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1959-02-10 第31回国会 参議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月十日(火曜日)    午前十時三十二分開会   —————————————   委員異動 十二月十九日委員杉原荒太辞任につ き、その補欠として梶原茂嘉君を議長 において指名した。 十二月二十日委員梶原茂嘉辞任につ き、その補欠として杉原荒太君を議長 において指名した。 十二月二十八日委員寺本広作公職選 挙法第九十条により退職者となった。 二月二日委員安部清美辞任につき、 その補欠として高良とみ君を議長にお いて指名した。   委員長異動 一月二十八日青柳秀夫委員長辞任に つき、その補欠として杉原荒太君を議 院において委員長に選任した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     杉原 荒太君    理事            井上 清一君            鶴見 祐輔君            苫米地英俊君            森 元治郎君    委員            青柳 秀夫君            笹森 順造君            津島 壽一君            岡田 宗司君            加藤シヅエ君            佐多 忠隆君            曾祢  益君            羽生 三七君            石黒 忠篤君            高良 とみ君   国務大臣    外 務 大 臣 藤山愛一郎君   政府委員    外務政務次官  竹内 俊吉君   外務大臣官房長  内田 藤雄君    外務省アジア局    長       板垣  修君    外務省アメリカ    局長      森  治樹君    外務省経済局長    事務代理    高野 藤吉君    外務省条約局長 高橋 通敏君    外務省国際連合    局長      宮崎  章君   事務局側    常任委員会専門    員       渡辺 信雄君   —————————————   本日の会議に付した案件通商に関する日本国ハイティ共和  国との間の協定締結について承認  を求めるの件(内閣提出) ○在外公館名称及び位置を定める法  律等の一部を改正する法律案内閣  送付予備審査) ○日本国アメリカ合衆国との間の小  包郵便約定締結について承認を求  めるの件(内閣送付予備審査) ○国際情勢等に関する調査の件  (国際情勢に関する件)   —————————————
  2. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) ただいまから外務委員会を開催いたします。  まず、委員異動について報告いたします。本月二日に安部清美君が委員辞任され、その補欠として高良とみ君が選任されました。   —————————————
  3. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) 次に、通商に関する日本国ハイティ共和国との間の協定締結について承認を求めるの件(本院先議)  在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案予備審査)  日本国アメリカ合衆国との間の小包郵便物約定締結について承認を求めるの件(予備審査)  以上三案件を便宜一括して議題とし、政府より提案理由説明を聴取いたします。
  4. 竹内俊吉

    政府委員竹内俊吉君) ただいま議題となりました三件について提案理由を申し上げます。  まず、通商に関する日本国ハイティ共和国との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  ハイティ共和国は、戦前わが国繊維製品の好市場であって、わが国から年間平均八十万ドル程度の輸出が行われた時期がありましたが、一九三五年ハイティ共和国政府は、貿易上の求償主義に基いて日本産品最高税率適用し、戦後においてもガット第三十五条を援用して同税率適用を継続して参りました。このため、戦後における同国との貿易は、わが国輸入するハイティ糖等輸入額に比較して、わが国同国への輸出はきわめて低調であって、昭和三十一年においてはわが国輸出十万九千ドル、輸入百七万四千ドル、昭和三十二年においては輸出五万二千ドル、輸入九十万二千ドルという、わが国の著しい入超状況でございました。  政府といたしましては、昭和三十三年二月同国駐在公使を兼任する在米朝海大使信任状提出のため同国に派遣しました際、同国大統領、外相、商工相等に対し、日本ハイティ間の通商関係発展双方にとり有利かつ緊要なるゆえんを説かしめますとともに、その前提として、ガット第三十五条の援用撤回が要望される旨を強調せしめるところがありました。  このような状態の折から、同年十一月中旬に至りハイティ共和国政府より在米朝海大使を通じ、通商協定締結交渉を行うため、ジャン・ダヴィッド同国上院財政委員長政府代表として派遣したい旨の提案がありましたので、これに対し、わが方としてもこの機会をとらえ、同国通商協定締結することを得策と考え東京において同作表との間に三週間にわたって交渉を行いました。その結果、双方の合意を見るに至りましたので、昭和三十三年十二月十七日東京において藤山外務大臣ダヴィッド代表との間で協定に署名を行なった次第でございます。  この協定の骨子は、関税及び輸出入貨物に対する内国税並びに輸出入規制等に関して最恵国待遇を許与し、また船舶に関しても内国民及び最恵国待遇を許与すること等にあります。なおこの協定は、批准書交換の日から三年間効力を有することになっており、その後も三カ月の予告をもってこれを終了せしめない限り効力を存続することになっております。  今次協定は、関税及び輸出入制限限について最恵国待遇を確保しておりますので、今後わが方の対ハイティ輸出は著しく増進するものと期待され、またこの協定により、第三十五条援用撤回にも等しい実質的効果を期待し得る次第であります。  よってこの協定批准について御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上、本件につき、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。  次に、在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案提案理由を御説明申し上げます。  まず、在外公館新設につきまして申し上げますと、外務省といたしましては、昭和三十四年度におきまして、ハンガリー公使館を、ブラジルのポルト・アレグレに総領事館を、アメリカ合衆国ヒューストン領事館新設したい考えであります。  第一にハンガリー公使館新設したい理由といたしましては、同国とは戦前相互公使を交換しており、第二次大戦においては、わが国同盟国であり、ソ連軍の占領後、外交関係が杜絶し今日に至っておりますが、同国は、対日感情が伝統的に良好であり、外交関係の再開を切望しておりますので、この際、相互公使館を開設して外交関係を復活することは有意義であると考えられるのであります。  第二にボルト・アレグレに総領事館新設したい理由といたしましては、同地は、ブラジル第五の都市であって、ブラジル南部のリオ・グランデ・ド・スール州の首府であるのみならず、わが国対伯輸出の重要な仕向け地一つであるとともに、わが海外移住の好適地でもありますので、市場調査貿易及び企業進出のあっせん、移住促進等のため、ここに総領事館を開設し、右諸事務処理に当らせたいのであります。  第三にヒューストン領事館新設したい理由でありますが、米国南部諸州は、最近特にその経済発展が目ざましいものがあり、輸出市場として重要性を増しつつありますが、この地方は、日本繊維等に対する輸入制限運動の激しい所でありますので、ニュー・オルリンズ領事館とともに広範な南部十一州を分担管轄する在ヒューストン領事館新設し、同地域との貿易促進に資したいと思います。  次に公使館昇格でありますが、過去数年来、外国が交換している外交機関は、段々公使館から大使館に切りかえられていくことが国際的な趨勢となっておりまして、イラク、レバノンにある各国公使館も逐次大使館に切りかえられつつあります。わが方といたしましても、これにおくれることなく、この際、大使館に切りかえ、外交上有利な地歩を確保したいと考えております。また、ポルトガルは、昨年十月すでに同国在京公使館大使館に切りかえた次第もありますので、この際、右三公使館大使館昇格せしめたいのであります。  更にニュー・オルリンズ領事館及びカサブランカ領事館における館務は、最近特に重要性を増して参りましたことに伴い、右二館を総領事館昇格いたしたいと思います。  このような在外公館新設及び昇格を行うための法的措置といたしまして、在外公館名称及び位置を定める法律の一部の改正を行い、また、それに従いまして、在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律にも改正を加える必要がありますので、ここに、右二法律の一部改正をうたった本法律案を提出する次第であります。  以上をもちまして、本法律案提案理由説明を終ります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御採択あられんことをお願いいたします。  最後に、日本国アメリカ合衆国との間の小包郵便約定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  日本国米国との間の小包郵便物交換業務に関しましては、戦前昭和十三年の約定によって規制されて参りましたが、戦後も、米国政府は、サン・フランシスコ平和条約第七条の規定に基いて、この約定の復活を通告して参りましたので、現在この戦前約定両国間に適用されております。しかし、この戦前約定は、昭和十三年以来一度の修正も行われておらないため、現状に適するよう改訂の必要がありましたので、政府といたしましては、新約定締結の希望を米国側に申し入れ、以来交渉を続けて参りました結果、先般、両国間に意見の一致を見ましたので、この約定作成され、わが国は、昨年十月二日に東京で署名し、米国側も十一月三日にワシントンで署名いたしました。  この約定は、小包交換に関する条件、小包の料金に関する事項価格表記小包に関する取扱、転送小包、誤送小包等についての処理手続航空小包に関する事項、事故の場合の損害賠償等について、現在の状況に適した規定内容としております。従いまして、この約定締結することにより、日米両国間の郵便小包交換業務は改善され、一そう円滑に行われることとなります。  よって、慎重御審議の上、なるべくすみやかに御承認あらんことを希望いたす次第であります。
  5. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) ただいま説明を聴取いたしました三案件質疑は後日に譲ります。  ただここで委員長から一言申しておきたいと思うのですが、ただいまの提案理由説明の中に、ハイティとの協定最後のところに「よってこの協定批准について御承認を求める次第であります。」こう書いてありまするが、この点は政府でなお一つよく研究されて、統一したものにされるよう注意しておきます。   ━━━━━━━━━━━━━
  6. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) 次に、国際情勢勢等に関する調査議題とし、藤山外務大臣に対し質疑を行うことといたします。質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  7. 岡田宗司

