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1959-03-20 第31回国会 参議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月二十日(金曜日)    午前十一時十九分開会   —————————————   委員の異動 本日委員小山邦太郎君、中野文門君、 鶴見祐輔君、川村松助君、古池信三 君、田中一君、千葉信君及び八木幸吉辞任につき、その補欠として吉江勝 保君、仲原善一君、岩沢忠恭君、柴田 栄君、土田國太郎君、戸叶武君、中村 正雄君及び市川房枝君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     木暮武太夫君    理事            小柳 牧衞君            近藤 鶴代君            塩見 俊二君            西田 信一君            堀木 鎌三君            鈴木  強君            中村 正雄君            矢嶋 三義君            森 八三一君   委員            石坂 豊一君            泉山 三六君            岩沢 忠恭君            植竹 春彦君            大沢 雄一君            勝俣  稔君            紅露 みつ君            後藤 義隆君            迫水 久常君            柴田  栄君            下條 康麿君            館  哲二君            土田國太郎君            苫米地英俊君            仲原 善一君            安井  謙君            横山 フク君            吉江 勝保君            荒木正三郎君            占部 秀男君            片岡 文重君            北村  暢君            栗山 良夫君            坂本  昭君            高田なほ子君            戸叶  武君            松永 忠二君            山田 節男君            島村 軍次君            千田  正君            市川 房枝君   国務大臣    法 務 大 臣 愛知 揆一君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君    厚 生 大 臣 坂田 道太君    農 林 大 臣 三浦 一雄君    運 輸 大 臣 永野  護君    郵 政 大 臣 寺尾  豊君    労 働 大 臣 倉石 忠雄君    建 設 大 臣 遠藤 三郎君    国 務 大 臣 青木  正君    国 務 大 臣 伊能繁次郎君    国 務 大 臣 世耕 弘一君   政府委員    内閣官房長官  赤城 宗徳君    内閣官房長官 鈴木 俊一君    法制局長官   林  修三君    自治庁財政局長 奧野 誠亮君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 加藤 陽三君    防衛庁装備局長 小山 雄二君    経済企画庁調整    局長      大堀  弘君    経済企画庁総合    計画局長    大來佐武郎君    法務省刑事局長 竹内 壽平君    法務省保護局長 福原 忠男君    外務省条約局長 高橋 通敏君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省主税局長 原  純夫君    大蔵省理財局長 正示啓次郎君    大蔵省銀行局長 石田  正君    大蔵省為替局長 酒井 俊彦君    厚生省公衆衛生    局長      尾村 偉久君    厚生省社会局長 安田  巖君    運輸省鉄道監督    局長      山内 公猷君    運輸省自動車局    長       國友 弘康君    労働省職業安定    局長      百田 正弘君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    日本電信電話公    社総裁     大橋 八郎君    日本国有鉄道総    裁       十河 信二君   参考人    日本銀行総裁  山際 正道君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠互選昭和三十四年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十四年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十四年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) ただいまから委員会を開会いたします。  まず委員の変更について報告いたします。八木幸吉君、中野文門君、小山邦太郎君、千葉信君が辞任し、その補欠として市川房枝君、仲原善一君、吉江勝保君、中村正雄君が選任せられました。   —————————————
  3. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 次に理事の選任についてお諮りいたします。松浦清一君が理事を選任したい旨の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 御異議ないと認めこれを許可いたします。  次に、ただいまの理事辞任に伴い、理事補欠互選を行いたいと存じます。この互選成規の手続を省略して、前例により委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議はございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 御異議ないと認めます。それでは委員長より中村正雄君を理事に指名いたします。   —————————————
  6. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) これより昭和三十四年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算を一括して議題といたします。  前回に引き続いて一般質疑を行います。占部秀男君。
  7. 占部秀男

    占部秀男君 言うまでもなく、来月四月は地方選挙が行われるわけでありまして、執行機関あるいは議決機関とも、全国都道府県市町村はほとんど改選せられる。そこで考え方によっては、今後四年間の全国県政市町村政の骨組みが変るときである、かように考えられるわけであります。こういうようなときに当って、政府地方政策がどういうことを行なってきたか、また今後どういうことを行うか、こういうようなことは地方選挙に臨む国民態度をきめる上からいっても、あるいはまた今後四年間の全国県政、市政、町村政の見通しをきめる上からいっても、これは選挙を控えた地方政治としては非常に重大な問題であると私は考えるのであります。そこで、政府地方政策につきまして、特に明三四年度の国の予算関連のある問題点を中心として、二、三お伺いを申し上げたいと思います。  まず最初に、制度上の問題について青木国務大臣にお伺いをいたしたいのでありますが、政府は最近自治省設置法案考えておるというようなことを聞いておりますけれども、一体これを今度の国会に出すつもりなのか、出さないつもりなのか、もしも出すとしたならば、その大綱的なところ、概略でけっこうでありますけれども、お答え願いたいと思うわけであります。
  8. 青木正

    国務大臣青木正君) お話のように、私は今回の地方選挙というものは、非常に重大な意義があると思うのであります。と申しますのは、日本に現在の新しい自治制度がしかれまして十カ年の経験を得て、ここで日本自治制度は本格的に新しい自治制度に基く考え方に立った基礎を固めていかなければならぬ。と申しますのは、御承知のように、日本地方自治体行財政能力確立するために先年来町村合併が行われまして、そうして市町村段階におきましては、一応基礎的公共団体として行財政力を強化するための基盤ができたわけであります。その基盤の上に立ってこれからの自治体としての完成をはかっていかなければならぬ。今年三月三十一日をもって町村合併に終止符を打つことを目標にいたしておりますので、その後に行われる地方選挙というものは、新しい基盤に立った日本自治制度確立という意味におきまして、非常に重大な意義があると思うのであります。しかも、最近の地方財政を見まするときに、御承知のように、日本地方財政が非常に膨大になっておるということは、市町村としてやらなければならない仕事がたくさん残されておる、こういうことを意味することでありますので、そういう面からも、私は今回の地方選挙は重大な意義がある。そこで自治省設置の問題でありますが、私どもはそういうような新しい日本自治制度一つ段階に入ってきておる。しかも、これからたくさんの仕事をやなければならないということを考えますときにに、文化国家福祉国家としての日本を再建するためには、現実的には結局それらの文化施設福祉施設地方公共団体がこれを担当しておるのでありますので、これを強力にせんければ、また国との関連と申しますか、国とのつながりにおきましても、もっと連絡を密にする必要もあろうと考えるのであります。そういう意味におきまして、日本自治行政というものが終戦後今日まで歩んできた道から考え、また今後やるべきことを考えますときに、私は地方公共団体立場に立って、閣議なりあるいは国会なりにその意向を正しく反映するというようなことはどうしても必要ではないか。また現在の自治庁というものが総理府の外局であるために、ここに行政責任の明確さを欠いておる点がありますので、私は新しい日本自治体が再出発といいますか、ここで基礎を固めようとするこの段階に当りまして、国の行政機構としてもその責任を明確にするために、自治省をこの際設置すべきである。いうまでもなく、ここに現行憲法のもとにおける地方自治法改正いたさないのでありますから、従いまして自治あり方として、私ども一つもこの機会に改変しようというのではないのでありまして、もっぱら府県市町村立場国政の上に正しく反映させる、こういう考え方であります。従いまして、自治省設置という問題は、内容的には純粋に地方公共団体、つまり自治体というものの立場を正しく国政の上に反映させる。またその中央機関としての責任を明確にするということでありますので、自治省はもっぱら現在の自治庁仕事をそのまま受け継いで、これを昇格するという考え方に立っておるのであります。ただそのほかに、御承知のように消防につきましては、消防組織法によりまして市町村消防になっておるのであります。ところが、これが現在は消防組織法だけの規定で国家公安委員会に付属しておるでありますが、消防というものが市町村消防である以上は、これは私は何といたしましてもむしろ自治省につけて、そうして消防の強化のための財源措置等について今後考えていく必要があるという考え方に立ち、自治省設置する場合、現在の消防国家消防本部をこれに合せる。その場合に内局にするか外局にするかという問題もありますが、消防仕事というものの性格から見まして、私は内局とするよりはむしろ外局とするという方が適当ではないか、かような考え方に立っておるのであります。しかし、なおこの点につきましては、政府内部におきましても、最終的に確定したわけではありませんが、大体外局という方向へ進んでおるわけであります。しかしてこの国会提案するかどうかという問題でありますが、これは行政審議会答申もあることでもあり、また先ほど来申し上げましたように、日本自治体というものが新しい一つ基盤確立の機運に向っておりますので、私といたしますれば、できるだけこの機会提案をいたしたい。しかしこれは申し上げるまでもなく、行政組織の問題でありますので、もっぱら行政管理庁がその担当になっておりますので、私だけの気持でどうというわけには参りません。ただ私自身としては、ぜひともこの国会提案させていただきたい。行政管理庁方面ともいろいろ折衝いたしておりますが、大体その方針のもとに、先般も山口国務大臣がここで御答弁申し上げましたように、本国会提案方針のもとに、せっかく内部的に準備を進めておるという段階でございます。
  9. 占部秀男

    占部秀男君 出したいという長官の御答弁でありますが、これは山口さんの答弁も聞きました。ただ、今長官言われたように、この問題は大臣言われたように、町村関係においても新しい段階にきておると、こういうようなときに当って、非常に僕は重大な問題を含んでおると思うのです。特に、これは一つの省を新設する問題でありますし、大臣も言われたように、新憲法下における地方自治あり方から考えましても、自治省を作ること自体に相当問題のあるところであります。そこで、今国会は率直に言って、好むと好まざるにかかわらず、来月へ入ってしまえばこれは審議をすることが非常に困難になる。こういうような事実上困難になる情勢の中にあるわけでありまして、すでに今日はもう三月の下旬に入ろうとしておる。こういうような国会内の条件から考えましても、今度の国会に出すということは、私は非常に無理ではないかと、かりに出したとしても、結局は無理に出したというよううな形で、その責任を追及されるようなことになってくることが落ちじゃな用いかと、こういうふうに私は考えておるわけです。そこで、そういうような点について大臣はどういうふうに把握されておるか、この点を御質問いたします。
  10. 青木正

    国務大臣青木正君) もちろん、私ども提案いたしたいという考えに立ちましても、国会関係もありますので、国会対策関連におきまして現実の問題としては十分考慮しなければならぬということも、私重々承知いたしております。ただしかし、会期の問題、国会対策の面もありますが、私といたしましては、ぜひとも提案させていただきたいと、こういう考えのもとに国会対策その他の方面とも連絡いたしまして最終的に決定いたしたいと、かように考えております。
  11. 占部秀男

    占部秀男君 大臣は、どうしても出したいのだけれども国会対策やいろいろな面もあるので、その他も考慮してと、こういうようなお話でありますけれども、私から言わせるなら、むしろ大臣はこの際、積極的に出さないように私は努めるべきではないかと、かように考えるわけであります。というのは、今大臣も言われたように、内容的に見れば現在の自治庁消防とをくっつけただけだと、かように軽くお考えになっておるようでありますけれども、これはそういうような軽い問題ではないと私は考える。ざっと考えてみても、あの廃止された当時の旧内務省機構仕事は現在どうなっておるかと言えば、まあここ七、八年、歴代政府政策から、すでに地方局のほとんど調査局の一部は、現在もう自治庁に集約されておる。警保局のほとんどと調査局の一部は現在の公安委員会の中に集約されておる。しかも、その七、八年の過程における法の改正で、国家公安委員長国務大臣でなければならないということになって、現在青木大臣、あなたがこれを兼務されておると思うのです。そこで、もうあと残っておるのは、建設省関係にあるところの旧国土局関係をこれにくっつければ、ほとんど昔の内務省と変りはないじゃないかと、こういうような論議さえ世間には多く論議されておるのです。そこへもってきて、急な形でこうした自治省設置法案を出すということになれば、国民の多くは、これはもう旧内務省復活のための踏切台をここへ出すものである、かような形で非常な疑惑を持っておるわけです。そこで、むしろ大臣としては、たとえほかの閣僚がこれを出そうとしてもそれをとめて、そして、もっと十分な審議期間の予定されるという条件のもとに国会へこういうような法案を出して、国会審議を通じて、十分な論議を通じてかくのごとき国民疑惑というものを一掃することが、大臣としての、責任ある政府としてのとるべき態度ではないかと私は考えるのです。それなのに、この国会会期も実際は会期末のような形になっておる今日、急にこういうようなことを出してくる、こういうところにどうも私としては何か理解し得ないものがあるという感じを持つわけです。そこで私は再び大臣にお尋ねをするのでありますけれども、今私が言うような意味合いを含めて、今度の国会に無理にこれを出そうというような印象を国民に与えて無益な摩擦を起さないように、ほかに再考する余地がないものかどうか、この点をお尋ねいたします。
  12. 青木正

    国務大臣青木正君) 御注意はまことにありがたく感謝するわけであります。私も自治省設置というものが、ややもすると内務省復活であるというような一部に御議論があることも承知いたしておるのであります。そういうような誤解があることにつきましては、私どもといたしまして、われわれの真意を国民の間によく徹底いたしまして、そうじゃないという御理解をいただかなければならぬことは言うまでもないのであります。そういう意味におきましては、なるほど御指摘のように、国会会期も追っておりまして、この段階で出すことはどうかという御議論につきましては、私も十分傾聴に値する問題であると考えます。ただ自治省設置の問題は、党といたしましても、単にこの省設置に限らず、行政制度審議会に諮問もいたしまして、その答申を受けておることでもあり、またかって内政省設置法案提出されまして相当検討されてきた問題でもありますし、また形は簡単でありますが、内容的に重大な意義を持っておるのであります。その点は私も了承するのでありますが、しかし、自治制度についての責任明確化という問題は、これは一刻も早く確立すべきものではないかとも考えられるのであります。そういう意味におきまして、できるだけこの国会提案いたしたいという強い希望を持っておるのであります。しかし先ほど来申し上げましたように、これは国会対策の面それからお話点等もありますので、もちろん最終的に提案いたすに当りましては、そういう点を十分勘案しなければならぬことは私も重々心得ておるつもりであります
  13. 占部秀男

    占部秀男君 この問題については、何も大臣が出すと言い切ったわけでもありませんし、それから今言われたように、問題の非常に多い問題であり特に今の地方自治体状態からして、いろいろな政府施策というものについての責任明確化というような点も考えられないわけではないわけであります。ただそのやり方について問題があるということについては、今度の自治省設置法案に響いてくる、こういうような点もございますので、私は時間の関係もあり、これ以上は質問はいたさないつもりであります。ただどうか一つ審議期間の点も十分考えて、こういう問題を処理していただきたい、こういうことを要望として申し上げておきたいと思います。  次に第二の問題に移って、今度の国の予算案がこのまま通った場合に、一体地方政治はどんな影響を受けるであろうかということに関連して、二、三の点を御質問いたしたいと思うのであります。大臣もすでに御存じのように、今地方ではほとんどの県や市が予算を組み、各県議会あるいは市町村議会にかけ、これも通ったところもあるし、いろいろやっておるところもある、かような状態になっております。ところでこの県や市町村予算を組む場合に、一番問題点は何であったかといえば、財源難である。そうしてこの財源難のためにここ数年かつてなかったほどの編成についての困難をきわめて、当事者は非常に苦しんだ、こういう事実は、これはもうおおべくもないわけであります。私も国会中ではありましたが、いろいろな連絡もあって、この年末の国の予算編成期からさらに二月のたしか七日の日でしたと思いますが、地方財政計画が出される前後、九州、四国あるいはまた東北の一部、関東というように、ほとんど目ぼしいところは歩いて参りまして、そうして知事さんや市長さんともこの問題について相当な話し合いもいたしたのでありますけれども、結局は知事市長さんの言うことは、異口同音として、このままの状態でかように予算を組まされるということになると、ことしは第一に公共事業を消化するだけできりきり舞いをしてしまって、地方は県単事業あるいは市単事業はほとんど皆無というような、放棄しなければならないような状態に陥るか、あるいはまたそういう状態を避けようとするならば、結局とどのつまりは決算期にきて、いやでも赤字をまたまた出さざるを得なくなるか、あるいはこの二つを回避しようとするならばやむを得ず国からのいわゆる公共事業の一部を返上せざるを得ないところに立ち至るであろう、こういうようなことを異口同音に私は聞いてきたわけであります。私も、現在のような国と地方との財政的な関係では必ずそうなってくる。その三者のうちの一つを選ばなければならないように地方は追い込まれてくると私も思っておるのであります。もちろん国の予算の場合と違いますから、県、市町村の場合は、当初予算だけですべてを律するというわけには参りません。六月から七月にかけての肉づけ予算という問題も考えなければならないわけでありますけれども、しかし現在予算を組んでおる知事市長は、六月、七月の肉づけということは期待できない、こういうような前提のもとにまた苦しい予算を今組んでおるのであります。これが証拠には、各県、市の予算を相当私もここに拾ってきておりますけれども赤字を出さない用心のために、当初予算の規模というものを全然前年度よりも縮小しておるというようなところも相当出てきておる。あるいは県単事業を見れば、名前だけの形式的な県単事業だけしかかけておらない。何々開発調査であるとか、何々開発研究であるとか、研究調査ならば金がかからないし、外に出せばこれは大きな形になるので、そういうような中身のない新規事業的な問題をここにずっと並べておって、そうして実際は仕事の上からいったら、これは内容のないということになる。あるいは国の公共事業の問題でも、大てい六〇%、七〇%を組んでいて、国が予定するものよりも五〇%しか組んでない県さえ出てきておることは御存じ通りであります。かような姿は、しかも選挙を控えて、県、市町村の場合においては知事や、市長は、こういう予算を組みたくない、ないのだけれども、やむを得ず組んでおる。こういう状態については青木大臣としてはどのような把握をしておられるか、そういう点をお伺いいたしたい。
  14. 青木正

    国務大臣青木正君) 明年度地方財政につきましては、私が申し上げるまでもなく、御承知のように一方において減税、一方において公共事業のワクの拡大、その他給与費等義務的経費増加等、プラス・マイナスの両方の面から非常に圧縮を受けておることは御承知通りであります。従いまして、私どもはこの地方財政明年度計画をどうするかという問題につきましては、いろいろ苦慮いたしまして、国の施策としての道路整備五ヵ年計画に伴う国庫負担金の三十三年度の特別の率、これを維持すること。さらに交付税を一%ふやすこと、また軽油税を増率すること等をいろいろやったわけでありますが、しかしそれにいたしましても、なかなか御指摘のように困難だと私ども考えるのであります。そこで限られたる財源において、できるだけ地方公共事業等に支障のないように、交付税配分方式につきましても御承知のように、新しく改正を加えて、できるだけそういうことのないように配慮を加え、また地方債計画につきましても、その点を相当考慮したつもりでありますが、しかしながら御指摘のように何と申しましても、私ども率直に申し上げますが、明年度地方財政は確かに窮屈だということは、私は率直に認めざるを得ないのであります。知事会を初め、六団体の方々からもいろいろ事情を聞いております。しかし私ども公共事業配分、あるいは経費の節減、その他いろいろ御努力を願いまして、今回決定いたしました地方財政計画に基きまして、ぜひともやっていただきたい。しかし、この予算執行過程におきまして、いろいろまた問題の起ってくることも私ども考えないわけではないのでありまして、その段階におきまして、私どもとしてやるべきことがあれば、私どもは必要なる措置を講じなければならぬ、かような考えを持っております。しかしながら、ともかくあの財政計画に基きまして、地方に格別の御努力をひたすらお願いしておるわけであります。
  15. 占部秀男

    占部秀男君 今大臣は率直に苦しい事態に入るであろうということを認められておる。これは非常に私としては好感が持てるわけであります。しかし問題は、私が好感を持っただけで、地方の県や市町村のそういう状態が救われるというわけにいかない。そこで私は個人的に言うならば、非常に大臣にはお気の毒かもしれんけれども、もっとこの点については、財源的な問題について大臣も工夫をすると言っておるけれども、今の限られた限度内において幾ら工夫してもなかなかそうは参らぬと私は思います。というのは、一体なぜことし各県や市でさような予算を組み、さような形で苦労しなければならないかということは、その原因が、地方の県や市にその財政的な原因やその他があるのならば、大臣が言われたような形で工夫されると相当助かると私は思うが、ところがそうではない。ことしの県や市町村財源の苦しい原因はどこにあるかといったら、きょう現在審議しておりますところの明三十四年度の国の予算編成の仕方の中にあると私は思う。なぜこういうことを言うかといいますならば、これは一兆四千億の一般会計をざっと洗ってみても、私が言うまでもなく、国からの補助事業事務というものは、地方へ回す金が公共事業関係だけで千六百億、一般会計補助で千八百億あります。これに二千四百億の地方交付税を加えると、六千億近い金になって、一般会計のいわば四二、三%はそのまま地方都道府県市町村に回って、地方の手持の金と合せて事務事業ができるという一応の勘定にはなっておるわけでございます。しかし、ところでこの国の支出金が具体化した、その具体化させたところの明三十四年度の地方財政計画を見ると、逆に国からの補助事業事務というものが、特に政府が一枚看板としておるところのいわゆる積極施策というものが、実は地方の県や市町村に対しては大きな重圧となっておる。これは私が自分で計算をした率はあるのでございますけれども、たとえば今度の地方財政計画で一千十八億でしたか、これは前年度よりも増加になっておる、規模が大きくなっておる。ところがその規模の大きくなっておるうちの五一%は今度の国の施策に基くものが中心となって、その大きくなった部分を食っておる。そして地方の県単事業はどうかというと、その大きくなった中のわずかに一〇%にも足りない、七か八%くらいにしかなっておらない。この公共事業が非常に大きな重圧になって、特に公共事業関係だけでも昨日も私の同僚田中委員も申し上げたように、二百十八億の地方負担、いわゆるこれに対する地方負担の増、この地方負担の増に対して、これに見合うだけの財源措置がほとんどされていない、問題は私はここにあると思うのであります。現在の地方財政計画を見れば、地方のいろいろな形の一般財源の自然増加というものは、既定経費の自然増をまかなっただけで、あとの残った金というものは、ほとんど今言った国の施策に伴うところの補助事業事務の地方負担分の増加に食われておる。しかも地方の方はどうかというと、地方の一般事務の分は逆に縮少されておる。維持補修費はそのまま一銭も上げずにほうっぼらかされておる。そうしてようやく給与費を実際単価よりも低く見積ったり、事務費や旅費を切り下げたり、あるいは高等学校の授業料の値上げまで含むところの雑収入をふやしたりして七十五、六億でしたか、県単事業というものを増加させて幾らか芽を出させておる。ところが、この県単専業の増も三十三年度の地方財政計画では、私が言うまでもなく、三十二年度に比べて二百三十億も増加分を与えておったのです。それを今度は一挙に一分の一の状態に減らしておる。かような地方財政計画を指針として、これで自分の県や市の予算を組んだ場合においてどうなるかといえば、これはさっき言ったように、三者の形のどちらかを選ばなければならないかのような形に追い込まれることは、私は必然であると思う。結局今度の地方財政計画というよりは、そのもとであるところの国の予算というもの、これは大蔵大臣もよく聞いていただきたいのでありますが、国の予算というものは中央だけで地方はどうでもいいんだ、地方の県や市はどうなってもいいんだ、そういう考え方で私は組んでおると考えるより仕方がない。そういう点については特に大蔵大臣青木長官との御答弁を願いたい。さらにまた、これをこのままやっていったならば、あとでまた触れますけれども、例のガソリン税ですか、あれの軽油引取税の穴もあり、私はこの三者の中に県や市町村は追い込まれると思う。地方自治を破壊しているのは自民党の政策だ、こういうことをわれわれはいやでもおおでも声を大にして地方選挙のときに言わざるを得ない。私はいいけれどもそういう状態になれば、県や市町村は非常に迷惑だ。こういう三者の状態のどちらかを選ばなければならないように追い込まれざるを得ないと私は考えるけれども、御意見はどうであるか、この二点について御質問いたします。
  16. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) なるほど今回の公共事業費をごらんになりますと、県単が相当減って国の事業がふえている。その意味において地方自治を非常に拘束し、義務づけるんじゃないか、この点は数字の面から見ると一応そういう考え方があるかわかりませんが、これは私は事実を歪曲するものだと思うのであります。と申しますのは、国の事業としてとり上げたものが地方で問題でないような事業一つもございません。言いかえますならば、地方においてもこれはぜひ国でやってくれろというものなんです。そういうことを考えますと、県単というもの、それから国の事業というもの、これは全体を合せて地方公共事業と見るべきなんです。だからその点では、私どもはむしろ地方事業を国が取り上げておる、こういう感じすら実はするのでありまして、財政的にはそれが負担になるとの御批判は当らないという感じを私は持っております。
  17. 青木正

    国務大臣青木正君) 明年度地方財政計画につきましては、先ほど申し上げた通りでありまして、私どもは率直に明年度計画は窮屈な点は認めますが、しかし、ただいま大蔵大臣も申しておりましたように、公共事業につきましても、国の事業をやると同時に、地方も同じように伸ばすということは、事務量から見ましても、そう一度にはできませんので、今回は、もっぱら国の施策関連する事業に自然に重点が置かれていくだろうということを考えるのであります。なおまた単独事業につきましても、三十二年度から三十三年度の伸びを今度急に減らしたではないかというお話でありましたが、三十二年度から三十三年度に伸びた額はそのままにして置いて、その上に御承知のように六、七十億ふえたということでありますので、単独事業の伸びた率が三十二年度から三十三年度まではよかったのでありますが、すでに三十三年度に相当伸ばしておるその上に、今回の六、七十億の伸びということでありますので、私は、一方において国の関係施策公共事業があり、これとあわせてこの程度の単独事業ということで地方行政水準の維持というものは確保できる、かように考えておるのであります。しかし、窮屈な点もあろうと思いますので、これは予算の執行の過程におきまして、なおその点は十、分注意いたしまして、できるだけ御協力申し上げまして、公共事業の返上ということがないようにやって参りたいと思います。
  18. 占部秀男

    占部秀男君 大臣の言われた財源措置、先ほど言われた問題については、私は確かに異論がある。たとえば交付税率の問題についても一%引き上げております。また、軽油引取税その他の問題があって百十億ぐらいの問題は国が措置をされておる。同じ制度改正によって地方税の減収が百一億、国の減税に伴うところの入場譲与税その他で十九億、百二十億ぐらい減っておる。ふえておるところが減って、とんとんになる。しかも今度の同じ制度改正による国の減税に伴うところの地方減収分百五億については、何ら措置がされていない。また、公債の面については確かに地方債をふやしたと言うけれども、五十五億ふやしたその中の一般補助事業については、五億しか見ていない。しかもこの五億というものは、建設大臣よく御存じ通り、この地方負担分に対する地方債の充当率をずっと減らしているんですよ。たしかそうなっておったと思う。あれを三十三年度と同じようにすれば、もう二十億よけい出さなければ地方債の財源というものはできてこないんです。今度は一般補助事業については五億ふやしておると言いますけれども、逆に十五億減っておるという勘定に、私たちの立場からいえば、なってくる。しかしそういう問題については時間がないそうでありますから、私はこれ以上申し上げませんが、問題の中心は私は佐藤さんにあると思う。実は青木大臣でも建設大臣でももっとふやしたいような顔をしておるけれども、佐藤さんがおられるので、これができないというのが率直にいえばその内容じゃないかと思う。そこであなたの御答弁の中に、県単事業と国の事業というものは、これは切り離すということはおかしいじゃないか、こういうふうに言われるが、私はそういう意味合いで言っておるのではないのであります。県や市でやっていることは、国の補助事業であろうが、知事が施行しているんだから県の仕事である、私の言っていることはそうでなくて、今のやり方によって地方に非常にアンバランスが出てきておる、この問題をどうするか。これがいわゆる地方行政水準の引き下げ、低下という形で現われているということを言っておるんです。一つ建設大臣に今の問題についてお伺いしたいんですが、たとえば道路の問題を、私数字をこんなにたくさん持っておるんですけれども、時間がないから申しませんが、概念的に申し上げますけれども地方道路というものは今日非常に荒れておる。というのは、国の国道関係やなんかに集中されてきておって、国道関係等がよくなればよくなるほど、地方道路、特に市町村の道路、末端の道路というものは非常に荒れておる、こういうような状態のところへ、今日のこの国の予算地方財政計画では、地方末端の道路というものは今日よりもより以上よくはならない、私はそう思う。維持補修費も増加されていない。百十五億の国の道路計画の、例の補助計画にしたところで、市町村等はわずかに三億、こういうような状態で、非常にアンバランスがあるし、また、今後大きくなってきておる、こういうこと自体が地方のいわゆる行政水準を荒廃させる、そうした現状であり、そうしたもとになっておると思う。こういう点について、あなたは道路政策というものは国道政策だけなのか、それとも国全体の道路政策とすれば、国道もよくしなければならない、これは私は決してやっちゃいけないとは言わない、県道も市町村道も、県や市の仕事というものは日常生活に直結する福祉的な仕事、福祉的な事業なんです。そういうような意味合いからいったら、市町村道もやはりよくする、こういうバランスのとれた政策こそ国のほんとうの道路政策であると私は思う。ところがそうなっていないと私は思う。そういう点についてあなたのお答えをいただきたいし、私が佐藤さんに言ったこともそういうような意味合いから言っておることを御了解願いたい。もし反駁されるなら、幾らでもお聞きいたします。
  19. 遠藤三郎

    国務大臣(遠藤三郎君) 道路政策の点から申しますと、国道だけをやっていくという考え方は間違いであるこキは御指摘通りであります。国道も県道も、さらに地方道も、均衡のとれた改修をやっていくことは当然であります。五ヵ年計画におきましても、地方の単独事業としてやるべき道路の分畠は、大体千九百億程度に見積っておるのであります。今回の財政計画にお去まして、だいぶ苦しくはなっておりますけれども、私ども自治庁当局ともいろいろこまかく打ち合せて参りまして、二の事業ができないようなことにはならぬようにということを、深く頭に入れて計画を立てておるわけでございます。今後もこの点については、十分留意をしまして、単独事業ができて参りますように努力をしていきたいと思います。
  20. 占部秀男

    占部秀男君 特にこの際、その問題に関連して自治庁長官に申し上げたいことは、これはきのうも同僚田中議員の質問に対して、今度の軽油引取税の穴というものを、これを県単事業の方にしわ寄せをされるであろう、これはやむを得ない、こういう形でお答えになっておられる、そうなると、今度は国の施策に伴うところの道路の部門はいいけれども、県単事業は、今まででも七十五億の中に私はたしか二十億近い金額ではなかったかと思うが、県市の単独事業に対するあれが出ておる。十五億を抜きとってしまっては、ほとんど残らないという形が出ておる。今年の地方の道路関係は、県道にしろ、市町村にしろ、現状以上に出ないという形に、これは少し機械的な言い方かもしれないけれども、なってくる、こういう点を追及したいけれども、時間がないから言ってもしょうがないが、そういう点については、もっと一つ何らかの形の考え方をしてもらわなければ困るのです。そこで私は質問をしただけでは問題が解決するわけではないのでありますから、実は御相談があるのであります。それは、当面こういうような形は、これは道路だけの問題ではない、実はきようは文教施設の問題についても、厚生関係の問題についても、いろいろの問題について皆さんにこれをずっとお伺いしたいのですが、時間がないからできないというので、やむを得ず道路を一つの例として出したのです。そこで、ちょっと佐藤大臣一つ伺いしたいのでありますが、臨時特例法の問題を、再建団体に対するあれを延長してもらうわけにはいかないかということと、もう一つは、交付公債の利子というものを当面免除してもらう、交付公債の方は、今年はたしか四十億になっておると思いますし、それから臨特の問題は、これは言うまでもなく直轄事業を除いて、これは五十五億ですか、たしか影響があると思うのですが、せめてこのくらいは何とかしてやらなければ、地方予算の返上をせざるを得ないと、公共事業の返上をせざるを得ない、そういうところに必ず追い込まれてくると思うのでありますが、そういう点についてはいかがですか。
  21. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 交付公債の利子免除については、昨日もお答えいたしましたが、これは本来地方分担金は現金で支払うべきものでありまして、それを特に交付公債の形でやっておりますので、この利子はいわゆる延滞利息的なものでございますから、他の振り合い上やめるわけにはいきません。  次に、臨特法廷長め問題でございますが、これは地方の財政状態が悪いので、特に臨特の制度を設けたのであります。今年はちょうど期限が到来するわけでありますが、地方並びに国の努力によりまして、よほど状態もよくなったから、本来時限法でありますので、時限が来ました際にこれは廃止する。しかし、道路についてはこれを特にそのまま残しておくということを処置いたしておるのであります。  これでお答えが済んだのでありますが、ただ、私は先ほど来のお話で、ちょっと申し上げてみたいのですが、直轄事業とその補助事業の区分というものは、明確にこれまでが直轄で、これが補助ということになっておりません。従って、補助事業を最近直轄事業に変えてくれろという強い要望はございます。さらにまた、道路なら道路に関しましても、地方道と国道との区分というものが過去においてありましても、その後の交通情勢によりまして、県道が二級国道に編入されるとか、それぞれの処置がとられておる、この実情も十分一つ念頭に置かれまして、今回の予算措置などは、そうめちゃくちゃな無理なものではない、この点を御了承いただきたいと思います。
  22. 占部秀男

