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1959-08-10 第32回国会 衆議院 社会労働委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年八月十日(月曜日)     午前十一時三十九分開議  出席委員    委員長代理 理事 田中 正巳君    理事 大石 武一君 理事 八田 貞義君    理事 藤本 捨助君 理事 小林  進君    理事 滝井 義高君       池田 清志君    大橋 武夫君       亀山 孝一君    河野 孝子君       齋藤 邦吉君    志賀健次郎君       田邉 國男君    中山 マサ君       古川 丈吉君    柳谷清三郎君       赤松  勇君    大原  亨君       岡本 隆一君    多賀谷真稔君       堤 ツルヨ君    中村 英男君       八木 一男君    吉川 兼光君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 渡邊 良夫君  委員外出席者         厚生事務官         (大臣官房長) 森本  潔君         厚生事務官         (大臣官房審議         官)      牛丸 義留君         厚生事務官         (社会局長)  高田 正巳君         厚生事務官         (保険局長)  太宰 博邦君         厚生事務官         (保険局健康保         険課長)    加藤信太郎君         労働事務官         (労政局長)  亀井  光君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      堀  秀夫君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 七月九日  委員賀谷真稔辞任につき、その補欠として  大矢省三君が議長指名委員に選任された。 同日  委員大矢省三辞任につき、その補欠として多  賀谷真稔君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  厚生関係基本施策に関する件  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますので、これを許します。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 七月の委員会で、中小企業争議に非常に警察権介入することがひんぱんになった点について質問をいたしました。そうしてその典型的なものとしてメトロ交通争議に触れたのですが、その後この委員会メトロ交通暴力事件を計画、実行、指揮した会社については大した調べが当時行われていなかったという点を指摘したのです。労政局長も、あの争議労働争議以前の情勢があるということをここで御答弁になったわけです。一体あの争議はその後どういう状態に経過しつつあるのか、これを一つ簡単に御説明願いたいと思います。
  4. 亀井光

    亀井説明員 先般の当委員会において御説明しました後、労働者側関東同盟交渉を委任し、経営者側都自協交渉を委任しまして、その後数度会合が持たれたようでございますが、具体的な進展はまだ見ていないというふうに報告を受けておるわけであります。都労委の方といたしましても、この問題に対して引き続き注目はいたしておりますが、中に入りましてあっせんの段階に入るというまでにはまだ機が熟していないというふうに考えておられるわけであります。
  5. 滝井義高

    滝井委員 同時に私は当時松野労働大臣に対しても、警察介入の仕方がきわめて片手落ちである。たとえば数組その他が講習会その他をちょっと阻止でもすると一網打尽にひっくくっていく、あるいは全然そういうものに干渉しない組合幹部に対しては教唆扇動の名をもってひっくくる、こういうことが行われておる。こういうふうに警察権力行使がきわめて不公平に行われる情勢がある。今度のこのメトロ交通にしても、教唆扇動をしておる会社幹部というものはいまだどこにおるか姿がわからない、係長その他三十名ばかりを連れて逃げ回っておる、こういう情勢があるわけです。こういう点は一体労政当局はどういう工合にお考えになっておるのか、労働組合との間に、それぞれ上部団体に委任をして交渉が進められておるというような御答弁があったのですが、もう二カ月以上過ぎておるのに、警察というものは暴力事件の計画的な実行を指揮した者については、どうも何ら処置が行われていない、こういうことがわかっておるのですが、あなたの方は、こういう問題はどうお考えになるのですか。中立の公平な立場労働行政を指導される労政当局としては、そういう行き過ぎがあれば、当然警察当局に対して閣議を通じて国家公安委員長なり、警察庁長官警告を発しなければならぬと思うのです。何かそういう警告を発したのでしょうか。私はこの前、そういう警告を発することを要請もしておったのですが、そういう点は一体どうなっておりますか。
  6. 亀井光

    亀井説明員 労働問題に対しまする警察権介入と申しまするのは、常々私どもが申し上げておりますように、できるだけ配慮をして、労使双方の自主的な解決というものを私どもは期待いたしております。ただその労使紛争の中で起りまする刑法違反のいろいろな事実行為がありました場合に、警察官が出ましてこれを取り締りますことは、法治国のもとにおきましては当然な措置であるわけであります。御指摘の点につきまして、警察がどういう態度でおりまするか、これは私たちといたしましても、実は十分知らないのでございます。また現場におきまして、当時警察がどういう態度で、どういう方針で出ましたかというようなことにつきましても、十分承知をいたしていないのでありまして、われわれは警察に対しましては、そういう場合における警察の出るべきいろいろな措置、すなわち刑法上の違反の事実がありました場合には、治安当局としてこれを阻止していくという立場につきましては、かねがね連絡いたしております。ただ行き過ぎ、その他の問題につきましては、それは現場のことでございまして、われわれとしましては、そういう行き過ぎのないようにということにつきましては、警察当局には注意を促してはおりまするが、これは抽象的なことでありまして、具体的に個々の事案につきましてわれわれが注意を促すというふうなことは、警察建前もございまするし、われわれとしましては、このメトロタクシー自体の問題につきまして、警察にそういう処置をとったということはないわけでございます。
  7. 滝井義高

    滝井委員 中小企業争議一般に対して、最近警察が非常な力で介入をしておるということは、すでに「月刊労働問題」その他の雑誌等にも書かれておることは、亀井さんもお読みになっておると思うのです。それはもちろん、使用者側には使用者側立場もあり、主張もあると思うのです。ありますが、少くとも国会で、中小企業争議の典型的なものとしてメトロ交通の問題が取り上げられ、しかも国会議員の中から、警察権行使というものに非常に不公平な、手落ちな状態があるのだということを至るところで指摘をされ、現在法務委員会なり地方行政委員会なり、あるいは社会労働委員会で、そういう指摘がなされておるわけです。しかも衆参両院でなされておるというときに、労政当局が、それは抽象的なことではやるが、個々の問題についてはということは解せないと思うのです。一般的なことは、具体的な問題からだんだん一般的なものが出てくるのであって、すでに一般的にそういう状態が出てきておるということは、多くジャーナリズムにおいても論議されておるところなんです。従って、もしあなたの方でお調べになっていないとすれば、速急にメトロのこの警察権介入状態というものがいかなる状態で行われたかということを、一つ具体的にお調べになって、そして私は九月まで待ちますから、九月のおそらく十日ごろまた委員会が開かれると思いますが、それまでに具体的にあなたの方の見解を表明してもらいたいと思うのです。公平に警察権行使されておるのかどうかという点です。これは具体的な問題をあなたがお調べになっていないということですから、特にわれわれとしてはこの委員会質問の形を通じて、あなたにお願いしておきたいと思うのです。  次には、この前メトロ交通におきましては、いわゆる自動車争議の新らしい形態として、ナンバープレートを取りはずしておるということなんです。あれは法規によって、何人といえども取りはずしてはいかぬことになっていたはずなんです。ところがそれを取りはずしてそのままになっておるわけなんです。そうして現在団体交渉も、七月七日ごろに一応行われたらしいのですが、その後、二回目の団交以降は行われていないようです。というのは、すでに国会でこの問題が取り上げられて、どうもメトロ交通会社経営者側というものについて、国会答弁、特に政府側答弁が必ずしも有利でない。それは、この前あなたも、あの争議というものはどうも労働争議以前の問題だというような御発言もあったし、それからロックアウトというものも、あれはロックアウトといえるかどうか疑問だというような発言もありまして、会社側団体交渉なんかやっておったら、国会のあの速記録でやられては大へんだという機運があったかどうか知りませんが、やってないのです。そうして現在姿を消して二カ月以上過ぎておる、実際に話し合いが軌道に乗らぬという、こういう情勢があるわけです。  そこで、自動車にはナンバープレートがない、再交付会社代理申請した場合でも、交付するかどうかわからぬ、こういう情勢で、陸運局には、会社側、いわゆる日経連といいますか都自協といいますか、そういうものから圧力がかかってくる、こういう形でなかなかうまくいっていない。しかし、これはすでに争議以前の状態だということになりますので、この場合の賃金はどうなるかということなんです。この前あなたはこの問題については明白な結論は言われなかった。個々の問題については労政当局としては言えませんというのが今までのあなたのおはこだったわけです。得意の答弁だったのですが、しかしこういうようにナンバープレート法律を犯してはずし、暴力団を入れ、会社側が逃げ回って姿を現わさぬ、こういうことになると、これは近代労働法あり方とは全く違った状態が出てきておるわけです。     〔田中(正)委員長代理退席藤本委員長代理着席〕 こういうものに対して政府は、自分中立だからといって手をこまねいて、ケース・バイ・ケースで、あまり立ち入るわけには参りませんなんということではいかぬと思うのです。こういう場合については、やはり労政当局見解というものを明白に打ち出す必要があると思う。たとえば倉石さんは大臣をやめたらとたんに、ILOの問題について大胆率直な、労働大臣を差しおいた見解を発表されたわけですね。あのくらいの勇気を持って、今度は労政当局が、メトロ交通についてはこういう見解だということをやるべきだと思うのです。それが少くとも労働問題を軌道に乗せる労政当局あり方だと思うのです。何も遠慮する必要はないので、日教組なり労働組合が何かやるということになると、政府見解を発表するのは得意だけれども資本家側がやったことについては、ちょうどタニシやカタツムリがからの中に閉じこもるように閉じこもってしまう、こういうやり方はいかぬと思うのです。この際やっぱり積極的に政府一つ見解をお出しになる方がいいと思う。賃金も支払わずにこういう状態でほっぽり出すのなら、これらの諸君はみな生活保護にいかなければならぬことになってしまう。あなたは一体これをどうお考えになっておるのか、御答弁願いたいと思います。
  8. 亀井光

    亀井説明員 労使関係紛争メトロのように非常に長期にわたりまして、なかなか解決がむずかしいという問題につきましては、いろいろその影響するところが大きいのでございます。もちろん労働者側にもございましょう、使用者側にもございましょう。そこでわれわれとしましては、こういう中小企業争議というものが純合理的に解決され、純経済的に解決されることを念願いたしまして、そういう面の労働教育もかねがねやってきておるわけでございますが、このメトロのように、そういう問題を離れて感情的な問題が入りますと、なかなか問題の処理がむずかしくなってくるという性質のものでございまして、われわれといたしましてもできるだけ早くその問題が解決されることを念願をし、またそういう方向いろいろ手は打っております。たとえば都労委に対しましても、問題が熟しまして双方そういう解決への気持がわいたときでなければ、なかなか仲に入って解決しにくいという事情もございます。しからば労政当局が直接出て紛争解決に何らかの影響を与えてはどうかという御意見のようでありますが、われわれが具体的に個々の問題についていろいろな見解を述べ、あるいはその解決への公式な手を打ちますることは、現在の法の建前から申しまして、またわれわれの労働行政あり方からいたしまして必ずしも適当でない面がございます。われわれとしましては、むしろうしろにおりまして、労使双方がそういう方向になって参りますることを助長し、あるいは法規上のそういう調整機関であります労働委員会というものがそういう場に出やすくするというふうな措置をわれわれは行政の上でとって参ってきておるわけであります。従ってこのメトロの現在の紛争について労政局として公式に見解を表明し、あるいは公式にその仲に入って解決をするということは、かえって問題の解決をむずかしくするのではないだろうかという気がいたしております。
  9. 滝井義高

    滝井委員 私は労政当局がそれに介入せよということを言っておるのじゃないのです。公式の見解一つ発表してみたらどうだというのです。ILOや何かについてはあれほど大胆率直に、このごろ大臣をやめた人が発表される世の中なんですから、いわんや客観的に公平な労政当局として、第三者の立場から争議をごらんになっておるあなたとしては、ナンバープレートをはずして、そうして今度は自動車のタイヤに穴をあけて空気を抜いて、暴力団を使って組合員を殴打した、そしてその幹部は逃げ回っておる、こういうものについては一体どうなんだという見解を発表されてちっとも差しつかえないと思うのです。一体これは賃金を払うべきですか、払わざるべきですか、払わなくともいいのですか。こういう場合にはどうですか。この休んでおる間の賃金というのはどうすべきですか。
  10. 亀井光

    亀井説明員 争議中の賃金は、御承知通り労働の提供がないわけでございますから、賃金は支払うべきでないという見解をわれわれは従来とっております。
  11. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、争議中といいましても、ナンバープレート、いわゆるかせがなければならぬ一番大事なものを剥奪されてしまった、それならば組合が再交付申請をしたらどうなりますか。あなたは再交付を許すという見解ですか。ナンバープレートはだれが剥奪して、だれが持っていったかわからない。あるいはどろぼうかもしれない。やった張本人はいない。だれかわからない。従ってこれはおそらくどろぼうか何かがやったのだろうと組合が認定をして再申請をした場合にどうですか。あなたの見解では、当然ナンバープレート交付すべきだと思いますか、すべきでないと思いますか、これはどうです。
  12. 亀井光

    亀井説明員 ナンバープレート交付をすべきかすべきでないか、これは運輸省当局の判断によるのでありますが、かりにナンバープレートが再交付になりましても、営業用に使いまする自動車そのものは、御承知通り、言うまでもなく会社側所有に属するわけでございます。その所有に属しまする自動車組合員が勝手にあるいは不法に使用しますることは、これは必ずしも適当ではないのではないか、かように思うのであります。そこでロックアウトの問題でありますが、この前御質問もございまして、私も御答弁申し上げましたが、一応会社側はコック・アウト宣言をいたしております。そのロックアウト宣言効力の問題につきましてはいろいろ疑義がございましょう。しかし一応宣言をして周知がなされまするならば、ロックアウト効力というものは一応成立するという見解を従来われわれはとっております。問題が具体的の問題になりますれば、あるいはその有効無効が裁判所で争われることになろうかと思いますが、一応組合員個々周知の手段がとられましたならば、口頭によろうが、あるいはそのほかの物的なそれによる指示というものがありましょうが、ロックアウトとしては有効であるということから考えますと、その自動車ナンバープレートの再交付を受けましても、会社側意思に反して組合員がこれを自由に使用するということは許されないことだというふうに思います。
  13. 滝井義高

    滝井委員 不法に使用するしないのことはお聞きしておるわけじゃないのです。ナンバープレートをだれがはがしたかわからない、暴力団らしき者が来てはがした、それが会社の意図を受けておったかどうかもわからない、そういう場合に、ナンバープレートの再交付申請して、それを、あなたの見解では、一体許すべきだとお考えになるかどうかということを尋ねている。それから先不法に使用するかどうかということは私はお尋ねしておるわけではないので、先の答弁よりか前の答弁をお願いしておるわけです。
  14. 亀井光

    亀井説明員 先ほど申し上げましたように、これは運輸省方針によるわけでありまして、私から答弁することはお許しをいただきたい。
  15. 滝井義高

    滝井委員 運輸省方針によると言いますけれども、これは労働争議なんです。当然あなたの方と運輸省と、これに対する方針はどうするかということは打ち合せておらなければならぬことなんでしょう。打ち合せておらなければならぬ。この前から質問もしている。国会の至るところの関係委員会で、これは質問されているわけなんです。だからこういうものに対して当然労政当局一つの見識と見解を持っておらなければならぬはずなんです。それをお尋ねしておるわけです。それはお答えできないはずはないと思うのです。向うと連絡もあるし協議もされておるはずです。政府としてはこれは一体どういう見解ですか。
  16. 亀井光

    亀井説明員 今申し上げましたように、このナンバープレートをはずしましたこと自体道路運送車両法違反をいたすわけでございまして、それはそれとして、あらためて再交付申請がありました場合にどうするかという問題は、これは運輸省当局がきめるわけでございます。それが会社側意思によって申請がなされ、運輸省当局がその申請に基いて許可をするということになれば、それはそれで問題は片づくのであります。その場合に、どういう形でその申請がなされるか、そこら辺にいろいろ問題があろうかと思います。そういう場合にどういう処置をとったかということは、私から答弁いたしますることは差し控えさせていただきたいと思います。
  17. 滝井義高

    滝井委員 どうも役人というものは自分のからに閉じこもって、それじゃ結局役に立たぬです。人間の行う争議というものは総合的なものなんです。あなたが労政局長としてものを判断し、その正当、不正当を見るときは、総合的に見なければいかぬ。労政だけの局面を見ていたのでは大局を誤まる。だからこそああいう倉石さんみたいな勝手な、労働大臣がおるのにその上にまた労働大臣のおるような声明が出てくるのです。あなた方の補佐が悪いからだ。もう少し大臣になった人をきちっと補佐しておいて下さい。  そうしますと、道路運送車両法違反であるということははっきりしたのですが、それに対して、違反であるということで何か会社を取り調べましたか。
  18. 亀井光

    亀井説明員 警察当局会社幹部を招致いたしまして事情を聴取したという報告は受けております。
  19. 滝井義高

    滝井委員 事情を聴取しただけで、あと何かあったのですか。明らかに違反ということを今断定があったわけですが、問題はこういうところにあるのです。われわれ個人が違反をすると、警察はすぐひっくくっちゃうのです。いわゆる講習会を阻止する、その阻止する現場にいない、二十人も三十人も先におる組合幹部を、教唆扇動したといって引っぱる警察じゃないですか。明らかに道路運送車両法違反をしておるということがはっきりわかるにもかかわらず、幹部から事情を聴取しただけでそのままニカ月以上も放置している。こういうことが一体法治国で許されるのかどうかということなんです。これは明らかに政府行政というものが片手落ちであるということを示すのです。こういうものをもう少しびしびしやらなければいかぬです。労働組合にあれだけびしびしやる政府なんですから。こういうことはあなたの方から大臣を補佐して、それぞれ国家公安委員長なり警察庁長官あるいは原宿の署長なりにきちっと言わなければならぬところなんです。こういうところに言わずに、私は労政当局でございますからそういうものには関知いたしません。——何のためにナンバープレートが剥奪されたか、ただ争議を打ち砕くためにやられておる。目的は争議を粉砕するためなんじゃないか。だとすれば、これは大きな争議の一環なんだ。あなたが、それは私の所管でございませんといってあなたがほおかぶりをするならば、労政局というものは針の穴から天をのぞくようなもので、日本の労働行政のいい指導の方向には役立たぬということになるのです。あなたは倉石さんのようにもう少し大胆率直であっていいと思うのです。そのことがどうもない。それだから大臣がああいう間違ったことをやる、むしろあなた方の方が大胆率直であっていいのです。  そうしますと、賃金は支払わなくてもよろしいとおっしゃいましたが、実は同じく横浜営業所に第二組合というのがあるのです、そこでは会社側との協定に従わずに勝手に稼働を拒否しておる。ところがこれは仕事はせぬでも賃金が払われておる。そういうことはあなたはおわかりになっていますか。
  20. 亀井光

    亀井説明員 その話は今初めてお聞きしましたのでありますが、われわれまだ事情を聴取いたしておりません。
  21. 滝井義高

    滝井委員 争議中のものについては払わなくてもいいとおっしゃいましたが、これは御存じの通り争議といってもロックアウトであるかどうかということもはっきりしないものなんです。あなたはきょうはこの前と幾分か違った見解で、会社宣言をしたのだからこれはロックアウトだと、だいぶ割り切られたようでございます。しかし、これがロック・アウダだということについて問題があることについては、あなたのこの前の答弁によっても明白でございます。私は時間の関係もありますからこれ以上申しませんが、会社の暴力的な行為があることは組合によって明らかに証明をされておるけれども、そういうことについては警察は積極的な取調べをやっていない。こういう傾向がはっきり出ておる。こういう点について、もう少しあなたの方でその実情を調べて次回の委員会にやっていただきたい。それからメトロ交通のあのロックアウトよりもロック・インという姿が、いわゆる正当の争議行為におけるロックアウトになるかならぬかという労働当局の公式な見解を、一つ具体的な事例を調べて、法律に照らして願いたい。従ってそこから当然、賃金を支払うべきか、それから支払わなくてもよろしいかという見解も同時に出てくると思います。こういう三点について、一つ労政当局の公平な正しい立場見解を表明していただきたいと思います。これだけをお願いしておきます。  次に、堀さんに少し専門的なことをお尋ねしたいのですが、この前私は、労働福祉事業団の労災病院の問題について質問をいたしたのです。当時懸案になっておった労災関係診療報酬その他の問題ですが、これをあなたが根本的に検討をいたしましょうということだったのです。それがどういう工合検討をされておるかということですね。全国の労災診療報酬というのはまちまちである。各県各個にばらばらに診療報酬が決定をされておるが、それではどうも今の段階ではいかぬ。少くとも診療報酬というものは、全国的に一つの科学的な、合理的な、学術的な基礎にのっとったものを作って、それを基礎にしてやはり各地がきめるべきだ、私はこういう主張をしたのです。あなたもそれについては一つ検討いたしましょう、こういう御答弁であったのですが、その後どういうようにそれが検討をされ、結論づけられつつあるのか、これを御説明願いたいと思う。
  22. 堀秀夫

