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1959-10-15 第32回国会 衆議院 建設委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年十月十五日(木曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 羽田武嗣郎君    理事 井原 岸高君 理事 木村 守江君    理事 堀川 恭平君 理事 中島  巖君       大久保武雄君    川崎末五郎君       久野 忠治君    島村 一郎君       徳安 實藏君    橋本 正之君       廣瀬 正雄君    石川 次夫君       兒玉 末男君    東海林 稔君       武藤 武雄君    山中 吾郎君       山中日露史君  出席国務大臣         建 設 大 臣 村上  勇君  委員外出席者         大蔵政務次官  奧村又十郎君         大倉事務官         (主計官)   宮崎  仁君         農林政務次官  小枝 一雄君         農林事務官         (農地局参事         官)      正井 保之君         農 林 技 官         (農地局建設部         長)      清野  保君         建設政務次官  大沢 雄一君         建設事務次官         (計画局長)  関盛 吉雄君         建 設 技 官         (河川局長)  山本 三郎君         建 設 技 官         (道路局長)  佐藤 寛政君         建設事務官         (住宅局住宅総 大津 留温君         務課長)         専  門  員 山口 乾治君     ————————————— 十月十五日  委員松澤雄藏辞任につき、その補欠として久  野忠治君が議長指名委員に選任された。 同日  委員久野忠治辞任につき、その補欠として松  澤雄藏君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  災害対策に関する件  派遣委員より報告聴取      ————◇—————
  2. 羽田武嗣郎

    羽田委員長 これより会議を開きます。  この際、前回の委員会における木村守江君及び逢澤寛君の質問に対する大蔵当局答弁が、文書をもって委員長の手元に届いておりますので、便宜委員長にかわりまして、山口専門員に代読させます。山口専門員
  3. 山口乾治

    山口専門員 大蔵主計局長石原周夫木村委員及び逢澤委員質問に対する回答について、去る十月八日開催の衆議院建設委員会における木村委員及び逢澤委員質問に対し別紙の通り回答いたします。    木村委員質問に対する回答   (1) 御指摘のように最近における治水事業促進により、抜本的な対策を施した河川被害が激減していることは、さきの七号台風並びに今次の伊勢湾台風の例に見ても明らかで、大災害を起すのは全く事業を行なっていない海岸河川渓流または山地に多い。しかしこのような問題は予算の問題というよりも、今次伊勢湾台風にも見られるように、むしろ工事実施に当つての綿密な調査とこれに基く工事対象の選定及び計画決定が必要であると考えられる。  (2) 次に治山治水対策要綱については、二十八年の大災害にかんがみ内閣に治山治水対策協議会が設置され、これによって治山治水基本対策要綱決定されたが、この要綱は、経済的、財政的検討を十分に尽した現実的なものでなかったので、閣議決定を見るに至らなかった。   その後、財政状況は、国、地方を通じて相当困難な時期を経過したのであるが、二十八年の超異常災害及びそれに続く二十九年の災害に対する復旧事業の消化に努めて今日に至ると同時に、最近災害復旧原形復旧主義相当大幅に緩和して災害復旧工事により相当改良を期することにしている。今回の治山治水長期計画の策定については、目下関係省協議検討中であるが、二十八年の例もあるので、治山治水事業技術的面における検討とともに、経済、財政両面においても十分に検討を行い、財政的な裏づけのある現実的な計画を樹立するよう努力中である。   (3) 次に治山治水特別会計については、建設省治水事業五カ年計画を達成するため、特別会計を新設し、一般会計からの財源のほか、資金運用部資金借入直轄事業にかかる地方負担金相当額及びその他の借入)に財源を求め、事業促進をはかることとしているので、大蔵省としては慎重に検討しているが、法律的に見て特別会計を必要とする実態を備えたものと認めがたいので、賛成いたしかねる。   次に、逢澤委員質問に対する回答   (1) 海岸堤防構造工法等が従来、建設農林運輸等所管ごとに相違している事例があることは御指摘通りで、これが海岸法制定の主要な動機となつたことは御承知の通りである。現在では海岸法第十四条の規定により、堤防等海岸保全施設の築造の基準が定められており、またその運用についての関係各省間の申し合せもできているので今後は構造設計等の統一がはかられていくと思う。もちろん大蔵省としても予算面から、関係省努力に協力して参りたいと考えている。   (2) 災害復旧事業は、原形復旧を原則としているが、最近数年来原形復旧することが著しく困難または不適当な場合の解釈を大幅に拡張して、たとえば、施設の効用を復旧するため、位置、法線、形状、寸法を変更し、または機質改良して施行するものや、施設は広範囲にわたって被災し、その後の状況に即応して被災個所全体にわたり一定計画のもとに当該災害を与えた洪水高潮波浪等対象として施行する改良的工事も、法律の適用上災害復旧事業とみなすこととしており、相当改良工事が事実上行われている。また、災害復旧事業で実施できない改良工事については、災害地優先改改趣旨災害関連事業制度がある。この制度は、被害が激甚で、再度災害を防止するのに、災害復旧工事では十分な効果が期待できないときに、被災していない個所を含めて改良工事をあわせ行うことを目的とし、二十九年度から実施されたものである。   これらの制度運用により、被災個所が再度の災害を受けるというような事態が起らないよう、できるだけ配慮している。   ただ、災害復旧工事の内容を現在以上に改良に近づけることは、何分とも復旧事業は限られた財政力範囲内で、すべてに優先して取り扱われるべきものであり、所要額も膨大なものであるから、別途治山治水事業基本的計画による改良の推進に対して困難を加えることも考え、合理的な限度として現在の制度運用を行なっている次第である。     —————————————
  4. 羽田武嗣郎

    羽田委員長 災害対策に関する件につきまして調査を進めます。  まず台風第十五号による被害状況調査して参りました派遣委員より報告を聴取いたします。  第二班である三重奈良和歌山三県の派遣委員が本日都合が悪く出席できませんので、派遣委員にかわりまして、山口専門員にその報告を代読させたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 羽田武嗣郎

    羽田委員長 異議なしと認め、さように決定いたします。山口専門員
  6. 山口乾治

    山口専門員 伊勢湾台風による被害調査について御報告申し上げます。  私どもは去る十月八日から十二日までの五日間にわたって、運輸、文教、農林及び社労の各委員とともに、三重奈良並び和歌山の三県の被害状況調査いたした次第であります。以下、調査各県の被害状況について御説明申し上げます。  三重県におきましては、全県下災害救助法を発動しているのでありまして、特にその北勢部におきましては、木曽、揖斐、長良の三大河川を初め、町屋川、朝明川等の各河川が大洪水のためはんらんし、あるいは津波のため海岸堤防決壊して、四日市桑名の両市を初め、三重郡、桑名郡の町村に想像も及ばぬ大災害をもたらした次第であります。私ども四日市市、川越村、桑名市及び長島町等の現地参つたのでありますが、これらの市町村は、すでに二週間を経過しているにもかかわらず、今なお相当範囲にわたって浸水するがままになっており、特に三大河川に囲まれたデルタ地帯である木曽岬村及び長島町のいわゆる輪中におきましては、全町村ことごとく水浸しのままであつて決壊個所の仮締め切り工事の的確なる完了予定すら、いまだ立たない悲惨な現状でありました。かかる事情のため、この地域を横断している国道一号線、あるいは国鉄関西線等は今なお二メートルに及ぶ水中にあるとのことでありました。かかる中にあつて自衛隊の手でべーリー橋と呼ばれる鉄橋が完成長島町に通じたことは、水没地帯復旧に明るい光を投げかけたものでありました。  また私どもは、伊賀盆地西南部にある名張市に参つたのでありますが、この地におきましては、上流における豪雨のため、市街地を流れる名張川がはんらんし、全市にわたって被害をもたらしている現状を見て参つた次第であります。なお南勢部、あるいは志摩地方には、直接現地に行くことができなかったのでありますが、県当局説明によると、この地方においては強風あるいは津波のため、臨海部は甚大な災害をこうむつている次第であります。  このように県下各地において河川決壊六百二十六カ所、その被害約二十五億円、道路決壊七百九十一カ所、約七億五千万円及び橋梁被害二百十二カ所、約八億円等、土木関係被害総額は百三十六億余円に達している次第であります。  次に、奈良県の状況について申し上げます。奈良県におきましては、奥地山間部における集中豪雨のため、吉野川、北山川及び宇陀川を初めとして、これら河川支流においても驚異的な増水をして、数多くの人畜の死傷はもとより、道路河川等公共土木施設にかつてない被害をもたらしている次第であります。  私どもは、榛原町において県当局より被害概況を聴取するとともに、宇陀地方の内牧から栂坂峠を越えて御杖村及び曽爾村等、伊勢街道沿つた山間奥地参つたのでありますが、この地方においては、地すべり、あるいは林地の崩壊はなはだしく、また河川はんらんにより山間部落埋没流失の危険にあい、道路はことごとく決壊して、いわゆる陸の孤島と化した次第であります。ようやく私どもが参りました日に、自衛隊等の働きにより、ジープが入り得て、調査することができたような状況であります。また吉野川流域についても、東吉野村、小川村、下市町及び五条市に参つたのであります。これら吉野川流域におきましては、大台原山系における集中豪雨により、河川水位が前例を見ないまでに上り、たとえば五条市における河川警戒水位三メートル六十に対し、量水計最終水位をはるかに突破して、九メートル以上にも達している実情であつて奈良県下において死者、行方不明者合せて百名以上に及ぶかつてない大災害をもたらした次第であります。これらの土木関係被害は、道路約二千カ所、四十五億円、河川六百三十七カ所、十三億円等、その総額七十四億円余に達している次第であります。  次に和歌山県について申し上げます。  和歌山県におきましては吉野川下流である紀ノ川沿線橋本市、高野口町、かつらぎ町及び那賀町等の現地を視察いたしたのであります。この地方被害吉野川流域と同様、紀ノ川はんらんし、荒れ狂う濁流に加えて無数の流木により堤防決壊し、橋梁をこわし、あるいは逆流して、人家、田畑等に莫大な被害を及ぼしたのであります。また私どもは参ることができなかったのでありますが、今次台風が上陸した潮ノ岬においては、瞬間最大風速四十八・五メートル、山岳地における降雨量四百ミリに及び、紀南の海岸線はもちろん、熊野川流域等相当被害をもたらしているとのことでありました。これら和歌山県における土木関係被害総額は、約十七億円であります。  以上簡単に被害概要について申し述べたのでありますが、次に、各県の要望等について若干御報告いたします。  まず第一に、潮どめのための応急工事早期に完了されたいということであります。三重県の北勢部においては、町村全域にわたって今なお水浸しとなっており、住民県下各地に分散疎開している実態でありまして、何をおいても潮どめのための応急工事早期完了が望まれているのであります。またこの工事完成がなければ、道路交通の整備はもとより、復旧資材の輸送も円滑に行われず、最大のガンとなっている次第であります。  第二に、治山治水事業特別会計を設けることであります。今次の大災害の現況からして、治山治水事業の画期的な促進をはかる必要が痛切に感ぜられ、これがためには特別会計を設定し、事業予算の拡大を期し、中小河川砂防事業等促進をはかられたいということであります。  第三に、災害復旧事業については、地方財政が悪化している実情にかんがみ、国庫補助高率負担について特別の立法措置を講ぜられたいということであつて、今回の災害が二十八年災以上に深刻なものである関係から、この措置が強く望まれている次第であります。  第四に、国の直轄事業として、河川改修事業を急速に実施されたいとの夢望であります。このことは、特に三重県においては、雲出川、櫛田川及び奈良県の吉野川について同様の強い要望があったのであります。  第五に、いわゆる改良復旧の問題であります。本問題はたびたび繰り返されておりますので、簡単にいたしますが、助成事業を大幅に取り入れることにより、画期的な改良復旧工事を施行して、災害を繰り返すことのないようにすべきであるという趣旨であります。  第六に、砂防事業強化、特に山林砂防強化についてであります。このことも従来からしばしば要望されている点でありますので、説明は省略いたしますが、今回特に奈良県下においては、これが重要性を感ずるとともに、防災を主目的とするダム建設についても、強い要望があったのであります。  第七に、つなぎ融資の問題であります。今次災害はその規模が非常に大きかった上に、七号台風被害を受けた地方と重なる関係から、その復旧には莫大な金額を要するのでありまして、その復旧事業を円滑に遂行するためには、政府資金特別融通措置を講ずるとともに、これが利子についても減免されたいというのであります。  第八に、小規模災害について、いわゆる特例債許可等に関する問題であります。国の補助対象とならない小規模災害についても、町村合併によりその地域が拡大したこと等に伴い、相当金額に上り、町村財政に及ぼす影響が大きいので、特に全額地方債の発行を許可し、これが償還について、国が元利補給を行われたいとの趣旨であります。  第九に、住宅復興融資について住宅金融公庫の融資ワクを大幅に増加するとともに、個人への貸付限度額を引き上げられたいということであります。  第十に、災害公営住宅建設戸数については、公営住宅法に定める滅失戸数の三割を五割に引き上げ、かつ、一事業主体ごと県単位とするよう要望があった次第であります。  以上をもって調査報告を終ります。
  7. 羽田武嗣郎