    占部秀男君 もう時間がないので、重ねて簡単にあれしますが、今お答えの中で、交付公債の問題については大臣の方の考え方と、同じ政府内でもまとまっていないと思うのですけれども、それは交付公債を出すというそもそも二十八、九年当時にさかのぼって考えなければならない。今大臣は現金を——きのう田中議員の質問に対してのお答えでもわざわざ現金払いをさせないで、そうしてこれに対しては余裕をつけてやったのだからというけれども、あれを作った当時の財政状態では、国の方から財政措置をしなければならなかったやつをせずに、この交付公債に肩がわりをしたのではないかとわれわれは思っておる。それから第二に、財政状態が悪いから臨特をやった、それはその通りであります。ただ僕の言うことは、財政状態が一時よりはよくなってきておるけれども、今の予算、この計画では返上する所が出てくるのではないか。返上したならやはり国の予算地方財政計画がずさんであったということに言われないとも限らないわけです。そこで、むしろこの際政府の方としては、逆に積極的に公共事業を実施させ、完全に遂行させるための臨特法というものを考える必要があるんじゃないか。今までのやつでは財政を救うというだけの形であった、これは言葉だけの問題じゃないのです。実態がそうなんだから、そういうことを私は考える必要があるのではないかということを言ったわけなんです。さらに補助事業を直轄にしてくれという要望があるというけれども、これもきのうも建設大臣は田中議員の質問に対して、返上はさせませんと、必ずやってみせますと言ったが、うちの田中君は、一年後にお会いしましょうと言ったけれども、私も一年後にお会いしましょうということを言わざるを得ないのです。今大臣考え方もそうです。直轄事業を要望しているというけれども、何が直轄事業を県や市が要望させているかということをもう少し究明してもらいたい。あの当時金がなくて仕事はできない、仕事はできないけれども、やらなければ知事市長というものはたたかれてしまう。そこで、当面は金が要らないけれども、利子だけでもって仕事ができる、河川その他いろいろな仕事ができる、それでこれに食らいつこうというので食らいついた。ところが今度はいよいよ去年から元利の支払いの時期に入ってきた、そうなると、今度は元利を支払わなければならない。今までは利子だけで済んだからぽんぽんぽんと私の方は直轄やってくれ、直轄やってくれと言ったけれども、これからは元利を支払わなくてはならなくなってきたから、そうあなたが考えているように甘く、直轄をそのままいただきますという考え方は大きな間違いなんです。その情勢の変化、県市町村の財政状態の変化、そうした客観的な変化を、少しは計算に入れて一つ答弁を願いたい。同時に、大蔵大臣にもそういうことを言いたいのです。しかし、この問題についてはもう私時間がないから、これで打ち切ります。  ただ最終的にもう一問だけ簡単ですから一つ質問をしたいことは、これは総理大臣にいてもらうと非常にいいことなんですけれども、第三の問題として、最近われわれ各地方を歩いていると、そうすると……。もう一つだけ忘れた、あまり時間をせかされるので忘れてしまったのだが、大臣に取りつけだけしておきたいのですが、これは今までの話は、国の予算面に出ている、地方財政計画に載っている問題です。ところが、地方財政計画の今年の中には載っていないけれども、三十五年以降大きくなる問題としては、私が言うまでもなく、今度の国の減税問題に伴うところの市町村の住民税、百十億ですか、この穴があくことになっている、現在のかような状態の中にこの穴があく。三十四年度だけではない、三十五年度もこれは大きな問題になってくる、この点については大臣としてはあらかじめどういうような措置をされる考え方を持っているか、これも地方はどうでもいいというので放っておくのかどうか、こういう点について、大蔵大臣も御答弁があったら御答弁願いたい。
  23. 青木正

    国務大臣青木正君) お話のように、国の所得税の減税に伴う市町村の住民税の問題、これは大きな問題であります。三十五年度の財政計画を立てるに当りましては、当然この点を考慮に入れなければならぬことはお話通りであります。ただ、今年度にその措置をなぜ考えなかったかということでありますが、私どもも、もちろん今回の予算編成に当りましても、十分その点は考慮いたしたのであります。しかし、御承知のように近く政府におきまして国税、地方税を、全体の財源配分等の関連におきまして税制調査会を設けることになっておりますので、いろろ御検討も願った上に、三十五年度の財政計画を立てる場合に、その減税について私どもも真剣に考慮して立てる、こういう考え方でございます。
  24. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ただいまの自治庁長官の答えでいいと思いますが、御承知のように減税をいたします場合には、必ず自然増収分を財源に充てておるのであります。地方におきましても相当の自然増収がございます。先ほど自然増収には一切触れておられませんが、国においての減税も、やはり自然増収をその財源にして減税をするわけでございます。三十五年度の地方財政編成に当りましては、十分収入、支出の関係をよく見て措置考えるつもりでございます。
  25. 占部秀男

    占部秀男君 どうも青木大臣の御答弁はいいのですが、これ時間がありませんから切ります。ただ、さっき続けた問題が一つあるのですが、それは各地を歩いてみると、知事選挙等では特にそうですが、どうも自民党の方の陣営から出ている話なんですけれども、社会党の知事をお蔵たちか入れるとこれから金が来ないぞ、自民党の知事を入れなければ政府の直轄してない金は出さないのだ、こういうようなことが相当宣伝されておる。これは宣伝ですから、私がここで云々ということは言うわけじゃないのです。われわれの方もそれに対する宣伝はしますけれども(笑声)、ただ問題は、一体そういうようなことが行われておるのかどうか、こういう点であります。私の知る限りにおいては、終戦前のどんぶり勘定の時代があったか何か、それは私知りませんけれども、終戦後は一応そうした補助事業その他の問題については、法律的な規定もあり、政令の問題もあり、補助対象の選定についても、やはり一つの基準というものがあるように私は考えるのです。同時に、一党の考え方によって県全体に対するもの、市全体に対するものがやられたら、ある県は自民党のあれだからよけいやるとか、こっちの県は社会党だからよけいにやらないのだとか、こういうことが今日の法治国の法律の中で行われておるとするならば、これは重大な問題です。そういうことはあり得ないと思うのですけれども一つ代表して、岸総理大臣に栃木県の問題も一つ聞きたいことがあるのだけれども、時間がないから聞きません。ただ代表して弟さんだから、なんだったら大蔵大臣実力者だから、言っていただいてもいいし、青木大臣でもけっこうでありますが、できれば一つ兄弟のよしみでお願いします。
  26. 青木正

    国務大臣青木正君) 申し上げるまでもなく、行政の執行に当りましてはあくまでも厳正、公正でなければならぬことは言うまでもないことであります。また御指摘のように、いろいろな国の施策につきましては、法令その他の規定もあることでありますので、私どもさようなことがあってはなりませんし、またないと確信いたしております。ただ、今日政党政治の時代でありますので、自然党派的ないろいろな問題もあろうと思うのでありますが、しかし、行政府として私どものやっておりますることは、あくまでも厳正、公正ということは言うまでもないのでありまして、万一それに反することがありましたら、私も十分事務当局にも注意する考えでおります。さらにいろいろお話もありましたが、何と申しましても今日国の施策地方といろいろ関連がありますので、どうしても自然にそういう声も出てくると思うのでありますが、しかし、関連があるからといって、私ども行政の公正を害するようなことは絶対につつしまなければなりませんことでありますので、その点は私どもないものと確信し、また、今後十分注意いたしたいと存じます。
  27. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 以上をもちまして、占部委員の質疑は終了いたしました。   —————————————
  28. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) ただいま委員の変更がございましたので、この際御報告いたします。  鶴見祐輔君、田中一君が辞任し、その補欠として岩沢忠恭君、戸叶武君が選任せられました。   —————————————
  29. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 次に、坂本昭君の質疑に入ることにいたします。    〔「大臣がそろっていません」「そんなことではだめです。」「経済企画庁長官を呼んで下さい」と呼ぶ者あり〕
  30. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 今連絡してすぐ入りますから……。  それでは次の質疑に入りたいと思います。坂本昭君の御登壇を願います。  この際、政府側に特に強く要望しておきますけれども大臣の御出席のないために、委員会の運営が円滑を欠いて、おくれるようなことは、政府として非常に御損なことですから(笑声)よく御注意を願いたいと思います。
  31. 坂本昭

    ○坂本昭君 最初に企画庁長官伺います。長期経済計画の中で、三十四年一度の雇用の増大と生活水準の向上をどういうふうに計画しておられますか。
  32. 世耕弘一

    国務大臣世耕弘一君) お答え申し上げます。  雇用増大についての問題であろうと思いますから、一応数字だけ申しますが、三十四年度の雇用増大の内訳は、大体総計で七十四万人と、こう踏んでおるのであります。そうして第一次産業におきまして、農業、林業、水産で二万人、第二次産業におきまして、公共事業関係が十八万、その他合計いたしまして、四十五万、なお第三次産業に対しましては、卸小売業、金融業、不動産業その他サービス業、合計いたしまして二十七万、で、前申しました四十五万の中には鉄鋼業、工業、製造業等も入っておるということを申し上げておきます。
  33. 坂本昭

    ○坂本昭君 今の公共事業の十八万の内訳を、もう少し説明して下さい。
  34. 世耕弘一

    国務大臣世耕弘一君) 第二次産業で、三十四年度の公共事業費が三十三年度に比べまして約四百億円の増加であります。これに伴いまして、雇用者の増加を約十八万に上ると推定しておる次第でございます。これは多くは公共事業に吸収されるものと、かように考えております。
  35. 坂本昭

    ○坂本昭君 生活水準の向上の説明がありません。
  36. 世耕弘一

    国務大臣世耕弘一君) 生活水準の向上についてのお尋ねでございますが、三十四年度におきましては、民間経済の成長が大体財政の適当な働きを加えることによりまして、前年度より実質五・五%の経済成長を見込んでおるわけであります。
  37. 坂本昭

    ○坂本昭君 もっと具体的に、低所得層の人たちに対しては、どういうふうな生活水準の向上を計画しておられますか。
  38. 世耕弘一

    国務大臣世耕弘一君) 具体的に申し上げます。前年度よりも実質的に五・五%程度の経済成長を見込んでおるのでありますが、同時に、国民所得も増加いたしまして、個人消費の比率が、減税や国民年金等の実施等によりまして、やはり全体として五・五%の上昇があるものと見込みまして、一人当りと見まして、消費水準で約三・九%程度の上昇が見込まれておるのであります。なお、国民生活の水準は、三十三年度に引き続き向上するものと期待できると思うのであります。さらに三十四年度予算として、生活水準向上に直接関係のする減税や社会保障の関係予算等の概要を説明すると、大体減税におきまして七百億円、政府は毎年のように減税を中心とする税制政策を行なってきたのでありますが、今回は特に所得税や事業税の軽減のことにつきまして、税負担の一般的な軽減をはかることを主眼といたしまして、平年度七百億円の減税を行う結果となつたわけであります。その結果、生活水準の向上に最も関係の深い所得税について見るに、三十四年度においては、給与所得者については年収三十万円程度、現行二十七万円程度でありますが、事業税の所得につきましては、年収二十三万九千円程度、現行は二十万五千円程度であります。また所得税を課せられないことになります所得税納税義務者は、八十六万減ということになっております。給与所得者減は六十二万人、事業所得者二十四万人となり、低所得層の生活水準に大いに寄与することができると、かように思うのであります。  なお社会保障の関係について申しますれば、三十四年度の社会保障の費用は総額約一千四百億円でありまして、三十三年度の一千二百億円に比しまして約二百億の増、一七%六の増加となるわけであります。そのうちに生活水準の向上に直接関係のあるおもなるものは、すなわち国民年金の百十億円を新たに計上して、老齢の援護年金等、障害援護年金及び母子援護年金、それぞれ四カ月分の給与を見込んで計上されておる次第であります。  次に、社会保障関係におきましては、国民健康保険助成金の増額等により、三十四年度において二百九十四億円が前年度に比しまして約六十八億円の増加となっております。その他生活保護関係並びに環境衛生関係等を織り込んで、相当国民の生活向上と福祉国家の使命を果すべく計上されておりますので、このような基本的な政策によりまして日本の生活向上が期待できると、かように考えておる次第でございます。
  39. 坂本昭

    ○坂本昭君 企画庁長官と労働大臣伺います。  今七十四万の説明がありましたが、三十三年度の六十七万の新しい雇用計画というものは実際に果されたのですか。われわれの知るところでは十一万五千人だけしか雇用されていない。説明していただきたい。
  40. 世耕弘一

    国務大臣世耕弘一君) 少し詳しくなりますが、お許しいただきたいと思います。  雇用者の産業別の見通しを申しますと、総数におきまして三十二年度が千九百二十六万人、三十三年度が千九百九十三万人、三十四年度が二千六十七万人の予想をいたしております。こういう計算から見ますというと、三十三年度並びに三十四年度は、三十三年度が六十七万、三十四年度は七十四万という数字が出てくるわけであります。  なお、第一次産業、第二次産業、第三次産業等を比較対照してみまするというと、第二次産業においては三十三年度は四十三万でありましたのが、四年度は四十五万、それから第三次は三十五万でありましたのが二十七万と、こういうふうになっております。一応御説明いたします。  なお詳しい内容については、御希望でございますれば政府委員からさらにこまかく御説明申し上げます。
  41. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 三十三年度六十七万、三十四年度七十四万、七十四万は計画でございますが、六十七万につきましては、実績でありますから、先ほど企画庁長官お話しになったようでありますが、十一万と御指摘になりましたのは、労働省で発行いたしております毎月勤労統計の人員増、あれで、御承知のように勤労統計に出て参りますのは全産業でありませんで、おもな産業をピック・アップいたしまして、その統計をとっている人員でございまして、六十七万というのは、今申し上げましたように、実績であります。
  42. 坂本昭

    ○坂本昭君 今の議論はだいぶ衆議院でやって、どうも水かけ論みたいであったので、これはもうきょうは聞きません、あともっと大事なことがありますから。  ところで、来年度は財政投融資が五千百九十八億と非常に拡大をして、さらに三十四年度の公共事業費等の建設の総事業費、これは三千四百四十六億になります。三十三年度に比べて八百二十九億事業費でいっておりますが、つまりプラス三二%、非常なこれは莫大な増加です。特に、ほかにまだ公団住宅だとかあるいは国鉄だとかあるいは電源開発、こういうようなものへの財政投融資の事業二千四百三十八億を加えると六千三百五十五億という巨大な総事業費というものが来年度計画されている。  そこで大蔵大臣伺いたいのですが、こういうふうな事業量の拡大の中で、国民生活の水準の引き上げを大蔵大臣は具体的にどういうふうに御考慮になられましたか。
  43. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 問題は、経済が成長いたして参りますと、国民の総所得がふえるということで、国民の生活の向上ということをねらっておるのでございます。
  44. 坂本昭

    ○坂本昭君 もっと具体的な考慮……。何もしなかったというわけですか。
  45. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ただいまおあげになりました公共事業費の中には、その他の実は土地買収等の費用がございますから、全部が就労関係というわけではございません。公共事業費の増では、先ほどお話いたしておりますように四百十八億円の増、これで十八万人の就労増を見込んでおります。しかし私はこういう公共事業計画を立てておりまして、資材の増大からあるいは雇用面から、あるいはまた総体が経済の成長ということに役立つということを考えておりますので、総体を後にしぼってみていかなければならぬと思っております。これはいわゆる経済の成長六・一とかあるいは六・五というものにふさわしいということでございまして、それが逆に、これが国民の総所得の伸びにやはり関係を持ってくるわけでございます。
  46. 坂本昭

    ○坂本昭君 どうもこれだけの膨大な計画をして、公共事業に十八万雇用される。それだけじゃ何も国民生活の水準が高まったことにはならない。現実に低所得層の人たちのふところがよくならなければ、生活の水準がよくなったということは言えません。  次は労働大臣に……。公共事業の拡大と失業対策、これはどういうふうに計画されておりますか。
  47. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 先ほどお話公共事業費と財政投融資等によって、新しく吸収増を二十万八千と政府は策定いたしておりまして、財政投融資増全部が二十万吸収されるというのではないことは御承知通りであります。つまり今年度は公共事業費と財政投融資計画を実現することによって、二十万八千人それだけが吸収増になる、こういう計画をいたしたわけであります。二十万八千、それから……失礼しました。その内訳を申し上げますと、公共事業が十七万九千、その他の財政投融資によって二万九千、合計二十万八千、こういうものを出しております。そこで失対事業のことでございますが、先ほど来お話のございましたように、実質鉱工業生産の伸びを五・五%と見て、昨年度の基準に比較いたしまして、やや完全失業者は下半期においては減っていく傾向を見られる。しかし大事をとって、やはり一応計画には六十万人という完全失業者というものを見込んでおる。そして失対事業予算計画いたしました。しかしながら昨年度よりも失対事業費はやや増額いたしておるので、大体この程度の計画で失対事業はまずまずやっていけるのではないかと、こういうふうに考えております。
  48. 坂本昭

    ○坂本昭君 どうも説明が非常に不十分なので、やむを得ませんから私の方から問いをして参ります。今度の日雇いの登録者を五十三万九千というふうにしておられます。これは昨年に比べて四%の増。たった四%の増と見積もられた算出の根拠はどこにありますか。
  49. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 非常に深い御研究お話でありますが、私がこれを読み上げますより政府委員から申し上げる方がいいと思いますが、いかがでございますか。
  50. 坂本昭

    ○坂本昭君 じゃあ今の点だけ説明して下さい。時間の関係なら私も要点だけ聞いておきます。
  51. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 御承知のように、昭和二十八年十月から三十年の二月と、大体今年度のものをとりますその前提の基準に、それをとりました。それの増加率を大体二十八年十月から二十九年九月の増加率を基礎にいたしまして、本年度、つまり三十四年度に吸収するべき人員、これを延べにして八百六十一万七千、これは御承知のような計算でこういう延べ日数を作りました。それを、そのうち民間事業等に就労されるもののうちから引きまして、それから公共事業は五十万三千、その他が十五万三千、こういうものを控除いたしまして、純粋にわれわれのやるべき失対による吸収人員を、一日平均は、つまり先ほど申し上げました延べ人員八百六十一万七千人から二百十六万五千人を引きまして、それを就労日数の二十五日で割りますと、二十五万八千という数字が出て参ります。これを基礎にして計算をしたわけでございます。
  52. 坂本昭

    ○坂本昭君 次に、今の民間事業の就労延べ数を百六十万、こういうふうに言っておられますが、これも前年度に比してプラス六%、六%の増と見込んでいますが、その六%増という一体その根拠はどこにありますか。
  53. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 先ほど申し上げましたように、鉱工業生産の実質の延びを五・五%と見ました。そういうことに基礎を置きまして、先ほど申し上げました前年度の基準に経済成長の伸びを勘案いたしまして、大体その程度のところが妥当ではないかと、しかし私どもは今の鉱工業の稼動率を見て参りますというと、下半期においては五・五、実質五・五の経済成長の伸びというものは、むしろ非常に堅実過ぎるというか、もう少しいくんではないかという見通しをもっておりますので、大体この程度に見ましたならば安全率をとった計算である、こう考えております。
  54. 坂本昭

    ○坂本昭君 さっき企画庁の長官は、公共事業に十八万人の雇用を吸収するという話しをしておられましたが、公共事業の方の就労の延べ数は今度五十万です。これは三十三年度に比して一〇%のプラスになっています。このプラス一〇%ということは先ほどの公共事業費の延べに比べると非常に少いのです。この一〇%の根拠はどこにありますか。
  55. 世耕弘一

    国務大臣世耕弘一君) 具体的な問題でございますから、政府委員からお答えを……。
  56. 大堀弘

    政府委員(大堀弘君) 公共事業費のそれぞれの部門につきまして、やはり雇用の吸収の高いもの低いもの、いろいろございますが、個別に割りまして、それを集積いたしますと、申し上げました十七万九千という数字が出て参るのでございます。
  57. 坂本昭

    ○坂本昭君 それで、五十万になるのはどうしてか、去年は四十六万、その四十六万を今度は五十万にしている、そのことと、あなたの方のさっきの十八万というのと、どんな関係がありますか。  委員長、弁答がうまくないというと、よけいしゃべらないといかんので、これは時間外の私語にして下さい。
  58. 大堀弘

    政府委員(大堀弘君) ただいまの五十万という数字でございますが、私どもの計算によりますと、六十七万四千が三十三年度でございまして、三十四年度が八十五万三千に相なります。差額十七万九千、こういうふうに見ておるわけです。
  59. 坂本昭

    ○坂本昭君 経済企画庁と労働省は、数がだいぶ違いますね。どこが計画しているのですか、労働大臣説明して下さい。
  60. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 私が先ほど申し上げました公共事業、昨年度は延べで四十五万七千、それに大体一・一%くらいをかけて、その程度の伸びということで、延べ人員五十万三千でございますから、一日にいたしますと二万人ということになります。この方が、もしこの方をもっと内輪に見て去年と同じとかりに仮定いたしますならば、失対の方でよけいにそれだけふやさなければならぬ、しかしながら先ほど申し上げましたような事情で、公共事業費に、御指摘のように相当金額を出しているのでありますから、これだけ堅実に見て、延べ五十万三千は妥当であろう、こういうことであります。一日にいたしますと、ちょうど二万人であります。
  61. 坂本昭

    ○坂本昭君 労働大臣伺いますけれども、企画庁との数がいろいろと食い違いがあるのじゃないかと思いますが、これはまたあとよく調べてからお尋ねいたします。  で、今度は失業者の多発地域、そういうものに対する対策は全然お考えになっていませんが、これはこれでよろしいのですか。
  62. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 失業者多発地帯につきましては、大体およそ見当のつくものもありますし、わが方だけで見当のつかないものもございます。たとえば駐留軍労務者が、あるいは駐留軍の計画によって突如、まあ突如でもありませんが、われわれの計画外に軍の計画で出て参ります。そういうものがございますものですから、前々は労働省だけで、また調達庁と一緒にやっておりましたけれども、これはやはり政府が総合的な計画を立てる必要があるということで、先年臨時措置法に基き、駐留軍労務者対策協議会というものを総理府に設けまして、政府全体としての総合的計画をやることにいたしております。従って、そこで行います事柄につきましては、それぞれの地域、たとえば多発地帯としてわれわれが指定をする場合には、御承知のように全額国庫負担の場合もありますし、それからまた、特にその地域に出て参りました失業者に対して、たとえば、今までの経験によって、企業組合を願い出るものは特別なことで許可をして生業が立ち行くように、と同時にまた、そういう地域では特にそこへ安定所の出張所を設けまして配置転換を助力するとか、あるいはまた総合職業補導所、そういうものの出先の訓練所を臨時にそこへ出しまして、そうしてそこで訓練をして他の方に振り向けるというふうなことをそれぞれ多発地帯によってはやることにいたしておりますが、他の駐留軍労務者以外の所でも、多発地帯に対しては特別にその地域においてはいろいろ国庫負担でやっておる場所もあることは、御承知通りであります。
  63. 坂本昭

    ○坂本昭君 大蔵大臣と労働大臣伺いますが、生活水準の引き上げの問題は、結局、賃金の問題になると思うのです。先ほど来経済成長の実質の伸びが五・五%ということをしばしば言われている。三十三年度の伸びと比べると、プラス八%になると思う。ところが、一般失対の賃金、これは、昭和三十二年から三百二円でとまっている。三十二年の十月一日に米価改訂で三百六円になっていますね。ところが、三十三年度も三十四年も三百六円の単価を使って失対賃金としている。国民所得も三十二年以来からいうと七%をこえている。従って、この最低所得層の賃金を三年も据え置くということは、私ははなはだけしからぬと思う。三十四年度の予算では、一般の失対の資材費は六十円を六十四円にしている。それから事務費は三十四円を三十七円に引き上げながら、三百六円は相変らず頭打ちにしている。一体ごの根拠は、どうしてこういうことをするのですか。大蔵大臣は生活水準を引き上げる意図が全然ないのじゃないか。
  64. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 御承知のように、賃金をきめます場合に、消費者物価指数がどうなっているかということが大きな基準になっております。今回も消費者物価指数はおおむね横ばいだということでございますので据え置いた次第でございます。
  65. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 大筋におきましては大蔵大臣のお考え通りでございますが、御承知のように、一般職種別賃金、いわゆるPWの改訂を怠っておるではないかというお話でございますが、ただいま、この前行われました三十二年のPWをそのまま採用している。そこで、現在はそのPWについて検討いたしております最中でありまして、これが決定いたしましたならば、やはりそれに基いてなんらかの措置を講ずる必要があるのでございますが、御承知のように、失対事業それから緊急失対等は、第八条に申しておりまする「同一の地域及び時期において同一職種に従事する労働者に通常支払われる賃金の額の百分の八十から九十までの額」と定められておるわけであります。従って、PWの最終的結論が出ましたならば、それぞれ相談をいたしまして、必要があれば改訂をしなければならぬと思っております。
  66. 坂本昭

    ○坂本昭君 大蔵大臣と労働大臣伺います。今の一般職種別賃金の三十二年の四月が三百五十二円。実際はこれは特別失対も臨時就労もプラス九%見ているのです。だから、今度の予算では、無技能者の臨就の賃金は三百八十八円、特別失対は三百七十八円、これはいいのですよ、私は。ところが、一般失対は、一般職種別賃金の今言われた八〇ないし九〇%で頭を押えてしまって、三百五十二円に対してわずか三百六円を三年間も据え置いている。いわば、最高賃金を規定することを急いでやめるべきではないか。例のむずかしい法律がありますね。政府に対する不正手段による支払請求の防止等に関する法律を廃止する法律の一部を改正すべきだと私思う。そうしなけりゃ、その意思が労働大臣になけりゃ、倉石さんはもう失対は三百六円けっこうだということになります。どうですか。
  67. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 今のようなお話についてしばしば御意見も拝聴し、われわれもいろいろ考えておるのでありますが、やはり今お読み聞けの長い名前の法律、ああいうので政府公共事業等に労務者を使います場合の基準にいたしますために、やはり何らかのものを基準を作らなきゃならない。それにはやはりPWがいちばん合理的であるということに現在はなっておりますが、したがって、そのこと自体について、さらに検討は進めて参りますけれども、PWの制度を今やめるという意思は政府にございません。ただしかし、ただいま申し上げましたような、また、御指摘になりましたように、いかにも事情が古くなっているではないか。全くその通りであります。したがって、PWの検討の結果が出ましたならば政府においても考慮をいたしたいと、こういうように考えております。
  68. 坂本昭

    ○坂本昭君 八〇%、九〇用を取りなさいということです。取ってしまったら上へ上がっていく。
  69. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) そういう法律の改正については、国会の皆さん方ともよくまた御相談をいたしまして、今のような点についてPWの改訂等のある場合においては、十分ひとつ検討してみたいと思っております。
  70. 坂本昭

    ○坂本昭君 厚生大臣伺います。今ちょうど低所得層の賃金問題が出ていますが、それに直接関連するのは生活保護法の保護基準だと思います。その現行の基準がいつ決まったか、そうしてその金額の理論的な根拠を説明し、いただきたい。
  71. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) お答えいたします。もし足りないところがございましたら政府委員より答弁をいたさせます。生活扶助人員の伸びにつきましては、昭和三十三年の四月から八月までの平均人員……
  72. 坂本昭

    ○坂本昭君 基準ですよ。金額を言っているんです。人員じゃありません。
  73. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 生活上の基準の引き上げを三・一%に……
  74. 坂本昭

    ○坂本昭君 いや、そうじゃないんです。現在の基準の金額がいつ決まって、その根拠はどうか、ということです。
  75. 安田巖

    政府委員(安田巖君) お答えいたします。昭和三十二年の四月に最近は改訂いたしたのでございまして、その後米価改訂が一度ございまして、そのまま現在に至っておるわけでございます。この決め方につきましては、食費につきましては、御承知のように、栄養審議会の審議の結果に基きまして日本人の標準の必要カロリーをあげております。その他の費用につきましては、マーケット・バスケットによりまして、その他の生活実態等も調査したものを加味して現在の基準になっておるわけでございます。
  76. 坂本昭

    ○坂本昭君 厚生大臣伺います。どうもあまりあっさりした答弁で、これはどうもはなはだ不満ですけれども、まあ一応今のようなことでできておるので、実際この金額で一ぺん厚生大臣やってみられたらいいと思うんですね。たとえば、東京の一級地で四十二才の男をとりますと、飲食物費が千九百十円です。主食が九百二十五円、魚が四百三十五円、野菜が三百八十円、味噌が四十円、しょうゆが三十五円など。それからあと、ふろ賃四十五円、理髪六十円、そういったもの、それに光熱水料を加えて、独身なら二千八百円くれるわけです。その今の食費の千九百十円で一月お暮しになったら、おそらく厚生省のあの階段を大臣上ることができないんじゃないですか。で、つまり今の基準で憲法二十五条に示されたあの生活が十分できるか、そのことをお伺いしたいのです。で、三年前に労働科学研究所の方で研究されたときには、三年前の最低生存費は約四千五百円、それから最低生活費は約八千円、そういうふうなのが出たのです。現在の、だから生活保護の基準は少くとも現在の倍は要るんじゃないか、いかがですか。
  77. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) ただいまお述べになりましたような基準でございまして、これで完全に憲法に保障されておる最低生活の保障ができるかどうかというわけでございますが、現在のところ、御承知通り生活保護法の建前からいたしまするならば、あらゆる人間の努力をして、そしてそれができないという場合にのみ生活保護というものを設けまして、その基準によってやるわけでございます。で、これはまあ十分とは申せないかと思いますし、経済変動等によりまして今後努力をしなければならない点だとは考えております。ことに昭和二十七、八年ごろよりいたしますると、一般生活水準との比率におきましては、漸次この開きが実は開いてきておるようなわけでございまするので、今後私たちとしましては、努力をしなければならないことであるというふうには理解をいたしておるような次第でございます。
  78. 坂本昭

    ○坂本昭君 厚生大臣伺いますが、そういうふうな理由のもとに、ことしこの予算請求で七・五%の引き上げを厚生省計画された。そのときの根拠、それはどういうことでございますか。これは社会局長でも……。
  79. 安田巖

    政府委員(安田巖君) この前予算の要求をいたしましたのは、先ほど大臣から答弁がありました三二%の物価の変動によりますところの補正と申しますか、引き上げと、それから若干できれは内容を改善いたしたいという費用がその他のパーセントに当るわけであります。
  80. 坂本昭

    ○坂本昭君 大臣伺いますけれども、今の厚生省の七%を超える計画というものは、私はどうも理論的に間違っておるのじゃないかと思う。だから結局大蔵省に負けるんです。先ほど大蔵大臣が物価指数は横ばいだ。たしかにその遮りで、ちょっと統計によって違うのもありますけれども、二%くらいです。だからその物価だけでいけば、これは生活保護の基準を上げることはできない。これは厚生省が負けるのが当り前だ。やはり私は観点を変えて、これは検討を加える必要があるんじゃないか。少くとも国民総生産の伸びは八%になっている。国民所得も七%ふえている。それから個人の消費支出は一〇・五%ふえている。それから勤労所得の増加は一一・八尾になっている。従ってまた勤労所得者ほどまでいかなくても、せめてまあ一〇%くらいふやしても、全体の国民所得の増加とは見合った一つの並行したものができてくる。そこでこの最初の厚生省の原案の七・五%というものは生きてくると思う。厚生大臣そういうふうにお考えになられませんか。私はこれは切られた側の厚生大臣、それから切った方の大蔵大臣にもお伺いしたい。
  81. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) ただいま仰せの通り、聞いておりますと、やはり単に物価の変動だけでこれを見るということではいけないのではないかというふうに私は考えます。私、就任いたしましたときはすでに実はこの予算がきまっておりましたので、その間の事情をよく私知りませんけれども、しかしながら、別の観点からこの算定をいたさなければならないのではないかというふうには今考えておるわけでございますが、先ほどお答えを申し上げましたように、この昭和二十八年以来の推移を考えてみますると、その格差がだんだん開いてきておるということは事実でございまして、やはりそれは単に物価変動だけでこれをみるか、そうでないものを加味するかということに大きな問題が私はあると思うのでございまして、よくこの理由の通った、一つの生活保護基準というものを定めなければならないという御指摘に対しましては私同感でございます。
  82. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 御承知のように、今回はその保護基準全体でみますと二・六%、また生活扶助基準では三・一%、これを増加いたしたのでございます。いろいろ御意見があり、この増加はもっとふやせという御意見、これはもうしごくごもっともだと思います。私ども今回をもってこれで十分だとは思いませんが、まあ先ほど来いろいろ伺いますような議論、それらを取り入れてただいまのようにわずかずつでも改正、向上させていくということで努力いたしておる最中でございます。
  83. 坂本昭

