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1959-09-11 第32回国会 衆議院 大蔵委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年八月二十九日(土曜日)委員長の指 名で、次の通り小委員及び小委員長を選任した。  税制並びに税の執行に関する小委員       足立 篤郎君    押谷 富三君       鴨田 宗一君    北村徳太郎君       黒金 泰美君    中村 梅吉君       夏堀源三郎君    濱田 幸雄君       古川 丈吉君    細田 義安君       毛利 松平君    山本 勝市君       春日 一幸君    久保田鶴松君       田万 廣文君    竹谷源太郎君       松尾トシ子君    横山 利秋君  税制並びに税の執行に関する小委員長                 鴨田 宗一君  金融及び証券に関する小委員       足立 篤郎君    植木庚子郎君       押谷 富三君    小西 寅松君       小山 長規君    竹下  登君       古川 丈吉君    福永 一臣君       細田 義安君    毛利 松平君       山下 春江君    山中 貞則君       山本 勝市君    春日 一幸君       竹谷源太郎君    平岡忠次郎君       廣瀬 勝邦君    松尾トシ子君       山花 秀雄君    横山 利秋君  金融及び証券に関する小委員長                 山本 勝市君  国有財産に関する小委員       荒木萬壽夫君    進藤 一馬君       西村 英一君    福井 順一君       藤枝 泉介君    坊  秀男君       山中 貞則君    山本 勝市君       石川 次夫君    佐藤觀次郎君       田万 廣文君    山本 幸一君       横路 節雄君  国有財産に関する小委員長                 荒木萬壽夫君  専売事業に関する小委員       加藤 高藏君    北村徳太郎君       黒金 泰美君    進藤 一馬君       西村 英一君    濱田 幸雄君       福永 一臣君    山下 春江君       石野 久男君    田万 廣文君       廣瀬 勝邦君    山花 秀雄君  専売事業に関する小委員長                 濱田 幸雄君     ————————————— 昭和三十四年九月十一日(金曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 植木庚子郎君    理事 足立 篤郎君 理事 坊  秀男君    理事 山下 春江君 理事 山中 貞則君    理事 石野 久男君 理事 佐藤觀次郎君       鴨田 宗一君    黒金 泰美君       進藤 一馬君    竹下  登君       中村 梅吉君    濱田 幸雄君       古川 丈吉君    細田 義安君       山本 勝市君    久保田鶴松君       田万 廣文君    竹谷源太郎君       廣瀬 勝邦君    松尾トシ子君       山下 榮二君    山花 秀雄君       山本 幸一君    横路 節雄君       横山 利秋君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君  委員外出席者         検     事         (大臣官房経理         部長)     大澤 一郎君         大蔵政務次官  奧村又十郎君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    大月  高君         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      小熊 幸次君         大蔵事務官         (主計官)   廣瀬 駿二君         大蔵事務官         (主計官)   海堀 洋平君         大蔵事務官         (管財局長)  賀屋 正雄君         大蔵事務官         (銀行局長)  石野 信一君         大蔵事務官         (為替局長)  酒井 俊彦君         農林事務官         (食糧庁総務部         企画課長)   亀長 友義君         農林事務官         (食糧庁経理部         長)      家治 清一君         運輸事務官         (航空局長)  辻  章男君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部長)  松永 正男君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 九月十日  委員石川次夫君及び山花秀雄辞任につき、そ  の補欠として山下榮二君及び久保田豊君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員久保田豊辞任につき、その補欠として山  花秀雄君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  税制に関する件  金融に関する件  外国為替に関する件  国有財産に関する件      ————◇—————
  2. 植木庚子郎

    ○植木委員長 これより会議を開きます。  税制に関する件、金融に関する件、外国為替に関する件及び国有財産に関する件について調査を進めます。  質疑の通告があります。これを許します。横山利秋君。
  3. 横山利秋

    横山委員 本題に入る前に、ちょっとほかの問題で恐縮ですが、管財局長にお伺いをしたいのです。今炭鉱の話を聞いておりまして感じたことがあるのですが、これほど石炭が不況で、政府総合エネルギー対策が要望されておるときに、ばかの一つ覚えみたいに、国鉄志免炭鉱を払い下げると言って大紛争が起っておる。楢橋運輸大臣は、それについて、非常に慎重なかまえを見せて、この際、国鉄労使双方ないしはそのほかの第三者が出した評価については、一つ政府としても慎重に大蔵省並びに通産省に研究をしてもらって、政府としての評価を出したいということを言明いたしました。これはきわめて重要なことであります。今日の紛争状況に対して影響するところ重大でありますが、大蔵省として志免炭鉱の採炭し得る数量その他売却価額等についての評価運輸省から依頼されたことがあるのかないのか、また、依頼されたとしたら、これを実施する用意があるのかどうか、そういう準備があるのかどうか、それを承わりたい。
  4. 賀屋正雄

    賀屋説明員 お答えいたします。志免炭鉱評価につきまして大蔵省運輸省から依頼があった事実はございません。もし依頼がありました場合のことは、まだ検討いたしておりません。
  5. 横山利秋

    横山委員 依頼がありましたら善処いたしますということは、今の大蔵省機能をもって、炭鉱という特殊なところの評価を、今の管財局機能評価を正当になし得る自信があるかどうか、それをお伺いしたい。
  6. 賀屋正雄

    賀屋説明員 評価につきましては、最近財務局の評価部門相当充実いたしました。専門の鑑定官というようなものも置いておりまして、漸次大蔵省国有財産評価の権威も高まっておると思うのでございますが、こういった特殊の炭鉱といったようなものについての評価につきましては、まだ経験が乏しい関係もございまして、完全な評価ができるかどうかについてはきわめて疑問が多いと思うのでございます。
  7. 横山利秋

    横山委員 わかりました。これはいつか機会を改めて運輸大臣の所信をただしたいと思うのですが、政府として志免炭鉱について公正な評価をしたいということの、評価をし得る一応の担当と見られる大蔵省が、今日の機能その他をもっては正当な評価をしがたいと思われるとおっしゃったことは、きわめて重要なことでございます。後日それを別な角度から、運輸省に来ていただいて、確かめたいと思います。  本日法務省管財局主計局に来ていただきましたのは、大蔵省が行なっております俗に建て交換といわれておる問題であります。私は選挙区が名古屋でございますが、名古屋を初め全国大都市並びに中都市の多くのまん中刑務所があります。そして、これが今日においては都市美観並びに景観を著しく阻害いたしておりまして、名古屋を例にとりますと、都市計画がそれによって非常な支障を受ける。大きなへいが都市のどまん中に城郭のごとく張りめぐらされ、それによって、中におります囚人その他も、このへい一枚外は浮世の快楽があるということを夢に見るばかりとなり、非常に各方面の問題になっております。これは、何も名古屋ばかりでなくて、聞くところによりますと、今問題になっておりますのは全国十七カ所になんなんとして、各自治体からこの拘置所並びに刑務所都市中心部から移転をしてほしいという痛切な要望が出ておるそうであります。私も、実情を見まして、全くもっともな話であり、これは単に地方自治体の問題、あるいはまた都市美観等地元の問題でなくして、国の施策としても、これらのほとんどの刑務所明治時代からの旧態依然たるものでありますがゆえに、この際近代的な刑務所なり拘置所を形成をいたしますためにも、都市中心部から移転をすべきではないかというふうなことが感ぜられるわけであります。そこで、まず、そういう点について、法務省の今日とっております方針並びに現状について、大略伺いたいと思うのであります。
  8. 大澤一郎

    大澤説明員 大都市にございます刑務所につきまして、それぞれその都市都市計画の遂行、あるいはまた、元来刑務所郊外地にございましたものが、最近都市の非常な発展によりまして、それらが繁華街の中に入ってきた。繁華街に取り囲まれて都市の経済的な発展上阻害するというような事情から、各市町村から刑務所郊外のどこか適当なところに移転してもらいたいという陳情なり申し出がございますことは、ただいま御説の通りでございます。法務省といたしましても、刑務所がさような繁華街の中にあるということは、在所者教化上も決していいことではございません。むしろ、郊外の閑静なところで教化に専念し、本人も静かに悔悟の生活が送れるというのが理想でございますので、刑務所といたしましても、その繁華街にいつまでも居すわろうというような考えは持っておりません。また、法務省といたしましても、適当な場所がありますれば、そこに移転したい、かように考えておる次第でございます。しかしながら、何分にも刑務所は非常に広大な地域を占めまして、また非常に大きな施設でございますので、軽々に移転するといたしましても、莫大な費用を要することになるのであります。また、刑務所移転につきましては、今度その移転先候補地の問題でございまして、すでに刑務所なり拘置所なりが移転するというので反対を受けまして、問題を起した場所も二、三ございます。また、移転候補地の選定ということにつきましても、相当深甚な考慮を払い、また市町村なり住民各位の御協力を得なければ実施することができない、という状況にあるわけであります。現在、刑務所で現在の位置から郊外へ行っていただきたいという陳情を受けておりますのが、二十数カ所あるのでございます。われわれもなるほどごもっともだと思われる理由のあるものばかりでございます。そのうち、なおこれは一刻も早く移らなければ市町村に非常に御迷惑をかけると思われるのが、大体十七あるわけであります。それらにつきまして、また候補地市町村でお考え願って、大体ここならいいだろうというような大体の目鼻のつきかけておる——交渉中のもございますが、それが十ございますので、とりあえずこの十について何とかすることはできないかというので、検討いたした次第でございますが、これらの十の刑務所を移しますのに、約八十億の経費が必要なのでございます。ところが、現在刑務所のございます土地というのが、大体町のまん中になっておりまして、非常に地価が暴騰いたしまして、現在の刑務所の占めております土地だけの評価と申しますか、これは厳密な評価はいたしたわけではございませんので、法務省の出先の法務局に一応の評価をさせましたところが、大体ほぼ同額の価値があるということでございますので、これらのものを財源にすれば新しく移り得るじゃないかというような考え方から、この十カ所の刑務所につきまして五年計画計画いたしまして、年間約十数億なり二十億というので実施いたしたい、かように一応考えまして、本三十五年度の予算要求の際に、大蔵省当局に一応の要求をいたしておるわけであります。もしも財政上許されますならば、各市町村協力を得まして、刑務所移転を実施いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  9. 横山利秋

    横山委員 二十数カ所の刑務所移転を必要とし、特にその間十七カ所が必要性があり、特にその間十カ所を五カ年間で八十億の予算を要する、これは喫緊のものであり、またその地方において協力態勢が整いつつある、こういう話であります。私は、方々刑務所を見たわけではございませんから、私の名古屋の例をもって大綱を律することができるかどうか知りませんけれども名古屋刑務所は、おそらくほかの十カ所もそうであろうと思うのでありますが、明治三十一年に現在のところへ建てられたものであります。ところが、その当時は人口が約二十五万、今は百三十万になんなんといたしまして、全く刑務所名古屋中心地帯に大きな城壁を張りめぐらして、厳として存在をいたしておるわけであります。その刑務所まん中都市計画による百メートル道路が突き当ってしまって、そうして刑務所がどかなければ都市計画が実行できない。その都市計画に該当する刑務所のそばの人々は、わしらが協力せぬでも、まず刑務所からどいてもらわなければならぬ、わしらはどく必要がないという気持になるのは当然のことであり、従って、都市計画はそのために非常な支障を来たしておるわけであります。こういうことは何も名古屋ばかりではおそらくありますまい。おっしゃる十カ所はほとんどそのようなところかと思うのでありますが、お差しつかえなかったならば、その十カ所というのはどこであるか、お伺いをいたしたい。
  10. 大澤一郎

    大澤説明員 われわれの方で、都市計画上、また刑務所自体も非常に老朽して、新しい行刑にそぐわないような旧式な施設でございますので、それらの点を考えまして、ただいま御質問の十カ所としまして考えておりますのは、名古屋刑務所、徳島、浦和、福岡、東京拘置所岡山刑務所、旭川、長野、新潟、静岡、以上の十カ所を大体計画しておるわけであります。
  11. 横山利秋

    横山委員 そこで、大蔵省にお伺いをいたしたいのでありますが、この刑務所移転するのに、正攻法といいますか、尋常普通の常識的な考え方は、政府刑務所を新たに建てるということであろうかと思うのであります。しかし、承われば八十億もの予算要求ということでありまして、大へんなことでありますが、大蔵省がその要求に対してどういうような状況にあるのか、大蔵省側、これは主計局側の見解を伺いたいと思います。
  12. 廣瀬駿二

    廣瀬説明員 ただいまの名古屋刑務所初め十カ所の予算要求につきましては、この九月一日からの予算折衝要求が織り込まれておりまして、目下いろいろ御意見を伺っておるところでございます。今この予算をどうするかということは、これからの折衝に待つわけでございます。
  13. 横山利秋

    横山委員 従来の経験からいって、また今法務省意見の中に少し入っておりましたが、従来は、これが地元協力態勢のもとに、俗に言うところの建て交換という方式によって推進をせられ、すでに、岡崎でありましたか、どこかで、建て交換方式によってそれが実現をされてきたように聞いておるわけであります。ところが、最近、そういう交換方式について、大蔵省内部に異論があるという話を聞きました。その刑務所移転する、これほどの喫緊の問題について、従来のやり方つまり建て交換方式によって、なぜできないのであるか、それは一体どういう理由であるのか、適当な責任者から、その説明を承わりたいと思います。
  14. 小熊幸次

    小熊説明員 お答えいたします。建て交換、あるいは建築交換という問題でございますが、この問題につきましては、これは刑務所の問題だけでなく、一般的な問題といたしまして、財政法規定から申しまして、まあ交換ということは、法律が認めればできるわけでございますが、その場合に、現在までは、国有財産法規定によりまして、あるいは国有財産特別措置法規定によりまして、これを実施しておったわけであります。ただ、この場合に、一般の交換というものは現存するもの同士につきましての交換ということ、それから建築交換は、これは現存しないものの交換でございますので、それを財政法精神から申しますと、どうも建築交換——現存しないものを建てさせておいて交換するということにつきましては、財政法精神から申しますと、どうも適当ではないのではないか、そういうような考え方に基きまして、なるべく予算形式でやっていくということが、国会における御審議を願うというような意味におきましても、最も適当な方式ではないか、こういうふうに考えておるわけであります。しかも、今度の問題は、非常に金額も張るものでございまして、そういうようなものにつきましては、やはり予算という形式で、国会の御審議を経て、それを執行していくという形が、最も正しい方式ではないか、このように考えておるわけであります。
  15. 横山利秋

    横山委員 周囲の人から問題をもっとわかりやすく話せというお話でありますが、たとえば名古屋を例にとりますと、名古屋市は、刑務所をどうしても移転してほしい、そのかわり、名古屋市で土地を見つけて、刑務所のおっしゃる通り建物を建てて、そして等価交換、同じ価格でかえましょうということで、土地も買収しよう、そしてそのための予算名古屋としては準備をいたしましょう、こういうことになっておるわけであります。そのかわりに、現在刑務所が建っておる土地名古屋市がもらう、新しい土地及び建物を市が建てて、政府交換をする、そしてその交換は同じ価格交換をするというやり方が、今の御説明を聞いても私は感ぜられるのでありますが、それが法律に違反しておるかどうか、また今日までそういうやり方方々でとられたわけですが、その中で、何かまずい点があったか、たとえば汚職があったのか、政府としてはどうにもならぬ不工合な点があったのか、そういう点が、承わるところによれば、ないようですね。ただ、その建て交換がどんどん発展をして、あまり金額が多くなった、名古屋刑務所のような大きなものをそういうふうに行政措置で勝手に交換していいかという、そういうことだけに限定をした話ではないかと思うのであります。そうだとしたならば、今日までずっと行われてきたこの建て交換によって、それぞれの関係者準備をし、そして土地折衝も行い、その土地もほぼよかろうということになり、全国各地で今日までの経過並びにそれに対して不工合な点がないという実績の上に準備をして参りましたそれぞれの刑務所拘置所地方自治体というものに対して、非常な論理的な問題、議論の上だけの支障によってこれにストップをかけることはいかがなものであろうか。そういう点については、交渉責任といいますか、処理の責任をとってこられた管財局としては、どういうふうに考えておられるのか、この点を一つ伺いしたい。
  16. 賀屋正雄

    賀屋説明員 建築交換につきましては、ただいま主計局法規課長が答弁いたしました通りの問題があるわけでございまして、ただこの制度が三十二年、三年と相当盛んに行われました。それから、特に刑務所に限って申し上げますれば、山形の刑務所その他二、三あるのでございますが、これにつきまして特に支障があったというようなこともございません。しかしながら、私どもこの建築交換をある程度認めて参りましたが、これがまたきわめて便宜な措置であるということから、各省におきまして、この方法によって、単に刑務所のみならず、文部省でありますれば学校でありますとか、それから各省それぞれ宿舎不足に悩んでおりますので、手持ちの行政財産交換に供しまして宿舎を建てるといたったような事例もたくさん出て参りました。これを無制限に認めて参りますことは、先ほども法規課長が申しましたように、国会財政に対する審議権を無視する結果になる。本来国の庁舎あるいは宿舎学校、病院、刑務所、こういったものが建ちますにつきましては、それぞれ予算に計上いたしまして、国会において御審議を経た上これを建築すべきであるにもかかわりませず、この方法によりまするときには、単に行政部内におきまして、国会の全然御存じないうちにどんどん庁舎が建ったり宿舎が建つ、こういうことはいかにも穏当を欠くのではないかという反省をいたしまして、これについては何らかの規制を加える必要があるのではないかというふうに考えるに至ったわけでございます。しかしながら、一方この建築交換の経済的な有用性というものもあながち無視するわけには参りません。従いまして、私どもも、今後といたしましては、ごく金額の軽微なもの等につきましては、ある程度主計局ともお話し合いの上で認めていかざるを得ないと思うのでありますが、何分にも金額の大きい、一件五億、十億というような件につきましては、これを認めるということは、先ほど申しました国会に対する関係上適当でないというふうに考えておるわけでございまして、その点につきましては、しからばその間の国会財政に対する審議権との調整をどういう方法によって解決するかというような点につきましても、今後の研究課題といたしまして研究はいたしたいと思うわけでございますが、その結論が出ますまでに、従来と同じ方法によって相当大きな金額建築交換を認めるというようなことは、御遠慮申し上げたいと考えておる次第でございます。
  17. 横山利秋

    横山委員 少し、僕の申しておることについて、やはり管財局としても責任を持ってもらわなければいかぬ。あなたのおっしゃることは、今までは不工合なことはございません、ただ論理上建て交換が大きな金額になりますとどえらいことにもなり——どえらいというのは、ワクが非常に大きくなりますから、この際一つ、そういうところまでということはいかがなものでしょうかという議論の問題をなさっておられる。自分が今までやってこられた建て交換は、不工合なことがなく、正しいという立場に立ちながら、そしてその間いろいろな経緯のあるものを今とめよう、さしあたりちょっと待ってくれ、こういうのです。それは、自分でやったことについて自分でけちをつけるといいますか、おかしなことを言っていらっしゃるような気がするのです。  もう一つ政府意見として伺いたいのは、先ほどお伺いしましたところによりますと、法務省としてはこれだけの刑務所を建てる、従って予算をそれ相当、八十億ですか、相当要求をしておる、要求をされた主計局はそれをオーソドックスに検討する、こうおっしゃる。あなたの方は従来の建て交換方式をそのまま踏襲をするけれども、その間ちょっとチェックをつけてみたいということで、その間待ってくれ。どちらの方法で解決をなさるのか。政府の統一的な意見をこの際明らかにしてほしい。私の申し上げることはわかりますね。
  18. 賀屋正雄

    賀屋説明員 この名古屋刑務所の具体的な案件について、どの方法によるかという点につきまして、まだ大蔵部内におきまして最終的な結論はついておりませんが、まあ私ども考えといたしましては、従来の建築交換方法によることは穏当を欠くという結論でございまして、なるべくと申しますか、先ほど法務省からお話がございましたように、来年度の予算要求も出ておるようでございますので、予算を通じる方法によって解決するのが穏当であろうと考えております。
  19. 横山利秋

    横山委員 もう一回。最後のところがよくわかりませんでしたから……。
  20. 賀屋正雄

    賀屋説明員 予算に計上する方法によりまして、名古屋刑務所を新築する方法によってこの問題を解決する方向で、検討を進めたいと考えております。
  21. 横山利秋

    横山委員 建て交換方式でなくして、予算に計上を八十億して——名古屋刑務所ですから十三億かそこらですか、そういう方式によってやることが妥当であるという御意見ですか。
  22. 賀屋正雄

    賀屋説明員 その通りでございます。ただ一言申し上げたいと思いますのは、予算に計上する方法と申しましても、ただ普通の予算に計上して歳出を認める方法と、それから、御承知と思いますが、昭和三十四年度の予算におきまして、庁舎等特別取得費と庁舎等売払代という歳入歳出に特別の費目を設けまして、一方においてある財産を取得いたします。それに伴いまして不要になったものを処分する収入の科目を設けたわけでございますが、これは、実は、建築交換が、先ほど来申しましたように、国会予算審議権を無視しておるという非難もございますので、実質的には建築交換と同じような働きをするわけでございまして、特定の人が建てましたものを、でき上ったところで取得する予算をつける、そしてその建てた人に対して不要となった財産を売却して、その収入を別の歳入とする、こういう特別の歳入歳出の科目を設けまして、二億円を計上いたしたわけでございます。この刑務所予算につきましても、そのような方式による予算の計上の仕方も考え得るわけでございます。ただ普通の予算の計上によりますか、今申しましたような予算の計上のいたし方にいたしますか、それは別といたしまして、このような金額相当大きなものにつきましては、従来通り建築交換をそのまま認めるということはいたさないで、予算を何らかの形で通ずる方法によって解決したいということで、検討をいたしたいと考えております。
  23. 横山利秋

    横山委員 そうすると、そこではっきりお伺いしたいのですが、今の予算を計上する三十何年かにあったやり方を私も承知しておるわけです。しかし、そのやり方は、たしか議論になっておるのは二億円ぐらいの場合でありまして、現実の要請を満たし得ないということは、あなたの腹の中でもこれはわかっておることですね。あなたは、その方式によって、今たとえば名古屋だけを例にとっても十三億ですね。二億が十三億になり得るか。ないしは十カ所八十億という数字になり得るか。現実にその方式によって現在問題になっております刑務所移転を可能ならしめる立場で、ものを言っておられるのか。ただそういう方法もありますというだけでは、実質上はできません。話として言っておるのか。あなたは、今度の刑務所移転について、方法のいかんはともあれ、実現をさせるという立場に実際に立っておられるのかどうか。私は、さっきからあなたの話を聞いておると、疑わしく思う。いかがですか。
  24. 賀屋正雄

    賀屋説明員 名古屋状況を私見たわけではございませんが、各方面からのお話を伺っておりますと、できるだけ早く実現させるのが適当であるというふうに私も考えております。しかしながら、その実現の方法といたしましては、従来の安易な建築交換方法によるのはこの際差し控えた方がよかろう。決して予算に計上するのが全然不可能だということになったわけでもございませんので、その方の努力をするように持っていきたいと考えておるのであります。
  25. 横山利秋

    横山委員 不可能だということにもなっていないが、建て交換が実現できるように持っていきたい、こうおっしゃるのです。もう一歩を進めてお伺いしますが、あなたの先ほどからの意見は二つに分れます。一つは、従来の建て交換方式は、これだけの金額になってはいかがなものであろうか、少しチェックする方法考えたいという言い方が一つ。もう一つは、今お話が出ました予算の中で収入支出を見つくろってやりたいという御意見のように伺ったわけです。その前者ですね。これほど多くなれば、一つ国会審議権ということも考えてやらなければならぬということは、具体的にはどういうことを意味しておるのか。たとえば建築交換のある一定規模以上のものについては国会で承認を求めるとかいうことにするつもりですか。あるいは国会へあとで事後承認を求めるとか、通告をするとか、報告をするとかいうことをしようとしておるのか。少くともこの交換というものは地方自治体と国との間に行われておるものであって、今議論の対象になっておりますのは、一般国民との間の問題じゃない。原則的に地方自治体と国、特に焦眉の急になっています刑務所移転という特殊な問題であり、特殊な事情であるということを、あなたはお考えになるべきではなかろうか。こういう気がするわけです。この点については、刑務所であろうと何であろうと、一般的の理論としてあなたがお考えになっておるような気がしてならぬのであります。どういう方法でなさろうとしておるのか、いま少し具体的に伺いたい。
  26. 賀屋正雄

