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1959-03-19 第31回国会 参議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月十九日(木曜日)    午前十時五十三分開会   —————————————   委員の異動 本日委員小幡治和君、新谷寅三郎君、 吉江勝保君、岩沢忠恭君及び藤田進君 辞任につき、その補欠として紅露みつ 君、中野文門君、安井謙君、後藤義隆 君及び千葉信君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     木暮武太夫君    理事            小柳 牧衞君            近藤 鶴代君            塩見 俊二君            西田 信一君            堀木 鎌三君            鈴木  強君            松浦 清一君            矢嶋 三義君            森 八三一君    委員            石坂 豊一君            泉山 三六君            岩沢 忠恭君            植竹 春彦君            大沢 雄一君            勝俣  稔君            川村 松助君            古池 信三君            紅露 みつ君            小山邦太郎君            後藤 義隆君            迫水 久常君            下條 康麿君            新谷寅三郎君            館  哲二君            鶴見 祐輔君            苫米地英俊君            中野 文門君            安井  謙君            横山 フク君            吉江 勝保君            荒木正三郎君            占部 秀男君            片岡 文重君            北村  暢君            栗山 良夫君            坂本  昭君            高田なほ子君            田中  一君            千葉  信君            平林  剛君            松永 忠二君            山田 節男君            田村 文吉君            千田  正君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    法 務 大 臣 愛知 揆一君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君    文 部 大 臣 橋本 龍伍君    厚 生 大 臣 坂田 道太君    農 林 大 臣 三浦 一雄君    通商産業大臣  高碕達之助君    運 輸 大 臣 永野  護君    建 設 大 臣 遠藤 三郎君    国 務 大 臣 青木  正君    国 務 大 臣 伊能繁次郎君    国 務 大 臣 世耕 弘一君   国 務 大 臣 山口喜久一郎君  政府委員    内閣官房長官  赤城 宗徳君    内閣官房長官 鈴木 俊一君    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正巳君    総理府総務長官 松野 頼三君    警察庁長官   柏村 信雄君    行政管理政務次    官       濱野 清吾君    行政管理庁行政    管理局長    岡部 史郎君    北海道開発庁総    務監理官    中平 榮利君    北海道開発庁主    幹       長谷 好平君    自治庁財政局長 奧野 誠亮君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 加藤 陽三君    防衛庁経理局長 山下 武利君    法務省保護局長 福原 忠男君    外務省条約局長 高橋 通敏君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省主税局長 原  純夫君    大蔵省理財局長 正示啓次郎君    国税庁長官   北島 武雄君    文部省初等中等    教育局長    内藤誉三郎君    厚生省公衆衛生    局長      尾村 偉久君    厚生省社会局長 安田  巖君    水産庁次長   西村健次郎君    運輸大臣官房長 細田 吉藏君    運輸省港湾局長 中道 峰夫君    運輸省鉄道監督    局長      山内 公猷君    運輸省観光局長 岡本  悟君    建設大臣官房長 鬼丸 勝之君    建設省計画局長 美馬 郁夫君    建設省道路局長 佐藤 寛政君    建設省住宅局長 稗田  治君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 干冬君   説明員    宮内庁長官   宇佐美 毅君    日本国有鉄道総    裁       十河 信二君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十四年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十四年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十四年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件   —————————————
  2. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) ただいまから委員会を開会いたします。  まず委員の変更について御報告いたします。藤田進君が辞任し、その補欠として千葉信君が、小幡治和君が辞任し、その補欠として紅露みつ君が、それぞれ選任されました。   —————————————
  3. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) これより昭和三十四年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算を一括して議題といたします。  本日は一般質疑ではございますが、本委員会において、先日来問題になっておりまする自衛力に関する憲法安保条約との関連等について、総理外務大臣防衛庁長官内閣官房長官、及び法制局長官に対し、ワク外六十分の時間でまず質疑を行います。  なお一般質疑の残り時間がまだ相当にございますので、毎度繰り返してはなはだ恐縮ではございますが、理事会の申し合せもありますので、関連質問は努めて自粛していただきまして、やむを得ないときにおいてもきわめて簡潔になされるよう委員長として特に委員の方々にお願いをする次第でございます。  それでは質疑に入ります。荒木正三郎君。
  4. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は、政府憲法解釈を非常に拡大して解釈している問題について初めに質問をいたします。  特に岸内閣になってから憲法拡大解釈が非常にひどい状態になってきた。特に伊能防衛庁長官は、先日のこの委員会におきまして、小型の核兵器は持っても憲法違反にならないのだ、これは従来の政府が言っていない、そういうところまで発展をし解釈をしてきておる。ですから、私はこの際、憲法解釈がその時の政府の御都合によって、勝手に解釈されるというふうなことでは、これは日本の基本をきめた憲法でありますので、そういうことはよろしくないという考えを持っておるわけであります。憲法というものが、特に憲法解釈において拡大解釈をされてきたのは第九条に関係をしております。この第九条は、申すまでもなく日本国憲法の非常に大きな支柱になっていることは申すまでもありません。この第九条がその時の政府によって拡大解釈されるというふうなことは、これははなはだ穏当を欠く点であるというふうに思うわけです。こういう点について、総理大臣はどのように考えておられるか、それをお伺いしたい。
  5. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 憲法解釈を、その内閣都合によっていろいろと解釈を変えるというようなことが不当であることは、荒木委員の御指摘通りであります。私ども憲法解釈していく上におきましても、そういう点については十分に留意しておるつもりでございます。ことに憲法九条の解釈について、私の内閣なり、私が内閣の責任を負うてから、非常に解釈が拡大されておるというふうな御指摘でありますが、私ども従来前内閣あるいは前前内閣等からこの憲法九条に関するいろいろな論議国会を通じてずいぶん行われたわけでございまして、その一貫した趣旨を曲げるような解釈は私どもはとっておらないという考えでございます。
  6. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それではお伺いをいたしますが、岸内閣自衛のために武力を持ってもよろしい、こういう表明をされておるわけであります。これには間違いございませんか。
  7. 岸信介

    国務大臣岸信介君) やや荒木委員のお言葉は不正確であると思います。私ども憲法九条は自衛権を否定しているものでなくして、しかして自衛権を持っている以上は、それを裏づけるに必要最小限度実力を持ち得ることは、これは当然許されておると、かように解釈をいたしております。
  8. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 実力という問題ですね。自衛権憲法では否定しておらない。そこで、自衛のための実力、あるいは総理大臣はよく自衛力と、こういう言葉を従来使っておりますが、この実力というのは、これは何をさしておるか。防衛庁長官等は、これは戦力というような言葉も時にはお使いになるように私は思う。あるいは武力。これは武力ではない、こういうお考えでございますか。
  9. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 自衛権の本質は、他から急迫不正な侵害を受けた場合にそれを排除する、実力を行使して排除するということでございますから、それに必要な実力というのが、私の言う自衛力であり、自衛のために必要最小限度実力を申しております。それは、その内容的に言って、一つのいろんな具体的の実力武力と言ったり、あるいは戦力というような言葉で表現する人もあろうかと思いますが、私の言わんとするところは、そういう侵害があった場合に、侵略があった場合に、それを実力を行使して排除する、その力を言っておるわけであります。
  10. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうすると、総理大臣がおっしゃる自衛力、あるいは自衛のための実力というのは、具体的には、今作られている自衛隊をさすんじゃないかと私は思うんです。この自衛隊は、これが武力ではないんだ、戦力ではないんだ、こういうことになると、自衛隊は何になるんですか。ただ実力ということだけでは適切でないと思うんですね。あれは武力でない、戦力でないというならば、何になるのか、おっしゃっていただきたいと思う。
  11. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 憲法九条の二項でいわれておる戦力ということではないと思いますが、その自衛隊が持っておる実力を、あるいは戦力という言葉で表わす人もありましょうし、あるいは武力という言葉で表わす人もあるかもしれませんが、それらは、私は言葉の用語であると思いますが、いわゆる憲法九条二項で持つことを禁止されておる戦力ではないと思います。
  12. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それでは、岸総理は、政府によって憲法解釈を変えることはよろしくない、また、現実にそういう憲法解釈を変えておらないと、こういう先ほどのお話でありましたので、私は、憲法制定当時の政府解釈をここに示しまして、お伺いしたいと思います。憲法制定当時において、当時は国務大臣であった吉田茂氏が、質問に答えて、「第九条第二項ニ於テ自衛権発動トシテノ戦争モ、又交戦権モ拠棄シタモノデアリマス。従来近年ノ戦争ハク自衛権ノ名ニ於テ戦ハレタノデアリマス。故ニ我国ニ於テハ戦争ノ拠棄ニ依ッテ全世界ノ平和ノ確立ノ基礎ヲ成ス決意ヲ此ノ憲法ニ於テ表明シタイト思フノデアリマス。」、こういう答弁をしておられます。こういう趣旨答弁は、随所にしておられるわけであります。また、こういう表現。野坂参三君が、侵略戦争はいけないんだ、しかし、自衛のための戦争は肯定さるべきではないか、こういう質問に対しても、「正当防衛権認ムト云フコトソレ自身が有害デアル」、こういうふうに答えておる。自衛のための武力行使も、そういうことを考えることも有害である。この段階において、この憲法制定当時において、自衛権というものは認めるけれども自衛のための実力行使岸総理が言われる実力行使、あるいは、言葉をかえていえば、武力行使、こういうことを考えることすら、これは有害である、いわゆる憲法趣旨ではない、こういうふうに答弁をしておるのであります。これは憲法制定当時の政府見解である。言葉をかえていえば、自衛権憲法が認めるところである、しかし、自衛のためといえども武力行使、あるいは実力行使、あるいは戦力を行使することはできないのだ、これが憲法の精神である、第九条の趣旨である、こういうふうに、これはしばしば国会において答弁をしておるのであります。これについて岸政府も同様な考えを持っておる、こういうふうに解してよろしいかどうか。
  13. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この憲法制定されました当時、また、過去のわれわれの苦い経験から、いわゆる自衛の名のもとに戦争をするということは、これはわれわれは、いかなる意味においても、侵略はもちろんのことですが、他国侵略でなしに、自衛の名のもとに、自衛のためという意味において戦争をすることに関しましても、これはやるべきものじゃない、ただ、九条のいわゆる戦争放棄ということは、国の自衛独立国として持っておる自衛権というものを否認はしていない、そういう意味において、自衛権とはそれじゃ何だといえば、他から侵略された場合にその侵略を排除する、そうして自分の安全を守るということでなければならぬことは言うを待ちませんから、その限度において実力を行使するということは、もちろん私は自衛権を認めておる以上、当然のことでありまして、今、制定当時論議されたことは、過去の経験からいうと、自衛のためという名のもとに戦争がやられるというようなことは、これは一切やらないのだ、ということを私は言われたのであって、その後におけるいろいろのその点に関する解釈においても補足されておって、私が言うことは、決して制定当時から拡張して解釈するというような、後に解釈するというようなことではないのであります。それとちっとも矛盾しておらないと私は考えます。
  14. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それではさらにお尋ねをいたします。昭和二十五年の一月二十五日の参議院における答弁において、吉田総理は、「武力がなくても自衛権は完全に、国家としては国家を護る力があると私は確信して疑わない」、こういう答弁をしておられます。武力がなくても国家を守ることができるのだ。先ほど岸総理は、他国から侵略をされた場合に、それを防ぐために実力が要るのだ、これは武力が要るのだということと同じ意味である、他国から侵略された場合には、これを守るために武力が必要なんだ、こういう見解であります。しかし、吉田政府のときには、武力がなくても国家を守ることができるのだ、こういう考え方表明しておるわけであります。ここには私は非常に開きがあると思う。同じであるという解釈は、これは通らないと、こういうふうに思うのです。  さらに同様なことを言っております。「武力なしと難も自衛権はあるのだ。武力なき自衛権を私は、想像し得る」、こう言っている。武力のない自衛権というものは十分考えられる、こういうふうに答弁している。これは明らかに私は今の岸総理答弁と食い違いがあると考えるのです。この点いかがでありましょうか。
  15. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今の論議での吉田首相答弁は、多分に政策的な意義を加味しておると私は考えます。現実にもちろん日本の安全を守るということ、他から侵略を受けないようにするためには、ただ実力を持ち、自衛隊を持っていればそれでいいというものではございませんで、その他のあらゆる外交の政策や、その他国際情勢等緊張緩和問題等に関してのあらゆるものを考え、他から侵略を受けないような態勢を国内において固めていくというようなことが、政策的に申せばあらゆる意味において必要であるということは言うを待たないのであります。ただ、しかしながら自衛権というもの自体には、やはり他から現実侵略を受けた場合において、これを排除するところの何らかの実力を持たなければならぬということは、吉田内閣におきましてもその必要を認めており、今日の自衛隊に至るまでの実力を国情に応じつつ増強してきた経過をごらん下さいましても、このことは明瞭であると私は思います。
  16. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私が先ほど申しましたように、憲法制定当時及びごくその近い期間においては、実力というもの、武力というものを完全に否定した答弁をしております。先ほど読み上げた通りであります。自衛のためで自衛権は認める、しかしそれは武力考えていないのだ、これが政府答弁であります。その後朝鮮事変が起り、警察予備隊が作られ、あるいは保安隊発展をし、そうしてさらに自衛隊発展した。それにつれて政府解釈というものがだんだん拡大された。明らかに憲法制定当時は武力というものを持ってはならないと、明らかにこれはしている点であります。それから考えると、政府の今日の解釈というものは、非常な拡大解釈であると言わざるを得ないのであります。その点重ねてお尋ねをいたします。
  17. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は憲法解釈としての、憲法解釈という立場からいいますというと、私どもが今日とつておる解釈は、決していわゆる政策的の意味でもって憲法内容を拡張して解釈するというのじゃなしに、客観的な、客観性を持った憲法解釈としては一貫しておると私は考えます。それよりも制定当時においては、多分にその当時の客観的情勢その他の情勢から政策的な意義を持って私は扱われたことが非常に多かったと思います。むしろその後において社会的な憲法解釈社会的情勢というものもある程度安定をした後における憲法の客観的な解釈標準というものも冷静に検討されて、私どもが今日とっておるような解釈というものは、私は憲法解釈としてはそれは一貫して正しい解釈であるという考えに立っております。
  18. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これは憲法制定当時の解釈多分に政策的であるというふうに総理がお考えになっておられるということであれば、非常に大きな誤まりであると思う。この憲法制定当時は、やはり大東亜戦争の苦しい経験、なまなましい経験の上に立って、日本国民としては私はこのことを真摯に考えておると思います。これを政策的に考えるということは私はあり得ないと思う。腹の底からやはり真剣に考えて、むしろ今日こそ岸内閣が、冷静といいますが、そうでなくて政策的に憲法解釈を拡大してきた、こういうふうに言えるのじゃないかと思うのであります。むしろ私どもがこの際岸総理に要請したい点は、憲法制定当時のあの気持に立ち返って、憲法解釈というものをやり直すべきだ、憲法制定当時に返るべきだ、こういう考えを深く持っておる。それを政策的であるというふうな言い方で制定当時の憲法解釈をゆがめようとする、こういう考えこそ私は是正さるべきではないかというふうに考えるのですが、いかがでありましょうか。
  19. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほどお答え申し上げました通り、私は私どものとっている憲法解釈は客観的に見て正しい解釈である、こう考えております。しこうして、それは単に岸内閣になってからの解釈ではございませんで、この問題についてさらに国会においてしばしば論議をされ、堀り下げて議論された結果到達しておる考え方である、私はかように思っております。
  20. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この問題について、憲法制定当時の考え憲法解釈についての考えは変っていないのだということについての答弁は私は不十分であると思います。従ってこれは時期を見てさらに確めたいと考えます。  第二点の問題は、先日の委員会において伊能防衛庁長官答弁について私どもは重大な疑義を持っております。その点について総理大臣並びに外務大臣から所見を伺いたい、かように考えるわけです。  この間の伊能防衛庁長官答弁は、日本に駐留しているアメリカ軍装備内容については日本政府の関知するところではない。であるからアメリカ軍原爆水爆日本に持ち込んでも憲法上の問題にはならない、こういう答弁であります。そこで私がお伺いしたい点は、岸総理伊能防衛庁長官と同じような考えを持っておられるのかどうかです。第一点にお伺いしたい点は、日本に留駐しているアメリカ軍はどういう装備を持っておろうと、これは日本政府の関知したところでない。これは私は今まで国会になかった答弁であると思います。そういうことがあり得るかどうか。あるいは原爆水爆を持ち込んでもこれは憲法に抵触しないのだ、こういう答弁ですね。これはどうしても納得できない。岸総理大臣からこの点を伺いたい。
  21. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御質問の第一点であるアメリカ日本に駐留しておる軍隊装備については、政府は関知しないという点でありますが、これは私は日本憲法のいわゆる九条の規定範囲外の問題であって、憲法とは関係のない事項であるということを述べたことであると思います。なお、実際の問題として、現在の安保条約におきましては、米軍装備についてはアメリカが一方的になし得るので、日本のあらかじめ同意を得なければならぬというようなことは規定されておらないことも御承知の通りであります。しかし、問題になるのは、いわゆる憲法規定において、われわれが憲法九条の解釈として先ほど来問題になっておる自衛権を裏づけるこの自衛のために必要最小限度実力という中に、一体原水爆を持つというようなことが入っておるのかということに対しては、従来もこれを否定して、私ども答弁いたしております。そういうものは、憲法日本自衛権内容としての実力として持つべきものでない、また持てないのだということを申しております。しかし、それは日本みずからが持っておるところの自衛権についての、限られたる自衛権というものについての規定であり、憲法九条はそういう規定であって、他の外国の軍隊日本との条約関係において駐留するとか、いろ、いろな日本の安全を保障するために働いてもらうという場合における、この持っておる武力等に関して、憲法九条が適用されるものでないという意味において、アメリカ軍装備については憲法の関知するところでないということを答弁したと思いますし、私はそれが正しいと思います。
  22. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 憲法九条の規定によって日本は核武装できないのだ、原水爆を持つことができないのだということは、今も御答弁もありましたし、しばしば答弁のあったところであります。そういう憲法を持っている日本アメリカとの間に安保条約が結ばれ、そうしてこの安保条約は、日本の安全を保障するためにアメリカ軍日本に駐留することになっている。そのアメリカ軍憲法規定関係なしに、いかなる兵器をも持ち得るのだということになれは、こういう条約を結んだ、安保条約憲法との関係は一体どうなるのかという問題が私は起つてくると思うのです。日本憲法は、これは原水爆は持てないのだ、核兵器は持てないのだということは、政府も明らかにしている。その日本憲法のもとにおいて、アメリカの駐留している軍隊核兵器を持ってもいいのだ、原水爆を持ってもいいのだということになれば、この駐留している軍隊趣旨というのは、日本の安全を保障する、言いかえれば日本自衛といいますか、そういうために駐留している、そういうものは何を持ってもよろしいのだという条約を結ぶということは、これは結んだ日本政府が、私は憲法趣旨を乗り越えて条約を結んでおるということになると思うのです。少くともこういう憲法を持っている日本政府としては、無制限な装備を許すようなアメリカ軍の駐留というのを許すような条約、そういうものは結び得ないというふうに私ども考える。この点を総理大臣並びに外務大臣から御答弁願いたいと思います。
  23. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本憲法は、先ほど来論議されているように、これを持ち得る限度というものにつきましては、最小限度のものであることは、従って原水爆のごとき、もっぱら他を攻撃するような用途に使われるものを装備することができないということは、当然に解釈できると思います。しかし、日本の安全を、今の国際情勢に応じて安全を保障し、日本が他から侵略を一切受けないということにつきまして、日本自衛権だけでできるかどうかということは、これはまた別個の問題であろうと思います。その場合に、日本はすでに憲法の前文にもございますように、諸国民の公正と信頼に期待して日本の平和と安全を守っていく、すなわち、国際連合等において一つのそういう力ができ、武力が持たれて、そうして世界の平和、安全が、侵略というものが排除されるという希望ができれば、これは一番望ましいことだと思います。それがまだできない場合においては、この国連の憲章の精神に従って、あるいは二国間、あるいは数カ国間においてお互いに安全を保障するところのことを作るということは、これは私は憲法の精神に反しているわけではございませんし、またいわんや憲法九条の規定の関知するところでもないことは当然であると思うのであります。その場合において、今他国とそういうふうな相互的にもしくは共同して日本の安全を保障するという条約を結ぶ場合において、それでは日本と同じような憲法を持っている国とだけしかできないかといえば、そんなことは私はないと思います。従って、そういう意味においてアメリカとの日本の安全を保障するために安保条約を結び、そうしてアメリカ軍がどういう装備をするかということは、これは日本憲法がこれを制約すべきものでないことは言うまでもないことであります。従って、それが憲法違反であるというようなことは、私ども解釈上としてとるべきものでない、こう思います。
  24. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私が質問をしている要点には触れておられないと私は思うのです。私は、アメリカ軍がどういう装備をするかということは、これはアメリカの自由であり、日本憲法がこれを規制するなどといっているのではないのです。そうでなしに、日本原水爆保有を禁止している、核兵器保有を禁止している憲法を持っている政府が、アメリカと、アメリカでなくてもいいのですが、アメリカと防衛条約安保条約を結び、しかもそのアメリカ軍日本の国土に駐留する場合、いかなる装備を持っても差しつかえないのだというふうな条約政府に結ぶことができるかどうか、そういうことはこの憲法規定からいって政府にそういう権限は、憲法上できない、そういうことを私は申しているのです。
  25. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 憲法の九条で規定しているところのこと、従って、原水爆を持たないということは、日本自衛隊、いわゆる自衛権内容として日本みつからそういうものを持たない、持ってはならぬということを意味しておりますけれども、これを、他の軍隊が持ち込んではならぬという規定でないことは、読んできわめて明瞭であるごとく、私はそれが直ちに憲法九条の違反になると、こういうふうな解釈はどうしてもとるべきものではない、かように思います。
  26. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ちょっと関連。今の荒木君の質問は非常に重要なポイントです。日米が安保条約を結んで、その条約に基いて米国の軍隊日本に駐留しているわけです。その米駐留軍はたとえ核兵器を持ち込んでも、日本憲法の制約は受けないというんでしょう。そうなりますと、安保条約日本憲法に優先するじゃないですか、安保条約はそれに関する限り日本憲法に優先するじゃないですか。そういうことは許されますか。
  27. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど来答弁しているように、憲法九条は日本の持っている自衛権内容として、原水爆を持ってはならぬということを意味しているだけでありまして、それ以上のことは何ら規定していないのであります。従って、アメリカとの間の安保条約は、持ち込ますかどうかという——優先するとか何とかいうことほ、同じものがどちらが先に適用されるかという問題でありますが、憲法九条は、全然、いわゆる問題にしていない。目的としてこれが違っておるのでありまして、九条は、日本自衛隊装備について、かりに何か条約日本自衛隊をどういう装備をするということを、憲法に違反するような規定をするなら、どちらが優先するかということは問題になりますけれども、全然規定外の問題でありますから、私は、どちらが優先するというような問題は生じないと思います。
  28. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 もう一回。それは総理、どうしても納得できぬですよ。憲法九条は、あなたの解釈原水爆は持てないというのでしょう。ところが、安保条約で米駐留軍が原水爆をたとえ持ってきても憲法の制約は受けないというのですよ、あなたは。あなた方の解釈は、それに関する限り安保条約憲法に優先することになるんじゃないですか。赤城官房長官は、この前のこの委員会で、私の質問に対して、憲法条約に優先する。そういう二国間の条約を結ばなくちゃならぬと明確に答弁している。はっきりその点に関する限り食い違うじゃないですか。はっきり答えて下さい。
  29. 木暮武太夫

  30. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 いやいや総理です。あなたはいつも曲学阿世の答弁をする。
  31. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 憲法条約との関係におきまして、私は、今の関係におきましては優先関係というものは生じないということを先ほど答弁しております。きわめて明瞭であります。
  32. 林修三

    政府委員(林修三君) 先ほどから総理が御答弁されました通り、また一昨日私がお答えいたしました通りに、憲法九条は、これはあくまで日本国の持つべき自衛権、あるいは日本国がその自衛権の裏づけとして用いる実力、あるいは持ってはならぬ戦力ということに関する規定でございます。従いまして憲法九条は、駐留米軍のことについて何ら規定しておらない。およそ日本にはこういうようなものはあってはいかぬというようなことはどこにも憲法には規定はないわけでございます。従いまして、日本アメリカ安保条約を結ぶ場合において、駐留米軍装備をいかに規制するかということは、憲法の制約はないわけでございます。従いまして、もしそれをやるとすれば条約規定すべきものであります。憲法安保条約の上で、装備について何らの規定をしなかったからといって、日本憲法のどの条項に違反するわけでも何でもないわけでありまして、そこには優先関係とか優越関係とかということは全然起らないのであります。    〔「実質的になるじゃないですか」と呼ぶ者あり〕
  33. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は、やはり要点がちょっとぼやけておると思います。もうちょっとはっきりさせたいのでありますが、アメリカ軍が持っている装備が、直接日本憲法とどうかという問題でなしに、アメリカ日本が結んでいる安保条約によれば、これは政府解釈ですよ、政府解釈によれば、原水爆を持ち込んでも差しつかえがないんだという解釈です。もしそういうことであれば、そういう安保条約を結んでいる政府の行為が違憲行為じゃないか、こう言っているのです。原水爆を禁止している憲法です。これは政府もその憲法の制約を受けている。その政府原水爆を持ち込んでもよろしいというふうな安保条約を結ぶというそういうこと自体が、憲法違反の越権行為だ、そういうことを私は尋ねているわけなんです。その点をお答え願いたい。
  34. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 憲法九条は、いかなる意味においても原水爆を持ち込んでならぬということを規定しているわけではございません。私は、日本自衛隊内容として原水爆を持ってならぬということを規定しておるというのでございますから、従って、いわゆる他の国との間においての条約において、私は安保条約を結ぶことが違憲行為だという議論は出てこないと思います。たとえば憲法九条において、今原水爆の問題がございますが、二項では、はっきり陸海空の戦力を持ってはならない、また交戦権を持たないということが書いてありますが、外国の軍隊日本と安全保障条約を結んでくる、それが交戦権を持ち、陸海空の戦力を持つことは、何ら差しつかえないのでありまして、憲法九条の規定の適用があるわけではございません。それを日本の安全のためにそういう条約を結んだからといって、私は憲法九条の違反になるものではないと考えます。同様に、さっきから議論のある原水爆を持たないということは、あくまでも日本自衛隊に関する憲法規定でありまして、その他のことについては触れておらないと解釈するのが正しい、従って、その点については、私は政府憲法違反の越権行為をしているとは絶対に考えません。(「関連々々と呼ぶ者あり)
  35. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 重大なことだから、一つ私話をしないで静粛によく聞いて下さい。
  36. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 アメリカ軍隊が交戦権を持ってわが国に参っても差しつかえない、こういうことをおっしゃっている。私はこの前の当委員会におきまして、この点について心配でありましたから、はっきりとあなたにお尋ねをいたしたいのです。それは、純粋の自衛のために日本自衛隊自衛力を行使するということは第九条に違反をしないということを、あなた方がおっしゃっております。われわれはこれにも異論がありますけれども、一応それはそれといたしました場合に、問題になるのは、原水爆日本に持ち込んで、そして日本自衛に当るというようなことはまず考えられない。第三国と米国との間に国際紛争が起きて、そしてわが国を前進基地として使用する、こういう場合でありまするから、従って、そのときには国際紛争を解決する手段として米軍は動くことになる。そういうわが国の国土を利用して国際紛争を解決する手段として動く、そういうことが、明らかにやはり日本国憲法に反するではないか、特にそれと共同作戦をとる日本国の自衛隊は、国際紛争を解決するために動くということになるのでありまして、これは明白に憲法違反であります。この点を明確にしていただきたい。
  37. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本自衛隊が出動する場合は、言うまでもなく日本に対する侵略があって、急迫不正の侵略を排除するために必要ある場合に限られることは、これはいかなる場合におきましても当然であります。従って、それ以上のことは日本自衛隊はいたしません。また、アメリカをしてそういうものを持ち込ませるか持ち込ませないかということは、これは別個の政策問題でありまして、私は、終始一貫持ち込ませないということを言明をしており、また今日まで実行しており、将来も実行するつもりでございますが、純粋の憲法論としての論議である以上は、純粋の憲法論としては、憲法九条というものはあくまでも日本自衛隊に関する規定であって、他の外国の軍隊に関する規定でないということは、終始一貫私は誤まりないと思います。(「おかしい、おかしい、それは」と呼ぶ者あり)
  38. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 関連。ただいま総理に取り消してもらいたい。あなたは重大な発言をしたのですよ。きょうの冒頭に荒木委員と、憲法解釈は拡大していってはならないということをまず確認したのです、お二人の間で。そして今あなたが何とおっしゃったかというと、憲法九条はいかなる場合にも原水爆を持ち込んではならないという規定をしているのではないということをあなたは答弁した。取り消して下さい。そういうあなたは憲法九条の解釈をされるのですか。さっき荒木委員との質疑応答で、憲法制定当時の憲法解釈を、荒木君はるるとして述べた。そしてこれは変るべきものでないという大前提のもとに、今日の討論は進められておる。ところが、あなたはいかなる場合にも原水爆を持ち込んではならないという規定憲法九条にはないということを答弁された。取り消して下さい。
  39. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は取り消す必要はないと思います。というのは、憲法九条というものは日本は交戦権を持たない。しかし自衛権は持っておる。日本戦力は持たない、交戦権は持たないとは規定してありますけれども自衛権というものは持っており、それを裏づけるに必要最小限度実力というものは持ち得る。これは憲法違反でない。しこうしてその内容としては原水爆のごときものを持つことを禁止をされておるということが憲法九条の精神でございます。いかなる意味においても日本自衛隊自身が装備するためにそういうものを持ってならぬことは、一貫して私の申し上げておる通りであります。しかしながら、外国の軍隊が、すべてのものが、何人も日本の国に持ち込んではならないということを憲法九条が規定している意味ではないということを申し上げたのであります。
  40. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 林法制局長官が補足説明をやりたいそうです。
  41. 林修三

    政府委員(林修三君) ただいま矢嶋委員は、今の憲法と駐留米軍関係のことで新しい言明のように仰せられましたけれども、これは昭和二十七年において、安保条約当時においてきめられておるわけでございまして、それは、駐留米軍戦力は九条の二項の戦力かという質問でございましたが、そういうものではない、駐留米軍はこれは別個の問題である、禁止されているのは日本の陸海空軍その他のものである、こういうことを何回も政府答弁しております。従って、その当時と政府見解は全然変っておらないわけです。    〔高田なほ子君「関連々々」と述ぶ〕
  42. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 荒木君に申し上げますが、あなたの持ち時間は残念ながらもう経過しておりますから、きわめて簡単に最後におやり下さい。
  43. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 いや、それを言おうと思っておったところです。ちょうど私のきまった時間がきましたから、千葉委員と私は交代をいたします。政府答弁については、私としてはなお質疑をしなければならない点があると思いますが、これは後日に譲りたいと思します
  44. 高田なほ子

    高田なほ子君 委員長関連質問をさせないね。
  45. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 荒木委員質疑は終了いたしました。  次に千葉信君の御登壇をお願いいたします。
  46. 高田なほ子

    高田なほ子君 委員長はどういうわけで私の関連質問を許しませんか。
  47. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 今、千葉さんに発言を許しましたから。
  48. 高田なほ子

    高田なほ子君 いやこれに答えて下さい。どういうわけで関連質問を許しませんか。
  49. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 私語を禁じます。
  50. 高田なほ子

    高田なほ子君 なぜ関連質問をやらせませんか。
  51. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 千葉さんの発言を許しましたから、千葉さんに登壇を願って発言をしていただいて、また関連があれば……。
  52. 鈴木強

    鈴木強君 委員長、議事進行。
  53. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) どうぞ。
  54. 鈴木強

    鈴木強君 今、高田委員から委員長に要求しておるのは、さっき荒木委員質疑の中で、高田委員関連質問を要求したわけです。委員長がそれをなぜ許さないかということを聞いているわけだから、委員長はそこで弁明しなさいよ。そうしなければ議事は進行しませんよ。
  55. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 関連質問で先ほど荒木さんの御質問を確認して、それに対する答弁がはっきりしないということが皆さんから出たわけで、こちらからもいろいろ言うておるわけだが、それをあなた方の方では承知ができないのだというわけだけれども、つまり政府側の答弁を確認しようということについては、荒木さんの線で皆さんがやっているわけで、理事の方もやり、それから栗山さんもやった。これは同じ筋道のことをやっているわけで、まあ先ほど私が申し上げました通り理事会の申し合せもありますので、この際はなるべく関連質問は差し控えていただきたいというような趣旨で、これをおとめしたわけです。今後もとめるわけでも何んでもありません。またどうぞ適当な機会を見て……。
  56. 高田なほ子

    高田なほ子君 なぜ今許さないのですか。
  57. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 高田君どうぞ。
  58. 高田なほ子

    高田なほ子君 私は委員長の今の言い分は納得できないですよ。関連質問は何も制限するというようなことはおっしゃっておらないわけでしょう。そしたら関連質問が出た場合には、最小限度お認めになるのが当りまえじゃないですか。私は予算委員の一員としてここに出ているのであって、何も臨時雇で出ているわけでございません。大体あなたの傾向は、婦人の発言を押える傾向がある。この予算委員会に婦人の代表は何人出ていますか、ほんとうに少数でしょう。そうだったら、むしろ優先的に発言を許すのが当りまえじゃありませんか。何というあなたは封建的なやり方をなさいます。そういうやり方は納得できません。先ほどから私が発言、発言と言っているのに、鈴木さんだけには発言を許しておって、なぜ私には発言を許さないのか、大体あなたの考えは封建的ですよ。その理由では絶対納得できません。関連質問を許すのが当りまえじゃないですか。
  59. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 御趣旨はよく了解しました。今、本質問者の荒木さんが自分の質問千葉さんに譲るというお言葉があったものですから、千葉さんの御登壇を願いました次第です。そこで千葉さんの発言をしていただいて、次の適当な機会にあなたにお許しします。
  60. 高田なほ子

    高田なほ子君 私は荒木さんの質問に関連して質問したいので、千葉さんの質問の中で私の関連質問がどうしてできますか。だからあなたはおかしいと言うのですよ。理窟に合わないじゃないですか。    〔矢嶋三義君「委員長関連質問を許した方が早いですよ」と述ぶ〕
  61. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 荒木さんの質疑関連質問として高田君の発言を許します。
  62. 千葉信

    千葉信君 私に発言を許したことはどうなるのです。
  63. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) あなたに発言を許したところ、今関連質問をぜひしたいというので高田君に許したので、あなたは黙っていたから……。(笑声)
  64. 千葉信

    千葉信君 質問者の了解を得ずに……。
  65. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) あなた方の理事の人が許せというようなお話だったので……。あなた方の仲間の方が言い出したのですよ。そうもいかぬかね、千葉さんどうしますか。
  66. 千葉信

    千葉信君 了解します。
  67. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) どうぞ高田君、関連質問ですから簡潔に願います。
  68. 高田なほ子

    高田なほ子君 私は荒木委員質問に対して関連質問をいたします。ちょっと空気が抜けて、しまったが、(笑声)安保条約関係と、それから憲法の問題について論議されたことについて、関連してお伺いするわけです。首相の解釈では、憲法九条は日本自衛権の限界をきめたものであるから、原水爆を持ち込むことは憲法上あり得ない、こうおっしゃっております。その次に、外国軍隊戦力または装備等については、わが国の憲法九条の規定するところでないと言っておられます。しかして外国軍隊という別個の問題については、そういう解釈は成り立つでしょう。しかしながら、この外国軍隊がわが国内に駐留する場合において、いかなる装備を持ち、いかなる行動もでき、原水爆もこの日本の国内において使用でき得る、こういう憲法解釈については疑義があるから、お尋ねをしているわけです。従って、私の尋ねたい要点は、もしこの憲法解釈が成り立つとするならば、一体日本憲法は、日本の主権の行きわたる所いずれも憲法の制約内にあるものと見なければならぬ。従って、主権内における外国軍隊の配備権は、当然憲法の制約を受けるものでなければ、日本の主権は存在しない。でありますから、岸首相の解釈によると、外国軍隊の配備権、駐留権そのものは、わが国の主権に優越するという解釈をしておりますが、これは大へんな間違いです。もしこの解釈が成り立つとするならば、沖縄におけるわが主権は潜在主権であるがゆえに、日本の領土であるけれども、主権が潜在しておる。外国、アメリカ軍隊は、装備でも戦力でも行動でも御自由になっております。こういうようなアメリカと同じような状態になり得るという結論が出てくる。主権より配備権が優先するものであってはならない。あくまでも日本国憲法の命ずるところによって、わが日本の主権は配備権よりも優先して確立さしていかなければならない。こういうような解釈を私は持つのでありますが、あなたの解釈と私の主張とは非常な違いがある。主権を喪失するおそれのある解釈をしております。あらためてあなたの見解をただしたい。配備権と主権との関係においてお答え願いたい。
  69. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 沖縄の関係は、言うまでもなく平和条約によって、日本がこれを承諾して、一切の施政権をアメリカに認めたということから、いろいろに制約を受けておるわけであります。また日本が主権を持っており、主権を持っておる範囲内で外国の軍隊の駐留を認めるか認めないかということは、これは日本日本の主権に基いてきめる問題でありまして、これは条約によってそれをわれわれがきめる。こういうことであると思います。  それから、そういう場合にそれを、駐留を認めた、日本条約を結んで他国軍隊のなにを認めたということは、私は、日本が主権を持っておるから条約を結ばなければならぬし、結んで承諾したから入り得るので、承諾なしに入らせるということはあり得ないと思います。  それから、さらに、その軍隊がどういう権利義務を持つかということは、条約に定めるわけでありますが、憲法そのものの規定が、今問題になっておる九条が適用があるかといいますと、私どもは適用なしと、こういう解釈しております。別に主権の問題と、私はそういう意味において何か抵触するものとは考えておりません。
  70. 高田なほ子

