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1959-03-18 第31回国会 参議院 商工委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月十八日(水曜日)    午前十一時二分開会   —————————————   委員の異動 本日委員森田豊壽君及び阿具根登君辞 任につき、その補欠として植竹春彦君 及び山下義信君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     田畑 金光君    理事            上原 正吉君            小幡 治和君            島   清君    委員            植竹 春彦君            小沢久太郎君            木島 虎藏君            佐野  廣君            高橋進太郎君            高橋  衛君            堀本 宜実君            阿部 竹松君            栗山 良夫君            岸  良一君   国務大臣    通商産業大臣  高碕達之助君   政府委員    科学技術庁原子    力局長     佐々木義武君    通商産業政務次    官       中川 俊思君    通商産業省重工    業局長     小出 榮一君    通商産業省軽工    業局長     森  誓夫君    通商産業省鉱山    局長      福井 政男君   事務局側    常任委員会専門    員       小田橋貞寿君   参考人    日本輸出双眼鏡    工業組合理事長 兼子 忠男君    白光精機株式会    社取締役社長  富永孝次郎君    日本ミシン協会    専務理事    日本ミシン輸出    組合専務理事  川島 清祐君    株式会社東光ラ    ジオコイル研究    所専務取締役  前田 久雄君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○軽機械輸出振興に関する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○石油資源開発株式会社法の一部を改  正する法律案内閣提出衆議院送  付) ○航空機工業振興法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付) ○プラント類輸出促進臨時措置法案  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 田畑金光

    委員長田畑金光君) これより商工委員会を開会いたします。  軽機械輸出振興に関する法律案を議題といたします。  本日は、お手元に配付いたしております通り、四人の参考人より、本案に対する意見を聴取いたしたいと存じます。  参考人方々には、御多忙の折、本委員会のためわざわざ御出席下さいましたことについて厚くお礼を申し上げます。御発言に当りましてはどうぞ忌揮のない御意見をお述べ願いたいと存じます。御発言は、一人十五分以内でお述べを願い、四人の方々の御発言が終った後、委員の方の質疑がある場合は、委員長許可を得て御答弁願います。  それでは、まず、日本輸出双眼鏡工業組合理事長兼子忠男君にお願いをいたします。
  3. 兼子忠男

    参考人兼子忠男君) それでは、私が日本輸出双眼鏡工業組合理事長の職を汚しておる兼子忠男であります。  このたびは、われわれの業界のためにりっぱな法律を、皆さん先生方の貴重な時間をいろいろと審議していただきますことは、業界を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  われわれ業界が当法案に賛成するゆえんは、登録制度事業協界内容の二点にしぼられると存じます。  まず、登録制度については、今から約二年ほど前に、三十一年の八月二十五日に、当時の理事会が、業界は、何か業界製造業者としての基準を設けて、それによって海外に大いに宣伝をし、品質のいいものを出すには、やはり登録制度は必要であるという点について、三十一年の八月二十五日に、われわれ理事会等において、担当官庁に申し出たのが、今度の法律の最初の出発だというふうに考えております。どうしてわれわれがこの登録制度を布かなければならないかというふうに申しますと、当時の三十一年の事業者の数を見ますと九十六社にすぎなかったのであります。それが、これは言葉に申しにくいことでありますが、メーカーにあらざる業者双眼鏡を操業する最低ワクを提供しなければならない、こういう点については、非常にわれわれはまじめな業者が、こういうものに対してワクをやるということは非常に危険であるという点について、何とか登録という点を考慮願いたいというのが最大目的であったのであります。現にわれわれは青空光学と言っておりますが、ブローカー的な、あるいは商業的な業者ワクを持って、そのワクを売り払って生計を立てている業者が多数ございます。こういう点については、何とかここでこの登録によって是正していこうというのがねらいであったのであります。しからば登録についてはわれわれがどういう点に有利であるかと申しますと、まず登録双眼鏡製作者製品に対して自己の責任において保証することができる。私のところは国の登録によった製品である、登録によった設備によって作った製品であるというふうな保証をできる。非常にこれはわれわれは業界として光栄と存じます。従いまして、登録の表示は保証付き製品であると共に消費者が安心してこの製品を買うことができる。こういう点につきましては、まことにわれわれの業界としては海外に対する宣伝を大いにPRしたいというふうに考えております。従いまして、米国内においては、日本双眼鏡は安かろう悪かろうという悪評が現在までにあるというふうに聞いております。こういう点に対して、われわれは登録基準をすみやかに設け、この法案に基いた登録をやっていきたいというふうに考えておるわけです。しかし、われわれの業界は、双眼鏡業界零細企業が多いために、登録によって、この業者が失業のような状態になっては、これは大へんということで、また反対方々がそういう面に大きな心配があろうと存じます。決してわれわれは零細企業中心とした、しかも零細企業が全部登録によってこの零細という言葉を返上していきたいというのがわれわれの登録の根本的なねらいでございます。  また次の事業協会の点でございますが、事業協会は御承知の、法案内容に出ている通り、現在われわれはめくら貿易でございます。このめくら貿易をまず打開していこうというのが、この事業協会最大目的だというふうに考えております。双眼鏡業界においては、組織だった調査機関が現在ございません。ただわずかに現在できておる振興会社中心とした、消費者メーカーその他の海外に詳しい方をお招きいたしまして、市場連絡研究会を組織しまして、それのみに頼ってわれわれの調整数量を作成したり、あるいは価格の安定に役立たせたいと思っておるのであります。これではまだまだ現在の状態では、将来五年、十年と先を思いますと、現在のような考え方では、とうてい競争国である西ドイツのような強力な国に市場を荒されるおそれがある。こういう点で、事業協会はますますわれわれの業界に対しての市場マーケッティングをやり、市場PRをいたしまして、われわれは安心して双眼鏡を作り、外貨の獲得に大きく役立ちたいというのが、この事業協会の根本的なねらいでございます。従いまして、われわれは、そのほかにメーカーというわれわれの製造業者の弱さがある。何かここでてこ入れをしなければならない。てこ入れをするには、やはり資本力によった一手買い取り機関を設けて、それによって商社の買いたたき、バイヤーの買いたたき等を防ぐには、やはり一手買い取り機関をどうしてもわれわれは必要だというふうに考えます。現在振興会社等によって一手買い取り機関といたしておりますが、それはやはり資金的にどうしても未熟でございます。しかしながら昨年度、これは昨年の十月でございますが、国の資金を豊富にお借りするようにお願いいたしました。担当官庁のお骨折りによってわれわれの業界には五億円の金をお借りするようになりました。これによって今まで振興会社は官僚的な会社であり、また幽霊的な会社である、手数料をとるだけの会社であるというような御批判もございましたが、こういう御批判は現在にいたしまして、われわれの業界がいかに擁護されたか、この五億円の金を用意しただけで、一銭も使わずに、商社が安心して、たたくのを防ぐというような状態が現在の姿でございます。やはりわれわれの個々の力では海外宣伝するにしても、また価格を維持するにしても、やはり国の力をお願いせざるを得ないというふうに考えております。現在の団体法に暴いた工業組合は、われわれの工業組合は、どこまでも自主的な価格統制市価統制をやりまして、事業協会海外宣伝並びにわれわれの弱いメーカーを擁護するところの一手買い取りによってわれわれも今後の双眼鏡発展に資したいというのがこの二点の目的でございます。  しからば、現在この法案に対する業界状態はどうであるかと申しますと、われわれ工業組合に若干の反対意見者もございました。しかしながら、これに属するところの完成品関係業者部品業者はこぞってわれわれより先に、この法案は絶対に必要であるから通してほしいというような、熱心な考え方で、われわれに先立って、われわれよりも先に立ってこの法案を支持しておるような状態でございます。  現在の業界は、われわれ工業組合員のメンバーは、百九十三社でございますが、われわれのこの双眼鏡によって維持しておる全業者を集めますと、六百八十ほどに達しております。これを人口にいたしますと、約四十万がこの双眼鏡によって食べているような姿でございます。この四十万を、現在は確かに価格は安定いたしました。しかしながら、将来われわれの競争国である世界市場が、四十万を将来どのような姿になりますか、こういう点をわれわれは深く反省いたしますと、現在はいいから何も手をつけなくとも、われわれ工業組合で十分であるというような考え方は、どうかこれを変えていただいて、われわれの四十万をどうにかして将来五年、十年永続的に続くことを願ってやまないのであります。  しかしながら、この法案は全面的にいいという考えではございませんけれども、しかしながら、この法案によって、まずわれわれの所期の目的が達するならば、あえて不満な点がございましても、これは一応やっていただいて、この経過を見ていきたいというふうに考えます。  最後に、この法案に対する業界要望といたしましては、まず事業協会ができました場合には、民主的な運営をお願いしたい。  二番目は、現在の品質は決して世界的なレベルに達しているというふうな考えはしていません。今後はますます品質向上するために、開放研究所の積極的な活動官庁の御援助を願いたい。  三番目は、買い取り資金等の十分な資金政府として御援助願いたい。  四番目は、宣伝活動のための補助金の増額をしていただきたい。あまり双眼鏡といいますと、零細企業が多いために、ややもすると見捨てられるおそれがありまして、こういう点を国をあげてやはり双眼鏡の現在の姿をよく認識していただいて、御援助を願いたいと存じます。  五番目といたしましては、零細企業者合理化資金援助、先ほども申し上げたように、双眼鏡業界零細企業が非常に多いのでありまして、こういう点についても十分な合理化資金を、国の御援助を願いたいと存じます。  六番目は、事業協会がもし役員を選ぶ場合には、今の規定でございますと、第三者的な役員で構成されておりますが、これを専門職のみならず、われわれ業界兼務者を出してほしいという工合に考えます。  七番目は、民主的に運営するところの総代会意見を十分に尊重していただきたい。  以上、業界は七つの要望をお願いする次第であります。業界はあげて法案に賛成しておる今日、すみやかにこのわれわれの熱望を参酌していただきまして、一日も早くわれわれ業界——一日おくれますと著しい損害をこうむるというように考えますので、何とぞすみやかにこの法案を通過することを、御尽力をお願いするとともに、私の業界の御説明を終りといたします。ありがとうございました。
  4. 田畑金光

    委員長田畑金光君) ありがとうございます。  次に、白光精機株式会社取締役社長富永孝次郎君にお願いいたします。
  5. 富永孝次郎

    参考人富永孝次郎君) 私、今御紹介を受けました白光精機社長富永と申します。私は、この法案反対連盟を代表しまして製造業者立場から双眼鏡の問題につきまして意見を申し上げたいと思います。  まず、本法品質向上過当競争防止目的としまして登録制を採用すること、それからもう一つは、販路拡張価格維持目的として輸出振興事業協会を設立することを内容としておるのであります。  まず、登録制の問題から申し上げますと、これは品質向上のために、一定設備その他の基準を作りまして、これに合格しない者は輸出双眼鏡は作らせないということになります。ところが、双眼鏡製作というものはアッセンブル方式でございまして、大した設備は要らないということが特色でございましてこれが日本人の器用な技術と相待って、安くてよい物ができておるのであります。もし、これこれの設備をしなければ双眼鏡は作ってはならぬということになりましたならば、いやがおうでも工場を広くするとか、機械を買い込むとしかしなくちゃならない。また、衆議院における当局の御言明によりますと、登録基準は漸次引き上げていくということでありまするが、そうすると、小企業者は絶えず資金とその利息に悩まされまして双眼鏡は安くでは作られないという結果になるのであります。品質向上業者としては絶えず心がけておるところでありまして、すでに日本製品西ドイツの品に比較しても劣らないというところまでいっておるということは、これは万人の認むるところでありまして通産当局におかれましても、りっぱに認めておられるのであります。現在、こういう強制的な法律を特に作ってまでも、双眼鏡のコストに新しい負担をかける必要はないと私は思うのであります。日本品が、現在アメリカを初め、全世界において他国品を圧倒して大市場を獲得しておるということは、実に品質がすぐれて価格が安いからであります。特に価格の点で、世界の大衆の購買力にマッチした結果であると考えられます。しかも、現在の価格でもって製造業者十分採算がとれて、何ら不安がないのでありまするから、また一方、双眼鏡使用目的というのは九〇%が娯楽用なんです。そういう点からしましても、わざわざ品質を必要以上に向上して価格を高くするということは、輸出量の減退を招くことは当然であります。西ドイツの品が百ドルである、日本品が二十五ドルである、もったいないという当局の御議論もよく聞くのであります。これは二十五ドルという武器でもって百ドルの敵を征服しておきながら、その征服した敵の百ドルをうらやむという矛盾に過ぎないのであります。終戦後数年の当時の価格からしますと、確かに四割方価格は下っておりますが、しかし輸出は三倍以上になっておるということを忘れてはいけないのであります。結局輸出振興ということは、採算のとれる価格輸出の総数量を乗じた積、これを最大ならしめることが目標であると私は信じます。しかも品質向上検査規格引き上げ現品検査実行等方法で、まだまだその目的を達する余地が十分残されておるのでありまして登録制でもって経営者事業規格までも規制する必要は認めないのであります。  次に、登録停止でございますが、これは必要があると認めるときは、一定期間新規開業は全く許さないということなんであります。現在団体法によるところの生産制限で、一年間に六社ないし七社、数量にして六千本以下の増加しか許されていないのであります。年間百数十万本の生産に対して、まことに狭いものでありまして、狭き門でありまして、過当競争なんか起る憂いはみじんもないのであります。大体生産制限において全体の供給が制約されておる現在において、過当競争が起るということを考えること自体が自己矛盾であります。過当競争のおそれがあれば、全体の生産制限を強化すればそれで解決するのであります。既存業者利己的立場からのみいえば——私も既存業者でありますが、一人でも開業者がふえないのがいいかもしれません。しかしあすの独立を夢見つつ、こつこつと輸出双眼鏡を作っておるところの多数の組立工登録停止はいかなる打撃を与えるでありましょうか。彼らに残されるものは暗黒と絶望だけではないでしょうか。    〔委員長退席理事島清君着席〕  これが多数組立工作業能率を低下しないとだれが保証できるでしょうか。これが輸出振興に無形のマイナスを招くものであると私は信じます。すべて団体法生産制限にまかすべきであります。  次に、輸出振興事業協会でありますが、これは海外事業調査とか宣伝といったようないわゆるマーケッティング活動を行うことがおもな業務となっています。しかしこの実施はジェトロに委託して行うということになっておりますが、それなら特にこの協会の必要はないのであります。工業組合から委託しても、ジェトロはやってくれるはずであります。しかし企画や宣伝普及というようなことは、むしろ専門家工業組合がやった方がうまくいくのではありますまいか。大体海外市場は、終戦後十数年の間、多数の商社営利心から生ずる熱意によって、幾多の苦難を経て、世界のすみずみまで開拓されているということが常識になっております。特に現在のように外国注文が山積しておる状態において、海外PRはさして急務とは考えられないのであります。  次に、本法案で私どもが一番失望していますことは、第四十六条第一項第五号を適用しまして通産当局輸出振興事業協会をして現在の日本双眼鏡輸出振興株式会社共販業務を引き継ごうとしていることであります。そしてこの振興会社共同販売は完全に失敗しておるのでありまして、同社手数料を搾取する単なるブローカー的存在と化しておる。現在非難の的であり、その廃止論はごうごうたるものがあるということであります。同社は、三年前の過当競争時代に、双眼鏡買取機関として業者商社との出資でもって設立されまして、当初若干の現物買い取りましたが、デット・ストックとなりまして、数カ月後に投げ売りをして大失敗したことがあるのであります。それ以来現物買い取りは全然行われない。実際取引は全くすべて商社業者間で行われておりまして、同社注文者に納品及びその他の書類だけの伝達機関に堕してしまっておるのであります。昨年八月に先ほどこちらからお話がありましたが、今度は実物買い取りを始めるというので、私の工業組合保証をしまして手形保証をいたしまして、商工中金に五億円のワクを設定して、同時にしかも買取品倉庫に入れなくちゃならないというので、双眼鏡一本について最低三十五円、最高六十一円といったような保管料を徴収してきたのであります。ところが依然として一台の双眼鏡実物は買い取らない。従って中金からは何らの借り入れもなさない。品物を買い取らないのですから倉庫に預けるものもないのであります。しかしながら、手数料保管料だけはきちんきちんと取っておるという搾取業務を継続しているのが現状であります。現物を買い取らぬ以上、価格維持には何らの効果のあるはずはないのでありまして、全く業界厄介者となっているのですが、今度はこの会社を解散して、その業務をそのまま輸出振興事業協会で引き継ぐ方針であるのであります。本来、この貿取機関というものは、生産過剰の際に価格維持のために必要なのでありまして、生産制限がその機能を発掘しておるかぎり、無用のものであります。昭和三十一年十一月の中小企業安定法によるところの生産制限以来、多少の屈折はありましたが、ただいまにおいては価格は大体協定価格に安定しております。一方海外需要の激増のために商社海外注文を断わるのに苦心している状態のもとに買い取り機関は全然存在理由がないのは当然でありまして、今後といえども生産制限の運用を誤らない限り、この機関有害無益存在であります。振興会社は早速事業を閉鎖するのが業界のためであります。しかるに再びこれを本法によって輸出振興事業協会に抱き込んで、これを強化しよう、共販業務を継続されようとする当局方針は、どうしても納得できないのであります。また一面将来不況のときに一手買取りを行なって業界を救済するのだという説をなす人もあるのでありますが、大へん考え違いでありまして滞貨は買取っても、やはり滞貨である。滞貨の累積はさらに一そうの圧迫となって、業界の大破綻の元となるということは、過去の幾多の事例がこれを立証しております。いずれにしましても、私どもはどうせ搾取的の手数料を納めるなら、共同販売業務は、これは本来工業組合重要業務になっておるのでありますから、これを工業組合に移して、現在の手数料を半額にして業者負担を軽くすると同時に、剰余金は積立てて工業組合将来の発展に資するということこそ、団体法自主的経済活動の育成という趣旨に合致するものと信じております。本委員会におかれましては、ぜひこの点について当局の意思をお確かめ下さいますと同時に、右日本双眼鏡輸出振興会社の過去及び現在の業績を徹底的に御調査の上、適当な御裁断を賜わりますよう、伏してお願い申し上げます。  要するに結論としまして、第一に双眼鏡に関する限り価格は一応安定しまして、過当競争は全然なく、海外需要は旺盛をきわめている現在、本法のような物心両面に抑制的な要素の多い法律を急ぐ必要は全く見当らないということ。第二に昨年から施行されている団体法が私どもに与えた自主的経済活動の権能を一年後の今日、本法のような官僚的性格を持つ法律によって奪い返されるという理由が納得できないということ。第三に本法案目的とするところは、右の団体法の適用によって現に解決されつつあり、また解決さるべきものでありますので、今しばらく団体法を十分御活用をなさるようお願いいたす次第であります。  最後に、皆さんにぜひ申し上げておかなければならぬところのまことに重大な問題があるのであります。それは双眼鏡国際市場に憂うべき事態が発生しつつあるということであります。今施行されておりますところのこの生産制限は、価格引き上げの点に関しては一応その効を奏しておるのでありますが、あまり価格の点のみに執着しまして、国際間の需要の実情に即応しなかったうらみがあります。その結果としてアメリカバイヤーは、注文を出しても出しても、生産制限のためにこれが満たされないため、香港に組み立て工場を作りまして、日本から双眼鏡部品を輸入して、香港で組み立てて、どんどんアメリカに持っていく方法考えたのであります。実際のやり方としましては、日本メーカーは一度完成品を組み立てて輸出検査も受けないですぐそのままばらばらに解体しまして、レンズレンズ鏡体鏡体別別に荷作りしまして、別々に輸出許可証をとって、どんどん出しているのであります。これは昨年の八月ごろから起っている現象でありまして、私の近所でも、五千、六千とやっております。全体では月例が台になるかわからない状態であります。東京商工会議所の「東商」という雑誌の二月号にも、そのことが明らかに書いてあります。新聞には海外派遣細み立て工の募集が盛んに出ております。その雑誌新聞もここに持ってきております。このことは一体何を諮るか。要するに統制の行きすぎであるか、その通用を誤った結果であるか、いずれかでありまして、海外から膨大なる需要が現にあるにかかわらず、あまり価格面に拘泥して生産制限融通性を持たせなかったという結果であります。とにかくこのことはまことにおそるべき現象でありまして、輸出検査を受けぬメード・イン・ジャパンがどんどん出ておるようでは、これは品質向上どころの話ではありません。もちろんこのことがだんだん発展してきますと、おそらく日本からの双眼鏡生産輸出に大打撃をこうむることになるのではありますまいか。最近通産当局は全国の関係当局に手配しまして対策を講じておられるようでありますが、生産制限令の出ていない部品について、どれだけ輸出制限ができるのであるかということを私どもは心配しております。かりに今後部品輸出をある程度食いとめることができましたとしましても、問題はまだ残ります。日本双眼鏡品質がよくて価格が安くできるということは組立工レンズ研摩工の技術が優秀であるということと、その工賃が安いということであります。そこで統制行き過ぎの結果、特にこの輸出振興法によって登録停止ということになってきますというと、国内で前途を封じられた多数の組立工、その他の技術者は続々と米国のバイヤーに招堪されて渡米するでありましょう。鏡体の方は米国の方で大規模に製作する方がはるかに有利でありますので、ここに米国本土で双眼鏡の大量生産が行われることが予想されるのであります。これは単なる予想ではありません。すでに米国のある輸入業者が東京にある代理店を通じまして、私の近所の小企業者と計画を進めておるという事実があるのであります。すでに時限爆弾は点火されたという状態でありまして、もしこれが爆発する日がくれば、日本双眼鏡は一挙に壊滅することは明らかであります。このようなまことに容易ならぬ事態を前にして、少しでもコストを低くして、この米国のバイヤーたちの商略に対抗するような姿勢を作らねばならぬ重要なときに、この法案のような登録制によって業者に重荷を負わせたり、事業協会負担金を納めさせたり、手数料を徴収したりして、国際競争力を減殺するような制度については、これを論議すること自体がすでに現実離れのした空虚を感ずるのであります。国際市場は決してなまやさしいものではないと思います。願わくは、本法案は、できますならばしばらくたな上げされまして、通産当局におかれましても、業界と一体となられて、国際需給と販売価格と、そうして生産制限、この三つの関係を真剣に検討されまして、もっともっと現実に即するはつらつとした政策を立てられまするよう、切に念願してやまない次第であります。  以上をもちまして参考意見の開陳を終ります。
  6. 島清

