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1959-02-27 第31回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月二十七日(金曜日)     午前十時三十五分開議  出席分科員    主査 田中伊三次君       植木庚子郎君    周東 英雄君       中曽根康弘君    山本 勝市君       加藤 勘十君    北山 愛郎君       小平  忠君    多賀谷真稔君       松前 重義君     兼務       岡良  一君    佐々木良作君  出席国務大臣         法 務 大 臣 愛知 揆一君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 高碕達之助君         国 務 大 臣 伊能繁次郎君        国 務 大 臣 山口喜久一郎君  出席政府委員         内閣官房長官  赤城 宗徳君         法制局長官   林  修三君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         防衛庁参事官         (装備局長)  小山 雄二君         総理府事務官         (科学技術庁企         画調整局長)  鈴江 康平君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   佐々木義武君         総理府技官         (科学技術庁調         査普及局長)  三輪 大作君         外務事務官         (大臣官房長) 内田 藤雄君         外務事務官         (アジア局長) 板垣  修君         外務事務官         (アジア局賠償         部長)     吉田健一郎君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         外務事務官         (国際連合局         長)      宮崎  章君         外務事務官         (移住局長)  伊關佑二郎分科員外出席者         原子力委員   有澤 廣巳君         大蔵事務官         (主計官)   海部 洋平君     ————————————— 三月二十七日  分科員岡田春夫君及び北村徳太郎委員辞任に  つき、その補欠として多賀谷真稔君及び山本勝  市君が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員賀谷真稔委員辞任につき、その補欠  として岡田春夫君が委員長指名分科員に選  任された。 同日  第二分科員岡良一君及び第三分科員佐々木良作  君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十四年度一般会計予算皇室費国会、  裁判所会計検査院内閣総理府経済企画  庁を除く)、法務省及び外務省所管昭和三十四  年度特別会計予算総理府所管      ————◇—————
  2. 田中伊三次

    ○田中主査 これより第一分科会を開会いたします。  昭和三十四年度一般会計予算皇室費国会裁判所会計検査院内閣総理府法務省及び外務省所管昭和三十四年度特別会計予算総理府所管を議題といたします。  質疑を続行いたします。北山愛郎君。
  3. 北山愛郎

    北山分科員 私はきのうの残りで、法務省関係、それからもし来ておられるならば、防衛庁のことにつきまして若干お伺いしたい。  予算書についてお伺いしますが、予算書を見ますと、きのう申し上げた通りで、法務省という役所は割合に収入の多い役所で……(「法務省はいないよ」と呼ぶ者あり)それでは防衛庁をやります。  簡単に二、三点お伺いしたいのですが、今度の防衛庁予算は約百六十億ふえておるわけです。人員も一万二千八十二人、年々増強されておるわけでありますが、そういたしますと、大体この資料を見ますと、陸上においては自衛官一七万人、そのほかに一万三千四百八十人、合せて十八万三千四百八十人、海上艦艇が十二万八千三百八十八トン、航空機の方が千六十四機、そのほかに海上航空機が百九十八機、こういうことになっておるのですが、私どもが聞いておりますいわゆる防衛計画によりますと、陸上自衛隊が十八万、海上自衛隊が十二万五千トン、それから航空機が千三百機、こういうふうな計画を伝え聞いておるわけですけれども一体このように年々増強して、どこまで増強すればストップするのか、その防衛計画とこの防衛現状増強の今後の見通し、こういうものについてまずお伺いしたい。
  4. 伊能繁次郎

    伊能国務大臣 お答え申し上げます。御指摘のように昭和三十四年度、来年度予算で御審議をいただいておりまする人員増加につきましては、陸上自衛隊につきましては、本年度一万人の増員を御審議をいただいて承認せられた以後、昭和三十五年度末を目標といたしまして、ただいま御指摘のありましたように、陸上自衛隊十八万人、艦艇十二万四千トン、航空自衛隊におきまして千三百機という形に相なっておりまして、現状では陸上自衛隊十七万、海上自衛隊約二万五千強、航空自衛隊二万六千強ということで、その他は防衛庁自体の、制服職員でない事務職員でございます。従って政府できめられました昭和三十三年、四年、五年の三カ年度における最後の整備目標は、ただいまお話がありました通りでございまするが、来年度陸上自衛隊については、本年度一万人を増強いたしました関係上、主として特車その他陸上自衛隊の科学技術的な兵器の性能の向上進歩、そういった方面にできる限り重点を置く。なお従来陸上自衛隊の内務その他関係職員について、制服以外の職員で執務せられるところを制服職員をもってこれに充てておった面につきましては、来年度一千人程度をこれにかえて、陸上自衛隊建設隊あるいはロケット実験隊等の要員に充てることにいたしております。当面の目標は、御承知のように三十五年度末をもって、ただいまお話もあり、私から申し上げたような目標で一応の整備目標は達成せられるわけでございますが、その後のものについて、さらに第二次の整備目標につきましては、目下各般の見地から検討中でございまして、われわれとしては、人員増加もさることながら、現在の国際情勢、ことに科学兵器の画期的な進歩発展の現況にかんがみまして、航空機につきましてはジェット機を中心とし、また艦船については対潜警戒、対潜水艦作戦というものを中心にして、できるだけ人員増加よりも兵器の質的な増強という方面に向って研究を進めております。ただ御承知のように、本年度より米軍陸上関係につきましては補給部員を除いて全面撤退をいたしておる。またアメリカの空軍につきましても逐次撤退をする計画があるやにも聞いておりますので、それらの状況と、かつ日本をめぐる東洋全体の情勢が平和な方向に進みますれば、当面それほどの増強を必要とする段階ではないと思いますが、これは将来の日本並び日本をめぐる国際情勢のいかんによっても御承知のように左右されることでございますので、それらの点等十分考慮の上で、今後の第二次整備目標についてできる限り日本の国力、国情に応じた整備をいたして参りたい。今日いまだ具体的な数字をお尋ねの点について申し上げることのできないことははなはだ残念でございますが、できるだけ研究をすみやかにいたしまして将来の目標を樹立いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  5. 北山愛郎

    北山分科員 法務大臣が来られましたから法務に移りますけれどもついで国民の一人として疑問に思う点をお伺いしておきたい。それは防衛計画といわれるものが、実は新聞とかいろいろなことで伝え聞く程度であって、正式には防衛三カ年計画というようなものも国会にも出されておらないし、正式に政府から発表されておらないじゃないか。そしてアメリカの方には、この前岸総理アメリカへ行った際にも防衛計画アメリカ政府には提示をした、こういわれておる。なぜこの防衛計画というものを国会に出すとか、あるいは国民に明確にするということができないのか。アメリカの方には知らして、日本国民には知らせることができないのか。この点は私、国民の一人として非常に疑問に思いますので、その点を明らかにしていただきたい。  それからもう一点は今度の予算説明によりますと、この防衛庁予算重点としまして、間接侵略に対する防衛体制確立ということがうたわれておるわけであります。それが予算上どういうふうな面に現われておるのか、また特に予算編成上の方針として間接侵略に対する防衛体制確立ということをうたわなければならぬような事情がどこにあるのか、この二点についてお伺いをしたいのであります。
  6. 伊能繁次郎

    伊能国務大臣 お答え申し上げます。先生御指摘の点は、一昨年の国防会議におきまして、御承知のように国防基本方針が決定せられ、それに基いて当面の昭和三十三年度より三十四年度に至ります整備目標については当時政府としても発表いたしておりますし、またその後の国会の御審議においても明らかにいたしておるつもりでございます。決してアメリカだけに話をして、国内において国会における論議の対象にはしなかったとか、あるいは発表しなかったとかいうことはございませんので、この点は一つもしさような御理解でございましたらお改めをいただいた方が非常に私どもとして望ましいところと存ずる次第でございます。  また第二段の、来年度予算重点として間接侵略に対する方針云々というお話でございましたが、私ども予算間接侵略に対する重点措置を講じておるというような点は、特段に強調もしておらなければ示してもおらないと存ずるのでありますが、ただ業務計画内容において、間接侵略に対する業務方針というものは明示しております。これらについてはさいぜん御説明を申し上げました対潜水艦作戦、対潜防備各般航空機の哨戒であるとか、あるいはエリコンその他の誘導兵器研究でありますとか、海空を通じまして、自衛隊業務計画といたしましては間接侵略に対する自衛上の各般整備並びにこれに対する研究等重点を置いてやっておるということは事実でございます。
  7. 北山愛郎

    北山分科員 ただいまのお答えでありますが、防衛計画についても、国会でもいろいろと質疑をされてその過程において明らかにしておるいうことは私ども承知しております。しかし、何としても日本自衛隊計画というものがアメリカの方に出されて、そして国民には知らされておらなかった。だんだん追及をされて、その全貌が逐次明らかになる、あるいは正規の機関以外の新聞その他の報道機関の方からこれが伝わってくる、かような過程は私は好ましくないと思う。やはり国防会議等政府が決定をしたというならば、そういうものの内容は積極的に示すというようなことが好ましいのではないか。私は、長官のお言葉でありますけれども、そういう過程にかんがみて申し上げておるのでありまして、国民の方がつんぼさじきに置かれておるうちにいろいろな兵器が突如としてやってくるというような印象をぬぐうことはできない。こういう点は気をつけていただきたいと思うのであります。  それから間接侵略に対する防衛体制確立というのは、今度の予算説明資料の中に書いてあるのです。ですから私はお伺いするのであって、業務計画の中においてあると言われますけれども、それならそれでもって一体自衛隊間接侵略に対するような訓練をどういうふうな形で現わそうとしておるのか。あるいは間接侵略に対する危険が増大しておるというような事情が特別にあるかどうか。こういう点をほんとうは聞きたいのでありますけれども、私は、主として法務省のことをお伺いしたいのでありますから、防衛庁の問題はほかの人に譲っておきます。  それで法務大臣にお伺いするのですが、この予算書について見ますと、法務省収入が非常に多いのであります。裁判所とか刑務所とか、そういう役所収入をどんどんふやしていくということは、あまり歓迎すべきことではないのですが、特に罰金科料、こういうものが三十二億円もある。昨年に比べて約十億円も増収になっておるわけであります。国家財政の上からは大へん助かるわけでありますけれども、こういうふうに罰金とか科料が非常にふえておるというような事態は好ましくないと思うのですが、その罰金科料というものはどういうところから出てくるのか。特に交通取締り関係から来る収入が多いのではないかというふうに思うのですが、そういうような内容一つお伺いいたしたいのであります。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま御指摘の点はごもっともな点でございますが、一応この積算基礎になりました点を御説明いたしますと、次の通りでございます。  懲罰及び没収金という名で呼んでおりますのが三十二億円でございますが、そのうちまず罰金科料、二十九億六千万余りでございますが、これは最近までの収入実績等基礎として算出したわけでございまして、たとえば昭和三十二年度の四月から八月までの実績を申し上げますと、八億六千五百万、これと三十二年度全体の実績との関係を顧慮いたしまして、三十三年度の四月から八月までの同期間の実績をとりまして、そのパーセンテージをとりまして一つ基準とする。それから一方において、三十年度以降の実績算出いたしまして、これに最近の増加の比率をかけ合わしてみましたものを二十九億六千万と概算いたしたわけでございます。それからその次に、過料でございますが、これは二千九百万円。これもやはり最近の収入実績基礎といたしまして算出したものであります。それからその次に、没収金は二億一千百十九万円ばかりになりますが、これは昭和三十年度以降三年間の平均収入実績基礎として算出をいたしたわけであります。  それから次に、弁償及び返納金というのが七千二百万円ばかりございますが、これもやはり昭和三十年度以降三カ年の平均収入基礎として算出をいたしたわけでございます。そのうち、これはわずかなものでございますが、返納金が四百万ばかりございますが、これもやはり三十年度以降三年間の平均実績額基礎として算出をいたしたわけであります。それからその次に、同じく歳入に上りますものとして、ただいま特に罰金等の御質問があったのでございますが、ついでに申し上げますると、矯正官署作業収入が二十四億四千六百万ございます。これは刑務所作業収入少年院等職業補導によって生ずる収入見込み額、並びに婦人補導院同様職業補導関係収入がございますが、そのうちで少年院婦人補導院関係はほとんど少額でございまして、大部分が刑務所作業収入ということになるわけでございます。  ほかに物品の売り払い収入とかそのほかの雑件がございますが、これは特に申し上げるところもないと思うのであります。  一般的にこういったような収入が非常にふえるのはおかしいではないかという御趣旨の御質問でございまして、これはごもっともの点と思いますが、先ほど申し上げましたように、主として最近の実績基準にして算出しておりまするので、事柄の善悪は別といたしまして、ともかく最近における罰金科料等収入実績が相当多いので、これを積算基礎に置いたという関係になっております。  それから、矯正官署等作業収入等については、一面歳出の方でも、職業補導その他刑務所における教育刑目的を達成するというようなこと等いろいろな点で工夫を加えておりまするので、一面歳出も若干増加いたしました反面において、結果として作業収入が従来より若干ふえている。大ざっぱな御説明でございますが、こんなふうな考え方で組んだのであります。
  9. 北山愛郎

    北山分科員 法務省は、入ってくる金を実績によって見込みを作って計上したというだけなんですが、やはりこういうふうな罰金がふえる、犯罪がふえるというような傾向は、刑事政策というか、総合的なそういう立場から見てもいい徴候ではない、こういう印象を受けるわけであります。  そこで今、刑務所作業収入等お話がございましたが、刑務所に入っている人の人数、それから少年院に入っている収容者人数、毎年出たり入ったりする状況、こういうものは一体どういうふうになっているのか。最近は御承知のように犯罪が非常に激増しております。そこで刑務所が繁盛するということになろうかと思うのですが、一体刑務所収容人員はどのくらいになっているか、その出入りの関係はどうなっているのか、それをお伺いいたします。
  10. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほどの御説明に申し上げました中に特に申し上げたいと思いますのは、最近、道路交通取締り違反が非常に激増いたしておるということでありまして、その関係罰金収入というものは、先ほど申し上げましたように前年度における後半期においても非常にふえておりますので、これを一応積算基礎にしたわけでございます。こういった案件がふえますることは非常に残念でございまするけれども、申し上げるまでもなく、現在の道路交通状況からいたしまして、非常にこの関係が激増しているという点が最近における特色であると存じます。  それからその次の、ただいまの御質問でございますが、三十三年の十一月末現在におきまして、受刑者総計が六万五千七百二十一人でございます。それから被告人、これが一万二千八百十四人、それから被疑者が九百二十六人、それから労役場留置者が五百三十六人、それから、それらの人に付随いたしまする乳児その他が四十名、合計いたしまして、拘置所刑務所少年刑務所に在所しておりまする十一月末現在の全体の数が八万三十七人、大よそ八万人がただいま刑務所拘置所並びに少年刑務所に収容されている人員でございます。三十二年はどうであったかと申しますと、総計で申し上げますと七万八千二百五十八人、三十一年が八万八百六十一人、それから三十年が八万二千六百二十六人、三十年以降の収容者は大体そういうような格好になっておりますが、もう一つ御参考に申し上げますと、最近におきまして一番多かったのが昭和二十四年でございまして、九万六千七百二十八人、この二十四年が最高でございます。二十五年が九万五千、二十六年が九万二千というふうに漸次減って参りまして、最近において一番減ったのが二十八年の七万五千人余り、そうしてきわめて最近が八万人、大体大ざっぱなところでございますが、こんなような状況になっております。
  11. 北山愛郎

    北山分科員 それで、ことしの予算は九万五千人を基礎にして組まれているようですが、やはり収容者がふえる、こういう見通しでもって組んでおるのか、これをお伺いします。  それから刑務所作業収入が二十四億、これは昨年よりも二億円ばかりふえておるわけでありますが、この予算説明によりますと、刑務所作業費としては、去年十億が十二億と若干ふえたような格好になっております。しかし作業収入と比べてみると、作業費の方は約半分、だから十二億の経費をかけて二十四億の作業収入を上げておる。こういうふうな格好になっておるんで、刑務所収容者作業さして、もうけているわけではないと思うのですけれども、何かしら割り切れないものを感ずるので、特に収容者食費なんかについてはどうなっているのか。たしか一日に六十円というような非常に低い食費じゃないか、こういうような点を改善することはできないのかどうか。作業収入が二十四億あって、そのもとになる作業費が十二億で、倍になっておるというようなことは改めて、もう少し食費なんかを改善する余地がないのかどうか、こうゆう点を考えさせられるのですが、どうでしょうか。
  12. 愛知揆一

    愛知国務大臣 収容所関係予算積算基礎にいたしておりますものは、ただいま御指摘通り総体で九万五千人でございますが、これの内訳は刑務所八万三千人、少年刑務所九千八百人、それから鑑別所二千人、補導院二百人、その合計を九万五千人として積算基礎にいたしておるわけであります。それから作業収入の問題は、ただいま御指摘がございましたが、これは考え方といたしまして、収容されておる人たちにつきましてもできるだけ腕に職をつけてやる。一方において教育的な目的もおわせ、かつそのことによって結果的に相当の収入も上るようにいたしたい。そして一般財政の負担をできるだけ少くしたい、こういうふうな気持でやっておるわけでございます。同時に、たとえば民間事業を圧迫したり、あるいはそれに対して不当な競争結果になるというようなことは徹底的に避けなければなりませんので、その間に工夫をこらしておるわけでございます。  それから受刑者の一日一人当りの食費の問題でございますが、刑務所においては、主食費につきまして三十九円九十一銭、副食費二十円五十銭、合計六十円四十一銭、これを基準にいたしております。それから少年刑務所におきましては、主食、副食合せまして六十六円八十銭、少年院が六十五円六十銭、大体こういうふうになっております。
  13. 北山愛郎

    北山分科員 私のお伺いしたいのは、刑務所というのは、今大臣お話のようにやはり教育をしなければならぬのであって、新しい刑事政策からいえば、こらしめというよりは、教育をして普通の人間にして社会に帰すというのが刑務所目的だと思うのです。そうとするならば、作業についても、技能なんかの指導にしても、もう少し力こぶを入れるということになれば、この予算書にあるような、収入の方は二十四億で、そのもとの方は十二億だというふうにはならないと思う。これは民間事業所でもこんなことはしておらぬのじゃないかと思うのですがね。だから、作業収入の半分しか作業費としてはかけないというようなことじゃなくて、機械を入れるなり、もう少し高度な技術を覚えさせるなり、こういう点は必ずしも民間事業と何も競合する必要はないのですから、もうけようとすればこそ競合するのであって、教育をするという意味ならば、むしろ競合しない方向にいくと思うのです。それに、今の主食が三十何円で副食が二十円というようなもので、一体一人の人間としてやっていけるかどうか、こういう点も私は疑問だと思うのですが、六十円でいいのですか。普通の人間としての、おとなでも子供でも毎日のカロリーがそれで間に合うものかどうか。食費の点なんかも改善を要すると思うのです。こらしめの意味ならばそれはいいでしょう。しかし、これを改善をし教育をしてやろうとするならば、そういう食べるようなものとか、あるいは作業とかいうことについては、もう少し力こぶを入れてもいいのじゃないかと思うのですが、どうでしょう。
  14. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これもごもっともでございますが、今の食費関係におきましては、多少普通の家庭におる場合とは考え方が違いますので、主食基準にしてカロリーが十分であると申しますか、適当であるというところを基準として考えております。率直に申しつますならば、副食費が多少安いのじゃないかという印象をお与えするかと思いますが、これらの点につきましては、御承知のように医療関係あるいは栄養関係の担当の者も始終留意いたしておりまして、最低限度カロリーが足りないようなことがないように十分注意いたしております。これは実はもう少しふやせればふやしたいと思わぬでもないのでありますが、まず現状のところはこれでやっていけると考えておるわけであります。  それから作業収入の問題なんでありますけれども、これは御指摘通り労働の強化とか、搾取とかいうような考え方ではございませんで、もう少し作業関係に適当な機械を入れるなり、あるいは技能をさらに高度に覚えさすようなことを重点に考えるべきであると考えます。そういう点は今年度予算でも相当考えておるつもりであります。その結果作業収入が、要するに中で製品として付加価値の額が多くなれば、それだけ結果的に作業収入も上がるというのであって、収入を上げることが目的ではないつもりでやっておるわけでございます。最近刑務所の営繕なども新営のところがだいぶできて参りました。それと相照応いたしまして作業のやり方、指導方針などは相当これから画期的に改善していかなければならない、またやるつもりでおるわけであります。
  15. 北山愛郎

    北山分科員 刑務所におる八万人の人たちは、社会から隔離をされておりますから、この人たちのために生活の改善なり、あるいはベース・アップをしてくれるような心配をしてくれるものはどこにもないわです。犯罪人だから待遇は悪くてもかまわないのだとか、あるいは食費が足りなくてもかまわないのだというようなことは、まさか現在の新しい刑事政策に立った法務省としては考えるべきではないと思うのですが、しかしこの予算書の示すところを見れば、そういう印象はぬぐい切れないわけです。作業収入としても二十四億の収入が上るなら、やはり二十四億だけの設備をいろいろやってやる。何も収入が上る必要はないのですから、そういう点について十分配慮すべきじゃないか。あるいは食費についても、常識で考えて、副食費が一日に二十円で一体やっていけるか、作業もやってできるか、こう言いたくなるのですよ。ただ生きてさえおればそれでいいんだというなら、これは別でありますが、やはり社会全体の大きな問題として考えた場合には、そういうおざなりなことでは済まされないんではないか。こういう印象を、この予算書を見て私は感じたもりのでありますから、その点は、法務当局としては新しい考え方に立って、そうして遠慮なしにそういう予算は組んでもらいたいと思う。  それから婦人補導員なんですが、これについても昨年より予算が減っておるようでありますが、これはどういうわけですか。要するに、売春禁止法により婦人を補導するというようなことは実際上効果がないということを表わしているのか、その点をお伺いしたいのです。
  16. 愛知揆一

    愛知国務大臣 前段の点で補足いたします。私も、就任以来刑務所その他については非常な関心を持って、自分でもだいぶ方々回って見たのでありますけれども、たとえば八時間以内の労働をするにいたしましても、適当な仕事がないということが一つ指摘されなければならない事実なんであります。八時間なら八時間の間、興味と関心を持って熱を入れて働けるようなり仕事を作らなければならないということを、私は痛感いたしましたわけで、それらの点につきまして、ただいまの御意見まことにごもっともで、私といたしましても一そうそういう面に努力をいたしたいと考えるわけでございます。  それから婦人補導員の関係でございます。これは、事務当局から詳しくお聞き取り願いたいと思いますが、私の理解しておりますところでは、実は予定したところに補導員の新設ができなかったというような事情もございまして、本年度予算の当該部分の繰り越し明許を受けていただいたというような関係で、三十四年度予算としては若干減額になっておるところがあるんではないかと考えます。
  17. 北山愛郎

