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1958-12-19 第31回国会 参議院 内閣委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年十二月十九日(金曜日)    午後一時二十七分開会   —————————————   委員異動 十二月十六日委員大谷贇雄君西田信 一君、上林忠次君、山木利壽君、北村 暢君及び大河原一次辞任につき、そ の補欠として苫米地義三君、佐藤清一 郎君、木村篤太郎君、松本治一郎君及 び吉田法晴君を議長において指名し た。 十二月十七日議長において柴野和喜夫 君を委員に指名した。 十二月十八日委員堀木鎌三君辞任につ き、その補欠として西田隆男君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     永岡 光治君    理事            松岡 平市君            千葉  信君            竹下 豐次君    委員            木村篤太郎君            佐藤清一郎君            松村 秀逸君            伊藤 顕道君            矢嶋 三義君            横川 正市君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    国 務 大 臣 左藤 義詮君   政府委員    内閣官房長官  赤城 宗徳君    法制局長官   林  修三君    宮内庁次長   瓜生 順良君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 加藤 陽三君    防衛庁教育局長    心得      小幡 久男君    防衛庁装備局長 小山 雄二君    公安調査庁次長 関   之君    外務省アメリカ    局長      森  治樹君    外務省条約局長 高橋 通敏君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○国の防衛に関する調査の件  (国の防衛に関する件) ○国家行政組織に関する調査の件  (国家行政組織に関する件)   —————————————
  2. 永岡光治

    委員長永岡光治君) これより内閣委員会を開会いたします。  委員異動がございました。去る十六日西田信一君、上林忠次君、大谷贇雄君北村暢君、大河原一次君及び山木利瀞君が辞任され、その後任として、同日佐藤清一郎君、木村篤太郎君、苫米地義三君、松本治一郎君及び吉田法晴君が、また翌十七日柴野和喜夫君が委員に選任されました。  以上御報告いたします。   —————————————
  3. 永岡光治

    委員長永岡光治君) それではこれより議事に入ります。国の防衛に関する調査を中心として調査を進めます。岸総理初め藤山外務大臣左藤防衛庁長官及び赤城官房長官出席されております。  それでは御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  4. 千葉信

    千葉信君 ただいま議題になっておりまする国の防衛に関する問題について、本日は首相にお尋ねをしたいのでありますが、その前提として現在進行中の安全保障条約に関する改定交渉がどうなっているかということが、この問題を審議する際に、非常に前提条件として大事な問題です。せっかくの首相も御出席ですが、安保条約改定の問題に関する現在の進行の状態、同時に外相としてのこの問題についての、いろんな個々の問題を持っておりますが、その個々問題等についての腹案や、お見通しを、この際まず承わりたいと思います。
  5. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 安保条約の問題につきましては、かねて藤山外務大ほが向うへ参りまして、根本考え方についてダレス国務長官と話をして、あとは東京において具体的にマッカーサー大使交渉するという、基本的な話し合いをいたしまして、その後外務大臣東京におきまして数回マッカーサー大使とも会っておりますし、なお、事務的にいろいろ検討すべきことにつきましても、外務省及び大使館の事務当局との間にいろいろな検討を続けてきております。なお、詳しい経過につきましては、外務大臣からお答えすることにいたします。
  6. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま総理が述べられましたように、東京におきます交渉は、十月四日第一回をやりました。これは顔合せ程度でありまして、別段特に問題を論じなかったわけであります。  で、第二回十月の十六日でありましたか、マッカーサー大使と私と会談をしまして、そのときはこれから論議すべき議題ポイントにつきまして、両方の意見話し合いました。そうして五、六の問題点を選んでこれを順次一つこの問題から取り上げていこう、こういうことになったのであります。その後いろいろの事情からいたしまして、問題点についていろいろ御協議をする時間等もないような事情も起っておりましたので、若干その交渉がスロー・ダウンして参ったことは事実でございます。  そこで、先般十二月の十六日に第三回の会談をいたしまして、そうしてその席上では、大体条約文の構造についてまず話し合いをいたし、なお国連憲章等に関連する点、先般交換公文等でもやりましたので、そういうものを土台にして、それらのものを一つ条項に入れるという程度のことをきめまして、次回は前文等一つ協議していこうというような話し合いをいたして、大体年末にもう一回話し合いをするというような順序で、ただいま進められて参っております。もちろん、これからいよいよ実際的な、実質的な交渉に入って参りますので、問題点等につきましては、いろいろ各方面の御意見も聞き、また、内容等意見決定されました上で、それらの問題について交渉に入っていく、こういう段取りをいたしておるわけであります。  最初に予定いたしましたときは、私の心がまえとしては、一月再開国会前後に調印できるように持っていきたいというふうな考えでありましたけれども、今申し上げましたようないろいろの事情のために、若干交渉が遅延しておることは事実でありますから、若干私としてはできるだけ初めの心がまえ通り努力はして参るつもりではおりますけれども、延びざるを得ないのじゃないかという感じはいたしております。
  7. 千葉信

    千葉信君 大体交渉の形はわかりました。私は何といっても一番重要な問題はその内容だと思う。特に今回の安保改定の問題に関する交渉については、首相の談話から見ましても、日本側から申し入れてこの交渉が行われたというのが真相のようでございます。そういう意味から言いますと、ただいまの外相の御答弁では、その実際上の取りきめの内容等については、これから各方面意見を聞いて進めていくという御答弁がございましたが、私は日本側から交渉を持ち出しておいて、今もって日本側に具体的なその腹案がないということはないと思います。ただ、実際にも前後三回にわたる交渉の席上では、その内容にも新聞報道では触れたということになっております。従ってまず第一番に特に問題になりますことは、その防衛地域ないしはまた新しい安全保障条約対象となる範囲適用範囲の問題、こういう点がまず一番問題になると思います。そこでその点については、臨時国会における首相外相答弁と、今日においては若干その防衛範囲といいますか、適用範囲等においても変化が生じているという印象が国民の中にはあると思う。その問題、一体、現在外相としてはどういう構想で会談に臨まれておられるか。それをまずお伺いしたい。
  8. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この安保条約改定に当りまして、いろいろな問題点があると思いますが、今御指摘のありました防衛地域の問題というような問題は、一番大きなこれは問題だと思います。従いまして、これらの問題については、やはりよく世論を聞くことも必要だとわれわれも考えておるのでありまして、従って総理にいたされましても、私にいたしましても、特別に意見を申し述べておったことはないと思うのでありまして、それでありますから、初めから何かいろいろ変化があったというふうなことはございません。むろん議会等でいろいろ仮定の上に立ちました御質問に対して、法律的あるいはその他の面からお答えをした点はありますけれども、そういう意味において、問題の重要な点につきましては、いろいろの角度から検討した上で最終的には政府方針がきまると思います。ことに沖縄問題等につきましては、沖縄住民の感情の問題その他もいろいろございます。従って、世論もいろいろに議論がされておるのでありまして、重要な問題だけに意見がいろいろ出ていることも、また私当然だと思っております。しかしやがておのずから、それらの世論を聞きながら、政府最終的決定をいたして交渉に臨むということになって参ろうと思っております。
  9. 千葉信

    千葉信君 もう会談もこれで前後三回行われたわけで、最初計画通りには進んでいないようですけれども、そういう外交交渉が行われていく過程に、最初から日本政府の方で持ち出した話で、しかも、そういう格好外交交渉の進んでいる今日の段階で、まだその防衛範囲問題等について、明確な腹がまえも決定もなしに交渉されるとは、私ども考えられない。そこでまあ、外相の方から沖縄という発言がありましたから、私はそれに直ちに質問を結びつけて参りたいと思うのですけれども、まあ、西太平洋の問題の場合につきましては、これまでの答弁からいいましても、政府としてはこれは考えておられないようであります。沖縄の問題については、何か政府に一部後退の形勢は見られますけれども、しかし、政府としてははっきり沖縄小笠原島は防衛範囲に含んで交渉はしないというところまではまだ踏み切っていないようです。与党の内部にも、さまざまな意見があるようだし、同時に、閣内にもその問題については賛否両論があるという新聞報道です。そこで、その交渉の衝に当たられる外相に、沖縄小笠原島は一体どうするつもりで交渉に臨んでおられるのか。今までも三回も交渉に臨んでおられて、これからまた近い機会にその交渉が持たれるわけですから、今もってその問題について、外相が何らの腹がまえなしに臨まれるとは考えられません。従って外相としては一体沖縄小笠原島の問題をどう考え、どういう腹づもりで交渉に臨まれるつもりか、それをはっきりお答え願いたい。
  10. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほど申し上げましたように、この問題については、むろん重大な問題でありますから、いろいろ意見があるのは当然であります。従いまして意見は十分聞きました上でやりませんければ、当然外務大臣独走というようなことに相なってもいかぬわけであります。そういう意味においては、十分論議を尽した上で、最終的に議決をとって、その上に立って外務大臣としては交渉をすべきだと思います。
  11. 千葉信

    千葉信君 次に、私は岸首相にお尋ねいたしますが、どうも外相答弁を聞いているとまことに心もとない感銘を受けました。こういう重大な問題について折衝に当る当事者が、まだ一番問題の重要なポイントだと思われるその地域の問題についても、腹がまえすらはっきりしていないという格好ですから、私はこの外交交渉は、かなり日本としてはまあ不利な格好に、現在の段階はなっていると思う。そこでしいて今沖縄の問題、小笠原島の問題をどうこうというような格好で御質問申し上げても、おそらく首相の方からも、大体同じような御答弁になると思われまするので、私はこの問題については先に進んでいきたいと思います。  沖縄が含まれる、ないしはまた小笠原島が含まれるということになりますと、これは相当大きな問題がてんめんしてくる、つきまとってくる。たとえば現在もすでに沖縄に持ち込まれている核兵器問題等考えますと、容易ならない事態になるし、同時にまた潜在主権はあるとは言っても、果して首相が衆議院で答弁されたように、もし沖縄を含むということになれば、そこに日本軍事行動権が若干確立されるわけだ。そうなれば何かその潜在主権のある沖縄に対して、日本の権限が一部返ってくるような御答弁もされたようであります。その問題はとにかくとして、非常に海外派兵という重要な問題が論議されなければならぬ格好になってくると思います。これはアメリカと台湾、アメリカと韓国との条約関係からいいましても、当然海外派兵という事態が起ってくるという想定がはっきりするわけです。そういう点から言いますと、沖縄が入るか入らぬかという問題は、非常に重要な問題ですが、私は先に問題を進めていくことにして、かりに沖縄がその区域に含まれないとした場合でも、私はここではっきり首相の御答弁を得ておきたいことは、十月一日の本会議の席上で、海外派兵の問題と核兵器国内持ち込みの問題について質問申し上げて、首相からその二つの問題については、現在の条約上不明確な点があって、いろいろな疑惑や誤解を与えている。従って今度の条約改定もしくは新条約の締結に当っては、条約上はっきりその問題を処理するという御答弁首相からいただいております。沖縄の問題を抜いて考えた場合でも、この問題はここで明らかにしなければならぬと思うのです。その点について、首相はどういう方法なりもしくはどういう交渉を通じて、その問題を確立されるおつもりか、それを承わりたい。
  12. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今のこの条約で、私は常に政府方針として核兵器持ち込みはこれを拒否する、認めないということを申しておりまして、これに対して、しかし首相はそう言うけれども一体それは条約上からいうと、米軍装備というものは、米軍米国側の一方的な意思できめられているということになっておるのだから、首相がいかにそういうことを言明しても、条約上それは意味をなさないじゃないかということが従来言われております。なるほど現在の条約におきましては、日本に駐留する米軍装備配置等につきましては、これは全然米軍の一方的の意思できめられるということになっております。この点を今度の条約においてはそういう至要なことについては、事前日本側協議をして、日本同意をしなければ持ち込みができないような根拠を作りたい、かように思っております。  それから海外派兵の問題につきましても、海外派兵はしないということを明確にいたしております。ところが、この条約ができるというと、条約が優先して、条約上できるところの義務によって海外派兵ということが、たとえ憲法でそれが禁止されておっても、そういうものができるのではないかという御懸念があるようであります。しかしながら、この今度の改定日米交渉前提として、日本憲法の持っておる特質、それから日本憲法制約というものを前提としてすべての交渉をする。従って海外派兵はしないという前提に立って、いろいろな条約上の義務ももちろんございます。そういう意味において、ある意味においては双務的なものであるということは言えると思いますが、しかしその双務ということは、アメリカ日本に負うところの義務内容と全然同一の義務内容を、アメリカ側に与えるものではなくして、従って海外派兵はしない、憲法のこの制約前提としておるということを、その範囲内だということを明確に条約に明らかにするようにしたいと思っております。
  13. 千葉信

