運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1959-02-28 第31回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月二十八日(土曜日)     午前十時十六分開議  出席分科員    主査 大平 正芳君       井出一太郎君    小坂善太郎君       床次 徳二君    八木 一郎君       山崎  巖君    淡谷 悠藏君       石村 英雄君    佐々木良作君    兼務       山本 勝市君    井手 以誠君  出席国務大臣         通商産業大臣  高碕達之助君         国 務 大 臣 世耕 弘一君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁長         官官房長)   宮川新一郎君         通商産業政務次         官       中川 俊思君         通商産業事務官         (大臣官房長) 齋藤 正年君         通商産業事務官         (大臣官房会計         課長)     阿部 久一君         通商産業事務官         (通商局長)  松尾泰一郎君         通商産業事務官         (企業局長)  松尾 金藏君         通商産業事務官         (重工業局長) 小出 榮一君         通商産業事務官         (軽工業局長) 森  誓夫君         通商産業事務官         (繊維局長)  今井 善衞君         通商産業事務官         (鉱山局長)  福井 政男君         通商産業事務官         (石炭局長)  樋詰 誠明君         通商産業事務官         (鉱山保安局         長)      小岩井康朔君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      小室 恒夫君         工業技術院長  黒川 眞武君         特許庁長官   井上 尚一君         中小企業庁長官 岩武 照彦君         通商産業事務官         (中小企業庁振         興部長)    川瀬 健治君  分科員外出席者         総理府事務官         (自治庁税務局         市町村税課長) 鎌田 要人君         大蔵事務官         (主計官)   海堀 洋平君     ————————————— 二月二十八日  第一分科員山本勝市君及び第四分科員井手以誠  君が本分科兼務となつた。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十四年度一般会計予算経済企画庁、農  林省及び通商産業省所管昭和三十四年度特別会  計予算中農林省及び通商産業省所管      ————◇—————
  2. 大平正芳

    大平主査 これより会議を開きます。  昭和三十四年度一般会計予算、同特別会計予算中、通商産業省及び経済企画庁所管一括議題として、審査を行います。  まず、通商産業省所管について、質疑を行います。床次徳二君。
  3. 床次徳二

    床次分科員 私は経済協力促進に関して、政府の御所見を伺いたいという意味において、質問をするのでありますが、包括的な問題に対しましては、あと大臣によって補っていただくことにして、私は基本的な問題を伺うというところに主眼があるわけでありますが、一応政府委員から伺っておきたいと思います。  現在の状態におきましては、輸出促進に関しましては、直接の輸出促進方法以外に、どうしても間接の輸出方針でありまする経済協力を必要とするということは、言うをまたないのでありまして、今年の予算を見ましても、通産省関係におきましては、西ベンガルあるいはマラヤの技術プラント等の設置があるのでありますが、しかし実際面におきまして、政府財政支出を伴うところの経済協力というものにたよるというのでは、とうていこれは現在必要とするところの各種経済協力に対しては応じ得ないのではないかということを感ずるのであります。反面におきまして、経済協力そのものについては、今日コマーシャル・べースによるところの経済協力というものがうたわれているのでありますが、このコマーシャルベースによるところの経済協力というものは、現実においては実はなかなか動いていないと感じておるのであります。すなわち極端な例で申しますと、賠償に伴うところの経済協力の義務と申しますか、これが国際的に認められているにかかわらず、フィリピンの場合におきましても、インドネシアの場合におきましても、あるいはビルマ等の場合におきましても、なかなかこれが実行困難だという実情に入っておるのであります。従いまして、それ以外の方法によりまして経済協力をなお促進しなければならない、いわゆるコマーシャルベースによるところの経済協力をより有利な条件にし直して、そうして広い意味経済協力が行われるようにすべきものだと思うのであります。今年政府が新しくプラント輸出一つ補償制度を作られましたのも、確かに改善だと思いますが、現在のところ、たとえば輸銀のいわゆる借款等におきましても、利子とか償還期限というものに対して、非常に無理な条件があるのではないか、あるいは将来の償還に対するところの各種条件、たとえば物品見返りでもって貸し付けるということもできず、やはり全部外貨償還を要するということも、非常に大きな困難があるのではないかと思います。現在のようにしておきましたならば、経済協力というものは伸びがたいと思うでありますが、この点に関して通産省はどういうふうに打開すべくこれを考えているか、伺いたいのであります。
  4. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 経済協力でありますが、われわれは経済協力の目的といたしまして、いろいろの面も考えられますが、通産省といたしましてはあくまでも輸出の安定、市場培養拡大、それから輸入の安定、市場培養という点を目標にいたしておるのであります。そこで今御指摘のように、政府財政負担によらない、いわゆるコマーシャルベースによる経済協力によるべきではないか、またそのための方策いかんというお尋ねかと思いますが、私はまず経済協力の一番大きいものといたしましては、輸入促進であろうかと思うのであります。東南アジアまたは後進国地域からの輸入促進する、ある程度割高な物資でありましても、それを買ってやるということが、一番大きい経済協力であり、またそれが日本輸出市場を育成培養する大きい役割を演ずるのではないかと思うのであります。通産省といたしましては、外貨予算の編成におきましても、またその実施面におきましても、そういう趣旨でできるだけ運用に努めておるのでありますが、しかしこれも割高物資をある程度買うということでありますので、おのずから限度があることはやむを得ませんし、その物資を利用する関係業界協力を得なければなりませんので、限度のあることはやむを得ませんが、できるだけそういう方向で、まず輸入の増進に努めまして経済協力をはかりたい、こう思っておるのであります。  それから第二点といたしましては、今床次先生からも若干御指摘がありましたが、財政支出に若干よることにはなろうかと思いまするが、輸出入銀行の活用による延べ払い輸出なり、また円クレジットを供与いたしまする輸出促進、またそれによる現地経済開発協力するという問題であります。これも国家財政資金が一部お手伝いすることでございますので、財政支出ではないかもしれませんが、若干の財政援助というような格好になろうかと思うのであります。この輸出入銀行運用につきましては、もちろん積極的な運用をはかるように努めてきておるわけでありまして、三十四年度におきましても、大体八百億円程度運用計画を作っておるのであります。もちろんこれには、財政からの資本の繰り入れなり、あるいは融資を仰がなければならぬのでありますが、これも三十三年度に比べましてはかなり大幅に、数字を申し上げますならば、三百六十億円の財政投融資を願って、この輸出入銀行積極的運用をはかることになっておるのであります。かねて、この輸出入銀行貸し出し審査基準がきついのではないかというふうな点につきまして、民間業界からもいろいろ御意見なり御要望もあったのであります。結局この延べ払い条件緩和につきましては、日本世界の先頭を切って緩和をする。緩和競争の先端を切るということもいかがかと存じまするが、西欧各国がこれをやっておる程度なり、それに劣らぬ程度条件緩和をはかりまして、輸出競争に負けないようにするという点につきましては、大蔵当局とも随時密接に連絡いたしまして、大体その趣旨で現在のところは運用いたしておるかと思うのであります。現在のやり方が厳格に過ぎるということは、私は決してなかろうかと思っております。一度こういう基準をきめますと、若干固定化するおそれもあるのであります。そういう時期もございましたが、最近逐次実情に沿うように緩和して参っておる。非常に弾力的な運用に努めておりますので、現在のところは、大体世界各国に立ちおくれをしないやり方をいたしておるかと思うのであります。また今後各国実情をよく見ました上でやりたい、こういう考えであります。
  5. 床次徳二

    床次分科員 ただいまの御答弁の中に、輸出促進をはかると言われたのでありまするが、たとえばプラント輸出見返りとして現地から原料物資を入れるというようなことが、今日の東南アジアにおいては一番大きいのではないかと思うのでありまするが、現在実際の取扱いにおきましては、物を輸入するという形のもとに輸出は認められていない。やはり決済は一応外貨の形にしなければならぬという原則をとっておるのじゃないかと思う。たとえば一例でありまするが、プラント輸出をして返りに石油輸入する。価格がコマーシャル・べースであれば、将来石油によってこれが償還できるということになれば私は構わないと思うのでありまするが、現実においては、そういう話はなかなか結びがたい実際上の隘路があるのじゃないかと思うのですが、この点はいかがですか。そういうことに対して積極的に便宜を与えるお考えを持っておられるかどうか、これが第一点。  第二点といたしましては、現在の輸銀のペースに対して各国並努力をしておられるというのでありまするが、東南アジアの諸地方に対しまして、これも極端な例でありまするが、ソ連、中共等においては、いわゆる政府ース資金が入っておる。二分五厘で入っておる。これと競争するということに対しては私ども考えておられぬけれどもアジアにおける日本立場から見まして、また現在の日本経済力は貧弱ではありまするが、やはり将来の貿易振興ということを考えますると、日本といたしましても相当努力をしてよろしいのじゃないか。かような見地から見れば、現在の輸出入銀行各種条件をもっと低下していいんじゃないか。むしろ国策として低下すべき時期に入っているのじゃないかと思う。局長は大体各国並だと言われるのでありますが、どうも私ども感じから見ると、各国並ではない。少くとも今日の取扱い方針によっては、なかなか契約の成立は困難じゃないか。われわれがもしも東南アジアに対して経済協力、あるいは中南米等に対しましては積極的にやろうという以上は、もう少し国家として努力を要するのじゃないかと思うのであります。国家がそれだけ努力すれば、結局輸銀等においてそれだけの利息あるいは償還年限において負担をする。すなわち間接的な財政負担をするという形になりまするが、それだけの財政負担と申しますか、それは輸出入銀行を通じて日本が背負っても可能なのではないかと思う。日本経済状況に対して、経済企画庁等数字を見て参りましても、すでにそういう面において積極的な支出をすべき時期になっておる。負担をしてでも経済協力によるところの進出をすべき時期になっておると思うのですが、この点に対してさらに重ねて御答弁いただきたい。
  6. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 先ほど私が経済協力の一手段といたしまして、いわゆる東南アジア等からの輸入促進するということを申し上げましたのは、一般的に、たとえば米にいたしましても、あるいはトウモロコシにいたしましても、なまゴムにいたしましても、現地物資を買ってやるということが、当該国外貨を与えることになる。それが日本輸出促進するゆえんになるという意味で申し上げておったのでありますが、なおその日本から輸出をした機械なり設備と関連する輸入につきましては、現在のところあまり多くのものはございませんが、鉄鉱開発のごときにつきましては、これは明らかに開発につきまして日本から機械なり設備を送る。そのかわり、開発いたしました鉄鉱石を若干値引きをするなり、あるいは長期契約によって買付契約をするなり、いわゆる設備機械輸出と、それによって開発されました原材料の輸入とのリンクというような格好で、行われてきておるのであります。これは今のところ鉄鉱石くらいかと思いますが、今後はなおそういうものもふえてくると思います。若干銅鉱石なんかにつきましては、そういう格好になっておるのではないかと思います。今はっきり承知いたしておりませんが、経済協力ということになりますと、やはり現地開発したり生産したりするものの販売市場というものを考えなくちゃいかぬということになりますれば、やはり日本輸入してやれるものから開発するということが、手近であるし、また一番確実安全なやり方であると思うのであります。今後、そういう方向が漸次進められていくのではないかと私は思うのでございます。それから最後のお尋ねの、輸出入銀行貸出金利の点でありますが、これも一般的に世界金利水準を割るということはなかなか困難な点もありまするが、円借款の場合におきましても、あるいは先般エジプトに成立いたしましたクレジット・ラインの設定の場合におきましても、相当金利引き下げになっておるかと思うのであります。これはあまりこちらから安くするというわけにも参らないのでありまして、その場合現地側の要請その他をにらみ合せて考えなければならぬかと思うのであります。私どもといたしましては、できるだけ現地要望にも沿いつつ、経済協力に応ずるということでいきたいと思っております。ただ、今先生指摘の、輸出入銀行を通ずるところの経済協力やり方の速度がにぶいではないかという点は、われわれも認めるのでありますが、それは輸銀貸し出し基準いかんの問題といいますよりは、ある国によりましては、政治経済情勢について、どうも少し信用がいたしかねるというふうな点から、個々の、貸し出し基準以上に借りられる当該国に対して、踏み切るべきか踏み切らざるべきかというところで、若干のちゅうちょをいたしておることはこれは確かにございますが、これも世界各国が、ある程度積極的にその国に対してやっておるということでございますれば、日本だけが安全な道を踏んでおるというわけにもいかぬわけでございまして、われわれといたしましては、西欧諸国の出方も見ながら、先ほど申しましたように、競争におくれをとらぬという考えから対処して参りたいと考えております。
  7. 床次徳二

