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1959-02-27 第31回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月二十七日(金曜日)     午前十時五十三分開議  出席分科員    主査 綱島 正興君       小澤佐重喜君    楢橋  渡君       保利  茂君    水田三喜男君       加藤 高藏君    田中織之進君    兼務       井手 以誠君  出席国務大臣         労 働 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    大堀  弘君         外務事務官         (アジア局賠償         部長)     吉田健一郎君         労働政務次官  生田 宏一君         労働事務官         (大臣官房長) 澁谷 直藏君         労働事務官         (大臣官房会計         課長)     松永 正男君         労働事務官         (労政局長)  亀井  光君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      堀  秀夫君         労働事務官         (婦人少年局         長)      谷野 せつ君         労働事務官         (職業安定局         長)      百田 正弘君  分科員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   鳩山威一郎君         大蔵事務官   金子 太郎君         水産庁次長   西村健次郎君         労働事務官         (大臣官房労働         統計調査部長) 大島  靖君         労働基準監督官         (労働基準局監         督課長)    鈴木 健二君         労働基準監督官         (労災補償部         長)      村上 茂利君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部長)  三治 重信君     ————————————— 二月二十七日  第四分科員井手以誠君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十四年度一般会計予算労働省所管  昭和三十四年度特別会計予算労働省所管      ————◇—————
  2. 綱島正興

    綱島主査 これより会議を開きます。  本日は昭和三十四年度一般会計予算及び同特別会計予算中、労働省所管について審査を進めます。これより質疑に入ります。通告がありますから順次これを許します。井手以誠君
  3. 井手以誠

    井手分科員 石炭産業の不振から今回重ねて者朽化した炭鉱百万トンを買い上げるような模様でありますが、そのために従来三百三十万トンでございますか買い上げになっていないものを含めた石炭鉱業整備になりますと、一万二千人くらいの失業者が出る見込みであります。そのためにきのうも次官会議でその対策を講ぜられておるようであります。その一万二千名に上る石炭鉱業失業者対策、その対策がきまりましたならば、この機会に承わりたいと思っております。具体的に一つお願いいたします。
  4. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 石炭産業につきましては、御承知のように貯炭量も千百万トンに及ぶというふうになりまして、同時にまた他のエネルギー資源の圧迫によりまして、業界が今日のような状態であることは御承知通りです。そこでかねて決定していただいております合理化法に基きまして、三百三十万トンはすでに買い上げのことに決定をいたしておりまするが、なおさらに百万トンを増加するという必要があるということで、それぞれ関係方面においてはその方針決定したわけでありますが、労働省立場といたしましてはそういう施策を推進して参るにつきましては、当然予想される失業対策をまず考慮に入れて計画を進めなければならぬということで、その意見が出ましてから今日までそれぞれ部内において検討いたしまして、地元におきましてもやはり合理化法発動も大切である、これもぜひやってもらいたいということも要望され、同時にまた今私が申し上げましたような失業対策も講じてもらいたい、両方でございます。ごもっともなことだと思ってやって参りました。それぞれ関係当局において検討いたさせました結果、今日までの合理化法発動による失対、その残り対策を要する人員等に加えて今回のものと、大体私どもの方で成案を得ましたので、今具体的に政府委員の方から決定いたしました案を御説明申し上げたいと存じます。
  5. 百田正弘

    百田政府委員 ただいま御質問のございました石炭鉱業合理化の問題につきまして、すでにこれが始まりました当初からそれぞれの対策を講じてきたのでございますが、その後石炭の景気がよかったというような事情によりまして、再び労務者数等でも一部において増加を見まして、昨年来これの買い上げの進むに従いまして、大体昨年の秋までに発生した、このために離職した労務者が、今お話しになっておる一万二千人程度になるわけであります。それらにつきましては、従来それぞれによって対策を講じて参ったのでございますが、今度さらに百万トン追加買い上げになるということで、大体昨年の十一月末で、特に公共事業その他失対事業等によって吸収しなければならぬ人間が約五千八百人ということになっております。そこでその後三百三十万トンを年度内に買い上げていくためにさらに追加して出て参りますが、百万トンの追加買い上げによりまして全国で約七千五百人の離職者が予想されるのでございます。特にこれが集中的に北九州地区におきまして四千九百人、約五千人程度がある。その他の地域もございますけれども、これはそれぞれの対策によって処理し得ると考えられますが、特に北九州地区におきましてはこういうふうに集中的に出ます関係もございますので、これに対して従来のいろいろな対策の不備な点等実績にも顧みまして、それらも補足しながら対策を講じていく必要があるということで、大体従来の実績から申し上げますと、離職者のうち約二割というものが公共事業あるいは失対事業等によって当面吸収を必要とするものでございますので、今度九州地区において約五千人、その二割の一千人も加えまして、この全部を対象といたしまして、北九州地区におきまして集中的に公共事業実施を行うということになったわけでございます。もちろんその前提といたしまして、職業安定機関におきます職業紹介、あるいは職業訓練の充実ということを行いますと同時に、さらにまた石炭鉱業整備事業団におきましても、これらの離職した労働者がほかに移転していくという場合には、一カ月分の移転資金も支給するということになっておりますが、特に公共事業等によって吸収し得る者につきましては、三十四年度におきまして、北九州地区において、昨年よりも約三十四億増加いたしまして、約七十九億程度予算によって、できるだけこれに集中的に吸収をしていこう、しかしながらこれを実際に運営する場合にいろいろな問題もございますので、できるだけ失業者の発生する地域においてそうした事業が行われることが必要でもありますと同時に、それに必要な輸送施設あるいは飯場施設といったものも確保していくことにいたしまして、できるだけこの吸収計画通り円滑にいくように努めていきたいと考えておるわけでございます。さらにこの実施が地方の実情に合って参りますように、関係機関におきまして離職者対策協議会を作り、これが中央と密接な連絡をとって、その計画が円滑に行われるようにやっていく、こういうことで大体の方針がきまりましたわけでございます。
  6. 井手以誠

    井手分科員 いま少し数字を的確にしたいと思っておりますが、今日まで合理化法によって整備されたトン数と、それによる離職者の数をまずお知らせ願いたい。
  7. 百田正弘

    百田政府委員 今日まで買い上げました炭鉱の数は百三十四、二百四十三万五千トンの買い上げが行われておりまして、それに伴う離職者が一万七千六十三名、こういうふうになっております。
  8. 井手以誠

    井手分科員 そうしますと今後買い上げになる分が、今回の百万トンを加えますと百九十万トンになるわけですね。百九十万トンになれば離職者は幾ら出るのでありますか。
  9. 百田正弘

    百田政府委員 新しく百三十万トンに達するまで買い上げるために、今後さらに十二月以降三月までに出てくる離職者見込みは約三千人、その後来年度にまたがりまして、三十四年度に三百三十万トンまでの買い上げによって出てくるのが五百十五人、計三千五百十五人、今の三千のうちには多少前の分の重複するのもあるかと思いますが、三十三年度の四半期に予想されますのが三千三百九十三人、それから三十四年度にかかりますのが五百四十二人、さらに百万トンの追加買い上げによります分が七千五百三十二名、こういうことでございます。
  10. 井手以誠

    井手分科員 そうすると三百一三十万トンの中に、今日までに離職した者が一万七千人、それから三百三十万トンの整理による残り離職者が三千九百三十八人、それから新たに百万トンによって七千五百三十二人できるというわけですか。
  11. 百田正弘

    百田政府委員 そういうことです。
  12. 井手以誠

    井手分科員 すでに買い上げによって離職された一万七千人は的確にわからないかもしれませんが、およそどのくらい就職し、あるいは失対に入り、あるいは失業のままになっている見込みですか。
  13. 百田正弘

    百田政府委員 それが先ほど申し上げましたように、失対事業対象といたしまして、なお対策を必要とするという数字が昨年の十一月末現在において福岡地区において約五千八百七十人、他の地区においては特に大きな数字とはなっておりません。
  14. 井手以誠

    井手分科員 そうすると一万七千人のうちに、なおあなたの方で対策を要すると考えられるものが五千八百七十人、しかし特に石炭界においては今後ますます雇用状態が悪くなると思わねばなりません。そうなりますると、三千九百人に加えて七千五百人の新たな離職者考えますと、石炭鉱業整備による失業問題というものは、きわめて重大だと考えるのでありますが、その対策としてどういうふうにお考えになっておりますか。先刻は抽象的にお話しになりましたが、どういうふうにこの新たに発生する一万人以上のものをお考えになっておりますか。ただ失対ということでございますか、公共事業に若干吸収するという程度でございますか。
  15. 百田正弘

    百田政府委員 やはり第一義的には安定所努力によりまして、できるだけこの人たちを再就職させるということが一番の本筋であろうと思います。それと同時に必要なものについては職業訓練実施することによりまして、他産業ないしはその他のものに就職を促進する、従来もそれによりまして相当程度就職はいたしておりまして、先ほど申し上げましたように、公共事業その他で対策を必要とするものが十一月までで五千八百七十人ということになっております。大体これがそうした離職者の二割程度に当るわけであります。これは単に石炭合理化のみならず、その他の理由によりまして石炭産業から離職いたした者を含めまして、やはり二割程度、これが公共事業その他で救済を必要とする、こういうことであります。従いまして今後出る——特に福岡地区におきまして今年度におきましても三千四、五百人、さらに四千九百人程度出ておりますが、これもわれわれの先ほど申し上げましたような対策によりまして、できるだけ他産業への就職をはかるように努力を続けて参りたいというふうに考えております。従来の経験から見まして、どうしてもそうした公共事業その他において吸収することを必要とするものが残って参ります。これが大体その二割といたしまして、それに対しましては先ほど申し上げました、公共事業をあの地区において重点的に実施する、こういうふうなことであります。
  16. 井手以誠

    井手分科員 七十九億円と申しますのは、北九州とおっしゃいましたが、どの県とどの県でございますか。
  17. 百田正弘

    百田政府委員 ただいま申し上げました七十九億というのは、これは福岡県でございます。
  18. 井手以誠

    井手分科員 福岡県以外の佐賀長崎についてはいかがでございますか。
  19. 百田正弘

    百田政府委員 佐賀長崎につきましては、従来の公共事業ないしは失対事業の運営においてやっていく、こういうふうなことであります。
  20. 井手以誠

    井手分科員 大臣にお伺いいたしますが、七十九億円と申しますのは、公共事業に予定された配分のほかに新たに加えられるものですか。
  21. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 今般の施策をやるにつきまして必要なる新たなる経費であります。
  22. 井手以誠

    井手分科員 その金はどちらから持ってこられますか。
  23. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 公共事業費のうちからやるわけであります。
  24. 井手以誠

    井手分科員 すでに公共事業については実績に基いて予算の査定が行われ、九体各県においてその用意があると思いますが、その中から七十九億円を新たに持ってくるということは、なかなか困難だと思うのです。予算編成のときには一万名以上に上るこの石炭買い上げによる離職者については、私は予定されていなかったと思う。その点はどうですか。
  25. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 百万トン買い上げのことは、大体予算編成のときから、通産省におきましては今日の石炭事情でこういうものをやらなければならないということを考えまして、先ほど申し上げましたような買い上げ事業団とも折衝をいたしておったようであります。
  26. 井手以誠

    井手分科員 それでは百万トンの石炭鉱業整備に伴うものは、公共事業において、いわゆる福岡県については七十九億円というものは加わっておったというわけでございますか。
  27. 百田正弘

    百田政府委員 本年度予算におきましては、公共事業費は四百七十億以上の増額になっております。従いましてこれの配分につきまして、特に九州地区におきましてこれらの失業者が多数出るということで、公共事業増額をいたしております。
  28. 井手以誠

    井手分科員 公共事業全般で四百六十六億の増加、これは公共事業全般の問題ですが、少し数字がおかしいようですね。そうじやなかったと思うんですがね。公共事業というのは、道路港湾、すべてのものにわたる公共事業が四百六十六億円ふえる。そうでしょう。
  29. 大堀弘