    千葉信君 そうしますと、後段の方の海外派兵の問題ですが、これについては、ただいまの首相答弁は、条約上に明確に海外派兵はしないという点を含むということに確認していいかどうか、その点をまず……
  14. 岸信介

    国務大臣岸信介君) そういうことで条約を作りたいと思っております。
  15. 千葉信

    千葉信君 そこでもう一つ核兵器持ち込みの問題ですが、首相は今、たとえば事前協議等によってという御答弁でございましたが、その事前協議が私は危険だと思う。何か首相はただいまの御答弁では、その事前協議において拒否することができるようにはっきりとそれをされるかどうかということについては、あいまいな答弁をされましたが、事前協議をした場合に、その事前協議が成り立たない場合には、日本は拒否することができるという条項を、はっきりと今回の条約においておきめになるおつもりか。それとも事前協議をするということだけでは、今日の日米安保委員会共同声明によりますと、事前協議という項がうたわれております。そうして実行可能な限り協議をする、こうなっております。実際の事態が発生した場合に、そういう事前協議を経てそれからゆうちょうにその問題を処理できるということは、ほとんど私はないと思います。しかも、その共同声明の中にもはっきり言われておるように、実行可能な限り事前協議をする、こういうことで、その可能性がなかった、するひまがなかったということになりますと、これは協議をしなくともいいということになる。この実行可能な限りという言葉は、とんでもない言葉である。かりにそういう言葉を除いても、協議をするというだけでは私はいかぬ。協議をしてまとまらなければ、日本がはっきりそれに対して拒否権を持つということが明確でなければ、私はその事前協議なんというものは、実際の場合には何にも役に立たぬと思う。その点については、首相はどう対処されますか。
  16. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 現在のこの安保委員会におけるいろいろな協議の問題につきましては、昨年、私がアイゼンハワー大統領と会ったときの状況のもとに作られたものであります。その後、一年の経過も見ており、また、今回安保条約改定ということ、日本自主性を認め、対等な立場において、できるだけこの条約改定していこう、その立場に立って改定しょうという考え方根本をなしておるわけであります。私はどういう表現をいたしますかは、なお検討を要する点があると思いますが、少くとも事前協議をするということは、協議が整わなかったら勝手にできるんだという意味では絶対にないと思います。それをどういうふうに表現して、どういうふうに形をつけるかはこれは別として、事前協議をしようという私の意思及びアメリカ側がこれをそういう考えのもとに今交渉しておりますことは、協議が整わないときにおいて、一方的に持ち込むことができるということを承認する意味ではございません。
  17. 千葉信

    千葉信君 その点は首相ははっきり断言されますけれども、私はその点は現行条約でも、はっきり首相言明通りにはならぬということを言えると田う。なぜかというと、首相は現在の条約なり、現在の行政協定の建前からいっても、海外派兵等の問題については今のままではいかぬ、今のままではいかぬから明確にしなけりゃならぬということを言われている。今のままではいかぬということは、たとえば海外派兵等の問題、共同防衛等の問題について、行政協定の二十四条で協議をすることになっている。日米両国協議をすることになっている。ところが、その二十四条で協議をするその対象は、安全保障条約第一条の目的を達成するために協議をする。従って安全保障条約第一条の方は、単に日本地域防衛ということだけではなくて、日本に駐留しているアメリカ駐留軍目的を響き、その目的の中に極東地域の安全と平和を守るという条項があって、従ってそういう第一条と行政協定の第二十四条の関係から、私は海外派兵という問題等についても、国民は非常に大きな不安を持っている。どう、首相がいかなる折衝を約束されようとも、今の首相事前協議という問題も、首相言明だけでは、国民は安心できないからこそ、この問題が重大な問題としてここで論議されなければならぬ。従って、私はその事前協議だけでは全然安心はできないし、現在の条約と同じ格好になってしまう。首相はその点、どう考えますか。重ねて御答弁をお願いいたします。
  18. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 従来いろいろと論議がありますことを、私はかように了解しております。私自身が、この核兵器持ち込み、これを認めません、拒否いたしますということを、私が国会でしばしば言明をしておるけれども、これに対してはいかに総理がそういう言明をしても、条約上拒否できるところの何らの根拠がないじゃないか。そういうことではいかに総理がそういうことを言明しても、それに対して国民は不安を持つじゃないかという御議論を、従来私は承わっております。その点は私が、私は事実上アメリカ日本との関係からいって、日本政府が責任をもって国会においてそういうことを言明していることに対して、全然事前に、何ら日本意思を聞くこともなくして持ち込むことは絶対にないと信じておりますけれども、しかしながら、それが条約の文面に表われておらないというところに、国民が持つ不安が従来あると思うのです。従って、今度の改正におきましては、そういう問題や、あるいは駐留軍使用問題等については、日本の方に事前協議する。そうして日本同意を得て初めてやるということを明確にするような根拠を作っておきたいというのが、私の考えでございます。
  19. 千葉信

    千葉信君 時間が参りましたから、最後に今首相核兵器の問題としてお答えになりましたが、核兵器の問題は、さっき私は首相答弁で了解しております。条約上はっきり明確にするということについて……。そうじゃなくて、海外派兵の問題について、その問題についても、首机は十月一日の本会議の席上で、海外派兵の問題についても、私どもはそういうことをやはり条約において明確にしておくことが、国民をして不安を与えないと、はっきり言われた。それを今日の段階になりましてから、首相はその問題について明確さを欠く事前協議等によるという態度は、私は了承できない。
  20. 岸信介

    国務大臣岸信介君) それは問題が、私の答弁が少し不明確だからで、海外派兵の問題は、日本憲法の規定の上からできないことだと思う。従って、今度の日米安保条約改定というものが、日本憲法制約内においてすべて論議され、交渉され、締結されるということを前提としてアメリカ側交渉しております。そうしてそのことは、なお条約にそのことを明瞭ならしめて、海外派兵ということは、これをできた安保条約においてそういう義務は負わないのだということを明瞭にする。事前協議云々の問題は、向う側の装備や、あるいは使用問題等重要な問題について、従来一方的にやっておったことを事前協議する、アメリカ側が一方的にやっておった行動についてこれを事前協議する。それから海外派兵の問題は、今憲法上の制約範囲内においてすべての義務があるということを条約に明瞭にして、憲法で許されないところの海外派兵までやることは、絶対に条約上において義務を負わないということも明瞭にするつもりです。
  21. 千葉信

    千葉信君 ただいまの答弁では、全然了解できませんし、今の憲法が現存するもとにおいて、海外派兵等危険性のある条約が現に結ばれてきているのです。しかし、私は時間もありませんので、この問題については次回に譲ります。
  22. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 総理に伺いますが、時間がありませんので、お考えがわかりさえすればいいのですから、簡潔に願います。  第一番に伺いたい点は、政治をやるに当っては、世界情勢分析判断を、適正に把握するということが、一番大切なことだと思います。先般の国会における混乱、その後の事態というものも、結局は総理国内政治情勢を誤まりつかんだ点にああいう事態があった。ところが国の防衛とか、外交等に当っては、その判断を誤まると、国家民族の運命にかかわるわけでありますから、事はきわめて重大なことだと思います。そういう立場から伺いたいのですが、それはアメリカ戦略体制の最近の動向が変って参りました。ICBM、最近アトラスが完成いたしまして、一万三千キロ飛んだと言っておりますが、アメリカICBM、それから戦略空軍、それからノーテラス原子力潜水艦、これらを主軸として国内外の戦略体制を立てようといたしております。こういう情勢下に、岸内閣としては、従来とって参りました防衛計画を再検討することなく、従来の方針をそのまま続けていかれるつもりであるかどうかお答え願います。
  23. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お話しのように、もちろん世界国際情勢や、あるいは軍備の変遷というようなものに対しましては、十分に検討して、これに対処していかなければならぬことは言うを待ちません。しかし、私どもは国防の根本考え方については、一応私どもが国防会議にきめておるところの基本方針に従って日本防衛考えていくのでありまして、これを今直ちに変更するという状態にはまだ来ておるとは、私ども考えておりません。従って今いろいろお話しありますけれども日本防衛計画なり、国防計画というものを根本的に変えるというような考えは持っておりません。
  24. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 しからば伺いますがアメリカはこの戦略転換から、具体的に極東においては台湾、韓国の兵力を減少する、そうしてアメリカの上層部は、極東防衛に対する日本立場を重く見て参りました。このことは防衛庁あるいは外務省に対して、アメリカから正式に、具体的に働きかけが現われつつあるはずであります。従ってアメリカの軍部並びに上層部としては、日本に対して極東における防衛を担当してもらいたいという願望を持っているだけに、アメリカの上院においては西太平洋地域安保条約改定においては主張いたしております、依然として変えておりません。少くとも沖縄小笠原地域まで広げたい、こういう強い要望をアメリカは持っております。現在においてもこの態度は変っていない、かようにあなたは把握されておられるかどうか、判断を承わります。
  25. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私ども日本防衛はあくまで日本憲法及び自衛隊法等に明瞭にされておる、この使命を果すということが、私は日本防衛の本義であると思います。アメリカ世界戦略の上において、極東に対してどういうことを考えておろうとも、私は日本防衛については、日本憲法及び日本の自衛隊法、日本政府がきめておるところの国防計画の基本に基いてこれをやっていくというのが、私の変らない考え方でありまして、今いろいろアメリカ戦略体制や何かが変ることによって、日本が当然その戦略体制の一部の中へ巻き込まれていくというふうな議論が世の中に行われておりますけれども、私どもそういうようには絶対に考えておりません。
  26. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 従ってそれでは伺いますが、在日米軍行動範囲は、現行とは変りませんね。
  27. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今度の条約におきまして、私ども先ほど千葉君の質問お答え申し上げましたように、米軍使用についても、従来米軍の一方的の意思ですべてきめられておるようでありますが、これはやはり重要な事項として、協議事項としたい、かように考えております。
  28. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私はそんなことを聞いているのじゃないです。明確なお答えを願います。現行では安保条約の一条で、日本の国内及びその付近となっております。日本の国内及びその付近、ところが、アメリカの上院では、西太平洋に広げるべきだ、そして日本の極東における防衛責任をはっきりすべきだということを言っている。その西太平洋に広げることができない場合においても、少くとも小笠原沖縄に拡大すべきだという強い意見アメリカは持っているのですよ。だから私はこういう情勢下に、あなたは交渉するに当って、在日米軍行動範囲を広げるのか広げないのか。これは国民の重大関心です、それを言ってもらいたい。
  29. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 防衛範囲を広げるか広げないかという御質問ですが、先ほど私お答えを申し上げているように、日本が今度の安保条約改定によって、いかなる場合においても海外派兵義務日本自身が負うような改正はする意思はないということを、はっきり申し上げております。従ってそういう意味において今御質問の、地域がどういうふうになるかという問題も、先ほど申しておるように、特に沖縄小笠原につきましては、重要問題として検討いたしておりますけれども、いかなる場合でも、たとえこれを入れる場合におきましても、自衛隊の行動範囲が広くなる性質のものではないと思います。
  30. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 的確にお答え願いたいのですが、私は海外派兵云々なんか聞いていないのですよ。在日米軍行動範囲は、今より広くなるのか広くならないのか、現状維持でいくのか、その点。それと自衛隊の行動する範囲は、今度の改定によって変るのか変らないのか、どういう方針でいくのか、それを聞いている。外務大臣お答え願います。
  31. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいまお話しになりました、私はアメリカが必らずしも西太平洋というようなものをこの条約に含めるというふうには考えておりません。またわれわれとしても、できるだけそういう問題は、狭い範囲内において交渉をすべきだ、こう考えております。
  32. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 では私は両者の答弁を、今度の改定に当っては、在日米軍と自衛隊の行動する範囲は変らない。従って岸内閣防衛計画の推進は従来通り方針で進むと、かように両者の答弁を了承いたします。  次に、外務大臣に伺いますが、防衛分担金の交渉が行われておりますが、この決定に当って、一般方式を適用する際に、一萬田大蔵大臣のときに三十億円特別減額されたわけですが、百八十六億円という数字を基準にして一般方式を適用する交渉をしているのか、それとも基準金額として二百十六億という数字を使っているのか、お答え願います。私は当然百八十六という数字を基準として一般方式を適用すべきものであると、かように考えます。議論の余地はないと思いますが、どういう基準の数字を持って交渉しているか、結果だけをお答え願います。
  33. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 来年度の防衛分担金の問題につきましては、まだ外交交渉をいたしておりません。大蔵大臣と今後協議をして、大蔵大臣がその必要がありますれば出すと思います。
  34. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 防衛庁費並びに防衛分担金は予算を編成するに当っては、大きな要素となるわけです。毎年繰返している。岸内閣としては、来年度の予算案を二十三日の閣議で決定されるということですが、そんなことで予算が組めるのですか。総理お答え願います。
  35. 岸信介