    ○坂本昭君 厚生大臣。今厚生大臣が言われた通り日本の今日の生活は上と下との格差が非常にひどくなっている。従って、最初からこのきわめて低い保護基準を国民所得の増加並みには引き上げるべきだと思うのです。そうしなければ、幾ら国民の総生産がふえても、所得がふえても、いつまでも低所得者層は下へ沈澱しているということになってしまうのであります。特にひどいのは住宅問題です。生活保護に例をとりますと、住宅扶助は東京で五人以上の世帯でたった千百円です。それで、保護世帯は一般世帯のように独立家屋に住んでおるというのは非常に少いのです。間借りが多いのですね。普通の人よりも倍も間借りが多い。しかも、その間借りというのは一番値段が高いのです。ね。この公務員などは非常に安い家に住んでいるのですけれども、間借りというのが一番高くて東京都で一概千円ぐらいするでしょう。五人世帯だったらば三畳に住まなければならない。三千円以上です。これは、そうすると千百円の住宅扶助というのは全く意味がないと思うのです。もしほんとうに厚生大臣が低所得者層の住宅問題を考えるならば、これは建設省はだめですよ。ちょっとも考えてくれません。いいうちばかりしか考えない。家賃のこを考えない。厚生大臣の住宅政策をちょっと聞かしていただきたい。
  84. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) お答えをいたします。先ほど私この生活保護基準につきまして物価変動だけではなくて、その他の要素も考えなければならないということを申し上げたわけでございますが、そのことと、一面におきましてそういう努力をいたしますことも私どもの任務と心得ておるわけでありますが、しかしながら一面におきましては、生活保護法というものの建前から考えますると、生活を、あらゆる努力をやって、そうして、どうしてもできないところに、その方々に対してこれを守っていこうという考え方でございまするので、やはり、それは非常に最低な基準におさめられるべきものであるという一つの法自体としての建前は一つ御了承を願いたいと思うわけでございます。しかしながら、今仰せの通りにその生活保護法の適用を受けないボーダー・ライン層等につきましても、あるいはそれに転落しようとする人たちに対しては、その他の社会保障あるいは住宅政策あるいは失業対策というような政策によって漸次これを引き上げていかなければ、生活水準を引き上げていかなければならないというふうに考えるわけでございますが、今仰せの通り生活保護を受けておられる中において、それらの物価変動だけでなくて、その他の要素を考えると申しました意味は、確かに私は住宅政策というものも単に建設省でおやりになる住宅政策とともに、われわれの低所得者層に対する住宅政策というものがあってしかるべきだというふうに私は実は考えておるわけでございまして、これがもしほんとうに解決をされるとするならば、この生活保護基準の問題もこれによって幾分緩和されてくるのではなかろうかというふうに私は思います。諸外国の例等におきましても、これらの低所得者層に対しまして徹底したところの、何といいますか、政策がとられておることを聞いておりますし、現に私も外国においてとられているのを見て参っておるわけであります。そういうような考え方というものをやはり政策の中に織り込んでいくということが、やはり社会保障制度を取り入れた国としてはふさわしい旧だと私は言い得ると思うのです。まあそういうような一つの片りんと申しますか、今度のお願いしております予算の中におきまして、千二百戸の低所得者層に対する第二種公営住宅を盛り込んだということは、私はその一つの片りんだと私は考えております。これらの点につきましては建設省とよく打ち合せをいたしまして、これらの低所得者層に対する住宅政策をともどもにやって参りたいというふうに考えておるようなわけでございますが、基本的にはもう少し私も研究をさしていただきたいというふうに考えます。
  85. 高田なほ子

    高田なほ子君 関連して。今の厚生大臣の御答弁は非常にけっこうな御答弁です、内容は別問題として、第二種公営住宅が若干ふえておることは今御答弁通りであります。先にどの経済企画庁長官は——世耕大臣です——国民生活の向上の問題について御質問があったわけですが、それに対して環境衛生等の費用をふやして国民生活の向上をはかるのだという御答弁にあわせての問題になりますが、このスラム街というものの存在というものはまことに恥ずべき存在である。そしてまた少年犯罪はこのスラム街を温床として出発しているということ、このことはまことに大切な問題でありますが、しかしそれは一挙に解決はできないにしても、スラム街のあの不衛生な状態、不潔な状態、まことにこれはお気の毒きわまりないものでありますが、こういうような環境衛生というものの中で、スラム街が放置されているという問題が、おそらく坂本委員がこれから御質問になろうと思いますが、結核対策等についても十分重大な問題があると思うのです。そこで世耕大臣にお尋ねしたいことは環境を整備するためにかなりの思い切った予算が組まれたようなおっしゃり方をしておりますが、不良住宅地区の周辺の清掃を促進するための費用というのはわずかに千四百万円の補助きりされてない。今日のスラム街の周辺の環境衛生、こういうものを整備するためにわずか千四百万円の補助でどうしてこれができるかということに、非常に実は予算書を拝見をした際にも思いを深くしたのですが、この千四百万円の予算配分というのはどういう形でされるのか。これだけの予算でどれだけの実効をあげようとするのか、この二点についてお尋ねしたいわけです。質問の要旨を詳しく言うと、スラム街が多いという大都市等に、重点的にこの予算配分されるようになるのかどうかということに尽きると思うのですが、その点を承わらしていただきたい。
  86. 世耕弘一

    国務大臣世耕弘一君) お答えいたします。この問題はむしろ厚生大臣から直接お聞き願う方が便宜だと思いますから、よろしくお願いいたします。
  87. 安田巖

    政府委員(安田巖君) いまの千四百万円はこれは実は建設省の予算に入っておりますから建設省でお答えになるのが適当でございますが、私も関心を持っておりますので知っていることを申し上げたいと思います。それは、不良住宅地区改良法に基きまして、ただいま厚生大臣答弁されました千二百戸の低家賃の第二種公営住宅を作るにつきまして、清掃費として入っておるわけであります、ということは、それを他に移すにつきまして、跡を片づけて他に移れるようにするという費用が千四百万円、こういうふうに聞いております。ですから、いまの千二百戸に関連のある予算である、こういうことでございます。
  88. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 高田委員それでよろしゅうございますか。
  89. 高田なほ子

    高田なほ子君 わかりましたからいいです。
  90. 坂本昭

    ○坂本昭君 今社会局長が若干……、あまりそれほどほめるにも足らないと思うのですけれども、しかし社会局の生活課が今まで環境衛生も住宅問題もやっておったのですよ。ところがこのごろはだんだんやらなくなった。建設省がやるということでだんだんやらなくなってきた。これは厚生大臣しっかりやってもらいたいんです。特に先ほど大蔵大臣は物価指数が横ばいといわれましたけれども、住居費は昨年度から一〇%で非常に上っておるんです。だから千百円をいつまでもとどめておくということは、大蔵大臣の理論とも合いませんです。この点は少くとも改めなければなりません。  次に、医療扶助の問題をお尋ねいたしますが、厚生大臣は医療扶助の算定の今度の根拠になったものは何か。これで十分だと思っておられますか。私は足りないと思うのです。これで足りるかというのです。私は厚生大臣にお伺いしておるわけですよ。
  91. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 入院扶助の人員につきましては、入院外来別に算定いたしております。御承知通りでございます。  まず入院人員に対しましては、低所得層に対する結核検診の強化あるいは精神病床を中心とするベッドの増加を勘案をし、昭和十二年度平均実績人員を基礎にいたしまして、昭和三十三年度において八%、さらに昭和三十四年度におきまして二%、合計一〇%の増加を見込んでおります。  次に、外来人員につきましてはここ二、三年間は逐年減少しておりますので、昭和三十二年度実績人員を基礎といたしまして昭和三十三年度及び昭和三十四年度についてそれぞれ二・四%の減少率を見込んだのでございます。
  92. 坂本昭

    ○坂本昭君 ところが実際はですね、昭和三十三年の四月から九月にかけて、初め三十五万の医療扶助の対象が三十六万になり三十七万になり三十八万になり、最近の九月の統計では三十九万八千になっておる。それからまた入院も十四万であったのがこの九月には十六万になっておる。だから今の十六万三千四百二十八という数は、私は足りないと思うのです。絶対足りない。足りない結果どうなるかというと、引き締めをやるわけです。これは医療扶助だけではありません。生活保護の方も引き締めをやる。特に入院をしている患者さんに対する引き締めをやってくる。打ち切りをやる。これはもう去年の暮れくらいから行われてきておる。たとえば熊本県あたりでは新しく審査のやり直し、医療扶助の再審査を六百名についてやった。その中から現在おかゆを食べておるような患者さん、あるいは排膿のあるカリエスの患者さんに、一々退院しろと言ってきておる。これは熊本県だけではなくて愛媛県、群馬県、徳島県、鹿児島県というように、たくさんある。そういう実情を大臣は一体知っておられるか。少くとも局長まかせの答弁では困る。  けさの新聞にも、世田谷で女の人夫が生活保護を打ち切られたというので、病気の夫と四人の子供を置いてニコヨンに働きに行って、オート三輪にひかれて死んでしまったじゃないですか。これは生活保護を打ち切られたために一つの悲劇が出て来ておる。そういう打ち切りの事実がたくさんある。それをどう考えられておられますか。
  93. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 基本的にはそれらの方々をなんとかして、これは保護をしていかなければならないというふうに考えておるわけでございますが、お示しのように漸次この基準の引き締め等が行われているやに聞いておりまして、私も非常にこの点については関心を持っております。熊本に帰りました際におきましてもその点について実は私調査をいたしておりまして、わずかな経験ではございますけれども知っております。また気持の上においてはこの方々をどうするかというわけで事務当局と私今協力をいたしまして、いやしくも保護に値する人たちに対して、さようなことがあってはならないという気持で実はやっておることを申し上げたいと思います。
  94. 坂本昭

    ○坂本昭君 熊本に実際実例がございますから、大臣おひざ元ですから一つよく御研究をいただきたい。ことに一月二十二日に全国の民生部長会議をやって、そこで医療扶助の人員特に入院の人員についてはその増加がはなはだしい。だから福祉事務所における実施態勢、特に医療扶助に対する態勢の整備をはかり遺憾のないよう措置せられたいということを民生部長会議で指示しています。ことに一体実施態勢を整備するというのは、具体的にどういうことを言っておられるのですか。
  95. 安田巖

    政府委員(安田巖君) お答えいたします。福祉事務所等の人員の充実等につきましては坂本委員承知通りに、まだまだ不十分な点があるわけでございまして、そういったような関係から必ずしもこの生活保護の実施が適正に行われていない部分もあるわけでございます。そういう点で十分一つ気をつけなければならんというのが私ども考え方でございます。たまたま現在は医療が非常に増加をいたしておりまして、そして医療にはなかなか手が回らないという状況でございますので、私ども承わるところによりますというと、各病院等におきましても非常に元気な患者さんなんかがおられまして、病院長が私の方へそういう人を出してもらえないかということを言ってこられる方もあるわけでございます。そういうことは別といたしましても、私どもの実施態勢というのは、そういった点で人員その他の充実をはかれと、こういうことが主たる目的でございます。  それからなお立ちましたついでに、先ほど具体的におあげになりました例についてお答えいたしますけれども、世田谷で、保護を打ち切られたために失対人夫へ出て、これは交通事故でございますが、死亡したというお話。これは大へんお気の毒でございましたけれども、私どもの調べたところでは、これは別に生活保護を打ち切られたわけではないのでございまして、この人が日雇いで働きたいという希望がありましたので、あっせんをいたしたわけでございます。あっせんをいたしまして十日目ぐらい……。しかし福祉事務所は非常に慎重でございまして、続くかどうかということを見るために、試験期間としてわざわざそれを打ち切っておりません。ただしかし春になりますというと主人の軽いリューマチで寝ているのがだんだん働けるようになる、そして同時にその奥さんの方も落ちついて働けるようになればそういったようなことは当然問題になるとして話はしたことはあるかもしれません。事実はそういったことで打ち切りはいたしておりません。
  96. 坂本昭

    ○坂本昭君 大臣に、今医療扶助の問題が出ておりますが、その医療扶助の実情を、こまかく要りませんが、大臣のつかんでおられる点の説明をいただきたい。
  97. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 医療扶助の実施状況について見ますと、入院につきましては十六万四千七百五十人、外来につきましては二十三万四千百一人で、医療扶助費総額は二十三億円となっております。一件当りの平均点数は入院につきましては千百七十九点、外来につきましては百十四点となっております。入院患者を病種別に見ますと、約六六%が結核、二二%が精神となっております。外来患者について見ますと、約三〇%が結核となっております。
  98. 坂本昭

    ○坂本昭君 厚生大臣伺います。最近なぜ入院がふえてきたとお思いになられますか。入院患者のふえてきた理由。これは大臣ですよ。一番大事なことだもの、そんなむずかしいことを聞いていないですよ。
  99. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) やはりわれわれの厚生省の施策の中におきまして、早期診断の強化等の施策によりまして、潜在しておりました病人というものがだんだん顕在化してきた、つかめるようになってきた、治療を受けるようになってきた、こういうふりな観点から、かようにふえて参ったことだと思います。また二・回におきましては、われわれ医療保険制度の拡充と申しますか、国民皆保険が漸次惨透して参ったというようなことから漸次ふえて参ったというふうに思います。
  100. 坂本昭

    ○坂本昭君 厚生大臣伺います。どうも今の点大分議論がありますが、医療扶助の入院患者はその扶助を受けておる場合に完全に扶助されておるというふうに見ておられますか。
  101. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) まあ完全にして十分だというふうには考えませんけれども、今のところ医療扶助を受けておられる方々に対しては最低限の医療保障がなされているというふうに考えておるわけでございます。また一面におきましては、こういうような事情もあるかと思うのでございまして、たとえば、結核等につきましては、すでに結核菌が出なくなったような方でございましても、やはり長く診療を受けたいというような気持もこれはわからぬわけでもございませんので、その方々がなかなか出にくい実情にある。しかしながらわれわれの方から言いますと、すでに結核菌が出ておる人たちで、もっと入院をしてもらわなければならない人たちがある。こういう人たちの希望というものも非常にあるわけでございまして、まあこの辺のところに私たち非常にむずかしい問題があると思いますけれども、しかしながら、やはりいやしくも厚生省の責任におきまして医療扶助を行なっていきます限りにおきましては、その最低限というものは確保していかなければならないというふうに思っておるわけでございます。
  102. 坂本昭

    ○坂本昭君 実は大臣大事なことを知っておられないと思うのです。医療扶助で入って一部負担の自己負担をして、いるのが非常に多いのです。私の統計では八四・四%自己負担なんです。その月額は千円以下払っている人が三七%、二千円以下が五九%、これでは医療扶助ではありませんよ。さらに入院患者で社会保険の加入状態はどういうふうになっているか、御説明いただきたい。
  103. 安田巖

    政府委員(安田巖君) ちょっとお伺いいたしますけれども、社会保険というのは、一般の療養所に入っております患者のうちで、健康保険とかあるいは国民健康保険とかの加入者のことをお聞きになるのでございましょうか。それとも生活保護と関連して……。
  104. 坂本昭

    ○坂本昭君 医療扶助で入っている人でそれが健康保険と国民健康保険で入っているのがどのくらいいるかということです。
  105. 安田巖

    政府委員(安田巖君) わかりました。医療扶助を受けておりまして、これは主として国民健康保険が多いわけでございますけれども、大体医療扶助の人員の一割程度だというふうな私どもは推計をいたしております。
  106. 坂本昭

    ○坂本昭君 どうも厚生省のつかみ方が非常に不十分だと思うんですね。私の統計では二六%というのもあれば、五〇%、半分だというのもあるんです。一番大事な点をどうもつかんでおられない点、はなはだ遺憾だと思います。  次に厚生大臣に。医療保障の一番の問題点は結核です。結核対策について一つ御見解を伺いたい。
  107. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 結核対策は、まあ私どもが今日までやって参りました医療政策の中におきまして一番大きな問題でございますが、最近結核医療の目ざましい発展進歩によりまして、その死亡率は著しく低下をいたしましたことは御承知通りでございます。しかしながらなお患者の数というものは依然として減少を示しておりません。また結核医療費の総医療費に対する比率より見ましても、結核問題は社会保障の大きな私はやはり障害となっていると思うのでございまして、やはりこの所得保障をやる基礎条件といたしましては、医療保障というものを大いにやっていかなければならない。しかもその医療保障の根幹をなすものは最近やはり精神病だとか、あるいは成人病とかいうようなことも言われますけれども、やはり日本の実態から言うならば一結核というものが一番大きな問題であり、ウェートを持っていかなければならないというふうに私ども考えておるわけでございまして、私どもといたしましては、国民皆保険の達成等もあわせまして、医療保障政策の強化に努めておるわけでございます。その重点的な施策といたしまして、具体的に申し上げますると、これは、一般的に申し上げますると、やはり健康診断の強化でございまして、あるいは零細企業や勤労者、一般住民という方々にこれがやはり及んでいくという施策をとっていかなければならない。これを第一点に考えております。  第二点は、患者管理の強化でございます。これは、従来からの患者の登録制度の活用であります。登録患者につきまして、病状の把握、それに適しました療養指導を強化をしていくという考えでございます。  第三番目といたしまして、医療の普及でありまして、これにつきましては、現在の一般患者に対する公費負担による適正な医療の普及は、相当の効果を上げて参っておるのでございまするが、特に私どもが今回考えておりまするのは、濃厚感染源の患者に対する入所命令の措置が十分徹底しないうらみがございますので、今後は、その方面を強化いたして参りたいというふうに考えております。  また、以上の施策を進めて参るに当りましては、現在の保健所の能力も勘案しなければなりませんので、来年度におきましては、従来から相当の実績を上げており、さらに、これを高める能力のある全国の中で二百保健所を選定をいたしまして、その地区につきまして、命令入所患者の医療費の国庫扶助率を引き上げまして、患者検診費の国庫扶助を行い、積極的な助成のもとに、ただいま申し上げましたような施策をやっていきたいというふうに考えておるような次第でございます。
  108. 坂本昭

    ○坂本昭君 厚生大臣考え、一応いいんですけれども、二、三千人命令入所したって、これはもう大したことないですよ。それよりも、全部の結核患者さんに命令入所させるという、そういう大きな気持をお持ちになりませんか。
  109. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 気持の上においては、坂本委員と同感でございます。将来におきましては、これらのことにつきまして、拡充強化をしていかなきゃならないというふうに考えておるようなわけでございます。この結核施策につきましては、私は、やはり国がやります、あるいは保健所等において検診等を行います場合におきまして、特に重点をこの方面に持っていきたいと思うわけでございますが、ともすると、保健所あたりが、従来の、何といいますか、いろいろの権限によりまして、監督行政みたいな形になったうらみもないわけじゃございません。そういうようなうわさも聞くわけでございまして、やはり私は、これから社会保障を進めていく場合におきましては、これらの保健所がいわゆるソーシャル・サービスの最先端となりまして、そうして地元の御協力、特に一般医師との関係、あるいはまた、われわれの所管をいたしておりまする診療所あるいは病院等の御協力を得て、そしてともどもにこの結核対策に当っていかなきゃならないんじゃないか。つまり私は、今後の一つの医療保障といいますか、あるいは社会保障と申しますか、それらのものを充実していく一つの方向といたしましては、やはり公衆衛生行政というものが地域活動を通じて行われるというところに、私はこの健全なる施策国民の中に浸透するというふうに考えておりまして、私どもといたしましても、これらの地域に対しまして、自主的な活動を促す意味におきまして、これらの予算を、わずかなことではあまりしたけれども、これを計上いたしまして、実は御審議をわずらわしておるわけで、これも実はそのような意味があることを御了承を願いたいと思う次第でございます。
  110. 坂本昭

    ○坂本昭君 厚生省の結核対策にしても、あるいは住宅対策にしても、基金がないことないんです。この前も、厚生年金の積立金のことで、大蔵大臣にいろいろ聞きましたが、どうも大蔵大臣、少し考えがはっきりしませんからお尋ねしますが、資金運用部の特別会計ですね。資金の構成はどうなっておりますか、御承知でございますはずですが。
  111. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) これは、お尋ねになる坂本さんよく御存じ通りでありまして、郵便貯金や各種保険積立金その他からできております。
  112. 坂本昭

    ○坂本昭君 その預託金が九九%なんですね。その預託金の今の郵便貯金、それから年金、厚生保険の特別会計、ここで私、一つ注意申し上げたいのは、この預託金の中には二種類のもの一がある。一つは貯金であり、一つは保険料の積立金。これは、なるほど預託金という名前にすると同じですけれども、これは内容的には、私は性質が違うと思うんです。というのは、厚生保険の特別会計の積立金と、それからもう一つ、失業保険の特別会計の積立金、これの扱いは、郵便貯金のように一般の人がみずから求めて出して貯金をするものと同じように扱うということは、これは間違っておると思うんです。少くともその使用に当って、先般も大臣言われました通り、資金運用部資金法によると公共の利益の増進に寄与せしめ、確実かつ有利な方法で運用をはからなければならないというのですが、その際、私は、公共の利益という言葉は、これは大企業に融資するということではなくて、元来は保険料なんですから、やはり出したところの労働者の利益というところに公共の利益という一番の根本的なものがあると思うんです。そうすれば、こういう一とで、たとえば低所得層の住宅問題九なを解決する道がある。現在、三十三年度を調べますと、厚生保険特別会計の預託金が二千三百九十三億のうち、住宅金融公庫に百四十一億、それから住宅公団に八十五億、勤労者厚生資金に七十五億、こういうふうに出ていますが、出方が非常に足りない。私は、もっと低所得層住宅に使えるような仕組みにどうしてもしなければならぬと思うんですが、その点、大蔵大臣と厚生大臣の御意図を明確に伺いたい。
  113. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 三十四年度の二千七百数十億円、こういうものの使い方でございますが、基本的な考え方で、財政投融資資金として運用すねことには御賛成がいただけるだろうと思いますが、先ほど来おあげになりますように、これは大企業ばかりでなくて、中小企業、農林漁業、あるいは住宅関係、あるいは国債、社債ですか、公社債等も引き受けておりますので、そういう面で、どの金がどこへ行ったということは、ただいま申し上げかねますが、ただ一面、こういうような厚生年金であるとかいうようなものにかりますと、やはり還元融資を考えていかなければなりません。その還元融資が、ただいま言われるような点にぴんといくの、だろうと思うのであります。その金額も、わずかずつではございますが、それぞれの年において考慮が払われておりまして、今回は昨年よりも十億ふやして八十五億、こういう還元融資をいたしております。病院だとか住宅だとか、あるいは療養施設だとか、こういうものにそういうものが使われるように実はいたしておるのでございます。資金的に十分ありますれば、もっと出してもいいのでございますが、実は非常に困っておりますので、御了承願います。
  114. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 厚生年金にいたしましても、あるいは国民年金にいたしましても、相当の保険料を納められた方々の資金の蓄積が行われるわけでありまして、私といたしましては、これらのものが直接零細な保険料を納められた方々に還元していくということは、私は当然の姿だと思います。その直接間接にそれが資金が還元されていくという考え方につきましては、基本的に私は坂本委員と同感でございまして、むしろ先ほど来御指摘がありましたように、われわれの方で住宅政策等をやるとすれば、低所得者層に対するところの資金源としましてこれらのものを活用していきたいという気持を私は持っておるわけでございます。またその他の療養所であるとかあるいは病院というようなものもあわせ含めて考えていかなければならないと思うわけでございますが、何せこの額が膨大であればあるだけに、また一面においてはこれが経済成長に役立つ。そしてそれが回り回って、またそれらの保険料を納められた方々に帰って、いくという、この基本的な大蔵大臣等の  お考え方もあるわけでございまして、また、国民年金等につきましては、経済の変動に対するところの調整資金としまして、大いに私は今後活用の道があると思うわけでございます。一面にそれらの経済活動、あるいは経済成長、あるいは景気変動というものに対処すると同時に、一面においては直接的に還元融資の道を開くべきであるという考え方を私は持っております。
  115. 坂本昭

    ○坂本昭君 最後に一言。社会保障が果す大きな役割というものは、これは所得の再分配だと思います。これは、この前も大蔵大臣にお尋ねしましたが、どうもその辺、あまり考えが明確でなくて、何か理解が全然ないのではないかというようなおそれも感ずるのですが、一千万の現在厚生年金保険に入っている人たちから保険料を取って、現在二千八百億もたまっている。その二千八百億というものを、これはいわば大蔵大臣を初め独占しているんですよ。これを十分に保険料を出した労働者のために、還元という言葉は私は非常にまずいと思うのです。還元というなまぬるいことでなくて、もっと積極的な使用をすべきだと思う。そこで最後に、大蔵大臣と厚生大臣に……。今、厚生大臣はほぼ大蔵大臣にかわるような御意見を言われたのですね。もう厚生大臣と同じことを言わないで、もう一ぺん、所得の再分配ということに対して大蔵大臣としてこの一つ見解を……。いやしくもアメリカのルーズベルトのニュー・ディールの時代から二十数年たっております。日本の大蔵大臣も、たとえ保守党の人といえども、明確な考えを持っていただきたい。そういう意味で、大蔵大臣に一言、そういう経済的な効果について御説明をいただきたい。それから厚生大臣は、そういう理論的なことは、むしろ大蔵大臣も知っておられるのだが、今の還元融資というようなことでは、私は解決できないと思います。もっと積極的な御意図を表明して下さい。それで私の質問を、お答えを聞いた上で終ります。
  116. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 運用部資金の総体は、一兆五千億ぐらいになるだろうと思います。ただいま言われる厚生年金としては、その一八%前後程度でございます。私どもは、この運用部資金を運用いたします場合に、まあ社会党は社会党的な御説明をなさいまして、あるいは所得の再分配というような表現をなさるようでございますが、私どもは、どこまでも総体の経済を成長させ、総体の収入を上げると同時に生活を向上させ、豊かな生活のできるようにする。これが政治の目標だと考えている。そういう場合に、自力によって十分自立また生活の向上を期せられない者に対して、国が全体の立場において、その責任をもって各種の社会保障制度を推進していくと、こういう実は考え方をいたしておるのであります。そういう観点に立って、ただいまの厚生年金なりあるいはその他の預託金の運用に実は当っておるのであります。その点では、先ほど来申し上げますように、どこまでも基金の性質から見まして安全また利益があり、しかも公共の福祉、これに役立つ、こういうことにこれを使っていく。この公共の福祉というのは、直接生活扶助なりあるいは低所得者に対する施策としてやることも一つの方法でしょうが、冒頭に申しますように、経済そのものが発展していく、そうして総体が拡大し、伸びていく、こういう方向に役立つように運営をいたすつもりでございます。
  117. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 総体として経済の成長をはかり、あるいは生活水準を向上させるということが、これは大蔵大臣の御任務かと思いますし、しかし、それでなおかつ転落するところのボーダー・ライン層あるいは最低生活を営むことができない人たちというものを受け持つのがわれわれ厚生省の任務なりと実は心得ておるわけでございます。それがなおかつ、今日の状況においては二百四十万世帯もあるというこの現実に実は当面し、また、これと取り組んでいるようなわけでございますが、しかし私は、これは、われわれの施策によっても、これらのボーダーライン層あるいは生活保護法を受けておられる方々を漸次保障していくということができるものと実は信頼をしておるわけでございます。坂本委員も御承知通り、まず第一には、公的扶助でございます生活保護者を対象としてこれを取り上げて、生活基準等の引き上げをやっていくということが第一でございましょう。第二といたしましては、所得保障のもっと基本的な条件といたしましては、医療保障という意味におきまして、厚生年金等のいわゆる社会保障、さらに国民皆保険という、こういう医療保障の整備拡充ということが第二点かと思うわけでございますが、これが進みまして、今日社会保障の中心でございます国民年金というものを今度打ち立てたわけでございますが、さらに進みますならば、それを取り囲みますところの環境公衆衛生というものをも含めて、私たちは社会保障の一環なりというふうに考えておりまして、その方面につきましても案施していきたいというふうに考えておるわけでございますが、そのような夢物語みたいなことをして、それじゃ二百四十万の世帯を解消できるかというふうにお思いになるかとも思いまするけれども、イギリスにおきましては、御承知通り、一九三六年におきまして、ローントリーが調査をいたしております。その中におきまするヨーク・シティにおきましては、すでに同じ方式におきまして貧乏調査をやったわけでございますが、その際一七・何%とかの貧乏世帯があったのが、一九五〇年、つまりいろいろの所得保障であります年金その他が整備をいたしまして、一九四六年か七年からビバーリッジ案が施行されたが、一九五〇年において、これら貧乏世帯が、同じような調査によりますと、一・七%に減っているというこの現実というものは、私たち保守党が今後ほんとうに施策をよくするならば、これらの貧乏世帯というものをこの世の中から追放していくという一つの光を私は与えてくれたものと考えるわけでございまして、わが岸内閣におきましても、貧乏対策を掲げておりますゆえんのものは、実はここにあると思いまして、その意味において国民年金法案提出したようなわけでございまするから、一つ御了承をいただきたいと思う次第でございます。
  118. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 関連して……。きょう坂本委員が質問の前半で、雇用の問題について質問したわけですが、これは大蔵大臣答弁を求めませんが、聞いておいてもらいたい。  雇用の問題が重大であることは申すまでもないと思う。具体的には職安行政ですが、職業安定所があり、支所があり、分室がある。私の記憶では、分室は全国で百二ぐらいあると思うのですが、その分室に行ってみると、一人かあるいは三人程度しか職員がいない。しかも、その庁舎費並びに人件費の大部分は自治体負担になっている。たとえば、保険金をもらう場合には、隣の町まで労働者はバス賃、汽車賃を使っていかなければ支給を受けられない、こういうような状況ですね。これは非常に気の毒な国民階層に対するサービス行政機関であるから、私は、もう少し充実すべきである、こう思うのですが、来年度はどういうふうにやられるつもりか、労働大臣答弁を求めるとともに、それと関連して、ちようど厚生大臣と経済企画庁長官がおりますが、雇用の問題は人口問題と関連するわけで、先般の総括質問の段階に、両大臣はこういうことを答弁された。経済企画庁長官は、日本の経済力の助長のためには産児制限云々ということがあるけれども、労働力は大事だから、産児制限なんということじゃだめだという意味答弁をしている。ところが、厚生大臣は、日本の労働人口がふえることは、これは重大な問題だというような答弁をしている。一体岸内閣は、家族計画というものを指導、奨励、助長する方針なのかどうなのか。世はまさに結婚ブームで、影響するところは大きいから、統一見解を示しておきなさい。
  119. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 安定行政について、非常に理解あるお話を承わりまして、ありがとうございました。御指摘のように、労働省の仕事の中でも、職安行政の前線の人たちは実によく働いてくれるのでありますが、従来、御指摘のように、安定所の建物を初め諸般の設備が非常におくれておりまして、そこで、昨年に比べまして、本年はこれをどうしても増強しなくちゃならぬ。有沢教授を会長にいたします雇用審議会等においても、現実にただいま御指摘のようなことについて研究をいたした答申を受けまして、これに基きまして、われわれは、昨年度予算において、大体安定業務のただいまお話にもありましたような事柄については約四千五、六百万円しかなかったと思いますが、本年度は約その四倍、二億一千万円余を計上いたしまして、老朽の建物を直したり、それからまた、安定所に来られる方々の便宜をはかるように、同時にまた、安定所の事務当局があらゆる求人の開拓のために努力をされるようなために、人員もたしか百六十余名増員をいたしました。で、安定業務について十分な理解を実際に雇用してくれる人々が持ってくれるということが大事でありますから、そういう点についても、やはりある程度の設備をしっかりいたしませんと、実際に雇用に役立つような方面からの求人の便を与えてあげることはできないのでありますから、来年度の予算においても、もちろん政府においては、御指摘のような点において、一番労働政策の中でも重点的に考えまして、徐々に国民全般の御期待に沿うようにいたしたいと思います。  ただいま分室等のお話がありましたけれども、こういうものにつきましては、最近各地で、やはり自分のところへ、たとい分室でもいいから置いてもらって、そしてできるだけ安定業務を広げてもらいたいという要望が各地にありまして、そういう所に、予算関係もありますので、徐々に御便宜をはかるような施設を始めたものでありますから、今御指摘のようなこともございます。そこで、今申し上げましたように、来年度においては、さらにこの規模を拡大して、できるだけ安定業務が一般の御便宜になるように拡大いたして参りたいと、政府はそういうふうに考えております。
  120. 世耕弘一

    国務大臣世耕弘一君) お答えいたします。  人口問題は、非常に政治上から見ても重大な問題であります。でありますから、人口問題を経済的に扱うものと、それからまた、一面人道的に扱うものと、この二つを分けて考えなくちゃならぬと私は思うのであります。この点に関して御説明申しますと長くなりますから、ただこの二つの観点から考慮したいと、かように思います。
  121. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) ただいま経済企画庁長官からお述べになりました通りでございまして、この問題は非常に重要な問題をはらんでおると思いましてお答えをいたしておるわけでございますが、われわれといたしましても、バース・コントロールというものがいかにむずかしいかということは、これは矢島先生もおそらく御経験になることであって、と申しますのは、結局、人間と申すものは、安易に流れる傾向を持っておるわけでございまして、ともすると、母体を保護するという観点に立ってやらなければならないのが、そうでなくて、人工中絶法が施行されまして、これを誤まって運用されておる向きも実は非常にあると思います。そのためにかえって母体をそこなっておる。その考え方基礎には、やはりまだ日本の封建的な、いわゆる男性中心の考え方があるかと思うわけでございまして、これらの点につきましては、よく家族計画ということが一般の民衆の方々にわかってもらわなければならぬ。女の方々だけにわかってもらうだけでなくて、男の方々に対してもよくわかっていただかなければならないし、自制心をも涵養していただかなければならないわけでありまして、そういう意味の指導をわれわれ厚生省は相勤めておるようなわけでございまして、このことは、簡単なようでございますけれども、私は非常に大きな問題だと思いますし、将来の働く人口等を考えた場合において、ある程度の家族計画ということは必要であるということでございます。しかしながら、また一面におきましては、人口というもの、あるいはこれは民族の発展ということから考えて参りました場合において、その人口構成というものが非常に重大であって、それがアンバランスになるということは、これはたとえばフランスの例をとりましてもうかがわれることでございまして、フランスにおきましては、むしろこの出生を促進をするというような政策をとっておる。その意味におきまして、国民年金も、家族手当を中心として組まれておるというようなことも考え合せなければならない。われわれ厚生省といたしましては、量の問題というよりも、今日におきましては、質的な改善というように家族計画の方向を考えまして、指導をいたしておるような次第でございます。
  122. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) これで坂本委員の質疑は終了いたしました。  午後三時に再開することとして、新品心休憩いたします。    午後一時五十七分休憩    —————・—————    午後三時二十二分開会
  123. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 委員会を再開いたします。  次は、高田なほ子君の質疑に入りたいと存じます。高田なほ子君。
  124. 高田なほ子

