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1959-02-28 第31回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月二十八日(土曜日)     午前十時三十七分開議  出席分科員    主査 綱島 正興君       小川 半次君    小澤佐重喜君       加藤 高藏君    保利  茂君       水田三喜男君    岡  良一君       田中織之進君    西村 力弥君       柳田 秀一君    兼務       岡田 春夫君    川崎 秀二君       上林榮吉君  出席国務大臣         文 部 大 臣 橋本 龍伍君  出席政府委員         総理府事務官         (自治庁財政局         長)      奧野 誠亮君         文部事務官         (大臣官房総務         参事官)    齋藤  正君         文部事務官         (大臣官房会計         参事官)    天城  勲君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     内藤譽三郎君         文部事務局         (大学学術局         長)      緒方 信一君         文部事務官         (社会教育局         長)      福田  繁君         文部事務局         (体育局長)  清水 康平君         文部事務官         (調査局長)  北岡 健二君         文部事務局         (監理局長)  小林 行雄君         文部事務官         (文化財保護委         員会事務局長) 岡田 孝平君  分科員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   相沢 英之君     ――――――――――――― 二月二十八日  分科員澄勇者及び成田知巳委員辞任につき、  その補欠として西村力弥君及び柳田秀一君が委  員長指名分科員に選任された。 同日  分科員西村力弥君及び柳田秀一委員辞任につ  き、その補欠として今澄勇君及び成田知巳君が  委員長指名分科員に選任された。 同日  第一分科員川崎秀二君、岡田春夫君及び第四分  科員上林榮吉君が本分科兼務となった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和三十四年度一般会計予算文部省厚生省  及び労働省所管昭和三十四年度特別会計予算中  厚生省及び労働省所管      ――――◇―――――
  2. 綱島正興

    綱島主査 これより会議を開きます。  本日は昭和三十四年度一般会計予算中、文部省所管を議題といたし審査を進めます。質疑の通告がありますので順次これを許します。岡委員
  3. 岡良一

    岡分科員 科学技術振興という立場から文部大臣にまず御所信を承わりたいと思います。  先般予算委員会でも御答弁は承わったのでございますが、何しろ革命的な科学発展は今日世界の趨勢でございますし、しかもこれらの科学技術は、常にその底辺にはきわめて深く広い基礎研究分野が横たわっておる。スプートニクが打ち上げられたといたしましても、やはり航空力学なり天体物理学なり電子工学なり金属材料に関する深い透徹した基礎研究の上に初めて一発の人工惑星が生まれた。こういうような状態でありますので、わが国の科学技術発展せしめるとすれば、何といたしましても特に自然科学における基礎研究分野を、予算的にも施設の上においても、人的にも充実しなければならないと存ずるのでございますが、この点、今年の予算自然科学振興について具体的にどの程度予算が計上されて、かつまたそのうちのおもなる費目についてお聞かせ願いたいと思います。
  4. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 詳細は政府委員から説明いたさせますが、その前に私の所見を申し上げたいと思います。  ただいまお話のございました通り基礎研究の強化という点につきましては、これはいても立ってもいられないほどの切実さを感ずる次第であります。本年度も前文相以来の努力によりまして、かなり予算増加をいたしたつもりでございますが、何分にも前の年度に比べてという意味でありまして、基本的には非常に不十分でございます。私は前にも委員会等で御答弁申し上げました通り、過去におきます日本科学技術というものが、単に文部省研究費のみならず、あるいは陸海軍でありますとか、満鉄その他の国策会社でありますとか、あるいはまた財閥でありますとかというところの研究費に非常に大きくささえられて参ったという観点から見ましても、文部省研究費増加という点につきましては、一つめどを立てて急速に拡充する必要があるのじゃないかと考えておりまして、そうした方面の検討を重ねておる次第でございます。今年度の問題についてお話を申し上げますと同時に、今後またそうした方面について努力をして参りたいと思いますので、格段の御支持なり、また御援助なりをお願いいたしたいと思います。
  5. 緒方信一

    緒方政府委員 三十四年度予算に計上されております基礎研究の面の経費でありますが、これは初等中等教育の面から大学の面までございますが、おもな事項を拾ってこれを合せますと、金額にして約百五十三億でございます。そのうち初等中等教育の分が約十三億、内容理科教育設備整備、それから産業教育施設整備等でございます。  なおその上の段階の大学についておもな費目を拾って申し上げますと、大学一般的な運営費の面におきましては、教官研究費というのがございまして、御承知の通り、これは一般的な基準的な研究のための経費でございますが、昨年度に比べてこれを十億ほど増額いたしました。三十三年度の四十億に対して五十億に増額計上いたしております。今申し上げましたのは国立大学教官研究費でございますけれども一般国公私立を含めまして、そのほかの研究費等も含めて、特殊な研究に対して特別に配分いたしております科学研究費を十五億四千六百万、昨年度に比べて一億四百万ばかり増額して計上いたしております。  なおそのほか、在外研究費、これは国立大学の若干の優秀な教官を海外に派遣しまして留学させる経費でございますが、これも三十三年度に比べて五千万増額して、一億六千万計上いたしております。なお一般的に申しまして、国立大学研究のための施設設備充実に対して、約四十五億ほど計上いたしております。  それから、三十二年度以来行なっております理工系学生の増募を年々はかって参っておりますけれども、三十四年度においても一千名近くの理工系学生を増募いたしますために、六千万円計上いたしております。これは主として学生経費であります。  それから、そのほか私立大学助成の件でございますが、いろいろございますけれども、合せまして六億三千二百万円計上いたしております。そのほか、民間の学術研究団体に対する助成でございますが、これは九千二百万計上いたしております。  さらに三十四年度において新しく実現いたしたいと思っておりますことは、大学院の担当の教授に対して特別な手当を支給したいということで約八千八百万、これは大体七%程度でございますけれども、計上いたしております。以上申し上げましたのが大体おもなる項目であります。
  6. 岡良一

    岡分科員 それでは理工学部についての一講座あたり年間研究費は、どれだけになっておりますか。
  7. 緒方信一

    緒方政府委員 これは、大学院を持っております大学については、講座研究費ということで配分いたしておりますが、これは単価として、来年度三〇%引き上げまして、約百四十三万くらいになっております。
  8. 岡良一

    岡分科員 自分のことを申し上げるのは恐縮ですが、しかし一番確実だと思いますので率直に申し上げまして、私は昭和四年から七年まで京都大学研究生をやっておりました。今度また昭和二十九年から現在も私は金沢大学研究専攻生をやっております。ところが、昭和の初年には、私ども研究室では実は伝票一枚で外国図書も買えた、また必要な外国の純粋な試薬も買えた、またウサギはむろん無償で提供されたということで、乏しい助手俸給俸給として、非常に意に満ちた研究ができた。さて昭和二十九年に入ってその後昨年まで努めて研究しておりますが、今度はウサギ自弁で買わなければならない、試薬自弁で買わなければならない、外国図書自弁で買わなければならないということで、従って、講座にいる研究室諸君助手諸君が、学位をもらったら早くいいサラリーにありつきたいというあせりも見えるし、研究そのもの内容もなかなか十分にいかない、非常に格段な相違を発見して悲しんでおるわけなんですが、百四十三万円という一講座研究費は、昭和初年あるいは十年くらいの大学の一講座あたり研究費に比較して、現在の貨幣価値に対してどのくらいになるのか、そしてこの百四十三万円というのは何十パーセントくらいになるのかという点をお答え願いたい。
  9. 緒方信一

    緒方政府委員 戦前講座研究費に比較して、戦前に一講座あたり約一万円のものを現在の貨幣価値に換算いたしますと、三百倍にしても三百万円ということになるわけでございます。私どもといたしましては、せめてとりあえず戦前水準まで引き上げたいということで、年々努力して参っておりますけれども、三十四年度におきましては、先ほど申し上げましたように、全体といたしまして十億増額いたしました。講座研究費単価といたしましては三〇%ふやしたということで、先ほど申し上げたように百四十二万円ほどになったわけであります。そこでその三百万ということにいたしますと、まだ二倍以上にいたさなければ戦前水準に達しない、かような計算に相なるわけであります。今後引き続きまして増額に努力いたしたいと考えております。
  10. 岡良一

    岡分科員 この大学研究室入ろうという志を持っておる者は、とにかく生活は最低限度でも自由な研究がしたいということが、やはり研究室へ入る一つの大きなあこがれなのです。ところが今お聞きすると、戦前の半ばにも満たない。事実研究室の実態を見ると、教授アルバイトをする、研究生は落ちつかないですぐいいサラリーを目がけて、家庭の事情からいい研究生研究室の座を去らなければならない。そこで大臣にお伺いをいたしますが、大臣自然科学研究には格段努力をしなければならないとおっしゃっておられますが、今年度予算はまだその努力の結果が現われておりません。私はこのようなことで一体いいのかということを痛切に感じておるのでございます。これも私の経験ですが、ちょうど一昨年私は、ウィーンで、スプートニクが夜空をかすめるのを見ました。それから約三、四日くらいでワシントンへ寄った。ところが、アメリカ国会は、スプートニクによって先を越されたということから、私の滞在中に、急速一億七千五百万ドルの予算を可決した。大学教授処遇改善あるいは自然科学を学ぶ学生に対する奨学金等に重点的に注ぎ込むというように、一億七千五百万ドルをとにかくその次の六月までの予算として討議するというふうに、おくれまいとする努力を、国会政府は事実予算的努力で直ちにやってのけておる。先進諸国がなおかつこのような努力を傾けておるという事実を見たときに、戦前研究費にも満たないので、事実上こうして教授アルバイトをしたり、研究生研究室を去らなければならないというような状態に放置されておるということは、私は非常に遺憾だと思うわけでございます。この際大臣は、科学技術会議のメンバーとされて、基礎研究の問題については特に重要な御発言をしていただかねばなるまいと思うものでありますが、何とか、まずこのような一講座当り研究費の問題などについても、すみやかに、二年なり三年の間に十分充実できるという年次的な計画を策定して、日本基礎研究充実をはかるという方向に御努力を願えないだろうかと思うのでございますが、この点、いかがでございましょう
  11. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 科学技術会議促進をはかる上に、実質的な努力をされたお一人の岡さんからそういう御意見を承わりますのは、私は非常に力強く思うのです。科学技術会議発足を前にいたしまして、私自身の心づもりとして、省内でも漸次準備をいたしておるのであります。科学技術会議発足に当って、いろんな応用面の問題は出て参ると思いますが、それをこなしていくためにも、基礎研究というもののおくれを取り戻して、新たなスタートをしていくということは非常に大切でありますので、当面それに一体どれくらいのめどを置いて、それをどれくらいに実現していくかということを、いろいろな面から、これはただ、多々ますます弁ずというだけでは世間も納得いたしませんし、力にもなりませんので、いろいろ過去の実績でありますとか、現在のいろいろな状況等を考えまして、基礎研究充実についてのプランを考えておる次第でございます。お話のありましたように、おくれの部分があまりにもひどうございます。そうして戦後、とにかく、少くとも過去において注ぎ込んできたくらいの金額の回復は、当然やらなければならぬわけであります。それについての促進が十分でなかったことは当然認めなければなりませんので、私は、財政計画の面であまり無理も言えないかと思いますが、やはり相当無理な程度の案でも、ある年度の間にある水準まで持っていくということをめざして考えて参りたい、それをこの科学技術会議において科学技術振興基本計画を定めていく場合の一番基本的なスタートにしたいと考えておる次第でございます。
  12. 岡良一

    岡分科員 それから、世上しばしば伝えられている点について、なお具体的に事務当局にお伺いいたしたいのは、たとえば、同じ事業年次の方でも、公務員として文部省にお入りになった方と、大学にとどまってその道権威者になられた方と、その処遇格段差異があるということが伝えられているのでございますが、この給与較差状況は、ごく簡潔にどのような状態になっておりますか、また、それをどのような形で補正する御努力をしておられるのか、その点について。
  13. 緒方信一

    緒方政府委員 大学教官に対しましては特別な給与表が適用されておりまして、これは一般行政公務員に比較いたしますと、その水準が高くなっております。でございますから、同じ学校を卒業しまして両方に分れて進みます場合に、俸給表としては最初教官の方が高い水準にございます。ただ、問題のありますのは、行政職員管理職につきます場合に管理職手当がございます。教官にはつかないわけであります。たとえば本省の課長になりました場合には、むしろ実質上行政職の方が高くなるということが出ております。これに対しまして、全般的に大学教官待遇改善しなければならぬことは痛切に感じている次第でありまして、実は三十四年度予算要求の際においても、この俸給表そのものを改訂して全体的に引き上げたい、かような努力をいたしたわけでございますけれども財政上その他いろいろな事情で来年度は実現を見なかったのであります。先ほど申し上げましたように、ただ、大学院を担当いたします教授に対しましては若干手当を出す、この点をまず差しあたり実現して、これも教官待遇改善の一助になると思いますけれども、さらに将来は、ただいまもお話のございましたような点にかんがみまして、全体的にこれを引き上げる努力をいたして参りたい、かように考えております。
  14. 岡良一

    岡分科員 特定なお方の名前を引用することは差し控えますが、同じ年次大学を出て政府官署へ入って、現在次官である。一方は大学にとどまってその道権威者として定年に手の届くところまできている。その方の現在の給与はとても七%の手当ではカバーできるものではない。私が得ている数字では格段差異がある。四〇%以上の差異があるように私見ておるのですが、そういう点、私の資料の不備な点かもしれません。一昨年東大の茅さんあたりソ連へ出かけられて、ソ連科学者に対する政府処遇なんかを報告しておられたのを見ましても、格段差異があるようです。そういう点、講座指導者として教壇にとどまって安んじて指導に任じ得られるだけの処遇改善も、当面非常に大切な問題だと思うので、その点あわせてお願いしたいと思うのであります。その次の問題は、官公私立大学の純粋な自然科学、医学、工学、薬学、住物、動物という自然科学教育分野と、でない分野との卒業生比率はどういうことになっておりますか。
  15. 緒方信一

    緒方政府委員 純粋な自然科学とそうでない分野との比率というお話でございますが、大学専攻分野の中に教員養成あるいは芸能といったようなものがございます。これはいずれにも属しませんので差し引いて申しますと、国公私立を含めて自然科学系が三五%、そのほかの人文社会分野が六五%、かような比率に大体なっております。ただこれは、国立大学だけを引き出して申し上げますとちょうどその逆でございまして、自然科学の方が六五%、人文科学の方が三五%、こういう結果になっております。それからなお先ほどお話のございました教官待遇の問題でございますけれども、同じ大学を出まして両方に進んでいきます場合に、その本俸におきましては最後まで教官の方が高いわけでございます。ただ行政職管理職についた者については、先ほど申しましたように管理職手当がつきます。これは大学学部長、学長にはつきますが、その点で若干行政職の方が高い場合があるわけでございますけれども管理職手当のつかない、たとえば文部省視学官とかは、専門職でございましても、これは教官の方が高い水準でございます。しかしまあ全体としまして改善をはからなければならぬことは御指摘通りだと存じております。
  16. 岡良一

    岡分科員 私はこれも非常に適切な例だと思うので申し上げるのですが、なぜ人工惑星の打ち上げでアメリカが負けたかということについて、アメリカの新聞の論説の中にこういうことが指摘されておる。それは一九五一年には理学、テクニシャン系統の高校、大学卒業生は、アメリカでは大体七万人をこえておった。それが一九五五年には半分程度になった。ところが逆にソ連の方では、一九五一年には三万であったものが六万をこえるというふうに完全に反対な状況が起ってきた。日本でもその道専門家がやはりそういうことを書いておられるようですが、それにつけても、何と申しましても科学振興といったって要は人の問題であります。しかも人の質と量の問題であります。現に最近新聞紙等原子力局が発表しておるのを見ても、ことしの年中にはCPうが動く、それからおそくとも再来年の初めには国産第一号炉が動く、動力試験炉もやがて動くであろうし、あるいは原子力発電所も三十七年か八年にはできる。原子力の要員だけでも、少くとも昭和三十七年には二千名では足りない。原子力分野だけでもそういうことです。いわんや近代科学としての原子工学なりあるいは高分子化学、その他いろいろな分野における研究者あるいはテクニシャンが非常に足りないだろうと思う。なるほど八千名養成計画というようなものも拝見はいたしておりまするけれども、しかし人の養成という問題で、今御指摘のようにパーセンテージの問題よりも、特に国立では割合に自然科学方面が優位しておるが、私立へいくとそうではないというこの較差、こういう隔たりというようなものは、国立大学あり方として、国の要求に対するあり方として考え直していかなければいかぬのじゃないか。私立大学はなるほど自然科学分野の科を設けるということになりますれば、設備費なりその他非常なお金がかかるわけなので、ついついホワイト、ハンドを相手にしようという傾向にいくことも無理もないだろうし、ここに入ろうとする子供たちの気持にもそれがあるかもしれませんが、これはやはり大きく矯正をして、そうして理工を中心とする新しい学問的体制を再編成していくという必要が、非常に大切な問題として起ってきておるのじゃないかと思います。こういう点について文部大臣いかがお考えでございましょうか。
  17. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 先にも申しましたように、戦後のおくれが非常に大きかったために、何もかも不十分でございますが、私学方面につきましてもできるだけこれの充実をはかって参りたいと思いまして、一つには私学振興会方面で現在も私学が立ちいきますための援助をいたしますとともに、別にまた今回の予算案でも、あまり十分な金額ではございませんけれども私立大学研究費助成といたしまして、また理科研究助成といたしまして、金額を計上いたしておる次第でございます。金額につきましては局長の方から申し上げます。
  18. 緒方信一

    緒方政府委員 私立大童に対しましての助成費につきましては二種類ございます。私立大学研究設備のための補助金といたしまして二億四千一百万円がございます。それから理科特別助成補助金という項目がございます。これは主として学生教育のための設備につきまして補助をいたすのでございまして、これが三億九千一百万円、このうちで理科系の新設の場合に対しまして特に高率の補助をいたしましてそれを助成していく、それらが総計して三億九千一百万円でございます。
  19. 岡良一

