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1959-02-26 第31回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月二十六日(木曜日)     午前十時二十九分開議  出席分科員    主査 大平 正芳君       井出一太郎君    床次 徳二君       山口六郎次君    山崎  巖君       淡谷 悠藏君    石村 英雄君       黒田 寿男君    佐々木良作君       永井勝次郎君    長谷川 保君  出席国務大臣         農 林 大 臣 三浦 一雄君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局長)  淺村  廉君         農林事務官         (大臣官房長) 齋藤  誠君         農林事務官         (大臣官房予算         課長)     丹羽雅次郎君         農林事務官         (農林経済局         長)      須賀 賢二君         農林事務官         (農地局長)  伊東 正義君         農林事務官         (振興局長)  増田  盛君         農林事務官         (畜産局長)  安田善一郎君         農林事務官         (蚕糸局長)  大澤  融君         農林水産技術会         議事務局長   小倉 武一君         食糧庁長官   渡部 伍良君         林野庁長官   山崎  齊君         水産庁長官   奧原日出男君         水産庁次長   西村健次郎君  委員外出席者         農林事務官  大河原太一郎君         農 林 技 官         (農地局建設部         長)      清野  保君     ――――――――――――― 二月二十六日  分科員黒田寿男君及び西村榮一辞任につき、  その補欠として永井勝次郎君及び長谷川保君が  委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員長谷川保辞任につき、その補欠として  西村榮一君が委員長指名分科員に選任され  た。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和三十四年度一般会計予算農林省及び通商  産業省所管  昭和三十四年度特別会計予算農林省及び通商  産業省所管      ――――◇―――――
  2. 大平正芳

    大平主査 これより会議を開きます。  昭和三十四年度一般会計予算、同特別会計予算中、農林省及び通商産業省の所管一括議題として、審査を行います。  まず農林省所管について質疑を行います。床次徳二君。
  3. 床次徳二

    床次分科員 農林大臣に、また農林省関係に、海外移住問題、消費米価、あるいは李ライン対策、あるいは海外技術協力というような項目につきまして、質問いたしたいと思います。  まず第一に、海外移住の問題につきましてお尋ねいたしたいと思います。海外移住は現下非常に重要な問題でありまするが、昨年閣議決定によりまして、海外受け入れ関係外務省国内における送出農林省という形になったのでありますが、しかし、元来移住というものは、受け入れ態勢ができなければ十分な送出も準備しかねることは当然のことでありまして、今日の状態を見ますると、あらゆるところに隘路があることを私どもは認めるのでありまするが、しかしすでに方針が決定しました以上は、今後は一つ本格的に移住の全体の推進をはかりたいと思うのであります。特に国内より送出担当せられるところ農林省に対して伺いたいと思うのでありまするが、まず、今日農林省において送出事務をつかさどっておるところを見ますると、振興局拓殖課担当しておるようであります。国内におけるところ開拓その他の事務相当組織を持っておるようでありますが、肝心な海外移住に関しましてはきわめて貧弱な状態であります。かような状態でもって、今後計画的な海外移住担当いたしますのにはまことに心細い感じがいたすのであります。すみやかにこれを担当する独立課、あるいは部局というものまで設置いたしまして、そうしてわが国といたしましては本格的な海外移住に着手すべきである。特に農村の基本問題といたしまして、二、三男対策というものが農村対策として重要な問題であります以上は、そこまでの決意を持って農林省は当らるべきだと思うのでありますが、この海外移住、特に送出担当せられるところ農林大臣の右に関する御意見を承わりたいと思う次第であります。
  4. 三浦一雄

    三浦国務大臣 ただいま御指摘になりました通り海外移住関係業務担当区分は、昨年の八月に大体大綱はきめられまして、国内事務はもっぱら農林省でもって一応扱う、そして緊密な連絡のもとに推進するということに相なったのでございますが、農林省におきましてもまだ機構組織は十分だとは考えておりません。従いまして今後機会あるごとにこの拡充をはかって参りたい所存でございます。とりあえず、そのわれわれの考え方だけを一応お答え申し上げておきたいと思います。
  5. 床次徳二

    床次分科員 少くとも担当部局に対しましては、もっと積極的な熱意を持って拡充していただく。もとより事業内容におきましても、内地におけるところ開拓海外に出ます移住と比較いたしますと、事柄の難易におきましても数倍の差がある。実際に国家においてこれに対する世話をしております状態を見ますと、困難な海外移住の方がきわめて軽易であって、比較的容易でありますところの、困難の少い内地におけるところ補助が厚い。これも十分ではございませんが、比較いたしますとさような状態になっております。かようなことに対しましては、今後積極的な改善をぜひ期待いたしたいのであります。少くとも担当者に対しましては、特に責任ある部局を作りましてやっていただきたい。なぜこれを申しますかと申しますと、国内におけるところ担当事務につきましては、従来海外移住協会担当しておる。今回これを府県事務として取り扱わせる形になっておるのであります。予算を見ますと、多少の職員を配置される形になっておるのでありますが、果して現在府県十分海外移住に対して熱意を持ってやってくれるかどうか。これはもう当然なすべきなのでありますが、いわゆる府県としての立場に立って海外移住熱意を注がせるためには、相当の努力を要するのであります。このためには、やはり本省におけるところ部局も拡充すると同時に、府県に対しまして積極的な働きかけと申しますか、府県知事そのもの、またこれは自治団体国家事務を行うことにもなるのだと思いますが、自治団体自体といたしましても、重大な仕事でありますので、この点に関しましてもっと積極的な呼びかけが必要なのではないかと思うのです。この点に関しまして、農林省としましては各地方府県団体に対しましていかようなるお考えをもって臨まれるお考えでありますか、伺いたいのであります。
  6. 三浦一雄

    三浦国務大臣 現在農林省におきましては、振興局拓殖課を置きましてこれを総括させてあります。同時に、従来は府県等におきましては専任職員等もなかったのでありますが、三十四年度からは専任指導職員を置かせまして、そしてこれに助成の道を開い たわけであります。来年度はとりあえず三十名程度設置することになりました。主として海外移住機運の旺盛であると申しますか、そういう方面に十分に考えてそれに着手して参る所存であります。それから従来地方海外協会等に対しましても、農林省は直接関与しない建前であったのでございますが、三十四年度からは農林省が統轄的に連絡し得る道も開かれましたので、これらを通じてもなお指導を強化して参りたいと思います。ただいま農協方面におきましてもだんだん機運が高まって参りました。同時に拓殖農業協同組合設立等も進んで参りました。これらは御承知の通り農林省が従来から指導しておりますから、これらの事情に即して強化して参りたい。ことに振興局仕事は、これらのいわば農村の二、三男対策と申しますか、あるいは青年活動指導的な関係等につきましても、従来から指導しておる部局でございまして、これらを総動員して、そして同時にまた、外務省とも緊密な連絡のもとに強くこれを進めて参りたい、こういう所存でありますから、御了承願いたいと思います。
  7. 床次徳二

    床次分科員 この移住希望者選考募集ということに関しましては、これは受け入れを見ながらやらなければなりませんが、途中の輸送その他のいろいろの関係もありますので、むしろある程度移住適格者というものは事前にたくさんプールしておいて、そしてこれを送出するというだけの、むしろ受け入れを上回ったところ送出態勢を作る、そして多少の時間がかかりましても、必ずこれを海外送出するという建前が必要なのじゃないかと思うのであります。それだけの余裕ある力を持ってぜひ国内態勢は活動すべきじゃないかと思うのであります。送出の準備からいよいよ出かけるまでの待機の間の一つのプールというものに対しまして、もう少し積極的に施策を講ずるというお考えがあるかどうか、伺いたいのであります。
  8. 増田盛

    増田政府委員 ただいまの御意見はまことにごもっともでございまして、過去を反省いたしますと、向うからオファーがありまして、実は船に乗る関係等もございまして、あまり十分な講習等を経ないで送出をするというふうな状態がしばしばあったのでございます。今後は私どもといたしましては、やはり年度当初に基本的な計画を樹立する、基本計画内容は、現地受け入れ状況がまず一番大事でございますから、それを具体的に地区別送出時期別に確定しまして、それに従って募集を開始するということであります。従いましてそういうことが逐次実現して参りますと、あらかじめプールいたしまして、これを計画的に研修もし、それから送出もできるという態勢になろうかと思います。そのように実行に移して参りたいと思います。
  9. 床次徳二

    床次分科員 今後送出に当ります職員は県が中心になりますが、県は海外協会を従来通り使って当るわけでありますが、この県と海外協会との連絡提携と申しますか、活用は一つ十分慎重にやっていただきたい。ほんとう移住に適する人間をこれに当てしめるという形にしていただきたいのでありまして、いたずらに役所のなわ張り争いという過去の弊害をそのまま残すようなことがあっては、新しい制度の実施に当って非常に困難があると思いますので、ほんとう適材者をその職務に当てるようにお考えいただきたい。今日地方海外移住協会でもって長年の経験を持ちながら、案外に県から冷遇を受けておる、あるいは将来その地位が危くなるのじゃないかという心配をしておる向きもあったようでありますが、この点は一つ十分に考慮していただきたいと思うのであります。なお、お話がありました拓殖農協、その他各種関係者が今後移住に当るわけでありますが、その移住に当りますものの幹部訓練と申しますか、今お話がありましたが、中央あるいは地方においてこれらの訓練組織と申しますか、訓練所等研修所でありますが、そういうものの設置予算面に見えておるようでありますが、果して現在予定されておりますような程度予算でもって、大体期待された目的を達することができるかどうか、大体予算で考慮しておられますところ訓練所の規模、運営方針と申しますか、内容等について、御説明いただきたいと思います。
  10. 増田盛

    増田政府委員 三十四年度予算におきましては、中央地方移住研修施設設置する予算が計上されております。中央研修所はこれは二カ年計画でございまして、三十四年度予算には五千万円計上してありますが、大体二カ年合せますと一億数千万円になると思います。ただし、これは移住に関する研修だけを目的とするものではないのでありまして、その他の農業機械化に関する研修、あるいは農業普及関係職員高等研修、こういうことも目的にしております。これに対する移住研修は、お話にございましたような幹部研修を含めまして実施するわけでございます。特に施設の完成いたしますのは三十五年を待たなければなりませんので、三十四年度におきましては、仮の施設におきまして、コチアの産業組合の招聘いたしております単独移住青年の大体五百名を対象といたしまして、昭和三十四年度から研修を実施いたしたい。なお地方研修施設に関しましては、従来経営伝修農場施設を借用して実施して参ったのでありますが、これではきわめて不十分でございますので、三十四年度におきまして、移住研修を含めまして、農村青年研修施設全国に五カ所設置することになっております。これに対する一カ所の補助金が五百万円でありまして、大体すでに三十四年度設置される五カ所に関しましては、設置個所が内定してございます。この地方に関します研修施設も引き続きまして拡充いたして参る計画でございますが、そういう点に関しまして、私どもさらにこれに対しまして、この研修に当る先生、だれが移住者に対して研修をするか、こういう点が非常に重要でございますので、この点に関しましても実質的に考慮を払って進めて参りたい、かように考えます。
  11. 床次徳二

    床次分科員 なお本年度予算を見ますると、青少年に対するところ各種研修訓練所と申しますか、そういう種類施設がたくさんできておる。なお従来からありますところ建設隊等も拡充されておるようでありますが、こういう種類青少年に対する訓練施設というものは、いずれもこれは将来移住を行います青年に対しましても相当役立っておるということは、実際において示されておるのでありますが、これらの各種青年訓練機構におきまして、やはり海外移住に対して何と申しますか、ばらばらでなしに、ある程度まで意識的に計画的な訓練を施すような配慮がしてあるかどうか。大体所管があるいは文部省、あるいは建設省、あるいは農林省といろいろになっておるようでありますが、その間の訓練において、どの程度まで移住に対する指導等を行なっておるか、伺いたいのであります。
  12. 増田盛

    増田政府委員 三十四年度から所管関係もはっきりして参りましたので、青少年に対する海外移住啓蒙宣伝ども、私ども責任におきまして解決して参りたいと思います。その場合に、御指摘のように農林省関係所管いたします青少年対策に対しましては、海外移住ということを一つ重点項目として取り上げてございます。たとえば御指摘農村建設青年隊でございますが、農村建設青年隊の場合におきましても、実は現状海外移住に緊密に結びついているとは申し上げにくい状況でございますが、これに対しましても、国内雇用関係の一面もございますが、将来におきましては海外移住と結びつけて――その芽ばえといたしましては、すでにこれは農林省だけでなく、建設省所管産業開発青年隊と一緒になりまして、ブラジルの現地に対しまして基地を設けまして、これに対しましてきわめてわずかな隊員でございますけれども、送致しております。この基礎が固まり次第、私どももこの青年建設隊機構を逐次海外移住と結びつけていく、かように考えておるわけであります。なお総理府その他の所管青年対策もございますが、これに対しましても、総理府設置されております青少年問題協議会事務局を通じまして、啓蒙宣伝に努力いたしたいと思います。なお農業改良普及員機構を通じまして、農村青少年のクラブに対しまして海外移住考え方を結びつける、こういう点に関しましてはすでに方針を決定しまして、各都道府県に対しまして通達し、その実行に移っております。
  13. 床次徳二

    床次分科員 次に、移住希望者財産整理の問題であります。すでに自作農創設資金を活用して、ある程度までその目的に適合せしめておるように見ておるのでありますが、しかし積極的な財産整理土地家屋等買い取り等に関しましては、かなりまだ残された分野が多いと思うのであります。今回農林拓殖資金とでもいうべき基金ができているようでありますが、果してこの機構でもっていわゆる財産整理と申しますか、そういう目的を十分達し得るのであるかどうか、伺いたいのであります。
  14. 増田盛

    増田政府委員 移住者財産処分その他援護施設に関しましては、従来御存じの通り自作農創設維持資金をもってこれに充当しておったわけでございますが、これを一方におきまして拡充して参りたいと思います。なおこの自作農創設維持資金十分目的を達成し得ない部面があるわけでございまして、ただいま御指摘になりましたように、たとえば自作農創設資金の場合におきましては農地対象でございますけれども、そのほかに、海外移住者が山林なり宅地なり家屋を持っておる、こういう場合におきまして、これを財産処分しなければならない、こういう場合に対する制度が実は必要でございます。なおもう一点は、これも現在自作農資金対象になっているわけでございますが、援護資金でございます。自分の子供なりあるいは兄弟が海外移住する場合におきまして、これに対して携行資金を持たしたいという場合におきまして、実はこの資金の捻出を考え制度がないわけでございまして、私どもとりあえず、ただいま申し上げましたような農地以外の財産処分、及び身寄りの者の渡航に際します携行資金の調達、この二つをねらいまして、この農業拓殖基金制度を三十四年度に創設して参りたいと思います。しかしこれは中央一つ基金を作り、地方に県を単位にいたしました地方基金設置いたしまして、これによりまして農協系統資金を活用する、農業協同組合の持っております資金を活用するというねらいでございます。そしてこの基金が、これに対しまして債務保証する。まず第一次的には地方基金が債務保証し、それから中央基金がこれに対して再保証するという考え方でございます。三十四年度はわずかにこの資金に対する補助金が三千万円だけでございます。従って三十四年度計画にありましては、中央基金設置する。それから地方基金は、十五億三十四年度に作ります。従いましてこれが全国に及ぶのは三カ年かかるのではないか、かように存じております。県の基金出資の構成が問題になるわけでございますが、県の基金におきましては、中央からの補助金のほかに県自体出資をする、それから市町村あろいは農協団体といったものの出資もある。ただいまのところさように考えております。
  15. 床次徳二

    床次分科員 次に伺いたいのは、拓殖農協関係であります。これは国内におきましては海外移住希望者の選出に対して協力すると同時に、海外においても若干仕事をしておるようでありますが、将来拓殖農協というものがどういうふうに拡充されることを期待しているか、あるいは他の団体と併合してやっていくのがいいのか。多少その事業の重複もあるのではないかと思うのでありますが、それに対する方針を伺いたいのであります。
  16. 増田盛

    増田政府委員 私どもは、拓殖農協というものと、それから地方における海外移住団体として有力なのは、先ほどから問題になっております地方海外協会でございますが、この性格に対しましては、一応区別しております。地方海外協会は、海外協会連合会一体になりまして、いわば国の事務を代行するという色彩が強いわけであります。従いまして募集選考あるいは研修、こういう一連の事務をつかさどるわけであります。これに対しまして拓殖農業協同組合の方は、農業協同組合法の適用を受ける団体でございます。従いまして、これは本来的に農業者の自主的な団体でございます。農民の生活の改善あるいは文化の向上、こういうものを目的にいたしまして自分たちみずからの手で組織し、自力で発展していく、こういう性格を持っている団体でございます。一応そういうように区別して考えているわけでありますが、しかしこの拓殖農協が現在行なっておる事業について申し上げますと、農民自体に対する啓蒙宣伝事業と、それから集団的な移住業務農民みずからの手によりまして農村の内掛から集団的な移住を実現する、こういう内部的な力として動く目的を持ちまして、事業を実施いたしておるわけであります。私はこういう面におきまして、創業の当初でありますので、いろいろ問題はあろうかと思うのでございますが、しかしこの基本的な将来の方向といたしましては、あくまでも自分たちの手でやるという方向で動いていくものと思うのであります。ただし先ほど申しました地方海外協会との関係等につきましては、非常に密接なものがあるわけでございますから、こういう点に関しましては、将来ともにその関係を強化して参りたい。しかもこの関係は、おそらくは都道府県知事中心になりまして、積極的に移住行政を進めていくという体制に切りかえたわけでございますから、それぞれの地方団体におきまして、都道府県知事の有効適切な指導のもとに、両者のそれぞれの機能が相互調整されて強力なものになるのじゃないか。いわば外部に対しての働きかけと内部から動いていくこの力が一体となって、国の名においてやがては国外の移住現地にまでつながっていく、こういう関係になるのじゃないかと考えております。
  17. 床次徳二

    床次分科員 今日各地方の例によりますと、自己立場において直接海外において移住地を購入設定しようというところもあったように思うのであります。しかしながら今日、海外のことに対しましては海外移住振興会社もできております。しかもその移住地造成その他に関しましては、相当の経費を要するのであります。現在海外振興会社事業はきわめて不十分であると思うのでありますが、今後責任を統一いたしまして、移住地造成に対してはもっぱら会社をしてそれを担当せしめるという形にして、県なりあるいは拓殖農協等が直接自己の手によって海外移住地造成設定するということはしない方がいい、むしろ海外移住会社を鞭撻してそれをせしめる方がいいのじゃないかと思うのでありますが、こういうことに対する御意見を伺いたいと思います。
  18. 増田盛

    増田政府委員 ただいまのお話にありますように、移住地取得並びにこれに対する造成は、きわめて膨大な費用を要しますので、御指摘のように基本的な考え方といたしましては、これに対する業務海外移住振興会社が当るということが適当だと考えます。ただこの場合におきまして、移住会社がやるのが本来の建前でございますけれども現状から見まして、実はこれだけでは不十分な面があるのでありまして、余力のある団体、これは単に拓殖農協関係団体だけではなしに、あるいはこの面に関しては特定の県においても拓殖農協に似たような動きがございまして、しかもそういう県におきましては、その県の出身の南米在住の邦人と結合しまして独自の移住地取得並びに建設に当ろう、こういう機運が見えるわけでありますが、こういう点も実は押えるべきではないと考えるわけであります。そういう動きが十分に合理性を持ち、具体性を持ち、しかも適切可能なものでありました場合におきましては、やはりそういうものも一部認めていく、かように考えております。
  19. 床次徳二

    床次分科員 次に、中小企業移住の問題であります。現在送出関係または受け入れ関係も、もっぱら農業移民が主になっているようなんです。しかしながら中南米その他の状態から見ますと、中小企業に対する希望もあるのじゃないか、むしろ将来中小企業の進出ということも期待されるのでありますが、こういう問題に対して現在指導あっせんと申しますか、そういう機構があるのかどうか、あるいは現在の農林省機構の中に多少でもそういうことを考えている係でもあるかどうか、あるいは外務省関係の方においても、どうも中小企業係というようなものは存在しないかのようにも思うのでありますが、この事情を御説明いただきたいと思います。
  20. 増田盛

    増田政府委員 農業以外の中小企業に関しましては、各省間の了解によりまして、大体窓口各省所管する。たとえば西独の炭鉱労務者派遣のような場合には、労働省が窓口になり、一般中小企業の場合南米に参っている者が若干ですがございますので、これは主として通産省が窓口、こういうことになっているわけでありまして、しかもこれは吸い上って参りまして外務省が総括するという立場にあると承知しております。
  21. 床次徳二

    床次分科員 以上をもちまして、移住関係については質問を終りたいと思います。  次に、米価に関してお尋ねいたしたいと思います。現在の消費者米価でございますが、これに対しましては生産県、消費県の立場から見まして、それぞれ三クラスに分けておられるようでありますが、この米価の各地区の決定に関しまして、政府はいかようなる基準をもって当っておられるか、なお現在生じております結果に対して、これを修正するお考えがあるかどうか、承わりたいと思います。
  22. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 御承知のように、消費者米価につきましては、生産県、消費県を分けまして、甲乙丙丁という四種類の価格をきめております。このきめ方は、当該県の配給米を平年度において自県産米をもってまかない得るかどうかという点と、希望配給米の受配率、そういうものを基準としてきめたのであります。そこで自県産米をもって当該県の配給米をまかなえる県、すなわち生産県と、その他の都道府県、この二つのグループに分けております。そこで自給度の六〇%以下でありまして、かつ希望配給米の受配率が八〇%以上、これを大体消費県の甲地区ということにしました。そのほかのものを乙地区といたしました。生産県を丙地区としたのであります。ただし生産県のうちで、東北地方のごとく、非常に移出量が多く、受配率が悪い地域を特殊地域としまして、いわゆる丁地、こういうことにしております。
  23. 床次徳二