    高田なほ子君 昨日の質問の保留してある部分について御答弁をいただきたいと思うのですが、その第一点は、憲法と条約との関係について、このことは一応、政府として見解がはっきりしておるわけでありますが、九十八条の関連で、条約と憲法、どちらが優先するものであるのか、この点を再度お尋ねをしておきたいと思います。
  125. 林修三

    政府委員(林修三君) この点は先日も実はお答えしたつもりでございますが、条約と憲法との関係につきましては、学説上二説あることはお説の通りであると思います。しかし私どもといたしましては、少くとも政府としましては、条約を結びます際に、特にそれが二国間条約の場合には、その条約が憲法に違反するようなものでないような配意のもとにやるべきである、かように考えております。
  126. 高田なほ子

    高田なほ子君 赤城官房長官は、先日来、当委員会において、在日米軍が原水爆を持ち、在日米軍がいかなる武力行動をするとも、このことは何ら憲法に規定がない、こういうような御答弁ですが、これはいかなる法的根拠に基いておっしゃったのか、この点を明らかにしていただきたい。
  127. 赤城宗徳

    政府委員(赤城宗徳君) ただいま御指摘になったことは総理の方から御答弁したことでありますので、法制局長官からお答えさせます。
  128. 高田なほ子

    高田なほ子君 官房長官、もう一度あなたのお考えをお聞かせ願いたい、私きのう総理の御答弁で、ふに落ちない点があるのです。それでわざわざあなたにおいでを願ったわけですから。
  129. 赤城宗徳

    政府委員(赤城宗徳君) 日本の自衛隊等に関する問題は、当然、日本国憲法あるいは自衛隊法によって規定されるということでありますが、在日米軍の問題、これは条約に基いて条約の定めるところによって規定されていますが、それでいくことだ、こういうふうな意味考えております。日本の憲法によって直接在日米軍の装備等について規定することではなくて、条約の上の問題である、こういうふうに考えております。
  130. 高田なほ子

    高田なほ子君 重ねてお尋ねを申し上げます。これは主権と外国軍隊の配備権の問題になる。もしあなたの説を許すならば、日本の国内、すなわちわが国の主権の及ぶ範囲内で、ある外国軍隊、この軍隊がいかなる装備を持ち、いかなる武力行動をしようとも、このことは何ら日本の主権にとって関係のないという結論になってくるのではないか、このことは明らかに、主権が、ある意味において拘束されるという結論が出るのではないか、このことについてあなたはどういうふうにお考えになっていますか、赤城官房長官
  131. 赤城宗徳

    政府委員(赤城宗徳君) 法律上の問題でありますので、法制局長官から御答弁いたさせます。
  132. 林修三

    政府委員(林修三君) その一国が他国の軍隊のその駐留を認めるかどうかということは、まさにその国の意思に基いてきまることでございます。他国の軍隊が自由勝手に他国の領土に駐留するということは、これはもちろんできない、条約上の根拠がなければもちろん駐留は認められません。で、そういう条約を結ぶことは、まさに今の日米間で申せば、日本の意思とそれに対する米軍の意思、この両方の主権国の意思が合致して、そういう駐留は認められておるわけであります。
  133. 高田なほ子

    高田なほ子君 それでありますから、当然、駐留軍を日本に配備することはわれわれは反対ですが、そういう条約を結ぶ場合には、憲法に規定する主権を侵さないという建前をとるのが正しいのではないか、こういう見解に私は落ちるのではないかと思いますが、この点はどうですか。
  134. 林修三

    政府委員(林修三君) 主権という問題は、実は憲法に規定するというよりは、独立国は主権を持つということは、これは当然くることでございます。もちろん主権国としての日本の意思に基いて米国は駐留しておるわけでございます。従いまして、日本の主権がそれによって侵されたということが何らないわけでございます。なお私は、御質問の趣旨かと思いますので、あわせてお答えいたしますが、駐留米軍について日本の憲法は関知せざるところであるということの意味は、御承知通りに、憲法第九条というものは、これは明らかに明文を見ましても、日本国の国際紛争解決の手段としての戦争の放棄、あるいは武力の行使の放棄、あるいは第二項は、日本の自衛隊と申しますか、自衛力についての保持を禁止される限度、あるいは保持を許される限度、あるいは交戦権を認めるか認めないか、こういう規定でございます。そのほかの憲法の規定にも、もちろん今の規定は、従いまして外国の駐留軍に関することは規定しておらない、その他の規定を見ましても、外国の駐留軍についての憲法の規制の及ぶような規定はどこにも憲法にはございません。従いまして、駐留軍を日本に置くことを認めるかどうかは、主権国たる日本の意思に基いて、その条約に基いているわけでございまして、その行動をどう規制するかということは、憲法には何ら規定がない、もっぱらそれは条約上の問題であるということは、前から申し上げておるごとでございます。
  135. 高田なほ子

    高田なほ子君 従って、条約が締結された場合でも、憲法に違反するような行動が認められる場合には、この条約は違法であるという結論が出てくるのではないですか。
  136. 林修三

    政府委員(林修三君) 条約は、もちろん日本立場といたしましては、日本態度といたしましては、日本の憲法に合致するような態度で結ぶべきことは当然でございます。しかし先ほどからお話しの点は、多少私どもと前提が違っておるわけでございまして、つまり駐留米軍の行動について、日本の憲法の何らかの規制が及ぶという御前提で御質問だと存じますが、私どもは、日本の憲法には駐留米軍の行動について規制しておる規定はない、従って、それについて憲法違反と、違反でないという問題は起らない、つまり駐留軍を置くこと自身は、これは主権国である日本の意思に基いておりますが、その置いた駐留米軍が条約の目的に従って行動する以上は、それ以外に憲法がそれを規制しておるものはない、こういうのが私ども考えでございます。
  137. 高田なほ子

    高田なほ子君 どうも今の説明わかりません。もう一ぺん、私、ごくしろうとですから、もっとよくわかるように……。
  138. 林修三

    政府委員(林修三君) 憲法九条は、御承知通りに、日本の自衛権あるいは日本の自衛隊に関する規定でございます。自衛隊というのは、固有名詞ではございません。いわゆる自衛力という問題の規定でございます。これはつまり、駐留米軍が日本にいた場合に、その駐留米軍が交戦権がないとか、あるいは駐留米軍の兵力は陸海空軍その他の戦力であってはならないとか、そういうことは憲法九条はどこにも規定しておらないのであります。駐留米軍については、そのほかにも憲法の規定はございませんから、結局、憲法上駐留米軍がいかなる行動をとるべきか、とってはならないかということについては、憲法上何らの規制がないということがまず第一の前提でございます。従いまして、日本としては、もちろん主権国として、その意思に基いてアメリカと安全保障条約を結び、米軍の駐留を認めるわけであります。これはもちろん主権国としての日本の意思に基いて認めておるわけでございます。その米軍の行動について、何らかの制約が憲法上あるのではないかという御質問と私は拝聴しましたので、そういうことは今の憲法の規定にはないと、もしもそれを規制する方法があるとすれば、これは条約上に規定する以外に方法はないと、そういうことを先ほどから申し上げておるわけであります。
  139. 高田なほ子

    高田なほ子君 しからば、これもくどいことでありますが、これは赤城長官に。その理屈が成り立つならば、原水爆を持ち込まないという条約上の規定というものは、当然これはっけられるべき性質のものでないか、特に原水爆とわが日本の主権というのは論議の中で明らかになった通りなんでありますから、これは条約の中に盛り込まれることが正しいのではないか、こういう理屈が成り立つ、どうですか。
  140. 赤城宗徳

    政府委員(赤城宗徳君) 先ほどから法制局長官答弁しておりますように、憲法上は在日米軍の装備等に規制することはありませんが、条約に培いて規制あるいは制限されることは、これはあると思います。そこで、今お寺ねの原水爆の持ち込みに関してでありますが、それについては、政策上の問題として持ち込まない、持ち込まさないということははっきりしていますが、これを条約の中に入れるかどうかという問題も、これは条約締結の一つのテーマだと思います。しかし、その問題につきましては、日本の憲法の趣旨に基いて条約は締結されなければなりませんから、原水爆は日本の憲法の趣旨に基いて条約が締結されれば持ち込まない、持ち込まさないと、こういうことに相なろうと思いますが、なお、具体的に条約の中にそれを入れるか入れないかという問題につきましては、協議というようなことで、これを規制することもできるかと思います。
  141. 高田なほ子

    高田なほ子君 ちょっと今の答弁もはっきりしないわけですが、駐留軍をこれは無制限に認めるというわけではないこと、今はっきりした。駐留軍を制限するものは条約なんだと、こう言われる。しからば、原水爆の問題は、これほど国民が脅威を感じ、憲法にも恐怖からわれわれが解放されることがうたってあるんですから、こういう重大な問題こそ、条約の中に入れなければならないと思うんですが。
  142. 赤城宗徳

    政府委員(赤城宗徳君) この点は外務大臣からもたびたび御答弁申し上げておるのでありますが、条約の中の協議事項の中で、これを持ち込まさないと、こういうことにしたい。ですから、条約の本文では協議事項として、政策上事実上持ち込まさないと、こういうふうにやろうかという考えであります。
  143. 高田なほ子

    高田なほ子君 協議事項というのは、国際法的にどういう効果を持つものですか。
  144. 林修三

    政府委員(林修三君) 条約の形式につきましては、外務大臣からお答えすべきことかと思いますが、条約の本文に書く、あるいは議定書に書く、あるいは付属文書に書く、いろいろ書き方はございます。しかし、いずれにいたしましても、両国間の合意であれば、もちろん国際法的なりっぱなそれは約束でございます。お互いにそれを履行する義務があるわけでございます。で、協議というのは、また書き方にもよりますが、たとえば、装備の重大な変更については事前に協議をするということを書いた場合においては、当然協議なくして重大な装備の変更はお互いの義務としてできないと、こういうふうな効果があるものと考えております。
  145. 高田なほ子

    高田なほ子君 協定と協議事項とはどういうふうに違うんですか。
  146. 林修三

    政府委員(林修三君) 協定と申しますのは、今の御趣旨、ちょっと私もわかりかねたところがございますが、たとえば、二国間あるいは三国間の合意の形式が、あるいは条約と言い、あるいは協約と言い、あるいは協定というふうないろいろな形をとるわけでございます。そういう形、形式で、まず名前が分れるということ、それからもう一つは、今お尋ねの点は、あるいは行政協定というようなお話の趣旨かと思いますが、つまり行政府間限りでそれをきめるか、あるいは国家間できめるかという問題も一つあるわけでございます。これは外務大臣からお答えすべきことかと思いますが、今の協議事項云々の問題は、おそらく、いわゆる行政協定というようなものでなくて、条約と一体をなすようなものの形に持っていかれるのではないかと私ども推察しております。
  147. 高田なほ子

    高田なほ子君 あと続けますが、赤城官房長官はお急ぎのようですから……。先日来の御発言は大へん国際的にも私影響を持ってきていると思う。原水爆の使用はできる、持ち込みもできる、そうして相手国を爆撃することも攻撃することも在日米軍はできるんだというこの発言、これは大へん国際的な影響を持つものだと思いますが、あなた、どういうふうに考えられますか。
  148. 赤城宗徳

    政府委員(赤城宗徳君) 原水爆の関係は、憲法の解釈上しばしば政府答弁していることなんでありますが、その解釈上、原水爆について外国駐留軍の規制が日本の憲法ではできないということそのことからは、よく理解してもらえば国際的な影響は少いだろうと思います。しかし、そのこと自体から誤解を生ずれば、これは相当国際的の影響はあると思いますが、憲法の解釈上の問題だということがはっきりすれば、それほど誤解はないのじゃないか、こう思います。それからまた、外国の基地を日本の存亡に関する場合には爆撃することもあり得るかもしらんというような答弁につきましては、これは仮定の問題で、非常にそういう質問が出てきたので、そういうことも万々一の場合にはあり得るものということでありますが、そういうことは考えておりませんことですから、まあ戦術、戦略の問題の仮定の問題ということで答弁をしておりますので、その点もよく政府の意思がわかれば、国際的にもそう影響はないと、こういうふうに考えております。
  149. 高田なほ子

    高田なほ子君 赤城官房長官は、私どもが質疑の中で、まくらを高くして眠ることのできないような不安感を覚えている討論がかわされているにもかかわらず、あなたは記者団に向って、おれは委員会で眠っていたんだよというようなことを言われたそうですが、これはほんとうですか。そうだとすれば、私は今の御答弁に重ねてお伺いしなければならない点がある。どうなんです。
  150. 赤城宗徳

    政府委員(赤城宗徳君) 私は昨日眠っていたわけではありませんが、目をつぶってよく聞き入っておったんでありますが、鈴木さんからか、矢嶋さんからか、官房長官、眠っちゃだめだ、目をあいて聞けと言われたので、そのことを新聞記者に伝えただけであります。決して御質問をおろそかにしておったとか、眠っておったとかいうことを言ったわけではありませんから、御了承願います。
  151. 高田なほ子

    高田なほ子君 そういう御答弁ですが、でありますから、社会党が昨日来の質問に対して、あたかも社会党が、仮想敵国に対してどうあるべきかというような意味で質問をしているのだというような、あなたは感覚を一部記者の方に漏らされたようですが、これはとんでもないことです。あくまでも私どもは、日本国内にも武力を持たない、また、平和共存でいかなければならない、こういうような観点からの質問で、決してわれわれは仮想敵国を目標にして質問なんかしたのじゃないということを一言ここで弁明しておきます。お忙しいそうですからどうぞ。
  152. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 関連質問です。官房長官伺います。  わが日本社会党の代表が、安保条約をかりに改定する場合には、原水爆を国内に持ち込ませないために、条約の中に明記すべきであるという主張に対して、政府は、協議事項で事足りると主張する。このことは、非核武装宣言に賛成をしないこのことと一脈相通ずるものがあると考えるが、どうか。と同時に、岸内閣総理大臣は、昨年十二月十九日、参議院内閣委員会において、原水爆を国内に持ち込まれるのではないかという国民の不安があるから、それを解消するために、安保条約を改定する場合には、これを条約上に明記したいと答弁したのにもかかわらず、その後、協議事項で事足りると主張を改めていることは、アメリカ側が条約に明記することを拒否し、協議事項にとめようというアメリカ側の主張に、日本政府が屈服しようとしているのかどうか、その経緯を明確にお答え願いたい。
  153. 赤城宗徳

    政府委員(赤城宗徳君) 核武装、核兵器の原水爆等の持ち込みを条約上に規定すべきだという社会党の主張に対して、協議事項の中でそういう方法をとりたいということは、非核武装宣言と関連があるかどうか、こういうことでありますが、国会において核武装をしないように、製造、使用等を禁止するという決議は、すでに昨年もなされております。なおそのほかに、非核武装宣言というようなことで、国会の決議をしようということは両党の間で話し合っております。話し合っておりますが、字句の点その他について一致しない点がありますので、そのままになっているようです。これはその問題とは関係がありません。  第二に、総理が昨年答弁されたことを、私、承知しておりませんけれども、今、安保条約の改定でアメリカ側と外務当局が、外務大臣のもとで折衝いたしておりますが、アメリカ側でそういう規定を安保条約の中に入れてはいけない、こういうことを言っておるわけではありませんで、協議事項としてこれを進めていった方が適当だといいますか、そういうような考え方で話をしておるので、アメリカ側からそれを入れてはいけなというような話があるということは聞いておりません。
  154. 高田なほ子

    高田なほ子君 協議事項の方が適当だという理由は、これは説明を聞いてもわからない。先ほど言うように、主権を拘束させないため、国内における在日米軍の駐留権を認め、この行動は自由で、勝手なことをされては困るので、これを制限するものは条約だ。そうしたら、その条約は協議事項とどう違うのかと言ったら、大体、条約と同じようなものだという説明があったわけです。そうだとすれば、当然、原水爆等は入れないというような問題は、条約の中に入れてもいいという結論が出てくるではありませんか。なぜ協議事項が適当であるという答弁をされるのですか。
  155. 赤城宗徳

    政府委員(赤城宗徳君) 交渉中のことでありまして、その交渉の経過、内容等について、私も詳しく存じておりませんので、機会を見て外務大臣の方にお尋ね願えばけっこうだと思います。
  156. 高田なほ子

    高田なほ子君 大へん重要な問題を質問していますが、このことについて関知しないということです。私は政府のこの重要な問題に対してお互いに意見が統一されていないということについて、非常に国民は不幸だという気がする。  次に、林法制局長官。これは、協定と条約との性格を今聞いているわけであります。協定は条約とどういう違いを持っているのかという質問をしているのであります。お答え願います。
  157. 林修三

    政府委員(林修三君) これは、条約と協定という違いいかんという御質問でございますので、ちょっと一口にお答えいたしにくいのでございますが、つまり形式面から申しますと、たとえば安全保障条約とか、日米原子力協定というように、ある国際約束は条約という名前を使い、ある国際約束は協定という名前を使っておるものがございます。そのほかに協約とか、あるいは、何とか憲章とか、そういうようないろいろ名前を使っておるものがございます。こういう場合において、たとえば日米安全保障条約と、いわゆる日米原子力協定と、どこが違うかと仰せられますと、もちろん名前が違うというだけでございまして、いわゆる憲法の面から見ました国会の承認を経べき条約としての、そういう意味の条約からいえば、どちらもそういう意味の条約でございます。名前が違うだけで、条約と協定には、その面においては差がございません。ただ、一般の例でいえば、比較的重要な国際約束には、条約という名前を用い、それほどでない二国間等の約束には協定という名前を使っておる、そういうような区別があるわけであります。しかし、いずれにいたしましても、二国間あるいは数カ国間の約束で、お互いの国の権利義務を拘束するようなものは、これはいずれにしても、憲法七十三条でいう条約には間違いございませんで、これは名前が条約といい、協定といっても、その間に差はございません。ただもう一つの問題は、いわゆる日米安全保障条約第三条にいう、ああいう意味の行政府間の協定あるいは行政協定というものと条約との違いいかんという、こういう御質問があるかと思いますので、その点もお答えいたしますが、これはいわゆる安保条約では、アメリカの駐留軍の配備を規律する条件行政協定できめるということを書いてございます。あの場合の行政協定はつまり行政府間限り、つまり日本の行政府と米国の行政府の間で結んで、あれ自身を国会の承認を経る必要がないと、そういう趣旨であの安全保障条約第三条ができておる。ああいう場合における行政協定というのは多少普通の意味の条約とは性質が違う、かように申すべきであろうと思います。
  158. 高田なほ子

    高田なほ子君 国際的な行政協定の場合の国際的な権利義務という面においては条約と何ら効果の違いがないということになりますか、効果の問題です。
  159. 林修三

    政府委員(林修三君) これは御承知通りに、国家間の約束であれば、これは条約という名前を使い、あるいは協定という名前を使っても、お互いの国をお互いが拘束するわけでございます。これは当然に条約と言っても協定と言っても同じことでございます。ただいわゆる行政協定、行政府間限りで、今の行政協定は多少例が違いますが、たとえばお互いに文化使節を交換しようとか、あるいは為替の手続はこういうふうにしようとか、あるいはお互いの貿易上の輸出入の数量はこの程度にしようという、行政府でできる事項について行政府同士できめるものについて、いろいろ協定という名前を使っているものはございます。これはいわゆる行政府限りでやったもの、もちろん国内法の範囲でやっているものでございまして、これはいわゆる行政府を拘束するものであって、国家間の約束ではございません。しかし、今の行政協定の問題でございますが、安全保障条約の行政協定の問題は、これはあの安保条約の当時にいろいろ御説明した通りに、あの行政協定に書いた事項は、大部分は本来国家間の条約できめるべき事項でございます。それをあの第三条において、特にこれを行政協定によってきめるということを書いたことによって、国会の事前承認を経てあの行政協定が結ばれた、つまり第三冬についての事前承認を経て、この事前承認のもとに行政府間で行政協定が結ばれた、こういうような格好になっております。従いまして、あの行政協定は、お互いの私は国を拘束する条約的な性質を持っておるものと、かように考えます。ただ、それを結んだ当事者は国家間ではなくて、もう少し段階の低い行政府同士でございますから、あの安保条約の場合の行政協定は、内容から申せば、あるいは効果から申せば、条約と大体同じものだと考えていいと思います。
  160. 高田なほ子

    高田なほ子君 こうなって参りますと、国を拘束する条約的な性格のもの、このものについては当然憲法の規定に従って国会の批准を経なければならないということになるのではないか、批准との関係はどうですか。
  161. 林修三

    政府委員(林修三君) 憲法七十三冬は、御承知通りに、条約については事前に国会の承認を経る、時宜によっては事後においてその承認を得てもよろしいということになっております。ちょっと私ども専門的に申しますと、批准というのは実は内閣の所掌事項でございまして、国会の御承認を願うのは、その批准をしてもいいかどうか売いうことについての御承認を願っているわけでございます。憲法七十三条はそういう意味の承認をお願いするわけであります。もちろん国家間の約束であれば、名前が条約と言い、協定と言おうとも、もちろん国会の御承認を事前あるいは事後において得べきものであることは、これは当然でございます。ただ、これはよけいなことかもわかりませんが、安保条約第三条の行政協定につきましては、先ほど御説明申し上げました通りに、安保条約第三条で、駐留米軍の配備を規律する条件行政協定できめる、こういう規定について国会の承認を経ているので、あれに基いて行政府限りでやった。これはもちろん御承知通り国会の承認を得ておりませんけれども、しかしあの効力は条約と同じものである、かようにわれわれは考えております。
  162. 高田なほ子

    高田なほ子君 防衛庁長官にお尋ねしますが、一昨日来のあなたの御発言は非常に国民の感情に不安を沸き立たせている。従いまして、今の御説明をあなた承わっておったと思いますが、在日米軍、これの配備、またこれの戦力、こういう問題等につきましては、憲法の趣旨を尊重して、そうして今後この協議事項にゆだねるという答弁であったのですが、いろいろ尋ねていくうちに、この協議事項というのは条約に含まれるのではないかという今お話があったわけです。あなたは防衛庁長官として、原水爆の持ち込み、それからわが主権を侵すがごとき武力行使等については、厳に協議出項、これを単に協議事項とするのではなくて、明確に条約の中に持ち込むような御努力を私はなさらなければいけないと思うのですが、これは政治的な質問でありますから、あなたの御意思を承わりたい。
  163. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。政治的な問題につきましては、岸総理が政府を代表し、また私ども核兵器は持ち込まない、かように明確に弁答をいたしておりますので、その他の条約上の問題については外務大臣が、さいぜん来、法制局長官お話しのごとくに、協議によって解決されることと存じます。
  164. 林修三

    政府委員(林修三君) 今、高田委員の御質問を伺っておりますと、ちょっと私の意思が、言わんとするところが御理解願えなかったところがあるのじゃないかということをちょっと危惧いたしましたので補足いたしておきます。つまり協議事項ということは、条約か、あるいはその付属文書に、こういう場合にはお互いに協議をしましょう、事前に協議をしましょうという条文がおそらく入るだろうという意味で、協議事項は条約の中に入るだろうと申したわけりであまして、その具体的な協議をすることがいわゆる条約である。あるいは何と申しますか、国会の承認を経べき国際約束である、そういう意味で申したのじゃございませんので、つまり包括的に、こういう場合には事前協議をするというような条項が、条約か、あるいはそれに付属する文書に、これは外務大臣がお答えになった通りに、おそらく入るだろうということを申し上げた。具体的な協議自身は、これはいわゆる行政府がやるものであって、これについて国会の一々御承認を得るというようなことは、これはないかと思います。
  165. 高田なほ子

    高田なほ子君 重ねてお尋ねしますが、これは林法制局長官にお尋ねします。国家間を拘束するような条約、これは安保条約はそういう性格を持っているものだと言われた。このような性格を持つ協定、この協定を結ぶことについて、国会の事後の承認を受けてもいいということについては、私は憲法が条約に優先するという建前からいうと、はなはだおかしいのじゃないか。当然、国家の主権を拘束するような権利義務関係の生じる協定であっても、当然、憲法優先の原則に立つならば、これは国会の承認を経なければならないのではないか、事前に。単にこれを協議事項に回すということでは済まされないのではないか、こういうふうにとれますが、どうですか。
  166. 林修三

    政府委員(林修三君) 御承知通りに、憲法は条約の承認につきましては事前に、または時宜により事後にと書いているわけでございます。これを文字通り読めば、普通は事前に承認を得べきであるけれども、場合によって——非常に急ぐという場合を予想していると思いますが、そういう場合には、事宜によっては事後でもよろしいということを言っているわけでございまして、これはすべての条約について、憲法の文句からだけ申せば、すべての条約についてこの規定は当てはまるわけでございます。ただ、政治論といたしまして、非常に政治的に重要な条約については、もちろんできるだけ事前に国会の御承認を得た上で条約を締結すべきである、これはもちろん政治論としては成り立つことでございまして、そういうことはなるべく事後承認なんというものはすべきでない、こういうことはもちろん言い得るわけでございます。  それで、憲法と条約との関係につきましては、これは事前に御承認を得ようと、事後に御承認を得ようと、これはもう政府としては憲法違反の条約を結ぶべきものではない、そういう態度はもちろん一貫すべきものでございます。政府は、政府としての憲法解釈に従って、あるいはこの条約が日本にとって憲法違反のものにならないような努力をするのは、これは当然の義務でございまして、そういう場合には、事前に御承認を得るか、事後に御承認を得るかということにつきましては、これは憲法の文句の通りに、憲法論として私は考えなくちゃいけない。政治論としては、もちろん政治的に重要な条約、経済的に重要な条約は事前承認を経るのが、私はもう建前だと思います。で、御承知通りに、新憲法になりましてからもうずいぶん数多くの条約の御承認を得ておりますが、事後承認をお願いした例は、私ども承知している例では、二、三回しかございません。すべて事前承認をお願いしているはずでございます。
  167. 高田なほ子

    高田なほ子君 またこれは蒸し返す時間もないのですが、安保条約はこの再軍備を別に義務づけてはおらない。しかし、行政協定やMSA協定は明らかに日本の再軍備を明確に義務づけてきている。命令している。こういうような拘束力の重大なものが、立法府にあるわれわれの事前承認を得なかったという、こういうことについて、あなたの今の御説明とはなはだ違うようなことになりますが、この点、どうですか。
  168. 林修三

    政府委員(林修三君) 安全保障条約あるいはいわゆるMSA協定、あるいは、あれはたしか二十八年だったと思いますが、日米相互援助協定、これはどちらももちろん日本にとっていわゆる再軍備を義務づけたものではないとわれわれは思っております。ないと思っておりますし、日本の負うべき義務は日本の憲法の範囲内のものだと思っておりますが、御承知通り、この二つの条約とも事前承認を得ておりまして、決してこれは事後承認を得たものではございません。  行政協定につきましては、行政協定はこれは安保条約の付属文書でございまして、先ほどからお話しいたしました通り行政協定を行政府限りで結んでもよろしい、こういう安保条約第三条の規定に基いて締結したものでございまして、これは国会の御承認を得ておりませんが、これは安保条約第三条の効力としてそういうことになったわけでございます。
  169. 高田なほ子

    高田なほ子君 今の答弁は的はずれですよ。時間がありませんから、また後日に譲ります。  次に、法務大臣にお尋ねします。皇太子殿下の御慶事を前にして、恩赦の問題がいろいろ論議されております。報道で知る限りにおいては、大体原案の作成が終ったのではないかというような報道でありますが、現在法務省としてこの恩赦に関する事務というのはどの程度に進んでいるものなのか、この点をお伺いします。
  170. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 皇太子殿下の御成婚に関連いたしまして、恩赦を適当な規模で行いたいというふうに考えまして、その規模、内容等につきまして鋭意検討中でございます。これにつきましては、先般当委員会で総理大臣からもお答えいたしました通りでございますが、十分にいろいろの点から検討いたしまして、結論を出したいと思っておりますが、まだその具体的な成案を得るに至っておりません。
  171. 高田なほ子

    高田なほ子君 御成婚も間近ですが、だいぶ仕事がおそいように思いますが、結論はいつごろお出しになるつもりですか。
  172. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) この恩赦につきましては、事柄が非常に大切なことでもございますし、その事の性質から申しましても、前例等を見ましても、御慶事の当日ぎりぎりのところで決定をするというのが慣行になっておりますので、今回におきましても、これが適当な方法であろうと考えております。
  173. 高田なほ子

    高田なほ子君 法務大臣にこの恩赦の基本的な理念について、私、一応尋ねておきたい。恩賜とか恩賞、恩給、これはみな、恩という字は、今まで皇室につながるものであったわけなんです。国民全体が特別に皇室から恩恵を受けていると、こういう思想、これはまあ皇室中心の思想になるわけですが、しかし、今日は新憲法のもとでは、皇室中心という、いわゆる政治的の中心ではないわけのことは御承知通り。恩ということと減刑という問題は、直接関係がないように私ども考えられる。従って、国の慶事とこの恩赦、減刑というものが結びつけられることの可否については、かなりいろいろ議論があるようです。で、法務大臣としては、国の慶事と結びつける特殊な減刑というものの制度、この制度についてどういう見解をお持ちになっていらっしゃるか。
  174. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) ただいまのお尋ねの点につきましては、御承知のように、新憲法ができましてから恩赦法が制定されておるわけでございまして、この恩赦法に基きまして、政府としては、その規定された範囲内、あるいは授権された範囲内におきまして、何と申しますか、刑事政策的な立場においてこれを実行するというのが、現行の建前であり、また気持であると考えておるわけでございまして、当面の措置といたしましては、これでやっていくことが妥当であると考えます。  それから、ただいま御指摘通りでございまして、これは旧憲法当時とはその性格が私はすっかり変ったものと思うのでございまして、たとえば、御慶事というようなこういう機会をとらえて、恩赦法に規定されたようなことをやることがよろしいかどうかと、こういう判断を政府としてはいたすべきものだと考えるものでありまして、今回の御慶事に際しましては、先ほど申しましたような気持で、恩赦法の規定の範囲内でこれを実行したい、ただ具体的の細目をまだきめるに至らない、こういうふうな考え、こういうふうな状態でございます。
  175. 高田なほ子

    高田なほ子君 この恩赦というのは、裁判所が法に従って判決をしたこの判決自体を、内閣の権限でくつがえすというこれは重大問題なので、単に法務省だけの、内輪だけの、政府内部だけの決定権というものについては、これは相当慎重にしなきゃならないと思いますが、これは閣内だけの意見で決定するということについて、どういう意見をお持ちになっていますか。
  176. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) ただいまの御説は私もごもっともな点が非常に多いと思います。しかしながら、現在さしむきの問題といたしましては、現在の恩赦法によりましてこれを実行するというのが、さしむきのやり方としては妥当なやり方だと思いますが、さらに根本のこの理念、あるいは外国等の最近の情勢等を見ますると、大体こういうことは非常に小規模になってきておるように思われるわけでございまして、これは今度の問題としては、あらためて私としても根本的に検討する必要があるのではなかろうかと思います。  なお、御案内の通り、恩赦法の建前というのは、旧憲法のときとは非常に違っておりまして、たとえば常時恩赦ということも現在では行われているわけでございますから、これを大いに活用するというようなことも、これはまた別の意味で正しい行き方ではなかろうかと、こういうふうに考えておるわけであります。
  177. 高田なほ子

    高田なほ子君 そこで、今度の恩赦についていろいろ基準が御相談になられておると思うのですが、この基準の問題についてはそのたびごとに変っておるようです。刑法の条文から照らしても、変っているようです。この中には、選挙違反というものが何ら特赦の対象にならないものの中には入っておらないわけなんです。私は、選挙違反というのは当然破廉恥罪として減刑の対象にならない、特赦の対象にならないという中に入れられるべきではないか、すなわち基準の中に入るのではないかという思想なんです。これについてどう考えられますか。そうして今度の恩赦の内容は、おっしゃることはちょっとむずかしいと思いますけれども選挙違反というものがどういう取扱いをされるのか、この点、明確にして下さい。
  178. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) ただいまお話のございました点等は、なかなかむずかしい問題でございまして、一がいにどうこうと私は言えないかと思いますけれども、今一般論として私の意見を申し上げる段階でもないと思います。また、先ほど申しましたように、今回の恩赦についてどういうふうに具体的にやるかということについては、まだきめ切るところまでいっておりませんので、この点についてまだ明確に申し上げることができませんのを非常に遺憾に思いますが、さような事情でございますから、御了承願いたいと思います。
  179. 高田なほ子