    羽田委員長 第三班である福井滋賀京都を視察された山中吾郎君。
  8. 山中吾郎

    山中(吾)委員 御報告を申し上げます。  十月八日より五日間、伊勢湾台風による福井県、京都府、滋賀県における災害状況を、建設農林水産委員会合同で視察、調査をいたしましたので、その概要を簡単に御報告申し上げます。  まず福井県でございますが、今次台風被害の原因は、山間部で三百ミリないし四百ミリという短期間の集中豪雨によるものでございまして、九頭龍川上流及び県西部小浜付近山間部において多くの被害を出し、特に八月台風による災害緊急復旧工事が壊滅する等、交通は途絶いたしまして、孤立無援個所が続出いたしましたため、三十四名という多くの犠牲者を出しましたほか、全壊、流出家屋百四十六戸、田畑流失冠水は一万二千ヘクタールを数え、公共土木施設被害額は二十四億円に及んでおります。  私ども日程都合もございましたので、九頭龍川上流まで足を延ばすことができず、敦賀市より小浜市周辺の県西部調査いたしたのでございますが、渓流河川または小河川はんらんがきわめて多く、小浜市の多田川、大飯町の佐分利用等その顕著な例でございまして、今後の治水事業が大河川のみならず、砂防事業、小河川改修をも促進しなければならないことを痛感いたした次第でございます。  次に、京都府でございますが、被害総額八十二億円のうち、土木被害は三十億円でございまして、私ども舞鶴市から大江町、福知山市、綾部市を経て京都市に至り、さらに府の南部、木津川流域加茂町、笠置町等を調査いたしたのでありますが、舞鶴市、宮津市では、局地的に多量の雨が降り、折からの高潮影響もありまして、市内の小河川はんらんしたため、東舞鶴のほとんどと宮津市街地中心部水浸しとなり、また由良川、木津川上流山間部豪雨のため、その下流地域舞鶴加佐地区大江町、福知山市及び笠置町、加茂町、南山城村等が特に被害激甚でございました。由良川は、上流大野ダム建設中でございますが、三十五年度に至らないと完成せず、また福知山付近の一部を直轄河川改修中ではございますが、そのほとんど大部分が未改修でございまして、大野ダム早期完成と、下流全域にわたる河川改修、あるいは上流にさらにダム建設することを要望しておりました。  木津川におきましても、上流高山ダム建設する計画がございますが、目下調査の段階のようでございまして今次出水にかんがみまして、一日もすみやかに着手できるよう促進する必要があると存ずるのであります。  次に、滋賀県でございますが、本県河川は、いずれも中小河川ではございますが、天上川でございまして、山間部に降りました豪雨は、土砂を押し流して下流はんらん、至るところで堤防決壊し、このため家屋流失、浸水し、田畑冠水土砂の流入による被害等激甚でございまして、田畑被害四万八千ヘクタール、金額にして二十四億円、土木被害は二十六億円に達しているのであります。  特に被害の激甚でございました湖東、湖北地方調査したのでございますが、そのうちでも日野川天野川補等流域は特にひどく、目野川は野洲町、近江八幡市で数カ所決壊、このため野田沼干拓水茎干拓では、干拓地を取り巻く承水堤防が寸断され、野田沼干拓三十町歩水茎干拓百五十町歩入植者四十二戸が調査当日なお濁水に没しており、目をおおうような惨状を呈していたのであります。また天野川決壊はんらんによりまして、入江干拓地の二百五十町歩入植者百二戸が水没したのでありますが、調査前日に至りようやく水は引いたようでございますが、収穫はほとんど望まれない状況でございました。  滋賀県の各河川は、前にも述べました通り土砂流出はなはだしく、いずれも天上河川でございますので、原形復旧のみにとどまるならば、また同じことを繰り返すおそれがありますので、日野川天野川等につきましては、抜本的対策要望しておりましたが、私ども現地を見まして全く同感、これが改修促進の必要を認めたのでございます。  以上、三府県調査概要を御報告申し上げましたが、最後に各府県共通した要望といたしまして、今次災害東海地方で特に激甚でございましたために、とかくこれら三府県災害が忘れられはしないかということを非常に懸念しておりましたが、福井県の税収十一億円、滋賀県の税収が十二億円という貧弱なる地方自治体でございますので、政府災害対策東海地方のみにとどまらず、これら地方に対しましても、特別の措置が講ぜられますよう強く要望しておりました。以上をもちまして、はなはだ簡単ではございますが、第三班の調査報告といたします。
  9. 羽田武嗣郎

    羽田委員長 第四班の兵庫鳥取を視察された兒玉末男君。
  10. 兒玉末男

    兒玉委員 去る十月十日より四日間にわたり鳥取兵庫県下における災害状況をつぶさに調査いたして参つたのでありますが、その詳細を御報告申し上げますことは、相当の長時間を要することとなりますので、この際きわめて簡単にその概要を申し上げるとともに、二、三の所見を申し述べ、これに対する当局の明確なる御答弁を期待いたしまして、御報告にかえる次第であります。  まず鳥取県について申し上げます。  本県におきましては、特に活発なる水防活動が行われたのでありますが、それにもかかわらず被害は全県下に及び、特に東部、中部地区被害惨状をきわめ、室戸台風以来の大災害を惹起するに至つたのであります。幸いにして本県下における二大河川である手代川、天神川の両河川は、直轄改修がある程度進行いたしておりましたため、その地域における相当量の雨量にもかかわらず、その被害は比較的軽微であったのでありますが、これら両河川支流部及びその他の小河川流域においては、本県曽有の大水害をもたらし、ために山間部における代替道路のない道路は随所に寸断せられ、木橋もそのほとんどを流失いたしておるのであります。  中でも加勢蛇川、天神川上流の小鴨川、勝部川、河内川及び千代川支流の野坂川、砂見川、曳田川の被害は著しく、ために倉吉、関金、青谷、気高、鹿野等の各市町村は、甚大なる被害をこうむるに至つたのであります。また鳥取市におきましては、旧袋川合流点工事が未完成であったため、排水をはばまれ、その浸水面積は一万八百平方メートルに及び、床上、床下浸水戸数は三千九百九十三戸に達したのでありますが、これら台風十五号による本県被害は、建設省関係公共事業のみでも河川砂防関係一千二百四十五カ所、十五億円余、道路橋梁関係七百九十六カ所、九億円余を初め、その合計は二十九億円余に達しているのであります。  次に兵庫県について申し上げます。本県下における災害は、特に県北部但馬丹波の両地域に集中いたしていまして、但馬地域におきましては、円山川を初め、岸田川、矢田川、八木川等の諸河川丹波地域におきましては、篠山川、佐治川、竹田川等の諸河川及びそれらの小支川に発生いたし、鳥取県と同様に、未改修区間が著しい災害を惹起いたしているのであります。そのため、浜坂、八鹿、日高、養父、豊岡、城崎、香住、出石、和田山、市島、篠山等、同地方市町村はいずれも甚大なる被害をこうむつたのでありまして、本県下における建設省関係公共事業被害は、河川砂防関係四千百四十カ所、二十七億円余、道路橋梁関係二千百七カ所、十億円余、その他を合せ、合計四十億円余に達しているのであります。  以上簡単に両県下における被害概況を申し上げたのでありますが、次に、調査団としての所見を若干申し述べることといたします。  まず両県下における今次災害共通点といたしまして、山地における小河川の未改修区間災害が多発したため、いわゆる小災害の数がきわめて多いということが言えるのであります。従いまして改良復旧、小災害の問題を含む特別立法措置要望が至るところで聞かれたのでありますが、これらの問題は、これら両県に限らず、他府県についても共通の問題であり、当局においても種々検討を進めておられることと思いますので、るる申し述べることを避け、鳥取県及び兵庫但馬丹波地方は、いずれも財政貧弱なる町村が多いため、これらの問題に対する要望が特に強いものがあったということだけをお伝えしておきたいと思います。  次に、やはり両県下共通の問題といたしまして、今次災害山間部に集中いたしました関係上、いずれも奥地河川沿い道路決壊いたしましたため、いまだに孤立のままの状態の個所が見られるのであります。これら住民の木材、農作物の搬出のためにはもちろん、災害復旧自体をやるためにも、何にもまして道路復旧が急がれなければならないと思うのであります。またこれらの災害地は、いずれもいわゆる雪寒地帯でありますので、これが復旧には、一日も早く着手いたさなければならないのでありまして、最小限来春の春水に対するだけの手段は、何といたしましても講ずる必要があろうと思うのであります。  次に、具体的な問題といたしまして、小鴨川上小鴨地先及び円山川改修計画について申し上げます。今次災害による小鴨川上小鴨地先の破堤個所復旧につきましては、この際すでに樹立されている同川の改修計画にあわせて引き堤することが最も得策と考慮されているのでありますが、同個所がいわゆる五カ年計画に編入されていないため、単に災害費による原形復旧にとどめざるを得ない状況でありまして、現地関係者は、これが対策に苦慮いたしているのであります。公共事業関係の用地取得難の今日、いずれ数年の後には買収せねばならない土地である以上は、今次災害により住民改修計画に好意的なうちに用地を取得いたし、改修計画に従って引き堤すべく、臨機の措置を講ずることこそ、工事促進、国費の浪費を防ぐゆえんであろうと思うのであります。  次に、円山川改修計画についてでありますが、今回の出水に際し、従来の計画洪水流量をはるかに超過いたしましたため、当然改修計画に改訂が加えられるものと想像いたすのでありますが、いずれにいたしましても、日高町地先における岩山によるカーブと狭搾部の問題は放置することはできないと思うのでありましてさきの小鴨川と同様、今回大惨状を呈しました左岸一帯の用地取得には、早急に着手する必要があると思うのであります。  その他橋津川の河口閉塞の問題等種種の問題もあるのでありますが、他の機会に譲ることといたし、本日は緊急を要するもののみについて申し述べ、御報告にかえる次第であります。  なお御報告に関連しまして特に地元から強く要望されましたことは、伊勢湾台風の場合においても、特にその中心部であります愛知あるいは三重和歌山等に集中されて、このような他の地域がともすればその焦点からはずれるようなきらいがある。特に台風措置については、十五号台風だけでなくて、全般の台風を通じてアンバランスのないような措置を特に講じていただきたい。  以上のことが特に強調されましたので、つけ加えて御報告にかえる次第であります。
  11. 羽田武嗣郎

