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説明員(花園一郎君) ただいま議題となりました公共用水域の水質の保全に関する
法律案の
提案理由及びその要旨並びに逐条
説明を申し上げます。
近時、
都市人口の増大、鉱工業の急激な発展にもかかわらず、
都市下水道の
整備が著しく立ちおくれ、工場、事業場等においても汚水処理施設の
整備に欠くるところがありましたため河川、湖沼、港湾、沿岸海域その他の公共の用に供される水域が年々汚濁され各種の問題が随所に発生するに至りました。
すなわち、汚濁水の放流に起因して水産業等の
関係産業に相当の損害が生ずる等の事例が増加する傾向を示しておりまして、この傾向をこのまま放置するときは、産業相互の協力を害し、均衡のとれた経済発展を阻害するだけでなく、これに起因して紛争等を惹起し、また公衆衛生の向上をも期しがたいと考えられるので、
政府といたしましては、かかる
事態に対処する措置として新たに本法を制定し、水質保全のために必要な基本的事項を定め、もって産業の相互協和と公衆衛生に寄与させ
ようとした次第であります。
以上がこの
法律案の
提案の
理由であります。
御承知の
ように、欧米の工業先進国においては、すでに十九世紀以来、水質汚濁の規制についてその
対策が
論議されており、わが国においても、さきに資源
調査会から
水質汚濁防止に関する勧告がなされ、その後引き続き、
政府部内において複雑多岐にわたるこの問題について種々
調査研究してきたのでありますが、このたび成案を得まして提出の運びとなつた次第であります。
次に、本
法律案の要旨につきまして御
説明申し上げます。
第一に、水質基準についてでありますが、本法は各省所管の汚濁水規制に関する各種行政法規に対しいわゆる基本法的な地位に置かれるものでありまして、本法によってこれらの行政法規の運用統一をはかり、直接の取締り等は各行政機関にゆだねることになるのでありますが、この運用統一の基本となるべきものが水質基準でございます。まず、経済企画庁長官が公共用水域のうち汚濁による相当の
被害が生じまたは生ずるおそれが高い一定の水域を指定水域として指定し、当該水域について水質保全上必要であるとともに具体的に遵守可能な水質基準を定め、工場排水等の規制に関する
法律、鉱山保安法、下水道法等の主務大臣がこの基準によって現実の取締りを行い、これによって本法の
目的とする水質の保全を実現し
ようと期している次第であります。なお、この基準は公共用水域の水質の保全をはかるための行政上の基準でありますので、当事者の民事上の免責規定ではないのであります。
第二に、水質
審議会についてでありますが、経済企画庁の
付属機関としてこの
審議会を設け指定水域の指定、水質基準の設定等の
重要事項については、この
審議会で慎重
審議の上決定することといたしております。なお、水質保全に関しましては、地下水の汚濁等今後の研究に待つべき課題も多々あると考えられますので、公共用水域及び地下水の水質の保全に関する基本的事項を水質
審議会の
所掌事務に掲げ、今後の施策の
検討の場とした次第であります。
第三に、水質汚濁による
被害に関する紛争についてでありますが、この種の紛争は、近来
各地にしばしば見受けられるところでありますが、解決に迅速を要し、また判定に専門的知識を要する等、本来裁判
制度になじまない性格を有するため、ややもすれば両当事者の力
関係に支配され、必ずしも、農水合理的な
方法で解決を見ているとは言いがたいものがあります。これを放置するときは、産業相互間の協和を害するのみならず、社会問題化するおそれなしとしないので、水質保全行政の一環として本法に、
都道府県知事による和解の仲介
制度を設け、紛争処理を合理的な軌道に乗せ
ようとはかったのであります。
最後に、本法の施行に伴い経済企画庁において
関係行政機関の水質保全行政を調整する等の必要を生じますので、附則において同庁設置法の一部を
改正し、
関係条文の整理を行なつた次第であります。
以上が
法律案の
提案理由と、その要旨でございますが、引続き、逐条
説明を申し上げる次第であります。
まず、公共用水域の水質の保全に関する
法律案の
概要説明をいたします。
この
法律の
目的と性格でございますが、すでに御承知の
通り、都会人口の増大、鉱工業の発展に伴う水質の汚濁、これが
関係産業に非常な損害を与え、あるいは公衆衛生上も看過しがたい影響を生ずるなどの問題が生じておりますので、これに対してこの規制措置を講じたわけでございます。それで、第一条から三条までが実は総則ということになっておりますが、これにつきましては、第一条で「この
