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1959-02-18 第31回国会 衆議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月十八日(水曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 楢橋  渡君    理事 植木庚子郎君 理事 小川 半次君    理事 重政 誠之君 理事 西村 直己君    理事 野田 卯一君 理事 井手 以誠君    理事 小平  忠君 理事 田中織之進君       井出一太郎君    内田 常雄君       小澤佐重喜君    岡本  茂君       上林山榮吉君    北澤 直吉君       久野 忠治君    小坂善太郎君       周東 英雄君    田中伊三次君       床次 徳二君    二階堂 進君       船田  中君    八木 一郎君       山口六郎次君    山崎  巖君     早稻田柳右エ門君    阿部 五郎君       淡谷 悠藏君    石村 英雄君       今澄  勇君    岡  良一君       岡田 春夫君    加藤 勘十君       北山 愛郎君    黒田 寿男君       佐々木良作君    島上善五郎君       滝井 義高君    楯 兼次郎君       中島  巖君    成田 知巳君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君         厚 生 大 臣 坂田 道太君         通商産業大臣  高碕達之助君         運 輸 大 臣 永野  護君         労 働 大 臣 倉石 忠雄君         建 設 大 臣 遠藤 三郎君         国 務 大 臣 青木  正君         国 務 大 臣 世耕 弘一君  出席政府委員         法制局長官    林 修三君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  大來佐武郎君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         通商産業事務官         (石炭局長)  樋詰 誠明君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      山内 公猷君  委員外出席者         建 設 技 官         (道路局高速道         路課長)    斎藤 義治君         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 二月十七日  委員加藤高藏君、二階堂進君及び柳田秀一君辞  任につき、その補欠として古井喜實君、綱島正  興君及び岡田春夫君が議長指名委員に選任  された。 同月十八日  委員綱島正興君、岡田春夫君及び小松幹辞任  につき、その補欠として二階堂進君、中島巖君  及び滝井義高君が議長指名委員に選任され  た。 同日  委員滝井義高君及び中島巖辞任につき、その  補欠として小松幹君及び岡田春夫君が議長の指  名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  分科会の設置  昭和三十四年度一般会計予算  昭和三十四年度特別会計予算  昭和三十四年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 楢橋渡

    楢橋委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。昭和三十四年度一般会計予算外二案の審査のため、分科会を設置いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 楢橋渡

    楢橋委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。  なお分科会の区分、分科員の配置及び主査の選定等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 楢橋渡

    楢橋委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。     —————————————
  5. 楢橋渡

    楢橋委員長 昭和三十四年度一般会計予算昭和三十四年度特別会計予算昭和三十四年度政府関係機関予算、以上の三案を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。楯兼次郎君。
  6. 楯兼次郎

    楯委員 私は交通関係につきまして、各大臣に御質問申し上げたいと思います。  まず第一に、東海道新幹線であると言われております広軌複線化についてお伺いをいたしたいと思います。国鉄から出されております資料によりますと、昭和五十年に大体輸送量が倍になる。従って東海道新幹線建設が急務である。こういうふうに運輸省から出されました資料には強調をされてあります。しかし私ども考えますと、東海道輸送の逼迫については——新幹線はもちろん将来は建設をしなければならないと思いますが、まだその前に打つべき手があるではないか。手といいますか、何らかほかの方法によって、東海道輸送緩和をする方法を講ずるのが、まずさしあたって妥当な策ではないか。こういうふうに考えるのでありますが、運輸大臣の所見を一つ承わりたいと思います。
  7. 永野護

    永野国務大臣 東京—大阪間の交通緩和につきましては、運輸省といたしましてはいろいろな方法考えたのでございますが、その結果、抜本的の画期的ないわゆる広軌で、そうして高速度の運輸機関を作る以外には、東京—大阪間の交通緩和をする基本的な案はないという結論に達しましたので、あのいわゆる広軌案を作ったのでございます。
  8. 楯兼次郎

    楯委員 大体倍になるのが昭和五十年でありますから、当局資料によりますと、五カ年で建設をしたい。こういうようなことをおっしゃっておりまするが、私がその前に打つべき手というのは、今国鉄の手によって進められております再建五カ年計画、これを繰り上げて実施をするなり、あるいはさらに五カ年計画に次つぐ第二次五カ年計画とでも言いますか、そういう計画を立てられた方がこの新幹線建設をするより妥当な策ではないか、こういうふうに考えるわけであります。  抽象論ではどうかと思いますので具体的に申し上げますと、たとえば大阪—名古屋間の国鉄輸送緩和するためには、関西線があります。     〔委員長退席重政委員長代理着席関西線複線電化を早急に進められたならば、大阪—名古屋間の東海道輸送というものは非常に緩和されてくる。地図がございませんが、私はそう迂回をしておらないと思います。それから名古屋—東京間につきましては、中央線複線電化を早急に進められたならば、これまた名古屋—東京間についての輸送というものは非常に緩和される。旅客等につきましては、人為的に送配することはできませんが、貨物輸送等については、これは必要とあらば中央線の方にあるいは関西線の方にどんどんと輸送を振り向ける、こういうことが可能であろうと、こういうふうに私は考えるわけです。従って新幹線を、きのうの本会議のように、いろいろの疑惑を持たれながら進め、早急に決定をするより、まず関西線複線電化あるいは中央線複線電化を完成をした後に、なお足りないというので、その次に東海道新幹線というものを考えるのが、これは常識ではないか、こういうふうに考えるのでありますが、この点についてどういうふうにお考えになっておられるかお聞きしたい。
  9. 永野護

    永野国務大臣 お説の関西線複線電化中央線複線電化という問題は、これはどうしてもやらなければならぬ線であるということは全く御同感でございます。ただし東京—大阪間の交通緩和基本的国策といたしましては、先ほど申しましたように画期的な思い切った対策を講じませんと行き詰まると思うのでありますが、それにつきましては、これらの区間の具体的な貨物及び人間の輸送量に対する見通しを、数字について申し上げた方がいいと思いますので、これは恐縮でありますけれども事務当局答弁いたさせますから、御了承願いたいと思います。
  10. 山内公猷

    山内(公)政府委員 お答えいたします。東海道線行き詰まりといいますのは、大体もう三十六、七年ごろには全線的に行き詰まるという情勢がはっきりいたしております。と言いますことは、列車の間合いに保守をいたしますわけでございますが、現在でもその保守は夜間だけ、あるいは非常に短かい期間にやるという線区が非常に多くなっておりまして、三十六、七年ごろには百二十ダイヤくらい入る予定になりまして、大体輸送量が一・三倍、三割増しくらいになる予定でございます。また五十年になりますと、ただいま御指摘になりましたように倍になるという数字的な検討が十分されておりまして、その結果、部分的な線増ではどうしても間に合わないということのために、早期に着工してこの東海道線輸送力を強化しない限り、日本産業の非常に大きな動脈でありますところの東京—大阪間の輸送が詰まるということが目に見えておりますので、国鉄及び運輸省におきまして検討の結果、これらの委員会あるいは経済企画庁を中心といたしましたそういった委員会でも十分検討の結果、早期着工をきめた次第でございます。
  11. 楯兼次郎

    楯委員 それでは、これは事務当局でけっこうでありますが、先ほど来私が言っております関西線複線電化、あるいは中央線複線電化によって、どのくらい東海道輸送を転換できるか。これは正確な数字でなくてもよろしいのですが、一つ答弁を願いたいと思います。
  12. 山内公猷

    山内(公)政府委員 ただいまお話のありました中央線の線路の増設につきましては、現在浅川—韮崎間につきましては、五カ年計画といたしまして浅川の方から工事実施中でございます。名古言屋—多治見間につきましては、五カ年計画といたしまして現在名古屋—大曽根間を工事中でありまして、その他は輸送量に応じて今検討をいたしておるわけであります。関西線につきましても、それぞれ目下検討をいたしておるところでございます。  ただ、先ほどの答弁を繰り返すようでございますが、それぞれ五カ年計画におきまして現在線の増強ということにつきましても、できる限りの手を打ちつつありますし、電化につきましても年々の計画におきまして延ばしておるのは御承知通りであります。ただこれらの部分的な線増では、なかなか東海道行き詰まりが打開できないという見通しのもとに、新線——新線といいますか別紙の計画をいたしておるわけでございます。
  13. 楯兼次郎

    楯委員 時間を食いますので、それではこの新幹線工事期間資金調達についてお伺いいたしたいと思います。  私ども資料によると、大体全工事費が千九百四十八億円かかる、五カ年にやりたいという希望的な資料をいただいておるのでありますが、確たる政府決定資料といいますか、決定されたという点については、まだ聞いておらないのでありますが、政府のこの工事期間あるいは資金調達についての決定の線をお伺いしたい。
  14. 永野護

    永野国務大臣 何しろ膨大な資金を要することでございまするので、ただいま正確なる見通しを申し上上げかねるのでありますけれども、第一には、白力で、つまり国鉄の自力の資金調達能力をまず第一に考えなければならぬと思うのであります。ところが、これは景気の消長に非常に大きく影響いたしますので、ことに五カ年計画というすでに確定しておりますはっきりした資金の用途もありまするので、果してこの東海道の新増設線のために、どの程度の資金国鉄自体の力によって調達し得るかということは、今は見通しはついておりません。しかし財政投融資の問題も考え得ると思いますし、できれば外資導入というようなことも考え得るのでありますが、この五カ年に割り当てましてどういう財源で作るということは、今日はまだ申し上げる段階になっておりません。
  15. 楯兼次郎