    高田なほ子君 選挙違反の問題については、岸首相から、今度の恩赦の対象には入れることはけっこうではない意味答弁があった。そういうふうに私ども了解したいのでありますが、この選挙違反の内容というのは、実にいろいろな刑罰に比べて率が多過ぎる。数字をあげる時間はありませんが、選挙違反として起訴された者、その者が第一審になると起訴人員がぐっと減ってくる、第二審になるとほとんどこれが消えてしまう、こういうことです。そうして恩赦のたびに選挙違反ははずされているということでは、この選挙違反をなくしてしまうということは非常にむずかしいのじゃないか。選挙違反に対する国の見方というものが、あまりにゆる過ぎる。アヘンの輸入、それかれアヘンの吸引、こういうものもこれは恩赦の対象にならないのですが、これよりはむしろ私は選挙選反というものが日本の民主政治を害する面において大きいのじゃないかと思うのです。当然、刑を重くせよというのではないのですが、選挙違反の恩赦という問題については十分な御考慮をわずらわせなければならない。こういうようなこともありますので、常時恩赦審議機関というものは私設けられるべきだと思うのですね、政府内部だけでなく。この恩赦審議機関というものを、今度を契機にして、お設けになるという御意思をお持ちになっておりませんか。
  180. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) まず、前段のお尋ねでございますが、これは先ほども申し上げましたように、去る五日と記憶いたしますが、市川委員の御質疑に対しまして総理からお答えをいたしました、そういう基本的な気持でただいま立案をいたしておるわけでございます。  それから、審議会の問題でございますが、これは御承知のように、今中央更生保護審査会というのがございまして、常時恩赦については個別に上申に基いて、民間の方々を主として更生保護審査会を作っておりまして、その中にはたとえば婦人の方では坂西志保さんもお願いいたしております。それかれ久保田万太郎さんというような方もこの中に入っておられまして、五人の委員で構成された審査会が常に熱心に本件について鞅掌されておるわけでございます。  それから、今の御質疑の点は、今度のような場合の基準をきめる、あるいはその他の規則をきめるというようなことが必要である場合に、審議会を作ったらどうか、こういうお尋ねかと思うのでありますが、これは私、先ほど申し上げましたように、将来の問題としては相当研究しなければならない点があると思うのでありまして、そういう際の一つ考え方としてはあり得る意見であると私考えますが、ただいまのところはそういうような意味審議会を常設するというところまでは私今考えておらないわけであります。
  181. 高田なほ子

    高田なほ子君 獄中から、今度の恩赦の適用を受けさしてもらいたいという要望書がだいぶ来ているようですが、この状況はどうか。それから同時に、今度の恩赦について法務省にたくさん投書が舞い込んでいると聞いておりますが、その国民の声はどんなふうですか。
  182. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 私のところへ、ただいまおあげになりましたような上申書が参っていることはございません。私、少くともまだ自分では読むまでの段階に至っておりませんので、来ているかと思いますが、まだ私の手元には届いておりません。それから、第二のお尋ねでございますが、これについては、いろいろの御意見やあるいは批判その他が来ておりますことは事実でございますが、これも、先ほど来申し上げておりますように、総理としても答弁いたしましたように、十分それらの意見も聞くべきは聞きまして、すっきりした形で政府としてやりたい、こういうふうに考えております。
  183. 高田なほ子

    高田なほ子君 獄中からの上申書はかなり、私、重要な意味を持つと思うんです。まだごらんになっていないということでありますが、誤判を救済しろ、あるいはまた、本人の行状というものがきわめて改悛の情顕著であるというような者が、これがまあ上申されてくるわけなんです。まだごらんになっておらないということはちょっと納得できませんが、この点はやはり重視していただきたいということが一つ。これは親族からの上申権というものを将来お認めになる気持はありませんか。
  184. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) ただいま事務当局からの話も、ここでごらんのように、聞きましたのでありますが、特に御慶事に際してどうこうという上申は来ておらぬようでございますが、そういう意味で先ほどお答えいたしたわけでありますが、それ以外に、第三者等から私あてに直接何とかしてもらいたいというような上申書が参りましたことは、一、二ございます。
  185. 高田なほ子

    高田なほ子君 これは、出願による申し出の制度にやはり私は研究しなければならない点があるのじゃないかと思うんです。今は受刑者本人が出願によって申し出ることになっているわけなんです。やはり誤判を救う、あるいはまた行状改悛の情顕著であると認められる者または親戚や親等において十二分なる責任を持ち得るというような特定の者についてのこの上申というものについては、相当研究していただく必要があるのではないか、この点であります。
  186. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) その点につきましては、御意見としてただいまのところ承わりまして、十分研究をいたしたいと思います。
  187. 高田なほ子

    高田なほ子君 今度の恩赦と仮釈放の関係は、どういうふうになっていますか。
  188. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) お答え申し上げますが、恩赦と仮釈放は関係がございませんので、先ほど来申しておりますように、恩赦法に規定されたたとえば減刑とかあるいは特赦ということになりますと、この恩典に浴した場合に、いろいろとケースがございますが、その結果釈放されるということはあり得ることでございますけれども、仮釈放と恩赦とは格別関係がないわけでございます。
  189. 高田なほ子

    高田なほ子君 私は、仮釈放という問題についても非常に研究問題があると思うので、これを決定する機関、こういうものを設けて、この機関にやはり恩赦の申し出権を与えていったらいいんじゃないかというような意見も持っております。これについて別にお答えいただかなくてもけっこうです。  時間もなくなりましたので、次に、売春の問題をちょっと二、三お尋ねしたいと思います。  売春防止法の完全実施が行われてやがてもう一年になりますが、これの実施後の状況は一体どんなふうになっているのか。この売春防止法の目的とするところに従って、どういうような状態に現状が置かれているのか。いろいろこまかい内容の問題は申し上げ得ませんので、十分この内容について詳しく御説明を願いたい。残っているところは、また質問いたします。
  190. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) この機会に、売春取締法が昨年の四月に完全施行されまして以来の状況を、かいつまんで御説明申し上げたいと思います。  これは、ただいまも仰せになりましたように、売春防止法は、売春の反社会性を明確にする、それからその防止対策として売春を行うおそれのある女子に対してその保護更生の措置を講ずる、それから特に売春を助長し婦女を犠牲にして中間搾取を行う各種の行為を刑罰で取り締る、というのがこの法の目的でございますので、それによりまして全国的に検挙いたしました違反事件は、売春勧誘等の違反が、昨年末現在で申し上げますと、一万一千三百十九人でございます。それから、売春周旋等の違反をいたしましたものが三千四百一名でございます。いわゆる管理売春、場所提供その他が三千七百八人、合計一万八千四百二十八人に達しておるのでありますが、その処理の状況は、起訴いたしましたものが六千七百五十人と相なっております。それからさらに、その裁判の結果を見ますると、売春の勧誘等については、懲役の実刑が二十一人、補導処分の言い渡しが百二人というような程度でございますが、管理売春等の売春助長犯として起訴せられましたものが千五百七十五人であり、そのうち懲役の言い渡しがあったものが八百四十二人に上っておるのでございまして、警察並びに裁判の結果を見ましても、先ほど申しましたように、法の目的とするところに従って、悪質なものに対する取締りは相当徹底してきておるように見受ける次第でございます
  191. 高田なほ子

    高田なほ子君 取締りの面だけでなく、何%のものがこれによって更生していったか、まあ救われた面、それからこの保護施設の実情など婦人相談員の問題簿、また潜在売春の実情はどうなっているのか、もっと積極的な面についてもお話し願いたいと思います。
  192. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 積極的な面につきましては、法務省の関係だけでないところもございますが、大体の状況を申し上げますと、昨年の四月から主要な地点二十二カ所に更生保護相談室というものを設けましたことは御承知通りでございまして、これはあえて起訴するとかしないとかいうような、そういうふうな検挙ということとは別と申しますか、その前段階におきまして、たとえば警察関係の係官あるいは厚生省の相談員というような人にも、警察庁を中心に集まってもらいまして、それを更生保護相談室ということで、一応何といいますか、引っぱられたけれども、起訴したりその他をするのには気の毒であると思われるような女子の更生をはかることにいたしておりまして、これも漸次効果を上げてきておるかと思われます。それから裁判の結果、実刑を言い渡し、補導処分に付せられた場合におきましては、御承知の婦人補導院をとりあえず全国三カ所に作りまして、ここで更生補導にせっかく努力中でございます。  しかしながら、これらの点につきましては、何分世界的にも非常に新しい画期的な試みでもございまするし、これらの補導の対象になった女子の人たちが一体どの程度更生をし、どの程度社会人として更生してきているかということを、まだ数字の上で申し上げるまでの段階になっておりませんわけでございまして、これらの点については、実は婦人補導院の施設なども率直に申しまして非常におくれておりまして、鋭意これの補強策に努力をしておるわけであります。大へんこれは大切な問題であると思うのでありますが、今申しましたようなことで、正確に数字的に御説明申し上げる段階にないことを非常に遺憾に存ずる次第であります。
  193. 高田なほ子

    高田なほ子君 一番大切なところは、御調査がないために、詳細伺うことができませんでしたが、実態はこれはひどいものなんです。大蔵大臣は婦人相談所あるいは婦人相談員、婦人保護施設あるいは補導処分の実情、そういうものについてはごらんになったことはございますか大蔵大臣
  194. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) まだ見たことはございません。
  195. 高田なほ子

    高田なほ子君 そういうわけだから、予算がことしは後退している。あなたから売春対策といわれる予算を一応概略的に説明をしていただいて、あなたのこれに対する考え方を述べていただきたい。
  196. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 予算を、各省の間にわたりまして、一通り御説明いたしたいと思います。  厚生省所管では、総額千九十万円の前年度に対しての減でございます。しかして、ただいま御指摘になりました婦人相談所、これは一部事務費は増加いたしましたが、充足状況等から考えまして、補助職員を減らしております。九十三万円の減でございます。婦人相談員施設費、これは二百八十万円ふやしたのでありまして、これが月手当九千円では少いというので、一万円にこれを引き上げる。この点は、特に婦人相談員をして、売春対策の中心といいますか、その活動の中心にするという考え方でございます。婦人相談事業費は四百九十三万円の減でございます。これは初度費の減額でございます。その次は婦人保護施設でございますが、これは運営費の面では千三百九十九万円ふやしておりますが、建設費の減が二千百八十三万円になっております。厚生省の関係で約一千万円の城でございますが、これはただいま申します建設費の減が大きく響いておるのでありまして、内容的には活動に資するように予算を組んだわけでございます。  法務省関係といたしましては、総額といたしまして七千四百二十八万円の減でございますが、このうちの一番大きなものは婦人補導院関係でございますが、七千万円の減であります、七千三十二万円。しかし、運営費の面におきましては、わずかではございますが、四十万円の増加を見積っております。検察費は従前同様、身上調査室の関係は初度費の減が百万円、補導援護費は二百九十六万円の減ということでございます。これも、ただいま申し上げます施設が今回は要らなくなったということで、大幅に減じておるということであります。  労働省関係におきましては、これはわずか二十七万円の減でございます。それから裁判所の所管、これは売春対策関係の会同の費用でございますが、これは六十五万九千円のプラスであります。総理府所管の売春対策審議会、これは二万一千円の減、警察庁の売春事犯取締りは二万七千円の減、こういうことでございます。  今回一般に補助費その他事務費、経費の節約を計画いたしております。その程度の節約はいたしたつもりであります。主として施設費が今回は要らなくなった、そういう意味で、補導院につきましては手当を増額するとか、活動に便利するように考えておるわけでございます。
  197. 高田なほ子

    高田なほ子君 大蔵大臣は大へん正直に今言われて、きのうから怒られることは覚悟の上でといって大へん恐縮していられるから、この一々については追及するのをやめます。あなたも自責の念にたえない思いで今発表されたんだろうと思います。  これは、各省ばらばらに予算措置されておるし、地方においてやはりもっと行政面でこの予算が生かされるようにしないから、どんどん、どんどん弱くて削られていくのではないかと思いますが、一体大蔵大臣は、謙虚に今おっしゃいましたけれども、この売春防止法を完全実施させるということのために、年次計画というようなものに基いてこれを予算化していくというような構想はお持ちになることはできないでしょうか、この点いかがでしょうか。
  198. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 問題は人権に関し、また社会風潮に関し、また性道徳等の面から見ましても、大へん重大な問題でございます。そういう意味で、売春防止法の法の精神が十分徹底いたさない限り、言いかえますならば、国民全体の積極的な協力がない限り、十分の効果は上るものではないと思うのであります。政府におきましても、そういう意味関係各省をして十分効果あらしめるべく、その法の目的達成のためにいろいろの努力を払っておるところでございます。しかして、ただいままでのところでは、せっかく施設いたしましたものが十分利用されない。いろいろの理由のあることだと思います。これらの点については、内容の改善等についてもさらに意を用いて、本来の法の精神、その目的達成のために一そう努力すべきものだと、かように考えております。
  199. 高田なほ子

    高田なほ子君 これはまた異な御答弁を伺うものです。国民の積極的な協力なしにはと、こう国民責任を転嫁したようですが、この売春防止法の法実施に当って、いかに地方の婦人たちがこのことに協力しているか、まことに、これは一々申し上げる時間もなくて残念ですが、血のにじむような努力をしています。また、民間からの拠出金なんかは相当多額に上っております。こういうのは御調査になっておらないのだと思いますから、どうか政府はもう少しこの問題の本質、そして現状というものを十分把握されて、予算計画等については万全を期されるようにしていただきたい。再度御答弁をわずらわしたい。国民責任じゃないのです。
  200. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) この施設というものは、あらゆる面においての理解、協力がないと、十分にやっていけるものではございません。私は、今日まで協力が足りないとか、理解が不十分だとか申しておるわけではなく、そういう一部の方々の非常に熱心な御協力、また御理解はいただいておると思いますが、そういうことではなくて、やはり全般の問題としてのそういう意味のものが必要だということを申し上げたのでございます。
  201. 高田なほ子

    高田なほ子君 法務大臣にお尋ねしておきますが、これは神戸に起った事件ですが、三十三年の六月から八月までの間、アメリカ艦隊が神戸港に入港した際に、強制検診を、命令書も出さないで、口頭で八丁その他に働いておらるる婦人の方々に言ってきた事実があるということがいわれておるのです。私はこれは大へん驚くべき問題だと思いますが、こういう事実を御存じでございましょうか。もし御調査になかったらば、こういう事実がかりにあったとすれば、法務省としては本問題については相当強い御意思を示す必要があるのではないか、こう考えますので、御答弁をわずらわしたいのです。
  202. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 実は、ただいま御指摘の事実につきましては、私、従来知らなかったのであります。そこで、もしかりにそういう事態があったとすれば、これは容易ならぬことと考えまして、実は昨日も徹底してそういうことの報告その他がないかと思いまして調べてみましたが、幸いにして私どもに関する限りにおいて、これは法務局等の所管になるわけでございますが、現地についても調べましたところ、そういう事実の報告は受けていないのでございます。  後段のお尋ねでございますが、私は、万々一かかる事実がありとすれば、これは人権擁護の立場から申しましても見のがすことのできないことであると思いますので、万々一さようなことがございました場合には、適当な措置を十分にとるつもりでおります。
  203. 高田なほ子

    高田なほ子君 最後に一言だけ、法務大臣に……。これは将来の問題としてここでお尋ねをしておきますから、概略でけっこうです。潜在売春の実情は今どういうふうになっているか、そしてこれの対策については何か計画を持っておるか、この点についてだけお答えいただきたい。
  204. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これは率直に申し上げますが、なかなかその実態の把握が困難でございまして、たとえば、ある著名な都市の赤線区域あるいは青線区域等を特定して関係各庁の協力で実態の調査に手をつけている所もございますが、これはというような、的確にその状態を申し上げるに足るような調査がまだできておりませんので、この点も、先ほど申し上げた通りに、まことに遺憾に存じますが、今後とも徹底した調査を進めて参りたい、こういうふうに考えておるわけであります。  なお、これは御承知のことと思いますが、政府としては、売春対策協議会は、売春法が施行せられましたけれども、引き続きただいま御指摘の問題等について大いに民間側のお知恵も拝借したいと思いまして、存続いたします。御指摘のような問題についても、特に小委員会を作りまして、それらの方々の御協力や御支持も仰いでおるのです。
  205. 高田なほ子

    高田なほ子君 地方の方を説明して下さい。
  206. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 地方も、先ほど申しましたように、たとえば京都、神戸その他の赤線、青線等を特に調査区域にいたしまして、いろいろとやっておるのでございますが、今申しましたように、なかなかこれは、何と申しますか、微妙な、また複雑な問題でありまするだけに、思わしいような実態の調査というものが今日までのところはできておらないようなわけでございますが、地方につきましても、もちろん徹底した調査や対策を今後とも努力を新たにして参りたいと思っております。
  207. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 以上をもちまして、高田委員の質疑は終了しました。   —————————————
  208. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 次は、栗山良夫君の質疑に入ります。栗山君、御登壇願います。  栗山君に申し上げますが、御要求の日銀総裁山際君は、御多忙中時間を差し繰って御出席いただきました次第でございますので、山際総裁に対する質疑をまずお願いできるならばしていただきたい、こう思います。
  209. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 なるべくそういうことにいたします。  過日の委員会におきまして、日銀の金地金保有の問題について大蔵大臣にお尋ねをいたしましたが、なお、理解をし得ない点が数点ありまするので、山際日銀総裁もおいでをいただいておりますので、重ねてお尋ねをいたしたいと思います。  まず最初に、過日の委員会で大蔵大臣は、昭和十二年、金の再評価をいたしましたときの金額を八億百万円、地金にいたしまして二百三十二トン、こういう工合におっしゃいました。ところが、私が持っておりまする資料である昭和二十四年度「国民予算」、一番最初に出ましたものであります。それの中を見ますというと、二百三ページには、昭和十二年末、日本銀行勘定は、二百二十七トン百三十五グラム、こういうことになっておりまするが、五トンばかりの違いはどうして出ておるのか、これを明らかにせられたいと思います。
  210. 石田正

    政府委員(石田正君) 私の持っております資料によりますると、昭和十二年末の日本銀行の金地金勘定の残高は、二百三十二トン余になっております。御指摘の二十四年度の予算書につきましては、ちょっと私に見せていただきます。
  211. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) ただいま御指摘の点は取り調べてみますが、何分にも「国の予算」というものは、全部の計数につきまして、十分に正確を期しておるわけでありますけれども、公式のものでございませんので、銀行局長の方から申し上げておる方が正しいかと思いますが、帰りまして至急調べます。
  212. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 正確なものでないとおっしゃいましたが、過日来、日銀の四十四トンの金地金が現物がないということを私が探り出した本は、これなんですよ。今の御答弁じゃ納得いたしかねるんです。この本で昭和二十年百トンというのがあります。ところが、あなた方の御説明は、百二十九トンあるとおっしゃる。ところが、これには百トンしかありません。しかも、昭和二十年のときにはそれが合っているんです。そうすると、この本の中の一部分が正確で、一部分がずさんだ、こういうことですか、この本全体がずさんだということですか。
  213. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ただいま主計局長が申しますように、ずさんだとか申すわけではございませんが、公式のものは当方の説明いたすものでございますということを申しておるのでございまして、あるいはもう少しよく調べてみれば、その出所なり、あるいは相違点も明確になるかと思いますが、いかにもとっさのことでございまするので、ただいまのようなお話をいたしておるわけであります。
  214. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 地金の問題については、先日来、私が発言をいたし、その後に何回か連絡をとっていただいて、昭和十二年のを問題にしておるのでありまするから、ここに昭和十二年の基準年において五トンの食い違いが、少くとも政府の発行された記録の中で食い違いがあるということについては、私はこれからお尋ねしようとするところのいろいろな項目について、これ以上話をちょっと進めるわけです。ここがスタート・ラインなんです。
  215. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) 古い数字でございますので、今、至急取調べをいたしますでございますが、先ほども申し上げましたように「国の予算」というのは、毎年予算ができました後に調製をいたすものでございますので、何分にも膨大な資料を集めまして編集をいたすものでございまするから、その全部につきまして、十分な原典につきましてのチェックのついていないものもあり得るかと思いますので、先ほど申し上げたことでございまするが、銀行局長の方から申し上げておる数字の方が正しいとお考えいただけば大へんありがたいと思います。なお、食い違いの点は至急取り調べます。
  216. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それでは銀行局長の述べられた二百三十二トン、これが昭和十二年末における金地金の現在高である、こういうことでよろしゅうございますか。
  217. 石田正

    政府委員(石田正君) この数字は日本銀行から取りました数字でございますので、間違いはないものとわれわれは考えております。
  218. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それでは、この「国の予算」との食い違いは、どうしてこういうことがかつてあったのか、後刻明白にされたいと思います。  次に、大蔵大臣にお尋ねいたしますが、過日の私の質疑に対しまして、あなたは速記録を読んでいただくとわかるが、一番最初のところで、過日、五千万ドル日銀が買い入れをなさいました四十四トンの金地金を含めて、日銀の地金の保有高は百二十九トンである、こういう工合におっしゃったのでありますが、これは事実と全く相違するわけです。どういうことでございましょうか。
  219. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 四十四トンは外地の金地金勘定会計に計上いたしておりまして、内地の日銀の方とは別のものでございます。この機会に、何だかその点が非常に不明確であったやに伺っておりますが、明確に申し上げます。
  220. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そういたしますと、この三月六日の本委員会における発言の誤まっておる点は訂正をされますか。
  221. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 速記はどうなっているかわかりませんが、ただいま申し上げるのが正確な発表でございます。従いまして、間違っておるところがございましたら直さしていただきます。
  222. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私読み上げるといいのだけれども、時間が大へん惜しいので、一ぺんよく読んで、それでこことここをこう直すということをおっしゃっていただきたい。三月六日の速記の訂正を大蔵大臣がなさっていただきたい。この三月六日のこういう発言をしたことは、こうこうこういうことであるという工合に大蔵大臣がおっしゃいませんと、速記の訂正になりませんよ。
  223. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) この前の表現が不十分でございます。一応読んでみますと、「昨年の十二月及び本年の一月におきまして合計五千万ドル相当の金、約四十四トン余でございますが、これを米国において購入をいたしました。以上の結果、現在は日銀の帳簿上金地金勘定で計上しておるものは約百二十九トン、金額において約四億四千七百万円となっております。これ以外に、海外寄託金地金勘定で経理しておるものが約四十四トンございます。金額にしてこれは約百七十九億円になるわけであります。」、この点が非常に不明確でございまして、今読んだうちの「以上の結果」という五字を削除していただくとはっきりするのではないかと思います。だから、アメリカにおいて購入をいたしましたこれが四十四トン余でございます。現在は日銀の帳簿上金地金勘定で計上しておるものは約百二十九トン、金額において約四億四千七百万円となっております。これ以外に、海外寄託金地金勘定で経理しておるものが約四十四トン、それは昨年アメリカで買った金でございます。かように申せば、これで筋道が合うのでございます。大へん御迷惑をおかけいたしました。
  224. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 次に、これは日銀の総裁にお尋ねをいたします。日銀のただいま金地金としてバランスシートに乗っておりますのは四億四千七百万円、数量に直して百二十九トンと政府の説明がありました。ところが、ただしてみますというと、そのうちの四十四トンは、戦争中に日本銀行の持っている金は正金銀行に預けて、金預かり証書というものをとっておいでになるということが明らかになりました。さらに一部は金資金特別会計に売却をして、タイ並びに中国へ現送せられた、売り戻し条件付である、こういうことをおっしゃった。この二つが事実であるかどうかということと、その証書の内容ですね、政府へ返還する条件その他の内容、売り戻しの条件その他の内容、こういうものはどういうことになっておるか、それを明確にされたいと思います。
  225. 山際正道

    参考人(山際正道君) お答えいたします。ただいま最初に御説明になりましたところは私はその通り考えております。正金銀行に金を預けました分につきましては、同時に、正金銀行と政府が約束をしておられまして、政府の金資金特別会計において事情が許すならば、直ちに当該数量の金を正金銀行に払い下げる、しこうして、正金銀行は直ちにそれをもって日本銀行の金の預け金に対して払い戻しに応ずる、こういう約束がついておるのであります。いつという期限はありません。それからまた、政府の金資金特別会計に一応売り渡した形をとりました分につきましても、直ちにこれは金資金特別会計において払い戻しのできる事情になりますならば、再びそれを同じ数量、同じ金額において日本銀行に払い下げる、こういう条項がついておるわけでございます。日本銀行におきましては、一応は売却の形でございけれども、同時に、それは仮勘定を設けて、何どきでも直ちにこれを受け入れる態勢において計上を続けておるのであります。
  226. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 日銀の資産勘定を見ますというと、今おしやった二口のものは、金地金という勘定整理科目で四億四千七百万円の中に一括包含をされている、そうすると、あなたの今おっしゃったこととは少し事情が違うように受け取るが、いかがですか。
  227. 山際正道

    参考人(山際正道君) ただいま私が申し上げましたことは、やはり御指摘の勘定のうちに全部入っております。これは私ども当局といたしましては、さような条件のもとにおいて政府に対して取引をいたしておりまするからには、政府はその事情の許す限り、最短の期間においてその債務と申しましょうか、約束を履行されるものという信頼をつないでおりますので、しからばこれは、金地金の勘定において計上してしかるべきものであると、かような考え方で、従前から引き続き今日まで計上をいたしておる次第でございます。
  228. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 もうすでにこの行為が行われてから、戦争中のことは問いませんが、戦後十数年を経過しております。この間、政府に対しまして売り戻し、あるいは返却の交渉をせられたことがありますか。
  229. 山際正道

    参考人(山際正道君) ただいまお尋ねの問題は、日本銀行当局といたしましても、最も深く関心を払っておる点でございます。機会あるごとに正金銀行あるいは政府に対して、約束の履行を折衝いたしおるのでございまして、現に横浜正金銀行は閉鎖機関で清算中でございまするけれども責任者に対しては、常時、その注意を喚起いたしておりまするし、また、その背後にあります政府、また、直接取引相手方としての政府に対しましては、常時、むろんこれは協議を続けておりますので、何分にも戦後の各般の事情、ことに、ただいま御審議を願っておりまする接収貴金属の処理に関する法律等の関係もございまして、相当の年月を経過いたしましたことは非常に遺憾でございまするけれども、私どもといたしましては、常時、最大の注意をもってその実現を期待、努力いたしておる次第でございます。
  230. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 常時とおっしゃいましたので、それは具体的に何回ぐらいおやりになったのか、こういうことをお尋ねしなければなりませんが、それと同時に、この決済は、当初の約束通りに現品で相当価格の金地金を日銀が引き取る、こういうことでございますか。その処分方法以外にはないと考えてよろしゅうございますか。
  231. 山際正道

    参考人(山際正道君) 私は政府が約束されました以上、当然、ただいま御指摘通り条件において現物を返済せられるものと期待いたしております。
  232. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 大蔵大臣、日銀総裁は今そういう意思表明をなさいましたが、あなたはこれに応じられますか。
  233. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) もともと戦時中の事柄ではございますが、これは国の信用に関することでもございますし、もちろんこれは実行しなきゃならないことでございます。しかし、その時期をいつにするかという問題なり、あるいはまた、国民に負担のかからない方法とか、いろいろ工夫していかなければならないのでございまして、今直ちにというわけには参りませんが、十分その債務というか、なすべき事柄がよくわかっておりますので、これは時期を見ましてその処置をいたしたいものと、かように考えております。
  234. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 国民に負担のかからない方法で現品を四十四トン調達をいたしまして、日銀に戻すという方法は、どういう方法がございますか。
  235. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 結局、再評価するその益金でその金を返してあげる、こういうこと以外には方法はないかと思います。それいたしましても、厳格に言いまして、もとの価格そのものの補てんはこれは困難かと思いますが、そういう点を十分工夫したい、こういうことでございます。
  236. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 その再評価というのは、四十四トンの現在地金のない分を再評価されるわけですか、どういうことですか。
  237. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) これはまあどういう考え方をいたしてもいいと用いますが、これは現物の四十四トンというものを返さなきゃならないことになっておると思います。この四十四トンを返します場合に、今日この接収書金属等で現物を返しますものは、これはこのまま済んでしまうと思いますが、その他の残りの分について、大体三十四トン程度がその上ですぐ考えられるわけでございますが、こういうものについての処置は、結局、今日持っておりますものを再評価いたしますればその益金が出ますが、この益金は国に帰属して参るわけであります。そういうものを今度新しく物を買ってそうして返すとか、こういう措置をとる以外に方法はないかと思います。
  238. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 ただいま政府が手持ちをしております金地金はどの程度でございますか。
  239. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) お答えを申し上げます。現在金資金特別会計で持っております金は、接収貴金属で返還を受けておりません関係上、約二十一トンであります。
  240. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 これは旧価格だろうと思いますが、これを再評価すると、どれくらいになりますか。
  241. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) これは昔の金資金特別会計、今日では貴金属特別会計と申しておりますが、この特別会計が新産金の一部を買い上げたもののうち、接収を免がれたものの数量でございます。そこで、これは年度によりまして買い上げ価格を異にいたしておりますが、大体昭和十二年年ごろは一グラム当り三円七十七銭、十三年が三円八十五銭、二十一年が十七円、二十二年が七十五円及び百五十円、二十三年になりますと三百二十六円、二十四年は三百八十五円、二十五年は四百一円、二十八年以降は四百五円、こういう価格になっておりまするので、それぞれ御承知のように、数量と差額をかけて出さなければならないのでございますが、ちょっとそのトータルの評価益を出しておりません。御必要がございますれば、計算をいたしまして出すことにいたします。
  242. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 四十四トン、約百八十億円要るわけでありますから、ちっと一ぺん計算をしていただきたい。  それから日銀総裁に伺いますが、ただいま日銀が、接収下にありましてまだ解除に法律的になっておりませんが、この金地金の再評価をされる御意思はありますか、ありませんか、それを伺います。
  243. 山際正道

    参考人(山際正道君) 御承知のように、中央銀行といたしましては、なるべくその資産の内容を堅実にし、いわゆる積立金ないし内部留保利益を厚くいたしまして、どこまでもその信用を確保したい考えでございます。もし日本銀行自身におまかせに相なりまする限りは、私はみずから再評価をするつもりはございませんが、立法府においてさような措置を御要求に相なりますれば、むろんそれはそういたしますが、従来の再評価も日本銀行自身の配慮ではいたしておりません。法律の結果、さようなことが実現いたして参った次第であります。
  244. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 大蔵大臣と日銀の総裁にそれぞれお伺いいたしますが、最近の状態において、金の地金をすでに八千万ドルお買いになりました。今後も余裕があればお買い続けになるかどうかということ、また、そういう工合に、新しくお金を外国からお買いになろうとしておりまするその目的、理由ですね、これはどこにあるのか、これを伺いたいと思います。
  245. 山際正道

    参考人(山際正道君) 日本銀行の考え方といたしましては、銀行券を発行いたしておりますその準備といたしまして、各種のものを持っておりまするが、なかんずく金がその背後にあるということは、やはりこの銀行券の流通上相当信用を博する上において、その利益が多いということは現実の事実でございます。だんだん外貨等も蓄積せられまして、その余裕を生じます限り、私はある程度の中央銀行は金準備を持つべきだと考えております。欧米の各中央銀行に比較いたしますると、現在日本銀行の持っておりまする金準備の額は、率が非常に低いのでございます。私はぜひともこれを相当程度、今後無理のない機会を見ましては引き上げて参りたい考えでございます。ただ御承知通り、その意味と申しましても、たとえば外貨が今日信用度が薄いからそれをカバーする意味において金にかえておくといったような考え方は実は現在はございません。ただ従来、慣習上みんなの心理といたしまして、金の保有高が相当多いということは、銀行券の信用を厚くするという現実の事実に基きまして、なお相当程度増したいという考え方でございます。巷間ややもいたしますると、外貨の不安から金にその危険をつなぐのだという解説もあるやに伺いまするけれども、私どもといたしましては、現在さような考えでやっておるわけではございません。
  246. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 将来も買い増しを続けられるということでありますが、金準備の何パーセントくらいのところまでお持ちになろうとしておられますか。
  247. 山際正道

    参考人(山際正道君) これは学者の議論その他にかんがみましても、実は何十パーセント程度が一番よろしかろうという定説はございません。ただ、今申し上げました通り、各国によりまして相当、程度の高い国がございます。たとえばイギリスのごときは八〇%—九〇%、また国によりましては一〇〇%以上の金を持っておる国もございますが、いかにも日本の実情はまだ一〇%にも及んでおりません。これは何といたしましても、まあこの辺がとめどころだという限度に到達いたしまするのには、まだまだ時間はかかろうと思いますが、いかにも現在の比率では低過ぎるのではないか、かように考えて、いましばらく、先ほど申し上げましたような方針で進みたい考えでおります。
  248. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 今、総裁は一〇%にも及ばないとおっしゃいましたが、過日、大蔵大臣は衆議院において、五千万ドルの買い入れが終った直後に八・四%だとおっしゃいました。あれからすでに三千万ドルの新しい買い付けを行なっておりますから一〇%を越しておるわけであります。その計算の内容を一つ明らかにしていただきたいと思います。
  249. 山際正道

