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秋山長造君 私は、この
動議の
提出者に対して御
質問をいたす前に、
議長に対して、二、三点
納得のいかない点がありますので、御
質問いたしたいと思います。
大体、本日は
会期末でもなければ、また、本
会議の
定例日でもない。しかるに、そういうまことに奇妙な日に、夜の九時が過ぎてから、にわかに
議長職権によって本
会議が開かれるというようなことは、全く
納得のいかないことであります。
一体、この夜の九時を過ぎてから、こういう日に、
議長が
職権によって本
会議を開かれたその
理由と
心境を明らかにしていただきたいと思うのであります。
第二には、聞くところによると、
議長は、一方において、
久保社労委員長以下
社労委員の
諸君が、明日から
名古屋と仙台における
国民年金法案についての
公聴会に出張するための
許可を与えておりながら、しかも、その前日の今夜のおそくになって、明日のいつまでかかるかわからんような、こういう本
会議を開かれるということは、全く
矛盾もはなはだしいと思うのであります。この
矛盾撞着について、
議長自身の御
解明が願いたいと思うのであります。
第三は、先ほど
光村君から出されました
倉石労働大臣の
問責決議案についての扱いであります。
問責決議案というものは、
倉石労働大臣に対する
不信任案であります。これは、
通り一ぺんの
決議案として、
ただ数で片づければいいという性質のものではありません。
労働大臣の
政治的生命にかかわるものです。従いまして、出された以上は、堂々と
提案者に
提案の説明をやらせ、それに対して賛否の
討論をやらせて、しかる後に決をとるということであって、初めて、
参議院の運営というものも、あの
正常化の声明にもありました
通り、公明正大に行われることが期待できると思うのであります。しかるに、先ほどのような何のことやらわからんうちに、ただ
採決さえ急げばいいというようなことで、何が
採決されたかわからないようなことで片づけられてしまうということは、私は、
参議院の
正常化を念願されて参りました
松野議長の
やり方としては、まことに
納得がいかないのであります。この点についても
議長のはっきりとした御
心境の
解明をお伺いしたいと思うのであります。
そこで、この
中間報告の
要求の
動議の
提出者に対しまして、若干の御
質問をいたしたいと思います。
まず第一に、突如として本日こういう
中間報告の
要求動議が出された
理由がわからないのであります。大体
中間報告というものは、
会期が押し迫って非常に周囲の空気が緊迫をした
事態のもとにおいて、初めて出されているのであります。これは過去の幾多の
先例がはっきりと示している。しかるに、今日ただいまの場合、いかなる
理由があって、またいかなる情勢が前提になって、こういうものが出されたのか。私どもは全く理解に苦しむのであります。(
拍手)三十一日に新年度の
国家予算が
通過成立をいたしたのであります。
政府与党の
皆さんは、
予算さえ成立すれば、通るものさえ通れば、
あとはどんなことをやっても野となれ山となれの、こういう無責任な
態度であるのかどうか、はっきりさせていただきたいのであります。
あとはろくろく審議を尽さないで、一気呵成に
ただ数をもって片づけてしまえばよろしいのかどうか、そういう
態度であるのかどうかをはっきりしていただきたい。
エープリル・フールという言葉がある。しかし、
エープリル・フールには、まだあいきょうがあります。今回の
皆さんの
やり方には味もそっけもない、全くいきなり目の玉に指を突っ込むような
やり方だと思うのであります。
さらに第二にお尋ねいたしたいのは、
会期が五月二日まであることは、
皆さんも御承知の
通りであります。
あと一カ月も
会期があるのに、
一体なぜそれほど事を急がなければならないのか、その
理由がわからないのであります。何もこの夜中になってから
暁国会などをやられる必要は、私はないと思うのです。なぜそういうことをあえておやりになるのでございましょうか。しかも、
議席を見渡してみると、
中間報告というような非常に重大なる手続をとってこられた自由民主党の
議席がぼろぼろあいているのです。これは全く不謹慎きわまると思うのであります。これだけの
非常処置をとられるならば、一人残らず数をそろえてこられたらどうでしょうか。(「怒らないでやれよ」と呼ぶ者あり)怒らざるを得んですよ、こんなむちゃなことをやられては。
一体、
地方選挙の応援なり、あるいは
参議院選挙の準備というようなことで、十日ごろまでに何もかも片づけてしまって、
あとは
自然休会というような説が、しきりに
政府与党の方面から流れておりますが、もしそれが事実といたしますならば、こんな
国民をばかにした考え方、
やり方はないと思うのです。特に、今回はわれわれの半数改選ということを控えた、いわば最後の重大な
国会なんです。だから、なおさらのこと、五月二日の
会期切れまで、任期満了までお互いに精励恪勤をして、そうして有終の美を全うするということによって、初めて私どもに信託されたところの国政審議の使命を十分に果すということになるということは、
皆さん笑っておられるけれども、腹では
納得されると思うのです。私の言うことは間違ってはおらんです。その
理由についてお伺いをいたしたい。
第三は、
社会労働委員会の審議の状況についてお尋ねしたいのであります。今問題になっております
最低賃金法案というものは、そもそも昨年の春の二十八
国会以来三度目の
提案であります。またわが社会党の出した
最低賃金法案というものは、
皆さんも御承知のように、二十九年の十九
国会以来、ほとんど
国会ごとに
提案をされてきておるのであります。いずれにしても、今問題になっているところの