    羽田委員長 第五班である長野、山梨を視察された橋本正之君。
  12. 橋本正之

    橋本(正)委員 台風十五号による被害状況調査のため、第五班として派遣されました、山梨、長野両県下状況について御報告申し上げます。  私ども建設、社会労働、農林水産、文教、商工の各委員の参加のもとに連合調査班を組織いたし、十一日から三日間にわたり、被害地をつぶさに視察調査いたしたのでありますが、山梨、長野の両県は、去る八月十四日の七号台風によって未曽有の大災害を受け、さらに十五号によって追い打ちをかけられ、その被害は深刻なものがありました。すなわち、山梨県下におきましては、七号台風による被害額三百十余億円に加えて、十五号台風は百億円、都合四百億円余の大被害を見たのであります。雨量三百五十ミリ、風速三十七メートルの強風と豪雨七時間全に及ぶ強襲は、一カ月の間にようやく築き上げた一切の応急工事を、一瞬にして水泡に帰せしめたのであります。また、長野県におきましては、七号台風に続き、降ひようの被害、さらに十五号台風と矢つぎばやのきびしい天災を受けまして、被災者はぼう然自失、なすところを知らずという言葉をまざまざと思い起させるような悲惨な状態に置かれたのであります。同県における両台風と降ひようの被害総額は、三百五十億円余の巨額に達しております。  第一日は、山梨県下を視察いたしましたが、同県では、果樹の被害がことにはなはだしく、数十年の歳月を経たリンゴの木が根こそぎ倒され、特産のブドウは見る影もなく打ちのめされている惨状は、目をおおうものがありました。陳情の町村長の中には、目に涙を浮べて窮状を訴え、また被災農地の政府買い上げを強く要望する村民もあり、政府の適切、迅速な措置要望する声が強く感じとられたのであります。また、小、中、高校の校舎の被害も多く、半壊、一部流失し、二百人の学童が分散教育を受けている状態でありました。また、韮崎市では、釜無川の決壊によりまして、流域二百町歩の耕地が全滅したばかりでなく、土砂、大石の荒野と化しておりました。今回の災害は、異常な風速と豪雨によることはもちろんでありますが、各河川決壊による被害は、治山治水の根本施策につきまして、再検討を加えるべきではないかと考えられたのであります。  第二日は、長野県下の伊那、飯田、泰阜、塩尻地方の被災地を視察いたましたが、同県下も山梨県と同じように、すでに七号台風の洗礼を受け、直後再び十五号の災害に遭遇し、ことに住居では、山間僻地の低所得農家が多くの被害を受けまして、全壊二千五百余戸、半壊一万二千余戸に達しております。  私どもは、この日全行程三百キロ近くの間を砂塵を浴びて走り回り、現地の人たちとも会い、陳情を受けたのでありますが、視察予定に入っていなかった千代村では、私たちの車をさえぎつて被災現場に案内して、その窮状を訴えるなど、筆舌に尽せない苦労が察せられたのであります。  第三日は、豊科を振り出しに、穂高、松川、大町を視察いたしましたが、松川村では乳川の堤防八カ所、六百メートル、中房川三カ所、二百メートル、高瀬川五カ所四百メートル、芦間川に至っては全面的に河床が上り、下流三百メートルは、押し出された土砂のため、農地と同位の高さになり、また同村では、山麓扇状台地の不毛の土地として顧みられなかったところに、終戦後入植して十余年、粒々辛苦、貧困と戦つてきました外地引揚関拓村は、両台風によりまして壊滅的な被害をこうむつて荒野に変り果て、残されたものは、投入した借財だけという惨たんたる実情でありました。乳川、中房川、芦間川の急流に対処する完全な堤防、砂防堰堤を作る等、現地の強い要望があったのであります。  両県の共通的な要望事項について最後に申し上げます。  一、公共災害復旧事業費の早期決定とともに本年度復旧率五〇%以上として、これに対する国庫負担の高率の措置を講ぜられたいこと。  一、国庫補助対象外の小災害復旧に要する経費を助成するための特別の措置を講ぜられたいこと。  一、災害住宅復旧建設に対し助成のための立法措置並びに住宅金融公庫の融資ワクの増額の措置を講ぜられたいこと。  一、災害公営住宅(第二種住宅)の割当に特別の御配慮を願いたいこと。  一、山くずれ、土砂崩壊防止施設(砂防)の補助率を十分の九とし、災害復旧事業債を認められたい。  一、住宅金融公庫による災害復興住宅資金貸付について次のような措置をとるよう配慮せられたい。  (イ)償還期限の延長をはかること。  (ロ)低所得者層にも貸付の道を開くこと。  (ハ)手続を簡素化すること。   一、都市計画区域内の堆積土砂排土費用の補助率を四分の三に引き上げられたい。  以上であります。  終りに、共通的の若干の所見を申し上げておきます。  恒久対策として治山治水事業の年次計画化と、その事業促進が根本的なものと考えられますが、今回の山梨県、長野県の視察の結果を見ますと、山梨県の総被害額四百億中、土木被害は約百十五億余になっておりまして長野県三百五十億中、土木被害が百億余になっております。従いまして、現在立案されております治水五カ年計画というものは、今次災害にかんがみ、将来の恒久対策として、これをさらに考え直す必要があるのではなかろうか、かように考えられるのでありますが、これに対する御所見を伺いたいと思います。  それから治水計画と治山計画との関連をどのように考えておられるか。たとえば同一水系、あるいは同一地域におきまして治山と治水との関係がどういうふうに根本的に考えられておるか、この基本的な考え方を承わつておきたいと思います。  それから次に、今回の災害は、異常豪雨による異常出水を見まして、山腹の崩壊、河川の異常洪水化を招来したことはもとよりであります。たとえば山梨県の白州町におきましては、山腹の崩壊個所四百三十カ所、十七の沢が一挙に流出して、その岩石、土砂を押し流したというふうな状態でございます。また武川村では、大武川の異常洪水によりまして、平常の河幅が数十倍になっておるというふうな状態でございます。このようなところを考えてみますと、山地砂防の強化はもとよりでありますが、山地砂防と河川砂防の計画実施の関係がどういうふうに今日まで計画されておるかということに疑問を抱いた次第でございます。  さらに、こういうふうな地域に対する防災ダム構築の要望がきわめて強いのでありますけれども、山梨県におきましても、二十七億円余をかけまして三カ年程度で河川砂防、あるいは防災ダム要望を強く訴えておつた次第でありますが、これらに対するお考えも承わつておきたいと思います。  それから各河川の河床が大体二メートル前後一様に上昇しておるような実情でございますが、これの根本的対策はもとよりでございますけれども、今次被災地中河川の河床の上昇に対して、これも将来どういうふうに復旧していくかという考え方についても御意見を承わりたいと思うのであります。  それから次には、山梨県、長野県を通じまして典型的な天上川であります。この天上川に対する河川改修計画をどういうふうに将来とつていくか。一例を申し上げますと、山梨県の甲西町、増穂町地域におきましては、北から坪川、戸川、利根川、畔沢川の天上川が流れていますが、これらの河川は時に合流し、時に交差しております。はなはだしいところになりますと、道路河川の下を走つておるというようなまことに奇妙な形に相なっております。数十年来災害がなかったから今日までよかったようなものの、今度のような災害を考えました場合に、このような水利の困難な地域に対する改修についての考え方というものを、根本的に将来考えておく必要があるのではないか、かように痛感された次第でございます。  最後に一点伺いたいのは、過年度災害に対する復旧はもとよりでございますが、その中で、単独事業に属する災害復旧についての起債措置であります。災害発生年次におき、ましては、もちろん単独災に対する考え方が相当温情的に考えられますけれども、二年次、三年次になりますると、単独災害に対する考え方が薄れていくんじゃないか。従って、初年度考えられたような起債の割当というものが、二年次、三年次に至って薄れていって、従って過年度におきまする単独災害復旧というものが進捗しない。そのうちに年月も経過して忘れられてしまうというふうなことがないか。この点につきましては、長野県の知事よりも御意見がありましたので、あわせてこういう起債の割当方針等につきましても、御意見を承わつておきたいと思います。  以上をもって御報告といたします。
  13. 羽田武嗣郎

    羽田委員長 ちょっと御相談しますが、突然でございますから、当局の方も答弁をすぐでなく、会議録を読んでから答弁をしてもらうようにしたいと思います。どうぞ御了承願います。     —————————————
  14. 羽田武嗣郎

    羽田委員長 この際、木村守江君より、昭和三十四年度災害復旧に関する件について発言を求められておりますので、これを許します。  木村守江君。
  15. 木村守江

    木村(守)委員 今年七月以来の豪雨並びに風水害による被害は、まことに莫大なるものがあります。これにかんがみまして、わが建設委員会におきましては、これに対処するために、すみやかに応急かつ恒久的な、抜本的な対策を立てまして、民生の安定を企図して参ることが必要だろうと考えられます。かような点から考えまして昭和三十四年度災害復旧に対する決議を行いたいと存じますので、ただいまより決議案を朗読いたしまするので、各位の御賛成を得まして、可決してもらいたいと考えます。  決議案を朗読いたします。    昭和三十四年度災害復旧に関する決議   本年は、さきに七月集中豪雨、六号台風、七号台風、八月集中豪雨、十四号台風等相つぎ、甚大な被害の登生を見たが、今次の伊勢湾台風(十五号)に至っては、多数の人命を瞬時にして失い、国土に与えた被害は、その規模に於て又深刻なる点に於て末曽有である。政府は、速かに、各般の特別立法の措置を講じ、補正予算の提出をいそぎ復旧に当る必要がある。なお、これが対策を講ずるに当っては在来の原形復旧にとらわれることなく改良を加え、再度災害の招来を排除するとともに、行政部局のセクト主義を排し、技術工法の統一改善を図り、災害対策の基本的事項についての再検討を行うべきであって、特に此の際、災害を未然に防止し国土ならびに人命の安全をはかるため、治山治水の根本計画を確立し、適切な措置を講ずることが必要である。  右決議する。  以上であります。  御承知のように、七月以来の今年度災害におきましては、実に死者四千五百二十三名、行方不明八百八十六名、全壊戸数が三万八千百一戸、流失家屋が五千二十五戸、半壊実に十万七千九百八十一戸というような膨大な数字に達しておりまして、その被害はまことに甚大なるものがあるのであります。こういうような点から考えまして、この災害に対処いたしまして、地方財政に及ぼすところの影響がきわめて甚大であり、また被害民に及ぼすところの影響がきわめて大きいことを考えられまして、政府はすみやかに特別立法の処置を講ぜられまして、そうしてまた補正予算等を提出されまして、これらの復旧に当ることが必要だろうと考えるのでございます。  なおこれらの対策に対しましては、在来ややもすれば原形復旧というようなことにとらわれまして、再度同一個所災害を起すような状態が繰り返されて参りましたが、こういうようなことであっては、真の復旧ではないと考えられますので、どうかそういう点を訂正されまして、いわゆる改良を加えた恒久的な災害復旧をなしていくべきだと考えます。特に今回の災害において見られましたように、あるいは建設省、あるいは運輸省、あるいは農林省というような各部局の継ぎ目、お互いのいわゆる接触面から非常な災害をこうむった実例もたくさんあるのであります。またいろいろ予算関係等から、農林省の工事がきわめて予算の少かったために、多く破壊されたというような点がありますので、片一方では強固な堤防の構築をいたしましても、片一方ではきわめて脆弱な堤防を作っておるような状態でありましては、ここから破壊されまして、かえって大きな災害をこうむるというような状態をわれわれは如実に見せつけられて参ったのであります。こういう点から考えまして、どうしてもいわゆる各省の部局的なセクト主義というものを排除いたしまして、そうしていわゆる建設技術というものを統一いたしまして、しこうして将来再びかような災害の起らないような、いわゆる統一改善をはかつて参ることがきわめて重要なる問題だと考えておるのであります。こういう点を特に考えられるようにわれわれは要望してやまない次第であります。  また御承知のように、年々の災害は繰り返しておりまして、ややもすれば、わが国の財政上から根本的な治山治水計画はとうてい樹立し得ない。これはやりたくも金がないからというような状態でありまするが、今年の土木災害もすでに一千二百億をこしております。われわれは、さきにいわゆる五カ年治山治水特別会計要望いたしまして、三千五百億円を要望いたしておりまするが、今年一年だけで、土木災害だけが実に一千二百億円に上っております。こういうことを考えてみますと、今年のような災害を起さないようにするために、五年で三千五百億円を要求しておるのであります。これを金がないから出せないというような考えで、一年に千二百億円以上の災害費を出さなければならないというようなことは、一文惜しみの百知らずという昔のことわざがあるように、ほんとうにこれは大きな国家的な損失であると言わなければなりません。こういう点から考えまして、国家財政の伸びからどうしてもできないのだというようないわゆるきまり文句ではなく、日本の国土の保全の点から、いわゆる民生の安定の点から考えられまして、そうして基本的な治山治水対策をこの際打ち立てて参らなければならないと私どもは確信いたしておるところでありまして、あえてこの決議案を提出いたしまして、各位の御協賛の上に強く政府要望してやまない次第であります。
  16. 羽田武嗣郎

