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1959-08-11 第32回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年八月十一日(火曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 村瀬 宣親君    理事 小坂善太郎君 理事 平野 三郎君    理事 保科善四郎君 理事 前田 正男君    理事 岡  良一君 理事 原   茂君       天野 公義君    小金 義照君       永山 忠則君    八木 徹雄君       石野 久男君    内海  清君       田中 武夫君    松前 重義君  出席国務大臣         国 務 大 臣 中曽根康弘君  委員外出席者         科学技術政務次         官       横山 フク君         科学技術事務次         官       篠原  登君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   原田  久君         総理府技官         (科学技術庁計         画局長)    久田 太郎君         総理府事務官         (科穿技術庁振         興局長)    鈴江 康平君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   佐々木義武君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局次長)  法貴 四郎君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局原子炉規         制課長     藤波 恒雄君      ――――◇――――― 八月十一日  委員正力松太郎辞任につき、その補欠として  永山忠則君が議長指名委員に選任された。 同日  委員永山忠則辞任につき、その補欠として正  力松太郎君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件      ――――◇―――――
  2. 村瀬宣親

    村瀬委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件につきまして調査を進めます。質疑の通告がありますので、この際これを許します。石野久男君。
  3. 石野久男

    石野委員 中曽根大臣にお尋ねいたしますが、先月の三十一日にコールダーホール改良型の発電炉安全性に関する公聴会がありまして、それぞれの方々から賛否両論が出たことは、すでに私どもの承知しているところであります。新聞等によって報ぜられるところを聞きますと、大体がこの炉の受け入れについては慎重論が多かったように聞いております。論の内容については、私はまだ詳細を聞かしていただいておりませんので何とも言えませんが、大臣一つ一その当時の公聴会感想をお聞きしたいと思います。特に、ここで出ました意見のうち、慎重論、ないしは、まだ受け入れが早期であり、ことに現地知事とか村長などが出しておりまする問題は、安全性の問題、補償問題等について非常にやはり切実な訴えをしておると思うのです。それらの問題を通じまして、大臣はどういうふうに感じておられるか、また、それに対して今後どういうように対処しようとしておられるかということについての御感想を承わりたい。
  4. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先般開きました公聴会につきましては、関係者方面の非常な御協力を仰ぎまして無事終了することができましたことを、関係方面に対して感謝申し上げる次第であります。  公述人皆様方は、炎暑の中をきわめて真摯に御発言をいただきまして、御発言内容につきましては、非常に傾聴に値するものもあり、われわれは誠意をもって御発言内容を一々チェックいたしまして、科学的に検討しておる次第でございます。  そこで、大体の雰囲気といたしましては、日本動力開発のために、あるいは文明を推進していくために発電炉日本に入れるということは趨勢としてはやむを得ないことである、むしろ一部の理論では、日本燃料事情等を見ると、積極的にこれを推進すべきである、そうでないと時間的に間に合わないというような意見もありまして、態勢としては、原子力発電を推進するという方向に私は見受けられたと思います。ただ、その実施に当って、まだ安全性に関して疑問点やら解決しない点もあるようであるから、その点については慎重にやれという御議論や、あるいは総評からおいでになりました保障対策部長は、自分反対であるという御意見を表明なさいました。正式に反対であるとおっしゃったのはその方だけでありまして、あと方々は非常に疑問点をお述べになりましたり、あるいは慎重に取り扱ってほしいという御議論であったように思います。全般的に見ますと、動力炉受け入れについては、やはり日本必要性をお感じになりまして、その方向に進むことは時代の趨勢であるというお考えが前提にあったように私は思いました。  そこで、問題点として指摘された点は、大体次のように思います。第一は、安全性確保のためにコンテイナーを必要としないかという問題、これは本委員会におきまして、しばしば岡委員石野委員からお話のあった点でもあります。それから第二の点は、核分裂生成物飛散について、許容量等の限度において住民との関係をどうするかという、核分裂生成物飛散についての御議論であります。それから第三番目は、申請資料を公表しろ。それからその次は、具体的な安全基準というものを確立しろ。それから、さらに、許可をする場合に条件付訂正可をすることはいけない。そのほか、爆撃演習場をなるたけ早く解放せよ、久慈川からの取水について、住民の、特に農事方面のことも考えてもらいたい、そういう御議論や、あるいは災害補償に対する取扱いを早く確立せよ、あるいはわれわれが前から考えておりました原子方施設周辺地帯の整備について政策を確立せよ、こういうような御議論があったように考えております。これらの御議論傾聴に値する御議論であり、われわれとしても一応はぜひとも検討しなければならぬポイントであると思いましたので、ただいまわれわれの方の原子力委員会におきましても、あるいはまた安全審査部会におきましても、鋭意検討中でございます。
  5. 石野久男

    石野委員 各委員の述べられた中には、非常に積極的な受け入れ態勢を示したものがあると同時に、やはり非常に慎重であり、特に許可するやに当っては条件付などというあいまいなことをやらないようにしてくれという、これは、むしろ慎重論というよりも、もっときびしい要求がやはりここに出ていると思います。それらの意見を通じて、原手力委員会がこれらの公聴会に出たものをどういうふうに取り扱うかは、公述した人はもとよりのこと、われわれにとっても非常に重要な問題だと思います。大臣は、今、これらの問題について原子力委員会が慎重に検討を加えておる、こうおっしゃっておりますが、どうも原子力委員会の、特に今度の公聴会などの開催の仕方などを見ますと、私は現地から出ておるのでございますが、現地では、この問題について、すでに村長知事その他村会議員の方も意見を述べておりますけれども、その他にも相当この問題を、別に反対せんがための反対というようなことでなしに、慎重に将来の発展地域安全性の問題を考え意見を聞いてもらおうという人が多かったわけです。これらの人々の、故意かどうか知りませんけれども公聴会に対する出席許可されなかった。もちろん、これは人員や何かのこともございましょうけれども、私どもから見ると、なぜそういうようなことを原子力委員会がするのかということに一抹の疑義を持たざるを得ない。こういう問題を私考えますると、むしろ、原子力委員会は非常に真剣にこれらの問題に取り組み、そして、また将来を憂えて、なるたけ受け入れるなら受け入れるように、みんなが安心してそういう受け入れ方ができ、地域人々もそれに積極的に、そういう安心感の上で協力できるような態勢をとれるようにという考え方から、意見を述べようとした人々意見が封じられたような感じを持ったわけです。こういうことは、どうも原子力問題に関する三原則との問題にもからみまして、やはり原子力委員会の炉を受け入れようとする態度の中に、何か政策的にそういう人々意見を封じようとするのじゃないかというような感を受けざるを得ない。こういう問題について、大臣原子力委員会委員長をなさっているわけでありますが、委員長は、そういう事情を御承知の上であの人々出席許可しなかったのかどうか。この点は一つはっきり委員長のお考えを聞かしておいていただきたい。これは、なじるとかなんとかという意味でなしに、炉の受け入れ方に対する現地人々の真剣な考え方をどういうふうに見ているかという立場でお聞きしておきたいと思いますので、一応委員長の所見をお伺いしたいのでございます。
  6. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 公聴会を開催するのは、なるたけ大ぜいの人々の御意見を拝聴するという趣旨でございましたから、大ぜいの公述人を選びまして公聴会趣旨を生かそうと努力いたしましたが、希望した人は何しろ二十人に及びまして、時間の制限がございますので、必ずしも全部を受け入れるという余裕がございませんでした。そこで、われわれの方では、主として安全審査ということが中心であり、問題は非常に科学的な附議と申しますか、能力を要する部分が非常に多いと思いましたので、学者関係でお出し出になりましな方々は全部公述人になっていただいのであります。それから、労働界といたしましては、総評と全労という二つの二大組織がございますので、おのおのから一人ずつお選びいただきました。しかも公述申請して参られた方は、一人はこの問題に関する総評保障対策部長である塩谷さんであり、もう一人は電労連の委員長でありまして、やはりこの問題に一番関係のある方でありますから、適任であるとも考えたわけであります。それから産業界におきましては労働界とのバランスを考えまして二人をお願いいたしました。あと地元代表する方々はこれは、やはり知事とか村長とか議員とか、そういう地域的な住民代表の資格を持っている方が比較的皆さんの意見を公平に反映する立場にある、こういう考えで、数の制限がございましたので、そういう基準でしぼったのであります。それにお漏れになった方はございますが、これは別に他意があったわけではございません。
  7. 石野久男

    石野委員 こういうことにあまりこだわりたくはないのですが、現地から出た中には、労働組合代表として県評代表の方、それから原研の労組の方、それから原研に従事している御家庭の方々もあったわけです。特に原子力研究所に従事しておる方々は、現実放射能にさらされておるという危険を感じており、こういう人々にはそれぞれ原研の中で対策も立てられておるが、その経験をもとにしてのいろんな発言もあり得ると私たちは期待しておったわけです。同時に、また、この人たらも、原発のできることについてば、自分たちの短かい経験であっても、しかし彼ら自身直接にその職場で働いている者の意見として、原子力委員会自身としてもそういう人々に聞くのに非常にいい機会だったろうと思うのです。ところが、こういう人々が特に現地代表としては選ばれなかった。大臣が今言われるように、村長とか、あるいは知事とか、村会議員地域代表になるということは一応われわれも了承のできることです。しかし、原研というあそこの職場が、わが国におけるところの原子力産業においても、また、そういう部門においても特殊の地位として、しかも最初にそういう事態に言分のからだをさらしている人々でございますから、こういう人々からこそ、むしろこの機会に話を開いてやるべきだったろうと私は思うのです。そういう点で、私は大臣の配属の仕方が足りなかったのではないかと思います。これは何らかの機会にこういう人々意見を率直に聞いてやるように心がけることが、将来、経験者言葉を聞くという意味でも私は非常に有利だったろうと思うのです。そういう点で、私は非常に遺憾に思いまするし、また、そのことが善意の立場でお漏らしになったのならともかく、何らかの意味で作意があったとしますると、やはり炉の受け入れに対してほんとうに憂うる人々の声が聞けないことになって、これは非常に対束を誤まることになると思いますので、今後そういう人々意見は、特殊の立場として十分開くように大臣要望しておきます。  それから、各公述人の述べられた意見の中には、先ほど来申しておるように、原子力を熱源として利用するという平和利用立場から、非常に積極的な意見のあることも私ども聞いておりますけれども、しかし、この問題については、内外ともにいろいろ資料的に安全性問題等についてば不十分だということから、その安全性を確保するための要望が非常に強く格公述人から出されておると思います。ことに現地知事ども、そのことを強く、短かい言葉であるけれども、言っておりまするし、これを受け入れようとするところの東海自身でも、その問題については非常に心配をしておるわけでございます。この問題についてのそこの地域住民に対する安心感というものを与えることなくして、設置の問題などもそう簡単に、スムーズにいくものではなかろうと思うわけです。従って、私たち原子力平和利用を積極的にやろうとするならば、引き下って、そういう人々安心感を与えるということをもっと積極的に考えなければならないと思うのです。そういう立場からいたしますると、たとえば大塚公述人が言っているように、条件付許可をすべきでないというようなこと、あるいはまた、岩土氏が一番最初に言っておりまするように、災害の完全な補償制度を作る、そして、またその災害補償制度については、安全性基準をどのようにして確立するか、何を基準にして安全を審査するかという、その墓準設定せよという要望ですね。こういう意見は、この際、安全性審査立場からいたしますると、非常に重要なことだとは思うのでございます。大臣ば、今、これらの問題ば原子力委員会でそれぞれれ検討中だとおっしゃったのでございますけれども委員会検討はともかくとして、大臣としては、何を基準にして安全を審査するかという安全性基準の問題だけは、輸入の許可を与える前にはっきりと出さなければならない問題ではなかろうか、こういうように私は思っておるのですが、大臣はその点についてどういうようにお考えになっているか、また、それ以前にそういう基準設定するというお考えがあるのかどうか、この際はっきりお聞かせ願いたいと思います。
  8. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 許可基準に適合しない申請について、これを許可基準に適合せしめるための条件を付して許可するということはしないつもりであります。つまり、許可基準に適合しないものをこう直せ、こう直せ、こう直せといって適合せしむるようにさせるために条件をつける、こういうことはしない方針であります。たた、許可基準に適合しているものは許可いたしますが、念を入れまして、たとえば、設計上この点はさらにこういうふうにした方がいい、あるいは工事を実施する段階において、これはこういうふうにしなさいとか、そういう補完的意味条件を付することはあり得るだろうと思います。その気は明確にしておきたいと思います。  それから、許可基準につきましては、何しろ現在原子炉ができまして日が浅いが、しかし、非常に日進月歩でいろいろなタイプの炉ができておるものでございますから、非常に大まかに、抽象的にはできるわけでありますけれども、それは現に核原料物質核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律に五つばかりの条件が載っております。しかし、かなり具体的に一般的に作ることはなかなか困難のようであります。そこで、もう少しいろいろな炉ができて一般的な具体的な基準が可能になれば、われわれはできるだけそれを作りたいと思っておりますが、現在のところではケースバイケースで、コールダーホールについてはこれこれ、ボイリング・ウオーターについてはこれこれ、そういうような具体的なケースケースで審査していくのが一番安全のように思います。そういう意味におきまして、現在はコールダーホール中心にいたしまして、具体的に安全審査都会検討しておるわけであります。
  9. 石野久男