    参考人(山際正道君) ただいまの、現在持っております金がいかなるものに対してどの程度の割合で持つかという問題は、実は計算の仕方によりましていろいろ変ります。試みに、私が手元に持っております材料で申し上げますると、現在の評価額をとって参りまするならば、現在日本銀行が発行いたしておりまする銀行券に対しまして四%程度の数字に相なります。もしこれを、先ほど御指摘のありました再評価というようなことでもいたしまするならば、むろんその割合は高くなりまするけれども、現在の取扱いから申しますると、その程度に相なっておるわけでございます。また一部におきまして、御承知のように金はその対比する相手を、銀行券の発行高で対比する場合もございまするが、国全体として持ちまするいわゆる外貨準備に対して、そのうち金がどれだけあるかという見方もございます。その計算でいきますと、私の手元の資料では、現在日本の持っておりまする外貨準備高、すなわち九億四千六百万ドルに対しましては一〇%見当という数字に相なっております。
  250. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 大蔵大臣から、どういう計算の内容でおっしゃったか、一つお示し願いたいと思います。
  251. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 今の総裁のお話は、発行高に対してのお話でございました。私のは外貨に対する割合でございます。
  252. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私がちょっと計算してみますと、大蔵大臣のおっしゃった八・四%というのは、日銀の買い入れた五千万ドルと、貴金属特別会計にある二千三百万ドルですか、先ほどおっしゃった分だと思いますが、それを入れて七千三百万ドルで、ちょうど八・四%になります、八億六千万ドルについて。そこで、過日三月に買い入れた三千万ドルを入れますというと、ちょうど一億ドルになりますから、二・六%ということになりますが、それでもよろしゅうございますか。
  253. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ちょっと計算しておりますから、お待ち下さい。
  254. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) 三月十日現在で申しますと、外貨準備に対する金の割合は一〇・九%になります。
  255. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それの計算の内容……。
  256. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) 計算の内容といたしましては、外貨準備が九億四千六百万ドル、それに対しまして、そのうち貴金属特別会計に所属いたします金が二千三百万ドル、まあ二千四百万ドル弱でございます。それから日本銀行の金が八千万ドルになっております。
  257. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それは全然違うですよ。私は今申し上げました貴金属特別会計の二千三百万ドル、それからこの間買い入れをされた三千万ドルとを入れて一一・六%になりますよ、ということを申し上げて、これはベースになる外貨準備が九億四千万ドルにふえておりますから、一〇・九%になると思います。日銀の総裁は先ほどあらゆる地金を計算してとおっしゃいましたが、私はそれほどまでに重要な外貨準備との。パーセンテージをとらなければならぬものであるならば、九十二トン分、これも再評価をせられて、そうして買い付けたものを一緒にされて、そうして全部の率はこれこれになるのだ、こういうことをおっしゃるべきだと思うのです。私が計算いたしますというと、大ざっぱに見まして二三%ぐらいになります。これは全部入れますと二三%ぐらいになります。そういうふうに今後御発表になる御意思はございませんか。何かもやもやとしておってさっぱりわかりません。一体どなたのお話を信用していいのか、さっぱりわからないのですが、この辺で日銀と大蔵省と思想統一をされて、今後発表になる数字はどういう基準でやるのか、これを明白に一つしていただきたいと思います。
  258. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 御指摘のように今後十分よく相談いたしまして、統一した発表をいたします。
  259. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そのお答えをいただくためには、今接収されておるところの貴金属が、金地金がいずれ日銀に返りましょう。そういうときにはこれを新しい四百五円に換算をし直して、そうしてこれを買い付けたものに入れて、そうして発表するとかしないとか、現に、とにかくそういうふうに仮定をすれば二三%ばかりになっておるのでありますから、そういうふうにもう少し具体的な内容を方針として示しておいていただかないと答えになりません。
  260. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) もちろん、先ほど来、冒頭にお話しになっております問題の処理もつけなければなりません。ただ、この再評価の問題はそう簡単に片づく筋のものでもないようでございます。いろいろ私どももなお研究を要する点があるように思うのであります。しかる上で貴金属特別会計なり、あるいは日銀の状況等もこれは正確にしておきたいものだと、かように思います。もう少し時間をかけていただかないと整理がつきかねる、かように思います。
  261. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 とにかく私の試算では、日銀が保有しておるだろうという金をあらいざらい計算をいたしまして出しますというと、大体二億ドル、二三%、これに四十四トンのからになっておる分を、あなた方は地金は地金だと、こうおつしゃいますが、それを計算に入れるというと、それが五千万ドル、ちょうど二九%になります。これを入れれば二九%。従って、金の問題が、どんどん外貨を使って買付をせられておるにかかわらず、基礎になる数字がきわめて不安定で不明瞭であります。これは緊急に当委員会を通じてでもけっこうでございますが、その方針を明瞭にせられたいと思います。  それから、から債権の処置についても、いつ、どういう方法でやるかということについては、やはり腹案を示してもらいたい、かように思います。よろしゅうございますか。
  262. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 先ほど来お話し申し上げておりますように、接収貴金属の問題が法律で制定を見ますると、この面で解決のつくものも相当ございます。そういう点も含めて、これを正確なものに大蔵、日銀両局の間で十分協議を遂げまして、そうして結論を出したいと思います。しかしながら、そう簡単に右から左へもなかなかできかねると思います。いましばらく時間をかしていただきたいと存じます。
  263. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) 先ほどから問題になっております外貨保有高の数字でございます。実は日本の外貨保有高といたしましては、いつでもこれが支払に充てられる流動的なものでなくちゃならぬという意味におきまして、実は接収貴金属というものは、これは動かすことができませんので、保有外貨と考えるわけにいかないという意味で保有外貨からは抜いてございます。この接収貴金属の分でございますが、これにつきましても、相当分は日本銀行が幾ら持っておるかということをはっきりいたしております。若干やはり接収貴金属の法律が通りましたあとで調べてみましたら数字に異同が生ずるかもしれないという点がございますので、その辺ははっきり数字をここに出すことはできないかと思います。とにかく、保有外貨と申しますのは、そういう流動的な形、それを集めておりますので、接収貴金属のようなものは保有外貨として計算をしておりません。それだけちょっとお断わりいたしておきます。    〔委員長退席、理事小柳牧衞君着席〕
  264. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 これは日銀総裁、大蔵大臣に、そういうことであれば重ねてお話を申し上げたいと思います。もし流動ということを中心にして勘定整理をおやりになるならば、今度初めて買付になりました分は、海外寄託金地金勘定という新しい目を設定になっております。地金と紙ぺらと一緒にしておいでになるのだが、そういう流動ということで勘定整理をなさるということであれば、やはり国民が日銀のバランスシートを見てその内容が一ぺんでわかるように、十何年も全然内容がわからないで今日来たわけですが、わかるように、もう少し親切な勘定整理をなさらなければならないと思います。この点について、総裁はどういう工合にお考えになるのでしょうか。私はやはり過日は日銀法によって、日銀には責任があるのではないかということを申し上げたのでありますが、勘定整理があまりにもラフ過ぎやしませんか。
  265. 山際正道

    参考人(山際正道君) 日本銀行の勘定科目が、国民の皆さんに容易に御理解を願えるような形に常時保つという努力は、むろん私どもも心がけておるつもりでございます。御指摘の戦後処理からつながる各種の問題につきましては、実は、今、御指摘のような金地金の関係もございまするし、なるべく早くこれを正常化いたしまして、その基礎の上に、冒頭申し上げましたような、きわめて容易に理解できるような形に持っていきたいと思います。今、鋭意、行内におきまして、各種のそれらの関係の事務改善に関しまして特に分科を設けまして研究に努力いたしております。
  266. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 次に、私は経済企画庁にちょっと大蔵大臣にお尋ねをする前にお尋ねいたします。三月三日、経済企画庁が発表になりました月例経済報告ですね、これに出ておりまする鉱工業の生産指数を見まするというと、三十四年一月の実績は一六一・七となっております。そうして私が計算いたしました前年度同月対比が一三%増になっておりますが、もしこういう傾向が日本経済界にあるとすれば、もう本年度はあと二月と三月だけであります。二月と三月の鉱工業生産指数の大体の予測はどの程度になるか、これを承わりたいと思います。
  267. 世耕弘一

    国務大臣世耕弘一君) 指数のことでございますから、政府委員から。
  268. 大堀弘

    政府委員(大堀弘君) お答え申し上げます。製造工業の生産指数につきまして、鉱工業の方を申し上げます。鉱工業の方について、昨年の十月以降、御指摘のように上って参っておりまして、十月一五一、十二月一五〇……
  269. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 いや、これに基いて言って下さい、月例報告に。
  270. 大堀弘

    政府委員(大堀弘君) それは季節指数に載っておる数字かと思います。ちょっと手元には……。
  271. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 ほかの数字を言われたのではわからない。
  272. 大堀弘

    政府委員(大堀弘君) 御指摘通り、数字が上っております。ちょっと季節指数を持ち合しませんので、なまの数字を持っておりますので……。一月は季節的に見ますと、相当高い数字が出ております。季節変動を除きました数字で申し上げますと、御指摘のように、一月は一六一・七になっております。十月以降一五二、一五三、一五六と来て、一月が一六一と相当高い水準でございます。私ども予測いたしました三十三年度下期の生産上昇予想カーブに比べまして若干高いところに行っていると考えられます。今後二月、三月の動きでございますが、多少十二月あたりから高い感じがいたしますので、たとえば鉄鋼生産等がかなり急速に上っておりますが、このままの勢いで今後上昇を続けるというふうにも考えられませんので、多少調整があるのじゃないかと思っておりますが、それにいたしましても一五〇台、三月はかなり指数としては常に高く出ますから、相当高い数字が出ると思います。総合といたしましては、予測よりも多少高い数字にいくのではないか、かように考えております。
  273. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そういたしますると、今の高い、昨年の十二月以降伸びて参りました指数をとりますというと、昭和三十三年度の年度の指数は大体どれくらいになる御予定でしょうか。
  274. 大堀弘

    政府委員(大堀弘君) 一応二月、三月を予想いたしまして三十三年度平均といたしまして一五〇・五、これが一応私ども研究段階の結論でございます。
  275. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 一五〇・五だということになりますと、あなたの方からいただきましたこの予算の説明資料ですね、経済の見通しと経済運営の基本的態度、これの一番おしまいにあります、主要経済指標というのがありますが、そこの一四六・三と、大幅に伸びてくるわけです。そうすると、結果において一〇六・一という、三十四年、三十三年度対比の経済の成長ですね、これが頭打ちをすることになると思いますが、いかがでございますか、もう一口申しますと、六・一%成長するということになっておりますが、六・一%成長にならない、一五〇だと三・二%か三%くらい、そのくらいになると思います。
  276. 大堀弘

    政府委員(大堀弘君) 現在、見通しとして考えておりますのは、御指摘のように一四六・三でございますから、それに比べますとかれこれ四ポイント程度高く出ております。来年度の動向といたしまして、本年度予想よりも多少消費あたりも高い情勢がございます。設備投資も多少予測よりも落ち力が少いという工合に近い状態が出ております。そういったことで、本年度下期予測が予想よりも高いことになっておりますが、来年度しからば果してどういうふうに動きますか、消費等につきましては、あるいは多少実数としては、経済計画で見ておりますよりも、今の情勢でいきますと少し上へ行くかもしれない、この辺も実はもう少しデータを集めまして、三月までの実際の動きをつかみましてから私どもも全体の計画をレビューしてみたいと思いますが、気持といたしまして、そう大きな変化は出ないのじゃないか、むしろ来年度も、本年度が少し下期になって上りが強い、ということは、むしろ来年度も続くのではなかろうかという予測もございます。その辺はもう少し今後の動きを勘案いたしまして検討いたしたいと思います。
  277. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 三十四年度の見通しの生産水準は一五五・二、これだということでございますか、見通しとして間違いないと、こういうことでございますか。
  278. 大堀弘

    政府委員(大堀弘君) 三十四年度につきまして実数の動きによりまして、三十三年度が高いと、自然、同じ数字でございますと、三十四年度が御指摘のように低く出るわけでございます。
  279. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 低くないのです。五%高いのです。
  280. 大堀弘

    政府委員(大堀弘君) かりに三十四年度が予想通りの数字でございますと、三十三年度が予想よりかりに高い数字が出ますれば、三十四年、三十三年の比較においては低く出るということに相なるわけでございますけれども、全体の動きがただいま申し上げましたような状況で動いておりますと、三十四年度も多少予測が変化するということも考えられますので、その辺はもう少し、現在、昨年の秋から上ってきております情勢について分析をいたしまして、その上で的確な見通しを立てたいと、かように考えております。現在のところ、確定的な見通しということはちょっと申し上げにくいのであります。
  281. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私は、これから続ける質問の前提条件としてお尋ねしているので、経済の伸びが六・一%になるのか、あるいは三%でとどまるのか、これによって今審議している予算のワクがずっと変ってしまうじゃありませんか。これが変るということは、鉱工業生産の指数が変るということは、国民総生産の率がそのまま変るということですよ。そうすると、予算編成のいろいろな基準になったものはずらっと変るじゃありませんか。私は今、大堀さんのおっしゃったように、鉱工業生産水準が三十三年度の実績見通しが一五〇で、三十四年度の見通しは一五五だ、そうするというと、うんと縮まってしまいます。半分になってしまう。そのときに、どういうことになるかというと、私は六%伸びるならば、一五五が一五九ぐらいに伸びるのじゃないか。そうするというと、国民総生産というものは十兆七千六百二十億円から二千億ぐらいの増加になるだろうと思うのです。ちょっとした見通しの間違いでこういう現象が起きてくるのは、私は数字の遊戯をしているわけではないので、もう少しきちんと答えていただきたい。
  282. 大堀弘

    政府委員(大堀弘君) やはり経済は動いておりますので、民間の投資動向、在庫投資設備投資、それから消費の動向等が常時動いておりますので、たとえば現在鉄鋼の生産が非常に上っている、在庫投資あたりが相当に動いているのじゃないかというふうに推察されるわけでございますけれども、あるいは四月、五月の需要が現在一時的に繰り上げられまして、それが生産に影響を与えているのか、あるいは基本的に需要全体として上ってきているから、その辺の動向につきましては、いましばらく検討いたしませんと最終的な判断は困難な状態でございます。従いまして、あるいは現在の需要が多少よけいございまして、四月、五月には多少勢いが低下して、それからまたあと生産に対する経済の需要がそれ以降上昇していくという格好にあるいは出るのじゃないかというような予測をされます。この辺は、いましばらく、数カ月動向を見きわめませんと、はなはだ申しわけございませんが、的確な数字の改訂は申し上げられませんが、一応現在やっておりますのが私どもの当面の見通しになっているわけでございます。
  283. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 しばらく待てとおっしゃっても、予算審議をストップしてそれまで待っているわけにいきません。  それですから、局長、あなたが三十三年度の実績見込みのごく最近の現われた現象を例にとって一五一だということをおっしゃったわけですから、これでもう少し検討されて、個々の部分を修正する必要があれば修正の数字を示していただきたい、私は今の御説明では納得しませんよ。  それから、経済企画庁の長官にお尋ねしますが、これは大蔵大臣も聞いておいていただきたいですが、昭和三十二年に神武景気が裏返って、強硬な対策をあなた方おとりになりました。昨年の七月の特別国会のときに私どもはもう積極政策をとるべきではないかということを強く主張したことがあります。ところが、なかなかよく情勢がつかめないというお話でありましたが、実は昭和三十二年度のあの激変をいたしましたときに、三十二年度の年次経済報告書が企画庁から出されました。そして統計の不備あるいは調査の能力の点等があって見通しを誤まったことは大へん申しわけない、しかし今後は経済調査に対しては科学的合理的に行なって的確な判断をするようにしたいからよろしくという御答弁が一昨年ありました。その後経済企画庁としては、こういう経済の診断についてどのような科学的合理的な作業ができるように具体化せられたかどうか。この点を企画庁の長官伺います。  それから、大蔵大臣には、あなたは昨年七月の特別国会でわれわれが論争いたしましたときに、いや、まだ在庫の調整は十分終っていない。秋口でなければ積極政策などというものはとれるものではない、こういう工合にお逃げになったのだが、もう十二月になるというと、この大きな積極予算をお作りになりました。きわめて経済の見通しとしては、的確であったでありましょうが、こういうふうにお作りになった。ところが、経済企画庁の経済研究所が、なるべく景気の診断を早目に出して、国民の利益に供したいというので、四半期報告を出しました。それを見ますと、その中に書いてある説明を読めば、昨年の七月以後には底はなかった。七月ごろが一番底で、もう第二四半期からずっと上に上ってしまった。こういう診断です。そうすると、われわれの方が勝って、大蔵大臣の診断は間違いであったのです。そういうような工合に、今の総生産のことでもそうですよ。きわめて怪しげな数字なんだが、もう少し経済の見通しを数字的に合理的になされるのに何かいい方法がございませんか。この点伺っておきます。
  284. 世耕弘一

    国務大臣世耕弘一君) お答えいたします。御指摘の点はごもっともだと思いますが、その後企画庁といたしまして対策を講じた二、三の点に触れて申し上げたいと思います。  まず第一に申し上げておきたいことは、日本の統計があなた御指摘になるように、完全なものでないということも私は認めざるを得ないと思います。同時にまたパーセンテージの問題についても、これはまあ世界各国いずれの国でもパーセンテージの問題の見込みについては論議が絶えないことも御承知通りと思いますが、しかしながら、経済の見通しの根本をなすものはすなわち統計の確実性と、敏速であるということと正確であるということを中心に考えまして、その後企画庁といたしましては、まず電子計算機を購入する、数千万円を投じまして近く、予算に計上しておりますから、通りましたらこれの実施に入ります。  それから今、御指摘にありました経済研究所をもう少し活発に活動を開始せしめ、その他経済の動きを敏速にキャッチするために、それぞれの庁内の  それから、経済企画庁の長官にお尋ねしますが、これは大蔵大臣も聞いておいていただきたいですが、昭和三十二年に神武景気が裏返って、強硬な対策をあなた方おとりになりました。昨年の七月の特別国会のときに私どもはもう積極政策をとるべきではないかということを強く主張したことがあります。ところが、なかなかよく情勢がつかめないというお話でありましたが、実は昭和三十二年度のあの激変をいたしましたときに、三十二年度の年次経済報告書が企画庁から出されました。そして統計の不備あるいは調査の能力の点等があって見通しを誤まったことは大へん申しわけない、しかし今後は経済調査に対しては科学的合理的に行なって的確な判断をするようにしたいからよろしくという御答弁が一昨年ありました。その後経済企画庁としては、こういう経済の診断についてどのような科学的合理的な作業ができるように具体化せられたかどうか。この点を企画庁の長官伺います。  それから、大蔵大臣には、あなたは昨年七月の特別国会でわれわれが論争いたしましたときに、いや、まだ在庫の調整は十分終っていない。秋口でなければ積極政策などというものはとれるものではない、こういう工合にお逃げになったのだが、もう十二月になるというと、この大きな積極予算をお作りになりました。きわめて経済の見通しとしては、的確であったでありましょうが、こういうふうにお作りになった。ところが、経済企画庁の経済研究所が、なるべく景気の診断を早目に出して、国民の利益に供したいというので、四半期報告を出しました。それを見ますと、その中に書いてある説明を読めば、昨年の七月以後には底はなかった。七月ごろが一番底で、もう第二四半期からずっと上に上ってしまった。こういう診断です。そうすると、われわれの方が勝って、大蔵大臣の診断は間違いであったのです。そういうような工合に、今の総生産のことでもそうですよ。きわめて怪しげな数字なんだが、もう少し経済の見通しを数字的に合理的になされるのに何かいい方法がございませんか。この点伺っておきます。
  285. 世耕弘一

    国務大臣世耕弘一君) お答えいたします。御指摘の点はごもっともだと思いますが、その後企画庁といたしまして対策を講じた二、三の点に触れて申し上げたいと思います。  まず第一に申し上げておきたいことは、日本の統計があなた御指摘になるように、完全なものでないということも私は認めざるを得ないと思います。同時にまたパーセンテージの問題についても、これはまあ世界各国いずれの国でもパーセンテージの問題の見込みについては論議が絶えないことも御承知通りと思いますが、しかしながら、経済の見通しの根本をなすものはすなわち統計の確実性と、敏速であるということと正確であるということを中心に考えまして、その後企画庁といたしましては、まず電子計算機を購入する、数千万巴を投じまして近く、予算に計上しておりますから、通りましたらこれの実施に入ります。  それから今、御指摘にありました経済研究所をもう少し活発に活動を開始せしめ、その他経済の動きを敏速にキャッチするために、それぞれの庁内の  それから、経済企画庁の長官にお尋ねしますが、これは大蔵大臣も聞いておいていただきたいですが、昭和三十二年に神武景気が裏返って、強硬な対策をあなた方おとりになりました。昨年の七月の特別国会のときに私どもはもう積極政策をとるべきではないかということを強く主張したことがあります。ところが、なかなかよく情勢がつかめないというお話でありましたが、実は昭和三十二年度のあの激変をいたしましたときに、三十二年度の年次経済報告書が企画庁から出されました。そして統計の不備あるいは調査の能力の点等があって見通しを誤まったことは大へん申しわけない、しかし今後は経済調査に対しては科学的合理的に行なって的確な判断をするようにしたいからよろしくという御答弁が一昨年ありました。その後経済企画庁としては、こういう経済の診断についてどのような科学的合理的な作業ができるように具体化せられたかどうか。この点を企画庁の長官伺います。活動を活発にするという方針で、せっかく今努力をいたしておりますということを申し上げておきます。
  286. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) まあ、昨年の景気の見方が甘かったとか、辛かったとか、時期的に違っているとかと、こういう御批判があるようでございますが、とにかく景気は下降しているときと、それから上昇しているときと、あるいは横ばいにあるとき、その表現の仕方はなかなかむずかしいものだと思います。私ども、ちょうど調整の期間に入っているという時期に、もうすでに、ある学者によりましては景気は上昇線をたどりつつある、こういうような診断をし、またある政治家はまだまだ不況のどん底にある。二重底があるのだから、この際刺激を与える必要がある、ごうも申します。しかしながら、過去の事柄についてのそういう時期的な相違は少しはあるかと思いますが、いずれにいたしましても昨年来上昇線をたどりつつあると、このことは見のがすことのできない現実のように思いますし、それが何月からどうなったとか、こう月を限って一線を画すことはなかなか困難ではないかと私は思います。三十四年の予算が非常に膨大だと、多分に刺激策を取り入れておるのじゃないか、こういうような御批判もあるようでございますが、私どもは三十四年の経済の成長、これに対応する必要なる予算だ、かように考えておりまして、特に刺激をつけると、こういうような意味は持たしたつもりではございません。
  287. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 だから私は申し上げておるので、三十三年度の実績見込みの鉱工業の生産水準が五%近くももう実績で上回ってきている。従って、あなた方の今年のお作りになった予算は、国民総生産を六・一%の成長率で編成したとおっしゃっている。これがもうくずれちゃっているのです。それだから、どうなさるということを私申し上げている。何も見通しが抽象的に誤まったとか誤まらないという問題でなくて、私が具体的に数字で申し上げているので、あなたの方でいただいた数字で申し上げている。だからこれは企画庁長官、あなたの方の予算提出された資料で、国民総生産の三十三年度と三十四年度との対比が六・一%もふえる、国民所得も六・一%ふえる、鉱工業生産水準も六・一%ふえると、こういう数字が出ている、これ今、大堀局長が認められたことによって全部変るのです。だから、その変ることをはっきりされて、その修正の数字をぜひ出していただきたい。
  288. 大堀弘

    政府委員(大堀弘君) 私の方の、先ほど申しました最近ごく短期の動きから見まして、予測より多少高いということを申し上げましたが、全体の年度比較で見ました場合に、来年度が今年度の経済計画の線とそう大きな食い違いが出ると、現在はそう大きな食い違いが出るとは考えておりません。
  289. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それは答弁用にそうおっしゃっている。私は一々この数字で自分でもチェックして見たし、数字でそうならないのですよ。ならないからそれで言っているので、いずれこれは分科会でもう少し私はこまかく伺いますから、それまでに勉強しておいていただきたいのです。  それから、もう持ち時間が来ちゃったそうですから、大蔵大臣に私は、経済の成長率を六・五%にとりまして、長期経済計画をあなた方は持っておいでになります。この長期の経済計画というものが六・五%という数字が出ておりまするから、従って十年後の経済の成長も計算できるわけです。たとえば私が試算しますと、三十一年度に七兆六千八百億円の国民所得が、昭和四十二年の十年先には十四兆七千五百億になります。倍になります。ところが、そういう大きな国民所得になるのについて、こういう工合になるから国民に働け働けという一種の号令的な奨励的なものが出ているわけです。ところが、その大きな国民所得が出てくるのに対して、それの使い方をきめる国家財政の方については一言も触れておいでにならない。今までの統計によりますと、大体国民の所得のふえただけずつ国家財政をふやしておいでになります。大体租税収入は中央、地方を合せて国民所得の二〇%で、これでずっときております。ところが、今後国民が要望するのは、日本の一人当りの国民所得が非常に低い。アメリカの十分の一とか、イギリスの六分の一とか、あるいはドイツの三分の一とかいう工合に低いのでありますから、一人当りの国民所得を非常に上げてもらいたいという熱望があるわけです。そうすると、政府としては働け働けというこの号令的な目標をお出しになった限りにおいては、国民に対してそのリターンとして国家財政の規模はこういう規模で今度やっていくんだ、その内容の構成はこういう工合にするのだという国家財政の方の規模もやはり長期の計画というものを発表されて、そして国民に、十年先のことで、あまり先のことでどうかと思いますけれども、それにしても十年先には税金がこれだけに減るのである、社会保障の費用がこれだけにふえるのである、こういうように夢を持たせなければいかぬと思うのです。そういうものが今まで一回も発表になっておりまん。従って私はその点について、きょう時間があればある程度試算をしてみましたからその数字についてずっとお尋ねをして参りたいと思いましたが、時間が参りましたので、分科会のときに、これはとくとお尋ねをしたいと思います。従って大蔵省の方におかれても、今私が申し上げました考え方というものは、大体おわかりいただいたと思いますから、これに応じていただけるような準備をぜひともお願いをいたしたい。それだけ申し上げまして、私の質問を終ります。
  290. 小柳牧衞

    理事(小柳牧衞君) 栗山君の質疑は、これをもって終りました。   —————————————
  291. 小柳牧衞

    理事(小柳牧衞君) この際、委員の変更について報告いたします。  川村松助君が辞任し、その補欠として柴田栄君が、古池信三君が辞任し、その補欠として土田國太郎君が選任せられました。   —————————————
  292. 小柳牧衞

    理事(小柳牧衞君) 次に、戸叶武君でございますが、先ほど高田なほ子君の外務大臣に対する質疑が残っておりますので、この際これを許します。高田なほ子君。
  293. 高田なほ子

    高田なほ子君 外務大臣にお尋ねをいたします。  一昨日来、私どもの質問について、その趣旨は十分おのみ込みになっていらっしゃると思います。ただ、日本政府側の答弁の内容は、アメリカ軍の日本における行動については、憲法は規制しない。いかなる戦争行動も、いかなる戦力もこれは日本側として規制しないというような御発言があって、私どもとしてはまことにこの点について疑問と恐怖を持ちながら質問を続けてきたわけです。そこで、今度安保条約の改定に当りまして、外務大臣その衝に当っておられますが、この基本となる精神は、私は全米相互援助条約、この条約に基本を置くべきだというような考え方をしておる。なかんずく第一条では、これは「(戦争の否認)」「正式に戦争を否認し、」「武力の威嚇又は行使をなすことのないことを約束する。」これが第一条の戦争否認のアメリカの意思であると考えている。従って、安保条約改定に当るその基本的な態度は、あくまでも戦争否認というこの規定というものが尊重されなければならない。このように考えますが、いかがでしょうか。お答え願いたい。
  294. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) もちろん安保条約を締結いたしますのは、やはり国際の平和と安全を希求する日本の意思にあることはむろんでありまし出て、しかも自衛のために最小限度に日本を守っていかなければならぬ、そういう必要がある場合にこれを達成していくのだという形でありますから、武力行動というようなものが、安保条約を締結しましても起らないことが望ましいことは当然なことであります。従ってそういう意味において、われわれ基本的に安保条約締結におきます態度もそうでありますが、同時に国連憲章に沿ってこれをやるわけでありますから、国連憲章におきましても武力をできるだけ用いようという意味で集団安全保障なり、あるいは自衛のことを考えておるわけではないので、やはり恒久的な平和を達成するためにできるだけ平和であるという精神には変りはない。そういう意味において、われわれとしてはできるだけの努力をする考えでおります。
  295. 高田なほ子

    高田なほ子君 端的に、戦争否認の精神というものはあくまで尊重するというふうに了解してよろしゅうございますね。
  296. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん日本国民が戦争を欲しておりませんし、世界のいずれの国民も私は戦争を欲しておるとは思っておりません。しかしながら、現在の状態は私は残念ながらやむを得ずそういうような局地的な戦争が起る、紛争が起るという状況にあろうと思うのでありまして、われわれとして、日本国民の願望が戦争をしたくないという考え方であることには私ども同感をいたしておるわけであります。
  297. 高田なほ子

    高田なほ子君 ただし、いろいろな在日米軍の配備及び武力行動の範囲等については、協議事項の中に盛るというお話でありますが、このことは、同条約の第三条の精神を盛ったもの、すなわち外国からの攻撃に対抗することを援助することを約束する口攻撃に対する対抗措置を援助する約束というものを、協議事項の中にお盛りになる御予定でございますか。
  298. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今度の交渉に当りまして、俗な言葉で言えばできるだけ戦争に巻き込まれたくない。われわれとしては好んで戦争をするわけでございませんし、やむを得ず侵略を受けた場合に、それに対抗するという立場でありますから、戦争に巻き込まれたくないということは考えております。従って、作戦行動は、アメリカの配備、装備の問題等につきまして協議事項にいたしますのもそういう趣旨からきているわけでございます。
  299. 高田なほ子

    高田なほ子君 三条との関係があるか……。
  300. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 三条との関係が直接あるかどうか知りませんが、そういう精神的な意味において関係があると思います。
  301. 高田なほ子

    高田なほ子君 終了いたしました。
  302. 小柳牧衞

    理事(小柳牧衞君) 高田君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  303. 小柳牧衞

    理事(小柳牧衞君) 次は、戸叶武君にお願いいたします。
  304. 戸叶武

    戸叶武君 現在の日本の政治は日の当るところと日の当らないところが著しくなり、特に株価は昨年十一月四日から神武以来の暴騰を続けております。ダウ六百円から七百円を突破し、七百二十円にまでなったというような、こういう状況でありますが、私は先般不況下における株価値上り現象の暴発する直前において、当時岸内閣の閣僚であった池田氏の、第三次公定歩合引き下げの当面の責任を追求いたしましたが、この証券投資の、大衆投資の傾向は、大蔵省の単なる規制では、コントロールできない状態にあります。大衆の金は定期預金から貸付信託へ、やがて証券投資へと流れて行くでありましょう。この際における四大証券及び中小九十数社の責任は重いのであります。現に中外証券なるものが、四、五年間に七億三千万円からの客の株券をいいかげんにしてしまったのであります。毎年一回の定期検査程度では、これを取り締ることはできないと思いますが、政府はこれに対していかなる処置をとろうとしているか。
  305. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 最近の株価の動向につきましては、影響の及ぶところ非常に大きいと思いますので、もちろんこれにつきましては最大の注意を払っておるのであります。  ただいま御指摘になりましたように、証券会社に対しの検査は、一年に定期的にもいたしますが、もちろんそれだけでは足らないことでございますから、随時私どもは必要に応じて検査し、また同時に証券会社の自粛も願い、また制度的にもいろいろ改善をいたしまして、株式価格、株価が異常な価格にならないように絶えず指導いたしている次第であります。
  306. 戸叶武

    戸叶武君 株価の異常な暴騰を押えようとしていると言うが、現実には押えられないのが事実であります。証券と投資信託の兼業について佐藤大蔵大臣は信託業務分離の方向に持っていかなければならないという見解を持っていられるようでありますが、二千億円をこえる投資信託を現在いかなる時期においてそういう方向へ導いていこうとしておりますか。
  307. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 今日の株価の高騰が、投資信託が非常に影響がある、確かに影響があることは私どもも見のがすことはできませんが、今日の株価そのものは投資信託のあり方だけで決定されておるものでないということ、これもやはり十分理解しなければなければならないことだと思います。そこでただいま申しますように、投資信託のあり方について今後どうしたらいいか、これは監督官庁であります政府ももちろん検討いたしておりますが、同時にまた業界におきましても、投資信託の今後のあり方についてはみずからも研究いたしておる次第であります。大体のその傾向としては、ただいま戸叶委員が御指摘になりますように、投資信託が一般証券取引とは別個のものといいますか、この分離という方向に研究されておることは事実でございます。しかしながら、分離すると申しましても、わが国の証券業界の実情からいたしまして、いろいろ複雑な事情もございますから、十分影響度等も考えて参らなければならないのであります。今日直ちに、あるいはその時期等が明確に非常に早急に差し迫って、これが分離しなければならないまでは実は考えておりません。絶えず分離の方向でいろいろ検討は続けておる、まだ結論は出ておらない、こういうのが現状であります。従いまして、時期等も非常に急速に分離しなければならない、こういう差し迫った状況だとは私ども考えておりません。    〔理事小柳牧衞君退席、委員長着席〕
  308. 戸叶武