    岡分科員 私はその程度のことでは現状を若干手直しする程度であって、時代の要請にはそぐわないのじゃないかということを実は申し上げておるわけです。そこで、たとえば施設の問題ですが、私の手元に参っておる資料によると、東大工学部の現在の各講座施設のうち、明治年代のものが三十数%、大正年代のものが三十数%、昭和年代のものも戦後のものはきわめてりょうりょうたるものであるというのです。しかも現存のものを補修するだけでも百四十億という予算が必要じゃないかということを私は聞いておる。せんだって科学技術委員会東大理工学部に行ってみまして、現地の声もいろいろ聞いて参ったのですが、いわば日本の総本山の一つであるところの東大工学部施設内容があれでは、まことにうらさびしい限りだと思うのですが、その施設費についても、先ほどのお話のように全国的に分散されれば、いつになったらあの工学部施設がまっとうなものになるかわからないというような心配があるわけですが、施設充実格段にやはり努力しなければならぬ。と申しますのは、現に昨年の九月にジュネーブで原子力平和利用会議があって、私たまたま湯川博士と同じホテルでいろいろ話も聞いておった。出席しておられる方の結論の一つは、三年前の平和利用会議では、日本の学者の発表するアイデアはなかなか各国に対しても誇るに足るものがあった。ところが三年後の今度の会議では、もうとても日本アイデアでは追っつかない。というのは一方ではどんどん国家資金を投じて大きな近代的な実験施設を作り出しておる。粒子加速機一つ見ても大へんなものを作っておる。アメリカにしても、西ドイツにしても、スイス、フランスに行ってみても大へんなものを作っておりる。日本にはその十分の一の規模のものしかないということでは、なかなかこの方面の実験的な、ほんとうに自信の持てる研究はできない。こういうような点を考えまして、科学技術発展進歩は日進月歩であるだけに、新しい施設を要する。新しい施設はまた莫大な予算を要する。こういう事実を率直に認識をして、そして科学技術発展を、まず基礎分野においてはかろうとする努力が足らないと私は思う。施設の問題について大臣の御抱負をお聞きいたしたいと思います。
  20. 緒方信一

    緒方政府委員 計数の問題でありますから、私からお答えいたします。ただいま御指摘のございましたように、基礎科学振興のために施設設備の更新、充実をするということが非常に必要でございます。先ほど御指摘のございました教官研究費、それから施設設備、さらにその研究に従事する人の陣容の問題、数の問題、こういうものが相待って、研究が進んでいくかと存ぜられるわけであります。施設設備につきましては従来の古いものを更新するという一つの問題と、もう一つ日新月歩科学進歩に対応いたしまして、高性能な非常に新しい、新鋭な研究装置を備えていかなければならぬ、こういう二つの問題があると存じております。この両面に対しまして、従来も努力をして参ったのでございますけれども、なお非常に不備な点が御指摘通り残っております。更新をしなければならぬ状況につきましては、ただいまもお話がございましたように、やはり戦前等に、それも非常に古い時代のものがなお更新されないで残っているという状態は現にございます。これにつきましてなるべく更新をしていきたいと思って、予算を今日まで計上してきているわけであります。三十四年度予算額といたしましては、先ほどもちょっと申し上げましたけれども施設設備合計いたしまして四十六億一千七百万円という計上をいたしておるわけでございます。この中には今申し上げました更新をする経費、それから新しく設備充実していく経費両方を含んでおります。もちろん原子力研究のための施設設備というものを含めてございます。今後なおこの努力は継続していかなければならぬと思っております。
  21. 岡良一

    岡分科員 最後に大臣にお伺いをしたし、また要望申し上げたいのですが、今事務当局のお方のお話を聞いても、まだまだ日本科学技術振興に対する、基礎分野に対する文部当局の施策は弱体であると思います。しかも特に私どもが遺憾に思うことは、やむを得ない事情もあると思いますけれども日本の技術は基礎分野研究がなぜ怠られておるかというと、一方民間産業においては、ともすれば安易について、外国の技術導入を無条件に急いでおる。そのことはここ四カ年の外国の技術導入のために支払った対価を見ましても、四十億、七十億、百十億、百五十億というふうに伸びておる。日本自身の外国に輸出した技術なんかは五億そこそこであるというふうに、非常なアンバランスであります。しかも民間の研究費は、たとえばアメリカの統計なんかを見ますと、一九四一年における民間産業の研究投資は大体二十億ドル台です。一九五一年にはこれが四十億台に上っている。五五年には七十億ドルの台に上っている。ところが日本における民間の研究投資というものは、今日まだ三百億ないし四百億の間で、横ばいの状態といってもいい。それだけに日本の民間産業における研究活動というものはおくれておればおるほど、やはり国が格段努力をするということは、単に基礎分野のみならず、国の大切な仕事になってきておる。そういう観点からも、国としては一つ格段努力を払っていただきたいと思うのです。  今るる申し述べたように、科学技術というものが革命的な状態発展している。何しろ一トンのウラニウムで石炭三百万トンのエネルギーを出そう、核融合反応も二十年後には実現されると、平和利用会議では各国の権威者が言っておる。そうなれば、これは手工業時代から蒸気機関が発明されて資本主義時代に入ったというような、産業革命以上の大きな変革がやがて予想される、それも科学技術進歩によってこのような社会革命、産業革命が予想され、おそらく思想の革命さえも予想されるだろう。こういうような大きなシュトウルム・ウント・ドラングの時代に、日本がただ拱手傍観の態度にあるということは、特に日本科学技術基礎分野における立ちおくれに対する、ただこうやくばりの対策に終始しておるということでは、将来の世代に対して相済まないと私は思う。そこで大臣に特に明確な御所信をお伺いし、また私の要望申し上げたいことは、かりに日本が輸出第一主義というけれども、何と申しましても輸出の競争は技術の競争になっているというのが、明らかな現状でございます。従いまして日本が経済建設計画を立てる、たとえばお宅の党が、お宅の政府が経済建設計画を立てられるならば、これを裏づけるためのやはり科学技術発展計画、特に技術をささえる人の養成計画、こういうものを一本にした計画を立てていくということでなければならぬ。つまり今後の新しい経済建設計画というものは、科学技術発展とそれに伴う人の養成というものとが不可分な問題として、これに裏づけられた経済計画でなければなるまい、もうすでにそういう時代に立ち至っていると私は思うのでございますが、これは大臣としても十分御考慮願いたいと思うこの点一つ大臣の所信を承わって、私の質問を終りたいと存じます。
  22. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 現在の五カ年計画におきましても、その間における科学技術陣容の不足という点からいたしまして、理工系卒業生八千人増の計画を含めてその計画を進めておる次第でございます。ただお話のございました通り、まだまだ非常に不十分でございます。私は今日までの間、この不十分ななりに幾らかずつ増していくという態度で参りましたのを、まことに不満とするという御趣旨は全く同感でございまして、構えて今日の現状を分析いたしまして、将来に対しましてどの程度に飛躍的に充実するか、科学技術会議発足を控えて、文部当局としても一案を持ちたいと考えております。
  23. 綱島正興

  24. 上林山榮吉

    上林分科員 残念ながら時間の制約があるようでございますので、私はきわめて要点だけを二、三お尋ねしたいと思います。  まず文部大臣にお尋ねしたいのでございますが、御承知のように日本教育は、国あるいは公共団体、こういうような方面が、ことに高等学校以上は約半分、それ以外の私学がこれまた約半分というふうに、大体経営主体が二分されておるということになっておるのでございますが、もしそれ、国が財政的に非常に恵まれておれば、義務教育制度のいかんにかかわらず、高等学校、大学まであまねく教育の機会均等があるようにしてやるのが、最高の理想でありますけれども、これが財政的その他の都合でできない、こういうことになりますと――私は決してここであなたの言質をとろうなどという考え方は持っておりません。すなおな気持でお答え願いたいと思うのでございますが、そうしたようなことから考えまして、国の教育私学に半分だけ経営上委任をしておるのだ、こういうようなお気持になりますかどうか。それとも国は国でこの程度やるんだ、これが適当なんだ、私学がやっておるのは、あれは勝手に教育機関を設置してやっておるのだ、こういうような御感覚に立ちますか。まずこの前提をぜひお聞かせ願いたいと思います。
  25. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 きわめて重要な御質問でございますが、誤解のないようにお聞きとりを願いたいのでありまして、私は教育の問題につきまして、財政が許すならば教育はすべて国の手でやる方が理想だというふうには実は私考えておりません。それは今日の憲法及び教育基本法の建前におきまして、教育というものは、国民社会というものそれ自身の中に教育方針というものを生み出して、それを一つには民主制度下におきます政府指導、助言、援助し、教育委員会が実施をするという形でやっておるわけでありますが、しかしそうした形で、つまり国民社会教育に関しまする意見の最大公約数を今申しましたような形で打ち出して実施をする、これはそれで十分民主的な教育ではございまするけれども、しかしその中に最大公約数からはずれては参りますけれども、特に自分のところは宗教教育を強調いたしたい、その中でもキリスト教の教育を強調いたしたい、あるいはまた特別にそのほかの面を強調いたしたいという教育方針を持つ国民的グループがあるわけでございます。従いまして私は、やはり教育というものはもし財政さえ間に合ったならば全部国及び公共団体でやる、従いまして今日は財政の都合からいって半分を私学に委任をしておるのだという考え方は、実は持っておりません。私学というものはもっと重要な使命を持っておるのでありまして、教育基本法、憲法の精神から、教育が片寄らないということからは、いい面と悪い面と出てくるわけでありまして、そういう面で出た教育方針に従ってやる。私どもはできるだけ国立、公立という面での努力をいたしますけれども、しかしそれだけでやはりほんとうの国家国民のための教育というものがよい方向に行くかというと、私は足らぬと思います。一つの宗教教育という例をとってみただけでも、私はわかると思うのであります。従いまして、私学私学としての意義がある、決して国の委任を受けているのではないのだ、ただ国といたしましたならば、それならばあれはもうそういう独立の意義があるんだから勝手にやれといってほうっておけばいいというのではございません。それは、今申し上げましたような国総体の面からいきましたならば、最大公約数的な教育と、それから特殊な私学としての見識を持った教育と、二つ合わさって全きを得るのだという考え方から申しますならば、国の委任じゃない、独立の意義を認めた私学に対しても国が財政上の余裕があったら十二分の援助をいたしたいと考えております。
  26. 上林山榮吉

    上林分科員 大臣が非常に念を入れて御答弁になっておるようでございますが、私は、国家あるいは公共団体が、あるいは私学がそれぞれ教育をしておることは、国家社会の役に立つ人間を養成するということが最高の目標になっておるのだ、こういうように理解をいたしておるのであります。そこで、法律論というようながた苦しい議論でなしに、だれがやろうとすべての国民に教育の機会均等を与えてやることが第二段としては正しいことなんだ。いいことなんだ。そこで大臣にお尋ねしたのは、できるならば国家や公共団体が財政その他の事情が許せば、もっと教育機関を増設しあるいは充実してもいいはずだ、しかし、そこにはいろいろな意味での制約が確かにある、そこで、なるほど歴史的に考えて私学私学なりの特徴を持ち、それぞれの目標を持って生まれたものではありますが、私学に対する法制的なあるいは財政的な援助をもっと積極的にやっていいのだということにもなる。これはどちらが進んでいっても、最高の目標は国家有用の人材の養成にあるのである。かたくなな考えを持たないで進んでいっていただきたいものだという意味で申し上げたのであります。要は、大臣はなるほど沿革もお考えになっておられるようでありますが、同時に現段階における実情を中心としてお答えになっておられるようでありますので、それも確かに一つの考え方ではございましょうけれども、国民的な要望という点から考えますと、私の意見もまた一応御参考にしてもらわなければならぬのじゃなかろうかと考えます。そこで、もっと具体的にお尋ねしたいのでございますが、時間の関係で制約せられておりますから結論だけ申し上げますと、その基本的な感覚はどうであろうとも、文部省がどういう手続、どういう経路をとるにいたしましても、私学というものに対してもう少し行政的な指導、助言ができるような体制を整えてもらいたい。もちろん、私学の特徴、私学の自由、こうしたものを侵せよというのではございません。そういう意味合いにおいて、今私どもが、たとえば私学振興関係の、あるいは私学全般のいろいろな問題、先ほどの御議論にもあったような科学振興の問題などで、文部省にまず参りますと、担当の課長すらおらない。一課長が、私学の問題だけを専門にやるのではなくて、その一部の事務として取り扱っておられる状態である。だから私は、国の力あるいは私学の力で教育を二分して国家の要望に沿うように教育をしているのでありますから、先ほど申し上げた感覚から、あるいは実際から申し上げて、一課長が、しかも専門にもおらない、そういうことから考えて、この際思い切って、ほかの局は廃止しても、私学局という一局ぐらいを創設して、そうして私学指導助言、あるいはその他の要望を積極的に手助けしていく、そして両々相待って、国の費用、公共団体の費用、私学自身の経営、これが一体となって日本教育振興をはかっていくということ。単に機構を改革しただけでは決してこれはよくならないのでありますけれども、その前提として文部省私学局ぐらいを設置するぐらいの良識と勇気があっていいんじゃないか。決して私学の干渉になりません。積極的に指導助言していく、こういう意味においてやっていくならば、当然です。私は今まで文部省に参りますと、当然の仕事は国あるいは公共団体の学校の仕事だ、私学はちょこっとお手伝いをしているだけなんだ、その他よりそのことを見てもそれがよく現われている。折衝の過程においても、われわれはそれをよく体験しております。だから、局長ができたところで決してそう急によくはなりませんが、私学に対する一つの意気を与える、いわゆる独立心を与える意味においても、大臣はもう教育に非常に御理解のある方でありますから、大臣の在任中に、あるいは来年の予算編成を前に、この際一つ研究を願って、それが適当であると思われたならば、一つ私学振興のために、いな日本教育振興のために一役買っていただこう、そういう意味で、その過程におけるいろいろな具体的な質疑も試みたかったのでありますが、そういう意味で一つ御善処願いたい。大臣、これは一つぜひ御善処願いたいと思います。
  27. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 私学振興の問題はきわめて重大でございまして、実は、私ごとを申し上げてはなはだ恐縮でありますが、私も、戦後の教育界の混乱を見ながら、私学充実というものを真剣に考えなければならないと思いまして、昭和二十四年に私学振興会の問題が出ましたときに、きわめて指導的に問題を取り運びました一人でございます。その後も、私学充実については私も十分考えて参りました。ただいま上林山委員のお話のございました点につきましても、十分に留意をいたして検討することにいたします。先ほど私の申しましたのは、私学というものをむしろ私は非常に高く買って、その趣旨において私学というものには独特の値打があるのだということで申し上げたのでございますが、その後なお補足して話のございましたように、私の申したような意味で公私立それぞれの意義を持ちながら、国全般としては大学教育を受ける者は一体どれくらいあるか、高等学校教育を受ける者はどれくらいあるかということを目算しながら、国公私立でそれぞれ分担をしながら教育需要を満たすということにしておりまするのは、上林山委員のお話通りであります。従いまして、私学が十分に充実して参らなければなりませんので、今日までの間でも、文部行政の面で、あるいは大学の審議会でありまするとか、その運用の問題についてもいろいろな意見がございます。ただ、今日のところ、皆さん御承知のように、国公私立を通じて、大学については大学学術局、また小中学校、高等学校については初中教育局というふうに分けましてやる方が、私学だけ取り上げてやるより便利じゃないかという趣旨でやっているわけでございます。お話のございましたように、私学の特性というものを考えて私学局というものを作ったらどうかという御意見につきましては、御質問の趣旨を生かすように考えながら十分に――とにかく、私学振興という点を一体どうしたらいいかという点に主眼を置きまして、果して私学局を、今までのような大学大学局というような分け方でやった形がいいか、御提言のようにいたした方がいいかという点についてはよほど考えなければならないと思いますので、十分に検討さしていただきたいと思います。ただ、その検討の過程におきましては、私学振興のためにという御趣旨は、十分に尊重して考えるつもりであります。
  28. 綱島正興

    綱島主査 約束の時間になりましたから……。
  29. 上林山榮吉

    上林分科員 だいぶ節約してお尋ねするのだけれども、答弁の方が長い関係もありますので時間が経過して済みませんが、第二点として私がお伺いしたいのは、入学試験拒否斗争に関する文部省の見解を伺いたいということでございます。  二月の十八日から京都において高等学校の生徒の入学試験の願書を受け付けることになったわけでありますが、高等学校の先生がその願書の受付を拒絶して、校長が面くらった、こういう報道が流れておりますが、これは事実であるかどうか、これが第一点。その第二点は静岡でございますが、静岡の高等学校の先生が入学試験の拒否斗争という名目で、いわゆる試験の監督もしない、採点もしない、あるいは選考もしない、こういうように入学関係の一切の仕事をやらない、こう言っておるということでございますが、これが事実であるかどうか。先般、昨年でございましたか、東京都でございましたか、これに類似した入学拒否斗争が行われて、父兄並びに生従、こういう方面に非難の声が起り、一般の人々からも非難の声が非常に起ったために、中途半端で中止したというような例も聞いておりますが、今日さらにこういうことが繰り返されているとすれば、これは実にゆゆしい、教育破壊の、あるいは教員としての資格のないやり方である、こういうふうに考えますが、きわめて微妙な時期に達しておりますので、文部省の見解を一つ伺い、そういう事実があった場合は善後処置をどういうふうにされるつもりであるか、緊急な問題でありますのでお尋ねいたしておきたいと思います。
  30. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 実は、今お尋ねの京都、それから静岡、さらに大阪等においても高等学校の入学試験の事務を拒否するということが伝えられておるのでございます。ただ、まだ入学試験に入っておりませんので、現実にそういう事態にならぬように私どもは期待しておるわけでございます。実は、昨年もお話のようにそういう事態がございましたけれども、世論のきびしい批判と、父兄の同調が得られなかったという点で断念したようないきさつもございますので、私どもといたしましては、本年も入学試験事務の拒否というような事態の起きないように念願し、またそういう指導をしているような次第でございます。万一起きた場合はどうかというようなお尋ねでございますが、これはお話通り教職員としてあるまじき行為であると思います。また公務員としてもとるべき措置ではないと思っておりますので、さような場合については、厳重な措置を講ぜられることを私どもは期待しておるのでございます。
  31. 上林山榮吉

    上林分科員 ただいまのお答えによりますと、そういう気配はあるが、まだ具体的にそういうことが起っていない、こういう話でありますが、二月の十八日には京都で入学願書の受付を拒否したという報道が流れておりますが、そういう事実はないのかどうか。それから善後処置というのは、言うまでもなくこういうようなことをやって、大事な子供に迷惑をかけ、心配をしておる父兄に迷惑をかけるような教員は、これはもう公務員法から言うても、教員自身という人格的な問題から言っても、教育の場を去っていただかなければならぬ人々であることは言うまでもありませんが、私の言う善後処置というのはそれとは別に、もしそういう事態が起ったならば、だれがかわって試験を実施するのかということが一点。これらの処置に対して、教育委員長あるいはその他に、文部省から入学試験に対してはそういうことを起さないようにという事前の処置を何かとっておるかという点でございます。これをまずお答え願いまして、お約束がありますので、あと一回だけ質問したいと思います。
  32. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 ただいまの京都の入学試験の願書を拒否したという報道につきましては、私どもまだ入手しておりませんので、至急に調査いたしまして、そういうことのないように十分指導を徹底するようにして参りたいと考えております。  なお、こういう事態が起きないように文部省はどういう措置をしたかというお尋ねでございますが、これにつきましても教育会議等におきまして、十分そういうことの起きないように趣旨の徹底をはかって参っておるわけでございます。それからさらにそういう事態が起きた場合におきましては、父兄や生徒たちにできるだけ迷惑のないような適切な措置がとられるように、文部省としても十分教育委員会を指導して参りたいと考えております。
  33. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 私補足してお話を申し上げたいと思いますが、ただいま初中局長から話のありましたような趣旨で指導いたしておりまして実はおとといも教育長協議会を開いてそういうことのないように朝から会議をしたのでありますが、もしただいまお話のようなことでどうにもならないということであれば、当然文部省はそういう御意見だけれども、実はこうなって困っておるんだという話が出ると思いますが、出ませんでしたところを見ますと、お話のありました願書の拒否ということも、その後引き続いてずっとその状態であるんではなしに、おそらく入学試験の準備は割合に進んでいるんじゃないかと思うのでありますが、ただいま御指摘がございましたので、これは大至急なお念を押して調べます。
  34. 上林山榮吉