    ○堀説明員 労災保険の診療料金につきましては、御承知のように本法施行当初から、いわゆる慣行料金主義をとりまして、各地区ごとに関係者と協議いたしまして、適当と認められる診療費を定めることになっておるわけでございます。しかしながら、最近診療費の問題につきましては、地方によって関係者にいろいろの御意見もあるようでございます。この点につきましては、私どもの方といたしまして、まず現在のところといたしましては各地区における関係者、要するに医師会あるいは歯科医師会等の関係者と地方の基準局長と話し合いまして、話し合いのついたところで妥当な診療報酬を定めていく。しかし、従来話し合いのつかないところにつきましては、とりあえず従来通りでいくということで進んでおりますが、いろいろな問題もあると思いますので、この点につきましては、一般社会保険との関連も考慮いたしながら、診療内容の適正化と並行いたしまして、診療費の地域的な不合理、不均衡につきましては、全部これを是正する方向で善処していきたいと考えておるわけでございます。そのために診療費の問題、それから労災の診療の適正化の問題いろいろございますので、これにつきましては労災審議会あるいは関係の医師を中心とする関係者にお集まり願って、その協議会等におきましていろいろ問題点をお話し申し上げまして、それらの御意見を伺いつつある実情でございます。
  23. 滝井義高

    滝井委員 その慣行料金主義と申しますことは、いかにも科学的なようでありましても、これはなかなか力関係で動いてくるわけです。力のないところは十円になったり十一円になったりするでしょう。どうかすると十七円になったりする。これは局長さん御承知通りです。従って、少くとも公傷の患者を早く職場に復帰させることが目的なんですから、そのためには少くとも最高の医療というものがそこで行われなければならぬと思うのです。従って、最高の医療をやろうというからには、その基準というものを一応あなたの方がお示しになることが必要だと思います。そうなるとその基準というものをどうしてきめるかということになると、これはしろうとのあなた方がきめるわけにはいかぬから、当然学術的な専門家に寄っていただいておきめになると思うのです。それを私はこの前、そうやることが必要だということを言っておるわけなんです。今厚生省は御存じの通り、中央社会会保険医療協議会の問題をはらんで何もやりきれないのです。これは厚生省の役人の無能が原因かもしれませんが、やりきれない。そこで一つあなたの方で腕前を示されたらいい。天下に一つ模範的な形における診療報酬を示してやろう、それくらいの意欲をお持ちになることか私は必要だと思う。昔ながらの慣行料金は、ちょっと聞いたところではいいようでありますけれども、あにはからんやその内容を見ると、実に三府四十三県、三府四十三様の姿が出ている。これはばかげたことなんです。だから一定の基準が出たら、その上に地域の特殊性を加えていくという姿が私は合理的だと思うのです。どうですか、そういう委員会をお作りになって、積極的におやりになる意思がありますか。
  24. 堀秀夫

    ○堀説明員 ただいま労働省に、労使中立三者構成の労災審議会というものがあります。これには三者代表のほかに、さらに公益側としてはいわゆる医師関係の権威者が入っておられるわけでございます。この診療費の問題、それから労災保険の特殊性にかんがみまして、いろいろ労災保険特有の診療内容があるわけでございます。この診療内容の適正化の問題、このようなことは、ただいま先生御指摘のように、権威者の専門的見解を待って善処すべき問題であると考えます。この点につきましては、現在労災保険審議会会の話し合いによりまして、関係のお医者さん方を中心にいたしました研究会のようなものを作っていただいております。これで非常に御熱心にこの三、四カ月以来御検討になっているわけであります。こういうようないろいろな問題とあわせまして、今後労災保険の診療を適正ならしめるためにどのような方法が妥当であるかという点について、十分関係者の意見を聞いた上で善処していきたいと思います。
  25. 滝井義高

    滝井委員 関係者の意見を聞いて善処するということですが、労災保険審議会というのは今御説明のように三者構成、その下に今のことをやる専門部会でもあるのですか。
  26. 堀秀夫

    ○堀説明員 労災保険療養の適正化の問題につきまして、これは事実上の問題といたしまして労災保険審議会にお入りになっておるお医者さんの関係委員の方を中心として、それにさらに関係の医師の方にお集まり願った事実上の懇談研究会のようなものを設けまして、労災保険内容の適正化の問題についていろいろ御意見を伺いつつある状況でございます。
  27. 滝井義高

    滝井委員 それではちょっと非公式みたいなものになる。そうでなくて労働省で閣議了解なんかを取りつけて、そしてやはり権威あるものにしてやる必要があると思うのです。それはけい肺なり外傷性脊髄障害なり、その他塵肺等の問題が起って参りますと、どうしても権威ある機関がきちっとしたものを出さないといろいろ問題があるのです。外傷性脊髄障害でも、ある医者は特別法だけで臨時法の適用はよろしい、ある医者はそうじゃない、これはやるべきだ、いろいろあるわけなのです。それははっきりした基準がないからです。基準はなるほどおよそのところはあるでしょう。しかし天下周知の基準がないところに問題があるわけです。従って私は特にそういうものを、少し権威あるものを労働省がお作りになって、そしてほんとうの専門家できちっとしたものを作る、できたならばそれを労災保険審議会の労使あるいは公益の代表の賛成を求めていく、こういう形をやはりとらなければいかぬと思うのです。労使双方そういう専門家じゃないのですから、わかりかねるところがあるわけです。そういう形はできましょうか。
  28. 堀秀夫

    ○堀説明員 この問題につきましては先生お話のような方法もございますが、われわれといたしましては、やはり労災保険審議会の公益委員の医師関係の方が中心になりまして、それに各界のお医者さんで権威のある方がお集まりになりまして、御検討を始められたところでございまするので、またこれと別な機関を作るというようなこともどうかと考えます。そこでまず事実上の取扱いでございますが、この懇談会がせっかく発足いたしまして、非常に御熱心に御検討をいただいておるところでございますので、この御検討の結果を伺いながら、ただいま先生のおっしゃいましたような方法も、あるいはその結果によって必要になるかもしれません。それらの問題をにらみ合せまして、何とかこの問題について合理的な改善をはかっていくという方向へ努力いたしたいと考えます。
  29. 滝井義高

    滝井委員 問題は、形は、私はりっぱなものができればそれでいいと思うのです。そこで公益中心の人が中心になって各界の者を集める、その集め方ですね、これは一体どういう工合にお集めになっておるのですか。各界の権威者をお集めになったというのは、公益中心の医者がどういうところから集まってきたのですか。
  30. 堀秀夫

    ○堀説明員 この点につきましては、ただいま労災審議会の公益委員のほかに、たとえば外科学会の方とか、その他いろいろな学会の方がございます。こういうような関係の専門の方にお集まりを願っております。
  31. 滝井義高

    滝井委員 そういう公益中心の医療専門家が中心になって、その人たちのほかに外科学会や整形外科学会ですか、そういうところから推薦をしてもらっておるのならば、私はそれでけっこうだと思うのです。ぜひそういう方向でやってもらいたいと思います。  それから千円未満の問題ですね。千円未満の労災費は事業主負担になっておるわけです。ところが御存じの通り、最近特に炭鉱地帯は炭界不況のために、中小の事業主はそういうものを払えない状態が出てきた。石炭鉱業合理化の納付金さえも払えない者がたくさん出てきつつあるわけです。従ってこの問題はこの前も私はいろいろと欠陥のある現状を、質問を要約してしたのです。これは一体どうされるつもりなのかということなのです。やはり労災ならば千円以下を事業主に持たせるということでなくて、どうせ保険料はメリット制をとっておるのですから、そういうものを一括して労災で払う、そのかわり千円以下のものは私がこの前言ったように別個に事業主から取り立てるなら取り立てる、何かそういう形にしないと、医療機関にそれが全部負担になっていく、しわ寄せになる、こういう形が出る。そうなると、結局公傷の患者も取扱いが悪くなる。一切のしわは終極は患者にいく、こういう形になるわけですから、この点の検討はどうしてくれておるか。  それから指定医療機関の、機関の指定の問題です。これも申し出たものは全部指定したらよろしいということを私はこの前主張したのです。何も選択をして、君は労災の指定にする、君はしないという必要はない。医師の免許を持っている者は、希望する者は全部指定したらよろしい、その方が患者が便利なのだ。それがどうして同じ医師免許を持っておる者を分けるのか、なるほど設備その他で分けます。設備その他が必要かもしれないが、いなかに行くと設備のないところもあるわけなんですから、そうすると労災の患者は近い医者にかけ込んで応急の処置をしてもらって、それから今度は専門のところに行くわけなんです。最近厚生省は家庭医と専門医なんということを言い始めました。そうすると専門医だけが労災の指定になって、家庭医はだめだ、こういうばかなことはないわけだ、一応家庭医に見てもらって専門医に行く、こういう形になるわけです。そうすると、一応見てもらうからにはやはり労災手続というものをそこでしなければならぬ、ところがそれはめんどくさい書類の手続が今度は必要になる、あるいは現金でもらってしまってあとからやるんだというような、いろいろめんどうくさいことが起ってくるわけです。だから私は一応希望者だけを指定しておけば差しつかえないと思う。いやならば希望しないのですから。なりたいと思う人は、いかにあなた方が設備その他を制限しても、設備を整えてもなろうとする運動をするわけです。そういうところからいろいろと変に収賄するとか贈賄という問題が起りかねないのです。だから私はこの指定は、何科であっても希望をする者はやらしたらいいと思う。希望する者をやらしても、そうわんさわんさと労災の指定医になる人はないと思うのです。ちょうど結核の指定と同じです。結核の指定をやっても、だれもかれもやりはしなかった。やはりみな希望をして、適当になっていっているのです。生活保護だって同じです。生活保護をみな希望してやはりなっていっているわけです。だから何か特権的な立場労働省もとるし、医者にもとらせるということは、医療の秩序を乱すもとになるわけです。だから私は希望する者は指定医にならせる、こういう形をとっておけばいいじゃないか。それから先は、設備を講じて下さい、どうしても指定医のために必要な設備があるならば、あなたもこの設備だけは一つ整備しておって下さいよということで私はいいと思うのです。この二点についてその後どうあなた方は検討をされたのか。
  32. 堀秀夫

    ○堀説明員 千円未満で疾病がなおった場合の療養費をどうするか、この問題でございます。現在は御承知のように千円未満の療養費につきましては限度がありまして、これは労災保険法の方でなくて、基準法の事業主負担の方の原則でいく、こういうことになっておるわけでございますが、この趣旨は、この程度少額の補償義務について保険することといたします場合に、事務量が非常に膨大になるということと、補償に要する直接的な費用に比べまして、事務的な間接費用が過大になり、ひいては事業主の保険料の負担を過重にする結果になるというようなことから、現在このよう主取扱いになっておるわけでございます。この点につきまして、ただいまお話のような御意見もございますが、われわれといたしましては現在のところはこのような方法でいきまして、そのかわりにそのような場合には基準法に基いて事業主が直接災害補償の法的義務を負うわけでございますから、これは必ず実行してもらうように監督の面で遺憾なきを期して参りたいと考えております。しかし先生お話しのような点については、さらにこれも今後の問題として検討いたしたいと考えております。  それから第二番目に指定医の関係についてでございますが、これは現在労災保険の建前といたしましては、政府が直接療養を行うという場合と、それから民間の病院なり医院なりで療養した場合に、かかった経費を労働者の請求によりまして労災保険で払うという間接的な療養費の支払いという二つの方法をとっておるわけでございます。そこで指定医につきましては、これは労災医療の内容はただいまお話もありましたが、いろいろ専門的な内容、外科的な内容にわたる労災の特有のいろいろな病態があるわけでございます。そこで直接行います場合にはやはり一定の基準を持ったようなお医者さんを指定して、この方にやっていただく。しかしこれは一般のお医者さんが診療することを妨げるものではなくて、その場合には第二の方法で、かかった費用は政府が支払う、こういう二段がまえでいっておるわけでございます。この問題につきましてもやはりいろいろの問題、先生の御意見等もございますので、これはわれわれといたしましても今後労災保険審議会その他で関係者の意見を聞きまして、その結論を待ちましてさらに合理的な内容の改善向上に努めたいと考えております。
  33. 滝井義高

    滝井委員 指定医の問題は合理的に改善に努めたいということでございますが、とにかく特殊のものを指定して、特殊のものを指定しないということは、同じ医師免許を持っているのですから、ばかげたことです。それを選択的に役人が恣意的に選ぶということになると必ず収賄、贈賄が起る。腐敗が起る。だから自由にやらしたらいい。それから先は患者の自主的判断です。患者その他がかかえ込むことを自主的判断できめるわけです。ところがそうしてくれればいいのに、今度指定してくれてなくて、個に合わぬときには指定しないものにかかえ込んでくるのです。だから指定しないところにかかえ込んでくるということは、やはりそういうものを初めから指定しておけばよかったといってあとで悔むことになる。だからこういう点をそう固くやらなくとも、みんな医学に対する知識も相当発達してきたし、どの医者がいいか悪いか知っておりますから、みんな指定医になっておっても行くところにしか行かないですよ。だから頭から色をつけてかかる必要はない、こういう考え方です。  それから千円未満の問題で、非常に事務量が多くなると言うけれども、実はその労災事務がやはり実に繁雑なのです。従ってこれは千円未満を今事業主が負担をしております。やはりこれは医者としてみれば同じようなことを書いて出しておるわけです。医者の事務量は変りはしない。そうするとあなたの方の事務量は、書類が直接事業主からもらう分がおたくに出てくる、それは言いのがれであって、それならば今の複雑な事務をもっと簡素化したらいい。あんなにややこしい書き方をやらせる必要はない。きょう私事務のあれを持ってきておりませんが、労災の事務をもっと簡単にしていいですよ。そういう点で、千円未満は事業主の負担であるが、全部事業主がまじめに払うわけにいかぬ経済的な情勢が特に労災の多い炭鉱地帯に出ておるということです。一日炭鉱でどのくらいの災害が出ておるか知らないが、相当のものが出ております。三人か四人一日に死んでおるのです。そういう点で、こういう点ももう少し、事業主から取り立ててもよろしいが、やはり支払いはあなたの方で責任を負うのですよ。それから先は、金は保険料として別に事業主から取り立てるということになりますと、この前私が申しましたように保険料と一緒に取り立てていいのです。医者が差し押えすることはできない。あなたの方は国税徴収法に基いていつでも差し押えできる。ところが医者に国税徴収法と同じような権限を与えられるかというと、これは与えられないのです。そういう点で、国民健康保険の半額徴収の問題についても、皆保険政策を順当に遂行するためには、やはり善良な管理者の立場をもって注意をして取り立てをやっても取り立てできなければ——国民健康保険が出てきたわけですが、それと同じです。何かそういう善管の注意をもってやってもなお取れないのは基準局が取るのだというところまでいかないと労災の責任というものは、あなた方が全うしたことにならないと思う。そういう点、もう一回千円未満の問題について見解をお伺いしておきたい。
  34. 堀秀夫

    ○堀説明員 千円未満の問題につきましては、制度はただいま申し上げた通りでありますが、われわれといたしましてはさしあたりは労働基準法に基く監督を励行することによりまして、千円未満の災害補償について事業主に必ず補償してもらう、その態勢の確立に努めると同時に、ただいまお話の点につきましては労災保険全体の事務合理化の問題であります。これとからみ合せまして十分研究いたしたいと思っております。
  35. 滝井義高

    滝井委員 堀さんが基準法の監督をおやりになるというけれども、ごらんの通りに未払い賃金はもはや合理化にかかった炭鉱に行ってごらんなさい、山のように出ております。未払い賃金をみんな労働者はもらえない、こういう状態ですから、基準法の遵法というものは口では言っておるけれども、実質には行われないというのが現実なんです。中小企業労働争議状態から見てもそれは御存じの通りです。従って基準法の監督を厳重にやってもらうことはけっこうです。しかし実質はもうまる裸になった事業主から取ろうとしても取れないということです。だからやはり最終的にこういうことをやろうとすれば、責任は基準局当局が持つのだという態勢を確立してもらいたいということです。一つ事務の合理化とあわせて御検討願いたいと思います。  それから時間がありませんから最後にもう一つ尋ねますが、今度労働福祉事業団ができて、最近各地に労災病院がどんどんできております。たとえば築豊の稲築にもけい肺を中心とする労災病院ができました。それからこの前から再々言っておる門司にも労災病院ができた。それは潜水病を中心にしてやるということがあなたと私との間に固い約束ができておるわけです。ところが実質はそういうものが行われていないのです。実はそういうことで私はこの地域の医師諸君から最近つるし上げられた。お前ら労災病院を作るのだといった、われわれはけい肺専門の病院を作るのだということで許したのだ、ところが実質はそうではないではないか、こういうことなんです。国会はわれわれ良民をあざむくのか、こういってつるし上げを受けておるわけなんですが、一体ああいうところにはけい肺の専門家なり潜水病の専門家の医者を配置しておるのですか。
  36. 堀秀夫

    ○堀説明員 けい肺専門の病院にはもちろんけい肺の専門家を配置いたしております。潜水病の問題についても同様だと思いますが、これはちょっと私記憶がございませんので、後刻調べまして御返事申し上げます。
  37. 滝井義高

    滝井委員 実は稲築の方も独立採算制ということを労働福祉事業団がいっておるわけです。けい肺だけでは病院は成り立ちません。そうすると一般の患者をとるということです。一般の患者をどんどんとるということになると医療体系というものは乱れてくる。労働省に労災病院を持たせるわけにはいかないということになる。こういう結論が出てくるのであります。それから潜水病でも同じです。潜水病というのはただ羊頭として掲げておるので、実際には犬の肉を売っておって、一般の患者をとっておったのだ、これでは私は国費の乱費になると思います。それなら一般の病院を大きく作って、患者が少いならここに潜水病を取り扱う医師を置いておく、こういうことにしたらいいと思う。ところが労働福祉事業団がわざわざ潜水病なりけい肺病と銘打って何億もの金をつぎ込んで大きな病院を作るとするならば、やはりそういう方針をきちっとして専門家を配置して、そういう患者を集める態勢ができて、他のものはとらない、こういう方向でなくてはならないと思うのです。ところが実際にはそうではないということです。あなたは門司の方はお調べになっていないようですからもう一回お調べになって、専門家が入っているかどうか、次会にお答え願いたいと思います。もし入っていないならば、それは労災病院とはいえないわけです。これはたびたび私が門司の問題でもいっておるように国鉄の病院があるし、健康保険の病院も同時に払い下げて最近は市立病院にするとか、それから海員掖済会ですか、海員の病院もあるというように、たくさんの公的医療機関がある中に、わざわざ潜水病ということでベッドをふやす。ところが一般のものをやるということになると、結局公的医療機関が全部赤字になってだめになってしまう、こういう結果が出て、国費の乱費、二重投資、三重投資になるのです。そういう金があるならもっと労働者の福祉事業につぎ込んだ方がいいということになるのです。だからこれは予算使用上の問題になるのですが、そういう点、もう一回専門医を配置してそういう態勢になっているかどうかを御検討になって、次会に御答弁願いたいと思います。私も調査いたしますから。
  38. 藤本捨助