    床次分科員 事務当局立場から見ると、私は局長のような答弁になるかと思うのですが、現実の問題を見ると、隘路は単なる銀行の業務の隘路でなしに、いろいろな面からの隘路がある。簡単に申しますと、外務省大蔵省通産省の三省の意見調整という問題でもって出てくるのではないか。たとえば、ブラジルの過般のいわゆる清算勘定の廃止という問題に伴うところの、貿易を縮小したという現象につきましても、これはいろいろの見方があると思う。大蔵省大蔵省立場で、非常に外貨というものを大事に考える。また、しからばブラジルの将来が果してどうかと見れば、あれだけの資源のある国が、そう簡単に経済的に行き詰まることはないと思うのであります。しかし外貨という面から見ると、非常に窮屈ということになっている。また移住その他の過去の因果関係もあるわけでありまして、そういうようなことを考えますと、私は簡単に事務的な段階においてきまるのでなしに、もっと高い程度において方針が常にきめられていいのではないか。ブラジルの例は一つの例でありますが、経済協力につきましても、さような意味において政府が行動せられるべきではないか。その意味から考えますと、今局長が御答弁になった程度では、はなはだもの足らないような感じを持つのです。わが国の国策として、経済協力というものをやるのだということを考えている以上は、一歩前進して、積極的な意欲がそこにほしいと思うのであります。この点は一つ通産大臣に伺いたいと思うのですが、やはり大蔵、外務、通産というものは、もっと積極的に意見調整せられて、今度のブラジルのようなのが一つの例と私ども思うのでありますが、ああいう結果にならぬように、むしろ事前に打開するという、納得させた方法がとり得るのじゃないかということを、強く私ども感じる。また現地に行っておられて、調査して帰ってきた連中も、そういうことを言う、業者もそういうこと言う、現地日本の二世であるけれども、その人も、そういうことを強く感じて、母国へ呼びかけてきているという現状なんです。かような立場から、一つ経済協力に対しましては、従来の事務的な制約というものを越えて、打開していただくということにお考えをいただきたいと思うのです。  なお、たとえばプラント輸出の場合におきましても、鉄鉱山開発のために、設備輸出して鉄鉱石をもらうということは、きわめて単純でありますが、必ずしも趣旨に合わないのではないか。日本に入る資材というものが、日本の希望する資材であれば、そういうものを見返りに将来持ってくるということも成り立つと思うのですが、現在のところ、そこまでは考えておられぬように私ども見ておるのであります。そういうところの政府方針というものが、一般業界あるいは相手国の方にもよく了解ができまするならば、現在経済協力というものをもっと一そう促進することが可能なんじゃないか。少くとも時期的に言いまして、ことしから近い機会において、積極的に日本がやるべきときなんじゃないか、この時期を失ったならば、だいぶアジアにおけるところの状況が私は違うと思う。この点は単なる営利べースじゃなしに、国際ベース等も考慮して、日本がやるべきときだと思うのですが、この点に関して通産大臣の御意見を伺いたいと思います。
  8. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 この経済協力及び日本輸出を増進するために、輸出入銀行取引条件緩和というさきの御質問の問題と、同時にこのブラジル取引成り行き等についての意見を申し上げるわけなんでございますが、今日の世界情勢といたしましては、どうしてもこれらの国々に対しては、東南アジアにいたしましても、ブラジルにいたしましても、あるいは中近東にいたしましても、外貨事情が非常に悪いわけですから、これに対しては相当クレジットを先方に与えるという考えでいかなければならぬ。そうせなければもう伸びない。しかし相手方いかんによっては、御承知のごとく、持てる国の政情が安定しておるとか、持てる国が今外貨がないために資源開発できないというふうな国に対しては、相手方を見て、日本経済力の許す範囲においての援助というか、クレジットを出すとか、そういう方法をもっていかなければ伸びないと存ずるわけであります。これもヨーロッパ各国は、同じ市場を目当てとして日本競争的の立場をとっておるわけでありますから、これに対しましても、日本条件相当緩和せなければならぬというわけでございまして、昨年の六月に私就任以来、その問題を強く取り上げまして、延べ取引なり、あるいはクレジット設定というようなこともやってきたわけでありますが、何しろ御承知のごとく、国内におきましては、外務省は外交的の関係からいろいろ自分責任議論を立てられる、大蔵省大蔵省自分責任議論を立てられる、通産省通産省責任議論を立てられる。これはおのずからみな意見が違うことは当然でございまして、その意見をどこに調整を持ってくるということは、これはほんとうの政治の要諦だ、こう存ずるわけであります。ブラジルオープンアカウントの問題のごときも、相当意見があったわけでありますけれども、しかし世界大勢オープンアカウントというものをだんだんやめるという大勢であるということになれば、これにもやはりならっていかなければならぬ、こう思うわけであります。そういうことのために、今ブラジルは今日の状態になっておるわけでありますけれども、これとても今現在ちょうど端境期にあって、日本に持ってくるものはその時期でないからこういうことになっておりますが、これは逐次それも時期になれば解決していきたい、こう思っております。原則といたしまして、私はこういうことは一つ考えていきたいと思っております。従前、業者があまりに政府にたより過ぎておつたという憂いが相当にあると思います。いわゆる一旗組というものは、政府の力を借りて、そうして自分だけはもうけてしまって、間違ったときは政府あとしりぬぐいさせる、こういうような結果が、相当過去において見られた実例があります。一例を申しますれば、インドネシアにおけるオープンアカウント勘定においては、取引をした人が相当もうけておった。しかしそのしり政府がぬぐってやった。そういうことに相なっては済まない、こう存じまして、オープンアカウントの問題はそれで取引した人はもうかるけれども、万一焦げつきがあった場合は、政府がこのしりをぬぐわなければならない。これは相当警戒を要する点だと存じておりまして、円クレジットの問題にいたしましても、政府自身政府との間にある一つクレジット設定してしまったということになりますれば、これは商売を終った人たちは、売りさえすればいいのであって、その跡始末は政府がやってくれるというようなことで、つい、これに従事する業者は、あたかも賠償の中にものを売るというような考えで、きわめてイージーな考えである、こういうふうなことになったときに、これはいい結果を来たさない。私は、どうしてもこれから先は、日本業者自身相手方情勢をよく判断して、そうしてその仕事が成り立つかいなやということ等もよく検討を加えて、業者責任でこれを輸出するということにやっていき、そしてその輸出したものにつきましては、政府はできるだけ金融について援助をする、それからまた間違いが起って、相手方政情が急速に変化したといった場合には、政府相当責任を持ってやらなければならないが、事業やり方が悪くなるとか、相手の方の仕事について見込み違いがあったというようなことについての責任は、業者自身が持たなければならぬ、これをはっきりしていかなければならぬ、こう存じておるわけであります。その意味におきましては、延べ取引条件等も、輸出する業者、あるいはプラント輸出にいたしましても、供給する業者責任において——これは相手の国が引っくり返ってしまったときは別でございますけれども仕事が悪くなったときにおいては、その責任を一々政府に持たすことになっては困る。従いまして万一そういうような場合に、自分たち見込み違いにおいて損失が起った場合には、かりに輸出入銀行においても、金融を請負っている輸出入銀行に対する責任は、この輸出入銀行から金を借りた日本のシッパー、日本プラントを供給したメーカー、これが責任を負うということさえはっきりしておれば、私はその条件等相当緩和していっていいと存ずるわけであります。それはつまり業者責任においてやり、政府はこれを援助していくということでやっていきたいと思います。ただ今非常に困難に感じておりますことは、プラント輸出におきましては、御承知のごとく、このプラントによってできる能力というものについての責任を持たなければならぬ。これは現在プラント類を作りますメーカーと、これを動かす人たちの間に連絡がかっちりとれていない。たとえば砂糖のプラント輸出をするにいたしましても、製糖会社はこのプラントを動かした経験がありますが、この機械を作った人は動かした経験がないということのために、そのプラントの能力というものについての責任が持てないというふうなことがあるものでありますから、ここでどうしてもその責任を持ち、万一予定のごとく能率が出なかった場合に、先方に対する責任があった場合には、これはプラント協会というものが中心になって保険を受ける。その保険につきましても、政府はある程度責任を持つというふうなことをしたい、こういうのが今回このプラント輸出の法案をお願いしたというふうなわけなんであります。そういうふうなことにしていろいろ考えていきたいと存じますが、床次さんの御指摘になりました、つまりどうしても根本におきましては、大蔵省は財布を締めるところであり、通産省は積極的に商売したいところである。この両方の意見は必ずしも一致いたしませんけれども、この間の調整を十分とって、それで積極的に進めていきたい所存でありますから、さよう御承知願います。
  9. 床次徳二

    床次分科員 次に、これに関係いたしまして、今度新たに海外経済研究所というものを設立された。これはまことにけっこうだと思います。私ども一日も早く拡充されて、事業が円満に遂行されることを望むものでありますが、特に要望いたしたいのは、この研究所におきましては、いわゆる貿易、あるいは一般人文科学的の研究も必要でありまするが、しかし何と申しましても、いわゆる自然科学的のもの、たとえば熱帯農業、あるいは熱帯医学等、あるいは工場が行って参りますにつきましては、現地の衛生状態も知らなければなりませんし、特に南方でありますれば、熱帯農業、熱帯医学、あるいはその地方、その地方の土地の問題、地質の問題、鉱山等の問題でありますとすれば、地質の問題を知らなければなりませんが、そういうふうな自然科学的のものを早く充実する必要があるのじゃないかと思います。相当経費はかかりますが、今日まで相当各地方にもこの資料があるわけであります。特に戦時中におきましては有益な資料を持っておったのが、散逸せんとしており、まことに残念でありまするが、すみやかにこの研究所におきましても、かかるものに対して着手をしていただきたいと思うのでありまするが、これに対して大臣の御意見を伺いたいと思います。
  10. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 先般発足いたしました財団法人のアジア経済研究所というものは、これは当然将来文化方面、今御指摘のような方面にもどんどん進んでいきたいと存じております。こういうふうなことのために、これは経済研究所という名前を、場合によっては変えていこうではないかというふうな考えで進めておるわけでありますから、従いましてさしあたりの問題といたしますれば、とにかく経済協力というふうなことが主体になっておるようでありますけれども、根本問題は、そういうふうな問題につきましても、逐次内容の充実と同時に、予算も十分に拡充いたしまして進んでいきたいと思っております。
  11. 大平正芳

    大平主査 山本勝市君。
  12. 山本勝市

    山本(勝)分科員 通産政策につきまして、大きいこと、小さいこと、いろいろ伺いたいと思います。まず最初に大きい方から、大臣がせっかくお見えになっておりますので始めたいと思います。第一に伺いたいのは、最近日本経済の体質改善ということが叫ばれてきております。日本経済は浅いとかいうようなことは、前々から言われておりましたが、最近はただ浅い、深いということだけでなしに、体質を改善せにゃいかぬということを言われておりますが、その体質改善についての大臣の構想ですね、これは企画庁長官の一番考えねばならぬことかもしれません。しかし世耕長官はまだ新しいことでありますし、世耕長官に聞くよりも、むしろ通産大臣に伺った方が適当かと思います。日本経済の体質改善の構想ということを、大筋だけでもけっこうでありますから、伺いたいと思います。
  13. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 この問題は、おのずから私は三つに分れると思います。  体質改善の一つといたしましては、経理的の面から日本の工業というものをながめる場合と、それから、これを技術的に見る場合と、これを総合的に見る場合、この三つの点から改善していかなければならぬと存ずるわけであります。経理的の面から申しますと、現在の日本の工業、産業、戦前は、大体六割から七割を自己資本でやって、あとは借入金であった。ところが今日、戦後は、自己資本は三割ないし四割でありまして、あとは借入金になっておる。こういうことのために、事業全体の経理が、市中金利だとか、あるいは金融の緩慢だとかいうことによって、非常に動かされる。経営者自身も、ほかの借入金が多いというようなことで、責任感がどうも薄いような気がします。これはどうしてもドイツなりアメリカなりイギリスの例のごとく、少くとも六割なり七割というものは自己資金をもってまかなって、あとは借入金でやっていくというふうに、税制等においても考えて、資本の蓄積をそこにさしていく、しかも自己資本の充実をはかっていくということが一つの問題であります。  第二の点は、技術的に考えまして、今日の科学技術というものは日進月歩であって、毎日とどまるところを知らぬような状態であります。この科学技術を適切に早く事業に取り入れるということを考えなければならぬ。これは大企業においては、すでにおのずから自分でやっておるところもありましょうけれども、中小企業においては非常に欠けておる。こういうわけでありまして、中小企業に対する設備の近代化ということを十分考えていかなければならぬ。これが第二点だと存じております。  第三の点につきましては、日本の工業全体を日本全体の立場から見ていかなければならぬ。今日産業が興りますときにおいては、これはあるいは炭鉱だとかいうものは別でありますけれども、しかし加工産業を興す場合に、ただ総合的に考えられずに、工業立地のごときも、任意別々に各自が考えているというようなことは間違いで、それがために、必要であるべき農地がつぶされるとか、農地をつぶすような工場を建てたところが、工業用水がないとかいうような点もあります。また一面からいうと、イージー・ゴーイングのために、都市に多数の工場が集中して、そうして当然建つべき場所に工場は建てられらないで、都市に集中するというようなことは、はなはだおもしろくない点でありますから、こういうふうなことから考えまして、産業基盤の強化というようなことと関連いたしまして、工業立地の条件等もよく検討いたし、将来工業の興るべき地域等につきましては、総合的に国は考えて、そこに対する港湾設備をするとか、あるいは埋め立てをするとか、あるいは水道施設をするとかいうような点を考えていかなければならぬ。こう存ずるわけでありまして、概括いたしまして、この三つの点を考えておるわけであります。
  14. 山本勝市

    山本(勝)分科員 日本経済の体質改善についての大臣の構想を伺ったのでありますが、承知いたしましたところでは、政治的な見地から、企業の自己資本の充実という面に努力して、税制その他万般の面からそこを目標にしていく。第二には、技術的な面ですが、特にその面では、中小企業の技術の改善に努力していかねばならぬ。第三には、全面的というか、総合的に、工業立地その他について、もう少し広く計画的にやっていかねばならぬ、こういうふうに理解したのであります。  そこで私の考えも申し上げて、御批判というか、御考慮願いたいのですが、政治的と言われた中に、自己資本の充実、これは最近日本経済の体質改善という言葉を使っておる人たちは、主としてその点を意味しておるようでありますが、しかし私は、むしろ日本経済の体質改善というよりも、企業の体質改善、もちろん今日の経済において、企業の体質が改善されるということが、経済全体の体質改善に重要な意味を持つことは申し上げるまでもありませんが、しかし直接にはやはり企業の体質を改善するということのねらいではないかと思う。借り入れ資金に対する自己資本を充実させていく、これも非常に大切なことだと思いますが、それでは私は不十分だと思う。  それから日本における中小企業の立場、比重というものは、非常に大きいし、また今後もおそらく大臣も、中小企業というものを、日本全体の一つの安定中堅といいますか、そういう役割を果させようとして、これを育成強化していくというねらいは、申し上げるまでもないと思います。その点で、どうも中小企業の生産性が低い。ですから、その生産性を高める意味において、中小企業経営の技術を向上させていかねばならぬという御意向かと思います。さように了解していいですな。そこで、これもまことにけっこうな、ごもっともな御意見だと思いますが、その場合に、中小企業の技術というものを、いかにしたら向上さしていくことができるかという方法の問題に入ってくると思うのです。私が考えるのは、特許庁というのがありますが、ああいうところで発明品をいろいろ審査する場合にも、従来どうなっておりますか、これは事務当局に聞かねばわかりませんけれども、特に中小経営において生産性を高めるような発明、これを特に重視していくということが非常に大切なことじゃないかと思うのです。学問の方、科学技術と申しますか、科学の方は、あまり実用ということを念頭においてやる科学というものは、かえって実用にならない。実用を離れて、学問のために学問をする、科学のために科学をするというのが、かえって結果において非常に人生に貢献すると、昔からいわれてきておるのであります。ただ技術の場合には、科学と違って、やはり目標があって、実用といいますか、必要は発明の母だと申しますが、その必要というものが前提になって、外部からの刺激で技術というものは発達する。科学のように、科学のために科学するといったものとは、精神が違うと思うのです。ですから戦争中に、戦争が起りますと、非常に兵器技術が発達する。というのは、戦争の必要というものが、国家として強い要求になって参りますから、その必要な兵器の発明を生み出してくる、兵器技術の発達を非常に急速に伸ばしていくということから見てもわかるように、明らかに技術というものは、学問とは違って、必要が生み出すわけであります。そういうふうに、戦争中に急速に兵器技術が伸びるということを考えますと、中小企業を振興していく、その生産性を高めるというところに国家の目標を置きまして、特に中小経営向けの技術というものを国家が要求する。これはそういうものを奨励もし、審査に当っても特に目をつけて早くやってやる、あるいはそういう発明に対しては税法上他のものよりも優遇する、こういうことをやる必要があるのではないか。昔は、農業の生産性を高めるということは、農業の性質上人力が多くて機械の使用はむずかしいとよく言われておったのですけれども、しかし今日は、小型の電気モーターというようなものができて参りますと、農村の小さな農家ですらも、この小型電気モーターを使って農業の生産性を高めることができる。だから一人、二人で仕事をしている手工業者のようなものでも使い得るような技術の発明を奨励していく必要があるのではないかと思う。ですから、今まで特許庁のいろいろな発明審査に当って、大規模なマス・プロの機械というものではなくて、中小経営向けの小さな一人、二人でも活用できるような機械を、特に重規していったというようなことがあったかなかったか。なくても責める気持はないのでありますが、もしなかったとしたら、今後、中小企業庁の長官も来ておられますが、中小企業庁の方から、外部から発明を生み出すような刺激を与えていくような意味で、特許庁にも働きかけてもらう必要があるのではないか。今まではそういう点はあったのでしょうか。
  15. 井上尚一