    国務大臣岸信介君) いろいろ予算の最後の数字をきめる上において、防衛分担金の額ももちろん大事なものであります。その他いろいろな問題があります。しかし、今予算編成に関する各種の折衝中でございまして、必ずしも二十三日にすべてのものがきまるとは、実は私は考えておりません。
  36. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 総理に伺いますが、防衛分担金の交渉に当っては、百八十六という数字と二百十六という数字のいずれを基準として外務大臣をして外交折衝をさせるつもりでありますが。
  37. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今外務大臣お答え申し上げましたように、このなには財務当局との予算編成に関係のある問題でありますから、まだ外交交渉にいっていませんし、十分検討した上で交渉に移りたいと思います。
  38. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 きわめて無責任です。不満ですよ。そんなものは財務当局云云じゃないですよ。どうしたのですか。何をしているのですか。はっきり内閣としての方針を打ち出して、まっ先に交渉して、もうまとまっていなくちゃならない。時間がないからこの問題はここで切ります。  次に伺いますが、先ほどのお二方の答弁から、私は次のごとく推察するのですが、相違ないかどうか。それは安保条約改定が行われる、その方向は、日米間の軍事提携は今よりも強化されることはない、かように了承してよろしいかどうか。日米間の軍事提携は今よりは強化されない、こういうふうに国民は安心をしておってよろしいかどうか。あなた方の外交交渉の基本方針がわからないので、私を含めて国民は非常に不安な気持でおるわけです。だからその点明確にお示しを願いたい。
  39. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 軍事的協力の内容範囲等が、今より強化されるということは私はないと思います。ただ、従来不明確であった点、あるいは一方的であった点、さらに、これの施行上において、いろいろな疑惑、疑問を生じておるような点を明確にすることが必要である。また、それをすることは、同時にアメリカ軍と日本とが、対等な立場においてすべて協力していくというこの根本原則を樹立する意味でありまして、軍事的だけに限って考えるならば、私は今よりも以上に日本義務がふえたり、あるいは日本としてやらなければならぬことが加重されるというようなことは、絶対にないと思います。
  40. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ただいまの答弁は、たっとき答弁として私は確と承わっておきます。  次に、外務大臣に伺いますが、外務大臣が昨年アメリカを渡米されるときは、沖縄小笠原というような防衛地域の問題が頭になかったのですよね。片務性を双務性にすると、事前協議と、この二つを胸に含めて岸さんと相談されて行かれたと私は推察しておる。ところが、お帰りになってから、前国会あたりで答弁されたときには、今の安保条約とかなり本質的に変貌したものを持っておるように国会に臨まれました。その後、だんだん変って十一月二十三日、京都におけるあなたの記者会見の様子を見ますと、臨時国会の当時とがらっと変って、今度の改定の方向は、現行安保条約の不合理、不平等な点を是正するにとどまる、こういうふうに述べられておられる。ずいぶん変ったと思うのですが、さように了承してよろしいかどうかお答え願います。
  41. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の交渉を始めましたときは、現行の安保条約の不備な点、または日本国民感情に合わぬ点、あるいは由主性を欠いておる点というものを問題点としてあげて、そうして改定をしようという交渉をいたしたのでありまして、初めから私としては、別段変ったものを作ろうという考えよりも、現行安保条約を改善していくという方向にあったので、総理も全く同じ考えだと私は思っております。
  42. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それはそれで承わっておきます。  もう一つその点で承わりたい点は、総理に承わりますが、核兵器は持ち込まぬ、しかし、沖縄核兵器を持ってくるのはやむを得ないと、こう言われますね。沖縄には施政権がない、施政権がないから、核兵器を持ち込まれてもいたし方がないという考え方だと思います。ところがまた、沖縄日本の自衛隊を出しても、これは海外派兵にならぬと主張されますが、矛盾しませんか。沖縄に施政権がないから、だから核兵器を持ち込まれても仕方がない、他面自衛隊の出動は海外派兵になると、こう認定するならいいのだが、沖縄に自衛隊を出動させてもこれは海外派兵にならぬ、また、米軍核兵器を持ち込んでも、施政権がないから差しつかえないし、われわれの核兵器持ち込み禁止の主張と反しないと申されることは、非常に矛盾していると考えます。だから沖縄については、核兵器を持ち込ませないということがはっきりすれば、それならば自衛隊を沖縄に派遣することは海外派兵にならぬということは、一応筋が通るかと思いますが、非常に私は矛盾しておると思いますが、どうお考えになりますか。
  43. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は沖縄が今度の条約がどうきまろうとも、いわゆる沖縄のステータスは私は変るものだとは思っておりません。従って施政権の問題と安保条約の問題は、これは別でありますが、日本は現在あそこにおいて全然施政権を持っておらない。ただ持っておるものは、潜在的主権だという意味におきまして、沖縄におけるところの一切のアメリカ行動というものは、これはアメリカの、日本がいかんとするところでも、施政権がないのですからというのが、私ども根本考えであります。自衛隊をあそこにやるかやらないかという問題につきまして、私はあそこへやる意思を持っておりません。ただ、観念的に言うと、潜在主権、これは従来の安保条約の現在の状態においても、従来しばしば質問されたことでありますが、一体沖縄潜在主権があると言っているけれども沖縄に対して日本憲法は行われておるのか、日本の自衛権というものはあそこを含むのかどうかという現行のもとにおきましても、いろいろ議論が従来あります。抽象論としては、私はやはりここに潜在主権を持っておるという意味においては、抽象的な自衛権というものは私はあるのだろうと思うのです。そういう意味においてですよ、この自衛隊の問題も観念としては議論されるわけでありますけれども、実際問題としては、アメリカが一切の施政権を持っており、アメリカが全責任を持ってあそこを防衛しているということで、われわれの方から自衛権を発動するということは、私は現実の問題としてはない、かように考えております。
  44. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 次に、戦闘機械の問題について伺います。この問題は、ずいぶん論じられたことで、総理にいろいろ承わりたいことがありますが、時間がありませんから簡単に伺います。それは、グラマンに急にきまった、どうしてあんなに急いできめたかというのが、納得できない点があります。果せるかな、その後衆議院の決算委員会でああいう事態が起りまして、そうして山本党員の離党というような事件も起って参りました。さらには、党六役会議赤城官房長官を中心に、防衛庁を除く特殊の委員会を作って十分検討しようというような段階になって参ったわけです。確かに資料不十分で、四月十二日に内定されております。そうして四月十八日に両党首会談があって解散がきまったわけですが、選挙と何か関係があるというように疑る国民が非常に多いのです。そうして戦闘機の問題については、売り込みの利権争いと自民党内の派閥争いが、こうした事態を起したということは、まあ国民から言われているわけでありますが、一体これを今度参議院選挙を前にして早急にきめるらしいという情報が、もっぱら流れている。児玉誉士夫氏のごときは、川島幹事長並びに岸総理大臣を非常に非難しているようです。あなたは最近児玉誉士夫氏に会ったことがあるかどうかということと、私は来年の参議院選挙までは、少くとも主力戦闘機種の決定はしない方がよろしいと思う。そうしていわゆる通称赤城委員会を中心に十分検討さるべきである。本委員会において、赤城官房長官は、先般、慎重にやるために、来年度の予算編成には間に合わない、予算編成には組み込まないつもりであるということを言明されておりますが、赤城官房長官答弁総理考えは、同様であると了承してよろしいか、お答え願います。
  45. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 児玉誉士夫君に私は最近において会ったことはございません。同君とは御承知の通り、巣鴨の拘置所にいた関係が、そうして従来ときどき会ったことはありますが、最近において会っているような事実はございません。それから戦闘機種の決定の問題につきましては、四月にきめた、内定したことが、非常に唐突にきめたというようなお話しでありましたけれども、決してそうじゃありませんで、この問題は、重要な問題として、われわれはあらゆる機種を検討をし、なお不明確な点がありますので、四月の決定も一応内定ということにして、さらに具体的な資料なり、あるいは具体的の検討をする、全然見当をつけずにいろいろ調査するということも困難があるからして、一応の内定という形においてさらに検討するが、その際にはグラマンのみならず、その他の機械の問題も、なおこれは目々進歩し、日々具体的な数字が変って参るような点もありますので、そういう点を十分検討した上で最後の決定をするということで進んできておったわけであります。今日もなお同じであります。その後における、アメリカにおける両機種初めその他の新しい機種等も出ておりますので、これらのものも合せて検討をし、さらにこの機種を決定して、アメリカ側がある程度の負担をして、そうして日本において国産するという建前になっておるわけであります。これのアメリカ側の負担が、これは同時に日本側における予算の、日本側の財政上の負担というものの額をきめることにも関連があるわけであります。そういう点もいろいろと慎重に検討した上できめたい、今決して私は参議院の選挙の前にこれをきめるとか、あるいは参議院の選挙の前には絶対にきめないとかいうようなことを申し上げる段階ではないと思います。十分一つ慎重に検討して、国民が納得するような方法においてこれを決定したい、かように考えております。
  46. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 四月十二日当時、十分に慎重にやったと言われますが、決してそうでないのです。その後、専門家を呼んでいろいろ聞いたのですが、今の主力戦闘機というものは、機体だけじゃだめなんです。ファイア・コントロール・システム、FCSというのが非常に重要だということを、源田空将以下みな証言しておる。ところが、四月十二日に決定した当時、機体だけに重点を置いて、FCS、ファイア・コントロール・システムについては、何ら決定しないできめられておる。あまり専門的になると、時間がかかるから申し上げませんが、決して慎重にきめられたものではない。質問を進めますが、この問題は津島防衛庁長官にあり、現在の左藤長官に一切責任がないと思いますが、それを総理はどう考えておられるか。それと、防衛庁長官というのは、ずいぶん重要な仕事を持っているわけですが、防衛庁発足以来八人です。私、調べましたところが、一番任期の長いのが、津昂さんの十一カ月と船田さんの十三カ月、平均六カ月、六カ月でかわっておる。これでは対外関係もあり、なかなか勤まらぬと思う。左藤防衛庁長官最初はよたよたでした。ようやく最近勉強して一人前になったが、今までは防衛庁長官心得であったと私は思うのです。これから本採用するときだと思うのに、最近、左藤防衛庁長官に罷免権を発動するというようなうわさを聞きます。官房長官の十二月一日の記者会見では、大阪府知事に立候補するしないとにかかわらず、更迭することになるであろうということを述べておられますが、防衛庁長官が引き続き長官の職にありたいと希望するならば、当然そうすべきだと思うのです。いかがでございますか。
  47. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん、各国務大臣の任命及びそれの罷免や、あるいは辞任を聞き入れるかどうかということは、私の全責任にあるわけであります。私としては、国務大臣をそう軽々に任命すべきものでもなけりゃ、これをやめるべきものでもないことは、当然言うを待たないと、かように考えるのであります。
  48. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 だから私はあまり脅迫めいたことを、岸総理とか官房長官は言わぬ方がいいと思うのです。左藤防衛庁長官が乱暴長官だというふうに言われたことが新聞に出ておりましたが、十分これは、防衛ということと、国務大臣の栄職という立場から、党利党略の用に供せられないように、十分私は警告を発しておきます。  それから時間があと一分でありますから最後にお伺いいたします。それは総理並びに宮内庁次長に伺うのでありますが、新憲法下初めて皇太子の御成婚式が近く行われることになりました。私は皇室におかれても、公事は明確にさるべきである。そして私生活面については、それなりにそっとして尊重さるべきだと思うのです。しかし、公事に類する面については、総理並びに宮内庁当局において十分配慮すべきである。そのことは、常に皇室は国民とともにあるという、こういう心がけで物事を取り運んでいくべきである。具体的に申し上げますならば、いろいろと旧憲法以来のしきたりがあって、御成婚式をあげるに当って、約十九からの儀式があるやに私ども承わっておるわけです。これらは現代に即応するよう、現代式に簡素化して、形式的な儀式というものは、公事に関する限りは避けるように私は配慮すべきではないか。  さらに最近、当用漢字とか、いろいろ教育上言われておるわけですが、宮中用語はずいぶんとむずかしいものがございます。で、私はこれらの用語について、今の教育を受けた子供が、字を書けるし、聞いてわかるように若干、新憲法下の初の御成婚式でありますから、検討されるのがよいのではないか、かように私は考えているわけですが、めでたい御成婚式を前に、要望を兼ねてお伺いするわけであります。  それと最後に、何といっても、これは自由なる両者の意思の結合によって婚約がなされたわけで、できるだけ早く来年の春ぐらいに御成婚式があげられるように取り運ぶことが適当ではないか、こういうふうに私は考えているのですが、これについては宮内庁当局としては、どういう見通しを持って準備されておるのか、あわせお答えを願います。
  49. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 皇太子殿下の御婚儀のやり方につきまして、現代りやり方に合うように、むだを省いて実質的にやっていくようにというような御意見に対しましては、宮内庁当局じ準備をいたしておりまする私たちといたしましても、そのつもりで今打ち合せをいたしております。従って以前り皇室親族令にそういう式のやり方をずっときめたのがありますけれども、現在はもちろん皇室親族令は効力がなくなっておるわけでありまするが、いついろ式をやる場合には、前のやり方丘まず見るのでありますが、それを見はがら今研究をいたしておりますが、釧路できる点は省略しよう、実質的なものになるようにしようというふうに考んでやっております。従って、まだ決定ではございませんが、たとえばこの式の中で贈劔の儀とか、贈書の儀とか、そういうものはなくてもいいのじゃないかと考えましたり、あるいは結婚の前に入宮の儀というのがございますけれども、これもあるいは特別のものでなくてもいいのじゃないか、そういうふうに考えながら研究いたしております。結局、中心になりますのは、納采の儀が最初、これは普通の結納の取りかわし、それから次は、結婚の儀式であります。それから宮中の宴会、つまり一肌の披露に当るもの、それが中心だと思いますけれども、中心の点をしっかりして、その他の点につきましては、同素化できるものは簡素化しようといふうに考えております。それから用語の点でございますが、用語も、いろいろ儀式のやり方をずっと書く場合におきましても、従来の用語そのままを使わなくて、わかりやすい用語にしようというようなことを、われわれども検討いたしております。  それから結婚式の時期の問題、早い方がいいという御意見、こういう問題につきましても、われわれ準備をいたしておりますものといたしましては、できれば春がいいだろうというつもりで、今、それまでにうまく準備が整うかどうか、いろいろの、特に御服装とか調度の関係、これも質素にという趣旨でいきますけれども、しかし儀式に着られる服装とか、そういうものがうまく間に合うかどうかというようなことを検討いたしておりますが、何とか春に間に合うように、いろいろな、生かしたやり方を考えて、簡単にうまくいくような方法で、春に間に合うようにできないものかということを、事務的にやっておりまするが、まだその日取りにつきましては、きまっておりません。
  50. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 総理にも伺ったのです。
  51. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今、宮内庁の当局から具体的にお答え申し上げましたが、矢嶋議員のお心持、おそらくそれは矢嶋議員だけではなしに、国民ひとしくそういうふうに願っておるだろうと思います。御趣旨につきましては、全然私も同感でございます。
  52. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 防衛問題について二、三岸総理にお伺いいたします。まず、次期主力戦闘機選定の時期は、一体いつごろになるのか。今、矢嶋委員からも御指摘がございましたが、これが決定しないと、今後の防衛計画が立たないと思う。この点について総理の見解を明確にしていただきたいと思います。
  53. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほども矢嶋議員にお答えを申し上げたのですが、時期としては、いっきめるということを私は今、前提といたしておりません。できるだけこういう問題は、早くきめ得るならば早くきめた方がいいことは言うを待たないのでありますが、しかし先ほど来お話がありましたように、なかなかこの戦闘機の問題は、日進月歩でもあり、できるだけ優秀なものを取り入れて、しかも、日本の財政ともにらみ合せてきめなければならない問題でありますから、そういう点に関して十分に検討して、できるだけ早くきめたいとは思っておりますが、今時期をいつということを申しあげることはできないと思います。
  54. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 次にグラマンF11F、これについては試作機は二機しかないわけです。一機はエンジン故障で、一機は大破と、うしろものですところが、防衛庁が実際に買おうとしておるのはG—98J—11ということになっておる。従ってこれについては一機の試作もない。試作もないから実験も一回もやっていない。こういう致命的な難点のあるものを一応内定したというようなところに、国民の疑惑が向けられたのではなかろうか、こういうふうに考えられるわけです。総理の所信を一つ明確にお伺いしたいと思います。
  55. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私も実は飛行機その他の専門的の知識は十分持ち合せをいたしておりませんが、しかし、国防会議においてこれを検討する場合におきましては、専門家のいろいろの方面の研究及び意見を基礎において、一応内定したことは間違いないのでございます。今お話のようにすでにできて試験済みのものもありますし、また近くできるのもあり、これは専門家の方の技術的ななにから申しますというともちろんいろいろな試験をしてみなければ最後のはっきりしたデータはわからぬのじゃないかという御議論はありますけれども、相当程度までは専門家として従来あるところのグラマンの機体や、あるいはグラマン会社の作っておるもの等を基礎にして、また、最近の技術のいろいろな点を盛り入れるというと、現実になくてもある一応の規定は私はできるのだと思います。しかし、これがかりに決定をいたしましても、それが現実にでき上るまでにおきましては、相当な年数を要するのでありますから、その間において間違いなくこれが実現する確信に立つだけの基礎的資料があるならば、現実にまだその機が飛んでおらないというものにつきましても、これは対象になり得る。こういうふうに考えて実は検討いたしたわけでございます。なお、具体的な今F11F云々というようなことにつきましては、防衛庁長官からお答えいたします。
  56. 左藤義詮