    岡田宗司君 藤山外務大臣に、まず日米安全保障条約改定交渉の問題についてお伺いいたします。外務大臣は、方々講演会あるいは国会においても、この安全保障条約改定交渉をすみやかに行なって、三月中には調印をしたい、こういうようにお話しになっておるようでございますけれども、三月中というともう間もなくでございますが、間もなく交渉を開始せられる予定であるか、またその交渉を開始されるならば、外務大臣が期待しておるように、すみやかに交渉がまとまって、三月中に調印ができる運びになる確信をお持ちになっておるのかどうか、まずそこからお伺いいたします。
  8. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 安保条約改定交渉は、初めの私の心づもりとしましては、一月の二十日前後くらいに調印運びにしたいという考え方で進めたわけでございますが、諸般の事情のために、約二カ月ほどおくれてきたわけでございます。そういうようなことでありますので、私としては大体三月末もしくは四月を目標にして努力をしていく。むろん相手国のあることでありますし、あるいは条約文作成等字句等の問題でもいろいろ議論する場合もありますから、必ずそこにできるとは申し上げかねますけれども、しかし、目標としてはそういう目標を立てて努力したい、こういうふうに考えております。
  9. 岡田宗司

    岡田宗司君 目標は三月、こういうことでございますが、懇談会等お話ですと、かなり三月中に調印のできる確信をお持ちのようですが、ほんとう確信をお持ちになっておるのでございますか。そこをお伺いしたい。
  10. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私としましては、逐次問題のあるような点につきまして、正式交渉は若干おくれておりますけれども事務的ないろいろな連絡もしております。そういうような関係等もありまして、確信とまでは申し上げかねるかもしれませんが、そこに目標を置いてやれば、かなりその前後にできるように進められるのじゃないかという心持でやっております。
  11. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいまのお話ですと、マッカーサー大使との正式の交渉は中断されて以後行なっていない。しかし、事務的な交渉は行なっておる、こういうことですが、この事務的交渉において、両方において相当意見が合致したというふうに見られるので、それに基いて二月中には調印ができるであろう、そういうふうにおっしゃられておるのですか。
  12. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 必ずしも本質的に意見が合致しておるというのではありませんけれども条約作成のときにいろいろ使います字句等については、相当事務的に検討しておりますので、最終的に内容がきまってから字句等の検討に入るというようなことができるだけ避けられるように、そういうような点については、あとう限りいろいろな角度から検討させておりますので、本質的な問題がきまってきますと、そうむずかしい問題ではないのじゃないかというのが私どもの方の感触でありますけれども、むずかしくないというか、そう時間をとらなくてもいけるのじゃないかということでございますが、しかし、むろん交渉のことでありますので、相手の方の事情もあります。あるいは相手がさらに日本側意向を受けて最終的に意思決定をいたします時間的余裕を見なければなりませんので、必ずしも三月末、四月初めということは言いかねますけれども、六月とか八月とかに目標を置きますと、それだけだらだらしてしまうわけです。私どもとしては、できるだけ近いところに目標を置いて努力していきたいというつもりであります。
  13. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、三月か四月が目標であるか、まだ確定的なことは言えないと申しますと、方々で御演説になったこととだいぶ内容が違って後退しておると思うのですが……。あまり確信がおありになるようには思われない。相手側のあることでと言われますけれども相手側事情もさることながら、実はあなたの方の内部がまとまっていないところの方が確信をぐらつかせておる大きな原因ではないかと思うのですが、そこで一つお伺いしたいのですが、あなたには、自民党内部及び政府内部をあなたの考えておるような意見でまとめられるような確信があるかどうか、そこからお伺いしたい。
  14. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろんこういう問題でありますから、自民党内部にも、世間にいろいろ意見があるように自民党内にもいろいろ意見のあることはもちろんだと思います。しかし、この問題を取り上げましてから、十月以来取り上げておるのでありまして、大体意見も出尽してきたような感もいたしております。従って、それらの意見を最終的にまとめていくという段階で、特に何か新しく問題点が出てきて意見を戦わすというわけではないと思いますので、取りまとめ等には、いろいろ党の意思決定によって、若干の時間的余裕は必要かと思いますが、しかし、やはり一定の目標を立てて、そしてなるべくそれに間に合うように一つ意思決定してもらって、また意思決定に進むように、われわれも努力していくということが必要だと思っておりますので、私としては三月末、もしくは四月上旬を目標にしてすべての段取りをやってもらいたいということを、党の方に要求いたしております。また、われわれもその心がけでおりまして、内閣意向をきめて参りたい、こう思っております。
  15. 岡田宗司

    岡田宗司君 所管大臣が、三月、四月中に調印運びにいきたいと、こう言っておるのに、官房長官の方は三月、四月はむずかしかろうということを堂々と発表しておる。どうも官房長官はどちらかというと取りまとめ役の方の仕事をする方だし、また赤城さんの人柄から言っても、まとめる方の人がむずかしかろうと言うのですから、これはどうもあなたの言うよりも、そちらの言う方が私どもにはほんとうらしく聞える。そのまとめ役がむずかしかろうというのは、結局党内にいろいろ意見があるということからきているらしいのですけれども、一体この赤城官房長官意見というものは、藤山外務大臣はどうお考えになりますか。
  16. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) そういう御意見があれば、なおさら私は三月、四月を目標にして取りまとめてくれという要求をいたしませんと、なかなかスムーズに運んでいかないと、こう考えております。
  17. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、党内にまだいろいろな意見がたくさん出ておって、これは大いに出尽したのかもしれぬですけれども、それはまだ一つもあなたの方では話がついておらない。こういうことなんですね。
  18. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 話がついておらぬというか、最終的にはきめておりませんけれども、御承知のようにだんだん意見が出尽してきておりますし、もう新しい、珍しい意見もそう出てくるとも思いませんから、従来出尽しております意見を調整する段階にはある。それらの可否を最終的に決定する段階ではないか、こういうふうに、やはり最終的段階にあるんじゃないかという感じを持っております、
  19. 岡田宗司

    岡田宗司君 たとえばあなたは条約改定の際に、問題になっております沖縄小笠原条約適用範囲に加えないということを方々で言明されておる。これに対して、まず岸総理は今度の国会で、衆議院の予算委員会で、その点を質問されても、これに対して、あなたと同じ意見を表明されていないのですね。非常にあいまいなんです。含めるとも含めないともどちらとも言わない。これは国民意見に従ってとか何とかいうようなことを言って、総理大臣としてあなたの御意見に同調したような発言をしておらぬのですけれども、この点は、あなたは沖縄小笠原を含めないという線でもって党内を納得させる自信があるのですか。
  20. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 総理がまだ総理の立場としてはっきり言明されておらないことは当然だと思います。私自身も、含める含めないについて、非常な的確な表現をもって含めないとはまだ言っておりません。ただしかし、私がいろいろの説明━━利害得失説明しておりますときに、私から受ける感触というものは、含めないのではないかというように世間皆様想像しておられる。いずれ党内あるいは閣内の意見を調整しますときには、外務大臣意向はどうであるかということは聞かれるだろうと思います。そのときには、最終的には私のはっきりした意向を申し上げたい。こう思っております。
  21. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、総理からあなたは最終的な意見を聞かれたときに、はっきりお答えするというその内容は、これを共同防衛範囲、すなわち条約適用範囲に含めない、こういうことでございますか。
  22. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今日ではまだ申し上げかねますけれども、いずれ近く、時間もないのでありますから、最近の機会に、いろいろ内閣もしくは党の意見話し合いが行われる、そういうときに、おそらく交渉当年者としての外務大臣意見はどうだろうかということが聞かれることだろうと思います。そのときには、初めてはっきり私の意見を申し上げてみたいと、こう思っております。
  23. 岡田宗司

    岡田宗司君 ところが総理大臣ばかりではない、党内のいわゆる実力者自他ともに称せられておる河野一郎氏が、マッカーサー大使と会われたときに、ちょっと意見を述べられた、それは個人の御意見として雑談の際に出たということではない、またその後の河野氏の発言、あるいは河野派と言われる諸君が会合を開いて発言しておるところを見ると、沖縄小笠原条約適用範囲に含める、ただし施政権が返還せられるまではその例外にしておくのだというような御意見があるのですが、これに対して外務大臣は、そういうようなことは、いわゆる党内実力者から直接にマッカーサー大使との話し合いをつけて、また同時にそれらの氏が帰ってきてからあと党内及び一般に対して積極的なプロパガンダが開始されておる、こういうことは、あなたとしてはどうお考えになりますか。
  24. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 東京におられます各国の大公使がいろいろ民間その他の方に接触して意見を聞かれることは間々あることでありまして、そのこと自体は、いろいろ日本の実情の調査なり意見なりを聞かれるのでありますから、当然のことだと思うのであります。ただ、ここにおられます在外公使においても、外交的折衝もしくは外交的意見の発表というようなことは、外務大臣を通じてのみやるプロートコルを守っておられますし、われわれもそういう意味において責任を持っておりますので、むろん先般の河野氏が会われた場合でも、またマッカーサー大使意見を言っておられないと思います。ただ、いろいろな問題について、参考的に意見を聞かれたのではないかと思う。むろん党内においてそれぞれ実力ある方々意見を出されるということは、こういう重要な問題の場合に当然あることであり、また出されることによっていろいろ討議して参ることが、いいものを作っていくことにも相なろうと思うのであります。一々の意見を押えつけるという気持は、私はございません。ただ最終段階において討議すべきものは私としては討議していきたいというつもりでおります。
  25. 岡田宗司

    岡田宗司君 いわゆる河野発言について、あなたはそう言われておるんですけれども、これが一つ党内における大きな流れになりだしておるというふうに私は見ておるんです。たとえば外交調査会調査会長を初め、外交調査会の有力なるメンバー諸君も、やはり沖縄小笠原条約適用範囲に含めるという意見をお持ちの方が多いんです。そこへ河野発言があったということになりますと、しかも河野さんがマッカーサー大使とプライベートに意見を交換したということなら、これはあり得ることですし、今あなたの言われるように、正式の交渉外務大臣マッカーサー大使とおやりになるのですから、それはそれでいいんですけれども河野発言が今度党内に入ってきて、外交調査会有力メンバーその他と同じような流れに、一つになって参りますと、なかなかあなたの手に負えないんじゃないかと私は思うのです。そうすると、それがやはり三月調印確信にも響いてこようし、また赤城発言にもなったことだと思うのですがね。あなたは総理大臣なり、あるいは河野一郎外交調査会のあなたの意見にやや反対の傾向にある面々を、十分に説得するだけの自信をお持ちでしょうか。
  26. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私としましては最善の努力を尽してやるわけでありまして、むろんいい意見がありますれば、とり入れることにやぶさかでございません。まあ私自身今までの予備的なといいますか、九月ダレス長官と話し合ったそれ以来の経過を見ておりまして、私としての意見意見で、やはり相当強く申して参りたいと、こう思っておるわけであります。
  27. 岡田宗司

