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1959-04-07 第31回国会 参議院 予算委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年四月七日(火曜日)    午後零時五十二分開会   —————————————   委員の異動 四月一日委員大沢雄一君、平島敏夫 君、吉田法晴君及び山田節男辞任に つき、その補欠として松岡平市君、吉 江勝保君、松永忠二君及び平林剛君を 議長において指名した。 四月二日委員鈴木強辞任につき、そ の補欠として藤田藤太郎君を議長にお いて指名した。 四月六日委員松岡平市君及び藤田藤太 郎君辞任につき、その補欠として大沢 雄一君及び鈴木強君を議長において指 名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     木暮武太夫君    理事            小柳 牧衞君            塩見 俊二君            西田 信一君            堀木 鎌三君            鈴木  強君            松浦 清一君            矢嶋 三義君            森 八三一君    委員            石坂 豊一君            泉山 三六君            植竹 春彦君            大沢 雄一君            大谷 贇雄君            川村 松助君            迫水 久常君            笹森 順造君            下條 康麿君            館  哲二君            苫米地英俊君            岡田 宗司君            北村  暢君            栗山 良夫君            中村 正雄君            羽生 三七君            田村 文吉君            千田  正君            市川 房枝君  国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君    通商産業大臣  高碕達之助君    労 働 大 臣 倉石 忠雄君    国 務 大 臣 伊能繁次郎君   政府委員    内閣官房長官  赤城 宗徳君    内閣官房長官 松本 俊一君    内閣官房長官 鈴木 俊一君    法制局長官   林  修三君    外務省アメリカ    局長      森  治樹君    外務省条約局長 高橋 通敏君    大蔵政務次官  佐野  廣君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省主計局次    長       村上  一君    労働省労政局長 亀井  光君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選昭和三十四年度一般会計予算補正  (第1号)(内閣提出、衆議院送  付)   —————————————
  2. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) これより委員会を開会いたします。  まず、委員の変更について御報告いたします。四月一日付吉田法晴君、山田節男君、平島敏夫君が辞任され、その補欠として松永忠二君、平林剛君、吉江勝保君が選任せられました。   —————————————
  3. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 次に、理事補欠互選についてお諮りいたします。現在理事一名欠員でございますが、この互選成規の手続を省略して、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 御異議ないと認めます。それでは委員長より鈴木強君を理事に指名いたします。   —————————————
  5. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) この際、昨日の安員長及び理事打合会におきまして協議決定いたしました事項を御報告いたします。昭和三十四年度一般会計予算補正第1号)の審議を七日、八日の二日間にわたって行い、これを議了するここ、右の質疑時間の各会派別割当は自民党四十分、社会党八十分、緑風会二十分、無所属クラブ十分、第十七控室十分、合計百六十分とすること、以上でありますが、委員長はこの決定に基き委員会の運営を行いますから、御了承願います。   —————————————
  6. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) 昭和三十四年度一般会計予算補正(第1号)を議題といたします。  まず提案理由説明を願います。
  7. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 政府は今回、昭和三十四年度予算補正(第1号)を国会に提出いたしましたが、ここに予算委員会の御審議をお願いするに当りまして、その概要を御説明いたします。  政府は、さき昭和三十四年度一般会計予算国会に提出いたしたのでありますが、その後、国際通貨基金及び国際復興開発銀行に対する出資の額が増額されることとなりましたので、別途法律案を提出いたしますとともに、これに関し必要な予算措置を講ずるため、今回予算補正(第1号)を提出することといたしました。今回の予算補正による歳入歳出追加は、それぞれ二百五十億余万円であり、これによって昭和三十四年度一般会計予算総額は、歳入歳出とも一兆四千四百四十三億余万円となるのであります。わが国は、昭和二十七年八月に国際通貨基金及び国際復興開発銀行加盟いたしたのであります。この二つの国際機関わが国経済発展に著しく寄与したのでありますが、ひとりわが国に対してのみならず、広く戦後世界経済復興発展のために果しましたその役割はまことに大なるものがあるのであります。しかしながら、最近の世界経済及び国際貿易の急速な発展に比し、これら両機関資金量は十分とは言いがたく、わが国を初めとして加盟国の一部はここ数年来、これら両機関資金充実必要性を提唱して参ったのでありますが、昨秋ニュデリーにおける第十三次年次総会において、全加盟国の総意に基き、両機関資本増加方針が打ち出され、昨年十二月両機関理事会においてそれぞれ資本増加に関する決議草案が作成されたのであります。この草案によれば全加盟国について国際通貨基金は一律五割、国際復興開発銀行は一律十割の増資を行うほか、特に戦後において顕著な経済発展をとげました日本ドイツ連邦共和国、カナダの三国については特別の増資を認める構想になっていたのであります。この草案に対し本年二月二日までを期限として加盟国総務賛否投票が行われたのでありますが、この賛成投票はワシントン時の一月三十日にいたり、国際通貨基金協定及び国際復興開発銀行協定規定に基く多数、すなわち国際通貨基金については五分の出、国際復興開発銀行については四分の三にそれぞれ達したことが確認されました。ここにおいて、わが国といたしましては国際通貨基金に対し二億五丁万ドル、国際復興開発銀行に対し四億一千六百万ドルの追加出資を行うことを要する事由を生ずるに至ったものであります。この追加出資を行う結果、これら両機関に対するわが国出資総額はそれぞれ五億ドル及び六億六千六百万ドルとなるのであります。従いまして、政府といたしましては別途国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案を提出いたしまして、追加出資のため所要の法的措置を講ずるとともに、今回予算補正により必要な予算措置をとった次第であります。  すなわち歳出追加といたしまして、国際通貨基金及び国際復興開発銀行出資諸費二百五十億七千三百余万円を計上いたしておりますが、このうち国際通貨基金関係は二百三十四億二千二百余万円、国際復興開発銀行関係は十六億五千百余万円となっております。  この歳出追加に必要な財源といたしましては、さきに申し述べました法律案規定によって、日本銀行の所有する金地金帳簿価格を改訂することにより生ずる再評価差額に相当する金額日本銀行から国庫に納付せしめることにより二百五十億七千三百余万円を歳入追加計上することといたしております。  以上、昭和三十四年度予算補正につきまして、その概略を申し述べました。何とぞすみやかに御審議をお願いいたします。
  8. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 議事進行について。  申し合せによって直ちに質疑を始めるわけですが、総理大臣外務大臣以下関係大臣が出席していないのですね。至急出席させていただきたい。  それからもう一点は、昨日委員長理事打合会決定によって本予算案審議のため必要な関係資料を要求して、本日午前九時半までに提出するように委員長を通じて要望してあったのですが、まだ届いておりませんが、どうなっているのか、いつ提出するのか、それもお答えいただきたい。
  9. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) まず第一点は、今至急来るように言っております。間に合って参るはずでございます。
  10. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 早く来ないと休憩にしてなにしますよ。違約行為ですよ。総理がまだ来ていないということは少したるんでいるよ。こちらがちょっと甘くするとこれだ。質問者がちゃんとおいでになっているのですから、総理大臣は来ておって聞いておらなければいかぬ。もう一つ資料はまだ来ていないのですか。
  11. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) やかましい矢嶋さんだけに行かなかったようですから、御勘弁願いたいと思います。  それでは主計局長より補足説明をいたさせます。
  12. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) ただいま大臣の御説明のございました昭和三十四年度予算補正(第1号)の説明補足をさせていただきます。  お手元に差し上げてございます三十四年度予算補正(第1号)説明という印刷物がございますが、その一ページに歳出、二ページに歳入説明が、一ページから二ページにかけて細目載っておりますので、それをごらん願いながら補足説明を申し上げます。  IMFは現在二一億五千万ドルの出資をいたしております。それに対しまして今回倍額、すなわち二億五千万ドル増資をいたしまするので、それに伴いまする払い込みの問題があります。この払い込みのいたし方は金または米ドルでございますが、それをもちまして二五%、円現金をもちまして一%、円国債をもちまして七四%でございます。そこで出資用金地金、今申し上げました二億五千万ドルの基金払い込みますために金地金を購入いたしました代金が二百二十五億円、六千二百五十万ドルに該当いたします。出資用金地金を購入いたしまする取扱いの費用が二千二百五十九万五千円、それから円現金によりまする出資金一%と申し上げたのでありますが、それが九億円、その三つがごらんを願っておりまするIMF関係出資の金であります。なお、これ以外に別途に国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律というものがございまして、この法律に基きまして、先ほど申し上げました七四%に当ります円国債払い込みをいたすわけであります。この金が六百六十六億円ということでございます。  次が世界銀行の分でございまするが、これは規定出資が同じく二億五千万ドルでございまして、今回増資をいたしまする分が二億五千万ドルの倍額になりますほかに、特別割当といたしまして一億六千六百万ドルで合計いたしまして四億一千六百万ドルになるわけであります。この増資に対しまする払い込みは一〇%ということでございますが、従来二億五千万ドルでございまして二〇%払い込みをいたしておるのでありますから、増資倍額のところまでは払い込みを必要といたしません。特別割当の一億六千六百万ドルに対しまする払い込みを必要とするわけであります。この一億六千六百万ドルにつきましては、先ほど申し上げました一〇%の払い込みということに相なるわけでございまするが、このうち米貨をもちまして一%自国通貨をもちまして残りの九〇%払い込むわけでありまするが、そのうち、現金は一%のほかは国債払い込みました場合におきましても、年度内に償還のために現金化を必要とする分十億円というものを予定いたしまして、一%のほかに十億円の現金払い込みます。国債は従って九九%から、それから十億円を差し引きました額を払い込む、こういうことに相なるわけであります。  金について申し上げますと、ドルの現金払い込みます分は一億六千百万ドルの一割のまた一割、一%に相なるわけでありますが、それが百六十六万ドル、五億九千七百万円、次が円の現金払い込みます分が一億六千六百万ドルの一割の九割、その一%それが五千三百七十八万四千円になりまして、先ほど申し上げました償還のための現金化予定分十億円というものと合せまして、合計が五十九億七千六百万円という数字に相なるわけであります。  なお、予算外措置といたしまして、先ほど申し上げました法律に基きまして円貨の国債によります払い込みが四十三億二千四百万円ということに相なっておるわけであります。  以上が歳出の内訳でございまして、これに見合います歳入といたしましては、今の通貨基金並びに復興開発銀行、その両者を合計いたしました二百五十億七千三百万円という金は、日本銀行の持っております金の再評価をいたしまして、そう再評価差額雑収入の形で特別納付金という形で収入をいたしまして、見合いの歳入に立てているわけであります。現在の日本銀行簿価は二百九十ミリグラムが一円、グラムに当りましては三円四十四銭何がしに相なるわけであります。昭和二十五年の金管理法規定によります再評価は一グラム四百五円であります。従って二百五十億七千三百万円という歳出額に対する金量は六十二トン四四二キログラムということに相なるわけであります。それは大体日本銀行が所有しております接収解除分に相当をしますいわゆる特定分という数量に見合うわけでありまして、この金額歳入といたしまして雑収八に計上いたしましたというわけであります。以上をもちまして説明を終ります。
  13. 堀木鎌三

    理事堀木鎌三君) これより質疑に入ります。
  14. 岡田宗司

    岡田宗司君 まず総理大臣及び外務大臣に対しまして、安保条約改定の問題についてお伺いしたいと思うのです。  四月三日の政府与党会議におきまして、安保条約改定要綱がきめられまして、これが新聞に伝えられております。さらにまた行政協定改定につきましての要綱ができたようにも伝えられておるのでありますが、これらの内容については一応新聞に伝えられておりますけれども、大体政府としてその方針がきまったと思うのであります。そこでまず外務大臣からこれらの政府が今アメリカ側交渉するに先だって、いかなる点についての改定を求めようとしておるかということについて、この要綱に基いてまず御説明を願いたいと思うのであります。
  15. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 政府与党との間で要綱をただいま審議中でございますので、まだ最終的には確定をいたしておりません。従いまして、その点について確たることを申し上げることは差し控えたいと存じます。ただ今回の改定交渉に当りましては、かねてから当委員会等で申し上げておりますように、私どもといたしましては、一定考え方をもって進んで参りたい、それは自主的な立場においてこの現行安保条約改定していくという立場をとっておるわけであります。従って、この際総括的にそれを申し上げますれば、御承知のように、われわれといたしましてはアメリカ側日本防衛義務を持ってもらいたいということを考えておりますので、その点について進めて参りたいと存じております。  それから第三国に基地を許与するという点につきましてアメリカの承諾を得るというようなことが書いてございますけれども、これらの文句は削除していきたいつもりでおります。また同時に、内乱条項等につきましても、現在の安保条約に書いてありますようなことは適当でないと考えておりますので、この点は削除して参りたいという方針で臨んで参りたい、こう思っております。また、経済条項等につきましては、かかる条約ができます両国の関係が緊密であることが必要でありますので、従って、そうした条項というものは織り込んでいくように考えておるわけであります。  この条約を作るに当りまして、アメリカ側において当然バンデンハーグ決議というものがございますので、その精神をある程度体していきますことは当然のことだと思います。が、しかしながら、日本憲法上の制約もございますので、これらの点につきましては十分慎重に考慮をして参らなければならぬのではないかと、こう存じております。  なお、核兵器を含みます装備、配備につきましては、協議事項にいたして参りたい。期限等につきましては、むろんこれを定めて、一定の期間において廃棄条項がつくことに相なろうと、こう考えております。  なお、申すまでもなく、この条約を通じまして、われわれは憲法の範囲内で行動することは当然のことでありまして、その点につきましては、十分考慮して参りたいと思っております。  また極東の安全と平和ということでありまするが、今回の場合におきましては、日本を防衛するということが第一であって、従って、日本を防衛すること自体が極東の安全と平和に寄与することだという考え方で終始して参りたいと、こういうふうに考えておるわけであります。  なお、行政協定につきましては、まだ今後の折衝に待つところ多いのでありまして、果してどの程度の改定をいたしますかわからないわけでありますが、われわれといたしましては最初から考えておりますことは、行政協定第二十四条というものは、これは今回の条約におきましても、協議事項等につきまして十分本条約中に書き入れられることでありますから、これは削除していく。なお、二十五条の(b)項でありますが、防衛分担金の問題については、日本側はこれを負担しないという方針のもとに進めて参りたいと考えております。  その他の条項につきましては、NATO条約との比較もございます。また、日本の現在の実情に照らして適当と思い、あるいは不適当と思う点をそれぞれ検討をいたしまして、そしてそれらのものについて改定し得べきものは改定し、あるいは字句上の調整によりまして改善できるものは改善して参りたいと、こういうふうに考えておるわけでありまして、現行行政協定等の二十八条がございますので、従って、この問題を将来とも活用して参れるとも存じておりますので、それらのものを一括して考えて進めて参りたいと、こういうふうに考えておるわけでありまして、これらの点を党内とも話し合いながら、最終的に党内調整の問題を進めて参りたいと思うのであります。それらの点につきましての要綱等につきましては、ただいま申し上げましたように、まだ最終的決定はいたしておりませんし、ただいま審議をいたしておる過程でございます。
  16. 岡田宗司

    岡田宗司君 聞くところによりますというと、今月の十三日に藤山外務大臣マッカーサー大使と会って、中絶しておりました安保条約改定交渉を再開するというお話でございますが、朝日新聞なんかによりますというと、最近、政府与党の間で話し合って、安全保障条約改定要綱行政協定要綱を作っており、これは選挙用に急仕上げをしておるのだというような皮肉な時評もあるわけであります。私どもややそういうふうな感に打たれるのでありますし、また、砂川事件に対する伊達判決が出まして、これが非常に政府に対しましても大きな打撃を与えた、また世論に対しましても非常に大きな影響を与えておるようであります。そのために、政府としてはこれらに対しての一つの強がりか、安全保障条約改定はやってのけるのだというふうなつもりでおやりになっているようにも見受けられるのでありますが、十三日に再開をいたしまして、大体この安全保障条約改定交渉はどれくらいの日数をかけて、そうしていつごろ調印にこぎつけるというめどをもれてなさるのであるか。前に藤山外務大臣は三月一ぱいでやるというようなことを言われたのでありますけれども、それがおいおい与党の内部におきましてもいろいろ意見があるようでありますけれども内閣としてはいつごろまでに調印までにこぎつけるつもりであるかどうか、それをお伺いしたいと思います。
  17. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先般、久しく正式に交渉をいたしておりませんので、党内調整も進んできたし、内閣も大体考え方がきまってきたから、近く交渉を再開したいという話をいたしました。ところが、マッカーサー大使が十四日から一週間旅行をして不在になるということでありましたので、できれば私どもとしては十三日くらいまでに一応の考え方をまとめまして、そうして大使に伝えることが適当ではないかと考えておりますが、今申し上げましたように、まだ最終的に要綱もきまっておりませんので、確定的に十三日に会うか会わないかということは言明の限りではございませんが、私自身としてはそういう希望をもって進めておるわけであります。  御承知のように二国間の交渉のことでありますので、ことにマッカーサー大使日本に駐在する大使でありますから、一々本国の訓令も仰がなければならぬ関係もあると思います。従って、交渉の日時をいつまでくらいに大体できるかということを申し上げることは非常に危険なことだと思うのでありますが、私自身といたしましては、できるだけ早く交渉を妥結に導いて参りたい、こう考えております。われわれといたしましては、むろん当初予定いたしておりましたよりもだんだん延びて参ってきておる。たまたま参議院選挙等にかち合って参りましたので、何かいろいろ道聴塗説を生んでおるかもしれませんが、私どもといたしましては、そういうことに関係なく、この問題はできるだけすみやかに妥結して参るように、責任者としての私としては努力をして参りたい、こう考えております。
  18. 岡田宗司