    理事(島清君) 次に、日本ミシン協会専務理事川島清裕君にお願いいたします。
  7. 川島清祐

    参考人(川島清祐君) 日本ミシン協会専務理事日本ミシン輸出組合専務理事を兼務しております川島でございます。  本日、こういう機会を得させていただきましたことは、ミシン業界といたしましては大へん心から感謝いたす次第でございます。  一応本法案の問題に触れます前提条件として、ミシン業界の概況をごく簡単に、今までの成り立ちを申し上げたいと思います。  大体ミシン界としまして三つの特色がございまして、もちろんいろいろな面もございましょうが、一つは非常に戦後急速に伸びた業界であります。それからアッセンブル・システムが一応生産形態の中核をなしております関係上、中小企業がやはり大部分を占めている、それから輸出が非常に大きなウエートを全体のうちに占めておる、この三つが一応三つの特色として考えられるわけでございまして、これを具体的に申しますと、輸出に関しましては、戦前は昭和十五年が生産輸出の最高でございましたが、年間十五万台の生産、家庭ミシンを主にしまして、工業ミシンもございますが、大体家庭ミシンが大多数を占めております。そのうち輸出が一万台という数でございます。ところが昨年三十三年の調査によりますと、生産が二百二十八万、それからそのうち輸出が百七十三万という数字でございまして、圧倒的に戦後急速に伸びたという姿になっております。この数字はここ数年続いております。大体の数字でございますが、金額にいたしますと、約四千七百万ドル、百七、八十億円に当りますか、現在の機械輸出としましては、造船に次ぎまして、最近ずっと二位を占めております。で、その輸出先も——国内の問題に今触れませんが、輸出先も大体アメリカ合衆国で六割近くを輸出しておりまして、もちろん向うで黒人が使っておるわけでなく、黒人も白人も全アメリカ人がこれを使っておるわけでございます。あと四割ないし、その年によって違いますが、五割ぐらいアメリカ以外の全世界——中南米、東南アジア、ヨーロッパ、アフリカの全世界にわたって輸出しておりまして、従って結局全世界輸出されているというのが現状でございます。問題は先ほど申し上げました特色の一つとして、戦後急速に伸びましたということは、生産形態が非常に標準図面というものを最初作りまして、部品工業が統一されて発達したというために、非常に容易に小資本で戦後できて、そのために需要に対して直ちに受け入れるという態勢が大へん早かった。ということは逆に申しますと、いわゆる販売体制という面におけるおくれがどうしてもあった。作る方が非常に早く行きましたために、その売り方という面におきましては、ミシンというのはいわゆる耐久消費財でございますから、本来ならば売り方も同時に考えた売られ方があってしかるべきでありましょうが、それがあとになった。まず作ってバイヤーが来て、どんどんそれを売ってゆくという姿勢で急速に伸びたけれども、反面、かつ大きな問題をそこに内蔵しておったわけです。そこでもう一つは、当然中小企業というのは非常に試験研究とか、あるいは海外のサービスとか、あるいはそういう宣伝調査ということは、合体になって一つになれば非常に大きな力になりますけれども、個々別々にはそういうことはなかなかでき得ないものでして、むしろ生産して早く売られてゆけばいいという面がどうしても主体になるということでありましたために、当然そういう面で非常に大きなおくれも同時にあったわけです。従って非常に残念でございますけれども、たとえばアメリカに売られています。かりに年間約八、九十万台のうち、いわゆる当然——電気メーカーさんも、ほかのメーカーさんもそうですが、自己ブランドで売らるべき製品でありながら、それが非常に少い、つまり向うの指定ブランドによって売られる。このブランドの問題は、アメリカでも一流の百貨店でも、その百貨居のブランドを指定されて売られているというアメリカの実態もございますから、いろいろ問題もございますが、一応そういう状態であるということであります。結局、従って私もこの関係を十年くらいいたしておりますが、ほとんど七、八年前以後は当然そこに起る過当競争と申しますか、そういう問題への対策に終始している。つまり今から五年くらい前に、アメリカ日本ミシンのダンピングの疑いの問題が出まして、向うから調査官が見えて調査しに来た。幸い関係者の非常な御努力で、これはダンピングでないという、一応断定かどうかわかりませんが、従ってその措置がとられなかったという問題があり、またそれに引き続いて国内で通産省でミシンのアメリカヘの輸出停止という非常措置もとられた。これはやはり過当競争による問題を内蔵しまして、価格がかりにある時期に一台ヘッドだけで二十二ドルしたものが十四ドル、十三ドルというふうに、急速に数量は伸びるけれども価格が下るものですから、結果において非常な憂うべき状態になったということもあったわけでございます。それでこれに関しまして、私も先ほど申しました輸出組合に関係しておりますが、輸出組合は設立は五年前でございますけれども、直ちにまず価格協定それから生産メーカーとのいわゆる協約による出荷数量協定というのをいたしまして、この問題の対策にまず入っていったわけであります。その後二年ぐらいおくれまして、いわゆる調整組合、現在の工業組合もできまして、やはり輸出組合の行なっておりました出荷数量調整を行いまして、それから販売ルートの規制あるいは国内の売り渡し価格の調整、そういう問題を非常に努力して参ったわけでございますが、問題点として常にそこにあるのはいわゆる過当競争による価格対策の問題がほとんど毒になっておりまして、結局あまり価格対策が主体になりますと、最後価格というもののいわゆるチェックや違反というものも当然問題になります。しかしかりに輸出組合にいたしましても、工業組合にいたしましても、執行機関である理事会が、それぞれの利害関係の深いメーカーなり、商社なりでございますから、そういうふうに摘発してもなかなか実施できないという非常にむずかしい問題があり、結局、最後には出荷数量調整に頼っていく、あまり出荷数量調整をやりますと、結局輸出振興でなく、いつの間にか価格に拘泥して輸出抑圧になってしまうという、非常にジレンマに陥っているのが現状でございます。そこで一つの例といたしましては、後に触れたいと思いますけれども、私が三年前にアメリカに参りまして、シカゴのいわゆる向うの大きなシャス、モンコーリーワードなどの日本の三越みたいな店、全米に千軒ぐらい持っている大きな百貨店の重役さんに集まってもらって、ミシンの問題について腹蔵なく話し合ったときに、「われわれは日本ミシンは昔はブリキでつないであるという極端な話も聞いたけれども、一応最低品質はある程度安心できるようになった」という話がありまして、これから百貨店としては買いたいというような話がありましたので、それではぜひ買ってほしいと言ったところ、価格はちっとも下げる必要はないけれども数量保証してくれ、自分の方はかりに全米に千軒の店を持っているとすると、日本ミシンを入れた、ところがたちまちあと輸出調整をしているため、あとが続かなくなってしまうと、非常に店の信用にかかわるということが一つ。それから次に、そういう数壁調整上の限界をそこで示されたと同時に、アメリカの場合は、いろいろツートン・カラーとか、何カラーとか、好みも違い、家庭に置いてきれいだというようなことも一つの必要な面で、デザインであるとか、好みとか、そういうものをもっとよく研究してくれと、いろいろ注文がございました。ところが、それが決してうそでなくて、一昨年の秋ごろから本格的にそういう百貨店の日本ミシンの買付が始まった。これは日本ミシンというものは今まで向うの南部の黒人なんかが使っている錯覚すら持っていたわれわれにとっては、非常にプラスになった。同時に大きな危険も出てきた。と申しますのは、こちらはおのおの分散しておりますが、向うのかりにそういう大きな百貨店が、毎月もしアメリカに六万、七万を輸出しているうち、三万、四万と占めて参りますと、向うが非常に力を持ち、価格を下げるのみでなくして、全部買わなくなったら急にほかに売れといっても、とても売れません。そこに大きな危険性を内蔵いたします。一応そういう意味で、日本ミシンが大きな百貨店に出られるように信用を非常に得たのは、これはやはり先ほど申し上げましたような原因があったわけであります。そういうわけで、非常に話は前後いたしますが、先ほど申し上げました日本ミシンの持つ三つの特色が非常な長所であると同時に、一つの大きな欠点となった。同時に価格政策の限界に来てしまったという点が大きな問題であります。それで輸出組合といたしましても、もちろん無理をいたしまして、アメリカに一名駐在員を置きまして非常に大きな効果をあげております。後にちょっと触れますが、大きな問題になったシンガーの特許問題のときなど、たった一名の駐在員の存在が、日本ミシンのアメリカヘの輸出のため大きなプラスになったということは、現在身をもって感じているわけでございます。そういうふうにいろいろ前後いたしましたが、これを今国際的な競争国のミシンという観点から見ますと、皆さんも御承知のシンガー、これは非常に大きな生産力を持っております。資本金も一億ドルという大きなものです。ところが大体輸出生産は、日本の全体の輸出生産と似たり寄ったりということで、輸出におきましては、日本の方がむしろ大きいということでございます。あとホワイト、フリーというアメリカのミシン会社がありますが、日本ミシンの進出のため生産面でつぶれてしまいまして、日本ミシンの販売会社に転向した。これは非常に変った状態で、反対するよりも、それがアメリカ人の経済についての考え方の一つかもしれませんが、むしろメーカーとしては日本ミシンとは太刀打ちできない、しかし日本ミシンを販売する方がけっこうもうかるから、そちらの方に転向したということで、生産はほとんどアメリカではシンガーだけでございます。ほかにはドイツのパフ、イタリアのネッキ、そういうのは非常に製品を研究しておりまして、この大きなウエートを占めておりますシンガー、パフ、ネッキなどの大きな特徴は自国ブランドで売っている。しかもアフター・サービスの機関はニューヨークなどの目抜きの所に持っている。シンガーは全世界に持っている。パフは東南アジアやインドに進出の場合は、やはりそういう進出の仕方でやっておりますために、だんだん日本のミシンというものは押されて参り、東南アジアでは非常に押されて参りました。シンガー、パフ、ネッキの競争国のミシンは、徹底的な、一貫した宣伝、サービスの仕方で、それから販売ルートを持ってやっております。それに対しまして、日本のミシンは安い、何といっても安いということで、安い割合に品質がいいということが、残念ながら、ミシンばかりじゃないと思いますが、これが実態でございます。もちろんミシンの種類は、いわゆる家庭用ミシンには丸型、角型、ジグザク型と非常に種類がございまして、いいミシンもたくさんございますが、非常に大きなウエートを占めている一般のミシンは、安く、その割合に品質がいいということで売れているという現状でございます。あと中共ミシンというものが最近出て参りましたが、これはまだ品質は非常に落ちております。値段は中共のことでございますから、採算を度外視して出して来ます。これは現在数量は非常に少いが、将来は一つの問題点になるかと思います。もう一つ、インドのウシャで作っているミシンが最近出て参りました。日本ミシンは、販売とか宣伝、サービスの完備したミシンと、今申した品質は少し落ちるが非常に安いミシンとの両方の間にはさまれてきたという状態で、今までみたいに作れば売れるという時代は過ぎ去ったという現状でございます。  以上が大体ミシン業界の一応簡単なアウト・ラインでございます。  本日の軽機械輸出振興に関する法律に関係いたしましては、まず登録制の問題といたしまして、いわゆる品質向上、それはどなたも御反対はないわけです。ただ品質という意味もいろいろございます。先ほど申しました一応の品質というものは、最低線ではある程度守られている。ところがなかなか検査協会が全部いちいち見るわけでございません。ある程度バイヤーに売られたもののうち、そのうちに何パーセントかはもうだめなものがある、それだけ安く買っておくという習慣がずっと続いておりまして、非常に品質がよくなった、高級品は非常に品質がいいのですが、一般品が必ずしも実態がよくなったためにクレームがこなくなったというのではなくて、初めからある程度見込んだためにクレームがこないというような状態もあるわけでございまして、全く安心していいとうほどの実態になっていない、つまり一定の資格あるメーカーによる良心ある製作ということは、依然としてミシン業界でも大切なものでございまして、その問題は現在は民主的に実施をいたしていただきたいということを申し上げるにとどめたいと思います。  それから登録停止でございますが、これはなかなか大きな問題でございます。だんだん過当競争が、現在は別として、もっと激しくなります場合には、当然価格は上から押えられる。そうすると、品質の方で、たとえばアーム、ベットの肉の厚さを何ミリを何ミリに減らすとかして、メーカーとしては安くしようとする、そうすると、当然実態としては、品質が落ちて参ります。従ってそういう実態が起きた場合には、現在の中小企業団体法の新規設備制限というものは、一種の極端な言葉で言えば、ドリル一本と一部屋あればできるという業界でございます場合には、技術的には困難でございまして、もしそういう事態に至った場合には、やはりこの法律によるしかないのじゃないかということが、われわれは一応常識的には考え得るのでございます。  それから次に、事業協会でありますが、この事業協会の仕事といたしまして、いわゆる調査宣伝、サービスといろいろございます。それから品質の改善、これは今まで私がミシン業界の実態を申し述べました中に大体尽きると思いますけれども、それからもう一つは、やはり一番最後に特にお願いしたいと思いますのは、資金による裏づけも、当然それによって仕事の内容いかんが非常に変ると思いますけれども、一応先ほどの、いろいろとミシン業界の実態から申しますと、当然もっと海外調査、あるいは品質の維持ということは重要になってくるのじゃないかと思います。それでたとえば電気製品メーカーさんが、国内であれだけ非常に努力しておられることは、耐久消費材として当然でありますが、ミシンは海外へ参りますと、残念ながらそういう状態は、シンガー、ドイツのパフだけを見て、日本のミシンというものは、どこのミシンだかわからないような名前がついておるというのが実態で、国内では機械工業輸出中第二位を占めるといばっておりますけれども、少くとも現在、やむを得なかったと申しましても、実態はさようでありまして、今後いつまでもこのような状態は、もう世界の経済の、ミシンの競争から申しましても許されない状態ではないかということを思いますと、当然このような事業協会の仕事は直ちにやっていただきたいと思います。先ほどちょっと輸出組合で、ニューヨークに一人駐在員を出しておりますと申しましたが、実はシンガーが一月の十五日にアメリカの関税委員会日本ミシンの問題で輸入停止——ジグザグ・ミシンの輸入・停止という問題で提訴した問題がございます。これは現在お互いにこの問題で関税委員会中心にあれしておりますが、その内容は、日本ミシンのジグザグの特許の問題で触れておるということで、それに該当し、あるいはそれの可能性のあるものは全部一応停止してくれというのがシンガーの提訴の内容であります。こちらといたしましてはアメリカに非常なウエートを占めておりますだけに、ほかのミシンに関係いたしましても大へんですし、さらにいろいろな点で、シンガーといたしましては、これだけ日本ミシンに押された以上、あらゆる手を尽してくるのではないかということで、向うの専門の弁護士、弁理士を雇いまして、現在これに対して係争中でございますが、この特許問題一つ考えましても、ミシンに関する特許は、聞きますところによりますと、アメリカで一万件もある、これにはいろいろ需要製、あるいは重要性じゃないものもございましょうと思いますが、おそらく特許問題だけでも一つ一つ、さらにシンガーが今三つの特許ができておりますが、やり出しますと、こちらは中小企業が主体になっておりますから、あまりそういう特許を詳しく調べていない。そうしますと、非常に危険を感じまして、いろいろそういう問題がまだこちらが負けていないにかかわらず、輸出停止しようとしたり、いろいろな問題が出て参りまして、特許一つ考えましても、そういう実態でございまして、これは当然こういう団体が特許の問題にも触れて、国内で海外の特許に触れない、そういう問題で輸出停止を食わないというような調査も当然必要ではないか、これは特許一つ例を出しましても、そういうような実情でございます。  私一人であまり時間を過ぎてはあれでございますから、最後にいわゆる買い取り行為でございますが、将来価格の安定、あるいは不況対策として、こういうものがミシンの場合は当然考えられてくるのではないか、たとえば現在工業組合で一つの考え方としましては、共同受注、買い取り行為ということをいろいろお互いにやるのですけれども、たとえば民主的に一票一票は非常にけっこうでございますけれども、非常に利害錯綜するために肝心なところにいくと、そのままストップしてしまう。それからたとい金額にいたしましても、工業組合は個人保証ですから、非常にお互いの危険性を重んじまして、ここに限界がございます。工業組合としての仕事の面もございますが、そこに限界があるということで、現在一年前から出しては引っ込め出しては引っ込め、結局振興法ができたら、その方でやろうじゃないかというような状態になっております。  以上が大体申し上げたい全貌でございまして、従いまして、業界といたしましては、今後の要望は別といたしまして、大勢としては賛成でございます。ただ要望といたしましては、当然民主的にぜひ運営していただきたいことはもちろんでございますが、民主的という意味は非常にばく然としておりまして、それでは関係利害メーカーが全部入って、全部の意思を通すのが民主的かと申しますと、必ずしもそうとは言えないのであります。団体の性格上、あまりメーカーに偏しても、あるいは商社に偏してもいけないので、双方のことを知った方に当然運営していただきたいという考えは持っております。  それからこの中に部品関係がちょっと登録の関係で出ておりますけれども、やはりミシンの場合には、完成品部品とそれぞれの役割の限界はございますけれども、やはり生産面から申しますと、部品が中核をなしております。その点で、将来この部品部門の点でさらに大きな御配慮があるとありがたいと思います。なお、これができました暁には、当然いろいろなこういう事業はミシン関係の各中小企業を中心とするメーカー負担金の納付によって運営されると思いますが、何と申しましても、非常に中小企業を中心としておりますだけに、なかなかその点でつらいわけでございまして、将来こういう点で、政府におかれましても、十分資金援助もいただければ、それに乗って、一そうこの協会発展が期せられ、それこそ確実な安心したコンスタントな輸出業界ということになり得るのではないかと思っております。よろしくどうぞお願いいたします。
  8. 島清

    理事(島清君) 次に、株式会社東光ラジオコイル研究所専務取締役前田久雄君にお願いします。
  9. 前田久雄

    参考人(前田久雄君) ただいまから十分間ぐらいいただきまして、次の五項目に分けて申し述べさしていただきたいと思います。  一、参考人としての資格、二、軽機械法の考え方について、三、最近のトランジスター・ラジオ業界、四、主張、五、トランジスター・ラジオを含む本法案に対する業界の態度、以上の五項目でございます。  一、参考人としての資格というようなことについて申し述べます。  一つにはトランジスター・ラジオも軽機械として、またその輸出生産の大部分を占めているという点で、双眼鏡やミシンと同じ立場にあるということ、また一つには、私は株式会社東光ラジオコイル研究所というものを創立いたしまして、トランジスター・ラジオに必要なIF・トランスというものを日本の全セット・メーカーに、数量から申しまして八〇%以上を納入しているということから、この法案の正否に重大な利害関係を有しているものでございます。  二、軽機械法の考え方について申し述べます。  軽機械法の内容は、登録制によりまして、品質向上と、業界の秩序を確保し、また輸出振興事業協会の設立によりまして、活発なマーケッティングを行うものと承知いたしております。ところで、現在同法案にはミシンと双眼鏡が取り上げられております。ミシンや双眼鏡アッセンブル方式によって作られ、しかも中小企業が大きな比率を占めているという輸出産業であることから、特別の立法をされまして、従来欠けておりました海外マーケッティング品質向上価格安定を助成されることにつきましては、大へんけっこうなことと存じます。これによりまして、貧しい日本のために、安定に多額の外貨獲得ができるということは、何としてもうれしいことでありまして、大賛成でございます。私たちトランジスター・ラジオ業界もまさに同じ状態に置かれておりますので、将来の安定輸出の拡大のためには、ぜひとも同様に軽機械法の対象としてお取り計らいをいただきたいものと存じます。ここでまず業界の実態を御認識いただきたいと存じます。  三、最近のトランジスター・ラジオ業界に関して申し述べさせていただきます。  トランジスター・ラジオは、御承知のように、最近現われました産業でございまして、輸出産業として目ざましい飛躍を遂げつつあります。昭和三十二年四月には、二千四百七十台の輸出が、約一カ年半の後に当る昨年の十二月には二十三万三千台と、約百倍に伸びております。双眼鏡やミシンは古い歴史で、輸出量もほぼ一定しているようでありますが、トランジスター・ラジオの方は施策のよろしきを得ますれば、ここ二、三年後にはおそらくミシンの数倍になる可能性が強いのでございます。しかるに現在バイヤーの買いたたき、それから輸出先、すなわち相手方の正規販売ルートの混乱から、相手国の正規業者過当競争となって、日本製トランジスターの信用を害しつつあるのでございます。このまま放置するならば、ミシン、双眼鏡にありましたように、業界に摩擦を生じ、また売り先国の正規販売ルートを乱し、ついには輸出も衰微するに至ることは火を見るよりも明らかなことでございます。これが現在の状況でございます。  四、次に、参考人の主張を申し述べさせていただきます。  今やトランジスター・ラジオのみをもってしましても、昨年において年間一百億円以上、本年は百五十億円以上の外貨をかせぎ、将来全地球上あますところなく日本のトランジスターを普及せしめ得られるという曙光さえ見えておるのでございます。驚くべき事実でございます。しかるに今日、同業者過当競争によりまして、相手方の正規販売ルートを乱すこと、価格の乱れることなど、あえてみずからその芽をつぶし、自覚があっても、道義心に薄く、協調性に欠け、双眼鏡やミシンに見る失敗の轍を再び踏むところまでいかねばおさまらぬ国民性こそ、まことに悲しいことと言わねばなりません。ここにおきまして、トランジスター・ラジオの輸出のさらに今後順調な進展をはかり、何年も何年も今後に長く続く外貨獲得に資するために、ぜひとも今すぐ本法案にトランジスター・ラジオを追加していただきたいのでございます。これが私の切なる主張でございます。  次に、トランジスター・ラジオを含む本法案に対する当業界の態度について申し述べさしていただきます。  ここで、この法案が国会に提出されるまでの業界の態度を振り返ってみますと、政府側から本法案の骨子を示されたに対しまして、業界が検討いたしましたときに、時期尚早論が出たのでございます。ところがその時期尚早論の背景を見ますと、一面では、現在業界の体制を次第に整えて、それを軽機械法の対象として助成してもらうようにしたらとの意見がありましたが、また一面では、現在輸出がどんどん伸びている、またもうかっている、従ってよけいなことはやめて、現在のままでよいではないかという、すこぶる安易な意見が非常に強かったのでございます。すなわちトランジスター・ラジオの輸出のすべり出しが非常に順調で、しかも急上昇に現在伸びつつあるだけに、すでに起りつつある相手国の正規販売ルートの乱れや価格の低下などを規制するの必要性を認識し得なかったのでございます。こうしたままに今日に至りましても、何ら自主的な販売改善案も出ておりません。私たちの国民性からいっても、自主的のみによる規制はおそらく困難と思います。もしできるというならとことんのところまで行って、相手国の信用も地に落ち、従って輸出量も激減して、価格も安くなって利益もなくなるというふうになって、初めて自主的な規制が考えられ、また実施されるので、現在のようにまだもうかっているという段階では、自主的のみによる規制は、悲しい国民性から絶対望み得ないと考えます。先ほど申し述べましたことからわかりますように、このまま放置するならば、私たちのあすの経営にも支障を生ずるような事態の芽が幾つでも見られます。すなわち国内の過当競争海外の正規ルートを乱すことから、すでに新聞紙上でも見られますように、日本製品反対の声が出ております。今や時期尚早どころの話ではございません。この対策が一目おくれますならば、それだけ手おくれになる現在であります。これをぜひとも御認識いただきまして、今すぐトランジスター・ラジオを本法案に追加していただきますよう重ねてお願い申し上げます。  以上でございます。
  10. 島清

    理事(島清君) 以上で四参考人の御意見の拝聴は終りましたが、四参考人の方に対して御質問をなさる方は、順次御発言を願います。
  11. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私今伺いました御意見の中で、富永さんにちょっと伺いたいと思います。あなたのお言葉の中に西ドイツでは百ドル、日本では若干値が下りまして現在では二十五ドル程度でできている。その二十五ドルで十分に採算がとれている、こういうことをおっしゃったのであります。この採算のとれようというものは、いろいろ見方があると思いますが、私どものいろんな経験からいたしますと、西ドイツが百ドルで作って、それが世界市場に相当浸透し得るものであるならば、西ドイツと同じ品質をもっておる日本品を、なるべくわれわれの努力で、百ドルの上を越すということは、とうてい商売にならないでしょうが、百ドルに近づけながら輸出をしていく、こういう努力が国内業者としては、製造業者も販売業者も必要ではないか。非常に日本品は安いというのだが、みずから卑下して安くする必要はないので、なるべくいわゆる国際的な価格水準に日本製品引き上げていく、こういう努力をすべきではないか、そういう工合に私は考えますが、これに対する御意見はいかがでしょうか。
  12. 富永孝次郎

