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1959-03-25 第31回国会 参議院 予算委員会第二分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月二十五日(水曜日)    午前十一時三十三分開会   —————————————   委員の異動 本日委員仲原善一君辞任につき、その 補欠として小幡治和君を予算委員長に おいて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    主査      西田 信一君    副主査            栗山 良夫君    委員            笹森 順造君            鶴見 祐輔君            苫米地英俊君            羽生 三七君   担当委員外委員            鈴木  強君   国務大臣    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    国 務 大 臣 世耕 弘一君   政府委員    防衛庁防衛局長 加藤 陽三君    防衛庁装備局長 小山 雄二君    経済企画庁長官    官房長     宮川新一郎君    経済企画庁長官    官房会計課長  塚本  茂君    経済企画庁調整    局長      大堀  弘君    経済企画庁総合    計画局長    大來佐武郎君    経済企画庁調整    局長      金子 美雄君    外務大臣官房長 内田 藤雄君    外務大臣官房会    計課長     吉田 健三君    外務省国際連合    局長      宮崎  章君    外務省移住局長 伊関佑二郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十四年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十四年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十四年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 西田信一

    主査西田信一君) ただいまから第二分科会を開会いたします。  昭和三十四年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算外務省所管を議題といたします。政府から御説明を願います。
  3. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) それでは外務省所管昭和三十四年度予算につきまして大要を御説明いたします。  予算総額は百十三億四千三百三十九万円で、これを組織別に大別いたしますと、外務本省予算が四十七億六千二百七十三万七千円、在外公館のために使います予算が六十五億八千六十五万三千円であります。  ただいまその内容について御説明いたします。まず外務本省経費について申し上げます。第一、外務本省一般行政に必要な経費十億二千十八万四千円は外務省設置法に定める本省内部部局及び附属機関一般事務処理するための職員千二百七十八名の人件費及び事務費等であります。  第二、外交運営充実に必要な経費三億一千万円は諸外国との外交交渉によりまして、幾多の懸案の解決をはかり、また各種条約、協定を締結する必要がありますが、これらの交渉わが国に有利に展開させるため本省に必要な経費であります。  第三は、アジア諸国に関する外交政策樹立並びに賠償実施業務処理に必要な経費千九百十三万八千円であります。これはアジア諸国に関する外方政策企画立案及びその実施総合調整並びに賠償の円滑かつ統一的な実施をはかるため必要な経費であります。  第四は、欧米諸国等に関する外交政策樹立に必要な経費でありまして、九百八十六万四千円であります。北米、中南米、西欧、ソ連東欧、中近東、アフリカ及び英連邦諸国に関する外交政策企画立案及びその実施に必要な経費であります。  第五は、国際経済情勢調査並びに通商交渉準備等に必要な経費でありまして、千四百九十八万七千円であります。これは国際経済に関する基礎的資料を広範かつ組織的に収集いたしまして、これに基いて国際経済を的確に把握するための調査、並びに通商交渉を行う際の準備等に必要な経費であります。  第六は海外経済技術協力に必要な経費でありまして、六億八千二百六十九万九千円であります。これは海外との経済協力に関する企画立案及びその実施総合調整を行うとともに、コロンボ計画等に基きます技術者交換及び各種技術センター新設等経済技術協力実施するため必要な経費でありまして、技術協力実施委託費三億二千百一十八万一千円、海外技術センター等事業実施委託費二億一千万円、メコン河開発事業調査委託費四千三百二十五円、国際技術調査委託費千四百二十五万円、社団法人アジア協会補助金二千八百八十一万八千円、財団法人国際学友会補助金五千二百六十五万円、財田法人ラテンアメリカ協会補助金一千一百五十万円等であります。前年度に比べまして四億六百三十七万七千円の増加技術協力実施委託費海外技術センタ一等事業実施委託費等増加によるものであります。  第七は、条約締結及び条約集編集等に必要な経費でありまして、千二百十七万五千円であります。これは国際条約締結、加入及び条約集等編集条約典型作成条約国際法並びに内外法規調査研究のため必要な事務費であります。  第八は、国際協力に必要な経費でありまして、二億三千六百八十五万一千円であります。これは国際連合等に対しまして協力するため国際連合機関との連絡、その活動の調査研究等に必要な事務費及び諸種の国際会議わが国代表を派遣し、また本邦国際会議を開催するため必要な経費財団法人日本国際連合協会補助金九百五十二万七千円、財団法人日本エカフエ協会補助金五百万円、財団法人日本ユニセフ協会補助金百万円等であります。前年度に比べまして八千百十一万一千円の増加は、ガット総会本邦開催に必要な経費等増加によるものであります。  第九は、情報啓発事業並びに国際文化事業実施に必要な経費一億八千七百五十三万九千円を計上いたしております。これは国際情勢に関する資料の入手、海外に対する本邦事情啓発及び国内啓発並びに文化交流を通しまして、国際間の相互理解を深めるため必要な啓発宣伝資料作成購入経費と、財団法人国際文化振興会補助金二千九百二十四万三千円、及び財団法人国際教育情報センター補助金三百万円等であります。前年度に比べまして八千八十二万二千円の増加国際文化振興会補助金及び啓発宣伝関係経費等増加によるものであります。  第十は、海外渡航関係事務処理に必要な経費二千三百三万八千円でございます。これは旅券の発給等海外渡航事務経費と、その事務の一部を都道府県に委託するための委託費千二百四十八万八千円であります。  第十一は、国際分担金等支払いに必要な経費十一億四千五百四十三万五千円でございます。これはわが国が加盟いたしております国際機関各種分担金及び拠出金等を支払うため必要な経費でありまして、前年度に比べまして四億九千三百七十二万八千円の増加いたしておりますのは、国際連合分担金後進国経済開発技術援助拡大計画並び国連特別基金拠出金国連警察軍スエズ派遣費負担金等増加によるものであります。  第十二は、旧外地関係事務処理に必要な経費六百八十九万二千円を計上いたしております。これは朝鮮、台湾、樺太、関東州等旧外地官署職員給与、恩給の支払いその他残務整理に必要な経費でございます。  第十三は、旧外地官署引揚げ見込職員十二名と未引揚げ職員二百八十四名の留守家族に支払っております俸給その他諸給与等でございます。  第十四は、移住振興に必要な経費でありまして、十億六千九百九十三万五千円でございます。これは中南米等に移住いたします者一万人を送り出すための旅費、事務費及び渡航費貸付金六億六千四百八十五万四千円、日本海外協会連合会補助金六千百十六万三千円、移住者受入機関補助金一億八千九百五十八万六千円、農業労務者派米協議会補助金千四百八十三万九千円、移住船運航費補助金六千二百五十六万円等、移住事業振興をはかりますため必要な経費であります。前年度に比べまして、一億五千三百四十九万三千円の増加いたしておりますのは、渡航費貸付金及び移住船運航費補助金日本海外協会連合会補助金移住者受入機関補助金等増加によるものであります。  次に、在外公館経費について申し上げます。  第一、在外公館事務運営に必要な経費五十七億二千九十万六千円を計上いたしております。これは既設公館九十一館二代表部六百八十名と三十四年度新設予定の在ハンガリア公使館、在ポルトアレグレ総領事館及び在ヒユーストン領事館のために新たに必要となった職員十一名並びに既設公館職員増加三十五名、計七百二十六名の人件費及び事務費等であります。  第二、外交運営充実に必要な経費四億九千万円でありまして、これは諸外国との外交交渉の有利な展開を期するため在外公館において必要な工作費を計上いたしたのであります。  第三は、対外宣伝及び国際文化事業実施に必要な経費でありまして、九千七百万三千円でございます。これはわが国と諸外国との親善に寄与するため、わが国の政治、経済文化等の、実情を組織的に諸外国に紹介するとともに、国際文化交流を行う等のため必要な経費であります。  第四は、在外公館営繕に必要な経費でありまして二億七千二百七十四万四千円計上いたしております。これは在インドネシア大使館事務所、在オーストラリア大使公邸、在マラヤ大使公邸(第二年度)及び在外職員宿舎の新営工事、在ヴアンクーヴァー領事公邸購入、在連合王国大使館事務所リース購入等、並びに在外公館事務所及び館長公邸建物修理費等であります。  以上がただいま上程されております外務省所管昭和三十四年度予算大要であります。詳細御審議のほどお願いいたします。
  4. 西田信一

    主査西田信一君) この際、お諮りいたします。他の分科担当委員から質疑の御希望がある場合は、これを許可いたすことにしております。あらかじめ御了承を得たいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 西田信一

    主査西田信一君) 御異議ないと認めます。  御質疑のおありの方は御発言を願います。
  6. 羽生三七

    羽生三七君 この外務省所管予算一般会計の中の総予算の中に占める比率、それがどの程度のものか、外国との関係なんか等、検討されたことおあり血しょうか、たとえば海外経済援助とか、技術援助とか、そういうものもあるから一がいには言えませんが、純粋な意味で、純粋な外交上の予算として、総予算の中に占める外務予算比率外国日本との関係で、どういうふうになっておるか、そういうことは御検討になったことがあるのですか。
  7. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) ただいまの御質問にお答え申し上げます。大体一般外交予算というもののとり方あるいは予算組み立て方というのは、国によって必ずしも同一ではございませんから、正確な意味での外交予算比較検討というのはなかなかむずかしいのでございますが、大体一般的に申し上げますと、今の外務省予算を総予算の中でとりますと、ことしはたしか〇・七九%になっておると思います。戦後一番低いときは、〇・四八%ぐらいでございましたと思いますので、まあ漸次改善されつつある状況であると考えます。  それから世界各国との比較でございますが、大体のところを申しますと、総予算の一%ないし多いところでも一・五%くらいかと考えます。ただし、非常に大きな軍事予算を持っているような国の場合には、一%を切っておる国もございます。逆に、非常に軍事予算が少いような国では、概して申しますと、外交予算が占める地位が多くなっておるという大体の大勢ではないかと考えます。戦前におきましても、大体日本外務省予算というものは、おおむね一%から一・四%くらいの間を前後しておったというような状況であると考えます。
  8. 羽生三七

    羽生三七君 先日もアジア公館長会議ですかあって、中共問題、台湾問題等についての意見交換があって、その結論的なものも新聞に出ておったようですが、こういう外務省予算全体を扱っていく場合に、そういう日本在外公館等について、何か一定方針というようなものを政府が、外務省として持ってそれで御指導なさっておるのか、そういう点はどういう関係になっておるのか。私は、どうもアジア公館長会議におけるいろいろな検討の結果を見ておるというと、今の日本の置かれておる立場から見て、相当感賞的にズレがあるのではないかという批判も、けさ控室で皆さんあったわけです。そんなこともあって、一体政府として、外務大臣として何か御指導かさっておるのか、むしろそういう報告が逆に外務省を動かすことになっておるのか、そういうような関係は単にアジア公館長会議だけではない、全般的にその間の連絡といいますか、指導能勢というのはどうなっておるのか、号の辺を少し承わりたいと思います。
  9. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 外務省’しては公館長会議等を開きまして、できるだけ現地内地との連絡協調をはかっていかなければならぬのであります。御承知のように、久しく外地に滞在いたしておりまして、予算等関係もありますので、諸外国のように、二年に一ぺん必ず賜暇休暇をもらって相当の日を内地に滞在するというような状況には今の外務省予算では参りません。従ってやはり会議等を開きまして、そうして、時々会合をして現地状況も聞きますし、また任国政府対外政策等も十分聞く必要もありますと同時に、また日本国内事情、また日本のいろいろな政策というものを指示し、それによって今後の運営をはかっていくということも必要なんでありまして、そういう両面の必要からわれわれ公館長会議というものを開き、また開く際にはできるだけ、もし予算があれば東京であらゆる公館長会議を開きますことが必要だと思いますけれども経費関係上そうも参りませんので、ヨーロッパなりあるいは南米等につきましては現地において開いて、その際できれば外務省首脳部が出て行って、そうしていろいろな問題について話をするというようなことにいたさなければならぬと思っておるわけであります。そういう意味において、今御質問のありましたような、本省あるいは政府の考えております考え方等について十分そういう機会に説明をいたすわけでありまして、万遣漏なきを期していくような方針は立てておるわけであります。ただ、それぞれの任国のいろいろな事情がありまして、任国大使としてはそれらの情報を持って集まって参りますので、会議の場合においてはいろいろな意見が出ることは当然であり、またいろいろな意見が出ることが必要なことだと思うのでありまして、そういう意味において運営をしていっておるわけであります。
  10. 羽生三七

    羽生三七君 これはお話のあったように、私も現地にある外交官意見を積極的に取り入れていくことはもちろん賛成なんですが、私は、強いやはり外務当局指導性が望まれるのではないかということを考えておるわけですが、そういう抽象的な議論は別としまして、二、三具体的な問題についてお尋ねいたしたいと思います。その一つは、ただいま御説明の要旨の第三の、アジア諸国に関する外交政策樹立並びに賠償実施業務処理に必要な経費、これに関連してでありますが、ずっと前なくなられた重光外務大臣のおられたころに、私は賠償問題と日本国内経済、特に予算との関係において緊密な配慮が要るだろうということから、いろいろ委員会で御質問をいたしたところが、重光外務大臣はその翌々日か、閣内に特別の閣僚懇談会を作って、この問題について協議をするようなことにしたことを記憶しておるわけです。実はガリオアイロアの問題ですが、私はやぶをつついてヘビを出すようなことがあってはいけないということで、ずっとこれは質問を差し控えておったのでありますが、ずっと前に、これもなくなられた緒方さんが副総理のときに、この問題を私かなり詳細にお尋ねしたことがあったのであります。当時日本ではガリオアイロア総額二十億五千万ドルと受け取り、アメリカでは二十一億三千万ドルですかということで、当時返還についての要請があって、そのときに私緊急質問をしたのでありますが、そのままになった。しかし、しいてアメリカから特に特別の強い要望もあるかどうかわからないのに、委員会等であまりこういう問題を取り上げるのはどうかと思って、私はあまり多くを言わなかったのですが、しかし最近になって、つい二、三カ月前ですか、アメリカから日本政府に非公式に何か話があったようであります。私西独へ参りましたときに、ドイツアメリカからの請求を約三分の一に切り下げてもらって、そうしてそれを長期の年賦償還にしたことは御承知通りでありますが、日本の場合一体アメリカはどういうことを考えておるのか、それは実際具体的に賠償問題として日程に上るような形になっておるのか、あるいはこの日本政策等関係関連があって、その関連で特に延ばされておるのか、その辺はどうなのか。実はこの問題は国民立場からいうと、占領中のガリオアイロア、特に食糧問題なんかについては、国民からいえば完全に食糧配給所を通じてすでに支払い済みのものであるが、日本としては、国家としてはアメリカに対して一定債務関係にある、しかし、またそれが見返り物資として積み立てられて、その金は経済復興のために使われて、しかし、それは特別会計で積み立てられて処理されてきておるわけですが、私詳細に国会立法考査局から詳しい数字はもらっておりますけれども、しかし、そういうことから今のアメリカとしてはどういう程度考え方を持って日本に臨んでおるのか、その辺を、私まあ無理にこんなことを公けにするような形でお尋ねする気はないんですが、どうも事情が非常に不明確なので、その辺のところを少し御説明いただきたいと思います。
  11. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ガリオアイロアの問題は、日本としては債務だということは、これは今までの確定した態度だと思うんです。しかし、これは解決を要する債務であって、言われている解決する場合にどういうふうな形になるのか、それは問題が今後の交渉が起った場合にあると思いますが、アメリカ側としてはかねて日本から、歴代の政府が、日本復興のために多額の経費も要るし、また賠償等も支払わなければならない、現在そうした問題のネゴシエーションには応じかねるというようなことを説明いたしておるのであります。アメリカ側もそれに対して了承をいたしておるというのが現在までの状況でございます。
  12. 羽生三七

    羽生三七君 それでは、その後特に強い要請で、具体的に日程に上るような条件は存在しておらぬと理解してよろしゅうございますか。
  13. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 特に今まで、今お話のように強い条件でのいろいろな話は出ませんでした。ときどきそれは号そそろどうだというような程度のことを——交渉をしてみたらどうだというような程度のことはございますが、強い要請があったということはございません。こちらもまだちょっとそういうような状況ではないということで推移しております。
  14. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、これは日本政府態度方針によっては必ずしもドイツのように三分の一に負けてもらって、それを年賦払いというような具体的なことは起らないし、何とか政治的に処理してゆく可能性は存在しているわけですか。
  15. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) これは交渉の相手のあることでありますから、ただやはりドイツ等の例もございますから、どういうふうにこれがきまりますか、われわれもそういう点を交渉がいよいよ行われるようになれば、そういう問題については考えて参らなければならぬと思っております。現在までの推移から見まして、手をつけてないという状況でございます。
  16. 笹森順造

