運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1959-02-24 第31回国会 参議院 大蔵委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月二十四日(火曜日)    午後一時四十五分開会   —————————————   委員の異動 二月二十一日委員石原幹市郎君辞任に つき、その補欠として塩見俊二君を議 長において指名した。 本日委員林田正治君及び木内四郎君辞 任につき、その補欠として斎藤昇君及 び増原恵吉君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     加藤 正人君    理事            土田國太郎君            山本 米治君            大矢  正君            平林  剛君            天坊 裕彦君    委員            木暮武太夫君            斎藤  昇君            迫水 久常君            西川甚五郎君            廣瀬 久忠君            増原 恵吉君            小酒井義男君            小林 孝平君   政府委員    大蔵政務次官  佐野  廣君    大蔵省理財局長 正示啓次郎君    大蔵省管財局長 加屋 正雄君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君   説明員    大蔵省理財局経    済課長     庭山慶一郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○企業資本充実のための資産評価等  の特別措置法の一部を改正する法律  案(内閣提出) ○株式会社の再評価積立金資本組入  に関する法律の一部を改正する法律  案(内閣提出) ○接収貴金属等処理に関する法律案  (内閣提出) ○租税特別措置法の一部を改正する法  律案内閣送付予備審査) ○国有財産法第十三条第二項の規定に  基き、国会の議決を求めるの件(内  閣送付、予備審査) ○日本国とアメリカ合衆国との間の安  全保障条約第三条に基く行政協定の  実施に伴う関税法等臨時特例に関  する法律の一部を改正する法律案  (内閣送付予備審査) ○派遣委員報告   —————————————
  2. 加藤正人

    委員長加藤正人君) ただいまから委員会を開きます。  企業資本充実のための資産評価等特別措置法の一部を改正する法律案及び株式会社の再評価積立金資本組入に関する法律の一部を改正する法律案一括議題とし、これから質疑を行います。  質疑のある方は、順次、御発言を願います。
  3. 平林剛

    平林剛君 ただいま議題となった法律と最近の株高との関係についてお尋ねをいたしたいと思います。先般、当委員会参考人をお呼びして御意見を聞きましたところ、最近の株高に対してもこの法律一つ影響を持つことになろうというお話でございました。しかし、最近、株式市場にブームが来ているのは、いろいろな理由があると思いますけれども、私は、まだ、この法律が何か関係あって株高を押えるような役割を果すということについて、ぴんとこなかったわけであります。そこで、提案者側政府の方から、一体どういう関係が生ずるかという点について、御説明をいただきたいと思います。
  4. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 御指摘のように、最近の株式市場相当活況を呈しておることはお話通りでございます。この原因はいろいろ言われておりますが、基本的には、株式需要供給関係におきまして、需要が非常に強い。これは、国会の当委員会におかれましても、かねがね証券民主化というふうなことには相当の力を入れておられたことは当然でございまして、われわれ、またその線に沿うて始終施策をいたしておるわけでございますが、そういうことから考えまして、一般大衆株式投資ということに大へん興味を持ち、またそれが相当実行されておる。こういうことから、株式需要が非常に伸びてきておる。これに対しまして、いろいろ、先般の当委員会におきまする参考人に対する御質疑等にも現われておりましたように、株式供給をふやす面、すなわち、もう少し具体的に申しますと、増資をする面におきまして、税制等がいまだ十分これを容易ならしめるようにできていないという点があるようなことも一つ理由で、大体におきまして、今日株式需要が非常に超過しておるということは一つの常識かと思うのであります。さような意味におきまして、株式一般に強調を呈しておるわけでございますが、  なお、ここに提案を申し上げております法律案との関係についてでございますが、これは、たびたび申し上げました通りに、実質的な意味におきましては、勘定科目を振りかえるというようなことに終るのでございますが、一応とにかく、ノミナルな意味におきましても、株の供給という面におきましては、供給面をふやす、こういうことに相なるわけでございまして、これは、従いまして、一つ傾向から申しますと、需要供給の面におきましては、需給のバランスをとる一つファクターになって参るということにおいて、私どもは、株式市場正常化にも寄与するものと、かように考えておるのであります。ただ、さしずめの影響といたしましては、これは新聞等にも報ぜられましたように、若干のいわゆる無償交付というふうなことを織り込みまして、これが市場一つの期待というふうなところから、その当座といたしましては、株式関係におきまして、むしろそういう一つプラスファクターとして株式の市価に考えられることも一つの事実でございます。ただ、それはすでに御承知のように、本法律案提案いたしますことは、今日の市場においては織り込み済みでございまするから、今後の影響といたしましては、先ほど申し上げましたように、需要供給バランスをとつていく、すなわち正常化に寄与していくものと考えておる次第でございます。
  5. 平林剛

    平林剛君 昨年来から、日本経済の実態から見て、非常に株の値段が高いということは、世間からも異常な株の値段として注目を浴びておつたところであります。そしてこれが一体一般経済にどういう影響を与えるか、私ども、しろうとでありますから、よくわからないのでありますけれども、今のお話でもわかりますように、企業資本充実のための法律案が通過をすることになると、そうでなくても高い株の値段が、さらに高くなっていくのではないかという傾向を感ずるのであります。今のお話だと、すでにこの現在の株式市場においては、資本充実法の成立ということも一つプラスとして値段に織り込んであると、そういうふうに見てよろしいのでしょうか。
  6. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) これはすでに御説明申し上げましたように、今回の措置によりまして、具体的に影響のあります会社が大体九十社程度組み入れの総額におきまして大体三百億ぐらいという計数は御説明申し上げたと思うのであります。それらの具体的な会社株式につきまして、まあ株式無償交付が行われるというふうなことが、この政府案を発表いたしました当時の新聞経済評等に若干あったことは事実でございます。これを、私は、先ほど申し上げましたように、織り込まれておるという意味に申し上げたわけでありまして、そういう銘柄等につきましては、これは一つプラスファクターであったということがいえると思うのでありますが、それは、しかしながら、そのときの一つの事実として考慮に入れられたのでございますが、結局、株式無償交付ということは、さらに、先般も参考人からお述べのように、これに関連をいたしまして、有償増資を伴うというふうなプラスのアルファの面もございまして、全体としては株式供給をふやすということに相なるわけであります。そこで、冒頭に申し上げました需要供給関係から、需要が非常に強いという面に対しましては、むしろ供給を増加するという長い作用の方が重視さるべき事柄ではないか。  今日の株価状況につきましては、むしろ、われわれといたしましては、この企業収益が、三月期決算あるいは九月期決算というふうなものを分析をいたしまして、最近の経済新聞等に盛んに報道されておることは、平林委員も御承知通りと思うのでございますが、そういう会社業績がだんだんよくなって参るということを主といたしまして、非常に買い気が旺盛であるというふうな面が非常に多くありまして、もはや今日におきましては、この企業資産評価一つ処理の法案を材料として、強気が出ておるというふうには見られない、かように考ておる次第でございます。
  7. 平林剛

    平林剛君 ことしの予算の積極的な性格、それからまた、政府の見通されるように、将来の景気の好転、また、公定歩合の引き下げでわかりますように、金融面における緩和、それから今御説明のようないろいろなことを考えますと、ことしは、企業資本家においては、相当数将来に向って再び施設の拡充や合理化をはかるという機運が出てくる。そのために増資もかなり多くあるだろうという見通しから、大衆投資家一つ株を買うてやろうというような気分になって、いろいろな要素がはね上って今日の株高になっているのではないか、こう見られるのでありますけれども政府としては、ことしは、全般の見通しの上に立って、この法律も含めて、一体どのくらいの増資が行われるだろうと、そういうことについての何か御観測がございますか。
  8. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) これはなかなかむずかしい、いわば経済一つ観測の面になって参りまするので、はっきりしたことを申し上げることはむずかしいのでございます。ただ、今お述べのように、大体におきまして、やはり今日の株式市場状況、その他企業が次第に業績が好転しておる、すなわち若干の収益向上等によりまして、増資の能力ということもだんだんついておるというふうな点、これらの点を総合して考えますと、私どもとしましての控え目な考え方にいたしましても、この三十四年度は三十三年度よりは相当伸びていくのじゃなかろうかということは、一応申し上げて差しつかえないのじゃなかろうかと考えております。この数字は、なかなか、申し上げて当るか当らないか、八卦のようなことにもなりますので、大体の傾向値といたしましては、まあ三十三年度よりはある程度伸びて参る、そうしてまあ三十二年度あたりよりはなお若干伸びるのじゃなかろうかというぐらいの程度考えております。  しからば、三十二年度はどのくらいあったかという数字を御参考に申し上げますと、三十二年度は全体で有償増資が、この全国株式取引所に上場されておりますもの、及びその株式店頭取引されております会社につきましての有償増資が、三十二年度は千八百億ぐらいでございます。これに対しまして、やはり同じ全国上場及び店頭取引会社無償増資が百五十四億くらいになっておりますから、合せまして大体二千億近いところにいっておると、こういうふうに見ておるわけでございます。
  9. 平林剛