    参考人富永孝次郎君) これは私今参考人としての意見開陳のときに申し上げたのでありますけれども、結局、日本製品がこれだけ世界のあらゆるマーケットを支配してしまったということは、安いということ、品質は、もちろん今お話のように、ドイツの品に負けないという程度にいっておるのであるが、安いという点において、初めて大衆の購買力にマッチしたのである、大体この使用目的が、双眼鏡というのは、観劇であるとか、あるいはスポーツであるとかといったような大衆の娯楽に使われるものであるから、高くしたのでは結局売れないということで、つまり大衆価格であるということにおいて、これだけの売り上げをなしておるのであると考えます。現に、日本で、ほんとうにこれこそドイツ品に負けないという最高級のものができております。日本光学の製品であるとか、東京光学の製品ができておりますが、日本光学はほとんど売れておりません。おそらく月に五台も出ておるかどうかわかりません。東京光学は月五十台出ておりましたが、最近ではもう生産をやめております。そういうことで、結局は適当な採算のとれる価格、大体今、日本双眼鏡メーカーは一割から二割の間の利益を得ております。何ら不安はありません。皆が大へんこれを喜んで作っております上、その状態においてたくさん売るということが、この輸出振興という目標じゃないか、少しでも高くすると、これは売れなくなるのじゃないかと思います。品質向上はけっこうだけれども品質を少しくらいよくしたからといってこれはそれだけよけい売れるものでないのじゃないか、双眼鏡はこれは双眼鏡自体の性質を御了解願わぬとわからないのだけれども、現在の状態から少しでもよくするためには、非常なこれは経費がかさむのでありまして、レンズ一つの問題を考えましても、コストにおいて大へん違いが出てくるのであります。無理をして、ここでしいてそうする必要はないというふうに考えます。
  13. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 いや、私の外国品との比較の場合は、やはり品質が同質であるということが前提でありますから、同質な品質について、日本の方が二割安いとか三割安いということならば、商売として成り立つと思いますが、四分の一であるというような、そういう安い値段にして商売をする必要はないのではないか、こういうことを私は申し上げたわけです。このことは私も実はずっと一回り回ってきたときに、ライターとか万年筆とか、こういうものを見て痛感してきたのですよ。日本の雑貨品というのは全く安いですね、これは。で、安いし、しかもそれで輸入価格、向うの輸入価格を聞いてみますと、バイヤーは相当利益を得ているようですね、それでもなおかつ。ですからやはり雑貨品が日本輸出貿易の相当なウエートを占めているのですから、外貨を獲得するという意味においては、値段はあまりバイヤーに、まあ悪い言葉でいうと、ぼろもうけをさせないで、利潤をもっと日本に持ち込むというような、向うに高く売るという意味じゃありませんが、日本としてはそういうことを考えなくちゃならないのじゃないかと、こういうことを私は申し上げている。  それからもう一つ、伺った中で、重要なことがありますのは、これはいずれ政府側に私は尋ねたいと思っておりますが、これは、ミシンにも双眼鏡にも、今最後にお話になったトランジスター・ラジオにも、その他にもあると思いますが、完成品でなくて、こういうものができるというと、部品でもって輸出をして適当なところで組み立てて売ってしまう、こういうことが行われることになりますというと、なかなかこれまた防げないことになるのだが、そういうものを防止する方法はありますか、実際問題として、この点をそれぞれの方からちょっと承わっておきたい。
  14. 兼子忠男

    参考人兼子忠男君) 先ほどのことにさかのぼって申し上げたいと思いますが、確かにドイツの五分の一に相当する金額で販売されていることは、これは事実であります。しかしながら、品質は、ドイツとそれだけ優っているか劣っているかという点については、三十一年にこれは政府の御意思によって、三カ国から輸入いたしまして、比較試験をやりましたところが。ハーツ等については若干の劣る点がございますが、レンズその他の点については、絶対に五分の一に相当するような安く売らなくても十分に売れるというわれわれは確信を持っております。これはデータに基いて、はっきりした線が出ておるのであります。これはここにおる反対者の富永氏の発言もありますが、自分たちが業者でありながら、こぞって、進んでそういう安く売ろうという考え方が、どうもわれわれには納得できかねるのでありますが、これは何かの間違いじゃないかと思います。われわれは品質は現在よりも、ドイツに負けない品質向上をしながら、おそらくドイツでも品質向上に向って政府並びに民間こぞって、いろいろな点で研究しておると思います。これをわれわれがここで大いに、ドイツと競争しながら、価格をドイツの五分の一にならなくても、それの八〇%までに持っていきたいというのが、われわれの業界要望でございます。従いまして今御指摘のハーツの点で、今香港等において組み立てをやられて、われわれの統制がきびしいために、パーツを輸出されて販売されている。こういう点については、こういう結果があるために、われわれはこの法案が必要だと思うのであります。といいますのは、現在の規定でパーツを輸出してはいけないという規定はございません。こういう点も、輸出するには関連産業のパ一ツ業者を表示したのみで輸出することができるこういう点に要約されますと、やはりこの法案がわれわれのためにも必要であるかということを、はっきりおわかり願えると思います。こういう点で、遺憾ながら若干の、先ほどの富永参考人発言内容では、相当な数量が出ているというようなお考えのようですが、私の方もこれは黙って眠っていることはできませんので、いろいろな点で調査いたしました。東京、横浜から出荷されているかあるいは関西方面からこういうパーツが流れているか、こういう点もわれわれは十分に調査した結果、若干は出ております。しかしながらこういう点を、今後出さないように、われわれの規制によって、今の団体法による工業組合ではとうていできませんので、今度の法律の中でこういうものを規制していく、せっかく売るものを、いいものを高く喜んでいただこうという考えから、われわれがこの法案に対する考え方を多数がそういうふうに考えております。決してドイツの金額から見ますと、五分の一という考えで、安いから売れるのだという考え方は、われわれの業界ではもうなくなったような気がします。と申しますのは、実は昨年の十月に振興会社が一手買い取りの基礎ができましてお前たちは商社に買いたたかれるならば、いつでも振興会社に持ってきなさい。われわれは最低価格で買ってあげましょう。こういうような制度ができまして、そのときの価格と現在の価格は、おそらく反対者である富永さんであるにしても明確に認識されておると思います。あの当時の状況からいきますと、おそらく一ドルは上っております。われわれのメーカーの手取りが三百円から四百円もあの当時から見ると価格的には上っております。これは否定できない、実例がはっきりしておりますので。振興会社無用論を先ほど言っておりましたが、決してそういうものではないというふうに御認識願いたいと思います。  それからこれはついででございますが、工業組合が自分たちの法律団体法法律のもとで……。
  15. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 ちょっと、それでけっこうです。それで大体わかりました。  反対撤回連盟の方から、これはあとで事務局で取っていただきたいと思いますが、今述べられたことをだいぶ系統的にずっと意見が出ております。従って同じ双眼鏡の関係ですから、あなたの方からずっとこまかく出ている反対論に対して、それぞれの項目について、御意見をこれに相対するようにやっていただいて、緊急に私の方へ出していただいて、そして私どもの判断の間違いのないようにいたしたいと思いますから、いずれまたそのときに、われわれでよくわからないときがあれば、富永さんと兼子さんにもう一ぺんきていただくということもあると思います。とにかく非常に同じ業界意見が正反対に食い違うということは、ちょっと国会の審議としてはそのどちらを取るかということは、慎重でなければならないので、そういうようにお願いいたします。
  16. 兼子忠男

    参考人兼子忠男君) それでは今業界が二つに割れているという考えですが、私の方の……。
  17. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私はちょっと時間がないものですから、あとで資料をいただけば、きょうはそれでけっこうだと思います。
  18. 島清

    理事(島清君) では兼子さん、そのように。
  19. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 あとミシン、トランジスターの方は、先ほど私がお尋ねしたようなことで、ほかに御発言いただくようなことはありませんか。
  20. 前田久雄

    参考人(前田久雄君) 今栗山先生からお話がありましたトランジスターの方は、まだ入れていただいておりませんが、入れていただくことについて御不審があるといけませんので申さしていただきますが、トランジスターの方では、部品で入れてどうしても売りたいということはまずないと思うのです。やむを得ず、完製品じゃ困る、輸入できないという先では、これは部品で売ることも考えられますが、これらは事業協会の内部におきまして、部品業者も十分な発言のできる立場をとって、そして売先国のコストの構成において、労務費がどの程度のパーセンテージを占めているかということを、マーケッティングで研究して、それによって品質価格を決定する努力をすれば、もうからなくなるということは防げるのではないかと思います。
  21. 上原正吉

    ○上原正吉君 ちょっと富永さんに伺いたいのですが、この反対者名簿というのはあなたの方の御提出の資料だと思うのですが。
  22. 富永孝次郎

    参考人富永孝次郎君) はい、そうです。
  23. 上原正吉

    ○上原正吉君 ここに組合員総数百九十一、反対者九十八、とあるのですが、組合員総数というのは何組合なのか。    〔理事島清君退席、理事小幡治和君着席〕
  24. 富永孝次郎

    参考人富永孝次郎君) 団体法による日本輸出双眼鏡工業組合でございます。
  25. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 兼子さんにお尋ねをいたしますが、私は本会議に出席をしておりまして、あなたの御意見を聞けなかったわけですが、栗山委員の質問に対して、あなたは御答弁の中で、私の伺ったことは、この法案に賛成であるというような趣旨だと思うのです。  御承知の通り日本アメリカから始まって東南アジアもそういうことになりますが、あらゆるものが出ていくたびに、最後は買いたたかれてにっちもさっちもいかなくなるということは、まず真珠から始まってあらゆるものに……。現在、皆さん方あるいは最後に述べられた前田さんの方では、トランジスター・ラジオが来年あたりこういう状態になるというお話なんですが、そこで、去年団体法を作って、これは今の政府のお話を承わっておれば、日本の中小企業の憲法である、こういうことをここに並んでおられる方が言ったのです。ここにいる重工業局長は当時局長でなかったから、そういうことは言いませんでしたが。そこで、われわれもそんなことでは助かりませんということで、大いに討論をやったわけですが、あの団体法で、わが国の政府、岸内閣は、これで商工組合をやるということになりますと、商工業組合というもの、あなたたちの方は工業組合ですが、それでやっていけるということで、あの法律ができ上ったのですよ。しかし、あの法律でだめなんですか、あの法律で……。
  26. 兼子忠男

    参考人兼子忠男君) 確かに当時の中小企業安定法に基く調整組合もございました。今度の団体法に切りかわって、去年の五月一日からわれわれ工業組合が誕生したわけです。今の御指摘は、団体法でできないかということなんですが、われわれは、団体法というものは中小企業の一般法であって、やはりそれに属さないわれわれの企業があると思うのです。そういった業界がわれわれ双眼鏡である。やはり団体法だけでは防ぎきれない。たとえて申しますれば、先ほどのパーツを輸出しまして海外で組み立てて販売するというような関係で、こういう点でも今の団体法では規制できない。それから企業者としての問題ですが、今までとにかく団体法では、現在の規定では、順番がくれば最低の保障は認めてくれるという点で、たとえば青空的な魚屋、八百屋さん的なものが並んで、双眼鏡ワクをもらって売って商売をしている。ブローカー的な存在もある。こういう点では、やはり今の団体法では私どもは規制できない。こういう点が一つ。それから、決してわれわれは登録停止するという問題でなくして、まず団体法の精神から言いましてわれわれの業界はまず生きることを考えなければならない。これは団体法の精神でございます。まず生きた後、海外市場が非常によろしくなって、そうして新しい業者を入れていくというのが団体法の精神だと思うのです。それにのっとってやっておるようですが、また事業協会の点は、現在われわれが振興会社という機関がございます。これは御承知のように商社あるいはわれわれメーカー、なお大手筋といって、組織を持つ大きな会社の三社をあわせた振興会社がございますが、この振興会社ではどうしても不備だ。どうして不備かといいますと、まず法的に一般法人でありますから、せっかくわれわれが手数料を納めたものを税金によってしぼられるおそれがある。現在しぼられておりますが、あるいは国がもっと今度の法律に伴いまして国のある程度資金の裏づけがある。衆議院で三つの付帯決議をされておりますが、あれを見ましても、財政的、経済的援助をしろという付帯決議がありますが、そういう点から考えましても、今の工業組合よりも卒業協会の方がベターであるというふうに考えておるわけです。そういう意味で、われわれはこぞってこの法案に、一応いただいていこうという考えを持っております。
  27. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 私がお尋ねする内容が散漫ですから、御答弁も散漫になって非常にやりにくいと思うんですが、時間がございませんから、端的にお伺いいたしますが、その団体法は、まああなたのおっしゃったような意味もあろうかと思いますけれども、私あなたと討論をしておるわけじゃないから申し上げませんけれども団体法はそういうような趣旨ではなくして、あなたのようなりっぱな指導者すら、そういうように理解しているんだったら、これは大問題であって、これは中小企業庁の責任であるかどうかしりませんよ。しかし団体法の真の目的は、やはり過当競争を防ぐというところに、やはり真の目的があって、とにかく真の目的過当競争を防ぐというところにあるんですから、私はあなたのように一般法だとは考えておらぬわけで、しかし私は、あなたのようなりっぱな指導者がそう理解されているということでは、きわめて残念に思うわけです。そこで団体法じゃいかぬということですが、実は皆さん方のような会社日本に百九十か二百近くございまして、そのうちの百以上がこれに反対意見だということを私聞いたんですが、兼子さんの方ではどう認識しておりますか。
  28. 兼子忠男

    参考人兼子忠男君) ちょうどいい機会ですから……。実はここに衆議院あるいは参議院の先生方には署名のものをお配りしたと思いますが、これを見ますと、この署名はこれは写真で原版から写したものでありますが、この署名が、先ほどもちょっと申し上げましたが、署名が六百二十三名になっております。今日は、現在の工業組合の数が百九十三でございます。それでこれに署名しておるのが、百五十六名が署名しておるわけです。どうしてかといいますと、現在ここにおられる富永参考人が、これが反対派の代表という発言をしておりましたが、ここに発言内容を見ても、富永氏個人の資格で参っております。私は代表として業界の一般のこの法案に対する考え方を述べましたので、私の主観も若干入りましたけれども、この大勢が、百九十三名の中で百五十六名がすでに署名しておる。あるいは反対者の今の連盟がございますが、これは本来ならば委員長がここに来られて説明するところでありましょうが、委員長自身も、今まで反対しておられた中で、大体この法案を一応いただいていこうと、やってみようという考えが多数あるようであります。そういう意味で、私は工業組合理事長としての業界の全般の意向をお話を申し上げたわけです。決して百名ではなくして、ここにあります、あとで届けてもよろしいのですが、百五十六名の署名がございます。
  29. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 今の点について富永さんに、もし違った点があればお伺いします。違わなければよろしいんですが、その点が一つ。  それからこれは衆議院商工委員会で、いろいろ論議をやっておりますから、衆議院でやった論議を私は繰り返すつもりございません。ただ皆さん方の、双眼鏡振興会とか、振興株式会社などという名称の一つの組織がございますね、しかし双眼鏡作っておられる全部の方に対して商工中金、政府機関ワクで五億円ある。しかしこの五億円のワクは一つも使っておらない。ただ年末融資で五千万円使っているということだと……。衆議院商工委員会委員と、ここにお見えになっている小出局長と、皆さん方と話し合ったかどうかわかりませんけれども、しかしそれくらい苦しいのであれば、なぜ安い金利を使わぬのであるかということを、これを一つ富永さんにお尋ねいたします。
  30. 富永孝次郎

    参考人富永孝次郎君) 業界が賛成、反対両論ありまして、これは当然ある一つの問題については、賛成の意見反対意見があるのは当然でありまして、それぞれ違った頭で考えるのでありまするから、どちらがいいか、悪いかというようなことは、たとえばこういったような最後の、つまり国家の審議機関において決定さるべきものでありますので、ここで十分意見を申し上げるということは差しつかえないと思う信念においてやっておるのでありまするが、ただ、今、工業組合理事長から、百五十六名の、本人の署名、捺印のある同意書があるのだ、賛成連判状みたいなものがあるのだというお話し、反対の方は皆さんのお手元に名簿を差し上げておりまして、これが九十八名であります。今百九十三名と、これは私の方は二月現在ですから、百九十一名になっていますけれども、百九十三名とおっしゃいましたが、そのうちとにかく九十八人というものが反対者である。百五十六名が賛成者である。そうすると、それを加えますというと二百五十何名になるのでありまして、おかしいのじゃないかということになるのであります。これは重複しているのであります。両方重複しているからそうなるのであります。そして先刻から理事長が、業界は賛成しているのだということを盛んにおっしゃっている。私は、まあ今日賛成、反対の代表者として招かれたつもりであるのでありますが、理事長というのは、これは工業組合の執行機関工業組合の意思決定は総会でありますので、これは総会できめたことを執行する機関であります。工業組合の意思、たとえばこの法案に対して賛成か、反対か。執行してもらいたい、やめてもらいたいということは、これは工業組合の意思であります。それをきめるには総会があります。総会のみがこれを決定する機関であります。理事はその決定に基いて、ただこれを実行する、あるいは理事長はこれを、その決定を代表して、その旨申し述べるということが理事長の役目じゃないかと思います。ところが今のお話しでは、工業組合を代表しているんだということだが、一体どこからきているのか、私は全然見当がつかない。というのは、一度も総会においてこの法案について賛否を決したことがないのであります。それじゃあどうしてそういうふうに今おっしゃるかということ、だから理事長が総会の決議を全然考えないで、これは個人的な資格においておっしゃるなら、これは構いませんけれども業界は賛成である、工業組合は賛成であるということが、どうもこれは法理的にはおかしいと私は思います。同時に、百五十六名あると、あるいは関連会社を含めて五百何十名であるとおっしゃいましたが、その署名なり、判というものが、それだけどうして集ったかということを実は申し上げなくちゃならないので、実は私はここの席にきます前に、こういうことになつちゃ困るので、どちらが多い、少いというようなことは、総会を開かなくちゃわからなかったのだから、ここでは申し述べまいということを私は兼子さんに御相談したのでありますが、しかし自分の方は連判状をたくさん持っているから断然優勢なんだから申し上げます。こういうお話しであります。——委員長、こういうことを記録にとってよろしゅうございますか。私は反対が多いと思っております。実際において、心の中を見て、ほんとうに、これで何かレントゲンなんかで写して見たら、これは反対が多いんじゃないかと思います。なぜかというと、この同意書はどうして出されたかということを申し上げますと、これは通産省で、こういうことがあるのです。私は去る十一月二十五日に参議院の議員の本多市郎氏が私の同郷の大先輩でありますので、この問題について御相談いたしたのであります。それではさっそく政策審議会を開こうというので、翌日直ちに二十五日の日に——御相談したのは前の日でありますが——二十五日に審議会がありました。そのときに、私ら反対者が約八名、それから参議院の政策審議会の方がやはり、五、六名、それに通産省から乙竹課長さん、中小企業庁からもう一人課長さんが見えました。そこで私はこの法案が非常に間違っておるということを御説明したのであります。ところが、そのときに乙竹課長さんは、反対は少いのである、ここに来ていらっしゃる方ぐらいなものなんであると、こうおつしゃいましたので、そのときに、ちょうどその時分の反対連盟委員長が、これだけ同意書があるのだというて提出された八十名ばかりの同意書をお見せしたのであります。そういうことにおいて、その後通産省の御当局は、この法案PR運動を開始されたのでありまして、産業機械課発行のパンフレットを二通工業組合の手を通じて一般組合員に散布されました。これはこの前私から差し上げました印刷したやつにも書いておりますのでおわかりでありましょうけれども、一方、協同組合の理事長、副理事長を招致されたのであります。協同組合と工業組合とは違う。これはつまり、世間にありますところのいわゆる協同組合であります。協同組合が五つあるのでありますが、そのうち四つだけの理事長、副理事長を招かれまして、この法案に対する善処方を依頼されたのであります。そこで、理事長、副理事長は帰りまして——これも、協同組合も当然組合の意思を決定するには総会が必要であります。こういう重要な法案に対する組合の態度をきめるのは、これは総会を開いて多数決で決定をすべきである。しかるに、今お話ししたように、理事会の決定でもって賛成という線を出されたのであります。そうして、そういう人が集まって、この促進連合会というものをお作りになりました。そこで、そのうちの一つでありますところの東京望遠鏡協同組合、私もそれに属しておるのでありますが、この理事会だけでもってこういう組合の意思を決定することは、これは越権であり、定款違反であるというところでもって、私ら組合員が総会の招集を要請しまして、そして開きました結果、多数決でもって理事会の決議は無効であるということにいたしまして、そして理事は直ちに責任をとりまして辞任しまして、私も代って理事になったのでありますが、そういうようなこともあったのであります。そのときに、この連判状というのは、通産省から引き下ってきて後、理事長、副理事長が人を使って、全業者の中の賛成だけの署名をとって歩いたのであります。これは当然協同組合の理事長としてはすべきことじゃないと思います。賛成、反対両方を持って歩いて、どちらかについてくれというのならわかりますけれども、賛成だけのものを持って、どうだ、これはいいんじゃないか、押さないかというふうでは、集まるのも当然であります。その他関連業者、これはその辺に御用を聞きに来るところの下請の業者に、さあ押せ押せで作ったもので、これは五百集まろうが千集まろうが、これはそのときの調子であって大した意味のあるものではありません。そういうようなことですね。つまり、これは偽装されたものであります。もっと極端なことを申し上げたいのでありますけれども、あまりに下劣でありますので申し上げませんけれども、判を取った方法につきましても、いろいろ事実があるのであります。なぜこれを総会において正々堂々ときめないかということなんでありまして、そういうふうな方法によって作られた。私の方も、実はさっき申しましたように、十一月二十五日の審議会に出しました八十通あるのであります。これをなぜきょう持って来なかったかということは、先刻こちらがおっしゃいましたように、私どもが懇話会を作り——懇話会というのは前にあったのであります。あれは、双眼鏡界のいろいろな問題を研究してそれに対して運動するという本来のこれは永続的な懇話会という集まりでありますが、この法案が出たために、それを母体としまして軽機械輸出振興法案撤回連盟というものを実は作ったのであります。だから、懇話会に四十名としましても、その上に八十名というものは乗っかっている。その委員長であるところの某氏は、最初においては、衆議院において法案が通るまでは、最後まで戦うんだ、参議院で最後まで戦うんだということをあらゆる席において公言しておったのであります。ところが、衆議院を通った後に、俄然として今度は態度が変ってきた。これは、別に一つ重要な業界の問題があるんです。つまり、生産制限がありますから、その生産数量の割当をもっとふやしてもらいたいという、これはもう念願であります。みんなの念願でありました。それにつきまして、増ワクと申しているんですが、通産省にお願いしてもう少しふやしてもらっていいんじゃないか、国際情勢、需給関係からしてもっとふやしてもらってもいいんじゃないか、また、小さいメーカーは、月に百本しか作れないのもあるし、二百本しか作れないのもあるし、こういうことでは生活ができないんだという意味から、全体の数量をふやしてもらう、その結果、またお互いの各個人の数量がふえるということの、つまり増ワク運動と言っているんですけれども、通産省にお願いして割当をふやしてもらうという意味の増ワク運動であります。それがたまたま一緒に起ってきまして、ぜひこの際かりに五万本なり十万本なりふやしてもらおうじゃないかという別個にまた運動があるわけなんです。そこで、この法案とこれを結びつけまして、あまり法案反対をするとこれはいかんじゃないか、そのためにワクの方が運動がうまくいかないのであったんでは困るというところに頭が行ったんです。そこで、頭が切りかわっちゃった。法案を立案した人も産業機械課である、ワクをふやしてくれる所も産業機械課である、この法案にあまり反対するということは、一方において不利益な現象が起るんじゃないかといったようなそういうことから、反対の急先鋒であった委員長は、この反対を打ち切るという趣旨において、すっかり方針が変ってきたのであります。これはまことに遺憾なことでありまして、もちろんそういうことを通産省は考えていらっしゃるわけはないのでありまして、これは非常にお互いの低級さを暴露することでありまして、だからこういうことを申したくなかったのでありますけれども、当然これは法案法案として、どうしたら双眼鏡輸出をはかれるか、大事な国策であります。これは、通産省も、あるいは議員においても、われわれ業者も、一体となって、賛成反対、こういうところが悪い、いいんだということを、当然議論する大事な国策なんです。反対意見はもちろん言わなくちゃならない。また一方、生産数量の増加にしましても、さっきから私も御説明しましたように、膨大な注文が今あるのであります。各商社とも三万、二万、一万という注文をかかえて、生産制限のために応じ切れなくて困っているのであります。決して私は架空のことは申しません。三日前に東洋実業に連絡しましたところ、三万本のアンフィルド・オーダーがあるということを申しております。その他、一万、二万、何千という注文の満たされないのは至るところにある。こういう時代に、もう少しこれは国際情勢、需給関係から、さっきから私は警告しましたように、部品輸出によるところの脅威が迫っております。そういう点から、もう少しこれはワクをこれくらい、あと五万本、十万本ふやさなくちゃならぬじゃないかということは、これは一つの国策なんです。両々相まつことであって、これを混同して一緒にして考えることは全くおかしいのでありまして、ともに両方ともお互いに一生懸命に並行して考えるべきことであるから、こっちを通しこっちを通さぬ、そんなことを考えること自体、これは根本的に間違っておると私は思うのでありますが、不幸にしてそういう考えにある人が相当あるということが、非常な、私は自分ながらこういうところで申し上げるのは残念でありますけれども、あるのです。そういう見地からさっきの賛成者の名簿というものはまことに偽装されたものであると思います。私はきょう、けさくるときに今の、八十名の判こを押したやつを持ってきたいと思いまして、委員長に電話をかけまして要求しました。懇和会、まあ撤回連盟の母体である懇和会におきましては、先般集合しまして衆議院は通った。どうだろう、今後の方針どうしようかというときに、やはりこれは法案反対最後まで進むべきであるということに決議をしたのです。議決したのです。みんなで決定したのです。しかるにその翌日委員長はそういうふうですっかり変っちゃっている。あるいはほかの方へももうよろしいというようなことを申し出たことも事実であります。そういうことからして、けさ実はその委員長にあの同意書は一時こちらに貸してくれぬか、あれはあなたのものじゃない、あなたの判は一つ押してある、あなたの分だけとったらいいだろう。それであとのやつは全部こちらに、反対同盟のものだから、全員のものだから渡してもらいたいということを申し上げましたのですけれども、ついにそれは拒絶されたのであります。はなはだ残念ながら、その判のあるものはここにございませんけれども、大体皆さんにお上げしましたものと実際のものと内容は同じでありますけれども、さような、まことにこういうところで申し上げることは恥かしい、だからこちらでもって先ほどああいうことをおっしゃらなければ私は何も申し上げないつもりでしたのです。速記をとめて申し上げたかったのですけれども、事実ですからあの場合に御報告しまして、御批判を仰ぎたいと思って、数という問題については、反対も賛成もたくさんあるのだということで一つ御了解を得たいと思います。
  31. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 なお、私は年末融資の五千万のほかの五億円についてお尋ねしておったのですが、時間がございませんからあとで局長にお尋ねすることにして、あとの、もう一時になりましたので非常にお尋ねしたいことたくさんあったのですが、かけ足で大へん失礼ですが、川島さんと前田さんにお尋ねいたします。  環境は違っておるし、今までたどってきた歴史が違うので、現在置かれている輸出という立場で同じかもしれませんけれども双眼鏡の方と、川島さんが担当しておられるミシンと一緒に法律を作って縛るということは、なかなか困難なことであって、できることであれば、別々な法律を作らなければならないものだというように私は判断しているのです。しかし政府はなかなか仕事がたくさんあるわけで、なかなかそういうようにいかなかったことだと私は理解しているのですが、そこで川島さんに端的にお尋ねいたしますが、今とにかく大阪、一番ここが多いそうですね、ミシンの製造する率が。それから東京あるいは名古屋というように日本全国に散らばっているわけですが、大阪で作るそのミシンは、私は一度ある工場を見せていただいたのですが、十六ドル五十セントから十七ドル二十セントぐらいででき上る。もちろん船賃も途中のマージンもかかりましょうが、アメリカにいったら、安くて七十五ドルくらい、高いのは百二十五ドルから百二十七ドルくらいで売れる。われわれしろうとが考えれば、なるほど船賃もかかるし、途中口銭もかかるんだろうが、とにかく膨大な数字になるものであるというふうに、しろうとですから、びっくりしたのです。まだいろいろ理由がありましょう。しかしこの法律が適用されることによって、そういうことが規制されるかどうか、そこがまずお尋ねの第一点。  それから、第二点は、とにかく海外輸出ワクがあるそうですね。各社によっていろいろワクがあるでしょう。大阪が幾ら出せとか、名古屋が幾らだとか、京浜地区が幾らだとか、ワクがあるそうですね。しかし、なかなかワクよりも製造数量が何倍か能力があるので、そのミシン一台に対する輸出ワク——一台に対して、ミシンがとにかく十七ドルあるいは十七ドル二十セントの何十倍もするというようなことを聞いておるわけですよ。そういうようなことで、これを一本でしぼった場合に、そういうワクの割当というのですか、皆さん方の商売用語では何というのかわかりませんけれども、それから一本になってとにかく一つの組織がスムーズにできるものかどうかということが、その第二点目ですね、お尋ねの。ワクがありましょう、大阪も八千を固執する、東京は七千固執する、中京が六千固執するといったら、なかなか仏作って魂入れずにならないか。それがお尋ねの第二点。  第三点は、こういうことになりますると、ジューキとか、三菱とか、蛇の目ミシンやらブラザーミシンやら、私らが名前を知っているだけでもとにかく十指に余るぐらいあるわけですから、日本にあらゆる、メーカーが幾つあるかわかりませんよ。そこでそういう大工場で、やはりとにかく小さいものから大きいものまで一切仕上がる工場が、自分のところの工場部品は作らぬ。従って、とにかく、あらゆる下請機関にもう仕事をまかしてしまって、自分のところの機関は、ただ組み立てる、製造の方は抜いて、組み立てだ。ただ看板だけだ。その振興会ならば振興会に名前をつらねているのは看板だけだということになってしまって、将来の発展というものがとにかくすくすくと伸びていくけれど、中身が何もないものになりはせぬかという点ですね。その三点をお尋ねいたします。  それから、前田さんに、その次にお尋ねいたしますがね。あなたはこれに関連して自分がおやりになっているお仕事の立場から、トランジスター・ラジオ、コイルですか、その点について大体同じような立場に置かれておるというような参考意見の開陳がございましたが、衆議院商工委員会の議事録を読んでみますと、田中さんという委員の方がトランジスター・ラジオだとか、あるいはカメラ、こういうものは一体どうなったのだという質問をなさっておるわけです。ところがこれはやはり局長の答弁としては、大体田中さんの意見には反対しておりませんけれども、それぞれのやはり現在置かれている立場というものを考慮して、田中さんの意見には反対しておりませんけれども、また将来おやりになるということも明確にはおっしゃっておりませんが、ずっと一貫して流れておることは、将来やられるというようにも判断できるような答弁をなさっているわけです。従って、もし来年ならば来年こういう法律に似たものを、あなたのおやりになっているトランジスター・ラジオとか、あるいはまたカメラ、こういうものに適用するという法律政府が出した場合は、これは賛成意見反対意見があるかもしれません。しかし、今兼子さんと富永さんの内部事情承わったのですが、これは労働組合と経営者ならばまっ二つに分れて激しくやるのは当然ですが、しかし、こういう業者の方が、今までもそれは賛成反対ございましょうけれども、こういうように明確に反対賛成全く伯仲して対立しておるというものは、今まで参考人の方何名か来ていただいて、あらゆる産業についてお伺いしたけれども、ないわけです。従って、もし重工業局長の方で衆議院商工委員会に答弁したのを、来年実を結ばせて、あなたの方のお仕事にも適用しますといった場合にはどうなりますか。最前の発言はあなた個人の発言であるか、それとも大体そういう空気が流れておる、そういう考え方であなたの業界は進んでおるということを判断してよろしいかどうか。そういう点についてお尋ねいたします。
  32. 川島清祐