    羽田委員長 中島巖君より発言の申し出がありますので、これを許します。中島巖君。
  17. 中島巖

    ○中島(巖)委員 私は日本社会党を代表して、ただいま自由民主党を代表して木村守江君より提案になりました昭和三十四年度災害復旧に関する決議案に対して、賛成の討論を行わんとするものであります。  本年本土を襲つた台風は、七月十三日より十四日にわたって山口県、福島県、新潟県等を襲つた集中豪雨、八月四日ないし七日にわたって愛媛県、大分県、鳥取県等を襲つた六号台風、八月十二日、十三日にわたって山梨県、長野県、滋賀県等を襲つた七号台風、八月二十六日、石川県、静岡県、岐阜県新潟県等を襲つた集中豪雨、九月十六日、十七日に北海道、長崎県、新潟県等を襲つた十四号台風、九月二十六日、二十七日、三重県、愛知県、奈良県等を主として本土全域にわたる伊勢湾台風等がありました。  本年度の建設省関係公共土木施設のこうむつた損害は、七月以降のみにても一千百七億円に上るのであります。昭和二十八年の公共土木施設災害総額は一千二百三億でありました。まさに昭和二十八年に匹敵する額であります。また伊勢湾台風の特色は、人的被害並びに家屋被害、中小商工業に対する被害額が甚大でありました。  先ほど提案者の木村守江君の提案理由の説明にもありましたが、死者四千九十四人、行方不明一千三十五人、全壊家屋三万六千六百十八戸、半壊家屋九万八千六十五戸に及んでおります。以上の数字を見ても、政府はすみやかに昭和二十八年度を上回る高率補助の特別立法の措置を講じ、補正予算の提出を急ぎ、急速の復旧をはかるべきであります。私は木村守江君提案の決議案に賛成すると同時に、これに関連して政府に左の五点を要望するものであります。  一、災害のたびごとに特別立法をすることをやめて、恒久的立法としてその災害の程度に応じて自動的に適用されるべきものとする。  二、ことに民生安定を重点に置き、罹災者援護についての手厚い制度を確立すべきである。  三、年中行事的災害発生を根本的に克服し、国土の総合開発を促進するため、治山治水促進に関する基本的な法律を制定すべきである。  四、この際自衛隊を改編して平和国土建設隊を設置し、国土建設災害救援に専心さすべきである。  五、農地、農業用施設公共土木施設等の復旧工事施行の予算は、三・五・二の比率にとらわれず、復旧早期完成をはかるよう予算措置を講ずべきである。  以上五点であります。  また伊勢湾台風にて特に感じたことは、徳川時代からの長い間の海岸埋立地帯、すなわち干拓地帯の災害が甚大であった点であります。政府は十分調査研究の上、今後の国土開発計画に大幅な修正を加えるべきではないかと考えるのであります。  以上理由を申し上げて、大村守江君提案、昭和三十四年度災害復旧決議案に賛成の討論を終るものといたします。
  18. 羽田武嗣郎

    羽田委員長 木村守江君の動議を採決いたします。ただいまの木村守江君の動議の通り決議するに賛成の諸君の御起立を願います。     〔総員起立〕
  19. 羽田武嗣郎

    羽田委員長 起立総員。よって木村守江君の動議の通り決しました。なお本決議につきましては、議長報告するとともに、関係方面に参考送付いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 羽田武嗣郎

    羽田委員長 御異議ないものと認め、そのように取り計らうことにいたします。  この際、政府当局より発言を求められておりますので、これを許します。村上建設大臣。
  21. 村上勇

    ○村上国務大臣 ただいま当委員会おきまして、災害復旧に関する決議案が満場一致をもって可決いたされましたことは、まことに適切な処置として、私ども意を強ういたしておる次第でございます。決議の内容に、特別立法をすみやかに制定して、あらゆる角度からこの復旧のすみやかに行われるように、その措置を講ぜよということでありますが、私どもは、ただいま特別立法を政府提案で上程するように、慎重に審議をいたしておる次第でございます。  また原形復旧でなく、恒久的な改良復旧を行うようにということでありますが、これも全く御趣旨通りでありまして、恒久復旧をするのでなければ、災害を再び繰り返すおそれがあるという点につきまして、その意を強ういたしておる次第であります。予算措置、あるいは技術方法について格段の検討を加えよというようなことにつきましても、われわれこの決議の趣旨を尊重して、あくまでもその線に沿って適切な方法を講じて参りたい、かように思っておる次第であります。
  22. 奧村又十郎

    ○奧村説明員 ただいま御決議になりました御趣旨につきましては、まことにごもっともに考えます。その内容につきましては、すでに当委員会において各委員から御質問があり、また御答弁申し上げて、大蔵省としての方針を明らかにしておるわけでありますが、さらに本日ここに御決議になりましたのでありますから、この決議の趣旨を実現すべく、またただいま村上大臣からも御答弁がありました通りでありますから、その通り実現するよう大蔵省としても努力する所存であります。
  23. 小枝一雄

    ○小枝説明員 ただいま当委員会におきまして、満場一致をもって災害復旧に対する重大なる決議が行われました。私どもその御決議の趣旨に対しましては、まことに適切かつ重要なる問題であることを痛感いたすものでございまして、御趣旨を尊重いたしまして、十分御期待に沿うよう、農林当局といたしましては処置をとるつもりでございます。     —————————————
  24. 羽田武嗣郎

    羽田委員長 質疑の通告がありますから、前会に引き続きこれを行います。久野忠治君。
  25. 久野忠治

    久野委員 前二回の建設委員会において、天災か人災かということが焦点になって議論せられました。大体の結論は、ある程度の措置をすればこれは防ぎ得心のではないか、いわゆる人災論が多数を占めたのではないかというふうに私は記憶をいたしておるのであります。ただいま当委員会における決議が採択をせられました。その決議案文の中にも、これらの幾多の重要な問題が指摘をせられておるのでございます。ただ言葉の上で、当委員会がこの決議案文を採択したということだけでは、私は多くの被災者の人たちは納得をしないと思うのであります。そこで、二度とこうした大災害を受けないためにも、この際将来の恒久対策の技術的な面はどうしたらいいか、またそれを解決するためにセクト主義を改めよと言っておるが、その改めるための根本的な方策はどうしようというのか、また予算上の措置は応急、恒久の二本建として来たるべき臨時国会に提案すると言われるが、しかしその予算措置だけで満足すべきものかどうか、こうした幾多の点について、私は具体的に問題を取り上げて率直に政府側の意見をお聞きしてみたいと思うのでございます、  私がただいま申し上げたような諸問題は、昭和二十八年災が発生をいたしました際に、建設委員会、あるいは災害特別委員会において幾多論議された事柄でございます。そのときに政府側の答弁を聞いてみますと、異口同音に、まことにごもっともである、十分予算措置をしてその期待にこたえたい、二度とそうした災害を起さないようにいたしたいということであったと思うのであります。ところが、そうした国会における政府側の決意が果して実行に移されたかどうか、またそれを実現するために障害があったのではないか、こうした多くの疑点が今日頭に浮んでくるのでございます。さような意味合いから、予算措置の問題を中心にして、まず政府側に御意見を承わつてみたいと思うのであります。  建設省におきましては、海岸堤防の脆弱性を根本的に解決をするために、思い切つた改良復旧をやるのだというので、当時応急、恒久の海岸堤防復旧のための予算の案なるものが示されました。当時お話によりますと、建設省の要求額は三百二十億円であったといわれておるのであります。その三百二十億円の予算要求がだんだん時とともに削られてしまいまして、最後には百八十億円になつたと聞いておりますが、その金額はどういう変遷をたどつてそうなつたのか、その経過について政府側の御意見を承わりたいと思います。
  26. 山本三郎

    ○山本説明員 私ども、当時直接は関係しておりませんでしたけれども災害を受けた部分について改良復旧、いわゆる災害助成を加えまして全体をやりますには、三百二十億円という数字が出たわけでございます。これを第一期工事と第二期工事に分けて、第一期工事が百八十億円、第二期工事が残りということで、私どもとしては現在まで進めて参つたわけでございまして引き続き第二期工事もぜひやらなければならぬというような考えでおつたわけでございます。
  27. 久野忠治

    久野委員 建設省が要求をいたしました三百二十億の復旧費の中には、今回大きく破堤をいたしました海部郡、名古屋市の南部一帯の海岸堤防は、計画の中に含まれておりましたか。
  28. 山本三郎

    ○山本説明員 海部郡の南部の堤防は、十三号台風によりまして被害を受けなかったわけでございまして、これにつきましては、ただいま申し上げました改良復旧あるいは災害復旧というものを行う部類に入っておりませんで、別途の河川海岸堤防修築事業計画というものに入っておつたわけでございます。
  29. 久野忠治

    久野委員 そういたしますと、その修築計画の内容は、金額にいたしましていかほどになっておつたでございましょうか。
  30. 山本三郎

    ○山本説明員 ただいま的確な数字は記憶いたしませんが、海部郡の日光川から鍋田の干拓の取りつけまでの間におきまして、総事業費が三億数千万という全体計画ではなかったかと思っております。
  31. 久野忠治

    久野委員 まことに少額なのに、私は何とも申し上げようがございません。一体三億数千万円というような金額で、果してあれだけの高潮を防ぎ得るかどうか、また十三号台風の際の高潮に対する堤防の修築計画というものは、技術的に検討をせられまして、ある程度その計画が立っておつたと思います。しからばお尋ねをいたしますが、そのときの技術的な検討の結果、将来起り得るであろう高潮の潮位、潮の高さというものはどれだけに推定しておられたのですか。
  32. 山本三郎

    ○山本説明員 場所によって違うわけでございますが、一番高いところにおきまして、堤防を六メートル五十に構築いたすならば、約五十センチ程度の余裕は得られるということでございますので、潮位に偏差を加えまして、波の高さをさらに考慮いたしまして、約六メートル程度というふうに考えておつたわけでございます。
  33. 久野忠治

    久野委員 そうだといたしますと、それだけの高潮を防ぐための海岸堤防の高さで、総延長どれだけになりましようか、建設省の所管だけで。
  34. 山本三郎

    ○山本説明員 今の日光川から鍋田の干拓のところまでの延長は、約五キロないし六キロではないかというふうに考えております。
  35. 久野忠治

    久野委員 ところが、名古屋市の南部一帯の海岸堤防も、これは所管が違うわけでございますが、さらにこれに加わると思いますし、また鍋田干拓の農林省の所管の堤防もこれに加わると思いますから、おそらく五キロが三倍あるいは四倍に私は海岸線の延長がなろうかと思うのであります。その延長の長い距離の海岸堤防修築のために、わずか三億数千万円の修築費をもって事足れりというような考え方は、一体当初に誤まりがあったんじゃないですか。
  36. 山本三郎

    ○山本説明員 仰せの通り、三億数千万の計画といたしましてはなお不十分でございまして、これはとりあえず第一期計画と申しますか、県と打ち合せましてとりあえずそれだけにしておきまして、引き続いてさらに補強をする必要があるということは考えておつたわけでございます。
  37. 久野忠治

    久野委員 そもそもあれだけの大災害を受けたのでございますから、当初から潮位というものはちゃんと計算の中に入れて、それに耐え得るだけの堤防を作つておかなければ、これは災害防除にはならないのです。それをただいままでの御答弁によりますと、何ら考慮に入れてないというふうに私は思いますが、どうですか。
  38. 山本三郎

    ○山本説明員 十三号台風におきましては、海部郡の地帯は、今回の潮位よりも一メートル程度低いものでございまして、そのためにあそこが幸といいますか不幸と申しますか、こわれなかったのであります。そのために現在におきましては、ほかの地区は改良されて強くなつたのでございますけれども、ちようどこわれなかった地点が、今回の台風におきましては非常に弱い地点になつたということでございまして、改良を加えて早く促進したいということを考えておつたわけでございますが、その中途においてやられたというのが実情でございます。
  39. 久野忠治

    久野委員 その問題は、あとでもう一度質問をいたしたいと思いますから、先へ進めますが、その三百二十億円の建設省の要求を、第一期工事として百八十億円に削つた、こういうのでございますが、そういうふうに削られても、建設省は、それで十三号程度の台風が襲来すれば技術的には十分耐え得る、こういう考え方であったのでございましょうか。
  40. 山本三郎

    ○山本説明員 その点につきましては、百八十億ではまだ十分ではないと考えておつたわけでございます。
  41. 久野忠治

    久野委員 私はそこが問題だと思う。あくまでも国土保全、あるいは災害復旧のためには、やはり技術的に十分検討をいたしまして、大蔵省はその意見を聞いて、そうして財政措置をするということでなければ、十分な国土保全の意義は達成されないと私は思うのであります。最近新聞の報ずるところによりますと、学術調査団とか技術調査団、いわゆる学者グループが災害地を回りまして、技術的の検討がなされておるようであります。本日の新聞紙上にもその内容がつぶさに報告をされております。しかし要は、そういう検討をなされたことを着々と実行に移していくという用意がなければなりません。災害はあす来るかもしれないのであります。五年後に来るとか、六年後に来るとかいう性質のものではない。でありますから、あす来るための用意をするためには、そうした技術的な検討を着実に政治面で実行に移していくという強力な用意と、また決断力が私はなければならぬと思うのでございますが、その点についての建設大臣の御所見を承わりたいと思います。
  42. 村上勇

    ○村上国務大臣 もとより災害がどこへ、いつ来るかということは予期できないのでありますから、国費の許す限り、どこまでも前もって十分な施設をしておくということは大事であります。
  43. 久野忠治

    久野委員 第一期計画百八十億円という計画が樹立をされて、昭和二十八年からその事業が推進をされたわけでございますが、当初は、これは何年で完成するという予定でございましたか。
  44. 山本三郎