    笹森順造君 関連して。この前外務大臣の御演説の中にも、これは一つ債務と考えているというお話しがあった。非常に私ども気にしておった。それは援助せられたあの当時から、いろいろ状況を私どもは気にしておったわけですが、決して理屈っぽいことを申し上げるのではないですけれども国家一つのそういう財政的な債務を負っているということになると、建前としてはやはり国会がこれに対して承認を与えなければ、政府債務として責任を負い得ないじゃないかという議論は、ずっと前からあって、国会でこれに感謝決議をしてもらったこともあったけれども、これを国家責任として、債務として決議したことは一度もない。そういうことを行政府として政府がやり得るものではないと私どもは信じている。これはもらったものであると私どもは信じている。ところが、後において賠償の問題が起ったときに、日本としてそれだけの賠償を払うところの力がないのだというようなときに、ジェスチュアでごくわずかな金でも、まだ債務があるんだ、あるんだということでやった方がいいじゃないか、これは私の方の解釈ですけれども。そういうようなことで、ごく少額な金を返すというようなことを考えた時代があったことを私は記憶している。ところが、今のお話しで、これが国が負うべき債務だ、しかしそれは処理を要する債務だという外務大臣のお答えであって、これを正確に二十億ドル、あるいは二十一億ドルの債務であるがゆえにこれを返すとか、ドイツのように三分の一を返すとかというような性質のものではなくやれるのだということで、そういうふうなことがいろいろ日本とほかの国に対する賠償問題等の振り合いがあって、非常に高い外交の、政治的な意味においての取扱いというふうに私どもは了解しておった。ですから、そういう意味で、国会としてはそういうことを決議したこともないわけですから、そうすると、一体その責任はどこが負うかということになるのですから、この際ぜひ一つそういう意味で、これは債務であるとしても、必ずしも返済を要する債務でないという線を強く出していただかなければならないじゃないかということで、一体国会で、責任がないものを政府がそれを債務とし得るという立場一つ法的にこの際明らかにしておいていただいたらけっこうじゃないかと思います。
  17. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私の言葉が若干足りなかったかと思いますが、これはわれわれ処理を要する債務ではないか、そうかといって、確定債務だと思っておるわけではございません。また同時に完全にくれたという意思表示もまあないわけなんです。ですから、何らか処理を要する債務関係があるじゃないかという立場で、交渉に当りますればやっていくわけでありまして、そういうつもりなんでありますから、今お話しのような確定債務としてあれしておるわけではございません。何といいますか、気持の問題でございます。
  18. 羽生三七

    羽生三七君 今笹森さんからお話しの点は、これは一つ問題点で、実は私がずっと前に質問したときに、緒方総理は、やはりこれが債務となる場合には国会承認を要するものであるから、政府としては今何とも言えない。こういう御答弁があって、その後、今繰り返して何度も申し上げたようにやぶへびになってはいかぬので、あまり多くを申し上げなかったわけです。しかし御承知のように、もう衆議院、参議院、特に衆議院は何回となく感謝決議をしておられる。そうして国民の大多数は、これは贈与を受けたものと見ておるし、それから特にガリオアのごときは、当然やはり、そういう性質のものだろうというふうに見ておるわけです。しかも、いろいろ私国会図書館の調査を依頼したことがあるのですが、なかなか数字的に、あの混乱の中でこれを二十億ドルとか、二十一億ドルとかということを言うが、一体何を基準にして言うのかという非常に不確定な要素もあって、まあこんなことを幾度もこちらがきめてかかってかれこれ言うこととはないと思いますが、しかし二、三カ月前にどなたでしたか、アジア各地を回られて、その話が公然と新聞に出ておったし、それから今またきょう御説明の中に、賠償実施業務処理に関する経費をこれに計上してありますから、それに関連してお尋ねしたわけですが、どうかこの問題は、たとい幾らにしろ、国民負担というようなことが起ることは私は好ましくないと考えておりますので、そういう気持一つ処理をいただきたいと思います。
  19. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 申すまでもなく、今羽生さんの言われましたように、総額幾らだとかいう金額はまだ完全に確定しておるわけではございません。その中でどういう種類のものが、かりにそういう対象になるにしても、その金額が幾らになるかというものもまだきめていないわけであります。そういうふうに御了解願っておきます。
  20. 羽生三七

    羽生三七君 それから主査にちょっとお尋ねしたいのですが、予算に直接関連のない外交問題に若干触れてもいいですか、この分科会差しつかえないですか。
  21. 西田信一

    主査西田信一君) 差しつかえないです。
  22. 羽生三七

    羽生三七君 先日外務大臣が旅行された際に——二十二日ですか、行政協定の改定の場合には特に第二十四条、二十五条を中心にやっていきたい、その他のことは早急にやる必要はないという御見解を発表になっておるようでありますし、かつ、もう安保の本条約の方については、ある程度アメリカとの話し合い進んでおるように——あるいは話し合いが進んでおるのか、政府自身のお考えが固まってきたのか、その辺はわかりませんが、相当進行しておるように思われるのですが、きょうはまっこう切っての問題ではないのですから、少しどういう事情になっておるか、もう国会も実質上間もなく終ると思いますし、国会の終ったあとで実際問題として具体的な交渉に入られるということになると思うのですが、お差しつかえのない範囲で、少し具体的にお聞かせをいただきたいと思うのです。
  23. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 安保条約につきましては、御承知のようにわれわれ世論に聞く点も問題点としてあるわけでありまして、過去半年の間一般う明白に、その場になって協議をするとか何とかいう性質のものではなしに、むしろ本質的に条約上拒否すべきものではないか。繰り返し申し上げますが、日本に対す直接攻撃はこれは別です。そうでない場合は少くともこの安保条約の第一条にある極東の平和と安全に寄与するということで、米軍の広範な極東地域における活動を日本を拠点として行うというこの考え方は非常に私は矛盾がある。のみならずこれはもう非常なあやまちであろうと考えるわけです。これはもう一番私は基本的な問題だと思うので、しかし国民の大多数はこのアメリカ軍が日本を守ってくれるのになぜ社会党は反対するのかという、こういう素朴な考え方をしておりますが、これは外国が直接日本を攻撃した場合に、援助を受けることもあり得ると思うのですが、そうでない私が今御指摘をした問題については、これはどうしても私は理解に苦しむ。しかし政府立場に立ってみても、少くとも日本にかかわりのないアメリカと他国との紛争に、日本の基地を使用するということについては、私は十分これは規制する方法が、方針政府立場においてもあっていいと思うのです。これは政府と社会党との見解の違いなんというものではない、基本的な重要な問題ではないかと思うのですが、この前の総括質問の際はだいぶあまりにも簡単な御答弁だったわけですが、どういうことをお考えになっておるのか、もう少しきょうは詳しく聞かしていただきたい。
  24. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 行政協定から二十四条を1抜くことは、本条約の方に書きますので、これは抜くことになっておりますが、本条約協議事項としてこうした問題を入れていきますのは、要するに今お話のように日本が直接侵略を受けた場合、当然共同動作をとってもらうためにやらなければならない。ところが今のように日本以外の所で日本に直接関係のない戦乱が起るということなんでありますけれども、われわれの考えからいえば日本以外の非常に遠い所で日本に直接関係のない……むろん協議事項にしてノーと言うことは当然だと思います。しかしまあ現実の問題として、将来どういう周辺で何が起るかわからない。しかも、それがほんとうに明日の日本侵略の前提だということも考えられないことは私はないと思うのでして、若干それだけのゆとりは残しておくことが、やはりこうした条約をあれする上に私は必要なんじゃないかと思います。従って原則としてはわれわれ日本以外の作戦というものに対して常にノーという立場をとるだろうと思いますが、まあ条約上の規定からいえば、そういうことになろうかと思います。
  25. 羽生三七

    羽生三七君 これは何回も繰り返した論議でありますが、実際問題として緊急の事態に事前協議をしてイエスかノーかを相談をしておるというような余裕はもう近代戦の場合にはないことは当然で、むしろでき上った既成事実をあとから協議をしたり、またそれに基いて合理化するという、そういう形のものしかなくなると思うので、私は日米の親善という点ならもっとほかに親善を強化したり、またそれを条約上にうたい込むことはまだほかに方法があると思うので、ノーと言うことがすでに外務大臣の心境にあるように明白であるならば、むしろこれを公然とチェックしておくべきだろうとこう考えますし、もう一つは、既成事実が起ってしまった場合はどうなるでしょう。あとから協議を持ち込まれて、実際上としては既成事実が先行してしまった、そういうようなことが予想されるのですよ。私は実際問題としてはそういうことが決定的になってくるのではないかという気がするのです。さてこれからアメリカが第三国との紛争を始めた場合に、日本に、基地を使わしてもらいたいのですが、いかがでございますかといって事前に申してくるような、そういうようなことは存在しない。既成事実が起ってしまって、むしろそのあと協議となり、またそれを合理化する、そういう形のものになっていかざるを得ない、そういう見通しだろうと思うのです。
  26. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 現実としてまあアメリカ軍の行動そのものも事前折衝に従っていくことになります。そう不当にアメリカが飛び出してくるということも、まあ原則としては考えられないわけです。しかし、日本を基地として何か起らないとはむろん限りません。非常な抽出された議論としては、全然今まで空模様が何にも変りなかった、かんかん日が照っていたときに突然雨が降ってくるということを、自然現象としては考えられると思いますけれども、事実上はやはり相当雲が出てきて、そうして雨が降ってくる前には、夕立のあれも遠くで光っておるというようなことで、突然青天へきれきのごとく何か起って、そうしてそれがボタン一つ押すと飛び出す、すぐに動く、協議時間もないじゃないかということには、私は、そこまで議論を純粋に詰めていくというと、今お話しのようなことになりますけれども、しかし、社会の現象というものは、必ずしもそういう純粋論ではないのじゃないとか考えておるのです。
  27. 羽生三七

    羽生三七君 これは、そのお話もわからぬわけでもありませんが、大体、本来こういう論議というものは、あまり具体的に論じ合っておると、むしろ政府のペースにこっちが入り込んだような形になって、妙な議論になるので、私はあまりやりたくないのですが、しかし、私は非常にそこのところは重大な問題であると思うので、ノーということがもう決定的な何か政府の心境なり、まあ政府というか外務大臣の心境にあるとすれば、なぜそれが実際上条約上チェックできないのか、そこがどうしても理解できないので、むしろ日本に対する急迫した他国からの理由のない攻撃、そういうものに重点が置かるべきであろう。だから、従って先ほど来申し上げるような形で極東全般にその問題を拡大するような、そういう意味での双務協定、共同防衛方式というものは、もうどう考えても危険だし、私は、やはり何といってもこれは憲法上非常な疑義があるし、疑義というよりもむしろ明白に憲法違反だろうと考えておるのですが、どうしてもやはり第一条の極東の平和と安全に寄与するという条項は残されるつもりですか。これははずすことはできませんか。
  28. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この極東の平和と安全に寄与するという文字そのものが全然今度の条約からはずされるということは、私はやはり考えておりません。それは、日本が他国から侵略されること自体も、極東の平和と安全を脅威することになります。これは日本人のうぬぼれかもしれませんけれども、私どもそういうように考えます。ですから、極東の平和と安全に寄与するということは、日本自体が他国の侵略から守られるということが必要だと思うのです。ただ、極東の平和と安全のために、今お話しのようにアメリカ軍がどこまでも出ていくというような場合があれば、これは今回の趣旨から言えば、アメリカ日本を守るために条約上義務を負うのだと……今度の条約改正の主眼というものは、やはり日本を侵略から守るということにあるわけなんですから、そういう意味から言えば、アメリカ軍が、ここに今目的の第二の目的あるいは第三の目的がある、その場合に、やはりわれわれとしては、ほんとうに日本が守られるという立場を考えてみますと、極東の平和と安全という言葉を使いましても、私は、今の安保条約における極東の平和と、安全という意味とはだいぶ違ってくる、だから、極東の平和と安全という言葉自体は、全然条約上からはずしてしまうという考え方は持っておりません。
  29. 羽生三七

    羽生三七君 私も、極東が平和下、あり安全であることをこいねがう一人ですが、しかし、第一条の今の字句から、米軍の広範な活動権というものが容認されることになるので、これを問題にしておるわけですが、続いて、少しこれは抽象的な論議になりて恐縮ですが、私はやはり何といっても、新しい外交の基本的な問題は、防衛力の増強だけで、あるいはアメリカ軍に依存することによって日本の安全を保持しようということにのみ重点を置くのは、適当でないと思う。だから、戦争の起りそうな原因そのものを除去していくということに対する政府方針というものが非常に欠けておる。だから、アジアにおいては、むしろ朝鮮問題の解決であるし、それから中国問題の、本土と台湾関係ですが、この具体的な解決であるとか、そういう問題を逐次解決して、アジアにおける日本の脅威なり、——私は現実に脅威が存在するとは思いませんが、そういう脅威を徐々に除去していく、そういう意味の努力というものが非常に欠けているし、ウエートが非常に少い、それはそのままにしておいて、むしろ防衛力の増強によってこれをカバーしよう、これが何と言っても、今の政府考え方の基本的な欠点ではないか。だからむしろ、日本の置かれた国際的な条件、客観的な条件経済的な条件、そういうものから見て、しかもさらに際限のない兵器の発達から見て、防衛力というものを軍事力だけに限定して考えていくということは、少くとも新しい世界の進み方からいって、特に日本の置かれた立場からいって、あまり得策でないそういうように考えるわけです。そういう意味において、私は核兵器がどの程度まで攻撃的か、どの程度まで防衛的かという論議はあまり意味がないと思うし、場合によっては愚劣だと思っている一人でありますが、そういうふうな意味から、政府はもっと積極的に日本の周辺における脅威1という言葉を使っていいかどうかわかりませんが、かりに脅威なるものが存在するとするならば、そういうものを具体的に解決する、そういう努力をなすべきだと思います。これが非常に欠けているし、何らの積極的な熱意も見られない。ここに私は日本外交の基本的な問題があると思いますが、どうですか。
  30. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 大きな外交政策の上から言えば、私は羽生委員のお考えがむろんわれわれの考え方であって、日本を守るということの大きな面から言えば、当然世界に紛争がなく、特に周辺に紛争がないということ、また同時に、世界が平和になるための軍縮問題、その他いろいろな問題が解決されていかなければならぬ、そういう問題についてわれわれの外交は努力して参らなければならぬと思います。また防衛そのものにいたしましても、やはり現在の実情から申しますれば、国内国民生活の安定とか、あるいは失業に対する対策という問題も、これはやはり広義な意味における国防だと私は思うのであります。しかし実際に現実の問題となりますと、現に膨大な武力を持っておる国もあり、また一方第一次世界大戦後の世界の状況から申しますと、大戦というもので揺り動かされた世界の現状から申しますれば、必ずしもまだ安定になっておるとは思われない。大戦から直接きた結果である分裂国家の問題もあるし、たとえば東南アジア、中近東においてそれぞれ独立した国もあるわけですが、あの第二次大戦の末期における混乱の中から独立したのでありますから、独立した国自身が、西欧に対するばかりでなく、独立した国相互間にもいろいろ問題があるわけであります。従って植民地独立後の西欧との関係ばかりでなく、それぞれの独立国家間においても、やはり紛争は、局地的紛争の関係ばかりでなく、それぞれの独立国家間においても、やはり紛争は、局地的紛争の起る種というものは非常に私はあると思う。ですからそういうことで、一方では膨大な戦力を持つ国があり、また他方ではそういうように局地的紛争の起るような要因というものが、これは二十年とか三十年たつとだんだん安定して参りましようけれども、現在はその安定の過程にあるということですから、局地的紛争というものも私は絶えないと思うし、またそれをできるだけ平和的に解決していくということを、国連その他を中心にして望ましく、やって参らんければならぬけれども、やはりそうした問題はあるのでありまして、そういう現実をやはり見ていきますと、外交の上でも、あるいは防衛の上でも、現実の政策を担当しております者としては、そうその理想論だけでは……、やはり現実のそういうところに目を置いて、われわれの足固めをしっかりしていくということが必要だと思う。従って外交方針として、お話のように、ただ軍事上の防衛だけに頼らないで、できるだけそうした問題の解決に努力をするという御趣旨にはむろん賛成でありますし、われわれもその方針でやっておりますけれども、それだからといって、必ずしも現実の事態、日本自身の侵略に対する防衛をないがしろにしていい、現在の段階ではいいということにならないのじゃないか、こういうのが私どもの見解でありまして、外交活動が鈍いという点についてのお小言は十分承わりますけれども、まあ大きな意味から言えばそういうことです。
  31. 羽生三七