    北山分科員 総体としてこういうような矯正官署、そういうものの内容については十分お考えを願いたい。この内部の事情が世間によくわからないだけに——私どもよくわかりません。わかりませんが、この数字だけで見ても、どうも適当ではないんじゃないかというふうにうかがわれるので、改善をしていただきたい。もちろん刑務所を別荘みたいにして、みんな志願して刑務所に入りたいというのでは困りますけれども、そうでない意味においてもう少し改善の余地があるんじゃないか、こう思うのです。そういうことについては予算はあまり考えておらないのに、どうもほかの、何と言いますか、警備関係とか公安関係というものに力こぶを入れるというのが岸内閣の傾向なんです。昨日の川崎委員の質問の中にも、情報調査費あるいは機密費というようなものが総体としてふえておるんではないか、こういう言葉があったわけなんです。この予算を全体として見てみると、そういう傾向がうかがわれる。刑務所予算なんかは不十分なのに、相変らず公安調査庁の予算は十二億円も使っておる。一体公安調査庁という役所はどういう仕事をしておるのか。世間では何をしておるかわからぬような役所に十三億円も使っておる。そうして刑務所とか補導員とか、そういうものは切り詰めた予算でやっておる。この公安調査庁は、ことしは予算が活動費として四億五千万、昨年よりも五千万円ふえております。これを普通の検察庁の予算と比べてみても、私は、公安調査庁というのは不当に多くの予算を使っているんじゃないか、こういう印象を受ける。検察庁、普通犯罪その他の捜査をやるような役所における活動費、それを見ると最高検が九十五万円です。高等検察庁が二百二十八万円、地検が、旅費として千九百四十五万円、活動費が千三百七十七万円、そのほかに一般検察旅費というものが二億二千八百九十六万円、これを合計すると、検察庁全体として二億五十万円しかない。それを公安調査庁だけで破壊活動調査費を五億一千六百万円も使っている。こういう公安調査庁という何をしているかわからないような、破壊活動防止のスパイ活動をやっている役所に莫大な金を使っておって、正規の仕事をやっている一般犯罪捜査とか、治安の問題をやっている検察庁の活動費がばかに少く、半分くらいしかない、こういう現象は一体どうなんですか。
  18. 愛知揆一

    愛知国務大臣 公安調査庁の調査活動費を他に比べて非常に多く見ておるではないかという御意見でございますが、これは実は御承知のように、昭和三十三年度、三十四年度とごらんいただきましても、四億円以上の調査活動費が組まれているわけでありますが、最近内外の共産主義勢力の伸張に伴いまして、調査が複雑困難になってきております。これまでも活動費の不足を非常に訴えられておったわけでございまして、三十四年度におきましても、自然増加のほかに若干の増加、約五千万円程度の増額を認めたわけでございますが、これらの経費の使途等については十分注意をいたしまして今後ともやって参りたい、かように考えているわけであります。
  19. 北山愛郎

    北山分科員 公安調査庁は十二分にやっておるというのですが、一般印象から見ると、これは共産党の活動を調査しているのだと思うのです。共産党は、御承知のように合法政党であります。また、世間の受ける印象は、さらに非合法活動を強化しようとか、あるいは暴力的な企図を持つとか、そういう傾向にないということだけははっきりしていると思うのです。問題は、共産党そのものを悪いとしてやるのではなくして、そういう非合法的なあるいは暴力的な犯罪を犯すおそれがあるかないか、こういうことについて調査をされていると思うのです。そうすると、世間の傾向から見ると、平和的に動いていっている。そういうふうな勢力の活動に対して、公安調査庁は十二億円もの莫大な金を使って一体何の実績を上げているのか。これは私でなくても変に思うのです。しかもほかの捜査費、検察庁の普通の機関の活動費なんかから見ると莫大に多い。検察庁は、最高検や高検、地検を合せて約一万人の人間がいるわけですが、一万人が活動するのに三億五千万円しか使っていない。公安調査庁は千六百人くらいしか人がおらぬ。それが活動費はその倍も使っておるというようなばかばかしい話はどうしても納得ができない、この点法務大臣どうでしょうか。
  20. 愛知揆一

    愛知国務大臣 実は検察関係の捜査活動費等についても、もっと増額をいたしたいとは考えておりますけれども、一方公安調査庁の関係ではどういう実績を上げておるか、どういう活動かというお尋ねでございますが、これは御承知通り破壊活動防止法に基いての調査活動でございます。それから破防法につきましても、たとえば実績というようなものについて申し上げますならば、解散を命ずるとかなんとかいうような措置に出ないで、未然にこれを防止するという点でこの活動費の重要性があるんじゃないかと私は思うのであります。一見いたしますと、他に比べて多額に見えますけれども、やはり事柄の性質上なかなか調査も複雑で相当困難な点が多いものでございますから、この程度のことはお認めいただきたいと考えておるわけでございます。
  21. 北山愛郎

    北山分科員 これは私でなくとも納得できないと思うのです。何も今のような破防法の仕事だって、警察もやっておるし、検察庁もやっておるでしょう。だからむしろ公安調査庁の仕事を検察庁の方へあわして活動費を一緒にして使った方がより有効じゃないかというふうに考えるのは、これは当りまえの話なんで、しかも、今私が指摘をしたこの検察庁側の活動費は二億五千万に対して、公安調査庁だけで活動費が五億一千六百万円です。倍以上です。おかしいじゃないですかと言うのです。どうなんですか。これはむしろ調査庁をやめてしまって、そして検察庁でやるとか、警察でやるとか、その方が有効じゃないですか、合理的じゃないですか。
  22. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点はそういう御意見もあり得ると思いますけれども、検察とか警察とかというのは犯罪の捜査をいたしますところで、おのずから破壊活動防止法の系統の仕事とはせつ然と分ける方が私はしかるべきだと考えるわけであります。ですから公安調査庁の仕事を検察庁あるいは警察庁の仕事にするということは考えておりません。
  23. 北山愛郎

    北山分科員 これは考えてもらいたいのです。私ども予算をいろいろ比較検討してみると、そういうふうな不合理が出てくる。やはりこれは内閣とかあるいは警察庁、そういうふうなずっと全体の予算を見てもアンバランスが出てきておって、犯罪にしても普通の犯罪じゃなくて公安犯罪とか、あるいは警備とか、そういうものに重点が置かれておる。こういうことが法務省部内でもこういうふうに現われておるじゃないですか。それじゃ犯罪がふえるとかなんとかいっても、普通の民衆の生活を直接脅かすような、そういうふうなものに対しては手薄になっておる。そうして共産党の取締りというような部分だけが拡大されておるというような印象を深くこの予算の中から受けるわけです。こういう点は改めてもらわないと、ほんとうに国民大衆のための刑事政策というものは行われないのじゃないか。これは十分反省をしていただきたい。  同時に昨年の警職法の問題のときに、人権を侵すんじゃないかということに対して、法務大臣は人権擁護機関というものがあって、これを強化するのだとか活用するのだとかいうようなことを言っておりましたけれども、その人権擁護の予算に至ってはまことに貧弱なんです。擁護委員が、これは全国にずいぶんあると思うのですが、わずかに六百五十七万円です。昨年が四百九十八万円、ことしは六百五十七万円です。それから人権事件の調査費が千五百七万円、昨年が千二百九十七万円、一体全国の擁護委員が何名おるのか。これは何千、何万とおるかもしれぬ。これに対してわずかに六百五十七万円で何ができるのか。人権擁護が叫ばれておる。しかも警職法の関係において政府は、こういう機関があって人権を擁護しておるんだから心配されることはないんだというふうに言っておる。またこれを強化するということを言っておる。この実績がこういう数字なんです。公安調査庁の数字の何分の一か何十分の一です。これでは政府は人権擁護について熱心だというようなことは断じていえない。この前の国会政府が言われた言葉は取り消さなければならぬ。こう思うのですが、いかがですか。
  24. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず人権擁護委員の関係でございますが、現在大体六千五百人が人権擁護委員としてお願いいたしております数でございます。これは制度としてはもっと広げたいところなんでありますけれども、さりとてこの人権擁護委員の人選というものは、きわめて中立で信頼のできるような方々でないとなりませんので、にわかにこの数をふやすということはかえっていかがかという点もあるわけでございますから、この人員を画期的にふやすということまでは今踏み切っておらぬわけであります。そこでただいま御指摘通りでございますが、この人権擁護委員のたとえば会合費その他について、現在擁護委員としてやっておられる方々の活動をより円滑にするというところにこの予算一つ考え方を出しておるわけでございます。それから人権擁護局並びに地方の法務局の人権擁護部あるいは人権擁護課というようなものにつきましても、ようやく全体としての機構が整備されつつあるのでございまして、これらの現在できております機構の活躍を漸次強化して参りたいということで、いわば非常に大きな画期的な増額というようなことは今回の予算ではできませんでしたけれども現状に即して、人権擁護事件がだんだんふえると同時に、もっと深く事案を究明していかなければならぬということが当面の一番の問題かと思いますので、調査のための旅費の増額その他の点について予算上に考慮いたしたのであります。これらの点は、私としてもこんなものでは十分じゃないので、漸を追うて拡充して参りたいと考えております。
  25. 北山愛郎

    北山分科員 国会の答弁は適当にごまかしておけばよろしいというのでは困るのです。この数字のように、全国六千何百人の人権擁護委員の費用がわずかに六百五十七万円だ、全体の活動費が千五百万くらいだということでは、ほかの公安調査なりあるいはその他の経費に比べて、全く岸内閣は人権擁護という問題には不熱心だ、誠意がない、こう言わざるを得ないのです。きのうも話が出ました内閣の情報調査、これには七千七百万円も一挙にふやしておる。二億数千万円であります。こういうことにはどんどん予算をふやしておきながら、どうして人権擁護の予算はふやさないのか。一体法務省の本庁に人権擁護の係が何人おるのか、そうして昨年あたり人権擁護の事件は何件あるのですか。
  26. 愛知揆一

    愛知国務大臣 本省といたしましては、人権擁護局の定員は十三名、それから全国八つの法務局で人権擁護に専担しておりますのが二百三十五名。それから一年間にいろいろな形で人権擁護事件として一応持ち込まれますものは七万五千件ございますが、これは常識的に申しますと、投書等に類するような一応持ち込まれる総件数を勘定いたしますと、それらを含めめて七万五千件でございますが、実際相当真剣に検討しなければならない事案というものはその一割以下という程度に考えております。
  27. 北山愛郎

    北山分科員 そういういいかげんな答弁をされちゃ困るのです。私が、地方の法務局へ行って人権擁護の担当の人に聞いてみると、人権擁護の申請がたくさんあるけれども予算がない、また権限もない、だから調査ができないで保留しているという実態なんです。また、こういう予算じゃこれはやれないわけですよ。ほかの予算がどんどんふえているのですから、人権擁護だけふやせないという理屈はないはずです。しかも、この前の警職法のときにはさんざんその人権擁護の問題が出た。またそれだけじゃなくて、ほとんど毎日の新聞に人権侵犯の事件がたくさん出ておる。こういうような実態にあって、しかもそういう事件がどんどんふえておるというような情勢のもとで一体こんな予算でどうしますか。私は、現在の人権擁護委員の制度も改めてもらいたいと思うのです。というのは、単に市町村にたくさんの擁護委員を置いて取り扱っているというのじゃなくて、もう少し強力な擁護委員というものを府県単位くらいに置いて、これもそれこそ公選制にして権威のあるもにして、しっかりとした事務局をつけてやれば、もっともっとこの人権侵犯の問題がこの機関によって防ぐことができるのです。それを制度を弱体のままにしておいて、数だけたくさんの擁護委員を散らばらせておいて、こんな貧弱な予算でもって運営しようとする。こういうところに法務省部内の予算全体を比較検討しましても、岸内閣というものは人権擁護に不熱心である、警備あるいは公安犯罪とかいうことにだけ熱心である、こういうふうに言わざるを得ないのです。  それから検察庁も、これは検察庁の経費がふえたりすることは好ましいことではないにしても、二億五千万円くらいの活動費では確かにこれはやっていけないのじゃないかと思う。こういうところから最近賠償その他の汚職事件が伝えられて、どんどん新聞、雑誌等には書かれておっても、検察庁としては予算がなくて手が出せないということもあるかもしれぬ。また逆に言えば、検察庁の予算を窮屈にすることによってそういう活動を制約しているとも一言えるのじゃないかと思うのです。私は、去年東京の地方検察庁にある種の陳情で行ったのですが、何十人かの陳情隊が行って二階へ上るというと、二階が落ちるおそれがあるというので、一階の方で待っていてくれというわけで、陳情隊が一階で待っておるというような工合なのです。ああいうふうな建物に地方検察庁を置いておる。こういうような検察庁の予算をどんどんふやすということは好ましいことではないにしても、予算のバランスとして、もう少し合理的な基礎に考えを置いて、人権擁護なりあるいは刑務所における収容者の待遇なり教育なり、そういうことについては特に考慮を払ったような予算の編成をやってもらいたい。  私は、法務省関係につきましてはほかにも問題はありますけれども、時間も経過しますから、以上をもって私の質問を終ります。
  28. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず人権擁護の問題でございますが、この点はさらに私どもといたしましても、大いにこれの拡充と機能の活発化をはかるために、この上とも御趣旨を体して参りたいと思います。  それから検察庁の点にお触れになりましたが、これも御指摘通りでございまして、今おあげになりました東京地検の庁舎の問題も、ようやく多年の懸案が今回片づくことになりました。現在一時臨時に東京地検の一部は築地の方に移転をいたしておりますが、しばらくの間で、本庁舎が完成するに及びまして、ほとんど完全な執務態勢に切りかえられることになっております。これらの点は今回の予算の営繕費の中にも計上されておるわけでございます。  いろいろ御指摘いただきました御意見については、私もごもっともな点が非常に多いように思いますから、今後とも大いに努力を新たにいたしたい、かように思います。
  29. 田中伊三次

    ○田中主査 岡良一君。
  30. 岡良一

    ○岡分科員 本年初めて原子力研究開発のために約一千万円の予算防衛庁に配分されたようでありますが、防衛庁の原子力研究開発の範囲、目的などについて、原子力委員会、科学技術庁並びに防衛庁から、この際明確な責任のある御所信を承わりたいと存じます。  まず第一にお伺いをいたしたい点は、防衛庁昭和二十九年以来原子力に関する研究を始めておられるということが伝えられておるのでありまするが、その機構、また研究内容、結果、相なるべくはその予算をこの際お聞かせ願いたいと思います。
  31. 伊能繁次郎

    伊能国務大臣 お答えを申し上げます。防衛庁といたしましては、原子力関係研究につきましては、御承知のように原子力、ことに原子爆弾等による被害につきまして、これを最小限度に食いとめる問題等については研究をいたさんとし、また若干いたしておる次第でございますが、その内容につきましては、御承知のように原爆は熱風、爆発力、さらに放射能、それらの点についての被害が甚大であると考えられるのであります。そのうちに当方としてさしあたり研究可能のものは放射能の問題でございまして、これらの点について自衛の見地から当方としてできる範囲の研究を、きわめてわずかな経費でもって継続をいたしておる次第でございます。本年度についてただいま御指摘の一千万円というようなお話がございましたが、さような状況ではございませんで、御承知のように原子力関係予算は科学技術庁において総括をしてこれを処理することに相なっておりまして、来年度としては防衛庁の原子力関係予算としては、防衛庁自体に計上されておるものはございませんですが、原子力関係の科学技術庁における放射能調査の一環として五千メートル以上の高空の放射能測定の研究、これは御承知のように当方においてジェット機その他の航空機の使用の関係上、高々度における放射能の研究等関係から、予算額四百六十万円を科学技術庁から振り分けをいただきまして、それによって研究をいたしておるというような状況でございまして、ただいま岡委員御指摘のそれらの問題の経過その他の詳細につきましては、担当政府委員より御説明申し上げたいと思います。
  32. 小山雄二

    ○小山(雄)政府委員 数字的なことをお答え申し上げます。二十九年度から、先ほど長官のおっしゃいましたような意味研究を始めております。機構といたしましては、技術研究本部の機構が少し変りました関係もありますが、現在では、技術研究本部の第一研究所の第四部、これは基礎的な材料だとか、燃料だとか、そういうことをやっているところでございますが、その中に対原子力班として定員三名、予算年度別に申しますと、二十九年度が四百三十三万、三十年度が三百四万、三十一年度が、これは機械を買う関係が相当ありましたが、少し多くなりまして一千万、三十二年度が二百四十九万、三十三年度が、これは実験室を新設する予算が一千四百万ばかりありまして、それを含めまして一千七百二十六万、三十四年度、来年度は科学技術庁の方に先ほど長官の言われました予算がついておりまして、防衛庁の方には全然ついておりません。大体機械、器具等を調達する予算が相当たくさんありますが、研究内容といたしましては、主として放射能の測定のいろいろな機械器具を試作し、それに基きまして、防衛庁用としてどういう型のものがいいというようなことをきめていくような研究、試作等をやっているというわけであります。
  33. 岡良一

    ○岡分科員 そういたしますと、防衛庁が行なっておられる原子力の研究というものは、一応、わが国が核兵器における攻撃を受けるかもしれない、こういう想定の上に研究を進めておられるのでございますか。
  34. 伊能繁次郎

    伊能国務大臣 将来の事態についてはなかなか予想いたしかねるのでございますが、当面の問題としては御指摘のような趣旨で研究いたしております。
  35. 岡良一

    ○岡分科員 それでは具体的に、日本が核攻撃を受ける、あるいはまた放射能の影響を、戦争に介入してもしなくても受ける可能性があるというようなことについて、たとえば最近アメリカあたりの、いわば戦術兵器として、在来兵器にかわって用いる核兵器は、一応五十キロトン程度までを用いるということが公式に申されておりますが、五十キロトンの核兵器の、たとえば人口の密集した都市に攻撃が一発加えられたときにおける破壊力は、いろいろありましょうが、直接の破壊力として、たとえばガンマー線、あるいは爆圧、あるいは熱による建物、人命の損傷、被害の程度はどの程度防衛庁の方では測定しておられますか。
  36. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 お答え申し上げます。最近の戦術核兵器の問題でございますが、だんだんと水爆によりまして大型のものを研究して参りますのと並行いたしまして、原爆等を使いまして小型の兵器を使っております。今私ども承知しておる範囲では、二百八十ミリの原子砲というのがアメリカ兵器の系列に加えられておるのでございます。これは大体におきまして弾丸の重量は四百七十キロくらいでございまして、威力といたしましては、広島に落されましたものが二十キロトンですが、二十キロトンの十分の一ないし二十分の一くらいというところにとどまるのではないかと思うのであります。五十キロトンの原爆の威力はどれくらいかということは、落ちる状況等によりまして、高度その他によりまして非常に違うわけでありますが、大体標準的なことは、広島に落ちましたのが二十キロトンでございますから、あれを中心に考えますると、相当な被害を受けるというふうに考えております。
  37. 岡良一

    ○岡分科員 この機会に防衛庁としての御見解を承わりたいのですが、今御説明をいただいたように、在来兵器に取ってかわって戦術的な核兵器としても、すでに五十キロトン程度のものが、いわば戦術兵器として用いられ得る段階になっておる。そういたしますと、このような核兵器というものは、これは明らかに防御的な性質を持っておらない。自衛的な性質のものではない。攻撃的な兵器である。このように常識的に私どもは考えますが、長官はいかがお考えでございますか。
  38. 伊能繁次郎

    伊能国務大臣 御指摘通り、攻撃的兵器と考えております。
  39. 岡良一

    ○岡分科員 それではこの機会にお伺いいたしますが、私どもは、日本が将来とも核兵器によって武装さるべきではないという国会また国民を代表しての決意を明らかにしたいという気持を持っておることは御存じの通りでありますが、もはやこのような形で、いわゆる戦術兵器として、在来兵器にかわった核兵器そのものの破壊力が全く攻撃的な性格を明らかに持っておるということになれば、この核兵器をもって自衛隊が武装されるようなことは絶対にあらしめてはならないという私どもの立場は、当然この兵器そのものの実態から正しさが証明されたものと考えるのでございまして、若干余談になりますが、御説明に関連をして、この機会に防衛庁としての御見解を承わりたい。
  40. 伊能繁次郎

    伊能国務大臣 お答えを申し上げます。核兵器の問題につきましては、政府としては、常に岸総理から核兵器を持たないということを声明いたしておる通りでございます。
  41. 岡良一

    ○岡分科員 従って、防衛庁としては、将来とも日本自衛隊は核兵器をもって武装せしめないという方針承知してよいのでございますか。
  42. 伊能繁次郎

    伊能国務大臣 将来の問題につきまして私から申し上げることは若干いかがかと存じますが、当面岸内閣としては、核兵器を持たないということについては、前々からお答えを申し上げている通りでございます。
  43. 岡良一

    ○岡分科員 最近きわめて短かい期間に、すでに在来兵器に取ってかわった戦術兵器が、あの大じかけな広島に落された爆弾のいわば二倍半の破壊力を持つ。従って、今後その破壊力はふえても減らない。そういうものが戦術兵器として用いられ得るという見通しの上に立って、将来ともこのような攻撃兵器は持つべきではないというのが、自衛隊としての当然な御決意であってしかるべきであると私は思うのであります。ただ当面持たないという限定では私は納得いたしかねますが、この機会に長官としての御所信を一つお伺いしたいと思います。
  44. 伊能繁次郎

    伊能国務大臣 核兵器の問題につきましては、御承知通り前々から政府として統一した見解を明らかにいたしておりまする通りであります。
  45. 岡良一

    ○岡分科員 この問題は、あなたとやっておっても仕方がないでしょうが、それでは最近の新聞記事ですが、原子力研究所の施設を利用したいという申し入れが防衛庁からあった。これに対しては一応さたやみになったという新聞の報道が伝えられておりますが、そのような事実があったのか、どういう目的で御使用を申し込まれたのか、その点を伺います。
  46. 伊能繁次郎

    伊能国務大臣 この点につきましては、最近の新聞で私もちょっと拝見したのでありまするが、どういう事情からそういう記事が出ましたか、われわれ非常に不思議に思っているのでありますが、真相は、昭和三十一年の秋に、原子力研究所側の瑳峨根遼吉氏並びに阿部企画課長等と、当方の防衛技術研究所の鈴木一佐、浦井技官等が会談をいたしました際に、防衛技術研究所におきましては、さいぜん装備局長から御説明申し上げましたが、当時以来原子兵器の防御対策の研究を実施いたしておる。従って原子力研究所のこの種の研究と重複をいたしておるようなことがありはしないか、重複をいたしておるような場合には、これらの点について協議をする必要があるのじゃなかろうか、こういう話をいたしましたところ、原子力研究所の方では、当面原研ではさような軍事的研究をやる考えはない。従って、重複をいたしておらないから御心配はないだろうというような話し合いがあったという事実は私ども承知をいたしておりますが、その以後において新聞に出たような事実は、全くあずかり知らぬところであります。
  47. 岡良一