    大堀政府委員 経済企画庁の方からちょっと補足的に御説明申し上げたいと思います。ただいま申し上げました公共事業費はもちろんでございますが、そのほかに国鉄事業でございますとか、通産省でやっております鉱害復旧仕事でございますとか、道路公団仕事でございますとか、こういった各種の事業がございますが、例年特別に失業者が集中して発生します地域に対して、こういった事業をなるべく集中的に持っていく、そういった面でそこから発生する失業者を救済するようにということで、内閣の方で各省集まりまして、予算編成と同時に対策を講じておるわけであります。今回は特に北九州地区石炭整備の問題から失業者が多発するおそれがございましたので、関係省集まりまして、それぞれの所管事業について、できるだけ予算北九州の方へ重点的につけていこうということで、建設省農林省運輸省、それから通産省、これらのそれぞれの所管事業について北九州地区に集中する、こういう努力をいたしたわけでございます。それを集積いたしました結果が、各省作業量全体といたしまして、三十四年度七十九億の事業北九州へ持っていくことが可能であるという結論を得たわけでございます。昨年三十三年度が四十五億でございます。従いまして、差額の三十三億程度事業北九州よけいに三十四年度は持っていけるわけでございます。これによりまして千百名程度石炭労務者から出てくる失業者吸収し得る、それについて各省、現地と十分連絡をしましてこれの実行をしていく、こういう考え方でございます。
  30. 井手以誠

    井手分科員 これは加わっておればそれでもいいと思いますけれども数字を一応知っておる者は、このままではおかしいと思いますので、大臣に念を押しておきますが、治山治水道路整備港湾漁港食糧増産災害復旧鉱害復旧、こういう多くの公共事業、これはもう各都道府県にまたがったものです。ことしはなるほど公共事業は四百六十六億円ふえておりますが、ふえておるということは、これはやはり各県必要があってふえておるわけでありまして、そのふえたものの四百六十六億円の中から、七十八億円というものを福岡県だけに持ってこれる余裕があるのですか。あるとおっしゃればそれでもけっこうですけれども、将来は将来の問題になりますけれども、七十八億円というものが、よその県のものが持ってこれますか、そういう、ふうに重点的に。
  31. 大堀弘

    大堀政府委員 これは各省におきましてそれぞれ内容を検討していただきました結果、これだけのものをここへ持って行き得るという結論に達したわけでございます。
  32. 井手以誠

    井手分科員 それではその項目別にどのくらいずつ持ってこれるかお示し願いたい。
  33. 大堀弘

    大堀政府委員 これは非常に細目がございますので、実は私から全部詳細に御説明申し上げかねますが、建設省関係では三十四年度五十四億円、農林省関係で五億五千万円、運輸省関係で七億八千万円、通産省関係で十一億九千万円、合計で七十九億ということになっております。
  34. 井手以誠

    井手分科員 そうしてまた普通の公共事業が昨年よりも四百六十億円ふえておりますので、従って福岡県も大体その比率でふえていくだろうと思いますが、そのふえていった上に、さらに七十九億円福岡にふやされるということに結論はなるわけでございますか、その最後の点だけですから大臣から間違いなければ一つ……。
  35. 大堀弘

    大堀政府委員 ただいま申し上げましたのは、七十九億の中には公共事業費も入っておりますし、それ以外に国鉄の鉄道の建設事業も入っております。あるいは通産省でやっております鉱害復旧仕事工業用水仕事漁港関係、その他全部含めまして七十九億でございまして、ただいま申し上げました既定の計画にありますものにプラスしてできるだけ九州に持ていった結果が、七十九億であります。
  36. 井手以誠

    井手分科員 くどいようですけれども公共事業は各方面です。それで昨年度よりも公共事業は全体的にふえておりますから、福岡県も当然ふえていくだろうと思います。その上に新たに発生する石炭鉱業整備のために七十八億円上積みされるわけでございますか、念を押しておきます。その点は間違いないですね。昨年よりもふえたというのじゃなくて、石炭鉱業整備のために七十九億円間違いなくふえておりますな。
  37. 大堀弘

    大堀政府委員 七十九億円というのは、全部含めた額であります。三十三年度はそれに相当する項目は四十六億でございますから、それが三十三億ふえて七十九億になるわけであります。これは全体としては大きくなっていますが、各地域よりもよけい目に、相当重点が置かれていることは明らかであります。七十九億が全部新しくプラスされたわけではございません。その点何か食い違いがあったかと思います。
  38. 井手以誠

    井手分科員 きのうの次官会議決定並びに本日の閣議の決定によりまして、福岡県には七十九億三千九百万円を新たに公共事業として加える。そういううふになっておりますが、そうすると、そうではないわけですね。
  39. 大堀弘

    大堀政府委員 御指摘のようなことではないわけであります。
  40. 井手以誠

    井手分科員 それでは先刻来の答弁と少し違いますが。
  41. 百田正弘

    百田政府委員 七十九億というのは、筑豊地区それから北の方の粕屋、あの辺の北九州地区において三十四年度特に重点的にこうした発生があるから、あの地区に七十九億の公共事業実施しよう、それが昨年度に比べて三十四億増、こういうことになるわけです。そこで、それによる吸収人員はどの程度になるかと申しますと、これのみによりまして三十四年度に四千三百四十一人、このほかに失対事業についても増がありますので、これが大体予定が三千二百、合せて七千五百の失業者吸収できる、こういう計画になっております。
  42. 井手以誠

    井手分科員 七十九億も出すというので非常に勢いのいい話だと思っておりましたが、あけてみたらさようでなかった。これはあまりいろいろと追及することもないと思いますが、公共事業吸収しましても、それは臨時でございまして安定したものじゃないわけです。この問題はなかなかむずかしい問題でございますから、労働省にああしろこうしろと言ったところが簡単にいかないことは承知しておりますので、この程度にとどめておきます。福岡県の分はわかりましたが、佐賀長崎はいかがなさいますか。
  43. 百田正弘

    百田政府委員 佐賀長崎につきましては、状況に応じまして、私どもの方では失業対策事業その他で応急的に吸収できるものは処置していきたいと考えております。
  44. 井手以誠

    井手分科員 佐賀長崎については当初からあまり特別に重点的には考えておらないというわけでございますか。
  45. 百田正弘

    百田政府委員 整備事業団の百万トン追加買い上げによる各県別離職見込みは、佐賀については現在のところございません。長崎については四十九名ということになっております。これは失対事業吸収することになります。     〔主査退席水田主査代理着席
  46. 井手以誠

    井手分科員 石炭鉱業整備についてはこの程度にとどめまして、今度は失業保険についてお伺いをいたします。  今回政府では失業保険に対する国庫補助を、従来三分の一であったものを四分の一に引き下げた。これは社会保障制度後退だといわれておるわけでありますが、もう予算の審議も余すところ二、三日になって参りましたが、この予算関連の議案はいつお出しになるつもりでありますか。お出しにならぬならそれでもけっこうです。
  47. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 政府部内の意見調整もまとまりましたので、昨日提案になりまして、たぶん社会労働委員会に付託されることと思います。
  48. 井手以誠

    井手分科員 船員保険法と一緒ですか。
  49. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 その通りでございます。
  50. 井手以誠

    井手分科員 それではやはり大蔵省意見通りにあなたの方は後退なさったわけですか。
  51. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 後退と申しますことが、どういうことか存じませんが、予算委員会でも申し上げましたように、新しくいろいろな社会保険を設置いたします関係上、根本的に社会保険全体について、社会保険省というような構想の話もあり、いろいろございましたが、そういうふうに整備統合する必要はあるということは考えておりますが、とりあえず今年は新しい国民年金等実施いたしますにつきまして、財政的にもその間の調整をいたす方がよろしいということで成案を得たわけであります。
  52. 井手以誠

    井手分科員 それでは大蔵省が主張しております通りに、予算の説明にあります通りに、国庫の負担は四分の一というわけでございますか。
  53. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 その通りでございます。
  54. 井手以誠

    井手分科員 これは新聞の論評でも、あるいは各方面意見でも、失業保険の改正は練り直せということが強くいわれておるわけであります。会計が黒字になっておるならば、むしろ内容を充実すべきであるという主張が圧倒的であります。今回は政府部内でやむを得ざることになったかもしれません。私は反対でありますけれども、あるかもしれませんが、これは明らかに社会保険のうちでも重要な失業保険後退だと私どもは思っておりますが、労働省はこの世論にかんがみて、あるいは理論的にも、来年度あるいは三十五年度くらいからもとに復するお考えはございませんか。
  55. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 失業保険だけ考えますというと、私どもは必ずしも今度ああいうことをやる必要を感じておるわけではございませんが、社会保険全般としての考慮から考えた次第であります。そこでこの失業保険は御承知通り、約五百数十億の積立金を持っております。けれども、これは労使双方資金でありまして、決して国の資金ではありません。従って社会政策という立場から私ども考えますならば、当然やはり内容についてできるだけ充実してやっていく、これが理想でございます。ただ先ほど申しましたような関係で、この際ああいうふうにやることが適切であると考えていたしたのでありますが、もちろん保険経済に危機を生ずるというふうなことがあってはなりませんから、そういうことのないように、今回の立法措置でも十分な考慮を加えた案を提出いたしたつもりであります。
  56. 井手以誠

    井手分科員 失業保険保険経済というよりも社会保障でありまして、一方に社会保障制度の一部が前進しましても、一方で後退するならば全体的に私は前進にはならないと思うのです。労働省の意向は私も大体承知しておりますが、大蔵省主計官は、ただいま労働大臣がお話になった点について、三十四年度はすでに決定したものとしてやむを得ないとは思っておりますが、三十五年度以降については考え直すお気持はありませんか。
  57. 鳩山威一郎

    ○鳩山説明員 失業保険国庫負担率については、いろいろいきさつがございますけれども結論的に申し上げますと、昨日内閣の方から出ました法案については、私ども伺っておりますところでは、失業保険の全体の保険料並びに国庫負担率を下げますのは、暫定的なとりあえずの措置として下げる。それで今後社会保障制度審議会その他において社会保障、特に各種の社会保険の給付内容その他についても総合的に検討して、その結論によりましてはまたこれは別な結論が出るのではないかと、そういうことで一応三カ年ほどの実績を見て、その後にまた考え直すというような結論になっております。私ども当初は国庫負担を四分の一に下げるということでいろいろ案を作ったわけでございますが、その趣旨といたしましては、社会保障全体で例年ですと七十億、八十億くらい伸びる——これは考え方によっては非常に少いという見解も十分ございますが、それに対しまして本年度は二百二十億をこえた増加になっております。これのうちで失業保険国庫負担を三分の一に据え置いた場合にはさらに二十八億の財源が必要になるわけであります。そういうような次第で、社会保障全体として国民年金の創設あるいは皆保険計画の推進というようなことで非常に経費が要る。それからまた失対事業その他についても別に改善をはからなければならないというような各種の社会保障の他の部面における拡充が要請されておったわけでございます。他方失業保険につきましては、端的に現実的な問題として国庫負担を三分の一を据え置いた場合には、結果として積立金増加ということになって現われてくるだけでございまして、当面他の社会保障の各部門におけるどうしてもやむを得ない緊急の増額をはかった方が、結局社会保障全体としてプラスなのではないかというような考え方で、制度といたしましては三分の一が四分の一になるということが一見後退というような観を与えますが、しかし他の面で緊急の問題の方にその財源を振り向けるということの前進になるのじゃないかということを考えまして、当初の案を立案いたしたわけでございます。そのような次第でございますので、予算編成の過程におきましてただ財源が二十八億ほどどうしても足りないというだけのことではなしに、他の緊急な面に社会保障を前進させるという考え方に立ちまして、そういうような案を作ったわけでございます。御了承願います。
  58. 井手以誠

    井手分科員 私は大事な時間でございますから、その必要性などについての論争はいたしません。これはわかり切った事柄ですからこれ以上申し述べませんけれども、黒字になったから国庫負担を減らすなんということは話になりません。そこであなたは先刻答弁の中に、三カ年間だけ模様を見ようというお話でありましたが、またほかの答弁では、審議会に諮って結論を待って改めたいというようなことでございましたが、どちらでございますか。審議会に諮ってもとに復した方がいいということであれば、三十五年度からでもやれるというわけですか。
  59. 鳩山威一郎

    ○鳩山説明員 法案につきましては三カ年の実績を勘案してきめるというふうになっております。これは失業保険につきましては特に失業のやや長期的なトレンドといったものを勘案する方が妥当であろうということから、一年ではやや短か過ぎるのではあるまいか、三年程度実績を見る方が失業の事の性質上いいのではあるまいかということで、三年といたしてございますが、これは何もそれより早く国庫負担率を改めることを否定するわけではございません。早い結論が出ればもっと早く措置をとることは、もちろん可能だと思っております。
  60. 井手以誠