    平林剛君 ただいま御説明になりました有償無償合せて約二千億に近い増資が昨年あった。ことしはそれよりさらに上回るだろうということになりますと、現在の株高ということは、なお先に行ってもっと伸びるのではないかというふうに、すぐ私は受け取つてしまうわけであります。けれども、これに対して、現在政府株式市場に対してどういう手を打つべきか、あるいはどういう考えを持ったらいいだろうかということは、いかがですか。
  10. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) これは大へん大切な問題でございます。私どもは、株式市場に対しましては、政府の立場におきましては、株価が高過ぎる、あるいは低過ぎるというような批判は差し控えております。これは自由に買手と売手とのいわゆる需要供給の一致するところにおいて形成されていくべきもの、かように考えておるのであります。ただ、先ほど申し上げましたように、戦後の日本経済一つの大きな方向といたしまして、経済民主化する、また証券民主化ということが強く叫ばれて参ったのでありまして、現に個人の投資家というものが、戦前等に比較いたしますと、相当ふえていることも事実でございます。そこで、こういう健全な投資意欲といいますか、投資に対する関心というものを今後も維持向上さしていくということは、これは一つの大きな大切な施策かと考えておりますので、そういう大衆投資家不慮損失を与えないようにする、これは当局として最も大切な点かと考えておるのであります。  そこで、昨年来、昨年の一月ごろから十二月までの経過を振り返つてみましても、株価というものは大体大きな破乱もなく、まあ堅実に上昇の過程をたどって参ったのでありますが、その間若干、いわゆる信用取引と申しまして、日本証券金融会社その他の証券金融会社におけるいわゆる差引残高、こういうところが若干増加のあとがございます。かような点を注目いたしまして、私どもはさっそく、そういう一種信用取引のふえる傾向に対しては、前後四回にわたりまして注意を与え、また、具体的にいわゆる担保率の引き上げ、あるいは掛目を引き下げるというような措置を講じまして、今日におきましては、御承知のように、信用取引のこの膨張傾向というものは完全に抑止されております。そこで、本年に入ってからの株界は大体実物取引ということに相なっておるのでございますが、その実物取引の面におきましても、御指摘のように、需要供給関係から、今後もなお騰勢を続けていくんではなかろうか、こういうお見通しは大体その通りであろうかと思うのであります。  問題は、堅実に伸びていく、これは一つ日本経済を象徴するものでもあり、それは私どもとしても望ましいことでございますが、いわゆる利回り採算等の面に現われておりますように、若干行き過ぎが起って、その反動として急激な下落が生ずるというようなことになりますと、先ほど申し上げた善良なる投資家に対して不慮損失を与えることにもなりかねないのであります。で、堅実に伸び、しかも大きな反落がないというような株式市場の実現が一番望ましいわけでありますので、私どもとしましては、今日の実物取引中心とする市場に対しても常に、そういう面におきまして行き過ぎのないように、また一部のいわゆる投機家、スペキュレーターの操作によって若干の銘柄が非常に波乱が多い動きを示すというようなことになりますと、ついそういう株に手を出して、けがをされる方が多いわけでありますから、いわゆる品薄株というようなものに対しての毎日の取引状況等につきましては、証券取引所中心実情をよく調べまして、一般の善良な投資家方々に御迷惑のかからないように、まず証券界は全体としていわゆるモラルを向上させ、一般投資大衆方々の信頼にこたえていく必要がある、こういうことを指導原理にいたしまして、具体的に御注意を申し上げておるような次第でございます。従って、フェアな取引によりまして株価が漸次堅実に伸びていくということは望ましいことでございますが、それが一部の投機家の思惑によって波乱を生じ乱高下をするというようなことの極力ないように、私どもとしては証券行政のねらいをここに定めましてやって参っておるような次第でございます。
  11. 平林剛

    平林剛君 ただいま御説明になりましたような株式市場に対する政府考え方はよくわかりましたが、今日まで行われてきた投資信託に対する自粛、あるいは今お話しのように、信用取引に対する措置など、一連の考え方の以外に、これから先の株式市場考えて、何か新しい規制をやる必要はない、現在はまあ静観をしていってよろしい、それぞれ業界自粛に待っていくという考え方でよろしい、現在は新しいことは考えていないと、こう理解をしてよろしゅうございますか。
  12. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 私、先ほど申し上げました趣旨の中から、今仰せのような結論をお引き出しになりますと、若干私ども考えと違っております。一応、私は昨年以来の証券市場分析を申し上げたわけです。そこで、ただいまの段階は一応、信用取引の警戒すべき面というものは大きく後退して、実物中心市場になっておる、しかし、ここにも種々注意をすべき問題があるということを申し上げたわけでございますが、非常に大きく後退いたしました信用取引も、これは必ずしもそれっきり衰えてしまうものでもないと存じます。今後の金融情勢等において、先ほどお話しのように、資金面のさらに潤沢な資金ということも予想して参らなければなりません。従って、これを端的に現わしておりますところの信用取引取組状況あるいは証券金融会社融資残高状況、これらは常に注意をいたしております。今日は比較的落ちついておりますので、今差しあたりどうということはございませんが、それらが、さらにこの信用取引増高傾向になりました場合には、あらためて信用取引の面からの規制ということも考えて参らなければならぬことは当然かと思います。しかし、今日はいまだそういう徴候は出ていない、こういうふうに申し上げた次第であります。  なお、実物取引中心にする市場でございましても、申し上げましたような取引所あるいは証券業界というようなそれぞれの団体なり機関におきまして、なすべきことが多々ございます。最後にはもとより大蔵大臣監督権が発動する余地もあるわけでございますから、これらにつきましては常に注意をいたしまして、いわゆる不健全な傾向については、時を失せずしてこれを是正していくような措置を講じたい。  そういう面から、今日の証券業に関するいろいろな規定、これについても私どもは必ずしも現状でそのままよろしいとは考えておりません。たとえば、手近なところで申しますと、取引所定款等におきまして若干改正を要する面があることも認めておるわけであります。たとえば会員——承知のように、取引所会員制度でございますが、会員に対する監督権検査権、あるいは報告を求めてその報告に対して措置をする権限等につきましても、具体的に取引所が今日持っておる権限なり責任で十分であるかどうかということは、これは毎日の取引状況に照らして判断をいたしております。従いまして、それらについて改正をする面は時々これは改正をはかつて参るつもりでございます。  なお、お言葉の中にございました、たとえば投資信託証券投資信託等につきましても、私どもとしましては、御承知のように、今日まで順調な伸びを示しておりますが、今日相当、これは二千百億をこえる大きな資金になって参りました。こういうものを、証券会社が、みずからその受益証券を売ると同時に、そういう財産委託会社になっておるのが今日の制度でございますが、証券会社委託会社になることが今日の状況において適当かどうかということについては、十分検討を要する問題といたしまして、将来の方向としては、これを大体特別の委託会社というものを設けまして、そしていわゆる受益証券販売会社委託会社、これの委託を受ける信託会社というふうな、三つのそれぞれ独立した機関に分離して参るというふうな方向がむしろ正しいのではないかという考え方をもちまして、これらについてはほとんど具体的に研究を進めておる段階に来ております。業界においてもそういう点については十分研究いたしておりますので、これらはいずれ成案を得まして改正の運びに持っていきたいと考えておるのであります。  まあそういう意味から、われわれとしては今後も、大きな意味で、直接投資を奨励し、経済民主化ということの改造に国民大衆が信頼され、不安感なしにその方向に進まれるように、いろいろの制度を整備して参りたいと考えておりますから、一方では堅実な株価上昇ということは望ましいことでございますが、それをささえていくりっぱな取引の場というものを作つていくためには、十分これから研究をして改正を要する面が多々あると、こう考えておるのであります。
  13. 平林剛