    床次分科員 ただいまのような基準でもって現行の消費米価が行われておるのでありますが、しかし実際面において相当不合理を来たしておるという点に対して、お伺いいたしたいのであります。それは例としまして、鹿児島県の例を申し上げたいのですが、南九州におきまして、生産県として宮崎、熊本がいわゆる生産県の米価をとっておるのであります。ところが鹿児島県におきましては、従来におきましては自産米が少いという立場に立ちまして、消費地のいわゆる中間価格をもって配給されておるのでありますが、しかしながら県の実情を見ておりますと、単にいわゆる消費県として他の工業があるわけでなしに、大体農業県として立っておるところでありまして、しこうして人口が多い、耕地が少いというだけの理由をもちまして、自産米でもって消費がまかなえなかったというのが実情であったのだと思うのでありまして、他の大都市等の消費県とは全く意味が違うのであると私ども考えておるのであります。最近の様子を見て参りますと、早期栽培その他の奨励によりまして、比較的生産が増加して参った、かような立場から、本年のごときも大体割当量を超過してむしろ移出が可能じゃないか、二、三千トンは移出が可能であるという状態に入りつつあるのであります。従っていわゆるやみ価格等におきましても、相当低下を来たしておるというような実情なのであります。また県民所得その他のいわゆる生活状態を見て参りますと、宮崎、熊本、鹿児島とこう並べてみますと、むしろ価格におきましては低下すると申しますか、平等がふさわしいものじゃないかと思うのであります。かような状態に対しまして、地元側の状態によりますと、現在の消費者米価というものに対しましては、非常に形式的な取扱いであったという印象を持つのでありまして、ぜひこれは是正せられたいという希望を持っておるのでありますが、これに関しまして政府はどういうふうに考えておられるかということを伺いたい。  なお、この価格というものはときどき改訂せられると思うのでありますが近く改訂する時期があるかどうか、そういうときに考慮してもらえるかどうかということを伺いたいのであります。
  24. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 昨年の消費者米価改訂の際に、先ほど申し上げましたような基準で甲乙丙丁の地区を分けたのであります。お話のように、鹿児島県は従来の考え方の平年度で見ますと、私ども考えた場合には、需要に対して政府が買い入れて県内に配給する数字は非常に――六対三くらいの割合であります。三十三年度では多少上りまして五対四くらいになりました。三十四年度産米は、これは非常に豊作でありますから、ただいまお話のように、私の方では予約以上に相当数量の政府売り渡しをお願いいたしまして、その目標に近い数量を売り渡していただきまして、やっと需給がとんとんになる見通しも立っております。そういうふうに年度によって自給県であるか、他県からまかなわなければならないかということは、なかなか判定がむずかしいのであります。私の方といたしましては、これが平年べースで大体自給できるということになりますれば、ただいまの消費県の基準を変えなければいかぬのであります。こういうふうな考え方にいたしておるのであります。しかしそのつどつどという、まだ自給できるまで売り渡しがいただけるかどうかということがわからぬ先に、受配率の変化だけを見まして、甲乙丙丁の区別をするというわけにも参らないのであります。しかし何と申しましてもやはり消費者の立場、それから少しでもよけい売り渡していただかなければならないという立場から、これは十分検討しなければならない、できるだけ速かな機会に、もっと弾力ある運営ができるようにしなければならぬということで、検討いたしております。
  25. 床次徳二

    床次分科員 大体改訂する時期は、毎年いつごろ行いますか。
  26. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 これはまだやったことはないわけです。同様な県が数県出ておりますから、できるだけ早い機会に結論を出したいと思います。
  27. 床次徳二

    床次分科員 ただいまの問題は、生産の形式がだいぶ変って参りまして、今までなかったところの早期栽培というものによりまして、生産量も上って参ります。同時に、農家としても台風の被害をそれによって免れることができますので、非常に確実な収入があるということを自覚して参りましたので、どんどんその方向へ移行して参る、従って生産量もふえるし、栽培反別もふえるし、生産意欲が従って非常にふえてきたという状態がある。この点におきまして過去の状態と非常に変ってきておると思う。この点は単なる天候の事情によるところの、いわゆる豊凶の差ではないというふうに考えておりますので、十分一つ地元の状態を御調査いただきまして、合理的な米価というものの決定あらんことを要望する次第であります。
  28. 山崎巖

    山崎(巖)分科員 関連して。ただいまの消費者米価の府県の格づけでございますが、実は自分の県のことを申し上げてはなはだ恐縮でございますが、福岡県でいつも問題になる。昨年も、福岡県は、今乙でございますが、甲地に引き上げたいという食糧管理局の御意見が強うございまして、だんだん調べてみますと、福岡県は御承知のように県内の消費は、大体五二%ぐらいは県内でまかなっておると思います。ことに筑後平野一円は、大体人口をその平野の米麦でまかなっておるように思っております。ところがすぐ隣の熊本県、佐賀県は内地でございまして、これを甲地に引き上げられますと、二段階違ってくることになるわけであります。そういたしますと、非常に米の需給の上におきましてもいろいろの問題が起りますので、昨年は農林省の御了解を得まして、そのまま乙地にとどめていただいたわけでありますが、本年もまたそういう問題が起りませんように、この機会にお願いをいたしておきたいと思います。
  29. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 御指摘のように、九州では福岡と長崎と鹿児島が乙、そのほかの県が丙地ということになっております。ただいまのお話の乙地を甲地に上げるという考えは、私ども持っておりません。
  30. 床次徳二

    床次分科員 次に、日韓交渉の推移にかんがみまして、政府といたしましては、李承晩ラインにおけるところの拿捕漁船に対する対策というものに対し、あらためて方針を確立すべき時期になったのではないかと思うのでありまして、御承知のごとく、北鮮に対して、帰国を認めるということになりますると、その方針に影響されて、再び、いわゆる李承晩ラインの状態が悪化したということはいえると思うのであります。従って、今後の李ラインにおけるところのいわゆる拿捕乗組員等の対策に対しては、国家といたしましても従来以上の、多少永続的と申しますか、恒久的な、また基本的な考え方をもって対策を立てていただきたいと思うのであります。  以下われわれ関係者等の状態から見て必要と認めますることの項目を申し上げますると、第一は抑留船員及び留守家族に対する援護措置の強化であります。差し入れと生活援護に対しまして、従来から若干は認めておったのでありまするが、しかしこれを恒久化するということが必要なのではないか。相当将来に対する見通しを与えて、そして家族その他に対しましても、この現存の難関を突破し得るだけの援護措置を必要とするのではないかと思うのであります。今までとって参りました措置に対して、さらにその金額等におきましても、増加をする必要があるのではないかと思うのであります。これが第一点。第二点は巡視船、監視船等の増派であります。従来も若干は出しておったようでありまするが、今回のような措置をとられることによる影響にかんがみまして、これは特に厳重な警戒をいたす必要があるのではないか。これに対して水産庁といたしましても、十分関係方面と連携をとられて、措置をはかるべきだと考えておるのであります。それから第三は、いわゆる拿捕を免れるため、警戒をせしめる意味においてのラジオの受信装置の普及であります。小漁船にはこれがないということに、非常な影響を受けておるということに対しての原因があったわけでありますので、政府といたしましては、この際すみやかに補助金を計上されて、その普及に努めることが必要なのではないか。第四は、いわゆる拿捕保険の拡充の問題であります。料率の引き下げ等をさらに実施される必要があるのではないか。また第五といたしましては、帰還後の援助の問題であります。過去において経験をしたところによりますると、抑留せられました漁夫というものは、体力の消耗がはなはだしい。従って、単に帰って参りまして若干休養いたしましただけでは、なかなか再び漁業に従事し得ないというような状態になっておるのであります。直ちにこれが生活援護対象になるということに対しては、適当でないように思うのでありまして、かかる意味においての特別なる援護措置が必要なのではないか。  今日関係者において非常に要望しておりますることは、大体以上の五点なのでありますが、今日水産庁におきまして、この李ライン対策として応急にとるべく準備中の事柄、あるいはすでに決定せられたものがありますれば、お知らせをいただきたいと思うのであります。
  31. 三浦一雄

    三浦国務大臣 北鮮への帰還問題が具体化されるようになりましてから、韓国政府の態度は御承知の通りであります。具体的に、その後の抑留等が非常に多いということは、幸いにしてまだ出ておりませんけれども、それらの事態にかんがみまして、農林省は最折においてさらに二隻監視船を増強し、現在六隻出しております。それから海上保安庁の方では、多分十三隻だろうと思いますが、これは二交代でもって出ておる。こういうことでございまして、その注意は怠らぬつもりであります。問題は、ただいま盛漁期でございますから、海上保安庁の方の関係としましては、今後北洋漁業等が始まりまして、そっちの方に移動しなければならぬ。そういう場合に、いわば手薄になるわけでございます。これは先般も関係省の間に、さようなことのないように、従前の通り巡視船並びに監視船を配置するということで、だんだん話を進めておるわけでございますが、さような事態でございます。  それからトロールだとか底びきだとか、大型のものは受信装置を持っておるのでございますけれども、五トン、十トンの船は受信装置を持っておりませんので、これは近く助成の道を講じて、そして、あるいは協同組合に持たせてそれを利用させるとか、そういうような措置もさせたいということで、今至急に案を練っております。近く実施に移したい考えでございます。  援護関係のことにつきましては、水産庁長官から説明させます。
  32. 奧原日出男

    ○奧原政府委員 抑留漁夫の留守家族の援護の問題に関しましては、かねてから給与保険の制度をしきまして、大体給与保険に入っている家族については、一応生活の安定を得ているように考えるのでございますけれども、給年保険に入っていない漁夫に関しましては、御承知のごとく毎月定額の見舞金を出しておるのでございますが、これに関する増額は、かねてからの問題になっておるのでございます。われわれといたしましては、留守家族のためにこうもあれかしといういろいろな考えをもちろん持っておる次第でございますけれども、ただ政府としてこの問題を取り上げます際には、通常の生活援護の体系との間に、今日において留守家族の処遇が非常に引き上げられておるという関係から、これが実現については、いろいろ話し合いを重ねなければならない状況にある次第であります。ただわれわれといたしましては、現在留守家族が抑留漁夫に対して差し入れをいたします際に、相当高い航空郵便の料金も払っておる、こんなふうな実態でもございますので、一方においてこの見舞金が適確に抑留漁夫に届くような措置を追及いたしますとともに、留守家族が送る差し入れ費の援助の増額、現在年間五万四千円の金を出しておる次第でございますが、これについて研究をいたして参りたい、かように考えておる次第でございます。  拿捕保険の拡充に対しましては、今日保険料率の引き下げ、あるいはまた保険料率の二分の一国庫負担等の要請をいただいておる次第でございますが、ただ実は今日の特殊保険、これは漁船自体に対する特殊保険及び漁夫の給与に関する給与保険、いずれも非常な赤字を出しておる次第でございます。国といたしまして毎年多額の繰り入れをいたしておる次第でございます。従って、たとえば二分の一の国庫負担というふうな構想は、これは一般漁船保険にとっておりますように、保険としてこれを運営していくという前提のもとに考え得ることでありまして、従ってわれわれとしましては、とにかくこういう特殊な事情でありますので、漁業経営費の全体から見て、今日の保険料負担がそれほど多額でもないようにも考えられるので、今後当然予想される赤字に対しまして、十分なる国庫の援助をするという態勢を固めることの方が、むしろ実際的なのではないか、かように考えておる次第でございます。  帰還後の援護の問題に関しましては、実は昨年帰って参りました九百何名の方々に対しまして調べましたところ、今日一応就職をしておる者は約六とに筑後平野一円は、大体人口をその平野の米麦でまかなっておるように思っております。ところがすぐ隣の熊本県、佐賀県は丙地でございまして、これを甲地に引き上げられますと、二段階違ってくることになるわけであります。そういたしますと、非常に米の需給の上におきましてもいろいろの問題が起りますので、昨年は農林省の御了解を得まして、そのまま乙地にとどめていただいたわけでありますが、本年もまたそういう問題が起りませんように、この機会にお願いをいたしておきたいと思います。
  33. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 御指摘のように、九州では福岡と長崎と鹿児島が乙、そのほかの県が丙地ということになっております。ただいまのお話の乙地を甲地に上げるという考えは、私ども持っておりません。
  34. 床次徳二

    床次分科員 次に、日韓交渉の推移にかんがみまして、政府といたしましては、李承晩ラインにおけるところの拿捕漁船に対する対策というものに対し、あらためて方針を確立すべき時期になったのではないかと思うのでありまして、御承知のごとく、北鮮に対して、帰国を認めるということになりますると、その方針に影響されて、再び、いわゆる李承晩ラインの状態が悪化したということはいえると思うのであります。従って、今後の李ラインにおけるところのいわゆる拿捕乗組員等の対策に対しては、国家といたしましても従来以上の、多少永続的と申しますか、恒久的な、また基本的な考え方をもって対策を立てていただきたいと思うのであります。  以下われわれ関係者等の状態から見て必要と認めますることの項目を申し上げますると、第一は抑留船員及び留守家族に対する援護措置の強化であります。差し入れと生活援護に対しまして、従来から若干は認めておったのでありまするが、しかしこれを恒久化するということが必要なのではないか。相当将来に対する見通しを与えて、そして家族その他に対しましても、この現存の難関を突破し得るだけの援護措置を必要とするのではないかと思うのであります。今までとって参りました措置に対して、さらにその金額等におきましても、増加をする必要があるのではないかと思うのであります。これが第一点。第二点は巡視船、監視船等の増派であります。従来も若干は出しておったようでありまするが、今回のような措置をとられることによる影響にかんがみまして、これは特に厳重な警戒をいたす必要があるのではないか。これに対して水産庁といたしましても、十分関係方面と連携をとられて、措置をはかるべきだと考えておるのであります。それから第三は、いわゆる拿捕を免れるため、警戒をせしめる意味においてのラジオの受信装置の普及であります。小漁船にはこれがないということに、非常な影響を受けておるということに対しての原因があったわけでありますので、政府といたしましては、この際すみやかに補助金を計上されて、その普及に努めることが必要なのではないか。第四は、いわゆる拿捕保険の拡充の問題であります。料率の引き下げ等をさらに実施される必要があるのではないか。また第五といたしましては、帰還後の援助の問題であります。過去において経験をしたところによりますると、抑留せられました漁夫というものは、体力の消耗がはなはだしい。従って、単に帰って参りまして若干休養いたしましただけでは、なかなか再び漁業に従事し得ないというような状態になっておるのであります。直ちにこれが生活援護対象になるということに対しては、適当でないように思うのでありまして、かかる意味においての特別なる援護措置が必要なのではないか。  今日関係者において非常に要望しておりますることは、大体以上の五点なのでありますが、今日水産庁におきまして、この李ライン対策として応急にとるべく準備中の事柄、あるいはすでに決定せられたものがありますれば、お知らせをいただきたいと思うのであります
  35. 三浦一雄

    三浦国務大臣 北鮮への帰還問題が具体化されるようになりましてから、韓国政府の態度は御承知の通りであります。具体的に、その後の抑留等が非常に多いということは、幸いにしてまだ出ておりませんけれども、それらの事態にかんがみまして、農林省は最近においてさらに二隻監視船を増強し、現在六隻出しております。それから海上保安庁の方では、多分十三隻だろうと思いますが、これは二交代でもって出ておる。こういうことでございまして、その注意は怠らぬつもりであります。問題は、ただいま盛漁期でございますから、海上保安庁の方の関係としましては、今後北洋漁業等が始まりまして、そっちの方に移動しなければならぬ。そういう場合に、いわば手薄になるわけでございます。これは先般も関係省の間に、さようなことのないように、従前の通り巡視船並びに監視船を配置するということで、だんだん話を進めておるわけでございますが、さような事態でございます。  それからトロールだとか底びきだとか、大型のものは受信装置を持っておるのでございますけれども、五トン、十トンの船は受信装置を持っておりませんので、これは近く助成の道を講じて、そして、あるいは協同組合に持たせてそれを利用させるとか、そういうような措置もさせたいということで、今至急に案を練っております。近く実施に移したい考えでございます。援護関係のことにつきましては、水産庁長官から説明させます。
  36. 奧原日出男

    ○奧原政府委員 抑留漁夫の留守家族の援護の問題に関しましては、かねてから給与保険の制度をしきまして、大体給与保険に入っている家族については、一応生活の安定を得ているように考えるのでございますけれども、給与保険に入っていない漁夫に関しましては、御承知のごとく毎月定額の見舞金を出しておるのでございますが、これに関する増額は、かねてからの問題になっておるのでございます。われわれといたしましては、留守家族のためにこうもあれかしといういろいろな考えをもちろん持っておる次第でございますけれども、ただ政府としてこの問題を取り上げます際には、通常の生活援護の体系との間に、今日において留守家族の処遇が非常に引き上げられておるという関係から、これが実現については、いろいろ話し合いを重ねなければならない状況にある次第であります。ただわれわれといたしましては、現在留守家族が抑留漁夫に対して差し入れをいたします際に、相当高い航空郵便の料金も払っておる、こんなふうな実態でもございますので、一方においてこの見舞金が適確に抑留漁夫に届くような措置を追及いたしますとともに、留守家族が送る差し入れ費の援助の増額、現在年間五万四千円の金を出しておる次第でございますが、これについて研究をいたして参りたい、かように考えておる次第でございます。  拿捕保険の拡充に対しましては、今日保険料率の引き下げ、あるいはまた保険料率の二分の一国庫負担等の要請をいただいておる次第でございますが、ただ実は今日の特殊保険、これは漁船自体に対する特殊保険及び漁夫の給与に関する給与保険、いずれも非常な赤字を出しておる次第でございます。国といたしまして毎年多額の繰り入れをいたしておる次第でございます。従って、たとえば二分の一の国庫負担というふうな構想は、これは一般漁船保険にとっておりますように、保険としてこれを運営していくという前提のもとに考え得ることでありまして、従ってわれわれとしましては、とにかくこういう特殊な事情でありますので、漁業経営費の全体から見て、今日の保険料負担がそれほど多額でもないようにも考えられるので、今後当然予想される赤字に対しまして、十分なる国庫の援助をするという態勢を固めることの方が、むしろ実際的なのではないか、かように考えておる次第でございます。  帰還後の援護の問題に関しましては、実は昨年帰って参りました九百何名の方々に対しまして調べましたところ、今日一応就職をしておる者は約六費約七百万円を計上いたしております。  なおそのほかに、技術協力の推進関係の調査費、あるいは派遣者のオリエンテーションの費用といったような若干の経費も、計上いたしておるわけであります。
  37. 床次徳二

    床次分科員 最後にお伺いしますが、大体農林関係のものだと普通のコマーシャル・べースに乗らないものが多い。従って非常に長期にするとか低利でなければ、なかなか合わないものがある。そうでなければ、結局政府の財政負担によらざるを得ないんじゃないかと思うのです。政府の予算をとってやるとなると量も制限されるし、また急に間に合わないものが少くないので、従ってコマーシャル・べースまで達しないけれども、しかしその中間において、いわゆる貸付条件、その他あるいは償還年限の延長というような形で特例を開きますならば、ある程度まで実行できるというものもあるかとも思うのでありますが、そういう方面に対する見通しはいかがでございますか。
  38. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 ただいま申し上げましたように、技術協力の具体的な形態は、今まで話のありましたところは、大部分が技術センターの設置で、従って試験研究機関であるとか、あるいは現地の改良普及員等の養成施設であるとか、こういった内容中心といたしておりますので、従って大部分の技術協力の関係は、現在までのところ財政支出という形で行なっておるところでございます。
  39. 大平正芳

    大平主査 淡谷悠藏君。
  40. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 最近の農業における経営階層の分解が非常に速度を増しまして、日本の農業の構成に一つの変化も起り始めておりますことは、大臣もむろん御承知のことだろうと思います。それにつきまして今年度予算を見ますと、一方においては北部上北、根釧地区あるいは八郎潟といったように、かなり大規模な開墾事業が行われ、かつその経営反別なども思い切って大きくなっておる。また片方には自作農維持創設を強く裏づけまして従来の農民の維持をはかろうという計画があるようであります。これにつきまして、日本の農業はどれくらいの経営反別なら合理的にできるものかということが、農政の構想として非常に大事だと思うのであります。まず自作農維持創設に当りまして、借り入れ申込者から農業経営の計画書を徴するということになっておりますが、大体現在の自作農経営規模で、こうした安定経営が成り立つかどうか、それを一つお伺いしたいと思います。
  41. 伊東正義

    ○伊東政府委員 御質問でございますが、自作農資金を借り入れる場合でございますが、われわれの場合といたしましては、大体中庸規模程度の農家を考えて自作農維持創設資金を融通しているということを考えまして、大体北海道におきましては二町から五町未満、東北では三反から一町五反未満、その他では三反から一町未満というような、第二階層とわれわれ言っておりますが、そういう中庸の規模の農家を作っていこう、これを維持し創設していこうという考え方からいたしまして、対象といたしましては、今申し上げたような第二階層を中心考えて融資をいたしております。
  42. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 この借入書には一戸一戸の農家の安定計画が必要になっております。第四条の規定にもございますが、「貸付の申込をした者につき、次条第一項の農業経営安定計画を参酌して、貸付金額及び償還期間その他の貸付条件を定めなければならない。」というのがあるわけです。ところが今おっしゃったように、三反ないし一町五反程度の農家の立ち得る安定計画があるかどうか、ここが問題なんです。この零細性をなくさなければ日本の農業は持っていけないというのですが、こういう零細な農家で安定計画が立つとすれば、これは日本の農業推進の上に非常に大きな意味を持つと思います。金を借りるためにはどうでも数字を合わしておけという安定計画か、それともほんとうのこういう安定計画によって自作農は維持された完全な経営ができるのかどうか、その点をお聞きしたいのです。
  43. 伊東正義

    ○伊東政府委員 ただいま法律をお読みになりましたが、われわれの考え方からいたしまして、たとえば東北でございますが、第二階層、三反から一町五反未満ということを申し上げましたことにつきまして、三反程度で経営が成り立つかという御質問でございましたが、そのほかございます第一階層は、いわゆる三反未満ということになっております。それから融資の対象外になっている大きい第三階層でございますが、これは一町五反以上ということにしまして、その間に入ってくるものを実は考えているわけでございます。経営の安定の問題でございますが、われわれといたしましても、なるべく零細農家につきましては、ある程度の規模に持っていきまして、経営を安定していきたいということは、先生のおっしゃる通りでございますが、たとえば東北で大きいところだけに融資していくということになりますと、片方に零細農対策を十分とった上ならば別でございますが、そういう措置と関連してこの問題は考えるべきでありまして、また一つは、農業の中だけでなくて、外の第二次産業なり第三次産業とも非常に関連して参りますので、そういう外の受け入れ態勢が万全でない際に、ある程度大きなものだけで自作農創設資金の融資をしていくことも問題がございますので、われわれといたしましては、一応今申し上げましたような基準をとりましてやっております。われわれの希望といたしましても、なるべく零細農を大きなものにしていくことを考えていきたいと思っております。
  44. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 この貸付をする場合に、農家の経営安定の計画は担保にかわるべき大きな意味を持つということを頭においていただきたい。この法案が上程されましたときに、この資金を融通するために農地を担保にするという字句がございましたのを、そのままでは疑義があるということで削りました。ところが今日配付になりました資料を見ましても、自作農維持創設資金融通に関する業務方法書というものが作られたわけであります。この第二の貸付条件の二に、保証人及び担保の条文が規定してあるのです。「保証人及び担保又はこれらのいずれか一方を徴求するものとする。」とある。これは確かにその当時は、担保に関しましてはいろいろ農林省との間に話し合いもあって、農林省が自発的にこれを削ってしまった。それを法律の面では削っておいて、貸付の業務方法書でまた知らぬふりをして担保を徴するということを出すならば、まさにこれは国会を欺瞞していると思いますが、これはどうなりますか。
  45. 伊東正義

    ○伊東政府委員 私からかわりまして御答弁いたします。今の保証担保の問題でございますが、現実には大体八割程度は個人保証なり連帯保証とする形で、個人保証なり連帯保証でやっております。人的担保が大部分でございます。今お読みになりました二つの条件、物的担保、人的担保両方をとる場合、実はどちらでもいいという規定をしているのでございますが、われわれといたしましては、なるべくその一つでやっていくという指導方針をとりまして、その中でも人的担保で貸付をやっていきたいというような指導方針をとっております。
  46. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 大臣にお伺いしたいのですが、担保という言葉を非常に重要視しまして、これを削ったことは明らかなんです。それをここに明らかに、業務方法書の中に担保という字句を持ち出してきたことは、これは国会の意思を尊重したものと言われましょうか。私はどうもそこで国会の方はごまかしておいて、陰へ回って業務方法書で勝手に担保というものを作ったとしか見えないのですが、この点はいかがでしょう。
  47. 三浦一雄