    楯委員 私はそういう法律的なことは知りませんが、財政見通しもつかないのに、こういう計画をされる。本年度予算を見ますと、新幹線工事費として三十億円の予算を盛ってあるようでありますが、こういうことは許さるべきことかどうか、大蔵大臣にお伺いしたい。
  16. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ことし三十億とってあることは、ただいま御指摘通りでございます。許されることかどうかとおっしゃると、これは許されることは間違いないのでございますが、楯さんは鉄道出身ですから、鉄道の問題については非常に詳しくいらっしゃるので、先ほど来中央線関西線の話をなされました。しかしこの経過は先ほど運輸大臣からも御説明いたしますように、広軌による新線建設する必要のあることは、各方面を調査した結果の結論でございます。しかし、ただいまは、先ほどのお話にもありましたように、国鉄整備五カ年計画の進行中であります。まず第一は、五カ年計画整備を進めていくということが第一でありまして、この五カ年計画については、資金的な準備が一応できておるわけでございます。その五カ年計画を進めておる途中において新幹線を作る必要が生じた。そういう結論が出てきた。そこでただいまのところは、五カ年計画遂行と新建設の問題とあわせて考えなければならない。そこで今のような資金の問題が起るのであります。ことし三十億とりあえずつけましたのは、第一は五カ年計画の推進の方に重点を置く。そうしてあと二、三年すれば五カ年計画は終了することでございますから、この新幹線建設を非常に急いでおる、そういう意味で、非常に時間をとると考えられる丹那トンネルその他の隧道、あるいは用地買収のために、まず三十億を計上いたしたのであります。  そこでその後の問題といたしましては、五カ年計画遂行とにらみ合せてやることでございまして、ただいま運輸大臣から御説明いたしておりますように、もともとこの線は収益のある線でございますから、これはできるだけ国鉄自身の方で資金を工面するということが必要だ。言いかえますならば、政府の直接出資という方法はとらない方がいいのだ、こういうことを第一段に考えております。しかし国鉄公社自身が企業の合合理化その他から資金を捻出するといたしましても、もちろん財政投融資による資金なり、あるいはまた、鉄道債の引き受けを民間団体協力を願うとか、いろいろの問題があるわけであります。なお、要すれば外国資金協力ということを考えてもいいと思いますが、これは今後五カ年計画遂行と合せて考えて参りますので、一、二年先になるということを御了承願いたいと思います。
  17. 楯兼次郎

    楯委員 まあそのくらいの答弁だろうと私も予測をしておったのでありますが、私はこの大事業を行うには無定見過ぎると思います。大蔵大臣は、自己資金でやった方がいい、政府出資ということには首をひねっておられるようでありますが、私ども承知をいたしておるところでは、たとえば本年度国鉄予算を見ましても、鉄道債券等はもう限界じゃないかと思うのです。といいますのは、ここではお聞きいたしませんけれども、たとえば縁故偵五十億というような、鉄道債券の中に項目があります。ここらは、もう行き詰まってしまってやむを得ずこういうようなところに財源を求めておる。もうこれ以上は望めないと私は思います。それから外資の問題につきましても、先日新聞等を見ますと、盛んにマッカーサー駐日米大使その他と折衝をされておるようでありますが、どうも結果がうまくいかぬというようなことを、これは新聞等によって私ども承知をいたしておるわけです。これが事実だといたしますと、かいもく金が出てこないのに、まあそのうちには何とかなるだろう、いよいよとなったら再び運賃値上げをやってまかなってやればいいだろう、そういう安易な底意があなた方の中にあるのじゃないか、こういうふうに推察をするわけですが、これらの事情はどうですか。
  18. 永野護

    永野国務大臣 御承知通り、この東海道新幹線経済的にはっきりと見通しのついておる線であります。従いましてその資金調達は、もうかる事業には金はできるというのが、大体経済の原則であります。問題は、東海道線につぎ込んだ金が他に流れるようなことがあっては困るというようなことが、外資なんかを調達する工作をいたします上に非常に懸念される点であります。従いまして国鉄の経理の運営の両からいいまして、この線はもうかるのだけれども、他の一般のもうからぬ線とその資金が混同しないようにできるか、というような安心感を与える方法が何か考えられますと、この線だけは必ずもうかるという見通しがついておるのでありますから、私はその資金は必すできる、こう考えておるのであります。先ほどの外資の問題につきましてもなかなかむずかしいというお話でございますが、その遮りであります。しかしながら、それはそういう安心感をどうして与えるかということ、ことにこれは金で持ってきませんで資材で持ってくるということはよほど可能性があると思います。しかしながらこの点は内地産業との競合というようなことがあるものでありますから、そう簡単にその話を引き受けることもいたしかねますので、目下しきりにその利害得失を研究しております。しかしそういう関係を抜きに考えますと、この線だけの資金調進は決して不可能ではない。非常にそろばんのいい線でありますから、この線の資金調達は不可能ではない、こう考えております。
  19. 楯兼次郎

    楯委員 今ここで幾らできる、できる、大丈夫だとおっしゃっても、これは私ばかりでなく、聞いておられる方が全部納得しないと思う、だからできるならできるでこういう見通しであります、こうしてやります、ということを伺いたい。なおその見通しが立たなければ、何もあわてて本年度からやらなくても、そういう資金調達ができてからこの工事に着工されればいいじゃないか、こういうことを私はわ伺いをしておるのであって、今ここで幾らで、きる、できるというお説教を聞かされても納得がいきません。
  20. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほどの運輸大臣お話でいいかと思いますが、まあ事業採算のとれることは、ただいま御指摘通りでございますので、資金は獲得できると思います。それを具体的にというお話ですが、その点は、先ほど申し上げますように、ただいまの五カ年計画というものが一応終了いたしますれば、五カ年計画に投入しております資金というものは今度は不要になるわけであります。そういう意味から考えて参りますと、資金調達について特に非常に苦しいということを考える必要はないということを先ほど来申し上げておるのでございます。ただ、それならば年度計画はどうなっておるか、こういうお話になろうと思いますが、その年度計画を立てることは、まだ五カ年計画の方を第一役に考えておりますから、今のところはちょっと無理なんです。で、先ほど来お話しになっておりますように、鉄道債券にしても、なるほど地方新線建設等については地方縁故募集はなかなか困難でございます。しかしながら、民間資金協力、しかもかような採算性のある線についての民回資金協力ということは可能だと私どもは確信をいたしております。だから、そういう意味で相対的なお話をいたしておるのでございます。これはもう小し五カ年計画整備、終了ということと相待って、並行して考えて参らなければならない、そういうことであります。
  21. 楯兼次郎

    楯委員 私は、大蔵大臣のような考え方もあると思います。しかし、そういう考え方が一番容易な考え方であろう、こう私は思っておりますが、われわれの一番心配いたしますのは、そういう形でやっていくと、もし財源が不足した場合に必ずまた運賃の問題が出てくるということです。だから、今実施をされておる五カ年計画遂行するに当たって、三十二年に運賃値上げが行われた。これはもう運賃値上げ財源を求めておるということは確実です。だから、将来大蔵大臣のような考え方でいった場合には、究極するところ、そこにしわ寄せが来る、こういう点を私は一番心配している。それから、こういう大事業については、今国鉄のやっておる通常経費から切り離して、特別会計といいますか、そういう形で建設が行われるのが私は最も妥当だ、こういうふうに考えますが、どうですか。
  22. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 通貨問題は、いわゆる経営費についての問題なら運賃問題ということが起こるでございましょう。しかし、これは今の国鉄経済状態から見まして、今すぐ問題になるというふうには私ども考えておりません。だから、御指摘になりますように、新線建設の問題については別途資金で確保するということが望ましいことでありましょう。国内資金調達方法について、政府自身がこの案を取り上げる以上、あらゆる努力をいたすことは当然でありますが、また、すでに世銀等におきましてもこの線の調査に乗り出しておりますし、きょうちょうど調印をいたしました外債発行等も、比較的いい条件でこれを発行することができるような状況になっております。日本経済に対する信用はよほど高まっておりますから、この資金を獲得するという面について、私は別に心配はないように思っております。ただ、それが抽象的だということでお話があろうかと思いますが、この点はさように私ども考えて、十分自信を持っておるということを御披露いたしておきます。  運賃問題は、重ねて申し上げますが、経営費が赤になるといいますか、そういう意味においては、運賃によって解決するということが必要だろうと思いますけれども新線建設の場合は別途の資金構想をいたすのが筋だろうと思います。そこで、ただいま特別会計でこれを建設したらどうか、あるいは一部においては別会社でやらせたらどうか、いろいろな議論があると思います。そういう点は今後の研究問題だ、かように思っておりますが、今日国鉄輸送が非常に困難さを生じて、それの妥結策としてかような広軌新線考えておる場合におきましては、その経営に支障のないような方法新線建設をし、しかもその新線建設が現在線の収益に重大な影響をもたらさないようにこれが経営さるべきことは、これはもう当然のことだと思います。そういう意味で、今の特別会計議論は、これは一案かと思いますが、ただいま研究はしておると思いますけれども、その点は先ほど来中すような資金獲得上の便宜上からそういう方法が可能かどうかということで、これは研究しておる問題だ、かように御了承いただきたいと思います。
  23. 楯兼次郎