    平林剛君 最後に、これは念のためにお尋ねをしておく問題でありますが、政府としても、最近の株式市場から、いろいろの配慮をしておることは、よくわかりました。その中で、証券会社に対する業務内容ですか等についてもいろいろ目を届かして、大衆投資一般経済に悪影響のないように配慮をしておると思いますけれども、現在、現状において何か問題があるようなところはございませんか。
  14. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 証券界全体として、先ほど申し上げたような点について、今後もなお改善をはかっていく必要があると思っておりますが、当面の証券業界におきましての一番の問題は、やはりいわゆる大証券中小証券との関係であろうかと思うのであります。この大証券中小証券は、まあいわば日本経済の縮図のようなものとも言えるわけでございまして、大企業中小企業というふうなものの関係にも通じておるかと思うのであります。私どもといたしましては、これはどこまでもこの証券界全体を、先ほど申し上げたように、健全に育てていく必要を考えておりますので、これからの問題といたしましても、ぜひとも大証券、中証券、小証券、それぞれところを得て、証券界全体の中にりっぱに機能を発揮していただきたい、こう考えております。  しかし、当面においては、若干そこにやはり無理があることは事実でございまして、現に中小証券では、今日のような証券界相当活況を呈しておりますときは、そうでもないのでありますが、これが一たび不況になって参りますと、どうも業務を継続していくことが困難だというふうなものも中には出て参るわけであります。そこで、証券界全体がむしろ今のように活況を呈しておるときに、中小証券業者等につきましては、やはりそういう繁栄のときにむしろ非常の事態に備えるような堅実な経営をやつていただく必要がある、こういう意味から、私どものやっておりますことは、少くとも年に一度は必ず各業者検査をいたしまして、そしていわゆる負債倍率流動負債流動資産関係中心に、経営堅実化ということに非常な力を入れて指導をいたしております。大体、私どもはこういうことによって、あまり不健全なものを営業さしておるということはないと思うのでございますが、中には、なかなかこれは一種の行政的な検査でございまして、強制権を伴っておりません関係で、場合によりますと、見落し等もあり得るわけでございます。そういうことのないように極力努力はいたしておりますが、やはり相当、五百数十社というふうな多くの業者でございますから、中にはそういうものもありまして、これらが不始末をいたしましては、証券界全体の信用にかかわるというふうなこともございます。なお、今後一そうの努力をいたしまして、さようなことのないように注意をいたしたいと考えておる次第でございます。
  15. 大矢正

    大矢正君 二十九年に特別措置法律ができて、自来今日まで、評価益資本への組み入れが行われておるのですが、大体前の法律を作るときには見通しとして年限を限られたということは、その年限の以内において相当大幅な資本組み入れが可能じゃないかというそういう考え方のもとに、おそらく年限が切られたのではないかと私は思うのですが、その点はいかがですか。
  16. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) お答えを申し上げますが、大体現行法が、本年の九月でございますか、九月の決算期までということになっておりまして、これは当時の配当水準等から見まして、一割五分というふうなことにいたしておきまして、組み入れを間接的に促進するという考え方相当効果があるものと考えていたしたことは、御指摘通りかと存じます。しかるに、その後におきましては、御承知のように、配当水準も漸次低下をして参りまして、大体こういう制限というものがあまり効能を発揮しなかったのであります。そういう点から、当時考えていたほどに組み入れが促進されていないというのが大体の実情かと考えております。
  17. 大矢正

    大矢正君 三十三年末現在の一括した組み入れ年次別内容というものが、ここへ資料としてあなたの方から出されておるのですが、これは産業別に再評価積立金がどの程度あり、しかも、組み入れをどの程度行い、かつ、どの程度取りくずしたかという資料といいますか、そういうものはありますか。
  18. 庭山慶一郎

    説明員庭山慶一郎君) 全体のものは、お手元に差し上げましたような資料で、組入率が大体一七%ぐらいになっておりますが、業種別に見ますといろいろございまして、私どもの方で資料は一応検討しておりますが、あまり煩瑣になりますので、要点だけを御説明申し上げますと、電力業は再評価積立金が非常にたくさんございましてこれの組入割合は、電力会社収益状況もございまして、非常に悪うございます。大体五%余りしか入っておりません。でありますから、それを除きますと、お手元に上げましたような資料で電力会社を除きますと、大体二六%ぐらいになっておりますが、二六%の中の内訳を大体傾向的に申しますと、陸運業、つまり地方鉄道でございます、そういうものが非常に悪い。これは、そういう地方鉄道業は、運賃等の関係がありまして、収益力が伴いませんので……。それからその次に、機械メーカーが比較的少い。それから倉庫業でございます。こういうものも料金の統制を受けておりますので、少うございます。それから金融保険業、これは銀行経営の特殊性にかんがみまして、現在はまだそれほど組み入れておりません。しかし、その他の業種につきましては、特別に顕著な特色はございません。大体相当組み入れておると思います。で、一般的に申しまして、収益率の高い企業は、あるいは半分、中には八割程度組み入れを終つておるようなものもあるようでございます。
  19. 大矢正

    大矢正君 この再評価積立金というものは、実際問題として、将来どういうことになるのですかね。かりに二年間なら二年間の法律の延長と、それから組み入れない場合の配当の制限を行うわけですが、それでもなおかつ、膨大な積立金というものが二年後もなおかつ残るというような事態があった場合には、どういうことになるのですか。
  20. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) これは私どもも、今回の時限法が期限が参りますので、それをどうするかという過程において、非常に突っ込んで問題とした点でございます。で、非常に短兵急な考え方としましては、たとえば、残りの相当——まだ一割七分強しか入っておりませんから、八割二、三分のものをどうするかという問題がございますが、短兵急に、もう全部とにかく一定の期間内に、たとえば三年なり四年なり五年なりの間に全部処理をしてしまへというような議論もあったわけであります。で、これは一つの方法かと思います。いずれにしましても、その間に処理をつけてしまつて、本来のあるべき姿に再評価積立金というものを処理をしてしまうということも考えられるところであったのでありますが、これはしかし、御承知のように、これからは経済の安定的な成長ということを主眼にいたしておりますから、まあ、それにねらいをつけてやればやれないこともないかも存じませんが、しかし、それはやはり一つのリスクを含んでおることであるから、やはり今御説明申し上げましたように、業態によりまして、ずいぶん収益等も違っておりますから、やはりこの際としましては、漸進的な方向をとった方が安全である、こういう考え方をとりまして、大体二ヵ年ぐらいの期間を定めまして、従来の規制を若干強めたところで間接的な強制をして参ろう、こういう  結論に今結局到達いたしたのであります。   そこで、ただいま大矢委員の御疑問は、二年後に相当組み入れが行われるとして、なお残るやつは一体どうなるかというお話でございますが、これは、二年後の経済の状態等を見まして、今度は最終的な処理案を作り得るか、さらにまた今回のような方法で間接的な強制の度合いを強めて、引き続いてそういう施策をやっていくか、これはそのときの経済情勢を判断いたしまして決定すべき問題じゃないかと考えております。少くとも今日の私ども考えといたしましては、先般来当委員会でもいろいろ議論がございましたように、資本の充実ということは今後非常に大切なことでございますが、それのための施策というものは、なお多く残されております。それらの施策ともあわせ考えまして、今後二年間の情勢をよく考え合せて、その次にとるべき方法を考えていく。従って、間接的にいくか、あるいは直接一挙に処理するかは別といたしまして、漸次この積立金というものはあるべき姿の、いわゆる資本組み入れられる形において処理されていくことは間違いない、こう考えておるのであります。
  21. 大矢正

    大矢正君 全然、将来に対する、いつごろまでにめどがつくかということが不明のままにやられるということになるわけですね、結局そうなると。
  22. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 不明というわけではございませんので、先ほど申し上げましたように、前回の、五年前になりますが、法律をおきめいただいた際におきまして、一割五分という一つ配当水準、これに対して三割以上の組み入れということを想定をいたしまして、これで相当の効果が上るという一つの目安を立てたのでありますが、今回は、提案を申し上げておりますように、二つの限界を設けまして、その規制の間接的な効果ということによって相当程度にその方向に推進できるということは、たびたび申し上げた通りであります。二年後のことについて、的確に今どちらにするかというふうに、まあこの際断言しろと言われますと、これは二年後の情勢を見ないとはっきり申し上げかねるのでございますが、方向といたしましては、これは先ほどお答え申し上げましたように、漸次あるべき姿になっていくという考えでございます。また、経済の諸般の施策は、大体ねらいをそこに置きまして、企業資本の充実ということが、先般もお話がありましたように、日本経済の体質改善の重要な項目になっているのでございますから、私は今申し上げたような方向に進むことについては、はっきりと見通しとして申し上げて差しつかえないと、かように考えるわけであります。
  23. 大矢正