    羽生三七君 私はむしろ日本の敗戦の結果得られた憲法を、特に第九条をこれをたてにして、これでこの外交を展開した方が、それから日本の進み方としても、これを中外に強く打ち出していた方が、私は単に理想論というだけでなしに、実際的にも現実的にも私はおもしろい外交ができると思うのです。むしろこれを基盤にして強く打ち出していくことの方が、むしろ安全に役立つという考え方を持っているんです。これは私の感覚的なものだけではない。情勢分析からいって自分としてはそう受け取っているわけですが、しかしそういうことは抽象論になるし、実は私参議院の方で中共から帰られた曾祢君、佐多君の特別の事情説明が始まる時間がきておりますので、簡単にしておきたいと思いますが、続いてこの安保条約改定をやる場合に、MSA協定とか自衛隊法は全然今度は変えられませんか、その機会に何らかの若干の検討ということは起るのですか、その辺はどうです。
  32. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 安保条約を変えるための條文上の訂正はしなければならぬ点はあろうと思います。内容そのものについては触れる必要はないのじゃないかと思います。
  33. 羽生三七

    羽生三七君 次に、今の問題は際限のないこれは平行線みたいなことになるので、打ち切って次へいきますが、今申し上げましたように、わが党の中共へ行った諸君が、一昨日帰られ、またきょうもこれから詳細な説明を聞くごとになっているのですが、ああいうことでちょっと両国間の具体的な折衝ということがなかなか見通されない状況になってきたと思うのです。これも私前に総括質問の際に申し上げましたが、具体的にたとえば台湾条約を破棄せよとか、中共との国交回復を即時やれとかいうわけではないが、それ相応の措置ということを今度の声明では使っておりますが、それ相応のことを考えていけばいいので、方向を私は言っておると思うのです。そこで、この社会党のような野党が国民外交と言ってみても一応の限界があることでありますから、私は岸内閣がかわって、藤山新総裁、総理大臣になるかどうか知りませんが、それでできればけっこうでしょうが、とにかく時間がかかりましょうから、私は場合によっては保守政党でも問題が解決できればそれでもいいと、必ずしも野党でなければならぬということはないと、そう考えております。そこで、保守政党の場合としても、何らかの具体的な問題の転換を迫られておるような感じがするのですが、前に外相は大使級の会談をやってもいいというようなことを言われましたけれども、かりにそうなっても、政治と経済との分離論というものはなかなかむずかしいことになってきておる。そこで藤山外務大臣がお考えになって、もうああいう声明が出てどうにもならないからしばらく放っておく、アジア公館長会議検討の内容もそれに近いようなものであったようですか、しばらくこのままにしておくというお考えなのか。しかしこの前、いわゆる静観は静観であったが、かれこれいろいろな動きがあるので、何らかの手がかりを得て、問題打開を考えなければならないということを言っておられる際でありますから、一体この局面をどうして打開しようとするのか。私は静観と言われるが、これは一年静観されたが、また同じ静観がしばらく続く見通しではないか。しかも、むしろインシアチヴをとるとすれば、それは日本側にあると、こう考えておるし、そういう糸口をどこに求めようとするのか。大使級会談でもいいし、どういう形でもいいと思いますけれども、なおこの静観を続けられるのか。問題打開のために、先ほど申し上げたことをまた繰り返しますが、即時難きをしいるような条件でもない、方向が出てくればいいと思うのですが、そういう方向すらまだお考えになれないのか。きょうはこういう席でありますから、少し具体的にお考えを聞かせていただきたいと思います。
  34. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ちょっと答弁いたします前に、一つ委員長と羽生委員の御了解を得まして、先ほど私がレバノンとシリアの問題とか、パキスタンの問題とかいう——何か国境についてちょっと外務大臣としてあれですから、その点だけは速記から削除してもらいたい、名前を言ったことは……。非常に懇談的ですから……。
  35. 西田信一

    主査西田信一君) お諮りいたします。ただいま外務大臣の御発言通り取り計らってよろしゅうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 西田信一

    主査西田信一君) それではそのように取り計らいます。
  37. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ありがとうございました。  中共に行かれました社会党の使節団の方には、きょう総理と一緒に十時から会合がありまして、一応の報告を承わりました。なおわれわれその際、共同コミュニケについて、だいぶ新聞等に報じられた共同コミニュニケと違うから、きょう持ってきたのがほんとうの共同コミュニケだから、正確なものだから、それを十分検討してもらいたいということなんで、われわれも十分検討はいたすつもりでおります。中共の問題についてはむろん将来にわたってわれわれとして解決して参らなければならぬ問題が多々あると思います。ことに貿易の関係、あるいはその他の技術的な郵便協定であるとか、海難救助協定であるとか、近隣国との関係でありますから、こうした問題は相当密接な関係を持っておりますので、適当な機会に解決することが必要だとはわれわれも考えております。むろん今日まで静観と申しておりましたことが、これらのものを全然やらないという意味で静観をいたしておったわけではないのでありまして、何かやはり日本側の発言に対して、中共側が誤解があるのではないか。従っていろいろ言いますことが、かえって誤解に誤解を生むという結果に相なってもいかぬのでありまして、そういう意味において、われわれとしてはできるだけもの静かに対処していく方が将来の局面打開の上に適当なんじゃないかということをわれわれは考えまして、総理も私も静観という言葉を使っておったわけであります。ただ静観ということが、決して中共との貿易を否定する意味でもございませんし、また中共との今申し上げましたような郵便協定その他事務的な問題についての解決を否定しているわけでもないわけであります。われわれとしては、今お話のありましたように、機会があればそうした機会をとらえて、そうして善処して参りたいというのが政府方針であることは申すまでもないわけであります。ただそうした機会が、今お話のように、日本側だけからあるのか、中共側からもあり得るのかという問題は、これはやはり相当考えて参らなければならぬと思います。ただ従来のような、何か非常に岸内閣が敵視政策をとっているというような誤解があるようでありますけれども、われわれ岸内閣として、特に敵視政策をとったような意味もないわけであります。そういう点は中共側におきましても、十分理解をして、もらわないと、やはり機会をつかまえるということも非常に困難なのではないかと思います。また今度の社会党が行かれました中共使節団につきましてもまだその点が必ずしも明確になっておらぬように思うわけでありまして、具体的にどうしたことが日本が中共を敵視しておるのか、われわれは特に中共を敵視したというようなことに、中共を敵とするような言葉も使っておりませんし、そういう点は今度帰えられた方々の御意見もよく承わって、一体中共が、日本が敵視政策をとっておるというような点はどういうところにあるのかということを、今までの御説明、あるいは、たとえば長崎の国旗事件というような問題では、われわれはあれは偶発的な事件であって、政府指導したり、あるいは起った後の政府の処置が必ずしも誤まっていたとは思わない。非友好的な処置をとったとは考えておらぬ。ごくたまたま偶発的に起った事件を解決したという程度にすぎないのであります。そういう点等につきましても、もう少しはっきりして参りませんと、ただ日本側が全部そういう敵視政策をとっておって煙かったんだというだけでは、これはほんとうの問題の解決にはならぬのではないかというふうに考えておるわけであります。
  38. 西田信一

    主査西田信一君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  39. 西田信一

    主査西田信一君) 速記をつけて。
  40. 羽生三七

    羽生三七君 私、もうすぐ終りますが、そこで何か具体的な契機があればといいますが、政府がお考えになる契機とは、たとえばどういうようなことがあるのか。実は敵視政策をとったことはないとおっしゃいますけれども、まあ私古いことを申し上げたくないのでございますが、岸総理が東南アジアを回られて、帰りに台湾に寄られて、大陸反攻説を出されたときに、私はそのすぐあと、この外務委員会に岸総理に来ていただいて、この発言は必ず将来非常に問題を起すから、この席上で取り消されたらどうかということを、私執拗にやったわけです。最後に岸総理が、それは武力という意味でなしに、精神的な意味で言ったんだからということを言われましたが、私はやはりあれは非常に大きな影響だろうと思うのです。だからむしろ積極的に敵視政策をとった覚えはないとか何とかいうことではなしに、むしろ友好というものを積極的に打ち出していくという、そういうかまえというものをおやりになったらどうかということと、もう一つは、具体的な契機があればとおっしゃいますが、その契機とは、たとえばどういうことが予想されるか。もっとアメリカを説得するとか、あるいは関係各国にいろいろな了解を求めるとか、まあ私たちは、端的に直接政府が腹をきめればそれでいいと思いますが、政府立場でお考えになっても、国際情勢待ちでなしに、むしろ国際情勢をみずから切り開いていくというような意味の積極性を持ちながら、しかもそういう中で契機をつかもうとするならば、どういう契機があるか、どういうチャンスがあればおやりになるか、あるいはそういう契機をつかむ意味でとにかく話し合いをしてみようということで、前に外務大臣がお考えになつたように、大使級会談なりその他の方法なり、具体的に何かおやりになるという考えはないのかどうか、その辺はどうでありますか。
  41. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろんチャンスをつかむということは、具体的にどういうチャンスということは非常に申し上げかねると思います。やはりこういうものは、おのずから自然に流れてくるものであって、それをどうつかむかっかまないかということが一つの問題だろうと思います。従って今から、こういうことになればつかめるんだ、こういうことになればつかめないんだということは、これは非常に私はむずかしい問題だと思いますので、その点はちょっと具体的にいろいろ御答弁申し上げかねると思います。ただわれわれの態度として、総理もこの国会以来言われておりますように、また私も言っておりますように、適当なチャンスをつかめたならば、今日まで言っておりますように、大使級会談も開くというようなことを考えておるのでありまして、そういうような根本的な考え方は申し上げておる通りだと思います。
  42. 羽生三七

    羽生三七君 私、時間の関係もあってこれでやめますが、若干人物評論になって恐縮ですが、前の重光外務大臣、それからその前の岡崎外務大臣等から、ずっとその時代から考えてみて、イデオロギーでは違いがあったが、具体的にいろいろ話された。藤山外務大臣は、これはほんとうの外交官かどうか知りませんが、全く雲をつかむような話で、さっぱりつかまえどころがない。特に一国の外交をあずかっていく場合に、二一天作の五というような結論をすぐ出して、さあこれだというようなことを言えるものではないということは、われわれも承知しているけれども、何としてもあなたの御答弁はつかまえどころがなくて、具体的に御答弁をいただけぬのは、はなはだ遺憾だと思いますが、少くとも私は中共の問題なんかは、やはり一年も静観されたんですから、もう少し方向を出されていいんじゃないかという気がするわけです。安保条約についても私は同様なんです。もうほとんど固まっておるようにも考えられますので、もう少し、少くともこういう席くらいは、ある程度お話があってしかるべきだろうと思いますが、しかしまあ時間もないから、きょうこれは御注文にして、私の質問は一応これで終ります。
  43. 笹森順造

    笹森順造君 一つ二つ簡単にお尋ねしておきたいと思うんですが、これは先ほど羽生委員からのお尋ねに対してお答え願ったので、すなわち、外務予算というものが日本の全予算の中に占めるパーセンテージがどうなっておる、か、あるいはまた日本の場合の予算外国のものとの比較はどうなって、おるか、大体お答えをいただいたわけでありますが、戦前における日本外務省の仕事というものと、戦後における、特に平和克復後の外務省の仕事というものは非常な違いがある。少くとも以前においては、日本の海軍、陸軍というものが大きな予算を持っておって、しかも直接国の活動のために関係があることでありましょうけれども、諸外国におけるいろいろな事情調査のためには、相当な費用を使っている。そこで、情報を得るようなことのためには、相当な手が届いていた。ある意味においては外務省がそれを引き受けていろいろな外交の手を打ってきた。ところが今それもなくなってしまった。従って、外務省が一切の責任を負って、あるいは経済の世界情勢なり、その他のいろいろな関係なり、あるいは政治的ないろいろ関係なりを見なければならぬ。特に私どもが強く感じたのは、先般中東における紛争が起ったときに、果して外務省が的確なる情報を得ておったのだろうかどうだろうかというようなことが問題になり、あるいはベトナムにおける南北の問題等も、果して外務省がこれの的確なるものを持っておるのかどうかというようなことを考えたときに、いろいろと現地に人を出して特にやったらいいじゃないかというようなことを話をしたら、なかなか外務省予算がないのだ、費用がないというような話があった。そういうようなことに関係して、私はここで本省予算在外公館予算のところで、それらに関して十分にそういうような突発的なことが起っても、そういうようなことをし得るというような一体余裕があっておるのかどうか、これは多分そういうつもりでおやりになっておるのでしょうけれども、特に気になるものですから、本省外交運営の問題、あるいはまた、在外公館外交運営充実に必要な経費などというようなものは、割合少いのじゃないかというような気がするのですが、これで一体すべてのものが軌道に乗っておるとは言えないでしょうけれども、そういう突発的なことが起きたときにでもお困りにならないような方策をとっておるものかどうか、気になるものですから、その点を一つまずお尋ねしておきたいと思います。
  44. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今お話になりましたように、戦後の外務省予算というものは、戦前から比べてみましてもむろん非常に少い。それから戦後の今日だけのことを考えてみましても、私は決して十分だとは思いません。そうしてことに現在ではほとんどぎりぎりと申しますか、機に応じ変に応じていろいろ活動をするというような費用というものは、あらかじめ予定がつきませんから、計上することが非常にむずかしい関係がございます。従って外交運営費とか、いろいろなような形で若干は余裕を取ってはおりますけれども、それ自体が非常に少いことも事実でございます。従って、今後日本が安保理事国として、世界の国々と日本と二国間の問題、あるいはアジアの問題ばかりじゃなく、世界の各国の問題についてやはり発言をしていかなければならぬというふうな立場に立ちますと、相当の調査費なり経費なりを取っていかなければ、ほんとうの充実した活動はできない。現在少額の予算で、いろいろ御批評はありますけれども、ある意味からいえばよくやっておるというようなふうに私は考えておるのでありまして、もう少しく充実して参らなければならぬと思います。
  45. 笹森順造