    賀屋説明員 先ほど来申し上げておりますように、ただいまの考えでは、建築交換によらず、予算に計上する方式によりましてこの問題を解決したい、そういう方向で検討を進めたいと考えておりますが、かりに建築交換によるといたしました場合に、先ほど来申し上げておりますような、国会財政に対する審議権を無視するということに対する調整をどういうふうにはかるかという点でございますが、これにつきましては、方法としてはいろいろ特別な立法をいたしまして、一件幾ら以上のものは国会の特に個別的に議決を経るというようなやり方もあろうかと思いますが、まあそういった法制的な問題につきましては、ただいま検討中でございまして、結論めいたものには達しておりません。しかしながら、この刑務所は先ほど来市と公共団体と国との間の特殊な関係のものであるというお話でございます。緊急性はいろいろあろうかと思いますが、刑務所について建築交換を認めて、学校について認めないとか、あるいは病院等についても認めないというふうなことには、ちょっといたしかねるのではないかというふうに考えておるのでございまして、建築交換相当大きなものについて認めることが適当だという議論になりました場合には、国会審議をどのような形で経るかということは、また別途検討を続けておるわけでございます。ただいまのところでは結論は得ておりません。
  27. 横山利秋

    横山委員 私の承知しております経過でいけば、去年の五月ごろからこの問題は浮んでは消え、また議論をしては蒸し返すということになっておるわけです。そうして、名古屋市を例にとってみますと、その間大へんな努力と経費と労力というものが費されておる。そして、名古屋市としては、いろいろな議論があるけれども、かわりのここならばよかろうという土地を見つけて、その買収の話を進め、諸般の準備を整えた。今日まで、建て交換という方式が、何の不工合もなく、大蔵省においても、あるいは法務省においても、それによってなされてきた実績があるから、これに対して何の問題もなかろうということで進めてきたわけなんです。それを、今局長の表現をもってすれば、別に今までにまずかったことはないけれども、理論上どうもまずいように思うから、この際予算措置を講ずるなり、建て交換方式を修正なりいたしたい、こういうわけですね。そうしますと、こういうことになりますか。今のお話ですと、いつのことやらわからぬのですが、来年度の予算並びに法律事項ということになりますと、通常国会ということになる。通常国会でこれを審議をして、来年の二月なり三月なりにその予算なり法案が通る。それからおもむろに名古屋市を初め各所と相談を始めて、それによって、もし今の建て交換国会の承認を必要とするときめたとしたならば、来年の十二月から始まる通常国会にこの建築交換でよろしいかどうかということの国会審議を求める、こういうそろばんになっていくわけですか。(「ことしじゃないか」と呼ぶ者あり)ことしはそういう法制を作るというのだから……。(「予算要求する」と呼ぶ者あり)予算要求をすればいいですけれども、あなたがおっしゃるように、ある規模以上は建て交換については国会審議を要することにするという法制を作るとすれば、今度の通常国会でその法制化ができて、そしてその次の国会に承認を求めるとするならば、来年の通常国会、そうすると、再来年あたりでなければ、この建て交換方式によるものはできない、こういうことがまじめに考えられておるわけです。私はまことに不可解千万だと思っているのです。政務次官も大体話の筋はおわかりになったと見えて笑っておるようですが、常識的な御判断を願いたいわけです。私の言いたいところは、今日まで不工合がないとしたならば、今日までの経過というものを一応尊重して、今問題になっている焦心の問題だけは建て交換でやりなさい、そして将来予算なりあるいは法制化が必要であるとするならば、それはそれでやりなさい、それと並行してどういう点が悪いのかということを主張をしておるわけです。さしあたりの今の焦眉の急——二年も問題になってきたものを、大蔵省法務省議論をしてきて、諸般の準備地方自治体に全部とらしておることであるならば、それだけはやったらどうだ、こういうことを私は主張をしておるわけです。
  28. 奧村又十郎

    ○奧村説明員 政務次官におはちが回ったようですから、私からちょっと申し上げたいと思います。横山委員のおっしゃるところの多古屋の刑務所移転問題については、どの角度からだれが見てもいわゆる建て交換が妥当だということであれば、国会審議を尊重する建前をとって認めるように運びたい、こういった答弁をたびたび繰り返しておるので、管財局長の方は少し慎重に考え過ぎたように思いますから、私から申し上げますが、その方法としては、一方において予算の中に庁舎の特別取得費というような項目で予算を計上するというようなことも考えられるわけですね。それに対して法規を、つまり規定法律にきめなければいかぬじゃないかということですが、これは、予算に計上しておいて、法律もまたその国会中に提案する、こういうことは今までもたびたびやっていることだから、あなたの御心配になるように、法規は次の国会だ、そうすれば予算は再来年だ、そういう心配はなかろうと思います。
  29. 横山利秋

    横山委員 方法は、予算によって刑務所を作るというやり方と、建て交換によって予算関係なくやるというやり方と、両方ある。けれども建て交換予算をとれないから、ある金額以上はチェックしなければいかぬ、国会建て交換をしてよろしいという承認を求めるようにしなければいかぬ、こういう意味らしいですね。だから、こちらの方法ならば、予算で建てるというなら、今度の国会で八十億大蔵省予算に盛ってくれれば来年建つけれども、こちらの建て交換方式国会でチェックするという法制化を作るというなら、今度の国会は法制化する国会です。それができ上ってから、次の国会で今度は具体的な承認を要する国会ということになる。そうすると、再来年あたりしか交換方式は実現できぬではないか、こう言っておるわけです。  それから、私の主張は、どちらにするにしても、今までの経緯のあるものについては、悪いところはなかった、不工合の点はないというなら、今日までの経緯並びに地方自治体の今までの努力というものが水泡に帰してしまうやり方だから、不工合の点がなかったら、今の焦眉の問題については今まで通りやったらどうか。そして、これからの問題については、予算で計上する方式なり、建て交換国会がチェックする方式なり、どちらでもお好きなようにやりなさい。私は、そうはいうものの、予算で八十億主計局が計上するということは、おそらくあり得ないだろう。それがあり得るならいいけれども、それは実際問題としてあり得ないと思う。そうとしたら、今地方自治体協力して、私の方でやりましょうと言って準備もできておるのですから、建て交換方式によって、多少チェックする方法でもいいから、現実的な方法でやったらどうだろう、こういった主張をしているのです。おわかりになりましたか。
  30. 奧村又十郎

    ○奧村説明員 この刑務所庁舎取得費に対して、たとえば名古屋刑務所の新築移転建て交換方式で認める場合といたしますと、それだけの予算を別にまた特別取得費として計上するのですから、つまりワクが別ワクになるわけです。それに対して法律改正が必要であれば、別ワクで予算を計上し、別途法律も提出する、こういうことですから、これは来年度予算に実施するという政府の腹がきまれば御心配なくできる、こういうわけです。
  31. 横山利秋

    横山委員 政務次官の認識と私の認識とちょっと違うようですけれども、要するにやってくれるなら私らけっこうです。準備させるだけ——資料もとり、あれもやれ、用地はあるのかなんといって話をさせておいて、もう用地も確保し、そして、刑務所の付近の人には、いよいよ移転するからあなた方もどいてくれと、万端の手を打ってしまったのです。にっちもさっちもならぬのです。ならぬところへ、今までのやつは白紙だ、これからおもむろに法制化する。どういう法制化をするか、どういう予算になるか知らぬ。予算とあなたは簡単に言うけれども予算を盛るといったって、政務次官、八十億ほんとうに盛れますか。できゃしますまい。何ぼ自民党内閣だって、現実的には建て交換方式しかないだろう。なければ建て交換方式一つチェックしたい。国会で承認を求めるとか、通告とか報告を求める。それはそれでいい。やりなさい。法律案を出しなさい。けれども、今まで諸般の準備をさせておいて、そして万般の準備をして、さあどうぞといって政務次官に持ってきたら、そのごちそうを食わぬというばかなことがあるか、そういう勝手なやり方があるかというのです。だから、今までのことは今までのこととして、建て交換をやったらどうだ、こう言っているわけです。それとも、あなたは、いやそれはまあというような顔をしているのだが、もしそうならそうで、建て交換法律案を今度の国会に出すとします。出しながら、あわせて現実の建て交換の承認を、具体的な、たとえば名古屋なら名古屋、どこならどこという現実の承認を二つ一緒にしてお出しになれば、これはまだいいです。やり方としては私は妥当だと思う。とにかくあなた方は今政府部内で理屈だけでけんかしている。迷惑をこうむるのは現地です。別に今まで不工合なところはないと言っておりながら、理屈上あちらこちらでけんかして、銭でやれ、交換でやれといってけんかしておる。みっともないから、現地の準備万端整っている状態を尊重して、すみやかにけりをつけてほしいということなんです。それで、私の言うことはわかったと思いますが、一体やるのかやらぬのか。
  32. 賀屋正雄

    賀屋説明員 お話を伺っておりますと、現地において相当話が進んでおるように承わったのでございますが、お前は実情を知らぬといっておしかりを受けるかもしれませんが、実は昨年の七月ごろ、建築交換が、無制限と申しますか、あまりに乱雑に流れ過ぎるということを反省いたしまして、各財務局に対しましては、自後チェックするようにということは徹底いたさせたつもりでおるのでございます。その後、名古屋刑務所につきましては、昨年の暮れでございますか、陳情は参ったのでございますが、その際も建築交換については問題があるということを十分申し上げておるはずでございます。従いまして、現地の情勢が相当おぜん立てが進んでおるからということで、これだけは特別に認めろと仰せられましても、ちょっとそうはいかないのじゃないか。また、そういうものを認め出しますと、現在各省建築交換をやりたいという要望が出ておりますのが百十五件ばかりございまして、金額にいたしますと百十億くらいになるのでございまして、この中からも相当話が進んでおるから認めてほしいというものがたくさん出てきて、断わりにくいというものが出てくることは、容易に想像できるわけでございます。従いまして、私どもは、今後の方針が法律によるなら法律によるということがはっきりいたした後に、処理を認めていくということにいたしたいと思うのであります。法律によりまする場合には、先ほど非常におくれるというようなお話がございまして、また一案、横山委員のおっしゃったように、法律を出すと同時に国会の議決を求めるというような方法もあり得るわけでございますので、そう何年も先になるというようなことはあり得ないと思うのでございます。しかしながら、先ほど来申し上げておりますように、この件につきましては、できるだけ建築交換方法によらないで、オーソドックスな予算計上の方法によりたいということで考えておるのでございます。八十億というお話がございましたが、これは数年にまたがるものでございますので、三十五年度だけとって考えますれば、ただいまの計画では十二億程度ということになっておりますし、その中でも名古屋だけをとりますと三億五千万程度のものでございますので、これをはっきり予算に計上するということはもちろん申し上げる段階ではございませんが、そういった金額のものでもありますので、相当ほかの費目との関係を考慮して、主計局においても善処されるのではなかろうかというふうに考えておるわけであります。
  33. 山本勝市

    山本(勝)委員 関連して。  会横山委員から名古屋刑務所の問題が出ましたが、同じような問題が浦和にもある。先ほど来予算要求の中にも浦和を含んでおるということでありました。そして、名古屋の場合は、方式はどういうふうにやるにしても、何だか大蔵省の方でも今度の予算には実現したいというような気持が浮んできたようですけれども、浦和も大体同じじゃないかと思うのです。それは同じように考えておられるだろうと思うが、僕は法務省とか大蔵次官にこういうことを聞いてみたい。刑務所をどこか瀬戸内海の島の方に持っていくようなことを者えたことがないかどうか。御承知の通り、サンフランシスコヘ行くと刑務所は島にあるのですけれども、実際これまでの実情からいっても、埼玉で犯罪を犯した者は埼玉へ置くのなら、近いところへ置く必要はありますけれども、実際はそばに置くとかえってよくないということがある。近所に入れておくと、一緒に悪いことをしたやつが近所におって、どうも成績がよくないということから、埼玉県で悪いことをしたやつを、新潟県とか山形県とかいうところへ持っていっている。これは法務省の方は御存じだろうと思いますが、遠方へ持っていっておる。それで、親の方からいうと、母親などなるべくときどき行って会ってやりたいから、近所に置いてほしい、埼玉に置いてほしいといっても、そうはいかぬのだ、そばに置くとかえってなおらぬから、それで遠方の方へ持っていくのだというので、新潟に持っていったり山形へ持っていったりしておる。そういうのは確かに意味があると思うのです。そばに置かぬ方がいいという方針は私はその通りだと思いますが、そういうことなら、なおさら、名古屋刑務所名古屋の人がかえ地を作ってそこへ作るなんというようなこそくなことを考えないで、今名古屋の場合はすでにきまっておるそうですが、何も愛知県の犯罪人は愛知県に置かなければならぬというのじゃなくて、瀬戸内海に限らず日本には島がたくさんあるのですから、その島に持っていって、そして自衛隊がブルドーザーでも持っていけば、敷地くらいはすぐできますよ。そうすれば、あらゆる環境から見て、犯罪を犯した人にとっても、教育上からいっても、またそうでない者から見ても、外部の者から見てもいいのじゃないか。だから島なんか一番いいのじゃないか。そういうことを考えた場合、島ではやはり都合の悪いところがある、そこへ行く役人が困るとかなんとかいうことでもあるのか、その点を一つ伺ってみたいと思う。
  34. 大澤一郎

    大澤説明員 現在、刑務所の収容者は、その土地に必ずしも収容しているわけではございません。それは、囚人の中でも、いろいろ知能でありますとか、性格でありますとか、あるいは再犯者、初犯者、あるいは若年者、年長者というふうに、それぞれ所遇が異なって参りますので、刑務所の中で適正なところを初犯の刑務所あるいは再犯の刑務所というふうにいたしまして、それぞれ最も似たような所遇のできる者を一カ所に集めて所遇しておるわけでございます。従いまして、浦和でありますと、埼玉県の犯罪者が必ずしも埼玉県の刑務所に入るというわけではございません。さような意味でよそに出している場合もございます。しかし、何といたしましても、犯罪者が再び社会に復帰しなければならぬ、さような意味合いから、やはり家族なり親戚なりのおりますところで平素連絡をとりまして釈放後におきまする社会復帰ということも考えなければなりませんので、やはりその地におるのが最もふさわしいのではないか、かように考えております。  それと、一つの島等に囚禁するという問題でございますが、現在刑務所に入っております者が、大ざっぱに見まして受刑者が約八方ございます。人口八万の犯罪都市というものが一つでき上るわけでございます。また、さような者を一時に八万人一つの所に囚禁しますと、やはりそこに大きな治安問題が起きるのではないかということも考えられますし、また、刑務所の所長以下職員が、それだけの収容者を掌握いたしまして、一つの方針のもとに改過遷善をはかっていくという場合に、やはり一つのグループの限度はあるわけでございます。現在刑務所は大体二千人程度と伺っております。少年でございますと、二百から二百五十人というのが、改過遷善し掌握していく一つの限界でございます。この点で、一つの島に八万から十万というものを集めてしまうということも、やはり行刑の本質上非常にむずかしいことではないか、かように考えております。しかし、ある刑務所を島に持っていくということはまた考えていいんじゃないか、特に長期の、無期囚なんかを囚禁するというようなところは、島の中ということも考えていいのではないか、かように考えております。まだ法務省として全部島に集めるという結論まで考えておるわけではございません。
  35. 山本勝市

    山本(勝)委員 先ほども、何しろ膨大な敷地を要する、だからなかなか適当な敷地がむずかしいというようなことがありましたから、私は、刑務所なんというものは膨大な一ところにたくさん寄せるなんという必要はないものだ。むしろこれを分散して、小さいといっても程度はありますけれども、普通の住宅みたいなものでは困りますけれども、しかし、規模を小さくして、そうして同時に、島は理想だと思いますが、とにかく人里離れた所へ小さくしてたくさん作ったらいい、あんまり小さくすれば経費がかかるということもありましょう。しかし、小さくすれば敷地も得やすいのですから、今のブルドーザーでちょっとやってもできるくらいな学校くらいの大きさのもので、あたりはもう島ですから逃げ出すわけにもいかぬということですから、島自身が一種のれんがの壁みたいになって、れんがを積まぬでもいいところもできるかもしれない。とにかく分けるということと、島に移すという考え方——これはおそらくサンフランシスコだけではなしに、ナポレオンなんかでも島におったのであります。ほかにもたくさんあるだろうと思います。日本には島がたくさんあって、しかも人間がほとんど住んでいないような島もたくさんあります。そういうところこそ僕は刑務所としては最も適地ではないか、こういうことなんですが、考えてもらいたい。
  36. 横山利秋

    横山委員 それでは、結論的に要望いたしたいわけですが、そうしますと、管財局長意見を総合しますと、こういうふうに理解してよろしいか。まず第一に、予算に見つくろうのが正攻法であるから、それをやってもらう。それがうまくいかなかったなら、建て交換という方式について若干の修正を加えて実施をしたい。その方式による場合は、私が懸念をいたしますようなことはない。たとえば、その国会審議、法制化する場合にあわせて承認を求める方法もあるから、そんなにおくれるようなこともないと思う。最後に、いずれにしても当面の名古屋——ほかにも名古屋と同じようなところがあるだろうと思いますが、当面の焦眉の急の問題については善処する。こういうふうなお話と承わってもよろしゅうございますか。そうであるとするならば、政府の最終的な意見というものはいつごろおきめになりますか。それによって、地元の方としても——あなたは勝手にやったというような顔をしておりますが、それはけしからぬ。いろいろ地元としても運動をしたことでありますから、迷惑を一刻も早くなくするようにきめてもらわなければならぬと思いますが、いかがでありますか。
  37. 賀屋正雄

    賀屋説明員 仰せの通りでけっこうでございますが、最終的に確定いたします時期は、おそらく来年度予算が確定いたします際であると考えております。
  38. 横山利秋

    横山委員 そう言われれば当りまえのことだ。確定をいたしますということは、最終的確定は国会において決定するのでありますが、そういうことでなくて、政府の内部において大体内定をいたしますときということでございますか。地元の便宜ということもあるから、もう少し親切に御答弁して下さい。
  39. 賀屋正雄

    賀屋説明員 予算の確定といいますれば、もちろん国会の御承認があったときでございますが、そういう意味ではございませんで、国会に提出いたします予算の内容がきまります際でございますが、仰せのような事情もありますので、できるだけ早く確定いたしますように、主計局とも十分折衝いたしたいと考えております。
  40. 植木庚子郎

    ○植木委員長 午前の会議はこの程度にとどめまして、午後一時まで休憩いたします。     午前十一時三十八分休憩      ————◇—————     午後一時三十分開議
  41. 植木庚子郎