    岡田宗司君 そこで、あなたが三月中に調印にこぎつけようという安全保障条約改定といいますか、新条約内容の問題に入るわけですが、大まかにいって、まあ国民の間には、この安全保障条約改定について非常に心配がある。それは岸総理が前の国会においても言われておるように、相互防衛条約式のものにする、それから沖縄小笠原条約適用の範囲に含めるというようなことを、かなりはっきり発言されておる。あとでそういうことを言ったことはないと打ち消されておられるけれども、どうも私どもは速記録その他をあとで読んでみても、そう言われたと受け取られるような発言だったと思うのです。そこから国民の間には、アメリカとの軍事関係を一そう強化するのではないかというふうな見方が強くなってきて、それは非常に危険だというふうに考えられておる。それで、国民の間における安全保障条約改定の反対という声も高くなってきております。私ども自身総理発言その他からして、これは危険であるというふうに考えまして、まあ交渉を打ち切れということを総理大臣にも外務大臣にも申し入れておるわけでありますが、あなたは、やはり安全保障条約を今改定する必要があると考えられるか、そうしてその必要があるとすれば、どういうような方向に持っていかれる考え方をお持ちなのか、基本的な考えとして。つまりアメリカとの軍事関係を強化するという方向に持っておいでになるつもりであるのか、あるいはまあ今の安全保障条約よりももっと軍事的な、つまり日本側で負う軍事的な義務を薄くするというふうな方向に持っておいでになろうというのか、その点をまずはっきりお聞かせ願いたい。
  28. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 安全保障条約日本の自主性を欠いておる点をできるだけ改善していこう、従いまして、軍事的に強化されるとか、軍事的に弱化されるとかということはないと思うのでありまして、現在の安全保障条約のうちで、日本国民の感情に合わない、あるいは日本の自主性を欠いているところについては、その自主性を含めて改正していくというような線を、基本的な考え方としておるのでありまして、この点は総理と私は大体意見は一致しておるつもりでございます。
  29. 岡田宗司

    岡田宗司君 現在の安全保障条約一つの軍事的条約であることは、これはもう否定できないことだと思うのでありますが、これは軍事的条約だとお考えになっておりますね。
  30. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん軍事的条約でありますが、こういう軍事的条約を結ぶためには、両国が友好親善の関係にならなければならないという前提に立ってこの規定があることはもちろんであります。
  31. 岡田宗司

    岡田宗司君 軍事的条約であるということをお認めになると、この改定ということは、その軍事的な内容に触れない改定ということは、私は非常におかしいと思うのですし、まあ形を平等に直すというだけのものかどうかということも疑わしくなってくるわけですが、その条約の一番の主眼である軍事的の関係の面について、強くするとも弱くするともきめないのだ、そういうふうなことではないのだと言われますけれども、たとえば総理が前に表明されたように、相互防衛条約式のものにするということになれば、これは軍事的な関係を強化することになる。あるいは沖縄小笠原共同防衛範囲に含めるということになれば、これまた軍事関係を強化するということになると思うのですが、そうお考えになりますか。
  32. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほど来申し上げております通り、現行安保条約の、日本国民感情に合わない、自主性のないような点を取り除いていくというようなことが主眼でありますので、特に強化されるという方向に結論的に条約締結されるとは考えておりません。
  33. 岡田宗司

    岡田宗司君 それではあなたがさきに言われましたように、たとえば事前の協議によって日本におるアメリカ軍が出動する際の出動について規制を加えるということは、アメリカ側から見れば、軍事的に多少手足を縛られることになる。それは軍事的に強化されるのか、あるいは弱化されるのか、それはどうお考えになりますか。
  34. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本考え、あるいは日本と協議をして日本考えを尊重していくということは、今お話のように、若干アメリカ側では、今あります自由な行動を制限されることになる、そういう意味においては、あるいは弱化されるとも習えましょうかと思いますが、まあ強化されるとか弱化されるという言葉で表現することは、非常にむずかしいのではないかと思います。
  35. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあそこらはごまかしておかないと相手との交渉上工合が悪いということなのか、それとも国民を神経過敏ならしめないように、一応ごまかしておくためにそういう言葉を使おうとしないのか、それはわかりませんけれども、とにかく問題になります第一条の駐留軍の使用の目的の第一の問題ですね、例の「極東における国際の平和と安全の維持に寄与し、」云々という問題ですが、これに対して、このままこれは残しておくというおつもりかどうか。
  36. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) そういうような字句の問題については、今何とも申し上げかねるわけでありますが、問題は、日本が侵略から守られるということ自体、そのこと自体は、私は極東の平和にやはり貢献するのではないかと考えております。字句をどういうふうに表現するか、その他のことについては、まだ申し上げる段階にはなっておりません。
  37. 岡田宗司

    岡田宗司君 私は字句の問題をお聞きしているのじゃないのです。これは字句の問題じゃなくて、ここにおける「極東における国際の平和と安全の維持に寄与し、」そしてそのためにアメリカ軍が使われるということになりますというと、このものがありますために、日本におけるアメリカ軍は、勝手に、台湾の突端で事が起ろうが、どこで事が起ろうが、どんどん日本の基地から発して行動を開始することができるわけです。日本政府日本国民もこれに対して黙って、あれよあれよと眺めておるよりしようがないわけですけれども、こういうようなものであるから、みんな非常に危惧を感じている。これをやめようかというお考えもあるように私は承わっておったのですけれども、そんな言葉の問題ではなくて、これを一体どうするかということを、この条約改定ということになれば、基本的な問題の一つなんですから、それは考え方はお示しになってもいいのじゃないかと思うのですが、この点どうでしょうか。
  38. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私としては、日米安全保障条約によって日本国が他の国から侵略をされないということ自体が、極東の平和と安全に寄与するゆえんだということであります。こういう考えが基本的な考えであります。極東の安全を保障するということは、安保条約のおそらく第二あるいは第一の問題になってくる、日本国自体が他国から侵略されない、そのことが極東の平和を維持する意味だ、こう考えております。
  39. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、その考え方を裏返しをすれば、こういうふうにアメリカ軍が独自の判断でもって「極東における国際の平和と安全の維持に寄与し、」云々ということで、日本に関係のない所へ出勤するということは、これは今度の改定に除こうというふうにお考えになっているものと承わってよろしいのですか。
  40. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 配備、装備等を全面的に協議事項にするということによって、今お話のようなことが起ってくると思います。
  41. 岡田宗司

    岡田宗司君 配備、装備は問題にならない。駐留軍の目的じゃない。出動が目的なんです。日本にいるその駐留軍の目的というのは配備、装備じゃない。出動が目的なんですから、その出動についてどうかということをお伺いしているのです。配備、芸備の問題は、今あなたにお伺いしているのじゃない。
  42. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私の考え方は、つまり日本における駐留軍というもの、基地にいる軍隊というものは、日本を防衛することを主目的とし、侵略から守ることを目的としているのでありまして、その目的以外に他に出動しますことは、その防衛目的が空白になることになります。従って、そういうときには、日本と協議をしてもらわなければならぬ、こういうことであります。
  43. 岡田宗司

    岡田宗司君 それではアメリカ軍の出動について、事前の協議ということを主張しようということに解せられるわけですが、それが果たして「極東における国際の平和と安全の維持に寄与し、」ということで、この条項に従ってアメリカが独自でもって動くということを、それだけで抑えられるかどうか、それともそういう歩前の協議ということだけで押えるのではなくて、この条項を削って、たとえば日本の直接の防衛のために出動するというふうに改めようとされるのか、その点はどういうふうにお考えになっておられますか。
  44. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 交渉の過程でありますから、最終的にどういうふうに決定するかは、今申し上げかねると思いますけれども、今私が申し上げました趣旨から、今度の問題を改定していきますれば、当然策一義的に日本を防衛するためにアメリカ軍がここにおるものであつて、それは日本の防衛の目的のために使用される、他に出動してしまうことは日本の防衛がからになることでありますから、それは困ると思います。ただ、むろん日本が侵略を受ける段階がもし起った場合に、本土自身でなくて、近接の地に起った場合に、それが日本侵略の前提であるというようなことでありますれば、協議の際に、そのとき決定すべき問題であろうかと思うのでありますが、目的としては、やはり日本を守るということが第一義的のものだという考え方で言っておるわけであります。
  45. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、藤山外相のお考え方に基けば、たとえば昨年の八月に金門、馬祖でああいう緊張が起りましたが、その際にアメリカ軍が出動すること、あれは日本にとって好ましくないことである。あるいはまた朝鮮で今後問題が起る場合に、日本からアメリカ軍が出動することは好ましくないことである。だから直接日本の防衛に関係することにとどめて、そういう所へ日本におるアメリカ軍の出動することは、今後の条約改定によってやめてもらうようにしよう、そういうふうにお考えになっておるのか。これは一番重大なポイントだと思うので、あらためてはっきりお答えを願いたい。
  46. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) それは事前に協議をして決定すべき問題だと思うのです。先ほど申し上げましたように、日本におりますアメリカ軍が、何か朝鮮もしくは台湾というような所で事件が起りましたときに出動されますことは、そういう情勢下における日本の侵略を外部から防ぐために空間ができることになるのじゃないかと思いますから、拒否せざるを得ない場合が多いと思います。ただ、日本を侵略する前提として、あるいは飛び石作戦と申しますか、そういうような意味で来た場合には、それはその場合の事情によって、日本防衛のために必要なんであるから、若干の進出を認める場合があるかもしれませんが、それはそのときの状況判断で決定されることだと思います。
  47. 岡田宗司