最低賃金法案というものは、これはいわば、いわく付きの重要法案であることに間違いはないと思うのです。そういう重要法案であって、しかもその内容については、最低賃金の決定の仕方なりあるいは最低賃金審議会の性格や権限等についても、非常に問題が多いのであります。私どもは決して、最低賃金法という看板さえ通れば、看板さえできればそれでよろしい、というものではないと思います。これだけ過去においての長いいきさつのある法案であるだけに、なおさらのこと、十分に委員会においては審議を尽して、そして完璧なものをお互いの協力によって作り上げて、初めて
最低賃金法案というものが日の目を見る意味があると思うのであります。(
拍手)しかるに、三月の十日に
社会労働委員会において政府側から
提案説明が行われて、初めて審議に入ったんですが、その後、十四日、十九日、二十八日、一日、わずか四日間、しかもそれをまるまる審議はしておらんのです。聞くところによると、あの二十日、二十三日の
公聴会を入れても、十時間前後の審議しかしておらぬということであります。まだ逐条
質問というようなものは全然行われておらないのであります。本文が四十六条ある、付則が十カ条ある。これだけの大きな法案について、逐条
質問もやらないうちにいきなり
質疑打ち切りの
動議を出されるというようなことは、少くとも過去においてこういう重要法案についてはあまり例のなかったことであります。特に
会期末、押し迫ってからの場合と違います。一カ月からの
会期をまだ余しておる今日の
事態のもとに、そういう非常手段に出られるというような例は、私は寡聞にして今まで聞いておらぬ。そうではなくして、もっともっとやはり総括
質問から逐条
質問、さらに締めくくりの総括
質問、という順序だけは踏んでいただきたいと思うのであります。結果がどうなろうとも順序だけは踏んでいただくことが、ほんとうに
社会労働委員会なり、
参議院全体として、この重要法案を十分慎重に審議したということになると思うのであります。そういう手続が踏まれないで、しかも社会党六人、また自由民主党三人の
質問者がまだ残っておる状態のままで、
質疑打ち切りの
動議を出され、さらにそれがうまくいかねば、その翌日にはこういうように
中間報告をやられるの
動議を出されるというようなことは、全くこれは、
参議院の正常なるルールを無視して、ただ結論を急ぐだけの、多数横暴の
態度だと言われても、私はこれは言いわけができないと思うのであります。しかも、社会党の修正案もまた
久保委員長の手元に出されておったにもかかわらず、その扱いすらもきめられないままにこういう
事態に突っ込んでしまうということを、私は、はなはだ遺憾と考えるものであります。
さらにその次には、この問題になっております
最低賃金法案の内容についてであります。
一体、
提案者は、この内容についてどういうお考えを持っておられるのか、伺いたいのであります。およそ賃金というものは、これは
労働者と使用者との対等の団体交渉によってきめられるべきものであるということは、今日世界の常識であります。しかるに、この政府のいわゆる画期的な最低賃金制度をしこうというのに、この最低賃金の決定に対して
労働者の参加を全然認めないで、もっぱら、一方的に使用者と政府側とできめて、これを押しつけようということでは、最低賃金が最低賃金になりません。とんでもない食わせものという結果になってしまうのであります。第一、こういうものを素
通りさせたので声、問題になっているところの
ILO条約二十六号の批准なんというものはできるはずはないのであります。政府自身がこの点にひっかかって動揺しているじゃありませんか。この際いさぎよく、こういう無謀な
やり方を引っ込めて、そして少くとも
ILO条約二十六号の趣旨に沿う線において、まあ諸外国に対して顔向けのできる程度の内容は盛っていくべきではないかと思うのであります。
さらに、その次にお尋ねいたしますが、いわば、こういう
事態のもとで、こういう時期に、こういう
やり方で、
中間報告の
要求動議という重大な手段に出られたのでありますから、
政府与党としても、これはよほどの決意を持って当っておられることと思う。まだ
あと一カ月の
会期が残っております。また審議中の法律案は、防衛二法を初め、あるいは揮発油税法、
国民年金法、社教法等々、四十八件がまだ残っているのであります。
一体、明日からの
国会運営というものを、自民党の
皆さんは、
提案者はどうお考えになっておるのか、お伺いしたいのであります。
一体これだけ残っておるものを全部犠牲にして、全部捨ててしまっても、こういう無謀な、横暴な
中間報告というものを押し通すおつもりであるのかどうか、はっきりとお伺いしたいのであります。
さらに、最後にお伺いしたいのでありますが、
一体この
中間報告の
要求動議というものは、
国会法五十六条の三によって出されていることは明らかであります。しかし、この
国会法五十六条の三の中には、
中間報告を求めて、しかる後の処置については、あるいはこのまま本会
議場で片づけてしまうか、それとも、また再び委員会に差し戻すかというような、幾つかの方法がうたわれているのであります。
一体、
提案者は、このどれをおとりになるおつもりであるか。私は
提案者に伺いたいのであります。
以上申し上げましたようないろいろな情勢を考え、また、いろいろな面を総合的に慎重に御反省をなさって、いさぎよく、この無謀な
動議をこの際引っ込められたらどうかと思うのであります。そして
国会運営の正常なルールに沿って、そして五月の二日まで、十分あらゆる法案について慎重審議を尽すという
態度をとってほしいのであります。この点についての
提案者のはっきりとした信念と御返答とをいただきたいと思う次第であります。
以上の諸点について明確な御
答弁をお願いをいたしまして、私の
質問を終らしていただきます。(
拍手)