    笹森順造君 そこで、前には軍の外務省に対してアタッシェというものがあったのだが、今はそれがなくなってしまった。今度は文化アタッシェみたいなものを考えてぼつぼつやっておいでになるようですが、外交の上外れ文化の面からよほど平和的な外交経済的な外交をやるのには、その方面にもう少し制度の上でも文化アタッシェというものは必ずあるのだ、あるいは経済の面でも前の財務官みたいなものがもっと強化されるのだという、ほんとうの意味で強化されるのだという方面に、平和的な外交、文化的な経済的な面で、組織の上でももう少し強化されていけば、自然と予算もついていくのじゃないか。今度は、失礼なようですけれども藤山外相だから予算を取るのは上手だろうと思って私ども見ておったら——今までの外務省予算の取り方は実に下手だと、失礼ですけれども私はそう思って見ていたのですが、ところが出てみると、そう違わないような気がするのですが、そういう必要性を組織の上でももう少し研究されて、であるから必要なんだ、ただ領事館をたくさんふやすというようなことばかりでなくて、そういうようなことを根本的に今のお話の国連における御活動なりはもちろんのことですけれども、そういうふうに、外務省というものを戻していくのでなくて、それ以上に日本の平和外交が届くような御配慮を、もう少し具体的になされたらいいのじゃないかということで、実はアタッシェのようなものの御構想があるかどうか、あるいはアタッシェのような予算についてはどういうもの、があるか、そういうことを具体的にお伺いしたかったのです。
  46. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) お話のように、いろいろな活動をやって参りますために、もっと充実して参らなければならぬと思いますし、ことに文化アタッシェというようなものは、やはり今後の日本の平和外交を推進していく、日本の実情を知らすという意味において、非常に私は必要なことだと思います。従って、制度的にもそういうことをもっと進んで考えていくことは必要なのでありますけれども、ただ問題は、これは実は非常にむずかしい、デリケートな問題になりますけれども、文化アタッシェの人選というものは非常にむずかしいのであります。文化関係を扱うということ自体から、文化アタッシェというものを置きますと、いろいろ各省から、また文化アタッシェばかりでなくて、経済アタッシェのようなものにつきましても、そういう方がほんとうに任地国の語学もでき、あるいはそうした経験もある方が来ていただけますれば有効なんでありますけれども、率直に言いますと、必ずしも任地国の語学が有能でないという方が、いろいろな関係上おいでになりますと、そうするとその方に外務省のプロパーの仕事をしている人がつきっきりで仕事をしなければならぬということになると、その文化アタッシェができただけに現在の公館の人が人減らしがあったような形になることも起ってくるわけなんですね。ですから、その文化アタッシェということ、そのことはわれわれも非常にいいと思いますししますが、そういう点を各方面に十分認識していただいて、ほんとうに適当な人ができるというのでないと、ただ制度だけ置きまして、制度があるから、これをこうしろ、ああしろということになってきますと、今のように外務省プロパーの仕事に使われている人がその方にさかれてしまう。これは現に過去においてあった実例だと思います。率直に言って。ですから、そういう面もあわせ考えまして、やはり一方では外務省のプロパーの活動費もふやし、またそういう方でも、あるいは任地国の語学ができなくても、文化的貢献もし得るという方もあり得るのですから、そういう方が来る場合には、そういう方についているような、つまり通訳をし、あるいは手伝いをするというような人もあわせて予算上措置されないと、かえって困るというような場合があるわけです。まあそういう非常にデリケートなむずかしい面があるのを御理解をいただいておきたいと思うのですが……。
  47. 笹森順造

    笹森順造君 ところで、まあアメリカ日本の美術品が招かれて好評を受けておる。これが今どれだけ日米関係をよくしたかわからぬし、あるいは日本に対する理解を深めたかわからぬ。ああいうようなことを考えてみた場合に、今度もう少しこれはアメリカばかりでなくて、ヨーロッパ各国、あるいはまたあまり日本ほど発達していないところの国々でもよろしいから、そういうようなものを、今のような文化アタッシェというようなものはお話のごとくでございましょうが、もし漸次これを強化してやるとしても、これはまあ一まとめにして全世界を回ることもできるものだから、ああいうものをお考えのうちに入れて、あるいはまたそういう費用を見ておるかどうか、これはよほど具体的に、しかも割合に効果があると思うのですが、これは一つ藤山外務大臣が大いに力を入れましてやれば、いい似合いの仕事になるのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  48. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) お説の通り、私ども日本の古美術を持っていくとか、あるいは日本の現代美術を持っていくとか、あるいは日本の演劇、映画を持っていくということは、非常に必要だと思うのです。やはります外交の基礎になるものは、日本を理解してもらうということが一番の基礎でございまして、その基礎のなにがかたまっていなければ、なかなか外交もできていかない、やりにくいという点もあります。ですから、そういう面については特に力を入れなければならぬので、ことしあたり、そういうことに一応なっているのは、国際文化振興会だと思います。ことしの予算は、相当大幅にふやしていただいたわけです。国際文化振興会などは、必ずしも大規模にはやれない状態ですけれども、小規模には最近どんどん拡充していっております。昔は、国際文化振興会は、御承知のように対支文化事業費をそのまま使ってやったので、相当金額も持っておったのですが、今日はそういうわけにも参りません。また、それ以外に、直接、何か国がそういう関係で展覧会を開催するとか、あるいは演劇団を送るとかというような文化的な交流に役立つような経費を盛っていくことにすればいいのですけれども、必ずしもこの予算にそういうものが十分あるとは思えません。ただ、若干、今度情報文化局の費用もふえまして、現在条約を作っておりますところで、経費がないために、教授の交換とか何とか、そういうこともできないようなところもございますから、文化協定を作っております以上、その裏づけとなる措置も若干やって参らなければならぬと思います。幾らかそういうようなものも、ことしの予算では、芽を出したというとなんでありますが、予算を取ることが下手なのは、まことに申しわけないと存じておりますけれども、そういう現在の状態でございます。
  49. 西田信一

    主査西田信一君) 他に御質疑はございませんか。——御質疑もないようでございますから、外務省所管については、この程度で終了したいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 西田信一

    主査西田信一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  午後二時まで休憩いたします。    午後一時二分休憩寺    午後二時二十六分開会
  51. 西田信一

    主査西田信一君) 第二分科会を再開いたします。  総理府のうち、経済企画庁所管を議題といたします。政府から御説明を願います。
  52. 世耕弘一

    国務大臣世耕弘一君) 昭和三十四年度経済企画庁予算説明をただいまからいたします。  歳出予算の要求総額は三十七億五千八百九十一万九千円でありまして、これを前年度予算額二十九億九千八百四十万八千円に比較いたしますと、七億六千五十一万一千円の増額となっております。この増額となってたおもな理由は、離島事業費が五億九千九百四十一万三千円と、国土総合開発事業調整費において一億円増額となったためであります。  次に経費の内訳を申し上げます。第一に、経済企画庁の項では要求額は三億五千八十六万四千円でありまして、前年度二億九千二百五十三万二千円に比較いたしますと、五千八百三十三万二千円の増額となっております。この要求経費の内容を御説明申し上げますと、人件費二億一千四百四十五万一千円と事務費一億三千六百四十一万三千円であります。この事務費は、一般庁務の運営経費並びに次に申し上げる内容のものであります。  一、わが国経済に関する長期計画及び年次計画の策定、国際経済協力の推進、基本的経済政策企画立案並びに経済審議会その他各審議会の運営等に要する経費が八百五十万一千円であります。  二、わが国内外の経済の動きを的確に把握し、また経済白書等の報告書及び統計指標を作成する等経済動向の調査分析に必要な経費が三千六百三十二万五千円であります。  三、わが国経済の構造と経済の循環その他経済の基本的な事項を調査研究するために要する事務費が三千五百三十七万六千円であります。  四、河川、湖沼、港湾、沿岸海域等の公共の用に供する水域の水質の保全をはかり、あわせて水質の汚濁に関する紛争の解決に資するため、水質審議会を設置し、公共用水域の調査に関する基本計画の決定及び公表、並びに水質規準の調査設定及び紛争処理事務を行うため、新たに二十名の定員を増加し、これに必要な事務費一千八百十九万九千円を要求しております。  第二に、国土開発調査費の項では、要求額は二千二百十一万六千円でありまして、前年度一千九百七十七万八千円に比較いたしますと、二百三十三万八千円の増額となっております。この経費は、国土総合開発法、電源開発促進法、特殊土じよう地帯災害防除及び振興臨時措置法、離島振興法、東北開発促進法、台風常襲地帯における災害の防除に関する特別措置法等の各法律に基きまして、それぞれ災害の防除と生産力の発展を促進する諸施策を樹立するために要する経費と、国土総合開発審議会、電源開発調整審議会、特殊土じよう地帯対策審議会、離島振興対策審議会、東北開発審議会、九州地方開発審議会、台風常襲地帯対策審議会の運営に要する経費であります。なお九州地方の総合開発を促進するための調査費として四百七十五万円を要求しております。  第三に、土地調査費の項では要求額は一億七千七百二十七万円でありまして、前年度一億七千六百八十四万二千円に比較いたしますと、四十二万八千円の増額となっております。その内容を申し上げますと、基準点測量におきましては四等三角点の新設点数を九百五十点と予定し、これに要する経費として二千七百十七万九千円、国土調査法の規定によって、地方公共団体、土地改良区等が地籍調査を行いますときの補助金として一億四千七十万円、土地分類調査と水調査については六百八十万円となっております。  第四に、国土総合開発事業調整費の項では六億五千万円を要求しております。国土総合開発法に基く開発事業は、各省各庁によってそれぞれ所管を異にして実施されるため、開発事業相互の進度に不均衡を来たし、総合的な効果が発揮せられない場合があります。このような場合に、経済企画庁がこれを調整いたしまして、総合開発の効果を上げようとするものであります。特定地域及び調査地域並びに東北地方、九州地方及び首都圏地域における開発事業を対象といたすものであります。  第五に、離島振興事業費の項と揮発油財源による離島振興道路事業費の項を合せて要求額は二十五億五千八百六十六万九千円でありまして、前年度十九億五千九百二十五万六千円に比較いたしますと、五億九千九百四十一万三千円の増額となっております。この経費は離島振興法に基きまして離島において国が行いますところの治山治水、道路整備、港湾漁港、食糧増産等の公共事業に必要な経費と、地方公共団体等が行いますところの公共事業、農山漁村電気導入事業、簡易水道事業に必要な事業費を補助するための経費であります。この経費は、経済企画庁に一括計上したもので、その使用に際しましては、実施に当る各省所管に移しかえるものであります。  以上で経済企画庁の予算説明を終りますが、なお、御質問に応じて詳細御説明を申し上げたいと存じます。何とぞよろしく御審議の上、すみやかに可決せられんことをお願いいたします。
  53. 西田信一

    主査西田信一君) 順次御質疑をお願いいたします。
  54. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 この前予算の一般質問のときに、利は経済企画庁の一番重要な、しかも一番大きな仕事として、わが国経済の診断を正確にすることでなければならぬということを申しました。これはすでに各年次経済報告書を経済企画庁は毎年出されておりまして、その中に実にこまかく、ていねいに経済の分析をなさっておりますから、われわれも敬意を表しておりますが、しかし正直に年次経済報告書においては見通しが若干甘かったり、あるいは見通しが間違ったことについて率直にこれを述べて、将来あやまちなきを期したいということも書かれてあります。その意味では、私は年次経済報告書を通じて経済企画庁がとっておいでになる態度については、何も申し上げることはないわけです。ただ非常に複雑多岐な広範な統計を集約して結論を出し、そうして分析診断をされるわけでありますから、よほどその組み合せその他においてスピードと、そうして精密さがないというと、診断の正確を期するわけにいかない。で、私の意見的な質問に対して、世耕長官は唯一の答弁として、電子計算機を据えることにしたとおっしゃったのですが、電子計算機を買えばそれで全部解決することになりますか。まだそのほかに足らない点がずいぶんあるのじゃないでしょうか。私は今長官が説明せられましたこの予算説明書の中で、経済の見通し、判断の正確を期するために、特段の措置がとられておるとは受け取ることができません。この点はどういうことですか。
  55. 世耕弘一

    国務大臣世耕弘一君) 過般来私の所感の一端を申し述べておいたつもりでありますが、経済の見通し、計画というものは、御承知通り非常にむずかしいものでありまして、ある意味において生きものをとらえるような感覚が必要である。このために往々にして見通しを誤まり、また見当違いなこともあり得るということを申し上げておいたのでありますが、それについて特に御指摘をいただいて、今後どういうふうな方法で経済の見通しを、実際に即した面を打開していくことが考えられるかという御指摘があったと思うのでありますが、その節につけ加えて私が申し上げたことは、今現在、企画庁がとって持っておる統計は完全無欠なものではない。精一ぱいの努力をいたしておりまするが、なおこれでわれわれは満足しているものではない。さしあたって一番統計を作る上において必要なことは、数字の正確なことをつかむこと、しかもその数字は敏速で、しかも的確に確保すること、こういうことが企画庁で一番判断の資料の第一点としなくてはならぬ。それについては、現在の日本の統計は残念ながら十分とは言い得ない。まず、別な意味から申しまして、早く集まってきた数字をば計算するということが手初めとするなれば、計算機ということがおのずから考えられる。たとえば、ごく高度の電子計算機を使いますれば、専門家が七十五日かかるのがわずかに二分二秒で正確な計算をするというようなこともすでに証明されておりますが、そういうふうな精巧な機械を用いなくても、それに類する機械は取り入れて、まず計算の速度を早めるということが一つの問題である。そういう意味で、企画庁といたしましては、三十四年度に電子計算機を活用するということを実は申し上げたのであります。  次に、要約して申し上げたいことは、それだけではまだ満足するわけではございませんので、御指摘によっての御注意をさらに充実するためには、私は新しい情報を確保するということが経済見通しに必要ではないか、こういうふうな観点からも、現に企画庁は海外に一部人を派遣いたしまして、先んじて海外のニュースをとるような方法を今やっております。しかし、それは一地方だけのものでありまして、将来は少くともヨーロッパ各国の主要都市に数カ所ぐらいはやらなくてはならないのではないかというようなことも、実は目安の中へ入れておるような次第であります。  なお、そのほかに、今後の日本経済のあり方、また進め方、あるいは科学的にいろいろな技術の変化もあり、産業の分野も動向が変化するのでそれをキャッチし、予想しながら、新しい根本的な態勢を立てるために、経済調査研究所というものを拡充しつつ今日に臨んでおるような次第であります。まあそういうふうなわけでございまして、政府予算とにらみ合せながら、日本経済の見通しをなるべく誤差のないようにもっていきたいというのが、企画庁としての今日の態度であるということを申し上げたいと思うのであります。  なお、その他の点について、計数等に関しましては、政府委員からお答えいたしたいと思います。
  56. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 まあ、ただいまの長官の御答弁は抽象的な方針としてはそれで私も了解をいたしますが、問題は経済企画庁のそういう経済の見通し、診断を正確にせられるということは、やはり一つの目的を持っていなければならぬと思うのです。何の目的のために正確に見通しを立てるかということでなければならない。で、その目的はわが国経済の発展なりその他に貢献をさせるということであろうと思います。ところが、私が今までのところをずっと見ておりまして、一つまだ足りないのではないかと思いますのは、たとえば例を長期経済計画にとってみまするというと、なるほど、長期経済計画によって国民総生産であるとか、国民所得であるとか、鉱工業生産であるとか、こういうものの伸びについては相当長期にわたってある一つの構想がまとめられ、そして大よそのサイズというものも大体見通しがつくようになっている。ところがただそれだけであって、そういう将来長期の経済の見通しの年次において、しからば反対に国家財政の規模はどうあるべきか、国家財政のその見通される規模の内容として、その構成は一体どうあるべきかというようなことについては、私が不勉強かもしれませんが、とにかく今まで伺ったことはないように思います。それで経済企画庁としてはそこまで一歩を進めておやりになる必要があるのではないか。もちろん予算化いたしますのには大蔵省の権限に属するかもしれませんが、その大蔵省が間違いなく国民の幸福を願って予算化していくためには、やはり一つのプランというものが必要である。そのプランのメーカーはあなのところであるわけですから、そこまで突っ込んでおやりになる必要があるのではないか、こう考えるのですが、今現にそれがおありになるのか、私はないと思いますが、ないとすれば、将来どういうふうなお気持でおいでになるのか、私が今申し上げたようなことを構想に持っておいでになるのか、これを伺いたいと思います。
  57. 世耕弘一

    国務大臣世耕弘一君) 御指摘の点はないということはございません。あります。また、なくちゃならぬはずであります。ただそれが御期待に沿うほど完全なものであるかどうかということには私は言い切るだけの勇気を持ちません。しかし、ただ問題は長期計画をする場合に、あるいは経済の見通しをする場合には、どうしても財政と経済とのつり合いというものがなければならぬと思うのであります。ところでその財政の完全な確保をするのには、どうしても日本国民経済の確保ということが当然出てくるわけであります。そこに雇用の増大もあれば、産業の安定、成長という問題が出てくると思うのであります。そういう事柄を全部勘案いたしまして、いわゆる財政の基盤となる経済の分析を実は企画庁がやっておるのでありますが、こういう建前からもしその経済体質の不完全なために伸び悩みをしておるようなところは大いに施策を施して、その改善の実を上げて伸ばせる。また、ときに行き過ぎた面については調整をはかる。そうして健全な、安定しつつ成長をはかるというような行き方がいわゆる企画庁としての使命でもあり、その対策に基いて実は諸政策を進めておるのでありますが、この点について特に具体的な面に関しましては、局長からお答えさしていただきます。
  58. 大來佐武郎