法律は、公共用水域の水質の保全を図り、あわせて水質の汚濁に関する紛争の解決に資するため、これに必要な基本的事項を定め、もって産業の相互協和と公衆衛生の向上に寄与することを
目的とする。」ここで「水質の保全」という用語についてでございますが、これについては、これまで、あるいは汚濁防止、または汚濁規制、幾多の用語例がすでにあったわけでございます。ただこれらの汚濁防止なり、汚濁規制という用語例を考えてみますと、それはあくまでよごれたものを前提にして、かつそれを防止する、または規制するという
ような手段的な
一つの限界を用語の中に、用語の意味として持っておりますので、この場合、さらに
改善の
趣旨をも入れて、ただし、これを水質
改善と言い切るには、現在まだよごれておらぬ所はその必要がないわけでございますので、従って、その広範囲の意味において水質保全という用語を一応と
つてみたわけであります。従いまして、この「保全」という用語を使いますときは、もちろん水のよごれ方、また、きれいなあり方、これが非常に種、雑多な段階があるわけでございますが、いいものはいいものなりに保全する、悪いものはさらに
改善をするという
趣旨をわれわれは考えた用語でございます。
それから第二条に「何人も、公共用水域及び地下水の水質の保全に心掛けなければならない。」、これはもちろん心がけ規定ということになりますが、この心がけ規定的な規定は、前例としては、水道法にやはり同じ
ような心がけ規定があります。これにつきましては、もちろん法的な規制力を用いませんことにはなるわけでございますが、一応、特に最近、今後において問題になるであろうと思われます地下水をも含めまして規定いたした次第でございます。
第三条の「定義」でございますが、『公共用水域」とは、河川、湖沼、港湾、沿岸海域その他の公共の用に供される水域及びこれに接続する公共溝渠、かんがい用水路その他の公共の用に供される水路(公共下水道及び
都市下水路を除く。)」ということになっております。これは公共用水域というのは、もう御案内の
通りでございますが、さらに公共用水域ではない、私設ではあるが、これに接続するものをこの
法律の
適用範囲にいたした。「公共溝梁」という言葉でございますが、これはたしか自治法にあった言葉であります。「かんがい用水路」というのは、これは用排水路とお考えいただいて、要するに灌漑用の水路、川水路、排水路、両方と考えていただきたいと思います。「その他の公共の用に供される水路(公共下水道及び
都市下水路を除く。)」、公共下水道は、下水道法に非常にきびしく規定されておりまして、終末処理施設を有しておるものでございます。さらに
都市下水路につきましてもそういうものでございますが、これらは一応下水道法の
適用を受けておりまして、その力でそこの水質基準がきめられるということになっておりますので、これは除いたわけでございます。この際、そうなりますと、工場から流れます水が、直接公共用水域に入ります場合は、当然これの規定を受ける。それから、それが公共溝渠と申しまして、いわゆるみぞでございますが、みぞに入ってから川に流れ込みます場合は、みぞを通って工場まで規制が及ぶ。灌漑用水路も同じでございます。それから、その他の公共の用に供される水路は当然でございます。それから除かれるものは、その出口でこの
法律は一応
適用がとまるわけでございます。従いまして、公共下水路に汚水を流しております工場は、直接的にはその方の
法律が働くということになります。
それから第二項で、「水質基準」とは、工場、事業場、それから鉱山、水洗炭業の事業場から指定水域に排出される水の汚濁の許容限度をいう。この場合は、「放射線を発生する物質による汚染を除く。」、これは放射線
関係の
法律が別にございますので除いたわけでございますが、この規定では、この規定にございます
通り、一応
適用範囲をここで規定しておるわけであります。
それじゃ、水質基準とはどういうものかということになりますと、一応、
一つの河川について指定水域がきまりますと、おおむねその水域の本流の汚染度、汚濁度を予定しながら、それぞれの工場からの排出水について汚染度を決定していく。従いまして、Aという指定水域がございますれば、その水域に汚水を流す工場は、BOD何パーセント以下とか、またはぺーハー幾ら幾ら以内、またはそういうふうな大腸菌の含有量幾ら幾らというふうな規定が
一般的にございまして、それでその工場の出口で汚水をはかって規制していくということになるわけでございます。
第二章に「水質基準」というものがきめてありますが、まず第四条で「経済企画庁長官は、公共用水域のうち、当該水域の水質の汚濁が原因となって
関係産業に相当の損害が生じ、若しくは公衆衛生上看過し難い影響が生じているもの又はそれらのおそれの高いものを、水域を限って、指定水域として指定する。」、従いまして、