    国務大臣左藤義詮君) ただいま総理から申されましたような技術的な見通しをもって内定されたことでございますが、その後試験機の一機がフランス人の操縦の誤まりで故障いたした。これも完全に修理をして試験を続けてございます。今お話しの新しいエンジンを装着いたしまして、これも試験を今いたしておるという報告を聞いております。
  57. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 この戦闘機機種の選定にいろいろ世間からも疑惑があったわけです。そこで、この国民の疑惑を一掃しない限り、自衛隊の権威と国民の信頼を失墜すると思うのです。そういうことについて、総理においてもこれは事重大でありますので、この際所信を明確にしていただきたいと思います。
  58. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 世間の一部におきまして、この機種の内定について何らか疑惑があるごとき言動がされておりまして、私ども責任上十分に調査し、これに対する検討を加えましたけれども、そういう世間で一部疑惑の目をもって向けられておるような事実は、この問題に関する限り絶対ございません。ただ、最後に決定するにつきましては、今お話しのように何分にも新しい精鋭なものを作ろうということでありますので、そうしてしかも日進月歩でありますために、いろいろな機械の問題について専門家の間にも議論が出ることは、私は当然だと思います。これらの事柄を十分取り入れてわれわれができるだけ公正に検討する。その意味におきまして、国防会議議長として私が国防会議及び国防会議の付属するところの機関、あるいは必要があれば、こういう問題に関して権威者と認められておるような人々の意見も聞いた上において最後に決定をして、国民をして十分な納得をせしめ、信頼をせしめるような措置をとっていきたい、かように思っております。
  59. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 次に、国防の基本方針  の第二に、民生の安定ということを強調しているわけです。まことにけっこうだと思うのでありますが、だがしかし、現在たとえば経済不況から失業者は続出している。また、生活困窮者が増加の一途をたどっている。なかなか民生の安定ということは期しがたい現状にあるわけです。しかるところ、一方国の防衛費については、御承知のように年々増加の一途をたどっているわけであります。やはり民生を安定せずにただ防衛力の増強だけをはかっても、なかなか真の国家の安全を期しがたいと思うのであります。こういう点について総理はこの現状をいかようにお考えになっているか、明確にお伺いしたいと思います。
  60. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お説の通り日本の国防を全うし、安全と平和を維持するというためには、ただ自衛隊に関する経費をふやす。これに関する装備を増強するというだけで足るものでないことは言うを待たないと思います。そこで、今お話しの民生安定の問題が当然考えられる。その他外交上の問題もあらゆる国の政治外交が、みんなその方向に協力をし、効果を上げるようにしなければならぬことでありますが、今お話しのこの経済不況の問題及び国防費の狭い意味における国防費、いわゆる狭義の国防費の今度の予算に占める割合等につきましても、十分に一つ予算編成の上において考えなければならない。特にわれわれが今度の三十四年度の予算におきましては、国民年金の制度の創設を初め社会保障政策を拡充していくというようなことも考えておりますし、あるいは経済基盤を強化して、経済の安定した基礎における拡大を考えていくというような諸施策を、この三十四年度の総予算には当然重要施策として盛り込むつもりでおりますが、そういうことによって民生の安定もし、また、わが日本の持っておりまするこの狭義の防衛力というものも、決して十分ではないのでありますから、それらの改善や充実を必要とするものは、従来通り国力と国情に応じてこれを増強するという方針のもとにある程度の増強をしていくことは、これは当然であろうと思います。しかし、十分にそういう点に関しても、経済の点あるいは失業対策や社会保障制度の拡充というような点を、十分に予算にも盛り込んで権衡を保っていきたい、かように思っております。
  61. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 民生安定の費用と防衛の費用とは、御承知のようにともに巨額の予算を必要とするわけであります。いずれも予算は相当必要とするわけであります。これをどう解決するかということが、重大問題だと思うわけであります。そこで、総理はこの問題をどういうふうに解決しようとするのか、この点をもう一度お伺いしたいと思います。
  62. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は今の国際情勢から見まして、全然いわゆる狭義の防衛力というものを持たずに、そうして日本の安全が保てるとは考えておりませんし、従ってその意味において、防衛費というものは相当額を占め、そうして日本国民の安全を保障していくために必要な国防力というものを作っていかなければならぬ。同時に、先ほども申し上げたように、国民がこの国土に対して、十分に民生が安定してそうして国土を守るという、防衛するという気持が国民全体に出てこなければ、いかにいわゆる自衛隊だけをふやしましても、それではいかぬということは言うを待たないのであります。どういう比率にすることがそれじゃ適当であるかということは、私はこれは具体的に国民所得の上の何パーセントは国防費でいい、何パーセントは民生の安定にというふうに、ただ数字的のパーセンテージでやるべきものじゃないと思います。今もっとも、日本の狭義の防衛に使っておるところの費用というものは、全体の国民所得の二%以下だと思いますが、これは諸外国の事情とは非常に違っておりますから、私は諸外国があるいは八%であり、一〇%であるから、日本もそれまで上っていかなくちゃならぬなんということは決して考えておりません。まだまだ一方から言うと、防衛の力も足りませんし、また国内におけるところの民生安定に関するところの社会保障制度を初め、その他の政策もまだ非常な不十分であるという状況でありますから、そういう日本の特殊事情に応じて、またそのときにおけるところの経済情勢や、近く見通すところの経済情勢等ともにらみ合せて、この間の権衡をとらなくちゃいかぬと思います。ただ形式的に何パーセントと、何パーセントはこうするのだというふうに、私は機械的には考えていきたくない、かように思っております。
  63. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 御承知のように、世界の軍備はミサイル時代に突入しておるわけですが、こういう情勢に即応するためにも、明年度の防衛計画の増強基本方針ともいうべきものについて概要をお伺いしたいと思います。
  64. 左藤義詮