    岡田宗司君 まだ交渉に臨むだけの要綱なるものができてないと、こういうお話でございますけれども、大体新聞に発表せられておるところは、その考え方がだんだんまとまりつつあることを示すものだと思うのであります。  ところで、こまかい議論はもう前に繰り返されておりますので、私はいたしませんが、藤山外務大臣にこの点だけお聞きしたいと思うのは、一体この改定によって得られましたるところ、新しい条約の形をとりました場合、これは従来の安全保障条約と比べまして、日本軍事的義務が増大するのであるかどうか。つまり言いかえますれば、より軍事同盟的な方向に進められるものであるかどうか、この点をはっきりさしていただきたいと思うのであります。
  19. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の交渉に当りましては、現行安保条約に対しまして自主性の欠けておりますところを、自主的に、自主性を確保していくということが主眼であります。従いまして、今回の改定に当りまして特に軍事的な何か負担の増大が加わるとは考えておりません。
  20. 岡田宗司

    岡田宗司君 総理大臣にお伺いいたします。総理大臣は、昨日新潟におきまして演説をされておるのでありますが、その演説において、安全保障条約改定は相互防衛的のものにするのだということを言われているように新聞に伝えられております。今の藤山外務大臣お話ですというと、現在の安全保障条約と大差ないようでありますけれども総理の考えられておるところは相互防衛的なものであるということになりますというと、これは相互防衛条約の性質から見まして、現在の安全保障条約よりもより軍事的な色彩が強くなり、軍事同盟的なものになるということは明瞭なんでありますが、総理は果して改定に臨みまして、相互防衛条約的のものにするという方針をとっておられるのかどうか、それをお伺いしたい。
  21. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この安保条約改定の問題につきましては、しばしばその基本的な考え方につきまして、従来国会におきましても質疑応答がなされております。先ほど外務大臣がその改定のおもなる事項について御説明を申し上げましたような方向改定をしたいというのがわれわれの初めからの考えでございます。従って、この改定によって従来日本アメリカとのこの安全保障条約によって負うております軍事的の義務が強化される、増大されるというふうには私どもは考えておらないのであります。先ほど来外務大臣がお答え申し上げました通りでございます。
  22. 岡田宗司

    岡田宗司君 しかし総理は、新潟相互防衛条約的のものにするというように言われたように新聞に伝えられておりますが、そういうことをはっきり言明されたから伝えられたと思うのですが、やはり総理はそういうふうな形にするということを今もお考えになっておるのかどうか。
  23. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今日までの安保条約というものが、アメリカの一方的なものであり、アメリカの意思に全然動かされておって、日本の方としては何らの自主的な意思が認められておらない、これを対等な形に置いて、いろいろなことをするのについても日本の意思を十分にとり入れるというふうなものにしたいという意味のことを私は申したのでありまして、そういう考え方でこの改定には最初から当っておりますし、今後もそういう意味でこれを改定したい、こういうっもりでございます。
  24. 岡田宗司

    岡田宗司君 条約の形式を対等のものにするということと、相互防衛条約的のものにするということは、これは非常に内容が違うのです。私どもをそういうことで、ごまかそうとされても、これは、ごまかせるものじゃないのでございますが、相互防衛条約にするということは、今は日本の方でもって基地提供以外に軍事的義務を負うてないわけでありますが、しかし相互防衛条約的のものにするということは、日本においてそれ以上のさらに軍事的義務を負うことである、しかも今、藤山外務大臣バンデンハーグ決議との関係について述べられまして、もしバンデンバーグ決議を今度の条約改定のうちにとり入れる、それを明記するということになれば、日本軍事的義務を今日の安全保障条約以上にふやしていくことは、これは当然なことです。それは条約に明確になることなんでありまして、岸総理相互防衛条約的にすると言った方が私はほんとうだと思う、そうすると、今ここで私に説明されたことと違ったことをお考えになっておるし、また、やろうとしておることに明白なんです。私どもは、やはり相互防衛条約的な、軍事的な色彩をより強めるものにしようとしているというのがほんとうだと考えざるを得ないんですが、もう一度その関係について首相のはっきりした言明をお願いしたい。
  25. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど来お答え申し上げました通りでありまして、われわれは決して日本の軍事的なアメリカに対する義務を増加するということは考えておりません。ただ、今お話通りバンデンバーグ決議をどういう形でとり入れるかということ、これは日本憲法との関係もございますので、先ほど外務大臣がお答えしているように、きわめて慎重にこの問題を、とり入れることについて、研究、検討をいたしておるわけでございます。従いまして、この安保条約について、アメリカ日本を防衛する義務があり、それに対応する日本側における義務としては、日本が基地を提供するということに具体的としては私はなると考えております。従って、現在の安保条約がやはりそういうことになっておりますし、従って、軍事的の日本義務を増大するものではない、かようにわれわれは考えておるのであります。
  26. 岡田宗司

    岡田宗司君 藤山外務大臣にお伺いしますが、バンデンバーグ決議をとり入れるということは、これは相互に防衛の努力を増大していくことを約束することになる。憲法の範囲であろうがなかろうが、アメリカとの関係においてバンデンバーグ決議をとり入れるということは、日本側においてアメリカに対する軍事的義務を増大することになるじゃありませんか。その点、一体バンデンバーグ決議と軍事義務の増大との関係をどうお考えになるか、外務大臣の所見をお伺いしたい。
  27. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) バンデンバーグ決議は、御承知のようにこうした条約を結んでお互いに軍事的に協力し合おうということが主体だと思います。そうしてその主体をなすものは、やはり自分の国の憲法なり、あるいは国内の経済その他許す範囲内において、自分の判断においてそうしたものを増大していく、あるいは防衛力を増大していくことをお互いに考えていくということでありまして、条約によりまして何か日本の自衛力を、日本の考えております経済力その他以上なものを押しつけられるという意味では、私は精神はないと思います。また、そうないことによって、この、ハンデンバーグ決議というものは生かしていけると思うのであります。あるいは条約によってそういうことを押しつけられていくという場合があるかもしれませんが、精神からいいますれば、そういう解決方法でいけるのではないかと考えております。
  28. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいまの藤山外務大臣のお言葉でも、あるいはそれを押しつけられるかもしれないということを言われておりますが、まさにそういう危険があることは明瞭であります。それからバンデンハーグ決議でよそから押しつけられないで、日本が自分の考えるところ、あるいは自分の経済力の範囲で増大するにいたしましても、これは日本アメリカとの間の条約が結ばれておって、その条約の中にこれが明記されて、日本がみずから自発的にそれを増大するという場合でありましても、これは明らかに条約によって制約されて、条約に基いて増大するということに結果においてはなるわけです。そういたしますれば、バンデンバーグ決議をとり入れるということは、たとえ精神をそのままとり入れて、日本憲法に合致するようにしながらそうするんだと申しても、これは軍事義務増大ということを条約の中に明記することになるのではありませんか。そうすると、これをとり入れることは、藤山外務大臣が今より軍事義務の増大にならぬ、あるいは岸総理がただ対等のものにするんだと言うこととは、まるで性質の違ったものになるということは明瞭であろうと思うのであります。少くともバンデンバーグ決議をとり入れるという以上は、向う側からもそういう要求が、これは押しつけの形をとるか、いろいろ内攻性の形で、もっと巧妙な形でくるかは別といたしましても、日本側ではそういうような——精神というお言葉をお使いになったから、私も申し上げますが——精神的義務を負われるに違いないと思うのでありますが、そうなれば、やはり結果としては軍事義務の増大になる、こう断定してもいいのじゃないかと思うのですが、その点いかがですか。
  29. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 岡田委員と若干見解が相違をするかもしれませんが、私どもといたしまして、要するに自分自身がやはり健全な態度を持つということは、これは必要なことだと思うのであります。こうしたお互いに防衛に関して協力していこうというようなことは、お互いに健全な態度を持つというところの間で話し合いができることは当然なことでありまして、そのこと自体は私は必ずしも条約で何か押しつけられるということではないと思うのであります。自分の許す範囲内において自分が努力するということをお互いに話し合って参りますことを自体は、決して押しつけられることだとは考えておりません。
  30. 岡田宗司

    岡田宗司君 押しつけられないでも、先ほど言ったように、その精神に沿うてみずからやるということになれば、結果は軍事義務の増大になる、こう私どもは断定するのであります。  まあこれはその程度にとどめておきまして、今外務大臣お話ですというと、いわゆる内乱条項は、これは削除する方針である、こう言っておる。ところが、自民党の総務会におきましては、内乱条項削除反対である、こう言っておる。これはどうきまりますかわかりませんが、大体において、自民党の中においては、内乱条項削除に反対の空気が強いようであります。もしそういうことになりましたならば、これは、藤山外務大臣なり岸総理大臣なりが言っております対等の形ということとまるで違うことになるのであります。これは明らかにアメリカの内政干渉をあらかじめ許す条項を設けておこうということに相なるわけでありますが、一体これをもっても、こういうふうなものを残しておいてもなおかつこれが対等の条約の形式をとるものであるかどうか、これはアメリカ日本に対する内政干渉を条約に明記して許すものであると思うが、そうお考えにならないのかどうか、その点を総理大臣からお伺いしたい。
  31. 岸信介

    国務大臣岸信介君) いわゆる現在あります安保条約の内乱条項というものは、先ほど外務大臣も御説明申し上げましたように、これは私は改定した新らしい安保条約には、ああいう条項一はないようにしたいと思います。そのことについて、従来党内にも反対の議論がありましたことは事実であります。しかし、この今回の安保条約改定があくまでも日本自主性アメリカとの関係を対等な形にできるだけもっていくという基本方針から考えますと、こういう条項はこれは削除することが適当であると私は信じております。
  32. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に、小笠原、沖繩を条約の適用範囲に含める問題でありますが、この点について、前々岸総理がこれを含めるようなことを議会で言明されておりますし、藤山外務大臣はこれを含めないということを言っておられる。また、党内におきましても、あるいは河野一郎氏その他の方々のうちには、積極的にこれを含めろという意見もあるようでありますが、これらについてはなおまとまっておらぬようですが、この点については、小笠原、沖繩をどういうふうに処理されるのか、この点なお明瞭に政府の態度をお示し願いたいと思います。
  33. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 沖繩、小笠原をこの防衛地域に加えるか加えないかという問題につきましては、従来もいろいろと質疑応答が行われておりますが、ただ、私が何だかこれを含めるというような意見であって云々というお言葉がありましたが、私は、この問題については、従来国民の間にもいろいろ議論があり、両方の議論が立ち得るわけであるから、十分慎重に世論の動向も聞いてきめたいということを申してきたのであります。私どもは、沖繩、小笠原については潜在主権を日本は持っておる、しかしながら、一切の施政権はアメリカが持っておる、したがって、一切の施政権を持っておる限りにおいてはやはりアメリカがこれらの地域を防衛すべき義務を持っておるのだと、しかして、この施政権が日本に返ってくれば、当然日本がこれに対して防衛するところの義務を持つことはこれは当然である。現在の状況においてはアメリカが施政権を持っておるがゆえに、また防衛の義務もこれはアメリカが負うべきものであるという考えをもって進んでいきたいと、かように考えております。
  34. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいまのお答えですというと、現実には小笠原、沖繩は共同防衛の範囲に含めない、こういうことになるわけでありますが、いわゆる太平洋におけるアメリカの行政管轄のもとにおける島々ということが米韓相互防衛条約、光比相互防衛条約、米タイ相互防衛条約等にもしるされておるわけでありますが、私どもは、もし沖繩、小笠原を日本が今度の安全保障条約のうちに含めるということになりますならば、これはその連鎖反応を起す結び目になると思っておって、これを含めることは非常に重大な問題であると思っておったわけであります。で、ただいまのお話ですけれども、とにかく形の上では含めることになるわけであります。そういたしますと、依然としてここが連鎖反応の結節点になるということは残るわけでありますが、その点については総理大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  35. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今お答え申し上げましたように、施政権を持っておる限りにおいてはアメリカがもっぱらこれが防衛に当るべきものであって、私どもは今度の安保条約のいわゆる防衛地域にはこれを含めない。将来施政権が日本に返還された場合においては、完全なる日本領土として、他の本来の領土、今度の安保条約が考えております地域と同様にこれが条約の防衛地域に入ってくるわけですが、施政権のアメリカに属する限りにおいては、これは安保条約のいわゆる防衛地域には含めない、もっぱらアメリカがこの防衛に当るべきものであるということを明らかにしたいと思います。
  36. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、アメリカに施政権がある限りは、たとえ条約にそれを日本は将来施政権が返還されたときには条約の適用範囲に含めるというふうにしても、それは現実現在の状況のもとにおいては、米韓、米比、米タイ相互防衛条約の連鎖反応を超す結節点にならないと、そういうふうにお考えになっておる。それらの条約とそこでは結びつかないというふうにお考えになってそういう発言をしておられるのかどうか、念を押しておきたい。
  37. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 従来米韓、米タイ等の条約におきましては、沖繩、小笠原等が含まっておりますので、今度安保条約にこれを防衛地域に含めるというと、今岡田委員お話のように、これがいわゆる連鎖反応的な作用の扇のかなめみたいなことになるというふうな議論があるわけでありますが、私がさきほどからお答えを申し上げましているように、今度の防衛地域というものは、日本のいわゆる潜在主権を持っておる領土すなわち日本が施政権を持たない所へは及ばないということにするならば、そういう議論は超り得ないと私どもは考えております。
  38. 岡田宗司

    岡田宗司君 今度の安全保障条約期限の問題について、現在はまあアメリカ側の言いなりほうだいというようなことになっておるわけでありますが、一応十年にしたいという意向のように新聞には伝えられておる。ところが党内には中ソ友好同盟条約が三十年だから三十年にしろという意見もあるように聞いておるのでありますが、これらの点についてはどういうふうにお考えになっておられるか。
  39. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 党内にはむろんこの問題についてもいろいろな意見がありますことは当然でありまして、いろいろな年限についての考えを持っておられる方もあろうかと思います。われわれといたしまして最終的にはまだ決定をいたしておりませんけれども、しかしそう長期にわたる必要もない、またあまり短期でもいかぬというようなことをいろいろ考えて参りますと、やはり十年ぐらいが適当じゃないかというふうに考えておるのでありまして、そういう意味において皆といろいろと話し合いをして参りたいと、こう思っております。
  40. 岡田宗司

    岡田宗司君 それから日本に駐留するアメリカ軍の兵力量それから配備の点についてあるいは出動について事前協議ということを入れようというお話でございます。この事前協議の問題は、特に出動についての事前協議はきわめてむずかしい、ほとんど戦術的行動の場合には不可能だというのですが、それを入れるということでありますが、特にその中においてアメリカ軍が日本に核兵器を持ち込まないということ、そしてまたそのことはあるいは核兵器の、ロケット兵器の基地を設けないということ、それらのことはこの条約の中に明記されるのかされないのか、単に装備、配備についての事前協議というだけにとどまるのかどうか、その点についてお伺いしたい。
  41. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 兵器そのものの名称を書きますことは困難だと思います。従いまして配備、装備というような、重要な装備その他の、というような字句をもって表現するのが適当ではないかと思います。
  42. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、条約上今度は話し合ってそれらの装備を日本に入れるということも可能になる道が開かれると思います。私どもは、そういう今は持たない持たない、あるいは要らないということを言っておられるけれども条約にそれが明記されず、配備、装備については事前の協議を行うということになりますというと、日本アメリカと事前の協議をいたしまして、明瞭に今度は、はっきりとそれを入れるということをみずから承認して入れる事態も起ってくると思うのであります。私どもはそこに将来この条約が効力を発生しましてから後政府の態度等が変りますならばその危険があることが感じられるのでありますが、その点について政府はどうお考えになっておるのか。
  43. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 現在の安保条約にはアメリカ側が持ち込みましてもこれを拒否いたします条約上の根拠はございません。従いまして少くも今回協議をして拒否することを明記いたしますことは、私は現在の条約よりよほど日本のこれに対する立場がはっきりしてくるのではないかと思っております。申すまでもなく岸内閣が続く限りにおいては拒否することは総理の言明の通りであります。
  44. 岡田宗司

    岡田宗司君 条約は岸内閣以上に続くのでありますが、たとえば附属文書か交換公文の中にそのことを明記される用意があるのかどうか、その点をお伺いしたい。
  45. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろんわれわれとして総理もたびたび議会で言明しておられますので、現在そういう内閣として持ち込みに対して拒否することは当然なことだと思うのであります。現行安保条約では条約上拒否する権能も何もございません。従ってただアメリカが精神的に日本の国民の好まざることを強いるということを控えておるのだと思っております。そういう意味においては本来条約にそれを書きますことは事態は非常に自主的になりますし、また拒否する根拠もはっきり出てくると思います。
  46. 岡田宗司

    岡田宗司君 私はそれを附属文書か交換公文でもってはっきりさせるかどうかということをお伺いしたのですが、その点いかがですか。
  47. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 総理が議会で言明されておりますので、そういうことは書く必要はないと思います。
  48. 岡田宗司