    上林分科員 この問題は時期的にきわめて重要な問題でありますので、多分そういうことはないだろうなどという考え方でなしに、急速に処置をせられることがいいのではなかろうかと思いますので、大臣にも御善処を願っておきたいと思います。  そこで、やはり入学試験に関連のあることでありますが、私鉄が賃金値上げのストを春季闘争の一環として計画をしており、それがちょうど入学試験の時期に際会する。こういうことが起らないようにわれわれは要望したいのでありますけれども、不幸にしてそういうことが起った場合、入学試験に間に合わなかった、約十万人の人々が高等学校とか大学の受験のために、私鉄ストによって非常なる不利益を受ける、これに対して学校当局なりあるいは教育委員会なりその他がいわゆる善後処置をして、入学試験の機会を失うことがないように、適当な処置をとっておかなければならぬと思うのであります。こういうことに対して、これは大臣からお答え願いますが、おそらくそういうことになるのではないかと私は取り越し苦労をいたしております。そういう点から見解を承わって、入学試験関係者の生徒並びに父兄に安心感を与えるような処置をこの議場を通じてお話願いたいと思います。
  35. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 ただいま御質問のございました点は、非常に私どもも憂慮いたしておるところでございまして、大学、高等学校、中小学校を通じまして、この二月の下旬から四月上旬にわたりましてずっと試験が続いておるのであります。お話のございましたように、多い日になりますと十万をこえると思われる時期がございます。従ってこれは万一の場合に非常に痛ましい結果を来たしますので、文部省といたしましては労働省、運輸省等に対しまして、これに関します善処方を要望いたしますと同時に、昨日も閣議でも一緒に相談をいたした次第でございます。労働大臣お話によりますと、そういう点を考慮して労働組合方面等にもいろいろ話をしている結果といたしまして、あまり大きな問題にならずに済むのではないかと思う、しかし現実の問題としてはいろんなことが考えらおますので、労働省その他はそれぞれいろいろな面で御苦心を願いますと同時に、ただいま御指摘のございました万一あった場合におきまして、一生涯をかけて真剣にやっております受験生の措置に対しましては、できるだけ当人たちに痛ましい不利益のないように善処方を――実はこれは学校等もございまして、一律に指図もできませんけれども大学に要望いたしておる次第でございます。
  36. 綱島正興

  37. 西村力弥

    西村(力)分科員 まず第一に、先ほど岡委員科学振興の問題を取り上げられましたので、それに関連したお尋ねを一ついたしたいと思います。  今年度予算を拝見いたしますと、理科設備補助として五億円計上なさっていらっしゃいますが、少々でもその額がふえたことはけっこうだと思うのですけれども、実際この理科教育振興法に基く設備費補助費というものは、むしろ理科教育を阻害しているような事情が現実にある。それはどういうことかと言いますと、一つは学校のほしいものを買うという全面的にオープンのものではない。購入すべき品目にある程度の制限がある。これが第一。  第二番目は、この理科教育振興法に基いて購入した備品は、常に現在員数を備えていなければならぬ、こういう点であります。この第二点が最も悪い影響を与えておるわけですが、結局無理をして買った理科設備、これは当然こわれるものです。しかしこわれたからといって放置しておくと、文部省の方から来る指示に基く教育委員会の監督が許さない。それでこわれたものをどうかして補充しなければならない。ところがその補充ということは、新しく自治体に負担をかけることになります。それで結局理科の主任は機械器具の保存ということにだけ専念をする、他の教員もそれを使いたがらない、こういう実情にある。この点を改めない限り、せっかくの金が全然死んだものになってしまうという現実なのです。この点を一つ文部省としては十分に考えられて、実効の上る措置をとらなければならぬのじゃないか、これが私の質問ですが、そういうことは結局理科教育振興法の施行令というものを少し変えてくれるとできるのじゃないか。もちろんいいかげんに手荒く取り扱ってこわしては悪いのですが、しかしこわれるということはやむを得ないことなんです。ところが、こわれるとあとがおそろしいからそれを使わないということになっておる。その点に関する見解はどうですか。
  38. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 これは一般に国の補助金でございますので、国の補助金の適正化の法律もございますので、員数あるいは単価等についてはもちろん査定をいたしておりますが、しかし今お話のようにこれがこわれてはいかぬという意味ではございませんで、検査したときに品物がないと困るという意味でございます。それが有効に使われて破損することはもちろんあり得ることだと思います。ですからこういう点についてもし規定上お説のような点に不備がございますれば、これは改めて参りたいと思います。要は理科教育の実験、観察等ほんとうに振興に役立つようにということでなければならぬものと思うのであります。ただあまりぜいたくなものを買われては困ると申しますのは、学習指導要領がございますので、その指導要領の基準に合ったものであってほしいということなんです。これが要点でございますので、そうぜいたくなものを買われますと、やはり全体の予算の中から必要なものが整備されないという結果にもなりますので、この点は教育上必要なものでとどめていただきたいと思っております。
  39. 西村力弥

    西村(力)分科員 そうすると破損はやむを得ないこれは当然ですが、その場合に補充されることを望むけれども、補充されていなければならないという工合に厳密にはやらないことにしよう、こういう工合に考えて指導なさいますか。
  40. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 常にそれが保存されるのは望ましいけれども、こわれた場合はそれもやむを得ないと思っております。
  41. 西村力弥

    西村(力)委員 その点に関する財政当局の奥野さんのお考えはどうですか。
  42. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 今伺いますと、国が補助した対象が毀損した場合にどうなるかという問題でございます。補助した対象がなくなりますと、当然また新しいものが必要になってくるわけでございますけれども、その場合にさらにそれについて国の補助をするか、あるいは全額地方団体が財源を出してそれをまかなっていくか、それはそのときの事情によることだろうと思うのであります。常にそういう場合があるわけでございまして、国がそれだけの配慮をしているわけでございますから、当然それにかわるものを持続していくことが望ましいわけでございます。また一般に自巳の財源でそれをまかなっていくのが普通だと思いますけれども、国が重ねて補助することも何ら差しつかえないことだ、こう思っております。
  43. 西村力弥

    西村(力)分科員 あなたにお尋ねしたいのは、理科教育振興法に基く補助金に見合う財政需要をそれに見ているかどうか。それから、文部省当局としては五億円なら五億円を計上して何年間に理科設備を完備するという計画を持っている、しかしそのことは一ぺん補助を出して設備させれば、そのまま補充しても何でも設備が維持されるということを前提としておる。ですからそういう場合には、地方財政を見ていらっしゃるあなたの方でも、当初補助金を受ける場合の地方の財源は今までの教育費の中から食い込むしのではなく、新しく見るという方向をとる、それからずっとそれを維持するための措置も見るというような考え方でいかないと、年度計画といったってちょっとできないことなんです。これは文部省としては、今年は何個つぶした、あとは六千個なら六千個つぶしてよろしいということになるだろうが、それには自治庁の財政の裏づけというものと両々相待って補充し維持するということにならなければならない。そこのところの連携をはっきりしてもらいたい。
  44. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 西村さんは非常に詳しいと存じますが、御承知のように国が補助金を出します場合には、見合いの地方の財源が必要でありますので、そういうものにつきましては毎年度予算の編成と並行いたしまして地方財政計画を策定して参っております。その所要の財源の中には、補助金に見合う地方財源は当然計上しているわけであります。従いまして全体としてはそれだけのものは地方団体で捻出することが可能だという姿になっているわけであります。それでは個々の団体にそれだけに見合う財源が与えられているか、こういう問題になりますと、これは御承知のように各団体別に基準財政需要額を算定いたしているわけであります。個々の団体の基準財政需要額を算定いたします場合に、設備費のようなものにつきましては償却費のような形で計算をいたしております。理科教育の点につきましても、設備について地方団体が負担していかなければならぬようなもの、そういうものは耐用年数とにらみ合せまして償却費の形でそれだけの額を算入いたしているわけでございます。従いまして新たに設備を設けますときには、一時に多額の金が要るわけでございます。しかし個々の設備、いろいろな種類のものがございます。備品などもあるわけでございますが、全部そういうものが償却費のような形で算入されているわけでありますので、重点的にかりに補助を受けます場合に、そちらに財源を使っていく、他の部分については翌年度に回すというようなやり方で、全体としては弾力のある運営がなされている、こう考えているわけであります。要するに、全体として地方財政計画の中に見込むと同時に、個々の団体については償却費の形で算入している。個々の団体がそれをどう運営していくかということは、そういうものがたくさんあるわけでありますので、弾力的にそれを運営しているのだ、こう申し上げることが適当かと考えているわけであります。
  45. 西村力弥

    西村(力)分科員 学校にからかさを備えつけたり、駅に備えつけたりしますと、大へんりっぱですけれども、それが間もなく全部消えてしまう。これは補充の措置が全然考慮されていない、実行されていない。その例と同じで、設備費補助なんかについては、十分にそれが維持されるための財政措置というものが常に裏づけされていかなければ、それはそのときだけのものになってしまう。こういうことについては十分に連携をとっていただかなければならぬのじゃないか。そういう点については事務当局ばかりではなくして、これは学校の設備だけに限らず、設備というものは腐朽し、破損する、こういうことがあるのですから、一回やったらそれが維持されていく、それだけの効果を現わす、こういう具合に考えて、裏づけの措置を十分に方針として打ち合せを願わなければならぬと思いますが、これは大臣も反対ではないと思いますが、その方針を伺っておきたいと思います。
  46. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 もう西村さん御承知の通り理科設備につきましてもフラスコみたいなほんとうの消耗品は別として、顕微鏡みたいな永続的にいくようなものを設備としてあげているわけであります。しかしそういうものもこわれますし、いろいろな問題があるわけであります。それで維持ができますように財政的に十分考えて参らなければならぬことは申すまでもないところでありまして、ただいまもそういう面での配慮はいたしていると思いますが、なかなか十分でない点もあるかと思います。せっかく国といたしまして理科教育振興という見地から、これだけのものは備えさせたいという設備につきましては、当然それにあるべき損壊、遺失等につきましても考慮に入れて維持のできるように十分検討いたして参りたいと思います。
  47. 西村力弥

    西村(力)分科員 次に、この前もちょっと問題として取り上げてあったのでございますが、市町村の教育長に対する給与費の補助、この問題であります。市町村の教育長の給与費を引き上げたいというお気持はそれでいいし、私たちも反対ではない。ところが現実には非常に低い給与にあるから金を出すのだ、こういうことを仰せられますが、しかし金を出せばそれでよろしいとただ割り切るわけにはいかぬ。そういうこじき根性というもので政治を貫いてはならないと思います。その点について現状が非常に低い給与にあるという、なぜそういう工合にあると支部当局は考えるのか、どうです。
  48. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 これは地方財政計画の中でも、また交付税の単位費用の中でも十分な手当はしておるわけでございます。しかし現実に一万円以下の教育長が約四分の一にも及んでおりますので、これは文部省としてはこのまま放置できないというので、実は国庫補助によって給与待遇改善をはかりたい、こういう趣旨でございますが、要は結局地方財政が苦しいからだと思うのでございます。
  49. 西村力弥

    西村(力)分科員 それで奥野財政局長にお尋ねしますが、私の調べですと、市町村の教育長に対して普通の給与を行い得るだけの財政需要額を見積っておる。その計数はどうなっておるか。それからあなたが言えるかどうかわからぬけれども、あなたが地方財政を扱っている限りにおいて、こういう工合に市町村教育長に補助金を出すことに対して、地方財政を扱っている立場から見てそれが好ましいか好ましくないか。純粋に考えて、地方自治というものを扱っている立場から見て好ましいか好ましくないか、どうですか。
  50. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 御承知のように、市町村の教育委員会に要します経費も基準財政需要額に算入いたしておるわけでございます。その場合に、それらの関係の経費は、人口一人当り幾らというような形で算定を示しております。その金額をきめます場合の額として、三十三年度においては教育長の給与年額を五十二万八千円、こう見込んでおったわけであります。私たち人口十万の都市におけるあるべき費用、こういうものを基礎にして単位費用をきめておるわけでございます。そこにおいて五十二万八千円、こういう数字を用いておったわけであります。今回教育長に対しまして国庫補助金が交付されることになりました関係もございまして、そういう金額を基礎にしてこれを七十七万四千円に引き上げるという措置をとろうとしているわけでございます。従いまして、相当程度給与額を引き上げるというようなことが単位費用決定の基礎の中に入っておるわけでございます。なお地方自治の立場から考えた場合に、こういう補助金が好ましいか好ましくないかという問題でございます。現在六万人程度補助職員が地方におるわけでございます。私たちは人にひもをつけることはなるべく避けてもらいたい、こういう気持は持っておるわけでございまして、地方自治といいますか、地方団体の自主的な自治的な運営をできる限り伸ばしていくという点から考えますと、あまり人にひもをつけることは好ましくないと思います。しかしそれだけの立場でものごとをきめるわけには参りませんので、いろいろな角度から総合的に判断しなければならないと思いまして、総合的に判断した結果、あえて教育長の給与に対して補助金を交付すべきだ、こういう建前がとられたもの、こう思うわけであります。そうしますと、それはそれとして、今後この補助金をどう運営していくか、これは非常に重要な問題でありまして、その運営に当りましてもできるだけ地方自治体の自主的な運営がそこなわれないように注意をしてもらいたい、こういう希望は今日でもなお持っておるわけであります。
  51. 西村力弥

    西村(力)分科員 人口給与でもってひもをつける、こういうことは好ましくないということは、当然のことであろうと思うのであります。ただこの場合、あなたのお立場としては十万単位の市町村で五十二万八千円という金を見込んでおるということならば、これを一四・八で割ったにしても、三万四千円の給与は出せるはずなんです。そういう工合にあなた方は責任を持って、自信を持ってそういう工合に見込んでおるはずだ、だからそれが支給されないという場合においては、あなた方の立場からいうと、この財政需要額に見積っておるのだから、そのワク内で当然やるべきだという工合に勧奨する、こういうことが一番方向として正しいのじゃないか。そういう勧奨を今までなさったことがあるかどうか。また三分の一の補助金が出たときに、その地方の自主性をそこなわないような運営の方式を考えなければならぬとおっしゃったが、そういうようなことをどうなさるのか。
  52. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 自治庁といたしましては別段教育長の給与を幾らにしなければならないというようなことは、申しておりません。基準財政需要額にそう算入しておるから、必ずその通り支出しなければならないというわけのものでもございませんし、そういうような考え方で運営しておるわけでありますから、要は教育長にどういう人を得るかという問題でございまして当然こういう問題については文部省が責任を持って指導されておる、こう思うわけであります。
  53. 西村力弥

    西村(力)分科員 文部省が責任を持つといいいますけれども、市町村の教育委員会の仕事というものは、市町村の固有の仕事であります。教育長であるから文部省が責任を持つというのじゃない、また市町村の教育委員会の職員でもこれは地方公務員です。文部省が責任を持つというような言い方は私は妥当でないと思う。教育委員会の教育行政のあり方なんかについての指導、助言、援助ということは、文部省が責任を持つだろう、しかし固有の事務として、ここにそれが地方公務員という立場にある限りは、責任の所在というものは自治庁にある、こういうふうにいわなければならぬと思うが、どうですか。
  54. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 お示しのように地方公務員給与につきましては、国家公務員給与基準でありますとかあるいは地方の生活の実態でありますとか、そういうものを基礎として条例で定められておるのであります。またそういうものを基礎にして給与が支払われますような財政措置をしていかなければならないわけでございまして、そういう点につきましては、もとより自治庁は当然責任を負っておるわけであります。個々の職種につきましてどういう人を充てることが適当であるか、こういう問題になってきますと、自治庁があまり事こまかく言いますことは穏当でない、こう考えてそういう意味において申し上げたつもりであります。
  55. 西村力弥

    西村(力)分科員 ところで今の奥野局長の御答弁によると、自治庁としては、十分に、普通に支給できるだけの財政需要額を見積っておりますから、こういうことを自治庁から希望するはずはない、こういう趣旨のことを御答弁なさったのですが、そうしますと自治庁と文部当局においては、この市町村の教育長の給与補助については、十分な話し合いということはなされている、こういう工合に私は理解いたしますが、それでよろしいでしょうか。
  56. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 地方の負担を伴います予算の措置につきましては事前に十分話し合いをする建前になっておるわけでございますけれども、この点につきましては事前に打ち合せをいたしておりません。
  57. 西村力弥

    西村(力)分科員 それでは大臣にお尋いたしますが、今はっきりと事前の打ち合せがないと言われた。いやしくも地方自治体の固有の事務にかかわる問題について、自治庁当局と了解をつけないでやるということは明らかに政治的意味を持つ、こういう工合に私は断ぜざるを得ない。そういう工合に、その自治体のあり方を侵犯するような重大な問題に当って、それを責任を持って担当する部局あるいは官庁があるにかかわらず、一方的にそういうことをきめていくということは、まことに好ましくないことであると思う。大臣のその点に関する見解を伺いたい。
  58. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 今自治庁の政府委員から答弁のございましたのは私よくわからないのでありますが、教育長の地位というものは非常に重要でありまするので、従前から基準財政需要の上において教育長の給与をたしか助役並みというのを標準にして見てあったと思うのであります。これを見込んで、現実に支給されるように希望するということは、文部省が前々からとってきた態度でございます。それがどうしてもやってもらえない、やってもらえないとしようがないじゃないかということで今回の予算要求をいたしたわけでありますが、私は実は最近でございまするし、それからまたこまかい実態は知りませんけれども政府部内において、予算要求の過程において、自治庁長官の全然知らないものを文部大臣と大蔵大臣だけで予算をきわめるなんてことは、考え得べからざることでありまして、政府部内において十分に検討の結果、そして閣議を経てこの予算をお願いをしておるわけであります。政府一致の見解でございます。
  59. 西村力弥