    藤本委員長代理 暫時休憩いたします。     午後零時四十一分休憩      ————◇—————     午後二時三十分開議
  39. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますのでこれを許します。滝井義高君。
  40. 滝井義高

    滝井委員 まず大臣がお見えにならぬので、見えるまで、事務的な、少し専門的なことから先にお尋ねしたいのですが、それは多分昨年であったと私記憶いたしますが、昨年の五月の選挙前に健康保険の病院の問題について質問をいたしました。当時局長は高田さんでございましたが、厚生省のいわば直轄的な健康保険の病院について、当時高田局長はほとんどその内容を知らなかった。そこで健康保険病院に非常に多くの欠陥がある点を指摘して、その改善を要望しておったのです。その後一年以上過ぎた現段階において、健康保険の病院というものは一体どういうように改善をされたか、これを一つお尋ねいたしたいと思うのです。私はいつも質問をしますが、した質問なり、それから未解決の問題、あるいはそこでこうやりますと言ったことは大体覚えておるし、ひかえております。従って政府はやはり議員の質問については責任を持って、質問があってこうやりますと言ったら、その後それがどうなったということは、また質問がなくても率先して改革をやったら、そのあとは報告をしてもらうのが筋道だと思うのですよ。ところがそれが選挙が終って一年以上もたっておるのですが、何も報告がないのです。そこできょうは再び、時間が惜しいのですが、健康保険の病院のことを尋ねるわけです。どういう工合に改善をせられ、どういうように運営をせられることになったのか、これをまず御説明願いたい。
  41. 太宰博邦

    ○太宰説明員 健康保険の福祉施設として運営いたしております健康保険病院の運営についての御質問でございますが、昨年御質問があったということであります。ちょっと私当時のことを詳細存じておりませんが、この運営をできるだけ効率的にするということは、当然私ども常に考えなければならないところでございまして、多分さような滝井委員などの御論議などを参考にいたしたものと考えておりますが、昨年の十月から一部その運営方式を改正いたしました。従来は各病院でそれぞれ独立に、ばらばらに運営しておったのでありますが、さような方式を改めることといたしまして、現在約八十三カ所ほどあります病院の中で、特別のものを除きまして七十カ所余りを府県知事から社会保険協会の全国連合会、これが社団法人でございまして、そこの方へ委託をいたしております。そういうことによりまして従来の運営がばらばらでありました点につきまして全国的視野のもとに統一的な運営をするという態勢を整えたわけであります。それの内容を逐次進めておる現状でございまして、もとよりそれがほんとうに地につきますにはなお若干の時間がかかろうかと思いますが、目下その線でその運営の一元化をはかり、その内容の実施を急いでおる、こういう段階でございます。
  42. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、八十三カ所のうち七十カ所は全国社会保険協会連合会いわゆる全社連に受託せしめることにした、こういうことなんですか。
  43. 太宰博邦

    ○太宰説明員 そうです。
  44. 滝井義高

    滝井委員 そうするとあとの十三カ所はどういう形になっておりますか。
  45. 太宰博邦

    ○太宰説明員 あとは地方の公共団体に委託しているもの、それから朝日新聞の厚生文化事業団に委託しているものが一つ、残りは全部市でございます。さような関係でございますので、この方につきましてはただいまのところはまだ従来の運営でそのままやっておるわけであります。これはもう少しあとに残された問題です。
  46. 滝井義高

    滝井委員 それで大体昨年でございましたか一昨年でございましたか、質問をした以降における厚生省の処置がわかったわけです。そこでそういうように機構が昨年の十月に変りましてからすでに十カ月になるわけです。そうしますと当時健康保険病院の給与というものは、国家公務員に準じて給与の体系というものがきめられることに、厚生省が運営のための準則か何か出している。多分そういうことになっておったのです。これは一体そのように給与体系というものも七十の病院については一貫したものになっておるのかどうかということです。
  47. 太宰博邦

    ○太宰説明員 統一的運営をいたします目的の一つには、ただいまお話しになりましたような、そこに働いております者の給与の面とかそういうものにつきましても相互のアンバランスがあるならば極力バランスをとっていくというようなことも目的の一つに入っておるわけでありますが、これは何分にも従来の運営がいわく因縁がございまして、独立採算制をとってきておるということでございます。それを一挙に是正するということも、いざとなりますとなかなか問題があるわけで、まあ逐次そういう方向に持っていこうということを考えておるわけでございます。今日までのところ必ずしも全国一本でぴたっとするまでには至っていないことは残念に思っておりますが、極力急いでそういう方向にやるべく目下準備中であります。
  48. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、まだ独立採算制というものはそのまま現存しておるわけですか。各病院は独立採算制をやって、もうからぬところは夏季手当等は少い、もうかるところはよけいにやる、こういうことになっているのですか。
  49. 太宰博邦

    ○太宰説明員 大体一応独立採算という建前は今でもとっております。ただし、先ほど申し上げましたような統一的運営及びそれによって私どもがいろいろ社会保険病院に期待しておりまする事業を統一的に運営いたしますために、その中の一部分のものについては、本部の方でもってこれを運営するために若干本部に納入してもらう措置をとっておりますが、そういう点を除きましては、独立採算と申しますか、そういう運営を現在しておるわけであります。従いまして給与の面につきましても、採算の悪いところといいところでは、若干のニュアンスの差は現在あろうかと思います。こういう点につきましても、私ども必ずしも一律がいいとは思いませんけれども、是正をせねばならぬ点があろうかと思います。今後もそういう線にだんだん進めて参りたい、かように考えておる段階でございます。
  50. 滝井義高

    滝井委員 少し具体的になりますが、今年の夏季手当は幾らくらいやったでしょうか。
  51. 加藤信太郎

    ○加藤説明員 本年は大体公務員の夏季手当に準じまして、約一カ月でございます。ただし先ほども指摘がありましたように、採算その他の関係でそれだけ出し得なかったところもございます。
  52. 滝井義高

    滝井委員 国家公務員と同じ程度の一カ月——われわれは〇・八か九もらったと思いますが、従って国家公務員もそれくらいだと思いますが、一カ月というのは七十のうちどれくらいありますか。
  53. 加藤信太郎

    ○加藤説明員 今資料を手元に持っておりませんが、ほとんど大部分じゃないかと記憶しております。しかし手元にありませんので、正確にはお答えできません。
  54. 滝井義高

    滝井委員 私の調べたところでは、〇・五カ月分しか出していないようにあります。そしてこの社会保険病院、いわゆる健康保険病院というのは、健康保険のいわば模範的な病院としてできておるわけなんです。同時に全社連の設立の目的等を見ると、健康保険や厚生年金事業の円滑な運営を促進をする、あわせて被保険者や被扶養者の福祉をはかる、そして社会保障制度の確立に資するというようなことが目的になっておるわけです。そういう目的を持った全社連に、七十の病院が委託をされたわけです。〇・五程度の夏季手当しか与えることができないということは、これは一体何を意味するかということが当然問題になってくるわけですよ。それから、これは問題になってくるという問題点だけをあげておきますが、健康保険の病院は学会等に出張さしておるかどうかという点です。
  55. 加藤信太郎

    ○加藤説明員 まず最初の〇・五カ月しか出していない病院もあるではないかという御指摘でございますが、私もそういう病院が二、三あることは承知しております。御承知のように病院の中には結核療養所を中心とするものもございまして、当時は立地条件で、山の中に置くべきだというので山の中に置いておりましたのが、最近の結核の治療方針その他の変化によりまして、山の中にあるものも最近は非常に条件が悪くなりまして、中には患者が半数も入っていないものもできまして、私どもの方でもこれをどう措置するかということについては、目下検討中でございます。これは一例でございますが、おっしゃいましたように健康保険病院は社会保険のモデル病院として運営すべく努力はしておりますが、実情必ずしも全部がそう参りませんので、採算の点につきましても、非常に困難なものができ、御指摘のようなものができたわけでございます。  第二の学会に病院勤務の先生を出席させておるかということでございますが、これは大体出席させております。
  56. 滝井義高

    滝井委員 大宮病院というのは山の中にありますか。
  57. 加藤信太郎

    ○加藤説明員 大宮市の市外にございます。
  58. 滝井義高

    滝井委員 東京と割に近いし、そう悪くないと思うのです。現地を見てはおりませんが、多分大宮病院が夏季手当〇・五です。それからここは一度も学会に出張したことがないのですね。そこで健康保険病院には就業規則というのがありますか。実は先般労働福祉事業団——労働省の直轄下にある労災病院の就業規則がなかった、私これを指摘したのです。労働省当局は終始ろうばいしておりました。労働省と厚生省は元は一本の役所だったのですね。分れて労働省ができたのですが、健康保険の病院には就業規則はありますか。健康保険病院というよりか、一番親分の全社連をいった方がいいと思いますが、公国社会保険協会連合会ですか、こういうところに就業規則があるでしょうか。
  59. 加藤信太郎

    ○加藤説明員 まず就業規則の問題ですが、現在私の方で調べたところでは、完備した就業規則は持っておりません。これは全社連にこの点も含めて検討を依頼しておりますが、御承知通り人もかわりまして、いろいろ手続がおくれましたので、全社連がとりあえず従前の方式をそのまま踏襲いたしまして、検討を終ったものから改善いたしていくという態度をとっております。  それからその次に埼玉の大宮病院の件でありますが、これは学会に出していないという事実は私ども実は承知してなかったのであります。ここは割合に内容がよくなくて、運営その他の関係で〇・五カ月しか出していないことは承知しておりますが、これは病院当局並びに全社連に話をして、運営についてさらに努力をするように私の方でも注意しているところであります。
  60. 滝井義高

    滝井委員 健康保険のモデル病院となり、世のかがみとならなければならぬ、いわば厚生省の足元の病院です、これが〇・五カ月分の夏季手当しか出せないし、学会にも出張させぬ、就業規則もない、これで模範だということはなかなか言えないと私は思うのです。そこでそれはそれとして、こういう点は改善をしてもらわなければなりません。  次にもう一つ、一年間の健康保険病院の人員の異動、退職者、これは一体どの程度ありますか。八十三のところを聞きたいのですが、七十でよいと思います。七十の病院の退職者と申しますか、異動する人——やめる人の方がはっきりするでしょうが、退職者はどの程度あるか。それからその退職者の勤務年限というものは一体何年あるのか。
  61. 加藤信太郎

    ○加藤説明員 その点、実は今資料がございませんので、いずれ調べまして御返事申し上げます。
  62. 滝井義高

    滝井委員 ぜひ一つ調べてもらいたいですが、それならば退職金は国家公務員と同じ程度にやっておるのかどうかということなんですね。同時に退職金の積み立てが病院には順調に行われておるかどうか。
  63. 加藤信太郎

    ○加藤説明員 退職金の制度につきましては、必ずしも国家公務員と一致しておりません。これは準則で示しております点も若干の食い違いがございます。  次にお示しの退職金の準備として正当に積み立てられておるかという点でございますが、この点も実は私どもの方で調べました限りでは、準備状況がきわめて不健全でございまして、現在全社連にその点を検討させておる次第でございます。大体の傾向を申し上げますと、医療器械その他に形を変えて残しておるところがございますが、これも額といたしましては、必ずしも十分と申し上げかねる次第でございます。
  64. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、退職金の積み立てもほとんどない、不健全だということがはっきりわかって参りました。ある病院を調べてみましたところが、毎晩八時まで働いておる。最近は開業医は、昼の間は大きな病院へ患者が行くために、昼は来ない。しかし夕方サラリーマンなり労働者諸君がひけるころになると、開業医がラッシュ・アワーになる。だから、昔は開業医は午前中働いて、午後からは往診、夜は休んでおった。ところが今は、午前中は閑古鳥が鳴いて、夜働くという逆の形になりつつあるのが開業医の姿です。ところが、健康保険の模範のこれらの病院で、毎晩八時まで働く。なぜそんなに働くのか。そんなに働かなければ、病院がやっていけない、独立採算になれないというのが実態なんです。これは一体なぜか。結論は簡単です。退職金がない、夜八時まで働かなければならぬ、学会にも行けぬ、夏季手当は国家公務員と同じだというけれども、もらえないというのは、結局診療報酬が安いということなんです。もうこれらの病院ではみな結論を出しております。今の甲表や乙表のあの診療報酬では、われわれはやっていけません、こういう結論です。先般団体交渉をやっております。三十四年七月二十一日の十時三十分から、三十四年度第一回の団体交渉を、健康保険病院労働組合連合会と、それから全社連の副会長の曽我さん、常務理事の鎌倉さん等、いろいろおるようであります。そうして、組合側から執行委員長以下出てやっておる。この議事録を読んでみますと、さいぜんのことも出ておるのですが、「われわれは健保病院で年間どのくらいの人がやめるかを調べたんですが、八百人くらいですか……。」「そうですね。」「八百人で平均在職期間が、若い人が多いから、平均して三年ないし四年と見るとざっと五千万円くらいかかる。」と書いてある。「現在全社連の予算が千五百万円だからどうにもならない。君たち何かいい案はないか。」こういうことなんです。しきりに案はないか、案はないかと労働組合に言っておるのですが、そこで労働組合委員長が、「しきりにわれわれに向って案はないかと言われるが、われわれは、われわれの身分保障を要求しているのである。働く者の権利として要求しているのである。われわれが案を出すならばわれわれが経営の側に立たなければならない。」——われわれに案を出せというなら、われわれを管理者の立場になしてくれというようなことを言っておる。こういう状態です。当局には案がない。案がないということは財源がないということです。財源がないということは、今の診療報酬が安いということです。公的病院は、この通り税金を一銭も払っておりませんよ。それが、あなた方の足元がこの状態なんです。これは考え直さなければならぬ問題です。あなた方が莫大な金を出して、そうしていわばどこからか金を借りて作ってやった病院です。結核のためには四、五億くらいの金を出しておる。その病院が、団体交渉で、事局側が労働組合に対して、何かいい案があったら教えてくれ、わしらいい案がないと言う、こういう状態なんです。だから、今私がいろいろの点を二、三指摘をしましたが、結局これは診療報酬が安いということです。結論はもう簡単ですよ。病院の運営が悪いとかなんとかではない。みな八時まで働いておる。学会にも行かずに八時まで働いて、そうして国家公務員と同じ程度に給与もやるし——ということは、年末手当なり夏季手当を出すということなんですが、それが出せない、こういうことなんです。これはあなた方一体どう考えるのですか。今の診療報酬で十分やっていけます、国家公務員と同じ通りにやっていけます、こう御言明ができれば、一年間余裕を与えて経理を見たいと思います。
  65. 太宰博邦

    ○太宰説明員 どこの病院か存じませんが、夜の八時まで勤務しておるというようなお話を種にしまして、結局診療報酬が安いではないかということのようですが、これは先ほど健保課長からもちょっと申し上げましたように、普通の民間の企業でございまするならば、ある場所で運営しておりましてそれがうまくいかなくなればそれを閉鎖して、もうかるところに持っていくとかいうことが比較的たやすくできると思うのであります。しかし社会保険病院になって参りますと、やはりなかなか急にそうも参らない点もございます。たとえば山の中、郊外で療養所としてやっておった。ところがそれがだんだんそういう方が片づいて参りました場合に、これを一般病院として運営していくのには、立地条件その他が必ずしもうまくいかないというのもございます。それからこれは終戦直後のいろいろな関係で買収したり引き受けたりしたような病院もあるわけでございまして、そういう面から必ずしも運営自体が、最も効率的に運営すべく努力いたしましても、なおかつそういう立地条件等からなかなか困難だというようなものも私はあろうと思うのであります。そういう場合に、不幸にしてそういう条件の悪いところにありまする病院においては、相当努力いたしましてもなおかつ採算が合わない。従って給与とかあるいはボーナスという点もなかなか人並みと申すよりも、こちらの準則ほどにも出すことができないというようなこともあると思うのであります。かような点は、従来のような独立採算でもってばらばらに運営して参りました場合の一つの大きな欠点でございます。おそらく前にはそういう点の御指摘もあったかと思うのであります。さような点からいたしまして、昨年そういう運営を改めることにいたしたわけでございますが、これから後はやはりそういう点についても、バランスを合せていくということも十分考えていかねばならないと思うのであります。もとより一つのこういう運営でございますから、画一的に、どれだけ努力しても、努力をサボっても、もらうものは同じだというようなことでは、やはりこれが一つの事業として能率的な運営とは思えません。その点は十分考慮しなければなりませんが、しかし立地条件でどうしてもうまくいかぬというところで、なおかつそれによるマイナスの面をそこにおる人が全部ひっかぶるのだということは酷だと思うのであります。そういう点から申しまして、統一的運営をいたします場合には、そこに何らかのバランスをはかるという道も当然講じなければならぬ。そういう点から考えて参りますならば、私は先ほど御指摘のような、個個の病院で運営の悪いところについては、それはどういう原因であったかということを突きとめてこれを是正して参りたい、かように考えておるわけであります。直ちにそれをもって今の診療報酬が全部安いのだという結論は、私どもとしてはただいまのところは了承いたしかねるわけでございます。その点は今後私どもが運営をさらに軌道に乗せて参りました暁においては、御指摘のようなことはまずなくなるものと考えて、目下鋭意それぞれの面に準備を進めておるような次第でございますので、その点は御了承願いたいと思います。
  66. 滝井義高

    滝井委員 実は過去においてもこれらの健康保険病院というのは、あなたの足元における模範的な病院であったはずです。ところが私が一昨年指摘して、その実態が初めてこの国会ではっきりしてきたわけです。全く模範でないということがはっきりしたわけです。そうして一年半以上も待って、模範的なものに果してなっておるかどうかをお聞きするために、きょうは私も少し調べてきたわけですが、実態はそうでないという状態なんです。あなた方の今の答弁も、これからだということなんです。これからだというからには、一体これから幾らくらい待てばほんとうに模範的な形になるのか。独立採算制で国家公務員と同じように退職金も出すし、二・九カ月ですか、二・八であったのが人事院で〇・一勧告したのですから、二・九になるのですが、その期末手当も出す、こういう形で夜は八時までも働かすようなところは一つもないような形になる、こういう形になり得ればけっこうです。それまで私は診療報酬が安いという結論は延ばしてけっこうなんです。まだこれから一年ぐらいあとにもう一ぺん様子を聞きますから、そのときは局長さん、あなたは栄転しておられるかもしれませんけれども、必ず私は聞くと言ったら聞きますから、事務引き継ぎでよくあとの局長さんに引き継いでおいて下さい。  そこでさいぜんあなたは、へんぴなところ云々ということを申しました。東京のまん中に麹町の診療所というのがある。これは現在三百万円の赤字を持っています。これは診療所ですから医者はそう多くはないのです。ところがここは月に三十万円ぐらいの水揚げがある。それで人件費が二十万円で、あとの十万円で薬とかその他のものをまかなうということになると、なかなか経営困難です。これが実態なんです。これに対して、厚生省なり全社連は何ら抜本的な対策をやっておらぬ。三百万円の赤字では個人ならばもう手をあげていますよ。三百万円背負って、収入が三十万円あって、人件費が二十万円で、あと十万円で雑費から薬まで払うことになったら個人ではだめです。ところがこれは税金を払わないでこれなんですからどうにもならぬ、こういうことなんです。さらにあなた方の管理していらっしゃる健康保険の中央病院で当面必要とする備品を調査した。ところが良心的な診療をやるためには、大体どの程度の備品が不足しておるかというと、二千六百万円の備品が中央病院で不足しておる。結局二千六百万円のものが買えない。なぜ買えないかというと、もうここではっきり結論を出しています。現在の診療報酬は不適正だ、だからこういうものを買うだけの余裕はありませんと、はっきり言っておる。中央病院にしてしかり、いわんやいなかにおける患者の少い病院は言うをまたないのであります。こういうことになる。こういうのがこの健康保険病院の実態なんです。これを今後一体どういう工合にうまく運営をされていくかということなんです。そうしますと、あなた方が委託をした全社連は一体どこから金を持ってくるのか。独立採算制をとっている限りは、赤字がどんどん累積する病院が出てくる。他のもうける病院でも一定の限界がある。退職のときの積立金も積み立てなければならぬということになると、全社連に金を回してこれない。一体全社連の財源はどこから出ておりますか。
  67. 太宰博邦