    岡田宗司君 アメリカにはっきりそれを認めさせなければなおその危険が残るわけで、国民は安心しないのです。それで私がしつっこいようですが、それをおやりなるかおやりにならないのかを聞いたわけなんですが、おやりにならないというところをみますというと、まあ岸内閣の続く限りはどうか知りませんけれども、その後にはまた道の開けることも起ってくるので、私どもは不安にたえないのであります。いずれにいたしましても、今度の条約改定については、今の御説明では対等のものにするのだ、そして現在以上に軍事的義務は増大しないのだと、こう言われますけれども、どうも対等のものになるかどうかということは、これは単に形式だけのことではなくて、実際の力関係あるいは現在までの経過その他からきまることであって、私は文面だけではとうてい実質的に安全保障条約日本アメリカとの対等の関係で結ばれるというふうには考えないし、また特に内乱条項等を残すという意見が強くて、それが残るといたしますならば、依然としてこれは日本に内政干渉の道を開くことになろうと思うし、また国民が一番心配しております軍事基地の増大、特にアメリカ軍が核兵器の持ち込みあるいは日本にロケット兵器等の基地を作ることについて、事前の協議という言葉は入れるかもしれませんけれども、実際にそれを明確に拒否するということを何らかの形で示さない限りは、依然としてこの安全保障条約改定については私どもは不安に思わざるを得ないのであります。しかも、今日の情勢において、特に昨年の八月以来中国台湾海峡の緊迫した情勢以降において、急に安全保障条約改定が持ち出されて参りましたこと等の状況から考えまして、私は依然としてこの安全保障条約改定アメリカの対共産圏戦略の強化という一環につながっておるものであるというふうに考えざるを得ないのであります。そうしてこの改定が進むにつれて、やはりそれらの疑惑が起ってくることは、国民の間にそういう疑惑が起ってくることはこれは、もう確かだと私どもは考えておるわけでございますが、特に日本側だけが安全保障条約改定についての見解を持っているわけではないのでありますが、アメリカ側もおそらく交渉に応じた以上は、安全保障条約改定について何らかの方針は持っておると思うのでありますが、そのアメリカ側が持っておる方針について大略のところをお示し願いたいと思います。
  49. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) アメリカとしては基本的に日米関係の強化ということを考えておると思います。これはむろん経済上、政治上、そういう意味から申しましても日本との友好親善関係を強化していくということが必要だと考えておると思います。同時にまたアメリカ自身日本が他国から侵略されることは極東の平和と安全を害するということを日本人と同じように考えておるのだと思います。そういう意味において日本との間にできるだけ友好的立場をとっていきたい。それにはやはり日本が今日置かれている状況からみて、日本自主性を入れる。占領当時の延長でできたこの現行安保条約を改善して、そして日本考え方も十分自分たちが聞いて、そうしてこれを運営していくということが日米友好関係をさらに強め深めていくという考え方を基本的に持っていると存じております。
  50. 岡田宗司

    岡田宗司君 これは単なる政治的あるいは経済的の日米友好関係の強化の問題ではない。安全保障条約改定は、やはりその内容からいって、軍事的問題なんですね、そう考えて参りますというと、私はアメリカ側にとっては、現在の対ソ連圏諸国に対する戦略、戦術的な強化ということを考えないわけはないと思う。この点について、アメリカ側がそれを捨てるということは私は考えられない。特に、日本に軍事基地を持ち、アメリカが相当な海空軍を今日なお駐屯さしておることは、極東戦略の一環としてなされておる。だから、これを捨てるはずはないのでありまして、私は、特に今藤山外務大臣が軍事的という言葉を落されたのは、これはごまかされることだろうと思うのですが、われわれは、依然として、この条約改定によってアメリカ日本を軍事基地として使用し、また、対ソ戦略あるいは対中国戦略に日本を使うという根本的な考え方が捨てられない限り、この条約そのものに反対せざるを得ないし、また、私どもは、この交渉がいかなる表面美しい言葉で飾られようと、そういう内容を持つ限り反対せざるを得ない。特に、過日の砂川の事件の判決によりまして、安全保障条約は違憲であるということがはっきり示されたのであります。これは、過日も申しました通り、単に国際法学者あるいは国際政治評論家、ジャーナリストというものの論文ではないのでありまして、国家機関の一部が、安全保障条約の違憲性をはっきりと明示したのであります。愛知法務大臣は、七十余件その安全保障条約を合法的なものと認めて下した判決があると言っておりますけれども、これは、ただ頭からそう考えて、刑事特別法に基いて裁判をしただけのことであり、判決を下しただけのことでありまして、安全保障条約自体の違憲なりや合憲なりやという問題については、何ら今までそういうことを下しておらぬので、初めてそういうことが下されたのであります。しかも、国家機関によってそういう見解が述べられたということは、これは重大なことであります。政府の方では、おそらく飛躍上告をして、すみやかに最高裁判所が別な判決を下すことを期待しておるようであります。しかしながら、憲法制定当時の状況、あるいは日本に朝鮮戦争によって警察予備隊が行われ、保安隊、自衛隊になりますまでは、ああいう解釈は当然のことと考えられておる。それができてから、逆に、九条の解釈並びにこの安全保障条約の違憲合憲の問題も、そこに新たな角度から問題になってきたわけでありまするが、少くとも憲法制定当時のことから考えて、法律的に考えれば、最高裁判所といえども、容易にあの判決をくつがえすことはできないものと私どもは信じておる。そういたしますならば、この条約改定は今日進めるべきではないと、こう考えておりまして、少くとも、私どもは、最高裁判所の決定がなされるまではこの改定は打ち切るべしと考えておるのであります。また一面におきまして、これは一つの軍事条約であり、とにかくヴァンデンハーグ決議等を入れて何らかの形で軍事的な両国の提携を強化しようという方向に進むといたしますならば、これは危険なものでありまするが、今日、ベルリン問題について両陣営間のいろいろな折衝も行われ、東西両巨頭会談も開かれようという情勢になっております。これらの情勢がどういうふうに展開するかということも、これは日本の将来について非常に関係することでありまするので、それらの事態もありまするので、安全保障条約改定は今日やるべきでないと考えるのでありまするが、その点、総理大臣並びに藤山外務大臣の御見解を伺いたい。
  51. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 砂川事件に関する伊達判決につきましては、あの判決がありました当時にもこの委員会におきまして質問があったのでありまして、これに対して政府もその所信を述べたわけでありますが、私ども、もちろんこの判決の最終的な効力は、今上告されておりまして、最高裁判所がこれを決定するのでありまして、従ってそれまでの間におきまして、従来われわれがとっておる憲法の解釈は決して間違っておらないという政府は信念に立っております。また現行安保条約自体が国会において審議され、そうして批准されて、今日まで、この安保条約に基くところのいろいろな法律関係というものが平穏に今日まできておったわけであります。私どもはこれはあくまでも合憲であるという建前に立ってすべての行動をしていきたい、かように考えておるわけであります。これは安保条約——現行安保条約につきましては、御承知のように非常にアメリカの一方的なところもあり、    〔理事堀木鎌三君退席、委員長着席〕 また日本に全然自衛力のなかった立場から日本の安全を確保するためにアメリカにお願いをして駐兵、駐留してもらって防衛してもらおうという建前になっておるのであります。しかしながらこれは、日本が独立を回復し、日本も国情と国力に応じて漸次自衛の力を高めて、強めて参ってきております実績にかんがみて、一日も早くこの独立国としてふさわしい、また自主的な立場から両国ができるだけ対等の立場においてこの条約を改正したいということは、相当長い間われわれの念願であり、幾たびか日米の間にそういう話し合いがされてきておったわけであります。それが漸次日本のわれわれの希望が理解され、そうして安保条約改定アメリカが同意をするに至ったわけであります。先ほどお話がありましたが、台湾海峡の問題が起って何か突如としてこういう問題が一この安保条約改定の問題が提起されたようなお話でございましたが、そうではありませんで、その前私が参りましたとき、さらにその前重光外相が向うに行ったとき以来の、ずっとわれわれの主張が、アメリカ日本の独立の完成と、日本の国民の気持を理解してこれが改定に賛意を表したわけでありますから、私はやはり既定の方針に従ってこれが改定交渉を行なっていき、改定交渉が妥結するならば適当にこれが調印等を進めて参りたい。従って砂川事件に関する伊達判決の問題は、あくまでも最高裁において最後の決定をしてもらう、政府は従来の所信に基いて行政的、あらゆる政府の行動を従来通りやっていく、これが私は当然の政府に課せられた義務であると、かように考えております。
  52. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと関連、いいですか、一問。  砂川事件について、地裁の判決を最高裁が支持して、地裁と同様の決定をされた場合には、政府はどうされますか。
  53. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん最高裁において憲法の最後の解釈がきまった場合においては、政府としてはその解釈を採用して、それによって生ずるいろいろな問題について必要な処置を講じていかなければならぬ、かように考えております。
  54. 岡田宗司

    岡田宗司君 少くとも国家機関の一部である地方裁判所の判決である、そしてこれは判決自体の重みから言えば、これは一つの判決として、最高裁の判決が下るまで重い軽いはないのでありますから、従って最高裁の判決が下るまで、こういうような違憲と思われるようなことになっております安全保障条約改定、しかもその違憲性がより強まる方向改定することはやむべきであると思いますが、このことは見解の相違でありますから、これにとどめまして……。
  55. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ちょっと関連して。岡田委員質疑がかわるようですから、行政協定とそれから安保条約改定に関して過去一カ月間ここの予算委員会質疑応答をした。それと比較するときに、きょう岡田委員に対する答弁の中から若干ニュアンスの違う三つの点を私は発見するわけです。その三つの点について伺いますが、その一つはヴァンデンバーグの決議についてはずいぶんここで議論しました。しかしその当時の藤山外務大臣の答弁と、きょうヴァンデンバーグの決議の精神を入れることは当然云々というこの積極的な発言の間には、かなりの私はニュアンスの相違を認められます、従来の本委員会の答弁と。それはこのヴァンデンハーグ決議の「継続的且つ効果的な自助と相互援助に基礎を置き、且つ合衆国の安全に影響を与える地域的」云々と書いてある、これは議論したところなんです。今までのこの委員会における答弁では、きょうの答弁とは私はかなり差があったと思うのですが、そこで、はっきり言えることは、岡田委員が指摘したように、軍事義務の増大というのが出てくると思う。そしてまたこれと関連する問題として、あの第一条にある、極東の安全と平和という言葉を落しなさい、極東の安全と平和というこの第一条は落すべきだということが、日本社会党はこの委員会でずっと追及したわけですね。ところが本日も依然として極東の安全と平和は落さない、ここに軍事義務が増大するということと、実質的にNEATO的なにおいが従来の答弁よりは私は出てきたと思う極東の安全と平和を保つことが日本の平和のために大事だから極東の安全と平和を入れる、こういうふうに答弁をしているわけですけれども、しかしそれなら日本の安全を保つために、世界の平和と安全も大事でしょう。ここに極東というものを持ってきているということと、きょうのヴァンデンバーグについての藤山さんのは、確かにニュアンスが違っている。これはいよいよ十三日から交渉せられるというのですが、アメリカと事前協議をしたときに、やはり若干向うから強く押されているのじゃないかと思うのですが、この点が一点。  それからもう一点、次にニュアンスの違うのは今まであなたは条約改定に当っての期間は、積極的に藤山さんずっと十年が適当、十年と言っておったわけですね。ところがきょう岡田委員質疑に対しては、答弁は、期間は未定云々と言って、十という数字を隠した。そして追及しましたところが、そう長期にわたる必要はないと、こう言って、そして最後に小さな声で自信なげに十年云々と言ったんです。これは与党内の意向が相当あなたに圧力がかかっていると思う。われわれ日本社会党はそのもの自体には反対です。十年というあなたの案自体長過ぎると思う。社会の情勢が刻々変っているんですね。われわれはそういう見解を持っているわけです。かりに改定するにしても、十年という期間は長いと思っている。そこでこれはあなたは与党のやはり反主流派の圧力に屈しようとしているのか、それからかりに十という数字をとった場合でも、世界の情勢がいかに変るかもわからぬのだから、両国が合意した場合は、十年以内においてもこれは廃止できるように私は規定すべきだと思う、この点。  それからもう一点は、選挙を前にして新聞、ラジオでは盛んに行政協定、これは全面的に改定するという党の方針になった、まあ池田さんとかあるいは河野さんの意見が入れられたように報道されている。きょうの新聞にも大大的に出ている。ところがきょうのあなたの答弁を見ると、依然として行政協定は二十四条、二十五条に重点を置いて、あとはほとんど軽視されています。この点に関する限りあなたの答弁は変っていない。ところが新聞報道は選挙を前にしてぐっと変ってきている、これは私は国民をごまかすものだと思うのですね。行政協定を全面的に改定してほしいというのは、国民のこれはほとんど総意と言っていいでしょう。この前言ったような関税の問題にしても、入国の手続の問題にしても、あるいは裁判管轄権の問題にしても、あるいは進駐軍労働者の労働法規の順守の問題にしても、だからこの点あなたどうも藤山さん、二十四条、二十五条だけでけっこうだということを、向うに言質を取られているのじゃないかと思いますが、この点さらに国民の声を背景にして、これを交渉なさって、強力に押し返す決意と見通しがあるかどうか。今まで当委員会で一カ月間議論して参りまして、私きょう承わってこの三つは確かにニュアンスが変っていると思う。お答えいただきたい。
  56. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 第一のヴァンデンバーグ決議でありますが、ヴァンデンバーグ決議に対して私が申したことは変っているとは思っておりません。私が申しましたのは要するに終始一貫申しておりますのは、あの上院でのヴァンデンバーグ決議の字句そのものというのは、われわれは必ずしもそれにこだわる必要はないと思います。ただこの種条約を作ります両国の態度と申しますか、そうしたものは、やはりヴァンデンバーグ決議の中にも現われていると思います。従ってそういう意味において、われわれは精神的にもヴァンデンハーグのお互いに助け合っていくという精神を尊重していくと、そういうことが規定されていくことは必要だと思うのでありますし、その意味において、これらのものを生かして規定さしていく、ただし申し上げましたように、憲法上の問題もございますので、あのヴァンデンバーグの決議通りの字句を必ずしも使う必要はないのではないかというのが、私が終始一貫申していることだと思います。  それから十年という問題、決して私もよろめいているわけでもございませんし、まあ各方面でいろいろの御議論のあることも当然だと思います。私は大体私個人としては、十年が適当だと、こう考えているのでありますが、しかしむろん各方面の御意見も承わって、これらの問題を解決いたして参りまするけれども、しかし今の態勢から申しまして、十年ぐらいに適当に決定していくのではないかと考えておりますけれども、今それ以上申し上げるわけにはいかぬと思います。
  57. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 両国の合意した場合は早くやめられると規定して下さい。
  58. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) それらの点につきましては、若干御意見の相違になろうかと思います。それから最後は……。
  59. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 最後は行政協定二十四条、二十五条では、言質取られているのじゃありませんか。
  60. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 行政協定につきましては、私どもはまだなんにも言質を取られていることはございません。これは条約に関しましてもそうでございます。従いまして私どもとしては、むろんできるだけのことはやって参りたいということを初めから考えております。ただ行政協定は御承知のように二十八条からなっておりまして、いろいろな面に接触したものがございますので、各方面の意見も十分聞かなければならぬわけであります。二十四条のごとき、当然条約が改正されますれば、しかも条約上に規定されるものでありますから、これは当然最初からとってしかるべきものだと、こういうふうに考えておりますし、また結果として二十五条の二項というようなものも当然これは主張すべきだということは、はっきりいたしておりますので、私はそう申しているわけであります。  その他の問題について、全面的に検討しておらぬわけではございませんし、(矢嶋三義君「あまりあなた熱がない」と述ぶ)主張すべきものはできるだけ主張するのは当然のことであります。ただ行政協定につきましては、若干専門的な面がございますので、いろいろ御意見はありますけれども、まとまりの点もございまして、また表現上の問題によって本質は違わないけれども表現が違っているというところもございます。そういういろいろなこまかい点がありますので、何しろ全面的改定ということは条文が全部悪いというような印象を与えている面もございますので、私としては必ずしも全面的改定という言葉は適当ではないのじゃないかということを申しているわけでありまして、たとえば労働法規につきましても、一応日本の労働法制を採用いたしております。あるいは司法裁判権の問題につきましても、日本法律に服することになっておりますので、そのこと自体を条文で改正する必要はないのでありまして、あとの問題はやはり運営上の問題にもなってくると思うのであります。そういう点を見ますと、全面という言葉が何か全部悪いものだという印象があるように思いますけれども、そうではないということはわれわれ考えているのでありますが、できるだけ交渉でありますから努力いたすことはもちろんであります。
  61. 鈴木強

