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1959-09-11 第32回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年九月十一日(金曜日)     午前十一時十二分開議  出席委員    委員長 村瀬 宣親君    理事 小坂善太郎君 理事 保科善四郎君    理事 前田 正男君 理事 岡  良一君    理事 岡本 隆一君       秋田 大助君    木倉和一郎君       小金 義照君    細田 義安君       石野 久男君    内海  清君       田中 武夫君    辻原 弘市君       松前 重義君  出席国務大臣         国 務 大 臣 中曽根康弘君  委員外出席者         防衛政務次官  小幡 治和君         防衛庁参事官         (装備局長)  小山 雄二君         科学技術政府次         官       横山 フク君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   原田  久君         総理府技官         (科学技術庁計         画局長)    久田 太郎君         総理府事務官         (科学技術庁振         興局長)    鈴江 康平君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   佐々木義武君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局次長)  法貴 四郎君         外務事務官         (欧亜局長)  金山 政英君         文部事務官         (大学学術局         長)      緒方 信一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員会設置に関する件  科学技術文献資料収集整備について  議院運営委員会に申入れの件  科学技術振興対策に関する件      ————◇—————
  2. 村瀬宣親

    村瀬委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  この際、小委員会設置の件についてお諮りいたします。先ほどの理事会で協議いたしました結果、原子力施設周辺整備に関する小委員会研究に関する税制改善小委員会宇宙科学技術研究開発に関する小委員会の三小委員会を設置して調査を進めることに決定いたしましたが、以上の小委員会を設置するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 村瀬宣親

    村瀬委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  なお、小委員の員数、小委員及び小委員長選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 村瀬宣親

    村瀬委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  なお、委員異動等に伴う小委員補欠選任等並び参考人より意見を聴取する必要が生じました場合等には、その期日、人選その他所要手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 村瀬宣親

    村瀬委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  次に、お諮りいたします。科学技術文献資料収集整備に関し、本委員会から議院運営委員会に対し、お手元に配付の文案のごとく申し入れをいたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 村瀬宣親

    村瀬委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決します。  なお、所要手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますので、御了承を願います。     —————————————
  7. 村瀬宣親

    村瀬委員長 次に、科学技術振興対策に関する件について質疑の通告がありますので、この際、これを許します。岡良一君。
  8. 岡良一

    岡委員 先月のこの委員会からあと、新聞紙等に伝えられた若干の事実について、特にわれわれ科学技術平和利用に大きな責任関心を持っておる立場から、若干のお尋ねをいたしたいと思います。  私は、原子力委員長としての中曽根委員長所信を承わりたいのでございますが、その前に、一応関係当局の方の御意見を聞きたいと思います。幸い、外務省の金山局長がお見えでございますので、順序はまことに不同でございますが、サハラ砂漠核実験について、最近新聞紙等によると、関係諸国がいろいろ動いておるようでございますが、その実態、また、それに対する日本のとられた措置等について御報告を願いたいと思います。
  9. 金山政英

    金山説明員 サハラ砂漠における核実験の問題は、ことしの五月四日に、フランス総理大臣アルジェリア選出の議員の質問に答えまして、フランスサハラ砂漠において核実験を行うために目下準備中であるという回答をしたところから問題が起ってきたわけであります。その後、六月になりまして、国防大臣もその準備が進められているということを言っております。やるときには各国政府通告をするということを申しておりますが、アラブ及びアフリカ諸国、この問題に直接の利害関係を持っております諸国は、これに非常な関心を持ちまして、ガーナからフランス政府に、正式に、その実験はやめてくれという抗議申し入れた事実があります。その後、モロッコが、この問題を国連に提出いたしますために、仮議題にのせる手続をとった次第であります。このモロッコ提案に関しましては、国連AAグループ会議におきまして数次にわたって討議が戦わされたわけでありますが、この核兵器実験について非常な惨害を受けているというようなこともあり、人道的な立場から非常な関心を持っております日本政府といたしましては、この問題について黙視しているわけに参りませんので、国連会議におきましても、積極的にこの問題についての討議に参加いたしたわけでありますが、それだけでは足りませんので、ただ、フランス実験をやるということをまだ公式に声明したわけでもありませんし、そのようなことも考慮いたしまして、しかし政府責任者がそのような言明をしているというようなことも、また他方考慮に入れまして、日本政府核実験禁止について重大なる関心を持っているということに関してフランス政府の注意を喚起する必要を認めましたので、九月一日に古垣大使にその旨訓令いたした次第であります。当時、アイゼンハワーのヨーロッパ訪問の時期でもありましたし、クーブドミュルビル外務大臣に直接会って訓令を執行するように申したのでありますが、早急に会見の日取りがきまりませんために、その次の責任者であるドカルボンネル総務長官に晦会いたしまして、古垣大使は、日本政府核実験反対立場を明確に先方に印象づけるとともに、現在ジュネーブにおいて核実験停止に関する会議が行われており、原爆保有の三国が実験停止している際に、フランス政府がこのような実験を行うということは不適当である、また、基本的な問題といたしまして、核実験に対しては、日本政府としては絶対に反対である、もし、その実験を強行される場合には、日本政府としてはこれに対して強硬な抗議を行うつもりであるということを先方申し入れた次第であります。それに対しまして、ドカルボンネル総務長官は、フランス立場をるる説明いたしておりますが、この会談において日本政府の本件に関関する強い立場十分先方に印象づけられたものと考える次第であります。現在、この問題は、国連議題として取り上げられることと思います。その場合におきまして、さらに日本政府の本問題に対する強い関心反対の決意とを表明するつもりでおります。
  10. 岡良一

    岡委員 欧亜局長御存じイタリアジュゼッペ——一昨年ちょうどイタリア政府の副総理をしておられました。たまたまローマでお目にかかったときに、すでにフランスはここ一両年のうちに原爆実験をするであろう、こういうふうなことを申しておられました。その予想が、いわば的中いたしましたようなことで、プルトニウム生産工場が作られ、さらに増設をされ、さて、いよいよ大フランスの栄光のためにというので、原子クラブ入りを決意するというようなところになった。そういうような事態で、新しい国が原爆実験をやるというようなことがそのままに放任をされるということになれば、わが国の原水爆禁止への国民的な悲願、また、国連総会に提出しておる政府意思というものが全く無視され、じゅうりんをされるという結果になることを私はおそれるわけでございます。そこで、最近新聞の伝えるところによれば、アラブ連盟においても、また、アフリカ連帯委員会においても、フランスサハラ砂漠における核実験停止要求する決議案が採択されたと聞いておりまするが、来たるべき国連総会にこれらの諸国共同提案として禁止決議案が上程されたときには、当然日本もこれに積極的に賛成をさるべきもつの、こう私は思うのでございますが、その辺の御方針はいかがなものでありましょうか。
  11. 金山政英