    井手分科員 元気のいい倉石労働大臣がおって、三カ年間もそういう措置をするようなことに賛成されたことは、私は非常に不審に思っております。えらい労働大臣大蔵省に弱いもんですね。今の御答弁で、結論が出れば何も三カ年に限ったことじゃなくて、一カ年でもよろしいということでございますが、その点に私は期待をいたしまして、私どもは法律案に強く反対いたしますが、三十五年度予算編成の際には、保険経済などということよりも社会保障という重大な点をお考えになって、三分の一に引き上げられるように、もとに復するように一つ御努力を願いたいと思っております。この点はここで論争してもあまり価値もないでしょうから、この程度にとどめておきたいと思います。  次にあなたのいらっしゃる間にお聞きしておきたいと思いますが、それは職業安定機構の問題であります。今私ども地方に参りまして、一番古い建物は法務省関係の登記所と職業安定所、おそらく徳川時代の建物が多いだろうと思っております、大ていの家は屋根にはペンペン草がはえておる、便所もない、あれほどたくさんの求職があるのに便所もない、そういうことで私は便所のお世話までしたことがある。今の時代には国のサービス機関としては、第一線の重要な職業安定の機関であります。その建物が非常に腐朽をしておる。三十四年度には幾ら安定所の改築あるいは人員の整備について増額をなさっておりますか。家屋いわゆる事務所と人員についてまず承わっておきたいと思います。
  61. 百田正弘

    百田政府委員 私からお答え申し上げたいと思います。庁舎につきましては、三十三年度は四千五百二十三万九千円、三十四年度におきましては、一般、特別両会計合せまして二億六百五十六万二千円、これで一億六千百三十万くらい増額になるわけであります。この点につきましては非常に大蔵省の御理解を得まして、昨年に比べまして額において四倍半という増額になったことは非常に喜ばしいことだと考えております。人員につきましては、特別会計におきまして百六十三名の増員、こういうことになっております。
  62. 井手以誠

    井手分科員 あなたの方の大蔵省に対する人員の要求は幾らでありましたか。
  63. 百田正弘

    百田政府委員 私どもといたしましては、現在の安定所におきます窓口が非常に混雑しておる、従ってなかなか一人当りの時間もとれないというようなことからいろいろ計算いたしまして、千名か二千名は実は必要とするというふうに考えておりますけれども、いろいろな一般会計事情もあり、特に今回におきましては、失業保険の受給者が多い現状にかんがみまして、失業保険の特別会計におきます増員ということで、なったわけであります。
  64. 井手以誠

    井手分科員 求職者の激増に比べて安定所の人はむしろ減っておるように聞いておりますが、七、八年前と今日の比較がありましたら……。
  65. 百田正弘

    百田政府委員 今手元に詳細な資料はございませんが、大体当初におけるのと比べまして、その後人員整理その他におきまして約一割程度の減少になっております。業務量におきましては逆に非常にふえてきたということで、安定所におきましては一人当りの業務が非常にふえておるというのが現状であります。
  66. 井手以誠

    井手分科員 業務量は大よそどのくらいにふえておりますか。
  67. 百田正弘

    百田政府委員 業務量につきましては、たとえば求職者の数あるいは日雇い労働者の数いろいろございますが、それはわれわれ一つの指数を作っております。それによりますと約三倍程度ということになっておると思います。
  68. 井手以誠

    井手分科員 これは新聞の報道ですが、安定所職員が求職者一人に面接する時間は、新規求職で七分、再来求職で二分、一般紹介で一分、失業保険の認定給付で一分、日雇い紹介に至っては十三秒五となっておる。大体そんなものでありますか。
  69. 百田正弘

    百田政府委員 安定所事情によっても異なりますが、特に東京都内あたりの大安定所の実情はその程度でございます。
  70. 井手以誠

    井手分科員 労働大臣にお伺いいたしますが、この重大な雇用問題、職業安定において、わずか一分か二分くらいで大事な職業のあっせんができるとお考えでしょうか。この職業あっせんについてどのくらいの熱意を持っておられるのか、倉石大臣の熱意のほどを伺っておきたい。
  71. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私はいつも現場を見まして、労働省の事務当局はみな非常によくやっていてくれますが、なかんずく非常に激しいお仕事をしておるのは職安の関係であります。職業安定の審議会の方々も非常に熱心に各地を巡回されまして、井手さんの御指摘になりましたように、建物は古い、しかも非衛生な古くさい設備である。これでは今日のような状況において、職安行政を満足にすることはできないではないかという、非常に真相をうがった答申をいただいております。昭和三十四年度予算の編成に当りましても、そのことを特に財政当局とも懇談をいたしまして、今日の財政事情の許す限り、先ほど政府委員が申されましたように、四倍以上の予算を得たようなわけでありますが、私はこれで十分であるとは思っておりません。ことに私の方でまず労政の一番重点的なものは、雇用、失業の問題であるということで、いつかも申し上げましたように、実際に人を使っていただく方々に集まっていただいて、雇用問題懇話会というふうなものを作りまして、そこで大体計画的に雇用の相談をして、政府と実際に雇用する面と連絡を緊密にしていこうということでやっておりますが、そういうところのお話を承わりましても、百パーセント安定所を利用されておるところもあり、また幾ら頼んでも、本日は予算で何回電話をかけたからこれ以上はかけられないといったようなこともあるし、また相当なところの安定所の所長が自転車で飛び回っておるというふうなことで、あまり信頼感を持てないというふうなことをおっしゃる雇用者もあるのであります。安定行政につきましては一番大事な窓口でありますし、また大ぜいの大衆に喜んでいただける仕事でありますから、これで十分だなどとは決して考えておりませんし、なお財政当局ともさらに相談をいたしまして、この機能が活発に動けるように一段の努力を続けて参りたい、こういうふうに思っております。
  72. 井手以誠

    井手分科員 ここに私は中央職業安定審議会が出しました、職業安定組織の整備拡充に関する建議というものを持って参っておりますが、これには今局長がお話になったように、人間は減る、仕事は三倍にふえておる実情が詳しく書いてある。建物がいかに古いかということも書いてある。ただいま申し上げましたように、一分間か二分間で大事な職業あっせんをしなくてはならぬという、しかも電話もろくろくかけられないという、この一番大事な政治の第一線にある職業安定機構に対して、予算に対して、大蔵省主計官はどういうようにお考えになっておりますか。もちろん十分であるとは思いません、せいぜい努力しますとお答えになるかもしれませんが、そのくらいではこれはどうにもなりません。
  73. 鳩山威一郎

    ○鳩山説明員 昨年審議会の答申がありまして建議がございました。特に安定所の建物と人とそれから庁費の三本、これが予算対象でございますが、その三本を拡充しなければならないということでございました。私どもといたしましては労働省の御当局と御相談いたしまして、以上三点につき重点的に予算を計上するという方針で、予算を作った次第でございますが、そのうちで特に最大の重点としては、まず建物に置いたわけでございます。特に東京近辺あるいは大都市の建物が非常に悪いものがございまして、また非常に狭隘でございまして、人ももちろん増員を要しますので増員いたした次第でございますが、何分建物を広げませんと人も入れられないという状態のところが多うございます。そこでまずここにおいて建物を緊急に整備する必要があるということで、二億一千万円の予算を計上いたした次第でございます。人につきましても、今後とも拡充して参りたいというふうに考えております。
  74. 井手以誠

    井手分科員 各方面の統計によりましても、昭和三十七年度には新規労働力が百九十万になると言われておる。新規労働力のあっせん、失業対策、ますます職業安定所仕事は多忙にまた重要になって参るのであります。建物にいたしましても、中央では大きな役所も十億、二十億とどんどんできておりますが、一番大事な第一線がおくれておる。なるほど昨年に比べて何倍かふえておりますけれども、このくらいでは追いつきません。かりに建物を作りましても、たくさんの人を入れることができましても、人が足りぬでは仕事にならぬわけであります。私は健在なる限り、この点については今後も何回となく要求するつもりでありますから、大蔵省でもこの点を十分一つ御配慮願いたい。また大蔵省労働省もいま少し強いところを見せて、自分こそ政治の第一線にあるという気魄を持って当っていただきたいと強く要望いたしまして、この点はこれで打ち切りたいと思っております。  次にもう一点、労働大臣に席に着いていただきたいと思いますが、労働大臣失業問題について、総理府統計局の毎月の労働力調査をとっておられるのでありまして、これがいわゆる隠れみのになっておるようであります。先般私が委員会において質問した際もさような意味の答弁がございました。ところが、二、三日前に発表されました経済企画庁の景気変動と就業構造という資料によりますれば、今日の総理府統計局における完全失業者出し方が間違っておる。定義がきびし過ぎるために実際の完全失業者というものをつかんでいない。こういう発表がありました。先般、委員会におきまして、三十三年度においては六十七万人の雇用増加があると政府は申しておりますけれども、私が数字を当ってみますと、逆に減っておると思うのです。雇用全般については分科会でやることはふさわしくありませんので申し上げませんけれども、本日はこの雇用問題の基本になるところの完全失業者のとらえ方、この点を一つしばらくお聞きいたしたいと思っております。  大臣も御存じのように、失業いたしましても何とかして生き延びなくちゃなりませんので、一日に一時間とか一週間に半日くらいはだれでも働く。人夫に行ってでも働いて食わなくちゃならぬわけでありますが、そういうものが完全失業者の統計に入っていないわけであります。この点についての大臣の所見をまず承わっておきたいと思います。
  75. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 内閣統計局でやっております数字、私は隠れみののつもりではないのでありますが、内閣統計局の統計について企画庁が意見を述べたという話も聞いております。内閣統計局の労働力調査のとり方については多分昨年だと記憶いたしておりますが、とり方を若干変えた。そこで非農林の従業者というものがその結果非常に現われてきておる。数字に大きな変動がありました。内閣統計局としてやっております労働力調査というものは、一応その資料のとり方を変更いたしたにいたしましても、その統計を基礎にして計画を立てていたことは、御承知通りであります。  それからまた昭和三十四年度の経済の運営等について、政府が企画庁を中心にして策定いたしました経済の見通し及びその運営の方針にいたしましても、やはり実質五・五%の経済の伸び、従来のデータ、それを基礎にいたしまして、大体本年度増加いたすべき吸収人員増加も七十四万人、こういう計画を立てたのでありますが、その統計局の資料のとり方につきまして私どもの申し上げることに誤解があってはいけませんから、うちの方の統計調査部長を呼んでおりますから、どういうふうにしてその数字に若干の変動を生じたかということを具体的に御報告申し上げる方がいいと思います。
  76. 井手以誠

    井手分科員 それは承知いたしております。従来は千五百世帯の中の一世帯を調査しておったものが、千三百五十世帯の中の一世帯をとるようになったわけであります。若干精度は高まっておりますけれども、それくらいで正確を期するなどとは考えるべきでございません。千五百分の一が千三百五十分の一に変っただけでありまして、あとはそれによって全体を類推していくわけであります。ところがその統計のとり方が調査期間中一時間でも働いておれば完全失業者ではないわけです。先刻申し上げましたように、何日間のうちに一時間か二時間はだれでも働くと思う、食うためにはやむを得ないのです、それが失業者に入っていないということはおかしくはありませんか。その統計のとり方の変更については私は聞く必要はございませんが、そういうもので完全失業者というものがつかめるかどうか、その点を私はお伺いしたい。
  77. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私どもも実は労働行政をやって参ります上において、統計というものが一番大切であると存じまして、来年度予算にも統計について若干の増額をしていただいて、専門の調査官を増置していただくことにいたしましたのも、そういうところに趣旨があるのでありますが、技術者かたぎと申しますか、統計を専門にやっておる人たちにつきましては、やはり自分のやっておる統計のとり方というものについては相当数が自信を持っておるようであります。私どもは内閣統計局の統計につきましても若干の疑点を持っておりましたので、労働省側からもかねて内閣統計局にも、今御指摘のような点について懇談を申し入れておったようなわけであります。そこで今お話のように、一時間でも働く者は完全な失業者というわけではない、そういうことはなかなかむずかしいことだと思いますが、実際にそういう程度のことで生活を安定し得ることは、われわれも考えておりませんけれども、いわゆる完全失業というものの定義につきましてはいろいろございましょう。しかし今まで内閣統計局でやっておりました統計は、今御指摘のようなとり方で完全失業者というものを出して、その他は私どもの方で言えば不完全就労者、こういうことにいたしておるわけでありますが、そういう点につきましては政府部内においても企画庁もああいう意見を持っておることでありますし、なお検討してわれわれの方針をきめて参りたい、こういうふうに考えております。
  78. 井手以誠