    鈴木強君 ちょっと関連して。一つだけ総理にお尋ねをしたいと思いますが、非常に問題になっております砂川基地の東京地裁の判決に対する政府の態度でありますが、今度跳躍上告ということを正式にきめたようであります。で、私たち考えまするに、現在の三審制度をこういう問題こそ生かされて、できるだけ一審、二審、三審と順を踏んで、事が重大であるだけに、その判決を求めていったらよかろう、こういうようなのが私は国民の大多数の考えておることだと思うのですね。ところが、いろいろ見方もあるようでありまして、あるいは、こういう問題ですから、できるだけ早い機会に一審をくつがえす結論を出して、安全保障条約交渉やあるいは選挙等の問題に対処しようという自由民主党の考え方があるのじゃないか、こういうような政治的な見方もあるようであります。従って、私たちも、どうして高裁を飛ばして最高裁にもっていったのか、この点非常に疑義を持っております。従って、総理大臣から、世上いろいろ、政治的な問題をからめておるときだけに、そんなにせっかちに一挙に最高裁まで跳躍上告というようなことをおやりになる必要は私はないと思うのですが、どうしてそういうことをやるのか。
  62. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この判決に不服申し立てをどういう形でやるかということは、これは御承知通り、検察当局がきめる問題でございます。そして事が重大でございますので、検事総長以下関係の検事当局におきまして数回の会議をして、そしてその結果として、こういうものこそ跳躍上告の規定によって跳躍上告をして、そしてこれを決定するのがいいというわけで、というのは、もっぱら憲法の解釈に関する問題でございまして、事実認定の問題とか何とかが問題になっておるわけではない。憲法解釈の問題であるから、そういうものは跳躍上告の方法をとるべきであるというのが検察当局の一致した意見であったのであります。政府はこの検察当局の態度及びその結論を一応承認したということであって、政府の方で政治的意図やあるいは考えをもって検察当局にそういう手段や考え方をとらしたわけでは全然ないのでございまして、検察当局において事の性質上跳躍上告をしたのですが、もしも政府が反対であれば、指揮権を発動してやるという問題があるかもしれませんが、そういうことでなしに、検察当局の一致した意見を承認した、こういうことであります。
  63. 鈴木強

    鈴木強君 総理の言われることは一応表面的にはわかりますが、三十日にこの問題について岡田委員から愛知法務大臣に対して質問がございました。そのときにすでに、法相は跳躍上告というような方法があるということをここでもって漏らされておるのですね。ですから、それがいよいよ裏づけされて出てきたというふうに判断するということは、これは当然です。もちろん、筋道として、検察側がいろいろ御検討なさったでありましょう。しかし、そういう内容も何も知らないと言っている愛知法務大臣は、あのときすでに、そういう方法があるのでできるだけすみやかに政府としては最終的な判決を待ちたいということを言明しておる事実があります。そういう点から、われわれ連想してみまして、どうも総理の言われるようなすなおな格好にとれないのです。どうも政治的な意図があるというように私たちは解釈せざるを得ないのですが、この点はもう間違いないでしょう。
  64. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど私が申し上げましたことは、ちっとも、ほんとうにかけ引きがあるわけではございません。(笑声)実は私も、今鈴木委員お話しのように、これを普通の方法によって三審でいくのがいいのじゃないかと考えたこともございます。ところが、検察当局が一致して、これはもう法務大臣の報告を聞いてみると、だれ一人異論なしにそうきめておる。それで、もしもどうしてもそれをやらせないということならば、いわゆる指揮権を発動してやると。しかし、そういう性質のものでもないし、何からいえば、純粋に憲法解釈の問題だけが論議になっているわけですから、われわれとしては、何かがおかしいということで、決して政治的に検察当局をしてやらすというそういう事実は全然ございません。
  65. 岡田宗司

    岡田宗司君 次にお尋ねしたいのは、四月四日にアイゼンハワー大統領がゲチスバーグ大学でもって、アメリカの外交政策に関して演説をやっておりますが、その演説のうちで日本に関する部分があるのであります。そのうちで、アイゼンハワーは次のようなことを言明しておると伝えられておる。日本はアジアの共産勢力に対する不可欠の対抗勢力、こう言っておる。また、日本の工業力は極東をその共産勢力から守る集団的努力の中心である、こういうことを言っておるのであります。なるほど、アジアにはソ連、中国、あるいは朝鮮人民共和国、あるいは北ヴェトナムの共和国等がございまして、アジアにおけるいわゆる共産主義諸国家というものが大きな地位を占めておるのであります。日本はそれと接触した地位にあるのであります。海は隔てておりますけれども、きわめて近い地位にあるのであります。日本の安全いう立場からいきますれば、私はやはりこれらの国々との間にも友好親善関係を打ち立ていくということが必要であろうと思うのでありますが、アメリカは、アメリカの対共産圏政策あるいは戦略からいたしまして、日本アメリカの陣営側につけて、そうして共産主義諸国にアジアにおいて対抗さしておる、さそうとしておるのだということは、この今申し上げた点からも明らかになっておるわけでありますが、私どもは、もし日本自身がこの演説を肯定して、そうしてこれと同じような考え方を持つといたしますならば、それこそきわめて危険なことであると思うのであります。この点について、私どもは、政府がこのアイゼンハワー大統領の演説についてどうお考えになっておるか、お伺いしたいのであります。  日本は果して、アジアの共産主義勢力に対する不可欠の対抗勢力である、こういうふうなある意味で軍事的ななににつながるようなものの言い方が見られるわけでありますけれども、これを肯定されるかどうか。それから、第二点の、日本の工業力というものは果して、極東に共産勢力が伸びてきておるそれに対抗するための集団的努力としてあるものであるかどうか、これについての明確な見解を、まず総理大臣からお伺いしたい。
  66. 岸信介

    国務大臣岸信介君) アイゼンハワー大統領の演説は、私、詳しく内容を承知いたしておりませんが、これは今岡田委員から御質問の点は、アイゼンハワーが日本を見て、日本に対する一つの批判といいますか、アメリカ側から見た批判の意見を述べたのであると思います。ただ、日本の外交の基本方針として、従来も言っておりますように、私どもは、国連中心主義と自由主義の立場を堅持し、自由主義の国々と協力をする、アジアの外交を推進するという三原則をもって臨んでおります。しかし、その根抵にあるものは世界の平和、いわゆる平和外交の推進ということでありまして従って、共産主義の国々との間におきましても、すでにソ連との間の国交を正常化してきておりますし、いつまでもこの共産主義国家を一つの敵としてこれと対抗していくというような考えを持たないものであることは、言うを待たないのであります。ただ、日本自身の外交方針としては、今言った三原則を私どもは基礎としてとっておるわけでございます。これをアメリカの方が見て、アメリカが、どういうふうなアイゼンハワー大統領がこれを批判したかというのが、その意見であろうと思います。もちろん、日本の工業力であるとか国力というものを高く評価して、そういう見解を発表したものであろうと思います。  しかし、日本の工業力というものは、言うまでもなく、これは相当世界におきましても高く評価されるだけ内容が充実しておることは事実でありますが、これは言うまでもなく、日本の経済を発展せしめ、そうして日本の国民生活を向上し、日本の繁栄を期するために、われわれはあらゆる面において日本の工業力を養っておるわけであります。ことに戦後の日本工業力というものは、いわゆる防衛産業の部門に関する、以前にいっておったいわゆる軍事産業という部門は、直接の軍事産業部門は、戦後におきましては非常に少くなっておりまして、平和産業というものが非常な大きな部分を占めておるのでございまして、今申すように、日本の経済の発展日本の国力の充実による国民生活の向上ということのために、この工業力ができ上ってきておるのであり、政府としてはそういう方針のもとにこの工業力を培養してきておるというのでありますから、ただ、アメリカの方からそれをどういうふうに見るかということは、これはアメリカ側の見方でありまして、私どもの見方は今申し上げた通りであります。
  67. 岡田宗司

    岡田宗司君 これはアメリカの見方というだけにとどまるものではない、アイゼンハワーの、一つまりアメリカの外交政策の基調を述べておる演説です。そのうちに、日本の地位についてこういうことを指摘しておるということは、アメリカの対日政策というものがこの上に立てられておると申し上げていいのではないか。そういたしますと、安全保障条約の問題等について、また日本におけるアメリカの駐留軍を置いておく必要の問題について、あるいはアメリカ日本に対して防衛産業を作らせようといろいろな援助をしておる点について、日本の軍備に対してアメリカがさらに援助を増大しようとする点について、いずれもこの見方から出ておるわけです。だから、私どもはこれは重大だと思うので、今の総理大臣お話ですと、単なる見方というけれども、実際に日本はこのアメリカの見方に適応せられるようなことをおやりになっておるのじゃないですか。私は、言葉だけではなくて、この点について総理がはっきりとこれを否定されるのかどうかということをお伺いしたがったんでありますけれども総理は今、アメリカの対日政策はこういうような観点を基にして行われておるとお考えになっておるかどうか、これをお伺いしたい。
  68. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本の自衛隊を作りましてからの、いわゆる日本の国力、国状に応じて、これを漸増するという国防の基本方針を定めて、これを増強して参っておりますが、これに対して、アメリカ側はその努力に対して、日本の自力だけではできないところのものをいろいろな点から軍事援助をして、そして日本の自衛力を早く充実させようということに協力しておることは事実であります。また、この自衛力という、国の防衛力というものの背後には、防衛産業というものがある程度の基礎を持つことが必要であることもこれも事実であり、それに対しての援助を従来行なってきたことも事実であります。しかしながら、私は、アメリカ日本との関係を、単に軍事的の意味からだけアメリカが考えており、アメリカの対日政策の基本というものが単に軍事的に、そういう面だけであるというふうに考えることは適当でない、やはりアメリカとしては、この東洋におけるところの安定勢力であり、そしてこの地域におけるところの平和を維持し繁栄を期していくためには、日本というものがやはり繁栄していき、その経済、あらゆる面において充実されるということを望み、そして日本のそれに向っての勢力に対して協力をするということが、アメリカの対日政策の基本であり、軍事面というものは、いろいろな面がありますから、その一面である、かように私は理解をいたしております。
  69. 岡田宗司

    岡田宗司君 このアイゼンハワーの考え方というもので対日政策が組み立てられて、これが日本の方にずっと押しつけられてきておるわけでありますが、私どもはこういうアメリカ日本に対する見方というものは断じて承服できない。そして日本アメリカの軍事的な道具にさせられるわけにいかないのであります。私どもは、国民の生活の発展、国の発展、そして国の平和が第一でありまして、われわれはこういうアメリカ考え方なり政策に対しましては断じて反対の立場をとらざるを得ないと考えるのであります。  次に、やはりアイゼンハワーの演説のうちで、日本が共産圏諸国と経済的に接近することをきらっておるように見られておりますし、そうしてそのために、日本がもっと他の方面、たとえばアメリカとの貿易を拡大しなければならぬ、東南アジアの開発、東南アジアとの貿易を拡大しなければならないということを言っておるのであります。ところがそう言いながらアメリカ自身は、一体日本に対してどういう態度をとっているか。この間の綿織物の協定につきましては、たちまちこれが業者の反対によって、せっかく話し合いができたと思ったら、事実上くつがえされておるという事態、その他のいろいろなこまかしいものに至りますまで、関税の引き上げだとか、輸入を制限する措置をするということになっておりますし、またサケ、マスの問題につきましても、米日加漁業協定について、また異議を申し立てておる。ブリストル湾に対する日本漁船の活動に対する制限、こういう、このアイゼンハワーの演説とまるで違うことが行われておるわけでありますが、これらの点についてどうお考えなのかこれはほんとうだとお考えになるのか、リップ・サービスだとお考えになるのか。  それから、今度、高碕通産大臣が向うへおいでになるそうでありますけれども、一体、高碕通産大臣は、このアイゼンハワー大統領の演説を基にして、向う側とどういう折衝をなさるつもりであるか、それらの点についてお伺いしたいのであります。
  70. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 日本の工業力の充実拡充というものは、これは日本国民が生きんがためにやるべきものでありまして、これは見る人によってどう解釈されるかは別の問題でございますが、その点につきましては、先ほど総理がお答え申し上げました通りでございます。日本といたしますれば、何としても、現在アメリカに対し輸出いたしております製品のほとんど大部分が中小工業の製品でありまして、これを一そう拡大することは日本の産業振興上最も重要であることと存ずるわけであります。  先般、四月四日のゲッチスバーグ大学における大統領の演説、これは私は詳細にまだよく拝見いたしておりませんですが、これだけから見ますれば、いろいろ想像する点もございましょうが、ただ単に物を売るという点から考えますれば、私は、これは日本の輸出振興という上から申しますれば、これは歓迎すべきことだと思っておりますが、しかし、一方におきまして、お話のごとく、綿製品初めそのほかの商品につきましては、あるいは数量の制限をするとかあるいはこれにつきまして関税を上げるとかいう考え方は、アメリカの民間といたしまして相当根強く動いているわけでございます。それが常に三月、四月、五月というこの時期にアメリカで起るわけでありますから、私は、国会の御了解を得まして、短期間であるけれどもアメリカに参りまして、そういうような問題はできるだけ業者の間とも話をつけて、そうしてなるべくアメリカの業者にじゃまにならぬようにして、この現在輸出しております商品の輸出をもっと増進いたしたい、こういう考えで参りたいと存じておるわけでありまして、根本的の問題につきましては、もしそういうふうな問題に触れたとすれば、私は日本の工業というものはどこまでも平和、そうして日本の工業というものは日本国民の生活を安定せんがためにもっと充実していかなければならぬという動かすべからざる考えは、よくお話しする考えでございます。
  71. 岡田宗司

    岡田宗司君 東南アジアの開発の問題と、東南アジア貿易の増大の問題について触れております、どういう方法で東南アジアの開発をやるかということについては触れておりませんけれども。これと関連するのが、さきに岸総理が抱いておられた東南アジア開発基金の構想であります。アメリカから金を持ってきてこれをもって日本が東南アジアの開発に乗り出す、これはどうも東南アジア諸国においても冷くあしらわれまして、そうしてアメリカ側でもそれに金を出すということにはならなかった。それで、岸さんの考え方は、私が当時指摘しましたように、シャボンのあわのように消えてしまったのでありますが、今度またこういうことをアイゼンハワー大統領が言われるとすると、また岸さんは前の考え方をもう一ぺん持ち出されるに違いないと思うのでありますが、このお考えを持っておられるのかどうか。そうして、私はもしそうだとしても、このようなことをアイゼンハワー大統領が言って、また岸さんが前の同じような構想を抱かれたといたしますならば、その結果、依然として日本アメリカの手先じゃないか、アメリカの手先となってアメリカが東南アジアであまり喜ばれておらぬ、きらわれておる、そのかわりになって乗り込んできてやるんじゃないか、いわばアメリカの帝国主義的経済発展、経済侵略ということのお先棒になるんじゃないかという感じを与えることは必定だと思うのでありますが、岸総理はやはりこの問題がアイゼンハワー大統領によって持ち出されたということを取り上げて、前の構想を再び具体化そうとされておるのかどうか、それをお伺いしたい。
  72. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 東南アジアの開発という、これを早く開発してそうして経済的基盤を強固なものにし、これらの地域における国民生活の水準を高めていくということは、世界の平和の上からいってもぜひ必要なことであることは、これはだれもが異論のないところであります。しかし、それを具体的に実現しようとするならば、どうしても二つの大きな欠けたものが考えられるのでありまして、その二つとは、言うまでもなく、資金面における資金と、それから開発に必要な技術の面と、この二つをどうしてあすこに供給するかという問題を考えなければならぬと思います。しかして、これらの民族の間におきましては、いろいろないわゆる民族独立の念願から、また多年の植民地から解放されて、反植民地の思想が非常に盛り上っておるところであります。そうすると、一体その資金と技術をどういう形であすこへ導入することが望ましいか、可能であるかということを考えなければ、開発、開発といっても、実は絵にかいたもちのようになると私は思います。そこで今、岡田委員お話のようにアメリカが従来いろいろなバイラニーラルの方法で相当な金を出しておることは事実であります。また日本の技術援助につきましても、いろいろな面において、自由ではありまするが、行われておることも事実であります。しかし、やはり民族の願いからいい、反植民地的な考え方からいうと、その資金にしても、あるいは技術にしても、できるだけニュートラルなものにする必要がある。一国が、かりに政治的な意図はないといっても、大きな金を一国だけで出すという場合におきましては、いろいろな裏面の政治的な考え方を想像する、そこで、私が従来申しておるのは、そういうニュートラルな資金、しかもそれは、今日の状況においては、まだ銀行、いわばバンキングの相手にするのには、なかなか銀行家のそろばんには乗らないという地域でありますので、従来のワールド・バンクというような世界銀行でやるのだというだけでは十分ではないじゃないか、何かそこにこの必要を認めるところの国々が出し合って、そうして一国の特別な政治的意図ではないということが明瞭になるような基金制度というものが必要じゃないか、あるいは、そういう見地において、この技術の面におきましても、そういう国際機関を通じて技術が出ていくということであれば、一国が何らかの政治的意図をもってそこに出ていっておるのだという想像を払拭する上から必要じゃないかというのが、私の東南アジア開発基金に関する構想であります。しかしながら、その場合においても、やはり大きな金を持っておるところはアメリカで、国際的機関と申しましても、アメリカの資金というものが何といっても大きいし、また技術の面も、そういうふうに申しましても、比較的余裕を持ち、それから技術能力を持っておるのは日本だという点が自然考えられまして、その東南アジア開発基金の実際の運用においては、アメリカの資金と日本の技術というものがクローズ・アップすることになるのでありまするけれども、私の考えそのものからいえば、いわゆるアメリカの資金と日本の技術を結んで、そうして向うへ進出するというふうな考え方ではなしに、国際的のそういう基金制度を作り、それをニュートラルなものにして、そうして東南アジアの開発に欠乏しておる資金と技術を供給したいというのが私の考えでございます。従って、それを十分理解してもらうのには、私はある程度の時間を要すると思っております。決してあの構想を捨てたわけではございませんし、また、アイゼンハワーのこの演説で、捨てたものをまた拾い上げてやるということではございませんで、私の考えからいえば、あらゆる機会に、今言ったような、事実私が申し上げておるように、資金と技術が供給されなければ開発できないので、それがしかし、政治的意図をもって、技術にしても、あるいは資金にしても出ていくということは、これらの民族の反植民地精神からいっても適当でないという考えでございますので、なお、私の従来考えておりますことについては、あらゆる国々にも理解してもらい、また自分の構想もさらに具体化する上において検討を続けていきたいと、こう思って検討をしておる次第でございます。
  73. 岡田宗司

