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1959-03-26 第31回国会 参議院 外務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月二十六日(木曜日)    午前十時五十九分開会   ―――――――――――――   委員異動 三月二十四日委員笹森順造君及び苫米 地英俊君辞任につき、その補欠として 井上知治君及び林田正治君を議長にお いて指名した。 三月二十五日委員高橋進太郎君、木島 虎藏君、林田正治君及び井上知治君辞 任につき、その補欠として青柳秀夫 君、重宗雄三君、苫米地英俊君及び笹 森順造君を議長において指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     杉原 荒太君    理事            鶴見 祐輔君            苫米地英俊君            森 元治郎君    委員            青柳 秀夫君            鹿島守之助君            笹森 順造君            野村吉三郎君            加藤シヅエ君            羽生 三七君            石黒 忠篤君            佐藤 尚武君   国務大臣    外 務 大 臣 藤山愛一郎君   政府委員    外務政務次官  竹内 俊吉君    外務省アジア局    長       板垣  修君    外務省条約局長 高橋 通敏君   事務局側    常任委員会専門    員       渡辺 信雄君   説明員    外務大臣官房審    議官      小田部謙一君    外務省経済局次    長       高野 藤吉君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選関税及び貿易に関する一般協定の新  第三表(ブラジル譲許表)の作成  のための交渉に関する議定書締結  について承認を求めるの件(内閣提  出、衆議院送付) ○日本国カンボディアとの間の経済  及び技術協力協定締結について承  認を求めるの件(内閣提出衆議院  送付) ○日本国ユーゴースラヴィア連邦人  民共和国との間の通商航海条約の締  結について承認を求めるの件(内閣  提出衆議院送付)   ―――――――――――――
  2. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。昨日、高橋進太郎君及び木島虎藏君がそれぞれ委員を辞任され、その補欠として青柳秀夫君及び重宗雄三君が選任されました。   ━━━━━━━━━━━━━
  3. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) 次に、理事補欠互選についてお諮りいたします。一昨日理事苫米地英俊君が委員を辞任されましたので、理事に一名欠員を生じておりましたところ、昨日再び委員になられました。よって苫米地英俊君を理事に指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
  5. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) 関税及び貿易に関する一般協定の新第三表(ブラジル譲許表)の作成のための交渉に関する議定得締結について承認を求めるの件、  日本国カンボディアとの間の経済及び技術協力協定締結について承認を求めるの件、  日本国ユーゴースラヴィア連邦人民共和国との間の通商航海条約締結について承認を求めるの件、  以上三件を便宜一括して議題とし、前町に引き続き質疑を続行することといたします。この三件につきましては、昨二十五日衆議院から送付され、本付託になりましたので、念のため申し上げておきます。質疑のおありの方は順次御発言をお願いいたします。
  6. 石黒忠篤

    石黒忠篤君 質疑がなくてさびしいようですから伺ってみますが、カンボディアとの技術協定の一項目として、種畜場の設置ということが書いてありますが、熱帯における種畜場というものはむずかしいことだと私は思うのであります。ことに乳牛を新らしく作るといったようなこをインドもやっておりますし、米国も協力をしているなどで、なかなか長年にわたっての熱帯乳牛の作り出しといったようなことはむずかしい仕事であるのであります。これはカンボディアの方から要望をした項目でありますか、日本の方から出したのでありますか、その辺を伺ってみたいと思います。なお、種畜場のおもな目的は牛だろうと思うのですけれども、ほかのものもありますか、そういうことを承わってみたいと思います。
  7. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) お答えいたします。農業センター並びに種畜場の問題は、これはわが方からでなくて、カンホディアから日本の方にこういうような申し出がありまして、日本の方といたしましては、これは異議ないから受諾したのでございます。  それから二番目の問題は、一応この協定ができまして、今最後協定をやっておりますが、それができますと、実施の段階に至りまして、どういうものをどういうふうにやるかということを相談することになっておりますが、一応農林省が作りました案では、種畜場の内応は鳥及び豚を中心とする種畜とか、それから牛、この三つになっております。しかしこの問題は、実際に協定が発効いたしまして実施する際に、向うとあらためて細目を相談することになっております。
  8. 石黒忠篤

    石黒忠篤君 よく了解いたしました。私の質疑はこれで終ります。
  9. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 一つ簡単なことですけれども、この第三条の三項に「1の規定にかかわらず、第一条1に定める生産物及び役務の供与は、契約締結することなく行うことができる。」こうありますが、これはどういう必要からなのでございますか。また、その金額に制限があるかどうか。
  10. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) 農業センターとか種畜場とか、その他大きい企業の場合には、第三条の第一項に基いて両国で相談を進めるのでございますが、そのほかに小さい費目がございます。たとえば、結局日本から金を送ることになりまして、日本銀行カンボディアの特別の勘定というものが設けられることになりますので、その銀行手数料というようなものが大体ここに相当するものでございます。賠償国との協定の場合には、賠償ミッション滞日費用というものもこの中に入っているようでございます。カンボディアとの協定において、今のところ予想せられているものは銀行手数料という小額の金額でございます。
  11. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) 委員長から政府側に質問いたします。  ユーゴーとの通商航海条約について、先般提案理由説明があったのでありますが、それにさらに追加して、もう少し説明していただきたい。  それは第一は、従来の条約では実情に即しない点があるから新しい条約を作る必要があったのだという説明でありまするが、それを具体的にいえばどういう点であるかということ。  それから他の国との通商航海条約と類似の内容のものであるという説明がしてありますが、特に他の国のと比較して注意すべき点、あるいは異なった点があるとすれば、どういう点であるかということ。  それから第三には、このユーゴー日本との経済通商関係の現状はどうなっておるか、それをそうこまごましたことでもなくていいから、要領を説明していただきたい。
  12. 高野藤吉

