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1959-03-16 第31回国会 参議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月十六日(月曜日)    午前十時四十三分開会   —————————————   委員の異動 本日委員高野一夫君、山本米治君、中 野文門君、鶴見祐輔君、中村正雄君及 び豊田雅孝君辞任につき、その補欠と して田中啓一君、石坂豊一君、大沢雄 一君、小山邦太郎君、上條愛一君及び 島村軍次君を議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     木暮武太夫君    理事            近藤 鶴代君            塩見 俊二君            西田 信一君            鈴木  強君            矢嶋 三義君            森 八三一君    委員            石坂 豊一君            泉山 三六君            植竹 春彦君            大沢 雄一君            小幡 治和君            勝俣  稔君            古池 信三君            紅露 みつ君            小山邦太郎君            後藤 義隆君            迫水 久常君            下條 康麿君            館  哲二君            田中 啓一君            苫米地英俊君            横山 フク君            吉江 勝保君            荒木正三郎君            片岡 文重君            上條 愛一君            北村  暢君            栗山 良夫君            小柳  勇君            坂本  昭君            高田なほ子君            平林  剛君            山田 節男君            田村 文吉君            千田  正君            八木 幸吉君   国務大臣    法 務 大 臣 愛知 揆一君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君    文 部 大 臣 橋本 龍伍君    農 林 大 臣 三浦 一雄君    通商産業大臣  高碕達之助君    運 輸 大 臣 永野  護君    郵 政 大 臣 寺尾  豊君    国 務 大 臣 青木  正君    国 務 大 臣 伊能繁次郎君   国 務 大 臣 山口喜久一郎君   政府委員    内閣官房長官  赤城 宗徳君    内閣官房長官 鈴木 俊一君    法制局長官   林  修三君    警察庁長官   柏村 信雄君    行政管理庁行政    管理局長    岡部 史郎君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 加藤 陽三君    防衛庁装備局長 小山 雄二君    法務省刑事局長 竹内 壽平君    外務省条約局長 高橋 通敏君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省主税局長 原  純夫君    国税庁長官   北島 武雄君    水産庁長官   奧原日出男君    通商産業省重工    業局長     小出 榮一君    運輸大臣官房長 細田 吉藏君    運輸省港湾局長 中道 峰夫君    運輸省鉄道監督    局長      山内 公猷君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    日本国有鉄道総    裁       十河 信二君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十四年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十四年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十四年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) ただいまから委員会を開会いたします。  まず、委員変更について御報告いたします。豊田雅孝君が辞任し、その補欠として島村軍次君が、山本米治君が辞任し、その補欠として石坂曲蔓君が、中野文門君が辞任し、その補欠として大沢雄一君が、鶴見祐輔君が辞任し、その補欠といたしまして小山邦太郎君がそれぞれ選任せられました。
  3. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 次に、昭和三十四年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算を一括して議題といたします。  前回に引き続いて一般質疑を行います。西田信一君。
  4. 西田信一

    西田信一君 運輸大臣お尋ねいたしますが、過般の総括質問におきまして、私の質問に答えられまして、運輸大臣国鉄の中に運賃改正に関する調査会を設けて研究しておるというのは事実であるけれども、値上げ目的としておるものではない、全体としてはふえもしないし減りもしない、こういうワクの中で非常な不合理を是正することを目的としているものであって一決して値上げ考えていない、このように御答弁になっておるわけであります。そこでお尋ねをいたしたいのは、大臣が答えられました非常な不合理を是正すると、こう仰せられておりますが、非常な不合理とは具体的に何を指すのであるか、お答えをいただきたいと思います。
  5. 永野護

    国務大臣永野護君) お答えいたします。  御承知通り運賃をきめますときには、その品物によりまして運賃負担力考えましたり、あるいは産業開発の上に考慮を払いまして運賃をきめておるのであります。二十八年に運賃改定をいたしまして以来、その後いろいろな経済情勢変化に伴いまして、運賃負担力の少いものに大きい負担がかかったり、その後物価も非常に変っておりますから、もう少し負担をさしてもいいもの、その負担が軽くなっているようなものがございますので、二十八年以後の経済情勢変化に伴いまして、その運賃負担力を勘案して是正していきたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  6. 西田信一

    西田信君 そういたしますと、全体のワクの中では運賃変更考えられる、こういうことのようでありますが、そのように受け取ってよろしいのでありますか。
  7. 永野護

    国務大臣永野護君) 大体のワクは動かしませんで、先ほど申しましたような負担力のあるものにはもう少し負担してもらう、そのかわり負担力のないものに重圧をかけている点は軽くいたしまして、全体としてはそのワクはあんまり動かさないようにしたい。これは御承知通り貨物等級専門委員会にそのこまかい運営を委託しておるのでありますが、まだそれから答申が出て参りません。出て参りましたらその大体の作業がわかると思います。
  8. 西田信一

    西田信一君 この問題につきましては、後ほどさらにまたお尋ねをいたします。  次に、国鉄総裁お尋ねをいたしますが、鉄道運賃収入の中で貨物収入がむしろ減るということは三十四年度、来年度の予算説明にも出ております。そこで三十二年度、ことに三十三年度の決算期も近づいておりますが、三十三年度におきまする貨物収入は、予算に比べましてどういう状態にあるか、どういう見通しであるか。もし予算に比べて非常な減少がくるという予想であるといたしまするならば、その原因がどこにあるのか、お答えを願いたいのであります。
  9. 十河信二

    説明員十河信二君) お答えいたします。その原因は大体経済界不況にあると思うのであります。従って旅客収入の方は予算と大した違いはありません。大体予算通り、少し予算を上回っております。貨物収入の方で、ただいまのところ百八、九十億くらい収入減になるんじゃないかと予想いたしております。それは主として経済界不況によることと考えております。   —————————————
  10. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 委員変更がありましたので御報告申し上げます。中村正雄君が辞任し、その補欠として上條愛一君が選任せられました。   —————————————
  11. 西田信一

    西田信一君 ただいまの百八十億ないし百九十億の減収というのは、おそらく三十三年度見込みであるというのでありますから、三十三年度における予算対比減少額と受け取りましたが、その理由経済界不況によると、こういうお答えでございました。経済界不況によるものといたしまするならば、三十四年度以降におきましては、こういう減収は十分回復し得る見通しであるかどうか、将来に対する見通し伺いたいのであります。
  12. 十河信二

    説明員十河信二君) 三十四年度は幾分回復することと思いますが、以前に五ヵ年計画を立てましたときに予想しておったほど回収するかどうかということは、多少疑問だと思っております。
  13. 西田信一

    西田信一君 私は、貨物収入のこの減収原因が、もちろん財界の不況等にもこれは大きな理由があると思いまするけれども、一面、近距離における輸送貨物自動車輸送に非常に移行しておる、食われておる、こういうことが相当大きな理由になっておるのではないかというふうに考えるわけであります。この傾向が、もし私の考えが当っておるといたしまするならば、道路整備が非常に急速に進むにつれて、一そうこれは顕著になって参るであろうということは想像にかたくないわけであります。そこで最近調査会政府答申をいたしましたその答申を見ましても、遠距離逓減というようなこの運賃の立て方を改めようというような傾向が見えるように思うのでありまするが、もし、そのような考え方運賃を将来きめて参るということになりますと、近距離輸送減収遠距離輸送物資によって補てんしようとする、こういう結果に、欲すると欲せざるとにかかわらずそういう結果になると思うのでありまするが、このこと自体が私はきわめて合理性を欠く、こういうふうに考えるのでありますが、こういう点に対しまして、運輸大臣はどのようにお考えになるか、また、国鉄総裁はどのような見解をお持ちになっておられるか、お伺いをいたします。
  14. 十河信二

    説明員十河信二君) ただいまお話のありましたように、貨物運賃収入減原因の一部分は、近距離輸送が他の交通機関に取られたということも一つ原因だと思うのであります。遠距離逓減法につきましては、先年貨物運賃改正いたしましたときに、幾分修正していただきまして、それは、今特に修正をするという意思は持っておりませんです。しかしながら、先刻大臣からお答えのありましたように、物価の変動、あるいは新しい貨物が出て参りましたというようなことで、多少その運賃体系改正をいたしまして、でこぼこを修正したり、そういうことによりまして、幾分はその貨物収入減収を回復することができるのじゃないかというふうに考えております。
  15. 永野護

    国務大臣永野護君) 大体国鉄総裁がお返事いたした通りでありますが、運輸省といたしましては、運賃制度調査会のまだ中間報告もございませんので、それらの報告が出ましたら、十分に検討して善処したいと、こう考えております。
  16. 西田信一

    西田信一君 昭和三十二年の四月に、国鉄貨物運賃賃率表改定せられました。そして、賃率で一割六分、国鉄の総収入では一割三分の値上げが行われたのであります。ところがその年の十月に国鉄は、鉄道運賃制度調査会というものを設けて、そうして旅客貨物両部面にわたってその審議を行わしたのであります。ただいま運輸大臣中間答申も出ないというお答えでございましたが、昨年の十二月にその中間答申がなされております。その答申によりますと、運送原価主義等級制度に修正することを原則にして、そうして運賃負担の幅を圧縮して等級数減少することが一点、それから特別等級公共政策割引の縮減または廃止をする、こういう二つの方向が示されているわけでございます。もしこのような等級改定が行われるといたしまするならば、上級貨物等級引き下げが行われて、そうして逆に下級貨物、特に木材とか、わら工品、そのような下級貨物値上げが予想される。先ほど運輸大臣負担力に応じて是正すると申されましたが、この改定がもし行われるとするならば、私はこれは運輸大臣意図に逆行する結果になると思うわけであります。主としてその結果は、主要な農村物資等運賃しわ寄せをされることは、これは明瞭でありまして、その影響は非常に大きい。国民生活に直結するこれらの貨物運賃改定について、もしこのようなことになるといたしまするならば、運輸大臣のただいまの御答弁、言明とは逆行することになるわけでありますが、これに対して運輸大臣はどのようにお考えになるか、中間答申といえども、この調査会一つ方向というものは無視できないのでありますがこれに対してどのようにお考えになるか、それから国鉄総裁はどのようなお考えを持っておられるか、見解を承わりたい。
  17. 永野護

    国務大臣永野護君) 中間報告書がまだ出ておらぬと申しましたのでありますが、事実まだ出ておらないのであります。これは運輸省にも出ておりませんし、国鉄の方にも出ておりません。ただ委員の中の内輪である段階にきたのだと思うのでありまして、正式の報告は四月ないし五月ごろに出るであろうという見通しであります。それから先ほど運賃の不合理を是正いたしますときに、負担力考えると申しましたけれども、そのほかに産業開発振興という条件も申し上げたつもりでございます。従いまして、単に負担力があるものにのみ運賃値上げしわ寄せをするということになりますと、今西田委員の御心配のようなことが起るかもしれません。これはいまの答申をいたしましてから、単に負担力ばかりでなく、負担力考えますけれども、産業開発の方から十分に研究いたしまして、その答申案をとるつもりでございます。
  18. 十河信二

    説明員十河信二君) 運賃改正の際にも、ただいまやっておりますような調査をやって運賃改正をしたいという何がありましたけれども、それもできませんで、これは後日是正をいたしますからということで、この調査会の設置は当時からすでに予想されていたところであります。ただ、いまお話中間答申と言いますのは、分科会でのいろいろな意見でありまして、私も絶えず分科会審議状況報告を受けておりまして、まだこれは中間報告とか何とかという、調査会意見としての発表ではないのでありますから、さよう御了承願います。   —————————————
  19. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 委員変更がありましたので、御報告をいたしておきます。高野一夫君が辞任し、田中啓一君が選任されました。御報告申し上げます。   —————————————
  20. 西田信一

    西田信一君 その点は、——中間報告が正式に出ておらないという点はただいまの答弁でわかりましたが、しからば、その調査会はいつごろまでに結論を出し、その結論実施に移す、つまり運賃改定を行う時期はいつを予定しているのでありますか。また先ほど御答弁がありましたけれども、その改定によって国鉄運賃増収ということは一切考えておられないのかどうか。国鉄総裁からお答え願います。
  21. 十河信二

    説明員十河信二君) お答えいたします。調査会は大体この四、五月ごろまでに一応結論を出すという計画で進んでいるそうであります。しかしながら、運賃制度、あるいは等級等改正するのはまだいつになるか、もちろんそのまま取り上げるかどうかということの報告が出ておりませんので、結論がついておりませんです。それから運賃全体は過不及のないように、つまり運賃値上げをするという意図でないことは、大臣からもお答えした通りであります。われわれもそのつもりで進めているような次第であります。
  22. 西田信一

    西田信一君 時期は明言できないが、改定答申を得て行うということでありますが、しかも先ほどの御答弁によりますと、昭和三十二年、一昨年の改定のときからすでに全面的改正考えておった、こういうことでございますが、そういたしますと、今回の改定というものは、先ほどの趣旨において、根本的、全面的に改定をする、こういうふうに考えられるのでありますが、この場合には当然財政法の第三条、あるいは国有鉄道運賃法の第七条の解釈によりまして、取扱い貨物賃率表改定をも必要と考えるのですが、その通りでございますか。
  23. 十河信二

    説明員十河信二君) もし調査会答申がそういう賃率表改正とか何とかというふうなことに触れるような答申が出て参りまして、それを採用することになりますと、当然そういう結果になると思うのであります。
  24. 西田信一

    西田信一君 運輸大臣にお聞きをいたしたいのでありますが、これは要するに運賃政策に対する基本的な考え方伺いたい。申すまでもなく、日本は非常に地形上南北に長い国であります。九州の南の端から北海道の北の端まで参りますというと、おそらく急行で走っても三昼夜近くかかる、こういう地形の国でございます。私、先般のこの委員会における総括質問におきましても、総理その他に日本人口政策等についてお尋ねをいたしました。さなきだに人口が、あるいはまた文化、経済等の中心が、だんだん中央に移っていく、こういう傾向が非常に強いわけであります。そうして中央から距離が遠ければ遠いほど、その地域住民経済負担が重くなっている、こういうこともこれはいなめない事実であります。このような立場から考えまして、将来の人口政策の面、あるいは地方開発の面から考え、かつ負担均衡の上から考えまして、遠距離逓減方式というこの運賃政策は、当然とらるべきであると思うのでありますが、むしろどうもこれが逆行の傾向にあるように私は受け取れる、見えるのでありますが、運輸大臣はこういうふうな日本の置かれている立場地形上の問題あるいは現在の日本人口の問題、その他一切を考えまして、総合的に運賃政策はどのような政策をとられようとする基本的な考えを持っておられますか。これをお伺いをいたしたい。
  25. 永野護

    国務大臣永野護君) 運賃政策基本はお説の通りでございます。その基本まで動かしますとなりますと、非常に問題の扱い方が慎重を要することはお説の通りであります。ただいま申しておりますのは、例の八条で言う全体の総収入にあまり大きな影響を与えないものの限度だと思いまするので、そういう基本政策変化、つまり長距離逓減法をやめるというような基本問題にまでは入らないものと想像いたします。まだこれは、先ほど申しましたように、答申の案が出ておりませんから、それが出ましたら、十分そういうことを考慮に入れて検討いたすつもりでございます。
  26. 西田信一

    西田信一君 私は答申案が出てから考えるというのでなくて、運輸大臣として、当然運賃政策というものをお持ちになっておるであろうという見解考えからお聞きをしたわけでありますが、しかしながら大体のお考えはわかりましたので、この点はこれで質疑を繰り返しません。
  27. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ちょっと関連して。西田さんの今の問題に……。
  28. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 今のに関連質問ですか。
  29. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ただいま西田委員から、運賃政策について質疑がありましたが、二点について、ちょうどいい機会ですから関連して伺いたいと思います。  その一つは、国鉄経理に非常に難儀をしている。そこでいつも運賃という問題がクローズ・アップされるわけですが、国鉄経理がかかる状況であるにかかわらず、国鉄総裁伺いたいのですが、昨年山口県の岩国で、米駐留軍の不注意によって、「かもめ」が転覆させられた。その損害は七千万円ですね。ところがその米兵は米軍の裁判で無罪になり、しかもその七千万円の国鉄補償要求に対しては、国鉄は国の機関であるから補償できないとして、いまだに解決していないわけです。これは行政協定の十八条の不備からきているわけですね。従って私どもは国鉄としては、行政協定の十八条に基くあの補償規定というものは変えていただかなければ困るという見解を持っているのだろうと思う。今日もなお、ああいう形で起った損害米軍によって補償してもらわなくちゃならぬという立場を堅持されていると思うのですが、ちょうどいい機会ですから、これに国鉄総裁からお答えを願います。  それからもう一点は、今運賃政策が出たのですが、長い間義務教育である中学校の生徒の乗車賃は、小学生並みに五割引きにしようという要望がきわめて強いわけです。これは文部大臣もその必要を認めているわけですね。中学三年が義務制として延長されて以来、これは文部大臣主張し、国民も非常に要望をしているところです。一千万に及ぶ生活困窮者の子弟というものは、非常に運賃に困っているわけですね。これは当然小中学生義務教育なんですから、この小学生並み中学生運賃は五割引きにすべきだと思うのだが、どういうわけで今まで解決しないのか。国会でもずいぶん論議した問題でありますが、近いうちにさようにするという明確なる答弁一つ承わりたい。この点についてはあとほど運輸大臣にもお答えしていただきたい。
  30. 十河信二

    説明員十河信二君) ただいまの事故の件につきましては、国鉄といたしましても、政府にお願いいたしまして、いろいろ折衝をしてもらっておるのであります。ただいまも日米合同委員会で御検討を願っておるような次第であります。  中学生運賃問題につきましては、いろいろ検討をいたしておりますが、先ほど御質問の中にもありましたように、国鉄としては今非常に窮迫をしておる次第でありますから、今直ちにこうするというお答えはいたしかねるような状態にある次第であります。
  31. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 行政協定改定を必要と認めておるのでしょう。それをはっきり答えていただきたい。
  32. 十河信二

    説明員十河信二君) 行政協定が必要であるかないか、どういうふうに改正すればいいかというようなことは、ひとえに日米合同委員会検討していただくことになっております。
  33. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 改定しなければ国鉄主張は通らぬじゃありませんか。
  34. 十河信二

    説明員十河信二君) れれわれとしては、ちょっとお答えいたしかねると思います。
  35. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そんな国鉄総裁じゃだめですよ。改定しなければあなた方の主張は通らぬじゃありませんか。そういうことだから米軍からなめられるのですよ。
  36. 永野護

    国務大臣永野護君) 中学生運賃の問題は、ただいま国鉄総裁お答えしましたように、趣意としては私ども御同感でありますけれども、何しろ大きく運賃収入に響くわけでございまするので、今直ちにこれを実行いたしますと、その跡始末の問題もございますから、いましばらく運賃収入の趨勢をよく見きわめませんと、今ここでいつごろどうするというはっきりしたお答えはいたしかねます。
  37. 西田信一

    西田信一君 次に国鉄総裁にお聞きをいたしたいのですが、昭和三十二年の四月に政府鉄道輸送力増強と設備の近代化ということを考えられて、国鉄整備五ヵ年計画を立てられました。そうしてその財源充当のための鉄道運賃値上げ案とともに、国会の承認を求めてこれを実施に移しているわけであります。ところが先ほどお答えがありましたように、旅客運賃は別といたしまして、貨物運賃収入は予定のように収入を上げていないということが明らかにされたわけであります。このことは国鉄整備五ヵ年計画、六千億に上るところのこの計画の遂行上に私は相当影響をしておるのじゃないかというふうに考えるのでありますが、先ほどお答えになったような貨物収入減収によって、この国鉄整備五ヵ年計画工事消化にどのような影響を与えておるのか、支障があるのかないのか。あるとするならば、どのような影響を与えておるのか、その点お答え願いたいと思います。
  38. 十河信二

    説明員十河信二君) 当初五ヵ年計画を立てましたときと、今日の情勢考えてみますと、旅客は半年か一年くらい、貨物は一年半か二年くらいというふうに上昇のカーブがずれて参っております。従って一面においては、資金の不足によって工事幾分かおくれておりますが、五ヵ年計画は大体当初の計画を立てましたときに申し上げましたように、老朽施設の取りかえ、近代化をして輸送力を増強するということに主眼を置いて立てたものであります。老朽施設の取りかえの方は、これは事故をなくする点から申しまして、どうしても早急に実施をしなければならぬということで、大体予定通り実施して参りました。輸送力増強近代化の方は、今申し上げましたような事情で幾分かおくれておりますが、これにつきましても大体早急に効果を発揮し得るような施設事業を先にやりまして、なるべく少い金でなるべく大きな効果を上げるように五ヵ年計画を進めて参っているような次第であります。幾分これはおくれております。三十四年度までで予定の三カ年を経過するのでありますが、金額が五割程度しか支出ができないような状態になっているかと思っております。
  39. 西田信一

    西田信一君 減収影響があって工業が若干おくれているというお答えでございました。そこで次の問題をお聞きするのでありますが、三十四年度の予算に計上されている国有鉄道の工事規模は一千百十五億円で、前年に比べて五十三億円の増加が計上されておりますが、その中で三十億円というものは、これはいわゆる夢の超特急、東海道新幹線の建設費が含まれているわけであります。そこでまずお聞きしたいのでありますが、東海道新幹線というものは、何カ年間で建設をする、そうしてその工事費総額は一体どのくらいなのか、またその財源計画はどのように立てているのか、これをまずお伺いをします。
  40. 十河信二

    説明員十河信二君) 東海道新幹線は工事費総額千七百二十五億円と予定されております。三十四年度から五ヵ年間で完成いたしたい、こう考えております。それでこの幹線調査会答申によりますと、大体まあ国鉄経済界の回復あるいは五ヵ年計画の終了等によりまして、できるだけ自己資本をまあ節約をし、合理化もして、できるだけ自己資金を出し、足りないところのこの新線建設の当初二、三カ年間は、相当収支の上に困難な場合もあるかと思うから、その間に処するため政府はできるだけの出資をしてやってほしい。その他は財政投融資あるいは民間資金、あるいは必要によれば外資によってまかなえ、まあそういうことで大体日本の現状から見てできると思う。東海道線は三十七、八年ごろになれば全面的に行き詰まる、東海道線の行き詰まりが日本全国に大きな輸送上の障害を来たすから、早急にこれは着手をし、五ヵ年間で実施するように計画を進めることが必要である、という答申であります。われわれもこの答申がもっともであると考えまして、そのように進めて参りたいと、今計画をいたしているところであります。
  41. 西田信一

    西田信一君 ただいまの御答弁によりますと、東海道新幹線は三十四年から三十八年五ヵ年間で千七百二十五億円を投ずる。そうしてこれに対する資金のおよそのめどについてお話がございました。そういたしますと、国鉄整備五ヵ年計画、これは三十二年度から三十六年度まで、これは六千億円計画実施されることになっております。そうしてその中では、ここに持って参っておりますが、電化その他を除いたいわゆる幹線の増強の計画は五年間で千四百十三億と、こうなっております。そうしてこれの対象になる線路というものは大体ここに書いてある通り、北海道、東北線あるいは北陸線、鹿児島線、その他重要な路線があげられておる。要するに東海道新幹線というものはその当時は全然計画になかった、載っておりません。そこで突如としてこれが今度現われて参った。その必要なことについて説明がございましたが、千四百十三億を五ヵ年間でやるという。五ヵ年計画にダブってことしからしかも千七百二十五億、これを上回るような東海道新幹線の計画がここに載せられておる。しかも初年度において三十億円というものが予算に計上されておるわけです。そういたしますと、一体最初の国鉄五ヵ年計画との関係はどうなるのか。何らこれが政府予算書の説明にない。この点は一体どうなっておるのか。この関係をまずお伺いいたします。
  42. 十河信二

    説明員十河信二君) 東海道の輸送量の逼迫の状況は御承知通りであります。この逼迫をさしあたって救済をいたしますために、五ヵ年計画の中にも東海道に相当金額をつぎ込むように計画ができておるのであります。しかしながら先刻申し上げましたように、三十七、八年ごろになれば東海道線はもうリミットに達して、この上列車を増発することもできない。輸送力を増すことができなくて輸送が行き詰まることに相なります。それゆえに新しい幹線の計画を立てたのであります。五ヵ年計画は応急の輸送力対策であって、東海道新幹線は、根本的の全面的行き詰まりを来たす東海道線をどうして救済すればいいかということの対策であります。その当時からもちろん検討はいたしておりましたが、まだ成案を得ておりませんので、おくれて出したような次第であります。
  43. 西田信一

    西田信一君 私は専門家でありませんからよくわかりませんが、東海道の新幹線を作る必要があるという点については、私は異論を差しはさむものではありませんけれども、すでに昭和三十二年に国鉄五ヵ年計画というものが立てられて、そしてその計画の中には東海道線の輸送力増強も取り上げられておりますが、さらにこれとは別個に東海道新幹線を、しかも年度をダブって、三年間ダブってここに計画をし、そして三十億の予算を新たにつけられました。そこで、先ほどの御答弁によりますと、運賃収入等の減収によってすでに立てておるところの五ヵ年計画すらもこれは工事がおくれておる、こういうことをあなたは答弁されておる。そうしますと、さらにことし五十何億ふえておるが、そのうちの三十億は、ある意味においてはいわゆる既定計画に三十億が食い込んでおるという結果になっておると考えるわけです。そうしますと、なおさら、しかもその将来の財源計画は先ほどのあなたの答弁では、はっきりと立っておるというふうには受け取れません。そういたしますと、すでに立っておるところの五ヵ年計画というものは、これが並行して行われるごとによって非常な影響を受ける、圧迫を受けるという結果になって、前の計画がくずれてしまうという危険を多分に感ぜざるを得ないのでありますが、一体こういう点についてどういう的確な見通しのもとに本年度東海道新幹線三十億の予算を計上したのか、この辺を明らかにしていただきたいのです。
  44. 十河信二

    説明員十河信二君) 五ヵ年計画の必要なことは、これは応急の差し迫った工事が主でありますから、これはもちろん必要でありますが、先刻申し上げましたように、輸送状況が多少変って参りましたので、その方面においても多少しんしゃくをし、変更をすることもあり得るのであります。五ヵ年計画はさればと言ってこれをそう延ばすことはできないのであります。五ヵ年計画もやりながら東海道線も、これも先刻申し上げましたように、三十七年になれば行き詰って参りますから、行き詰って参りますと、全国にわたって輸送障害を来たすおそれがあります。これもやらなければならぬ。その他なお国鉄でやらなければならぬことはたくさんあって非常に困っておるのでありますが、それらのことを並行して輸送状況に適応したようにやっていきたいと、こう考えておる次第であります。
  45. 西田信一

    西田信一君 私は繰り返して申し上げますが、新東海道幹線が必要でないということを申しておるのではないのでありまして、少くともすでに立てた五ヵ年計画が財源的な理由からこれが遅延をしておるという現状にあることは、あなたがお認めになった通り。そういう状況にあるときに、こういうような、しかも千七百二十五億、五ヵ年計画を立てられるに当っては、少くとも的確なる財源の見通し等がはっきり立っておるかどうかという点に私はどうも疑問を感じておりますし、またそういうようなものを年度をダブってやるといたしますならば、当然三十二年度に立てた国鉄整備五ヵ年計画というものは、これは大改定を加えなければならないものだと考えるわけでありますが、この関係はどうなっておるかということが先ほどの答弁で明確になっておりませんので、さらにお答えを願います。
  46. 十河信二

    説明員十河信二君) 輸送状況変更に応じまして、国鉄は絶えず計画をいじくっております。五ヵ年計画も、もちろん先刻申し上げましたように、輸送状況変更に応じましていろいろと計画を多少変更するということはあり得ると思います。またやっておりますが、しかしながらこれを根本的にどう改定するかというところまではまだ達しておりません。五ヵ年計画は今のところ引き続いて遂行していかなければならぬと考えて、われわれはこれを促進することに努力をいたしておるのであります。しかしながら、同時に東根道新幹線も必要で、これをやらなければほかの線にも影響するということで、これもやらなければならぬ。そこで資金の点が今いろいろ問題になると思います。まあできるだけ合理化等もやりますが、そのほかにまあ財政投融資も外部資金も、あるいは場合によれは外資も考えていただきたいと、こう思って政府と始終御相談をしてお願いをいたしておるような次第であります。
  47. 西田信一

    西田信一君 どうも答弁が明確を欠いておりますが、先の五ヵ年計画というのが、これはすっかり年度計画、財源計画を立てて、そして国会もこれを認めたわけでありますが、ただいまの御答弁によりますと、東海道新幹線というのは、一つの希望を持っておるか、はっきりした計画を持っておらない、幹線審議会の何と言いますか、答申によりまして、いろいろこういうような種類の財源が考えられると、希望的に考えられるということのように伺ったわけでありますが、それではどうも私は納得がいかないわけでありまして、少くとも三十億という予算を本年度新たに計上するからには、これに対する的確なる見通しが立っておらなければならない、この点については運輸大臣はどのようにお考えになりますか。さらにこの予算を計上されます立場から、大蔵大臣はこの東海道新幹線の財源計画についてどのような見通しと、それから計画を持っておられるのか、この御両所からお答えを願います。
  48. 永野護