    三浦国務大臣 担保は何も土地だけではないと思うのですが、土地を取るという建前であったならば、これはまさにその御趣旨の通りになると思いますけれども、その点は実際問題として私は巨細にわたって一々知りませんから、趣旨は今私が申し上げた通りだと思いますが……。
  48. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 これを見ていきますと、明らかに別な項目であるのです。自作農維持創設資金融資要綱の第二の自作地の取得資金及び小作地の取得資金の中に、「借入者は、貸付を受けたときは、その貸付により取得した農地又は採草放牧地の移転登記の登記簿謄本を遅滞なく、公庫に提出する。」これはある意味では担保なんですがね。農地局長の言われる人的担保というのは、保証人というものです。保証人と書いたほかに「担保又はこれらのいずれか一方を徴求する」としてあれば、明らかにこれは土地担保と見るのですが、農家には土地以外に担保物件はないのですね。具体的にお伺いしますが、現在貸し付けました中に、土地を担保とした場合と保証人だけでやっております場合と、比率はどうなっておりますか。
  49. 伊東正義

    ○伊東政府委員 その比率でございますが、人的担保が大体八割程度でございます。残りは物的担保でございますが、今御質問の土地がそのうち幾らということは、ちょっと今資料を持ち合せませんので、調査の上御返答いたします。
  50. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 保証人は、何人の保証人をとっておりますか。
  51. 伊東正義

    ○伊東政府委員 保証人は、一人でよい場合もありますし、連帯でやっておる場合もあります。
  52. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 連帯は何人ですか。
  53. 伊東正義

    ○伊東政府委員 これは二人以上ということでやっておりますので、何人という限定はしておりません。
  54. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 これはその当時もだいぶ論議の対象になりました。土地の担保を出さない場合に保証人をつけるとしましても、おそらくはその担保が金庫の方に入らなくても、保証人の方に入ってしまうだろう、つまり金を貸すのですから、回収の責任がなければなりませんし、従って担保にかわるべきものは何かということを論議された場合に、これは経営であるというふうに規定したと思うのです。そこに経営の安定計画というものの重大さがあるのですが、この経営安定計画がただ添付書類程度に扱われまして、これがほとんど担保にかわるべき重要な観点から見られなければ、たとい自作農を創設しましても、あるいは一たん維持しましても、これは必然に没落して、その農地を売ってしまうということが目に見えておる。これは開拓者を見ればよくわかります。こういう点でこの安定計画をどういうふうにお扱いになっておるか、もう一ぺんあらためてお聞きいたしたいのです。
  55. 伊東正義

    ○伊東政府委員 経営安定計画でございますが、これは今おっしゃいましたように、これからその借りる農家が実際農業に精進しているということを具体的に表現をいたしております計画でございます。その内容でございます。でありますので、これが認定になりまして初めて融資されるということになりますので、この安定計画というものは、われわれは非常に重要視いたしております。その上で大体の方針といたしましては、なるべく人的担保でやっていくということで指導いたしております。
  56. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 これは農家の信用の一番基本になるものが経営であるという建前に立ちまして作られた法律なんてすが、三十年の八月に出ておりますから、三年の期間をもう終りますので、そろそろ返還期に入ると思うのですが、返還期に入った場合に、この安定計画計画通りに行われておるかどうかは、重大な結果を招くと思います。この点は、一つ土地の担保あるいは保証人よりも、経営安定計画を重大視して、保証人がなくとも、担保がなくとも、これは確実な安定計画さえできれば貸せるというくらいの安定計画に対する信用を、農林省みずからが持ってもらいたいと思います。それにつきましてもさっき大臣の御答弁にありましたが、言葉に出して、文字に表わして、一たん法律で削った担保というものを、別な面で生かしてくるような方法については、これは十分おり調べの上適当な処置をとってもらいたい。あなた方はけっこうであると判断しても、地方末端においては担保を取らなければ貸せないのだというように強くなりまして、おそらくはこの二割というものも、そういう地方末端において徴される担保だろうと思うのです。この点は一つ大臣において慎重にお考え願いたいと思います。  それから、むろん自作農の規模が非常に零細なので、ほんとうところ、新しい近代的な農業を営むだけの土地的条件が備わらぬだろうと思うのです。これは必然に土地が拡張されなければならないし、従って大規模の開墾も始まってきていると思うのでありますが、大規模の開墾をした場合に、これに要する機械が入ってくるようであります。特に畑作において機械が入ってくる計画が今度もなされておりますが、この大型トラクター、その他の大型の機械類は、一体どういう形で日本の農業に取り入れるつもりか、大臣の御抱負を聞きたい。
  57. 三浦一雄

    三浦国務大臣 第一は、これは畑作に対しまして非常に労力が要る、これは申すまでもありませんが、その畑作の改善の一環として、ホイール・トラクター、クローラー・トラクターをだんだん入れて参りたいということでございます。同時にまた、これは主として寒冷地帯、北海道、東北地方等をまず対象にしたのでございますが、逐次拡大して参るということで進めて参ったのでございます。
  58. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 この機械の所有並びに利用方法は、大体どういう形態でやられますか。
  59. 増田盛

    増田政府委員 国の経費にかかわる大機械に対しましては、二つの形態がございます。一つは国有貸付の形式であり、一つ都道府県に対する補助、こういう形式をとります。都道府県に対する補助にかかわりますものは、都道府県が所有をして、これを農家が実際に使用いたします場合には賃耕の形式をとる、かようにやっております。なお、国有貸付の場合におきましても、貸付先は都道府県でございますが、これが実際この機械を農家が使用いたします場合においては賃耕、これが主要な形態になっております。
  60. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 現在国が持っておりますこれらの大型機械は、大体どれくらいございますか。
  61. 増田盛

    増田政府委員 国で所有いたしております機械は、予算的にはいろいろな形に分れておりますが、北海道を主体といたします心土耕、混層耕、これが三十三年度までに三十二台でございます。それから深耕、積寒地帯を対象にいたしまして入っておりますものが、三十二年度までに百台、そのほかに北海道を対象にしまして、これはトラクターじゃなくて、作業機だけでございますが、十台、これだけ入っております。
  62. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 今度の予算に盛られてありますホイール・トラクター五セット、それから土層改良用のクローラー・トラクター八セットというのがございますが、このセットは一体どういうセットになっておるのですか。私のお聞きしたいのは、農地造成する場合の機械化は相当進みましたが、機械で造成した農地を耕作管理する場合の機械がセットをなしていない。従って、かなり深耕できる農地ができましても、その深耕された土地が十分に効果を発揮しないという例が、しばしば大規模開墾に見られるのであります。今までのところ農地造成の機械は相当入っておりますが、作業機の面が非常に少い。従って、今度入りますのも、その点でどうもはっきりしませんので、畑作営農用のホイール・トラクターというのはどういうセットであるか、土層改良用のクローラー・トラクターというのはどういうセットなのか、詳しい名前は要りませんけれども、作業機と開墾用のものと、それを区別して御説明願いたい。
  63. 増田盛

    増田政府委員 振興局で導入しております大型機械は、先ほど申し上げました通り、深耕を主体といたしております積寒地帯に対する導入機種と、それから心土耕、混層耕用、いわゆる土層改良用の大型機械とあるわけでありますが、いずれも営農用の作業機をつけまして、それで一セットになっておるわけであります。従いまして、金額におきましても、平均的に申しますと、大体トラクターのみで申しますと、百万円から百五十万円程度でございます。しかし作業機がほぼそれに匹敵する価格になっておりますので、大体一セットの単価が二百五十万円から三百万円になっておるというふうに考えております。
  64. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 大臣にちょっとお伺いしたいのですが、北部上北の農地造成はもう終っておるはずであります。それから根釧地区の篠津泥炭地を除いた一万町歩のパイロット・フアームも完成しておるはずでありますが、あそこには米国から買い受けたのか、借り受けたのか知りませんが、かなり大型の機械がたくさんあって、現在は休んでいるらしいのです。あれを何とか利用する方法を考えたいのですが、農地造成あるいは営農の構想がございましたら、お聞きしたい。
  65. 伊東正義

    ○伊東政府委員 今御質問の機械の問題でございますが、上北、床丹地区で大体建設は終っております。終っておりますが、たとえば床丹でございますと、床丹第一というところに引き続き事業を開始しております。それで機械は遊休になりませんで、引き続きやっております。それから上北地区の問題でございますが、これは、これに引き続きまして、あそこの倉内地区も機械開墾としてやっておる。それから北岩手についてもそういう方式でやっていこうということで、極力この機械は遊ばせぬようにわれわれは考えております。ただ一部機械が遊休化したというものは、実は篠津地区の機械がございます。これにつきましては、たとえば利用できますものは、八郎潟の干拓に持って参りますとか、あるいは愛知用水公団の開墾事業の方へ使うというようなことをいたしまして、極力機械が遊休化せぬように今やっております。
  66. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 農地造成の開墾のための機械はよろしいのですが、営農用の機械が入ったといたしますと、この機械は開拓者個々は持てないと思います。その場合に、この機械の利用方法は一体どうされるのか、お伺いしたい。開墾機でなくて、作業機の利用方法です。
  67. 増田盛

    増田政府委員 作業機の使用に関しましては、トラクターのみによって目的を達成する場合と違いまして、いろいろ問題がございます。これに対しましては、三十二年度予算より導入を開始いたしまして、実際に国内に到着して使用に供されましたのは、三十二年度の末期でございまして、農耕期間等から過ぎておった関係上、まだ実績が十分でないのでございますけれども、この作業機の使用に関しましては、たとえば開拓地のように比較的経営面積の大きいところ、それから賃耕の場合におきましても、個々の農家が対象じゃなくて、やはりこの使用面積をいろいろな形で共同化しまして、拡大して、単純な形の作業にしまして使用しておる、こういう傾向でございます。しかもそういう形でなければ、あるいは、たとえば作物の品種、植付時期あるいは水利の調整、こういうことをある一定の農家群の段階で統一して、それによって大型機械の作業を実施するということでなければ、実際の使用は非常にむずかしいのではないか、かように存じております、
  68. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 まだ実際に使っていないそうでございますから、これはあえて追及しませんけれども、今度導入しようとするホイール・トラクター五セット、これは作業機としてはどういう作業をするのですか、またどういうふうな構想でおやりになるのか。
  69. 増田盛

    増田政府委員 ただいまの五セットは、県に対する補助の五セットでございます。こういうものを全部合せて、今機種の明細が手元に書類がございませんけれども、これは主要な畑作物の耕耘過程から肥培管理、収穫、それまでで、いろいろ作物別に考えられます主要な機種を、一応県と相談しまして、その県が、自分の県ではこういう作業機の種類なら、これを使用する場合に一番都合がよろしいということで、県当局と相談しまして、その作業機種を選定しておる、こういうことになっております。
  70. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 ほんとうですか。何だかあなたの答弁がどうも変になりましたよ。これを見ますと、畑地生産力の造成をはかるためとありますから、実際は土地改良の機械じゃないのですか。末端の営農まで入らない機械だと思われますが、これはどうです。
  71. 増田盛

    増田政府委員 振興局で導入しております機械は、全部作業機がセットとして付属してございます。従って、いわゆる土地改良だけに使用されるわけじゃないのでございまして、あわせまして営農用にも使う、こういうような目的になっております。
  72. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 どうも飛行機だの大型機械だのというむずかしいものになりますと、一般が知らないつもりかもしれませんが、非常にずさんなんです。予算が大体三千万円で、両方合せて十三セット買うのです。それがまだ機械の機種も決定されていない、どんなものか明細もわからぬというものをお出しになるなんて、ずさんじゃないですか。機械十三セットで三千万円ですよ。これはもう少し詳細なお調べがありませんか、どこからどういうふうに買うのか。
  73. 増田盛

    増田政府委員 これはすでに導入しておりまして、各県で実際に使用しておりますものは全部わかっておりますから、ただいま手元に資料がございませんけれども、さっそく取り調べて御報告申し上げます。
  74. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 これから買うのでしょう。この予算に盛ったのは、今まで入ったのと同じものを入れるのですか。
  75. 増田盛

    増田政府委員 私がただいま申し上げましたのは、三十二年度から実施いたして、三十三年度すでに輸入機種がございますが、予算に計上しております三十四年度のものは、過去の実績によりまして、すでに各県の要望がある程度わかっております。しかし実際にこれを発注します場合に、国内の機械もございますし、国外から輸入する機械もございます。そういう場合におきましては、同じメーカーでもやはりいろいろございますから、それに対してその導入する県の希望をいれまして、具体的に決定するわけでございます。
  76. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 これはますます小型グラマンみたいなことになってきたのですが、大体予算を盛るときには、機械の種類とか単価などは一応お調べになって、予定して盛るものではないですか。当てずっぽうに三千万円も盛っておいて、それから機械の種類を決定して、地方希望を聞いてというようなことになると、全く予算に盛られた数字というものはでたらめに思われますよ。百姓はくわ一丁、かま一丁の値段しかわからないだろうということで、当てずっぽうな予算を盛って、それでなくても乏しいこの農林予算をこんなだらしのないやり方をしては困りますよ。
  77. 増田盛

    増田政府委員 これに対する単価は実は当てずっぽうではないわけでありまして、一応見当をつけて出しておるわけでございます。これに対しましてはさっそく書類を持って参りまして、御説明申し上げます。
  78. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 これは今のお話がございましたが、作業能率は一台でどれくらいの町歩を必要とするのですか。これはあまり小さい土地では、大型の機械を入れましても経済能率の発揮はできませんが、一台でどれくらいの畑を基準としておやりになるつもりか。
  79. 丹羽雅次郎

    ○丹羽政府委員 ちょっと今の御質問にお答えする前に、算出基礎について御説明申し上げますと、お手元の資料に畑作営農用ホイール・トラクター五セットと、上壌改良用トラクター八セット、合せて二千百万円、前年度が三千万円という資料についての御質問だったと思うのであります。これは先ほど振興局長から申しました通りに、都道府県が買いますものに対しまして、国が半額の補助をやる補助金でございます。内容といたしましては、前者の畑作営農用ホイール・トラクターというのは、いわゆる車輪型のトラクターでございまして、単価が百七十万三千円でございます。これが五セット、それの半額ということで、五百三十六万円、それから土壌改良用のトラクターと申しますのは、無限軌道のトラクターであります。これは八セットでありまして、単価が二百万円でございます。それの二分の一で、千六百万、合せまして2千百万円、こういう根拠でございます。
  80. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 そうすると、二千百万円の方が今年の購入予算で、三千万円は昨年の数字ですね。
  81. 丹羽雅次郎

    ○丹羽政府委員 さようであります。
  82. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 そうしますと、昨年度の三千万円はどういうものをお買いになったのですか。単価はどうですか。
  83. 増田盛

    増田政府委員 前年度の単価は四百一万四千円の二分の一になっております。それでセット当りにつきましてこれの二分の一でありますので、二百万七千円になるわけでありますが、これの内訳は、トラクターが四十馬力、これははもとの四百一万四千円の単価で申しますと、トラクターは三百八万三千円、それからプラウが六十三万円、ハロウが二十万六千円、カルチベーターが四万五千円ということとになっております。
  84. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 これは幾セットお買いになったのですか。今度はこれと同じものをお買いにならないのですか。買い求め先はまだきまっておりませんか。
  85. 増田盛

    増田政府委員 ただいまの御質問に対しましては、さっそく取り調べまして御報告申し上げます。
  86. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 買い入れ先も調べるのですか。まだ機種も決定していないんですよ、この機械は。
  87. 増田盛

    増田政府委員 これは買い入れる場合におきましては、指名入札の格好で買い取ります。
  88. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 まだ指名入札もしないといいますが、先ほどの二百万と百七万という予定価格をちゃんと出して指名するのですか。
  89. 三浦一雄

    三浦国務大臣 今御指摘でありましたが、役所の関係といたしましては、予算を策定する場合には、前年度の実績に徴して、単価を予定していき計上するわけであります。実行の際にはさらにそれを検討しまして、そうして機種の決定なり、あるいはいかようなところにこれを注文するかということを、具体的にだんだん進めることは御承知の通りでございますから、あらかじめどこどこから買う、こういう予定までは予算策定の時期にはきめておりませんから、今後の実行に際してそれらの問題を検討をして実行する、こういうことで御了承願います。
  90. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 だいぶ苦しい御答弁のようですが、昨年買った四十馬力のトラクターが二百万七千円という数字が出ております。これは四百一万四千円。今度のはトラクターの方は百七万と二百万ですから、規格がだいぶ違うように思われますが、そうすると、前例というものがあまり当らないと思いますが、算定の基準をどこに置かれたのか。
  91. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 淡谷先生から御質問のございました畑作改善用のトラクターは、本年度は大型が八台、小型が五台になっております。前年度はその系統は大型が十台、小型が九台になっております。先ほど振興局長から御説明がございましたアタッチメントにつきましては、大型の分を申し上げただけであります。小型の分はトラクター百十四万円、これは二十五馬力ないし三十馬力であります。それからボットンプラウが十一万九千円、デスクプラウが二十一万六千円、デスクハロウが十六万一千円、カルチベーターが十万円、リッチャーが七万五千円、トレーサーが二十七万五千円、サブノイラーが六万円、計二百十四万七千円の二分の一の百七万三千五百円ということになっております。これが昨年度の単価でありますが、今年度は先ほど振興局長が御説明申し上げました大型の四百一万四千円の系統が八台、それからただいま説明申し上げました小型の二百十四万七千円の系統が五台、合せまして先生が本年度購入の総金額とおっしゃっている金額になるわけであります。
  92. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 昨年は会社はどこの会社のものをお使いになりましたか。
  93. 増田盛

    増田政府委員 ただいま担当官におきましてさっそくお答えいたします。
  94. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 もう一点、この大型のものと小型のものは、一セットでどれくらいの耕作ができるのか、どれくらいの単価でお使いになるのか。
  95. 増田盛

    増田政府委員 これは小さいものの場合におきましては、大体二十五、六町程度考えております。それから大きい場合におきましても、四十町程度のものが適当じゃないか、かように考えております。
  96. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 それから二分の一を見るというふうに御答弁でございましたが、所有は一体国有になるのか、あるいは府県の方にやって補助を半分出すのか、はっきりしてもらいたい。
  97. 増田盛

    増田政府委員 これは最初に申し上げました通り、形が二つに分れてございます。それで国有貸付の場合にはあくまで国有でございます。国有で都道府県に貸し付けるという制度一つ。それからもう一つは、これは積寒地帯以外に対しましては、予算建前は二分の一補助で、これは県有というふうに考えております。
  98. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 この場合は、それでは県有になるのですね。
  99. 増田盛

    増田政府委員 先ほどから問題になっております台数の点は、県有でございます。
  100. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 その行き先はわかっておりますか。
  101. 増田盛

    増田政府委員 これも合せまして今までの実績が全部出ておりますから、申し上げます。
  102. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 いや、今度入れようとする十三セットですが、これはどこかの県から申し入れがあって導入されるのか、導入した上で申し込みを募るのか、どっちなのですか。
  103. 丹羽雅次郎

    ○丹羽政府委員 今手元に資料がございませんが、この都道府県有のトラクターは、先ほど振興局長が御説明をいたしました通り、寒冷地の府県につきまして全部国有でありますので、寒冷地以外の県につきまして、五カ年計画をもちまして逐次これを一台ずつ持たしていこう、こういう計画に相なっておりますので、すでに入りました二十台の分を――今後三十四年度でどこに入れますか、すでに入りました分につきましては府県別は明らかでございます。今後の分は、まだ入っておりません県に、今後選定をして入れることに相なるわけであります。
  104. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 そうしますと、どうもこの大型トラクターを寒地以外の全県に持たせるという構想のようですが、今回の予算だけでは解決がつかないで、来年も再来年もという形になりますが、全部で一体どれくらいの計画を持たれておるのですか。
  105. 増田盛

    増田政府委員 ただいまお尋ねの団地に対するトラクターの導入でございますが、これはちょうど三十二年度から開始しておりますから、一応三十四年度予算で三カ年になるわけであります。試験的といいますか、パイロット的に実施をするという段階が三十四年度で一応終るわけでありましで、将来の問題といたしましては、この三カ年の実績をいろいろの角度から検討いたしまして、新しい対策を立てることになっております。
  106. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 これはまだ国で試験もされてないのですか。国で試験をして成績が出たから県へ貸し付けるのではなくて、県で試験しろ、こういうのですか。
  107. 増田盛

    増田政府委員 私ただいま不十分な答弁でございましたので、補足いたしますが、試験はすでに国でも行われておりまして、きわめて効果があるということは疑う余地がないのでありますが、実際これを農村に導入する場合にやはりいろいろな問題が出てくるわけでございまして、従いましてこれをみまして、三カ年過ぎましてこれをいろいろな角度から検討する、検討して、将来さらにこれを新しい方向に発展させるということが必要だと思うのでございます。
  108. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 この三カ年入れたというのは、三カ年計画で入れたのですか。年々の計画によって入れたのですか。三カ年入れるという計画が三年前にあったのか、それとも入れてみて、また入れまた入れというふうにして入れたのですか。その点はどうですか。
  109. 増田盛

    増田政府委員 これは三年前に、財政当局とも相談いたしまして計画をして、それに基きまして入れたわけでございます。
  110. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 その計画内容を教えて下さい。何台入れてどういうふうにするのか、どこどこの県に入っておるのか。
  111. 増田盛

    増田政府委員 ただいま数字を持って参りますので、そのときに御答弁申し上げます。
  112. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 一つ資料を御提出願いたいと思います。  それから農地集団化事業というものがございますが、七千五百万円でございます。この構想は一体どうでございますか。今のトラクターなどの構想と関係があるのですか。
  113. 伊東正義

    ○伊東政府委員 農地集団化につきましては、第一次計画が三十二年度まで五カ年計画で終りまして、実績は大体百四十万町歩でございます。これは交換分合なり換地いたしましてやりました集団化でございます。今年度、三十三年度からは、実は第二次五カ年計画ということで、百三十万町歩ほど対象にしまして、交換分合を考えまして、三十四年度からは農道とセットで交換分合を考えていきますことが、この事業を推進するに最も適切じゃないかという見地から、農道の補助金を三千万円計上しまして、今おっしゃいました数字の七千万円余にしたわけでございます。これにつきましては、今御質問のありました機械をすぐに直接関通させまして計画したわけではございませんが、これからの農業経営としましては、ある程度経営規模も大きくしていきたいという考えもありますし、飛び地になっておりますと、いろいろな機械を入れます場合、家畜を入れます場合、非常な支障を来たしますので、なるべく集団化してやっていくという従来の方針で、実は予算を計上いたしました。今の機械とは直接すぐにはマッチいたしませんが、考え方としましては、やはり農村に機械が入っていくので、それに便利なためというのも大きな目的でございます。
  114. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 この集団化された農地は、たんぼと畑とどっちに重点を置かれましたか。
  115. 伊東正義

