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国務大臣(
倉石忠雄君) ただいま御指摘のような点が非常に私
どもも苦心をいたしたところでありますが、当初
最低賃金制というものはぜひやりたいという
前提に立ちまして、先ほど申し上げましたような零細な
企業を営んでおられる
方々等についても
意見を聴取いたしたのであります。そういう場合に、御
承知のように、全国に地方に
商工会議所がありまして、その
会議所の中に小さな
零細企業の
経営者も参加いたしておられます。私
どもが調べてみますと、三人か五人使っておられる小さな
企業というものは、やはり、その御主人と働いておられる人が一緒になって働いておられる、全く渾然一体となって働いておられるのでありますが、その
人たちの集まりであるところに行って聞いてみますというと、なかなか今まで、だれしもそうでありますが、今までなかったものを、新しい制度を作るというときには、やはり若干の反対があるのはやむを得ないと思いますが、それでも、その小さな
零細企業の
経営者等は、いろいろな角度から私
どもに反対の
意見を述べられましたが、しかし、逆に考えてみますというと、やはり
最低賃金というふうなものが設けられて、そうして、従って、野放図な食うか食わないの境で働かせるというようなことよりも、少しずつでも上昇していくということになって、初めてそこに希望するようなよい労働力も集めることができる、こういう利益もありますし、それからまた、働いておる人々にも、それだけの気持に張り合いが出るのでありますから、やはり反面から見れば、かえって利益であるかもしれないというふうなことについても、だんだんと納得していただけるようになったと私は思っております。同時にまた、先ほど申し上げましたように、そういう
中小企業ことに
零細企業でも、そういう事業の
必要性が社会的にあるからして存在いたしておるのでありますから、
政治の面においては、そういう
企業というものをやはり維持育成していく必要がある。そこで、農林中金あるいは商工中金、
中小企業金融公庫等に対する投融資も逐次増額いたして参りまして、常岡さん御
承知のように、ただいま
中小企業が一番悩んでおるのは金融でございます。ことに、大
産業は正規の金融機関を通じて金融ができますけれ
ども、
零細企業の方ではそういう
わけにいきませんから、しばしば問題になりますように、正規の金融機関にあらざる、まあ町の金融機関のようなものから、比較的高利の金を借りてそうして事業を憎んでおる。もうすでにそこで、大きな
産業に負ける
一つの
理由がございます。従って、そういう面について、できるだけ
政府の施策として援助をするようにして、そうしてなおかつ
最低賃金というふうなものはやはりそれぞれの
立場で業者間協定をして、そうしてそれを
審議会の議を経て
法律化するというふうになって参りますというと、だんだん一カ所でそういうことが始まりますならば、その付近及び類似の
業種では、やはりそういうものをしなければ、よい働き手も集まってこないということになりますから、だんだんとこういうものがふえて参ります。そういうようなテンポはあるいは一律にすっと
法律できめるよりはおそいかもしれませんけれ
ども、一般経済界にそれだけ波風を立てずに、逐次われわれの期待している
最低賃金の制度というものが全国に普遍して参る、しかも労働基準監督署あるいは通商
産業省の出先機関等が、この
法律が
通りましたならば、業界に呼びかけて、なるべくすみやかに、実際にこういうものが全国に伸びて参りますように指導いたして参りますから、そういうふうにいたしましたならば、一部に心配しておられる経済上の財界の混乱というものもなくて済むのではないか、こういうような
立場で
政府の案を考え出した
わけであります。