    岡田宗司君 従来の構想は、アメリカの金を借りてやろうというお話でしたが、これはまあ批判を受けてできないということになったと思うのでありますが、今度これが出まして、さらに前の構想を繰り返されるならば、その危険があって、かえってこれは東南アジアから日本が疑われることになるので、私どもはこういう構想は復活されない方がいいと思う。別な角度から、日本がほんとうに東南アジア諸国とそれぞれ協力してやっていくという立場でおやりになるように勧告したいのであります。  それから次に、中国との関係の問題、これはまあ私深くは申し上げません。向うでは、政治と経済を切り離して、経済の問題だけやろうということは、これはどうも虫がよ過ぎる、一体、日本と中国との関係は政治的な問題なんだと、政治の問題を話し合うならば、そうして政治の問題と経済の問題を同時に話し合うならば、こういうことで向うはいろいろ言っております。だから、私は政治と経済を切り離すなんという態度は、これは外国との話に実際上切り離して行われるということはないのでありますから、一つ藤山外務大臣なりなんなりは、はっきり日本と中国の間の国際的政治関係を話すという態度をとって話を始め、そうしてそれからさらに進んで両国の経済関係に及ぶという態度をもって交渉をするつもりがあるかどうか、その一点だけお伺いしたいのであります。
  74. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) もちろん、話をいたしますときに、政治と経済というものが画然と分けられるかどうかということは、これは若干疑問があろうと思います。ただ、従来の社会党の訪中使節団の方から承わっておりましたところでも、何か政治問題というのは、中共承認問題であるとか、あるいは日華条約を破棄するとか、そうした態度をはっきりきめてこなければ、これは話にならぬのだというようなふうにわれわれ理解されておったわけであります。けれども、先般の曾祢委員の御質問等にもありましたように、そうじゃないのだ、同じ場でもって、政治の問題にも若干話は触れるであろうし、あるいはそういう問題も出るかもしれぬというようなことでありますれば、話はそれは別なのではないかと思います。従って、そこいらの点は十分研究をしてみなければ、日本安保条約は廃棄してくるのだ、あるいは日華条約は廃棄してくるのだと、それが前提でこなければ話にも何もならぬのだと、われわれは政治と経済の分離という意味においても、そういうことをはっきりしてこなければ、まずそれをやってこなければいけないのだというふうに解せられるように理解した場合があるわけであります。しかし、今申し上げたようなことでありますれば、二人の人が話し合いますときに、いろいろの話が出ることは当然のことでありまして、その話については別段、特段の制限がなければ、それは話し合える場合があり得ると、そう考えております。
  75. 岡田宗司

    岡田宗司君 政治と経済とを分けるということは、必ずしも向う側で日華条約を廃棄せよとか、あるいは安保条約を廃棄してこいということを言っておるのじゃない。つまり日本と中国との両国の関係を将来どういうふうに見るか、どういう方向に進めていくかということなんだと私は理解してきたのでありますが、そういうような問題なら、これは両国間の代表が話し合うときには当然話される問題なんです。あり得るとかなんとかということでなく、はっきり中国との間に、東洋並びに世界における諸情勢、特に日本と中国との関係について新たなる角度から話し合いをするという基本方針をもって話をされるという積極的態度をとってはどうか、これを一つお伺いしたい。
  76. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私どもは、特に今積極的態度といいますか、そういう言葉の上では別でありますけれども、経済の問題を話す、そのときに政治の問題もいろいろ出てくる、必ずしも中共側の言う通りにわれわれは返事をすることはできない場合が多いと思います。政治の問題につきましては、そういうことでもうそれが話なんだ、こういうことでありますれば、考えられる問題はあり得ると、こう考えております。
  77. 岡田宗司

    岡田宗司君 両国間のそういう国際政治関係について話すという基本的な態度をとれば、私はここになおいろいろ紆曲折はあろうけれども、話し合いの道が開かれると思うのですが、そういう態度をおとりになっておらないのかどうか、もう一度念を押しますが、どうなんですか。まだあり得るとかなんとかというようなことでおいでになるのかどうか。
  78. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろんあり得ると申しましても、私どもは現在までは訪中使節団の方のお帰りになった当時の話からみると、そういうものがほとんど否定的でなければ話ができないように思っておりますし、また、あるいは一つの席でもって話し合うということが、そういう意味において不可能な印象を受けておりますが、果してただいま曾祢委員や、あるいは岡田委員の言われますようなことであって、そういう問題も経済の問題と同時に出てくるのだ、しかし、それは必ずしも日本側の主張ということにおいてやぶさかでないのだということでありますれば、適当な機会の来た場合には、そういう話し合いもあり得ると、また、でき得ると考えております。
  79. 岡田宗司

    岡田宗司君 適当な機会とはどういう機会なんですか。それとも適当な機会をみずから作る努力をするのかしないのか。
  80. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 適当な機会と申しますのは、向うから作る場合もありましょうし、こちらから作る場合もありましょうし、おのずから適当な時時に適当な方法で解決されると思います。
  81. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうも積極性がないようでありますが、次に、高碕通産大臣にお伺いいたしますが、私、この間朝鮮に行って参ったのですが、今、朝鮮との貿易、つまり北鮮との貿易がとまっております。だいぶ向う側は民間貿易協定を結んでもいい、それから、たとえば茂山の鉄鉱石を本年五十万トンを出してもいい、来年度からは長期契約としてもいい、黒鉛等は日本の要求するだけ出してもいい、日本からいろいろなものを買いたい、特に私ども日本に帰って参りましてから、火力発電設備五万キロワットのものを百万キロワット分買いたいという引き合いも来ておるのです。この朝鮮との貿易について、一体、政府はこれを進められる方針なのか、依然としてこれをやらせないという方針で臨まれるのか、その点について方針をお聞かせ願いたい。
  82. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 日本と北鮮との貿易につきましては、これは当然日本と中共との貿易と同じような建前で進んでいくべきだと私は信じておりますですが、何しろ現在の国際情勢の非常に複雑な場合でございますから、この点はよく検討いたしまして、十分検討の上これをきめたいと思っておる次第でございます。
  83. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 岡田君に申し上げますが、あなたの持ち時間はすでに経過いたしたわけですから、きのうの理事会の申し合せの次第もございますので、すみやかに一つ質疑を終るように御注意をお願いいたします。
  84. 岡田宗司

    岡田宗司君 それでは、今、中共と同じように取り扱いたいというのは、やはり民間貿易の方式で進めていってもいい、これはもうどんな国とでも貿易のできる可能性があればしてもいいと思うのですが、そう解してよろしゅうございますか。
  85. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お説のごとく、民間協定によって積み立て式でやるというのが中国と日本との関係でございますが、その式にならってやるべきだと私は存じておりますのですが、しかし、それに踏み切るにつきましては、先刻申し上げました通り、国際情勢が相当複雑でございますから、いましばらく時間をかしていただきたいと、こう思うのであります。
  86. 岡田宗司

    岡田宗司君 最後に一つ総理にお伺いしたいのは、伝えるところによりますと……(「総理おらぬ」と呼ぶ者あり)
  87. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 今便所に行きましたのでちょっとお待ち下さい。今すぐ参ります。
  88. 岡田宗司

    岡田宗司君 最後に総理一つお伺いしたいのは、いよいよ十日には皇太子殿下の御成婚がございますが、これらに関連いたしまして、御成婚恩赦ということが実行されるようですが、この点について、前々からいろいろ国会で問題になっておりましたときには、総理も法務大臣も、いや、これは入れないということをこの委員会でも、あるいは他の委員会でも言われておるわけであります。これは速記録で明らかであります。また参議院ではこの問題について、法務委員会法律改正案を出そうということまで行われておった、これはやめましたけれども。ところが、今度見ますというと、これを入れる、そうしてそのために、ひどいのになりますというと、浦和の地裁でもって特赦に間に合うように異例のスピード判決が行われた。「選挙違反事件は普通結審から判決まで約二週間日取りがとられるが翌日とする異例の処置について藤井判事は「被告が特赦になりたければその審査請求ができるように私なりの考えで配慮した」、こういうことなんです。まるで選挙違反を非常に特別に擁護するようなことさえ行われ出したのであります。私は前々からこの問題は非常に不明朗な問題である、特に選挙違反は自民党の方が非常に多いのでありますが、そういうような見地から今度選挙違反を含めるというふうに決定したことは、しかも、復権をさせるということは、これは党の圧力に押されてそう決定になったと思うのでありますが、これこそ国民に対して岸内閣は選挙違反を奨励し、選挙違反を製造するのだという印象を私は与えたと思うのであります。一体、総理はこの問題について、なぜ今までこれは含めないという態度でこられたのを、急にお変えになったのか、この点を明らかにしていただきたい。
  89. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御慶事に際して恩赦を行うということは、従来からもそういうふうななにに対しては行なってきたのであります。そこで、その恩赦をどういう範囲にするか、いわゆる大赦、戦後にはいろいろな機会におきまして大赦が行われておることが非常に多いのでありますが、従って、今回のなにに対しても大赦を行うべきだという議論も一部にはあったのでありますが、しかし、大赦は行わず特赦の範囲に限る、そして特赦は御承知通り、この犯罪は犯罪として判決をされ、判決の言い渡しが確定したものについてその減刑なり、あるいはそれに伴うところの復権等のことを個別的に審査してこれを行うわけであります。その場合に選挙違反をどうするかという問題につきましては、選挙違反の性格からいってこれを除け、除くべきだという強い意見のありましたごとも私よく承知いたしております。しかし同時に、こういう恩赦を行うというような場合において、一般の犯罪の種類をどういう範囲にするかという意味におきましては、おのずからいろいろな刑事政策の立場からほぼ同様な罪質であり、同様な違反の性質を持っておるものというようなものを幾つか拾うことになるわけであります。その場合に特に選挙違反であるがゆえにこれを特赦に入れるとか、あるいは選挙違反なるがゆえに特別の扱いをしてこれには入れないというふうな見解は政府としてはとらずに、一般の刑事政策の立場からいろいろ似たような罪質なり、あるいは犯罪の刑のものなりいろいろな点を審査する場合においては特にこれを区別しないという考えに立って今恩赦についての具体的のことを審査検討をいたしておるというのが現状でございます。そして今お読みになりましたが、裁判所に対して政府がどういう指示を与えるべきものでもないことは当然であり、また裁判所に対して、まだ今検討中でありますので、どういう結論だというふうなことが漏らされていくことはあり得ないと思うのであります。ただ裁判長において、いろいろな想像やいろいろな点から、今、新聞でおあげになっているようなことを想像しての私は処理であろうと思います。政府としては、今申し上げましたような見解に立って今回の恩赦を特赦に限り、また選挙違反については、これは特に除けという意見もございますが、政府としては特別な扱いはしない。他の犯罪と刑事政策上同様に見るべきものについては同様に扱うという原則に立ってこれを検討する、こういうつもりでおります。
  90. 岡田宗司

    岡田宗司君 この選挙違反を特赦の範囲に加えるかどうかということは、これは単なる技術の問題じゃない。法律技術の問題じゃなくて政治の問題なんです。それゆえに従来国会でも非常に問題になり、世間でも問題にしておる。そして先ほど私がお聞きしたのは、総理はしばしば国会では入れないということを言明されておる。ことに法務大臣はそれをはっきり言われておられるのに、今度それを入れられると、しかも、今いろいろな選挙が行われておるのであります。そういたしますというと、まるで選挙違反は幾らやっても罪にならないということを政府が指示しておるようなものじゃないですか。これは果して単なる法律技術の問題で片づけられる問題ですか。これは私は検察庁の方でもおのずからつかまえてもつまらぬということになって、選挙違反は野放しで、金は使いほうだい、供応はしほうだい、バスに乗っけてどこへ連れていったってかまわない、こういう選挙が今横行しているのを助長する結果になると思うのです。こういう政治があなたの政治として許されるのですか、あなたはこれをいいことだと思っておやりになっておるのかどうか、これをお伺いしたい。
  91. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今お話のように、これを政治的に扱うか、純粋の刑事政策の問題として法律的に考えるかという考え方の点につきましては、今、岡田委員お話のように、一つの政治的な考え方でもって、こういう犯罪については恩赦のなににするなという御議論であろうと思います。政府としてはそういう見解をとらず、一般の政治的な意図からこれを取り除くとか、あるいはこれを特に入れるとかいうような考え方をとらないということを先ほど申し上げたわけであります。そうして今これを特赦に当てるというと、選挙違反に対して野放しであり、やりほうだいじゃないかというお話でございますが、私は、大赦にするというとそういうことになると、岡田委員お話通りであります。特赦の方は、これは罪は罪として一応宣告をいたしまして、そうして情状によってこれを減刑または復権するという個別的な問題でございますので、今、岡田委員の御意見ではございますが、私はそういう意味において、こういうものを大赦にすべきものではないと、こう考えますけれども、特赦の場合には、今言ったような政府の見解を政治的には扱わずに一般の犯罪と同様にこれを審査するということにしたいと、こう思っております。
  92. 岡田宗司

    岡田宗司君 もう一点……。
  93. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 岡田君、もう時間がありませんから……。
  94. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいまのお話ですと、大赦は特赦と違うのだ、特赦だからかまわない、しかし、選挙違反で罪に問われておる者が復権したり、あるいはまた確定した者がこれでもって問題にならなくなるということは、これは事実ならば私はそのことも問題だけれども政府の方が国会でもって今まで入れないと答弁したのを何のゆえにくつがえされたのか、そうして今日これを入れることにしたのか、そのことをお認めになるかどうか、今まではっきり入れないということを言明しておったのを今度入れることにしたのですから、前には入れなかったということを言ったのは誤まりであった、入れるつもりだったけれども、世論がいろいろうるさいのでうそをついておったのですと、こういうふうにはっきりお言いになれるかどうか、そこをお伺いしたい。
  95. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この問題に関して従来いろいろと検討をいたして参ったのであります。私はその道程において入れないという御意見に対しても相当な敬意を払って参ったのであります。(笑声)従って、検討中のことでございますので、まだ政府としてこういう方針をきめたというはっきりなには申し上げてはおらないと思います。(「法務大臣がはっきり言っている」と呼ぶ者あり)しかし、私の意見として、あるいはそういうふうにとられるような見解を述べたことがあるかもしれません。私も今言っておるように、そういう御意見に対しては、十分その御主張についても相当な根拠のあることであり、また、そういう考えも私は決して閑却してはならない一つの御意見であると思っております。現在においてもそう思っております。今回の恩赦につきましては、今言ったようにいろいろと検討しました結果、一般の犯罪と、特に政治的の意図を持ってこれを区別するということは適当でないけれども、しかしながら、選挙中でもございますし、今お話のような点もございますので、大赦ということはこれは現にいたさない、そうして個々別々の情状によって特赦するという場合においては、これは政治的の考えからこれを除くという考えもあるけれども、それは政府としてはとらない、こういうことでございます。
  96. 岡田宗司

    岡田宗司君 もう一言、十日まで間があるのですから、改めるにはばかることなしですから、今から選挙違反は入れないという方針政府ははっきりなさい、悪いことじゃないのですから。この方がむしろ御成婚を祝うことになり、国民に明朗な感じを与えるのです。だから政府は、今ここでもって選挙違反は、今までの政府考え方は誤まりでございました、ここでもう一へん選挙違反は範囲から除きます、ということをはっきりお言いになったらいかがですか。
  97. 岸信介

    国務大臣岸信介君) まだ最後の決定はいたしておらないので……。しかし、今申し上げましたような方針で最近においては大体検討いたしておるということを私は率直に申し上げたわけです。決定までにはなお時日がございますから、御意見は御意見として十分に考えておきます。
  98. 森八三一