    ○植木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  佐藤觀次郎君。
  42. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 実は、東南アジアへ過日参りまして、いろいろ感じたことなんでございますが、大臣もさきにインドヘおいでになったことがありますので、いろいろと同地のことについては詳しいと思います。わずかな日にちではございますが、私が東南アジアに行きまして、大使館の方やあるいは地元の事業家の方、いろいろな方から意見を聞きましたときに感じましたことは、現在東南アジア開発基金というものがあるけれども、実際には活用されてないというようなことも、いろいろ意見を聞きましたが、こういう点について大臣はどういうようなお考えを持っておられるのか。せっかく私も東南アジアへ行って参りましたので、大臣の御所見を承わりたいと思います。
  43. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 いずれ最近視察からお帰りになりました佐藤さんから御批判をいただくことだろうと思いますが、政府におきましては、かねてから東南アジア諸地域、ことに経済の後進国、この経済開発に協力する、こういう基本的な考え方を持っております。いろいろ貿易を伸張さすということも、自国の経済に寄与し、自国民の生活を向上さすということが一つの最終的な目的のようにも考えられますが、ただいまは、各国共存共栄というか、そういう方向でない限り、世界経済を拡大するわけにいかない、こういう意味から、先進国と自負し、またそれだけの力を持ちます日本といたしましては、東南アジアの後進諸地域に対しましては、これらの国々の経済を発展させ、同時にまた当方もその利益を受ける、まあこういう観点に立って、今日まで施策を進めて参っておるのであります。  ところで、東南アジア諸国ということになりますと、多数の国々がございますが、それぞれの国々がそれぞ特殊な事情にあるのでございますので、ただいま申すような基本的な考え方を実施に移します場合に、ただいままでのところ主たる柱になりますものは、過般の戦争賠償問題、あるいはこの賠償協定に付帯して締結いたしました経済協力協定、あるいはそれ以外には特殊なクレジットの設定であるとか、あるいは貿易の延べ払い方式、こういう形で今日まで冒頭に申すような基本的方針を実行に移しておるのであります。岸内閣といたしまして、東南アジア経済開発基金というものを五十億まず基金として作りましたが、まだこれは実行に移してはおらないのであります。最近におきまして、世界銀行の関係あるいはIMFの関係等におきましても、後進国に対しての経済開発のための金融措置は、いわゆる世界銀行の考え方だけでは不十分だ、こういう意味で、農近第二世銀の構想というものが発表され、それに対する工業国等の出資等を要望しておるのでございます。わが国におきましても、この各国共同しての第二世銀の構想というものには、原則的にただいま賛成でございます。しかし、この第二世銀の構想が、金利の問題であるとか、あるいは期限の問題であるとか、あるいはまた弁済の方法等がただいま明確でございませんし、さらに、融資するとしても、その資金の量をいかにするかということもまた明確になっておりません。従いまして、ただ構想というか、そういう考え方にわが国が賛成だというだけであります。賛成した場合におけるわが国の持ち分というか、あるいは分損と申しますか、そういうものはまだ決定をしておらないのでございます。しかし、後進諸国の経済援助をして各国の経済を発展さしていくということ、これは共同の目的と申してもいいだろうと思います。近く開かれますIMFやワールド・バンクの年次総会、それらの席においても、これらの点について意見交換される、かように実は予想をいたしております。ところで、第二世銀の構想は構想として、日本の場合に一体いかにするか、こういう問題、第二世銀に参画することは一応了承できても、日本は日本として車独にみずから進めるものはないか、こういうことが私どもに課せられた一つの命題のように思っておるわけであります。ただいま、与党である自由民主党の中にも、東南アジア開発のために特別委員会を設けて、結論を急いでおるようでございますが、まだ明確な結論は出ておりません。こういう状況でありますので、いわゆる五十億の開発基金といいますか、それの使途はただいままだきまっておらないというような現状でございます。ただ、しかしながら、私は、冒頭に申しましたような基本的な考え方、これを機会あるごとに実現に移すように努力すべきだ、かように考えております。せっかく基金として積み立てられておりますので、そういう意味では有意義にこれを使うことを工夫すべきだ、かように考えておる次第であります。
  44. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一点お伺いしたいのですが、これは、現地の事業家の代表の方々、商社の代表の人々といろいろ懇談したのですが、どうも、通産省は理解があるけれども大蔵省は理解がない。こういうことで、私も、大蔵委員をやっておりますから、いろいろ聞いてみたのですが、どうも現地を見ないので理解が乏しいというようないろいろな意見を聞きました。この一点についても大臣がどういうお考えを持っておられるか、その点をお伺いしたいのと、もう一つは、後進諸国に対する日本の経済の発展あるいは援助についても今いろいろと施策が行われておりますけれども、どうも日本の貿易対策あるいは日本の経済進出についての重点がはっきりしない。一体ビルマに置くのか、タイに置くのか、あるいはインドに置くのか、パキスタンに置くのか、あるいはインドネシアに置くのか、こういう点がどうもはっきりしないように思われます。特にどこでも少しずつ頭をなでる程度にやるということになりますと、現在、アメリカとソ連は別にいたしましても、西ドイツが非常にこの方面に進出をしてきておりまして、これらの東南アジアの諸国からもいろいろと強い要望がございました。いずれ自民党の方もおいでになっておりますから、党の方からも問題があるかと思いますが、こういう点について、私どもの希望としては、やはり重点をはっきり置いてもらいたい。そういう点で大臣の所見を承わっておきたいと思います。
  45. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 外地をごらんになりまして、通産省は比較的理解があるが、大蔵省は理解に欠けておる、これは一体どういうことを意味しておりますか、私には、ちょっと理解しかねるのであります。私どもも十分深い理解を持ち、そうして大蔵省の果すべき責任は十二分に果しつつあると、実は確信を持って申し上げる次第でございます。ただ一言、あるいはこういう点からただいまのような御意見が出るのじゃないか。と申しますことは、大蔵省といたしましては、大事な国の財布、国民の財布を預かっておる、こういう意味におきまして、やはりその採算性を十分考えるとか、あるいは焦げつきにならないように工夫するとか、こういう意味で態度が非常に慎重だ、そういう点が伸びて行く経済発展支障を加えておる点がある、こういうような御指摘ではないかと思うのであります。これは基本的な経済に対する考え方の問題でもございましょう。基本的に、私ども、いわゆる健全成長あるいは安定成長——安定か成長かとか、健全か成長かという二つの題目ではなくて、健全成長、安定成長ということを考えておる。そういう立場でいろいろ工夫いたしております。あるいは、大蔵省が少し窮屈過ぎる、こういうような事柄ではないかと思いますが、今後とも十分私どもも努力をいたしまして、実情に合った妥当なる処置をとっていく、こういうように心がけて参るつもりでございます。  次に、東南アジアの諸国が非常に多数ある、一体重点は何かというお話になりますが、これはまことにむずかしいお話でございます。先ほど申しますように、これらの諸地域は経済的な後進国であります。インドもおくれておれば、ビルマも、タイも、インドネシアも、あるいは回教地域もみんなおくれておる。そういう国々にはそれぞれの特質があるだろうと思いますので、それぞれの特質のあるものについて私ども協力をする、あるいは、どこまでもそれぞれの国々が独立国家としての経済開発計画を持っておられる、これに対して私ども協力していくということでございまして、いずれの国に重点を置くというわけには実は参らないように考えております。一部わが国の財界、経済界の方面には、わが国の経済に積極的に寄与する、そういうような産業部門に対して積極的に協力支援、開発をしたらどうか、こういう意見もあるやに伺います。これは一つの御意見だと思いますが、後進国の経済開発に協力するという場合に、日本の立場だけからその具体策を決定するわけにも参りません。そこにはやはり独立国家における諸計画を十分勘案し、よく相談に乗って、相手の国の経済の発展がひいてはわが国経済の発展に寄与する、国民生活の向上に寄与する、こういう非常に広範な大目的のもとに提携協力すべきだ、これが私ども考え方でございます。
  46. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 貿易制度について通産大臣にも質問しようと思いましたが、おいでになりませんので、もう一点、最近やや不振を唱えておるプラント輸出について、大臣はどのようにお考えになっておるのか。いろいろ現地で問題がありまして、プラント輸出がもう少しうまくいけばというようなことがあるので、この点については今までと同じような方針でいかれるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  47. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 経済後進国ばかりではございません。他の諸地域等においても、わが国の技術あるいはプラントを積極的に輸出する。これには私どもも非常な積極的な考え方を持っておるつもりでございます。しかし、なかなか決済方法その他で相手の国が当方の要望を引き受け得ないものもございます。それぞれの国々は、何と申しましても国際決済ということに重点を置いて、貿易の振興なりプラントの輸入状況なりを勘案いたしておりますから、相手の経済力とやっぱり十分に見合いをつけないと、当方が強い意欲を持ちましてもなかなか実現して参らない、こういうことになるようであります。具体的なアイテムにつきまして、私どもも、積極的に協力するよう、隘路を打開するよう、せっかく努力しておる状況であります。
  48. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 ビルマに行きまして、ビルマのいろいろな要人、あるいはウ・ヌー前首相あるいはウ・バ・スエなどに会った。この人々から直接賠償の問題は聞かなかったけれども、最近いろいろな方面からこれが問題になっておりまして、これは外務大臣の所管かもしれませんけれども、大臣としてこの賠償の問題についてはどういう見解を持っておられるのか、これも関連して一つ伺いしておきたいと思います。
  49. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御承知のように、前の戦争の結果、賠償問題として最初に取り上げられ、最初に解決をしたものが、ビルマに対する賠償問題でございます。戦後処理の先端を切ってくれた、こういう意味で、ビルマ賠償というものを契機にして、他の国の賠償問題も順次解決を見るようになった、こういうことでございますから、ビルマの賠償問題というものは、私どもには非常に感銘深いものであります。もちろん基本的には外務当局あるいは政府自体として考うべきものがあるかもわかりませんが、ただいま申し上げるような意味において、ビルマ賠償協定並びに経済協力協定というものが、十分審議が遂げられて参っておるのであります。最近におきましてビルマ政府から申し出があった。これはすでに新聞等で報道せられておりますので、そういう事実もあることを否定するものではございませんし、そういう意味では、関係の外務省に対してまた大蔵省等も協力をいたしまして、いろいろ折衝を続けておるというのが現状でございます。事は申すまでもなく外交の問題でございますし、また事柄の性質は賠償問題並びに経済協力の具体化の問題であると考えられますので、今日まで実現を見ておらないような経済協力の問題等も具体的に早急に進めていく、その努力を私どもも払うべきではないか、かように考えておる次第であります。
  50. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 いろいろ問題を聞きっぱなしでありますが、他日この問題を展開する機会があると思います。  大臣はまた近くアメリカにおいて開かれますところのIMFの総会に行かれると聞いておりますが、そこに出席されて日本はどういう主眼点を持って方々回っていかれるのか、またその目的について所見を述べていただきたいと思います。
  51. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御承知のように、IMFの年次総会が近くワシントンで開かれることになっております。私昨年その会に参りました。今回が二度目であります。また、開催地がアメリカでありますために、直接会議の用務以外にも、何かと各方面と話し合う機会があるのではないかと思います。今回のIMF並びに世銀の定時総会におきまして、事前に特に議題として提案を見ておるものはございませんが、今日までの雲行きから見まして、第二世銀の構想の問題が具体的に取り上げられるのではないかと一つ予想されます。また、従来通りIMFの目標としております為替貿易の自由化、こういう方向についての論議がいろいろかわされ、同時にまた経済後進国に対する援助等についての積極的な意見も述べられるのではないかと思います。わが国の特別な問題といたしましては、第二世銀に対する具体的な意見交換する機会を得ること、これが一つと、同時にまた、在来からの経過から見まして、第二世銀から過去におきまして相当の額の融資を受けておりますが、これが計画の期限も大体到来いたしますので、次期計画等についても話し合う要があるのではないかということで、ただいま国内において準備を進めておる、かような段階でございます。その他、一般的な問題といたしましては、私どももこういう際にアメリカその他の国の経済情勢も十分判断もして帰りたいし、金融等につきましても十分の見通しをつけて参りたい、かように考えておる次第であります。
  52. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 きょうの新聞に、ドル相場の自由化ということで、大蔵省が近々二、三日中に発表されるのではないかといわれております。この手続については、大蔵省でやられるのか、日銀でやられるのか、そういう点についていずれ発表されるということでありますけれども、大臣はどういう考えを持っておられるか、伺いたいと思います。
  53. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 それはきわめて近い時期に発表される、かように御了承おき願いたいと思いますが、この基本的な考え方について申しますならば、ちょうど昨年の暮れでございますか、欧州各国が通貨の交換制を回復した。これに引き続いて、わが国為替政策にも相当の影響があるだろう、前国会中におきましても、そういう意味でいろいろ御質疑を重ねたり、また御意見ども拝聴して参ったと記憶いたしております。その際も私どもお答えしたと思いますが、為替の自由化の方向へ諸準備を進めて参りたい、この為替の自由化ということは一つの大きな方向でございますということを申したのでございます。ことしの春時分に、一部そういう点について投機的な動きもあり、国内にも影響を与えたようでございますし、私どもも慎重に準備を進めて参っておるというのが、現在の段階でございます。一部的な投機的な事柄はどこまでも避けて参りたいと思いますし、また、このドル自身についてある範囲をきめて交換制を考えるようになって参りますと、一部金融界、財界等にも影響があることだろうと思います。そういうことについても私ども慎重に工夫もし、できるだけ異常な影響を与えないように、ただいま努力しておる状況でございます。
  54. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 金融問題については、いずれ同僚の横山委員からも質問があると思いますから、あまり詳しいことは申しませんが、ただ、私は七月ごろに酒井為替局長といろいろそういう問題について話し合いをした。また、ヨーロッパに行きますと、そういうことをよけい痛感すると思うので、ぜひ一つ具体的な処理を早くしていただきたい。  最後に、大臣に希望的な意見でありますが、きょうも実は石炭問題で福岡県からも陳情がありました。あとでうちの横路君からもあると思いますが、石炭山が廃坑になって、非常にたくさんの失業者が出てきておる、そういう点についてのいろいろな救済策は、とても県などや北海道などでは困難な状態である、ぜひ国の法律なりあるいは大蔵省の援助を望みたいというような熾烈な要求がありまして、この二、三日来は非常にいろいろな意見を聞いておるわけでありますが、一つぜひあたたかい気持でこういう問題についても十分な理解を持ってやっていただきたいことを一言申し上げまして、私の質疑を終ります。
  55. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 別に意見を求められておるわけではございませんが、ただいまお述べになりました石炭問題をめぐる失業者並びにその事業に関連する地域等についての救済方法につきましては、御指摘の通り、私どもも、誠意を持ちまして、またその窮境に十分の理解を持って対処する考えでございます。本日も、本委員会の終了後、労務関係閣僚懇談会等を持ちますが、その主たる議題は、石炭問題、その後の処置についての問題でございます。ありがとうございます。
  56. 植木庚子郎

    ○植木委員長 横山利秋君。
  57. 横山利秋

    横山委員 私は、先般の委員会で、政府側に御検討をお願いしておきました中小企業金融につきまして、根本的な改善並びに具体的な改善、それぞれ私の意見を含めて、この際政府にただしたいと思うわけであります。多少根本論に触れますので、時間がかかります。承われば大臣はその間御用事があるということでありますが、前段の根本論が終りますまでは、ぜひ大臣の御在席をお願いしたいと思うのであります。  まず、現状についてでありますが、中小企業金融というものは常に新しい問題でありまして、景気がよかろうと悪かろうと、いつもわれわれの話題となり、われわれの問題になります。この現状を一つ制度の面からながめてみますと、先般、私は、この中小企業金融というものは、言うならば戦国的状況にあるというふうに断定をいたしました。  たとえば、一つ一つの弊害をとってみますと、相互銀行に関して言うならば、相互掛金業務による弊害というものは、中小企業が一体幾ら借りているのか、幾らの利息であるのか、さっぱりわからない。従って、中小企業金融の果すべき経営に対する役割というものが行われていない。いわんや相互銀行はこのごろは預金業務の方が大宗を占めておる。相互銀行の本来の任務というものは変りつつある。この点は銀行大会において佐藤大蔵大臣みずから指摘になったところであります。  信用金庫はどうだろうか。信用金庫は今共同組織の観念は稀薄になってしまった、本来の信用金庫の組合精神というものは影が薄れておる、こういうふうに断じたら誤まりだろうか。またそういうふうにいわれておる。人から組織に移るべきだと信用金庫ではいわれているが、その近代化は杳として進まない。  信用組合はどうであろうか。信用組合は政府の監督下にない。これは県の監督下にあるのでありますから、県政のいかんに左右されて、勝手にこれができ上ったり、政治的に利用されたりしてしまっておる。信用金庫と信用組合との業務の調整は一体どうなっておるのか。これが、先般の中間答申においても、ついに政府としてはこれに対して解決を与えることなく、じんぜん日を空しうしておる。  不動産銀行はどうであろうか。本委員会において不動産銀行について審議をいたしましたときの立法の精神からいうならば、今日の不動産銀行の金融状態は言語道断である。たしか平均六百万円から七百万円の貨し出しをしておる。これを称してわれわれが本委員会で立案をした中小企業金融といえるであろうかどうか。コストが高過ぎるということで、まとまったところに貸すのに狂奔して、中小企業金融の本来の仕事をしていない。  信用保証協会はどうであろうか。信用保証協会は、保証しなくてもいいところにどんどん保証して、保証しなければならぬところに保証をしていない。こういうふうに断定したら、どういう反論があるであろうか。私はそう断定してはばからないのであります。信用保証協会というものが、ボーダー・ラインの辺ないしはその下の人に保証をして、初めて本来の効果があるのにかかわらず、信用保証協会発足まぎわにして健全な経営ということに中心が置かれるの余り、保証しなくてもいいところに保証しておる。事もあろうに国民金融公庫や中小企業金融公庫に対して保証協会が保証するということは、一体いかなる立場にあろうとも論理的に認められないにかかわらず、これが正々堂々と行われるということに対して、政府は何ら発言していない。またとめようとしていない。  商工中金はどうであろうか。これまた、妙な言い方でありますが、組合で借りたら九分六厘で、個人で商工中金の金を借りたら九分三厘である。組合を通じて借りたら高くて、個人で借りたら安いということは、一体論理的に許されるであろうか。今日の商工中金についても数々の問題がまだある。  中小企業金融公庫はどうであろうか。これは直貸しを始めたのは多とすべきでありますが、直貸しを申し込んだら、三カ月も四カ月も、ひどいのは五カ月もかかる。これが政府の行なっている金融であろうか。金融というものは一体どういうものであろうか。少くとも、大銀行が大会社に対する金融ならいざ知らず、中小企業金融について三カ月、五カ月もかかるというばかげたことで、これが政府機関の金融、しかも中小企業の金融といえるであろうか。  国民金融公庫はどうであろうか。国民金融公庫は、申し込みの平均は六十万といわれておるのでありますが、しかしながら、実際借り出しておるのは、全国平均でたしか二十三万、都市平均で二十七万であります。しかも、この潜在的な国民金融公庫の要望を勘定したならば、これは全く九牛の一毛でしかない。  このように、今日の中小企業金融の実態を考えてみますと、一体政府は中小企業金融の機構について何を考えておるのか、疑わしい限りであると私は思う。  しからば、金融の行われている実態はどうであろうか。これも、早い話が、景気の一番上昇した場合、景気の一番下降した場合の特徴点をつかまえてみるとよろしい。かつて、私は、前任者池田勇人大臣のときに、大蔵委員会相こぞって、神武以来の不景気になったときに、約三百五十億の資金投入を、国民金融公庫、中小企業金融公庫あるいは商工中金に投入したことがある。われわれは、少くとも与野党こぞって大臣と相談して三百五十億にしたのであるから、ある程度選挙区に帰って多少は話はできるものと確信を持っておった。ところが、いざふたをあけてみると、一体どういう結果が起ったであろうか。中小企業向け融資の増減状況は、三十一年度が五千五百六十二億、それに対して三十二年度は二千九百四十三億、驚くべき激減をもたらし、全国銀行が大企業向けに貸し出したものと対比いたしますと、三十一年度が六千六百二億、三十二年度に至っては七千七百七十億を大銀行は大企業向けに貸しておる。どんなにわれわれが中小企業金融に、商工中金に、国民金融公庫に、相互銀行に行って目先の資金量を投下いたしましても、結果というものはこういう結果にしかならないということは、根本的に資金の調整について考えるべきところがありはしないか、こういうことが考えられる。一体なぜこういうような結果が起るのであろうか。政府が、ないしは私どもが対策をするに当って、中小企業金融の特質というものを正確に把握しておるであろうかどうかということを、私どもはこの際考えなければならぬと思う。  そこで、中小企業金融の主体的条件と申しますか、それらを銀行側なりあるいは中小企業側に立って考えますと、貸付や割引の手数は大小にかかわらずみんな一緒だから、小口の貸付が多くなれば、口数がどうしてもふえる。人件費ないしはその他の費用がかかるばかりである。融資に当っては信用調査をしなければならぬので、調査料が高くなる。保証や保険をつけなければならぬ。回収不能の場合に、大企業に比べたら延滞や貸し倒れの率が非常に多い。担保物件の処分も、大企業の担保と違ってスムーズにはいかぬ。客観的条件は、大企業に比べて収益率が少く、自己資本が少くて、借り入れ依存が多くて、金繰りに追われておる。預金歩どまりも起る。大企業のように系列融資もできない。送金を通ずる為替銀行も少い。また銀行は従業員預金にはあまり多く期待できない。こんなことは今に始まったことではない。中小企業金融の本来的なものなんです。しかし、この本来的なものということもわれわれ承知しながら、今日中小企業金融をしなければならぬということは、中小企業金融対策というものは、目先のものでなくて、根本的なものがなければ解決にはならぬ、というふうに私ども考えるわけです。  以上、金融機関の現状と、それからその中小企業金融に流れる金の行きどころと、中小企業金融の実態というものを考えますときに、私は、少くとも政府が今日中小企業金融対策としておることは、これはもう根本的な立場、根本的なものの考えというものがなく、そのときそのときに追われておるというふうにしか私の目には映らないのです。この聞こういう点を一、二披瀝して、この際政府が中小企業金融の根本的な対策を次会の委員会に説明をしてほしい、また私が提案をする具体的な点について説明をしてほしい、意見を言ってほしい、こういうふうに申しました。そこで、きょうは、その根本的な問題と具体的な二点に分けて、政府の意向をただしたいと思う。  まず、根本的な対策ということで政府意見伺いたいのは、一つは、昔と違って、銀行というのはつぶれないという自信を持っておるということです。どんなに悪いことをしても、どんなにまずいことがあっても、政府はひそかに怒るけれども、おれのところはつぶせぬ、銀行は連帯観念があってつぶれない、預金者保護という天下の錦の御旗があってつぶれないという、うぬぼれと自信が銀行に横溢しておる。少くとも中小企業が銀行に行って金を借りるということとは、恩恵的に金を借りるのでなくて、やはり商取引であるのに、頭をぺこぺこ下げて借りていくというのが今日の状態である。その秘密性、つぶれないというようなうぬぼれ、そのものの考え方を変えさせる方法はないであろうか。これが、抽象的ではありますけれども一つの根本的な問題であります。  それから、第二番目には、先般も、政務次官が大蔵委員でありました当時、相互銀行を土台にして鋭く銀行局長に迫まられたことがありましたが、あの相互銀行が悪い、ここが悪い、ここをこうしろといったところで、これは百年河清を待つような気がするわけであります。少くとも、この際、この中小企業金融のモデルというか、そういうものを中小企業の前にとっくりと据えて、これを見なさい、これを見て他に当りなさい。というふうに、モデルを見せる必要がありはしないか。これは、さしあたり今の問題としては、国民金融公庫、中小企業金融公庫が言い得られるのでありますが、本来そういう役割をしていない。この際それらを飛躍的に改革強化して、そうして、今の補完機構というものから、指導機構、中心機構、中小企業金融の王座に据えていくという考え方はできないものであろうか。こういう中小企業金融のモデルをしっかりと根をはやさして、これを競争させるという考え方が第二点であります。  第三番目は、ちょっと先ほども申しましたけれども、相互銀行なり、あるいは信用金庫なり、そのほかの諸金融機関、中小企業金融公庫だって、国民金融公庫だってそうでありますが、発足当時のその設立のときの考え方国会がこれを設立し、政府がこれを設立したときの考え方と現状とは、明らかに違っておるということであります。変貌をしておる。その変貌をしておる姿をもう一度正しく把握する必要がないか。だれが考えても、この銀行は、この機関はこういうふうに進めなければならぬのだときまっておるならばきまっておるらしく、道筋を明らかにしたならばどうだろうか。情勢の変化に応じた法律改正をなさる必要はないか。  第四番目に、日銀法の改正が議論されています。私は日銀法にだけ限定をするつもりはありませんが、現行法にいたしましても、何にいたしましても、私どもがよく言いますように、資金の流れを総合的にとらえる。政府資金、民間資金、全部を総合的にとらえて、そしてその総合的にとらえた中から中小企業金融に流れる道筋をはっきりさし、どのくらい流していくかということをつかまえる総合的にやる方法はないものか。  大きく言いますと、私は根本的な問題としてこの四点を主張したいわけです。その具体案についてはさらに議論が幾らもあるわけでありますが、さしあたりすぐに具体案を出してもいかがかと思いますから、以上の点を含めて、中小企業金融についての政府の根本的なものの考え方並びに改善案をこの際承わりたいのです。
  58. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 横山委員は各方面にわたって非常に深く御研究になり、その結果まことに鋭い御批判を賜わりました。私どもまことに恐縮に存じております。  そのお話のうちにもありましたように、中小企業の持つ特別な役割から申しましても、またその地位が弱いという点から見ましても、特に金融の面で私どもが工夫しなければならないこと、これは申すまでもないところであります。そのお話のうちにもありましたように、各種金融機関設立当初のはっきりした理想なり目標というものが、その後変貌しているのではないかという御指摘でございますが、これはいろいろ見方もございます。私ども、それぞれの機関はそれぞれの設立趣旨に沿ってそれぞれ活動しつつある。しかしそれで十分だと申すわけではありません。より以上工夫しなければならない。これはもうよくわかるのでございます。特に、お話しになりましたように、これはひとり中小企業金融についてのみ申すわけではございませんが、金融と申します以上、金融の量と質並びに速度というものについては、これは何としても需要者の御要望にこたえるようなものでなければならぬ。これは申すまでもない点であります。金額の総量が十分潤沢であり、同時にまた金利が安く、またその手続等が簡素であり、迅速に処理される。これはもう申すまでもないところであります。そういう意味からの現実の金融についての御批判、一々私どももさらに工夫しなければならぬと感ずるのでございますが、これらは一つの目標として私どもの努力をしていくものだ、こういうように御了承もいただきたいし、そういう意味ではさらに御叱声を賜わりたいとお願いをいたすのであります。  ところで、ただいま申されましたうちに、中小企業の金融、それから大企業に対する金融、これを分け得る面と双方関連のある面、これはやはり前提としては御了承になっておることだろうと、私は一応理解いたしておるのでございます。と申しますのは、大企業と中小企業との経済活動における関連性から申しまして、大企業に対する融資が潤沢にいく。同時にそれが中小企業をまかなっておる。これは、しばしば経済が不況になりました場合に、大企業が下請産業に対して金融の道をつけない、こういうことが非常に中小企業の経済活動を圧迫しておるということが、しばしば指摘されております。ちょうどそれと今度は反対に、経済活動が活発になって参りますると、そういう意味では、中小企業は不況の際とは違う意味の便益を受けてくる、こういうことが言えるのではないかと思います。こういう点は、中小企業金融と大企業金融とをせつ然と区別することのできない部面であるように思います。従いまして、大企業に対する金融の額が非常にふえている、こういう御指摘は、大企業だけで消化されておるとは必ずしも言えないのではないか、こういうことを一点実は指摘いたしたいのであります。しかして、中小企業には中小企業の特質がありますし、大企業との協力なりあるいはその連係関係なしに、中小企業として金融の道を開かなければならない、こういうものについての特殊な処置を講じていく、こういう意味でそれぞれの公庫が設けられたり、あるいは御指摘になりましたような市中金融という道が開かれておる、かように私考えたいのであります。これは前提としての考え方でございますし、あらゆる機会に御指摘になりますように、その量をふやし、その質を金利を安くし、同時にまた金融措置はできるだけ簡素に迅速に処置する、こういうことを念願をいたしたい、かように思います。  そこで、具体的な問題についてお話がございましたが、銀行そのものが今つぶれないという前提に立って、銀行経営がまことに積極的な努力を払わないのじゃないか、こういうような意味の御指摘であったかと思いますが、銀行をつぶすとかいうことは、これは大へんな問題でございます。従って、銀行はつぶれないのがいいという、この点は申すまでもないのでございますが、銀行がつぶれないからといって、銀行業者がその地位にあぐらをかくというようなことがあって、いわゆる金融の大事な仕事をおろそかにするというようなことがありますれば、私どもが銀行について各種の方途を講じて、経済的な悪影響を起さないように、銀行をつぶさないように努力しておることが明らかになるわけであります。そういう意味においては、私の方の大蔵省としての指導監督、あわせて御指摘になりましたような趣旨に、とにかく進めて参りたいものだと思います。銀行自身が非常に優位に立っておる、そういうことでその優位の上にあぐらをかいて、大事な金融機関としての使命達成におろそかであるということのないようには、十分私どもも指導監督をいたしたいものだ、かように考えております。  第二の問題といたしまして、中小金融のモデルのものとして取り上げられましたものは、やはり国民金融公庫であり、中小企業金融公庫である、こういう御指摘でございますが、これは御指摘の通りであります。私ども、そういう意味におきまして、こういう政府機関については特に指導監督も厳重にいたしておるつもりであります。それにいたしましても、今日までのところなかなか量的にまかなえない、あるいは質的にまだまだ一般の要望にこたえておらない、こういうような点が指摘されるだろうと思います。そういう点につきましては、私もさらに皆様方の御叱声のもとに指導も進めて参るつもりでございます。中小金融のモデルとしてのこの両公庫が持つ役割、これは私どもも十分考えて参るつもりであります。先ほど一般的な問題として申しましたように、諸金融機関の設立当初の考え方が変貌しておるのではないか、こういうおしかりでございますが、こういう点で、特に私どもが工夫を要するものがあれば、もちろん工夫をして参らなければならないと思います。  次に、資金の総ワクを考えて、しかる上に中小企業に対する流れ方を考えろ、こういう点であったと思います。これは、先ほど来申し上げております大企業金融と中小企業金融等につきましても十分考慮の払われるところでありますし、基本的な問題としては、私は御意見とそう食い違っておるとは思いません。あるいは具体的な事例等につきまして私どもの知らない点がまだまだあるのではないかと思います。こういう点はもっと私どもが努力を要することだと思います。  最後に、もう一つつけ加えさしていただきたいことは、金融は取引だ、恩恵ではないと言われる。その通りでございます。私どもも、これは取引だ、商取引だ、かように考えます。そういう意味におけるコマーシャル・べースに乗るか乗らないかというところが、いつも問題を起すのではないかと思います。御意見のうちにもありました信用保証協会でございますが、信用保証協会が非常に信用度の高いものについてのみ保証を与えるなら、これは意味はない。これもよくわかります。しかしながら、全然危険を度外視して、出てきたもの全部に保証を与えるということにもなかなかならないのじゃないか。こういう意味で、この商取引という考え方、これはやはり基本的に捨てるわけにいかない。しかし、中小企業の一番弱いところは、その資産状況なり信用力の弱いということだ、そういう意味で、信用保証協会というものを作り、政府が特にこれに助成をしておる、こういう意味では、一般の信用保証をするものとは、その範囲は拡大されておるだろう。ただ、それが、具体的な事例について見ます場合に、もっと保証供与の範囲が拡大されていいじゃないかというような御批判があるのではないかと思います。この点はまことにむずかしい問題で、具体的な問題としてやはり処理をさしていただきたいと思うのであります。ちょうどこれと同じような問題で、輸出の問題についても信用供与の問題があったり、あるいは保険の問題等がございますが、これらも政府が特に助成をしておる。こういう意味においては、一般民間金融より以上に拡大さるべきものだ、そういう意味において十分指導すべきだ。これはよくわかります。しかし、全然採算を度外視して——採算と申すと語弊がございますが、無制限な信用供与ということにはなりかねる。この点は誤解はないことだと思いますが、つけ加えさしていただきたいと思います。
  59. 横山利秋