    岡田宗司君 次にお伺いするのは、相互防衛条約式にしようという総理のお考え方があるのですが、これは全然おとりにならぬ。
  48. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 相互防衛条約というその言葉の意味でありますが、まあ条約名称をどうするかということもいろいろ問題がありますので、ここらの問題は相当研究して参りませんければなりませんが、ただ内容としては、日本を侵略から守るというような意味においては、相互的であると思います。二国間で一緒にやることでありますから、その意味においては相互という言葉もある場合には使えると思います。
  49. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういう表題の問題じゃないので、相互という問題は方々で使われておりますから、なんですけれども、たとえば米韓相互防衛条約あるいは米華相互防衛条約、米比相互防衛条約というふうな、防衛条約の意味における相互防衛条約、それに近いものにしようとするのかどうか。その点はまあ総理相互防衛条約式にしようということを━━それから、なんですね、過日ブラウン記者に対する憲法九条廃止のときがきたというような意味のことを言われたことは、それに関係するものと私どもは思っているんですけれども、あなたはそういう意味の相互防衛条約式のものにはしないのだというふうなお考えですか。
  50. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この相互という内容でありますが、たとえばアメリカ大陸に何か攻撃があったときに日本が立つ、そういうことの意味の相互ならば、むろんそういう意味での相互という考え方は持っておりません。アメリカ領土がやられた場合に、すぐ日本がいわゆる行かなければならぬという、そういう意味の相互というふうには考えておりません。ただ日本を侵略から守るためにお互いに協力していくという意味の相互という意味ならば……。相互という字が非常にあるいはむずかしいあいまいな言葉かもしれませんが……。
  51. 岡田宗司

    岡田宗司君 相互という言葉の意味をお伺いしているのではなくて、相互防衛というくっつけた言葉のものの意味をお伺いしているんですよ。それで米韓、米比、米台の相互防衛条約を見てみますとね、その一方において出動の問題と関連するのですが、たとえば北太平洋あるいは太平洋におけるまあアメリカの軍隊あるいはアメリカの行政管轄下における島々というような言葉を使われておりますが、そういう意味においてですね、そこへまあ両国の軍隊が一緒に出て戦うというような意味における相互防衛ということが、あの条約では問題になっているんですが、どうも岸総理相互防衛条約式のものにしたいというふうに、言われたのは、そういう点にあるように私は思うのですが、あなたはそういうお考えをおとりにならないのですか。
  52. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 総理も今お話のような意味で相互というような言葉を使っているとは私は思いません。やはり日本国を守るという意味においての相互であって、アメリカの領土に敵が攻撃をかけたというようなときに、日本が共同行動に移る、これは憲法上の制約ということも一面にはありますけれども条約の精神を作り上げていく上からもそういう意味での相互防衛というふうには考えておりません。
  53. 岡田宗司

    岡田宗司君 それでは日本以外の、西太平洋におけるアメリカ軍とか、あるいはアメリカの島嶼等に問題が起りましたときに、日本の自衛隊は派遣することはない、そういうふうに考えていいのですか。今の外相の御意見ですと、そういうふうに考えられるのですが、そういうふうに考えていいのですか。
  54. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 派遣することもなし、また憲法上派遣もできないと考えております。
  55. 岡田宗司

    岡田宗司君 では次に駐留軍の使用目的の第二に、「一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によって引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じょうを鎮圧するため日本国政府の明示の要請に応じて」、「日本国の安全に寄与するために使用することができる。」というふうになっておるのですが、これはまさしく内政干渉を認めることになると思うのです。で、この点については外務大臣は、これはやめたいというお考えのようですが、果してそうでございますか。
  56. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) その条項は、まあ私ども端的に内乱条項と言っておりますが、それは九月にワシントンでダレス長官に話をしたときにも、日本改正を欲する一つの点だということをはっきり申しております。問題点だということを申しております。総理も先般衆議院で、内乱条項は削除したいと言明をされております。私どももその線に沿ってやっていきたいと、こう考えております。
  57. 岡田宗司

    岡田宗司君 ところが、あなたの党の外交調査会長を初め、たとえば党内の有力者である賀屋興宣氏とかそのほかの方々は、公然と、これを残しておけ、今の日本の自衛隊じゃ内乱等が起ったときにどうにもならぬ、だからしてこれは残しておけという御意見が非常に強いように私ども聞いておるのですが、これらについて、あなたはどうお考えになりますか。こういうような意見はまことに情ない意見だと思うのですけれども、あなたの党内有力メンバーがこれを残しておけと言うのですが、これらについて、あなたはどういうふうにお考えになり、またこれを十分に説得していける御自信をお持ちですか。
  58. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま申し上げましたように、私、過去のいろいろな国民的感情、世論というようなものを聞いて、問題の改正点としてこれをダレス長官にも九月に説明しておりますし、従って、大体の意見が内乱条項の削除にあると思います。むろん党内には有力な方がたくさんおられますので、その方々がいろいろな御意見があろうかと思いますが、やはり最終的には、相当内乱条項の削除という問題については、国民世論の背景もございますし、そうした面に決定していくのではないかということを考えております。また、それを望んでおります。
  59. 岡田宗司

    岡田宗司君 これは除くというお考えのようですが、この点もなかなか意見の相違点があろうかと思います。  それから第二条ですね、いわゆる第三国の駐兵の禁止、あるいは通過の禁止というようなことを書いておる。これもまたどうも日本の自主性を害するものというふうなお考えでやめられるように聞いているのですが、この点については、やはりアメリカに日本を独占的に使用させるというようなことをやめるということになるわけですが、これは廃止される意向をお持ちになっておりますか。
  60. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) それらのこまかい点については、一々必ずしも意見を申し上げかねると思いますが、自主的な立場でもって日本国民感情に沿って改正するという方針でありますので、大体そうした点については、必ずしも自主性を現在まで持っていないと同じような条文とわれわれ見ておりますので、そういう面については総括的に努力して参りたいと、こう思っております。
  61. 岡田宗司

    岡田宗司君 次にお伺いする点は、事前の協議の問題ですが、先ほど外務大臣は配備と装備の事前協議ということを言われたのです。日本の国内に駐留するアメリカ軍の配備の事前協議というのは、これは輸送の問題もありましょうし、兵舎の問題もありましょうし、いろいろありますから、これはもう事前協議をしなければできない問題であることは、もう明瞭だと思うのですが、次に装備の問題ですが、装備についての事前協議ということには、これはもちろん事前協議ということには拒否することも含まれていると思うのですが、たとえば今問題になっておりますアメリカ軍が核兵器を、これは小型であろうと大型であろうと、持ち込むごとについての事前協議をしなければならぬというふうにお考えになっているのかどうか。
  62. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今の装備については、全面的に事前協議ということをまあいたしていくつもりでありまして、御例示のような核兵器については、岸総理は持ち込ませないということを言明しておられますので、内閣が変らない以上、そういう方針で協議していくと思っております。  なお、装備等につきましては、やはりいろいろな事情もあろうと思います。たとえば非常に大きなものを持ち込まれて、橋や何か全部直さなければならぬというようなことになっても、すぐ困る場合もありましょうし、また、装備というような問題については全面的に協議をしていくというので、核兵器ばかりではないと思います。
  63. 岡田宗司

    岡田宗司君 事前協議ということが、抽象的にただ条約のうちに出かれておると、私ども非常に危険を感ずる面も出てくると思うのです。というのは、まあ岸内閣は今核兵器を、これは大小によらず持ち込まないという方針のようです、そういう方針が続けられておるうちは、事前協議ということはまあそういうふうに、そういうものを持ち込むときに拒否する場合に使われるわけですけれども、もし岸内閣の防衛方針が変って、そうして小型の核兵器を持ち込んでもよろしい、たとえば西ドイツのような状況にその考え方が変ってきますと、この事前協議ということで持ち込むことを許可するということも起つてくるわけなんです。それからまた内閣が変って、岸内閣でない別な保守党の内閣ができて、大いに積極的にアメリカのこの日本共同防衛態勢を強化しようという考え方になってくるというと、この承前協議ということを逆に利用して、そういうものをどんどん入れるということも私は起ってくると思うので、非常にこれは危険なことだと思うのですが、その点について、事前協議ということは必ずしも拒否ばかりではないと思うのですが、その点どうお考えになっておりますか。
  64. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 条約はある程度の内容を持っておりますものを作ることでありますから、今永久に方針を縛るわけに私はいかぬと思います。従いまして、協議ということが適当であろうと思うのであります。協議のときにイエスと言うかノーを言うかということは、そのときの国民が判断することであろうかと思います。国民の判断に反対していかなる内閣もこれを強行するいずれの説もとるわけにいかぬと、こう思いますので、やはり長期にわたりまして国民の断に従っていくということになることが当然のことではないかと、こう考えております。
  65. 岡田宗司

    岡田宗司君 国民は現在でもまあひそかに持ち込んでおるのじゃないかと心配しておる向きもあるのです。今後なおさら小型の核兵器等が発達して参りますというと、いよいよそういう心配も多くなって参ります。小型ばかりじゃない。あるいは原水爆を持ち込まれはせぬかということも、非常に心配しておるわけですが、もし事前協議ということをあなたの方でもってこれに入れるといたしましても、その点の心配は解消されないわけです。政府はしはしば持ち込まないということを言われておるけれども、あなたの党の方の中には、非常に強硬論者もたくさんいるので、これまた国民に非常な心配を与えておるわけです。そこで、その条約ができましたときに、これはまあ条約の条文の中に書き込むことは別として、たとえば交換公文等で核兵器は持ち込まないということを明記することをされるつもりがあるかどうか。
  66. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私としては、ただいま申し上げましたように、協議ということで参りたいと思っております。まあ日本は民主主義の国でありますので、国民の意思を無視して内閣がいかなる決定をしましても、ほんとうにそれは実行できないのじゃないかと思うのでありまして、やはりそれはその場合における国民の判断によるのが適当であり、また、長期に条約を作って参る場合には、そのときだけのことで限定していくということは、条約作成舌としては適当ではないというふうに考えております。また、岡田さんの言われますように、国民全部が反対ならば、当然内閣としてはそういう処置はとれないと思います。
  67. 岡田宗司