    ○伊東政府委員 集団化の内容でございますが、これは田の方が実は多うございます。畑ももちろん入っておりますが、今までの関係では田の方が多うございます。将来の問題としましては、畑につきましても極力やっていきたいというふうに考えております。
  116. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 面積は、一戸当り平均大体どれくらい集団化したのですか。
  117. 伊東正義

    ○伊東政府委員 一戸当り幾ら集団化したかという御質問でございますが、大体経営規模といたしましては、従来たとえば一町歩持っていた人につきましては、それと大体同量程度のものが交換される、そういうふうな見地からしまして、実は集団化を立てておりますので、一戸の経営面積が集団化によって大きくなるというふうなことではなくて、むしろ飛び飛びになっております面積を集めていくというような考えでございます。
  118. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 どうも予算委員会においては、農林関係の方はしろうとと見ているのか、御答弁がついでたらめなんですが、今私が聞きましたのは、機械化の方と関係があるとあなたはおっしゃった、それでは日本の水田というものは、将来どういうふうに機械化されていくのですか。農道なら農道を作って、稲や肥料の運搬を便利にするということはわかります。将来これを機械化の方に持っていくというならば、日本の水田はどういう形で機械化されるのか、それをお伺いしたいと思います。
  119. 伊東正義

    ○伊東政府委員 御質問でございますが、私は今問題になっております機械とは直接関係はございませんということを申し上げまして、ただこれからの農業の近代化といいますか、労働生産性を高めまして、余剰労働力を別な方に使うという見地からいたしますと、農村に小型のトラクターなり、あるいはいろいろな耕作の機械が入るということは当然だと思います。その場合、水田が何町歩くらいあったら機械化にいいのかという御質問でございますが、われわれとしましては、一応開拓の場合にはいろいろな基本類型を作りまして、たとえば上北でございますと、五町歩というような類型を作りまして、今開拓県についてはやっております。既存の農家におきましては、この機械化とマッチさせまして、水田経営は将来幾らあったらいいのかというところまでは、まだ計画は立てておりませんので、今の集団化の考え方は、飛び飛びになっているものにつきまして、それを集団化していこうという考え方予算を計上してございます。
  120. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 これはどうもまことに私にはわからなくなったのです。私の言ったのは、経営規模を規定する前に、どの程度の機械が入るのか、どの程度まで近代化し得るのか、それを考えなければ、開拓県を五町歩といっても、五町歩の土地を持たなければうまい工合に経営はできないということが必ず起ってくるのです。日本の水田と機械とが技術的に一体どう結びつくのか、大へん困難な問題で、われわれも頭が痛いのです。五町歩というとかなり大きな反別ですが、それを個々の経営にしないで、日本で現在とっております米と同じ程度の収穫を上げるためには、この規模にした場合どういう構想をもってやるのか。機械はどんなものを使うのですか。
  121. 伊東正義

    ○伊東政府委員 五町歩と申しますのは、上北地区でございます。これは今やっております機械開墾地区でございます。それで開拓地について、先ほど申し上げましたような基本類型を作りまして、五町歩なり、あるいは西南の方にいきますと二町歩とか、そういうような開拓県について経営規模を考えたのでございます。既存の水田その他につきましては、私の方の農地局では、類型を作りましてそれにマッチした機械化ということまでは、まだ計画的には結びついておりません。
  122. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 ちょっとまた御答弁が混乱しているように思われますが、五町歩というのは、上北の国営開墾のことなんですか、それとも水田の開墾のことですか。私の聞いておりますのは、畑作の機械化の方は別に聞きますが、水田を機械化する場合にどういう方法をお持ちになっているのかということで、できないならできないでかまわない。それはやはりその規模でわれわれは構想を進める以外にしようがない。現在農林省は水田の機械化についてどういうふうな考え方を持っていますか。
  123. 増田盛

    増田政府委員 先ほどから問題になっておりますのは、トラクターでございますが、トラクターの動力によります水田の機械化の問題につきましては、私の方では直接まだこれを取り上げるような段階に至っておりません。機械化一般の問題に関しまして御指摘通り、水田作業におきます耕耘過程、それから収穫過程の機械化は、きわめて困難なものがあると思います。ただ現在耕耘過程におきましては、いろいろな小型の動力機械によります耕耘が行われているわけでございますが、その他の分野におきまして、特に問題となっております田植えに関しましては、まだ実用的な機械すらできておりません。但し刈りとりに関しましては、試験場におきまして相当程度の研究が行われておりますことを御報告申し上げます。
  124. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 水田の方の機械化は、耕耘並びに刈りとりに限るということは仕方がないのですけれども、勢いそうなりますると、農政の上に現われました零細農規模というものは、水田の方に限定をされまして、近代的な経営というものは畑作の方にいくわけですが、それにつきまして開拓の形は、この際こういう機械化の近代農業に向って進んでいく必要があると思うのですが、現在開拓地は、昭和二十一年、二年、三年という非常に悪条件で行われた開拓と、それから現在上北、根釧地区のような、かなり好条件に恵まれた開拓と、形が違ったものが非常に交わっている。現在行ってみますと、最初に入った開拓者は七割まで離散する、あるいはほとんど九割までというものもある。残った者も生活扶助を受けている者もあり、病気の場合は全くこじき同様の生活をしている開拓者も珍しくありません。こういう開拓地についてこの際革新をする必要があると思いますが、開拓者の将来についてどういう構想をお持ちであるか、農林大臣にお伺いいたしたい。
  125. 三浦一雄

    三浦国務大臣 開拓地のうち、特に緊急開拓等によりました地区は不振をきわめております。そこで不振開拓地に対しまする改善方法は重要な問題でございますので、来年度予算等におきましても、第一に、開拓者の負債の関係につきましても緩和の措置をとる。第二には、建設工事が相当おくれておりますから、この建設工事を促進いたしたいということでございます。第三番目には、先年以来やって参りましたところ開拓地の営農振興計画等を立てさせているのでありますが、これはつまり一つの立て直しでございます。こういうようなことを促進するほか、今不良土壌の改良のために大型の機械等も府県等設置させまして、それを利用させるということをしているのでございますが、これは主としてさような方面に活用を願って、そうして土地の改善等もはかっていきたい。こういうことを総合的に取り進めていくのも一つの方法であろうと思いまして、これを総合的に取り進めたい考えであります。  なお先ほど来御指摘になりました大型の機械化、機械の利用は、主として北海道地区を中心にして、不良土壌の改良、一期計画、二期計画ということにいたしまして、その線に沿うて取り進めるということでございますが、これらも北海道等につきましては、詳しいことは私も存じませんけれども、畑作の改良を重点に考えているのでございますから、北海道の開拓地等につきましては、条件の許す限りこれらを活用して参るということが運営上必要である、こう考えております。
  126. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 今年の開拓方針につきましては、開拓入植事業の刷新強化という言葉を用い、同時にまた、新開拓方式という言葉で、昨日農林大臣は説明されましたが、具体的にいって新開拓方式とはどういう方式をおとりになるつもりですか。
  127. 伊東正義

    ○伊東政府委員 御質問でございますが、開拓につきましては今大臣から御答弁がありましたが、補足いたしますと、従来の人力開墾といいますか、そういう開墾方式の結果につきましては、現在出ておりますような状態で明らかになっておりますので、われわれといたしましては、開拓の重点は、不振既入植者の安定を極力はかっていくということをまず最重点に考えまして、あわせて新しい開拓者につきましては、これはなるべく機械を利用しました開墾方式をとりまして、もう入植二年目くらいには全部開墾が終って営農にかかれるというような形の開墾にして、二度と過去のあやまちを犯したくないというような考え方を持ちまして、来年度につきましては新規入植は千七百戸というようなことにいたしたわけでございます。方針としては、新しく入る人については極力機械等を利用した開墾方式をやっていくということを考えております。そのほかには、今までの国営開墾等をやっておりました問題につきましては、これは特定地域というものを作りまして、その特定地域については、これは一つ国営ではっきりやっていこうということで、特定地域の調査費というものをあげまして現在やっております。たとえば今年度あたりは三カ所新しいところを追加いたしまして、将来の国営の大規模な開墾を予定した地区を考えております。たとえば東北では南会津でありますとか、あるいは長野県の岡山、九州の久住飯田というようなところにつきましては、これは特定地域として調査して、将来の国営開墾でやっていくという構想でおります。  それから、今まで代行開墾というような言葉を使っておりましたが、これについてはわれわれとしてはもう一つ新しい市町村の総合開発ということを考えまして、そういう市町村単位でものを考えていくというような立場で、市町村開発地域というものを全国に新しく作りまして、これも調査しまして、将来代行開墾をやっていくような事業につきましては、そういう規模で考えていったらどうかというようなことを実は考えておるわけであります。
  128. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 さっきトラクターの問題等もだいぶ触れましたが、この開拓については、従来農業土木的に開墾をするということに重点を置いてきたようであります。これもむろん大事であります。お話通り、新しい強力な機械を使ってやるという方針は私賛成でございますが、強力に開墾して農地を作ったあと、一体開拓方式による開拓営農というものはどういう構想で行われますか。農地造成した、振興はした。そのあとで、果してその振興した土地を十分生かせるような機械化なり、近代化なりが、上北地区でも、あるいは根釧地区でも行われているかどうか。非常に大型のアメリカ製の機械が入ってきたのはびっくりしますけれども、依然として従来と同じような開墾方式では、これは近代的な開墾方式とは言えないと思いますが、その点の構想をお聞かせ願いたい。
  129. 伊東正義

    ○伊東政府委員 お説ごもっともでございまして、われわれとしても機械力によってなるべく早く営農にかかれるということをやりますと同時に、従来はともすれば、開拓地においても穀菽農業中心になって行われてきたわけでございます。これについて適地適作といいますか、たとえば東北でありますれば、酪農を中心にした混同経営を考えていくとか、あるいは南の方でありますれば、米麦のほかに果樹を入れて、果樹を中心とした経営でやっていこうとか、いろいろ地域によりまして、今までの米麦増産という考え方を切りかえまして、これからの経済に合った経営をやっていきたいというふうに考えまして、たとえば今までの不振地区についても、ある程度追加投資をしまして、そういうふうなところに持っていきたいということで、開拓営農振興臨時措置法による振興計画考えているわけであります。これの指導につきましては、もちろん農事試験場等の協力を得まして、県におります営農指導員等を活用してやっていきたいというふうに考えております。
  130. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 作物の種類などはいろいろ選ばれましょうし、時代とともに変っていきましょうけれども、さっきのトラクターの場合にも申し上げましたように、そのあとの機械は一体どういうふうな構想でお入れになるのか、やはり素手でやるんじゃないでしょう。現在の新しい開拓方式によると、どんな作業機を用い、これをどんな形で開拓者に利用させるという構想はございませんか。
  131. 伊東正義

    ○伊東政府委員 開拓地の作業の機械化の問題でありますが、これは実は振興局から話のありました機械等につきましても、開拓地でなるべくこれは借りまして経営をやっていくということを考えております。そのほかにつきましても、開拓資金融通法に基きました資金で、その土地その土地に合いました機械がありますればそれでやっていく、また経営者の考え方によって機械の種類等もございましょう、そういうものを中心にしまして、資金の面でめんどうを見ていくというような考えでおります。
  132. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 これは国営方式で開墾される場合、入っていく農民はやはり依然たる農民なんです。これは入った農民の気持でやっていかないと、見当がつかないんですね。現在入っております機械でかなり進んだものは、トラクターがあります。このハンド・トラクターあるいはガーデン・トラクターというのは、言うまでもなく、あくまでもガーデン・トラクターなんです。アイゼンハワーかチャーチルか知りませんが、政治家たちが週末にうちに帰ってガーデンでもてあそぶものが、ガーデン・トラクターなんです。それが相当日本の農業には入ってきております。しかも歩いて使うトラクターなどになりますと、本来疲労を知らないはずの機械が、これを使う人間の疲労のために制約されまして、その機能を十分に発揮してない。それをほっておきますと、農機具生産会社の商売政策と、農民会社に対する追従主義と申しますか、はやりものになって、相当な苦労をしてこの機械を買いながら、かえって経営が苦しくなっているという事実が、水田農業でもあるのです。この開拓地に入れます機械でも、そういう誤まりを農民自身がしないように、確固たる指導方針があっていいと思いますが、そういう構想はございませんか。なければないでよろしい。
  133. 伊東正義

    ○伊東政府委員 どの地帯には何機械というまではっきりした計画は実は立てておりませんが、これの今おっしゃいましたような弊害が出ませんように、開拓農協なりあるいは県の営農指導員というものを中心にしまして、それに最も合いましたような経営を考えていく、あるいは機械等も考えていくというようなやり方で、私はやっていきたいと考えております。
  134. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 農機具に関する新聞とか雑誌なんかずいぶん出ておりますけれども、見ておりますと、ほとんど製造会社の広告による知識が多いのです。これは一般農民は仕方ございませんけれども指導に当る農林省としては、将来の日本の開拓営農のあり方など十分勘考しまして、むしろこっちが考えて適当な機械を作らせ、かつこれを各開拓地に配給するという形をとらなければ、同じところで足踏みするように考えられます。同じ予算を使うならば、そういうような積極的な機械化の方向に一歩踏み出されてはどうかということを考えておるのですが、どうでしょう、この点は。
  135. 伊東正義

    ○伊東政府委員 その点は、先生のおっしゃいますような弊害が出ませんように、これは試験場その他と十分連絡しまして、研究いたしたいと思います。
  136. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 この書類を見ますと、基本営農類型適用地区なんというりっぱな看板はできておるのですね。そうすれば、すでに基本営農類型ができておるはずなんですが、この類型の御説明が願えませんか。
  137. 伊東正義

    ○伊東政府委員 基本営農類型といたしまして、実は北海道の地区と内地に分けまして、たとえば内地につきましては、五類考えております。一つの例をあげますれば、東北地区等におきましては、先ほど国営開墾のことを申し上げたのでありますが、大体五町歩くらいの経営面積を考えまして、先ほど申し上げました上北におきましての国営開墾地区におきましては、酪農経営を中心としました混同経営を考えております。あるいはまた近畿地方へ参りますと、面積は二町五反というような一つの類型を考えまして、この辺の山間の開墾地区では果樹を中心としたような基礎類型を一応概定いたしまして、資金計画、融資の計画等を実は考えておるわけでございます。われわれとしましては、従来は、全然ではございませんが、そういう点の配慮が入植の際には実は欠けていたのではないかという気がしますので、今のような類型そのものを強制するという意味では全然ございません。ただ考え方として、そういうものを中心にして考えていったらどうだろうかというような指導を、実はいたしておるわけでございます
  138. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 新しい開拓方針は、いろいろお考え願って、間違いのないようにやっていただきたいのですが、それにつきましても、従来の既入植者の振興ということは、一日も捨てておけない緊迫した事態になっております。この問題につきまして、従来金を借りかえてやるという方向でやっておりましたのですが、それが窓口が数本になるので、しょっちゅう借金の言いわけばかりしていなければならないというのが、最近既入植地の組合長の任務になっておるのですが。その間にはさまざまな問題が起って参ります。これを何とか一本の窓口に統合して、思い切った施策をして、旧債整理の方法を考えていかなければ、借金の言いわけで一年暮すという形もしばしば現われて参ります。農林大臣、何かそういう点で、開拓者の負債整理の問題で御構想がございますか。
  139. 三浦一雄

    三浦国務大臣 第一に、開拓資金融通特別会計におきまする回収のことでございますが、これは実は相当きびしい計画であったようであります。これの計画によりますと、当初七割程度の回収を予定しておった。この特別会計から放出しておりますものの返還を七割程度予定しておったものを、三割程度に切り下げて参った。これは一つの延納をさせたわけでございます。第二には、国の債権の管理等に関する法律というものがございますのは御承知の通りでございますが、これの運用によって、これまた開拓者につきましては延納の措置を講ずるということです。それから大災融資法につきましても、御承知の通りでございますが、据置期間の条件等も、これを緩和して参る。そしてこれに対しまする利子補給等の措置も講ずるということでございます。それから特に高利債につきましては、先ほど御論議がございましたが、自作農創設維持資金等を充当してそれに充てさせるというふうな、数段の措置を講じまして、当面の資金関係については対処して参りたい、こういうことになっております。お説の通り各種資金が数本出ておりますので、これを整理統合して、合理的なものにしたいという念願でございますが、今までのところ、まだ整理されておりませんから、今後の問題としては、検討の上に簡素化して、実情に沿うように改善を加えたい考えであります。同時に、この借金は、何といいましても、営農自体が確立して、そして生産性を高めなければならないのでございますから、先ほど来御指摘になりました営農の問題を、さらにまた不振地区につきましては、振興計画を立てさせまして、そして生産性を高め、所得水準を高めると同時に、この裏づけをするという方策をあわせて行わなければならぬと思っておりますが、一般的に、負債の整理をするということは、現在のところデータもございませんし、今後開拓農民の負債整理というわけにはなかなか参りかねるのでございますから、開拓者の負債の緩和等につきましては、今申し上げるようなことで当面の問題に対処して参りたい、かように考えております。
  140. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 大臣御答弁の通り開拓者に対する融資の窓口が非常にたくさんございまして、ほとんど開拓者自体はどうなっているかわからぬというのが実情らしい。困ったから、どうでも金が借りられれば借りるんだという形で、どんどん借りていったのですが、非常に窓口が多く、厄介になっているでしょうけれども、かつて東北、北海道の冷害凶作の場合は、もっと複雑で、もっと乱雑だった農民のための負債整理というものができた。今度は新しい開拓方針で、新しい営農という場合、荷物を軽くしてやる意味においても、なるべくもっと簡素な方法で負債の苦労を救ってやるような方策をとらなければ、これはゆゆしい事態になることは確言できます。自作農維持創設資金等でも、私さっきいろいろ言いましたが、手続法が非常にむずかしいのです。金を貸すのですから、これくらいきつうやるのは当然でございますけれども、もう現在の農民の実態から見ますと、こういう形ではなかなか乗ってこない。そこにやはり負債整理組合とは限りませんけれども、現在までのいわば国の誤まった方針によって苦しんできました早期入植の人たちは、一つの農政の方面から新しい開拓方式に乗りかえさしていく配慮が必要と思いまするが、一体この基本調査などはできておりましょうか。大臣はずいぶん調査には御熱心なのでございますが、こういう面の調査がございましたら、お答え願いたい。
  141. 三浦一雄

    三浦国務大臣 だいぶ皮肉なお尋ねでございますが、一般的にはこれは調査はいたしておると思います。個別問に見ませんと、あなたは専門家ですからよく御承知のようですが、個々の農家もその部落でも、よほど実態を見て、ほんとうに透徹した調査をするのでなければ、対案が立てにくいと思う。そういう考えをもちまして、今度は特に開拓農民指導のための普及員等も増員しておりますから、主としてそういう方面にこれを指向して、そしてこの適切な方途を見出すということが、やはり現在の段階であろうと思うのでございます。さようなことにしで逐次進めて参りたい所存であります。
  142. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 開拓者のいろいろな問題というのは、二千年の伝統を持った一般農民と違いまして、複雑なようでも案外簡単なので、特に二十一年、二十二年、二十三年度という形の入植者、明らかにこれは非常にひどい条件で入ってきております。この面だけでも先に手をつける考えはございませんか。全くしようがなくなっておるのです。たとえば大臣の出身の県である青森県などの、岩木山ろくの県営開墾で入った連中などというものは、ほとんど九割まで全部出ちゃった。ふもとの母村から米やみそを届けられ、小づかい銭をもらっておる開拓者が、ようやく残っておるという形で、母村の農家では、次三男を別にしたのだから、自分の宅地やあるいは田畑を分けてやったと思えばあきらめがつくという形で、個人的永久保護政策をとっておるようであります。こういう面だけでも何とか全国的に手を打たなければ、早期入植者はこれ以上は持てまいと思うのですが、早急におやりになる必要がある。慎重な調査も大事ですけれども、まずこうした川へ落ちたような人の手を引っぱってあげるのが、第一の問題であると思いますが、その点はぐうですか。
  143. 三浦一雄

    三浦国務大臣 具体的な例をおあげになりましたが、実は反対な事例もたくさんあるのです。たとえば下北等に入りましたものは、県民はさっぱり居つなかい。ところが山形あたりから行った人は、お嫁さんとともに開拓に精進して、着々と成果を上げておる。これらを見ますと、やはり自主的な精神が欠けておったり、あるいは各般の施設を十分にそしゃくせずに、それを援用せなかったり、個別的に言うならば、非常な差があるわけであります。私も実は、家自体としても、開拓には若手の経験を持っておるのでございますが、これらの個別的な差異が往々に出ておる。私の付近の開拓地等におきましても、むしろ商人系統の者は成功しておって、従来から父兄の援助をかりておる者は、やはり営農の貫徹ができないという実情もございます。従いまして、各部落にはそれぞれの特色を持ち、それぞれの個性を持っております。ですからそれらを十分見ていかなければならぬと考えます。一般的には、先ほど申し上げました通り建設事業の立ちおくれになっておるようなところは、これを推進する、あるいは電気、水道等のないような場合には、電気の導入をはかるとか、あるいはその他水を確保してやるとかいう施設をたんだん拡充すると同時に、やはり入ります者の心がまえと申しますか、その人たちの考え方自体も、われわれとしては指導を加えて参りたい。御承知の通り開拓地へ入れる前に、県等の施設によりましてある程度研修を重ね、さらにまた開拓地に入るにつきましてのいろいろないわゆる訓練に類すべきこともやっておりますが、これらの課程におきましてもまだ周到を期していないので、これらもやるべきだと思いますが、われわれの考え方としましては、それらの、特に緊急開拓等で入っておりまして、営農の確立しておらぬ地区を選んで、そして先ほど申し上げたようなものを集中的に実施して再建をはかりたい、こういう考え方であります。
  144. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 これは既入植者の問題で大臣は十分配慮されるということですから、言うことはありませんけれども、大臣にそう出られますと、これは農政上の大家であるあなたに言われますと、私も一言言わなければならないのでありますが、いろいろなケースがございましても、大体類型的に分類ができると思います。大臣もよく見ておるし、私もよく見ております青森県の例を見ても、あすこには三大事件という開拓の問題がありました。長慶平、八甲田のてっぺんにあります田代平、下北の野平の事件を三大事件といって有名な問題で、われわれ扱ったのでありますが、この三つのケースを見ましても、成功しているところと失敗しているところは、それぞれ原因があるようであります。野平のごときは、地上にある木が目的で入って、木を切ってしまったらぼんと逃げてしまった。そのあとに入った長野県の人たちが成功しておるわけであります。同じ下北でも、県が戦争中全力を尽して世話してやった田名部の開墾などは、りっぱに成功して今成績を上げておる。そうしますと、農民の心がまえも大事でしょうけれども、これを受け入れる側の開拓の施策いかんによっては、同じ時代に入ったものでも、あるいはまたもっと困難な時代に入ったものであっても、りっぱに成功している事実がうかがえるのであります。従って今日早期入植しました人たちを、本人たちの罪に着せないで、やはり農政の面で今大臣が言ったように、緊急にこの対策を立てていただきたいことを私は特に強く希望しておきます。  それからもう一つ、これは林野庁の方にもお伺いしたいのですが、大規模の開拓が進みますと、治山治水の面でややもすればいろいろな欠陥を生ずる傾きがございます。ことに昨年度の大降附に際しては、そういう事例が乏しくないようであります。大体三千町歩、五千町歩という大がかりな開墾をした場合に、森林は若干残すつもりでございましょうが、それにしましても従来とは違った条件が生ずるのが当然でありまして、特に降雨の際などはこれが一気に押し寄せてくる。従って防災ダム等も開拓一つ仕事として計画に載せる必要があると思いますが、従来その面が非常におろそかにされた傾向がございます。これはどう思われておりますか。
  145. 三浦一雄

