○小西英雄君 ただいま
議題となりました
昭和三十一年度
一般会計歳入歳出決算ほか三件につきまして、決算
委員会における
審議の
経過並びに結果の概要を御
報告申し上げます。
本件は、三十二年十二月二十三日
国会に
提出されまして、今回審査を終えたものであります。
まず、本件の
内容の概略を申し上げます。
一般会計では、歳入決算額一兆二千三百二十五億余万円、歳出決算額一兆六百九十二億余万円で、差引千六百三十三億余万円の剰余を生じましたが、このうち、三十一年度で新たに生じた純剰余金は千一億余万円であります。また前述の歳出決算額のほかに、翌年度への繰越額が四百四十億余万円あったので、百四十二億余万円が不用額となつたものであります。
次に予備費は、予算額八十億円に対し、ほとんど全部を使用されました。また、
国庫債務
負担行為のうち、
財政法第十五条第一項に基くものは、限度額二百三億余万円に対し、実際の
負担額は百二十四億余万円であり、同条第二項に基くものは、三十億円に対し、実際の
負担額は九億余万円でありました。公債は、内外債を合わせ、年度初め現在額四千八百三十三億余万円、年度中の発行額三百四億余万円、減少額四百五十四億余万円で、年度末現在額四千六百八十三億余万円であり、借入金は、年度初め現在額四百九十七億余万円、年度中の借入額千余万円、減少額一億余万円で、年度末現在額四百九十五億余万円であります。
特別会計は、その数が三十七でありまして、各特別会計の決算額の総計は、歳入決算額が二兆二千三百十四億余万円で、歳出決算額が二兆七十四億余万円であります。
政府関係機関は、その数が十でありまして、各機関の決算額の総計は、収入決算額九千七百七十八億余万円、支出決算額八千三百六十六億余万円であります。以上が決算の概略でありますが、詳細は決算書類についてごらんを願います。
本件については、本年四月二日関係各省及び会計検査院から説明を聞きまして、本十二月二十三日まで実に三十五回の
委員会を開き、また、六班の
委員派遣によって現地をつぶさに調査し、検査院の批難事項千百二十八件のほか、決算に関連し、または
国家財政の調査として、前回
審議を終えるに至らなかった農林中央金庫等の融資の問題を初め、江戸川における汚水放流による漁業の
被害事件、
日本航空株式会社の管理
運営状況並びに航空交通
事業に関する件、国鉄客車清掃
事業の民間委託に関する件、あるいは
愛知用水公団の
事業実施と請負契約処理の適正化等の問題を取り上げ、慎重に
審議を重ねました。詳細は
会議録によってごらんを願います。
審議を終了するに当りまして、当
委員会の決議をもって、防衛庁、農林省、郵政省、
日本国有鉄道及び
愛知用水公団に対し、さらに強くその反省と決意を促すため、警告を行なつたのであります。
審査の結果といたしまして、
内閣に対し、総括的に次の警告を行う必要を認めましたので、その概要を申し上げます。
第一は、綱紀の粛正刷新であります。
公務員の非違行為は、関係当局の
努力にもかかわらず、決算検査
報告等で明らかにされた不正行為だけでも、その額は約一億円に上り、その他、収賄等の忌むべき事件が多数摘発されており、綱紀の粛正は未だしの感が深いのであります。また、依然として、各種法令、予算の違背事項あるいは不経済事項が繰り返し行われており、公務員の公金軽視の風潮がなお強く、
国民への奉仕に対する自覚の不足が痛感されるのであります。
内閣及び関係当局は、職員の
教育訓練を
充実するとともに、上司もみずから高潔を持し、確固たる信念と決意をもって
責任の追及をさらに厳正にし、もって綱紀の刷新に努むべきであります。
第二は、
制度及び
運営の整備
改善であります。
まず、自主的な
規制と監督について申し上げます。
会計秩序の維持と経理の適正をはかるためには、みずからその統制を
強化し、内部牽制を確立することが緊要でありますが、全般にその成果の発揮が十分でありません。また、中央機関の方針が地方出先機関に徹底していない向きがあり、さらに海外支払いの
経費等で検査及び監督の行き届いていないものが見受けられます。これらの事実にかんがみ、
政府部内における統制監督の機構を整備し、有効適切な
運営に一そう
努力を要するものがあります。また