    石野委員 許可基準に即応しないものについて、いろいろな補完的な問題を要請したり、注意したりするということは――それは私は許可基準というものについてはよくわかるのです。許可基準と炉の安全基準、これは、炉の安全性というものについての基準をどのように置くかということの設定とは意味が違うと思います。  そこで、今、大臣は、原子炉発展原子力産業についてのいろいろな発展ということが一日々々新たになっていく、だから、今の場合はその炉についてのケースバイケース設定をしていくのだ、こういうお話でございましたけれども、私は、炉そのものについてはそれぞれ発展があり、ケースバイケースの何は考えられておるけれども安全性の問題というのは、炉の安全ということと同時に、それが安全を必要とする対外的な関係があると思います。周囲の状況だとか、あるいは住民状況だとか、あるいはその産業自体の危害を防ぐための立場からする安全性の問題、そういう問題は、常にやはり一つ基準がなかったらいけない、また、そうなかったら実際に大衆というものは安心感を持つことはできない、ですから、安全性の問題については、どうしても一つ安全基準を何か最低の形で置かないと上へ衆に納得させることはできないと思います。そういうものは、現在国の場合は持っていないわけであります。それをどういうように設定するかということをにこではっきりしてもらわなければならぬし、また、許容量の問題にしても何にしてもそうでございますが、そういう安全基準の基本的な考え方というものをはっきりと、何をどこに、どういうような形で置くかということについては、公述人の人もそれを要求している人が多いし、また、現地でもそれを要求しているわけです。むしろ、産業自体発展のためにもそれが必要だということをわれわれは考えるので、許可基準の問題とは別個に、それの根底をなす安全性基準についての一つ方向づけというものをぜひ一つ設定すべきであると思いますが、大臣はどういうように考えられますか。
  10. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 炉の問題では、一番問題になるのは放射能許容量の問題であると思います。放射能許容量につきましては、国際的基準が今確立されつつありますので、その国際的基準を厳守するように、それが一つ基準になって審査しているわけでもあります。しかし、アメリカ型の炉とか、イギリス型の炉とか、いろんな炉がありますし、炉自体日進月歩でいろいろ改良を加えている状況でありますから、放射線等最低基準については、これは、もちろん基準としてわれわれは確立して順守していくつもりでございますけれども、各炉を通ずる一般的な基準というものは、ある程度の国際的な経験及びわが国経験等も見ないと、具体的にはなかなか確立できないと思うのであります。従いまして、目下のところは、具体的にケースバイケースによって事故の場合をいろいろ想定したり、最悪の場合、起り得べき場合、あるいは軽微な場会、あるいは立地条件、そういうあらゆる問題を検計いたしまして、H木のどの地点においてどういう炉を作るときにはどれが安全の基準であるかということを一つ一つ見出していくのが、今のところは賢明なやり方であると思います。しかし、われわれの経験がだんだん積まれまして、国際的にもいろいろな検計が加えられましたならば、そういう具体的な一般的基準の確立もあるいは必要であろうと思いますので、原手力委員会におきましても鋭意努力して参りたいと思います。
  11. 石野久男

    石野委員 炉自体日進月歩であるから、その炉に対する基準ケースバイケースでいかなければいけないということは私も了解いたします。しかし、炉から出るところの放射能障害は、それを受ける側からすれば、炉がどういうふうに発展しようと、これはちっとも変っていないわけです。そこではりっぱに一般的基準方針は出てくるし、また、そういうものを作っておかなければならない。それはやはり人口密度の問題とか、地域的ないろいろの問題とか、各般の問題があろうと思うのです。私は、そういう面でのはっきりした線と、炉の日進月歩が行われることに対処すべき最低線における基準とは、やはり両方あわせてりっぱにできるものだと思うのです。ですから、今、大臣の言われる炉自体日進月歩の問題については私はよくわかる。しかし、一つ固定点が出るまでは、一般的なある基準はなかなか困難だという立論には承服しがたいし、また、一般の人には、現実には海のものとも山のものともわからないような炉についての論が各方面から出てくると、東海村の村長が言っているように、「私たちにはわからないんだ。だから学者意見が一致することを待つよりございません」とということを、実際問題として言わざるを得なくなってくるのです。だから、そういう点で、やはりはっきりと安全性の問題についての基準をどのように置くかということについて、政府はそこに考えを出すべきである。原子力委員会もまたそういう立場で努力し、早急に確立して、そういうものを基準としてコールダーホール型ならコールダーホール型を受け入れるのに、かりに反対するとか、慎重論をとっている人々にも安心感を与え、一般人々にも、それじゃよかろうじゃないかというふうにしていくことが、むしろ炉を入れるためにも非常に緊急な処置であろうと思うのですが、大臣はそういう点についてはどういうふうにお考えですか。
  12. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先ほど申し上げましたように、放射線基準、つまり放射能基準につきましては、国際的な基準もあり、わが国におきましても規則、告示ですでに規定されておのでございまして、これを厳守するということは言うを待たないのであります。そのべースを基準にいたしまして、放射線というものを基準にいたしまして、核分裂生成物がどのように飛散するか、それが放射線基準量に至るか至らないかというような点が一番大きな問題でありまして、そういう点については、炉の性能等とにらみ合せまして具体的に検討しておると申し上げたのであります。
  13. 石野久男

    石野委員 私の開きたいのは、今、炉の安全というものを審査する、そして、またそれが炉自体についても、炉の外に対しても、それらのもの全体を含めて、安全審査をする基準を何に置いておるかというにとが今ないだろうということです。それがあるなら、こういうものと、こういうものと、こういうものだということをはっきり言ってもらって、それでみんなを納得させるならけっこうだというのです。だから、そういうものがあるならある――私どもから見ると、今原子炉安全基準を確立するということについて、何を基準に置いておるかということについては、まだはっきりした基準線がないのだから、審査すべき基準になるべきものをやはり作るべきだということを言うわけなんです。それがあるなら、こういうものでいくんだということを言ってもらいたい。私は、こまかい技術的なことは、実際をいうとわからない。わからないから、従って、そういうことについて憂えている学者なり技術者の言っておることを聞くと、今そういう基準になるものがないから確立してくれということを公述の方も言っておる。それがあるならあるでけっこうです。今現に原子力委員会なり政府が言っておることでは満足できないから、この人々はやはり基準設定せよということを言っておると思う。だから、私は、そういうことは大臣としても淡々として、炉を受け入れる前にそういうものを作るということの腹がまえを見せるために努力をなさる方がよろしいと思いますが、それはできませんか。
  14. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 御意見趣旨のほどはよくわかります。原子力委員会といたしましてもいろいろ検討を重ねまして、なるたけ早い機会に、そういう一般的な具体的基準を作るべく努力いたしたいと思います。
  15. 石野久男

    石野委員 この炉を入れるにとについての安全性の問題については、やはりそういう基準を積極的に、そして早期に作ってもらうことによって、一般人々一つ安心感を与える状態の中で炉が入るようにすることを私たちも希望するわけです。そのように一つ努力を願いたいと思うのです。放射線の管理の問題についてある委員言葉を聞きますと、東海村は原予カセンターだから放射線管理の面ではきわめて容易なんだというふうに、こういう形で東海村を見ておる人が多いようでございます。それが、やはり地域人々にとると非常に容易ならぬことなんです。原子力センターなんだから非常に管理は簡単なんだ。では管理をするための施設なり何なりがとういうふうにできておるかというと、実にあいまいなんです。それは基準問題等とも関連してくるわけです。こういう考え方で炉の受け入れ東海村にされるということになると、非常に東海村としても困ると思う。それならば、放射線管理の画での施設なり何なりについて、知事や何かが要望したことなどをどの程度に原子力委員会なり、あるいは委員長受け入れる腹がまえをしてくれておるのかどうかという問題が非常に重要になって参ります。東海村でもそう言っておるし、あるいは知事立場からいいましても、特に知事は、そういう放射線管理の問題については、モニタリング・ステーションの固定したものを一つ積極的にやってくれと言っておるわけなんです。そういうようなことなどが、炉の受け入れと関連して当然考えられなければならないことになってくる。そういう配慮は、政府はすでに用意がありますか。
  16. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 現在でもすでにモニタリング・ステーションは数カ所置いてやっているわけでございます。将来あそこに、もし万一コールダーホール型の動力炉ができるようになりますと、その際には、もっとモニタリング・ステーションを置き、また、住民のウエルフェアも考えましていろいろ措置する必要があると思います。現在原子力委員会の中に原子力施設周辺地帯整備懇談会を設けまして、関係方面の権威者を網羅いたしまして原子力施設の周辺帯の住民の安全その他も考慮いたしまして、政府としてどういう施策を具体的に講ずるか、立法措置によりまして安心感を与えるべく今努力している最中でございます。
  17. 石野久男

    石野委員 安全性の問題を審議するに当って、また、われわれが考えるに当って、災害対策というものが非常に大事になって参ります。それについて、先ほどの安全性基準の問題とも関連するのでございますが、公述人の中には、原電が重要なレポートの公開を拒否したというようなことを言っている方がございます。いろいろな報告書で、特に一般人々や、あるいはまた、これを真剣に考えている人々に知らしめなければならないような問題が拒否されたり、あるいは公開されなかったりするということは、こういう問題を処置していく上に非常にまずいことだと思うのです。そういう事実があるようでございまして、そういうことがないようにしてもらわなければならぬが、なぜそういうようなレポートを公開しないのか、また見せてくれというのに見せないのかということにつついて、大臣としても、また原子力委員会委員長としましても、それを許しておくべきではないと思うので、そういう問題については今後大臣としてはやはり積極的に公開していってもらわなければならぬと思いますけれども、この問題は、大臣はどういうふうに藤本公述人なんかの発言をお聞きになっておるのか、一つ所見を聞かしていただきたい。
  18. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 設置計可申請書は政府に対して審査を求むるための書類でありまして、その申請書の中には、たとえば商業上の秘密事項、あるいはその他の問題も――たとえば、英国の方の製造メーカーの方にしますれば、ほかの国のメーカー等に知られては困るようなことも実は入っている場合があるわけであります。そういう点からいたしまして、それは政府当局は知ってもいいけれども、ほかの人に知られては困るというものも当然あり得るわけであります。そういう面からいたしまして、申請書全部を公開するということはいかがかと思います。しかし、政府といたしましては、これを厳重に審査いたしまして、そして、かりに許可処分をやるという場合には、許可処分に関する審査結果についてはこれを常に全部公表しております。こういう結果を全部公表するというやり方によりまして、一般の皆さんも安心できるのではないかと思います。申請書全部を事前にすべて公開するということは、今のいろんな制度上、あるいは技術保全と申しますか、商業上の関係等を考えてみましても無理があるのではないかと思います。
  19. 石野久男

    石野委員 商業上の秘密に類するものまでも聞こうというようなことはわれわれも考えていないわけです。ただ、しかし、その申請書の中には、炉の運転中に起き得るであろうと予想されるところの炉の災害といいますか、そういうものが書かれてあり、大体予想されるものが出ているともいわれているわけです。炉の運転中に予想し得る事故の規模と、その被害状況、安全対策、そういうものまでが相当出ているということも聞いているわけですが、もし、そういうものが出ているとすれば、それはやはり安全性を論議するに当って、原発自身考えているそういう考え方は、相当程度安全性の問題として論議の対象になるべきものだと思う。それはやはり公開されるべきものであり、また、それを知らなければ、いろいろ論議しておっても砂上に楼閣を築くようなもので、その論議は一たまりもなくくずれてしまうだろうというように思うわけでございます。こういう問題は明らかにすべき性質のものだと思うけれども、それもやはり商業上非常に差しつかえがあるものなんですか。
  20. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 現在の技術上あるいは商業上のいろんな道徳等から見まして、公開をはばかるというものもあるということは御了解をいただいたわけでありますが、そういう点から見まして、不適当と思うものは公開しないようにせざるを得ないと思うのであります。しかし、一般に知らしても差しつかえないと思うものは、これは淡々として公表すべきものであろうと私は思います。
  21. 石野久男