    ○森八三一君 関連。ただいまの皇太子の御成婚に関する大赦、恩赦、特赦の問題でありますが、このことはすでに二十八国会から取り上げて、この委員会では毎回論議をしてきたところであります。私も二十八国会以来、予算委員会のたびには毎回発言をいたしておるところであります。最初に、総理の御答弁は、御成婚等の場合には、前例としてはそういうことはなかった、だから、そういう趣旨においてこの取扱いをするでありましょう、そういう趣旨の御答弁であったと記憶をいたしております。なるほど調べてみまするというと、現在の天皇陛下の御成婚、大正十三年には、総理のおっしゃる通り、選挙違反は対象になっておりません。それから現在の皇太子の立太子、昭和二十七年にも同様になっております。大正天皇のときにも同様であります。まさに総理のおっしゃる通りであります。立太子あるいは御成婚のときには、選挙違反はその対象になっておりません。そこで、今回の場合にも、総理の御答弁から当然そういうような措置がされるであろうと私どもは実は期待をし安心をしておったのです。ところが、今度は、今も、先回の予算委員会でも、特別に取扱うというような措置をやめるというお話ですが、どうもそこが、今までそういう機会に取り扱われておらなかった選挙違反の問題を今回は取り上げるということが、政治的に入れるとか入れぬとかいうことでなく、むしろ政治的にお入れになるということになりはしませんか。今までは考えておらなかったことを、今回は公平の観念に基いて一視同仁に扱うとおっしゃいますけれども、過去に例のなかったごとを岸内閣が初めて取り上げるということは、そこに政治的な意図が加味されておる、こういうことに結論されると私は思うのです。でありまと同時に、今まで前例のなかったことを、これだけ世論がやかましい、新聞もほとんどその論調でこれを取り上げまして、非常に遺憾なことだと申しておるのであります。総理は民主政治を実践するために謙虚な気持で世論に聞くとおっしゃっております。私もそうでなければならぬと思います。その世論をだれが代表するかといえば、これは見方によっていろいろですが、新聞の論調は世論を代表する一つ方向として重視すべきものであると思うのです。これがほとんど連日のようにこの問題を取り上げて論議をし、われわれの主張と同じように、今回の御成婚に対しまして、ほんとうに国民が喜ぶときに、国の政治の基調をなす選挙に関連するこの問題を含めてはならぬということを繰り返し繰り返し論じておるのですから、世論に聞くという、民主政治をほんとうに実践しようとしている総理がこれをどうしてもお入れになることはおかしい。過去にも例はなかったのを特にこれを岸内閣で取り上げるということは、どうしても岸総理の民主政治を実践するという態度に瑕瑾を与えるということになって非常に残念だと思うのです。これだけは、今お話のようにまだ二日ございますので、その決定までには考慮するということでございますから、ほんとうにこれはまじめに真剣にお考え願って、政治的に加えられるという考えが持たれては大へんでございますので、よく一つ考えていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  99. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 実はこの問題に関しましては、今お話のように、いろいろな世論もございますので、またいろいろな議論も、反対の議論も実はあるのであります。と申しますのは、今お電話の通り、私どもも従来の皇室の御慶事の場合の先例は、森委員お話通り私もさよう考えております。ただ、戦後における恩赦が非常に広い大赦で、非常に広く各種の犯罪についての犯罪そのものを罪にしないといういわゆる公訴中の公訴権をもなくするというふうな非常に広い恩赦が行われてきて、これも戦後におきまして数回行われたわけです。それから生ずるところの法律的な関係というものも、こういう場合における恩赦について、そういう一般の期待といいますか、考え方も戦後においては広く行われておると私は思います。しかし、今回のわれわれのとります措置は、どちらかといいますと、そのちょうど中間的な、結論としまして大赦は行わない、しかし、選挙違反については、その他の政治的な犯罪や統制違反の問題等のいろいろな罪刑の権衡上からいって、特に選挙違反というものを特別に扱わない、そういう情状によってやはりこれに対しても考えるべきものは考えていくということが一番公平の原則に沿うのじゃないかという見解に、大体に検討しました結果、今日の考えはそういうところまできたわけであります。従って、先ほど来私はそのことを率直に申し上げたのでありますが、先ほど岡田委員また森委員お話もございまして、そういう点についても、もちろん私はそういう御意見は十分世論の中にも相当有力に行われておるのでありますから、政府としても、もちろん一つ慎重に考えなければならないことであり、また実はそういうものも考えて今申しましたような一方大赦まで行うべしという御意見があるのに対しまして、特赦で特に罪質の情状を酌量して個別的にきめるという特赦の範囲に限り、選挙違反については、今言ったような他の類似もしくはその他の権衡上の点を考えて、特にこれを政治的には扱わないということが一番適当じゃないかというのが今の私どもの考えでございます。しかし、最後の決定はまだいたしているわけではございません。私もまだ具体的な内容につきましては、ただそういう考え方にわれわれの方で大体方向が来ているということを率直に申し上げた次第でありまして、具体的の技術的の問題につきましては、私も承知をいたしておりません。御意見は御意見として今日は承わっておくことにいたしたいと思います。
  100. 森八三一

    ○森八三一君 関連ですから、お願いを申し上げますが、戦後でも立太子の時には見なかったのであります。今回は公平の観念ということでそれをお取り上げになりますことは、ほんとうにこれは新しい例を開くのですから、かえって政治的に配慮したということだけが私は残ると思うのです。政治的に区別をしないということでなくて、感じの上では政治的に加えたということだけが残り、非常にあと味が悪いので、これはどうしても一つ対象にされませんように再考をお願いいたします。私の関連質問を終ります。
  101. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 関連して……。
  102. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 関連ですか。どうぞ。
  103. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 先刻来の質問の中で、ぜひ私は伺っておきたい点があるのです。それは藤山さんがこれから日米交渉をする。それから高碕さんを初め各大臣相当数がアメリカに行かれると思うのです。そこで問題は先ほど質疑のときに出たアメリカはどういう目で日本を見ているかということについてのあなた方の取り方、これは非常に私は甘いと思う。岸総理の言葉を借りてするならば、アメリカは軍事的のみには日本を見ていない、——きわめて軽く見ている。しかし、私どもの見解では、アメリカ日本を見る場合に、その眼というのは軍事的に非常にウェートを持って見ているということです。これは私間違いないと思うのです。これをああやって、あなた方がイエス・マンになられたのでは日本日本国民としてはたまらないわけです。先ほど軍事問題について論じられていましたが、これは結局はアメリカの利益と、米国そのものの防衛を全うするための世界戦略の立場から日本を、さらにアジアを見ている。その立場から日本の軍事的価値を高く評価し、また日本に期待をしている。このアメリカの眼というものは、他のいかなるものよりも私は高いと思うのです。これを見忘れてはならぬと思うのですよ。それで、具体的に最近出てくるのは、今度高碕さんがアメリカに出て行かれたら必ず出てくる、藤山さんが日米交渉のときに必ず出てくるのは、やっぱりさっきちょっと出た防衛産業ですよ。岸さんは防衛産業に特別に熱心のようですが、いわゆる植村構想というのはドレーパーのところでは必ず出てくるのです。通産大臣として行かれる場合、必ず話があると思うのです。この防衛産業の植村構想一つとっても、これはアメリカの死の商人、これと結び合った日本の死の商人、これにアメリカの世界戦略の立場から見て日本並びにアジア諸国の軍事力の増強という立場、そうして日本の国民の税負担によってこれを進めていく。こういう要素を積み重ねたものが植村構想というものに出てくるわけです。それで、防衛産業の育成という岸さんの意図と結びついてくるわけですね。だから、アメリカはどういう眼で見ているかというようなことでは、先ほどのことでは私は甘くて危険だと思う。従って、藤山外務大臣あるいは高碕さんが、あるいは日本国内において、さらにアメリカに行かれて向うと話し合いされる場合は、こういう点しっかり腹に入れておいていただいて、イエス・マンになっていただきたくないということを要望するとともに、これに対して答弁を伺いたい。  それからもう一点は、先ほどから選挙の話があったようですが、選挙のまつ最中ですから、私は岸総理にお尋ねと要望を申し上げておきたいと思う。  どうも岸総理は、そうしているとほんとうに私も闘志がにぶるのですが、あなたは選挙に対してはほんとうに民主的で高い次元の理念を持っておられるんじゃないかと思うのですね。具体例をあげましょう。藤山さんが政界にデビューする場合、あなたかわいいでしょう。しかし、藤山さんは横浜の選挙区の人に顔つなぎするというので、ずいぶん事前運動をやりましたよ。派手に、総理みずから先頭に立って、ものすごい事前運動をやつている。私は先般の両国での東さんのときも、かわいいでしょうが、あれだけ派手にやって、あの壇上で、私は見ていたのですが、東さんと握手までして、これはものすごい事前運動ですよ。少くとも総理立場にあったら、そういうものは御遠慮なさらないと、事前運動を奨励するようなもんですよ。選挙運動については、私は少し反省していただきたいと思う。矢嶋ごとき政界の末席を汚す者がやることと……私はやりませんが、それと同じような考えに立ってはならぬと思うのです。この点に対する見解と、それからそれと関連するのですが、選挙が始まるわけですが、あなた先般新潟に行かれて、今ここで非常に謹厳になさっているのですが、きわめて野に放った虎みたいに高調子の大演説をぶたれておったのですが、自民党の総裁として行かれてやるのですから、私は言論の自由でとやかく申しません。しかし、総理と総裁というのは不可分ですから、これからあなた、あっちこっちに寄って出かけられるでしょうが、あなた自身はこういう場合、出張旅費をとっていないということは明確になっています、私の調査では。しかし、公務員を、私は、ああいう場合に選挙運動に連れていって、それに出張旅費を出すということは厳にやるべきであってはならぬ、これは各省庁の問題においても同様であると思う。この点は必ずそうしていただかなければならぬと思うのですが、この点もお答えおき願いたい。
  104. 岸信介

    国務大臣岸信介君) アメリカの方の問題につきましては、これはいろんな見方があると思いますが、私は数回アメリカの首脳部の人々と話し合って参りました。やはり、日米がほんとうに理解し、その理解の上に、信頼関係に立って協力しようじゃないか、それは単に軍事的だけじゃなしに、もちろん外交の面におきましても経済産業の面においても、あるいは文化の面においても、あらゆる面において、日米が理解と信頼の上に立って協力しようということを進めようという考え方で話し合いを進めておりますし、アメリカでも、私は、そういうふうに見ていると思います。従って、ただ単に軍事的協力というものを私は非常に軽視しているというわけでもございませんし、同時にそれが唯一であり、もしくは唯一に近い重要性を持っているというふうに見ることは、日米関係についての理解は違うと思っているので、そうは思っておりません。  選挙についてのいろんなお話がございました。もちろん、総裁が同時に総理立場にありますから、これはいろんな場合において、そのことも頭に置いて行動しなければならぬこともありましょう。しかし、二大政党で戦うという場合におきまして、やはり総裁みずからが、たとえ総理であろうとも、あるいは国務大臣であろうとも、やはり総裁として、ある党の公認候補なりあるいは党が支援しているところの者に対して、相当に私は活動しなければならないものであると思います。従って、その演説等につきましても、いろんな御批判はございましょう、ございましょうが、いわゆる総理大臣としてここでお答えをするとか、あるいは責任ある立場において私が言明するとかいうこととはおのずから違った党の政策なり、党の考え方、多数の考え方を代表してこれを国民に訴えるというようなことは、これはどうも実際上からいって自然じゃないかと思います。しかし、それが同時に、今お話しのように国民に与えるところの影響、総理という半面もあるのだから、特に出張するような場合におきまして、公務員等をたくさん連れていって、そうしてそれに公務出張旅費を出すということは適当じゃないのじゃないかということ、これはもっともでございます。しかし、総裁は同時に総理大臣でありますので、いろいろな出先におきましても公務上の連絡その他もございますので、秘書官の一人だけはいつもこれは連れていかざるを得ないのでございます。それ以外のことは、今お話しのように慎しんでいくべきものである、かように思っております。
  105. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先般のアイクの演説につきましては、おそらく二つの面があろうかと思います。一つは、アメリカで御承知のように議会等が始まりますと、業者から、ことに斜陽産業の業者、これは日本の中小企業者と相当衝突をする場合が多い。これらに対していろいろな問題が出てくる場合は、アメリカの地位として、当然日本の輸入その他経済的なものを助成しなければならないという面が一つあろうと思います。  それからもう一つの意味におきましては、当然、矢嶋委員が言われましたように、軍事上の問題もございますけれども、いわゆる経済の安定というものが、共産主義の浸透から守るという意味におきまして経済の安定ということは非常に必要だ、特に日本等においてもそういう必要があるので、従って第一段に申し上げましたものとうらはらになる意味において、日本の経済的安定ということが、やはり共産主義に対する自由主義の擁護であるという意味において言われたと私どもは理解しております。アメリカに対しまして、言われますように、私は決してイエス・マンになっていくつもりはございません。ただ、十分向う側の言うことも聞いて、こちら側の言うことはやはり率直に述べていきたい、こういうつもりでございます。
  106. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 日本の防衛産業と申しますものは、自衛力の範囲において持つ産業でございまして、これにつきましては、将来ともこの産業は自給自足をやる方針で進んでいきたいと存じております。従いまして、これが兵力とかいうふうな問題につきまして、外国からの注文がありましても、これは日本の防衛に要する範囲の機械にもし余力があればこれは出すことはありましょうが、特別にそれがために日本の産業を興すというような考えは毛頭持っておりません。
  107. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 岡田委員質疑は以上をもって終了いたしました。   —————————————
  108. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 次に、千田正君の質疑に入ります。
  109. 千田正

    ○千田正君 私は、きわめて短かい時間でありますから、端的に外交問題についてお伺いいたします。特に日ソ漁業問題は、先般来、たびたびこの予算委員会の席上におきましても、総理並びに関係大臣からいろいろ御説明を承わっておりますが、理論的にはちっとも進捗しておらないということ、日ソ漁業条約に基く日ソ漁業委員会そのものが、ただいまのところ、相変らず結論が出ておらない、ただし、内輪の話し合いにおいては、どうもソ連側の申し入れば、きわめて日本の予想したよりも少い五万トンぐらいのところを持ち出しておる。日本側としましては、どうしても最低十一万トンなければ、漁船の出動、あるいは北洋の漁業経済は成り立たない。これは日本側の強く主張しておるところであって、十六万五千トンという線を出しております。ところが、どうもなかなか結論が出てこない。本日あたりは、私は農林大臣がおられれば、当然行政担当の大臣として、強くお伺いするのでありますけれども、その問題についておいでにならぬというのでありますから、岸総理並びに藤山外相、あるいは大日本水産会長を兼ねておりますところの高碕通産大臣にもお伺いしたいと思うのであります。申すまでもなく、この十一万トンという量は、非常に日本の漁業にとっては最低の量であるということであります。ということは、十六船団、五百隻というのが従来のいわゆる北洋のこのサケ、マスの母船式、独航船の量であり、それが昨年は十一万トン、オホーツク海の犠牲のもとに十一万トンに縮められて、そうして四十隻というものは、お互いに二千九百万円ずつ出し合って、そうして休まざるを得なかった。ことしまた、それが非常な漁獲量が狭められてきますというと、さらにまた膨大な犠牲が出てくる。オホーツク海の漁業もできない。最近伝えられるところによると、区域外の漁業さえも向うは規制しようとしておるとするならば、オホーツク海の犠牲、さらに区域外——区域外と申しますと、大会社の母船式の漁業ではございません。中小零細の漁民が、みずから小さい舟をこいで区域外に出漁しておるところの、この方にその規制の手が伸びるとするならば、北洋漁業というものは、まさに転落そのものしかないのでありまして、これに対して政府は、漁業委員会のみに依存することなく、まさに政治折衝あるいは政府政府の結論的な折衝に入るべき段階ではないか、かように考えますので、総理大臣並びに外務大臣にお伺いしたいと思います。
  110. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 漁業委員会の日ソ両国代表の間に、八十数日も会議が続いておりまして、結論に到達しておりませんし、また今の状況で見ますというと、近く妥当な結論が出るような見通しも立たない状況に私あるように思います。と同時に、漁期もいよいよ迫ってきておる問題でございますから、政府としてもこの状況を打開して、適当なこの結論を得るように、あらゆる努力を進めたい、かように思って、関係大臣等におきましても、そういう心がまえのもとに今後の交渉に当りたいと思います。なお、外務大臣からいろいろなことにつきましてお答えすると思いますが、方針としては、政府としても、一つこれを打開するように、ただ漁業委員会審議だけに一これはまあ漁業協定の方からいうと、漁業委員会審議できめるということになっておるわけでございますけれども、漁期も迫ってきている状況及び委員会審議の模様からいって、これだけにまかしておいたのではいかぬだろう、打開する方法を一つ考えて推進したい、こう思っております。
  111. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御質問のありましたように、漁業委員会におきまする調査資料の上での討議というものは、ほとんど限界にきております。ソ連側から出しました規制区域、あるいは数量等の問題につきましては、とうていわれわれの応諾できないような案でございます。従いまして、その根拠等について、十分委員会の席上、一応の論議をしまして、その根拠を反駁する必要がありますから、技術的にその反駁はいたしましたけれども、それ以上問題は進んで参らぬと思います。従って現在の段階になりますれば、総理が今基本的に言われました方針通り、当然政治的な問題としてこれを解決すべき時期にきているのではないかというのでありまして、関係閣僚とも相談をしながら、これを政治的に取り上げて問題の進展をはかりたいと、こう考えております。
  112. 千田正