    参考人(川島清祐君) ただいまの御質問の最初でございますね。非常に日本ミシンがたとえば十四ドル、十五ドルで、それが向うの最終が、かりに五十ドル、七十ドル、これは先ほど阿部委員がおいでになる前に一応ミシンの戦後の急膨張の状態御説明したわけですが、その中に、非常にいわゆるアッセンブル方式により小資本でも非常にたくさんできるということによって、先に生産ですね、非常に自由に膨張できた。ところがアメリカバイヤー、これはユダヤ系が多いのですが、これはどんどん買付にくる。そうしてお互いにたたきあって、つまりあすこではやはり、当時二十二ドルでしたけれども、それがたちまち十四ドルに落っこってきたのです。十八ドルで売ってくれる、ここでは十七ドルというふうになるものですから、片方は幾ら出したいということで競争し合っておりまして、つまり再生産のいわゆる研究費とかそういうことは全然考えません。ただある程度の普通の大福帳のような計算でどんどん出していく、それが続いたものですから、結局向うではたとえばシンガーなら百ドルで売れている——いろいろな種類がございますけれども、一応の普通の家庭ミシン、それはこちらではそういうふうに競争するものですから、かりに十五ドルに下る、途中で非常にもうけてそれで売られている、しかもそれで五十ドルは五十ドルという現状ですね。これを引き上げるということはなかなか非常に大へんなんです。二つ考えがございますが、向うで日本ミシンというものはやはり宣伝されていない。もっと日本ミシンというものはどんどん宣伝してくれれば——今は昔と違って、昔はメイド・イン・オキュハイド・ジャパンを隠したのです、日本ミシンというものは。今は決してアメリカの感情は、日本のものだからどうというものはない。非常にいいということを宣伝してくれ、それにはもっと宣伝費はこちらで——アメリカはテレビが非常に高いのですけれども、テレビで宣伝すればわれわれがもっと高く売ろうとしても売りいいのだという点を非常に強調したことがございますのが一つ。それで根本的に一挙に上げることはむずかしいにしても、ところが現在そういうことは残念ながら個々ばらばらでございまして、そういう宣伝はほとんどしておりません。一部大きなメーカーが自分のブランドで宣伝しておりますけれども、さっき申し上げましたドイツのミシン、イタリアのミシンのように、日本ミシンとしては向うで宣伝されていない。ところが今後これによって、一本化して日本ミシンを宣伝される場合には、まず向うの売る人への大きなバック・アップになってくる。それからもう一つは、先ほど申し上げました通りメーカーと途中にサプライヤーが入る、日本のこちらのサプライヤーもばらばらで、ある程度の販売ルートというものを作っていって、大体それでいかなくちゃいかんのですが、同時にやはりある程度のミシンでも、アメリカに行っております中で、普通の家庭ミシンと高級のジグザグがある。普通の家庭ミシンを考えました場合、ある程度のこちらとしての出荷する場合の共同体制ですね、これは必要じゃないか。つまりこの中にございます一手買い取りの意味が、非常に不況の場合の買い取りもございますし、一応ルートを調整する意味の買い取りもあると思うのですが、その場合にも一挙に全部買い取る必要がなくても、一応サプライヤーなり、出す場合のルートの一本化といっても、一つとは限りません。その場合によって、いろいろ向うの状況によって強弱もございますが、そういうことからいっても、やはり非常にプラスになるのじゃないか。現在工業組合でいろいろその点努力しておるのでございまするが、なかなか執行機関即利害関係人で、非常に激しいですね。それで工業組合自身も先ほどちょっと申しましたけれども、すべてがこの振興法ができてそれでその問題はいこうじゃないかというふうに言っております。そういう点から言っても、一挙に、何かの競争相手がある以上は、十五ドルが二十ドルになることは無理にしても、ある程度徐々に上るのじゃないか。もう一つは、去年十四ドルを十五ドルに上げたことがございました。これは非常に異例な業界としての英断でございますが、それはやっぱり向うを調査して、いろいろな連中が余っているとか多いとか盛んな情報がくるのですね。それに対してある程度のこちらから駐在員が調査しまして、大体の見通しを立てて、それでこちらとタイアップして一ドル上げたので、非常に調査が大きな役割でありまして、そういう観点からも今度はもっとプラスになるのじゃないか、これが一番です。  それから第二番目ですが、現在ミシン協会考え方といたしましては、もちろん振興法と工業組合とできて、事業協会ができても、工業組合は十分にその機能はそのまま続けてもらいたい。ただ、やはり一応の自分たちの利害関係人だけのワクと、それから第三者というのは、決して冷酷な、知らない者という意味ではなくて、向うのいろいろな情報とか、いろいろな点を全部加味した振興事業協会の側と話し合いしようじゃないか、そうすれば、一応の今よりもっと話し合いがスムーズにいって、出荷調整もあるいは将来買い取る場合でもむだな抑制的な出荷調整もしないし、あまり放漫なこともしないで済むのではないかという考えでございます。  それから三点は部品の点ですか。
  33. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 大企業がたとえばワクからその小さい針まで作る設備を持っているわけですね。しかしながらこういうことになると、もうとにかく全部中小メーカー、下請機関ですね、零細企業製作を一切まかせてしまつて、大会社といえども、単なる下請機関を利用する一つの、何と言うのですか、組み立て工場となってしまって、大企業というものは一つもなくなるのではないかということです。
  34. 川島清祐

    参考人(川島清祐君) やはり大企業の特徴は、もちろん人材も従って全体から言うと多いですし、いろいろな輸出する場合に情報をキャッチする点もございますし、大企業自身の宣伝というものもございます。それからやはり機械設備その他もございまして、それぞれ特徴はあると思います。従って大企業といえども、全部、たとえば部品が三百六十なら三百六十から成り立っているとしますと、決して全部作っているということではなくて、合理的な面だけを——合理的に考えて自分で作った方がいい、あるいは機能上非常に重要な面だというところだけを作っておりまして、現在はほとんど全部作っているわけではございませんが、従って特別このために急に大企業の機能が喪失するとか、変貌するということはないと思います。
  35. 前田久雄

    参考人(前田久雄君) トランジスター・ラジオは先ほど申し上げましたように、単にアメリカとかというだけではなくて、全地球上、どこへでも伸びられそうな、すでに事実が出ているわけなんです。これはもう大へんけっこうなことで、金額から申しましても、今年は百五十億円以上、おそらく二、三年には三百億ぐらいまでいくのだろう。あるいはもっといくかもしれません。それほど多額のものが、施策さえよろしければ、それだけ多額の外貨が何年も何年もずっと続きそうに思えるのです。ただ、思えるのですが、悲しいかな先ほども申し上げましたように、自主的に過当競争を抑えるようなことはなかなか国民性からいってむずかしい。ただそこに自主的なものの上に——上にと申し上げてはあれですが、自主的なもののほかに多少の足がかりがほしいのです。統制というほどのものではなくても足がかりがほしい。その足がかりとして、この登録制ということが大へん有用だと私は思えるのです。幸いこの法案全体を見ましても、これは時限立法にもなっていますし、有用な登録制があるし、もう一つの事業協会の方もこれは自主的に運営できそうでございますし、これによって海外マーケットをよく調査して、向うの正規のルートを乱さないような販売方法をこれによってとれる、こういうところまできているとすれば、これを早く成立さして、トランジスターも入れていただきたい、こう思うのです。それから私は個人として申し上げておりますけれども、今までの反対意見というほどのものではなくて、反対ではなくて時期尚早論で見送ろうといった形なんです。しかし今やもう相手方の正規ルートを乱したということで、こんな日本品は困るというような声がちらほら見えかかっているのです。ですから今や時期尚早論ではない——時期尚早を唱えているという時期ではないということになりますと、私ども業界としては、おそらくほとんど全員が一致するのではないかと、私は思うのです。ですから早急にトランジスター・ラジオを含めてすみやかに成立さしていただきたいと思うのです。事がむずかしくなってから、困ってから、立法それから成立するまで、ずいぶん時間がかかりますので、今年中にもすべてが動き出すという態勢をとらなければ、非常におしいことをすることになると思います。毎年三百億円の外貨を捨ててしまうというようなことになると思いますので、この点を痛切にお願いしたいと思うのです。
  36. 上原正吉

    ○上原正吉君 富永さんに伺いたいのですが、先ほどドイツの双眼鏡は百ドルで、日本双眼鏡は二十五ドルというお話がありましたが、これはメーカーが、あるいはエクスボークーが輸出する価段だと思うのですが、それが向うで……。
  37. 富永孝次郎

    参考人富永孝次郎君) 向うの値段でございます。
  38. 上原正吉

    ○上原正吉君 向うの小売値段ですか。わかりました。  それで、わかっておればお答えいただきたいのですが、ドイツの双眼鏡を百ドルで販売する、日本双眼鏡を二十五ドルで販売するのに、その利益の率はおのおのどのくらいということが、わかっておったらお答えいただきたいと思います。わからなければけっこうです。
  39. 富永孝次郎

    参考人富永孝次郎君) そこまでは調べておりません。
  40. 上原正吉

    ○上原正吉君 それから前田さんにちょっと伺います。御陳述わざわざプリントとしてお配りいただいて大へん参考になったのですが、どうもいささか抽象的に過ぎるようでして、われわれしろうとには理解できないようなところがあるわけなんです。たとえば、おっしゃいます正規のルートを乱した——日本のエクスポーターかメーカーか知りませんが、海外の正規のルートを乱した、その正規のルートというのはどういうもので、それを乱すとどういうふうになるかという事実、具体的な例、現在トランジスター業界海外においてこういう問題が起りつつある。たとえばエクスポーターから、インポーターから、価格から、ルートから、具体的に実例をあげてお示しいただければなおけっこうですが、トランジスター・ラジオについて海外においてこういう問題が起りつつあるということを列挙していただきたい。そうしてこの振興法が通れば、振興法にどういう定めがあるから、これにはこういう手が打てる、これにはこういう手が打てるというふうな具体的な実例を、もちろんこれからのことですから、想像でけっこうですが、これをあげて、御説明をいただいたそういう書類なり、陳情書というものですか、御要望書でもけっこうですから、そういうものを当委員会にお出しをいただければ大へん参考になると思います。それをお願いいたしたいと思います。
  41. 前田久雄

    参考人(前田久雄君) 今簡単に申し上げられますことを申し上げますと、正規のルートと申しますと、この日本の国内でテレビ販売がございますが、テレビ販売なんかをメーカーが直接需要家に売りますと卸屋も困りますし、小売屋さんも困るわけでございますが、そういうことを正規のルートを乱したと申し上げたのです。たとえばアメリカを例にとりますと、アメリカにもメーカーがございますし、卸屋もございますし、小売屋もございます。もちろん需要家もおります。それを日本から輸出するときに、向うの位置の商い卸量さんに売り込むというときには、適当な値段であってよろしいのですが、向うからハイヤーが来まして、直接来てくれたのだから、これは売らなければというので、かりに同じ値段で何含かを契約したとしますと、それが売られた先はもうどこへ行くかわからないのです。直接かりに需要家にいくあるいは小売屋に行ったとしますと、向うの業者は、日本品というのは卸屋へ入るのも小売値段、需要家に売っているのはどこから入ってきたのかしらぬが、日本製品は非常に需要家に安く売られているということになりますと、日本のトランジスターというものは信用がない。日本のああいうものは値段の高い安いにかかわらず扱えない。適切なかたい利益が得られないから扱えないということになるのですが、これが一番問題だと思うのであります。そういうことを正規のルートを乱すという言葉で申し上げたのでございます。
  42. 上原正吉

    ○上原正吉君 まあ正規のルートを乱すだけはわかりましたが、そのほかにどういう不都合が生じつつあるか、そういうようなことが具体的にあげられましたらあげていただきたいと思います。そして、この法律にはこういう条項があるから、この法律によってそれに対してこういう防止策が講じ得るということがわからなければ、この法律を通していいか悪いかわれわれ判断できませんから、それを一つお願いいたしたいのです。
  43. 前田久雄

    参考人(前田久雄君) あとで書いて参りますから。
  44. 小幡治和

    理事(小幡治和君) ほかに御質問ありませんか。参考人の方には、長時間にわたりいろいろ貴重な御意見をお述べ下さいましてありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。委員会におきましても皆さんの御意見を参考といたしまして法案の審査を進めたいと存じます。  それでは二時半まで休憩いたします。    午後一時二十五分休憩    —————・—————    午後三時十七分開会
  45. 田畑金光

    委員長田畑金光君) これより委員会を開会いたします。  石油資源開発株式会社法の一部を改正する法律案を議題といたします。  昨日に引き続いて、質疑を行います。御質疑のある方は、御発言を願います。
  46. 島清

    ○島清君 私は昨日、開銀に対して債務保証の必要はない、こういうような政府の御答弁に対しまして、それは、はなはだ了解しにくい、こういうことを申し上げて質問を打ち切ったのでありましたが、と申し上げますゆえんのものは、従来、やはり開銀からの石油資源開発株式会社に対しまする融資では、担保をきつく取っておるのですね。申し上げるまでもございませんが、同社は、設立後日が浅くて、事業の性質上、侮り入れに必要な担保物件も少ないわけですね。開銀当局では、油田の埋蔵量が相当程度確認されるまでは、容易に貸付に応じない意向を示しておりますし、これは、やはり開銀法の第十八条二項に、資金の貸付は「債務の履行が確実であると認められる場合に限り、行うことができる。」と定められている以上、開銀の立場からすれば、当然のことと思われるのです。  従って、同社の開銀借入金についても、融資対象になる油田の埋蔵冠が、相当程度確認され、担保価値を認められるに至る時期までは、やはり政府が債務保証をしてやって、同社資金の調達の円滑化をはかることが、私はこの法律のおもなる目的でなければならぬ、趣旨でなければならぬと、かような観点から、きのう政府当局にお尋ねをしたのでしたが、その意味におけるところの満足な答弁を得られなかったので、きのうは質問を打ち切ったわけでございましたが、やはり一晩熟考してみても、私の考え方に、やはりそうあらねばならぬ、こういうふうに考えるわけです。ただ政府当局の御答弁の中には、あるいは大蔵省との関係において、通産省の立場からすると、きのみたような御答弁しかできなかったのかなあと、こういうような推測もしたわけでございますけれども、私はしかし、大蔵省とどういうようなお話し合いがあろうとも、通産省といたしましては、また鉱山局といたしましては、やはり石油資源開発会社の持っております国家的使命にかんがみまして、開銀からの融資を受ける場合でも、政府が債務を保証する、こういう趣旨をやはり貫いていただかなければ、同社資金の円滑な運営を期することは困難ではないか、こういうふうに考えるわけですが、これについて、なお一晩福井さんもお考えいただいたと思いますので、御答弁が願えるならば、大へん仕合せだと思います。
  47. 福井政男

    政府委員(福井政男君) ただいまの島先生の御指摘の点は、非常にごもっともな点でございまして、実は、きのう御答弁申し上げましたが、私ども考えてみまして、でき得べくんば、そういうような関係にありますならば、開銀からの融資も、さらに一段とできやすいのではなかろうか、こういうことで内部で、いろいろ相談をしてみたのでございます。同時にまた御承知のように開銀の所管は、大蔵省でいたしておるわけでございまして、早速、まあ大蔵省とも先生の御意見も申し上げまして、御相談申し上げたのでございます。  従来の関係を見ますと、開銀の融資について、政府が債務保証をしたというような例はないようでございます。ただ法律上、これを禁止するというような規定は別段、もちろんないようでございますが、先ほど御指摘になりましたように、開銀法の十八条におきましては、開銀も金融機関でございますので、債務の回収ということにつきましては、やはり確実であることを要請されておるわけでございます。そういう面から、過去におきまして、石油資源開発株式会社が開銀の融資をお願いいたします場合にも、担保の問題で、いろいろ会社当局は苦労をしたような経験もあるわけでございますが、ただ、一方開銀は、政府機関でございまして、当然政府の政策を実行する一つの機関でもあるわけであります。  大蔵省といたしましても、実態が、融資の対象となり得るという、こういうような場合には、石油資源開発株式会社が担保がないために開銀から融資を受けることのできない、そういうようなことのないように努力を十分いたしましょう、というような意向を漏らしております。私ども、今後今のようなことで、私といたしましても、大いに努力をいたして参りたい、かように考えておりますが、大蔵省でも、今のようなラインで、十分今後、御協力いただけるものと確信をいたしておる次第でございます。
  48. 島清

    ○島清君 御答弁といたしましては、十二分な満足ではございませんが、ある程度、私が懸念をいたしました点は、解決できるような気がしますので、それでよろしいわけなんでございますが、私といたしましては、やはりこの種の法案を十分に審議し、そして可決をするという前提といたしましては、大蔵省の関係官だとか、あるいは開銀の係の者をこっちの方へ呼びまして、そして今、福井さんから御答弁のありましたようなことが間違いなく、そういう工合に実施されるのだという裏付けがなければ、十二分な安心が持てないわけでございますが、やはり時間の関係もありましょうし、大蔵省内の係官であるとか、開銀をここにまた呼んで、確実にそういったような趣旨を表明させるということも、時間的な関係で、いかがかと思いますので、私は、福井さんの御答弁をもって、一抹の不十分さを感じながら、その答弁で質問を終りたいと思いますが、願わくばどうか一つ、本法案が可決されました場合には、やはり従来、開銀当局が十分な担保力を要求しております関係からいたしまして、これが必ずしも円滑に行くとも、また思えない節もありますので、どうか一つ、私が懸念をしております問題が、将来杞憂に終りますように、格段と、通産当局と福井さんにおかれましては努力をされて、円滑な資金調達ができますように、格段の御配慮を願っておきたい。希望だけお述べ申し上げて、私の質問を終ることにいたします。
  49. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  50. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 速記を起して。
  51. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 この法案の改正の内容は、二点でございまするから、あまり問題もないようですし、反対すべき点もないようですから、別にお伺いする点もございませんけれども、明治三十四年にできた鉱業法というのがまだございますね、あの鉱業法との関係は、これは一体どういうことになるのですか。  きのう御説明の中にございましたこの第三点の石油鉱業権評価審査会を廃止するということ、これは、今より四年前、特殊に作った法律ですが、しかし明年度は、御承知の通り、どうなるか別として、鉱業法を総体的に、今より五十年も前に作った法律ですから、直すということを通産大臣が書明しておられるのですが、これと、全然関係ないですか。
  52. 福井政男