    大矢正君 日本経済のこれからの総体的な伸びの問題とか、もちろんそれが産業別、業種別にはいろいろ異なった形が出てくると思いますけれども、大体政府経済五ヵ年計画に基いて現実に経済政策を進めているのだから、そういう計画がある限りにおいては、さらに今後二ヵ年間延長をする過程の中では、この法律改正によって、単に延長だけでなくて、制限の強化をやっていくわけですから、これを通じてどの程度組み入れが可能なのか、こういう点については見通しありませんか。
  24. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) この前御説明を申し上げたと思いますが、大体、今回のこの措置によりまして、直接規制の対象となります会社が大体九十社程度、そうして組み入れの対象となる金額は大体三百億程度と、こういうことを申し上げた次第であります。
  25. 大矢正

    大矢正君 そうすると、この二年間の間は三百億程度しか見込みがないという意味になるわけですか。
  26. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) ただいま申し上げたのは、いわば直接的に対象となる再評価積立金の額を申し上げたのであります。先般の参考人の供述でも明らかな通りに、こういうことをいたしますことが、一般的に資本充実の考え方を非常に鼓吹するのみならず、この無償交付自体が多くの有償増資を伴って、それがプラス・アルファの効果として期待できる、こういうふうにわれわれは考えているのでございます。ただいま御質問は、直接の金額を御指摘でございましたから、一応お答え申し上げましたが、これに伴って生じます有償増資の見込みというものは、的確に申し上げかねますが、相当額に上るものと、かように考えている次第であります。
  27. 大矢正

    大矢正君 今の実際の株の配当現況を見ると、特別な株は別としても、ほとんどが一割五分以下で、一割二分、一割というのが一般的じゃないかと私思うのですが、そうなって参りますと、ここで制限の強化を行なっても、あまり今まで以上に多くを期待することは困難じゃないかという気がするのですが。
  28. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) これはまあ一つ、先ほど申し上げましたように、短兵急に、たとえば一割まで下げてしまってやるというのも一つの方法であり、さらにもう、一定の積立金組み入れをしなければ、かりに六割とか七割とかという非常に高率の組み入れをしなければ、非常に低い配当でもできないというふうな考え方も、理論的には可能でございます。御指摘の点はあまり、先ほど申し上げた数字は、そういうひっかかりの効果というものは少いではないかというお感じかと思うのでありますが、まあその点を実は最近、申し上げたように、われわれとしてはいろいろな場合を想定いたしましたが、結局、漸進的に進んで参る。これはまあ建前として、あらためて申し上げるまでもなく、企業が、その企業状況によりますれば、今日企業の自主的な判断で再評価積立金を全部資本組み入れるということが許されるという企業、これが条件がよい企業等においてはそういうことが可能でございますが、そういうこともむろんできるわけでありますが、私どもとしましては、まああまりフリクションの強くないような一つの最低の線を求めまして、五割以上組み入れなければ一割をこえる配当はできない、三割以上を組み入れなければ一割二分をこえる配当をすることができないというような、一つのモダレートな線と仰せになればモダレートな線でございましょうが、そういう線において一つの誘因を作る、きっかけを作る。そうしますと、これが企業に対して、先ほど申したように、一般的に資本の充実ということの思想を鼓吹することにもなり、また、それがこの再評価積立金組み入れということだけでなく、これに関連しまして、無償なり有償なりの増資を伴つて、それが企業資本の充実に寄与する、こういうことをねらったわけであります。  従って、これ自体が非常にプラスチックでないというお感じは、これは仰せの通りかと思いますが、これらは、全体の産業界をながめ回して、あまり無理のない線で今申し上げたような効果を上げていくためには妥当な一つの線ではないか、こう考えておる次第であります。
  29. 大矢正

    大矢正君 今までの経過を見ると、一七・九%ですか、一八%に満たないというようなことで、事実こういう法律が作られても、その法律ができたことによって、積極的に組み入れが行われているというようにもあまり考えられないような気がするのですがね。それはまあ別としても、もう一つお伺いしたいのですが、今まで行われた組み入れの中で、特に無償増資有償増資の度合いというのはどんなふうになっていますか。
  30. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 御趣旨は、一七%の組み入れに伴って、どの程度有償増資なり無償増資がこれに伴って行われたのか、こういう御質問の御趣旨かと思いますが、これはまあそう厳密にそういう調査はいたしておりませんので、先ほど申し上げたように、相当のものをまあさそっておるということだけは、事実として申し上げることができるかと思います。まあ実際会社経営の面でございますので、これだけは積立金組み入れに伴った増資であるということを実ははっきりと証拠立てるような材料は手元に持ち合せませんが、相当それらが一つの刺激となって、申し上げたような有償増資あるいは無償増資というものが行われておる、こういうふうにわれわれは考えておるわけであります。もし、しいて必要というお話でございますれば、具体的に二、三の会社につきまして、増資の行われた会社につきまして、まあ調べることはできるかと思います。
  31. 大矢正

    大矢正君 資本金の多い会社の場合には、比較的に配当増資をすることによって下るとしても、下る率というものは少いわけですよね。しかし、実際資本金があまり多くない、資本の少い企業では、大幅に配当が下落するというようなことから、積極的に組み入れも困難だ、増資も困難だということに私はなると思います。今まで数字が出されて、どういう産業が比較的組み入れがおくれているか。まあ八〇%も積極的に進められているというような話がありましたけれども、大体今言ったように、資本金の多いところは、比較的……。組み入れと、その無償有償を問わず、増資というものは積極的に実際の姿としては進んでおるものですかね。
  32. 庭山慶一郎

    説明員庭山慶一郎君) ちょっとこまかい数字の問題に関連するので、私から便宜御説明させていただきたいと思いますが、今おっしゃいました配当率が現在高い会社増資をします場合には、あるいは無償増資あるいは有償増資をします場合に、配当率を急激に下げなければいけないということでございます。それはその通りでございます。で、私ども今度の改正考えておりますのは、大体株価が高い会社、つまり過小資本収益率が名目的に高くなっておって、だから配当率も名目的に高い会社を、もっぱら対象といたしておりますから、そういう会社無償増資なり有償増資をします場合は、配当率は急激に下ることは確かでございます。だけれども、それらの会社収益率が高うございますから、株価が、たとえば五十円払い込みの会社の株が二百円なり三百円なりしているというものがたくさんございますから、それによってその会社がたとえば額面割れをしても、以後増資ができなくなるというふうなことは全然考えておりません。やはり一つのこのねらいは、そういうふうに何と申しましょうか、会社資本の実態を明らかにして、そうして適正な収益率なり適正な配当率にしたいということをねらっておりますので、そういたしませんと、直接投資をいたします場合の企業比較というものができないということになります。だから、そういうところが一つのねらいであります。  それで、現在配当率が低くて、株の値段が額面よりあまり上っていない、六十円とか七十円という会社で、その会社が今度増資いたします場合には、大体そういう会社はおおむね資本金が大きくなっております。場合によっては再評価積立金をたくさん組み入れまして適正な資本になっておりますから、そういう会社は現在配当率が少い。ですから、その後の企業努力によりまして収益状況が上ってきたときに、今度増資をするということになります。その場合に、一割二分の配当をしていた会社が——たとえば二割の配当をした会社増資をして一割にした場合と同じように考えて、一割二分の配当をしておる会社が今度増資をします場合に六%にするかというと、そういうことにはならないのであります。その場合の配当率の低下はうんと低い。大体現状配当が続けられるようになったときに増資をするというふうになると思います。そのほかにもう一つ配当率の問題としましては、全般的に金利が下りますから、今までだったら一割配当しなければ額面を維持しないのが一般的常識であっても、一年なり二年たちますと、八%でも額面通りあれするようになる。そういう傾向は数年前から現在までずっと続いておりますし、現在から今後にも続くだろう。それらを勘案しまして、今度の標準をきめたわけでございます。  なお、先ほど有償増資無償増資はどれくらい抱き合せしたかというお話も承わりましたが、これは個々の会社によっていろいろ——通常の場合は全額無償ということはあまりやりませんで、会社としては、増資をやる以上はやはりその無償に抱き合せて少しでも有償増資をするというのが常識でござ  いますから、全額無償増資は非常に少うございます。大体多いところで半額抱き合せとか、二割抱き合せとか、一割抱き合せ、まあ二割抱き合せぐらいのところが一番多いのでございます。  それから、お手元に差し上げております資料で、年度別に組み入れ状況がずっと出ておりますが、この金額、この表にはちょっとございませんが、たとえばこのお手元に差し上げました表の右上のところに毎年の分がございます。ここに二十六年から三十三年までの上場会社無償組入額があるわけでありますが、これに対応してそれぞれ二十六年から三十三年までどれだけ有償増資があったかということを申し上げましたならば、一般的に見て大体どれくらいその抱き合せがあったか、どの程度有償増資が行われたときにどの程度無償が同時に行われているかということを理解していただくために役立っと思いますので、ちょっと、非常に恐縮でございますが、申し上げてみますと、この表で二十六年では、たとえば上場会社のところを見ていただきますと、三十九件で百七億とございます。このときの有償増資は八百三十六億でございます。八百三十六億に対して百七億の無償があったわけです。個個の会社について見ますと、全額有償があったり、全額無償があったり、抱き合せ増資があったりいろいろでありますが、大体のウエートを知っていただくためにはそれで十分であると思いますので申し上げておきます。それから、二十七年は有償増資が千三百四十三億あったわけです。それに対して百四十二億の無償でございます。だから、平均的に見ますと、大体一割くらい、一割強でございますね。昭和二十八年は千九百二十六億の有償に対して百四十七億、二十九年は千四百十七億の——ちょっと間違いました、非常に失礼でございますが、初めから申し上げますと、二十六年の百七億につきましては、二十六年の上場会社増資が大体五百二十億でございます。五百二十五億に対して百七億、それから二十七年は八百九十七億に対して百四十二億、それから二十八年は千百六十五億に対して百四十七億、それから二十九年は有償が八百九十三億に対して二百十五億、それから三十年は六百六十一億に対して百八十億、それから三十一年は、このときは増資免税の期間が切れたりいたしましたので、有償増資が集中いたしまして、二千百七十九億あったわけです。それに対して四百五十三億、三十二年が千八百億、これはちょうど千八百億に対して三百億という格好でございます。三十三年はまだちょっと数字が示されておりませんが、大体千六百億くらいになるのではないかと思います。さようなことでございます。
  33. 大矢正