    戸叶武君 大蔵大臣は、差し迫った状況でないというふうにのんきにかまえておりますが、あの神武景気のあと半年たたないうちに不況が押し寄せてきたことを、当時の大蔵大臣は予見できなかったのであります。私は民法百八条の双方代理の禁止の法理論をここで展開しようとするのではないのですけれども、分離の現実的要請というものを早急にやらないと、問題が起きたときに政府の政治的怠慢というものが私は追及されると思うのであります。株価の暴騰は、投資信託のあり方だけでないのは事実でありますけれども、この分離に至るまでの過程における処置を具体的にどうしていくかという、そういう対策がなければ、やがて政府の怠慢ということが追及されると思いますが、そのことを承わりたい。
  309. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 投資信託で私どもが特に注意をいたしておりますのは、過大な競争といいますか、過大な広否によりまして善意の人たちに悪影響を及ぼすことのないようにということを第一におそれておるのであります。同時にまた、投資信託であります以上、当然相当の利潤を約束しないと投資信託に客は集まらないわけでありますが、ところが投資信託は、御承知のように、元本、利子を約束しておるわけのものではないと思います。保証しておるものではないと思います。元本についてですね。そこで配当等について、これが高配当を持続するというところに非常に投資信託の経営上にも問題が存するように思うのであります。そういう意味で、業界におきましてもいろいろ今自粛の方法を立てておるようでありまして、過当な競争をとにかく避るように、誇大な広否などはこれを注意するように、この元本自身が保証されていない点も投資家としては十分理解しなければならない、こういうようなことをいろいろ申しておるわけでございます。同時にまた、投資信託の金額が非常にふえてきて、そのあり方等についても私どもも絶えず注意し、その正常なあり方を指導しておる、こういう状況でございます。
  310. 戸叶武

    戸叶武君 投資信託が非常にふえている今日、元本、利子を約束していないからというような形でおいて、今のように野放しにしておくと、私は政府責任というものは非常に重いと思うのです。アメリカにおける株価の値上り、あるいはイギリスにおける株価の値上りは、日本とは若干違うと思うのであります。ソ連の軍事兵器の脅威を経て極端に値が下ったアメリカが、この株価が復活して参りましたが、それでもなおかっこのインフレを懸念しながら公定歩合の引き上げを行なって抑制措置をとっているという今日、またイギリスにおきまして、五月における総選挙を前にして保守党が雇用を拡大する目的でもって公共事業に対しての投資を広げていっている、それと日本の状況は違うと思うのであります。私はここで、今日のこの不況下におけるなべ底景気といわれるような沈うつな時代に、優良株というものが極端に暴騰している反面、中小企業やあるいは農業部門においては、依然として冷たい風が吹いている。これが岸内閣の私は一つの政治的な象徴であると思うのであります。日の当らない日本の農政をどう打開していくか、この問題は前にも幾多の事例をあげて農林大臣に質問いたしましたが、ほとんどむだであります。この曲りかどにきた農政に対して確固たる施策を持たないのが三浦農政の特徴性であります。まだ赤城農政は一つの野人としての粗雑ではあったが、意欲があったが、三浦農政というものは沈滞そのものでありますが、私は今日政府は、農業基本法を制定すべしというこの要請を受けて、農林基本調査会というものを作り上げようとしておりまするが、その調査会において、二年間時をいいかげんにずらしていくのか、それとも農業基本法をこの期間内に作り上げるのか、そういうことがあなたの答弁では明確になっておりませんが、もっと明瞭に一つの回答を願いたいと思います。
  311. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) 今度農林漁業の基本問題に関する調査会の法案提出いたしておるのでございますが、この前も私が説明申し上げました通り日本の農業等を成立させる条件ととしての、たとえばこの土地等の問題につきましても、これは非常に狭小である。わずかに五百十万ヘクタール程度の耕地をもって、そうして四千四百万の農民を養わなければならぬ、これはもう列国に比べまするならば日本ほどひどい条件のところはございません。  第二番の問題といたしまして、さらにこれを拡大しようという場合におきましても、土地の利用区分から考える場合に、よく山地農業の提唱をせられるのでございますが、これは西ヨーロッパの土地条件とは非常に違っておる、同時にまた、台風の常襲地としまして、西ヨーロッパのごとき台風の被害のないところと違いまして、その経営におきましても非常に違っておるわけでございます。従いまして、これだけの宿命的な悪い条件がありましても、これを放置するわけには参りません。従いまして、今後われわれは土地の利用区分におきましても、同時にまた、生産力を拡大する面におきましても、これは十分に検討し、考え直さなければならぬと思うのであります。同時に、農山漁村方面におきましては過大なる人口をかかえておりますから、第二に雇用問題は非常な大きな問題であります。ドイツにおきましては、農業の人口を工業方面に転換させまして、そうして農業の生産性を高めるとともに、雇用政策を解決しております。これは戸叶さん御承知通り、ドイツの農業の行き方がさようなことになって参ったのでございますが、日本におきましては、これらの条件を満たす上におきましても基本的な問題がございますので、われわれはわれわれとして考えて参りたい。しかしてこれらの問題を解決するにつきましては、第一に考えなければならぬことは、国の財政投融資、これの拡大はどうしてもこれは考えざるを得ないのであります。私はその際におきましても日本の国の置かれている地位は、貿易をもって立たなければならぬ関係でございますので、これらの面につきましても、単に、農山漁村の問題は、そのワク内ではとうてい解決し得ない、こういうことでございますので、われわれとしましては、この際国民経済の高い見地からこの問題を見直す。そして次の方向を求めたいと、こういうことでございます。同時に、また列国の農業政策の基本的なあり方を見ましても、国々によって事情が異なっておりますることは、もう御承知通りであります。われわれとしましては、これらの問題と取り組みまして1農業基本法を策定せよ、こういう御意見でございまするが、われわれとしまするならば、立法を要する場合におきましては、その立法の措置を、さらにまた拡大した財政投資等を予定したところの予算の問題等につきましても、結論を見ます際に、これを積極的に取り進めたいというのがわれわれの念願でございます。これが、われわれの今度農山漁村に対しまする基本問題の考え方と同時に、取扱い方でございます。
  312. 戸叶武

    戸叶武君 三浦農林大臣は、いつも農政に対する基本的な考え方の前提として、日本の土地は狭い、人口が多過ぎるという重圧の中にいじけておるのでありますが、最近道路公団で招いたアメリカの著名な経済統計学者は、あなたがおそれているそれを、台風常襲地帯における日本の雨量と、日本の多い人口というものが、日本の富源であるということを強調し、このことはたしかリーダース・ダイジェストにも紹介されてあったはずでありますが、物の見方が非常に私はいじけているのではないかと思うのであります。政府側の部には、農業法制定後における西ドイツ等においては農林水産関係予算が二倍にも増大したと、こういうことから農林予算の膨張が生まれてくるのではないかというのをおそれて、農業基本法の制定をちゅうちょしている向きがあるというような話も伝わっておるのでありますが、今あなたの話を聞くと、立法措置と拡大した予算措置ということをにらみ合せてという話もありましたが、やはりそういう点を懸念して農業基本法制定にブレーキをかけておるのかどうか、このことだけ伺います。
  313. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) われわれはそういう条件によってブレーキをかけられているという考えはございません。むしろ立法すべき基本問題のあり方をつかむということでございます。
  314. 戸叶武

    戸叶武君 立法すべき基本問題をつかむ——日本の政治が始まって幾年になるのです。日本の農政が始まって幾年になるのです。日本の重要産業と言われる農政に対する基本的なつかみ方のできない農林大臣が今日あるということは不幸です。ドイツにおいて農業基本法がやはり促されたときの条件というものは、やはりこれは一九五三年から五五年の調査によりましても、農業の雇用労働者の賃金というものが、工場労働者の賃金から三〇%低かった。この賃金のアンバランスを是正しなければならないということが動機になって作られていったのでありますが、日本の農民は国民の四割を占めながら、国民総所得に占める地位は二割にすぎない。都市と農村との所得の違いが三対一である。ドイツの農業労働者よりも農民は非常に貧しい状態に押しつけられている。ここに農政の病根というものがあるのであって、しかも土地改革後におけるところの細分化された土地にこもるところの農民は、旧時代の地主のように蓄積された資本もなければ、土地改良に投資すべきところの資本もない。これには当然政府の財政投融資に依存し、長期にして低利なる融資なしには、生産性の向上もコストの引き下げもできないのだ。しかるに政府は、土地改良を言い、畑地灌漑を言い、近代化を言い生産性の向上をしたと言うが、少しもそういう具体的措置を講じてない。問題は、七・四%にとどまるような農林予算では何にもできないのである、そういうことの御認識を持っているかどうか。この財政的な裏づけと農政というものを、どう考えているかを承わりたい。
  315. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) 私はあなたと討論をする気持はありません。(戸叶武君「討論じゃない、重大な問題です」と述ぶ)しかし、農政の基本問題としましては、私も心得ております。しかしながら、膨大なる国費の支弁をするというのでは、私は片づかぬと思う。やはり国民経済全体のワク内で片づけなければなりませんから、われわれとしましては、その事情に応じて最善を尽して推進するということになろうと思うのであります。  ただいま御指摘になりましたが、ドイツの基本法の、農業法の制定の過程を見ましても、これは、今御指摘通りでございますが、その行き方といたしましても、必ずしも当初、立法のような措置には参っておりません。と申しまするのは、農民の側では、その所得の増大を価格政策に求める、そうして強く主張されたのでございますけれども、西ドイツにおきましては、これを、生産性の向上を、他の雇用に転用を求めたのでございました。これらの問題等につきましても、これは日本の実情からいうて、必ずしもお説の通りには簡単には参りませんから、これをいかに調和さし、いかにわれわれこの政策を求めるかということにつきましては、謙虚に、冷静に、かつ周倒な検討を重ねて前進したいというのがわれわれの考えでございます。
  316. 戸叶武

    戸叶武君 これは三浦農林大臣から奇っ怪なことを聞くのです。国会は討論の場です。質問といっても、単なる下僚の質問と違うのです。農政面において対立する政策を持っているから、その質問はおのずから討論的な性格を帯びるのは当然であって、それを奇っ怪とは何ごとか。  西独では、あなたの言っているのとは違う。あなたは現象面だけを見ている。私は一九五六年の八月、西ドイツの首都ボンにおいて、連邦食糧農林大臣リュペケ博士と一日つぶさに私はこのグリーン・レポートの問題、グリーン・プランの問題について、二十幾つかの質問を出している。私は話をしたのです。価格政策におけるいろいろな問題点があるのも事実だが、この生産性の問題の重点をおいて、雇用を他に転じたとあなたは言うが、日本の農業において一番重要なのは、二、三男対策がなっていないわけです。農村におけるところの潜在失業者が多いわけです。この一番基本的な問題を解決しないで、慎重に考慮しているというのは、全く萎縮した旧官僚的な考え方である。今日このグリーン・レポートなり、農業の現状に関する年次報告は、政府によって提出されることによって農業の実態というものが把握できるようになったのであります。農林省が、大ざっぱであったが農業白書を出したことは、一つの進歩でありましたが、あの統計には相当ずさんな面もある。もっと私は研究調査機関を整備し、そうして農業の現在のあるがままの姿の実態を把握し、そうして次にこれをどうしていくかという、そういう西独におけるグリーン・プランのような対策というものが作られなければならないので、今日の農民がいつまでも考えない農民で、哀願、陳情にとどまっていると思うと大きな間違いであります。そういう意味におきまして、私は今日の農業分野における一番の問題は、やはり農業分野の所得と経済の他の領域における所得とのギャップをどうつぼめるか、問題であると思うのであります。これは日本におきましても、農業生産性を高めるのには政府は思い切った保護政策をやらなければならないのであります。製鉄なり電力なり、あるいは石炭なり造船なり、あるいは道路建設に対し、港湾整備に対し、政府は相当の財政投融資をやっているが、国民を養うのには二〇%食糧が不足であり、小麦や、砂糖を年々二千億円も外国から買っているのにもかかわらず、重要産業とは名ばかりであって、食糧増産に対して政府は思い切った積極的な対策を講じていない。私が言うのは、日本の国は、神代の時代から瑞穂の国といって農政を中心に素朴なる農本主義的な政治が中心であった時代から、長い間農政はあるが、その農政が停滞して科学する心がないから今日の農民の貧窮を生んでいるのであって、農民の貧窮は宿命ではない、農政の貧困からこの農民の貧困ということがあるのだ。この事実を三浦農林大臣が謙虚に認識した上に農政というものを立てていくのでなければ、私は、いつまでたっても日本の農政というものの建て直しはできないのじゃないかと思いますが、日本の農政に対してこの現状でよいのかどうか、それから三浦さんに承わりたい。
  317. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) 農林当局といたしましても、日本の農山漁村の置かれたる地位、同時にまた耕作農民の現況にかんがみまして、われわれとしましては、あらゆる角度からその事情を究明し、そうしてこれを打開するの方途を講じたい。と同時に、またただいま御指摘になりましたが、わが国の現状から言いまするならば、農山漁村に対する問題は、いわゆる保護政策をなお数段に取り進めて参るということが肝要であると考える次第であります。
  318. 戸叶武

    戸叶武君 三浦農林大臣は農業生産は国民総年産の一八%程度であると、かつて答えておりますが、一八%の生産は重要な産業であります。西ドイツでは一〇%であります。だが、重要な産業としてこれを取り上げておるのであります。そういう意味におきまして、西独では日本と状況が似ておりますが、六〇%程度の食糧生産から、現在では、農業法が成立した以後においては、七五%に達しておるのであります。農業人口はあなたも問題にしておりますが、第一次欧州大戦戦後のフォンゼクトが指摘した当時は四〇%前後でありましたが、今日においては東ドイツと分離しておりまするけれども、一三%に減じておるのであります。こういうふうに農業というものの障害となっている問題が一つ一つ解決されておるのでありますが、そういうものがどういうふうに今後解決していくか、そのことを承わりたい。
  319. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) 私は最近におけるドイツの農業改革につきましては、実地についてのなには存じませんから、これはもう戸叶さんからの御意見を尊重いたしますが、文献を通して見ますると、われわれの先ほど申し上げた通りであります。同時に、御承知通り日本条件とドイツの条件とはこれは多少違っているということも御了承の通りであります。従いましてわれわれとしましては、今後少い耕地を深く耕し、同時に質を改善するということに努力を向けなければならないことは御承知通りであります。従いまして、いろいろの御批判がありましたけれども、三十四年度の予算におきましても、増額されましたほとんどの大部分を土地改良等に注ぎました点も、こういうところに顧みるところがあったわけであります。  第二に、先ほども触れましたが、今度は畑地の改善、さらにいわゆる農林一体の農業を推進しなければならないと思いますが、この面におきましては、遺憾ながら条件がドイツ等とは異っている、劣位にあるということであります。しかしながら、これらがいかに条件が悪くても、日本の土地を利用するほかには道がございませんので、この方面に強く今後の施策を持っていかなければならぬ、こう考えておる次第でございまして、これがつまり他産業との関係、同時に国民経済の面から見て、ここに解決の道を求める、同時にまた、立法すべき事項はどうであろうかということで、先ほど来申し上げました通りに、われわれの基本問題をとり進めたい基本的な考えでございます。
  320. 戸叶武

    戸叶武君 西独と日本とはいかにも違いますけれども、しかし、西独でやはり食糧輸入を四〇%から、二五%まで引き下げるに至ったのには、この輸入貯蔵公社のような機関を通じて、食糧品の輸出入のコントロールを通じて食糧品の価格の安定ということをはかったのも事実でありますが、日本においてこの小麦や砂糖、こういう問題に対して、そうしたコントロールをやることが今日においては必要ではないかと思いますが、いかがですか。
  321. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) 御承知通り日本の食糧政策の根幹は食糧管理法等を初めといたしまして、主食類すなわち米麦を中心としてこれに次ぐ重要農産物、さきに御指摘になりました砂糖等に至るまで、これは価格支持政策を置きまして、そしてとり進めておる。同時に、農業収入の大体七割方はこの制度によって支えられているということは、現実の姿でございます。しからば現行の制度をもってして十全であるかと申しますと、これは改善を要すべきこともあろうと思います。ことに麦対策等につきましては、今後研究すべき事項があると考えますが、大宗におきましては、今の支持政策によって日本の食糧問題、同時にまた農業収入等に対しましては、相当の力強い政策になっていると考えているのでございます。
  322. 戸叶武

    戸叶武君 労働大臣に農業関係の労働者あるいは潜在失業者のこの統計を、今後どうとっていくか、そういうこと、並びに農林関係、これは農林大臣ですが、この統計や研究調査にたずさわっている人たちの定員外の問題も質問いたしたいのですが、時間がありませんから、労働大臣に対する質問は保留して、あとに残すことにします。  それで、ガソリン税法の一部を改正する法律案をこの国会提出されておりますが、この問題に関しまして、私は政府態度に非常に不満を感ずるものであります。かつて私は参議院の運輸委員長をしておりましたときもこういう問題がありましたのですが、そのときに、この道路整備にガソリン税をとり入れる場合におきましても、それに見合うところの一般財源を他から支出するというのが自民党の政調会における考え方でもあり、また運輸委員会等においてもそういう決議なり、申し合せもなされており、政府もそれを了承しておったのでありますが、課税技術が安易なせいか、道路整備五ヵ年計画のずさんなせいか、こういう工合にして今日また再び安易な方法においてこの増税がなされておるのでありますが、ドイツでも自動車道路、オート・バーンを作った際には、三年計画で国家予算の六分の一をこれに出しておるのであります。東大の今野教授が指摘しておりますように、道路整備の緊急性は認めるが、このガソリン税のみに依存し、国の一般財源財源を求めないといういき方は、これは不健康ないき方だと思うのでありますが、政府は、目下課せられておるガソリン税を軽いと見ているのか、それ以上増税をしないという態度を前にはしておったのでありますが、今日においてはそれを変更しておるのか。日本の販売業者なり、あるいは利用者というものは、西欧諸国とは違って、中小企業が大部分であります。トラックが七〇%を占めております。今度のような増税というものは、大衆課税となって大衆の上にかぶさっているのであるが、これをどう考えるか。ゴルフ道具その他のぜいたく品に対する税率からみるとずっとこの方が重いが、こういう問題に対してもどういうふうに考えているか。また、ガソリン税は消費税で、消費者負担にしわ寄せが行われ、この資金力の弱い中小企業である石油販売業者の金融難など、こういう問題に対して特別融資のワクでも設定するつもりかどうか。この石油の問題とガソリンの問題と、また酒の問題とは非常に関連性があるが、ガソリン税は税収以上酒税に比肩する実績を上げておるのですが、酒税関係は、酒税の確保及び取引の安全をはかるため、業界全般に対する規制措置考えられているが、石油の業界にはこれと見合った措置を行うかどうか。こういう諸問題に対して、大蔵大臣並びに運輸大臣、通産大臣から御答弁をいただきたい。
  323. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 今日の国内の道路、国道といわず、地方道といわず、まことに悪路である。これを改善することの急務であることは、国民のひとしく認めておるところであります。しこうして、これが財源を一体どこに求めるかという問題になるのでありますが、一般財源をもってこれをまかなえという御意見のように伺えますが、すでに御承知のように、ガソリン税は目的税になっております。諸外国の例を見ましても、ガソリン税によって道路を整備しておる。ただいまドイツのお話をされておりましたが、ドイツ等におきましても、ガソリン税は相当多額であります。道路整備を十分まかなうだけの税を課しておるのであります。問題は、目的税だからといってこれを課するという考え方ではないのございまして、今日の石油消費者、これに負担力ありやなしや、負担力がありますならば、この目的税であるガソリン税で道路を整備する、これが最も望ましいのであります。私どもの見るところでは、ただいまの運輸業者において、消費者において、十分負担力ありという実は結論を出しておるのであります。いろいろの見方がございますが、その点は省略さしていただきます。問題は、負担力のないところへ税を課することは、これは避けなければならない。幾ら道路整備が急務と申しましても、それは避けなければならないのでございますが、これが負担力ありと考えますならば、その税によりまして道路を整備する、これが望ましいことであります。なお、申し上げておきますが、今回のガソリン税の引き上げに際しましても、もちろん一般国費からの支弁、これもあるのでございまして、わが国の現状をもっていたしますれば、ガソリン税だけで道路を整備するという実情ではございません。そこで、問題になりますのは、運輸業者が負担するか、あるいは石油販売業者が負担するかということであります。過去におきましては、ガソリン税の金額が少いために、販売業者が負担した例もあるようでございます。いずれにいたしましても、お得意関係、商売関係でそういう問題も起ろうかと思いますが、私は、やはり最終消費者が負担するようになるのではないかと思います。そこで問題は、これが運賃等の引き上げに直ちに影響を来たすじゃないかという議論がございます。しかし、私は運賃構成の面から、ガソリン税がその一つの要素であることは認めますが、これによりまして運賃を左右するような事態になるとは今日の状況では考えないのでありまして、御承知のように、道路がよくなりますと、油の消費量は減りますし、あるいはまた、最近の自動車の車体購入費も安くなり、あるいは修繕資等も、これも節約ができるわけでございますから、プラスの面、マイナスの面、それらを考えて適正運賃を考えていくべきだと思うのでございます。なお、この問題については特殊金融の措置考えるかというようなことでございましたが、私は、今回のガソリン税の引き上げ程度ではさような措置まで考えるべき要はない、かように考えております。
  324. 戸叶武

    戸叶武君 労働大臣は、どこか外国の使臣に会いに行くとか……。
  325. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 戸叶君に申し上げますが、間もなく労働大臣は御出席になるそうです。
  326. 戸叶武

    戸叶武君 いや、議事進行でやる。労働大臣は帰って来るからという話でした。そのあとの連絡では、片岡さんの質問もあるので労働大臣は来るから、前のことは取り消すという話でした。その次にはまたよそへ行くというのですが、こんがらかっちゃって、さっぱり様子がわかりませんから、労働大臣が来たら質問をしたいと思いますから、ぜひ来るように、これは質問を保留することにいたします。
  327. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 戸叶さんの持ち時間はもう終っているわけでまが、労働大臣が来ましたら、それでは簡単に質問をしていただきたいと存じます。(「労働大臣はどこへ行った」と呼ぶ者あり)労働大臣は間もなく戻って参るという連絡がありました。(それまで休憩」と呼ぶ者あり)  速記をとめて    午後六時三十八分速記中止    —————・—————    午後六時五十三分速記開始
  328. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 速記をつけて下さい。委員長からこの際申し上げます。議事の都合により午後七時半まで休憩いたします。    午後六時五十四分休憩    —————・—————    午後七時四十五分開会
  329. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) これより委員会を再開いたします。  この際、委員長より労働大臣に対し一言申し上げておきます。  委員長は、理事各位の御了承を得て、本日一般質疑を完了することを目標として、鋭意委員会の円滑なる運営をはかっておるのでございまするが、労働大臣には、委員長に無断にて退席せられましたために、委員会は休憩のやむなくに至りました。この事態は、委員長といたしましてまことに遺憾に存ずる次第でございます。  それでは、休憩前に引き続き質疑を続行いたします。戸叶武君の労働大臣に対する質疑を行いますが、戸叶君は、持ち時間はすでに経過いたしておりますので、きわめて簡潔にお願いを申し上げたいと思います。戸叶武君。
  330. 戸叶武

    戸叶武君 労働大臣とのことは行き違いがあったのだと思います。ただ、私は、この質問の過程におきましても、ガソリン税の問題、あるいはそれに対しての、大蔵大臣だけの答弁でなく、やはり運輸大臣答弁も求めておったのですが、そういう答弁がなく、農業基本法の問題に関連しまして、農林漁業基本問題調査会等におけるところの一つの活動といたしまして、私は、今、低所得の日本の農民の、特に農業労働者の問題、それから農村における潜在失業者の問題、そういうのを、農林白書等においても若干出ておりますが、正確な統計が出てこないので、都会の労働者だけを中心にいろいろな統計が出ておりますが、やはりこのボーダー・ラインの、厚生白書なんかに見ると、一千百十三万人からの低所得者がある事実を見ましても、生活困窮者は、病人ばかりでなくて、やはり失業者、潜在失業者の中にあるのでありますが、そういう正確な資料を今後労働省で整備するのか、それとも農林省のそういうものは管轄なのか。今後の労働問題というものは、工場労働者だけでなくて、勤労者全体に向っての統計資料というもののやはり正確なものを私たちは求めたいので、そういうことに関連して農林大臣と労働大臣の私は御答弁をお願いする次第であります。
  331. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 御連絡の行き違いで、私のために審議に御迷惑をかけまして、まことに申しわけありませんでした。  ただいまの戸叶さんの御質疑でございますが、いわゆる潜在失業者というものが農村に相当隠れておるのではないかということ、及び農村の毎年起るべき新しい労働力等についてどういうような調査があるか、主として農村の問題につきましては農林省が所管でございますが、私どもは、やはり農村が大きな部面を占めておるわが国では、やはり、労働力の発生する場所として、もちろん農村における労働力をでき得る限り的確に把握することが必要でありまして、従って研究もいたしておりますけれども、御承知のように、いわゆる潜在失業者という定義もなかなかむずかしいことでありますし、農村はまた農繁期には非常に多くの人手間を要し、農閑期になりますとそれが余った労働力として他に向って行かなければならない。そういう問題でございまして、的確に農村における労働力の過剰の分、いわゆる潜在労働力というふうなものについて今私どもが確たるものを持つことはできないのでありますが、しかしながら、私どもとしては農村の近代化はもちろん必要なことでありますし、なるべく多くの労働力というものを比較的完全な近代的雇用形態に置いて、そうして確実な収入を得させるということは大切でありますから、第一次産業の就職者を、昭和十一年から三十七年までの間に政府の策定いたしましたいわゆる新長期経済計画等におきましても千七百三十万人から千六百四十五万人、つまり八十五万人ほどは、今申し上げましたような第二次産業の方向に持っていって、完全な雇用形態を持つようにいたしたいと、そういうことでやっておるわけであります。
  332. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) よろしゅうございますね。
  333. 戸叶武

    戸叶武君 運輸大臣に……。
  334. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 戸叶君に申し上げますが、運輸大臣が参りましたときに、運輸大臣から御答弁を申し上げるようにいたします。   —————————————
  335. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 次に、山田節男君に昨日の残りの質疑を許したいと思います。山田節男君。
  336. 山田節男

    ○山田節男君 大蔵大臣どうしましたか。
  337. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 山田節男君に申し上げますが、昨日の残りは、郵政大臣と電電公社総裁となって……。
  338. 山田節男

    ○山田節男君 大蔵大臣を申し込んだ。
  339. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 大蔵大臣でございますか。
  340. 山田節男

    ○山田節男君 事務局にも言ったし、大臣にも言ったのですよ。
  341. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 今すぐ参るそうですから……。速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  342. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 速記をつけて。(「議事進行」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)  それじゃ許します。議事進行どうぞ。
  343. 占部秀男

    占部秀男君 きょうは自民党さんの方でも、一般質問はどうしてもきょうじゅうで打ち切るのだということで、きのうからああやって、われわれの方もごうやって一生懸命出てきている。かりに大蔵大臣にこちらからの指名はなくても、こういう情勢はわかっているのだから、しかも、ほかのことじゃない、予算の問題をやっているのだから、当然自分が指名がなくても、大蔵大臣はここにいるのが当りまえじゃないですか。それだのに、指名までしているのに事情がわからないはずはない。ここにいないなんというようなそんな不熱心なことでこの予算審議ができますか。委員長も、少しはっきりした態度をとってもらいたい。こういうことが二度も三度も行われるなら、われわれはボイコットするわけじゃないけれども、きょう、とてもこれはできませんよ。審議をする時間よりは、大臣を探すために苦心をしている。こんなばかな委員会がありますか。もう二度も三度も、われわれとしてはがまんできません。この次にそういうことがあったら、ほんとうに決意をせざるを得ない。一応委員長に警告しておきます。
  344. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) お答えいたしますが、ごらんの通り、大蔵大臣はずいぶん長くここにおいでのことが多いんですが、何かの都合でちょっと退席したので、今連絡しまして、間もなく参ります。(「政府はやる気があるか」と呼ぶ者あり)  山田節男君、御発言を願います。
  345. 山田節男

    ○山田節男君 私は、電電公社の電話の拡充につきまして本委員会で質問をいたしたい。  くしくも、この私が今質問申し上げる案件につきましては、電電公社を作りました昭和二十七年、公衆電気通信法を作りました二十八年当時は、佐藤大蔵大臣は電気通信大臣でありました。また、電電公社を作る動機となりました、寺尾郵政大臣は、これまた官営の電信電話事業を公社化するためにアメリカにいらっしゃった方で、現在郵政大臣、なお、公社発足当時から経営委員長であられた大橋八郎君も現在電電公社の総裁である。また、この公衆電気通信法、電電公社法を作る場合に、非常に努力されました当時の横田経理局長が副総裁である。くしくもこの四名の方々を前にいたしまして私は質問を展開いたします。  実は、戦前の日本の電話は非常に不足をいたしておりまして、日本は道路と電話に関する限りにおいては文明国でない。終戦後、戦災によりまして、ほとんど五〇%に近い電話が破壊されました。第五ないし第九国会におきまして、衆参両院は、電話の復興拡充を早急にやるべしという決議をいたしておるのであります。これは大蔵大臣も御記憶のことと思います。そういたしまして、昭和二十七年に公社ができまして、二十八年からいわゆる国会の意思もございますので、この電話の拡充の五年計画というものを立ったのです。そういたしまして、これは三十二年度に終了いたしました。三十三年度から第二次五ヵ年計画をいたしておるのであります。  私が大臣にお伺い申し上げたいことは、この第一次五年計画におきまして、電電公社といたしましては、資金、ことに建設工程の関連の資金としまして、五年計画ないし十カ年計画を創立当初に立てまして、十カ年計画におきましては約五千億、大体五百億パー、また五ヵ年計画としましては約三千億、いろいろこれは当初計画が変りましたけれども、しかし第一次五ヵ年計画が終りました三十二年度におきましても、電話は依然として不足しておる、積滞数はますますふえる。ことに、われわれ日本が文明国として最も恥ずべき電話の権利金があるというようなことは、世界に類例を見ないのであります。これをなくするためにも電電公社を作ったのであります。しかるに第二年度に入りまして、その初年度を経ました昨年に至りましても、いよいよ電話の積滞数が、二十七年の調査のときに約四十三万あると申しておった。ところが今日におきましては五十万、こういうようなことでは、一体この第五、第九国会における国会の意思としまして、電話の復旧を迅速にやれ、電電公社としましては、電話は、水道、ガス、電気と同じようにいたしますということを声明いたしておるのであります。まず第一に、この第一次五ヵ年計画並びに第二次五ヵ年計画の初年度を通じまして約六年間、どういうわけで一体この童話の積滞数がふえるばかりであるのか。国民が電話を全く希少物資化しているということは、どこに原因があるか。これをまず郵政大臣並びに電電公社の責任者に伺いたいと思います。
  346. 寺尾豊

    国務大臣(寺尾豊君) お答え申し上げます。第一次五ヵ年計画並びに第二次五ヵ年計画、いわゆる電信電話の拡充のこの計画を立てましたけれども、特に経済事情あるいは農村方面の電話架設に対する熾烈な要望等が日にかさまって参りまして、御指摘のように第一次五ヵ年計画の最終におきましては、潜在積滞数をまじえまするというと六十万をこえる、こういうような結果になったことは、御指摘通りであります。従いまして、第二次五ヵ年計画におきましては、どうしてもこの積滞数を消化しつつ、この第二次五ヵ年計画において相当の電話の拡充をしなければならぬというところから、予算四千百億円をもちまして、百三十五万個の電話の増設をする、市街回線におきまして四百二十万キロの増設をする、こういうことを一応の目安として、昨年三十三年度に第二次計画のスタートを切ったわけでございます。しかるところその後の電話架設の要望というものがさらに増大をいたしまして、最近においては年間三十五万を数えるのではないか、こういう事態になったことはもう御承知通りだと思います。従いまして私どもといたしましては、この第二次五ヵ年計画というものを四千百億、五年間において百三十五万個と申しますと、年間二十七万個になるわけでありますが、これを三十三年度におきましては一応二十五万個ということの実績ですでに架設を終ったわけでありますけれども、かようなことにいたしておりますると、要望が三十五万個に対して年々積滞数が増加をするばかり、だということにおきまして、三十四年度においてはどうしても四千百億円で計画をいたしました第二次五ヵ年計画の改定をしなければならぬ、いわゆる拡大修正をしなければならぬというような事態になりまして、三十四年度におきましては、大体九百五十億といったような予算を一応組みまして、そうして三十万個というものを年間増設をしたい、こういうことに努力をいたしましたけれども、これの予算が大蔵省における予算総則あるいは財政投融資等のなかなか多方面との関係におきまして、十分私どもの要望がいれられるところになりませず、実は非常にこれが削減をされたというようなことによりまして、この積滞数を解消をするということにつきましては、この三十四年度の予算ということにおきましては、はなはだ不十分だ。三十七年度の第二次五ヵ年計画の最終年度における見通しとしては、きわめて悪い見通しになったと、まあこういうことでありまして、この点はまことに申しわけがないと思っております。従いまして電電公社におきましても、また私ども自民党の政調会等におきましても、この電信電話の拡張修正と申しまするか、そういうことにおいて電信電話拡充特別委員会、こういうものも制定をいたしまして、第二次五ヵ年計画の最終年度における三十七年度の積滞数というものを現在の積滞数よりもずっとこれを消化していかなければならぬということを目下検討をいたしているということでありまして、この点につきましては、なお電電公社当局から詳細な数字をもってお答え申し上げさせたい、かように考えます。
  347. 大橋八郎