    ○井上政府委員 御承知の通り、日本は特許、実用新案の出頭の数におきましては、世界第一という状況でございまして、そういう点から申しましても、中小企業関係の発明意欲というものが非常に旺盛であるということは、申していいかと考えております。中小企業向けの発明について、特許の与えられた例が多いかという御質問かと存じますが、その点は従来かなりその数は多かったと思います。例として申しますれば、たとえば農機具関係なんかにおきましては、特許または実用新案が、農機具工業の進歩の上に非常に寄与しているということは申していいかと存じます。なお、中小企業関係の発明につきましてのみ特に審査を早くするというようなことは、先願主義、つまり順序通り審査をやる、その原則関係上、特にそういう考慮を加えることは法律上許されていないことでございます。なお問題は少し違いますが、発明に対して特許が与えられる、しかしながら、その特許発明は非常にいいのであるけれども、中小企業者としてその実施化がうまくいかない、その実施化について援助をする、そういう問題につきましては、従来、発明実施化試験費の補助というような制度は、先般科学技術庁ができますまでは特許庁として扱って参りましたが、今日は科学技術庁の所管ということに定まっております。
  16. 山本勝市

    山本(勝)分科員 日本は中小企業が多いものですから、従って中小企業者の需要が多いわけです。その結果において中小企業向けのいろいろな発明が多かったということは、それはそうだろうと思いますが、特に産業構成、日本経済全体の体質改善という点から考えて、中小企業者というものを育成していく上において、その生産性を高めにやならぬ、こういう必要がある。そうして大規模なものがたくさんできて、そこにプロレタリアが集まってきて、ジクザク行進ばかりさせるということは、あまり好ましくないという見地、大きな見地から申しましても、中小企業政策というものが非常に重要です。それで法律でとめられているというお話がありましたけれども、私は重要な国策として考えた場合には、特に中小企業を目標とした発明、その生産性を向上させる発明を振興さしていく刺激、つまりくどいようですが、戦争のときには、軍が重点にしてやるからあれだけ兵器技術が発達する、そういう考慮を加えて、法律がもしじゃまになるなら、改正を加えてでもそういう意味のこともやる。何と言いましても、技術を盛んにすることが生産性を高めるゆえんでありますから……。農業、それから中小経営、これが大経営に対立した日本のいわゆる中堅層でありますが、そこをつちかっていくという意味において、生産性を高める。生産性が高まるには、積極的、意識的にそういう政策をとっていくべきであると思うので、ただ結果においてそれが多かったということでなく、お願いいたしたい。これは大臣の方でその方針をきめていただけば、その実現は不可能ではないと思うのであります。  それから第三点に、総合的立地条件考えていかにゃならぬ、これもごもっともだと思います。今日のように大都市集中で、きのうでありましたか、おとといでありましたか、私は実は建設委員会で建設大臣にも申し上げたのでありますけれども、都市の住宅問題を一生懸命にやっておられますが、交通、住宅その他で都市に金をつぎ込めばつぎ込むほど、ますます全国から家屋敷のない人間が集まってくる。ですから当面のものを処理することも必要ですが、当面の政策が、かえって長い目で見れば都市集中を促して、自分で問題を作り出しておるということを反省してもらいたい。ですから、そのことを実は建設大臣にも申し上げたのであります。あんなマッチ箱を積み立てたような高層アパートなんかを作って、親はいなかで育っておるからいいですけれども、あの中で生れて育った子供というものが、果して将来健全な、円満な思想を持って行動をする人間として期待できるかどうか。おそらく神経質な、ジクザク行進をやらなければ何かさびしいような人間ができ上るのではないかということを、実は痛切に申し上げた次第であります。そういう意味から言いまして、私は大臣が言われた工場立地というものを考えて下さるということ——私はむしろ都市の郊外に住宅を作るなんというこそくなことでなしに、この都市をもっと健全な形が保てるだけのものに減らしていくという国土計画が必要であると思う。その意味では、ただ交通難緩和などというような小さい見地ではなしに、もっと広い見地から、個性のない、ジグザク行進をしなければさびしいといったようなことで集団化してしまって、革命の根拠地になるような都市を作り上げていくのじゃなくて、そういう意味から言うと、建設大臣に申し上げたのは、宮城の移転問題なども、交通の問題からは反対だけれども、そういう大きな見地からいけば、むしろ奈良とか京都とかにお移り願って、そういったことで自然に東京にあまり魅力がないように——大都市に魅力があるから、どんどん集ってくる。国費を注入すればするほど集まってくる。そうして問題を自分で作り出していく。それを今大臣が言われた通り、地方へそういう国費を注入していくということになれば、またそこにそれぞれの文化が栄えて、健全な都市が栄えてくる。ですからやはり都市の健全な姿というものは、おもなる顔役連中はどこで会ってもやあと声がかけられる程度の顔見知りという程度の都市が一番健全なのではないか。それでしかも生産性を上げるような方式を考えていくべきだということも申し上げたのです。  非常にけっこうだと思いますが、もう一つ、私が申し上げたい重点があるのです。それは、体質改善という場合に、ちょうど医者が人間の病気になっておるからだを健全にするというのが、体質改善という本来の意味だと思います。日本経済の体質改善を一人の人間にたとえた場合、どうも今の日本経済という人間のからだは、いろいろ故障を起しておる。その故障を直して健全な人間にしようという名医のつもりになって診断をしていただけば、体質改善策が出てくるのではないか。そこで一番大事なことは、通じをよくするということであります。名医に限っていろいろな病人にぶつかったときに、まず通じはいいかということを聞く。通じが悪くて、あっちこっちにかたまりができたり、障害ができて血液の循環がよくない、従って通じも悪い、これが日本経済の今陥っておることではないかと思う。この間、実は企画庁におられた後藤君でありましたか、今アメリカに行っておられるようでありますけれども、ある会社で、私がそのことについて話したら、後藤君も全く同感で、日本経済の非常に困っておることは、硬直化してきておることだ、ですからなべ底ならなべ底に下っておりまして、そうして世界的景気が上ってくる場合でも、まるで病人のようにぼうっと熱が出たり下ったりしますけれども、体質が硬直化しておるために、ほんとうに自然に上る時期に上ったりしないというのです。たとえていうと、中気という病気がありますが、動脈硬化をして内出血を起しておるのではないか。これを血液の循環をよくして、通じをよくするという見地から考えていってもらいたいと思うのです。動脈硬化症を起しておるということは、あらゆる面であります。農業の面におきましても、最近わが党において特別委員会まで作って農業基本法を作ろうというのは、言葉はきれいですけれども、結局これまでの政策が完全に行き詰まったということです。価格支持制度というものを作っている。そうして増産政策をやってきた。牛を飼わしたところが、牛乳が下ってきた。その他ジャガイモ、澱粉の問題にいたしましても、繭の問題にいたしても、あるいは硫安の問題にいたしましても、もう壁にぶつかってしまっている。このままではどうにもならぬというところから根本的に考えてみようというのが、あの農業基本法に関する委員会を設けている理由であります。今までの市場経済というものは、機能障害を起してきておる。それから通産政策についても、これは私の意見として聞いておいていただけばいいですが、私は中小企業団体法というものができるときにも、強く反対しました。私はなぜそれに反対したかというと、ああいうふうに絶えず組織化して、その中に押し込んでしまう、これは必要があって自然に生まれてくる組織、自然にくずれてくる組織なら別ですが、強制的に、画一的に組織を作っていくということが、物の動きをスムーズに動かぬようにしてしまう。つまり変化に適応することが困難になる。そして動脈硬化に陥ってしまう。ですから何か問題が起ると、すぐ着眼点として、競争が激しいことの責任だということで、これを組織と統制の強化によって安定させていこうというふうな考え方をどうもしてきておるように思うのですが、この組織と統制の強化によって、逆にいうと、競争を押える形で、当面の安定を考えていこうという政策、ことに悪いことは、価格の安定ということをねらい過ぎると思うのです。これは大臣は専門家だから、もう申し上げるまでもありませんけれども、生産と消費と価格という三つのものは、相関関係で定まっているのであって、消費の方は押えるわけにいきません。人間が何を買うかということは、消費者がきめることであります。それから生産の面でも、技術の変化その他の変化は押えるわけにいきません。そうすると価格が動くのは当りまえです。生産と消費と価格の相関関係において、生産の面に変動があり、需要の面に変動があれば、価格は変動する。品物が足らないときは上る。そうして余ったときには下る。この足らねば上るし、余れば下るという価格の変動、これがバロメーターとなって、生産と消費とのバランスがとれていっておるのが、御承知の自由経済市場経済の体制であります。それをこのバロメーターというか、価格の上り下りが全体の経済調整をとっていく中核であるのに、品物が余っても下らぬようにする、足らぬでも上らぬようにして、安定させていくということになると、ちょうどたとえていうと、寒くても下らぬ、暑くても上らぬ寒暖計と同じようになってしまう。そしてそういう寒暖計をバロメーターにしている全体の市場経済機構というものは、もう作用が麻痺してくるのは当然であります。ですから価格をなるべく安定したいということは、これはもうだれしも自然の要求でありますけれども、しかしそういう価格を安定さすということをもしねらっていきますと、その次には今度は必ず生産を計画的に命令して、守らなければ罰していくという計画を押しつけていく以外に方法がないようになります。そしてそれでもいかぬようになって、今度は消費を規制していくということも必要になってくる。現に牛乳の問題で、小学校の子供に無理に牛乳を飲ましてみたり、そういうことまで考えてくるようになるということは、一に価格の安定ということばかりに気をとられておる。その価格を安定させるためには、相関関係のエレメントである生産をまず制限する、今度は消費の方を考えていく、現に今までの農業政策のあり方は全部それできておる。桑を引け、それが今度はそれでいかぬから、何か絹の商品がないかしらということで、消費の方をいじくってくる。ですからわれわれは、自由経済といいますか、市場経済を守るというために、党を作っておるのであります。そこで自由主義国と協力して命がけの努力をしておるという理由は、この自由の経済、ことに自由な市場経済——経済だけは命令経済にしておいて、政治や文化の面では自由なものを作り上げるというのは、笑うべき一つの迷妄であって、経済生活においてもし自由の原理が失われてきたら、政治の面でも、文化の面でも、自由は失われてくることは当然であります。ですからわれわれが自由の世界を作るために制度を作っておりながら、その政権のもとにある今日、現実政治はますます自由の態勢をくずす方向へ進んでいっておる。その一番の原因は、自由の態勢の一番肝心かなめの自由価格の形成が、需要供給の関係で微妙に動いていく、ちょっとでも余れば下る、ちょっとでも足らねば上るという、この機構を政策的にとめていこうとしておることが、いやおうなしに生産の方面で自由を奪い、消費の面で自由を奪う線にだんだんと進んでいっておる。ですから通じをよくするというか、変化に対して適応し得るような状況というものは、できるだけ企業者及び消費者に残していくという考え方からやっていくことが、日本経済の今日の体質改善、つまり通じをよくし、血液の循環をよくする大切な点じゃないかと思うのです。  私は、最近、日本経済の体質改善の処方箋というものを自分で書いてみたのです。そう考えた場合に、先ほど来おっしゃったことは一々大切な点ですけれども、もっと根元的には通じをよくする、血液の循環をよくする。それをじゃまをしておるのは何かというと、今言う自由の組織の動いていく条件考えないからです。もちろん自由に放任せよと私は申しておるのではありません。これは誤解のないようにお願いしたいのであります。世の中に変化が起りましたときに、その変化に対して弱い人々がこれに耐えられない。その摩擦を少くするためにも、その変化に伴って起る動揺があまり激しくならぬように、市場に対して国家が干渉していくということは、私は必要な場合は十分認めるのです。時には外国からの刺激に対して関税でやっていくことも必要かと思いますが、市場に対して国家が干渉する前に、絶対に守らなければならぬ二つの原則がある。この条件を忘れて、やたらに目先の事件にとらわれて対策をとっていくものですから、対策がまたその対策の必要を生んでくる。それから次に自分自身で問題を作り上げていって、最後は一挙に共産主義になってしまうか、あるいは行き詰まってしまうことになる。これは歴史的にいいましても、また理屈で考えても、そうなると思うのです。必ず守らなければならぬ二つの条件の第一は、変化が起ったときに、変化にスムーズに適応させるために干渉するのはよろしい。技術の変化でも、あるいは戦争とか、いろいろな海外からの影響にいたしましても、天変地異にいたしましても、とにかく変化があります。その変化にスムーズに適応させるために干渉するのはよろしいが、現状維持を目的とした干渉は絶対いけない。世の中は変化常ないのが実態であって、これは昔から諸行無常といわれておるくらいで、いかなる政治力をもってしても、世の中を一定させておくことはできない。変化はやむを得ない。ただ変化からくる結果を、なるべくその変化にスムーズに適応させるために、国も力を尽すということが必要なのであって、もし現状維持させようというための干渉をいたしましたら、わかりよい例を言いますと、既存業者が得をするだけであって、独占を形成するだけであって、次から次に子供が大きくなっていくのに、その子供は行き先がなくなってしまう。目先の、現におる人の今の安定ということばかりねらうから、そこで現状維持的な安定策というものが、長い目で見た大きな不安定の要素を必らずはらんでくるのです。そして今度は大きな激動を避けられないことになってくる。ですから水が川を流れておる場合に、どこかに材木がひっかかっておる、そのひっかかっておるのを、ちょっと手を貸してスムーズに流れさせるという意味の干渉なら、よろしいけれども、そうではない、水そのものが国家の力で流れぬように、現状で安定さそうというようなことをやったら、これは一時の安定が大きな不安定の要素になりますから、これはいけない。変化に適応するための干渉でなければならぬ、現状維持のための干渉はいけないということが、一つです。  もう一つは、同じ干渉をする場合に、市場の法則に適応した干渉の仕方でないといけない。市場経済の法則というものにそむいて、その法則自身作用しないような形の干渉、そういう干渉は避けにゃならぬということであります。その市場の法則に従って干渉するということは、市場の法則にさえ適応すれば干渉は幾らやってもいいという意味ではもちろんありません。しかしたとえば、外国からの品物が入ってくる、それも急激に入ってきて国内の産業が大混乱を起すという場合に、関税をかけるということは、これは私は市場の法則にぴたっと合った、市場の機能というものにちっとも障害を起さない一つの方式だと思います。しかし為替管理をするとか外貨の割当をするというようなことは、市場の機能そのものに干渉するのであって、これは関税による方策とは質が違う。ですから同じ効果を持つ場合には、私は関税を高めるという方式でやるべきであって、外貨の割当とか為替管理とかいうふうなことは避けにゃならぬ。しかし外国——今日本の役人たちはすぐ、外国でやってる、外国でやってると言いますが、外国自身も誤まりを犯している。世界全体の経済の改善という考え方をする場合には、国際会議なんかに出た場合には、同じ干渉をどこの国も必要とすれば、むしろ為替管理や外貨の割当という制度の方をやったら、国際条約で処罰をする、関税の方はむしろ必要の場合は認めるという方向へ持っていくように、世界を指導せねばならぬと私は思う。それを、関税の方へ手をつけるとすぐガットにひっかかるとかいうことで、外貨割当や為替管理という方はむしろあまりやかましく言わぬからということで、やっておるのが現状のようですが、これは大間違いであって、市場の法則に従った自由経済を守ろうとしておる国々の集まりの会議で、今そういうことをやっているのは、世界の連中が少し間違っているのだから、それを実は改めていく必要がある。一番悪いのは、価格の形成に直接国家が干渉するということが一番いけない。一番肝心かなめのバロメーターのところに手をつけるのですからいかぬ。ですから干渉する場合には、なるべく価格の形成の前で干渉するか、価格形成過程のあとの方で干渉する。形成過程そのものでは干渉しないということが、私は大切だ、こういうふうに思っておるのです。時間がごまいませんから、くどくどしいことは略してそれくらいにいたしますが、現にこの前できました団体組織法なども、私は埼玉県の行田が私の選挙区でありますが、これは中小企業庁長官にも非常に無理を言って苦労してもらっておるのですけれども、行田のたびの連中は、当時あの団体法ができるときには私が反対なために、私を支持しておるたび業者が、非常に苦労しました。もう先生、これは反対せぬようにしてくれと言っておったのですが、最近になって初めて行田のたび業者は、やはり先生が反対したのがほんとうだったというので、深く私に対してまた傾倒してきておるというのは、たびというものは、だんだんとだめになってきておる。それは主としてナイロンの靴下の、たびの格好をした、げたでもはけるようになった靴下、これはたび靴下と称するのですが、ナイロンで作ったたび靴下に食われるのです。そこで行田自身でたびをはかないで、たび靴下をはくようになってきたから、たびはどんどんとだめになってしまった。これは絶対だめという見通しがついて、そしてようやく、たび靴下に食われるのだから、たび靴下に変ろうということに決心をいたしましたときに、待ったが入った。どこから入ってきたかといいますと、全国の靴下業界が、あの団体組織法に基いて設備制限をする、靴下業界はすでに生産過剰だ、こういう理由であります。ところがその行田の連中の中でも、一部はすでにたび靴下に変っておるのがあるのですが、昨年の暮から春にかけて、たび靴下は夜も夜業をやって、日曜も休みなしにやっている。東京などでもそうなんです。それほど盛んであって、一軒としてつぶれた店はない。ないけれども、業界に聞くと、もう靴下業界は過剰生産である、機械は半分たな上げしているのだという。聞くところによると、昨年の暮れに、審議会においていよいよ設備制限の決定をしたということです。それを待ってくれという陳情が盛んに私のところに来て、私からも訴えたのですが、そのとき連中の話を聞くと、倉へほおり込んでたな上げしているのは、それはたび靴下の機械ではないのだ。たび靴下という、行田のたび業者が今転換したい、自分たちが犠牲を払っておるそのものではないのだ。それはどこにも一軒もつぶれた店はない。非常な勢いで夜業もやり、日曜も休みなしにやっておる実情ではないか。ことに一般の靴下などというものは、生産技術が日進月歩であるから、技術的には使えても、経済的には古い機械はもうだめになるから、それをあげておるのだ。一軒も靴下業でつぶれたのはないほど盛んなのだけれども、古い機械では間に合わないから、あげておる。これほどもう倉にたな上げしておる、そういうことを業者は言うのですけれども、靴下業者としての説明に対して、審議会では、私の知った範囲でもあとで聞きますと、その実情を知らない人たちが、知らぬから賛成した。それで今から転換するということになったときに、もう生きる道がない。そこで中小企業庁の方でも、行田だけは何とか特別に気の毒だからというので、一定のワクをやろうということで、そこにある程度の方策は講じてもらっておるのですが、しかし、それはそれより仕方ないということになっておるが、もとをただせば、要するに動脈硬化といいますか、変化に適応するということのできないような組織にだんだんなってきておる。ほかにもたくさん私はあると思う。新しく出てきた人間の道をふさぐということもあろうし、あるいはこれまでの事業を転換したい、転換すれば必ず立っていけるのに、もうそこに壁ができておって転換できない。ですから画一的組織化をもって目先の安定をはかっていこうということが、だんだん日本経済を動脈硬化と申しますか、麻痺と申しますか、市場機構を麻痺しておるのであるから、この点は反省をしていただかないと、その他の点だけでは、ほんとうの意味での健全な体質にはならない、こういうように思っておるのです。お忙しいようですから、今日はこれだけにいたします。大臣にはどうもありがとうございました。所感がありましたら、ちょっと一言承わりたいと思います。
  17. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 山本委員の御質問につきましては、私、体質改善のために、自由経済をもって立っておる国といたしましては、同感でございます。なお今問題になっております行田のたび問題は、非常に重要な問題だと思っておりますから、政府委員から状況等は御説明いたさせたいと思います。
  18. 大平正芳