    石野委員 そこで、その一般に公開しても差しつかえないだろうと思うものは淡々と公表してよろしいということの中に、炉の運転中に起きるであろうと予想される災害の問題についての原発の考え方や何かというものは、これは一般に知らしてもよろしいものだと考えられるけれども、それは大臣はどういうふうに考えられますか。私は、災害に関するにとが商業上の機密に属するとか何とかいうことを大臣がもし言われるとすれば、それは商売へを非常に大事にするけれども、それから出てくる被害を受ける大衆に対しては無慈悲な考え方をしているものと思うのだが、まさか中曽根大臣はそういうことは考えていないものと思う。だから、そういう点は公表すべきものの部分と思うので、早急に公開して、皆さんに知らしてもいいと思いますが、どうですか。
  22. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は一商社の立場を特に守るようなことは毛頭考えておりませんし、やっておらぬつもりであります。やはり原子力というものは全国民の原子力でありますから、全国民の保安、安全というものを考えてわれわれは措置すべきものだという考えであります。  それから、ただいまの御質問は、この間の公聴会の際における藤本さんの御発言関係した部分があると思うのであります。それで、あの藤本さんの資料というものは、お話内容がよく私わからなかったのでありますが、原電側に参りまして、原電側の責任者と申しますか、ある部局の責任者からいろいろ情報を承わって、それを基礎にして御発言なさったようでありますが、われわれは、藤本さんの放射能許容量及び核分裂生成物飛散住民との関係の問題と、それから、西脇さんのそれに対する御所論を非常に興味深く拝聴したのであります。それで、あとで私は係の者に、一体どうしてああいう差が出てくるのかということを聞いてみましたら、やはりそれは基準の取り方が違うのだ、それで、その点については藤本さんの基準というものは仮定的な事故と申しますか、観念上で起り得べき最悪の事故と申しますか、現実的にはそういうことはあり得ないが、しかし、考えればそういうことがあり得るというものがあるわけであります。そういう意味におきましてハイポセティカル・アクシデントと英語で言っておるようでありますが、観念上はあり得る最悪のものでありますが、現実的にはあり得ないというものを基礎にしてお考えになった結論のようであります。ところが西脇さんのお考え方は、実際には起り得る最悪の事故――ワースト・クレディブル・アクシデントという言葉で言っておるようでありますが、そういうものを中心として、お考えがああいう結論になったようであります。その両方の場合において、藤本さんのお考えの方は、出る放射能の量というものを、原電側が、あるいは西脇さん側がお考えになっておる量よりもよけいにこまかい、具体的な数字で申し上げますと何でございますけれども、一万キューリーの生成物が放出される場合を計算しておやりになった。ところが、そういう場合はあり得ないのであって、その中のヨードがどのくらい出るとか、何がどのくらい出るとかいう具体的な計数でやったのが西脇さんの場合のように承わっております。それで、どの程度の資料を原軍側が藤本さんにおっしゃったか私存じませんが、まあ、こういう問題につきましては、やはり安全審査部会におきまして、科学的に、正確な基準をもとにして結論を出さなければいけないと思います。この問題はこの間の公聴会一つのポイントでもありましたので、特に安全審査部会におきまして正確な数字をはじき出していただきまして、われわれも納得がいき、国民も納得のいくような処置をもって処理したいと思います。
  23. 石野久男

    石野委員 今の資料提出の問題については、大臣は、西脇さんと藤本さんの意見の違いはこういう点にあったのだということのお話で、私の開いておる、そういう資料をなるべくやはりそこへ出した方がいいだろうということについての御答弁がなかったわけであります。これは、そういうような藤本さんと西脇さんとの考え方の中に、観念的なものと現実的なものとの差があるのだということはともかくとしまして、先ほど私が申しました安全性についての一定の基準がないから、そういう両論が出てきて大衆は迷う、こういうことになってくるのだろうと思うのです。そういう意味からも、先ほど言ったように、安全性基準というものについては、やはりはっきり大衆の納得し得るようなものを、早急に各般にわたって作るべきであろうということが痛感されます。それと同時に、今私が申しました原発の申請書に書かれておることの中に、炉の運転中に起き得る災害事情等について書かれておるともいわれておるが、そういうものがないならないで別にかまいませんが、あるならあるで、ちゃんと原発が予想し得ておる災害問題等は発表するようにしてもらいたい。こういうように私は思います。この点は、大臣原子力委員長として処置していただくべき性質のものだと思いますので、それはぜひやってほしいと思います。
  24. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 今の放射性核分裂生成物飛散について安全性基準というお話がありましたが、誤解があるといけませんので、念のために申し上げたいと思います。その放射能の危険度に関する基準というものはあるわけでございます。これは、われわれの方の規則あるいは告示で出しておるのでありまして、原子炉の設置、運転等に関する規則等の制定に基き許容週線量、許容濃度及び許容表面濃度を定める件という告示が、昭和三十二年十二月二十八日、科学技術庁告示第九号で出ておるわけであります。従って、これに触れれば、当然こういうものは許可されないことになるわけであります。従って、住民のそういう放射線等からくる安全性については、やはり基準というものは厳然としてあるのでありまして、それを犯してまでやろうということではないのであります。従って、一番問題になります核分裂生成物放射線からくる危害については万全を期してやっておるつもりであり、将来もわれわれはやるつもりであります。  それから、今のコールダーホールのいろいろな安全性の問題につきましては、現在安全審査部会におきまして検討中でありまして、そういういろいろなデータの検討を待ちまして、できるだけその結果を公表するようにいたしたいと思います。
  25. 石野久男

    石野委員 私は、何度も言いますけれども、原発が申請書類に書かれておる中に、炉の運転中に起きるであろうと予想される災害問題等がしるされておるといわれているわけであります。そういう問題は、なるべくみんなに知らしてほしい、こういうことを言っておるのですが、その点は、一つ大臣、ほかの問題にずっとそらさないで、そこはちゃんとやってほしいと思う。そこをはっきりやって下さい。――それはよしいですね、やってくれますね。
  26. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 申請者の方の商業上の秘密とか、そういういろいろな問題の関係を私はよく知りませんので、調査いたしまして、もし、さようなことが必要であり、また可能であるならば処置いたしたいと思います。
  27. 石野久男

    石野委員 今の御答弁の中にも、まだ逃げ道はちゃんとある。商業上の秘密云々というのは、炉の災害問題とは関係がないと思うのです。炉を作るメーカーの方にとっては、これは非常に売り込むのに困難になってくる問題はあると思うのですけれども、そうでない住民の方にしてみれば、それこそが問題なんです。それこそが今、日本が炉を受け入れようというときに知りたいことなんですから、それこそ知らしてほしい。そこで、商談が成り立たないとしても、決して国は損はしない、業者も決して損はしないと思うのです。ですから、ここのところは大所高所から、大臣は、やはり大臣としてやって、やるべきものはやっていただくように、特に私はお願いしておきます。これは、中曽根大臣が特に原子力については一番の権威者であり、私は、その権威においてあなたに期待するのですから、ぜひ一つやって下さい。お願いいたします。  それから、放射線許容量の問題について、きょうの新聞では、学術会議放射線影響調査特別委員会の都築さんの方から、国際勧告もまだ甘いというようなことで、放射線の新許容量については、早急に同委員会の出したデータを総理府の方で中央放射線審議会に諮って新許容量について立法をしてもらいたいというようなことが出ておる。こういう新聞を私はきょう読んだわけです。ここに書かれていることは、ほんとうにきびしい放射線の許容最についてのものの考え方があるようであります。また、各地で放射線の障害が、戦争でなくとも、平和利用の中からだんだん出てくる可能性があるときには、当然こういう問題は論じられなくちゃならぬことだと思います。大臣は、この学術会議の特別委員会から発表しておる問題についてもうすでに御承知のこととと思いますけれども、どのようにこの委員会のいわれておることを受け取っておられるか、それを承わりたい。
  28. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 けさの新聞にありましたように、放射線許容量基準自体が非常に動揺しておるものですから、炉の安全の基準というものもなかなか確立されない状態に実はあるのであります。そこで、放射線許容量基準を、なるたけ国民が安心する線に、国際的にも、国内的にも作るという努力が今一番重大な問題だろうと思います。ただいま国際放射線防御委員会でございますか、そこでいろいろ御研究もあるようでありますし、また、放射線審議会でもいろいろな点を御検討中であると思いますので、それらの権威ある客観的な基準の確立を持ちまして、われわれは処置していきたいと思います。
  29. 石野久男

    石野委員 今度の公聴会を通じまして、やはり一番問題になったのは、炉の安全性を期するためにコンティナーをつけるべきだという意見学者の中からも、あるいは地元民の中からも出たと思います。コンティナーの問題については、ある者は、特に西脇さんでしたか、どなたでしたか、地震があれば、むしろ先にコンティナーがこわれてしまうじゃないか、そんなものは気休めだというような御意見もあったやに聞きます。ものはいろいろ考えようでございますから、外からくるいろいろな打撃というものは、うちの中よりも外にあるコンティナーに先に加わることは一応考えられるのかもしれませんので、そういうことも言えると思いますが、しかし、地震については日本も相当研究は進んでおるわけで、そういうような意味で、コンティナーというものを、日本自身日本の地震力学というようなものから研究していけば、相当なものがやはりできるだろうとわれわれは期待するわけです。そうなりますと、やはり炉を受け入れる場合は、メーカーとか、あるいは産業資本家の方々のみならず、日本の国民経済の全体から見ましても、原子力産業が相当に発達するために炉を入れるわけですから、それは早急に入れなければならぬと思います。しかし、その入れることも、安全性を度外視してはいけないということもまた一面の真理でありますから、安全性というものについては、この前も私は委員会で申しましたように、かりに二十億かかろうと、三十億かかろうと、そのことで一般にも安全感を持たれ、そうして、また作業自体においても事実上それで安全が保持され、災害を防止することができるという事態が出るなら、二十億や三十億金がかかっても大したことはないじゃないかというような考え方をわれわれは持つわけです。従って、今度改良型のコールダーホールの炉が参ります場合に、これにそっくりかぶせるようなコンティナーをつけるということ、これはやはり商売人とか事業家という立場よりも、国民経済の立場から見て非常に大事だと私たちは思っておるわけです。先般も大臣からその問題について私は御所見はいただいておりますけれども、しかし、今度の公聴会で聞くコールダーホール型のコンティナーに対する要望というものの強さ等から見ても、また、学者が言う、コールダーホール型についても安全性に対する疑問点がまだあるという点から見ても、コンティナーを設置させるべきだという意見を私は強く持ちます。この際、これらは委員会で審議するというようなことはともかくといたしまして、大臣個人としての意見は、このコンティナーをつけるべきかどうかということについて、どういうふうに今お考えになっておられるか。ただ皆さんの言うことを聞きますというだけでは、どうも能がないような気がするんですよ。やはりこの際、大臣は、あなたもずいぶんお考えになって御研究なさってきておりますから、ぜひ一つ安全の上にも安全を確保するという意味で、コンテイナーの問題だけは何らかの処置をつけて、もし炉を入れるならば、それだけはやはりつけるという態勢をとっていただきたいと思うのですけれども大臣はどういうふうな御所見でありますか。
  30. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 こういう問題につきましては、冷厳なる科学的検討が一番重要であると思いますので、私のようなしろうとがいろいろ先入観をもって考えることは非常に危険であると思います。従いまして、現在安全審査部会におきまして、この問題等中心に今検討している最中でございますから、その結論を見た上で、われわれは考えなければならぬと思います。
  31. 石野久男

    石野委員 安全性の問題と、災害補償をどういうふうにしてくれるかという問題が、現地では一番大きな問題です。のみならず、現地々々と私が言いますと、どうも自分のところばかり言うように聞えるかもしれませんが、そうじゃなくて、やはり日本の国民経済の将来のために非常に大事だと思うのです。特に炉の没置場所が原子力研究所と全くの至近地域にあるということなどを私たちは非常に心配しているわけです。そういうようなこともからんで、もしものことがあった場合に、原発が予想せざる何かの事態を引き起しますと、わずかに六百メートルぐらい離れたところの原子力研究所もだめになってしまいはしないかという心配があるので、導入に当っての敷地設定についてはぜひ一つ相当にお考えいただきたいし、特にコンティナーの問題については――予想されるような事故がなければけっこうです、事故があった場合に、そのコンテイナーがあることによって、場合によれば現地住民を守るということよりも、原子力研究所を守るということもできるわけです。ですから、皆さんは現地住民のことは大したこととは考えていないで、原子力研究所とか、原発とか、そういう会社組織、研究所組織だけは非常に、重要視されておるようでありますから、私は、皆さんの立場に立って、むしろ原発に事故が起きたときに原子力研究所を守るという意味からも、どうしてもコンティナーというものはつけてもらいたいということを、切実なお願いとして大臣に申し上げておきますから、一つよろしくお願いします。  それから、現地では、災害補償態勢がどうもはっきりしないのじゃないかということが言われているわけです。コールダーホール型の炉を入れる前に、災害補償についての基本的な考え方なり、立法化とか、あるいは何かをはっきりしておいてくれということを言っているわけです。これは、もちろん本院自身がそういうものをしなくちゃならぬ問題でありますけれども政府並びに原子力委員会委員長としての中曽根大臣は、そういう問題について、まあまあ、きてからでもいいじゃないかというお考えを持っているのかどうか。これは現地の切実な要望とにらみ合せて、大臣のこの災害補償に対する基本的な方針、あるいはそれらに対する具体的な処置の方向というものについてのお考えを、一つこの際聞かしていただきたい。
  32. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先般の公聴会におきまして、地元を代表する方々の非常に多くの声は、災害補償の問題と、それから、原子力施設周辺地帯の整備の問題でありました。災害補償の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、我妻教授を中心にいたしまして、目下鋭意作事中であります。問題は、国家がどの程度までこの問題について補償を引き受けるかという問題でありまして、今そこに大体問題がしぼられてきたようでありますしできるだけ通常国会に間に合うように――多分聞に合うと思いますが、立法化をいたしたいと思います。その節は、ぜひとも御協力をお願いいたしたいと思います。
  33. 石野久男