    岡田宗司君 それからまた元へ戻りますが、出動についての事前協議ですね、これは一体軍下技術的に可能であるとお考えになり申すか。
  68. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) たとえばよく例を出されまして、まあ今度のこれからの戦争というのは、敵機が来るとボタン一つだという。そのボタン一つの瞬間に協議ができるかというように、想定された質問をよく受けるわけであります。しかし、まあ少くも全然その瞬間まで非常な平穏な状態にあって、突如としてそういうようなほんとうの侵略、あるいは外部における騒乱というものが起り得ようとは、ちょっと想像できないのでありまして、やはりそういう情勢が一月なり半月なり起ってくる、そういう問題が起った場合には、やはり当然事前協議をして、ある程度のそういう問題の対策に対する協議はすることになろうと思っております。まあほんとうに平穏なら、突如として大編隊がやってきて何かするというようなことは、まあ想像としては想像できないことはありませんけれども、必ずしもそうではないのじゃないかというのであります。まあ軍事的に私もしろうとでありますから、そこまでの常識的判断を考えたわけであります。
  69. 岡田宗司

    岡田宗司君 奇襲ということがいろいろ問題になっておるのですね。今のあなたのお話ですというと、奇襲ということは考えられないようなお話ですけれども、奇襲というような場合が一番まあ出動という問題と関連して大きな問題になるわけなんですけれども、それじゃ奇襲はない、そういうお考えですか。
  70. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 奇襲というものが全然ないとは考えておりませんが、たとえばまあ真珠湾の事件もこれはまあ奇襲なんでありますけれども、まあ真珠湾の事件そのものは奇襲でありますが、あれに至る日米間の状況というものは、相当、数カ月前にあったわけで、ある意味から言えば、アメリカも相当準備をしていたのではないかというふうにも考えられるわけでありまして、そういう意味においては、事前の協議ということもある程度できるのじゃないかというふうに考えておりますが、まあそれでは全然の奇襲、まあ政治的関係からいっても軍事的関係からいってもほとんど前日まで全く何の混乱がないときに、ぽこっと翌日始まるというふうな極端なことはないのじゃないかというふうに考えるのであります。
  71. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、事前の協議というのは、一々の軍専行動についての事前の協議ではないのであって、かなり包括的な政治的な判断に基いての事前の協議である、まあ一般的な出前の協議であるというふうに考えてよろしいですか。
  72. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん今言ったような、全然奇襲がないか、その時間がないかというような御質問がよくありますので、私はそういう今のようなお答えをしておりますけれども、実質的には、普通の場合には具体的な一々の条件等についてやはり協議をしていくということになると思いますが、そういう非常にむずかしい御質問があったときに、私はそういう答えをしておるわけなんであります。
  73. 岡田宗司

    岡田宗司君 たとえば先ほど金門、馬祖の例を引いたわけですが、金門、馬祖の問題が起ったというときに、改定された新らしい条約の場合には、あすこで非常な危険な状態があった、そこで日本側はアメリカ側に出ないでくれということを話をする、こういうことになるわけですか。
  74. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 金門、馬祖のときのような例でありますれば、十分年前協議の時間的余裕があるのではないかと思っております。
  75. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、朝鮮の場合においてもどうもまだ三十八度線をはさんで対峙している状態が、これがいつ爆発するかもわからないということが予想されるわけですね。そういう際に、北鮮が日本に侵略してくるということは、これはもう軍事的にも不可能であろうし、考えられないと思うのでありますけれども、そういう際には、アメリカに対して日本における軍隊は朝鮮に出動してはいけないということを、事前協議をして抑えられるというわけですか。その点、今度の条約ではそういうふうにするおつもりであるかどうか。
  76. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま申し上げましたように、時間的な余裕がそうした問題にもあると思います。従って、その押えるか押えないかということは、そのとき日本が侵略をこうむる危険が引き続いてあるかどうかというような状況から判断されるのではないかと思うのであります。
  77. 岡田宗司

    岡田宗司君 ずっと今お伺いしておったところを聞いておりますというと、藤山外務大臣の意図は、この条約改定して軍事的関係においては前よりも強化をするのではなくて、日本側の軍事的な義務を除いていく、あるいはまた何というか、若干潤めていく、日本におけるアメリカ軍の行動を規制するという点に主眼があるように思われるのですが、そう解釈してよろしいですか。
  78. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) まあ弱めていくということであるかどうか知りませんが、少くとも日本が侵略から守られるためには、米軍がよそにいかないということは、日本を他国の侵略から守るために強めていくということが言えないわけではないのですが、弱めるとか強めるという言葉はちょっと使いにくいわけでして、趣旨としてはそういう趣旨でやっておるわけであります。
  79. 岡田宗司

    岡田宗司君 それから今の条約では、アメリカ軍が無期限に駐留し得るということになっておるわけですが、これは一定の条約の年限をつけるというお考えがあるというふうに聞いているのですが、その点、並びにそれはどういうふうな形で期限をおつけになるおつもりですか。
  80. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 期限をつけることをすでにダレス長官にも、ワシントン会談のときには、日本側はそういうところに期限がない条約とはおかしいということで、期限をつける、期限をつければ当然廃棄条項がつくということになると思います。ただ期限をいつにするか、それはふる年数を限るか、千九百何十何年にするかという問題は、今後の交渉上の問題でありますので、言明を差し控えさしていただきたいと思います。
  81. 岡田宗司

    岡田宗司君 次にお伺いしたいのは、行政協定です。この間新聞で拝見したのですが、外務省の方では、行政協定改定も同時に行いたいというような意向だ。ところが藤山外務大臣は、どうも外務省の方でそういうことを言うのはけしからぬということで、だいぶおしかりがあったように聞いておるのですが、外務大臣は、行政協定改定には、今回は手をつけないというおつもりですか。
  82. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は全然手をつけないということを申しているのではないのであります。本条約改定に伴いまして従来一番問題になっておりましたような、たとえば行政協定二十四条でありますとか、防衛分担金の問題でありますとか、そうした問題については、大きな基本的な問題でありますので、交渉をいたしてみたいと思っております。ただ、こまかいいろいろな問題になりますと、十分検討をした上でやらなければなりませんので、それはいずれゆっくり検討した上で、さらに部分的な改正をしていってもいいのではないかというつもりでおります。
  83. 岡田宗司

    岡田宗司君 行政協定二十四条の問題というのは、これは行政協定の中に含めるような問題じゃないと思います。これは向うさん側がうまくすらっとこっそりはさんだというふうに私は見ておるのですけれども、これは非常に重大な問題なんで、これを今改定されるようなお話ですが、どういう方向に改定されようとしているのか。
  84. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) まあわれわれとしては二十四条そのものをいじるよりも、むしろ削除してもらいたいと、こう考えております。
  85. 岡田宗司

    岡田宗司君 それでは防衛分担金の問題については、どういうふうにお考えになりますか。
  86. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 防衛分担金を問題にするということでおわかりいただけるのではないかと思っておりますけれども……。
  87. 岡田宗司

    岡田宗司君 つまり防衛分担金は日本で払わないようにするというふうに解してよろしいですか。
  88. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 防衛分担金は問題になるべきものだと思っておりますので、われわれとしては、なるべくそういう方向に進めていきたいと思っております。ただ、以上申し上げたようなことは、いずれもこれから交渉をいたすことでありまして、百パーセントわれわれの意向がいれられるか、あるいは九五パーセントいれられるかということは、今後の問題でありますが、しかし、そういう意味において努力していきたい、こういうことであります。
  89. 岡田宗司

    岡田宗司君 日本におけるアメリカ軍の配備についての事前協議ということですが、これは現在は、日本におけるアメリカ軍がどれくらいの兵力量を持ってこようが、どういうような種類の兵力を持ってこようが、これはアメリカの勝手次第、日本側は何ら関知できないのです。今度は、たとえばもしあなたのお話ですと、配備についての事前の協議といううちには、日本におけるアメリカ軍がどれくらいの量駐屯するかということも両方の協定でおきめになり、また日本には陸軍、海軍、空軍だけにとどめるというおつもりか、そういうことも事前の協議としておやりになるのか。
  90. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろんそれらのことが協議に付されることになると思います。ただ、内容につきましては、防衛庁関係の方々が協議されることになろうと思います。
  91. 岡田宗司