    ○岡分科員 原子力委員会にお尋ねをいたしますが、今防衛庁長官のお答えによりますると、本年度わずかではありまするが、四百六十万円の原子力研究予算原子力委員会によって配分されておるわけであります。御存じのように、原子力の障害防止については、すでに原子力委員会が担当するということで、各省庁の御連絡の上、あるいは実験の結果に基く放射能そのものの量、種類等の調査なり、またそれに対する方策についても立法措置、予算措置を講じておられることで、原子力研究所としての当然なお仕事になっておるわけでございますが、なおこの際、たとい少額であろうとも、これが防衛庁の原子力研究にさかれておるということは、やはり原子力基本法の立場から見ても国民から疑惑を持たれ得るのではないか。特に今防衛庁長官の御説明によれば、防衛庁の原子力の研究は、放射能の測定を中心とし、おそらく放射能障害に対する治療というところまでいき、しかも想定が、日本が核兵器の攻撃を受けるということになっておれば、いやましに発展をする可能性がある。そういうような事情を考えてみた場合に、原子力委員会が予算の配分に当ってこのような措置をとられたということは、原子力基本法第三条の平和目的という精神から見ても、私は疑義があるのじゃないかと存ずるのでありますが、有澤委員の御所見を伺っておきます。
  48. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 防衛庁の原子力関係予算は、来年度予算に関しまして初めて私たちの方に出て参りました。単に高空の放射能測定に関する予算ばかりでなく、ほかに医療関係予算もあったかと思います。そこで私たちも岡委員の今の御質問の趣旨の点について鋭意検討いたしているわけであります。防衛庁もわが国における官庁でございまして、その官庁の中におきます原子力関係予算がどういうふうな状態になっているかということを、私たちも拝見いたしたいと考えております。防衛庁の方で御協力を願いまして、そういう予算が出てきたことは大へん仕合せだと思っております。  そこでその予算につきまして私たちが考えましたことを申し上げますと、むろん原子兵器のために原子力の開発をするということは原子力基本法に認めていない点でございますから、そういう問題につきましては、私たちもむろん承認をすることはできないわけでございますが、かりに、たとえば治療の問題だとか、あるいは高空放射能が大気中にどういうふうに散らばっているか、こういうことの調査は、これは当然平和利用として考えることができるのではないか。防衛庁がなさいますから、平和的利用でないというふうに考えることはちょっと困難じゃないかと思います。こういう見地から、今度の予算についております高空の放射能の調査は、これはどうせ放射能の調査は全般的に行なっておりますし、しかも高空にある放射能を調査するためには特別の飛行機等でなければ調査ができない問題がございますから、従って防衛庁がこれをなさるなら、放射能調査の一環としてやっていただきたい。こういう趣旨でこの調査の予算は平和的な基本法に反するものではなかろうという考え方で認めたわけでございます。防衛庁のなさいます原子力関係の御研究につきましても、予算という見地から申しますと、私たちはそのケース、ケースについてこれを吟味していくより仕方がないのではないか、防衛庁の中のものは一切平和的利用に反する、こう一般論で片づけるというわけには参らないと考えますので、その個個のケースについて十分吟味していきたい、こういう趣旨でございます。
  49. 岡良一

    ○岡分科員 私も別にそういう機械的に、防衛庁が原子力の研究をされるから軍事的目的だと考えているわけではないのですが、しかし、今の長官の御説明のように、日本が将来核兵器攻撃を受けるかもしれないという前提の上に放射能を調査する、また障害の治療の研究に当るということは、これはあってはならないことではあるが、あるかもしれないといえばそれまでですが、あくまでもそうさせてはならないという観点から考えますと、広い意味においてそういう想定のもとに研究をされることが、やはり原子力基本法の建前からいって、私どもとしてはすなおに納得ができない。そういう気持で、特に聡明な有澤先生がおられて、そういう苦しい配分をなさったことには御苦衷はお察ししますが、納得いたしかねるわけです。  それでは長官にお聞きしますが、かりにそういう、いわば大規模な核弾頭をつけたミサイル攻撃を受けるという場合、大体防衛庁ではその防衛体制として、現在の相手国の攻撃能力で何千発くらいが一挙に日本に押し寄せてくるというふうな想定を立てておられるか。
  50. 伊能繁次郎

    伊能国務大臣 ただいまだんだんとお話がございましたように、私どもとしてはあくまで東洋の平和、日本の平和、ひいてはそれを通じての世界の平和を維持したいという趣旨の、平和と独立を守るための防衛庁自衛隊でございまするので、核兵器を現に岸内閣としては持たないということによって、あらゆる努力をして戦争を避けるという一端の努力の現われでもあると思うのでございますが、ただいまのような状況においてさようなことまで想定をいたしたことはないことははなはだ遺憾でございまするが、われわれとしてはまだ考えておりません。またそういった際における高高度における放射能の調査につきましては、五千メートル以下については原子力研究所としていろいろな資料から調査もできる。しかし、五千メートル以上の高高度については調査も困難であるから、放射能の状況についての調査を当方として予算の振りかえによって委託を受けておるというような状況で、現在ではそういう事実の調査をいたしておるというのが率直な現状でございます。
  51. 岡良一

    ○岡分科員 防衛庁の技術研究所、あるいは防衛研究所にお勤めの方の公表されたものなどを見ますと、ちゃんと想定ができておるわけであります。三十発ぐらいだと思ったら、一千発ぐらいくるだろうというようなことがはっきり著書に出ておる。私どもは、こういう著書を読んで実はりつ然といたしておるのであります。防衛庁の方ではここまで考えておられるかということについて、何か私どもの知らない危険が身に迫っておるような感じを実はいたすのでございます。  それはさておきまして、高高度の放射能の測定というものは、技術的に考えまして速度の早いジェット機よりも、大体各国の事例を見れば、気球を上昇せしめて、十分に性能のよい測定器を乗せて測定をしておるのが通例のようでございます。これは原子力委員会としても、高高度の測定について特にジェット機をわずらわさなければならないということはないと思うのだが、この辺の関係はどうなっておるのですか。
  52. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 私ども今度の予算を検討しました際に、やはり同じような問題が議論になったのでございますけれども、まあ成層圏のような高い空の放射性のちりを収集調査しますのにはただいまのところジェット機等でやった方が、新しくそのために特別に気球等を設けるよりは、それで事足りるのじゃなかろかという感じがありましたので、先ほど有澤委員からお話がありましたような予算を認めましたわけであります。
  53. 岡良一

    ○岡分科員 この機会に特に原子力委員会に強く要望いたしたいのは、御存じのように国連の科学委員会もさらに存続しようという方向になっておるようでございますし、その本部も日本へ持ってきたいというようなことも厚生大臣が申しておられるようです。してみれば、日本としても人の問題、施設の問題等についても、やはりこの際一本に統一された形で、自衛隊も少しやってみる、あちこちが少しずつやるというのじゃなく、もっと高い高度における放射能の測定を、実験の結果蓄積されたもの以外についても探究していくというようなことは、人は十分日本におられるわけですから、施設さえ与えればやれるわけですから、こういう点は特に自衛隊のお世話にならなくても、原子力委員会として自主的に独自に予算を持っておやりになるくらいの御努力があってしかるべきと存ずるのでございます。  関連をして、それではこの科学技術関係について若干お尋ねをいたします。最近いわゆる人工衛星とか、人工惑星の打ち上げに伴って、特に私どもとしても関心を寄せておる問題でございますが、まず第一に電子工業の分野における基礎、応用、工業化、この方面は科学技術庁としてどういうふうにお進めになっておられますか。
  54. 鈴江康平

    ○鈴江政府委員 電子工学関係につきまして、御説のように、科学技術庁には電子技術審議会というのがございまして、ただいま電子技術振興のための長期計画とか、あるいは電子工学上の重要研究というものを選定いたしまして、それに対する促進方策というようなことを具体的に考えていきたいと思っておりまして、ただいま審議会において審議中でございます。そして来年度の電子工学関係予算につきまして御説明申し上げますと、電子工学は、御承知のように各方面の技術に関係があるものでございまするので、官庁の研究所におきましても、いろいろな方面でやっておるわけでございますが、主としてやっておられますところは、通産省の電気試験所、あるいは郵政省の電波研究所といったようなところでございますけれども、しかし電子工学の材料につきましては、やはり科学技術庁の金属材料技術研究所、あるいはまた航究に関しまする応用関係につきましては、航究技術研究所というようなところでやっておりますし、またオートメーション関係につきましては電気試験所のほかに機械試験所とか、あるいは中央計量検定所とかいったようなところでもやっております。その他気象庁におきましてもやっておりますし、漁船の漁群探知機といったような関係から、農林省の漁船研究室においても研究しております。そういったようなことで、予算といたしましては来年度七億五千七百万円を計上しておるわけでございまして、これらにつきましては科学技術庁におきまして、その間の重複のないようにといったような点から、各省の意見も調整してございますし、またその重点的な問題につきましては電子技術審議会の意見も聞いて、各省にその点を申し上げておるというような次第でございます。
  55. 岡良一

    ○岡分科員 いろいろな新しい科学技術の分野がほとんどおおむねそうであるように、特にこの電子工学関係、これは最近の科学技術の中心分野になっておりますが、御説明のような格好で各省庁の付置された試験研究所に予算が分割され、人が分割され、施設が分割され、そしてただ一応審議会、協議会というふうなものがあって、その間の運営の調整をはかるというような態勢では、私はなかなか特に計画的な電子工業なり電子工学の発展というものは期しがたいと思われるわけなんですが、こういう近代科学技術の急テンポな革命的な発展に照らしても、特におくれたわが国としては、乏しい資金、少い人、また貧弱な施設を最も効率的に運営するという意味から、やはり科学技術庁がもっと強力に掌握して進めていくという態勢を急速にとる必要がある。設置法の改正も出ておりまするが、現在の庁内における部局ではなくて、こういう分野に突っ込んで、電子工学局を置くくらいの改革をやって、強力に進めていくというようなはからいがあってしかるべしと思うのでございます。長官でもおられればその間の所見も承わりたいと思いますが、私の希望にとどめておきます。  それからロケットの研究は、今日本ではどういう組織で、どの程度予算で行われておりますか。
  56. 鈴江康平

    ○鈴江政府委員 ロケットの研究につきましては、例の地球観測年の事業の一環といたしまして、東京大学の生産技術研究所におきまして、糸川教授がやっておられたのでありますが、その後あの事業も一応一段落いたしましたので、これをどうするかということにつきまして、科学技術庁がやっております航空技術審議会にはかったわけでありますが、現在のところ、まず基礎研究を最も重点的にやるべきである、基礎研究の段階であるということが委員の方々の御意見としてまとまりました。それでしからばどこでやるかということについていろいろ話し合いましたところ、東大の航空研究所が一応中心になりましてロケットの基礎研究をやる。それにつきましては、東大の生研の糸川教授もその中に入ってやっていこうということに一応なったのであります。これは文部省の所管においてやっておるわけでございますが、予算の金額につきましては、ちょっと私今覚えておりませんので、後刻御報告申し上げたいと思います。
  57. 岡良一

    ○岡分科員 これまでのロケットの研究では、むしろ民間産業がスポンサーになってやっておるというような傾向さえ事実あったことは御存じだと思います。文部省の予算も私正確なところは存じませんけれども、とうていこれをもってロケットの研究の裏づけになろうとは私は思えない。ところが一方、たとえば軍事目的もありますけれどもアメリカのミサイルの研究費は、新しい予算では七十億ドル、昨年より二十三億ドルふやして、いわば日本の一カ年間の総予算が、ミサイル研究に充てられている。必ずしもロケットの研究のみとは言えませんが、これは大へんな較差があるわけではございまして、こういう点でも、文部省がやっておるのであるからといって、やはり近代科学の焦点の一つであるロケットの問題について、科学技術庁としてはよそ様におまかせをするという態度では無責任ではないかと私は思う。  それから核融合反応については、現在どういう機構、どういう予算で来年度はやられますか。
  58. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 核融合の研究予算の面から申し上げます。予算の分割は二つになっておりまして、一つは原子力予算一つは文部省予算であります。その総計日本における核融合研究予算のすべてかと存じます。三十三年度においては原子力予算としては五千三百七十六万七千円、文部省予算としては二千二百六十六万円、合計七千六百四十二万七千円というのが総額でございます。来年度の原子力予算といたしましては一億一千三百八十五万五千円、文部省予算としては二千万円、合計一億三千三百八十五万五千円になっております。ただ来年度の文部省予算の中には、これ以外にさらに科学研究費の中から、まだ配分がきまっておらぬそうでございますのではっきりした計数は出ておりませんが、大体二千万円から三千万円程度のものがさらに来年度予算になる予定であります。従いまして三十三年度に比べまして大体倍以上の研究費が出されるように相なっているようであります。  この組織と申しますか、これに関しましては、ただいまの段階では、原子力委員会の下部機関といたしまして核融合専門部会を組織いたしまして、湯川博士に部会長になっていただきまして、この方面の各大学、あるいは民間、あるいは国立試験機関等のそれぞれの多識の方たちに集まっていただきまして、目下検討を加えつつございます。予算の配分と申しますか、使途でございますけれども、文部省はもちろん大学関係でございますが、原子力予算に関してましては、国立試験所は主として電気試験所でございますが、そのほか委託費といたしまして、民間の大きい機械メ—カー等に対しまして、製作研究等に委託費を出しまして研究をさせるということになっております。
  59. 岡良一

    ○岡分科員 これも原子力委員会に特に希望を申し上げたいと思うわけでありますが、今お答えに名前の出ました湯川博士その他専門の方々に、先般ジュネーブで行われた第二回原子力平和利用会議のあとで、私どもお目にかかっていろいろ率直な印象をお聞きしたときにも、期せずしてこういうことを異口同音に言っておられたと私記憶しておるのです。要するに、核分裂反応の研究開発については、ここ三年ほどの間に日本は非常に立ちおくれを感ずる。国の予算、それによって裏ずけられたりっぱな施設などによって、ここ三、四年前までは日本はむしろアイデアとしてはすぐれておった。それが何といっても実験を主体とする物理学の領分であるだけに、実験装置でもってどんどん研究開発を進められた結果として、この調子だと、ここ一両年で核分裂反応における日本研究開発はかえってドイツやイタリアからは非常に立ちおくれるかもしれぬという心配がある。この点に努力をしなければならないことはさることであるけれども、しかしいずれにしても、先般の会議などでは、大体十七、八年後、二十年後には核融合反応の実用化ができるであろうということを言っておる。そうなれば、無限なエネルギーが海の水からでもとれるというような状態で、これは産業社会を通ずる革命的な日を迎えようとしておるが、現在の基礎研究の分野は、アメリカでも英国でもまだそう十分なものではない。しかし、この分野で日本は相当高いアイデアを持っておるし、研究の下地もできておるから、ぜひ一つこの分野に政府としても積極的な予算措置を講じ、何とか核分裂のおくれを融合で取り戻したいということを率直に言っておられる。これは科学者としてももっともなことだと私思うのですが、今お聞きすれば、その研究施設が通産省所管の電気試験所の方に大きく依存するということで、せっかく原子力委員会に融合のために専門部会を持っておられる。そうしてその責任者としても人を得ておるわけです。また湯川博士等を中心とする核融合懇談会等も、予算のない段階ではあるが、まじめな学界の権威者の団体として、この問題に真剣な国家的な立場からも心配しておられるようでありますので、やはり予算の裏づけ、そして運営の一本化というような形において、一つできるだけ原子力委員会としても、この融合問題については今後積極的に取り扱っていただきたい。ただこの科学技術の問題がここまで差し迫りながら、どうもお聞きをしておると、みんなこれからだというようなことでございますが、これも各国の事例を申し上げるまでもなく、非常に思い切った予算措置をこの科学技術関係に注ぎ出してきておることは御存じの通りなので、よほどこの際日本としても思い切った施策をお持ちいただくというふうにお願いしたいと思います。  それから外務省の方がおられるようでありますが、今度いよいよ日本の国産一号炉に使用する天然ウランは、国際原子力機関から三トンだけ供与されることになったと伝えられておりますが、とすれば、当然国際原子力機関とこれを受け入れる日本政府との間には、何らかの協定がなければならないわけでございますが、この際、その協定の内容を御説明願いたいと思います。むずかしい個々の協定というよりも、特に私どもが米英両協定の場合問題といたしました点の中でも、いわゆる免責条項並びに保障条項、そして価格、この点を一つ御報告を願いたいと思います。
  60. 宮崎章

    ○宮崎政府委員 国際原子力機関日本との間には、現在天然ウラン三トンを購入することを目的といたしまして、協定を結ぶ交渉を継続中でございます。この協定の根本になりまするものは、国際原子力憲章でございまして、この憲章の第十一条によりましてこの協定の交渉をやっておる次第でございます。それでお尋ねのありました免責の問題につきましては、この対象になっておりまするものが天然ウランでございますし、分量もわずか三トンでございまするので、国際原子力憲章の範囲でそれはカバーせられておるという想定のもとに、これを今度の協定の中には含めないように努めておるわけであります。大体そういうことになるであろうと思っておる次第であります。それからあとお尋ねのありました保障条項に関しましては、これも大体国際原子力憲章によりましてやっておるのでありますけれども、その点はやはり協定の中に盛り込むことになると考えております。それから価格につきましては、これは大体三十五ドル五十セントということになっております。この価格も、入札をいたしました結果、最低に当る価格と相当しておる次第であります。
  61. 岡良一

    ○岡分科員 特にこれも私ども強い要望として申し上げたいことは、御存じのように米英両国とのあの動力協定の中では、将来国際原子力機関日本とが、原子炉のいろいろなものを受け入れた場合に協定を結ぶ、これと肩がわりをしていこう、移行することができるという建前になっておるわけでございます。これは特に外務省の御発表の文書ではっきりしておるように、スターリング・コールという、あの国際原子力機関の事務局長も、各国が国際原子力機関を差し置いて、大国と双務協定を結んで、国際原子力機関というものが全くたな上げになっておるということを、公けの席上で非常に手きびしく批判をしておられることは、外務省の御発表の文書にも出ておるわけであります。そういうことであってみれば、日本としても初めて国際原子力機関のわずか天然ウラン三トンではあるが、これを受け入れる。この場合に、国際原子力機関日本との間に結ばれる協約というものは、非常に重要な意味を持つと思う。それは日本が大国に依存する原子力開発形態を、やはり国際原子力機関中心とする自主的な原子力の研究開発態勢に切りかえていくための一つの跳躍台としての役割を持っておるし、いま一つはやはり国際原子力機関が、将来はその憲章の第二条にうたわれておるような目的を十分に発揮できるためのこれまた跳躍台として、国際原子力機関日本との間に受け渡されるわずか三トンの天然ウランではあるが、この協定の内容は非常に重要なものがあると思う。特に問題は、やはり保障条項だと思う。この保障条項について、スターリング・コールさんは昨年の十月、私に一年以内には査察班を作れるということを言っておる。これができれば、われわれは対米英協定に従って査察を国際原子力機関に切りかえて行き得ればそれにこしたことはないと思っておるし、またわずか三トンであるからといって、きわめて軽い気持でこの協定を原子力機関も結ぼうとする。こちらもそれで済まそうということであってはならないと私は思うわけです。価格の問題につきましても、アメリカは四十ドル程度だと存じます。その他各国によって天然ウラン一キロの価格はいろいろです。それで今度三十五ドル半。こういうように各国の価格がいろいろでありますが、特に今度新聞の伝えるところによれば、大規模な実用発電炉が導入されることになる。そうすれば、一番最初に二百トン、年々六十トン。一基だけでも二百トン余り、そして年々六十トン買い入れる。それを何基も入れようというのだから、相当な天然ウランを、日本の現在の国内資源の現状ではやはり外国に依存する。買い方によっては、非常に高いものを買わなければならぬということにもなるし、そういう点でやはり価格の問題もいろいろ問題があると思う。だから、これは単に日本だけの利益ではなく、将来国際原子力機関を利用しようとするおくれた国々にとっても、やはり国際原子力機関への期待につながる大きな問題を提供するわけでもあるし、これは協定が憲章のワク内で作られるものでもあり、従って、国会の承認を得なければならないものでもある。まあないという取扱いではありましょうが、ぜひやはりはっきりときまったら公表願って、適当な衆議院の委員会等で、そういう協定の持つ意義から、われわれとしても将来の見通しの上に立って十分論議を重ねてみたいと思いますので、ぜひそういう機会を作っていただきたいということを希望いたしておきます。  私の質問はこれで終ります。
  62. 田中伊三次

    ○田中主査 それでは、午後一時三十分より正確に開会することとしまして、暫時休憩いたします。     午後零時三十一分休憩      ————◇—————     午後二時四十五分開議
  63. 田中伊三次

    ○田中主査 休憩前に引き続いて会議を開きます。  質疑を続行いたします。松前重義君。
  64. 松前重義

    ○松前分科員 私は、科学技術の振興について御質問をいたします。  まず第一に事務当局に伺いたいと思いますことは、日本年度別の科学技術の研究費と、それから日本の総予算との間の割合、科学技術の研究費に何%充てておるか、それを年度別にお示しを願いたいと思います。
  65. 鈴江康平

    ○鈴江政府委員 お答え申し上げます。科学技術振興予算につきましては、最近のことを申し上げますと、来年度予算につきまして二百二十五億三千万円、それから三十三年度は二百九億五百万円というふうになっております。これを全予算に対する比率から申し上げますと、一・五九%、これは三十四年度、三十三年度についてでございます。大体同じような数字になっております。
  66. 松前重義

    ○松前分科員 アメリカ、英国、西独、ソ連等においての国家総予算に対する科学技術研究予算の比率の工合を……。
  67. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいま私の手元にあります資料によりますと、米国は総予算に対して四・一%、イギリスは四・二%、西独は二%、ソ連は三・九%になっておりまして、これから比較すると日本はよほど少いようであります。
  68. 松前重義

    ○松前分科員 そもそも総予算が、アメリカ、英国、西独、ソビエトに比べて少く、そのパーセンテージにおいて、米国、英国、ソビエトなどは四%以上に上っておるにもかかわらず、日本は今のお話によると一・五九%であります。そして、原子力予算をこれから除きますと一%にしかなっておらない、こういうことになっておるのであります。御承知のように、宇宙ロケットが打ち出されたりあるいは人工衛星が飛んだりいたしまして、新しい科学による世界が開拓され、科学の力そのものが大きな国際的な発言力となって現われておる。このようなときに、各国が争って科学技術の振興に全力を注ぎ、科学技術教育そのものがまことの自衛である、平和的な産業をこれを基礎として興すことそのものが自衛であるという概念に打ちかえつつあるこの時に当りまして、わが国だけは相も変らず一・五九、原子力を除けばわずかに一%、しかも総予算は一兆四千億程度のまことに徴々たる国家の総予算である。それにパーセンテージが半分以下でありますから、いよいよもってこれらの国に、追いつくどころか、おくれる一方である、こういうことになる。国際的にも科学力そのものがものを言っております今日においては、その発言力はますます弱まりつつある、こういうふうに見るのでありますが、このような意味において、科学技術振興のために存在する科学技術庁長官として高碕国務大臣はどのような考え方を——一・五九%で果してよろしいかどうか、今度の予算等を見ましても、昨年と同じように一・五九%のようでありますが、果してこれで世界の現状に即応していけるのかどうか、国の基本的な問題であると思いますので、御質問を申し上げたいと思います。
  69. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 御質問の要旨はまことに同感でございまして、全予算に対する比率は、イギリス、米国に匹敵するまではいかなくとも、少くとも西独を追い越すくらいのところでなければならぬ、こう存じております。これも三十一年度は、御承知のごとく、総予算に対し一・〇四だったのでございますが、逐次上ってきておるわけでございます。本年は昨年とほぼ同額——同額というよりも、同じ比率であるということはまことに残念に存じまして、今後御趣旨に沿うように、科学技術の振興につきましては、研究予算というものをもっと十分取っていきたいと存じております。
  70. 松前重義