    ○千田正君 高碕通産大臣にお答え願う前に、高碕通産大臣は非常にその方の権威であられるから、私はさらに今の私の質問につけ加えましてお答え願いたいというのは、先般オホーツク海の問題は、先ほど申しました通り、今年からできない。もう一つは、カニ漁の面におきましても、本年はどうも日本の漁獲量は、箱数において十万箱くらいは減ぜられそうなおそれがあるこの事態。第三点は、いわゆる先ほど申しました区域外の場所がまた規制される。魚道その他という名前のもとに規制されてくるというと、あそこへ行くところの船は、流し網であるとか、はえなわであるとか、いわゆる大会社の母船に隷属しないところの中小企業あるいは手こぎのいわゆる小さい零細漁民が多く出て行く。この人たちは、さらに大会社の犠牲のもとにそうした区域外の漁業さえも制限されるということになりますというと、日本の水産行政に対しましては、非常なマイナスであり、こういう点をわれわれは痛感するのでありまして、その点もあわせまして、今回の政治折衝に入る前に、あなたが大日本水産会長といたしましても、かつてはソ連においでになられた御経験からいたしましても、確固たる政府内の話のまとめ役の一人としても、この際、確信のあるお答えをいただきたいと思うのであります。
  113. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) オホーツク海の問題につきましては、これは日ソ漁業協約を協定いたします第一年度から、ソ連側といたしましては、あのオホーツク海はサケの産卵場であるんだから、あそこだけはどうかとらぬでおいてくれということを最初から強硬に主張しておりまして、昨年私ども参りましたときも、昨年は入っちゃいかぬ、それで話は進まなかったわけであります。いろいろ赤城代表が折衝いたしました結果、昨年一年だけは許す、こういうようなことになっておったわけでありますが、その後いろいろ折衝いたしました結果、どうせ許されぬものであるならば、明年度から、つまり今年度からやらぬということにして、昨年は太平洋沿岸における十万トンという制限を十一万トンに上げさしたわけでございます。そういう状態でございまして、現在の漁業者といたしましては、せめて昨年並みでなければ操業できない、こういうようなふうに言っておるわけでありますが、そういう趣旨をもって本年の交渉で折衝いたしておるわけなんでございます。  また、カニの方の問題につきましては、昨年日本側は三十二万箱をとった。本年は二十万箱ぐらいにしろ、こういうふうな折衝があるようでございますけれども、これはとても先方のいうところの数量でいけば、これまた漁業者は立っていけない、特に小さな漁船を持っておる漁夫の連中が立っていけない、こういうことでございますから、この点につきましても十分折衝を加えて、せめて昨年並みに持っていきたいというような考えで、今折衝中でございますが、区域外の問題につきましては、これはおのずから別々でございまして、区域外の問題は、本年特にまた制限区域をある程度ふやすと、こういうふうな申し出がありまするけれども、先ほど外務大臣からお答えいたしました通りに、この問題につきましては目下折衝中でございますが、区域外の流し網、あるいははえなわというふうな問題につきましては、これはもちろんわが方の従前の作業の停頓を来たさないにように政治的の折衝を進むべきである、こういうふうな考えで、目下折衝中なんでございます。
  114. 千田正

    ○千田正君 区域外のお話は、ただいま高碕通産大臣からお話を承わりましたが、この際外務大臣一つのテーマを申し上げまして、明快なる御答弁をいただきたいと思いますが、先般も日米カナダ漁業条約において制限されておるところの東経百七十五度以東における、いわゆる日本アメリカ、カナダが資源を守るためにおのずから制限しておる所で、ソ連の業者といいますか、あるいはソ連の漁業者が行きまして盛んにとっておる。これに対してはいわゆる条約上は何らの制限は受けられない、自由なわけでありますね。そうしますと同じように、サケ・マスの資源保護のために条約をされておる以外の所においては、私は自由じゃないかと、ソ連がそういう行動をとっておるとするならば、この区域外において、日本の流し網であるとか、はえなわであるとか、こうしたいわゆる零細中小漁業者が制限外においてとるのは、これは公海自由の原則からいっても、何らソ連側から異議を申し込まれるべきところのものじゃないじゃないか。私はそういう観点から立って、むしろ日本の外交的な立場において、強く区域外の制限はお断わりすべきであると私は考えますが、藤山外相はどういうふうにこの点はお考えでありますか、お答えをいただきたいと思います。
  115. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ソ連がブリストル湾の沖でとっておる問題につきましては、これはむろん日米加漁業条約その他の範囲外の問題でありまして、従って将来の問題としてこれをどうするかということは別として、現在においてはやむを得ない事態ではないかと存じます。むろん日ソ漁業協定によります区域外の問題については、今お話のようなことがありまして、先般来論議されておりますのは、むしろ区域内における一つの区域を作っての区域外という、妙な表現になりますけれども、そういう意味になろうと思うのでありまして、単純な意味における区域外はこれは問題は当然ないわけであります。協定の範囲内におきまして、さらに制限区域を作ってそうしてやろう、魚道等を作りましてしかもそれを広範な幅でやっていくというような問題については、日本として当然異議を申し立てていく価値がございますし、またなければならぬと思っております。
  116. 千田正

    ○千田正君 私は最後にこの問題については、政府はむしろこの際ちゅうちょすることなく政治折衝の段階に入るべきである。先ほども総理がおっしゃる通り、もう漁期が迫っておる。漁民が非常にあせっておる。このままにおっては、日本の漁業に対するところの非常なマイナスである。こういう際においてはむしろ政府は断固として政治折衝に入って、一日も早く漁民の安定をはかるべきであると、私はそう思いますので、この際すみやかにちゅうちょすることなく政治折衝に入ってもらいたい。これに対して総理並びに外務大臣のお答えをいただきたい。
  117. 岸信介

    国務大臣岸信介君) いわゆる政治折衝というのは、いろいろな意味にとられますが、しかし先ほども申し上げましたように、漁業委員会だけにまかしておいたのでは、これは適当な時期に適当な妥結を得る見通しが非常に困難であります。従って関係大臣もしくはいろいろな関係者その他があらゆる努力をして、この妥当な解決を一日も早く見るように努力をいたします。
  118. 千田正

    ○千田正君 まあ外務大臣にもお願いしておきますが、時間もありませんので……。先般社会党の岡田委員がゲチスハーグにおけるところのアイゼンハワー大統領の演説を問題にしてお伺いしておったのでありますが、私は別な観点からこの点を一つ総理並びに外務大臣、高碕通産大臣にお伺いしたいのであります。  それは最近御承知通りアメリカ側においては、日本の商品に対して輸入制限等のいろいろな措置をやっておる。日本側も自主的にはいろいろな業者間において規制をして、アメリカ側の意図にこたえるような方法をやっておるけれどもアメリカ側としては十分それを了承しない。そうして今日に至っては日本の輸入品に対していろいろな制限を加えようとしておる。時あたかもそういうときにおいて、一方においては社会党の訪中使節団との間に声明されたところの中共の周恩来首相のいわゆる政治折衝という問題が起るという、この問題との関連におきまして私は、ゲチスバーグ大学におけるアイゼンハワー大統領の演説は非常に日本の経済政策なり、外交政策に大きな示唆を与えておるのじゃないか、私はそう考えるのであります。同時にまたこれはむしろ岸内閣に対しては応援の演説のようにも私はとれるのでありますが、というのは、これは自由世界の防衛を強調しておると同時に、理解することが必要であるという、自由諸国がお互いに理解し合って、そうして一つのそこには防衛態勢を作るべきである、あるいは戦力のこともあるでしょう。また経済力のこともあるでしょう。外交のこともあるでしょう。この演説の内容に盛られた結論としましては、自由世界はお互いに手を取り合って共産世界に対する一つの防衛態勢を作るべきであると、それを極東においてはその当てはまるところの国は日本だ、日本が今苦しんでおるのは経済的ないわゆる貿易の面だと、東南アジアにおいてはなかなか伸びていかない、アメリカに売ろうとしても、アメリカでは現在のように輸入品のいわゆる制限ということを国内の諸君が言うておるのじゃ、理解していないじゃないか。むしろこの点を打開してやって、大体一カ年八億ドルのこのアメリカ日本との貿易をある程度進捗させつつ、東南アジアにおいて日本の行くべき方向を応援してやる、というのがこの演説の趣旨のようであります。同時にまた一方においては、もしそういうことをやらなかったとするならば日本はどこに行くだろう、この間の中共とのいわゆるいろいろな問題があったようであるが、このまま自由諸国が日本を締め出すならば、共産国の方へ日本が行くであろう、共産国側に日本が合体するであろう、その危険ははかり知るべからざるものがあるということが大きな一つの結論のようであります。  それで私はこの際日本としてはどちらに行くとか行かぬとかいう問題は、ここに論議する時間もありますまい。しかしながら日本の貿易の行くべき道をある程度アイゼンハワー大統領は示唆しておる。同時にアメリカとの交渉における日米貿易がただいまのところ暗礁に乗り上げつつある。その打開するために高碕通産大臣はおそらくアメリカにおいでになるでしょうし、また外交の一面としての経済外交として行かれるでありましょうが、アイゼンハワー大統領のゲチスバーグのこの演説は、少くとも日本の岸内閣の現在に対してまた大きな一つの応援の演説であると、私どもはまあ私自身はそういう感じを受けたのでありますが、かりにこのたびこの演説を基調にするというわけではありますまいが、アイゼンハワー大統領のこの演説一つの味方として日本側が出ていく1日本側といいますか、岸内閣の外交政策、経済政策が出ていくとするならば、これによっていわゆるアメリカ側の資金の応援、対日援助ということを非常に言っておりますが、資金の応援を得て東南アジアの貿易を開拓するのか。あるいはそういうことによって、中共との間の貿易というものは逆になかなか打開する方向にはいかないのじゃないか、という危惧さえもわれわれは考えるのでありますが、そういうことは別個の問題として、先ほど岡田君が質問したような、いわゆるチャンスがあったならば、中共との間にも十分話し合いをつけようというお考えなのか、むしろこの際アイゼンハワー大統領のいうように自由世界の防衛のためには日本の経済力を充実しなければならないという線に沿って、日本の経済外交を促進させようとされるのか。その点を、重大な問題でありますから、この際もう少し明確に総理大臣のお考えを述べていただきたいと思います。
  119. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本の産業経済の特質の一つは、いうまでもなく国際経済界につながっておる度合いが非常に強いことでありまして、われわれは必要な原料源等を輸入しなければならない、食糧あるいは衣料の原料等大事なものを輸入しなければならない。従ってこれとバランスするように輸出をうんと伸ばしていかなければならぬ、というような立場が非常に強いわけでありまして、従ってこの輸出貿易の伸張ということは、どの内閣がやりましても日本の繁栄と国民生活の向上のためにはうんと力を入れなければならない。ところが国際情勢は必ずしもそれが恵まれておる情勢でないということも事実であります。特に貿易の面から見ますると、日米間の貿易は輸入につきましても、輸出につきましても日本の貿易の全体に占めておる量が最も多いのでありまして、しかもこの輸出入の関係がアンバランスになっておりまして、日本にとって不利な状況にあることも御承知通り、従ってアメリカに対する輸出貿易をうんとふやすということは、何といっても日本にとって現実の問題としては一番大きな問題になってくるわけであります。しかもこの関係において、アメリカ側におけるいろいろな日本品の輸入制限や、あるいは関税障壁を高くするというような問題が、国会に取り上げられる、ある意味からいえばこれはほとんど年中行事のような、政治時期になるといつもそういうふうなことがありますけれども、そういう政治的な関係は別として、やはりそういうことが起ってくる原因がどこにあるかということを十分検討して、これに対する対策を考えなければならぬと思うのであります。アメリカのワシントン政府は、日本アメリカとの関係から今いったような関係を十分理解しておって、日本に対するそういうような関税の障壁やあるいは輸入制限というようなものが望ましくないという態度で、非常に日本政府に対しては協力的な態度に出ております。あるいは国会で議決したところの関税の引き上げに対して、大統領がヴィトーの権限を発動しておるというようなことにも見えるわけでありますが、しかし同時にアメリカの各州の状況、また各産業の実情というようなものは、これは無視できないのでありまして、十分一つこういう点につきまするアメリカ側の実状も一応わかっておりますが、業界の人々や政界の人々の十分な了解をとり、できればそういうことを未然に防ぎ、また起っておる問題を合理的に解決するというふうなことが必要である。高碕通産相が近く訪米する使命のうちの重要なるものは、この日米間の貿易問題に対する調整、並びに日本の輸出貿易の伸びていくことについての具体的な有効方策を見出そうということであります。さらに私は、日本は根本においてわれわれがとっておる外交の三原則である国連中心、自由主義国との提携、アジア外交の推進というこの線に沿うて、日本が自由主義国の立場を堅持し、そして繁栄していくということを、あらゆる面から非常に強く望んでおる、見方によれば、それはアメリカの安全の立場からいって、日本がそういうふうに繁栄していく自由主義の立場を堅持しておるならば、いわゆる共産勢力の波及に対する一つの防波堤にもなり得ると思っていることも事実でありましょう。また共産圏との対立において日本が持っておる実力からいって、非常にこれを重要視しておることも、これも事実でありましょう。しかし何といっても、われわれは先ほど来申し上げるように、日本経済の根本の特質から、日本の繁栄、国民生活の向上ということから、どうしても貿易の点において一段の努力をしなければならぬし、アメリカ貿易というものを、この意味において非常にこれを改善することが必要である。さらにわれわれが東南アジア外交を推進する意味からいっても、東南アジアやあるいは中近東等に対する貿易もうんと伸ばしていきたい、しかも事実は、現在のところあまり伸びておらない。それにはやはりこの地域についての開発ということが先行する必要があり、これに対してアメリカが従来やっている援助が、必ずしも有効でないということについて、アメリカとしても相当自覚していると思います。従ってこれらについて、日本の繁栄のためにこれらの地域が開発されるということに対して、積極的な意図を示してアメリカがだんだんきているということも、これは事実でございまして、いずれにしても、われわれとしてはやはり国家間の、これはいろいろな議論がありましょう。しかし決して共産主義を敵視するとかこれらと一切交際しないとか、経済交流しないとかいうようなわれわれは考えを持っているわけではございませんけれども、事実問題、現実問題として、まだまだ自由主義国の立場をとっておりながら、十分な貿易のできない地域、これらに対して日本としても一そう努力すべきことだ。また日中間の問題につきましては、いろいろな議論が論議されているように、私どもも決して消極的な態度をとっているわけではございません。まだ貿易再開に適当な手がかりができておらないというのが現状でございます。いずれにしても、そういう方針日本としても進むわけであります。アメリカがわれわれの立場を相当によく理解して、これに対してあらゆる面から協力していることは私は望ましいことである、その間におけるいろいろな利害の衝突というようなことについては、適当な方法で調整をしていく必要があると、かように考えております。
  120. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先般のアイゼンハワー大統領の演説は、先ほども申しましたように、一面におきましては、国内において毎年起ってきます議会会期中のいろいろな請願運動、あるいは禁止運動等に対する一つのワシントン政府考え方、アイゼンハワー大統領の考え方を申したと思います。同時にこのこと自体は、日本の経済を成長させていかなければならぬ、そのことは単に共産主義に対して自由主義を守るという意味においては、軍事力だけでなしに、広義の意味において経済生活の安定ということが、それぞれの国民が思想の安定を得て共産主義の浸透を受けない、そういう考え方からいたしますれば、当然日本のいろいろの産業活動を刺激し、アメリカがこれを買ってやることによって成長するということを、大きな政治の意味において考えていっておることだと思います。従ってこの間のアイゼンハワー大統領の声明というものは、非常に日本立場をよく理解し、そうしてそれを進めていきたいという意味におけるアメリカの大きな方針を示したものだと思うのでありまして、われわれとしては、この演説に感謝しておるような次第であります。しかし同時に先ほど総理も言われたように、日本が産業経済の活動をやって、しかも輸出貿易によって国を立てて参ります以上、日本として日本の国民生活を安定させ、生活水準を向上させ、あるいは文化水準を向上させて参りますためには、日本の経済全般が発展して参らなければなりません。その意味からいって、日本立場から、アメリカがもっとものを買ってくれなければならない。ことに現実にドルを持っております国、金の取りはぐれのない売り先を十分に確保していくということは、日本のために必要だと思います。がしかし、日本はアジアに国をなしております、従って日本の安定と平和ということを考えてみましても、アジア全体が、やはり安定してこなければ、日本の安定ということも考えられないわけであります。従ってそういう意味における東南アジアの方面の経済力の伸張というものに対しては、日本はこれに協力をして参らなければならないと思います。従って、経済外交の一面において経済協力の部面があると、また、今申し上げた通りだと思います。  で、対米貿易を十分やりますことと、それから政治的な問題とを別にした経済上の関係でありますれば、中共との貿易等につきましても、やはり日本としては、日本の民生の安定からいいましても、ある程度、これを考えて参ることが必要であろうと思うのでありまして、そういう点につきましては、やはり日本のおかれておる立場等につきまして、アメリカにも、十分理解をしてもらう必要があろうと思います。日本全体が、輸出貿易あるいは輸出入の原料を買い製品を輸出するという、それによって国を立てておるという立場から、十分、われわれは日本の外交を、そこにおいて考えて参らなければならぬというふうに考えておるわけであります。
  121. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) ちょっと千田委員に申し上げますが、もう時間が、あなたのは超過しておりますので……。
  122. 千田正