    西村(力)分科員 それではお尋ねしますが、この三分の一補助をやる場合は、実支給が固まったのを見て三分の一を支給する、こういう工合にやるのか、こちらの方で期待する何万円というような額がある、その三分の一をやるからそれに見合うだけのものを出していけ、こういう工合にやるのか。あなたの方のこの補助金をつけた考え方からいうと、五万なら五万という額を設定してその三分の一を補助する、だからそれに見合うだけの三分の二を出して五万にせよ、こういう工合になさるようになるのですか、いずれの措置をとられるのか。
  60. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 予算の積算といたしましては、町村の場合に二万円を基礎にいたしておりますし、市の場合には三万五千円を基礎にいたしておりますので、私どもといたしましては、町村の場合には少くとも二万まで引き上げるように、市の場合には三万五千円まで引き上げるようにというような指導をいたしております。しかしながら補助の実際に当りましては、実支給額を見た上で検討いたしたいと考えております。
  61. 西村力弥

    西村(力)分科員 それから奧野財政局長に聞きたいのですが、六万人の補助職員がおる、その中で教育長のような性格を持った地方公務員給与補助を出しておる例がございますか。
  62. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 教育長のようなという趣旨がよくわからないのでございますが、非常にたくさんな種類にわたりまして補助金が交付されております。
  63. 西村力弥

    西村(力)分科員 教育長のようなということがわからないということですが、私の言わんとするところは、教育長というものは、法の示す通り教育委員であることが基礎条件です。教育委員は議会の同意を得て任命されるのですから、これは特別職です。特別職であることが基礎条件で教育長になる。ですからやはり教育長というものは、事務そのものは一般職の事務をやりますけれども、基礎資格というものは特別職である。そのところから、これは一般職と規定づけないで、特別職と規定づけるべきである、こういう考え方を持つのです。文部省としてはこの点に関しては反対のようでございますが、反対ならば反対の理由を一つ明確に言ってもらいたいと思う。どうもこの前の答弁ではまだ私としては納得できない。
  64. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 教育長は教育委員の中から互選されるわけでございますけれども、もちろん教育長としては一般職でございます。ですから一般職の教育長に適当な人を選ぶという趣旨から、待遇改善をするという趣旨でございます。
  65. 西村力弥

    西村(力)分科員 仕事は確かに一般職的な仕事をやっておりますが、それだけで片づけられない複雑な性格をこれは持っておるわけです。教育委員にならなければ教育長になれない。特別職であることが基礎ですよ。その人が教育長になるべき基礎なのです。だからやはり特別職と規定つけるのが正しいのじゃないかと思うのです。特別職でないという工合になれば、教育長に対してはリコール請求というものは不可能なわけです、一般職であれば。解職の陳情なんかはできるでしょう、憲法に基いてできるでしょうけれども、自治法に基くリコール請求というものはできないということになってしまう。ところがあの人は教育長として不適任だという場合には、やはり教育委員として不適任であるとしてリコール請求が可能になるわけです。そう考えていかなければならない。であるからやはり特別職であるという工合に、基礎の資格というものが大事になってくるのじゃないかと思うのです。またその他の場合においても――こういう場合は一体どうなりますか。市町村の教育委員のある人がある政党に所属した、教育長がある政党に所属したということになってくれば、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の何条かに基いてこの人は直ちに解職されることになる。職を失うことになる。一般職であるとするならば、一つの政党に所属したために解職されるということは当然あり得ないはずなのです。一般職の規定としては明らかにそれは対抗ができるのです。ところが政党支持の選択の自由という国民の基本的権利を教育長が行使して、同一政党に教育長が加入した場合においては、当然その人は解職されることになってしまう。それじゃ一般職ということは言えないと思います。その点はどうでしょうか。
  66. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 先ほどから申し上げておりますように教育長は特別職である教育委員の身分と、同時に一般職である教育長の身分を併有しておるわけです。教育委員としては御指摘のように政党に加入できますけれども教育長としては、これは当然一般公務員法の適用を受けますので、政治活動等の制限は厳重に受けておるわけです。ですから今回補助しようとするのは委員に補助するのではなくて、一般職である教育長の職務遂行に支障のないような待遇を与えたいという趣旨でございます。
  67. 西村力弥

    西村(力)分科員 今局長は重大な発言をしましたが、一般公務員として政治活動は相当制限を受けておる、これはわかる。ところがそれがあたかも政党に所属することが制限されておるような発言でありますが、特別職であろうと一般職であろうと政党に加入するあるいは支持するということは完全に自由でなければならないはずです。今の答弁は舌足らずだと私は思う。それは取り消すか訂正されるべきだと思う。これは重大で、国会において一般職の政党加入が制限されるような工合に考えられてはおかしいじゃないか。もちろん一般職の公務員は政治活動に対しては制限がある。その点は一つあなたのために御訂正を願った方がいいじゃないかと思うわけです。
  68. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 私は政党加入のことをいったのではないので、一般職である教育長につきましては政治活動の制限を一般公務員法によって受けておる、こう申し上げたのでございます。
  69. 西村力弥

    西村(力)分科員 私の質問は政党に加入した場合に当然解職になるという問題を今提起してやっているわけです。政治活動の方をいっているのではございません。だから教育長が政党に加入する国民の基本的な権利を行使することによって。当然先にその政党に所属していればその人は失職しなければいかぬ、教育委員の身分、教育長の身分というものを失わなければならぬ。それでは一般職とはいえないんじゃないですか。一般職の人は政党加入は自由だ、加入したことによって何らその身分、待遇に差別をつけられるべき筋合いのものではない。ところが明らかに教育長というのは政党加入によって差別をつけられる。教育委員という身分を失えば教育長という身分はなくなるのだから、明らかにこれは差別をつけられておるのですよ。だからはっきりこの人はそういうところからいっても特別職だ。もちろんあなたのいうように特別職と一般職を併有しているという言い方もありますけれども、基礎的な立場はやはり特別職であるのだ、こういう工合に考えなければならぬじゃないかと思う。あなた方はただ埋届もなくこういわれることに対しては、私はちょっと納得できないのですが、それではこの条項はどうなるのです。地方教育行政の法律、これの第二節の第十六条の四項、ここにはこう書いてある。「前項の委員のうちから任命された教育長は、当該委員としての任期中在任するものとする」これはまあいい。「ただし、地方公務員法第二十七条から第二十九条までの規定の適用を妨げない」こういう特別規定を設けておる。これは何であるか。これは一般地方公務員の分限を規定した条項だ。これを適用することを妨げないと特別にここに打ち出している。だからこの人は特別職であるが、しかし一般職という性格を持っておるからこれの条項の適用を妨げない、こういう特例を設けているのです。あなた方のように一般職であるというならば、教育長は何もこんな分限の規定を適用することを妨げないという条項を付する必要はない。地方の一般職の公務員であるとするならば、こういう特例を設ける必要はない。この特例を設けているということは、確かに教育長は特別職である、こういう立場を前提としてこの条文は作られておる。
  70. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 一般職である教育長は一般職の法令の適用を受けることは当然でございます。しかし先ほど来申し上げましたように、教育長は同時に教育委員でもありますので、この面においてもこの規定を明確にしたわけであります。
  71. 西村力弥

    西村(力)分科員 それは御都合主義の答弁というものじゃないですか。教育長には一般職としての分限というものは適用にはならないという性格であるから、特別に摘記してここに特例というものを規定づけておるのです。明確にするためとか、そんなようなことだけのばくとした考え方で法律が作られたらいかぬと思います。明確にするのは何であるかというと、その前提は特別職であるからということであるから明確にしなければならぬという意味でこの特例を作った、こういう工合になってくるじゃございませんか。
  72. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 ですから先ほど来申し上げますように、一般職である教育長については、これは一般公務員法が適用になるわけであります。この点についていささかも問題はない、ただ教育長が教育委員であるという身分を併有しておりますので、その教育委員の身分に応じて、ここに何らかの制限を加えなければならない、それで一般職と同じような分限の規定を適用したわけであります。
  73. 西村力弥

    西村(力)分科員 そうしますと教育長に対して地方公務員法の身分上の規定というものはどれだけ適用になるか、これだけが特別に適用になるという工合に摘記しておるのですが、その他は適用がないと私たちは考える。あなたの考えだと一般職として広範な地方公務員法の規定が分限あるいは服務に関して適用になるが、しかしその身分柄がちょっとこんがらがっておるものだから、これだけを明記したのだという工合になりますが、それよりも一般職だから一般職としてこんなものを特別に摘記しなくても、あなた方のいうように一般職であるということならば、黙っておっても全部適用になるわけなのです。一体どのくらい適用になりますか。どこどこが適用になりますか。地方公務員法の服務分限、そういうものをどこどこの条項が教育長に適用になりますか。
  74. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 教育長につきましては先ほど来申し上げますように、公務員法に関する規定は全部適用になるのであります。ただ教育委員の身分を併有しておる点において、ここに書いてありますように「前項の委員のうちから任命された教育長は、当該委員としての任期中在任するものとする」、ただしこれこれの適用を妨げない。任期の規定をここに設けたわけでございます。
  75. 西村力弥

    西村(力)分科員 そうしますと教育長は、一般公務員の解職の理由のその職に適しないというようなそういう判定でも解職されることがあるわけですね。地方公務員の場合はそういうような簡単な理由によって、御都合主義によって解職するというようなこともあり得るという工合になる。そうすると教育委員である教育長が地方公務員法の御都合主義的な、ふさわしくないという、ただそれだけのことによっても解職されるということになってくると思うのです。それでは大へんなことになってしまう、いやしくも教育委員たるものが、その職員たるものが、その職にふさわしくない、適しないという判定だけで解職されるということになると大へんなことになる、どうでしょう。
  76. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 そういう意味で実は任期中は教育長は有任するということが前段に規定されておるわけであります。ただし地方公務員法の二十七条から二十九条までの適用を妨げない。だから一応形としては教育委員の任期中は保障されておる、しかし一般職である教育長をかねておりますので、その面においては二十七条から二十九条の規定の適用がある、こういう趣旨でございます。
  77. 西村力弥

    西村(力)分科員 任期中在任するものとするというようなことは、任期というものをただ決定しただけである、その間在任することが決定的なものであって、その職にふさわしくないなどという、そういうような条項は適用できないというようなことになるような規定じゃない、こういうようなことは議員の任期だろうが何年なら何年というような工合に全部ただ時間的な期間というものを規定しただけであって、その間相当の問題があっても在任しておられるのだというような保護する意味の規定では絶対ない。私の表現がはっきりしないかもしれませんが、教育委員として在任期間中その教育長として二年間あるというようなことは、決してその間に特別の保護を与える規定ではない。ただ期間を指定しただけである。それを今のお話ですと、そういうふさわしくないなんというようなことで解任されるということを防ぐために任期中在任するものとすると規定してある、こういう法文の解釈は非常に御都合主義で、何でも言うておけといったような答弁に受け取られてならない。
  78. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 ともかくこの規定は普通の一般職でございますと、任期がございませんから、ある意味では任期以上に相当長期間にわたっても教育長の職にあるわけですけれども、本件につきましては任期がきまっておりますので、少くとも任期中は身分が保障されると見るのが妥当だと思うのです。しかしその場合でもからだが弱くて教育長の職務にたえないような場合があるわけですから、その場合に解任の規定をしませんと教育長の職務が円滑に行われない、こういう趣旨であります。
  79. 西村力弥

    西村(力)分科員 二年間在職するという規定は特別の保護を加えておるのではない、こういう工合に考えていらっしゃいますか。
  80. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 任期のある公務員につきましては、任期中は身分保障があると見るのが妥当だと思っております。
  81. 西村力弥

    西村(力)分科員 それは一般的な立場からの保護であってここに規定するのは、もうその職に適しないと判定するときに解職されるなんということを一切排除して教育長の身分を守るのだという規定ではないということですね。一般的な公務員の身分保障、そういう条項は適用になるでしょうが、そういう工合に考えていかなければならぬのじゃないかと思うのです。どうですか。
  82. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 先ほど来何べんも申し上げておりますけれども教育長は、教育長としては一般職である、しかし同時に教育委員という身分を併用しておりますので、教育委員としては任期があるわけです。ですから任期中は教育長の職にある。しかしながら身体の故障等で教育長の職務にたえ得ない場合がある。この場合には原則ならば任期のある者については絶対に身分保障があるわけですけれども一般職をかねておりますので、この場合にやめていただかなければならぬ事情も起きると思うのです。その規定をここにただし書きとして置いたわけでございます。
  83. 西村力弥

    西村(力)分科員 その点に関しては、これは純粋に考えるということをせずに、文部省一つの政策として、これは政府の政策であろうと思うのですが、市町村教育長に補助金を出すことにしたからいやがおうでもその理屈づけをやっておる、こういう工合にとれるのですが、それじゃ話を転じて奥野財政局長どうですか。特別と一般職を併有しておるというような地方の公務員、こうういう者に対する給与上の前例がありますか。
  84. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 この補助金を交付しております職員の中で、特別職の身分を持っておる者があるかどうか承知していないのであります。
  85. 西村力弥

    西村(力)分科員 それはあなた知っておって言わないのだ。そんなものはあるはずはないのです。どうですか。
  86. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 今ここでの御質問でございますので調査していなかったのであります。五、六万人おりますが、もちろん一般職の身分を持った者については補助するのが通常の例だと考えて、特別職の身分を持った者が絶対にないかどうか、そこまではまだ調べておりませんので知りませんということを正直にお答え申し上げたわけであります。
  87. 西村力弥

    西村(力)分科員 それではこの三分の一の補助を出すようになれば、財界需要額の見積りはどうしますか。
  88. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 先ほどもちょっと申し上げましたように、今まで見ておりました所要額よりも補助金を基礎にして算定して参りますと、その額が大きくなるわけでございますから、大きくなった額で見ておるわけであります。市町村に対しましてもそれだけのものが、補助金と基準財政需要額を合せまして多く保証されるということになって参るわけであります。
  89. 西村力弥

    西村(力)分科員 次にこの前地方財政法の第二条の問題についてお伺いをしましたが、国の施策をもって地方に財政負担を転嫁してはならない、こういうことでございましたが、現在低い給料しか支給できないというのが地方の実情で、やむを得ずそれでやっておるわけです。ところが今誘い水のように三分の一の補助を出すということになっていけば、これは明らかに地方自治団体としては、それに見合うだけの努力をせねばいかぬ。相当無理をしなければならぬ事情があるにかかわらず、そういう国の施策が上からかぶさってくれば、自主的な判断以上に財政不如意の手元をやりくりしてこれに見合う措置をしなければならぬ、こういうことになってくる。この件に関しては地方財政法第二条から見て相当疑問があると思うのですが、いかがですか。
  90. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 三分の一の国庫補助金が交付されるようになる、その基本額は従来の実績よりも若干高いところに置かれるということになって参りますと、教育長に対する給与水準が引き上げられて参りますことは、これは当然だと思います。またそのために補助金を交付されるものだと、こう考えるわけであります。しかしながらそれに見合う地方負担につきましても、必要な財政措置をいたしておるわけでございますので、負担を転嫁するというふうな問題は何ら起らない、こう思っておるわけでございます。問題は自主的な運営をそこなうかどうか、こういう点でお話しになっているのだと思います。もとより自主的な運営ということを重点に考えました場合には若干影響を受けるだろうと思います。また影響を受けて給与水準を上げさせようということがねらいでございますので、国の施策というものと地方自治の健全な運営というものと両者の調和をどこに求めていくかという問題にほかならないのだと思います。そういう意味で今後これをどう運営していくか、その運営の仕方によっては御指摘になりました地方財政法第二条に正面から抵触するような問題になりかねないけれども、しかしいわゆる補助金を出したらすぐにそのことが地方財政法に対して違反的な行為になるんだ、こうは考えていないのであります。
  91. 西村力弥

    西村(力)分科員 大臣にお尋ねします。政策としてこういうことをやられると正しいとお考えになると思うのですが、基本的に考えてお金を出せばそれで事がうまくいくんだという工合に政策をとられることは、これは危険を伴う。この点に関しても地方自治というものの本旨を曲げない立場で十分に自治庁当局とその点について打ち合せをしてもらわなければならぬ。あなたの方で金を出せばそれでよろしいというような考え方でおる。理科教育振興の問題を見ましても、多く出して理科教育がうまくいっておるだろうと思ったって、実際かぎを締めてこわさないようにこわさないように保存してというようにいっておることもありますし、また校長に対する管理職手当を無理をして前国会で通しましたが、今校長さんたちは俸給をもらうとどうやっておるかわかっておりますか。職員の手前、工合が悪くてこそこそとお金を勘定しておる。そういうことが全く職場の一体をくずしておる。管理職手当によって校長のほっぺたを札束でひっぱたくようなことで教育の劾果が上るだろうというのは大きな間違いなんです。ああいう金を出すために職場の一体性というのははっきりくずれている。そういう点を相当考えていただかなければならぬ。  またこの間の新聞を見ますると、外国の留学生が不満で帰るようになっているということですが、今度も外国学生の招致の費用が盛られておりますが、少しは増額になっていますけれども、それをほんとうに効果あらしめなければならぬじゃないか。せっかく金を出しても不満で引き揚げるというような工合になってくる場合がある。  その点地方自治のほんとうの姿をくずさないように、こういう地方自治に関連する文部省の施策なんというものは慎重を期していただかなければならぬと思うのですが、大臣その点いかがでございますか。
  92. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 私は補助金を国で出しますのがひもつき――先ほど自治庁の方からひもつきという言葉を使われましたが、私は遺憾千万だと思います。ひもをつけるつもりで出しておるわけでも何でもない。また金によってつるというようなことは全然考えておりません。これは西村委員もよく御承知だと思いますが、今日都道府県の教育長はなかなか忙しい仕事をしております。これは片手間で――一般教育委員諸君は仕事を持たれて名誉職的に片手間でできるかもしれませんが、今日都道府県または市町村の教育長といったような人たちは、なかなかむずかしくて非常に骨を折ってやっておられるわけであります。それでありますればこそ基準財政需要の計算につきましても十分な手当を組んでもらえるような基礎計算でやっておるのでありまして、自治庁の方で現実にこれが手に渡るように自治体を指導していただきたいということを今までも思ってきたし、今後も思っておるわけであります。ただ現実に地方財政の現状から見てお金が回らないというので補助金を計上いたした次第でありまして、私はこれでひもをつける気もないし、特別に金でつる気もないし、真実教育長には相当な給与を払うべきもので、自治庁もそういうふうにおそらく苦心して御指導になられてなかなかむずかしいのだと思いますが、文部省もそのつもりでやっておるわけであります。  校長の管理職手当につきましても、校長には当然それくらいのことがあってしかるべきものだ。大体ほかの管理職にある人たちには出ているのでありますから、むしろ何か教育の面にこだわりがあって、教育の面だけ何か特別に管理職手当も遠慮しなければならぬような考え方はおかしいと私は思うのであります。どうか一つ校長先生方も正々堂々と月給の勘定をしてもらいたいし、また教員の人たちも校長先生がそれだけの手当をもらうのは、ほかの管理職と同じように当然であるという考えでやってもらいたいと私は思っておるのでありまして、そんな変てこなこだわりがあるのが当りまえみたいな教育界というのは、非常に遺憾千万だと私は思う。西村先生のような有力な方の御協力を願って、ぜひ一つこだわりのない明朗な教育を実現したいというのが、心から私の念願しておるところであります。  ついでに私は自治庁の方にもお願いをしたいのでありますが――これは自治庁に言っているのじゃないので、西村さんに言っているのですが、自治庁がさっき言ったような金を出したら何かひもつきで特別にやるのだというような自治庁の方の答弁を感心してばかり聞かないで、どうか一つわれわれのようなさっぱりした気持がほんとうに地方自治の上に実現できるように格段の御協力をお願いいたしたいと思います。
  93. 西村力弥