    国務大臣永野護君) お答えいたします。東海道新幹線の必要性につきましては、あまりに東海道線の輸送の行き詰まりが目の前に迫って参りましたので、どうしてもこれはやらなきゃならぬということをまず基本計画として取り上げたわけでございます。従いまして、その財源につきましては非常にただいまの西田委員の御心配になっておりまするように、はっきりとした数字が申し上げかねますことは非常に遺憾であります。しかし、何はともあれこれはやらなきゃならぬのであるから、とにかくこの計画を進めていこう、その第一着手といたしまして本年度三十億を計上したわけであります。御承知通り本年度からは大体大勢として財界の見通しも明るうございまするので、五ヵ年計画影響を与えておりまするような運賃減収も、本年はやや明るくなるのではないかというような希望もありますし、それからこの東海道新幹線の必要性なことにつきましては、ほとんどあげて各方面に認められておることでありますから、財界の好況下に伴う運賃収入のほかに、金融面の援助も相当程度期待できるのではないかと思います。また国鉄総裁が触れましたように、一番望ましいのは、今の苦しい国鉄経理に外部資金の潤いを持たしめるということがこの東海道新幹線を契機として起ってくることも非常に望ましいことでございまするので、それには今ちょっと国鉄総裁も触れましたように、外資の導入というようなことにも相当力を入れてやっていきたいと思いまして、これは今日まではまだほんの手探りの段階でありますけれども、その段階ではある程度の希望が持てる、こう考えまするので、最近に手探りの程度からこれを具体的に進めていく方法を着手していきたい、こう考えております。
  49. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 東海道新幹線は、その必要性にかんがみまして、政府といたしましてはこれを取り上げることについて非常に慎重に審議をいたしたのであります。最終的に東海道新幹線を建設する、こういうことを決定をいたしました。先ほど来お話の出ておりますように、国鉄はただいま五ヵ年整備計画を推進中でございます。この仕事と新幹線とは直接の関係が具体的路線においてあるわけではございませんが、全般から見まして、国鉄は新幹線問題については五ヵ年計画をとにかく推進することがまず第一の仕事だということで、五ヵ年計画の推進を第一に取り上げて、同時にこの新幹線の建設は必ず政府としてはこれを実現するという決意のもとにただいま取り組んでおるのであります。そこでことしの三十億の問題でございますが、この五ヵ年計画をまず推進するということをいたしております結果、この新幹線の建設については五ヵ年の建設計画ではありますが、具体的な年次計画を立てるまでにただいま立ち至っておりません。そこで土地の買収その他具体的な年次計画を立てるのに必要な調査費というので、三十億をただいま計上いたしておるのであります、そこで具体的な建設計画が立つと同時に五ヵ年計画も進んで参りますので、資金的にも今度は新幹線の方に振り向ける余裕も出て参るわけであります。そこで具体的な年次計画、そしてあわせて資金計画、これを樹立することになるのでありまして、ただいままでそこまでの検討は進んでおりません。ただいま鉄道当局においても今申し上げるような線に沿って検討をいたしております。従って私どもが今ばく然と考えておりますものは、この五ヵ年整備計画の方からも財源が回ってきますし、また経済状態も順次好転をして参るでございましょうから、公社債等の引き受けも、国内においても可能でありましょう。また同時に世銀その他あるいは場合によれば外債等も今後の問題として研究して参りたい、かように考えております。
  50. 西田信一

    西田信一君 私がお聞きしたがったことを、大蔵大臣から先にお答えになったのでありますが、私はこのような状況下にあって、どちらが一体優先するかということをお聞きしたがったのでありますが、大蔵大臣の答えによりますというと、先に立てられておりますところの国鉄五ヵ年整備計画というものは、これはまず第一にやるのである、しこうして将来の財源措置を講じながら、これと並行して新東海道幹線もやっていく、こういう御答弁でありますので、私はまず先に立てられました国鉄五ヵ年計画というものが完全に遂行されることを前提として、次の東海道線も同時に行うというように承わったわけでありますが、国鉄総裁並びに運輸大臣も同様の御見解であるかどうか、一つ確かめておきたい。
  51. 十河信二

    説明員十河信二君) 五ヵ年計画は当面急を要する計画でありますから、これはもちろん第一に考えなければならぬ、ただいま大蔵大臣お話しになったことと同様に考えているものであります。
  52. 永野護

    国務大臣永野護君) 運輸省といたしましても、同様に考えております。
  53. 鈴木強

    鈴木強君 関連して……。今、西田委員から、国鉄の五ヵ年計画に対して御質問がございましたが、私も西田委員と全く同じ考え方を持っておりますが、当初出された五ヵ年計画国会の承認を得て逐次まあ遂行中でありますが、東海道新幹線の問題は、これはもう当時から予想され、その必要性は国民が認めておったものでありますので、当然今お話に出てくるのはわかりますが、少くともその五ヵ年計画遂行途中においてこういう問題が出て参りますと、非常に最初に出ました国鉄の五ヵ年計画に対する国民の疑義というものが出てくるわけだと私は思うわけであります。そこで今お話中でわかりましたのは、五ヵ年計画は五ヵ年計画として推進していく、しかし新幹線の必要性はあるので、何とかこれを完成したい、こういう政府の方針だと思うわけであります。私もそれが至当な行き方だと思いますが、ただこれには建設資金がかかります。従って資金をどう調達するかということが非常に問題だと思うわけであります。ちょっとこの機会お尋ねをしておきたいのは、先般賀屋興宣氏が西欧からアメリカを回って来られたようでありますが、帰りましたときの新聞記者との会見の中で、国鉄新幹線に対する外資の導入については、相当にまあ自信を得たような内容が出ておりました。私は念のためにお聞きしておくのでありますが、これはすでに本委員会でも問題になりました国土開発縦貫自動車道との関係もあると思います。私は中央道か東海道かという論が出ているのでありますが、先般中央道は法律にも明定されておりますし、必ずやる、こういう岸総理大臣と建設大臣お話でありましたので、この点は安心をするわけでありますが、その賀屋興宣氏のお話の資金が、国鉄新幹線の方に使われるような形になっているものか、それも新しく国土開発縦貫自動車道の東海道の方に使おうとするものなのか、こういった点、御本人でないからわからないと思いますが、おそらく帰朝されて大蔵大臣なり運輸大臣はそういった点についてもお話を承わっていると思うわけでありますから、もし差しつかえなかったら、賀屋興宣氏の構想の内容を、この際、国会を通じて国民に明らかにしていただいた方がよろしかろうと思いますので、差しつかえなかったら、一つ大蔵大臣運輸大臣あるいは十河国鉄総裁等もその点についても話をしておったものであるかどうか、そうした点をお尋ねしておきたいと思います。
  54. 十河信二

    説明員十河信二君) 先刻お話を申し上げましたように、幹線調査会答申案の中にも、必要があれば外資によることもけっこうであるという答申がありました。そこで、われわれといたしましては、万一をおもんぱかって、あらゆる手段を講じておきたい、用意しておきたいということで、アメリカ方面その他の外資の点についても研究を進めております。また外国へいらっしゃる方にも外国の金融市場の情勢をよく研究してほしいということをお願いいたしてありますから、それで賀屋興宣氏がアメリカへ行かれるということを聞きまして、私も外国の金融市場がどうであろうか、外資を導入するにはどういう方法によったらいいか、そういうことを一つ機会があったら研究してほしいということをお願いしておきました。そのまだ詳細のお話を伺う機会を得ておりませんが、一応はまあ非常に明るい、有望だという話でありました。そのことが新聞に出たのじゃないかと考えております。
  55. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ただいまの総裁からのお話で、鉄道の資金獲得についての御努力は、十分それで説明がついたと思いますが、お尋ねになりますように、道路についての世銀からの融資計画、これはすでに具体的にきまっておるのであります。もう昨年来その話が具体的に調査も完了いたしております。従いまして、これも早急に実現をするような方向に、ただいま話が進んでおります。昨年道路についての世銀からの融資を相談すると同時に、国鉄の新幹線計画も披露いたしてあります。ニューデリーからの帰りに関係者も立ち寄って、国鉄当局からも詳細な説明を聞き、同時にデータも持って帰っておるのであります。ただいまアメリカにおきましても世銀が中心になってその点を研究しておるのであります。賀屋さんがどの程度のお話をされたか、私にはまだ詳しい報告はきておりません。おりませんが、昨年の外債発行なり、また電源開発や道路に対する世銀からの融資計画等が順調に進んでおりますし、鉄道についての理解も十分持っておりますので、これは今後の問題ではございますが、相当期待をかけ得る状況ではないかと思います。ただ問題は、直ちに外資によるとか資金の調達計画をこの際進めるという段階にまだなっておりません。この新幹線計画を作ることで、あらゆる実施計画をただいま樹立中でありますし、同時に、この実施計画が樹立されますと、そこで資金計画が立つわけであります。  そこで、先ほど来お話のありますように、五ヵ年の整備計画、これを推進することが第一でございますし、これと並行して新幹線を取り上げるとなりますと、国内資金にはなかなかよりにくいから、外国資金を調達するのだという問題にも考えをいたさなければならないのでありますが、この国内の五ヵ年整備計画が進んだその後にでも、この新幹線計画が取り上げられるようになりますれば、また資金計画が変ってくる、かように思うのであります。問題は、すでに実施計画の立っておる五ヵ年計画の遂行と、この新幹線計画に対する実施計画、それとのにらみ合せの問題として私どもも処置したい、かように考えております。
  56. 鈴木強

    鈴木強君 その東海道新幹線に対してどのくらい、外債か外資か知らぬが、大蔵省としては考えているか。
  57. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 先ほど来申しますように、まだ実施計画が立ちませんから、そこまで進んだ話はまだございません。
  58. 西田信一

    西田信一君 次に、これは国鉄総裁でも運輸大臣でもよろしいのでありますが、お答えを願いたいのは、非常に国内輸送の隘路になっておりまする青函連絡について、これは私の調べたところでは、昭和十一年ごろに比べて確かに貨物量は四倍ぐらいになっておるというふうに考えられまして非常に滞貨が多い。ことに季節的な滞貨が非常に多い。ふだんでも平均五日間ぐらいの滞貨が常にあるように私は承知しております。そこで、現在は上下十八便のたしか運航と考えますが、これはすでに五ヵ年計画にもこの問題を取り上げられておるわけでありますが、この青函連絡をさらに増便するというような考えはないかどうか、伺いたいと思います。
  59. 十河信二

    説明員十河信二君) お話のように、この海峡の連絡はときどき相当詰まって参ります。現在はまあ最高十八運航をやっておりますが、これを十九運航に増し、またこれを二十運航に増したいと、こう考えて、計画を進めておるような次第でございます。
  60. 西田信一

    西田信一君 その十九運航に増す時期はいつか、二十運航に増す時期はいつか、それをお示し願いたい。
  61. 十河信二

    説明員十河信二君) 本年中に十九運航にいたしたいと、こう考えております。これは東北の輸送力等とも見合いまして、総合的に計画を進めたいと、こう考えております。
  62. 西田信一

    西田信一君 二十運航はいつですか。
  63. 十河信二

    説明員十河信二君) 二十運航はその次でございまして、東北の輸送力とも関連しまして、その次に二十運航にしたい、こう考えて進めております。
  64. 西田信一

    西田信一君 東北の輸送力の強化と見合って青函航送の増強をはかるという御答弁でありますが、この機会に伺っておきたいのでありますが、東北本線、これは非常にまあ行き詰まっておるのでありますが、これが青森まで複線化する時期は大体何年ごろでありますか。
  65. 十河信二

    説明員十河信二君) ただいまのところ、たしか三十五年度までに仙台、それから仙台—一ノ関間はただいま複線を増強しつつあるのであります。そこが一番詰まっておりますので、それをやりまして、それから必要に応じて順次青森まで進めていきたい、こう考えております。
  66. 西田信一

    西田信一君 青函隧道の問題は、すでにこれは相当国会においても議論され、また、すでに国鉄等の青函隧道については技術的調査を終って、実施の段階に入ったということを、しばしば当局は言明されました。そこで、三十三年度から実施調査に入ったはずでありますが、その調査の結果はどうなったか。また、本年度以降についてはどういう計画を持っておるか、また、実際に工事にほんとうに着手するのはいつの時期であるか。こういう点について一つお答えを願います。
  67. 十河信二

    説明員十河信二君) 青函隧道は、御承知通り三十数キロに及ぶ長い海底隧道であります。海底隧道の開さくは世界においても日本以外に例がないのであります。われわれといたしましては、三十三年度は一億円、三十四年度は一億五千万円の調査費を投じまして、いろいろ地質の調査等を進めて参っておるのであります。あそこに、地質調査をいたしました結果、ひどい断層があることを発見いたしました。この断層に対してどういう工法をやったらいいかということを、今、盛んに検討をいたしておるような次第であります。丹那隧道でわれわれはひどい苦い経験をなめております。世界に例のない長い海底隧道の掘さくをやるのでありますから、十二分に調査をいたしまして、一応自信を得て、それからあとに、これは大事業でありまして、各方面に非常に影響をいたしますから、それらの関係方面ともよく御相談をいたしたいと、かように考えまして、明年度は、さらに調査を進めるように、一億五千万円の予算を計上しておる次第でございます。
  68. 西田信一

    西田信一君 御答弁によりますと、なお慎重に調査を要する段階であるように伺いました。従って、着工の時期もただいまの答弁では明らかにされませんが、要するに、青函隧道は、ただいまお話通り、世界に初めて行われるような長い隧道であるということは間違いありませんし、従って相当の年月を必要とするであろう。しかしながら、これはただ国鉄の連絡航路という以外に、いわゆる九州の方も通じましたし、北海道の海底で、要するに陸連絡をするという意味において重大な意義があろうと思いますので、一つ極力これは推進を願いたいのでありますけれども、しかしながら、なお相当の年月を必要とすることはよく想像つくわけであります。  そこで、先ほど青函航路の増便についても計画を伺ったわけでありますが、しかしながら、北海道の開発、あるいはまたいろいろな面から貨物がどんどんふえて参る。旅客もふえて参る。また青森、函館両港の港湾の能力というものもおのずから限界があると思いますがといたたしますれば、他に何かサブになるような連絡航路あるいは補助航路、こういうようなものを考えなければならぬのではないかと思います。また、そういう補助航路に対する強い要望も長年あるわけであります。また政府当局も、これに対する用意があるというような言明をしばしばされておるわけでありますが、こういうような国鉄のサブの連絡航路あるいはまた補助航路、こういうような計画をお持ちになっておられるかどうか。これは運輸大臣から一つお答え願います。
  69. 永野護

    国務大臣永野護君) お答えいたします。北海道との間の連絡貨物は非常な勢いでふえておりますし、非常に重要な航路でありますから、青函トンネルができれば解決いたしますけれども、これがなかなか急にいかぬとすれば、この間に何か補助航路を考える必要があるのではないかということは、お説の通りであります。いろいろな場所からいろいろな案が立てられておるのです。北海道開発庁の方でもいろいろお考えのようであります。目下いろいろな案について検討しております。あるいは苫小牧とか、室蘭とか、いろいろな案がありますけれども、まだどこにどういうような補助航路を設けたらいいかということにつきましては、調査の結果が出ておりませんので、せっかく検討中でございます。
  70. 西田信一

    西田信一君 ただいま運輸大臣お答え願った問題については、北海道開発という立場からも重大な問題でありますので、山口長官のお考え一つ承わりたいと思います。  なおこの機会に、念のために伺っておきたいのでありますが、過般新聞報道によって承知したのでありますけれども、開発庁におきましては、八戸と苫小牧にフェリーを運航をする、こういう発表が大きく載っておりました。衆議院でもこの問題について質疑があったように承知しておりますが、この構想というものはどういうものなのか、フェリーといいますから、道路公団等による有料道路的な構想であるのか、あるいは鉄道の連絡航路、こういうふうに考えておられるのか、ないしはまた民間の何か補助航路とかいうふうなものを考えておられますのか、これはどういう構想であるのか、これは一つ大臣にお伺いをいたしたいと同時に、この問題について、運輸省といたしましても、こういうようなことについて何かお考えがあるのかどうか、一つ伺いをいたしたい。
  71. 山口喜久一郎

    国務大臣山口喜久一郎君) お答えいたします。  お尋ねの点につきましては、開発庁としてもいろいろ諸般の材料を集めて研究中でありますし、また、これに伴って日勝線の問題も当然起きて参りますし、フェリーの問題では、八戸と、北海道の一つの港とつなぐ、はっきりどこというようなことを今ここで申すのは遠慮しておきたいと思いますが、そういうことについて、運輸当局とも十分一つ懇談して、そうして青函トンネルができ上るまでの補助航路として、何とかそういった面において五百万の北海道道民の非常な要望にこたえたいものだと、せっかく開発庁においてもいろいろ考究しておるような次第でございます。
  72. 永野護

    国務大臣永野護君) 先ほども申しましたように、また、どことどことの間を結ぶのが適当であるかというような点につきましても結論が出ておりません。検討中でございますので、従って、その運航の形式についての御質問がございましたけれども、これまだ全然未確定でございます。
  73. 西田信一

    西田信一君 この機会に、私はいい機会でありますから、一つ運輸大臣国鉄総裁に伺っておきたいと思います。  それは、国鉄が各駅に鉄道の地図を、鉄道線路図といいますか、地図を張っている。この地図の中に、一枚の紙にかかれた地図でありますが、それに本州、四国、九州、北海道、この四つの日本の島のうち、北海道だけが特別に違った縮尺で小さくかかれておるのでありますが、これはどうも私は理屈がおかしいと思う。具体的に申しますと、九州、本州、四国は百二十万分の一、北海道は百六十万分の一、これは距離でいうと四分の三、面積では一六分の九だから、約半分ということになっておる。これは一体どういう理由からこうなっておるのか知りませんが、面積がこの半分くらいになっておるということは、たとえば鉄道の普及の密度の問題につきましても、あるいは距離の感じからいいましても、これは非常におかしなことでありますが、紙の節約のためにやっておるとするならば、もう三千数百億を持っておる国鉄のやり方としては、はなはだどうも受けとれない。これはいろいろなことで錯覚を起すのでありますが、一体、全国にこういうような地図をなぜ張ってあるのか、私は理由がわからない。これはいろいろな点に影響します。地方の鉄道敷設を軽視するという結果にもなるような気もいたしまして、はなはだけしからぬと思うのでありますが、少くともこのような一枚の紙で、紙代なんというのは知れたものでありますから、この際鉄道線路図、全国に張ってあるこういう地図は、同じ縮尺にして、そうして国民に誤まりながらしめる、こういうふうにやっていただきたいのですが、無意識のうちに、潜在意識のような圧迫を受けるというようなことがあると思う。これについては、どうですか。運輸大臣国鉄総裁、改めるお気持はありませんか。
  74. 永野護

    国務大臣永野護君) 北海道の地図が九州なんかに比べて比較的小さく出ておるというのは、その通りでございます。これは、しかし、どういう理屈でそういうことをしたという御質問でございますが、理由はないのでございます。とにかくしかし、これは、国鉄の地図ばかりではございません。他の文部省の地図などでも、みなそういうふうになっておるのであります。ただし、今お説の通り、北海道の立場からみると、非常な無意識的の一種の圧迫感をお受けになるのもごもっともかと思いまするので、大体北海道を特に並へますと、そこだけ紙が大きくなるというような理由であろうと思うのでございまするので、御説ごもっともでございますから、これは主管官庁でありまする国鉄とよく打ち合せまして、御期待に沿うように訂正していきたい、こう考えております。(矢嶋三義君「北海道を軽視するなということを言っておるんです」と述ぶ)
  75. 十河信二

    説明員十河信二君) ただいま運輸大臣からお話がありました通りでありますから、全体を表わす場合には、北海道も、同じ百二十万分の一の地図で表わしておるのであります。小さい地図になりますと、紙の大きさに制限がありまして、北海道は、百六十万分の一になっておるのであります。そのなには、便宜上1こちらの方は、駅の数が非常に多いために、駅を表わすのに、どうも少し大きくしないとわからない。北海道は、駅が少いために少し小さくしてもわかると、こう単純に、公衆の便宜をはかってそういうふうにしている次第であります。別に他意ないということを御了承を願います。
  76. 西田信一

    西田信一君 公衆の便宜をはかってとおっしゃるけれども、小さく図面を書いてもらったら、公衆は何も便宜を感じないのです。これは、少くとも運輸大臣答弁されましたから、あなたにさらにお聞きいたしませんけれども、こういうものはさっそく、紙の少しの節約などと、そんなけちなことを考えないで、東海道線に千七百億もかけてやろうという国鉄総裁に、もう少し大きな気持でさっそく改めていただきたい。大丈夫ですね。  ついでに文部大臣おられますね。文部大臣一つお聞きします。  ただいま運輸大臣からも、これは別に理由がないが、文部省あたりもごうやっているが、こっちの方もまねたというような運輸大臣の御答弁でありましたが、これは私、大きな問題だと思うのです。小学校、中学校、あるいはここにこういう大きな図面があります。私は一冊借りてきたのですが、高等学校、これを全部通しまして、これはまた、文部省の社会科で使っておる人文地理の地図は、もっとひどいのです。これはもうはっきりおわかりになっておると思いますけれども、関東地方が百万分の一、近畿地方が百万分の一、九州地方が百二十五万分の一、東北、四国、中国地方は、百五十万分の一、北海道は二百万分の一というスケールでこれが書いてある。そうしますと、関東、近畿に比べて、九州は、距離では四分の三です。面積では半分、十六分の九、東北、四国、中国は、距離が三分の二です。そうして面積では半分以下、九分の四です。ところが、北海道は、距離が半分で面積が四分の一、九州より小さく書いてある。これが、小さな問題のようだけれども、非常に大きな影響を与えておる。あなたも、ここにおられる各大臣も、政府委員も、政府の役人も、全部、小学校からずっと、国定教科書の時代から、こういうような地図を見せられてきておる。このことは、これはただいま、国鉄が錯覚を起して、簡単に、そんなこと、小さく書いても何でもないというように言ったのは、こういうようなことから原因があると思うのです。これが知らず知らずの間に潜在意識になりまして、距離とか広さとかいう感覚を失ってしまって、で北海道に旅行されて、北海道は広いなということを初めて大臣でも漏らされる、ということは、すでに北海道を小さな地図で見ておるから、知らず知らずの間に錯覚を起すのであって、縮尺で勘定して計算した頭で拡大してみるということはないわけです。だから、こういうような間違ったごとになってしまって、これは、結果的に非常に大きいと思う。たとえば、やはりあなたの所管の教育行政にいたしましても、教育の施設をするにいたしましても、地方の行政の問題につきましても、地方の財源の問題につきましても、あるいは鉄道の普及の問題にしても、あるいは文化施設をやるにしても、あるいは、厚生施設をやるにしても、道路の整備をやるにしても、何か小さい土地であるような錯覚を起して、これが大きな結果になって、国の行政をあずかる立場から、非常に私は大きな問題だと思うのです。こういう点について、文部大臣としてどのようにお考えになるか。少くとも、国定教科書ではないけれども、文部省は一つの基準を示しておるのですから、教科書の縮尺なども、これをもう少し考えるという気持がないかどうか。これを一つ伺っておきます。
  77. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 先ほど国鉄総裁から、文部省の方の地図もいろいろになっておるというお話がありました。これを引き合いに出されるのは迷惑でありまして、これは、もう御承知のように、実は児童の地図帳の中に全部を入れます場合に、現在のようにあまり紙に余分のものを出さずに一枚の帳面でやる方が、子供が扱いやすいというのでできている一つの方針でございます。しかし、西田委員お話のように、これは確かに観念を誤まるおそれはあるのでありまして、多少の扱い上の便、不便というものを考えても、一冊の帳面では、縮尺を同じにして、そのかわり折り込みが出てきますけれども児童の扱い方の問題とか、経費の問題とか等はございますが、これは十分検討に値する問題だと思いますので、現在のところでは、これは児童の便宜、扱いの便宜からいって、折り込みがない方がいいというので、一枚にして、従って、地域の広狭に応じてこの縮尺が違っております。その場合には、観念の誤まりのないように、十分それを付記いたしまして、間違いのない教育をしておるわけでありますが、ただいまの御提言につきましては、教育上の大事な問題でありますから、もう一応、教育関係の審議会において問題にしてみたいと思います。
  78. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 関連。
  79. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 何ですか。——関連質問ですか。
  80. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 文部大臣お話は、私は、全く納得できないのです。国の大きさ、地勢というものは、初めから正確に表わして教えるのが当然なんです。便宜であるとか、わずかばかりの経費だとか、折り込みがどうだとか、これはもう理由にならないのです。そうして、地図を別にしたときには、縮尺を大きくしてあるからいいとおっしゃるけれども、初めから日本全国をながめて、国の割合だけを見ておりますから、その割合だけしか考えない、そういう教育を受けてきたわれわれおとなが、そういう弁護をして、日本の地図が実体といものを表わさない。これは、非常な間違いだと思うのです、私は、いやしくも祖国を教えるならば、いずれの場所においても、正しい形において教えなければならない。また、教える方でも間違いなく教えていくとおっしゃいますけれども、私はそれを信じられないのです。これは何分の一の地図だと生徒に言ったって、それがどれだけの差があるか、小学校の生徒がわかるはずがないのです。また、それだけの注意さえも、先生方がしておるかどうか、私は疑問に思うのです。ですからこれは議論の余地なく、文部省は正しい教育をする意味において、日本全国の地図を一目見たならば、目で見ただけで感覚的にすべての大きさがわかるというようにすべきであって、それを検討してみる余地などはない、教育は正しい真理を教える、正しい真理は、大きさを大きいなりに初めから教える、私は文部省にそういうふうに考えていただきたい。
  81. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 答弁の前に関連して、同じ問題ですから、三人に一緒に答弁していただきたいと思います。事は非常に重要で、私の考えでいえばきわめて低級なる取り扱い方をしていると思う。私は文部大臣を今の質問者と違った角度からあなたの不見識を責めますよ、あちらの方からあなたを責めた、私は違う角度から文部大臣としてのさっきの答弁の不見識を責めます。科学的精神、科学的態度の涵養ということを最近言われているのだが、この基本的な問題は単位というものが重要なのです。表を見たときには、数字を見たときにはユニットは何かという、地図を見た場合何分の一かという単位というものが、科学的精神、科学的態度の涵養ということに一番大事なのです。地図の大きいとか小さいとかいうことは、見せられたらまず縮尺は何分の一かということを見なければならない。文部省の地図の中の、九州は五十万分の一で北海道を百万分の一に同じ地図で表わしておったら問題です。九州のところでは便宜上五十万分の一、北海道の場合には便宜上二百万分の一にするのは、何も北海道を軽視しているのではない、教えられる人と、教える人の教え方がいけない。まずこの地図を見たらこれは何百万分の一だということを教えて、教えられる人もその態度で教えられればいい。ところがわれわれの受けた当時の教育は、科学的な教育というものに徹底していなかったから、われわれはそういうなにを受けているのであって、今の教師がりっぱな方針でりっぱに教えていればそんな影響はない。ところが文部大臣はこちらの意見を入れてごもっともだから云々というような、少くとも今の時代における文部大臣としては不見識ですよ。
  82. 田中啓一

    田中啓一君 関連質問。ただいま大へん北海道の方が不見識な意見を吐かれたような関連質問矢嶋さんがなさいましたが、私は不見識だとは思いません。大へん矢嶋さんは、地図には必ずスケールがついているから、スケールというものをちゃんと先に教えてやればそういう間違いは起らぬはずだというお話をなさっております。ところが人間の理解力というものはそうはいかないのです。それから一体今日の学校の先生方は、大へん私は失礼なことを申すようでありますが、それほど注意をして、私はスケールというものをもとにして教えておるかどうか疑問に思われますので、でありますから、やはりこれは子供もおとなも通じて、ことに一体子供が地図を買ってくるときにはおとなも見るのです。知らず知らずの間に北海道というものは大きいものでないということは、これは大ていみな思うのです。やはり小学校とか中学校とかいうのはそんなに、私は実は地図屋みたいな人間なんです。国土開発ということを一生懸命やっておりますから、普通の人は一ぺん行ってみなければよくわからぬということをいわれますけれども、私は五万分の一の地図は、大てい人がいわれたくらいの理解力は持っている。それでもなかなか北海道というものに対しての観念は、やはり西田さんや苫米地さんの言われるような弊に私自身が陥っているのです。そういうものなんであります。でありますから、私はどうも一冊の地図で各地方別に表わしておくような場合には、折り込みはできても、やはり同じスケールでやっていくということが必要ではないか、私は実はそういう意見を持つのです。あながちこれを不見識として片づけられるというのは、人間の理解力というものについて大へん理想を追うておられるけれども、なかなかそう理想通りに人間の理解力というものは進まぬものだということを申し上げまして、一つ答弁の資料にしていただきたいという意味で、関連質問をいたします。
  83. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ちょっと釈明します。私は、質問者が不見識だ云々ということにおとりになったとすれば、その点は取り消します。私は文部大臣答弁文部大臣として不見識だという点に重点をおいて質問したわけですから、その点御了解いただきたいと思います。私は地図なんかというものはユニット、縮尺というものが大事だと思う。ここにアメリカの地図と日本の地図がある場合に、アメリカの縮尺を小さくして日本のを、五十分の一ぐらいにでかく日本の領土を書いても、日本を広いなと思うというようなのは、科学的精神のないもとですよ。だから地図なんか見るときは、文部大臣にいうことは、縮尺というものは大事なんで、今の学校の教師というものは単位というものは非常に重視してやっています。昔は天皇陛下が何か災害があったときに御下賜金を何万匹、何万匹とか何十万匹というと非常にたくさん金をもらったように考えるが、匹という単位は何ぼだということで、このくらいかということを考えるので、単位を無視した数字でごまかされるということは誤まれる非科学的な教育を受けたお互いがそういう印象を受けるのであって、これからの今の教育というものはそうではない。だからその立場から少くとも文部大臣答弁は、就任早々の関係もありましょうが、やや私は不見識であったという点を責めているわけであります。質問者を責めているわけではありません。
  84. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) いろいろ大へん有益な御意見を拝聴いたしまして、冗談ではなしに私は感謝いたしております。ただ私の答弁が不見識だというお話がございました。私さように考えておりません。私も御提言の点は真剣に考えているわけでありますが、もちろん地図は正確に考えなければなりませんので、全部の地図に縮尺を付記をいたしまして、それぞれ観念の混清のないようには十分教科書編さんの際も検定の際も考えておりまするし、教育の際にも注意をいたさせているわけであります。ただ、私先ほどの御提言に対しまして、結論を必ずそうするというお約束をしたわけではありませんけれども、この地図帳の中で全部縮尺が明記してございますが、いろいろな地図があって、日本全土でありますとか、地方の部分図でありますとか、いろいろ縮尺があるわけであります。ただこの主体になっておりますのは、先ほどお話のあったような九州地方、中国、四国地方、それから関東地方、東北地方とか何とかいうように並んでいる。これはざっとした常識的な観念からいうと、先生もめくったときに一々違うぞということを注意しながらでも、まあ同じように、子供が常識的な判断で見やすいおそれがあるということはあり得ようかと思いますので、外国の地図なんかでも、地図帳でまとめたものについて、その点をそろえるために、一つ一つ大きい小さいで折り込みを使った扱いの不便なものがございますが、私はただいまのお話がございました場合に、文部大臣として現状が非常に最善である。一議にも及ばないというのは、これはどうも真剣な御質問に対して失礼だと思うし、私もそれだけの検討はして見る値打があると思っているわけであります。ただし、苫米地先生から逆な意味で不見識千万だというお話がございましたが、これはやはり縮尺を明記して、そうしてそういう点も十分頭に入れながら教示をする、しかも扱いはなるべく簡便であるといってできましたものを、その点がそろっておらないというので全部私のところで没にするというのは、これもどうも少し行き過ぎでありまして、そういうものを検定不合格にするかどうかということは、これはやはり今矢嶋委員からお話通りに別の考え方で、それはむしろ教育の材料としているのじゃないかという御意見もあるし、それから扱いの便不便といういろいろの問題もあるわけでございますから、これは一議に及ばず不合格というわけには参りませんので、ただいまお話のありました通り、どうせ一冊の地図帳の中には、いろいろな縮尺が出てきますが、ずっときた大分けの地方分けについてはただいまお話通りに、あるいはその縮尺をそろえるために多少の折り込みをつけたものを作る。その方が観念の混清がないということは、私一つ問題にして検討をさしていただきたいと思います。
  85. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 今の問題について私の発言に誤解があるようですから……。
  86. 鈴木強