    ○山本説明員 二十九年までに完成するよう努めるというつもりでやつたわけです。
  45. 久野忠治

    久野委員 ところがその中で、まだ全部使い果していないと思うのですが、残つておる部分があろうかと思いますが、それはいかほどでありましようか。
  46. 山本三郎

    ○山本説明員 先ほど三百二十億と百八十億というお話がございましたが、第一期計画が百八十億でございまして、そのうちまだ十二億程度残つておるわけであります。
  47. 久野忠治

    久野委員 二十八年災の処理が、六年もたつてまだ十二億残つておる。しかもその十二億残つておる残事業の施行地区というものは、一体どういうところでございましょうか。
  48. 山本三郎

    ○山本説明員 海面に面した外郭の地区でございます。
  49. 久野忠治

    久野委員 何ですか、もう一度……。
  50. 山本三郎

    ○山本説明員 海の方に面した表の地区の堤防の補強でございます。
  51. 久野忠治

    久野委員 そうすると、小河川とか、あるいは用排水路とか、あるいは入江とかいうような中へ入つた部分は、その十二億の中には含まれてないのですか。
  52. 山本三郎

    ○山本説明員 第二期工事の大部分は、今先生のおっしゃったような小河川の取りつけの部分でございます。
  53. 久野忠治

    久野委員 ところがせつかく皆さんの御協力ででき上りました十三号台風のあのりつぱな海岸堤防、これを被災地の皆さんは何と言っておるかと申しますと、万里の長城だ、こう言っております。もう二度と災害は来ない、どんな高潮が来ても、この海岸堤防なら防ぎ得る、こう言って避難をしなかったという実例が今回あります。退避命令を出したにかかわらず、避難をしなかったという地区があった。ところが残念ながら、わずか十二億の予算の出し惜しみから、昭和二十九年にこれが完成をいたしておりますれば破堤をしなかったにかかわらず、その地域から堤防が破壊をいたしまして高潮被害を受け、多数の人命を失つたという地域が今回たくさん見受けられるわけでございます。いかに表護岸を万里の長城を築いても、内側のわずかな地域から水が漏れたということであります。  しからば大蔵省当局にお尋ねをいたしますが、技術的な十分な検討をして、二十九年までにまず第一期計画は終りたい、そうして三十年から三百二十億というものの残事業、いわゆる第二期計画、第三期計画にかかりたいという建設省側の要望に対して、大蔵省側はどういう態度で臨まれたか、そのことをまず伺いたい。
  54. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 お答え申し上げます。ただいま河川局長からお話がございましたように、災害直後の問題でございましたものですから、全体計画の提出はだいぶあとになつたと思いますが、三百二十億円の計画が出たわけでございます。もちろん大蔵省といたしましても、当時の大災害の問題でございますので、これは技術的に見て守れるというものをやらなければならぬということは否定するわけには参りません。そういう方向でやろうということになつたわけでございますが、何分にも大災害のことでございまして、財政的にも非常に大へんであるという事態でございますので、計画の内容を、当面重要な個所を守るための第一期の計画、それから第二期の計画とに分けて、第一期計画をなるべく早くやる、こういうことを話し合いをいたしまして実施したようなわけでございます。
  55. 久野忠治

    久野委員 その第一期計画がまだ十二億残つておるのですよ。その十二億の残された個所からは堤防は破堤したのです。そのことによって多数の人命を失い、工場や住宅を失つた気の毒な罹災民の人たちがたくさんある、なぜそれを処置しなかったのですか。
  56. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 御指摘のような事態があったといたしますと、まことに遺憾でございますが、二十八年の災害は非常に大きかったものでございますから、災害復旧事業もやつと三十四年度、本年度で完済するというような事態でございます。従いまして災害関連事業であります海岸堤防のようなものが一年程度おくれたということは、まことに遺憾でございますが、やむを得なかった、こういうふうに考えて点ります。
  57. 久野忠治

    久野委員 私はやむを得なかったでは済まされないと思う。これはもう大へんな問題です。おそらく海岸堤防を中心にして住まつておる住民の人たちは、もうどんなに政府が今度りつぱな堤防を築いて下さつても安心しないでしよう。予算措置もいたします、こういう仕事をやります、こういかに政府側がりつぱにおっしゃっても、住民はこれには賛意を表さないでありましょう。政治に対する不信の念が高まつてくる、それを私はおそれるのであります。急速果敢に応急、恒久対策を進めるという根本はそこにある。技術調査団がいかにしさいに検討して結論を出しましても、これが実際に政治面に取り上げられて、その仕事が進んでいかなければだめであります。それが六年有余になってまだ十二億も残つておる。この十二億の予算措置は、何年終る予定でありますか。
  58. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 三十五年度には完済いたす予定であります。
  59. 久野忠治

    久野委員 これは二十八年災でありますが、その後に起きました二十九年災、三十年災、三十一年災、こういうものはいつ終りますか。また終つてたいものはいつ終るのですか。
  60. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 三十一年度に公共土木川施設災害復旧事業費国庫負担法の改正が行われまして、その法律実施の日から後の災害につきましては、緊要な災害につきましては三カ年、その他のものにつきましてもできるだけ早期に終了するようにという法律の改正が行われました。従いまして三十一年災害からこの法律の趣旨にのつとりまして緊要な災害には三カ年、その他のものは四カ年で終了をするという方針で実施いたしております。
  61. 久野忠治

    久野委員 そういたしますと、二十九年災、三十年災はもうすでに完了したということですね。
  62. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 法律の成立が三十一年でございまして、二十九年災はほとんど残つたものはないと思っておりますが、場合によりますと若干あるいは残つておるかもしれません。三十年災は完済いたしました。
  63. 久野忠治

    久野委員 もう一つ重要な点を私はお尋ねすることを忘れましたので、追加してお尋ねをいたしますが、この百八十億の事業を遂行するに当りまして、当初計算をせられました技術的な内容が何回も修正されております。私の記憶しておる範囲内では、三回にわたって修正されておると思います。早く工事の施行の済んだ個所と、それから三十一年、二年あるいは三年、四年と残された地域の技術的な内容とは相当つておると思います。具体的に申し上げますならば、海岸堤防の表のコンクリート張りと波がえしとの取りつけ部分には、鉄筋を入れるように最初の計画ではなっておりました。ところが昨年あたりからやりました工事の内容を見てみますと、その鉄筋が抜かれております。それから表護岸のコンクリートの厚さが私はどれだけであったか今記憶しておりませんが、薄くなっております。それから礫も薄くなっております。その礫の下には粘土を入れるような施工内容になっておりましたが、その粘土も抜かれております。査定を繰り返すたびごとにだんだんと当時の技術的な検討の内容が改変されております。改変が改善ならいいのですが、改悪であります。だんだん悪くなっていっておるために、先ほど私が指摘をいたしましたように、まだ残された工事個所が破堤したということだけでなしに、すでに完成をいたしました堤防も破堤をいたしております。当初作りました海岸堤防は、厳然として残つておるにかかわらず、ごく最近に完成をいたしました海岸堤防で破堤した個所があります。その多くを見てみますと、ただいま私が指摘をいたしましたように、波がえしがひっくり返つたとか、あるいは裏のりのコンクリート張りが再査定によってのけられたために、そこから内堤がこわれて堤防が破堤したという個所を随所に見るのであります。なぜそういうような再査定の際に技術的な改悪が行われたか、その経過をまず建設省の方からお伺いいたしたい。
  64. 山本三郎

    ○山本説明員 こまかい内容でございまして何でございますが、。パラペットの下に鉄筋を挿入するというようなお話でございましたが、これは地区によりまして鉄筋を入れたところがあつて、他は入れてないというようなところはなくて、全部鉄筋は入っていないそうでございます。それからパラペットがないところがある。これは、お説の通りあるらしゆうございまして、そのパラペットを第二期の方に回したところもある。それから場合によりましては、波当りの陰等におきましては、裏のりの張るやつを第二期の方に加えたのがあるというのが実情でございます。
  65. 久野忠治

    久野委員 私は局長のおっしゃったことに反駁するわけではございませんが、あなたは実情を御存じない。なるほど建設省直轄工事でやつた区域については、鉄筋は入っております。ところが最近工事をやつておりますのはほとんど補助事業であります。市町村工事だとか県営の事業であります。その補助事業が三回にわたって再査定が行われたのであります。当初の技術的な内容は、ただいま私が申し上げましたように、全部波がえしの中に鉄筋を入れるようになっておりました。ところがその鉄筋が抜かれております。そのために波がえしがひっくり返つたという個所がたくさんあります。うそだとおっしゃるなら、私はその現地をお見せします。ちゃんと痕跡が残つておりますから、お見せします。それから裏のりのコノクリート張り、あるいは表護岸のコンクリートの厚みが減らされたという事実がありますが、この点はどうですか、どういう考え方で厚さを減らしたのか、その技術的な根拠を伺いたい。
  66. 山本三郎

    ○山本説明員 表のりのコンクリートの厚さを場所によって変えたというようなことはない。当時の海岸をやつておりましたのが防災課長でありましたので、少くとも直轄の部分につきましてはそういうことはないということでございます。
  67. 久野忠治

    久野委員 直轄は早く工事が終つておりますからありません。しかし補助事業では、三回の査定によって変つておるのであります。なぜそういうふうに変えたか、もう一度お尋ねしたい。
  68. 山本三郎

    ○山本説明員 その点につきましては、先生が現実に見ておられるので、あるいはそういう点があるかと思いますけれども、今私どもの存じている範囲におきましては、再査定によりまして前のコンクリートの厚さを変えたというような例は、今のところ私どものところでは考えられないということでございますが、なおその点につきましては、調査をしてみたいと思っております。
  69. 久野忠治

    久野委員 水かけ論になりますから、これ以上は申しませんが、どうが一つそういう実情を十分調査して、二度とそういう被災をこうむらないように技術的な検討をしていただきたいと思うのであります。それからさらに技術の問題で、時間がありませんから要約して簡単にお尋ねいたしたいと思うわけでございます。河川の流入口、いわゆる河口部分に対する手当を怠つているのではないかという気がするのであります。従来河川については、ある程度治水的な立場から技術的な検討がなされていると思うのでございますが、高潮という際には、やはり四キロも八キロも上流部分が潮が高くなるのであります。この高潮に対する技術的な手当というものを検討なさったことがございますか。また十三号台風工事計画をお立てになるときに、そういう点を考慮の中に入れてこの三百二十億という計画をお作りになつたかどうか、そのことをお尋ねいたしたいと思います。
  70. 山本三郎

    ○山本説明員 十三号台風に対する災害復旧なり改良工事におきましては、海岸に関連いたします河川等につきましても対策を考えたわけでございます。それから一般の河川につきましても考えているかというお話でございますが、それにつきましても海岸の部分の河川計画は、高潮がきてもいいように海岸堤防を調和のとれたものにしようということで計画はしているわけでございますけれども、今回の災害等におきましては、海岸堤防はもちろん、河川も同時に高潮にやられたわけでございますので、その点、計画も一致させ、また工事も並行してやらなければならぬという点をさらに痛感いたしたわけでございます。
  71. 久野忠治

    久野委員 十分そうした点については技術的な配慮をしていただきたいと思います。ところが名もないような小便川といいますか、小河川、これを生かすために十分な措置が講ぜられておらない、そこから破堤をしたという実例をたくさん見るのでございますが、こうした農業排水口と申しますか、そうした小河川については、逆潮樋門を作るとか、あるいはまた大きなヒューム管でもってこれにかえて、そして海岸堤防は一直線にその部分をも含めて施行するとか、やはりいろいろな技術的な検討がなされなければならぬと思いますが、そうし点についてどういうふうにお考えになっておりますか。
  72. 山本三郎

    ○山本説明員 流入いたします河川につきましては、もちろん海岸堤防に準じてやらなければならぬわけでございますが、そこに堤防を単に作りますると、ふだんの排水にも困るわけでございますので、それと一緒に水門なりを作りまして、ふだんの水は自然にはけるようにいたしますと同時に、高潮が参りましたときには、水門を閉じて十分耐えるようにしなければならぬというふうに考えておるわけでございます。十三号台風のときには、やはり川の中にだいぶ入江を作りまして、そのままに堤防を作るように考えていたわけでございますが、私も現地を見まして、それらの堤防を前べ出して、同じような海岸堤防を作らなければならぬような個所も出てきたというふうに感じておるわけでございます。その際には、もちろんその部分に新しく水門を作らなければならぬわけでございます。従いまして、それらの関連もありますので、実施に当りましては十分注意をいたしまして、河川の部分が弱いというようなことがあつてはいけないわけでございますので、一連した計画にいたしまして、工事を施行して参りたいというふうに考えております。
  73. 久野忠治