  19. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 実は私、一昨年の秋、閣議決定を見ましたところの新長期経済計画に基きまして、エネルギー政策の基本的な方向として打ち出されてきておりますところの、国内炭の積極的増産、水力開発促進、原子力発電の推進、さらに四番目に海外石油資源の確保と石油輸送能力の強化、こういう四点をあげて、特にエネルギー価格の安定を長期エネルギー需給計画の基本的要件にすることが決定をされて、その後二カ年の推移をしておるにもかかわらず、むしろ当時の基本的な決定とわ逆の方向に来つつある。こういう現状につきまして、少し掘り下げてお伺いをいたしたいと思っておったのでありますが、先ほど来のこの委員会の運営の面から、外務委員会にも大臣が呼ばれておられるそうでありまして、分科会できょうは時間がなさそうであります。従いましてまたの日にいたしまして、これらの本質的な問題は中止をいたしたいと思います。ただ五、六分時間をいただきまして、最近の問題二、三について、通産大臣に注意を喚起いたしたいと思います。その第一点は、これは妙な話でありますけれども、御承知のように、昨年の新聞を見ますと、電力会社の首脳部陣に対する刷新意図を通産大臣が持っておられるかのごとく報ぜられておる。ところが昨日の閣議におきまして、通産大臣は了解を得られて、何だかそういうことをせぬような格好の発言をされておるらしく承わる。私は本来電力問題に対しましては、基本的ないろいろな問題がありますけれども、その中の電力問題を混迷化しておる一つの問題に、電力事業なるものの性格から、公共事業的な性格を持っておった、非常に強い産業でありながら、しかも御承知のような再編成以来、これを普通の株式会社にするといって、普通の商法上の運営で行われておる。そこで実際の電力行政の面で、電力首脳部というものに一つの盲点があることを承知いたしております。従ってこれは法的権限があるないにかかわらず、今の電力会社に対しまして政府の意図されるような行政が行えないとするならば、これは先んじて堂々とやられたらいいと思う。筋道はおかしくとも、電力会社に対して政府としては常に多くの資金を投入されておるわけでありますから、能率が上らないとすれば、適当な方法で強引に通産大臣としてはその措置をとられたらいいと思う。しかしながら、一面に、それを強行される場合には、現在の電力会社のもって立っておりますところの法制的な基盤というものとは、矛盾する面が出てくるわけであります。従ってそれらを調節しながらも、なおかつ法的に十分に熟さない段階でも、経済的要請なり社会的要請が強いというならば、私は勇気を持ってやられたらいいと思う。おそらく通産大臣としては、やりたいといってやり出すと、あちらこちらから問題が出てくる、それじゃやめておこうというようなことがあろうかと思いますが、こういう重大なる電力会社の首脳部、特に大資本を擁し、政治的な問題がいろいろ取りざたされる危険性のある問題につきまして、ヘビのなま殺しのような状態で対処されることは、事態をますます不明朗化する原因だろうと思います。御承知のように、この問題をめぐりまして、たとえば政党の派閥の電力会社への介入でありますとか、あるいはまた一面におきましては、政治資金にまつわる妙なうわささえ立ち得るわけであります。従いまして、私は率直に、そういうことはないならないといたしまして、今当面しておる電力問題を推進するためには、やはり電力会社の首脳部の刷新なら刷新をやらなければならぬという決心をされるならば、その点を明確にして出発されたらいいと思いますが、通産大臣の御心境を承わりたいと思います。
  20. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 電力会社がもう発足いたしましてから七年たっております。その間におきまして、内部の人事等につきましても相当問題とすべき点があるようでありますが、しかし通産省といたしましては、この人事権というものはないわけであります。しかしながら、この電力事業というものは、公益事業であり、その上に政府資金も勧銀を経て出ております。さらにまた海外資金を持って参りますときに、政府はこれを保証しておるというふうな点から考えまして、これに対しては相当の発言力を保持していきたい、こう存じておるわけであります。そこで、少くとも内部において紛争しておるとか、あるいは汚職問題が起るとかいった場合には、これはそれぞれ警告を発しておるわけでありますが、今後の問題等につきましてそういうふうな問題が起りますときは、当然監督官庁としての力をもって刷新をしていきたい、こう考えておるわけであります。ただ、今日こういう政府のやる仕事が、あるいは派閥にとらわれておるとか、あるいは選挙対策だとか、こういうふうに見られるということは、はなはだ残念でありますから、そういうものではないということを、私はきのう閣議に申し上げたわけでありまして、根本の方針といたしましては、今佐々木委員の言われたごとく、政府はこの公益事業である電力会社に対しましては、相当の関心をもってこれに対する監督を強化していきたい、こういう所存でございます。
  21. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 これ以上追及するのは酷でありましょう。従って私はこの問題につきましてはやめまするが、御承知のような形でせっかくやろうとされる。今こういうややっこしい世の中でありますから、やろうとされれば、当然うわさが出るのは当りまえの話で、それを承知してそういう問題をあげられるということは、通産大臣、不用意だ。一たんあげられたとすれば、これを遂行しなければならぬ。従って私は、通産大臣がこの電力行政に対して熱意を持っておられるならば、いずれにしても、この問題はすっきりした格好で取り組まれることを特に要望しておきたいと思います。  それから一分間の返事でよろしゅうございますが、電力料金問題がずいぶんくすぶっております。そこで答申書が出て、だいぶ長くなっております。同時にまた、三月末三割頭打ちの問題がずいぶん論議されておりますけれども、今の御処置の方針、いかがですか。
  22. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 先般年末に、この審議会の答申も参っておりますから、ただいませっかく検討中でございまして、今後当分私は電力料金は値上げせずに済むというような感じを持って進んでおります。
  23. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 今審議されているうちで、最近通り魔事件等の問題につきまして、街灯料金というものが問題になっておるわけでありますが、この街灯料金の問題は答申書には出ておらぬと思います。本気になって検討される用意があるかないか、承わりたいと思います。
  24. 小室恒夫

    ○小室政府委員 治安対策等の件に加えて、街灯料金について要望が出ております。これについては、現在当局において検討中であります。街灯といっても、いろいろ範囲が広うございます。その中で、しさいにどういうところにはどういうような対策を講ずべきかということを検討中であります。
  25. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 この問題は、特に電気事業が公共事業であるということと結びついて、問題にするには非常にいい問題だと私は思います。ちょうど今は電力会社が経理のいい状況になっておるときであります。従って、大体家庭料金と同じ格好になっておりますが、これは本気になって取っ組んで検討を加えていただきたい、そういう要望をしておきたい。  最後に一点だけ、石炭の問題にからみまして、従来いろいろな問題が社会問題としても上りつつあります。従いましてその石炭問題解決の一端として、通産大臣は不良炭鉱の買い上げ問題を取り上げておられる。これは一つ方向としてはけっこうなことだと思います。ただ私は、特に岸内閣になりましてから、具体的な問題について、政府として一貫しないうらみを心から遺憾に思っておるのであります。御承知のように、政府におきましては、石炭政策の根本的な問題の検討の中で、不良炭鉱を買い上げて、いい炭鉱を中心にして能率化しようという方針が進められておりまするときに、今それこそいろいろな角度から問題になっております国鉄の志免炭鉱の払い下げという問題がある。私はこの国鉄の志免炭鉱は必ずしも不良炭鉱だとは思っていない。その意味で、払い下げに反対という立場をとっておりますけれども、これを強行されようとするところの運輸当局あるいは国鉄当局の方針は、これはあくまでも不良炭鉱だ、従って能率の悪い炭鉱だということを前提として、払い下げようという措置をとられようとする。また一面におきましては、御承知のように、三菱の鉱山と一緒にして総合開発をしようというのが、払い下げの一つのねらいのようなものの言い方をされる。私は、この問題に対して通産大臣が所管が違うといって知らぬ顔をしているのは、おかしいと思う。事石炭に関する問題であって、政府の方で、一方において不良炭鉱を買い上げるといってやっておきながら、一方官有の不良炭鉱を払い下げて民有にするという論議が、一つの内閣において行われるということは、そもそも話がおかしいと思う。  第二点としましては、しかもまた別の理由として、総合開発をするということを述べられている。私はこれは総括質問でつついたところが、何としても総合開発をするのだという。総合開発をするといっても、民間に払い下げた炭鉱を総合開発するという権限があるのか。特に運輸省あたりにはありっこない。もし少しでも指導性があるとするならば、それは当然通産省が持っているべきである。従って通産大臣が知らぬ顔しているということは、はなはだおかしな話だと思う。総合開発をするという理由は、当然能率のいい炭鉱であるから、従って総合開発をするという理屈が成り立たなければならぬ。その場合には、当然指導性は通産省が持たなければならぬ。あるいはまた不良炭鉱であるという方針が成り立っておるならば、不良炭鉱であるというものを民間に払い下げるといって、通産省の方は不良炭鉱を買い上げるという政策を進められる。こういうべらぼうな政策が、一つの内閣において論議され、行われているということは、まことに不愉快にたえないわけであります。この辺から痛くもない腹をさぐられ、あるいはおかしな話が出ているのじゃなかろうかという、くさいものにハエがたかるような問題が出てくると思う。通産大臣の所見を承わりたい。
  26. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいま志免炭鉱の問題につきまして、通産大臣は黙って知らぬ顔をしているのは、たなはだ不届きだというお話でありますが、御質問があれば私はお答えする考えでおったのですが、きょう初めて御質問があったので、お答えいたします。  志免炭鉱は決して不良炭鉱じゃございません。あれはりっぱな炭鉱であります。これを不良炭鉱であるということならば、私はそれは間違いだと思っております。それからああいう炭鉱を国営に近い鉄道が運営しているということは、間違いです。これはどうしてももちはもち屋で経営させて初めてできるのであって、もち屋が経営すれば、ほかの炭鉱と一緒に総合的に——余った機械があればこっちへ持ってくる、工事があればこっちへ持ってくる、その総合開発ができますから、私は、これは一日も早お国鉄から離して、もちはもち屋に持たせた方がいいという考え方であります。
  27. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 そういうふうに筋が通るなら、まだ話はわかる。しかしながら御承知のように、答弁されておる内容から見ると、能率が悪いから、従って赤字経営——今はちょっと黒字になったようだけれども、また赤字に転ずる危険性があるから、こういう荷やっかいなものは持っておらぬで、払い下げた方がいい、その払い下げの理由は、通産大臣が何ぼ言ったって、国鉄の十河さんも吉野さんもそういうふうに答弁される。われわれはそうじゃない。調べてみると、なかなかいい炭鉱じゃないか。だから、いい炭鉱ならなぜ払い下げるのだ、今度追い討ちして質問をすると、それは三井、三池、三菱などと一緒に総合開発をした方がいい、総合開発が唯一の理由だと言われる。総合開発ということならば、今言ったように、話が違ってきて、民間に払い下げて、民間の私有物にして総合開発しろという理由はどこから出てくる。従いまして、通産大臣を責めはしません。しかしながら、そういう払い下げるという方針があるならば、もう少し筋を通して、石炭行政とからませて問題を展開してもらわなければ、いういろいろくさいものに、ウジがわくように問題が発展することを、特に注意をしておきたいと思います。  時間がなさそうでありますから、私の質問はきょうはこれでやめておきますけれども、先ほど申し上げました電力会社の人事の問題に対しても、基本線を立てて勇敢に、どっちでもいいのですから、勇敢に対処せられますよう要望いたしますと同時に、タイミングを逸し——いいことであっても、やる人とやる時期が悪いと、悪くなる危険性もありますから、そのことも心せられんことを要望し、また志免炭鉱の問題につきましては、閣内で今のように右、左に理由があちこちしているのでは、今のような妙なうわさも立つことを特に注意を喚起して、質問を終りたいと思います。
  28. 大平正芳