    楯委員 そういう希望的観測を述べられても、先ほど申し上げましたように、具体的な構想というものがない以上承知することができぬ。  それから大蔵大臣運輸大臣考え方が違いますよ。この五カ年計画の完遂をしたあとに引き続いてやるという大蔵大臣考えと、それから運輸大臣考えは明らかに違うと思います。しかし私は時間がございませんから、こんなことばかりやっておりましても進みませんから、やめますけれども、こういう資金調達見通しも説明のできないような形でこういう大工事をやられますから、非常に疑惑を世間に与える、こういうふうに私は思います。この点は早急に構想を立てられて、そうしてわれわれにもお示しを願いたいと思います。  それから次にお伺いをいたしたいのは、東海道新幹線をなぜ鉄道建設審議会に諮らなかったか。私は当然東海道新線だと思います。従って法律の定めるところに従って、当然建設審議会に諮問をして行わるべきものだと考えておりますが、この点どうですか。
  24. 永野護

    永野国務大臣 御説の点につきましては、一体鉄道敷設法にいう新線をどういうふうに解しておるかという基本の問題になるのでございますが、私どもが了解しております新線は、いわゆる日本鉄道網を拡充するものを新線と申しておるのでありまして、一定の区間内の輸送力増強のために施設いたしますものは改良費的のものだ、こういうふうに従来取り扱っておるのであります。従いまして、その慣例によったという点が一つ。  それからもう一つには、これは御承知通り昭和十六年の鉄道会議でこれを改良費でやるということをきめまして、今日まで用地買収では二七%ぐらい、トンネルの方は三〇%ぐらいすでにやっておるのであります。でありますから、実質上は一種の継続事業のような関係になるのでございます。これはずっと今まで改良費で出してきて、おるのであります。  従いまして今申しましたような理論的の理由と、それから実際上の扱い方と両方面から見まして、これをいわゆる新線の中には加えなかったのであります。しかしながらその経済上の影響から申しますと、他のどの新線よりも最も大きい影響がございますので、そういう見方はありますけれども、今後これを実行していきます上には、ぜひ建設審議会の方にこれを報告いたしまして、皆様の意見を十分に取り入れてその実行に移りたい、かように考えております。
  25. 楯兼次郎

    楯委員 かけられなかったからそういう答弁をなさるのだと思うのですが、これば明らかに、あなた方の方の資料を見ましても、新線ですよ。新線という字句があなた方の資料の中には全部使われておるのです。東海道の改良だとおっしゃいますが、これはあなたがそうおっしゃるだけで、おそらく日本の国民は、東海道は今あるものより、もっと幅の広い、東京—大阪間の、しかも経過地が違うじゃないですか。経過地が極端に違うところへ、関西へ入りまして鈴鹿山脈を抜く、こういうようなことをこの資料ではうたってありますが、全然経過地の違うところへ、現在あるものより以上に規格の変った、軌間の変った大幹線を建設するのでありますから、幾らあなたが建設審議会にかけなかったからそういうふうに答弁をおっしゃっても、これは認めるわけにはいかないのであります。これはあなた方の資料を見て明らかに新線とうたってあるのですから、この点どうですか。
  26. 永野護

    永野国務大臣 先ほども申し上げますように、昭和十六年これに着手いたしますとき、鉄道会議の議を経て改良費でやるということにきめました、その工事の継続であります上に、両地点、その間途中で線路の要るところは、従来の改良計画でも、たとえばカーブをなす——これは専門家の楯さんの方が私よりももっとおくろうとだと思いますけれども、ある区間の全く新しいところへ線を引っぱるようなことがありましても、それはみな改良費でやっておるのであります。この文書の中に新線という字を使っておるではないかという御指摘でござでいました。その通りでございます。しかしこれはごく法律的の意味でなくて、経済的の意味であると御了承を願いたいと思います。
  27. 楯兼次郎

    楯委員 どうですか、そういう詭弁を弄されぬでも、はっきり新線だ、ただし建設審議会にはいろいろな事情があってかけることができなかったから、おそまきではあるけれども委員もきまったことであるから、これからかけて事後承諾を得てやっていく、こういう工合に答弁されたらどうですか。あなた方も新線だといい、あなた方の出された資料には新線ということが書いてあるのです。それから法律にははっきりと附則の別表を改正をして、いわゆる追加をして法律に載せて実施をしていく、こういうことになっておるが、これはどうですか。
  28. 永野護

    永野国務大臣 先ほども申し上げましたように、今までは今申し上げましたようなことでかけませんでしたが、今後は新線同様、すべて建設審議会の御意見に従いましてこの工事の施行をいたす決心でございます。
  29. 楯兼次郎

    楯委員 そうすると、結局過去とってきた取扱いというものは誤まりであるということを、あなたは認めておいでになるのじゃないですか。今までのものは改良だ、継続だ、しかし今後は建設審議会にはっきりかけて実施をしていく。どうも筋が一貫しないようにとれるのですが、どうですか。
  30. 永野護

    永野国務大臣 先ほども申し上げましたように、昭和十六年この線にかかりますときには、鉄道会議の決議を経まして、改良費でやるということをきめて、すでに三分の一の工程を終ってるのであります。従いまして、これを、継続事業とは私決して申しませんけれども、継続的の意味がが多分にございますので、改良費予算工事をしているのをそのまま続けてやってきておるのであります。しかしながら今、楯委員お話通り、非常に大きな問題でありますから、従来改良費の勘定でやっておりましたけれども、今後はあらためてこれを建設審議会の議に付しまして、十分な御了承を得てこれを運用して参るつもりでございます。
  31. 楯兼次郎

    楯委員 運輸大臣答弁は、鉄道敷設法の改正前の議論だろうと私は思うのです。数度法が改正になって、第三条で明らかに鉄道建設審議会を設けて、すべて新線はこれに諮れ、こういうふうに改正になったと私は思うのですが、運輸大臣はそれ以前の——あなたのおっしゃるのは戦争前の話でしょう。そのきまったとおっしゃるのは……。
  32. 永野護

    永野国務大臣 昭和十六年。
  33. 楯兼次郎

    楯委員 そういう議論は、私は今は通用しないと思うのですが、どうですか。
  34. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 それは今予算に計上いたしておりますように、東海道線建設費はいわゆる新線建設費ではございません。これは線路増設費のうちから別な費目を実は設けておるのであります。この点は先ほど来運輸大臣が申しておりますように、また楯君も鉄道の御出身だから、これはもう御承知のことだと思いますが、こういう場合におきましてば改良工事として、改良費として指定しておる、これは鉄道が在来からずっとやってきておることでございます。従いまして今回の扱い方が特に異例な扱い方をしておらないということを私ははっきり申し上げたいし、予算の項目におきましても新線建設費ではないということを一つはっきり御了承をいただきたい。  ただ建設審議会の問題になりますと、いわゆる建設審議会に報告というか、あるいは全然相談なしというか、そういうことはあるいは不穏当であるかわかりませんが、運輸大臣の申されるのはそういうような意味でございまして、予算編成上なりその項目としては、ただいま出し上げるように、いわゆる新線建設費としてはこの問題は取り上げないということ、これを御了承いただきたいと思います。
  35. 楯兼次郎

    楯委員 大蔵大臣のおっしゃるように、三十億が新線建設費として盛ってない。これは盛ったらえらいことですよ。新線建設費の九十五億の中三十億入れたら、ここで論議する必要はないのです。これは全然あなた方の黒星ですよ。そんなことは理由にならない。私はこれは明らかに運輸省の手落ちであると考える。  しかしこれまた時間を食いますので、次に移りたいと思いますが、それなら、昨年の鉄道建設審議会において、わが党の審議委員が、これは新線建設ではないかといって質問をしたときに、どういう答弁をなされ、どういう取扱い方がなされておるかということをお聞きしたい。今この席上であなた万がおっしゃったように、社会党の審議委員の方が質問をされて、了解をされておればいいです。それでいいと思うのだが、そのまま聞きっぱなし、言いっぱなしになっておるじゃないですか、はっきりした結論を出しておらぬじゃないですか、この点どうですか。
  36. 永野護

    永野国務大臣 お説の通りでございます。この前の建設審議会のときに、淺沼委員からその御指摘があったことはよく承知いたしてわります。ところが、御承知通り、その後建設審議会のメンバーに変動がございまして、その新幹部がこの研究をしております間に時がたってしまったわけであります。御承知通り鉄道建設審議会運輸大臣の権限の中の機構ではございませんで、独立の機関でございますので、その会長がこれを招集いたしませんと、運輸大臣がこれを招集するわけには参りません。その招集がおくれておりましたことはまことに相応まぬことだと存じております。今度さらにまたそのメンバーがかわりましたので、今度はなるたけ早く招集していただくことを懇請しておりますから、そう遠くないうちにその会議が聞けると考えております。
  37. 楯兼次郎