    政府委員(大來佐武郎君) ただいま大臣からお話がございましたように、一昨年の末にできました新長期経済計画の中で、財政の役割という一項目がございまして、国の経済バランスの中で、政府の財政の面でどのくらい大体使うか、税収の総額はどの程度の見当になるかという大まかな数字をあげておるわけでございまして、収入では租税、専売益金その他の収入、社会保険負担というような内訳を出しまして、支出の方では財政消費、行政投資、振替支出、その合計という形で三十七年度の大まかな見通しを出しております。ただまあ財政はそのときどきの政策によって相当影響される面がございますものですから、もっと詳細なものが必要ではないかという御意見もあるかと存じますけれども、現在の計画ではこの程度の大まかなもので一応とどめておるわけでございます。
  59. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 少し私が自分で自分勝手な我流な意見を持ち、あるいはそれをもとにしてお尋ねをしているかもしれませんけれども、僕はただいまの日本の資本主義体制というものが、ここ当分の間現状維持で進んでいくということであれば、経済の長期成長の見通しというものは若干の狂いはあるにしても、根本的に狂いを生ずるような、そういうことは絶対ないと思うのです。その場合にここから五年、十年、十五年なり先を見通す場合に、そういう経済の成長は、そう大きな狂いなく伸びていくとした場合に、そこで日本国内の特殊事情によって急激に変化を来たすもの、それから急激に変化は来ないが、変化をさせるような努力をしなければならぬもの、そういうものがあると思うのです。そういうものが国家財政の規模にも響いてくるし、また一人当りの国民所得等にも及んでくるわけであります。ですから私は経済企画庁が経済の成長に対して正確な資料をとり、資料をもとにして将来を見通されることは、これは当然おやりにならなければなりませんが、これは言葉で言えば、国民に向って経済成長のために大いに働いてくれという号令的なもの、激励的なものだと私は受け取っていいと思うのです。国民にそういう激励的な一つの声明というか、宣伝をされるならば、反対に国民がその経済がそこまで成長したときには、個人個人がどれだけのリターンをもらえるのか、報酬をもらえるのか、そういう楽しみというものをやはり与えてやらなくちゃならぬと思うのです。ですから今若干あるようにおっしゃったのですが、私はあとで時間を少し頂戴して私の持って、いる意見の内容を申し上げたいと思いますが、ものの考え方としてはそういうことでなければならぬのではないか、そういう構想については今経済企画庁がおやりになっている点は少しまだ足りないのではないか、こう私は考えるのです。
  60. 大來佐武郎

    政府委員(大來佐武郎君) ただいま御指摘の点は確かにその通りだと存ずるわけでございますけれども、計画の中自体にこの経済成長計画で言っております年六・五%程度の成長が実現された場合には、たとえば昭和三十七年度に一人当りの消費水準——大体これは生活水準と見てよろしいかと思いますが、これが三十一年度に比べて三八%も上昇することになるのだ。これだけ生活は楽になる。また消費の内容もこの程度変るという大まかな数字が出ておるわけでございます。それから財政の面でもやはり大きな考え方といたしましては、財政消費、消費的な財政支出はできるだけ節約して、行政投資と呼んでおりますが、これは道路、港湾その他公共の基礎施設になるような面の支出を全体の支出の中の割合でふやしていく。それから振りかえ支出、社会保障的な面を含みます項目でありますが、これも全体の比率をやや上げていく、まあそういう根本的な考え方を計画の中には示してあるわけでございますけれども、まあ具体的な点でまだ足りませんし、あるいは計画の内容についての一般の理解を求める面で少し努力が足りないところもあったのではないかと感じております。
  61. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私はこまかい点に入る前に、総括的に一つの区切りをつけていこうと思いますが、その区切りというのは何かと申しますと、ただいまは経済企画庁がいかなる作業をしようと、ただその作業を採択してこれを予算化する仕事というものは大蔵省に全部の権限が移されているわけです。それをいかに経済企画庁の資料を取り入れようと大蔵省の独占権に入っている。そこで私としては大蔵省の予算編成権というものを、やはり経済企画庁の経済企画の立案が大蔵省の編成権に相当な関与をなし得るような、そういうものでなければいけないのではないかということを考えているわけであります。従って、あまりにも今の日本の財政あるいは財政金融の運び方というものは、大蔵省に権限が集中しすぎていはしないか。経済参謀本部としてはみずからの立てた案がやはり実現をしていくようにもう少し高度の参加権、そういうものを持たなければいけないのではないか、こういう工合に考えているのですが、この点についての御意見はいかがですか。
  62. 世耕弘一

    国務大臣世耕弘一君) ごもっともなお説だと思いますが、企画庁といたしましては、それぞれ精査立案いたしまして、その案をもちまして大蔵省と折衝いたします。なるべく企画庁の基礎資料をもとにおいて立案してもらう、経済対策を立ててもらうということが建前となっておりますが、なお御指摘のような点にも必ずしも理想通り行っていないと思います。今後はそういう面について十分国策の伸長をはかりたい、かように考えております。
  63. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それではこれから少しこまかい点を伺いますが、その前に、過日一般質問のときにまだはっきりお答えをいただけなかった三十三年度の主要経済指標の見込みと三十四年度の見通しについてもう一ぺん、ちょっと繰り返すようでありますが、お尋ねをしたい。この前一般質問のときには、私は、ちょうど三十四年一月の鉱工業生産指数の実績が発表された直後でありましたから、その一六一・七という数字をあげて、これは終戦後の最高数値である、しかも昨年の秋からずっと上り気味で来まして、最高数値を示している。あと二月と三月の二カ月の実績が出れば三十三年度の実績というものが出てしまう。私がかりに試算をすれば、一月はこれは実績ですが、前年対比一三%の増でありますから、二月と三月とを一二%の増で想定をするというと、二月が一五八、三月が一五二になる。そうして季節修正をやっても大体一四九・七くらいになりませんか、こういうことをお尋ねをいたしました。そうしたら大堀局長は、一五〇・幾つになる、こういう工合におっしゃった。私が試算したよりは多くおっしゃった。ところがけさの新聞を見ると、もう二月の実績が出ている。私が想定した一五八よりもはるかに多くて一六二・二ですか、という数字が発表されている。ですからもう三月の推定はそう大きな狂いのないところで計算ができるわけです。そういう立場から、昭和三十三年度の実績の見込みというものは最終的に幾つになる、こういう工合の見通しをお立てか、それを伺いたい。
  64. 世耕弘一

    国務大臣世耕弘一君) 栗山さんは相当痛いところを突いてこられたというふうに思いますが、具体的の問題については調整局長から御答弁申し上げます。
  65. 大堀弘

    政府委員(大堀弘君) 三十三年度の鉱工業生産指数につきましては、ただいま栗山先生御指摘になりました通り、一月が一六一・七、二月は通産省が速報で出しておりますのが、一六〇・二でございまして、三月はまだわかりませんが、大体の推測から申し上げますと、あと一カ月だけでございますが、これはこの程度の横ばいと考えまして、この間鉱工業生産としましては一五〇・五と申し上げましたが、大体一五〇程度に相なるのではないかと、かように考えておるわけであります。
  66. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そういたしますと、一五〇・五ということになる、しかもあなたの方でお出しになった鉱工業生産水準の三十四年度の見通しが一五五・二ということになると、一六〇・一という、三十三、三十四年度の率、増加率、これはずっと大きく食われてしまって一三五・二ぐらいに落ちてしまう。要するに、三十四年度の経済の伸びというものは、当初の六・一%増の見込みから半減してしまう。こういうことになるわけです。従って私は三十三年度の実績見通しが一五五・五とほぼ確定してきた場合においては、三十四年度の見通しの一五五・二というのは、やはり修正しなくちゃいけないのではないか、こういう工合に考えるのですが、いかがですか。
  67. 大堀弘

    政府委員(大堀弘君) 私ども提出しております経済の指数の内容については、国民総生産、その中で産業別に申しまして、第一次産業、第二次産業、第三次産業とございまして、鉱工業生産指数だけは割合に早く数字が出て参るわけでありますが、その他の第一次産業、第二次、第三次産業につきましては、なかなか統計捕捉が困難でございます。また同時に需要面、投資の面、消費の動向、こういった面の伸びというものが、やはり非常に統計が、栗山先生御指摘になりましたように、非常におそいわけでございまして、昨年十二月までわからない数字もあるわけでありまして、全体としまして、私どもこの計数を今日の段階で動かすということは——これはまあ資料として出ておるわけでございますが——今日の段階で直していくというには、データがそろいませんものですから、在庫がどう変動し、設備はどう変動し、どういうように影響があるかということは、もう少し推移いたしませんと困難でございますので、その点については配慮いたしたいと思うのでありますが、数字といたしましては、現在の民間活動の上昇というものが健全な活動で自立回復力をもって伸びてきて立直りを示しておりますので、来年度の鉱工業生産につきましても、大体今日伸びておりますような状態で伸びていくものと考えられますので、結果におきましては、鉱工業生産については来年度の一五五というのは、御指摘のように多少高い結果になるのではないかと思います。伸び率としましてはあまり変化はない。こういうことになるのじゃないかと思います。
  68. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 今ほかのいろいろなファクターがそろわないからとおっしゃったのですが、それはその通りですけれども、われわれがいただいておるこの主要経済指標では、国民総生産の三十三年度対比の四年の率と国民所得、鉱工業生産水準の率はみんな同じなのですね。六・一%増になっています。国民総生産もそうであるし、国民所得もそうである、鉱工業の生産指数もそうである。こういうことだと思うのです。そこで私は鉱工業生産水準というものが、一つある程度確かなものが出ましたならば、それでほかのものもほぼ類推できるのではないか。そういう立場からお尋ねをしているわけです。
  69. 大堀弘

    政府委員(大堀弘君) 私どもの見方といたしましては、鉱工業生産が実は昨年の九月に見通しを立てました当時でも、下期七%上昇ということを私どもは発表したわけでございますが、一般にはほとんどそういう見方は楽観視過ぎてとてもいかぬ、下期にそんなに伸びることはとうてい予想もできないという一般の空気が当時ございまして、むしろこのまま放っておけば十一月ごろには経済の底が割れるのではないかという御心配、御意見があったのであります。実は非常に予測が困難でございますが、現状におきましては、実は私どもの予想したことよりも多小高い目の実績が出てきている。こういうふうな現状で、先のことを予測することは、先ほど大臣お話のように非常に困難なことでございますが、現在の数字で申しますと、鉱工業生産だけは非常に上っておりますが、第三次産幸等は、私どもが予測した線とそう大きな食い違いはないのではないか。第一次産業はあまり変化はないと考えられます。消費の伸びあるいは在庫の変乱が昨年悪いときはなかなか買い付けたい。よくなってきたらみんな一挙に習い付けているということもございますし、その辺の経済の需要要因の動向というものがもっとはっきり数字的につかめませんと、なかなかどこにどういうふうにいくのか、第二次産業にいくのか、第三次産業にいくか、その辺の分析も非常に困難がございまして、私どもお説のように三十三年度鉱工業生産としては、ここに出ておりますような数字の率になると思いますけれども、全面的に数字を直すというには、データがまだ不十分なわけでござい、して、御了承いただきたいと思います
  70. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 その程度で一応了解しておきますが、私が言いたいところは、要するに統計収集のスピードが非常におそいからこういうようなことが出てきたわけなんです。問題は、あなたは今、去年の秋にどれだけにする九非常に議論をしたということですが、われわれも去年の七月の特別国会のときに、当時の大蔵大臣と非常になべ序論をやった。そのときに大蔵大臣は終始一貫して在庫の調整から何からもう秋にすべてをかけておられた。そこで、われわれはもう大体いいのではないか、少し積極政策に転じていいのではないか、こういうことを主張したのですが、大蔵大臣はがんとして聞かなかった。ところがあなたの方で、この間も一般質問のときに出しましたが、経済企画庁経済研究所四半期報告を初めてお出しになって、早期の診断をやるのだ、こういうふれ込みなんです。これは非常にけっこうなことなんですが、これを見ると、昨年三十二年度からずっと国民生産が落ちてきたのが、三十三年度の第一四半期で底をついて、第二四半期にはそれが上ってきたのです。こういうことがあらゆるデータから示されている。そうすると勝負はわれわれが勝ったということになる。大蔵大臣も負け、経済企画庁長官も負け、勘でやって……。勘と計算との勝負なんです。それはそれとして、そういうふうに出された経済研究所の速報ですら、七月から九月までの分が十二月に出ているのですね。これじゃやはり間に合わない。従ってこういうものをうんともっとスピードを早めてやる、そういうことが必要ではないかということなんです。そういう可能性が、ただ技術的にあるかどうかということなんですね。四半期まで切られたというのはけっこうなんですが、今度切られたのを、もっと早くできるということが技術的に可能かどうか。予算が必要であるということならば、そういう意味予算を取らなければならないでしょう。
  71. 世耕弘一

    国務大臣世耕弘一君) 大へん大事な御注意であり、御指摘だと存じます。私も実はその点について苦慮しているものであります。できるだけ人的にもまたその他の技術的にも、御指摘に沿うように今後努力いたしたいと、かように考えております。
  72. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それは実際事務的には可能なんでしょうか、その早めるということについては。
  73. 宮川新一郎

    政府委員宮川新一郎君) 大臣がお答え申しげしましたように、われわれといたしましてはできるだけ迅速にいたしたいと考えております。四半期ごとの国民所得の分析を行うようにいたしましたのも、ただいま栗山委員御指摘のような趣旨に出たものでございますが、御承知のようにこの統計を作ります上におきまして、関係各省、各方面の全面的な協力を得ないとできない仕事でございまして、昨日もわれわれ庁縫いたしましたのでございますが、統計の不備の点が相当多い、また、せっかく統計を作る以上は、もう少し迅速にやると効果が多いという部面が多々出て参りましたので、企画庁といたしましても、近い機会に各省に対しまして統計整備上要請をいたすべき点は強力に要請いたしまして、できるだけのことをいたしたいと思いますが、ただ、何分非常に膨大な範囲にわたりますので、たとえば四半期でも、一カ月ぐらいおくれたあとで発表するくらいまでなかなかいかないのじゃないかと思いますが、できるだけ早めるような方向へ努力いたしたいと思います。
  74. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私が申し上げるのは釈迦に説法ですけれども、とにかく貿易の自由化への速度は、これは当然早まっていくと見なければならない。そうすると、国内産業のやはり再編成、大げさかもしれませんけれども再編成態勢にも入らなければならん。いろいろ今までよりももっとテンポが早く経済が動いていくと見なければなりませんから、そういう意味で産業指導を適確に、誤まらないようにするためには、万難を排してこういう見通しのスピード・アップのために全力をあげられるように私は要請をしておきたいと思います。そういうことのために予算を使われることについては、われわれは協力するのにちっともやぶさかでありません。どうか電子計算機だけに頼らんで、もう少し科学的に広範な一つ体制を作って進んでもらいたいということを要請しておきます。
  75. 世耕弘一