    ○太宰説明員 これは全社連の会費でもってまかなうことになっております。それの経営いたします病院の件につきましては、国の委託でございますから、国はそこでもって得た収入でそこの運営をしてもらうようにしておるわけであります。さようなことになっております。
  68. 滝井義高

    滝井委員 国の費用といっても、健康保険病院に国が経営費を出すわけではない。そうしますと、赤字の出た病院が出てくるわけです。さいぜんの麹町診療所のように三百万円の赤字を背負っておるわけです。これがカメの甲のように永久についてきたのではどうにもならぬ。どこかで切り捨ててやるか支払ってやるかしなければならぬ。それは受託をした全社連の責任になってくるわけです。全社連の財源は今あなたのおっしゃるように会費ですよ。会費というのは、健康保険の被保険者の数か何かを基礎にして出しておる。とても莫大な何千万円、何億という金を集めて病院に配るだけの金はない。これは参議院の鹿島守之助さんがたしか会長さんです。この前私は鹿島さんに来てもらっていろいろ尋ねようと思ったけれども、こういう点についても高田さんはよく御存じなかった。そこでこういう点は一体どうするんだということで、これは根本的に考え直さなければならぬということになったはずなんです。ところが今のあなたの御答弁は、まだそのままになっておる。全社連になるほど七十のものを委託したけれども、全社連は主体的にどう運営するかということが全然出ていない。これじゃ全社連というものは、色男金と力はなかりけりで、金も力もないのです。色男だけでは困る。少くとも七十の病院をひっさげて、そこにおる患者には最高の福祉を与え、そこに働く医師に対しては、近代的な医学の先端をいく手当の模範的なものを与え、良心的な診療を行わせるようにしなければならぬ。その金と力を全社連が持たなければならぬ。全社連にはそれがないのです。問題はここなんです。一体全社連というものが、今のような姿であなた方の言われるような模範的な病院の姿に一年以内になり得るかどうかということです。この点どうですか。何かよい構想があれば……。
  69. 太宰博邦

    ○太宰説明員 これは格別これから新しい構想を出さなくても、ただいままで私どもが全社連に統一的運営のいろいろな方法等に力をかして、お互いに研究しておるわけであります。これが逐次軌道に乗って参りますれば、運営は少くとももう少し全般的に改善される、なかなか採算のとれないところは調べてみて、そういう施設を置く必要があるということになれば、これは他の病院なり何なりがみんなで援助して、そうしてそれを支持してやらなければならぬ筋合いであります。そういう全面的なことというのは、従来のやり方ではできなかったのですが、それができるようになった。そういうようなことからして、これから漸次軌道に乗せていく努力をしておりますので、もう少し時間をかしていただければありがたいと思っております。
  70. 滝井義高

    滝井委員 そういうように、ある程度時間をかしてくれということになれば、一年くらい一つ待たしてもらいたいと思います。そうしますと、この前も質問いたしましたが、いろいろ団体交渉その他をやっておるけれども、病院管理の責任の所在がはっきりしないんですよ。健康保険病院というのはだれが一体最終的に責任を持つか、こういうことになるとはっきりしなかった。今もどうもそうらしい。なかなかはっきりしないらしい。そうすると、これは今のような考え方でいくと、一切の経営の責任というものは全社連が負うと、こう考えて差しつかえありませんか。
  71. 加藤信太郎

    ○加藤説明員 最終的には全社連でございますけれども、全社連の委託に基いて、一時的には病院長がこれの責任を負うことになっております。
  72. 滝井義高

    滝井委員 そうすると全社連が病院長に責任を移しておる、こういうことになると、独立採算制であるならば、給与の問題も期末手当の問題も一切病院長と交渉して、病院長が責任を持ちますか。
  73. 加藤信太郎

    ○加藤説明員 全社連が示した委任の範囲内で持つわけでございますから、全く別の行動をとることは全社連としては認めておりません。先ほど申しましたように、現在は従来とっておりました準則に基いてやっているわけでございます。
  74. 滝井義高

    滝井委員 そういうように、きわめて狭い委任した範囲ということになるわけです。人事権の問題とか、大事な給与の期末手当を〇・五しかできない。〇・八出してくれ、こういうようにストライキその他があるということになると、これは院長ではどうにもならぬ。しかもこの前も私は指摘をしたのですが、県の保険課長が依然として地方の社会保険協会の常務理事を兼ねておるということです。私はこういう形態はいかぬと思う。たとえば太宰さんが監督者それから保険者と被保険者というような三足のわらじをはく、あるいは現業の責任者ということになると四足のわらじにもなるのですが、そういうような形は問題をだんだんこんがらかしていけないということをこの前指摘したのです。そして特に健康保険課長というものが社会保険協会の常務理事をしておると、人事権に関しては、たとえば一定の等級以上の者の人事については保険課長と協議をするということになっている。そこで保険課長と協議をしなければ何にもできない。じゃ保険課長がどんどん金でも出せるかというと、これまた出せやしない。出すためにはあなた方と相談しなければならないということになる。そうすると病院というものは、名は全社連に委任をしておるけれども、あるいはある一定の範囲に限っては病院長に権限を与えているのに、大事なところにくると全部保険課長になってしまうという形なんです。しかもさいぜん言ったように夜八時までも働かせる。それを〇・五しかやらぬということになると、その保険課長の責任になる。われわれから言わせれば常務理事は何をぼやぼやしておったのだということにならざるを得ない。ところがそうなると、いや私は保険課長でございまして、そこいらまでは目が届きませんですから、と逃げられたら何にもならぬです。だからみんな中央に来るわけです。中央に来ると、わしらはどうも金がないということになる。鹿島守之助という参議院議員のところに行くと、僕らはどうもそういうことは知らぬから一つ曽我君にということになって、だんだん副会会長くらいのところが権限を持つということになる。実質は保険課長が握っておる。こういうばかげたことはない。前の保険課長は林天皇といわれて、全部林さんが握っておった。病院も握る、保険の方も握る、こういう点についてはやはりもう少し病院の管理の最高責任についてどこが持つということをはっきりさせて、そして一切の団体交渉はそこで引き受ける、赤字か出たらそこで責任を持つ、こういう形をとる。そうでなければ、太宰さんが責任をとるならとる、すなわちあなたがとるということは厚生大臣が責任をとる、こういうことならいいですよ。そういうことなら厚生大臣を呼んで、赤字が出たらこの赤字の点をどうするんだ、診療報酬が安いなら変えなさいということになる。ところが診療報酬は安くはございません、こうあなたがおっしゃるが、病院は赤字なんです。しかも模範的なあなた方の足元の病院ですよ。こういう点をもう少しきちっとしてもらわなければいかぬですよ。前の高田、小沢のバッテリーのときでも、はっきりすると言っておったが、まだはっきりしておらない。今度はあなた方二人が、加藤さんと太宰さんがおかわりにならぬうちに、一つこれをきちっとけじめをつけて、そしてこうなりましたよということを報告してもらいたいと思います。あなたが報告しなければ私が質問しますが、どうもあなた方はこれを十分御研究になっていないように思う。実は私は一ぺん質問したのだから十分あなた方の方では事務引き継ぎになって、きちっと態勢ができて、きょうは通告してあったからおわかりだろうと思ってやったのですけれども……。もう一つ、これはあなた方の足元の病院ですから、これがだめなら明らかに診療報酬はだめだということになる。これは甲表をやっておるところが多いのですが、申表はわれわれは科学的な根拠を認めておりません。甲表では四苦八苦のところが多いのです。これは十分御検討になって次会に答弁をいただきたいと思うのです。  次は、これはほんとうは医務局長にもちょっときてもらって聞きたいところなんですが、官房の方で一つ考えてもらいたい点なんです。これは保険局にも関係がありますが、御存じの通り現在結核療養所のベッドというものはもう二割以上あいております。全国の結核療養所の状態を見ても二割あいております。結核ベッド全体でいうと約三割近くあいておりますよ。ところが御存じの通り、昨年の結核の実態調査によって結核患者は減っていないことがわかったわけです。ベッドはあくけれども患者は減っていないということがわかってきたわけです。三百万余も療養しなければならぬ者がおるということがはっきりしてきた。ところが、あなた方がきょうの新聞がなんかに発表しているように、開放性の結核患者を五カ年間で半減するという、何かそういうものが出ておりました。そこでこのあいているベッドを中小企業一つ開放をして入れてやる方法を考えたらどうだという点です。というのは、たとえば東京のあの隈部さんのやっておる結核研究所ですね、あそこには付属療養所を持っております。ところがこの結核研究所のベッドは百くらいで、あとの五百くらいは委託ベッドです。一体この委託ベッドはどこが委託しているかというと日本銀行、朝日新聞、富士銀行、東京電力、国税庁、大蔵省の共済組合、日本軽金属——いわゆる大手です。大企業です。日銀とか朝日、富士銀行というところは、加藤さんも御存じの通り、保険料も安い、労働者の負担も安い、こういうところは、労務管理、健康管理が非常に優秀だから結核患者はおりませんよ。だから委託ベッドはみながらあきです。これをがらあきのままにしていることは惜しいことです。こういう点について一体厚生省は何か考えたことがあるかどうかということです。結核のベッドは閑古鳥を鳴かしたままでいいのかどうかということです。こういう点を何か官房の方で調整することをお考えになったことがありますか。
  75. 森本潔

    ○森本説明員 ただいま御指摘のように、結核の大病院に対しまして民間から委託ベッドがございます。これは他の病院に比べまして相当空床数が多い実情でございまして、これは御指摘通りでございます。これを他の結核患者のある中小企業の方面で使わすようにしてはどうかというお話でございますが、その点具体的にはまだ検討しておりませんが、最近の状況を見ますと、そういう委託病床において空床が多いということがはっきりいたしておりますので、方法は別といたしまして何か適当な方法を考えなければいかぬじゃないかという程度の考えでございます。まだ具体的には措置をいたしておりませんが、何か適当な方法で考慮する必要があろうと考えております。
  76. 滝井義高

    滝井委員 問題は、それらの結核療養所の委託ベッドというものは、それぞれの会社の健康保険組合なりあるいは会社自身が金を出して作ったものなんです。従ってこれを自分会社の従業員ならとにかく、何ら関係のない赤の他人に貸すということは、会社にとっては損なんです。だからこれを国が使用料を払うとか、あるいは何らか補償をする道を考える以外にはないのですが、この問題を真剣に考え意思があるのか、あるいはこのままほっておくつもりですか。何か具体的にことしから、二割以上もあいているベッドをこういう工合に活用するという意思があるのですか。これは健康保険だってすぐに関係する問題ですよ。
  77. 森本潔

    ○森本説明員 この委託病床の空床は、先ほどお話がございましたが、結核病床のうち二〇%の空床があるという、全体の数字から見ますれば大した数字ではないわけでありますが、現にあるわけであります。その点につきまして現に健康保険等におきましては委託しました病床を、委託したところから病院の方に譲渡さしておる、かような例も一、二ございまして、その方法は別といたしましてだんだんと進めて参りたいと考えております。
  78. 滝井義高

    滝井委員 私は特にこれらを問題にするのは、それは僻陣地の結核療養所のあいているベッドというものは入り手はない。ところがこれらの国民健康保険組合なり、大企業自身が金を出して委託したベッドというものは、多く風光明媚な交通至便の地にある。利用しようと思ったら利用の価値が十分あるものなんです。こういうところに厚生省がもっと積極的な手を打たずして、あいているあいているというだけでは話にならぬと思うのです。従ってこれは一つ積極的に手を打っていただいて、そうして開放性の結核患者をもっと早くこういうところで養生できるようにしてもらいたいのです。  それから、大臣が来ぬので事務的なことをずっとやりますが、甲、乙二表の一本化の問題ですね。これはあなた方はすみやかにやるやるというし、われわれはこの前の委員会でも、きようでも一本化を強硬に推進しようとするが、なかなかうまくいかない。自民党さんの方はきわめて消極的です。厚生省はすみやかにやるというのだが、一体どういう工合に準備が進んでおりますか。御存じの通り、もし民主的な方法で事を処理しようとするならば——全国の病院の九割というものがとにかく乙表を採用しておるということなんです。国会は多数決でいく、医療の選択も多数決でいくということなら乙表一本です。しかしこれは厚生省と日病との問題があって、なかなかあなたたちは清水の舞台から目をつぶって飛びおりるというような工合にはいかぬと思う。乙表一本というわけにはいきますまいから、これは乙表でもない甲表でもない、全く新しい紙の上で一つ診療報酬の体系というものを作る以外にないだろうと思う。そうしますとあなた方としてはその準備というものをしなければならぬ。これは昨年の十月、甲乙二表が採用されて以来、やがてむかわりがこようとしている。もうすぐ十月が来ます。そうするとすみやかというのは、われわれはやはり一年以内くらいだと思っておる。当分の間というのならば、これは農地法じゃないけれども三年ぐらいです。すみやかというからには相当準備も進んでおると思いますが、準備進捗の状況について御説明を願いたいと思います。
  79. 太宰博邦

    ○太宰説明員 甲乙二表を一本化するということについては、そういう方向に準備を進めていくようにたしかお答えいたしたと思います。これはしかし実際問題となりますといろいろ前提条件などがございまして、たとえば現在実施しております甲表、乙表それの実施の成果というものを見きわめまして、それぞれの長所短所あるいは問題点というようなものを調査いたしまして、それから逐次積み上げていくという態勢をとらねばならぬわけであります。それからまたこういう診療報酬の点数表の改正という問題は、当然診療を担当する向きあるいは保険者、被保険者それぞれ影響するところが広いわけであります。そういう関係者がそういう一本化の方向に向ってお互いが資料を出し合い、議論し合って進んでいこうという気持がまず皆に出て参りませんと、なかなか厚生省だけでどうこう申しましても進まないわけでございます。そういうような点などを考えて参りますと、私どもの方の準備もなかなかそう簡単に進んで参るわけにもいかない現状でございまして、ただいままでのところはそういうような状況であります。こういう関係者の気持がそういう方向へ進んで参る、あるいは現在実施されておるものについてのいろいろ各方面からの御意見なり何なりというものを承わって、そういうものの積み重ねにおいてこの問題を進めて参りたい、かように考えておる次第であります。
  80. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、それではすみやかにということを取り消してもらいたい。昔からまいた種ははえるという言葉もあるし、自分のまいた種は自分が刈らねばならぬという言葉もあります。甲乙二表をまいたのは厚生省自身なんです。それを現実に実施して悪いということはあなた方周知の事実です。こういう悪いことを改めるに何ではばからなければならぬかということです。自信があり確信があるならば、自分がやったことが想いというなら、すみやかにこれを改めるということは、孟孔子の昔の時代からはっきりしておる。これはあなたの方で当然準備されておると思う。一つ準備の中間報告をしてもらいたいと思うのです。いかなる準備といかなる進行状態で今一本化の作業が進みつつあるか、これを一つ説明して下さい。何もやっておらぬならやっておらぬでけっこうです。これとこれはやっておりますということを一つ説明して下さい。
  81. 太宰博邦

    ○太宰説明員 先ほど申しました以上に、今日のところ御報告することはございません。
  82. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、何もやっておらぬのですか、答弁を拒否するのですか、どっちです。甲乙二表を一本化するということは大臣もあなたも言明になっておる。一本化するなら、一本化するだけの準備と方法論がなくちゃならない。準備と方法論がなくて、客観情勢が動くまでわれわれ何もしませんというなら怠慢です。その方法があることが行政官の責任であり、大臣、与党の責任である。もう一年になりますよ。ですからデータがないとは言わせない。健康保険は昭和二年から実施されておる。国民健康保険は昭和十三年から実施されておる。データはないとは言わせない。あなた方は甲表については何ら科学的基礎をわれわれに示していない。何ら示すところなくして甲表というものを正当なりとして実施した。ところが甲表はわずか一握りの病院しかこれを使わないという形です。なるほど診療報酬は五割か六割になっておるかもしれない。しかし医療機関の数にすれば一握りです。だからこれがもはや現在の日本の医療の大勢を占めることはできないことは明らかになっておる。明らかであるならば、これを変える準備をしなくてはならぬ。その変える準備というものをいかに厚生当局はやっておるか。それさえも言えないというならば、これは答弁拒否ということになる。一体いかなる準備をしておるか。これを一つ局長言ってもらいたい。
  83. 太宰博邦

    ○太宰説明員 私は別に答弁を拒否するつもりはないのであります。ただ先ほど申し上げましたように、甲表、乙表というものは、あれだけの月日をかけ、関係者の間で議論をされて、そして実施に移された点数表でございます。現在それでやっておるわけでございますが、それを二表あるのがどうも工合が悪いから一表にするということは、関係者の一人としてうなずけるわけでございますけれども、やはり一本化するといたしましても、今まで実施になりました二つの表をそれぞれ長所、短所というものも調べ、また実際運用されておる各方面の御意見というものも承わって、その上でこれをよりよきものにする。いわゆるアウフヘーベンするという形で持っていくのでなければ、私は音意味はないと思うのです。今そういうことを全然抜きにいたしまして、何でもかんでも一本にするのだということでございますれば、もともと厚生省といたしましては、原案としては大体医療の合理化の線から一つの表を考えておったわけでありますけれども、現実の点を考えてこれを甲表、乙表、二つの表にしたいきさつもあるわけでございます。従いまして全然そういう経緯を無視して、これから新しく一つの表を作るのだというようなわけには私は参らない。今までありますものをアウフヘーベンするとなりますれば、それの実績なり、それの問題点なり、あるいはそれに対する各方面の御意見なりというものを承わって、それを根っこにしていくのでなければ、私は意味がないと思うのでございます。さような点につきましては、ただいまいろいろ実際の運用について各方面の御意見を承わっておる段階であります、従いまして準備の中間報告を今せよと言われましても、その点を申し上げるのもいかがかということで、格別御報告するまでのものになっていないということを先ほど申し上げたわけでございます。さような点で、これをすみやかに一本にするということを答弁申し上げたからといって、すみやかというものの通常概念からして、これが半年であるとか、あるいは何月であるとかいうようなことにはどうぞおとり下さらないで、私どももそれは誠意をもってやっておるつもりでございますので、これはもう少し時間をかしていただかなければ、ほんとうにいい表ができるとは思われないのであります。その辺のところは御了承いただきたいと思います。
  84. 滝井義高

    滝井委員 すみやかに一本化する、しかし各方面の意見なり問題点を調べなければならぬ、こういうことなんですね。そうしますと、各方面の意見をお聞きになるならば、具体的に各方面の意見をどういう工合にしてお聞きになりつつあるか、これを説明していただけばその方法が出てくるわけです。さらに実施して十カ月になるのですから、もはや問題点ははっきりわかってきているわけです。甲表の欠陥はどこにあり、乙表の欠陥はどこにあるか、私に言わせれ、ば、乙表はこれくらい事務の複雑なものはない、医者泣かせです。甲表なんというものは、たとえば十八点という科学的な基礎というものは何もわからない。高田さんが見えられたのたけれども、初診料四点を六・二〇三点、六・二〇三点を十二点と出し、さらに十八点と出した。一体十八点はどこから出ましたかと聞くと、それはつかみ金でございますと答弁している。そんなつかみ金の初診料というものは世界どこにもない。科学的な基礎がない。それならばはっきりとした科学的な基礎がないということを前局長みずからが認めている。そういうことを平気でやっておる。あなた方だって問題点がどこにあるかわかっている。もはやあれが実施されるまでにどこが論議されたか、問題点はわかっているはずです。いわんや十カ月間の実践の道を踏んでいるから、ますます問題点はわかっている。だからもしあなた方が各方面の意見をお聞きになっているならば、意見をお聞きになったのはどことどこの意見を聞いたか、その意見の中からどういう問題点が出たかを一つ報告を願いたい。
  85. 太宰博邦