政府関係機関を初め、
政府出資団体及び国が
財政援助をしている公私団体等に対する監督行政においては、問題も多く、不当不正を抑制するはもちろん、
事業運営の合理化を促進し、
財政資金が十分効用を発揮するよう、適切な施策の実行が肝要であります。
次に、予算の効率的
運営についてであります。
工事の
施行、物件の調達等における予算の不経済使用の例は依然として多いのでありまして、ことに特殊関係にある業者との契約に遺憾な事例が多く、また入札において競争の実を必ずしもあげていない現状に対しては、当局の適切な
措置、対策が望まれるのであります。さらに予算の編成及びその執行方法については、その合理性と効率性を一段と推進して、いわゆるこま切れ予算の計上や総花的配分の弊をすみやかに一掃し、また行政の大綱に着目して、真に有用な
経費の実をあげるよう
運営する要があり、各種
補助金、助成金等については、その積算及び執行を合理化するはもちろん、項目の減廃統合について再検討を行う要があります。
次に、財産の管理運用についてであります。
国有財産の取得、管理及び処分については、
政府においても国有財産
審議会
制度を設けており、財産の実態調査に着手するなど、
改善への
努力は認められますが、その成果はいまだ十分でなく、これが調査及びその
整理態勢を
強化し、二兆円に上る国有財産の管理運用の万全を期すべきであります。
なお、各企業特別会計、
日本国有鉄道及び
日本電信電話公社等における財産の企業的運用、各省庁機関の庁舎の合理化について、一般の
努力が肝要であります。
次に、機構
運営の簡素化についてであります。
行政機構及びその
運営の簡素化は、強く一般からも要望されているのでありますが、決算
審議に徴し、各省の所管にわたっている港湾行政の管理
運営及び事務処理が複雑非能率であり、利用者の不便も多い問題があり、そのほか、北海道における開発行政の一元的な
運営、保育所における保育料の徴収基準及び
国民健康保険助成金の交付要件の簡素化等の問題があります。
政府は、すみやかに、行政本来の
目的を達成するよう、これが簡素化について適切有効な対策を講ずる要があると認められます。
以上、概略を申し述べましたが、これらの諸点は、連年繰り返し警告しているにかかわらず、いまだ
改善への成果が十分とは申せないのであります。
財政処理全般としては、ようやく三十年度ぐらいを契機として、順次
改善への傾向にあることは、一応首肯し得られるところでありますが、特に、前記の諸点に対する施策の徹底について、
政府の一段の強い反省と
努力が要望されるところであります。以上は、決算
委員会として党派を超越した
意見でありまして、本件
採決の際における各
委員の熱心な
討論でも明らかであります。各
委員からなされました
討論の
要旨を申し上げますれば、
まず、自由民主党を代表する平島
委員から、「承認するに当り、
政府に対し次の事項を強く申し上げたい。三十一年度は三十年度に比し批難事項の減少を示し、
努力改善の跡は認め得るが、なお多額の不正不当の指摘があるのは、
国民の信にこたえるゆえんではない。一円の金のむだ使いもないようにすることが血税を納める
国民への
責任であります。また、公金、公物軽視の風がいまだに少くない。特に、警告を受けた各省その他において、警告の趣旨を体し、業務の監督、統括、内部監査等に格段の
努力を要望したい。なお、不正不当支出に対する善後
措置については、
制度そのものについて反省検討し、関係者の処分については、形式的に流れず、もっと適切妥当な処置を講ずる要がある。要するに、
国民の血税を主とする国の
財政が、合法かつ合理的に経済的に使用されるよう、一段の
努力を払い、
国民の信用と信頼を深められることを強く要望したい。」との御
発言がありました。
次に、
日本社会党を代表して相澤
委員から、「決算
審議の過程で目立つことは、請負その他の契約、
補助金の経理について、なお多数の不当事項があり、また、各省における出資団体等に対する監督も不徹底である。これらについては、大臣初め官僚の反省の不足によるもので、当
委員会の警告にもある通り、一段の
努力を要望する。ことに、各種契約については、悪質業者の排除につき断固たる決意を要する。