    ○千田正君 これで終ります。  今、通産大臣からお答えいただくのですが、通産大臣に、お答えをいただくのに一点だけ加えて、お答えいただきたいのですが、今のアイゼンハワー大統領が演説の中にも、日米貿易は限界にきておる、日本は限界にきておるという考え方も、米国人の中にある。だから、これを振りかえて、東南アジアにやらせようという、やってもらいたいということを言っておるのですね。日米貿易をこれ以上進めよう、打開する方向にいらっしゃるのか、アイゼンハワー大統領が言うようにターンして、そのかわりに、オーバーした分を東南アジアに向けようとする政策遂行のために行かれるのか、その点は、どういう考えを持っていられますか。その点だけお伺いしたいと思います。
  123. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私は、そんなに解釈いたしておりません。日米貿易は、年々ふえております。昨年は、一昨年に比較しまして一割三分ふえております。毎年ふえております。私は今後の政策いかんによりますれば、もっと日米貿易は増加していくべきものだとこう存じまして、その方針で進むべきだと存じております。
  124. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 関連ですか。
  125. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 関連して。  ただいま、千田委員が日ソ漁業交渉のことについて質問しましたが、これは年々歳々、ほんとに悩ましい問題だと思うのです。皆さん方の御努力に期待し、お願いしますけれども、これは、私はこれに関連して伺うわけですけれども、科学的資料とか、科学的研究以前の問題がある。それは、両者間における民族的、人間的理解の欠除というものが、これはあると思う。これから片づけて行かなければならなないと思うのです。  そこで、私は伺いたいのは、昨年の予算委員会で、藤山さんにお伺いしたときに、両者間の民族的、人間的な理解を深める意味においての日ソ文化協定等は非常に大切だ、押し進めて参りたいということをあなたは答弁されました。それ以来の動きを見て参りますと、全くとまっているのです。そしてあなたが所属する与党内に、相当抵抗があるわけですが、それらの人の主張していることは、僕らの考えから言うと、歯牙にかけるにも値いしない意見ですよ。そういうことはほったらかしておいて、魚を取ることばかり交渉しようと思っても、いくもんじゃないと私は思う。藤山外務大臣は、昨年答弁したあの線の考えで、日ソ文化協定の締結にまっしぐらに進むのかどうか、私は、おそらくそうだと思うのですが、はっきりあなたのお考えと決意を表明してもらいたい。  岸内閣に、豊かな文化的センスを持っておる閣僚がある、その名は藤山さんであるというのが、もっぱらの評判です。あなたは、与党内の一部の勢力によろめくようなことがあっては、断じてならない。その点、私は信頼しておりますが、はっきり決意を表明して下さい。
  126. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 文化協定につきましては、特に与党内に異論があるとは思っておりません。私どもとしましては、今準備を進めております。  ただ、御承知のように、一般的な文化協定を作るか、若干、そうでない形式のものを加味するかということ、そういう問題につきまして、各省に若干の御意見がございます。そういうものを、今調整しながら進める段階にきておりますので、文化協定は、やらぬとは申しません。
  127. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 急いでやりますと、もう、一年以上経過しているんですよ。急いでやりなさいよ。
  128. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 以上をもちまして、千田委員質疑は終了いたしました。   —————————————
  129. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 次に市川房枝君。
  130. 市川房枝

    ○市川房枝君 何度もここに立ちますのは、少し面はゆい感じがいたしますが、時間をいただきましたので、前から総理に、ぜひお伺いしたいと思っておりました婦人に関する問題についてお伺いしたいと思います。  その前にちょっと、先ほど恩赦についての、また論議がございまして、森委員の御質問に対して、総理は、まだ最後的に決定してない、だから、もう一へん考慮するというようなことをおっしゃったように私受け取れましたのですが、今、新聞に発表されておりますよりも、幾らか内容が縮少されるといいますか、変更されるような希望を幾らか持ってもいいかどうですか。
  131. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほどもお答え申し上げました通り、私、具体的な内容につきましては、まだ承知いたしておりません。法務大臣からの報告も聞いておりません。従って、新聞に出ておりますことは、どこからその資料を得たか、もちろん公表したものではないと思います。ただ、政府考え方の基本につきまして、いろいろ御議論もありますし、あるいは私が従来、お答えをしておったことと、多少の考え方なり、あるいはニュアンスの違っておるところもあるかと思いますが、私どもが、今日までいろいろ検討して、最後の考え方の基本としては、こういうふうに考えておるということを率直に申し上げた、それは、大赦は行わない、それから特赦ではあるけれども、選挙違反を政治的な意味から特に除くとか、あるいは入れるとかいうふうな扱いにせずに、一般の刑事政策その他の犯罪と権衡を保つ方向で研究する、こういうふうなことを申し上げておりますが、その具体的な内容については、なお最後の十日の前日くらいに、しさいに検討して、閣議としてきめることになる。  しかし、依然として政治的な意味から、こういうものは入れるなという御主張は強いものがあり、世論も、そういうものがあり、それには、相当傾聴すべき意味があるということも、よく了解をいたしておりますけれども、なお、そういうことについての御意見については承わっておいて、最後の審議の際は、あるわけでございますから、その内容を見て、そうして検討したい、こういうことを申し上げた。  従って、きょう出ておりますのが、私、決して政府が、こう考えておるとか、こうなんだという意味のものではなかろうと思います。私どもも知らないことでありますから、そういう意味において、なお、今の方針で検討いたします。
  132. 市川房枝

    ○市川房枝君 何かよくわからないのですが、今、この前からの総理のお考え、あるいは法務大臣のお考え、新聞なんかに出ておりますのも、一応ごもっとものように、ちょっと聞えるのですけれども、いろいろな経過を知っております者からいいますと、やはりそこに、何らかある。今のような新聞の程度ですと、まあ大赦はないから、まだいいのですけれども、しかし、大赦に似たようなものになる危険が多分にありまして、やはり、これはお手盛り恩赦だというふうなことに考えられてしょうがないのですが、これは、まあ私はほんとうに、日本の民主主義政治のためにとか、あるいは岸総理自身のために、敢然として、何とかそういう非難を受けないようなふうに、一つ最後の段階になって、さらに御考慮下さるようにお願いしておきます。これで終ります。  婦人問題の中でも、特に予算を伴わない、総理のお考えだけでできます問題、すなわち婦人の地位の向上の問題、それも、行政への婦人の参加だけについて伺いたいと思います。  一昨年の国連総会に婦人の代表代理を、また昨年は正式代表を加えていただきましたことにつきましては、国内の婦人たちは、非常に喜びましたし、また国連でも、各国の婦人たちが非常に喜びました。これについて総理並びに藤山外相に対して、私どもは感謝をいたしております。今後も、ぜひ続けて婦人の正式代表を出していただきたいと思います。同じようなユネスコの総会がございますが、これには、顧問として一度婦人の方が行かれましたが、正式の代表は、一度も出ておりませんけれども、この次には、一つ御考慮を願いたいと思います。  それから婦人の国務大臣を任命するということにつきましては、外務大臣がおいでになりましたときに総理は、私にちょっとお約束なすったが、まだ、これは実現をしておりません。いや婦人の大臣どころか現在の岸内閣には、婦人の政務次官もおいでになりませんです。これでは、婦人を軽く見ておるというふうに婦人たちは感ずるのじゃないかと思いますが、自民党の婦人議員の方の中には、りっぱな方がたくさんおいでになりますので、私は、候補者はおいでになると思いますが、総理のお考えをちょっと伺いたい。
  133. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 婦人の地位の向上の意味において、婦人のいろいろな活動を十分にしてもらう意味において、あるいは国際的な会議等においての正式代表等に参加してもらうということは、私ぜひ、だんだんと、そういうことを進めていかなければならぬと思います。さらに政党内において、婦人の議員の政治的地位を十分に考え、能力を考えて政務次官や、あるいは国務大臣等の要職につけることは、同時に婦人全体にとっての一つの地位の向上の上から非常に望ましいことであるというお考え、私も、そう思います。  私がかつて、市川委員お話を申し上げまして、ぜひ自分の内閣時代に、婦人の大臣を作りたいということを申し上げたことは、私よく記憶いたしております。その機会を常に頭に置いておりますが、いまだ実現しておりませんことは、大へん、これは決して、婦人を軽視しておるとかいうようなことは、ございませんが、今後においても、ほんとうに真剣に、私はこの問題をぜひ自分のときに、そういう例を開きたいという、非常に強い念願を依然として持っておるということだけを申し上げて御了承願います。
  134. 市川房枝

    ○市川房枝君 ぜひ、それは一つ、お忘れないようにお願いを申し上げます。  それから、各省の一般職の職員の中に、婦人の局長というのが、労働省に一人ございます。それから課長は、労働省に二人、厚生省に一人、農林省に一人、合計四人しかおりません。文部省にも、婦人の課長がございましたけれども、これは辞任されたあと、男の方がなってしまいましたので、それだけ減ったわけであります。  それで、外国では、婦人のそういう局長、課長なんというのは、たくさんございますし、東南アジア諸国でも、婦人大臣はもちろん、そういう高級の官吏もございますが、日本は非常に少い。適任者がないわけでもないと思いますが、もし今後、そういう課長で、だれかやめた人がありました場合に、あと男をもって補充するとかいうようなことは、私はないと思いますが、それだけでなく、さらに、ふやしていただきたいと思うのですが、いかがでございましょうか。  それから、それに関連しますけれども、国家公務員の上級試験というのがございまして、これには、女子の受験者がこのころずいぶんふえております。そして合格した者が、三十二年には四十一名、三十三年には五十一名に増加しております。そしてその成績なども、心理の方なんかは婦人と男子と両方合計で、一番二番というのは婦人がなっております。ところが、そういう人たちが今度官庁に採用されるかどうかといいますと、半数ぐらいしか採用されていないのでございますが、これは、政府の方さえその御方針になれば、私は採用していただけるのじゃないか、そうすれば、将来、婦人のそういう官吏も、だんだん適任者が出てくるではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  135. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私、官吏採用の現実の実例を詳しく承知いたしませんので、抽象的な話になりますけれども、今、公務員の試験をハスし、そうして相当な成績であり、官庁に就職することを希望しておられる人があるならば、それは、大いに進んで採るべきものであると思います。そうしてただ、まあどこでも同じでありましょうが、どういう仕事でも、婦人にできないことはないわけでありましょうけれども、比較的婦人に適している仕事と、そうでない仕事とが、おのずからあることだろうと思います。従って、これは頭をかえて、特に婦人に適しておると思われるような仕事については、進んで婦人を採るような気風を作るべきじゃないか、私は、また外務省あたりにも、そういうポストが相当あるのではないかというふうな考えもありますので、なおこの採用の方面、資格等々、十分にらみ合せまして、趣旨としては積極的に進めるように、一つ関係の方面に話をいたすようにいたします。
  136. 市川房枝

    ○市川房枝君 公立の小学校の校長の中に、女の校長がございます。その数は、総計二万一千六百八十人の中で、女の校長は九十七名でございます。それから中学校も、それと同じように非常に少いのでございますが、これの数は、一時終戦後より少し少くなっているような気がいたします。文部大臣は、適任者があったら、ふやすとはおっしゃいましたけれども、私は、小学校の校長には適任者がないはずはないのだ、先だって小学校並びには中学校の校長の会合がございまして、それに傍聴に出ましたけれども、なかなかりっぱといいますか、しっかりしておられまして、ぜひこれは、一つふやしてほしいと思うのでありますが、婦人の場合は、その地位に置けば、私はある程度伸びると思います。だめだからということだと、やはりだめになってしまいますけれども、ことに教育の方面で、婦人にもう少し、そういう地位を開いていただいていいのじゃないかと思うのですが、いかがでございましょうか。
  137. 岸信介

    国務大臣岸信介君) おそらくこの公立学校の校長なんというのは、各府県の教育委員会が任命権を持っているのではないかと思います。従って、文部省が指図して、どうというわけにはいきますまいが、適当な指導と勧告をして、今お話のように、こういう仕事については、教育の仕事については、私は婦人は適している、また、それに待たなければならない部面も少くないと思いますから、そういう教員が多数になれば、そのうちから、校長に適任の人も、自然出てくるわけでしょうから、そういう者は、積極的に考えるように、各府県の教育委員会等を文部省の方において、適当に指導するということが望ましいだろうとこう思います。
  138. 市川房枝

    ○市川房枝君 次に労働大臣に、ちょっと伺いたいのでありますが、婦人の啓発あるいは婦人の地位の向上を直接担当しておりましたのが、文部省と労働省だと思いますが、文部省は、どうも封建的で、社会教育局のごときは、婦人があまり利口にならない方がいいというふうに考えられておられるみたいでございます。これは、橋本文部大臣も、文部省はどうも婦人に対して、あまり理解がないようなことをお認めになっておりました。ところが労働省の方は婦人少年局があり、その設置法で、はっきりと婦人の地位の向上ということが書いてありますので、そのために労働省の婦人少年局は努力しておるわけでありまして、その労を私どもも多として認めております。その婦人少年局を主管しておられます労働大臣の、婦人の地位の向上といいますか婦人の啓発についての御所信、御抱負をこの機会に伺っておきたいと思います。
  139. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 御承知のように、私どもの方で所管いたしておりますのは、主として働く御婦人が直接でありますが、来週もNHK等の援助を受けまして婦人週間を実施いたしますが、年々非常に理解されて参りまして喜ばしいことだと思っております。今私どもの方の直接関係のあります問題につきましては、働く婦人についてどのようにして社会的地位、それから労働者としての職場を持っておられる婦人の地位をできるだけ引き上げていくことができるか、そういうことにねらいを置いてやつおるわけであります。ことにわれわれは婦人と一緒に働く少年を一緒にしておるわけでありますが、地方に参りまして一番痛切に感じますことは、やはり何と申しましても長い間の伝統的封建性の影響がまだありまして、従って働く婦人等が自分たちだけ集まって修養の機関を持ちたいと考えられましてもそういう機会は少い。そこで最初群馬県に始めまして、今度は働く少年のための働く青少年ホームというようなものを国庫が補助いたしまして、愛知県にりっぱなものを作りまして、ああいうものを作りまして、集団的にやはりそこに会合をして、そしてたまさかりっぱな講師を招いてお話を聞いたり、同時にまた働く婦人、働く少年としての必要な素養を身につけるべき機会を集団的に持ち得る、こういうふうなことを始めまして、非常に地元からも喜ばれまして、先般私も出席いたしましたけれども、そこへ参加する働く婦人青少年のみならず、その人たちをお使いになる立場に立っておる事業家たちも、やはりこういうふうなことをしてもらうことが、かえって働く人々を使っておる産業の発展のためにも非常にいいことである。こういうふうなことで両方から非常に喜ばれておりました。三十四年度予算も、先般御指摘がございましたように、あまり大した伸びではありませんでしたけれども、それでも三十三年度よりはこういう施設に増額をいたしておりますが、だんだんこういうことに政府部内でも認識を高めていただきますようにわれわれも努めまして、こうやって全部から喜ばれるような施設をだんだんふやして参りたい、そういうふうなことをすることによって、御自分がやはりそこに働いておられる婦人であり少年である人たちが、御自分自身が自分の地位というものに権威づけるような自覚を知らず知らずの間にもってこられる。そういうような方向へ私どもは今申し上げたような趣旨で力を入れて参りたい。大体そういうふうに考えておるわけです。
  140. 市川房枝

    ○市川房枝君 労働大臣に重ねて一つ伺いたいのですが、婦人少年局に婦人の職員がたくさんおられますが、そのほかの局、ほかの官庁との交流があまりなさそうでございますけれども、それでは少しマンネリズムになるといいますか、働く人たちにも希望がないと思いますが、そういう婦人少年局そのもののもう少し職員の交流といいますか、そういう点についていかがでしょうか。
  141. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 今私どもの方の婦人少年局は婦人の課長もおりますが、若い方の人たちのクラスでは基準局、それから職業安定局等々の間に人事の交流を盛んにやっておるようでございます。
  142. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 簡単ですが、関連質問を……。
  143. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 簡単でございますね。矢嶋君。
  144. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 具体的な問題で総理一つ伺いたいと思うのですが、先ほど市川委員との質疑応答に、にこにこ顔で非常に理解できるセンスで答弁されておったようですが、具体的な問題で伺いたいのは、予算委員会の分科会でもはっきり指摘し、労働大臣も認めたのですが、出先機関に婦人少年室というのがあるのですが、これが大きい所で二人、小さい所は普通一人しかいない、室長が。ところがたった一人で非常に成果をあげているのですね。これは分科会で労働大臣みずから認められ、高く評価しオーバー・ワークも認められておる。それから大蔵大臣も何とか充実をしたいということの答弁をしておるのです。  それでお互いこれは人間は生き身ですから、ああいう各県に婦人少年室に室長が一人ということは、単数ということはいろいろ支障があろうと思う。国家財政のつごうもあるから私はむちゃなことは申しませんが、少くともこれは偶数にするということほ私は大切だと思う。さっき市川委員になかなかいいセンスで答弁なさっておりましたが、少くとも偶数以上にしてやるということをここでちょっとお答え置きを願いたいのです。これは労働大臣、大蔵大臣は賛成です。
  145. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私実は大へんうかつというか、そこまで勉強をしておりませんので、地方の実情は承知いたしておりません。しかし今お話のようなことで非常に必要なことであれば、このまま放置しておくことは適当でないと思いますから、十分に財政の点ともにらみ合せてこれが充実について十分考えます、政府としても。
  146. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 以上をもちまして、市川委員質疑は終了いたしました。  明日は午前十時に開会することとして、本日はこれにて散会いたします。    午後四時十八分散会