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橋本(正)
委員 台風十五号による
被害状況調査のため、第五班として派遣されました、山梨、長野両
県下の
状況について御
報告申し上げます。
私
どもは
建設、社会労働、
農林水産、文教、商工の各
委員の参加のもとに連合
調査班を組織いたし、十一日から三日間にわたり、
被害地をつぶさに視察
調査いたしたのでありますが、山梨、長野の両県は、去る八月十四日の七
号台風によって未
曽有の大
災害を受け、さらに十五号によって追い打ちをかけられ、その
被害は深刻なものがありました。すなわち、山梨
県下におきましては、七
号台風による
被害額三百十余億円に加えて、十五
号台風は百億円、
都合四百億円余の大
被害を見たのであります。雨量三百五十ミリ、風速三十七メートルの強風と
豪雨七時間全に及ぶ強襲は、一カ月の間にようやく築き上げた一切の
応急工事を、一瞬にして水泡に帰せしめたのであります。また、長野県におきましては、七
号台風に続き、降ひようの
被害、さらに十五
号台風と矢つぎばやのきびしい天災を受けまして、被災者はぼう然自失、なすところを知らずという言葉をまざまざと思い起させるような悲惨な状態に置かれたのであります。同県における両
台風と降ひようの
被害総額は、三百五十億円余の巨額に達しております。
第一日は、山梨
県下を視察いたしましたが、同県では、果樹の
被害がことにはなはだしく、数十年の歳月を経たリンゴの木が根こそぎ倒され、特産のブドウは見る影もなく打ちのめされている
惨状は、目をおおうものがありました。陳情の
町村長の中には、目に涙を浮べて窮状を訴え、また被災農地の
政府買い上げを強く
要望する村民もあり、
政府の適切、迅速な
措置を
要望する声が強く感じとられたのであります。また、小、中、高校の校舎の
被害も多く、半壊、一部
流失し、二百人の学童が分散教育を受けている状態でありました。また、韮崎市では、釜無川の
決壊によりまして、
流域二百
町歩の耕地が全滅したばかりでなく、
土砂、大石の荒野と化しておりました。今回の
災害は、異常な風速と
豪雨によることはもちろんでありますが、各
河川の
決壊による
被害は、治山治水の根本施策につきまして、再
検討を加えるべきではないかと考えられたのであります。
第二日は、長野
県下の伊那、飯田、泰阜、塩尻
地方の被災地を視察いたましたが、同
県下も山梨県と同じように、すでに七
号台風の洗礼を受け、直後再び十五号の
災害に遭遇し、ことに住居では、山間僻地の低所得農家が多くの
被害を受けまして、全壊二千五百余戸、半壊一万二千余戸に達しております。
私
どもは、この日全行程三百キロ近くの間を砂塵を浴びて走り回り、
現地の人たちとも会い、陳情を受けたのでありますが、視察予定に入っていなかった千代村では、私たちの車をさえぎ
つて被災現場に案内して、その窮状を訴えるなど、筆舌に尽せない苦労が察せられたのであります。
第三日は、豊科を振り出しに、穂高、松川、大町を視察いたしましたが、松川村では乳川の
堤防八カ所、六百メートル、中房川三カ所、二百メートル、高瀬川五カ所四百メートル、芦間川に至っては全面的に河床が上り、
下流三百メートルは、押し出された
土砂のため、農地と同位の高さになり、また同村では、山麓扇状台地の不毛の土地として顧みられなかったところに、終戦後入植して十余年、粒々辛苦、貧困と戦
つてきました外地引揚関拓村は、両
台風によりまして壊滅的な
被害をこうむ
つて荒野に変り果て、残されたものは、投入した借財だけという惨たんたる
実情でありました。乳川、中房川、芦間川の急流に対処する完全な
堤防、砂防堰堤を作る等、
現地の強い
要望があったのであります。
両県の
共通的な
要望事項について最後に申し上げます。
一、公共
災害の
復旧事業費の
早期決定とともに本年度
復旧率五〇%以上として、これに対する国庫負担の高率の
措置を講ぜられたいこと。
一、国庫
補助対象外の小
災害復旧に要する経費を助成するための特別の
措置を講ぜられたいこと。
一、
災害住宅
復旧建設に対し助成のための
立法措置並びに住宅金融公庫の
融資ワクの増額の
措置を講ぜられたいこと。
一、
災害公営住宅(第二種住宅)の割当に特別の御配慮を願いたいこと。
一、山くずれ、