    金山説明員 この核実験禁止の問題に関しまする日本政府態度というものは一貫しておりまして、いかなる国がこれを行いました場合にも、従来強硬な抗議を提出しているわけであります。国連においてのこの問題の取扱い方に関しましては、この問題が国際世論によって禁止方向に向うというか、それに寄与するような方向において、日本政府としては将来とも積極的にこの問題の討議に参加していかなければならないと考えております。ただ、原爆実験という問題は、これは非議さるべき問題でありますが、この問題のために、たとえばフランスを非難するというような面があまりに露骨に出ないように、むしろ、それを一般的な核実験禁止の問題として取り上げるのが、日本政府としては実際的な、効果的な方法ではないかとわれわれは考えておる次第であります。ただ、モロッコの提出いたしました決議案に対しましては、特に地域的な国々関心といたしまして、日本政府は最も同情ある立場をとることはもちろんであります。国連においていかなる態度をとるかということに関しましては、大臣もおられないことでありますし、私から直接御返事するのは不適当でありますので、御容赦願いたいと思います。
  12. 岡良一

    岡委員 それでは中曽根長官にお尋ねいたします。問題は、やはり原子力基本法において、私ども原子力平和利用を深く念願をしております。この規定は、なるほど国内法ではございますが、しかし、この原則は、広く内外に通じて普遍的な大きな真理でなければならないと私は考えておる。そういう意味からいたしますと、内閣共同責任制と申しますか、国務大臣としてのあなたの御所信は、やはりこの原手力平和利用に関しましては大きなウエートを私どもは期待いたしておる。そういう意味で、今金山局長は、局長立場からは、大臣も不在だし、国連においてこのフランス核実験停止せしめよという決議案に対しましては、明確な、責任ある返答を保留せられておるのでありますが、国務大臣としての中曽根委員長の御所信はいかがでございましょうか。おそらく、アルジェリア問題等もありますので、かなりフランスを攻撃をするという趣旨も盛り込まれる可能性もあろうかと思いますが、しかし、フランスが、この際、三国の核実験停止会議が開かれつつあるとき、しかもフルシチョフ・アイク会談待ちという形で一時停止になっておるというやさき、フランスがやにわに核実験に飛び込むということは、そのこと自体が非難されてもいい。それは政治的な理由ではなく、人道的な意味においてもいいのではないかと私は思うわけであります。それはそれといたしまして、当然私は、国連において日本政府は、アフリカ、アジアの国々フランス核実験停止決議に対しまして賛意を表すべきである、こう考えるのでありますが、国務大臣としての御所見を承わりたい。
  13. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 核実験停止要望につきましては、国会におきましてもしばしば御決議があり、岸内閣におきましても、総理を初めといたしまして、国会の御要望に沿うような考えを持っておりまして、このことは、しばしばアメリカあるいはソ連に対して申し入れしたことでも明らかであります。それと同じ精神をもちまして、今回のフランスアルジェリアの問題につきましても、外務当局を通じて申し入れをしたのだろうと思います。私個人といたしましても、この趣旨には全く同感であります。ただ、外交技術的にどういう措置をとるかということは外務大臣専管事項でありますので、私にはよくわかりません。趣旨におきましては、全く同感でございます。
  14. 岡良一

    岡委員 私は、やはり責任内閣制という立場において、特に原子力委員長として原子力基本法の守り本尊でもある委員長が、国務大臣として、このような問題に限って積極的な、かつ責任を伴う強い御主張があってしかるべし、こう思うわけでございます。国連において関係諸国からフランス核実験停止についての共同決議案等がやられました場今日は、当然政府としてもこれに賛意を表してもらいたいし、また、その推進力として、閣議における中曽根委員長の積極的な御努力をこの機会に強く要求いたします。  そこで、実は次の問題でございますが、特に身近な問題として、中共核実験をやるかもしれないという外電が最近入っているのでございますが、これについては、あるいは金山局長なり、あるいは、また原子力委員会なりにおいて何らかの情報を入手しておられましょうか。
  15. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 新聞報道では、中共は近く人工衛星を打ち上げるとか、あるいは原子兵器ソ連要求して入手するであろうとか、そういう新聞情報は目にいたしますけれども、正確な情報として、そういうものを行うということは、まだ聞いておりません。
  16. 岡良一