    ○松前分科員 防衛庁予算と比べてこの科学技術予算を見たのでありますが、いろいろ岡委員から質問をしておりました原子兵器というようなものと研究関係等は別といたしましても、世界をあげて、今や兵隊の頭数をふやしたり、軍艦を作ったりすることあるいは戦闘機という昔の遺物は、幾らジェット機といえども、こういうものは全部廃止しようとして、現に英国やアメリカ等では廃止の傾向をもって、これを実行に移しつつある今日におきまして、日本防衛予算というものは、逆にこれらのためにだんだんふえつつある。こういう現状、諸外国は、兵隊の頭数を減らしたり、軍艦をやめたり、あるいは飛行機をやめたり、ジェットの飛行機さえもやめたり、こういうことで、新しい時代に即応した国のあり方を考えておるときに、日本はこれを逆行して、同じようなつもりで、ちょんまげな防衛をやってござる、こういうことであります。外国が、科学技術の振興、そうして研究を旺盛ならしめることそのものが、平和産業の生産力を盛んにする、そうして科学技術教育を盛んにする、こういう方向に各国とも全力を注いでおるのが世界の現状であることは申すまでもないのであります。こういうときに、防衛予算と科学技術予算との関連性において、あまりに大きな時代認識の錯誤があるのじゃないか、私はこのことを痛切に感じておるのであります。これに対して科学技術庁長官は、閣僚としてどういうお考えをお持ちであるか、伺いたい。
  71. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 防衛予算につきましては、今日多いとか少いとかいうことについての議論はいたしかねますが、どっちかと申しますと、国民所得に対し防衛費というものは二%以下でなければならぬということは、ずいぶん前から主張されておりまして、今の状態ではその程度でいっておると存じておりますが、私はそれとは別途に考えまして、少くとも科学技術の研究ということにつきましては、何としても、今後の日本の経済といたしましても、政治といたしましても、やはり科学技術というものがすべての中心になり、これの振興が大事である、こういう点から考えまして、国家予算の許す範囲におきましてはこれは十分取っていきたい、こう存じます。
  72. 松前重義

    ○松前分科員 防衛予算と科学技術の振興との関係は、これは切っても切れないものでありまして、私の質問はむしろ総理に御質問するのが妥当であると思うのであります。科学技術庁長官に御質問するのは、少しよその領分に対して聞いたような感じがいたしますが、いずれこれは総理に御質問申し上げなければならぬと思っております。  そこで、この科学技術の振興ということが叫ばれてから長いことになりますけれども、いまだに総予算の一・五九%前後の予算が盛られるにすぎない、こういうような状態のために、わが国がアメリカや西独やその他の国々から技術の導入をいたしておるが、その導入の費用が相当な額に上っているはずであります。そこで最近におきまする一年間に技術導入をやられたところの金額、技術導入のためにどのくらいの外貨を日本が支払ったか、これを一つお示し願いたいと思います。
  73. 鈴江康平

    ○鈴江政府委員 お答え申し上げます。外貨の支払いは毎年漸増の傾向にございますが、昭和三十一年におきまして、円に直しまして約百二十億円、三十二年度は百五十三億円でございます。先ほどの科学技術振興費との割合を考えてみますと、三十一年度におきましては、科学技術振興費より多いのでありまして一一一%程度、三十二年度におきましては少し減りまして八八・九%であります。
  74. 松前重義

    ○松前分科員 あなたの方からいただいた資料で乙というのがありますが、これには十一億四千万円くらいあった、これを合せますと昭和三十二年度においては大体百五十三億三千万円程度の外貨を技術導入のために支払っておる、こういうことになりますがいかがですか、間違っておりますか。
  75. 鈴江康平

    ○鈴江政府委員 松前先生のお言葉の通りでございます。
  76. 松前重義

    ○松前分科員 技術輸出——日本の技術を海外に輸出して日本に入ってきた外貨についてお示し願いたいと思います。
  77. 三輪大作

    ○三輪政府委員 昭和三十一年度におきましては一億三千万円、昭和三十二年度は一億八千万円程度であります。
  78. 松前重義

    ○松前分科員 昭和三十二年度をとってみますと、技術を輸入したのと輸出したのと差し引いてみますと、外貨が海外に流出したのが大体百五十一億円、このくらいの外貨が技術を入れたというだけのことで海外に流出しておる、こういうことになります。そこで先ほどお示しがありましたように、日本の科学技術研究予算を総合してみると大体二百二十五億、これから原子力の予算を除きますと百五十一億であります。そうするとこの百五十一億の予算と全然同じお金で技術を海外から買っておる。日本研究のためには百五十一億、同じ金額を使っておる。まことに不思議な一致でありまするけれども、こういうことになると思うのでありまするが、いかがでございましょうか。
  79. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 全く御説のごとく、これは偶然に一致しておりまして、百五十一億の予算と同じ百五十一億円の外貨を払っておる。これはまことに残念な次第でございます。しかし、一方から考えますと、日本の工業全体が戦後空白時代があったのでありますから、これを取り返すために、日本の輸出貿易を振興し、日本の科学技術を振興するということは、これは並行的にやっていかなければならぬというので、やったわけでありますが、今後は相当この技術輸出もふやしていきたいと思っております。それにつけましても、やはり科学技術振興の予算というものはもっと取って、もっと拡大し、伸展させるべきものと考えておる次第でございます。
  80. 松前重義

    ○松前分科員 科学技術予算をもっとたくさん取らなければならぬという御答弁に対しては、満足をいたします。どうかこれは特に大臣の政治力をもって、来年というと鬼が笑うかもしれないけれども、とにかく、重要な発言力を持っておられる高碕通産大臣でありますから、一つ御努力を願いたいと思うのであります。すなわち、この科学技術の研究というものは、外国への外貨の流れをせきとめさせるためにやるべきものであると私は思うのです。ここ数年来の傾向を見ますると、外国からの技術導入は毎年ふえる一方、ところが、日本の科学技術研究予算は、昨年と今年はパーセンテージは同じである。問題はその絶対値でなくて、パーセンテージだと思うのであります。こういうことになりますると、これはまことにおぼつかないのでありまして、逆の方向をたどっておる。外国から輸入する方はどんどんふえる一方で、日本の科学技術研究費というものはふえもしない。これでは今のような御趣旨に向って、いわゆる外貨の流出を防ぎ、日本の国産を助長していくという結論には私は到達し得ないで、逆の方向へ行くのじゃないか、だんだん離れていく一方じゃないか、こういうふうに思うのであります。この点は特に思い切った予算、まあ米国や英国、ソ連などのような科学技術の進んだ国でさえも四%以上の予算をもってやっております。わが国は一・五九%、まことに情ないのでありまして、どうしても、おくれた国を追っかせるのには、強い機関車をもって引っぱってやらなくちゃいかぬ。その機関車はやはりこの予算に現われて参りますので、その点については特に留意して、将来とも科学技術の振興予算の獲得に対して、努力をお願いしたいと思うのであります。  そこで、私はこれらの問題を考えてみますると、まずこの技術導入の内容を見てみまするときに、その大部分は電気部分であります。その電気部分のうちで、しかもその大部分がエレクトロニクスの技術なのであります。このエレクトロニクスの技術のために技術導入をされておる。そうして、そのために相当な外貨が海外に流れておる、こういうことに相なっておるのでありまして、こういう意味から見ても、また、先般飛ばされました宇宙ロケットやあるいはスプートニクなどの中身を見ますると、全部エレクトロニックである。オートメションはエレクトロニクスによって進歩発展しつつある。こういうような現状でありまするので、エレクトロニクスに関する技術の研究は、日本の工業ことに日本のような手先の器用な国民には適当した工業であるとも思われるのでありますが、現在わが国にこのための強力な統一した研究機関がない、ばらばらであります。先ほど岡委員も質問いたしておりましたが、ばらばらでありまして、これを何とか一つ強い指導下に置いて、そして計画的にこの研究を前進せしめる、こういう御意図はないのであるかどうか。現在、科学技術庁自体の予算には、全然これが見えておりません。関係予算には多少散見はされますけれども、科学技術庁自体には見えていない。これらに対して何らかの具体的な措置をとられるのであるかどうか、お伺いしたいと思います。     〔田中主査退席、植木主査代理着席〕
  81. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 御説のごとく、外国から輸入しまする技術のおもなるものは、電子工学に関するものでありまして、これに対しましても政府は、総計いたしますと、昨年が七億二千万円、本年は七億五千万円を取っておるわけでありますが、これが御説のごとく、総理府なり、通産省なり、運輸省、郵政省、農林省という工合にばらばらになっておる、こういうふうなことも事実でございます。これはどうしてもやはり根本的に、政府といたしましては総合したる研究所を持たなければならぬ、こういうことのために、電子工学の総合対策委員会というものを作りまして、せっかく検討いたしておるわけでございます。何にいたしましても、とにかくただいま各省が持っているものをこのまま総合しても、それは意味をなさない、あるいはその一部分のものをもってやるということにするほかはないと存じておりますが、何しろ一番問題は、この研究に要する人たち、技術者を得るということが重大なる問題であると存じておりまして、この技術者をいかにして養成するかという点に重点を置いて参りたいと存じておるわけであります。しかし、仰せのごとく、この電子工学に関する研究あるいは研究所の設置は、総合的に、国としてもっと強大なるものを持っていきたいという御趣旨には全く賛成でございまして、その趣旨に沿うように今後考えていきたいと存じております。
  82. 松前重義

    ○松前分科員 お伺いいたしますと、非常な決意をお持ちのようでありますが、本年度予算には全然見えておりません。しかし、これは今後において具体的な御計画を持って進んでいかれんことを希望いたします。ただ現在、この電子工学あるいは電子技術に関する研究の促進に対して問題になるのは、各省にまたがっておる研究機関のなわ張り争いというか、セクショナリズムといいますか、その間に障害があって、一つのものが芽生えんとすると片一方からこいつを妨害して、なわ張り争いのためにそれが犠牲となってつぶれてしまう、こういうような傾向が非常に顕著に出ておるのであります。これに対しまして、科学技術庁が電子工学の研究に関して何らかの成案をお持ちであるといたしまするならば、通産省、郵政省との間に何らかの具体的な、なわ張りと申しますか、所管の問題に対する分界点を明確にして、ともに手をとり合って、電子工学の研究の促進に当るようにしなければならないと思うのでありますが、その点につきまして通産大臣兼科学技術庁長官であられる高碕さんは、どういうふうなお考えをお持ちであるか承わりたいと思います。
  83. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいま私が科学技術庁と通産省を兼任いたしておるものでございますから、そういう点からの御質問だと存じますが、この問題は、お話のごとく、これは率直に申し上げまして、各省のなわ張り争いが相当あるということは事実でございますから、これをいかに打開するかということが今後重要なる問題だと私は信じておるわけであります。それがために電子技術懇談会というものを各省の間に設けまして、そこでどの範囲までは通産省でやるかどの範囲は郵政省ということをきめたいわけでありますが、原則といたしまして、基礎的の研究につきましては科学技術庁がやるべきであり、これを実行に移す、実用に移すという場合には通産省なり、また郵政省がやる、こういうふうな方針のもとで今後懇談会を指導していただきたいと存じておるわけであります。
  84. 松前重義

    ○松前分科員 懇談会だけではこれはなかなか片づくまいと思うのでありまして、やはり政治的な問題として、国務大臣として、具体的にお互いに暗いところで小ぜり合いをやることのないような明るい道を開いていかなければ、電子光学の研究はどうも停滞しているように私は見受けております。この点一つ特に要望をいたしたいと思います。  そこで私は民間研究に関しまして質問をいたしたいと思うのでありますが、民間会社に研究に関する助成金等をお出しになっておられるのでありますが、果してこれが研究に使われたのか、会社の借金の穴埋めに使われたのか、その辺のところに対しましてどういうふうな監督をしておられるのか。もしもこの辺に疑問があるならば、その民間会社の別働隊として研究法人法のごときものをお作りになって、その研究法人法に基く研究機関に対して助成をする、そうすればこの監督等も明確にできるし、会社が適当にこれを流用することもないだろう、こういうことになると思うのでありますが、この問題について、具体的な案をお待ちであるかどうか伺いたいと思います。
  85. 鈴江康平

    ○鈴江政府委員 ただいま御質問のございました研究補助金の問題でございますが、研究補助金につきましては、各省がそれぞれの所管の行政の範囲内におきまして適当な研究者あるいは適当な会社に交付をしておる次第でございますが、その交付の仕方は、直接それぞれの省が監督しておるわけでございます。やはり実施計画を提出させましてその内容を検討し、必要がありますれば、またその場に出向いて検査をするというようなことにいたしているわけでございまして、当庁としては、直接の監督はしておらぬわけでございますけれども、それぞれの省が責任を持って監督している、このような次第でございます。  もう一つそれに関連いたしまして、研究法人法の御質問があったわけでありますが、当庁におきましてもいろいろ研究はして参ってきておるわけでございますけれども、何分にも営利機関研究機関を、営利の主体から一応法人を別にするということにつきましては、経済界の方面におきましてはあまり好まないということもありますので、なお検討を続けておる次第であります。
  86. 松前重義

    ○松前分科員 研究法人法というものがいいのか悪いのか知りませんが、何らか会社としてもやりやすいようにしてあげるとともに、せっかく助成金を出したならば、それがほんとうに研究のために使われるようにすることが、非常に急務ではないかと思うのです。たとえば、会社自身が利益金の中から研究費を出すようなことではなかなか研究は促進しません。だからして、支出勘定その他でも出せるような、何らか税制的にもこれを保護し得るような体制を講ずる必要があると思うのでありまして、この点については特に一つ今後の研究ばかりでなく、すみやかに具体的な対策を講じてもらいたいと思うのであります。  その次にお伺いしたいのは、研究公務員に対する問題であります。研究公務員というものは、一般の公務員に比べてはるかに待遇が悪い、差別待遇をされておるのであります。研究者というのはじみな仕事でありまして、そうして自己の要求よりも、むしろ技術や科学に対する研究に熱心のあまり、自分の生活やその他に対する要求をなさないがゆえに、だんだんこれがないがしろにされて差別待遇をされておる、こういう現状でありますが、これに対してどういうふうな具体的な措置を今度の予算においてとられておるのであるか。また、とられようとして、できなかったことが私はあると思う。その意思はあるとは思いますけれども、なかなか実現困難であったということもあるのではないかと思います。それらの点について少し伺いたいと思います。
  87. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 御説明のごとく、研究員が他の公務員に比し、別に虐待というわけではありませんけれども、優遇されていなかったということも事実でありますし、また研究員が今日やたておることが、自分の研究をやるのに熱心のあまり、夜もおそくまでやる、自分の研究に熱心のあまり、自分で本も買わなければならない、買いたいというようなこともあるし、かたがた局長になるということもできないというふうな点もあるものでありますから、その上に今日技術者を学校卒業生から採る上におきましても、なかなか研究所に入ってくれない。こういうような点を考えまして、今回の予算につきましても、三つのポイントだけとったのであります。これは、第一に特別研究員の制度の実施というふうなこと、これは役づけ等の関係で役づけできない人でも、相当の給料を出せること。第二に超過勤務手当の増額をする。第三に初任給を引き上げる。この三つの点につきまして、今回の予算に計上されたわけでありますが、詳細のことは政府委員から御説明申し上げます。
  88. 鈴江康平

    ○鈴江政府委員 ただいま大臣から御答弁のありました通りでありますが、最後に松前先生から、科学技術庁で計画したものがうまくいかなかったものがあるのではないかという御質問でございますが、この点に関しまして申し上げますと、今大臣お話がございましたように、研究者はいろいろ図書を買ったり、あるいは学会に加入するというようなことで、普通の公務員よりもいろいろ経費がかかるのではないかということで、研究手当というものをつけたいという希望を持っておったわけであります。人事院、大蔵省ともいろいろ話し合っておったわけでございますが、何分にもこの制度は新しいものでございますし、こういったことを研究公務員に認める場合には、他の官職においても同様な希望も出るのではないか。その限界がはっきりしないということになりまして、その結果三十四年度予算においては見送るということになった次第であります。こういういきさつがありましたことをちょっと申し上げておきます。
  89. 松前重義

    ○松前分科員 いろいろ苦労されて、研究公務員に対し、研究者を優遇しようというお気持はわかります。しかし、物事はやはり具体的に現われてこなければ、その効果はないのでありまして、ただいまのお話のように、研究者は本も買わなければいかぬ、それから学会にも行かなければいかぬ。聞くところによると、一人当りの出張旅費が、研究者にとっては年間四千円だそうです。年間四千円では出張もできない。汽車賃で終ってしまう、一回の出張にも事足りない、こういうことにもなるのでありまして、これではとうてい、いわゆる研究者として公務員になって、一つ科学技術の振興をはかりたいというような野望を持っておっても、自分の研究そのものもできない、生活においても一般の公務員に対して非常に劣っておる、こういうことでは優秀な人も入ってこないばかりか、優秀な人がおればどんどん民間やその他の方向に逃げていくだろうと思います。また現実逃げていきつつあります。そこは私は基本的な問題だろうと思うのでありまして、この点については特に一つ高碕国務大臣におかれましては、今後のこの科学技術振興の上から最も重大な基礎でありますので、努力していただかなければならないと思うのでありますが、通産大臣の御所見を承わりたいと思います。
  90. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お説私同感でございまして、今回の予算におきましても、先ほど申しました三項目につきましてかれこれ一億八千万円というものを増額したわけでございます。そういうようなことで、今後も十分研究員が落ちついて進んで研究することができるように努力していきたいと存じております。
  91. 松前重義

    ○松前分科員 先ほど来いろいろ御答弁がありましたが、科学技術研究と税金の問題について一言お尋ねしたいと思います。先ほど来、技術導入の問題と技術輸出の問題を御質問しました。ところが、この技術を輸出する場合においては、外国と契約いたしましたそのロイアリティ、外国から日本に入りますロイアリティ、その外貨の半分を税金に取り上げられてしまうのであります。こっちから出す場合においては、外国の税金はほんのわずかである。こういうことでは、技術の研究なんというものの促進ができるはずはありません。こういう全く技術に対するところの過重な税金、こういう状態では、とうてい科学技術の振興奨励はできないと思うのでありまして、この点は税制の上から見た基本的な問題の一つであると思うのであります。これに対して、科学技術庁長官としてあるいはまた通産大臣としましてもどういうお考えをお持ちか、根本的に是正しなければならないと思うのでありますが、いかがでありましょうか。
  92. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 日本の科学技術を輸出するということは、何ら原料なしに頭を輸出するわけですから、これはできるだけ奨励していかなければならない問題でありまして、それに対してただいまお話のごとく税金が課せられておるということは、私実はよく知らなかったわけなんでありますが、そういうようなことだとすれば、それは租税特別措置法の一部を改正するということも今考えられておるわけでございますけれども、これはますます奨励して、そういうようなものはどんどん輸出を奨励していきたい、こう存ずるわけであります。同時に、輸入につきましても、相当これに対する制限を加えていくべきものだ、こう存じております。
  93. 松前重義

    ○松前分科員 私は、輸入に対しては相当な税金をかけてよろしいが、輸出に対しては税金を軽減すべきだ、こう思うのです。それを逆でありまして、輸出の場合は半分近いところの税金をかけておるという現状であります。これでは科学技術の振興なんというのは逆転するばかりであります。輸入を奨励して輸出を抑圧する、こういうことで一体ほんとうの経済政策であるかどうか、科学技術振興政策であるかどうか疑わざるを得ないのでありまして、これはすみやかに一つ、今国会におきましてまだ間に合うだろうと思いますから、善処していただきたいと思うのであります。  その次にお伺いしたいことは、このようなもろもろの政策を実現いたしまするためには、外国は、ことに先ほど申しましたアメリカや英国、ソ連などは、非常な強力な行政機関を作ってやっております。わが国においては内閣の一部の科学技術庁ということになっておりまして、長官大臣ではありますけれども専任ではない、兼任であります。常に兼任である。こういうようなことでは、これはなかなか科学技術の振興というものはできかねるのではないか、こういうふうに私どもは考えております。     〔植木主査代理退席、主査着席〕 この科学技術に関する行政をつかさどる中核体としての科学技術庁を思い切って強化して、これを科学技術省に持っていく。そうして機構の拡充をはかり、各省との調整をはかり、そうしてこれが機関車になって日本の科学技術の振興に当る、こういうような態度に私どもは出なければならないと思うのでありますが、長官はどのような御意見でありますか、伺いたいと思います。
  94. 赤城宗徳

    ○赤城政府委員 ただいまのお話もっともだと思います。科学技術庁を省にするかどうかということにつきましてはお話もっともでありますが、行政機構全般との見合いからなお検討いたします。なお、現在科学技術庁の専任の大臣がおりません。内閣改造の際にも、実は総理の方でも、専任大臣を置きたいということでありましたが、いろいろな関係から今置いてありませんけれども、それには最も適任である高碕通産大臣が兼任された方が一番適当だということで、今兼任されているようなことなのでありますが、専任大臣を置きたいという意向は総理も持っておるようであります。
  95. 松前重義

    ○松前分科員 行政機構の問題は、各国とも非常な努力を払って、膨大な行政機構のもとに科学技術の推進をやっております。むしろ自衛隊増強よりもこの方がよほど——よほどどころじゃなく、今世界をあげてこの方向へ向いつつあります。これ自身がほんとうの自衛であるという概念の上に立っておる。今は自衛なんということは、私は専門家のやることではないと思っております。平和産業そのもの、科学技術の振興そのもの、科学技術教育の拡充そのものが自衛である、こういう概念の上に新しい歴史が進みつつあると私は見ておる。こういう意味からいたしましても、科学技術省の設置あるいはまたこれに類似の政策を今打ち出さなければならないときだと思うのでありますが、ただいまの官房長官の御答弁はちょっと私には満足ではございません。今度は総理の施政方針演説の中にも、科学技術の振興というのは遺憾ながら一言半句も入ってなかった。そうして、その結果が結局総予算の一・五九%、昨年と同じパーセントになっております。これでは私ははとうてい日本が世界に伍していくことはできぬと思う。この点については、特に今後政府も具体的な強力な政策を打ち立ててもらいたいと思うのであります。  最後に御質問したいのは、科学技術に対してただいままで申し上げましたような政府提出の予算を見ても欠陥だらけ、不足だらけでありまして、とうてい日本の世界における立場を、新しい文化国家と申しますか——あるいはこの国のあり方に対しまして非常に大きな欠陥を宿しておるという状態でありますので、すみやかにこれらを是正しなければならないばかりか、この科学技術の振興そのものが、国家の将来にとって、経済力にとって、あるいはまた国際的なポテンシャルと申しますか、一つの目に見えない力——ソビエトがあの宇宙ロケットを打ち出したことによってミコヤン副総理がアメリカを訪問して、アメリカはがく然とした、そういうふうな無言の平和の目的のための科学の力が、偉大な国際的な力として現われておる今日において、私は科学技術の振興そのものが、今日の日本の状態であっては、とうてい問題にならないという感じを持つものであります。そういう意味からいたしまして、科学技術の研究費というものは、日本の国家予算の何パーセント以上でなければならない——何パーセントという数字をここで明確に申し上げることははばかるのでありますけれども、とにかく何パーセント以上でなければならないという基本的な国家の原則を今確立しなければならないときだと私は思うのであります。科学技術基本法のごときものを作りまして、内閣はかわっても、なお科学技術の振興によって日本の力が培養され、科学技術の振興によってあらゆる面において世界的な日本のポテンシャルが高まっていく、こういうような基本的な法律を制定する用意がおありになるかどうか、お伺いしたいと思います。
  96. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お説のごとく、科学技術というものは、今後日本の進むべき道として最も重要であり、天然資源の足りないところは頭の資源によって補っていかなければならぬ。しかもわが民族は決して外国に比して頭においては劣っていないということも実際にわかってきているときでありますから、この際日本といたしまして、今後の政治を運営し、経済を運営するにいたしましても、科学振興は最も大事であるということは全く同感でございます。それがためには今日の科学技術庁におきましても、今まで専任の大臣がいなかったことは間違いだと存じまして、今後はできるだけ専任の大臣に入ってもらって、十分な施策を講じてもらう。同時に、今回発足いたさんといたしております科学技術会議を強力に推進いたしまして、そちらにおきましても、国の政策として科学技術をもっと取り入れる。予算の編成等につきましても、従前は民間におきましては利益金の何割を研究に使うことも言っておりましたが、利益金ではなくて、売上金の何割ということを考えなければならぬ時代になっておりますから、日本防衛予算国民所得の何パーセントとかいうことになれば、私は、予算の何パーセントというよりも国民所得の何パーセントというふうなことから考えていって、科学研究費というものは十分取っていかなければならぬものだと存ずるのであります。そういう点は皆さんの御支援によりまして、今後進んでいきたいと存ずる次第でございます。
  97. 松前重義