    説明員高野藤吉君) お答え申し上げますり  第一点の、実情に適さないという点でございますが、これは今までの条約が大正十二年に結ばれて、しかもユーゴーがまだ共産主義をとつていなかった時代でございまして、その後、ユーゴー国内法上、法制が非常に変りましたので、たとえば財産の問題、会社、組合に関して共産主義的な法制をとりましたので、これを改正するというのが、大きな実情に即さなかった点でございます。  それから第二点の、通常まあほかの国と大体同じでございますが、特に特記すべき点は、普通の国でございますると、混在とか居住とか旅行において、最恵国及び内国民待遇をいたしまが、ユーゴー共産主義的な国内法上の関係において、内国民待遇は、身体保護難破船の救助、そういう点にしぼってあるわけで、従って、内国民待遇は非常に限定されておるという点でございます。  それから第三のユーゴーとの貿易の状況でございますが、これは実はあまり現在活発になっておりませんので、わが方の一方的出超でございまして、たとえば数字が少し古うございますが、一九五七年には約百五十万ドルこちらが出しております。それから一九五八年には四百五十万ドルというふうになって、しかもユーゴーから買うのは、水銀以外にあまり大きな物資がございません。現在ユーゴーから経済使節が来て、いろいろ通商条約ができた後にどういうふうに貿易を拡大するか、現在交渉を行なっておる次第でございます。そのほかプラント輸出が少し、それから造船の契約がございますが、こういう点につきましては、貿易外経済的な協定が着々進捗しておるような次第でございます。
  13. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) 他に御質疑はございませんか。
  14. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 このブラジルとの間の関税で、今後あそこのウジミナスの建設に関する何かこちらから売ったものに特恵はありませんか。ああいう製鉄とか建設に関して、何か今回の協定で便宜を得るもの……。
  15. 高野藤吉

    説明員高野藤吉君) 特別にございません。
  16. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 これは、この間ブラジル加藤参事官が行っておられましたね。その交渉の結果ですか。
  17. 高野藤吉

    説明員高野藤吉君) これは全然違ったものでございまして、今御審議を願っておりますものは、昨年二月からジュネーブへ加藤参事官が行っておりましたのは、これは貿易取引及び支払い取引の改定の問題で、今までオープンアカウントでいたしておりまして……。全然違う問題でございます。
  18. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 違う問題であるけれども、今ブラジルとの貿易が非常に困難ないろいろ事情がありますが、この協定ができますとね、ブラジル海外輸出あるいは輸入について相当な……。金額にしてどのくらいでありますか、一年間。
  19. 高野藤吉

    説明員高野藤吉君) ガットによりまして関税を互いに下げて、関税上の障壁は非常に少くなったのでございますが、一方ブラジルとの二国間の協定によりまして、今までのオープンアカウントを廃止いたしまして、キャッシュ・ベースで、しかも日本ブラジル物資を興って、それの見合いでブラジル日本の物を買うという協定に変りましたのですが、現在ブラジルからおもに買うのは綿花砂糖、コーヒー、そういうものでございますが、綿花今出回り向うが悪いので買えない、砂糖もなかなか買えない、日本向うの物を買うというのが、その後の相手国経済的な理由でちょっと行き悩みの状態でございます。しかし日本政府といたしましては、通産、大蔵、業界の御協力を得まして、できるだけこれを買い進めて、現に砂糖もある程度話が進んでおるのであります。大体貿易協定におきましては、片道三千五百万トルくらいは考えておりますが、結局綿花の出回り、砂糖の出回りいかんによってと、そういうことになっております。
  20. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 私たちが聞いているのは、あすこのブラジルにある商社が三十か何かいるが、取引が少くて、引き揚げて来ようかという寸前にある。何とかブラジルとの通商関係をもう少し大きくしようというのですが、何かそれに対して、この協定ではそれだけの効果がないなら、何か外務省で対策ございましょうか。これに関連して伺っておきたい。
  21. 高野藤吉