    久野委員 きようの新聞で発表せられました学術調査団の技術的な内容について、どうお考えになりますか。
  74. 山本三郎

    ○山本説明員 調査団の方におきましては——まだ正式の意見は私も聞いておりませんが新聞で方々に、個人的にも申されておるようでございますが、堤防の高さ等につきましては、今回のような台風が参りましても十分耐えるようなものにしたい。それからさらに上を越す場合も、万が一のときには考えられるわけでございますので、裏からやられるようなことが絶対ないようにというふうに考えまして、近く全体の計画決定し、さらに施行に際しましては、先ほどから申し述べておりますように、いろいろと災害実情に応じて災害実情をよく考えまして、それに応ずるような施策を施して参りたいというふうに考えております。  それから、河川上流部にずっとやらなければいかぬという御意見も、私どももぜひそうしなければならぬというふうに考えておるわけでございまして、一連のものとして施行して参りたいというふうに考えております。
  75. 久野忠治

    久野委員 ところが建設省でそういう事業計画をお立てになっても、実際にその事業を、先ほど来私は何回も繰り返して申し上げておるように、現実にものを作らなければだめだと思うのであります。ところがその力に欠けておると私ははっきり申し上げたい。どういうことかと申しますと、名古屋市の南部で今度大きな災害を受けたのでございますが、これに流入をいたしておりまする河川、天白川、山崎川、大江川、庄内川、こういうような河川の破堤個所をつぶさに見てみますると、依然として昔のままで、何ら手を加えられておらない。こういうような河川は、中小河川としてある程度事業計画をお立てになって事業は進めておいでになつたと思うのでございますが、一体それは従来やつておいでになつたのか、あるいはまたこれからやるというのか、その点について御意見を伺いたい。
  76. 山本三郎

    ○山本説明員 これらの河川につきましては、まだほとんど手を加えていないというような状況でございます。今回におきましては、これらの河川海岸と同時にやらなければ、あの地区の水害を根本的に除くことはできないというふうに考えておるわけでございますので、優先的に処置して参りたいというふうに考えております。
  77. 久野忠治

    久野委員 私はこれは大へんな御答弁だと思うのですが、まことにおそれ入りました。実に私はおそれ入つた。十三号台風のときの高潮災害によって、潮位がどの辺までくるかということは、もうはっきりわかつておつたと思う。その高潮河川の河口部から上流まで、どの辺までの距離まではどれだけの高潮になるかという技術的な検討もなされたはずであります。そうだとするならば、ただいま私が名前をあげました数河川は、少くとも河口部から四キロ、ないしところによりましては六キロ、八キロという中流部まで高潮のための防潮堤を作つておかなければならないはずであったと思うのであります。そういうような技術的な検討もなだしておらない、事業もまだ全然手をつけておらない。そうだといたしますと、原始河川のままで放置されておつた、そういうことに解釈してよろしゅうございますか。
  78. 山本三郎

    ○山本説明員 ただいまのお話の河川の部分につきましては、幸か不幸か十三号台風におきましては、あの辺の潮位は非常に低かったわけでございまして、もちろん十三号台風のあとの災害復旧なり河川助成の対象にはならなかったわけであります。従いまして、現在までそれらに手をつけていなかったわけでございますが、海部海岸海岸堤防の修築と同時に、日光川の部分におきましては、特に高潮にも必要だということで、逆水門を作ろうということでこの工事も始めておつたわけでございます。それからまた庄内川につきましても、これも中小河川改修計画を樹立いたしまして、これによりまして工事を行なっておつたわけでございますが、それらも今回の台風に間に合うことができなかったわけでございまして、そのためにああいう被害が発生したわけでございます。今回の台風高潮は、十三号に比べますとあの付近では相当程度高いわけでございまして、従いまして従来の計画通りできておりましても、あれでは危険ではなかったかと考えておるわけでございまして、今回の高潮に耐えるようには、先ほどからいろいろお話し申し上げておりますけれども、さらに計画を大きくいたしまして、強固なものを作らなければいけないというふうに考えております。
  79. 久野忠治

    久野委員 庄内川の河口部は、中小河川としての堤防、こういうような技術的な内容でございましたでしょうか。
  80. 山本三郎

    ○山本説明員 河川の河口部におきましては、川の洪水も参りますけれども、しかし高潮が参りますので、むしろ高潮の方が危ないわけでございます。従いまして下流部は主として高潮に安全なような計画を作る、しかし高潮が参りまして、さらに上流から大きな洪水が参りますから、高潮プラス洪水ということになりますので、それも加味して下流部の計画を作るというのが河川の立場の計画でございます。従いまして、庄内川につきましてもそういうふうに考えておるわけでございますけれども、何せ今回の高潮等は、従来にないような大きなものでございますので、さらに計画を大きくしなければならぬというふうに考えております。
  81. 久野忠治

    久野委員 中小河川としての改修計画はもちろんやつておいでになると思うのであります。中流部から上流部にかけては、ずっと工事はやつておいでになるようです。ところが下流部は全然手をつけていないというのが実情でございます。これは、ただいま私が申し上げたような数河川には相当見られるのでございます。ところが河口部は、御承知のように港の関係がありますから、運輸省の所管です。その運輸省の所管区分で仕事を進めているかと見ますると、さにあらずして、これまた全然手をつけていないというのが実情でございます。ここに私は行政官庁のセクト主義が如実に現われておると思う。所管区分の接合点はいずれもやらない。そういうところから先に手をつけて、だんだん離れたところへいくというのなら話はわかるのですが、上流の方からだんだん攻めてくる、運輸省の方は港の方からやつてくる、その接合地点が昔の姿で残されておりますので、今度の名古屋市の南部地帯の破堤個所というものは、全部そこが破提したのです。そういうような配慮を怠つたということが、私は主要な原因だと思います。そうした点について、どうですか、そういう意図があつて、所管が違うのだから、おれの方は上流の方からぼつぼつやつてくるんだ。運輸省の方も、河口部のずっと港の方からぼつぼつやつてくるんだ、そういうような考え方が頭の中にあったんじゃないですか。
  82. 山本三郎

    ○山本説明員 今のお話は、多少所管の区分があるから、それより離れたところからやるというようなことは私どもは決して考えておるわけではございませんで、川を処置する場合におきましては、やはり一番危ないと考えられる地点からやつておるわけでございまして、私どもも今回のような台風がくるということが想定されるならば、もちろん下流の弱いところもやらなければならぬわけでございます。しかし従来の経験から申しまして、上流からくる洪水で危ない回数が非常に多いというようなことから、上流の方の危ないところをやつておつたわけでございまして、下流部は十三号台風のときも持つたわけでございますけれども上流部の方はしばしば非常に危険にさらされておるところが多いという観点から上流をやつておつたわけでございます。しかし今回のような事態が想定されるわけでございますので、それらの河川につきましては、最優先的に下流をやらなければならぬというふうに考えておるわけであります。
  83. 久野忠治

    久野委員 高潮ということを考慮の中に入れなければそれでいいと思うのです。しかしとにかく海と接合しておる地点は、ところによっては、ただいま私が申し上げましたように、十キロ近くも海水が上流部へ遡行、上ってくるのです。そういうことなどを頭に入れて技術的な検討をおやりにならないと、今度のような災害を二度三度繰り返すことに私はなろうかと思うのです。これは一名古屋地区だけにとどまりません。都市の密集地帯に流入をいたしております河川というものは、私が今指摘をいたしましたような、同一条件にあると思うのです。大阪湾にいたしましても、東京湾にいたしましても、その他の都市にいたしましても、私は同じことが言えると思うのです。でありますから、やはり高潮の高さがどれくらいまでくるかということのある程度の技術的な検討がなされたら、それに応ずるための施策を急速に果敢に一つ各省ともセクト主義にとらわれずにやつていただきたいということを希望いたしたいと思うのでございます。  次に、農林政務次官がおいでになりまするので、一青お尋ねをいたしたいと思うのでございますが、鍋田干拓が大きく破堤をいたしましたために、それを原因としたのか、またそうでなく、非常な高潮のためか、それは私はわかりませんけれども、非常な災害を受けたのでございます。その鍋田干拓の海岸堤防の技術的な内容というものは、どれくらいの高潮に耐え得るという内容でございましたでしょうか。
  84. 小枝一雄

    ○小枝説明員 ただいま御質問の鍋田干拓の堤防でございますが、この点につきましては、事務当局も参っておりますので、事務当局から答弁いたさせます。
  85. 清野保

    ○清野説明員 お答えいたします。鍋田干拓の堤防の標高は、海岸堤の部分で七・三メートルでございます。この堤防標高は、十三号台風のときの暴潮位三・九メートルを基準にいたしまして、波高あるいは吹き寄せ作用、つまり高潮に対する影響を十分に考慮し、さらに余裕を見て決定したものでございます。なおこの堤防標高は、過去におきますところの最大潮位である昭和元年の四・三八という潮位をも考えまして、それよりチェックいたしましても十分安全である、こういう方法によって決定いたしております。
  86. 久野忠治

    久野委員 ところが安全であるといわれた鍋田干拓の堤防が、約七キロほどありますが、それが全部破堤をいたしました。一カ所も満足な形で残つておるところはございません。それだけでなく、愛知県における干拓堤防、他の三地区の干拓堤防も同様に破堤をいたしました。これは全部ではございません、一部破堤でございますが、同じような技術的内容のもとにおいて、農林省の作りました海岸堤防は破堤をいたしたのでございます。一体鍋田干拓というのはいつ完成したのですか。
  87. 清野保

    ○清野説明員 昭和三十四年度に大部分が完成をいたしまして、三十五年度に仕上げる、こういう予定でございました。
  88. 久野忠治

    久野委員 建設省所管のこの計画内容と非常に違うのでございますが、その違う主要な原因というのはどこにあるのですか。どういうところにその重点を置いて、ああいう構造の内容になさったのでございましょうか。
  89. 清野保

    ○清野説明員 鍋田干拓その他の干拓堤防構造につきまして、建設省堤防と若干違うのであります。そのおもなる理由を申し上げますと、干拓の経済的特性、やはり農民の負担減というものを一応考慮に入れまして堤防断面をきめておる、こういう点が主要原因かと思います。
  90. 久野忠治

    久野委員 一メートル当りの建設資金はどれくらいでございましょうか。
  91. 清野保

    ○清野説明員 干拓堤防の一メートル当りの工費は、ところによって違いますが、大きいところでおおむね十万円くらい、普通は七万円、八万円の程度かと考えます。
  92. 久野忠治

    久野委員 建設省の十三号台風のときの海岸堤防の修築の一メートル当りの資金内容は、どれほどになっておりましょうか。
  93. 山本三郎

    ○山本説明員 七、八万ないし十二、三万程度でございます。
  94. 久野忠治

    久野委員 そうすると、大体同じような金額でもって海岸堤防が作られておると見なければなりませんね。ところが一方は万里の長城のように残つておる、一方は全部倒れた、これはどこかに欠陥があると私は思いますが、その欠陥の主要な点は、どういうふうに技術家として見ておいでになりますか。
  95. 清野保

    ○清野説明員 鍋田干拓の災害を一例にとりまして、御説明いたします。  鍋田干拓の干拓堤防の標高は、先ほど申し上げた通りでございますが、その構造につきまして、若干建設省海岸堤防と違う点がございます。その一つは、鍋田干拓の干拓堤防は、基礎にコンクリートの約四トン近い大きさの無底函を置きまして、それを基礎にいたしまして、その上に石垣を築く、その石垣をコンクリートでもって、いわゆる練り石積みの石垣を、十分コンクリートを入れて打ちながら、裏のりの方に土砂をサンド・ポンプで吹いていく、そしていわば堤防といたしましては、半自立堤という形式をとつて、裏のりの土砂でもって海水の浸透を防ぐ、こういうような方法をとつてつたのでございます。なお十分堤防が安定してから、堤防標高、堤防のてんば並びにその裏のりを護岸するという考えでもって、堤防のてんば並びに裏のりにつきましては、葦根土というような土と石とをまぜましたものでもって固めておつた、こういう点がございます。従いまして、今回のような未曽有台風が参りますと、どうしても堤防の上を高潮によりましてオーバーいたしまして、そのオーバーしました波がてんばを洗い、てんばをこわす、半自立堤ですから、その堤防が自然に倒れる、こういう結果、従来の干拓堤防とは違つた一つの方法をとつたことによりまして、全面的な破壊、もっとも七千五百メートルのうちにおいて、河川部分を残しまして、その他の部分は基礎がほとんど残つておりますけれども、ともかくも見た目では全面的破壊、こういう原因になつたのでございます。従いまして、建設省堤防と違う点は、今申し上げました半自立堤と、それからてんば舗装につきまして、とりあえず粘土と砂利をもってやつたという点が特に違つておる点と考えます。
  96. 久野忠治