    大平主査 井手以誠君。
  29. 井手以誠

    井手分科員 私は簡単な問題を二、三点お伺いをいたしたいと思います。あいにく大臣が出かけましたので、関係のない方からお伺いをいたしますが、まず鉱害復旧について石炭局長お尋ねをいたします。鉱害復旧については、あらゆる機会にお尋ねしておりましたが、今回一点だけお伺いしたいのは、鉱害復旧の事業費の最高限度であります。私の聞いたところでは、反当十九万一千円が最高の限度だと承わっておりますが、福岡、佐賀などの鉱害復旧の実情を見て参りますと、反当二十万、三十万もかかるところがかなりあるのであります。しかし最高制限に押えられたために、原形復旧ができずに、中途半端な復旧になったため、関係被害農民から多くの不満が出ておるのであります。開拓地におきます入植農家の事業費の限度、あるいは一般農地における災害復旧の最高制限額、こういうものから比較検討して参りますれば、十九万一千円は低きに失するという考えを私は持っております。私も方々の鉱害復旧に関係いたしておりますが、どうしても二十四、五万円まで引き上げなくては原形復旧ができないという当面の実例を、私は多く持っておるのであります。当局ではこれを引き上げられるお考えはないのか、その点をお伺いいたします。
  30. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 農地の鉱害復旧の十九万一千円につきましては、私も必ずしも、現在の段階が非常にいい、妥当で動かすべきものでない、そこまでの自信は持っておりません。確かにあちこちでもう少し増していただけば原形復旧できるのだということのあるのは、井出さん御指摘の通りでありますが、これにつきましては、従来から農業の主官庁であります農林省と十分協議して、そちらの方の意見をできるだけ取り入れるということで、国全体として相当の国費を出して復旧しているわけでございますが、どこまでやるのが国民経済的な見地からいいかということは、一応の基準を立てておるわけでございますが、ただいま御指摘の点もありましたので、今後のあれにつきましては、さらに十分検討いたしまして、農林省と連絡をし、普通の一般干拓とも平仄が合うといったような格好に持っていくように努力したいと考えております。
  31. 井手以誠

    井手分科員 農林省は農地の主官庁でありますから、せっかくの良田が荒廃に帰している、これを原形に復旧することについては、非常な熱意を持っておることは申し上げるまでもないのであります。農林省関係方面では、この引き上げを非常に熱望しておる。ところが鉱害復旧はあなた方の主管でありますために、思う通りにならぬということを承わっておるわけでありますが、御答弁によりますと、今後打ち合せて実情に即するようにしたいというお言葉でございますが、予算がすでに提出され、まさに決定しようとする今日、決定したあとでもこの最高制限額を引き上げることはできるわけでございますか。私の方から見れば、ぜひそうさしてもらいたいと思っておりますが、その点を一つ……。
  32. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 現在の御審議いただいております予算から申しますと、十九万一千円ということでやっておりますし、大体予定地と金額の関係からしますと、現在の予算で金額を上げた場合に、若干不足が出てくるということは当然でございますが、しかしやはり非常に急ぐというところと、ある程度おくれてもいいところ、若干緩急の度というものもあると存じますので、十九万一千円ということこれ自体は、必ずしも国会で一々そこまでおきめいただいているわけではございませんので、主務官庁である農林省あたりとさらに相談いたしまして、せっかくやっても中途半端なあれではできないというようなことになれば、引き上げるということについて、先ほど申し上げましたように慎重な検討を加えて、できるだけ鉱害復旧の主目的を果せるように持っていきたいと考えております。
  33. 井手以誠

    井手分科員 私が関係しております鉱害復旧においても、二十四、五万に引き上げてもらわなくては、一〇〇%の鉱害復旧に八〇%程度しか盛り土ができないという事例があるわけです。今後農林省などと折衝して引き上げに努力したいというお言葉でありますから、私はそれを信頼しておきたいと思いますが、このほかの一般災害の復旧の場合と、鉱害復旧は、これは農家の関係なく、いわゆる炭坑の掘進のために被害を受けたものであります。私どもの見聞したところでは、良田が非常に多いのであります。従来の標準によりますと、いい農地であるから最高制限額はこうだというのではなくて、平均耕作反別で最高制限額が設けられておるようでありますが、ただいま申し上げましたように、鉱害は一般的には平坦地の陥没が多いために、反当十俵以上の良田が陥没している。こういうことを考えますと、一般災害の最高制限額以上に引き上げていいものだと私は痛感いたしておりますので、その点も御考慮の上で、御努力下さるようお願いしたいと思うわけです。  次に中小企業庁にお伺いいたします。あるいは中小企業庁でない部面もあるかもしれませんが、少し金利についてのお尋ねをいたしたいと思います。大臣の予算の説明によりますと、中小企業金融公庫などの金利が若干引き下げられるようであります。現行の金利と、引き下げられる金利を、国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工中金別に、一つお示しをいただきたいと思います。もし幸いお手元に参考資料としてありますならば、農林漁業金融公庫並びに農林中金のものをも、現在の金利をあわせてお教え願いたいと思います。
  34. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 中小企業金融公庫の現在の貸し出し金利は、大体九分六厘程度でございますが、来年度の資金考えまして、これを大体三厘程度引き下げ得る計画に相なっております。  それから、商工組合中央金庫の現在の平均金利は、大体九分九厘程度でございますが、これを約三厘程度引き下げ得る見込みという計算に相なっております。  農林関係の資料は、私ここに持ち合しておりませんので……。
  35. 井手以誠

    井手分科員 あなたの方で、国民金融公庫の分は参考にお知りじゃございませんか。
  36. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 大体中小企業金融公庫と同じ程度運用されておると考えております。
  37. 井手以誠

    井手分科員 中小企業金融公庫と国民金融公庫は大体同じ、現行九分六厘だと理解してよろしゅうございますか。
  38. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 その通りでございます。
  39. 井手以誠

    井手分科員 国民金融公庫については、主管が違うかもしれませんが、金利引き下げのことは予定はないようでありますか、御存じありませんか。
  40. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 中小企業金融公庫も国民金融公庫も、新年度から金利を下げる予定にしております。大体現在平均九分六厘程度のものでありますから、三厘程度下げるようなことで、今検討しておるのであります。
  41. 井手以誠

    井手分科員 検討でございますか、大体内定というか、計画でございますか、検討の程度でございますか。
  42. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 平均金利では三厘は内定しております。ただ一律に各種のあれを下げますか、あるいは若干貸付業種によりまして差別をつけるかという点を検討中でございます。
  43. 井手以誠

    井手分科員 検討というお話でありましたが、選別審査ということでございますか、必要な零細の方に考えるというわけですか、担保力というか、そういうものの有利なものに金利を下げるというような意味でございますか。
  44. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 私申しましたのは、そういうような意味じゃございませんで、いろいろな業種がございます。たとえば物品販売業、それから鉱業あるいは製造工業等にもいろいろ範囲がありますので、一律に下げた方がいいか、あるいは若干変えた方がいいかという点の検討中であります。別段相手先の担保条件、その他資力、信用で云云ということじゃございまん。
  45. 井手以誠

    井手分科員 最近金利がずっと下っておるようでありますが、その一般金利の引き下げとこの三二程度の引き下げはどういうことになりますか、均衡を得ておるわけですか、どうでございますか。
  46. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 その点はなかなかむずかしい問題かと思います。御承知のように、一般の金利、ことに長期の金利は、これは市中銀行とのあれを見ますと、かなり相手先の先ほど申しましたような資力、信用で差異もあるようでございますし、また担保条件等で違ってくる点もあるかと思います。政府機関同士から見ますれば、たとえば開発銀行の長期の設備資金が一般には九分でございます。今まで中小企業関係の同種のものが九分六厘でありました。これを九分三厘程度というふうに考えますから、差は縮まるわけでありますが、これは一挙に下げるのもいかがかと思いますし、また金融機関としての各種の牽連性の問題もございますから、その辺は慎重に検討しなければいけませんが、でき得れば開銀等の金利とあまり差のない方が適当だと思っております。
  47. 井手以誠

    井手分科員 参考にお伺いいたしますが、開銀の金利、標準と最低、最低はどういう方面に融資されておるか、それと輸出入銀行の金利、標準と最低、最低はどういう方面に融資されておるのか、あわせてお伺いをいたします。
  48. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 現在開発銀行の金利は、一般金利としては年九分でございます。そのほかにいわゆる特定金利と言われておるものでございますが、電力、石炭、それから特定機械、これは特定機械の合理化の法律に基いて運用されておるものでございますが、それと船舶、これが六分五厘ということでございます。それ以外は一般は九分でございます。
  49. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 輸出入銀行の場合でございますが、これは対象によりまして若干の差異はございますが、原則としまして、輸出の場合は最低が四%でございます。なお輸出と申しましても、延べ払いの場合あり、またインドに対しますがごとく、円クレジットを供与するという場合がありますが、円クレジットの場合におきましは、たしか国際金利水準ということになっておりますので、はっきりとは承知いたしておりませんが、五分四、五厘になっておるのじゃないかと思います。それから輸入金融の場合もございまするので、はっきりした利率を記憶いたしておりませんが、最高が六分くらいになっておるのじゃなかろうか、従って、最低が四分、最高が六分であったかと思います。
  50. 井手以誠

    井手分科員 開銀の場合、一般は九分、特定のものは六分五厘、その金額からした割合をちょっとお知らせ願います。——それはあとでお聞きすることにいたしまして、いわゆる金利のコストを一つお伺いしたいのであります。開銀の場合、輸銀の場合、それから政府金融機関の中小企業金融公庫、国民金融公庫の場合、政府出資あるいは産業投資特別会計から回った場合はどうなる、預金部資金から回った場合はどうなるというコストを、一つお伺いします。
  51. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 開発銀行につきましては、年々その貸付の内訳が違っておりますので、大体の見当ということで申し上げるよりほかはないと思いますが、ただいま申しました電力、石炭、海運、それから特定機械というようなものを拾って参りますと、大体半分あるいは半分ちょっとくらいのところが特定金融、それ以外は一般の九分ということに相なっております。  それから資金コストの計算を、私ども手元に正確なものを持っておりませんが、大体開発銀行資金ースといたしましては、運用資金借り入れが非常に多うございますから、開銀が新たな資金を受け入れる場合の金利は、運用資金借り入れでございますから、大体六分五厘ということでございますが、それ以上に産投会計からの出資ということになりますと、これは出資でございますから、当然金利負担はございません。しかし資金の比較的大きな部分を占めます原資といたしましては、運用資金の六分五厘というのが大部分でございます。
  52. 井手以誠

    井手分科員 これはこういうふうに聞いた方がわかりやすいと思うのですが、輸銀の場合はほとんど出資だと思います。それは今までどんなふうになっておりますか。
  53. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 輸出入銀行の場合は、もちろん国からの出資と預金部からの借り入れ資金でございますが、先ほど私ちょっと金利の点を申し上げましたが、間違っておりましたので、訂正さしていただきます。延べ払い等の輸出の場合は四分であります。それから対外事業等に対する投資の場合は五分でございます。それから円クレジットの場合が、国際金利水準ということでありましたので、その当時の国際金利水準といたしましては、五分七厘五毛くらいになっておるようであります。その資金源は、国からの出資と、それから預金部の借り入れでございます。国の出資の方は無利子でございます。それから預金部の方は現在六分でございまするので、私、はっきりとコストは存じ上げませんが、大体それでまかなっております。
  54. 井手以誠

    井手分科員 輸銀の場合は大部分は四分で貸してあるようでありますが、政府出資の場合は幾らで貸せば大体まかないのつくものですか。結論的にお伺いいたしますが、出資ばかりでやった場合は、取扱いの費用は要りましょうが、そういうものは最低幾らまでは貸せますか。政府出資、産業投資特別会計から出資された場合、金利のつかないものを運用する場合には、最低幾らまで貸せますか。三分ですか、二分五厘ですか。
  55. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 これは特に輸銀の場合ということに限定せられたと思いますが、全額出資ということになりますれば、出資資金そのものはコストはゼロになるわけであります。事務費その他のことを考えて、これは一般に常識的にいわれておりますのは、やはり一分くらいの運用コストになるのじゃないだろうかというようにいわれております。
  56. 井手以誠

    井手分科員 それでは同じことを聞くようですけれども、全額出資の場合は最低一分では貸せる、公庫なり銀行なりはそれで運営ができる、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  57. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 これは先ほど申しましたように、特に一般的、常識的に申し上げたのでございますが、その貸付業務の内容いかんによりまして、たとえば輸銀のように一口が非常に大きな貸付になるような場合には、いわゆる事務費その他が比較的安く上るわけであります。それに対しまして、小口あるいは中小企業に対する小口貸付のような場合は、たとい全額出資で資金そのもののコストが安くございましても、それだけ経費はよけいかかるということになりますので、一律的にはちょっと申し上げかねます。
  58. 井手以誠

    井手分科員 それは常識でしょう、その通りでしょう。その場合に、輸銀のように一口が大きい場合は、常識的にどのくらいで貸し出せるか、国民金融公庫のような小口が多い場合には、どのくらいの運用の費用がかかるか、その二つをお教え願いたいと思います。
  59. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 私どもそういう意味の計算のファクターがわかりませんので、ちょっと申し上げかねるのでありますが、三十四年度の計画として、輸銀が現在予定しております運用総額が約八百億でございます。しかしそのうち、来年度のいわゆるただの金といいますか、産投出資は七十億でございまして、あと二百九十億は六分五厘の運用部借り入れであります。これが来年度新たに投入する額でございます。それ以前にすでに輸銀に投入されている金で、大体回転する部分が約四百三十億くらいあるのであります。そういう点を兼ねて考えてみますと、大体現在の輸銀状況で見ますと、貸付金利が平均で四分三厘くらいのところを維持できるだろうというような計算に相なっております。
  60. 井手以誠