    政府委員(福井政男君) 仰せのように、鉱業法とは関係ないわけでございます。  関係ないと申します意味は、法律の条文として関係がないという意味でございまして、石油鉱業権評価審査会と申しますのは、昨日も簡単に御説明申し上げましたように、石油資源開発株式会社が設立されましたときに、帝国石油株式会社から、一時に多数の鉱業権を譲り受けをすることになったわけでありますが、その際に、評価の適正を期します意味におきまして、臨時にこういう評価審査会を設けたわけでございまして、従いまして、この会社法の付則に掲げておるわけでございますが、すでに譲渡は完了いたしました。その後に、個々に取引は若干ございますけれども、この設立時の大量の移譲は終りましたので、この評価審査会の役目は終了いたしたわけであります。従いまして、この際、これを廃止いたしたい。  こういうことでございまして、鉱業法の方は、別途設置法改正をしていただきまして、鉱業法改正審議会というものの設置をお願いいたしております。現在参議院の内閣委員会の方で御審議をいただいておるわけでございますが、ここで可決をされますと、早速鉱業法改正審議会の活動を開始するような取り運びをいたしたい、かように考えております。
  53. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 その鉱業法を参議院の内閣委員会で審議しておるのではなくて、その審議会を設けるということについて是か否か審議をしているのでしょう。鉱業法をこれで審議しておるわけじゃないでしょう、参議院の内閣委員会でね。
  54. 福井政男

    政府委員(福井政男君) さようでございます。鉱業法改正審議会の設置につきまして、通産特設催法の一部改正法律案の御審議をお願いいたしておるわけであります。
  55. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 そうしますと、昨年の暮れの本委員会において、通産大臣が、明治三十四年に作った鉱業法の大改正に基いて鉱区の整理統合等も行うのであるという言明から始まりますと、この昭和三十年十二月に作った法律ですから、直接関係ないようですけれども、ことしの暮れになるか、来年になるかは別として、直ちにこういう審査会というものが、内容が違っても、やや似た審査会が必要になってくるということ言えるわけですね。  従って、何のために、そういうものが、やがて必要とする時代がくるのに、これがどうして廃止しなければならぬか、こういうことなんですね。きのうの島委員の質問に対して、あなたは、石油会社も困る、私どもも因りますという御答弁でしたね。これは、とにかく国全体を支配する法律ですから、単なる開発株式会社ばかり規制する法律でないですから、それに関連して、よその鉱区の問題等もあるから、その人たちも困るなら、あの人たちも因るということになるので、どうもそのあたり、明確でないのですが、御説明をしていただきたいと思います。
  56. 福井政男

    政府委員(福井政男君) この石油鉱業権評価審査会と申しますのは、先ほど申し上げましたような趣旨でございますが、この法律の規定がございます以上は、石油資源開発株式会社が、帝石と言わず、他の会社なり個人から譲り受けますような場合には、すべてこの審査会の意見を聞かなければならない、こういう法律関係に相なるわけでございまして、鉱業法の問題といたしましては、鉱区の強制分合、こういう規定を置くということになりますれば、これは一般的に鉱業法の問題でございまして、その際に、あるいはこういう評価審査会というようなものを一般的に置くことが必要であるかどうかということを大いに研究しなければならないと思います。  ここで言っております評価審査会は、石油資源開発株式会社が、譲り受けをいたします場合にかけなければならない審査会、こういうことでございます。
  57. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 そういうことですから、今御説明があった福井さんのお話は、よくわかるがゆえに、明年整理統合ということがあって、つまりこれは国有財産になるということになれば、——整理統合しなければ別です——こういうものが、やはり必要になってくる時代があるだろうと私は思うので、当然、残しておかなければならないでしょう。——別に金がかかる問題でございませんから。そういうことを、お尋ねしておるわけなのです。  それから、それがもし、そうでないとすれば、これから石油資源開発株式会社が、ほかに持っておる、どなたが持っているかは別として、石油鉱区を一切買収しない、あるいは整理統合をやらない、こういうことに理解されるのですが、それはいかがでしょうか。
  58. 福井政男

    政府委員(福井政男君) 石油資源開発株式会社におきましては、当然、やはり鉱区の取得でございますとか、あるいはまた不用になりましたものの処分とか、こういうようなことが行われると思います。現に行われておるわけでありますが、ただ会社の責任者もおるわけでございますので、小さい財産の個々の処分につきまして、こういう手続を経なければならぬということは非常に処理の迅速を妨げますし、また手続が煩瑣である、こういうことから、必ずしもそういうを踏む必要がないのではないかということでございます。
  59. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 そうしますと、私の知っておる範囲内では、石油資源開発株式会社で現在事業としてやっておるのは、越後川口町のそばに田麦山というのがありますね。それが一番有望であるということを聞いておるんですが、それ以上有望なのがあるかもしれませんが、あれを現在持っておって、あの附近に鉱区がある。それを将来買うということになれば、こういうものが必要になったり、また民間に払い下げるということになれば、改正点の第二項に当てはまるような機関が必要だということになるだろうと思うのです。  しかし一切、資源開発会社の三村さんであるか、あるいは岡田さんであるかわかりませんが、その人たちが、端的に申し上げれば、その人たちのみによって一切の取引を行う、こういうことになるのですか。
  60. 福井政男

    政府委員(福井政男君) さようでございますが、ただ重要な財産になります場合には、通産大臣なり大蔵大臣の認可を経なければならぬ。こういう手続は残るわけでございます。  ただ、この石油鉱業権評価審査会にかける手続は省略される、こういうことに相なります。
  61. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 そうすると、それは国有財産処理法に基づいてやられるのだろうと思うのですがね。その、たとえば、民間に払い下げるというような場合は、そういうことにならぬわけですか。そういうことになると、その国有財産処理法に基いてやる場合に、だれが責任者になるかということですよ。そのものさしを、だれが作ってくれるかということですよ。あくまでも、やつぱり資源開発株式会社がやると、こういうことに理解されることなんですか。
  62. 福井政男

    政府委員(福井政男君) 石油資源開発株式会社は、政府の多額の出資をいたしております。そういう特別立法に根拠をおいております特殊会社でございますけれども、財産は、国有財産とはなっておりません。
  63. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 そうであるから、監督のある程度の範囲内で、ほかは一切、その国有財産処理法に基いてやらぬでよろしいと、こういうことになるわけですね。  その次に、第一項目の、政府保証するという、融資の問題ですが、これは島委員の昨日の質問やら、局長の御答弁で、大体理解できたのですが、これは世界銀行には関係ございませんか。
  64. 福井政男

    政府委員(福井政男君) 世界銀行には、関係はございません。
  65. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 そうすると、あくまで日本の開銀であるとか、政府機関のそういう機関を初め、一般市民銀行であって、たとえば電源開発のために、関東あるいは中部とか、こういう電力会社に、世界銀行から融資するというようなことには全然相ならぬと、こういうことですな。
  66. 福井政男

    政府委員(福井政男君) 今のところ、世界銀行からの融資は考えられておりません。
  67. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 それから、これの対象になるのは、今までそれぞれあらゆる箇所から融資を受けておると思うのですがね、今までの融資分に対しても、政府がさかのぼって裏判を押すのか。この法律が有効になった、三十年十二月ですか、その分については遡及しないと、たとえば、さようならきょう可決して、本会議にかかって、次の日から、その日付の裏づけにするのだと、こういうことになるのですか。ただ、野幌ですか、一本とにかく、これは石油資源開発株式会社でやったと思うのですが、一本ボーリングをおろしておるしすぎてしまって七千万円損をして、七千万円をただ投げてしまったと、あの辺の人たちは、こういうことに理解がないから、こういう金は、どこから出たかということを騒いでいるようですが、そういうことで、前の負債の分まで遡及して裏づけするものか、この修正点が効力を発生してから裏づけになるものか、そういうことをお尋ねいたします。
  68. 福井政男

    政府委員(福井政男君) 現実問題といたしまして、石油資源開発株式会社では、今まで金融機関から融資を受けておりますのは、開発銀行から一億七千万円の融資を受けているだけでございまして、その他の民間金融機関からは、融資を受けておりません。この法律が成立いたしまして、現実に債務保証を必要といたします場合には、予算総則で保証限度を掲げまして、それからそのワクの範囲内で保証する、こういうことになって参りますので、当然将来の問題になります。  それから、ただいま仰せの事例につきましては、本件は探鉱いたしまして、その探鉱の結果、油の層があるということが確認されまして、そこを開発する段階になりまして、その開発資金を調達する場合の問題でございまして、油があるかないかを探す段階の問題といたしましては、政府予算で出資をお願いいたしております分と、それから民間から出資を年々お願いいたしておりますこの出資金でまかなっておるわけでございます。
  69. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 その答弁は、きのうも島委員の質問に対して、あなたはなさっておったが、政府から入る金と民間から入ってくる金、あるいはその他銀行から入ってくる金は違うかもしれませんよ。従って、違うかもしれませんけれども、開発株式会社へ入った場合には、会計が一つですから、結局、ここまでは探鉱の分ですね。ボーリングを下して試掘する分は、貸しません。しかし、試掘以後の油の出るボーリングについては、やれるんだということを、あなた、きのう三回くらい、きょうで四回くらい言うが、しかし実際問題として、財布は一つですから、その分について、どっからどこまでは、どこの金だということは規制できませんでしょう。探鉱の分について、全部開発株式会社が金を使用してしまえば、当然食い込んでいくということは考えられるわけですね、そういうことにならぬでしょうかね。
  70. 福井政男

    政府委員(福井政男君) 現実の資金繰りの問題といたしましては、ただいま阿部先生の御指摘のような格好になろうかと思います。  ただ、会社の予算といたしまして、その収支計算なり、会社の予算の実行ということになりますと、それはきちんと、先ほど来申し上げておりますように、探鉱段階の金と、それから開発段階の金、こういうものは質が違って参りますので、分けておるわけでございます。
  71. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 こういう地下資源を開発して、日本の乏しい燃料を掘り出すというのですから、裏づけするなり、政府みずから金を出してやらせるのはけっこうですから、反対しませんけれども、旧交山なら田麦田で製油される。製油といっても荒ごなしでしょう。日本石油に入るか、どこに入るか私知りませんけれども、一般市価との関係は、どういうことになるのですか。政府は、金は出すけれども政府は金を出す、投資をする、あるいはその裏判を押して、よその銀行の保証人になってやるということで、ほかの石油会社と違った恩恵を受けておるわけですね。しかしその製品がやはり安くなければならない、こういうことになるだろうと思うのですよ。  そこで安く売っておるのかどうか。もし、日本は足りないのだから、安く売っておらぬということになれば、その利潤は、どういうことになるのか。まあ、政府は、幾ら出資しておるから何割と、民間の分は何割ということになるかわかりませんけれども、安く売っておるのかどうか。一般市価で売っておれば、大体、そのさやがどういうことになるかということをお伺いしたい。
  72. 福井政男

    政府委員(福井政男君) 御指摘の点は、ごもっともな点でございますが、ただ、御承知のように、国内の石油資源は、非常に今までのところでは貧弱でございまして、過去三年余りの探鉱の成果として、現在生産いたしております石油資源の生産量としましては、非常にわずかなものでございまして、特に二千キロ前後のものでございます。今までの投資した資金等から見まして、原価計算をすれば、とてもこれはお話にならない価格になるわけでございまして、なお数年後の生産量の見合いで、まあ楽しみにして、現在金を注ぎ込んでおるというような実態でございますので、現在の価格は、国産原油といたしましては、他の会社価格と同じ価格で売っておるわけですけれども、石油資源開発会社だけから見ますと、現在の販売価格というものは、とてもまだ採算のとれるというようなところには相なっていないわけでございます。
  73. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 いや、採算とれるかどうかわかりませんけれども、私のお尋ねしているのは、大体、市価で売っておるのか。もう国策会社ですからある程度はね。ですから、そういう赤字を見越して、将来のために、安く売っておるものかどうかということをお尋ねしておるのです。
  74. 福井政男

    政府委員(福井政男君) ただいま申し上げましたように、他の国産の原油と同じ価格で販売いたしております。
  75. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 最後に、将来どういうことになりますかね。  確かに局長のおっしゃる通り、これは今、採算がとれないだろうということはわかるけれども、やっぱり採算がとれなくても、とにかくやりだした以上は、金を注ぎ込んでいかなければならぬということになって、何年たっても市価を左右するということには、とても乏しい石油ですから、ならぬでしょう。ならぬまでも、普通の会社、個人企業ではできないから、国の力で石油を若干でも外泊によらないでまかなったから、その分で、国のために尽したということで理解されるものかどうか、それとも、将来、こういう宝庫がたくさんあって豊富であって、幾ら豊富だといっても、日本は限度があるでしょうけれども、そういうことで、将来ピリオドを打つときは、大体政府の出資その他が、とんとんになっていくものか、最後にそういう点をお伺いいたします。
  76. 福井政男

    政府委員(福井政男君) 御指摘の点は、私どもも非常に心配をいたしております最も大きい点でございまして、ただ、現在の状況から見まして、本年度、秋田沖の海洋掘さくを本格的に実行いたす段取りになっております。この結果が、どういうふうになるかということが石油資源開発株式会社の将来の方向をきめます一つの大きいポイントになるのではなかろうか、かような考え方をいたしておりますが、さらに残っております陸上の探鉱をやるべき地帯がございますが、従来の石油資源開発会社の探鉱の成果から見まして、あと残っておりますものが、陸上においてどの程度あるかということは、そう大きな期待ができないのではなかろうかというような、私ども、従来の経験から見まして、心配をいたしておりますが、しかし、北海道でございますとか、あるいは秋田、山形、新潟、こういうところの徴候から見まして、あるいは私どもの懸念が杞憂に終るのではないか、また、願わくは杞憂であってほしい、こういう希望を持って実は将来を見守っておるような次第でございます。   ━━━━━━━━━━━━━
  77. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 委員変更について、御報告いたします。  本日、阿具根登君及び森田豊壽君が辞任され、山下義信君及び植竹春彦君が選任されました。
  78. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 他に御質疑はございませんか。——ないようでございますから、質疑は終局し、討論にはいります。  御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——発言もなければ、討論は終局し、採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手]
  79. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 全会一致と認めます。  よって、本案は、全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。
  80. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 次に、航空機工業振興法の一部を改正する法律案を議題といたします。  昨日に引き続き質疑を行います。御質疑のある方は、順次ご発言を願います。
  81. 島清

    ○島清君 本案の提案の趣旨によりますというと、中型輸送機国産化を図るために、日本航空機製造株式会社を設立したいと、このようですがそれについては、昨日、いみじくも阿部委員から何か組み立て工場を作るのか、こういうことでございまして、さすがの小出重工業局長もたじたじとなってだいたい、そうだということでございましたが、私も、そういったような細み立て工場みたようなものを作るならば、この種の、なにも法律を改正をして会社の設立を急ぐ必要はないのではないかと、まあ、こういったような疑念を持っているわけなんです。  ところが、説明の中で、国産化を図って、そうして、何か飛行機を輸出をしたいと、こういうような御説明があるように承りましたが、輸出をされるとすると、何か東南アジア方面の市場ということを説明をしておられたようですが、今の航空機工業といいますのは、日進月歩といいましょうか、口々に新しくなっていくわけですね。そういったような航空機工業の基盤を失っております日本が、これからこういったような模型を作って、私は横浜におけるところの模型というのを見ておりませんので、よくはわかりませんが、阿部委員の御発言を承っておりますというと、それは、泥くさくて仕様がないと、こういうお説でございましたが、模型ですら、泥くさい模型しか作れない、しかも、航空機工業の基盤が非常に脆弱のわが国において、しかも、日々に進歩しておりまする飛行機をこういう会社を作って製造されて売り出したいと言われてみても、それは気持の上において、私たちわからないわけでもないし、よく了解できるような気はしますけれども、はたして実際に、非常に進んでおります各国の飛行機工業と世界市場において、輸出が可能であるかどうか。私のまた、そういうふうな疑問を提示いたしまする根本的な理由といたしましては、今まで飛行機工業といいますというと、国防と非常に密接につながって、そうして戦力の一部といたしまして、盛んになつたわけですが、しかしながら、これからの飛行機というものは、武器としては、もう役に立たなくなりつつあると思うんです。したがって、今まで武器の一つとして生産をしておりました各国の飛行機工業というのも、私は、こういったような平和的な利用といいましょうか、輸送機といいましょうか、しては、いいところを集めまして、しかも癖本人に適した形において、これを設計したという確信を持っているわけであります。もちろん今後数年の間に、世界各国においても、同様、新しい航空機の設計開発に入ると思いますけれども、しかしいずれも、どの国におきましても、そういった設計試作には、おおむね六、七年という長日月を要するわけでありまして、従って現在のわれわれの考えておりますYS—一一型によるところの設計に基いてできまする飛行機というのは、決して、これが実際に市場に出ます時期におきましても、世界におくれをとらないものであるとかように考えております。世界的なこういった民間航空機の趨勢から申し上げますと、航空機工業の非常な先進国でありまする米国、英国、あるいはソ連というようなところにおきましては、どちらかと申しますれば、大陸間を、大洋を航行いたしまする大型のジェット機という国際的な長距離輸送機というところに重点が置かれておるわけであります。もちろんそのほかに中距離的な国際間の中距離輸送を行います中型のジェット機、これにつきましても、フランス、アメリカあるいはイギリス等においても開発されております。従って国内のローカル線、あるいはごく近距離の国際間のものといたしましては、ただいまこのYS—一一型において採用しようといたしておりますターボ・プロップのエンジンの中型の輸送機、これがすでに考えられておりますものは、オランダあるいはカナダ、フランス等において、そういった開発が進められておるわけであります。  これらと並行して、日本のものが完成いたしました場合においては、そういった性能の面あるいはコストの面において、十分国際競争力を持つものである、かように考えております。日本の航空機工業の基盤は、確かに戦争中の荒廃と戦後の空白によって、かなり打撃を受けておりまするけれども、しかしまだ全体といたしましては、相当の設備も残っておりまするし、技術陣営につきましては、過去において、世界最高の技術陣営が、そのまま残っておるわけであります。しかも戦後、昭和二十七年以降において、航空機工業が再開いたしました以後におきまして、米軍の発注、あるいは防衛庁需要というようなことによりまして、製造修理という実務にも当って、生産を実際に行なっておるわけでありまして、従って、これらの設備なり技術なりというものを動員することによりまして、十分国産の輸送機を製造するということについても、その基盤は、十分あるものである。かように考えておるわけであります。  そこで、この残りまする問題は、実際に輸出の面についての見通しでございまするが、これは、昨日もお答えいたしましたように、将来におきまする、今後におきまする世界的な輸送力の面において、航空機が一番その輸送面の伸びが——輸送を負担いたしまする輸送手段といたしましては、航空機の伸びが、一番大きいと思いまするが、その世界的な伸びというものを全体的に算定いたしまして、その中におきまして、特に日本がこのYS—一一型というような国産機によって、日本の航空機を売り出すことができる可能性のある地域といたしまして、東南アジア、中近東あるいは中南米という、この大体三つの地域を想定いたしますると、相当の需要になると思われるのであります。これに対しまして具体的に代替し得る機数というものを、各地域ごとに、現在各地域において使われておりまする中型の輸送機の代替時期が来る年数、あるいはその生命というようなものを計算いたしまして、相当、手がたく見積りましても、日本からの輸出の可能性は、十分にある。かように想定いたした次第でございます。
  82. 島清

    ○島清君 まあ私はね、私の疑念に対して、十分な説得力があったとは思っておりません。  と申し上げまするのは、私が疑念として結論的に申し上げましたその根本をなしておりますることは、一つには、すでに飛行機が兵器の座から去りつつあるということが一つの理由でした。  もう一つの理由は、現在でも航空機工業の生産工程を見ますると、オートメーション化されているんですね。従って、機械力によって物が製造されるという現段階においては、最も優れたオートメーション化がなされているわけなんですね。これは、今の航空機工業が持っておりまする必然的な結果だと思うのですが、しかし日本輸出状況を見ると、日本は、やはり原材料に労働力を加えてそれを海外の方へ送り出す。これが日本貿易の立っておりまする根本的な強みなんですね。しかしながらオートメーション化されますると、日本の最も強味でありまするところの労働力を商品に転化して輸出をはかっていくということが、必ずしも、私はこの飛行機には、多くを望むことは無理じゃないか。こう思うのですね。  それから市場としてあげられた中南米市場というものは、今でも日本との貿易関係においては、大蔵省の横槍で、せっかく通産省、外務省あたりの努力にもかかわらず、今行き詰り状態なんです。日本の行っておりまする、進出しておりまする企業が、もうお手あげをして、もう日本に引き揚げてくるというような状態にまできているんですね。わずか五千万ドルくらいの金が焦げついたからといって、日本とブラジルとの貿易は、全面的にストップしているような状態なんですね。ところが反対に、アメリカの方はどうであるかといいますると、アメリカは、どんどん、どんどん投資をしているわけですね。それに劣らず、西ドイツもイギリスも、どんどん、どんどんその投資をしているわけなんですね。ですからおそらくブラジルという国は、アメリカが放っておかないだろうから、ブラジルにどのくらいの債務があろうとも、アメリカがそれをしりぬぐいするだろう。そうして二十年もたてば、ブラジルという国は、世界の非常に有数な国になるだろうというので、そこで諸外国は、こぞってブラジルの方へ投資しているんですね。ブラジルの民族主義といいましょうか、そういうことの民族主義から起りまする諸外国の投資に対する警戒ぎみはありますけれども、それも乗り越えていって、諸外国は、こぞってブラジル市場——南米市場の方に投資しているのです。ところが日本は、そうじゃないんですね。ブラジルの外貨保有高がないからといって、非常に警戒をして、あれだけの国力を持っておりまするところの国に対してすら、貿易がストップ状態なんです。  こういったような中南米の事情からしまして、いわんや、こういったような、最も近代工業の頂点に立っておりまする飛行機が、私は売り込めるということは、どうしても考えられませんね。しかも、今日ただいまにおいて、それが輸出ができるということなら、これはまた、あるいは別の角度から考えようもあろうと思いますが、これが量産態勢に入るというのが、三十五年ですか、そして製品が出るというのが、三十八年ですか、三十八年から、初めて製品が出て、そうして国内でも使いましょうし、外国の方へも出そうというようなことであれば、私は何か、ものの考え方が、非常に停止状態な形において、考えておられるんじゃないかと、こういうふうに思うのです。  ですから、こういうふうに考えておりまする私に対する説明としては、いささか立体性がないように思うのですが、もう少し一つ、立体的に御説明願えませんかな。
  83. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) 最初にお話がございました航空機工業——航空機というものの何と申しまするか、今後における性格といたしまして、いわゆるまあ軍用と申しまするか、そういったものとして使われる分野というのは、ほとんどその価値が、だんだんなくなってくるのではないか、こういう点につきましては、その方面の専門のことはわかりませんから、なんとも申し上げられませんけれども、あるいはそういうような考え方もできるかと思います。  しかしながら、私どもの今考えておりまするのは、これは輸送機といたしまして、そういった軍の戦闘に使うような飛行機という意味ではございません。従いまして、その面から見まするというと、いわゆる交通の手段としての航空機の使命というものは、これは飛躍的に増大するのではないか。他の交通手段に比べまして、国際間においてはもちろん、またローカルな線におきましても、航空機の輸送手段としての伸びは、今後数年間に、おそらく年率一〇%ないし一八%くらいの伸びを示すのではないかと考えております。特に国際間の輸送手段といたしましては、非常に高い率をもって伸びるかと思います。また、私ども考えておりまする中型輸送機、中型程度の輸送手段といたしましても、少くとも年々一割以上の伸びを示すのではないか、かように考えておるわけでございます。  そこで、第二段といたしまして、ただいま御指摘がございました日本の航空機工業というものが、非常に国際競争力があるという特質を持っておりまするその非常に大きな面は、確かにお話の通り、先ほどもお話が出ましたように、アッセンブル工業という形態におきまして、ちょうど軽機械が、非常に日本人の技術的な技能的な特性に適した国際競争力の強い商品であると同じような意味におきまして、航空機におきましても、そういった、主として日本人の非常に手先の器用な面に依存することによりまして、非常に国際競争力が強いという性格を本来持っておるという点におきましては、まことに、その通りでございます。  しかし、その面におきまして、今お話のように、だんだんオートメーション化することによって、その面の国際競争力が漸次減殺されるのではないかという点につきましても、ある程度は、そういうことが言えるかと思うのであります。  しかしながら、日本の各産業、日本におきまする航空機部門というものの付加価値率等を見まするというと、きわめて高いものであり、また現に、米軍等の発注によって、ジェット機の生産、修理に当っておりまするが、それらは、全部発注者である米軍の仕様書に基きまして、その精密な設計、指示のもとにやっておりまするけれども、しかしながら、その面におきましても、やはり日本人としての特性を十分生かして、非常に精密度の高い生産能力を持っておりまして、世界的に、最も優秀なレベルにあるということは、これは発注者の方でも認めておるわけであります。その面におきましては、今後においても、やはり十分国際的に競争力も、非常に根強いものを持っておる、かように考えておる次第であります。  それからもう一つ、今輸出先といたしまして、中南米の市場につきまして特にブラジル等を中心にして、御質疑がございました点につきましては、これは、私どもも相当、その点につきましては、同じような感じを持っておるわけであります。現在これらの国との間において陥っておりまする貿易の実態というものは、確かにお話の通りでございまして、このままでいきますれば、貿易は縮小均衡という線に陥らざるを得ないという点につきましては、確かに同感でございます。しかし、これは、このままにほうっておくことは当然できないわけでございまして、少くとも通産省といたしましては、すみやかにこういった状況を打破いたしまして、たとえばブラジルの問題等を中心といたしまして、もっと縮小均衡でなくて、バランスをとりつつ貿易を拡大していく、こういう方向に向って、これはあらゆる努力をしなくちゃならぬと思うのでありまして、その面につきましては、この航空機の需要ということは離れましても、貿易全体の自主性といたしまして、他の手段を講じていかなければならぬということをもちろん前提として考えておるわけであります。ただ、アメリカというような国と、その市場におきまして、直ちにこれと競争し、対抗できるかという点につきましては、もちろん現在の状況におきましては、その面においては、非常に技術的、設備的な能力の差があるわけでございます。しかし、今ここで考えておりまするような日本のYS—一一二型というようなタイプの飛行機につきましては、これは、必ずしも米国等の生産と競合しないというふうな考え方もできるわけでありまして、それらの点につきましては、現実に、ある程度、たとえばオランダが、現在四十人乗り程度のフレンド・シップという飛行機、これを一九五二年から、その生産にスタートいたしまして、昨年一九五八年の十月ごろからようやく量産の第五万機が完成したのでございます。これに対する、やはり最初の引き合いというものは、カナダの航空機の会社からきているというような実態もございまして、必ずしも、米、英あるいはソ連というようなところにのみ独占されるというような懸念はないのではないか、かように考えております。
  84. 島清