    久野委員 オランダの干拓堤防、これは干拓事業の元祖といわれておりますが、その干拓堤防構造とは大へん違うように思いますが、そういう違う構造をおとりになつた技術的な検討の内容というものは、どういうものでございましょう。
  97. 清野保

    ○清野説明員 オランダと日本との干拓堤防に関する技術強力に関する点は、八郎潟干拓を契機としておるのでございます。従いましてそれまではオランダの干拓堤防に対する技術的な検討が日本では十分行われておらなかったというような点に一つの原因がございます。オランダの干拓堤防は、日本の干拓堤防とは違いまして、河川堤防によく似ました非常にゆるやかなスロープを持つた干拓堤防、しかもそこに十五メーターなら十五メーターの小段がございます。その小段は、波が参りますと、その小段で勢いが消されまして、いわゆる波がはい上る、干拓堤防の問題としましては、波の吹き寄せ作用といいまして、狭いところに風が吹きますと、吹き寄せられて水位が上ります。その次に、波が堤防ののり面に沿いまして、ずっとはい上って参ります。そういうような二つの大きな問題もございますが、それらの点をオランダの干拓堤防では十分勘案いたしまして、のり面に小段をつけて、小段でもって波のエネルギーを殺す、こういう工法をとつてつたのでございます。日本の干拓堤防は、それに比べますと非常に急傾斜な、しかも自立堤といいまして、急傾斜な堤防で、一応その堤防構造が波とか風によって、十分自立できるという方法をとっておったのであって、波に対してはむしろ直接ぶつかる、オランダの工法は波を殺す、そういう点に非常な違いがございます。
  98. 久野忠治

    久野委員 オランダの工法は、十分取り入れて検討をしていただかなければならぬと思うのですが、時間がありませんから結論を急ぎますが、とにかく建設省の所管といたしておりまする海岸堤防運輸省の所管をいたしておりまする港関係海岸堤防農林省の所管をいたしておりまする干拓堤防、こういうものの背後地には一様にたくさんな農地、それから工場地帯、人家を控えておるのであります。一度破堤をいたしまするならば、人命あるいは財産に与える被害というものは莫大に上るわけでございまするから、やはり技術者が総力を上げそ知恵をしぼり合って、万遺憾なきを期さなければならぬと思うのです。ただ干拓地を作るということだけにとらわれて、自分たちの考え方だけで、自分たちの技術的な内容を最善のものと考えてその海岸堤防を作ることが、十分に住民の安心と納得を得る道であるかどうか、私は非常に疑問があろうと思うのであります。でありますから、先ほどの決議にも指摘をされましたように、セクト主義を排すということはここにあると思うのです。やはり今回の未曽有災害実情にかんがみまして、技術の検討については、お互いが虚心たんかいに総力を上げ、知恵をしぼり合って、最良の海岸堤防としての技術的な検討をなし、その内容については一定の期間を付して、是が非でも完成年度は何年までにやるというような計画を立てて、大蔵省当局予算措置を迫らなければならぬと私は思うのです。また大蔵省当局にいたしましても、今回の災害実情にかんがみまして、ぜひ一つ予算措置は、六年もかかってとか、あるいは十年もかかってとかいうようなのんびりした末長いことを目標にせずに、やはり一定の計画を立て、資金計画を立てまして、計画的にこれが完成年度を早めていただかなければならぬと思うのでございます。この貴重な体験をぜひ生かしていただきまして、将来二度と繰り返さないために、名古屋地区だけじゃないのですよ、私の申し上げておることは。大阪湾、あるいは東京湾といわず、全国各地の都市周辺の海岸堤防の修築に当って、このような配慮をしていただきたいと思うのでありますが、大蔵省当局の御意見を伺いたいと存じます。
  99. 奧村又十郎

    ○奧村説明員 ただいま久野委員からの御質問に対して、農林関係建設省関係、また大蔵省関係、各政府委員の御答弁のやり取りの間に、私も非常に教えられるところがございます。お説の通り海岸堤防というものを各省のセクト主義のために不完全なものにするということは、非常な禍根を残すことになりますし、また大蔵省としても、せっかく計画したことは、早期完成させなければ目的が達成できない、これらのことにつきましては、また臨時国会におきましてもいろいろ有益な御議論も出ることと存じます。また政府においても、これに対する対策として立法措置、また予算措置も講ずる、こういう用意をしておるわけでありますから、御趣旨を体して、その通り実現するように予算措置を講ずる、あるいは立法措置を講ずることについても大いに努力をする覚悟であります。
  100. 久野忠治

    久野委員 結論を申し上げます。結論的な問題を要約して御意見を承わりたいと思うのでございますが、これを要するに、海岸堤防あるいは河川堤防、あるいはまた全体の治山治水計画、こういうものに総合的な計画性を付与するときが私は来たと思う。ある程度事前に計画を立て、そうしてそれに一定の時期と資金とを重点的に流入をしなければ、二度、三度と私は災害を受けることになろうかと思うのでございます。さような意味合いから、一昨年以来治山治水特別会計の設定ということが、私たち自民党の党内においても意見が高まって参りまして、この前の予算編成の際に、政府側にも強く要望をいたしました。残念ながら実現に至らなかったのでございますが、今回の三十五年度の予算編成に当りましては、是が非でもこの治山治水特別会計を設定いたしまして、その中に大きく海岸堤防復旧計画を取り入れて、思い切った措置を講じなければ、住民は生計を安んずるわけにはいかない、私はこういうふうに思うのでございまして、その治山治水特別会計建設省一が現在想定いたしております内容、三千五百億の内容自身も変えなければならぬときがこようと思います。先般の建設委員会において、私はそのことをお尋ねをいたしまして、十分内容も検討いたしたいと言っておられますが、とにかくこういう点を十分考慮に入れて、是が非でも政府におきましては、この特別会計を作ることによって抜本的な海岸堤防の修築を含めた治山治水対策を立てていただきたいと思うのでございます。この点につきまして、建設大臣の御所意見を承わりたいと思います。
  101. 村上勇

    ○村上国務大臣 海岸堤防もとよりでありますが、海岸堤防といわず、あるいは河川堤防といわず、ともかくこの治水事業はどうしても抜本的な施設を施しておきませんと、かようなことがまた忘れたころやってくるのでありまして、われわれがすでに計画いたして要求しておりまする治水事業五カ年計画と申しますのは、いわゆる必要最小限度の費用でありまして、これが必ザしも抜本的な将来とも災害に対して何ら不安がないというような、そういう誇るべきものではありませんが、とにかく今日の国の財政等も考慮に入れた最小必要限度の要求をいたしておるのでありまして、これだけは、私といたしましては今回の災害があったから、あるいはなかったからというような問題ではなく、過去のあらゆる災害によって国費あるいは国力を失っておるところを考えますと、どうしてもある程度までは何とか対策を講じておかなければならない、こう固く信じております。
  102. 久野忠治

    久野委員 この問題についての大蔵省当局の御所見を承わりたい。
  103. 奧村又十郎

    ○奧村説明員 治山治水計画をどうしても実現しなければならぬという御趣旨については賛成であります。大蔵省としてもそのように努力をいたす覚悟でございます。ただ、これはもう釈迦に説法ではございますが、国家財政の健全性を確保しながらやっていくということについては、非常な苦心が要るということだけは、一つあらかじめ御了承願いたい。御承知の通り、自然増収も多少は見込めますが、今回の災害復旧のために、今年度の自然増収はほとんどが取られるのじゃないか。来年度においても、相当災害復旧費が増額するのじゃないか。また治山治水計画のほかに、科学技術振興とか、あるいは東南アジアの開発とか、そのほか御承知の通り、いろいろ新規要求もございますので、その間の調整をどのように取るかということについて、大蔵省として実はただいまから非常に苦心をしておるということで、しかもその苦の中を御趣旨に沿つうごと——、実現したい、こういう気持も一つよくお含みおき願いたいと思います。
  104. 久野忠治

    久野委員 国家財政の立場からということは、いつでも大蔵省当局のお言いになる常套語でございます。そういうことで昭和二十八年災の災害復旧も、六年かかってもまだ完成しないのであります。そうして二度災害を受けて、何千億という大きな被害を受けた。わずかな国家財政っの健全性という美名に隠れて私はあえて美名だと言う。何とか財源措置を講じようとするならば、できると思います。お互いが知恵をしぼって考えればできることを、ただ漫然として時日をかせいで一おるために、今日のような災害を何度も繰り返しておるじゃないですか。そういうことを言葉だけでなしに、一つ現実に今回は実現をしてもらいたい。これは奥村政務次官に要望するのは、私は無理だろうと思いますが、とにかく建設大臣におかれましても、国務大臣という立場から、閣議においてもどんどんこの点を強調していただきまして、政府が一体となって根本的な治山治水対策を樹立し、また強力に実現するという決意でもって、この問題の処理に当っていただきたい、こういうことを希望いたしまして、私の質問を終りたいと存じます。
  105. 山中吾郎

    山中(吾)委員 関連して次官にお伺いしますが、私、お聞きいたしたい趣旨はこれだけ国民の世論が沸き立っており、国会も超党派的に、災害対策については、何とかしなければならないという声がある。ところが実際に予算面に現われると、その世論がほとんど反映していないのが今までの事実であり、今後もそういう懸念が非常にあると思うので、次官にお聞きいたしたい。  先ほどこの建設委員会で、木村委員の提案によって、万全の措置をとることを要望する決議をいたしまして、それから大臣並びに次官もその趣旨に沿う決意を表明された。ところが同時に、この委員会に渡されました前の木村委員質問に対する正式文書による建設委員長あての回答を見ますと、その一ページの3に、治山治水特別会計については反対である、大蔵省としては慎重に検討しているが、法律的に見て特別会計を必要とするっ実態を備えたものと認めがたいので賛成いたしかねる、こういう文書が同時にきておる。  そこで、一体実質的にこういう決議に敬意を表しておるのか、そのときどきの政治的答弁としてただお答えになっておるのか、非常に私は疑問に思うのです。今久野委員特別会計の設定を前提として質問をされておったようでありますけれども、文書は否定したものがきております。私は、こういう中に非常に大きい問題があると思う。こういう災害対策費が事実上世論を反映して予算化されないということは、建設省の怠慢になるのか、あるいは日本の政治思想の中に原因があるのか、あるいは大蔵省の査定思想の中に原因があるのか、非常に疑問なんです。これについて最近の新聞を見ますと、建設省の五カ年の治山治水計画の総予算は三千七百億である、大蔵省治山治水特別会計には賛成であるが、しかし予算については二千七百億ですか、それでいいと思うというふうなことをどこかの新聞に書いておるのを見ておった。それで、こういう特別会計を押えるということも、ただ財政的に出さないということだけを考えて、こういうふうな理屈をつけておるのかどうか。私はきょうの委員会の中に、一方にこういう決議をし、次官が努力すると答え、同時にまたこういう特別会計に反対だという正式文書がきておるこの委員会の姿の中に、何か日本の政治の欠陥を感ずるのでありますが、その点について、この場で次官の所信を知らしていただきたいし、治山治水特別会計というものに対して反対なのかどうかお聞きしたい。  ただし一つ疑問があるのは、向うの文書は主計局長の名前である。官僚がそういうことを正式に委員長に対して政治的な立場をもって答えておることがいいのか悪いのか、そしてこれを見て次官がまた別な答えをされる。どういうことか。そういう矛盾を私は感ずるので、どうしても御質問しなければならない。お答えを願いたいと思います。
  106. 羽田武嗣郎

    羽田委員長 答弁の前に申し上げますが、これは、私から主計局長に求めたものですから、その点どうぞ。
  107. 奧村又十郎

    ○奧村説明員 お答え申し上げます。治山治水五カ年計画そのものには決して反対ではありません。ただ具体的にどうそれを実現するかということにつきましては、ここに建設大臣もおられますが、特に建設大臣、大蔵大臣、それから経済企画庁長官などの方々が、いろいろただいま御相談中でありまして、具体的なことについては、いずれ来年一度予算案が確定するときにきまること一と思うのであります。それまでの間に一政府部内でいろいろの案があって、いろいろ論議するということは私は当然であろうと思うので、その間の論議の一端がお耳に入っておることかと存ずるのであります。特に治山治水特別会計なるものを作るということについて、大蔵省としてはそれを作らなければならぬことではなかろう、それを作らなくとも、治山治水五カ年計画の実現そのものはできる。ということは、治山治水特別会計というものを作るについても、いろいろまた問題がありますので、それらの問題をもっと突き詰めて検討してみなければならぬ、こういう趣旨であります。まだ検討中のことでありますから、政府部内の一部の議論をそう取り上げずに、また確定したときに一つ議論を願いたいと思います。
  108. 山中吾郎