    井手分科員 幸い大臣がおいでになりましたから、お伺いいたしますが、今まで中小企業金融公庫、国民金融公庫、あるいは開銀、輸銀の金利をお伺いいたしました。ただいま御答弁がありましたように、輸銀においては、政府出資が多いために、船舶を中心として四分三厘程度でお貸しになっておる。これは大企業とばかりは申しませんけれども、これは相当の企業をささえておる。ところが、一方中小企業、零細企業に向けらるべき国民金融公庫、あるいは中小企業金融公庫、これはあなたの説明にもあったように、若干——若干というか、大体三厘程度の引き下げにはなっておりますが引き下げになっても、九分六厘から三厘、こういうふうになるわけであります。この非常に必要な、またわずかな金とわずかな利益で生活をしていかなくてはならぬ中小企業、あるいは零細企業に対して、九分三厘とか九分六厘、一方大口の者には四分三厘、私はこの点が非常に矛盾があると思っている。ここでは、そう法外なことはお話し申し上げませんが、私は財政投融資というものは、原資が税金、あるいは零細な預貯金であるということを考えますならば、これを還元する意味においても、まず財政投融資のほとんどは、中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫に回すべきである、六分か六分五厘の金利がすでについておる預金部資金というものを開銀なり輸銀の方に回すべきである、かように考えておるわけであります。中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫の金利のコストは一分程度だとお話しになりましたが、もちろん今日まで預金部資金から相当額受けられておりますので、簡単にそれが二分、三分になるとは私は考えておりませんけれども、もし幸いに、今後の財政投融資に、中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫に政府出資、産業投資特別会計からの出資をいたしまするならば、私はこの貸し出し金利は五分程度でまかなうことができるのではないかと思っております。私は、その見込みと、この大事な中小企業金融についての大臣のお考えを承わっておきたいと思います。
  61. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 現在の日本情勢といたしまして、輸出を振興せなければならぬということのために、輸出入銀行の金利というものは、一般の金利と比較いたしまして格段に安い、こういうことは事実でありまして、また、政府はこの方針を持続していきたいと存じております。輸出入銀行金融というものは、ひとり大企業のみにいくのではなくて、直接はあるいは大企業になっているかもしれませんが、その下請工業だとか、いろいろな点から考えまして、これは中小企業も均霑することでありますから、この問題は、もう中小企業だとか、あるいは大企業だとかいうことから分れて、できるだけもっと金利を安くするという方針で、輸出増進という意味からも今後進めたいと存じております。  それから一方、私は中小工業の金融の金利というものは、今日の状態では決して満足すべきものでなく、これが高いということは事実でありまして、ようやく今度の国会において、幾らか金利は引き下げできたのでありますが、これの目標は輸出入銀行並みにするかと、こういう御質問だと思いますが、私はこれは少し無理だと思っております。少くとも私は現在開発銀行がやっておる程度の金利まで引き下げていくべきものだ、こういうふうな考えで進みたいと私は存じておるわけであります。
  62. 井手以誠

    井手分科員 輸出振興の助成が必要であることはもちろんであります。下請その他関連する企業が多いことも私は承知をいたしております。しかし、そこで金利が安いために一番得をするものは、大企業と申しますか、商社と申しますか、これは船舶が中心であります。その商社が今日どういう経理状態にあるかは、私がここで申し上げなくとも、大臣はおそらく御承知であろうと思っております。その相当経営内容のいい商社あるいは輸出関係の企業の金利と、その日その日に困っている零細企業の金利と比べてみて、私はあまりにも開きが大き過ぎると思うのです。理屈を言えばいろいろあるでございましょう。しかし輸出振興をにしきの御旗のようにして、だからこれは安くしなくちゃならぬとおっしゃいますけれども、そうであるならば、やはりそれはそういう会社の経理まで考えなくちゃならぬと私は思うのです。私はそれをあまりしつこく申そうとは思いませんけれども、そういうこともありますので、やはり中小企業、零細企業に対する金利を、大臣は今開銀の九分程度とおっしゃいましたけれども、私はもっと大幅な引き下げを行うべきであると思う。それは今までは六分なり六分五厘の預金部資金運用願っておりますから、急に引き下げることは困難でありますけれども、今後政府出資を中小企業、零細企業の公庫にどんどん持って参りましたならば、私は毎年一分ずつくらい下げることは可能だと思います。そういうお考えはございませんか。
  63. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまの御説は、一面において、開発銀行の金利並みに引き下げる程度では満足できない、こういうわけでございます。しかしこれは開発銀行金融というものも、開発銀行が大工業に直接やっておるようでありますが、これはすべてやはり中小工業に関係しておることでありまして、ここで開発銀行よりもまださらにもっと下げるというふうなことにつきましては、やはり相当考慮を要する点がありまするが、私は今の根本の趣旨といたしまして、中小工業が零細企業であり、非常に困っておる、こういう意味から申しまして、できるだけ御趣旨に沿うような工合に下げていきたい、こう存じておりますが、どの程度にするかということにつきましては、今ここではっきり言明はできないわけでありますが、できるだけ下げるように努力いたしたいと存じておるようなわけでございます。
  64. 井手以誠

    井手分科員 あなた方の建前とわれわれの建前とは基本的に違うものがありますので、平行線になろうかと思いますが、私は、たとい大企業中心といわれる今日のやり方であっても、もっと大胆に中小企業金融あるいは零細企業金融については、金利の引き下げに努力をしてもらいたい。いかに金利の負担が重圧になっておるか、これを考えますならば、またその原資が税金なりあるいは零細な預貯金であることを考えまするならば、私は根本的に考え直していただきたいものだと、かように存じておるのであります。これは答弁は要りません。  次に、大臣にお伺いいたしますが、肥料輸出関係でございます。臨時肥料需給安定法と日本硫安輸出株式会社、いわゆる肥料二法といわれるもの、これを存続するかどうするかということが非常に論議されました結果、これをまた存続するということに問題を延ばされたようであります。ところが新聞の報道その他によりますると、この輸出会社が相当な赤字になっておる。五十億前後だといわれておる。この赤字に対して業者方面から、政府に補償を求める、国庫でその赤字を埋めてもらいたいという要望が非常に強いようであります。この問題については、出血輸出が国内の農家にしわ寄せされるということは 一応この肥料二法において防波堤は設けられておりますけれども、この輸出会社の赤字を国で補償すべきだなどということは、私は考え得られないことだと思う。ところが考え得られないことが、盛んに国家補償だとか、赤字は国で持てとかいう議論があるので、この際その方面について、事態を明朗にするために、大臣の所信を承わっておきたいと思います。
  65. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 現在この硫安輸出会社がすでに二十五億円の赤字を出して、さらに本年度この事業を継続すれば、その赤字がもっと大きくなるという事実は、よく存じておりますが、これは当然業者努力によって、生産原価をさらに引き下げて消すべきものであって、政府が補償すべきものでない、私はそういう考えでおります。
  66. 小坂善太郎

    ○小坂分科員 ちょっと関連して。今の硫安輸出会社の赤字の問題ですが、これは当然繰り越すのではあるが、政府が背負うものではないのだというお話はけっこうだと思いますが、実は硫安だけについて、そういう繰り越しという特恵を与えておるわけです。他に同種の化学肥料がございますが、それらが海外で出血の輸出をした場合には、全部直ちにその会社がかぶっておる。こういう差があるのは非常に不公平なように思うのですが、こういうような点を何か調整するようなお考えはありませんか。
  67. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 肥料の生産が、だんだん硫安からほかの肥料にも変ってきておりますから、私の理想だけを言わしていただきますれば、輸出会社というものは、硫安だけに限るということでなくて、やはり全体の肥料というものを考慮に入れて、輸出をするということがよくはないかと存じておりますが、これは主として業者意見を十分尊重してやっていきたいと存じております。
  68. 小坂善太郎

    ○小坂分科員 今申し上げたのは、硫安と全く性質の同じ石灰窒素肥料などは、その赤字はその会社でやっておるわけです。他の過燐酸その他のものもそうです。だから業者とおっしゃいますけれども、やはり公平になるよう、当局において指導されるのがむしろ望ましいと思うので、一言申し上げておきます。
  69. 井手以誠

    井手分科員 ただいま大臣から明確な御答弁がありましたから、もう繰り返す必要はないと思いますが、聞くところによりますと、赤字を非常に多く見積って発表されておる。何でも運賃まで加えられているということを聞いておりますが、私は大臣のただいまの言明で安心をいたしました。いろいろ聞きたいこともありますが、ただいまの明快な答弁を承わりましたので、私はこれで打ち切りたいと思います。どうぞそういう要望がありましても、法律を作るときには、政府は補償しないということが、当時もはっきり論議されておるのだからということで、そういう方針を堅持されるようにお願いをいたしまして、私の質問を終ります。
  70. 大平正芳

  71. 小坂善太郎

    ○小坂分科員 最近電力会社の人事に政府が介入するというような新聞報道がありまして、その後通産大臣がはっきりこれを打ち消しておられるのでありますが、このことに関連して、私が感じたことを中心にして御質問したいと思う。  電源開発促進法ができました当時は、非常に資金が枯渇しておった。そこで電発というものを作って電源開発に当られたのは、これは当時としては全く当然の措置であったと思うのでありますが、その後金融事情等もずっとゆるんできた、日本経済の力もついてきたということで、現在九電力の会社も相当開発をやっておるわけです。たとえばこの説明書にございますように、電発の方は田子倉、奥只見、御母衣をやるというのでありますが、関西電力も黒部などというような、非常に大規模なものをやっておる。そうなると、この二本立で電力の開発をやっていくということが、一体どういうふうにいくべきであるか、そろそろこういうことを考え直す時期にきているのではないかという感じを持つのであります。電発の方は財政投融資から融資がなされるということでありますが、九電力の場合は、財政投融資から開銀にいき、開銀を通して金がいく、間に一つクッションがあるというだけで、実態はあまり変らなくなってきている。そこで、これは将来の問題になりますが、電発というものをどういうふうに持っていくのか。九電力が力がついて自分開発をし、そして電力の消費者需用をまかなえるということになってきたら、その点は一つ考え直してもいい時期になってきておるのじゃないかというふうに思いますので、この問題についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  72. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 電源開発会社出発の当初の理想は、御承知のごとく、開発困難なる、そして資金を多量に要するものは、民間にまかすことができないから、これは政府の息のかかった電源開発会社にやらせる、従って電源開発会社には、政府は一千億円の限度において出資する、その出資したものについては、必ずしも配当をしなければならぬということに迫られていない、不足の金は財政投融資方面から持っていって、大体これが四分くらいの金利で上るようにしていけば、普通の電力会社よりも安い資金が使える、こういうような理想で出発したのでありますが、現在のところいろいろ政府出資の事情等もありまして、四分では上っていない、こう存じております。どういうふうになっておりますか、少くとも五分くらいにはなっておるかと存じております。一方そういうような工合に、電源開発会社の使っている資本の金利というものも、一般の電力会社が使っている金利というものも、えらい違いがないということになれば、電源開発会社によって大規模なものをやらすという問題は、解消すると存ずるわけであります。そこで、それでは今後の水力資源開発ということになるとどうなるか、こういうことでありますが、その点に至りますと、多少まだ考えなければならぬ点があります。電力会社が一つの水力電気を開発するということになれば、その電力をプロパーで見る、電力としてどういうふうな価値があるかということを見るのは、当然だと思いますが、しかし国として考えましたときには、やはり一つの水力資源というものは、電力は一つの目的であって、そのほか、あるいは灌漑とか工業用水とかいうふうなことも考えなければならぬ。そういう意味においては、やはり電源開発会社というような国家的機関をもってやらせていくということも必要なように考えられます。いずれにしても、電源開発会社は発足してからすでに五年有余になっております。九電力会社は発足して七年にもなっております。こういうわけでありますから、その後の経済情勢の推移等にかんがみまして、今後電源開発会社の性格をいかにすべきかという問題は、当然検討を要すべき点と存じまして、政府としても今後十分検討していきたいと考えております。
  73. 小坂善太郎

    ○小坂分科員 今キロワット当り建設コストは、電力会社がやる場合と電発がやる場合と、どういうふうになっておりますか。
  74. 小室恒夫

    ○小室政府委員 これは水力の場合だと思いますが、ほとんど地点別に非常な差がありまして、九電力会社のやっているもので、キロワット当り電発より高いものもありますし、また電発の方が高いものもあります。総じて申せば、先ほど大臣が申しましたように、電発は大規模の貯水式の発電所で、民間会社では手に余るようなところをやっておりますから、比較的高くなりがちであることは事実であります。地点別の数字は、役所の方には持っておりますが、手元にちょっと持っておりません。
  75. 小坂善太郎

    ○小坂分科員 ちょっと質問が無理だったと思います。これはいろいろな条件がありますから、一律にいえぬと思いますけれども、かつては手に余った、しかし今は手に余らぬということになっている場合があるので、今ここに列挙されております三つをやって、そのあとで数地点はありましょうけれども、そういうものはどっちがやってもやれるというようなことになってきているようにも聞いている。そこで最初に申しましたように、資金的には財政投融資を開銀という一つのクッションを経て出しており、世銀の借款をする場合には両方政府が保証しているということになると、あまり扱い方が違っていないのです。むしろこういう問題は、やはり将来の問題として一本に持っていって、そして海外の電力開発をやるとか、あるいは今大臣がお話しになったような、総合的な電力を中心とした開発をやるとか、あるいはさらに進んで電力の融通を考えるとか、そういうふうな方面に性格を変えていく。大臣のお話のように、もう五年もたっておりますし、五年間の日本経済の躍進というものは非常に著しいものがあるのでありすから、これは一つぜひ検討していただくというふうにお願いして、またそのような御言明をいただきたいと思います。
  76. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お説のごとく、当然今後電源開発会社のあり方につきましては十分検討を加えて、なるべく御趣旨に沿うようにすべきだと私は思っております。
  77. 大平正芳

    大平主査 石村英雄君。
  78. 石村英雄

    ○石村分科員 私は、通産大臣には先般一般質問で、今度の予算の重点が資本蓄積に置かれておるという観点からいろいろお尋ねしましたが、先ほどの井手君の質問に関連して、一言お尋ねいたします。  今度の財政投融資計画を見ますと、開銀、電発、輸銀、この三つに対する財政投融資計画というものは、三十三年度に比較しますと約六一%強増加いたしております。一方、中小企業金融公庫とか、国民金融公庫、あるいは信用保険公庫、商工中金、不動産銀行、こういう主として中小企業と考えられておる方面への財政投融資は七・八%弱しか増加しておりません。しかも、この中小企業関係の三十三年度の——今のは当初計画を比較しての話ですが、三十三年度の改定計画を含めて中小企業関係と比較しますと、三十四年度はむしろ減っておるわけです。ことしも、三十四年度の年度途中でどのように変化があるかもしれませんから、当初計画だけを比較していえば、さっき申したように、大企業関係では六一%もふえており、中小企業関係ではわずかに七・八%弱しかふえていない。こういうやり方に対する大臣のお考えを一言お示し願いたいと思います。
  79. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいま御質問のごとく、輸出入銀行及び開発銀行の融資額は非常にふえた。それに比較して中小企業の方は少い。こういう御質問でありますが、輸出入銀行資金源を大幅に増加したということは事実でございます。これは私、今自分の手元に統計を持っておりませんが、輸出入銀行だけを別に考えていただくということは、この場合必要だと思っております。輸出入銀行の投資額をふやすということは、輸出を増進しなければならぬというだけでなくて、やはり中小企業の振興にも役立っておることは当然でありますから、これはそう御解釈を願いたいと存じております。また一方、中小企業の金融の財源につきましても七・八%、これはいかにも少いようでありますが、むしろ私は、今日中小企業が困っておる問題は、金利を安くすることも必要でありましょうが、貸し出しにつきまして非常に信用が少いものだから急速に進まないわけでありますので、これをやはり保険するために中小企業の金融保険というものにつきましては特別の考慮を昨年来払っておるわけであります。そういう意味におきまして、十分この中小企業にも財政投融資資金を回していきたい、こういう考えでおるわけでありますが、しかし、いずれにいたしましても、私は、今日の情勢といたしまして、今後の方針とすれば、もっともっと中小企業の金利を引き下げるということ、そうしてこの資金源もふやしていきたいということにつきましては、石村さんと全く同感でございます。
  80. 石村英雄