    井手分科員 各役所、各人名人かたぎとか職人かたぎがあることは私も承知いたしておりますが、しかし失業統計に関しましては各役所とも自信がございませんと申しております。あなたの方でも、総理府でも企画庁でも失業者についての統計は自信がございません、このくらいわからないものはございません、こういうお話です。ところが、一方あなたの方が出されておるこの統計によりますと、実際はずっと雇用者は減っておりますね。今からその点について一つお聞きしたいと思う。  私は先般も時間がありませんので簡単に申し上げましたけれども、最近一カ年間の離職者はこの統計だけでも百十万人出ておる。常用は、最近一カ年間に三十人以上の事業所で五万七千人、三十人未満の事業所で五万八千人、計十一万五千人ふえております。これはあなたの方の統計です。総理府の統計は、千三百五十分の一の調査をやっておられますが、あなたの方では三十人以上については個々に当って調査をなさっておる。これは確度が非常に高いものであります。そういう常用雇用者は、一カ年間に十一万五千人ふえておるわけであります。一方雇用者の中に入っております臨時日雇については、ずっと減っております。指数から申しますならば、昭和三十年を一〇〇として、今日では製造業において八三%に減っております。そういたしますと、総体から見ますれば、雇用者数というものはほとんどふえていないという結論になってくるわけです。あなたは先般の委員会においても、六十七万人ふえております、来年は七十万人にふえますとおっしゃいましたが、もう根本からくずれておるわけです。その点については、どうお考えでございますか。
  79. 大島靖

    ○大島説明員 統計の専門的なことの御質問でございますので、私からお答え申し上げます。  最近の雇用の趨勢についての毎月勤労統計あるいは労働力調査、この統計の数字についての異同ないし最近の傾向についてでございますが、たとえば昨年一年間の雇用の伸びを見てみますと、毎勤の数字で申しますと、約一・六%の増加を示しております。ただ労働力調査の結果によりますと、もっと大きな伸びが出ておるわけなんです。その違いは、毎勤の方は三十人以上の事業所、労働力調査はその下まで参りますので、三十人以下の雇用の伸びがどういう工合だったかということが一つの問題であります。第二の点は、産業分類、調査対象が、労働力調査の方が毎勤よりも若干大きいということ。第三に、毎月勤労統計は御承知通りサンプル調査であります。従って三十人以上の調査をいたしますときには、三年に一回行なっております事業所センサス、これは悉皆調査で、この名簿によりまして、そこから一定の統計的な算式によって抽出したサンプルについて調査を行う、それは三年間固定するわけであります。従ってその間におきまして、三十人以上に上って参りました事業所あるいは新設されました事業所、こういうものがとられないという欠陥がある。しかしこれはサンプル調査の統計としては必然のことなんであって、やむを得ないことなんでありますが、その間における実態との乖離につきましては、三年に一度行われます事業所センサスの数字につきまして、これを修正して参るわけであります。ただ三年に一度でございますと非常に期間が長うございますので、この点につきましては現在研究いたしまして、失業保険による事業所の把握とかその他を勘案いたしまして、これはより短かい期間において実態との乖離をできるだけ少くするような修正を行なっていくということで、現在研究いたしまして、最近実施いたしたいと考えております。  なお先ほど申しました三十人以下の雇用の情勢につきましては、なかなか三十人以下の事業所の従業員の正確な把握はむずかしいのでありますが、私どもの方でやっております調査によりまして、事業所に新しく入って参ります新規入職者、それから事業所から出て参ります離職者、この入職率と離職率を合せまして異動率、この中小企業の異動率から推算いたしますと、一昨年経済の引き締めが行われましてからの雇用の情勢といたしましては、中小企業におきましてはむしろ伸びて参っております。ようやく昨年の七月、八月、この辺で停滞ないし減少を若干見せたのでありますが、昨年の十一月、十二月、この辺になりますと、中小企業はさらに雇用の増を見せております。そういう関係で、一昨年の引き締めによりまして、先ほどお話のような大企業における離職者というものは、かなりふえたのでありますが、全般的に見ますと中小企業の雇用の伸びが相当著しかったということがわかるのであります。従って三十人以下に及びます労働力調査においては、毎勤における雇用の増加よりもより以上の雇用増が見られるという結果になっております。
  80. 井手以誠

    井手分科員 私は統計の正当性とかなんとかいうことを聞こうとは思っておりません。もう失業統計、労働統計が正確でないということは定評があります。  あなたの方の統計を見まして、私はここに端的にお伺いしますが、完全失業者のほかにあなたの方の職業の窓口に職を求めない就職の希望者というのが、四十万人から五十万人おるわけです。これは一応完全失業者と見ていいと私は考えておりますが、どうでございますか。
  81. 大島靖

    ○大島説明員 ただいま井手さん御指摘になりました点は、先ほどの御質問と関連するものと存じますが、御承知通り労働力調査による完全失業者というのは、毎月の調査の最後の週で一時間も働かなかった者というものを、現実の姿においてとらえるわけなんであります。従ってたとえば平生失業しておりましても、かりに最後の一週間で一時間でも二時間でも働きますと完全失業者でない、あるいは平生就業しておっても、最後の一週間で働かなければ完全失業者になる。従って完全失業者五十万、六十万という数字には、そこに通常失業者と常識的に考えられるものより少ない数字も出ますし、またより以上のものも含んでおる可能性もあるわけなんです。そこで完全失業者五十万、六十万という数字だけで、失業問題を判定するのは非常に危険であるということは、御指摘の通りなんであります。そこで労働力調査を補完する意味におきまして、毎年三月と十月に労働力臨時調査というものを実施いたしております。これは、労働力調査は今申しましたような期間のアクチュアル・ステータスにおいてとらえる、この臨時調査の方は、ふだんはどうかという点においてとらえる。ユージュアル・ステータスにおいてとらえる、こういう形になっております。さらにそれを規模を大きくしてより詳密な調査という意味で、三年に一ぺん就業構造基本調査というのを実施いたしております。これによりまして完全失業者の周辺におります、すなわち就業者としてとらえられておるものの中で、たとえば短期間就労者、もっとたくさん働きたい追加労働者、あるいは現在就業しておるがもっと収入のよいところに変りたい、転職希望者、それから非労働力の中で働きたいという新規就業希望者、この三つをとらえまして、大体その数字は二百数十万と見ておるわけでありますが、それを完全失業者の周辺にありますいわゆる不完全就業者を推定いたす一つの資料として、私ども考えておるのであります。井手先生御指摘の点はあるのでありますが、統計調査といたしましてはやはりアクチュル・ステータスでとるのが、こういう失業者のとらえ方の一番いい方法であるということは、ILOの第六回の国際労働者統計家会議、あるいは第八回の会議においても決議としてなされておるのでありますが、同時にわが国のような複雑な雇用形態のところにおきましては、それを補完する意味におきまして、今申しましたような臨時調査、就業構造基本調査、これとの総合的な判断において失業情勢を見ていく。こういうことは御指摘の通り非常に重要なことだと存じております。
  82. 井手以誠

    井手分科員 大臣はあるいはお聞きになっておらぬかもしれませんが、ただいまの部長の答弁の中にありました一番確度の高いといわれる総理府の毎年三月の臨時調査によりますと、九百二万人のうちに就職希望者が五百七十三万、転職希望が二百十八万、追加労働の希望が百十一万、合せて九百二万人、このうちに職を求めて走り回っておるものが四百四十一万人、このうちに新たに就業を求めておるものが二百八十七万人、転職が百五万人、こういうふうになっております。いろいろ統計の見方もありましょう、統計のとり方もありましょうけれども、私は今日実際職を与えてやらなくちゃならぬ、職を求めておりますものはやはり三百万人前後だと思っております。今まで七時間働いておったものが九時間働きたい、もっと収入をふやしたいというものは別にいたしまして、もっといい条件の職場に行きたいというものは別にいたしましてどうしても仕事を持ちたいというのが三百万人と考えなければならぬと思うのです。これはどこの統計でもどこの数字でも大体この数字は出てくる。ここであなたは六十七万人三十三年度にはふえます、来年度は七十三万とおっしゃいますが、これは仮定の数字でありまして、実際はふえていないと思う。しかもその条件は悪くなっておることは一般に言われるところでありますが、こういう実態に対して——私はこの雇用問題というものは、なるべくむずかしい問題だから伏せておけというような気持じゃなくして、あからさまにその実態を出して、大胆にこれと取り組む必要があると考えておるのであります。先般総理は特別の機構を持ちたいとはおっしゃらなかったのでありますけれども、やはり失業問題の基本としては、この失業者の実態というものを明らかにする必要があると考えますが、労働大臣はこの点についてどういうふうにお考えになっておりますか。この統計が信用にならぬことはもう申すまでもありません。今の労働省の機構の範囲でもけっこうですけれども、何とかして実態を明らかにして取り組む必要がある。これは何人が政権をとってもむずかしい問題であるけれども、しかし取り組まなければならぬ大きな問題でございますので、一つ労働大臣のこれに対する構想がありましたらお聞かせ願いたいと思います。
  83. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 御指摘のように雇用問題というものは一番むずかしい問題であり、しかも大切な問題でありまして、政府も内閣に雇用審議会を置きまして、今そういう点についてできるだけ関係の統計を整備してこれに基いていかにして雇用を増大していくか。先ほどちょっと触れましたいわゆる長期経済計画の一環であります三十四年度の経済計画に、産業の伸びを一応計算をして今までのデータをそれにかけて七十四万人というのがわれわれの計画であります。従ってそれが実現のできるように、御指摘のようにこの点については難物ではありますけれども、特に労働省が中心になりまして政府施策として雇用の拡大に努力をして参りたい、こう思っております。
  84. 井手以誠

    井手分科員 私が特に聞きたいのは、この失業の実態をつかむということが私は基本だと思うのです。ところがいつもおっしゃるように五十何万人だけれどもどうだということじゃなくて、実際は二百万だ、三百万だというこの実態をつかんで取り組む基本をどうなさるのか、そこなんですよ。私はきょうここであなたの数字が間違いだとかどうだとかいって論争をしようとは思っておりません。
  85. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 最近経済指標の動き方について非常に参考になりますのは、私は失業保険の統計だと思っております。政府が経済政策をやる、たとえば貿易のバランスを是正しようということで調整手段をとる。そうしますと直ちに正直に六、七カ月後にはここに現われて参ります。私どもはそういう経済指標を中心にして考えます場合に、失業統計というものは非常な参考になります。同時にまた安定所の窓口が、先ほど来ここでお話がありましたように、その日その日の仕事に追われておるような始末でありまして、安定所の窓口などもやはり実際の地方における雇用失業が現実にそこに表現されて参りますので、そういうものを中心にして井手さんが御指摘になりましたようなことについて、できるだけ完備したものになるように努力して参りたいと思っております。また失業者の実態調査を三十四年度に行うことにいたしておりますから、今井手さんのお話のような点もだんだんと正確なものに近いものを把握することができる。そういうふうに努力して参りたいと思っております。
  86. 井手以誠

    井手分科員 これは事務当局でけっこうですが、あなたの方の統計に出ておる失業保険の日雇いの初回受給者というものは、一カ年間のうちに同じ人間が二度現われることはないと思いますが、その点はどうなっておりますか。
  87. 百田正弘

    百田政府委員 日雇い失業保険の初回受給者と申しますと、各月におきまして失業いたしまして、そうして待期期間を満了いたしまして初めて失業保険をもらった人の数でございます。従いまして同じ人間が毎月出てくるという場合もあり得るわけでございます。
  88. 井手以誠

    井手分科員 大臣が一番参考になるとおっしゃっておる失業保険の統計でありますが、先刻もちょっと触れましたように、常用の場合最近一カ年間に百十万人——常用の就業と申しますのは、一カ年間にそう百何十万も上るものではございません、九十万前後だと思っております。この常用雇用の離職が最近一カ年間に百十万人、それから日雇いの場合が最近一カ年間に百七十万人、日雇いの場合は重複することもございましょうけれども、合せますと二百八十万人という数字が出てくる。若干の重複は日雇いにおいてあると思いますが、あなたが一番信用なさっておると言われ、参考になると言われる失業保険がこういう状態でありますから、一つその点は雇用がふえていくとかなんとかいう論議は別にいたしまして、この数字をとくと頭に入れて、今後の政策の実行に当ってもらいたいと強く要望したいと思います。雇用全般についてはきょうは触れませんけれども失業の実態がこういうことである。特に農林業においては農繁期と農閑期の場合には四百七、八十万人違うのです。こういうようにちゃんと統計に出ておるわけです。その差は、全部がそうではありませんけれども、大部分はいわゆる農村の潜在失業というものが考えられると思うのです。一方一般の失業においては、ただいままで申した通りきわめて重大な失業対策について一つ格段の努力を私は要望いたしたい。もし答弁があればお聞きいたしますが、今までのように完全失業者が五十万とか六十万とかいうことではもうお話にならぬ、それでは済まされぬ数字ですから、その点だけは私は特に念を押しておきたいと思います。
  89. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 今の安定所の窓口を通じて調査いたしますことは非常に実態に即したことであります。同時にまた、先ほど申し上げましたように、三十四年度に失業者の実態調査を行うことにいたしておりますが、失業保険受給者がその受給して一年後及び一年半後が今度どうなっているかということを今年調査いたしますから、これはやや実態に即応した完全に近いものが出てくるのではないか、こういうようなものを基礎にしてやってみたいと思っております。今農村のお話がございましたそれらも、私どもの調査の統計にも出てきておりますが、これは御承知のように、非常な農繁期にはよそから労働力を吸収してやっておって、同時にまた農閑期にはその人たちはそれほどそこに土着して働く必要もないというので、他の方に出ていくということで、農村における今御指摘のような労働力の問題等も、やはり私どもは調査の対象として研究を続けて参りたいと思います。
  90. 水田三喜男