    国務大臣世耕弘一君) お答えしておきます。私は就任と同時に役所で私の考えを発表いたしましたときに、企画庁の役割は少くともレーダーのような役割を果す。しかも適確に、しかも正確に迅速にその把握したものをば発表の段階に持っていく。また一面、日本経済の根本である体質の面におきまして、どこの点が弱体でどの点が健康体であるか、あるいは将来安定成長させ得るとするならばどの点をば助成し、また発達せしめ、強化しなくちゃならないかということを、これもすみやかに診断して指示しなくてはならない。これが二つの一番大役ではないか。それをおそれれば、それはやぶ医者になるのだ。やぶ医者であってはかえって大きな被害を国民に与えるのではないか。この点で自分は推進していきたいということを実は申したのでありますが、今、栗山さんのおっしゃるのもその趣旨を御指摘になったように実は感じたのでありますが、全く私は御指摘の点は同感であります。ただ、日本の統計が非常におそい、不正確であるという一面は、これはたとえごとを言ったらはなはだ申しわけありませんが、患者を診断するときに患者はほんとうのことを言わない。実は病患を持ちながら、いいえ一向に悪くないと言うような、病状を訴えようとはしない。これはちょうど統計を要求してもほんとうの統計を渡してくれない、協力してくれぬというところに、よほどの、体質を見抜くだけの烱眼が必要であるということも、日本の国情の一端を物語るものではないかと思います。そういうようなことを克服しながら、各省と連絡をとって、御期待に沿うようにするのには、企画庁本来の使命を達成する上において、よほどの努力と決意と情熱が必要であるということを実は考えておるのでありますが、先ほど来御指摘いただいたり、また御意見をいただいておりますが、非常に貴重な御意見なり御指摘だと拝聴しておりますので、よくこの御趣旨を体して善処いたしたいと、かように考えております。
  76. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 まあこの問題はその程度にしましてですね、その次に、私は経済の成長とそれから国家財政の規模を含めて、国民所得として国民に還元をしていくいろいろな方途について、二、三気づいた点をお尋ねしておきたいと思います。  実は昭和三十一年度の長期五ヵ年計画、あなた方お立てになった長期五ヵ年計画を基準年度にしまして、そして六・五%の成長率で国民所得というものをずっと当ってみまするというと、十年先の昭和四十二年には、七兆三千八百四十一億、これが十四兆七千五百八十億になるわけです。約倍になるのです、計算しますと十年間に倍になる。従って国民としてはもう自分でそろばんを入れておれば、日本国民所得というのは十年たてば倍になるのですよ。今政府の約束した経済政策というものが進展していけばこうなるのですということはわかっているのです、はっきり。従って、国民のわからないのは、これだけ伸びていく国民所得を五年先なり十年先なりに政府はどう始末するであろうということがわからない、具体的に。そこで私は、過日防衛庁の長官に、大体自衛隊の費用を含めて、いわゆる軍事費というやつですね、軍事費というものは国民所得がどんどん増加していくのに対して同じ率で伸ばしていかれるかどうか、こういう質問をしたのですよ。そうしますとね、これは国立国会図書館で出している国会統計提要というのがありますが、それを見ますとね、昭和三十一年ごろからは国民所得に対する軍事費の率は一・七%なんです。ずっと変っておりません。そこでどうですと、こう言って詰め寄ったところが、伊能長官曰く、大体二・〇から一・七の程度で軍事費は要求していきたいと、こう言うのです。そうすると日本国民所得に比例して同じ、定率で、防衛費、軍事費というものを取っていくならば、自衛隊というものはひとりでにどんどん、どんどんでかくなっていくではないか。自衛隊の頭打ちというのは一体いつくるのか、こういうことを尋ねた。そうするというと、実は空幕、陸幕、海幕の方で第二次の今計画を立ている。それに従って試算をするのだが、いずれもこのくらいの率におさまるように将来立てていきたい、こう言うのですね。そうすると、戦争前に軍部がですよ、自分で軍備計画を立てて国会を押え、もう何者も有無を言わさず予算を取っていったそのやり方と同じになるんですよ。やはり政治というものが、この軍事費というものについては客観的ないろいろな立場からコントロールしていかなければならない、そういう意味で軍事費の頭打ちというものはどうする、安保条約に基いて、のアメリカとの共同防衛態勢に入る、政府はしばしば日本の自衛隊はそんなでかくできないのです、アメリカとの共同防衛の立場において日本はやっているのです、こういうことを言いながら、一方においては国民所得の伸びに比例してふやしていくのだということになれば、これはまたロジックが合わないわけです。だからそういうことについて経済企画庁としては、国民全体の立場から日本の軍事費というものが安保条約態勢下においてこれくらいであるべきである、絶対額においてもうスロー・ダウンしていかなければいけない、率で同じに引きずってしまってはいけないのである、こういう方針というものがやはり明らかにせられなければいけないと考えるのです。
  77. 世耕弘一

    国務大臣世耕弘一君) 詳細の点は局長から御答弁申し上げますが、私の感じを一応申し上げておきます。今日の世界情勢は、ある意味において刻々に変化しつつある。ある問題に対しては長期的な見通しもつきますが、ある問題に対しては半年先もわからぬような状況である。それに対して一応の目安はつきますけれども、これが見通しであるというようなことをちょっと言い切れない今の状況であると思います。ただしかしながら、一応の見通しは企画庁としても今日持っておりますから、その点に関しましては政府委員から答弁させます。
  78. 大來佐武郎

    政府委員(大來佐武郎君) 実は一昨年できました長期経済計画では、防衛関係の支出が幾らになるか、財政支出の内訳についての数字は何も示しておりません。実はただ防衛を含む行政消費、財政消費という項目を、まあ全体の国民総生産に対する割合を幾分下げていこうという程度に出ております。それ以上具体的なものは実は出しておらないわけでございます。また、事実なかなかいろいろむずかしい問題がございますから、計画でそこまではちょっと言い切れないという実情でございます。
  79. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私これからいろいろな二とを申し上げますが、一つの例として申し上げたわけですよ。こういうものは非常に政治がかった問題ではあるけれども国民経済立場から、政府はしばしば言明しているから、その言明している線に沿って日本の防衛力というものを想定すれば、とめどもなく国民所得に比例して伊能長官の言うように二・〇から一・七もふやしていかなければならぬというものではないと思う。だからその辺に適当な頭打ちをする余地はないのか、こういうことなんですね、伊能長官は質的な充実をやっていくというのですが、憲法的には原水爆、政治的には小型核兵器を絶対に日本に持ち込まぬと言明したのだから、それを除いてしまったあとの自衛隊の装備の充実というものは、大体想像つきますよ。だからそういう意味では、そんなに伸ばしていく必要は毛頭ないわけです。そういう点を、純経済的な立場から大蔵省なり、防衛庁なり、あるいは内閣に、一つのプランをもって指導をせられる責任があるのじゃないかということが、この問題の一つ。  それから第二番目は、今国民の一番の悩みは何かと申しますというと、老人人口がどんどんふえていく、それで、これについては大体日本のただいまの老人を計算してみますと、老齢化指数という指数を使っておるようで、私はよくわからないものだから、いろいろあっちこっち調べてみてやっとわかりましたが、ゼロから十九歳までの未成年者ですね、これの総人口でもって六十歳以上の老人の総人口を割ったのが老齢化指数というのだそうです。それで見ますと、日本の現状は一八・七ということです。六十歳以上の老人は現在七百二十万人おります。ところがその老齢化指数というやつが、これが大へんな問題なので、私がちょっと調べてみると、たとえばヨーロッパ方面のイギリスそれからフランス、スエーデン、ベルギーなんというところは大体四五以上です。アメリカはちょっと下って二八、そういう状態にあるのに、日本はそれじゃヨーロッパ並みまでに何年くらいかかって進むかということが問題なんです。それを人口問題研究所で私計算してもらいましたところによりますと、昭和四十年には老齢化指数は二七・八になり、大体アメリカのところまでいってしまう。昭和五十年には四二・七です。ヨーロッパの一番小さいところくらいにいってしまう、昭和七十年になると五〇をこすだろうという人口問題研究所の話なんです。昭和五十年のときの老人は絶対数でどのくらいになるかというと、一千二百万人に大体なります。従って、今国民年金の法案が国会で審議中でありますが、国民所得が十年で六・五も複利計算でふえていくわけですから、従ってその国民所得の相当部分をやはりさいて、家族制度の崩壊した日本において六十歳以上の老人の生活保障ということを考えなければこれはゆゆしい社会問題になると思うのだね。ところがそういうことについて、遺憾ながら経済企画庁の方のいろいろな御説明では、われわれが納得し得るような十分なものを拝見したことがないわけです。
  80. 大來佐武郎

    政府委員(大來佐武郎君) ただいまの御指摘の点は、老齢化がふえる、特に六十歳以上の人口が増加しまして若い方が減るということは、非常にこれから日本の人口動態から顕著になる現象でございまして、実はこの前の五年計画の中にも、こういう問題は五年程度の期間では見通しが違った形が出て参りますから、もっと長期の見通しが必要なゆえんだということを、一部触れておるわけでございますけれども、今後の二十年間というのが日本の人口動態としては、世界にもちょっと類例を見ないような顕著な形態になるかと思います。まあそのような点で老人がふえて参りますので、当然社会保障の面も充実が必要になって参ると思いますが、この前の五年計画の際には、実は原案を作成しておりますときに、まだ年金関係は、だいぶいろいろ議論は行われておりましたのですけれども、具体的な形をとっておりませんで、数字的にあげることが不可能でありましたので、ただ計画書の中にできるだけ早くこの国民年金制度の本格的なスタートをするのだということを抽象的にうたったにとどまったわけでございます。さらにまたそういう将来の計算をいたすような場合には、こういう問題をもう少し具体的にはじけるかと存じます。なお栗山先生はその六・五%十年間延長して御計算になったようでございますが、私どもできればそのまま持続してほしいと思いますのですが、まあ一応この計画では三十七年まで六年間、その先が持続できるかどうかまだはっきり……。その辺のところは少し成長率が下る可能性もあるのじゃないかというふうに考えております。
  81. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そのことは国民年金の充実のことに結局は関連するわけですが、私がなぜ申し上げるかというと、国民年金なんというものは、やはり実際の効果を現わしていくのは二十年くらい先なんですね、これは拠出制をとるとすれば。そうすると、ちょうど今二十年先にヨーロッパ並みに老齢化指数がなってしまうということであれば、今からヨーロッパ並みの老人対策ということを、二十年先に実現しようとすれば、今から考えなければいかぬ。ところが、年金法案の国会における審議を見ていると、そういうことはちっとも入っていないのですね。ちっともというのは語弊があるかもしれませんが、とにかくわれわれが十分に信頼し得るほどには入っていない。そこでそういう問題については、やはり経済企画庁あたりが、正確な資料をもとにして、厚生省の足らざるところを大いに補ってもらわなければ実を結んでこないのではないか、わが党の、たとえば八木代議士が衆議院でずいぶん熱心に研究して、この辺のことを説いているのだけれども、さっぱりから説法でものにならないのですね。そういう点を考えたら、まあ世耕さんは六十歳以上ですから、同志のために大いに一つ奮闘してもらわなければいかぬと思う。その問題が一つ。  それからもう一つの問題は、所得税の問題ですが、これは財政機構にすぐ影響する問題ですが、所得税で、ただいま昭和三十四年度の見通しでは、勤労所得税を納める人が大体九百十万人ですね。ところが戦争前の基準年次においては、大体七十万人くらいです。これはやはり勤労所得者等の税金の率が高いのと同時に、その範囲が非常に広いということを証明しているわけです。これをやはりどんどんと範囲を狭めて、そうして、しかも低所得者の方をどんどん課税対象からはずしていく、こういうやはり一つ方針というものがなければいかぬと思う。現に、私がいつも言うのですけれども、私が初めて奉職をしたときの月給が、あれは幾らでしたか、六十五円でしたかね、そうすると、今の金に直せは、大体二万五千円以上ですよ。それで税金はかからなかった。今は大学出て、大体初任給が一万円から一万二千円くらい、それで独身の場合は税金がかかります。こういうことでは、青年たるもの夢を持てといったところで、これはなかなか持ちようがないわけですね。そこで、何としても低額勤労所得者の税金というのは、大幅に非課税クラスを多くして、そうして、しかも税率を下げていく、こういうことでなければならぬと思う。これなどは、大蔵省はあまりいい顔をしないでしょうが、経済の計画者としては、国民の側に立って、そういうところに重点を置いてもらわなければいけないのである。なぜ私はそういうことを申すかというと、これもまた釈迦に説法ですけれども日本の一人当り国民所得というものが、大体八万円台くらいで、アメリカが十倍近く、イギリスが六倍とか、ドイツ、フランスが三倍、こういう工合に、先進国の一人当りの国民所得はうんと高いのですよ。だから経済企画庁が、今国民に向って、どんどんと総国民所得をふやすように号令をしておられる反面、国民にそれじゃ何を返せばいいかというと、一人当りの勤労所得をふやしてあげるということを考えるよりほかにない、ここに夢を持たせなければいけない、そういうことが、これは完全雇用の問題とも結びつきますが、とにかく国家財政の規模において考えていかなければならぬ、こういうことに私は結局はなると思うのです。それで、国民所得が、こういう工合にずっとふえていくのに、財政の規模も同じ比率でどんどんふやしていくということであれば、国民は何の楽しみもないわけです。そういうところのしぼり方というものをどういう工合にお考えになっておるか、これが問題になってくると思うのです。
  82. 世耕弘一

    国務大臣世耕弘一君) 経済の安定並びに成長ということが、日本経済の発展の上に非常に重要な役割をすると同時に、国民生活の安定向上ということも同時に考えにやならぬと思うのであります。こういう両方がからみ合って、並行して進むところに、私はいわゆる福祉国家並びに文化国家ということが言えると思うのであります。戦後、日本国民生活が、どん底まで追い詰められてきたのでありますが、国民の勤勉努力によって、一応底をついて、今、上昇しているような形になってきたと推測するのであります。この上に、日本経済、政治が、その運営を円満に伸長発展を遂げたなれば、御期待に沿えるようなことになるのではないかと思うのです。しかしながら、いかにもその前途には、いろんな障害が残されておる。で、これを除去するのには、相当の努力と、また、時間的な経過をたどらなくちゃならぬと思いますが、全く今御指摘になった御趣旨の通り、われわれは、その線に沿うて今後対策を講じていきたい、かように考えます。むろん、これまでの施策といたしましても、その線に沿うて、それぞれ対策を立ててきたのでありますが、意に満たない点がございましたが、今後はその面に関しましても、あくまでも合理的に、しかも迅速に、その実を実現するように努力いたしたいと思います。  なお、先ほど来お話がございましたいわゆる老齢問題をどう片づけていくかということが、むろん大きな国策として考えられなくちゃならぬ問題だと思います。同時に、諸政策が常に財政の伴うことであり、その財政の負担をするものが、多くは直接国民が負わなくちゃならぬという循環性の問題もございますので、この間の調節をしながら文化的に推進するということ、そこに政治の妙諦があるのではないか、かように考えております。御趣旨の点はよく了承いたしまして、はなはだ無責任な、また、ごく通り一ぺんなお答えのように思われるかもわかりませんが、栗山さんのおっしゃる趣旨は、十分私は了解して、今後の政治面に実現いたしたい、かようにお答えいたします。
  83. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私が、今までいろいろ個別に申し上げてきましたが、一口で申し上げれば、国民所得を国民の努力によって、最大限、できるだけ伸ばそうじゃないかということが一つ。それから第二としましては、しかし、国家財政というものは、圧縮し得るだけ圧縮しようじゃないか、その中で特に頭打ちし得る財政支出というものは、徹底的に頭打ちをさせる、また、膨張させなければならぬ社会保障費のようなものは、これは意識的に膨張政策をとるべきである、また、国の最近の財政投融資から直接投資までいろいろありますが、そういうものに再検討を加えて、やはり間接税、直接税の税制の振り合いがあるでしょうが、とにかく税というものをできるだけ下げて、そうして、国民個々の資本蓄積に役立つようにすべきではないか、こういうような方針でもって経済の長期見通しと並んで国家財政そのものに対して、経済企画庁はやはり一つの長期プランというものを持つべきである、こういくことを私は結論的には言いたいわけなんです。  特に過日は総括質問でしたか、一般質問のときに申しましたが、もう一ぺん繰り返して申しますがドイツが今日六十億ドルの外貨を持って欧州の経済界を完全に席巻してしまったというその有力な一つの基盤は、もちろん資本蓄積にあるのですが、その資本蓄積のやり方は、やはりドイツらしいやり方をしているということが調べてわかりましたが、それは要するに、これは生命保険会社から頼まれたわけではありませんが、前置きしておきますが、生命保険の基礎控除というものを非常に大幅にとっているのです。それで勤労所得者なんかが所得税を納めるときには、その自分の納める額を予定して保険契約をしてしまう、そうするとそれだけ全部税金を納めなくていい、それで保険会社の方はどんどん資金が保険料として集まる、そういう制度をとっているようですね。はっきりした数字はわかりませんが、すばらしい大きな数字なんです。数字を一応申し上げますと、西ドイツでやっておる保険料の大口基礎控除というものは、独身者は一千百マルクまで完全に控除しているようです。一千百マルクというと九万四千二百九十二円、夫婦者は二千二百マルク、十八万八千六百八十四円、それから扶養家族一人当りに五百マルク、四万二千八百六十円、これだけ加算して引いている、ですから勤労所得税を相当納める人でも、これに比例して保険さえ入っていれば、税金を納めなくてもいいのである、しかも国の必要とする資金は集まっている、そういう方法をとってドイツがやっている資本蓄積というものは、非常な重大な柱になっているということを私はある書物で読んだことがある、これが真偽のほどは役所で調べていただけばわかります。私の言っていることがうそであるか、ほんとうであるかわかりますが、一つの方法として国が資金を必要とする場合には、こういう方法でもできるのだという一つのこれは方便なわけですが、そういうことをするお考え、まあそのほかいろいろあるでしょう、そういう方法は。国民も喜ぶし政府も喜ぶそういう方法がたくさんあるだろうと思いますが、そういう方法を考えておやりいただくということが必要ではないか、こういうことなんです。
  84. 世耕弘一