    鈴木強君 委員長、議事進行について。
  87. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 苫米地君に発言を許しておりますから。
  88. 鈴木強

    鈴木強君 議事進行は一切の議事に先行するんでしょう。
  89. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 議事進行より、先ですよ。  私の言っておるのは、一枚々々の地図のことを言っておるのじゃない。全国の地図を表わすときに別々の尺度を用いちゃいけないと思います。一枚の地図、日本全国の地図を表わすときに場所によって別個の縮図を用いてはならない。一枚の地図においては同一縮図ですべてを表わせ、私はこう言っております。一枚々々の帳面なら一枚々々縮尺を表わしておるからよろしい。私はそんなことに対してものを言っておるのじゃない。それはオランダあたりがインドネシアを支配するために、自国を非常に大きな地図にして、インドネシアを小さくしてやっておる。これは従来やってきた手です。そんなことはほかの国のことだからかまわないけれども。とにかく日本においては日本全体の地図を表わす場合には地方によって縮尺を変えてはならない、こういうことになっておる。それを一枚々々の地図、九州だけのものは九州だけの縮尺図でいいでしょう。東北だけのものは東北だけの縮尺図でいいでしょう。私はそういうことを言っておるのではない。日本全体の地図を言っておりますから、そのことを誤解しないようにしてもらいたい。
  90. 鈴木強

    鈴木強君 議事進行について、私は先ほど発言を求めましたが、議事進行を質問中にやってはいかぬという見解はどういうのですか。
  91. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) いや、苫米地さんに発言を許したものだから……。
  92. 鈴木強

    鈴木強君 議事進行は一切の議事に先行するのじゃないですか。(「いや、それは違うよ。」と呼ぶ者あり)だからそういう点は委員長、今後注意して下さい。(「委員長に聞えなかったんだろう」と呼ぶ者あり)ああ、そうですが。委員長は耳が聞えなくて私の議事進行がわからなかったならいいけれども。
  93. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 鈴木さん、私語をせずに。あなたに発言を許しているのですから、どうぞ。
  94. 鈴木強

    鈴木強君 これは今の文部大臣の御答弁にもありましたように、西田委員質問に対して十分に検討する余地があると言われておりますから、私はそれでいいと思います。ただし田中委員の発言の中に、縮尺のユニットをそれぞれ明示しておりますが、そういうことに対して教える先生がそういうことを気づいてやっておるがごとき発言があった。これは私は非常に重大な問題だと思う。少くともそのまじめにやっておる教職員に対して侮辱を与えたものだと思います。ですから本人が今いないようですから取り消しを要求してもできませんが、委員長、議事録を調べて、そういう不穏当な点は善処して下さい。どうですか。
  95. 西田信一

    西田信一君 ちょっと……
  96. 鈴木強

    鈴木強君 今の私の発言についてはどうなんですか。委員長見解を伺っておるのです。そういうことがあったので善処して下さいますかというのです。
  97. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) よく速記録を調べてみましょう。田中さん今退席しておりませんから、よく調べてみて、どういうような言葉があったかよく調べてみた上で理事会でよく検討いたしてみたいと思います。
  98. 西田信一

    西田信一君 どうも私の質問が大分いろいろ波乱を呼んで恐縮であります。(拍手)文部大臣はわれわれの言うところを検討されるということでありますから、私はその検討に期待いたしますが、幸い北海道のことが問題になったので、北海道開発庁長官が北海道は非常に広い、どうも広さが狭く感じられておるというので何か長官、北海道開発上支障がないかどうか御見解伺いたい。
  99. 山口喜久一郎

    国務大臣山口喜久一郎君) 私が北海道開発庁長官に任命されて各地を親しく視察いたしまして私自身もそういうふうに感じたことがしばしばあるのでありまして、よく私は北海道の広さにおいて質問を受けますので、そういう場合において、たとえば根室から函館は東京—糸崎間の距離だと説明しております。そうしてまた広さは台湾と朝鮮と九州と山口県を加えた広さである。それから東北六県と新潟県を加えた広さであると説明すると、大へん不思議と思われるような方もあるのでありますが、そういう意味におきましても、私は学問上のこと、教育上のことにつきましては今地図を拝見して非常によくできておるとは思いますが、やはり鉄道の地図等につきましては十分に西田委員主張されるように今後改正をして、このただ単に地図が児童ばかりでありません。一般の遊覧の観光客等に対しましても北海道を旅行する人々がつい錯覚を起して狭いなと思ってこられると、いろいろ観光客自身がお困りになることもありますし、そういった点においては、ぜひ国鉄の地図等においては御改正を願いたい、こう思っております。
  100. 千田正

    ○千田正君 関連……。今の答弁について。  ただいまの答弁の中に誤っちゃいけないと思うから質しておきたいのだ。あなたの御答弁の中に朝鮮、台湾、九州を含める。そんな大きなところで北海道はありますか。その辺ははっきりしておかないと。
  101. 山口喜久一郎

    国務大臣山口喜久一郎君) 東北六県と新潟県、それから九州と四国と山口でありまして、台湾は別のものと組み合せるのとちょっと混同いたしました。(拍手)
  102. 西田信一

    西田信一君 次の問題に移ります。  政府は新長期経済計画によって予想される経済の伸びを基礎にいたしまして、輸出物資あるいは石油、石炭、鉄鉱原料等を扱う国家的重要な港湾の整備を促進するために今回特定港湾施設工事特別会計を設けられました。また、特別措置法を制定して受益者負担の制度も確立されることになりました。これは大へんけつこうなことでありますが、しかしながら、私ここでお聞きしたいのは、このような港湾の緊急整備ということは、これは道路整備の五ヵ年計画のごとく、やはり年度計画というものが必要であるというふうに実は考えるわけであります。ことに受益者負担立場にある企業者の立場から考えましても、企業の計画上からも、これは当然大体でき上る年度のめどというものが必要でありまして、こういう点から言うならば、むしろ道路よりも、この重要な産業と直結しておるところの港湾の整備においてこそ年度計画の確立が必要である、こういうふうに考えるわけでありますが、今回の政府の提案にはそのことがありません。そこで少くとも私は三十三年度から発足しましたいわゆる道路整備の第一次五ヵ年計画と、年度的に符節を合すべきものであるというふうに考えるわけでありまして、そういう点から申しまするならば、大体四カ年計画程度が妥当であろうというふうに考えるのでありますが、年度計画を立てるお考えがないかどうか、これは運輸大臣と大蔵大臣からお答えをいただきたいと思います。
  103. 永野護

    国務大臣永野護君) 港湾計画につきましては、道路計画のような国全体の認めております五ヵ年計画というものはまだできておりません。しかし運輸省自体といたしましては、五ヵ年  計画を立てておりまして、まず総工事費を一般会計で千七百五十億円、特別会計で三百十三億円、合計二千六十三億円といたしまして、これに各年度の割り振りをいたして進んで参っております。その毎年度の年度割について申しますると、毎年四八%ずつ伸びていけばいいわけでありますけれども、三十四年度の三十三年度に対する伸びは七八%でありまして、今の調子で参りますると、予定の期間内に、五ヵ年内に今申しました千七百五十億円の一般会計、三百十三億円の特別会計の工事は支障なく完了する見通しでございます。
  104. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 道路計画の場合はガソリン税のような特別財源を持っておりますので、比較的計画が立ちいいのでありますが、港湾の特別会計の場合は、やはりその財源を一般資金から仰いでおりますために、そのときどきの財政状況でいろいろ変化をきたすことも予想しなければならないのであります。しかしただいま運輸大臣が申しますように、経済の成長、それに対応するための特別施設でございますから、これが長くかかったり、計画が立たないようでは困りますので、予算編成に当りまして十分その点を考えていくつもりでございます。
  105. 西田信一

    西田信一君 大体了承いたしましたが、ただ一点運輸大臣お答えの中に、これは一般港湾との関係、特別会計以外の……、それを混同されたのかもしれませんが、五ヵ年計画を持っている、こういうお答えでございましたが、運輸大臣のこの特別措置法の提案の理由を読んでみますというと、今回の緊急整備については、「おおむね」という言葉を使っておるのでありますが、「おおむね」四カ年間でやる、こういう説明をされておるでありますが、その四カ年間というものを「おおむね」でなくて、確定してもらえないかという意味で私は年度計画の樹立の必要をお尋ねしたわけでありますが、ただいま五ヵ年ということでは、説明と御答弁とが食い違っているように思いますが、その点はいかがですか。
  106. 永野護

    国務大臣永野護君) お答えいたします。ただいま五ヵ年計画と申しましたのは一般会計。それから特別会計の方は四カ年計画であります。訂正いたします。
  107. 西田信一

    西田信一君 次に、運輸大臣に観光の問題についてお伺いをしたいのでありますが、これは政府におかれましても、観光の問題は相当重要視されておることは大へんけっこうなことだと思います。しかしながらなお不十分の面が多々ございますので、私は二、三点具体的に一つこういう考えはないかということをお聞きいたしますから、お答えを願います。  第一は、外客の宿泊施設の整備計画というものが立っておりますが、これに基いて中小企業金融公庫から貸出が行われておりますが、これがわずか最高一千万円とされておる。これではとても十分な施設ができませんが、これをもっと数倍に引き上げる必要があると思います。さらにまた、貸出期間も最長五年ということに定められておりますが、これも少くとも期間は十年ぐらいにする必要があろうと思いますが、そういうことに対してどういうお考えであるか。さらにこの問題は大蔵大臣からお答えをいただいた方が適当と思います。  それから外客を誘致する旅館用の外貨の割当を行うべきじゃないかということを考えておりますが、この点はどうか。  それから登録旅館とか登録されたホテル以外は、外客の遊興飲食税の免税の措置が講ぜられておりませんが、やはり向うの好みによりましてこの登録以外の旅館等も相当利用されておる現状から見まして、これは同様の措置を講ずる必要があろうかと考えますが、これはどうか。  これらの点につきましては、いずれも運輸大臣と大蔵大臣からお答えをちょうだいいたしたい。
  108. 永野護

    国務大臣永野護君) お答えいたします。観光施設の整備拡充ということは、私の最も関心を持っておることでございまするので、ただいま御指摘のありました、一千万円の宿泊計画に対する融資が少いと——御同感でございます。われわれの実は希望は五千万円ぐらいにしてもらいたいと考えておりまするし、また期間も十年ぐらいにしてもらいたいと、こう考えてせっかく交渉中でございますけれども、まだ結論に達しておりません。御趣意はまことに御同感でございます。  それから外貨の割当の方は、今ホテルにはいたしておりますけれども、内地の宿屋に対しては非常に範囲が広くなりまするので、これはむしろ大蔵大臣の方から御答弁を願う点じゃないかと思います。  それから登録制以外の宿屋に云々というお話がございましたけれども、実は登録制以外の宿屋となりますと非常に数が多くなりまして、どこで線を引いたらいいかという非常にむずかしい技術的の問題がございますので、とりあえずのところは登録制の宿屋ということに限定しておる次第でございます。
  109. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 融資限度並びに期間等についての具体的のお尋ねだったと思います。  私どもも観光事業は非常に大事だと思いまして、そこで外客誘致というか、国際観光と国内観光はやはり区別して考えるべきではないかと思うのであります。今回運輸省を中心にしての観光協会を設立されるに当りまして、おそらく今後は観光融資計画なども具体化して参るだろうと思います。そういう場合に、ホテルの整備状況はどうであるか、あるいは道路、自動車、そういうような問題がそれぞれ取り上げられて参るだろうと思います。こういうことをやはり計画的に推進して参りませんと、観光事業が大事だというだけで、どれもこれもみんな旅館あるいはホテルの整備ということに投資いたすこともいかがかと思います。ただいま一千万円の限度なりあるいは融資期間の延長などについては両省でいろいろ協議中の由承わっております。
  110. 西田信一

    西田信一君 もう一点伺いたいのでありますが、東北とか北海道あたりは非常に観光客が多くなって参っております。ことに北海道あたりは相当雄大な観光地を持っておるわけであります。ところが施設がほとんどありません。そこでこれに対する北海道東北開発公庫というものがございますが、これが融資対象になっておらない。しかしながら、この外客招致あるいは北海道開発という面から考えましても、これはまた私は閑却できない問題だと思うのでありますが、これが全然この道が開かれておりませんが、これに対しましては強い要望もありますし、また私は実際上これは必要であり、その道を開くべきであるというふうに考えますが、大蔵大臣、北海道開発庁長官はどのようにお考えでございましょうか。
  111. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 北海道の観光施設が整備されておらない。この点で北海道東北開発公庫をして融資の対象にさせるという御要望のようでございます。私ども観光施設の整備につきましては、相当採算性の高いものでございますから、普通金融も可能ではないかというような点で、いわゆる特殊産業開発というような公庫の対象にしないけれども、他で大体融資ができるだろうと、こういうのが考え方のもとでございます。しかし、ただいまお話がありましたように、公庫をしてまた特に力を入れさせよ、北海道の産業としての観光事業の地位をもう少し考えろと、こういうことにつましては、なお私ども研究させていただきたいと思います。
  112. 山口喜久一郎

    国務大臣山口喜久一郎君) 北海道においてしばしばこの議論のあることは承知いたしておりまするので、私からも大蔵当局にいろいろ御相談をして、これが実現に努めたいと思っております。
  113. 西田信一

    西田信君 次の問題に移ります。農林大臣お答えを願いたいと思います。  日ソ間におきまして一九五九年一月一日以降オホーツク海の公海におきまするサケ・マス漁業について、これは魚族資源保護増大のためにという理由をもって、ここの区域内に入漁することを停止いたしております。オホーツク海の公海に対する禁漁については、これを解除することについて、ことし日ソ漁業委員会に提案する意思はないということは、過般農林大臣は衆議院のたしか農林委員会かにおいて答弁されたと承知いたしております。これはなかなかめんどうな問題であることはよく承知しておりますが、わが国の漁業関係者の強い要望もございまするし、また、漁撈の方法等にもよることでございますが、特に沿岸漁業家の非常に強い熱望があるわけでありますが、政府としましては、将来この問題はどのように処理しようとする方針なのか、将来の問題として、近い将来の問題としてどのように考えておられるか、この際政府の御方針を伺っておきたいと思います。
  114. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) オホーツク海に対しまする出漁の問題でございますが、これは第一回以来ソ連の強い要望のありました問題でございます。昨年は日本側におきましても、魚族資源保存の関係からこれに同意しておりまして、今年から出漁しない、こういう約束をいたしました関係上、今年はこれに対しましてその禁止の措置を撤回するという申し出をするということは妥当じゃない、こういう考えでおるわけであります。しかしながら、これは両政府の話し合いにおきましても、資源の調査を十分にしてそしてやるということになっておりますので、昨年もオホーツク海海域におきまして、日本側も参りましたし、ソ連側も資源調査に参ったのであります。本年も、三十四年度におきましても、依然この事業を継続して周密な資源調査をいたしたい考えでございます。従いまして、わが方におきまして、この資源調査の成果がだんだん出て参り、必ずしも禁漁の必要がない、こういうふうな的確な資料を得られます段階に至りましたならば、あのオホーツク海の広大な海域の開放を日本主張して、そして漁業ができるようなことにしたいという所存でございますが、今までのところは、先ほど申し上げた通りでございますから、どうぞ御了承願います。
  115. 西田信一

    西田信一君 日ソ漁業委員会の第三回会議がたしか一月十二日以来すでに二カ月を経過しておると考えます。新聞等の報道によりますというと、科学小委員会におきまする資源論は並行線のままで、なかなか本論の漁獲量の問題に入っておらないように承知をいたしておるわけであります。日本側の主張は十六万五千トンを主張したのに対して、ソ連側はこれに対して何らの回答もせずに、突如規制区域内におきまする非常に広範な禁漁区域の設定、ほとんどすべて禁漁区域にしてその一部分ですらも取らせぬというふうに受け取られるのでありますが、こういう極端な禁漁区域の設定、さらにまた加えて、極端な漁期の制限を提案しておる、従来の何分の一かの非常に短かい期間を主張しておる、こういうように両国の主張は非常に大きな食い違いと申しますか、話にならない状態にあるように考えるわけであります。もし、ソ連側の提案しておるような区域に制限をし、そしてまた、漁期を極端に短かくいたしますれば、これは必然的に、その漁獲量というものは問題にならないほど小さくなって参るのじゃないか、おそらく十六万五千トンの四分の一、五分の一になるのじゃないかというふうに考えられます。要するに、非常に交渉が難航しておるというふうに考えられますが、また、出漁の時期もどんどん切迫して参っておるわけでありまして、こういう状況下にありまして、政府といたしましては、この交渉をどのように進展させるお考えであるのか。きょうは、外務大臣が実は見えておりませんけれども、農林大臣として政府の所信を、一つ、この際明らかにしていただきたい。
  116. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) 本年一月十二日から開催されました漁業委員会の会議の模様は、今御指摘になりました通り、本会議においてすでに十九回、科学小委員会において二十九回の会談を重ねて参りました。しかしながら、双方の資源論につきましても、対立の形をもって終始いたしてきたのでございますが、過般ソ連から提案されましたものは、すでに御承知通り、三階梯地区、三つの階段的な地域におきましては操業を認める、その他の海域は全部禁漁にせい、しかも、その漁撈の期間は三十五日ないし四十五日という、こういうふうにきびしい制限の提案であったのであります。この提案の基礎は、条約を締結しました根本趣旨、同時にまた、従来両国がこの海域におきまして漁業を運営して参りました経緯、同時に、日本にとりましては、これは歴史的な事実等もございますので、とうてい容認ができぬわけでございます。日本におきましては、海洋における魚族のいろんな資源的な、生物学的な見地から主張をいたしておるわけでございまして、これをただ単にわれわれとしては容認するわけには参りません。そういうことから今、熱心にこれに反論を加え、同時にまた、打開の方法を講じておるわけでございまして、われわれとしましては、日本の持つ各般のデータを持ち、かつまた、根本の今申し上げたような趣旨から、根強く、しんぼう強く交渉をいたしまして、そして打開の道を開くと、こういうふうにいたして参りたい所存であります。同時に、この過程におきましても、ある程度の話のついたものもございますが、要は不撓不屈の努力、同時にまた、各般の資料を援用しまして、そして合理的な主張を堅持しまして、そして交渉の万全を期してわれわれの初志の貫徹をはかりたいと、かように考えております。
  117. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 西田君にちょっと申し上げますが、あなたの持ち時間がもう経過いたしましたわけですから、御注意を申し上げます。
  118. 西田信一

    西田信君 間もなく終ります。
  119. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) きわめて簡単ですか。
  120. 西田信一

    西田信君 もうすぐです。よろしゅうございますか。
  121. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 西田君、きわめて簡潔にお願いします。
  122. 西田信一

    西田信一君 非常に難航されておるし、政府の決意もわかりましたが、私、ここでお伺いしたいことは、この北洋漁業というものの考え方です。これをどう考えておるかということでありますが、こういうことが一つの何といいますか、相手方に対して交渉上不利になっておりやせぬかという憂慮からお尋ねをするわけであります。北洋漁業は資本漁業による母船的な沖取り漁業である、こういうことで行われておりますが、政府がこの北洋漁業を扱う基本的な態度として、資本漁業ばかりでなく沿岸漁業につながるところの漁業全体の問題として、日本漁民全体の問題として考えていく必要があるのではないか、こういうような考え方で日ソ漁業交渉に当ってもらいたい。また、そういたしますことによって、やはり日本主張もある程度理解されるのではないかというふうに考えまして、この北洋漁業の本質をどのように政府は理解し、どのように考えており、また、将来これを扱っていくかという基本的な一つ考え方についてお伺いをいたします。
  123. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) 御承知通り、北洋におきまするサケ、マス等の漁業は、三つの態様によって行われていることは御承知通りであります。すなわち一つは母船式漁業によって、それから同時にこれに伴う独航船によって操業が営まれている。同時にまた、日ソ間の協定以外のいわゆる規制外の海域におきましては、流し網漁業並びにはえなわ漁業等が行われているわけでございます。従ってこれらの三つの態様の漁業を貫いてみまして、大多数はやはり零細なと申しますか、中小企業の漁業者のこれは操業でございまして、われわれとしましては、本質はやはり日本の大衆漁業の本質を持っておる、こう考えております。もとより海上におきまするカン詰等を作りますために、母船等の事業を認めているわけでございますが、本質は前段にありますことは申すまでもございません。従いまして今後といえども、われわれはこの趣旨を十分に認識しまして、そして指導の誤まりなきを期したい、かように考えております。
  124. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 西田さんに申し上げますが、どうですか、まだなかなか長いようですから、もう一回ですか。
  125. 西田信一

    西田信一君 まだ二、三問ありますが、簡単にやります。
  126. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) もう一間それでは簡単に許して、あとはまた別に……。
  127. 西田信一

    西田信一君 時間に若干食い込みますが、お許し願いたいと思います。
  128. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) それでは簡潔に願います。
  129. 西田信一

    西田信一君 文部大臣お尋ねいたします。過般私は総理大臣にも質問し、あなたにも質問いたしまして、政府の決意を聞いたのでありますが、それは近く決定が迫られておる東京オリンピック招致の問題、これにつきましては、ほんとうに国民の強い要望といたしましてぜひ実現さしたいと思いますが、私がお聞きいたしたいのは、過般総理は私がこの際一つ政府が適当の人を派遣して、そして少くとも各国間の理解を深め、また誘致を確実にする考えはないか、こういうことをお聞きしたのでありますが、総理はそれは一つ考慮しようということでありました。その後どのように考慮されたか、いよいよ時期も迫って参りましたから、私はこの際一つその考慮の結果、適当な政府代表でも派遣されるという結論に達したかどうか、一つ文部大臣からお答え願いたい。
  130. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) お話のございました点については、なお外務当局とも相談をいたしまして考慮中でございます。御承知のようにオリンピックの委員会は、政府の方でこれの開催に対して極力協力をするということは、向う側も意見を求めておるわけでありますが、開催につきましては、当該開催地の自治体を中心にする民間の協力という形でありまして、あまり政府で干渉がましい形で出てもいくまいかと存じまして、日本側の熱意のあるところを最も効果的に知らせる方法というものをなお検討中でございまして、そのためにやはり政府代表が出るのが一番効果的であるという結論に達しますれば、西田委員お話のあった方向で計らいたいと考えております。
  131. 西田信一

    西田信一君 次に、文部大臣にお聞きいたします。これは皇太子様の結婚式に関するものでありますが、皇太子様の結婚式は四月十日に決定をいたしました。しかもこれは憲法第七条に基く国の儀式として、閣議で決定を見まして、その決定に基いて行われるわけでありまして、私はこれは公けの儀式であると考えておるのでありますが、そこで実は過般、この十四日に、朝日新聞に載っておりますが、この記事によりますというと、文部省全国の都道府県教育委員会等に対しまして国旗の掲揚、あるいは適当の方法で慶祝の意を表するようにという通知を発するとか、発する意向であるとかいうことが報ぜられております。これに対しまして日本教職員組合の見解もここに出ている。それによりますと、皇太子様の結婚は個人的なものであって、慶祝すべきであるけれども、いろいろな行事等は一切反対であるから、都道府県の教育委員会と交渉せいという通知か何かを発したということが、この記事に載っているわけです。それで、このことはいろいろ見解もありましょうけれども、私はこのような国家的、国の行事であるということでありまして、しかも日本国民全体あげて慶祝すべき行事であると考えるのでありますが、こういうふうに、何か文部省の考え方日本教職員組合の考え方が食い違っておるといいますか、対立しておるといいますか、こういう印象を与えることは、国民感情の上からも、はなはだ私は割り切れない、あと味の悪いものを残すのではないかと考えるのでありますが、文部大臣としては、この点についてどうお考えになるか。  できるならば一つそのような食い違いをなくして、そうして国民全部をあげて慶祝を申し上げるということが望ましいと思うのでありますが、この点についてどのようにお考えでございますか。
  132. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 皇太子殿下の御結婚の問題は、もう国家的な行事として行われるものでございまして、まことにおめでたい次第でございます。そこで、文部省といたしましては、当日の扱いにつきまして、地方に指導いたさなければなりませんので、先般、次官通達をもちまして、都道府県の教育委員会、都道府県知事、国立高等学校長、それから付属学校を置く国立大学長あてに、次のような内容の通牒を出すことにいたしました。  御結婚の儀当日の四月十日は、学校の休業日とするということ。それから結婚の儀当日は、国旗を掲揚するということ。それからもう一つは、ただ休むだけではいけませんので、適宜な方法によって、皇太子殿下の御結婚の慶事に対して、国民こぞってお祝いすることの意義をあらかじめ児童、生徒に理解させて、その喜びをともにするようにすることを通達いたした次第でございます。  で、このように通達では、結婚の儀当日は休業を原則とするので、学校で行事を行うような、積極的に指導する意図はございませんけれども、しかし学校、地方等によって、いろいろ意見もあるようでございますので、自主的に行事を行うことは、別に禁止しておるわけではないわけでございまして、学校の行事につきましては、原則は、ただいま通知した通りでありますが、教育委員会や学校が、地域の実情に応じて適宜きめるべきものでございまして、このような慶祝の行事は、地域社会の盛り上りを待って行われることが適当であると考えております。  こういう場合に、日教組が、皇室の私事であるといったような考え方から、全国統一的にどうせい、こうせいといったような指図をするというような、これは実際にそこまでの指令を出すことを考えておるかどうか知りませんが、多少なりとそういうような意見があったように伝えられることは、はなはだ残念なことでございまして、国民こぞってお祝いをする慶祝日に際して、まことにふさわしくないことであると考えておりますが、文部省の考えの趣旨も大体徹底させつつあると思いますので、西田委員お話しのようなことなしに、気持よく慶祝のできるように相なるものと期待をいたしております。この通牒の趣旨につきましては、地方には誤解のないようによく通知をいたしておきました。
  133. 西田信一

    西田信君 最後に一つ道路整備の財源についてでありまして、これは大蔵大臣一つ考えを願たいという意味で申し上げるわけであります。道路整備五ヵ年計画の財源として揮発油税にこれを求め、しかも、これに見合うかなりな引き上げを提案されておるわけでありまして、これにつきましては、いろいろな角度から賛否両論もあり、かなりの批判もあります。また本院でも、また衆議院でもいろいろ論議の対象になっておることは御承知通りであります。また、大蔵大臣は原案を主張せられておることも、予算編成の責任者として当然のことであろうと私は田うのでありますが、ただここで、予算編成当時と今日とでは、かなりの時間が経過しておりまして、若干、情勢、事情の変化も来ておるのではないかというふうに私えられる点もあるわけであります。たとえて申しますれば、揮発油の消費量等におきましても、すでに三十三年度の実績がそろそろ明らかになろうとしておりますが、これなども、若干計画よりも伸びておるというような結果が見られるようでございます。従って、各年度における揮発油消費量の推定におきましても、若干の変化が来るのではないかというふうに考えられまするしまた、本年度は別といたしまして、三十五年度以降、明年度以降、本年度は百億の一般財源の繰り入れがございますが、明年度以降におきましては、それはむしろ少し後退するというようなことに計画されておるわけでありまして、こういう点につきましても、一般財源の繰り入れ等について、三十五年度以降につきましては、相当経済の伸びもあり、国の財政も伸びて参るわけでありまするから、これと見合って若干の繰入額等についても検討の余地がなおあるのではないかというふうに考えられまするし、また、揮発油を使うところの消費業者の税負担能力の問題についても、なおこれは負担し得るものもありますが、また相当困難なものも出て参るという点についても、なお検討の余地が残されておるのではないかというふうにも実は考えるわけでございまして、すでに予算案の審議もそろそろ最終段階に近づきつつありまする今日といたしまして、何らか一つここにこれらの見通しについてお考えを願う必要があるのではないか。私はこういうふうに、道路整備事業計画の遂行ということはこれは絶対必要でございまするからして、これに事を欠くようなことがあってはならないと思いまするが、ただいま申し上げましたような諸点を総合いたしまして、そしてこれはいわゆる年度、五ヵ年間の残り四カ年間の計画でありまするからして、これらの、明年度以降の予算においてその影響がなく、そして事業も遂行できるという見通しがつきました場合におきまして、その限度におきまして若干の、計画されておる引き上げをもう少し下げるというようなことについては御検討を願いたいという意味におきまして、ただ、私はここで大臣から的確などうであるという答弁は求めませんけれども、御考慮願っておきたい。何かお答えがあれば承わりますが、私はむしろ要望的に一つ申し上げまして、私の質問をこれで終ります。
  134. 高田なほ子