    ○太宰説明員 御承知通り、点数表の改正は相当画期的なものでもございます。ことに甲表の場合におきましては、相当合理化の線を進めておりますが、それだけにまた実際の運営の点でもいろいろ御意見の出てしかるべきところでございます。昨年の十月から実施いたしたわけでございますが、その実施の結果についての御意見は、やはりある程度の期間いろいろ御検討いただいた結果御意見を承わる、こういうふうにしなければいけない。昨年の十月の実施でありますから、もうすでに全部についての問題点が出ていると必ずしも言えない。すでに問題点のわかっている点もございますし、なおしばらく御意見を承わっていきながら、その点を明らかにしていきたい点もあるわけでございます。従いまして昨年の十月から実施されたとは申しましても、私どもとしては各方面の御意見を承わるにつきましては、その方々がただ一回や二回のあれじゃなしに、ある程度期間もかけて、こういう点は直すならこうしたらいいというような点についての御意見も承わりたい、かように考えておるわけでございます。時間は多少かかるかもしれませんけれども、この点は御了承いただきたいと思います。
  86. 滝井義高

    滝井委員 答弁をごまかしてはいかぬと思うのです。意見を聞いたとおっしゃるから、どの方面の意見をお聞きになったか、そしてその意見の中の問題点はどこだ、こう私は御質問申し上げておる。あなたが今から意見を聞きますと言うのなら、私はどの方面の意見を聞きますかと、こういう質問になるわけです。しかしあなたは聞いたとおっしゃる。だからそういう点、もう少し質問もよく聞くし、答弁一つごまかしじゃなく、その場のがれじゃなくて的確にして下さい、われわれ真剣にやっておるのですから。あなた方は事務をやらぬからそれでいいんですよ。現実にやっておる療養担当者なり患者はかなわぬです。甲乙二表があるということは、ただそれはみんながあなた方のところに言ってこぬだけです。もはや甲乙二表というような、こんなばかげたものを一体厚生省のどの役人がやったのだということを、末端に行ったらみんな言っておりますよ。それは高田さんがやったのだと言ったら、高田さんはみんなにかみつかれますよ。あなたは現場に行って実際にやってごらんなさい。私は今度は診療報酬の請求書を持ってくるから、あなたは書いてみるといい。小数点以下があって、一円から用意してつりをやらなければならぬというような、こんなばかげたことをあなた方平気でやらして、そうしてじんぜん日を送っていくということは、私は許されぬと思うのです。もしあなた方がほんとうに日本の医療を考えておるというなら、あなた方は徹夜で一本化に努力すべきなんですよ。だれが何と言おうとやるべきなんですよ。ところがその信念がない。極端に私に言わせれば、ただ世の中の移り変りを見て、自己の安全を願いながら仕事をしておるところに問題がある。やはり火の中に飛び込んでも日本の大衆の医療を守り、日本の医者が科学的な良心的な大衆のために医療ができるという姿を作ろうという情熱があるならば、あんなくだらない二本立をこんなに長く放置するはずはない。私をして言わせれば、あなた方の熱意がない。だから私は再三にわたって言っておる。医師会と厚生省、医師会と目病の問題をどうしても御解決になろうとするなら、徹夜でやりなさい、三日でも四日でも寝ずにやったら片づく。その情熱がないところに、日本の医療の混乱の根本的の原因があるのです。私はその問題はこれ以上は言いませんが、これだけ言っておるのだから、賢明な太宰さんはよくおわかりになっておると思うのです。もう少し良心的にやってもらわなければ困ると思うのです。問題がどうだ、意見がどうだという、意見を聞くならばどことどこの意見を聞くか、ポイントがあるはずです。それをもう少し大臣に積極的に進言してやらなければ、現実には毎日動いておるのですから、動いておるものをすみやかによりよき方向に動かすことは行政の責任です。これは国会が関与することができるならわれわれが早くやります。行政の面にわれわれは関与できないので、むしろわれわれは今切歯扼腕しておるのです。そういうことで一つもう少し努力をして下さい。あなた方がしなければ毎回やりますよ、来月もまたやります。  次に医療調査会の問題です。この医療制度調査会も、法律は四月の初めにできたにもかかわらず、まだ人選をしない。これは期間は二年ですよ。この前も言うように、そしてしかも七人委員会報告はずっと前に健康保険について出ておる。五人委員会報告は今年の三月の終りに出した。そうしてその委員の任命というものは、じんぜんとして行われない。これは一体どういう理由で委員の任命が行われないのですか。
  87. 牛丸義留

    ○牛丸説明員 医療制度調査会は、お言葉のようにさきの春の国会で成立しまして、その後準備を進めてきたわけでございますが、途中で大臣の更迭があったり、あるいは医療協議会の問題で関係団体の間に多少のトラブルもあったような状況でありまして、なかなかどういうふうな調査会の構成に持っていっていいか、あるいはそこの中で何を審議するか——この会の発足を早くするということだけが目的ではございませんし、結局は関係者がみんな同じこの調査会の中で医療制度の本質的な問題を協議して、そこから建設的な結論に持っていくというところに目的がございます関係もございまして、その調査会の成立した現在、準備を進めている段階でございまして、遠からず委員の発令までいけるのじゃないかと思っておりますが、現在のところなおその準備に着手しているような状態でございます。
  88. 滝井義高

    滝井委員 政府労働組合には、法治国家だから法律を守れとよくおっしゃいます。あの法律が通過してから四カ月たちますよ。四、五、六、七、八と足かけ五カ月目です。任期は三年ですよ。五カ月過ぎてあと一年半しかその仕事はできない。こういうように政府は、人には法律を守れというけれども自分は一向に法律を守らぬ。何のために国会が議決して法律を作っておるか。そこで、近く任命するというならば、委員任命の基準は一体どういうところにあるのですか。
  89. 牛丸義留

    ○牛丸説明員 調査会の構成その他は政令にゆだねられておりまして、現在まだその政令が制定されてない段階でございますので、はっきりしたことは申し上げられないわけでございます。しかし少くとも医療制度調査会の本旨に従って、医療を行う医師、歯科医師の人たち、あるいは医療を受ける一般の人たち、それからそれとは直接関係のない中立的な人たちというようなことが、少くとも構成要件としては考えていかなければならないのじゃないか。しかし御存じのように、いわゆる団体の推薦によるような利益代表の構成をとりますと、社会保険の場合の実例を見ましても、これが討議をして建設的な意見を述べ合う機会よりも、むしろ利益を主張するような結果にならぬとも限りませんので、委員の構成を学識経験者としての任命という形式をとった方がいいのじゃないかという意見もございます。それらの点について現在事務的に検討している段階でございます。
  90. 滝井義高

    滝井委員 法律はどうなっておりますか。法律委員の資格、あれは私は多分学識経験者で構成するとかいうことになっておった文章じゃなかったかと思うのですが、今手元に法律がないので、その委員の資格というか、それを法律を見て答えていただきたいと思います。
  91. 牛丸義留

    ○牛丸説明員 今手元に法律がありませんが、委員の構成については別に書いてなかったと思います。調査会が何をするかということだけが設置法の中に書いてあったのじゃないかというふうに私は記憶しております。
  92. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、委員二十人を置く、これだけですか。その委員は学識経験者の中から二十名を任命する、こうなっていませんでしたか。
  93. 牛丸義留

    ○牛丸説明員 委員の構成と数は政令にゆだねられているはずでございます。設置法に具体的には書いてないと私は記憶しております。
  94. 滝井義高

    滝井委員 そこは私法律を持ってこなかったのではっきりしないのですが、あれは学識経験者だけではなかったかと記憶しておるのです。そこで労働組合の代表も入れてくれという論が総評あたりから出てきておるし、われわれもさいぜんあなたが言われたように、療養を受ける側と療養を担当する側と、それから学識経験者、こういう三者構成の形が当然出るべきだと思うし、しかもその人たちは担当者なり受ける側として出るのじゃなくて、一応出る形は学識経験者というか、そういう形で出ていくべきであろうとは思っております。思っておりますが、そのはっきりとした基準がまだきまっていない、政令も出ていないということでは、どうも厚生省は怠慢だと私は思うのですよ。一体毎月月給をもらって何をしているのか、悪い言葉だけれどもこう言わざるを得ない。足かけ五カ月になるのに、まだ臨時医療制度調査会の委員さえもきまらぬ、委員の任命の基準もきまらぬのじゃ情けない。これは大臣が来たら文句を言いますが、こんなことでは、甲乙表の一本化は百年待ってもきまらぬですよ。そういうでたらめな行政は、私はやるものじゃないと思うのです。月給はきちんと払いますから、一つ仕事を早くやって下さい、お願いしますよ、国民としてはそう言わざるを得ない。毎月月給をもらっておって仕事をしておらぬじゃ困る。こういうものは、すみやかにといったら、やはりすみやかにやらなければならぬ。これが常識ですよ。法律が四月六日か八日に通ったら、やはり五月中には政令ができておって、委員の任命が行われる基準ができておらなければならぬ。八月になってもまだ何もできておらぬ、今から政令を作る、基準も今から相談して作るというのでは、これでは明敏な牛丸審議官が任命された価値がないですよ。そこらあたりはもう少しはっきりして下さい。  それと関連をして、こういう委員がだんだんできておりますが、この際そういうところには、やはり目病代表というようなものも、甲乙ということで入ることになるのですか。この点はどうです。そういうように療養を担当する側と、それから受ける側と出るのですが、やはり委員の選択も、基金とか医療協議会でやったと同じように、甲表代表、乙表代表、こういうようにチャンピオンが入ってくるのですか。
  95. 牛丸義留

    ○牛丸説明員 ただいま申し上げましたように、いかなる構成になるかは、おしかりを受けましたが、現在まだきめてないのが事実でございますから、率直にあやまりますが、たとえば三者構成をとった場合にも、医師、歯科医師ということで入ってくるわけでございますから、団体の代表というふうな資格では入れないのじゃないか。学識経験者的な個人の資格でしか入る人はないというように私は考えております。
  96. 滝井義高

    滝井委員 そこらあたりの取り扱いは、きわめて微妙なところがございます。すでにあなたたちは基金の理事の問題、医療協議会で一応のルールというか、一つのレールを敷いたわけです。しかしこのレールは今途中で切れて、日本の医療行政、むしろ厚生行政と言った方がいいかもしれませんが、どうにもならぬという状態になっていることは、もう身をもって経験をしている通りです。私はこの前厚生省の顧問、それから社会保険審議会会、臨時医療制度調査会の委員、また中央社会保険医療協議会の委員、これらの問題を一つひっくるめて、土俵を広げて解決すべきだということを申したのは、そういう点からです。一つ委員の任命の基準その他については十分頭を冷やして、すみやかにやってもらいたいと思うのです。  そこで、それと少し似通ったことになるのですが、これは太宰さんの方になるのですけれども、地方医療協議会というのは、甲表の代表はちっとも入っておらずに運営されておるのですが、これは一体どういうことですか。なぜ中央だけ病院協会という甲表の代表を選ばなければならなかったのですか。
  97. 太宰博邦

    ○太宰説明員 社会保険医療協議会にも、中央の協議会と地方の協議会とあるわけでございますが、大体その任務としているところがやはり違っておりまして、診療報酬というようなものにつきましては、中央の医療協議会で論議されておるわけでございます。さような点で、いろいろニュアンスの違いがございますので、委員の任命につきましても、やはり必ずしも中央、地方が画一的でないということがあっても差しつかえない、かように考えております。
  98. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、身分、いわゆる保険医の指定取り消し、これは診療報酬よりかもっと大事なことです。身分ができて初めて診療報酬の問題が出てくる。身分を逃げられて、地方の医療協議会というものは、どうしてこれを問題にしなくていいのですか。ニュアンスが違うなんという、そういう法律上の見解はないはずです。もし法律上の見解で医師の利益を代表するものということで、あなた方のこの前の御説明のように、甲表を代表する医者というものをやはり入れておかなければいかぬのだとおっしゃるならば、身分の問題はなお大事なはずです。ところが一向にこれは厚生省も問題にしておらぬし、病院協会も問題にしておらぬし、地方でも問題にしておらぬ。地方は今までの姿でうまくいっておるのです。中央だけなぜ無理やりに甲表のものを入れてけんかさせて混乱させなければならないのかということです。これはどうもニュアンスという言葉では説明できないのです。法律ですから法律の問題をニュアンスで言うことになると、これは大へんです。
  99. 太宰博邦

    ○太宰説明員 これは医療協議会法の十四条の所掌事務を見てみますと、中央の医療協議会については療養担当者の保険診療に対する指導監督、こういうような事項がございます。それから第二号にそれの診療報酬の事項があるわけであります。地方協議会会はその二の方を落しまして、第一に掲げる事項をやる、こういうわけでございます。先ほど申し上げました通り、私どもがこの中央医療協議会の委員の選任についてとりました線というのは、やはり現在の診療報酬というものを論議される場所において、甲表と乙表とあるならば、それぞれの表をとっておる医師の利益を代表する方に出てもらう必要がある、こういう点からいきまして、それをどういうふうに調整するかという点についてはいろいろ肝胆を砕いた点でございましたが、地方の方につきましては、そういう点については諮問の対象の外でございまして、それは指導監督ということでございますれば、甲表をとっておろうが乙表をとっておろうが、それを格別主張しておる関係団体から委員を任命しなければならぬということもなかろうかと存じておる次第であります。
  100. 滝井義高

    滝井委員 どうも私、それは法律論としては納得がいかないのです。それは中央だって地方だって任務が違うだけで、医療協議会というものは同じです。医療協議会法という法律の中にあるのですから。ただ中央の医療協議会は診療報酬をやるし指導監督をやる、地方の医療協議会というものは、保険医の指定取り消しをやるのだ、これははっきりしている。そうすると身分の方は、甲表の方は自分の代表を出さなくてもよろしいのだ、どんどん切ってもいいのだ、こういうことになるのです。診療報酬よりか、まず一番大事なのが身分ですよ。身分があって初めて診療報酬というものが第二次的に出てくるのです。保険医の身分なくして診療報酬というものはない。それは普通の医者ならばどんな方法をとろうと関係がない。健康保険がどんな診療報酬をとろうとも、保険医であり、保険医療機関であるところに関係があるのだから、その身分について何もないということはおかしいのです。こういうふうに、どうもこれは高田さんを前に置いてはなはだ言いにくいことですが、あなたの先輩のやったところははなはだ抜けておるところがある。抜けておるところは改めるか、あるいはそれをもとに戻して考え直すかする以外にないのです。それでは医療協議会は甲表のものをこれから全部任命するのだということになったら、今度は日本全国かなえの沸くがごとくに大騒動になりますよ。ところが法律上の趣旨は、この前あなた方がいろいろうまいことを言いましたけれども、地方協議会の点は、そういう上手の手から水が漏れておるのです。これはニュアンスでは説明できないところがある、こういうことです。一つすみやかに、臨時医療制度調査会の発足ができるように精力的に一つ準備をしてもらうし、九月には任命をしておって下さい。これは一つ宿題です。それから健康保険病院のことについては一年間待ちますから、国家公務員と同じように一つ来年の八月には一カ月分の期末手当がもらえているように処置していただきたいと思います。これは来年の八月まで待ちます。そのときには私は国会議員でないかもしれませんが、国会議員でなければだれかほかの人に頼みます。それで一つ局長もかわることであろうし、しっかり事務引き継ぎをしてもらいたいと思います。  それから甲乙二表の一本化についても、きょうは医療課長が来ておらぬが、折に触れてではなくて、精力的に意見を聞いて、九月になれば一年になりますから、一年になれば問題点の結果はわかるはずですから、あなた方の保険局の見た甲乙二表の一カ年間実施の結果を一つ出してもらいたいと思います。  それから八・五%のワクの拡大ができたかどうかの資料を出してもらいたいということを言いましたが、これはどうですか、できておりますか。これはきょうで三回目ですよ。前にも二回言っておる。これは私は宿題として出しておきます。各甲表の採用の病院で最近におけるいわゆる薬品の使用の変化はどういうふうになっておるか。十七円の薬がきまったのだが、十七円以上の薬が果して今までのように頻繁に使われておるかどうか。注射薬は皮下二十三円、静脈三十四円になったが、一体静脈では三十四円以上の薬、皮下では二十三円以上の薬がどういう状態で甲表の病院には使われておるか。それからそれが製薬業にはどういう影響を及ぼしておるか。これは影響ないということを前の高田薬務局長は答えたが、しかしあなたの方はそれは調査をいたしましょう、こういうことです。同時に私は各甲表を採用した病院の旧点数と甲表の点数との比較、それから旧乙表と新しく今度変った乙表との比較、これによって果して八・五%のワクの拡大ができたかどうかがはっきりわかる。それを一つ出してくれということをお願いしたのです。この前もらった資料というものは、去年の五月とことしの五月とを比べた資料で、そんなものは実際は役に立ちません。だからそれを出してくれるようにお願いした。これを出しますという御意見だったのですが、きょう一つ御説明を願いたいと思います。これで終ります。
  101. 太宰博邦

    ○太宰説明員 先ほどの甲乙二表の実施後一年間の結果でございますが、そういうものについて九月に報告しろということ、これはその通りいたします。  それから八・五%上ったかどうかの点ですが、これは前にも申し上げましたように、なかなか医療行為自体がすでにもう変っておりますものでありますから、前のものであったならばなんぼであるか、今度のようになって幾らというこまかい点は出ないと思います。これをどういうふうに推計していくか、そういうようなことを考えて、どこまでそれができるかということであろうかと思うのでありますが、主管課長が来ておりませんので、ここでちょっとお答えはいたしかねます。
  102. 滝井義高

    滝井委員 甲乙二表を一本化するためには資料が必要なんだ、こういうことをあなた方はおっしゃったわけです。われわれも八・五%のワクの拡大ができておるかどうかという点も当然見なければならぬし、それによって同時に八・五%のワクの拡大ができておるならば、それはある程度あなた方の言ったことが正直でほんとうだったということにもなるわけです。それを調べるためには、去年の五月のものとことしの五月のものと点数表を比較したってだめなんだから、一つ金をかけてでもよろしいから、そんなものはわずかの金でいい、前の点数をカルテを見て当てはめてみたらすぐ出る。医療行為対象が違っておったって、病院収入という面では、去年の五月とことしの五月と、新点数と旧点数を当てはめて比べてみたら、増加しておるか減っておるかという数字を見ればいいんだから、かまわない。そういう点、どうもわれわれがお願いした点をあなた方はちっともやろうとしない。そんなことなら国会は要らぬですよ。国民の代表が頼んでやってくれと言っておっても、それをサボタージュしてやらぬなら国会は要らぬ。しかもあなた方の判断で勝手におやりになるなら、国会は要らぬですよ。役人ばかりで政治をおやりになったらいい。私はこれが三回目です。この前二回も言っているのです。これは館林君に何回言っておるかわからぬです。きょうは八月の十日です。ちょうど一カ月ぶりに委員会があるということは天下公知の事実です。そういう点をもう少し局長、熱意を持ってもらわぬと私はいかぬと思う。まるっきりあなた方がサボっている以外の何ものでもない。そのサボっておることを、あたかも日本医師会と病院協会がけんかをしておるために物事が進まぬように世間に印象づけられたり、流布されたらかなわぬ。だからもう少しそういうことは無関係に、やるべきことはきちっとやって下さい。何もこういうことは何百万円の金がかかるわけじゃない。あなた方の傘下の病院一、ニカ所に五万か十万の金をやったらすぐできることじゃないですか。あなた方がだめだったら、私に二、三十万貸して下さい。私はどこでもやれます。こういうやさしいことさえも、あなた方はサボタージュしてやらない。どうですか、九月までにやってくれますか。これはカルテを見てやったらすぐできますよ。三万か五万の金をかけたらいい。一、二統計調査部の人に臨時にやってもらって、そして八・五%のワクの拡大ができたかできぬか、これが一番大問題じゃないですか。そういうことの証明をやることがあなた方の義務なんですよ。当然にやらなければならぬ。政策を実施したら、やることが当然なんです。これで私は三回目ですよ。三回言ってもちっとも誠意がない。そういうことならば医療課長をかえてもらいましょう。新しい医療課長にしてやらして下さい。サボタージュするような医療課長では処置ない。大蔵省と交渉しているかと聞いたならば、折に触れて交渉しておりますということを言うような医療課長ならかえて下さい。それでなければ、きょうすぐ医療課長を呼んで下さい。やっておるのかどうか。すぐ呼んで下さい。甲乙二表の八・五%のワクの拡大ができたか、旧点数と新点数との比較、これはこの前二度言ってきょうは三度目です。で、そういうようにどうも行政というものが、私に言わしめるならば弛緩をしておる。国民の声として、一つ月給はきちんと払いますから、仕事はきちんとして下さるようにお願いをいたして、一応私のきょうの質問を打ち切っておきます。
  103. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 八木一男君。
  104. 八木一男