    ○島清君 私が質問しておりますことは、言葉が足りないのかもしれませんけれども、今までのように、飛行機が兵器としての価値が非常に減殺される、それが従って、諸外国の進んだ航空機工業というものが、今あなたたちが考えておられるような輸送機だというような面に——戦闘機を作り、爆撃機を作っておったが、もう爆撃機というものは、役に立たないということは、アメリカのペンタゴンあたりでも言っていることなんですね——編成がえをしつつあることは、あなた御承知の通り、戦闘機におきましても、その通り言えるのですね。だから、日本におりまする駐留軍も、要するに、こういったような兵器の変遷に基きまする必然な要求から、そこで駐留軍の地上部隊が減りつつある。それに基いて、いろいろ原水爆兵器が持ち込まれるのではないかというて非常に問題になっておりますことは御承知の通りなんです。  ですから、私が言うのは、あなたたちが、そういったような兵器を作ろうとしておられるのだということの前提に立って、兵器を作っでもだめじゃないかということを申し上げておるのではなくて、諸外国の進んだ飛行機工業というものが、兵器としての飛行機——戦闘機であるとか爆撃機であるとかいうものを作らずに、それをいわゆる輸送機の方に切りかえてくる可能性が非常に大きいじゃないかと、そうなった場合に、先進諸国の工業に太刀打ちすることが困難ではないかということを申し上げているわけなんです。  それからもう一つ、中南米市場の問題については、中南米諸国は農業国から工業国に切りかわろうとしている。これが、中南米諸国の上での国策なんです。ブラジルも工業化、アルゼンチンも工業化、すべて工業化で、この工業化の中には、当然、これは諸外国の資本投下と相待って、航空機工業というのも、私は入っていると思うのです。中南米を含めて、特に飛行機工業としては進んでおりまするアメリカが、戦闘機も要らない、爆撃機も要らないということになって、平和利用の輸送機に切りかえられた場合に、おそらく近くの中南米市場において太刀打ちできないことは、もちろんでありまするし、さらに中南米諸国が、農業国から工業国へというて、国策を推准しておりますから、その工業化の中に、全面的な飛行機工業というのが入らなくても、部分的なものは、入っていると見なければならないと思うのですね。世界が、そういう状況のもとにある場合に、どうも輸出が可能であるということは、私には理解できませんと、こういうことを申し上げているわけなんですが、私は、今、栗山委員が予算委員会から、こっちへ来られて質問を待っておられますから、私の質問は、これで終りまして、またあとに譲りますから、そこらの疑念としての点について、一つ十分に理解できるような御説明を願いたいと、こういうわけなんです。
  85. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) 航空機の使命というものが、漸次いわゆる軍用戦闘用というものから、単なる輸送手段というものに変る関係上、先進諸国の主として軍事として発達して参りましたような航空機工業というものが、全面的に急速に切りかえられる、そのために非常な国際競争——輸送機の売り込み競争ということになるのではないかということにつきましては、これは、私どもも、ある程度そういうような趨勢が出てくるという可能性も、十分考えております。しかしながら、今直ちに、ここ数年のうちに、そういうような大勢が、急速に諸外国、特にアメリカ中心として切りかえられるということは、今の世界的な趨勢から見まして、あるいはそういった戦闘機あるいは爆撃機というようなものの必要性がなくなって、それが他の戦闘手段に変るというような場合におきましては、それがそのまま、航空機工業が、輸送機の製造というふうに転換する面もある程度あると思いまするけれども、むしろミサイルの工業というような方向に転換をしつつあるということが、すでにアメリカあるいはイギリスの航空機工業の実態でございまして、従ってその面からくる非常に大きな圧迫というものは、それほど大きくこれを考慮に入れる必要はないのではないかと、かように考えておる次第であります。  それから中南米等、これは中南米に限らず、日本輸出先の比較的後進地域におきまして、それらの工業開発が進むに伴いまして、日本の工業製品と同じような製品を先方でも作るという、この趨勢は、飛行機に限らず、あらゆる商品について、現在起りつつある問題でございまするので、航空機工業というふうな非常に高度な、総合的な精密度の高い工業につきましては、中南米を含めて考えました場合におきましても、それほど急速な、輸出がほとんど見込みがなくなるというようなほどの、先方において航空機工業が確立されるということは、近い将来においては、それほど期待することはできないのではないか、かように考えております。
  86. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私は、一、二点、本件に直接関係ないかもしれませんが伺っておきたいと思います。  その一つは、政府の今とらんとしている、この航空機産業の将来を展望した体系は、一体どういうことを考えておられるかということを知りたいと思います。  それで大体、日本の産業は、発達の過程を見るというと、相当重要なる未成熟な産業は、資本が危険を負担することを回避して、そうして、しかも仕事を軌道に乗せたいという意欲が強くて、大ていの産業というものは、鉄鋼を初め、最初国家の財政投融資に依存をして、ある点まで伸びていく、そうするというと、そこで初めて民間企業に切りかえて、そうして採算経営をやる、これは現実なんですね——大体において。ですから、例外なしに、そういう現状なんです。そこで航空機工業というものは、これまた、同じような過程をたどって戦争前はきたんだが、戦争で、一ぺん壊滅してしまった。そこで、これがほんとうにあなたの言われたように、日本は、特別に航空機に対して、高度の技術を持っている、温存しているということであれば、民間企業は、競ってこれは再開したと思います。ところが再開しなかった最大理由は、需要がないということですね。需要がないから、これは商売にならぬ。  そこで、その後幾多の変遷を経て、航空機工業振興法ができて、そうして米軍の飛行機のオーバー・ホールとか、あるいはそれの技術を習得して国内生産を始めるというようなルートを歩んで来たんですね。従って、そういうルートというのは、特に軍事に強いのです、そういう歩みというものは。ですから、私はそういう、その輸送用の主として民間の航空機の製造を行うというようなことは、これは純然たる民間企業として行われるべきもので、政府が、こういうところまで財政投融資でめんどうを見るということは行き過ぎではないかと考える。  それに対しての一つ御所信を承わっておきたいと思います。
  87. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) 日本の航空機工業の過去から現在に至ります実態を見ますというと、これは戦争中におきまして、戦争ということによって、急速に発達をした産業であることはもちろんでございますが、その場合におきましても、一応、やはり民間企業という体系において、軍需生産が行われておりましたけれども最後の段階におきまして、いわゆる軍需会社というようなところに切りかえられた面もございます。他の、こういった総合的な工業あるいは基礎的な産業といたしまして、あるいは鉄鋼業とかいうようなものとの比較におきましてのお話もございましたが、戦後におきまして、しばらくの間、この昭和二十七年までは、これは、占領軍の指令によりまして、生産、修理は禁止されておった。その後におきまして、再開されましたあとにおきましても、お話の通り、全体として保有しておりますような設備なり、技術なり、そういうものも、比較いたしますれば、発注と申しますか、需要の面においては、比較的これがフルに動くだけの需要はなかったということも実態でございます。  しかし今回、これを純粋に国産化ということに進んでいきますにつきましては、非常に戦後の空白もございましたけれども、新しいこの技術に基きまして、将来国際競争力のあるような、ほんとうに高度の設計に基きました航空機生産を行なっていくということにつきましては、非常に大きな設備面、あるいは技術の面等につきましても、一つの会社だけではとうてい背負い切れないだけの重要なと申しますか、非常に大きな規模のものになるわけでございます。従いまして、既存の各会社、どの一社をとりましても、自分のところだけで、一切の生産の態勢を整えるということができないというのが実態でございます。  そういう面におきまして、最初の研究開発ということが、軌道に乗りまするためには、どうしても、これは政府援助によってスタートしなければできないというのが、これが業界の実態でございます。  従いまして、過去におきましても、各生産会社から、技術陣を供出してもらいまして設計をいたしましたが、その設計をいたすにつきましても、それぞれの各会社の企業のリスクにおいてやるということが、各企業においてまかない切れないという状態でございましたので、政府から、年々補助金を出して、その財団法人によって運営をして参ったのであります。これが、いよいよ具体的に試作機を作り、試験飛行をやり、量産をやるということになりまするというと、資金的な面等におきまして、どうしても政府の出資と財政支出ということによりまして、そうして業界の全体の協力態勢を作っていくということによってすべり出さないと、とうていこれがスタートを切ることができないというのが実態でございました。  従って、将来における航空機工業のあり方をどうするかというような問題もございまするけれども、この国産機に乗り出すためには、どうしてもこの政府の強力な支援がなければ、スタートすることができなかった。  こういうような実態に基きまして、今回政府出資の方を中心とした特殊会社を作る、こういうことにいたした次第であります。
  88. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 今、中型輸送機だけのことを考えれば、あなたのおっしゃる通りだと思うんです。中型輸送機だけ特別に切り離して考えればね。  ところが、私が一番不思議に思うのは、この資料にもいただいておるんだけれども、「航空機製造修理実績一覧表」というのがございますね。それからあと、ずっとこまかいのがあります。今、ここで拝見しただけでも、大体の見当がつくんですが、これを見ると、もう、すでに米軍の飛行機のオーバー・ホールから始まって、軍用機の製造のために、相当巨額の投資が行われているんですね、政府投資から民間投資とが行われておる。ところが、この仕事は、まだ成熟したところまでいっていないだけでなく、最近の軍用機の問題がつかえているものですから、これだけの投資をし、二万人に近い技術者なり工員を養成して、いよいよこれで体系的な製造に入ろうとしているのに、さっぱり作るべき飛行機がきまらないで、各航空会社は、これは経営上、一応民間会社ですから、非常な不安定な状態に置かれている。  そういう状態に置いておいて、そうしてまた、これを財政投融資なり、直接投資なり、投融資でやっていくということは、あまりにも無定見じゃないか。なぜまずこちらの方をがっちりと、百億投資してあるのだから、これをきちんと軌道に乗せて、それから進んでいかないのか。ちゃらんぱらんじゃないか、こういうふうな僕は直感を受けるんですがね。  だから、そういうことについて、これは防衛庁との関係もあるので、あなたに、そういうことを伺っても、あるいは答弁に困られるかもしれないけれども、しかし、それは通産省のことであって、岸内閣としては、そういうことでは、私は済まされぬと思うんです。大切な国の金を、とにかく直接か間接か、入れているわけです。そうして仕事を中途半端にして、こういう仕事をする。こういうことでは、どうもわれわれは、理解できないんですが、通産省としては、どういうふうにこのことを考えられるか。
  89. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) 今御指摘の点は、すでに既存の航空機の会社がたくさんございまして、これが米軍の発注、あるいは防衛庁の需要というものを中心として製造、修理の実績を持ち、設備投資も相当過去において百億以上の設備投資が行われてきたということも事実でございます。  で、それが現在御指摘のFX問題等も関連いたしまして、それらの発注が停滞することによりまして、生産稼働が非常におくれておる、むしろその方を促進することが先決問題であって、別に新たにこういった特殊会社を作るということは、むしろ順序が逆と申しますか、多少その間に矛盾があるのではないか、こういうような意味の御質問かと思うのであります。  しかしながら、私ども考えておりまするのは、航空機工業の国産化ということでありまして、国産による航空機製造工業というものを確立しようということでありまして、いつまでも、こういった米軍の発注あるいは防衛庁需要ということだけに依存するということはできないわけでありまして、当面の問題といたしましては、それはこういった当面の発注者でありまする米軍なり防衛庁というものの発注の関係等の調整というようなことによりまして、現在の航空機工業のアイドルを是正していくということも、これは航空機工業の育成の立場からは必要かと思いますけれども、しかし国産化を推進するという立場から申しますれば、これはやはり、どの一社でも、できない仕事でありますからして、ここに中核体としての政府出資の特殊会社を作ることによりまして、それを中心として研究開発を行い、ほんとうの意味の国産機というものの生産に乗り出すということは、どうしても、これは一日も閑却してはならない問題ではないかと、かように考えておりまして、その間は、おのずから問題の性格といたしましては、別個の問題として、一応考えておるわけであります。  もちろん既存の航空機工業の設備資金なり、あるいは技術提携というようなことにつきましては、それはその面で、また政府としてできるだけの援助をする、従来もしてきた、こういう関係になっておるわけであります。
  90. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 中型輸送機を中心にして、ずっと研究をしてこられて、早くこれを完成品として商品にしたい。そういうことは、一生懸命考えておられる人は、今、あなたのおっしゃった通りの理屈が私は成り立つと思うんです。それはそう思うんです。  ところが、現に川崎、新三菱という、いろいろここに名前が出ておりますが、こういう既存の航空機製造業者の一番大きな悩みは何かといえば、輸送機を早く作りたい。それは金がないから困るということじゃないんです。あれだけの新しい設備投資をして、そうしてあらゆる技術者を養成をし、機械設備を整備して、もう、これでいよいよ量産に入れる、国産々々とおっしゃるけれども、あれは国産なんです。オーバー、ホールのほかに、とにかく現有機の国産化をやっているわけです。それが入れるというところへきて、ちょっと待ったということになっている。  そうすると、それらの会社経営者皆さん方は、せっかく養成した工員、これをどうする、何でその生活を保障していくか、それに投下された資本の補充をどこから捻出していくか、こういう悩みを一番持っておるわけであります。それのことを全然考えないで、そうして、こういう問題をぽかっと出してくるということは、少し私は飛躍し過ぎていやしないかと思いますが、どうですか。私の言葉が過ぎるかね。
  91. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) 私どもの航空機工業の国産化の計画というのは、昨年航空機工業振興法ができましたときにおきまして、すでにある程度体系的な計画を予定いたしまして、航空機工業振興の基盤を作り、そうして設計研究協会中心として、昭和三十一年以来研究を重ね、それが、いよいよ研究開発が見通しがついた段階に入りまして、ここに試作の段階に入るための特殊会社を作るという既定の一つの長期的な目標に従って進んで参ったわけであります。  で、ただいま栗山先生が御指摘になった、当面の各航空機会社が、当面直面いたしておりまする問題、これは、むしろその後におきまして、昨年の秋ごろから、このFX問題を中心として派生して参りましたような問題からくる結果が、主たるものでございまして、それはそれとして、やはりこれは当面の、当面と申しまするか、短期的な対策と申しまするか、そういう意味におきまして、これはこれで、やはり手を打たなくちゃならぬと、かように考えております。しかしこれは、何分にも先般来、各方面で論議されておりまするような、非常に国防上あるいは財政上重要な問題をはらんでおりまするので、早急にはなかなか見通しがつきにくいかと思いまするけれども、しかし、これは政府といたしましては、当然その問題の解決にも努力して参っておるわけであります。従ってかたがたこれが相当時間的におくれておるということもございまして、それに対するいわゆる空白の対策というようなこともあわせて考えながら、これは、あるいは防衛庁のお立場かと思いまするけれども、防衛庁の方におきまして、たとえば生産のぺースをややスローダウンするとか、あるいは飛行機の発注を早目にやるとかいうような対策もとられておるようでございまするし、また、かたがた私どもの方で考えておりまするこの中型輸送機の開発が、既定方針通り進むといたしますれば、その面からの、またある程度の空白も埋めるということもできるかと思います。  しかし、私ども考えているのは、これは、あくまでもそういった当面の空白対策という意味ではなくて、国産化という非常に長期の目標を持ちましたものといたしまして、航空機工業を確立していきたいというのが念願でございますので、その辺の関係を御了承いただきたいと思います。
  92. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 まあ、これは局長の御答弁は、やはりそうだろうと思いますね、私は。今の答弁で、合格でしような。合格でしょうが、しかし政治的には、それじゃ通りませんぜ、それは。中川政務次官どうですか。
  93. 中川俊思

    政府委員(中川俊思君) 先ほど来、島さん、栗山さん、いろいろ御心配の点、私もごもっともだと思うのですよ。  しかし私は、こういうふうに考えているんです。少し言い過ぎがあるかもしれませんが、一つ、その点はお許しを願いたいと思うのですが、日本の航空技術というものと、戦前におきます日本の航空技術と外国の技術というものは、私は対比して、日本はいささかも遜色はなかったと思うのです。ところが敗戦によって、とにかく軍需生産というものが禁止をされる、飛行機工場はつぶされてしまう、分散されてしまうというようなうき目にあったわけです。そこで、まあ押えようと思っても、押え切れない科学者といいますか、日本人の気持が、おもちゃの飛行機を作ってみたり、あるいは模型のおもちゃのようなものを作ってみたりして、かすかにうさ晴らしを私はやっていたと思うのです。そうして、そのところへ持ってきて、例の先般来問題になりました、現在でも問題になっております外国——アメリカ製の飛行機の組み立てを、三菱であるとか、あるいは川崎というものがやっておった。ところが、これもぼつぼつ一段落をつけるようになってきているわけなんです。  その、今のグラマンであるとか、ロッキードであるとかいうような問題は、しばらくこれはおくといたしまして、(栗山良夫君「それはおけないんですよ。」と述ぶ)ところが、それは防衛庁の問題ですから、その問題に対する御質問は、一つ予算委員会なり、あるいはその他の内閣委員会等で、まあ一つ、十分に御検討願いたいと思うのですが、とにかくそういうようなことをやって、日本人の従来持っておった技術を何とかして温存をしたい、外国の技術に負けないようにやっていきたいというところに、私はやはりこのたびの中型輸送機の問題も、一つの現われとなってきておるんじゃないかと思うのです。  むろん、先ほど来お話になっておりますような、島さん、栗山さんの御心配になっているように、私も、実は一まつの不安を持っていないことはございません。果してこれだけの中型輸送機を作って、これが売れるかどうか、事務当局では、テーブル・プランで売れるというふうに考えてやっているでしょうが、あるいは売れなくなるかもしれません。私はもうこんなものは問題にならなくなって、五年先には、月の世界へお互いに旅行できるような時代がくるのじゃないかと思っている。  そういうようなことを考えれば、こんなちゃちな中型輸送機などというものが、果して問題になるかということも、実は考えられないこともない。島さんは、昨日来——先ほども、いろいろ御心配になって、こんなちゃちなものを作ってと言うて、島さんも、それから阿部さんも盛んにひやかされておったようですが、あるいはひやかされたのでなく、それが現実になって、もう数年後に現われるかもしれないと思うのです。現われるかもしれないが、まあとにかく戦争によって、ひしがれた日本の航空技術を、何とかして世界の水準に持っていきたいというので、通産省の事務当局が、いろいろ頭をひねって、そうしてこの中型輸送機を作ろう、これを作って、そうして日本の航空技術を盛んにしていこう、日本人の誇りを海外に示そうと、航空機工業の確立をはかろうと、まあ、この熱意だけは、一つ買ってやってもらいたいと思うのです、私は。  あるいは今御心配のように、三菱であるとか川崎なんかの失業救済でやっているのだろう、大きな工場の失業救済であろうというような御心配もあるだろうが、(栗山良夫君「そんなことは言っていない」と述ぶ)あるいは、そうかもしれません、それは。そうかもしれないが、いずれでも、失業救済であっても、何であっても、私は、日本の航空技術を盛んにしていくというこのとりあえずの目的のために、この中型輸送機を、何とかして一つ、作り上げて、日本の航空技術を確立していこうと、日本人の誇りを確立していこうというのでありまするから、いろいろ御意見はあるだろうと思いますが、私は、先ほど来、ここで黙って聞かせていただいているのでありまするが、島さん、栗山さんの御心配も、あるいは杞憂に終るかもしれませんし、また事務当局が答弁をしておりますことも、何だ、あそこで何年前には、つまらぬ答弁をしておったが、結局何にもならなかったじゃないかという結果にもなるかもしれません。将来のことでありますから、これは、私はだれにもわからぬと思うのであります。  あるいはあなた方御心配になっているように、輸出には、ちっとも向かないのじゃないかと、今盛んに言っておられますが、あるいはこれで、できまして、中南米、東南アジアで、どんどん買うようになってくれるかもしれません。これは、私は将来のことでありますからわかりませんが、事務当局といたしましては、しばしば御答弁申し上げておりますように、東南アジアや中南米の方に、相当売れるという確信をもってやっているのでありまするから、あるいは売れるかもしれないと、私は思っている。まあ、いずれにいたしましても、架空の問題を取り上げて論争が行われているという——架空と言うと、はなはだ失礼ですが(栗山良夫君「あんたの方が架空だよ」と述ぶ)ちょっと雲をつかむような気がするのであります。  私が、先ほど来申します通り日本の航空機工業の確立、日本人の誇り、一つ、この一点に集中してやろうという非常な熱意をもって、通産省は乗り出しているのですから、そういう点から一つ、ごらんをいただいて、御協力を願いたいと思うのであります。
  94. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 今の政務次官の御答弁は、私の質問に、何も答えていないので、自分で好きなことをしゃべっただけで、それはそれで、しょうがないですがね。  私が言ってるのは、私の立場から言えばですよ、軍用機を製造することは、私は反対なんです。で、今、あなたの方で出されている案の方が賛成です、実際は。中型輸送機なんかの優秀品を作って、海外にどんどん輸出に努力するということであれば、私は、それには理論的には何も反対するものではないのですよ。その点は、誤解しないようにしてもらいたい。  それから、戦争前の日本の航空技術が、えらいすぐれておったということをおっしゃるけれども、内燃機関とか、そういうものは、すぐれてもいたかもしれないが、飛行機全体の一つのプラントとして考えた場合には、無線技術というものが全然だめで、めくら飛行で、ちっとも航空できなかったのだから、そういう計測器なんかの、ああいう高度の総合技術において、それが全部完全に完成しなかったわけであります。いい飛行機ができなくて、そしてあっちで落ち、こっちで落ちしたので、あまり日本の航空技術というものは、戦争前、世界的レベルにあったというような、そういう自信過剰も、私はどうかと思いますよ。それは部分、部分においては、そうであったかもしれぬけれども、航空技術全体から考えれば、私はそうでなかったと思う。レーダー一つ考えても、一つも、うまくいっていなかった。  そういう意味では、まだ若干、私は異論がありますが、とにかく軍事用でない飛行機を作っていくということについては、そうむげに反対することはないと思う。ないと思うのだが、ここが夢でなくて、現実だ、中川さん。百億の投資をして、一万五千人の工員や技術者を養成して、軍用機の国産をやろうというわけでしょう。少くとも軍用機であるから、それはジェットだとか、そういうことは、若干違うかもしれませんが、計測器だとか何とか、民間で、すぐ使えるものもたくさんあるわけですよ。そういうことをやろうとしているのに、それの方の仕事の方は、ちっとも心配しない。私は、これは架空なことを言っているのではなくて、現に、ある航空機製作所を訪れて聞いたところが、真剣にそれを心配しているわけです。せっかく三年間も四年間もかかって、そうして高度の技術を修得させた工員や技術者を、仕事がなければ、もう一ぺん散らせなければならないのじゃないか。一台何千万円かかって輸入したような機械を、使えなくて、これまた遊ばしておかなければならない。経営者としては、全く先が見えないで困っているのです。従って、そういうつなぎの仕事を今考えることの方が必要ではないか。こういうことを申し上げておる。  この法案は、三億ばかりの会社をこしらえて、三億ばかり投資をしてやろうというのですから、そう大きな仕事じゃないということはわかるのですが、このこと自体は、スタートするときは。しかし、生んでおけば、育てなければならぬ、一ぺん生めば、そのときに、こちらの方も半育ち、こちらの方も半育ちではよくない。やはり国費の効率的な運用ということを考えれば、もう少し真剣であるべきじゃないか、こう考えるわけなんです。  私の考え方というものは、それであるから、まあ軍用機の製造は、われわれ賛成せぬが、岸内閣は、一生懸命やろうといっているが、やろうとしていることを、ちっとも軌道に乗せないから、こういう問題が起きてくるのです。その見通しを何としても、われわれは伺いたい。どうするのか。こういうことです。
  95. 中川俊思