    国務大臣左藤義詮君) 明年度の予算要求につきましては、私ども防衛整備計画は、三十五年を目途といたしましたその計画をできるだけ達成するように要求をいたしておりますが、現在折衝中でございますので、その結果をまだ申し上げる段階には至っておりません。
  65. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 岸総理にお伺いいたしますが、さきに新聞でも報道されましてブラウン記者に対して、総理は、中共は侵略国であり、日本は中共を承認しない、こういう意味のことを強く述べたとのことでありますが、特定の国を侵略国呼ばわりしたり、仮想敵国扱いすることは、いたずらに相手国を刺激することになりますし、また、国際親善の立場からも、日本の平和のためにも、百害あって一利ないとそういうふうに考えられるわけです。この点について総理はどのようにお考えになりますか。
  66. 岸信介

    国務大臣岸信介君) ブラウン記者との会見談につきまして、いろいろと当時論議をし、私の会見したところの内容国会を通じて申し上げておりますが、今伊藤委員の御質問になりました中共を侵略国であると私は申したのではございません。中共については、このわが岸内閣においては、今直ちに中共を承認するという意図はないということは申しました。これはもう従来からしばしば内外においてそういうことは申しておるわけであります。その理由の一つとして、とにかく国際的な情勢もいろいろな関係も調整されなくちゃならない、これを承認する前には、前提として調整されなくちゃならない。そうして中共はこの国連においてあの朝鮮問題の当時侵略国として決議されておる、その国連の決議もまだ是正されておらないというふうな情勢のもとにおいて、日本が直ちに承認するということは私ども立場じゃできないのだ、こういうことを申したのが真意でございますし、そのことは、従来も私が申しておることであります。
  67. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 第二十七国会における河野密氏の質問と、第二十八国会における辻政信氏の質問に対して、総理はこういう意味お答えをしておるわけです。政界復帰の動機、信念についてお答えになったわけですが、その内容は、過去の過失を認めて、再び日本を戦争に巻き込むようなことはしたくない、また二つには、日本の民主政治を完成するという、そういう決意を述べられておりますが、それに間違いないと思いますが、もし間違いがあったら御指摘いただいて、そういう前提に対して、さて現状を見ますと、政府のいろいろな基本政策を通して、あるいは先ほど問題になりました安保条約改定の問題、あるいは防衛問題、さては勤評問題、警職法改悪の問題、こういう等々の問題において、国民の不安、戦争への危機は、いよいよ増大しておると考えられるわけです。そこで、このことは総理決定とは全く相反する政治路線を選んで進んでおる、そういうふうに考えられるわけですが、この点について総理はどのようにお考えですか。
  68. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御質問前提をなしております二つの私の決意なり心境というものは、今日も変らずそういうふうに思っております。そういう日本を戦争に引き込んではならないという考え方、また、民主政治を完成しなくちゃならないという考え方、これは根本において少しも変っておりません。今おあげになりました私の内閣において扱っておりまする諸問題が、それに反するようなお話しでありますが、私は絶対にそう思っておらないのであります。たとえば警職法の改正の問題を一つ取り上げてみましても、なるほどこれに対しましては、世評のいろいろな批判もございました。あるいはその提案の仕方について、今日から考えてみまするというと、われわれが十分な慎重な態度を欠いておった点もございます。また、内容についても、世間において論議されておる点において、相当に考慮すべき点も私はあると思います。しかしながら、これが必要であるという考え方は、むしろ私は民主政治を守り、民主主義を完成するためには、どうしてもこの警職法の改正が必要であるという信念に立って、実は改正案を提案をしたのであります。この問題は、御承知の通り、公安委員会におきまして長い間研究をし、最近における社会情勢において、集団的暴力によって多数の平穏なる安穏な生活をしておるところの社会人の、一般人の自由や平和が侵されておるような事態があり、これに対して警察官の職務執行の上から見るというと、警職法成立の沿革から見て、そういう点に関する職権の点が非常に不十分である、これを十分にして、そうしてこの平穏なる社会情勢において、集団暴力によって脅かされる一般社会人、善良なる社会人の生活を保護するということは、民主政治を守るゆえんであるというのが私の信念であり、変らない考え方でございます。従って、一部の人が批判したように、これを出すことが、何か戦争に直ちに巻き込むというような議論をされておりますが、これは私にはその戦争と警職法の今申したような内容を持っている改正とがどういう一体関連があるか、私はどうしてもわからないのですが、決して私が戦争を好むとか、あるいは民主政治に反対するという意味においてこれを出したわけじゃございませんで、おそらくあるいは警職法の条文のすべてのものがそうでなしに、あるいは乱用のおそれがあるとか、あるいはそれ以外の目的があるのじゃないかというような点に関する御論議や、あるいは世論等につきましては、なお検討すべき点があると思いますが、今私が申し上げました根本においては、残念ながら最近の世相なり、あるいは社会に現われている思想というものは、これを看過しておいては、ほんとうの民主政治、平穏な一般の人々の安穏な生活というものは、非常に不安にかられるおそれがあるんじゃないか、それじゃ民主政治はできないじゃないかという考え方から来ておるわけであります。安保条約の問題につきましても、先ほど来いろいろと具体的なお話が出ておりますが、私どもはこれによって日米の間の軍事的な何か協力を高めるとか、あるいはアメリカ世界戦略、その一部である極東戦略に引き込まれるのだというふうなつもりではないので、今の条約において自主性のない、また、不明確な点、日本考え方を十分に認めることのできない点等についての改正をし、義務の点においては、先ほど来申しておるように、決して現在われわれが負うておるところの義務以上に義務を負担するものでないというようなことを明確にするつもりでおります。従って、これが戦争に引き込むのではなしに、むしろ日本の安全を保障して、今の規定では、あるいは日本意思いかんにかかわらず、知らぬうちに戦争に引き込まれるおそれがあるのじゃないか、アメリカが一方的に日本駐留軍使用することによって、非常な危険があるのじゃないかという懸念も私はあると思います。そういう点を明瞭にして、そうしてそういうことがないのだということ、日本を戦争に引き込まない、また、民主政治を守る上から必要である、こういうつもりでやっておるわけでありまして、決して今お話しのように、これらのものが何か反民主的である、あるいは戦争に引き込む危険があるというふうに言われることは、私は全然違っていると、かように考えます。
  69. 横川正市

    ○横川正市君 大体前三者の質問に対して答えられた内容から、新聞その他で総理外相等の意思が発表されたのとは、私は少し違っている点があるのではないかと思いますが、その第一点は、沖縄防衛圏を拡大して、沖縄小笠原も含めるのだというふうな政府の見解が新聞で発表されたときには、総理はきわめて強い意思を表明されておったように私は聞いておったし、新聞の発表で見たわけでありますが、現在の説明によりますと、これは観念的には潜在領土権というものがあるけれども、しかしそれは現実的には、防衛範囲の中で実際的に動くものでもないし、また、派兵の原因にもならないというふうにお答えになられている。しかし、私は、この潜在的な領土権という問題を総理考えておったときに、全体の問題としては、安保条約改定の時期が到来したのと、これと軌を一にしたというところから、沖縄島民の日本復帰の願望といいますか、これに対して日本政府アメリカとの交渉の中で、どのようにこれを実現していくかということが、私は非常に大切な問題ではなかったかと思います。単に防衛上の地域を拡大するしないの問題とは関係なしに、こういう沖縄島民の、潜在的な領土権のある地域が、安保条約の締結によって施政権もない、あるいは現在さらに教育の基本権も返ってこないというような、そういう立場に羅かれている。このことをどういうふうに解決するかということが、私は非常に重要問題だと思います。当面の事態をすっと見ておりますと、四原則の問題の中で三つは大体解決しましたが、当面の問題としての経済問題等も含めて三つの問題は解決し、さらに重要問題とされておりました未解放地区の新規接収問題等につきましては、この四原則の解決の中では全然触れられておらないという点が一つ明らかにされている。それからもう一つは、九月の二十日から沖縄全島に対して法定通貨がアメリカドルにかわってきた、こういう問題等から勘案してみて、果してあなたの言っている潜在領土権というものを、これを安保条約改定の時期において、幾年かたった今日においてそれを具体化していくとするならば、これらの問題を私は少くとも日本復帰の方向へ解決していくのが、これは当然ではなかったかと思うのでありますが、この点に対しての総現の見解、それからアメリカとの折衝過程があれば、明らかにしていただきたいと思います。
  70. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 沖縄の施政権の返還の問題、すなわち沖縄が完全に日本に復帰するというこのことは、沖縄住民の変らない願望であると同時に、私は九千万日本国民全体の意向であり、願いであると思うのです。そこでわれわれは、アメリカとの交渉におきましては、しばしばこの問題を出して、施政権の返還の問題について話し合いをいたしております。昨年の私とアイゼンハワー大統領との会談におきましても、この問題を出したのでありますが、相当に論議をいたしましたけれども、この点については意見が一致しなかったということを、あの共同声明の中にも出しておりました。しかし、私どもはその考え方を捨てたわけでもございません。これを等閑に付すというつもりはございません。しこうして、安全保障条約の今度の改定の問題、また沖縄をいわゆる条約地域に入れるか入れないかということ自体が、直ちに施政権の返還の問題と直接関連のある問題ではない、別個の問題であります。従いまして、これがどう変ろうとも、われわれはやはり一貫したわれわれの従来からの主張を、時期を見、また方法を考えて、そうしてこれが復帰の方向に進めていくように努力をしなければならぬと思います。ただ、先ほど外務大臣も一言触れましたが、沖縄住民考え方からいうと、これは理論的には、これがかりに条約地域に入らなかったから、われわれが沖縄を見捨て、もしくは沖縄の施政権の返還の願望を捨てたということは全然関係はないのでありますけれども、感情的には、何か沖縄を入れないということは、われわれに対して非常に冷たい感じであり、沖縄の住民の感情からいうと、非常に一種の情けなく思うというような気持があることも、これは事実です。しかし、先ほど来申し上げたように、施政権の返還は、入れる入れないにかかわらず、全然別個の問題として、なおアメリカとの折衝を続け、その目的を達するまでわれわれは労力をしていかなければならぬと、かように思っております。
  71. 横川正市