    石野委員 法案が出たときは、またいろいろわれわれは意見を述べさしてもらうつもりです。なるべくわれわれがもろ手をあげて賛成のできるような原案を出してもらうように、一つ努力して下さい。あそこに今度コールダーホール型の炉を入れまして、東海村に設置するということになりますと、原発はもとより、原子力研究所のためにも、また、先ほど来言っている原子力センターとしての都市計画を推進する上からいっても、あそこの前渡の基地をなるべく早く住民の手に戻してくれるようにという要望がございます。この問題は、おそらく政府においても相当中曽根さんの御努力によって慎重審議され、また、好意的な処置が出るようになっておるだろうと私は思うのですけれども大臣があそこの基地の問題について今まで折衝した事情はどういうふうになっているんだろうか、これはいろいろ米軍との関係もあって言いにくいこともございましょうが、方向はどういうふうになっているだろうか、また、そのめどはつくのかどうか、また、大臣自身としては、やはりああいうとにろにああいう基地を置いておくのがいいのかどうかということについてのお考えを、一つこの際明確に聞かしておいてもらいたい。
  34. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私の前任者のころ、いろいろな筋を通しましてその解除方の話をしたことがあるようであります。しかし、そのころは、アメリカ側の空軍等におきまして引き渡すわけにはいかぬ、そういう返事がありましたそうであります。私は、石野委員と全く同感でありまして、あの広大なる地域は、できるだけすみやかに、できたら、原子力施設の土地として確保したい、地元ではいろいろほかのお考えもあるかもしれませんが、私といたしましては、できるだけ原子力関係の土地としてあの辺は確保しておきたいと思うのであります。従いまして、今後ともあの接収地をわれわれの原子力関係のところへ使わしてもらうように努力をいたしたいと思います。この点は、茨城県の県会におきましても、あるいは理事者当局におきましても、全県一致の御希望であるようでありますから、われわれもその意を体して努力いたしたいと思います。
  35. 石野久男

    石野委員 最後に、私は原子力委員長一つ。先般の公聴会のとき述べられたいろいろな方々の御意見は、大体において、国内におけるところのこの炉に対する考え方を一応代表しておるものだと私は思います。そこで、原子力委員会がこれを慎重審議なさるに当りましても、この原子炉の設置について慎重であれとか、と反対するというような人に対して積極的に入れろという人々の言い分は、どうも反対せんがための反対だというようなものの受け取り方をしておるようでございます。ある人は明治の愚を繰り返すなというような意見を非常に大胆に言っている方もございますけれども、しかし、私の見るところでは、今慎重論を出し、あるいは反対意見を出している人々も、一定のやはり安心感が与えられ、また、それに対する対策が十二分にとられれば、それらの人々も決して原子力産業とか、あるいは原子力の研究を阻止しようという考え方を持っている人じゃないのです。この人たちは、常にやはり原子力研究に随伴して出てくる障害というものをおそれ、しかもまた長崎や広島のああいう障害を身にしみて感じているために、そういう考え方を持っているんだと思います。これは、ひとり日本人だけの問題じゃなくして、全世界の人々の問題でもあるわけでございます。私たちは、やはりここで原子炉を入れて、日本原子力研究を一日も早く進展させるということには質感ですが、だからといって、そのことが、一部のそれをかてとして利益を上げていこうとする産業陣営の方々のためにのみなって、それで大衆が非常な障害を受けるようなことがあっては、国全体としてはまずいという考え方を持つわけです。私どもは、その一部の炭業陣営の方々が早急な開発と研究のためにという要望をすることは、同時に、国民全体のやはり利益と、そして平和的な生活に用益を果さなくてはいけないのだという考え方でいろいろな意見が出ているもの、こういうふうに私は考える。そういう立場から、ぜひ大臣原子力委言員会を構成する方々に対する大臣の対処の仕方としても、常にそういう高次の立場から問題の処理をしていただきたい。そして、できることなら、安全性を私たち要望することは、中曽根大臣が言われるように科学的でなければならぬ。科学的であるということは、常にやはり、より以上に十二分の安全性を要求することだと私は思うわけなのです。そういうことになりまするならば、若干の経費の問題はもとよりございましょうけれども、その経費の問題と将来の安全と産業の発展のためのかね合いを考えますると、ここで出る安全性についての投資というものは、そう大して大きな負担になるものじゃないと思いますので、そういうような立場から、いたずらにその次元におけるところのコストの問題だけを考えないで、長期にわたって継続的に問題となるコストの問題として、安全性の問題を考えていただきたい、それで施設も考えてもらいたい、こういうことを私は特にお願いしたいのでございます。こういう点は、われわれもちろん院内でもいろいろ論議しなくちゃなりませんが、主としてこういう問題の取扱いが、原子力委員会の処置の仕方によって方向づけされてしまうというふうに私ども考えます。これが本院においてわれわれの論議の中で討議されるなら、私は、こういうお願いするとか何とかいう言葉は使わない。だけれども、実質的には、やはり原子力委員会で具体的にやることがそのまま現実になって出て参りまして、私たちは幾らこの委員会でものを言っても通じないというのが実情であるから、私はやわらかい言葉でお願いをしているわけです。賢明な大臣は、どうぞその点を十分に取り入れて、大衆の願っているところは何であるかということをよく受け入れた上で、やはり処置方法を講じていただくように私は切に希望しまして、私のきょうの質問を一応終ることにいたします。
  36. 村瀬宣親

    村瀬委員長 岡良一君。
  37. 岡良一

    岡委員 私は、石野委員公聴会に関してのお尋ねに関連をして若干お尋ねをしたいと思います。  そこで、中曽根原子力委員長は、あの公聴会の開会のごさいさつで、三月十一日の本委員会における決議の趣旨をも尊重してこの公聴会を開いた、こういうごあいさつでございました。私どもは、あの委員会における決議の当時これに参画した立場から申し上げまして、このような公聴会は、今後とも必要と認められたとき、特に大型の炉の導入については必ず開いていただきたいという強い希望を込めての決議でございましたが、今後とも公聴会は開催をしていただけるものでありましょうか。
  38. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 当委員会におきまする御決議の趣旨を体しまして、開いて参るつもりであります。
  39. 岡良一

    岡委員 そこで、ともすれば、公聴会というものが一片のおつき会いの行事というような取扱いをされるきらいがこれまではあるのでございます。しかしながら、せっかく国民の大きな関心を呼んでおる大型炉の安全性に関する公聴会であってみれば、これはきわめて権威あるものでなければならない。同時に、公聴会に現われた意見というものは、当然原子方委員会は尊重していかなければならない。そこで、問題は、この公聴会が非常に権威あるものであるといたしますと、私ども公聴会を見る者といたしまして、非常に奇異な感じをいたしたのでございます。それは御存じのように、学術会議側から出られた方々の、いわば専門的な科学者が五名おられました。都築さんはできるだけ念には念を入れようというような、きわめて常識的な訓辞をいたしておられたようでございますが、あとの四名の方については、意見がきわめて鋭く対立をしておる。特に藤本君の意見と西脇君の意見が非常に対立しておるという点は、そのこと自体が、私は原子炉安全性についての重大な問題を示唆しておると思うのであります。もちろん、学界においても賛成の人、反対の人があることは当然のことでございます。それにしましても、反対なら反対意見、賛成なら賛成の意見というものは、やはり権威づけられなければなりません。いわば、その公述人の資格の問題でございます。そこで、大塚君はやはり学術会議原子力問題特別委員会代表ではないが、委員会の長の承認を得て出席していると言って、自分立場をはっきりしている。藤本君も、原子核特別委員会のやはり長の推薦を得て自分出席していると言って、立場をはっきりしておられました。ところが、あとの二名の方々については、その学界の代衣ではあるけれども、しかしながら、いかなる資格を持って出られたのかという点については、私は非常に不分明な感想じがいたしたのであります。そこでお尋ねをいたしたいことは、あの西脇さん並びに渋沢さんという方は一体どういう経過で出られたのでございましょうか。
  40. 佐々木義武

    ○佐々木説明員 御承知のように、公聴会の開催に対しまして二つの考え方で進んだわけでございます。一つは指定公述人で、政府から指定をいたしまして、それによって指定された人に公述正願う、もう一つは公募いたしまして、公募に応じて来た人たちの中から選択をするという、二つの建前をとったわけであります。ところが、こちらから指定する要もなしに、公募の人が、先ほど大臣が述べましたようにたくさんございまして、そうして公募した中から学界の人とみなされる人は、そのままエキスパートの人を尊重して御公述願う、こういうふうにしたのであります。
  41. 岡良一

    岡委員 公募された公述人であれば、公述内容というものは一応原子力委員会申請されなければならないわけでございますが、この西脇、渋沢御両所の公述内容というものは、事前に原子力委員会に提出されておりますか。
  42. 佐々木義武

    ○佐々木説明員 公述の要旨は、もちろん主として個条書きのようなものでございますけれども、事前に連絡を受けております。
  43. 岡良一

    岡委員 それから、たまたま二十八日に、原子力委員会安全審査部会の、いわば中間報告が原子力委員会に提出されたわけでございます。そこで、大型炉の安全性に対する公聴会ということになりますれば、当然やはり学術会議なり、また科学者立場からは、この安全審査都会の答申というものは、たとい中間報告でも十分に検討するものであり、安全性を論ずる場合における最も有力な資料でなければなりません。これは、こうした方々に対して配付されましたでしょうか。
  44. 佐々木義武

    ○佐々木説明員 それぞれ中間報告の内容は報告しております。
  45. 岡良一

    岡委員 安全審査部会から原子力委員会に提示された中間報告は、そっくりそのまま文書にしてこれら公述人に配付されたのでございますか。
  46. 佐々木義武

    ○佐々木説明員 日本原子力発電株式会社の発電用原子炉設置計画の概要というものがございまして、これを配付しております。
  47. 岡良一

    岡委員 私は、公聴会公述というものを権威あらしめるためには、やはり公述人の諸君に、十分な、いわば確信のある所見を述べていただくという手順を経ることが一番大事だと思うのです。ところが、それが配付されておらない。ただ発電会社の申請の一部の概要、いわゆる商業的秘密等を取り除いたものか配付されている。私は、原子力委員会が招集される公聴会であれば、少くとも中間報告として安全審査部会が提出した報告は、当然これらの公述人の諸君に配付されてしかるべきだと思う。また二十八日に中間報告が出され、三十一日に公聴会が開かれる。それでは、私は、この資料に基いて厳密な、科学的な立場における安全性についての自分意見を固める時間的余裕はないと思う。そういう点ですね。私は、今度の公聴会についてはこの公述人意見をほんとうに権威あらしめるという手順において、きわめて遺憾な点があったのである、こういうふうに思いますが、済んだことはいたし方ございません。将来は、やはりこういう十二分な資料を提示されてしかるべきものである。これらを公述人の諸君が十分に自己の立場から科学的に検討されて、そして責任の持てる意見公聴会に発表していただけるという、これだけの計らいをぜひとられなければならないと私は思うのでございますが、この点、今度の公聴会にかんがみて、原子力委員長としてはいかなるお考えをお持ちでございますか。
  48. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 できるだけ連絡を密にいたしまして、御期待に沿うように努力いたします。
  49. 岡良一

    岡委員 せっかくの公聴会でありまするから、公聴会がサル芝居に終らないように、やはり公聴会の権威を尊重するという立場から、万般の考慮をぜひお願いをいたしたいと思います。  そこで、今、石野君のお尋ねの件に対しまして、佐々木原子力局長は、いわゆる原電が安全審査部会に提出しておる最大事故における生成物の放出は一万キューリーである、こういうことでございましたが、一万キューリーという数字には間違いございませんか。
  50. 佐々木義武

    ○佐々木説明員 公述をする際に、藤本さんは十万キューリーというふうにおっしゃっておるのですけれども、そうじゃなくて、一万キューリーが正確だと思います。ただ、そういうことは、先ほど大臣からも話がありましたように、ハイポセティカル・アクシデント、仮定の事故でありまして、想定した起り得る最悪の事故ではございません。それ以上にもっと架空なものでございまして、そういう点に関しましては、ローマの会議でワースト・クレディブル・アクシデントというものが出ておりますので、今のコールダホールの面から見れば最悪の事故というものを想定すべきだというところで、公聴会の次第もございましたので、ただいま安全審査部会といたしましては、資料を一生懸命検討中であります。
  51. 岡良一

    岡委員 私がお尋ねしておることは、原電が申請書に当然すべて出されておるものと思いまするが、その申請書に付加されておるところの予想し得る最大事故における放出のキューリーは、一万キューリーということでございますか。
  52. 佐々木義武

    ○佐々木説明員 申請書には――想定し得る事故というふうに法律ではなっておりますが、その想定し得る事故という解釈自体は、おそらく、原電ではさっき申しましたように、ハイポセティカル・アクシデントとするか、ワースト・クレディブル・アクシデントとするか、その解釈を誤まりまして出したものと考えます。出て参りましたのは、まさしく一万キューリーのものでございます。
  53. 岡良一

    岡委員 原子力委員会としては、では、一万キューリーという、この事故の放出キューリーというものを一応是認をしておられる立場でございますか。
  54. 佐々木義武

    ○佐々木説明員 ただいままだ安全審査部会検討中でございますので、委員会自体の意見というものはきまっておりませんが、ローマの報告は、その一万キューリーに対して二百五十キューリーでございますので、非常に差がございます。ですから、今後これを検討する際に、一万なりや二百五十なりや非常に差がございますので、そういう点の想定事故の最悪の場合の大きさと申しますか、そういうものをいかに科学的に定めていくかという、炉自体の性格そのものから検討いたしまして割り出していくというふうな建前で進むだろうと思っております。
  55. 岡良一

    岡委員 あの炉が正常に運転をされて、ある時期を経過すれば、大体6)(108キューリーの放射能が蓄積されてくるわけです。そこで、一万キューリーということになれば、これは大へんにわずかなものだが、ローマで二百五十キューリーというのは何んでございますか、二万五千キューリーの間違いじゃございませんか。
  56. 佐々木義武

    ○佐々木説明員 ローマの会議で発表になりましたファーマーの解析はマグノックス被覆に小さな漏洩があって、その上ガス・ダクトが破損して炭酸ガスが空気で置きかえられた場合に、その期間、数時間を要してウランの酸化がどれほど進むか、その結果ヨードが大体二百五十キューリー放出するというのが、最悪事故に対する解析になっております。
  57. 岡良一