    政府委員(中川俊思君) 結局、なんですか、栗山さん。グラマンであるとか、ロッキードなんというものを、政府は買うか買わぬかという御質問ですか。
  96. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 いや、そういう質問じゃなくて、この法律によって、民間事業として、今始めているこの航空機製造業者があるわけです。もうスタートしている。投資もし、りっぱに技術も修得して、量産に入れる態勢にある航空機会社が、当面、政府が約束した仕事をくれないために、せっかく態勢ができたにかかわらず、操業がだんだんと落ちて、そして製造所の門を、場合によれば閉ざさなければならぬ事態にまできておる。そういうおそれがある。それを一体どうするか。これの方が、国費の効率、効用を考えるということならば、それの方が優先しはしないか、こういうことを申し上げておるわけです。
  97. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) 今御指摘の点は、結局、現在各航空機の会社が、米軍なり防衛庁の需要に基きまして生産をしておりまする、その生産の実態と、将来の見通しにつきまして、具体的には、たとえばFXの問題等の機種の決定がおくれておるということによって、当面せっかく投資した設備なり労務者を遊ばせなければならぬという事態に当面しているので、これに対する対策を急速に確立するということの方が、むしろ当面の問題じゃないかという御質問だと思うのでございます。  そこで、その問題は、先ほど来、お答えいたしましたように、FXの機種の決定の問題につきましては、御承知の通り、昨年来、非常な論議が起りまして、そこで、各方面から指摘されましたような問題は、たしかに財政上、あるいは国防計画上の問題といたしまして、非常に重要な問題でありまして、これを軽々に決定するということは、実際上としては、非常に困難な情勢であり、従って政府全体としては、これはできるだけ早く解決するという線で努力をされておると思うのでありまするけれども、しかし同時に、非常に慎重な決定をしなければならぬということで、これは、相当に遷延をする可能性があるわけでございます。そこで、それでは、そのままで、いつまでもきまるまで航空機工業というものの実態をほうっておくのかということにつきましては、たしかに御指摘の通り非常に問題があるわけです。  そこで、これに対するいわゆる空白対策と申しますか、そういうようなものにつきましては、かりに、今のFXの機体関係の発注が、相当おくれまして、そうしてその結果として、たとえば来年三十五年の四月ごろから、ようやくそういった次期戦闘機というものの生産活動できるという程度にまで、これがおくれたというふうに考えました場合におきましては、現在の新三菱なり、あるいは川崎なりの空白というものは、大体七百八十万工数ぐらいに及ぶだろう、こういうふうに予想されるのであります。従いまして、そういう状況でございまするが、そのうちで、この七百八十万工数のうちで、二百五十万工数ぐらいは、F—86Fというものの生産計画の繰り延べをする、つまり生産のテンポをややスロー、ダウンする、こういう、先ほどお答えしましたような方策なり、あるいはF—86F、T—33Aというようなものの機体部品というようなものを、全部一括して発注するというようなことによって、それらの二百五十万工数ぐらいは埋めることが可能であろうというふうに考えられます。  また、通産省におきまして、今計画しておりまするこの中型輸送機の国産計画は、予定の通りに進めば、今の新三菱なり、川崎という会社で、さらに約三百二十万工数程度を埋めることができるだろうというふうに考えられますので、従って実態的には、二百十万工数くらいの空白が、やはり依然として残るわけでございまするが、しかし、そういうような手をある程度打つことによりまして、空白対策としては、十二分ではございませんけれども、ある程度の手を打つことができるということで、それらの点についても、これは防衛庁におかれても、また通産省といたしましても、そういうふうな方向において、この機種決定が遅延したということ自体は、まことにやむを得ない事情に基くものでありまする関係上、そういうことからくる空白対策についても、できるだけ万全の手を打っていただきたい、かように考えておるわけであります。  しかし、それだからと申しまして、そのことにのみ専念いたしまして、国産化の計画を放棄するということは、これは許されないことでありまするし、またその航空機の会社も、この国産化については、非常な熱意を示しておりまして、この法律が成立いたしました場合におきましては、直ちに航空機の会社が、特殊会社が発足し、スタートできるような万全の対策を、各会社間において、すでに協議し、準備しつつある状態であります。
  98. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 ちょっと話が、前後しましたが、そうすると、この会社をまず作る。そうすると、この中型輸送機の製造が開始され、そうなれば、今軍用機の製造業者として努力しておる新三菱、川崎初め関係製造業者は、この中型輸送機の仕事で、若干軍用機の仕事の不足していく分を補っていくことができる、こういうことですか、全部にわたって。
  99. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) 先ほど申し上げました、新三菱、川崎という、そういう主要な会社の例をあげて申しましたけれども、その関係におきましても、三百十万工数程度は埋め得るということでございますので、従って、結果といたしまして、この中型輸送機の国産化計画が、進捗することは、やはり空白対策になるということでございます。
  100. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それは、三十五年四月までに機種が決定したときの計算ですね、今の話は。
  101. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) 三十五年四月に、次期戦闘機の生産がいよいよスタートする、こういう、前提で考えました場合でございます。
  102. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 この航空機製造事業者の監督は、通産省でしょう、そうですね。
  103. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) 航空機製造事業法に基きまして、通産省でやっております。
  104. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 お客さんが防衛庁ですか。
  105. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) 防衛庁は、発注者ということになるわけであります。
  106. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 これは問題も、若干重要性を持っておりますし、なんですから、私はこの程度にきょうは打ち切っておきます。必要だったら、これは一ぺん予算委員会か何かで、防衛庁の伊能長官にでも、一ぺん尋ねてみますから。とにかく、この岸内閣の戦闘機種決定遅延の問題は、非常に大きな政治責任ですよ。大体、局長、今までこの機種の決定がおくれたために、どれくらいの損害を各製造業界は受けたと、あなた方は推察されておりますか。
  107. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) 先ほど申し上げました三十五年の四月に、次期戦闘機が生産活動をしたと仮定いたしました場合において、七百八十万工数のアイドルが出る。そのうち防衛庁発注のスロー、ダウンなり、あるいは中型輸送機の国産化のすべり出しということによって空白を相当埋めるといたしましても、先ほど申し上げましたように、なお二百十万工数ぐらい空白が残る、こういう計算になるわけであります。  従って、かりに、その一つの、一工数を金額で換算すると、これはいろいろの見方があると思いますが、約千円ぐらいになる、こういうふうに私どもは計算をいたしておりますが、そういたしますと約二十億円の損害が生ずる、こういうふうな見方ができるかと思います。
  108. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 今すでに、今日までだいぶ起きておりますが、今までの損害が、相当たくさんあるでしょう。
  109. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) ただいま申し上げましたのはもうすでにスロー、ダウンなり、あるいは空白が生じておりまするもの、それから、来年の四月までの全体を総合いたしまして申し上げた合計でございまするが、今日ただいままでに、具体的にどのくらいのあれになっているかということは、実は、まだ計算いたしたものはございません。
  110. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 この二十億円という損害は、誰が負担するのですか。
  111. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) まあ損害と申しましても、結果……。
  112. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 赤字だね。
  113. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) その空白というものを金額に換算するということになるということでございまして、結局、それは、企業の損失ということになると思います。
  114. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それから関連することだから、一つ率直に伺っておきますが、最近、町で政府は、航空機製造事業が安定しないために、業界も非常に困っておる。だから、まあ、どういうふうに表現したらいいですか、最もわかりやすく言えば国有民営のような形態をとって、そうして運営したらどうだ、こういう意見があるやに僕らは聞いておるのですが、政府に、そういう考えがありますか。
  115. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) いわゆる国有民営というような形態は、全然考えておりません。
  116. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 その思想は、将来も絶対ないと理解してよろしゅうございますか。
  117. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) 将来もないと思います。
  118. 島清

    ○島清君 先ほどから、栗山君の質問に対する御答弁を承わっておりますと、敗戦までは、かなり高い航空機技術を持っていたので、その温存をはかりたい、こういうことですが、今、あれですか、政府考えておられるような会社を作られるとしますと、技術の面、こういうことは、別に養成しなくても、今、国内に保有されておりまする技術だけで足りるわけですか。
  119. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) すでに、従来からもYS—一一型の概略設計をいたすにつきましては、財団法人輸送機設計研究協会というところに、その主要メーカーからの最も優秀な技術者を集結いたしましてやって参ったわけでありまして、一方、御指摘の通り各大学なり、あるいは航空技術研究所その他研究機関もありまして、次々に新しい新進の技術者も養成されつつあるのでありまして、取りあえずは、今既存の各社が持っております陣容を動員いたしてやりまするけれども、もちろん新しい技術者の養成ということについても、今後一そう努力をして、その方面にも力を入れていくということは当然だと思います。
  120. 島清

    ○島清君 いや、私がお聞きしておりますことは、今、会社をお作りになります、それで、その技術を確保するのには、養成されなければ、技術が確保できないのか、今、国内にあります技術者を動員することによって足りるかどうか、こういうことを聞いておるわけです。
  121. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) 現在考えておりまする中型輸送機の設計から研究、開発、製造に当りましては、現在の技術陣を動員することによって、十分できる、かように考えております。
  122. 島清

    ○島清君 そのYS—一一型というのは、あれですか、全部今、日航さんなどは、何ですかDC—3あるいはDC—7といって、あれはダグラス系統ですか、——こういうような機種を持っておりますね。そうすると、この会社が発足しますというと、量産態勢に入りますというと、私は、機械のことはよくわかりませんけれども、全部日航さんであるとか、あるいは全日本空輸ですか、こういう国内航空会社には、全部こういったような機種を使わせようと、こういうようなお考えですか。
  123. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) YS—一一型が、かりに国産機として完成いたしました場合において、現在、結局まあ日本航空にいたしましても、全日空にいたしましても、全部輸入品を使っているわけでありますが、御承知の通り、DC—3なりDC—4でありますけれども、それを全部一挙に代替するということは、これは実際問題といたしまして、経済性の問題その他から、非常に困難かと思いますけれども、行く行くは、それぞれの現在使っております使用機の代替機がくるに伴ないまして、全部国産機に切りかえていきたい、かように考えます。
  124. 島清

    ○島清君 今、あれなんですか、YS—一一型というのは、六十五座席があると、こういうふうに示されておりますが、今、日航などの使っておりますDC—7とかDC—4というのが、私は、この飛行機と、どの程度性能が違うかわかりませんが、値段の点では、これと同じような型で座席数も同じぐらいで、積載量も同じぐらいで、それから性能も同じぐらいで、値段の点では、どう違うのですか。
  125. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) 現在、日本航空が使っておりますDC—13なりDC—4でありますが、DC—3は規模といたしましては三十人でございます。それからDC—4が六十人、今度私ども考えておりますのは、大体、六十人というところが標準でございまするが、多少無理すれば、それからまたふやせるということでございます。  その値段でございまするが、この日航が買い入れました場合において、これは、全部新品ではございませんで、中古品を買っておるわけでございまするが、DC—3が一機約二十万ドル、DC—4が一機約七十万トル、そういうような価格になっております。それで、今度YS—一一型ができました場合において、一応私どもの方のコスト計算といたしましては、一機約三億五千万円という程度でできると、かように考えております。
  126. 島清

    ○島清君 三億五千万円ということは……、十万ドルですか。
  127. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) 百万ドル弱でございます。
  128. 島清

    ○島清君 そうすると、どうなんですか、DC—4……
  129. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) 単純に、今その値段の点だけを比較いたしますると、DC—4が約七十万ドルであり、こちらのものが百万ドル足らずということでございまするから、高いようでございまするけれども、性能の点におきましては、これは、もう格段に違うわけでありまして、これはスピードの点、あるいは燃料の消費率その他いろんな面を比較いたしまして、非常に違う。従いまして、それらの性能との比較におきましては、非常にコストという点では、安いし、また諸外国において、おそらくそのころに使われるであろうというものと比較いたしましても、かなり国際競争力のあるコストになっておる、かように考えております。
  130. 島清

    ○島清君 DC—7とは、どうなんですか。
  131. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) DC—7というのは、私どもの方で予定しておりまする、こういった近距離輸送機ではございませんで、大陸間の国際線の飛行機でございますので、これとの価格の比較は、単純にはできないわけでございまするけれども、DC—7は、約三百万ドルというふうに伺っております。
  132. 島清

    ○島清君 たとえば会社をお作りになるとしますと、これは最初、三十四年度ですか、初年度の出資額というものは三億、それから補助金が幾らですか、六千万円ですか、それはわかりましたが、五年間のうちに、大体、どれくらい出資をしたら、一応通産省で考えておられるものができ上る予定なんでございますか。それは、もちろんまた大蔵省などと財政の範囲内において相談をしなけりゃならぬという制約はありましょうけれども、一応、五年間にわたって出資をしなければならぬ、それから、補助金をやらなきゃならぬと考えておりまする総額というものは、どれくらい考えておられるのですか。
  133. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) 五年間、三十八年度までの所要経費といたしまして、全体として、一応考えておりますのが、三十九億五千五百万円でございます。そのうち出資が三十八億円というふうに考えておりまして、残りが補助金ということになるわけでございます。  そこで、その三十八億円の出資の中で、政府出資をどのくらいにするかということにつきましては、昨日もお答えいたしましたけれども、これは、あらかじめ予定したものはございませんけれども、しかし、私ども方針といたしましては、初年度三十四年度が、出資五億のうち三億が政府出資、二億が民間でございまして、六〇%が、政府出資でございまするので、やはり三十八億のうち、少くとも六〇%は、政府出資に期待したいと、かように考えております。
  134. 島清

    ○島清君 何ですか、これが、実用化される、量産を得て実用化されるという段階の国内の需要機数というのは、大体どの程度見積っておられるのですか。
  135. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) 国内におきまするYS—一一型の需要機数でございまするが、大体、現在、まあ昭和三十八年度におきまして、一応これをDC—3に換算いたしまして、所要機数が約十五機というふうに考えております。  それで、その以後、三十八年から以降大体、四十四年度までを一応、全体として総合して考えまして、国内ローカル線用といたしまして、約百機と考えております。その間におきまして、輸出面におきましては五十機、全体として百五十機という想定のもとに、計画を立てておる次第でございます。
  136. 島清

    ○島清君 飛行機の耐用年数というものは、よくわかりませんが、今、あれですか、国内にあります全日空ですか、などの飛行機は、その当時、使用に耐え得るという考えのもとですか、それとも、今使っておりまする飛行機というものは、使用に耐えない、全部これが新しいこのYSに切りかえられるというような前提のもとですか。
  137. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) ただいまの需要想定をいたしました根拠でございまするが、大体耐用年数はDC—3が六年、DC—4が七年というのが標準でございまするが、従いまして、今年度、昭和三十三年度における年度当初の保有機数、これがDC—3に換算いたしまして九機であります。それから、三十四年度においても九機。その間の所要機数といたしましては十一機というふうな、だんだん所要機数の増大を見込みまして、それから一方廃棄して参りまする、廃却いたしまする飛行機の機数、これを大体、昭和三十六年度ぐらいにおきまして一機、三十七年度には二機、三十八年度には三機ぐらい、その代替時期がくると、こういうものを——そういった所要機数と廃却の機数の予定というものを差し引きまして、需要の想定を計算してみた次第でございます。
  138. 島清

    ○島清君 今の御答弁の中には、これは全部YS—一一型を買ってくれると、使ってくれると、こういうことの前提のもとに立って御答弁がなされたわけですが、しかし、日本航空の成立の沿革を顧みてみますると、かなり外国の援助といいますか、——技術の援助は、もちろんあったわけですが、かなり援助がなされたわけですね。従いまして、外国の航空機製造会社と、かなり深い取引上の関係があるものと見なければいかぬわけですね。もちろん、半官半民の国策会社みたいなものですから、政府のこういったような国策会社みたいなもので作った飛行機を買わなきゃならないという、また義理も生じてくるということは、私も想像にかたくないわけですが、しかしながら、これは年限は、五年ぎりですね。五年になりますというと、これがおそらく民間の方に、払い下げになるというようなことに相なると思うのですが、そこで、必ずしも私は、日本航空の成立の沿革に顧みて、この会社が、期待するほど日本航空は、この飛行機を買ってくれないと思うのです。  それは、政治的な、政策的なある種の制約を設ければどうかしれませんが、普通の私は商業べースから考えます場合に、外国の長い間の取引があり、さらには海を渡って飛んで参りまする場合には、かなり技術の援助を受け、そうして、いろいろの提携を深くしている面も営業上には見られるんですね。しかもまた、アメリカの飛行機会社とは、競争する面もありまするけれども、しかしながら、日本の日航が設立日が浅いというので、かなりまた好意的に見てくれている面もあると思う。たとえば、あの長いことサンフランシスコからロスアンゼルスへ乗り入れしたいというように考えておりました線も、大阪飛行場を使わせろというような条件を持ち出して、非常に難航しておりましたが、ロスアンゼルスのリレーが可能になったようでございますね。そういうことも、やっぱりアメリカの好意的な扱い方であったと私は見られぬこともないと思うのです。その日本航空と外国飛行機会社との密接な関係、さらに全日本空輸の日航の持っております株主としての発言権などから考えてみまするというと、非常な政治的な制約を加えれば別ですが、普通の商取引の面からだけだとすると、あなたたちが期待されるような全部の機種を、これにかえるということは、おそらく今の場合、そういうふうに考えるということは、早計に過ぎるような気がするんですがね。  何か、私がこういったような疑念を持った場合に、そうではないんだという説明がありますならば、納得のいくように御説明願いたいと思います。
  139. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) 国産の中型輸送機の需要面におきましては、もちろん国内のローカル線も、全部これに代替するということが、まず先決問題であり、国内需要というものは、輸出需要よりも、さらに確実と申しますか、かたいものでございますので、ぜひ、そういう方向にいきたいという計算のもとにやっておるわけであります。  そこで、今御指摘になりました、それでは、日本航空なり全日空というものが、それを買うだろうか、どうだろうかという点につきまして、外国の会社との関係その他の点につきまして、御指摘になり、あるいは政策的配慮というような言葉もございましたけれども、私どもの見通しといたしましては、政策的配慮をするまでもなく、経済性の面におきまして、純然たるコマーシャル・ベースという点から見ましても、先ほど申し上げましたように、品質価格というものをにらみ合せて考えますれば、これを輸入して——外貨を使って輸入するよりは、はるかに有利であるということは当然でございまするし、のみならず、この外国の会社との関係におきましても、特に外国と縁が深いのは、今御指摘のダグラス関係だけでありまして、ダグラスは目下こういったDC—3、DC—4に代替する飛行機の生産——この種の中型機の生産計画はないわけであります、従ってこの面につきましても、それほどのつながりの点について、御心配するものはないかと思います。  それから航空輸送会社といたしましては、できるだけ一つの機種に統一をしていくということが、これがやはり航空整備上から申しましても、非常に便宜であるということから、やはり国産機に統一をしたい、かように考えるわけでございます。ことに日航とは、特に緊密な連絡をとり、運輸省とも御相談をいたしまして、パイロットの提供、その他設計段階等からも参加をしをもらっておりますので、十分これは発注の見通しがある、かように考えております。
  140. 島清

    ○島清君 まあ百機ぐらい売りつけたい、それから五十機ぐらい輸出をしたいという商売人はだしの、商魂たくましい御答弁は大へんけつこうですが、まあ国内の需要を確保するということは、外貨の割当をしないとかなんとかいうことでも可能だと思うのですが、五十機を国外に売り込むということは、私は、非常に困難だと思うのです。  その五十機を売り込みたいという国別はどういうふうになりますかな。
  141. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) 輸出面につきましては、もちろん私どもは、簡単にこれを輸出できるとは思っておりません。あらゆる努力を傾注して輸出しなければならぬ、かように考えております。  そこで、その見込みとして考えられておりまするのは、東南アジア、中近東、中南米でございますが、それぞれの地域におきまして、現在使っておりまして、それが代替期がきて代替し得るであろう——YS—1型で代替ができるという見込みの機数でございますが、東南アジア地域におきましては、大体三百六十三機、それから中近東におきまして九十三機、中南米におきまして六百二十二機、合計三地域だけで九百七十八機と、こういう計算をいたしております。これは今後十年間の間に一割ないし一八%ぐらいの航空輸送の伸びがあり、中型輸送機の伸びを一〇%と押えました場合におきまして、このYS—一一型というものとDC—3型というものとは、DC—3に換算して考えました場合に、非常に手がたく換算いたしましても、三地域だけで千百機ないし千二百機ぐらいの代替需要が、あるいは新規需要が予想される、こういうことでございます。  これに対して諸外国において開発し、量産移行中のコンベアとかあるいはホーカーというようなものとの代替需要を差し引いて、その減少部分を考えましても十分YS—一一型で代替需要が合う、かように考えておるわけでございます。
  142. 島清