    ○横川正市君 私は、アメリカ総理か話されたときに、沖縄日本復帰の問題に対して、これが直ちに返ってくるというような、そういう問題で話されたのではないのじゃないかと思うのです。やはり第一段階としては、四原則の問題が話されて、未解放地区の解放の問題と、それから新規接収反対という四項目目の問題も一つでありましょうし、それからもう一つは、政府も明らかにされましたように、教育基本権等の問題も、暫定的には、第二段階として、当然これは日本に帰属すべきものではないかというふうに考えられたと思う。それから第三点の問題としては、やはり施政権の問題等も、これは日本に帰属すべきものとして交渉されたというふうに、こういうふうに段階をもっておそらく話され、しかも、一つが実現しないのだというふうに考えられることは、これは非常に沖縄島民の日本復帰の願望というものから考えてみますと、いかにも日本政府折衝というものに対して非常に失望を与えたのではないかと思う。そういう失望を与えたことから、きわめて危険な方伝であっても、潜在領土権というものをあなたが主張するから、だから安保条約防衛区域については、これを入れてもらいたいというところまで沖縄島民の願いというものが意思表示をされたのではないかというふうに私は思うわけです。だから、当面日本政府としては、このいずれかの最も実現可能なものから一つ一つこれを実現していくのだと、こういうことが私は当面とられる方法ではないだろうかというふうに思いますが、そういうことに対して、安保条約改定問題のこの論議の中から、私たちはやはりこれを実現していく方法というものが、当然政府によってとられなければならないというふうに思いますが、この点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  72. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほども申し上げましたように、施政権の返還、沖縄の復帰という問題と、安保条約の問題とは、直接関連のないことを明確に申し上げました。しかし、この施政権返還の方向に向ってあらゆる努力をしていくということを申し上げましたが、結局は施政権を全部一括してすぐ返すということは、これは今横川委員のお話しのように、私もすぐに実現する問題だとは思いません。しかし、われわれの強い願望なり、要求というものは、常にアメリカにぶっつけておく必要があると思います。しかし、その意味において、あるいは教育行政権の問題に関して、教育権の問題についても交渉したこともございます。しかし、これもまだその段階ではない。ただ、土地問題を中心として従来係争されておるところの問題について、沖縄住民の希望を入れた解決をすべきものであるということにつきましては、私どももしばしばアメリカ側に言い、アメリカ側におきましても沖縄の代表者をワシントンに呼んで交渉し、その一部は沖縄住民の希望に即した、いわゆる一括払いを停止するという問題が、御承知の通り解決をいたしております。ただ、新規の接収の問題に関する点であるとか、あるいはすでにアイゼンハワー大統領との問の共同声明にもうたってありますが、沖縄住民の福祉の向上や、その経済の繁栄についてアメリカが施設すべき事柄につきましても、いろいろと私ども交渉もし、アメリカ側において十分にやってもらっておる。また、日本側において処理すべきものについては、日本側におきましてもある程度の方法を講じたいというような折衝もいたしておりまして、もちろん、安保条約交渉、それに沖縄を入れるか入れないかという問題を、安保条約改定の問題として交渉すると同時に、今の施政権返還の方向に向って一歩々々いろんな問題を解決していくということは、常時努力をいたしておりますし、また努力を続けていかなきゃならぬ、かように思います。
  73. 横川正市

    ○横川正市君 私はこれは、今の総理の努力の方向というのが、実はB円の軍票が九月の二十日から実際上は廃止されて、そして法定通貨が米ドルにかわり、沖縄の経済状態がきわめて自主性のないものに逐次変ってきつつある。ことに、最近の現地からの報告によりますと、沖縄自体の経済の不安定が原因するところでありましょうが、大体年間について二十万ないし三十万ドルの金が日本の銀行へ振りかわってきて、資産の蓄積を肩がわりするというような傾向も出てきて、実際上きわめて不安定な状態だということが報道されておるわけであります。ですから、一歩前進をするのだとするならば、私はこういうような半永久的というか、永久的方向へのアメリカの実際上の軍政が基礎づけられていく、こういう方向を私はやはり事前話し合いで行わせないような方法がとられるべきではなかったか、こういうふうに思っておるわけなんです。しかし、これは短い時間でちょっとこの問題に十分触れることはできませんが、ただ、安保条約改定の問題と関連を直接はいたしませんが、間接的には非常に大きな影響力を持っておるという問題として、ソ連との平和条約の締結の問題であります。これは第一には、緊張緩和の問題と、もう一つは北海道の沿岸漁民あるいは漁家等の経済上の問題等と関連いたしまして、これは喫緊の私は問題だというふうに考えております。ことに釧路地域、それから根室地域の沿岸漁家の、いずれの地域からの陳情ないしは請願等を見ましても、平和条約の締結についての一日も早からんことを念願をして要望されている点は、これはもう総理も御案内の通りだと思う。そこで、締結当時の状況から推してみますと、当初十三点くらいのものがずっと羅列されておりまして、その一つ一つが大体交渉の過程ではさして重大問題としては残らないで、最終的には領土問題が問題として残り、領土問題の最終的な帰結ができなかっただけに、暫定条約にかわってきたということになっておるんだろうと思うのであります。そこで私は、沖縄潜在主権問題等、これはまあ第一には、固有の領土ということから、戦争その他によって日本が取得したのではなくて、従来から日本の領土であったものと、こう日本政府は主張し、それから安保条約によってアメリカに対して沖縄の施政権を与えてしまったということから、現在潜在領土権というような問題を私どもは云々しなきゃならなくなってきているわけですが、自民党の皆さんの考えている外交調査のいろんな資料を見てみますと、南千島、北千島、それから南樺太等を含めて、これは日本の固有の領土であると、こういうふうに主張されて、ことに三十年の八月の三十日から八月三十一日の日ソ交渉のさなかで、自民党の皆さんの主張が、北千島、南樺太等の帰属をきめるように、こういう決定をし、そのことを会議に持ち出して、ついに最終的に平和条約の締結が行われなかったということが、まあ、私は当時の状況から推して原因だろうと思うのです。ただ現在地域住民の願いをずっと見てみますと、これは日本社会党も、南千島、それから南樺太の帰属については、日本は当然主張すべき範囲と、こう規定はいたしておりますが、当面現実問題として、いろいろ地域の人たちや、それから党内でのいろいろの話し合いの結果としては、まず第一に歯舞、色丹の帰属を明確にする平和条約を結ぶべきではないだろうか、同時にこの条約が結ばれることによって、国後、択捉に対して基地を作られて、そして漁家の安全操業がそのことによって確立されるならば、私は現実的な問題として、当面非常に大きな利益が、この沿岸漁家ないしは日本の漁業をされておられる方々にあるんだ、こういうふうに考えられ、その実現方を非常に強く要望いたしてきているわけであります。そういう点から、私どもは、安保条約と直接な関係はないにしても、安保条約の締結が相当影響をされて、そしてその択捉、国後の問題等に対して、おそらくこれは主張しておれば、いつまでたっても平和条約が結ばれないという現実の問題を考えて、そして当面、今言ったように、歯舞、色丹で平和条約を結び、国後、択捉等に漁業の基地を設けるということで安全操業をかちとっていく、こういう方法がとられるべきではないかというふうに思うのでありますが、その点についてどのようにお考えでしょうか。
  74. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日ソ交渉は、長い経過をとっておったのでありますが、鳩山内閣のときに、鳩山首相が向うへ行かれまして、いわゆる日ソ共同宣言で国交を正常化したのであります。なぜ、当時われわれは初めから平和条約を結ぶつもりでずっと交渉してきたのでありますけれども、平和条約が結ばれずして共同宣言で終ったかということになれば、領土問題に対する根本的の考えが違ったわけであります。その最後のわれわれの主張は、この国後、択捉、いわゆる南千島、歯舞、色丹は当然北海道の一部であることは、これは明瞭であると同時に、この国後、択捉は、歴史上始まってから、外国にかつて属したという事実は全然ないのであります。従ってわれわれとしてこれは当然日本の固有領土として考えて主張する。ただ、この南樺太及び北千島につきましては、これもまたわれわれが戦争でもって侵略して取ったとは思いませんけれども、いろいろな、歴史的に言うと、かつてソ連に属しておったこともあるわけでありますから、またわれわれはサンフランシスコ条約においてこれらの領土権を放棄しておるということから考えましても、その帰属はサンフランシスコ条約に調印をしておる国々によって、国際的にその帰属がきめられるべきものである。これは直接にソ連と今交渉において争うということじゃないけれども、少くとも国後、択捉は、われわれのもう開闢以来われわれの固有の領土としてわれわれ考えておるのみならず、歴史的事実がそれを証明しておるのであるから、当然日本に属すべきものであるという主張をしてきて、それが合致しないために、共同宣言になったことは御承知の通りであります。しこうしてその後におきましても、私は、この国後、択捉に対する私の、今、考えを述べましたが、これは自民党の考えであると同時に、日本国民の、私は、大多数がそう考えておると思うのです。従ってこの日ソの共同宣言によって国交を正常化し、向うからも大使が来、こっちからも大使を交換して、そうして日本国民の大多数の一致した願望というものに対して、ソ連が十分な理解をもってほんとうに日ソが友好関係を結び、そうして平和を維持していくというためには、これは日本人のこの考え方というのは無理じゃないのだと、当然これはかなえてやるべきものだという理解を、私は、ソ連が持たない限りにおいては、これは解決できない。それを理解を深めるために、あるいは通商の協定をして通商関係を密にするとか、あるいは文化協定をして文化を交流して、お互いによく理解し、信頼し合うという基礎ができなければ、これほど、私は、明瞭な事態が解決できないということは、日本国民がとうてい納得しないことである。従って現在において、あるいは歯舞、色丹だけの帰属をきめることによって、あるいは国後、択捉に対する従来の日本人の主張を捨てるならば、これは私はソ連と平和条約をすぐ結べると思いますが、私はそういう条件のもとに平和条約を結ぶことは、これは日本国民意思に反するというやはり考えに今立っておるわけであります。それは日本国民の一致した強い願望であり、主張であるところのものであるから無理がないのだ、日本が言うのは無理がないのだと、そうして日本との間のほんとうの友好関係考えるならば、これは日本人の主張を認めてやることが適当であるという理解にソ連が一日も早く達して、そうして平和条約が締結される日が来るように私は願っており、また、そういうふうにこの日ソの間における友好関係やあるいは理解を深めるような方法を、いろいろ積み重ねていっているのが現在であり、それができなければ、とうてい私はまだ結べないのじゃないかと、かように考えております。
  75. 横川正市