    高田なほ子君 これは大へんな重要なことになってしまった。私は時間が必要でありますから、いずれ持ち時間に言わせていただいて、保留いたします。
  71. 千葉信

    千葉信君 私は、今問題になっております先ほどの荒木委員質問並びに関連質問にありました在日米軍が、日本憲法関係なしに原水爆を保有できる、こういう政府解釈に対して、私は以下質問申し上げます。  首相の御答弁によりますと、日本自衛隊自体は憲法第九条の制約を受けるけれども、在日米軍はその制約は受けないという御答弁でございました。しかし、実際上は現在の安全保障条約というのは、日本の、国連憲章第五十一条にいうところの自衛権を行使する手段として日本アメリカとが安全保障条約を締結し、そうしてその安全保障条約締結によって、第三条によりますと、その配備は「両国政府間の行政協定で決定する。」政府間の協定で決定する、ごうなっている。同時にまた行政協定の前文におきましても、「第三条は、合衆国の軍隊日本国内及びその附近における配備を規律する条件は両政府間の行政協定で決定する」と、こう述べております。ということになりますと、日本憲法の制約を受ける。日本政府アメリカとその配備について決定する際に、当然日本の国内には保有することのできない憲法の制約を受けるところの原水爆の国内保有という段階に入る配備については、日本政府としては、当然これは憲法に違反するという建前から、これを拒否しなければならないというのが、私の見解でございます。もしそれをアメリカならアメリカの希望する通りに、原水爆の保有もしくは持ち込みを認めるということになりますと、日本憲法が言うところの第九十九条によって、日本国務大臣国会議員はもちろんですが、「この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」というこの条文に違反することになるという私の見解ですが、いかがですか。
  72. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、この核兵器の持ち込みや装備につきましては、従来原水爆だけではなくして、これで装備しないし、またこの核兵器の持ち込みも認めないということを終始一貫言明もし、また実行もしております。(「オネスト・ジョンはどうだ」と呼ぶ者あり)問題は、憲法解釈の問題でございまして、今論議されている事柄は……。しかして憲法の、先ほど来しばしば繰り返して申しておるように、憲法九条の規定は、あくまでも日本みずからが持つ自衛権並びにその内容に関する規定でございまして、日本がいろいろな国際情勢から見て、日本の安全を保障するために、安保条約や、あるいはその他の二国もしくは数カ国によって日本は安全を守るという必要がありと考えまして、他国条約を結ぶ。その条約によって日本日本が駐留を認めるというような内容条約であったとして、その場合の駐留する軍隊に関して、憲法九条というものは、これは適用ないのである。従って、憲法九条の制限が当然その軍隊にも及ぶものと解釈することは、憲法解釈としてはわれわれはとらないということを申しておるわけであります。  しかして、私はこの政策の問題として、そういうものを認めないということについては、一貫して申し上げておる通りでございます。
  73. 千葉信

    千葉信君 私はその憲法解釈の問題で、先ほどの私の意見を申し上げたわけです。直接には、なるほど憲法の制約は外国の軍隊は受けないかもしれない。しかし、間接的にはどうしても日本に駐留する限りは、日本憲法の制約は受けなければならない。その受ける理由というのは、先ほど申し上げました通り日本の国内に憲法第九条によって、そういう危険な兵器は保有しないという解釈ですから、従って、そういう立場に立っている日本の場合に、もしもそういう憲法を持っている日本政府が外国と条約を結ぶ場合に、この憲法の条章を無視した条約をもし結んだならば、その条約憲法違反条約になるし、もしそうでないというなら、憲法に違反しない条約だというならば、その条約憲法に違反しない範囲内で締結されなければならない。従って、この第三条の解釈も、そういう憲法解釈からいけば、両国政府間でその配備の条件等については、はっきり話し合いできめるのだ、こういうことになる。ですから日本政府の場合には、日本国の憲法を守らなければならない。日本政府が結ぶ条約、協定等には、そういう憲法の条件というものを無視しない範囲内で約束しなければならない。そういう意味では、やはり駐留米軍といえども、間接的には日本憲法の制約をはっきり受けなければならないということに私はなるのと思うのです。その点いかがですか。
  74. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 前提としてわれわれが条約を結ぶ場合において、憲法規定に違反したような条約は結んではならないということは、千葉委員のお話の通りであります。問題は憲法第九条の規定が、日本条約を結んで外国の軍隊を駐留せしめる場合に、その外国軍隊にも適用があり、従って日本自衛隊に認めてないようなものを外国の軍隊日本の国内において持つことは憲法違反であるという点に関しましては、私はあくまでも先ほど来お答え申し上げておるように、憲法九条の規定一項、二項とも、これは日本自衛権また自衛権を裏づける実力としての自衛隊に関することでございまして、外国軍隊については適用が全然ない。従って、前提としての御議論には、私は賛成でありますが、具体的にこのアメリカ軍隊にこの規定が適用される1直接もしくは間接に適用されるというふうなお考えは、私ども見解としてとらないのであります。
  75. 千葉信

    千葉信君 それでは少しもっと前提条件についてお尋ねをしたいと思うのですが、この安全保障条約の前文を見ますと、その安全保障条約日本が結んだのは、国連憲章の第五十一条に言う自衛権日本も有するものとして、その自衛権を発動する手段としてアメリカと安全保障条約を結んだのと違いましょうか、どうでしょうか。その点いかがですか。
  76. 岸信介

    国務大臣岸信介君) その点につきましては条約解釈でありますから、法制局長官からお答えいたします。
  77. 林修三

    政府委員(林修三君) 第五十一条は、御承知の通りに、いわゆる個別的あるいは集団的自衛権を持つということの規定でございます。日本は主権国であります、もちろんこういう自衛権は持っておるわけであります。日本国は主権国としてアメリカとの間に日本自身が日本を守るだけの実力を持っておらないからアメリカに依存する。こういう立場で条約を結んでおるわけであります。しかしてその場合に、日本憲法第九条で制約されております自衛権あるいは自衛のための実力というものの範囲内でなければ、米軍の駐留が認められないということは、憲法にはどこにも規定がないわけでございます。日本に駐留する米軍が交戦権を持たないというようなことは、これはどこにもあり得ないことでございます。こういうことを憲法九条二項がそこまで規定するものでないことは明らかでございます。そういう意味から、先ほどから総理がお答えになっていることは正しいことと思うわけでございます。
  78. 千葉信

    千葉信君 今の林君の答弁通りだということになりますと、日本にはその根本基準として憲法が存在しながら、この安全保障条約を結ぶことによって、実際上日本憲法はくずれてしまったということになると思うのです。どうしてかというと、憲法の前文にも明らかなように、あくまでも日本は国際平和を希求し、あくまでも平和国家として生き抜いていくために、国際紛争を解決する手段としては戦争はやらない、戦争には訴えない、こういう建前で日本国憲法ができているのに、しかもその憲法第九条は、もし侵略があった場合には、最小限度戦力というか実力というか、それを行使してその侵略を排除しなければならない。そういう意味における最小の実力というものが一応認められた格好に現在遺憾ながらなっております。しかし、そういう格好のところへ、日本最小限度実力もしくは戦力等に全然関係のない非常に膨大なアメリカ軍隊原水爆を含むところのそういう軍隊日本の国内に駐留するということになると、日本全体としての立場から言うと、憲法の方針なり憲法の言うところの高い理想は完全にくずれてしまったごとに私はなると思うのです。この点はいかがですか。
  79. 林修三

    政府委員(林修三君) 憲法第九条は、御承知の通りに、過去における日本のいろいろの経験にかんがみまして、特に日本といたしましては、自衛権はもちろん持っておるけれども、そのための自衛の裏づけとなる実力というものは必要最小限度しか持たない、そういうのが憲法九条の趣旨だと思うのです。しかし、それだからといって、さらに憲法の前文から、憲法全体の、第九条、十三条をごらんになりますれば、日本が他から侵略されて安全が危うくされるということを認めていいということはどこにも出てこないわけでございます。むしろ逆に、日本の安全は保たなければいけないことは、これは憲法趣旨でございます。従って、もちろん日本憲法の九条によってそういうふうに自衛権を行使する実力が制限されておりますけれども、それを埋める意味において、国連憲章の集団安全機構ができれば、もちろんそれによるべきでございましょうし、それができないときには、一国あるいは数国と集団安全機構を結んで、これによって日本を守るということは、もちろん憲法の認めているところと思います。その場合の集団安全機構によって、日本が集団安全機構を結ぶ国の実力がいかなる範囲のものであるかということは、憲法は全然これは規定しておるわけではございません。憲法は、もちろんそういう場合に日本の安全をはかるために何が最善であるかということによって日本の態度をきめるべきである、こういうことが憲法趣旨であると私ども考えておるわけでございます。従って、その場合において、米軍がいかなる実力日本において持つかということは、これは日本が政策的に条約によってその制約を考えるべき問題でありまして、憲法九条がそれを直接に制約しておるものではないということは、何回もるる御説明した通りでございます で、駐留米軍実力につきましては、これは憲法上の制約がないということは、先ほど申し上げた通りでありまして、ただ駐留米軍がいかにも他国侵略するがごときことのお言葉でございますが、米軍は御承知の通り、国連に加入しておりますから、米国が実力を発揮し得るのは、もちろん国連憲章に従った以外にはあり得ない。みだりに他国侵略するようなことを米国ができるわけでもございませんし、米国がそういう行動に出るはずもないわけであります。そういう国と日本が安全保障条約を結ぶこと自身、私は憲法が禁止しておるものではない、むしろ憲法が積極的に認めておるところだと、かように考えます。
  80. 千葉信

    千葉信君 この問題については、ただいまの政府答弁を聞きますと、憲法に抵触するような条約を結ぶんだか、さもなければ今の政府解釈が誤まりであるか、いずれかでありますが、私は、この問題にあまり時間をかけておりますと、次の問題に入れなくなりますので、次の問題に入ります。  岸さんにお尋ねいたしますが、三十三年の八月十六日の参議院の内閣委員会におきまして、岸さんは社会党議員の質問に答えて、こう答弁されております。核兵器の持ち込みの問題についてでありますが、今お話の通り、われわれは効果的な防御力というものを持つけれども核兵器は持ち込まないということを明らかにしておるのでありますから、その持たないために破れるというようなことがありましてもそれはやむを得ないと、こう思っております。岸さんはこう言われましたが、あらためて確認していいかどうか御答弁をいただきたい。
  81. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 核兵器に関する限り、私は絶対にこの点装備しない、持ち込ませない、それが戦術上不利であっても、それは一貫して貫く考えでございます。
  82. 千葉信

    千葉信君 そこで、私は防衛庁長官お尋ねをいたしますが、本月九日の予算委員会におきまして、防衛庁長官は、オネスト・ジョンに核弾頭を装備したものでも自衛隊は持てると言う、持っても憲法違反にならないという御答弁をされましたが、私はこの答弁は、従来の政府の態度、すなわち昭和三十二年四月二十五日の参議院内閣委員会に対して、政府の統一見解が出されました。その統一見解によりますと、「現在、核兵器といわれておるものは、原水爆が代表的なものであるが、その他のものも、伝えられるところによれば、多分に攻撃的性質を持つもののようである。そうとすれば、この種の核兵器をわが国がみずから持つことは、慰法の容認するところではないと考えられる。」この政府の統一見解に私は相反する答弁をされたと思うのですが、伊能さんいかがですか。
  83. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。  昭和三十二年の参畿院内閣委員会で、御指摘のように核兵器について統一解釈をいたした際の趣旨は、「現在、核兵器といわれておるものは、原水爆が代表的なものであるが、その他のものも、伝えられるところによれば、多分に攻撃的性質を持つもののようである。」もしこの前提が正しいとすれば、核兵器を持つということは違憲であると概略的に当時申し上げた次第でございまするが、すべての核兵器について、「多分に」と申しておりますが、一切を網羅的に断定した趣旨のものではないと、私ども解釈をいたしております。従いまして、オネスト・ジョンにつきましては、昭和三十年におきましても鳩山内閣当時、時の杉原防衛庁長官あるいは船田防衛庁長官等も、オネスト・ジョンについては攻撃的のものというふうには解しておりません。かようにも答えている次第でありまして、従来のオネスト・ジョンの防御的性格についての考え方が変ったわけではございません。私としては、その後の核兵器の飛躍的な研究開発というようなことから、核弾頭が漸次小型化してきているということも、先般来申し上げたところでございますので、最近のオネスト・ジョンを念頭に置いて、最近のオネスト・ジョンのようなものは防御的なものであって、わが国のような地理的事情からは、矢嶋先生からもお尋ねがありました憲法上の解釈論としては、違憲ではない、かようにお答え申し上げた次第でありまして、先般の統一解釈と、特に異なっているとは考えておらない次第でございます。
  84. 千葉信

    千葉信君 私は少しその答弁は納得できません。オネスト・ジョンに関する限り、当時の杉原長官答弁しました当時は、核弾頭はつけないという条件で答弁がございました。ところが今日のあなたの答弁は、核弾頭をつけても、これは憲法違反でないという答弁でありますし、同時にまた、最近の小型兵器の発達しました段階から言いますと、オネスト・ジョンがあくまでも防御的の兵器であるという御見解を、私はそのままは了承できません。特にこの統一見解を発表されました当時の論議の中にもはっきりしているように、この論議の中にはオネスト・ジョンの問題も含まれて、こういう統一見解政府は出さざるを得なかった状態なんです。それを私は伊能さん御存じないために、そういう答弁をされているのじゃないかと思うのですが、もう一度答弁を伺います。
  85. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。ただいま杉原長官当時のお話が出ましたが、杉原長官当時の答弁につきまして内容をごらんいただきますと、核弾頭をつけた場合、つけない場合、いずれにいたしましてもというように、明確に答えられているように存じます。その問題は別といたしまして、当時の私が聞いておりまするところでは、主として原水爆のような大型の攻撃的兵器を中心に議論がなされた、かように政府としては考えまして、あのような統一解釈をいたした次第で、今日の事情から考えて、当時の統一解釈とは異なっておらない、かように存ずる次第であります。
  86. 千葉信

    千葉信君 この統一見解を見ましても、「その他のものも、伝えられるところによれば、多分に攻撃的性質を持つもののようである。」この中に核弾頭を装備したオネスト・ジョンが含まれているのです。あなたはこれの中に核弾頭を装備したオネスト・ジョンが含まれていないという反証を今あげることができますか。
  87. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 国会における論議でございますから、証拠とかというような問題ではなくして、論議の上におきまして、政府としては、最近のオネスト・ジョンの現状にかんがみて、当時の解釈と変っておらない、かように申し上げている次第であります。
  88. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 関連して……。総理に伺いますが、私はこの前三月十二日の約束で、責任をとってもらいたいと思う。防衛庁長官は今千葉委員に対して、鳩山内閣時代、杉原防衛庁長官答弁とか。あるいは岸内閣になっての小滝防衛庁長官言葉云々と言われておりますが、小滝防衛庁長官はこういうふうに答弁していますよ。それは岸さん、あなたの最初の内閣のときなんですよ。三十二年二月十四日衆議院内閣委員会でこういうことを言っている。「原水爆とか原子弾頭を日本には持ち込まないということは、これまでも申し上げた通りでございます。」、「それを防御用というように解釈いたしておるのであります。」、そうしてしばらくおいて、「われわれの通念において攻撃的なものであります。」、「攻撃用のものであるから、すなわち憲法の立場からいってもこういうものは、……持つべきでない。」、こういうふうに答弁していますよ、岸さんの内閣の小滝防衛庁長官は。だから防衛庁長官は、千葉委員に対して、先ほど防御用とか攻撃用とか区分して答えておられる、それ自体おかしい。防御用、攻撃用とか核兵器を区別して、そうして憲法云々を論ずるという、そのこと自体が間違いです。かりに、それを百歩譲って許しても、この前三月十二日、岸内閣が成立して以来の問題については責任を持つと言いましたね。そうして、われわれとの理論闘争に負けたら総六辞職すると約束した。あなたはここで総辞職するか、ここで陳謝されて、今までの答弁を取り消して、われわれの裁断を待つか、二者択一です。総理大臣からお答え願います。速記録を持ってきて答弁しなさい、わからなかったら。私は速記録で言っているのだから。
  89. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今矢嶋委員のお読みになったことだけによりますと、そのあとの方の問題は、オネスト・ジセンの問題であるということはきわめて不明瞭でありまして、前段の方のお話はオネスト・ジョンに関するものであると思います。原子弾頭をつければ核兵器になる、そうしてその当時の……「持ち込まない」と呼ぶ者あり)持ち込まない。だからオネスト・ジョンが入っても、それは核弾頭をつけておらないのだという説明はしたと思います。そしてオネスト・ジョンというものは防御的な性格を持っておる兵器だという……。
  90. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 攻撃的と書いてある。核弾頭をつけたものは攻撃的、だから憲法違反
  91. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 第二段にお読みになったところは防御的というふうな……。
  92. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 違いますよ。もう一ぺん読みましょうか。千葉委員との質疑で、過去は問題ないということをごまかすから私証拠に出すのです。三十二年二月十四日、衆議院の内閣委員会、「原子弾頭を……」——だからオネスト・ジョンに原子弾頭をつければ関係ありますね。「弾頭を日本に持ち込まないということは、これまでも申し上げた通りでございます。」、よろしゅうございますね。防御用というのは、「普通の爆弾を発射するという性質のものであります。」、防御用というのをそういうように定義しておるのです。弾頭をつけたものは防御用でないということを次に言っているのです。「われわれの通念において攻撃的なものであります。」、「憲法の立場からいってもこういうものは、……攻撃用のものである限り日本としては持つべきでない。」、持ってはならぬ。要するに、原子弾頭をつけなければそれは防御用だと、防御用の定義をしているわけです。弾頭をつければ攻撃用だと答弁しているのです。何となれば、防御用と攻撃用と区分するから区別がつかないじゃないかと追及に追及をされた、衆議院の内閣委員会で。そうして防御用というのは普通の爆薬で、弾頭をつけないものだ、攻撃用というのは弾頭をつけた場合。だから、弾頭をつけたものは攻撃用だから憲法上持てないと答弁されておる。二月十四日の衆議院内閣委員会で。大体攻撃用と防御用と区別すること自体がおかしいですよ。それを区別して糊塗しようとするから苦しくなって、こういうことになる。だから、先般の伊能発言というものは明らかに間違いですよ。取り消して陳謝するか、三月十二日の約束通り総辞職するか、どちらかです。憲法を侮辱するもはなはだしい。時々でごまかすような、都合のいいようなことを言うべきものじゃない。林長官も、あなたの言質をあげてから答弁を求めますからね。あなたいろいろ言っているけれども、あなたは過去に重大なことを答弁しているんですよ。
  93. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは二月十四日の衆議院の内閣委員会における小滝国務大臣答弁であります。いろいろなことを言っておる。第一、防衛的であるとか防御的であるとか、攻撃的であるとかということは、見ようによるということ、並びに兵器をそういうふうに分けることは困難だということを申しております。そうして、原子兵器ということについては、石橋委員が、「原子兵器とこれに類するものは攻撃的兵器である、現憲法の制約を受けるのでわれわれは受け入れられないのだ、こういうことだと理解してようございますか。」という質問に対して、小滝国務大臣は、「原子兵器とおっしゃる言葉は多少誤りであります。ある装置をつければ原子弾頭もつくかもしれない、しかしそれでもって直ちにそれが私の言う意味の原子兵器と申しますか、原子弾頭とか原水爆を持ち込まないというようなこととは必ずしも一致しないわけでありますが、私はこういう意味原水爆、原子弾頭というようなものを持ち込むことはやらないという考えを述べておるのでありまして、そして最初の議論に返るならば、攻撃的な性格を非常に大きく持っておるものはこれを排除したい、こういう考え方でございます。もちろんそのときの情勢による場合もありましょうが、今私ども考えておりますのは、そういう意味において攻撃的な武器としては持ち込まない、それは持たないという考え方でございます。」、こう言っておるので……。
  94. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 あとの方に、追い詰められて大へんなことを言っておる。あなたは都合のいいところばかり読んでいる。攻撃用のものであるから、憲法の立場から言って、こういうものは持てないということを言っておる。うしろの方でずっと追い詰められて言っておる。あとでゆっくり読んできて答弁してもいいですよ。石橋さんの質問に対して、あとでずっと追い詰められて、結局、憲法の立場からいって、核弾頭をつけたような攻撃的なものま……。
  95. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 石橋委員は、いわゆる大陸間誘導弾といわれておるもの、これなどは明かにわれわれは攻撃的な兵器だというように考えておりますが、これは制約を受けますか。」、小滝国務大臣、「私の考えでは、そういう攻撃的なものはもちろん憲法の上から見ても持ってはならないというように考えております。」——具体的ななには別として、われわれの憲法解釈としては別に……(「変っている」と呼ぶ者あり)変えておらないつもりです。
  96. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 速記録に残っておる。第一次岸内閣と変っているということを言っておる。小瀧さんと伊能さんの答弁は食い違っておるということを言っておる。
  97. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 食い違っているということは……。
  98. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 よく読んでごらんなさい。——(「休憩」と呼ぶ者あり)
  99. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 千葉さんちょっとお待ちなすって。何かこちらで今御答弁がある。(八木幸吉君「議事進行」と述ぶ)ちょっとお待ち下さい今答弁しますから。
  100. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 二月十四日の内閣委員会における石橋委員と小瀧国務大臣との間にいろいろ論議があったようでありますが長いことでありますから、全文を今ここで読むことも適当でないと思いますが、そのときの小瀧国務大臣と石橋委員とのこの論議においては、必ずしも石橋委員は満足されたようにも見受けられないのでありまして、その後昭和三十二年四月二十五日に、内閣委員会において、小津国務大臣から、この核兵器についての政府の統一解釈をはっきりと申し上げております。その統一解釈というのは、いろいろな論議を通じてのエッセンスであり、また、政府の一貫した考え方でございます。それは「現在、核兵器といわれているものは、原水爆が代表的なものであるが、その他のものも、伝えられるところによれば、多分に攻撃的性質を持つもののようである。そうとすれば、この種の核兵器をわが国がみずから持つことは、憲法上の容認するところではないと考えられる。」というのが政府の結論でございまして、これと今日私どもが申し上げておることとは矛盾がないということであります。
  101. 千葉信

    千葉信君 ただいまの関連質問にそのまま関連するわけでありますが、ここにも、オネスト・ジョンがはっきり攻撃的な武器、これは憲法違反であるという証拠がある。参議院の内閣委員会で行われた、これは、三十二年五月七日の内閣委員会の席上ですが、八木委員質問は、「防衛庁長官に伺いたいのですが、弾頭だとか何だとかという核兵器類似の一発で何百人も殺すというような兵器で、それを持つことがやはり憲法違反でないかのごとくあるかのごとく非常に答弁があいまいなんですが」と、こういう質問のありましたときに、小滝長官はそれに答えて、これは、オネスト・ジョンの問題に関連して、「戦略的な非常に大量殺戮をするというようなものは、急迫不正の侵略に対する防御の域を脱するおそれのあるものでございますから、そういう威力を持ったものというものは、これは憲法違反になる、こういうように考えおります」と、はっきりと当時の小瀧国務大臣は答えております。そうすると、もう今になってから、オネスト・ジョンの問題については、防衛庁長官は、これは防御用の兵器だ、攻撃的な兵器ではないと、ごう言って、政府の統一見解からこれをはずそうとしております。おかしいじゃないですか。いつもこういうように、憲法解釈がそのときどきによって変ってくるということは重大な問題ですよ。いかがですか。
  102. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。  憲法解釈の問題としては、私は少しも違っておらないと存じまするが、最近の破壊力、殺傷力について、オネスト・ジョンのごとき殺傷力の少いものについては、もっぱら防御的なものと、かように解釈をいたしております。
  103. 千葉信

    千葉信君 殺傷力いかんということを一つの根拠にされておりますが、きのうの衆議院の内閣委員会における質疑応答でも、防衛庁長官は、オネスト・ジョンの性能に関して、大体現在のオネスト・ジョンは、核弾頭を装備すれば、一万五千トンから二万トンもあるというその爆発力を答弁しておる。こういう膨大な爆発力を持っておる兵器が、これが大量殺戮をしない、もしくはまた、防御用であって、攻撃的な兵器ではないという見解は、一体どこから出てくるのですか。こういう事実からしても、オネスト・ジョンの核弾頭を装備した場合の威力というものは、おそるべき兵器じゃありませんか。かえってむしろ、前に国会でオネスト・ジョンの持ち込みの問題が起りました当時に比べて、現在のオネスト・ジョンの性能というものは、だんだんに増大しておるじゃありませんか。どうですか、その点は。
  104. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 昨日の衆議院内閣委員会において答弁いたしましたのは、杉原長官その他の防衛庁長官がお答えしました当時のオネスト・ジョンは、一万五千トンないし二万トン程度の威力を持つものである、かように説明をいたしたのである。しかし、最近において、伝えられるところによれば、アメリカの普通師団等がこれを装備して、千トン程度の力を持つ小型のものが生産されておる。そういう意味において防御的なものだ、かように私は昨日説明をいたしております。そういう趣旨から私は、これは、本委員会においても説明を申し上げましたが、他国を攻撃的な方法をもって攻撃することのできない三十キロないし四十キロ余りのオネスト・ジョン等については、もっぱら防御的なものである、かように解釈をして申し上げた次第であります。
  105. 千葉信

    千葉信君 私は、今の防衛庁長官答弁を聞いても、前に政府がはっきり、そのオネスト・ションを含んで統一見解を出されておいて、そうして今日になってから、次々と憲法の拡張解釈というか、むしろ核兵器等の関係では縮小解釈、むしろ攻撃的な兵器であるとか、あるいは大量殺戮の兵器ということについて範囲を狭めて、そうして憲法違反ではないという立場をとろうとしておることに対して、重大なる不満を表明せざるを得ない。一体こういうオネスト・ジョンのような兵器が防御用だということを盛んに言われておりますけれども、防御用だということで、しかも、それが憲法違反ではないという解釈に結びつけておられるのですから、私は、もっとわれわれが了承できるような説明が政府の方から行われなければ、政府の統一見解で、今日その中からオネスト・ジョンをはずすということについては、私どもは了承できない。  そこで私は、さらにこの問題に関連をしまして、次の問題に若干入りたいと思うのですが、大体今までの国会論議の中で、いろいろな経緯があるようでございますが、私は、その中で一つどうしても了承できないのは、岸さんは、衆議院の内閣委員会質疑応答に際して、在日米軍他国に対して、まあ朝鮮動乱が一つの例でございますが、ああいう場合に、日本の国土から在日米軍が出発をする、艦船も出かけていく、飛行機も日本から飛び立っていく、こういうふうな場合に、外国から、今度はそれに逆に、基地が日本にあるからという理由で日本の国土に進攻してくる、そういう場合には、岸さんは、その外国の軍隊が、日本に基地があるということで、日本に駐留している米軍の基地をたたくために来たときには、これは侵略だと岸さんは言っておられる。ところが、同じように、政府の統一見解として、もし日本にその急迫不正の攻撃が行われた場合、他にこれを防御する手段がない場合には、その基地をたたくことは憲法違反ではない。これは自衛だ、自衛権の行使だと、こう統一見解が鳩山内閣当時国会提出されております。岸さんは一体この点をどっちかに統一した解釈をしなければならぬと思うのです。こっちの方から、敵の基地に対して、急迫不正の侵害あり、やむを得ずその基地をたたくという場合には、自衛の一環である。日本にある駐留軍の基地に対して外国の軍隊が攻撃を加えた場合には、侵略と認めて、岸さんは行動するということを衆議院の内閣委員会であなたははっきりと言っておられる。この点は一体どっちであるか。政府としては、統一した解釈をとらなければならぬと思うのです。今までの国会論議の中では、はっきりこの点が未解決で残っております。この点についての御答弁をお願いします。
  106. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、今千葉委員の御質問の二つの点は、相異なっているものに対する政府見解を述べたわけでありまして、日本にある米軍の基地といえども、これは日本の領土であることは言うを待たないわけでありますから、そこに対して向うから侵略行為が、どういう理由であろうとも、これに対して向う側から攻撃が加えられ、日本の領土権を侵害するということであれば、これは日本領土に対する侵害としてこれを排除する行動に出ることは、これは自衛権の立場から当然であると思うのであります。  もう一つの点に関しましては、これは、われわれはもちろん自衛権内容として非常に限られた行動も自衛の範囲内に限られることは当然であります。そういう意味において、海外派兵等のできないことも、憲法上当然そういう制約を受けておるわけでございます。ただ、質問の設例の場合は、いかなることがあっても、この海外の、外国の領土内の基地から日本に対して誘導弾その他の攻撃が加えられて、これを排除する方法というものは全然ない、そしてその場合に、一体それなら、方法がないのだから、自衛権の発動としては、手をつかねて全土が焦土となるにまかせる以外には方法がないかといえば、憲法自衛権というものは、そういう場合において、日本が全土が焦土となり、全国民がみな殺しになるというようなことを座して見ておらなければ仕方ないのだというわけにもいくまいと、従って自衛権の作用として、そういう場合において、ほかの方法がないという場合においては、日本へのこの侵略行為をやめさすために、その基地に対して攻撃を加えて、それが侵略をやめさす、侵害をやめさすというような行動に出ることも、自衛権の範囲内と考えるべきであろうという解釈をいたしておるわけでありまして、両者は私は矛盾をしているとかあるいは二者択一のというような関係ではなしに、別個の問題であると、かように解釈をいたしております。
  107. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 千葉さんよろしゅうございますね。——千葉さんの質疑は終了いたしました。——関連質問ですか。高田さんありませんですか……。山田委員
  108. 山田節男

    ○山田節男君 関連。千葉君の持ち時間がなくなりましたので、関連質問として私最後に、私として最後に質問したいと思いますが、少し話が長くなりますけれども、どうも私は頭があまりよくないものでございますけれども、一昨日、ことに今日の岸総理並びに岸総理に対して陰の声を放送している林法制局長官、これは憲法学者としてどのくらいの権威があるかしれませんけれども、私はむしろ林法制局長官の頭を疑いたくなる。そこで私は、この憲法制定の経過について、やや私の経験がございますので、これは岸総理なり林法制局長官に特によく聞いてもらいたい。  それは、昭和二十一年の、たしか七月の終りか八月だったと思いますが、今の国際連合協会のありまする、もとの国際連盟の連合会、そこでちょっと私名前を今ここで失念しておりまするが、スタンフォード大学のプロフェッサー・カルバートソンという人だったと記憶いたしますが、この方と今国際キリスト教大学の教授鮎沢巌君初め、われわれ十数名の者が集まりまして、この日本の新しい憲法の草案ができたのを見るというと、戦争を否定する、武力を持たないというような、こういう主権の観念はおかしいじゃないかというので、実は約半日そこで討論をいたしました。そのときに、このプロフェッサー・カルバートソンが申しましたのは、なるほど今日のコンブンショナルな、いわゆる世界のこれまでの普通に行われている普通の憲法からいえば、非常にこれはアンコンベンショナルである。しかしながら、これは今後の原子力の戦争の時代に入って、人類は破滅するのであるからして、これは、日本の、戦争を否定し、武力を持たない、交戦権を否定するというこの憲法こそは、世界平和に対するこれは一つのチャレンジである。挑戦である。こういうことを申したのであります。私はなおそのときも——これは昭和二十一年私は外地から復員して帰った早々でございましたけれども、従来私どもの大学で習った憲法論から申しますと、主権論からいえば、まことにこれは奇異でございましたけれども、占領下であり、私は非常に、従来の考え方からいえば、戦争否定の主権があるかと思ったのでございます。  そういたしまして、昭和二十四年の十月の末に、自民党の北村徳太郎君と私は、戦後最初の国会議員派遣としてジュネーヴに参った。  ロンドンに行き、ニューヨークに行き、ワシントンに参りました。そのときに、第八軍の司令官をしておりましたアイケルバーガー中将が、ペンタゴンで、国防省で、極東の担当の軍事顧問をいたしておった。そのアイケルバーガー中将が、特に北村氏と私を呼びまして、一時間ちょっと話したい。で、参りましたときに、彼の部屋に世界の地図がございましたが、日本の、アジアの地図を見せました。このときに、これは昭和二十四年の十月の末でありましたが、このときに、このアイケルバーガーが、北村氏と私を前に置きまして、この日本の地図を見ろ、これは共産主義に対する防波堤である。そうして、この長い島は、これはアメリカにとっては航空母艦である。しかも日本は人口が大きくて優秀な民族である。工業技術が発達しているから東洋における工場である。こういうような日本を、アメリカとしては、これは絶対に放すことはできない。もし日本が変になれば——共産主義の方にいけば、このアメリカの東洋における戦略は、五〇%減じる。そうして共産圏は五〇%ふえる。もし日本が向うに行ってしまえばカリフォルニアが危ないということを申したのであります。そういたしまして、私どもは帰りまして、二十五年に朝鮮の事変が起りました。そうすると、これは占領当時でありますから、マッカーサー元帥が警察予備隊を作ったのであります。
  109. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 山田委員に申し上げますが、お言葉中ですが、関連ですから、要点を一つ簡潔にお願い申し上げます。
  110. 山田節男

    ○山田節男君 要点を申し上げます。  そういうような経過で、この今までの総理並びに林法制局長官解釈を聞いていますというと、どうも私はこの日本憲法制定された精神というものを、これを現実の向米一辺倒、ことに安保条約というものを正当化せんがために日本憲法の精神を非常に曲解して、現実のこの日米関係を正当化しょうがために憲法の精神を非常にこじつけに解釈されていると思うのであります。  そこで私は質問に入るのでありますが、岸総理憲法改正論者である。特に憲法の第九条を、これは押しつけのものである、日本がやったんじゃないということで、昨年高柳憲法調査会会長がアメリカに行かれた。それで帰られまして、先般ジャパン・タイムズに場あるところで講演されたのが出ております。それを見まするというと、このマッカーサーの参謀でありましたウィロビー少将に会っております。ところがマッカーサーから書面で返答をもらった。そのときに、この憲法はこれはやはり幣原総理大臣がみずからこれをイニシアチブをとって作ったものだ。ただこれはおそらく天皇を戦犯にしろ、あるいは天皇をやめさせろ、こういうような連合国の中に世論があったからして、それを打ち消さんがためにこういうような戦争否定のものを作ったかもしらぬけれども、とにかく幣原総理大臣がマッカーサーのところへ行ってこういうものを作りたいと、こう言ったというのであります。そういうことがはっきりしたということを申しておるのでありますが、私は岸総理に御質問申し上げたいことは、どうもこういうように今あなたのとっていらっしゃる向米一辺倒の、また安保条約を正当化しょうということ、これは明らかに憲法違反であるけれども、今日の政策としてあなたが日米安全保障条約を正当化せんがために、こういうような牽強附会の第九条の解釈をなさるのでありますが、あなたは高柳憲法調査会会長がこっちへお帰りになって、いろいろ向うでの調査の結果をお聞きになって、あなたの従来の憲法改正論者、指導者としてのこのお気持は依然として前と変らないのかどうか、この点私は最後にお伺いしたいと思います。
  111. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 憲法の問題につきましては、憲法調査会においていろいろ各方面の識者が慎重な検討をいたしております。その一つとして高柳ミッションなるものがアメリカに参って、そのミツションの報告も私承知をいたしております。しかしながら調査会の結論としてはまだ出ておりませんで、一つの資料としてこれが憲法調査会に提出せられ、憲法調査会の審議に供されておるというのが実情でございます。私自身がこの憲法解釈するに当って、何か日米安保条約という制度を、やはりそれを正当化するために憲法解釈を不当に拡大し、もしくは憲法解釈を牽強附会な解釈をしているというような山田委員の御意見でございますが、私どもは先ほど来一貫して御説明申し上げております通り、決してそういうような意図に出て憲法解釈をしているわけじゃございません。そうしてそのことは、私がきょうここで申し上げるだけではなくして、ずっとこの国会におけるところの、私以前の内閣総理大臣等が答えておりますことと、この憲法解釈につきましては、私は趣旨においては変っておらないということも先ほど来申し上げておる通りでありまして、もしも山田委員のお話のように、われわれがある一つのことを正当化すために、もしも憲法をそれに都合のいいように解釈しようというような態度は、これは厳に排撃すべきことは私も山田委員と全然同じように考えております。
  112. 鈴木強

    鈴木強君 関連。
  113. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 関連ですか。それじゃ簡単に、鈴木さん。
  114. 鈴木強

    鈴木強君 簡単に御質問申し上げますが、二つあるのですが、その一つは、先ほど荒木委員の御質疑の中で、自衛権の問題で、自衛権憲法で認められておる。従ってその自衛権を行使する場合、これは緊急の場合にこれを排撃する実力だと、こう言っておる。荒木委員武力ではないか、こういう質問をしたのですが、あなたは適当に答弁されておるのでありますが、私は具体的に聞きますが、それではあなたの占う実力というのはどういうものでありますか。たとえばジェット戦闘機もあるでしょうし、今のオネスト・ションもあるでしょうし、あるいは、ハスーカ砲だとかあるいは戦車であるとか、いろいろあるだろうと思う。こういうものをあなたはあえて実力と言って、戦力だと思わないのですか。これは武力ではないのですか。あまりにも詭弁を弄し過ぎる。自衛のための戦力であるか実力であるか、そういうようなことぐらいごまかして答弁するのは納得できないので、この点一つ伺っておきたい。  それかれもう一つは、きのう衆議院内閣委員会で石橋君の質問に答えて、これは防衛長官でありますが、弾道兵器とかあるいは原水爆というものを絶対に持たないのか、こういう質問に対して、将来は別として現在はそのような攻撃的なものは米軍に依存をしておる、こういう答弁をされておる。私は速記録を見るひまがありませんから、朝日新聞の報道するところで質問するので多少内容がわからぬかもしれませんけれども、少くともこれは憲法解釈岸総理が一切の核武装をしないし、将来もこれはやらない、こういうことをはっきりしておる。ところがわが党が非核武装の決議をしたときに、ここであなたの方で問題が起きてきた。要するにそういう思想が、今日この委員会においても、あるいは内閣委員会においても出てきておる。だからオネスト・ジョンに核弾頭をつけてもこれは憲法上は持てるのだ、こういうところまで発展をしてきておる。きのうおっしゃった、将来は別としてということは、これは憲法原水爆あるいは弾道弾というものが持ち込めるというようにわれわれは理解せざるを得ない。それがあなたの理論から言うと正しいのだ。どうも拡大解釈をしないと言っておられるが、ますます拡大解釈をして正当化しておる。私は現在の日本自衛隊にプラスする米軍の力というものが今日の日本自衛力なんだ。そう解釈しなければならぬと思う。その場合に、米軍原水爆を持ってきても何を持ってきてもかまわないということは、これは私はおかしいと思うのだ。現在の安保条約憲法第九条の自衛力から言うと、明らかにこれは憲法違反だ。われわれは安保条約を解消してくれということを要求しておる。そこに問題がある。今日さらに拡大をして、原水爆を持とうが何を持とうが、それは憲法規定をしていないから関知するところではないというような、そういう逃げ口上を使うということは、これは非常に重大問題だと思う。だからそういうようなごまかしの答弁ではなしに、自衛力というものは、私は少くとも米軍というものの力を借りたところのものが日本自衛力だ。国連には集団安全保障がある。だからそこに依存をして日本を防衛する場合にはそれはまた別だ。だからその辺を二つはっきりしてもらいたい。
  115. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私が自衛力とかあるいは自衛を裏づけるところの実力と申しておるところのものは、あるいはそれは武力といい戦力という言葉を用いても差しつかえないと思いますが、ただ問題は憲法上の九条二項に戦力を持ってならないということが規定されております。その戦力には当らなという前提のもとに、それを明確ならしめるために私は特に誤解を招くおそれがありますから、実力ということを申しておるわけでございます。
  116. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 さっきのが片づいておらぬから、もう一つ……。
  117. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 私のお答えいたしましたのは、岸内閣は一切核兵器を持たない。従ってもしそういう事態が起った場合には、アメリカの防衛力に期待をする、アメリカ日本に持ち込んでおらないことも事実でございまして、全般としてアメリカの防衛力に期待する、かように申したのでございます。
  118. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 憲法上は。
  119. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 憲法上はすでにお答えした通りでございます。
  120. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 関連質問……。
  121. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 関連質問だけれども千葉君の質疑は終了したわけだから、きわめて簡潔に……。
  122. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 さっき私が伺ってあなたが答弁していないんです、答弁して下さい。三十二年二月十四日の衆院内閣委員会における小滝国務大臣答弁と、三十二年四月二十五日の参議院内閣委員会における岸内閣の統一解釈、これはオネスト・ジョンを攻撃的性質のものであると規定して、そうして憲法の立場上持てない、こうしていることは速記の上からきわめて明確です。従って岸総理大臣は第一次岸内閣のときであるから責任をとるべきである、またそれに対してとやかく常に言っている林法制局長官、あなたは三十二年五月七日参議院内閣委員会において核兵器を持つことは違憲であるということを答弁しておる、責任をとりなさい。
  123. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど来私この席におきまして、小滝長官と石橋委員質疑応答の全体をずっと通読をいたしました。しかしさらに二十五日の統一解釈というものの関係において、私はオネスト・ジョンを攻撃的のものである、こう小滝長官が断定しているという矢嶋委員のお話でありますが、全体を読んで見ると私はそういう意見にはとれぬと思います。
  124. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そんなことないですよ。
  125. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私はごごで読みましたあれでは、決してそういう意味におきまして、私ども不統一な解釈を、見解をとっておるものではない、かように御了承願います。
  126. 林修三