    楯委員 以上質疑応答したように、この点についてはきわめてあいまいであるし、運輸省としても怠慢であると思います。従って新委員がきまったことでありますから、早急に審議会を開いて、事後になってもこれを審議し、了解を得てこの問題を今後進めていっていただきたい、こう思います。  それから予算書でちょっとこまかい点をお聞きしたいと思います。きのうもわが党の久保君が本会議での演説の中で触れたのでありますが、運輸省の所管の予算の中で、三国間輸送助成に必要な経費として五億円が盛ってあります。これは、私勉強はしておりませんからはっきりしたことは言えませんが、これを支出するに基づく法律というものの記憶がないのですが、これはどういう根拠に基いて支出をされるのか、お聞きしたいと思います。
  38. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 予算を編成いたしたのは大蔵省でございますから、私からお答えをしたいと思います。  もちろん予算で御審議をいただきまして、皆さん方の御協賛を経れば、行政措置でも出せると思います。しかし法律で出すことも一方法、そのいずれの方法によるかはただいままだ研究しておるところだそうです。
  39. 楯兼次郎

    楯委員 行政措置で出すこともできるが、法律云々というが、それは一体どちらですか。一体どちらでおやりになっているのですか。ちょっとあいまいじゃないですか。
  40. 石原周夫

    ○石原政府委員 ただいまた大臣からお答えをいただきましたように、予算の御議決をいただきますれば、これに基きまして予算上の補助をいたします例は、御承知のようにたくさんございます。しかしながら本件の場合におきましては、私どものところではまだ運輸省の方から法律を出しますことにつきましての相談を受けておりません。出す運びで準備をいたしておるかと思うのでありますが、それは至急取り調べまして御返事を申し上げます。
  41. 永野護

    永野国務大臣 私は、この三国間の航行助成はぜひしなければならぬという運行上の問題から申したりであります。そこで資金を要請したのでありますけれども、その資金はおそらく行政措置で出してもらえるものと思ってその提案をいたしたのでございます。     〔「統一見解をもって臨まなければだめだと」呼ぶ者あり〕
  42. 楯兼次郎

    楯委員 その点はっきりして下さい。
  43. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 予算は私の方で編成はいたしますが、ただたいま運輸九大臣は、運輸省は行政措置で出したいということですから、それで差しつかえないと思います。
  44. 石原周夫

    ○石原政府委員 ただいま聞きましたところ、法律は出さぬことに相なっておるようであります。(「その理由を言え」と呼ぶ者あり)法律に基きまして補助金を支出いたします場合と、予算の議決に基きまして補助金を出山します場合と、両方ございます。この後者の場合につきましては、その他の例がたくさんございますが、おのおのの場合によりまして、法律によりまして補助金の規定を入れます場合、予算の議決だけによりましてやります場合——これは、その場合にそれ以外に法律上の規定を必要といたします事項がありますのと、もっぱら行政上の措置によりましてやることが適当であるという場合と両方ございますから、一律に法律をきめるということに相なっていないわけであります。従来の前例におきましても、法律をもちませんで予算上の措置をもちまして補助をいたす場合もあるわけであります。大体の例から申しますと、いわゆる負担金というものは、一般的に補助金と申しますが、この中に、法律的に負担割合というものをきめまして、それに基きまして負担をいたします場合——これは補助金と申す場合いが多いようでありますが、この場合におきましては、ことごとく法律をもって御議決をいただくことになるわけであります。しかしながら奨励的な意味におきまして補助をいたしまする場合もたくさんございまして、農林省関係あたりにおきましては相当たくさんの補助金が出ております。こういうような奨励的な補助の場合におきましては、むしろその補助だけの意味におきまして法律を出します例は少いのでありまして、何らかそれ以外の法律的な措置を必要とする事項とあわせまして助成規定を置きます例はございますけれども、奨励的な補助だけの意味におきまして法律を出します例は、むしろ例外にとどまると思います。
  45. 楯兼次郎

    楯委員 私もあまり詳しくないからわかりませんが、たくさんあるたくさんあると言われますが、それでは具体的に、過去行われた事例をここであげてみて下さい。
  46. 石原周夫

    ○石原政府委員 お答えを申し上げます。先ほど申し上げましたように、農林省の系統におきましては多くの補助金がございます。これは採種圃設置の補助金であるとか、あるいは農薬の補助金であるとかいうような補助金の類が多くございます。こういう場合におきましては、おのおの補助金の奨励的趣旨ということに基きまして予算で議決をいただきまして、それに基きまして支出をいたすわけであります。従いまして、農林省系統の、たとえば採種圃の補助金のごときは、補助に対します法律上の根拠を持っております。今手元にあります資料を至急調べまして御返事申し上げますが、農林省系統の中にございます。
  47. 楯兼次郎

    楯委員 この問題は一時保留にしておいて、それでは国内線航空機改装費補助五千万円、こういう項がありますが、これはどうですか。
  48. 石原周夫

    ○石原政府委員 お答え出し上げます。これは全日本航空輸送株式会社に対しまして、同社が臨時に資材を整備いたします、それに対して補助いたします分であります。
  49. 楯兼次郎

    楯委員 これも先ほど主計局長が言われるように、法律のない、いわゆる行政措置の補助金ですか、どうですか。
  50. 石原周夫

    ○石原政府委員 さようでございます。
  51. 楯兼次郎

    楯委員 私は、こういう重要項目の中にそういうあいまいな予算が盛られるということは、今の局長の説明を聞いても納得ができません。しかし、これは私も不勉強でありますから、あとでまた調べてお伺いをしたいと思いますので、この点一つ保留をしておきたいと思います。  それから志免の鉱業所の問題について簡単に触れておきたいと思います。先日当委員会において、わが党の佐々木委員からいろいろ質問が行われたわけでありますが、私はこれを聞いておりまして、どうも問題の中心がそらされておるように感じたわけです。といいますのは、この志免鉱業所の払い下げの問題が起きてきたのは、いろいろといわれておりますが、国鉄の三十一年に起きました運賃値上げをめぐって、この払い下げという問題が起きてきたわけです。従って、あのときの論議にもありましたように、合理化が行われ、そうして赤字が克服をされました今日においては、払い下げの根拠を失ったものである。簡単に言ってこういうふうに思えるのでありますが、この点についていま一回運輸大臣答弁を願いたいと思います。
  52. 永野護

    永野国務大臣 沿革的な理由は、実は私責任者でございませんでしたので十分に心得ておりませんけれども、私が志免鉱業所の分離を認めましたのは、日本の重要資源である石炭の、将来大きな開発の余地のある炭田といたしまして、この粕屋炭田というものを——国鉄の所有鉱区ばかりではございません。周囲の私有の鉱区もみんなあわせまして、これを開発することが、日本の資源開発政策の大きな問題になる、こう考えまして——個々に開発計画を立てましたのでは、断層その他のあの特殊の炭層の事情によりまして、私はほとんど不可能だと思います。それでこれを総合開発すべきだ、こういうことが、これを分離すべきものであると決意をした理由であります。でありますから、それは実は国鉄本位にまとめてもいいと思います。しかし、他の方法でこれをまとめる方法があれば、それも考える。しかし、少くも国鉄だけが持っておるという状態は、ぜひ早く解決しなければならぬ。まず分離いたしまして、そうしてそれをどう開発するかということが、その次の問題と考えておるのであります。従いまして、目先のところが、一年、二年損をしたとか得をしたとかいうことではなくて、日本の重要資源開発の基本問題に触れた観点に基いて、私は分離ということを了承したのでございます。
  53. 楯兼次郎

    楯委員 私はこの問題については、国鉄総裁の議論というものは的はずれで、なっておらぬと思います。といいますのは、総裁は、簡単に言って、嫁入りと身売りと一緒にしておるわけです。娘のもらい手があるうちに売らなければ、婚期を逸するというようなことを言っておりますが、それは嫁に行く場合の言葉です。ところが、この志免の場合は身売りですから、総裁の議論は、嫁入りと身売りと一緒にしておるようなことを言っておられますから、これは問題にならぬと思いますが、その後私が聞くところによりますと、国鉄にこの志免鉱業所が移管になってから、二十数億円の金がこの鉱業所につぎ込まれておるわけです。聞きますと、日本一の縦坑を掘ったばかりだ、こういうことを聞いたわけでありますが、こういうことをしておいて急に払い下げという問題が起きてくるから、この裏には何かある。これは疑惑を招くのは当然だと思うのです。今まで政府資金で二十数億もつぎ込んで、とにかく設備の更新をしておいて、さてそれができ上ったとたんに、これを業者に払い下げる、こういうやり方は、これは疑惑を招くのが当然だと思うのですが、この点どうですか。
  54. 永野護

    永野国務大臣 お答えいたします。先ほども申し上げましたように、分離するということは了承いたしましたけれども、それを払い下げるという問題はまだきめておるわけではございません。まず分離しておいて、先ほど申し上げましたような、この日本の重要資源をいかに開発すべきかということにつきましては、さらにゆっくり研究しなければならぬと考えておるのであります。払い下げということを申しましたのは、かりに分離してこれを処分した方がいいというような結論になりましても、そのときはいわゆる個人随意契約はいかぬぞ、公正なる競争入札にしなければならぬぞということを、念のために注意したのでありまして、私はこれを売るという、つまり払い下げという方針を決定いたしますまでに、今の基本国策に伴う、いかにしたならばこの粕屋炭田を最も——楯委員お話にありました疑惑を招くことのないような方法があり得ると考えますので、それはこれから考えることでございまして、その考える余地は少しも奪われておらないのであります。     〔重政委員長代理退席、委員長着席〕
  55. 楯兼次郎