    岡委員 ヨードが二百五十キューリーということでございますか。
  58. 佐々木義武

    ○佐々木説明員 そうです。
  59. 岡良一

    岡委員 私は、この点、専門の立場でもございませんし、資料もありませんので十分わかりません。ローマで回際会議が開かれて、それが将来重要な意義を持つものであろうと思います。いずれにいたしましても、原子力委員会としては、特に安全審査部会としては、とにかく相当な核分裂生成物が炉内に蓄積されてくるというしろものでありますから、どの程度のものが、万一の事故において出るか、最大の事故を想定していただきたいとは申しませんが、これは十分御検討あってしかるべきものと思います。ただ、口一マにおいてたまたま非常に低い値が出ておった、それを鬼の首でも取ったように振りかざすというようなことでは因りますので、この点十分慎重にお考えを願いたいと思います。  それから、この公聴会において、特に原子力研究所の研究者の諸君ないし家族がぜひ公述をしたいという希望がありました。私は、公聴会というものは、なるほど、それは知事さんもよかろう、市長もよかろう、村長もよかろう、また、炉の対策委員長もよかろうと思います。しかし、公聴会の民主的運営ということからいえば、まあ古い言葉で申せば、野に遺賢を求めるというような、幅の広い、大所高所の角度から人の選定を願いたいと思う。原子力研究所に勤めておられる研究者ないしその家族というものは、すぐ間近にこの炉が設置される。従って、炉の放射能によって直接被害を受け得るという、生活人としての切実性を持っておると思う。同時にまた、日本原子力研究所という、いわば原子力研究における最高の科学的な知識を持っておるこういう方々は、当然参画されていいのではないかと思います。これも済んだことではございますが、やはりそういう方が参加さしててもらえかたっということから、原子力研究所の方でコールダーホール改良型の導入についていろいろの疑義を公表するというようなことになりますと、やはり公聴会そのものの権威から見ましても、原子力開発そのものの民主的な運営ということから見ましても、フェアではないと思います。いずれに是があるか非があるかは別としまして、今後公聴会を開催される場合の公述人の選定に当っては、努めてこうした形で野に遺賢を求める、やはり切実な意見を持っておる方には、できるだけ公聴会において意見を求めるというような取扱いがぜひ一つあってしかるべきだ、こう思うのでございます。  そこで、この大型コールダーホール改良型の導入について、安全基準云々という問題についての質疑応答が先ほど石野さんとの間にありました。一体許容量がどれだけであるか。このことについても、都築さんのあの委員会の御意見を見れば、いわゆる最大許容量なんというものはないのだ、遺伝ということを考えたら、最大許容量というものは考えられないというので、三年前に国際放射線学会がきめた許容量を十分の一に落し、それをさらに三分の一に改め、今度は、それをストリクトにしようというように、非常に強い規制をやっておられるようです。そういうことから言いますと、許容の水準もわからないとなれば、安全の基準も従って相対的に十分確立しないということにもなりますけれども、しかし、それだけに安全基準というものについてはあらゆる事実、資料をお集めになって、十分に御検討願いたいということなんです。そこで、現在のコールダーホール改良型について申しましても、国際的な基準はない、こうおっしゃっておられます。ケースバイケースできめるより仕方がない、こういう御意見でございます。私は、昨年九月にSENNが世界銀行の融資を受けて十五万キロワットの原子力発電をやろうとしたときに、世界銀行は国際的な権威者を七、八名集めまして、この権威者の儀を経て、コールダーホルの改良型は入札に応じましたけれども、ついにその選に漏れたことは御存じの通りでございます。私は、少くともコールダーホール改良型について国際的な基準ということを考えるならば、SENNのこの経験というものは、私は今日やはり一番権威ある基準だと思います。この点は十分一つ検討あってしかるべきだと思うのでございますが、このような外国の経験というものについて、原子力委員長はどのようにお取り扱いでございましょうか。
  60. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 安全審査部会におきまして、そういういろいろなケースを全部しんしゃくいたしまして目下検討しておりますので、その結果を待ちたいと思います。しかし、コールダーホール改良型の実績を見ますと、現にコールダーホールで動いておりますものや、あるいはブラツドウェルに建設して、一部運転開始しているもの等のイギリスの経験を見ますと、さような危険性はないように私は考えるのであります。しかし、これは私の考えでありまして、安全審査部会の結果を待って最終的な判定をいたしたいと思っております。
  61. 岡良一

    岡委員 最近拝見した資料によりますと、SENNの審査において、こういう点が特にコールダーホール改良型について指摘されておる。第一は、燃料体装入排出機の問題、第二点は、燃料体そのものの問題、今わが国に導入しようとしておる中空管状燃料そのものについて若干の疑義が持たれている。同時に、第三には、反応度の不確定性が指摘されておる。特に安全性については、制御系は幾つかのものは十分な顧慮が払われていない、こううたわれている。それから、耐圧容器の脆化ということについてはかなり説明がなされております。それで、安全審査部会が中間報告として出された条件がありますが、この条件は、大体このSENNにおいて指摘されたところの、いわゆる天然ウラン炉の問題点というものを中心として出されております。でありますれば、一体原子方委員会としては、この中間報告に盛られた条件というものについて、これを基礎として、さらに導入すべきかいなかの安全性を決定されるのにはどういう方法を用いられるのか、この点を一つお聞かせ願いたい。
  62. 佐々木義武

    ○佐々木説明員 SENNの入札の際に、わが方からも人をローマに派しまして、もちろん審議にはタッチはしませんが、傍聴を許されまして経過等は十分お聞きし、また、膨大な資料もちょうだいして帰っております。従って、一つの有力な参考資料といたしまして、ただいま安全審査部会検討中であることは事実であります。ただ、ただいま御指摘の中間報告に出ました二つの問題点、黒鉛の収縮の問題と冷却芸置をどうすべきかという二つの問題点に関しましては、その後、この前岡さんから御指摘がありました一カ月あまりの間非常に丹念に検討を加えておりまして、文字通り、あらゆる想定の場合でもそのものに耐え得るような設計をただいましてございます。従いまして、近くどういう結論が出るか知りませんけれども、結論が出ました暁には、そういう疑点に対しては十分答え得るような回答が出るんじゃなかろうかというふうに考えております。
  63. 岡良一

    岡委員 それから、問題は、この間公聴会で繰り返し主張しておられた西堀さんの、いわゆる膨大な電子計算機で計算をしておられるという意味検討ですか、青写真の検討ということですか、それとも、実物大の規模で実験をされるということですか。
  64. 佐々木義武

    ○佐々木説明員 冷却装置の検討が一番中心になっておるわけでありますが、これに関しましては、二段、三段にかまえまして、あらゆる場合にその冷却に耐え得るという装置を、場合々々、あらゆる事態を想定して対策を講じつつあります。これは、その検討が済めば、それによって詳細な設計がまた生まれてくるわけでありますから、決して青写真というような意味合いではなかろうと考えております。
  65. 岡良一

    岡委員 たとえば、炉の黒鉛の収縮問題でも、ジユネーブ論文では大体一・五%、英国の方では〇・四九%というふうに数字が食い違っております。そのいずれが是か非かということも、やはり日本としてほんとうに安全性を顧慮し、あるいは収縮による耐震設計をやり直そうというなら、この数字から吟味してかからなければならない問題があると思うのです。そういうわけで、これはなかなか容易に決定されるものではないと思います。  そこで、安全性の問題では、八月二十二日に学術会議原子力問題特別委員会とか、放射能影響調査の特別委員会等が安全性についてシンポジウムをやる、こういうことになっておるようでございますが、これは当然原子力委員会としても十分尊重されなければならないきわめて貴重な機会だと思います。この会議の結論が出るか出ないかわかりませんが、そこに戦わされる意見というものは、もちろん原子力委員会は十分に尊重していただけるでしょうね。
  66. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 学術会議が近くコールダーホール刑炉について対論会を開く由でありますが、御論議の結果は、よく注目いたしまして、検討してみたいと思います。
  67. 岡良一

    岡委員  原子力発電については、ごく大づかみに、また、ある見方をすると、結局学術会議原子力産業会議の二頭立の馬車に乗って日本原子力発電が急がれておる。どうも、そのむちゃの振り上げ方が原子力産業会議に重点が置かれているために、学術会議あとに取り残される。そこにやはり日本原子力開発のひずみが起っているような感じがいたすのであります。卒直なところ。そういう意味で、学術会議がせっかくこの機会にシンポジウムを開かれるのでございますから、ここに現われてくる意見は十分に一つ御尊重を願いたい。このことを重ねてお願いをいたしておきます。  イタリアの話がさっき出ましたので、これは佐々木局長にお尋ねいたしますが、こういう記事がございます。「原子力海外事情」の今年の七月号の五十四べージですが、イタリアのAGIPのコールダーホール原子力発電所のコストが高いことに端を発して、ギノ・マルチノリという会長がENIの総裁エンリコ・マテイ氏と不和となって、AGIPの会長を辞職した。言ってみれば、私は、単純に考えると、どうもコールダーホール改良型を入れてみたところが案外コストが高いということから、会長の責任をとって辞職したかのような印象を受けるわけでございますが、この間の経過は原子力局の方で御調査でございますか。
  68. 佐々木義武

    ○佐々木説明員 そのてんまつは、まだ聞いておりません。
  69. 岡良一

    岡委員 原子力発電長期計画では、原子力発電の経済性というものが非常に強く主張されておる。当時、私どもは、あまりにも経済性を主張し過ぎるのじゃないかというような批判も率直に申し上げたようなわけです。ところが、イタリアにおいては現にこういう事態があるわけです。こういう点は、やはり十分その他の事情を御調査になって、他山の石として参考にせらるべきものと思いますので、ぜひ御努力を願いたいと思います。  それから、中曽根委員長は、先ほどコールダーホール改良型は英国型においてもすでに運転の経験が積まれておる、これがいわば安全基準の国際的な基準として認定し得る重要なる資料である、こう申されました。そこで、私は、安全性のみならず、経済性を含めまして、こういう資料があるのでございますが、これは御存じでございましょうか。七月四日の英国の「フィナンシャル・タイムス」の記事です。これには「英国原子力発電計画の変更、改良原子炉への早期切りかえ」という大見出しがついている。改良原子炉というのは、いわゆるコールダーホール・インプルーブのタイプではございません。もう一つ別な改良型に変更する、切りかえる、こういう趣旨でございます。内容を簡単に申しますと、従来のいわゆるコールダーホール改良型――今日本が導入しようとしているものですが、この改良コールダーホール型から予期以上に進歩した型の原子炉へという原子炉様式の急速な切りかえ及び現在行われているごとき、発電所を全体として契約するのではなく、各部分ごとに契約するという慣行への早期復帰が含まれている。ダンゲーネス発電所の入札調査はすでに行われており、これはサマーセット発電所、ヒンクリー・ポイントに類似したコールグーホール改良型によるもののようである。六百メガワットの発電能力が予想されるサイズウェル、サッフォーク発電所の調査も今年の末ごろに行われるようで、この発電所も同様な型を採用するものと思われる。しかしながら、その後発注される英国の原子力発電所は、カンバーランドのウィンズケールにおいて現在建設中の実験所と同じような、より進歩したガス冷却型原子炉を採用することが確実であると思われる。中央電気発電庁は、このときに当って原子力発電所を全体として契約するのではなく、部分的な契約へ戻ろうとしつつある模様である。」云々。こういうような記事が出ておるわけです。御存じのように、今向うのメーカーと日本は契約しております。この記事の通りであれば、この産業グループば来年解体されるわけですよ。しかも、英国では原子力発毛の発注の当の責任者は中央電気発電庁でしょう。いわゆる〇・六ペンスを日本で宣伝していかれたヒントン卿が今就任しておられる。〇・六ペンスで、経済性に合うコールダーホール改良型をぜひ採用してくれと日本で賞伝していったヒントン卿が中央電気発電庁の総裁でしょう。このヒントン卿のもとで、今日本が買おうとしておるコールダーホール改良型はことしで打ち切られ、来年から別なタイプうになる、こういうことなんです。これは、ほかの国と違って、当の英国の重大な方針の切りかえでございますが、この点について御存じでございますか。
  70. 佐々木義武

    ○佐々木説明員 御承知のように、英国は第一の計画におきまして六百万キロワットの発電計画を持っておるわけですが、そのうち、大体半数以上のものはすでに発注を済ませまして、ただいま建設中なことは御承知の通りであります。さて、その後の発注をどういうふうにするかという問題に関しましては、いろいろ問題があるようにも承知しています。英国といたしましても、ただいまの改良型にさらに改善を加えまして、インプルーブしたものがどしどし考えられつつあるようにも承知しておりますので、ただいまの岡さん御引用の記事は、おそらくそのインプルーブした改善のまた改善と申しますか、さらに改善した型を、今後どういうふうにその計画にアダプトしていくかという問題かと思います。ただし「フィナンシャル・タイムス」の記事のように、現実にその問題が入札等で動いているかどうかという点に関しましては、まだつまびらかな情報はございません。
  71. 岡良一