    山中(吾)委員 時間がないので、私はまことに遺憾でありますが、今の次官のお答えは非常にあいまいもことしておると思うのです。文書に大蔵省として書いてありますよ。そして特別会計を置かなくてもこういう治山治水に責任を持つというならば、治山治水の五カ年計画の三千七百億については責任持ってやるので、特別会計は要らないというのならわかります。その点ははっきりしていただかないと、決議したこういう状況に出されておるものですから、私は何か責任政治というものが、どこか無責任政治に変質しておるような感じがするので、どうしても次官のお答えが満足できないのでありますが、もう一度お答え願いたい。
  109. 奧村又十郎

    ○奧村説明員 建設省の立案されておられます五カ年計画の三千五百億ですね、これが、必ずしもこれ全部認めねばならぬかどうかということについては、これは大蔵省だけでなしに、経済企画庁長官の方でも、国家財政の規模の関係からいろいろ御検討いただいておる、こういうことでありますので、その間のまだ確定は経ていないということであります。
  110. 徳安實藏

    徳安委員 同じような問題で、一つ政務次官にお聞きしたいと思うのでありますが、たまたま本日石原主計局長から答弁書が参りまして、それを拝見いたしますと、私も非り常に奇異に感ずるのであります。私は与党でございますけれども、こうした不審な点は、一つただしておきたいと思います。この特別会計は、治山治水の五カ年計画はただいま降って沸いたんではありません。もう数年来の問題であります。しかも昨年は、閣議等におきましてもずいぶん論議され、私もその責任の一端をになって、ずいぶん走り回ったものであります。その経緯は、私がここに申し上げなくても、おそらく政務次官も御研究になっておると思います。従って今日の情勢から、また今年の大きな災害から考えまして、国民は相当大きな期待をこの問題にかけておるように思います。同時にまた、この委員会におきましても、しばしば決議をし、またわが党の建設部会を初めその他の各機関でも、特別会計にせよということは、昨年来再々決議されたんですが、とうとう翌年の予算編成までによく研究しようというようなことで、一応落ち着いておりますけれども、しかし言わず語らずのうちに、当時の内閣諸公の考え方というものは、もう終着点というものはさまっておると私は考えておったのであります。従って、いやしくもこれはアメリカ、イギリスから来た役人なら別問題です。少くとも大蔵省の役人が、そうしたその当時の諸般の情勢を相当お考えになって御存じの人が大蔵省は反対だ、賛成しかねるというような公文書をおよこしになることは、あまりにも私ども侮辱されたような気がするのです。おそらくこれは、当委員会でも黙ってはいないと思います。この問題は、実際こうした政治的な問題、しかも今後これは大きく取り上げられると思いますが、そうした問題を一主計局長が、政府を代表した意味で、大蔵省は賛成しかねるというようなことを言い切る、こういうことは、一体いいのでしょうか、悪いのでしょうか。一つ政務次官の御見解をお聞きいたしたいと思います。
  111. 奧村又十郎

    ○奧村説明員 大へん私も言いにくいあれでございますが、しかしこれは、まだ政府としてはっきりきまったことでないことを発表するということについては、これは建設省の方もまあ同罪と言わなければならぬので、これのきまるのは予算案を確定するときですから、本来ならそれまでは、なるべくこういうことは言わぬ方がいいと思います。しかしその間に、大蔵省の見解はこうですと、建設省といろいろ話し合いをするという段階において意見が漏れるということも、ある程度やむを得ぬので、そこで、要するにこの建設省の五カ年計画が事実実現すればいいので、特別会計を作るということがそんなに私は論点にはならぬのではないか一と思う。おそらくまた大蔵省の立場でっすと御承知の通り、多目的ダムとか、あるいは重要港湾の特別会計とか、特別会計がずいぶんできてきましたが、財政法からいたしまして、一般会計で持つ、へきものと特別会計を作るべきものと、はっきりと区分がしてあるのですね。それで、特別会計を作るについては、やはりそれぞれの条件がなければならぬ。なかなかその条件が見出せない。従って、大蔵省としてはそう簡単に賛成はしかねる。  これは大蔵省の立場とすれば、そういうふうにはっきりした態度を堅持するのが役目だ。しかし最後の決定は、閣議で大臣がおきめになるのですから、それまでのところは、これは一つ御了承願いたいと思います。
  112. 徳安實藏

    徳安委員 どうも奥村政務次官のお言葉だとは私は考えられないのです。この問題がきょうやきのうわいてきたものなら、そういうことも言える。しかし数年来の懸案であって、しかも昨年は、この法律論についても何べん論議されたかわからない。あるいはわが党内においても、ほんとうに血のにじむような努力を各同僚諸君もして下一さったわけです。その間における経緯は、ここで私は多く申し上げませんが、いまさら法律論や何かにこだわっておる時代じゃないけれども、しかしかりに事務的にそういうことにこだわるにいたしましても、もう今日では事務当局の手を離れて、今お話しのように政治的に閣議できめなければならないような段階に来ていることなんです。そういう問題を、一主計局長が賛成しかねるというようなことを、国会に堂々と公文書で答弁するというようなことは、これはどう考えたって、私どもは理解しかねるので、こいねがわくば奥村政務次官も、大蔵官僚の代弁者にならぬように、一つもうちょっとしっかりして押えていただきたい。この問題に限って、こんなことでは済まされない。私は次の機会に石原局長に来てもらって、みんな総動員して質問しなければならぬし、またすると思いますが、こういうような種をまくことはいかぬと思います。もし大蔵省が慎重な態度をとられるならば、ただいま慎重に検討中でございますということであるならば、私どもも多少政治的の含みがあると思います。しかし、全然賛成しかねるとはっきり言うに至っては1私どももこれはほとんど党議にひとしいところまで一時持っていったことは、御承知の通りなんであります。これはすでに事務当局の手を離れて、もう政治的に解決しなければならぬような昨年党の三役、七役会議も開かれてこれを取り上げたような経緯も、おそらく政務次官御存じでしょう。こうした問題を一主計局長が答弁一するのに、大臣も政務次官も知らないうちに、一個人の見解だというようなことでは済まされぬと思います。どうぞ一つわが党の態度の中から政務次官はまだ十分研究が足りていないと思いますから、深くはここで追究しませんけれども、こうした醜い有様を社会党に見せないように、もう少し庁内調整と申しますか、役所の役人の言うことをあまり考えずにやるというようなことは押えて、そうしてわが党の面目や、私ども部会や委員会の決議した方針を十分見きわめて、醜いざまを社会に暴露しないよう善処することを、尊敬する政務次官ですから、大蔵官僚の代弁者にならぬようお願いしたい、これだけを一つ申し上げておきます。
  113. 木村守江

    木村(守)委員 私は、私に対する主計局長の答弁書につきましていろいろ質問したいと考えておったのですが、これは、この次に主計局長にここに来てもらいまして徹底的にやることにして、ただいまこの問題に関連した山中君並びに徳安委員からの質問に対しまして、奥村政務次官から、ややともすればこの主計局長の答弁を是認するような御発言がありまして、まことに私は心外にたえないと考えております。これは徳安さんから言われましたように、この問題に対する経緯等は私は申し述べませんが、建設省要望することが実現すれば、特別会計云々というような御発言がありましたが、私ども建設省が真剣に検討して、日本の国土保全の最小限度の要求を達することができないから、仕方がないから特別会計によってこれをまかなうというような考え方が昨年からの考え方です。それにもかかわらず、建設省要望が実現すれば特別会計云々というようなお話がただいまありましたが、一体大蔵省は、今建設省要望しておる三千五百億をすぐに出すというようなお考えなんですか、ちょっとその点、お伺いしておきます。
  114. 奧村又十郎

    ○奧村説明員 建設省の立案された治山治水五カ年計画金額である二千五百億円は、まだ確定したものではありません。
  115. 木村守江

    木村(守)委員 先ほど政務次官の発言の中に、建設省要望が実現すれば特別会計はなくてもいいんじゃないか、特別会計そのものに対しては反対だ。そうすると、大蔵省は三千五百億出すのだから、何も特別会計を作らなくてもいいんじゃないかというような発言があったようであります。一体この議論に対して、今徳安委員から言われっましたようないろいろ政治的な含みがあるのに、主計局長の言葉を是認するような、それを弁護するような言葉がございましたが、これはまことに政務次官として、われわれ聞きのがし得ない言葉だと思うのですが、どういう考えでそういう御発言をなすったのであるか、ちょっとお聞きしておきたい。
  116. 奧村又十郎

    ○奧村説明員 実は私も、国会閉会中とはいいながら、各委員会に呼び出されまして、主として災害とか地方財政などの問題で答弁をいたしておりますが、大蔵省の立場としては、どの委員会べ出ましても、金を出せ、予算を出せと、こういうことでありまして、実際何とか国家の健全財政を守るという立場は大蔵省だけであります。そうすると、どこへ行っても憎まれ役と申しますか、渋いことを言わざるを得ぬ、これがどこの委員会へ行ってもそう気楽なお話で申し上げたら、とても財政は立たぬと思いますので、大蔵省の役人がつい渋いことを申し上げるということは、これはやむを得ぬ。もし大蔵省の役人がそれを言わなければ、一体日本の国の財政が——これは国会を侮辱した言葉になるのでなんですが、率直にいうと、これは国家財政を今必死になって守っておる大蔵省の立場ですから、そこの気持もおくみ取りをいただいて、それをわれわれが大臣なり政務次官として、また政策的に調整していかなければなりませんが、これは最後のときです。今この委員会で、特に来年度予算にかかわることを下手な発言をいたしましたら、今度はほかの委員会でまたたたかれるということでありますので、腹で相当固まっておっても、うりっかりっは書写えぬ、うでぺいうっうさとでありますから、どうかそこの点は御了承願います。
  117. 羽田武嗣郎

    羽田委員長 ちょっと御相談をいたしますが、大臣はKRTVに一時までに行かなければなりませんので、御退席をいただきますが……。
  118. 木村守江

    木村(守)委員 ただいまの奥村政務次官からの答弁でありますが、どうも健全財政というようなことをすぐに逃げ口に聞くのです。三千五百億五年間で出すのを惜しんで一年で千一百億も出さなければならないというような状態で、これで一体ほんとうに健全財政を守るということができるのか、私は非常な疑問を持つ。そのときになって、出さなければならぬから出すんだというような格好でやる政治では、その場その場の政治であって、ほんとうの政治と言うことはできないと思う。これが一体大蔵省の健全財政というものであったならば、私は大蔵省の言う健全財政に非常に疑問を持たざるを得ない。そういう点から、私どもはやろうとすればできないどころか、やろうとすればできるその範囲内を要求しているのごす。そういう点は、政務次官もよくわかっているような感じもいたしますが、今日の答弁は、ややもすれば、大蔵官僚に巻き込まれたわが賢明なる奥村政務次官になっては困ると考えまして、答弁の中に非常に納得できない点があるので質問いたしたのであります。  いずれにいたしましても、この問題につきましては私に対する答弁ですから、一項も二項も三項も、いずれの点につきましても、これに対しては徹底的に追及しなけっればならないの、でありまして、これは局長にお伝えを願います。この次に必ず質問いたします。
  119. 羽田武嗣郎

    羽田委員長 中島君。
  120. 中島巖

    ○中島(巖)委員 今いろろお話もありましたけれども、そういう治山治水の特別会計を作るようにするという、こういう問題じゃないと思うのです。この前も大臣から、治山治水の特別会計には、大蔵省その他と折衝してその実現に努めておる、こういう言明があったわけです。これは、私後刻速記を調べたいと思っております。また奥村政務次官も、ただいま建設省や企画庁なんかと寄り寄りいろいろ協議をしておる。この前二階堂進君も、自民党としてはこういう考えでおるから、治山治水の特別会計をぜひ実現せねばならぬ。これはいずれ私は速記を全部調べますけれども、こういうやさきに一事務官僚が「大蔵省としては慎重に検討しているが、法律的に見て特別会計を必要とする実態を備えたものと認めがたいので、賛成いたしかねる。」こういう公文書を出すというこのことに問題があるのです。これは、私もよく速記を調べまして、そして党の方へも諮って、党としてもはっきりした態度を出さねばならぬ。国会の権威に関する問題があるから、あに社会党の問題、だけでなくして、国会の権威のためにも究明せねばならぬ。別に答弁は要りませんが、申し上げておきます。
  121. 羽田武嗣郎

    羽田委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後一時十八分散会