    大矢正君 前の国会でこれが論議をされたときも、法案のような形ではなかなか組み入れが促進をされないから、もっときつくすべきじゃないか、配当制限をですね、というような、非常に意見があったんだけれども、どうも私どもが聞くところによると、証券業者なんかの反対等があって、まあそういう六、七分の配当制限で押えるというようなことが不可能になったというようなふうにも聞いておるわけなんだけれども、実際に配当制限を強化して、もっと積極的に増資をさせるというようなことが、結局のところ、証券業者等株価に対する問題や、まあそれが中心になると思うんですが、そういうようなことが今日の場合にもあって、まだこういうようななまぬるいいわば配当制限が行われているわけですがね。
  34. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 前回の場合及び今回の場合におきましても、証券界から要望があって、この組入率あるいは配当制限の割合というものをゆるめておるという事実は全然ございません。むしろ、大矢委員の御趣旨でございますと、これでは組入率なりあるいは増資の奨励としては手ぬるいんじゃないか、もう少し組み入れがよく行われ、またそれに伴う有償増資等ももっと行われるような効果的な措置をしたらどうか、こういう御趣旨かと思うのでございますが、これは、ところが、先ほど来たびたび申し上げますように、それぞれの業態によりまして、先ほども説明をいたしましたように、ずいぶん違って参ることはごらんの通りであります。そこで、そういう先ほどの実情から申しまして、たとえば昨年あたり非常に操短をやりまして、いわゆる調整過程を経たようなものもございます。また、いわゆる経済基盤産業といたしまして、なお多くの公共投資を必要とするような産業もございます。こういうふうないろいろの産業界実情を見ますると、今一挙に非常に強力な強制措置を講ずるということは、全体の経済の政策の見地からいって不適当である、こういう判断をわれわれはいたしたわけであります。これが一部の業界の、あるいは証券業者というふうなものの利害関係からさような考えを持ったということは全然ございません。
  35. 平林剛

    平林剛君 今の点でちょっとお尋ねいたしたいのであります。一昨年ですか、昭和三十二年の十月、大蔵省ではこの資本組み入れに関して相当程度大幅に組み入れるという案を作ったという話を聞いているのであります。ところが、それは今回の法律案として提出されるに至らず、結局、資産評価審議会でまとめ上げた結論が今回の法律案になったと聞いているわけなんです。証券業界の方の運動があったかないか、これは別にいたしまして、当初大蔵省が考えられた相当積極的な組入案が、今回のような形にゆるんできた理由はどこにあるか。
  36. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 一昨年になりますか、私どもとしましては、今回のこの時限法が期限に来ることを想像いたしまして、部内でいろいろ研究をしておりました。それらの案が一時一部の新聞にも報ぜられた事実はあったようでございますが、これはまあ必ずしも当局の案というよりは、むしろそういう立案の過程における一つ考え方なり意見なりというふうなものが、若干新聞に報ぜられたようなことであったと思うのであります。  そこで、先ほど大矢委員にお答えをいたしましたように、われわれとしては、現在の経済実情というものを中心にいたしまして、これに対していろいろの業界の態様があるわけでございますが、たとえば積立金の八割というふうなものを一挙に組み入れを強制するということは、どういう影響を持つかというふうに、具体的に検討をしておったわけであります。これは各般の産業にわたりますので、しかも、その後において、平林委員も御承知のように、大きな経済の動きもございまして、調整過程を経て参つたわけでございまするから、産業の実情というものについては、相当これは込み入った分析を必要といたしたわけであります。今日のわれわれの提案に対しても、一部の産業界ではこれは相当むずかしいというふうな御判断もあろうかと思うのでありますが、しかし、これは大勢として、資本の充実という施策を強力に進めていくためには、今日程度のものは最小限度必要であるという結論に到達いたしましたので、今回のような提案をいたしている次第であります。従って、一昨年の、一部に報道せられましたような案というものは、これは全然われわれの最終案というものではなくて、その過程における一つの意見等が報ぜられたのでありまして、これを、たとえば先ほど申しましたような基幹の産業は、昨年以来の調整の過程を経た産業というふうなものの実情から比較検討されましても、大体今日われわれのやり得ることは、ここに御提案を申し上げましたようなところが妥当な線ではないかと、今でもそういうふうに確信をいたしている次第であります。
  37. 平林剛

    平林剛君 まあ三度目の正直という言葉があるけれども、これはまあ四度目だね、資産組み入れというふうな措置をおやりになるというのは。まあ今お話しのように、三十二年十月当時はいわゆる神武景気と呼ばれたので、大蔵省としてもこれはまあ最終的結末をつける段階だとして、相当な積極的な構想を立てたものと私は見るわけであります。今回の提案は最終的な処理とみなしていないように、法律案文その他を見——まあこれはあとはあなたの方の質問にはならぬかもしれませんけれども日本経済に対する見方というものも、まあいわば法律案に端的に現われたような感じがするわけですね。まあこれは、いずれまた大蔵大臣でも来たらいろいろお尋ねをすることにいたしますが……。  最後に、資産評価審議会のメンバーというものをちょっと聞かしておいていただけませんか。
  38. 庭山慶一郎

    説明員庭山慶一郎君) 再評価審議会のメンバーでございますが、これはできましたのが、たしか昭和二十六年に再評価法を作りましたときでございますので、今の委員会考え方と少し違っておりまして、まず関係行政機関の代表が七名入っております。これは各省次官でございますが、申し上げますと、経済企画庁、法務省、大蔵省、通産省、農林省、運輸省、自治庁の各事務次官でございます。それからあと、産業界の代表の方なり、学識経験者の方がおられますが、これはお名前を全部申し上げますか。
  39. 大矢正

    大矢正君 そうです。
  40. 庭山慶一郎

    説明員庭山慶一郎君) 経済団体連合会会長石坂泰三さん、日本石炭協会会長栗太幹さん、電気事業連合会の会長菅さん、日本鋼管社長の河田さん、日本化学工業協会会長の原安三郎さん、日本機械工業連合会会長の倉田主税さん、日本鉱業協会会長の古村誠一さん、日本中小企業団体連盟の副会長の数原三郎さん、私鉄経営協会会長の鈴木清秀さん、十条製紙社長の金子佐一郎さん、全国銀行協会連合会会長の小笠原光雄さん、日本船主協会会長の一井保造さん、それから学識経験者の方といたしまして、横浜国立大学教授黒沢清さん、京都大学講師の汐見三郎さん、一橋大学、この間まで学長をしておられました井藤半弥さん、日本銀行副総裁の井上敏夫さん、日本公認会計士協会会長の太田哲三さん、大阪大学教授の中西寅雄さん、日本経済新聞社の円城寺次郎さん、農林中金の楠見義男さん、以上でございます。会長は大蔵大臣となっております。
  41. 大矢正