    岡委員 私も新聞情報でございますが、これは去年の八月の新聞で、ニューヨークタイムスロイター特派員記事として、中共核兵器とミサイル、人工衛星などのほかに、新兵器発電用原子炉などをソ連から受けるようになったというようなこと、しかも、それは確実なる筋の情報として、御存じの権威あるニューヨークタイムスが一面に報道しておる。その後、引き続き二、三回そのような報道がありますが、最近も六月一日の朝日新聞の夕刊を見ますと、それはジュネーブの消息筋の伝えたところとして、やはり、中共が五八年までには最初の核爆発を実施するに十分な量のウランをソ連から受け取った、従って、実験をやるかもしれないという大見出し報道されておるわけでございます。私どもは、こういうような事態が万一にも起りますると、極東の緊張というものが、このことを契機として非常に高まりはしないか、同時に、また、そのことが日本原子力平和利用、また、核兵器の不保持というふうな私ども立場に対しても、かなり決定的な影響を与える可能性もあるのではないか、こういうようなことを考えまして心配をしておるわけでございます。この点につきましては、新聞情報でございますし、従って、確実にそうあるということを言い切れる問題でもございませんが、少くとも、このような動きがある。しかも、中共のこの関係の、副総理をしておられる責任ある科学関係責任者が、最近の言明を見ると、中共も他の国に劣らないように、原子力平和利用のみならず、軍事利用においても他の国に劣らないだけの仕事をすることができるというようなことをはっきり申しております。こういうようなもろもろの情報というものが案外事実となって現われてくると、先ほど申しましたような、私どもとしては、むしろ好まない事態が起って参りますので、この点については、もちろん、現在中共との門に外交関係のない政府といたしまして、積極的な手は打ち得ないかもしれないが、私は、この機会に、やはりこういう問題も含めて、中共との関係については積極的な御努力が望ましい、こう思うわけでございます。  さて、次の質問ですが、この前の委員会中曽根長官に私がお願いいたしておきましたことは、科学技術行政というものを進めるには、できるだけ総合的に進めてもらいたい、統一的に、計画性を持って進めてもらいたい、それには、現在の官庁機構というものの持っておる、いわば割拠主義的な傾向というものが、ともすれば日本科学技術振興にとってチェックする作用を持ちはしないかという点で、文部省初等科の教育における理数科方面振興政策を例として申し上げておきましたが、その後、さらに新聞報道によりますと、七日の日には、今度は文部省私立大学における理工系国立並みに高めるというような記事が出ております。また、厚生省には科学技術会議を置く、こういう決定がされ、それぞれ相当な予算の正要求が省議で決定したということが出ておるわけでございます。私は、文部省がこのようなことをおやりになることは、当然やってもらわなければならぬことでございますから、別に反対はいたしません。また、厚生省としても、公衆衛生なり医療関係における日進月歩の科学的な技術の進歩に伴って、この問題にこのような形で関心を寄せられることには、私はちっとも反対ではございません。反対ではありませんが、一方では科学技術会議ができて、来年の六月までには、十年間にわたり、長期にわたっての総合的な振興政策を策定しようということで、すでに諮問が発せられておる。一方で、またこのような事業がされておる。私は、こういうような文部省のお仕事なり厚生省仕事が、やはり科学技術庁と緊密な連絡をとって、そしてステップ・バイ・ステップに進められていくべきではないか、これが、ただ各省ごとに、科学技術振興という、いわば時代の潮流に乗って、思いつきであれこれとやられるということになりますと、資金の面、資材の正面、人の面において乏しい日本としては、科学技術振興のためのあらゆる運営が、非常に非効率的になりはしないか、そういうようなこともあるのでありますが、文部省なり厚生省なりのこのような企画については、科学技術庁としては御相談を受け、協議の上でこれはやっておられることでございましょうか。
  17. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 科学技術庁が設置されましたのは、官制によります通り大学研究を除く日本の各官庁研究機関をなるだけ総合的に、能率的に運営していくためにできておるわけでございます。そこで、予算の上におきましては、原子力につきましては、事前に科学技術庁において総合する権限が認められておりますが、それ以外の点につきましては、いわゆる調整権というものが認められているだけでありまして、強制的にこれをどうするということはできないわけであります。しかるところ、先般農林省におきまして、農林水産技術会議というのができて、農林省系を打って一丸とする統合措置ができました。新聞によりますと、厚生省でも、またそのようなことをやろうという企画のようであります。各省のことは、大体各省主管大臣責任を持ってやることでありますから、干渉する意思は私はございませんが、そういうふうに、各省々々が自分たちの系統をまとめているということはいいことだろうと実は思うのであります。そうして、農林省農林省で統合的にやってもらい、厚生省厚生省でやってもらい、運輸省運輸省でまとめてもらったものを、科学技術庁が全部をまた統合していく、そういう形でいった方が実際問題として能率的になるだろうと思います。従いまして、もしその問題について相談を受ければ、私は積極的な助言をいたしたいと思います。ただ、大事なことは、その場合に、農林水産技術会議なり厚生省会議なりその他の会議をばらばらにやることは非常に大きいマイナスになるから、これを科学技術会議等を通じまして連絡調整できるような力だけは、科学技術庁において持っておかなければならないと思います。
  18. 岡良一

    岡委員 せっかく科学技術会議も発足したことでございますから、やはり各省とも、お説のごとく、それぞれその分野における科学技術振興を目ざしての中核としての会議的な組織を作られることには、私ども異議はございません。ただ、その運営は、やはり統一的に調整をはかっていくということが望ましいと思いますので、この機会に強く要求をいたしておきたいと思います。  その次の問題は、またいつものコールダーホール改良型でございますが、私も、もうそろそろこの論については問題が尽きたと思って、この次の委員会ではコールダーホールのコの字も言わなくていいのかと思っておりましたところが、また九月の五日に「甘過ぎた原子炉安全基準」という大見出しで、中央新聞東海村の適格件を論じておる。しかも、この意見を発表された人が、英国原子力公社原子炉安全部長という肩書きのあるF・R・ファーマー氏でございます。こういうように、東海村の特に人口の問題、許容量問題等について英国側の見解を指摘されました。そういたしますと、現在東海村の条件あるいは原電の対策というものが、このファーマー氏の所論から見ると、きわめて不満足なものである、条件を満たしておらないという結果になってくるわけでございます。その点、こうしてまた次々と問題が出てきたわけでございますが、このファーマー氏、原子炉安全部長日本が買おうとする炉を取り扱って起る管理体系の安全に関する最高の責任ある部署におる人、この人のこういう意見が出て参りますと、私どもコールダーホール改良型について、さらに新たなる疑義を感ぜざるを得ないのでございますが、これについてはどういうふうに原子力委員会あるいは原子力局としてお取扱いでございましょうか。
  19. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 コールダーホール型炉安全性につきましては、目下安全保障部会で慎重に検討中でございます。これはほんとうに慎重に検討しておりまして、小委員会及び安全保障部会を夜を日に継いで実は開いておりまして、各部にわたって非常に念入りな審査をしております。そのために結論はおくれているわけであります。従いまして、現在の目的になっておりまするコールダーホール型の炉の安全性最終的結論はまだ出ておりません。しかし、安全性審査一つ参考といたしまして、原子力発電会社がイギリスの原子力公社安全技術部長ファーマー氏を呼んで、彼が一年前にローマで発表した論文についていろいろ検討を加えたわけであります。これは私は非常に適切な措置である、そういう当の責任者を呼んでいろいろ具体的に確かめてみるということは、安全審査の上に念を入れている証拠であると思いまして、非常にこの措置を喜んでおったのであります。ところが、そのファーマー氏の報告及び声明というものが新聞紙上に誤まり伝えられまして、東海村が不適格であるように判定を下したように報ぜられましたのは間違いであります。ファーマー氏の言明は、今お手元に差し上げました一九五九年九月四日のステートメントが公式の責任ある言明でございまして、これがファーマー氏の真意であります。どういうことであったかといいますと、ファーマーローマにおきまする論文で、英国コールダーホール・タイプ炉を置く場合の三つ要件を実は提示しております。その三つ要件一つは、原子炉地点より五百ヤード、すなわち四百五十メートル以内にほとんど人が住んでいないことが望ましい、第二の要件は、原子炉地点周辺にどのような三十度の扇形をとっても、一マイル、すなわち一・六キロメートル以内に五百人以上の人が住んでいないこと、第三は、五マイル、すなわち八キロメートル以内に人口一万程度あるいはそれ以上の人口の中心がないこと、この三つを望ましい要件として彼はローマ論文に提示したのであります。この点に関するファーマー所見をただしましたところ、これは自分所見で、その通りである、こういうことでありました。そこで、この要件東海村について具体的に適用してみたわけでありますが、特にファーマーの考え方は、ファーマーの発言通り申しますと、これは最大事故考慮から導かれたものではなく、敷地周辺放射線管理仕事から、この程度人口以下が便利であるということで、英国原子力公社の内部でも、これを緩和することが必要であると最近は考えておる、こう言っておりました。すなわち、これは最大事故考慮から導いたという条件ではなくて、放射線管理の都合上、この程度人口以下が便利であるという要件としてこれが出ているということを、特に彼は発言したのであります。それで、英国における従来建設された炉は大体三つ要件を満足しておりますが、最近その地点の決定を見たイングランド南海岸のダンゲネスのみは第三の一万人という人口要件を満たしてはいない、こういうことであります。そこで東海村について考えてみますと、第一の要件につきましては、設置地点から七百メートル以内には全く人が住んでいないので、この条件は完全に満足する。それから第二の要件については、地点の周囲にいかなる三十度の扇形をとっても一マイル以内の人口が四百人以下となって、これも完全に東海村は満足する。第三の要件については、地点から四ないし五キロメートルのところに人口一万一千五百人の久慈町がある。従って、多少この要件を越えても、この一万人という制限値は放射線管理、つまり管理の上から導かれた数値であって、ラウンド・ナンバーになっているのを見てもわかる通り、それほど厳格に守るべき値ではない。このことはダンゲネスの場合でも明らかであります。従って、東海村の場合に、久慈町が人口一万人をこえているということだけをもって不適格であると判定することはとるところではない、こういうように彼は言っておるのであります。ただ、学校の問題が一つありましたが、この小学校は、すでに日本原子力公社との話し合いに基きまして、近く移転されることになっておりますので、この点は問題がないのであります。ファーマーのステートメントによりますと、彼は九月四日付のステートメントにおきまして、東海村は設置地点より七百メートル以内に樹木のみで住宅はなく、農業も行われていないので、この種の原子力発電所の敷地としては英国地点よりすぐれており、英国で採用されている安全性の基準を適用しても、これはすぐれていて、明らかに受け入れるべきであると明言しておるのであります。これがファーマーの真意でありまして、これが一部誤まり伝えられたのは、まことに遺憾であります。
  20. 岡良一