    ○松前分科員 ただいまのお覚悟のほどは承わりましたが、今のような発言の内容を盛った——国民所得の何パーセントというのがいいのか、国家予算の何パーセントというのがいいのか、この辺は今後の問題といたしましても、その他もろもろの科学技術振興に必要な、科学技術研究を助長するような政策を盛った、しかも超党派的な立場において、科学技術振興基本法でもよろしゅうございますが、こういう意味の基本的な、内閣がかわっても動かない、常に日本民族の経済的なあるいは文化的な基礎となるこの科学技術の研究の促進に対して、科学技術基本法のごときものをお作りになる意図があるかどうか。科学技術会議その他ができますれば、当然政府としてはこれに付議される問題もあるかと思うのでありますが、そういう意図があるかどうか伺いたいと思います。
  98. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 科学技術会議が発足いたしますれば、当然ただいま御質問の問題は付議して進んでいきたいと存じております。
  99. 松前重義

    ○松前分科員 これで私は質問を終ります。  ただ、伺いますると、大臣は大体予算ができ上るころ御就任になったようでありまして、大臣の御熱意があっても、なかなか予算編成には間に合わなかったのではないかと思われるのであります。ただいまの御発言の趣旨はまことにけっこうでありますけれども、具体的にこの予算の中に盛り込まれてない現状であります。国際収支の問題にしましても、百五十一億円の外貨がどんどん海外に流れており、同じ百五十一億円だけしか国内の研究には使われていない、そのために海外への技術輸出はわずかに一億八千万円程度しかりない、こういうことでありまして、しかもまた科学技術の研究予算は、昨年も今年も同じであるが、技術導入のために海外に流れ出る外貨は、どんどん毎年々々ふえつつある。こういう状態では、とうてい日本の国力は増進しつつあるとは私はどうしても見られない。増進しつつあるならば、これは人人の汗によって、いわゆる労働力によって増進しつつあるのであって、ほんとうに頭脳の力によって増進している姿ではないと思うのであります。こういう意味からいたしまして、基本的に、おざなりな態度でなく、政府はほんとうにふんどしを締めて、今後のこの冷厳な歴史の現実に対処しておくれをとらないように、そしてまたもっともっと強力な経済体制を打ち立てるばかりか、高い文化への道を国が歩くことができるように、一段と努力をお願いしたいと思うのであります。  これで私の質問は打ち切ります。
  100. 田中伊三次

    ○田中主査 多賀谷真稔君。
  101. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 最近ジラード事件とか、あるいはロングプリー事件という米軍の不法行為による遺憾な事件が次から次に発生しておるわけであります。しかし、これは講和発効以後の事件でありまして、一応補償の処置は、わずかではございますけれどもついております。ところが講和発効前に駐留軍の不法行為によって損害を受け、あるいは死亡、傷害を受けた方々には、単に見舞金は出ましたけれども、十分な補償がついていないわけであります。これに対しましては、西ドイツにおきましても、イタリアにおきましても、十分補償の法的措置がなされておるにもかかわらず、日本においてはいまだそれがなされていない。そこでこれが非常に大きな問題になりますと、政府はこのたび予算といたしまして、事故補償費として百万円の調査費を組んでおる。一体百万円でどの程度の調査ができるのか。府県にそれを割り当てますとわずかに二万円程度でございますが、一体こういうようなわずかなことで果して十分な調査ができるかどうか。また調査をした後に、一体政府はどういう措置をとられようとしておるのか。この点について官房長官から明快な答弁を願いたい。
  102. 赤城宗徳

    ○赤城政府委員 ただいまお話のように、占領後におきましては、行政協定十八条の補償支給基準によって補償金が出ておるわけであります。占領前におきましては、国の行政措置として、療養、傷害及び死亡見舞金を支給しておるのでございますが、これにつきまして二つの問題があると思います。一つは、今御指摘のように、占領後の支給基準に比較して、前の行政措置の支給金が非常に低いということであります。もう一つは、支給漏れもあるわけであります。占領前の救済措置は、都道府県の委託業務として実施されておりましたが、相当期間も経過しておりますので、具体的にこれを調べる必要がある。それからまた支給漏れについて調べる必要がある。こういうことで、今御指摘のように、三十四年度予算に——百万円ということでございましたが、四百万円でございます。四百万円の調査費を計上してあるわけであります。  そこで、見舞金を支給されておる者と見舞金を支給されていない者と二つあるわけでありますが、すでに見舞金を支給されている者については、各都道府県にその資料が保存されておるはずでありますので、都道府県の協力を得て、その資料を借りて調査を整備させる。それからまたその時期でありますが、この調査は大体六月末に行いまして、その結果を七月中旬ごろまでに取りまとめる方針を持っております。また見舞金が支給漏れになっておる者もありますので、これは届出を待つわけでありますが、こういうことに対する予算も計上して、漏れておる者に対しては届け出るようにということをいろいろな面から周知するような方法、一口で言えば広報活動をいたしまして、届出をさせたい。これは六月末日までごろに調査をいたしまして、額の低い者及び調査漏れ等に対しまして、関係方面の検討資料が一応整備されるという予定を立てて進みたいと考えております。四百万円の予算がありますので、大体十分であろうという見通しを持っておるわけであります。
  103. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 こういった事件は何も日本だけでなくて、占領されておりました西ドイツもあるいはイタリアも、同じ運命にあっておるわけであります。西ドイツにおきましては一九五五年、法律を作りまして、すなわち占領損害補償法というのを作って、占領中にあった損害について——これは人的損害の場合もありますし、あるいは財産権の損害の場合もありますけれども、その補償をしておる。そうしてその占領損害というのが一九四五年八月一日から一九五五年五月五日正午までの間においてこの法律の施行区域内で惹起されたものを言うのだ、こういうわけで、あるいは従来見舞金等で出されておるものについては、物価の変動その他があればそれをスライドしてその差額を補償する、こういうように非常に親切に単独立法としてこれが行われておるわけであります。あるいは、それによって生業無能力者になった者については、また傷病手当のほかに、生業無能力でありますから、そういう措置もとられておる。あるいは年金制度もこれに加わっておる。こういうようにきわめて手厚い保護がなされておるわけであります。あるいはまたイタリアにおきましても、イタリアの平和条約におきましては、連合国に対するイタリアの政府並びに国民が持っておる請求権は、日本と同じように一切放棄しておりますけれども、そのあとに、イタリア国領域にある同盟または連合軍の軍隊に徴発されたりあるいはまたその領域において同盟または連合軍隊による戦闘によらない損害の損害賠償を満たすために、リラ貨をもって公平な補償をすることを同意する、こういうように講和条約の中に明記しております。ところが日本の場合は、平和条約の十九条によって完全に放棄しておる。放棄したのはいいけれども、それに対する補償がうたってない。条約にうたってなくても、国内法ですぐそれに対する補償処置をとればよかったわけですが、国内法にも何ら明記されてない。ただ厚生省から見舞金と称する行政措置でされておる。こういうところに、ものの扱いとしてきわめて不適当な、そしてそれを軽視した扱いがなされておるのではないか、こういうように考えるわけであります。最近は坂井さんの場合でもあるいは宮村君の場合でも、そういう事件が起きますと新聞でもかなり大きく取り上げられますし、補償についても、現在の補償制度ではまだ低いという声すらある。そしてそれを何とかしなければならぬという問題すら起っておる。ところが、その占領中にいろいろなことによって損害をこうむった人々、たとえば、堀本稲夫さんという人がありますけれども、この人はかなり大きく事業をやっておったが、突然夕方になって仕事から帰る途中で拳銃弾で後頭部を貫通する瀕死の重傷を負って、一カ年間も療養しておる。この一カ年間の療養費というものは莫大なものである。そしてその後は常にてんかんに襲われる。さらに昭和二十八年には、再手術をしなければならぬという状態になっておる。現在でも起居に非常な不自由をしておる。そこで生活保護法の適用を受けておった。ところが最近子供が高等学校へ行くということになった。高等学校へ行っておる子供は、生活保護法の適用がない、こういうわけで、理由のいかんを問わず、生活保護法というのは、子供を高等学校にやらせておるのではだめだ、こういうふうなことで、生活保護法の適用を受けられない事態になった。子供に学校をやめさせるか、生活保護法の適用を受けずにやっていくかというような差し迫った状態にある。あるいはまた青年団の諸君が集会所に集まっておりました。ところが酒と女を出せというので、三人のうち一人はふんどしのまま、一人はゆかたがけのまま、もう一人もゆかたがけのままですが、三人を連れていって銃殺しておる、こういう幾多の例があるわけであります。これがわずかの五百円からあるいは六万円、さらに十五万円もらった人もありますが、そういう見舞金でこれが放置されておることは、非常に遺憾であると思うのです。そこで政府は、今度四百万円ですか、調査費を組まれておるのですが、一体この調査の結果が出れば、西ドイツやその他のように法律をもってこの補償をなされるのかどうか、その点明確に伺いたい。
  104. 赤城宗徳

    ○赤城政府委員 占領中にいろいろな被害を受けましたことに対しまして事後救済処置をとるべきだ、各国にもそういう例があり、法律もあるのだというお話でございます。この問題とは違いますが、今国会におきましても、占領中に接収された家屋等が非常に安い価格で接収された、返されても損害が相当あるということでありますので、そういう問題に対しましては、今のスライドといいますか、適当な価額を補償するというような予算措置もいたし、法律も出ているわけであります。今お尋ねになっておる占領中に身体財産等に被害を受けた者に対する措置は、調査会の結果を待ってどうするか、法律に出すかどうかということでございます。これは行政協定十八条の占領解除後の問題についても法律になっておりませんので、この方面も検討いたしまして、調査の結果を待って、あるいは法律でこれをきめるということに相なろうかと思いますが、今のところ断定は下せませんけれども、調査の結果を待って法律を出すというのが私は筋じゃないか、こう思っております。
  105. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 行政協定の場合は、これは一応米軍に責任がある、その取扱いを日本がしておるという場合ですから、これは必ずしもすぐ法律が要るかどうかというのはかなり疑問ですけれども、今長官お話のように、占領中の場合、現在の行政協定の適用を受けない場合ですから、これはやはり法律に出していただくということが、まず第一に私は周知徹底をすると思うのです。行政措置ですと、知っております者は恩恵にあずかるけれども、知らない者は恩恵にあずかれぬという非常な不公平が起きる。法律だってそういうことが間々ありますけれども、法律の方が適当ではないか、かように考え、そういう御処置を願いたいと思うのであります。  それから現在傷が残って治療をしておる者、こういう者についても十分考えていただきたいと思うのであります。これはなるほど治療費は出ましたけれども、当時の療養費というのは六カ月で打ち切られておる。三年、四年かかるような病人でも、六カ月で打ち切られておる。ここに非常に不公平が出ておる。なお、治療するまでという条件がついておりませんから、現在でも身体障害がそのまま残っておるという者、これについてもやはり現在の時点で考えていただきたいと思うのです。  それから支給日が非常におくれております。ために、せっかく金額が、もらうときにはずっと支給日がおくれておる。そこで実際はもうインフレになって、もらっても価値がないという問題、それから最初のときは五百円ですから、当時の五百円は若干多かったのじゃないかという議論もありますけれども、やはり五百円は五百円で、しかもその支給日はかなりおくれておるということになると、非常に問題である。少くとも、現在でも千日分というもの、あるいは葬祭料六十日分は低い。裁判所では最近、訴訟をいたしますと、むしろ裁判所の方が多いという事例が多いのです。こういうこともありますから、私はそういうスライドの面は十分見ていただきたいと思います。いやしくも政府が払って裁判所に不法行為による損害賠償を請求した場合に、裁判所の方が額が多い。こういうことは、どうも立法府におるわれわれとしましても、また行政府を担当されておる方々といたしましても、十分考えなければならない問題である。今申し上げておりますのは講和発効後の事件でありますけれども、ですから講和発効前の問題は、果して国家に賠償責任があるかどうかということは非常な議論になりますけれども、そのことはやめまして、一応法律にして十分な手当をしていただきたい、このことを要望したいと思います。最後にもう一度御答弁を願いたい。
  106. 赤城宗徳

    ○赤城政府委員 調査を進め、その結果によって決定することでありますが、私も法律にした方が適当であるという考えを持っております。
  107. 田中伊三次

    ○田中主査 小平忠君。
  108. 小平忠

    ○小平(忠)分科員 過日の本委員会の一般質問の際に、時間の都合上分科会に譲りますとお約束をいたしておった件でありますが、開発庁長官であり、また行政管理庁長官である山口国務大臣にお伺いをいたしたいと思います。  質問の第一点は、先般も少しく触れたのでございますが、三十四年度の公共事業関係予算は、すでに御承知のように、道路関係あるいは港湾関係等は大幅に増加いたしております。しかるに、これに呼応いたしまして、事業量の増加と当然密接不可分の関係にあるべき職員増加でありますが、これは私の考え方からみますならば、非常に困難なことではなかろうかというように考えさせられるのであります。そこで、山口大臣は、この事業量の増加に伴います職員の配置についてどのようにお考えになりますか、まずお伺いいたしたいと思います。
  109. 山口喜久一郎

    ○山口国務大臣 お答えいたします。先般の予算委員会において一応簡単にお答えはいたしておきましたが、御指摘通り、諸君の御協力によって、北海道開発予算が非常に増額されました。それにつきまして、この予算すなわち事業量をどうして年度内に消化するかということは、もう端的に考えなければならぬ問題でありまして、これについては、私も、開発局関係者ともいろいろ相談をいたしましたが、本来ならば、現在の開発局の人員をもってはとうてい消化し切れないという判断をいたしましたから、差しあたって、今法的に許された範囲の人員をもってこれを消化しようとすれば、どうしても他に協力を求める機関が必要になるという判断のもとに、近く現地にも私は参りまして、設計とか測量とかいったような面は時間もかかりますし、また手間もかかることでありますから、米国等の例にならいまして、設計、測量といった面を民間会社に委託して、そうして人的に足らざる面を補うようにしなければならなぬ、こう考えておるようなわけでございます。
  110. 小平忠

    ○小平(忠)分科員 ただいま、現地をよく調査されまして、不足の場合にはいわゆる現地の設計、測量等については、民間会社に委託する場合も考えておるということ、これは私はきわめて重大な発言だと思いますが、このことに関しましては、後ほどお伺いいたします。  そこで、従来とも問題になっておりまする定員外の職員ですが、現在はどのくらいおりますか。
  111. 山口喜久一郎

    ○山口国務大臣 お答えいたします。御承知通り、三十二年度末現在に対して約五六%に相当する二千百八十八名を定員化しましたから、残るものは、常勤職員で二千名、それから常勤的非常勤職員といいますか、これが二千名程度ある、こう思っております。
  112. 小平忠

    ○小平(忠)分科員 この定員外の職員を、三十四年度においてはどのくらい採用の予定になっておりますか。
  113. 山口喜久一郎

    ○山口国務大臣 お答えいたします。三十四年度においては、九十五名採用の予定であります。
  114. 小平忠

    ○小平(忠)分科員 定員外の職員であります。九十五名は定員のワク内でございましょう。
  115. 山口喜久一郎

    ○山口国務大臣 ただいま御説明申し上げました二千名から定員に繰り入れるものが九十五名ですから、それを控除した残りが定員外として残る、別にふえることはないのであります。
  116. 小平忠

    ○小平(忠)分科員 そうすると、定員外の職員として三十四年度に採用するという考え方はないのですね。
  117. 山口喜久一郎

    ○山口国務大臣 今のところ、定員外職員として採用する考えはございません。九十五名繰り入れますから——その九十五名は繰り入れても差しつかえない、こういうことになります。
  118. 小平忠

    ○小平(忠)分科員 この九十五名というのは増員されるのじゃないですか。
  119. 山口喜久一郎

    ○山口国務大臣 常勤から繰り入れますから、その常勤が減っただけまた繰り入れるから、結局、あわせて九十五名の増員となります。
  120. 小平忠

    ○小平(忠)分科員 これは建設省全体で二百九十四名、それから開発庁関係で九十五名、これだけ定員がふえるのじゃありませんか。常勤職員から入れようとどこから入れようと、定員がふえるのじゃありませんか。
  121. 山口喜久一郎

    ○山口国務大臣 お答えいたします。結局そういうことになります。九十五名増員ということになります。
  122. 小平忠

    ○小平(忠)分科員 その九十五名は、いわゆる定員外の非常勤職員をふやすのであるから、そうすると、その分を補充するのですか、それとも補充しないのですか。
  123. 山口喜久一郎

    ○山口国務大臣 結局補充するということになります。
  124. 小平忠

    ○小平(忠)分科員 そうしますと、補充するのだから、結論的にはそれだけ定員がふえる、そうして定員外の分は補充して従来と変りがない、こういうことでありますね。そうすると、三十四年度は、従来の定員外の職員のワクをふやすということは考えてない、こう思ってよろしいのでしょうか。
  125. 山口喜久一郎

    ○山口国務大臣 それは最初にお答えした通りであります。
  126. 小平忠

    ○小平(忠)分科員 そこで問題になるのは、果して九十五名の職員増加で、一体この飛躍的に増大された事業量を年度内に円滑に消化できるかどうかというところが非常に問題であります。そこでただいま長官が御指摘のように、現地を調査した結果、測量等については民間会社に委託することも考えているのだというのでございますが、それは具体的にはどういうことなのですか。
  127. 山口喜久一郎

    ○山口国務大臣 ただいまのところ、まだ具体的にこの委員会を通じて発表する段階にはなっておりませんが、開発局に命じて、至急に私の考え方に基いて会社をこしらえるように、現地の有力なる経済人その他技術家、それらの方々に相談をして、そして相当額の資本金をもって——現在も何か一つあるようですが、そういったものもついでに吸収するか、あるいはそれを基盤とした測量設計請負会社をこしらえるか、そういうことも、予算通過までに間に合うように、至急立案するように命じておるわけであります。
  128. 小平忠

    ○小平(忠)分科員 現地の財界人その他に協力を求めて、国みずから行うべき事業の一部を、そういった民間会社を作らしてそれに委託してやるということで、目下準備中であるということですね。
  129. 山口喜久一郎

    ○山口国務大臣 そうです。
  130. 小平忠

    ○小平(忠)分科員 これは大臣、あなた、それ本気でございますか。もし本気でそういうことを考えたとするならば、これは私は重大な問題だと思います。これは分科会でありますからあまり内容にわたっての論争は差し控えたいと思います。いずれ適当な機会にこの点に関しましては根本的に政府の所信をただしまして、真に北海道の総合開発、いな国土総合開発のために、これが完璧を期する意味において私は明らかにしたいと考えますが、これはあなたがこの分科会においてそのような構想を述べられたということは、もうだいぶ具体的に進んでいるのではありませんか。
  131. 山口喜久一郎

    ○山口国務大臣 お答えいたします。具体的にといっても、具体的の程度があるわけですが、私としては、これを必ず年度末までには具体化して発足させるように本気で考えております。
  132. 小平忠

    ○小平(忠)分科員 一番問題になりますことは、事業量の増加に伴って必然的に起って参ります稼働人員増加、このことに関しまする公務員の定員化の問題について、従来長い間問題になってきたところであります。このことは、国の事業を円滑に推進する上から、当然国が責任を持って考えなければならぬことであります。そこで一方定員の増加はできない、しかし反面事業を推進しなければならぬから支障がある、そういった苦しまぎれに、国の事業を、民間会社を作ってそこに委託してやらせるなんていうことは、これは山口さん、大へんなことでございます。あなたはよほどの決意を持ってかかられたと思うのですが、しかし、この点については、先ほど申し上げましたように、基本的な重大な問題でありますから、別な機会に私は所信をただしたいと思いますが、しからばこの三十四年度において定員外の職員増加する考え方はない、こうなって参りますと、今あなたがおっしゃったように、民間会社に委託するといったところで、直ちにこれはできるわけじゃないのです。そうすると直ちに起きてくる問題は、職員に対して非常に過激な労働をしいるというようなことになるのであります。私はこの際明確にしなければならぬと思いますことは、その事業量を消化できないということが、とかく従来職員の労働組合に責任を転嫁するといううらみがなきにしもあらずであります。労働強化に対します労働組合の反発、いわゆる超勤の拒否闘争というようなことがあった場合に、これを労働組合側に転嫁をして、責任のがれをするというようなことがあるのでありますが、現実の具体的な問題として、この点に関しますあなたの所信はいかがでございますか。
  133. 山口喜久一郎

    ○山口国務大臣 なお、先ほどの問題でございますが、結局せんじ詰めて参ると、非常勤職員の定員化を少くとも三十五年度までにはしなければならぬというようなことは、片一方行政管理庁長官として私は一つの考えは持っておるわけであります。しかし、現在の段階においては、公務員法の改正とにらみ合せなければ、非常勤職員の定員化というようなことは相当困難な問題でありますから、仰せの通り苦しまぎれではありましょうが、何としてもこの予算を消化するためには、幾何学と一緒で、与えられたる定理と定理によって問題をすみやかに解決する以外には方法はないのでありますので、私は、私に与えられたる人員と、そして予算をどういうふうに消化していくかということが私の当面せる問題でありますから、こういうことにつきましては、予算の早期示達であるとか、あるいは人員の適正な配置であるとか、また旅費、超勤手当等を増額していく、またただいま九十五名の増員がありましたが、これも大した期待は持たれないわけではありましょう。さらにまた直轄工事というようなものを相当量請負に回す、民間に回すというようなことによっても、そこにも多少の余裕はできてくるのでありまして、今の人事管理の問題につきましても細心の注意を払いまして、超過勤務が過重になったり、お示しのような超勤拒否のような不祥の事態が私が長官たる限りにおいてはこれの起らないように、私自身が親心を持って臨む、こういった考えを持っておるようなわけであります。
  134. 小平忠