    三浦国務大臣 防災ダム等を配慮して開拓計画を進めるということは、私は趣旨としてはけっこうだろうと思います。そうあるべきだと思います。同時にまた、防風林の設置であるとか、あるいはまたこれに類する治山関係の森林の問題でございますが、これは当然に配慮しなければならぬ。しかしながら往々にしてこれが阻害されているということがあります。現に上北の地区を選定した場合でも、防風林の設置はむしろ地元であまり好まない。どっちかというと、木をほしいという欲にからまれたようなことはありますが、国の計画としましては、やはり合理的な防風林もしくは治山的な施設を残す。さらにまた予想される場合には、防災ダム等の建設等もあらかじめ予定し、道路その他の基本的な生産手段の基盤は、周到にしてかつ合理的な計画にしなければならぬということはお説の通りだと思います。われわれとしましても、その方針に即応して今後の計画を立て、大規模な国営にいたしましても、あるいは代行の開拓等にいたしましても、その方針は貫くべきものと考えております。
  146. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 これ一間で午前の部を切り上げたいと思いますが、北部上北の開拓ということは、パイロット・フアームといわれ、いわゆる将来の指針になるものであります。乙供とかあるいは沼崎といったような地区、あの辺の水害が従来とは違った形態をとって起っておりますが、地元へ行きますと、私確信を持って言うわけではありませんが、地元の人たちの言うところでは、最初開拓の場合に、何らかそういう治水の計画を立ててくれと再三懇願したのだけれども、できたところが、できていないといって、非常に恨んでいる形があった。そうすると、地元と開拓地との間の平和の面からも悪いし、やはりその点は地元民の深い経験に基いた施策を、大型の開拓をやる場合には取り入れまして、あとで悔いがないようにやることが絶対必要だと思います。機械を使いました大規模な開墾は賛成でありますが、それによって影響を受ける周囲の地帯までも十分配慮していただきたいと思います。  なお酪農、テンサイ等質問は残っておりますが、午後にいたします。
  147. 大平正芳

    大平主査 午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時五十六分休憩      ――――◇―――――     午後四時四十六分開議
  148. 大平正芳

    大平主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。淡谷悠藏君。
  149. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 午前中のいろいろ質問でもわかります通り、日本の農地拡大、経営の近代化は、水田の面では不可能でないまでも非常に多くの問題があるので、早急にはできないと思いますので、勢いこれは畑地農業の方に近代化のスピードがかかると思います。畑地農業でやる段になりますと、どうしても家畜の問題が重要視されるのは当然でありますが、今年度予算で、戦争中はとにかく、戦後は和牛の問題が出ております。大体二千頭という数がここに載っておりますが、この和牛は役牛として奨励されるつもりなのか、肉牛とされるのか。そのほかにまた役肉用の牛として、一万五千頭という有畜農家創設事業等もありますが、機械などが入ったときに、役牛としての使用の価値というものはだんだんなくなりまして、むしろ肉牛としての方が比重が高くなるようですが、一体この辺に対する構想はどうなっておりますか。
  150. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 淡谷先生の御質問にお答えを申し上げます。最近までは和牛はどちらかといえば、民間の方で品種の改良、育成、増殖等に力があったかの感があります。国の事業としても、種畜場、牧場その他において、あるいは特に試験研究機関においていろいろやっておりましたが、国が全く中心になっておったとも私は考えておりません。ところが御指摘のように、農業経営の高度化及び近代化をはかって参ります上において、各種の畜産を取り入れて、また共同事業とか規模の適正化とか、いろいろな問題が基本的にあると思いますが、そのうちの畜産の和牛につきましては、従来役肉用牛としての発達が、中国中心の黒牛でも、高知、九州の赤毛牛でもそうなっておったのでございます。朝鮮から入れました赤牛も、またこれは主として飼いやすい、粗食に耐え得る役牛としての価値をかなり持っておった。ところ農業機械化、特に畑地におきまする場合、この進展は時代の趨勢で合理的であるものがあります。そこで去年と一昨年との統計を見ますと、和牛全体としまして十二万五千頭近くずつ屠殺――肉の消費が多いせいですが、生産が現に減退しております。そこで国の試験研究機関で試験研究の成果がすでに出ていることを、国立種畜牧場で実施に移すことといたしまして、役肉用牛として役用を除く、すなわち肥育を中心にした牛を増産普及することに国が力を尽し、県の種畜場も働いてもらって普及しよう。これが農業に必要な畜力利用の一部を農業機械化して、農業経営の近代化に資することに力を入れることでありますが、役肉用牛としてもまたその価値のあるものは相当残さなければならぬものもあります。そこで鳥取と但馬の牛とをつる牛と言っておりますが、そういうものを中心にしまして肉牛を飼育用にする能率のいい牛を作るようなことを考えまして、すでに島根の試験研究機関において結果が出ておりますことを、中国の国立牧場をその中心に充てまして、国立牧場に新しい事業を起そうと思っておりまして、その予算一つであります。  もう一つは馬の減少とともに――耕地の比較的広いような条件もありまして、また寒冷地等の条件もありまして、東北、北海道に馬の生産飼育県が多かったのでございますが、乳牛はもちろんでありますが、和牛ももっと増すようにしたい。そこで北海道で和牛を増産する前進基地とでもいうべき普及指導施設を国で直接持つ予算も計上いたしました。一般に見ますと、従来の役肉用牛は役用に使う点に非常な問題があると同時に、東北、北陸の冬場の問題がございまして、夏飼育した分が冬においてかえってやせてしまって経済的でないということがありますので、以上二点を中心にしまして飼料あるいはえさのやり方、塩かげんの仕方等も普及員、畜産会、農協等を通じまして指導して、その方向に持っていきたい、そういうふうに思っておるわけであります。
  151. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 私もこの黒牛を肉用牛にすることは賛成なんです。実はこの黒牛を飼育している農家が、肉用牛として非常においしいのだということを知らないままに従来使ってきたらしいのでありますが、最近の屠殺牛についてはやはり肉に対する認識が出てきたと思われますので、むしろこの際だんだんに肉用牛に転換して奨励した方が効果的だと思っております。  もう一つジャージーですが、ジャージーは輸入しました当時国内繁殖の点にいろいろな障害があったはずです。率直に言って当時の計画通り国内繁殖ができているかできていないか、お伺いしたい。
  152. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 輸入した乳牛を日本で飼養増殖させ、酪農を発達させてきましたのは明治の初年以降でありますが、主として市乳生産から発達した歴史的沿革がありまして、ホルスタイン種が日本には多いわけです。もちろんある時期にはジャージー種とかその他のもの、たとえばショート・ホーン種がある程度飼育されていたのでありますが、輸入をしだした最近までは、結果としてジャージー種はあまり多く飼育されておりませんでした。終戦後のことは御承知の通りであります。それらの時期的な関係もありまして、畜産増殖計画に見積りましたジャージー種についての増殖率について、経験、技術的に若干欠けるところがあるかとも思います。しかし、大局的に見て、最近政府はジャージー種を時期及び場合に応じて数種の方式で導入しました。すなわち最初は国有貸付の方式で行い、あとは国内生産のジャージー種の乳牛を有畜農家創設資金特別融通法による方式により、またさらに世界銀行の資金で機械開墾地に政府の補助をして導入する方式により行なったのでありますが、それらのジャージー種乳牛の飼育経営がそれほど成績が悪くいっておるとは思いません。おおむね所期の目的を到達しておると思っております。
  153. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 あの当時畜産局長はたしか経済の方をやっておられましたので、むしろ渡部さんの方が詳しいかと思いますが、若干ジャージーには繁殖上の障害があったことは、委員会などの質疑応答でも明らかになっておりますが、あの当時の計画では、輸入するジャージー種というのは現地では非常に安いのだけれども、途中の経費がかかりますので、なるべくこの輸入は押えて国内繁殖をしたいという御計画があったようです。それを現在また新しく輸入するらしいのですが、ほんとうにこれは計画通りふえていますか、もう一ぺん念を押しておきます。
  154. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 ほんとにふえております。
  155. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 それから、もう一つはジャージーを内地で飼育した場合に体型がだいぶ変ってくるし、特徴である乳の脂肪率が乳量の増加とともに若干減るような形があるのですが、一体その形はどうなっておりますか。
  156. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 標準型のホルスタイン種におきます脂肪率は三・二%でありますが、ジャージー種は現在の、終戦後導入しましたものの平均で三・五以上、五%に近づくものもあります。昨年乳価問題等がやかましくなりました際など、シャージー種の乳牛の牛乳は飲用牛乳としても決して悪くありませんが、導入した地域が乳製品工場の原料地域が比較的多いことは御承知の通りでありまして、それがためバターの滞貨の状況などにおいてジャージー種の輸入をとめてくれとか、脂肪率の高いものでも値段は一升は一升、こういうふうににして取引をしてくれという声が、全国の生乳の買手側から相当起きました。農林省では、それではいけないということで指導して、この実行はされておらぬはずでありますが、それらに徴しまして、御説明がなっていないかと思いますが、うまくいっていると思います。
  157. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 これはちょっと問題があるのです。もしそうだとしますと、各農家なりあるいは酪農家団体なりに、簡単なものでもかまいませんが、脂肪計量器を備えておく必要があると思うのです。大体ジャージーも最初のうちは脂肪率が高い高いといっておりましたが、乳量が増すと同時に脂肪率が下るので、これは買い入れの規格かどもかなり変ってきておると思うのです。だから、もしあなたのおっしゃる通りであるならばこういう乳業会社の引き取り方に若干ごまかしがあるのではないかという疑いがあります。これは一つ重大な問題ですから、事実面で、乳量の増加と脂肪率の関係を、もう一ぺん信用できるようなものを御説明願いたい。
  158. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 お話のように今後指導いたしますことは、ジャージー種を買う酪農家のために、普通農協、開拓農協等を通じまして、脂肪はアルコール検査でいいのですから、この脂肪率の検査を自主的にやるということを指導するようにいたしたいと思います。合せまして、それらの援助は、資金融通ならば用意はございます。また、今度は一般的に申しますと、目下は集乳の慣習その他からいたしまして、生乳の取引は処理をする工場の工場渡し取引が多いのでありまして、それで買い取り者側が行う検査に従ってやっておるわけであります。それまでに、集荷するときにホルスタインの牛乳とジャージーの牛乳をまぜることが、集乳カンに入れる場合にございます。それらについては、今後工場渡しはなるべく避けるのが農家のためだと思いますが、諸般の事情でそこまで実際にいかない場合は、出荷団体も立ち会うべきだと思います。しかし、別途県を通しまして、国が補助いたしまして生乳の品質検査をすることを三十三年度から始めまして、来年度予算にも、ほぼ同額でありますが、計上してあります。それから生産地における細菌の状態と牛乳の品質、その脂肪率等を県が見まして、そうして乳質と乳価を維持する一助にする、合せまして今回三十四年度で、これもまた県を事業主体にいたしました乳牛の経済能力検定を農家の依頼によって、国が半額補助をする事業をやることにいたしました。これは特に、えさの給与の仕方と牛乳の質と脂肪率を向上させる、その関係をはっきりさせる事業でありまして、その事業を来年度予算に計上して始めることにいたしますが、それらを総合いたしまして、先生のおっしゃるように公正な取引を行わせ、それを通じて農家の酪農経営に資するようにいたすつもりでございます。
  159. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 大体私前の御答弁で納得しようと思ったのですが、今のお話を聞きますと、大体飼料と脂肪率の関係が調査研究の対象になっておるようです。そこを私は言いたい。ホルスタインは相当長い飼育の歴史がありますので、これは大体データがきまっておりましょうけれども、ジャージーは入ったばかりなんですね。飼育の方法なども、原産地とこちらではかなり変ってきているようだし、飼料なども変化があるようです。その場合、乳量がぐんと上りますが、脂肪率が減るということは農家自体言っているのです。それをあなたがないとおっしゃるから、私不思議に思うんですが、今後のジャージーの飼育方法の指導、個々の飼育がいいかあるいは集団的な飼育がいいかということについてはジャージーの消長をきめるものなんですね。ですから、私は別段体型が大きくなって、乳量が多くなって、脂肪率が下っても、見込みはないと言うつもりじゃございませんから、将来の飼育指導の面においてそういう事実があるかないか、国会答弁と思わないで、技術答弁のつもりでお答え願いたいのです。
  160. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 お話のことは、全くないというわけではありません。私も聞いております。それから成績も、三十三年度から始めた牛乳の品質検査を通じたり、農家の声を聞いたり――北海道では先ほど申しました経済能力検定を組合で酪農家がやっておるわけであります。その成績も出ますが、およそ乳牛は十カ月、十四カ月、搾乳すると初めのうちは脂肪率が低くて、また害物といいますか汚物もちょっと入って参ります。その時期にもよりますし、あわせて飼料にもよりますか、従いましてジャージーは、日本では大へん違いますが、なるべく輸入国のような状況に近く、密集できて、草地、自給飼料が多い所、自給飼料上の施策も不十分ながらあわせてとれるような所でなるべくまとめて飼う、そこへ酪農指導所を県で置いてもらう、こういうことをやっておるわけでございますので御了承願いたいと思います。
  161. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 大体了承しておきますか、脂肪率が変化するなんというのは、その日同じにしぼった乳でも、最初しぼった乳と最後の乳とでは脂肪率が違っているのですから、これはさまざまな変化がありましょうが、平均してジャージーの脂肪率は、体型が増し、乳量が増すと同時に若干下るのが常識のようですから、その点の御研究を願いたいと思います。  これは大臣に聞きたいのですが、ホルスタインも含めまして乳価の問題であります。これは昨年以来だいぶうるさい問題であります。今年度も乳価を維持し、乳価を生産費を償うところまで持っていくためにはどういう施策をとられておりますか。予算面だけでははっきりしませんので、大臣の構想をお聞きしたいと思います。
  162. 三浦一雄

    三浦国務大臣 実は昨年予想した需給のバランスを失しまして、これが乳価の低落ということになって問題を起したわけでございます。そこでバランスをとるということにいたしまして、その方策としてすでに御了承の通り、学校給食あるいは集団的飲用の奨励ということで消費の拡大をはかったわけであります。同時にまた大都市方面の市乳等につきましても、業界の協力によって値下げをいたしたのでございまして、幸いにも消費の伸び、またこれに対応する需給の関係もだんだん安定して参りまして、現在では需給の均衡はほぼ保たれるようになって参りました。それから通常のいわゆる在庫等も月間五十五万石程度の製品にとどまり、過剰傾向もなくなっておる、こういうことで乳価は値上りの傾向にだんだんなって参りました。しかしこの値上りといいましても、一時的にただ値上げになったからということで楽観すべきことじゃないのでございます。従いまして今度の酪農振興法のねらいどころは、生産直においてできるだけの生産費の低下をはかる、乳価の安定をはかっていくというところにある。そのためには飼料対策としての草地の改良の問題、あるいは酪農地帯における生産から取引並びに消費に至るまでの一貫した一つ計画的な取り進めをしていきたいということ、それからさらにまた昨年以来拡大して参りました学校給食等の何を継続する。そして消費の拡大の宣伝等も依然進めていく、こういうようなことで、双方のバランスをとりながら均衡を得たものに持っていきたい、こういうことになっておりまして、従いまして来年度予算はそういう意味で学校給食の施設、さらにまた消費宣伝の経費、さらにまた一面において先年御審議を得て成立しておりますところの酪農基金の活用、同時に今申し上げました今度の酪農振興法の改正に伴う生産方面への手当、こういうようなことを総合的にして、そして生産費の低下をはかると同時に、乳価の安定を期していきたい、かようにいたしておるわけでございます。
  163. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 余剰乳製品の七万五千石分の調整保管の補助ということが盛られてありますが、七万五千石分が大体余剰乳製品といわれます全部でございますか、ほかにまだございますか。大体これだけ調整保管すると、あとは自由にまかしておいてもいいという数ですか、その点をお聞きしたい。
  164. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 私どもの見方では、本年度末で来年に持ち越すものといたしましては、昨年予備費で約九億文出していただきましたものを使った特別消費の増大、それから最近の一般消費増加の運動その他による増加、三十三年度の本予算にありました学校給食における一部の予算、そういうものを使ったあと、在庫を生産量の一カ月半と見ますと、余剰な製品で約八万ばかり残ると見ておりますので、調整保管は国が補助するのはそのくらいでいいのじゃないだろうか、こう思っておるのであります。来年度以降は御承知のような牛乳の生産でございますから、それ以上に需給がアンバランスになって、乳業を含めて将来乳価等についての安定性を欠き、健全な発達を欠く事態を生じますれば、これは臨時的なものといたしまして予備費要求をすべきもの、こういうふうに考えておるわけです。
  165. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 乳価が漸次上向いておる一つの原因として、こういう施策もございましょうけれども、乳牛の数が減っておるということが、この春の見通しをむしろ乳の方面では明るくしておる原因になっておると思いますが、昨年乳牛の頭数はどれくらい減りましたか。
  166. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 乳牛の頭数そのものは減っておりません。昨年二月乳牛頭数六十六万頭余でございます。本年二月は約七十四万頭前後、その牛乳生産の増加の伸びが鈍化したということはあります。それが十一月でとまりまして、十二月以降は上向いております。駄牛淘汰されたと思います。駄牛淘汰は屠場で屠殺され肉畜として市場に出荷された。これも十一月が最高でありまして、十二月以降減少をいたしております。
  167. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 どうも言葉の自由性というものは重宝なものでありまして、大てい乳牛の減るときは駄牛淘汰ということが出てきます。これはあとで出てきます共済保険の問題ではっきり説明書に書いてあるのです。かなり屠殺するものがふえてきているので、保険掛金の率の問題も出てきているようです。ほとんど乳の値段が間に合う間は、駄牛というものまで経済飼育にたえることは、これは土地における差額地代と同じような原理があるわけです。従って乳価が下ってきますと、かなりいい牛でも駄牛というような名前でどんどんつぶす、あるいはむしろ飼育しているよりも保険金をとった方がいいというので、不心得な獣医さんも出てくるのは明らかなのです。それを駄牛整理で片づけていきますと、乳価が上向いたときに良牛になる可能性がありますので、バランスが狂ってくると思います。乳製品を調整するということは、乳業会社を通じて乳価を支持しましょうけれども、生産者としては、むしろ飼料の問題に重点を置いて、合理的に利潤をなくしないで生産費を下げるということがかなり大事なことだろうと思います。一体今年の飼料計画はだいぶ輸入の小麦も考えているようでありますが、ふすまの値段が高いということは、単に乳牛だけでなくて養鶏家も言っている。このふすまはそんなに高くなるはずがないと思うのですが、ふすまが輸入されてから一般需要者に配給されるまでの経路を、従来の形、あるいは将来お考えになっている形を御説明願いたいと思います。
  168. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 幾つか御質問がございますので、お許しを願って、逐次分けて申し上げます。  駄牛淘汰は、私さっき簡単に申し上げましたが、農家は搾乳期間のこともありまして、一頭当りの一日の出乳量とかいうことも関係あると思います。牛乳の生産過剰と一応いわれておりました去年の夏の農林省の牛乳生産量及び乳牛調査によりますと、日本の搾乳牛数の四割が十四カ月間も搾乳しておりました。搾乳牛一頭当りの搾乳期間中を通じての牛乳生産量は別として、月別に見た総搾乳牛の牛乳の生産量の総量は、対前年比で一八%増になった月があります。これなんかは健全な乳牛飼育、健全な牛乳生産とは思っておりませんが、私ども技術的にいえば、一般的乳牛の搾乳期間は十カ月くらいが一番健全であるようであります。経済的に考えて、十二月前後までしかやらぬ方がいいということもあります。それと駄牛淘汰と合わしたことがあると思うのであります。第二につきましては飼料価格の点、特にふすまの点でありますが、価格を先に申し上げますと、統計調査部の農村物価賃金調査、畜産局調査の二つにより見ましても、ふすまの消費者価格は、昨年よりも、一俵当りで申しまして八十円から百円程度下っております。卸売価格、政府売り渡し価格も、自由販売の製粉業者が売りますふすまも、若干の程度の差はありますが、相当値下りしております。政府が取り扱います飼料としてのふすまは、御承知の通り飼料需給安定法によるものでございまして、輸入のふすまでございます。この輸入のふすまの国際価格が高いことが第一であります。日本が最近において買っております平均はトン当り二万四千円強でございます。それに対比する例で申し上げますと、食糧庁が輸入する小麦、食糧用という意味でございますが、一トン当りの実績平均二万八千円で、ふすまと小麦粉との日本の国内に売ります比価と申しますか、価格の比率からいうと国際的なふすまの価格は非常に高い。それは私の調べましたところ、諸外国、欧米等において、小麦その他も含めまして、小麦の生産消費は非常に多いのですが、ふすまの国内消費も多くて、貿易量はおおむね五十万トンであります。そのうちイギリスが約三十万トン輸入します。日本が約十万トンから、今度相当要求して十七万トンになっておりますが、それで大半輸出国の輸出量を満たすのであります。そういう関係もあるかと思います。しかし飼料として輸入ふすまを操作していきます場合は、法律にありますように国内の時価も勘案するが、畜産の経営安定に資するように基準を設けております。来年の食管予算についてみても、この輸入飼料としての農産物等勘定では畜産物の価格の見通しをとりまして、これに照応するがごとく引き下げることにいたします。比率にいたしまして五・三%か五・四%でありますが、価格差補給金を一般会計から入れて売り渡す予算にしております。  次にルートについて申し上げます。飼料全体のお話でしたが、まずふすまといたしますと、飼料として輸入のふすまは全部政府で買い上げます。従来は全部買い上げなかったことがありますが、来年度はそういたします。当初予算に組んであります。その次は、そういう操作をいたしますので、政府所有の輸入ふすま十七万トン、食糧庁がその他の小麦を輸入しまして製粉会社に売り渡しまして、製粉会社からふすまが出て売られていきますのが六十六万トン、それは国内産の麦から出るものも入っております。見込みは、日本の農家の生産する麦から出るふすまは、農家保有が約十一万トン、販売流通が五十五万トンと思っております。それらの関係から現在の年度へ持ち越します持越量、輸入量、政府操作量と、その他現在の値段、需要の気配から考えまして、一般の競争入札で売り渡して農家に販売されれば操作ができると目下思っておりますので、そういうことにする予定であります。需給の事態が変れば、飼料需給安定法の関係条文がございますので、政府所有にかかる小麦につきましては、それから出てくるふすまについて相当強度に統制することができますので、その規定を発動するということに予定しておるのであります。飼料用の小麦あるいは飼料用の大豆、これは飼料用としての外貨を組みまして政府が輸入して、飼料扱いしまして、そこで飼料に適するような製紛または搾油を特別にいたしまして、そのふすま及び大豆かすを畜産農家に配給する、こういう部分がございます。丸粒と丸大豆をまず飼料として入れることでございますが、小麦につきましては、ふすま専門工場へ政府から売ります。その専門工場から飼料需給安定法による指定の売り渡し相手方が八つ、実需者及び実需者に準ずるものでございますが、それに対しては、必要に応じていろいろな指示が政府でできる法規がございます。それに向いまして、指名の取扱い者に関します限りは、競争入札、そういうことで末端に届くようにいたしておりますが、それは系統機関を通じて配給されるように考えております。大豆は、政府から飼料用大豆をその八つの指定の団体に競争入札で売りまして、それを製油工場に委託製油いたします。委託製油を実需者またはそれに準ずる団体にした結果、大豆かすを取得しますので、大豆かすをその下部機構の系統組織を通じて流すようにいたしている、こういうことであります。
  169. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 駄牛等のことはいいと思いますけれども、搾乳期間と結びつけるからおかしくなるのです。搾乳期間が十四カ月にするか、十二カ月にするかということは、妊娠との関係があります。子供が生まれるまでの前を二カ月おくか四カ月おくかできまるわけなんです。子供を産んだあとすぐまたしぼる、すぐ搾乳することはできないのですが、そういう搾乳期間の二カ月の違いということは、駄牛とどういうような関係がありますか。
  170. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 牛乳の生産量に最近影響しましたことは、能率の悪い駄牛を肉畜として殺して販売する、それは十一月を底としてよくなりました。もう一つ、牛乳の生産量というものは、搾乳期間に影響があるのです。正常でない乳価の関係等をもちまして、長く搾乳いたしますと、一月当りとか一頭当りの継続した牛乳生産量は多くなりますが、一日当り一頭の生産量は減ってくることが相当あります。そういうことを申し上げたのです。
  171. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 けっこうです。駄牛の整理もあったんですね。私、時間もだいぶとりましたので、遠慮して短かくやりますが、問題にしたいのは、飼料になる小麦を製紛業者がとった場合、これは、粉で一もうけ見ておいて、ふすまでまたもうけるという傾向が事実あるのです。マニトバは最もいい例です。こういう弊をなくするために、何か実需者団体というものを、農民組織している団体に限るような――飼料に限ってです。一般の小麦は申しませんが、飼料に限ってはそういうような措置をとられるような気持はございませんか。
  172. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 飼料小麦としまして今まで入れ、また輸入する予定でございますのはマニトバ五号、六号でございます。過去にも入れたことがございます。来年度も予定しておりますが、マニトバ五号は豊作である場合は軽質麦でありまして、かえって生産が減少することがあって若干割高のようであります。しかし、いずれにしても丸粒の小麦を飼料用として使う場合のことは先ほど申し上げました通りであります。それを原料として製粉会社を指定してそれに渡す。そして一般の場合よりもふすまを多くとる。その工場は、お話のような実需者団体とか実需者団体に準ずるもの、すなわちこれは畜産農家にいろいろのものがありますから、既存の実需者団体だけではいけない場合もあるからであります。従来からの商権のことも一部あろうと思いますが、それはあまり尊重する要も――適正にしか必要ないと思います。そういうふうになっているので、今後もそれを続けるのであります。その製粉会社では、普通の食糧用小麦か、やや良質の小麦ではふすまが二五%幾らでありますが、この飼料用小麦は六割をふすまにする。それを来年度も継続したいと思っております。
  173. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 酪農と一緒に今盛り上ってきた仕事にビートがございます。国内で砂糖を作るということは、輸入の見当などの関係もございますので、おのずから限度があると思うのですが、農林大臣は輸入砂糖と国内自給の砂糖をどういうふうなめどをもって調整されていくか、伺いたいと思います。
  174. 三浦一雄