    岡委員 ファーマー氏のステートメントを今拝見いたしました。なるほど、中曽根委員長の言うような内容のようでございますが、ただ、このステートメントの中で非常に着目すべき意見が冒頭にある。それは、「まず最初に、私の英国における任務は、英国原子力公社の保健安全部の安全関係の長であることを説明したいと思います。私は英国原子力公社を通じて、英国原子力産業の開発上必要な安全に関する注意事項について、他の政府機関に助言する責任も持っております。」と、まず、ファーマー氏は自分立場を明らかにしております。その結果といたしまして、「このような責任があるために、安全問題に対する私の態度は、原子炉運転に関する現在の知識におけると不確かさや、将来原子炉運転方法に変化があるかもしれないことなどの判断をしなければならず、従って、炉の運転者の態度とは違ったものになります。このために、私の態度は、原子炉設計者のそれよりもはるかに悲観的な見方をとることになるでありましょう。」こう彼は申しておる。私はこの点はファーマー氏の立場を最も的確に表わしていると思う。ファーマー氏かあとでステートメントを発表され、今委員長が御披露になった内容というものは、これは原子炉を運転するものの立場からするところの考えだ。ところが、英国と違って日本では、原子炉の運転については、特に動力炉の運転については、だれも経験者がいない。日本とすれば、英国とはもう問題にならない。であるから、なおさらのこと原子力委員会とすれば、被害を受けるものの側に立って安全性というものを考えるという顧慮がひとしお必要であると思うのです。でありますから、あとで御披露になったような、いわばファーマー氏の申されたことが誤まり伝えられたというところから——ファーマー氏はこのステートメントでは、むしろ原子炉を運転する立場に立ってのお話をしておる。最初には、そうではなくて、万一原子炉に事故が起った場合には被害を受けるという立場から言っておる。私は、やはり原子炉の運転に万一事故があった場合に、被害を受けるものの立場から人口その他についても十分現状に即した対策を立てていく、これが私は必要だろうと思うのです。私は今委員長の申された点、それはなるほど原子炉を運転するものの立場としては認められ得るかもしれないが、まだ運転の経験もない日本が、大規模の動力炉を入れるという場合、やはりその周辺の人たちの安全というものを第一の目安に置いて、むしろ、私は、ファーマー氏の三日の説明より、より強い基準の上に安全性を考えていくというのが親切なやり方である、また妥当なやり方だと思います。この点、議論になりまするから避けまするが、私はそう思います。で、問題は、ファーマー氏の理論からも、そして、また今度中曽根さんの構想心によって原子力施設の周辺の、いわゆる都市計画的な構想も出ておりますが、人口基準というものを、やはり原子力委員会安全基準部会にはっきりきめさせなければいかぬと思う。これがないもんだから、あれはよかろう、五人ではいかぬが、四人ではよかろうというような、きわめて非科学的な取扱いになると思う。やはり、きちっとした原子炉周辺における人口基準というものをはっきり出しておく必要があろうということを、私はファーマー氏の三日の所論、今御披露になったステートメントで特に痛感をするわけでございます。原子力局あたりで、この原子炉の、特に動力炉の設置に伴う人口基準というふうなこと、安全を中心とした人口基準についてお考えになったことがあるかどうか、また、その結論でもあったら、この際お示しを願いたいと思います。
  21. 佐々木義武

    ○佐々木説明員 人口基準と申しますか、どのくらいの距離にこのくらいの人口があってはまずいという、そういう面に関しましては、ただいままで原子力委員会でやりましたのは、小さい実験炉を設置する場合には、少くとも五十メートル以内には人口のないのが望ましいというふうな、内部的な取りきめをいたしております。ただいまのような大きい炉に関しましては、いろいろ英国の炉、あるいは米国の炉等によりましてタイプが相違しておりますので、一律にこれをどうときめますのは大へん困難な事情でありますので、ただいまのところはケース・バイ、ケースで問題を処理したいということで臨んでおりますけれども、しかし、岡先生のおっしゃるような、抽象的と申しては語弊がございますが、一般的な立地条件として、大体の考え方としてはどの程度の考えを持ったらよろしいかというふうな点に関しましては、基準部会というものがございまして、その基準部会でただいま検討中でございます。
  22. 岡良一