    ○島清君 中近東といいますと、中近東のどの国もたくさんありますので、どういう国ですか、中近東は。  私が、中近東を歩いて感じましたことは、すでに、もう世界の古い兵器の捨て場所みたいになっているのですね。そこで、ロシアか、そうでなければアメリカだというて、アメリカとソビエトの先鋭的な獲得闘争の場になっているわけですよ。ですからアメリカといえども、それはもう飛行機を提供し、ロシアといえども、惜しげもなく飛行機を提供するというような形が今行われているわけですね。そうしまするというと、すぐにそれが革命に直結をして、それで、まあ革命になりまするというと、そこの、その国の市場になるわけです。アメリカならアメリカ市場、それからソビエトならソビエトの市場になるわけですね。  そこで私は、今これは、お前のその言い方に対しては、それは、きっと戦闘機の問題であって、兵器の問題であって、こちらの方は、平和的な中型輸送機の問題だから、そういうことは心配は少しもないのだ、こう御答弁になるかもしれませんけれども、そこで私は、さっきも言っておりますように、兵器としての使命は、飛行機に、もう大きく望むことはできないのだ、各国の兵器としての飛行機の使命は、もう終ったものだ、こういう判断に立って新兵器にかえつつあるのだ、こういうことですから、そこで、一度ソビエト地区に握られた市場というものは、これは、やはり私は、日本市場になるということは、私は考えられないと思うのですね。アメリカにおいても、私はその通りだと思うのです。  ですから、中近東のそういったような政治情勢の下に立たされておりますその後進国に、しからば売り込みの、どういう方策を持っておられるか説明をしていただきたいと思うのです。
  143. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) 輸出予定先といたしております中近東なり東南アジアというような地域は、いずれも今、御指摘のように、政治的な情勢あるいは経済的な実力等におきましても、非常に不安定な地域でありまして、これは、もう飛行機に限らず、あらゆる輸出面において、確定的な見込みというものは非常に立ちにくいわけでございまするけれども、しかし、今私どもが、中近東で九十三機と申しましたのは、具体的に、中近東の国別に積み上げて計算したという資料では——率直に申し上げて——ございません。国別ではなくて、むしろ中近東地域において、現在運航中でありまするところの輸送機DC—4が九機ございます。それからC—46が一機、コンベアーが四機、DC—3が七十四機、ヴァイキングが三機というような、そういう計算を積み上げまして、その機種別に輸出費用を計算したわけでございます。  従いまして、鳥先生がおっしゃいますように、機種別の計算のほかに、国別、それぞれの国の事情が、たとえば先ほど御指摘になりましたブラジルというような特殊の事情のものもございます。それらについては、この三十八年度以降において、どういうふうな、その国との取引状態になっているかということを予測することは困難でございますので、一応機種別に見まして、どうしても代替機がきて、取り替えなければならぬ機種、その中でYS——型が大体一〇%くらい需要が食い込めるであろう、こういうふうな、かた目の想定をいたして考えたわけでございまして、もちろん、将来のことでございまするので、必らずその通りになるということは、これは何人も言えないわけでございまするが、私どもの算定の基準は、そういうふうなことでございます。
  144. 島清

    ○島清君 やはり私は、中南米にしても、中近東、東南アジアというて想定されております市場、これを、私たちが現地を見まして、非常に感じておりまする不安を解消できるというような説明を拝聴できないことを非常に残念に思うわけですが、たとえば私は、ただ中近東の政治情勢を見ただげでございまして、航空機会社に、どこの資本系統が入っていて、そしてどういったような人的配置によって、それが運営されているかということについての詳しい事情は知らないわけですが、おそらく私が想像するに、これは機械を、あなた方がごらんになります通り、今御説明になりましたような機種と、それからその数が、あるいは飛んでいるのかもしれませんけれども、私は、資本的な内容からすると、たとえばおそらくこちらの方に売り込みにかかっておりますYS—一一型の会社であるとか、おそらくこういったように、入る間隙のないような態勢になっているのじゃないか。  こういうように思うわけですが、それはなんですか、たとえば中近東あたり、東南アジアあたりの、こういったような航空機会社をお調べになって、その資本系統、こういうものも全部お調べになりまして、そして何が何でも、とにかく一〇%程度は、食い込めるのだ、こういうような確信があって、今御答弁をしておられるわけですか。それならば、各中近東なら中近東、東南アジアなら東南アジアの航空機会社の資本系列と言いますか何と言いますか、そういうものを一つ御説明を願いたいと思うのですが。
  145. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) 今、東南アジアなり中近東の各別の、それぞれの運航しておりまする会社の資本系統に関する資料を今直ちに手元には持っておりませんけれども、これは調査いたしましたものがあるはずでございますので、資料としてお出しすることはできると思います。  それから、今世界国際競争の中で、ほかの国が新しい機種の売り込みにきわめて強く、YS—一一が入る余地がないのじゃないかというようなお話は、ごもっともでございますけれども、現在、この新しい機種の代替機がくる時期に間に合うように、新しい生産態勢に入っている国は、比較的少いのでありまして、従って十分YS—一一というものが非常に優秀な飛行機として、幸いにコスト的にも安くできますならば、これは十分競争力があると考えておりまして、従って先ほど申しました世界の輸送の伸びから換算いたしました三地域の代替及び新規需要の千百機ないし千二百機のうち、そういった競争会社として、すでに現在わかっておりまするもの等も含めまして、アメリカなりヨーロッパが出てくるということを想定した場合におきましても、大体、一割は食い込めるであろう、こういう、これはむしろ非常にかた目に計算をしたつもりでございます。
  146. 島清

    ○島清君 あなたたちのねらいは、五年間ということになっているのですが、その五年先は、どうなるのですか。
  147. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) 五年間と申しますのは、研究開発に要します期間が、五年間でありまして、従って政府出資を次々に注ぎ込んでいきますものは、その研究開発の段階だけでございまして、それが終りましたあとにおいて、新たな政府出資はしないというだけでございまするけれども、この会社は、実質上存続していくわけでございます。
  148. 島清

    ○島清君 そうすると、会社の経理は、五年間政府が、そういうふうな資本的なめんどうを見ておれば、十分にやっていける、こういうことでございますか。
  149. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) そういうことでございまして最初の五年間、つまり研究開発段階は、なかなかもちろん利益も上りませんので、政府は、相当めんどうをみなければなりませんけれども、幸いに量産態勢に入って、製造販売が軌道に乗りますれば、あとは、民間の資金あるいは借入金というようなことによりまして、運行することができる、かように考えております。
  150. 島清

    ○島清君 そうしますと、何か五年間で三十九億五千五百万円、そうして三十八億円ですか、その三十八億の中の六割程度は、政府が保有していきたいと、こういう御説明でございまして、それは、政府は五年先、六年目からは、株主として配当を受けるわけなんですか。それとも、出資額というものは、徐々に民間の方に切りかえて、転換をしてもらうという方針なんでございますか。
  151. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) 附則の第三条にございますように、試作、試験が完了した年度の翌年度以降は、会社に対して、新たな出資を行わないというだけのことでありまして、従って、政府出資を、だんだん減らすわけではございません。
  152. 島清

    ○島清君 きのう阿部委員の質問に対しまして——新しい会社の人事のことについて質問があったようでありますが、これは、もちろん株主総会において決定されることでありますので、今、にわかに全首脳部の人事を発表するということの段階ではないと思いますが、しかしながら、反面また、通産大臣が非常な責任を持っておやりになる仕事でございますので、通産省といたしましては、こういったような人的な面についても、かなり突っ込んだ施策というものがなされておると思うのですが、きのう、私寡聞にいたしまして、この人事の面の私たちが知りたいというようなところまでの御説明はいただきませんでしたが、どの程度の人々が——氏名を今発表される必要はありませんが、どの程度の役職の人々が、今通産省で考えられておるのでございますか。
  153. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) 新会社の首脳部の人事につきましては、いずれ設立委員を命じまして、その設立委員会において決定されることになると思いまするけれども、現在のところ、一番まあ問題は、社長と申しまするか、一番頭になる人に、どういう方になっていただくかということでございまするが、これにつきましては、できるだけ公正な、しかも業界全体に信望のある人と、こういうことが、当然の前提でございますけれども、ただいまのところ、そういう方についての候補者が、まだ内定をいたしていないという状況でございます。それで、あと重役——取締役なり監査役なり等につきましては、それは大体、この会社を中核体として、これから発注を受けて生産いたしまする主要な各メーカーの中から、それぞれ担当の分野に応じまして、あるいは企画担当であるとか、あるいは技術の担当であるとか、あるいは設計の担当であるとかというふうなことにつきまして、それぞれ各会社の内部において、すでに人選に取りかかっておりまして相当優秀な、しかも中堅と申しまするか——の人を出してもらうということで、すでに具体的に各会社としては、内定に近い段階にまできているかと思いますが、現在のところ、私どものところには、まだその氏名等につきましては、内定をいたしていない、かような現状でございます。
  154. 島清

    ○島清君 工場敷地は、どこに求めるおつもりでございますか。
  155. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) この会社は、御承知のように、自分で設備を持って製造をやるわけではございませんので、むしろ既存の各会社設備を利用するわけでございますが、従って、むしろ工場敷地と申しまするよりは、東京都内に営業所を置きまして、主として設計というようなことを中心にして、仕事を開始すると、かような格好になると存じます。
  156. 島清

    ○島清君 そういうことであれば、こういったような株式会社じゃなくて、航空機研究所といったような、もっと国家性を非常に強く出したようなことをお考えになったことはないのでございますか。
  157. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) 従来のように、単に概略設計をするというだけの使命でございますれば、財団法人の形でよかったのでござ、いまするけれども、先ほど申し上げましたように、この会社が設計をし、そうして、それぞれの分野に応じて、既存の各メーカーに発注をして、そうしてでき上ったものを、この会社自体が製造し、販売するわけでありまして、やはりこれは、会社の形態というものが適当でございまするが、ただ、非常に、そういった政府出資というものを期待しておりまする関係上、特殊会社という形をとったわけでございます。
  158. 島清

    ○島清君 政府出資は、だれが期待しているのでございますか。
  159. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) 期待していると申しまするのは、あるいは表現が悪かったかと思いまするけれども、もちろん業界において、それぞれどの一社でもできない。従って、どうしても、ある段階までは財政的な援助に頼らなければならないという面におきまして、業界としては、もちろん期待いたしますると同時に、われわれ政府といたしましても、やはり航空機工業を確立いたしまするためには、当然、そういうような財政投融資というものによっていかなくちゃならぬということで、全体として、これを要望しているということでございます。
  160. 島清

    ○島清君 そこなんですが、今、お答えをいただいた答弁の中に、非常に本質的なものが含まれていると思うのですが、私たちは、栗山委員の質問の中にもありました通り、何も採算が立つならば、あなたたちが、非常に採算が可能であるというような形のデータが出ているなら、すでに、もう資本家の諸君が、これを企業化しているはずなんですね。  ところが、企業化しないということは、どうなるかわからないから、危険の負担をしたくないと、その危険の負担は、国家の方にしてもらって、そうしてある程度の見通しをつけてから、ちょうだいすればいいと、こういうような考え方だと思うのですね。ですから、それは、ちょうだいする方の側から見れば、期待することは当然である。  そこで私たちは、果して国の財政から見て、そういったような危険を負担するという立場において、こういったような会社を作るべきものであるかどうかというようなことについては、もとより非常に慎重でなければならないわけです。それで、その慎重という立場に立ちまして私たちの質問がなされているわけですが、ですから、危険を負担をするならば、それで、なおかつ非常に国家的な必要性があるとするならば、私はやはり、全面的に、国家が責任を負うという形の研究所でもいいだろうし、そうして、その研究の成果は、あるいはまたできるであろうところの航空機会社の方に、その権利を買ってもらうとか何とかいうことで、十分に私はなし得るであろうと思うのです。  よしんば、これが三十八億投資をしまして、全面的にこれが失敗に終っても、私は今は、やはり国家的な必要性に基いて、結局、こういったような研究所が持たれた場合に、その研究のために、三十八億なら三十八億の金が、かりにペイしなくても、やはりこれは、そのときの必要性に基いてやったことですから、筋は通るのですね。  ですから、何か説明を承わっておりますというと、十分に採算がとれる事業であって、輸出も、かりに非常に盛んに行われるのだと、そこで外貨もとれるのだし、今まで払っておりまする外貨の支払いが不要になるのだと、こういう説明ですが、どうも私たちが、ただいま疑念をはさみながら質問申し上げたように、そういうことは、にわかには私たちは結論にくみするわけにはいかないのですね。  そこでそういうことであるならば、研究所というようなものを、国家機関で十分に研究するということの配慮が、やはり国家の機関としては、当然に考えられてしかるべきじゃないかと思うのです。ですから、それを、にわかに株式会社として出して、そうして政府が出資をする、補助金を与えるというようなことについて、非常に割り切れない気持があるわけですが、それはさておきまして、御答弁願えるならば、御説明いただきたいと思いますが、これは、何ですか、民間の中型輸送機ということになっておりますが、それから、たとえばこの会社ができ上ってしまうと、ただ、もうそれだけにするわけであって、いわゆる防衛庁関係の仕事というものは、全然やらないという保証はどっかにあるのでございますか。
  161. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) 前段の点について、お答えいたしますが、研究段階は、すでに過去において、財団法人設計研究協会という形において、各会社の民間の協力体制ができ、それに対して、政府補助金を出してやって参ったのであります。  この研究が、一応一段落いたしまして、いよいよ試作開発の段階に入った。しかし、会社が、将来においてペイするようになりますまでには、少くとも五年の口数がかかる。その間においては、やはり政府の相当の財政的な援助がなければなりませんし、また量産態勢に入りました以後におきましても、業界全体の協力体制ということ、これは業界相互間に相当な利害関係もございますので、それらの協力体制をやっていきますためには、こういった中核体の特殊会社が必要である、こういう趣旨で、会社の設立を考えたわけでございます。  それから、もう一つの防衛庁需要の問題でございますが、この点につきましては、衆議院におきましても、御質問がございましてお答えいたしました通りでございまして、この中型輸送機は、これは、もちろん民間、先ほど申しました国内のローカル線、あるいは輸出需要ということを前提として計算されておりますけれども、しかし、防衛庁が、これに対してある程度の設計の変更によりまして、防衛庁用の輸送機としてこれを使用するために発注するということは、これは可能でございます。可能でございまするけれども、しかし、われわれの需要想定の中には、それをあらかじめ予定して計画を作ったわけではございません。
  162. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  163. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 速記起して。  他に御質疑はございませんか。——御質疑はないものと認めます。  以上をもって、本案に対する質疑を終局することにいたします。   ━━━━━━━━━━━━━
  164. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 次に、フラント類輸出促進臨時措置法案を議題といたします。  昨日に引き続いて質疑を行います。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  165. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 実は、私はきのう当委員会で、担当局長から十分承わりましたので、法案内容について、賛否は別として十分理解がいきました。  ただ、お尋ねしておる中で、日本のこのプラント類の輸出が、非常に欧米各国に比較しておくれておるという理由は、やはりこれに対する国家なり、その他の裏づけが十分でないから、どうしても、わが国がおくれておるということを、私はしろうとですけれども、大体承わっておるわけです。  そこで、そういうのを補うために、今度、通産当局としては法案を出したと思うのですが、しかし、どうも、きのう御答弁を承わっておっても納得できないわけですね。おそらく大臣から承わっても、この法案法案ですから、局長のお話と一緒に、あるいはなるかもしれませんけれども、こういうだけでは、果して完全にいけるかどうかという心配があるわけです。ですから、私の考えでは、コンサルティングのミスに対する補償ばかりでなくして、ほんとうに業者とかメーカーが、故意にやったなら別ですよ。しかし、そうでないなら、政府が、もう少しお金を出してこのプラント協会に判定をまかすとか何とかいうあやしげなものでなく、明確に政府がそういう団体を規制して、コンサルティングのミスがあったら、あるいは故意にやらないものであったならば、一切、政府が責任を負いますというところまで、政府が何がしかの金を出してそして明確に規制して、お仕事をやってはどうかということが私の主張ですが、そういうところまでいっておりませんという局長の御答弁なんです。  ですから、この法律を直ちに直せといっても、衆議院を通ってきておりまするから、無理でしょうけれども、岸内閣が、聞くところによれば、改造をなさるというのですが、通商産業大臣は、最も優秀だから残るやに新聞報道されておる。そこで、あなたがおるうちに、それは、とにかく明確に、来年の国会でもけっこうですから、政府が、もう少し責任を負うということで、資金を出して、明確な、りっぱな団体を作って、プラント協会に委託するとか何とかというのではなく、やるということをお約束願えるかどうかということなんですね。  なかなか通産大臣は、自民党にも人物はたくさんあるけれども、主流派とか、反主流派とか、当選何回とか、戸籍が何とかと言って、りっぱな人が来ないのですが、今は、通産大臣が高崎さんですから、それを約束してもらいたい。この法案で直ちにということは申し上げませんが、これでは完全でないということを、局長も、きのうの質疑の中で言っておるのですが、金がないし、種々の事情で、この程度でがまんをしてほしいということですから、局長を、これ以上責めることは差し控えました。しかし日本の国は、とにかく外国と貿易しなければ飯を食っていけぬ、岸さんとしても経済外交だということをおっしゃっておるのですから、やはり経済外交の面にまで生かすということですから、そこを一つ大臣の意のあるところを承わりたいと同時に、もしお約束できるものなら、今年は、これでがまんしよう、しかし明年度は、もう少し、しっかりしたものを作って、法案の改正になるか、単独立法になるかは別としてやりますということを承わっておきたいわけです。以上です。
  166. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) ざっくばらんにお答え申します。  私は、今回の国会に、二つ大きな問題を出したのでございますが、一つはプラント輸出を増進するために特殊法人を作って、阿部委員がおっしゃったごとく、強力な特殊法人でもって、そうして設計の面まで十分入りまして、コンサルティング・エンジニアを包容したものを作っていかなければ、今日、欧米各国がやっている東南アジアに対する輸出の増進の力と比較いたしまして、この点だけが劣っているわけでありますから、これはぜひ、そうしてもらいたいということを、強硬に実は主張したのでございます。新しく特殊法人を作るということにつきましては、相当難関に遭遇いたしまして、ようやく中型輸送機の方だけは通ったわけなんでございますが、この方は延ばされたわけでございますが、これは私は、どうしても次の国会に成立させていきたい、こういう所存でやっておるわけなんでございます。  それにつきましても、差し迫った問題といたしまして、今日、エジプトとか、インドに輸出いたしますプラントにつきましては、どうも値段は、相当安くやっておるわけなんです。その能力に対する責任ということになりますと、今やっております業者だけでは、これはよう責任を持てない、それは何だと申しますと、この機械を作る人と、機械を動かした経験者とが、おのずから違っておるわけでありますから、そういう点から考えまして、どうしても、これは早く発足しなければならぬ、こう存ずるわけでございまして、今日急速に、この法案を提出いたしましたわけなんでございますが、せめてこれだけでも、一つ通過させていただきますれば、相当の期間の間に、これを初めの、本来の目的であった特殊法人に仕上げていくというふうな方針をとっていきたいと、こう存ずるわけなんでございます。  従いまして、この法律等も、五カ年という限時法にもなっておるというふうな点も、そこにあるわけでございますから、その意味で進みたいわけであります。
  167. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 私、だめ押しするわけではございませんけれども、五カ年になっておるということは、五カ年で、これをなくするのか、あるいは五カ年で、別の法案を作ってよくするかということが心配なわけです。  ですから、五年間は、これでいけるかどうかは別として、これはとにかく差し当りの法律ですから、大臣のお話でいくと、これは政情その他によって、ここで明確にお約束してもだめかもしれませんが、一つ大臣の御方針として、明年度は、新たに、もう少し中身のあるものを出すというお考えのものかどうか。  単刀直入という、御答弁勢頭のお言葉であったのですが、初めだけは単刀直入ですが、うしろの方は、何を言っているかわからぬ、僕の理解力が足りないかもしれませんけれども最後まで、単刀直入でお答え願いたいわけです。
  168. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) お説のごとく、どうしても、これは明年度の予算につきましては、実行し得る力のあるものに作り上げるように努力いたしたいと存じます。
  169. 島清

    ○島清君 私は、今の日本のプラント輸出が、非常に期待通りいかないということは、日本の政策の貧困にあると思うのです。  と申し上げることは、こう大きな輸出をやりまする場合には、必ずといって、どこの国も、国策の線に非常に影響を受けるわけです。しかしながら日本の政策を見てみますというと、プラント輸出を非常に口だけは言いながら、各国の政策が、どういうものであるかということにマッチした輸出計画を持っていないのですね。ですから、かなりまとまりかけたものが、よそから持っていかれておるという事例がたくさんあるのですね。  たとえば、ちょっと忘れましたが、私たちが、南米旅行をいたしましたときに、アルゼンチンあたりで……、チリーですか、発電所を入札して、落札したところが、西ドイツにとられたのです。とられたのは、アルゼンチンが売りたいという品物を、それを売れ、おれのところで買ったというので、その品物を買つたのです。買って、そしてそちらの工事を請負っておる、こういう例があるのです。  そういう例から見ますと、外国あたりを回ってみまして、いかに日本貿易政策といいますか、何といいますか、それが、貧困であるかということがわかるのですから、私は、口先ばかりでプラントの輸出云々ということは、もちろんそれは戦争によって、世界市場を失って、そしてアフター・サービスをしなければならぬといったようなときに、設備も、これからしなければならないので、そういうところに欠ける面はあると思うのですよ、あると思うけれども、しかしながら、これは徐々に補っていかなければならないと思うのですが、少くとも今補わなければならぬことは——今すぐ補えることはその貿易政策と、その国の政策と結びついたプラント輸出考え方ですね、この三つが、私は寸分の間隙もないほどに結びつかなければ、プラント輸出の拡大発展ということは、そう期待できないじゃないかと思うのですがね。  それについては大臣どういうふうにお考えになりますか。
  170. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) ただいま御指摘の点は、私は、このプラント協会の問題と異なった意味において、最もそれは必要な点だと思っております。  とにかくプラントを輸出する以上は、その国の大きな国策ということが、まず考えられなければならぬ。それと同時に、それにマッチするようにいかなければならぬということは、当然やっていかなければならないと存じますが、同時にまた、その国の経済状態も考慮いたしまして、その国の経済に応ずるように支払条件、あるいはその国においてできるものを、すぐ買うとかいうような方法を講じていくということは、これは、輸出を増進いたします上において、最も必要な点だと痛感いたしております。
  171. 島清

    ○島清君 ただ、一つ心配な面が考えられますことは、わずかの掛金によって、そして、その危険は、国が補償するという形がとられると、非常にずさんな設備をするというような可能性が出てくるじゃないか。これはプラント輸出をいたしまする会社というのは、一流中の一流でございますから、そこまで人を疑えば、切りがないとも言い得ることですが、しかしながら保険をかけておりさえすれば、国の方で、それは補償するのだからといって、非常にずさんな設備になって、そこで、日本の信用というものを低めるというような反作用が起るのではないかというようなことも、非常に人を悪く解釈しますと、そういう心配の面もないでもないと思うのですが、そういう点については、どうなんでしような、大臣。
  172. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) まあ考え方によれば、そういう心配もなきにしもあらずでございますが、大体が、この保険に掛ける金額というものは、契約金額の二割程度しか掛けることはできぬのでありまして、二割のうち、もう七〇%は政府が補償するのでありますから、従いまして、これは大体政府が補償することは一四%でございますね、契約金額の。それが、大体限度になっておるわけでありますから、まあ、ある程度政府は、それを助成するということになりますから、やはりこれは、そのブラントを輸出した人の全体の大きな責任になるわけでございますから、そこまでは考える必要はないと存じておるわけでございます。
  173. 島清

    ○島清君 そうすると、せいぜい政府が、あれするのは一四%だと、大した金額ではないのだということですと、——そう大した金額じゃないのだということですと、そう大した金額でないものに、そうそうプラント輸出振興ということを期待することも、また非常に甘い気がするのですが、どうなんですか。
  174. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) まあ、いろいろ御議論がありましょうが、それくらいの程度が、ただいまのところはいいだろうと思っております。
  175. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 他に、御質疑もなければ、これをもって質疑を終り、討論に入ることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  176. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 御異議ないと認め、これより討論に入ります。——別に御発言もなければ、これより採決を行います。本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  177. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 全会一致と認めます。  よって本案は、全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。  本日、可決されました二案の議長に提出する報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願います。  本日は、これをもって散会いたします。    午後六時十二分散会