    岡委員 問題は、こういう事実をよく調査されるべきだということを私は申し上げておるわけです。もし、このような事実が英国本国内にあるならば、やはりわれわれとしては、現在話題となっておるコールダーホール改良型は考えなければならぬと思うのです。私は、この前この委員会で申し上げたこともあります。というのは、向うのAEAの当事者、特に技術担当の責任者と会った場合に、黒鉛のガス・クーリング型はどうしても経済的にも効率的ではない、大体非常にボリュームが大きい、だから低濃縮ウラン以上に、天然ウランにプルトニウムを加えることによっても低濃縮ウランとしての機能を期待できるのだ、これを研究しておるのだということを申しております。そういうような私ども経験からにらみ合せても、もはや天然ウランを燃料とするコールダーホール改良型、今われわれが問題としておるようなものは、もう英国においては古いものになろうとしておる。来年からこれは大きく切りかえられようとしておる。日本では、今やっと注文し、本契約をあなた方が許可されたらやろうとしておる。今ならば、私は、後手を踏まないで新しいタイプに切りかえ得ると思う。何しろ三百五十億という莫大な資金をつぎ込む日本における最初原子力発電所については、安全性、経済性その他の点において――売ろうという英国本国がこういう重大な方針の変更をしておる。今局長は、英国は多分幾つもコールダーホール改良型について発注しておる、であるから、というようなことを言われます。しかし、これまでに発注したコールダーホール型についても、かなり思い切った設備の模様がえをしていることはあなた方も御承知の通りだと思います。私どもは、現場でかなり思い切った修理をやっているのを知っております。そういうわけで、向うはプルトニウムの需要というものがありますから、そこでコールダーホール改良型天然ウラン炉というものに対しては、まだ執着を持っております。ところが日本では、プルトニウムには何らの執着はありません。少くとも、原爆の原料としての利用というものは日本にはないはずです。してみれば、やはり電気発電炉としてこういう大きな変更があるということなら、私は、こういう事実をそう単純に片づけらるべきものではないと思う。それは国会に対してだけではなく、国民に対しても、原子力委員会としては、私はこういう事実をもっと詳細に調査される必要があると思う。そうして、誤まりなきを期するのが当然な措置だと思いますが、原子力委員長、どうでございましょうか。
  72. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 イギリスが日進月歩改良を加えておりまして、将来は低濃縮ウランの方向に動いていくであろうという情報は、私も前から承知しております。また、イギリスに参りましたときに、そういうような個人的見解をイギリスの当局者から開いたこともございます。しかし、われわれが相当な国費を傾けて入れる場合には、やはり二年とか三年くらいの運転実績のある、経験を積んだ確実性のあるものを入れるということが、日本のような場合は安全であると思うのであります。これはイギリスの炉に限らず、アメリカ系統の濃縮ウランの炉を入れるにしても、その他の場合にいたしましても、今日のように新しい分野を開拓している時代におきましては、やはり二年、三年くらいの実績ということが非常に大事であると思いまして、そういう観点から現在の世界の動力炉考えみますと、イギリスのコールダー・タイプというものは、その実績が明らかであります。そのコールダー・タイプの基本を中心にして若干の改良を加えておるということは、ブラッドウエルの場合でも、われわれの今度の場合でも同じだろうと思います。しかし、それは実績に対して暗影を投ずるようなものではないとわれわれは考えるのであります。そういういろいろな点からいたしまして、現在の日本立場からいたしますと、ともかく二年、三年の実績のあるということが安全確保の上に一つの重大なよりどころともなりますので、イギリス型の改良型を入れることが適切である。それが安全であるということが証明されれば、われわれはそれが適切であると考えるものであります。しかし、イギリス側が常にそういう改良を施して新しい型へ進みつつあるということは重大なことでありまして、われわれの委員会といたしましても、イギリス側の情報の入手に努めまして、彼らの努力の跡を追跡いたしまして、研さんして参りたいと思います。
  73. 岡良一

    岡委員 二、三年の実績があると言われるのが、私は少し間違いじゃないかと思う。たとえば、この前の委員会で私が申し上げました点鉛の収縮の事実、これは、やはり日本に大型炉を導入するときにおける安全性のキイ・ポイントである耐震設計という点において重要な資料でしょう。ところが、これは去年の九月にジュネーブ論文で初めてアメリカの科学者が発表した。六月の二十日に初めてこのことを英国のメーカーから日本に申し込んできておる。そうしてみれば、何の実験もないではありませんか。だから、私は、この際特に御所見を重ねてお伺いしておきたい。こういう経験は、こういう英国国内における大きな切りかえは、これは日本としても十分に、なぜ切りかえたか、そうして、新しくできる発電所がいつでき得るかなどというような点について、具体的に責任を持って調査される必要が私はあると思う。その上に立って、なおかつ委員長のような結論になればともかくといたしまして、少くとも、「フィナンシャル・タイムス」といえば「エコノミスト」と同じく、最も権威ある、信用のある英国の経済新聞でしょう。してみれば、私は、この事実は十分調査される必要があると思う。そての上でコールダーホール改良型にすベきか、また別途考うべきかという結論を出されるのが私は妥当じゃないかと思うのです。コールダーホールもやはり開銀融資十五億という、国費に準ずる支出が伴っておるのでございますから、私は、この点を十分御調査をいただいた上で最終的な結論を出されるのつがほんとうじゃないかと思います。この点、委員長から一つ結論を出していただきたい。
  74. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 海外の新しい進歩につきまして調査を加え、情報の入手を行うということは当然のことでありまして、御意見趣旨を体しまして、その点につきましても、特にイギリスにおりますアタッシェの方にも連絡いたしまして、情報の入手に努めていきたいと思います。ただ、コールダーホール改良型は、大規模の発電所といたしましては、現在世界に活動しておるほとんど唯一といっていいと思うのであります。アメリカ側において農縮ウラン系統のものが小規模のものはございますけれども、十五万キロとか、そういう大きなものについては唯一といっていいと思います。耐震性の問題は、日本特有の事情がありまして、イギリス側の現在の稼働に対していかなる補助的な工作方法を加えれば日本にそれがアプライできるかという問題に転化してくると思うのであります。しかし、炉自体安全性というものは、すでにコールダーホール改良型の数年の経験によりまして、私は実績があると思います。われわれが過去における運転実績というものを対象にいたします場合はコールダーホール改良型というものはやはり一つの対象になるだろうとわれわれは思っております。
  75. 岡良一

    岡委員 そういう問題は、また別の機会に学術会議のシンポジウムが済んでから一ぺん原子力委員会の実務にタッチされておる専門の方の御意見も私は聞きたいと思いますから、この程度でやめますけれども、しかし、委員長もさっき申しましたように、SENNの入札になぜ落ちたか、十分な考癒が払われておりません。耐圧の容器の脆化ということも考えられる。こういうように、やはり疑問点がはっきり出されておるということも、国際的にはコールダーホール改良型が安全運転の経験が確実にあるということの証拠にはならぬと思う。むしろ反証ではないかと思うのです。だから、西ドイツでは、コールダーホール改良型を導入しょうという計画が現在もうすっかり引っ込められたことは御存じの通りであります。ユーラトムにしても、ドーヴァー海峡一つ隔てた英国から入れておらぬ。アメリカから濃縮型の炉を入れようとしておることは御承知の通りであります。それですから、SENNからも落され、西ドイツからも結局打ち切られ、ユーラトムからも問題点があるというのでペンディングになっておる、そのコールダーホール改良型というものを、そうえこじに安全だ安全だというふうに言われることは、あなたのいわゆる科学性を欠くものだと思う。かつては青年将校の中曽根さんがだいぶ老成されたようで、私も面くらっておるのでございますが、これは、やはり十分お考えを願いたいと思います。  そこで、私は、きょうこういうことを実はお尋ねするのではなかったのですが、ちょうど、せっかく技術庁でも来年度の要求予算についての作業と取っ組んでおられると思いますので、来年度の要求予算の大綱と申しましょうか、これをこの際一つお聞かせを願いたいと思います。
  76. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 まだ具体的な計数がまとまっておるわけではございませんが、大体予算編成を行うための政策の大綱といたしまして、次のようなことを考えております。政府におきましては所得倍増計画というものを十カ年計画でいろいろ考慮しておるようでありますが、経済計画の一つの中軸に技術の革新、科学技術の重要性というものをやっぱり根本に織り込まなければならぬと思います。それが第一点であります。それから第二に、現在日本の科学技術界のバランスを見ますと、基礎部門においてかなり脆弱な面がある。従いまして、科学学術の面における基礎部門の充実、特に人材の充実等につきまして、やはり特段の考憾をする必要があります。前者の経済的な問題は経済企画庁長官の所管、後者の基礎学術の問題は文部大臣の所管であります。この両大臣とも緊密な連絡をとりまして、わが国の経済並びに科学技術というものがバランスをとって発展するように考慮いたしたいと思います。こういう考慮のもとに総理大臣から科学技術会議に諮問がありました。十年後を目標とする科学技術振興基本政策というものの案を目下いろいろ検討しております。われわれは、われわれとして検討しておりますが、これの一環として、やはり三十五年度予算というものを考えなければならないと思いますので、そういう長期構想の一環として策定しておる次第でございます。  そこで、大体五つの大きな山を考えました。第一は、基本政策を確立するということであります。これは、ただいま申しあげましたように、長期計画との見合いにおきまして、日本の政策の中における科学技術の地位というものを明確に浮きぼりにいたしまして、長期的基本政策を確立していくということであります。  それから第二番目は、この基本政策を推進するための態勢を整備するということであります。これは、研究機関そのほか諸般の問題につきまして、この態勢を整備充実していくということであります。  それから第三番目は、原子力や宇宙科学技術や電子技術等、開拓を要求せられる分野の開発と、特に重要研究の促進をはかるということであります。これらの点は、科学技術会議とも緊密な連絡をいたしまして推進して参りたいと思います。  それから第四番目は、民間の科学技術活動を活発にするということでありまして、政府がいろいろ援助をいたしましても、それほど大量のものを一気に期待するわけにはなかなか参りません。そこで、民間にあるいろいろな資本力その他を大量に研究活動の方へ導入できるように、税制そのほかのめんどうを見まして民間活動を活発にしまして、日本の科学技術を推進する方策を講じたいと思います。  それから最後に、大事なことは、国際協力を推進するということでありまして、この点につきましては、日本の科学者その他を相当外国へ出すとともに、向うからも呼ぶ。それから、国際会議等を開催するというようなことを推進いたしまして、国際的な協力をますます緊密にして、わが国の科学技術を発展させるように努力して参りたいと思います。  こういう五つの山のもとに具体的な施策を織り込みまして、来年度予算を要求したいと思っております。
  77. 岡良一

    岡委員 ただいま御説明の来年度予算に対する大臣の五つの柱の構想は、それぞれ私もまことにけっこうだと思います。そこで、もう少し予算の数字が固まりましてから、適当の機会にぜひまた具体的にお伺いをいたしたいこともあろうかと思いますが、先般、新聞紙によると、文部省が理科教育振興について、初等教育に二十億近い予算を入れて、力こぶを入れるということが出ておりました。長官のこの委員会お話でございますと、来年の六月までに科学技術会議が十カ年間の総合的な科学技術振興方策というものを作るということです。十カ年間の計画を作られる、もちろんこれも必要なことではありますが、やはり戦後の空白を取り返す、日本現実に即した緊急な手を打たなければならぬ。私がその新聞を持ち出しましたのは、科学技術会議には確かに文部大臣も入っておられる。そこで、科学技術会議が十カ年問をめどといたしまして総合的な科学技術振興政策を立てるということになれば、当然その計画の中には、いわゆる国民全体の科学水準の向上ということも含まれてくる。従って、義務教育における理科教育の振興ということが当然含まれてくる。一方、文部省では予算措置を講じてやる。科学技術会議は、来年までに出して、予算が通れば、文部省が取りかかっているそれとは別なものを出してくるというふうに、何かそこに総合的な振興方策が、出発点においてそうした官庁の割拠的な悪い慣行によって、どうも私どもとしては納得いきかねるような姿が出てくるのではないかというふうに考えるのですが、この点は、やはり御案内があってのことかと思いますが、文部省とこういう点についての話し合いは進めておられるのでしょうか。
  78. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 冒頭に申し上げましたように、文部省系統の仕事とも十分なる連絡を保ってわれわれも政策を推進したいというのが一つの重要なポイントでもあります。そこで、松田文部大臣あるいは菅野企画庁長官等とも連絡をとりまして、バランスのとれた政策を、来年度予算をまず手始めにいたしまして、編成し、推進して参りたいと思っております。人材養成の問題、あるいは初等、中等、大学等における科学技術の振興充実の問題も一つの重要な問題だと思いますので、その点につきましても文部省側と連絡をとって参りたいと思っております。ただいまの二十億円云々というお話は、まだ私は承わっておりません。文部省側ともいろいろ連絡をとってみたいと思います。
  79. 岡良一