    岡委員 なお、人口基準と同時に、ファーマー氏のこれを読んでみると、前の日のファーマー氏の説明では、大体二百五十キューリー放出量、それから原電は二十五キューリー、十分の一にしている。これについてもファーマー氏は、私ちょっとこれを読んでみただけですが、非常に矛盾を犯していますよ。このステートメントは余儀なく書かされたような印象を受けますよ。「私は、本日の新聞報道日本原子力発電会社が述べた放出量二十五キューリーと、私の論文で用いた二百五十キューリーの違いについて読みました。原子炉の動作を解析する場合、事故が発生し得る状態をすべて記述するのが普通のやり方であります。」云々と書いて、「その結果は適当な技術的評価とともに、「災害評価報告」の中に述べられますコールダーホール原子炉の「災害評価」の結論は、事故が発生しても、事実上放射能の放散はしないということであると考えています。もし、通常あり得ないような状態が幾つも同時に発生すると仮定して、ずっと条件を悪くして事故解析を行えば、ヨードの放出量が二十五キューリーに達するということも可能であります。」云々。ファーマー氏はここの場合に、さらにそのあとを読んでみますと、とにかく非常な矛盾を犯している。ファーマー氏としては、やはり二百五十キューリーという、ことし六月のローマ会議に出した線が正しいんだ、だが、しかし二十五キューリーという、そういう考え方もあるんだと言うておるだけです。なぜそういう考え方が許されるかということをここで説明しておらない。そして、今申し上げたように、解析のいろいろなケースというものがあるのだということを言って、そのいずれかの一つのケースでは二十五キューリーも考えられるであろうということである。これは、私は、専門家としてファーマー氏の御意見は非常に自家撞着があると思います。  しかし、それはそれとしまして、さらに私がこの際指摘したいことは、御存じのように、先般学術会議の放射線影響調査特別委員会ですか、都築さんが委員長をしておられるあの委員会でも新しい勧告を出しました。その勧告については、当然原子力委員会としてもまじめに御検討のことと思いますが、あの勧告は、これまでの勧告から見ると、非常に異質的な原則に立っておる。要するに、放射能はどんなにわずかでもいけないのだ、だから、許容量というものはあり得ない、しかし、必要悪として最小限に制限をするならばどれだけかという考え方で、放射能の許容量というものを認めようという、放射能のこれまでの、いわゆる許容量の概念と全く異質的な概念に基いておる。これが私は正しい原則だと思う。そういう許容量の問題について、原電は二十五キューリーと言っている。一方では二百五十キューリーと言って、二十五キューリーでもよい、いろいろな事故についての解析のたくさんのケースの中では、二十五キューリーも生まれてくるであろうということで、ファーマー氏は二十五キューリーを認めておる。これで、科学的な結論として、ファーマー氏のステートメントは、原電のいわゆる二十五キューリーというものを是認しておるとは、私は了解することができません。私は、そういうことを勘ぐりたくはありませんが、こういう新しい許容量についての勧告もあることでございますので、人口の問題と同時に、ファーマー氏がまず指摘をいたしました——原電の方の認可申請書にもついておるはずでございますが、放射線影響調査特別委員会の勧告をすなおに受け取っていただいた上で、ぜひこの許容量の問題についても、もう少し真剣に取り組んでいただきたいと思います。
  23. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 許容量の問題につきましては、ICRPからの勧告もございまして、それを中心にして目下検討を加えております。この問題は一番重要な問題であると思いますので、原子力委員会といたしましても、特に注意をして国民に安心感を与えるような措置をとるように努力して参りたいと思っております。  なお、ファーマー氏の発言につきましては、あれが最初新聞に出ましたときには、ファーマー氏は新聞記者とたしか会見しなかったということを聞いております。ファーマー氏が自分論文についていろいろ説明したところを原子力局の係の者が聞いておりまして、その者が、きょうはどういうことがあったというときに、ファーマー氏の論文の説明があった、ファーマー氏は自分論文について自分は正しいと思っているという発言があったということで、東海村を具体的な敷地として考えてどうこうという発言はなかったのであります。ファーマー氏の論文を、そういう間接的な発言から、東海村に類推してみてああいう新聞記事が出たのじゃないかと私は思います。ファーマー氏が自分の基準をもって、東海村はしからばどうか、具体的に適用してみてのステートメントがこのステートメントになっておるのでありまして、私は、ファーマー氏の考え方が、前の日とあとの日で変っておるというふうには考えたくありません。
  24. 石野久男