    岡田宗司君 今全体として、この安全保障条約改定については、前に岸総理がアメリカへ行って日米関係の新時代ということをうたった共同宣言を出してから、どうもアメリカとの間の軍事関係を強めるのではないかということが私どもにも考えられておった。また、安全保障条約改定ということが具体的に取り上げられました場合に、岸総理の議会での発言等から、そういう気運がいよいよ強くなった、国民の間にもそういう気運があった、また、この日米安全保障条約の、どこの国を相手にということは明記はしてありませんけれども相手方となるべき国々においては、非常にこれに対してやはり疑惑を持っている。同時に、それが今改定されて強められることになるならば、これは明らかに敵対行為を強化していくことになるのだというふうに考えて、敵視政策をとっているのだということで、いろいろ国際関係の上において誤解も生じて、あるいはまた誤解ではなくてほんとうだというふうに考える筋もあると考えられる点もある、それらのことから考えまして、現在この安全保障条約改定というものは時期でないという考え方も、あなたの党の中でも、たとえば松村謙三さんや三木武夫さんはそういう見解を漏らしておる。そういうような観点から見て、あなたの面目問題もありましょうが、国民にも非常な疑惑を与えているような観点から、一応これを打ち切るというお考えはないのかどうか。
  92. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今が安保条約改正の適当な時期でないというのには二つの御意見があったと思います。一つはこういうことを日本がアメリカに言うことによって、日米間の何か親善関係を阻害する、その意味ではアメリカがダレス会談におきましてもおわかりいただけますように、また、その後の状況を見てもおわかりいただけますように、これを日本改定を要求したことによって、日米関係は阻害されておりません。従って、そういう意見は解消されたと思います。また同時に、今、岡田委員お話にありましたように、何か他の近隣国において、これに対して誤解をし、さらに近隣国に脅威を与えるような事態が新しく起ってくるのではないかというような一つのために、そういうことはやめたらいいという御意見はあると思いますが、ただいままで御説明申し上げておりますように、私としては、現行日米安全保障条約日本が自主的に改正をしていくことでありまして、先ほど来お話のありましたように、強められたということはないので、実質的にこれの日本の参画する立場を明確にして、そうしていくということでありますから、そういう意味では、私は誤解でないかと思います。従って、日米安保条約を今政府のやっておりますような線で改善することは、近隣国に対して脅威を与えることではないと考えております。理解されてくれば除かれると思います。むろん安全保障条約は要らないのだという立場からの御議論でありますれば別でありますけれども、現行の日米安全保障条約を改善するという立場からすれば、これがさらに大きな脅威となるということではないと思っております。この点も私は解消してくると思います。
  93. 曾禰益

    ○曾祢益君 ちょっと関連して。ただいまの仰せの中で、一点だけ伺いたいのですが、それはアメリカ軍の日本駐留の目的と、いわゆる海外派兵の関係ですが、大臣のお考えを伺っておると、日米安全保障現行条約とはむしろ建前を変えて、アメリカ軍は第一義的には日本を守るためにおるのだ、日本を守ることが安保条約の中にあるむしろ極東の平和と安全を確保する道だ。そういう建前に立って、原則としては、日本を、いわゆるあなたの言葉で言えば、あけっぱなしにするようなことがあってはならない。従って、海外出動というようなことは原則としてはあってはならない。しかしそうかといって、全然駐留の目的を、日本の区域だけを防衛するというわけにもいかないだろうからというので、海外出動の場合には、その海外における戦闘行為が日本の防衛に直接関係があるというときには、これは相談によっては許すことがあろう、そうでない場合にはこれを許さない。そういう拒否権を含んだ協議権というものを確立していけば、大体不必要に日本を足場としてアメリカ軍が日本の外で戦闘行為をする、それに日本が巻き込まれることがないじゃないか。こういうお考えのように伺った。ところが現実問題として、アメリカ側の考え方というものを、これはお互いに知っていることでしょうが、たとえばきわめて最近のダレス氏の新聞会見においても、たとえば金門、馬祖を中共軍に渡すことは、これはフィリピンに対する直接の、何と言いましたか、脅威である、これは政治的脅威かもしれません。あるいは純粋に戦略的にのみ考えればそういうことが言えるのかどうか知りませんけれども、少くともそういう考えを持っておるアメリカに対して、かりに台湾海峡において、アメリカがいよいよ中共軍と軍事行動に入ったような場合には、これは日本は、それはもう向うが必ずしも飛び石を考えているのじゃないという見地から、これを拒否するということを、日本の首脳がそこまで考えるかどうか知りませんが、かりにとったとしても、向うは、いやそれは飛び石なんだよ、金門、馬祖を取らせることが、いわばフィリピンを明け渡すにひとしい。こういう考えでアメリカとの間に、そこに大きな食い違いがあるのじゃないか。だから、観念的にいうと一応わかったようであるけれども、現実にはそういうような戦略、作戦というものが、いわゆる全地球的なグローバルなアメリカの考え方、そういうことになってくると、実際として協議権を設けて置いても、日本が幾ら言ってみたって、しぶしぶ承諾せざるを得ない、そうすると、協議権を設けたことは、逆に海外出勤に日本側がいや応なしにその状況下において強い方に従うということを、あらかじめ白紙委任状を渡しておるという結果を生じやしないか。これは非常に通俗的な見方ですが、存外通俗的な見方の方が、純粋に条約的に考えるよりも真相に近いのじゃないかということが、これは言えるのじゃないか。そこに非常にロジックとしてはうまく立てられておるようだけれども、やはり日本に駐留を許し、その海外派兵についてのはっきりした拒否権というものは、実際上この条約の形にもあるようだけれども協議権を条約の形で整えることは、かえって白紙委任状を渡す結果になるのじゃないかということが心配の原因になるのじゃないかと思うのですが、そういう点について明快な御答弁をいただきたい。
  94. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 現行の日米安全保障条約は白紙委任状を渡しているということが言えるのじゃないかと思うのです。少くとも協議事項を設けて協議いたします以上は、それは現行の安保条約のように、白紙委任状を渡しているとは私ども考えません。むろんそのときに拒否するかしないかということ自体は、非常にそのときの実情によりましょうし、また重大な問題であります。従って、これは国民的なやはり非常に大きな一般的考え方が、そうした問題について作用してきましょうし、また、アメリカに対しても日本国民的な感じ方が強く影響していくと思いますので、曾祢委員の言われますように、白紙委任状を渡したというふうには私は考えておらないのであります。
  95. 曾禰益

    ○曾祢益君 一点だけ。これは見解の相違だからやむを得ませんが、ただ、だれが考えても現在の安保条約は、いわゆる何といいますか、強制のもとにおいて作られた条約、いわばアンダーデュレス、作られた条約日本の意思というものは全然ない。一つとして日本の自主性に立った条約ではない。事実上は白紙委任状を渡したという結果になるならば、これは対外的な影響というものは、強制的なもとに作られた今の安保条約の状態と非常に対外的には違うということは、私の意見として申しておきます。
  96. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私としては、それが白紙委任状になるかならぬかは、そのときのやはり事態に対して、国民がどう判断するかということによって白紙委任状になるかならぬかがきまると、こう思います。
  97. 森元治郎

    ○森元治郎君 岡田委員と曾祢委員の話に関連するのですが、そういう事前協議の問題でいろいろ問題が起ってくると思うので、行政協定の第一条に入っている例の日本にいるアメリカ軍の軍人、軍属、家族の条項のことですが、日本にいるアメリカ軍はこれとこれとこれだという名称をはっきりしておいた方が、無用な混乱に巻き込まれないで済むのではないか。たとえば、日本にいるのは第一騎兵師団、あるいは直射師団、第三海兵隊、こういうようなものであるならば、兵力用語もある程度わかっているならば、変なことで遠くの方に行って問題を起すというようなことも押え得るのではないか。あなたの言う気持が、改定の気持が、若干アメリカ軍の行動の規制になるというのであるならば、行政協定の(a)を考え直す考えがあるのか、どうか。
  98. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今お話しのように、何かこれこれこれということを例示いたしますことは、非常に困難なことではないかと思います。従いまして、やはりそうした問題については協議という形においてきめられていくというのが適当なのではないか。
  99. 森元治郎

    ○森元治郎君 事前協議という条項を入れようという気持から見るならば、今までのように駐留軍と通称されるものは無限にあるわけで、たまたまそのときに日本本土にいたものが駐留軍、こういうことに条約の解釈ではなっているようです。従って、何十万でも入れる。こういうことをなくしておく方が事前協議をしたいという気持からは、気持が合っているのではないか。第一条の解釈はそういうふうだと思いますが……。たまたまそのときに日本本土にいたものが米軍——三十二年度の夏ごろは約十万くらいおったアメリカ軍が、今は四万くらい減って六万くらい残っているように聞いておりますが、その六万のたまたま駐留軍が、一歩日本から出てしまえば、それは駐留アメリカ軍ではない。出てしまったあとの行動というものは非常に規制がむずかしい。日本も責任がとりにくい場合があるので、あらかじめあなたの方は駐留軍というものはこれとこれとこれだというように指定されておいた方が、お互いのために便宜じゃないかということです。
  100. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ちょっと御質問の趣旨がわかりかねるのでありますが、駐留軍、米軍の通称をあらかじめ限定しておいた方がよい……。
  101. 森元治郎

    ○森元治郎君 これとこれとこれが駐留軍だということがわかっていないと話が非常に——たまたま一人でも駐留軍、三個師団でも駐留軍、こういうことでは、駐留軍というものは不明確じゃないか。これは条約局長でもけっこうですよ。
  102. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) ただいまの御指摘の点でございますが、われわれは、まあ日本における米国軍隊ということを考えておる次第でございますが、行政協定の建前は、確かに御指摘のように、流通無碍、すなわち日本に来ればそれが駐留軍だというふうな形になっておることは、御指摘の通りでございます。ただ、これをそれではどういうふうに改めますか、これは条約の、また行政協定の相当細目に入っての検討が必要かと思うのでありますが、ただ、軍隊というのは、御承知のように一つの軍隊としてのユニットというのですか、あれを持っておりますから、あれの軍隊、これの軍隊というように、はっきり限定することは非常に技術的にも困難が伴うのではないかと考えておりますが、よく一つ研究させていただきたいと思います。
  103. 岡田宗司