    政府委員(林修三君) 私の答弁はそのときもそうでございますが、これは衆議院の科学技術特別委員会でも何回も答弁しておりますが、いわゆる核兵器という名前がつくから、一切のものが憲法違反ということにはどう考えても考えられない。核兵器なるがゆえに憲法違反ということは考えられない。しかし現在は原水爆というものが代表的なものであるから、これは憲法違反である、そういうことで三十二年のときから——私はその当時の内閣委員会、あるいは衆議院の科学技術委員会で一貫して私はそういう説明をいたしております。将来についてのことはそのときオネスト・ジョンのことは私は触れておりません。それで原水爆は代表的なものでありますから、そういうものは憲法違反であろうと思いますと申し上げました。(「速記録をごらんなさい」と呼ぶ者あり)拝見いたしました。将来科学技術が発達して、どういうものができるかわからないから、そういう場合のことについては今から申し上げられない、こういうことを申しております。(「議事進行」「再質問」と呼ぶ者あり)
  127. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 八木君に質問を許したんですけれども……、もういいじゃないですか。
  128. 鈴木強

    鈴木強君 議事進行上問題があるから発言を求めておるわけです。
  129. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 議事進行ですか……。
  130. 鈴木強

    鈴木強君 私たちは委員長の最初言われた関連質問については、委員長の御趣旨を体して、できるだけ簡潔に、委員長に協力しているつもりなんです。今も質問が終って、われわれは全部言い尽したあとで関連をしたいということで、中途でやると質問者に失礼ですから、われわれじっとこらえていて最後に質問したわけです。もう千葉委員質問は終っているから矢嶋君、関連ないというようなことを委員長言われたら困る、われわれ最後にいって、そのときにやりますから、だから今後もできるだけそういう点は委員長そつのないようにやってもらいたい。
  131. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私は自衛隊違憲論の立場でありますが、しばらく政府憲法解釈に従って質問をいたします。  現行の安保条約におきましては、米軍日本軍との関係は法律上無関係である、こう私は考えております。    〔委員長退席、理事小柳牧衞君着席〕  ところが新しく改定されます安保条約におきましては、ヴァンデンバーグの決議の関係から、共同防衛的の性格が予想されまするので、そこで初めて憲法上の問題が出てくると思います。その憲法上の問題は二つあるわけでありますが、その共同防衛的の関係から申しますと、自衛関係になってくると思います。そこで私伺いたいのは、新しく改定される安保条約に——極東の安全と平和のために米軍が出動する。日本の内・地から出動する。その際補給的な業務で自衛隊の協力を求められましたときには、事前協議でありましょうけれども、時にイエスという場合があると思います。この関係総理に伺います。
  132. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 外務大臣答弁させます。
  133. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 総理に伺いたいと思いますが。前に外務大臣の意向は一応伺っていのですが。
  134. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今度の条約上に、極東の平和と安全という言葉がどこかに出てくるかもしれませんけれども、今度の条約の精神から申しますれば、日本他国からの侵略を守るということのために米軍が駐留する。また同時にその周辺に何か起りました場合に、やはりアメリカ軍日本侵略がその次に起るという想定のもとに出得る場合があり得るかと思います。そういう場合には、むろん協議をしなければならぬ。協議をしてノーという場合が多くの場合あろうと思いますが、イエスという場合もあろうかと思います。また極東の平和と安全という言葉を用いましても、日本自体が侵略されることが、極東の安全と平和を害するということに主点があると思うのでありまして、そういう精神でもって今度の条約を締結するつもりで私どもいるわけであります。
  135. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 主として、むろん今の外務大臣のお答えの通りであると思います。しかしヴァンデンバーグの決議の関係から申しますと、国連の決議があった場合、あるいはアメリカの、他国との相互防衛条約との関係、もしくはアメリカ自体の自衛関係から、日本から出動するという場合があり得ると思います。そのあり得る場合に、補給を要請されたときに、これはノーとは言い切れないと思うのですが、そのときの憲法関係を私は伺いたいと思います。これは総理に一つ。
  136. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 憲法解釈からいえば、まず自衛権を裏づける自衛隊というものの出動は、これはあくまでも自衛限度に限られるわけでありますから、今ただ補給という日本関係のない出動に対して、何か協力をするということは私は起り得ないし、またそういうことは憲法上許されておらない、こう思います。
  137. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 補給の要請があったときに、一切これはノーと言われるというふうな今の総理のお言葉でありますが、先ほどの外相のお言葉では、主として断わるが、イエスという場合もあり得る。そこに違いがありますが、私は外相の言われることが実体に即しているので、補給業務さえ日本がノーと言えば、共同防衛の意味をなさない。ヴァンデンバーグの精神に反する、こう思うのでありますから、これは全部はノーとは言い切れないと思いますが、もう一ぺんお考えをいただいて御返事を伺いたい。
  138. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 抽象的に補給業務と、こう言われますから、私よくその内容が頭にわからないのでありますが、たとえばそこの何か単純な商売上のなにとして、日本の持っている物をそのなにに売るとか、あるいはこの補修をちゃんと契約上するというようなことは、これは別に私は補給業務ということじゃなかろうと思いますが、どういう意味か、とにかく自衛隊の発動する——また今度の条約におきましても、ヴァンデンバーグ条約でありましても、われわれは日米両国間において、日本憲法の制約というものはこれを越えないということがわれわれの改定の場合における日米両国の大前提として完全に了解をしておるところでありますから、自衛隊自体の出動というようなことは、これはあり得ない、こう思っております。
  139. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 商売で物を買う意味でありませんので、たとえば食糧を補給するとか、衛生業務にたずさわるとか、あるいは燃料を供給するとか、それを自衛隊が隊としてやることは、私はノーと言い切れないと思う。その場合におきましては装備編成された一つの組織体としての自衛隊、それが補給業務で米軍に直接の自衛意味ではなくて極東の安全、あるいは平和維持のために出動する、米軍に協力する。ここは非常に違憲の疑いがあるデリケートな問題であると思いますが、その点についての憲法解釈を伺いたい、こういうわけであります。
  140. 林修三

    政府委員(林修三君) これは、実は仮定の問題でございまして、今安保条約の改定の交渉をやっております場合において、日本の態度は、いわゆる日本の負うべき義務は、日本憲法の範囲内においてやるということでございますから、日本憲法上負い得ないものをこの条約の中に盛り込むはずはないわけであります。ただいま仰せられました補給業務ということの内容は、先ほど総理が仰せられた通り実ははっきりしないのでございますが、経済的に燃料を売るとか、貸すとか、あるいは病院を提供するとかということは軍事行動とは認められませんし、そういうものは朝鮮事変の際にも日本はやっておるわけであります。こういうことは日本憲法上禁止されないということは当然だと思います。しかし極東の平和と安全のために出動する米軍と一体をなすような行動をして補給業務をすることは、これは憲法上違法ではないかと思います。そういうところは条約上もちろんはっきりさしていくべきだと思います。
  141. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私がはっきりさしておるのに法制局長官は仮定の問題とおっしゃる。自衛隊が隊として燃料や食糧や病院を協力義務として、協力の能勢においてやるということは当然起り得るので、これは憲法上差しつかえないか、こう伺ったのですが、これは常識的に総理から答弁ができると思います。商売で買うのじゃないのです。
  142. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 条約を結びますときのわれわれの態度として、今お話のように、日本の基地から作戦行動に出て行く、その場合想定されますものは、つまり日本侵略されるという危険が非常にある。従ってそれを放置しておけば、日本侵略に次のステップになるという場合にはむろん日本はイエスと言います。そういう事態は日本自体が侵略されたと想定されるからイエス、近いからイエスということであります。そういうときには、むろんいろいろな意味において補給業務が行われましょうけれども、その他ただ単にアメリカ軍が単独でもって、日本侵略をされない場合、またそれをあまり予想されない場合に飛び出して行くというような場合に、補給業務を自衛隊がやるというようなことはあり得ないことだと思いますし、またそういう場合に単独で飛び出して行くことに対しては協議の上でノーということになろうかと思います。
  143. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 外相の答弁よくわかりました。ところが今までの憲法解釈では非常に自衛というものを厳格に解釈しておって、極東の安全というようななものには自衛は入らないという従来の政府解釈と少しニュアンスが違うのですが、そこを総理に私は伺いたい。
  144. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 自衛という観念は先刻来しばしば議論しておりますように、私は憲法九条の自衛ということは非常に狭い意味であると思います。従来、自衛のためのということでいろいろと戦争が行われておりましたが、そういうことは一切今度の憲法の言う自衛権の中には入らないことは私は明瞭だと思います。そういう意味において、この白権衛が発動することは、日本に対して直接、間接の侵略があった、それに対して出動するという性格のものでございまして、極東の平和なり、あるいは海外におけるところの事情が将来、日本に対して危険を及ぼすおそれがあるから、まずこれをたたいて、そして日本自衛を全うするというような意味におきましては、今度の憲法上の自衛権というものは、そういう広い意味を持つものではなくして、非常に狭い意味であると私は解釈すべきものだと思います。
  145. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 今の総理のお答えと外相の答えとはニュアンスの上において違うのです。ところが外相のお答えの方が、私は実際に合っておると思うが、今までの憲法に対する政府解釈としては非常に開きがある。私は時間の関係でこれ以上この問題には触れませんけれども、一つ十分政府間におきまして、この問題は宿題として真剣にお考え願いたい。これはずいぶんむずかしい問題でありますが、一つ御研究をわずらわすことを申し上げておきます。  それから次に、沖縄に武力攻撃が行われた場合に、条約の問題とは関係なしに、潜在主権の問題で、日本の協力を求められ、もしくは日本がこれに対して防衛をすることを積極的に米軍に話して、米軍がそれにイエスと言った場合、そのときには、当然日本は補給業務その他でこれに出動すると思うのですが、これはいかがですか。これは憲法上私は差しつかえないと思うのですが……。(「眠れる主権ですよ、行政権が及んでいないのですよ」と呼ぶ者あり)
  146. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 従来、私ども解釈としては、やはり沖縄、小笠原というものに対しては、われわれは潜在主権を持っておる地域でありますから、その地域に加えられた侵略というようなものは、やはり日本の広い意味における領土権に対する侵害であって、これは日本自衛権の発動する前提条件である。日本に対しての侵害は加えられたということになると思います。これを排除するということは、これについては御承知の通り、沖縄及び小笠原については、アメリカが全面的の施政権を持っておりますから、アメリカの意向を無視して、日本の領土であるから日本がこれを防衛するというわけにはいかぬと思う。しかし今お話のように、第一段は施政権を持っておるものがこれを防衛する義務を負い、これをやることは、これは当然なことだと思います。しかし事態いかんによって日本自衛権の発動を適当とするということであるならば、これは私は憲法違反にならないと思います。
  147. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そこで事実問題として、日本がそういう場合に沖縄に行く、どうせ大きな武力攻撃でありますから、アメリカとフィリピン、台湾、朝鮮、これと軍事行動がそこで競合する。事実問題として私は差しつかえないと思うのですが、その事実はお認めになりますか。
  148. 岸信介

    国務大臣岸信介君) かりにそういう場合に、日本自衛隊が出て行ったと、こういたしましても、これはあくまで日本の領土主権に基いて日本自衛権の発動としてやるわけであります。各国が条約上いろいろな沖縄に対して米韓条約であるとか、米国とフィリピンとの条約上の権利義務としてやる、この軍事行勅と私は必然的に競合するとか、あるいは共同のなにをとるということは、これは性格上違うのじゃないかと思います。
  149. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 性格は違いますが、四つの国の軍隊が沖縄で戦うという事実が起る、当然起ると思うが、それはいかがですか。
  150. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 事実問題として、そういうことも起り得ると思います。
  151. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 委員長、ちょっと関連して。重大だ。
  152. 小柳牧衞

    理事(小柳牧衞君) 八木君よろしいですか。
  153. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 ええ、いいでしまう。
  154. 小柳牧衞

    理事(小柳牧衞君) 矢嶋君。
  155. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 内閣考え方は統一されていないのですよ。官房長官目をさまして下さい。官房長官は、先般参議院の内閣委員会で私の質疑に対して、自衛隊の行動する範囲というものは日本の行政権の及ぶ範囲であり、それ以外には絶対出られないのだ、これは岸内閣考え方だ、それで私はたたみかけて岸総理も同じ考えかと聞きましたら、岸総理も同じ考えでありますと、こういう答弁をしておる。その答弁と今の岸総理の八木委員に対する答弁とは大きな食い違いがある。お答え願います。
  156. 赤城宗徳

    政府委員(赤城宗徳君) 憲法論としては日本の主権の及ぶ範囲は日本で防衛する。実際問題としては施政権を持っておりませんから、自衛権の及ぶ範囲は潜在主権を持っておるところまでは及ばない、こういうふうに考えております。しかし、今八木委員のお話では、安保条約と別に、アメリカの方から協力を求められた場合にはどうかということに対して総理の方から答弁をされたと思います。(矢嶋三義君「総理答弁して下さいよ」と述ぶ)
  157. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は日本自衛権というのは領土全体に及ぶ。そうして潜在主権を持っておるところにもこれは及ぶと思う、観念上は及ぶと思う。実際上の行使については、これは行政権を持たなければ日本が直接行ってやるということは事実上できないと思いますが、ただ、行政権を持っております、施政権を持っておりますアメリカの意思を無視して、こっちでは単独ではできぬということを申しておるわけで、アメリカがそれだけの点について実際上施政権を何といいますか、制約して、日本にそれを認めるということであるならばこれは私はできる、こういうふうに先ほど来申し上げております。
  158. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 新安保条約日本憲法の範囲内で、こういうことを総理はしばしば言われますが、具体的にはどういうことですか、憲法の範囲内というのは。
  159. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本のこの条約上負う義務は憲法の制約内であるという意味であります。御承知の通り、相互防衛の二国間の条約におきまして、本来で言うならば完全な相互的な、双務的なものから言えば両方が無限にお互いに軍事的な力でもって共同し合うということになると思いますが、それは日本憲法は許していない。従って、たとえば最も明白なことは、海外派兵ということは日本憲法が認めていない、自衛権の範囲内に限っておりますから認めていない。従っていかなる場合においても、海外派兵の義務を負うというようなことはできない、こういう意味でございます。
  160. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 核兵器持ち込み禁止をどういう方法で規制されますか。
  161. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今後安保条約の改定に当りましては、そういう重大な装備につきましては事前に日本と協議し、日本の同意を得るにあらざればこれを持ち込むとか装備を変更することのできないように条約上したいと思いますので、そういう事態をなくしたいと、こう考えております。
  162. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 条約の中に明記されるのですか、あるいは付属文書ですか。
  163. 岸信介

    国務大臣岸信介君) そういう技術的な問題につきましては外交交渉、折衝によりまして適当にきめるつもりでおります。
  164. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 事前協誰の中に包括するという意味ではなしに、別にという意味ですか。
  165. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 装備配備の協議事項は全般的な事前協議、たとえば極東の情勢の協議というようなこととは別個に協議事項を入れていきたいと、こう考えております。
  166. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 持ち込み禁止は協議事項ですか、あるいは別項ですか、核兵器は。
  167. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 装備配備を協議事項にするということに含めて参りたい、こう考えております。
  168. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に、原子攻撃に対しては米軍核兵器でもってこれに対応する、こういう政府考えであると思いますが、その米軍が持つ核兵器は沖縄からくるという意味でありますか。
  169. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 従来政府答弁いたしておりまするのは、米軍全般の兵力に依存しておると、かような意味でございます。
  170. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そういうぼんやりしたことでなしに、つまり武力攻撃が日本にくる、核攻撃が日本にくる、それに対しては米軍核兵器でもって対応しなくちゃならぬ、日本に持ち込まないなら沖縄の核兵器でやるのですか。もう少しはっきりしたことを総理にお願いします。
  171. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) ただいま申し上げました意味は、どこを制限するということはございませんで、米軍全体の防衛力に依存しておる、かようなことでございます。
  172. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 総理に。
  173. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 防衛庁長官が答えました通りであります。
  174. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私は速記録を引きますと時間がかかりますけれども、つまりこういう場合には持ってもやむを得ないということを総理はしばしばおっしゃっておる。そこで私は日本に持ってこないなら、アメリカは沖縄の基地を使うよりほかに方法がないのじゃないか、こういうふうに言っておるのですから、イエスと言われるのが当り前だと思いますが、防衛庁長官答弁では私納得できません。
  175. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 再々申し上げておりますように、日本核兵器を持たないという趣旨を、核兵器を世界からなくしたいという希望を持っておりますから、万一の場合における防衛力は制限的に考えておりませんで、米国全体の防衛力に期待しておるということでございます。
  176. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 総理はこの問題、しばしばおっしゃったお答えがあるのですから、沖縄から応戦するのかという点についての御返事をいただきたいと思います。
  177. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 具体的に沖縄からどうするとか、どこからどうするということは、私は従来もお答しておることはないと思いますが、これは要するに日本が日米安保条約によりまして、そういうような日本自衛力で、とうてい抗し得ない、侵略を防ぎ得ないというような事態に対しては、米軍の持っておる武力によって日本の安全を確保しよう。それがどこからその侵略が起り、どういう事態でどういうふうに処していくのかということは、もっぱら、アメリカ軍にこれは依存するというのが日本考えであると思います。
  178. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 どうも時間の関係で私は困るのですが、総理答弁を引きます。去年の三月三十一日の衆議院内閣委員会飛鳥田氏に対する答弁です。「そういう兵器をもって侵略を防ぐほかないというような事態の場合において、アメリカ軍がそれを用いるということについては、これはやむを得ない措置じゃないかと思います。」これは核兵器で応戦するというのはやむを得ないというのです。ところが日本に対して核兵器の攻撃があったら、アラスカから飛んでこなくても、沖縄に基地があるんですから沖縄からが当然じゃないかと思います。それを聞いているのです。
  179. 岸信介

    国務大臣岸信介君) それは現実の場合におけるアメリカの戦略戦術上の問題であろうと思うのです。日本にきたものは必ず沖縄のアメリカ軍がやるのだ、アラスカからやるのだ、どこからやるのだということを今きめておくことは私は事実上不可能だと思います。
  180. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 沖縄からの場合もあり得ますか。
  181. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は今日沖縄にアメリカが核装備しておるかどうか承知いたしておりませんから、ただ理論的の、抽象的の問題からいえば、もちろんあそこは施政権を持っておりますから、そういうこともあり得ると思います。
  182. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に、憲法全般の問題にわたりますが、岸総理は、九条二項の解釈として、自衛のための最小必要限度実力戦力とならない、こういう御見解、官房長官自衛のためなら戦力は持てる、全然根本的に違っているのですが、これを一つ統一的にまとめて政府の統一見解を承わりたい。
  183. 赤城宗徳

    政府委員(赤城宗徳君) 私は、憲法九条二項の戦力というものは一般的な戦力とは違う、こういうように考えております。憲法九条二項に許されている戦力というものは、目的と内容が二つあると思います。目的は自衛のた抗の戦力、それから内容については自衛必要最小限度実力、これが憲法笹九条に認められている戦力だと、こう考えておりますので、総理答弁されました最小必要限度実力、それを私は戦力に見て差しつかえない、こういう意味で、第九条二項は、自衛上の最小必要限度実力を持つことができる、すなわちそれが戦力戦力内容はその最小必要限度実力、こういうふうに解釈しております。
  184. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 今の答弁、前段ほとんどよかったのですけれども戦力と言われたところに間違いがあるので、俗称ならどうでもようございますが、憲法九条二項は戦力を禁止しているの下す。その点において非常な違いが承る。それをどう統一されますか。
  185. 赤城宗徳

    政府委員(赤城宗徳君) 憲法第九条二項等において交戦権を否定しておったり、陸海軍等の戦力を持たないということが規定されています。でありますので、憲法上の厳格な意味における戦力ということでありまするが、私が申し上げるのは、必要最小限度実力、それを戦力といって差しつかえない、こういう意味における戦力であります。
  186. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 非常にすなおに取り消されたのでありますけれども、あとのところでちょっとひっかかりがある。憲法上の今議論をしておるのですから、戦力という字をお使いにならないで、今までのは取り消したと、こうあつさりおっしゃられたらよかろうと私は思っております。官房長官のことはこれ以上追及しないで、私は自分で了解しておきます。  そこで、もとへ戻って私は簡単に伺いますが、いろいろ憲法九条二項の解釈がだんだん発展して参りまして、海外派兵ができるとかできぬとか、あるいは核装備ができるとかできぬとか、防衛上の兵器はいいが攻撃用の兵器は困るとか、いろいろなところまで発展しましたけれども憲法制定当時のことを考えてみますと、こういうことはまるで問題にならぬ、と申しますのは、御承知の通り憲法の前文には「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」、これはつまり一切の無防備宣言であります。無防備宣言でありますから、だからこの装備なんかの問題ではなくて、自衛隊そのものがまるで憲法違反である。これはもうはっきりしておるわけです。吉田さんが二十八年の国会でありましたか、この問題について私が質問いたしましたときの答弁に、今の日米安全保障条約は何のためにできたか、それはつまり日本憲法関係軍隊が持てないからこれでもって日本の安全を保つよりはか方法がないのだ、つまりこの安保条約広のものが、無防備であり、軍隊を否定しているということの一番有力なこわは突は証左になるわけでありまして、当時の総理大臣はそのようにおっしゃっておる。そこで一体、岸内閣としては軍隊というものに対してどういう定義を持っておられるか、これを伺ってみたいと思います。総理に伺いたい。
  187. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 軍隊というとの法律的解釈につきましては、法律の問題でございますから、法制局長官をしてお答えいたさせます。
  188. 林修三

    政府委員(林修三君) 軍隊ということにつきましては、国際法的にもいろいろのまあ考え方があるわけでございますが、これはいわゆる一つの部隊組織をなして、ちゃんとした標章標識を持っておる。そしていわゆる外国との交戦に従事するということが軍隊の特徴だろうと思います。しかしこれをいろいろ分析して参りまして、いわゆる外国から侵略を受けた場合に、その侵略を排除するのに、場合によっては、そのために実力行動をとる部隊——実力部隊、こういう点だけを取り上げて軍隊といえば、まあ今の自衛隊軍隊だろうということは、これはすでに二十九年当時に言われておるところであります。しかし、いわゆる外国の普通の軍隊は、それにプラス・アルファがあるわけでありまして、いわゆる交戦権も認められておりますし、    〔理事小柳牧衞君退席、委員長着席〕 そういう意味において、いわゆる自衛行動の範囲に限られ、外国に出ていって戦闘行動することも、国際法あるいは国連憲章に違反しない限においては認められておる。そういう意味が普通の軍隊だろうと思う。日本自衛隊は、そういうような意味の交戦権はないわけでありまして、そういうものを差し引いたものをなおかつ軍隊というなら軍隊かもしれませんが、しかし交戦権を持たないものは軍隊でないということを言われれば、今の自衛隊軍隊ではない。しかし外国からの武力侵略に対して抵抗するという点からいえば、よその国の軍隊と似た性格は持っておるわけであります。
  189. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 最後に、もう一点伺いますが、交戦権がないから自衛隊軍隊でない、しかも国際法上認められた交戦権がないから軍隊でない。幾らこれが大きくなっても、交戦権がない以上は軍隊でないというのは、これは非常に飛躍した解釈で、私は納得いたしません。そこで総理の言われる、自衛のための最小必要限度の問題になるのですが、総理の今までの委員会等での、私もたびたび質問したことがありますが、お言葉では、現在の自衛隊でも、国力の関係から、まだ最小必要限度に達しておらぬ、こういうお言葉がございます。私はおそらくその通りだろうと思います。そこでそれならば、国を守るための最小必要限度という以上は、軍隊の性格は別といたしまして、その量的と申しますか、内容、実体的には、駐留米軍の中から、極東に備えた軍事力を引いた残りと、日本自衛隊と寄せたものが、大体現在における最小必要限度に当るのではないか、こういう質問を私がしたことがございますが、そのとき、私極東の話をしなかったために、総理のお答えは、極東にもいくものもありますから、それを両方寄せるわけにいかない、こういう御答弁があったわけであります。速記録もここに持っておりますが、今申しました極東に備えるものを引いた残りの米駐留軍と、日本自衛隊とを寄せたものが日本の最小必要限度である。ただし、国情も許さないし国力もそこまでいかないから、今はそこまでいかぬけれども、だんだん国力が充実して、米駐留軍が撤退をする、それに見合って、日本のものはだんだんふえていく、結局、その二つを寄せて最小必要限度である。これは総理答弁からも大体うかがえるのですが、念のためにこの点を伺っておきます。
  190. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 観念上からいえば、今われわれが答えております、八木委員の御質問にそう答えておると思います。ただ数学的に、どのくらいの数という、ちょっと数学的には言えないと思います。観念的にはそう言えると思います。
  191. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 憲法拡大、曲解しているからこういう問答が行われることになるわけで、まことに遺憾千万に思います。  で、先ほどから伺ったのでどうしても不明確な点を伺いますから、総理並びに防衛庁長官の順序でお答え願います。  それは、さっき八木委員にこういうことを答弁されたのです。施政権がない沖縄に米軍がいる。で、その米軍から日本自衛隊に要請があれば、日本自衛隊も行動する場合がある、こういう答弁をされました。ところが、今までの質疑応答で、自衛隊法の第三条の「わが国」、これは沖縄、小笠原を含まないという解釈になっているわけだ。それから、日米安保条約の一条「日本国内及びその附近」、これも沖縄、小笠原を含まないということは、もう何回も明確になっているところです。従って、現在の法の建前からいうならば、総理が言われるような、そういう場合というのはあり得ないわけです。かりにこの自衛隊法とかあるいは安保条約を改正してやるとなれば、沖縄というものは、現実的にこれは防衛区域に入ってきます。これは、あなたが衆参の委員会において、沖縄を防衛区域に入れれば、国民政府あるいは韓国とアメリカが結んでいる条約との関連から、NEATOが結成されて、危険のおそれがあるから、だから沖縄は防衛区域になっていないという主張と矛盾してくる。この点を明快にすること。  それからもう一つは、先ほどからわれわれが証拠として出したかっての速記録を、その文章を曲解して、そうして、オネスト・ジョンは含まぬというようなことを言っていますが、これはもう曲解もはなはだしいと私は思う。あの文章を見れば、明瞭にオネスト・ジョンは入っています。ところが、入っていないとか、あるいは防衛庁長官は、通常兵器にオネスト・ジョンがなっているから、きれいな核兵器ができたからというようなことでごまかそうとしている。通常兵器というのは、ちゃんとここに定義をかつて防衛庁が出していきますよ。通常兵器は、おおむね非核兵器を総称したものであるということを出している。だから、あなたが通常兵器になっていると言うのは間違いであって、きれいな核兵器ができたといっても、九〇%きれいでも、あと一〇%がきたなかったら非常に危険なんですよ。ところが、オネスト・ジョンは、さっきから、四十キロぐらいならいいとあなたは言っておるけれども、ところが、さっき証拠に出したように、オネスト・ジョンはいけなかったということなんです。しかも、この前の委員会では、ボマークが合憲か違憲かということで、ボマークは三百二十キロ飛ぶのですよ。それを日本国内に持ってくることは合憲か違憲か検討してなんということを答弁しておる。はっきり、こんなものは違憲だということに答弁訂正しなさい。こういう点、非常に不明確、憲法を軽視、じゅうりんするもはなはだしいと思う。まず総理から答弁して、しかる後に防衛庁長官から答弁を求めます。
  192. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 第一の自衛隊法その他の解釈につきましては、法制局長官から法律解釈として答弁をさせます。  速記録云々の問題は、私も一応ここで通読をいたしまして、全体を考えますというと、オネスト・ジョンは防御的なものと、あの当時考えておるようであります。私は、それはあのときに、いわゆる核弾頭をつけるかどうか、原子弾頭をつけるかいなかという問題が議論になり、それはしない。そうしてそういう意味において、われわれがアメリカに要求しておるところのものは、オネスト・ジョンというものは、防御的なものと考えるというふうな一貫した趣旨で私ども答弁しておると思います。  その次は、防衛庁長官からお答えします。
  193. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) さいぜん来オネスト・ジョンについて申し上げた通りでありまして、普通師団が持っておるようなものである。従って、通常兵器的な形になっておるが、核弾頭、核装備兵器であるということを私は否定はいたしておりません。従って、あくまでも、たとえばオネスト・ジョンのようなものは、防御的なものであるということを申し上げた次第であります。  それからボマークにつきましては、御承知のように、飛行機を撃つミサイルでありまして、これが攻撃的なものであるということであれば、もちろん憲法上持ち得ない、かように考えております。
  194. 林修三

    政府委員(林修三君) 先ほどの自衛隊法、あるいは安保条約における「わが国」あるいは「日本」という言葉の定義でございます。これは、御承知の通りに、「日本」とか、「わが国」という言葉は、日本の領土主権の及ぶ範囲だと私は思います。しかし、現実に沖縄、小笠原が入らないということは、平和条約第三条がありまして、日本が施政権を持っておりませんから、事実上日本の法令はああいう地域には今施行できないということであります。従って、結果からいえば、安保条約にいう「日本」、あるいは自衛隊法にいう「わが国」は、現状においては施政権の及ぶ範囲と、こういうことになるわけであります。しかし、かりに沖縄、小笠原の施政権が全部または一部返還されました場合に、「わが国」あるいは「日本」という言葉に沖縄、小笠原を含めるために、法律改正する必要があるかというと、そういうことはあり得ない。わざわざ沖縄、小笠原を含むと書かなければわが国に入らない、こういうばかなことはないと思うのであります。
  195. 鈴木強

    鈴木強君 関連。非常に大事な問題でありますから、岸総理伊能防衛庁長官からお答えをいただきたいと思いますが、昨日の内閣委員会における石橋委員質問に答えて、先ほど私が指摘しましたように、あなたは、防衛庁長官は、将来は別として、現在はアメリカ軍に依存しているのだ、こういう答弁をされた。そうしますと、私は憲法上の解釈は一たんここでおきます。別におきます。しかし、現在の岸内閣の政策として、一切の核兵器を持ち込まないし、将来も持ち込まないという、こういう思想の確たる信念を何回か御発表になっております。この御信念があるにかかわらず、防衛長官は一閣僚である、それが将来は別としてというような言葉を使うことは、これは岸総理の思想というのは岸内閣の思想だと思うのですが、食い違いが明らかに出てきておる。こういった重大な問題をこのまま看過することはできないのです。この際、明確にしていただきたいと思います。  それからもう一つ、今の八木委員質問に関連をするのでありますが、先般の委員会で、私が海外派兵の問題について岸総理にただしました。その際、具体的に、戦闘機によって、まあかりにこちらが爆撃をされた場合でありますが、報復的に、他の方法がない場合には、敵基地を攻撃することがあり得る。その場合に、私は、飛行機はどうですか。飛行機は、これは海外派兵にならない。ここまで明確になっておるわけです。ICBMはどうかと言ったのですが、具体的には答えておりませんが、私の質問をあなたは肯定されております。かりにICBMで攻撃する場合でも、これは海外派兵でない。こういう点は明確になっておる。ところが、今、補給の問題に関連をして、敵の基地に日本自衛隊が出動する。そういう場合に、藤山外務大臣は、協議をしてイエスかノーかというようなことをきめるのだ、こうおっしゃっているのですが、少くとも岸総理の言われたことを私たちは確認をしている。そうであるならば、今度の安全保障条約をどう改定するか、私わかりませんが、事船に乗って、日本軍隊が、どのような形であっても——軍事行動は、これは米軍と一しょになりますから——海外へ出動して行くということは、これは海外派兵になる。それはあなたは、それはやらぬと言っておる。だから、明確に、そういう点は安保条約の中で明定できると思うのですが、どうもさっきの藤山外相の御答弁を聞きますと、あいまいでありますから、この際、明確にしておいていただきたいと思います。
  196. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 前段の、やむを得ない場合に敵の基地をたたくというようなことを申し上げましたが、そのときに、少し不明確であったであろうと思うのですが、飛行機はいいというようなことは言っていない。
  197. 鈴木強

    鈴木強君 いや、言っておる。ここに書いてある。
  198. 岸信介

    国務大臣岸信介君) あるいは少し不明確であったと思いますが、外国の領空にまで出かけて行くことは……。
  199. 鈴木強

    鈴木強君 ここにちゃんと書いてある。
  200. 岸信介

    国務大臣岸信介君) だから、それは不明確であったのですから、少し修正、訂正をいたしますが、(「だめですよ、三日ごとに訂正をしたら」と呼ぶ者あり)いや、めったに訂正しないのですけれども、(「本会議で全部訂正したよ」「近ごろ訂正することが多いですよ」と呼び、その他発言する者多く聴取不能)……と思います。私は、もうその点ははっきり申しております。  それから、将来云々ということは、どういう意味において申し上げたか、それは防衛庁長官から申し上げます。
  201. 鈴木強

    鈴木強君 あなたは変っていないのですな。
  202. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は変っておりません。
  203. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) こまかい質疑のやりとりの間におきまして、攻撃を受けるようなことを申し上げたことは遺憾でありまして、岸首相が常に申しております趣旨を乗りこえて私は申し上げた趣旨でございませんので、その点は速記録を見て、もし間違いがあったら訂正をいたします。
  204. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私、最後に二点伺いますが、一点は、総理とそれから法制局の長官に伺いたい。  先ほど八木委員質問の中で、日本には直接の関係のない問題で、極東の安全を保持するために、米軍日本の国内において作戦の行動を行なったときに自衛隊の協力を求める、そういうことが起きた場合にはどうするかという質問に対して、国内においては、補給等の業務の問題はあり得る、また、行政権はありませんが、潜在主権のある沖縄に対して、もし攻撃が加えられた場合には、自衛隊の出動も観念的にはあり得る、こういうことをおっしゃったのです。ところが私は、憲法の第九条の考え方からすれば、米軍が極東の安全平和のために作戦行動を行うということは、おそらく国際紛争を解決する手段として、交戦権を保持するときであろうと思います。従って、そういう場合、交戦権を持たない、自衛権しか持たないところの日本自衛隊が、形はどうであろうが、協力態勢に入るということは、国際紛争を解決する、その紛争に直接参加をすることになりますから、これは明白に憲法違反ではないか。そういう行動を行うということは明白に憲法違反ではないか。この点が第一点であります。  それから第二点としてお尋ねしたいのは、大へんものものしい格好で、わが国への核兵器の持ち込みの問題、あるいは在日米軍装備の問題、さらには、日米両戦力の共同防衛の問題等について、非常に従来には見られなかったような新らしい解釈をとろうとすることに懸命の努力を払われていることが、最近における衆参両院の内閣の発言によって明瞭になっております。で、私ども心配することは、そういうあなた方の御意図というものは、ただいまアメリカと交渉の進んでおる安全保障条約内容において、あなた方のそういう説明のようなことをアメリカとの間に条約せざるを得ないような段階に入ってきておるのかどうか。そういう説明を合法化しなければ、妥当性のあることにしなければ、安全保障条約の改定はできない状態にあるのか。この点を明白にしていただきたいと思います。
  205. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私どもは、憲法解釈につきまして、一貫してお答えを申し上げているように、最近になって拡張解釈をしているような考えは毛頭ございません。また、何か安保条約の改定に関連して解釈を変えておるとか何とかという事態は、全然そういう事態はございません。従って私どもは、一貫して同じことを言っておるつもりでおります。ただ、最近非常に議論が出ておりますのは、具体的ないろいろな、従来論議されていない具体的な問題を憲法論の中に持ち込まれて議論されておるのが最近の情勢だと思います。そこで、何かわれわれの解釈なり、憲法に対する態度が違ってきているのじゃないかという御疑問が出たのだろうと思いますが、私どもとしては、終始一貫、その点においては変っておりません。  それから、第一の点の補給云々のことにつきましては、あくまでも私は……ただ抽象的に、補給の仕事に協力するかどうかというようなお話でありますが、いわゆる補給というようなことがどういうことを一体意味しているのか、いわゆる軍事行動的なものであるならば、これは自衛隊憲法の制約からいって、できないことは言うを待たないと思います。ただ、実際上けがした人や病人を病院の施設を使って治療するとか、あるいはそういう場合壊われるところの兵器その他のものを補修するとかいうようなことは、その当時の何によりまして協力するということは、私はこれは別に差しつかえないことだろうと思います。従って、ただ補給業務をどうするかというような抽象的でなしに、この具体的に考えなければいけないわけでありますが、いかなる場合においても、憲法九条の自衛隊の持っている制約というものは、これを逸脱することは許されない、かように考えております。(「沖縄はどうなった」と呼ぶ者あり)沖縄の問題については、先ほど来お答え申し上げました通り、やはり潜在主権を持っておりますから、これに対する侵害があった場合においては、われわれの、日本に対する侵略があったと見て、観念的には、自衛隊がその侵略を排除すべきものであると思います。しかしながら、事実問題として、実際上の問題としては、アメリカが一切の施政権を持っておりますから、これを防衛する義務と権利は、もっぱらアメリカが持っているというのが実情でありますから、われわれは、単独に、侵略があったから、これを排除するということは考え得られないと思います。しかし……(「憲法違反であるかどうか」と呼ぶ者あり)だから、憲法解釈としては、やはりそこにあった侵略日本に対する侵略として、自衛権の発動の一つの観念的の条件にはなると思います。
  206. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私のお尋ねしましたのは、日本の国土、施政権のある所が攻撃を受けたときに侵略とみなすとあなたおっしゃいましたが、それはやはり、そういうことも解釈され得るかもわかりません。しかし問題は、侵略されるような事態が起ったときは、日本には直接関係のない米軍というものが極東平和の安全のために作戦行動を起して、国際紛争を解決する手段として行動をしたために起きたことである。従って、その行為に協力すれば憲法第九条に違反するのではないか、こういうふうに私は申し上げておる。それで、あなたの今の説をそのまま延ばしてくれば、日本の国内にある米軍の基地が攻撃を受けたときには、自衛隊がやはり参加するということになる。そうすれば、これまた国際紛争の解決のために、入ることのできない自衛隊が参加することになるでありましょう。そういうことは憲法違反ではないかということを申し上げているのです。
  207. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど法制局長官からお答え申し上げましたように、アメリカは国連加盟国でございますから、国連憲章の規定にそむいて、いろいろな、たとえ極東の平和のためといいながら、出動するということは考えられないのでございます。その範囲内において行動しておることに対しまして、もしも第三国から攻撃が加えられ、日本の領土がそれによって侵害を受けるという場合におきましては、それを排除することは、日本自衛権の範囲になってくる、こう思います。
  208. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 アメリカ軍隊日本自衛隊とは、根本的に性格が違うということを先ほどあなたははっきりされたのですよ。そこで、アメリカの持っている軍隊の性格というものは、日本憲法の第九条のような性格ではないということははっきりしている。それですから、国連憲章がどうあろうと、それはその通りでしょうけれども、少くとも国際紛争を解決する手段として交戦権を保持して、戦力を行使するということもあり得るということだけははっきりしているわけです。そういう行動にわが自衛隊が参加するということは、これは明白に憲法第九条違反じゃありませんか。この点を明確に伺いたい。
  209. 林修三