    ○水田主査代理 午後は一時三十分から再開することにいたしまして、暫時休憩いたします。     午後零時二十四分休憩      ————◇—————     午後三時三分開議
  91. 綱島正興

    綱島主査 午前に引き続き会議を開きます。  質疑の通告がございますから、これを許します。田中織之進君。
  92. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 労働大臣お急ぎのようでありますから、最初に大臣に対して御質問申し上げたいと思います。実は労働省所管事項になると思うのでありますけれども、いわゆる漁業労働者に対する役所の方の窓口が、一体どこなのかということについてでございます。従来の例から参りますと、例の船員法によって規制されている部分が、運輸省の船員局の方で扱われるわけでありますが、大体三十トン未満の漁船に乗り込んでおります労働者については、これは船員法の適用もございませんので、その点から見ますると、これは当然いろいろ労働基準に関する問題、その他の関係から見て、労働省の方で所管をしていただいて何かと指導、保護をやっていただかなければならないと思うのであります。従来労働省の方へ参りましても漁業労働者ということについては、特別にお考えをいただいておらないような御回答しか受けないので、実は今回、これは直接労働省関係にもなってくるわけなんでありますが、フィリピン賠償の関係で、漁船が賠償の中に入れられまして、三十三年度分として九隻、近く向うへ送られるわけなんです。それに乗り込む漁業労働者が一隻について十一名、約百名乗り込むわけでありますが、その関係でいろいろ賃金その他の問題が、現在ペンディングになっておりますので、後ほど事務当局、水産庁あるいは賠償部長等の関係でただしたいと思いますが、そういう問題が起った矢先でもございますので、この際労働大臣からこの点についての従来の労働省の取扱いその他で、私らはこの点では漁業労働者がなおざりにされておるように思いますので、積極的に労働行政の中に取り入れてもらいたいと思うのでありますが、労働大臣の御所見を伺いたいと思います。
  93. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 お話のように漁業労働者でも三十トン以上の船員法によりますものは、運輸省所管でございますが、その他のものの労働関係につきましては、所管の問題は、労働省の基準局が受け持っておるわけであります。
  94. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 基準局の方が受け持っておられるというのでございますが、実は先ほどもちょっと申し上げましたように、これからお伺いをいたしますフィリピンに参ります漁業労働者の賃金問題が、フィリピン国との間に現在実はペンディングになっておるわけなんです。そういう関係労働省の方へそのことについて御協力をお願いをいたしたのでありますけれども、実はあまり積極的にその点についての御回答が得られませんので、この際大臣の方から今おっしゃられたように、労働基準局でそうした三十トン未満の漁船に乗り込んでおる漁業労働者の問題については、やはり海上における問題でありますから、厳密なる労働基準法の適用という問題は、これは漁業という事業の性質から見て非常に不可能な問題だと思います。ところが、天候等の状況から考えまして、しけで従業できないというような関係の場合には、実は日雇い労務者についても、いわゆる失業保険その他の手続がとられるわけでありますけれども、いわゆる沿岸漁業関係におきます純然たる労働者関係におきましても、この失業手当等の給付の問題につきましても、やはり失業保険でありますから、使用者の方での保険金の納付、いわゆる掛金をやっておくというようなことが明確になっておらない関係もあるのでありますけれども、そういう意味で、私は基準局の立場から考えましても、一番取り残されておるのが漁業労働者でないかと思うのです。ただ形式的な大臣の今の御答弁ではなくて、私は積極的に取り組んでいただきたいと思う。その観点から見て、それでは労働省では、こういう種類の漁業関係労働者は一体全国ではどれくらいあると把握せられておるか、この点を実は伺いたいと思うのです。
  95. 鈴木健二

    ○鈴木説明員 現在漁船関係労働者が幾らあるかという御質問でございますが、詳細な資料を現在持ってきておりませんので、至急調べましてお手元に差し上げたいと存じます。
  96. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 本日急なので資料を持ってこられないというのですが、漁業労働者数の調査というようなことについて、ある程度の資料を現実に労働省がお持ちなのですか、具体的な資料がおありであるということであるならば、後ほど出していただいてもけっこうなんですけれども、その点はいかがですか。
  97. 鈴木健二

    ○鈴木説明員 われわれがとっております資料は、漁船だけを限定してとっておりませんで、包括的に水産、漁船というのを一緒にしてとっておりますので、漁船だけの資料は現在われわれのところにはとっておらないわけでございます。
  98. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 実はこの点については第四十二回のILO通常総会、これは昨年の六月の四日でございますか、それにおいても漁業労働者の労働条件ということが議題の第七号として取り上げられ、日本側からも代表がこれに参加いたしました。これはいまだ結論が出ておりませんが、実は国際上ILOにおいても取り上げられておる問題であると私は思うのです。それにしては、今監督課長からのお話にもありましたように、漁船関係として、漁船に乗り組んでおる漁業労働者は何名おる、こういうような把握はいたしておらぬ、いわゆる水産関係というようなばく然たる形で数字をつかんでおられるということも、大臣実はお聞きの通りであります。しかし水産業に従事しておる労働者の実態というものは、私はしかく簡単ではないかと思うのです。やはり労働者に対するサービス省としての労働省といたしましては、漁業労働者の実態につきましても十分の調査をいたしまして、それに伴います労働基準の確保であるとか、あるいは失業保険その他のいわゆる労働者保護をこれらの漁業労働者に均霑するように、労働省として当然考えていただかなければならぬと私は思うのです。その意味において大臣から——大臣、お急ぎのようでありますから、今申されるような資料が出て参りませんとわかりませんけれども、私は、これは従来の関係を根本的に考え直してもらわなければ、漁業労働者もまた国民の一人であり、労働者の一人であるという立場から、重大な問題になると思うのでありますが、重ねて労働大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。
  99. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 先ほど御指摘のように漁業労働者というものは実情を把握するのに非常にむずかしいことは、おわかりの通りであります。ILOでやりましたのは、こちらから運輸省関係のものが昨年は代表で参りまして、それで海事関係のいろいろ協議がございました。しかし、今お話のように運輸省関係に属さない小さな漁業労働者、こういう者についてわれわれの方で一般労働者と同じように諸般の保護を考えるということは、当然のことでございます。御趣意に全く賛成でありまして、私どももできるだけめんどうを見ることにいたしたいと思います。  なお、事務当局から補足して申し上げたいと思います。
  100. 村上茂利

    ○村上説明員 田中先生の御指摘の中に、三十トン未満の漁船に乗り組む労働者と、それ以上の大きな船に乗り組んでおるという者に分けてお話がございましたが、三十トンを基準としまして分けて取り扱うという点につきましては、労災保険の面にその点がはっきり現われておるわけでございます。労災保険の面から三十トン未満の漁船であって五トン以上の船に乗り組んでおります労働者に対しましては、労災保険法の適用をしております。従いまして、その実数も把握しておりますが、約十三万六千程度労働者事業場数といたしましては、一万五千五百程度事業場が労災保険の適用を受けております。従いまして、そういう面からは、保険という制度によりますところの労災保償という点については遺憾なきを期しておるということがいえるかと存じますが、先生の御質問は労働条件一般に関することでございますので、私のお答えといたしましては、今の所管しております点にだけ限定してさようにお答えさせていただきたいと思います。
  101. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 その点はあと労働条件の点で具体的に伺うことにいたしまして、大臣お急ぎのようでございますから、どうか一つ本日のこの予算分科で問題を取り上げたことを契機にいたしまして、まず非常に複雑な漁業労働の実態を十分調査せられまして、その上に立って適切な方策を講じていただきたいということを重ねて要望いたしまして、事務当局に対して具体的な問題についての質問に入りたいと思います。  水産庁の次長がお見えになっておるようでありまするから、質問を申し上げたいと思うのでありますが、三十三年度のフィリピン賠償の実施計画の一つとして、漁船九隻、これは大体百トン程度の鉄船であるというように伺っておるのでありますけれども、フィリピンに送ることになりまして、現在それの乗組船員の労働条件の問題について関係者の間で協議が進められておることを、水産庁として御存じでしょう。
  102. 西村健次郎

    ○西村説明員 私の方で、フィリピンの賠償について、漁船の輸出が行われるということは聞いております。たしかその協議があったように覚えております。ただし、私どもの方でこれに対して特に行政的に何かするという面は直接にはございません。ただ、今の労働条件につきましては、私ただいまのところ聞いておらないのでございます。
  103. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 実は、賠償関係で九隻船が参るわけでございます。大体一隻に十一名船員が乗り組むわけであります。現在石巻で二隻、高知で二隻、大分県の臼杵で二隻、計六隻がすでに竣工をいたしまして、近くこれに、十一名でありまするから総計六十六名の船員が——船員と申しますか、漁業労働者が乗り組みまして、向うへ引き渡すことに相なっておるわけであります。もちろんこれに乗り組みまする漁業労働者は、いわゆる役務賠償という意味ではなくて、これはフィリピン国との間にいわゆる漁業技術の交流、日比協力という形でこれらの人たちが乗り組んで参るわけであります。賠償関係といたしましては、私は漁船だけのように理解をいたしておるのであります。そこで、これの具体的な関係といたしましては、フィリピン側はユニヴアーサル・ディープシー・フィッシング・コーポレーション社長がガウディオソ・M・チョンゴーという人でございまして、それと日本海外漁業協力会——これは通産大臣になられてからあるいはおやめになっているのかもしれませんし、公共的なものでありまするから会長をまだ退いておられないかもしれませんが、実は現内閣の閣僚の高碕達之助氏が在来会長をいたしておりました海外漁業協力会との間で、この漁業技術の協力問題について交渉が行われているのであります。しかもこれは、先ほど申しましたように賠償として漁船九隻が入りました関係から、それに乗り組む漁携技術者をぜひ日本から送ってもらいたい、こういうフィリピン側からの希望に基いて始まったものでございます。ところが、特に賃金その他の労働条件の問題で現在まだ条件が折り合わないために、ペンディングになっておるわけでございます。  そこで、現在日本側から海外漁業協力会との関係において提示しておりまする条件について簡略に申し上げますと、協力会の下部組織といたしまして、日本海外漁業技術者組合というのを作りまして、それでフィリピン国の最低賃金法に基き、また従来インド、セイロン等へ日本の漁業労働者、技術者が派遣されておる関係等の条件を考慮いたしまして、いわゆる賃金要求を出しておるわけでございます。それに対してフィリピン側からは船長二万円、機関長一万八千円、一般船員一万五千円を支給する、こういうことでございまして、これでは私の手元に持っておるフィリピンの最低賃金によりまするところのいわゆる一日四ペソ、日本貨に直して七百二十円でございますが、それに比べましてもはるかに低いものでございまするので、日本の漁夫がこの賠償漁船に乗り組むかどうかということについて実は行き悩みの状況にあるのが現状でございます。この点について、水産庁としてはどこまで事情を把握されておるか、重ねて次長からお答えを願いたいと思います。
  104. 西村健次郎