    横山委員 大臣と私との中小企業金融問題に対する現状の認識に、少しまだ食い違いがあるようであります。私は今日はもう根本的に中小企業金融の制度及び現状について考え直すべきだという立場に立ち、大臣は現状において是正すべき点があれば是正するというような立場のようであります。それではべースが違うのでありまして、私も何も白紙に返せというわけではありません。しかし、ものの考え方にもう少し思い切った考え方をせぬと、だめなところではないかということを主張しておるわけであります。その意味で、私はことしの経済白書を少し取り上げてみたいと思います。  経済白書は、中小企業について、産業の二重構造としてこれを取り上げています。そして、その二重構造も、下の方で呻吟する中小企業の中をさらに分析をして、比較的経済ベースに合っている中企業は合理化が進んでおる、だから中小企業内部でも格差が広がりつつあると指摘をしています。けれども、合理化の進んでおる中小企業といえども、合理化された部面は、コストの低下による利潤は親企業に吸われておると、これまた正しく指摘をしています。そうして、全般を通じて中小企業の体質改善の急務なることは、単に中小企業を救うということでなくして、日本の産業の構造のために必要だという立場をとっておるわけです。私もきょうあらためて根本的に中小企業金融を云々するゆえんのものは、この白書の持っておるこういう立場です。  ただこの際一言申し上げたいのは、大蔵省というよりも、通産省ですか、政府側には、資本構成を変える、他人資本を少くして、自己資本をふやすという立場に立って、増資免税を主張され、そして他人資本をあまりふやさないようにという言い方をされておるのでありますが、私はそれとは意見を異にするものでありまして、何も今他人資本が多いから銀行が貸し渋っておるとか、あるいは企業がやっていかれぬとか、あるいはどうにもこうにもならぬということではなくて、幾らでも銀行は貸してくれるのです。その証拠には、資本構成については現在の企業の運営上何ら問題になることはないと私は信じておるものでありますから、他人資本を借り入れて、そうして中小企業経営の近代化をはかるというやはりその正攻法の立場で議論をしているわけです。そこで、この白書ですらそう言っておりますし、現状の運営自体においても、これはこの際中小企業金融について根本的に見直すべき立場なんです。ただ手直しをちょっとしてみたり、あるいはちょっと手がけて、それから信用金庫、信用組合の業務調整をちょっとして、それで出かけてすぐ引っ込んだというようなみっともないことをやらないで、大臣としても、地方銀行協会で考え直すべきだとおっしゃったら、その大綱でも示されて、前進をやはりするべきではないか。他の問題と違って、金融の制度及び運営の問題は、なるべくきめもこまかく、落差もなるべく少いように進めたいだろうという気持はわかります。けれども、きめがこまかろうが、落差が少かろうが、改革というものは、やらなければならぬときにはやはりぐっとやってもらわなければならぬ。単にきめのこまかさだけを誇って、なすべき前進というものをしていない。これが今日の政府金融対策、特に中小企業金融対策にある、こういうふうに言っておるわけです。やや抽象的なものの言い方でなんでありますけれども考え方としては、大臣と私との間に中小企業金融に対する議論の基盤が違うのでは話になりませんから、あらためて申し上げるわけです。もう一回大臣の御意見伺いたい。
  60. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 現状分析においては、遺憾ながら相当食い違っておるようでございます。しかし、金融の実態としての量をふやし、そして金利を適正にし、そうして速度を早くするという、金融のあり方については、私は同一だろうと思います。ただ、白書に書いてあると言われる問題でございますが、これは、一部は当っておるし、一部は当らぬ点がありはしないかと私は思います。二重構造の問題、この意味において、ことに中小企業のわが国経済に占むる地位、その意義というもの、これを高く評価する——私もその一人でございますが、たとえば織物なら織物という事業を考えてみますと、これは、中小企業として、いわゆる親企業云々の問題は比較的薄いのじゃないかという感じが私はいたします。しかし、造船関係の中小企業になりますと、親企業との関連は非常に深い。かように実は思うものであります。従いまして、中小企業の実態というものはなかなか把握しにくいのではないか、一口に産業の二重構造であり、そして一口に非常に弱い、こういう言い方がされますが、中小企業そのものとしては、いわゆる中企業として考えたものは相当強い基盤を持ちつつある。また小企業も小企業としてとどまるにあらずして、それは中企業になる。規模は拡大されるに違いない。かような点も考えて、十分その要請にこたえていきたい。今あります現存の各種の機構そのもので見ました場合に、特に機構そのものとして不足しているとか、機構そのものとして金融の本筋から非常にはずれた使命を持っておるとは、私自身には見えないのであります。と申しますのは、経済の好転した場合、あるいは経済が下降した場合における中小企業の金融の実態を考えて参りますと、そういう点は相当はっきり出てくるのではないか。従って、私どもが努力しておる方向、それは、横山委員の御指摘になりますことも、私はそう大して違わないだろう。今あります機構そのものが、今の法律そのものでは要請にこたえ得ないような段階になっておるかどうか、こういうことになって参りますと、私は、まだ努力の余地は多分にあるのだ、こういうような感がいたしております。この点は、不幸にいたしまして、御所見とあるいは基盤が相当相違しておるという感がやはり残っておるようでございます。
  61. 横山利秋

    横山委員 大臣は、現状を是正をしていけばよろしいというお考えですが、この考えの中に、私が、何か現在の状況が、極端に申しますと、要請があるとか、あるいはもうにっちもさっちもいかぬというふうに言っておるとかいうふうな考えを持たれたとしたならば、ちょっと違うのであります。つまり、川は流れておる、今右の方へずっと流れようとしておる、そのときに、今までまっすぐに来たのだから、ちょっと直せばいいということでなくして、私は、川が流れようとしておるのだから、かじを右に取りなさい、こういう大勢というものを見てもらいたい、こういうことを言うのです。同時に、中小企業金融の特質というものは、金融機関が、ほとんど、大体初めは下の方を大事にするなんて言いながら、時間がたつに従って上の方を大事にしてしまう。それで下が取り残される。だから、下の零細企業といいますか、中小企業といいますか、そこにどっしりと根を張るというものの考え方がありませんと、ほうっておいたら、全部上へ吸い上げられてしまう。保証協会が、保証せぬでもいいものを保証して、保証しなければならないものを保証しないというのも、私は自然の流れだと思います。そこのところは、ある程度力を下へ、ないしは本来の目的に向って常に力を与えておらぬと、放任しておいたら目的に反する。しかも、大勢というものは、川の流れが少し変ってきておるのであるから、変ってきておる方向にこの際正しくかじを向けたらどうかという意味であります。しかし、やや抽象的な論争でありますから、やはりもう少し具体的に話をした方がいいと思います。その前に、今大臣も景気の動向について話を触れましたから、二、三前提としての意見伺いたいのです。  この間準備預金制度が発動されました。それについても見解が三者三様であります。そこで、池田さんは、これは赤信号ではないのだ、こういう御意見のようでしたね。それから、山際さんは、これは赤信号か黄信号か知らぬけれども、危ないからやったのだという御意見のようです。大蔵大臣は、これは予防措置だという御意見のようです。ちょっとした言葉の表現ではありますが、そこに三人の基本的なやはりものの考え方が違う点が見られます。これはもう、何といいますか、政府部内のどなたがどうという意見、そういうことで言うのでなくして、政府全体として、また金庫番たる大蔵大臣の景気の見方として、この際正しく承わっておきたいのであります。この準備預金制度を発動した政府全体としてのものの考え方、これはおそらく大蔵大臣としてのお考えに一致することがあると思うのですが、この考え方と、それからその基礎になる今後の景気に対する展望というものを、この際明らかにしてほしいのであります。
  62. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 準備預金制度をはっきり創設したというか、発動したということでございますが、それについていろいろの御意見がございます。御承知のように、準備預金制度という制度を法定し、法律で作っていく。問題は、今回の程度のことでございますならば、もっと早く発動すべきであり、いわゆる金融正常化の観点から見ましても、これは当然のことであったろうと思います。ところが、皆さん方からなぜ早くやらないかというようなおしかりを受けておりながらも、当時の金融情勢等から見ては、これをそこまでやらなくても、何とか自主的にうまく参るでしょうというような話をして参ったと思います。しかし、私ども昨年来金融の正常化の方向で非常な努力をして参りました際に、この準備預金制度という建前ではございませんでしたが、日銀に対する預金を積極的に進めて参りました。相当金額がちゃんと預金されるようになってきた。これは大へんけっこうだ。いわゆる正常化の一方法として、今後起るということを希望はいたしませんが、万一の場合等に備える上から見てもいいのではないかというように実は考えて、順次預金の額をふやすような指導をして参ったのあります。最近になりまして、経済の伸展工合というか、あるいは発展工合等を見まして、ただいままでのところ物価も強含みであるという状況ではございますが、いわゆる高騰というような現象は生じておらない。通貨価値も安定しておる。しかし生産は非常に伸びております。操業度は八〇%以上をこすようになっておる。しかも、最終需要は依然として強い。こういうようなことを考えてくると、ただいまの経済自身は大へん順調にいっておる。ある新聞では数量景気というようなことを表現したりしておるが、このままでいくならば、いわゆる数量景気が高原景気とでも言われるような事態が起ってくるのではないか、こういうことを考えますが、政府といたしましては、いつもいいことばかりも考えられない。この成長の後に万一崩壊というような事態が起きるとか、あるいは操業度が八〇%以上になると、設備投資の要望も非常に強くなるということを考え、ことにこれからまた金融が緩慢になる、こういうような事態を考えると、一応銀行の金融の面についても、やはり適切な指導をしていかなければならぬ、こういうように実は考えざるを得ないのであります。しかし、昨年来私申し上げておりますように、政府が、経済、特に金融の面に積極的にタッチすることはできるだけ避けたいのだ、金融は、金融機関として、みずからの力によってこれを規制していくというか、正常な形に維持していくという努力をしてもらいたい、しかしながら、民間にまかせてなかなか思う通りにいかないようなことがあれば、政府は、いつでも政府の立場から注意もし警告も発しますよということを実は申したと思いますが、そういう意味で、今年の春などは、銀行相互間の不当な預金競争があると、預金獲得競争の間はまだ心配はございませんが、これがお得意、特に貸付のお得意を奪い合うような競争にでもなりますと、これまた非常な危険なものでございますから、預金獲得競争をまず注意を与えたということもいたして参ったのであります。そこで、日銀に対する預金の額も相当に上っておりました結果が、最近一・五%という、あるいは〇・五%というような率をきめ得るような状況になっておるということで、大体今回の処置は実情に合う程度のものを法定したという程度でございますから、特に強い意義を持つということはないという見方もあろうかと思います。しかしながら、今後の経済の動向なり金融の動向等を考えました場合に、金融正常化の方向から見まして、この準備預金制度を創設すること、これは必要なことだというのが、私ども政府並びに銀行との間における一致した見解であります。ことに、資金需要に対する資金審議会という民間の方々のお集まりをいただく委員会がございますが、それなどにおきましても、資金審議会等の意見を徴してみましても、やはりこういう際は予防的措置をとるべきが当然だろう、こういうような進言も実はいただいたのであります。そこで、私どものかねての構想をこの際実行することになった。一面現在の経済の活動状況について非常に不安な状況があるというならば、これに非常な拘束を加えるという表現も当ると思いますが、先ほど申し上げますように、ただいまの経済の進歩状況、今後の設備投資に対する資金計画等が当を得ますならば、一部懸念されるような崩壊というような事態は起らないだろう、かように考えますので、私どもは実は慎重な表現をいたしておるわけであります。池田通産大臣は、今日の状況について、いわゆる数量景気、この景気は持続するだろう、かような見方をしておられるので、別に警戒的な措置でないと言われる。これもまた事実に合っておるだろう。しかし、ただいま申すような資金審議会等の大方の意見等から、十分今日からそれぞれ準備しておかなければいかぬぞ、こういう意味においての日銀総裁の発言も理解ができないことではないようにも思うのであります。問題は、ただいまの準備預金制度そのものが金融の数量の上に直ちに及ぼす影響というものをどの程度に考えるか。私は非常にきついものだとは考えておりません。従いまして、これが直ちに強い引締めを招来するものだ、かようにも実は考えておりません。在来から、金融引き締めの場合に、アメリカなどはすでに公定歩合を二度も三度も引き上げておる。こういうように金融の金利の引き上げでこれに対抗しておる時期がございますが、わが国の金融の実際、また先ほどの中小企業金融についてもお話がございましたが、やはり金利は日本が下げてアメリカが上げた、その結果国際金利の差はだんだん少くなってきている、わが国経済の発展上非常に役立っておる、かように私ども考えますので、金利にさわるというような処置はできるだけ避けるべきだ、その他の事柄によりまして、金融機関に対しても、また財界一般に対しても、十分自粛自戒し得るような意味においての措置をとることが望ましいんじゃないか、かように実は思っておるのであります。  今回の準備預金制度そのものは、直ちに形の土において非常な引き締めの効果があるものだと、私ども考えておりません。しかしながら、政府がかような措置をとったことが、一部財界における自粛自戒の気持に沿うものじゃないか、かように考えております。と申しますのは、横山さんも御承知のように、景気が上向き、経済活動が活発になりました際に、一部においては過熱論が出ておる。その過熱論は一部の非常に先ばしった警戒心理だ、かように考えるべきで、私ども現状から過熱のおそれがあるとは実は思っておりませんが、しかし、今後出てくるであろうところの設備投資に対する要望等を十分勘案いたして参りますと、経済の成長ももちろん必要なことである。そういう意味においての安定成長を心から願ってはおりますが、そういう意味で予測されないような事態に対して前もって措置するということは、言葉が不適当でありますが、望ましからざるような事態についても、やはり予防的な措置を未然に講ずるというのが、金融として当然のことだろうというので、この準備預金制度を実は創設したわけでございます。人によりまして表現が幾分かずつ違っておりますが、少くとも、この準備預金制度を創設したということについては、これは通産大臣も大蔵大臣も意見は一致し、日銀の総裁も一致している。だから、そういうものが生まれたときに、その気持をどういうように表現するかというだけでございます。  私の補足的な説明は以上で終らしていただきたいと思います。
  63. 横山利秋

    横山委員 今のお話の中で、いろいろと考えさせられる問題が、実は私なりにあるわけでございますが、たとえば、少し話題を変えてお伺いいたすのですけれども、この間シャウプ博士が来まして、忍び寄るインフレ論といいますか、デフレになるよりは軽微なインフレの方が望ましいという巷間伝える議論について、私はこう思うというように言っておりますが、それは、申すまでもなく、安定か成長かという今日の話題に対して、シャウプ博士が自分の本来の持ち味から答えた言葉で、そういうことは可能だというふうに言っておるわけです。ただ、今日の日本の国民の景気に対する現状の認識をもってするならば、私は、個人的なことではなくて、理論的にあくまで話を進めるのですが、池田さんの今の経済に対する認識、数字、それが案外説得力を持っておるわけです。なぜかというと、現に景気は割合に上昇ぎみで、しかもあなたのおっしゃるように堅調をたどっておると見られる筋合いがございますから、その段階において慎重を、安定を唱えるよりも、成長を唱えておるその数字的根拠に対しても、国民に説得力があるというふうな見方の方がまあ強いように私は思います。その国民の心理の中には、今言ったような、シャウプ博士がデフレよりもむしろ忍び寄るインフレ、軽微なインフレの方が好ましいという、そういう心理、そういう危険性も手伝ってはおりましょう。しかし、一面そういう忍び寄るインフレでなくて、これは現実に物価も上らない、景気の上昇では堅実な上昇であるという見方ももちろんあるにはある。私は、今、大臣が平素の御持論の安定ないしは伸長ということに、何か固執をされておるような気持がありはしないだろうかという気がするわけです。現にあなたが一番数字をよく知っていらっしゃるのですが、今日の日本経済というものは、そういう危険性は、私の個人的意見かもしれませんが、まだないように見える。そうだとしたならば、来年度の予算にいたしましても、あるいは今後の経済政策にいたしましても、いま一歩踏み出てもいいのではなかろうかという感じがいたすのであります。大蔵大臣であるから常に慎重に予防線を張っておったらいいという立場で——岸総理大臣が、大蔵大臣ですからそう言うのですよ、通産大臣ですらああ言うのですよという言い方ならば、これはまだ子供だましだと思うのですよ。大蔵大臣だから経済をそういうふうに予防的に見るというならば、これは、私は、まともな意見、まともな理論ではないと思うのです。この点やや慎重に安定を主張し過ぎるおそれはないであろうか。たとえば、具体的に言いますと、この準備預金制度を発動なさって、あなたは公定歩合は云々とこの間言っていらっしゃったが、実はそれを考えていらっしゃるのじゃないか。公開市場操作を考えておられるのではないか。さらに、次々に安定、締める方で、一つ一つ布石を考えておられるのではなかろうか。こういう点をお伺いいたします。
  64. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 私は、根本の問題ですが、最近新聞を見ますと、経済は安定か成長かという討論が出ております。私はずいぶんおかしな議論だと思うのですよ。安定か不安定か、成長か不成長かとか、あるいは停滞かというならば、これは議論になる。ところが、安定か成長かということで今議論されておることは、私には実はわからないです。私は、いつも皆様方にも申し上げ、あらゆる機会に述べておると思いますが、経済を停滞させていいという議論を一度もしたことはありません。経済は当然成長させなければならない。また経済拡大をしていかなければならない。そうすることが国民生活の向上であるということは、いつもはっきり申し上げております。しかしながら、成長、拡大は、健全な上に、また安定度のある上においてなされるべきものだ、これでこそ初めて経済の正常な成長だといえるのだというのが、私の持論なんです。最近安定か成長かとかいわれる。どうも議論にならないものをつかまえて議論しておる。安定の反対なら不安定なんで、だれも不安定でいいという人はない。成長に対抗するものとすれば萎縮というか、あるいは停滞というのか、それならば議論になる。だから、安定成長という一つの言葉なんだというのが、実は私の持論であります。今日の経済発展状況は非常に順調にきておる、こういうことを実は申しておりますが、とにかく急激な伸展であることだけは見のがすことができないでございまししょう。この急激な後にくるものについて私どもが警戒することは当然だろうと思います。ことに日本経済が一国経済だけとしての独立性を十分に持っておるわけじゃない、国際経済の影響を多分に受ける日本経済であることを前提にして考えますと、やはり十分あらゆるケースを考えて対処していくということが望ましいんじゃないか、これが実は私どもの基本に立っておる考え方でございます。  今シャウプ博士の説を御引用になりましたが、シャウプ博士の説なり、あるいは設備投資の当否といいますか、設備投資が非常に危険であるとかないとかいう議論、これなども、私は、経済の総合性というか、経済の全体の立場において不均衡な設備投資というものは経済を不健全ならしめる、その危険は多分にあると思いますが、均衡のとれた設備投資、しかも、その生産の結果が、最終需要が堅調であるという場合においては、あまり危険を感じなくてもいいのじゃないか、かように思うのであります。  ところで、わが国の経済はどこまでも自由経済をやっておりますから、これを自由にいたしておりますといろいろな危険な状態が生ずる。ことに、競争激化の余りは、私どもが最もおそれるような事態すら出てくるんじゃないかと思うのであります。やはり私どもは事前に警戒をする必要があるんじゃないか。たとえて申しますならば、よくいわれることですが、外国へ行ってごらんになれば、日本商社、貿易商社が非常な過当競争をしておる。そうしてお互いに損をしておる。どうしてああいうことをするのか。進出急なるの余り非常な過当競争をしておる。あるいは、今海運が非常に参っているといわれますが、最も利益の上るといわれるニューヨーク航路にしても、外国船と競争するのではなくて、自国船同士が競争している。こういうようなところに自由経済としての非常な欠陥もあるわけでございます。そういう点は大いにみんなの創意と工夫を伸ばすという意味で、その努力を大いに買うという意味から申せば、政府が一々指図したりすることはよくないことだ、しかし、制度の上におきまして、それぞれの事態に対して対処していくということが望ましいのではないかというのが、私ども考え方でございます。しこうして、先ほど来御議論のありましたように、私どもがやってはならないこと、しかしそれが最終的に万やむを得ないというような事柄は、これは緊急な例外の措置として御批判をいただかなければならない。正常の状態においての措置は私ども十分に考えて参る、こういう気持で実はいるのであります。  ただ、準備預金制度についての御議論の中にもございましたが、また一般のコールに出ておるレートの工合とか、こういうようなことも私ども絶えず気をつけている問題でありまして、これは、コール・レートだけの問題でなくて、実際の取引上の問題から見ましても、その資金量などは私どもとしては等閑に付することができない問題であります。また、中小企業金融の面から見まして、いわゆる大銀行は別としまして、地方銀行の果している役割もなかなか大きいのであります。ことにコールとのつながりにおいて、これなども十分私どもが念頭に置いて絶えず注意をする一つのアイテムである。これを一つつけ加えさしていただきたいと思います。
  65. 横山利秋