    政府委員(林修三君) 第一の米軍の行動でございますが、これは、御承知の通りアメリカは国連憲章に加盟しておりますから、国連憲章上いわゆる軍事行動が正当化されるのは、五十一条の個別的または集団的自衛権に基いてやる場合、これも安保理事会が行動をとるまでの限定的な場合でございます。それからもう一つは、国連の安保理事会の決議によって、国連の一つの継続行動的なものとして軍事力を行使する、これも国連憲章によって認められておるところであります。そのほかに、国連憲章に直接の規定はございませんが、朝鮮事変の場合、あるいはスエズ事件の場合、いわゆる国連総会での平和統合のための決議、国連憲章の決議、ああいうものに基いて海外に出動することはあり得るのでございます。そういう三つの場合しか、いわゆる国連憲章上、軍事行動が正当化されることはあり得ない。米国も国連憲章に加盟している以上、それ以外に国際紛争を自国に有利に解決するために軍事行動をとることはあり得ないと第一の点は思います。  それからもう一つは、従って第一の前提が違っておるわけでありますから、あとのことは少し違ってくるわけであります。少なくとも、日本自衛隊は、日本自衛のために必要な範囲で、直接侵略または間接侵略に対して行動することが日本自衛隊の任務でございます。また憲法はそれを認めておるわけでございまして、従いまして、米軍が極東の平和と安全という任務のために、これはもちろん国連憲章が認めた場合のことに限りますが、国連憲章が認めた範囲内におきまして、アメリカがたとえばどこかへ日本の駐留米軍が出て行くという場合には、それに対して補給をすることが憲法違反かどうかという御質問かと思いますが、私はこの点は先ほど総理から仰せられたことで、単に補給するという言葉だけで私は納得できない。内容には非軍事的なこともございますし、軍事的なこともあると思います。いわゆる米軍等の軍事行動と一体をなすような私は補給は、日本自衛隊の任務とは言えないと思います。しかし先ほど言いましたように、病院にたとえば負傷者を収容するとか、そういうようなこと、あるいは日本が経済的行為として朝鮮事変のときにとったようないろんな便宜を提供することは、これは私は日本憲法に違反することは、ないと思います。(「沖縄はどうした」と呼ぶ者あり)沖縄の問題は、先ほど総理が仰せられましたように、観念的には日本の領土でありまして、潜在主権を持っておりますから観念的に日本自衛の対象であるということはもう何回か繰り返して御答弁申し上げておるわけでございます。ただ現実には、平和条約第三条がございまして、米国が全部の施政権を行使しておりますから、米国の意思に反して日本がここに具体的な行動をとることはできません。しかしかりに、米国が施政権を放棄した場合に、これはだれがそこを守るかというと、日本自身が守るべきではないかと思います。
  210. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 もう一点だけ。今のアメリカ軍隊の性格について、あなたは三つの場合をあげて、アメリカ軍隊自衛のために動くのだ、実際国連憲章の定めておる範囲内において動くのだ、こういうことをおっしゃいましたが、ちょっと聞いておれば、わが国の自衛力と同じようなことをおっしゃったのですが、根本的には違うのじゃありませんか。私はもう一度間違いのないように申しますが、しからば、アメリカ軍隊は国権の発動たる戦争を、国際紛争を解決する手段として絶対に行わないのだ、アメリカ軍隊は国際紛争を解決する手段として使われぬのでありますか。国連憲章のワク内とは言いながら、国際紛争を解決する手段として、アメリカ軍隊は作戦行動を起すことがあり得るのでありますか。
  211. 林修三

    政府委員(林修三君) 米国の憲法日本憲法第九条のような規定がないことは、これは申すまでもございません。しかし現在の、従って米国の軍隊は国際法の認める範囲においては、いわゆる普通の国の軍隊のなし得ることは幾らでもこれはできることであります。過去においては、もちろんそうした意味戦争を米国がやったかどうかは別といたしまして、いろんな国がこういう意味戦争をやってきております。しかし、現在は国連憲章がございまして、国連憲章には米国も加盟しておるわけであります。国連憲章に加盟している以上、米国が国連憲章に反した行動をとるということを予想することは、これは適当でないと思います。国連憲章で予想されることは、先ほど申しました三つのことでありますが、ある国際紛争が起った場合に、それを自国に有利に解決するために軍事行動をとることは、国連憲章がはっきりいけないということを規定しております。いわゆる集団的または個別的自衛権のためにいわゆる行動する。それから国連の安保理事会あるいは国連総会の議決に従って行動する。もう一つは、国連憲章に規定していないことは、内乱の援助、これは国連憲章は国内問題として排除しております。そういうようなものしかあり得ない。米国が国連憲章に反して、自国の憲法がどうあろうとも、国連憲章に反して行動することを予想することはこれは適当でないと、かように解釈しております。
  212. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 八木君に申し上げますが、あなたの時間がなくなりましたから……。これで終りたいと思いますから。
  213. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 最後にきわめて簡単に要点だけ。  安保条約の改定の問題は、重光外相に同伴して、総理が幹事長として御渡米になった。それから一昨年のアイクとの会談のときにもそうした話が出た。最近は藤山外相が昨年おいでになりまして、もう年内にもこの話がまとまると、こう思っておったところが、最近派閥関係の余波のように私は見受けられるのでありますが、だんだんおくれて参りました。しかしこの問題は、大体信念に従って総理がお考えになれば、断が下せる段階になっておると思いますので、あまり延びますと、やはり潮どきがありますから、アメリカとの国際信用の問題に相当大きな影響がある。だから私は慎重を期することはもちろんでありますけれども、一つ指導力を発揮して断をお下しになりまして、早くこれを結末をつけることが必要ではないか、それが一点。  それからもう一点は、先般総理は申されましたけれども自衛隊憲法との関係でたびたび、論議がかわされておる。政府は合憲論でありますけれども、違憲論のあることも事実、また、自衛隊に対する士気高揚の観点からも必要であることは岸答弁でも明らかである。そこで参議院の選挙もあるのでありますから、もう少しこの憲法改正の問題は、憲法調査会というようなのんきなことを言わずに、政府としては強力にこの点の必要を国民に向って啓蒙するということが私は必要ではないかと思います。この二点を私は総理に伺います。
  214. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 安保条約の改定の問題につきまして、私も大体において最後的段階に来ておると思います。従って、いつまでも不確定の状態に置くことは、国内に対しても国際的にも適当でない。従って最後の結論を出して、これを所期のように改定の結論を出すべきである、こういう点につきましては八木委員のお考えと私も同様に考えております。  第二点の憲法改正の問題につきましては、いろいろな御議論もあろうかと思いますが、私ども決してただじんぜんとして憲法調査会の審議にまかしておるというわけではございません。が、憲法の問題は、改正について有力な反対論もございますし、また問題点はいろいろたくさんございますし、行政上または、実際の施行した実績等に関しましても、あらゆる面から十分な検討をしてそうして結論を出すべきものでありまして、今政府として、また私自身が憲法改正論者であるからということで、直ちに結論的なことを軽々に宣言することは私は適当でない。十分憲法調査会において審議し調査されたその結果によって出た議決に基いて、政府としてはさらに適切な方法で国民に理解を求めるように、こうしたいと思います。
  215. 高田なほ子

    高田なほ子君 一問だけ関連さして下さい。一問だけ首相にお尋ねしたいのです。海外派兵は、現在の憲法上これは絶対にあり得ない、やれない、こういう言明をされました。しかし、先ほど国連憲章の問題が出て参りまして、五十一条に基く地域的集団的安全保障の体制をとるとするならば、国連総会がわが国に対して兵力の提供をこれを求めた場合に、首相は当然このときに政治的な決定を迫られるだろうと思う。国連の総会決定と、そうしてまた、この海外派兵のさっきの言質というものは、最後まで守り抜けるものかどうか。この点についてお尋ねをしたい。
  216. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国連総会における議決においての国連加盟国に対する義務の問題は、後に法制局長官から、条約上の解釈としてお答をいたすごとにいたしたいと思いますが、私は従来これは憲法の、これは皆さんももう御存じだと思いますが、日本自衛権というものは、ごく限られたものであって、日本に対して直接または間接に侵略が加えられた場合、それを実力でもって排除する、その実力行動も、自衛権の範囲に必要な最小限度に限られるものである。私は日本の領土、領空あるいはこれに接続する地域以外に、海外に出て何か軍事行動をするというような目的で自衛隊を出すことは、これは憲法の許すところでない、こういうことでございます。しかしながら、将来国連におきまして、警察軍であるとか、あるいはいろんな意味におきまして、加盟国がこれに協力して、世界の平和を保つ意味において、それらに協力する場合にどういう行動をとるかというような問題につきましては、国連の憲章の解釈問題として、法制局長官からお答えするようにいたしたいと思います。
  217. 林修三

    政府委員(林修三君) ただいま、あとから仰せられました、国連が安保理事会の決議に従って、いわゆる各国に対して国連憲章に違反した国に対して、一種の制裁行動をとることを議決した場合、あるいはそれに安保理事会にかわるいわゆる総会、平和統合のための総会というようなことでまたそういう決議をした場合、その場合に、その行動と日本憲法関係いかんという問題は、非常にむずかしい問題でございます。私どもも、別にまあ最終的な結論を得ておるわけではございませんけれども、少くとも憲法九条で言っておりますのは、これは国際紛争解決の手段としての日本戦争あるいは武力の行使、武力の威嚇をやらない。反面において自衛権は認められるということでございます。国際社会は非常に発達して参りまして、国内社会に近づいて参りました。いわゆる警察というものができて、その国際社会における犯罪人に対して制裁行動をとるということも一般化して参りました。国際社会が理想化して参りました場合においては、これはいわゆる従来の観念の戦争とかあるいは武力行動とは全然性質の違ったものになってくると思います。これはまさに警察行動でございまして、あるいは国内社会において警察が犯罪人をつかまえる。あるいは犯罪人をどう処断するのかという問題に似てくる問題でございまして、こういうことは、実は憲法九条では直接私は言っていることとは思いません。こういう場合に日本自衛隊あるいは日本がいかなる行動をとるべきかということは、もちろん国連憲章は義務として課しているわけではございませんから、自主的にこれは判断することでございますけれども、これは今言ったような、普通の意味自衛行動とか、あるいは国際紛争解決のための他国に対して戦争をしかけるとかこういうことは別個の、別の第三のカテゴリーの問題である。これは現在の国際社会では全部の国が国連に入っているわけじゃございませんから、今一がいに言うのは危険でございますけれども、将来すべての国が国連に入り、しかもその国連の中において、国連憲章違反の犯罪行動があった場合の制裁ということになりますと、これは今までとは違った観念の問題がそこに出てくる、かように考えております。
  218. 高田なほ子

    高田なほ子君 不明確ですが、あとでこれも考慮します。
  219. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) これにて自衛の問題に関する別ワクの質疑通告者の方の質疑は、全部終了いたしました。  午後三時に再開することといたしまして、暫時休憩をいたします。    午後二時十三分休憩    —————・—————    午後三時三十五分開会
  220. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) ただいまから委員会を再開いたします。  午前に引き続いて、一般質疑を行います。
  221. 森八三一

    ○森八三一君 時間がわずかでありますので、端的にお伺いをいたしたいと思います。  まず最初に、青木国務大臣お尋ねをいたします。ひとり予算委員会だけではありません。どこの委員会でも、われわれ議員と政府との間に各種の質疑が行われまして、その質疑を通して政府当局の見解も述べられ、ときにはわれわれ議員の質疑に対しまして、同感の意を表せられ、それが他日、に約束をされるような場合がしばしばあるのであります。その具体的な現われといたしましては、各種の委員会で付帯的な決議をいたします。その決議の趣旨はごもっともだから、そういうものはすみやかにその、実現をはかるというような見解が述べられたり、もっと具体的に、予算等の関係もありますので、その次の年度には実現するように誠意を持って努力するというような見解がしばしば表明されておる。私どもはそういうような政府当局が議会で表明せられました見解というものは、信義をもって守っていかなければならぬ、こういうように理解をするのであります。これは当然なことであります。そこでお伺いいたしたいのは、通例申しまするいわゆる遊興飲食税の問題であります。これは先年、税法が改正になりまして、三百円までは免税措置がとられる、その際に、従来五%であった部分五百円までが、いろいろ取扱い上の便宜というようなことで、五%増税ということになりまして、一〇%の課税をするということに相なりました。その当時、担当の地方行政委員会では、減税をするというやさきに、少くとも大衆飲食に関する税がふえるということは、考え方からみますれば逆行するのじゃないか。これは免税にするか、少くとも増税するという措置は避くべきであるというような論議が、これは与野党を通じて一致した見解でありました。そこで、その当時も税法の修正というような案まであったのでありまするが、当時の担当国務大臣は、よくその趣旨はわかりましたので、明年度、必ずそういう点については是正する措置をとるという趣旨の御発言があったのであります。ところが、本年提案せられておりまする地方税法の改正案を貝ますると、それが織り込まれておりません。こういうことで、そのときの大臣が約束せられた、見解表明せられた言葉が、等閑に付されておるということでありますれば非常に遺憾なことである、これに対して担当の青木国務大臣としては、どういうようなことでこんなことになっておるのか、また今後どういうようにこの問題を処理されようとしておるのか、その辺をお伺いいたしたいと思います。
  222. 青木正

    国務大臣(青木正君) お話の通り国会の付帯決議その他国会の御意思に対しまして、行政府としては、当然これを十二分に尊重して、政府の施策をきめなければならないことは言うまでもないところであります。私どもまでもその考え方に対しましては、あくまでもその考え方を押し通して参らなければならぬと、かように考えておるのでありますが、ただ遊興飲食税の問題につきまして、先般、臨時国会でありましたか、三十年の地方行政委員会で、これが軽減についての御決議がありましたことも、私どもも十分承知しております。従いまして、今回の減税案の策定に当りまして、地方行政委員会の御決議の趣旨ということも十分念頭に置きまして、私ども昨年の秋以来、しばしばこの問題についても検討して参ったのであります。結果におきまして、そのことが実現できなかったこと、そういう事実に対しましては、私どもまことに申しわけなく存ずるのでありますが、実情を申し上げますと、今回の地方税の減税に当りまして、御承知のように、主として事業税その他府県税関係に重点が置かれた結果として、府県税の減収が百億程度になるのであります。しかも公共事業費が増高いたしましたので、府県の財政需要が増大するというような事情にありますので、参議院地方行政委員会の御決議通りの遊興飲食税の減税をいたすということになりますと、約三十五、六億さらに減収ということになりますので、地方、府県の財政事情から見まして、今回はあまりにも急激に、府県に激変を与えてはどうかという一つの配慮もいたさなければならなくなったような事情もありますので、残念ながらそれができなかった。またもう一つには、まあいろいろその他にも他の委員会等から御要望のありまする地方税、あるいは国税関係等におきましても、減税の御要望等もあるのでありますが、今回はもっぱらいわゆる公約激減の線に沿って、その実現をはかるという考え方に立って案を策定いたしましたので、遊興飲食税の問題は今回実現を見ずに至った、こういうのが、率直に申しまして内部の事情であります。なおまた、遊興飲食税それ自体についても、私どもいろいろ国会側の御意見もありますし、さらにまた遊興飲食税の実態というものにつきましても、いろいろ検討もいたしたのでありますが、いずれにいたしましても、今回はともかく公約減税という点に重点を置いて減税を実行する。さらに三十五年度におきましても、いろいろ国と地方との財源配分との問題とも関連いたしまして、根本的な税制改正という問題もありますので、今回はこれを見送るはかなかったというのが実情でありますので、その点、御了承いただきたいと思う次第であります。
  223. 森八三一

    ○森八三一君 私の申し上げておるのは、各種の委員会でいろいろの希望的な付帯決議が行われます。そうして政府に向ってその実現方を要請しておる、その全部が直ちに実現されることは好ましいことではありまするけれども、これは諸般の情勢上、直ちにそれは実行されないということがありましても、その非を私責めておるのではないのです。この案件につきましては、ごもっともだ、だから次の機会には必ずそういたしますという積極的な御発言がある。非常にごもっともだから将来の問題として十分検討しようというような趣旨ではなくて、必ず次の機会には実現いたします。だからあの税法改正の際には修正する等の措置は、一応まあ取りやめてもらいたい。もしそういうような見解が述べられなかったとすれば、あの際に、あるいは与野党とも一致した意見であったので、政府提案の原案というものは修正されておったかもわからない。が、そのことは以上申し上げますように、ただ単に付帯決議として希望を表現したというのではなくって、むしろ大臣が、これは青木大臣ではありませんけれども、当時の大臣が必ず実現する。これは速記には残っていないと思いますが、懇談の機会には、あらゆることに優先してその問題を考えたいと思うからというような、誠意のこもったお話しもあったと私は記憶しておる。だからそういうことに期待をして、次の機会に譲られておる。私は今回、税法の改正という案件が、取り上げられておるのですから、この機会には当然入ってこなければ、お互いに国会論議を尽しましていたしましても、それがただその場限りのことに終ってしまうならば、私は非常に遺憾だと思うわけでありますので、今お話しのように、公約減税を実現するに急であったとおっしゃるけれども、これは自民党としての公約というよりは、むしろ議会に対する一つの公約であった案件ですから、選挙に際して自民党が公約なさったことの実現よりは、国会に対して約束されておることの実現の方が私はもっと重く考えられなければならぬ、こう思うのです。そのことが取り上げられておらぬということは非常に遺憾に思う。そこで、今お話しのように、税制全般に関しまして中央と地方とを総合的に見て、今後、適正な税法を制定したいということで審議会を作るということでございますが、これがいつ結論が出ますかわかません。わかりませんが、そういうことの結論が長引くというような段階になりますれば、これはやはりその結論が出るまで、これを放置しておくということでございますのかどうか、その辺の見解を承わりたい。
  224. 青木正

    国務大臣(青木正君) お話しの点まことにごもっともと思うのであります。私が当時、大臣でなかったから、これを軽視したというようなことではないのでありまして、その間の事情等、私いろいろ事務当局の方からも詳細承わっておりまして、御期待にというか、御決議の御趣旨に沿うようにしなければならぬという考え方に立って、いろいろ検討いたしたのでありますが、何と申しましても明年度の地方財政計画におきまして、府県の負担増、そうしてまた減収ということが非常に大きく響いておりますので、この段階におきましては、遊興飲食税の問題を取り上げることは、あまりにも激変を与えるということで私ども譲らざるを得なかったのであります。重ねての御質問でありますが、私どもは三十五年度における地方税の関係につきましては、御承知のように、所得税の減収に伴う地方の減税分、これは市町村民税になるわけでありますが、そういう問題、その他三十五年度において解決しなければならぬ問題を幾多懸案として残されておりますので、国税、地方税の税源配分の問題、そのことがおくれるとか、おくれぬとか、そういう問題は別にいたしましても、三十五年度の地方税問題につきましては、当然検討しなければならぬことになってくるのでありまして、その機会に、私ども国会の御意思につきまして十分尊重いたしまして努力いたしたいと、かように存じておる次第であります。
  225. 森八三一

    ○森八三一君 三十五年度で十分検討して努力するというお話ですが、このことはすでに内容的には十分検討がなされた結果として、政府も同意を表明されたことと思うのです。もしわれわれが質疑を通して明らかにいたしましたようなことが、適当じゃない、もっと研究する価値のある内容のものであるということであれば、これは端的な見解表明というものはないはずなんです。きわめて率直にわれわれの意見というものを了解せられて、次の機会にはそれを取り上げますというようなことを約束されておる。それが今お話しのように、また誠意をもって研究するということじゃ、これは私はまあ極端な表現をもってすれば、国会に対する一つの不信行為だ、そうは思いませんけれども、表現すれば、そういうことになると思うのです。そこで重ねてお伺いいたしますが、ただいま税法の改正ということが議題に上っておるわけでありますので、お話しのように三十億円減収を生ずるというようなことになりました場合に、もちろん地方財政に影響するとは思いますが、これは必ずしも私は機械的にそういう結果が生まれるというものではないと思うのです。むしろ消費の根源を十分捕捉することに努力いたしますれば、われわれが念願しておるような税法の修正をいたしましても、地方団体に対する、これはもちろん団体別に考えますと差等が起きるかもしれませんが、全体の財政といたしましては、捕捉を完全にすれば、こういうものはそんなに大きな狂いは出てこぬと思うのでありますが、そういうことについての見通しはいかがでございましょうか。
  226. 青木正

    国務大臣(青木正君) 今の税源の捕捉の問題は、単に遊興飲食税だけの問題ではないと思うのでありますが、遊興飲食税だけにつきましても、御承知のように、遊興飲食税という税がなかなか非常に厄介な税でありまして、これをどういう徴税方法にするか、いろいろ検討する必要も私はあると思うのであります。その他の税につきましても、なおいろいろ検討することはあると思うのでありますが、特に遊興飲食税につきましては、しばしば国会側におきましても問題になりましたように、この税がなかなか完全に捕捉しがたいというような点もございますし、また、そのやり方等につきましても、従来からしばしば議論もあった問題でありますので、私どもそういう点も十分今後一そう真剣に検討しなければならぬと、かようには考えております。しかし私は今ここで直ちに、三十五、六億の減収が徴税方法いかんによって捕捉できるんじゃないかということを言明するわけには参らぬのでありますが、しかし問題の所在につきましては、私ども十分承知いたしておりますので、そういう問題等も十分検討して参りたいと、かように考えておる次第であります。ただしかし、私ども一番考えなければならぬと思いますることは、いろいろ地方税のうち、府県税の減収が特に多いということばかりでなく、そのまた偏在と申しますか、偏在する結果として、一部の府県に非常な財源の減収が激しく出るというようなことも十分検討しなければませんので、そういう点等をあわせて考慮して参らなければならぬと、かように考えておるわけであります。
  227. 森八三一

    ○森八三一君 この問題は、なお数字をあげていろいろ質疑をいたしたいのでありますが、税法が審議の過程にありますので、当該の委員会でさらに詳細を尽すといたしまして、次の問題に入りたいと思うのです。  それは、ことしは参議院議員の選挙が行われるわけでありますが、現在の諸規定から申しますると、五月二日に半数の諸君の任期が満了して、そうして六月の上旬に選挙が行われるというような建前に相なっておるのであります。そこで、六月の上旬というときは非常に農繁のときでありまして、有権者の立場からみれば、生産に全力を上げなければならぬときに、たとえ半日でも一日でも、ひまどりをするということは非常に苦痛な問題であります。この選挙期日ということは非常に重要な問題でございますので、時の政府都合や政党の都合で、こっちに変えたり、あっちに変えたりすることはいけません、いけませんが、やはり基本的観念としては、努めて有権者諸君の便益に資するということを主体にして考えていかなければならぬと思うのであります。そういう趣旨から申しますると、現行の規定が作られましたのは、選挙運動期間が三十日のときに作られた規定でございますので、今日では運動期間か二十五日に短縮されておるということからいたしまして、規定を変更いたしますれば、五日なり六日なりはもう少し繰り上げて選挙がやれるということになるのであります。そのことは農繁期を控えておる農民諸君には非常に裨益することであって、それが投票率にもまた影響してくる。国民が一人でも多く国政に参画し得るという機会を与えるということにも通ずると思うのでございます。でございますので、そういう趣旨において選挙期間を、新聞等にも出ておるのでございますけれども、お考えになったことがあるのかないのか、また、その結論として変えようとする御意思がないのかどうか、その辺をお伺いしたいと思います。
  228. 青木正

    国務大臣(青木正君) お話のように現行選挙法によりますと、三十二条の規定によりまして、参議院の閉会になったあと三十一日以後三十五日以内に行うということになりますので、現行法のままでありますと、六月二日から六日までの間に選挙が行われる、こういうことになるわけであります。そこで私どもといたしましても、農繁期を迎えることでもありますし、それからまたいろいろいわゆる地方選挙等もありまして、いつまでも選挙をやっておるというよりは、なるべく早い方がいいのじゃないか、こういう気持も私ども全く同感であります。しかし、この問題は政府がその日をきめるというよりは、やはり何と申しましても参議院の皆さん方の選挙でありますので、それぞれの党のお考え等をやはり十分尊重して、各党におきまして早く繰り上げてやる方がいいではないかというような御意見であれば、私どもは当然早く繰り上げる方が、農繁期の関係からいたしましても適当ではないか、かような考えのもとに、三十一日から三十五日というのを二十六日といたしまして、そういう法律改正をやりますれば、五月の二十八日から六月の一日までにできるわけであります。そういう考えのもとにいろいろ法改正の問題も検討いたし、さらに先ほど申し上げましたように、政府で日をきめるというよりは、政党各方面の御意見を尊重することが当然と考えましたので、非公式ではありまするが、党の方に連絡をし、そうして、緑風会の方にはまだ連絡するまで至らなかったのでありますが、社会党側の御意向、内意を承わったのであります。その結果、かりに繰り上げてみたところで五、六日のことではあるし、そのためにわざわざ法律改正はどうかというような御意見が社会党側からも表示されましたので、そうであるとするならば、ここで政府が法律改正を提案するということもいかがかと考えまして、現行法通りやるほかはないのではないか。もちろんしかし、今後、参議院側の各会派の皆さん方におかれまして、繰り上げてやるように法改正をやれということでありますれば、政府はもちろん異存はないのであります。ただしかし、大体の考え方は、今日まで承わったところによりますると、そこまでしてやる必要もないのではないか。その結果、十日なりあるいは二週間なり早くなるということであれば、それもいいであろうが、法律改正してみたところでわずか四、五日しか早くならぬことであるから、現行法通りやるほか仕方がないのじゃないかというような御意向が大勢であるやに私ども察知いたしましたので、法改正の提案を見合せたのであります。
  229. 森八三一

    ○森八三一君 この問題は、一日でも早ければ、それだけ裨益することでございますので、必ずしも十日早くなければいかぬという趣旨のものではないと思うのであります。ただお話の点もわかります。わかりますが、私はこの機会に、大臣の御発言は、かりにここでもし国会側の措置として、そういうようなことになったような場合においても、政府の方における選挙事務の執行上、まだ二カ月もございますので何らの支障はないというように理解をいたします。そういうことが行われるかどうかは知りませんけれども、そうなっても政府の立場における選挙事務執行上の支障はないということだけを了解をいたしておきたいと思います。
  230. 青木正

    国務大臣(青木正君) 今回の選挙のごとく、期日がおおよそ予定されておりますので、従いまして、選挙管理事務から申しますと、かりに法改正によって早くやるということになりましても、選挙管理の事務においては一向差しつかえありません。ただしかし、問題はいつごろやるかということを、あまりまぎわになって日取りをきめられると、これは困りますので、繰り上げることはけっこうでありますが、繰り上げるかどうかということはなるべく早い機会に決定いたしませんと、その点はいろいろ差しさわりがあるのではないかと思います。
  231. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ちょっと関連して。ただいまのは、長官何ですね、各政党、会派で意見がまとまればやるが、まとまらなければやらぬということですね。第一、やろうとするならば、選挙のことですから、一年前にやっておかなければ、選挙前に、コースに乗ってから二カ月か三カ月前に持ってきたのではまとまりっこないと思うのです。やはり一年ぐらい前からやっておかなければ、もうおそいですね。だからまとまらなければやらぬですね。それを言っておいて下さい。
  232. 青木正

    国務大臣(青木正君) 選挙はそれぞれの各会派に非常に重大な関係がありますので、各会派の御意見がまとまらないのに、政府が勝手に繰り上げるというようなことは決していたしません。
  233. 森八三一

    ○森八三一君 今の御発言は国会の審議を拘束することになりはしませんか、各会派の意見が完全にまとまらなければやらぬということは、これは法律改正はわれわれ議員としてもやれるのですから、その議員のやれる権限は、少数ではいけませんけれども、多数で決定されるということは民主主義の本則ですから、各会派が完全に一致しなければやらぬということをおっしゃってしまったのでは、これは国会の審議権を何か拘束することになるのですが、それでよろしいんですか。
  234. 青木正

    国務大臣(青木正君) むしろ逆の意味で、各会派の大勢が御決定にならぬのを政府がやるということは、むしろ国会の意思を無視することになりますので、国会側の意向がそういうようなときにやると、こういうようなことを申し上げるのであります。国会側をむしろ尊重する気持で私は申し上げたのでありまして、国会側の大方の方々がその必要がないというのに、政府が押し切って提案するというようなことはいたさぬと、かように申し上げたのであります。
  235. 森八三一

    ○森八三一君 その次にお伺いいたしたいのは、昨年のこの委員会で、私は戦後盛んに流行して参りました射倖的な娯楽というべき競輪だとか、競艇というようなものは、だんだん経済も落ちついて参りました、民心の安定した今日ではやめるべきではないかということを申し上げたわけです。当時、担当の運輸大臣は、何か新しいものを許可したいというようなふうの御意思に基きまして明確な御回答がなかったので、最後に総理にその点をただしましたところ、総理も同感だということで、これはほとんどうにスピーディに、その翌日の閣議で、新設は一切認めぬということを申し合せをされました。自来、そういうように措置をされております。私はこのことに非常に敬意を表しておりまするが、総理がそういうような措置をとられましたゆえんのものは、新しいものを許可しないことだけではなくて、やはり私が申し上げたように、こういうものは漸次やめていくのだという前提に立って、新しいものはやめるという決断が下された、こう私は了解している。ところがその趣旨が、その後一カ年間眺めておりますると、さっぱり具体的に進行していない。それにつきまして担当の通産大臣として、競輪問題をどう考えていらっしゃるのか、運輸大臣は競艇問題をどういうように処理されていこうとするのか、これはぴしゃっとここでやめてしまうというと、地方財政に非常な大きな影響のくる問題でもございまするので、そういう問題を考えながら対処していかなければならぬものだと思いまするが、担当大臣として両大臣から、一体どういうように始末をしようとお考えになっているのか、その点をお伺いいたしたいのであります。
  236. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お説のごとく、競輪は競馬そのほかモーター・ボート・レースなんかと同様に射倖的なものを含んでおりますから、社会的に悪影響を及ぼす、こういうことは当然考えておるわけでございますが、現在のところお話のごとく、地方財政におきましても年にかれこれ四十億円、これは競輪だけでございますが、それからまた住宅なり、社会施設なりに使われております。また一方におきまして、自転車そのほか機械工業の振興等に年額約五億円という寄付が行われております。その上にやはり十八万人ぐらい人間がこれによって生活しておる、この失業問題等考えますると、にわかにこれをやめるわけにいかない。こういうふうなことから、政府では昨年の七月でございましたか、今後新たに許さないという方針をとっておりますのですが、新たに許さないということは、現在あるものも自発的に各府県において、これは地方財政に影響しないでやめたい、こういうところはやめてもらう、こういうふうな方針で進んでいきたいと存じておりまして、逐次これは整理をしていきたい、こういう考えで進んでおるわけであります。
  237. 永野護

    国務大臣(永野護君) 私どもの所管しておりまする競艇につきましても、ただいま通産大臣が競輪についてお答えいたしましたのと大体同じ趣意でございます。これらのものは射倖心を排発して、民心安定の上に非常に好ましくない設備であるとは存じておりますけれども現実の問題といたしまして、三十一年度約十三億、三十二年度十五億以上の金が地方財政の方に回っておりまして、これによりまして学校が建ちましたり、住宅が建ったり、そのほか各般の公共施設の方に金を使っておりまするので、急にこれをとめますことは、そういう方面に非常な影響を与えますので、これ以上ふやさないという方針は堅持いたしておりますけれども、これをどの程度に押えて縮小していくかということに関しまするまだ具体案を立てておりません。研究中でございます。    〔委員長退席、理事堀木鎌三君着席〕
  238. 森八三一

    ○森八三一君 こういうような収益によって学校が建つとかいうことは、これは決して好ましい姿ではないと思うのです。学校のような神聖な施設物は、これはやはり堂々と公けの金をもって十分な措置をすべきであって、極端な表現でいたしますれば、ばくちのテラ銭で学校が建ったりということは実に遺憾なことだと思うのです。そういう金で軽工業の発達がなされてもこれは感心しない。しかもその裏面には非常に多くの社会悪というものが存在しているのです。それを考えますと、どうしてもこれは漸次、急激にはいきませんが、圧縮しなければならぬと思います。ところがいつもそれは同感だ、そういうものは漸次整理するとおっしゃるが、ちっとも具体的な整理の案というものはないのです。それじゃ前進はしないので、一ぺんには地方財政の関係でやれぬと、いつもそういうことを繰り返しているだけだ。真剣にどうやったらいいか、これは施設があるから一ぺんにやめるわけにいかぬと思うのです。地方財政の影響もあるから一ぺんにやれぬ。やめていくには逐次やめていかなければならない、それには具体的にどういうように整理をしていくか考える。施設に対しましても、具体的にどう償却するか、いろいろなことを考えましても、言っておるだけでは進行しない。これは一つ真剣に考えていただきたいと思うのであります。これはまた進まなければ来年も御質問いたしたいと思いますが、来年は具体的にどうやることになっているかと、きょうは聞きましても、ちっともないはずでありますので、お聞きすることはかえって御迷惑と考えますのでお聞きいたしませんが、真剣に一つ考えていただきたいと思うのであります。  それから厚生大臣に、もう時間がございませんから、一点だけ一つお伺いしておきたいと思いますが、今度の国民年金の制度でございますが、これは私ども多年要望しておったことの実現でありますので感謝をいたします。ただ内容的には、これが最善のものであって、十分とは思いませんが、一歩前進するという点については賛意を表するにやぶさかではございません。ところが二十才から、前半は月額百円、後半は百五十円という掛金をしなければならぬ。その掛金が実際に今対象となるべき国民に漏れなく完全に行えるかどうかということを考えて参りますると、低額所得者等につきましては、必ずしも掛金が喜んで納められるという筋合いではないと思うのです。そこにいろいろ問題が起きる。法律もそういう点については配慮をなされておるし、また伺いますると、そういうような場合には免除するようなこともお考えになっていると、こういうのでありますが、その免除をする場合、これが第一線で事務を処理いたしまする地方公共団体の職員の諸君の裁量によって免除せぬというようなことをきめられたのじゃ、これは大へんな問題を引き起すと思うのでございます。でございますから免除をする限度は、やはり明確に機械的にきまってくるようなことを考えておかぬというと大へんな結果になると思いまするが、その標準をどういうようにお考えになっておるのか。私は少くとも今日の税法で所得税を免除しておるというクラスは、これは免除をすべき筋合いだろうと思うのです。他日に備えて今日の生活を破壊してまで納めるという気持が起きてこないことは、これは当然だろうと思うのです。だから税法上、今日所得税の免除措置をやっておりまする段階は、それぞれ今日の経済事情において最低生活を営むに必要な限界線だと思うのです。その中に食い込んで掛金を払っていくことは事実上不可能である。でございますので、機械的に免除をいたすべき範囲をきめるといたしますれば、それは所得税を免除されておる非課税の対象は免除をすべきであると思いますが、いかがでございますか。    〔理事堀木鎌三君退席、委員長着席〕
  239. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) お答えいたします。私どもといたしましても、できるならばその程度に所得制限を設けるのが望ましいものであるというふうに実は最初は考えておったわけでございますけれども、今日の段階といたしましては、結局、市民税を納める程度ということに、もっときびしくしなければならぬと思っておる次第でございます。第一に、保険料の免除の基準につきましては、生活保護法による生活扶助を受けておられる方、それから傷害年金、母子援護年金を受けておられる方、それから、らい療養所に入所されておる方々は、申請を待たずに、当然にこれを免除をして参り、地方税法による市町村民税の非課税の対象となっておるような、いわゆる低所得者層の方につきましては、これらの申請を待ちましてこれを免除して参りたいと考えておるのであります。この趣旨規定を法文にも明記いたしておるような次第でございます。  第二に、免除を受けた方の給付につきましての優遇措置についてでありますが、たとえば老令年金についての最低拠出期間二十五年につきましても、これを十年に短縮しておりまするほか、これらの長期間免除を受けた方は、原則として援護年金が支給される建前となっております。また傷害とか、死亡とか、不特の事故につきましては、拠出しておる方と同様に年金が支給されることが原則となっておりまして、これら低所得者層に対する年金支給の実をあげるよう配意いたしたところでございます。なお、保険料を免除せられる方の数は、大体全被保険者のおおむね二割五分か三割程度だと予定をいたしておるような次第でございます。
  240. 森八三一