    説明員高野藤吉君) お説の通り現在ちょっと貿易がストップしておりますが、これは先ほど御説明申し上げましたように、綿花砂糖の出回りが悪い、はたまた去年、今年から急に貿易支払い協定が変りましたので、新しい事情が加わったということで、ちょっと中断しておりますが、今後政府といたしては、綿花をある程度割高でも買う、砂糖もほかの地域に比べてある程度割高でも、できるだけ買って貿易を伸張させていきたい。一方クレジットという問題もでございますが、これも政府といたしましては現在研究中の段階でございます。両々相持って今後ますます拡大発展してというふうに希望し、かつ努力をしたいと思っております。
  22. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 ありがとうございました。
  23. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) 他に御発言ざいませんか。他に御発言もございませんようですから、三件に関する質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) 御異議イないと認めます。  それではこれより三件の討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。別に御意見もないようでございますが、三件に対する討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  25. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) 御異議ないと認めます。それではこれより三件の採決に入ります。  関税及び貿易に関する一般協定の新第三表(ブラジル譲許表)の作成のための交渉に関する議定害締結について承認を求めるの件、  日本国カンボディアとの間の経済及び技術協力協定締結について承認を求めるの件、  日本国ユーゴースラヴィァ連邦人民共和国との間の通商航海条約締結について承認を求めるの件、  以上三件全部を問題に供します。  三件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  26. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) 全会一致でございます。よって三件は、全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました、  なお、三件の議長提出すべき報告書作成につきましては、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。   ━━━━━━━━━━━━━
  28. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) 次に、国際情勢等に関する調査議題とし、藤山外務大臣に対し質疑を行うことといたします。質疑のおありの方は順次御発言をお願いいたします。
  29. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 外務大臣にお伺い申し上げます。  私はカナダ日本から移住された方々の問題につきまして、この前、外務大臣が、お時間がなくてお帰りになったので、やむを得ず、外務当局からいろいろ手続上の問題その他につきましては御答弁をいただいておるのでございますけれども、なお政治的な問題として、外務大臣の御所見を、この際伺っておきたいと思うのでございます。  それは、カナダに移住された方々は、まあ人数から申しましても、合衆国の方に行った人々よりは大へんに少数であり、その勢力も大へんに微弱なもののように見受けられるのでございますけれども、あの戦争の始まりましたときに、せっかく作り上げました財産その他を接収されてしまった、あるいは売却されてしまった、これが戦後アメリカ合衆国におきましては、それぞれ取り上げられたものが返されたり、あるいは金銭によるそれぞれの補償を受けて、今日まあ非常に生活も安定しているというような状態であるということを聞いておりますけれども、同じような条件にあるのではないかと思われるカナダにおけるこうした人々待遇に対しては、カナダ政府が別にそういうようなことをしていない。そのために非常にまあ向うにいる人々は困っている、こういう問題に対しまして、カナダの二世の人々も、こういう問題をどういうふうに取り扱っていくかということについて十分にまだ動きが見られないわけでございます。こういう問題に対しまして、日本外務大臣としては、カナダ政府に対して、あるいは右日大使に対しまして、何らか口添えをされて、せめてアメリカ合衆国と同じようなことをしてもらいたいというような動きをおやりになるというようなお考えはないかどうか、その点をまず伺いたいと思います。
  30. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 非常にむずかしい問題だとは思います。カナダ国内の一つの問題にもなるわけだと思いますが、しかし、御指摘のような事情もないとは思わないのでありまして、そういう点について、実情によっては口添えをするというようなことはやるのが適当であるかとも思いますし、十分思量しました上で、検討いたしてみたいと思います。
  31. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 先だって当局から御答弁をいただきましたときに、まあこれは日本政府からカナダに対してとやかく言うことはできないけれども、やはり問題としては、カナダ国会がこうした動きを始めてくれるのでなければ、実際問題としてはできないという、こういう御答弁をいただいたわけでございます。それで、今この大へん苦労している財産なんか取られた一世の方たちが、幸い日本にこの間たくさん来られまして、これを機会カナダの二世の人たちが二世協会というようなものを作って、だんだん一緒になっていろいろな働きをしていきたいという、そういう機運を一つ作っております。それから五月ごろ日本で開かれます国際会議、これはMRAの国際会議でございますけれども、それに対しまして、カナダ国会議員方たちが相当多数議員団として、それを機会日本に来たい、カナダ政治家もまた一般方々も、私たち考えられないほど日本に対する認識が非常に足りないらしいのでございます。それで、カナダ国会議員が相当議員団のような形で、こういうような民間の国際会議出席をしたいという希望が漏らされておりますので、こういうような機会には、特に外務大臣としてもそうした人々にお会いになって、日本をよく理解してもらい、ことに今さっき私が提出いたしましたような問題を、外務大臣としても善処なさるのに非常にいい機会じゃないかと思うわけでございます。こういうようなことも、そういう今の計画に対しまして、外務大臣としてできるだけの機会を利用して、今の問題について善処していただきたいと私は思うんでございますが、いかがでございましょうか。
  32. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) まことにごもっともなお考えでありまして、われわれも今お話のような機会がありますれば、できるだけそういう機会をつかまえて、そうしてお話のような事情向う側の方にもよく伝えるということにして、できるだけやってみたいと思います。
  33. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 次に、防衛の問題につきまして外務大臣の御所見を少し伺いたいと思います。ただいま防衛の問題につきまして、いろいろの角度から予算委員会におきましても取り上げられまして、そしてあるいは外務大臣の御答弁をいろいろ承わっているのでございますが、なお私不十分だと思っております点につきまして少し伺いたいと思います。  それは、憲法七十三条の第三項にございます、内閣条約締結する権限は、条約内容憲法に抵触する内容を持たないものを締結することができると、こういうふうに私どもは理解しているのでございますけれども、これはその通りでございますか。
  34. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) その通りだと思います。
  35. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 そういたしますと、予算委員会でいろいろ御答弁がございました安保条約外国軍隊の駐留に関しまして、その外国軍隊日本基地を利用して外国を積極的に攻撃できるような兵器日本国内に持ち込むことができるような、そういうような御答弁がたびたびあったわけでございます。で、そういうような積極的に外国基地を、ある場合には攻撃ができるというような兵器を持ち込むというようなことは、それ自体憲法第九条に抵触するのではないかと思うのでございますけれども、その点はいかがなんでございましょう。
  36. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 憲法解釈につきましては、いろいろ議論があるところだと思いますし、またその議論というものは、各方面の討議の末に決定されていくものだと思います。私どもといたしましては、要するに、ただいまお話のありましたような、憲法違反にならないということを主にして、そうしてやって参るわけでありまして、外交折衝当事者自身が、当事者として自分だけ一個の考え憲法解釈をきめるわけにはむろんいかないと思います。従いまして、条約上においても、憲法の範囲内でやるということを規定しているということは当然のことだと思います。また、憲法精神に違反しないように条約締結することも、これまたむろん当然のことでございます。
  37. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 憲法精神に違反しないようにという、その限界はどういうところにあるのでございますか。たとえば自衛権の問題というものは、こっちから、ある場合には座して敵の侵略を黙視するには忍びないから、そういうときには、攻撃をしている基地に向って、こちらからも攻撃することがあり得るというような御答弁ですが、そういうようなこともその限界の中に含まれるのでございますか。
  38. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 個々の内容については、いずれ内閣がその決定をいたすわけでございます。それはいろいろな議論の末、あるいは衆参両院においても議論された上で決定を見ると思います。われわれとしては、その決定ということを主眼にしてむろんやることは当然だと思います。
  39. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 今までおやりになっていらっしゃったこと、あるいはやっていらっしゃることというのが、どうもいろいろの御答弁を総合いたしますと、いろいろの手続上の問題が手落ちがなければ憲法にも違反していないというふうに解釈をなさるように私どもには聞きとれるのでございますけれども手続上の問題が何にも手落ちがなければいいものなのか、それとも憲法の第九条にきめられた戦争をしないというような、そういう原則、そういうものの問題の根本精神というものに違反するかどうかということが問題になるのか、その点はどうなんでございますか。
  40. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 憲法精神あるいは解釈というものは、内閣全体がきめる問題であります。私、外務大臣として、交渉の当事昔として、手続上の問題がきめられた線に沿っていっておりますれば、交渉当時者としての、外務大臣としての責任は尽せるのではないか、こう考えております
  41. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 ただいまの御答弁を伺いますと、どうも私は非常に不満なんです。外務当局としては、手続しに不備がなければいいということで、それ以上の責任はおとりにならない――私は、外務大臣としてやはり根本精神というようなについても十分に考えていただいて、外務大臣としてもその精神をどういうところに置くかというような点について、強い確信をお持ちになった発言をしていただきたいと思うのでございます。
  42. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、外務大臣閣僚の一人でありますし、内閣解釈その他の決定をするときには、当然閣僚の一人としてその責任を分つことだと思います。同時に、条約締結の上における責任というものは、やはり条約上の手続その他憲法に違反しないようにやっていきますけれども条約交渉当事者としての外務大臣は全責任がそこにある。他の閣僚と違いまして、全責任がそこにあるということであります。
  43. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 それでは、外務大臣としては、今の予算委員会防衛庁長官その他からの御発言があったように、何かこちらから、ある場合には敵を攻撃するというようなこともあり得るというような、ああいう御発言対しては、それを支持していらっしゃいまりか
  44. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私、岸内閣閣僚として、同じ責任を分担しておると思います。
  45. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 私は、そういう解釈に対しては非常にどうも賛成いたしかねますけれども、私の質問はこれで終ります
  46. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 今のに関係して。自衛権というものについては、先だって高柳憲法調査会長が行ってきた報告を見ましても、憲法九条には自衛権は否定しておらないとマッカーサー元司令官が言っておったということでありまして、この自衛権を持っておるということは、私ら疑問がない思うのであります。  ただ、自衛という言葉の解釈が少しはっきりしておらない。自衛というのは、ただ外国侵略に対して抵抗するということでなくて、国の安全を守るということじゃないか、国の安全を守るということであったならば、守るために、国際情勢変化に伴っていろいろの変化が起るのは当然である。国際的に日本が脅威される度合いによって自衛力というものも推移していく、これは当然のことじゃないか。それから兵器も急速に進展していますので、自衛のために必要な兵器は持てる。私はこう解釈しておるのでございます。一体、防衛のための兵器か、攻撃のための兵器かという論争がだいぶありましたけれども、これは私はナンセンスだと思います。出刃ぼうちょう一つ例にとっても、これが防衛的なものか、凶器であるか、これはその出刃ぼうちょうの本質でなくて、使う人の気持、意思である、私はこう見るのであります。従って、大陸弾の弾頭をつけた兵器であっても、これが防衛のものであるか、攻撃用のものであるかということは、それを使う人の運営にあるのだ、これはイデオロギーの違う人は別な意見を持っていましょうけれども、アメリカでは決して予防戦争のためには使わない、他国を侵略するためには使わない、ただ国を守るために報復手段としては使うと言うておりますが、アメリカの現在の実情からいうて、私はこれは信用していいと思うのです。そこで私は、原爆や大陸弾弾頭というものは攻撃用のものであるというふうに定義を下すことはどうか、その使う人によって、国によって違う、私はこんなふうに考えておるので、防御用か攻撃用かというような論争は、全く意味のないことで、私は、そういう論争を続けても、イデオロギーが違えばどうも平行線で、出てこないと思うのでございます。そういうことよりは、内閣が、日本では核兵器を持たない、持ち込ませない、これで私は結論は出ているじゃないかと思うのであります。この論争がむやみに続いて、国民に、あたかも政府が一歩前進して、核兵器を採用するのだというようなふうに印象づけられてくると、相当慎重な態度を必要とするんじゃないかとは思うわけでありますが、私は、憲法上から、予算委員会議論を聞いておりますというと、原爆は攻撃用だ、だから憲法上違反だというような意見がありましたけれども、私は自衛権というものを認める以上は、憲法違反だとは考えないのであります。ただし日本政府では持たない、持ち込ませないと言っている。そこへ総理の発言された中に、敵が攻撃をしてきたときには、座して滅びることを待つわけにいかないから、敵を攻撃することもあり得ると言われたのですが、これも私ごもっともなことだと思います。この場合に、日本が原子兵器を打って敵の基地攻撃するとか、もしくは飛行機で持って行って攻撃するとかいうのでなくて、このときに安保条約がものを言うので、現在のアメリカでは中距離弾道弾を持っていますから、相当遠方からもそういうことができるし、軍艦からも、潜水艦からも、飛行機からもそういうことができるのですから、こういうものにたよる。自衛力日本だけではできない、これは日本だけじゃなくて、米ソでも、一国では国が守れないというのが現状であるのですから、安保条約というものは、何か自衛力限界をこえた自衛力プラス・エキスというような侵略的なもので、憲法に違反するというような議論もありますけれども自衛力というものは国を守る、安全を守るというところにあるのでございますから、日本の一国で日本が守れないならば、安保条約、さらに進んで国際連合による集団保障というところへ進んでいって、何も憲法違反だとは私は考えないのであります。ですからして、基地をたたくと言えば、すぐ日本がそれじゃ中距離弾道弾とか、弾道弾に使う兵器を用いるんだとか、核兵器をどうだとかいう議論に飛躍するということは、ちょっとおかしいので、そういうことができないから、日本の現在の立場として、徳義的に、人道的に、世界に向ってこの大量殺戮の兵器をやめさせようということが日本の念願でありますから、日本はそういうものは持たない、けれどもそういうものによって攻撃された場合には、一本を守らなきゃならないから、そのために安保条約というものができるんだと、これは補完的な要素である、こう考えるのであります。私は、安保条約日本自衛権を越えて自衛権プラス・エキスだというような議論は、どうも成立しないのじゃないか、こう考えるのでございますが、外務大臣は、安保条約というものは自衛権プラス・エキスとお考えになるか、自衛権の足りないところを補うだけとお考えになるか、これはお答えははっきりしていると思いますけれども、やっぱりはっきり大臣のお言葉によって国民に知らせることが必要なんじゃないか、私はこう考えておるのですが、いかがでございましょうか。
  47. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今度の安保条約締結に当りまして、われわれは憲法の範囲内でこれを締結するということは再々申し上げていることであります。従って、自衛権を逸脱して安保条約締結されることは日本の立場においてはございません。従って、その点は明瞭になっておると思います。
  48. 森元治郎