    ○八木(一男)委員 社会局長に御質問する前に、委員長にちょっと要望したいことがございます。十分おわかりのことと思いますけれども速記録にとどめておきたいと思いまして御要請申し上げるわけでございますが、今日の委員会の運営は、委員長も御承知通り非常に不円滑なものであります。不円滑の原因は、衆議院、参議院の委員会が同日に行われて、両方で出席要求する政府委員がダブるという問題が一つ。もう一つは、労働省に関しては最も出席を第一に要求されている労働大臣が全然両方に出てきておらないという点であります。こういう点につきましては、即刻改めていただかなければ困ると思う。ところが九月の委員会開催日は、委員長がおられないので、委員長代理としてははっきりお答えになれないと思いまするが、九月のときにそういう問題が起らないように、田中委員長代理から十分に御連絡になっていただいて御処置を願いたいと思います。
  105. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 ただいま八木委員から御発言の件につきましては、永山委員長が見えられましたら、とくと相談をいたしまして、できるだけ御要望に沿うように処置いたします。
  106. 八木一男

    ○八木(一男)委員 絶対にということでなければ、できるだけでは不満足なんですが、絶対にという意味だと田中さんのお気持を尊重して、そういうことでどうぞ……。  高田さんに部落問題についてで御質問申し上げたいわけでございますが、社会局長にこの間御転任になられましたけれども、前にも社会局におられたようでございますし、十分に厚生省全般のことに御通暁でいらっしゃいますので、よく御存じだと思いますが、この問題の推進には厚生大臣が十分に当られなければならないわけです。そういう点で社会局長として、渡辺さんが新任されましてから、どのような厚生大臣に対する進言とか、そういうことをなさったか、おありになったら一つ伺わせていただきたい。
  107. 高田正巳

    ○高田説明員 同和問題につきましては、新大臣に事務説明をいたしますときにも申し上げましたし、またその後特別に若干時間をさいていだだきまして、いろいろお話を私たちからもいたしております。なお国会等でも、私十分承知をしておりませんけれども、従来から八木先生を初め、当委員会でもいろいろ御質問がございまして、党におきましても与野党通じて、なかなか問題になっておるようでございます。従来の線を踏襲していくわけでございますけれども、できるならば来年度はもう少し積極的に施策を講じたい、こういうことで関係各省が与党側の号令で実は集まりまして、いろいろ今相談を進めておる最中でございます。私どもといたしましては、今御指摘のように、結局各省がその気になって一生懸命やっていただきませんと、なかなか解決のつかぬ問題であります。ことに建設関係等が非常に事業としては重要になって参るわけでございます。しかし厚生省といたしましては、自分でやるべき分野もございますし、さらにまた今御指摘のように、各省が力を入れていただけるように推進をいたすといいますか、そういう役割も持っておるわけでございます。大いに積極的に進めてみたい、かように考えております。
  108. 八木一男

    ○八木(一男)委員 実は部落問題の中で国会で一番大きく問題にされましたことは、現実の各省の予算もそうでございまするが、部落問題解決のため内閣に直属する強力な権限を持った審議会を設置するという問題が、国会の論議の場面においては一番大きくされたわけであります。その経緯は高田さん御存じじゃないかと思いまするし、御存じでなければいけないのですけれども、ちょっと昔の話ですから、もう一回重ねて申し上げますると、昨年の三月のたしかし旬でございました、五日か六日の社会労働委員会において、時の岸内閣総理大臣臨時代理から、強力な部落問題解決のための審議会を置くことを確約せられた。それも野党に追及されていやいやしぶしぶという形でなしに、内閣総理大臣から積極的にそういうものを設置するというはっきりとした御答弁があったわけです。ところが昨年の十月に閣僚懇談会というものが設けられた。閣僚懇談会をもってすりかえる気持かということを、昨年の十二月の国会において質問をいたしましたところ、そういう気持はない、閣僚懇談会は一応設けるけれども、今度この審議会をどうするかということも、閣僚懇談会で審議をしていくという考え方を持っておるのであって、審議会は設置するというような御答弁であったわけです。ところが、その後全然その問題が遅滞しておりますので、実は本年の七月の四日に、官房長官の椎名さんのところに、社会党の方から、淺沼書記長並びに私どもがつき添いまして、申し入れをいたしました。椎名官房長官も、そのような経緯並びに内閣総理大臣意思を尊重してこの問題を進めるということを言っておられたわけです。ところが残念ながら、その後進んだような形跡がないわけでございますが、これは閣議の問題でございますから、高田さんに申し上げるのは筋違いかもしれません。しかしこの問題が進み出しましたのは、堀木厚生大臣のときに、厚生大臣が非常に問題に理解がおありになりまして、閣議で十分にこの問題を主張せられましたことが推進の要因になっておったわけです。その後の厚生大臣が、堀木さんほど積極的でなかったのか、ほかの問題に忙しくて時間がなかったのか知りませんが、そういう問題で停頓しておるわけでありますから、この総理大臣のやりたいと考えておること、国会でやるべしと議論をせられたこと、並びにやるという答弁せられたものを推進するためには、やはり厚生大臣が本腰でかかってもらわなければならないと思う。そういう点について、新任の厚生大臣社会局長が十分補佐の任務を果しておられるかどうかが、少し疑わしいと思うのです。それについて高田さんがどのような補佐をされたか一つ伺いたいと思います。
  109. 高田正巳

    ○高田説明員 審議会を設置せよという御趣旨の御質問なり何なりがありまして、そしてそれが非常に問題になっておるということは、私も実は十分承知をいたしております。ただ、ただいま御指摘のように閣僚懇談会もできておることでございますし、その後各省といたしましても、相当足並みをそろえてたびたび集まっております。その当時のいきさつを私つまびらかにいたしませんけれども、今日の態勢でもってとにかくやるべきことをどんどんやっていく。結局これは予算が一番問題になってくるわけでございますが、やるべきことをどんどんやっていくということが一番肝心な問題じゃあるまいか、私は根本的にはさように考えておるわけでございますが、なお審議会のことにつきましては、当時のいきさつ等を私もう少し勉強さしていただきまして御返答いたしたい、かように考えております。
  110. 八木一男

    ○八木(一男)委員 高田さんの御答弁によりますと、高田さんも社会局長になられてから日が浅いので、御研究の日がまだ少いようでございますが、どうか一つ十分に御研究になって、前後の経緯もお調べになって、大臣を補佐していただきたいと思います。  ところで、渡邊厚生大臣に御質問をいたしますが、問題は部落問題でございます。今ちょっと半分やりかけたわけでございますが、部落問題について渡邊さんがどのような御認識を持っておられるか、一つ御説明を願いたいと思います。
  111. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 今、同和対策問題ということが、いろいろとわが党内部におきましても、政府におきましても強調されておるわけでございます。民主主義の近代社会におきましては、どっちかといいますと、部落問題に限らず、そういう一つの一般的な社会公共施設といいますか一福利施設といいますか、そういうものを大きく取り上げて、すべて公平な立場における社会福祉施策というものを立てていかなければならぬ。しかし伝統的にそこの一つの部落というものが、他の近代都市との間におきまして、いろいろな事情でもって経済交流その他がない場合においては、やはり特別にこれを取り上げまして、社会共同施設というものを特に作ってあげていかなければならぬ。これはやはり近代都市国家としての重要な問題であろう、かように考えております。
  112. 八木一男

    ○八木(一男)委員 厚生大臣は新潟県の御出身でいらっしゃいまして、新潟県にも部落の差別現象はあるのですけれども、それがほかのところに比べれば非常に薄いので、実感が来ないかもしれません。しかし関西以西においては、非常に大きな現象がまだ現存しておるわけです。今社会共同施設と言われましたけれども、厚生省の担当部門は、社会厚生施設というような、何か共同浴場だとか公民館だとか、そういうものに関係が深いから、そういうお言葉をお使いになったかもしれませんけれども、ほんとうの解決はそれだけでは済まないということをぜひ御認識願いたい。  部落問題は、簡単に申しますと、観念的な差別の問題と考えておられる方が多い。非常に非人間扱いをした略称といいますか、俗称で呼んで差別をしておる問題であるというように考えておられる方が多いけれども、そういう問題は、水平社運動が起って、それに対する糾弾が起ったので、一応表面的にはなくなった形になっておる。しかし実際には非常にあるわけです。表面には口に出さないけれども、そういうことをこそこそとしゃべっておるという事象もあるし、こそこそしゃべるだけでなしに、人間扱いをしないような事象があるわけです。端的に一つだけ申しますと、関西以西では、未解放部落の人とそうでない人との間に結婚問題が起ったときに、うまくいった例が非常に少い。ほかの要因が一つもないのに、それだけで、なま木を裂くように無理やりに引き裂かれて、自殺をしたりとんでもないことが起るという事象が、まだ跡を断たないというような状態です。そういうような状態でありますので、事なまやさしい問題ではない。社会施設というようなものを急いで作るだけでは解決しない。もちろんそれは作らなければならないけれども、淵源からたどると非常に長くなりますので省略をいたしますけれども、とにかくこの問題を解決するには、部落の差別と貧乏の悪循環を断ち切らなければならぬ。差別から貧乏が起っておる。ところが、今貧乏があるために差別が抜け切らないわけです。前の方の差別のところから申し上げないと十分じゃありませんけれども、同僚の滝井委員、小林委員あるいは大原委員の御質問が残っておりますから、これは別の機会に十分申し上げることといたしまして、貧乏のところから始めますと、貧乏の状態が非常に多い。たとえば、貧乏だから、子供さんを高等学校とか上級学校に入れられる人は非常に少い。ほとんどない。それだけでなしに、子供のときから働かせないと食うことができないので、義務教育を休ませる。長欠児童の問題になってくる。あるいは無就学児童の問題になってくる。学校に全然やらないというような問題になってくる。ところが、そういう人たちがそういう状態にありながら、そこの子供が一生懸命勉強して、中学校をある程度よい成績で出る。非常に困難な条件を冒して出ても、今度就職するときに、大会社では実際上の差別をやってこれを採用しない。未解放部落民であるという名目のもとに、それを採用しなかったならば大問題が起ります。ですからそういう理由はつけませんけれども、実際には身元引き受け能力が少いというような一般的な理由、それもけしからぬ理由でありますが、そういう理由をつけて大会社では採用しない。従ってつぶれかけの会社しか採用してもらえないし、それも採用してもらえないことが多い。そうなると非常に不定定な、たとえばパチンコ屋の従業員であるとか、競輪場の従業員であるとか、そういうところに就職するというような問題が起る。同じ成績——というよりも、成績の下の子、また成績だけではありません、いろいろの工場なり会会社の適性が、普通に見たら悪いはずの子がいい事業体に就職して、そして非常な努力、苦難のもとから努力した者が、そういうところに就職できない。しかも就職できないことをばかにされるということになれば、その人たちは虚無的にならざるを得ない。虚無的になることから、いろいろのときに少し気の荒いことがあるというような現状がある。気の荒いという現状をつかまえて、そのような気の荒い現状があるから差別をされるんだということになってくる。気の荒くなる原因は何か、貧乏から来ているわけです。だれでも一生懸命努力して、苦難のもとで努力をして、楽な努力をした人より以上の成績をとって、そして自分の希望の就職が、絶対的にだめなら仕方かありませんけれども、不公平な事情でだめになって、しかもその事情を軽べつされるということになったら、そういう人たちは虚無的にならざるを得ない。それは一例であります。そういうようなことから、表面的な差別はなくなっているけれども、実際的な差別が消えるわけではない。そのような虚無的になったのは貧乏から起っている。その貧乏も解決しないで、虚無的な事象だけを取り上げて、そういうことがあるから差別されるのも仕方がないというような認識に立つ人がある。そういう点は一つ厚生大臣よくお心にとめておいていただきたい。そういう点があります。たとえば不衛生だ、衛生観念がないということで差別をする。ところが衛生観念がないといったってしょうがない。たとえば非常に貧乏なために四畳半くらいの部屋に六人くらい暮らしている人がいる。そういうところでは手ぬぐいも少いということでトラホームが伝播する。トラホーム患者が多いから、伝染するといけないというので差別をする。そのもとは貧乏から来ている。また自分のうちに便所がない家庭がある。朝子供たちが学校に行くときに、大人はがまんしても子供たちは学校の時間に間に合わなければならないし、用便はがまんできない。従って下水道で用便をする。そういうところだけを見て、そのような公衆道徳に反するような事態だから差別をされるのだということを、自分自身は恵まれていて、そういう人たちに対して無理解な人たちは言う。そういうことで、差別が消えないという現象が起っている。そういう問題は、尋常一様の問題ではない。そういう問題を解決しなければならないということが提議されて、一昨年の十一月閣議において取り上げられて、岸さんもこれを取り上げ、提唱したのは堀木鎌三氏であります。そういう方針が内閣でもきめられたはずです。その問題を解決するには、もちろん公民館を建てる、共同浴場を建てる、あるいはトラホーム対策をする、あるいは就学対策をする、あるいは不良住宅の改築をするというようなことも必要であるけれども、根本的には貧乏の問題を直す、就職ができるようにする、ほんとうの零細農業が成り立つようにする、ほんとうの零細商工業が成り立つようにする。そうして、それができない間は、失業対策事業を十分にしなければならないし、また生活保護法の方も何とかしなければ生活上の問題が解決できないというような、すべての問題に関係しているわけです。そういうすべての問題を解決するために、内閣に特別な強力な審議会を置いて、あらゆる関係官庁——関係官庁はこれだけあります。大蔵省、地方日治庁、農林省、通産省、厚生省、労働省、建設省、法務省、文部省、それだけの多くの官庁が関係があるわけであります。そういう関係がございますので、それでそういうところの政策をまとめてやらなければならないということで、審議会ということが提議をされて、岸さんも取り上げなければならないという返事をされたわけです。ところが、昨年の十月に閣僚懇談会を設けた。その問題ですりかえられては問題解決ができないので、昨年の十二月に岸さんにまた質問した。ところが、閣僚懇談会はとにかく間に合せにすぐ作った、しかし、部落問題の解決のために審議会を作ることを否定したのじゃない、閣僚懇談会はこの部落問題の審議会をどうするかということを審議しますということを答弁されておるわけです。ところで、岸さんもそういう気持でやってもらわなければなりませんけれども、こういう問題を推進するには、その問題に最も今までに関係深かった厚生大臣に非常に熱心に取り組んでもらわなければ、なかなか問題が進まないわけです。特に東日本の人は、渡辺さんもちょっとぴんときておられないようですけれども、事象を目の前に見ておられないので、なかなかぴんとこない人が多い。閣僚がちょいちょいかわる、前の閣僚はそういう気持になっておっても、新しく来た閣僚は無知識だ、そういうことでいつも停頓する。そういうことじゃなしに、渡邊さんにしっかりとこの問題を把握していただいて、堀木さん以上に推進していただかなければならない。この問題について簡単でけっこうですから御答弁を願いたい。
  113. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 同和対策問題につきましては、先般党において堀木さんが今までの経過を報告されました。それからまた、たしか二、三日中に閣僚懇談会をやるということで、私も今非常に勉強しておるわけでございます。私は若い時代に奈良県に三年ばかりおりましたものですから、部落問題につきましてはいろいろな事情はよくわかっておるわけでございます。それで先ほど申しましたように、歴史的ないろいろな問題がひそんでおるから、そういう問題は、われわれが現在の民主主義の社会におきまして、社会福祉国家建設を平等にやるというばかりではなく、特殊な事情を考慮してやらなければならぬ、こう申し上げたわけでございます。ただいま八木委員からいろいろとお話がございまして、さらに私認識を深めようとしておりますから、どうぞ御鞭撻、御指導のほどをお願いいたします。
  114. 八木一男

    ○八木(一男)委員 部落問題解決審議会について閣議の中で強力に推進されるやいなや、この点について伺いたい。
  115. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 党にせっかくこういう対策委員会が特別にあり、また総理大臣も皆様方に公約されました以上、できるだけすみやかにこれを大きな軌道に乗せて、もっと具体性を持たせていきたい、かように考えております。
  116. 八木一男

    ○八木(一男)委員 それと申しますのは、実は岸さんの政策の大半はめちゃ、くちゃにでたらめなことが多くてけしからぬことが多い。私は大反対ですか、部落問題についてはちょっとましなんです。ところが、ほかの問題についてよい総理大臣が出ましても、何しろこの問題を理解するのは東日本の人じゃわからないし、また非常に淵源の深いものでありますから、ちょっとやそっとの認識ではだめなんです。その意味で、内閣がかわろうが、担当の各省の大臣がかわろうが、磐石なものを作り上げておかなければ、何百年にわたる同胞を非常に非人間的扱いにした国民の責任を解消することができない。ですから、閣僚懇談会というものでは閣僚がかわったごとにごたごたまた停滞をする。内閣がかわったらそれがやめになっちまうかもしれない。だから、そうじゃなしに、今せっかく何百年の問題が解決しようという機運が全国的に高まった機会に、必ず恒久的な審議会を置いて、どんな事態が起ろうとも、それを解決しようとする努力が中断しないようにしてもらいたいということと、もう一つは、政府部内だけの論議ではやはり実態に触れないので、そういう部落解放の問題に直接に身をもって当ってきた人の意見をいれるようにしてもらいたい。そのような機関でやらなければ、やはりいかに頭のいいお役人がたくさんいても、自分の身にほんとうにしみじみと感じていないことはぴんとこないわけです。ぴんと十分にはこないわけです。ですから、そういうようなことに実際に経験のある民間の人も入れた審議会、しかも恒久的な審議会を設置されることが大事だと思う。それを閣僚懇談会でただ今の来年の予算たけの問題でやってしまったら、問題が小さな問題ではありませんで、何百年の被搾取の問題であり、何百年の差別の問題ですから、解決するには全力をあげても相当時間がかかりますから、そういうような恒久的な広範な大衆の意思を反映した機関を作らなければならないと思う。そういう点、一つ御認識を深くしていただいて、閣僚懇談会でいいんだ、予算をちょっぴりふやせばいいんだというようなことでお茶を濁さないように閣議を推進していただきたい。その点についてもう一回はっきりと御答弁を願いたいと思う。
  117. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 先ほど申しましたように、できるだけしっかりした軌道の上にこれを乗せまして、恒久的な対策を講じたい、かように考えております。
  118. 八木一男

    ○八木(一男)委員 もっとはっきり答えていただきたい。岸内閣総理大臣はやると言っている。内閣のやることは総理大臣が責任を持てばいいといったって、総理大臣は忙しい。ときどき外国へ何かと行かれるようです。それを担当大臣がどんどん補佐してやっていただかなければならない。留守の間にもちゃんと要綱まで作って、法律案まで作って、岸信介さんが帰ってきたら、これはどうでしょうかというくらいの用意をしておかなければだめです。内閣の官房がやる仕事かもしれないけれども、閣僚の中で最も関係の深い閣僚がそういうことを推進するという決心を持たなければ、ほんとうの内閣自体のきめている政策が進まない。野党に追及されるんじゃないんですよ。内閣がきめている政策が進まないんですよ。そういうことではいけないので、都落問題解決審議会の法案を早く出すように、横になっても、てこになっても推進するという決意をここで示してもらわなければ困りますよ。
  119. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 関係閣僚、特に私の所管といたしまするこの同和対策問題につきましては、近くわが党におきまするところの対策要綱というものもでき上って私どもの手元へ来ることになっております。それで、私といたしましては、お説の通り、できるだけすみやかなる機会におきまして、お説のような恒久機関的なものを設置するように努力いたしましょう。
  120. 八木一男