    ○森八三一君 今の点は、もう少し数字的に究明しなければならぬ点でございまするし、御説明の内容については、私も本会議等の質疑を通しまして承知をいたしておるのでありますが、それでは実際問題として処理が非常にできなくなるということは、その程度の免除では、また納めろ納めぬといういろいろなトラブルが起きて、せっかくの制度というものが、ほんとうに国民から喜ばれなくなってしまうという危惧を実は感ずるのです。でありますので、あるいは財政の都合によって、三千五百円という給付では十分ではございませんけれども、すべり出しの一つの方法として、あるいはその額を多少変えてでも、ほんとうに今日の生活を破壊してまで納めるということは無理でございますので、そういうように変えたらどうかという意見を持っておりまするが、時間がございませんので、他の委員会等に譲ります。なお、いろいろお伺いしたい点がありますが、時間が参りましたので、一応分科会に譲りまして、きょうの質疑はこれで終ります。
  241. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 関連して。資料の要求です。
  242. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 矢嶋君、資料の要求ですね。
  243. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 自治庁長官がお帰りになるといけませんからお願いしたいんですが、実は、私はことしの予算委員会の審議に供するつもりで、一年前、去年から資料の要求をしてあるんですが、実は、それは地方自治体の財政が窮迫だ窮迫だといいながら、地方自治体の首長並びに議員が、東京初め、あちこちに出かけるのが非常に多いと思うんですよ。もちろん先進自治体を視察するということは大事だと思うんですけれども、学校一つ焼けたから何人か出張する。小さな地方自治体であるのに、相当の人がよく上京して来る。政治家の中には、呼び寄せて地盤確保に利用したり、選挙運動に使う形もなきにしもあらず、だから一体どの程度自治体はそういう方面に金を使っているのか。また国家公務員の場合は、地方に選挙があるというと、中央官庁の課長さん以上が、ずっと出張の名目で出かけて行くわけですね。それで地方から上って来る場合と、中央から地方へ出かけて行くのと、両方どの程度の国民の税金を使っているのか、大ざっぱでいいから資料を出してほしいということを要請した。それが条件で去年自治庁の設置法は成立したんですよ。それで行政管理庁とあなたのところが責任を持って、あなたのところが中心でやってくれる、これは前長官のときですが、しかし、一カ月ぐらいではできないから、相当期間がほしいというので、私はゆっくりでいいからと言っておいたところ、一年たってもまだ出てこない。今年の予算審議にも間に合わないんですが、若干資料を作るべく努力していただいたのかどうか、どの段階まで行っているのか、あなたの前の長官時代のことなんですが、お答え願いたいし、あまりめんどうなものでなくていいんですから、大づかみの、ある程度のものは一つ出していただきたいと思うんですけれども、いかがなものでしょうか。
  244. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) 前段の方の問題は私の所管でございます。後段の方は私どもの所管ではございませんので、前段の点についてだけお答え申し上げます。率直に申し上げまして、実はそういう御要望のあったことは私存じております。だれか関係者がおそらく調査にかかっておるんだと思います。ただ想像いたしましても、大へんむずかしい調査だと思います。しかし、どこまで御要望に沿えるかわかりませんけれども、できる範囲で調査をさしていただきたい、かように考えております。
  245. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 森委員質疑は終了いたしました。   —————————————
  246. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 次に、松永忠二君の質疑に入りたいと存じます。
  247. 松永忠二

    ○松永忠二君 質問に入る前に、法務大臣は、後ほど文部大臣のあとからでいいですから、それまでに来ていただかなければ、私はそこで質問を打ち切りたいと思うんです。
  248. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 松永君に申し上げます。法務大臣は、今連絡をとりまして、すぐ参ります。
  249. 松永忠二

    ○松永忠二君 なお、委員長において一つぜひ理事を通じて、非常に出席が悪いので、あまりひどく定足数を欠いてくれば、私は途中で一つ休憩をしていただいて、そろえてやっていただきたいと思うわけです。
  250. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) よく承知いたしましたから。
  251. 松永忠二

    ○松永忠二君 一つ御配慮いただきたいと思います。  私は、教育委員会の問題について大臣に少しお尋ねをするわけでありますが、御承知のように、前の教育委員会法には、その目的として、「教育が不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきであるという自覚のもとに、公正な民意により、地方の実情に即した教育行政を行うために、教育委員会を設け、教育本来の目的を達成することを目的とする。」というふうに規定をされておるわけで場ありますが、この教育委員会の目的というものが、現在においても何ら変更されていないものだと私たちは考えるのでありますけれども、大臣はいかにお考えになりますか、お答えを願いたいと思うわけであります。
  252. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 趣旨におきましては、今日もそういうような考え方で、教育委員会は行くべきものと考えております。
  253. 松永忠二

    ○松永忠二君 そこで、最近の勤評の問題を通じて、教育委員会が今申し上げましたような目的を完全に果しているかということについて、私たちは疑問を持っておるわけであります。国民全体に対して直接責任を持ってやるとか、あるいは公正な民意により、地方の実情に即した教育行政を行うというようなことについて、現在の任命制の教育委員会が果して適当であるかどうかということについて、私たちは非常な疑問を持っているわけでございますが、私はそういう問題について具体的に私の意見を申し上げますので、これに対して具体的に大臣から一つお考えをお聞かせいただきたいと思うわけであります。まずその第一として、非常に勤評を通して教育界が混乱をしてきたときに、教育委員の中には、私が辞職をすればいいんでしょう、こういうふうな言い方をされた方もなかなかあるのであります。民選をされた教育委員であるならば、よもやこういうようなことを私は言うことはないと思うわけであります。とにかく民選をされておる教育委員であるならば、全体に対して直接責任をもっていかなければできないし、公正な民意をあくまでも代表しなければできないという気魂と行動力をもって事に当ると私たちは思うのであります。ところが、任命された教育委員会であるので、私が辞職すればいいんでしょうというような言い方をして、その責任を明確に負って、民意を代表して、この問題を処理していくというような気魂と実行力に非常に欠けている点が非常に多かったのではないかというふうに私たちは考えているわけであります。それからなお、教育委員会が、混乱のためについに機能を麻ましてしまってきたときに、その混乱の収拾に当ってきたものはだれであったかというと、これは全国的に、御承知の通り、ほとんどこれは任命権者である知事であるのであります。あるいは市町村長が任命権者として、この機能を麻痺した教育委員会にかわって、時局収拾の任に当っているというのが現状であろうと思うのであります。任命された教育委員会に最大の圧力をかけることのできるものは任命した知事、市町村長であるということであります。公選された教育委員に最大の圧力をかけることのできるものは世論であるのであります。私たちはこういうような点から考えてみて、この任命制の教育委員会がこの困難な混乱の時期にその責任を果していくということについて、やはり民選された教育委員の方がその事態を収拾するに適当ではないかというふうに考えるのでありますが、この二つの点について、具体的なあなたの御意見を一つ聞かせていただきたいと思います。
  254. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 御意見の趣旨はよくわかりましたが、この問題について具体的に御答弁を申し上げるに当りまして、やはり公選制の教育委員の制度というものを今日の制度に切りかえたゆえんがどこにあったかということを考えなければならぬと思うのであります。で、いろいろな利害得失はあると思いますが、公選制の教育委員の制度をやりました場合に、とにかくやはり立候補して、選挙運動をして、そうして当選をしてから教育委員になるという場合において、具体的に、やはり好きな人が出てくるという点から見て、必ずしも教育委員としての適任者をほんとうに選んだことになるかどうかというような点に心配があり、かえって人物を選ぶのに片寄りができる。また投票率等も非常に低いというような点を考慮いたしまして、また諸外国等においても、現実にやはりいろいろな点からいって、公選制をとっているところも少いというようなところを勘案いたしまして、むしろ、ほんとうに国内から教育委員を適当な人物を求める、そうしてそれが公正に選ばれるようにということで、公選制によります知事、市町村長が推薦をして、公選制による議会が承認するという制度を今日とっている。しかも、その中には、政党の片寄りを持ってはならぬという規定を置いているわけであります。私は、これがやはり今日、いろいろ考えてみまして、教育委員として最も適当な人物を選ぶゆえんだと考えておる次第でございます。で、ただ気魂という点からいいますと、ほうっておいても、自分がぜひやるのだといって出てきた人に比べて、ぜひ一つなってくれということで、すすめられ、選ばれて出てきた人の間に差がないかというような点については、あるいは多少そういう傾向が私はあるだろうと思いますが、利害得失を総体的に考えてみました場合に、やはり教育委員としての責任感の点、あるいは広く人材を求める点、あるいは人事の片寄りのない公正な点ということで、今日の制度が最適だと考えておる次第でございます。  勤評の問題は、現実にあれだけもめましたが、あちこちでいろいろな問題があり、あるいは教育委員の中で、がっちりほんとうに自分が受けとめて仕事を処理すべきであるにかかわらず、その不十分な人物があったかもしれませんけれども、しかし、私は、それが任命制によるもっぱらの欠陥であって、公選制によれば、万事任命制よりもよくいくのだというふうには考えないのであります。公選制時代のいろいろな実情を改めました今日の制度というものは、運営の実情、人選の実情等から見ましても、私は今日比較的よく行われていると考えております。
  255. 松永忠二

    ○松永忠二君 今の大臣の答弁は、私のお聞きしたことに対して具体的に意見を述るべというよりも、抽象的に、ただ任命制の方がいいことだというようなお話であったわけでありまして、私はそういう点では納得ができかねると思うわけでありますが、そこで、もう一つまた進んで、任命制の教育委員の場合に、私たちが指摘できることは、大体、知事が保守系の方を選ばれているということになれば、大体その県においては、保守党の議員の方が多いのであります。そこで、保守党の議員の議会の承認を経て、教育委員が任命されるので、やはり、これまた、保守系の人が実は非常に多いのであります。これは、今度は逆に、社会党なり革新系の知事が出ているところにおいても、やはり同様な、類似をしたことが行われていると私は思う。そういうことがいまだに、なおかつ、この勤評を実施しないところの県もやはり出てきている理由の中には、そういう一つの原因もあると私たちは考えるのであります。また、教育委員の構成について考えてみた場合においても、実際に教育委員の中に、ほとんど農業関係の人が含まれていないとか、あるいは労働者の関係の人が含まれていないとかいうような点が指摘をされるわけであります。これがもしも民選の選挙によるところの教育委員であるとするならば、やはり大体今の国民の世論を反映するような割合においてそこに教育委員が選出をされて、その教育委員会の中でいろいろな議論が昇華をされて、問題が展開をしていくところに、やはり教育委員会がほんとうの意味の地方の民意を代表して、勤評の問題等においてもその実情に即した処理の仕方をしていくことができるのであるけれども、任命制であるということによって、ある意味においては、保守系のところでも、革新系のところでも、非常に片寄ったいわゆる構成がなさていく。四割の人口を占めるところの農民、五割の労働者の代表が、だれ一人もここに選ばれていないというような任命制のこのやり方が、やはりほんとうの意味で、この世論の上に立ち、世論を反映した教育委員会としての機能を発揮することが非常に不十分であるというふうなことを、私たちは具体的に指摘をしたいと思うわけであります。こういう点についていや、任命制の方がいいのだという具体的な一つ論拠をお示し願いたいと私は思うのです。
  256. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 先般もやはり、教育委員の方々の職業構成といったような問題について御質問を承わったことがあるのでございますが、もちろんある程度、平素のお仕事の関係によりましてものの考え方というものが多少左右されやすいということはあるかもしれませんけれども、まあ本来的に申しまして、教育委員会の仕事師をはかるとか、あるいは各界の意見の調節をはかるとかいうことでなしに、いかなるお仕事の方であろうと、あるいは男であろうと女であろうと、ほんとうに教育という観点から見て適当な人物を自治体の首長と議会との間で選ぶというのが今日の制度でございます。私は、そういう点から申しまして、今日どこの自治体においても、相当教育委員の問題というものは、慎重に人選がされ、そして自治体の住民もその人選の当否というものは十分注視をして見ておるわけでありまして、あまり片寄った人選といったようなものは、これはもう選挙を通じて任命権者自身に対して監督が行われているわけでありまして、私は本来的に申しまして、教育委員会というものが各界の利害の調節機関とか意見の調節機関とかいうようなものでございませんし、それからまた、選ばれた方はそれぞれの職業的な立場で教育を考えるということでなしにお考えを願っている筋から申しまして、文部省といたしましても、そういう観点で広く人を選ぶように注意をしておるわけでありますから、各地に行われました教育委員の人選というものがそう片寄って不満であるというふうには見ておりません。
  257. 松永忠二

    ○松永忠二君 私が申し上げたのは、職業構成がどうだということは一つの例であって、私は一番問題なのは、やはり勤評に対する考え方に、保守的なものの考え方をする方と進歩的なものの考え方をする方があるということは、私は否定はできないと思うわけです。現在、教育の問題等についてこういう二つの異なった意見を持っていることは、私は事実だと思うのです。やはり、そういうものが教育委員会の中で昇華をされるということが、私はそういう問題を処理する上に必要だと申し上げているのであります。こういう点においては、やはり任命権者と議会というようなものとがほとんどそれによって占められている場合においては、おのずからそこに出てくるものが片寄ってくる。これは、必ずしも私は保守系のことばかりを言っているのじゃありません。革新系の方において、もそういう事態があるということを申し上げておるのであります。だから、私たちは、これが民選で行われれば、おのずからそこに比例をもって出てきて、昇華をされるということを私は申し上げているのであって、具体的なそういう事柄について、むしろこれは任命制の方がいいのだということは、私は今の御説明の中には一つもないと思う。もう一回一つその点をお答え願いたい。
  258. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) それで私は、実は初めの答弁で申し上げたわけでありますが、任命制でなければ、結局直接選挙という形でいくわけでありますが、もとよりこれは両方利害得失はございましょうと思います。御意見はあると思いますが、戦後行われました直接選挙の状況を見ましても、教育委員に自分が立候補したいという人が出てきて、めんどうな選挙運動をやわるけでございますから、ことにイギリスとかアメリカとかいうような、ほんとうに公明選挙でなれたところと違って、相当激しい選挙運動をしなければなかなか当選しないといったような日本の実情から見まして、この直接選挙にした方が、広く人材が、なってもらいたいような人たちが出てきて、それが当選をするという保証はない。それよりむしろ任命制の方がやはり広く人材が得られ、その中にはやはり職責を考えてしっかりしている人が得られるというふうに私考えて申し上げた次第でございまして、もちろん任命制の場合にも、いろいろ御指摘のような御議論もあると思いますが、私はそれでは、任命制にかわるに面接選挙にした場合には任命制のときよりももっと人物を得られやすくなるという保証はないと考えている次第であります。
  259. 松永忠二

    ○松永忠二君 私は、教育委員会の重要性というものがよく理解されないような段階において直接選挙を行なった場合に適当な人が得られないというような指摘はあるとしても、国会議員なり、県会議員なり、市町村会議員が民選によって適当な人材を得ているということについては、われわれはやはりその方法で疑う余地は私はないと思う。やはり教員委員だって、私は同じことだと思うのです。教育委員会の機能というものがよくわかり、あるいは重要性が理解された段階においては、やはり民選によってやるということが最も人材を得ていくし、先ほど申し上げたような国民の世論を代表もするし、また民意に基く気魄と行動をも伴いながら、しかもなおかつ世論に最も圧力を受けながら自分の行動を律していくということになると思うのであって、あなたは直接選挙の場合にそういう保証が得られないというけれども、私は今のような保証は得られると思っているわけです。しかしまあ、これについて議論をしてみたところが仕方がないのでありますが、私は今申し上げた点で、あなたの御議論で納得できるような了解は得られないと思うのでありますが、なおその次に、旧教育委員会と新しい地方教育行政の差異の中で最も重要な点は、教育長の職務とか、選出の仕方だと思うのであります。これについては、県の教育長が文部大臣の承認を得て、また市町村の教育長が市町村長の承認を得ているというようなことが出ているわけでありますし、また教育長については、教育委員の中から選ばれていくとか、必ずしも教育専門職でなくてもいいというような事態等も出てきているわけであります。ところが、こういうことがやはり私たちはいろいろな弊害を実は伴なっているというふうに具体的に考えているわけであります。そこで、その点についても具体的に一つお答えをいただきたいと思うのでありますが、今まで教育長というもの、そうしてまた教育委員というものが民選をされていた時代には、全国の教育委員協議会、全教委というのがあって、大体全国の教育委員会の連絡の活動の中心をなしておったわけであります。ところが、任命制に変って、教育長が承認制に変ってくるに従って、実は教育委員長協議会というのが出てきた、と同時に、ここでもっとも活動を始めたのは、全国教育長協議会というのが御承知のように勤評で試案をこしらえて、これを実施に移しているわけでありますが、はとんどそれが実は全国の教育委員会の中心的な活動をなしてきた事実があるわけであります。こういうところにも、やはり私は前々と違ってきた教育長が、そういう非常な教育委員会実力者としての力を持ち始めてきたという一つの証拠だと思うのであります。  それからなお、教育長が文部大臣の承認を得なければできないというようなことや、あるいは教育専門職でなくてもよいというようなことから、教育長の中に官僚出身の人が非常に多くなってきた事実であります。これは具体的に数字もあるわけでありますけれども、四十六都道府県の中で官僚出身の教育長というものが非常に数多くなってきて四十六都道府県の中で二十人が官僚の出身である。また任命制に変って、教育長が十七人変ったけれども、その中の十四人がいわゆる官僚の出身だというふうになってきたわけであります。私たちは、やはりここにも教育長承認制というものを通して、教育長が教育委員会の中心的な役割を果すようないわゆる官僚支配、中央集権的な状況というものが教育委員会に現われてきたと思うのであります。そこで私は具体的に、教育長なるがゆえに文部大臣が承認しなければできないのか、その理論的根拠はどこにあるのか、それを一つお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  260. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 教育行政をやりまする場合には、これはむやみな中央集権化をやったりするようなことを、ただ片寄りを防がなければなりませんと同時に、やはり各委員会の自主性というものを認めながらも、教育課程の基本の問題でありますとか、その他につきまして、やはり総体を通じた一つの統一性というようなものを考えなければならぬわけであります。従いまして教育については、いろいろの面の自主性がありながら、やはり文部大臣が教育課程を定める、指導、助言、援助をしておるわけでありまして、その両方の結びつきというものがうまくいかなければできませんので、これは両方いろいろな意見があると思いますけれども、各都道府県の教育委員会というものの中でそれの実務的な曲をいたしまする教育長につきまして、文部大臣の承認制をとりまして、教育における各教育委員会の自生性、それと、文部大臣が責任を負って一つの教育全体に対する協調をはかるという面とのつながりを考えたわけであります。
  261. 松永忠二

    ○松永忠二君 先ほど最初に申し上げましたように、教育委員会というものの中には、別に文部大臣が統制、支配をするというような目的のために作られたものでないということは、先ほどその目的からも指摘をされるわけです。私はやはり積極的に、何ら教育長をどうしても文部大臣が承認をしなければできないという面はないと思います。教育の問題について、文部省が現在持っておるところの文部省設置法等に伴う一つの力をもってやっていけは、そこに統一的な仕事のできる部面も残されているのであって、私は積極的な異議は特にないと思います。そこで私たちは、先ほど申し上げましたように、今度の勤評の問題等を通じて、教育委員会の重要性というものは非常によくわかった。そういうようなことから、またそういう費用等も府県市町村等を通じて約十七億というのが昭和二十七年に府県市町村で教育委員の選挙を行う費用として計上されていた費用である。この程度の費用をもってして、この現在普及されてきている現在の状況の中には、やはり教育委員会の目的を完全に果すために、この際やはり民選制に変えて、いくべきではないか、公選制に変えていくべきではないか。そしてまた教育長の承認制も一つ撤廃をするし、また教育長について教育専門職であるというような事実も前に復活をさしていくというようなことが必要だと私は考えるわけです。大臣はこういう問題について、地方教育行政の組織と運営について、真剣にやはり今後検討を要するというふうに考えておられるのか、この点の御意向を一つお聞かせ願いたいと思うわけです。
  262. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 私は、ただいま松永委員からお話のございましたような点につきましては、十分留意をしながら運営をはかって参らなければならぬと思っておりますが、制度としましては、御提言の問題につきましては、今日の制度がよろしいと考えておる次第でございます。
  263. 松永忠二

    ○松永忠二君 この点については、また後に論議をしたいと思うのでありますが、そこで進んで、教育基本法の第十条に、教育行政のことについて規定をされているわけでありますが、特に教育の中央集権的な官僚統制、そうしてまた政党支配というものを非常に排除していかなければできないというふうに私たちは考えるのですが、この点について大臣はどうお考えになりますか。
  264. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) その通り考えております。
  265. 松永忠二

    ○松永忠二君 そこで、近ごろ起ってきたいろいろな問題を通して特にお尋ねをするのでありますが。勤務評定というものが非常に強行されてきた。管理職手当が支給をされて、道徳時間が特設をされて、学習指導要領の国家基準ということが非常に強調をされてきたということも、私たちはこの中にやはり中央集権的な官僚統制と政党支配というものを相当強く打ち出しているということを実は憂えているわけであります。事実、勤務評定について、これが教育長協議会の試案を実行するという、そういうことを表面に立てながら、背後でこの実施を強行したのが文部省であるということは、これは偽わりのない事実だと私は思う。また、松永文部大臣のときに、自民党の総務会等で早期に勤務評定を実施すべきであるということを、松永文部大臣に要請をした事実も、これは当時の新聞報道で明らかになっておるわけであります。また、管理職手当の支給については、当初文部省がほとんど何ら私たち文教委員に対して、今年度要求をするというような、当初の資料に全然なかったものが、次回において管理職手当の支給の問題が出てきた、これが自民党の要請から協議をされているという事実も、これはやはり私は明らかであると思うわけです。あるいは灘尾文部大臣の当時に、校長非組合員化の要請が自民党から大臣に要請をされて、大臣がこれについては非常に疑問を持たれていたという事実も質問を通じ、あるいは新聞等で明らかになっていると思うのであります。教育課程を改めることについて、いち早く予想された地歴教育に重点を置いて、愛国心の教育を強調しなければならないということを言っておった。自民党の政策の中には、教育内容の偏向を是正をする、地歴教育を強化をするというようなことが政策として決定をされておったわけです。しかも、文部大臣の言動について、これは有名なことであるのでありますが、大達文部大臣は、政党内閣の一員であり、自分は当然、党の文教政策を推進すべきだというふうに言っておったし、清瀬一郎氏は、自分は党の番頭だ、党の決定した文教政策を実施するのが自分の役目だと、こういうふうに言っておられるのであります。こうなって参りますと、この勤務評定の強行、管理職手当の実施、道徳時間の特設、学習指導要領の改訂等が、いずれもその背後に政党の動きがあり、また文部省の推歩があったという事実を、私はこれをそうでないという具体的な証拠はないと思う。そうなってくると、私たちは、今申し上げましたように、この教育の中に、中央集権的な官僚支配や政党支配というものが非常な力で歩みを進めてきているというふうに私たちは思うわけであります。こういうようなことから、私は今の学者や、あるいは一部のいろいろな人たちの中に、中央教育行政のあり方、機構というものについて、何か検討をしなければならない時期に来ているではなかろうかという意見も相当出てきていると思うのであります。そこで、私が文部大臣にお尋ねをしたいことは、教育の中央集権的な官僚支配を排除し、政党の支配を排除するというために、今の教育の中央行政のやり方について、機構について改めるというようなこと、あるいは検討するというような用意や考え方というものが一体文部大臣にあるのかどうか、こういう点について私は大臣の所見を伺いたいと思うのであります。
  266. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) きわめて大切な問題でございまして、私は端的にこういうふうに考えております。教育の面に片寄った政治色が入っちゃならないことは御承知の通りでございまして、教育基本法はその精神でできているわけであります。私は、ただ今日の政治というものは、政党が政策を考えて、内閣がそれを実行するという筋道というものは、これはもう教育行政については、私は何も変りがあったならないものだと思います。ただ、その政党自身は、教育行政に関しまする限り、憲法、教育基本法の精神に従いまして、やはり節度を保って、片寄った政治的な宣伝の場などにしてはならないということは、これは政党自身が考えていかなければならぬ問題だと思います。で、そういうふうに、憲法、教育基本法の精神に従って政党自身が教育政策を考え、そうして政党内閣の閣僚が教育行政を行なっていく。で、それに対しまして国民は厳重な監督の目をもってもう選挙の際に裁断を下すというのが私は筋道であると考えている次第でございます。従いまして、私は教育行政の問題に関しましては、これはできるだけ世の中の理解を深めて、そうして十分な御批判を仰いで参らなければならぬと考えているのでありますが、制度の問題といたしましては、これはあくまでもやはりある程度はこの問題の本質をとらえて、節度の問題でありまして、私はその最後の締めくくりをつけるのはやはり国民の監督だと考えております。ですから、あくまでもこの教育における政党支配を禁ずるというようなのは、政党の私利というような考え方、政治宣伝の場合などに教育を使っちゃなりませんし、そういう偏向を取り入れちやならない。そういうふうな考え方でよい教育を行うということを政党政治の中において大いに私は検討をし、その政党内閣の閣僚は、そういう意味でやはり教育行政に大いなる関心を持ってやるということが筋道なので、どうもその点に関して、何か政党が教育のことを考えちゃいけないのだというようになったら、私はむしろ筋は違うのだと考えます。
  267. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ちょっと関連して。
  268. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 関連ですか。
  269. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 はい。私は、ただいま松永委員岸内閣の文教政策の動向について、本質的に非常にいい質問をしていると思うのです。で、文部大臣の御答弁を承わっておって、私、理解しかねる点があるから承わるのですが、私は、文部大臣は尊敬している政治家の一人なんですがね。あなたが吉田内閣の当時に、遺家族援護資金の問題で、お灯明料という言葉で当時の古首相と対決された記憶が私、まざまざとよみがえるのですが、ところが、先般の内閣の改造で、あなたは厚生大臣から文部大臣にかわれた。それで何か私は、橋本文政という新しい何かのニュアンスを持ったものが聞けるだろうと思ったのですが、何も出てこないわけなんですね、今の答弁を聞いていると。政党内閣ですから、自民党政権が続いている以上は、灘尾さんがやろうが、橋本さんがやろうが、変わらないというものでも私はないと思う。それは、灘尾さんは優秀な人でよくやられましたけれども、当時、日本の教育界が混乱したことは事実です。これはあなた方、日教組が悪い、先生方が悪いというかもしれないが、文部行政の最高責任者としての文部大臣に責任がある。灘尾文部大臣は、昨年末、ああいう形で岸さんと対決してやめられた。これは明らかに職場放棄ですね。穏やかでない私は行為だと思う。それであなたは文部大臣になられた。私は非常な関心を持って見守っているんです。ということは、あなたはわが国の画期的な国民年金に手をつけたわけです。その国民年金に関する法案が今や国会に出されようというときに厚生大臣のいすを去って文部大臣に移られたわけです。大臣であればどのポストでもいいというわけのものじゃないと思うのです、政治家の信念としてはね。あなたか、ああいう国民年金なり社会保険の改正を目前にして文部大臣のいすにかわったということは、何かやはり私は、同じ自民党政権の中でも、正本の文教について橋本色というものを出そうという抱負経輪があって移ったものだと思うのです。そういう立場から私観察しているんですが、先般、自教組とも一回お会いになったというのは、私、一つの現われかと見ているんですが、盛んに松永委員が文教政策の動向という本質的なものに触れてお伺いしているんですが、変った答弁がないことは私はとても不満なんです。今度の参議院の選挙直後に内閣改造があるのですが、今度また岸さんが、橋本さん、今度は自治庁長官の方どうだろうか、といえば、自治庁長官に移っていくようなものでもないと思うのですね。私が、だからこの際に松永委員答弁に答えられるに当って承わりたい点は、国民年令とか、あるいは社会保険の改正を前にして、あえてあなたが文教行政の最高責任者としておかわりになったので何か決意があられると思う。それをあわせお答えいただくとともに、過去の一本の文教政策の反省の上に立って松永委員が本質的なことを熱心に質問をしているのですから、もうちょっと実のある答弁を一つお願いしたいと思う。その点お答え願いたい。
  270. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 私、文部大臣に就任をいたしまして、至らぬものではありますが、文部行政については渾身やつて参りたいと考えております。文教委員会の方でおもにいろいろなお話をいしたしましたが、文教の行政は非常に広範な問題で、あり、しかも、ほんとうにこれが国家百年の大計に通ずる、そのどこに落ちがあってもならない総体的な考慮が必要でありますが、その中においても特に強く主眼点を置かなければならぬのは、義務教育の充実と科学の基礎研究の充実というものを特に当面重点に置いていかなくちゃならぬと考えている次第でありますが、ただいまお話の問題は、特に、教育総体でありますが、義務教育の非常に重要なものに触れて参るわけであります。この点につきましては、これは私はただ逃げ口上で申しているとかなんとかいうことでなしに、私が真剣に、戦後どうもいろいろな議論の中に、明治憲法下におきまする天皇の大権で教育行政が行われていたときと、それからその後新憲法下において、衆参両院とも真剣にやはり選挙を通じて国民の監督下に事が行われるようになっております時期との間に、ほんとうに国民の感じというものが割り切れておらないための私は問題が非常に多くあると思うのでございます。私自身は、民主主義の政治というものはやはり政治を通じて監督が行われるのであって、従いまして、憲法なり教育基本法なりというもの、これも民選の議会を通じてできた法律でありますが、この法律の本旨に逸脱をしてはなりませんけれども、その本旨の範囲内においては、文部大臣が基本的な教育課程を定めます、それからそれに基きましていろいろな点で指導、助言、援助を行います、それで教育委員会を通じて実施をいたしまするということにつきましては、私はもっと文部省自身としてフランクに、おおらかな気持でむしろ積極的にやはり事を立案し、そしてその実施を求めて、国内からはそれに対して意見があれば、これをよくあつちこっちで聞いて消化して、次の段階において、またそれを改良、実施していくということが私筋だと考えておるのであります。ただいま私の申し上げましたのは、基本的にそういうふうな考え方からいたしまして、私はどうも戦後、むしろ何というか、教育の問題については何か文部省が手を触れるといけないような、おっかなびっくりで、はれものにさわるような態度はむしろ間違いである。憲法、教育基本法の精神の中で教育行政が行われるという点においては、むしろ国民の十分な監督が行われてるのだ、そういう面について監督してもらっているのだということについての意識を十分持ちながら、与えられた職務の範囲内においては積極的にやはり物を考えていかなければならぬのだ。それについては、また新たな目でいろいろな批判が行われていくだろうということでありまして、私はいろいろな戦後の教育の改革の問題等に関しましても、さような考え方で積極的に私は行なって参りたいと考えておるわけであります。先ほどもお話がございましたが、新年度の大きな問題でございまする新教育課程の問題等につきましても、これは過去において、学力調査等で調べた結果、十分学者等とも相談をとたしまして新しい教育課程をやっておりますので、こういうふうな問題については、もう努めてできるだけ積極的に理解を求めながら、協力を求めながら実施をいたして参りたいと考えておる次第でございます。おのずから内閣の中においても、人のやりょうでいろいろ違うかもしれません。教育の基本の方針というものは、あまりむやみに変る筋のものでもありませんし、ただいま申しましたことを私としては固く信じて、総体のバランスを誤まらない中で義務教育の充実ということに特に重点を置いて、教育行政をやって参りたいと考えております。
  271. 高田なほ子

    高田なほ子君 関連して。教育行政の問題が今出ましたから一言だけ関連して質問させていただきたいのですが、教育基本法の精神に沿ってこれを忠実に積極的にやっていくという決意を今御表明になったわけでありますが、二月二十六日、教育長協議会は十一項目にわたり要望書を文部省に出しています。私の関知する限りにおいては、この十一項目は教育長協議会の総意で出したような印象が与えられておりますが、そもそも教育長の職務の限界は、これは「教育委員会の指揮監督の下に、教育委員会の権限に属するすべての事務をつかさどる。」と規定してある通りに、教育委員会の指揮監督のもとに行われなければならない。従って、教育長協議会の結論というものは、全国の教育委員会が決定的に出した結論というものが教育長協議会の結論でなければならないはずだ。ところが、この十一項目は、私も付近の数県を調べたのでありますが、教育委員会の何の結論にもなっておらない。真剣な討論もかわされておらない。そういうものが教育長協議会の結論として文部省、すなわち政府に正式な形で申し入れられておる。これは明らかに教育長の職務権限を逸脱した行為であって、教育長と文部省との関連あるいは教育委員会との関連というものが、これが中央集権の方向に行く危険性を多分一に持っている実態ではないかと思う。  第二の問題は、この十一項目の内容の問題、すなわち組合に対して専従の制限に関する立法措置を要求している。特に組合専従の立法措置という内容が、若干組合活動そのものの、これに干渉するという憲法に違反の疑いのある内容すらも述べられておるわけです。もちろん、このことについて政府が立法措置をするかしないかということは、これは今後の問題でしょうと思いますが、伝えられるところによると、すでに文部省はこの組合の専従制限の問題について立法の準備がされているとも一面伝えられている。それを合法化するために、この教育長協議会がこういう形の申し入れをして、あたかも、全国民あるいは、全国の教育委員会がかくのごときことを要望しているのだから、これにこたえてしかじか云々というような形をとらせるために、こういうような工作が続けられたのじゃないかという疑念を持たざるを得ない。これではせっかく文部大臣が教育の中央集権を廃して、あくまでも地方の自主性にのっとった教育行政を積極的に行いたいと思っても、こういうような運営のあり方であっては、これはあなたの精神に沿わない方向に行くのではないかと思う。従いまして、私は以上の質問に対して、文部大臣のただいまの御答弁に基く具体的なこの問題に対する見解をただしておきたいと思う。
  272. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 教育長協議会は、地方の教育委員会で教育長として仕事をやっている人たちの集まりてありまして、これはやはり十分その意義を認めて参らなければならぬと思うておりますけれども、しかし、教育長協議会で教育に関するいろいろな問題に実際当っておりまするから、そこへ出て参ります意見というものに十分耳を傾けるつもりでございますが、しかしこれは、教育長としての集まりの上に出て参りました意見でございまて、文部省といたしましては、それを聞いて参考にはいたしますが、どうするということを直ちに右から左にきめるわけではございません。ことに教育長協議会の意見が、それぞれの教育委員会の皆さんに御了承される意見であるかどうかということについては、これは十分お話のありましたように気をつけてみなくちゃならぬところでありまして、私聞いたところによりますると、教育長協議会の意見は、大体教育委員長の会議の了承を得ておるというふうに私は聞いて、おる次第でございます。  なお、十分この教育長協議会の意見それがそれぞれの教育委員会で十分練られた上でやるかどうかということについては、私の方も気をつけてみようと考えております。なお、そこに出ました意見に対して文部省がどう措置するかということでありますが、これは格別今日意見をきめておりません。で、御指摘のございました専従職員の問題につきましても、これを法律的にどうこうするということをまだきめているわけじゃございません。私はむやみに何もかも法律できめることがいいこととは思っておりませんけれども、ただ、私の率直な感じで申しますると、とにかくやはり学校の先生というのは、子供にとっても大事な先生でありまするので、この先生の身上のことを考えるという立場にある方が、むしろ数年も続けてやはり教室を離れるというのは異常なんでありまして、私は、法律的に規制するとかなんとかいうようなことを抜きにいたしまして、やはり学校の先生はあまり長く教場をあけないで適当に学校に帰っていただきたいものと、率直に考えております。
  273. 松永忠二

    ○松永忠二君 今の御答弁についての意見があるわけでありますが、これはまた後にいたしまして、先ほど大臣が答弁されたことは、これは非常に危険なというか、考え方だと思うのであります。つまり、政党の大臣がやっていたって、その政党は人民が支持してくれているし、またそのやり方が悪ければ支持してもらえなくなるから、いいじゃないか、見張りをしている人があるじゃないか、こういう考え方なのであります。こういうことになれば、それでは逆に支持を失えば逆なものが出てきて、またその考えていることをやるということになれば、またひっくり返るというようなことになるのであります。それではいけないから、そこで初めて教育の問題については政党支配というもののらち外に置いて考えていくべきではないかというので、もうすでに教育委員という人事院に似通ったものを作っていく方がいいとか、あるいは中央教育委員会というようなものを作る方がよいとかいういろいろな意見が出てくると思う。私は、あなたのその御意見は最も危険なものであって、そういうものを避けるために、やはり中央教育の行政機構について一考を要すべき時期だと思うのであります。ただ、しかし、時間もそういうことをやっておりますとありませんので……。  現在ある機構の中でも、私は、こういう教育の中央集権的支配や政治支配を排除しようとするならば、活用し得る機関があると思う。それは最も重要なものの中に、いろいろな審議機関があるが、中にも中央教育審議会だと思うのであります。ところが、この中央教育審議会が果してこれだけ全国的に混乱を起した勤評のときに何の一体役割を果したか、何の一体中央教育審議会が役割を果したかということを考えてみたときに、やはり私は、中央教育審議会の役割というものが果し得ないこのやり方では、こういうふうな点についてのいわゆる機構としての活用も十分できないではないかと私たちは思うのであります。これはその権限と構成を調べてみると、非常に問題があるわけであります。文部大臣の諮問を受けない限りは調査審議あるいは建議もできないということから、勤評問題等についても積極的な建議ができなかったと思うのであります。  そこで、まず権限についで考えますならば、これと類似の外国の事例を考えてみても、フランスあたりの教育高等評議会というようなものは、文部大臣が重大な改正を試みようとするときには必ず諮問する。激しい政情の中で教育行政の一貫性を保つことができているのは、この教育高等評議会の力に待つところが大きいのであります。イギリスの中央助言委員会というのは、諮問に答申するだけではなしに、進んで報告する権利を持っております。大臣の職務執行を牽制する役目を持っているのであります。理事会の運営について、国会に報告するところの義務を有しているのであります。国内についていろいろな機関の持っている審議会について私も調べてみましたが、特に社会保障制度審議会のごときは、こういう問題について国会提出するように、法案を提出するように、総理大臣に勧告もできるし、あるいは総理大臣関係大臣に書面で助言もできる。あるいは内閣総理大臣関係大臣に、社会保障に関する企画、立法等について、あらかじめ審議会の意思を求めなければできないというようなことがあるのであります。観光事業審議会よりも権限が少いのであります。  こういう権限について、やはり中央教育審議会に権限を与えていくべきではないかと思います。たまたま、中央教育審議会は、すでに全員三月十一日で任期切れであります。新たに人選をするのでありますけれども、この際一つ権限について検討するということが私は必要だと思うのでありますけれども、この点についての大臣の意向を聞きたいわけであります。
  274. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 中央教育審議会は、現在の規定でたしか積極的に建議をする権能はあると思うのです。で、やはりこの制度の立て方の問題もございますが、運用の問題が私ども非常に大切だと思うのであります。ただいま御指摘のございましたように、社会保障制度審議会のお話がございましたが、これも私は、厚生大臣を二度やりまして、その間に非常な有益な示唆も受けましたし、仕事の実施の上でのやはり助けにもなったのであります。中央教育審議会のあり方ということにつきましても、これは私もよほど考えなければならぬ点があるのじゃないかと思いますが、今回の国会の問題といたしましては、法律制度を改める時間もございませんし、それからまた、事実法律制度の問題といたしましては、建議権能もあるはずでありますので、私はあれはあれでいいのじゃないか。具体的な運営の方法につきましては、ただいままとまってどうという結論もございませんけれども、御趣旨を体して十分考えてみたいと思います。
  275. 松永忠二