    国務大臣世耕弘一君) 栗山さん、なかなか各方面にわたってうんちくを傾けていただいて、私始終傾聴さしていただいておりますが、やがて適当な機会には、栗山さんのような人が社会党内閣の企画庁長官に一つなっていただいて、それまでは私がお預かりしておりますから、どうぞ何かと御指導をお願いいたします。
  85. 大來佐武郎

    政府委員(大來佐武郎君) 今の資本蓄積の必要につきましては、やはり高い成長率を維持するためには、やはり高い投資率を実現していかなければならぬわけでありますが、なお最近の傾向としては、同じ成長率に対して必要な投資の額がふえる傾向もございますので、御指摘のようにできるだけ資本の蓄積を高めていく、ただその高める内容をいわゆる財政を通ずる方式によるか、あるいは個人の自発的な貯蓄によるか、企業の内部保留によるか、その貯蓄の源泉がいろいろありますし、ただいま御指摘のように個人の自発的貯蓄の場合も、郵便貯金とか銀行預金とか、今の保険の行き方とか、いろいろな行き方がございます。各国の例を見ましても、保険を通ずる貯蓄が相当ふえる傾向にありますので、ただいま大へん参考になる御意見を拝聴いたしました。今の計画も、実はそこまで表に出しておりません。一応源泉別の貯蓄の試算はいたしましたけれども、計画としてそれを表に出すところまでいっておりませんけれども、将来また計画を作り直すような時期には、ぜひまあそういう面も検討していきたいと、事務当局としては考えるわけでございます。
  86. 羽生三七

    羽生三七君 なお、簡単なことで一、二点お伺いしますが、少し抽象的な議論になって恐縮ですが、あえて日本とは限らないけれども経済の成長発展の条件を考える場合に、いろいろあると思いますが、その一つが、設備の増加であることは言うまでもないわけです。この際、生産力の増強と国民の生活水準を引き上げることになるけれども、ただ、問題は、それが過剰生産になって、特に設備投資等の場合ですね、過剰生産になってその結果、消費とのアンバランスを招来する。そうすると、一種のデフレになる。従ってそこに生産調整というようなことが起ってくるわけです。この場合、輸出力の強化によってこれをカバーする、そういう方法をとるわけですが、これは本来輸出力は輸入力をカバーする条件にすぎないわけです。そこで、輸出が伴わない場合、予想通り輸出が伸びない場合には、それをカバーするものとして、国内の有効需要を伸張させる、これがまた他方の一つ条件になっているわけです。ところが国内有効需要を振興させると今度インフレ懸念が出てくる。あるいは国際収支が悪化する、そういうことで問題になるわけです。そこでこの場合、個人の消費生活の貿易依存度という問題も続いて出てくるわけです。そこでインフレ懸念や、国際収支の悪化を防ぎながら、しかも国内有効需要を伸張させていくという具体的なことを検討されたことがあるかどうか、こういう問題です。これは局長さんでいいのですが、というのは、今、日本で考えられている国民生活水準向上の場合、特に低額所得層の場合、これは落ちていく、転落していく層を社会保障でカバーしていく、こういう考え方です。だからこれは純粋の経済ベースでやる論理よりも、むしろ政治的な配慮から取り扱われているわけです。しかし、私は日本の非常な広範な低額所得者層の存在を見た場合、しかも社会保障費の増強というものはもう限度がある。若干ずつ伸びてはきておるけれども、必ずしも目的を達成する程度のものではない。そうすると、落ちていく者を社会保障で救うというのでなしに、何か、むしろ有効需要をうんと伸張させて、あるいはその人の持っている仕事をもっと有効的に活用できるようにして、まあそういう形で雇用も解決し、同時に有効需要をふるい起させる、伸張させる。そうして貿易の依存度にはそれはど影響がない、そういうことについての作業をやる必要があるんじゃないか、検討を具体的にやられる必要があるんじゃないか。これは特に日本のような産業構造の国、非常な低額所得者の多い、しかも中小企業が多く、それから農業なんかももう言うに足りない零細農業の場合、こういう場合に、完全失業者はもとより、不完全失業者も吸収をして、しかも一国の経済の伸張をはかっていく。その場合に、輸出だけを問題にすることなしに、国内有効需要を考えていく。これは池田勇人さんなんかもそういう理論をある程度立てておるのですけれども、あの人は私の言うところと違って、一般的に積極財政論で、鉱工業生産が伸び、あるいは企業者が活動を起せば余力が自然に下に及んでいくという、一般的、抽象的な意味での積極経済論なんです。私は、世界的にはそういう理論が通用いたしておる部分もあるでしょうが、日本の置かれた特殊な条件、客観的な条件、産業構造の中では、今私が申し上げたことを真剣に検討しないと、社会保障費の拡大という政治的な配慮だけが問題を救う唯一の鍵になってくる。それではもうだめだ。そうかといって、いわゆる一般的抽象的な積極政策論というやつはすぐいろいろな意味の壁にぶつかってしまう。だからそういうことを考えて、かれこれ検討して、国際収支の問題、輸出力の問題等もありましょうが、また同時に、個人の消費生活の水準と貿易依存度との関係もあるけれども、その辺をもっと具体的に検討をして、社会保障費も重要であるが、それによらない、それ以外の方法でもなおかつこの問題を解決し得る、解決するためにそういうことを一つ検討されたらどうか。これはまあ社会主義的な経済でなければなかなかできないことでしょうが、私は資本主義の経済の中においても、ある一定の限界や条件のもとにおいては、ある程度可能ではないかということは考えておるわけです。まあ私はこういうことをしたらどうかということも幾つかありますけれども、そういう個々の例証は省略をして、そういうことについて検討されたことがあるのか、また、されたことがなければ、今後ともそういうことについての作業をおやりになる考えがおありになるかどうか。これは大臣でなくてもよろしいのですが、いろいろ私考えてみても、これは一つの重要な問題になると思いますが、ぜひ一つ御所見のほどを聞かして下さい。
  87. 世耕弘一

    国務大臣世耕弘一君) 個々の具体的な問題について調整局長からお答えさせていただきたいと思います。根本的の問題については、私の所感を申し上げたいと思います。日本の資源の乏しい国状から見まして、自然輸入に依存し、貿易に依存しなくちゃならぬということは、現在の段階においてやむを得ない国状に置かれていると思いますが、しかしながら、ある程度なお調整よろしきを得たなれば、日本国内の資源をさらに開発して有効に利用でまる、さらに技術面等において、貿易額を増大して、おのずから日本国民の個人所得をふやす方法も多分に残されていると、私はかように考えております。この点に関しまして、今御指摘のあった点は、私も同感でございます。  なお、社会保障の点に関しましては、おのずから限度があるということは、現にフランスあるいは英国においてその実例が相当出てきているように私は考えております。そういう点から見ましても、ここにまた別の観点から経済対策を考えていかなくちゃならぬ。しかしながら、国民の犠牲においてすべてを解決するというような行き方よりも、資本主義経済の行き方といたしまして、むしろ国民経済生活を向上しながら、なおその間に貯蓄の向上と経済成長をはかるということを、根本に樹立しなくちゃならぬと思うのであります。そういう点から考えまして、重ねて申し上げるようでありますが、日本の古来の産業の面におきましても、また国民生産面におきましても、なお研究発展の余地があると、かように考えておるものであります。  なお、具体的な問題に関しましては、局長から御説明申し上げたいと思います。
  88. 大堀弘

    政府委員(大堀弘君) 大へんむずかしい御質問でございますが、私どもも研究は現在いたしておるわけではございませんが、私ども経済計画の際にも、御指摘のように、やはり昨年来の経済の動きを見まして、投資の変動によって非常に需要が減退した場合において、なおかつ個人の消費というものが経済をささえてきたという実情もございますので御指摘のような点については、たとえば農業政・策における価格支持策も一つであろうと思うし、社会保障制度を充実していくということも同時にこれは経済的に重要な意味を持っているというふうに考えておるわけでございますが、ただ問題は、国内成長率を高めたいということと同時に、この場合に、あまりにまた消費を上げていく場合は、逆に貯蓄といいますか、資本蓄積の方がおくれて、結局これは設備投資が総体的に不足をして、成長率を低めるという結果にもなりますし、日本の場合は、割合に資本係数が高いといわれておりますので、どうしても成長率を高く持っていくと貯蓄率も高くなってくるという逆の面もございますので、私どもといたしましては、やはりある程度来年度におきましても消費を相当伸ばして、いくという、伸びるであろうし、また伸ばしていくという気持を持っておりますけれども、ただ、全体のバランスを考えていかなければならぬのじゃないか。国内均衡論については、いろいろの角度から所得をふやす方法とか、財政を拡大する方法とか、いろんな意見がございますけれども、結局またそういう面からして一つの限界があるのじゃないか。それから国際収支の面がやはり割合に今日の段階ではよろしいわけでございますけれども、やはり三十二年の例のように、経済の上昇率が高くなって参りますと、財政投資がまた加速度的にふえて、一年以内、九カ月くらいの間に六億も七億も外貨が一挙に流失するというふうな日本経済でございますので、やはり国際収支ということも相当重大な限界的な意味を持ってくるのじゃないか、かように考えます。御指摘の点はよく了解いくわけでございますが、そういう点もあわせてわれわれとしては検討して対策を考えて参りたい。
  89. 羽生三七

    羽生三七君 私は、国際均衡を第一にするか、あるいは国内均衡を第一にするかという、そういう片寄った考え方は持っていないので、それは両方の要素をバランスさしていけばいいと思うのですが、ただこの場合、すぐ設備投資とか何とかいうことに私は必ずしも言及しているわけじゃないので、経済成長率を考える場合に、個人の消費支出が必ずしも貿易依存度にすぐ直接的にはね返ってこない形で、なおかつ問題解決をする条件というものを、日本の産業構造、経済の構造の場合は、積極的に検討してみる必要があるのじゃないかということを、私は痛切に感じている一人なんで。またその余地も私はあるように考えられるのですね。たとえば農業の場合でも、酪農問題の処理だって、ミルクをたくさん飲ましたから、それで貿易依存度がどうなるという性質のものでもないと思うし、土地改良もやっておられるが、農道の問題でも利水の問題でも、共同化の促進の問題でも、中小企業でも、体質改善の問題で、もっと具体的な例をあげられると思のです。そういうように、経済成長が直ちに今申し上げたように貿易に直接的連関性を持たせない形でやっていける点は相当あると思う。神谷調査官の統計なんかを見てもある程度実証しておると思うのです。だからそういう点をもっと具体的に検討されて、今の点についての配慮を持ちながらの作業をおやりになっていただくことは、私は非常に意義あることだろうと考えておるわけでして、そうでないと私の言っていることがすぐ池田勇人さんの議論と同じように考えられるのは遺憾で、ああいう考え方一つあるでしょうけれども、私はそうでないのです。そういう条件ももちろんあるだろうけれども、今言ったような点にある程度の御理解をいただけると思うのですが、そういうこともぜひ一つまじめに検討していただきたいと思うのです。
  90. 世耕弘一

    国務大臣世耕弘一君) 御趣旨ごもっともだと思います。私は、先ほど農業生産に関してもその点ちょっと触れたのは、御指摘の通りだと思います。また同時に、家庭的に見ましても、日本人の食生活の改善並びに他の面の生活の改善、あるいは消費生活の中にも合理的な消費生活が私はもっと研究されなければならぬと思います。そしてほんとうに経済を有効適切に活用して、文化生活に入れる、国内的になお改善の余地は十分にあると考えております。その点は例をあげて申しますと、御指摘の通りだと思います。よくこの点は了承いたしまして、なお具体的にそれが実現するように努力いたしたいと、かように考えております。
  91. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私先ほどの長期の財政規模のところで根拠のないことを主張したように取られてもちょっと困りますから、ある程度数字的なことを申し上げますと、たとえば昭和九年から十一年の基準年次において、国民所得と租税負担との割合は、統計に出ておりますように、一二・九%なんです。現在は二〇%です。だからはるかに高いということですね。しからば昭和九年から十一年のときの基準年次における国家の歳入総額の中で、租税収入の割合がどのくらいあったかといいますと、五三・五%です。だからおそらくそれだけの一〇〇%から五三・五%の差額は公債でまかなわれておったと思いますが、その数字は、この統計によりますと偶然に一致するわけですが、昭和九年から昭和十一年の歳出総額に対する軍事費の割合が四六・三ですから、だからぴたっと合うわけです。五三・五%で、あとの残りは軍事費で公債でまかなわれておった。こういうことがびたっと合うわけです。従って、現在二〇%という国民所得に対する租税総額の規模というものは、中央地方を含めての額ですが、非常に高いということがいわれるわけです。だからこの二〇%の率を下げなければならないのであって、国民所得がふえていくに従って、これと同率で伸していくことも問題があるということが一つ言えるわけです。特に問題は、今の軍事費が一二・四%ですから、昭和十年ごろの軍事費が四六・三%といたしますと、軍事費だけでも三〇%の余裕があるわけです。その当時と比較いたしますと、現在の軍事費で言いますと……。ですから私の考えでは、昭和九年から十一年ごろの一二・九%くらいのところへ将来落せる。すぐ落すということはなかなか困難でしょうけれども国民所得の伸びに応じまして……。そういう構想でしからば租税対策をやっていけば、漸次昭和九年—十一年の一二・九%くらいのものに落していける、こういう一応のラフな計算をしてみても見当がつくわけです。ですから、先ほど申し上げましたように、こういう仕事はなかなか大蔵省はおやりにならないと思いますので、経済企画庁の方で一つ青写真をこしらえてもらいたい。こういうことを申し上げておったので、私は決して不可能なことをあれやこれや申したのではないと思っております。そういう意味で御勉強願いたい。
  92. 大堀弘

    政府委員(大堀弘君) ただいま御指摘の点で昭和九—十一年ごろは相当公債で歳費をまかなっておりました。私どもは資本蓄積率、資本形成の率を民間部門と公共部門と分けて、戦前戦後の動きをいろいろ調べてみたわけでございますが、大体昭和九—十一年は、軍事費負担国民所得の約五%くらいになり、財政の四五%くらいだったかになっております。それが今国民所得の、先ほど御指摘のように一・七くらい、軍事費の面で国民所得に比べて五%くらい低減されたものが公共、パブリックの資本形成の方に回っている計算になります。私どもはもう少しこの点は研究してみたいと思いますが、かなり公共事業的な面の支出が戦前に比べて多くなっている。これは戦時中及び戦後の公共的な施設の補修なり何なり怠ってきた分を補てん投資しなければならないというような面がございまして、その点の公共的施設の投資の需要と見合て財政規模を考えなければならないと思いますが、長期計画では、租税負担を現在の一九・五%から一八%程度に引き下げたいというふうにしているわけでございます。
  93. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 今の国家財政の膨張は大来さんのおっしゃった通り、公共関係に最近ものすごい直接投資があるということが一つの原因なことはその通りだと思いますが、問題は、日本人というのはどういうのかまねをすることが上手なのと、流行を追うことがずいぶん上手なわけで、何か一つ公団のようなものをこしらえてやり出すというと、各省がわれもわれもとそういうものを作って、特別会計を作って国の金をどんどん直接投資、間接投資することに努力する。私は公団制度というものはあまり賛成でない。どの国会どの国会も応接のいとまもないほど出てきます。事業公団から金融公団までいろいろなものが出てくる。ああいう傾向というものは、ある時期には批判をしてやめるべきだと私は思います。だからそういうような点で公共事業費をとめどもなくあいう格好でふやしていくことがいいかどうか。住宅の問題はいいと思いますけれども、そのほかのものについてはもう少し反省する必要があると思うのです。この点を一つ、流行をあまり追うなということを言いたいのです。
  94. 世耕弘一

    国務大臣世耕弘一君) 御指摘の点は共鳴する点も多いと思いますが、にわかに御趣旨に沿うような方法がとれるかどうか、検討いたしまして、善処していきたいと思います。
  95. 西田信一

    主査西田信一君) 他に御質疑はございませんか。——御質疑もないようでございますから、経済企画庁所管については終了したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  96. 西田信一