    ○西村説明員 先ほど申し上げましたように、本件につきましては、実は、今田中委員がおっしゃった事実について私はまだ承知しておりません。あるいは担当の方にすでにきているかもしれません。従いまして、私どもとしまして、きておりました場合におきましては、これはさっそく十分調査して参りたいと思います。御承知のように、賠償は別といたしまして、役務提供につきましても、先ほど申し上げましたように、これは直接水産庁の所管する部面はございませんけれども、為替管理の面におきまして、大蔵省がその許可をする場合には私どもの方に協議して参る、こういうことになっております。私どもとしましては、従来から、海外の漁船乗組員の役務提供につきましては、賃金のベースのこともさることながら、賃金の不払いとかいろいろのトラブルが従来起っておりましたので、せっかく役務提供という格好で出ていく場合にはそういうことの起きぬようにして参りたい、こういうふうに思っております。  なお、先ほどの、海外漁業協力会がこちらの方面の話し合いの団体であるということですが、海外漁業協力会の性質上、私はあるいはそれは橋渡し程度かと思っております。しかし、いずれにしましても海外漁業協力会が事情をよく承知していると思いますので、今の田中委員の言われた賃金のペースが低いだろうというような問題、これは今ここで私が云々するわけには参りませんが、さっそく本件につきましては海外漁業協力会なり関係方面につきまして調査して参りまして、十分善処して参りたい、かように思います。
  105. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 賠償部長に伺いますが、三十三年度のフィリピン賠償の実施計画の中に、百トン級の漁船九隻が賠償物件として向うへ引き渡されるということになっているように伺っているのですが、そういう計画はございますでしょうか。
  106. 吉田健一郎

    ○吉田(健一)政府委員 今おっしゃいました三十三年度の実施計画、これは第二年度実施計画とわれわれが言っているやつだろうと思いますが、御承知通り、賠償の年度は賠償協定が発効した日から勘定しておりますので、三十三年の七月から三十四年の七月までを第二年度の賠償実施計画と申しておりますが、この中には今おっしゃいました漁船が入っております。
  107. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 そのうち石巻で二隻、高知で二隻、大分県臼杵で二隻、これはすでに完成をいたして、あと三隻はどこで建造中であるかまだわからないのでありますが、この漁船の賠償一隻当りの金額なり、あるいはこれに乗り組む船員あるいは漁業労働者というような関係が、この九隻の分についてはどういうような話し合いになっているかということを、賠償部の方でおつかみでございましたらお答え願いたいと思います。
  108. 吉田健一郎

    ○吉田(健一)政府委員 初めの御質問の船価の点でございますが、これは実は私今隣りの第一分科会に出ておりまして資料を持っておりませんので、電話をかけてすぐ持って参りますから、すぐお知らせすることができると思います。  第二の乗組員の問題でございますが、これは日本側の方で、始終私の方にそういうお話でおいでになる方があるのでございますけれども、フィリピン側からは、乗組員に関して賠償から出してもらいたいというような提案は何ら正式に受け取っていないわけでございまして、従いまして、賠償は御承知通り向う側の要求によってこちら側からそれを審査して可否を決するわけでございますから、フィリピン側からまだ正式の要求は出されておりませんから、賠償部といたしましては、これを正式に取り上げる段階には至っておりません。
  109. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 そこに若干この問題の行き違いがあるように思うのですが、先ほどちょっと水産庁の次長にお伺いいたしたのでありますが、この賠償漁船に乗り組む漁業労働者、漁撈技術者、それから船員の問題については、これは向うの正規の機関であるかどうかわかりませんが、フィリピンのユニヴアーサル・ディープシー・フィッシング・コーポレーションと、海外漁業協力会、これは高碕さんが今会長かどうか私はっきりはしないのでありますが、大臣就任前まではたしか会長をやっておられたと思います。今お伺いすると橋渡しのようでありますけれども、海外漁業協力会が橋渡しにいたしましても、今申し上げましたフィリピン側のコーポレーションとの間に、この漁船に乗り組む漁業労働者のフィリピンヘの派遣の問題が、実は具体的に進んでおるわけなんです。それで賃金の総額も、私ちょっと正確ではないのでありますが、十七万ドル、これはどういう機関の賃金総額であるかということもわからないのでありますが、そういう数字も出るような話し合いが実は進んでおるのでございますが、フィリピン側から現在提示をいたしておる条件が、海外漁業協力会の下部にできております日本海外漁業技術者組合、これは海外漁業協力会の指導のもとにできた、海外へ進出する漁業労働者関係団体でございますが、それとの間で現在ペンディングになっておるわけであります。今賠償部長がおっしゃいましたように、この漁業労働者等の問題について、外務省へお見えになったという方は、あるいは大阪市南区北炭屋町十三番地の日比貿易株式会社ではないかということが考えられるのです。この代表者は掘田彦次郎という方だそうでございます。それで先ほど申し上げましたフィリピン側の団体、コーポレーションと、この日比貿易会社との間で取引をいたしまして、実は広島県沼隈郡内海町居住の小原良一という人を長とする十一名の乗組員が向うへ参るということの話が仮契約でできたそうでございます。ところがそれの条件が、先ほどもちょっと申し上げたのでありますけれども、船長で二万円、機関長で一万八千円、一般船員は一万五千円、こういうことではフィリピンの最低賃金法にも違反をいたしますし、そういうような形ではとうてい——一隻分の十一人がそれでもがまんして行こうということになったようでございますけれども、実はその他の漁船で、乗組関係が、そんな条件では行かれない、向うの方では賠償に漁船を入れてもらった関係上、それに乗り組んでもらわなければ困る、こういう形で現在問題が進展しておるのが実相のようでございますが、賠償部長の方ではこの間の事情をどういうふうに把握されているか、御説明願いたいと思います。
  110. 吉田健一郎

    ○吉田(健一)政府委員 今御指摘のありましたような実情だということも私はうすうす承知しておったのでございますが、ただ乗組員の漁夫の費用を賠償から落すということになりますると、これはちょっと話が違って参りまして、御承知通り賠償というのは、双方の政府がまっ先に実施計画を合意してから行われていくわけでございますから、現在のところでは乗組員の漁夫に対する費用の実施計画がないわけであります。従いまして先方から漁夫に対する実施計画を提案してきてもらいまして、これを日本政府が合意いたしましてから、初めて賠償で漁夫が出ていくという形になるわけでございます。従いましてユニヴアーサル・ティープシーと日本の小原さんですか、そのお話し合いは、要するに両国の政府実施をきめまするまでの非公式な話し合いであろうと思いますので、これが実施計画にどういう形で上ってくるか、また向うからどういう提案がございますかは、ちょっと私としては今断言することはできないのではないかと思うわけでございます。  それから第二の問題でございますが、価格と申しますか、労賃が非常に安いという問題でございます。これは現在までのところフィリピンに賠償による役務を提供した例がございません。従いまして賠償上役務に対してどういう基準を設けるべきかということをまだ日本側といたしましても、フィリピン側と話していないのでございますけれども実施計画に漁夫の役務を調達したいという提案がございますならば、当然私どもといたしましては、フィリピン側と賃金の基準について早急に話を開始しなければならないと思っております。むろんまだ提案がないわけでありますから開始しておりません。この場合に参考になりまする点は、ビルマに対しては役務契約は相当行っているわけでございます。大体ビルマ政府と話し合いをいたしまして、本邦給与の三倍以上というような給与を受けて役務調達を向うと合意して参っております。従いましてこれは関係各省とも御相談いたさなければなりませんが、不当に安いような賃金で賠償から出ていくというようなことは起り得ないのではないかと思っております。ただ重ねて申し上げますが、フィリピン政府が正式に実施計画にこれらの漁夫の労務調達を要求し、日本政府がこれに合意した後にフィリピン政府と労賃の基準について話し合うわけでございますから、今の場合は何ら両国政府間にそういう話し合いは行われておらないわけでございます。
  111. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 そういたしますと、現在の段階では漁船を賠償として向うに引き渡すことは、両国の間ではきまっているけれども、それに乗り組む船員、漁業労働者の問題については、それを役務賠償として賠償に入れるかどうかというようなことについては、フィリピン側から何らの提案もありませんし、現在は私的な話し合いというか、関係業者間の間で何らかの話し合いがあっても賠償との直接の関連はない、こういうふうに理解してよろしいわけですか。
  112. 吉田健一郎

    ○吉田(健一)政府委員 その通りでございます。ただし私的に行なっておりました話が、将来フィリピン政府によって取り上げられまして、こちらで実施計画の提案となる可能性がないわけではございません。その場合には、先ほど申し上げましたように、労働条件の基準その他については日本側の関係各省の御協力を得て、フィリピン側と役務契約の標準フォームというものを作っていかなければならないわけでございますので、そういうことでやっていきたいと思います。
  113. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 今、吉田部長がお答えになるような方法で、やはりこれも賠償の一つといたしまして、さらには日本の持っている漁業技術を海外にさらに広める、こういうような使命も持ってくるわけでございまするから、現在の段階においては、向うへ参ります漁民といたしましても、私はそういう形で労働条件等が明確になっていくことが望ましいと思いますので、そういう点の御努力を一つわずらわしていただきたいと思います。同時に、現在まだ海外漁業協力会の下部組織となっておりまする海外漁業技術者組合、先ほど申しました日比貿易会社との間のいざこざのような形になっている問題、十一名はきまりましたものの、実は先ほど申し上げたような状況で、家族に送金することもできない。実は外務省の立場から見て、そういう不安な状態のもとに、本人はおれはフィリピンへ行くんだからということであるとしても、海外渡航についての旅券発行等についてもお考えおきを願わなければならぬと思いまするので、そういう点を伺ったわけでございます。この点について水産庁当局に伺いますが、今、吉田部長がお答えになったような形で、日本の漁業労働者がフィリピンに参るというようなことについては、水産庁といたしましては、むしろ最近のような沿岸漁民の窮迫の状況から見まするならば、それに対する一助ともなると思いまするので、お考えおきを願わなければならぬと思う。また外務省の方との間に積極的な話し合いをもって軌道に乗せていただきたいと思うのでありますが、その点の御用意があるかどうか、水産庁の当局に伺いたいと思います。
  114. 西村健次郎

    ○西村説明員 私どもは本件に限らず、いろいろ役務提供の格好で日本の漁業者が海外に出ていく場合につきましてそのこと自体といたしましてはけっこうなことであろう、こういうふうに思って関係方面と従来から協力して参りました。ただし、出かけました場合に、労働条件あるいは賃金の支払い条件が悪くて、賃金不払いが起ったというようなトラブルがあります。それではせっかく出ていった漁業者に非常に気の毒でありますので、今の件につきましても、もしそういう事態になりました場合には、外務省その他関係省に十分にお願いしまして、そういうことに至らないようにしてもらいたい、こう思っております。
  115. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 なお賠償部長にもう一点だけ私の考えを申し上げて、御見解を伺いたいと思うのであります。実情はそういうことになっておるのでありますけれども、ユニヴアーサル・ディープシー・フィッシング・コーポレーションと日比貿易会社との間の——ちょうどこの間本委員会で問題になった、インドネシアの船舶賠償の問題におけるインドネシア側の、これは政府であるか商社であるかわかりませんが、木下商店との間の話し合いが、やはり賠償実施計画にあとから載せられるというような形のところに、価格その他の問題で——きょうの毎日新聞等によりますと、今度はインドネシア側からも、べらぼうに高いものを売りつけられたんじゃないか、自分たちの政府にもやましいところがあるんじゃないか、こういうような形の問題が提起せられておるわけなんですが、実は今申しましたフィリピンヘの賠償、漁船に乗り込む漁業労働者の賃金問題については、実はそれと逆の形のものが出てきておるわけです。そのユニヴアーサル・ディープシーの日本駐在の渉外担任社員のピンタル君というのがこういうことを言ってきている。東京の団体、これは海外漁業協力会と、その下部の海外漁業技術者組合でありますが、不当に高い賃金を要求している、われわれの方は最も良心的に誠意を持って貴社の要望にこたえるものである、こういう形で日比貿易へ言ってきているわけです。日比貿易の方は、先ほど言ったように、広島県の小原何がしという人を長といたしまして十一人乗り組もう。そのうちには、家族送金はおろか、現地における生活もできるかどうかというところに非常な問題があるということも申し上げたのでありますが、こういう形で向うの、商社であるかどうかよくわかりませんが、何らかやはり賠償関係に関連を持つ向うの団体になる方々だと思うのです。それが、日本の商社との間で、インドネシアの賠償の船舶の場合とは逆な形で、これは不当に安い賃金で話がついた、それをお前のところの最低賃金に基いたって、べらぼうじゃないか、こういう形で、他の乗り組みを希望する人たちのために、労働条件についての話し合いをしようというときに、そういう低い例を持ってこられるということが、ここでたまたま現われてきているわけです。その意味で、部長の先ほどのお答えで、やはり両国の間で漁業労働者も役務賠償としてもらいたいというようなことが、両国の合意の上に実施計画の中に織り込まれて、それから具体的に話になるということになれば、勢い事労働者の肉体労働に関する問題でありますから、賃金その他の条件は政府としても関係各省と協力して適正なものに持っていくための努力をされる。それがちょっと先行したために、逆な結果が出てきておるわけでございます。この点についても、今後この役務賠償なら役務賠償という形で乗せることのために、私らも協力いたしたいと思うのでありますが、外務省としてぜひお考えをいただきたい。もう一つは、とにかくべらぼうに高い。その意味で、特定の商社を賠償によってもうけさしているんじゃないかというような問題が出るし、現にインドネシア賠償の関係におきましては、次の船舶の二十一隻でありますか、すでに仮契約が調印されたというような報道もなされておるような状況でありますから、特に賠償実施の責任に当るセクションといたしまして、この点については不当にもうけることも許されませんし、それかといってこの漁業労働者のような方に身を切るようなことをさせてはならないと思いまするので、その点一つ適正な御配慮をいただきたいと思うのでありますが、賠償部長の御見解を伺っておきたいと思います。
  116. 吉田健一郎