    ○森元治郎君 初めに魚をちょっと伺っておきます。その次に外務大臣の外交演説の中の一節の中立に関する件、終りに行政協定中心の安保条約、大体三つをお伺いしたいと思います。  最初の魚ですが、きのうモイセーエフ団長が記者会見して、従来の規制区域を若干広げ、魚をとる期間も幾らかゆるめる、これを概算すると漁獲量においても六、七万トンになりそうな、従来よりはやや日本にゆるいような案を出してきたんですが、交渉の経過を見ると、この前の経過で申し上げた通り日本の方は魚をとる二とばかり、総漁獲量にばかり頭がいってて、向うが堂々と押してくるあの科学的基礎、これに対して反駁の内容も努力も足りないように思うのです。ところで漁期もあと一カ月に追っているのですが、大よその交渉の見通し、現存のところの見通し、十六万五千トンという、あの量がとれるものかどうか、そういう大きい見通しをまず伺います。
  49. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ソ連が前回出しました案と変った案を新しく出してきましたのは御承知の通りでございます。むろんこれは今御指摘のありましたように、科学的知識と申しますか、科学的調査の結果、あるいは過去の経験等から見ます結論というようなものを、委員会の席上で堂々と論議をした結果が出てきておるんでありまして、先般来政治折衝に早く進めという御議論も一部にはあったわけです。今、森委員の御指摘のように、委員会の席上でこういう事実に基いた議論をもうしばらくした方がいいだろうということで、こちらはしておるわけです。その結果がそういうところにきたので、決して科学的調査による結果に基く議論をないがしろにしているわけじゃない。ただ問題が非常に科学的調査に基礎を置いたりしますから、派手な問題ではないのでありまして、従って政治折衝というような面よりも、何か世間に映る程度が、派手には映らないと思いますけれども、決してそういう努力を怠っておるわけではありませんし、またその努力の結果が、まだ政治折衡をしない前にああいう訂正をしてきたということになっておるんだと思います。従って、今後もできるだけソ連側のそうした根拠になっております調査等について、日本側の調査に基いた反駁を、学術的にも、あるいは調査結果、あるいは経験等から、反駁をいたして、できるだけその点を、問題を詰めていくことが必要だと思います。ただ、お話のように漁期等も迫っておりますので、それらの問題についての意見も相当畳みかけて向う側に持って参らなければならないことは事実であります。そういう点に最大の努力をいたして、そうして一日も早く、できれば政治的な解決などということでなしに、そういう面からして解決ができるように努力していくつもりでまだやつておるわけであります。その点を御了承いただきたいと思います。
  50. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) ちょっと委員長から申し上げておきますが、外務大臣はきょうケーシー外務大臣との午餐のお約束がございますので、それだけちょっと申し上げておきます。
  51. 森元治郎