    高田なほ子君 今の御質問のその一つ前の御質問だったのですけれども、皇太子殿下の今度の御結婚に際しての御質問の中で、日教組はこれに反対をしておるというような印象を受ける点がございますが、日教組といいましても、これは現場の五十万の先生方は、今度の皇太子様と美智子さんの御結婚については、従来の皇室の御結婚の考え方を新しい方向に向けたという意味で、おそらく全国の教育者は今度の御慶事を心から喜んでおるわけなんです。御結婚に反対しておるというようなことはいささかもない。従って五十万の先生方が、このことに反対しておるというような印象を受けるということは、まことに私は実際とはかけ離れたとられ方だと思うのです。ただ、日教組が異議を申し立てたということは、今度の御慶事に際しては、何も文部省が中央から、しかじかかくかくのことをした方がいいというようなことを、わざわざ教育委員会に通達をお出しになるこのことが問題だと思う。地方の教育委員会が自主的に地方の喜びを、これをそのまま素朴にやっていけばいいので、何も文部省がわざわざ中央から、君が代を歌った方がいいとか、国旗を上げるべきだというような、そういうことをおやりになる必要はいささかもこれはないので、むしろ、私は素朴な国民感情として、これは教育の現場あるいは地方の教育の実際、そういうところにゆだねる方がしかるべきだという、こういうようなことを日教組は言っておるのであって、これに対して反対だとか、御慶祝はけしからんと、そういうことではないのであります。従いまして文部大臣の御答弁の中でも、はなはだ遺憾なことだから円満にできるようにというような御答弁がございましたが、もう少し現場の空気というもの、また五十万の教師がいかに新しい皇室のあり方というものに心から拍手を送っておるかということを御理解願いたい。まげて、わざわざそういうことをおっしゃるということは、はなはだ私はけしからんことだと思うので、この際御訂正をわずらわしたいと思います。
  135. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 皇太子殿下の御慶祝につきましては、私はもう心から国民をあげてお喜びをいたしておると思いまするし、教職員の諸君ももちろんそうだと思っております。そういう建前で私も申しておる次第でございます。この四月十日の休みのことにつきましては、これは扱い方につきまして、文部大臣としましてこうした特別の措置が講ぜられるわけでありますから、一応の通達をしておくのが筋だと考えておる次第でございます。もちろん、下記により慶祝の意を表することが適当と考えますので、指導についてよろしくお取り計らいを願うというので、各地の教育委員会なり学校なりの自主性に従って措置をされるのは、これはもうその通りでありますが、ただ、四月の十日を原則としてお休みにする。これは休みにしないで、いろいろな行事をしようといったような考え方の人もおるわけでありますが、これは考え方としては、一応原則的にお休みにさらっとしたらよろしかろうということと、それからもう一つは、ただし漫然とお休みにしてみんな休んでしまうということでなく、ほんとうに将来、国民統合の象徴になられる方の御慶事でありますから、だれもいない学校でも国旗を掲げて慶祝の意を表します、それからもう一つは、四月十日はこういう意味でお休みになるのだということの趣旨を子供に徹底をさせておくということは、これはきわめて適当なことと考えて、そういうふうな趣旨で措置をするようにということを申した次第でございます。日教組の方の話は私はよく存じませんが、先ほど申しましたのは、こうしてこのお休みの趣旨というものをみんなが理解して、ほんとうに喜び合うようにというのが、文部省の通達の趣旨でありますが、これによりますると、地方のいろいろな事情等によりまして、ここではぜひ一つもう少し何か行事をしたいというようなところがあるかもしれません。そういうふうなところについては、あえてぜひ休まなければならぬという厳命を下すということは、これは行き過ぎでありますから、してないのであります。何でも日教組の方の考え方によりますると、文部省のこうした考え方で、大体はいいのだけれども、しかし何か特別なようなことをするようなのはぜひやめさせるようにするのが筋であるかのごとき通達とか、何か地方に意見を流しておるというような話がありますので、それははなはだ遺憾でありまして、地域社会の盛り上る考え方によって、教育委員会においても、あるいはまた、その町なり何なりにおいても、あるいは学校においても、ぜひ一つもう少し別の慶祝の意を表したいというのなら、それはそれで妨げないのでありまするし、けっこうなことなのであります。これをぜひやつちゃいかぬというような指令を出すのは行き過ぎだと思いまするので、これはもうすらっとした形でほんとうにあまり理屈抜きに喜びをともにして参りたいということを念願をして、この通牒を出した次第であります。
  136. 高田なほ子

    高田なほ子君 喜びというものは、何も上から言われたから喜ぶのじゃなくてみんなが喜んでいるのだから、それで私はいいのだと思います。特に私は今発言を求めましたことは、最近の傾向として、せっかく皇室というものが民主的なあり方に進まれるために、皇太子様も今度の御成婚の前にも、ずいぶんいろいろな立場でお苦しみになったことも私としては承知している。それだけに今度の御慶事というものは、ほんとうにうれしいという気持でおりますから、みんなやっぱりそんな気持でおるのでありましょうが、ややともすると、せっかくそうした皇太子様御自身の気持というものが、回りのいろいろな工作によって逆に固められて、昔のような形になっていってしまうということを私はおそれるわけです。このことは何も皇太子様に限ったことではありませんが、岸首相あるいはまた何々大臣が郷里へ帰られるなんというと、あるところでは一日授業を休ませて、そして旗を持って三時間も行列させるというようなところも、今日ちょいちょいあるように私は聞いている。こういうようなことは、教育を利用することであって、かえって純粋な子供の感情なり、あるいは教師の感情というものを、そのことのためにかえって思わしからざる方向に追いやってしまうということでありますから、特にこういう点については御注意を願いたい。今御説明を伺いますと、そういったような趣旨のようでありますが、要するに最近の文部省は通達や伝達や命令とかといって、やたらに通達を出したがる。これは文部省はやはり教育行政の面で教育の諸条件を確立するということが目標でありますから、本来からいうならば、サービスの省でなければなりませんが、最近の傾向は命令、伝達というようなところに重点が置かれておるようでありますので、いろいろな起らなくてもよいようないざこざが起るきらいがなしとしない。特に君が代等の問題についてもいろいろ議論もあるころであり、文部省が君が代がいいと言っても、国民の有識者の中には相当の議論のある問題です。こういうような問題は無理にしないで、やはり国民感情のことで、やはり盛り上る国民感情というものが主体にされなければならない。御成婚の意義を徹底させるとあなたおっしゃるけれども、子供たちはもう、むしろおとなよりも早くこういうことはよく知っていて、よかったね、よかったねと喜んでいるのが現状ではないかと思う。どうかすなおなこういう気持を無理に歪曲する方向にいかないように、再度御注意をわずらわしていただきたいというので、あえて私は発言をしたわけであります。
  137. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 関連して。問題は、特に皇室の問題なんか曲げられた形で論じられるということは慎しまなければならぬと思う、慎重でなくちゃならぬと思うのですね。で、先ほどの質疑応答の中で、全国の先生方あるいは日教組の考えている点がまだ正しく表われていないというところに、高田委員から発言があったわけです。人のめでたいこと、特に皇太子殿下のめでたい御慶事は、すなおにみんな喜んだらいいと思うのですよ。いろいろね、僕は意図を持って喜ぶというようなことがあってはならないと思う。また、御当人にも僕は失礼になると思うのですね。だからすなおにみんなが喜ぶことがいいことだと思うのです。問題の焦点はね、橋本さんは人柄もよし、あなたが今度文教行政に携わるようになって、僕はどういうように変るかということを注意しているわけですけれども、要するに文部省は指導過剰です。今の教育は民主教育、地方分権となっているわけですが、教育委員会制度が現われて、だんだん変ったとはいえ、指導過剰なところがあります。その指導過剰を通して、教育の中央集権が行われる傾向にあるのです。だからこういうおめでたいことがあった場合は、教育委員会法で地方分権がうたわれ、りっぱな教育委員が都道府県、さらに市町村の段階にあるのですから、お祝いの仕方まで一つ一つ、学校行事の具体的な案まで今の文部省が一々流すというのは指導過剰ですよ、そういうことを一々やると、地方の教育委員会というものは、一々文部省から指示がなければ動けないことになる。一人歩きができない教育委員会になる傾向が非常に強いのです。それでは教育委員会法の立法の精神に反するし、教育の地方分権というものが行われないわけです。そういう指導過剰な最近の文部省に警告を発しているわけです。だから日教組はああいう何をしたというのは、あなた方が挑発をしたわけであって、あなた方がこういうことをされなければ、何も日教組がああなり、議論がここへ西田君から質問が出て、そしておめでたい人のお祝いをいろいろ議論するということはないと思うのだが、問題の起りは、あなた方の挑発行為にある、すべて最近の文教政策はこういうことにあると思う。それなら、あなたが頭を振られるなら…、前任者の時代です。たとえば高知県の森小学校、森小学校で父兄がハンストをやって、逆ストをやって、免許状を持たない教師が何カ月間も学校を寺小屋でやっておった、あるいは長崎県の平戸中学校もこれまた学校の統合問題でもめて、学校に父兄は子供をやらないで、免許を持たない先生で学校を自主的に設けて約十カ月間教育をやったではないか。最近ではその中学校の生徒は全部進級させるわけにいかない、落第させないかぬという事態が起ったのです。こういう問題こそ、文部省はもう少し積極的に現地に人を派遣して、そんな変則な教育が続けられてはならない、免許を持った教師でりっぱな教育をしなければならぬ、父兄の方々にそういうやり方は間違っていますと説得して、一校あげて進級できないという事態が起らないようにやらなければならぬ、そういう点こそ文部省の私はやるべき責任だと思う。そういう点については、あなたの就任前ですが、ほとんどやられないで、他の面については非常に指導が過剰である、そこにこういうことが議論になってくるわけです。まあ、教育の地方分権と教育委員会法の精神からいって、りっぱな教育委員が都道府県市町村、各自治団体の段階にあるのですから、文部省の指導というものは私は限度があると思うのです。学校行事の一つ一つまで一々指導すると、それがなければ地方の教育委員会が動けないという事態になることは、とりもなおさず教育委員会法の立法の精神が閑却されることであり、教育の地方分権ができず、教育の中央集権が行われることになる。こういう懸念があるわけで、高田委員の、われわれの言わんとするところはそこにあるわけです。日教組の決定は、あなた方の挑発によって一つ見解を示したのであって、やや西田委員とあなたの問答の中では、誤り伝えられる懸念がありますから、関連質問として発言をしたので、よくその点お聞き取りを願いたいと思います。
  138. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 私も御趣旨は十分汲んで善処して参るつもりでございます。ただ、私が通牒を出しました趣旨は、努めてよけいなことをする気はございませんけれども、今回の御慶事の問題については、あちこちからいろんな意見が実はございます。この従来の御慶事の例というと、これは戦後の民主憲法下における皇室のあり方と戦前とは違うわけでありますが、なかなかいろいろ大がかりの行事等がございまして、学校についても、こういうことをすべきであるというような意見を述べられる方もあるし、あるいはまたどういうふうな方向になるだろうかということを心配して聞くような向きもある。そこで、挑発ということのお話しになりましたが、私は実は非常に遺憾でありまして、むしろ問題があまりごたごたいたしませんように、今回の御慶事については、四月十日に両党相談の上で休日の法案を出したというのも、あっさりした気持でお祝いをして休もうというのが趣旨なんだから、学校の方もそうしたあっさりしたお祝いの趣旨でする。ただし漫然と遊んでしまわないで、お祝いの趣旨だけはわかるように、とにかく敬意を表したいという趣旨で、実はまとめて通牒を出した次第でございます。で、こういうむしろ皇室の御慶事でありますから、あまり議論など起らないようにしてほしいというのが、これは実は趣旨でありまして、その点を一つ日教組の諸君も理解してもらわんとはなはだ遺憾だということをさっき申したわけでありまして、どうかそういうっもりで、あっさりした気持で休んでもらいたい。それからまた、当該地方社会等でほんとうに盛り上る空気でお祝いの行事等が出てきたならば、これはまたこれで、その土地のみなが気持よくお祝いのできるようにしていただきたいと思います。
  139. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 西田委員質疑は、これで終了いたしました。  午後二時二十分に時間厳守で再開することといたしまして、これで暫時休憩をいたします。    午後一時二十一分休憩    —————・—————    午後二時四十六分開会
  140. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) ただいまから委員会を再開いたします。  休憩前に引き続いて、質疑を行います。
  141. 千田正

    ○千田正君 今日、岸内閣の最大の問題としましては、やはり外交問題に重点を置いてあると思うのです。先般、この委員会におきまして、日米問題等につきましては各委員からいろいろ質疑をただされましたので、私は、本日は、けさの各新聞社等が一斉に掲げておりますところの、中共の周恩来首相が談話で発表した、もう日本との貿易はこのままではやらない、いわゆる岸内閣の現在とっておるところの政策ではとうていわれわれは日中貿易というものは緒につくことさえもむずかしい、ということを強く述べております。これは、われわれから考えますというと、非常に大きな問題のように思われますのは、岸内閣のいわゆる外交政策といたしましては、国連を中心としての外交政策をやると、一方にはそういうことを声明しておりまするが、一方におきましては、やはり東洋におけるところの安定ということを考える場合においては、どうしても中共を無視してそういうことはあり得ない、こういうことは常識でも考えられるわけでありまして、この問題につきましては、いろいろ過去においても論議を重ね、あらゆる面において手を尽してきたはずであります。  先般、社会党の淺沼書記長は、いわゆる社会党側からの使節団として向うに行きまして、いろいろな声明をしておりまするが、これは社会党が社会党としての声明をやっておるとしましても、日本政府といたしましては、今後のいわゆる日中貿易をやるか、日中会談を正式に取り上げて、東洋におけるところの安定をはかるのが第一義に考えなくてはならない現段階におきまして、中国のいわゆる実力者と称すべきところの周恩来首相が、本日明確に、国民外交ではだめである、われわれは日本政府との間に、日本政府考え方を改め、そして友好的な立場において手を差し伸べるにあらずんば、たとえそれは国民的な意思にしましても、軌道に乗るところの外交は打ち立てがたいということをはっきりと明言しておりますので、今後におけるところの日本の貿易再開等に対しまして重大な影響があると私は考えますので、この点につきまして藤山外相からの御所信を承わりたいと思います。
  142. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本と中共との関係につきまして、貿易再開の問題をめぐって、淺沼団長に対して周恩来首相が非常に、政治と経済の問題を一緒に解決しなければというようなことを言われたように新聞紙上でも伝えられておりますので、私といたしましても、その点は新聞紙上で承知いたしております。ただ、私ども、中共に対して決して非友好的な態度をとっておるとは考えておりませんし、やはりアジアの将来を考えて、中共と次第にいろいろな関係を持って参りますことは必要であります。特に、日本として貿易を再開していく、貿易ができますればやりたいという念願は、国民を通じての念願でもありましょうし、また、日本の将来の経済などを考えてもしかるべきだと考えます。ただ、政治の問題になりますと、歴史的ないろいろな過去の経緯もございまして、そう簡単にこれらの問題について日本が割り切って参るわけにもいかず、また、いろいろなそれらの国際情勢等を考えて参らなければならぬと思います。従いまして、われわれとしては、できるだけ貿易なりあるいは文化の面において国交の友好関係のもとに交易をやっていくという立場によって、おのずから将来の道がどういうふうに開けるかということを見ていくこともまた必要だと思うのでありまして、われわれとしては、従って、貿易問題というような問題については、できるだけわれわれ日本立場から見て適切に行われるように希望をいたしておる次第なのでございます。
  143. 千田正

    ○千田正君 それで、昨日の周恩来首相の、記者団あるいは日本の社会党の使節団を含めた、外交についての言明のうちに、非常にわれわれが考えなくちゃならない大きな、そこに残っておる一つ基本問題があるのであります。それは、第一に、こういうことを言うております。日中関係でまず申し上げなければならないのは、日本の侵略戦争が終って十四年近くになるのに、両国は正常関係が回復せず、戦争状態が続き、国交関係も回復していないことだ。ところが、岸内閣はこういう状態を続けたいと思っておる。彼は、引き続き、中国と戦争状態のままで貿易をしようとしている。この目的のためには、藤山外相も高碕通産相も中国に来たいと言っておる。このように、一方で中国を敵視していながら、一方では中国と商売し、これによって困窮した日本の経済を助け、彼らの支配を続けようとしておる。中国はその手には乗らない。私は、これは周恩来首相が自分の考えで述べておることであるから、あるいは向う側からそういう点で言うことは自由でありましょうが日本国民の受けておる感情は、われわれは戦争は終ったという観念を持っておるのであります。ところが、周恩来首相からいえば、戦争はまだ続いておる、日本と中国の間においては戦争終結の条約も結ばれておらない、現在は戦争そのものはしないが戦争終結の段階に来ておらない。日本政府といたしましては、かつての中華民国、今の台湾政府がかつての中国の代表であるという意味において、中国と日本との戦争状態は終った。こういうふうに、両方を比較してみますと、その観念において非常な隔たりがある。中国は、まだ日本とは戦争は終っていない、戦争状態はまだ続いておるのだ、こういう観点からこういう談話を発表しておられるとするならば、われわれとしては非常にこれは重大な問題だと思うのであります。そこで、この点の考え方はどういうふうにお考えになっておられますか。
  144. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま千田委員の言われましたことでありますけれども、われわれといたしましては、戦争は終結しておると考えております。そうして戦争状態は継続しておるとは思っておりません。ただ、中国の内部におきまして政権の交代あるいは政権を担当する人たちの事実上の問題がいろいろあって変化をしておるということは、われわれも十分認めて参らなければなりませんけれども、戦争自体はすでに終った、こういう認識のもとに考えておるわけであります。
  145. 千田正

    ○千田正君 先般もこの委員会において岸総理大臣にただしたのでありますが、かつてのいわゆる吉田ダレス書簡の中においては、中国共産党、いわゆる中共というものは認めないという交換文書があるはずであります。この考え方は今日に至ってもなお外交の本筋としては残っておるのでありますか、どうですか。
  146. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 過去におきますいろいろな歴史的事実というものは、国際間のいろいろな問題解決に当って当然考慮しなければならないことは事実であります。しかしながら、歴史的の変転によりまして、それらのものがまたおのずから変ってくる立場にもあろうかと思います。
  147. 千田正

    ○千田正君 われわれは、新聞やあるいはラジオ等からいろいろと知識を得るしかありませんので、その内容のこまかいことはわかりませんが、これから受ける感じは、もう国民外交では日本との間の折衝はやらない。そこで、向うの言うように、日本政府よ出てこい、日本政府であれば、われわれは政府政府との間において話の相手になろうじゃないか、こういう意味にもわれわれはとれるわけです。それで、この周恩来首相の言い方からいいますと、もう国民外交等によって問題をわれわれは進めたくない、むしろもっと真剣になって日本政府政府の交渉として出てこいという意味のことを、談話に述べられておるのであります。そうしますというと、社会党の国民外交の原則は認めるのでありますが、貿易についてはもう国民外交ではなかなか打開できないじゃないか。先般、総評の岩井事務局長が行きましたところ、中共の友情を窓口にして人民貿易をやろうじゃないか、それでウルシであるとか甘栗といった、まずこういう問題から片づけようというような意味のことを話されてこられて、貿易再開はこういうところの民間貿易の窓口からいかれるのではないかという一つのわれわれは希望を持っておったのであります。ところが、今日に至ってこういう談話があるとするならば、おそらく、政府自体が積極的に乗り出して手を差し伸べるとか、あるいは話し合いをする以外には、今後においては日中貿易の再開というめどがつかぬじゃないかと、私はそう思うのですが、大臣はどうお考えになりますか。
  148. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の周恩来首相の淺沼団長に対する話というものは、今のように理解されると思います。政府といたしましても、先般来申しておりますように、貿易の関係において民間貿易が今度行われる場合、民間協定が行われる場合には、政府もできるだけ協力を惜しまない、また必要な技術的な問題その他につきましては、政府の大使級会談等も取り行なっていいということをわれわれは言っておりますので、そういう意味において、何らかの形で政府側も動くということについては、決してわれわれは拒否しているわけではございません。
  149. 千田正

    ○千田正君 それでは、こういう希望を持って差しつかえありませんか。いずれ社会党の淺沼君やその他の方々がお帰りになるでしょうが、そういう方とも一応お会いになって、向うの事情もお聞きになるでしょう。そしてその後において日本政府として何らかの手を打つとするならば、あるいは自民党の諸君も参加することもけっこうでしょうし、ともかく国をあげての一つの外交方針を、一貫したまとまりのある外交の手を打つというお考えはおありですか、どうですか。
  150. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、外交の手を打ちますことは、そのときどきの国際情勢なり、あるいは国内の事情なり、あるいは相手方の立場あるいは考え方、そういうものを勘案して参らなければならぬのでありまして、現在すぐそういう状態が予想されるかどうかということは、おのずから今後の情勢によってきまっていくことと思いますが、先般来、総理も私も申しておりますように、ある程度政府間の話し合いのチャンスが来ますれば、やっても差しつかえないということだけは申しているわけであります。
  151. 千田正

    ○千田正君 一応この問題は、またいずれ機会をあらためて申し上げます。  最近、ことにわれわれの考えがもう一つ重大な問題に来ているのは、いわゆる北鮮の帰還問題、この問題に対しましては、藤山外相は人道上当人たちが望む国に帰すと言っているが、これはわれわれも大いに賛成であります。しかしながら、その問題は非常にこじれてきて最近に至っては、ジュネーブの国際赤十字の委員会に、日本側からは日赤の井上部長、あるいは昨日は葛西副社長が飛んで参りましたが、この問題はどうなのですか。外務省では一応日赤を交渉に当らせる、日赤をもって一応国際赤十字にそういう問題を陳情さして、国際赤十字の手でやらせる、これが本筋であるとするならば、一応外務省としては日赤に一切の話し合いをまかせたという格好ですか、どうですか、この点は。
  152. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 国際赤十字にある程度これらの問題に対して話をして参ります場合には、日本の国内赤十字を通じ、また国内赤十字に、この問題については、純人道上の問題でありますので、その処置をできるだけ一任して参ることが適当だと考えておるわけであります。むろん日本赤十字としても政府の意向をただす点もございましょうけれども、人道上の問題としてこれを扱っていくように、一任と申しますと少し言葉があれかもしれませんが、大体善処を願っておるわけであります。
  153. 千田正

    ○千田正君 ところが、巷間伝うるところによるというと、どうも外務省が手を焼いたのでそれで日赤に行ってやってこいというお話で、日赤としては、日赤の立場から国際赤十字を通じてこの問題を解決しようと思っておったところが、途中で外務省側は国内的にいろいろな報道をされるのでわれわれは仕事がやりにくい——まかせるならば完全にまかしてもらいたい、それでなかったら、今度は出先に行って日本政府の意向はごうたというようなことをやられると、ジュネーブにおけるところの活動はとかくにぶりがちである。それで、ほんとうにまかせるならば、一切の責任を日赤と国際赤十字にまかしてこの問題の解決に当らせるという方針を立てられるべきであると思いますが、その点はどうですか。
  154. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) もちろんわれわれはこの北鮮帰還の問題につきましては、居住権の選択の自由という国際通念に従いましてやるわけであります。ただ、いろいろ問題がありましてもいかがかと存じまして、それらの問題についての確認なり、処理を国際赤十字を仲介にしてやってもらうという立場をとって、また国際赤十字の確認を得てやりたい、こう思うわけでありまして、従いまして、その限りにおいては、日本赤十字がこれを国際赤十字と打ち合せていくという方針に変りはございません。
  155. 千田正

    ○千田正君 この問題について大体歩み寄りができたような報道が伝わっておりますが、北鮮側は、いわゆる北鮮に帰りたいという者を再調査する、調査するという段階はわれわれは承知できない、こういうことを声明しておるようでありますが、この調査の問題はどういうふうにお考えになっておりますか。
  156. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の問題は、日本側といたしますれば全く、先ほど来申し上げておりますように居住権選択の自由という立場から人道上の見地でやっておりますが、しかし、いろいろな政治的雑音も聞えて参るように思うわけであります。そういう意味から言いまして、ほんとうに本人が帰りたいという意思を持っているということを、必要があれば、国際赤十字をして確認してもらわなければならないと思っております。それでないと、何か日本政府が政治的意図を持ってそうしたことを取り扱うのだという誤解が起つては相ならぬと思うのであります。そういう意味において国際赤十字に確認してもらうのが一番適当な処置だと、こう考えております。
  157. 千田正

    ○千田正君 その適当な処置だということは私もよくわかるのでありますが、これは相手のあることでありますから、北鮮側はあくまでそういうような調査に対しては納得がいかない、またわれわれは受け入れ態勢を作っておるのだが、そういうことであればわれわれは歓迎しない、受け付けない、こういう問題になったら、相変らず日本側としましては、北鮮に帰る者、南鮮に帰る者こういう者をかかえて苦しまなければならないと思うのですが向うはどうしても聞かないというならば、やむを得ずやはり今まで通り状態を続けるほかはないという結論でございますか。
  158. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 何しろ、北鮮側にも若干の誤解があろうかと思います。従いまして、そういう誤解を解いて参りますための努力はして参らなければならないと思います。また国際赤十字においても、数万の人を確認するという方法論等については、若干まあ手数のかかる手段をとるのかとらぬのかというような問題もあろうかと思います。しかしながら、一般的に本人の意思でもって帰りたいという場合に、そうむずかしい手続が国際赤十字にかぶさるとは思いません。ただ何か問題が起ったようなケースがありますれば、そういう問題については、やはり国際赤十字の判断あるいは確認によることが、日本政府としての立場からいいますと、実際に居住権選択の自由という趣旨を通して参るわけでありますから、そういう趣旨に沿ったことであるということが国際赤十字というような中立的機関によって認められることが非常に適当だと思うのであります。そういうふうに考えております。
  159. 千田正

    ○千田正君 韓国に抑留されておりますところの日本の漁夫の問題、百五十三名というのがそのまま抑留されておるのですが、この前もここでお尋ねしたのでありますが、今度のような国際赤十字を中心とした問題が起らない前の私の質問でありましたが、この問題は並行して考えておられるのか、それとも切り離して日韓会談等の際にこの問題が出てくるのか、あるいは先ほど申し上げました通り、これもやはり日赤の代表に委任して国際赤十字を通じてこの日本漁夫の帰還問題を解決するのか、その点はどちらでございましょうか。
  160. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 釜山に抑留されております日本の漁業者の方々の帰還問題につきましては、北鮮帰還とはこれは全然別個の問題として扱っております。しかし、同時に日韓会談とも全然別個の問題として扱っております。先般井上外事部長が参りますときに、この問題を私からボアシエ委員長に手紙を出しまして、そしてわれわれの立場を説明し、国際赤十字のあっせんによって一日も早く百五十三名の方々が帰還できるように尽力をお願いしたわけであります。
  161. 千田正

    ○千田正君 それではもう一つの問題は、昨年の三月、私は二十八国会において、領空、いわゆる空の問題、領海の問題は海洋の問題で国際会議で相当論じておるようであります。最近非常に飛行機の発達あるいは原子力の発達等によって、この科学兵器を積んだ飛行機等が相当各国の空を侵犯しつつ動いておる、この問題について、私は昨年、領空に対してはどう考えるかという問題につきましては、抗議が出ないから一応黙視するということは言わないけれども、研究するということでありましたが、ところが、各国においてこれがもう非常に研究されつつある。私はこの問題につきましては、岸内閣は科学兵器の、ことに原子力兵器の製造を禁止してほしいとか、使用を禁止してほしいということは、国連を通じて日本国民の悲願を伝えておるわけであります。またそれを努力されておることに対しましてはわれわれは敬意を表しますが、この問題もなかなか容易じゃない。これとうらはらになるところの領空の規定という問題は、いよいよ国際法上の一つの規定として問題になりつつあるのであります。これは日本のようにアメリカやソ連のような強大な国の合間にあるところの、谷間にあるところの日本のような国は、むしろこうした原子力兵器や、その他の飛行機等によって空を侵され、それによってまた被害も生ずることはほかの国より大きいのではないか、科学兵器、原子力兵器の禁止を叫ぶと同時に、日本側からむしろ国際法上の規定を強く要望する必要があると思いますが、こういう点においては研究され、あるいはどういう準備がおありでありますかどうか、お伺いしたいと思います。
  162. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 高層における領空の問題につきましては、最近急激にこれは問題化してきたわけでありまして、数年前国際民間航空との条約ができましたときにも、加入ができましたときにもまだ問題にされておらなかったわけであります。しかし、この問題は逐次問題として取り上げて参らなければならぬのでありまして、昨年の秋国連の総会において、日本国も含めまして十二カ国であったと思うのでありますが、決議によりまして、この問題を取り扱う準備委員会を作る決議案が成立いたしております。従って、国連において、やがてこの問題を取り上げることになろうと思います。
  163. 千田正

    ○千田正君 これは、被害国が損害賠償などという程度で話をつけらるべき問題でなくて、むしろ侵されることを未然に防ぐ一つの法案を作らなければならぬ、各国ともそうでありましょうが、特に日本のように、しょっちゅうそういうことにおびえ、しかもビキニや太平洋の中でさえも日本の産業が傷つけられるという現状においては、いち早くこういう問題に対しては日本は研究を積んで、いわゆる国際連合なりあるいは国際領空侵犯等の問題に対しましても、そういうところを通じて十分に日本立場を述べるべきだと私は思います。この点、それじゃ御研究をぜひ願いたいと思います。  外務大臣に対する質問は、次は一緒になりますが、ただいま日ソ漁業問題は、けさも同僚の西田委員からも御質問がありまして、一応の御回答を農林大臣からいただいておりましたが、ソ連側のやり方は、いわゆる資源論から入って規制論、規制論から入って最後に漁獲量、日本側もそれに対処して反論を重ねておるようであります。もうすでに六十日費されておる。ところが、私は日本の外交が下手なのか、日本の政治折衝というか、日本の海洋における技術的な問題が下手なのかしらぬが、じんぜんとして延びておる。まず第一に、外堀を埋められたというのはオホーツク海の問題、これはけさも御答弁がありましたからあえて触れませんが、その次の問題は、今までは問題にならなかったところの制限海域の、区域における四区の禁止区域を設けてそれには一歩も入れない、あるいは期限を設定して、その期限外にはとってはいけない、こういうようにだんだん向うは外堀を埋め、また内堀を埋めかかっている。最近においては、魚をとる網目の大きさを制限をしろ、あるいは糸の太さを制限しろ、こういう問題が起きている。これでは一体日本の外交政策なり、あるいは日本の北洋における漁業政策というものは、もう一歩々々退くばかりである。これに対して、日本側としては、そういう一つ一つ攻められることに対して対応するだけの何は持っているかどうか、はなはだ残念ながら今日に至っても私はそういうようには見受けられない。この点についてはどういうふうにお考えになりますか。
  164. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日ソ漁業条約によります委員会は、御承知のように毎年の漁獲量をきめて参る委員会でありまして、性質から申しますと、相当専門的な立場において検討を加える、専門的な基礎の上に立って話し合いをするというのが委員会本来の性質だと思います。従いまして両方の学者、あるいは経験者、あるいは技術者等が寄りまして、魚の資源論において相当時日を費しまして、そうして論議を尽して参ることは、これは当然条約上の委員会の性格だと存じます。ただ、今日まで両方の学者、技術者、経験者等の意見が必ずしも十分一致いたしておりません。そういうような点からいたしまして、ほんとうに政治的問題のように解決しなければならぬ場面が出てきますことは、実ははなはだ残念なことでありまして、従って共同調査等によりまして、両方のそれらの専門家の意見が一致して参りますと、たとえば本年は豊漁年であるとか、あるいは不漁年であるとか、あるいは小さな何といいますか稚魚の発育状況、そういうものによっては、こういうような、あるいは海流の状況によってはこういうふうな方面の海域にするとか、その辺でとった方がいいとか、とらない方がいいとかということがおのずから一致してくると思うのであります。残念ながら現在そういう段階にございません。そしてソ連側としては相当強く一方的に自分の調査した海域と申しますか、あるいは技術的見地に立って強硬に主張してきているのが現在の実情だと存じております。従ってそういうことでありますれば、やはりわれわれとしては大局に立って、ある段階になりますれば問題の解決をはからなければならぬということも起って参ろうかと思いますが、本来の性質から申しますれば、今申し上げたような立場でもって、特に外交的な問題を論じないで、実際の経験技術の上に立って、話し合いで円満妥結できるというのが本来の漁業委員会の性格ではないか、こう存じております。
  165. 千田正