    ○吉田(健一)政府委員 最初に役務の提供、フィリピンに対して賠償を通じて役務を提供すると申しますことは、最初申し上げました通り、今まで全然例がないことでございまして、従いまして、これは仮定の問題でございますが、もし先方が役務の提供を提案をしまして、私どもの方がそれに合意いたしましたといたしましても、どういう形で適正な役務契約を結ぶかということは、日比相互間で慎重に考慮しなければならない問題じゃないかと存じます。熱帯でございますし、いろいろ生活環境も違いますし、また技術的なことを申しますと免税、課税の問題等もありますし、ビルマの例も勘案いたしまして、フイリピン側と私どもとが役務契約の標準方式を慎重に検討していかりなければならないと存じております。ただし、賠償協定上申しますならば、実はこれはすべて直接方式なんでございまして、こういう形で向うが契約すると申しまして、またこちら方がそれならそれでいいということを申し出しますと、協定上の権利としては向うが強いわけでございまして、私どもの行政官の努力というものが非常に狭められてくるわけでございまして、願わくは身を切るような不当な低賃金で向うと契約をするということが起らないように、まず行政官庁としては努力をしていかなければならないと思っております。  第二に賠償を通じて非常に高いものが出たり安いものが出たりするということは御指摘の通りでございまして、私どもも今の御発言を銘記いたしまして、そういうことを避けるように最善の努力を行政官としてやって参りたいと思っております。
  117. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 賠償関係はそれでけっこうであります。  次に労働者関係についてお伺いいたします。フィリピンへ漁業労働者が出て参るということにつきましても、賃金その他の問題について、お聞きの通りペンディングの問題がございまして、沿岸漁業の不振から、海外へ進出したいという気持、しかし全く意に満たないというか、内地におけるよりも、へたをするともっとミゼラブルな生活をしなければならぬというような労働条件では行きたくても行かれない、こういうような形で苦しんでおることは、漁業労働者の今日窮迫した生活状態なり労働者の実態の一部分を示唆いたしておると思うのであります。そういう意味で、先ほど大臣にも私が冒頭にお伺いいたしましたように、労働省関係においては、各方面労働者の実態について的確な実情を把握されまして、対策を講じていただきたいとという先ほど大臣に申し上げた点が、この問題にもすでにこれだけ現われておるという点を、私は御理解いただきたいと思うのです。それと同時に、先ほども申しましたように、昨年のILOの通常総会において、漁業労働者の労働条件の問題が取り上げられてきておるわけです。今年も引き続いて討議せられると思うのでありますが、先ほど伺ったような形で、いわゆる運輸省関係で船員法の適用がある船員の関係官が行くということではなくて、漁業労働者ということになれば、大きな資本漁業の漁船に乗り込んでおる船員ではなくて、船に乗り込んでおると同時に漁携をやる漁業労働者の問題が、ILOで総会の議題として取り上げておる問題であると思いますので、その意味から見まして、本年度に予想せられるこの問題の討議については、もっと漁業労働の実態に即した意味から見て、労働省の直接の担当官が出向いて行き、あるいは水産庁の関係の実情を把握している人が出かけて、こうした国際討議に参加すべきであると思うのでありますが、その点について労働省なり水産庁の方が、このILOにおいて漁業の労働条件に国際的な一つの基準ができることに対して、それだけ協力をしていただけるかどうか、この際伺っておきたいと思うのであります。
  118. 澁谷直藏

    ○澁谷政府委員 私からお答え申し上げます。ただいま先生から御指摘のございました点につきましては、従来とも運輸省労働省との間に連絡はとってございますが、ただいま御指摘されましたような、状態でございますので、今後一そう連絡を緊密にいたしまして、なおILOのございますジュネーブには労働省からレーバー・アタッシェも行っておりますので、その方面とも十分連絡をとりまして善処いたしたいと考えております。
  119. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 先ほどはフィリピン関係のことを申し上げたのでありますが、実は近く在メキシコ日本人との関係で、向うへ定置漁業その他の関係で相当な漁業労働者のメキシコ進出ということも考えられるという。現に私らの全国漁民協議会の関係から田伏万次郎というのをメキシコへ派遣をして、昨年の十二月に就任をせられました大統領との間で、漁業許可等の問題の折衝を続けておるわけであります。この点については、外務省並びに水産庁の方からも、いろいろ適切な指導助言をいただいておるわけでございますが、そのほか南米の各地、ブラジル等に対しましても、やはり日本の漁業労働者の漁業移民という、ある意味から見れば日本の漁業技術の海外への進出、こういう形の問題が大体出てくる。それがまた窮迫した沿岸漁民の一つの活路の問題といたしまして、北洋における沿岸漁業への出稼ぎの問題とも関連をいたしまして、今日本の沿岸漁民がひとしく注目している点だろうと思うのでありますが、そういう場合に海外への漁業労働者の派遣の際の労働条件等について、何か一つの基準を設けるとか——先ほどの賠償というようなことに結びつけると、直接賠償でありますから、当事者間で話をしたものを行政が変更を加えるわけにいかない。しかし一つ賠償という問題を離れて、私が今あげましたようなメキシコその他の南米諸地域、あるいは将来の問題といたしましては、タイその他の東南アジア各国への漁業労働者の進出というようなことも考えられますので、あわせてこの際、労働省を中心といたしまして関係省との間に、そうした海外へ派遣される労働者の条件の問題についてお考えおきをいただいて、できれば何らかの基準をきめていただきたいと思うのでありますが、そういうことに御努力をしていただけるかどうか、重ねて伺っておきたい。
  120. 澁谷直藏

    ○澁谷政府委員 私からお答え申し上げます。ただいま御指摘のございました点につきましては、労働省はもちろんでございますが、運輸省、水産庁、さらに外務省が関係する機関が相当広うございますので、関係各省十分連絡いたしまして、先生の御希望に沿うように努力いたしたいと考えております。
  121. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 それでは、フィリピンとの賠償漁船に関連した問題はこの程度にとどめまして、あともう一点失業保険関係について伺いたいと思います。  先般大臣から御説明をいただいた中でも、積立金もうんと増加をいたして参りましたので、本年は保険料率の引き下げ、それから積立金の運用についての積極的な施策考えておられるということを大臣予算に関連をして述べられたのでありますが、現在失業保険積立金関係の実情はどういうようになっているか、この際まず伺いたいと思います。
  122. 百田正弘

    百田政府委員 失業保険積立金は、昭和三十二年度末、昭和三十三年三月末現在で約五百三十九億何がし、こういうことになっております。そして三十三年度中に約七十九億くらいの積立金が予想されます。従って三十三年度末には六百億をこえるというようなことになると思います。
  123. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 そういう意味で、今回若干の保険料率の引き下げを行なったことは、これまた一つの適切な方策だと思うのでございますけれども、実は昨年来私らは保険給付期間の延長の問題を要請いたしておるのであります。それからこの積立金がどういうように運用されておるかということにも関連いたすのでありますが、逐年積立金増加をいたすという関係から見まするならば、やはり失業保険の給付期間の延長の問題あるいは保険料率の引き下げということも、けっこうではございまするけれども、その点から見ますると、やはり保険給付の内容の充実というような面において、失業保険について根本的に検討を加えるべき時期にきているのではないか、こういうふうに考えるのでありますが、その点は労働省としてどういうようにお考えになっておるか伺いたいと思います。
  124. 百田正弘

    百田政府委員 ただいま申し上げました積立金の三十二年度末で五百三十九億、その約半分に当りまする二百五十億というものは、実は三十一年、三十二年といわゆる神武景気のときに蓄積されたものでございまして、その他の年におきましては、大体七、八十億あるいはもうちょっと三十億程度、あるいは欠ける場合もあったわけです。ところで、現在そういうふうになりましたのは、失業保険も今日まで十一年余を経過したのでございますが、現在被保険者の数も一千万こえるという状況になっておる。それから長い経験によりまして、大体の失業率というものも、年によっては変動はございますけれども、一応の目安がつくようになりまして、その結果、保険料率は当初においては、御承知と思いますが、千分の二十二という非常に高いものでございました。これは失業保険制度をわが国で初めて行うということのために、予測も困難であったわけでございますが、その後千分の二十二を二十とし、さらに千分の十六とするというふうに下げて参ったわけでございます。同時にまた、保険給付の内容の問題につきましても、従来からこの制度の改善につきましては、われわれも終始検討して参ったわけでございます。今お話のございました、その一つとしての給付期間の延長という問題をどう考えるかというような御質問であったわけでございますが、大体失業保険制度というものは摩擦的な失業に対処するための一つの短期的なものだというのが世界どこの国でも考えられている通念でございますが、わが国では、制度の当初から、六カ月、百八十日ということでやって参りました。外国におきましても、大体百八十日程度がほとんど大部分でございますが、これより短いのも多いわけであります。その意味では遜色はないところでございますが、さらにいろいろな実情も考慮いたしまして、昭和三十年来、特に雇用期間の長いものにつきましては、七カ月あるいは九カ月まで延長し得るという措置を講じて参ったのでございます。従って、一つの制度としての給付期間といたしましては、私は大体この程度で十分ではないかとは考えますけれども、ただ、ただいまお話もございましたように、非常に失業の情勢が悪化するというような場合におきまして、失業保険の支給を、期間が切れるまで就職できない者が非常に多くなるというような場合については、一時的にそうしたことも考えなければならぬ場合も出て参ると思うのでございます。そういう点についても検討いたしてみたのでございますが、昭和二十四、五年から最近までの支給終了者の割合というものがそう大きな変動を示していないのであります。そういう関係から、現在のところでは、これを延長ということまでは踏み切っておりませんが、今申し上げましたように、短期的な摩擦失業に対処するものだ、ところが、わが国の場合には、特に非常に構造的な部面に入るものが多く、ことに失業保険の支給期間が切れて、なおかつ切れるものの中の様子を見ますと、年令の高い人あるいは女子というようなものが非常に多いことから考え、現在の状況から見ますと、いわゆる中年層以上の就職が非常に困難だというようなことのために、こういう問題についても、わが国独自の立場から考えねばならぬじゃないかというような問題もあるわけであります。こういった点につきましては、いろいろ議論もございまして、われわれの方にございます三者構成の職業安定審議会等におきましても、今後十分に検討いたしたい、こういうふうな状況にあるわけでございます。さらに、その給付期間の延長も重要なことであるかも存じませんが、同時に現在におきましては、五人以上の事業所が強制適用になっておりまして、五人未満についてはこの手が及んでおらない。ところが五人未満の事業所というものは、われわれの推定で、全国で百十万事業所、労働者の数にして約二百二十万、やはり現在あるものの内容をよくする前に、これにできるだけ広く適用を拡大していくということが必要じゃなかろうかということで、昨年来失業保険法を改正いたしまして、五人未満の事業所に対する適用拡大の措置をとって参ったのでございます。われわれといたしましては、絶えず失業保険制度の内容の改善ということについては、今後とも研究して参りたいと思っております。
  125. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 この間の大臣の説明によりましても、失業保険特別会計関係だけを見ましても、保険料率の引き下げ等の関係があるからであろうと思うのでありますが、前年度より七億五千余万円の減少にはなりますけれども、約四百八十八億円の歳入に対して、支出といたしまして、失業保険給付費の三百五十一億、それからいろいろな施設拡充のための出資及び交付等の関係で十四億一千八百余万円、その他の保険施設費並びに公共職業安定所の庁舎新営費を入れても、その関係が十六億八千万円、そういたしますると、この特別会計関係を見ますと、私は本年度の失業保険特別会計の収支の関係から見ますならば、やはり明年度へ向いて残る部分が相当多額に上るのじゃないか。本年度だけでも、先ほど申されたように七十九億ございます。あるいは三十三年度から三十四年度への場合においては、積立金として入る部分はもっとふえてくるのではないか。こういうふうに考えられるので、その点から見て、やはり失業保険の給付内容の問題について根本的に考えるべきではないか。その点から見て、これは保険料率の引き下げに伴うものかもしれませんけれども、国の負担が従来の三分の一が今度は四分の一に引き下げられて算定されておる。こういうようなことは、もちろん一般会計から繰り入れる部分があることは承知いたしまするけれども、これはやはり労働者失業に備えて積み立てたもので、今年はそういう積立金もうんとできてくる、こういうような関係から見て、一面、失業問題の質においてむしろだんだん悪くなる、そういう状況にあるにもかかわらず、労働者の負担において国の負担が軽減される。これは社会保険としての点から考えましても、今失業保険特別会計の実体というものは大きく再検討しなければならぬ時期にきている、私はそういうふうに考えるのですが、その点について局長の重ねての所見を伺いたいと思います。
  126. 百田正弘