    楯委員 国鉄は将来、四、五十年間は石炭が要るのです。今までよその業者より志免炭鉱からは、トン四百円ないし五百円安い価格で納入しておるわけです。だから、よしんば国鉄の手を離れて他の業者が経営をしても、石炭が高くなっても安くなってもやはりこれから買ってこなければならぬわけです。そういう関連を考えたら、ここで疑惑を生み、無理をして——これを分離だとか総合開発だとかいろいろ言われておりますが、無理をしてする必要はないじゃないか。それより、先ほど私は時間の関係であまり追及はいたしませんでしたけれども、もっと東海道新幹線というような問題を真剣に考えて、そごのないような方法をとった方がいいじゃないかと思うのです。そういうことはあいまいにして讓論になるようなことをしておいて、こういう鉱業所の問題は、従業員が全員反対もし、また世間の疑惑を生むような形で処分をなさろうとする。私は、しいてあわてて処分する必要はないと思う。どういうところから考えても、そういう議論の根拠というものは生まれてこない。時間がないから答弁は要りません。よく与えて、一つこういうことのないようにやっていただきたいと思います。  それから次にお伺いをいたしたいのは、昭和三十二年の三月に当時の衆議院全員の賛成によって通過をいたしました国土開発縦貫自動車道建設法に対する取扱いが、その後私どもが見ておりますと、経済企画庁運輸省建設省も非常に冷淡な取扱いをしております。法律は通ったけれども、あまり重要視しておられないという態度が見えるわけでありますが、この点について運輸省建設省、企画庁、それに大蔵大臣のお考えを承わりたいと思います。
  56. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 国土開発縦貫道路の問題についてのお尋ねでありますが、お説の通り昭和三十二年にあの法律が通ったのでありますが、自来三十二年、三十三年とそれぞれ、三十二年は四千三百万円ばかり、三十三年は約五千万円の調査費をつけまして、鋭意調査をしておるわけであります。今度の三十四年度予算にもほぼ五千万円ばかりの調査費をつけまして慎重に調査をし、調査の結果を待ってこれを実行しよう、こういう考えでやっておるのでありまして、決して軽視しておるわけではないことをお答えしておきたいと思います。
  57. 永野護

    永野国務大臣 建設大臣がお答えいたしましたと同様に考えております。
  58. 世耕弘一

    世耕国務大臣 お答えいたします。  道路交通の問題に関しましては、企画庁といたしましては実は慎重な計画を進めておるわけであります。まず交通問題に関しまして、汽車と自動車をどういうあんばいで今後運営していくか。むろんこの点に関しましては諸外国の例もございます。長距離は汽車、短距離は自動車を活用するというような方針を各国ともとっておるようでありますが、日本の道路交通政策に関して、これをどういう方法で運営することがいいかどうかということが問題の一つ。もう一つは、その道路交通を運営するあるいは利用する場合において、人を主にするかあるいは荷物を主にするかという問題も当然関連して出てくる問題だと思います。なお御質問の趣旨にもあったと思いますが、この交通関係はどうしても産業間発ということを重要な観点として考えなくちゃならぬ問題だろうと思うのでございます。こういうことを総合的に考えてみますと、どうしてもスピード化ということが重要なことになってくると思います。そうすると、おのずから従来の線路を拡張するなり、あるいは新線を新たに計画するなりという問題が出てくるわけであります。そうなってくると、結論として資金計画をどういうふうに盛り込んでくるかということが考えられるのであります。それからさらに掘り下げてみますと、結局安全性ということも盛り込んでいかなければならぬ、スピードの中で安全性ということも非常に重要な交通上の事柄だ、かように考えております。  日本の交通量を今後発展せしめる意味において、諸外国の自動車の発達の状況を一九五五年の統計を基本にして考えてみますと、楯さんも御承知通り、人口五百八十人に対して日本は今一台の自動車の割合になっております。一番発達しないと見られているイタリアですら五十五人に一台というふうになっております。やがてこの日本の人口割の五百八十人に対して、台が、少くともイタリア並みの五十五人に一台くらいに伸びてきたら、おのずから貨物運送等にも隘路を来たすのではないか、道路交通上の隘路がくるのじゃないか。アメリカ式にいうと三人に一台という自動車が、東海道線あるいは各地の幹線を運行する場合に、どういう道路計画をしなければならぬかということが、おのずから企画庁としても考えなければならぬ問題である。  なお、最後に申し上げたいのは、道路計画の上の土質の研究が、諸外国の例と比較いたしまして、まだどうも十分でないのではないかという懸念がございます。そういう点を総合的に計画を持ちまして今後万全を期したい、かように考えております。  ただいま御質問の東海道幹線並びに中央新線に対しても、そういう観点から各省と連絡して、慎重に取り扱っている状況にあるということを申し上げておきます。  なお、この点については、そういうあらゆる観点から計画を進めておりますが、決してスピードはおくらしていない、すみやかにこれが結論を出すことについて努力しているということを御了承願いたいと思います。
  59. 楯兼次郎

    楯委員 時間に追われますので、私この問題を三回ここでやっておりますが、もうあまり上品な議論をやりたいとは思いません。特にこれを主管する建設省はいかに冷淡な——冷淡というより、むしろ国会議員全員の意思を無視した態度をとっておったかということを、具体的な例をあげて質問をいたしたいと思います。  まず第一に、昭和三十二年度にただいま建設大臣が申されましたように四千五百万円の調査費がついたと思います。ところが一体その四千五百万円はどういうふうに使われたか。私どものうわさを聞いているところによりますと、この中央道の五千分の一の地図を一つ作成した、あとは金が余ったから臨時職員の給料としてこれを流用している、こういうことを聞いているのですが、どうですか大臣
  60. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 それは私はそういうふうに聞いておりません。三十二年以来一生懸命に調査して参っております。もちろん五千分の一の地図も作成いたしましたし、実地に調査をして歩いております。そして航空写真も確かにとってあります。  なお必要がございますれば、三十二年度の間にやりました調査の結果を後日詳しく御報告して差しつかえございません。
  61. 楯兼次郎

    楯委員 三十二年度のこの調査費の内訳を、今無理だと思いますので、一つ資料として提出を願いたいと思います。  それから、これは大臣でなくてもけっこうでありますが、三十三年度の五千万円の調査費は今日までのところ、いかに使われたかということを、概略でよろしいが一つ答弁を願いたい。
  62. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 五千万円の調査費については事務当局からお答えさせます。
  63. 斎藤義治

    ○斎藤説明員 今年五千万円の調査費をもちまして、八王子から東京に至ります区間の航空写真の測量、地質調査といたしまして全線にわたりました地質調査、気象観測の調査、交通関係の交通量の調査、交通需要の調査、それから、これは部分的でございますが、一部の高低測量、こういうものを実施いたしまして、さらにそれを取りまとめます費用というものを見込んでございます。
  64. 楯兼次郎

    楯委員 それではこれは建設大臣にお聞きしたいと思いますが、昨年、この中央自動車道の経済調査を早稲田大学の生産研究所へ委託したことがあるかどうか。
  65. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 大学の教授に調査を委託したことを記憶しております。
  66. 楯兼次郎

    楯委員 この調査メンバーは生産研究所の河辺教授、東大の今野源八郎教授、大石助教授、それから佐竹学習院大学教授等が調査団となって中央道を調査しておるわけです。これらの学者はどういう人であるか御存じですか。
  67. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 調査を委託しました学者は、いずれも道路に関する日本のオーソリティであるということを私は聞いておったのであります。あらゆる角度から調査をする必要がありますので、最も権威のある人たちに調査をしていただく、こういう建前で私は調査を依頼したのであります。  なお個々の学者がどういう議論をしておられるかというようなことについては、事務当局から説明さしてけっこうであります。
  68. 楯兼次郎

    楯委員 この学者連中は、これは昨年のエコノミスト等にも掲載をされたのでございますが、新聞、ラジオ、講演において、中央道反対の論文をどんどん出しておる人たちですよ。これは全部反対論者ですよ。その建設省の方がせっかく調査をする経済調査を、オール反対の学者に委嘱をするのはどういうことですか。これはもう反対であるか賛成であるかということは、十九国会以来議論済みです。議論議論を重ねた結果、将来の日本産業発展のためには、中央道でなくてはいけないという結論を出し、全員が賛成をして国会を通過さしたのです。それにもかかわらず、明らかにオール反対の——これは私今持ってきておりませんけれども、反対の論文をどんどんと発表しておる人たちを全部集めて、そうして経済調査をするなんということは、あとで調査費の内訳をいただきますが、これじゃまるで建設をするための調査じゃないじゃないですか。反対をするために調査をしたと言われても私は言葉がないと思う。建設省はこういうことをやっておるのですよ。この点はどうですか。
  69. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 これらの学者の人たちが、従来どういう議論をしておったかは、私は詳しく存じませんが、私はこういう考えを持っておったのであります。あの縦貫道路はすでに法律もできておりますし、国会で満場一致で決定した法律でありますので、あの縦貫自動車道路を作るか作らないかという問題については、もう議論がない、作るのだ、こういう前提に立って、しかる上にあるいは部分的に幅員を四車線にするとか二車線にするとか、あるいはインターチェンジをどこに設けるとか、そういうような経済的な調査ももちろん必要であります。そういう調査を詳しくやっていく、こういう意味であらゆる知能を集めて、慎重に調査させる、こういう建前でやっておることを一つ御了承いただきたいと思います。
  70. 楯兼次郎