    ○横川正市君 ちょっと時間がないから十分、これ時間をずっと追って関連することで、質問ができないのでありますが、私は、日本の固有の領土であるということの主張については、これは日本国民がすべてそういう主張をし、しかも、それはそのことによって解決したい、ということが、最大の願いであるという点については、これは私は意見は同じだと思うのであります。現実の問題として、それでは総理の言われるそういう方法で南千島を含めて、日本の領土としてこれを認める平和条約を締結される、こういうこの見通しについて、はっきりお持ちになっていられるのかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。そういう主張をするなら、おそらくもう半永久的に現状のまま、安全操業もできず、毎年々々漁業協定を結び、しかも漁家の不利益は一刻おくれればおくれるほど、日を追うて蓄積されていく。こういうことを排除することはできないということになるわけでありますが、その点はどうでしょうか。
  76. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私はなるほど今の状態であるために、歯舞、色丹に特別の利害関係を特ち、あそこで生業を営んでおる漁民、ことにそれは零細な漁民が相当多数である。それが非常な苦しい立場にあるということもよく承知をいたしております。しかし、今この領土の問題に関しては、これは歴史的に言いましても、民族的に言いましても、私は単にこの一時的の、一時的と言っちゃ何ですが、利益、一応のそろばん勘定で解決できないものがあることは、これはもう独立国とし、それから歴史的に、民族的に各国の歴史を見ましてもある問題であって、今の状態において、今横川君のお話しによりますというと、なるほどその点にまでわれわれが主張を後退せしめてやるならば、歯舞、色丹におけるところの漁業上の利益は得られるであろう。もうほとんど国後、択捉に対するわれわれの主張というものは、領土に対する主張というものは捨てざるを得ないと思うのですよ。そのことが私は現在の日本国民が納得するわけがない。国民意思に私は沿うゆえんでないというのが私の考えでございます。
  77. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 変則国会から初めてお目にかかりますので、最初にその責任の問題について、二、三伺ってみたいと思います。  御承知の通りあの違法、不当な会期延長で、非常に変則的な、国会史上まれに見る現象を呈したことは御承知の通りでありますが、その弁解の言葉として、総理は当時の事情はやむを得なかったのだ、こういうことをあらゆる機会に仰せられておりますが、そのやむを得なかった事情というのは一体どういうことなのか、簡単でけっこうでありますが、伺ってみたいと思います。
  78. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 当時の事情から申しますというと、これは意見が違う点もあろうと思いますが、私どもは先ほども警職法について私の信念を一応申し上げましたが、これをどうしても成立させたい。それにはいろいろな事情から、実際上衆議院における審議が行われておらない。あるいはいろんな議事が混乱をし、委員会の議場が占領されておって、審議がされておらない。これは私は大事な法律であるから審議は十分尽して、そして内容的に是正すべきところがあれば是正し、なるほど出し方についても、いろいろな反省すべき点もあり、議論もあるのですから、なおさら国会における審議を通じて国民が疑惑を解き、理解を深めていくようにしなければならない。その意味においては、相当大幅に会期を延長して、そして十分な審議を尽していきたい。その結果によって、審議の結果によって、あるいは修正というような問題なり、あるいはどうしてもこれは成立させちゃいかぬというような理論に達するかもしれぬ。十分そういうことをやりたいというのが、会期延長をしたいということを考え根本である。しからばそれを平穏裡になし得る状態であったかということについては、これはいろんな見方もございましょう。しかし、国会の運営に当っているわが党の人々は、当時の議場の状況からいうと、すでに院外におけるいろいろなスケジュール等も発表されており、そして院内における情勢等を勘案して、七日までいくということになると、当時言われておった、この五日の日には一万、六日には二万、三万というような、七日には三万という人を動員して、そうして、これは絶対にいかなることがあっても、あらゆる手段を講じてこれが延期を阻止するということを声明しておる。そういうスケジュールが発表されておるというときに、七日までこれを持っていくということになれば、あるいは不測の事態が起るかもしれない。そうすれば、どうしても、これは会期を延長するのには、そういう最悪の事態を避けて、そうしてやらなければならない。しかし、それに関して野党との話し合いが十分につかないという状況にあったために、議長の職権においてこれを延長するということはやむを得なかった、かように当時の状況から私は判断をいたしておって、やむを得なかったんだ、しかし、その方法が、いわゆる正常な方法でなかったということは、これは何人も異論のないところであります。ただ、八木委員のお話しのように、これを直ちに不法不当なる延長で無効だと、こういう御意見でございますが、私どもはそうは考えておらなかったわけでございます、
  79. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私は、衆議院規則から見て違法である、また、慣例から見て不当である、これは一点の疑いもないのでございますが、時間の関係で詳細には申しません。ただ問題は、今おあげになりました動機については、総理のお考えはよくわかります。わかりますけれども、結果としては、とにかく突如として出された警職法が遠因しまして、直接の原因としては抜き打ちの会期延長で一カ月国会が空白状態を続けた。これが両党首会談で妥結した。しかし、私ども両党のほかにある者から見れば、両党の間に警職法の廃案と会期延長の有効とが取引されたような感に受け取るわけでありますが、私自体といたしましては、憲法第四十一条、国の唯一の立法機関である国会の成立の手続というものは、きわめて厳格にこれはしなければならぬ、いささかの疑義があってはならぬと、こう考えるのでありますが、この国会がさような、いわば詐欺的なとでも言っていいような方法でもって一カ月延長されて、しかもこれが空白状態を続けたというようなことについて、しかも、国民に対しては、何らの責任が明らかにされておらぬ。民主政治というものは、申すまでもなくこれは責任政治でありますから、党内で、自民党内で、いや執行部の責任がどうだとかかんだとかいったような議論でなしに、自民党一体として、国民にどんな遺憾の意を表されたか。どんなにして民主政治のルールを通されたか、どんな責任を明らかにされたか。私は、責任政治立場から言えば、内閣は総辞職をするか、あるいは総辞職をしないまでも、まだ国民の信任われにありとお考えになるならば、解散をやられるか、冷静に考えてみれば、この二つしかないのであって、一カ月以上も国会を空白に置いたという責任は、これは旧憲法時代でももっと大きな問題になっている。それが両党の抗争の間に埋没して、この問題についてあまり論議がかわされぬということは、私は非常に遺憾な状態だと思うのでありますが、これの責任、国民に対する責任についての。自民党総裁なり、内閣の首長としての岸さんの所見はいかがでありますか。これを承わっておきたいと思います。
  80. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お話しの通り、この民主政治のもとにおける内閣の最後の責任をとる手段は、今お話しの通り、内閣が総辞職するか、あるいは国民にさらに信を問う、解散によって信を得るか得ないかということをなにした上において、最後に内閣がやめるかやめないかをきめるという方法も、最後の責任を明らかにする方法であることは、八大委員のお話しの通りであります。しかし私は、すべての責任があるから、いかなる場合においても内閣は総辞職したり、あるいは解散すべきものだとは、実は思っておりません。それだからといって、責任を全然ほおかぶりするという意思はございません。この場合においては、私はもちろん政府とし、与党として、与党を率いておる総裁として、国会運営に関して、与党及び政府立場から責任のあることは、これは当然でありまして、そのことは当時もいろいろな機会に述べておることでありますが、その責任を果す方法としては、やはりこの事態が起ったということは、決して私は野党だけを責めるつもりはございません。野党に大きな責任を負わしめるということはございませんけれども、しかし、やはり二大政党のもとにおいてああいう事態が生じてきたということについては、この二大政党の首脳部が会って、党首が会って、そうして将来国民が一番不安に思っておる国会運営の正常化、特に民主的なルールの樹立ということについて十分に話し合って、そういうルールを立てて、今後それを守って、そして国民の信頼にこたえていこうというのが、私の当時の心境であり、また、そういう意味において両党首が会見して、ああいう申し合せをし、これを具体化するところの処置を講じて今日に来ておるというのが、私の国民に対してあの事態を生ぜしめた責任を明らかにして、そうして将来そういうことを絶滅するという決意を国民に示して、私の責任を明らかにするということが適当であると考えたわけでございます。
  81. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 国会正常化の具体的方法として、正副議長の党籍離脱、こういう問題がありましたが、この国会最初の三日間は、その問題で、副議長の問題で空費された。私は、具体的な取りきめ自体が不備であったと思いますのは、旧憲法時代では、衆議院の正副議長は、議院法第三条によって三人の候補者を選挙して、その中から一名が勅命された。貴族院では無制限に議員の中から勅命があった。こういうような事情でありますから、両党だけできめるのでなしに、国民が納得し、また議員全員が納得する議長、副議長を撰ぶのであるならば、複数制を最初からとるべきである。この用意が欠けておる。それが一つ。それからもう一つは、国会の正常化でありますから、当然参議院の議長、副議長の党籍離脱が行われなければならぬ、こう思っておるのでありますが、いまだにこれが実現されておらない。この二つをいかようにお考えですか。
  82. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今回の国会の混乱というものが、主として、というよりも、むしろ、もっぱらと言っていいかもしれませんが、衆議院における議事のことから起ってきております。衆議院は、御承知の通り、とにかく二大政党の形において運営されておる。こういう状況でありますから、両党の間で党首の間で話し合いをしたわけであります。参議院の関係は、直接に今度の問題に関係ないのであります。それから参議院自体の自主性といいますか、独自の立場というものも尊重する。また、参議院の問題であるとすると、衆議院と違って、これが二大政党だということを言い切ることは私むずかしいと思うのです。緑風会というものもあるし、無所属の方も相当おられるというような立場におきますというと、この参議院の運営のことについては、現に議運の構成につきましても、衆議院の構成と参議院の構成とは異なっております。社会党と自民党の党首が会って、これでもって参議院をこうするのだというわけには私はいかないと思う。従って、あの申し合せにおいては、このことは参議院においても、なるべくこの趣旨でやってもらいたいが、同時に参議院の自主性というものに対して、衆議院だけできめたことを押しつけるという意思はないのである。しかし、この趣旨でなるべくやってもらいたいということを実はつけ加えておる。なお、複数制にしたらどうだという御議論もこれはごもっともであります。その点において欠けておったことも事実であります。あの副議長を中心としての二口、三日の交渉段階において、そういう提案もなされたのでありますけれども、あの場合には成立をしなかったのでありますけれども、将来の問題としては、私はやはり考慮しておくべき問題であり、なお同党において一つ研究を進めていきたいとこう思っております。
  83. 永岡光治