    西村(力)分科員 自治庁の地方自治を守るという考えは、日本の民主主義を守る基礎である。文部省教育を守る、その教育は民主主義を守る教育でなければならないという点からいって、自治庁が自治体のほんとうの姿を守るということ、これはウエートが大事に考えられる。それは当然だろうと思うのですが、ただ大臣のお説を拝聴しますと、管理職手当をもらってもこそこそしないで当然のものとして受け取れ、教員もそれをうらやむなとおっしゃいますが、そういう管理職手当をよけいにもらって、それが当然の形になる教育の場というものはどういうものか、官庁と何ら変らない。官庁と何ら変らない雰囲気と構成、そういう中で教育なんというものは行われるはずがない。あなたの言われるのはそれと何ら変らない、官庁システムのような形によって教育の場が運営されることを当然のように言われる御答弁と拝聴したのですが、その点は議論になりますからやめましょう。  次にもう一点だけ時間がなくなりましたが、伺いたい。沖縄に指導主事を今度派遣されるわけでありますが、その基本は沖縄の県民を日本国民として教育する、こういう立場に立っているだろうと思うのですが、そういう基本的立場をはっきり持っておるか、あるいは外交的にはその点はどういう状態になっておるのか、その点を一つお聞かせ願いたいと思います。
  94. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 沖縄の教育の問題につきましては、沖縄の方からも依頼を受けておりますし、われわれも沖縄の教育につきましては日本教育になるべく近くやって参りたいと思いまして、依頼に応じてその方法を考えたのであります。
  95. 西村力弥

    西村(力)分科員 私の質問はそうではなくて、沖縄県民を日本国民として教育するのだ、こういう大前提をはっきり確立して、しかもそれは外交的にも確立されて、沖縄に指導主事を送るという一つの仕事が生まれてくる。その点をお聞きしておるのです。外交上の何としてはどこまで確立されておるか、その点をお聞きしておるのです。
  96. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 日本としては潜在主権を持っておる地域でございまして、趣旨としては事情の許す限り日本の行政権を将来も及ぼしたいと考えておりますし、今日も日本の行政権の中で、また日本の行政能力の中で手伝いのできるものはしたいと考えております。大要の方針は西村委員のお話のような趣旨を含んで考えられたものと思います。
  97. 綱島正興

    綱島主査 ちょっと申し上げますが、予定の時間が過ぎましたので、皆さんお見えでありますので……。
  98. 西村力弥

    西村(力)分科員 この間新聞を見ますと、沖縄の高等学校の教科書について、今は高等弁務官になっておりますが、向うの当局の文教局ですか、そういう担当の方から、それは適当でないから変えるべきだという圧力が加えられたということが来ておりますが、そういうことに対して大臣はどう考えられますか。
  99. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 さような事実を聞いておりません。
  100. 西村力弥

    西村(力)分科員 それは聞いていないということであるならばやむを得ないのですけれども、これは東大教授の坂本さん、それから教育大の家永教授、この二人が著わした「高校生の日本史」、それが不適当だといって沖縄の政府の文教局に来た。そこでそこの指導主事はもう大あわてにあわてて、各学校を歴訪して、米軍からこういわれたのだからこの教科書は今年度採用しないようにしたらどうかということを盛んに説き回っている。それに対して、そんなばかなことがあるか、日本人として教育するという立場が認められているにかかわらず教科書に文句をつけてくるということはけしからぬ、そうして抵抗したその結果、大体向う側も折れたということになって、話はその通りにいきましたけれども、事実そういうふうに新聞にはっきり出ておる。沖縄タイムスそのほかに出ておる。こういう介入、圧迫、こういうものに対しては大臣はどう考えられるか。
  101. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 その点に関しましては、事実は存じませんけれども、今日、沖縄の行政権につきましては西村さん御承知の通りのような状態になっておりますので、向うの行政権者の方で意見があるということは、その事柄が遺憾であるか、遺憾でないかというようなことは別として、これはやむを得ぬことだと私は考えておるのであります。われわれといたしましては先ほど申しましたように、沖縄の方から依頼のありまする範囲内におきましてはできるだけ協力、援助をして参りたいと思いますが、向うの行政権者の方でいろいろいたしますることは、事実も存じませんし、これはどうも、ちょっと何ともいたし方がないと考えております。
  102. 西村力弥

    西村(力)分科員 それは後日、事実のお調べをお願いしたいと思うのですが、教科書の使用、教育の自主性、こういうものにまで――向うは、三権は完全に米軍当局が持っておるのだからやむを得ない、こう考えるのじゃ、一体人を送って何をするんだ、やむを得ないということを教える教育指導するというような工合になるのかどうか。その点については現状やむを得ないという大臣のお考えは、日本大臣として少し足らぬじゃないか。僕らは不満です。
  103. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 これは極端なことをいわれると、しょうがないということになるものですが、私は、百パーセントこちらの好きなようにならなければ指導主事を送る意味がないというふうに決して考えておりません。向うの方もいろいろに考えればこそ指導主事を入れることを容認をしておるのでありますが、われわれといたしましては向うの行政権者が行政権を及ぼすということについての最終判断について干渉することはできませんけれども、しかし教育の問題等は十分いろいろな節度をもって考えられることでもございますので、私はやはり、こちらから指導主事を送りますことは、十分意味のあることだと考えております。
  104. 西村力弥

    西村(力)分科員 今、沖縄はドルに切りかえになってドルが通貨になっているわけですが、そういう工合になって算数とかそういう場合の教育は一体どうなっておるか。それからドル切りかえに伴なって教科書の改訂が問題になってきておるかどうか。こういう点、一つ事務当局からお伺いしたい。
  105. 北岡健二

    ○北岡政府委員 ドルになったために教科書が使いにくくなったというのは、現に向うの現場でも相当苦心しています。従来は沖縄は円ではございますが、例のB円で、換算率は三で割ればB円になるというふうなつながりがあったのが、ドルになったのでどうしようかというので、ずいぶん研究もされておるようですが、教科書はそのまま使うという行き方を現在とっているというふうに聞いております。
  106. 西村力弥

    西村(力)分科員 ドルで不便なら、B円に切りかえ、それを日本円に換算して勉強しているというのが実情だということになっておるのですが、この点なんかも文部当局としては相当注意を払って、沖縄の教育日本人を教育するのだという前提をアメリカ軍に認めさせて、そういう立場に立って善処してもらわなければならぬと思うのです。これは外務省当局も一つ日本人を教育するんだという前提をはっきり向うと折衝して、認めさせる。これをやらなくて、指導主事くらい送ったって何になる。日本人を教育するというはっきりしたことを日米両当局がはっきり認め合って、それからやらなければだめじゃないか。それは大臣一つの決意というか、そういう工合に一つやってもらわなければならぬと思うのです。  次に、事務当局に聞きますが、沖縄に指導主事を送るときに、学習指導要領の中には、国連を非常に賞賛する、評価する、そういう要綱がありますね。そこのところを一体どう教えろと指導しますか。これは指導主事の仕事になりますが、たとえば国連憲章によれば、日本も国連に加入したんだから、信託統治というものはできないことになってきておるはずです。国連憲章の七十八条には、御承知の通り「国際連合加盟国の間の関係は、主権平等の原則の尊重を基礎とするから、信託統治制度は、加盟国となった地域には適用しない。」とはっきり書いてある。ところが現実には、アメリカはこの規定があるにもかかわらず、国連憲章の精神を裏切って永久占領を企図しておる。これに対して国連は大へんにいいところだというように学習指導要領にあるが、指導主事が文部省から参って、一体どう教えるかというのだ。沖縄国民が祖国復帰を叫ぶ一つの法的な基礎はここにある。ですから、そういう点はどう教えろという工合に指導されるか。
  107. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 御承知の通り学習指導要領には国連に関する知識は載っております。ですから、この場合には、国連がどういう性格のものであるかということは十分徹底しなければならぬと思う。しかし、日本が占領下にあった当時と同じように、まだ占領中においては加盟ができないということが書かれてあるわけです。ですから、私どもとしては別に国連の機能というようなものを子供たちに教えることでいいんじゃなかろうかと思います。  なお、日本人としての教育につきましては、これは沖縄の法律ではっきり占領軍も認めておるし、日本人として教育するんだ、こういう趣旨から教員も実は私ども五十人ほど内地で引き受けて内地で研修も六カ月もしておるわけであります。ですから、そういう点で内地の教育事情も十分知らせる、同時に今度は指導主事を派遣いたしまして、現地において日本教育の成果をお伝えして、教育の劾果をあげようという趣旨でございます。
  108. 西村力弥

    西村(力)分科員 これで終りますが、日本国民として教育するということは、はっきりと認められておるということは私も知っておるのです。  そこで、最後に大臣にお聞きしますが、国連の問題をただ単に機構としてだけ教える、知識として教えるということだが、そんな教育指導するなんて、そんな指導はありはしない。まず国連というものと現地住民との関係、日本国との関係、そういうようなものをはっきり教えなければ、それは教えたかいがないのじゃないか。国連の機構だけ教えたって。そんなものは何になりますか。私はそういう工合に考える。そこで、指導主事を送る、あるいは沖縄の住民を日本国民として教育するという立場に立つならば、沖縄の八十万県民が祖国復帰を願っておる、あの願いを鼓舞するという方向に教育の大綱を進めなければならぬと私は思うのです。指導主事をせっかく送るならば、そういう工合に沖縄県民の切なる願いを鼓舞する方向に、そういうエネルギーを教育の場において蓄積していく、こういう方向に指導する、基本的方向は、立場はそのようにしていかせる、さように大臣としてははっきり指導方針を立ててもらわなければいかぬ。
  109. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 私も日本人の一人として、西村委員がどういう気持で言っておられるかというお気持はわかります。ただ私はその点につきましては、今日沖縄の日本人を日本人として教育をする、それについて日本から指導主事まで送って、国内で十分訓練をして向うで教育をするということ自体に、今お話のございました点を十分盛り込んで考えておるのでありまして、いろいろな問題はございまするけれども、しかし現実世界に関しまするいろいろな知識という点から離れて、政治的見解といったようなものを教育の場を通じて特に普及宣伝するというようなことを、今日われわれがこの指導主事の研修等を委託された立場において、その方向を強く考えるということは、私は行き過ぎであると考えております。私は沖縄の行政権の回復についても十分の情熱を持っておりまするし、また日本人としての教育ということに十分に協力してやって参りたいと思いまするけれども、住民自身はおのずから得られた客観的な知識に従って、政治的な判断はやはりそれぞれで考えてもらわなければならぬのでありまして、教育の場においてあまり政治的見解を盛り込んでいくというような指導方針をただいま考えておりません。
  110. 西村力弥

    西村(力)分科員 それでは最後に一つ。今の御答弁でございますが、ことしの一月十六日に日華協力会の諸君が沖縄に行かれまして、どういうことを指導したか、また声明したかといいますると、一つは、沖縄は日米共同の防衛地域に入ることがよい、そういうことが一つ、第二番目には、アメリカから年間六百万ドルの経済援助を受けて経済の発展をはかる、それにたよって沖縄の発展をはかるのがよろしいということ、それから第三番目には那覇周辺は自由貿易港としてドルをかせぐのがよろしいということ、それから第四番目には、あらゆる政党派を超越してアメリカに追随することが上策だ、日華協力会の諸君が向うへ行かれてそういう工合に指導されておる。こういう見解に対して大臣の所見はどうです。沖縄の指導層に対する指導はこういう工合に行われておる。
  111. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 ただいまお話のございました点は、外交関係の問題でございまして、私個人として感想がないわけではございませんけれども、今日こうして国務大臣として国会に臨んでおる立場からは、ただいまの御質問は一つ外務大臣にお尋ねをお願いいたしたいと思います。
  112. 綱島正興

    綱島主査 柳田委員。
  113. 柳田秀一

    柳田分科員 時間も十分ありませんし、他に同僚諸君もおられますので、私はごく簡単に質問いたします。私の質問は、文部当局を難詰するような問題は一つもありません。従って、全部大臣からお答え願いたい。その間、私の質問中にも内藤局長の方も大臣に耳打ちしたりしないように願いたい。大臣としての所見を伺いたい。そこで、今日新制中学校が町村の合併、あるいは新制中学それ自体、あるいはこの予算書を見ても小中学校の統合を予算にも盛り込んで推進しておられるので、従って、義務教育である小中学に通う通学距離が非常に延びてきた。その際に、小学校は国鉄の運賃は半額になっておりまするが、中学校は半額になっておりません。この問題に対して大臣は、教育機会均等の立場からも、あるいは僻地教育振興の立場からも、どういうふうにお考えになりますか。
  114. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 交通費の問題につきましては、何と申しましてもやはり通学のためのパスというものをできるだけ安くしてもらいたいというのが、一番の主眼点でございますが、その間において、年令によりまして運賃の差をつけておりまする総体の運輸省の建前につきましては、これはやはり今日小中学校の間に差があってもやむを得ぬと考えておりまりす。
  115. 柳田秀一

    柳田分科員 それでは、この問題に対して橋本さんは内藤局長からどのような報告を受けられ、また事務当局はどのように考えているか、それを御答弁願いたい。
  116. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 私、就任以来日が浅いのでありますが、通学の運賃のことについて、特別に事務当局に掘り下げて事情を聴取したり、また相談をいたしたことはまだございません。
  117. 柳田秀一

    柳田分科員 これははなはだ大事なことであります。現に今大臣が答えられたのと、前国会における内藤初等中等教育局長の答弁とさらに、その当時は松永文部大臣が病気中唐澤国務大臣文部大臣の代理をされましたが、その唐澤国務大臣の答弁とも、あるいはその当時の臼井政務次官の答弁とも、今橋本さんは率直に自分の見解を申し述べられたのでありますが、全然意見が食い違っている。これは重大なことです。内藤さんにあとで聞いてみますから、大臣もう一ぺん御答弁下さい。全然これは違っているが、どうなんですか。
  118. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 どういうところが違っているか私存じませんが、私は、通学運賃というものはできるだけ安くしていかなければならぬということで、今後とも運輸当局に対してパスを安くするということについては交渉し、あるいは将来値上げ等の問題が起っても、パスの運賃を上げないようにということは考えて参らなければならぬと思っておるのでありますが、運賃はたしか満十二才未満が何かが半額で、それ以上がおとなということになっていると思うのであります。そういう総体的な運賃の建前について、今日といたしましては、これを特に義務教育の立場で全部一本といふうにいたすということは、今のところは私は考えておりません。
  119. 柳田秀一

    柳田分科員 これはやはり内藤局長大臣に対する補佐の怠慢だと私は思う。大臣就任以来まだそういうことを局長から聞いておらないというならば、それはあなたの怠慢です。なぜというならば、この問題は前国会でもあなたは御答弁になって、しかも昭和三十二年には、参議院の文教委員会では、少くとも義務教育である中学校に関しては通学運賃は小学校並みにすべきだという決議が出ている。国会の決議が出ている。しかもこれは重大な案件でありますから、当然局長大臣にはすぐ報告すべきである。しかもこの問題は単に文部省だけでは解決しない。文部省と運輸省の両当局が両々相待ってやっていかなければならぬ問題であるから、単に文部省だけでは解決しない。どうしてもこれは閣議決定までいかなければならぬ問題でありますから、文部省だけでいくら解決しようと思っても解決しない。当然これは橋本大臣にもあなたは報告すべき義務があると思うが、どうですか。これは局長から聞きます。
  120. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 今お尋ねの、義務教育の年令層を全部小学校並みにという柳田委員のお話につきましては、私前から伺っておるわけです。できますれば文部省といたしましても、義務教育の就学を容易にするという点から、中学校までを小学校と同じにすることが望ましいと思います。ただ、この前も委員会で申しましたように、運賃制度というものは、単に運賃だけではありませんで、他の料金との関連もございます、たとえば風呂の料金とか、その他いろいろございまして、小児運賃あるいは小児料金というものをどの線におさめるかということにつきましては、運賃だけで解決しないいろいろな複雑な事情もございますので、私どもとしても運輸省にもたびたび事務的にはお話しをいたしております。しかしながらなかなか実現を見ないのは私どもへん遺憾に思っております。ただ私は、大臣に詳細を御説明しなかったのは私の補佐が悪いので、その点はおわびいたしたいと思っております。
  121. 柳田秀一