    楯委員 大体中央道の沿線の町村長に一ぺん会って聞いてごらんなさい。町村長はどういうことを言っておるか。調査団が来たので、敬意を表するためにこれを案内する。異口同音に市町村長が言っておることは、あれは建設の調査に来たんじゃない、彼らの話をしておるところを聞いておると、いわゆる建設困難であるという宣伝をするための種を探しに来たとしか思えないと全部言っおるんですよ。それから私はここで個人的な名前をあげて言ってもいいのですが、今の段階ではちょっと差しさわりがあると思うから言いませんが、建設省の某幹部は、これも名前もはっきりわかっておりますが、自民党の道路利用者会議という会議関係しておる代議士にどういうことを言っておるか、ぜひ中央自動車道をつぶして東海道に自動車道を作るように、自民党の意見を統一するために努力してもらいたい、こういうことを現実に頼んでおるじゃないですか。どうですか、こういう幹部がおるのですが。
  71. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 中央自動車道路につきましては、学者などの人たちの意見は、大半非常に疑問を持っておる人が多いのです。しかし私はその疑問を持っておるのを宣伝させようとかなんとかいう考えは毛頭ございません。しかも建設省の幹部の中にいろいろな議論をする者があるというお話ですが、あの道路を作る上において、最も経済的に、しかも最も合理的な道路を作るという意味での検討は許しますけれども、あれを作らせないのだという意味の宣伝や議論というものは私は許さない。こういう態度を堅持してやっておりますから、一つそれは御了承いただきたいと思います。
  72. 楯兼次郎

    楯委員 それでは次に私はお聞きするというより言いたいのは、あなた方建設省の命令を受けて中央道を建設しなければならない日本道路公団の岸総裁はどういうことを言っておるか。これは本年の一月四日の産経新聞でありますが、こういうことを新聞に書いておるのです。東京—名古屋間高速自動車道は、中央道案か東海道案か松永案の三つを調査し、そのうち一番いい案を採用して建設することになろう、こういうことを堂々と新聞に出しておるのです。名前が岸でありますから、総理大臣になったような気で、そういうことを言ったのかもしれませんけれども、これは不見識じゃないですか。たとい個人的な意見はどうあろうとも、法律で、五年間も議論をした末、中央道にきまっておるにもかかわらず、それを堂々と——まあ個人的な雑談なら別です。堂々と新聞に発表しておるというようなことは、これはあなたが管理する道路公団の総裁としては、全く不見識だと思うが、どうです。処分しなさい、これは……。
  73. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 道路公団の総裁がどういう記事を出されたか、私は読んでおらないのですが、実は建設省で、ただいま道路の五カ年計画の策定中でございます。ごく近いうちに五カ年計画を閣議で決定をいたしまして、政府全体としての確定案を作りたい、これが法律の要求しておるところでもあり、建設省で当然やらなくちゃいかぬことでもあります。その問いろいろ議論しておりましたので、建設省のほんとうの考えはどういうことであるかということを、多少誤解をしておられた向きもあるかもしれません。しかし、これが確定いたしますれば、そういう区々たる議論はもう消えてしまうと思います。ですから、しばらくお待ちいただきたい。そうすれば政府の方針がはっきり出て参りますから、それでみな議論は一致していく、こう思っておるわけでございます。
  74. 楯兼次郎

    楯委員 もう少し待って下さいとは何事ですか。これは一月四日の新聞ですよ。すでに中火道を建設するということは三十二年にきまっておるんですよ。それを一月四日に、まだそういうつまらぬことを言っておる。個人的にそういう意見を友だちくらいに話されるということなら、これはまだわかるのですが、堂々とこれは公表しておるじゃないか。道路公団の総裁として……。こんな者を——こんな者といっては失礼ですが、こんな人をとにかく建設大臣が弁護すること自体が私はおかしいと思う。反対じゃないですか。国会議員の意思に反しているじゃないですか。  もっと具体的な小さな問題でありますが、私は参考のために申し上げたいと思います。今名古屋—神戸間の工事をやっております。その事務所がございますが、この事務所は当然中央道という名称を掲げなくちゃいかぬわけです、政令できまっていますから。ところがこの事務所の名称は名神高速国道滋賀事務所、こういう看板を掲げておる。こんな事務所は日本にないはずです。こういう看板を掲げておりながら、建設省はこれを黙認しておる。こういう能急度はどうか。  それからいま一つは、大体名古屋—神戸間は昭和三十六年に完成をして、三十七年から使用をする、こういう命令があなたの方から行っておるはずです。ところが、中央道につながる一宮—小牧間はやろうとしないのです。これだけをほうっておいて、ほかの方をやっておる。という意図は、やがてこいつをひん曲げて、東海道の方にくっつけよう、こういう意図が明らかなんです。いわゆる建設省の命令を道路公団は守っておらない、それを知りながら黙認をしておるという、以上二つの能急度は建設大臣として何と思うか。
  75. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 正式の名前としては中央道の建設事務所というようにつけるのがほんとうだと思いますが、俗に名神国道、名神国道と言っておりますものですから、俗に言う方がわかりやすいので、おそらくそうしたのじゃないかと思うのであります。別にこれは私は他意はないと思うのであります。  なお、名古屋から東京に至る中央道の問題については、近いうちに閣議決定をいたしまして、広く中外に政府の態度を明らかにいたします。そういたしますれば、いろいろな区々たる議論は消えてしまうのじゃないかと思いますので、一つ御了承いただきたいと思います。
  76. 楯兼次郎

    楯委員 どうも建設大臣がばかに弁護ばかりしておりますと、あなたもそのようなふうに私には見えてくるのですよ。  次にお聞きしたいと思いますが、本年度東海道路線の調査費として三千二百万円、予算書には計上してあると思います。ところが東海道はすでに昭和二十六年から一億数千万円を投じて、東海道の弾丸道路計画というものがもう調査済みなんです。また先般はワトキンスの調査団が来て数千万円使っておるのです。にもかかわらず、なお三千二百万円も計上して、一体何を調査されようとするのか、お伺いしたいと思います。
  77. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 私どもの方の調査によりますと、東海道はだんだん交通が輻湊して参りまして、大体昭和四十年になりますと飽和状態になってしまう、身動きできないような状態になることが予想されるのであります。従ってその場合に、その交通の輻湊を緩和するためにどういう手を打つべきか、それをほったらかしにしておきますと、これは政治にならないのであります。でありますから、その輻湊を緩和するためにどういう手を打つべきか、あるいはただいま国道一号線の改良舗装をやっておりますが、これをもう少し拡充するとか、あるいはその他にまた一つの線を考えるとか、そういう問題を十分調査をしておかなければ、昭和四十年になってその事態に対応することができない。こういう意味で全く東海道の交通輻湊の緩和の策はどうすべきかという点についての調査をやっておるのでございます。
  78. 楯兼次郎

    楯委員 そうするとこの調査費は、東海道の従来から調査をしておったいわゆる高速自動東道に対する調査費ではない、こういうことですか。
  79. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 それは一つの目的に限定しないで、東海道の輻湊を緩和するための方策についての調査をする、こういう考え方でございます。
  80. 楯兼次郎