補助金の不当経理についての監督も、さらに
強化すべきである。また、
政府関係機関の会計は気がゆるむ傾向が考えられ、
政府の監督も不十分であり、今後緊張して自粛されたい。防衛庁、農林省、郵政省、国鉄、
愛知用水等は、当
委員会から警告を与えられていることを銘記すべきである。また、防衛庁については、予算繰越、不用額が多く、水ぶくれ予算のため放慢に流れやすく、不当事項も多いので、予算編成の当初において十分に緊縮すべきである。」との御
発言がありました。
緑風会を代表する奥
委員から、「国の
財政は正しく実行しても
国民の福利を完全に守ることが困難なのに、決算を見ると、なおその上に、多数の不正不当、むだ使いが行われているのは情ないと思う。下積みの方々から種々の陳情を聞くが、それらはきわめて微々たる金額の問題であり、多数の
国民がこのように困っているのに、一方では何億という不当が行われている。検査
報告の指摘はほんの一部である。各省等は不当防止に
努力し、また、相互の連絡を密にして、むだの生じないよう、
責任感と熱意を持って今後格段の注意
努力を払うよう望みたい。警告決議を受けたもののみでなく、
政府全体として、予算の有効適切な使用に努め、
国民の信頼を得るようにせられたい。」との御
発言がありました。
最後に、共産党を代表する岩間
委員から、「ただいま警告決議がなされたが、これをこの場限りのものとせず、その趣旨の実行されることを見守ることとして本件を承認する。次の二点を強調したい。一、公安調査庁、警察、
内閣調査室等において、
経費が不明朗な形で使用されており、会計検査院の検査も行き届いていない。これは、調査費といっても、実はスパイの費用であり、その陰には人権侵害の行為も行われている。これは、平和憲法下においては許されない事態である。二、各官庁、
政府関係機関には外郭団体があつて、当該官庁等の出身者が多く入っており、その結果、工事請負等になれ合いが行われている。これは汚職の源泉となっているから、これを根絶するため、官庁出身者の関係会社等に就職を禁止するような
措置をとる要がある。右のような
改善によって
国民の疑惑を一掃することが決算
委員会の任務と考える。」との御
発言がありました。
以上の
討論を終りまして、
採決の結果、
全会一致をもって、審査
報告書の通り
異議ないものと議決した次第であります。
以上をもって、
昭和三十一年度
一般会計歳入歳出決算ほか三件の
報告を終ります。
次に、
昭和三十一年度
国有財産増減及び現在額総
計算書並びに
昭和三十一年度
国有財産無償貸付状況総
計算書に関する決算
委員会の
審議の
経過並びに結果を
報告いたします。
まず、本件の
内容の概要を申し上げます。
昭和三十一年度において、一般会計、特別会計を合計した国有財産の増加額は三千三百八十二億余万円、減少額は二千三百四十四億余万円、差引純増加額千三十八億余万円でありまして、本年度末、すなわち
昭和三十二年三月三十一日における国有財産の現在額は二兆二百九十一億余万円となっております。この内訳は、行政財産一兆千二百七億余万円、普通財産九千八十四億余万円でありまして、行政財産をさらに分類いたしますと、公用財産四千百八十八億余万円、公共用財産八十五億余万円、皇室用財産九十五億余万円、企業用財産六千八百三十七億余万円となっております。
次に、国有財産の無償貸付は、一般会計、特別会計を合せて、
昭和三十一年度における増加額は九億余万円、減少額は八億余万円、差引純増加額は八千余万円でありまして、年度末における無償貸付の現在額は五十一億余万円となっております。
決算
委員会におきましては、右二件につきまして、
政府の説明並びに会計検査院の検査
報告の説明を聴取いたしました上、
昭和三十一年度決算と並行して
慎重審議いたしましたが、本件の
内容をなしますところの国有財産の取得、管理及び処分に関し処理の適正でない点、財産管理の
基礎資料をなす実態調査が十分でない点につきましては、別途、
昭和三十一年度決算において審査を行いましたので、この二件の
計算書については、
異議がないことと議決いたした次第でございます。
以上
報告申し上げます。(
拍手)