    ○石村分科員 そうすると、今の輸銀関係の八十億が三百六十億になっておるというような分を差し引いても、やはり非常に増加しておる。こう考えなければならぬと思いますが、将来を楽しんで待てという話ですから。きょうは時間の関係でやめておきます。
  81. 大平正芳

    大平主査 それでは私から中小企業庁の方に伺いたいのですが、最近承わりますと、中小企業金融公庫の方で直接貸しの方に重点を置いた金融施策をとるというように新聞で伺ったのですが、この問題は、中小企業金融公庫を作ったときに、私どもはむしろ非常に消極的で、なるべく直接、貸しをやらないで、相互銀行、信用金庫、信用組合等のパイプを通じて経由貸しに重点を置いて中小企業金融公庫というようなものの組織に固まることはできるだけ避けた方がいいんじゃないかというような考え方で、何でも大蔵委員会では附帯条件をつけたように思うのですが、その後どういう理由で直接貸しに重点を置くようになったのか。また、直接貸しの方が金融をやる場合において、コストの面においても、また金融事務の上においても、こういう利点があるからこのようにするのだというのか、そのあたりの事情はどうなっておりましょうか、お伺いしたいと思います。
  82. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 直接貸しと代理貸付の問題は従来からいろいろ問題になっております。公庫発足当時は、直接の審査能力その他もございませんので代理貸しの方が圧例的に多かったわけでありますが、その後若干機構の整備を行い、事務にも習熱いたしましたので、その比率は逐次ふえております。しかしながら、全体の中におきましては非常に少く、ことしの一月末の残高なんかから見ますと、直接貸しが約一〇%余りでございます。明年度重点を置くというふうに特別には考えておりません。今まで直接貸しをある程度やっておりまするから、それを一般の需要の増加に応じまして直接貸しにふやそう、こういう程度でございます。なを、今の主査のお話でございまするが、他方直接貸しに対する要望も非常にあるわけでございます。これは借りる方からいいましても、金利その他の関係等もあるかと思われますが、かなり要望も多いわけであります。またわれわれとしましても——われわれというよりむしろ産業政策上の見地から、特にこういう中小企業に配意をしてもらいたいという要望は割合あるわけであります。そういう際になりますると、代理貸しではいわゆる隔靴掻痒の感じがありまして、なかなか政府関係なりあるいは公庫の思うように参らない場合もあるのであります。そこはやはりある程度政策的に、そういう要望等にこたえまするためにも、直接貸しのある程度のことはやらざるを得ないのではないかと思っております。お話がありましたように、特別にこれに重点を置くという程度には考えておりません。
  83. 大平正芳

    大平主査 現在支所をどこどこに持っておるのですか、それで今後どこまで拡充していくつもりなんですか。
  84. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 支所拡充の問題は非常に方々から希望が多いわけでございますが、現在は大体におきまして通産局所在地の七カ所と、それから新潟程度でございます。最近はその他の地域にも中小企業の数がかなりまとまっているところにおきまして、ぜひという希望も多いようでございますが、ある程度必要なところもあるかと存じておりますけれども、これはひとり直接貸しだけではございませんで、代理貸しの関係も、その代理店の業務の連絡、監査あるいはその後のいろいろな融資管理等のためには、ある程度手足をほしいと思っております。しかし、いろいろな予算関係その他で今年度は一カ所もふやさない、そういう方針であります。
  85. 大平正芳

    大平主査 直接貸しの方は、設立当初から比較的消極的に私どもの方では考えておったのですが、ああいうように組織ができますと、どうしてもそういう傾向になりがちでございますが、できるだけそういう附帯決議の趣旨もありますので御注意を願いたいと思います。
  86. 石村英雄

    ○石村分科員 大平主査がそういう発言をやるから申し上げるのですが、私は、現在の中小企業公庫の運営あるいは実態なんかを見ると、代理貸しをやめろとは申しませんが、もっと直接貸しに重点を置いた方がいい。こういうような考えを持っているわけですから、大平君の意見もさることながら、それのみにとどめておくと問題であろうと思いますから、反対意見を申し上げておきます。
  87. 大平正芳

    大平主査 ちょっと速記をとめて……。     〔速記中止〕
  88. 大平正芳

    大平主査 速記を始めて下さい。
  89. 山本勝市

    山本(勝)分科員 第一にお伺いをしておきたいのですが、これは午前中に床次君からの質問で、東南アジア諸国への経済援助方法についての質問がありました際に、その答えに、一番重点を置いておるのは向うの品物を買うてやることだということでありました。ことにそれが割高であっても買うてやるという方針だという言葉がありましたが、これはちょっと聞き捨てならぬ言葉じゃないかと思うのであります。それは事のついでに言われたのなら別ですけれども延べ払いなど財政援助をすることと二つ述べられた中で、特に何よりも重点を置いておるのが割高でも買うてやることだ、こういうことであります。これは単なる思いつきの答弁ではないのです。責任者としてそういう一つ基準というか、方針として述べられたものと思いますが、割高であっても買うてやるということは、それが私は日本に、ことに日本の農業に対してどういう影響を持つかということを考えなければならぬと思うのであります。割高でなくても、ただ一般のコマーシャルベースで買うという場合ならば、これでも問題は起りますけれども、しかしこれは一応説明はつきます。しかし割高であっても買うてやるということは、これは私は重大な問題だと思う。東南アジアの諸国は、言うまでもなく、買ってやるとすれば主として農産物だと思います。その農産物を、割高であっても援助するために日本に持ち込んでくるということが日本の農業にどういう影響を持つか。実は先般私の選挙区で、日中貿易の問題で農家の方々が質問をされたときに、口をそろえて言っておることは、中国は農業国であるから、これと貿易を開く結果われわれの農業に打撃を与えはしないだろうかということを質問しておるのであって、やはり素朴な農民諸君もそういうことに不安を持っておる証拠であります。これはほんとうにそういう意味で政策の基準として今後やっていくつもりかどうか、これを一つ伺っておかなければならぬと思う。バナナのようなものなら、これは内地にはないものですから、向うから買うてやるということは一応、ないものだから買うという理屈が立つようです。しかしそれですらも、バナナとミカンとかあるいは桃とかナシとかいうものは、同じようにくだものに対するわれわれの需要として競争関係といいますか、競合関係に入ってくるのですから、直接日本のバナナと向うのバナナとの間には競争はなくとも、バナナ以外のくだものとの間では必ず競争、競合の関係に入ってくるのであります。ですからいわんや、日本にある品物あるいは日本で作れば作り得る品物を、割高であっても援助のために買うてやるということは、これは軽々にお聞きすることはできない。こういうわけでありますが、いかがですか。これについて先ほど答弁された方に……。
  90. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 もちろん輸入の基本方針といたしましては、良質廉価なものを買うということにあることは当然のことであります。しかし、現実貿易面を見ますと、一例をたとえばタイ国にとって、本年度でタイ輸出の目標といたしましては七、八千万ドルにならんとしております。ところが輸入は二千万ドル程度にも至っておらぬのであります。そこでタイ国におきましては、あまりにもタイ国から見まして輸入超過である、片貿易である。日本がもう少し買ってくれなければ日本品を輸入制限するということが、タイ国の国会におきましていろいろ議論になっており、タイ国政府からの要請も参っておる。また言論機関でもやかましくいわれておるのであります。またその他たとえばイランを一つとってみましても、現在のところ輸出は年間大体四、五千万ドルになっておりますが、輸入石油を除きますと四、五百万ドルにもならぬ。十分の一にもなっておらぬということであります。これまたあまりにも片貿易ではないか。そこで日本品に対して二割五分関税を引き上げるというのが昨年暮れの要望であったわけであります。そういう事態に対処します場合に、山本先生の御議論とすれば、ほっておけばいいじゃないか、(山本(勝)分科員「ほっておけということは言わないですよ」と呼ぶ)自由にまかして、今のところ輸入規制をせずに自由にした結果がそういう格好になっておるわけであります。できるだけ日本の産業に安い原料を使わせるという角度から言いますと、高い原料の輸入をしいるということは当然避くべきことでなければなりませんし、世界貿易の自由化の風潮から見ましても、できるだけ輸入ベースはマルティラテラルで考え、バイラテラルな考え方を避けていくべきであるということは、われわれも念願としてやっておるのであります。そういう現実の事態が起りましたときには、ある程度それらの国の要請に応ずる方が、かえって輸出の増進の役に立つわけでありまして、たとえばブラジルからの綿花の輸入にいたしましても、エジプトからの綿花の輸入にいたしましても、同様の関係にあるわけでございまして、輸入を自然にしておくことはもちろん需要者の側からいうと最も望ましいことだと思うのでありますが、輸出の維持振興という点から申しますならば、ある程度業界でがまんのできる程度輸入協力は願わざるを得ないのであります。かりにそういう努力をいたしませんければ、おそらく三十億ドルの輸出目標達成も私は困難ではなかろうかと思っておるわけであります。われわれは及ばずながらそういう努力を今いたしておるということを申し上げたのでありまして、もちろんこれには国内産業に及ぼす影響というものは十分に検討いたしておるわけであります。むちゃくちゃに国内を圧迫するというようなことはもちろんないようにいたしておるわけであります。たとえば、米の輸入にいたしましても農林当局と十分話し合いをいたす、しかし農林当局のできるだけ米の買い方を減らしたいという御要望はわかるのでありますが、そこを若干無理して二、三万トン増加を願っているというような努力をしておる。バナナにいたしましても、もちろんバナナが大量に入って参りますれば、日本の青果物の売れ行きにも影響するでありましょうが、これまた台湾に対する輸出の伸長という点から申しますれば、ある程度バナナの輸入考えなければならぬわけであります。もちろん、その割高物資輸入といいましても程度の問題でありまして、国内産業に及ぼす影響はもちろん十分に考慮しつつやっておることは申し上げるまでもないわけであります。しかしながら、これをほうっておくわけにはどうしてもいきませんので、ほうっておけばそういう輸入はできない。そこで行政措置でもってある程度協力を願っておる、こういうわけであります。
  91. 山本勝市

    山本(勝)分科員 外国から安い原料あるいは安い品物を入れるという場合に、それが日本の産業にどう影響するか。それを使う者にとっては利益になる。しかし、それと競合する生産業者に対して非常なる打撃を与えるというような場合に、関税政策をとるということは是認せらるべきだ。これは午前中にも説明した通りであります。消費者にとっては非常に利益になるが、しかし同じ生産者には急激な打撃を与えるから、この急激な打撃を緩和する意味で関税をかけるということを是認しておるのでありますが、今申しましたのは、消費者の利益になる、あるいは安い原料でその生産者に利益になるというのではなくて、割高であっても東南アジアの諸国を援助するために買うということが私は問題だと思う。援助が終局の目的であるならばほかにいろいろな方法がありましょう。ほんとうは値打がないけれども、まあ高く買ってやろう。それは援助になりましょうが、もっと安く手に入るにかかわらず高く買うてやる、それを今の協力政策の基本方針の第一にあげるということは、ここで議論するつもりはありませんけれども考える必要がある。対等の、向うさんにも利益を与え、こちらも利益を得るという方式ではいけないのだ。それでは援助したことにならないから、だからこっちが向うに与えるより、向うがこっちに与える方が少くないと援助にならないというふうなもし言い分ならば、それは値打のないものでも高く買うてやるということがいわれますけれども、そうではなくて、いわゆる経済の給付原則と申しますか、向うも利益をする、こっちも利益をする。こっちが割高なものを損をしてまで買わなければやっていけないというふうなことは、私は考えるべきではないかと思う。日本の農民を犠牲にしてまで向うの農民を保護すべきではないから、できるだけ買ってやるということには賛成ですけれども、割高でも買ってやるのだということは私は研究してもらいたい。あくまで言い張られるなら、私は別な機会に突っ込んで議論をしなければならぬ。  それからこれは午前中聞いておって感じたことでありますが、中小企業というものが、実態は個人であるのにかかわらず、形式だけ法人会社の形をとるというのが終戦後非常にはやって参りました。実態は個人であるにかかわらず、形だけが法人である。そして家では親方とかだんなとかおやじとか言われておる。名刺を見ると、社長とか専務ということになっておる。この趨勢ですが、これがどういう趨勢をたどっておるか。最近はだんだん減っておるか、あるいはだんだんそうなっておるのか。新聞では、農民までもだんだんこの流れの中に巻き込まれてくるということが出て問題になっておるのでありますが、農民以外の中小というより、むしろ零細なる商工業者が似て非なる法人を作るという傾向はどういう趨勢をたどっておるのか、まずお教えを願いたい。
  92. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 法人、個人別の中小企業の形につきましては、ちょっと統計を探しますからしばらくお待ち願いたいと思いますが、おそらく法人化の傾向が強くて、法人の比率が高まったんじゃないかと思っております。
  93. 山本勝市