土砂崩壊防止
施設(砂防)の補助率を十分の九とし、
災害復旧事業債を認められたい。
一、住宅金融公庫による
災害復興住宅資金貸付について次のような
措置をとるよう配慮せられたい。
(イ)償還期限の延長をはかること。
(ロ)低所得者層にも貸付の道を開くこと。
(ハ)手続を簡素化すること。
一、都市
計画区域内の堆積
土砂排土費用の補助率を四分の三に引き上げられたい。
以上であります。
終りに、
共通的の若干の
所見を申し上げておきます。
恒久
対策として
治山治水事業の年次
計画化と、その
事業の
促進が根本的なものと考えられますが、今回の山梨県、長野県の視察の結果を見ますと、山梨県の総
被害額四百億中、
土木被害は約百十五億余になっておりまして長野県三百五十億中、
土木被害が百億余になっております。従いまして、現在立案されております治水五カ年
計画というものは、今次
災害にかんがみ、将来の恒久
対策として、これをさらに考え直す必要があるのではなかろうか、かように考えられるのでありますが、これに対する御
所見を伺いたいと思います。
それから治水
計画と治山
計画との関連をどのように考えておられるか。たとえば同一水系、あるいは同一
地域におきまして治山と治水との
関係がどういうふうに根本的に考えられておるか、この基本的な考え方を承わ
つておきたいと思います。
それから次に、今回の
災害は、異常
豪雨による異常出水を見まして、山腹の崩壊、
河川の異常
洪水化を招来したことはもとよりであります。たとえば山梨県の白州町におきましては、山腹の崩壊
個所四百三十カ所、十七の沢が一挙に
流出して、その岩石、
土砂を押し流したというふうな状態でございます。また武川村では、大武川の異常
洪水によりまして、平常の河幅が数十倍になっておるというふうな状態でございます。このようなところを考えてみますと、
山地砂防の
強化はもとよりでありますが、
山地砂防と
河川砂防の
計画実施の
関係がどういうふうに今日まで
計画されておるかということに疑問を抱いた次第でございます。
さらに、こういうふうな
地域に対する防災
ダム構築の
要望がきわめて強いのでありますけれ
ども、山梨県におきましても、二十七億円余をかけまして三カ年程度で
河川砂防、あるいは防災
ダムの
要望を強く訴えておつた次第でありますが、これらに対するお考えも承わ
つておきたいと思います。
それから各
河川の河床が大体二メートル前後一様に上昇しておるような
実情でございますが、これの根本的
対策はもとよりでございますけれ
ども、今次被災地中
河川の河床の上昇に対して、これも将来どういうふうに
復旧していくかという考え方についても御意見を承わりたいと思うのであります。
それから次には、山梨県、長野県を通じまして典型的な
天上川であります。この
天上川に対する
河川改修計画をどういうふうに将来と
つていくか。一例を申し上げますと、山梨県の甲西町、増穂町
地域におきましては、北から坪川、戸川、利根川、畔沢川の
天上川が流れていますが、これらの
河川は時に合流し、時に交差しております。はなはだしいところになりますと、
道路が
河川の下を走
つておるというようなまことに奇妙な形に相なっております。数十年来
災害がなかったから今日までよかったようなものの、今度のような
災害を考えました場合に、このような水利の困難な
地域に対する
改修についての考え方というものを、根本的に将来考えておく必要があるのではないか、かように痛感された次第でございます。
最後に一点伺いたいのは、過年度
災害に対する
復旧はもとよりでございますが、その中で、単独
事業に属する
災害復旧についての起債
措置であります。
災害発生年次におき、ましては、もちろん単独災に対する考え方が
相当温情的に考えられますけれ
ども、二年次、三年次になりますると、単独
災害に対する考え方が薄れていくんじゃないか。従って、初年度考えられたような起債の割当というものが、二年次、三年次に至って薄れていって、従って過年度におきまする単独
災害復旧というものが進捗しない。そのうちに年月も経過して忘れられてしまうというふうなことがないか。この点につきましては、長野県の知事よりも御意見がありましたので、あわせてこういう起債の割当方針等につきましても、御意見を承わ
つておきたいと思います。
以上をもって御
報告といたします。