    柳田分科員 そこで橋本さんは、あなたは厚生大臣としても――その前に川崎厚生大臣以来二、三人ほんとうにあってもなくてもよいような厚生大臣が続きましたが、あなたはその後厚生大臣として熱情を持って厚生大臣行政に当られた。その熱情を同じく文教行政にも傾けられるであろうことは、あなたのお人柄からも私は期待しておる。しかしこの問題に関しては、あなたはまだもう一つ事情の御理解というか、把握が足らぬと思うのです。そこで私は申しますが、大体新制中学ができたときには、昔の郡で言うならば、その郡単位に一つ、あるいは非常に広い郡ならば二つとか、そういうふうに作ったものです。その後文部省はさらに小中学校の統合をお進めになっておる。この予算書にもそれに対する経費が盛られておる。さらに今度自治庁は、これまた町村合併ということを推進してきた。その町村合併には、特に法律も設け、また財政的な裏打ちまでして進めてきた。そうするとここに必然的に義務教育に対する通学距離が非常に伸びてきた。そこにもってきて、片一方では交通機関がだんだん農村漁村にまで発達してきた。国鉄バスも伸び、私鉄バスも伸びてきた。そうすると昔ならば歩いて通った、あるいは自転車で通っていたところを、バスが砂塵を立てて通っておる。そこでバスで通う。貧困な家庭の子はバスに乗ろうとすると相当な父兄の負担になる。はなはだしいところは、町村合併の条件として、通学バスの金を町村財政から負担しておる。私が調べたところでは、ある町では五百万円の教育予算のうちで二百万円までもバスの補助金に当てておる、こういう状態なんです。私は青少年の訓育の上からいって、片道二里、八キロ未満くらいはハスに乗せず歩かすべきだと思う。その方が訓育上からもよろしいと思う。しかし二里、八キロ以上になると、往復四里ですから、これは小学校でも中学校でもちょっと無理だと思う。これでは義務教育にほんとうに身が入らないと思う。朝起きてすぐ食事をかき込んで、そうして通わすのでは、これは第一に教育にはならぬと思う。従って今政府が進めておる町村合併といい、あるいは小中学校の統合といい、そういうことから必然的に起るところの通学距離の延長問題といい、同時に交通機関の発達ということからいうならば、僻地教育振興という立場からも、教育の機会均等という立場からも、当然こういうような遠距離通学児童に対しては何らかの手当をするのでなければ、遠隔地から通う児童にとっては物心両面の負担にもなり、同時にその父兄にとっては大きな財政的負担になるから、その点は政府としても、これは国鉄においても、運輸省においても、あるいは文部省においても、大蔵省においても、あるいはそれができない間は暫定的には自治庁において、何らかのめんどうを見るという総合的な観点から、この問題に対してはもう少し熱意を持ってやらなければ、単に町村合併だ、小中学校の統合だといっても、そこには教育の機会均等も、僻地教育振興もあり得ないというのが私の持論なんです。またこの持論に対してはあなた方も御異論はないと思う。そういう意味において今局長も言われましたが、運賃に関しては運輸省に鉄道営業法によるところの旅客運輸規程というものがあり、その第十条に、今言われたように満十二才ということになっていて、その十二才というきめ方も必ずしも小学校ということではないそうです。ただ偶然に満十二才が義務教育の小学校の年令と一致しているということらしいが、しかし現実に義務教育であるところの小学校というものが半額になっている。ところがこの運輸規程がきまったのは、義務教育というのが小学校というときだけであった。さらに今日中学校まで三年間義務教育が延長されたという観点に立つならば、私は何もふろ賃とかそういうものと比較しなくてもよろしい。あるいはまた百歩を譲って、すべて十二才以上の者、十五才未満の者を全部運賃を半額にしろというのではない。修学旅行あるいはこういうような通学に関してのみ特例を設けてもいいのではないか、物見遊山に行く者までも小児並みにしろというのではない。少くとも義務教育の一環としての通学ということに関して、あるいは修学旅行ということに対しては、当然とるべき措置だと思う。こういう意味で質問をしているのですから、そういう意味合いの上に立ってあなたも国務大臣としての所見と決意をここで披瀝してもらいたい。
  122. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 お話の趣旨は私十分にわかりました。ただいま柳田委員のお話の方向に向って私もできるだけの努力をいたしてみたいと思います。なおただいまお話のございました総体的な問題まではなかなか解決にはなりませんけれども、交通の問題につきましては、今年十分ではございませんが、僻地児童の通学につきまして、これは試験的でありますが、スクール・バス、スクール・ボートの予算を計上いたしまして、これが地方でどういうふうに受け入れられますか、来年度から実施をいたしてみたいと考えているわけであります。柳田委員からお話のございました御趣旨につきましては、私真剣に検討いたして、できるだけ御趣旨に沿う方向での努力をいたしてみたいと思います。
  123. 柳田秀一

    柳田分科員 私は九段の議員宿舎から国会に通う途中、千代田区のスクール・バスというのが二台もりっぱなのが通るのを見てびっくりしたのです。われわれの住んでいるいなかとは大きな違いです。今スクール・バスだと言われましたが、もちろんそれもけっこうです。ところが二里なら二里あるとしますね。そこにこういうふうにタコの足みたいに谷が幾つも出ている。そうしてこのセンターの学校へ通うわけですね。そうするとスクール・バスといい、登校といい、退校といい、同じ時間なんですね。送り迎えをするには、一ぺんこっちの谷へ行っておいて、そうしてまたこっちの谷へ来で、またこっちの谷へ来るというようにすると、時間的には間に合わない。だから僻地では一台のスクール・バスではとても間に合わない。はなはだしいところは谷がずっとあるところにスクール・バスを一台やろうとすれば、同じ時間に登校するときにはスクール・バスが五台も六台も、あるいは十台もなければ現実にはできない。スクール・バス、スクール・バスと簡単に言いますが、平野をぐるっと回って送り迎えするのなら一台で間に合いますが、僻地ではスクール・バスが十台もあったら、これは人件費や燃料費で、貧弱な町村財政ではでき得るものではない。従ってこの解決策としては、特に通学に関しては文部省が国庫の補助金を出すか、国において何らかの負担をするか、さもなければ通学に関してのみ私はこの運輸規程を変えるか、さもなければその暫定的期間として、そこに至るまでの間は自治庁でこれを特別交付金の基準財政需要に見込んで、これはひもつきと言っては悪いけれども、こういう問題はひもつきで特別交付金に充てるか、この三つしかないと思うですから文部省は、何としてもまずほんとうの腹ごしらえをしなければならぬと思う。私は大臣の御理解を深めていただくために申し上げますが、私の地元の中学校――農山漁村ですから小さな中学校ですが三百六十二人です。大臣一つよく耳にとめておいて下さい。そこで片道五キロ以下はたった一四%、六キロ以上が八六%もあるのです。そのうち、九キロから十二キロ、往復にいたしますと十八キロから二十四キロが三七%もあるのです。この学童に歩けといっても無理なんです。それで実際に父兄が大きな負担をしておるわけなんです。そこでまず国鉄が義務教育である中学生だけでも半額にするならば、当然国鉄バスもそれにならうでしょう国鉄バスがならえば私鉄バスもならうでしょう。それくらいのことは行政指導もできましょうし、法的措置もできると思うのです。この問題は当時文教委員長であった今の厚生大臣の、あなたの後任の坂田君にも私が言ったところ、坂田君も非常に賛成だと言っておるのです。これは一つあとで閣議の席上ででも坂田厚生大臣と御相談になって――あなた方は、文部大臣と言い、厚生大臣と言い、閣僚なんです。国務大臣ですから、あなたがその熱情をもっておやりになるという趣旨には、坂田君も賛成しておるのですから、閣内において有力なる橋本、坂田両大臣おられるのですから、あなた方が二人で強硬にやったならば、最近ちょっとよろめいている永野運輸大臣をへこますことはわけがないのです。それができなかったら、今まで私はあなたを尊敬しておりましたが、今度は軽べつしますよ。それくらいのことはやれるのです。この問題をほんとうに解決する意思がありますか、どうです。あなたがほんとうにやる気ならこれはやれるのです。
  124. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 私もせいぜい真剣に取り組むつもりでございます。ただ私の決意だけではなかなか簡単にも参りますまいと思います。私も御趣旨のございますところは十分わかりますし、その方向に向って努力をいたしたいと思います。
  125. 柳田秀一

    柳田分科員 これ以上、追及はいたしませんが、私はこれを議員立法にしようかと思ったのです。そして内々に、当時の文教委員長であった坂田君にも相談した。しかし議員立法をするよりも、こういう予算措置を伴うことはまず政府が本腰を入れなければ、単純な議員立法だけではなかなか解決しないので、功を急いで議員立法にするよりも、じっくり政府が本腰を入れられるのを待つ方がよかろうと思って、今議員立法について一応の腹案は持っておりまするが、まだそれを出さずにおるわけなんです。政府の善処を待っておるわけなんです。ここへ大蔵省の相沢主計官も来ておられますから、一つ、大蔵省の見解としてどういうふうに考えられるか、参考までに承わっておきたいと思います。
  126. 相沢英之

    ○相沢説明員 通学とか修学旅行に関する鉄道運賃につきまして、中学生の分を小学生並みに引き下げろというお話、これは前国会の分科会で先生から御質問があり、また文部省の答弁もあったように存じております。ただ予算要求の問題としましては、別に三十四年度の議題にもなっておりませんでしたので、そういう関係から私どもの方でも十分に検討しておりません。そういうお話があれば十分検討したいと考えております。
  127. 柳田秀一

    柳田分科員 そこで内藤さん、今相沢さんは私の昨年の質問も十分そらんじておられて、率直に十分検討してみたいと言われ、明快な答弁をされた。ところが予算要求も何にも出ておらぬそうです。あなたの答弁を速記録で読んでみましょう。十分今後努力いたしますとはっきり述べておられます。全文読んでもよろしいが、全文読むとあなたのお立場が悪くなるから言いませんけれども、十分努力しますと言っている。国会では十分努力しますと言いながら、文部省へ帰ればいつでも努力しておらぬ。これがいつでもあなた方政府委員国会答弁の逃げ口上なんです。善処します、万全の措置をとります、努力いたしますと言いながら、何も努力していないじゃないですか。大蔵省は受け入れ態勢ができているのです。いつも金を出すのをしぶる大蔵省が十分努力すると言って受け入れる用意があるのに、キャッチャーの方はミットをかまえているのに、ピッチャーのあなたの方がボールをほうらぬでは話にならぬじゃありませんか。努力する、努力すると言いながら努力していない。参議院の文教委員会が決議しておる事項すら、前国会からペンディングになっておる事項すら、あなたの方は努力しておらぬじゃないですか。どうなんです。
  128. 内藤譽三郎

    ○内藤政府委員 この点について私も運輸省に参りまして局長、次官あるいは所管の課長さんにも十分お願いをして参りました。ところがこれは柳田先生の方がよく御存じだと思いますが、内部にもいろいろの事情がありまして、どうしても運輸省としては今のところ中学生の運賃を半額にするということには踏み切れない、こういう事情でありまして、それならお話のように国庫補助という問題も出てくると思います。この点について相沢主計官から十分検討の用意があるというお話でありますから、せっかく努力いたしたいと思います。
  129. 柳田秀一

    柳田分科員 今までの問答は大臣お聞き取りの通りであります。そこで国鉄は今独立採算制を要求されておるのです。だから国鉄当局が進んでこれを中学生の通学に関してのみでも半額にしょうなんということは言いっこないです、これは文部省の決意いかんです。国鉄がみずからそんな自分の方の収入が減ることを言いっこないです、だからこれは文部大臣の決意いかんです。  そこで私は文部大臣に最後にお尋ねいたしますが、この問題に関しては私はある程度時限を切りたい。次に特別国会も開かれますが、それまでに努力をして、どのように――閣内はこれに対する意見があって、これに対しては今後どういう見通しであるかということを伺いたい。私は、この国会は無理とするならば、特別国会にはもう一度質問いたしますから、そのときには大臣に明確に答弁していただきたい。そのときまで私は保留しておきます。そこでいつまでたってもこれに対してあなた方に誠意がないと認めるならば、われわれは議員立法いたします。ここまで言うておいて議員立法するということは、政府としてもあまりほめた話でないと思いますから、政府みずからの責任においてほんとうにこれは努力をしていただきたいということを重ねて要望いたしまして、私のこの質問は打ち切ります。
  130. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 お話はよく承わりました。  それから上林山さんは御退席になりましたが、先ほど高校の入学試験の問題について至急事実を取り調べろというお話がありました。さっそく手配をいたしました結果を御報告申し上げておきたいと思います。京都府において高校の入学試験が拒否されておるというような話を聞くがどうかというお話であります。私どもはそういうことのないように手配をいたして参りましたので、御心配ないと思うということを申したのでありますが、確かめてみました結果を御報告を申し上げます。京都につきましては高教組が入学試験事務の拒否というようなことを考えましたのは二月十一日前後でありましたが、実際に拒否された事例は生じておりません。そこで高教組にこういう事件があるということを聞きましたので、京都府の教育委員会としましては事前に校長会議を招集して混乱を生じないように指示するとともにいろいろな準備をいたしておったのでありますが、幸いにして実際には受付事務は全然阻害されることはございません。明日から高校の入学試験が始まりますが、これは予定通りに行われる見込でございます。なお静岡県についてもお話がございましたが、今朝五時組合の方ではっきりこういうことをしないという中止の命令を出しまして、今日、明日にわたる高等学校の入学試験は予定通り実施されるに至りました次第でございます。これを上林山さんからの御質問に対するお答えとして記録にとどめておきたいと思います。
  131. 綱島正興