    大矢正君 政務次官ね、この間の参考人の意見にもあったようですけれども、例の配当を払うには結局法人税の対象になる、だから、借り入れをした場合には会社としてはもうかるじゃないか。これは今始まったことでなくて、前々から議論があったことなんだけれども、結局、そういったような実際上の姿がある限りでは、これはもう評価益のいわば組み入れもさることながら、企業が自己資本をふやすというようないわば積極性なんというものはとうてい生まれてこないわけですね。今度の法律には、もちろん、それに対してどう対処するかというような政府の方針も出ていないようだし、聞くところによると、明年度の予算編成にからんで、来年は税法の全般的な検討を行いたいというようなことを政府は逃げ口上として言っているようだけれども、実際問題として、今私どもが聞いている範囲では、明年度の税制改正というものは、地方税と国税の均衡といいますか、関連というか、そういうことに重点が置かれて、税制審議会か何か知りませんが、そういうところで議論をされるように聞いているのでありますが、そうなってくると、明年度も、いわば今言った株と借入金、増資と借入金とのアンバランスというものの是正が行われないから、増資も比較的停滞がちだという結論になってくるわけだが、それは大蔵省内では現実にそういう議論が進められておるわけですか。
  42. 佐野廣

    政府委員(佐野廣君) この問題は、私も専門家で必ずしもないのでございまして、非常にむずかしい問題だと思いますが、仰せのように、税制審議会というものは、この前の三十四年度予算の編成の際に、国税、地方税の割合をどういうふうにするかというふうなこと等も、きわめて根本的な、解決しなくちゃいけない大きな問題として悩みを感じたところでございます。七百億減税と申しましても、これが国税にどれだけのウエートを置き、地方税にどれだけのウエートを置くかということに、きわめて最初の私ども考えた割合とは違ったものの出たことも事実でございます。こういうような点も、この税制審議会におきましては根本的に解決しなくちゃいけない問題でございますし、またこの企業課税の問題、これも急いで検討しなくちゃいけない問題として考えておるわけでございます。  今お話しのように、配当と金利の問題、こういうふうな問題はきわめて根本的な問題でございまして、議論のいろいろ分れるところと思いますが、政府といたしましては、かれこれ含めまして、税制審議会というものを作りまして、それぞれの専門家の方々の御意見等も承わって、正しき税のあり方というものを搾り出していこう、こういうふうに先般来話をいたして、来年度から至急これにとりかかりたい、こういうふうに考えておるわけであります。根本的にはそういうふうな考え方でございます。
  43. 大矢正

    大矢正君 諮問をするからには、どういうところとどういうところが当面は問題になるということで、税制についても諮問をすると私は思うのですが、この問題は小さな問題でなくて、非常に大きな問題だから、当然税制審議会のようないわば一つの審議会ができた場合には、それが政府の諮問の一つとして出されるように方針がきまっているのですか。
  44. 佐野廣

    政府委員(佐野廣君) ただいま具体的に羅列してお答えするような段階にはまだなっておりませんが、来年度の早々から、各方面にいろいろ御意見のある問題を取り上げていこうということになっておる程度でございますが、今申し上げました企業課税の問題等は、差しむき急いでやろうというふうに考えておるところでございます。
  45. 大矢正

    大矢正君 これは、さっきから議論になっておる、増資が可能か不可能か、実際に増資をしても引き受け手があるかどうか、まあ全額無償でやる場合は別だけれども、そういうようないろいろ問題もあるだろうし、それから配当の問題ももちろんあると思うのですが、やはりそういう一切のものは、何といっても一般の預金金利というものと相当関係が出てくると思うのですが、その場合に、今の預金金利というものを下げる必要性はないということを大蔵大臣は言っておるようだけれども、それは実際問題として、銀行のいわばコストの引き下げによって、たとえば貸出金利の下る分はまかなえという議論は、それで議論としてはいいんだけれども、現実の問題として、資本のいわば増加が行われないという理由には、多少なりとも配当という問題、高率配当しなければ今の預金の金利とつり合いがとれないということも、一つの原因としてあるんじゃないかという気がするのですが、僕らしろうとだからよくわからぬけれども、そちらの方から聞かしてもらいたい。
  46. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 金利の問題は、これは非常に大きな問題でございまして、今日公定歩合が先般引き下げられましたことに関連をしまして、すぐ預金の金利をどうするかという問題については、大矢委員指摘のように、今すぐこれを下げるというようなことはできないということの点については、さようにお話を申し上げたと思うのでありますが、今、次に御質問の点は、有償増資等がもう少し盛んに行われるためにはやはり配当というものがもっと行われなきゃならぬじゃないか、あるいは配当というものと預金の利子というものとのアンバランスがあるんじゃないか、こういう御指摘かと思うのでありますが、一応この点については、もとより全体の金利水準が低下していく、そしてそれが国際水準にさや寄せしていくことが、金利の政策の大きな方向としてそうあるべきだということは、大蔵大臣もたびたび申し上げた通りかと思います。そしてそういうものが全体として低下していくようなときに、配当の水準もまたおのずからこれに従って低下しても、なお企業としては十分やつていける、こういうことになって参るのだと思うのであります。  しかし、さしずめ有償増資が行われない一つの大きな障害は、むしろ企業の面におけるコストの計算、こういう点にあろうかと思うのであります。この点は、先般の参考人に対する各委員からの御質問も、大体そういうところに帰着しておったかと思うのでありますが、今日法人税等の負担がやはり相当重いものでございますから、企業としては、借入金で利子を支払っていった方が資本の増加によって配当していくというよりも、企業の負担自体が非常に違っておる、これは主として税制の面にそういう違いがあるんだという点を御指摘になっておったかと思うのであります。これらの点は、金利水準の面とはまた別に、今後企業課税の一つの問題点としまして、さっそく税制審議会等で研究されるべき問題かと考えておる次第であります。
  47. 大矢正

    大矢正君 十九国会のときに参考人を呼んで、特に証券業者の代表が出られて説明をしている中に、どうも当時の政府提案は比較的配当の制限がきつ過ぎるから、もう少し緩和せいという、いわば理屈が出されたのですね。そこでどういうことを言っているかというと、昭和十二年から三年の定期預金の利率を見ると、これは三分三厘だ。二十九年の今日は六分になっている。社債の利回りは、十二年、十三年が四分三厘で、それが今日では九分四厘から五厘になっている。株式の利回りは、昭和十二年から十三年は六分から大体七分くらいだった。この計算でいくと、今日のいわば株式内容から考えて、最低一割二、三分から一割五分くらいまでの配当をしなけりゃならないんだ、という議論をやっておったんですがね。まあこの議論からいくと、さっき平林委員と局長との話のやりとりで、今大幅に有償無償を問わず——まあ有償増資というものが当然大きくついていくと思うのですが、それを大幅にやると証券業界が混乱をするおそれがある、それがひいては経済に及ぼす影響が大きいのじゃないか、こういうような議論があるのですが、どうも話が合わないように思うのですが、現実の問題は、非常に株が高いという点は明かに事実上の問題として、もちろん品薄のこともあるかもしれないけれども、勢いやはりバランスのとれた配当がなされているから株高というものが持続されておるのじゃないか。そうすれば、一割三分か一割五分に現況はなっているかは別問題としても、少くとも株高である限りにおいては、多少ここで線をきつくして、配当の制限をきつくして、大幅に増資を行わせるような方向に持っていったって、そう大きな混乱が起るようなことはないのじゃないかという、これはしろうとですからわれわれよくわかりませんが、そういう感じがするのですけれども、どうもさっきから意見を聞いていると、そうかなと思うけれども、また振り返って考えてみると、どうも合わないのですがね。
  48. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) たびたび申し上げますように、証券界が株の供給がふえると非常に混乱するということをおそれて、非常に手ぬるくしたのじゃないかということは、これは全く私どもとしてはそういうふうに考えなくて、先ほど平林委員との問答におきまして、今日の株式市場というものは、利回りから申しますと、むしろ行き過ぎのような点も実はあるわけでありますが、これは需要供給との関係で、若干当座のところ利回りからいうと不利でも、株を持ちたいというふうな大衆投資意欲というものが非常に高い、そこから株式界の今の活況というものが出てくると、こういう分析を申し上げたわけであります。  そこで、仰せの御趣旨は、それじゃ、どうももう少しシビアな、たとえば一割二分というのを一割とかいうふうなことを考えなかったかというふうな御趣旨かと思うのでありますが、これは先ほどもお答え申し上げましたように、まあ日本の基盤産業といわれております。電力とか、あるいは鉄鋼とかガス、この公共性の強いガスというふうなものをとつてみますと、先ほど御説明申し上げましたが、業態別に見ましても、非常にこれらは収益力は比較的低く、しかも、相当これからも公共の投資等を含めまして資本をさらに投下していかなければならぬ産業であることは、申すまでもないと思うのであります。そういう産業に対しまして、これを今どのくらいのところで押えていくかというふうな考え方をいたしてみますると、まあ大体今申し上げたようなところに制限を置きまして、それより低い配当をするような場合には組み入れというものを延ばしていってもやむを得ない、こういう考え方もとらざるを得ないのじゃないか。そこで、配当率をうんと低くして組入率を高くしていくということは、これらの産業から申しますと、一方で政府が財政投融資等で相当資金を出しておることも御承知通りでありますが、そういう政策から申しまして、つじつまが合わないような施策にも相なるわけでありまするので、主としてそういう点に考慮を払いまして、漸進的に、モダレートな線で組み入れを促進していくことが正しいと、こういう判断をいたしたわけであります。
  49. 西川甚五郎