    横山委員 大臣はもうお帰りの時間だそうでありますから、最後にもう一つ中小企業の立場からお伺いをいたしたいことがあるのであります。少し端折るかもしれませんけれども、来年度の予算の中で、政府は所得倍増論を一つ当てはめるという議論があります。所得倍増論というのは一体何なのか。正直なところ私には一向わからないのであります。おそらく政府もあまりわかっていらっしゃらないのではないかと実は思うのであります。その所得倍増論を来年度の予算の中に入れる——中小企業の素朴な聞き方は、所得倍増論とおれらとどういう関係があるか、それを聞きたいということですね。普通に言うならば、きわめて素朴な考え方としては、十年先に倍になるなら、来年度は七・二%ふえるということになるのですが、聞くところによりますと、政調会長は、そうではないんだ、将来よくなるんだから、来年はがまんしてほしいという意味で所得倍増論を掲げているんだということで、党内を説得していらっしゃるらしい。そして、大蔵省も、そうだ、そうだと言って応援しているということを伺いました。そこで、ほんとうに来年度の予算に所得倍増論の第一歩が入るんですか。また、所得倍増論というのは、大臣としてはどういうふうに理解なすっていらっしゃるのでしょうか。素朴な聞き方をお許し願いたいのですが、中小企業とはどういう関係があるのか、その点をお聞きいたしたい。
  66. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 所得倍増論は、経済成長を主体に考えて、国民所得倍増という観点に立っていると思います。何度も申し上げることですが、自民党内閣のとっております新五カ年計画、これは経済の成長を六・五%に見ております。しかし、生産所得が倍になるというか、そういう意味から見ると、六・五%の成長率を一応七・二%に増加すれば、十年で倍になるだろう、実はこういう複利計算ができるわけであります。ところで、今企画庁が中心になりましていろいろ検討をいたしておりますが、これはなかなかむずかしい問題でありまして、今の所得倍増——生産倍増とでも申しますか、そういう意味からは、全部平均して他の産業部門も同じように倍増計画が立てられるかというと、実はそうはいかないと思います。すでに非常に成熟した産業の成長率は、そう高いものではないということが言えると思います。そこで、中小企業の倍増はどうなるか、あるいは農業関係の倍増はどうなるか、こういうような議論をしばしば聞きますけれども、私ども政府考えるものは、個々のものについての倍増を考えるわけじゃなしに、総体としての倍増を考えていく。そこで、中小企業でございますが、一口に中小企業と申しますけれども、これは多種多様でございまして、なかなか一口には表現ができないだろうと思います。一つの例をとって申しますならば、最近対米貿易は珍しく輸出超過になった。それじゃ、日本からアメリカに出ていくものが、大企業が扱っておるような品物が多いのかと申しますと、いわゆる中小企業が担当しておるような比較的高級消耗品とでも申しましょうか、あるいは高級雑貨というようなものが非常に多数に出ておるといわれる。こういうことを考えてみると、中小企業といたしまして発展し得る余地は多分にあるのだろうということが言えます。言えますが、これも、佐藤はあんなことを言ったけれども、実際はそうならないじゃないかとおしかりを受けてもいけません。また、横山さんの地方だけのことで申すわけでもございませんが、たとえば織物の問題になりますと、昨年は御承知のように織物が大へんまずいというので、政府が織機を買い上げるというような問題がございましたが、今年は幸いにして繊維は非常な需要、外国からの需要もあるし、もう昨年の状態は忘れられたようになっております。しかしながら、この状況がそれでは年々七・二%ずつ織物がどんどん伸びていくか、こういうことになりますと、これは十分計画を立ててみないと、一がいにはなかなか言えないと思う。しかし、織物自身については、私はまだまだうんと需要はふえていくものだ、新しい市場を考え得るのじゃないかということを実は感ずるものであります。  今企画庁におきましていろいろの計画を樹立、立案中でございますが、なかなか広範の問題でございますし、また十分検討いたしませんと、いろいろそごを来たす危険もある。企画庁は相当真剣に取り組んでおります。そういう場合に一体予算とどう結びつくのだろうかという問題になりますが、必ずしも所得が倍になるから予算も倍にならなければならぬという議論が直ちにできるとは、私は思っておりません。そうは考えておりませんが、しかし、少くとも、この所得倍増の場合における民間金融なりあるいは民間資本なりあるいは財政資金なりが果す役割というものは、相当大きいということは当然考えなければならない。また、現実の問題としてみまして、予算は現実には相当金額が年々ふえていっておる。考え方によりますれば、七・二%より以上のものが案外ふえておるということも指摘できるのじゃないか、ここ二、三年のことですが。しかし、これが引き続いていつまでもそういうような金額がふえるかどうかは疑問でございます。たとえば予算が一兆四千百九十二億、その予算の一割の千四百億ふえれば、予算は十年で倍にふえる。これを、七・二%なら、それまでふやさぬでもいい。あるいは、財政投融資の方で五千百九十八億を、それじゃ五百億ずつふやせば、複利を持たないで予算だけは倍になる、投資計画も倍になるじゃないかというような議論もあろうかと思いますが、私は、必ずしもすぐそのままの数字をくっつける必要はないだろう、こういうように思います。問題は、今企画庁でいろいろ検討しておりますもののうち、どういうものを取り入れて参りますか。おそらく三十四年度予算の際に特に私どもが主張し、幾分かでもそれを取り上げて参りましたものは、産業構造のアンバランスを是正するというような事柄を申しまして、公共事業費などに特に力が入って参っておりますが、こういうような産業構造のアンバランスというものは、私どもが是正するものの一つじゃないか。そういうように考えてくると、中小企業が産業構造の面から見て非常に弱い面だ、そうして、これが近代化されない限り、日本経済としては健全な成長じゃないのだということがしばしば指摘される。こういうことを考えてみると、それじゃ、中小企業で一番必要なのは、おそらく中小企業の近代化というようなことが特に強く要望される。あるいは金融の面、財政投融資の面でどういうような処置をとってくれるか、あるいは特殊な中小企業に対しての救済方策はどうかとか、こういうようにそれぞれ分れてくるのではないかと思います。ただいま予算編成を前にして今お尋ねになりますことは、私どもの一番工夫苦心を要する点であります。ことに来年度の歳入といたしましての歳入増は、ただいまのところなかなか見積りにくい状況であります。今まで新聞等に税の自然増収は千五百億は下らぬだろうということが出ておりますが、千五百億自然増収がありましても、それが直ちに歳入千五百億の増ということには実はならないのでありまして、剰余金が非常に減っているとか、あるいはたな上げ資金の二百五十億がないとか、こういうことを考えますと、歳入増としては自然増収そのままを計上されないというような実情にございますので、予算編成上にはなかなか問題点があるということを、今日から私ども非常に心配しておる次第でございます。しこうして、所得倍増についての経済拡大の方向についての努力はもちろん払っていかなければならない。できるだけ早く経済企画庁においても結論を出し、そうしてそういうものが可能でございますれば、できますならば来年度予算の中にも取り入れるということが必要ではないか。ただ、私が申し上げたいのは、別に逃げるわけではございませんが、十カ年計画、これを平均して、また各産業ともみんな平均して倍増計画を立てるということは無理なことだろう、実はかように思います。しかしながら、財政資金の面から考えた場合に、これはやはり平均して財政資金を投入するようでないと、後年度において予算編成や財政投融資計画を立てる上に非常に支障を来たしはしないか。その方はできるだけ平均した使い方をすべきだろうと思います。しかし、ただいま幾らをどうこうするという段階ではありません。ことに、私ども、税の自然増収の見積りにいたしましても、九月の決算期を終えないことには、自然増収についてのより信頼のできるような見通しが立て得ないというのが現状でございます。
  67. 横山利秋

    横山委員 所得倍増、予算、中小企業、その関連をお伺いしたのでありますが、正直なことを言って、よくわからない。よくわからないということがよくわかったという方が正しいでありましょうが、時間でございますから、大臣お帰りを願うのですが、最後に私の意見だけ申し上げておきますと、どういうものでしょう。自由民主党の内閣で所得倍増計画をお立てになるということの本質的意義という問題であります。私は、かくありたいのか、かくするようにするというのか、あるいはかくあるであろうというのか、何が何だか実はわからない。かくありたいでなくして、かくするというのであるならば、私は、今日の自由民主党を解散をなさって社会党に合流なさらぬと、実現ができないのではないかと思います。これは国民はかくするというふうに理解しておるわけですよ。自由民主党が所得を倍増する、倍増のためにいろいろな計画を立てて、資金配置をきちんとして、一定のレールを引いて、ずっと連れていくのだ、こういうふうに国民は理解しておる。けれども、自由民主党の中の話をいろいろ伺うと、とんでもない、どろくさいことを言っておるというようなことを言っておる人が多いようであります。かくありたいという希望的なことであるならば、政策の骨格をそこへ持っていく必要はないように思うのです。今の大臣のお話が要するにどういうことなのか、私には率直に言ってよくわからないのであります。理論的に言って所得倍増を予算の面に実現することがむずかしいということは、私も百も承知しておりますし、平均してやるということも、各産業各業態に平均して毎年七・二%、それもむずかしいということも私は承知をしておりますが、政府の国民に訴えておる所得倍増の本質的意義というものが、もし簡単に大臣からお話し願えるならば、これを大臣に対する私の最後の質問にいたしたい。
  68. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまの基本的な物の考え方であります。私どもは、社会党と違っておりまして、自由経済の建前で計画経済即統制経済というようには実は考えておりません。今回のものにいたしても、過去の新経済計画というものと同様な考え方を実は考えております。いわゆる統制経済でなければ計画の具体性がないのだと言われると、これはもう議論がちょっと私どもと違って参ります。そうなると非常な飛躍があるだろうと思います。しかし、私どもが政治を遂行いたします場合に、はっきりした政治の目標というものはあります。幾ら自由経済の原則に立ちましても、また、しかもそれが財政計画面において無理でない処置、民間の協力を得るならば可能なものというものは、実は考えられる。過去における経済五カ年計画などは、幸いにして協力を得て、その目的を達成しつつある。こういうことを考えて参りますと、今回の所得倍増計画というものも、これはただ単に机上のプランにはならないだろう、こういうように実はただいま考えておるわけであります。問題は、これはもう私が申し上げるまでもないことですが、先ほどの貿易について申しましても同様ですが、最終的には国民生活の向上が私どもの政治の目標であることには間違いございません。どこまでも楽な住みいい国を作るわけですから、そういう意味で、やはり経済を伸展さし、所得をふやしていくということを絶えず計画もし、その計画の線を目標にして強力に推進していく、これが私ども政治遂行の基本的な考え方であるわけであります。その意味で、別にここで統制力を発揮しなくとも可能なものがただいま考えられるというのが、私どもの基本的な構想であり、それをただいま立案中でございます。
  69. 横山利秋

    横山委員 では、これから各論に入ります。  各論の第一は、相互銀行の問題であります。相互銀行につきましては先ほど引用いたしましたが、現状は、たとえば、二十六年の九月、掛金が七七・五%、預金が二二・五%、三十四年五月、掛金が四〇%に低落し、預金が六〇%に飛躍的な向上をした。ここにもうすでに相互銀行の変質がある。さればこそ、大臣は、相互銀行大会で、中小企業に最も適した業務形態として掛金業務が相互銀行の中心でなければならないが、最近の状況では漸次減退しており、金融制度における本質が失われていくおそれがある、この際、相互銀行本来の使命にかんがみ、新しい時代の要請に適応した独自の業務形態を確立し、制度存立の意義を明らかにしてもらいたい、こういうふうに演説をしておる。そこで、私は、こういう問題について、率直に、端的に伺っていきますから、あなたの方としても端的に一つお答えを願いたいのです。  お尋ねをする相互銀行の問題点の第一は、現在掛金業務ではいかぬという声は天の声であります。幾ら借りておるのか、あるいは実質幾らの金利になっておるのか、中小企業がわからぬという状況を、根本的に今日直ちに是正すべきである。おそらく今金利一割二分くらいでやっているんですが、掛金と給付金と両建となって二倍以上にもなります。そのほか両建預金があるとすれば、全くこういう金を借りて商売をやること自身が実はおかしいのであります。この掛金業務を是正して、減債制度にするという方針を、この際強力に遂行するお気持があるかどうか。それから、歩積み両建が何といっても是正をされないのであるけれども、この是正を真にやる用意があるかどうか。それから、根本的解決の方式として、今日の相互銀行の苦難の道、こういう問題点のある道を解決する方法として、私は、政府が指定預金の引き揚げをするような雲行きがあるのであるけれども、これは逆行するものではないか。相互銀行が約二十一億ぐらい、信用金庫が十三億ぐらい、商工中金が二十七億ぐらいあるといわれておりますが、この指定預金の引き揚げを逆行してなさるつもりがあるかどうか。それから、業務の簡素化、定形化、単純化、こういう言葉で表現をせられるわけでありますけれども、少くとも、今日の相互銀行の業務形態、その中心となる掛金業務、その問題の金利、またそれを解決すべき問題点の政府指定預金、こういう点について相互銀行を改善する方途を一つ政府側から伺いたいのです。
  70. 石野信一

    石野説明員 相互銀行につきまして問題を三つ御指摘になっておるわけでございますが、率直に申しまして、掛金業務等について、ただいまの相互銀行の例の金融利廻りというものが一体幾らになるのか、実質金利が幾らになるのかわからない、こういう問題があることは率直に認めざるを得ないと思うのであります。しかしながら、これは非常に歴史の古い、いわゆる無尽というような制度から発展して参ったものでございまして、御承知の通り非常に複雑な従来からの制度があるわけでございます。いわゆる大阪式とか、東京式とか、あるいは逓減式とか、残債式とか、いろいろございます。こういう制度がだんだん簡素化いたしまして、合理的、近代的なものになっていく、またそういうふうに指導していくということが必要でございます。  最初に御指摘のございましたように、掛金業務の方が預金業務よりも減って参っておる、こういう事実も事実ではございますけれども、この掛金業務というのは、相互銀行といたしましては特権的に認められておる業務でございますし、それから、この長期の割賦返済、こういう金融方式は、資力の乏しい中小企業者にとりましては、また非常に便利なものでございます。先ほど来お話がございましたように、それがいろいろ複雑な制度になっておりまして、金利等もはっきりしないという欠陥を持っておりますけれども、それがゆえに掛金業務の方を放擲するということはよくない、やはりこれを育てていくということが必要であると考えるのでございます。従いまして、この金融利回り等につきまして、いかに合理的にやっていくか、具体案を示せ、こういうことだろうと思うのでございますが、これにつきましては、御指摘の通り、掛金が進みますに従って、残債が減って参る、それが影響しないために金利が非常に高くなるという点でございまするが、二十九年の十二月に逓減方式——掛増金が債務額が減るにつれてだんだん減るというのをとりまして、それ以来、従前に比べますると金利も下ってきておるわけでございます。さらに、残っておりまする債務に相当して掛金が減りますように、完全に残債に見合うような合理的な制度、こういうものにすでに踏み切っておる相互銀行もございまするので、そういう意味でいろいろの制度を簡素化いたしまして、合理的にいたしまして、相互銀行掛金業務というものを伸ばしていく。なお、歩積み両建についても、これがだんだんに改善されていっているとは存じますけれども、今完全になくなっているとは申せません。これは検査のあるごとにやかましく申しまして指導いたしておるのでございます。一気に解決できませんでも、今申しましたような問題、過去の数年の経過をとってみましても、かなり改善いたしておるし、まだ理想にはほど遠いということでございましょうが、さらに一そう努力を続けまして、御趣旨のような方向に持って参りたいと思うのでございます。  指定預金の問題でございますが、これは、国庫の余裕金をああいう形で預けるということにつきまして、適当ではないじゃないかというような議論もございます。特に最近国庫収支が払い超が多い関係で、場合によっては大蔵省証券の発行を必要とするかもしれない。そういう場合に、指定預金が存在しておって、さらに大蔵省証券を逆に発行するのはどうであろうかというような議論もございます。しかしながら、これはやはり、中小企業金融という観点から、非常に政治的な重要な問題でございまするので、まだ結論を出しておりません。検討をいたしておる状態でございます。
  71. 横山利秋

    横山委員 あなたにお願いしたいのでありますが、今日の問題点を逐条的にも指摘して、全金融機関に及ぶのでありますが、時間もございませんし、質疑、討論といいますか、追及するわけにはいきません。けれども、あなたも御存じの通りの今日の話題の焦点ともなっているところを言うわけでありまするから、ずばりとしたものの言い方をしていただきたいのであります。たとえば残債式が一部のところで取り入れられている。これは事実であります。けれども、大勢を論じておるのでありますから、大勢を論ずる意味において、私は、残債式に政府が強力に指導しろ、やるべきだ、こういう立場をとり、指定預金も引き揚げるか引き揚げないかという立場なのであります。その意味においては、私の主張に御反対ではないのでありますから、要するに、どういう方法で、どういう順序を経て、いつやろうとするのかということを私はお伺いしたい。もう一回単刀直入に御返事をお願いしたい。
  72. 石野信一

    石野説明員 方向としてそういうふうに進めたいという考えは申してきた通りでありますが、これもやはりいろいろ業界でも研究いたしております。そのやり方等につきましても、こちらでも研究をいたします。今いつどういう方法でやるか、端的に答えよと申されましても、その点今直ちにここでお答えはできないのでございまするが、とにかくそういう方向に努力をいたしますということを、はっきり申し上げさしていただきます。
  73. 横山利秋

    横山委員 同じようなことでありますが、信用金庫について問題を議論してみたいと思う。先ほど申しましたように、信用金庫は、協同組合の精神というものは今やないといってもいい。私は断言をする。信用金庫と信用組合の関係についての政府の態度も明らかでない。信用金庫について基本通牒が先般出ました。これは、本来の性格、さらには将来におけるそのあるべき姿を想定して規定したものでなくて、現在を確認をしたというふうにとどまっておると私は思うわけであります。ただ言うならば、顔から足、近代化の方向をなるべく続けておるのでありますけれども、信用金庫の諸君に話を聞いてみますと、まあまあというところですな、つまりぬかにくぎのような雰囲気を呈しておるわけであります。本来あるべき姿、本来信用金庫について政府として期待する方向、こういう点についてはどういう方向を考えておられるか。どういうふうに今後持っていこうとするのであるか。一体相互銀行、信用金庫、信用組合等の業務分野調整はどういうふうに考えておるのか。またこの法律の改正というものも将来想定に入っておるか。そういう点について、今日の信用金庫は、本来信用金庫ができたときと変質をしておると思う。この現状の認識と将来の方向についてお伺いをいたします。
  74. 石野信一

    石野説明員 信用金庫につきましても、これはやはり協同組織による金融機関であるという建前をはっきりと守っていきたいと存ずるのであります。そういう意味におきまして、先般の基本通牒も、御指摘の通り、現行を特に変えるという趣旨ではございません。では信用組合との関係はどうかということでございますが、これは、信用金庫につきましては員外預金を取り入れる。信用組合の方は会員外の預金は取り入れない。それから信用金庫は地域を中心といたします。信用組合は職域とか業域を中心とする。こういう従来の考えを守って、その方針に従ってやっていきたい。従来の方針通りにやっていきたいということであります。
  75. 横山利秋

    横山委員 型通りの御返事を得ようとすれば、そういうことになるでありましょう。しかし、そういうあなた自身も、今日の状態について御存じないとは私は言わさないわけであります。信用組合を今度は議論してみましょう。信用組合の方は政府の直接監督指導のもとにない。県の指導監督のもとにある。その県がどういうふうに信用組合を指導し育成をしておるのか。この信用組合と信用金庫の業務調整というのは、あなたが言葉でおっしゃっているようにうまくいっていない。だから、県の指導監督しておる信用組合と、国のやっておる信用金庫、この全体的な調整ということの必要をあなたは感じないのであるかどうか。勝手に県がお作りになるなら、信用組合をどんどんお作りなさいというのか。設立その他については国の調整が必要な段階ではないか。そういう点について、理屈で、「いや、信用組合はこうです。信用金庫はこうです。ですからどうです」というようなことで済むものであるか。この点伺いたい。
  76. 石野信一

    石野説明員 信用組合については府県で監督いたし、信用金庫の方は大蔵省の監督になっておる。この点については、大蔵省の方でむしろ信用組合の監督もしたらどうか、こういう点が御質疑の要点かと思うのでありますが、これは、やはり、先ほど申しましたように、員外預金をとるかとらないかということで線を引いております。それは理論的な答えにすぎないじゃないかということであるかと思いますが、実際問題といたしましても、実は金融機関を大蔵省の監督下に置くという点につきましては、非常に考えなければならない点があるのでございまして、行政能力の限界を越えまして数多くの金融機関が監督下に入るというのは、逆に非常に監督が十分に行われるというような誤解といいますか、期待というようなことから、かえって弊害を伴うような場合もありますので、そういった意味で、員外預金をとらないものととるもの、そういう意味で区別をいたしまして、筋を引いておるのでございます。
  77. 横山利秋

    横山委員 だんだん怪しくなって参りましたが、それじゃ今度はもう一つ下にある町の貸金業といいますか、町の庶民金融、そういう点を大蔵省としてはどうお考えになりますか。選挙の最中に、佐藤大蔵大臣は、貸金業法を次の国会に出したい、こう言いました。一体ほんとうにおやりになる気持でありますか。大蔵省としてそれは準備がされておりますか。どのくらいございますか知りませんけれども、町のすみずみにあります高利貸し——貸金業と名前はうまいことを言っておるわけでありますが、それを選挙のときだけ貸金業法を作るとか大臣はおっしゃったが、それから杳として話を聞いていないのであります。上の方の銀行、相互銀行、信用金庫、信用組合、貸金業と、こういうふうになって参りますと、あなたの方では行政能力でできませんと言ってしまう。金融のことについては、きめがこまかいと言って、あなたの方はずいぶんいばりなさるのでありますけれども、実は筋がそこでずっと抜けてしまって、要するに、経済ベースに乗った企業、大企業の金融については一生懸命にお考えなさるけれども、だんだん下の方へいくと、行政能力がありません、できませんということで、結局放任をしてしまっておるのが、中小企業金融の実態ではないか。一番底の下の方に一番複雑した内容の高利貸しがあるのではないか。ところが、先ほど指摘して、これからは一生懸命にやりましょうといって、歩積み両建にしたところで、一体何年前から大蔵委員会で議論がされておるのか。そういう点を考えますと、私が冒頭に大臣に申しましたように、中小企業金融について一ぺん開き直ってお考えになるべき段階ではないかという意見も、またさかのぼって出てくるわけであります。今の質問は貸金業法でありますが、大臣は貸金業法を次の国会へ提案するというお約束を参議院選挙の最中になさったが、これを一体おやりになるのかどうか。また議員立法で出すという話があるのでありますがそれについての見解はどうか。貸金業法の問題についてお伺いをいたします。
  78. 石野信一

    石野説明員 貸金業を大蔵省の監督下に置く考えがあるかどうか、こういう御質問だと思うのでございますが、貸金業は現在三万以上ございます。非常に規模も小さく、毎月休業、廃業が非常に多いわけであります。大蔵省金融の監督は、先ほども申しましたように、不特定多数の者から預貯金をとっている、こういう一般金融機関に対する考え方とは性格上も非常に違いまして、自分が金をたくさん持っておる、それを、高利貸しといいますか、金を貸して金をもうける、こういうことでありまして、普通の金融機関に対する行政とは違うのであります。従いまして、現在のところは出資の受入制限等の法律によりまして、非常に高利なもの、日歩三十銭というようなところに、反社会性、犯罪性といいますか、刑事罰の限界を置きまして、これを取り締っておるのでございますが、これを大蔵省の監督下に置いて厳重に監督するというようなことにつきましては、実際問題として行政能力の範囲を越えるものでございます。これを責任のがれだと言われれば、それまででございますけれども、実際上行政能力の範囲を越えることをいたしますと、前にも大蔵省公認というようなことで、一般大衆が非常に信用力の高いものだというような誤解を招いて弊害を生じたというような点もございます。従いまして、事務的には貸金業を大蔵省の監督下に置くということはいたしたくないというふうに考えております。
  79. 横山利秋

    横山委員 大いに意見のあるところでありますが、次の問題へ移りましょう。私はあらためて大臣に選挙の公約について別な機会にお伺いをいたしたいと思います。  次は、信用保証協会の問題であります。これも冒頭一つの言葉でもって表現をいたしました。信用の保証を必要としないものに保証して、必要とするものに保証をしない、こういうふうに私は表現をいたしました。極端な表現かもしれませんが、それには原因があるわけであります。保証が必要であるかどうかということは、これは金融機関がいたす。あなたのところは保証をもらってきなさいということを金融機関が判断する。金融機関の一方的判断で、これに対して抗弁のすべもない。金融機関が窓口を一つ締めて、また健全な経営をしようとするならば、保証を持ってきなさいと言ってしまえば、それだけです。保証協会は保証協会で、健全な経営をしようという立場に立てば、保証をせぬでもいいものを、保証したら健全な経営になる。私は理屈を言っているわけでありますが、これは自然の人情ということになりやすい。かてて加えて、私の二、三調べた県市におきましては、保証協会は県にあり、市にある。県や市が保証協会を非常に宣伝をする。金融の相談は保証協会へ行きなさい、こういうふうになっておる。そうすると、そこでまた、知らぬ人は、保証協会の保証をもらったらどこでもいいというわけで、まず保証をもらって金融機関へ行くという風潮がある。それから、こともあろうに、先ほど申しました国民金融公庫や中小企業公庫が保証協会の保証をつけて金融をする、こういう全く政府の補完機関である国民金融公庫や中小企業公庫が、保証をして金融をするという機関になることもある。そうなって参りますと、一体保証協会とは何の保証協会か。これは中小企業の信用保証でなくして、銀行の保証協会ではないか。金融機関の保証協会で、はないか。本来の趣旨からいくと、まことに奇怪なる状況がある。私の言うのが極端な表現であるならばいいのでありますけれども、大体自然の流れはそういうふうになっておるように私は思えてならないのであります。あなた方は、信用保証協会を上から一般的に見ていらっしゃるから、そういう気がするのです。私は、この信用保証協会の運営について、ないしはどうしてそういうことになるかという観点にさかのぼって、一ぺん考え直す必要があるのではないかというように思うのでありますが、いかがでありますか。
  80. 石野信一