    三浦国務大臣 将来の国内砂糖と外国砂糖との関係でございますが、今後の見通しとしては、十年後百五十万トン程度の需要がある。そのうち国内のテンサイ糖、黒糖等もございますが――需給のバランスは食糧庁長官から説明させます。
  175. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 私の方では、十年後の砂糖の消費目標は、人口の伸びと所得の伸びとを考慮いたしまして、大体百五十二万トンくらいになるであろうというように推定をいたしております。ただし、これはズルチン、サッカリン等の甘味料は現在とあまり変らないという前提で見ました。その際に、国内糖といたしましては、テンサイで約四十万トン、砂糖キビの砂糖が沖縄を含めまして二十万トン、結晶ブドウ糖で十五万トン、合計七十五万トンを国内生産でまかないたい、こういう目標を立てていろいろな施策を考えております。
  176. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 四十万トンのテンサイ糖をとるためには、テンサイ畑の町歩をどのくらいにされるつもりですか。今のテンサイ糖の作付というのは、工場の関係がありまして、一カ所に集中する必要があるわけです。そうしますと、ことごとく開墾地に依存するということは作付の性質上できない。バレイショとかその他の作物の作付転換も行われるのが当然でありますが、この方向をはっきりきめておきませんと、農家としては経営が非常に混乱するおそれがある。従って、四十万トンを見込みましてテンサイ畑を何年くらいで幾ら伸ばすか、こういう長期の計画が立っておるかどうかお聞きしたい。
  177. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 これは四十万トンのうち三十万トンを北海道に期待し、十万トンを内地に期待する、こういうふうな目標を立っております。そこで、三十万トン北海道で生産いたしますのには、現在のビートの反収それからビートの砂糖の歩どまり、そういうものを考慮し、かつビートは連作ができませんから、この輪作関係を考慮いたしまして、一応十年後には四千八百斤反当。そうしまして、七万八千町歩があれば三十万トンの生産が見込める。七万八千町歩でございますが、これは輪作をいたしますから、五年輪作といたしますれば約四十万町歩、六年輪作としますれば五十万町歩、こういうものが要るのであります。従いまして、現在の北海道の畑作面積ですぐ使えるもの、それから今後土地改良なり土壌改良をいたしまして、ビートの適地にしなければならぬもの、こういうものを区別いたしまして、年次計画を立てて目標に近づけたい、こういうふうに考えております。内地におきましても寒冷地、すなわち東北地方では、大体北海道と似たやり方でできます。従いまして、適地を、現在の適地、それから土壌改良、土地改良をやれば適地になるもの、これを算定いたしまして、年次計画を立てていきたい。それから暖地ビートでございます。これはすでに岡山とか大分その他の県で相当熱心にやっておるところもございますけれども、まだ技術的に種子の問題とかあるいは輪作をするのに必要な畑地の面積、それと工場の適正規模と収穫地域の問題、こういう問題がございますので、これらをただいま北海道のように、大規模のしかも白糖まで作る工場でなしに、中間の粗糖を作る工場にして、その粗糖を既存の精製糖工場に持っていく、こういうようなことも考えなければならぬので、これもまた年次計画を作りまして目標に到達していきたい、こういうふうに思っております。
  178. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 いずれにしましても、砂糖の工場のない場所のテンサイ栽培というのは将来不可能なんです。特に飼料の関係から申しますと、ビートのかすが非常にいい飼料になる。従って、どうしても作付の畑の中心部に砂糖を取る工場が必要でございます。そうしますと、その地方に工場が建たなければ十分に効果を発揮いたしませんが、一体一工場に対してどれくらいの作付反別を要求するつもりでありますか。
  179. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 現在の北海道の状況でございますが、北海道でやっておる方式でいきますと、約六千町歩ですね。六千町歩が一つの工場に対する原料集荷地域の面積、こういうふうに考えております。
  180. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 輪作の条件も入れて六千町歩ですか。
  181. 渡部伍良

    ○渡部(伍)政府委員 これは年々でありますから、その年の六倍なり七倍なり畑地が必要になるということであります。
  182. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 六倍としますと、三万六千町歩ですね。一工場に付属する畑が三万六千町歩とるというのですから、これはかなり大きな作物になります。今度試験の段階らしいのですが、青森及び岩手に約百町歩のビートの試験栽培を行う。これを輸送費を補助して北海道の工場へ送るという構造があるようでありますが、そうなりますと、輸送費だけもらいましても、農家の経営としては、かすが還元されないと非常に困るわけなんです。ことしの分はやらないよりやった方がいいと思いますが、この百町歩の試験栽培というものは今後どのような計画で伸びるのか。百町歩と申しますと、全体の計画の上ではほんの少しでございますが、出す農家にしては今の零細農としては百戸以上の農家があるわけです。試験段階でもこれは相当大きな経済的な変化が起ります。それで将来工場を誘致し、三万六千町歩一単位の畑として育成する構想というものは、もう大臣できておいででしょうか。
  183. 三浦一雄

    三浦国務大臣 今青森県の事例をお引きになってのお尋ねでありますが、御承知の通り十和田市にフジ製糖が試験地を持っておりまして、そして相当指導しておるわけです。他面青森県の試験場等におきましても、テンサイの試験研究をして、その成績はよろしいということで、同地方におきましてはテンサイの栽培の空気がだんだん出て参っているわけであります。そして今淡谷君も御承知のような情勢でありまして、これを何らの操作をしないということでは伸びない。そこで次善、三善の策ではございましたけれども、一応輸送費等を助成しまして、同時に、まだ当該の地方との具体的な計画にはなっておりませんけれども、東北開発の会社等におきましても、これを助成するというふうな事態もありますので、これらは今農林省の立案しました輸送費の助成ということを中心にしてまず手始めをする、こういうことにいたしたのであります。  次の問題といたしましては、これはどうも強制栽培をさせるわけにもいきませんし、やはり県の指導と当該の工場の設置の準備とタイミングを合せてこれを持っていかなければならぬと思うのであります。フジ製糖等におきましても、その要望がありますけれども、まだ会社の設立を承認するという段階には行っておりません。結局青森県等における諸般の計画をも聞き、同時にまた伸び方等を見て、この問題をよく調整しなければならぬ、こう思っておるのでございまして、これらはやはりその当該地方指導を待ち、それからその計画に即応していかなければならぬ。同時に、先ほど来御論議になっております北海道のテンサイの奨励につきましても同様でございまして、北海道の精細な地元町村まで掘り下げた計画等を期待しておるゆえんも同様であります。そういうふうなことにして将来の問題をだんだん解決する、こういうふうに今考えております。
  184. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 これは青森県ばかりでなく、岩手と両県でやるようなお考えに伺っておりましたが、いずれにしましても百町歩では、一工場当りの反別に比べてほんの一少部分なんです。これは酪農でもそうですが、原料を生産する農家と、これを加工する工場とが別な資本系統でできておりますと、非常に価格の変化もあるし、また景気、不景気等によりまして、乳価の暴落と同じような形がテンサイ原料にも起らないということは保証できないと思う。大体栽培する農家と会社との自由取引に放任しておいて、原料対加工の関係でたたかれてきますと、どうしても個々の農家がそういう資本の利益のためにひどい目にあうという事態は、これは酪農の場合を見てもはっきりしておると思うのです。出発に際して、また新しいスタートをはっきりきめるために、そういうことに対する方法を何か考えておられますりか。
  185. 三浦一雄

    三浦国務大臣 テンサイの売買について自由放任させるというお話でありますが、そういうことはいたしておりません。現に北海道におきましても、テンサイを買い上げする場合の基準価格は農林省の告示でもってきめる、これは糖価を見、かつまた生産費等を見て適正価格をきめておるのであります。その価格が適正でなければ耕作農民に対する保証ではございませんけれども、適正な価格を決定して栽培農民に保証するという制度は、これはもう堅持しておるのでございますから、今後東北地方に対して拡大して奨励する場合も同様でございます。
  186. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 自給作物と違いまして、やっぱりこういう生産をして販売の面に乗せる作物を栽培するようになりますと、価格方面においてやはり保護していく必要が絶対必要だと思う。これは繭の問題があり、牛乳の問題があり、さらにテンサイは今度は工場と結びついた栽培が始まるわけなんですが、同時にさっき畜産局長の言われました肉牛の奨励も相当なされますが、現在生きた牛を売る場合と牛肉の場合と非常に値開きがあることは御承知の通りです。市場等の問題で枝肉市場というようなものを御考慮になっておりますか、これは販売面の問題ですか……。
  187. 三浦一雄

    三浦国務大臣 生肉取引につきましては非常にむずかしい問題のあることは御承知の通りであります。大阪等におきましては、生産者団体が公設の市場に出荷してほしいということでかなり努力もし、それから犠牲も払って設備を設けてやっておるのでありますが、まだ生肉取引の慣行は依然旧態を脱しておりません。われわれとしましてはその方面指導啓発、同時に各般の奨励をしておるのでございますけれども、なかなかそう参らぬのでございます。これは政府でもって公定価格をきめてやるという性質のものでもございません。しかし一面において大都市の市場に対する設備の改善であるとかあるいは機構の整備ということ、また生産者団体の自覚と同時に旧来の慣行を改めて、そして、公正な取引に持っていきたいという念願を持ちまして、今後とも指導をして参りたい、こういう考えでございます。
  188. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 市場その他の流通過程に対する調査の費用が予算に組まれておったように見ております。さっき私は、大臣は調査が得意だと言って怒られそうになりましたが、私は皮肉でも何でもなしに言っておるのです。御説明の中にもたくさん調査項目が並んでおる。これは農政に対するまじめな努力をしようという気持の現われであって、私は決して皮肉のつもりで申し上げておるのではない。地下水の開発利用調査、新開拓方式の調査計画、畑地地方の培養保全の総合的な基本調査、主要畑地の検診調査、大規模草地改良を行うための調査設計、米国における消費宣伝事業と市場調査、臨時生鮮食料品卸売市場対策調査会、産地事情調査、家畜及び食肉流通の改善のための施策を確立するため調査検討すること、水産物の需要増進対策のため海外市場調査、保安林の指定に伴う補償実施の調査、漁業共済制度の試験実施に関する調査委託、水産庁に漁港関係の調査を命ずる、最後には農政の大筋であるところの農林漁業基本問題に関する調査会が内閣に設置される、これは農政に対する非常に真剣なまじめな態度としてむしろ好意を持って見ておるのですが、ただ実態が、農村の窮迫は調査にじんぜんと日を過ごす段階ではない。この調査は慎重にされると同時にテンポラリーに行なって、農民の窮迫がこれ以上ひどくならないようにやることが、今日非常に重大ではないかと思うのであります。特に最後の農林漁業基本問題に関する調査会などは、これは農政の根幹をなすものとして重大な意味を持つものでありますから、この調査等につきましても、従来しばしば見られたおざなりなその場限りでちょっと逃げるような調査会ではなくて、もう十分責任を持って調査というものを敢行していただきたいということを希望しておきます。  最後に一点お伺いしたいのは、林野庁の労務管理の問題であります。これは現在青森の営林署において、八十名近い労務者が予算がないために突然雇用契約を解かれましてきのうあたりまで騒いでおったのです。私はその個々の問題を取り上げるつもりではない。ただ特別会計で見ましても、現業官庁である林野庁がその仕事を遂行する上において使っております労務者というのは全国に非常に数が多い。数が多いのですが、日本の農業の特徴としまして兼業が多いものですから、農閑期に小づかいとりのように使われたのが過去の実際であります。普通の労務者よりは確かに賃金が安い。賃金が安いからこれは非常に喜ばれて使われたのですが、随時この形態が進んで参りますと、第二種兼業としてむしろ農耕が従でこういう労賃取得が主になるような農家も非常にふえてきておるわけであります。これは今新しい労務契約を結んで新しい観点のもとに管理しなければ、莫大な予算を食いますこの労務の上において思わざる誤まりが起ると思うのですが、こういう点に対する林野庁のお考えを聞かしていただきたい。
  189. 山崎齊

    山崎(齊)政府委員 国有林野事業の労務の管理という点から雇用の問題を考えてみますと、直営生産事業と造林事業中心にした事業が雇用量全体の約九〇%を占めておるのであります。直営生産事業におきましてはその事業量、事業個所というふうな観点からいいまして、通念的な作業を行いますためには事業量が非常に少いというふうなものもありまして、そのために経営の合理化なり雇用の安定にも大きい支障があるというようなものが少くないのであります。今後のいき方としましては、直営生産事業量の増加と関連いたしまして、また保全上許される限度というものも考えまして、事業個所におきまする数量を十分検討もいたしまして、雇用の安定化、それから事業の合理化という両方の点を全うするような方法で、事業の仕組みというものを考えていきたいと考えておる次第であります。また造林事業におきましては新値保育という仕事がその中心でありますが、これらの仕事はその行うべき適当な時期というものがきまっておりますのと、新植保育に伴います雇用量に相当大きい雇用量の差があるわけであります。こういう点からいたしまして、造林地の面積が比較的少いというふうな地域におきまして、通念的な仕事と申しますか、そういう仕事がやはり困難になってくるわけでありまして、そういう場合にはやはり農閑期の季節労務を中心にして仕事をしていかなければならぬということになるのであります。今後におきましては造林事業の拡大という面を積極的に進めて参りたいと考えておるのでありまして、そういう点からいたしまして、地域的に造林地が相当まとまるというふうな段階になってくると思うのであります。そういたしますと、新植保育その他の仕事を通じて、連続して造林の仕事をやっていけるという仕組みがまた可能になるわけでありまして、そういう点を目標といたしまして、雇用の安定、それに伴う技術の向上ということをねらって今後の労務雇用に対処していきたい、こういうように考えておるわけであります。
  190. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 それで一つ私お聞きしたいのは、この労務管理に当りまして、従来の農閑期の日手間取りの人夫という考えは、これは長官にはないだろうけれども、末端の使役者には残っておるのではないかと思う。従って近代的な労務契約に基かず、便宜上雇用を打ち切った方が得だという空気が現地には若干見えます。同時にまた現地仕事ですから、今年みたいに北の方で雪が少いという異常天候の場合は、作業が大へん狂うわけです。従ってきっちりした予算仕事をしておっても、工程に狂いが生じた場合には、予算によってこの雇用契約を簡単に打ち切るというような今回のようなことがありますと、これは雇われた農家にはやはり農家なりに、三月一ぱいなら三月一ぱいという予定を立てまして、仕事があれば働くし、なければ別な方に仕事を求めるという非常にせせこましい生活設計があるわけであります。これはあくまでも近代的な雇用契約に立った関係に置きかえられなければ、あの膨大な労務管理が至るところで破綻を示すような形になりますが、一体農閑期に雇われる日雇いの労務者等に対しても、近代的な契約を重んじていかれるのかどうか、その点を長官からはっきり言明していただきたい。
  191. 山崎齊

    山崎(齊)政府委員 現在の労務雇用は、常用、定期、月雇いというふうな工合に分割されておるのでありますが、雇用に当りまして、それぞれ雇用の仕事内容、量という面を考えまして、それぞれ必要な労務というものを計画化して雇用していくということを方針としておるわけであります。従いまして、この事業実行するために経常的に必要だというものは、はっきりしたそういう雇用契約に基いて計画的にやっていくという形になるわけであります。天候その他の都合で緊急に必要な労務者は、日雇いその他の形で雇用するという形になるわけであります。今後ますますわれわれといたしましては雇用の計画化を進めたいということを念願しておる次第であります。
  192. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 その方針でやっていただきたいのですが、ただ現実に見ました場合に、率直に申し上げますと、労働組合などが結成されておりますので、何か最近における公務員の運動に対する官庁の態度がそういう面でも出たかのように誤解しまして、林野庁も現地においてやはり組合圧迫をするのじゃないかという疑念さえ出ることが間々あるようでございます。これは団体交渉の形あるいは折衝の過程にもいろいろめんどうな面が錯綜しましてそうなったと思いますが、少くとも過去における非常にルーズだった日手間取りの観念を捨てて、近代的な雇用関係に立ち、雇用契約の実行ははっきり守っていただくことは確認してよろしいのですか。
  193. 山崎齊

    山崎(齊)政府委員 先ほど申し上げましたような、計画的な雇用という線を今後強力に進めて参りたいというふうに考えておりますので、雇用契約をいたしました者を、一方的に当局側でどうこうするというふうな性格のものではないとはっきり考えておる次第であります。
  194. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 私は終ります。
  195. 大平正芳

  196. 長谷川保

    長谷川(保)分科員 私は特定土地改良、工事特別会計に関する問題で伺いたいのであります。ただいまから伺いますことは、きわめて具体的なことでございますが、私がそういう具体的な問題について伺いますのは、近時、総合開発というようなきわめて妥当な、またなさねばならぬ、そしてまた一面から見ればきわめてはなばなしい事業の陰で、ともすれば民主主義の根本の考え方である基本的人権を守るということが薄れて、はなばなしい事業の陰に無告の民として泣いる人々がおるのではないか。そういうことが絶対にあってはならないと思うのであります。そこできわめて具体的な問題を取り上げて、全国的にもそういう問題に対してきわめて慎重な態度をとってほしいという立場で、お伺いするわけであります。  まず最初に伺いますのは、特定土地改良工事特別会計の中の直轄干拓事業費の中に、浜名湖の庄内干拓事業費の予算が今年とられておるそうでありますが、何千万円ですか。
  197. 伊東正義

    ○伊東政府委員 浜名湖の干拓でございますが、これは庄内干拓でございまして、一応予算としましては約三千万円というものを予定いたしております。
  198. 長谷川保

    長谷川(保)分科員 御承知のように、この事業は三十一年度に決定し、三十二年度から工事にかかることになっておりましたが、地元漁民の猛烈な反対がありまして、いまだに工事着手の見通しも全然ついていないという事業であります。地元漁民の言うところによりますと、ここは浜名湖の湖面漁業のいわば宝庫、心臓部とも言うべきところでありまして、これを干拓すれば、年間三億円以上に上りまする浜名湖の湖面漁業はほとんど全滅するという。このことは、さらに漁民が言うのみならず、これは最近かわかりましたが、静岡県の経済部長及び水産課長も公開の席上で私にもはっきり言っている。これを干拓すれば浜名湖の漁業は全滅する、全部枯れるのだ、今までは枝をとっていたのだが、今度は枯れるのだ、こう申しておるのであります。さらにそればかりではありません。この干拓予定水域である七百余町歩のところで、クルマエビその他の稚魚が育つわけでありますが、これが夏から冬にかけまして外洋に出て参る。この外洋へ出て参りますクルマエビや、ササガニ、その他の魚を愛知県の漁業者が来て取る。この浜名湖の漁業者は、港の関係で外へ出られるのは大がいあらしのときであります。それで愛知県の方が船その他の設備がしっかりしておりますので、取りにくいのでありますが、これがまた年間二億円以上に及ぶと言われておるのであります。こういう漁業が全滅するおそれがあるのであります。従いましてこれは付近の漁民にとりましては、きわめて重大な問題をはらんでおるのであります。もし承わりましたようなことが事実であるとすれば、これは非常に重大なわけでありまするけれども農林省から私がいただきました資料によりますと、この総事業費は十六億六千万円、造成します耕地は、七百余町歩のうち五百余町歩が耕地になる。その他は提防、宅地等になるのでありますが、農産物の収量の予定は、米といたしまして一万四千百四十石、裏作として麦が五千三百三石、こういうことであります。投資効率につきましては、三十四年一月の資料だとして私いただきましたものには、一・一、それから三十四年二月六日付の資料では、わずか一カ月足らずでありますが、一・一四と書いてあります、どういう間違いでありますか。あるいは計算がずさんであったのでありますかわかりませんが、とにかくそういうように、わずか一カ月違いで作った資料で、私がいただいたのは違っておる。いずれにいたしましても、今の米麦の産額から申しますと、どうも先ほどの漁業の損害と比べまして、効率はマイナスになるように考えられるのであります。農林省はこの干拓によって失われるもの、経済の損失というもの、また獲得するところの経済の効果、金額にして年間幾らくらいと考えておるか、これを承りたい。
  199. 伊東正義