    ○森元治郎君 時間は……。
  52. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) 十二時ごろまで。
  53. 森元治郎

    ○森元治郎君 そういうことは最初から言ってくれなくちゃ。午餐は今きまったわけじゃないでしょうから。外交官の杉原委員長とも思えない御先言です。もう少し早く言ってもらいたい。それじゃ詰めなきゃならない。  十六万五千トンというのは、自信をもってとれる数とお考えかどうか。私は魚は昔からいろいろな関係で知っておるのですが、どうもソビエトの方では十六万五千トンなんというものは頭にさっぱり強く入っていないので、八万トンあたりのところを日本がねらっているのじゃないかぐらいの読みをしておるというふうに感ずる。読まれるということは、それだけこっちに弱みがあると思われるので、けさの新聞なんか見た印象では、どうも少しふえてきた、自分の方へ近づいてきた、――決して十六万五千トンに近づいたという意味じゃないのですよ、近づいてきたというふうな印象にとられるのですが、十六万五千トンをあくまでもがんばる、またがんばる理由が十分あると思いますか。また公海自由の原則と、それからただ魚がいるというだけの議論で押し通せるものと思うか、その点を。
  54. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私どももあまり漁業の知識はございませんが、この点については、農林省等の御意見等も十六万五千トンというのは適当であり、またこれを主張することが、決して日本がむだな主張をしておるのではないということを言っておられますので、専門的にはそれが適当な案ではないかということを信じて、われわれもせっかく努力いたしておるわけでございます。
  55. 森元治郎