    説明員(大橋八郎君) お答申し上げます。電話の第二次拡張計画につきまして、山田委員からのお尋ねの点、現状においては御指摘通りであります。御承知のように電電公社が設立されましてから直ちに第一次の拡充計画を立てまして、五ヵ年間に年々大体二十万加入の電話を増設いたしました。この五ヵ年計画終了の際に、五ヵ年間通じまして総計いたしまして、百九万の加入電話を増設いたしたわけであります。この数字は、御承知通り、戦前におきまして一番加入電話の多かったときは昭和十八年でありますが、そのときが百八万余りでありましたから、電話という仕事が始まりまして約五十年かかって戦前に増設いたしました数よりも、公社設立後五ヵ年間にかけた数の方がまだ多いくらいの電話をかけたわけであります。この数字だけから見ますと、大へんよけいついたようでありますが、しかし戦前と戦後では非常に条件が変っておりまして、電話の需要というものは非常に多くなっております。第一次五ヵ年計画が終了いたしましたときの状況は、いわゆる積滞数がますます増加するという状況になりましたので、このままの状態を続けておりましては積滞数がますます増加する一方である。そこで、御承知通り直ちに第二次五ヵ年計画というものを設定いたしたわけであります。その際の当時の状況から考えまして、将来の新規加入の見込みは、およそ年々二十四万の新規申し込みがあるだろう、かような推定のもとに、年々二十七万加入ということを目標とする五ヵ年計画を立てたわけであります。この計画通りに遂行いたしますれば、少くとも年々三万ずつ——はなはだ軽少な数字でありますが、年々三万ずつ少くとも積滞数は減っていくだろう、こういう予定のもとに計画を立てたわけであります。ところがそれに基いて第二次五ヵ年計画の第一年目がちょうど本年度——三十三年度でありますが、三十三年度に入ってみますと、最近の数字から推定いたしますと、先ほど郵政大臣も御説明になりました通りに、以前に比べまして新規申込みは非常に増加いたしたのであります。昭和三十一年には新規の申し込みが大体三十四万、昭和三十二年には大体四十三万、最近のこの三十三年度においては、まだ終了いたしませんので確定した数字は申し上げかねますが、大体三十五万を下ることはなかろうと思われる状況であります。実は三十四年度すなわち来年度の予算編成の際に、当時の状況はおよそある程度まで推定し得る状況にありましたので、ある考えといたしましては、この状況では必ず初めの予定通りのものをやっておったのでは積滞数がますます増加するだろう、むしろ最近の情勢にかんがみまして、第二次五ヵ年計画というものを改訂したらどうかと、こういう考え方も当時あったのであります。しかし何を申しましてもまだ五ヵ年計画に入ったばかしの状況でありまして、その状況で直ちに今改訂をするということはいかがであろうかと、いま少しく状況を見て改訂する力が慎重な態度であろうということで、とりあえず三十四年度の予算といたしましては、当時の状況から見て、まず三十万の加入が大体あるだろうと、そこで少くとも三十万の数をつけるという計画を暫定的に立てまして、これを遂行いたしますと、積極的に積滞数を減すということには至りませんけれども、まず積滞数がより増加するということはなかろうと、こういう考えで、当時三十万架設を中心といたします三十四年度だけの暫定的の繰り上げ増加の予算を作ったわけであります。ところが融資計画その他いろいろな財政的の都合もありまして、結局三十万加入というものは認めることができないということで、二十八万加入を中心といたします八百五十億の現在の三十四年度の建設勘定というものが認められたわけであります。それが現状であります。そこで現在の状況から見ますと、これでは先ほど御指摘のありました通り、積滞数が増加する一方である。どうしてもこれは五ヵ年計画というものはこの際いま一度再検討いたしまして、実情に行う計画を立てなければならない。かようなことで、最近の加入申し込みの状況なりその他各般の情勢を検討いたしまして、これから第二次五ヵ年計画の改訂の調査を目下調査いたしておる次第であります。この計画が改訂になりました暁には、その計画に基いて、三十五年度の予算編成に当りたい、かような現在の状況であります。まだ調査が完了いたしませんので、どの程度の計画を立てるかということは、この際申し上げるまでには至っておりません。
  348. 山田節男

    ○山田節男君 経営委員長として六年間、電電公社の総裁としてすでに一年たっておるのですが、ただいまの御発言によると一方においては五ヵ年計画が非常にそごした。これは私当時のものを持っています。全部持っていますが、これを今私拝見しまして、当時のたとえば資金計画、これによりますと二十八年からの五ヵ年間、三十二年度に終るまで毎年二百億円の外資の導入をする、こういう建前になっておる。ところがこれはついにいろいろな事情で外資は入ってこない。でありますから、この資金計画を見ましても第一に外資導入が入ってこない。これは後ほど大蔵大臣にも質問しますが、こういうようなそごが第一ある。  それからもう一つは電話というこの事業に対する計画というものが非常に、何と申しますか、私はずさんとは申しませんが、今日なおこういうふうにそごしたか、見通しを誤ったかということは——少くとも電話のデベェロツプメントの、事業の発達の計画というものは五ヵ年計画でできるものではない。十五ヵ年計画ぐらいのものをもって、一応事業発達の全国的な事業のデベェロップメントの大体の計画を立てておいて、そうして目の前の三年間ないし五ヵ年間というものを再調査して、そして資金なりあるいは建設資材なり、そういうようなものをもっと科学的にやらなければならない。なるほど今日の予算制度は継続事業ではございません。しかしながらこれは公社ですから、年度々々打ち切りましても、そこにまた計画の立て方があると思う。私はこれは、あなたは経営委員長として非常に努力されたにもかかわらず、かくのごとき、もう全く積滞数を乗り切ることができないという悪循環に包まれてしまって、その見通しがつかないということは、私は何と申しましても、従来の公社の経営方針として計画がそごしたということは、計画の立て方がまずかった。それから建設資金におきましてこれは外資の導入ができなかった。政府が投融資をくれないというそごもありましょうけれども、それはあまり口実には、理由にはなりません。私はそういう点に先ほど質問をした隘路があったのではないかと思う。  それではこの大体過去五ヵ年間の政府から受けた投融資の総額、それから受益者から電話を設備する負担金ですね、それから債券、これは五ヵ年間で総額幾ら収入があったか、それをお聞きしたい。
  349. 大橋八郎

    説明員(大橋八郎君) お答え申し上げます。  第一に五ヵ年計画の間において、五ヵ年間の建設総額は二千九百三十五億円であります。このうち損益勘定からの受入金が五百六十億減価償却引当金が千百三十六億、資産充当が百九十三億、装置料等の収入が九十一億、これだけがいわゆる自己資金に属するものであります。それからそのほか電話設置負担法に基く負担金が二百七十四億、加入者引受債券が三百四十三億、そのほかに公募債券として二百八十七億、受益者負担の債券が五十一億、かようなことになっております。
  350. 山田節男

    ○山田節男君 政府の財政・投融資の何は幾らですか。
  351. 大橋八郎

    説明員(大橋八郎君) お答え申し上げます。  つまり公募債券と申し上げました二百八十七億というものが純然たる政府の認められた融資といいますか、それに属するものでございます。
  352. 山田節男

    ○山田節男君 時間が切迫しますから少しはしょりますが、大蔵大臣に私は御質問申し上げますが、三十四年度の予算におきまして財政投融資が約五千二百億円ある、こういうことになっておる。しかるに電電公社の三十四年度の予算を見ますと政府の資金運用部資金が十億円、簡易保険の積立金から十五億円、合計二十五億円ですね。一体今回の大蔵大臣の財政投融資は公共事業なり、あるいはその他いろいろな金融公庫、道路公団、なぜこの二十五億くらいなものでこれで協力したことになるのか、昨年度田中角榮君が郵政大臣をしておられましたときには、これはやはり三十億しかもらってない。一体こういうようなことで、一方においては道路公団、道路も必要でありますよ、しかし電話が全く国辱的な存在になっておるのに、年間三十四年度においては二十五億くらいしか金を出さないということは、私は一体大蔵大臣に誠意があるのかどうかということを疑わざるを得ないんですが、これは郵政大臣も、これは一体どうしてこういうようなことになるのか、あなた少し政治力を発揮して、もう少し、あなた田中郵政大臣より五億少いじゃないですか、どういう何があるか、一つ忌憚なくおっしゃって下さい。あまり私はだらしなしと思うう
  353. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 政府の財政投融資が田中君のとき三十五億、今回は大へん政治力がありますから五十億、公募債、二十五億、さらにまた投融資の政府の何が二十五億、計五十億になります。そこでもちろん政府の投融資の金額も必要でございますが、この公社は最近成績が非常によろしゅうございます、昨年は七百五十億の建設資金がことしは百億ふえて八百五十億になっております。今の郵政大臣は大へん政治力があって、大蔵大臣がそのことに屈服をいたしたというわけであります。
  354. 寺尾豊

    国務大臣(寺尾豊君) 大蔵大臣としては各般に配分予算でありますから、大蔵大臣のただいまのような答弁があったかもしれませんけれども、私は財政投融資を百億、それから公募を百十一億、計二百十一億を要望いたして、極力このことを大蔵大臣にも主張し要望したのでありますけれども、財政投融資というものについての多方面のいろいろの振り合いもあって、ついには、合せて五十億、そうして自己資金等についての、まあ了解はありました。で、ようやく八百五十億にとどまった。大蔵大臣の今のお言葉では、昨年七百五十億が百億ふえたから、郵政大臣は云々というお話でありましたけれども、御指摘のように、積滞数が、三十四年度の年度末にいけば、三十四年度だけでも——積滞数というよりも、架設の要望というものが三十五万に達しよう、こういう情勢でありまするから、私といたしましては、あくまでも財政投融資というものを、相当増額をしてもらって、これを解決をするという以外にはない、かように考えております。
  355. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ただいま、積滞数のお話が出ております。なるほど五ヵ年計画では四千七十三億、これは、もう山田委員承知通りでございます。それで、この五ヵ年計画を遂行するのには、ただいまの予算措置で、財政投融資計画で大体私どもはまかなえると思います。  先ほど来、大橋総裁からもお話がございますように、最近の電話の利用について、さらにこの計画を改訂する、こういうお話がございました。十分調査した上で、もちろん内容が変って参りますれば、私どもも、来年度予算編成いたします際に、十分考えてやるつもりでございます。
  356. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 山田君に申し上げますが、あなたの持ち時間、もう、とうに経過いたしておりますから、どうぞ……。それでは、簡潔に最後に、お願いします。
  357. 山田節男

    ○山田節男君 今の大蔵大臣の御答弁ですが、これは、私は、こうして電電公社が発足して、今日六年を経過をしている。そうしてなお、これは世界に類例のない電話の加入者に、莫大な六万から十万の金を負担さしてやっている。これは明治以来の、すなわち公社のできる前、官営主義で今まで政府がやった電話事業というものは、すべて受益者に負担さして、そして利益の上った金は、政府が吸い上げる、こういうやり口であった。今の大蔵大臣の御答弁、やはりこの思想が残っておるから、一体、この郵政の簡易保険の積立金が一千億円、その中で十億円しか出さないという、これも私は、今のそういう思想の片鱗が現われていると思うのですね。私は、もうこれ以上答弁を求めませんが、とにかく今のような総裁以下郵政大臣の御答弁聞きましても、今の年々二十三万つけていきましても、もう、ますます積滞数はふえてくる。電話が稀少物資にますますなってくる、こういうことは、私は政府として、非常な責任があると思うのです。ですから、私は、先ほど申し上げましたように、この電話が、稀少物資化することを防ぐためには、全力を注げということの二回も意思表示があるにかかわらず、なお、この現状であるということは、まことに遺憾であります。くしくも、そういう四方が、非常な因縁のある方が、おられるのでありますから、これは責任を持って、与党の特別委員会とも十分協力して、電話の稀少という国辱的なことをなくするように、大蔵大臣、もとよりでありますが、郵政大臣、公社の諸君に、特に切に強く要望いたしておきます。
  358. 鈴木強

    鈴木強君 関連……。
  359. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 関連、どうぞ。
  360. 鈴木強

    鈴木強君 電電公社が発足をして、七年たっております。今、経営の実態は、総裁から、また郵政大臣から御説明があった通りだと、私は信じております。  そこで、大蔵大臣にちょっと、私は大へん僣越ですけれども、申し上げておきたいことは、第一次五ヵ年計画が、約四千百億の資金計画で発足しました。ところが、その計画国会で承認する際に問題になりましたのは、現在の設備負担法は、時限立法でありまして、三十五年度には、これは切れます。しかもこの立法は、一度延期をいたしまして、今後、こういうことのないようにという強い国会の意思表示で、付帯決議として加えられて通過したわけであります。  ですから、第二次五ヵ年計画の資金計画の四千七十三億のうちで、設備負担法に伴う年間六十四億という金は、三十六年、七年度に、当時ないものが、掲載されておった。私は、そのことを指摘をして、当時の靱副総裁を究明したところが、設備負担法が、三十六年度においても、依然としてあるがごとく掲載して、実際にはないのじゃないかということに対しては、一言もなかった。そのときに、田中郵政大臣は立ち上って、六十四億ずつ二カ年分、百二十八億については、政府が今後責任を持って、資金調節をする、だから一つ、第二次五ヵ年計画を承認してもらいたいというのが、田中郵政大臣のお答えでありました。私は、政府を信頼して、非常にずさんな資金計画でありましたが、それを認めておったわけであります。  今あなたが、四千七十三億という資金計画があるということを言われましたが、これは、きわめて不安定なものであった。そこで、今日六十万の積滞があり、なおかつ、年間三十五万の新規の需要がある。それに対して、二十五万の電話しか引けませんですから、ここにおる与党の皆さんも私たちも、みなそうでありますが、電話を申し込んでもつかない。もう東京あたりですと、五年、六年前に申し込んだ電話がつかないのです。早くつけてくれという苦情が殺到しておる。  しかも、そういう状況の中で今年九千五百億の資金計画を立てて、大蔵大臣と公社は折衝したはずなのです。ところが八百五十億に切られた。しかもその八百五十億の中で、自己資金として公社が八百六十五億の収入の中から六百三十九億というものを出しておるのです。外部から募集しておる公募債は二十五億、運用部から二十五億、それに設備負担を加えても二百十一億、自己資金と外部資金の割合は六百三十九億対二百十一億なのです。ですから、私が皆さんが電話がつかないというのは、公社が一生懸命合理化をして、成績をあげて、六百三十九億の自己資金を出して、二十五万の電話をふやしておるのです。だから、つかないのは、もう少し積極的に政府が財政投融資の面でめんどうを見ていただかないと、これはつかないのですよ。  しかも第二次五ヵ年計画が設定されて、わずか一年で五ヵ年計画を修正なければならないというような事態が出てきて、予算折衝に入ったのです。少くとも、そういう建前からいいますと、二百五十億の建設資金は、私はぜひ認めていただきたいと思うわけですが、これは、この前、中村委員から質問がありましたように、国鉄でも、資金が足りない、確かにこれは、各般の産業発展のため財政投融資五千百億ということでは足りないでしょう。もう少し私は、——電話というものは、日本の各産業、文化の中心として重大な使命を果している。中小企業にしてもしかりです。ですから、私はもう少し、政府は熱意をもって、この事業の資金的の措置をしていただきたい、こういう強い私は気持を持っておるわけであります。  非常に、公社が合理化して、従業員の職種転換、配置転換と、いろいろ労働条件の悪化をきたしております。にもかかわらず労使協力をして、これを乗り切っている。  賃金の面におきましても、公社法制定当時、あなたは国会において、能率をあげ、成績をあげてくれれば、一般公務員と違った給与体系もできると言われ、これは公社法第三十条にも、そういう点について書いてある。しかるに今日、何ら特性が生かされておらない。私は、国民全体として、もう少し電気通信事業というものを認めてもらいたい。電話がつかないという苦情も出ておりますが、しかし、この原因はどこにあるか、そういう点を究明していただくことが大事だと思います。  そういう意味において、大蔵大臣の御答弁をいただいて、八百五十億と、昨年より百億ふえたことは感謝いたします。しかし、少くとも年度の途中において、五ヵ年計画を修正したという現実の事実に立つならば、これは、やはり足りない。だから、さっき御所信を表明されて、大いにやるということでありますが、第二次五ヵ年計画の資金計画は、そういうところにごまかし的の点があった。そういう点を十分認識していただいて、努力をしていただきたいと、私は考えておりましたから、今申し上げたわけです。あなたは、どう思いますか。
  361. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 確かに、傾聴に値いする御意見と思いますので、十分伺っておきます。
  362. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 山田君の質疑は、これで終了いたしました。  先ほどの戸叶君の質疑中、運輸大臣答弁が留保されておりますので、この際、運輸大臣に発言を求めます。
  363. 永野護

    国務大臣(永野護君) 戸叶委員にお答えいたします。  ガソリン税の問題につきましては、先ほどの大蔵大臣の御答弁で尽きておりまして、付け加えるところは、ほとんどないのであります。運輸省といたしましても、このガソリン税の増徴が、自動車事業に相当の影響を与えることは認めております。しかし先ほど、大蔵大臣も御答弁の中に申しましたように、いろいろな要素を入れて考えなければなりませんので、今すぐ、ガソリン税の増徴があるからと言って値上げをいたすつもりはございません。よく実際の影響を見きわめましてから、その対策を講じたい、こう思っております。
  364. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 戸叶君、何ですか、あなたの質疑の時間はなくなったのですよ。
  365. 戸叶武

    戸叶武君 大臣答弁と、私の聞いたところと、ヒントが違っているのです。
  366. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) では最後に、簡単にやって下さい。
  367. 戸叶武

    戸叶武君 それは、大臣が、正確にものをつかめないのです。私、今も運輸大臣が、大蔵大臣答弁と同様な見解だというのに、非常に不満です。今までの運輸委員会において、これは、あなた方、大臣は、前からいつでも、ガソリン税は、もう増税しないという建前で付帯決議というようなものを受け入れて、そうして国会の意見を尊重しますと言って、一つも尊重していない。  しかも、今、大蔵大臣答弁と、非常に矛盾があると思う点は、大蔵大臣は、ガソリン税は、まだ負担力があるから増税したのだという暴論をはいている。ほかにも、そういう点において、負担能力があるという議論を押しつけるならば、どこからでも、税金をむしり取ることができる。これは一つの非常な問題である。  しかも運輸大臣が心すべきことは、こういう増税は、大資本より、結局は、中小企業なりあるいは運輸業者が、一般消費者に転嫁する。そういうところにおいて運輸行政において重要なので、大蔵大臣の言うことを、ごもっともだなんていう形で、唯々諾々としているから、こういう大蔵大臣の暴論というものを、その通りあなたは受けて、運輸委員会等におけるところの審議過程、あるいはその結論、あるいは付帯決議、国会の意見というものを尊重しないで、大蔵大臣のためにのみ従属するところの運輸大臣ができてくる。今の答弁では非常に不満である。
  368. 永野護

    国務大臣(永野護君) 無条件に、大蔵大臣に追随していくという主義ではございません。ガソリン税を増徴いたせば、自動車の運営に相当の影響があるということは認めますと申しているわけであります。  ただ、いろいろな、つまりプラスの影響もマイナスの影響もございますから、個々の問題について十分検討いたしましてから、その対策を講ずると、ごうお答えしたのでありまして、公認しておるということを申し上げたのではないのでございます。  おそらく個々のバス業、ハイヤー業トラック業というふうな問題に、いろいろな影響が起ると思いますけれども、その個々のケースに即しまして、適当の対策を講じて参りたい、こう考えておる次第であります。   —————————————
  369. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 次に、中村正雄君の質疑に入ります。中村正雄君御発言願います。
  370. 中村正雄

    中村正雄君 私は、これから国鉄の予算関連して御質問いたしますから、大蔵大臣、運輸大臣、並びに国鉄の総裁から、それぞれの立場から御答弁願いたいと思います。  今、国鉄が従来やって参りました新線の開発というものは、ほとんで不採算路線のみだと、私は考えるわけでありますが、これの赤字対策を三者どういうふうにお考えになっておるか、御指示願いたいと思います。
  371. 永野護

    国務大臣(永野護君) お答えいたします。  御承知通り、国鉄は、公益事業をその生命といたしておりますので、個個の不採算性にとらわれないで、国鉄全体として見て、数字を検討していきたいと、こう考えておるのであります。
  372. 十河信二

    説明員(十河信二君) お答えいたします。  私としては、そういう場合に、でき得るならば、政府の出資、せめて利子補給等をお願いいたしたい、従来、ずっとお願いして参ったのでありますが、なかなか各方面に、資金の要る面がありまして、それが、今日遺憾ながら、かなわんでおるような状態であります。
  373. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 国鉄公社は、全体としての収益を見ていただきたいと、かように考えております。従いまして、個々の線区で赤字だと、ことに新線の場合に、そういうお話があると思います。それかと申しまして、国鉄の負担を非常に過重さすようなことは、いいことではございません。そういう意味で、新線の要望も強いわけです。同時に、これを決定することにつきましては、建設審議会等で、各界、各方面の意見を十分聞いて、そうして新線を決定していく。国鉄自身の、非常な採算上の負担にならないように、工夫されておることだと思います。
  374. 中村正雄

    中村正雄君 大蔵大臣答弁ですが、現在の建設審議会という機関の審議過程において、国鉄の採算ということを考え審議をやっておるかどうか、運輸大臣並びに国鉄の総裁から、御答弁願いたいと思います。
  375. 永野護

    国務大臣(永野護君) お答えいたします。  国鉄は、一面において公共企業体でございまして、公益を重点に考えなければならない使命を持っておりますが、他面において、また独立の企業体としての一面を持っておりまするので、全然採算を無視したことはできません。  従いまして、新線に着手するかどうかということを決定いたしますときには、公益性をまず第一に考えますけれども、その次には、採算性も十分考えて、その採否を決定いたしております。
  376. 十河信二

    説明員(十河信二君) もうからない新線も、地方開発されますと、だんだん改善されて参ることもあります。また、現在線の培養になるという点もありますので、そういう場合にも、国鉄はがまんして、なるべく経費の節約のできるような合理化の輸送をやりまして、国民の要望にこたえておる次第であります。
  377. 中村正雄

    中村正雄君 私の質問は、鉄道建設審議会の経過において、国鉄の採算に関することを中心にして論議されたことがあるかどうか、昭和二十六年以降の私は審議会の記録を見ておりますけれども、ふびんにして、そういう議論をされたのは、一、二回しかない、ここ三、四年来は、そういう議論はされておらない。大蔵大臣答弁と違うから、そういう経過があるかどうか、運輸大臣に重ねて質問いたします。
  378. 永野護

    国務大臣(永野護君) お答えいたします。  ごの前の審議会には、私が実際出ておったわけでございませんので、記録上、それを推察するだけでございますが、御承知通り審議会は、諮問機関でございますので、その意見は、十分に尊重いたしますけれども、国鉄なり運輸省なりは、それ自体の立場から、十分に判断をする余地が与えられているのでありまして、従いまして、運輸審議会における質問応答だけで、その新線建設の方針が尽きているとも私は考えておりません。国鉄は国鉄として、十分考えていきたい。
  379. 中村正雄

    中村正雄君 昭和二十六年以降、新しく開設した新線の赤字の累計が、経営の赤字の累計はどの程度になっているか、お知らせ願いたいと思います。
  380. 十河信二

    説明員(十河信二君) ただいま、ちょっと数字を持ち合せておりませんから、取り調べてお答えいたします。
  381. 中村正雄

    中村正雄君 二十六年以降、新線の開設がやられたわけでありますが、これに要しました建設費の利息が、ほとんど借入金でやっているわけですが、利息の累計が、どの程度になっているかお示し願いたいと思います。
  382. 十河信二

    説明員(十河信二君) これも、同時に後刻、取り調べてお答え申し上げます。
  383. 中村正雄

    中村正雄君 先ほど、大蔵大臣からは答弁がなかったわけですが、国鉄の総裁は、毎回新線建設についての建設費の利子程度の補給はしてもらいたい、こういう要求を毎予算ごと出しているのでありますが、これに対して、大蔵大臣、運輸大臣は、どうお考えになっているか、あらためて方針を承わりたいと思います。
  384. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 冒頭に申しましたように、線区別の計算はいたさないで、国鉄の全体の収入で、収支で見て参る、こういう考え方でございます。  また、先ほど来の新線建設の場合に、採算がとれないという点についてのお話がございましたが、線区を決定する場合の一番の基礎になりますものは、何と申しても、経済調査でございます。あるいは運輸契約、こういうことが問題になるのでございまして、十分その点は、最初に考慮されるものでございます。なおまた、東海道新線のような場合は別でございますが、普通の新線というものは、建設いたしまして、開業いたしましてから成熟するまで、相当の期間を要する。これだけは、御了承おき願いたいと思います。
  385. 永野護

    国務大臣(永野護君) 先ほど、お答えいたしました通り、国鉄は公共性、採算制二面をにらみ合わせて、その事業の進行をやっていかなければなりませんので、今申しましたような、先ほどもお答えいたしましたように、全体としての計算をにらんで、その間に、公共性と採算制の調和をとっていきたいと、こう考えております。
  386. 十河信二

    説明員(十河信二君) 先ほどの新線建設費と、その利息の総計額を申し上げます。  昭和二十七年度以降三十二年度末までの投資額は二百五十二億で、それから利息は、約五十四億であります。
  387. 中村正雄

    中村正雄君 新線建設に関して、予定線の指定という項がありますが、予定線として指定されましたものの法的効力というものは、一体どういうものか。この線区に対して、民間人が新たに競願したような場合に関連して、法的効力について、運輸大臣からお伺いしたい。
  388. 永野護

    国務大臣(永野護君) 一応の予定でございまして、それを、どうしても民間にやらしてはいけないという絶対的に競願したような場合に関連して、法的効力について、運輸大臣からお伺いしたい。のものではないと、われわれはこう考えております。従いまして建設線の中に入れる時期が、見通しのついておる所はもちろんそれでやるのでありますけれども、予定表にはなかなか載りそうもない、しかしその要望はあるというような場合、ことに地元の要望なんかが非常に熾烈でありますような場合には、一定の条件を付しまして、これを民間に施行さすこともあり得ると、こう考えております。
  389. 中村正雄

    中村正雄君 そうしますと、予定線の効力は、国鉄が線路建設をする場合の一定の手続的な効力であって、外部に対しては何らの効力もないと、こういうふうに解釈してよろしいのですか。
  390. 永野護

    国務大臣(永野護君) 何らの効力がないということは非常に問題が、少しぎこちなくなるというのですか、先ほど申しましたように、予定線はあくまでも予定線でございます。それがほんとうの建設に移りますときには、建設線に繰り入れることによって初めてその実効が現われてくるわけでございますので、それが何か建設線に入る見込みがたたぬというような線については独自の考えができる、こう考えております。
  391. 中村正雄

    中村正雄君 国鉄は省営自動車を経甘いたしておりますが、国鉄の省営自動車の路線の新設に対しまする基本的な一つ方針伺いたいと思います。
  392. 十河信二

    説明員(十河信二君) 線路建設に代行いたす場合、あるいは先行いたす場合、あるいは培養の場合もしくは短絡と申しまして短かく連絡のできるような、大体そういうことを主にして考えておりますが、最近には都市の膨張が非常に急激に進んで参りまして、同時にまた道路が相当よくなって参りましたから、都市間の中距離も鉄道の補助、補完のために自動車で経営していきたいということを考えております。
  393. 中村正雄

    中村正雄君 今国鉄から発表になりました国鉄の経営いたします自動車の方針は、運輸省としてもこれを承認いたしておるのかどうか、運輸大臣にお聞きしたい。
  394. 永野護

    国務大臣(永野護君) 承認いたしております。
  395. 中村正雄

    中村正雄君 そういたしますると、今の方針に従って国鉄がバスを経営する場合、民間の、バスとの競願等の問題が起きた場合、運輸省としては方針に沿っておる場合は国鉄の経営を優先して認可するお考えがあるかどうか、この点を伺いたいと思います。
  396. 永野護

    国務大臣(永野護君) 国鉄の申請と民併の申請とが競願いたしました場合に対するその対策につきましては、その調和をはかりますために十分に両者の立場を尊重して解決をするようになっておるのでありますが、昭和二十九年の四月二十六日付で、この場合に、運輸省の自動車局長及び鉄道監督局長から連名で、国鉄の自動車局長あてに通牒を出しております。さらに運輸省の白亜車局長から日本乗合自動車協会長あてに「国鉄バスと民営バスの調整について」という勧告をいたしますとともに、各陸運局長に対してこの趣旨に沿う指導を行うように指示いたしておるのであります。この勧告通牒の基本理念は「両者の相互関連する地域について原則として、相手の立場を尊重し、融和協調の精神にのっとり、相互に侵さないこと。」ということをまず基本といたしまして、次に「利用者の利便を確保増進するため必要ある場合は、予め、相互に連絡打合せを行い公共事業立場から自主的調整に努めるごと」、こういうような勧告通牒を出しております。それで実際上の扱いに国鉄の方が優先するかという御質問でございましたけれども、この場合は平等に扱っております。
  397. 中村正雄

    中村正雄君 平等に扱っていると言われましたが、国鉄の方針については政府も承認し、しかも国鉄の方は同じ企業体であってもいわゆる公共企業体として公共性があるわけです。民営の場合ももちろん公共性がありますが、公共性の面においては優劣の差があると思います。それを対等に扱うとなると国鉄がバスを経営する意義はどこにあるのか。
  398. 永野護

    国務大臣(永野護君) 先ほどもお答えいたしました通り、国鉄バスと民営バスが競合しました場合の処置方針については、公共性に照らしてその優劣をきめるとこう言っておるのでありまして、その国鉄と民営との出願は同等に扱いますけれども、そのどちらに許すかということの基準には、公共性ということをものさしとしてきめますので、御指摘通り、国鉄バスの方が公共性が強いと判断いたしました場合には、出願の順位は平等に扱いましても結果において、国鉄の方が優先する場合を招米することもあり得ると思います。
  399. 中村正雄

    中村正雄君 先ほど国鉄が省営バスを経営する場合の方針について説明があったわけですが、国鉄の出願する場合はこの方針にかなわなければ出願しないと思うわけなんです。政府の承認した方針に沿って、出願するものを、政府が他の民間企業から出願したからといって公共性を勘案して公共性が少なければ、国鉄の場合に程度が濃厚でなければ国鉄は却下して、民間にやらす場合もあり得るというその趣旨が私は理解できないわけなんです。国鉄の出願するものはすべて政府の承認した方針に沿ったものでなければ出願しないとすれば、民間との競合ということは考えられないわけですが、その点はどうなります。
  400. 永野護

    国務大臣(永野護君) 国鉄が出願するものは、すべていかなる出願よりも公共性がすぐれている、ということを具体的のケースについて検討いたしませんで、国鉄即公共性イットセルフというような扱い方はいたしかねるのでありまして、場合によりましては、民営の方がもっとその地方住民の福祉増進に役に立つというような場合もあり得るのでございます。そういう場合は民同の一般大衆のむろんこういうときには御承知通り公聴会、審議会にかけて、やるのでありまして、その判断の資料については公共性があることが一番大きなものさしとなりますから、個々の場合につきましては、必ずしも国鉄だけが公共性を独占することにはならない場合があり得るとこう考えております。
  401. 中村正雄

    中村正雄君 国鉄よりも民間の方が利便であり公共性が市大であるという場合があり狩るという御答弁でありますが、上体的に一つ例示してもらいたい。
  402. 永野護

    国務大臣(永野護君) ただいまここに資料を持ち合せておりませんので、後刻その実例をよく調べまして御報告いたします。
  403. 森八三一

    ○森八三一君 委員長、議事進行について発言を求めます。
  404. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 森委員の発言を許します。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  405. 森八三一

    ○森八三一君 一般質問は本日をもって終了することを目途として努力して参りましたが、すでに時間も九時になったことでありますので、本日はこの程度として、残余の質問は二十三日に続行することとし、二十三口質問の終了後、直ちに分科会に移り、分科会は二十六日中に主査報告を結了すること、なお分科会の、委員配属等は委員長に一任することにいたし、本日はこの程度で散会されんことの動議を提出いたします。(「賛成」と呼ぶ者あり)
  406. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) ただいまの森委員の動議を議題といたします。本動議に御異議はございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  407. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 御異議ないと認め、よってさように決定いたしました。  委員長よりあらためて申し上げます。  二十三日は、午前十時より委員会を開き残りの一般質疑を行い、同日質問終了後直ちに分科会に移り、分科会は二十六日に主査報告を結了する運びといたします。  なお、分科担当委員の配置は、公報をもって御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後九時二分散会