    綱島主査 田中委員。
  132. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 文部行政に関連いたしましていろいろ伺いたいことがございますが、これは予算の分科会でございますので、できるだけ予算に関連する部分に限定をいたしまして、三、四の問題について伺いたいと思います。答弁はできるだけ簡潔でけっこうでございますが、誠意のある、また十分調査ができていなければ、調査ができていないというようにお答えを願いたいと思うのであります。  そこで、まず第一に伺いたい点は、大臣に伺いたいと思うのでありますが、橋本文部大臣はついこの間まで厚生大臣でございましたし、また大臣の御出身の岡山県には、御承知のように未解放部落が非常に多い関係から、日ごろから未解放部落のいわゆる部落差別の問題については深い関心を持っておられることと信じておるのでございます。そういう意味で過般の御説明を伺ったところによりますと、本年度予算関係におきましても、いわゆる部落対策関係といたしまして、文部省で総額二百四十三万二千円の予算が計上せられておるのであります。内容は、同和教育指定経費が六十五万二千円、同和教育資料作成費が二十八万八千円、社会教育費で百四十九万二千円、その合計が二百四十三万二千円でございますが、これは当初の文部省要求額の二百七十五万円に比べますと若干減少いたしておりますが、大体文部省関係といたしましてはほぼ要求額に近い額が認められるような形に相なっておるのでございます。  私はこれの内容について伺いたいと思うのでありますが、その前に、当然こうした予算を盛られる関係からいたしまして、いわゆる同和教育、部落差別をなくするということに対しては、文部省としても、私は日ごろからお考えおきを願っておることと思うのでございます。多くを申し上げるまでもなく、部落差別の問題は、これは諸外国にない事例でございます。アメリカなどにあります黒人と白人との間の人種差別の問題でもございません。また一昨日でございましたか、厚生省関係の質問のときには、政府の官房長官等も御出席を願って私申し上げたのでございますが、日本の民族の発生の歴史を調べて参りましても、私は諸外国におけるように、雑多な民族がその後融和、同和いたしまして一つの民族ができておるというのではないかと思うのであります。そういう関係からいたしまして、部落差別の問題は、やはり封建的な身分制という、政治的な分裂支配のための制度から参りましたところの政治の所産である、私はかように考えておるのでございます。一体、文部省が同和教育の問題にあまり積極的ではないのでありますが、少くとも本年度予算に、この問題と取り組むという態度を見せられた以上は、この問題については、従来にないところの積極さを持ち始めてこられたものと思うのでございますが、一体、同和教育の基本的な考え方というものをどこに置いておられるのか。この点について、まず文部大臣からお考えを伺いたいと思うのであります。
  133. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 同和の問題につきましては、やはりいろいろな意味におきます長い生活にからんだ、感情の問題等がからんでおりまして、なかなかむずかしい問題でございます。実は同和問題というものは、日本民族をめぐるまことに不幸な問題でございますが、現実に存在している限り、とにかくこれにはどんなに長いことかかりましても、問題の解消のためにぜひ骨を折って参らなければならないと私は考えております。文部省の関係の問題につきまして、私は正直に申し上げますが、教育の面におきます同和の問題がどういう様相を持ち、どんなふうになっておりますかということを、私あまりつまびらかにいたしておりません。ただ私が厚生大臣として所管をいたして参りましたころから考えて参りまして、従来からも長い変遷がございましたが、これについて私大きく考えて二つ考え方があると思うのであります。つまりこれは一つの傷に触れられるような問題で、なるべくそっとして忘れていきたい。これは必ずしも悪意でなしに、善意にもそういう考え方があるわけであります。従いまして、従来におきまして同和対策をやる上においても、資料というものは非常に大切なわけでございますが、過去においてとりました資料等を見てみましても、資料をとるのに、その町村に同和部落があるから人数が何人であるといったようなむき出しな調べ方というようなことは、非常に問題を起すおそれ等があったりいたしまして、資料などを見ても、あの県に同和部落が一つもないといったようなことは考えられないところで、過去全国的に調べました調査が、三回ほどある程度信頼のできる調査があると思います。それの中でも相当な大県で、どう考えてもおかしいと思われるようなもので、同和部落が一人もないのだというような答申を出しているようなところがあるような状態でございます。こういったふうな気持の問題がございます。それからまたもう一つの問題は、同和の問題につきましても、私の乏しい知識でございますが、三、四回の府県を見てみますのに、割合感情的にいろいろな問題はあるけれども、生活状態としてはあまり大して変っておらないところと、かなり生活の条件が悪いといったようなところが、府県として事情の変っているところがあるようでございまして、従いまして、それぞれで対策の考え方も違うのでありますが、端的に私の結論を申しますならば、最後の結論はこうした差別感情、差別記憶もなくということでこの問題が解消されることを望むのでありますが、現在のところとしては、現実に存在しておりますので、まず第一には生活の条件の悪いところにつきましては、いろいろな面で部落全体の改造の問題、あるいは建築の問題でありますとか、環境衛生の問題でありますとか、そういったような面の配慮によりまして、生活状態というものに一般とかなり開きのありますところは、その生活状態の差をなくなしますのを第一にいたして参りまして、そうしてその間にこうした差別というものが全くいわれないものであるということを十分に徹底をさせて、やはり正面から取り組んでこの問題の解消をはかっていくべきものだ。それ以外に、簡単に忘れろといってほうっておきさえすれば解消できるというふうに私は考えておりません。とにかく具体的な生活環境の差のあるものについては、目に見える生活環境の差というものを解消するためにいろいろな努力をする、それだけで済みませんので、その上にはやはり社会教育の面におきまして差別的な感情のいわれなきゆえんを徹底さしていく、こういう方向で将来進むべきものと考えております。
  134. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 この問題は、差別観念というものが頭の中に残っておるのだという考え方の上に立てば、時の経過とともにそっとしておけば消えていくのじゃないか、こういう考え方を現実に持っている人があると私は思う。部落問題についてかなり理解のある人の立場においても、そういう考え方を持っておる人が私はあると思うのです。しかし問題は、その意味から見て、部落問題に取り組んでおる人たちの中にも、この問題はそっとしておけば自然に薄らいでいくものだ、そういうことで、私らもむしろその中心的な人物でありますけれども、部落解放運動という形でこの問題を積極的に取り上げていこうという考え方というものは、端的にいえば寝た子を起すようなものだということで反発もございます。しかし私は今橋本文部大臣がお答えになったように、部落差別の問題というものは、ただ単なるそういう観念的なものではなくて、やはり部落の人たちの生活環境の中にも差別の実態が残っておるという立場に立って、生活環境あるいは経済的な社会的な条件を引き上げていくというようなことと相待たなければ、問題の根本的な解決にならないという意味に文部大臣が理解せられておることは、私らと全く同じ意見でございます。むしろ私はこの立場においての施策を進めていただきたいということを、元来この分科会において関係の各省に対して要請をいたしてきておるわけであります。そういう考え方の上で、従いまして私は同和教育というものについても、基本的にはこれが間違った考え方、封建的な身分制の残滓として残っているものだ、これは私はまさに間違いはないと思うのです。この間も厚生関係で申し上げたのでありますけれども、部落の人たちが今橋本文部大臣が御指摘になりましたような形で、経済的に社会的におくれた状態にあるということについては、私はやはり封建的な身分制としての部落の人たちに対する明治四年の太政官布告による法的な宣言がなされたと私は思うのでありまして、それが重ねて行われておるのが現行憲法の第十四条であると私は思うのであります。封建的ないわゆる身分制に基いて、門地、家柄等によって差別をしてはならないということが積極的に規定されておる。しかし明治四年の太政官布告によるところのいわゆる部落民に対する身分的なしがらみをなくするということの宣言に対して具体的な裏づけがなされていない。たとえば上級の封建的な身分制でありました武士階級に対して現在の金で換算いたしますならば一兆円をこすところの秩禄公債というものが発行せられておるけれども、下層の身分階級である、現在全国に六千部落、数は三百万といい、五百万というのであります。厚生省の調査によりますと、それは百数十万程度ではないかということで、人口の点において押えることはむずかしい問題でありますけれども、そういう実情にありまして、そういう人たちに対しては、一片の市会でいわゆる四民平等の取扱いはされたけれども、長い間の封建的な身分制によるところの差別と圧迫によって、この人たちが追い込まれた、経済的、社会的におくれた状態というものは、一向この市会の裏づけとしてなされなかったところに、私は今日の未解放部落における経済的、社会的な後進性というものが歴然として出てきていると思うのです。その意味で、先ほど申し上げたように差別観念というものはそういう古い観念が残っておるのだという考え方の上に立ちますれば、もうそれから八十年を経過いたしておるのでありますから、私は今日なくなっていなければならぬと思う。ところが義務教育段階の小学校におきましても、中学校におきましても、高等学校においても問題が――そうしたことに白紙であるべきはずの子供たちの中に、部落出身の子供と部落外の子供との間に実は深刻な差別事件が起りておるという点は、文部省事務当局諸君も私は十分御承知だと思うのであります。和歌山県の吉備高校などにおける――これは教官指導よろしきを得なかったということでありますけれども子供たちにこうしたことに対してどういう受けとめ方をしておるかということについてアンケートを求めた。つまり部落の出身者であるなら○をつけろ、部落の出身者でないなら×を書け、こういうような形で回答を求めたことを苦にいたしまして、吉備高校の女生徒が自殺をしたということが、これは一昨年でございますが和歌山県にあったわけであります。率直な話を申し上げますが、私の三番目の子供が現在高等学校に行っているのでありますが、同じ高等学校の一年でありますけれども、母親や姉に対しましてこういう質問をした。私の子供に向って、これ何や知っているか、僕知らぬのや、と言ったら、私の子供に対して、知らないならいい、ということでみんなが笑ったということなんです。私はこれはやはり部落の人たちは何らか劣ったものがある。普通は人間の指が五本ある。それを四本の指を出すことは、やはり一つの部落民蔑視の称なんですね。そういうことが高等学校の私の子供の周囲に現在起っておる。それでどういう形でそれを説明するかということを、家族たちとの間で話し合っておるわけでありますけれども、私はしかし積極的に、文部省の方の考え方とはその点では違うかもしれませんけれども、その自分の子供に対する関係から見ますならば、やっぱり部落差別というものは封建的ないわゆる身分制の結果起ってきておるものだ、現在はとにかくそれはないが、かつての間違った政治の所産からいたしまして、現在まで尾を引いておる問題だということをやはり子供に納得をせしめるということが一番正しい方向ではないか、こういうふうにそのことの相談を家内がして参りましたので、答えておるわけであります。私は文部省が同和教育を考える過程におきましては、そっとしておけばなくなっていくという考え方ではなくて、むしろやはり部落差別というものが何のために起ったかということについての経緯を子供たちにはっきり教えることによって、それが間違った考え方である。そこにいわゆる人権が平等であるという現在の国連の人権宣言等の問題と結びつけた形においてこの問題が取り上げられなければ、ほんとうの意味においてこの差別をなくするということにはならないと私は思うのでありますが、文部省が同和教育を考えられる前に、そういう基本的な考え方をとってもらえるものかどうか。それでなければ、今度は指定校をこしらえ、また具体的な対策を立てるために資料を整えなければならぬので、資料整備を行われようとするというようなことについての計画が、私はほんとうに生きてこないと思うのでありますが、考え方として、そういう積極的な問題の取り上げ方をしてもらえるものかどうか、この点についての御見解を伺いたいと思う。
  135. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 この同和部落の問題につきまして、歴史的にいろいろな意見が行われております。人種が違うとか、あるいは何が違うとかいうようなことは、これは根拠のないことでありまして、どういう過程で出て参りましたか、何かの間に、ただいまお話のございましたように、やはり誤まれる政治上の制度の所産としてできたものには違いないと思うのであります。そういう基本的な考え方で、本来的に同和部落の人々が何か人間的に劣ったような要素を持っているとかなんとかいうようなことは、これは科学的にも考えられないことでありまして、お話の趣旨の通りだと私は考えております。基本的な態度としては、そういう理解で私は正しいと思うのでありますが、ただ、ただいま積極的に理解を深めるということは、実は私は相当むずかしい問題だと思っておるのであります。現に東京あたりだと、ことに子供たちなんか全然そういう問題についての知識もないし、関心もないし、何の話かおそらくわかるまいと私は思うのであります。地方へ参りましても、私のところの県などでは、御承知かもしれませんが、割合に生活状態としてはどこへ行っても変りがございませんで、ただ言い伝えみたような意味で、何やかにや差別感情があるわけであります。そういったような関係等もあるのかもしれませんが、場所によりまして、やはりかなり――ことに都会と農村とでは関心の程度が違うわけでございます。ですから、現実に問題のありますところは、私、先ほど申し上げましたように、これは正面から取り組んで、問題の生活状態の相違等を解消してかかる。あるいはまた感情の問題につきましても、正面から取り組んで解決をしていくべきものだとは思いますが、そういうふうな社会教育のやり方につきましては、私なお一つ教育の実践に当っておられます方面等とも当って、慎重に検討さしていただきたいと思うのであります。先ほど田中委員からも、心ない調査をしたとか、子供が死んだというお話がございましたが、さきにも申し上げましたように、前々政府で調べました問題につきましても、市町村によっては、当市町村には該当なしというような回答を、どう考えてもおかしいと思うようなのを寄せられる例等もあるような状態でございます。理解の基本的な立場というものは、先ほど田中委員のお話通りに私どもも考えますが、どうして問題がありますところだけに限ってそういう方向で積極的にいくかという問題につきましては、私どもも検討いたしますし、また御意見等ももう少し承わりたいと思います。
  136. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 この問題はいろいろ議論をして参りますと、問題のある点でございます。現にこの部落問題と私らは対照的な立場で考えておるのでありますけれども日本の憲法の上では国民統合の象徴ということになっておるわけでありますが、やはり明治憲法以前からの天皇制の問題と、いわゆる下級の身分制としての部落問題との間の関連性というものも、私はこれは歴史学上無視するわけにはいかない問題だと思うのであります。一つには、今度皇太子殿下が結婚の相手方をいわゆる平民の中から求めた、これが非常に国民的な、ことに若い人たちの間の支持を得ておるということが、新聞等で報道せられておるのであります。私はこれはやはり新憲法ができますと同時に、天皇陛下がいわゆる人間宣言をされた、天皇もまた人間である。従来のように生き神様として、同じ人間であるにもかかわらず天皇を神格化して、それが政治の強力ないわゆる隠れみの的な役割をしてきたというところに、今日の日本の敗戦というものがあったということは、これはもう否定することのできない事実であります。そういう考え方の上に、官廷におにおける結婚問題というようなことについては、今度の皇太子が選択されたようなそういう人間としての個人の意見、自由なる意思というようなものがなかなか行われないところに、やはり宮廷における私ら封建性だと思うのでありますが、そういうものが残っておることと、部落問題が今日文部大臣がおっしゃられるように、経済的にはだんだん部落外の人たちとの間で差がなくなってきておるという地域もございます。ある意味から見れば、全国一、二の税金を納める、たとえば九州の石炭屋さんがございます。あるいは奈良の皮革屋さんがございます。あるいは芸能界においても、部落出身であるということを明確にいたしませんけれども、いろいろな方面において一流の人物が出ておることも事実であります。しかし、いろいろテレビなりそういうようなものに出ておる、著名な一、二を争うような芸能人になっても、やはりあの人の出身は部落だという声をわれわれは町で聞かないわけにはいかないような状態に、私はまだこの差別問題というものが現実に残っておると思うのです。そういう意味でこの点については、別に当然内閣委員会にかかることだと思うのでありますが、栄典法案の問題等にも関連をいたしまして、位階はなくなったけれども勲等ができる、しかもそれがまだ華族制度だとか軍人における階級だとか、そういうようなものが前提になったものを踏襲したままの勲等制の織り込まれた栄典法案が出るところに――あしたから三月に入りますので、けさの新聞では二月中におけるいろいろな問題について、栄典法案の問題についてもある意味において身分差別を助長するような傾向が出ておるという点について、国民から投書の形で反対意見が出ておるということが示されておること等も、私は関連されることだと思うのでありますが、予算に直接関連することではございませんので、いずれその基本的な問題については別の機会に文部大臣なりあるいは事務当局なりとの間に質疑を重ねたいと思うのでありますが、根本的な考え方として、文部大臣は私の意見に原則的には賛成をせられておるわけでございますので、一つこの問題は、いわゆる人の上に人なく人の下に人なしという福沢諭吉先生の格言の中にもありますように、そこから出発したことを、私は教育の基本的な理念として持っていただきたいということをお願いを申し上げまし、次の質問に移ります。  一つの問題は、今度社会教育法の改改案が出て参っております。それに伴いまするところの予算が増額されておることは、過日の文部大臣予算に対する説明でも出てきておるのでありますが、私はこの点は憲法の第八十九条の「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。」こういう規定に、今度の社会教育法の改正案に盛られており、また今度の文部省予算に増額を計上されておりまする社会教育の団体に対する補助金等の問題は抵触するのではないか。現在社会教育法の改正案に対しましては、婦人団体その他各民主団体からあげて有力な反対がなされておることは、大臣も御承知だと思うのでありますが、私は基本的にはやはりこういうところに問題があるのではないかというふうに考えるのでありまするが、文部当局といたしましては、この点についてどういうようにお考えか、お答えを願いたいと思います。
  137. 福田繁

    ○福田政府委員 ただいま憲法八十九条の問題についてお話がございましたが、御承知のように八十九条は「公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。」こういうような用語を使っておりますが、この八十九条の教育の意義でございます。これにつきましては内閣の法制局におきましては、そもそも憲法八十九条の教育の解釈といたしまして、一定の教育目標に従い、教育者と被教育者というような関係のある場合において、この教育を実施する場合を、この八十九条に規定をしておる教育というような意味に解釈いたしております。従って平たく申しますと、たとえば学校あるいは学校に類似するような教育施設において教育する場合がこの教育の事業だ、こういうように解釈されておるのでございます。ところで社会教育法の第二条をごらんいただきますと、社会教育の定義といたしまして、「この法律で「社会教育」とは、学校教育法に基き、学校の教育課程として行われる教育活動を除き、主として青少年及び成人に対して行われる組織的な教育活動(体育及びレクリェーションの活動を含む。)」こういう非常に広い定義をされております。従って私たちは従来この社会教育の関係の事業といたしまして、憲法にいう教育の事業よりもはるかに広い社会教育の事業というものが第二条から出てくる、こういうように考えられるのであります。端的に申しますと、たとえば体育、レクリエーションのごときはその適例でございます。ところで第十条におきまして社会教育関係団体の定義がございますが、この十条の社会教育関係団体の定義におきましては、「法人であると否とを問わず、公の支配に属しない団体で社会教育に関する事業を行うことを主たる目的とするものをいう」こういうように書いてございます。従ってさらに十条の社会教育関係団体の行いまする事業そのものは、この第二条の社会教育という定義に関連いたしまする事業を主たる目的とする場合に社会教育関係団体と、こういうように定義をされております。従ってさらにこの第二条よりも相当社会教育関係団体そのものは広く解釈されているのでございます。従って私どもといたしましては予算も計上し、あるいは今後補助金として出すというような場合におきましては、もちろん憲法八十九条の趣旨に違反しない、いわゆる憲法八十九条の教育の事業に該当しない、それ以外のもので社会教育の事業として関係団体において行われるものに対して補助金を出します場合においては、何ら憲法に違反するものではない、こういうような法制局の見解がございまして、それに従って私どもは考えておるわけでございます。
  138. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 今社会教育局長のお答えになりました点から考えても、私はやはりこの社会教育関係団体の定義として社会教育法の第十条にある、「この法律で「社会教育関係団体」とは、法人であると否とを問わず、公の支配に属しない団体で社会教育に関する事業を行うことを主たる目的とするものをいう」こういうように出てきておる。この公けの支配に属しない教育という憲法の第八十九条にいうところの「公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出」してはならないという規定があるわけですね。私はやはりこれに抵触をいたすと思うのです。どうしてここに、憲法第八十九条に公けの支配に属しない慈善事業、あるいは教育事業、こういうものはそれでは社会教育法の十条にいうところの社会教育関係団体とどう違うという御説明がされるのか。私はまるきり局長の御答弁は矛盾すると思うのです。で、憲法の第八十九条は、はっきりとここで「公金その他の公の財産は、」というのでありますから、国からの補助金等も、これは当然やってはならないという規定を私は出してきていると思う。それだから、これは戦時中におけるいわゆる超国家主義的な団体等の行うものに対しまして、今は教育基本法というものができておりますし、教育の行政と教育の直接的な指導との問題が新憲法において切断をされておりますから、問題は戦前におけるようなものはないのでありますけれども、私はやはり戦前における超国家主義的な教育、もっと端的な言葉でいえば、フアッショ的な教育の基盤というものが、社会教育の名を通じて行われてきた。従って特定の政治的な勢力に教育というものが引きずっていかれる危険性があるから、憲法の第八十九条の慈善事業その他の問題と同じ立場におきまして、社会教育に対しましても国がそういう端的にいえばひもをつけるようなことをやってはならないという意味の規定であると解釈をいたすのでありますが、どうも局長が第十条の関係で、社会教育関係団体としては公けの支配に属しない団体で社会教育を行う団体が社会教育団体である、こう言われることと――たまたま同じ文言を使った憲法八十九条の、公けの支配に属しない教育には金を出しちゃいかぬということと社会教育法の十条の、公けの支配に属しない教育というものとは、法律の場所は違いまするけれども、やはり同じ考え方だと思うのでありますが、その点について重ねて局長の答弁をわずらわしたいと思います。
  139. 福田繁

    ○福田政府委員 私が申し上げましたのは、憲法八十九条は、公けの支配に属しない教育の事業ということを規定いたしております。従って先ほど申し上げましたように、社会教育法におきましては第二条及び第十条の関係からいたしまして、この教育の事業という憲法のいわば狭い意味の教育の事業だけでなく、社会教育関係団体におきましてはそれ以外の非常に広い分野の事業を持っている、こういうことを申し上げたのでありまして、第十条は従って社会教育に関するこの事業を行うことを主たる目的とするものを社会教育関係団体といたしております。従って十三条の関係から申しますと、この団体に対しては、憲法の趣旨で禁じられている範囲以上に非常に広い範囲において全面的に補助金の禁止をうたっている、こういう関係になろうかと思います。
  140. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 かりに憲法第八十九条にいう教育に関する事業というものは、社会教育法の十条にいういわゆる教育というものよりも広いものを含んでおるのだという局長の解釈を是認いたすといたしますれば、憲法の第八十九条と社会教育法の十三条にいうところのいわゆる社会教育関係団体に対して補助金を与えてはならないという規定とが、私はぴったり一致してくるものだと思う。それだから、憲法第八十九条における、公けの支配に属しない教育を行う事業に対して補助金を出してはならないという規定が、やっぱり社会教育法の第十三条となって現われてきておるものだ、こういうふうに理解しなければならぬと思うのであります。しかしその点が、実際は社会教育関係について文部省が従来から出しておる支出、また今度出そうという予算増額した部分についても、私はやはりこの十三条の規定あるいはもとをただせば憲法第八十九条の規定に抵触するものだという考え方を持たざるを得ないのでありますが、その点は憲法第八十九条は広い意味における教育ということ、そうすればあなたの言われるように第十条は狭い範囲のものの社会教育ということを取り上げているといたしましても、当然憲法第八十九条に規定しておるところの、この種の団体に公けの金を出してはならないという規定はそのまま生きてくるものだ、現に現行の社会教育法の十三条にも、私はその意味ではっきりした明文の規定が出てきたんではないかと思うのでありますが、この点について重ねて御見解を伺いたいと思います。
  141. 福田繁