    ○伊東政府委員 いろいろ御質問があったのでございますが、この計画は今おっしゃいましたように、昭和二十六年でございましたか、ここの地区が天竜東三河の、国土総合開発法に基きまして、特定地域指定になりまして、その後昭和二十九年にたしかここの総合開発計画閣議決定になったわけでございます。その中の基本計画の一環といたしまして、この庄内干拓というか、実は昭和二十九年に閣議決定を見たような次第でございます。その後農林省におきましては、この決定に基きまして、三十年、三十一年と全体設計費、調査設計費でございますが、これで調査いたしまして、三十二年度から実は着工の予算を組んだわけでございます。これは千九百万でございますが、三十二年度に着工の予算を組んだのでございます。これは今先生のおっしゃいます地元の漁業協同組合中のそういう反対がございまして、事業に着手しませんで、三十三年度に実は繰り越しております。来年は三千万というものを一応予定しておりますが、私どもは反対の人が納得をされたならば着手したいという意味で、来年度予算に組んだわけでございます。これの事業効果の問題でございますが今先生おっしゃいました、この庄内干拓をいたしますれば、浜名湖全部の漁獲高が非常な影響があって、全滅に近いものになるのじゃないかという御見解でございます。この点につきましては、実はわれわれそこまでは考えておらぬのでございますが、これは地元の方々の反対その他ございますので、最近におきましても、昨年でございますが、いわゆる水産関係の専門の学術調査団を作りまして、県が中心になりまして調査をいたしまして、近日中にその結果は発表するというふうにわれわれも聞いております。われわれの干拓の事業の効果でございますが、これは増産量、先生が今お示しになりました大体一万九千石ぐらいのものではなかろうかというふうに考えているわけでございますが、これはその面だけでなくて、ここへわれわれの計画としましては、干拓としまして入ってくる人が、純粋な入植者が三百戸くらい、あるいは近所の地元増反が千戸ぐらいということを予定しておりまして、近所の農村の人、またそこで漁業に従事しておりました人で、農業に従事したいという人につきましても考えていこうというようなことで、その近辺の農家の二、三男対策にもなるのじゃなかろうかというような別な効果等も考えております。その金額は、推算でどのくらいの被害になるだろうかという推定でございますが、実はこれは補償その他の問題と非常に関連してくる問題でございます。今学術調査団が参りまして特に研究しております一つの大きなテーマは、この庄内干拓で、稚魚が育って、それが浜名湖全部にどのくらい出てくるだろうかということが、一つの大きな調査の眼目になっております。こういうものが正式発表をしましてから、われわれはある程度のものをはじきまして、その上で農林省としては幾らぐらいということを申し上げたいと思うのであります。今どのくらい漁獲高が減ると見ておるかというお話でございますが、われわれといたしましては、先生がおっしゃいました、ほとんど全滅に近いものではないかというお話でございますが、その点につきましては、若干見解を異にしているわけでございます。
  200. 長谷川保

    長谷川(保)分科員 この計画をおやりになるについて、経済効果を一・一というようにお考えになっている。とするならば、当然損失の方もあるいはこれによって得ます効果も、両方計算しておかかりになったことだろうと思う。一応農林省は幾らとお考えになっておるのか。そのことがなければ、この金額は出てこないだろうと思う。今後訂正なさっても一向差しつかえない。一応どういう計算でこういう数字をお出しになったのか。大体米麦合せて一万九千石でございますから、大体の押えは私もつきますけれども一体この金額を幾らとお考えになったのか。これなくしては計画は立たないでしょう。
  201. 伊東正義

    ○伊東政府委員 計画いたしました場合には、今お話しになりました米が大体一万五千石、麦が四千石というもの、これは食管で値段はきまっております。これは当然出て参ります。それで換算しまして計算したのでございますが、そのほかに今申し上げましたように、その近辺の農家の二、三男対策にもなる。それから地元増反もできるという効果も、その効果のほかにわれわれは考えられるのではなかろうかということで、この計画をしたわけでございます。われわれとしましては、今の状態では賛成で促進してやってほしいという漁業者もかなりあります。今おっしゃいましたような反対の点もございますので、その点につきましては、十分慎重な態度で臨みたいと思っております。
  202. 長谷川保

    長谷川(保)分科員 どうも変だと思う。こういう問題は率直に話した方がいいと思う。そうしてお互いにそこに合理的な妥結点を見るということは当然すべきであって、私は今それをたてにとって、あとで農林省責任を追及しようというのではありません。計画というものは、順に進んでいくに従って変る場合もございますから、少しもそれにこだわるわけではありませんが、少くともお宅からいただきました資料によりますと、経済効果の表が書いてあって、右表の作物のみの投資効率は一・一四であるとあって、他の方には一・一と書いてある。その他の効率として、今お話のような二、三男の対策ができる、あるいは交通がよくなるとか、周辺の経済的な発展ということが書いてございます。書いてございますが、一応この計画を立てた以上は、一体幾らの得があって、幾らの損があるということがなければならぬ。もし農林省がお答えができなければ、経済企画庁の方でこの計画をなさるときに御計算になったと思うのでありますか、いかがでございますか。
  203. 伊東正義

    ○伊東政府委員 その計画閣議決定いたします場合には、これは企画庁で閣議決定をいたしたのでございます。その際には、企画庁でそういう計算をされてやられたのではなくて、当時農林省でやっているはずでございます。今申し上げましたように、妥当投資額の算出の問題でございますが、そこで干拓をして増反効果が今のように出ております。これを資本還元しまして、今の投資とおっしゃいました十六億六千方、これがペイしていくという計算でやったのであります。
  204. 長谷川保

    長谷川(保)分科員 そうすると、これによる損害については計算をなさらなかったのですか。
  205. 伊東正義

    ○伊東政府委員 これは十六億六千万の中には、金額ははっきりはきめておりませんが、補償の問題も考えております。それで工事自身としましては、その当時の十六億六千万といいますのは、二十九年に決定して、三十年から今体適用をしてやった数字でありますが、その中には一部補償が入っております。これは金額がはっきりいたしておりません。われわれとしては、当然その中には補償は入っている。ただ補償の問題は、いろいろ地元の関係もあり、漁価の問題もこれからいろいろ変って参ります。数量ももちろん変る。その中でフィックスして補償は幾らかということは考えておりませんが、補償というものがある程度考えられて組まれております。今後事業をやる場合に、事業費と補償費が足りぬということになりますれば、またその金額は変ってくるということがあるだろうと思います。
  206. 長谷川保

    長谷川(保)分科員 どうも変ですね。この点率直にお答えができそうなものだと思うのだが、こういう十六億もの国費を使ってやる仕事が、損が幾らあるのか、得が幾らあるのか、差引幾ら。どう考えたって米麦合せて一万九千石ばかり、知れてますよ。けれども、いま一方の損という面からいうと、先ほど申し上げたように、漁民の言うことでも大へんなことですよ。ここではクルマエビ、カキ、ウナギその他の非常に高級なものがとれるわけです。こういうものが貫々からいっても相当とれている。相当大きな損害があるにきまっているじゃないですか。その損が、全部損するということがいえないまでも、少くとも公開の席で私の前で、大ぜいいるときに、静岡県の経済部長も水産課長も、これをやれば全滅する、今まではあちこっち入江を埋めて枝を切ってきましたけれども、今度これをやればもとが枯れます、こう言っているのです。水産業者はおやめになって、ほかに転換していただくことを考えてもらわなければならない、大きな損害があると、舞阪の漁業協同組合の公開の席上ではっきり言っている。それも計算に入れないで、わずか米麦合せて一万九千石ばかりのものでやっていくことは変じゃありませんか。この計算を農林省ですでになさったのか、率直におっしゃい。こういう問題は率直に言うべきですよ。これに関係して農民及び漁民約一万人の諸君が、血の雨を降らせるかどうかという問題です。私は何も農林省を責めようというのじゃない。こういう問題は、今のような非常に大きな基本人権に関する問題になっていますから、民主主義の根本を侵すようなことになってはならぬから、お互いによく話し合って妥結の道を考えたい。それについては実態を明らかにしなければならぬ。実態を明らかにするために私伺うわけですから、私に変につかまえられてあとでぎゅうぎゅう言わされるということをお考えにならないで、率直に言ってもらいたい。
  207. 伊東正義

    ○伊東政府委員 今の県の人々が漁業者の組合に対しまして、これは全滅するということを言ったというお話でございますが、実はこの問題につきましては、われわれが聞いております範囲におきましては、漁業者の中でも、数からいいますと賛成の方がよけいであるということを聞いております。いわゆる水産関係者の中でも、促進派の方々もだいぶおりまして、この事業を一日も早く促進してくれという方々もございます。それで水産の被害を一体どう見るかということが、今先生のおっしゃっておられる中心でございますが、これがすなわちすぐに補償が幾らという問題になって参りますので、われわれとしましては、先ほど申し上げました学術調査団をさらに新しく編成いたしまして、昨年この調査をやりましたので、その調査を待ちまして、補償その他の話もしてみて、それでも納得されぬかどうかということをやってみたいと考えております。その金額の中に補償を幾ら見たか、補償に該当する損を幾ら見ているかという御質問でございますが、これはいま少しあとになりまして機会がありましたら、別途またお話したらいいのじゃなかろうかと考えております。
  208. 長谷川保

    長谷川(保)分科員 どうも納得しませんけれども、これ以上言うても仕方ないでしょうから、もう少し質問を続けていきます。今次三男対策というお話がございました。これも確かに農村の方としては考えなければならぬ大きな問題です。しかしこの事件に限ってみますと、今お話のように入植農家は三百戸、田を一町歩、宅地を五畝ずつあてがうという、増反の農家が千二十五戸、計画によればこれに二反ずつ与える、合せて千三百二十五戸の農家の経済の確立を期する、こういう計画のようでございます。この限りにおきましてはけっこうなことだと思うのであります。しかし一面、今度は人間の関係になるのでございますけれども、これによって犠牲になる漁業者の数というものは、農林省の調査でも五千二百五名、私の調査では八千人以上に上るのであります。もちろんこの中に、今あなたのお話のようなこれに賛成するという諸君もあると思います。それの実際の内容につきましては、後ほどまた申し上げますけれども、いずれにいたしましても、次三男坊対策ということもけっこうでございますけれども、こういう大きな数の漁業者がこの事件によって犠牲になるということは、非常に重大だと思うのであります。この農業の従事者の数といたしますと、この事業で非常によくなっていくというのは、大体千人ぐらいと私は見ています。一方今申しましたような非常にたくさんの、それをはるかにこす漁業者の生活が、非常に不安になる、破壊される。だから今金の問題を申しましたが、人間の問題として考えたら実に重大な問題で、軽々に行うべき問題じゃないと思う。この点は農林省は、当然漁民のことも農民のことも両方考えなければいけない。これは農地局だけの問題じゃないと私は思うのです。こういうような大きな問題を一方に控えているのだが、これは一体人間の問題として考えましても、簡単な問題じゃない。こういう問題を、被害を受けます者についてどうお考えになりますか。
  209. 伊東正義

    ○伊東政府委員 今先生おあげになりました関係漁民五千幾らという数でございますが、これは浜名湖全部の漁業者とわれわれは承知いたしております。今干拓いたしますところは、庄内というのはその一部の地区でございまして、これは過去のわれわれの統計でございますが、おそらく三割ないし三割五分程度の漁獲高を上げた地域じゃなかろうかというふうに推定いたしております。これを干拓いたしますことによって、残った大部分の浜名湖にどういう影響があるかということが問題なのでございますが、この漁業に対します影響につきましては、全滅してしまうのだ、五千人全部ほとんど水産関係で生活できなくなってしまうのだという御意見かと思いますが、われわれはその点につきましては若干見解を異にしておりまして、どのくらい漁獲が減るかということにつきましては、先ほど申し上げました調査団の調査を待ちまして、どういう影響があるかということにつきましては、仕事をやる場合には適当な補償をいたしました上でやっていくという考えでおります。
  210. 長谷川保

    長谷川(保)分科員 それではもう少し話を進めてからにしましょう。この干拓ということが、今の農林省の資料からしますところの経済効果から見て、あまりにも犠牲が大きいぞということをもう少し申し上げてみたいと思うのです。またそれに対する御意見を伺いたいと思うのです。  この干拓の予定水域七百余町歩というもの、ほとんど浜名湖の全域に養殖カキが行われておる。これは飛行機から見てもみごとなものであります。そうしてその間々で、またそこから育って参りますクルマエビその他を出口で捕獲しているわけであります。だから全くみごとなほどにこの七百余町歩全域が、非常に効率の高い漁場として利用されております。しかも、その養殖されましたカキの一部は、くん製されてアメリカに輸出され、多額のドルをかせいでいる。さらにまたここでとれます種ウナギ、これも御承知の浜名湖の周辺の養殖場に入れまして、ウナギを養殖いたしまして、日本の養殖ウナギの八割をとっております。しかも、このウナギがくん製されて一部外国に輸出され、ドルをかせいでいる。こういうところなのに、もしこれを埋めるとすれば、このカキはもうどうにもならなくなってしまう。これは簡単に他に移せるというものではない。これは水と塩の濃さの問題、プランクトンの関係その他で、非常にいい条件でなければ育たない。でありますから、このカキのことでも、ある時期浜名湖の外洋に近いところに置くのでありますけれども、そこからこの水域に持ってきますと、二週間くらいのうちに身が倍になる。他のところではそれができない。そういう重要なところでありますけれども、こういうふうにドルをかせいでいるということ、またそういう重要な養殖をしているところだということを農林省は御存じで、このことをやろうとしているのかどうか、伺いたい。
  211. 伊東正義

    ○伊東政府委員 庄内干拓の予定地がカキの種場であるというお話でございますが、われわれも、大体、今度干拓をやりました場合に一番問題になるのは、先生御指摘のカキだと思っております。それで、これはドルの問題というお話でございますが、食糧自身もまだ入れているという問題もございますし、どちらがどうという問題になりますと、また比較計算をしなければならぬわけでございますが、われわれとしましては、そこでもしも影響が出ますれば、それはカキとかノリとかでございますので、これはまた水路を変えることも考えましたり、いろいろな手段を考えまして、施設につきましては被害をなるべく最小限にしたいということで、国も考え、県も、実は浜名湖につきましては、浜名湖の総合開発ということで、水産につきましては、漁港の問題でありますとか、あるいは漁床を作るとか、いろいろなことを計画いたしておりますので、われわれとしましても被害のなるべく少い措置を考えて、その上でどうしても被害が出ますものにつきましては十分な補償をしていくという考え方で、話し合いがもしつけばやりたいという考えでおるのでございます。
  212. 長谷川保

    長谷川(保)分科員 それでは話を進めましょう。沿岸漁業は近年衰微しているというのが大体定説であります。そこで浜名湖の漁業というものも一緒くたにしている。ところが浜名湖の漁業は年々再々ふえている。お宅の方の資料にもそのふえておる量が入っております。しかもだんだん港口がつぼまって水が出入りできなくなったのか、一昨々年でございましたか、二十五号台風以来非常に大きくあいて、たくさん出入りするようになった。そうして最近港口を整備し、防潮堤を作るというようなことからいたしまして、なおさらそれが広くなった。年々これはふえておる。この事実を御存じでしょうか。御存じの上でこの干拓計画をやろうとなさるのでしょうか。
  213. 伊東正義

    ○伊東政府委員 台風によりまして、そこが開きまして漁獲がふえたというふうな直接の因果関係があるかどうかは、私存じませんが、今先生から御指摘ありましたように、港口を広くするというようなことは、一部が商港でもございますし、企画庁でも調整池等もつけまして導流堤をつけたりしておりますので、存じております。これは農林省の統計のとり方の問題もございますが、最近漁獲高が若干ずつ前よりもふえておるということが、数字の上では出ております。
  214. 長谷川保

    長谷川(保)分科員 私は、ここは簡単に総合開発の一環として埋めてしまっていいなどというところではないということを、よくお考えになっていただかなければならぬと思うのであります。経済効果は漸次上っている。その点だけを考えましても、そういうことがいえると思います。  先ほどもお話がありましたように、昨年の八月の三十日から十二月十一日にかけまして、静岡県の委嘱によったということでございますが、農林省の方でもごあっせんなさいまして、数回に分れて、東大の大島教授その他六名の学者諸君が――これは私の強い要求でもあったわけですけれども、浜名湖の水産学術の調査に行かれた。その結果はまだ十分わからぬ、近くわかるというお話でございましたが、これは早く行った人とおそく行った人があるわけです。早く行った人の分については相当明らかになっておると思うのですが、この点は農地局の方でおわかりになっておらぬでしょうか。
  215. 伊東正義

    ○伊東政府委員 この調査につきましては、実は行かれました方々からまだ報告はもらっておりません。私の方は、県が仲に立ってやりましたので、県に対しまして早く正式な報告を出してくれという督促を実はいたしております。
  216. 長谷川保

    長谷川(保)分科員 この中には、水産庁の藤永調査研究部長も入っておるわけです。だから少くも藤永さんからはこの報告は出ているはずだと私は思う。それはどうでしょうか。研究調査の結果は出ておりますか。
  217. 奧原日出男

    ○奧原政府委員 学術団が調査に参りましたその調査の結果は、それぞれの専門の観点から合議をして結論を出さなければなりませんので、藤永さん自身の個人的な見解につきましては、私まだ報告を受けておりません。
  218. 長谷川保

    長谷川(保)分科員 だれであるかということは私もつまびらかにいたしませんし、申しませんけれども、この学術調査団の一部の学者諸君は、調査直後に、現地で、この庄内干拓はすべきでないという発言をせられておる。それが新聞やラジオで報ぜられておる。調査の結果がもしそうだったら、当然これはやるべきでないと私は思うのです。天竜東三河総合開発計画を訂正して、この計画をやめるべきだと思うけれども、もし学者諸君の調査の結果か、すべきでないという結論が出たとしたら、そういうことができるかどうか、農林大臣及び経済企画庁の方と両方から伺いたい。これは静岡県では、学者諸君がどういう結論を出しても、それは学者の説であって、自分たちはやるのだ、こういう不届きなことを言っておるということを耳にいたしますので、特にこの点について伺いたい。私は客観的な資料が必要だという点から、あくまで客観的な立場で、政治的な配慮を一切しないで、学者諸君に一つ調査してもらいたいということで、ただたび静岡県当局にも忠告をした。それで調査に行くようになった。ところが最近は、そういうことを言っているということである。そういうことを言っているということから、またただいま申し上げました一部の学者が、現地でラジオ、新聞等で放送しておりますようなことを申した。これはおそらく間違いでありますまい。NHKも申しておることでありまするし、中部日本新聞だったか、そのほかの読売新聞だったか、私はその資料をきょう持って参りませんでしたが、そう申しておるのでありますから、まさか間違いではあるまい。これらの学者諸君は、ノリの問題では水産大学の殖田教授、カキの問題では堀教授、一般の魚類の問題では東京大学の大島教授、潮流の問題では同じく東京大学の松江教授、港湾の問題では運輸省の鶴田技官、海嘯の問題では県の舞阪分場長野口技師、水産庁調査研究部長藤永元作、こういう人々がやっておるわけであります。こういう人々が結論をお出しになったら、それでもしすべきでないという結論が出たとするならば、政治的な配慮は絶対してはならぬと思う。もし政治的な配慮を与えるとすれば、これは国民に対する不信です。反逆です。なぜなら、十六億というようなものを投じて、経済効果がマイナスになるというようなことをもしするとすれば、これは主権者である国民に対しまする非常な反逆である、不信である。糾弾せられなければならぬ問題だと私は思うのであります。もしそういう結論が客観的な立場で出るとしましたら、農林省はこの計画をおやめになるか、訂正なさるか、経済企画庁はどうなさるか、御意見を伺いたい。
  219. 三浦一雄

    三浦国務大臣 きょうは長谷川さんからいろいろお尋ねのありました過程におきまして、私も初めてこの事案の真相がわかったようなことであります。しかしこの質疑並びに応答の過程にありましても、いわゆるアンノーン・ファクターが非常に多い。つまりこれが問題なのであります。これを究明する一つの手段として、学術調査団が派遣され、その正当な調査の報告を待っている、こういうことでございます。これはどういう結論が出ますか、予断はいたしようもありません。長谷川さんは、もしそれやめるべきだという意見が出たならば、こういう仮定で仰せられましたが、まだその調査団の報告もないことであります。これらの調査団の構成並びに成果というものは尊重しなければならぬと思いますが、その調査の成果を待ちまして、そしてそれを十分に検討して対処すべきであろう、こう考えます。本案を経済企画庁等と話し合いまして、やめるかあるいはするかということは、その調査団の報告を待って、さらにそれを正確に検討すべきものであると考えます。ただ単にいわゆる政治的配慮というような予断をもってと取り扱うべきじゃないと考えております。
  220. 淺村廉

    ○淺村政府委員 この特定地域の開発計画は、国土開発法に基きまして経済企画庁が原案を作りまして、閣議決定をいたしておるのであります。従いまして企画庁といたしましては、各事業の円滑なる実施については重大なる関心を持っておるわけでございますけれども事業の実施につきましては、あるいはその監督につきましては、それぞれの事業につきまして直接予算をお持ちになっておる各省がやっておられることでありまして、本件の場合は、農林省においてその実施を担当されておるわけでございます。もちろん私ども担当各省から種々お話がございますれば、またそれ相応に研究もいたしたいと思っておりまするが、この件につきましては、先ほど来農林大臣からもお話がございましたが、農林省においていろいろ御研究でございまして、いずれまたお話がございましたならば、企画庁としても何らかの考えをいたしたいと考えておる程度でございます。
  221. 長谷川保

    長谷川(保)分科員 今お話のように、昭和二十九年六月、天亀東三河特定地域総合開発計画というのが閣議で決定されたときに、この事業については、実施するというものと、または調査の上実施する事業として決定する、こういうように二色のものが入っておるわけです、総合計画の中に。一体この事業はどちらに入っておったのでしょうか。経済企画庁の方から伺いたい。
  222. 淺村廉

    ○淺村政府委員 ただいまお話がございましたように、実施計画とり調査の上実施するものと二通りに分れておりまして、本計画は実施をする側に入っております。
  223. 長谷川保

    長谷川(保)分科員 そうすると、調査はしないで実施するということですか。今のお話ですと、実施する中に入っておるというのは、調査しないで実施するということになりますね。
  224. 淺村廉

    ○淺村政府委員 もちろん事業を実施するのでございますから、調査せずやるということはできないと思うのでありますが、ここにございます実施すべき事業というのは、もちろんその後の調査も必要かと思いまするが、一応事業を実施するという程度の段階にすでに計画としてあるものを掲げております。調査の結果実施するというのは、まだそれこそ海のものとも山のものともつかない、しかしこういうことを今後やってみたいというふうなもつのを掲げておるのでありまして、その点はっきり区別いたしておるわけであります。
  225. 長谷川保