    岡委員 本委員会の全会一致の決議が、科学技術会議設置の大きなてこになったことは、中曽根さんも御存じの通りであります。私どもも、科学技術会議の運営には非常な期待を持っている。そこで、十カ年間にわたる総合的な振興方策というものをお立てになるということになれば、当然文部省が今発表していることがその一環として含まれなければならぬ。ところが、会議の答申は来年の六月であります。ことしいち早く――私は早いことが悪いと問いうのではありませんが、やはり総合的に計画を立てるということが科学技術振興の大事な方針であります。ただある官庁が特に急いでやるということで、その間ズレがある、相互の協力関係というものがはっきりしないということが、私は非常に遺憾だと思いますので、私の申し上げました資料も新聞の報道でございますから、よく御調査いただいて、やはり文部大臣も加わっておる科学技術会議にこのことを諮られて、科学技術会議として承認を与えるというか、答申という手続をやられるか、何らかの形で科学技術会議がこういう問題を処理するように、運営上御留意願いたいと思います。  それから科学技術振興も、いわゆる所得倍増十カ年計画、これと軌を一にした、不可分なものとして、経済企画庁とも十分連絡をとりたいという御趣旨、私はそれには大賛成でございます。特に経済企画庁長官の萱野さんは、当委員会委員長もしておられましたし、長らくこの委言員会の理事を勤めておられまして、科学技術に関しては造詣の深い、私の敬意を失している方でございます。ただ問題は、これは言いやすくして困難な作業だと思います。特に困難の大きな原因の一つは、やはり日本の科学技術というものが外国に依存しておる。従って、日本の自主的な基盤の上に花が咲いて、そのつど、そのつど、いわば安いものを手つとり早くということで、外国から技術を導入しておることは御存じの通りであります。その導入に対して外国に支払いをする額も、御存じの通り、四年前には四十億、三年前には七十二億、二年前には百十億、本年は百六十億というような数字が出ております。こういうようなことで、まことに莫大な金が、外国のロイアリティの支払い、ノー・ハウの支払いのために払われておる。こういうことでございますから、日本の自主性というものが科学技術においてかなり欠けておりますので、計画を立てるといたしましても、なかなか計画が立てにくい。これはよはど熱心に、そして、そういう根本的な問題をも切りかえるという政策もあわせて行わなければ、よほどこれは至難なことではないかと思います。私は、そういう御計画を推進されるに当って、何かやはり一つの組織というか、機関というか、そういうものを作られて、この機関なり組織が責任を持ってやるということが望ましいと思うのであります。中曽根大臣は審議会を作ることが非常にお好きとみえて、宇宙科学技術振興準備委員会とか、原子力施設周辺地帯整備懇談会とかいろいろ作っておられますが、私は、やはりこの科学技術振興計画も、経済企画庁の国民所得なり総生産の倍増計画と打って一丸となった、うらはらの関係における科学技術振興、こういうことで、責任ある組織を作ってもらいたいと思うのでありますが、そういう点についての御構想があれば伺いたいと思います。
  80. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 政府の、企画庁を中心とする経済計画の樹立に当りましては、まず事務的レベルにおきまして、当庁からも事務官を向うに出しておりまして、素案を作る過程においても十分緊密なる連絡をなさしめております。特に政治的に菅野企画庁長官と私もすでに話し合いを行いまして、科学技術というものを大きな一つの動脈に入れるようにという了解は得ております。おそらく、伊野さんも、同委委員御指摘のように、科学技術委員長もおやりになり、非常に御熱心な方であります。私にもその通りやると言っておりましたが、期待に沿ってやってくれるものと思います。今後も緊密に連絡して参るつもりでおります。それから科学技術会議の内部におきましては、総合部会をようやく編成いたしまして、梶井議員が部会長になり、関係方面の権威者を網羅いたしまして、その総合都会の各委員の方が分科会の主査になりまして、目標の委員会、人材の委員会、そのほかの小委員会を作りまして、そこでこれらの機関を動員いたしまして十カ年計画を作るわけでございます。来年六月答申するということになっておりますが、昭和三十五年度予算にもそれを織り込みまして、直ちに十カ年計画に基いて三十五年、三十六年と移行し得るように考慮して参りたいと思っております、
  81. 岡良一

    岡委員  いずれにいたしましても、科学技術振興と申しましても、結局は人の問題でもございますし、わが国が追いつき追い越そうという意気込みが立ち止る以上、人の養成、養成する人の養成という問題がまず存在しておるわけでありまして、こういう点は、文部当局とも十分打ち合せていただいて、ぜひとも人の養成という点に格段の御配慮を願いたいと思います。  予算の問題は、数字を拝見してからにいたしまして、この際若干お尋ねいたしたいことは、原子力政策の問題、ことに原子力研究所の問題でございます。あまりくどく申し上げようとも思いませんが、ああして私どもの非常な期待のうちに発足した原子力研究所が、年中行事のようなスト騒ぎをやる。その中で、根本的な問題としては、やはり人事の問題、研究体制の確立が不十分であることであります。なるほど、原子力研究所も、当初のほんのわずかな世帯から今日のあの大世帯になったのでありますから、やむを得ない宿命かとも私は存じておりますが、もうそろそろ決断をもって――私どもは組合の側に立つとかいう意味じゃなく、この研究体制の確立、それに不可分な問題としての人事の刷新等についても、委員長としても相当な決断を必要とされるときに立っておると私は思います。この点を、御所信があったらお伺いしたいと思います。
  82. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本原子力政策は、ちょうど今曲り角に来ているように思いまして、今までいろいろ施設そのほか軌道を敷設する努力をして参りましたが、いよいよ来年度あたりからは実用化の花をある程度咲かせる、あるいはアイソトープそのほかの面につきましても相当力を入れまして、各方面に実用研究的な要素を盛り込みまして進める段階にあると思います。原子方研究所は、さらに総合研究所としての体制を整備せしめまして、われわれが原子力基本法、原子力研究所法を作ったときに期待したような、充実した世界有数の総合研究機関に成長せしめたく思います。そういういろいろな点からいたしまして、過去三年間は、ある意味においてはトライアン・グルド・エラーでありまして、この三年間の実績にかんがみまして必要なる改革を加え、われわれの期待に沿うような原子力研究所に育成して参るつもりであります。内部機構の改革等につきましては、適当なる時期に順次これを実施していくつもりであります。ただ、これはわれわれの方から強制するというと適当でない問題でありますので、内部でもいろいろ御検討願いまして、内部の創意でこれを実施するようにわれわれは努力して参りたいと思います。
  83. 岡良一

    岡委員 もちろん、あまり天下り的にお役人風な干渉は私は避けるべきだと思いますけれども、しかし、原子力研究所にも相当の国費が支出されておるわけでございますから、従って、ああして一度ならず二度ならず、三度までもスト騒ぎが起って、原子力研究所に対する国民の期待をまことに裏切るような結果になっておるということについては、私は理事者の政治的責任はあろうと思うのです。これは私的営利会社じゃない。やはり、そこに特殊法人原研としての理事者の責任が当然あろうと思う。してみれば、やはり監督官庁としては力づくで、天下り的にということではなく、やはり必要なときには決断をもって手を打つということは、当然理事長ないし所長の責任でもあろうと思います。そういう点も十分に一つ考えをいただいて、私どもなり、また、おそらく広く国民が期待するような立て直しについて、一段の御決点と決断を私は強く求めたいと思います。  それから、この船舶川の原子炉か、舶用炉という問題が、新聞紙等で、よく私どもはだんだん日程に上ってきていることを聞くのでありますが、来年度予算では何ら予算措置を講ぜられるようになっておりますか、
  84. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 舶用炉につきましては、山県先生を中心委員会がございまして、いろいろ検討してこられたようであります。山県委員会におきましては、幾つかのデザイン、幾つかのタイプを中心にした素案を作ったようであります。大型のものにしますと、二万馬力くらいの四万トンクラスのタンカーが一つのアイディアになって浮んでおりますし、小型のものにしますと、四、五千トンくらいの観測船というか、やはり、これは国費で持たぬというと採算その他の問題で問題がありますので、そういう二つのアイディアが今有力に浮んでいるようであります。これをどうするかということは、運輸省やあるいは原子力委員会、そのほか諸般の意見を徴しまして、原子力委員会におきましてもきめたいと思います。ただ、サバンナ号がすでに進水いたしましたし、あるいはいろいろな船が、すでにレーニン号にいたしましても動いておる事実を考えますと、日本は世界合最大の有数なる造船国でもありますので、この研究を怠りますと、来たるべき原子力商船が七つの海を走るというときに、非常におくれをとるおそれがあるのであります、ところが、現在は遺憾ながら海運界が非常に不況でありまして、運航会社、船主側においては採算をとるだけで一ぱいでありまして、そういうところへ積極的に資金を投入するというような余裕がないので、やや萎縮している感がするのは非常に遺憾であります。しかし、造船関係、特に技術関係等におきましては、やはり日本の特性を非常に考えていてくれまして、非常に熱心に原子力商船の建造や設計の問題を推進して下さいます。われわれはこの努力を非常に多といたしまして、できるだけ推進する方向に持って参りたいと思います。来年度は運輸省当局とも相談してみたいと思いますが、基本設計をやるところくらいまで進めていきたいと思います。それで、それに必要な調査費とか、必要な諸経費を出すところまで進めたいと思います。  それから、もう一つ問題点は、サバンナ号が世界を回るときに起る問題であり、今予想されておる問題でありますが、原子力商船が港に入った場合の管理、規制をどうするかという問題があります。これは新しい海事法、国際法の問題にもなってくる問題でありまして、この点につきましては、いずれ国際会議等においていろいろ協定さるべき問題であるだろうと思います。われわれもそのときに備えまして、その方面の研究を原子力委員会中心にいたしまして鋭意やらせております。こういう二つの面から原子力商船の時代に備えるために、努力を進めておる次第であります。
  85. 岡良一

    岡委員 そこで、私はきわめて率直に申し上げるのでございますが、本年度たしか二十七億でございましたか、動力試験炉の予算があるはずでございます。その後聞くところによると、臨界実験はやれるというような話でもありますし、大体あの当時動力試験ということに限定しないで、試験用の舶用炉のための試験を兼ねるものも入れろということを私は強く申し上げて、佐々木君も御記憶だと思うが、やれますという御返事でもございました。しかし、その後しさいにお聞きをいたしますと、若干の実験はできるが、現在予定されておる動力試験炉ではなかなかそうはいかない、そこで問題は、動力試験炉を入れるという。しかし、臨界実験はやれるというなら、一つこの際大きく方針を切りかえて、舶用炉の試験をやるという意味の原下炉を導入されるというように切りかえたら、私は予算も非常に効率的に使用されることになり、今御指摘のように、非常に熱心に船舶用原子炉の問題が官民一体となって推進されておる、この期待に私は沿えるのだろうと思う。こういう切りかえを、一つ中曽根さんの勇断でおやりになるべきじゃないかと私は率直に思っておるのであります。私の思いつきではございますが、こういう御工夫があってしかるべきではないかと思いますが、いかがでございましょう。
  86. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 原研に入れます動力試験炉は、舶用炉も考慮いたしましてあの当時入れたのでございまして、舶用炉のためのいろいろな実感をするときに役立つと私は思います。特に、われわれがあのとき予算を編成するにつきましても、船舶用に対する応用ということをよく考えましてあの型を入れたのであります。  それから、御指摘になりました原子力商船の問題は、日本の国策土からも将来非常に大きな問題であると思いますので、来年度のわが国原子力政策の一つの重点に取り上げまして、努力して参る予定であります。
  87. 岡良一

    岡委員 私も早く一つ着手してもらいたいと思います。先般も、オリンピックに備えて、きわめて大型な超豪華太平洋渡航船という御構想があなたの党の友だちから発表された。そこで、あなたはいつも夢を追われるお方で、これは一つ原子力船でいこうということで、大いに立ち上っていただくくらいの気概が私はあってほしいと思いますが、とりあえずは、融通がきくものなら――この動力試験炉はたしか、なるほどそれはできるにはできますが、実験データとして期待するほどのものでない。船舶用とすれば、やはり特殊なデータが必要でございますので、購入予定定の炉では私は困難ではないかと思いますが、ここのところを少し切りかえるということがいいのではないかと思います。  それから、材料武感炉の問題でございますが、これも、私は委員会でそのつど申し上げて、動力試験炉よりも材料試験炉が大事だということを申しました。その当時、CP5で若干の材料試験炉はできるのだ、こういう御返答もあったのでありますが、このCP5では、原子力産業界あたりが希望している材料試験炉としての機能を果し得るのですか。
  88. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 最近、日本の原子方政策の進展に応じまして学界及び産業界からMTRを至急作ってくれという要望が相当強く出て参りました。ただ、日本の現在の技術的能力やら予算面等を考えまして、これは相当重要な問題として研究に値する問題であると思いまして、来年度予算以降におきましてMTRというものを対象にした調査を開始いたしまして、いつごろどういう形で入れたらいいか、どの程度のものを入れるべきか、そういう問題に本格的に取り組んで参りたいと思っております。
  89. 岡良一