関係産業に相当の損害または公衆衛生上見のがしがたい影響が生じているもの、またはそのおそれのあるものを指定するということにいたしておりまして、ここで指定水域の指定の仕方について一応規定しておるのでございます。それで指定水域を指定いたしますと、その指定水域にかかる水質基準をきめろということを二項に規定しております。従いまして、この場合、指定水域がきまりますときは、当然その水質基準というものは、大体同時に規定されていくということがここに書いてあるわけであります。それから第三項で「必要な
程度をこえないものでなければならない。」、これは要するに過度に水質基準をきめて、汚水を流す工場、事業場に、必要以上に除去施設等の
負担を背負わせるということがあってはなりませんので、あくまで必要な
程度のものであるということをいっておるわけであります。これらの水質基準または指定水域の指定につきましては、水質
審議会の議を経てきめる、変更するときも同様である。
これらの指定水域なり水質基準というものが特定の河川別に設けられますという
関係上、問題は明らかに地方問題でありまして、そこの所轄の
関係都道府県知事の関心並びに行政
関係から非常に
関係が深うございますので、
関係都道府県知事の
意見を聞かなければいかぬ、指定する前に
意見を聞くのだということをいっておるわけです。
第六条は、公示の規定でございまして、公示とともに
関係行政機関の長に通知する、その公示によって効力を生ずるということになっております。
第七条が遵守義務でございますが、これは「排出水を排出する者は、当該指定水域に係る水質基準を遵守しなければならない。」、これはやはりこのままでは心がけ規定の
趣旨になるわけでございますが、
一般的遵守義務を規定したわけであります。
それから第八条は、
調査等の必要がありますときに、
関係行政機関に必要な資料の提出を求め、または経済企画庁長官が
関係行政機関の長に対し勧告することができる。これは、たとえば、鉱業法の所管大臣である通産大臣に、たとえば渡良瀬川の水について足尾銅山がなかなか
整備をしておらぬという
ようなときには、もう少し引っぱらなければいかぬじゃないかということを企画庁長官から勧告することができるということで、鉱業法の所管大臣は、渡良瀬川について経済企画庁が水質基準をきめますならば、その基準の遵守について真剣に取っ組む
ように勧告されることになる。
第九条は、今度は
関係行政機関の長、
関係地方公共団体の長その他の
関係者に対する
調査協力義務でございます。これは
調査といいますと、実はこの水質基準の設定は、もう大半の努力が
調査にかかるということになるかと存ずるのであります。なぜかと申しますれば、各
関係業界の非常に利害の対立が見られる問題でございますので、基準の設定は相当な慎重さと、それから説得力を持たなければならない。その意味で
調査に万全を期して、各方面からその
調査についての効果を争われざる
ような
程度にまで
内容を
整備しなければならない。そのためには、われわれただいま考えておりますところでは、やはり渇水期、豊水期、つまり一年を通じて、たとえば淀川なら淀川という川について一年を通じて常駐いたしまして、渇水期、豊水期それぞれの川のあり方、それを一応調べ上げる。また、そこからいろいろとりました資料につきましても、たとえば汚水そのものについてみれば、一定した分析
方法を
適用して化学的または物理的
内容の、何といいますか、ずさんにならない
ような
方法をとらなければいけないという意味で
調査というのが非常に力を要しますので、これに対して
関係方面の協力を求める
趣旨のものでございます。
第十一条に水質
審議会を置くことになっております。経済企画庁に水質
審議会を置く。これはすでに本年度
予算において五十二万円の
予算が計上されておるわけであります。従って、この
法律ができましたならば、二月以降においてさっそく実は開きたい、か
ように存じておる次第でございます。これはただいま申し上げました
ような指定水域の指定または水質基準の設定その他基本的事項に関して
審議いたしますということになっております。
審議会の組織は、
委員二十人以内で組織する。この二十人は大体
関係行政機関の
職員と
学識経験者から任命することになっておりますが、
関係行政庁が実はやっと数えて実は十ございます。総理府内から申しますと、科学技術庁、経済企画庁、自治庁、それから各省
関係では大蔵、農林、通産、厚生、建設、運輸、法務、こういった
関係がございますので、この方面のまず次官クラスの人、また地方公共団体の
関係がありますので、地方公共団体の、つまり
都道府県知事のうちから代表者の方々を
学識経験者としてお迎えする、それ以外に
関係産業として考えますのは、農業、水産業、それにマイニングの鉱業、それからインダストリーの工業、それから醸造業、それから化学工業といったふうな、非常に広範囲な