    ○八木(一男)委員 それから厚生大臣社会局長両方に御質問したのですが、両方のお言葉の中から、与党の自由民主党と相談してということを言われた。また、特に社会局長は与党の意見を伺ってというようなことを言われた。これは非常に困ると思う。岸内閣総理大臣発言を全部読んでおいてほしいと思う。一昨年日本社会党が取り上げてこの問題を言いましたときに、日本社会党は、民族のこの長年の不始末、何百万の同胞に対してそういうめちゃめちゃな目にあわしたことについては、一政党や一内閣の手で簡単に、安易に解決できる問題ではない、国民全体が解決をしなければならない、与野党ともに力を合せてやろうではないかということをわれわれも言い、山岸さんからも言った。そこで自民党が研究されることはよろしい。非常にいいことだ。しかし、その中には間違っている点もあるかもしれない。私どもは自由民主党に申し入れているけれども、自由民主党はなかなか会談に応じない。すでに十回ほど出し入れているが、会談に応じない。これは自由民主党に申し上げるべきことかもしれない。しかし、自由民主党の内閣でありますけれども政府は日本の政府である。その日本の政府の内閣総理大臣がそういう発言をした線に従ってもらわなければ困る。部落問題の解決についていろいろなことを審議なさるときには、自由民主党の意見も聞かれるがよろしいが、日本社会党の意見も聞かなければならない。あるいはほかの政党、たとえば、緑風会の意見があったら緑風会の意見もお聞きになったらよろしい。与野党ともに力を合せて進もうというときに、自由民主党の意見だけをお聞きになっては間違いが起ります。その間違いの例を一つ申し上げておきましょう。  私は自由民主党の政策要綱を十分読んでおります。相当たんねんに努力をされた点はわかっておる。しかし、部落問題解決審議会の点については、ちょっとは触れておるが、強力に触れておられない。それからもう一つ、モデル地区を作って、協力をする地区に対して推進するという文言がある。そういうことはとんでもないことです。自由民主党の政策正要綱にそういうことが入っている。私は持っておるし、読んでおります。そういうことはどういう意意味だとお考えになりますか。
  121. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 もちろんただいま御指摘になりましたように、これは政党政派の問題ではない。ただ、この間私ども党の社労の部会へ参りましたときに、堀木さんが参られまして、そうしてこの同和対策問題につきまして強く強調されていられたものですから、それで党の対策要綱というふうに私は申し上げたまででございまして、これはほんとうにそうした一方に片寄った一政党の問題じゃない。大きな社会問題として、われわれが広く手を携えて研究し、できるだけすみやかに恒久的な正規のルートに、予算の面におきましても、すべての面におきましてもやっていかなければならない、かように信じております。
  122. 八木一男

    ○八木(一男)委員 この何百万人の人が何百年間しいたげられた問題を解決しようというときに、自由民主党の選挙の基盤を伸ばすとか、日本社会党の選挙基盤を伸ばすとか、そのような政党の利己心でこういうものを取り扱ったらとんでもないことだ。そういう扱いをせられないということを断言していただけますか。
  123. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 ただいま申し上げた通り、政党政派の問題じゃなくして、やはり社会福祉国家の建設というものは、およそ一政党の問題じゃないということを私ははっきりここで申し上げておきます。
  124. 八木一男

    ○八木(一男)委員 高田社会局長に、もちろん厚生大臣の御答弁でけっこうなんでありますが、そのような点で今後おやりになりますか、どうか。
  125. 高田正巳

    ○高田説明員 ただいま大臣がお答えになりました通りで、もちろんそうでございます。先ほど私が御答弁申し上げました中に、与党の号令で各省が集まりました、与党の号令で集まったんですがということをちょっと申し上げましたので、今のような誤解をあるいは先生お持ちになったかもしれません。その前にも、与野党を通じて委員会で問題になっておりますが、というふうに私も申しております。当然事柄の筋といたしまして、役所といたしましては、広く御意見を拝聴したい、かような考え方でございます。
  126. 大原亨

    ○大原委員 関連して。大臣に御質問いたしますが、十カ年計画で三百億円使うと、一年に三十億円使う、こういう方針を自民党でおきめになるのはよろしいのですが、そういう大きな方針についておきめになるのはよろしいのですけれども、しかしその一年間に使う三十億円は予算に計上してもないのですよ。そういう金を自民党に協力する地域、その部落地域に配布する具体的な問題まで、自民党の指図を受けて行政官庁が動く。予算を計上してない今日、そういうどこへ配分するという具体的な問題まで、しかも自民党に協力する地域と、そういうふうに一つの党が——行政中立性ということがあるけれども、客観的に部落問題を根本的に解決する、そういうことでなしに、そういう行政上の分野にわたってまで一つの党と行政官庁、こういうものが一体となって、予算に計上してない金の配分に至るまで具体的に一つ見解をもってやる、こういうことまでやっておるというふうに聞いておりますけれども、これは厚生大臣としても局長としても、そういう行政中立性というものを侵すものである、こういうふうに思うのですが、そういう事実はございませんか。
  127. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 そういう事実はまだ見聞いたしておりません。
  128. 高田正巳

    ○高田説明員 今与党で特別委員会をお持ちになりまして、そこに関係各省も呼び出されまして、いろいろものを聞かれたり何かもいたしております。それでなお党の方で、いろいろとこの十カ年計画とか、あるいはまた来年度の予算の方針をどういうふうにするかというようなことにつきましても、その特別委員会で御検討になっております。これはしかしあくまでも党としての態度をおきめになるための御検討でございます。行政そのものについてとやかく申しておられるわけではございません。私はかように承知をいたしております。行政といたしましては、これは行政官庁がそれぞれ現地の実情に応じて物事を判断して参るもの、もちろん与党でございますので、与党の御意見も十分に拝聴した上で、行政官庁といたしましてそれぞれの具体的な実施策をとって参るものと考えております。
  129. 大原亨

    ○大原委員 私が申し上げたように、行政中立性、客観性というもの、そういう社会問題に即して税金を公平に使う、そういうことでなしに、一党一派のために税金を使う、かりそめにもそういうことがあってはならぬと思うのですけれども、そういう事実はないというふうに今大臣は言われました。それは間違いである、こういう大臣の所信なんですね。そういうことがもしあったとすれば間違いである、そういうことはあり得ない、こういうふうに考えてよろしいですか。
  130. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 さようなことはございません。
  131. 八木一男

    ○八木(一男)委員 今、大原君の言われたことで大体尽されておるのですが、その問題は、一番きょう御質問したかった問題であります。行政機関の責任で、行政をほんとうに公正にやってもらいたい。それを与党の恣意が入ったり、御用団体を介在させて、それで懐柔するというようなことをしないでいただきたい。結局言うことを聞かなければ金がもらえないということになると、実際にそれ以上に必要であっても、金をもらいたいために、ある程度で要望をとめてしまうというようなことに使われがちであります。それからまた時の権力に勢力を引きつけるために使われる。そういうことであってはならないと思う。ほんとうに何百年の間、何百万の人を非常に苦しめた、そういう状態考えますときに、そういう一党のやり方や、それからまた、たくさん要望が出たらあれだから、このくらいで言うことを聞くところはやるけれども、言うことを聞かないところはやらないよというようなことで懐柔して、ある程度でとめておくということをやってはいかぬ。そういうことをやったら、ほんとうにまた非常な別な意味の差別を政府がそういう気の毒な人たちに押しつけるということになる。これは自由民主党で何と考えられても、政府としては、正しき行政を行うという立場で、その点については予算をたくさん出す。これはよろしいのですよ。自由民主党が予算の方は相当検討されております。出されるのはよろしいが、行政のやり方については、ほんとうに行政府としての正しい公正なやり方で断じて貫いていくという御決心を一つはっきりと御表明願いたい。
  132. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 八木委員の御指摘通りでございまして、その点は御心配ございません。
  133. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 小林進君。
  134. 小林進

    ○小林(進)委員 厚生大臣にお伺いいたしますが、人命救助もしくは他人の災害、危難を救助するために一般人が協力をし、そのためにみずからが負傷をする、あるいは疾病にかかる、廃疾になる、時にはみずからの命を失うという、そういう犠牲的な行為に対しまして、まだわが日本の現行法には盲点があって、この人たちの犠牲を補償するような制度がないのであります。これは人命救助の問題にも関係しますので、その点においては、自治庁の関係事項でもあったり、あるいは公安委員会にも関係する問題であるかもしれませんけれども、しかしその最も必要とする点は、そういう犠牲者の残された遺族の扶助の問題、あるいは生活保護等の問題にもまた関連をいたして参りますので、むしろ私は、この問題は厚生大臣が中心となって、そうして一つ閣議をおまとめ願って、こういう犠牲的行為のその人たちの残されたあとあとをあたたかく見守っていただくような形を推進をしていただきたい。こういう意味で、あえて私は厚生大臣にこの問題を提起したわけであります。  事例を一つ申し上げて、御意見を承わりたいと思います。最近起りました事件で、新潟県三島郡越路町大字岩野に、野上寅吉という五十六才の農業に従事しておる方がおいでになったのでございますが、この方が、昭和三十四年六月二十三日午後六時ごろ、付近の同じく新潟県下の小千谷市三仏生という地先を歩いておりました。そこに三古用水という用水——信濃川からの取り口があるのでありますが、その三古用水わきの県道上を通行いたしておりますときに、小千谷市三仏生の佐藤トシ子という十二才の少女が、用水路に落ちておるのを見たのであります。それでありますから、勇敢にこれを救助すべく用水路に飛び込んだのでございますが、何分降雨増水激しいさなかでございますので、その用水の濁流に押し流されて、ついにみずから溺死をしてしまった、こういう事件でございます。問題は単純でございまするが、申し上げるまでもなくこの事件は明らかに他人の災害、不幸を救わんとしてみずからの災害を顧みず勇敢に人命救助に当ったのでありまするが、不幸にして悪条件が重なってみずからがその災害を受けて一生を終った、こういうことであります。ところがこういう犠牲的愛情の発露は社会的、道徳的にも高く評価されなければならない、こういう問題に対しまして、法の社会保障の制度あるいはその人のあとあとを保障するような形は、わが日本の既存の法律にはございません。これは申し上げるまでもなく職務によらない、一般人がこういうふうな犠牲的行為をやった。これが職務によるものでありますならば、これは古いところでは小野訓導でございますか、自分の教え子を救ったというようなことがございましたが、これは職務によって行われておりますから、相当それに対する国家補償が行われておりますが、今のこのような場合は一般人でございまして、職務というものでないのであります。それで私どもいろいろ調べてみました。警察表彰規則、こういう規則もありますが、この国家公安委員会規則第十四号、こういうのも適用になるのじゃないかということで調べてみましたけれども、適用にはなりません。警察官に協力援助した者の災害給付に関する法律、こういう法律も最近できたばかりの法律のように思っておりますけれども、この法律によっても、拡張解釈してこれを適用する場合にはやはり困難があります。これは何か警察官に協力して犯人を逮捕する等々の場合に危害を受けて負傷したとか死んだとかいう場合にはこの法律によりまするけれども、これは直接警察官を援助したわけじゃない。ただ水におぼれるのを助けようとしたのでありますから、この法律を適用することはどうも困難性があるということで、結局災害を受けない場合には人命救助には感謝状、従来の例からいいますれば、たまたまこの人が生きていれば、これは人命救助に対して感謝状をもらう、こういうことにとどまるのでございまするけれども、死んだ場合に対しては、その遺族等に対する恒久的補償というものは全然法律上にはないのでございます。こういうふうに、くどいようでありまするけれども、職務によらない一般人が自己の犠牲を顧みず、進んで人命救助に当り、そのために災害を受けた場合は、国または公共団体において私は早急に何らかの処置を講じて救助すべきものであると思いますが、これに対して一つ厚生大臣の信念ある御答弁をお伺いいたしたいと思うのでございます。
  135. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 小林さんがただいま御指摘になりました奇特なる行為によって犠牲となられた家族に対しての永久扶助というようなものにつきましては、私もいろいろと調べてみましたけれども、現在はいかなる法律にも当てはまっていないのでございます。厚生省におきましては、災害救助法の第二十四条がございまして、これは災害が起きたときにおきまして、輸送、土木、医療等に従事するべく都道府県知事が命令をした場合によって、そのときに突発事故といたしまして負傷したりあるいは疾病となったり、あるいは死亡した場合においては二十九条におきましてこの扶助をやるという規定になっておるわけです。ただいま小林さんが申されましたように、過去の事例を調べてみますると、県知事の表彰とかあるいはその場所におきまするところの署長の感謝状、金一封、警察後援会から金一封だとか、警視総監賞の金一封だとか、こういうことでございまして、わずかにその地方自治体あるいはまた公安委員会等によりまして、わずかなるところのお見舞というようなことでありまして、われわれもまことに遺憾である。こういうことについては、何らか国家として考えなければならぬのじゃないかということは、私が大臣になる前からもいろいろな事例を見るにつけたり、あるいは新聞等がこの奇特なる行為者に対しまするところのいろいろな賛嘆した記事を見るにつけましても、私どもは痛感しておったような次第でございまして、これは私も政府の閣僚の一人といたしまして、関係各省等に対しまして、至急に何らかの政府提案の法律でもあるかないかということにつきまして研究いたしたい、かように考えております。またよいお智恵がありましたならばお聞かせを願いたい、かように思っております。
  136. 小林進

    ○小林(進)委員 大臣もこの問題について、大臣に御就任の前からかねがねお考えになっていたという御答弁を承わりまして、実はわが意を得たという気持もするのでありまするが、しかし何といいましても、もはやそれが具体的に法文ないしは規則に明らかに犠牲補償の制度がまだでき上っていないうちに、こういう具体的な問題が起ったのでありまして、もし政治の上に善政というものがあるとするならば、こういう善意の人、こういう犠牲的精神に富んだ人、これは政党政派やイデオロギーや思想を別にいたしましても、やはり私はこれは一つの民族の美徳と見なければいけない。こういう美徳を直ちに表彰をし、犠牲者の霊を慰めて遺族をあたたかく守っていくということが、私は民族発展のために必要だと思う。しかもこういう犠牲者が生まれるということは、その周辺を中心にいたしまして、知る者がこれにひとしく関心を持ちます。そしてやはり胸の中にあたたかい何ものかをそういう民衆が感じている。まだ気持の中に残っているうちに、政治がぴたりと手を打っていく、ここに善政の善政たるゆえんがあると思うのです。それを法律が不備であるから、あるいはまだどうもこれを的確に支出するような規則もないから、しばし研究していきましょうということで、もののあわれや人の気持は風評去ってまた落ち着いてしまって、時期を失した処置であるならば、同じ処置をされても、それはもはや善政の名をもって言うことはできないのであります。私は厚生大臣に心から敬意を表する。厚生大臣はもののあわれを知っております。こういうふうな犠牲的、愛情的な者のためにはみずからを犠牲にしてその人たちのために尽そうという、そういう崇高な精神をお持ちになっていることを私は多年の交友を通じて信頼いたしております。大臣に就任前にもお考えになったというのでありますが、このたびは御就任になっておる。今度はやろうと思えばやれる立場に置かれたのであります。むろんこれは厚生大臣一人じゃない。閣議の協賛も得なければならぬ。やはり総理の了解も得なければならぬ問題でございましょうけれども、しかし立場は非常に御有利なのであります。どうか一つ人心のさめやらぬうちにぴたりと私は処置をしていただきたい、かように考えております。いま一度力強い信念の御答弁をお願いいたしたいと思います。
  137. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 小林さんの御述べになりました通りでございまして、私もいわゆる社会道徳といいますか、そういう崇高なる精神に対しましては何らかやはり報いるところの社会会制度がほしい、こういうことでありまするので、満幅の御共鳴を感ずる次第でございます。
  138. 小林進

    ○小林(進)委員 ともかく日本はどうも、きのうあたりもまた台風が吹いておりまするし、災害は定期的に年を通じて訪れております。単にこういう事案はこれ一つだけでとどまらない。また台風の時期を迎えて方々でやはりこういう水難あるいは暴風のために、自然的猛威のために犠牲者が出てくると思います。そのときにだれもが安心をして、こういう自己を犠牲にして救済事業にはせ参じられるように、早急に一つ処置あらんことをくれぐれもお願いをいたしまして、私の質問を終りたいと存じます。
  139. 大原亨

    ○大原委員 大臣は最初ちょっとお聞き願いたいのですが、社会局長に対しまして私が御質問いたしますのは精神病院の問題であります。この精神病院は一般的に中に入っている人がなかなか病気がなおらないだけでなしに、家族やその他もどちらかといえば冷淡であります。従っていろいろな面において人権じゅうりんの問題が病院においては起きると思うのです。これは広島県の例でありますが、広島県の安芸郡府中町に静養院という精神病院がございます。社会福祉法人なんですが、そこに、大臣は御承知になっていないかもしれませんけれども、厚生省でこの関係の監督の立場にある方は十分御承知だと思いますけれども、この静養院に井上武一という、今はなくなりましたが理事長がおりまして、そしてこれは背任横領というような容疑で、その精神病院の患者をどんどん使いまして、いろいろな待遇も虐待いたしまして、そして私腹を肥やしまして金の延べ棒なんか持っておったというので評判になりました。しかし裁判中になくなりました。しかしながらそういう一族郎党でこの静養院という病院を食いものにしたというので、ずいぶん世評で非難を受けた伝統を持っておるのであります。それがやはり前といろいろ形は違いますけれども、そういう問題がずっと継続いたしまして、厚生省におきましてもそういうことはけしからぬというので監督官庁といたしましての改善命令をしばしば出したのであります。社会労働委員会も現地に視察をしたことがあるのであります。従ってこの問題は非常に大きな社会問題となっております。やはり精神病院の患者の人権を尊重するという問題は非常に大きな問題であります。従って社会党は、たとえば身体障害者の年金の中へ精神病の患者を入れるとか、いろいろなことを主張いたしまして、政府も御趣旨には賛同されましたけれども、金がないというのでなお現在そういう範囲に入っておりません。最近はここにいろいろな紛争が起きておるのですが、一つの問題を指摘いたしますと、患者が三百五十六人ほどおるのであります。この中には生活保護が百九十八名おります。この三百五十六名に対しまして専門の医者が、院長を除きまして二名なのであります。これは医療法の四十名に一名という趣旨からいいましても非常に少いのであります。問題が起きましてから、やはり従業員に対する差別待遇等もいろいろありまして、社会問題になりましてから組合ができまして、今労使の紛争中であります。やはりそういうところにおいては経営を民主化するという意味において、従業員が組織を持って、そして丙部からその公共性を主張しながら従業員に対する差別扱い、患者に対する差別扱いをなくしていくということには非常な意義があると思いますけれども、そういうふうに非常に患者は多いのに医者が少い。そこで組合の方でこれは少いのじゃないかというふうに要求をいたしましたところが、以前の理事会において決定いたしておりました二名の専門医につきまして、理事長が中心となりましてこれを拒否しただけでなしに、最近は一名の内科の医者を入れたのであります。これはけっこうなんでありますけれども、その内科の医者が問題であります。白内障によって他の病院で業務に服し得ないようなそういうお医者を入れまして、しかもこれは療養中の医者でありましたけれども、それに対しまして、今までの労働協約によりますと給与が二万九千八百円に相当する医者であるというのに、情実採用いたしまして、四万三千円の給与を支給した。そういうことをめぐりまして、専門医を入れろ、そして協約に違反しているじゃないか、公平に待遇していたいじゃないか、こういう問題を中心といたしまして、いろいろな他の問題もございますけれども、問題が起きているのであります。労働問題についてはきょうは厚生省には御質問いたしませんけれども、今までしばしば改善命令を出し、しかも精神病の病院であるというときに、社会福祉病院であるというときに、監督上放任するということは、精神病の患者の人権を尊重するという建前からもいけないのじゃないかと考えるのですけれども、現在厚生省といたしましてどのような実態把握と監督行政上の御見解をお持ちになっているかという点について、私は局長にお尋ねします。
  140. 高田正巳