    ○松永忠二君 これは今個々の点は省くわけでありますが、第二十六条に「文部大臣の諮問に応じて教育、学術又は文化に関する基本的な重要施策について調査審議し、及びこれらの事項に関して文部大臣に建議する。」ということがあって、諮問に応じるということは全部にかかっているので、私はいまだかつて中央教育審議会が積極的に建議をしたことを一つも知っておらないのであります。  そこで、なお構成の問題でありますけれども、現在の中央教育審議会は、人格高潔、広くかつ高い識見を有する者二十人以内ということになっております。ところが、フランスあたりについて調べてみれば、これは教育関係行政者若干名を除くほかは、学者、教育者だけであります。イギリスの中央助言委員会は大学の教授、学校長、産業関係の経営者、労働組合の代表であります。社会保障制度審議会については、申すまでもなく、各方面の人が入っているのであります。日本教育学会という教育者の——教育の学会の代表をこの中に入れてほしいということは、長年の日本教育学会の主張であるのであります。しかもなおかつ、この中には労働者の代表は一名も入っておらないのであります。私は、やはりこういう構成を改めていくべきである、この任命の際にこういう問題について考慮を払うべきだと思うが、この点については大臣はどうお考えでありますか。    〔委員長退席、理事小柳牧衞君着席〕
  276. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) これはまあ特定的な団体代表をとるという建前はとっておりますれども、御承知の通り、教育者は、大学、高等学校、中学校、国公立、私立等を加えまして、かなり混淆して入っておるわけであります。今後におきましても、これの中にはやはり学者、教育者を主体に考えて参るつもりでございまして、お話のありました点を十分考慮してありますが、特定の団体代表をとるというふうにきめることは、今のところは考えておりません。
  277. 松永忠二

    ○松永忠二君 中央教育審議会については、やはり検討すべきだと私たちは思うのです。  そこで、なおここで特に私は検討を要しなければできないというものは、教育内容について、これは極力いわゆる権力統制や党派の支配から守られていくということが、特に私は必要だと思うのでありますが、そこで、そういうために、実は教育課程審議会というものが設けられているわけであります。この教育課程審議会というものは、すでに昭和三十二年の九月に任期が切れておるのであります。現在はそのままになって、これは任期が一年でありますから、全然ないのであります。こういうふうなことは一体許さるべきものであるのかどうか。文部省設置法にも、特に教育内容についての教育課程審議会などは重要な位置を占めておるのでありますが、これが任期が切れてもそのままにおくというようなやり方で、果して審議会というものが一体正しく運用されていくものかどうか、こういう点について一つお聞かせを願いたいと思います。
  278. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 教育課程審議会は任期二年でありまして、まだ任期中だそうでございます。
  279. 松永忠二

    ○松永忠二君 これはどこからそう言うのですか。この四条に「関係各庁の職員以外の者のうちから任命された委員の任期は、一年とし、その欠員が生じた場合の補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。」というのが、これが教育課程審議会令にあるのであります。これはいつ改まったのでありますか。
  280. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 教育課程審議会の委員は、昭和三十二年の九月に任命いたしました。二年と私ども考えております。一応今ここに、手元に政令がございませんけれども……。
  281. 松永忠二

    ○松永忠二君 この点は明確に一年というふうに規定をされているので、そうすると、二年だからまだ任期が切れていない。一年で任期が切れていたということになると、これは重要な問題だと私は思うのです。これは別途調べて、後ほどまた一つ質問をしたいと思うわけであります。  そこで、実は教育内容というものを政党支配や官僚統制から守るという意味で、教育課程審議会があるのでありますけれども、この教育課程審議会に諮って、いろいろな教育内容を決定をするのでありますが、この教育課程審議会の答申というものは非常に簡単なのであります。たとえば今後の社会科の改訂の問題については、ここに一、二、三、四とほんのわずかの答申があるのでありますが、この答申を受けて、実は指導要領というものを文部省が作るのであります。文部省の初中局がこれを作るのであります。しかも、作った指導要領は、国家基準だから、法的な拘束力があるというのであります。しかも、指導要領の中に出ている事柄は、教科書の検定の基準の中の絶対条件、必要条件であるのであります。そうなって参りますと、学校教育の内容を実際上決定する力を持っているのは文部省の初中局にあるといわなければできないと私は思うのであります。簡単な答申を受けて、なおかつ、この答申は必ずしも守らなければできないという法的な拘束はないのであります。この簡単な答申を受けて、これを初中局が学習指導要領を作り、それを法的拘束力ありと断定し、しかもそれが教科書の検定の基準になっているということになりまするならば、私たちはあまりに初中局の権限というものが大き過ぎはしないか、こういうふうなことが国家統制になりはしないかと、私たちは憂えているのでありますけれども、この点について大臣の御意見を聞きたいと思うのであります。
  282. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) ただいまお話のございました点につきましては、具体的な審議につきましては、なおいろいろな手続がございますので、政府委員の方からさらに答弁をいたさせますが、この教育課程審議会において、御承知のような教育者の方々にお集まりを願いまして、御審議を願って、基本線の御答申を願い、それに従いまして、さらに別のやはりこの審議会に付議していろいろ相談しました結果を、初中局でまとめるようにいたしておる次第でございます。この過程におきましては、もうなかなかもって、初中局の役人だけで教育の教科書の内容等の問題はできませんので、十分心して、学者、教育者の方々の御参加を願い、御審議を願って作っておる次第でございます。なお、この上とも十分に御指摘の点に留意をいたして参りたいと思います。  具体的な手続につきまして、政府委員からさらに御説明を……。
  283. 松永忠二

    ○松永忠二君 よろしいです。こまかいお話を聞いても、承知もしておりますし……。  そこで、私はなおお尋ねしたいのは、こういうふうに初中局というのが非常に大きな権限を認められているということは、実はこれが非常に暫定的であるという、そういうことであるのであります。それからまた、作った学習指導要領というものは基準であって、一つの参考だというようなことから、そういうものを暫定的に初中局に作らせるというふうに法律がきめてあったのであります。そういうことから、初中局がこういう権限を持ったのであります。今度の高等学校の学習指導要領を作るのでありますけれども、義務教育の小中学校についてそういうことをやるというならまだしもであるのに、高等学校についても同様な権限を実は持っているのであります。こういう権限を許したのは、先ほど申しましたように、これが暫定的であるということ、それは文部省の設置法の付則の中に、初等中等教育局においては、当分の間、学習指導要領を作成するものとする。また、すでに改めてしまった学校教育法施行規則の付則八十一条の二には、この省令は、別に学校の教育過程、設備及び編成の基準に関して規定する法律が定められるまで、暫定的に効力を有するものとする。そうしてこれまた改めてしまった学校教育法施行規則の二十五条に、小学校の教育課程については、学習指導要領の基準による。基準ということであるのであります。しかも、その第二十四条には、小学校の教科、国語、社会等についても基準とするという言葉が明確に出ているのであります。教科についても基準ということになり、当然小学校の教育課程は学習指導要領の基準だ。そうして学習指導要領についての基準の説明については、今までこれは学習指導要領は試案である、試みの案であるというふうにして、しかも、その一般編には、学習指導要領は学校が指導計画を立てこれを展開する際に参考にすべき重要な事項を示唆しょうとしたものである、学習指導要領は手引き書として使うものであり、学習指導、要領を参考にしてということになるのであります。こういうふうに暫定的で、あり、なおかつ参考の資料であるということをもって、私は、初中局がこの学習指導要領を作る権限を持ち、それを教科書の検定の一つの基準とするに至っていると私たちは思うのでありますけれども、これは全く暫定的の措置としてなされたものであり、しかも、これは一つの参考として学習指導要領を考えていたことによって、初等中等教育局がこれを作ることができるように権限をきめたのだと私は考えておるのでありますけれども、これについて一体どういうふうにお考えになるのでありますか。
  284. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 戦後の教育制度は、いろいろな変革を経ながらだんだんに落ち着いて、一つのコースができつつあるわけでございます。教育行政のあり方については、今日こういう形を、御承知の通りの形をとっておるわけでありますが、なおなお今後いろいろに検討いたしまして、間違いのない公正な方向にいくように努力検討をいたして参りたいと思いますが、今日のところでは、この学習指導要領の作成、これを基礎として教育を願うということについては、今日とっておりますところが、戦後今までの過程から見まして、よろしいと考えておる次第でございます。なお、こういう行き方につきまして、なおなおお話のような点につきましては心して反省をいたして参りたいと思います。
  285. 松永忠二

    ○松永忠二君 私は、またあとから説明を聞くのであります。ところが、今度は文部省はこれをこういうふうにしてしまったのであります。先ほどの、暫定的に効力を有するものであるという、それを削ってしまったのであります。そうして先ほどの教科についてもこれを基準とするというふうに書き、教育課程は学習指導要領の基準によるという、これを全部削ってしまったのであります。そうして新たに第二十四条にはどういうことを書いてきたかというと、「小学校の教育課程は、国語、社会、算数、理科」云々「並びに道徳、特別教育活動及び学校行事等によって編成するものとする。」と、こういうふうに書き、「別表第一に定める授業時数を下ってはならない。」、下る場合には、市町村立の学校については都道府県の教育委員会に届けなければできないというふうに改めたのであります。そうして、なおかつ教育課程の基準として、第二十五条には(教育課程の基準として文部大臣が別に公示する小学校学習指導要領によるものとする。」と、こういうふうに改めてしまったのであります。暫定的という、そういうことも削除をしてしまった。そうして今申し上げますように、「別表に定める授業時数を下ってはならない。」。基準ではありません。「下ってはならない。」、下るときには、監督権もないのに、市町村立の学校については都道府県の教育委員会に届けなければできないと、こういうふうに改めたのであります。  イギリスのごときは、法律によって定められている一般的な手続の規則についても一々これを議会に出して、そうしてこれを批判を受けるようになっているのであります。その根本の法律である学校教育法の法律は一つも改まっておらないのに、規則を勝手気ままに改めて、そうして公示したから学習指導要領は法的拘束力があるというような言い方をするということになりますならば、文部省設置法にありますところの第五条の二「文部省は、その権限の行使に当って、法律に別段の定がある場合を除いては、行政上及び運営上の監督を行わないものとする。」ということにも、私は違反をしていると思うのであります。  こういう一体、根本の法律である学校教育法が何ら改められないのに、それに基く学校教育法施行規則をどんどん改めて、そうしてこれを公示するものについては「学習指導要領によるものとする」などというようなこういう一体やり方をするということは、許されるべきことであるのかどうか。一体、これについて、法律が改まらないのに規則を勝手気ままに変えて、そうしてその規則によって学習指導要領は公示したものだから拘束力があるなどという、こういう一体やり方が果して妥当なのかどうか、できるのかどうなのかということを、大臣にお伺いをしたいのであります。
  286. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 戦後の教育につきましては、非常な大変革をしましただけに、十分な自信のなかった部分もあり、検討を要する部分もあり、いろいろ変化をしてきておるわけであります。従いまして、暫定的と考えられている部分においてずっとやって参って、恒久化していいのじゃないかという点については恒久化をしている部分もあるし、また改めている部分もあるのでございまして、私は、お話のございました点につきましては、やはり法律の定められた趣旨の範囲内におきまして内容を検討いたして参るということは、それ自身間違っていることと考えておりません。ただ、事柄が妥当であるかどうかということにつきましては、これはもうその当時も十分考えましたと思いますが、今後におきましても十分やはり検討はして参らなければならないと思っております。
  287. 松永忠二

    ○松永忠二君 時間もありませんので、最後にお伺いをするのでありますが、そこで、一体文部省は、教育課程というものを文部省が作る権限があるのかどうか。それから、教育課程審議会のようなものこそ、私は文部省の外側にこれを置いて、そうして教育内容についてはその決定権というものを、文部大臣の指名する者あるいはその他の学術会議などの推薦する者などによって教育課程審議会を作って、そうしてこの党派的支配から排除をしていく必要があると思うのでありますが、この教育課程審議会を改めていくことについて、なお文部省に学校教育課程を編成する権利があるかどうかということについて、お尋ねをしたいのであります。
  288. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 教育課程を編成する権能があるものと考えております。で、これによりまして新教育課程が定められておるのでございます。  なお、お話のございました点につきましては、これは教育のあり方の問題としてきわめて大事でございまするから、常につつしんで誤まりのないようにして参らなければなりませんけれども、やはり最終的には、いろいろな点を勘案いたしまして、そうして憲法、教育基本法の精神をくみながら、やはり教育課程自身につきましては文部大臣が定めて示していくということが必要でもあり、その権能は定められておるものと考えております。
  289. 松永忠二

    ○松永忠二君 教育課程の編成をする権利は文部省にはありません。この点については後ほどよく調べて、訂正をしていただきたいと思うのであります。  なお、教育課程審議会の任期が二年だということについては、一年だというふうに知っておりますので、この点の誤まりも訂正をしていただきたいと思うのです。  そこで、この問題はあとに延したいと思うので、法務大臣にお聞きをしたいのであります。非常に時間が短かくなりましたので、簡潔にお尋ねをするのでありますが、刑務所の刑務作業というものを官用主義に重点を置いて運営するように改めなければできないということが、矯正審議会の答申で昭和三十三年の十二月十三日に法務大臣に答申されているわけでありますが、これを一体法務大臣はどういうふうに処理されるお考えですか。
  290. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) いわゆる官用主義についてのお尋ねでございますが、実はそれに直接お答えいたします前に、きわめて簡単に概略申し上げたいと思うのでありますが、現在刑務作業に従事しております者の総計は五万八千人あるわけでございます。そのうちの、刑務作業として適当と思われる有用作業という御承知の言葉がございますが、出所いたしましてから役に立つような仕事とでも申したらいいかと思いますが、有用作業と、刑務所自体の受益作業に従事しておる者が、約三万五千名あるわけでございます。ところが、その他に軽作業と申す、いわゆる風船作りその他のものが相当数、約二万名余りおるわけでございますが、この中には実は精神薄弱者その他が相当部分を占めているわけでございます。  さて、全体の状況がそういうわけでございますが、御承知のように、刑務作業につきましては、大ざっぱに申しましても、歳出と歳入のバランスが非常にとれていないわけでございまして、教育刑の目的を達する上から申しましても、それから作業の収入をあげる面から申しましても、それから受刑者に対して賞与金を交付して出所のときに何がしかでも役に立ててやりたいというような配慮から、もう少しこの刑務作業全体について抜本的な対策が必要である、かように考えているわけであります。ところが、ただいま御指摘の審議会の答申にもありますように、刑務所に適するような作業であって、しかも受注者が確定しておりまして、今申しましたような目的に沿いまするようなためには、やはり国とか公共団体とか、あるいはそれに準ずるようなところの発注者に対する注文を受注するということが最も適当であろうと考えておるわけでございまして、たまたま審議会の答申もさような趣旨になっておりますので、この点につきましては、今後各方面の協力を得まして、その審議会答申の線に沿うように努力をいたしたいと思っておるわけであります。
  291. 松永忠二

    ○松永忠二君 その努力をしていただくということはわかったの、ありますが、今お話しのように、刑務作業について非常に問題点があるわりであります。現実に官公庁の物件費は、昭和三十三年の予算で二百五十七億であります。刑務所の作業の収入は二十四億であります。で、刑務所の作業で部内で七%使い、民需が七三%であるのでありますから、これはこの宜用主義を閣議で決定をするなり、あるいは以前には法律もすでに出てきたのでありますが、法律を出すというようなことを実施をされるならば、これは確実に行われるというと、現実には、今お話しになったように、刑務所に関係の職員が、技能者の人たちが仕出をみずから探し歩き、しかも刑務所に入っている人たちは非常な不適当な軽作業をやっているのであります。こういうようなことを考えてみましたときに、こういうものこそ私は自由主義経済の悪さを露骨に現わしたものだというふうに思っているのであります。現に刑務所が紙の機械を一つ入れ、あるいは革を縫う機械を一つ入れれば、それが直ちに民間の方から非常な圧力を受けて、実はそういう仕事に非常に困難を感じているのであります。そこで大臣になおお尋ねするのでありますが、これについては早急にとにかく閣議決定をするとか、あるいは再度法律案を提出するとかということを考えていられるのかどうか。  なお、昭和二十四年に労働省との間で協定をされた受刑者の工事事業場への就労に関する協定事項というのがあって、これがまた非常に拘束力を与えているのであります。こういうものについては改めていく用意があるのかどうかということをお尋ねするのであります。
  292. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 今お尋ねがございましたように、実は昭和二十五年と記憶いたしますが、賞用主義を法律で規定したいということで、当時政府が立案をいたしまして国会にも提出したわけでございますが、ただいまお話しの中にもございましたように、非常にこれには複雑な関係がございまして、たとえば防衛庁その他の関係にいたしましても、仕事をとれば相当のものはあるかと思うのでありますけれども、同時に、これは中小企業その他の民間の正常な企業を圧迫するようであっては困る。それからまた、刑務所の実態から申しまして、刑期が非常に御承知のように短かい者もあれば長い者もあり、しょっちゅう出入りがございますから、あまり恒久的なそういう高い程度の技術訓練を要するものには適しないというようなこともございまして、実は率直に申しまして、ただいまのところ、法律でこれを画一的に規定することはちょっと無理ではなかろうかと、私実は考えているのでありますが、しかし、先ほどお答えいたしましたように、原則はあくまで官用主義、ことにしっかりした発注者の継続的な発注が必要でございますから、どうしてもやはり大口の需要者を官庁方面に求めたいということで、実は今回の三十四年度の予算でも、御指摘のように、少いのでございますが、実は三十三年度に比べますと、作業を多くし、約二億余の増収をはかることにいたしております。これなども実際そういう面が推進しなければそれだけの収入増はできないわけでございまして、この点についてはあらためてわれわれとしても努力を新たにしつつあるようなわけでございます。  それから、労働省との協定の問題にお尋ねがございましたが、これらの点も、今申しましたような考え方から、改善すべきものは改善したい、こういうふうに考えておりますが、まだこまかい点についての成案を得るには至っておりません。
  293. 松永忠二

    ○松永忠二君 官用主義をやろうとすれば、防衛庁があれだけの予算を使って実はやっておるのであります。また、官庁があれだけのいろんな備品やあるいは用紙を使っているのであります。これはやろうとすれば直ちにでも私はできることだろうと思うのであります。それをやれば、現実に非常によい作業が行われることができるために、能率も上るのであります。作業の賞与金のごときも、大体出所をするときに平均千六十二円であります。一カ月大体百七十円であります。一日六円です。そういう状態の中で、これを出所したときに更生資金として持っていくということが、どうしても今後の対策の上に必要だと私たちは思うのであります。  しかも、受刑者の出所して後の五ヵ年間の再入率というものは、大正年間が一〇%であるのに、昭和二十六年ごろから三四・八%出所した後の再入者が出てきているのであります。しかも、その在所したときに職業訓練を終了した者の再犯の受刑状態というものは、職業訓練を受けた者が一四・八%であるのに、受けなかった者は二一・四%であります。二十五才未満の者には最も効力が実はあるのであります。受刑者の職業補導費のごときは百九十一万円であります。要求の十分の一に削られているのが現状であるのであります。出てから補導援護に三億数千万円の金を使うよりも、やはり刑務所にいる間に職業補導を十分にし、しかる賞与金をためて出所のときに更生の資金とするというようなことをやることこそ、私は、現在におけるこれらの人たちに対する更生の方策として最も実行すべき問題であると思うのであります。しかも、これは、やろうと思えばきょうでも直ちに実はできるのであります。こういうことが現実に行われないというところに今の自由主義経済の悪さもあるし、また、いろいろな業者と結んだいろいろな活動に影響されていることだと私は思う。刑務所に収容されている人は、こういうことを主張する何らの力もないのであります。私は、やはり直ちにこの官用主義を実行して、そうして職業補導を充実して、そして受刑者の作業賞与金を十分出していくべきだと思うのであります。これは時間もありませんので私は申し上げないのでありまするが、少年院についても同様であります。少年院のごときは、その職業補導の原材料費が一年間五百三十時間であります。三百日として、一日に一時間四十分しかないのであります。この少年院の人たちは、実際には五時間を希望しているのであります。しかも、刑務所においての、御承知のように、四十八時間働らかなければできないという、法律が、規定を設けておきながら、紙の袋を張らせて、しかも作業をいたずらにだらだらやらせるという中でこういう仕事が事実上行われていることを考えてみたときに、青少年の犯罪とか何とかという対策を云々するけれども、できることを政府みずからが実施するということなくして、いたずらにそういうことをただ言うだけでは、私は解決をしないと思うので、この問題について十分御意向をただし、また、御決意を聞きたいと思う。本日は十分な時間もありませんが、最後に、この問題については、法務大臣が責任を持って実施をしていくということについての、御決意を一つ披瀝を願いたいと思うのであります。
  294. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 先ほど来申し上げておりまするように、原則的な考え方は全然私も御同感でございます。で、その点は不十分であるというおしかりを受けるかと思いまするが、三十四年度の予算編成の際におきましても、相当これは考えてもらいましたわけでありまして、たとえば刑務所の作業関係において、歳出予算の面でもたしか二億程度は増額してもらっておりまするが、これはもう、主として、というよりは、全部が職業関係の作業を活発にするという面に向けられるわけでございます。ただ、申すまでもないところでありますが、    〔理事小柳牧衞君退席、委員長着席〕 この問題は、ただ単に経済的な数字の面だけでは解決されない問題がございまして、先ほど申しましたように、刑期の関係もあり、それから大体性格破綻的な、こういうまともな仕事には向かない者も相当多くございまするので、その辺のところを勘考いたしながら、今からでもできることというお話がございましたが、今からできることをやるのでございますが、冒頭に申しましたように、なおこの点についで、御趣旨については全然御同感でございますから、大いに努力を新んにいたしたいと思います。
  295. 松永忠二

    ○松永忠二君 終ります。
  296. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 松永委員質疑は終了いたしました。   —————————————
  297. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 次に山田節男君の質疑に入ります。山出委員質疑のうち、外務大臣、郵政大臣及び電電公社総裁に対する分は、都合により明日に行うことといたします。
  298. 山田節男

    ○山田節男君 私はまず第一に文部大臣に、日本の言語政策について御意見を承わりたいと思います。  申すまでもなく、日本のわれわれの言葉というものは——語彙、すなわち言葉の上におきましても、あるいは文字の上からいたしましても非常に混乱をいたしておる、この文字にいたしましても、あるいは言葉にいたしましても、要するに、自己の意思を伝達する、あるいは他人の意思をこれを理解するという一つの手段であります。従って、文字なり言葉というものはできるだけ簡素に、また、できるだけ正確に伝達し理解するようなものでなくてはならないということは申すまでもない。従いまして、文教の府である文部省といたしましても、この点につきましてはっとに意を用いられておるということは、占領軍政下でありましたが、国語審議会なりあるいは国語研究所を設けられて、その道の達識の士を集めて、日本の言語政策というものに対していろいろ政策の研究をしておられることはわかるのであります。しかし、こういうような今日までの文部省の努力にかかわらず、なるほど漢字におきましては当用漢字の制限というようなことが着々実行されておりますけれども、しかし今日、ことにわれわれ日本の文化の向上のためには、言葉と文字というものが非常なハンディキャップをなしておるということはこれは疑う余地がございません。これはわれわれがじかに参って驚嘆いたしましたことは、この漢字の祖国である中共におきまして、少くとも前には私どもは中共の本なりあるいは新聞を読みますというと、文字でその意味がわかることができたのでありますが、今日の中共は非常に漢字を簡略にいたしまして、とてもわれわれ読むことができないほどに簡略になっております。そうしてしかも、中共の人民日報を見ますと、次第にローマ字化しておる、横書きにするというようにやってきておるのであります。そういう点から申しますというと、これは今日、文部省におきまして、日本の言語政策に対しましてどうも努力が足りないのじゃないかと思うのであります。  まず、質問の順序といたしまして、先ほども申し上げましたように、この文部省の外郭機関と申しますか、直属機関として国語研究所なり国語審議会というものを設けたのでありますが、これが果して具体的にそういう言語政策上におきまして今日どういう方向に文部省の政策を立てるべく努力といいますか、具体的な例を引いて一つ御説明を願いたいと思います。
  299. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 言語政策の問題はきわめて重要でありますし、戦後相当の決心で発足いたしましたにもかかわらず、その後の推移がいささか意に満たないものがあるということは私も実は考えております。国字、国語の簡素化、そうして当用漢字、新かなづかい等十分に簡素化いたしますと同時に、それだけのものをすぐに覚えて、それで覚えられる範囲内で教育して覚えて、そうして正確な国字、国語を話すように、それをさらに簡略化していくように平素より努めるということは非常に大事なことだと思います。ただいま御指摘のありました国語審議会、国語研究所の問題は、これも私就任以来日が浅いので、まだ検討は十分でございませんけれども、国語研究所自体は、これはやはり研究機関としては相当な仕事をいたしているようでありまして、ただ国語研究所で研究されました結果というものを十分活用する仕組みと、多少熱意に欠けているようなきらいがあるのではないかと私は考えているのでございます。で、なおこの点につきましては、先般来国語政策のあり方について、私も多少身を入れて検討をいたしているのでありますが、活を入れて参りたいと思っております。  ただ、このついでに私申し上げたいと思いますが、戦後やはり新かなづかい、当用漢字を使い、横書きの奨励をすると言いながら、途中でやはり多少改革の機運がにぶくなって参りましたのは、どうしてもやはり、書いた言葉と話した言葉を一致させるという方向への努力をやりまする間には、国字、国語の簡素化等、やはり新しい語彙を作って使っていくという努力が必要であると思いまするので、これは国語研究所のあり方や、国語審議会のあり方を検討いたしますると同時に、言論界その他と連携をいたしまして、もう少し新しい置きかえの語彙の研究に熱を入れていく必要があるんじゃないか、そういうふうに考えております。
  300. 山田節男

    ○山田節男君 どうも私、そういうただいまの文部大臣の御答弁のようなニュアンスのお言葉を受けるんじゃないかと心配いたしましたので、実は質問をすることになり、また心配しているわけでありますが、私、分けて御質問申し上げますが、まず第一、文字でございますが、御承知のように漢字を制限し、またできるならばかたかなを、あるいはひらがなを使おう。これは電報においてはかたかなを使っておる、またその他業務上もかたかなを使っていることが多いのであります。  そこで、私お尋ねを申し上げますことは、一体、将来日本のわれわれの使う文字というものが、漢字とひらがな、かたかな、この三つでずうっと進んでいくのが文部省の根本方針かどうか。それから、これは戦後におきましては、ローマ字でございますが、ローマ字も、これも小学校、中学校の過程で教えているのでございます。それで、ローマ字化するということについて、文部省というものは一体どういうようなものをお考えになっているのか。特に、私なぜそういうことを申し上げるかと申しますと、中共がああして漢字を非常に簡素化いたしまして、制限して、そうして後にはローマナイズしていこうということは、これは大臣も御承知だろうと思いますけれども、今日、電子工学を利用いたしまして、今のようなタイプライターを手でやるのじゃなくいたしまして、口で言えばそれが文字になる、あるいは口で日本語を話せばそれが英語にも、ドイツ語にも翻訳できるようなものがすでに今日できている。ところが、これは漢字では、理論から申しますと、これはできないことはないけれども、機械が非常に複雑になる。だから、中共は将来どうしてもローマ字化していかなければ、そういう文明の利器と申しまするか、そういうものが使えない。であるから、できるだけ早い機会にこの中国語をローマナイズしていく、こういうように言っているのであります。これは日本におきましても、われわれも同じ運命にあると思うのであります。でありますから、私の個人の意見といたしましては、むしろこのローマナイズしていくという方面に次第に移行していくのが、今後の科学技術、ことにこの言葉を文字化する、あるいは向うに伝達する、こういう場合におきましても、中国におきましてはローマ字が一番いい、こういうことになりました。そういうような意味からも、私は日本のこの文字というものが、将来どういう方に移行すべきか、そういうことを科学的に研究するのが国語研究所であり、あるいは国語審議会の使命であるように私は思うのでありますが、ただいまの大臣の御答弁では、非常に消極的である。何ら——まあ何らと申しては大へん失礼でありますけれども、われわれが高く評価すべきものが今日生まれていないということは、私非常に遺憾に思うのでありますが、この文字というものに対しまして、将来一体、ひらがな、かたかな、漢字、それからローマ字、こういうものを一体どういうように整理なさる御方針か、この点を承わりたいと思います。
  301. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 私は、こう考えております。ローマ字を使うか、かなを使うか、そのかなを使う場合にも、かたかなを使うか、ひらがなを使うかということにつきましては、これはまあ今日決定いたしてもおりませんし、それから、しいて私は今日決定する必要のないものと考えております。で、新しい学習指導要領につきましても、現実にローマ字があちこちに使われておりまして、そうして子供たちが義務教育過程においてローマ字を読みこなせるようにすることは、国民教育の面にぜひ必要と思いまするので、新しい教育課程においては、ローマ字を義務的に教え込むようにして、どこかにふやしておるわけであります。  で、国字、国語政策の結論として私は大切なことは、しいて音標文字としてローマ字を使うか、かなを使うかということで大論争を今日やりますることよりも、いわゆるこの漢字の熟語というものに非常に苦労をして、聞いただけではなかなかわからないようなものが多いということを、話し言葉でわかる国字、国語という方向に持っていく。つまり、漢字というものの使用をできるだけ制限をいたしまして、そうして音標文字でわかるように急速に努力をして参るということが、国字、国語の政策の基本として私は大切なことだと、実は考えておるわけでございます。  で、国語研究所の問題、国語審議会の問題につきましても、私はそれだけの国字、国語の改良の前提方針ということは、これはもう当然の方向といたしまして、そのために、そういう基本方策をただ議論して、これがいけない、いけないということを毎日研究所の中で言っていてもしようがない。その方向に向いまして、私は現実の、やはりこの現代語の変化という方向に、もっと具体的な努力をした方がいいと、私実は考えておる次第でございまして、山田委員は非常に消極的だと仰せられたのでありますが、私はそうでないのであります。つまり、ローマ字を使うか、かなを使うかというふうなことをきめてかかるより、漢字というものをできるだけ制限をして、話し言葉でわかる国語というものをどんどん伸ばして参る。そのための具体的な、やはりいろいろな面での改良の仕事というものを、国語審議会なり、国語研究所なりでやってもらいたいと私は考えております。
  302. 山田節男

    ○山田節男君 ただいまの、私のこの文字に関する質問に関しまして、話し言葉、言語、語彙について、兼ねて御答弁になっておるのでありますが、この言葉でありますが、御承知のように、日本の、われわれの話しておる言葉というものは、いわゆる漢字がやはり入りまして、いろいろ名詞なり、あるいは形容詞、こういうようなものもすべて漢語を持って、音で——つまり目で見る、目で見てわかるような文字にわれわれはなれているのであります。ですから、見ればわかるけれども、聞いていては、非常にアクセントが同じような語彙がありまして、なかなかある場合に判断しかねるとか、あるいは誤解を招くとか、こういう意味から申しましても、日本のこの語彙の整理ということは非常に私は重要なことだと思う。こういう点につきましても、私は文部省が、今話し言葉を次第に、いわゆる耳で聞いてよく区別のつくような、たとえば「かんこう」と申しましても、観光事業、見物する観光事業もありましょうし、あるいは従来のいい労働慣行、そういう慣行にもとれるというような工合で、アクセントが同じであって、耳で聞いていく場合は、大体前後の文章でわかると申しますが、そうでない場合もある。そういう不正確な語彙というものはやはり整理しなければならぬ。それがために文部省は二つの機関を持っておる。これに対するある程度の回答というものは具体的にわれわれに示さなければならない。それが小学校教育にいたしましても中学校教育にいたしましても、義務教育に対しましてはこれは教科課程に組まれてこなければならない。そういう点につきまして、私は、非常に文部省が消極的である。むしろ最近では、昔の習字を復活するとか、あるいはローマ字を教えることにつきましても時間を次第に制限してくるというようなことも実は私聞くのであります。そういったような、当然文字あるいは言葉の進歩のためには整理しなければならぬ大体の方向がある。私から申しますれば、むしろ逆行しているというように感ずるのであります。ただいま言葉の問題について御答弁がございましたが、時間もありませんから、これ以上私は申しませんが、もう少し文部省はそういうことに積極的にやるべきだ。私の理解するところでは、国語審議会あるいは国語研究所はむしろ時代逆行的な反動的な傾向が現われている。これは一々事例をここで申し上げませんけれども、これは、非常に文部省がそういうような方向にあるということは、むしろ日本のわれわれの文化——文字、言葉というわれわれの思想表現、伝達の表現をいたずらに混乱のまま」に放置するということはまことに私は残念だと思うのです。  大臣に対しましては、最後に横書きの問題であります。これは内閣の通達によりましても、官庁等におきましてはできるだけ——できるだけじゃなくて、横書きをすべしというように通達が出ているのであります。しかし、今日官庁におきまして横書きを実施しているものはきわめて少い。ございますけれども、きわめて少い。こういうような事態に対しまして、文部大臣は一体どういうようにお考えになるか内閣の通達にもかんがみまして横書きを奨励するような方策をとらるべきが当然だと思う。この点につきましての御意見を伺いたい。
  303. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 国語、国字政策の将来の方向については、先ほど申し上げましたが、当面の問題といたしまして、当用漢字、新かなづかいを十分に使うようにいたします。横書きを実施をいたしますることは、その前提としてぜひやっていかなければならぬものだと実は考えております。ただ、はなはだ申しわけないのでありますが、私自身前に厚生省を担当しておりまして、前からいささか国字、国語の問題には自分も心がけておるものですから、横書きを実施をしようといたしたのでありますが、府県庁とのいろいろな申請書の関係でありまするとか、いろいろな関係がありまして、実行してみますとなかなかめんどうで、私が申しましても事務がなかなか動かぬというような状況であります。具体的にやってみますと、存外骨の折れるものでありますが、それだけに国語政策の主管官庁であります文部省としてよほど熱を入れてもらわなければならぬと思いますので、かの横書きの実施に関しましては、あらためて内閣部内で注意を喚起する、実施をはかる方向に努力をして参りたいと思っております。
  304. 山田節男

    ○山田節男君 時間の関係がございますから、文部大臣に対する質問は、これで終ります。  首都圏と申しますが、大東京と申しますか、この将来の都市計画、ことに交通網の整備等に関しまして、皇居の問題その他宮内庁所管について御質問いたしたいと思います。  まず第一に建設大臣にお伺いいたしたいのでありますが、今日この東京都の人口がすでに九百万になんなんといたしておりまして、ここ三年たちますれば、もう千万になるということは、これはもうはとんど確実な事実であります。従いまして、政府としても、この首都圏整備法に基きまして、建設大臣が首都圏整備委員会委員長となられまして、これに対するいろいろ施策を研究しておられますし、また次第に具体化していくこともわかるけれども、ことにこの最近の東京の交通網の非常に混乱して無政府主義的な状態にかんがみまして、この皇居の膨大な地域というものが、東京都の交通の幹線の整備において、重大な私は位置を占めていると思うのであります。過日発表になりました首都圏の整備計画の作成実施報告等も私拝見いたしました。皇居を、この地区を、交通網の整備のためにいかに使うかという具体的なマスター・プランというものはないのありますか。建設大臣としては、この里居を、交通網の緩和のために、あの地区を、地下なり、地上あるいは高架線で使うというような案があるのか、どうかこれをまず聞かせていただきたいと思います。
  305. 遠藤三郎

    国務大臣(遠藤三郎君) お尋ねのように、東京都は最近非常に人口が集中して参りまして、しかも自動車交通が非常に輻湊して参りまして、そこで別途自動車交通の輻湊を緩和するために、首都圏の高速自動車道路整備の法案を提案をしているのでありますが、大体首都内に大きくいいまして、八路線の高速自動車道路を設置すべく、三十四年度に投融資も合せて三十五億円の予算で着手をすることに相なっているのでございます。皇居の問題は大きく見ますと、皇居を中心にいたしまして、各方面に道路が出ているわけであります。まあいわば大きな意味のローターリーのような形になっております。首都圏の高速自動車道路の計画におきましても、五反田からくる道路、それから渋谷から都心へくる道路、同時に新宿からくる道路と三つの高速道路が三宅坂のあの高い所へ参りまして、あそこからずっとこの竹橋を通って都心部の方へ行く、こういう計画になっております。宮城の取扱いについては、まだ計画は持っておらないのであります。
  306. 山田節男

    ○山田節男君 次は、この首都圏の整備委員会におきましては、この皇居を現在のままにあそこへ皇居を定めておいた方がいいかどうかということにつきましては、すでに審議をされたかどうか、承わりたいと思います。
  307. 遠藤三郎

    国務大臣(遠藤三郎君) 皇居を移転するかどうかという問題につきまして、いろいろ議論があることも承知をしております。しかし、首都圏委員会におきましては、まだ正面からその問題を取り上げて論議をいたしておりません。
  308. 山田節男

    ○山田節男君 この件につきましては、今回、皇居造営審議会法が提案されまして、過日衆議院をすでに通過いたしまして、参議院にも本審査で回されることになっておるのでありますから、これはこの審議会がいろいろ専門的にやられるだろうと思うのでありますが、宮内庁長官にちょっとお伺いしたいのでありますけれども、私、今日までこれは新聞等によっての印象でございますが、宮内庁の長官は、皇居を現状のままにしておきたい、こういう御意見であるやに拝聴するのでありますが、この点に関しての御所見をまず承わりたいと思います。
  309. 宇佐美毅

    説明員(宇佐美毅君) 皇居は、宮殿のほとんど全部が戦災によって烏有に帰しまして十数年たったわけでございますが、漸次来賓の日本に参りますものもふえまするし、各種の点からいたしまして、皇居を再建するということを考える時期にきておるのではないかと存ずる次第でございますが、その際に、よほどよく慎重に考究すべき点が多々あるだろうと思うのでございます。従って、ただいままでの経過から見まして、いろいろなその位置でございますとか、建築の様式でありますとか、また、公けの儀式等が行われまする宮殿のほかに、天皇陛下のお住居という問題もございまして、また、その再建につきましては相当多額の経費も要するであろうと思われまするし、過去におきましても、国民の熱心な方々からしばしは献金という問題も出まして、数年前政府といたしまして、その時期のくるまで待つようにという談話を発表したこともございます。各種の問題がございまして、やはりここに審議会を作りまして十分な御審議を経て、その基本的な方針をきめるべきではないかと考え、今度審議会設置に関する法案の御審議を願うようにいたしておるわけでございます。ただ、この二年間におきまして、将来の計画に対する調査費を御審議をいただきまして調査をいたして参、たわけでございますが、宮内庁といたしまして、各種の点から研究いたしまして、ただいまの皇居の中に建てるのが一番いいんじゃないかというふうな考え方になっておるわけでございます。ただ、ただいまございます約三十六万坪のお堀の中の全部を税状通りでいいかどうかということにつきましては、その一部の開放なり等につきましては十分検討すべきものではないかというふうに考えておる次第でございます。
  310. 山田節男