    委員長永岡光治君) 八木君に申し上げますが、約束の時間も相当過ぎておりますので。
  84. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 もう二、三分、よろしゅうございますか……。いつも理路整然とした答弁をいただく総理としては、非常にわけのわからぬ答弁でありますが、松野さんが党籍離脱のことに反対であることは私よく存じていますが、そのためにあなたはあいまいなことを仰せられる。しかし、国会正常化のポイントとしての正副議長の党籍離脱は、衆参両院で区別すべきものではないので、この点私は深く申し上げませんが、よく一つ考えを願いたいと思います。  それから時間の制約がありますので、二、三点簡単に委員長のお許しを得てお伺いしたいと思いますが、実は一つ安保条約の問題で、この問題は先ほどからいろいろ論議がありましたが、とにかく日本の方から要求しておいて今日まで進んできておったのに、警職法等から手を焼かれて、どうも非常によろめいていらっしゃるというふうな気がいたしますが、通常国会で批准をお求めになるだけの御決心があるかないか。これが第一点。  それから第二点は、防衛区域の中から沖縄小笠原をこの条約の区域の中に、入れるか入れないかという問題が今ペンディングになっておるようであります。そのペンディングになっている原因を承わりたいのと、もう一つは、アメリカと中華民国、朝鮮、フィリピン、この三つとの相互防衛条約日米安保条約との関連が、相当実際問題としてあるということを御心配になっておるのではないか、こう私は思うのでありますが、この三条約安保条約との沖縄を中心としての、具体的に言えば、NATOのような結果になって、戦争に巻き込まれるおそれがありゃせんかというふうな御懸念があるのではないかと思うのですが、その点についての総理の御高見を伺って、あと主力戦闘機の問題を伺って、四十分までに終りたいと思います。
  85. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 安保条約の問題については、交渉経過を先ほど外務大臣が申し述べた通りであります。もちろん、相手方のある問題でありますから、いついつまでに必ずできるということは申しかねるかと思います。しかし、そうしてこれが審議につきましても、相当の時日を必要とすることは、こういう重要な条約でありますから当然であります。御承知の通り、今度の国会が終った後において参議院の半数の改選がございます。そういうことも国会連営の上から見比べていかなければならない。従って時目的に早く調印ができるように進行したならば、この国会へ出したいと思います。しかし、時目的にそれが間に合わないというようなことであるならば、あるいはこの国会には出さずに次の国会に出すというような、批准を求めるというようなことにもなろうかと思います。これはもう少し交渉を続けていっての見通しをつけたいと思います。  それから沖縄小笠原の問題に関した何か特別の考えがあるのじゃないかとか、あるいはよろめいているのじゃないかというふうなお話しでありますけれども、私はこの問題に関しては、初めから、この前の臨時国会でも申しておるのでありますが、ずいぶん議論のある地域でありまして、私はその議論のあるゆえんのものも、決して全然根拠のない議論でもないと思いますから、国民のこの識者の意向等もある程度聞いて、わが党内においても先ほど御質問がありましたが、議論があることも、私は当然であると思っております。もちろん、保守党の自由民主党が与党としてこういうものに取り組んでおるのでありますから、その段階における議論があるにしても、これを統一すべきことは当然であります。そういうことを当然やりますけれども、そういう状態でありますから、今日結論的にまだどっちということは申し上げかねるというのが、先ほど来外務大臣お答えしている通りであります。  また最後の御質問でありました米韓、米華条約等は、沖縄を入れております。しかしながら、これらの条約は、当然別個の条約であって、かりにこれがあったからといってですよ、これが何かその間に、数カ国の間に軍事同盟ができるという性質のものでないことは言うを待ちません。ただ、関連して結果的にいろいろの場合を想定してみるというと、想定でありますから、いろいろな事態があると思います。そういうことに関連しての議論が私は出てきておると思いますから、これらの点につきましても、十分われわれの最後の腹をきめた場合においては、国民が納得するように説得していかなければならん、こう思っております。
  86. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 最後にしめくくってこれでおしまいにいたします。一つは藤山外相マッカーサー大使との間で、安保条約の中に経済協力条項を入れるということについて意見の一致を見たように新聞に報じられておりますが、さようなことがあるかないか。また、経済協力条項をこの条約の中に入れるということの利益はどういう点にあるか。私はむろんアメリカとの経済協力を進める論者でありますけれども、この条約の中に入れることの利益がどこにあるか、それが一点。  それから第二は、次期主力戦闘機の問題でありますが、これがいまだにきまっておらぬということは、将来の防衛計画に相当大きな支障をきたすじゃないか。これが一点。それから第二点は、関連航空工業に対してすでに相当の影響が出ておると思うが、この影響とその対策をいかように考えておられるか。これが二点。それから第三点は、現在いろいろ主力戦闘機の問題について議論がありますが、官房長官もそのような意見のようでありますが、グラマン・ロッキードあるいはノース・アメリカンといったような各種の有力候補の機種数機を試験的に買って、日本でこれをテストする、そしてこれに要する費用を追加予算にお加えになるお考えはないか。  それから最後は、行政改革の問題であります。岸内閣の選挙公約でも、また第二次岸内閣の重要政策としても行政改革が取り上げられて、大野副総裁が特別委員会の委員長になっておるし、行政審議会でもやられておりますが、しかし、具体的な問題としては、年金局の問題が出ただけで、一向抜本的の案というものが出て参りません。そこで、一体この問題について総理はどれだけの熱意をお持ちになっておるか。それから減税は約七百億と言われておりますが、社会保障費の問題にいたしましても、いろいろな有効な支出が増加することは明らかであります。また、この行革は、どうしても私は抜本的に困難があってもやらなければならん、こう思うのですけれども、非常に困難な道は困るということでぼやかしてしまわれるのか。あるいは非常な熱意をもっておやりになるならば、通常国会の再開劈頭の施政方針演説の中でもこれを織り込んで強力におやりになる熱意は、今でもお変りにならないのか。この数点についての総理の率直な御意見を承わって、私の質問を終りたいと思います。
  87. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 主力戦闘機の機種の決定の問題については、これは実は御承知の通り二つの意味があると思うのです。一つは、日本防衛上の直接の防衛の点から考えて、優秀な機種をある数持たなければならぬということが第一。第二には、それをできるならば国産化し、いわゆる航空機工業の裏づけを持っておくという、この二つのことが当然防衛の上から考えなければならぬと思います。そうしてすでにF86やあるいはP2Vのことにつきましては、これは国産化につきましてそれぞれ手順をきめて進んできておりまして、相当優秀な技術がこれによって保存され、向上されておることは御承知の通りであります。しかし、この機種決定がおくれるならば、その手順について今ある航空機工業というものが相当な損害を受けるという事情もあります。班に相当におくれておりますので、そういう事態も出ております。これらに対しては、通商産業省と十分具体的の方法、それに対する措置というものを考究をいたしております。われわれは航空機産業、いわゆる防衛産業として航空機産業を国内へやはり樹立したいという考え方と、さらに日本の航空機工業というものの性質上、ああいう高度の工業を日本に樹立することは、一般の日本の産業のレベル、技術のレベルを上げることでもありますし、さらに航空機そのものが一般のコマーシャルベースにおいて、いろいろ輸送機として、民間輸送機として、国内はもちろんのこと、東南アジアその他にも進出の余地がある。こういうことを考えてみますと、航空機産業を日本に樹立することは、日本の産業政策としても当然考えなければならない。ただ、防衛の見地だけでなしに当然考えなければならない。これらを十分一つ検討するということをやっております。それで、なんの方からいうと、この二つの目的をかりに分けると、むしろ飛行機は優秀なものを買って、それから航空機工業は、これは別に建てる方策を考える、という考え方一つ考え方だと思います。しかし、従来戦闘機を防衛上の意味において作る場合において、これを国産化するという場合には、アメリカから相当な援助があって、これによって日本防衛産業がある程度養われてきておる、培養されておるという事案もありますから、そういうこともにらみ合せて、なおこの問題は検討すべきものである、こう思います。  それから、安保条約に経済条項を入れるか入れないか、今度の条約の最後の形をどうするかということについては、もちろんまだ決定をいたしておりませんが、少くとも、今度のなには、ただ現在ある安保条約を一部改定するとか、あるいは単純な軍事協定というような意味じゃなしに、日米の協力、その一つのなにとして日本防衛について対等な形における双務的な経済条項も入れよう。こういうふうに考えることが適当じゃないかという考え方一つあるわけです。これもあわせて今研究をいたしております。まだ外務大臣から報告を聞いておりませんが、マッカーサーとの間にそういうことについて完全に意見が一致したとかいうことは、まだ聞いておりませんけれども、そういうことが研究されておることは事実であります。  行政機構改革の問題は、御承知の通りこれは歴代の内閣がやろうとしてなかなかむずかしいことであります。しかし、むずかしいからといって放ってはいけないと思う。私はぜひやりたい。予算の編成につきましても非常に重点的に考えて、減税もやる、社会保障もやる、ということから考えますと、行政費はある程度、従来非常に困難でありますけれども、相当思い切って節約するということが、財源を作る上からいっても考えなければならぬ。そういう点においてもぜひやりたいと思っております。何といっても日本の行政機構が、あまりにも最近の現状からいうと複雑であり、行政費がかさみ過ぎておると思います。従って、これをできるだけ簡素化し、そうして能率を上げるという意味において、私は一挙に全部が根本的に、抜本的に解決されるということはなかなかむずかしいと思いますけれども、しかしイージー・ゴーイングの意味でお茶をにごすというような考え方は持っておりませんから、再開後の適当なときにおいてぜひ提案をしたいと、かように思って研究を急いでおります。
  88. 永岡光治

    委員長永岡光治君) 速記をちょっととめて下さい。    〔速記中止〕
  89. 永岡光治

    委員長永岡光治君) 速記を始めて。
  90. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 前国会防衛庁当局に、大分の飛行場を自衛隊が使用することによって非常に騒音を起して、地元で困っているという事態が起っているから、十分調査して報告するようにと要請しておきましたが、その結果を報告して下さい。
  91. 門叶宗雄

    政府委員(門叶宗雄君) 矢嶋委員の御質問お答え申し上げます。岩国の飛行場が共同使用中でありますが、米軍機が多いため、海上の自衛隊の離着陸の訓練を大分の飛行場でただいま行なっております。使用状況は、海上自衛隊の航空機の離着陸訓練及び計器侵入訓練を行うのを目的といたしております。使用期間は今のところはっきりした見通しを持っておりませんが、ここ当分あるいは続くのではなかろうかと存じております。機種はSNB双発のプロペラの練習機でございます。大体使用内容といたしましては月平均二十日程度で、一月平均四機程度が練習をいたしております。各機の離着陸訓練は、最多時において五十分間に八回を基準といたしておるような状態でございます。  先般お話がございました騒音の状況でございますが、従前の進入経路たる南東方向を飛べば、桃園小学校が七十ホンないし八十ホン、東大分小学校が七十ホンないし七十五ホン、日岡小学校がやはり七十ホンないし七十五ホンというようなことになりますので、進入路を逆にして、北西方向をとり騒音を海面に逃がす方法をとっておりますが、この場合におきましても、日岡小学校が大体七十ホンないし七十五ホンと相なるわけでございます。これは直ちに補償の対象とは考えられませんが、回数が相当ひんぱんでありますと、やはり補償の問題を当然考えなければならないのでありますので、私の方といたしましては、頻度について目下調整をいたしまして、御迷惑のかからないように考えたいと思っておる次第でございます。
  92. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ただいまの報告についてごく簡単に二、三承わります。それは、岩国の飛行場を米軍ジェット機が使用することになって、海上自衛隊が、俗に言えば岩国から追い出された。そうして大分の飛行場を使用するに至ったということを承わっているのでありますが、今、米軍は板付の飛行場を使っていることは、御承知の通りであります。で、板付だけでは不十分なのか。これは米空軍の強化によって、板付だけでは不十分で新たに岩国を使うようになり、その米軍のジェット機は当分この岩国飛行場を使う、こういう状況なのか、その点はどうですか。
  93. 門叶宗雄

    政府委員(門叶宗雄君) 板付の飛行場は、米空軍の飛行場でございます。問題になっております岩国の方は、米海軍の飛行機の飛行場と相なっておりまして、私の方としては、早い機会に解除になることを期待しておりますが、先方の都合で、しばらくまだ解除になる見込みが立たないというような関係で、岩国の飛行場では十分練習ができないという関係から、大分の飛行場を使わしていただいておるという実情であります。
  94. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 では岩国の飛行場が解除になれば、もちろん大分の飛行場を海上自衛隊が使用するということは取りやめになる、それから当分使うということですが、それに備えて海上自衛隊で何らかの施設、設備をされたのか、また今後されるお考えがあるのかないのか、その点伺っておきます。
  95. 門叶宗雄

    政府委員(門叶宗雄君) 岩国の飛行場が解除になれば、海軍としましては当然岩国で練習をいたす、従って大分の飛行場を使用する場合はまずなかろうかと考えております。なお、大分の飛行場を使わしてもらうことによりまして、施設につきましては、自治庁とも相談をいたしまして助成金を交付してもらうという折衝をいたした次第でございます。
  96. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ただいま双発のSNBの離着陸に使っておるということですから、進入方向を考慮していただくとか、あるいは頻度に配慮を払っていただけば、それほどではないかと思うのですが、これは将来の問題ですが、相当期間使い、さらに将来、F86━Fとかそういうジェット機が飛ぶような将来が予想されるとすれば、あの地域で病院を建築するとか、学校を建築するに対しては、それに即応する指導をしなければならぬと思うが、かような将来に対する配慮を地元が学校とか病院を建築するに当って払う必要はない、かように了及しておいてよろしいかどうか、念のために承わっておきます。
  97. 門叶宗雄

    政府委員(門叶宗雄君) 私の方としましては、大分飛行場を将来F86━Fその他ジェット機をもって訓練に当らせるということは考えておりません。なお、地元にはできるだけ御迷惑のかからないように、頻度その他についても十分考慮をして参りたいと考えております。
  98. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 最後に、防衛庁等でいろいろ調査をし、配慮をされておる点は感謝をするわけですが、助成金については、話し合いを進めているということを承わっておりました。これはもうきまったかどうか。また、きまっていないとすれば、十分見通しのあるものかどうかという点と、それから七十ホンから八十ホンといいますが、学校としてはもうこれは限度だと思うのです。八十ホンをこえたら私は授業に支障があると思う。従って何らかそれらに対して対策を講じなければ、授業特に音楽とか理科の実験なんかには、地元で言うように差しつかえあると思うのですけれども、この点どういうふうにお考えになっておられるか。助成とその点について、最後にお答えおき願いたいと思います。
  99. 門叶宗雄

    政府委員(門叶宗雄君) 助成につきましては、大体内定をいたしているようでございまして、近く決定を得るものと考えております。  なお、学校その他に御迷惑を及ぼさないように、防衛庁としましては今後とも十分配慮をいたしたい所存でございます。
  100. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 どの程度の助成をなさるつもりですか。
  101. 門叶宗雄

    政府委員(門叶宗雄君) 金額につきましては、はっきり申し上げかねますが、大体九十万程度を期待いたしております。
  102. 永岡光治

    委員長永岡光治君) 他に御発言もなければ、本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十五分散会    —————・—————