    西川甚五郎君 これですが、企業積立金資金組み入れですね、これは奨励しておられるが、企業によってはこれをやらないように指導しておられる企業があるのですか。
  50. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 企業によってやらないような指導はいたしておりません。できるだけはみんながやつていただきたいのでありますが、今申し上げたようなものは、なかなか高い配当もできませず、また組み入れもなかなかできないというふうな実情のものもある、こういうことでございますが、私どもとしましては、全体にできる限り企業組み入れをやつていただきたい、こう考えております。
  51. 西川甚五郎

    西川甚五郎君 ところが、金融機関ですね、たとえば銀行、これは大蔵省の方の銀行局から、これはむしろとめておるのじゃないですか。
  52. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 御承知のように、金融機関につきましては、配当を比較的低く押えておることは御承知通りであります。そこで、従来そういう政策と関連をいたしまして、まあ組み入れということについても若干時日を要しておるのでありますが、最近はだんだんわれわれと同様の考え方で指導をいたしております。
  53. 西川甚五郎

    西川甚五郎君 それは事実と違うのじゃないですか。実際は、銀行局の方で、それはやるべきものじゃないということで、強く指導をしておるのじゃないですか。
  54. 庭山慶一郎

    説明員庭山慶一郎君) 今、西川委員の御質問でございますが、これも初めからのいきさつも関連いたしますが、再評価積立金は、これができましたときは、何と申しますか、インフレ当時だったものでありますから、利益の蓄積だというふうな考え方があったのですが、いろいろ最近、昭和二十九年あたり資本充実法を作りましてからは、これは利益の蓄積ではなくて資本であるというふうな考え方に、時代とともに認識が変つてきたわけであります。今度この法案を作ります場合にいろいろ検討いたしましたのですが、相手の会社が何業をやっておろうと、今、局長から申し上げたような考え方は同じであるのであります。銀行だから別な扱いをするということは、理屈に合わない。その辺の思想統一は現在の大蔵省ではできております。  ただ、問題はいろいろありまして、要するに、施策をやります場合に、何と申しますか、重要性の原則というようなものもございます。金融機関の再評価積立金というのは、これは金融機関の持っております建物を再評価したことによってできたものでございますので、金融機関全体の資産の中に占めますウエートは非常に少いわけでございます。でありますから、おのずから、これがたとえば電力会社のようにたくさんありますと、そもそも再評価積立金とは何ぞやという認識がすぐ問題になりますので、非常に重要に取り扱われますが、金融機関の場合は御承知のようなものであり、またその見合いになる資産が建物である。一般企業の場合には償却をし、また絶えず技術革新その他によって新しくすることを要請されておる償却資産でありますから、そういう問題が非常に現実の問題としてやかましくされるのですが、金融機関においては若干そういう監督の違いがあったかもしれませんが、別に銀行によってどうするというふうなことは、銀行だからどうするというふうに考えておるわけではないということだけ申し上げておきます。
  55. 西川甚五郎

    西川甚五郎君 それで、理財局長に申し上げておきますが、今おっしゃったことは、あなたの方で統一している。今後そういう問題が起りましても、銀行局の方でそういう指導がないように、一つお取り計らいを願いたいと思います。お願いいたします。
  56. 大矢正

    大矢正君 まだ時間が早いから……。評価益を対象にして増資をする分は、区分をしていないから、だから、どの程度それが対象になったかということは不明だと——不明だとは言わぬが、まあわからないというようなさっきの御説明ですね。ちょっと違うようですが、そのお答えをいただきたいと思います。
  57. 庭山慶一郎

    説明員庭山慶一郎君) ちょっと御質問の趣旨が私理解いたしかねますので、非常に恐縮でありますが、もう一度その辺はっきり一つ言っていただければ、御答弁いたします。
  58. 大矢正

    大矢正君 僕は、その有償増資無償増資との区分というものは、総体的にはもちろんあって、わかるでしょうけれども積立金を対象にして増資をするという分を抜き出して、総体的なものから抜き出して、そのうちに有償無償はどうなっておるかということをあなた答弁できないだろうと、こう言っておるのです。
  59. 庭山慶一郎

    説明員庭山慶一郎君) そういうことは別に問題にならないわけでございます。積立金を対象にして増資をするとか、いろいろおっしゃいますが、そういうことはございませんので、会社増資をいたします場合に、普通の場合は、一億なら一億の金が要るから、株主に対して有償の、一億の割当をして、株主から一億の金を出資をしてもらう。それが普通の場合でありますが、無償だけの場合を申し上げますと、別に会社にこの際株主から金を入れてもらう必要はないが、再評価積立金は本来株主のものであるから、会社収益状況がよくなったときにそれを株主に株をお渡しすることによって、そうして資本の姿を適正にする、その次からその分に対しても配当をするというのが、これが無償増資であります。それから、抱き合せ増資の場合は、その二つを抱き合せてやるのでありまして、たとえば十億増資をする場合に、八億は株主から取り立てる、二億は無償交付をする、その場合に個個の株主は五十円の株券について四十円払い込む、四十円払い込むと五十円の額面の株券がくるというだけのことでございますから、その辺ははっきりしておると思います。
  60. 大矢正

    大矢正君 結局、再評価をするというおもな原因というものは、戦後の混乱とインフレが急速にあったためにやると、こういうことになるわけでしよう。そうするとですね、事実問題として、その時期に銀行預金その他をやった場合には、確かにそれは利子はもらったかもしれぬけれども、しかし、利子よりはインフレの方が早いわけですからね。そうなりますと、結局、金を預金して、会社はその預金した金を銀行から借りてそうして設備を行なつた。設備は、実際の価値というものは漸次インフレとともに高まっていくけれども、金の価値というものは結局高まつていかないわけですね。そうすると、そういう実際の姿からいくと、かりに評価益というものはすべてがこれはもう株主に帰属すべきものだ、法律的にはそうかもしれぬけれども考え方としては、どうもそこが僕は理解できない。
  61. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) これは先般、たしか参考人にも御質問あったと思うのでありますが、大体今お話しのように、再評価の行われました理由といたしましては、これは一種の貨幣価値の変動と資産というもののノミナルな価値というものとにらみ合せまして、これをできるだけ実際の価値に合わしたということが再評価の趣旨であることは、御指摘通りだと思うのであります。問題は、そういう貨幣価値の変動というものが起ったために企業資産が増加した、これをどうするかということになってくるのだろうと思うのでありますが、これはまあやはりどこまでも、お認めのように、法律関係からいいますと、資本を出しておる株主というものが、これをどうするかという点についての権利を持っておるわけでございます。また、そうしなければならぬという意味におきまして、この組み入れを促進していくわけであります。  問題は、大矢委員の御趣旨は、むろん先ほど来いろいろお話し申し上げましたような新しい経済の倫理といいますか、感覚から申しますと、どうも企業の全体の中の何といいますか、労使の関係というふうな点に関連をして参ると、ただそれだけでは割り切れないような感じがすると、まあこういう御趣旨かと思うのであります。この点は、私は、やはりこの間参考人が申しておりましたように、企業の基礎そのものを強固にして参る。これはやはり企業資本を出しておりますものの常に念願しなければならぬ点であるから、やはりその面から、企業の中における使用者と労働者との関係というものも、全体として企業の基礎を強固にし、一そうの収益力をつけて参るという点で解決をしていかなければならぬ問題じゃないか。いきなり資産の再評価の分配について直接これをどうするかというふうな問題は、やはり商法その他の法律によって律せられるところでございまするが、それと全然別に、企業の一そうの繁栄に資するような労使の関係というものは、これは株主なり経営者なり、またその中で働いておられる労務者というようなものが、打って一丸として企業が成り立っておるわけでございますから、全然別に考えて参らなければならぬのじゃないか、こう考えます。
  62. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 御質問が別にないようでありましたら、質疑は次回に譲ります。   —————————————
  63. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 次に、接収貴金属の処理に関する法律案議題といたしまして、質疑を行います。  質疑のある方は、順次、御発言を願います。   —————————————
  64. 加藤正人