    ○森元治郎君 まあめどとしては、四月の中旬くらいには総漁獲量でも結論が出るように持っていかなければならぬと思いますが、その辺に出ると思いますが、どの辺を目途とされておるか。
  56. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 漁期は五月から始まることになろうと思うので、なるべく早いことがいいと思います。昨年は四の二十日でしたか二十一日でしたかにほぼ決定したようなことでありまして、まあおそくもその辺ぐらいまでには何とか目鼻をつけて参らなければいけないのではないかということは、むろんわれわれとして目標を置いてやっておるわけでございます。
  57. 森元治郎

    ○森元治郎君 それでは中立問題をちょっと一言伺いますが、外務大臣の外交方針演説を読んだことから感じたのですが、お尋ねする機会がなかったので……。どうもこれを見ると、「わが国の中立を唱え、あるいは集団的不可侵条約締結によってわが国の安全を保障すべしとの意見は、いずれも今日の世界の情勢を無視する観念論」だというこのくだりなんですが、このくだりをよく読んでみて、はっとする印象は、一体自由主義陣営とソ連圏と戦争状態に入った場合、日本は直ちに民主陣営に参加する、まん中に立っていないのだというような印象をこれから受けるのです。ということは、この中立という文字を、岸総理大臣が中立主義というふうに非常に注意して、ニュートラル・ポリシーとこっちに書いてあります。大臣の方は、中立と書いてあります。この中立というのは、まあ専門家でしょうが、戦争を前提としたものであって、戦争に参加しない国の、交戦国に対する地位であるということは、国際法的にいえばそうなるのです。いかにもこれを見ると、国際法的に解釈すれば、言葉の行き過ぎじゃないか、調子が。やはりこれは中立主義というふうな文字であるならばわかるけれども、この文面だけでは、日本は直ちに民主陣営に参加する、決してニュートラルでないのだという感じを受けるのですが、これをお作りになったときの感じはどうですか。
  58. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 作りましたときの感じは、何も法律的ないろいろな問題を考えたわけではないのでありまして、中立主義なり、中立国なりあるいは今お話のような中立とか、いろいろな意味でまあ中立という言葉が使われております。その総括的な意味において使っておったわけであります。
  59. 森元治郎

    ○森元治郎君 やはりこれはいわゆる中立というふうでないと、およそ外務大臣の演説としては、英文で見ても、少しこれは外務省手抜かりであったと思うのです。  続いて安保条約に移りますが、防衛義務を明確にするというのですが、一体どういう表現をとられるのか、お示しを願いたいと思います。
  60. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 表現の字句の問題につきましては、これから折衝をすることでありまして、最終的にどういう字句をとるかということは、まだ折衝の結果でないとわからぬことになると思います。が、しかしながら、少くも精神としては、日本防衛の義務を持ってもらうということが通りますように書いて参りたい、こう考えております。
  61. 森元治郎

    ○森元治郎君 もう一ぺん、日本の……。
  62. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本防衛に対するアメリカが義務を持つようなことを考えて、そうしてそれが通りますように書いて参りたい、こう思っております。
  63. 森元治郎

    ○森元治郎君 これはアメリカとフィリピン、アンザス、国民政府、あるいはSEATOなどに出てくるこういう表現がおそらく適用されるのじゃないかと思うのです。「自国の憲法上の手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」こういうことを、アメリカがこれらの国々と結んだ経過から見て、日本にもこの表現が適用されると私は思うのですが、どうでしょうか。
  64. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん各方面との条約が非常に参考になりますこと当然であります。ただ、最終的にそのままの表現になりますかどうかは、ちょっと今申し上げかねるのであります。
  65. 森元治郎

    ○森元治郎君 しかし、アメリカも同じ種類のヴァンデンバーグの決議の趣旨にのっとった防衛協定を結ぶ場合には、およそこの辺で、あるということは、もう判で押したようにもう文章ができているので、おそらくこうなると思うのです。そこで、この行動する――アクトということになっておりまするが、大臣は、この行動する――アクトをどういうふうに御解釈になるのか。
  66. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 非常にむずかしいので、条約局長から。
  67. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) たとえば、御指摘の米韓、米比が、「共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」とございます。ただ、これがどういうふうな具体的な意味合いを持ちますか、私、これは米比、米韓のことでありますので、正確にはただいま申し上げる権限はないのでございますが、おそらくこういうような武力攻撃を受けました場合に、憲法上の手続に従いまして、やはり武力を用いてこれを反撃するのであるということを、この行動の最も主たる内容とする宣言であろうと思います。
  68. 森元治郎

    ○森元治郎君 それではもう一つ、NATOの方の第五条ですか、同じくこの防衛義務のことでありますが、北大西洋条約の方では、もっと強い内容に――援助の内容が強くなっております表現がありますが、この表現は、日本の場合に用いる場合に、適当とお考えになるか。あるいは前に申し上げたフィリピンその他を結んだ、この「共通の危険に対処するように行動する」という方が、日本の防御協定に適当と、思いますか。
  69. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) ただいま御指摘の知りNATOとそれから米比、米韓の条約とでは、多少と申しますか、表現の方法としては異なっているのでございます。ただ、私どもとしましては、この両条約も実体的には――結局主要な目的の実体は同じである。ただこのように表現の方法が変りましたのは、むしろアメリカの国内法上の、アメリカの国会の審議の結果、このように、「共通の危険に対処する」というふうにあとで変ってきた。と申しますのは、アメリカの宣戦布告の権限は、アメリカの上院に属すること御承知の通りでございます。従いまして、それらの関係もありますので、一方に対する武力攻撃を他方に対する武力攻撃と自動的に認めるということは、多少アメリカ自身として国内関係上はばかりがあるというような関係で、表現の方法が変ってきたのではないかと、こういうふうに考えます。
  70. 森元治郎