    ○千田正君 私はその観点をなぜ問いたくないかと言いますると、最近ことに非常に各国とも資源論に籍口して、自分の国力の権益を伸ばすということを考えている。その根本的な問題を私は言いたいのです。資源論ということに籍口して、資源論であれば何でもかんでも規制できるのだ、公海の自由の原則さえも押えていけるのだ、こういうふうになってきているのが現状であって、私は逆に、そういうことにつられて日本側は技術的な資源論に押えられているのではないか。たとえば日米カナダ条約にしましても、あるいは日ソ条約にしましても、ただいま言っているところの李承晩ラインにしましても、あるいはオーストラリアのアラフラ海の問題にしましても、資源論という名前を表に立てて、実際においては各国ともおのずから自分らの権益を伸ばしていこうとしている。それに対する防ぎ方が足りないのじゃないかというのです、私のは。私の言おうとするのは、それは単なる資源論で対抗していったら、日本側は決して有利なことにはいきませんよ。資源論じゃなく、やはり国際法なら国際法という世界を貫く基本的な方針を土台として日本側は論じない限りは、とうてい日本側の防衛は成り立たない、そういう観点についてはどういうふうにお考えになりますか。
  166. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日ソ漁業委員会の進行状況その他見ておりまして、私どもも今、千田委員のような考え方を持たざるを得なくなって参るわけでございまして、むろん各国とも漁業問題におきまして資源の保有ということが大事であることは当然でありますが、しかしながら、同時に公海上に自由に線を引く、あるいはそれぞれの国にやはりそれに従事しております漁業者その他がおりますから、それらの生活問題でありますので、これはやはり考えて参ることも必要だと思います。従って、そういう意味からいえば、必ずしも日ソ漁業協定そのものが、現在資源論に終始しているような状況でございますけれども、将来やはりこういう問題についても、やはり今、千田委員の御意見のようなことも考えながら、われわれも進んで参らなければならぬというふうにただいま感想を持っております。
  167. 千田正

    ○千田正君 この問題の当面の実際漁業者の代表であるところの三浦農林大臣と、それから先般ソ連側から特に高碕通産大臣に対して会見を申し込んでこられたようですが、高碕通産大臣は、かつてソ連にも行かれたし、あるいは現在は大日本水産会の会長もやっておられるわけですが、そういう立場で向うからの申し込みがあったと思うのです。今私が申し上げました通り、単なる技術的な問題じゃないじゃないか、戦後における日本の漁場というものは、いわゆる資源論に籍口されて、そのためにだんだん日本の権益が縮まってきている。六十日、今日になってきてもなお問題が解決しない。しかも向う側は相当勝手なことを青っている。今までの規制区域以外の流し網、はえなわでさえも、中小企業の人たちの生命さえ脅かすという問題まで出てきておる。こういう問題の解決に対しては、断固として日本ががんばらなくちゃならないのじゃないか。もう一ぺん、三浦農林大臣の御所信と、高碕通産大臣は通産大臣であられるが、一方においては、ソ連側からだいぶ好意をもって迎えられておるようですから、あなたの御意見もこの際御発表を願いたいと思います。
  168. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) 現在、日ソ間の協定によりまする規制区域外の海域につきましての問題は、ただいまのところ、向うから別にさらにこれを規制を強化するとか、あるいはこの制限をきびしくして操業を困難ならしめるという条件の提示はございません。漁法あるいは機具等につきましては、若干の調整にいたしてございますけれども、操業を禁止するがごとき提案並びにこれを受諾した事実はございません。従前の通り、われわれの方としましては、支障なく操業し得るものと確信をいたしております。  なお、あとで高碕通産大臣がお立ちになると思いますが、技術的関係にわたりまして、先方の代表のモイセーエフさんからお会いしたいという申し出があったことを聞きまして、これは高碕通産大臣にお伝えしてございますから、あとで商碕さんからお答えいたします。
  169. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 今三浦農林大臣なり、それから藤山外務大臣からお答えした通りでございますが、私は、日本の漁業が今世界的に伸びていかなきゃならない立場におるわけでありますから、これに際しまして、ひとりソ連といわず、あるいはアメリカといわず、至るところにおいて、資源保護ということのために、日本の漁業の進出に対して相当な圧迫があるということは事実でございます。それに対しましては、やはり条約上、根本において、日本の漁業というものが、公海においてやるものについては制限を加えられないという建前でやる必要があると存じておりますが、ただ本質的に考えましてサケ・マスというものは、ほかの一般の鐵水の漁撈と多少違っておる点があると思います。これはどうしても陸上において産卵する、こういうことが一つの原則になっておりますから、これはやはり公海において漁業するものも、やはり陸上の方がなければ、これはすぐに枯渇しちゃうわけでありますから、そういう意味におきましては、それは米・加なりあるいはソ連との間にも、日本の公海における漁撈を永続さすためには、陸上の制限ということについても、ある程度日本が発言し得る機会を持つということが必要だと存じます。この繁殖保護という問題につきましては、お互いに協調する必要があると、こう存じておるわけなんでありまして、先般、ソ連の代表から、魚族の繁殖保護、特に鮭鱒の繁殖保護ということにつきまして、私の昔からの経験等について話し合いがしたいと、こういう申し出がありましたが、これは全然今回の漁業交渉とは、間接には関係はありましょうが、直接に関係あっての話ではございません。まだ私は、多忙のため会合する機会を持っていないわけなんであります。
  170. 千田正

    ○千田正君 サケ・マスは特別の魚であるから、陸上で生み落されるとかいうことがあるの、だが人間であったら生みの親が大切か、育ての親が大切かということになって、生みっぱなしのようなことであって、それだけが大切だということにはいかないのであって、やはり大きな公海において育っていくと、こういう点からいえば、決して生まれたところだけが原産地だから権利があるのだという論理にはならないと私は思いまして、その点は強く主張していただきたい。  せっかく通産大臣がお見えになっておりますから、私は通産大臣お尋ねしたいのは、エネルギー源の問題であります。最近のエネルギーの対策につきましては、固体のエネルギーから液体へと変ってきており、また、液体からさらに化学的処理によって気体に変っている、いわゆる単なる固体エネルギーというだけじゃなく、科学的進歩に従って、そういう問題はおのおのの国が国策として、いろいろの改策を用いているわけで、私は日本の現在にとっては、石炭はああいう状態であるし、また、油やその他はみな国の外から入れなければならない、こういう実際の面において当面している問題として、現に増大するところのエネルギーの需要に対する供給源について、どういう一体お考えを持っておられるか、あるいはどういう計画のもとに施策を進めておるか、この点についてお尋ねいたしたいと思います。
  171. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) さきに政府が策定いたしましたエネルギー資源につきましては、大体は将来において日本の石炭には限りがあるから、足らぬものだけは輸入の油でまかなっていく、同時にさらに、これで足らぬものは、昭和五十年を期して相当の原子力発電をなしてやつていこう、こういうことで一つ計画をもって進んでいる次第でありますが、お話のごとく、戦後世界の経済の変化の工合も非常に激しくなりまして、どの国においても油の進出のために、石炭業が圧迫を加えられているということは、予想外にひどいものがあるわけなんでございますが、といって、日本の国におきましても、石炭工業が今日までに唯一の国産のエネルギー資源であったということから考えまして、これは直ちにこのまま捨てておくわけにいかない、従いまして、先年来政府は、炭主油従という方針をとりまして、日本の石炭についてはある程度の計画を立てて、その計画に沿うようにして、そうしてこれに対して消費がふえるとか減ったとかいう場合の加減は、輸入する油でもってやろうじゃないかという方針をとっているわけでありますが、しかしながら、最近特に、油は各国とも生産が予定以上にふえているということのために、油の原価が下り、その上に油送船の輸送の運賃が下るということのために、国内に入って参ります油も相当多いわけであります。これはある程度一時的なものである、また、日本の国内における石炭は、現在消費が減っておりますが、これもあるいは豊水のために減っている、こういうようなことから考えまして、ある程度の規制は加えて、昨年度におきましても、下半期においては、予定よりも五十万キロリットル、エネルギー資源といたします重油の輸入を規制したわけなんでございますが、その方針は、ある程度とめていきたいと存じますが、これによってせっかく油に変らんとしているものをまた阻止しても困る、こういう点もあるものでありますから、価格が非常に暴騰するというようなことになれば、いつでもこれはある程度輸入を許し得るということにいたしますが、原則といたしましては、現在の石炭工業をどうして立たしていくか、これを維持するかということを主題として、このエネルギー政策はさしあたり実行していきたいと思います。
  172. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 さっきの外交問題にちょっと関連して質問さして下さい。  さっき千田委員が外交問題についての質疑をされ、今エネルギーの問題に変りましたのですが、さっきの外交問題、特に中共との問題に関する質疑応答に関連して一つ伺います。  これは非常に大切な問題だと思うのですが、千田委員質疑に対して藤山外務大臣答弁した内容は、日本国としては戦争はもう終結したものと考える、それから中共は認めないということを日本政府は常に言っているが、このままでいくのかという質問に対して、歴史的に変ってくることもあろうかと考えます。それからもう一点は、これは何らかの交渉を持つのかという質問に対して、チャンスがくればやるかもしれない、この三点を答弁された一わけですがね。これに関してお伺いするわけですが、中共の立場から考えますと、あの台湾と中国との領土、国土の広さですね。それから人口、それから国際社会における実質的な実力、そういう点から考えて、日本と台湾政権が日華条約を結んで、日本政府は中共は認めない、認めないと、こういうふうにオウム返しに言っておれば、中共の立場から考えるならば、われわれとの戦争は終結していないと、あの中国の大土に住む方々が主張されるのは私はごもっともかと思うのですがね。中共を認めない、認めないというが、たとえば英国はいち早く認めて、貿易の面でも、ココム、チンコムにしてもまっ先に英国みずからそれを破って、そうして香港を通じて貿易を拡大し、ある中国における国際的市場の拡大を着々と進めているわけですね。ただ日本だけが台湾政権に気がねするのかあるいはアメリカに気がねするのか、ココムについてもきわめて忠実であり、そうして中共は認めない、認めない、チャンスがあれば云々、あまこんなわけですが、そこで伺いたい点は、千田委員に対する答弁に関連して掘り下げて伺いたい点は、歴史的に変ってくることもあろうかと考えるというのは、それはいつごろだと思っているのか。チャンスがあればやってもかまわないというが、そのチャンスが降ってくるのをあなた方が待とうとしているのか、いわゆる静観ですね。そのチャンスを日本のために、アジアのためにみずから進んで藤山大臣は作り出そうとされるのかどうか。あの先般の北鮮の帰国問題についてあなたがとられた政策、そのセンスというものは、日本国民から非常に高く評価されている。われわれ日本社会党でも全面的に支持しているわけですね。あなたは、私は将来進歩的日本総裁にもなるべき素質を持っておられると思うのです。だからあなたのお考えというものを私は率直に言うべきだと思うのですね。だからこの中共の問題について、チャンスをみずから作り出すという努力ですね。だから率直に、具体的に言うならば、あなたはみずから出かけるかして、そうして中共の責任者と直接会って意見の交換をし、両国間の問題解決の糸口を作るべく努力さるべきじゃないか。あなたのセンスから言うならば、あなたも必要を認めているだろう、こういうふうに私は考えるのですが、どこに遠慮されるのか、千田委員質問に対する答弁は、やはりオブラートで包まれております。英国の中共政策等から考えて、私は今の日本政府というものは、もう一段突き進んだ点を考えなくちゃならぬのではないか、こういうふうに考え、先ほどの質疑応答で、私として納得しかねる点がありましたので、今の点について、一つ藤山外務大臣答弁をわずらわしたいと思います。
  173. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) お答えいたします。この国際間のいろいろの問題につきまして、私が申しておりますように、歴史的ないろいろな過程がございます。その上に立って、現実の問題を考えなければなりません。同時にまた、今日飛行機もでき、世界は小さくなっておりますから、国際関係というものは絶えずいろんな速力を持って動いております。変化もいたしてきております。従って、将来、そうした問題のいろいろな変化が起らないとはだれも断言することは、これはできないのでありまして、がしかし、それでは御質問のように、いつ、そういう時期がくるんだといいますというと、今言ったように、いろいろ動いておりますから、なかなか今の段階において、いつくるということを申し上げることは非常に困難じゃないかと思います。  また、チャンスをつかまえるというお話でありますが、むろんわれわれとして、貿易問題その他につきましては、先般来申しておりますように、機会が参りますればできるだけそれをつかまえて参らなければなりませんが、その機会というのは、お話のように、自分が作ったらどうだということでありますが、機会というものは必ずしも自分だけが作れるものでもないと思いますし、また、相手方だけが作れるものでもないと思います。まあそういう意味において、むろんこうした国際間のことは、機会というものはいろいろな形において、いろいろな場合に起り得ることがあり得ると思う。そういう機会をやはりのがさぬで、貿易問題等につきましてはつかんで参ることが必要だというように、われわれは絶えず気をつけて参らなければならぬのではないか、こう考えております。
  174. 山田節男

    ○山田節男君 関連。今の矢嶋君の関連質問に対しての藤山外務大臣の御答弁ですが、衆議院の方では、もう委員会を開いていないということですが、先ほど千田君の言われたように、昨日周恩来首相が社会党の代表団にああいったことを申した。すなわち、岸政府はもう相手にせず、政府と外交は切り離すことはできない、こういうことを言っておる。一面におきましては、この貿易というものは日本としてはもうこれは今日ほっておくわけにいかない。これはきょう正確な数字を申し上げることはできませんが、十日ほど前に、一九五八年度、昨年からことしにかけまして、フランスが約三百五十億Zフン、日本で申すと約一億ドル、それから西ドイツ、もちろんイギリス、イタリー等も非常に中共に対する貿易額はふえておるわけです。これは半面から申しますると、日本という非常に近いところに、地理的に近いところに日本があるにかかわらず、ただフランスとか西ドイツ、イタリー等からこういう莫大な輸入をしておるということは何に基因するかといえば、要するに、この昨年以来の、いわゆる長崎の国旗事件以来、中共と岸政府との間が、何といいますか、関係がまずいために、結果から申すと、日本の中共に対する、あり得べき貿易というものがゼロになっておる。しかも甘グリとか、あるいはこの間も話しましたように、ウルシとか、こういうわずかなものを、ああいう総評という労働団体の窓口を通してやってくる、こういうことを向うからおみやげに持って帰って来た。こういうことも、これは私は中共の政府が岸政府に対する終始一貫した態度だと思う。ですから、今藤山外相が申されたごとく——この中共との貿易は、政治、外交とは分離できないと言っているんですから、そういたしますと、岸内閣の続く限り、あるいは岸内閣が中共に対する、いわゆる向うは敵視外交と言っているんですが、この誤解を解くような、従来の対中共政策とは根本的に変えたものを打ち出すかどうか、そうしなければ、これは日本の中共外交というものは展開しないんです。そこで、今矢嶋君が言われたように、このままでチャンスを待つんだということは、これはますます、対中共貿易というものはないにかかわらず、政治的方面においても国交回復しておらぬ、戦争状態が続いているということになりますと、これは私は、特に昨日周恩来が、これは社会党の代表団に申したんではない、岸内閣にも、政府にもこれは申しておる。しかもその翌日であるきょう、この国会の唯一の委員会である予算委員会において、しかも藤山外相が、今のようにチャンスが来るまで待つんだ、こういうような御答弁でいいかどうか、私はその今の藤山外相の御答弁が、外電として北京に行った場合、今後の日本の貿易なり国交に重大な私は影響を及ぼすと思うのでありますが、今のようにチャンスが来るまで待つんだ、いわゆる従来のように静観主義、こういうことの御答弁がもし外電として向うへ行きますれば、どういう結果をもたらすであろうか、これは私は、われわれ国民の一員としまして、まことにそういう御答弁が外電として行くことは残念であります。もう一度、一つチャンスが来るまで待つというようなことの御答弁でいいかどうか重ねて御答弁願います。
  175. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 岸内閣が、私は必ずしも中共を敵視しておるとは思っておりません。また総理の言動にそういうものがあろうとも考えておりません。ただやはり何らか中共側における日本立場、あるいは態度等についていま少しく正しい理解を持ってもらいたいというようなふうには考えております。私は、むろんチャンスのことでありますから、どういうふうにこのチャンスが来るか、またそのチャンスをつかんでいくか、チャンスが来るということ自体は、先ほど矢嶋委員が言われましたように、日本側でも努力する必要があろうかとも思いますが、やはり中共側でも若干の努力をしてもらわなければならぬ点もあるんじゃないかと思います。従ってこういう問題につきましては、相互にやはり今までの感情その他について、やはりお互いに謙虚に考え直し、誤解のあることはお互いに考え直して、そうしてそれらの問題について、チャンスが来るような機会を待つのがやはり適当ではないかと私は考えます。
  176. 山田節男

    ○山田節男君 それならば先般社会党の代表団が、向うで人民外交学会の会長をしておられる張実者、あるいは国際貿易公社の副部長の雷住民であるとか、そういう連中と話をし、また人民外交学会での演説等に対しまして、自民党の幹事長福田君の名前で社会党の代表団の言動を慎しまれたい、こういう電報を打ったやに新聞で私は見ておるのであります。そのことはチャンスを今待つとおっしゃいますが、そういうこととどういう関係があるんですか。もし無関心であって静観をせられるならば、そういう少くとも天下の社会党の使節団が行っておるのに言動を慎しめということは、そういうことを少くとも与党の幹事長が向うへ電報を送るならば、外務大臣である藤山さん、あるいは岸総理ともこれは相談した結果に違いない。この点のいきさつを一つ伺いしたいことと、それからもう一つは、御承知の、私らも新聞で知っておるだけでありますけれども、与党の中にはやはり現在中共に対して静観ではいけない、ごとに社会党はああしてミッションが行く、自民党もこれはどうしても行かなくちゃいけない。いわゆる中共に対する貿易の再開ということについては自民党としても重大関心を持っておる。具体的に申しますれば河野一郎君あたりが、そういうふうに非常に心配して、そうして社会党の今度代表団が行くが、その次には自民党の一つ代表を送ろう、あるいは新聞の報ずるところによりますと、藤山外相あるいは高碕通産相が向うへ行こうか、こういうことも実は新聞で私は見るのであります。そういうことは今外務大臣がおっしゃるような時の来るのを待つんだという、ここの公式の御声明と違うんですね。私は重ねて申し上げますが、昨日周恩来が岸内閣に対してああいう重大な声明をいたしておるのであります。しかも日本としましては、幸いにこの参議院の予算委員会において、中共に対するこの今のあなたの御答弁がそのまま向うへ、そういうことになるのであります。この二点に関しまして一つ答弁願いたいと思います。
  177. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 淺沼団長の談話につきましては、新聞の報ずるところでありますから、私としてはとかくのことを申したくないと存じておりましたが、ただ新聞の伝えるように、米国というものが中共と日本との共同の敵だということがもし言われたことが事実でありますとすれば、私はこれは非常に大きな誤まりではないかと思う。また将来の日本と中共との関係を、そういう形において持っていきますことは、私は適当ではないと考えております。そういう意味におきまして、果してどういうことを言われたのか、特に今日まで正確に私も了解をいたしておりませんが、そういうふうに了解されたとして、あるいは福田幹事長がもし電報を打たれたとすれば、私は不適当なことではなかったと、こう考えております。  なおわれわれとして、今後チャンスを待つのはけしからぬという御意見のようでありますけれども、やはりこうしたものは、機会が来なければなかなかうまくいくものではないのでありまして、そうしたことにつきまして、貿易等の問題につきまして機会が来れば、それをただ単に静観だからというよりも、もう少し注意をして見ながら、こうしたチャンスが来ますればつかまえていこう、というのがこの議会以来私が申しているごとでございます。
  178. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 関連して、今のちょっと伺っておかなければならぬと思うのですが、福田幹事長の電報は、あなたと協議の上打たれたのではない。福田幹事長独自で打たれたのだと、こういうふうに御答弁なさったのですか。そうですが。
  179. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 福田幹事長はあの当日の朝私のところへ電話してこられまして、こういう電報を打ったから了承してくれという電話をいただきました。
  180. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そうすると、それは事後承諾だというわけですね。
  181. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) さようでございます。
  182. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 で、あなたは先ほど淺沼団長がどういう演説をしたか、つまびらかでないかと、非確認の発言をされているわけですね。非確認情報に基いてそういう挙に出るというのはおかしいじゃないですか。わが日本社会党は代表団を派遣していますが、外交権は内閣に、お宅にあるのですからね。お宅の外交権を侵さないようにということは心して対処しているはずです。そうして出発前もあなた方にごあいさつを申し上げて行っているわけです。そうして今政党政治で、外交に関する限りは政府と与党というのは一体だと思うのです。それで外交権はお宅にあるわけですからね、だから党の幹事長が、あなたの方に協議もされずに、勝手に与党の幹事長がそういう電報を打って、あとであなたに報告で済ますというようなことは、政府、与党一体として内閣に外交権があるという立場からすれば、外務大臣を非常に私は無視したものだと思うのですね。その点に一つ問題がある。  それからもう一つ違う角度から、それは社会党は、これはビザももらって行っているわけですからね。その他党、反対党の行動についていろいろ意見を言うことは、それは私は意見があってしかるべきである、しかし時期もいろいろあるだろうと思うのです。直ちに他党の幹事長が、外国にいる他党の代表に、その経過その他を十分熟知することなく、ああいう電報を打つということは、明らかに私は他党に対する内政干渉だと思う。これはまああなたは幹事長じゃないのだから、第二点についてはあなたに答弁求めませんけれども、第一点の、外交権が内閣にある点、あなたがその責任者で、そうして政党政治——少くとも外交に関する限りは、私は二本とか三本のひもがあってはならぬと思う。岸内閣発足以来鳩山さんの当時からもそうでありましたが、二元外交とか多元外交とかいわれているわけです。藤山外相はいいセンスをもって外交を推進しようとするが、いろいろ党内の実力者があって、二元、三元、多元となってどうも岸内閣の外交はうまくいかない、という批判があることはあなた御承知通りだと思う。従って幹事長が電報を打つとすれば、当然それは内閣の責任者である岸総理並びに少くとも外務大臣の了解を得て電報を打たなければ非常におかしいと思うのですが、あなたは日本国の外交担当の責任大臣としてどういう所見を持っておられますか。答弁次第では委員長の許可を得て再質問いたします。
  183. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 淺沼さんは社会党の書記長であろうと思います。福田さんは自民党の幹事長でありまして、しょっちゅういろいろな意味においてお互い話し合いをされておると思います。そういう意味において両兄の幹事長の間でいろいろお互いが注意し合っていくということは、私は別に外交権を侵すという問題ではないのではないか、こう考えております。
  184. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 外務大臣逃げてはいけませんよ。それは国内で、あるいは国会議事堂の中で両党の幹事長、書記長がいろいろと意見を交換し、話し合うことは自由ですよ。しかし少くともあなた方からビザをいただいて、そこでわが党の使節団が他国に行っているわけです。これは貿易なり外交に関連して行っているわけですよ。舞台は国内でないのです。国際的舞台になっているのですよ。そこにおける問題に対して他党の幹事長が電報を打つということは、国内で両党の幹事長が話し合いするのとは違いますよ。そういう点をごっちゃにして、頭のいいあなたが逃げるということは私は卑怯だと思う。これは当然、何ですよ、幹事長は電報を打つ以上は、あなたを尊敬し、あなたの立場を尊重するならば、当然岸さん、並びに岸さん以上に、外務大臣に、こういうことだが、あなたの所、外務省にはどういう情報が入っているか、そうか、それではこういうことを党としてやりたいと思うが外務大臣いいか、こうあなたの意向をたたいて、しかる後やるべきことだ。そうでなければ、外交なんというものは、一元外交、強力な外交というものは展開できませんよ。あなたは、日本国の外交を強力に成功裏に推進するために、外務大臣としての立場から明確に答えるべきだと思う。事後承認なんというのは多元外交の一つの現われであるとともに、外務大臣、あなた自身を軽視したやり方ですよ。逃げないでその点を率直に言いなさい。そう言ったからといってあなたの外務大臣のポストがなくなるというわけでないですよ。明確に言ったらいいと思う。
  185. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 福田幹事長が、かりに中共のだれかに電報を打ったというならば、これは私は外交権の侵害であり、やはり党として考えなければならぬことだと思います。がしかし議会における、二大政党の幹事長同士が、お互いに注意し合いまして、二度とそういうことが起らぬように、重ねてやらぬようにという電報を打っておるのであります。そのこと自体は、私は外交権を侵害するとか何とかという問題だとは考えておりません。
  186. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 関連して。
  187. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 栗山君、関連事項ですからなるべく簡潔に一つ
  188. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 先ほど矢嶋君の質問に対しまして外務大臣お答えになりました点で、一言関連してお尋ねをいたしたいと思います。  対中共問題は岸内閣もこういう工合に間違って、なかなか緩和の方向に向わないので、腹の中では非常に困っておられるのじゃないかと思うのです。その点は先ほどの答弁の中にも少しは出ておるように思います。問題は、昨日の周恩来首相との会見においても、岸内閣そのものが激しく非難を受けている。新聞の報ずるところでありますからどこまでが正確であるかわかりませんが、少くとも、過日なくなられました鳩山元総理については、そういう非難の言葉は全然ないのです。従って、岸内閣になってからやられましたところの中共政策というものについて、やはりもう一度振り返ってみられる必要があるのではないかと思います。国会答弁を通じて、しばしばあなた方岸首相、藤山外相が中共政策についてお述べになりましたことは、われわれも十分承知しております。十分承知しておる上で重ねてこの新しい段階に立って、なおかつ従来の見解のままであられるのか、あるいはここに一つの反省のもとに新しい歩みをせられようとしているのか、そこの点を明らかにいたしたいと思うのであります。  第一は、岸内閣に対する中共のきわめて強い不信感の中心をなしておりますものは、やはり岸内閣が中共を敵視しておるということ。ところがあなた方は決して中共を敵視していないと言われる。これはしかし両方がそういうふうに空っばり合っておったのでは問題になりませんが、今度はあらためて、従来しばしば問題になったことを、周恩来首相がさらに具体的にこれを述べておるのであります。まず第一は、長崎の国旗事件においてきわめてこれは不当なことである、しかも台湾政府と何か裏取引をして犯人の処分をきわめてあいまいにしてしまった、こういうふうに具体的に述べておる。また第二の問題としては、台湾というものは中共の国内問題であると言っておるにもかかわらず、依然として二つの中国というという見解をとっておるばかりではない、台湾との間の貿易協定その他もさることながら、岸総理みずからが台湾に行って中共の非難をするような言辞を弄したことについては、これは我慢ができないことである。さらに一国の総理大臣が東南アジアあるいは米国へ旅行されたときに、第三国、中国を非難するような言葉がたびたびあった。こういうことは国際社会における信義上の不信ではないか。こういう行為を行う岸内閣に対しては友好関係を結ぶことはできない。こういう工合にきわめて具体的に述べておるのであります。このことは、今まではそういう情報が参りましても、いろいろと言を右にし左にして済まされておりましたが、このたび社会党の責任ある地位にある人がグループを組み、そうして向うに公式に訪れて、その結果周恩来首相から、はっきりした具体的な意思表示というものがなされた。この具体的な点について私はただいま三点をあげました。三点をあげましたが、長崎事件あるいは台湾問題、さらに東南アジア、米国における岸総理の言動、こういうものについて依然として正しかったとお考えになるか。そういうことを正しいと考えてなおかつそれを非難する中共は当っていない、こうお考えになられるか。あるいはまた中共の言っておることはなるほど今振り返ってみればもっともである、こういう工合にお考えになるのか。その辺を明確にしていただきたいと思うのであります。
  189. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 長崎の国旗事件におきます司法処置を、台湾の意向によってうやむやにしたというような事実は全くございません。それから総理が台湾に行って何か非常に中国本土を刺激、攻撃するようなことに同感をされたとか、いろいろ言われておりますが、たびたび総理自身言われておりますように、そういう言動がなかったということを言われておるのでありますから、私どもはそうであろうと信じております。また東南アジアその他を総理が回られまして、特に中国を誹するような言辞をされたとは私どもは思っておりません。
  190. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そこまでであれば、今まで衆参両院で、本会議、予算委員会あるいはまた外務委員会でお述べになった通りなんです。その範囲を一歩も出ておりません。問題は、そういう工合に国会を通じて日本国民にも声明をせられ、またその声明が直ちに中国までも通じておりますにもかかわらず、中国においては岸内閣を信任し得ない、そういう態度はよろしくない、こういう工合にそこまで具体的になったのでありますから、従って、岸内閣としてはこの段階において、この時点に立って中共との友好関係を回復するという、一刻も早く戦争状態を終結せしめるという意味において、新しい踏み切りというものをなさる御用意があるかどうか、そこが問題であります。従来の通りの態度をおとりになるのか、あるいはまたここで具体的に中国に対して向うの了解を取りつけ得られるような態度をおとりになるのか、この点がお尋ねをいたしたい点なのであります。
  191. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私どもは、岸総理並びに岸内閣が今のような三点を通じても申し上げました通り、非友好的態度をとっておるとは思っておりませんので、従ってそういう意味において態度を切りかえるということは考えられないと思うのであります。
  192. 鈴木強

    鈴木強君 議事進行について。  この問題はきわめて重要な問題でございます。今、山田委員関連質問から発展をして、二、三のわが党の委員質問されましたが、少くなとも二大政党が対立をしている今日、社会党は社会党としての実質の上に立って行動をしている。自由民主党は自由民主党の立場に立ってやられておる。少くとも二大政党の間における政策の問題等について、事少くとも、わが党が中共に使節団を派遣して、その代表である淺沼団長が発言をしたことが、どういう思惟に基いてやられておったのか、ただ外電の伝うるところというこの軽率な判断の中で、少くともああいう電報を福田幹事長が出されたことは、きわめて私は遺憾だと思います。従って今この委員会で藤山外相だけを相手にして話をしても、これは解決いたしません。特に関連質問の中ですから、いずれわが党は、機会をあらため、使節団の帰国を待って、十二分にその間の事情を聞きまして、あらためてやることをこの際申し上げて、議事進行をしていただきたいと思います。
  193. 千田正