    委員長加藤正人君) それでは、次は、租税特別措置法の一部を改正する法律案国有財産法第十三条第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う関税法等臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案、以上三案を一括議題といたします。  政府より提案理由説明を聴取いたします。
  65. 佐野廣

    政府委員(佐野廣君) ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案外二件について、提案理由及びその概要を御説明申し上げます。  まず、租税特別措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。  政府は、昭和三十四年度税制改正に関して、すでに所得税法の一部を改正する法律案を初め関係法律案を提出して御審議を願つているのでありますが、今回の税制改正の一環として、現在の経済情勢に即応しつつ租税負担の一そうの公平をはかることを目途として、租税特別措置法の一部を改正することとし、ここに同法案を提出することとした次第であります。  以下簡単に法案の内容について御説明申し上げます。  まず第一は、預貯金等の利子に対する特別措置に関する改正であります。現在長期性預貯金、公社債等の利子については、非課税の措置がとられているのでありますが、その期限の到来を待って廃止することといたしました。なお、今後二年間は、預貯金、公社債等の利子につきましては、一〇%の税率による分離課税の特例を適用することとしているのであります。  次に、配当所得については、現在一〇%の軽減税率により源泉徴収を行うこととしているのでありますが、利子所得に対する特別措置と並んで、本措置についても、これをなお二年間継続することとしております。また、証券投資信託収益の分配については、昨年その課税方式の変更に伴い、税負担の激変緩和の意味で一年間特別に六%の軽減税率を適用することとしたのでありますが、今回その適用期限の到来とともに、一般配当所得と同様に一〇%の税率により源泉徴収を行うよう改めることとしております。  次に、企業資本の充実をはかることの重要性に顧み、法人の増資費用の軽減に資するため、増資登記の登録税を軽減することといたしております。すなわち、昭和三十四年一月一日において存する法人が、昭和三十六年三月三十一日までに増資登記をした場合には、その登記の登録税の税率を、千分の七から千分の五に軽減することとしているのであります。  次に、輸出振興に対する特別措置に関する改正でありますが、輸出振興の重要性に顧み、輸出所得控除制度につきましては、昭和三十六年三月三十一日までその適用期限を延長するとともに、特許権等の技術輸出について特にその控除率を引き上げることとしております。  次に、交際費の損金不算入制度に関する改正であります。この制度は、今後なお存続する必要があるものと考えられますので、その適用期限を二年間延長するとともに、この際、交際費使用の実情に即するよう交際費損金不算入の基準を改正することとしております。すなわち、損金に算入しない額の計算に当つての実績基準による限度額を、昭和三十四年一月一日を含む事業年度開始の日前一年以内に開始した各事業年度において支出した交際費等の額の合計額の八〇%相当額と、旧基準年度の交際費額の六〇%相当額との、いずれか多い金額によることとしているのであります。  次に、価格変動準備金の制度につきましては、その運用の実情に顧み、本制度の趣旨に照らして、準備金の取りくずしの方法を合理化することとしております。すなわち、所得が減少した場合には、通常の場合の繰入限度額からその減少した所得金額に前年または前事業年度の所得金額に対する価格変動準備金勘定への繰入額の割合を乗じて計算した金額を控除したものを、その年または当該事業年度の繰入限度額とすることとしているのであります。  次に、土地収用法等により資産が収用された場合の課税の特例について全面的な改正を加えることといたしております。現在、土地収用法等により資産が収用された場合には、その資産が昭和二十七年以前に取得したものである場合に限り、当該資産につき収用等により受ける補償金等の額を再評価額として再評価を行うことを認め、再評価税の課税のみにとどめているのでありますが、この制度は、昭和二十八年以後に取得した資産が収用された場合にも軽  城措置を講ずることが適当と認められますので、今回この制度を改めることとしているわけであります。以下その内容を申し上げますと、土地収用等により補償金等を取得した場合に、その補償金等により一定期間内に代替資産を取得したときは、納税者の選択により、収用された資産の譲渡がなかったものとして代替資産につき圧縮記帳的な処理を認めることとし、納税者がその選択をしないときまたは代替資産を取得しないときは、収用された資産の譲渡により生じた所得の二分の一に相当する金額を非課税とすることとしているのであります。なお、新たに公有水面の埋め立てに伴う漁業権の消滅等についてもこの特例を適用することといたしております。  以上のほか、重要外国技術の使用料について現行の軽減税率による源泉徴収の適用を受ける範囲を縮小するとともに、その適用期限を昭和三十六年三月三十一日までとし、外貨により取得した公社債の利子等に対する所得税課税の特例を廃止することとしておりますが、既存のものについては、所要の経過措置を講ずることといたしております。  また、航空機の乗客に対する通行税の特例措置及び農地等の交換による所有権取得の登記の登録税の軽減措置は、昭和三十六年三月三十一日まで、航空機の燃料用及び工業用揮発油に対する揮発油税及び地方道路税の免税措置は、昭和三十八年三月三十一日まで、それぞれその適用期限を延長することとしております。  このほか、新たに低アルコール度の清酒及び合成清酒に対する酒税の特例を設け、アルコール度が十三度以上十五度未満のものについて、アルコール分に応じ比例軽減税率を設けることとしているのであります。  なお、本年十二月三十一日をもって期限の到来する貯蓄控除の制度、輸出損失準備金及び海外支店用設備等の特別償却については、これらの措置の効果等に顧み、その適用期限の延長を行わないこととしております。  次に、国有財産法第十三条第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件について申し上げます。  まず第一は、皇居内の路面舗装工事でございます。皇居内の新坂から内廷庁舎西口までの道路並びに内廷庁舎西口広場、元北御車寄付近及び義宮御殿玄関前広場は現在砂利敷となっておりますので、これを舗装しようとするものであります。  第二は、正倉院第二新宝庫の新営工事でございます。千二百年の長きにわたって収蔵保存してきた正倉院の宝物を永久かつ完全に保存するため、さきに、校舎にかわる新宝庫を新築いたしましたが、さらに、宝物をことごとく収蔵し、保存管理の万全をはかるため、第二新宝庫を新築しようとするものでございます。  以上御説明申し上げましたものは、いずれも皇室用財産として取得する必要があるわけでありますが、そのためには、国有財産法第十三条第二項の規定により国会の議決を経る必要がありますので、ここに本案を提案した次第であります。  最後に、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条の規定に基く行政協定の実施に伴う関税法等臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。  この法律案は、合衆国軍人、軍属等による免税輸入物品の国内における転売の実情等に顧みまして、譲り受け物品に対する関税の課税価格の決定方法を改めて、課税の適正化をはかろうとするものであります。  以下、改正内容につきまして簡単に御説明申し上げます。  譲り受け物品に対する課税価格は、現在は、原則として同種物品が通常輸入により輸入された場合の輸入港到着価格を基準として決定することになっておりますが、通常輸入に対して為替及び貿易管理上の制限を行なっております結果、実際の譲り受け価格は、同種物品の通常輸入の場合の輸入港到着価格よりもかなり高いのが多いのが実情であります。このような実情に即した課税の適正化をはかるため、譲り受け物品に対する関税の課税価格は、国内における通常の取引価格から税額等を控除して逆算した価格を基準として決定することとしようとするものであります。  以上が、この法律案提案理由及びその概要であります。  何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成下さいますようお願い申し上げます。
  66. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 右三案に対する補足説明及び質疑は後日に譲ります。   —————————————
  67. 加藤正人

    委員長加藤正人君) お諮りいたします。  先般、地方の実情調査のため派遣されました九州班及び四国班の派遣報告に関しましては、前例に従いまして、口頭報告を省略し、報告書を会議録に掲載することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 加藤正人

    委員長加藤正人君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日は、これをもって散会いたします。    午後三時三十六分散会