    ○森元治郎君 従って日本の場合も、アメリカの国会関係、宣戦布告は上院の権限だという関係から、日本と結ぶ場合の形式というものは、さっき申し上げたフィリピン、国民政府、この形式がとり得る一ぱいの形式じゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  71. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) その辺の点になりますと、この条約内容とか実体的な問題になりますので、これはやはり交渉その他の結果いかんにかかっておりますので、私から申し上げかねます。
  72. 森元治郎

    ○森元治郎君 大臣にお伺いします。が、軍備を持っておる国々、いわゆる日本のような複雑怪奇な占領軍などが存在していないいわゆる常識的平価を持っている国々と条約においては、「対処するために行動することを宣言する」こともいいかもしれないが、日本は御承知のように非常にひよわい、まだ軍隊でもないという場に、こういう形式で十分とお考えになりますか。これで日本防衛義務の明確化ができたのだというふうに大臣お考えになるかどうか。
  73. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) まあアメリカが防御の義務を負いますという精神からいいますれば、表現のいかんにかかわらず、その精神を通して参ることはごく当然のことだと思うのであります。ただ、今指摘のようないろいろな法律関係になりますと、今すぐに私もお答えしにくいと思いますので、われわれとしては最善の注意を払ってこういう問題について今後交渉の過程において検討して参りたいと思います。
  74. 森元治郎

    ○森元治郎君 あと少しですから、もう一段突っ込んでお伺いしますが、もうこの交渉は前からやっておるのだし、改定の主眼点が、アメリカの防衛義務を明確化するというものが重点のように大臣はおっしゃっておったので、当然この問題は御研究になっていると思うのですが、きまっているが言えないのか、まだ何にも――何にもは少し語弊がありますが、まだ固まっていないのか、その点をお答え願いたい。
  75. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろんこういう交渉でございますから、字句上の問題についても二、三のいろいろな考え方を打っております。しかし、最終的にいろいろやってみませんければ、どういう表現をとっていくのが一番適確であるかということは、アメリカ側との折衝にもあるわけでございます。特に字句を必ずこれにというふうに一つだけにきめておるわけではございません。
  76. 森元治郎

    ○森元治郎君 それじゃ行政協定の方に話を持っていきます。どうも宴会に出られぬというのでは困るのですっ飛ばしますが、大臣の御答弁の意味から記者会見では二十四、五条のほかに、現実に問題になっているのはその規定そのものよりも運用に関するものがあると考えるので、これを考慮しつつ可能な範囲で適切な方法をとりたい、要するに規定を変えるよりは運用でまかなえる面が多いのじゃないかというのが行政協定全面改定論に対する大臣の御所見と思うのですが、その通りですか。
  77. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 行政協定につきましては、よく全面改定と言われておりますのですが、現行の行政協定自体も必ずしも改正をしなければ見劣っておる部面があるのだというところでない部面もございます。それから今申し上げましたように、実体は同じでありますけれども、表以上異なっておるという部面もございます。また天体は適当であるのだけれども、その運営に当って必ずしも両国の間で適切な処理がとられておらぬために、何か行う行政協定そのものの実体が不適当であるような感じを与えておる問題もあると思います。そうした問題をずっと拾い上げてみますると、そう大きく全面的にというような言葉で改正するという点は、そうないように私ども考えておるのでありまして、現在の行政協定自体が、いわゆる全面的改定、各条も全文変えなければならぬほどの見劣りのすると申しますか、あるいは自主性のないというものでもないように思いますので、そういう意味で私も申しておるわけであります。
  78. 森元治郎

    ○森元治郎君 そこで、問題になりそうなものをおあげ願いたいと思います。これを第何条、第何条、第何条とたくさんありますが、条約局長でもけっこうですが、削除する、大幅に改定するようなものもあればそれをあげてもらいたいと思います。たとえば十二条とかあるいは十四条、十七条などというものはそういう条項に入ると思うのですが、削除する、あるいは大幅に改定するものと、運用で気をつけなければならぬという条項をお示し願いたい。
  79. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 行政協定中二十四条は、これは削除するのが本条約の規定の精神にかなって参りまするし、削除するのが適当ではないかと現在考えております。また二十九条(b)につきましては、これはやはり削除されるべきではないかということで、交渉に当ってそれを持ち出してみたい。その他の点につきましては、特に全面的に削除する必要があるかどうかということは、私ども若干疑問をまだ持っております。必ずも削除をしないでも、字句上の修正その他で必要な点もあろうかと思うのであります。今直ちにどれとどれとを削除するという結論までは注しておりません。
  80. 森元治郎