    ○千田正君 エネルギー問題に対して、ただいま高碕通産大臣から、炭主油従——石炭を重点に考えて油を従にする、これはけっこうなことですが、ただ私はそこに現実に起きておる問題は、必ずしも政策が理想的に行われておらない。石炭鉱業の確立であるとか、あるいは保護ということの政策は当然これは日本政策としてやらなくちゃならない。かといってこれを、石油の輸入あるいは原油の輸入に対して制限を加えていくということは、これまた一方においては産業の面において萎縮させ、あるいはコスト高を生じ、あるいは中小企業その他の商社に相当な影響を及ぼしている問題であります。そういう点から考えますと、これは両方とも考えてやらなくちゃならない。それで、二月の十八日、衆議院の予算委員会において、あなたの御答弁の中に、重油の百万キロの削減をやる、こういうことをお話しになったそうでありますが、重油の百万キロの輸入制限をやるということになるというと、これは石炭と競合しない面ならば、これはいいとしまして、一般の中小企業あるいは一般の消費者に及ぼすところの影響が非常に大きい。同時にまた最近の情勢から、私は現実に起ってくるということは、ロー・サルファの重油や何かは十分に出回っておらない、そのために鉄鋼業や何か非常に苦しい。またA重油のような水産に対して欠くべからざるところの原油が回ってない。そのために現在漁期を控えて困っておる、これが現状であります。しかしながら、今までの輸入及び配給の経路をわれわれはつぶさに観察しましたときにあなたのような、いわゆる炭主油従ということは、けっこうであるけれども、こういうことに籍口して業者はもうけておる。昨年のいわゆるスエズ運河の閉塞というナセルの問題が起きると同時に、日本はロングランの一つの船の契約をしておった、高い船賃を払って原油を輸入しておった。それが途中にして平和に帰ったために、思惑がはずれたために、持っておるところの油はそのままやるというと赤字になってしまう。一応これを倉庫にキープしておいて、一応の値上りをしないというと赤字解消ができないというのが元売会社の現状じゃないですか。そうだとするならば、そういうところに適切な方途を考えて、実際に漁業であるとか、あるいは鉄鋼業のような、現在の産業に重大な影響を及ぼすようなものは、少くともすみやかに供給するような方法を講ずべきであると、私はこう思うのであります。現実に今三陸その他の漁場から油が足りない、元売会社は売らない、しかも持っておっても売らない——私はこの際、時間もありませんから、明細な報告を出していただきたい。一体、三十三年度の油の輸入計画、原油をどういうふうにして輸入して、それがどういうふうに製品にしてどういう配給をなされておるか、現実においては、高い方のいわゆるハイ・サルファが相当入って、実際の鉄鋼業その他に必要なロー・サルファがあまり入っておらない、私はそういうふうに見ております。  それで私は、きょう高碕大臣お答え願いたいのは、そういう現状に即しまして、どういう政策を持たれるか。こまかいことは私の手元に通産省としての的確な資料を出していただきたいということだけは申し上げますが、あなたの政策として、現状の状況をどういうふうに打開していくか、その点を一つお答え願いたい。
  194. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 昨年の下半期におきまして、重油の輸入を五十万キロリットルもカットしてしまったということのために、国内の油の値段が上ったということは事実でございますが、当時日本の油は予想外に下ったということも事実でありまして、それが正常な値段に返ったというふうに私どもは解釈いたしておるわけなのであります。しかし、それが今日ひずみになっておるかいないかということは、十分これは調査したいと思いますが、いずれにいたしましても、できるだけ石炭と競合する種類の油は今後規制を加えていきたい、こういうわけなのでありますが、それはきわめて予想よりも少いのでありまして、一千万キロリットルも輸入したうちで、かれこれ四割くらいが全体その方の油でありますから、その中には小型の漁船に使います油、あるいは今御指摘のロー・サルファの油も入っておるわけでありますからかれこれ競合するものは、おそらく二百万キロリットルくらいだろうとこう思うわけですが、それを正確に把握いたしまして、その方面における輸入をある程度規制を加えたいと存ずる次第でありますが、今、千田さんのおっしゃったような工合に、かりにロー・サルファを供給しておるのじゃなくて、ハイ・サルファの方の、高い硫黄のものの方はよけい入っておるというふうなことになりますれば、私どもの計画と逆になっておるわけでありますから、そういう点につきましては十分私調査いたしまして、資料を差し上げたいと思っておりまして、自分たちも検討いたしたいと存じておるわけでありますが、来年度の油の割当等につきましても、これは今検討中でございますが、こういう問題につきましても、資料として差し上げるものは差し上げたいと思っておりますから、さよう御承知を願いたいと思います。
  195. 千田正

    ○千田正君 時間があまりなくなったようであります。
  196. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 千田君に申し上げますが、持ち時間ももうなくなりましたから……。
  197. 千田正

    ○千田正君 それはよくわかっておりますが、農林大臣質問が残っております。これだけお許し願いたいと思います。  高碕大臣に対しましては、実際不均衡な需給のあれを早く是正していただきたいということをお願いして、いずれまたあらためてお聞きします。  農林大臣お尋ねするのは、先般、衆議院の農林委員会あるいは大蔵委員会等の論議の中心になりました農業法人の課税の問題であります。あのときの会議録を拝見しますと、農林大臣と大蔵大臣の間には十分了解があって、法へ課税と単独課税に対する了解ができたようなお答えもあったようでありますが、それに対して大蔵省の国税庁の金子直税部長はいや、それは実質課税をやるのだ。農林大臣お答えとは食い違った御答弁をされておる。そのときの結論からいいまするというと、農林大臣は、大蔵大臣ともう一回十分相談して、三月十六日、本日——本日は納税申告の最終日である、締め切りの日であるから、これまでには一致した政府見解意見を述べるということを衆議院においては述べられておりますが、きょう三月十六日において、いわゆる課税の対象になる人たちは一応の納税申告は終る日であります。農業法人の課税という問題は、日本の農地改革のあとに来たる重大な改革問題でありまして、とかくすれば零細農化するところの農村の実態に対しまして、十分な検討を加えなさらなければならない今日において、この問題は農村に対するところの重大の影響を及ぼしますので、農林大臣から明確に一つ答弁をいただきたいと思います。
  198. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) 農業法人に関する課税の問題でございますが、過般三月の十日の日に大蔵省と意見の調整をしまして、一応結論が出たのでございまして、その説明をいたしたのでございますが、第三項の後段につきまして若干のニュアンスの差が出て参った、その点につきまして、農林委員会の方では、さらにその問題を調整するようにと、大蔵大臣にも事情を具して善処方をお願いしたのでございます。大蔵省にも御連絡してございますが、事は最終的には課税の問題でございますので、私は農林委員会の意向は伝えましたけれども、お答えは私からするのはいかがかと思いますから、これは大蔵省の方からお答えを願うことにいたします。
  199. 千田正

    ○千田正君 ただいま農林大臣からは、一応大蔵省に十分に要請はしておるのだけれども、的確なる答えはまだ承わっておらないようであります。ところが、これは農民にとっては重大な問題でありますので、大蔵省の見解をはっきりしていただきたいと思います。
  200. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ただいま農林大臣が言われましたように、また、おそらく、これは御承知のことだと思いますが、農業法人に対する課税上の取扱いについてということで、農林、大蔵両事務当局で話し合ったものがあるのであります。ところがその第三の後段でございますが、その点の解釈についていろいろ疑義があるということでございますが、その疑義についてのいろいろな話し合いはしておることと思います。しかして、きょうはちょうど十六日でございますから、その申告の問題とからみ合わせてどうなるかというお尋ねのように伺うのであります。御承知のように、個人収入だと考えられますものはやはり個人申告として申告をしていただきたいのであります。問題は、現在法人成りをしておる農家において、おそらく自分としては法人だということで考えておられるに違いないし、まあ問題は、実際の面でそれらの方と直接お話をして最終的に決定するということにならざるを得ないのではないか、こういうように実は思っております。  問題の点は、やや農業法人成りの場合にいたしましても、いろいろの形式がございます。お尋ねになります方の御意見を聞きましても、たとえば集団農業というような意味の法人成りを主張される方もございますし、個人農家そのものが法人の届出をしたらどうなるか、こういうような場合もあるようでございます。過日来、私が質問を受けました、これは大蔵委員会でございましたがその方などの御意見は、個々の農家が、一農家で一法人を作るということは、どうも自分には理解はしかねる。しかし集団農業というような意味においてこの法人成りをする場合においては考えられないか、こういうようなお話を伺ったのでありますが、なるほど、共同経営に発展し、集団農業というようなことになりますと、個人農家経営とはよほど事情が違うように思いますが、その場合になりますと、農地法の許可が必ず問題になってくると思うのでありまして、そういう意味で、非常に理論的にはわかりいい、割り切ったような問題ではございますが、結局、個々の具体的なケースについて、実態で御相談する以外にはなかなか解決しにくいのじゃないか、こういう感じがいたしております。私でもは、正式に法人ができ上ったものについては、やはり法人としての取扱いをいたしたいと思いますが、いわゆる法人の届出というだけで法人事業税ということに変るとは実は考えられない。やはり実態を十分見きわめることが大事なように思っているわけでございます。
  201. 千田正

    ○千田正君 これは非常に重大な問題であって、大蔵大臣の御発言からいえば、法人として届出のあったものは法人として法的には認めるけれども、課税としての対象の場合は、個人的収入に賦課するという考え方のようでございますが、そうですが。
  202. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 御承知のように、農地法の許可がないと、土地の所有権というものは法人にはっきり帰属するとは言えないだろうと思うのであります。問題は、その点に理論が詰まっていくように私どもは考えております。
  203. 千田正

    ○千田正君 時間もありませんが、最後に、重大な問題ですから農林大臣にお伺いします。そうしますと、農民が、終戦後において、いわゆる法律の改正等によって、せっかく農地を手に入れた。あるいは今の民法の遺産相続等においては、細分化することをおそれるために、あるいは零細化することをおそれるために、法人という一つの法的根拠のあるものを幸いとして法人の届出をした。それに対しては法人として課税の対象にさるべき問題だと、われわれは思うが、今の大蔵大臣お話では、実質課税として、収入というものと、それから農地法における所有権の問題とを勘案して実際の課税をしょう、こういうお話のようであります。そうすると、農林行政からいいますと、農民の零細化というものを防ぐ一つの方法としては、農業協同組合その他あるでしょう。あるでしょうが、農家個々の問題において、今の法人組織ということは、将来は、名ばかりあって、実際は実は認められないという結論に到達するだろうと思いますが、どういうふうにお考えですか。
  204. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) 現在の農地法の関係におきましても、やはり例外的に、従前、法律の適用の面におきましては、法人の農地もございます。それからまた、御承知通り、開拓地等につきましては、組合有等を一時認める場合があるわけでございます。現在の農地法は、御承知通り自作農主義をとっておる。すなわち、耕作する者に耕地を持たせるということを建前にしておるわけでございますが、今後の制度として、法人に土地を持たせるということを、この際画然たる制度上の問題としてとるかどうかという問題になりますと、ここが議論の分れるところであります。当時質問された方々にも、その真意を問うたのでございますが、農地法の解釈上、あるいはこれが截然としていないというので、これを改正するの意図があると、こういうことかとお尋ねしますと、必ずしもそうじゃないのでございます。従いまして、われわれは農地法の建前としましては、これを制度的に法人に採用せしめること、制度的に今後とるかどうかということにつきましては、なお検討を要するものと考えまして、なおこれは考究さしていただきたいと思います。かつ、現行の民法等におきましては、御承知通りの分割相続制度でございまして、零細化を防ぎ、あるいは今後の農業経営上いかなる形態のものを法制上案出するかということはこれは重大な問題でございまして、この方面につきましては、今後もわれわれは検討を怠らないようにいたしたいと考えます。  ただいまの農業法人の租税の問題でございますが、これは主として、御承知通り、有限会社による商法上の法人でございますので、これの扱いは、つまり法人として画然たる経営をとっておるか、同時にまた、商業帳簿その他の帳簿を備えておるか、経営の実態はどうかということに、かかって税法上の問題があると考えるものでございますから、これは先ほど申し上げました通り、大蔵大臣お答えのように、これはその限度になりますると、私の方としましては、大蔵省の御意見を尊重すべきじゃないかと、こう考えておるわけでございます。
  205. 千田正

    ○千田正君 時間もありませんので、この問題は相当重大な問題でありますが、いずれ常任委員会において研究したいと思います。
  206. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 千田委員質疑はこれで終了をいたしました。   —————————————
  207. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 八木幸吉君。
  208. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 外務大臣お尋ねします。  改定安保条約の内容として、条約の適用区域、米軍の防衛義務、事前協議事項、内乱条項、第三国基地提供等の禁止、経済協力条項、期限等に関する現在お持ちになっているお考え伺いたいと思います。
  209. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の改定に当りまして、われわれは世論を聞きながらやっておりますが、条約適用地域につきましては、国民の多くの御意見が、沖縄、小笠原を含まないという御意見のように次第になったと私としては判断をしておりますので、そういうような考え国民大多数の意見ではないか、こう存じております。  米軍の防衛義務につきましては、義務を明記してもらう考えでございます。  それから事前協議事項と申しますか、この情勢の判断につきまて、あるいは配備装備等につきましては、協議事項にいたして参りたいと存じております。  それから内乱条項につきましては、第三国基地提供等の問題とあわせて削除をするのが適当でないかと、こう考えております。  経済協力条項につきましては、こうした条約を作ります基底に、やはり両国の経済的、文化的親善関係を基礎としておりますので、何らかの形においてそうした意味が明記されると思います。  期限等に関しましては、あまり長からずあるいは短かからずというようなことを考えておりますわけでありまして、方法論としては千九百何十何条まで、あるいは何年間というような、表現の方法が二つあると思います。これらのいずれをとりますかは、まだきめておりません。(矢嶋三義君「委員長、議場がざわざわして聞えにくいから静粛に一つやって下さい」と述ぶ)
  210. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に、改定安保条約は、アメリカの方から見ますと、防衛義務、あるいは核装備、もしくは出動に対する事前協議、期限といったような制限的の、いわば若干不利なような面がございます。ところが、他方では共同防衛体制といったような積極面もございまして、これが矛盾しているかのような感がございますのに、今回アメリカが改定に踏み切りました動機、理由等をどのようにお考えになりますか。
  211. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この問題につきましては、自由民主党として、重光外務大臣以来、アメリカに交渉をいたしております。岸総理が、また、一昨年ワシントンに行かれましたときに、この問題を取り上げて要請されております。そうして、国民もまた、七年前にこの条約ができたときとは、現在の日本状況が違っているということを考えておりますので、これを自主的に建て直しますことが、日米の関係を基本的に規整する上において適当であろうと、また、それ自体が日米関係を真に協力体制に持っていく一つの大きな基盤であろうという認識のもとに、そういう考えをアメリカが持ったと、私はこう考えております。
  212. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に、防衛出動の条件として、日本側の要請もしくは承諾を条約に明記されますか。
  213. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本国が侵略を受けましたときに、アメリカ軍が行動を起すと思います。が、しかしながら、アメリカと日本との間には、常時いろいろな協議をいたして参るわけでありまして、従って、そうした協議の上で出て行くことに相なろうと思います。
  214. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そういたしますと、条約にはお書きになりませんか。
  215. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 必ずしも条約に書かなくともいいのではないかと思っておりますけれども、それらの点につきましては、さらに検討しながら参るつもりでございます。
  216. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に、新しく経済協力条項をお入れになりますが、これは一般の意味のほかに、域外買付の促進といったような特殊の問題も包含しておるのでございましょうか。
  217. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 特に、域外買付というような特殊な問題を包含はいたさないと思います。一般的な経済協力を、あるいは文化的協力関係をうたっていくわけであります。
  218. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に、条約の性格について伺いますが、現行安保条約は排他的な基地貸与協定であり、行政協定の第二十四条を除きましては、米軍と自衛隊とは法律上無関係でありますが、改定条約は共同防衛的の性格を持つものである、かように考えるのでありますが、いかがでありますか。
  219. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 現行安全保障条約においては、アメリカの日本防衛の義務を明記しておりません。従って、それを明記することによって、アメリカが日本の防衛の責任を負うわけであります。それに対して日本が基地を提供するというような義務が負担されていくことになろうと思うのでありまして、共同防衛体制というのは、どういう意味に文字通り解釈されますかわかりませんけれども、現実の問題として、そういう形において規定されていくと思います。
  220. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 改定条約にも米軍の使用目的として、極東における国際の平和と安全の維持に寄与する、こういう一項をお残しになりますか。
  221. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) もちろん、極東の安全と平和ということは、われわれ日本国民が他国からの侵略を受けます場合に当然考えられますし、また、日本自身が侵略をされないことが極東の平和と安全のために寄与すると考えております。ただ、現行安保条約にありますように、広く極東の安全のために、ということが一つの主要目的になっておるのでありますけれども、それらの問題は協議事項に、今度の実際の問題として協議事項に入って参りますので、そうした文字が用いられましても非常に狭くなってくると思います。
  222. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そういたしますと、バンデンバーグ決議の精神を改定に盛られるということは、具体的には、米軍の使用目的として、極東の安全と平和を維持するという一項がある以外には、何か具体的にございますか。
  223. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本を他国からの侵略から守るということを共同でやりますこと自体は、共同の防衛だと思います。従って、バンデンバーグ決議における精神もそういうところにあろうかと思います。
  224. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ちょっと関連して。
  225. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 八木君、いいですか。
  226. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 いいです。
  227. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 安保条約の第一条ですね。極東云々という言葉は、これは総括質問の第一日に、わが党の羽生委員があなたに伺ったときは、そういう表現を残すかどうかは慎重に検討すると答弁された。きょう八木君の質問に対しては、若干ニュアンスの違う答弁をされておる。それは極東云々という言葉が残されても、従来よりは狭い範囲のものになるだろう、こういう答弁をなされた。初日の羽生委員——これは四日だったのですが、その答弁と、八木委員に対する答弁はかなり違うのですね。だからそういう条約に言葉がある場合には、不明確にしておけば、運用の場合非常に困ると思うのですね。だから羽生委員答弁されたことと、今八木委員答弁されたことをあわせお考えになって、あいまいもことしたものではなく、明確に一つお答え願いたいと思う、条約ですから、そういう字句というものは厳密にしておかないと、現行より幾らか狭くなるだろうとかということでは、運用上の場合に非常に困るだろうと思うのですね、その点、明確にしていただきたいと思います。
  228. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 羽生委員が、一条にあるそうした言葉を用いるか用いないかということは、今後の条文の書き方でありますので、われわれとしてもその点はまだはっきり最終的にはアメリカ側と折衝をもっておりませんから、はっきりしたことを申し上げかねるわけでありますが、十分われわれはその極東の平和と安全という文字は、今お話がありましたように、誤解を招きやすい文字だと思います。その使用方法によりましては。従って、それは十分注意して参らなければならぬと思っておりますことは当然であります。ただ、ここで申し上げたことがそのまますぐに相手国との交渉でもありませんから、現実に出てくるか出てこないかということについては、やはり今後の問題として十分考えていかなければならぬことだということであります。
  229. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 従来の政府答弁ですと、新条約は、日本憲法の特殊性の範囲内で、あるいは憲法の範囲内で条約全体を規律するとかというようなお言葉がございますけれども、これは一体どういう意味を含んでおりますか。
  230. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本の憲法の精神及び解釈に従って、われわれはできる問題とできない問題とあるわけであります。そういうことを明確にしていくためには、憲法の範囲内ということを書くことに相なると思います。
  231. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 アメリカの憲法の手続と、たとえば上院の宣戦布告の関係といったようなことではなしに、日本ではおそらく憲法九条の関係が一番大きな関係だと思うのですが、ただばく然と書いてあるだけではちょっと意味はないのではないかという気がするのでございますけれども、何か具体的にお書きになりますか。
  232. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本が憲法の範囲を逸脱して行動することに参りませんことは当然だと思います。従いまして、憲法の範囲内ということをあらゆる機会にアメリカ側に申しておりますし、また、この条約の中にもそういう文句を採用して参りたい、こう思っております。
  233. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 アメリカの憲法の手続という意味は今ちょっと申した通りでありますが、日本でお書きになると、たとえば攻撃的なことには共同防衛はしないというふうな含みでお書きになるというふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  234. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この条約自体が憲法の精神にのっとってやって参るわけであります。従って、日本は自衛力だけを持っておるわけであります。日本の骨身を守るだけのことでありまして、その精神は貫いて参りたいと思います。
  235. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に、条約改定後の在日米軍と自衛隊の協力関係について伺うのでありますが、米軍日本の基地から直接自衛のためではなくて、極東の安全のために軍事行動を起した場合、この場合に、自衛隊に協力を求められたときはどうされますか。
  236. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 条約の範囲内以上に逸脱して協力を求められることはないと思います。また、協力するならばその範囲内だと思います。
  237. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 もうちょっと明確に、防衛長官でもけっこうですが……。
  238. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。お尋ねの内容がきわめて一般的でありますので、具体的内容を持ちませんと防衛上何とも御返事がいたしかねる次第でございますが、規定される条約の内容によっておのずからきまることと私ども考えております。
  239. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 仮定を設けて伺っておるのですが、つまり米軍日本の基地から極東の安全のために、たとえば飛行機が出ていく、それに対して自衛隊も一つ助けてくれ、協力してくれ、こう要請された場合に、イエスと言われるか、ノーと言われるか、あるいは事前協議をされるか、この三つの場合。
  240. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 米軍日本の基地から出ます場合には協議事項になると思います。従って、協議をいたしまして、ノーという場合があり得ると思います。かりにまた、イエスと言いました場合におきましては、日本自身が侵略を受ける危険があるということが想定されるわけであります。ただそうした場合に、どうした協力をするかということについては、必ずしも条約には規定されないのでございます。
  241. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そういう協力を求められたときに、日本がかりにノーといえば、ただ基地だけを提供するということになると、どうもバンデンバーグ決議の精神からちょっとアメリカ側は納得しにくいのではないかと思うのですけれども、今の外相のお答えでは、そのときはとにかく相談するということでありますから、この点はそれ以上には進みません。  次に、かりに沖縄に対する武力攻撃が起った場合には、日本は潜在主権を有するから、わが国の自衛権の発動の対象とはなるけれども、アメリカが施政権を持っておるから、その意向に反しては出動できない、これが従来の総理の答弁であります。そこで、逆にこの場合に、アメリカから補給業務などで協力の要請があった場合には出動するのは、日本の場合と同じだと思うのですが、いかがですか。
  242. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 大体先ほど御答弁申し上げましたように、沖繩、小笠原を条約に含めないということは国民の意思のように考えられます。従って、そうした線で参りますれば、そうした問題は起ってこないと思います。
  243. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 総理は、沖縄に武力攻撃があったときは、潜在主権の関係で日本は自衛権を発動することができる、しかし、施政権はアメリカが持っているから向うの意向に反してできない、これがお答えです。それで私が申し上げるのは、もしアメリカが逆に日本に協力してくれと言うてきたら、これは私は出ていってちっとも、内地と同じことで、差しつかえないのじゃないかと、こう思うのですが、防衛庁長官はいかがですか。
  244. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) よく政府側では衆知を集めてはっきりした答弁をして下さいよ。
  245. 林修三

    政府委員(林修三君) ただいまの問題は、いわゆる沖繩——わが国が領土主権を持っている、従って抽象的、観念的には日本の自衛権の及ぶ範囲であるということは、前から政府として申し上げているのであります。しかし、現在平和条約第三条に基いてアメリカが全面的な施政権を持っております。アメリカ側の意向に反して、あるいは意思に反して、日本がこの地域において自衛権を行使することはこれはできない。こういうこともまた申し上げている通りであります。  今、御質問の、アメリカの要請があった場合はいかんという問題でございますが、これは実はいろいろ場合が分れるわけでありまして、いわゆる条約上そういうことが入るかどうかということになりますと、これは先ほど外務大臣が仰せられました通りに、沖縄、小笠原を安保条約の区域に入れるかどうかということできまってくるわけであります。条約上の問題は、そういうことがきまったあとで出てくるわけであります。そういう問題と離れて、いわゆるアメリカが、抽象的にそういうことの援助を頼むことがあるかどうか。これはアメリカとしてどういう態度でそういうことを頼むかということを考えませんと、簡単にはお答えできないと思いますが、しかし抽象的にいえば、ともかく沖縄、小笠原は日本の領土でございまして、その範囲においては憲法上必ずしも不可能ではないと思いますが、アメリカがどういう立場で——自分を援助してくれという立場で頼むか、あるいはもう日本日本、沖縄、小笠原はみずからの手で守るべきだという立場で言ってくるか、そういうことを分けて考えませんと、必ずしも的確にお答えはできないと思います。
  246. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 分けて考えお答えをいただきたい、分けて考えて。
  247. 林修三

    政府委員(林修三君) 先ほどから申し上げておりますように、いわゆる条約上の問題として、日本に条約上のそういう権利義務があるかどうかということは、いわゆる新しい安保条約で沖縄、小笠原をその条約の区域に入れるかどうかということできまってくるわけであります。小笠原、沖縄がそういう区域に入らなければ、条約上の権利義務の問題にはなって参りません。これを第一に申し上げたいと思います。それからその次に、ただ、そういうことと離れて、たとえばアメリカが沖縄にいるアメリカ軍を援助してくれという意味ならば、これはいわゆる日本の自衛権の範囲と必ずしもマッチしない点が出てくると思います。しかし、沖縄を守るという立場で、自分の領土である沖縄を守るという立場日本がそこに何らかの行動をする、これは先ほどから申し上げた通りに、アメリカがそういう意思を放棄した以上は、日本が当然やるべきだ、またやれると、こういう考え方であります。
  248. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 どうも答弁がちょっとはっきりしないのですが、沖縄に武力侵略の危険がある、そこで米軍が一生懸命それに対応しているのだが、日本も潜在主権があるのだから、一つ来て補給業務を手伝ってもらいたい。こう言ったときに、行けるのじゃないかと私は思うのですが、行けないのですか。
  249. 林修三

    政府委員(林修三君) 先ほどから申し上げておりますように、条約上の問題になりますと、単にアメリカがどう言った、こう言ったということだけでは簡単に参りません。これは条約上の権利義務、平和条約の第三条に基くアメリカの施政権というものとの関連で、はっきりとその間のことを取りきめた上でやるべきだということが第一の問題でございまして、そういう問題のあることを前提とした場合のことだろうと思うのでございますが、その場合においても、先ほど申し上げた通りに、アメリカを援助するというような立場でやるのではなくて、日本日本の領土である沖縄、小笠原を守るという意味で行動するのであれば、これは憲法の範囲内だ、これはいわゆる沖縄、小笠原に抽象的、観念的に自衛権が及ぶということと同じことだと、かように考えます。
  250. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 現実に沖縄を守るときには、米軍を援助しようがしまいが、日本の国を守るというのは実際行動としては同じだと思うが、防衛庁長官にゆっくり一つ御返事を願いたいと思います。
  251. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。ただいまのお尋ねは、アメリカから要請があった場合ということでございまするが、条約上、沖縄を入れるかどうかという問題と分けてお答え申し上げておりますが、日本の領土として守るということについては、これは日本自身の領土としては可能である、かように私は考えております。
  252. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そうすると、アメリカが要請しなくても、日本が行くということにアメリカが不同意を唱えない場合には、沖縄が危険に瀕すれば自衛隊はおいでになりますか。
  253. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) アメリカの問題は別として、守るか守らないかということになりますと、防衛上は力の問題でございまして、その点は、その場合でないと行くか行かぬかを決定することは困難であります。
  254. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 どうも非常にややこしくなってきましたけれども、つまりアメリカが補給業務等で日本の協力を求めるということは、実際問題で私はあり得ると思う。たとえば燃料を持ってこいとか、食料が足らぬとか、あるいは弾丸を持ってこいとかいうようなことは、私はあり得るだろうと思う。そのときに、補給業務でも一切行かないということは、潜在主権の関係から私は言い得ないのじゃないかと、こう思うのですが、その点はいかがですか。
  255. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。ただいまのお尋ねの点になりますと、条約上そういうことをするかしないかという問題に相なってくるのではないか、かように考えますので、条約の内容によって私どもは処理をいたしたい、かように考えます。
  256. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 外務大臣、そういう場合を想定しての条約、やはり事前協議になりますか、適用区域外ということになりますか、どうでしょう。
  257. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 沖縄、小笠原は、先ほども申し上げておりますように、いろいろ議論を拝聴し、国民の意向を拝聴しておりまして、私どもは、大多数の御意見が、沖縄、小笠原を含めないという御意見のように最近拝聴をいたしております。従って、そういうことでありますればそういう努力をしてみたいと、こう考えております。従って、国民の希望が達成されれば適用地区に入らないということになろうと思います。
  258. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 法律上の問題になりますが、かりに日本が沖縄に出動する場合、これは潜在主権を有するからであり、アメリカが出動する場合は、施政権を有するからということになりますが、これは各自の個別的自衛権の発動ということになると思うのですが、あるいは日米ともにこれは集団的自衛権は持っていますけれども、日本は、集団的自衛権の発動としての実力行使は、これは合憲でありますか、違憲でありますか。これは法制局長官でけっこうです。
  259. 林修三

    政府委員(林修三君) この集団的自衛権は、御承知のように、国連憲章五十一条に書いてあるわけでございまして、これの内容としてはいろいろの学説もあるわけでございますが、一番端的な問題として、今御質問がございました、武力行使という点においての集団的自衛権ということに限ってお答えいたしますが、結局、集団的自衛権と普通言われております、武力行使との関連において集団的自衛権と言われておりますのは、要するに自国と非常に関連のある他国が侵略された場合に、その他国を援助する、これはいわゆる国連憲章上違法な武力行使にならない、こういうことだと思います。そういう意味における自衛権というものは、現在の日本の憲法からは認められないことだと、かように考えております。
  260. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 平和条約に、日本は集団的自衛権を権利としては認められている、こう書いてあると思うのですが、今の御答弁はちょっとそれと違うように思うが、どうですか。
  261. 林修三