    ○石野委員 関連して委員長一つお尋ねしたいと思います。  ファーマー氏の論文もいろいろあるし、先般原子力委員会が行いました公聴会、それから、その後学術会議で行いましたいろいろな討論、こういうような問題を含めまして、炉の輸入をするに当って認可の問題が今どうなっておるのか、それから、それに対する考え方が、原子力委員会なり、あるいは局の方でどういうふうに考えておるかということをお伺いいたしますとともに、東海村があたかもこの炉の設置の確定的な位置であるというふうにされているかのごとき論がしばしば行われるわけでございますが、事実、委員会では東海村のあの敷地を、今度来る十五万キロのコールダーホール改良型の設置位置として確実にそういうふうにきめておるのかどうかという点を、この際一つ委員長からはっきりお伺いいたしたい。  それから、私は、ちょっと時間の関係がありますので、ついでに関連しましてお尋ねしますが、春以来、原子力研究所における労働組合のいろいろな争議事項がございました。これは、給与問題や労働条件その他に関連して問題が起きたわけでございますが、最近新聞などによりますと、この問題もある程度の打開の道を得られているように聞きまするし、特に労組諸君が、原子力の平和的利用とそれの発展のために熱心に要望された機構の問題、あるいは人事の問題等についても、相当程度委員長は配慮を加えて努力をなさっておることを新聞で拝見しますが、そういう問題が今どういうふうに進んでおるかということも、この際一つ報告いただきたい。
  25. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 東海村につきましては、原子力発電会社原子炉を設置する予定地として東海村を申請してきておるわけであります。従いまして、安全保障審査につきましては、具体的には東海村の地形、地勢等を中心にいろいろ検討を加えておるわけであります。従いまして、そういう対象にはなっておるわけです。しかし、東海村に確定したということはございません。確定していいかどうか、安全性審査している最中であります。  それから、第二に、審査の状況は、現在、たとえば冷却装置がまだどうであるとか、先般来しばしばお尋ねがありましたコンテイナーの必要ありやなしや、こういう点につきまして、目下技術的にいろいろな検討を加えているわけであります。これは、単に物理学者のみならず、法学者、機械方面の学者その他安全保障関係の学者等、全部網羅いたしまして、一つ一つ各セクション、セクションについてこまかい検討を加えておりますので、まだ結論には至っておりません。私は、できるだけ慎重に、そういう点については別に時間がかかることを心配しないでやってよろしいから、ゆっくり検討してくれ、慎重を期すが上にも慎重を期してやってくれ、そういうことをお願いしておるのであります。  次に、原子力研究所の改組の問題でありますが、私は、着任以来、日本原子力研究所は三年になりまして、建設のスピードは世界でも驚異するくらいに建物や施設はなかなかよくできておると思いまして、関係者の労苦を非常に多としておるのであります。現在の理事長、副理事長ともに、あの草創の時代から、東海村がまだやぶやあるいは森林であったころから努力されて、よくも三年間にこれだけ建設してくれたと、ほんとうにその功績については感謝しておるのであります。また、研究所の内部のいろいろな問題につきましても、仕事運営ぶりを見ますと、いろいろ関係方面との折衝やなんかでむずかしい問題もずいぶんあります。また、外国メーカーとの関係におきましても、あるいは技術提携等の配列からいきましても、なかなかむずかしい問題がありますが、なかなか適切なさばきをして、うまくやったとアプリシェートしておるわけであります。しかし、三年たちますと、時代の流れで、そういう建設的な仕事からいよいよ本格的研究所の仕事に入らなければならぬ段階になったと思いまして、言いかえれば、ブースターが終って二段ロケットに入る、そういう時代だろうと実は思うのであります。それにふさわしい体制を作るということが、現在の方々の適、不適にかかわらず、監督者としては当然考うべき問題であり、また、世論や国会側の御意見もいろいろ聞きまして、私は判定したわけであります。そういう意味で、これから十年くらい中枢になる人に腰を据えてもらって、本格的研究所として、昔理研の仁科さんが理研というものを育て上げたように、独特の気風を持っておる、学問の気風を作り上げるようなところにしたいと思いまして、そういう観点で改組を考えてきたわけであります。いろいろ人的配置やその他につきましては、まだ公表する段階には参りませんが、そういう方針で、じっくりと総合研究所に仕立てる目標で今努力をしておるということを申し上げる次第であります。
  26. 石野久男

    ○石野委員 その改組の問題につきまして新聞はいろいろと人事の問題等に触れて報道しておりますが、そういう問題については、今どういうふうになっているのでありますか、可能な限り、一つお聞かせ願いたいと思います。
  27. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 原子力委員会や、あるいは研究所に関係しております各方面の方々とも相談をいたしまして、どういう人が適任であるか、理事長及び副理事長そのほか研究体制等につきましていろいろ協議をいたしまして、その協議のもとに善処しておる。この程度で、今のところはごかんべん願いたいと思います。
  28. 石野久男

    ○石野委員 委員長が、いろいろと十年の構想のもとに、じっくりと順をおちつけてという趣旨に基いてお考えいただく場合に、原子力研究所の従業員の諸君が、自分たちの体験を通じて血の出るようないろいろな要望をしておったことを私たちは承知しているわけであります。委員長は、そういう問題については十二分にやはり自分の胸に入れて、そういう立場からの御処置をなさって下さっているものと思いますが、こういう問題について労組の要求していること、あるいは従業員の諸君が切実に希望を申し出ていることについて、委員長の御感想だけは一つこの際聞かせていただきたいと思います。
  29. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は、あらゆる方面の御意見を腹中におさめまして、さらに深い見地から善処するつもりであります。
  30. 岡良一

    岡委員 最後に、一、二点お尋ねをいたします。新聞で宇宙科学振興要求予算十七億というようなことを拝見いたしましたりが、その内訳を一つ報告願いたいと思います。
  31. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 宇宙科学技術という問題をわれわれが提起いたしましたまず根本の考えは、最近各国が宇宙方面に対する開発に非常に馬力を入れて参りまして、特にアメリカ、ソ連等が力を入れてやっておるのは御承知の通りであります。それで、ぼやぼやしておると、この方面に対する日本の国際的発言権もなくなりますし、あるいは、さらにぼやぼやしておると、たとえば、ある方と面の情報によりますと、ローマのオリンピック大会、おそくとも東京オリンピック大会までには人工衛星を上こげて、テレビの世界中継をねらっておる向きもあるといわれております。もし、そういうふうになりますと、これは世界的な独占権を生むということになりますし、国内でテレビのワン・チャンネルを取るのに血眼になっておるという状態でありますが、それが世界的にもっと拡大されて出てくるほどの重大な問題であるとわれわれは思っておるわけであります。ちょうど明治の初めに、われわれの知らない間に海底電線を敷設されてしまって、あとでまた高い使用料を払わされたと同じ結果になるおそれがあるのであります。一番いけないことは、ゼロの状態であります。ゼロ掛ける一万はゼロであります。しかし、一というものが出ておると、一掛ける十は十になる。わが国はまだセロの状態ですから、一の芽を出すことが今日非常に重大である、こう思いまして、一の芽を出そうという努力をしてきたわけであります。そこで、現在の段階は、学帽科学技術振興するための基礎的準備的段階と定義して差しつかえないと思います。そこで、来年度予算といたしましては、はなはだ微弱なものではありますが、十七億程度要求いたしまし石を打つということを考えております。そのおもな経費といたしまして、科学技術庁といたしまして約三億五千万円、このおもな内容は、調査に要する経費、それから審議会設置に要する経費、海外技術者派遣に関する経費及び海外技術者の招聘に関する経費であります。あるいは、そのほか委託費、補助金、普及宣伝費等であります。  それから、ほかの省の関係では、郵政省電波研究所が約二億七千八百七十四万九千円、これは電波研究所を中心にして計測関係研究を進めるということであります。それから、文部省関係として、東京大学生産技術研究所五億六千百八十三万七千円これは、いわゆる生産研ロケット、カッパー六型まで参りましたが、来年はこれを九型まで持っていって、三百五十キロ程度まで打ち上げる、そういう研究であります。これは非常に性能のいいロケットが最近考案されまして、世界でも驚異の的になっておるのであります。これだけ安つい経費で、あれだけ高度のものがよくできたといって、外国からも非常に賞賛されております。そこで、最近の電離層とか宇宙線とか、あらゆる問題の研究は、地上で観測するというのではとても時代に合わない、やはり高層にロケットを打ち上げて、いろいろデーダをとってこぬと、外国の学問の研究に追いつかない、そういう状態でもありますので、この点は大いに推進したいと思っております。それから、もう一つは、東京大学航空研究所の予算でありまして、一億五千百万円であります。そのほか、天文台におきまして約百五十万円、あとは各大学の各講座等にあります。そういう基礎研究の経費でありまして、全部で約十七億円になります。
  32. 岡良一