    ○小平(忠)分科員 超勤拒否に対します基本的な責任の所在について大臣考え方はまことにごりっぱです。そういう基本的な考え方のもとに善処を特に望むわけであります。  そこでやはり問題は定員外と、定員の中にあって身分を保障された形とは、これは同じ職場に働く者にとっては大きな開きであります。昨年、御承知のように、不満足ではあったけれども政府当局の善処によって相当の定員化がなされました。やはり私はこういった不遇な立場にある、身分を保障されていない定員外の職員を一日も早く定員化しておくということに本年も努力すべきであるというふうに考えますが、この点はいかがでありますか。
  135. 山口喜久一郎

    ○山口国務大臣 私としては、北海道開発庁長官としては、ぜひ定員外職員を定員化するということに今日なお熱意を失ってはいないわけであります。その間においてまた各省の大臣の中には、三十四年度中には定員化するといって国会で言明した方もあるやに承わっておるのでありまして、これらの諸君もわれわれの考え方に協力していただいておりますから、私は何とかしてこの問題は少くとも三十五年度までには全部定員に繰り入れて、そしてそこに一線を画して、今後は定員外職員を認めないとかいうような抜本塞源的な措置が必要ではないか、私はかように考えております。
  136. 小平忠

    ○小平(忠)分科員 基本的にすみやかに定員外の職員の問題を善処するということについて、さらにそれをあなたは行政管理庁長官という立場もあるのですから、一つ推進をしていただきたいと思います。この問題の最後の締めくくりとして、私は別な機会に譲りますけれども、国の事業を行います場合に、民間の請負会社を作ってこれにやらせるのだ、一部をやらせるのだということについては、これは慎重なる態度をもって臨みませんと、せっかくあなたが北海道開発庁長官に就任せられて今日まで無傷に、同時に非常にあなたの手腕力量を期待されておりますときに、これは重大な問題を惹起しないとも限りません。従って、この点については私はこの機会に、僭越でありますけれども、警告を発しておきます。  最後に、青函隧道の問題と苫小牧—八戸間の航路の問題について一点お伺いをいたしておきたいと思うのでありますが、青函隧道に関します基礎的な調査、さらに今後の計画、この点はいかようになっておりますか。
  137. 山口喜久一郎

    ○山口国務大臣 青函隧道の問題は、はなはだ御期待に沿い得ないで申しわけないのであります。すでに三十二年の五月に衆議院において決議までされておるのであります。またその決議に基いて隧道計画に計上されたる予算のうち、これも未消化に終って、他の方に振り向けられたというようなことを、私の代になってからいろいろ調査もいたしまして、まことに申しわけないことだと思っておるようなわけであります。小平君ももうすでにこの計画等については御承知通りでありますが、詳細のことは他の政府委員から御説明申し上げますが、大体この青函トンネルの問題については、きわめて不十分である、こう思っております。
  138. 小平忠

    ○小平(忠)分科員 大臣にお伺いするのですから、詳細なことは私自身もある程度検討も加えておりますし、実は承知いたしておるわけであります。やはりあなたの北海道総合開発の最高責任者であるという立場において、この青函隧道をどう処置しなければならぬか。単に思うように進んでいないから遺憾であるというだけでは相済まぬと思うのです。これに対します基本的な今後の推進についての考え方をこの際承わっておきたいと思います。
  139. 山口喜久一郎

    ○山口国務大臣 青函隧道が、運輸省の計画では、当初十カ年ぐらいと言われておったらしいのでありますが、私はどうしてもこれに手をつける以上は、少くとも五、六カ年で完全に開通するようにしなければならぬ、こういう考え方のもとにおいて研究を進めさしておるようなわけでありますが、これとてもなかなか容易ではありませんから、御承知通り苫小牧—八戸間の少くともフェリーボートといいますか、貨車等も一緒に積んで運ぶような、そういった面において、青函隧道が開通するまではそういう考え方で、海上で本州と北海道とを結ぶということの方を進めていきたい、こう考えております。
  140. 小平忠

    ○小平(忠)分科員 外務大臣がお見えのようですから、私の質問はこれで打ち切りますが、開発庁長官に最後に強くお願いをしておきたいことは、青函隧道の完成は、これは本院におきましてもすでに議決せられ、これは本州と北海道を結ぶきわめて重要な、国民全体の問題であるのであります。従いまして、ただいまのようなきわめて消極的な御発言でなくて、これは一つ積極的に、やはりあなたが一つの推進役となって、この問題は推進してほしい、こう思うのであります。同時に八戸—苫小牧間の航路を暫定的に、青函隧道ができるまでやりたい。ところが、その暫定的なことに重点が置かれて、青函隧道は取りやめになってしまうというようなことがあっては大へんであります。従いまして、そのようなことが絶対にないように、あなたの強力な政治力を発揮されて、本問題を推進されるようにお願いをして、私の質問を終ります。
  141. 田中伊三次

    ○田中主査 加藤勘十君。
  142. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 私は、藤山外務大臣に対して、賠償問題について国民が知りたいと思うもろもろの点についてお尋ねをしたいと思いますが、その前に、あなたは、けさの各新聞に報道されたUPIのジャカルタ発の記事をごらんになったかどうか、それをお伺いします。
  143. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 けさ実は非常に早く、八時ごろ出ましたので、寝坊をしておりまして、新聞を読むひまがなくて、出てきております。
  144. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 ごらんになっていらっしゃらなければ、私からここでそれを御披露いたしましょう。これは一片の外国通信の電文だというように軽く見るべき性格のものでなくして、報道されておる内容は非常に重大な問題を含んでおるわけであります。念のためにここで読んでみましょう。「「木下発注」に疑惑。インドネシア有力紙報ず。ジャカルタ二十六日発UPI。インドネシアの有力新聞ビンタン・チモールは二十六日本下商店への賠償船舶発注には不正の疑いがあるとつぎのように報じている。一、賠償問題について東京で木下商店および岸首相の行動が問題になったが、木下商店的なやり方はジャカルタではほかにも行われており、このため対日賠償決定の実施には問題があることがわかった。一、第一年度の船舶十隻には多数の日本の船会社が受注に参加したが、九隻が木下商店に発注され、しかも同社の出願だけは賠償管轄官庁の手を経ないで直接海運省に提出された。それどころか木下関係の処理は政府の公務員ではなく公式権限を持たない民間の一実業人によって行われた。一、木下商店への発注価格は別の社から調達された一隻よりも高く、価格差は一重量トン当たり約十五ドル八十セント(五千六百八十八円)である。同紙は社説でも対日賠償問題をつぎのように取上げている。今回の賠償にからむ不純工作はインドネシア側の不純工作と関係があるかもしれない。賠償はまるで少数の人を富ませるための投機商品化した観がある。こうした不正を食い止めるためインドネシア政府が厳然たる態度をとるよう希望する。」こういう実に聞きのがすことのできない重要な報道が、海外電報によって発せられておるわけであります。これらの点について、外務大臣はどのようにお考えになりますか。
  145. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 この賠償は、現在直接賠償方式をとっております。間接賠償方式では、賠償を受けます側の国におきましては、日本が何か高いものを賠償に繰り入れてやるのではないかというような疑いも持ちまして、賠償を受ける国としては、直接賠償を必ず主張しておるわけであります。直接賠償になりますと、ただいま御指摘もありましたように、多数の商社がインドネシア政府に対して競争的立場で話を進めることになる。そして、その上で契約をされることになりますので、まず適当なり価格、あるいは安い価格で賠償契約が成立するのではないかということを、賠償国の方としてはいつでも考えておるわけであります。また事実多数の業者が競争いたしましてやりますれば、そういう結果が出てくることにはなろうと思います。従って、現在直接賠償方式でやっておりますので、私どもとしては、日本が特に高い物を売ったというようなことが現実には起らないような状況にあるべきだと考えておるのであります。インドネシア政府の問題につきましてはインドネシア政府の問題でありますから、それ以上のことを私から申し上げることは差し控えさしていただきます。
  146. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 藤山さんの答弁は飛躍した感がありまして、私の質問はそこまで入っていない。今読み上げた外国電報に対してどういうお感じをお持ちになるか、それをまずお伺いしたい。
  147. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 賠償を通じまして、何か不正のことなり何なりが起っておるかのごとき疑いを持たれますことは、日本が忠実に賠償を履行する上において、はなはだ遺憾のことだと思うのでありまして、そういう意味において、そうした流説が行われますことは私は残念だ、こう思っております。
  148. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 われわれもともどもに、日本国民の一人として、こんな電報が外国からくることについては非常に残念に思います。しかし、火のないところに煙は立たないということわざもありますし、かつて日本の国を震憾さした山本権兵衛内閣当時のシーメンス事件、あのシーメンス事件は、外国の簡単な電報から端を発して、ついにああいう事件を呼び起したのであります。われわれはシーメンス事件のようなことがないことを心から望んでおりますけれども、万一こういう電報に現われるような、どこかに煙を出す火の種でもあるということになると、賠償というものがもう全く死んでしまう。賠償は、言うまでもなく、日本の敗戦という結果から、免れることのできない義務として大きな負担を背負わされたことになるわけでありまして、私が申し上げるまでもなく、今後二十年の長きにわたって、国民は大きな重い負担を背負わなければならぬ。ことし小学校に入る子供は戦争のときに生まれていなかった。にもかかわらず、この子供が成年に達して社会に出るときに、やはり大きな負担を背負わされておるのです。従って、賠償の問題は、今後二十年の長きにわたって国民の重荷となるものであるから、これが実施の衝に当る当局としては、いやが上にも細密に、厳正に行われなければならぬことは言うまでもありません。ところが、先般の予算総会においても、疑惑が投げかけられておる。今またこういうような疑惑が、その賠償の相手国であるインドネシア側において起っておるということになりますと、もし万一こういうことが言いふらされただけでも、本来賠償支払いによってそれらの国々との間に非常な親善平和の関係が増進されなければならぬやつが、逆にかえって親善関係を破壊することになる重大な問題だと私は思うのです。これらに対して、ただ単に、そういううわさがあることは遺憾であるということだけでは済まされないと思う。これらの点について、果してそういううわさがどういうところから出たか、これはどうなるかということについて、外務当局としてどのような処置をおとりになるつもりでしょうか。
  149. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいまのようなうわさが出ますことは、御指摘通り、まことに残念であります。賠償を通じて誠心誠意、日本の戦時において与えた損害に対する国民の気持を表わすわけでありますから、そういうものを通じて、国交の親善関係をもたらすことになるのが、たまたまそういうようなうわさによって親善関係を阻害するようなことになりますことは、はなはだ遺憾にたえないと思います。ただ、先ほど御説明申し上げましたように、賠償の直接の契約というものはインドネシア政府と商社とがやるわけでありまして、私どもとしては、インドネシアと商社の間に何らかの問題があったというようなことは、友好国の政府の内部のことでもありますし、想像することもできないと考えておるわけであります。
  150. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 どうも藤山さんは早くそこえ結論を持っていきたい考えのようでありますけれども、これはまだ返事が早いのです。私は次から次とそこへ質問しますけれども、私の質問はまだそこまできていない。そうではなくて、たとえば、この前のこの席においてのあなたの答弁でも、次の二十一隻の船の問題について黄田大使から情報がきておる、こういう御答弁をなすったですね。それと同じように、もしこういうことが日本国民の知らない間に外国でうわさが広がっておるとすれば、外務省としては、こういうことが電報で新聞に報ぜられておるが、一体現地の模様はどうだというて、当然大使に対して情報を求められる責任があると思うのですが、この点はどうでしょう。
  151. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 現地のいろいろな新聞等の情報につきましては、時々大使から打って参りますし、また今のような新聞電報のようなことがありましても打ってこない点がありますれば、当然りこちらから聞いてやることも必要だと思います。
  152. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 その手続はおとりになるのですか。
  153. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 それらの問題についてはなお詳細に黄田大使の方に、どういう新聞記事が出たのか、あるいはどういう情報が流れておるのかということは聞いてやります。
  154. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 藤山さん、正直でいいです。そういう工合に、これは手続をおとりなさいよ、大事な問題ですから。そうしてその結果を国会に何らかの機会に報告してもらいたい。外務委員会でもよろしい、予算の総括質問が最後に行われるときでもよろしい、私は問い合せた結果を報告してもらいたいと思います。  それから次に、賠償の問題は、今言いまする通り、国際間の信用にも関する重大問題であります。これは現在外務省の考え方は、一片の賠償事務を取り扱うものとして扱っておられるのか、それとも重大な国際政治の一環として扱っていらっしゃるのか、どちらでしょうか。その点を明らかにしてもらいたいと思います。
  155. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 むろん賠償の円満な遂行ということは、外交機能の上において、国際政治の一環として扱うことでありますが、具体的な問題については、事務的な取扱いをしております。
  156. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 言いたくないことであるけれども、戦争中には、いわゆる戦争成金というものが発生した。われわれは戦争に反対したけれども、こういうことが戦意を高めることを牽制する大きな役割をなしたのです。言わず語らずにですね。今また敗戦によって国民が負担する賠償問題の執行に当って、賠償成金というようなものが生まれてくるとしたならば重大な問題なんです。一方においては何千億円という大きな負担を国民が二十年の長きにわたって背負わなければならぬ。他の一方においてはその実施によって成金ができる。こんなことは、少くとも道義の上からいったならば、許されることではない。商人だから勝手にやりなさい、お金をもうけなさいというものじゃない。そういう点から、現に賠償成金が今生まれようとしておる、あるいは生まれておるかもしれぬ。そういうことは、政府の厳正な計画とその計画の実施が国民の前に明らかにされて、国民の目をごまかすことのできないようにしておけば、賠償成金というようなものは生まれようとしても生まれる余地がない。その点において、今あなたは大事な国際政治の問題でもあると考えておるとおっしゃったけれども、実際には、一片の事務として軽く見ていらっしゃる感があるのではないか。観念の中には政治的な問題として見ておっても、実際に扱う上においては一片の事務として扱っておられるのではないか。ここに大きな観念の上の錯誤が生まれてきて、そういうことから知らず知らずの間に、もうこれは賠償を支払う事務なんだから、従って、計画を立てて、その計画に基いて今のインドネシアの場合のような直接賠償というような方式でやれば、政府としてはこれに関与する権限がないというようなものの考え方ではないかと思います。代金は当然インドネシア政府が払うものではなく、日本政府がその商人に払う。従って、その価格が適正であるやいなや、さっきからあなたがしきりに返事されようとしておるその価格が適正であるやいなやということが、厳密に査定されなければならないわけであります。果して厳密に査定されておりますか。
  157. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 賠償の実施に当りまして、それらの査定の方法等につきましては、詳しく政府委員より御説明申し上げます。
  158. 吉田健一郎

    ○吉田(健一)政府委員 お答え申し上げます。協定上賠償契約が締結されまして、日本政府は認証をいたすわけでございますが、その場合に、協定に書いてありまする認証の基準と申しまするのは、すでに御承知通り、第四条に書いてある三つの基準だけしかないわけであります。しかしながら、同時に、認証というものは、賠償が輸出でありまする関係上、輸出関係の法令による審査をしなければならず、また賠償その他の為替関係の方での審査もいたさなくてはならないわけでございます。従いまして、もしここに輸出入関係の法令がございまして、一個のものに対しまして、この額以上のものは輸出を承認しない、あるいはこの額以下のものは輸出を承認しないというような法令がございまするならば、われわれは認証行為というものを拒否せざるを得ないわけでございます。しかしながら、そういう法令の根拠がございません場合には、実施細目にもうたってございまするように、通常の商業上の手続にのっとって賠償契約が締結されまする以上、協定の条件を満たしておりまする賠償契約を、日本政府は認証拒否をいたすという立場にはないと存ずるのでございます。
  159. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 手続とか法規とか——もちろん法規に準拠しなければならぬことは言うまでもないが、そういうようにものを事務的にごらんになるからいけない。たとえば、一例をあげれば、木下商店が扱った中古の船の価格なんかの問題です。これが果してどういう商業取引で契約ができたか知りませんが、少くとも支払う日本の側としては、ものを政治的に見るというならば、それが高いか安いかということを当然査定しなければらない。事務的に見れば、法規に準拠さえすれば差しつかえないということになるけれども、政治的にこれを見れば、当然高いか安いかということを見て、国際信用を阻害することがないかどうか、国民の負担を不必要に大きくすることはないかどうか、こういう観点から査定されるということが当然なされなければならない。これは手続の一つだと思う。ただ法規々々といって法規だけに準拠して、法規に断わる道がないから、どうにも断わることができないというだけでは済まぬと思うのです。たとえばここに具体的に、五つの船の売価、その船の建造費用、改造費用、重量総トン数、それから改造前の重量総トン数等が比較してあげられておるのですが、私はおそらくだれが見ても、この数字というものは作られた数字だと思う。たとえば玉宝丸、それから柏山丸、雲仙嶽丸、これの改造費はいずれも四千五百九十七万二千円、三隻ともみな同じ額です。そして重量トンの方でふえたのは、玉宝丸が七十九・六五トン、柏山丸がやはり七十九・〇四トン、これは大体似たようなものでありまするが、雲仙嶽丸というのは二十三・六三トンしか重量トンがふえていないのに、みな改造費が同じ価格なんです。しかも建造年月は、船齢の上からいくと幾らも違わない。玉宝丸が一年四カ月、柏山丸が一年四カ月、雲仙嶽丸が二年八カ月、もし古さからいうならば、これだけの相違しかないのです。それが改造費は同じである。そして改造の結果ふえたトン数は、今言う通り五十トン以上の差がある。こういうような数字を見て、だれが一体これがほんとうに支払われたものであると思われるでしょうか。帳簿はどうやってできたのか知りませんが、少くともここに出てきておる数字は、どうしても作られた数字としか思われない。それから船の売価ですが、売価の点がこの間のこの席でも問題になりましたけれども、若福丸のごときは建造費が二億二千万円、それが売価は、船齢三年たったものが二億三千五百五十八万四千円。それから成豊丸のごときは建造費が二億七千万円、それ売価は二億三千七百七十万八千円、これは改造費は別です。これらはいずれも五千六百万円から五千三百万円の改造費がかかっている。ふえたトン数は若福丸が五十八トンそこそこであり、成豊丸が七十九トンである。こういう数字を見まして、一体これが公正なる商業取引で契約されたものと思われるのか。それともインドネシアの方は、自分が代金を支払わないのですよ。賠償ということに切りかえさえすれば、いつでも自分の腹は少しも痛まない。従って、幾ら高くても平気なんです。それを厳密に査定して支払う場合に、その商人に日本政府から払うときに査定しなければならぬ認証権以外に何もないというようなべらぼうなことはない。そういう点どうですか。
  160. 吉田健一郎

    ○吉田(健一)政府委員 先ほど認証の手続の説明が簡単に過ぎまして、ただいまのような質問が出てきたわけでありますが、認証と申しますのは、先ほど申しました基準のほかに、それぞれのものを主管しておりまする省に認証の可否を外務省といたしましては問うわけであります。従いまして、たとえば船の問題にいたしますると、船を主管しておりまする運輸省に問うわけであります。私から認証のことをとやかく申すのは筋が違うかと存じますけれども、協定上の認証というものは、先ほど私が申し上げたようなことでございますが、協定上の権利あるいは義務ということでなく、賠償の根本義にかんがみましてよいものをできるだけ安く供給するということは、各省とも一致してやっていることでございます。ただ、今の御質問のように、一たん直接賠償というものを認めておりまする協定のもとで、通常の商業手続によってきまりました価格を政府が査定するというようなことになりますると、私は、今の協定のもとにおいてそういうことが行われるということは考えられないと思うのでございます。ただし、今も申しましたように、認証と申しまするのは外務省の一存だけでやっておりますることではございませず、いろいろの原局、原省に認証の可否を問い合せまして慎重にやっているわけでございますし、原省におきましても、賠償の根本義にかんがみまして適正なる価格でいたしまするように、協定上の権利義務の関係を離れまして、実質的に業界を指導しているというふうに私は了解しております。ただ、査定ということになりますると、協定上日本政府はでき得ない、かように存ずるのであります。
  161. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 査定というても、話がきまったからではない。認証するに当って、これが適正なものであるかどうか、相手方の信用をこわすようなことはないかどうか、日本の信用を傷つけるようなことはないかどうか、そういう諸般の点を勘案して、相手方の政府に向って、これは妥当だとか、これはどうも政府としては妥当とは思われぬとか、そういうことは認証前に当然なすべきが政府の義務だと私は思うのです。
  162. 吉田健一郎

    ○吉田(健一)政府委員 まさに御説の通りでございまして、認証という段階にこれを拒否するということは協定上許されておりませんけれども、その前に、こちらに来ております賠償使節団もおることでございますし、またジャカルタにもわが方の大使館もあることでございますから、もしそういう話が、先方の公式提案として日本政府に伝えられました場合には、協定上の権利義務の関係ではございませず、日本といたしましては、先方に対する好意、あるいは賠償を真に効果的ならしめるために、十分連絡を今までもとって参りましたし、私どもも、東京で双方の間に合同委員会というものが開かれておりますが、この席上でいろいろ話し合いをしてやったこともございます。関係のものを主管しております各省におかれましては、おのおの自分の主管に属する業界の指導を——高いものを売るな、悪いものを売るなということは、ビルマ賠償開始以来徹底して行われてきておることと確信いたしております。
  163. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 それならば、この船の価格また船の質というものについて向うから何にも申し出がないから、そのまま認証してしまった、こうおっしゃるのですか。
  164. 吉田健一郎

    ○吉田(健一)政府委員 認証と申しますのは、賠償契約が成立いたしますと、認証を求める書類を、先方の賠償使節団長から日本政府あてに持ってくるわけでございますが、今の御質問の趣旨も、先ほどの御発言の趣旨も、そのときに査定をするということじゃなくて、むしろ事前の相談、あるいはほんとうに先方のためを思う発言、あるいは先方がどうしたらよかろうかというような相談を日本政府にかけてくる、こういう雰囲気を——先ほど御発言の通り長い賠償でございますから、お互いの両国政府の代表の間に持つべきであるという考えは常々持って、その通り及ばずながらやってきたつもりでございます。今の御質問のように、認証の前に話がなかったから認証したかとおっしゃられますと、実はその通りであると申し上げるよりしかたがないのでありますが、ただ、私ども外務省といたしましては、対インドネシア関係、それから国内のものを主管しておる各省におかれましては、そのものの日本の国内業者関係に対して、賠償というものは公正に、いいものを安くやるのが賠償の根本義なんだということは、ビルマ賠償開始以来すでに四年になるのでございますが、常々徹底的に、そういうふうな行政的な指導をやっておったわけでございます。
  165. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 その点は、あなたと私の質問とは食い違っておる点があるが、問題は、要するに、今あなたが言われたように、ほんとうならば、事前に、日本政府が妥当と思わない限りは、一ぺん相手方の意向も聞く、こういう親切さがあってもいいし、また同時に、そのことは国民に対する義務だと思うのです。そういう手続をなされないで、向う側で何も言わなかったから認証してしまった、認証については拒否権はないのだ、こういうことでは、私はあまりにものを軽く、事務的にしか扱っていないということにならざるを得ないと思うのですが……。
  166. 吉田健一郎