    楯委員 私はここで、釈迦に説法でありますので、こんなことは言いたくないのですが、大体この中央道というのは、東海道に対して中仙道を通るから中央道じゃないのですよ。これは将来は東北道、九州、あるいは中国、あるいは北海道、ここの背骨となるから中央道なんです。これが東海道の海岸地帯に建設されたら、将来裏日本からこの道路に、北海道なり九州なり、遠方に行く自車が入れないじゃないですか。これはどうしても、少しの困難はあっても、日本のどまん中に建設をして、表日本からも裏日本からも入れて、北海道なり九州なりに行ける、こういうことを考えて中央道という名称をわれわれ提案したときにつけたわけです。東海道にこんなものを建設しても、これはあなた方の考えておるように大してよくならないと思います。といいますのは、インターチェンジが数十キロの区間にあって、料金を出して、どうしてそんな近距離の自動車が利用しますか。だから東海道交通緩和という面からいけば、都市の隣接しておるところはどうしても今の一級国道を拡張する、もしこれが拡張できなければ、さらに一級国道を一線なり二線作る、こういう考えでいかなくちゃならぬと思うのです。あくまでもこの中央道、高速自動東道というものは、長距離輸送をするものである。東京—名古屋—大阪を最短距離で結ぶというところに、初めて自動車道としての生命があるわけです。それを荷馬車を引いたり、うば車を押した道路しか頭にないので、どうせ作るなら何でも自分のところへ持っていこう、こんなものは持ってこられちゃ困るんですよ。迂回をしてインターチェンジから入って料金を払って、またインターチェンジから出て迂回してくるなんということは、これは近距離輸送の自動車は使わないですよ。どうもそういう自動車道に対する認識というものが足らぬと思うのです。だからそういう東海道だ、中火道だ——これは中仙道を通るから中央道じゃないのです。日本のどまん中、背骨に当るところにこれを建設しておかなければ、将来鉄道広軌複線をさらに建設をしなければならないという事態になってくるからわれわれは強調をしておる。私が委員会でこういうことを言いますと、お前は岐阜県たから、自分のところを通るのだからという議論もあるが、そうじゃない。私は社会党の交通政策委員長をしておった関係で三回にわたってこの委員会で主張するわけです。だからそういう点を十分一つ考えていただきたいと思います。国会は全会一致でこの法案が通った。それを執拗に反対を——二、三具体的な例をあげましたが、事務当局が反対をするということは、われわれはどうしても理解に苦しむわけです。だから世間では何と言っておるかといいますと、これだけ執拗に反対をするということは、いわゆる外資導入にからむ何か利権の黙契なり契約なりが裏にあるのじゃないか、こういうことを今これに注目をしておる人たちはうわさしておるわけです。そういうことのないように、建設大臣はただ聞き流し、言いっぱなしでは困ると思うのです。法律に反するような行動をとる公務員は断固処分をして、そうして法律通りに行われるような態度をとってもらわなくちゃ困ると思います。  それから次にお聞きしたいのは、政府が発表いたしました一兆円の道路整備五カ年計画についてであります。これを見ましても、冒頭に私が各大臣に御質問を申し上げましたように、国土開発縦貫自動車道の意義がわかっておられないのか、あるいは事務当局が反対をされるのか知りませんけれども、この予算配分から見ましても尊重されておりませんし、正確に評価をされておらない。これは何ですか。一体有料道路二千億円のうち、東京—小牧間はわずかに百二億円じゃないですか。百二億円の予算で、あなた方はどうしてただいま答弁されましたようにこの法律を尊重し、高速自動車道の必要なるゆえんを強調した裏づけとしてとれますかどうですか。
  81. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 先ほどのお尋ねの前段の方の問題について一言申し上げておきたいのでありますが、建設省の事務当局は決してこれに反対しているわけでも何でもございません。道路局の職員などはもう道路を作ることが一番の趣味といいますか、商売であって、いい道路を作りたいということで一生懸命やっておるわけであります。ことさらこれを妨げるようなことは絶対にございませんから、一つそれは御了解いただきたいと思います。  なお外資に関連して何か裏の話があるだろうとかなんとかいうようなデマがあるらしいですけれども、それはとんでもないことであります。それはもうとんでもないことですから、どうかそういうデマなどに踊らされないようにお願いしたい。そういうことが流布されますと、せっかくやろうと思っている道路計画というものが、支障を来たすような結果になるおそれがある。それを非常におそれるわけであります。外資と裏の話があるなどということはとんでもないことであるということを、ここではっきり申し上げておきたいと思います。  なお五カ年計画におきましてわずか百億程度の予定しかないじゃないかというお話、これは金額の上におきましては一兆円の中の百億でありますから、大きな金額ではございません。しかし先ほども申し上げましたように、三十二年、三十三年、三十四年と調査をいたしまして、この調査については、日本の今までの建設事業全体について言えることでありますけれども、今までは調査がきわめてずさんであります。慎重に調査しておって、間違いのない結果を出して、一挙に工事をやるという建前をとらなくちゃならぬ。私はドイツや何かのやり方と非常に違っておることを非常に慨嘆しておった一人であります。もっとがっちりしたり調査をしまして、その調査の結果に基いて事業を始めたときには、一気呵成にやるというような建前をぜひ日本でもとっていきたい、こういうことであります。従って非常に調査に長くかかるようでありますが、三十四年度予算で調査が大体完了する見込みであります。慎重に調査しまして、そうして間違いのない計画を作って実行に移っていきたい、こういう考えであります。
  82. 楯兼次郎

    楯委員 それはあまりにもここ数年にわたって反対が強過ぎるので執拗にやられるので、ほかのことは考えられないわけであります。だからそういう話が出てくると思うのでありますが、今百二億円の建設省が考えておられます使用区分といいますか、建設予定地、これは東京—富士古田間の自動東道建設のために百二億円を使う。これは公表はされておりませんけれども、新聞あたりは報じております。東京—富士古田間に百億円かけてどんな道路ができるか、おそらく二車線の人道に毛のはえたものくらいしか私はできぬと思うのです。そうしてこれは——私が言うのじゃないですよ、新聞等もどんどん書いておりますが、中央道を少し色をつけておかないと、自民党の一部並びに社会党の議員がうるさいから、一つ東京—富士吉田まで建設をするということではこ先を避けようじゃないか。富士古田まで建設をされれば山梨県等の議員はそれで納得をする、あとは長野、岐阜あたりは大したことはないからそれで引き延ばしてつぶしてしまおう。——これは私が言うのじゃないのです。新聞がどんどん書いておるのです。十六日に国土開発縦貫自動車道建設審議会が開かれました。われわれも出席をして論議をしたのでありますが、翌日の新聞には——私が申し上げる必要はないと思う。どういうことが書いてあったか。百億円くらいつけておかなければうるさくてかなわぬ。だからこれをつけたのだけれども、中央道を積極的にやる意思はないということを書いておる。これは大臣や局長が、おれはそんなことを新聞記者に言った覚えはないと、ここで答弁を求めればおっしゃると思います。おっしゃると思いますが、いわゆる火のないとにろに煙は立たない、それらしいことをあなた方が言っておられるということは、この予算委員会の席上ではしごくもっともなようなことを言われておるのでありますが、裏へ入ればこのきのうの新聞のような腹を持っておるのではないか、こういうようにわれわれは疑わざるを得ない、どうですか。
  83. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 新聞にそういうことを書いてあったのを私も見ましたが、これは絶対に私どもの真意ではないのであります。山梨までやれば山梨の部分だけはやかましくなくなるだろうなんて、そういうおかしな手を使うことは私は大きらいであります。絶対にそういう手を使ったりしません。すんなりどこからどこまでというようなことをきめないで、大多数の方々の意見を聞いてどこから着手していくことがいいかということを民主的にきめていく。しかも正確な調査の結果に基づいてそれを材料にしてきめていこうという考えでありますから、そういう手を使うことなんかは絶対にないということを御了承願いたいと思います。
  84. 楯兼次郎

    楯委員 では時間をとりますのでこの問題の結論を申し上げたいと思います。政府は国土開発縦貫自動車道建設法第三条において、すみやかに中央自動車道、東京—小牧間の予定路線を定める法律案を国会に提出する義務を負っておるわけでありますが、これをいつ出されるのですか。
  85. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 法律第三条に基く法律については、この次の通常国会に、できる限り提案をするという考えでございます。
  86. 楯兼次郎

    楯委員 できるだけ提出をするというような答弁では、これは納符できない。それでは一体出せない理由はどこにあるのですか。
  87. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 出せない理由と言いうものはありませんけれども、私としては私の全力を尽して提案をする考えであるということを申し上げます。
  88. 楯兼次郎

    楯委員 提案しますか。
  89. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 提案する考えでございます。
  90. 楢橋渡

    楢橋委員長 楯君、もう時間がきておりますから……。
  91. 楯兼次郎

    楯委員 それでは青木長官に十分ばかり質問をして終りたいと思います。  青木さんに簡単に御質問を申し上げたいと思いますが、町村合併の問題であります。この合併の問題で、第一に自治庁としてお考えになっておるのは——すでに私は長官とだいぶ議論をしてきたのでありますが、住民の志向する意思を尊重して決定するという点については変りございませんか。
  92. 青木正

    ○青木国務大臣 町村合併の考え方は、住民の意思を尊重することは言うまでもないことであります。また同時にもう一つのねらいとしてできました、町村の将来の発展ということも当然考えなければならぬ、かように考えております。
  93. 楯兼次郎

    楯委員 越県合併のことについてお伺いしたいと思いますが、元狭山あるいは神坂村でも同一だと思うのですが、あの合併の結論の出る前までは、あなた方とわれわれの一番議論の対象になっておったのは、いわゆる合併に賛成か反対かという数の把握ができない、これは実際問題としては、あなた方も賛成が多数か少数かということはわかっておられたでしょうけれども、県の顔、あるいは国会議員や県会議員等の顔を立てるというような面もあって、そういうことを言っておられたんだろうと思うのですが、いよいよ総理大臣の処分といいますか、裁定が出まして、今日措置をされておるわけです。ところが私の承知をいたしておるところでは、残りました合併をされない部落になおかつ——これは神坂村の例をとるとよくわかるのでありますが、残されました三部落の中で、合併の賛成者の方が数が多いという結論が出ておるわけです。従って過日来論議をした、賛成が多いか反対が多いかということは、一応今日では残された人たちでもなおかつ合併の意思ある者の方が多いということがはっきり現われてきたと思うのですが、この点について自治庁としてはどういう措置をされるか、この点を伺いたいと思います。
  94. 青木正