    長谷川(保)分科員 その点私は無知で判断がよくつかないのでありますが、今のような実施をする事業として一応決定をしておる、しかしその後の調査をしていって、経済効率は逆である、マイナスであるということになった場合には、経済企画庁といたしましてはそれをやめることがありますか。従来どういうふうになっておりますか。あるいは従来そういう例がなかったのか、こういう点を伺いたい。
  226. 淺村廉

    ○淺村政府委員 私どもといたしましては、先ほどお話申し上げましたように、詳しく申しますならば、各県が計画を立てられて、各担当の省がそれについて検討を加えられたものが参っております。それを私の方で全体計画としてまとめるわけでございますから、事業の実施については、それぞれの各省責任においておやりになっておるわけであります。この問題をいかがいたすかということは、農林省の方でまずおきめになることでございまして、私どもはそのお話を伺った上でなければ、今何とも申し上げかねる次第でございます。
  227. 長谷川保

    長谷川(保)分科員 もし農林省の方で、今後お互いにいろいろよくこれを勉強していって――先ほどのお話だと、どうもまだ勉強してないようだが、十分勉強していって、十分な調査をしていって、やはりやるべきでないという結論が出た場合には、この計画からはずしても、企画庁の方は少しも差しつかえないのですか。
  228. 淺村廉

    ○淺村政府委員 まだ農林省でいろいろ検討されておる段階でありまして、今直ちにその結果こうなったらこうということはお答えいたしかねるわけでございますが、いろいろお話も伺いまして、今後善処して参りたいと考えます。
  229. 長谷川保

    長谷川(保)分科員 私の聞きたいのは、そういう計画を一応経済企画庁の方で立案をして、一応閣議決定されたというものでも、その計画必ずしも完全にするというわけではなくて、その後の調査その他によって、これはやはり削るべきだというようなこと、つまり経済効果がない、マイナスだというようなことになれば、やめるということが従来あったのかどうか、また今後でもそういうことがあるかどうか、それをお聞きしたい。
  230. 淺村廉

    ○淺村政府委員 私どもの従来の経験では、一応閣議決定されましたものが、経済効果等の点から取りやめになったということで、変更した例はございません。
  231. 長谷川保

    長谷川(保)分科員 しかし将来はそういうことはあり得ますか、どうですか。あり得ると仮定できますか。仮定の問題ですが、今言質をとってどうしようというのではありません。悪いことをやるというのは変だと思う。
  232. 淺村廉

    ○淺村政府委員 将来のことですから、私も何とも申し上げられません。今まではそういうことはありませんでした。
  233. 長谷川保

    長谷川(保)分科員 それ以上あなたを責めてもなにですから、企画庁の長官とでも話してみましょう。どうもこの問題は、私が現地でよく調べてみますと、農林省は漁民の反対を甘く見ていると私は思うのです。先ほど来もお話しのように、この水域は浜名湖周辺の十六の漁業協同組合の共同正漁業権が確立しているところです。この十六の漁業協同組合のうちで、賛成しているのが十二組合でありますが、しかし問題は、数の上で十二組合といっても、実態はつかんでないのです。つまり十二組合は非常に小さな組合ということです。ではどうして十二組合が賛成しているかといえば、現地で実際に調べてみますと、大体三つの理由で賛成しています。一つは、この小さい漁業協同組合があります村あるいは部落というようなところ、その地区では、農家の数が絶対的に多数だ。そのために、反対をあくまで主張すれば村八分になってしまうということだ。これで漁民が目をつぶってしまったということです。第二はこの地区の小さい漁業者でありますが、その漁民の大半は半農半漁で、必ずしも漁業に大きな経済的な依存をしておらぬというのが理由です。第三は、その大部分の組合の所在地が干拓地域から遠い、あるいは直接干拓地域に接しておって、畑になれば、田んぼになれば、すぐ先に自分が入れるというようなこと、そしてそのために、その村では今まで漁業をやっておったよりもいい生活に必ずなるようにするから、こういうことを言っている。そういうような理由で、この地区の小さい漁業者はこれに賛成をするという形をとっているわけです。ところが反対の方の四つの漁業組合は、漁業専業者が非常に多い。これは舞阪、新居、雄踏、入出という漁業組合ですが、専業者が非常に多い。干拓によって生活の全基盤を失うものがほとんどであります。この点は農林省の資料でも、反対四漁業組合、もう一つ村櫛という漁業組合を入れまして、五つで全水揚高の七〇%以上だ、こう書いてあるわけです。しかも賛成の方の小さい組合の方は、お宅の資料でも各組合それぞれ五%以下、五%以下でも、それは七〇%ですから――平均すれば三%くらいということがお宅の資料にも書いてある。これはだれが見ても一応認めていいわけです。さらにこの資料及び現地の漁業協同組合から直接私が公式の文書としていただきましたのを調べて参りますと、農林省の資料とおそろしく違っている。今の賛成の十二の組合で、正組合員と準組合員合せて三千四十八名というのが、お宅の資料です。この準組合員は主として肥料用のモを取っているというようにお宅の資料には書いてある。ところが反対の四組合、これば二千百五十七名とお宅の資料にはなっております。漁協について今申しましたように公式文書による回答を私が求めまして、それによって調べてみますと、たとえば舞阪町の漁業協同組合だけでも、農林省の資料では正組合員五百三十一、準組合員零となっております。ところが今申しました公式文書による回答によりますと、湖面、つまり浜名湖の湖内と外洋に漁業者が分れておりますが、湖面の漁業者だけで、舞阪の漁業協同組合では正組合員が八百二十三、お宅の方でいえば五百三十一、その他の漁業従事者が、お宅の方では準組合員零となっておるけれども、舞阪町漁業協同組合からの私に対します公式文書に書いてあるのを見ますと、その他の漁業従事者は千五百九十九とある。これは非常に違っている。入出の漁業協同組合で見ますと、正組合員、準組合員以外に、漁業従事者というものが五百十八人ある。これはお宅の資料に全然載っていない。正組合員と準組合員の別は、お宅の方は、準組合員というのは主としてモをとっているのだ、こう書いてありますけれども、実際にそうではなくて、これは組合で違いますが、ここの地区では一年のうち七十日以上出漁するかどうかできめているわけです。いずれにいたしましても、ただいま申しましたような漁業従事者というものが、別にたくさんあるということをお考えにならなければならぬ。これは反対の漁協の方はことに非常に多い。なぜこういうものができてくるかと申しますと、これは正組合員は組合費をかけられるからであります。それから税金の問題も当然ありましょう。そこで一軒の家で一人が正組合員だ、他はもぐりの漁業従事者である、こういう形になるわけであります。こういうものがお宅の方の資料では全然考えられておらぬ。こういうように考えて参りますと、この四つの漁業協同組今日は、大部分の方が漁業を専業にしているのです。もちろん半農の人もおりますが、言うに足りないほどの、自分の家でほんのわずかのものをとるというほどの農地でありまして、専業に近いのであります。こういうように考えて参りますと、お宅の調査は実際とずいぶん違ったものになっている。これはお宅だけの責任ではなくて、静岡県の責任もあるかもしれません。静岡県があくまで県としてここをやりたいというようなところからいっているのかもしれません。いずれにいたしましても、こういうようにこの問題の実情を調べて参りますと、この仕事に反対の漁業従事者を含めます漁業者は五千人以上はある。お宅の方では二千何百人になっておりますが、五千人以上は確実にある。また賛成をする方の人々もしばしば私のところにやってきて、先生あくまで反対の交渉をしてもらいたい――賛成の漁業組合の諸君がですよ、夜しばしば私のところにやってきて、先生あくまで反対してもらいたい、私らはもう部落で言えないんだ、言えば村八分になる、何とか反対をしてくれ、こう言っているのがずいぶんあるわけです。これは非常におかしなことでありますけれども、この賛成の湖東庄内の地区では、漁業者の方の立場に立ってやる代議士が、政治家が一人もいないものだから、私が頼まれて一応この人たちの相談に乗っているわけです。そこで湖東庄内の地区では、私を悪魔のごとくに言うわけだ。しかるにもかかわらず、この地区で、一つの村から選挙になると千票から千四百票ぐらい投票が出てくるわけです。このことは明らかにそれを示しているのです。その漁業者の数、そういう人たちがやはり私をあくまで支持しているという線があるわけです。それだから、農林省の資料によると、どうも賛成の方が多いんだというお話が先ほどもございましたが、事実はそうではないということを見なければだめですよ。漁業協同組合のほとんど全部は反対なんだ。けれども村八分にされることをおそれて、小さい組合の人はものを言うことができない。先ほど言いました基本的人権を侵害するおそれがあるということ、生活権の問題になっているということは、このことを言っている。民主主義社会においてはそういうことであってはならない。ところが事実はそうなっている、こういうように思うのです。私は調べて参りました資料と、農林省の資料とがこういうように違うのだが、この点をもっと調べる御意思はないか。そうして実態を正確に把握することが大事だと思うが、その点はいかがでありましょうか。
  234. 伊東正義

    ○伊東政府委員 今御指摘の組合員の数がだいぶ違うじゃないかということでございます。これは私の方も、県等に中心になって調べてもらった数字でございますが、もう一回精査するということは当然やっていいことだと思います。ただ数字の違いの点でございますが、実はわれわれもいういろいろまなく漁獲高などを、組合を通しての数字あるいは県の数字、農林省の統計の数字等見ているのでございますが、これも実はかなりの違いがでございます。でありますので、漁獲高の数字でございますとか、今先生のおっしゃいました組合員の賛成なり反対の数字というものは、われわれとしましては、最後まで念には念を入れて十分精査いたします。
  235. 長谷川保

    長谷川(保)分科員 それじゃもう少し話を進めまして、水産庁に伺いたいのだが、共同漁業権が浜名湖にも相当にあるわけです。十六の漁業協同組合の共同漁業権が設定されている。この共同漁業権があるときに、十六の漁業協同組合全部の承認がなくて干拓工事ができるかどうか、この点を伺いたい。
  236. 奧原日出男

    ○奧原政府委員 共同漁業権の権利者に対しましては、権利者の承諾を得なければその権利を消滅させることができない、かように考えております。たた土地収用法、そういうものの適用を受けます事業につきましては、強制収用の余地がございますけれども、この事業がそういう形において実行されるとはわれわれ考えておりません。
  237. 長谷川保

    長谷川(保)分科員 この共同漁業権は昭和二十六年に設定されまして、十年間、三十六年の八月まで一応設定されているわけです。そのときに漁業者がなお続いて漁業をしていきたいということであります場合、漁業法から見まして、継続して事業をやっていこうという場合に、私は当然これはまた更改され、継続をされていくと思うが、この点はどうでしょうか。
  238. 奧原日出男

    ○奧原政府委員 今の漁業法におきましては、共同漁業権の当然更新という規定はございません。常に新規免許として審査し、決定するわけでございます。しかしながら、従来の権利を持っており、引き続き漁業をやるという者に対しましては、これは当業免許を与えるべきものであると、かように考えております。
  239. 長谷川保

    長谷川(保)分科員 その場合、今のような権利というものは私は確立しておると思う。これは農地法の場合も同様でございますけれども、漁業法の場合でも同様に確立していると思うのでありますが、これを強制的に取り上げるというようなことはできませんね。水産庁の御意見を伺いたい。
  240. 奧原日出男

    ○奧原政府委員 今日船舶の航行その他の公共の必要のあります場合におきましては、漁業権を取り上げることは可能でございます。しかしながら、これは法律の規定によりまして、当然補償しなければならない、こういう規定がある次第でございます。その場合にただいまの干拓事業が該当するかどうかということにつきましては、われわれとしてももう少しよく研究させていただきませんと、この場でお返事はいたしかねるわけであります。
  241. 長谷川保

    長谷川(保)分科員 ごもっともな御答弁でございます。しかし、今までの質疑応答で大体干拓の事業については概要がおわかりだと思いますが、こういう場合に漁業権を強制的に取り上げることができるでしょうか、どうでしょう。
  242. 奧原日出男

    ○奧原政府委員 私は、法律論を離れまして、こういう問題は実態についてやはり納得をさした上で解決するということで、今日まであらゆる案件について処理をいたして参った次第でございます。従って、やはり法律論を離れました実態的な解決に努めるべきである、かように考えます。
  243. 長谷川保

    長谷川(保)分科員 それでは農林大臣にこの際伺っておきたいのですが、先ほど来お話しのように、漁民が非常に反対をしておるわけです。また私は実情を見て無理はないと思うのです。この付近の漁業者は相当豊かな生活をしておる。家を見ましても、非常に大きな家に住んで豊かな生活をしておるのです。だから漁民がなかなか納得しないのです。漁民が納得をするかせぬかという問題は、政治に関する問題であって、今水産庁長官がおっしゃったように、実際に納得なしに取り上げることは、今日の民主主義の社会ではあり得ないと思うのです。そこで漁民が納得することなしには絶対にこの工事に取りかかることはないかどうか、その点を農林と水産の両方の責任者である大臣に伺っておきたい。
  244. 三浦一雄

    三浦国務大臣 法律論は別にいたしまして、今まで干拓等の大工事につきましても、たとえば秋田県の八郎潟等も、これまた非常に広範な漁業権を持っており、また関係する者も、今設例の事態よりももっと多い事件でございました。しかし同時にまた、経済効果は非常に大きいものですから、当該地方におきましては、熱心にこの実施を推進した、こういう経緯でございますから、その過程においても、県庁なり地元の方で十分に話し合って、納得づくで進んできた事情にもかんがみまして、農林省といたしましては、法律でもって強制するというよりも、もしもほんとうに経済効果等があってこれらの干拓を進めるべき場合だといたしましても、地元民が納得をしてほんとうに円満な解決のもとに進めるべきであろう、こう考えておるわけであります。
  245. 長谷川保

    長谷川(保)分科員 それでは一応御答弁で、この問題が不幸な結末にはならぬという見通しの立ったことを、私ども非常に喜ぶものでありますが、さて、もし話が順次妥結に向って進んでいくというようなことがあると仮定いたします。実はつい二、三日前も、この漁業協同組合の反対期成同盟の四つの組合の漁民諸君は、非常に強硬な声明を出しております。どんなことがあっても絶対にこれ以上話し合いに応じない。もししいて事業を進めるというようなことを農林省がするならば、直ちに出動して一切を粉砕する。その際どんな犠牲が起ってもいとわないというような、非常に強い決議をして声明を出しておるようでありまして、事態は必ずしも楽観を許しません。しかし、もしただいまのお話のようにこの工事を進めるとすれば、当然相当の補償をするということになるらしいのでありますけれども、そういう場合に先ほどもちょっと補償の話が出ましたが、農林省といたしましてはどういうような補償をしようと今日準備をしておるか、またその額は、先ほどのお話の十六億何ぼという金の以内だけなのか、それ以外にも場合によっては出ることもあるのかということを承わりたい。それ以外に出ることもあるといたしまして、反当事業費と合せまして幾らまでならばこれがやれるのかやれないのかというようなことを、できればお漏らしをいただきたい。もしこの公開の席で、あとの補償のためにできないということであれば、後ほど、その額については私は絶対秘密を守るということを国会議員として大臣にこの際お誓いを申し上げて、あとで秘密に教えていただいてもいいわけであります。そうすれば、その額によっては、私も及ばずながらあっせんをする線が出るかもしれない、こう思いますので、秘密に漏らしていただいてもいいのです。
  246. 伊東正義

    ○伊東政府委員 どういう補償を考えているかというお話でございますが、われわれの希望でございますが、八郎潟の大干拓を計画いたします場合には、実は県も中に入ってもらいましさ、直接漁業者の中から代表者に出てもらいまして、その人にみんなが一任するというような格好の補償対策委員会というものが地元にできまして、その代表の方々と相談をしました上で、最後の補償の額を決定いたしました。ての場合の補償は、これはほとんど金銭補償という形で補償をいたしました。われわれといたしましては今度の場合、もしもの仮定でございますが、できますればそういう形の何か対策委員会でもできれば、そういうところと話し合いをしていくというのが、最も望ましい形ではなかろうかというふうに考えております。それから金銭補償の問題でございますが、これは原則でございまして、もしもどうしても地元におきましてそれにかえて施設をしてほしいということがございますれば、一部施設補償をし、一部金銭補償をするということも当然考えられると思います。それから補償の額の問題でございますが、これは十六億六千万で絶対動かぬかという一つの御質問でございますか、これは一応の概定でございまして、工事によりましてはそれ以内でできる場合もあり、それよりこすという場合もございますので、それが絶対の額だというようには私どもはとっておりません。工事のやり方、補償のやり方で、若干の移動はあると考えております。額等につきましては、実は先ほど御答弁いたしましたように、この庄内干拓をもしやりました場合に、これが浜名湖全部に対してどういう――実は稚魚の問題で、庄内の干拓地区内で育った稚魚が、浜名湖の方にどのくらい出ていくのかということが、学術調査団の一つの大きな目的になっております。そういうことなど考慮いたしまして考えている問題でございますので、また別な機会におきまして先生ともいろいろ御相談したいというふうに考えます。
  247. 長谷川保

    長谷川(保)分科員 おそらく干拓工事などにつきましては、一応反当幾らぐらいまでならばするが、そうでなければできないという額があるだろうと思います。これは農林省の方でも大蔵省の方でもけっこうですが、大体そういう額があるだろうと思います。経済効果の問題がそこにありますけれども、同時にまた、一応ただいままでのお話でもわかりますような、反当どのくらいの額まではやるのだが、それ以上はできないのだという、一応のきまりがあるだろうと思うのでありますが、その点はいかがでしょうか。
  248. 伊東正義

    ○伊東政府委員 これは結局干拓の場合ですと一部農民が負担するという形になりますので、われわれの考え方としましては、農民負担の最高限は大体五万五千円ぐらいまでと考えまして、農民にはそれ以上負担させないという前提で、ものを考えていくというような方針でございます。
  249. 長谷川保

    長谷川(保)分科員 法律によると、反当五万五千円まで、それ以上のものはその値段で与える、農民に分けるということになっております。それからそれにつきましては年六分の利息をつける。それで二十五年というようになるわけだが、五万五千円で年六分で二十五年くるということになった場合に、元利反当幾らに当りますか。
  250. 清野保

    ○清野説明員 特別会計によりまして、反当最高五万五千円を負担します場合の三年据え置き二十二年償還の場合は、大体平均年間の償還額が約四千五百円であります。
  251. 長谷川保

    長谷川(保)分科員 先ほどの質問に対するお答えがなかったわけでありますが、この干拓をやるのに、反当最高額幾らぐらいならば干拓をなさるのか。農民に分けるのは今わかりましたが、農民に分けるのではなく、国の予算としては反当どれくらいな最高限度になっているのか、それを承わりたい。干拓をしていく場合、場所にもより、いろいろなことによって、いろいろになるでしょうが、最高限度反当幾らまでならば干拓をするということに限度があるだろう、一応の押えがあるだろうと思います。それ以上かかったのでは、どう考えてもとてもだめだからやらぬというのがあるだろうと思います。この場で伺えればもっとけっこうですが、この場で今伺うことができなければ――一体反当幾らならば工事にかかるのか、かからぬのか、その最高限度です。
  252. 清野保

    ○清野説明員 先生の先ほどからお示しのように、これの妥当投資限界が一・一になっております。従いましてこの事業の妥当投資額は三十二万円にかけた一・一、つまり三十五万何千円というものが、この際の妥当投資額を計算しますところの最高限界、こう考えます。
  253. 長谷川保

    長谷川(保)分科員 そうですが、ありがとうございました。だいぶ長いこと伺いましたので、時間がおそくなりましたから、この程度にしておきたいと思うのでありますが、いずれにいたしましてもこの干拓は、大臣が先ほど来お聞きのように相当問題があるものであります。ことに――今はもう時間がおそくなりましたから申し上げませんが、この庄内干拓というのは、浜名湖という、これは鹹水湖でありますが、これの特別な事情がありまして、相当大きな水域を残しておかなければ、天竜川から出ます漂砂が今非常に大きな問題でありまして、これが浜名湖の外側の遠州灘にありまして非常に大きなじゃまをしておるのでありますけれども、この漂砂やあるいは潮流によって舞阪漁港がもうすでに埋まっている。今日埋まりつつあって、非常に困る事情にある。またこの湖の口が埋まってしまうということになるおそれが多分にありまして、なかなか政府の方でも長年の間骨を折っておるところであります。いろいろ重要な問題をはらんでおるのであります。率直に言うて、今まで伺ったところでは、どうも私は調査が非常に不十分だというように考えられるのであります。現地の実態を調べましても、そう思うのであります。総合開発計画というようなことは非常にいいことであり、やらなければならぬことでありますけれども、今申しましたように、その陰でまじめに働いております勤労農家あるいは漁民というような人々が、ずいぶんとそういうはなばなしい政治的な仕事の陰に生活権を奪われ、あるいは基本人権を奪われて、侵害せられて泣いておるというようなことも十分あるのではないか。これはこの事件のみならず、全国的な問題といたしまして、私はこういうような総合開発計画で、ことに御関係の深い農林省及び経済企画庁、こういうような当局におかれては、尊い国民の血税を多額につぎ込んでやる仕事であって、しかもその中でそういうようなことが行われ、今私が申し述べましたことがもし真実であるとすれば、経済効果は逆になってしまうわけです。こういうような、日本の国と国民の生活をたといわずかでも――全体からいえばわずかでありましょうが、破壊していくというようなこと、しかもまたその直接の関係者としては、生活権を奪われ、基本的人権を侵されていくというような重大な問題が現われている。こういうようなことが、しばしば全国的にあるのではないかということを私は非常に憂えるのであります。どうか当局は念にも念を入れて、そういうことのないように行政をしていっていただきたいということを切望いたしまして、大へんおそくなりまして恐縮でありましたが、私の質問を終ります。
  254. 石村英雄

    ○石村分科員 せっかく農地局の方がいらっしゃいますので、簡単な事実ですから、関連して一言だけお聞きしておきます。  大へん農地局は干拓に御熱心なようですが、山口県の阿知須町というところで干拓が行われておりまして、ほぼ完成に近づいてきていると思うのでありますが、地元の人に聞くと、あれはできましても、水がありませんから何にもなりませんと言っているのですが、そういう事実を御存じですか。また、御存じならば、それに対する対策はどのようにお立てになっていらっしゃいますか。
  255. 伊東正義

    ○伊東政府委員 今の御質問の点でございますが、今そこに水がなくて、あとで農業経営ができぬじゃないかというお話でございますが、まだ私どもはそういうことを存じておらないのでございます。
  256. 石村英雄

    ○石村分科員 別に水利の対策というものは考えられていないわけなんですね。
  257. 伊東正義

    ○伊東政府委員 干拓をやります場合には、あと水田で経営していくというようなときには、当然水の問題というものは考えてやっております。干拓地だけでなくて、背後から水をどうするかということは、当然考え計画を立てるべきでございます。今御指摘になりました干拓地区につきまして、私ども実はまだそういう問題を聞いておりませんので、もう少し調査いたしましてから御回答をした方がいいかと思います。
  258. 大平正芳

    大平主査 明二十七日は午前十時より開会し、農林省所管に対する質疑を続行いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後七時十三分散会