    山本(勝)分科員 これは私は理由があってそうなっておると思いますし、おそらく企業庁の長官も、主として税制の関係から、個人の経営でやっておるよりも法人の形をとった方が税金の方で安いということが原因になっているということは、これはもう議論の余地はないと思うのですが、問題は、そういう税制によって、独立企業者、小さいながらも自分で計画し、自分責任でやっていくという独立経営者というものを、これは一つの法人という会社のサラリーマンに追い込んでしまう。そうして月々幾らという月給をもらって生活をする。自分のほとんど全財産は会社の財産にしてしまって、自分自身の財産ではなくなってしまう。こういう傾向が日本の大きな政策として好ましいことであるか好ましくないことであるか。私は、好ましくないことであるのみならず、憂うべき事態だと思う。自分の財産というものを中小企業者が、大きくはありませんけれどもその財産を自分の生活の基礎にしておる。それを会社の所有物として、自分は一個のサラリーマンとなる。それの方が税が幾らか安いし、気楽だということでありましょうけれども、そういうサラリーマンは、午前中にも申しましたように、ほんとうにたよりになる——責任とか自主性とか持ったデモクラシーの国家における一番たよりになる人間は、独立自尊といいますか、独立自営の人間というものは非常に尊重すべきものである。サラリーマンとかあるいは月給取りとかいうものは、いわば代表的に申しますと、自分が全責任を負うというよりも、きまった時間に与えられた仕事をやって、時間がきたらもう終る。月給相当仕事をするというのがサラリーマンとしての常道であります。ただ、日本の企業者の今の法人、同族会社の場合においては、形は法人の形をとっておりますけれども、実際は本人は、おれのものだ、おれはおやじだ、こういうふうに考えておるから、まだ責任観念も伴っております。形だけは法人であるけれども実際はおれのものだ、だから責任もおれがとってるという考えがあるから、まだ憂うべき傾向が——サラリーマンのただきまった仕事だけをやって、あとは知らぬといったようなものにはなり切っておりませんけれども、しかし、この中途半端であるということが、実は日本の税法の上にも非常な混乱を来たしておる最大の原因だ。税務署の方では、これは法人として大きな会社と同じように法人の型にはめて税をとっている。しかし、経営者の方では、これは形だけでありますから、自分はおやじだ。この間も人形屋のおやじに聞いたら、名刺は作っておるけれども、東京では一切恥かしくて出せない。どこで出すんだと言ったら、熱海か伊東あたりに行ったときに、何にも知らない女中なんかには出すけれども、近所では出せない。何と言っているかと言ったら、だんなと言っていると言う。だんなでりっぱに通るような政治をやったらどうか。だから、自分のものだと思うから、売り上げからちょっと持ち出してたばこを買ったり、一ぱい飲んだり、だれかが寄付してくれというと、売り上げの中から寄付してやったりするというのが実態です。ですから会社のことは計理士にまかしているから、計理士がみだりに太って、最近はどこへ行っても計理士が幅をきかしている。経理などは全然頭にない法人がたくさんできているから、全部計理士にまかしている。月に三千円か五千円やって、そして一月に一ぺんくらい見てもらう。ひどいのになると決算のときだけちょっと決算報告を作ってもらって出す。こういうのが実態でございます。その実態に沿わない税制、そこに税の混乱の最大の原因があると私は見ているわけです。最近の税制の小委員会で、それではないかということを突きとめるために、毎週国税庁及び主税局等を呼んで突き詰めていったが、だんだんこここに原因があるということを感じてきているのであります。税制の混乱は御承知の通り——今の中小企業者に、お前たちが一番いやな苦しいことは何かといったら、税金問題だ。もう税務署の役人を恐るることというか、憎むことというか、親のかたきのように思っている人が少くないですよ。こういう事態に追い込んでしまったのは、税額が高いということなのかというと、必ずしもそうではなくて、今言ったように、実態は個人であるにかかわらず、形式は法人だ。これは中小企業庁としては、中小企業者の生活の安定ということを最大目標にして進んでいく場合には、どこに一番の苦痛があるか、少くとも最大の苦痛の一つは税金問題、税務署との関係。ですから、実態は個人であるにかかわらず、形式は法人ということが税の関係からきているということは、これは企業庁長官も同感のようであります。しからばこの税制を改めさすために、中小企業の指導育成の責任に当っている中小企業庁自身が、政府大蔵、あらゆる関係に迫まって食いとめなければならぬ。それともそういう似て非なる法人に流れていく傾向が好ましいとか、ないしは別に憂うべき事態ではないんだということであれば、これはこのままどんどんほっておいてもよろしい。さらに、現在全国に法人が五十五万ある。そのうちの九三%は同族会社であります。その同族会社の九割三分の中には、若干は例外がありますけれども、ほとんど全部は形式だけが法人と見ていいと思う。企業庁長官は一体この傾向を好ましいと考えるか、好ましくないと考えるか、これを伺いたいと思う。
  94. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 法人化の傾向については、いろいろ意見があると思っております。ただ、そういう傾向を助長しておる一番大きな原因は税の関係であろうと思います。ことに法人税と所得税の事業所得に対するアンバランスの問題だろうと思います。この点は、実は明年度企業課税の問題としていろいろ検討される項目の中で一番問題になろうかと思っておりまして、われわれも寄り寄り検討したいと思っております。法人と個人とによって、同じ事業所得についての取扱いが違うということは、どうも私たちには納得できないような気がいたします。従って、これは所得税の方を分解して、勤労所得に対する制度と事業所得に対する制度を分けなければいかぬだろう。むしろ金業税という形で、法人、個人を通ずろ一つの公平な税制ができることが望ましいだろうというふうな気がばく然としております。しかしながら、税制のアンバランス——税制だけで法人化の傾向が阻止されるとはちょっと思えないだろうと思います。なぜかと申しますと、先ほど山本委員は中小企業とおっしゃいましたが、おそらくそれが一番問題になりますのはやはりいわゆる零細企業、工場で申しますれば五人か十人使っているところ、せいぜい五十人どまりというくらいのところがむしろ問題だろうと思います。ほんとうの中小企業といいますと、ある程度組織なりあるいは資本その他を持っておりますので、そういうものの経理の偽り方等につきましては、やはり生業、家計分離した組織を持った法人経理と言った方が適切じゃないかと思います。ただ、小さいところの家計と密接不可分になっているところで、形だけ法人化するということは、いろいろ混乱を生ずるもとになるかと思います。しかし、そういうふうに事業経営の合理化という見地から、ある程度の規模、組織から見てやはり法人化ということの方が望ましい場合もあることは、これまた疑いないと思います。他方、金融機関その他から見ますと、やはり法人ということになると、はっきりと企業の資産その他が明確になり、その運営の組織としても、はっきり家計と分れておるという形の組織の方が信用があるということは、これまた疑いない事実であります。また最後には、先生指摘のように一種のみえと申しますか、あるいはデモンストレーション効果と申しますか、そういうものから法人化することもあり得るかと思います。ですから、税制上の混乱はぜひとも解消しなければならぬだろうと思いますが、それだけで法人化の傾向が阻止されるということはちょっと断言しにくいのじゃないかと思っております。
  95. 山本勝市

    山本(勝)分科員 今の点は非常に大きな政治方向の問題で、事務当局に聞くべき問題でなく、政府として決定しなければならぬ問題だと思います。独立企業者というものも法人機関にするということが、日本政治の上で、民主主義国家において望ましいか望ましくないかという問題に関係するからです。それはここで長官の御答弁を求めません。  その次に、今年はかなり大幅な物品税法の改正を行うということになっておりますが、その場合に、中小企業と大きな関係を持ってくるものが非常に多いのであります。ですから物品税の改正については、これは中小企業者の税の中で非常に困っておるものでありますから、おそらく通産省の方へも大蔵省から相談があっただろうと思います。それで一つ伺いたいのですが、委員長からは質問を詰めてくれという矢のごとき催促でありますから遺憾ながら詰めてやりますが、一つここで聞いておきたいのは物品税法第六条、従来で申しますと第六条第四項になっておりましたか、こういう規定があります。「第二種又ハ第三種ノ物品ノ販売ヲ業トスル者ニシテ原料、労務、資金等ヲ供給シテ第二種又ハ第三種ノ物品ノ製造ヲ委託スルモノハ之ヲ受託者ノ製造シタル物品ノ製造者ト看倣シ当該物品ハ之ヲ委託者ノ製造シタルモノト看倣ス」という規定が従来あった。これは簡単に申しますと、資金あるいは原料とかいうものを零細な業者に融通して前貸しするといいますか、卸屋なら卸屋がめんどうを見て仕事をしてもらうとか、物を作ってもらうとかいうような場合に、そのめんどうを見た卸屋を製造業者と見てそこから税を取るということであります。これが方々で非常にトラブルを起しております。というのは、零細業者金融の面で、普通銀行へ行ってもとても借りられませんし、国民金融公庫とか、中小企業金融公庫なんていいましても、零細業者からいえば、例外的には助かっておりましょうが、大体はそういうものにたよるわけにはいかない。そこで私は昨年でありましたか、予算委員会で高碕通産大臣質問したときにも、卸屋がそういう零細な企業者金融のめんどうを見ていくということを助長していきたいというか、好ましいことだという答弁があった。これは私も同感であります。とてもそこまでは政府で手の届くわけがないし、普通銀行でも役に立たない。そこで資金のめんどうを見たからその作った品物は私のところへ持ってこいといって持ってこさせたら、その資金のめんどうを見た卸屋をメーカーとみなす、税金が同じならどこでやるのも大したことはありません。ところが庫出税で、作っている小さなメーカーのところで、たとえば千円なら千円で出せば、千円に対して一割とか二割とかの税がかかる。もし千円が免税点であれば、免税点以下になって税はかからないわけです。ところが、その卸屋をメーカーと認めるということになりますと、それにさらに卸しマージンを加えた額をもって基準になりますから、それに税率をかけたものが税になる。従って免税点が千円であると、マージン三割で千三百円になって、それに一割なら一割、二割なら二割の税がかかって非常に取扱いが別になります。そういうことであちこちで非常な問題を起したのでありますが、これまでそういう点ですでに問題が起っているにもかかわらず、今度さらに改正案の中におきましては、もう一つこういうことが加わるのです。「又ハ自己ノミノ商標ヲ表示スベキコトヲ指示シテ第二種若ハ第三種ノ物品ヲ製造セシムルモノハ」云々これがさらに加わってきた。これは実例はいろいろありましょうが、一例を申しますと、高島屋なら高島屋が、ある業者の作ったものでこの品物は確かに責任を負って販売できるというものに対して高島屋のマークを張る。三越は三越のマークを張る。そうすると、その三越あるいは高島屋が今度新しくメーカーになるわけです。そして申告は行田なら行田、岡山なら岡山の税務署、本来の意味における作っているメーカーのところの税務署へ届ける。まだ改正になりませんけれども、これが提案されて非常に問題になっている。これまでこれがなくても問題があったのですが、さらに問題を加えているわけであります。ですから、これは企業庁長官に今ここで質問して答弁を求めるというようなことはいたしませんが、問題はあるわけですから、少くとも中小企業に関する責任担当者として、これについて一ぺん研究してもらいたいと思います。早晩この法案について修正をせにゃならぬ幾多の点がありますが、それまでに、これは中小企業庁だけではなく、百貨店も含む商業全般の責任を負っている方々も研究して——大蔵省は徴税上の便不便ということは考えておりましょうが、そうでない見地から私は意見を述べてもらいたいということです。これは私の考えを申しますと、専属工場の場合、ある親工場があって、そうしてある企業者が専属工場を作って、そこの仕事は一切こちらの命令企画で、そのかわり責任は親工場がとる。こういう場合は、親工場をもってメーカーと認めるのが当然だと私は思います。そういうものが従来逃げておったとしたら、これを逃がさぬ方法を講ずるのが私は適当だと思います。しかし、親工場でない、小さくても独立した企業者、それがいろいろやっておる。そのうちのある品物について、この品物は私の方で保証して売れる。またそのままでは売れないけれども、三越とか、高島屋というものが責任を負って、もしそそうがあったらそこへ文句を言うていけば、そこでいつでも品物を取りかえてくれる。そういう関係でそれにマークをつけて出すということは、消費者にとっても安心できるし、その零細な業者にしても、その信用を結合することによって売れるし、また百貨店その他の卸屋にいたしましても、私はこれは望ましいことで、決して否定すべきことじゃない。それを自分のところだけのマークをつけた場合は、マークをつけさせたところを生産者と認める。こういうことになると、どういう結果を生じますか知りませんが、おそらくもうめんどうくさいということから、金の融通などもあまりしないで、全部自分のところの工場で作ってやってしまうということになってくるおそれもありはしないか。独立企業者に、信用保証の一種のマークをつけたというだけで、いろいろなめんどうが起ってくるということになる。そうすると、それは零細業者にとっても私は好ましくないんじゃないか、こういうふうに思いますから、一つ御研究を願いたいと思います。  それからその次に伺っておきたいのは、中小企業団体法が実施されて以来の実施状況です。これは簡単でけっこうです。一つお伺いしたいと思います。
  96. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 実施状況と申しますのは、大体商工組合の設立状況のお話だろうと思いますので、簡単に申し上げますると、御承知のように団体法の規定によりまして、従来からありました調整組合は、簡単な手続で団体法の商工組合に移行したわけです。現在まで約三百余りのいわゆる安定組合が商工組合に移行の手続を完了しております。なお若干残っておるかと思いますが、大半は完了しておるようであります。新しく商工組合を設立いたしましたものは、十二月末現在で各通算局からの報告を合しますと、大体四十ございます。このほかに概報によりますれば、一月中に約十余りが組合の設立が認可になっておるようでございますから、現在五十前後のものが新しく設立された、こういう状況でございます。
  97. 山本勝市

    山本(勝)分科員 これについて午前中の大臣への質問のときに、それの一つの例として、日本経済が非常に硬直化してしまう、動きのとれぬような形になってくるということを申し上げた際に、行田のたび業者がくつ下に食われて、たびくつ下に移りたいという場合に、今のこの法律に基く設備制限というのにひっかかって苦労したという話をいたしました。これは私申し上げるまでもなしに、企業庁の長官もいろいろ御心配願っておるわけでありますが、こういう例はほかには全然ありませんか。
  98. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 こういう例とおっしゃるのは、ちょっと今よくわかりませんけれども設備増設の制限をいたしておる例は、ほかにたくさんございます。お尋ね趣旨がはっきりいたしませんが、御懸念のありました今やっております措置は、丸編みの編立機を持っている業者に、その増加を押えるという措置でございます。新しくそういう設備を設置するものについては規制がございません。従って、行田の諸君が新しくそういうものに転換されるということは、現在のところは法律的に何も制限しておりませんで、あるワクといっては語弊がありますが、数を目標に総合的に転換をしていただきたい、こういうふうに指導しております。
  99. 山本勝市

    山本(勝)分科員 くつ下とたびの関係のような、はっきりした形のものはないかもしれませんが、ああいう一つの固定化した場合に、ほかのものが動きがとれなくなるといった例はほかにはありませんか。
  100. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 いろいろな業界が入り乱れた関係を持っておりますので、あるいはあるかも存じませんが、今ちょっと急に見当りません。
  101. 山本勝市

    山本(勝)分科員 これは最後の質問でありますが、午前中私が申し上げたことは大臣に頭に入れてもらったと思いますが、事務当局の方々も、私はここで繰り返しませんから、あの体質改善、とにかく動脈硬化症を起しているという点について検討を願いたい。その原因がどこにあるかということについての私の考え方を堀り下げて一つ御検討を願いたいのです。  最近、中小企業にも最低賃金法というのがああいう形でできますが、ああいうことをここで御答弁求めることはできませんけれども、動脈硬化症がなおっていくような方向にそれが作用するか、ますます動脈硬化症を起すような方に作用していくかということは、私は通産省としてもよく——ただ労働省がやっておるというのじゃなしに、御検討を願いたいと思うのであります。それから、その他いろいろ法案が出てきております。労働省から保険関係あるいは共済関係のものも出てきております。それらのものがだんだん進んでいく場合に、日本の中小企業の個々の事業というのではなくて、全体にますます動脈硬化を助長していくか、だんだんなおしていくか、そういう影響力を一つ御検討願いたい。  なお、こまかい問題もいろいろ持っておったのでありますが、大いに公益を重んじいないと困りますから、この辺で私の質問を終ります。
  102. 大平正芳

    大平主査 ほかに御質疑はありませんか。——なければこれにて通商産業省所管についての質疑は終了いたしました。     —————————————
  103. 大平正芳

    大平主査 次に経済企画庁所管について質疑を行うのでありますが、質疑の通告がありませんので、これを省略してよろしゅうございますか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  104. 大平正芳

    大平主査 それでは省略いたすことにいたします。  これにて本分科会所管についての質疑は全部終りました。  お諮りいたします。昭和三十四年度一般会計予算、同特別会計予算中本分科会所管についての討論採決は予算委員会に譲ることに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  105. 大平正芳

    大平主査 御異議がなければさように決しました。  これにて本分科会の議事は全部終了いたしました。  一言ごあいさつを申し上げます。分科員各位並びに政府委員各位におかれましては、御多忙のところ熱心に御論議いただき、御協力を賜わりましたことについて、主査といたしまして厚く御礼申し上げます。  これにて第三分科会は散会いたします。     午後一時四十一分散会