    百田政府委員 ただいま御指摘になりました国庫負担の三分の一を四分の一に引き下げたと申しますのは、失業保険だけの観点から申し上げますと、先生のおっしゃる通りでございます。ただ今回の予算編成に当りまして、特に政府全体として、社会保障制度の均衡ある総合的な前進ということで、一方において国民年金制度の創設をやる、一方において医療における国民皆保険を実施する、かようなことで、それぞれの社会保険に対する総合的な財政面からの調整を行うということが、政府として決定されたものでございまして、ただいま先生のお話のように、われわれといたしましても、現在五百数十億積立金があり、それが特に短期保険でございますから、これは正常な姿でないと思います。それはどうするかというと、やはり先生のおっしゃるように、あるいは保険料率の引き下げ、あるいは保険給付内容の改善というようなことになろうかと思うのであります。従いまして、先ほど私があげました職業安定審議会においても、この保険料率——給付内容をどのくらい、どういうふうに改善するかということによって保険料率の引き下げ方も変って参りますので、この両者を勘案して、今後根本的に検討していきたい、こういうことでございまして、われわれもその検討の結果に待ちたい、こういうふうに考えております。
  127. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 まだなべ底景気といっておる本年度においては、やはり相当生産の上昇が期待されるという見通しの上に立っておるようでございまするけれども、それならどこまで雇用力が増大するかというような点については、必ずしも政府の見通しが実情に合致しているようには私は思わないのであります。そういう意味で失業問題というものはますます深刻な度合いを加えて参りまするので、そういうものとの関連において、この点について一つ根本的な検討をわずらわしたいと思うのであります。  それから次に、あと二点ばかり伺いますが、別途中小企業退職金共済法案が本国会に出て参るようでございまするが、この関係から見まして、中小企業退職金共済制度の創設に必要な約六千万円ばかりの予算が計上されておるのであります。この問題につきまして、退職共済制度の実施に伴って、零細企業の関係でありまするから、やはりこの退職金共済を扱う関係が、勢い相互銀行であるとか、あるいは信用金庫であるとかいうような、ある意味から見れば中小企業をお得意といたしております金融機関が、この法案が成立し、退職金共済制度が発足すると、資金を集めるルートとして当然担当されることになると私は思うのであります。ところが、従来からもそうでありますが、こういう形で零細企業、中小企業から、いわば吸い上げて参りました資金の運用の問題について、ともすればそうした中小企業ではなしに、独占企業の方面にやはり流れていく傾向がある。そういうことで、この中小企業の退職金共済制度の実施を前にして、早くも、先日関西のある相互銀行の常務をいたしておる私の友人が参りまして、この中小企業の退職金共済制度の実施に基いて、われわれが集めてきた金がわれわれの金融機関に流れるんじゃなくて——これは退職という事態が生じたときに出されるわけでありますが、その資金の運用の面について、当然この資金運用がなされなければ、共済制度の内容が充実して参りませんので、資金の効率的な運用ということが考えられなければならないのであります。ところがどうもそういうことではなくて、一般市中銀行が早くもこういうものに目をつけておるし、ある意味から見れば、きょうは大蔵省の担当官はおりませんけれども大蔵省あたりが何らかそういうことについての了解を与えているのじゃないかというようなことで、私の注意を晩起して参ったのであります。労働省の方においてはこれの所管省といたしまして、中小企業退職金共済制度が実施された場合に、今私が申し上げたような点についても、当然配慮しなければならぬと思うのでありますが、その用意があるかどうかということを伺っておきたいと思います。
  128. 澁谷直藏

    ○澁谷政府委員 ただいま御指摘のございました退職金の法案は、すでに国会に提出済みでございます。ただいま御質問のございました余裕金の運用問題でございますが、この点は御承知のように、退職金制度が長期の制度でございますので、将来は相当額の余裕金が出て参る予定でございます。従って、この余裕金をどのように運営していくかということは非常に大きな問題の一つでございます。労働省といたしましては、当然この退職金の金が事業主から積み立てられておる金でございますので、私どもとしてはできるだけこれを中小企業の金融に還元していきたいという基本的な考え方に立っておるわけでありまして、特にこの点は法案の中に一項を設けて明示いたしてございます。従いまして、この制度が実施になった暁におきましては、通産省とも十分連絡をとりまして、先生がただいま御指摘の相互銀行等も含めて、できるだけ零細な中小企業の業種の方に資金が回っていくように運用して参りたいと考えております。
  129. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 今の御答弁にもありましたように相当長期の関係でございますので、多額の余裕金が出て参ると、その運用の問題について、これはやはり中小企業の関係から生み出されてくる資金でございますので、そういう方面にこの余裕金の運用による資金が流れていくようなことについて、格段の御努力をわずらわしたいと思うのでございます。  最後に、実は昨日特に内閣官房長官に出ていただきまして、厚生省関係のいわゆる未解放部落に対する対策の問題について質疑を行なったのでございますが、労働省関係においても、労働事情の全国的な調査の過程において、いわゆる未解放部落における失業問題あるいは就職問題というものが、きわめて深刻な問題であるということは、私はある程度の実情は把握せられておるのではないかと思うのであります。昨日も一例として申し上げましたが、和歌山県の御坊市の職業安定所に毎朝並ぶ約千五百名の中で、八割五分までが未解放部落の出身者である。しかもそれがニコヨンとして失対に並ぶことが一つの職になっておるような形で出てきておるというところに、非常に深刻な問題があるわけであります。労働大臣も、いわゆる同和対策関係閣僚懇談会の有力メンバーとして入っておるのであります。本年度の労働省予算関係を見て参りますと、岸総理が予算委員会で言明し、政府の中に関係閣僚懇談会まで持たれておるのでありますけれども、この部落の労働問題の解決のために労働省関係において積極的な予算費目等を見ることが残念ながら実はできないのでありますが、その点についてはどういうようにお考えなのか、この際伺いたいと思います。
  130. 百田正弘

    百田政府委員 御指摘になりました部落問題につきましては、われわれも部落解放同盟の方々その他としばしば会いまして十分実情も聞いておるところであります。特にそういう地域におきましては、そこの出身者を職業の上でも差別する、従ってなかなか就職したくてもできないというような現実にあることは非常に遺憾なことであると思っております。そうした職につけないということの結果からいたしまして、勢い労働省所管失業対策事業に就労を求めてこられる人が非常に多いわけであります。労働省といたしまして特に部落対策のための予算を特別の費目としては計上してございませんけれども、結局実際の問題といたしましては失業対策事業のワクの拡大ということで処理せざるを得ないというようなことになっております。こうしたことのために特別に新たに失業対策事業を開始したところもございますし、またそれ以外のところでも従来からありましたところでも、だんだん求職者がふえてくるということのためにワクを拡大するという措置もとって参っておるわけであります。特に労働省といたしましては関係官庁とも相談いたしまして——今先生も御指摘になりました和歌山県の御坊地区、これは全国的に見てもそういう意味で部落の人も含めて非常に失業者の多いところになっておる。そういう関係からいたしまして、従来から政府におきまして、失業者の多発地域におきましてはできるだけ就労の機会を与えるために公共事業その他特別失対事業その他を集中的に行うということで、従来はたとえば駐留軍の離職者の多数発生する地域あるいは石炭離職者の大勢発生する地域等を指定いたしまして、こうした措置を講じて参ったのでございます。特に昭和三十三年度におきましては、そうしたことではなくて、失業者が非常に多いという地区といたしまして、和歌山県の御坊地区も指定いたしまして、約三億程度公共事業その他の事業をつけたといったような事情もございます。  さらにそうした失業者の非常に多いという事情もあって、失業対策事業よけい実施しなければいかぬ、従って結局その事業を行う事業主体である市町村におきまして、財政的にその市町村の予算の中に失業対策事業費の占める割合が非常に大きなものとなり、財政的に非常に困難な事情もございますので、特にそれにつきましては、一般に三分の二の補助といたしておりますのを、その率をこえるものについては八割まで補助するという措置をとっておりまして、先生が御指摘になった和歌山県の御坊市につきましても従来法律措置を適用して参ったわけでございます。  さらにわれわれといたしまして一番心配しておりますのは、部落における子弟の方々の就職の問題であります。特に中学校を卒業されて就職される場合に、なかなか就職できないということは非常に気の毒なことでございますので、特にこうした人たち就職を促進するために現在関係機関を督励いたしまして、ちょうど現在職業あっせん期に当っておりますので、その就職促進をはからしておりまして、すでにきまっておりますものでも、あるいは東京地区就職できたというような事例がございますが、決してこれで十分だとは申し上げられませんので、そうした方面にも今後十分に力を尽していきたい、こういうふうに考えております。
  131. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 これで質問を終りますが、ただいま最後に伺いました未解放部落における失業問題、労働対策就職あっせん、職業補導というような点については、私らといたしましても特に未解放部落だけを対象としたところの特別な施策を要求するものではございません。何らかそういう形でやることが、下手をするとやはり差別を助長することにもなるのであります。しかし問題は昨日も申し上げたのでございますけれども、これらの地区の人々はなまけたがために今日朝早くから職業安定所に並ばなければならぬような状態に陥ったのではないと思う。その点はやはり根本的に認識していただかないと、勢い今安定局長が述べられたような、あるいは町村における失対事業に対する八割までの高率の補助であるとか、あるいは御坊市に現在やっていただいておるような失業多発地帯としてのたとえば失対のワクを特別にふやしてもらうということについて、そういう地区を含んでいるところにはやはり何よりも基本的に重点的な施策を講じなければならぬ。これは過去の政治の芳しからざる遺産として今日同じ国民でありながら、これらの人たちが水準以下の生活をせざるを得ないのだという点についての根本的な理解を持って進めていただきたい。今御坊市は市になってからすでに五年目に入っておるわけでありますが、当時失業対策関係におきましては、町村段階ではやらない法律の建前になっておったものを、特に御坊町は町の段階で失業対策事業実施してもらう、こういうような形で発足をいたしておるのでありますが、今日に至りますまでも一向そうした基本的な条件が改善されないところに、昨日も根本的に内閣において一つ対策を立ててもらいたいということの要請をいたしたわけでありますが、特に都市部落、農村部落を通じまして失業者といえば、一旦何らかの仕事について、それからはずれた者が失業者でありますが、部落の労働者というものは失業者以前の状態にあるのであります。そういう点を十分考えていただきまして——私は先ほど失業保険の点で申し上げましたけれども、部落の人たち失業保険、最近は日雇い失業保険の問題が出てきておりますから、そういう関係の諸君は幾らか均霑することになりましたけれども、いわゆる失業保険の恩典についても均霑することのできない、以前の状態にある。これは私あらゆる国の施策を集中してまっ先に解決してやらなければならぬ問題だという点を昨日も強調いたしたような次第でございますが、特に労働省関係においてはやはりこれらの関係地区の一番切実な問題でございますので、一つ格別の配慮をわずらわしたいということをお願い申し上げ、なお具体的な問題についてさらに質問したい点もございますけれども、具体的な問題をつかまえまして、いずれまた労働省と話し合いの機会を持ちたいと思いますので、私の質問はこれで終ります。
  132. 綱島正興

    綱島主査 以上で昭和三十四年度一般会計予算及び同特別会計予算中、労働省所管に対する質疑は一応終了いたします。  明日は午前十時より開会し、文部省所管について質疑を行うことといたし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十分散会