    ○山田節男君 宇佐美宮内庁長官は現状維持と申しますか、皇居の所在は現状がいいという御答弁のように伺うのですが、で、この皇居も、今日ヨーロッパにおきまする王国と申しますか、王室制度を持っているのは非常に少うございますが、イギリスあるいはオランダ、ベルジャム、デンマーク、スエーデン、ノールウェー、こういうところも実は昨年ですか、回られたはずであります。これによって私どもが感じますることは、今日の新しい憲法のもとにおきましては、天皇は国の象徴であり、また、これは国民の統合のシンボル、しかもそのシンボルであるという地位は、主権在民の国民の総意に基いている。だから、もし総意に基かなければ天皇の地位はない。これは非常に重要な民主憲法の根本規定でありまして、ということは宮内庁の、ことに宮内庁の諸君は今日の国民の統合の象徴である天皇ということにつきましては、できるだけ天皇、皇后両陛下または皇族を、国民に親近感を持たせて、いわゆる敬愛の念をほんとうに持たせるようにしなければならない、いわゆるヨーロッパの王国におきましては、スエーデンのストックホルムにいたしましても、あの宮殿を日曜品には見せる、見物させるというくらいにしているのであります。で、どうも天皇、皇后両陛下に対して国民に親近感を持たせるという努力が、どうも私は宮内庁の諸君の措置が悪いのではないかという、妨害というと語弊がありますが、そういう点について、非常に私は等閑視と申しまするか、むしろこれがますます国民と天皇の間が隔たっていくような傾向があります。これは非常に私はおそろしく思うのであります。従って、この皇居の問題につきましても、できるならばヨーロッパ諸国のように、町のまん中に、宮内庁のごときは丸ビルにあってもいいんです。むしろその方が国会なり政府関係において非常にやりやすい。それがやはりあそこに置きたいというそういう観念が、先ほど申し上げました憲法第一条の天皇の地位、いわゆる国民のシンボルであるという、これをあなたたちが助成していかなくちゃならぬのでありますけれども、それが希薄になるということになっているのではないかと私は憂えるのであります。これは私は意見になりますから、これ以上は申し上げません。   次に、これに関しまして皇族特に天皇、皇后両陛下、皇太子殿下の警備の問題であります。最近非常に皇太子の御通過路線の警戒が厳重になりました。青山の御所から皇居赤坂見付にかけて、皇太子がお通りになるときには二十メートルごとに巡査を数名出している。これはまことにぎょうぎょうしさに驚くのであります。何でもあの麻布のテニスコートへいらっしゃつても、路線には警官を配置する、こういうことは宮内庁が、長官がそういうことを警察庁に頼まれるのかどうか。これは先ほど申し上げましたように、せっかく国民の皇室に対する親近感というものが、こういうことによって非常に私は妨害されていると思うのでありますが、これは宮内庁長官の意思で警察庁に最近のああいう厳重な警備をされるように依頼されたのかどうか、これをお伺いしたい。
  311. 宇佐美毅

    説明員(宇佐美毅君) 天皇、皇后両陛下を初め、皇太子殿下、皇族方の警備につきましては、申し上げるまでもなく、その警備は警察庁の所管に属しております。これが指揮あるいはその他の権限はないのであります。しかしながら、ただいまもるるお述べになりました通り、その実際の動きというものを国民がどうとるかということは今影響が大きいことでございまして、慎重にわれわれとしても考えなければならぬところでございます。従って、私どもの立場からそういった問題については、警察の方にも十分希望を申し上げているわけでございますが、警備を厳重にしてほしいというようなことを申し上げたことはまずないと思います。ただいまお述べになりました通りに、公式の場合には別といたしまして、私的にただいま御指摘になりましたあるいはテニスとか映画等にお出ましのときは、なるべく一般と変らないように願いたいということをお願いいたしまして、警察の方においてもそのたびに慎重に検討を続けられて、だんだんその方向に向いていると存じます。まあ警備と申しまするよりも、最近の東京都の自動車の激増、交通の非常な激烈さから、警察としてもずいぶん神経をとがらしていろいろ努力をしていただくことは、われわれとしても感謝にたえないのでありますが、方針といたしましては、ただいま申し上げましたように、公私をなるべくはっきり区別していくようにお願いをしておるわけでございまして、特に皇居の直接の警備に当りまする皇宮警察とは最近は毎月連絡会議を持ちまして、些細なことも遠慮なく申して、そういったふうに、いかめしい感じのないようにわれわれの立場としてはいろいろ申し上げておるわけでございます。
  312. 山田節男

    ○山田節男君 この件について、警察庁の長官お見えになっていますか。——ただいまのように、宮内庁としてはむしろ迷惑なような御発言でありますが、公私を区別せず警護をするのが、今日の憲法からいって、それから国民の側の親近感のためにいけないと思うのですね。どうしてああいうことを最近急におやりになるか、理由を承わりたい。
  313. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 天皇皇后両陛下、皇太子殿下等の御警衛につきましては、先ほどから山田さんのお話しになりましたような趣旨において、私どもも警衛に任ずるように指導いたしておるわけでございます。戦前におきましては御承知のように、ほとんどもっぱらと申してもよろしいほど御身辺の御安泰ということを主眼として警衛に当っておったわけでございますが、戦後の新憲法のもとにおきまして、ただいまお話にありましたように、皇室との親近感を深める、また歓送迎者等の気持よく御送迎申し上げられるように整理をするということに、御身辺の御安泰ということはもちろんのことでございますが、そういう雑踏の整理であるとか、あるいは交通の整理であるとかいうことに非常な力を入れて御警衛に当っておるわけでございます。また、従いまして非常にいかつい警衛にわたるということのないように、あらゆる機会にそういう指導をいたして、おるわけでございます。従いまして最近、各地方の行幸啓その他におきましても、大体御趣旨に沿ったような行き方でいっておると私は考えておるわけでございます。ただ、非常に天皇皇后両陛下の行幸啓また皇太子殿下の行啓等に当りましては、非常に多くの民衆がこれを奉送迎申し上げる、その中にはなかなか秩序立たないような状況も起りますので、そういうときの事故防止ということに非常に力を入れざるを得ない。そのために、かなり多くの警察官を動員しなきゃならぬというような事態も間々あるわけでございますが、根本の考え方としましては、ただいま宮内庁長官のお話しになりましたお考えと同様の気持を持って私ども事に当っておるつもりでございます。ただいまお話の具体例につきましては、私とくと承知いたしておりませんが、皇太子殿下におかれて御婚約後非常にまた民衆の親近感というものがさらに深まって参りまして、交通整理、雑踏整理等に非常に人員を要するというような状況が出ておるのではないかと思いますが、警視庁等においてそういう点も十分に注意してやっておることと私は考えております。
  314. 山田節男

    ○山田節男君 時間の関係上省略いたしますが、希望として、公式の場合はもちろんです。これはやはり皇族、皇太子、天皇皇后両陛下の公式の場合は、これはもう一つのセレモニー、儀式でありますから、また威厳のためになくちゃならぬが、そうじゃない場合、もう少し警護を、私服を使うとか、目立たないようにしなければならぬ、その警護の仕方が依然として昔のようになってきている。この点を御注意願いたいと思います。  それから次には、時間がございませんので急ぎますが、例の東海道の……。
  315. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 今、山田委員が皇室関係質疑をされて、質問事項が変るようですから関連して一つ承わりたいと思うのです。皇居造営審議会が今度設けられて十分検討されるということですが、皇居は、交通の問題だけでこの問題を考えるべきでもないと思いますけれども、しかし、住宅公団の総裁を初め相当の識者が専門的な立場からいろいろと見解を発表されておりますね。私は、その交通という面を全く閑却しては都市計画も立たないと思うのです。かりに皇居を現在の位置にお建てになるとすれば、少くともトンネルをあけるとか何とかしなければ、空から見た場合に、この大東京のまん中に、ああいうロータリーみたいなものがあったのでは、これは将来どうにもならないと思うのですね。従って、この皇居を移転するかしないかということと、交通という問題、それは十分関連して考えなくちゃならぬと思うのですが、その点、建設大臣はどう考えられておるか。  それから、私は住宅公団の総裁等の意見もいろいろ書面で読んだわけですが、あの国家の象徴としての天皇陛下がお住居が位置が変ることによってどうだというわけでもないと思うのです。だから、もし両陛下がお好きであれば、大宮御所に今度東宮御所が建築されるわけですが、両陛下がお好きであったら大宮御所の内部に御一緒にお建てして今の皇居を移すという考え方も私はあるのじゃないかと思う。しかし、今の御文庫の位置が非常に両陛下のお気に召してお好きだとあらは、そういうわけにもいかぬかと思うのですけれども、そういう点、私はあわせて考えてしかるべきじゃないか。皇居の問題については、そういう考えを持っているのですが、建設大臣と宮内庁長官答弁をいただきたいと思うのです。  大蔵大臣おられると思うのですが、あわせて承わりたい点は、皇居造営等の問題が起ったときに、牧野国務大臣の時代から、皇居は日本が国際社会に復帰していろいろ儀式があるし、外国使臣にも拝謁されると、今のままではどうも不十分だから皇居を造営しなければならないと、同時にやはり招待外交というか、国際社会に復帰して、国立劇場の一つもないようでは文化国家とし、恥かしいことだ、だから皇居も建設するし、文化国家として国立劇場もよその国に恥かしくないりっぱなものをこしらえたいということを、当時、牧野国務大臣その他の方が盛んに主張されて、御承知のごとく大臣も非常にお骨折りになって、ハレス・ハイツの跡に土地だけきまったわけですが、本年度の予算書を見ますと本格的な予算を計上していないわけですね。この点なんか私は非常に遺憾だと思うのだが、一体大蔵大臣はどういうふうに考えておられるか。牧野国務大臣等は当時、まあ閣僚として皇居造営の問題と国立劇場の問題とは非常に並行的に国民に訴えておったもので、私はこの問題が出るとそれをあわして承わりたいと思うのです。  それから最後に、宮内庁長官に要望として申し上げておきたい点は、さっき山田委員からも指摘されたところですが、私は常々申しているんですが、それは宮内庁の職員は、非常に平均年令が高くて、宮内庁への在職年数が非常に長過ぎる。だから、やはりある程度しゃばの空気をああいう方々に知っていただくために、人事交流を相当やるべきだ。私は、三笠宮とか皇太子殿下など、あるいは清宮様の近代的感覚よりも、はるかに劣った宮内庁の職員が多いのではないかと思う。長官とか次長さんは非常にりっぱな方だと私は敬服いたしておりますが、ある程度何十年も宮内庁に勤めておる方々は、ある程度人事交流をすることが、両陛下並びに皇族の方々にあなた方接せられるだけに、必要だと思う。むしろ殿下の方々の方がよほど近代的センスをお持ちになっておられるんじゃないかと思いますが、その点もあわせて御所見と対策を承わりたいと思います。
  316. 遠藤三郎

    国務大臣(遠藤三郎君) 皇居の、あの地域の道路としての重要性の問題については、今回、皇居造営審議会で、皇居をどこに建設するかという問題について、広範な視野に立っていろいろ検討することになっておりますので、その際に各般の問題を検討して、しかもお示しのように、皇室が全国民の象徴であり、全国民の納得のできるような、きわめて常識的な結論が得られるように、いろいろな問題を同時に検討して参りたい、そういうふうに考えております。
  317. 宇佐美毅

    説明員(宇佐美毅君) ただいま建設大臣がお答えになりました通りに、私どもも、もちろん道路の問題につきましても、よくその方の専門の方の御意見を聞いて、慎重に考えるべきであり、必要な場合におきましては、適当な場所において、あるいは地下道等のことも、技術的にもいくことでありますれば、十分検討すべきことであると考えておるわけであります。その他いろいろな各方面の要請があろうと思いますので、十分各方面の御意見を伺い、専門の方の所見も聞いて、検討の上で進めたいと考える次第であります。また、宮内庁の職員の問題についてお尋ねがございましたが、仰せの通りに、宮内庁の職員の在職の年数は、他の官庁と比べて、相当長くなっております。これはまあ普通の役所と申しますより、一面、皇室という、大きな御家庭という特色もございまして、長く御奉公するという気持に燃えておる人が多いわけであります。しかし一面、今御指摘通り、私どもといたしましても、やはりその中に新しい空気を入れでいくということについてはいろいろ研究もし、各省にもお願いいたしまして、人事の交流を少しずつでございますが、進めつつあるところでございまして、今後におきましても、十分努力をして参りたいと存ずる次第であります。
  318. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 皇居の問題につきましては先ほど来お答えいたして、おりますように、皇居造営審議会の結論が出ることだと期待いたしておる次第であります。国立劇場につきましては、予算の計上が少いというおしかりでございますが、ことしは設計調査費を計上いたしておるのであります。御了承いただきたいと思います。
  319. 山田節男

    ○山田節男君 次に、東海道の国鉄の新幹線の問題でありますが、これもすでに予算には国鉄の新幹線の増設費として三十億円予算に計上しておるのであります。私はこの新幹線を作るというこの決定に至るまでの経過を見まして、なるほど国鉄のことですから、国鉄が新幹線を設けるということはできるでありましょう。しかしながら、少くとも一千数百億の金が要るものを建設するということ、それから今日この文明国におきましては、もう道路が非常にいいのでありますからして、鉄道を建設することはない。中共であるとか、あるいはソ連のシベリア地方であるとかというのは、これは鉄道の建設をやっておりますけれども、そういうような情勢下で、なぜ東京、大阪間を広軌の新幹線を作る必要があるのか。これは、私は時代のセンスを疑ったのであります。しかし、これがすでに既成の事実として、三十億の予算を計上されておるのでありますけれども、これは私はひがみかもしれませんけれども、国鉄はどうも国鉄一家というので、道路が発達し、飛行機あるいまヘリコプター、バスが発達してくると、次第に斜陽の状況になってくる。そこで、ああいったようなとっぴな案を出したんじゃないかと私は思うのでありますが、これはそういうことから私は質問するのでありますが、運輸大臣は、一体こういうことについて、今私が申し上げたような時代錯誤的なものじゃないか。どういう理由でああいうものをお許しになったかということ。それから国鉄総裁には、あの新幹線をお設けになって、ここに建設大臣がおられますが、弾丸道路ができるのであります。ヘリコプターも、今日ヨーロッパにおきましては、五十人くらいの乗客を乗せてタクシーのように、ハリー、ロンドン、ブラッセル、アムステルダムに行っておるのであります。私は航空機等を考えれば、今日の列車が非常に満員であり、あるいは貨物が積滞するとおっしゃいますけれども、われわれの見るところでは、列車も、それは季節によって違いまするけれども、急行列車等を見ましても、一〇〇%というのは少いのであります。どうも私の見るところでは、平均八〇%くらい、貨物も運搬が便利になって、トラックがどんどん庭先にまでこれが食い込んでいる。そういうような状況から見て、果して新幹線をお作りになって、国鉄としてこれが収支償う、すなわちペイするという自信があれは、それを一つこういうことを御決定の場合に、そういう収支の点に自信があるという数字が私は出たに違いないと思います。これにつきまして、これはできれば一つ具体的な例をもって御説明願いたい。  それから建設大臣には、弾丸道路ができるのであります。そういたしますと、これは今日の文明国の道路を見まするというと、鉄道の乗客あるいは貨物を、これは当然道路を使って輸送することになる。そういうところから見まして、なかなか旧式な百キロ前後の列車を走らすというようなことは、道路政策から見て、これは私は非常に疑わしく思うんですが、建設大臣はどういうふうにお考えになっておるか。これは閣僚としてでなく、もっと高い見地からごらんになっての御意見を承わりたい。
  320. 永野護

    国務大臣(永野護君) お答えいたします。東海道新線が時代の趨勢を無視して、突拍手もない計画をしたというふうな御質問でございますが、実は非常に現実に即した計画でございまして、今日の東海道線の貨客の増加の趨勢から申しますと、三十六、七年ごろに、運転の極限である一日百二十回のマキシマムに到達することは非常にはっきり見通されておるのであります。従いまして、今にしてその計画を立てませすと、東海道線は全く麻痺状態になる。これは御指摘の自動車の弾丸道路の建設、あるいは飛行機、ヘリコプターの利用というようなことは、皆計算済みなんでございます。こまかく調査いたしまして、そういうものができましても、乗客は一割、貨物は五分程度のものがその方に転換するのでありまして、大部分はやはり東海道の汽車によるということが、相当詳細に検討いたしました結果、そういう数字が出たのでございます。決してただ無根拠にあの計画をしたものではございません。  そこで、あれだけの膨大な金をかけて、利息を入れますと二千億に近い金でありますが、一体そろばんに合うかどうかという御指摘でございます。そこでこれも詳細に計算を立てまして、三十八年度に、まあ五ヵ年といたしますと、その次の三十九年度からの計画を申し上げますと、三十九年度におきましては収入が五百五十七億五千万円、それに対して支出は、経常費と利息を入れまして二百八十一億八千一万円、結局二百七十五億七千万円の利益になる計算でございます。四十年度が三百億、四十一年度が三百四十七億四千万円、それから四十二年度は三百八十億二千万円、四十三年度は四百十億九千万円、こういうような数字になっておりまして、投下資本に対して約一割の利回りになる計算が出て参るのでございまして、これは精密なる調査をいたしました結果、こういう数字が出て参りましたので、決して引き合わない無謀な計画といえない、こうわれわれは了解しておるのでございます。
  321. 遠藤三郎

    国務大臣(遠藤三郎君) 弾丸列車と高速自動車道路との関係についてのお尋ねでございましたが、実はお尋ねのような点は最も私ども注意深く検討したのでございます。交通関係の各省が集まりまして、あらゆる資料を持ち寄って、しかも再三交通関係の閣僚の懇談会をやりまして、そして高速自動車道路ができましても、なお弾丸列車は必要である。御承知のように長距離の輸送の分については、今日の日本の状況におきましては、道路よりもむしろ列車を利用するのが多いのであります。短距離よりも中距離の輸送は道路の方が非常に多く利用されますけれども、そういうことをこまかく計算し、貨物及び旅客の輸送等を詳細に検討いたしました結果、弾丸列車は絶対に必要である、こういう結論を出しまして、私どももそれに賛成し、これを支持して参ったのであります。
  322. 十河信二

    説明員(十河信二君) 東海道の収支については、もうすでに運輸大臣からお話がありましたから、重ねて申し上げません。あの数字の通りであります。どれくらい過去においてどういう趨勢で増加しておるかということを申し上げますと、昭和二十五、六年は日本の経済の落ちついた年、朝鮮事変のあった前後でありますが、そのときを百として、全国では三十二年度は貨物の輸送量が四割五分増になっております。東海道は八割六分増になっております。こういうふうな状態でありまして、旅客の方で申しますと、全国では四割六分増しておりますが、東海道は五割八分増しておる。先刻、乗車効率のお話がありましたが、世界各国は乗車効率が非常に少いのであります。いいところで四十くらいになっております。日本はこれが七十、八十、今お話のありましたような効率になっております。これは一年間を全部平均しての話であります。季節的には非常な変動があります。あるときは、もうとうていお乗りになることができない、つい三十二年ですか、荷物も送れない、急行列車に乗ろうと思っても乗れないという輸送の隘路の問題が大問題になったというふうな状態であります。昨年、世界銀行の方方がお見えになりました、あるいは外国の交通機関の首脳者が見えました。その当時も、日本の状態を見られまして、日本アメリカあるいはヨーロッパと全然事情が違うということで、世界銀行は御承知の通り、金を貸すことに相当辛いのでありますが、日本の国鉄は、なるほどこれは東海道新幹線が必要であるということを十分御認識になったというふうな状態であります。この東海道は、御承知の通り、全国の幹線中の幹線であります。ここが行き詰まってきますと、全国みんな行き詰まってしまいます。ここで昨年、三十二年度に約二百七、八十億黒字を出しました。東海道線を除きますと、そのほかは全体合せて収支の計数を見ますと、七、八十億の赤字になる。東海道のこのもうけで、他のもうからないところ、しかしながら公共的、国策的にやらなければならぬところをやることができるという状態になっておるのであります。その東海一道が、先刻、大臣からお答えになりましたように、三十六、七年ごろになりますと行き詰まって参りまして、片道百二十回の列車回数がもう限度であります。その限度に全線がほとんど達するのであります。五ヵ年計画で、大都会付近の今日すでに限度に達しておるところを応急に輸送力を増すことを今実施いたしております。しかしながら、三十七、八年になれば、もう全線が行き詰まって、全線が限度に達して、もう列車の増発もできないというふうなことになるのであります。それゆえに急いで建設をしなければならぬという、運輸大臣の設置された幹線調査会の結論が出ておるのであります。そういうような次第で、決してこれは赤字どころでない、実は相当もうかります。ここでもうけて、ほかのもうからないところの必要な施設をやりたい、こう考えておるような次第でございます。
  323. 山田節男

    ○山田節男君 これは運輸大臣、建設大臣、それから国鉄の総裁、非常に数字をあげてもっともらしくおっしゃいますが、私は、道路が五ヵ年計画で完成し、弾丸道路ができた場合に、今の運輸大臣並びに公社の総裁のおっしゃったことが、そういうようにいくことを念願しますけれども、これは多分にまだこの答弁には疑問を持ちます。いずれ分科会で、私もアメリカ、ヨーロッパ二、三カ国のデータを持っておりますから、これでやることにいたします。  時間も、ございませんのではしょりますが、最後に、国際観光事業の振興問題でありますが、申すまでもなく、資源の少い日本、しかも、風光明媚である日本としまして、材料を買い入れて輸出をいたしますれば、日本は低賃金であるというので、いろいろ不買同盟というものが、ボイコットが至るところに起きてくる。でありますから、どうしても貿易外の収入といたしましては、日本のこの風光というものを、これを資源としまして、貿易収入をふやすということは、これは絶対に必要であります。従来これに対して政府も関心を持ってやっておられることはわかるのでありますけれども、来年度の予算においても、国際観光事業費として三億近くのものを計上しておられます。私の特に知りたいと思いますることは、これは国際観光でありますからして、海外に宣伝周知しなくちゃならない。ロンドンに行きましても、ハリに行きましても、ベルリンに行きましても、ソ連はもとより、各国がこれはむしろ国営化したもの、補助金でやっているものもありますが、国営でツーリスト・ビューローを作って宣伝して外客を誘致する、いろんなサービスをしている。これが私は非常に今欠けていると思います。わずか一億二千万ぐらいのところで海外誘致をするとおっしゃいますが、こんなことじゃだめだ。そのことと、それからせっかくこちらへ呼びましても、いや、どろぼうにあうとか、道路は悪いわ、ホテルは便所くさい、いろんなことで、非常にアコモデーション——設備が遅々として進まない。もう一つは、せっかく日本の美しい風光をこわし、スポイルするような下等な広告がある。そういうようなものに対して全然整理をしなくて、ますます悪くなってくる。この国際観光振興の条件であるそれらの重要なものが、今日依然として改まらない。それらにつきまして、国際観光業というものに対して運輸大臣はどういう施策をお持ちになっているか、どうしてああいうような効果が上らないかというと、それから国際観光振興会というものをお作りになっておりまするけれども、これらの活動を見ましても、われわれ海外へ行ってみますというと、なお国際観光事業に対する運輸省の政策が非常に中途半端で、せっかくの取るべきドルなりポントを逃がしてしまうということが多いのであります。これは私が重ねて申し上げますが、国際貿易における貿易外の収入をふやす必要がある。これはスイスにおきましても貿易は赤字でありますけれども、観光事業で貿易外の収入でもって非常な黒字になっておる。日本もやがてそういうような時代が来ると思うのであります。こういう点につきまして、どうも運輸省の政策が徹底を欠き、非常に消極的であると思うのでありますが、この理由なりあるいは将来どうするのだということがございますれば、一つ御所見なり御意見を伺いたい。
  324. 永野護

    国務大臣(永野護君) 山田委員のお説はまことにごもっともでございます。天然資源の少い日本が、どうしてこの小さい領土で九千万という莫大な人口を養っていくかという問題の中で、いわゆるインビジブル・エキスボートの中の最も今おくれておるのが、国際観光事業であると思います。他の国の例を試にあげてみますと、アメリカはこの観光収入を一年に七億八千万ドルあけております。フランスが四億八千九百万ドル、約五億ドルであります。ドイツが四億四千万、ドル、イタリアが三億八千万ドル、カナダが三億六千万ドル、スイスは二億三千万ドル、オーストリアが一億四千六百万ドル、こういうふうに、特に観光地帯という特殊なそういう扱いを受けない国でも、こんな大きな数字をあげておりますのに、この風光明媚な日本がわずか六千五百万ドルというみじめな数字でございます。フランス、イタリア、スイス、オーストリアの観光収入は、それらの国々の外貨収入の第一位を占めているのであります。ところが日本の方は、昭和十一年時代で観光収入は貿易収入の四%でありました。それが今日では、三十三年はそれが二・六%に下っているのであります。従いまして、日本の国際収支のバランスを合わせますために、これからやらなければならない部門の最も多い産業だと、こう考えているのであります。  それにつきまして、一体運輸省がどういうことを考えているかというお尋ねでございますが、まずそれには、第一に海外の宣伝が必要じゃないかという御指摘でございました。これもまことにごもっともでございまして、日本の宣伝は、諸外国の宣伝に比べますと、非常に貧弱でございまして、今二億円足らずの程度で日本はまかなっているのでありますが、フランス、イギリス、イタリア等は、わが国の四倍から五倍ぐらいの宣伝費を使っているのであります。日本は戦前よりも少い海外宣伝事務費なのでございます。きわめて卑近な例でありますけれども、あの宣伝文書でも、日本の今作っております印刷物は、一年に百万部ぐらいでありますが、イギリスは七百五十万部ぐらいの印刷物を海外にばらまいているのでございます。そこでこのおくれを取り戻しますために、本国会日本観光協会という特殊法人を作ることにいたしまして、ただいま申しましたように、海外の宣伝と国内の受け入れ態勢の整備に力をそそぐことにいたしております。これは私どもの最初考えておりました理想に比べますと、実は非常に小さいのでありまして、実に遺憾に存じて、おりますけれども、私ども、少くも目に見える貿易のシエトロに二十億円出すのならば、少くもその半分の十億円ぐらいは出してもらいたいと思ったのでありますけれども、国の全般の財政計画の上から、二億円という、実に最初考えました数字から比べますと非常に小さいところへ予算を押えられまして、仕方がありませんから、とりあえずはその予算の範囲内で、日本観光協会という特殊法人を作る法案を今国会提出いたしている次第であります。でありますから、その働きも、山田委員がお考えになります程度のものには、よほどほど遠いのでありまして、非常に不十分だと思っておりますけれども、それを一粒の種といたしまして、これを育てて、諸外国に劣らない程度の観光収入をあげたい。少くもイギリスの程度まで持っていくことができましたならば、山田委員もすでに御承知の通り、この観光収入は、ほとんど百分の百、売り上げが即利益というような国際収支の関係になるのでありまして、他の貿易を一億伸ばしましても、手取りはその半分になるかその三分の一になるかでありますけれども、観光収入だけは、まるまる日本の所得になって、それが国際貿易の収支に貢献いたすのでございますから、ぜひともこの点には重点を置いた施策をしていただきたい。またわれわれは、それに従事する決心でございます。  だんだん一般の世間の観光事業に対する認識も深まりまして、御承知の通り、観光事業は一種の水商売的扱いを受けておりましたのが、今日ではりっぱな産業としての扱いを受けるようになりましたので、山田委員の御期待になりますような時期の到来も必ずあると、こう楽観しておるのでございます。
  325. 山田節男

    ○山田節男君 明日の質問のために時間を……。これで今日は終ります。
  326. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 山田委員質疑は本日の分はこれで終りました。   —————————————
  327. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 委員の変更がございましたので御報告いたします。  新谷寅三郎君、吉江勝保君、岩沢忠恭君が辞任し、中野文門君、安井謙君、後藤義隆君がそれぞれ選任せられました。   —————————————
  328. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和三十四年度総予算の審査のため、日本銀行総裁山際正道君を明日参考人として出席を求めることに御異議はございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  329. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 御異議ないものとして、さよう取り計らいをいたします。   —————————————
  330. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 次は、田中一君の質疑に入ります。
  331. 田中一

    ○田中一君 三十四年度の予算を通算いたしますと、大体結論的にいうと道路予算であるということに終始される。そこで今まで大体調べてみますと、昭和二十六年が一つの安定期として公共事業はぐっと伸びております。伸びておりますが、三十三年にきめられた新治水五ヵ年計画というものと反対の方向を示しておるという事実が発見されるわけであります。そこでその事実は、これから各公共事業を分担してありますところの役所ごとに指摘していきたい。同時にまたそれらについての大蔵大臣の見解も伺いたい、こう存じます。  御承知のように公共事業費というものが設定されたのは占領軍の命令でございまして、これはむろん当時の事情からして食糧増産ということが主となって、そうしてなおかつ戦後の失業者を救済しようというような両面を持ったところの政策が公共事業費ということになったのでございますけれども、現在ではそれらが一応安定した形ということになりますと、特別に公共事業の一つ一つに重点的な施策が持たれておる。二十八年の災害から、急速に一、二年は災害復旧の事業が伸びたけれども、これまた、この二、三年来災害がないということになりますと、ようやく道路、まあ一時は鳩山さん時代には住宅難で、住宅も落ちつきますと、今度は道路ということになったわけです。ことに、それに付随して港湾の整備ということも出ております。従って、この道路整備の五ヵ年計画というものを予算の面から見ますと、大体においてこれがガソリン税、いわゆる大衆課税によって、公共事業費が行われるということにならざるを得ないのです。これはむろん佐藤さんも御承知の通り、国費の投入というものは、一般財政の投入というものは少い。まあ衆議院でも予算委員会の公聴会で芹澤さんでしたか、まるで二重課税のような形でもって公共事業が行われておるというような御意見も拝聴しておりますが、これらの点につきましては、次々と申し上げますから、一つ御答弁願いたいと思います。  第一に、今申し上げたような三十三年度に策定されましたところの新治水五ヵ年計画、これと本年度の公共事業、それを含ましての公共事業の面でどういう現象が起きているかというので、これは各大臣に御答弁を願いたいと思いますが、三十一年に策定したところの治水五ヵ年計画の現在までの進捗率というものは三三%、それが今日までの状態でございます。そこで三十三年度の分を見ましても、新治水五ヵ年計画で見ましても二三%にすぎません。従ってこの新治水五ヵ年計画というもの、改訂された五ヵ年計画というものは、もはや自主性を失っておる。従ってこの計画そのものは全く絵にかいた計画であって、安全性というものは保たれておらない。こういう工合に考えておりますけれども、その点につきますところの関係大臣、大蔵大臣、建設大臣、農林大臣、運輸大臣等の御見解を伺いたいと思います。
  332. 遠藤三郎

    国務大臣(遠藤三郎君) 治水事業五ヵ年計画についてのお尋ねでございますが、御指摘のように昭和二十八年の大災害を機会に、内閣に大きな治水事業の調査会を設置しまして、そうして基本的な治水事業の構想というものを定めたのでございます。そうしてその基本的な構想のもとに、建設省におきまして、さしあたり五ヵ年計画というものを立てて、そうしてそれを遂行して参りました。この五ヵ年計画は、御指摘のように、財政その他の事情もありまして、なかなか思うように進まなかったことは、はなはだ遺憾に思います。  ただ、しかし、この五ヵ年計画について一言申し上げておきたいのでありますが、あの五ヵ年計画は、建設大臣が建設省の五ヵ年計画といたしまして、建設省が治水事業をやっていく場合の一応の努力の目標を考えておったのであります。あの五ヵ年計画は実は閣議の決定にもなっておりませんし、一応の目標を定めておったのでありまして、その後のだんだんの事業の進行、財政の状況等によって相当大きく変更されて参りました。しかし、こういうことを繰り返しておりましたならば、いつまでたっても治水事業は完璧を期することができない、しいうことで、私は、昨年新しく治水の五ヵ年計画を修正をいたしまして、そうして、この五ヵ年計画は、内閣全体の責任においてこれを実施する、そういう態勢でもって五ヵ年計画を一応提案をいたしました。しかし、いろいろその五ヵ年計画を検討しております間に、山林の砂防の問題等との関連の調整も十分しなければなりません。かつまた、私が考えておりました五ヵ年間に三千五百億円の治水投資をするという問題につきましても、その目標は、年々二千四百億円程度の災害が平均してありますのに対して、この五ヵ年計画の遂行によって年々千億円程度の災害を減少するという目標を掲げて、五ヵ年計画の案を提示したのでありますが、この五ヵ年計画の目標を達成する上におきまして三千五百億円必要であるか、あるいは二千四百億円程度でもって足りるかというような問題についての議論も出て参りました。これは具体的に各河川について調べ上げて、それを積み重ねて、そうして結論を出さなければならぬという事情もありますので、それらの点をもう少し詳細に検討いたしまして、関係各省の連絡をもさらに密接にいたしまして、そうして三十五年度の予算の編成までに内閣において全体の責任を負えるような五ヵ年計画を確立すべく、一応三十四年度におきましては、その五ヵ年計画を保留しておるような次第でございます。ただいま関係各省と相談をいたしまして、だんだん問題になりました点を積み重ねて検討をして、あらゆる面から見る。ことに財政的な裏打ち等についてもはっきりした見通しのつくような五ヵ年計画を定めて、その五ヵ年計画によって今後の治水事業というものを計画的に、しかも年々の財政事情によって動かされないような安定した計画を作るべく、今準備しているような次第でございます。ただ三十四年度の予算におきまして、しからば五ヵ年計画が成立しないのであるから、治水事業は全くネグレクトしておるのではないかというような御議論もあろうかと思いますけれども、この点につきましては三十三年度に比べて四十億円以上の予算の増額をいたしまして、そして非常に急を要する河川等の治水工事については万遺憾なきを期していく。そうして将来永久の大計画については確定した五ヵ年計画に基いて進めていく。こういうような態度をとって参ったのでございます。御了承いただきたいと思います。
  333. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) お尋ねの治山関係のことにつきましてお答えいたします。  農林省所管の治山事業の計画は、三十三年度から三十七年度をめどといたしまして、五ヵ年の計画をいたしたのでございますが、林地の崩壊地三十一万二千ヘクタールを対象にいたしまして、これの三〇%を五ヵ年間で治山施設を完備したい。こういうことになっております。ただいま御審議をいただいております予算におきましては、事業費にしまして民有林治山六十一億円、国有林治山三十二億六千万円、こういうことでございまして、この治山の六十一億、それから国有林関係の三十二億等は建設省の治水関係とも見合った計数でございます。  そういうようなことでございまして、実は多少計画よりは下回っておりますけれども、前年に比較するならば、民有林関係におきましては約一九%の増、国有林関係におきましては一〇%の増になっております。しこうして三十三年度、三十四年度を総計しますると、所定の計画の約三〇%を遂行できる見込みでございます。残年度に  つきましてもこのスピードになお加えまして、そして相当量を加えることによって、初期の第一期の計画は成功し得る見込みをもって努力しておる。こういう関係でございます。
  334. 永野護

    国務大臣(永野護君) 先ほど運輸大臣という御指名があったのでございますが、治山治水に関しまする部門は私どもの所管でございません。
  335. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど建設大臣が非常に率直にお話になりましたこの種の治山計画は、関係省、農林、建設両省を主体にいたしまして計画を樹立しなければならぬことは当然であります。同時に国といたしましては長期経済計画、これに対応するものとしてやはり権威のあるものを作り上げないと、なかなか実施計画は経たないものであります。先ほど建設大臣卒直にその点を御披露いたしております。この権威のある計画を樹立し財政的な裏付がないと、ただ各省のそれぞれの立場からの要望の計画でございますと、なかなか実施が困難だと思います。しかしことしの三十四年度の予算の編成に当りましては、農林、建設両省の計画のうち緊急を要するものをそれぞれ取り上げて、工事を進めることにいたしておるのでございます。御了承をいただきたい。
  336. 田中一

    ○田中一君 今建設大臣は、当時の緒方さんが担当しておったところの治山治水五ヵ年計画ですか、あれは今閣議決定して、ないからそれは希望的な目的であって、昨年の九月に建設省が策定したところの新治水五ヵ年計画、これは閣議決定しておりますか。
  337. 遠藤三郎

    国務大臣(遠藤三郎君) 昭和二十八年の大災害のあとで、緒方副総理が主宰されて治水事業のいろいろな基本策についての検討をいたしました。これは基本的には一兆八千億円程度の投資をする必要があるということをきめたのであります。しかし具体的な実施方策については、予算の許す限りやるということにいたしておったのでありまして、昭和三十年の建設省が五ヵ年計画というものを立てたのでございます。それは一応の目標というような意味で立てておったのでございます。これを私は改定をして昨年新たにほとんど新しい形のようにいたしまして、そうして五ヵ年計画というものを権威のあるものにしたい、単なる努力目標という程度のことでありますと、すぐまた計画がくずれて参りますから、権威のあるものにするという意味で、いろいろと提案をして各方面と交渉しておりましたのでありますが、その結果はもう少し検討する必要があるということであります。従って建設省が昨年提案をしました五ヵ年計画というものはただいま保留しております。そうしてその各方面の検討を終えた上、三十五年度に確定的な案をまとめあげよう、こういう計画でおるのでございます。
  338. 田中一