    岡委員 それでは委託研究——まあ独自な研究所もございませんから、航空研究所あたりが若干のお役に立つかと思いますが、あと委託研究というのは東大の生産技術研究所、あるいは民間の会社としてはどこを予定しておるわけですか。
  33. 久田太郎

    ○久田説明員 御説明申し上げます。これは来年度の予算要求いたす際の一応の考えでございますが、今科学技術庁として考えております委託研究並びに補助金の対象といたしましては、気象観測ロケットの設計研究というのが一つございまして、これにつきましては富士精密工業その他の民間会社が対象として、委託先として考えられております。  その次に、ロケットに関するシステム・エンジニアリングの研究——システム・エンジニアリングという言葉がちょっと新しい言葉のようでございますが、これは、ロケット等の打ち上げに必不要な各種の地上施設の研究等の関連したいろいろな施設、あるいは制御装置等の問題でございまして、これにつきましては、川崎航空機工業あるいは新三菱重工業等が研究の委託先として一応考えられております。  以上がただいま考えております委託研究でございまして、なお、研究補助の対象といたしましては推進材の試作研究、従来生産研で行われております実験の推進材は固体燃料が使われておりますが、この補助金の対象としましては、液体燃料を対象にいたしまして、交付先といたしましては、たとえば大日本セルロイドあるいは日本油脂等が候補として考えられます。  なお、最後に、月反射レーダー、月を反射体としてレーダーに使うという研究の問題でございまして、日本電気その他が一応交付先として考えられます。  以上であります。
  34. 岡良一

    岡委員 富士精密、川崎航空機、新三菱重工、それぞれ金額はどれだけですか。
  35. 久田太郎

    ○久田説明員 それぞれの金額等は、まだ全然きまっておりませんが、予算要求をいたしております総額といたしましては、気象観測ロケット関係が一億三百万円でございます。一応予算上の積算の基礎でございます。次に、ロケットに関するシステム・エンジニアリングの研究が五千二百万円、これが委託研究関係でございます。次に、補助金といたしまして、推進材の試作研究関係は六千八百万円、月反射レーダーの関係は一億四千三百万円ということになっております。
  36. 岡良一

    岡委員 防衛庁の技術研究本部はお見えでございますか。
  37. 村瀬宣親

    村瀬委員長 装備局長が見えております。
  38. 岡良一

    岡委員 技術研究本部の誘導兵器関係の昭和三十四年度、三十五年度の予算は資料としていただきました。そこで、民間産業に対する委託研究あるいは試作等は、空対空ミサイル、対戦車ミサイル、地対空ミサイルについて、それぞれどの会社を指定しておられますか。
  39. 小山雄二

    ○小山説明員 大体防衛庁でただいまやっておりますのは、将来配備、装備できるようなものを逐次研究を進めておる段階でございます。それぞれ研究につきましては、技術的内容あるいは技術員の分量といいますか、そういうものを考えまして、地対空の誘導弾関係につきましては、新三菱重工業を中心とした三菱電機、三菱造船の三菱グループを利用して参っております。それから、空対空の誘導弾につきましては、富士精密を中心としたグループを利用しております。それから、対戦車誘導弾関係につきましては、川崎航空機を中心とするグループを利用しております。
  40. 岡良一

    岡委員 文部省として、大学研究室が民間産業から委託研究等の依頼を受けて研究する場合、それに必要な経費等のやりとりということがあるわけだが、どういうことになっておりますか。
  41. 緒方信一

    ○緒方説明員 予想されます金額を支出予算に組んでおります。委託研究を受ける際には、歳入は歳入で入って参りますが、支出予算を一応組んでおります。
  42. 岡良一

    岡委員 それでは、かりに防衛庁が今お答えのありた富士精密に空対空のミサイルについての研究試作を委託する。そこで富士精密の手に余るものだから、ある大学の教授に、さらにその研究を委託する。そうすると、その委託費とか何かお金が出てくるわけです。これは大学予算に必ず計上されて、はっきり一目瞭然にわかることになっていますか。
  43. 緒方信一

    ○緒方説明員 建前といたしましては、ただいま申し上げますように、受託研究費というものを組みまして、その研究費を歳出予算に組んでおります。そこの実際の運営につきましては、文部省といたしましても、これは研究でございますから、いろいろな実態があるかと存じます。一々につきましては、なかなか把握しがたいのでありますけれども大学当局からそういう要請がございまして、それを支出してやる、こういう形であります。
  44. 岡良一