    岡田宗司君 今の安全保障条約の点と、もう一つお伺いいたしますが、それは安全保障条約の前文に「直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを期待する。」ということがある。で、まあこれは果して日本側が自衛隊を増強する義務を負ったものか、どうかということは、この条約の文面からは、あいまいなんです。もし今後安全保障条約改定もしくは新条約締結される際、アメリカ側の方では、それならば、お前の方の国がもっと自衛隊を増せというような要求が起ってくるかもしれない。これはまあよく外交交渉で起る問題ですけれども、そういうような際に、藤山外務大臣は、アメリカの方のもし御要求があれば、それに応じて日本の自衛隊増強について約束をするつもりか、そういうことはこれは他国に対する干渉になるということで拒否をされるつもりか、これは想定ですけれども、念のためにお伺いしたい。
  104. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本の自衛力を増強するかしないかということは、日本みずからが、その経済力なりあるいはその防衛力なりの見地から決定していくことでありまして、他国から指図されるべきものではないと思います。当然日本が自衛力をいかなる限度に持つかということに見合って……。しかし安保条約というものも、日本だけの自衛力ではいけないんだから一つアメリカの力を借りるという立場でありますから、好ましいことからいえば、日本の自衛力を増強して、あるいは日本だけの軍隊、自衛隊でもって日本が守れるというのならば一番好ましいことです。なかなかそうは日本の経済的事情、社会的事情からいかぬという意味からいって、アメリカの協力を求めるわけであります。アメリカにいたしましても、他国に協力ということでありますが、当然できるだけ最小限度の軍隊で協力したいという気持、従って日本もできるだけ自衛隊をふやせという気持もあろうが、そこらは話し合いで決定していける問題だと考えております。
  105. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、条約のうちから、アメリカ合衆国がその軍隊を日本の国内及びその付近に維持することを希望するというようなことも、それから「自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを期待する。」こういうことは、今度の新しい条約からは姿を消すようなことになるのですか。
  106. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 前文の書き方等については今検討いたしておりますので、内容全部について申し上げかねますけれども、たまたま今申し上げたような精神でもって検討していきたいと思います。
  107. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に中国との関係の問題についてお伺いしたいのですが、藤山外務大臣はこの中国との関係について、静観的態度は捨てるんだ、そうして大使級会談を開催してもよろしい、貿易については今までの民間貿易協定というものについてはいろいろ弊害もあるから、政府協定も結ぶことがあり得るということを言われる。新聞などでは、これは政府の態度は一歩前進したというふうにいわれておるのですけれども、一体、中国との関係がこういうふうに悪くなったことについて、いろいろ原因もございますけれども、これをあげてもしようがないのであげませんが、打開をするには、単に技術的に大使級会談をやるあるいはまた政府協定をやる、郵便の問題だの気象の問題だのそういう問題から入っていこうということだけでは、私は今の悪化せる日中関係を打開することはできないと思う。問題は、政府が、この隣国でありそうして今非常な発展を遂げつつあり、アジアにおいてもまた世界においても大きな力になり、発言権を持っておる中国との関係について、基本的な態度をどういうふうにきめるかということにかかっておるのですが、それなしに大使級会談とか政府協定を結ぶとかしても、これは何にも効果は現われてこないと思うのですが、中国に対する考え方あるいは方針というものは、昨年の五月の日中関係がこういうふうに悪くなったときと基本的に変らないのか、あるいはその後の約十カ月にわたる国際情勢の変化あるいは現在のアジアにおける情勢の変化から、日本の対中国外交方針を、この際変えなければならぬというふうにお考えになっておるのかどうか、その点からまずお伺いしたい。
  108. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 総理が議会でたびたび言明しておられますように、現内閣として中共を敵視しておるということはないわけであります。ただ、政治的に歴史的に、いろいろ事情もありまして、必ずしも政治的な関係を即時結ぶという状態にいかぬ事情にあるのであります。総理が覆われておりますように、中共を敵視しておるということを考えてはおらなかったわけであります。それは何らかの中共側における誤解でもあろうということであるわけでありますから、そういう意味からいえば、中共に対する考え方というものは変っておらないということを申し上げておる次第でありまして、初めからそういう敵視政策をとつておったわけではない。
  109. 岡田宗司

    岡田宗司君 あなたの方では敵視政策をとっておったわけではないと言われるが、しかし中国側が岸内閣は中国に対して敵視政策をとっておると言っておるのですけれども、その向う側が敵視政策をとっておると見るようなことまで行われてきておるわけですが、それはもう一々あげませんが、こういうようなことについて、なお今でも全然変えるというおつもりはない、そうすれば、中国との関係を打開しようということは、たといあなたが大使級会談を望んでも、あるいは民間貿易協定政府協定に切りかえてもいいとおっしゃっても、これはなかなか実現できることではない。何かやはり歩み得りといいますか、打開のためには日本側においても態度が変化しつつあるということを向う側も認められるようなことにならなければ、私は話し合いが始まらぬと思う。たとえば台湾との関係についてですが、台湾との関係についても、今のような関係をそのまま持続して、やはりもっと密接な関係をとっていごうとされるのかどうかというようなことも大きな問題だと思うのですが、それらの点はどうですか。
  110. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 台湾との関係は、御承知のように、われわれは国交を開いて友好裏にやっておりますので、当然今日以後もそれを続けていくことに、方針としてきまっておることは申すまでもないことで、特に中共をそれがために敵視しているということもないわけでありまして、そういう意味から言えば、むしろ敵視しているということが何らかの誤解ではないかというふうにも考えられますので、われわれとしては、特に態度を変えてという理由はないと思うのであります。
  111. 岡田宗司

    岡田宗司君 大使級会談を開かれるというようなことを言われておるわけですが、若干探りを入れたようにも聞いておるのです。何かこれだけのことを言われるについては、それについて多少手がかりがある、その手がかりが見つかったということから、これを打ち出されたものかどうか。
  112. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 特に手がかりが見つかったということはございません。しかし、御承知のように、政府は静観の態度を続けてきております。静観ということ自体が、中共との貿易関係その他の関係をストップするという意味ではなかったので、適当な時期がくれば話し合いもしていこうと、こういうことであったわけであります。従って、そういう意味においては、話し合いがつく時期には当然大使級会談なり何なりやることも必要でありましょうし、また、過去の経緯を見まして、若干、民間協定等につきましても、もう少し政府が指導すればああいうことにならなかった場合もあり得るのじゃないかというようなことも考えられますので、今後は、政府がもう少し民間協定の場合でも強力に指導していくという立場をとって、あるいはある場合には、今申し上げたような方法——大使級会談というような方法もとれるのではないかと、こう考えております。
  113. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、手がかりがあってこういうことを言われたのではないということになりますと、あなたが大使級会談ということを打ち出され、あるいはまた、民間協定でなくて政府協定を結んでもよろしいと言われたことは、一つのバロン・デッセであると考えてもよろしいわけですか。
  114. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) まあバロン・デッセであるかどうかはわかりませんけれども、今後そういうふうな場合には、日本もそういう考慮もできるものだということを、この際申しておくことがいいと思いましたから申したわけであります。
  115. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうも今までの中国側の態度から見るというと、なかなかあなたのあげたバロン・デッセには応じそうもないわけですが、このバロン・デッセが失敗だとしたならば、次にはどういうバロン・デッセを打ちあげられるのか、一つそれをお聞かせ願いたい。いろいろ構想もあろうと思われるのですが。
  116. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私どもとしては、前から申し上げておりますように、岸内閣としては中共を敵視しておるわけではありませんし、静観をしておりましたのも、静観をしておること、自体が貿易再開その他の役に立つと思って静観をしてきております。今後どういう手を打つかというような御質問は、非常にむずかしい御質問で、私としてもそれほど知恵者でございませんので、なかなか今お答え申し上げる限りでありません。
  117. 岡田宗司

    岡田宗司君 あなたが大使級会談あるいは政府協定ということを言われることについて、台湾政府の方から、それは中国を承認することだというようなことで抗議がきておるというふうなことを聞いておるのですが、そういう抗議は参りましたか。
  118. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 何か、どういう意味で話したかということは聞きにきておりますけれども、特に抗議がきておるというようなことはございません。
  119. 岡田宗司

    岡田宗司君 前の第四次民間貿易協定について、台湾から抗議がきたようないきさつから考えると、あなたが大使級会談を開かれるということは、向うを認めることになるということで、抗議がくるだろうということも予想されるわけでございますが、その際には、こういう抗議は無視をされますか。これは中国との今後の会談等がもしあなたの希望されるように開かれるとすれば、それについて重要な関係を持つことになりますが、こういうような抗議に対して、あなたは適当にこれを処理していかれるつもりであるか。
  120. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 国交を回復しておらぬ国でも、問題によりましては大使級会談をやっている例はあるわけでありまして、そういう意味においては、大使級会談がすぐ承認でありますとか、そういうものにつながるとは考ええておりません。
  121. 岡田宗司