    ○高田説明員 精神病院というものは、今大原先生御指摘のように、患者が普通の病院と違いましてわからない人が多いのでございますが、そこでいろいろと経営あるいは監督のむずかしさがある。従ってその経営につきましては十分に戒心をして参らなければならないということは御指摘通りだと思います。そこでただいま御指摘の、医師が患者に比較して非常に少いとかあるいはその他の従業員が少い、従って十分な医療ができないというふうな問題につきましては、これは直接的には、第一次的には医療法の関係その他、医療行政の上からの監督がまずなされるべきであると私は考えます。ただ私どもの方としましては、御指摘通りにこれは社会福祉法人が経営をいたしておる。従って経営主体の社会会福祉法人の、法人としての監督は私どもの方にございます。それからいま一つは、生活保護法の医療扶助等でこの病院に患者を委託しております。一口に言えば、さような工合の悪い病院にはそういうふうなものは委託できないということになって参るわけであります。さような二重の意味におきまして、私どもといたしましても非常な関心を持っておるわけであります。大原先生も御存じかと思いますが、この静養院の問題は実は相当長期にわたっていろいろ御指摘のような問題があったようであります。私はその経緯につきましては新米でございますので詳しいことは存じておりませんけれども、非常に問題があって、今日も労使間で問題が起きておりますし、現に問題があるということも承知をいたしております。従いまして、都道府県知事が社会福祉法人の監督におきましても、また生活保護法の患者を委託するという関係におきましても、これは第一次的な監督者でございます。それで広島県庁の方で実はこれが解決についていろいろ苦心をいたしておるわけであります。その状況につきましては私どもの方にも報告を受けております。さような状態でございますが、なかなか問題の根が深いので、知事の方といたしましても、そう簡単に問題が右から左に片づくというふうな工合にはなかなかどうも行きかねておるというふうな状態でございます。なお、われわれといたしましても、さような事態が長く続くことは非常に工合が悪いことでございますので、県庁の方と十分連絡をとりつつ、これが解決について努力をいたして参りたい、かように考えておるわけでございます。
  141. 大原亨

    ○大原委員 大臣、この点一つお聞きいただきたいのですが、たいていの県には県立、公立の精神病院があるのです。そういたしますると、私立なんかの精神病院にいたしましても、それを基準にして患者を出し入れしたりして監督上の威力が発揮できるのです。こういうところは社会福祉法人でありますから、税法上のいろいろな特典を利用いたしまして、ボスが巣食うて、たとえば非常勤の理事長が五万円もとって、その他交際費もとっておる。そういうようなことで、医者は雇わない、そういうことをあげますと切りがない。広島県のような大きな県におきましては、少くとも公立病院は一つくらいあって、それを中心として、私立病院の精神病患者も含めて、やはり精神病患者の人権を尊重していく、こういう建前を通すことが、行政上上の公益性からいうても私は至当じゃないかと思うのです。こういう問題を契機にいたしまして、一つ監督を厳重にして是正してもらうということと一緒に、やはり公立病院を作るということについて便宜を与えるなり勧奨するなり、指導助言を与えるということが私は必要だと思いますけれども大臣の御見解を聞かしていた、だきたい。
  142. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 まことに御指摘通りでございまして、今この精神病院についての問題というものが、各地で非常に関心を深くしておるのでございます。この指導監督強化という面におきましても、あるいはまたこの病院等に対しましても、国家がある程度の扶助をなして、監督行政をもう少し徹底さしたらどうかというところの御意見も就任以来しばしば各地で承わっているわけでございます。それでただいまいろいろな角度から検討中でございますので、御説の趣旨はよくこれを検討させていただきたいと思います。
  143. 大原亨

    ○大原委員 非常に人道的な厚生大臣が思いやりのある発言をされたのでありますが、厚生省においては、基本的に社会党の主張することについては異存はないはずです。そういうことについては私ども発言を十分取り入れて積極的な施策をして、問題の根源を断ってもらいたい。これ以外の問題はたくさんありますけれども、きょうは医務局長が見えておりませんし、労働問題もありますけれども、そういう問題を解決しないと、そういう紛争とかいう問題は解決しないのです。周辺だけをやって、第二組合を作るとかそういうことをやっておっては、ますます中の患者が迷惑するわけですから、問題の根源を解決するように監督上の立場を明確にしていただきたい。一つお願いをいたしておきます。  私の質問はこれで終りですけれども一つこのことだけ大臣にこの機会に申し上げておきたいのですが、原爆被害者の援護については、坂田厚生大臣のときも、橋本厚生大臣のときも質問いたしまして、大体理解をされたと思った。ところがとたんにみんな引かれるわけです。しかしようやく原水爆禁止運動をめぐりまして、政府、自民党も非常に関心を深めておられまして、被害者救援だけは、てれ隠しであろうが何であろうがやろうという御趣旨でありまして、これはいいことであります。この問題につきましてはあらゆる角度から、できれば現地を見ていただきまして実情を把握していただきまして、今も若い娘さんから子供に至るまで、ずいぶんそのつめ跡が残っているわけですから、十分なる対策用意をもって研究していただきたい。私どもも十分審議をいたしたいと思いますので、この点について大臣も十分御研究していただきたいということを要請いたしまして、私の今日の質問は終ります。
  144. 滝井義高

    滝井委員 私は実はたくさん大臣質問をしたいところがあるのですが、大臣がお急ぎのようでございますから次会に譲りまして、一つだけお尋ねをしておきたいのです。それは今問題になっている甲表と乙表の統合の問題です。現実は御存じの通り日本の医療機関の九割一分というものは乙表を選んでいるし、九分程度が甲表を選んでおるわけです。民主主義のルールからいえば、これは乙表に軍配が上っているわけです。しかしそうかといって乙表で一本化すということは、われわれはできても大臣立場ではなかなかできかねるところだろうと思うのです。そうだとするならば、甲表というものが一体科学的な基礎があってできたのか、これは科学的な基礎はない。横にお作りになった高田さんがおるからお聞きになるとわかるが、中表はない。ところか乙表はああいう変な小数点のついておるものなんです。五・四とか七・七とかいうような小数点がつくのです。これも実に事務が複雑なのです。そこでこれは一本化するというのが武見会長と橋本さんとの間の約束なのです。ところが去年の十月から実施しておるのですから、もうやがて一年になろうとしているのです。問題の発端は昨年の六月ですから、実際問題の発端からいえば一年以上過ぎておるわけです。今日大臣が来られるというので、保険局長とずいぶん一問一答をやりましたか、厚生省は甲乙二本を一本化のための準備は何もやっていないのですね。簡単に申し上げますと何もやっていない。各界の具体的な意見を聞いたというのか、今から聞くというのか、はっきりした答弁がない。一体甲乙二表の問題点はどこにあるのかというと、これもはっきりしない。そこで私は、国民の行政の付託を受けておるのだから、行政だけはすみやかにやるといったならばすみやかにやるように、月給はきちんと払いますからお願いをいたしますと今日はお願いをしたのです。大臣就任されて医療協議会の問題はまだ片づいておりません。これは当然片づけなければならぬが、甲乙二表の一本化の問題も、大臣の当面一番重大な義務だと思います。これは大臣、この前も私質問いたしましたが、もうあれから一カ月たっておるのだから、厚生行政全般に目も届いたし、相当腹がまえもできたと思いますが、どうされるつもりですか。
  145. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 この前の委員会におきましても滝井委員からこの問題について御質問も受け、また前大臣並びに前々大臣もこれをお認めになりまして、すみやかなる機会に一本化する、こういうことになっております。しかし自分が来てからまだこの問題については十分な研究も、また自分としての浅学なる今までの勉強からして、何らそのめどにつきましてもお答えできなかったわけでございます。しからば現在そのめどがついたかと申しますと、甲表、乙表というものが行われまして約十カ月くらいになりますか、そういうことで、いろいろな観点から一本化するということは必要でありそうだというような考えには、私もやはりなりつつあるのでありますが、しかしただいま滝井委員も御指摘になられましたように、甲表、乙表にきめたいわゆる根拠というものがはっきりしていない。専門家の滝井さんすらそういうようなことでございますので、私といたしましても、すみやかなる機会にこれをどういう方向で一本化するか、こういうことで今実は相当研究はしておるわけでございます。国民皆保険に伴う医療国営といったような思想的な将来への不安から来る問題やら、あるいはまた、大病院におきましてもあるいは小さな個人病院におきましても、近代医学の医療施設を取り入れたならば、おのずとそこに一本化するところの問題というものが歩み寄ってくるのではなかろうか、かように考えられますので、そういう一つの前提とするところの施策というものを考えつつ、すみやかなる機会に一本化の線に沿うて私どもは研究に着手いたしたい、かように考えております。
  146. 滝井義高

    滝井委員 どうも頭の悪いせいか少しわからぬのですが、今の御答弁で医療国営に対する不安というけれども、社会党でさえも医療国営をやるとはいわないのですが、自由民主党は医療国営をやるつもりなんでしょうか。大臣は医療国営をおやりになるのではないかと思うのですが、その点だけ先に一つ伺いたい。
  147. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 それはこういうことです。国民皆保険ということになって参りますと、将来医療報酬というものが一定のワクの中に国家的な報酬として当てはめられるのじゃないか、そういう点から来る一つの不安の声を聞く。そういうことでわれわれが社会政策として行なった国民皆保険ではありますけれども、ただ一面に、一部におきまして医療国営になるんじゃないかという不安が結果的に出てくるのじゃないかという心配をする向きもありますので、私どもはそういうことのないように、いろいろな面におきまして前提的な施策とともにこれを一本化していきたい、こういうことでございまして、決して医療国営という意味ではないのでございます。
  148. 滝井義高

    滝井委員 大事なところですが、国民皆保険になれば、医療報酬というものが一定のワクの中に入るのは当然のことなんですよ。なぜならば、点数単価というものはいわゆる公けの機関の医療協議会というものがきちっときめますから、従って単価は十円、初診料は甲表では十八点、乙表では五点、五十円だ、あるいは乙の甲地では五十四円だ、こうきまってしまうわけです。もうこれだから医療国営だということにはならぬと思うのです。なぜならば医師というものが一応自由に開業ができて、一応自由な身分であるということなんです。問題は、医療国営という厚生省の思想的な偏向と日本医師会がいっておる、こういうことに対する不安というものは、医療報酬がそういうことになるということではないと思うのです。というのは、たとえば日本医師会の会長の武見さんは、国民皆保険には協力いたしますということを演説されておる。国民皆保険に協力するということは、診療報酬というものが一定のワクの中にはまるということを前提にしておる。皆保険というものはそういうものなんです。これは保険が自由であるということならば、皆保険の基本的なものがくずれてしまうことを意味するのですから、あくまでも皆保険をやっていき、国が社会保障として責任を持つということになれば、そこに医療報酬というものが一定のワクの中にはまってくる可能性がある。しかしワクというものは、いわゆる近代の医学、科学技術を尊重した形の中における一定のワク、こういうことでなくてはならぬと思う。おそらく厚生省はそういう形で、学術によってあの甲表というものを出されておるのだと思う。乙表もその通り。ただしその説明というものがなおわれわれの納得のいくものでない。そうしますと今大臣は、医療報酬が一定のワクの中に入るために、そこに結果として医療国営らしい姿が出て不安になるのじゃないか、こういうことを言われましたが、大臣がそう考えておられるならばそれでもかまわぬと思う。そのことと今甲乙二表の一本化をするということは一体どういう関係があるのかということです。甲乙二表を一本化するというのは、結局合理的でない甲表、事務的にめんどうな乙表というものを、合理的に事務的にめんどうでなく、学術的な科学的な基礎に立った、万人の納得のいくところに編成がえをしていく、こういうことでないかと思うのです。これをすみやかにやることが診療報酬が不合理なワクの中に押えつけられているというこの不安を除くことになるのじゃないかと思うのです。従ってじんぜんとちょっと待ってくれ、ちょっと待ってくれというと、この前私が言うように、安保条約の問題でもごたごたしますとまた内閣がつぶれ、かわるということになり、また新しい大臣が出ると、滝井さんもうちょっと待って下さい、もうちょっと研究さして下さいとくる。この前の単価十一円五十銭なり十二円五十銭というものは暫定単価だった。昭和二十六年にきめられて延延去年まで持ってこられた。ちょっと待ってくれ、待ってくれで二十六年、二十七年、二十八年、二十九年、三十年、三十一年、三十二年、三十三年と八カ年間持ってこられた。今度また今のように大臣がちょっと待ってくれ、もう少し自分は専門的に検討したい、すみやかに一本化しますと言うことは言うけれども、やるのはいつかわからぬということでは大へんです。大臣はまだ事務の内容を御存じないと思いますが、一ぺん乙表の今の事務がいかに複雑であるか、いかに困っておるかということをいつか機会があったら、診療報酬の請求書を大臣のところに持って行ってお見せします。実に大へんです。だから医者が勉強できない。今は聴診器を捨ててもペンを捨てるなという言葉がある。医者は聴診器を持たなくてもいい、しかしペンを捨てたら食えないということがある。そのくらい事務が複雑です。だがらこれはすみやかに一本化しなければならぬ。患者だってそうです。盲腸になったときに、このくらいの程度の盲腸なら甲表がよかろうか、乙表がよかろうかと考えなければならぬ。こんなばかげたことはないと思う。なるほど乙表一本のときでも、甲の病院と乙の病院に行けば報酬は違いますけれども、基本は一緒です。初診料と手術料は一緒です。そういう点について一緒なんですから、ここらあたりで大臣も決心を固めなければならぬ。右顧左眄する必要はない。大臣の自信と信念に基いてやるべきだと思う。あなたの部下はそれをやろうとしない。それは大臣が右顧左眄していると言っては言葉が悪いけれども、遅疑邊巡をしておるからそういうことになるのかもしれませんけれども一つここらあたりで明白に、いつごろ甲乙二表というものは一本化の科学的な良心的な大衆の満足のいく、療養担当者の少くとも協力のできる態勢というものを作るのだ、こういう時期というものをもうそろそろ明示していい時期になったと思う。もう十一カ月になりますからね。大臣どうですか。
  149. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 御指摘通りでございますが、ときどき部局あるいは課の人々の意見等も私は徴しております。そうしてどういうところに問題があるかといって私が聞けば、局課長もやはり私は関心を持っておる、こういうふうなことに空気がなっておるのじゃなかろうか、こう思います。ただこれをいついつまでにやれというようなことは、私自体が別に右顧左眄じゃありませんが、まだ勉強が足りないということで、事実ほんとうに勉強は足りないものですから、そういうことである程度の自分の頭が固まれば、これは省をあげて協議をいたしまして、そういう御主張の線に持っていけるかとも思いますが、決して私は右顧左眄しているのではなくて、まだ右に研究し左に研究し、こういうことでございますから、その点御了承願います。
  150. 滝井義高

    滝井委員 これ以上言いませんが、しかしこういうものはちょうど鉄が熱いうちにたたかねばならぬと同じように、じんぜん日を送っておれば、前の単価が暫定単価といわれながら八カ年の道を歩んだと同じことが出てくるのです。そうするとあなたが厚生大臣だったときに何もしながった、こういう歴史を私は残したくないからこそ言うわけなんです。一つあなたがいい渡邊厚政の歴史を残せるためには医療協議会とこの問題を解決したら、あなたの名前は明治以来の医療史に特筆大書されます。一つすみやかに御決心されて、すみやかに御研究なさっておやりになることを切望いたします。研究しておれば、これは失礼な話だけれども、あなたがやはり二、三年くらい研究しないとわからぬことになる。それは実際われわれだってもう八カ年代議士をやっておって、まだよくわからない点がある。専門の外科の問題なんかよくわからません、内科の方はわかりますが。それは一プラス・アルフア・プラスGTというような高等数学を用いてやるような点数の計算の仕方、最近の日本医師会の出しておる十八円四十六銭の基礎のデータ、あの高等数学のわかった人はおそらく日本に何人しかいないだろうと思う。そういうところまで勉強して万全を期してやるということになると、これは十年河清を待つにひとしいことになる。やはり政治家ですから、ある程度それぞれの意見を聞いたらやはり勘でいくよりしょうがないということが出てくるかもしれません。こんなこじれた問題ですから、政治的に解決するほかありません。そうして一応政治的に軌道に乗せて、その次にもう一ぺんゆっくり手直しをしてやるということ以外にないのです。それを万人が満足のいくように、八方円満にいくような姿でやろうとすると結局何もできない、こういうことになって任期は終ることになるのです。そういう点でもう一ぺん一カ月待ちます。六月十八日に就任したときに一ぺん質問をして、七月にやって今八月ですから、秋風の立つ九月まで待って、九月にもう一回大臣見解を聞きたいと思うのです。やはり人間というものは刺激が必要ですから、ときどき聞きおかぬと忘れますから聞かしてもらいます。一つますます御勉強になって、りっぱな案をお立てになることをお願いしておきます。     —————————————
  151. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 この際、滝井委員より発言を求められておりますので、これを許します。
  152. 滝井義高

    滝井委員 今大臣から答弁もあり、さいぜん厚生省事務当局の答弁もありましたが、甲乙二表の一本化の問題は進捗いたしておりません。従って当然国民の負託にこたえて、われわれ社会労働委員会としては、社会保険診療報酬点数表の合理化に関して、すなわち甲乙二表の一本化の問題に関して、やはりこの際決議をする必要があると思います。その動議を提出したいと思います。  実質的には、大勢は乙表がほとんど大部分採用されております。もちろん診療報酬の額になると甲表のものが多いようでございますが、病院の数は乙表が圧倒的に多うございます。取り扱う患者も乙表が多いようでございます。従ってこの際乙表によって一本化せ、民主主義のルールからいえばそういうことになるかと思います。しかし現実に甲表を採用しておるものもある。その甲表というものは国会でその科学的な基礎について十分の討議が行われておりません。十分どころでなくて、ほとんど討議が行われていないということです。全く官僚独善的に作ったものが甲表です。そうしてしゃにむに押しつけたものが甲表です。従って当然この甲表というものを科学的に検討をして、その正邪を検討しなければなりませんが、その時間的な余裕というものがほとんど与えられておりません。また一方乙表は御承知通り八・五%のワクの拡大をいわば旧点数でやっておるわけです。従ってそのために八・五%という端数のついたもので補正をしておるために、必然的に出た結果は今までのまるかった、たとえば初診の四点というものが五・四点というような、こういう端数がついておることになっておる。事務的にきわめてこれは複雑です。しかも医療が甲乙二表に分れ、病院が甲乙二表に分れてけんかするというようなことは愚の骨頂です。国民もわかりにくうございます。事務的にも複雑です。こういうようなことから日本の医療が混乱しておりますから、この際大乗的な見地に立って、社会保険診療報酬の点数表の合理化が必要だと思います。そういう意味で社会保険診療報酬点数表の合理化に関する決議を出し、そうして満場一致で御可決をいただきたいと思います。  案文を読みます。    社会保険診療報酬点数表の合理化に関する件   昭和三十三年十月以来実施の社会保険診療報酬算定の基礎である点数表は甲乙 二表に分れ国民大衆にとってきわめて不便である。しかも十月新に設定された甲 表の点数についてはその算定の科学的根拠が必ずしも明白でなく、また乙表の点 数は小数点以下の端数があつて事務的に複雑である。   この際政府は日本の医学医術の進展と国民皆保険推進の大乗的見地に立ち衆知 を結集して真に学術的合理的な社会保険診療報酬点数表を昭和三十四年末を目途 として実現すべきである。  右決議する。 以上です。
  153. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 本件の取扱いについては追って協議することにいたします。  暫時休憩いたします。     午後五時三十九分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