対象を持ちますので、二十名ではいささか難点を感じたのでございますが、十五条にさらに
専門委員を三十名置くことにいたしまして、これでその方面の、特に専門的な
部分につきましては、こういう方で調整する、か
ように存ずるわけでございます。水質
審議会がもし働く
ようになりますれば、これまで力
関係または大衆陳情等によって、問題が争われ、または黙殺されるというふうな今までのあり方に対しましては、これが
一つのそういう問題に対する相談の場所ということになって、問題が円滑に解決される糸口になるのではないか、か
ように存ずる次第でございます。
当
審議会はさらに資料の提出等を
関係行政機関の長なり、地方公共団体の長にお願いするということになっております。それで
審議会はさし
あたりは
経済企画庁調整局がこれを処理いたすということになっておりますが、これにつきましては、衆議院におきましても、また
関係各省におきましても、既存の部局の一部において処理するということでは、これだけの大問題はやはり処理困難ではないか、これについては何らかの独立
機構をこの際考えてほしいという要望が強く出ておる
ように私伺
つております。
さらに第四章で和解の仲介を入れたわけです。これがこれまでの水質汚濁
関係の……このたびの提出
法案に新しく入つた章でございます。これは
内容といたしましては、工場、事業場から公共用水域に排出された水または水の処理によって生じた物で、工場、事業場から公共用水域に廃棄されたものによって生じた
被害、これは非常にむずかしい書き方でございますが、水の
被害はまず当然、それから工場、事業場から排出される水、水を出すときに、上澄みだけ流して、遺物は丘の上にほう
つておく、そうして今度は適当にたまつたところで公共用水域にほうり込むというやつを、実はこれは特に鉱山
関係等においてあるということでございますが、それを一応こういうふうに規定しております。ただし、カツコの中で、「(鉱害及び水洗炭業の施業による
被害を除く。)」ということで、それぞれ別個の特別法を持っておりますものについては、ここにはあが
つてこない。鉱害につきましては、鉱業法の和解、水洗炭業については、その方の和解ということになるわけであります。それから「損害賠償に関する紛争その他の民事上の紛争が生じたときは、」、これは単に損害賠償という金額的紛争だけでなく、たとえば施設紛争、この際排水路を別に作れという
ような関連紛争も一応これで考えていいんではないかということにしてあります。
都道府県知事は、仲介員候補者というものを毎年十五人以内委嘱しておきまして、名簿を作
つて、そうしてそのうちから五名以内を指定して、特定の案件についての仲介の労をと
つてもらう、こういうことになりますが、これはあくまでこの仲介員候補者は「
一般公益を代表する考及び工業、農業、水産業その他の産業又は公衆衛生に関し
学識経験を有する者」ということで、利害
関係者という
趣旨はこの際入っておらぬわけでございます。これも十五名といいますと、非常に実は
関係産業が多ございますので、若干これはなお多いことが望ましいでのはないかという
意見もあったわけでございますが、特定の仲介
対象については、やはり
関係産業というものが相当制約されるだろう、従いまして、仲介員五名以内を指定することになっておりますので、これでいきますならば、当然
一般公益代表者が一名、それ以外に、それぞれの
関係業者が、
学識経験者が四名ということに相なるわけであります。ですから
関係行政機関は、二十三条は、要するに仲介員から請求があったときは、たとえば足尾銅山の
被害について、仲介員から足尾銅山の資料をよこせ、また足尾銅山の鉱害についての県の資料はないか、通産省はどうかという場合に、
都道府県知事を通じて、そういった協力を求めるということになっているわけであります。
附則におきましては、公布の日から三カ月以内に施行いたしたい。ただいまのところ、
法案の御
審議が、これを前の三十
国会に
提案いたしましたときの考え方からいたしますれば、若干おくれて参っているわけで、はなはだ残念でございますが、
法案ができましたならば、なるべくすみやかに
政令で定めまして施行いたしたいと存じている次第であります。
ただ四章の規定は、特に
都道府県に対する和解の仲介
関係においては、これに対する
都道府県の
予算の編成その他ございますので、来年度当初から施行いたすことになると思います。
経済企画庁設置法の一部を修正いたします点は、先ほど十七条の
説明で申し上げました
通りとりあえず調整局でこれを取り扱うという
趣旨において条文修正をいたしまして、水質
審議会の規定は、肥料
審議会の次に一項目を起したわけであります。