    ○吉田(健一)政府委員 ただいまの御質問、まことにごもっともなことなんでございますが、一つ申し上げたいことがあるのでございます。それは、インドネシアの賠償は、昨年の四月十五日から発効いたしまして始まったわけでございます。何分にも非常にテクニカルな協定実施でございますので、インドネシア側といたしましても、初年度といたしましては非常にふなれな点が多かったと思いますし、また日本側といたしましても初めてインドネシアと賠償を行うのでございますので、いろいろな点でふなれな点が多かったと思うのでございます。  それからもう一つは、インドネシアと限りませず、求償国といたしましては、協定下に自国に認められておる権限、すなわち直接方式の権限でございますが、これに対して他国から、あるいは日本から制肘を受ける、とやかく言われるということは、かなりデリケートな問題でございます。従いまして、目下私ごときレベルでやっておりますことは、二十年続く賠償でございますから、インドネシアと日本との間に、長期にわたる賠償を通じて信頼関係を打ち立てまして、何でも腹蔵なく、こちらも言え、向うも言ってくれる、そこで腹を打ち割って話す、これは協定上の認証基準の問題よりも大きな問題でございますが、そういうふうな雰囲気を作っていくことが、私ども外務省の係官の気持じゃないかと思っておるわけでございます。従いまして、今の御質問の趣旨も願わくは——インドネシアの賠償は四月十五日から起りまして、まだ一年未満なんでございますから、今後とも今の御趣旨を体しましてやっていくつもりでございますが、初年度のことゆえ、双方とも、何かと意思の疎通しなかったことがあったことは認めなければいけないと思います。
  167. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 もちろん私も、向うの意思を拘束したり、制肘したりするようなことを外務省にやれ、こう言うのじゃないのです。現実に品物は向うへ行くけれども、代金は向うから来るのじゃなくて、日本政府からそれを扱う商社に払われる。従って、当然その間には、いろいろな関係であなたの方とも連絡がある。連絡がないはずはないと思う。その連絡があるならば、最後の正式の協定のできる前に、品物のよい、価格の安いものについては、あなたの方はよく事情がわからぬから、これを安いと思っておられるかもわからぬけれども、事実は、国際的な情勢、また日本情勢から見れば、こういうものはこれだけの価格だ、こういう値打があるんだということを親切にサゼスチョンされることは、両国の友好関係を深める上からいって当然と思います。それなしに、ただぼやっと手をこまねいて、商人と向うの政府とが話し合う、話し合ったらそれをどうすることもできぬというのでは、あまりに能がないと思うのです。そういう点はどうなんです、ほんとうのところを聞かしてもらいたい。
  168. 吉田健一郎

    ○吉田(健一)政府委員 先般の予算委員会で、藤山大臣から発言ございましたように、インドネシアが船の問題に乗り出しましたのは、オランダを追放したあと、内戦等の関係で、インドネシアの島と島との間を結ぶ内航船舶が極度に逼迫したことがございまして、そのあとで、まだ賠償協定の発効前でございますが、日本から船を借りたいという申し出があったように記憶いたしております。ところが、チャーターの条件で折り合いません関係上、賠償協定が発効いたしますや、賠償を通じて、緊急に内航船九隻を買いたいということの発言がございまして、こちらもその緊急性を認めまして、なるほど内航船をやらなければいけないということで、向うと実施計画、つまり協定に申します実施計画を合意いたしましたのが昨年の六月十八日でございます。従いまして、向うは極度に逼迫した内航船の需要の関係から急いでおったわけでございまして、六月十八日に実施計画を合意いたしまして、最初の船の賠償計画を認証いたしましたのが、たしか七月の十四日と記憶いたしております。従いまして、今御指摘のように、なるほど、この問題がもう少し前からわれわれの耳にも入り、しかも向うの正式の提案があったということになりますと、あるいはそのような条約上の権利義務の関係を離れて、個人として申せる立場に置かれたかもしれないのでございますが、今度の船舶調達の実情と申しますのは、全く向うが極度に急いでおりました関係上、年間のすべての実施計画を整える前に、とにかく船だけをくれという強い申し出がございまして、わが方といたしましてももっともなことだということを考えましたので、賠償実施協議会という十一省から成っておる協議会がございますが、これに、内航船の九隻を実施計画として供与する可否をはかりまして、その結果、六月十八日に実施計画を合意いたしました。その九隻の船に基く賠償契約が私どもの方に提出されましたのがすぐ直後、そうしてそれを認証いたしましたのが、七月十四日だったと思います。すべての問題は初年度であるということと、非常な緊急性をはらんでおったということを、一つ御理解いただきたいと思います。
  169. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 われわれも、オランダが船を引き揚げちゃって、インドネシアが島内連絡の船舶に非常に窮迫しておるということを聞いております。ナジル海運相が二度も三度も日本に来て、チャーター等について交渉したことも聞いております。従って全然、やぶから棒を突き出したように突然起った問題ではないのです。この問題の起ったのは一昨年の十一月ころでしたか、それから去年の一月早々ナジルが来ておるわけです。従って、そういう場合に現実にチャーターなんかについて船会社と折衡しているんだから、外務省の賠償関係の方々が全然知らぬということは言われないと思うのです。ただ、どういうことを話し合っているかということについて一々耳を立てて聞かれるわけではないかもしれぬけれども、当然そういう問題のときに、日本政府の意向を聞かずして商人が勝手にきめてしまうということは、普通あり得ないと思うのです。だから、あなたの方で、突然起った問題だからというだけでは、言いわけにはならぬと思うのです。
  170. 吉田健一郎

    ○吉田(健一)政府委員 お言葉でございますけれども、実施計画でございますが、載せるか載せないかというのは、両国政府の合意でございます。向うが提案して参りまして、日本政府が合意するという建前になっております。従いまして、もし年度実施計画ができます前に向うのエンド・ユーザー、たとえば海運省とこちらの商店との間に一種の契約というものができましても、これを実施計画に載せるか載せないかはそのときの両国政府の態度次第でございまして、そういう計画ができておりましても、向うの国内事情でその仮契約と同じものを提案してこないかもしれませず、また提案して参りましても、私どもといたしましては合意する義務はないわけであります。従いまして、ただいまの御発言のように、商社あるいは業者が、賠償協定発効前、しかも両国政府間の年度実施計画の合意前に政府の意見を求めて、これをあらかじめサウンドしてきめたという事実は、少くとも私どものレベルではあり得ないことでございますし、またそういう事実は私どもとして承知しておらないわけでございます。
  171. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 これはちょっと別なことになりますが、木下商店とインドネシア政府との協定は、新造船ということになっておるのですか。新造船と中古船と混合したものということになっておるのですか。
  172. 吉田健一郎

    ○吉田(健一)政府委員 詳しくは船舶局長の方がいいかと思いますが、私の持っております資料だけでは、中古船が五隻でございます。それから新造船は四隻、計九隻でございます。
  173. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 それは実際に引き渡したものでしょう。そうではなくて、協定はどうなんですか。インドネシアと木下商店との間のいわゆる約束は。
  174. 吉田健一郎

    ○吉田(健一)政府委員 それは私全然関知しておりません。その協定の成文も読んだことはないので、どういう協定になっておるのか存じません。
  175. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 これは書類を見たわけではないから何とも言えないけれども、世間では新造船という協定になっておると言われておるのです。それが間に合わないからということで中古船を改造して間に合わした、こういうように伝えられておる点があるのですが、そういうことをお聞きになったことはないですか。
  176. 吉田健一郎

    ○吉田(健一)政府委員 私といたしましては、今が初めてでございます。
  177. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 船舶局長は来ていませんか。
  178. 田中伊三次

    ○田中主査 来ておりません。
  179. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 それでは、それはそれとして残しておいて、そうすると次に、賠償計画はどういう機関で決定されるのですか。
  180. 吉田健一郎

    ○吉田(健一)政府委員 賠償年度計画というものは、協定によって先方から提案して参りまして、それを、閣議決定で作られている賠償実施協議会というものにかけるわけでございます。その協議会は、外務大臣を長といたしまして、他の十一省の次官からなっておりまして、ここで協議をして、年次賠償実施計画というものを決定いたすわけでございます。
  181. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 その機関で賠償実施計画というものが立てられて、今度実施はどこの手を経るのですか。
  182. 吉田健一郎

    ○吉田(健一)政府委員 ただいまの実施という御質問は、賠償契約の締結引き渡しですね。たとえば、船の場合には、そういうふうに船九隻というそういう実施計画を作りますと、その船一隻一隻につきまして、在京のインドネシア賠償使節団が日本の業者と直接契約をいたし、それを先ほど申しましたように、日本政府が認証することによって、賠償契約がなるわけであります。
  183. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 そうしますと、賠償実施計画を立てるには、先方からの提議によって、それに基いて十一省の次官会議で決定される。それから、いよいよ品物を引き渡す、あるいは役務をやるかいずれか知らぬが、とにかくその計画に基いて実行に移される、従って、向うから提議されたときに、それが当然価格の問題に関連してくるわけですね。価格なしで、何でもかんでも向うから言うてきたものをそのまま無条件に受け付けるのではないでしょう。とすれば、当然そのときに価格の問題が問題になるわけですが、その価格の妥当性はどうやってきめるのですか。
  184. 吉田健一郎

    ○吉田(健一)政府委員 詳しく申し上げますと、価格の面に関連して参ります場合が二つございまして、一つは実施計画に船九そう計幾らということを書いて出してくるわけであります。しかしながら、これは従来ともビルマ、フィリピン同じでありますが、これは一応の概算ということになっておりまして、これは多少の変動は起るものだというふうに実施計画の上ではエスティメーションを認めておるわけであります。  その次に、今度はいよいよ業者と直接に交渉いたしまして、商談が成立して賠償契約ができるわけございますが、そのときには何円何銭と非常にはっきりそこで価格がきまってくるわけであります。先ほどから申し上げますように、賠償協定それ自体からは、特に国内の法令で、最高価格、最低価格というものを規定していない限りは、通常の商業手続にのっとって直接に契約が締結されております関係上、何円であるから認証を拒否するということは、協定上はできないわけでございます。ただし、先ほど私が申し上げましたように、物を所管する所管庁におきましては、賠償の根本義にかんがみまして、よいものをできるだけ妥当な価格で安く賠償を通じて提供するということは、常々ずっと一生懸命やって参りましたようなわけであります。
  185. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 どこまで行っても同じようなことになるのだが、あなたの方は、そういう安くよいものをという考え方でおる、考え方はそうであっても、実際に行われたところのものはそうでなかった、ことに今度のインドネシアの船のごときは完全にそうでない、それはあまりに早急であったために、こちらからサズスチョンする時間的余裕がなかった、こういうことがあなたの方の一つの言いのがれになっておる。しかし、これも時間的に見れば、正式な話し合いはそうであったかもしれぬけれども、それより半年も前から、実際問題としては船を交渉しておったわけであります。だから、そういうことについて全然知らぬということは、私どもとしてはうなずけないわけであります。けれども、あなたの方で知らぬと言われれば、別に証拠があるわけじゃないから仕方がないけれども、しかし、賠償は、たまたま今インドネシアの船の問題が問題となったから船の例があげられるが、万一先ほど私が読み上げたようなUPIの電報の記事がどっかに根拠があるというようなことになると——あの記事によれば、この船の賠償問題は、政府の公けの賠償機関を経ないで、いきなり日本の木下商店との向うの海運相との話し合いだ、賠償機関の手を経ておらないということになると、あとから文句をつけられたら一体どうなりますか。
  186. 吉田健一郎

    ○吉田(健一)政府委員 どういう文句でございましょうか。
  187. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 それは、こんなものは個人商社がやったことであって、政府の公けの賠償機関は関与していないという……。
  188. 吉田健一郎

    ○吉田(健一)政府委員 わかりました。そういうことがございませんように、先方の政府から在京賠償使節団長を通じまして実施計画の提案を受け、先ほど申しましたように、関係各省と諮りまして実施計画を合意し、それに基いて賠償契約が締結されまして、しかもその締結の署名者は、協定にもございますが、賠償実施のための唯一専管の機関である在京インドネシア賠償使節団長がこの賠償契約にはサインをしておるわけでございまして、ただいまのような御質問の御心配は全然ないと存じます。
  189. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 ないことを私たちも望むわけですが、しかし、この前のこの委員会においても問題になりましたように、チョウというインドネシアの国籍を持った外国の二世、——二世か一世か知らぬが、チョウという人は、ジャカルタに上陸したときに、こちらの公使館か大使館か、とにかくインドネシアの公館の指図によって一応逮捕されたと伝えられている。これはどういうことか。それは何かの間違いであろうというのですぐ釈放はされたようだけれども、逮捕されておる。そういうことと思い合せたり、それからこっちの賠償ミッションの行動等にもし本国政府が疑惑を持って、不純と思われるようなことがその間に介在するから、そういう約束はだめだ、万一こういうことを言わないとも限らないと思います。その他のいろいろな例をあげても、そういうことはないことではないのです。出先機関が不正をやって約束したものは、本国政府としては責任はない。外交関係上いろいろそういうことが出てくることがある。だから、われわれはないことを欲するけれども、ないと断言することもできないと思います。そういうような危険を含んでおるわけなんです。それというのも、価格が妥当公正を欠いておるからそういうことになる。もし価格が相当の妥当性を持っておるならば、そういう疑いはどこからもかけられないで済むわけです。従って、認証の拒否権はないということだけでは、外務省としての責任は済まぬと思うのです。その点はどうお考えですか。
  190. 吉田健一郎

    ○吉田(健一)政府委員 認証の拒否権がないというだけでは、確かに日本国としては済まないわけでありまして、そのためには先ほど来繰り返し申し述べておりまするように、やはり賠償というものがどういう性質のものであるかということを、みなわれわれが知らなければならないわけでございます。従いまして、ものを所管しておる各省におかれましても、賠償というものの本義を徹底させるために、十分行政的な指導は働かされて今まで参っておるわけでございます。ただ先ほども申したのでございますが、今回の船舶に関しましては、先方における非常な緊急性という問題がございまして、実施計画の経緯から認証に至るまでも、ただいま申し上げましたような日付のものでございますので、しかも賠償初年度と申しまするのは、どこの求償国でも賠償の事務になれませんものでございますから、いろいろ不行き届きの点は、双方ともに事務的にあったのではないかと思いますが、ただいま御指摘になりましたように、この賠償契約が将来出先の何かの都合によって、本国政府がこの賠償契約を否認し得るというような賠償契約では、協定上絶対にないのだと存じております。
  191. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 その点は、結局どこまで行っても水かけ論だと思うから私はやめます。ただ、これが外国の船価に比べても非常に高いものであるということだけはエコノミストという雑誌にはっきり出ておるわけです。九千五百トンの三千三百馬力を持ち、十二ノットの速力を持った船が、その当時、一九五六年、一番のピーク時代における価格としてあげられておりまするが、それをかりに大ざっぱに一ポンドを千円と換算してみると、この船が一億八千万円程度でできておる。ちょうどこの五六年の十二月当時、その価格で、これは三年前だから若福丸とか成豊丸のできた当時の船価です。これは千六百トン級の、二千トン足らずの船で、九千五百トン級の船とは比較にならないけれども、それをかりに同じような性格を持ったものとして、トン数だけで価格を割ってみると、大体この当時二億二千万円もしくは二億七千万円くらいでできておる。まあこれも高いというても一千万円か二千万円のことなんだけれども、これが今度三年船齢を経たものが、売値価格が二億三千五百万円もしくは二億三千七百万円、このほかに改造費が五千六百万円あるいは五千三百万円かかっておる。そうすると、実際問題として、国際的な船の相場というものと比較しても高い、こういうことがだんだんあとからインドネシア政府の方にわかってくると、何だ、こんな高いものを売りつけたということになる。せっかく向うが急いでおるからそれに間に合せるということでやったものが、逆に今度は、日本の商人というのはけしからぬ、日本政府というのはけしからぬというように、かえってこっちの信用をそこねないとは限らないのですね。だから、そういう点が、非常にあなたの方も早急だったから手抜かりもあったんだろう、まあこれは手抜かりがあったという点だけは免れないと思うのです。認証をされる前に、あなたの方が注意を与えられなかったということは、何というても私は大きな政府の手落ちだと思います。それはそれとしまして、一体その賠償方式というものは、全部ビルマもフィリピンも直接賠償の方式をとっているのですか。
  192. 吉田健一郎

    ○吉田(健一)政府委員 お言葉を返すようでございますけれども、いろいろ事務的にふなれな点は確かにございました。着任早々の賠償使節団長との間に、向うも未経験なことでございますから、いろいろ事務的なそごがあったことはあったのでございますけれども、協定上賠償契約ができましたその価格について、それは高いとか安いとがということを、協定上権利として日本政府として言い得るものは持っておらないのであります。この点だけはどうぞ一つ御了承願いたいと思います。  それから、もう一つつけ加えますことは確かに今申し述べましたように、今後とも向うが実施計画を作る前、あるいは賠償契約をいたす前でも日本当局に相談してくれまして、一つ相談して一緒にやっていこうというふうな雰囲気を作っていくことこそ、外務省としてやるべき点だということはよくわかっておるのでございますが、その点が、初年度のことでもあり、また向うも在日日なお浅いわけでございますので、これは今後お互いにやっていくようにしたいと思います。  それから今の御質問でございますが、三求償国に対して全部直接方式をとっております。
  193. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 前の段は、あなたの弁明としてだけ聞いておきましょう、それじゃ私は得心しませんよ。そうすると、三国とも全部直接方式の形態をとっておるわけですね。そうすると、今後賠償の事務処理の衝に当られる機関は、認証を与える前に、国内の商社にも、それから相手方の政府に向っても、いやしくもあとから疑義が起るようなことのないように十分に注意を発してから、商社と向うの政府との交渉に入られるように、そうせぬと、ただ単に話ができたからこれを認証してくれというので持って来たって、日本政府はなかなかそう簡単にはいかぬぞというくらいの注意を与えることは、むしろ親切なやり方だと思う。これだけはぜひ今後やってもらいたいと思うのです。  それから、今まで各国の賠償は、先日もらった資料によりますと、金額の上だけではほぼ予定の通りを進んでおるように見えます。そこで、たとえばビルマの場合は年間七十二億円で、もう四年を経過しておるわけですからして、当然二百九十億円くらいは支払われておらなければならぬけれども資料によりますと、まだ二百六十億程度しか払われておらない。まだ三十億以上のものが払われていないのですね。こういう計画を立てて、それは品物のことですから、あるいはその他の役務寺に関することであるから、必ずしもぴちっと計画通り進むということは言わないにしても、四年間に三十億以上の遅滞が生じた。こういうことは、賠償を実施するに当って、直接契約として日本の商社に全然契約をまかし切りにしておる、そういう点から、向うが必要とするものはこっちの商社の手で間に合わぬとか、あるいは事業計画が思うように進まなかったということで、こういう遅滞が起ってきておると思うのです。しかも契約の認証額は二百九十五億円になっておって、実施が二百五十億円、ここには四十億円近くの遅滞が起っておるわけですね。こういうことについて、ビルマ政府が商社を選ぶ場合に、日本政府から日本商社についてのサゼスチョンを全然与えらないのですか、勝手に向うの政府が選ぶままにまかしておくのですか、どっちですか。
  194. 吉田健一郎

    ○吉田(健一)政府委員 ビルマの遅滞の点、それから認証額と支払い額との差の点のことでございますが、表をごらんになりましておわかりになりますように、一番大きな遅滞ができましたのは、第一年度の賠償義務履行額がわずか二億何がしでございます。それに対する契約認証額が十億何がしでございます。これは、ビルマと申しますのは、賠償を始めまた最初の国でございまして、そして四月の十六日に賠償協定を発効したのでございますが、現実に向うの賠償使節団が東京に参りましたのはその年の暮れでございまして、それまでの間は賠償が実は実行できなかったわけでございます。これは双方にとって遺憾なことでございますが、そのような理由がらでございまして、これは向うの使節団の来着がおくれたのだというふうにお考えを願いたいと思います。  それから第二の点でございますが、契約認証額と賠償義務履行額、これは支払い額でございますが、この差が四十億という御指摘でございますが、この契約認証額と申しますのは一つの契約でございまして、たとえば大きなバルーチャン・ダムを作ります場合に、四年分を一緒に契約することも可能なのでございます。しかしながら、その契約に支払い条項というのがございまして、初年度分には幾ら落す、二年度分には幾ら落すというペイメント・スケジュールというのがついております。従いまして、契約総額と義務履行額つまり支払い額とは、常に差があるわけでございます。換言いたしますならば、契約認証額が二百九十億になったと申しますことは、支払い義務履行額が二百六十億ではございますけれども、そこまでの契約が今できておるということでございまして、あとは自動的にこれが習年度、翌年度に、先ほど申しましたペイメント・スケジュールに従って落ちていくわけであります。   それから、第三の御質問の、今までビルマから商社を推薦しろと言われたことはないかということでございますが、これはございません。
  195. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 そうすると、ビルマにしてもフィリピンにしてもインドネシアにしても、これらの国々は、日本商社が売り込むかどういうことか知らぬが、とにかく勝手に向うで話を進めるわけですね、その間日本政府一つも口をきかないわけですか。
  196. 吉田健一郎

    ○吉田(健一)政府委員 先ほど申しましたように、両国政府間では、一年間に供与する賠償品目の合意というのは年度実施計画という形でやるわけでございますが、この増合、こちらがこれは賠償として供与するのに困るといって、拒否した場合もございます。しかしながら、一ぺん賠償実施計画というものができますと、その計画に計上されております物資並びに役務につきまして、ビルマ在京賠償使節団長が、入札方法なりあるいは他の方法をもちまして、個々の自分が最善と思う業者と契約するわけでございます。もちろん私どもといたしましては、何か向う側の方から、それに対してアドヴアイスを求めてきたようなことがございますといたしますならば、十分話し合っていくつもりでございますが、今までのところ、どうしたらいいかというようなことは、向うから商社選定につきまして申されたことはございません。
  197. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 そうすると私は、日本政府は賠償についていかに直接方式をとるとは言いながら、あまりに無責任なやり方じゃないかと思うのですね。今たびたび繰り返して言う通り、この賠償金は国民の税金によって負担されておるんですよ。それを勝手に商社の自由行動にまかして、そして向うから何か助言を求めてくれば助言をするけれども、さもない限りは助言も何もしない、そしてできた約束はもう認める以外に道はない、これでは私はあまりにも国民に対して無責任だと思うのです。だから、こういう点で、認証をする前に、あるいは話の進行の途中においてでもついい、私は当然日本政府国民の利益を代表する意味において、何とか積極的な手段を講ずべきであると思う。この点どう思いますか。
  198. 吉田健一郎