    ○森元治郎君 それでは条約局長でもけっこうですが、十二条第五項、「労働者の権利は、日本国の法令の定めるところによらなければならない。」とありますが、これもアメリカ軍の協力がなくては、実際の効力はない。たとえば不当労働行為などはこれに入ると思う。これなどは一体改定するかどうするのか。あるいは運用の点で手を加えていこうという条項に入るのか入らないのか。それから第十四条はどうか。十七条の刑事裁判権はなるほどNATO並みに改組されましたが、これはいろいろアメリカ兵の犯罪に対して刑が甘かったり、起訴猶予が多かったり、いろいろ問題が出ておると思う。また十二条の物資調達、アメリカ軍と業者との直接契約となっておるが、アメリカ軍はどうも勝手気ままで業者を泣かせておる。これは間接調達――政府が中に入って間接調達にしてくれということは前から言われておる条項です。そうしてまた、ことに紛争が起ったときには、契約者は十八条の七によって民事の訴えを起してもいいということになっておるが 実際の問題としてはどこの裁判所へ持ち出していいのか、解決が行方不明になってしまっておるというようなこと、これなども問題になるのじゃないかと思います。  もう一点は、例の岡崎・ラクス交換公文ですが、行政施設とか区域、つまり基地というものは、日本が同意しなければ設定されないということになっておるが、その例外として、占領中アメリカ軍か使っていた基地について提供の取りきめができない場合には、アメリカ軍引き続きそれを使ってもいいというふうになっております。この点なども、だんだん時がたつにつれて、問題の基地が少くなってきている。今やこの交換公文の存在が消滅してもいいのじゃないかというような時期にきたと思うのですが、これらの点について御返事を願います。
  81. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) ただいま御指摘の各条でございますが、たとえば十二条、十四条、十七条、十八条という各条項並びに岡崎・ラスクというような交換公文その他の点でありますが、なかんずく十二条その他の問題が非常に問題点があるということは、われわれ事務当局も十分理解しているところでございます。ただ、これを現在それじゃどういうふうに改むべきかどうか、改むとすればどういうふうに改めるかということは、まだ今検討の最中でもございますし、現在私としてはちょっと申し上げかねる次第でございます。また岡崎・ラスクという交換公文の問題も、これは実際的に解決すればそれによってこの交換公文自体も問題なくなってくるというふうに考えます。
  82. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今御指摘のありましたように、たとえば刑事裁判権の問題でも、森委員お話のように刑雇いとか、そういう問題は、これは日本の裁判上の問題でありまして、行政協定の問題じゃないのでありまして、これらの問題は、行政協定を見ておりますとあるわけでありまして、そういう点について、やはりいろいろな国民感情が出ていて、何か行政協定自体が悪いような印象を与えるのでございますけれども、そういう面でも裁判権の内容の問題等については、どうもわれわれ条約上タッチするわけに参らない点が多いわけであります。たとえば先ほどお話がありましたような保安解雇のような問題につきましても、たとえば労働者の待遇というのは日本法制によるということ以上には、実は規定の上では書けないと思います。ただ、そうした取扱いについて従来御懸念ありましたのは、その運営が円満にいかなかったという点にあるわけであります。そういう問題は、私ども今度行政協定を扱ってみまして十分はっきりしてきましたので、やはり行政協定そのものは改定しないまでも、また改定は必要のない場合が多いと思うのでございますが、そういう点については、やはり一方の解釈を定めておくなり、あるいは日本国内の各省関係解釈というものも一定しておくごとによりまして、協定そのものを、直さなくても、運営をうまくしていけば、国民感情を刺激するようなことはないようにいける、のではないか、こういうふうに私ども考えておるのであります。
  83. 森元治郎

    ○森元治郎君 では最後に、これで終りますが、一つ。それでは見通しとして、国会も来月からまた地方選挙でざわざわしてしまうので承わっておきたいのですが、大臣は少しぐらいの、少数の反対者を押し切っても藤山構想を実現していくと、そこで選挙前に大体日米間の条約案文ドラフトを作って、参議院選挙後に調印をして、秋の脇町国会ででもこの承認を求める、こういう御方針ですか、またそういくと確信をされておりますか。
  84. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 交渉当事者としての私は、昨年から交渉が始まったような関係の問題でもございますが、できるだけ早い機会にこれを調印まで持っていきたいということは当然のことでありまして、ただそのことが参議院の選挙とか何とかいうことには少しも関係はいたしておりません。できるだけ早い機会に一つ調印まで持っていきたい、こういうふうに考えております。ただ二国間の交渉で、いよいよ最終的な交渉をいたすことでありますから、アメリカ側に対しても相当字句上の問題その他についても、ただいま御議論もありましたように、いろいろな検討しなければならぬ問題もありますから、いつまでにできるとは申し上げかねます。ただ、おそらく国会等の御承認をお願いいたしますのは、秋の臨時国会が開かれますれば、その時期になろうか思っております。
  85. 森元治郎

    ○森元治郎君 仮調印という、いわゆるそういう説をなすものがありますが、これは両方一諸にドンピシャリ、ワンス・フォア・オールでいくんだ、こういうことでありますか。
  86. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 仮調印と本調印とには若干の時間のズレがありますことは、普通の簡単な条約をいたす場合でも多くあるわけでありまして、仮調印をしないで本条約調印というふうに、ドンピシャリでいくようなふうには、なかなかこれはいかないんじゃないかと、そう思っております。
  87. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) 委員長から政府側に一言いたします。先ほど森委員の質問に対する高橋条約局長の答弁の中に、アメリカの宣戦布告権とアメリカ上院との関係の点の発言がありましたが、その発言が精密を欠き修正を要するものがあれば、その点明かにしておかれたい。
  88. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) 宣戦布告の権限は上院にもちろんあると私は考えております。ただ宣誓布告が上院にありますから、宣戦布告以外には軍隊を動かすことができないかというと、そうではなくて、やはり大統領の権限で武力攻撃ですか、そういう場合にも起すことがある。また、実際そういう事例があったということだけを補足させていただきます。
  89. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 先ほど質問いたしましたが、カナダの問題、それに関係いたしまして、カナダにおいて実際接収されました財産というものは、その天体がどんなものであって、どんなふうになっているかということと、それからそれの参考のために北米合衆国の方の同様な問題に対してはどんなふうに取り扱われていたかというようなことに関しての資料をいただきたいのでございます。
  90. 竹内俊吉

    政府委員(竹内俊吉君) ただいま加藤委員からおっしゃった資料は、極力取りそろえまして、次の機会までに提出いたします。
  91. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) 本日は、これにて散開いたします。    午後零時十八分散会    ―――――・―――――