○
政府委員(佐野廣君) ただいま
議題となりました
租税特別措置法の一部を
改正する
法律案外二件について、
提案の
理由及びその概要を御
説明申し上げます。
まず、
租税特別措置法の一部を
改正する
法律案について申し上げます。
政府は、昭和三十四年度税制
改正に関して、すでに所得税法の一部を
改正する
法律案を初め
関係法律案を提出して御審議を願つているのでありますが、今回の税制
改正の一環として、現在の
経済情勢に即応しつつ租税負担の一そうの公平をはかることを目途として、
租税特別措置法の一部を
改正することとし、ここに同法案を提出することとした次第であります。
以下簡単に法案の
内容について御
説明申し上げます。
まず第一は、預貯金等の利子に対する
特別措置に関する
改正であります。現在長期性預貯金、公社債等の利子については、非課税の
措置がとられているのでありますが、その期限の到来を待って廃止することといたしました。なお、今後二年間は、預貯金、公社債等の利子につきましては、一〇%の税率による分離課税の特例を適用することとしているのであります。
次に、
配当所得については、現在一〇%の軽減税率により源泉徴収を行うこととしているのでありますが、利子所得に対する
特別措置と並んで、本
措置についても、これをなお二年間継続することとしております。また、
証券投資信託収益の分配については、昨年その課税方式の変更に伴い、税負担の激変緩和の
意味で一年間特別に六%の軽減税率を適用することとしたのでありますが、今回その適用期限の到来とともに、
一般の
配当所得と同様に一〇%の税率により源泉徴収を行うよう改めることとしております。
次に、
企業資本の充実をはかることの重要性に顧み、法人の
増資費用の軽減に資するため、
増資登記の登録税を軽減することといたしております。すなわち、昭和三十四年一月一日において存する法人が、昭和三十六年三月三十一日までに
増資登記をした場合には、その登記の登録税の税率を、千分の七から千分の五に軽減することとしているのであります。
次に、輸出振興に対する
特別措置に関する
改正でありますが、輸出振興の重要性に顧み、輸出所得控除
制度につきましては、昭和三十六年三月三十一日までその適用期限を延長するとともに、特許権等の技術輸出について特にその控除率を引き上げることとしております。
次に、交際費の損金不算入
制度に関する
改正であります。この
制度は、今後なお存続する必要があるものと
考えられますので、その適用期限を二年間延長するとともに、この際、交際費使用の
実情に即するよう交際費損金不算入の基準を
改正することとしております。すなわち、損金に算入しない額の計算に当つての実績基準による限度額を、昭和三十四年一月一日を含む事業年度開始の日前一年以内に開始した各事業年度において支出した交際費等の額の合計額の八〇%
相当額と、旧基準年度の交際費額の六〇%
相当額との、いずれか多い金額によることとしているのであります。
次に、価格変動準備金の
制度につきましては、その運用の
実情に顧み、本
制度の趣旨に照らして、準備金の取りくずしの方法を
合理化することとしております。すなわち、所得が減少した場合には、通常の場合の繰入限度額からその減少した所得金額に前年または前事業年度の所得金額に対する価格変動準備金勘定への繰入額の割合を乗じて計算した金額を控除したものを、その年または当該事業年度の繰入限度額とすることとしているのであります。
次に、土地収用法等により
資産が収用された場合の課税の特例について全面的な
改正を加えることといたしております。現在、土地収用法等により
資産が収用された場合には、その
資産が昭和二十七年以前に取得したものである場合に限り、当該
資産につき収用等により受ける補償金等の額を再
評価額として再
評価を行うことを認め、再
評価税の課税のみにとどめているのでありますが、この
制度は、昭和二十八年以後に取得した
資産が収用された場合にも軽
城
措置を講ずることが適当と認められますので、今回この
制度を改めることとしているわけであります。以下その
内容を申し上げますと、土地収用等により補償金等を取得した場合に、その補償金等により一定期間内に代替
資産を取得したときは、納税者の選択により、収用された
資産の譲渡がなかったものとして代替
資産につき圧縮記帳的な
処理を認めることとし、納税者がその選択をしないときまたは代替
資産を取得しないときは、収用された
資産の譲渡により生じた所得の二分の一に
相当する金額を非課税とすることとしているのであります。なお、新たに公有水面の埋め立てに伴う漁業権の消滅等についてもこの特例を適用することといたしております。
以上のほか、重要外国技術の使用料について現行の軽減税率による源泉徴収の適用を受ける範囲を縮小するとともに、その適用期限を昭和三十六年三月三十一日までとし、外貨により取得した公社債の利子等に対する所得税課税の特例を廃止することとしておりますが、既存のものについては、所要の経過
措置を講ずることといたしております。
また、航空機の乗客に対する通行税の特例
措置及び農地等の交換による所有権取得の登記の登録税の軽減
措置は、昭和三十六年三月三十一日まで、航空機の燃料用及び工業用揮発油に対する揮発油税及び地方道路税の免税
措置は、昭和三十八年三月三十一日まで、それぞれその適用期限を延長することとしております。
このほか、新たに低アルコール度の清酒及び合成清酒に対する酒税の特例を設け、アルコール度が十三度以上十五度未満のものについて、アルコール分に応じ比例軽減税率を設けることとしているのであります。
なお、本年十二月三十一日をもって期限の到来する貯蓄控除の
制度、輸出
損失準備金及び海外支店用設備等の特別償却については、これらの
措置の効果等に顧み、その適用期限の延長を行わないこととしております。
次に、
国有財産法第十三条第二項の
規定に基き、
国会の議決を求めるの件について申し上げます。
まず第一は、皇居内の路面舗装工事でございます。皇居内の新坂から内廷庁舎西口までの道路並びに内廷庁舎西口広場、元北御車寄付近及び義宮御殿玄関前広場は現在砂利敷となっておりますので、これを舗装しようとするものであります。
第二は、正倉院第二新宝庫の新営工事でございます。千二百年の長きにわたって収蔵保存してきた正倉院の宝物を永久かつ完全に保存するため、さきに、校舎にかわる新宝庫を新築いたしましたが、さらに、宝物をことごとく収蔵し、保存管理の万全をはかるため、第二新宝庫を新築しようとするものでございます。
以上御
説明申し上げましたものは、いずれも皇室用
財産として取得する必要があるわけでありますが、そのためには、
国有財産法第十三条第二項の
規定により
国会の議決を経る必要がありますので、ここに本案を
提案した次第であります。
最後に、
日本国とアメリカ合衆国との間の安全
保障条約第三条の
規定に基く
行政協定の実施に伴う
関税法等の
臨時特例に関する
法律の一部を
改正する
法律案について申し上げます。
この
法律案は、合衆国軍人、軍属等による免税輸入物品の国内における転売の
実情等に顧みまして、譲り受け物品に対する関税の課税価格の決定方法を改めて、課税の適正化をはかろうとするものであります。
以下、
改正の
内容につきまして簡単に御
説明申し上げます。
譲り受け物品に対する課税価格は、現在は、原則として同種物品が通常輸入により輸入された場合の輸入港到着価格を基準として決定することになっておりますが、通常輸入に対して為替及び貿易管理上の制限を行なっております結果、実際の譲り受け価格は、同種物品の通常輸入の場合の輸入港到着価格よりもかなり高いのが多いのが
実情であります。このような
実情に即した課税の適正化をはかるため、譲り受け物品に対する関税の課税価格は、国内における通常の
取引価格から税額等を控除して逆算した価格を基準として決定することとしようとするものであります。
以上が、この
法律案の
提案理由及びその概要であります。
何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成下さいますようお願い申し上げます。