    ○吉田(健一)政府委員 ただいま、ビルマ側から何か業者の選定について相談を受けたことがないかという御質問だったものですから、ないと申し上げたわけでございますが、毎週定期的に求償国とは合同委員会というのをやっておりまして、この中でいろいろお互いの率直な意見の交換をやっておるわけであります。従いまして、向うからそういう要望はなかったのでございまするけれども、私どもの方から好意的助言といたしまして、こういうことも考えられるのだがなあというようなことは言ったことがございます。また今後も合同委員会というような場を通じまして、協定上の日本政府の権利とか義務とかいうことではなくて、真に両国のためを思って、私どもは向うにアドヴアイスすべきことは十分アドヴアイスしていこうと存じておる次第でございます。
  199. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 政府は月に一回づつ、そういう向うとの合同委員会というもので話し合われる機会はあるわけですね。それならばただ単に法規がどうなっておろうと、そういう法規にとらわれることなく、政治的な見解として当然日本政府の意思を伝えることはできるわけなんですよ。そういうことをやらないから、あなた方はその合同委員会のときにどういうことをやられるかは知らぬけれども、そういうことをやられないから、とんでもない鉄問屋が舟を扱うというようなせん気筋の問題が起ってくる。もしこれが絶えず日本政府から事前に注意を与えて、間違いのない道を踏ましめようとされるならば、私はそういうせん気筋の——これはたまたま木下という鉄問屋が舟を扱ったということであるが、たとえばフィリピンの場合でも同じことなんすよ。インドネシアの船の問題が問題になったから木下というものが取り上げられるのだけれども、そういうやり方だから、世間でいうところの賠償成金というものができてくる。賠償成金というような言葉を発することすらわれわれは汚らわしいと思う。また国民に対して相済まぬと思う。ところが、実際は今あなたの話を聞いておっても、賠償成金がちゃんとできるようになっている。それでは税金を負担しておる国民はたまったもんじゃないのです。  なお、私はたくさんその他の角度からもお尋ねしたいと思ったことがありまするけれども、これで一応私の質問は終ります。これ以上言うても仕方がないから終りますが、ただ繰り返して私が言いたいことは、賠償というものは国民の税金によって負担されるものである。この基本観念を忘れてもらいたくないと思います。それならばいかにして国民により多くの負担をかけないかということのために忠実でなければならぬ。一部少数の商人が向うの政府とどういうつながりを持って話をするか知らぬが、そういう商人が自分の利益を中心として結んだ契約を、日本政府がそのときになってはどうすることもできぬということでなく、その契約が結ばれる前に、現在の条項のままでもそういうことのないように厳重な注意をするということにしてもらいたいと思うのです。それから先ほど、私は委員部を通じて外務省に要求しておきました、今までビルマ、インドネシア、フィリピン等に対して具体的な品物を、どういう商社がどれだけ扱っておるか、こういうことの表をもらいたいというて請求してありますが、まだ来てませんけれども、それはいつ出ますか。
  200. 吉田健一郎

    ○吉田(健一)政府委員 ビルマが四年間、フィリピンが二年有半、インドネシア一年でございます。これはおっしゃいました通り、商品別と商社別に分けるということは大へんな作業でございまして、目下鋭意やっておりまするが、その時日の点を今何日ということは、ちょっと私すぐこちらへ参りましたもので……。
  201. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 わかりました。だからそれはでき次第に出してもらうということにします。それから最後に、賠償の問題に関連するわけですが、南ベトナムに対する賠償の話はその後どうなっておるか、また北ベトナムからもし日本に賠償の請求があった場合にどうするか、これは将来の問題でありまして、今現実の問題にはなっておらぬけれども、南ベトナムの賠償交渉の問題と関連して私は切り離してみることのできない問題だと思う。これは一つ外務大臣からお伺いしたい。
  202. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 南ベトナム政府との賠償の交渉は現に進行いたしております。ただ大筋においては解決しつつありますが、まだ若干細部の点について解決しないところもございます。われわれといたしましては、南ベトナム政府との賠償をもってベトナム政府に対する賠償に心得ておるわけでございます。
  203. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 北の方は眼中にないということですね。眼中にあるとかないとかいうことはこっちの勝手であろうけれども、厳然たる事実が、しかも日本の軍隊によって荒廃に帰した分量からいうならば、北ベトナムの方が南ベトナムよりもひどいわけなんですね。その北ベトナムは国交が回復していないから、だから今現実には問題にならぬと言われるなら、国交を回復した後においてそういう問題が当然起るであろうということも考えられるし、その場合にどうするか。また南ベトナムだけに賠償を支払ったからそれでベトナム全部の要求を満たすということにはならないと思うのです。だから今南ベトナムと急いでやって、あとから北ベトナムから問題が起ったときに取り返しができぬ。こういうことになってはならぬと思いまするが、これらの点についてどういうようにお考えでしょうか。
  204. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 サンフランシスコ条約に調印いたしておりまして、ベトナムを代表する合法政府として私どもは南ベトナムとの交渉をいたしておるわけでございます。
  205. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 それはベトナムを代表するといったところで、今言う通り、ベトナムは厳然として二つに分れておるわけであります。これは事実なんですよ。このなまなましい現実をわれわれの目の前に繰り広げられておる。南と北との両ベトナムのあるということは国際的に否定することのできない現実なんだ。それを南の方だけ認めれば、それで一切の義務を果したということにはならないと思うのですけれども、それは未来永劫に北ベトナムに対しては国交を回復しない方針ですか、どうですか。
  206. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 南北ベトナムは御承知のように統一するような話し合いをいたしておるわけでございます。われわれ自体といたしましては、南ベトナム政府とサンフランシスコ条約によります締結がございますので、これに賠償いたしますれば統一後はそれが引き継がれるもの、こう思っております。
  207. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 私はくどいようだからおきますけれども、統一したらばそれが北ベトナムに引き継がれると言うが、現にそれならば統一してから支払うように話を進めたらどうですか。今二つに分れている一方だけ払ったからといって、他の一方が納得しなければ、もしかえってそれが統一の障害になるとすれば、日本政府は賠償を支払うことによって南北の統一をじゃましておるというふうにとられても仕方がないと思うのですが、それならば、統一するまで賠償の話を延期されたらどうですか。
  208. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 現に、ただいま申し上げましたように賠償請求権を持っておることでございますし、それに対して支払うのは当然だと考えております。
  209. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 じゃ、話がつかなければ賠償を支払えないでしょう。日本政府がいうことを聞かなければ、向うの一方的な意思によって支払うわけじゃない、両方の合意によって初めて賠償協定は成り立つわけです。従ってほんとうに賠償を求めるならば南北統一してから来なさい、こういうことも言えるわけだ。だから、それは何も今南ベトナムだけが請求権があるからといって、南北を一つにしてのベトナム政府でなければならないはずなんですから、そういう点外務省において、南ベトナムだけを対象とする賠償の交渉を進められることをしばらく中止されておかれることがいいのではないかと思うのですが、これはどうでしょうか。
  210. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私どもはサンフランシスコ条約の調印国として全ベトナムを代表しておるものとして交渉を開始しておるので、今これを中止する気持はございません。
  211. 加藤勘十

    加藤(勘)分科員 これも水かけ論になってしまうから、これ以上は言いませんけれども、しかし私は、アジア全体の情勢を総合的に判断して、日本があまりに片寄った見解をもって具体的な問題の処理に当られるということは、変転してやまない国際情勢のもとにおける妥当な方針だとは思えません。これは方針の相違、見解の相違ということになればおのずから別問題ですけれども、とにかく日本国内には、ベトナムが統一されて、単一ベトナムとなって初めてベトナム全体を代表するものであるということが妥当である、正しいという見解を持っておるものもあるということだけを御承知おきを願いたいと思います。  では、これで私の質問を終ります。
  212. 田中伊三次

    ○田中主査 佐々木良作君。
  213. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 おそくなりましてまことに恐縮でありますけれども、同時にまた、分科会の問題としてどうかと思う点もあるかとも存じますけれども、日韓問題、特にイライン問題につきましてどうもはっきりしない点がありますので、政府のお考えをただしたいと思いますから、お許しを願いたいと思います。  御承知のように、在日朝鮮人の北鮮送還問題をめぐりまして、日韓関係、特にイラインがまた問題をはらんできているように思われます。その一つは、韓国側の報復手段的に見える漁船の鹵獲の脅威の増大という意味で、また二つには、北鮮に現実に北鮮の人を輸送する場合の輸送航行の不安という意味において、この二つの意味からこの問題がまた相当深刻に論じられておるように思いますので、この際政府の態度を明確にせられたいと思うわけであります。  まず、政府は、北鮮送還問題について赤十字国際委員会にあっせんを要請しておられるようでありますけれども、その中にいわゆる輸送の安全についての問題が含まれておりますかどうか。もし含まれておるのならば、いかなる手段によって輸送の安全を求めようとしておるのか、伺いたいと思います。
  214. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 国際赤十字に対しましては、在日韓国人の北鮮帰還希望者の調査をしてもらうことが第一だと思います。同時にまた、これが輸送を円滑にして参りませんければなりませんけれども、国際赤十字の立場もございます。従いまして、今後国際赤十字がどのようにこれらの問題に対して介入するか等の問題も勘案して参らなければならぬわけでありまして、それらの点については、まだ最終的にきまっておりません。
  215. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 そうすると、国際赤十字のあっせんらしいものを依頼しておられる内容の中に、輸送の安全という問題は含まれて起らないのですか。
  216. 板垣修

    ○板垣政府委員 国際赤十字に依頼いたしました趣旨は、今大臣からお話がありましたように、自由意思を確認したあと、それを実施した場合に伴ういろいろな条件は全部含まれているわけであります。特に航海の安全というようなことは、一々指摘しておりませんが含まれているわけであります。ただ、御承知のように、今回は自由帰還という建前でございますので、日本側は配船をいたしません。船その他については全部北鮮側が手段をとるといこうとを受けて立ったわけであります。船の問題は北鮮側でやります。しかしながら、この航行の安全につきましては、日本側としても、もちろん重大な関心があるわけでありまして、ただいまジュネーブにおきまして、この問題を含めて国際赤十字側の意向を聞いているわけであります。われわれといたしまして、一応の見通しは持っておりますけれども、ただいま、まだ国際赤十字の意思ははっきりわかっておりませんので申し上げることはできません。
  217. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 そうすると、北鮮送還の輸送の手段は、あげて北鮮側が行うということを政府としては前提にされているわけですか。
  218. 板垣修

    ○板垣政府委員 国際赤十字のあっせんによるわけでありますが、条件といたしまして、日本側は配船をしないということになっております。従って、国際赤十字が北鮮側と話をいたしまして、どこの船——北鮮に船がありますれば北鮮の船、北鮮の船がなければどこか第三国の船をチャーターするということになるわけであります。
  219. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 日本船を使わない場合に起り得る輸送上の不安があるとすれば、それは国際法上どういう解釈に基く不安があり得るのでしょうか。
  220. 板垣修

    ○板垣政府委員 私どもの観測といたしましては、これは人道上の問題で、故国に帰りたいという者が乗っておる船でありますから、これに対してある国が暴挙を加えるというようなことはあり得ないと思っております。しかし、この点は現実に実施する場合、そのときの情勢を十分判断しなければならぬ問題でありますので……。
  221. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 私が質問する意図は、イラインというのは日本と韓国との間における問題である。ところが、今度北鮮あるいは第三国の船が、このイラインを航行する場合不安があるとするならば、それは国際法上どういう不安を意味するか。つまり、これまでは非常に明確でない日本と韓国との問題であったのが、今度は国際上の問題になるので、その場合の不安というのはどういう意味の不安か。たとえば、北鮮と韓国との間に戦争状態があるということを前提として、戦争状態があることのための航行阻止というような問題になるのか、あるいは日本に対する何らかの意図を持っているものとするならば、日本と韓国には今どういう状態が国際法上あって、そのために不安になっているのか、一般の国際法上の解釈から不安の内容を明らかにされたい。
  222. 板垣修

    ○板垣政府委員 法律上のことはちょっととわかりませんが、国際法上の不安等はあり得ないと思います。ただし、場合により事実上の不安はあるかもしれないということであります。
  223. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 わかりました。事実上の不安だということでありますので、次に進みたいと思います。  今度は日本と韓国との、特にイラインの問題についてでありまするけれども、御承知のように、この北鮮送還問題とともに、韓国側のイライン強化という問題がうわさせられ、同時に、漁船の威嚇拿捕事件の頻発が警戒されなければならぬ状態になっておると思います。これに対する政府の判断はいかがでございますか。
  224. 板垣修

    ○板垣政府委員 今般政府におきまして自由意思に基く北鮮帰還ということが決定される前までは、新聞紙上などでも御承知通り、だいぶ韓国側は激しいことを申しておりました。貿易の断交なり、あるいは場合によっては帰還船の実力による阻止とか、イラインにおける拿捕の強化とかいうようなことを強く口走ったような傾向がございましたが、一たび決定がありましたあとにおきましては、そういう言辞はございません。事実イラインのあの方面におきます情勢も、現在までのところきわめて平静でございます。
  225. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 御答弁にもかかわらず、一般国民の不安はぬぐい去られてはおらないと思います。そこで私は、漁船並びに船舶航行上の不安を除くための対策を伺いたいのでありますけれども、その対策を伺う前に原則に立ち戻りたいと思います。それは、いわゆるイラインという問題に対する政府の態度、特に法的な態度であります。政府一体このイライン内で、朝鮮の海岸から三マイル以上離れた海面はこれを公海と認めておられ、従って韓国の領海あるいはその管理水面とは見ておられない立場を厳守されておると思いますが、そう解してよろしゅうございますか。     〔主査退席、植木主査代理着席〕
  226. 板垣修

    ○板垣政府委員 あらためて申し上げるまでもなく、政府といたしましては終始一貫、イラインのごとき広範な地域において漁業管轄権を行使する、そういうことに対しては絶対反対の立場を堅持いたしております。
  227. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 それはつまり従来から堅持されておりますイライン不承認という立場の明確な態度だと思います。そこでそういう公海において平和的な航行あるいは漁業に従事しておる船舶に対しまして、銃撃を加えたり拿捕したりするような行為は、国際法上は、これが私船でありましたならば、私は完全な海賊行為だろうと思います。そしてまたこれが官公船でありましても、少くとも解釈上の異論はあるかもしれませんけれども、官公船であったとしても、今のような状態は海賊行為に類似すべき行為ではなかろうかと思いますが、政府の国際法を前提とした解釈はいかがですか。
  228. 板垣修

    ○板垣政府委員 海賊行為といっても、表現上の問題は別といたしまして、政府といたしましては、韓国側のイラインにおける日本船の拿捕は完全な不法行為ということで、従来しばしばこれに対しては強硬なる抗議を申しております。
  229. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 日本と韓国との間におきまして、イライン問題はあくまでも不法行為という考え方をとっておられ、先ほどお伺いいたしましたように、北鮮に朝鮮人を送還する場合の不安があるとするならば、それも法上何らの根拠もない事実上の不安でる。私は全然同じ意味の不法行為を前提とする不安だろうと思います。この不法行為を前提とする不安をなくするための対策としてどういう方法があり得るか、私は、これが従来の日韓会談の中心であっただろうと思います。確かに相手が不法行為でありまして、相手がはっきり韓国とわかっておるわけでありますから、この韓国に対しまして、平和的にそういうような不法行為をしないようにというふうな交渉をすることが最も必要でありますことは、私どももよく承知いたしております。しかしながら、この交渉はすでに長い年月にわたって行われており、しかも現在も行われておるのでありますけれども、今度の北鮮送還問題を契機として、いわゆる日韓問題、日韓会談はどうやら難航が予想され、あるいは壁にぶつかったような感じを持つわけであります。従いまして、少くとも私どもが見るところでは、早急の間にこのような平和的な交渉を持って本格的な不安を除去するような解決は得られる見込みがないのではないか、こういうふうに思うわけであります。しかも、この交渉が続けられておりまする間、引き続いてイラインを中心とするこの公海面における不安は継続いたしておるわけであります。交渉はしておるけれども、現実に実を結ばず。そして現実の不法行為が行われ、そしてわが国の財産あるいは人民が不安を感じておる。このこと自身が、今度は逆に交渉がうまく成立しなければ、これらの日本漁船あるいは平和航行に対する威嚇や拿捕はやむを得ない、むしろ解除されないというふうに、先ほど政府が明確にされましたところのイライン不承認の建前と逆に、平和的に幾ら話しておってもうまく話がつかなければ、ああいうふうな不法行為をやるのが当りまえだというような観点から、逆にイラインを承認しておるがごとき事実上の結果になってきており、そういう不安を日本国民は持っておると思います。そこで私はこの点に関しての政府の猛省を促したいと思うわけでありますが、そういう交渉にもかかわらず、起きつつある船舶の不安に対しまして、政府の保護並びに除去する対策についてお考えになったことはありますか。外務大臣で工合が悪かったならば官房長官でもよろしゅうございます。
  230. 赤城宗徳

    ○赤城政府委員 先ほど外務当局から御答弁申し上げておるように、李承晩ラインは認めておりません。認めておりませんが、事実上李承晩ライン内に漁船が入るということにつきまして、韓国側が拿捕するということが続けられております。でありますので、それにつきましてはいろいろの方法をとっておりますが、出漁する船に対しまして無線による指示をすることが必要でありますので、無線施設の設備、これは今までもやっておったのですが、その増強をはかっております。それからまた出漁する漁船が受信施設等を持っておらないものがあります。そういう小型漁船等につきましては、受信設備を整備するように、そしてまたそれに対しまして補助を出そうということで目下関係当局で折衝中であります。また海上保安庁から出ておる巡視船が銃撃を受ける危険性が増すおそれもありますので、防弾板を各巡視船に装備させる。また韓国側の出方に応じまして巡視船を増す必要がありますので、十三隻用意してあるのでありますけれども、今まで四隻海上保安庁の巡視船が出ておったのでありますが、なお三隻増しまして、六隻をもって被害を受けないように密接な連絡をとるようにいたしております。また水産庁の方の巡視船も出ておりまして、これが四隻出動いたして、漁船との連絡をとって被害を未然に防ぐという方法をとっております。
  231. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 それらの方法につきましては、他の委員会でも答弁されておる内容を私も承知いたしております。しかしながら、そういう方法によってちっとも不安は除去されていないというところに、私は根本的に政府考え方をただしたいと思っておるわけであります。この問題に入る前に、ちょっと横にそれますが、私は外務大臣に伺いたいと思うのでありますけれども、こういう日本と韓国との関係はまことに奇妙な関係だと思いますけれども、少くとも戦争状態ではない、平和な状態にあると思う。そういう関係で、こちらからは何にもしておらないにもかかわらず日本は脅威にさらされておる。今度は代表部を見ましても、韓国の代表部は日本にある、日本の代表部は韓国にはない。韓国の方からは日本に次々に来られる。しかしながら、日本の方から韓国へ行ったのは矢次一夫さんくらいのもので、行ったのを聞いたことはない。こういう状態は、また国際法に戻るかもしれませんが、これはどういう法的な根拠、あるいはどういう状態と見ていいのでありますか。
  232. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 不自然な関係にありますことは事実だと思います。ただ、国際法上どういう関係にあるかというと、おそらく過去にもあまりない関係ではないかと思います。従って、国際法上何か根拠があるかということは、これは私もわかりませんから、いずれ条約局長から説明いたさせます。しかし、これをできるだけ早く正常化していかなければならぬということを考えておりますのが日韓会談の趣旨だと思います。われわれも、イラインの問題なり、あるいは今お話しのような諸般の問題について、できるだけ二国間でまず正常状態に戻すように持って参らなければならぬと思いまして、そういう努力を今日までしてきておるのでありますが、それが十分に達成せられないというところに遺憾な点があるのだろうと思います。
  233. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 世界の古今東西に例を見ないような事態であり、しかも遺憾な事態であるにもかかわらず、日本国民は非常な不安と損害をこうむっておる。しかも、長年月にわたって交渉はされておっても実らない。こういった場合に、善処するといってもどういう手段が残されておるわけでありますか。
  234. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 こういう問題について、できるだけ二国間でもって問題が解決できることが一番望ましいことは問題ないと思います。あるいは部分的と申しますか、イラインの問題等については、国際司法裁判所に訴えるということも一つの方法であるかと思います。また、ただいま御指摘のようにはなはだ奇妙な状態で、威嚇的な困難な状態はありますけれども、紛争というものをどういうふうに解釈するかによっては、国連の安全保障理事会等でも取り上げられると考えられる問題があり得ると思うのでありまして、非常にむずかしい今まで例のないことでありますから、実は非常にむずかしい解決方法ではあろうかと思います。
  235. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 むずかしいからといってほうっておくこともできない。現実に国民が不安におののいている問題であります。そこで私はその問題に触れるわけでありますが、先ほどの官房長官の御答弁に対しまして、重ねて今度は逆に聞きたいわけであります。     〔植木主査代理退席、主査着席〕 法制局長官においでを願っておるはずでありますが、法制局長官より先に官房長官にお伺いいたしたいのでありますけれども、今のような個々の漁船に対して無電を取りつけてみたり、あるいは鉄砲のたまが通らないような処置を個々にくっつけてみたりしたところで、それは本論を解決するところの手段ではないと私は思う。しかも先ほど局長からお話しがありましたように、明らかに先方の行為は不法行為である。不法行為であるとするならば、この不法行為に対して、日本政府としては当然に自衛上の措置を講ずる用意があってしかるべきではないかと思う。日本政府として、この韓国側の不法行為に対して、自衛上の措置を講ずる用意があるかどうか、あるいは相談をされたことがありますかどうか、官房長官に重ねてお伺いしたい。
  236. 赤城宗徳

    ○赤城政府委員 話は根本に戻りますが、先ほど外務大臣からお話しがありましたように、李承晩ラインについてのいろいろな国際的措置をとる方法もあろうかと思いますが、御承知のように日韓会談で、日本といたしましては、日ソ漁業条約あるいは日米加漁業条約の例にならって、両国の協定によって漁業区域とか禁止区域とか制限区域とかを設けて、李承晩ラインというものを認めない、そのような方法で交渉しておるのでありますけれども、日韓会談が今休んでおりますような状態で、そのままになっておるわけであります。決して手を打っておらないというわけではないわけであります。また現在の情勢から危険が急迫するといいますか、危険が相当増してくるというよな状況において自衛の措置をとるかどうかということであります。これは自衛隊法ですか、それによればできないことはありませんが、現在そういう海上自衛隊を出動するような状態になっておりません。そういう状態でありますから、そういうことであえて刺激を与えるというような措置は避けた方がいい、こう考えておりますので、海上自衛隊を出動させるというような考えを現在持っておりません。
  237. 佐々木良作

    ○佐々木(良)分科員 長官は私の問いに対しまして、法制局長官への問いの先を含めてお答えになりましたが、私は戻ってもう一ぺん今度は法制局長官にお伺いをいたしたいと思います。今官房長官が言われましたように、自衛隊法の八十二条の規定によりますれば、「長官は、海上における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため特別の必要がある場合には、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に海上において必要な行動をとることを命ずることができる。」という規定があり、同時にまた防衛庁設置法の五条の十五にも、「海上における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため特別の必要がある場合において行動する」と規定されておるわけでありますが、今のような不法行為がイラインをめぐって行われておる場合に、総理大臣がそう認定するならばこの出動は可能である、このように考えますけれども、法的解釈は間違いないでしょうか。
  238. 林修三

    ○林(修)政府委員 今御質問のように、自衛隊法の八十二条には、いわゆる警備出動でございますか、これに関連する規定がございまして、海上における人命財産の保護あるいは治安の維持に限り特別の必要がある場合には、防衛庁長官海上自衛隊に出動を命ずることができるとなっております。従って特別の必要とは何ぞやということになると思いますが、これは御承知のように、海上における人命、財産の保護ということは、第一次的には海上保安庁の任務であります。これはあくまでも警察機能でありますから、海上保安庁の任務でありますが、海上保安庁の手が足りないという場合には、ここでいう特別の必要ということになるかと思います。従いまして、この朝鮮海峡の問題についても、そういう場合があればもちろん法律的にはこれは可能なことと思います。ただそれを果してやるかどうかということは、先ほど官房長官がお答えになりました通り、国際的にもいろいろ問題があろうと思いますから、まあ慎重な配慮が