    岡委員 学術会議は、一九五〇年の第六回総会でも、科学技術研究については軍事的な偏向は絶対に拒否するという強い建前をとっております。その場合における軍事的研究というのは、防衛的なことも含めてだということになっております。ところが、今おっしゃったように、さて、事実上の問題としては、軍事的な目的のための委託研究費というものが、政府の防衛庁なら防衛庁から民間会社に、さらに大学の教授に渡るときに、全然使途が不明である、実態が把握されないということは、私は、日本科学技術の平和的な振興という建前から見て、十分戒心すべきことだと思う。これは文部大臣でないから何でしょうが、これは、やはり現在における大きな空白だと私は思います。この点、あらためていろいろな資料も要求し、また大臣等の御出席を願って、私も意見がありますから、申し上げたいと思います。  そこで、今お答えになったことで、要するに、宇宙科学振興関係の経費十七億のうち、あるいは気象計測は富士精密に一億三百万円、あるいはシステム・エンジニアリングは川崎航空機、新三菱に五千二百万円です。ところが、防衛庁が委託研究をし、また試作をさせておる空対空ミサイル、対戦車ミサイル、地対空ミサイルの研究の場所も、やはり富士精密であり、新三菱重工であり、川崎航空機である。なるほど、私は、中曽根さんの人工衛星を飛ばそうという——私はこの宇宙科学を振興するということは大へん必要なことだと思う。また、中曽根さんであれば、これはやっていただけるという期待も持っておるけれども、事実上こういう形で重なってくるわけです。下世話に言う一定のわらじをはいていることになっている。一方では、あなたがいかに平和利用と言われても、一方ではミサイルの研究と実事上同じものです。その同じ場所で同じものをやっているという問題は、これは、やはり私ども立場からは非常に関心を注がないわけにはいかない。この点、中曽根長官どう思いますか。
  45. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 現在の政党政治の建前から自由民主党が政権をとっておるわけでありますが、自由民主党の信条におきましては、防衛庁は違憲にあらず、そういうことになっておるわけであります。そういう体制でものが進んでおるわけでありまして、これが国民の支持を失って、反対の社会党が天下をとれば、また変ると思うので、非常に弾力性のある、おもしろいシステムだと私は思いますが、幸か不幸か、自民党は終戦以来ずっと天下をとっているわけであります。そこで、防衛庁は違憲にあらずということで、防衛に関するある程度の自衛力の装備は合憲であるということから、その防衛力の研究も憲法の範囲内でやっているわけであります。それが委託研究その他の関係で富士精密とか三菱とか、そういうところへしみてくるものも合憲であると思うのでありまして、憲法の範囲内においてやっているわけであります。そこへたまたま、われわれは別の平和利用という目的で仕事をしていこうと思いまして、われわれの水もしみていくわけでありますが、会社も、お前は、平和利用係、お前は防衛庁係と人間を分けても、やはり知識は一つということになって、お互いは空気を吸っていますが、この空気は防衛庁の軍人が吸ったからお前は吸ってはいかぬというわけにはいかぬ。やはり、空気は共通であるというような関係に事実上なっているのっではないかと思うのです。その点を岡さん及び社会党の方々が一番心配しておられるのだろうと、先ほど質問を拝聴しながら、しみじみ感じたわけであります。そこで、これはやはり今の憲法制度のもとにおいては出てくるやむを得ざる体制であるだろうと私は思います。こいねがわくば、世界が平和になって、科学技術庁仕事だけを富士精密も三菱も受けるというようになる時代が来れば、一番ありがたいと思うのでありますが、現在の体制では、そこまでは参らないようなことでありまして、大きな理想からいえば、遺憾な状態ではあるが、日本の状態から見れば、やむを得ない状態であると思います。これは、やはり自由民主党体制下の今の社会機構と、社会党で想定される体制下の機構との相違からきているのではないかと私は思います。
  46. 岡良一

    岡委員 中曽根長官も、よく金沢へ自民党の候補者の応援演説にこられますが、残念ながら、まだ金沢では立会演説会をやったことがないのが、きょうは、たまたまこの委員会で立会演説会をやりまして、まことに光栄に存じているわけであります。ただ、私が申し上げることは、先ほども申しましたように、この五〇年四月の日本学術会議の第六回総会ははっきりと決議をした。それは、再び戦争の惨禍が到来せざるよう切望する、そこで世界平和の使徒として、科学者の節を守り、戦争を目的とする科学の研究には絶対従わないということを宣言しておるわけです。それは社会党が言うておるのではないのです。学術会議の第六回総会の決議なのです。こういう決議が厳としてある。してみれば、大学における研究の自由、あるいは運営の民主化という問題は、科学者諸君の重大な関心事でもあり、政府も尊重してやらなければならぬ。そういうもろもろの環境の中で、なおかつ、新聞紙の伝うるところによれば、防衛庁でも、いわゆる第二次防衛計画というものがすでに発表されている。ナイキ・アジャックスとかホークとか、ミサイルの導入を既定計画としてやっておる。いずれは新三菱重工なり、川崎航空機なり、あるいは富士精密も、やはりミサイルの国産化ということに進んでくるでしょう。これらのミサイルは、核弾頭を使おうと思えば使えるような状態において、これらの決議とは反対方向に、日本の科学者の研究が歩一歩進められているということになりますと、日本の科学の平和的な振興という、私どもの大事な路線からは非常に逸脱をしてくる。これは自民党、社会党という党の立場ではなくして、やはり日本の科学者の大きな原則的な要求から逸脱するということは、私としては忍びないわけです。宇宙科学振興に名をかり、また平和利用に名をかりながら、事実において大学の教授や大学研究室が軍事的な目的のために利用される機会を与え、かつ、機会を広げていこうという政策になるならば、私どもは中曽根さんの宇宙科学振興というものに対しても疑義を持たなければならぬと思うのです。こういう点、なお憲法上についてもいろいろ御意見もありますが、しかし、憲法上の定説としましても、なるほど、科学技術振興が管理者の意思によって軍事目的に使われるならば、科学技術の進歩というものは、そのもの自体は平和目的と申しましょうか、それは潜在的な戦力であっても、顕在化されておらないものとして、科学技術振興一般として大いに奨励すべきものでしょうが、管理者の意思によっては、それが軍事目的に転用されるということになれば、それは明らかに憲法違反です。してみれば、そういう潜在的な科学的能力というものを養っておるということは、やはり憲法上疑義があると思います。これは、いずれまたもっと勉強して、よく科学技術庁の、あるいは中曽根さんの見解をただしたいと思いますが、今お答えを得ただけでも、私は非常な危惧を感じておるということを率直に申し上げるわけでございます。  これで質問を終ります。
  47. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 御意見はよく承わりました。科学技術庁といたしましては、宇宙科学技術の開発は純粋に平和の目的に限りまして、その点はよく注意をして進みたいと思います。特に対空高速ロケットとか、あるいはいろいろな電波関係、あるいはエレクトロニクス関係等の発展につきましても、平和利用のためにこれが貢献するようにわれわれは努力をして参りたいと思っております。私に関する限りは、この宇宙科学技術というものは、平和の大筋を通すということを、あくまで責任を持って推進して参りたいと思います。このことをお答え申し上げておきたいと思います。
  48. 緒方信一

    ○緒方説明員 きわめて事務的なことでございますけれども、先ほど受託研究費の取扱いのことにつきましてお答え申し上げましたことを若干補足させていただきたいと存じます。  先ほど申し上つげましたのは、研究の一件々々について文部省において一々把握しているのではないということを申し上げたつもりでございまして、大学当局といたしましては、文部省から配付されました予算におきましてこれを運営いたしておりますから、当局としては、これを十分把握しているはずでございます。その受託研究が全然わからないままに行われておる、こういう事実はないと私は存じますので、その点を、事務的でございますけれども、補足させていただきます。
  49. 岡良一

    岡委員 それでは、一つ資料の提出をお願いしたいのですが、まず、具体的に、糸川英夫博士の生産研におけるロケット研究、特に富士精密その他の民間産業との間における委研究のテーマ、金額その他、一つしさいに具体的な資料の御提出をお願いいたします。
  50. 村瀬宣親

    村瀬委員長 他に御質疑がなければ、本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。     午後零時三十五分散会