    主査西田信一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
  97. 西田信一

    主査西田信一君) 次に、先日に引き続き防衛庁所管を議題といたします。  先日の鈴木委員の御質疑に対し、政府委員から御説明願います。
  98. 小山雄二

    政府委員(小山雄二君) 一昨日の本分科会におきまして、鈴木委員から御質問がありまして、鈴木委員資料その他で御説明する問題が残っておりましたが、私ども関係をまず申し上げます。  先般、予算委員会で、長官から三十二年度に通信電子関係の研究をどのくらいしているかということを申し上げました。その件数は百二件で、金額は六億二千五百万円ということを申し上げました。その内容でございますが、これには、たとえば武器にくっつく通信電子関係、それから航空機にくっつきますもの、管制と結びついたものというようなのがございまして、それを除いた純粋の通信電子関係は、研究——試作の研究でございますが、件数としては四十九件、三億四千六百万円、これは例年に比べて見ますと、三十二年度は非常に多いのでございます。その理由は、一つは、徳島に海上幕僚会議関係で基地を作りましてそれに据え付けます飛行機の着陸誘導装置を相当多額な、二億何がしのものを作りまして、たまたまそれが入っておりますのと、それともう一つは陸上自衛隊のいろいろな携帯その他の通信機——車に載せる、あるいは携帯の通信機を新しい、なるべく便利な進歩した形にしようという措置をやりましたので、これが三十二年度に固まっております。この二つがありましたために、この年度は非常に多くなったわけでございます。この関係では、鈴木先生の御質問になりましたいわゆるマグネトロン——磁電管の関係は、この年度にはございません。それから、しからば防衛庁自体として磁電管の研究をしてないかしているかという問題は、実は三十三年度で、これはまだ年度全部ではありませんが、大体六千六百万円の通信関係の試作研究をやろうとしております。その中に、いわゆるレーダー・サイトで使いますレーダー用の特殊のバルブ、これが鈴木先生御指摘の磁電管のものでございます。これは御存じのように、レーダー・サイトを逐次引き受けて参りまして、それに対する——その器材は全部無償援助でもらったわけでございます。またもらうわけでございます。それに対する補修用品、こういうものは非常に生命の短いものですから、補修用品が要るわけでございますが、補修用品は大体十七カ月半分はもらう約束ができております。その以外は、日本でできるものはできるだけ国産化して、できないものは仕方ないから無償援助とか、あるいは輸入するということになるわけでございますが、この磁電管を向うの仕様に基きまして作ろうという意味の試作を、三十三年度にやっております。これは出力は五メガワット、波長は十センチ程度のもので、まあいわば相当強いものでございますが、御存じのようにレーダー・サイトは相当長く距離も延ばし、相当出力の強いもので、それで向うを見つけるわけでございますが、これは事柄の性質上、レーダー・サイトがある以上、どうしてもこれはやらなければならぬ。これが殺人光線とかそういうものにつながるかつながらぬかの問題、われわれの技術的な判断では、殺人とか機械をとめるというような方式は無理だと思う。もっと波長を短かくしてそうしてやらなければならぬ。そうすると出力が出ないというような技術上の問題で、もちろんその方向でわれわれは考えておるわけでもございませんし、また、そういうことは技術的にも非常にむずかしいという判断で、もちろんそういう方向に向いての試作はやらぬということでございますので、先般説明のありませんでした部分を御説明申し上げました。
  99. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 先般お尋ねのありました練馬にあります陸上幕僚監部の第二部の別室のことにつきまして御説明申し上げます。練馬にあります建物は陸上幕僚監部の第二部の別室でございます。第二部と申しますのは、任務といたしましては防衛及び警備の実施に必要な資料及び情報の収集整理それから防衛及び警備に関する秘密の保全、暗号、地図及び空中写真の計画、それから情報の収集整理及び配付に関する技術的事項の教育訓練、情報関係の部隊及び機関に関すること等を担当しておるのでございます。練馬にございますのはこの別室でございまして、ここにおきましては第二部の所掌事務のうちで、特に軍事に関する外国の放送等を聴取し、それを整理するということと、自衛隊の暗号に関する研究というものをやっておるわけでございます。第二部の別室は、建坪五百七十二坪の三階建の建物でございまして、ここは各受信所から有線によって送って参りまする情報を翻訳し、整理をするということと、先ほど申し上げました暗号の研究でございます。ここに持っておりまする電気関係の設備といたしましては、架空線といたしまして変電室への高圧の引込線、照明用の低圧線、それから電話線があるのでございます。まあアンテナといたしましては、テレビ用のアンテナを一つ持っております。そのほかにIBMの統計機を保有しておるのでございまして、ここから電波を出すということはございません。従って、磁電管等もここには保有しておらないのでございます。ここは先ほどから申し上げております通り、各受信所から集まりました情報を収集整理するのでございまして、ここで収集整理いたしましたものを本部の方に報告をいたします。暗号につきましてもここでは研究をいたしているのでございまして、ここで研究いたしました暗号を、それぞれの系統を通じて部隊との連絡用に使っているということでございます。
  100. 鈴木強

    担当委員外委員(鈴木強君) 今の問題からちょっと御質問をいたしたいと思いますが、大井で受信したものを有線によって送ってくると、こういうことなんですが、それは電信でやっているのですか。電話でやっているのですか
  101. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 電話で送って参ります。
  102. 鈴木強

    担当委員外委員(鈴木強君) 私の言っているのは、ちょっと専門的になるかもしれませんが、要するに大井で受信したものを、有線によって、たとえば大井で外国の放送を傍受しますでしょう、それをまた有線電話で英文を送ってくるのですか。それを記録するわけですか。そうでなくて……。向うで受けたものを、わざわざまた電話で英文のやつを送ってくるなんということは、これは非常に不経済なことじゃないですか、そういう意味じゃないでしょう。
  103. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 私の説明が少し誤まっておりまして、大井において受信しましたものを記録で送ってくるのだそうでございます。電話は連絡用に使っているということでございます。
  104. 鈴木強

    担当委員外委員(鈴木強君) 記録で送ってくるというのは、これは直接受けた受信紙を何かはかの自動車か何かで持っていくというのですか。それともファクシミリのようなものでも使ってやっているのですか、どうですか。
  105. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 逓送でございます。
  106. 鈴木強

    担当委員外委員(鈴木強君) そうしますと、八木アンテナを使っているのは、これはテレビを受信するものであって、ほかに他意はないと、こういうことですね。
  107. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) その通りでございます。
  108. 鈴木強

    担当委員外委員(鈴木強君) それで大体わかりました。ただ一つ、この施設を私たち一度見せていただきいと思うのですが、支障ない限りそういう私たちの要望を満たしていただけますか。
  109. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 長官にお伝えいたします。
  110. 鈴木強

    担当委員外委員(鈴木強君) ここで即答ができなければ一つ連絡をしていただいて、また別途私にお話をしていただきたいと思います。  それで大体この方はわかりましたが、この電子機器の、装備局長さんのおっしゃる方ですが、これは非常に重大ですから、時間はそう長くとりませんが、質問をいたしますが、三十四年度には電管の関係予算はないと、これはわかりました。  それから三十三年度にレーダー・サイトに用いるマグネトロンですね、これの研究をやったと、この成果は確認されているわけですか。
  111. 小山雄二

    政府委員(小山雄二君) これは研究といいますよりは、向うの仕様で、そのものが同じ規格のものができるかということを初め、やっているものは全部技術研究の目的でやっているわけです。で、現在納入されましたものを技術研究本部でいろいろテストをやっております。大体これは向うの規格で、会社と、ロイアルティを払いまして技術提携をして、それに基いてやっているものでございますから、大体それに合ったものががきるということで、今テストの途中でございます。
  112. 鈴木強

    担当委員外委員(鈴木強君) ちょっと専門的になりますからお答えできるかどうか、もしできなければあとでもいいですが、一九二七年、今から三十二印前に、阪大の教授の岡部金次郎という先生がいるのですが、この先生がUHF帯に使う磁電管の研究に成功をして、その後、工大の八木博士ですね、こらの人たちがさらに進んだ研究をされているのです。で、私は、殺人電波があるかないかということは、今の御説明ではそういうことはないし、研究もしていないと、こうおつしゃられるのですが、事が非常に大事ですからお尋ねしておきますが、かつて戦争前ですね1戦時中に、今申し上げたような八木博士等の高度な、大出力の磁電管の研究がされ、これは陸軍が委嘱しておったのです。あなた御存じかどうだかわかりませんがね。それからもう一つは、海軍が、これこそもう陸軍よりも以上に大電力磁電管の研究をして、当時日本にある銅の三分の一を使っても完成するのだという意気込みで海軍は海軍の立場でやられておったわけなんですよ。これはおそらく数千キロワットの出力を持つものだと私たちは想定しているのです。ですからそういう研究がすでに進んでおるし、現実に一メートルか、ニメートルくらいの至近な距離における動物の、たとえばネズミの殺傷には効果を現わしている。こういうふうな歴史的な経過があるのですね。  それで、レーダー・サイトに使う磁電管というものは持ち込まれてきている。これがお話によりますと、十メガワットというお話ですね。波長は十センチメートルですね。そうしますと、この十メガワットというのは一万キロワットでしょう。そうですね。
  113. 小山雄二

    政府委員(小山雄二君) 五メガワットが五千キロワットですから……。
  114. 鈴木強

    担当委員外委員(鈴木強君) そうしますと、おそらく私は十センチメートルくらいの非常に短い波長ですと、相当にこのレーダー・サイトの周辺は人体に障害を起すような現象が出てくると思うのですよ。私は、おそらくわれわれが研究してみますと、この出力ですと、百メートルから百五十メートルくらいの付近は危険ですよ。これはもう波長が短かくなれば短くなるほど、これは危険性があるのですよ、あなたがおっしゃるように。ですから必ずしも今使われているレーダー・サイトの磁電管というものが、全然人体に被害を与えておらないとは言えないと思うのです。私はここで非常に重大な問題が起きてきていると思うのですね。  で、この前のお話によりますと、VHF等の磁電管だとこうおっしゃいましたが、これはもう古いのです。今は三極管とか、多極管とかが出ておりまして、レーダ・サイトに磁電管なんか使うのは愚の骨頂で、今の科学者はそんなもの使っておりません。問題にしておりませんよ。ですからそういう研究をするということでは私たち納得できませんし、現にこのレーダー・サイトに使われておる磁電管というものの危険性というものは、私はあると思うのです。これはどういうふうに御判断されておりますか。
  115. 小山雄二

    政府委員(小山雄二君) 私も実は技術の専門家じゃないのでよくわかりませんが、この程度の出力と、それから波長のものは、やはりそばへ寄って、ある程度時間がたてば、人体に障害があるということだそうでございます。ただレーダー・サイトは御存じのように遠い所では数キロ、近い所でも——まあわれわれレーダー・サイトを見学に行きましても、自動車に乗って——ぽつぽつ離れたような所でございます。またそういう所になければ目的の達成ができないわけですし、しかも上の方に向けて電波を出すようになっておりますから、その扱い者その他に関しては、いろいろ操作所はまた下に置いておるのでありますが、発信する所は皆上の高い所に向けて発信するという関係でありますので、このもの、そのものが障害があるということは——確かにないということは申せません。取扱いその他については十分注意してやりますが、レーダー・サイトというもので敵を捜索するということがあると、こういうものを大いに利用してやらないとできないということで、その点は御了承願いたいと思います。
  116. 鈴木強

    担当委員外委員(鈴木強君) これは私は安全な保障をやはり取りつける必要があると思うのです。で、幸い航空路線の、飛行場から飛び立って、それで向うへ着陸する間のレーダーである場合はいいですね。ところが直接今度は飛行場に、雨天の場合、夜間の場合にレーダーを頼りにして離着陸をするということは、これはあり得るごとですがね。こういうものが飛行場に設置された場合、しかもそれが民家に非常に至近な距離にある、こういうような場合は、これは想定ですけれども、相当に問題が起きてくると思うのですね。そういう点は今後どうなりますかね。
  117. 小山雄二

    政府委員(小山雄二君) レーダー・サイトの関係は、われわれは、たとえば飛行場からホーマー・ビーコンとか、飛行機のタカンをもっていろいろ誘導する、飛行場へ着陸のときは、さっきのGCAで誘導して、天気でも雨でも無事に着陸させるような装置でございますが、そういう所に、こういうものは使うわけでありまして、要するに警戒式装置、敵を見つけそれからこっちから要撃する飛行機を指揮するという関係、この関係は、通信系統その他全部別になっておりますが、その関係のレーダー・サイトの突端の所にこれをつける。飛行場その他にこれをつける考えは持っておりません。
  118. 鈴木強

    担当委員外委員(鈴木強君) そうしますと、飛行場のやつは要するにラジオ・ビーコンですか、そういうものを今使っているわけですか。
  119. 小山雄二

    政府委員(小山雄二君) いろんな方式のものがございますが、ラジオ・ビーコンもそうだし、こういうむしろ波長のもっと長い、そして出力も大きいものでなくていいというような種類、これは真空管もマグネトロンじゃないと思います。
  120. 鈴木強

    担当委員外委員(鈴木強君) これはお話の中にもありますように、やはり人命の保全上相当警戒していただかなきゃならぬ点が一つと、それからこれはもう今、科学がどんどん進んでいますから、現に数千キロワットぐらいの、きわめて、一センチメートルとかニセンチメートルとか波長の短かい磁電管というのがこれはいつでもできるですよ。ですからこれが一朝間違うと、殺人電波になり、飛行機を撃墜する電波に使われていくという方向に進んでいくと思うのです。ですから防衛庁として、私は絶えずこの磁電管の研究に努力されていると思うわけですが、今後これは技術的な面ですが、技術的な面として、そういう電波兵器ですね、いわゆる電波兵器として使うための準備の研究というのは、これを続けていく予定なんですか。続けてやる予定なんですか。
  121. 小山雄二

    政府委員(小山雄二君) 技術的に私どもの聞いておりますのでは、そういう殺人光線的なものも非常にむずかしいということを言っております、条件が。この舞台装置が、非常に大きいので、理論的にはやってすぐできるとおっしゃるようなものかもしれませんが、なかなか実際的にはそういうものはむずかしいというようなことも聞いております。なお防衛庁として、そういう種類のその方向にこの問題を研究するという考えは、毛頭ございません。もっぱら現在のやつはレーダー・サイト用のもので、これだけの出力の小さい、波長のもうちょっと長いようなものは、試案品もたくさん出ているように、いろいろの場面で使われているのでありますが、こういう種類のものは初めて日本でこれだけの出力のものを試作することになったというような意味におきまして、御指摘のように取扱いその他も非常に注意していかないといけないと思いますが、そっちの方向の研究開発を進めていくつもりは毛頭ございません。
  122. 鈴木強

    担当委員外委員(鈴木強君) これは皆さんでは御答弁をいただけないと思いますから、また私は長官にあらためてお伺いしたいと思いますが、伝えておいていただきたいのは、やはりこのレーダー・サイトの危険性というものはあります。従って、この危険性をどのようにして排除し、国民が安心をして生活ができるかというそういう保障については、はっきりしたものを私は確立していただきたいと思うのです。私の研究では、おそらく百メートルぐらいの所はちょっと危険があると思うのです。ですからその範囲は立ち入り禁止をするなり、何かそういうふうな方法をとるなり、やはりやっていただきませんと、国民として重大問題ですから、こういう問題は政治的な問題になると思いますから、あらためて長官の御所見を承わって、対策を立てたりしますけれども、一応そういうところを皆さんも御承知いただいて、長官にも一つ連絡をとっていただきたいと思います。この問題は、非常に重大な問題ですが、きょう回答を得ることは困難だと思いますから、あらためてまた質問することといたしまして、これで終ります。  どうもありがとうございました。
  123. 西田信一

    主査西田信一君) 他に御発言はございませんか。別に御発言がないようでございますから、本件に対する質疑は、これをもって終了いたすことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  124. 西田信一

    主査西田信一君) 御異議ないと認めます。  以上をもちまして昭和三十四年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算総理府のうち防衛庁、調達庁、経済企画庁、科学技術庁。外務省及び通商産業省所管に対する質疑は終りました。  これをもって本分科会の審査を終了いたします。  なお、委員会に対する報告の内容等につきましては、主査に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  125. 西田信一

    主査西田信一君) 御異議ないと認めて、さよう決定いたします。  これにて散会いたします。    午後四時三十八分散会