    岡田宗司君 中国との関係について、先ほどから、去年の五月と変らない態度だと、こう言われておりますが、国連総会等におきまして、ことに中国の代表権の問題についても、おいおい支持者がふえてきておる、それからまた金門、馬祖の起りましたときのワルシャワの米・中会談というようなもの、それから最近のアメリカの国内における政治情勢の変化から、だんだん外交方針にも変化が現われようとしておる、特に民主党が非常に勝って、上院の外交委員長がフルブライト氏にかわったということ、フルブライト氏の従来の意見等から見ると、中国に対する考え方というものも、かなり前とは変ってきておるし、またこれがアメリカの国務省の方針にも影響を与えてくることもある、そういうふうな情勢の変化のあるときに、日本が中国に対して今までと同じ態度だということは、これは私はおかしな話だと思うのですが、そういうふうな状況の変化があっても、なおかつ中国に対する基本的態度について検討を加えて、そうして日中間の関係を打開でき得るような方向に日本外交方針を変えていくというおつもりはないですか。
  122. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほど申し上げましたように、岸内閣は中共を敵視していないという意味でありますから、その誤解に基く何か敵視されているというようなことを変えることはなくてもいいのじゃないかと、こう考えております。むろん世界の各地のいろいろな紛争なり事件なりが、歴史的な長い経緯を経た問題でありますので、それらの問題は、やはり歴史的な経緯も尊重しなければ問題の解決にも当れない場合もあるし、またそういう歴史的な関係を飛躍していくわけにもいかぬ場合もありますから、おのずから今後の動き等もあろうかと思います。ただ、日本の与野党ほどアメリカもイギリスも与野党で外交政策が変っておらぬような感じがいたしておりますので、アメリカが直ぐに民主党が大勝を得たから政策が変るとまで踏み切っては考えておりません。しかし、歴史的にいろいろ世界の情勢が変化して参るということは、われわれも考えていかなければならないと考えております。
  123. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) 速記をやめて。    〔速記中止〕
  124. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) 速記をつけて。
  125. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、アメリカの与野党の外交方針が日本ほど違っていない、それはその通りでしょう。しかし、アメリカにおいても中国に対して非常に違った意見がたくさん出てきている。ダレスの方針と違った意見が出てきたということは、あなたもお認めになる。もしそういうような意見が非常に急テンポに今後変るというようなこともあるいは予想されるのですね。たとえば東西頂上会談が開かれたりなどいたしますと、だいぶ変ることも期待されるのですが、具体的に、日本がアメリカの顔色を見ていて後手をいくなんていうことはばかげたことですが、日本日本独自の立場で、アメリカの鼻息をうかがわないで、中国問題を解決していかなければならないと思いますが、あなたは中国が今日非常に発展をして、そして━━承認しない国はたくさんあります、アメリカ初め多くの国が承認しないにもかかわらず、なおかつ世界における最も実力のある国になりつつある。そして今の日本と中国の関係では、日本の将来の国際的な地位について、私はこれは非常に不安だと思うのですけれども、どうもそういうことはどういうふうにお考えになりますか。
  126. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほどから申しておりますように、国際関係というのは、いろいろ過去の歴史的事実もございます。また歴史は絶えず大きく動いて、流れているわけでありますが、それらの十分世界の動きを見ながら、自主的に日本が判断して参る問題だと考えております。
  127. 岡田宗司

    岡田宗司君 自主的にお考えになるなら、ここいらで、すでに中国に対する考え方を変えるという時期に達したと思うのですが、どうでしょう。
  128. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私どもとしては、今そうしたふうには考えておりません。
  129. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういうふうにどうも私ども意見が違うのですから、私どもはやむを得ません。いわゆる国民外交の形で私どもの方で中国に人を送りまして、日中関係の打開について、政府等の方のお考えとあるいは違うかもしれませんけれども、いろいろ話し合いをして、打開のために努力しなければならぬと考えておりますが、これに対しては政府はどういうふうにお考えですか。
  130. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん国際間の交流という意味におきまして、いろいろな立場、いろいろな職業の方々が他国に行かれて親善関係を持たれるということはあり得ると思うのです。従って、政府としましても、それをとめるとか何とかいうことには考えており乗せん。ただ、御承知のようにやはり外交というものは、なるべくでき得れば与野党が同じような共通の広場を持つということは望ましいことなのでありまして、若干日本の現在の事情においては与野党の共通の広場友持つということに相当の困難があるようであります。イギリスなりあるいはアメリカと比べて困難があることは、私どもも感じております。従って、同じような態度でない場合はあり得るかと思います。外交の当事者としてはそういうことは必ずしも好ましいことだとは思いませんけれども、やむを得ない現実として認めていく以外にはないと思います。
  131. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうも政府自民党のやり方は見ちゃいられないので、私どもはやらなきゃならぬと考えて出かけるわけですが、それはそれとして、最後にもう一つお伺いしたいのは、北鮮への送還の問題、これできのうあたり柳公使から大へんきつい抗議のようなことが言われてきているし、新聞によりますというと、李承晩大統領もえらい強いことを言っておりますが、今までのいきさつから考えると、政府やあるいは自由党の部内において、この送還の問題について、よろめきがありはしないかということが考えられるのですけれども外務大臣は、多少まあ向う側が硬化し強硬な態度をとっても、あるいは実力行使をやって妨害しようというようなこともちょくちょく言われているようですけれども、これらを押し切ってやられるおつもりがあるかどうか、その一点だけ一つ
  132. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先般、土曜日に柳公使が私を訪ねて来られましたが、実情の説明を求めに来られたのであります。特に韓国政府としての抗議を申しに来られたわけではまだなかった。私としては、今回の問題は、居住地選択の自由という国際通念に従って日本は処置したのであって、従つて、これは日韓会談をこわすためでもないし、また韓国に非友好的な考え方でやったわけでもないのだ、その点を十分韓国政府の方に御説明願いたい、お取り次ぎ願いたいということを申して別れたわけであります。  その後、新聞紙上等また柳公使、韓国側におきまして、非常に若干の強硬的な態度をとられているものですが、具体的にはまだ何らの意思表示はございません。しかし、この問題は全く居住地選択の自由という知念からやっておりますので、その意図を十分正当に理解されまして、韓国側においても、日韓会談等に支障を来たし、あるいは韓国側が国際社会に対して韓国側の不利になりますような、信用を失墜しますような処置をとられないように、われわれとしては希望をいたしているわけなのであります。日本としては、今申し上げましたような趣旨でこれを行うのでありますから、その通り実行して参りたいと現在考えております。
  133. 高良とみ

    高良とみ君 一つ二つ、時間がおありにならないようですが、アジア方面のことについてお伺いしたい。  従来、アジア協会に対して、外務省は多少の援助をいたして働いておられたのですが、今回それを解組されて、アジア経済研究調査会かをお作りになったようですが、その御構想を一つ伺いたい。どれだけ拡大なさるおつもりなのか、予算面等で約五倍程度のものではないかと見たのですが、その程度でとどまるものでありますかということを一つ
  134. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) アジア協会は解組いたしておりませんで、引き続いてこれを強化し、できるだけ実際的な経済関係の発展努力をいたしていきたい。ただいま御指摘のありましたのは、おそらくアジア方面を主体といたします経済研究機関の問題ではないかと思います。私どもとしましては、かねてやはり外交の基調を十分確立して参りますために、特に経済外交を推進して参りますためには、調査研究ということが非常に重要な問題だと思いますので、外務省等におきましても、研究所の構想を持っておったわけであります。たまたま昨年通産省に経済研究所ができまして、そうして多分予算が二千万円でありましたか、それで十一月から発足されました。そういうものが発足されておりますので、今回の予算がその方につくことになりまして、本年度の予算として一億円追加されているわけでございます。でありますから、そういうことで、アジア経済研究所と申しますか、そういうものが進んで参るわけであります。
  135. 高良とみ

    高良とみ君 そうしますというと、全部通産省にあったものを少し強化なすったという程度であると。外務省から漏れ承わるところによりますると、幾分その同じような性質の経済調査機関を強化なさるように伺うのでありますが、もう少し端的に申しますると、これがもっとまとまつた何億かのものであるという初めの御構想であったようでありますが、これが外務省と通産省とに分れたために、どちらも大した額が取れなかったのではないかということなのでありますか、いかがなのでありますか。
  136. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 外務省は、初めの計画といたしましては、大体三十億くらい基金を積んでもらいまして、その基金の利息を経常費に使うというような形で構想をいたしたのであります。その後、基金設定がむずかしいということで、初年度三億くらいの予算で新しく研究所を作る、特殊法人で作るという案で折衝いたしたわけであります。ところが、たまたま今申し上げましたように、通産省で昨年二千万円で発足した研究所があったわけでありまして、それを強化していくことが適当であるということになりましたので、まあこれも特殊法人として作るわけでありますから、各省が共同でこれを使うということに相なれば適当ではないかということで、ただ研究機関の一億円というものは、まあ私どもといたしましても少いと思いますけれども、二千万円から出発したものが一億円になったことでありますし、さらに今後充足していけばいいのだと思いまして、ことにその研究所は、昨年の十一月から発足しておりますので、来年度あたりは一億円ぐらいで所員を整備し、調査資料を集めるというようなことから始めますと、初年度としては一億円ぐらいでもやむを得ない、しかし将来は、やはりこういう機関は相当多額の費用をかけましてやるのが適当ではないか、所管官庁は通産省でありますけれども、われわれもできるだけ協力して参りたい、こう考えております。
  137. 高良とみ

    高良とみ君 もう一点だけ。そのアジア方面に対する研究調査もけっこうでありますが、実際上の今後のプラント輸出あるいは技術援助の御活躍振りのこまかい点について、大いに期待して拝見したいと思っております。その一部ともいえますかもしれませんが、これは技術をもって国際的な面で外国のと協力を強めていくというので、囲碁の調査、あるいは国際化の問題があるので、日本の技術としては碁の技術というものは大へん向く国際的に買われているようでありますが、伺うところによりますと、この予算がどうしても取れなかったように伺うのでありますが、大臣その点御存じでございますか。ここには碁の熱心な方があって、私どもは実際にはやらないものですから影響はありませんけれども、しかし、その団体は強力な要望を持っているのですが、いかがなものですか、わずかな予算のように伺っておりますが。
  138. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) お話のように、囲碁が国際的に、だんだんなりつつある。ヨーロッパ等においても盛んになっておりますが、特にアジア方面等におきまして、そういう運動競技、あるいはそういう娯楽を通じて親善関係を強めることは必要だと思います。まだ予算措置はしておりませんけれども外務省としては、そういうような面についてのあれは——運動競技、囲碁、そういうようなものを通じて親善関係を結ぶことには——できるだけ力を入れて参りたいと思います。
  139. 高良とみ

    高良とみ君 どうぞ一つ実現いたしますように、本年度の予算は来るべき一年の運命を決しますので、ぜひ御尽力のほどをお願いいたしまして質問を終ります。
  140. 杉原荒太

    委員長杉原荒太君) ほかに御質疑のおありの方はありませんか。——それでは本日の委員会は、これにて散会いたします。    午後零時三十五分散会