    ○福田政府委員 お言葉ではございますが、社会教育法の第十三条は社会教育関係団体に対し補助金を与えてはならないという規定でございまして、これは団体そのものに対して、いかなる事業をやろうと、社会教育関係団体に対しては出してはならないという全面禁止規定でございます。社会教育関係団体の中には、たとえば体育関係の事業あるいはレクリエーション関係の事業あるいはまた文化関係の事業とかいろいろな事業を行うものがございます。従って憲法八十九条のいわゆる教育の事業に該当しないものについては、現行の十三条が改正された暁においては出しても差しつかえないというふうに解釈するのであります。従って私どもの解釈としては八十九条と十三条とはずれておる、こういうふうに解釈いたしておるわけであります。従って御承知のように昨年、国際的あるいは全国的な運動競技に関する団体に対する補助金政府が出し得るように、この社会教育法の第十三条の特例として改正をお願いしたわけであります。そういったことから考えましても十三条は非常に広く、全面的な禁止規定になっておる、こういうように解釈しておるわけであります。
  142. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 どうもその点納得がいかないわけであります。憲法に規定する公けの支配に属しない教育というものを狭く解釈するということになりますれば、いわゆる狭義の教育ということの中に入らない体育その他の社会教育団体の行いますレクリェーションだとかいうようなものに対しては補助金を出してもいいような解釈になると思うのでありますが、局長の言われるように憲法八十九条の教育というものは――体育はいわゆる教育学のコースの中に現に入っておる問題であります。そういう意味であなた方文部行政全体を統括する立場の人たちが体育関係を教育の課程からはずそうという考え方は、きわめて便宜的な考え方だと思う。現に大学の進学コースの中におきましても、教育学部の課程の中には教育学と並んで体育関係のものがあるという現実を無視した議論だと思うのです。この点については、なおそういう考え方で社会教育法の十三条を変えていこうということについては――私はどうも内閣の法制局というものが憲法の解釈等をその時の政府に都合のいい考え方に持っていくということはけしからぬことだと思っておる。現に憲法第九条の解釈の問題などにつきましても三百代言的な、自衛のためには戦力を保持してもいいのだというような解釈をする結果が、けさの新聞に出ておるように安保条約の改定の問題で、防衛区域が拡大された場合に、自衛隊が日本の国土以外に出動するということに抵触してくるというような問題で――これは別の例でありますけれども、現に新しい問題を投げかけておるのと同じ意味において、社会教育の名において特定の政治目的に持っていくところの教育活動というものが行われていくという危険があるのであります。日本を今日のような敗戦国としての状況に追い込んだ基本的な考え方のものは、そういうところに出てくると思うのでありますが、他の質問者も待っておるようでございますから、私はこの点についての議論は、文部委員会なり他の機会に続けたいと思います。  それからもう二点伺いたいのであります。先ほど上林分科員私学の問題について触れたのでありますがこの問題についても私多くの大臣にただしたい点もあるのでありますが、一点だけ実は伺いたいと思うのでありますが学校教育法の五十四条に、「大学には夜間において授業を行う学部を置くことができる」という規定がございます。その結果官立大学にはございませんけれども私立大学におきましてはいわゆる二部なる名称のもとにおいて夜間に授業を行うといった学部があるわけでございます。ところがいわゆる夜間部ということになりまする関係から、せっかく優秀な成績で出ましても就職の点においても障害が出て参ります。現にこれは同じ学士であっても、二部を出た学士と一部の学士とが同じ先生について正規の勉学をいたしても、実社会へ出る場合に差が設けられるということは、私は基本的にいって憲法で保障された教育の機会均等という精神にももとることになると思うのであります。そこでこれは今日きのうあたりから各大学の入学試験が始まっておりますので、そういうこととも関連をいたすのでありますけれども、むしろ学校教育法の第五十四条を大学のすべてが夜間において授業を行うことができる、それだから昼間に授業を受けるか夜間に授業を受けるかは、ある意味から見れば勤労しながら勉学をするというような勤労青年等の関係を考えまするならば、むしろ学生の選択の自由にまかした形で当然昼間働いて夜間授業を受ける、あるいは夜間働くために昼間授業を受ける、そういうことについては区別のない形をやればいい。現実に大学関係において、官立なり公立の大学においては夜間授業はやらないのであります。短期大学等は別でありますけれどもやらないわけでありますが、私はむしろそういう点から見て、入学難のいわゆる受験地獄の解消の観点からいたしましても、官立の大学におきましても私はやはり夜間に授業を行う――もちろん夜間授業を行いまする関係から、電灯料あるいはその他特に最近はほとんど鉄筋になっておりますが、火災等の関係等についての特別の配慮なり経費ということもかさんでくることも考えなければなりませんけれど、私はそれは夜間においてもやはり学校の施設を活用して、いわゆる白線浪人として、早稲田大学等の例を見ましても各学部が何十人に一人というような受験地獄を解消する意味においても、この際根本的に考えなければならぬ点じゃないか、その点からこの五十四条は、むしろすべての大学はやはり夜間においても授業を行うことができるという規定に対しまして、一部、二部の区別を私は廃止すべきだ、かように考えるのでありますが、この点について文部大臣が御検討になられたことがあるかどうか。もしないとすれば、私は受験地獄の問題と、現実に夜間部卒業生が実社会へ出た場合に、夜間部の学生だという形で勤労のかたわら勉強をしてりっぱな学士として社会へ出されて差別的な扱いを受けなければならぬということを避ける二点からも、文部大臣一つお考えをいただきたいと思うのですが、そういうお気持があるかどうかお答え願いたい。
  143. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 まず事実から申し上げますが、国立も現在夜間の大学が六つございます。三十四年度で新たに二つ新設をいたすつもりでございます。ただいま御質問でございました点の入学試験の問題、ことに優良校、早稲田、慶応等実に競争が熾烈になって参りました。ただこれはできるだけ無理な試験のないようにいたしたいと思いますけれども、やはり優良校にある程度集中するのは、生徒が集まって参るのでやむを得ないと思うのであります。ただそれだけに優良校において当然夜間部を設置したらどうだというのは、一つの御意見でございますが、現在のところでは、夜間部の方でも決して資格の上で欠けておるところはございませんで、全部同じに扱っておるわけでありますが、世間の見るところが夜間部というふうに扱うわけでございます。従いまして全部の大学に昼夜設けるということは、私はなかなかむずかしい問題で、大学自身のいろいろな都合で、やる気のあるところを予算化してやっておるわけでありますが、事実において全部昼夜併設するということはむづかしいということのほかに、やはり今日の夜間部というものに対しまする見方が格別制度的に遜色がないにかかわらず、世間で夜の生徒というふうに見るという点から見まして、これはかりに無理に併設をいたしてみても、やはり昼夜というようなことは、生徒それ自身の考え方なり社会の考え方なりというものが変るまでの間は、解決策にならないのじゃないかと実は考えておる次第でございます。ただ今度国立大学で新たに二つ夜間学部を設けましたように、これはなかなか便利なところもございますので、要望があって機の熟しておるものにつきましては、もちろん夜間部の増設ということは考えて参るつもりでございます。
  144. 綱島正興

    綱島主査 大臣が四十分には立たないとどうにもならない事情ですから……。
  145. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 それではもう一問だけで終ります。どうか、その点についてはいろいろな問題を実は含んでおると私は思いますので、大臣においても一つ御検討願いたいと思う。やはり父兄の立場から見れば、実社会へ出ると夜間部の学生が差別的な扱いを受ける関係から、二部へ入っておるのを一部へ入りたいというわけで、非常な努力をしておるということになるわけであります。そういう点から見れば私はやはり一部、二部というようなものの、学校教育法の五十四条のちょっとした改正でその点がやはり取り除かれ、現実には学士として資格には変りがないということに学校当局者は説明するかもしれませんけれども、どうも五十四条との関連を持ってくると思いますので、御検討を願いたいと思うのであります。  最後に一点お伺いをしたいと思うのでありますが、これはまだ政府部内ではないと思うのでありますけれども、自民党の中に最近宗教法人に関する特別の委員会ができまして、そこでもっぱらねらいは伊勢神宮を普通の宗教法人とは別な扱い方をしたいという考え方から、もちろん新興宗教その他の関係もおありだろうと思うのでありますけれども、特別委員会ができて検討されておるやに伺うのでございますが、これは憲法第二十条との関係で、憲法改正ができない関係から、何かそこにあるいは憲法改正にからんだ問題になってくる可能性も私はあると思うのであります。そういう意味でこれは私非常に重要な問題だと思います。その点から見て先ほど申し上げました天皇の神格化ということを新憲法においてやめた、天皇陛下みずから人間宣言をされたという関係、その意味で祭政一致というものを、祭政分離をいたして参りました新憲法の基本的な考え方、またその意味において教育あるいは宗教に対する基本的な理念に触れてくる問題であろうかと考えるのでありますが、やはり政党内閣の立場でありますので、与党の中でそういう意見が出、現に特別委員会が持たれるということになりますると、主管省としての文部省の方でも、その点について何らかの準備を進めるというようなことであれば、これは非常にゆゆしき問題だと思うのでありますが、与党限りの問題でありまするか、文部省としてこれらの問題について検討の段階に入っておるのであるかどうか、最後にこの点を伺っておきたい。
  146. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 端的に結論を申し上げます。文部省としては何もいたしておりません。なお、与党の方のことにつきましても、事が重大なので、私も率直に申して、どういうことだということを尋ねてみたのであります。与党の側におきましても、いろいろな意見があるようでありまして、一つにまとまった方向のためにやっておられるのではないようであります。大きく、何といいますか、派でもありませんが、あの特別委員会を作られました動機になった考え方としては、一つには、ただいまお話のございました伊勢神宮や靖国神社を、このままでいいかといったような考え方で、むしろそういう面で非常に関心を持っておられる方と、それから新興宗教の取締りといったような面で、今のままでいいかといったような面で深く関心を持っておられる方とあるようであります。それで、ただいまのところでは、特別なテーマをあの委員会においても取り上げずに、今日の宗教法人法というのは、一体どういうつもりでどういうふうにできておるかといって、逐条審議をしながら基本的な勉強をしておられるそうでありまして、ましてや文部省の方といたしましては、今日特別のことを考えておりません。
  147. 綱島正興

    綱島主査 川崎さん。
  148. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 時間もないことですから、簡単に伺います。  国立劇場の予算は二千数百万円で、三千二百万円が削られたわけですね。これで設計費は足りますか。
  149. 岡田孝平

    岡田政府委員 土地はきまりましたけれども、非常に決定がおくれました関係上、予定の事務の進歩がおくれまして、三十四年度は主として設計書の懸賞募集に関する費用が主でございまして、これといろいろ調査研究費あるいは懸賞募集のための建設審査委員会の設置費、あるいは前からあります劇場の準備協議会に要する経費その他でございます。それは二千万円で今のところ足りる予定でございます。
  150. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 今までの費用はどうしたのです。
  151. 岡田孝平

    岡田政府委員 今までの費用は、国立劇場設立準備協議会に要する費用並びに劇場の各種の調査研究に要する費用、そういうものに充てております。毎年予算は一千六百万円程度いただいております。
  152. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 繰り越しはもらえなかったんですか。
  153. 岡田孝平

    岡田政府委員 繰り越しはもらえませんので、毎年必要な額を……。
  154. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 というと、国立劇場の規模が問題になるのです。三十四億くらいのものをあなたの方では出しておると思うのです。その意味で大体設計費というものは、どうしても諸雑費を入れれば一〇%くらいになるのじゃないですか。そういう懸賞募集じゃないですか。してみると、二千六百万円じゃ足りないのじゃないですか。
  155. 岡田孝平

    岡田政府委員 設計費は建設規模の何%というふうに、建築関係の団体の希望がございまして、その希望をできるだけいれて努力いたしたいと思いますが、その建築団体の希望を全部いれますならば、お話しの通り、二千万円では足りないと思いますけれども、これは大蔵省との折衝もございますし、また建築三団体ともいろいろ折衝いたしまして、しかるべき時期において決定いたしたいと考えます。
  156. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 今文部省でやっておることで、一番国民の関心の的であり、かつ超党派的に、それから全国民的な支持を得てやっておるのは国立劇場の設置だと思うのです。一部には、そういう豪華なものを今日作る必要はないというような議論もあって、いろいろ難渋しておったこともありますけれども、しかし、それはパーセンテージからいえば非常に低いのです。文化財保護委員会がこれまで非常な御努力はありましたけれども文部省は、これだけの国民的な支持を受けておりながら、設計だとかあるいは将来の建築の規模とかいうものを決定するに際しては、全国民的なスケールで問題を扱っておられぬように思うのです。小宮さんにしても、久保田万太郎さんにしても、非常な斯界の権威であります。しかし、できれば国立劇場のことですから、政治家も、財界人も、あるいは労働組合も、すべての代表者が、国立劇場というものは国民の芸術の殿堂だという意味で発言をし得る機会というものが置かれておらない。この間、文部大臣にお伺いしたときにも、自分はそういうことを申し上げたのですが、これからのコースはできればそういう規模で進めていったらどうか。これを要約すれば、文部省が主体になって作ることはいいけれども、イニシアチブは文部省だけれども、できれば内閣に国立劇場建設審議会というようなものを設けて、予算も十分取り得るような背景をあなたはやったらどうですか。
  157. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 所管の問題については、関係の向きとも話をしてみなければなりませんけれどもお話の筋は、全内閣的規模において真剣にこの問題に取り組んで、十分な衆知を集めてやって参りたいと思っております。ただいまお話のございました三十四億という規模についても、これも文部省が考えておるだけで、ほんとうにやはり内閣としてオーソライズしてもらい、そして設計の方向――設計と申しましても、やはり方向がなくちゃならぬわけでありまして、その前に十分な総意を聞かねばならぬと思いますから、ただいま川崎委員からお話のありましたような趣旨において、できるだけ問題を大きく、そして広く検討してもらうような方向で行きたいと思います。
  158. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 これで終ります。国立劇場の基本的性格について最後にお尋ねをして、これはまとまった議論を三分間ほど申し上げますから、そのあとで御答弁願いたいと思います。  私は、国立劇場の基本的な性格として、どうも今までの考え方は伝統芸術の方に重点を置き過ぎているように感ぜられるのです。すなわち、日本民族の貴重な伝統芸術を保存するのはいいのですが、雅楽、能楽、文楽、歌舞伎、邦楽、邦舞などのすぐれた日本芸能とともに、現代人の生活、思想、感情にマッチした新しい世界芸能を取り入れるべきだ。そういう意味では、歌舞伎はもうすでにコマーシャル・ベースに乗って、松竹がやっておるのです。それを除くと、あとは伝統的には非常に尊いけれども、これを舞台芸術として表わす場合においては非常にこまかなものです。その意味で、むしろ日本が将来世界の音楽界あるいは世界のバレー界、オペラ界というものに伍して、りっぱな世界的な普遍的芸能を育てるという意味では、私は今までのウェートの置き方というものを変えていかなければならぬ。伝統芸能の保護とともに、新しい世界芸術というものを取り入れてやっていかなければならぬと思うのですが、あなたのお考えはどうかということが一つ。  それから第二の点は、現在の案によると、大劇場、小劇場と、和洋をごっちゃにしておる。大きい劇場と小さい劇場を作るということで、両方とも、大きな劇場などは歌舞伎もできバレエもできると、そんな器用なことがうまくできるだろうかということの非常な疑問がある。これは建築学的にも非常な疑問があるそうであります。これは建設協議会の中で多数派できまったことだから仕方がないけれども、世の中には非常にそのことについて疑義を持っておる者もあるし、最近ロシヤで行われておるバレーやオペラなどを見ますと、もっと大きい規模で人間を収容しておる。もちろん今度の国立劇場というのはマイクをあまり使わぬ。いわゆる機械的再現芸能、あなた方はむずかしい言葉を使っておるけれども、機械的再現芸能というものでなしに、直接の舞台ということに集中しておるようですけれども、それでも最近イヴ・モンタンがロシヤの劇場で歌っておる。三千四、五百から四千人は入るだろう。新しいやり方をやっていますが、ああいう意味で舞台の構造というものをこの際やはり考え直したらどうかというふうに私は感ずるのですが、これらの問題を通じて、すなわち和劇場と洋劇場は分けるべきではないかという論を持っておるけれども、これらはもう最終的にきまったことであるか、なお再考の余地があるかどうかという点をお伺いをして質問を終ります。
  159. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 第一点につきましては、川崎委員の御意見と全く同感でございます。文部省でこの所管の部局といたしましては、文化財保護委員会と芸術課と似たようなところがございまして、文化財保護委員会で扱っているために、何か古物尊重のような印象があるかと思いますが、文部省といたしましても決してそういうふうなことばかり考えておりませんので、第一点については全く川崎委員と同感でございます。その考えでやるつもりであります。  第二点につきましては、政府委員の方から答弁いたさせます。
  160. 岡田孝平

    岡田政府委員 第二点につきましては、劇場の準備協議会でやや最終的な答申は出ましたのでございますが、なおこれを実施に移します際にはもう一度重要なことでありますので最終的に検討いたして、その結論に基いて実施いたしたい。お話しの通り、何もかもできるという劇場は、これは建築学上からも非常に無理でございますので、二つ作ります国立劇場は、どちらかは古典芸能の上演に適したような劇場にする。しかしながら、なお設備の工夫によりまして現代芸能も上演できるようにしたい。他の劇場は現代芸能に最も適した劇場に設計いたしますけれども、なお建築の工夫によりまして古典芸能もあわせて上演できるように工夫する。こういうことでございまして、やはりねらいをできるだけはっきりいたしまして建設いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  161. 岡田春夫

    岡田分科員 お急ぎのようですから簡単にやりましょう一点は、宗教法人に国が補助金を出すのは憲法違反だと思うが、その点はどうですか。
  162. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 宗教法人に国が金を出すのは憲法違反だと私は思います。
  163. 岡田春夫

    岡田分科員 橋本さんは、文部大臣になられたのは最近なので、あるいは御存じないかと思うのですが、その観点からぜひ注意を喚起しておきたいと思うのですけれども、今度何かお釈迦さんの二千五百年生誕記念のアジア仏教文化会議というものを三月の末にやるそうですね。これに対しては三千万円の国の金を実は出しておるわけです。これはどうしてこういうことができたかというと、一昨年に岸総理が東南アジアを回ったときにこういう話が実際出ている。それがきっかけであって、そういうお釈迦さんのその仏教会議をやるのについて金を出そうということになったのだが、今あなたのお話しのように、文部省でやってもらうと憲法違反の疑義があるというので、その団体の名前に文化という名前を加えて、これを外務省でやることに天下り的に押しつけておる。外務省では、これは仕方がない、上からおえらい人が言ったんだからというので金を出すことになっておるんだが、実体は宗教法人であり、宗教法人の連合体に金を出すわけです。そうすると、憲法上これは非常に疑義があるという点を十分文部省の行政問題としてお考えを願わなければならぬ点が第一点です。  それから第二の点は、これは三月の末からやるという意味が、年度内にやって金を使ってしまおうということなんですが、その内幕を私はよく知っております。それが済んでから、その外国から来ておる宗教関係の人を日本の宗教団体が案内をして地方で何かずっとやるらしい。地方でやるときは、これはざっくばらんに言いますが、ちょうど選挙のさ中で、あなたの党の方で選挙の運動に使うわけじゃないだろうけれども、きわめて効果的なアトラクションにお使いになる可能性が非常にある。そういう事実も実は御存じないと思いますが、私が今から注意を喚起しておくのは、マスコミできっと近いうちに内容の暴露があると思います。そのときになっておれは知らぬと言われても困りますので、今から注意を喚起しておきます。本来は文部省でやることになっており、その実体は宗教団体です。そしてそれが選挙に関連してくるということでありますから、一つ十分注意しておきたい。この点だけを一つ申し上げておきたいと思いまして発言を求めました。何か御意見があれば一つ……。
  164. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 ただいま初めて承わりましたので、十分調査いたしておきたいと思います。
  165. 綱島正興

    綱島主査 これにて文部省所管に対する質疑を終了することにいたします。従いまして、昭和三十四年度一般会計予算文部省厚生省及び労働省所管並びに昭和三十四年度特別会計予算厚生省及び労働省所管に対する質疑は全部終了いたしました。  この際お諮りいたします。本分科会所管の予算両案に対する討論採決は、先例によりまして予算委員会に譲ることにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  166. 綱島正興

    綱島主査 御異議なしと認め、さよう決します。  これにて本分科会の議事は全部終了いたしました。  分科員各位の御協力によりまして、円満に議事を進行することができましたことを感謝いたしますとともに、厚くお礼を申し上げます。  これをもって第二分科会を散会いたします。     午後二時四十九分散会