    政府委員(林修三君) 平和条約には、確かに日本は固有の権利としての集団的または個別的の自衛の権利を有すると書いてございます。国際法的には、日本は集団的または個別的の自衛権を持っているということは言えると思います。ただ、日本の憲法の上から申しまして、そういうことが日本の憲法のいわゆる自衛権の範囲に入るかと言われれば、今言ったように、集団的自衛という問題は、これはいろいろあると思います。内容は必ずしも一に限らないと思うわけでございます。ただ、先ほど仰せられたように、外国の領土に、外国を援助するために武力行使を行うということの点だけにしぼって集団的自衛権ということが憲法上認められるかどうかということをおっしゃれば、それは今の日本の憲法に認められている自衛権の範囲には入らない、こういうふうに言うべきであろうと思います。
  262. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私の伺ったのは、集団的自衛権を裏づけとしての実力行使は日本の憲法で許さない、こう思うのだが、その通りであるかと、こう聞いたのです。
  263. 林修三

    政府委員(林修三君) 先ほどからお答えしております通りに、要するに外国の領土において外国を援助する、外国を援助するという意味は武力行動を外国においてやる、そういう意味のいわゆる集団的自衛権の行使、これは日本の憲法にいう自衛権の範囲に入らないということは、先ほどから申し上げておる通りであります。
  264. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 どうも集団的自衛権の上にいろいろ文句がついておるので、私はちょっとわかりかねるのですけれども、つまり集団的自衛権を背景としての実力行使はできないかと、こう聞いておるのです。憲法上他国とか何とかいうことでなしに、この平和条約のいつも政府が認めると言うておられる集団的自衛権を土台として実力行使はできるかできぬかと、こう伺っておるのです。
  265. 林修三

    政府委員(林修三君) 先ほどから申し上げております通りに、集団的自衛という言葉の内容は、一にしてとどまらないと思うわけでございますから、ただいまの御質問に対して、先ほど来のような意味を加えてお答えをしておるわけでございます。
  266. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 どうもはっきりわかりませんけれども、時間の関係もありますから、次に移ります。  行政協定の改廃は、二十四条、二十五条の範囲以上になりますが、そうすると、非常に改定の時期が延びて、国際信用上私は有害であって、早く結べるようになるがいいと思うが、外務大臣いかがですか。
  267. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 行政協定の問題は、二十四条、二十五条のb項というような問題は、ぜひわれわれ交渉の際に持ち出して参りたい、こちらから持ち出して参りたいと思います。他の条項等につきましては検討をいたしておりますが、しかしながら、これは相当事務的にもかかる問題だと思いますので、現行行政協定の二十八条におきましても、やはり両者合意の上でこれを改定するということもできますから、将来そういう条項も活用することはできると思います。従って、われわれはできるだけの交渉は進めてみたいとは思っておりますけれども、どの程度まで直ちに改廃できるか、あるいは将来の問題として十分論議を尽した上で将来改定さるべきか、これは交渉を通じて一つ考えて参りたい、こう思っております。
  268. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 今度は防衛長官お尋ねいたしますが、日米共同作戦、それから指揮者の問題などで、安保条約に関連しての日米防衛専門委員会という構想がおありのように伺ったのでありますが、これは適当なものであると私は思うのですけれども、そういう構想についていかにお考えでありますか。
  269. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 現在の安全保障条約の建前におきましては、もっぱら双方におきまして緊密な連絡並びに意思の疎通ということをはかっておるだけでございまするが、今後の日米安全保障条約の締結の内容によりましては何らかの形でのそういったものが必要ではあるまいかということは考えておるのでございますが、まださような具体的な域には何も進んでおりません。
  270. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に、防衛長官長官の憲法九条二項と自衛隊との関係に関して御見解を承わりたい。
  271. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 従来、政府が常に声明いたしております見解と私も異なりませんで、独立国であります以上、その国が自衛権は当然持ち得る、かように考えております。
  272. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 その次が問題なんで、自衛権でなしに、もう少し明快なところを一つ。と申しますのは、官房長官と総理とは意見が違っておるのです。あなたのも一つ聞いてみたい、こいううわけです。
  273. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。私どもは自衛の裏づけとなるべき実力、自衛上最小限度の実力はこれを持ち得る、かように考えております。
  274. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そうすると、総理とこれは同じ考えであります。そこで、たとえば在日の基地から米軍が出動すると、それに対して補給業務等で協力を米軍から自衛隊に要請される、事前協議の結果、自衛隊がそれに参加するということはあるわけですね。
  275. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お尋ねの趣旨が具体的によくわかりませんが、条約上そういうような内容について規定する場合があれば、これはあり得るとも考えております。
  276. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 先ほど外務大臣お答えになりましたように、米軍は極東の安全のために在日基地から出動すると、それに補給業務等で協力を要請される、その場合、事前協議をしてイエスという場合もある、こう言われるんですが、そのイエスと言われて出動することがあるだろうなということを念を押しておきます。
  277. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) ただいまのお尋ねは、日本の自衛隊の出動ではなくして、米軍の出動について条約上承知をする場合、あるいは諾否をこちらが条約上きめる場合があるだろうということを外務大臣お答えになったのではなかろうかと思います。
  278. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 イエスと言った場合は、当然自衛隊が協力すると思うのですが、どうですか。
  279. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) その点につきましては、御承知のように自衛隊の使命は憲法において限られておりますので、憲法の許す範囲内において私ども援助し得る場合もあり得ると、かように考えております。
  280. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 憲法の許す範囲内での援助の具体的事例はどうですか。
  281. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 現在、具体的に十分な研究をいたしておりませんので、基地内の使用に関連して病院その他の供与をするとか、それらの場合についてはあり得るかと考えます。
  282. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 自衛隊として非常食糧、燃料その他のものを供給されますか。
  283. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) さような場合は、安全保障条約もしくは行政協定によって定められる場合で、政府自体がそういうようなことを条約上きめる場合は自衛隊がやるということはなかろうと思います。
  284. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そういたしますと、自衛隊は、つまり日本は在日基地だけを貸して、米軍から協力を求められても自衛隊としてはその作戦行動には一切参加しない。補給業務であろうが衛生業務であろうが隊としては一切参加しない、こういうお立場ですか。
  285. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) ただいまのお尋ねの前提がわかりませんので、私明確な御答弁をいたしかねるのでありますが、日本が侵略をされるというような場合においては、当然共同防衛としてやるべき面があろうと存じまするが、極東の安全を保持するというような場合においては、条約上当然きめられるべき問題かと思います。
  286. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 いや、問題は極東の安全即日本の自衛もしくは日本の危険を侵すものというようなときに、米軍から協力を求められたら自衛隊として参加するか。
  287. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) その場合は、条約上当然日本が侵略されるがどうか、極東の安全と同時に日本が侵されるというお話でございますから、その場合は自衛上共同防衛の適当の措置をとることはあり得ると思います。
  288. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 いや、私の申したのは、極東の安全というのは即日本の安全につながるということを先ほど外務大臣が仰せられた。そこで多少私は、極東の安全というだけでは間接的な意味があるんじゃないか、というその間接的な意味のときはどうするか。これは非常にデリケートな問題ですが、そういうときはどうされるか。
  289. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) さような場合に日本の自衛隊が武力行動に出るということについては、私は考えておりませんので、条約できめられた範囲以上について自衛隊が参与するということは困難であろうと思います。
  290. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 いや、私は武力行為じゃなくて、補給業務をおやりになるかどうか。商売人から油を米軍が買うということでなしに、自衛隊がそれに加わるかどうか、隊として協力態勢をとるか、これを伺っておるわけです。
  291. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 客観的な情勢について言葉の上の論議だけでは、どうも私には十分なお答えができかねますのでありますが、ただいまのような場合においては、自衛隊自身が発動する段階でない、こういう前提のもとのお話でございますから、日米安全保障条約もしくは自衛隊法に定められた範囲において、自衛隊としてはこれに協力をいたすということはできますが、法律に定められた以上には差し出ることは私どもとしては不可能であろうと、かように考えます。
  292. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 説明がまずいかもしれませんが、たとえば、ウラジオでどうも沖縄を攻撃するかもしれぬ、そこで日本における米軍がこれに出動する、しかしこのウラジオの飛行機はあるいは日本に来るかもしれない、あるいは日本に来ないかもしれない、沖縄だけかもしれないというような場合に、自衛隊に一つ補給業務を協力してくれということを米軍が要請した場合に、自衛隊は困ると言われるか、それに協力されるかと、具体的にいえばこういうことなんです。
  293. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) ただいまの設例については、私どもは、国際連合憲章においては、アメリカがそういう危険のある場合でもみずから積極的に攻撃をするということは、国連憲章上認められておりませんし、アメリカもおそらくさような処置に出ることはあるまい、かように考えまするので、私どもとしては、むしろその設例については、直ちに自衛隊が出動するかというお尋ねについては、十分実態を見た上でないとお答えいたしかねます。
  294. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 それでは、次の問題に移りますが、先般岸総理に私伺って、御返事がはっきりしなかったのですが、今も防衛庁長官は、最小必要限度の実力は憲法九条二項における戦力でない、こういうお答えがございました。そこで、私、その最小必要限度についてお尋ねをするのですが、今の日本は、アメリカの主として空軍と海軍、それから日本の自衛隊で守っているわけなんですが、アメリカの軍隊はアメリカの軍隊、自衛隊は日本というこの成り立ちははっきり区別さるべきでありますけれども、その性格と申しますか、成り立ちを離れて内容的な実力からいえば、力を合せて日本の国防を全からしめている。そこで、私は最小必要限度という憲法の解釈そのものが無意味だと思っているのですが、しいて最小必要限度ということを言われるならば、現在のアメリカの持っておる海空軍から日本の防衛——直接でなしに、極東もしくはアメリカ自身のための力を引いて、その残りと日本の自衛隊とを寄せたものが数量的に最小必要限度、勢いこうなれば無制限になるのじゃないか、こう思うのですが、その点はいかがですか。
  295. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) いろいろ、だんだんのお尋ねでございますが、私どもは、憲法上あくまで日本の自衛隊の力が日本の防衛上自衛隊の実力として考えております。アメリカのことについては条約上の問題であって、国有の自衛力とは考えておりません。
  296. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 これは条約と全然関係のないことで、憲法解釈の問題です。つまり、憲法九条二項の「陸海空軍その他の戦力」とは何を意味するか、これは、わが国の自衛のための最小必要限度の実力はここにいうところの戦力を意味しない、これが岸総理並びに政府の解釈でありますが、そこには、日本を守るための最小必要限度といえば、つまりどこから攻めてきても日本は大丈夫というところまでは持てるのだ。今は、米軍の空軍とそれから艦隊が引いてしまえば、日本の今の力では日本は守れない。だから、軍隊の成り立ちは別ですけれども、最小必要限度は戦力でないというなら、米軍の極東に備えたものは別にして、残りと自衛隊を害せたものが最少必要限度というふうに勢い数学的にはならざるを得ない、実態的にはならざるを得ない。でありますから、最小限度という言葉は無意味だと私は思うのですが、これに対して、軍隊が日本の軍隊でないとか、日本の憲法だとかおっしゃいますけれども、そんなことを抜きにして、実際の内容としたらそう言わざるを得ないのじゃないか。これは私、前から言うのですが、いつもアメリカの軍隊とは別々というようなことでごまかされてしまうのですから、一つ伊能さんのはっきりしたことを聞きたいと思います。
  297. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 私、常識的なお話としてはさような御見解も成り立つかもしれませんが、私ども、日本の憲法上の、日本の自衛隊とは何ぞや、またいかなる力を持ち得るかというものにつきましては、日本の憲法上の解釈として防衛上最小限度の、実力を持っている、かように考えて、現在の自衛隊が日本の防衛上最小限度の力である。しかし、それだけで十分であるかというお話があれば、十分でないために、日米安全保障条約その他行政協定等によって、アメリカとの国連憲章間における集団保障条約、集団保障体制をとっているということでありまして、実際にお尋ねの点、しからば、陸上兵力がアメリカが全部撤退をいたしまして、海上兵力についても常に移動をいたしております。また航空兵力についても同様だろうと思います。そうしますと、今御指摘になりました観念につきましても、常に安定をしたものではないということも言い得る形になりますので、私どもとしては、憲法上あくまで自衛隊は最小限度防衛上必要なものとして、逐次漸増をする。これは自分の力で自分の国を守るということが理想でございますが、もちろん、国防の基本方針にあります通り、国情に応じ国力に応じた自衛力を持つということで——現在の自衛力を持つということでも相当大きな負担でもありまするので、これが憲法上、防衛上必要な最小限度の自衛力、かように私どもは解釈いたしております。
  298. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 非常にこんがらかっていますけれども、官房長官おいでになっていますね。ちょっと、あなたの憲法解釈を一つ、この場合聞かしていただきたい。九条二項……。自衛のためなら戦力を持ち得る、この所説はお変えになりませんかということです。
  299. 赤城宗徳

    政府委員(赤城宗徳君) 憲法第九条二項においては、交戦権は否認しているのです。しかし、戦力を持ってはいけないということ、そのことは文面自体からは制約を受けていないと考えております。でありますので、憲法第九条二項によって、自衛のための戦力は私は持ち得ると思う。しかし、戦力というものはどういうふうにとるかといえば、自衛のためといえば、自衛の目的と自衛の内容だと思います。自衛の目的を持った戦力は持ち得る。自衛の内容からいいますならば、日本を守るに必要最小限度の自衛力、この必要最小限度の自衛力というのは、私は自衛のための戦力と言い得ると思う。ですから、その考え方は防衛庁長官考え方と違っておらないと思います。
  300. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 この問題は内閣委員会でまたゆっくりやるといたしまして、防衛庁長官、TNT一トン爆弾ができたということが新聞に報ぜられておりますが、そこで通常兵器より安くて威力あるものなら、戦術的にきわめて小さい核兵器は国防上から日本が持っても反対する理由はないのだ、こう思うのですが、いかがですか。
  301. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お尋ねの点でございますが、私、寡聞にして、TNT一トン爆弾に相当するきわめて小さな核兵器というようなものを具体的に承知いたしておりませんし、しかも、核兵器が廉価であるというような点についても承知をいたしておりませんのでありまするが、核兵器につきましては、しばしば申し上げましたように、防衛上また自衛上、最小限度のものであれば、必ずしもこれを自衛のために保有することは、憲法違反ではないという考え方で私どもは核兵器の問題を考えておりますので、経済的な観点で核兵器が防衛上、国防上持つことが可能であるということは、私どもさようには考えておりません。
  302. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に、自衛隊違憲論が自衛隊の士気に害があるということをこの間総理が御答弁になりました。そこで参議院選挙は憲法改正と非常に関係があるのですが、今度の改選に、国防担当者としてはこれを打ち出すのがほんとうじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  303. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) 私は、自衛隊違憲論が自衛隊の士気に影響があるという意見についても、いろいろ世上論議されておりまするが、現在の政府のとっております態度は、自衛隊は憲法違反ではないという考え方で、もっぱら自衛隊の正しい育成に努力をいたしております。従いまして、今回の参議院選挙を契機として、国防上、憲法改正をして、自衛隊をその面からも、いかなる面からも憲法違反でないというような憲法改正をやるかどうかというお尋ねにつきましては、憲法改正の問題は、政府において憲法調査会の十分な検討を求めておりますので、私自身としてはその結果に基くこととして、現在参議院選挙にさような考え方を打ち出す考えはございません。
  304. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 ソ連の北方近海での零細漁船拿捕の状況を外務当局から御説明願いたい。
  305. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 最近でも若干ございます。通算をして参りますと、戦後七百四十一隻、六千四百六十二名というような数字になっておりますが、最近、現在なお抑留されております者が五十九名でございます。
  306. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そこで、私は前から申しておるのですが、これはどうも南千島に軍事基地を持って、そうして公海や領海で日本の船を拿捕したり、漁夫を抑留をするということは、国際の平和と安全を脅かすものであるから、国連憲章三十五条で安全保障理事会に提訴する、ソ連がもし拒否権を使えば、これを総会に提訴して国際世論に訴える、この方法に対するお考えはいかがですか。
  307. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この問題につきましては、われわれも十分ソ連側に交渉はいたさなければならぬと思います。従って、問題を鮮明して参りますると、大体三海里と十二海里という、領海の見解が相違しているところに基本的にございますので、この問題を、何か両国に非常な危険な紛争が起っているという立場で、安保理事会に持って参りまするには、三海里、十二海里というそうした問題の違いというようなことでありますので、国際司法裁判所に持っていく方が第一次的にはいいんではないか、またそういうことをただいま検討いたしております。
  308. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に、通産大臣にお伺いいたしますが、次期主力戦闘機がまだ未定になっておりますので、航空工業、関連産業に悪影響を及ぼしておる、こう思うのでありますが、その実態と対策を伺いたいと思います。
  309. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 次期戦闘機は、機種がまだ決定いたしませんために、相当航空機産業の方について今隘路が生じてきているわけであります。それはわれわれの予定では、少くとも三十五年の四月には新しい機種を発足できる、こういう考えでおったのでありますが、それが今日まだきまりませんために、このまま進んでいけば、現在の手待ちが起ることは、少くとも七百八十万工数くらいは起るだろう、こういう数字が出たものでありますから、これをさしあたり埋めるために、現在製作中のF86F、これは毎月十機作っておりますが、これを八機に落していこう、それからでT33Aでありますが、これが製造を引き延ばすこと、それによりますほかに、その両機種の備品を製造することにおきまして、合計かれこれ二百五十万工数くらいの人数を収容し得る、そのほかに中型輸送機を今度通産省において作るごとになって、かれこれ三百二十万くらいの工数を収容できる、こういうわけでありますから、七百八十万工数の中で、大体残るものが来年の五月までに着手できなければ、少くとも二百万工数くらいの降路が生ずる、こういうふうな今数字であるわけでございます。なるべく早く、来年の五月ごろに着手し得るようになれば、まことにけっこうなことだと存じております。
  310. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 関連産業の被害の金額は。
  311. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいま申し上げました二百万工数が、これだけが残るということになれば、繰り越すということになりますれば、一工数がかれこれ千円でございますから、二十一億円くらいの損失が生ずるわけでございます。
  312. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 関連産業はいかがですか。
  313. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 関連産業といたしますれば、これに対する備品を製造する方面でございますが、これは一年延びますれば、少くとも三十億円くらいの損失が起ると存じております。
  314. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 お聞きの通りでありますので、防衛庁長官、次期主力戦闘機決定のために、汚職の問題は別にしまして、技術家を帯同してアメリカヘおいでになるというようなお考えはありませんか。
  315. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。新聞等で時折さようなことも散見いたすようでありますが、現在の私どもの考えといたしましては、昨年の四月に内定いたしましたグラマンについて、まだ内定の線は国防会議としてくずてれおりませんが、その後の新たないろいろな機種その他の関係をもつばら調査をいたしまして、できるだけ早い機会に国防会議としての何らかの決論を得て処理をいたしたい、必要があればさような点も考慮をいたしますが、現在としては国防会議の決定を待ちたいために、いろいろ各般の調査をいたしておる段階でございます。
  316. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 通産大臣に。合成繊維が自主調整するということでありますけれども、投資計画が相当ありますので、将来設備過剰に悩んで、その結果、繊維全体として供給過剰になるというようなことはないかどうか、需給関係をお伺いしたいと思います。
  317. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 化学繊維の中で人絹糸及びスフの方は、これは今はっきり規制をとっておりますが、合成繊維の方は、これは今度規制する法律を出します前から、すでに長期の相当膨大なる計画をやっておったわけでありますが、それは今日の情勢に応じまして、自衛的に各社がある程度生産を制限するという、設備を制限するということを今申し合せ中でございますが、それをもしも無理してやるということになりますれば、今度の規制法によりまして紡糸と申しますか、糸をつむぐ方の設備につきましては、制限を加えていきたい、これは行政指導でやっていきたいと、こういうふうに存じている次第であります。
  318. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次は農林大臣伺います。昨年繭生糸をたな上げするときに、実勢相場を無視してやるから損すると、再三私は御注意申し上げたのですが、十九万円確保できると、こういうお話で、結局五十億円の損失を出されまして、二十億円は一般会計、三十億円は資本命を切りくずすし、結局、国民の血税から払うことになったのですが、これに対する責任はどういうふうにされるか伺います。
  319. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) 今の問題でございますが、これはまあ責任は農林大臣の当然負うべきことと思います。しかし、現行の繭糸価の維持の政策をあの制度のもとでやっておりますと、これを施行しないわけには参りません。従いまして、あれを施行いたしました結果、かようなことになりまして、当時、必ず低落する、従って、この政策はとるべきじゃないという八木さんの御指摘もありましたのでございましたが、当時の情勢といたしましては、あの措置をとるのが相当と考えましたのでございまして、遺憾ではございましたけれども、繭糸価の維持の制度もあります関係上、かような事態になったのでございます。
  320. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 今申したほかに、政府の金を使っておられるので利子はありませんが、民間的に金利を計算するとまだこの上に二十七億円損になるわけです。この昨年の失敗にこりなくて、その実勢を無視して、結局繭の値の吊り上げ政策に終るだろうと思う日本蚕繭事業団に十億円今度また政府が出される。これは一つ大蔵大臣になぜこんなばかばかしいものをお出しになるかお伺いいたしたい。
  321. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) 所管は農林省でございますから、一応、私から。昨年の異常な事態にかんがみまして、養蚕団体も経済的な結合余力がない。そこで、繭価安定のなには、一にただ単に政府の施策に依存するという関係にあったのでございました。しかしながら、政府があれだけの施策をいたしますにつきましても、やはり関係の団体等がある程度の操作をし、自衛的な手段を講ずるべき一つの機構を整備する必要があると考えたのでございます。従いまして、現在の養連であるとか、あるいは養連の連合体等を糾合してやるというのも一つ考え方でございますけれども、これはとうてい短時日にはできない。そこで、今度蚕繭事業団を編成いたしまして、これが養蚕団体の意向をくみ、その委託を受け、同時にまた、この団体を中心にして最低価格まで落ちて参る中間的な自衛的な措置を講ずるということが相当だと考えまして、かような制度を案出して、皆様の今御審議を仰いでいると、こういうことでございます。
  322. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 農林大臣に続いて伺います。生糸の支持価格は下は十四万円に押えられておりまして、上はそのまま。そこで、十八、九万円にお下げになるお考えはあるかどうか。将来、支持価格をおやめになるお考えはないかどうか。
  323. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) 支持価格を下げまして十四万円程度にしてあるのでございますが、いわゆるその上限につきましては制限をおいておりません。すなわち、現在の臨時措置法等によりまして運営する場合におきましては、時価をもって処分するようになっておりますし、この時価をどう取りきめるかは繭糸価の安定審議会でもって十分に審議していただいて取りきめをすることはできますから、上限をただいまのところ設定する実益がない、こういうふうに考えるわけでございます。
  324. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 病変米十六万トンが全部処分済みになりましたが、病毒別の処分状況を、厚生大臣がおられたら……。おられなかったら、あとで……。  そこで、この病変米でまた五十億円農林省は損している。これでだれか一人でも責任をとった人があるかどうか、それを伺います。
  325. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) 黄変米の問題でございますが、これは昭和二十六年ごろまでは外米を買いました場合に、積み地でもってこれを収検して、そして内地に送り込んでおったのでございまして、この過程におきましては、扱い者もあるいはまたこの業務を担当しております農林省の公務員等におきましても、不法行為のことはございませんでした。しかしながら、何せああいうような重大なことでございますので、これは当時の関係者は厳重な戒告を受けて、そして一種の行政的処分を受けたようなことでございました。これは先ほどの繭とは若干事情が違いまして、たまたま内地へ来てからああいうふうな黄変米という異質のものができて参った、これがいろいろ調査研究の結果、衛生的に悪い、こういうことになりまして、当時帰りました者も、同時に扱いました者もこれを予見し得ざる事情によったわけでございまして、担当の公務員等につきましても、先ほど申し上げた通り不法行為等はないのでございまして、しかし、業務上重大なことでございましたので、当時の食糧庁長官あるいは関係の部長等は、当時の大臣からきびしく業務上の戒告を受けたような次第でございます。やめた者はございません。ただいまのところはもうすでに退任いたしております実情でございます。
  326. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 生糸、病変米、両方で百億円の損はあったけれども戒告で済んだと、民間人の常識でいえば、まるで納得ができない。これが農林省に汚職が絶えぬ原因だと、こう私は思うのです。  次に、やみ米のことについて伺いますが、食糧庁の調査では最高のやみ米の流通高が千六百万石、農家の二月平均販売量が三石一斗、かつぎ屋は全国で二万八千人、豊作でも配給日数が十四日、価格は変らない、消費者は買う米の三割六分がやみ米だ、まるで食管法は死文になっておりまして、今の統制は農協と食糧事務所三万人のためにあるような感じさえするのであります。そこで、総理は法秩序の維持は民主政治の一大支柱であると、こう声高らかに言われます。順法精神からいって間接統制に移すべきではないか。農相と、司法行政の責任者としての法相、教育行政の責任者としての文相、おのおの所見を真剣に私は伺っておきたい。
  327. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) やみ米の問題について御指摘でございますが、今の推計はいろいろな基礎がありますから、そういう見方もあろうかと思うのであります、現在の食管の制度におきましては内地米おおむね十五日分、さらに陸稲その他準内地米をもちまして約六日分、そのほか外米等をもちまするならば、大体一月の米の供給はちゃんと確保できるような制度になっております。しかしながら、日本人の食生活の関係上、内地米に依存して、そして外米その他をいわば断わると、こういうことになっておったわけでございまして、その半面においてやみ米を買い入れ、これを消費するということは、これは認めざるを得ないのでございます。当局といたしましては、極力この弊をためるということに努力しておりますけれども、何しろ食糧の事情のことでございますので、その徹底を期し得ないことはこれ遺憾でございますけれども、一面日本のこの農村の生産物の大宗は御承知通り米でございます。これにつきましては、現在食糧管理の面におきましてこれの供給を確保するという面と同時に、今度は価格支持の大きな使命を持つようになってきたわけでございまするし、同時にまた、安定した価格をもって消費者に供給しますことは、国民生活を安定させ、そしてあるいは物価等につきましても一つの安定感を持たせると、こういう意味からしましても必要だと思うわけであります。同時にまた、米に関する限り、まだ全体としましては、九千万以上になります国民日本米をもって供給し得る段階にはございませんので、やはり現行の制度を支持して参ることは事情やむを得ないものと考えておるわけでございます。
  328. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 食管法の違反事件の取締り状況につきましてお答えいたしたいと思います。  食管法の違反につきましては、この二、三年来あげております件数は相当減って参っております。たとえば昭和三十一年には検察庁が受理いたしました件数が五万件を越しております。それから三十二年は四万件あまり、三十三年には二万九千件あまり、こういうような状況になっておるのでありますが、これは食管法違反が全体として減っておるということは必ずしも言えないのでありまして、取締りの重点を悪質なものに集中して行なっておる関係でございます。従ってそれらの受理いたしました件数のうちで起訴いたしました件数は減っておらないのでありまして、起訴率で申しますと、昭和三十一年が一割七分、三十二年がほぼ同様、それから三十三年に至りますと二割三分以上も起訴をいたしております状況でございます。こうやって今後におきましても悪質な者につきましては厳重に取り締って参りたい。ただいまお話もございましたが、現行の法制のもとの秩序を維持するということで、この態度は引き続き厳重に行なって参りたいと思っております。
  329. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 教育の場におきまして、順法精神の涵養ということは非常に大事な教育の基本でございます。学校教育におきましても、社会教育におきましても、十分に留意いたして参っておるわけであります。ただ戦後、ことに経済統制法規等の面におきまして、実際国民がそのときになかなかついていきかねる法規のございましたことはまことに遺憾でありまして、これは順法精神を涵養すると申しましても、こういう事例があるじゃないかということが乱れのもとになる。いろいろの事情はあると思いますが、今後事態もだんだんに安定をいたして参ったことでありますから、学校教育の面でも道徳教育をますます十分にいたして参ると同時に、こうした法規の面におきましても、所管の方面においてできるだけの改善を加えられ、国民が真に日常生活の面で無理なしについていけるような方向へ、ぜひこの上とも改善をいたしたいものと考えております。
  330. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 やみ米の資料は農林省の資料で私は申し上げた。  それから法務大臣に、私はやみ屋を取締るようにと言っているのではないのです。この大きな法律の違反を一体どうしてなくするか、食管制度をやめなければだめなのじゃないか。こう申し上げておるのですが、いかがですか。
  331. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) その点は先ほど農林大臣からもお答えいたしましたが、ただ私の立場といたしましては、現行法制というものはあくまでもその規律を保って参りたい。こういうことで、先ほど申し上げましたような状況になるような取締りをやっておるわであります。この取締りの状況から申しましても、悪質なあるいは組織的な、食管法を故意にことさらに、もぐって巨利を博すると申しますか、そういう者に対しては断固たる処置をして参らなければならない。こういうふうに考えておるわけであります。
  332. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に自治庁長官にお伺いいたします。愛知県と名古屋市がビル建設資金として自民党に千八百万円、社会党に六百万円の補助を出しております。他にもこういう事例があるかどうか。  それから国が立法事務費の名前で各政党に一億七千二百万円出していることが手本だと思うのですが、地方のこの種の補助金は禁止するということを通達される気持はないかどうか。
  333. 青木正

    国務大臣(青木正君) 御指摘の愛知県における問題でありますが、事実関係を申し上げますと、たしか八木委員の御指摘になっておりますのは、社会事業文化会館でありますか、そこに社会党の事務所がある。その社会事業文化会館に対して愛知県から補助金を出しているじゃないか。それから大津橋会館でありますか、そこに自民党の事務所を設け、そこに補助金を出すのは不当じゃないか。こう申されたと思うのであります。申し上げるまでもなく府県が特定の政党に対しまして補助金を出すということは、私は言うまでもなく妥当でないと考えております。しかしながら地方自治法の定めるところによりまして、公益上必要な場合におきましては、寄付金あるいは補助金を出すことを認められておるわけであります。  そこで、この社会事業文化会館、これは現在財団法人としての申請をいたしているようでありますが、この会館は元来は経済と文化の向上に寄与するため、一般人の使用に供するということで財団法人として設立されておるのでありまして、たまたまその中の一部を社会党の県連の事務所でお借りしているわけであります。こういう事態だと思うのです。  それから大津橋会館におきましては、これは畜産会館と大津橋会館でありますが、この共同で作っておりましてやはり財団法人として申請いたしているのであります。この一室三十五、六坪を自由民主党の県連で借りるということでありますので、私は直ちにこのことがこれは両党に対して県が補助するというふうには考えられないと思うのであります。公益上必要なる財団法人、これに対して県が法律の定めるところによって補助金を出す、こういうことであると思うのであります。それが公益に反するかどうかということは言うまでもなくこれは市なり、住民なりがこれを判断するというのが自治の本旨でありますので、自治庁がこういう場合一々自治庁の判断をこれに下さないということが建前になっておりますので、自治の本旨にのっとって公益であるかどうか、という二とを判断するより仕方ないと思います。
  334. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そういたしますと、地方で政党に金を出すのは賛成しない、こう承わっておきます。  それから国会議員互助年金法案がお互いの掛金でまかなわれる建前でありますが、本年六百万円赤が出ます。参議院の選挙で適格者が十人落ちますと一千万円の赤字になるわけです。ところが全国の都道府県県会議、議長会議で互助年金法式により、掛金同額の補助金を県が負担するということを検討中でありますが、これは退職金法の精神に反すると思うのでありますが、禁止の通達をしていただきたいと思うのでありますがいかがですか。
  335. 青木正