    石野説明員 信用保証協会につきまして、まず建前を申し述べさしていただきます。これもやはり金融でございますから、この点は申し上げるまでもないことかと存じますけれども、貸し倒れが明らかであるような場合には、これはもちろん初めから保証ということにならないわけでございます。できるだけ多くの中小企業の利用者に対して保証をいたすという考え方から申しますと、そこにやはり選別が行われるということはやむを得ない。もちろん、先ほど大臣もおっしゃいましたように、当然借りられるものにまで保証する必要はない。御指摘のように、保証すべきでないようなものにまで保証する必要はないじゃないかという点はございますが、これは運営の問題として、確かに、保証協会の中にも非常にいいのと悪いのと、というような格差もあると思います。また、運用上は、具体的なケースとしては、そういう意味で御指摘のようなことがあろうかと思うのでございまして、私ども、上からばかり見ていてはいけないという点、いろいろ御意見を伺って、その点十分検討して参ります。指導その他ではさらに改善をいたしていきたいと思いますが、建前としては、最初に申しましたようなことでございます。  それから、国民公庫と中小公庫について保証をとるのはおかしいじゃないかという御意見でございます。この点につきましては、国民公庫、中小公庫は、やはり金融機関の建前といたしまして、物的担保、人的担保というものを債権保全のために必要と考える。これは、金融の建前でございますから、やむを得ないのでございますが、ただ、市中金融機関に比べますと、他の金融機関から金融を受けることが困難なものに対して貸付をするという使命にかんがみて、そういう担保条件等も弾力的に取り扱っておるのでございます。従いまして、中小公庫から信用保証協会の保証をとってきて下さいというふうには要請することはいたしておりませんけれども、災害で担保物が全部流れておる場合等の例があると思います。そういう意味で、全然担保その他がなくて、保証協会の保証がなければ借りられないというような場合に、これを持ってきまして、これに対して貸付をするという場合もある。従って、例外的に、積極的に保証協会の保証をつけてくれというようなことは申しませんが、保証協会の保証のついておるものにも貸付をする場合も例外的にはあり得る、こういうように考えております。
  81. 横山利秋

    横山委員 あなたのお話は答えになっていませんよ。時間がないから私は一問一答でいけませんが、さいぜんからどうも答えが答えにならない。信用保証協会の今日の運営上の問題でありますから、運営を何とか注意をして、そのようなことのないようにいたしますでは、解決はいたしません。それから、政府機関の融資に対して、特別の場合には保証協会の保証も例外的にはありますでは、答えになりません。そういうことがあってはいけないと私は言っている。論理的な問題として、大体市中金融機関で貸すことができないものを、補完金融として、国民金融公庫、中小企業公庫が貸すのだから、市中で貸せないものを貸すのだから、保証が必要だったら、論理上は全部保証が必要ですよ。そうでなくて、保証を必要としない、国民金融公庫では担保も必要としない、そういうことでやるのだから、その例外、その例外といったら、これは国民公庫だって中小企業公庫だって、原則的にいえば危ないものばかりに貸すのだから、そんな例外を開いたら、全部担保を持ってこい、保証を持ってこい、こういうことになるじゃありませんか。あなたは自家撞着に陥らないですか。ですから、私は、信用保証協会の問題については、根本的に今日のそういう事情になっているゆえんのものを改善をすべき方途として、やっぱり保証の限度についてチェックする機関が必要ではないか、ここは保証する必要がないというふうなチェックをする機関が必要ではないかということを考える。それから、もう一つは、そういうふうに保証協会が追い込まれていくゆえんのものは、やっぱり基金が乏しい。もう少し基金を十分に与えて、そうしてその危険度を分散をさせるというふうにしなければならぬのではないか。今の、何といいますか、独立採算制の方式で追い込んで、そこで健全な経営をしろとなれば、これは安全性をとるのは当然である。保証しないでいいものを保証した方が、さらに安全性を増すということになるわけです。それから、政府機関の国民公庫や中小企業公庫に対する保証協会の保証は、断固としてなくすべきです。それについて御意見を承わりたい。
  82. 石野信一

    石野説明員 政府金融機関の場合におきましても、やはり金融という建前で、担保その他債権保全については考えて、それを必要とするわけであります。これは市中の金融機関から借りまする場合よりも弾力的に考えてはおりまするけれども、全然担保も要らない、政府機関は担保なしで貸すべきだという御意見でございましたら、これは現状からかなり飛躍をしなければならない。先ほど来大臣とのお話し合いにもございましたが、私どもは、これはまあきめをこまかくといいますか、あまり落差を大きくしないようにというような考え方で、そう飛躍的なことは考えておりません。そういう意味におきまして、やはり政府機関といえども金融ベースに乗らなければ貸せない。従いまして、今の保証の問題でございますが、その保証協会の保証がなければ貸せないというような場合に、保証がついてきたものに、その保証付のものにも貸すことがある、こういうことでございまして、一切政府機関は物的担保とかそういうものを必要としないじゃないかという御意見でございましたら、そこまでは現在のところは無理だというふうにお答えせざるを得ないのでございます。
  83. 横山利秋

    横山委員 これは意見の対立するところでありますが、おそらく、政務次官は、先般までこちら側にすわって、こういう国民金融公庫や中小企業公庫で、信用保証協会の保証を持ってこいというのはおかしいじゃないか、と言っておられた人でありますから、よもや局長のお話に同調なさることはないと思うのですが、いかがでございましょう。
  84. 奧村又十郎

    ○奧村説明員 どうもおはちがこっちに回りまして……。  実は、まだ信用保証の制度について十分私も勉強しておりませんが、まあ率直に申し上げまして、この国民金融公庫や中小企業金融公庫は、政府の中小企業金融のための機関でありますが、それは銀行やその他民間の金融機関から借りられないものだけに貸すのだという、それはまあ理想ではありますけれども、実際にはなかなかそうはいかぬもので、従って、その意味から言いまして、信用保証協会の保証をとったものは、国民金融公庫や中小企業公庫からは貸してはいかぬ、また、逆に、国民金融公庫や中小企業公庫から融資するものには保証協会の保証をとらしてはいかぬということは、私は、今直ちに実行することは、実態に沿わぬというふうに思います。しばらく検討してみたいと思います。
  85. 横山利秋

    横山委員 これは世の中は変れば変るもので、こっち向きが向う向きになりましたら、お話まで変ってくる。これは奥村次官のために非常に残念な話でございます。しかし、私はこれを追究してやまないところでありますが、こういう政府の補完金融機関が市中金融機関で融資できないものを融資すると大文句で発足したところが、そういうところが保証協会の保証を持ってこなければ貸さぬとか、持ってきたから貸すとかいうことでは、お笑いぐさであります。こういうことも例外にはありますなんて、のんべんだらりとおっしゃっておられますならば、その人の気が知れない。どういうつもりでそういうことをおっしゃるのかわからぬ。いわんや、すぐ次官にそういうことを言っても、次官も苦しいようでありますから、政府内部においてすみやかに問題を整理して、別の機会にあらためて私は答弁を要求したい。  次は、金融紛争の問題であります。今私は相互銀行からずっと中小企業金融機関を洗ってきたのでありますが、それらを調査して参りますと、すぐに気がつくことは、中小企業が借りるときはいいのだけれども、返すときにずいぶん紛争が多いということであります。これは、借りるときには高利であろうが何であろうがというふうに、借りてしまった責任もあります。けれども、それは今の銀行と中小企業との関係の一面を物語るものでありまして、借りるときにそういう危険を冒す、こういう高利を貸さないようにするということは別の機会に論ずることにいたしまして、さて返す段階になって、全く紛争の絶え間がない。案ずるに、税については苦情処理機関、協議団というものがあります。それから、証券についても、証券紛争処理機関というものが財務局にあります。それから、建築についても、土建業者とそれから普通の建築主の間に、それぞれの県に紛争処理機関があります。一つだけ金融についての紛争処理機関がないということは、いかがなものであろうかと私は思うわけであります。借りたものなら返すのは当然だ。それはその通りであります。けれども、金の卵を生む鶏を殺してしまっては金の卵は生まれないのでありますから、その紛争の処理に当って、第三者の調整を今日必要とする時期ではなかろうか。たとえば財務局、財務部ごとに、あるいは県ごとに、金融の苦情の処理機構というものを作る必要があると、私はかたく信ずるわけであります。私が当面直面いたしました金融紛争は二、三にとどまらないのでありますが、その最終的な段階になりますと、やっぱり銀行の勝ちなんであります。それはもう奧村次官もよく体験されたところでありましょう。なぜかというと、銀行のうしろには政府がおるわけであります。今度の政府は奧村次官がおられますから、そんなことはないと思うのでありますけれども、そういう場合に、最終的にけんかになりますと、やっぱり銀行の勝ちでありまして、中小企業がそれで倒産する、あるいは経営に対する介入等々ということになります。私は、その意味において、金融紛争の処理機構というものを、県ごと、財務局ごと等に置くことを主張いたしたいのでありますが、政府の御見解をお伺いしたい。
  86. 奧村又十郎

    ○奧村説明員 お答え申し上げます。実は、私も、横山委員と同じように、大蔵委員として委員会で質問などやっておりましたときは、横山委員と同じような考えを多分に持っておりました。たとえば、おととしでありましたか、第一相互銀行における預金者との関係の問題とか、あるいはその他二、三この委員会でも取り上げた経験がありますので、それからいたしまして、横山委員のおっしゃるように何かこの苦情処理機関を設けたらどうか。これは同感に存じます。税においては御承知の通り苦情処理機関を設け、またそのほかに法律に基いて異議申し立ての規定を置いて、いわゆる税務協議団というものがあって、裁判にかかるまでに行政的に処置をするということになっておるのでありまするから、この点を金融の面にも考えたらどうか、こういうことでまことにごもっともに存じております。従いまして、政府としてもこれは考えるべきだと思いますが、率直に申しまして、まだ具体的な方法については政府部内で十分の協議を遂げておりません。今までの政府考え方といたしますれば、御趣旨はまことにけっこうでありますが、行政的にそういうことのないように十分やっておる、またこれからもやっていこう、取り立ててそういうはっきりした機関を置くほどのことはなかろう、まあこういうふうな考えを持っておるので、ちょっと答弁はややこしいけれども、よくお含みを願いたいと思うのであります。
  87. 横山利秋

    横山委員 これを称して龍頭蛇尾と申します。私は話は半分聞けば大体あとのことはわかると思うのでありますが、話を半分聞いただけでは、あとのこととまるっきり違う。これは、次官、少しお考えを願わなければなりません。物事は立場ということはよくわかるのですけれども、やはりそういうお考えでありましたら、一つあとの話は取り消して、私もそう思う、だから一ぺん十分に検討してみようという御答弁があって、私はしかるべきだと思う。その結果、これはいろいろ考えたが、横山委員に申し上げたいのだけれども、どうもうまい知恵がありませんが、よい知恵がないですかと言ってあとでお聞きになるなら、よい知恵を出しますが、今は三十秒もたたぬうちに、前半は賛成です。後半は反対ですと言うのでは、ちょっとおかしいです。もう一ぺん次官の誠意ある所信のほどを聞かしていただきたいと思います。
  88. 奧村又十郎

    ○奧村説明員 実際の問題としては、政府が監督の立場からそういう個々の事態が起った場合には注意をいたしまして、預金者との間に解決をさせてきておるので、政府としても今まで通りやり方でいける、現在はそういう考えです。しかし、今の横山委員の御意見も大へんけっこうでありますから、今後十分検討してみたい、こういうことです。
  89. 横山利秋

    横山委員 今後の御検討についての御同意を得てまことに幸いでございますが、今後さらに検討をいたしていただきます。私も具体的な提案をいたして参りたいと思います。  次は、社内預金の問題であります。いわゆる社内預金と称するもの、各民間の産業、会社、工場で労働者が積み立てております社内預金は、約千五百億になんなんとするといわれております。この社内預金については、すでに、参議院の委員会においても、また当委員会においても、一たん取り上げたことがあります。この際社内預金について政府の見解を承わりたいのでありますが、私はこの社内預金は法律に違反をしておるという立場をとるものであります。なぜかと申しますと、この社内預金は、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律に準拠して、第二条「業として預り金をするにつき他の法律に特別の規定のある者を除く外、何人も業として預り金をしてはならない。」、政府の解釈は、聞くところによれば、「他の法律に特別の規定のある者」、その「他の法律」は国民貯蓄組合法にあるのであり、さらに基準法によって差引が認められているのであるから、この社内預金は違法でないというふうな主張だと聞いております。しかしながら、この「他の法律に特別の規定のある者」というのは、他の法律において業として預かり金をすることを許可しておる特別の法律と見るのが順当な考え方であります。しかるところ、国民貯蓄組合法は、勤務先で預かり金のあっせんをなさんとするときであって、あっせんであります。業として預かり金をしているのではない。従ってこの法律を援用することは誤まりである。基準法に至っては給料から差し引いてよいという手続だけでありますから、この援用をすることは誤まりであります。従って、この社内預金については、法務省においても違法性ありというふうな見解をとっておるようでありますが、私は、この社内預金は違法性がある、これが第一の考え方であります。  第二番目は、この千五百億になんなんとする社内預金については、何ら預金者保護の規定はない。先ほどまでずいぶん議論をして参りまして、あなた方は銀行を擁護する立場に立たれて、預金者保護ということを神の声のことのようにおっしゃっておられるのであるが、この社内預金については何ら預金者保護の規定がない。これを一体どうするのか。  第三番目に、政府としては、産業資金の調整について、民間あるいは政府資金を問わず、いろいろと調整をなさっておられるのであるが、この交通整理のワク外にこの千五百億があるということについてどう考えるか。  それから、臨時金利調整法の適用がこれにはされないから、最高金利の制限がこれにはされない。社内預金は金利が高いからというて、市中金利よりも高くして、社内で会社が預けさす。あるところでは強制的に預けさせる。ある中小企業においては、預けさしておいて、それを運用して、会社がつぶれると従業員は自分の貯金すらもらえぬ、こういうふうなこともかつてあったのであります。  私は、以上のような理由から、社内預金につきましては、もうこの辺で政府としてお考え直しを願ったらどうかというふうに考えるものでありますが、いかがなものでありますか。
  90. 石野信一

    石野説明員 事務的な問題が含んでおりますので、私からお答えいたします。ただいまの社内預金についての法律解釈の問題でございますが、第二条に「業として預り金をするにつき他の法律に特別の規定のある者」、「業として」というのは、営業としてということでなくして、もっと広い意味で継続してということでございますので、その会社が多数の社員からそういうものを継続してとるという場合においては、やはり「業として」ということに入るというふうに解釈をいたしております。なお、不特定多数からという場合に、特定の会社の社員という場合はこれに該当するかどうかというような問題もございます。御指摘がございましたように、労働基準法の第十八条にこれの規定がございまして、これは、御承知の通り、身元保証金というようなものから変形しまして、福利厚生施設の一種として今現存している制度でございます。労働基準法でも年六分を最低限度としろということで、むしろ最低を労働基準法に基いてきめておりまして、そういう意味でむしろ労働者保護というような考え方もここに盛られているのでございます。御指摘のように、こういうものがむしろ普通の金融機関の預金に集まるということになれば、それは大蔵省としてはけっこうでございますけれども、ただそういう意味で労使間の問題として労働基準法にある意味で保護するような年最低六分というふうな規定がございまするのを、金融政策の立場からだけでこれの最高限度をきめまするとか、これを禁止するというように踏み切るのもいかがか、またそれまでの必要はないのではないか、そういうふうに考えております。
  91. 横山利秋

    横山委員 きわめて消極的なお考えであります。預金というものについて、あなた方が終始あらゆるところで主張してやまないのは預金者保護という立場であるが、この社内預金を預金者保護という観点から放置していいものであろうかどうか。それから、あなたの言う「業として」という解釈については、これはあなた自身がお述べになっておりながら、心中じくじたるものがないであろうか。継続して預かり金をする、そうしたところで、自分が預かり金をするもの、自分が銭を預かって出したり入れたりするもの、こういうふうに見るのが正しいでありましょう。国民貯蓄組合というのはあっせんをするものである。自分がやっているのじゃないのです。あっせんをなさんとするときは云々ということを規定しているのであって、業として自分が出したり入れたりするわけじゃない。かつて、法務省は、その点について、先ほど申しましたように、これは違法性の疑いありというふうに断定をいたしておるわけであります。あなたが、私が述べました結果、つまりこの預金者保護の規定がなく、金利はなるべく普通より高い、そしてつぶれたらこれはどうしようもない、だれも守ってくれない、これも一種の預金なんですが、そういう点について、放任をするよりほかにないと言わんばかりのお話は、どうにも納得ができません。あなたの預金というものに対する基本的概念からいって、社内預金をこのまま放置されてよろしいものであろうかどうか。かりに一歩を譲ったところで、社内預金を禁止することについては議論があるといたしましても、この社内預金が勝手ばらばらに、適当に、全く自由になされておるという現状について何とお考えになるか。金利はどんな金利であろうと、そしてそれがどういうふうに使われておろうと、会社がつぶれて本人に返らぬということがあろうとなかろうと、政府としては社内預金について関知しないと言わんばかりのお話でありますが、それで一体いいのでありましょうか。いかがでありますか。
  92. 石野信一

    石野説明員 先ほども申し上げましたように、福利厚生施設一つとして会社の方もその金を預かる。もちろん運用はいたしておりましょう。しかし、若干一般の場合より金利を高くして貸し付ける、こういうことで労働組合でも協約等でそれを認めたような場合には、これをやってもよろしい。そして、これは最低限度、そういう場合に逆に六分以下のものはやっちゃいけない、六分以上にしなさい、こういうように労働基準法で規定をいたしておるのでございまして、そういう意味では、こういう福利厚生施設の制度は適当かどうかという御議論はもちろんございましょうが、現在の問題としては、金融政策の観点からだけで、これを廃止するとか制限するというふうに考えてしかるべきものかどうか。むしろこれは労使間の問題として今認められておる制度でございまして、そういう観点であるのを廃止するというようなことになりますと、いろいろまた逆の御意見もあるのじゃないかというふうに考えるのでございます。金融政策の立場からだけ論ずるわけにいかないということを申し上げさせていただきたいと思います。
  93. 横山利秋

    横山委員 金融政策の部面からだけで論ずるわけにいかないということはわかります。だからといって、金融政策上これを放置していいという理由はちょっとわからぬ。それから、あなたの言う福利厚生的な面からこれがあるとおっしゃるけれども、これは認識違いもはなはだしい。企業者の立場に立ってお考えになればいいのですけれども、これは福利厚生といっても、結局その金を会社が運用しているわけです。会社の金融政策ですよ。会社がその金を適当に借入金のような格好で運用しているわけです。だから、そのもうけの中から市中金利よりも比較的高いものだと言って、つっているわけです。会社の政策ですよ。あなたの言うような福利厚生の問題だけだといって議論をするわけには参りません。私は重ねて言いますけれども、どうですか。その点についても政務次官の御意見伺いたいのでありますが、この社内預金を、今局長がおっしゃるように、全く金融面からばかり議論もできないから放任しておきますというように放任なさるのか。私の言うように、この際禁止をしたらいいというふうにお考えなさるのか。それとも、たとえば最高制限を置くとか、届出許可制度にするとか、あなた方が預金者保護ということをいつも言っておられるならば、金融政策をいつも言っておられるならば、この問題に限って私は知りませんと言うのは、さっきの高利貸しや信用組合と同じですよ。手数のかかることはいやだと言わぬばっかりのお話だ。これではいかぬ。いかがです。
  94. 奧村又十郎

    ○奧村説明員 御意見の点はごもっともな点もございますが、しかし、その社内の預金ですね、これは会社が使うのだ。しかし、会社はその預金しておる従業者の会社ですから、従業者は会社といわば運命をともにしておられるわけだから、会社が使うということを十分御承知の上で従業員の方が預金なさるのですから、この点はあまり議論倒れじゃなかろうかと思うのですが、どうですか。しかも、銀行局長の御答弁のように、労働組合の協定の中にもこういう話も出ておるわけで、労働組合も大体御承知になってこういうことが行われておるのが私は原則と思いますから、それなら、たとえばはっきりした信用組合とかあるいは農協とか、こういう場合と比べてみましても、預金者保護の政府責任もありますけれども、なかなかそう手が十分に伸びません。それと比較して考えても、従業員が生死をともにして働いておる会社がその金を使う。もし万が一間違いがあっても、従業員が会社の運命を一番よく知っておられるし、また会社と生死をともにするお気持なら、むしろ政府としてもそう干渉しない方が、会社も従業員もいいんじゃないか、これは常識で考えて私はそう思うのです。それとも労働金庫に持っていくということになれば、会社対労働金庫の関係がうまくいっておれば、これはけっこうというふうにも思いますが、実際問題として、そこら辺はむしろ私はあなたにお聞きしたいくらいに思いますが、どうでしょう。
  95. 横山利秋

    横山委員 次官はこの点については割合近代的でないお考えのようですが、会社と生死をともにするなんてことは、気持はわかるのですが、現実問題としてはそういうことはない。自分のかて、自分の家族の生活をささえるために働きに行き、そして給料をもらう。これが割り切った一つの姿なんです。それはもう飯なんかどうでもいい、給料なんかどうでもいい、会社と生死をともにする、そういう考え方はちょっともう時代が違うのであります。雇用者と被雇用者の立場からいって、雇用者がおれのところの金融がなかなかうまくいかぬ、済まぬけれども従業員のお前らも貯金をしてくれぬかと、やや半強制的な社内預金というのが最近非常に多いのですよ。そうして貯金しろ貯金しろと給料から天引きなんですよ、これは。ですから、合意だとかなんとかいうよりも、ややそういう気配が見える。そうして貯金してもらったものは自分の会社に運用する、こういうしかけになる。預金をするかせぬかは従業員の労働者の任意にまかせるべきであるが、少くとも支配をしておる立場、自分が使っておる立場の乱用になりやすいと言うのです。あなたは、そんなことはないよ、貯金がいやならいやと言えばいいじゃないか、こう言うでしょう。あなたは、問題の中小企業、零細企業、あるいはまだ非常に封建性の残っている民間企業についての理解がやはり乏しい。同時に、あなたは現場について議論をしておられるが、あなたは大蔵政務次官ですのに、金融政策として預金者保護の立場からの観点が全然ないのではないか。あるいは政府の産業資金調整のワク外にあるのではないか。あるいは臨時金利調整法の適用がなくて、六分以上は何ぼでもいい、そういうばかげたことがあろうか。そういう点についてどうなんだ。それから、法律に合法性があるというけれども、私は大いに非合法性があると思う。これは政務次官は十分に御検討願いたい。私はこの点は預けておきます。時間がございませんから、次に移ります。  次は、サラリーマン金融の問題であります。今日金融のじょうろというのは方々にたくさんございまして、たとえば中小企業の観点に立てば、いろいろな欠陥と弊害はあるけれども、まあ自分の家を直す、あるいは嫁をもらう、あるいは土地を買う等々、あらゆる条件のもとにおいて、何とかかんとかじょうろで水を受けることはできるわけです。ここに一つ不足をしたものがサラリーマン金融だと私は考えるのです。サラリーマンも労働金庫から借りれるじゃないか。たしか今労働金庫で借りれるのは五万ないし十万というところでありましょう。私の調べたところによりますと、熊本のある信用金庫がサラリーマン金融をしておるそうでありますが、表金利は三銭でありますが、歩積み両建で五銭二厘、大阪のあるサラリーマン金融をやっておる相互銀行では、表金利が三銭五厘で、それがいろいろなやり方で実質金利九銭八厘であります。全くとほうもない話だと思うのであります。たとえばサラリーマンが働いておって、自分がもう老齢になってやめかけたときに、あそこに今土地があいておる、その土地を今買うなら非常に安いと思ったときに、一体どういうふうな金策の方法があるか。ないんだ。勤め先が役所ならば、住宅金融貸付があって金が借りれるかもしれない。住宅金融公庫に行ってもそうはうまくいかない。くじ引きで、向う次第です。こちら次第ではない。そういうわけで、サラリーマン金融考えてやる必要がありはせぬか。たとえば、嫁をもらえば、まあ十万何がしというものが要る場合がある。むすこをどうかする、あるいは家を買うという場合に、今日サラリーマン金融として労働金庫があるけれども、労働金庫は員外利用ができない。労働組合ないしは会社における親睦団体でなければいけない。そうすると、未組織の労働大衆は全くそのサラリーマン金融から放置されておる。非組合員にしても、一般のサラリーマンにしても、この利用が何らないという点において、サラリーマン金融を今日やるべき必要があるのではないか。庶民金庫ですか、かつてそういう経過もあったそうでありますけれども、この際一つこういうことを考えたらどうか。そのために私は具体的な提案をいたしたいのでありますけれども、労働金庫というものは組合員でなくては貸さぬというのでありますが、労働金庫という本来の趣旨にのっとって、員外利用といいますか、労働者についてならば貸すという立場に踏み切ったらどうであろうか。また、今日業務方法書は政府の認可事項になっておるのでありますが、労働金庫は信用貸しで二年を限度にしております。三年間で労働者が給料の中から返せるというリミットがある。もうすでに信用金庫は二年というリミットを取りはずしておる。労働者にだけなぜ返済期限が二年でなければならないか。そういうことや、あるいは担保貸しですと労働金庫は十年期限ですね。その十年期限というけれども、住宅金融公庫で当れば、住宅金融公庫は十八年、向うは十八年、こっちは十年で返さなければならない。こういうばかげたことはないではないか。信用金庫の例をとりまして、業務方法書を改正してやって、返済期限のリミットを取りはずしてもいいではないか。労働金庫は労働金庫で貸してやる限界を引き上げてやるべきではないか。そしてまた、員外利用を認めて、労働者であればということにすべきではないか。そうすると、返済についてどうか。返済の保証があるかどうか。この点については、退職金の引き当てなり、あるいは担保を持っておる人は担保なり、給与について経営者の保証なり、そういう方法もいろいろあるだろうが、私は労働金庫を土台にとって言ったのでありますが、何も国民金融公庫だってできないことはない。さしあたり労働者の銀行であります労働金庫に、サラリーマン金融を一般的に認めるべき段階ではないか。おくれたる、忘られたる金融というのがここにあるのではないかと思うのでありますが、いかがでありますか。
  96. 石野信一