    岡委員 このMTRについても、関係方面からもいろいろな意見を出されておることは、若干私も間接に開いておるのでございますが、やはり外国に委託をするということになれば相当なコストもかかっておるようでございまするし、CP5では所期の期待がだいぶはずれておるようでございますから、材料試験炉を割合早期に導入されるということも、この際原研の総合的な研究所としての機能に非常に花を添えるものだと私は思うのです。ただ問題はあの運営のときには、これは老婆心ながら、中曽根委員長よく御存じの通り、ブルックヘヴンの原子炉でありますが、あれはニューヨーク州を中心とする大学連合の研究炉でございます。ところが、あの炉は四段階かになっていますが、そのうち、必要と思われる穴をもらって、そして民間のメーカーがどんどんあそこへ技師を派遣して研究しておるという、きわめてフェアな運営をしている、これを日本でやると、なかなかあそこまで踏み切れないそこに問題が起ってくる。こういうさまつ主義というか、形式主義というか、そういうことが、この材料試験炉を入れ、それを活用させるということにおいてもいろいろ問題を提供する心配もあるので、やはり先進国の運営の実例なども十分御参考になって、この材料試験炉の早期導入についてのお願いをしたいと思います。  それから、核融合反応の件はどうなりましたか。新聞を見ますると、なかなか右往左往しておるようでございますけれども……。
  90. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 MTRの輸入につきまして岡委員から御激励、御示唆をいただきましたことは大へん感謝にたえない次第であります。ただ、相当金がかかりますので、その点と、これに要するいろいろな技術者等の点も考えまして、また、原研東海村の辺に置いていいかどうかという問題も一つあるわけであります。あまり一カ所に集中するのがいいかどうかという問題も、われわれとしてはいろいろ検討しておりますので、そういう諸般の問題について、来年度予算以降におきまして調査を開始していきたいと思っております。  それから、核融合反応につきましては、学術会議側のいろいろな御意見もあり、また、湯川先生を中心にする核融合懇談会の御議論もあり、数次にわたっていろいろ会議を開きましたが、いわゆるB計画をやるかどうかという問題等につきまして、昨日は最終的な討論がありまして、数人の方々に処置を御一任なされたということを聞いております。それらの方々の御意見の結果を拝聴いたしました、われわれは措置いたしたいと思っております。
  91. 岡良一

    岡委員 私は、核融合反応については、私並みな考え方を持っておりまして、委員会で申し述べたこともございます。ああいうA計画、B計画、それを作ったり、くずしたりというわけで、ひっきょうするところA計画がいいか、B計画がいいかということではなくて、あれの起りからいえば、A計画もB計画もやりたい、しかし一つしかできないとすればA計画の方がいい、文部省から予算をもらおう、五億使うものなら、一カ所あれば五千万円じゃないかというような考え方がかなり支配的であることが、正直なところ――中には怒る人もあるかもしれませんけれども感じられるのであります。しかし、私どもが大学の研究室に籍を置いてみますと、大学の研究室というものは、現在は非常に封建的な要素が強い。なかなかその書斎から踏み出せない。学問の自由というものが運用されておる、研究の自治というものが運用されておるような弊害すら私はあると思う。私は、研究室の一員として実際痛切に感じることがあります。従って、研究室と研究室が共同するなんていうこと、あるいはその施設開放なんていうことはなかなかむずかしい。核研あたりはなかなかうまくやっておるようでありますが、なかなかむずかしい。しかし、核融合反応も将来実用段階になれば、ああいうことが特にエネルギー問題を解決することに大きく寄与する。二十年後においては実用化されるであろうというようなことが先般のジュネーブ会議においても明らかになったというような観点からいたしまして、原子力委員会としての一つのはっきりした方針をもって説得されるというような努力が足りないのではないかと思うのです。どうなと皆さんのよろしいようにという形でいくことは、民主的といえば民主的にはなりましょうが、しかし、その結果として、原子力の総合的な計画的な開発の上に、若干そこに断層が起るということもあり得るわけであります。そういう点で、原子力委員会としても、この際こういう問題についてとと腹をきめてかかられるに英断と申しましょうか、必要じゃないかと私個人として感じます。  それから、今おっしゃいました宇宙科学振興計画ということでございますが、これについて、あのとき中曽根長官の御発表の中に、このことについてアメリカとも技術提携をやるということについて外務省をして交渉を始めさせるのだというようなあなたの談話が発表されたのであります。これは事実その後の経過はどういうにとになっておりますか。
  92. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 核融合の問題につきまして原子力委員会に御激励をいただきましたので、善処いたしたいと思います。  それから、宇宙科学の問題は、日本の現在のいろいろな態勢を見ますと、ほとんどゼロという状態であります。ところが、最近の外国における動向を見ますと、非常なる進歩と、国家の力の入れ工合というものが顕著になっておるのでございます。そうして、世界の学界におきましてはコスパルというものがありますが、コスパルもなかなか問題があるようであります。しかもコスパルにくるものは学術的な情報等でありまして、割合におそく、薄い。ところが、それにいたしましても、日本ば学界あるいは官界、あるいは民間研究所等におきまして何ら連絡もなく、その日暮らしをしておったというような状態になっておるのであります。これをそのまま放置しておきますと、最近のいろいろな情報によりますたとえば、アメリカのテレビ、会社等が日本とか、あるいはアテネあたりに相当調査に来ておる。学者の話を開いてみると、三万六千キロの上空に、日本の上とアテネの上しとブェノスアイレスの上とに三つ人口衛星を飛ばしてやればテレビの世界中継がやれる。それをやりますと世界の独占権を握って――日本の国内で今テレビのチャンネルを取るのにこれだけ騒動しておるくらいでありますから、世界の権利を取ると、えらいものになるわけであります。それをローマ大会に間に合わせるとか、東京大会に間に合わせるとか、いろいろ言っておりますが、必ずしも遠い将来ではないとわれわれは考えております。もしそういうふうになりまして、日本が何もしてないという状態でありますと、特許の網で日本は張りめぐらされておるかもしれませんし、ちょうど明治の半ばごろ、海底電線を知らない間にみんな敷設されてしまって、知らない間に敷設された海底車線の使用料を払って日本が使わなければならぬ、そういう危険性もあるわけであります。原子力の初期とよく似ておるわけであります。放置しておくと、日本はパテント・コロニーといいますか、そういうものになるおそれがありますので、この際日本の国内にあります各機関の体制を整えて、そうしてにれらに対する一つの順序と方向をきめまして、日本が宇宙科学技術の問題に取っ組んでいくという態勢を作ることが非常に重要であると思ったのであります。ゼロかける百はゼロでありますが、一かける十は十になる。ゼロの状態が一番いけない。そういう気持がありまして、関係権威者の御意見を承わりまして宇宙科学技術振興準備委員会というものを作って、その準備委員会が今宇宙化学技術開発に関するコーオーディネーション、オリエンテーションをやって、来年度以降どういう体勢で進めるかということを審議しておるわけでありますしそういうことで、国内体制を一方において整備して、計画的にこれを進めていくと同時に、ある程度の年次的な目標も作ってみて、そうして行く方向を国民の目の前に明らかにし、国民の支持を得るということが必要であると思いますので、現在そのような考え方で当面の開発計画を策定している最中であります。この九千万の民族に夢を持つなといっても無理でありまして、やはり、なるだけ夢を実現する方向へ持っていくのが政治家の責任であるように思います。しかし、これは一国だけの努力では今日ではなかなかなし得ない状態であります。現に、アメリカとイギリスは人工衛星打ち上げの協定をやったと新聞に発表されておりますが、非常に緊密な連絡をやりまして、イギリスが自分で人工衛星を作ってアメリカのロケットで発射して上げるというプロジェクトで進んでおるようであります。フランスもアメリカと非常な協力をやりまして、特にドゴールになりましてからは、観側その他に対する周波数をアメリカと統一して今進めておる。カナダとアメリカはまた非常に緊密な連絡で、北極のオーロラ等を中心にして協力関係を展開しておる。中共とソ連はまった非常に緊密な連絡をやっておる。日本だけは一つの谷間になっている感じがあるのであります。従って、太平洋をはさんでおるこの両国が協力するということは一つの自然な姿でもありますしいろいろな諸般の政治、経済的な体制を考えてみますと、一番進んでおると思われるアメリカとある程度協力関係設定して、ちょうど原子力の初期のときのように情報を相当こっちにもらう、向うとも協力してもらうというにとは、非常に日本のこの学問、科学技術の発展に有益であると私は思います。しかし、これには非常な注意を要するものでありまして、コスパルというものがありまして、とにかくユニバーサルな形でやっているという点も考えてみますと、われわれとしては、やはりあくまで国連を中心にして、この問題について国際機関が設立されることが望ましい。らょうど原子力の場合の国際機関ができたと同じであります。それを念願し、それを推進していくということを前提にいたしまして、それに至るまでの当面の間は、二カ国あるいは多数国と協力関係設定することを妨げない。かりに、二カ国と協力関係設定した場合にも第三国との協力は排除しない。それから、われわれがやっておりまする宇宙科学技術という問題は、やはり平和目的、それから自主性を中心にして運営していく、それから公開をやる、軍事的秘密等は盛らなりいでやる、こういう考え方でわれわれは宇宙科学技術の当平和利用へ乗り出していき、たいと思うのであります。そういう考え方からいたしまして、アメリカ側に対して、もしわれわれの考え受け入れるならば協力関係設定した方がいい。現在の状態から見ますと、日本の電離層とか宇宙線の研究に世界でも相当進んでおる。南極に対して日本が観側に参りましたが、あれはやっぱり日本の学問の背景があるからできた。国連で松平康東氏が大気圏外平和利用特別委員長をやっておるが、これもやはり学問の背景があるからやれた。ところが、いかに地球上でやっても、高くロケットを、発上げられたら、それで今までの学問がくずれるというような状況になってきておりますので、新しい方向日本の学問の元本を仕入れなければならぬ。今は利子で食っているようなものであります。そういう点から考えまして、日本の科学技術体制を進めていくためにも、アメリカと提携するという形で進んでいきたいと思っておるのであります。それで、アメリカ側に対してそういう協力関係設定する意思があるかどうか、今開かしております。まだ正式な回答を聞いておりませんが、間接的な情報ではこちら側の態度を見まして、どういう具体的な提携をやるとか、そういう内容を見て向うは考えをきめたい、そういうようなものだと開いております。
  93. 岡良一

    岡委員 国内でも、このこ委員会で篤学の方にその問題について御意見を承わったが、国の予算というものはほとんど取るに足らぬというので、民間のあるメーカーがスポンサーになってやっているというようなことです。にもかかわらず、カッパー一号、二号というような、かなり高性能のものも、努力して実を結ばれてきておるというふうにも聞いておるわけです。そこで、この宇宙科学振興ということが原子力基本法の第二条の精神をやはり精神として進められるということについては、私どもは異議はございません。ぜひそうあっていただきたいと思います。その際、私どもは新聞情報でも見ておりますが、この人工衛星、人工惑星という宇宙時代に関しての科学技術は、アメリカ、ソビエトは見たりがたく、弟たりがたしだと私は思う。こういう科学の平和利用ということになれば、これは国境を越えた大きなテーマでもございますし、現にソ同盟の方には日本の科学者も毎年招待されて出かけて行っておる。また、向うの方から日本の実情を調べたいという意向も聞いております。そういうわけでございますから、この際、いわば米ソ両陣営の対立のいずれか一方においてという形、と申しますのは、特に人工衛星なり宇宙惑星という問題は、やはりこのロケット噴進装置というものは軍事的な要請から出てきたものだから、かなりの秘密があることは当然だろうと思いますので、技術協力と申しましても、日本平和利用の限界においてこれに協力を求めようとする場合には、いろいろな意味において制約があろうと私は思います。それはそうといたしまして、やはりこれは双方に、兄たりがたく弟たりがたしであれば、ソビエトにも、こういう問題の技術協力について進んでそれを求めていくという態度で、せっかく今御指摘の松平康東君が大気圏外平和利用委員長になっておられるのだし、平和利用の問題について、日本自体の政府がやはり現在の対立を越えて――真理は国境を越えたものです。これに全人類の幸福のために日本も協力する、こういう大局的な態度でお進めになってしっかるベきではないかと私は思う。ただアメリカだけということになりますと、私どもとしては納得いたしかねる。これは党派の考え方ではなく、学問の真理を探究するという科学の本質から見て、そういうふうな米ソの現実的対立というものを越えて、あらゆる協力を求めていく、こういう態度に進まれるべきが至当ではないかと私は思いますが、委員長にいかがでございますか。
  94. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先ほど申し上げましたように、こういう問題は、国連においてしかるべき機関ができて、全世界の協力のもとに行われるのが一番適当であるとわれわれは思っております。原子力におきましてもバイラテラルの二カ国協定がずっと張りめぐらされまして、それが現在の国際原子力機関に成長して参りましたが、この問題がどういう成長過程をたどるか、まだよくわかりません。われわれは、あくまでやはり国連を中心にして、そういう国際機関ができることを推進していきたいと思いますが、それまでの間は、やはり最も適当であると思う国々と協力するということを否定する必要はない。そこで、今二カ国協力あるいは多数回協力という構想を持っておるわけでありますが、しかし、かりに二カ国協力をやる場合にも、第三国とのそういう協力関係を排除するものではない、そういう原則で進めていきたいと思うのであります。それで、では、具体的にどの国が今のところ一番適当であり、必要であるかというような考えます場合、いろいろ政治的な情勢、経済的な情勢、学術的な情勢、技術的な情勢等を考えてみますと、今のところは、私はアメリカとやるというのが適当であるように思います。しかし、アメリカとそういう協力関係設定したからといって、ほかの国との協力関係を排除するものではない、そういう岡委員が指摘されましたような大乗的精神を持ちながら国連中心主義で進むという意味で、その第一段階として対米協力関係設定ということも考えておるわけであります。
  95. 岡良一

    岡委員 先ほども申しましたように、やはりソビエト側のアカデミ一あたりも日本との交流を希望しておるということも聞いておる。当のアメリカとソビエトの科学者の交流を去年もやておるという状態でもございますので、私どもは、やはり日本立場からすれば、アメリカに偏しないで、これはソビエトにも、そういう希望があるのだから、一つその希望をかなえながら技術協力の道を開く、こういう方向にぜひ進めらるべきであると私は確信をいたしておるのでございます。時間もありませんから、この程度で私の質問を終ります。
  96. 村瀬宣親

    村瀬委員長 他に御質疑がなければ、本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。     午後一時十一分散会