    国務大臣(青木正君) 御指摘のように現在全国の都道府県議会の会合等におきまして、地方議会の議員の退職年金制度、という掛金による年金制という問題が話題になっているようであります。申すまでもなく、いかなる名義をもってしても、退職金を出すということ、これは法律で定めていないものを出すということは禁ぜられておるのでありまして、あるいはかりに掛金によりましても、府県でこれに対して補助金を出すということは、自治法で認めないところであると考えるのであります。  また、地方議会の議員が国会と同じようにというお話でありますが、これは私は、国会議員の場合と地方議会における議員のあり方とは、おのずから態様が違っておるのでありまして、年の開催日数等を見ましても、私は果して地方議会の側の言うようなあり方がいいかどうか、検討を要する問題であると思います。自治庁といたしましても、現在のところは議会側の考え方に対して、直ちに同調するという態度はとっておりません。
  336. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に大蔵大臣に。行政費の節約額、補助金の整理額が今年度で幾らくらいおありでしょうか。
  337. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 昭和三十四年度予算の節約額は旅費、庁費、施設費、行政費で約二十一億、公共事業費系統の経費で約十九億、計四十億円となっております。それからこの節約の方法ですが、節約は大体五%を目標にいたしたのでございますが、中には義務的な費用を計上しておるのがございますので、こういうものは一切節約はできません。また金額、その他性質によりまして、五%を一律にはむずかしいのでございますので、ものによりましては三%—五%、三%、〇%こういうような節約をいたしております。で、ただいまのような整理金額を出したのであります。  また、次に補助金等の整理額ですが、これは公共事業の国庫負担率の臨時特例、この廃止によりまして、二としは四十三億、その他一般的補助金等の整理分が約十六億、計五十九億、これにさらに、最初に申しました一般行政費の節約に準ずる節約もいたしておりますので、これが十八億円、計七十七億円ということになっております。
  338. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 もう一点大蔵大臣に伺うのですが、これは、中央庁舎の建築状況は、国会関係が十六億四千万円、各省庁が千万円以上のものが、過去五年と将来の計画を含めますと、二百五十億円になっております。ところが一方、国家公務員の住宅不足数が十四万四千でありまして、この費用は六百三十八億かかるのであります。そこで金の使い方として、もう少し住宅の方へ力を入れて、庁舎の方を少し倹約すると、こういうお考えありませんか。
  339. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 十分両者の関係を勘案して進めて参りたいと思います。御承知のように、今中央官庁等は一つの官庁区域を考えまして、そこへできるだけ集めるようにいたしております。これも各省とも一時に強い要望を出しておりますけれども、私ども全部取り上げるわけに参りませんので、順次これを取り上げ、一方、公務員宿舎等も、各省の関係の従業員につきまして、別に高級職員というわけでなしに、十分考え方を、要望に沿うように努力いたしたいと思います。
  340. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 郵政大臣に。皇太子殿下御結婚記念切手売上げの純益を全国の社会施設にお分けになるお考えはございませんか。
  341. 寺尾豊

    国務大臣(寺尾豊君) お答えいたします。  記念切手発行の目的は、申し上げるまでもなく、国家的あるいは国民的記念事項に対しまする、あまねく国民各層にこれを周知せしめる、同時に、この普通切手の代用といたしまして、やはり郵便物に貼付されるということが本来の目的でありまするから、この点から申し上げますと、郵政省で記念切手を発行したことによって、郵政省が特に利益を得るとか、あるいは収入が増加するというようなことには考えられないと、こういう次第であります。ただ切手収集家、切手を愛好するというような人たちによって、アルバムにこれを貼付する、あるいはこれに退蔵する、こういう部分が郵政省の利益といえば利益といえますけれども、これがまた、いつとび出していって郵便物に貼付されるということになれば、記念切手の利益だとかいうようなことで使うというわけには参らないではないか、かように考えております。
  342. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 官房長官にお伺いいたしますが、岸内閣は行政改革を声高らかに叫ばれますけれども、一向熱がないように拝見をいたします。そこで、今度行政審議会から答申されました自治庁の昇格、人事院の分離、審議会の改廃、許可認可事務の整理、港湾行政の整備統一、国民年金機構の中央及び地方の配分、各省の事務の能率化といったようなことの大体の方向を、官房長官、それから詳細のことを行管長官から伺いたいと思います。  行管長官の分としましては、審議会の委員は、御承知通り今約二千五百名のうちで兼務をしておる最高のものは二十も兼務しておる。それから審議会の答申には、国会議員を審議委員から省けと、私もこれはきわめて妥当な意見だと思うのですが、百八十六名の国会議員がこれに入っておる。こういうことについて一体どういうふうにお考えですか。これを伺っておきたい。
  343. 赤城宗徳

    政府委員(赤城宗徳君) 今のお話のように行政機構の改革は、政府といたしましても、与党としても、これを実行しなくちゃならぬという立場に立っております。しかし非常に機構改革の範囲が広範にわたることに相なるかと思いますので、その結論はまだ出ておりません。行政審議会の答申の趣旨を尊重して、行政機構改革の法律案を出そうということにいたしております。  今お話の機構改革についてたくさんの問題がありますが、自治庁を省に昇格するという問題、それから港湾行政の一元化、これにつきましては、先ほど閣僚懇談会もいたしたのでありますが、機構そのものを改革しなくても、たとえば国民のためになるような行政措置ができるだろう。それから合同庁舎というものを作ることによって便宜もはかれるのじゃないか。あるいは申請の書類等を一本化するということによっても国民の便宜をはかれるのじゃないかというような議論が出まして、それ以上に機構改革するという問題がありましたならば、検討の上において法律案として出そう。それからもう一つは許認可の簡素化であります。これはかねての懸案でありますこの問題を手をつけていこう。大体今申し上げた三つの問題を取り上げて、できやすいものといいますか、そのことからやっていこうじゃないかということに相なっておりますが、目下各省等においてもその後検討中であります。
  344. 山口喜久一郎

    国務大臣山口喜久一郎君) 行政機構の改革につきましては、ただいま官房長官からお答えいたした通りでありまして、行政審議会の答申に基きまして、さしあたり中央行政機構の強化、それから港湾行政の改善、審議会の整備並びに行政運営の改善等につきまして、関係省庁の間で鋭意これを今取りまとめて、意見の調整中でありまして、時間と事情の許す限りにおいてこれが実現を期して、国会に提案したい考えでございます。また、国会議員が審議会等の委員になる問題でありますが、これは、その審議会等に関する法律それ自体にその趣旨の規定がある場合と、また法律に規定はないが、審議会等の運営に当って各省庁が一般の学識経験者として事実上国会議員を任命する場合もあります。いずれの場合においても、国会議員が審議会の委員につく場合におきましては、国会法の第三十九条の規定が基礎になっておるのでありまするから政府としては同条の精神を活用することによって、御趣旨に沿うよう今後とも努力をしていきたいと思っております。また、この審議会の委員が非常に重複しておりまして、二十以上の審議会の委員になられておる方、これも相当ございます。ただ、審議会は行政の民主化と、この専門的ないろいろの問題がありますので、その委員は一般にわきめて高い学識経験者や、それから専門知識を有する方々が多い。従いましてこれらの限られた少数の人々に集中する傾向は、これはもう免れないところであります。あまりに兼職数が多い場合には、委員個人の本務との関係上、十分に委員としての機能を発揮させることはきわめて困難でありますので、最近私も閣議においても、各省庁において審議会の委員等を任命される場合においては適材を広く求めて、なるたけ広く人材を求められるよう希望いたしておるようなわけであります。
  345. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 学識経験者の中で、学識経験者として国会議員が審議会の委員になっておるだけでも三十六名もあります。こんなのはもう即刻やめたら私はいいだろうと思います。  それから大蔵大臣にお伺いいたすのですが、数年前西ドイツでは官吏の総数が八万三千人、ところが現在の農林省だけでも八万一千人いるわけで、ほぼ同数であります。ところが、現在ことしの予算を見てみますと、国家公務員の給与と物件費を合せますと、一人当りが五十四万円あまりになります。財政需要も今後だんだんふえてくるわけですが、国民負担の軽減の見地から、どうしても一つ大蔵大臣は行政改革の問題について熱心に一つなっていただきたいということを希望しまして、最後に一点だけ伺います。  それは、この間、議事進行で私ちょっと話したのですが、今度の予算の中に郵政省が影を消しまして逓信省になっております。これについて政府の事務当局の御答弁では、政府がつまり提出を予定しておる名前であれば予算の中に書くのが従来のしきたりであった、こういう話ではあるのですけれども、今度しかしこれをやるためにわざわざ予算書の中に一項を設けられまして、法令の規定による行政機関の名称と対応しないことになった場合においても、その所管にかかる予算はその計画に従って執行することができる。こういうのを一項設けております。これはつまりもっと端的に言えば逓信省と書いてあるけれども、国会でこれが否決された場合、郵政省と読んでくれということであります。ところが実はこの書き方にも疑問があるわけで、法令の規定による行政機関の名称と対応しないことになった場合には、「対応しないことになった場合」と書いてありますけれども、なった場合ではなくて、初めから対応していないのですよ。つまり逓信省というものは今架空の名前で、そんなものはないわけです。でありますから、政府がやるという気持があるからといって、予算にこういう名前を使うのは間違いで、あるがままに予算はこしらえて、その後に法令等の関係で何らかの改正が起った場合には、その新らしい名前で読む従来のやり方が私筋が通っておって、今度のやり方は国会審議権をこれは無視した官僚独善の気持、考え方だ、非常に簡単なようでありますけれども、これは簡単でなくて、その考え方自体が私は非常に間違っておって、しかも何も意味がないのだ、だからこの法文でも、これはくろうとがお書きになったのでしょうけれども、「対応しないことになった場合」と、初めからなっていないのですね。なった場合にはというのは実におかしいことで、こういう悪例は将来はおやめになりまして、実際にそのときにあるがままを予算にお書きになる。しかしいろいろ変化が起るでしょうから、変化があった場合  にはそれに対応する別の名前で読む、今度は郵政省とお書きになって、逓信省という名前が通ったら逓信省と読むというふうなお考えがあるかどうか伺いたい。  ちょうど時間になりましたからこれで終ります。
  346. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 前段につきましては御要望でございますが、私も定員増ということについては十分注意して参りたいと思っております。ただ給与その他が相当上って参りますことは、これは一般の経済情勢にもよりますので、この点はいかようにもいたしかたございません。  また予算編成上の問題につきまして、ただいま郵政省を逓信省に変える法律案を別途御審議いただいておりますが、この点はただいま八木さんがおっしゃるような御意見も立とうかと思いますが、私ども十分政府の意向を決定いたしまして法律案を提案いたします際には、今回のような措置をとりますことはこれも先例がございますし、これも一応の行き方だと思います。ことにただいま御指摘になりましたような点を記入いたしましたことこそ国会を特に尊重したゆえんでございますので、どうか御了承願いたいと思います。
  347. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 悪例でありますから、これはもう改めるにやぶさかであってはいけないので、常識のある人が考えたら、大蔵省が無理を言っておるということはすぐわかると思うので、これ以上を申し上げませんが、どうか一つ考えを願いたいと思います。
  348. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 関連で。先ほど八木委員が安保条約と憲法の防衛権に関して質疑したときに、私関連質問を求めたのですが得られなかったので、やや時期がずれましたけれども、どうしても私の耳に入った範囲内では理解に苦しむ不明確である点が、しかも重要な点が二点ありますので、その点を関連して申さしていただきたいと思います。  その一つは、私の速記によれば、八木委員の新しい条約は共同防衛的な性格のものかどうかという質疑に対して、外務大臣は明確な答弁を避けて、基地を提供することになる。さらに八木委員がおっかけて、アメリカの極東の安全のために云々といって自衛隊の協力を求めたときに、ノーというかイエスというのかという質問に対して、日本の自衛のためかどうかによって変る。ノーという場合が多いというような形で答弁され、さらにおっかけて、防衛庁長官に、それでは補給業務のようなときにイエスというか、ノーというかと言ったところが、それに対しては援助することもあり得る、こういうような答弁をされております。  そこで、外務大臣と防衛庁長官に伺うことは、アメリカと日本が今度条約を結べば、好むと好まざるとにかかわらず、ヴァンデンバーグ決議からアメリカは相互共同防衛的な性格以外のものは絶対に結べないんですよ。ヴァンデンバーグの決議があるから、相互共同防衛的なもの以外は結べないのですよ、アメリカは、日本が何と言おうが。従って八木委員が指摘したように極東の安全のために自衛隊に協力を求めてほしいという要請があった場合、条約に明記していなかったら絶対にノーと言えない、もうはっきりしておりますよ、その点は。だから、きょうのあなた方の答弁のように、ノーと言う場合があるとするならば、条約上にそれを明記しておかなければ、ヴァンデンバーグの決議から絶対にノーと言えない。そうしてその結果こういうものはアメリカと第三国の紛争に必ず日本が巻き込まれることになる、この点を二人から明確に一つ答えてもらいたい。  もう一点は、憲法でいう日本が持つことのできる最小限度の戦力とはどういうものかという質問に対して、防衛庁長官は、よく聞いておって下さいよ、防衛庁長官は、日本におるアメリカの軍隊は別だ、これはよその国の軍隊だから別だ、自衛隊だけで最小限ものを考えるのだということを答弁しておる。私の伺いたい点は、今の日本国の憲法がある以上、日本の四つの島には日本を守る——あなた方の立場で言って、日本を守る最小限以上の力というもの、それを実力と言おうが、戦力と言おうが、それは譲りましょう。その最小限の力以上は、今の憲法がある以上は日本の四つの島には置けないのですよ。それをこえるような条約は結べないのですよ。またそういう政策というものを立ててそれを行うことはできないのですよ。これが今の日本国の憲法の精神だ。だから、アメリカが日本と条約上に基いて置くアメリカの軍隊のその戦力、力と、自衛隊の持つ実力のプラスしたものは憲法の制約を受けるのですよ。これは明確ですよ。ただ、あなた、アメリカは遊びに来ているのじゃない。日本政府と条約によって置いてあるのだから、これは憲法の制約を受けるわけですよ。それは合せたものであって、自衛隊だけで最小限云々という解釈をするのは、大きな間違いだ。憲法上、そういうような解釈をしてやられたのでは、それは憲法の精神をじゅうりんするもので、ゆゆしきことだと思うのだ。その点、防衛庁長官答弁は、私は取り消されなければならぬと思う。その二点について、私が聞いた範囲内では、不明確であり、しかも重大ですから、関連として伺いますから、明確にお答え願いたい。後者については、防衛庁長官と官房長官の両者からお答え願いたい。
  349. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) ちょっとお待ち下さい。外務大臣は所用のため今退席しておりますので、矢嶋君の質疑中外務大臣に対するものは、その答弁を次の機会に保留したいと思いますから、御了承を願います。
  350. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それはやむを得ないです。
  351. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) この際、出席しておらるる防衛庁長官から答弁をしていただきたいと思います。
  352. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答えいたします。前段の問題につきましては、ヴァンデンバーグ決議等に関しては、外務大臣から数次にわたってお答えをいたしたと思いまするし、私自身も、八木委員からのお尋ねにつきましては、条約上の内容によってきまるのだということを申し上げてあるはずでございます。従いまして、ヴァンデンバーグ決議については、憲法の制約の条項を入れるということ、これは私が答弁するのは適当でないかと存じますが、外務大臣としては、政府としては、常にさような回答をいたしておりますので、私は矛盾はないと、かように考えております。  第二段の問題につきましては、憲法はわが国の自衛隊の問題を規制いたしておるのでありまして、憲法上、わが国の自衛隊については、防衛上必要最小限度の自衛権に伴うもの以外は持てないということで、アメリカの軍隊についてのものを日本の憲法が規定しているわけではない、かように私どもは考えております。
  353. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 八木幸吉君の質疑は以上をもって……
  354. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 官房長官答弁が……
  355. 赤城宗徳

    政府委員(赤城宗徳君) 憲法にいう自衛力は日本の自衛力であって、外国軍隊、アメリカの駐留軍のものは含まないということは、再々、前の国会等においても答弁をし、そういう解釈に相なっておると思いますが、詳しくはなお法制局長官から答弁します。
  356. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ちょっともう一回、第一点については、これは主として外務大臣担当ですから、外務大臣答弁は後日あるそうですから、繰り返しません。防衛庁長官答弁は納得できませんよ。第二点については、これは納得できませんよ。これは何ですか、日本の自衛隊は最小限度のものがあって、アメリカあるいは英国、よその国と、最小限のものを上回るものを日本に駐留できるところの条約は結べるのですか、日本の憲法上。憲法上そういうものは結べますか。日本が他国と協定、条約を結んで外国の軍隊を日本に入れるそのときには、憲法の制約を受けますよ。日本が持てる最小限の力以上に駐留軍の条約、協定は結べませんよ、憲法上は。ただ、それは自衛隊だけだといえば、アメリカとよその国は入れられるのですか。核兵器を持ち込むことができぬとか原水爆兵器は入れられないということは、これは憲法の制約からきているのでしょう。だから、その自衛隊だけで、アメリカは入らぬというお二人の答弁は大きな間違いだ。憲法上では、そう解釈できませんよ。私はそう考えます。
  357. 林修三

    政府委員(林修三君) ただいまの点につきましては、お言葉でございますけれども、憲法はあくまで日本の自衛権のこと、あるいは日本の自衛隊、あるいは日本の戦争あるいは武力行使について、とるべき態度をきめておるわけでございます。米国の軍隊がどの程度の戦力を持つか、あるいは日本にどの程度のものを持つかということは、憲法に直接規制はいたしておりません。これはあくまで政策問題だと思います。今の核兵器云々のことにつきましても、憲法の制約はこれは自衛隊についてあることでございまして、アメリカについてのことは、これは日本政策としての問題である、こういうことだと私は思っております。
  358. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでは法制局長官、はっきり聞きますよ。日本と他国とが協定あるいは条約を結ぶことによって、他国の軍隊を日本の領土内に駐留させる。その条約を結ぶときに、日本を守るに必要な最小限以上の軍隊が日本に駐留するような協定、条約を結ぶことは、これは政策上やらないだけであって、日本の憲法上は差しつかえない、制約を受けない、こういうことなんですか。あなたの答弁はそうなりますよ。そういうことになりますよ。これでいいんですか。
  359. 林修三

    政府委員(林修三君) 御承知通り、要するに、憲法九条一項、二項に日本の国のことについて規定しております。従いまして、日本の国以外のものにつきましては、これは政策問題でございまして、御承知通りに、日本とアメリカと安全保障条約を結んだ場合に、アメリカは、日本にあるもののみならず、自国にあるもの、あるいは他国の基地にあるもの、全部使用し得るわけでございまして、こういう問題から考えましても、憲法でいっておりますものは、日本の自衛隊、あるいは日本の実力、こういうことが最小限度であります。また日本のとるべき行動、これが日本の憲法がいっておることでございまして、外国の軍隊とかあるいは外国のとるべき態度、これは日本の憲法で直接制約しておるとは考えません。(「それはおかしい」「めちゃめちゃだ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  360. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 今の法制局長官答弁に関連して私伺います。  というのは、矢嶋君の質問は、最小必要限度以上にアメリカ軍が日本に駐留することは憲法上いかぬと、こういう論旨だと思うのですが、アメリカ軍が日本に駐留しているということは、これは現行安保条約の関係で駐留しておるのであって、今度新しくできる安保条約では共同防衛の問題がからんでくるから、憲法の問題が出てきますけれども、今の条約のもとにおけるアメリカ軍の軍の数というものは、これは私は憲法と関係はないと思う、私自身は。そういうふうに防衛庁長官お答えになれば私はすらっとすると思うのです。  そこで、私が先ほど伺った問題に入ってくるのですけれども、憲法解釈としての、九条二項の、自衛のための最小必要限度ということに対する答弁として、外国の軍隊がどうだとか、日本の憲法は日本の自衛隊だけだというので、外国と日本とを区別して政府の従来の答弁は一貫してこの問題をあいまいにしておられますけれども、最小必要限度という言葉は、これは数の程度の問題であって、それがアメリカ軍の持った飛行機の数であろうが、日本の航空隊が持った飛行機の数であろうが、飛行機には変りがないのであって、自衛のための最小必要限度ということになれば、これはアメリカとか日本とかで区別すべきものじゃない。そこで、具体的に申しますならば、日本の自衛のための最小必要限度の飛行機がかりに——アメリカの飛行機が何千機おるか知りませんけれども——かりに三千機おると、日本の航空自衛隊が千機持っておる。それで日本を守るということならば、四千機なければ、今の日本の国際情勢においては、日本の自衛のための最小必要限度ということは言えない。そこで私のしばしば申す通り日本の数とアメリカの数と寄せたものが——これは軍の成り立ちではなくて、実体的にはそう考えなければならないのじゃないか。たとえば海上の防衛の問題にいたしましても、アメリカの軍艦がかりに三十万トンおる。日本の軍艦が十万トンおる。そこで、日本の国防を完璧ならしめるとするならば、四十万トンは憲法の第九条二項にいう自衛のための最小必要限度だと、こう政府が言っておると私は思うのです。ところが、私の解釈からいえば、そういうふうな大きなものはこれは戦力でないということはこれは詭弁に類するから、つまり、自衛のための最小限度という憲法解釈というものは無意味である。しからば、きょうは少しあいまいでしたけれども、しからば官房長官が言われる自衛のための戦力、そこに最小必要限度という程度の問題を入れなければ、問題は、この憲法解釈は私は反対でありますけれども、文理解釈としては筋は通る、最小必要限度という名前を入れれば、どうしても実体的にはアメリカの持つ飛行機の数なり、あるいは艦艇の数なりとか、これを入れたものが今の日本の国防を完璧ならしめる、こういう解釈をとらなければ私は意味はないと思う。どうも法制局長官は、アメリカとかいろいろなことを言われますけれども、憲法九条二項の最小必要限度という解釈自身としては、実態的にはそう解釈すべきだと、私はこう固く信じております。いかがですか。
  361. 林修三

    政府委員(林修三君) お言葉を返すようでございますが、憲法はあくまでこれは日本のものについて規定しておるわけでございまして、九条二項につきまして、陸海軍の保持を認めない、交戦権を認めないというのは、これは日本のことでございます。他国のことは全然ここには書いてないわけでありまして、憲法の九条二項の限度につきましては、これはやはり九条一項との関係から言って私は無制限とは考えません。やはり自衛のための必要最小限度というワクがあるものと考えております。これはあくまで日本の持ち得る限度でありまして、アメリカがいかなるものを日本において持つか、あるいは日本において持つものの背景としていかなるものを自国において持っておるか、こういうことは憲法の限度とは私は関係ないと思います。
  362. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 法制局長官今のようなことを言われますけれども、これは政府部内の法制局でもよく一ぺん御研究になったらいいと思います。アメリカの軍隊と日本の自衛隊との関係は、これは性格の問題、憲法の最小必要限度というのは数の問題、今私が艦艇の例、飛行機の例をあげましたけれども、自衛のための最小限度というのは、アメリカの軍隊であればいけない、日本の軍隊ならばよろしい、そういう問題は起らない。これは時間がかかりますからこれ以上言いませんが、もっとあなたの方で謙虚な気持で私は御研究になることを希望しておきます。(高田なほ子君「矢嶋さんのに関連」と述ぶ)
  363. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 関連質問でしたら……なるべく発言を許しますか。
  364. 高田なほ子

    高田なほ子君 私は、矢嶋さんのに答えられた林長官の御答弁は、やっぱり納得ができない。納得できないのは、外国との取りきめに対しては日本の憲法は制約をしない、こういうように答弁をしておられると思う。これは大へん重要な問題だと私は思う。なるほど内閣の国務執行権は私たち認めますよ。しかしながら、国務執行権にはおのずから国内法においても制限があるはずです。その制限の条項というのは、憲法の九十八条に国務執行権に対する制限規定がここに加えられているはずです。九十八条の規定は、国務を執行する場合には、憲法の条文に沿わなければこれは無効であるという、国務執行のその権利に対する制限が規定してあるわけです。これと同様に内閣は国際的に取りきめをする権限を持っているわけです。国際的な取りきめをする場合、全然憲法を無視していいということは何も書いてない。私は憲法の九十八条の後段に日本国が外国といろいろな取りきめをする権利を認めている。そしてまたその権利は同時に義務としてこれを順守しなければならないという規定をうたっている以上、国内法に違反するような外国との取りきめ、こういうことは憲法解釈上私は断じて許されないものだという解釈をとっております。従って、憲法九十八条の前段と後段との関連というものはどういうものであるかということを法制局長官にさらにお伺いをしたい、ここをはっきり。
  365. 林修三

    政府委員(林修三君) 憲法と条約との優劣関係についてはいろいろな学説のあることは御承知通りであります。しかし、少くとも私どもといたしましては、二国間条約等につきましては、もちろん憲法のワク内で条約を結ぶべきものだと考えております。憲法に違反するような条約は結ぶべきものではない、かように考えております。
  366. 鈴木強

    鈴木強君 関連。どうも長官考え方が変ってきたので、多少わかってきたような気がしますが、あなたの言っているのは詭弁なんですよ。要するに自衛権、自衛力というものが1自衛力といえば何かということになるわけです。そうするとあなたは自衛隊というものは憲法に規定されているものであって、アメリカのものは別だと、こうおっしゃる。これは政策だとおっしゃる。しかし今高田委員がおっしゃっているように、政策であっても日本の憲法を無視していいということはないはずなんです。日本の憲法を無視した条約は結べないはずなんです。そうであるならば、自衛権そのものは日本を守る最小限度の自衛力だと、こう言っている。それにプラスして現在アメリカの軍隊がいるわけでしょう。アメリカと日本の軍隊を合せたものが日本の自衛力となるわけです。そうでなければうそであって、もしあなたがそれを否定するとするならば、明らかにこれは第九条の自衛権というものに対する考え方と全然違う。これは根本的に違う。防衛庁長官、あなたもこれは大事な問題なんで、あなたどう考えますか。これは少くとも憲法九条というものは交戦権はない、自衛権なんです。だからその自衛権というものは、日本の自衛隊の力とプラス米軍の力によって日本を守るというのが自衛権じゃないですか。それが憲法上の解釈です。それをアメリカのものは別だという、そういう解釈は成り立たない。そういう考え方は全くおかしい。そんな林長官のような解釈はこれはきわめて私は問題があると思うのです。防衛庁長官、この点について一つ明解にしておいてもらいたい。
  367. 林修三

    政府委員(林修三君) 先ほどから申し上げている通りに、憲法はこれはあくまで日本の国のことについて規定しているわけでございまして、日本のやるべきこと、あるいは日本の持ち得る自衛力の限度、こういうことが規定されているわけでございまして、それ以外のものを規定しているわけではないと、私どもこれは一貫して考えております。この点については、もう安保条約の締結の当時から全然私どもの趣旨は変っておりません。(「その次の問題だ」と呼ぶ者あり)これは日本がアメリカの力によって日本を防衛しようという場合においての政策問題でありまして、日本だけでは守り切れないからアメリカの力を借りよう、アメリカが、いざという場合にアメリカが貸してくれる力は、必ずしも日本にいる防衛力だけではございません。アメリカ全体がこれの背景になっているわけでございまして、そういうことから考えても、あるいは九条の文理から申しましても、あそこに言っておりますものは日本自体のことでございまして、外国のものを言っているとは私ども考えておりません。
  368. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) お答え申し上げます。私が最前申し上げました通り、憲法九条に言う自衛力とは、防衛上、自衛上必要最小限度の自衛力を持ち得るという解釈を常にとっております。
  369. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) どうですか、外務大臣が次回に御答弁になりますときにも、関連質問の時期もございますから、それまでに政府の方でよく統一して、皆さんにおわかりになるような答弁を作ってもらっといて……。(「了承」と呼ぶ者あり)じゃ、それを了承して下さい。
  370. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 委員長一つだけ……。  それじゃ防衛庁長官答弁ができなかったらそのとき答えてもらう宿題にしますが、具体的に出しますよ。それでは今、日本とアメリカがかりに大型水素爆弾、そういうものを入れてもよろしいというような条約を結べるのか結べないのか。ただそういう大型水素爆弾なんか日本に持ち込むということは政策上いけないということだけであって、憲法上はそういうものを米軍が持ち込むところの条約を結ぶことは、憲法の制約を受けないのかどうか、お答え願います。
  371. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) その点はかねて申し上げておりまするように、防衛上最小必要限度のものをこえた攻撃的性質を持つものは憲法上の制約を……。(矢嶋三義君「具体的に答弁なさい」と述ぶ)水素爆弾については、攻撃的な性質が私は強いと信じますので持てないと思います。  ただいま私は日本が持つようなお尋ねでありましたからお答えいたしましたが、米軍が持ち込むことにつきましては、私どもとしては常に既定方針によってそれはお断わりをする。持ち込みをしない……。
  372. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 憲法上は、いいですか、憲法上はそういうものを持ち込むところの条約を結ぶことは、憲法上は差しつかえないのか、あるのか、答えて下さい。政策上は入れないとしている。いや、いや、防衛庁長官に。何だ、あなたは。出しゃばるな。
  373. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 矢嶋君私語を禁じます。
  374. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私語じゃない。大事なところだよ。
  375. 伊能繁次郎

    国務大臣伊能繁次郎君) アメリカがそういうものを持ち込むかどうかの問題については、日本の憲法には規定しておりませんので、その点はわれわれの関与するところではありません。
  376. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 制約を受けない。そんなばかなことがあるか。
  377. 木暮武太夫

    委員長木暮武太夫君) 八木幸吉君の質疑は終了いたしました。  明日午前十時より委員会を開くことといたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十一分散会