    石野説明員 サラリーマン金融につきましては、確かに、おっしゃる通り、現在特にサラリーマンを対象にした機関はございません。労働金庫に会員外の貸付をするということになりますと、これは共同組織の金融機関の原則をくずすことになりまして、先ほど来いろいろ御注文もございますけれども、利用分野の問題も乱れて参りますので、その点は一つ考えざるを得ないと思うのでありますが、御承知かと思いますが、今の労働金庫法の第十一条の第二項に、個人会員というものを認めておりますので、従いまして、未組織の労働者でも、会員になりますれば貸付をしてやる、こういう規定になっております。現在会員が七万六千六百三十八、団体会員が二万二千百八十三くらい、個人会員は五万四千四百五十五、そういう意味で労働金庫は全然道が開かれないということでもないのであります。その貸付の期限等について、これは資金源である預金が短期である関係もございます。あるいは資金融通の目的等の関係もあると思います。業務方法書の関係につきまして、なお詳しく必要でございましたら、大月財務調査官からお答えいたします。
  97. 大月高

    ○大月説明員 今局長から申しましたように、労働金庫の資金源が短期でございますので、長期に固定するような貸し出しはやらない。これは普通銀行ができるだけ短期の金融をするようにという指導をいたしておるのと、全く同様であります。住宅金融公庫等で、政府資金をもって十八年というような貸付をしているのとは、その点性格上制約があるというように御了承を願いたいと思います。
  98. 横山利秋

    横山委員 やはり最初から最後まで話のべースがあんた方と私と違うのであります。もう少し角度を広く見て、法律に抵触をするなら法律を直せばいい。私はもう少し楽に考えておるわけです。サラリーマン金融というものは、ほんとうに必要があるとあなた方がお認めになれば、その必要がある方法を実現するにはどうしたらいいか、という方向に目を向けてほしいのであります。局長がおっしゃるように、個人会員という方法もあるにはあるけれども、それは例外的な立場においてなされておるのであって、正攻法なものではない。サラリーマン金融という忘れられたものをこの際一つどんとやろうという立場に立って、その考え方を変えていくべきではないかというふうに思うのです。  あわせて同じようなことをお伺いいたしますが、参議院を通過して衆議院で解散のためできなかったと思うのでありますが、労働金庫の恩給担保貸付を認めてやるべきときではないか、こういうふうに私は考えるのであります。恩給をもらってやめた公務員や、そのほかのそういうような人たちについても、労働金庫に扱わせるべきではないかというふうに考えるが、いかん。それから、もう一つは、最近法律が通過いたしました退職金共済法による取扱い金融機関、あるいは預託金融機関として、労金を当然認めるべきであると思うのでありますが、その辺、何かあいまいもこたる雰囲気があるそうでありますが、なぜそれがいかぬのであろうか。労働者の退職金、そして退職金の共済、それを労働金庫が取り扱うということは当然の筋であろうと思うのですが、この辺の御意見伺いたいと思うのであります。
  99. 大月高

    ○大月説明員 恩給受権者に対しまして金融の道を開いてほしいという要望は前からあるわけでございます。現在は国民金融公庫の特別の恩給担保金融ということに限られておるわけでございますが、特に労働金庫におきましては、現在預貯金に比べまして貸し出しがやや少い、余裕金が多くて経理がなかなかむつかしいというような実情もございまして、また、今お尋ねのサラリーマン金融というような感覚にも合う。そこで、恩給担保金融をやらしてほしいという要望が強いわけでございます。これに対しまして、この前の国会においてもいろいろ論議があったわけでございますが、何分恩給担保金融の手続、技術等が相当複雑でございまして、この手続を国民公庫一本にしぼって、恩給局との間で実施をするということが最も間違いがなくやれるのじゃないか、こういう建前で、一般金融機関には今やらしておらない、こういうことでございます。ただ、御要望がございます点は重々でございまして、そういうような点もまた解決いたしますれば、単に労働金庫だけではなしに、普通の相互銀行、あるいは信用金庫、そういうようなものについても、あるいは道を開くことを検討してもいいんじゃないか、こういうことで、今ペンディングになっておるわけでございます。絶対的にいけないということよりも、むしろ問題が技術的に非常にむつかしいということで、今検討中でございます。
  100. 横山利秋

    横山委員 退職金の共済法の問題は……。
  101. 大月高

    ○大月説明員 今度発足いたします共済事業団の代理機関の問題は労働省の所管でございまして、一応こちらとしてはまだ相談も受けておりませんので、態度はきまっておりません。
  102. 横山利秋

    横山委員 時間がありませんから、それじゃ、あと政府金融機関、国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工中金の三つを総括して私は二つの意見を申し上げて、御意見伺いたいと思います。  一つは、以上民間金融機関にからまる諸問題を分析をして、いろいろと政府側に意見も申し上げ、また御意見も聞いてきたわけでありますが、総括して申しますならば、冒頭私が大蔵大臣に申しましたように、今日の中小企業金融というものは再検討される段階にあり、それは単に機構のみならず、その運営状況についても同様であるということになるわけであります。そうして、その根本的な検討の一つとして、第二番目に申しましたように政府金融機関を飛躍的に強化して中小企業金融のモデルとしろ——今補完金融でありますけれども、たびたびあなた方の御答弁の中にもございますように、補完ばかりではありませんよ。普通と同じ金融をしています。たびたび言葉の中に出ておりますように、もう変質をしておるわけであります。資金量としても膨大になり、内容としても普通の金融と変らないべースも中にはあるようになった。しかも、これと相対して、市中民間中小企業金融機関の弊害、是正すべき諸点等を考えますと、この際政府金融機関を飛躍的に強化すべきではないか、こう考えられる。その強化の方法として、私は、根本的な方法と当面の問題に分けて意見を聞きたいのであります。  根本的な問題としては、まあ早い話が、日本銀行が普通銀行の中心機関であるように、この際一つ、中小企業金融機関の中心機関として、国民銀行あるいは中小企業銀行あるいはそのほか庶民の銀行なり、そういうものをこの際創設する方法はいかがなものであろうか。私はいろいろと政府側の御意見伺い自分も検討してみて、この信用金庫についてはこれをこうして、相互銀行についてはこれをこうしてというふうに考えるのでありますが、そういう考えだけでは、今日の中小企業金融というものの根本的改善はなされないということを考えるわけであります。従って機構の問題としては、この際国民金融公庫、中小企業金融公庫等をなくして、そうして国民銀行ないしは中小企業銀行等のようなものを創設する、そうして、それが、補完金融でなくして、中小企業金融の指導機関、中心機関というようなスケールをもってものを考えなければ、これは百年河清を待つようなものではないかというふうに考える。これが根本的な意見一つであります。  それから、もう一つ、すぐさしあたりの問題として、私は、たとえば国民金融公庫を例に出しますならば、六十万の申し込みで二十三万という全国平均であります。ところが、その二十三万をもってしても、よく調べてみますと、私、もう少し人をふやさなければいかぬということの方が実は先決であると気がついたわけであります。私は、その金融の資金量々々々といつも普通に言っておるわけでありますが、国民金融公庫へ入っていろいろ議論してみますと、あるいは中小企業金融公庫へ入っていろいろ議論してみますと、きょうの問題としては、やはり熟練した人を配置して迅速に事を処する、そういうことの方が、実は今日の問題としては先決の問題ではないかという気がしてならぬのであります。もちろん、そのことは、資金量を投入するということは別にどうでもいいというわけではございません。今日国民金融公庫が約九百億、中小企業金融公庫が千百億くらいでございますか、これらを合せて二千億、中小企業金融は私の承知するところではたしか七兆くらいでございますが、とにかく非常に少い。その比率からいうと非常に少い。少い上に、これが中小企業者一般にまだ十分に利用されておるとは言いがたい。利用ということは、金を借りるということでなくして、現に、政府機関としてのモデルがここにある、このモデルを見ながら金融をやってみろ、商売をやってみろという本来的な使命が果せておるとは思われない。またそういうふうにしなければならぬのではないか。だから、当面の問題としては、私はこの政府金融機関の性格を根本的にこの際変えて、飛躍的な変った性格に改めるべきであり、今それ自身の問題としては、資金量の大量な投下と、それから同時に忘れてならないことは人である。人を増員しなければならぬ。国民金融公庫で、申し込んでから借り入れが終りますまで約二十五、六日でございましょうか。中小企業金融公庫では、時期柄ですと約三カ月以上は絶対かかる。こういうことで、「政府金融機関が、市中金融機関に対して、政府といたしましては」ということが一体言えるであろうかどうか、そういうことを考えるわけであります。  従いまして、この際、根本的な解決及び暫定的な方法について、政府側の御意見伺いたいのであります。
  103. 石野信一

    石野説明員 第一の根本的な問題でございますが、この点につきましては、先ほど大臣との質疑応答にも現われましたように、ここで非常な飛躍をするということは、その他いろいろ御質問の点につきましても、考え方が両者若干違っておる、建前が違うということがあったかと思うのでございます。そういう意味におきまして、ここで国民金融公庫、中小企業金融公庫、おのおの中小企業金融機関でございますが、それぞれの機能を果しておるのでございます。御承知の通り、国民金融公庫の方は、対象も非常に零細な企業者でございまして、一件当りの平均が二十一万円というような程度で、生業資金の貸付を主として行なっている。中小企業金融公庫の方は、そこに産業政策的な意味も加わっているかと存ずるのでございますが、設備資金、長期の運転資金を——中小企業と申しましても、国民金融公庫の対象の分野よりも、やや中の部類と申しますか、上の分野、一件当りの平均は二百二十五、六万円になっておりますが、そういう資金の貸付を行なっているのでございます。こういう意味におきまして、業務分野のおのずから分れておりますので、これを一つの同じ金融機関に統合するというような点につきましては、かえって現在のような分野が分れている方がいいのではないかというふうにも考えられるのでございます。飛躍的に拡大するという点にむしろ御質問の重点がおありになるかと思うのでございますが、これは、結局は財政投融資、これに向け得る原資の問題でございます。毎年度できる限り中小企業金融につきましては増加をするように努力をいたしておるのでございますが、そう飛躍的にここに中小企業金融機関を作るというふうにはなかなか参らない、非常に困難ではないかと考えるのでございます。  さしあたりの問題として、人をふやす、あるいは資金量をふやす、この問題でございますが、これはさしあたり来年度の予算編成と関連して参ると存じまするが、この人の問題、資金量の増加につきましても、私ども銀行局としては、中小金融に特にそういう意味で財政投融資等の予算編成においても重点的に考えて参りたい、そういう気持でおります。ただ、これは予算編成のこれからの折衝にもよることでございますし、漸進的に毎年度増加いたしておりまするから、ある程度増加は期待し得るとは思いますけれども、今後の折衝で努力をいたして参りたい、こういうふうに考えております。
  104. 横山利秋

    横山委員 さらに一つ希望を申し上げたいと思うのですが、長時間にわたって中小企業金融を中心にして政府側の所信を伺って参ったわけでありますが、正直に言って私は非常に失望をいたしたのであります。特に第一に希望申し上げたいのは、現状の認識について政府側に惰性的見解があると思われる。これは私どもの手前みそかもしれませんが、いつも渦の中に回っておりますと、自分が回っておることに気がつかないものであります。豊富な経験をそれぞれ政府委員としてはお持ちではありましょうけれども、中小企業金融にいつも携わっておると、目の先の改善にだけとらわれて、根本的な白紙からものを見るという立場に欠けるところがあるのではないか、私はそう考えるのであります。きょうお話を伺って、そういうことが痛切に考えられました。ぜひ一つ、この際、冒頭に申しましたように、あらためて中小企業金融を見直すということにしていただきたい。同時に、めんどうくさいこと、手の届かぬことは、やっても効果がないから、いやだという心理がもう一つあります。それは、貸金業であり、信用組合であり、サラリーマン金融であり、云々であります。そういう手の届かぬことはやってもめんどうだからいやだという心理は、結局は、この中小企業の中の零細企業、小企業に対するしわ寄せとなって、恩恵が行き届かないということになって現われて参ります。こういう点についても、金融というものは、ほかっておけば、金融べースの恩恵を受けるものは中企業、大企業と自然の勢いとして上へ上っていくものだ、私はそう痛感するものでありますから、この点も一つ御反省をお願いいしたい。もとより私も金融についてはそうくろうとではございませんから、手前勝手なこともあるでしょう。極端な言い方もあるでありましょう。しかし、そういうしろうとが、夏の間かけ回って、金融について自分ながら感じて参りましたことを率直にぶっつけたわけでありますが、そういう点ももう一ぺん白紙の立場からあなたの方としても御検討をなさっていただいたらどうであろうか。  政務次官に希望をいたしたいのでありますが、私は政務次官も中小企業金融のベテランとして非常に尊敬をしておるのであります。また、あなたが政務次官の間に中小企業金融が是正されることを、期待をいたしておるのであります。しかし、正直なところ、きょうは失望をいたしました。立場というものがそうさせることはよくわかるのでありますけれども、しかし、それはそれ、これはこれで、せっかくそこへおすわりになったのでありますから、今までここでがんばっていらっしゃった抱負経論を、ぜひあなたの御在任中に中小企業金融に生かしてもらいたい。私の考えはそうですが、しかし、政府の立場もありましてということでは、奧村さんを政務次官に送った——私が送ったわけじゃありませんけれども、効果がないことに相なるわけであります。せっかく経験を持っておられる奧村さんに、きょうは前段の冒頭の質問を聞いていただけませんでしたので、個々の問題についての御意見を伺っただけでありますが、私の包蔵する根本的な考え方を、また機会がありましたらお話をいたしますから、どうぞ中小企業金融の抜本的な改正が行われるように希望をいたしたいと思います。
  105. 奧村又十郎

    ○奧村説明員 実は私先ほど農林水産委員会に呼ばれまして行っておりまして、その間いろいろ貴重な御意見があったことと思います。私も横山委員の御意見を拝聴したいと、それを楽しみにしておったのでありますが、いずれ銀行局長その他政府委員から承わって、よく参考にいたしたいと存じます。ただいまはまたとりわけ御鞭撻、激励のお言葉をいただきまして、まことにありがたく思います。なるべく白紙の立場で中小企業金融の打開をはかれ、こういうお言葉と思いますので、まことにごもっともと思います。それで、横山委員と同じような気持でもって、実は大蔵政務次官になりまして約二月半です。それで、御趣旨のような気持で、何とか行き詰まったと申しますか、多少動きのとれぬようなところを打開して、抱負経綸を述べたらどうかということでありますが、私は生まれて初めて役所勤めをいたしましたので、役所の中の空気に近ごろなずんでみますと、なかなか思うようにいかぬものだということを、しみじみと実は痛感しておるのでありますが、しかし、任期もまだこれからでありますので、大いに努力したいと思いますから、どうぞこの委員会の機会に、今後とも御指導、御鞭撻の意味で、活発な御意見を出していただきますようにお願いいたしまして、お礼の言葉にいたします。
  106. 植木庚子郎

    ○植木委員長 横路節雄君。
  107. 横路節雄

    横路委員 午前中私の質問の時間でしたけれども、都合で今まで非常に延び延びになりまして、関係当局の方には非常に御迷惑でございますが、時間もだいぶおくれましたので、質問もごく簡単にいたしたいと思います。  実は、八月の二十五日の大蔵委員会で、管財局長に、去る七月二十日付で米軍から日本政府に返還された千歳の飛行場、ここにいろいろと旧海軍の飛行場の建物がありまして、これの利用につきましてどうなさるのかというようなお尋ねをしましたところが、防衛庁でもぜひ使いたい、運輸省の航空局の方でもぜひ使いたい、こういうことだった。そこで、私の方からは、千歳市でも、駐留軍引き揚げに伴う離職者がたくさんおって、それが相当技術屋であるので、民間のたとえば機械工場として払い下げを受けたい、こういうような陳情もあるのだが、どうするのだ、こういうように私お尋ねしましたところが、北海道の開発庁で、いずれ審議会を開いて態度をきめる、こういうことであったのです。ところが、その後現地の方の事情は、もう航空局長御存じのように、航空局としては、千歳の飛行場については自衛隊のジェット戦闘機との共有ということは今後なかなか問題がある、だから札幌近郊の丘珠の飛行場に移すのだ、こういうふうに新聞記者に語ったというのが大きく報道されているわけです。これは事実のほどは私よくわからぬ。もしもそれが事実だとすると、八月二十五日に、ここで管財局長が、航空局の方では千歳の施設が返還になったので、実は防衛庁と運輸省の方でそれぞれこれを所管の建物として利用したいと言った点と矛盾するのでないか、こういうようにも思いますので、これはあとで私は大蔵省関係にも聞きますけれども、話によりますと、航空局の方では、すでに来年度三億五千万、五年間の計画で十七億五千万というので、千歳の飛行場についてはいわゆる第二航空団の使用にして、民間航空としては丘珠、航空局の方ではそういう方針でお進みになるのかどうか。この点八月二十五日大蔵省管財局長から施設返還に伴って実はそういう答弁があったものですから、ほんとうはその当日お聞きをしたかったのでありますけれども、あらかじめ御連絡することができませんでしたものですから、きょうは大へん長時間お待ちいただきましたけれども一つその点明らかにしていただきたいと思います。
  108. 辻章男

    ○辻説明員 お答え申し上げます。千歳の飛行場が返還になりまして、実は、防衛庁の方と私どもの方と、民間航空で使う分と防衛庁の方で使う分につきまして、さっそくいろいろ協議を始めまして、現在でも継続いたしております。実はこれはそれとは非常に関連のある問題でございますが、今お話がありましたように、千歳の飛行場は防衛庁の戦闘機と共用しておるのでございまして、特に千歳の方はシーズンになりますと相当霧もございまして、非常に万全を期して、幸い現在までは事故はございませんが、霧なんかの場合に民間機と自衛隊機との間の事故の起る可能性も、ほかの飛行場に比べますと多いものでございますので、この際丘珠の飛行場を整備できれば、そちらの方を整備いたしまして、民間機は丘珠、千歳は防衛庁一本というふうにしたいというのが私ども考えでございまして、一応大蔵省の方に予算の概算要求の手続をいたしております。しかし、これにつきましては北海道の千歳の地元の皆様方から非常な御反対を受けております。また北海道御出身の国会議員の方々相当反対意見のあることも伺っております。また、一方、北海道開発につきまして主管庁であります北海道開発庁の事情としましては、北海道開発審議会でもこの問題が取り上げられまして、なお右とも左とも結論がつかない状態であるのでございまして、北海道開発審議会の御意見がきまれば、北海道開発庁長官と運輸大臣と話し合っていただきまして、最終的な政府の態度はそこできめていただきたいというふうに考えております。従いまして、今私どもの立場といたしましては、一応概算要求の手続はとっておりまして、それがもし政府全体として認められますならば、千歳の飛行場の問題につきましては防衛庁との話し合いの必要はないのでございますが、今申し上げたような事情でなかなかそれは困難ではないかと思われますので、千歳の飛行場を共用して継続して使っていくということを前提にいたしまして、なお防衛庁の方と千歳の建物その他につきまして話し合いを続けておるのが現状でございます。
  109. 横路節雄

    横路委員 大体今その経過がよくわかりました。航空局長にお尋ねしますが、だんだん旅客機も将来ジェット機になってくるだろうと思います。その場合、外国の例を見ましても、ジェット機の爆音がはなはだしいので、できるだけ都市の中心からはずす。そうでなければ爆音によるところの一般住民の被害というものは避けられない。こういう点になりますと、丘珠というのは、局長御存じのように、将来は札幌の住宅地の中心になると私は思うのです。そこで、これから三年か四年か五年かあと、ジェット機時代になった場合の将来のそういう計画考え、その爆音というものから現在の丘珠の飛行場と千歳の飛行場とを考えた場合に、航空局としてはそういう意味での検討も私は必要ではないかと思うのです。今飛行機で羽田から千歳まで三時間かかっております。ところが、その後バスで一時間十分かかる。丘珠の飛行場に移せば二十分かそこらで札幌の中心地には行く。確かに、そういう意味では、はるかに丘珠の飛行場というものの地理的な条件のよさがある。しかし、やがて三年か四年か五年後にくるジェット機時代というものを考えると、外国の例にも見るように、どこでも全部爆音に悩まされておる。そういう観点から、一体航空局としてはどういうように考えられておるか、その点一つお尋ねしたい。
  110. 辻章男

    ○辻説明員 ただいまのお話にございました飛行機の騒音問題、特にジェットの騒音の問題は、私ども方々の飛行場の地区から苦情を聞いておりまして、頭を悩ましておる問題でございますが、特にだんだんとジェット化して参りますと、この問題が非常に深刻化するわけでございます。ただ、今先生からお話がございましたように、確かに、騒音の一般住民に与えます影響から申しますと、千歳の方が丘珠よりも影響が少いということは言えるかと思うのでございます。ただ、これは、一般論といたしまして少し今の御質問からわき道にそれるかもしれませんが、だんだんとジェットの世になりまして飛行機が高速化すればするほど、今度は都心と飛行場との時間がかかるという問題が非常に目に立って参りまして、これを何とか早くする方法がないかという要望もまた一面出て参っておるわけでございまして、この辺どういうところに調和を求めるか、一般論といたしまして非常にむずかしい問題なんでございますが、確かに、丘珠と千歳に関しまして、騒音に関する限りは、丘珠の方が多数の市民に影響を与えるということは言えるかと思います。
  111. 横路節雄

    横路委員 先ほどの局長のお話で、防衛庁と共有という形で、千歳の返還された施設についても、ぜひ所管としてこれを使用したいというお話が先ほどございましたが、そうすると、千歳の飛行場は、今のところ第一種の空港には指定されてないわけです。これは当然そうなれば空港整備法に基いて第一種の空港に指定をしておかないと、あれは米軍が使用しているからというので閣議決定でただきめられたもので、今度は返還になったわけですから、そういう意味で千歳の飛行場は空港整備法に基いて第一種の空港としてきめておかなければならぬ、こう思うのですが、その点はいかがですか。
  112. 辻章男