    ○田中一君 どうも選挙が近付きますと、いろいろな計画を発表する。これは二十八年の大災害から閣内に対策本部を作り、そうしてわれわれもこれに協力をして、いかにして抜本的に治山治水事業を完成するか、いわゆる国民を災害からのがさせるという点で協力したものでございましたけれども、それは、閣議決定していないから単なる目標にすぎない、では三十三年九月、昨年あなたが改定して作られたというところのこの計画も、これまた単なる集約であって、閣議決定もしておらぬ、これまた単なる目標であるということにすぎないと思うのです。そういう根拠のないようなものを示されて、われわれが論議するのははなはだ残念なんです。やはりどこまでも、これこそ岸内閣の治山治水計画の根本方針であるということを示して、われわれ一に、国民の前に示して論議しなければならない。これから今これを中心に私はあなたと一問一答をしても、それは単なる計画に過ぎませんとこう言われたら何にもならない。従ってそこまで言われると私何を言うこともできません。何を申し上げても、それは単なる計画に過ぎません。従って国民の前に大きく言いたいのは、ああしたりっぱな計画はやる意思がないものでございますということがはっきり国民にわかればいいのでございます。二の点についてはこれ以上何も申しません。同じように閣議決定しておらぬものでありますから、あなたおそらくまたこれを追及されると、それは単なる目標でございますと言うに過ぎない小らもう申しません。  次に申し上げたいのは、これは私の次に質疑いたしますところ同僚の委員からも質問があると思いますけれども、本年度の予算、これに相当、公共事業費のうちで繰り越しが非常に多いということです。なかんずく道路公団、住宅金融公庫、それから住宅公団等には相当大幅な繰り延べを示しておる。これはむろん先年法律を改正して、繰り延べも繰り越しもよろしい、それから継続費もよろしいというような措置をとって、おりますけれども、これはまあ単年度事業の遂行というこの原則を、場合によってはやむを得ぬであろうというので、そのような改正がなされたものと思っておりますけれども、本年度の予算を見ますとあまりに多過ぎる。これまたいたずらに膨大な数字を重ねて、国民にこれだけの公共事業をするのでございます、というような意思表示をしているのではなかろうかと思うわけでございます。従って、二十七年度を境として公共工事関係の繰り延べられたもの、予算というものは、年度別に幾らになっているか、これをお示し願いたいと思うのです。
  339. 遠藤三郎

    国務大臣(遠藤三郎君) 私の所管関係について大体のことを申し上げたいと思います。  昨年の繰り延べは御指摘のように非常に多かったのじゃないかと思います。大体道路や河川あわせて公共事業の分が八十五億程度になりました。これはその前年の予算の執行について、非常に神武景気とかいうようなことをいわれておりましたので、ある面におきましては意識的におくらせていくという措置も講じたのでございます。しかし三十三年度におきましては、これまた逆に非常に景気が悪くなってきたというような事情もありまして、公共事業の繰り上げの施行を強硬にやって参りました。従って、三十三年度から三十四年度への繰り越しは、大体二月の末の見通しによりますと二十五億ほどになるだろう、あるいはそれよりも少しふえるかもしれませんが、非常に少くなって参りました。ただお話の道路公団の事業の繰り延べの問題でありますが、これは厳密の意味の繰り越しではございませんが、事実道路公団の事業が非常におくれております。特に名神国道の工事が非常におくれたのであります。これは私ども八方手を尽して工事の促進をいたしましたのでありますが、農地買収に非常にかかりまして、名神国道の用地の買収に対しては非常な困難をいたしました。御承知のように今日におきましては、道路工事そのものは非常に技術も進んでおりますので、急速に進んで参ります。一番困難なものは用地買収でございまして、用地買収に非常に手間をとったために、予算が繰り延べられたような形になっておりますが、その後だんだんに用地買収も進んで参りまして、三十四年度には工事が急速に進むような状況になっております。名神国道の例をあげてみましても、大体百億程度の投資を今度名神国道にやる考えでおりますが、ほぼこれは消化ができる。またそれを目標にして全力を尽して工事の完成をはかりたい、そういうふうに考えている次第でございます。
  340. 田中一

    ○田中一君 これは大蔵大臣に伺いますが、今の繰り延べの明許によって、事業費は幾らでも後年度に繰り越すということになった以上、従来までの単年度事業費の支出という問題は、理由のいかんにかかわらず、毎年々々公共事業の場合に起ることと思います。どうしてこうなったか、これはあなたに聞いてもいかぬかしらぬけれども、どうしてこうなったか、また今後どうするつもりか、それからどっちみち、本年度の予算の説明書を見ましても、はっきりとこれは次年度に繰り延べるのだというような説明もあったように僕は記憶しているのです。国会、国民の前に年度予算を提示しながら、それが初めから繰り越しを認めながらの予算の編成ということはあり得ないのです。これはまたいたずらに事業の大を誇って、どうも選挙の年になるとそういうことを言い出すのですが、これだけやるのだ、これだけやるのだと言っている、事実は仕事はするつもりはないということになるのです。もしほんとうにあなたが真剣にやるならば、かつて旧憲法時代、戦前にあったような継続事業というものを完全に認めて、一貫性ある施策をしなければならぬと思うのです。先ほどの新治水五ヵ年計画にしても、やるつもりないからその場限りの予算を組むということにならざるを得ないのじゃないかと思うのです。そこでこれは予算を編成する担当の佐藤さんの一つ率直な御意見を伺いたいと思います。
  341. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほどの治山治水についてのお話でございましたが、私もお答えした方が誤解がなくていいのじゃないかと思ったのでございますけれども、あえてもう聞かぬとおっしゃるものですから、実は答弁をいたさなかったのであります。  もともと建設省なりあるいは農林省といたしまして、災害の非常に多い日本では、やはり基本的な治山治水計画を立てるべきだという強い主張があります。また政府自身にもそういう考え方を持っているのでございます。しかし御承知のように治山治水といい、あるいは災害復旧といい、いずれもが国費で支弁するわけでございますから、今までの災害を復旧することをまず第一に考えるために、いわゆる治山治水、災害防除のような意味の予算があと回しになってきた、こういう点に非常に予算編成上の難点があったのでございます。しかしながらもうすでに国会におきまして、災害復旧についての基本的な計画が立ちました。あの計画によりまして、もう三十一年災、ことしたしか三十一年災が完成するのじゃないかと思っておりますが、もう古いものがなくなっていわゆる災害復旧の方も一段落ついてきた、こういうことでございますから、今後は治山治水、災害復旧合してのいわゆる治山治水という事業が、今後は計画的に乗り得るような段階になって参ったと思うのでございます。そこで先ほど建設大臣も申しますように、今後は一つ在来の計画を各省合して、一つ権威のあるものを作り上げてみたい。これは閣議決定とかいう形をとるまでもなく、各関係省の間で意見が一致いたしますれば、これを実施に移すこと別にむずかしいわけではございません。その点では先ほど三十五年度以降において特にこの問題と取り組みたい、ということを建設大臣が御披露いたしておりますから、これを御了承願いたいと思うのでございます。  次に繰り越し明許費の予算編成についての問題でございます。ただいまは、御指摘のように継続事業費というふうな計上の仕方をいたしておりませんので、これが問題になるのでございます。そこで繰り越し明許費の予算編成に当りましては、よく性質を勘案いたしまして、この予算に漏れのないように実は編成をいたしているのであります。  そこで問題になります公共事業費であるとか、防衛関係の支出金であるとか、あるいは住宅関係であるとか、こういうようなものは性質上やはり一部は年度をまたがるということは当然考えられる。そういう意味で繰り越し名許費がだんだん正確に数字がなってきておりますことと、御承知のように公共事業費全体の金額がふえて参りますから、いわゆる繰り越し名許費の総予算がふえてきた、こういうことになるのでございます。  ただ予算がふえたということと、ほんとうに繰り越し残が一体どうなっているのかという、その繰り越しがどういうように行われているのかという問題でございますが、三十三年度予算などは、年度途中におきまして予算の完全実施を特に要望いたしまして、そういう意味で先ほど建設大臣が申しましたように、比較的に繰り越しということは少額におさまっているようであります。三十二年度の成績だけ手元に持っておりますが、その三十二年度の実績は、繰り越し明許費、予算総額四千二十二億、これに対しての繰り越し実績は二百七十一億でありまして、予算額に比較しては六%余であります。この点は順次改善されてきておる。田中さんが御指摘になるように、これらの点についての状況はだんだん成績を上げてきておるということが言えるように私は確信をいたしております。
  342. 田中一

    ○田中一君 あなたの答弁もれの、継続費にしたらどうかということについてはどうですか。
  343. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 今日の状況におきましては、この実施について十分の検討をいたしておりますし、なるべく繰り越しはしない方が本筋だと思います。従いまして工事の性質上やむを得ないという程度に考えたいものだと考えておりますから、御指摘のようにただいま変える要はないかと思っております。
  344. 田中一

    ○田中一君 二十七年度を境として、当時は少ない繰り越しであったのを、大幅に今おっしゃった六%も繰り越しておるという現状、これから見て治山治水事業、いわゆる公共事業というものは、単年度の支出では事業が遂行できないということは明らかなんです。だからこれこそ抜本的な施策として、三年なり五年なりの継続事業費というものを認めるような意向はないかどうか、重ねて伺います。
  345. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この点は、災害復旧等につきましては、すでに国会で三・五・二の比率でやれとか、またその他直轄事業について早急に重要なものは二年で完成しろ、こういうことでもございますので、予算の編成上から見ましても、おのずからそのパーセンテージがきまるようでございます。もうすでにその計画が決定されておる今日でございますから、その方法によりたいと思っております。
  346. 田中一

    ○田中一君 この二、三年は災害がないから、あなたはそういうことを言うのです。しかしまた、もしことし災害があれば、これは今言う通り、三年で完成しようというような計画は、今までの例を見てもわかる通り、あなたの方で予算をつけないのです。だから災害のない年こそ治山治水事業を進めていく方が国費の乱費にならないわけです。能率も上るわけなんです。私は見解が違いますけれども、私は少くとも大蔵大臣が国を愛するならば、何も単年度予算では事業の遂行は完全にいかないという事実は、あなたも知っている通りなんです。二十七年度以来のこういう積み重ねたところの繰り延べがあるならば、従ってもう一度あなたに伺いたいのは、そういう災害のない年こそ予算を十分につけて、治山治水をして、国民を災害から救うという方途が望ましいのです。
  347. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 大体、私、田中さんの御意見は実は賛成でございます。昨年は実は災害がないと思って安心していたら、大へんの災害を受けまして、補正予算等組んでいるわけでございますが、この昨年の秋の災害にいたしましても、すでに計画通り今回の補正予算等並びに三十四年度の予算で、まず直轄事業等において五〇%、あるいは六〇%近くの工事が完成できるようになっております。これらの点は大へん仕合せでございます。先ほど御披露いたしましたように、わが国の治山治水は災害復旧に重点を置いてきたが、最近非常に災害復旧の進行度から見まして、その方の負担も楽になって参りますから、今度は治山治水の事業の本格的計画にも乗り出し得るのじゃないかと思うということを申し上げましたが、大体の御意見と大差はないように思っております。  ただ私はこの際に、継続事業、継続事業とおっしゃいますが、これは何と申しましても財政というか、予算の面から見ますとある程度の弾力性は予算につきものでございまして、その弾力性のあるごとに予算の妙味があるのでございますから、この点について私ども苦心しておることも御了承いただきたいと思います。
  348. 田中一

    ○田中一君 では本年度に治水費の伸びは少い、減っておるものもあるという現状から見ても、一番伸びているこの道路整備五ヵ年計画の第二年目になりますね、ことしは。これについて質問いたしますが、私どもきょう建設省からこれこそ三十四年二月二十日に閣議決定の道路整備五ヵ年計画を拝見いたしました。これによりますと大体総額一兆円のうち国の負担するものは八千百億。そこでこの一般財源をこれに投入するもの、これはすべて、本年また値上げの法律案を提案しているガソリン税によってまかなう、ということになっております。で、これを十分調べてみますと、この道路整備五ヵ年計画実施のための、国と地方との財源の負担というもの、これを見ますと、大体国がじかに一般財源から投入するものは、年五億円にすぎないことが明らかになっているわけです。むろん前々国会は通常国会でしたか、当時の池田大蔵大臣は、私はもう目的税としてのガソリン税を反対しておったけれども、今日では目的税としてのガソリン税に賛成でございます、だからこれは一般財源でございます、というような答弁をしておりましたけれども、ガソリン税の増徴というものは相当な見込みを立てておると思いますけれども、もし両院でこれがあなたが希望しているような値上げが実現しなかった場合、この閣議決定の五ヵ年計画は一応財源に不足を生ずることは明らかです。その際には大蔵大臣はどう措置するか。まあこれは仮定の問題です。まだその問題はきまっておりませんけれども、これは一つ伺っておきたいと思う。
  349. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この一兆円予算は、財源とそれから事業計画と両方合せておるのでございますけれども、ただいまいろいろの点についてこうなったらどうなるかというようなお話でございますが、政府といたしましては、もちろん原案が成立することを心から願っておりますので、その方向であえてお答えをしなくてもいいかと思いますが、当然、その財源に不足をきたすようなことがあれば、事業そのものはやれない、これはもう数学的な問題だと思います。
  350. 田中一

    ○田中一君 これはあなたこの計画をごらんになった通り、地方負担と国が直接負担するもの、それからはっきりわかっているのは、御承知のように軽油引取税はどうも値下げになるらしいのです。あなたの要求しているような額にはならぬらしい。これはむろん参議院でも同調するものと思いますが、そこで、これだけの大きな計画をして、地方財源がこれに見合う負担力があるかどうかという点については、これは自治庁から……、お見えになっていると思いますが、これはこの計画に対しては全部をあなた了承して、また地方がそれだけの負担力があるという前提に立って閣議決定されたものだと思いますけれども、その自信のほどと、それから計画を負担し得るという立証をお願いしたいと思うのです。
  351. 青木正

    国務大臣(青木正君) 道路整備五ヵ年計画に伴う地方負担の問題、またそのほかに地方としての単独事業関係もあるわけであります。そこで三十四年度におきまして、私ども財政計画を立てるに当りまして、道路計画並びに単独事業合せまして、地方負担分は六百四十三億ということを予定しておるのであります。そこで、三十三年度に比べまして明年度の増加額は百二億程度ということになるわけであります。この増加額に対しまして、その財源としては、地方道路譲与税、それから軽油引取税及び都市計画の税の一部というものを合せまして、特定財源の増加約八十一億ということになるのでありまして、そのほかにこの直轄事業の負担金の増加額につきましては、御承知のように交付公債をもって充てる、これが二十三億ほどになるわけであります。そういうことで財政計画を立てておるのでありまして、もちろん、今日の地方の単独事業というものは、地方に非常な要望もありますので、なかなか単独事業面におきまして、地方におきまして相当窮屈になるということは考えられるのでありますが、しかし一応の道路五ヵ年計画並びに単独事業というもの、合せまして、いわゆる道路についての行政水準の維持向上というものは達成できるのではないかと、かように考えているわけであります。  なお、軽油引取税の問題でありますが、私どもは、政府が計画いたしましたいわゆる五〇%の増税ということを期待しておるわけであります。ただ、しかし、国会側におきましていろいろ御意見もあるようでありますので、その場合どうなるかという御指摘だと思うのであります。まあかりに五〇%を三〇%にするというようなことになりますと、その結果としてまあ十六億程度のそこに財源の不足ということになるのでありますが、それが自然、単独事業の方に圧縮が加わってくるということも考えられると思うのであります。しかし、全体としまして、五ヵ年間で見ますれば、事業のやりくり等いたしまして、全体としては所期の計画が遂行できると、かように私ども考えております。
  352. 田中一

    ○田中一君 この五ヵ年計画をずっと見て参りますと、大体これは佐藤さん御存じの通り、公団に三十三年度四十五億でしたか、出したのは。それから三十四年度また四十五億出しているのです。そうすると、これはこの計画の中のどこに見合うものであるかどうか。国としてこの道路整備五ヵ年計画全部を通算して五億しか負担しないというようになっておりますけれども、四十五億のうち五億ですね。そうするとあとの八十五億というものはどこからこれを回収しようとするのかですね。
  353. 遠藤三郎

    国務大臣(遠藤三郎君) 道路五ヵ年計画におきまして、有料道路分の投資は大体二千億になります。そのらち道路公団への投資は三十三年度は五億円でございます。五億円を補助金の形で出しまして、三十四年度計画におきましては、四十五億円政府出資の形で出すことになっておるのであります。この政府出資の形で出す目安はどこにあるかと申しますと、御承知のように、有料道路は、一般から料金を取って償還をしていくものでございますから、道路公債その他の利息が非常に高いのであります。利息のない政府の金をつぎ込んで、そして料金を安いところへ持っていかなければならぬ、こういうことが一つの大きなねらいであり、かたがた、道路公団の財政的な基礎を安定させていく。形ばかりで内容が不可能にならぬような、そういう見地からにらみ合せまして、三十四年度におきましては四十五億円の計画を、出資の形でつぎ込むということに計画をしたのでございます。
  354. 田中一

    ○田中一君 三十二年度に予定のガソリン税がとれなかったために、御承知のように一年あとになりますか、三十四年度の揮発油の財源の三十二年度の決算を見ると、徴税額において六億円マイナスになっております、現在。従ってまあことし佐藤さんの言うように、あなたの提案しているものが全部通ればいいけれども、通らぬ場合には相当大きなものが現われてくるわけであります。これも仮定の問題だから、答弁しないと言えばそれまでですけれども、こういうように一種の国民が二重負担するということになるわけです。ガソリン税で有料道路を作る、それはむろん投資の形で出したのだとおっしゃるけれども、結局、目的税的なガソリン税をとっておる。それで作ったものの上を走るたんびに料金をとられるというようなことは、これはあまりけっこうな政策ではなかろうと思います。他の方からくる一般財源、そのものを全部まとめたものならば、これは無利子になりますけれども、増税をして、その上をまた、でき上った場合には通行料をとるなんということは、これはどうも私には納得できない、こう思うのです。そこで、これも仮定の問題だから答弁できないと言うと思いますから、言いませんけれども、いたずらに事業の大を誇っておられて、実質を掘り下げてみれば、あっちにもこっちにも破綻があるということを指摘しなければならぬと思うのです。  で、この地方財政の負担の問題について、私は、こういう不思議な現象があるわけなんですよ。従来ともに交付公債の発行の場合ですね、これはまあいやおうなしにこれを押しつけられるというものなんです。大体、まあ事業をお前の行政区域でもってこれだけやるからこうなるのだという形で、納得の上でもって仕事をするという形をとられるのが普通であろうと思うにかかわらず、現在やっておる行き力というものは、仕事はどんどん、補助金という形で仕事はどんどん進めていって、そうしてあとで交付公債をぽんとぶっつけるというような行き方をしているように見受けられるのです。この点については、そのために地方財政が予算計上できない、年度の予算計上できないというような欠点があるのじゃないかと思うのです。その点についての御見解を伺いたい。
  355. 青木正

    国務大臣(青木正君) 交付公債という制度と申しますか、これが採用せられましたいきさつから考えましても、これは地方の財源不足のためにやむを得ずとった制度であります。従って、この制度それ自体がそもそも変則的なものでありますし、また、御指摘のように、交付公債という形になりますので、県の予算に、予算審議に当りまして、これが表に現われないというようなこともありまして、正しい意味における県の予算編成の数字から見ましても、御指摘のように、私ども変則なあり方であると、かように考えるのであります。また、これについて利子をつけるという問題についても、いろいろ考えなければならぬ問題もお話しの通りであります。  そこで、私どもは、交付公債制度というものは、そのいきさつから見まして、やむを得なかった制度といたしましても、本来の姿から見て望ましい形ではありませんので、できるだけこの制度につきまして検討を加えて直していきたい、できることならば、三十四年度におきましても、交付公債制度について検討を加えて何らかの改善を加えたい、かような考えであったのでありますが、御承知のように本年度いろいろ減税等の関係もあり、さらにまた全般的に国と地方との財源配分の問題もございまして、明年度におきまして根本的に検討するという方針をとりましたので、今回は実現ができなったのでありますが、私どももお話のように交付公債制度は一日も早くこれを何とかしなければならなぬ、ということで大蔵省とも内々いろいろと折衡いたしております。
  356. 田中一

    ○田中一君 道路整備特別会計並びに多目的ダム特別会計の交付公債の発行は今までやっております。そこでこれの未経過利子ですね、総額幾らになっておりますか、三十三年度。
  357. 青木正

    国務大臣(青木正君) ちょっと細かい数字でありますので、政府委員に……。
  358. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) 多目的ダムだけの交付公債の利子はここに持ち合せていないわけでございますが、交付公債の利子分だけを申し上げてみたと思います。三十四年度の公債費が総額で八百十六億七千五百万円でございます。そのうち交付公債にかかります分が六十八億七千五百万円ということになっておるのでございます。金分が二十七億一千五百万円、利子分が四十一億六千万円でございます。
  359. 田中一

    ○田中一君 そこでここに利ざやが含まれていることは奥野さん御存じの通りです。この利ざやというやつは何に使っているのです。
  360. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) 交付公債につきましては、利率を六分五厘と定めておるわけでございます。これに相当する利子額は先ほど申し上げた通りでございます。特別会計で処理して参ります場合に、資金運用部の資金を特別会計が借り入れまして、その金でもって交付公債に相当する部分をまかなっているということになりますと、特別会計から資金運用部の方へ利子を支払って参らなければなりません。そういう部分は、地方団体が交付公債に相当する利子を特別会計へ支払っていきます場合に、その財源に充てられるということになるわけでございます。
  361. 田中一

    ○田中一君 これは自治庁の方として、地方負担を軽減するために未経過利子の廃止、こういうものはいつだって翌年度、年末過ぎてから今までは負担しておった。これはやめることです。  それからもう一つは、地方債並みの金利に引き下げるというような点を考えられませんか。これは大蔵大臣の意向もあるでしょうけれども、両者から御答弁願いたいと思う。
  362. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど自治庁長官からお答えをいたしましたように、この直轄事業にかかる地方分担金、これは本来から申せば現金で支払われるべきものでございまして、いわゆる金利などの問題が起るはずのないものであります。しかしそれが先ほどお答えをいたしましたように、地方団体の財政の事情等から、交付公債でこの分担金を一応支払うということでございます。この建前は言いかえてみますと結局延滞利息みたいな意味があるわけでございまして、その意味において、なるほど交付公債で支払うものだ。だからそれに利子をつけるのは、少し大蔵省強欲だと、こういうように言われるかもわかりませんが、一般の財産処分その他の場合の代金支払い等とのにらみ合せから見ましても、この六分五厘程度の利子は、これはまあ当然だと、かように私ども考えております。  で、最近でも、この直轄事業——いわゆる補助事業と直轄事業との関係から見まして、地方団体においては、この補助事業よりも、直轄事業の方にかわってくれ、いわゆるこういう利子を払っても、この方がいいんだと、こういうようなお気持が非常に強いのであります。こういう点から考えてみますと、将来、この補助事業と直轄事業とのあり方等から見ましても、ただいまこの金利を負ける、無利子にするというようなことは、ちょっと大蔵省としては考えかねることでございます。
  363. 青木正

    国務大臣(青木正君) ただいま、大蔵大臣からもお答え申し上げた通りでありますが、自治庁の立場と申しますか、府県の立場といたしますれば、交付公債についての利子は、これは免除してもらいたいということは、その気持はわかるのであります。しかし、先ほど大蔵大臣も申したような、国の立場からいたしますれば、やはりこれは、そういう大蔵省の考え方にも首肯しなければならぬ点もあるわけであります。  そこで私どもは、まあ、できることならば交付公債という形でなしに——自己財源があればもちろんけっこうでありますが、ない場合は、交付公債ということでなしに、それだけのものを、やはりちゃんと普通の地方債と同じように、地方がこれを借りて、そして払うという形の方がむしろすっきりするのじゃないか。交付公債という形になりますと、いろいろお話のような点が出て参りますので、私どもは、今までのものにつきまして、これをどうというわけには参りませんが、今後、そういう点において改善を加えて、いきたい、かように存ずる次第であります。
  364. 田中一

    ○田中一君 建設大臣に伺いますが、あなたの方で国策として、道路整備五ヶ年計画を策定する……、地方自治団体の財政等に対しては、何ら考慮していない計画ということになるのです、今のお話を伺いますと。話し合いの上の実施計画でなくなって、くるのです。地方にすれば、民選、知事、市町村長があるのですから、これは、国が補助金をつけて、仕事をせよということなら、やらなければ、また次の選挙に影響すると思うから、やるようになりますけれども、しかし計画の実態というものは、過重に押っつけられるという危険が多分にあるのです。私は本年度の道路整備五ヵ年計画の第二年目の予算が、完全に地方自治団体が遂行するかどうかという疑問を持っておるのです。ましてや軽油引取税が修正されるというようなことになる、そうして交付債の方は押っつけられる、年度の予算に何も計上しない、話し合いもないのです。事業だけは、どんどん進んで参る。それは、なるほど建設大臣としては、押っつければいいでしょうけれども、あとに残った地方自治団体の財政負担というものは、過重なんです。ことに今、大蔵大臣は、延滞利子的なものだという、そうして、起債は認めない、こうなりますと、何か、現在の大蔵省は、金貸しそのもののような印象をわれわれは受けるわけであります。それに加えて今度は、税務署までを、直接に主計当局がやるなどということになりますと、これは、あまり国民としては好ましいものじゃないと思う。  こういう点については建設大臣は、完全に本年度の道路整備事業を、地方は負担し得る自信があるかどうか、実施させる自信があるかどうか、こういう点について、最後に御意見を伺いたいと思います。
  365. 遠藤三郎

    国務大臣(遠藤三郎君) 地方財政が非常に苦しいために、公共事業は消化できないのじゃないかというお尋ねでありますが、実は、私ども公共事業を計画いたします場合に、ただ、予算を編成するというだけでなくして、実際、これが実行できるかどうかという点が、最も大事な点であります。その点については、大蔵省との——自治庁との周密な連絡をとりまして、そうして、この公共事業を実施する場合に、どの程度の地方負担になるかという数字を検討いたしまして、そして、これならやれるという自信を持って、実はこの計画を出しておるような次第でございます。地方財政がだいぶ苦しいことはよくわかっております。苦しいことはよくわかっておりますが、公共事業の面におきましては、絶対にやれるという自信を持っております。一つ、それを御了承いただきたいと思います。
  366. 田中一

    ○田中一君 まあ、出した以上、やらせるでしょう。しかし私は、その自信は、おそらくあなたの心の中では、今ここで言明するような確信はないと思うのです。これはまあ一年たって、お手並を拝見いたします。  そこで、このような膨大な事業を遂行さすのに、道路の技術的な面について、相当な御研究も進んでいるのだと思うのです。あるいは、早期に仕事を完成するとか、国民の日常の生活に不便を感じさせないで、あなたが、この前、新聞かどっかで発表しているように、深夜道路工事をするとか、いろいろ国民生活を脅かさないような事業の遂行をするものと確信をしております。  そこで、本年度の予算を見ますと、一番不思議に思うのは、研究費という——あなた方の付属機関である研究所の研究経費というものを、全部減らしておるのです。一体あなた方は、どこでもって、この膨大な事業を遂行するのに、技術的な研究とか、工法の研究とかをしようと思うのか、予算を減らしておいて、そして、それにさせようとするのか、あるいは道路公団は、どういう付属機関としての研究する場所を持っているか、これらの点について、一つ伺いたいと思うのです。
  367. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 三十四年度における建設省関係の技術研究関係の予算は、土木研究所、あるいは建築研究所、建設技術研究補助及び公共事業調査費、こういうものを合わしてみますと、九億二千三百九十五万円余になっておりまして、三十三年度のそれらの合計は五億七千七百五十九万円でございます。  かように考えますと、どこを御指摘になりまして、削減したとおっしゃるのか、実は、私にはちょっと理解しかねるのです。相当、金額をふえているように思います。それで、これをもっと具体的に申しますと、土木研究所の費用は一億三千三百七十七万円、増加額は千二百四十四万円、それから稲毛に、これは大へんな研究、道路の試験施設を設置することといたしております。また下水道についても、あるいは河川及び水路の汚濁防止につきましても、やはり研究を進めております。また建築研究所の費用は、昨年よりも、これはわずかですが、百三十七万円増加して、ことしは八千二百五十三万円。建設技術研究補助、これは千四百六十四万円、昨年よりも、これはわずか減少を来たしております。減少四十五万三千円、これは、きわめてわずかの減少でございます。それから公共事業の調査費は、六億九千三百万円でありまして、増加額三億三千三百万円、かようになっております。
  368. 遠藤三郎

    国務大臣(遠藤三郎君) 調査研究費が、非常に少いのではないかというお尋ねでございますが、実は私は、調査研究費の方は、非常に力を入れたつもりであります。むしろ、あなたにほめられるのではないかと思っておったのです。金額は、もちろんそうたくさんはございません。しかし各研究項目について、それぞれ増額をいたしまして、まあ相当予算については、努力したつもりでございます。  といいますのは、私は、建設省の仕事をずっと見ておりまして、どうも腰だめでもって、大見当でやっているような仕事が多いように考えたんです。やはり周密な調査をし、研究を相当進めていかなければ、経済的に見ましても、非常に大きなロスになりますし、それから技術の進歩が得られない。こういう、どんどん進歩していく技術に対応できるような、そういう態勢を作ることが、絶対に必要だということで、私は就任早々から、特にこの問題については、やかましくやっております。  金額は、今大蔵大臣から説明がございましたが、相当力を入れ、今後も、なおこの問題については、力を入れていくつもりでございます。
  369. 田中一

    ○田中一君 これは、まあ全体の予算を大蔵大臣ごらんになるから、そう思うのでしょうけれども、私どもが、分析、分類しているものは、研究費に属するものと見られる庁費、機械購入費、建設機械整備費というものを言っておるのです。これは減少しているのです。土木研究所において、昨年より七万円不足、建築研究所で二百万円不足しております。あなたは予算の増と言っておりますけれども、実際の研究を見ると、これが研究費に入るのが正しいのではなかろうか、こういう算定の仕方です。何も、あなたの方をいじめるために、こういう数字を出すわけではございません。これが研究費と、われわれは見ております。  それで、もう一つ、これは建設大臣並びに大蔵大臣に、これはお願いしたい。建設省の外郭機関として、付属機関として地理調査所がございます。これは相当大きな仕事をしております。また、しいて申しますと、日本の国土計画のもとをなすような仕事をやっております。ほかには、こういう種類のものはございません。現在では、たとえば道路の問題にいたしても海岸の問題にいたしましても、あらゆる産業面の必要な調査とか、あるいは写真撮影とかやっております。もう二千名以上の要員を持って、日本の各地に支所を持って、全く国民の経済活動に、相当大きな役割を果しておるという役所でありますから、何とかこれを昇格して、ほんとうの仕事をさせるようなことにしたらどうであろうかという点でございます。  これは今では、単に駐留軍から空中写真をもらって、それを保管したというような、なまぬるいものではなくして、大きな役割をしておるということについて、両者の御意見を伺いたいと思います。
  370. 遠藤三郎

    国務大臣(遠藤三郎君) 地理調査所のやっております仕事について、非常に高く評価して下さって、まことに私はありがたく思います。事実、あそこは非常に大きな仕事をやっておりまして、すばらしい学者もたくさんおりますし、それからやっておる仕事も、非常に大きいのであります。ただ機構の問題につきましては、実は私は、何かというと機構拡大、機構拡大という声が出ておりますけれども、私も役人生活をしておりましたけれども、どうも機構を拡大したところで、仕事がそう進むものではないのであります。大原則としては、あまり機構を拡大しないで、能率を上げていくということを考えるがいいという考え方を私は持っております。しかし地理調査所の問題については、御意見もございますので、よく十分、一つ検討してみたいと思います。
  371. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 十分、よく研究してみたいと思います。
  372. 田中一

    ○田中一君 これは、永野運輸大臣に伺いたいのですが、三十四年度にでき上りましたところの港湾施設の特別会計の問題ですが、大体、石炭とか石油とか鉄鋼とかの埠頭の整備をしようというようなお考えのようですが、不思議に思うのは、あなたの弟さんがやっておる富士製鉄ですか、これは従来ともに、自分の専用の埠頭でありますから自分で整備しております。そうして、これもあなたの部下の方の港湾建設局に委託工事をしてもらってやつております。ところが今度の整備計画によりますと、今まで自力でやっておった仕事が、これは姫路港の問題ですが、自分の財政範囲でやっておった仕事を、これはちょうどあなたの場合には、国並びに管理者が半分金を補助をして、仕事をしていくという計画のように見受けられます。これは何も、あなたの弟さんの富士製鉄ばかりじゃございません。  私が調べた範囲によりますと、松山の丸善石油、それから和歌山の下津港の住友金属等も、それから、これは八幡製鉄等は、みんな範疇に入るのです。これは、今まで自分の専用の埠頭でありますから、浚渫は当然、自分の経費でやっておる。ところが、今度の特別会計ができたおかげで、相当数の資金が浮いてくることになる。これはあなたは、どういう考えでやられたかしらぬけれども、そこまで助成しなければならない事業であるかもわかりません。どういう経緯でもって、住金とか丸善石油とか富士製鉄、八幡製鉄等が、自分の経済負担力でできるものを国が補助するというような形になったということに対して、私は非常な疑問を持っている。  また何か特別に——これは国民、知らぬです。こいつは、半額の負担をするなんということは、これはあり得ないです。これは、一般公用のために使えるような場所なら、これは弁解の余地があると思いますけれども、これは、完全に専用埠頭です。その浚渫をやつておる。その浚渫計画が変って大きくなったわけではない。そのままの姿でもって、今後の仕事の半分だけを負担すればよろしいなんていうことは、どうも、きなくさいにおいがするように思うのですが、この経緯を詳しく御説明願った方が、あなたのきれいな御身分の立証にもなろうと思いますから、その点を親切に、一つ御答弁願いたいと思います。
  373. 永野護

    国務大臣(永野護君) 御指摘の、国が補助し負担いたしますものは、航路でございまして、埠頭の施設ではないのでございます。それで航路の方は、それらの、御指摘になりました会社の船だけが通るのではございませんので、一般の船がみんな自由に通るわけでございますから、国が負担いたしましても、これはいわゆる長期経済計画に基きます経営の合理化の一端だと、こう私どもは了解しておるのでございます。
  374. 田中一

    ○田中一君 どうも、今の御答弁だけでは納得しません。幸い、私が図面もみんな持っておりますから出したいけれども、時間がないというから、時間でやめますけれども、この点については、何かの機会に究明——究明というか、解明していただきたいと考えるのであります。  そこで、最後に一つ伺いたいのは、もう時間がありませんから、何とも言えませんが、これだけの大きな仕事をするのに、ことしは、これに対する職員の生産意欲と申しますか、協力の姿を、どういう形で、あなたがそれを保証してやろうかという点でございます。  いわゆる昨年、運輸大臣、建設大臣、農林大臣、北海道の開発庁長官等が、あれほど、日陰にいる補助員とか、準職員とかいう身分の職員を、全部定員法上の職員にしようというような熱意をお示しになりました。こうして行管では、三十四年度は制度改正をして、それらの諸君の身分を全部救うというような言明をしばしば言っておりましたけれども、とうとう政府は、この提案をいたしません。  従ってですよ、自動的に昨年の条件に合う者が、一年たっておりますから、当然その分だけの者が、当然のことに、その条件に合うことになるのです。これに対しますところの、各四つの要求大臣の御答弁を伺いたい。同時にまた行管の考え方を伺っておきたい。
  375. 遠藤三郎

    国務大臣(遠藤三郎君) 三十四年度には、膨大な公共事業を実施して参りますので、その、実施担当者に、どういう優遇の措置を講じておるかというお尋ねでありまするが、御指摘のように、非常に仕事が多くなって参りまして、常勤職員の定員化の問題につきましても、ぜひ私どもは、これを達成したいということで、いろいろ相談をして参ったのでありますが、いろんな事情のために、今回はその実現の予算を計上することができないようなことになっております。  これらの詳しいことについては、他の大臣からお答えいたしたいと思いますが、建設省といたしましては、特に道路の工事が、非常に増大いたしました。従って約七百人の増員を考えまして、その七百人は、振りかえによる増員、あるいは新しく採用する増員等を合せて充実をして参ります。同時に、超過勤務の手当等につきましても、十分とは、とうてい申し上げかねるのでありますけれども、若干の増額を考えまして、そしてできる限り、われわれの方でも、この増大する事業に対する私ども考え方を表わして、この仕事が完全に遂行されるように協力していただきたい。そういう考えで、若干の超過勤務の手当等についても、増額を考えておるような次第でございます。
  376. 永野護

    国務大臣(永野護君) 御指摘の、定員外の職員を定員の中に入れるということ。三十三年度で二千九名入れましたのですが、残りは制度改正をまって三十五年度に入れる目途であります。
  377. 濱野清吾

    政府委員(濱野清吾君) 定員外の定員の処置につきましては、行政管理庁の立場から、公務員法の改正をもって根本的に解決したい。これが、私ども考え方であります。
  378. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) 農林省におきましては、約一万二千の常勤職員でございまして——定員外の者が一万二千人、それから非常勤のもので、なおそのほか約七千人程度でございますが、私たちの念願としましては、前段申し上げたものを、できまするならば早目に定員に整備して参りたい。かように考えております。
  379. 田中一

    ○田中一君 北海道開発長官……。
  380. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 中平総務監理官
  381. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 委員長国務大臣委員会の了承を得ないで東京都を離れた人がいますが、名前は言わんが、こういうのは、委員長から注意しておかなければいけませんね。私ら了承してない。しかし、きょうは皆さん、答弁していいんですが、予算委員会の審議中に、国務大臣が東京を離れるときは、委員長の許可で離れていかなければなりませんのですから、注意しておいて干さい。
  382. 田中一

    ○田中一君 政務次官おるでしょう、政務次官に答弁さして下さい、北海道開発庁の。
  383. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 田中さんに申し上げますが、先ほど中平総務監理官というのでよろしいような御了承を得たように聞いていたものですから、いかがでございましょうか。
  384. 田中一

    ○田中一君 これは時間外に、ちょっと発言さして下さい——ワク外でいいですか。
  385. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 説明をお聞きになりませんか、中平政府委員の。
  386. 田中一

    ○田中一君 では、ワク外で発言します。非常に人の信と申しますか、信頼を裏切るような言葉を今聞いたものですから、私は、ここでもって山口北海道開発庁長官がお見えになるまでは、答弁を聞きたくございません。山口長官が、直接に私のところに電話をかけまして、これこれの答弁をするように打ち合せてあるから、そのように了解してくれ、自分は、例の山村君の葬儀に行かなければならぬからというようなお電話であったので、これを了承したのであります。  ところが、今の農林大臣、建設大臣、運輸大臣等の御答弁を聞きますと、全然、山口長官の意図と違っている御答弁なんです。  従って、これは、ここで答弁を聞くことの方が、将来悪いものを残しますから、伺いません。いずれ、まだ会期もございますから、それまでの間に伺うことにいたします。私の時間は、もうないのでございますね。
  387. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 田中委員質疑は、終了いたしました。  次に、占部秀男君の質疑に入りたいと思います。  ちょっと速記をとめて。    午後八時三十三分速記中止    —————・—————    午後八時五十分速記開始
  388. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 速記をつけて下さい。  この際、委員長から申し上げます。明日、一般質疑を予定通り完了することを目標として、本日の質疑は、この程度とし、残余は、明日に持ち越すことといたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後八時五十一分散会