    ○辻説明員 実は、返還になりまして、防衛庁か運輸省かどちらが管理者として当るかという問題も今あわせて協議中なんでございます。これは、もし防衛庁が管理者になりまして民間機が宿借りするという状態になりますと、空港整備法によります空港の指定の問題はないのでございますが、運輸大臣が所管いたしまして防衛庁の方がお使いになるというふうな形になりますと、空港整備法による指定が必要でございます。ただ、その際に、私どもの方としましては、第一種空港と申しますのはいわゆる国際空港でございますので、これは地元からはそういうふうな御要望もございますが、もし運輸省の方が管理いたすにいたしましても、私どもとしましては第二種空港に考えたいという所存でございます。
  113. 横路節雄

    横路委員 実は航空局長にもっとお尋ねしたいのですが、時間も五時ちょっと前になりましたし、まだほかに二点お尋ねしたい点がございます。他の政府委員には朝から長時間お待ちいただきまして大へんどうも恐縮ですので、これで私は航空局関係の質問を終ります。  次に、これは労働省と大蔵省の両方にお尋ねしたいのですが、とりあえず労働省の失業対策部長にお尋ねします。これは大蔵政務次官もよく聞いていただきたい。ゆうべ、NHKのラジオはいよいよ福岡県におけるところの炭鉱の離職者がどんどんふえて、非常に生活が苦しい、そこで、今まで例がないのですけれども、県民みんなで相はかって黒い羽根の運動を展開するということであります。なおまた、東京におきましても、北九州出身の人々は、やがて黒い羽根の運動を展開しようとしている、こういうのが昨晩のNHKのラジオで、新聞からも前に報ぜられているわけであります。そこで、この問題について、御承知のように駐留軍が撤退をした、それに伴って一時的に失業者が出た、しかもそれは多くの技術者がおるというので、内閣のもとに駐留軍の離職者に対する特別の対策本部というものを政府は作って、そうして万全を期したわけであります。この点、今回のいわゆる石炭の不況といいますか、または炭鉱の合理化といいますか、それに伴って起きてくるところの離職者は、今私が申しましたように、いまだかつて例のない黒い羽根の運動として展開されるように、実に深刻なものなんです。政府の方では、さきに駐留軍の撤退に伴う一時的な多数の失業者に対して内閣のもとに対策本部を持ったわけですが、この点は一体どういうようになさっているのか。これは労働省の方から最初にお尋ねをして、大蔵省にも関係があると思いますから、大蔵政務次官のお答えを伺いたいと思います。
  114. 松永正男

    ○松永説明員 ただいまお尋ねの石炭離職者の対策につきましては、本年二月の閣議了解に基きまして、各種の総合的な対策をとって参っておるのでございますが、さらに、その後の情勢の推移によりまして、追加的な対策を必要とするという情勢にあるように思いますので、労働省といたしましては、現在企画庁、通産省、大蔵省、労働省等を中心とした労働対策連絡協議会におきまして、今後の離職対策につきまして現在検討中でございます。従いまして、石炭離職者の対策の機関といたしましては、各省が、このいわゆる労対連の会議に集まりまして、ここのところ連日検討をいたしておるような次第でございます。
  115. 横路節雄

    横路委員 ここに福岡県からの資料が出ているのですけれども昭和二十九年以来、石炭不況によりまして、御承知のように、石炭鉱業合理化臨時措置法が施行されまして、いわゆる炭坑の買い上げその他が行われて、今までの離職者の総数は、福岡県だけで三万二千九百人、今後の離職者の見込みは二万二千七百人、合計五万五千六百人、こういうようにいわれている。そのうち特に対策を要する者は、昭和三十四年度で約一万二千人といわれているようなわけですね。ところが、今お話しのように、労働対策連絡協議会で各省が集まって、それぞれこの対策を講じているというけれども昭和三十四年度の失業者多発地区の指定は、御承知のように、石炭関係の離職者を対象にしては、北九州地区では四千三百四十三名しか計上してないわけです。あとは宇部で四百九十五名、平地区で九百七十八名となっている。福岡県だけで今日まで三万二千九百人おり、今後の離職見込みが二万二千七百人、五万五千六百人以上です。特別に緊急の対策を講ずるものが一万二千人以上です。北九州全体で四千三百四十三人しかいわゆる失業者多発地区の指定の中に入れてないということになれば、八千人以上、おそらくこれは福岡、長崎その他を入れるともっとふえてくると思いますけれども、この点はどうなっていますか。今のお話ではやっていますと言いますが、四千三百四十三人しかやってない。この点は、これは当初にきめた数ですから、その後さらにあなたの方で増加をしてやっているのかどうか、その点をお尋ねしたい。
  116. 松永正男

    ○松永説明員 石炭離職者の対策といたしましては、先ほど申し上げましたように、本年の二月の閣議了解におきまして、まず離職者につきましては、できるだけ同系炭鉱間における配置転換、あるいは再雇用等のことをやる、しかし、さらにそれでも離職を余儀なくされる人たちに対しましては、職業訓練あるいは広域職業紹介といったような方法によりまして、できるだけ雇用の機会を見つけて、早い機会に雇用に復帰するということをやっているわけでございますが、それでもなおやはり離職されて生活に困られるという方に対しましては、先ほど先生が御指摘になりましたように、三十四年度におきましては、予算額におきまして七十九億四千万ほどの公共事業、特別失対事業、臨時就労事業等を福岡地区に対しまして集中的に実施をいたすということにしております。広域紹介等によりましてできるだけ他の地区にも就職の機会を持っていただくということをやっておりますが、現在までに静岡県に約四百名、それから奈良県に二十七名、東京に三十一名、四百六十六名の方が就職をされております。さらに、目下話が進んでおりますものが、岐阜県十名、東京に五十名、長崎県五名、岡山県三十名、これはそれぞれ事業が土建とか鉄鉱所等の採掘、電源開発、ウラン鉱の採掘といったような業種でありますが、九十五名ほどが今話が進んでおります。約五百五、六十名の方方が職業紹介によりまして職業につくことができる。さらにこの面につきましては紹介の業務を進めておりまして、できるだけこの施策を進めて参るということでやっております。しかしながら、福岡県等の数字におきましても、さらに相当数の失業者として現在滞留しておられる方々がおるということでございますので、労働省及び関係各省におきまして現地の調査等をいたしまして、さらに安定所窓口を通じての調査等をしまして、それらに基きましてどれほどの対策を要する方々がおられるかという調査、検討をただいま進めておるのでございます。本年度内にできるだけ早い機会にさらに追加措置を講ずべく検討をいたしておる次第でございます。
  117. 横路節雄

    横路委員 今のお話で、五百何十名が他の県に職を見つけるという労働省その他のお骨折は、われわれも今後も続けていただきたいと思いますが、しかし、これはおそらくあまり家族もおらない方じゃないかと私は思います。炭鉱労働者についきまして、それぞれ長い間山に住みついている者は相当な家族がいるわけで、そう簡単に他府県に出るというわけにいかない。そこで、四千三百四十三名という数字ですが、失業者多発地区を当初予算できめたときとその後の事情とは全く違うわけです。だから、一挙に四千三百四十三名というのを最低少くとも一万名にふやす、こういうような緊急の措置は労働省だけじゃできないかもしれません。ここに幸い大蔵政務次官がおられるので、特に残っていただいたわけですが、先ほど言いましたように、県民が、福岡県で、そうして東京でも県出身の者が、いろいろ黒い羽根の運動をしなければならないという深刻な事態なのですから、当初にきまった北九州の石炭労働者失業対策の四千三百四十三名というのは、最低一万なら一万という要求を先ほど労対連の中では労働省も主張されて、大蔵省にその予算要求されて予備費もあることですからね。これも一つの災害ですよ。台風によって家が流されたと同じように、いわゆる企業整備によって突然離職しなければならぬということも、私は同じ災害だと思う。当然これを予備費から出して、四千三百四十三名は最低一万なら一万の人数にして、全部仕事が与えられるようにしなければならぬと思うが、この点労働省の方では大蔵省にそういうような予算について要求なさったのかどうか。また大蔵省としてはその点どうなのか。この点まず労働省からお答えいただいて、それから大蔵省からお答えをいただきたい。
  118. 松永正男

    ○松永説明員 この点につきましては、ただいま先生の御指摘になりましたような面も含めまして、ただいま大蔵省も出席されまして、労対連において話し合いをいたしておるところでございます。やり方としましては、まずできるものから早く手を打っていこう、施策の時期を早くするということが必要でございますので、できるものから次々とやっていこうということで、今検討を進めておるわけであります。
  119. 横路節雄

    横路委員 労働省が遠慮しているので、一つ大蔵省側から答弁を願いたい。
  120. 海堀洋平

    海堀説明員 今労働省の方からお話のありましたように、現在労対連を通じまして各省寄り合って対策を検討中でございます。労働省からは、具体的には、現在こういう公共事業関係で数字を持ってきておるという事実はございません。さらに、敷衍して申し上げますと、四千三百四十一名という公共事業による吸収というものは、ほとんどもう限界にきているのではないかということは、公共事業の適格事業の問題でございます。さらに地方負担の問題がございますので、この前年度約四十五億というものを約八十億にふやして、公共事業に重点的に持っていくという措置は、実際問題として、事業の面から、それから県の負担という面からとで、ほとんど限界にきているのじゃないかと思います。従いまして、今後の問題は、公共事業に吸収するというのではなくて、失業者を救済するという面から重点を置いて考えていかなければならないということで、現在労対連で案を作りまして、各省それぞれ上司の決裁を得つつあるような状態でございまして、きょうの労働関係閣僚懇談会におきましても、その問題が具体的な対策として論議されている状態でろうと思います。従いまして、非常に近い将来に、そういった現象の発生している失業者に対する応急的な措置を追加してとることになるであろうというふうに考えられます。
  121. 横路節雄

    横路委員 今の大蔵省主計官の、公共事業については地方の負担分についても限度にきているというお話は、地方財政をこれ以上ふやせば、地方の負担分について非常にふえて地方財政を圧迫する。県の財政を圧迫することはその通りなのです。そこで、これは災害なのですから、災害であるというそういう考え方に立てば、その地方負担分については特別に起債を許して、その起債については元利償還は国が見てやる、こういう特別の措置を講じて、そうして炭鉱離職者についてのいわゆる失業者を吸収する。それから地方公共事業をふやす。地方負担分については、県の財政を圧迫しないように、その点については特別に起債を認めて、元利償還は国がやる。これが私は大蔵省として当然やるべき政策だと思う、災害なんですから。その点どうですか、政務次官。
  122. 奧村又十郎

    ○奧村説明員 御説ごもっともですが、今の地方の府県が負担にたえられぬということが果して事実であるか。これはそういうことを言ってきておるというので、そういう点は十分話し合いを遂げねばなりませんので、どうしても府県の負担にたえられぬということがはっきりすれば、それはその次の段階で政府としても考えていく、こういう態度であります。
  123. 横路節雄

    横路委員 今の大蔵政務次官お話通り、地方の負担がたえられないということであれば、政府としては当然考えなければならぬということは、ぜひ一つ政務次官——現に福岡県ではもう負担がたえられぬ。それはそうでしょう。初め政府が四千と見たのが、県の方では一万二千はどうしても緊急に対策を講じなければならぬという段階ですから、今申し上げましたように、地方負担分は特別起債、その償還は元利ともに政府が見る、この点はぜひやっていただいて、労対連の中で緊急に措置ができるようにしてもらいたい。  それから、同時に主計官にお尋ねしますが、今回の石炭鉱業の離職者の緊急就労事業というものについては、原則としては、地方に負担をさすべきでなくて、全額国庫負担でいくのが当然だと思います。それはすでに当初予定したそれぞれの事業がございましょうけれども、しかし、私は緊急措置としてはそういうことを当然措置すべきだと思うのですが、この点どうですか。
  124. 海堀洋平

    海堀説明員 前の点で少し誤解があったと思いますので、訂正させていただきたいと思うのでございますが、地方の負担が非常に大きくなるというのは、たとえば道路とか橋梁とかいう工事を行いますと、労務者一年間の経費を割ってみますと、大体一人を雇用するために三百万くらいの金がかかるのでございます。それはもちろん橋梁をかけるという目的、道路を作るという目的の事業でございますから、何も人を雇うことを主眼にしたものでございませんで、公共事業というのは本来その道路を作ること、橋梁をかけることが目的なのでございまして、そういうふうに公共事業の関係で労務者を吸収するということは、三百万ふくらましてただの一人という意味で、何千という労務者を吸収する対策といたしましては、百億にもなんなんとするような金を使いましても、なかなか目的を達せられないということでございまして、そこにはおのずから限界があるということを先に申し上げたわけでございます。従いまして、労務者一人に対して三百万という金になりますと、地方負担も相当大きくなりますので、従って、現在公共事業関係でとっております約八十億に対しましては、地方の公共事業としては適格事業もすでになくなっきておりますし、地方負担も相当辛くなってきておる、こういうことを申し上げたのです。  しかし、それだけでは労務者対策じゃございませんので、今労働省から紹介のありましたように、全国にわたりまして、相当雇用の機会がふえておりますので、そういう機会へのあっせんとか、それから、公共事業的なものの中でも、その地方で必要であって、しかも割合に雇用吸収能力の高いもの、たとえば鉱害復旧のごときは、金額に比して割合に労務者の吸収割合が高いわけでございます。従って、もし失業対策、要するに離職者対策として考えれば、そういった対策に政府は重点を置いて持っていかなければならないのじやなかろうか。さらに、失業対策というのは、ともかく短期的に一応雇用者を吸収しまして、さらにそれが全国的な機会への吸収という二段階になるとしますと、失業対策事業というものが当面やはり重点にならざるを得なくなってくると思います。失業対策事業は、種々の批判はあると思いますけれども、失業対策を重点といたしておりますので、年間大体十二万円余りで一人の雇用者を吸収できる。従いまして、地方負担も、この分につきましては、わずかな金でまだまだ相当の程度の雇用者を吸収し得る余裕があるわけでございます。そういった点につきまして、政府としては失業対策費を炭鉱関係の失業多発地域に重点的に集中していくということがとり得ると思います。  政府で全額負担したらどうかという問題は、公共事業関係につきましては、これは失業対策事業じゃございませんので、話を別にさしていただかぬといかぬのではないか。その点につきましては、別に福岡県といえども公共事業は公共事業として考えていく。それから、失対事業——これを何と名前をつけるかわかりませんが、現在失対としてやっている事業につきましては、何といいましても、たとえば現在の失対事業は、国が大体三分の二持ちまして、地方が三分の一持っておる。一人を一年間吸収する事業費というのは十二万円ぐらいでございます。従って、この負担が地方がたえられないという状況には現在ないのじゃなかろうか。ということは、公共事業費をこれだけ増額しても、それにはついてくる。しかし、多少の失対事業の国庫補助を増額しようというと、地方はついてこない。それは橋をかける方が失業対策事業をやるよりもありがたいという感覚だけの問題でございまして、現在福岡県の財政が失対事業の増額にたえられない状態にあろうとは思えない状態でございますので、福岡県の財政がほんとうにそういう状態にあるかどうかということをまず検討しない限り、失対事業の補助率を上げるということは軽々にとり得ないだろうと思います。
  125. 横路節雄

    横路委員 そうすると、今の主計官お話は、とにかく、福岡県の財政は、失対事業でこれらを吸収する場合において、三分の一の地方負担については必ずしも県の財政はたえられないものとは思わない、しかし、それがたえられないということが明白であれば、政府の方では別途考慮するという答弁のように私は聞いたわけですが、その通りなんです。県の財政は今たえられると思っておる。しかし、それが現実にたえられないということになれば、別途考慮しなければならぬというのだから、その点は、いずれ福岡県から地方財政を担当する知事その他の諸君が上ってきて、大蔵省とも地方財政の現状について十分話をされると思いますから、そのときには一つよく福岡県の県財政を検討の上、ほんとうに県が財政的な負担にたえられないものであるならば、これは特別に一つ全額国庫負担その他の道を開いていただきたい。  時間がないので次に移りますが、いずれこれは社労でもやってもらいますけれども、これはぜひ大蔵省考えてもらいたい。それは、生活保護の強化と小、中学校の要保護児童の給食費その他の問題、これは一体労働省の方では今どうなさっておりますか。この問題は起きておりませんか。もう何度も生活保護法の適用を拡大してやらなければいかぬ、実際子供の給食費も払うことができない、そういう点については別途見なければならぬという点は起きておりませんか。あなたの方には直接話はございませんか。
  126. 松永正男

    ○松永説明員 福岡県の県当局並びに議員の方々が上京されまして、炭鉱地区についてのいろいろの陳情を承わっておりますが、その中にはそういうお話を承わっております。
  127. 横路節雄

    横路委員 政務次官に私から特に要請をしておきたいと思いますのは、これはますます深刻になる。離職者がますますふえてくる。労対連というのは、前の駐留軍の撤退のときに、それに伴う離職者について政府が腰を入れて対策本部を設けたと同じくらいの積極的な熱意があるかどうか。労働対策連絡協議会という名称からすれば、果して石炭鉱業の離職者を対象にしたものかどうか。労働対策連絡協議会は全般的な労働対策なのか。この点は、前の駐留軍の撤退のときとは趣きが異なるのではないか。しかし、非常に大きな社会問題化しておりますので、短時間中における私の質問ですが、ぜひこれらの点については十分検討してもらいたい。特に、何と言っても、今主計官からも政務次官からもお話がございましたが、地方財政が圧迫されていることは明らかなのです。これはどんどん緊急事態としてふえてくるわけです。そういう意味で、県の財政も圧迫しないように、また離職者については十分生活ができるように、これはあらためて当大蔵委員会で質問したいと思いますが、きょうのところはほかにもう一件ございますので、今の関係については終りにしておきたいと思います。重ねて十分県当局と話をして、この離職者について生活が成り立つようにしていただきたいということを要望して、労働省関係は終ります。  次に、食糧庁の方にお尋ねします。けさからお待ちいただいたのですが、ほんとうはいろいろと詳しいことをお尋ねしたいと思って用意をしてきたのですが、時間も非常におそくなりましたので、きょうのところはかいつまんで質問をして、またの機会に食管特別会計に関連しましてゆっくりお尋ねをしたいと思います。  十一月一日から新米穀年度が始まるわけです。そこで、具体的な例をとってお話をしたいと思うのですが、生産者米価と消費者米価、それから生産県と呼ばれているところ、中間県と呼ばれているところ、そういうような問題についてこれからお尋ねをしたい。ほんとうは、あなたの方から出されている今後五年間の食糧需給の見通しだとか、食糧の生産だとか、そういうことをゆっくりお聞きをしたかったのですけれども、もう時間がありませんから、その点だけにしぼってお尋ねいたします。  たとえば、北海道は三十二年が三万二千トン、三十三年は九万五千トン、本年は約十一万トン、道外に輸出するわけです。だからそういう意味では生産県であるわけです。ところが、生産県ということになると、消費者米価は十キロ当り八百三十円というものが正しいのですが、生産県であるのに消費県と呼ばれ、中間県の十キロ当り八百五十円という値を建てている。十キロ当り八百七十円、八百五十円、八百三十円、八百十円というふうに消費者米価を建てた原因は一体何ですか。その建て方ですが、これを一番最初にお聞きいたしましょう
  128. 亀長友義

    亀長説明員 現在、消費者価格につきましては、甲、乙、丙、丁の四つの地区に分類をして、二十円の開きで八百七十円から順次下って四段階になりますが、これは昭和三十二年の十月に消費者価格を改訂いたしました。それまでは普通の配給価格と希望配給価格とが食い違っておりまして、希望価格はかなり高くした。それを一本化いたしますときに、四段階にきめたのでございます。その四段階は、大きく生産県と消費県に分けまして、その生産県の中でも比較的大生産県、簡単に言えば、従来の希望配給米をどのくらいとっているかというふうな率を、五〇%以下と、それ以上とのものに分けまして、いわば一番大生産県と、それに準ずる生産県というふうに分けました。それから、消費県では、需給度がどの程度あるか、六〇%以下と六〇%以上のもの、さらに配給をどのくらい、希望配給をどのくらいとっているか、八〇%以上と八〇%以下のもの、要するに消費県の中で需給率あるいは需給率の高低、あるいは配給をたくさんとるほど窮屈であるかというふうな需給の関係を考慮しまして、消費県をさらに二つに分けまして、全部で四つの段階を設けて、現在の甲、乙、丙、丁という区分を設けたわけでございます。これは三十二年十月当時の価格に現在の価格が設定されているわけでございます。
  129. 横路節雄

    横路委員 そうすると、三十二年十月当時の状態できめたわけですね。だから、確かに、今あなたから御説明のように、甲、乙、丙、丁の四段階に分れておることは私もよく承知しております。しかしその建てたときは三十二年十月なんです。だから、確かに、三十二年産米については、たとえば北海道は道外輸出は三万二千トン、去年は九万トン、ことしは十一万トン、だから明らかにもう事情が違って生産県である。三十二年のときはなるほど三万二千トン、だから作況は必ずしもこのまま続くかどうかわからぬという見通しもあったでしょうから、なるほどその中に入れて、そうして乙地区いわゆる中間県としての指定をしたわけです。だから、今日は事情が違うのですから、三十二年十月はそれで建てたけれども、三十四年の十一月、今度建てるときは、私はこのままでいくことは不当だと思うのです。長々とこれから一つやろうと思って用意をしてきたのだけれども、もう時間が五時半になっていますから、あらためてしますが、この点は三十二年十月と事情が違ったのだから、その後どんどん毎年度作況が好転して、現にもう中間県ではない。だから三十四年十一月からは、当然これは少くともいわゆる生産県としての丙地の指定をしなければならない。この際、あなたの方で、そうしますとお答えになれば、私はここでやめるのです。その点どうですか。
  130. 家治清一

    ○家治説明員 仰せの通り、三十二年当時と比べると、現在の状況は変っておるのでございます。もっとも、これは北海道のほかにもやはり当時の状況とは違っているということで、地域の変更の要望のあるところもございましたが、実は、先生御承知のように、一年一年さらに公定価格というものを違えるということも、行政の実際問題としても慎重を要することでもございますし、また作況も幸いにして大体順調で、仰せのように生産量が多い。それで移出できるという状況ではございますけれども、しかし、必ずしも、もう生産県になったというようにはまだ言い切れない点もあるかと思います。それで、先ほど企画課長から御説明申し上げましたように、生産の状況、それからその道内の受配の状況、そういったものをよく勘案をして慎重にきめなければならぬと思うのでございまして、来米穀年度につきましては、実際の収穫なりあるいはまた受配の状況なり、そういったものを勘案して、よく検討をしたいと考えます。この基本的なものといたしましては、実は、全体としましては、広く食糧管理特別会計の損益にもつながるものでございますので、いろいろな検討の際には相当慎重な態度で臨みたいと考えておるのでございます。
  131. 横路節雄

    横路委員 今部長お話の中に、必ずしも生産県でないというのはおかしいと思うのです。必ずしも生産県でないというのは、三十二年のときは十万トンだった、去年は五万トンだった、今度は三万トンだ、だからそういうように作況が不順だから必ずしも生産県でないというのはわかるけれども、三万二千トンから九万トンだ、ことしは十万トンだ、ひょっとしたら十五万トン道外へ出すかもしれない。そういう状態において、必ずしも生産県でないということはまことに私はおかしいと思う。しかし、最後に新米穀年度に当って検討するというのなら、私も、その検討の余地を、あなたの方へ検討する時間をここでお与えいたしますが、検討はいつまでになるのか。どうせまた大蔵委員会がありますから、そのときは、食管特別会計だけで、ゆっくり卸のマージンから小売のマージンからたんねんにお聞きしたいと思う。そうすると、これは検討するのですね。検討すれば、今日は検討するということで終えておきたい。ちょっと答弁して下さい。
  132. 家治清一

    ○家治説明員 仰せのように検討いたしたいと思います。もっとも、先ほども申し上げましたように、全体として食管の損益との関連、財政負担との関連を考えまして、いろいろ現在出ておる問題とあわせまして検討いたしたいと思います。
  133. 横路節雄

    横路委員 それでは私これで終りたいと思いますが、この次の大蔵委員会には、私は食管の特別会計だけの問題で十分お聞きをしたいと思います。十一月一日の新米穀年度に間に合うように——生産県であるものが依然として消費県としての消費者米価に押えられておる、三十二年十月のままに押えられておるという点は、これは何としても筋が通らないことですから、今検討するということでありますが、ぜひ十分に検討していただいて、次の大蔵委員会でこの問題を明らかにしていただきたい、こう思います。
  134. 植木庚子郎

    ○植木委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる十月十三日午前十時十五分より開会することとし、これにて散会いたします。     午後五時三十四分散会