    ○青木国務大臣 越県合併の問題につきまして、一面におきまして新しい町村を作ろうという意欲、また一面におきましては現状といいますか、伝統をとうとぶという気持からの現状維持の議論、こういうことで住民間に非常に意見の対立があり、さらにまたこれが両町村ばかりでなく、県にも関係いたしますために、非常に混乱がありましたことを、私当時の責任者としてまことに恐縮に、申しわけなく存ずる次第であります。幸いにして各方面の御協力を願いまして、政府といたしまして総理の裁定を下したわけであります。その下しました裁定につきまして、その後御指摘のように埼玉と東京の場合、また長野と岐阜の場合、境界線の画定について、両当局間にまだ意見の一致を見ない点もありまして、なお調整の段階にあるということで、私ども一日もすみやかにこれが円満妥結を願っておる次第であります。  ただ私どもといたしましては、地元の住民の方々のお気持もよくわかるのであります。またその考え方も、納得すべき点は多々あるのでありますが、しかしわれわれといたしましては、各方面の事情を勘案いたしまして、そうして第三者の立場に立って、またその土地の将来の発展ということを考えまして、総理の最終的裁定を下したものでありますので、いろいろ従来のいきさつ、行きがかり等もあると思いますが、そういった行きがかりをこの際一擲していただきまして、総理の下しました裁定の線に沿って、ぜひとも一日も早く円満に境界線の決定を行なっていただきたい、かように考えておるのであります。お話のように、その後一部の部落はまだ多少の御意見もあるということを承わっておりますが、われわれといたしましては、政府として冷静に判断してあの線をきめたものでありますので、どうぞ一つ今後とも住民の方々も政府の意のあるところを御了解願いまして、従来の行きがかりを一擲して、あの線で一日も早く円満に御決定を願うように、ひたすらお願いするわけであります。
  95. 楯兼次郎

    楯委員 長官の趣旨はよくわかるのです。私どもも今日まではあなた方に協力をし、やってきたわけです。しかし総理の裁定が出た今日において、なおかつ残存されました部落で合併を希望する人たちの方が多いわけです。これは無視するわけにいかないと思います。なぜなれば、いわゆる少数のために多数が永久に合併できないということは、全く住民の意思を無視していると思うのです。残された神坂村の場合、三部落の消防団あるいは婦人会は全部岐阜県中津川市に——法約根拠があるかどうか知りませんけれども全部入っている。小学生は中津川市に委託授業ということで来ております。まあ絶対反対という方が八十名ばかり寺小屋式の授業をやっているわけです。そういう感情、立場はわかるのでありますが、なお合併をしたいという人の方が残りたいという人より多いのです。そういう結果がはっきりと出ているにもかかわらず、少数のために多数が、将来永久に犠牲になっていくというような政治は、私はないと思う。少数の社会党がずっと内閣をとって、あなた方自民党の方が黙って泣き寝入りをしていくということはないと思う。そういう結果がはっきりと出ているのです。この取扱い方については時間もないので議論は申し上げませんが、ではどうするのか、これをどう解決していくのか、この点をお伺いしているわけです。
  96. 青木正

    ○青木国務大臣 もちろん将来永久にという問題ではないと思うのであります。ただ今の段階におきまして、裁定を下したが、さらにまた町村合併促進法の改正の趣旨に基いて、もう一度あれを取り上げて考えないか、こういうふうなお話だと思うのであります。しかし私どもといたしましては、一たん裁定を下しましたものでありますから、決して政府はただ面子にとらわれるとかどうとかいう意味でなしに、いろいろ各方面の事情を勘案して、ああいう裁定を下しましたので、その裁定の線に沿って、いろいろ御議論もあろうと思うのでありますが、ぜひ円満に妥結していただきたい。この際重ねて改正案の趣旨にのっとって、もう一度取り上げて検討するということでなしに、あの線に沿って何とかお話の学校の問題、あるいは消防の問題、そういう問題も円満に解決するようにお願いいたしたい。また両県の当局も、そういう方向にいろいろ御尽力いたしておるようなことも承わっておりますので、なお県側の御努力等もお願いいたしまして、裁定の線で御決定をお願いいたしたい、かように考えている次第でございます。
  97. 楯兼次郎

    楯委員 われわれはあなたの立場、県の立場を考慮して今までは協力してきたのです。しかし協力をしてきたその結果が、なおかつ合併の賛成者が多いのです。少数の反対の人のために多数の人が半永久的に、永久とは言いませんが、半永久的に犠牲になるというような、そんな政治はありますか。われわれが協力をしてきたその結果が、なおかつ合併をしたいというのですから、多数の人が総理大臣の裁定によって、少数のための犠牲となって、今日半永久的にやっていかなければならぬというような政治がありますか。私は理屈じゃないと思うのです。小学生でもわかると思う。だから住民のためにつまらぬ面子を捨てなければならぬ。この段階になったら捨てて、多数の住民の志向する方向にやることが政治ですよ。それがわかっておりながら、今までは、裁定が出るまではお互いにその運動の勢力いかんによっては、おれの方が多いのだというので——なるほどほんとうはわかっておったでしょうけれども、表面上はあなた方の立場としてこっちの方が多いということは言えなかったでしょう。それはわれわれも了解をし、協力もしてきたのです。ところが裁定が出た結果として、合併をする人たちの方が現実多いのです。現地はあなたと私とがここで議論しておるようななまやさしい状態じゃないのです。学校を目の前に控えながらその学校へおいでなさいといっても反対派は行かない。そして寺子屋をやっておるのです。こんなばかなことを放置しておくということはもう政治の愚の愚ですよ。だから、これは長官の立場もあるでしょう、いろいろな立場もあるでしょうけれども、これは一歩踏み切って解決をしてやらなければ、もうあの地方の住民は中央の政治なんというものはほんとうに信用しません。これは何とか青木長官も今ここで即答はできないにしても、これは大きな問題ですから、一つ考えていただきたいと思うのです。  それから次にこの分割されました境界線がまだはっきりしておらないのです。従って財産処理ができない。それから、災害が今その境界線のはっきりしておらないところに起きておるのです。一体どっちの県、どっちの町村がこの災害を復旧したらいいかわからぬからほうってある。それからやがて選挙です。選挙も近づいて参りますし、すでに中津川市等では市長選挙が行われたのですが、一体どっちで投票していいかわからぬというのです。これはどうしますか。
  98. 青木正

    ○青木国務大臣 境界線の問題につきましては、御指摘のように、地名としては一応はっきりしておるわけでありますが、しかし現実にどこの線ということになりますと、いろいろ両当局間に意見の相違等もありまして、くい打ちまでに至っていないわけであります。しかし埼玉と東京の場合は大体の線も出ておりますので、やがて決定すると思いますが、長野と岐阜の場合につきましては、両県当局の方におきましても、一日も早く決定するように、いろいろ尽力いたしておるようでありますし、また自治庁といたしましても、あくまでもこれがきまらぬということになりますと、お話のようないろいろな問題が起って参りますので、必要によりましては、自治庁もその間に御協力申し上げまして、一日も早く解決するようにいたしたい。また学校の問題につきましては、長野県当局もいろいろ配慮いたしておるやに承わっておりますので、こういう問題も一日も早く解決するように、自治庁としてもできるだけの御協力を申し上げたいと考えておるわけであります。
  99. 楢橋渡

    楢橋委員長 井手以誠君より関連質疑の申し出がありますから、この際これを許します。井手以誠者。
  100. 井手以誠

    ○井手委員 ちょっと関連して運輸大臣にお尋ねいたしますが、あなたが非常に熱意を示されております三国間輸送助成費、あれは本年度限りのつもりですか、末年度もおやりになるつもりですか
  101. 永野護

    永野国務大臣 運輸当局といたしましては、三国間の輸送というのは、海運基本国策に触れておる問題でありますから、一年限りとは考えておりません。これは大いに推進していきたいと考えております。
  102. 井手以誠

    ○井手委員 運輸大臣、あなたは造船利子補給法のことは御記憶だと思います。後年度に義務を課するようなことは行政措置ではできないと私は思っておりますが、あなたはどういうふうにお考えですか。
  103. 永野護

    永野国務大臣 財政法上の問題は大蔵当局からの意見に従わなければならないと思っております。
  104. 井手以誠

    ○井手委員 大蔵大臣にお伺いをいたしますが、先刻三国間輸送の助成については行政措置でできるという答弁がありました。公共同体に対する奨励的な助成はもちろん行政措置でもできましょう。しかし自由競争を原則とするものに対する助成は、これは法律に基くことが原則であると私は信じておるのであります。今運輸大臣の言葉によりますと、来年度もやりたい、これは国策だとおっしゃる。そうであるならば、第一に問題になりますのは、後年度にも義務を課するようなこの助成、第二には営業の自由、自由競争を原則とするものに対しては、法律に基かなくては助成はできないというのが従来の建前であった。そういうように二つの点から考えますと、当然この五億円に上る三国間の輸送助成費は、法律に規定しなくては私はできないと思いますが、いかがですか。
  105. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 子算を御審議願いますと、この種の補助といいますか、助成を行政措置でやっておる例は幾つもあるようであります。問題は毎年というか、長期にわたってやるもの、これが適当かどうかという議論はあるだろうと思います。ただいま運輸大臣は来牛もやるというお話でございますが、来年の子算は子算編成の際にまた十分審議いたしたいと思います。たとえば通産省関係の例で申しますと、国際見本市参加等事典費というのがございます。これは行政措置でやっております。さらにまた重機械類輸出振興事業費あるいは巡航見本船補助金、あるいは農林省では生糸需要増進費、こういうものが幾つもございます。従いましてただいま言われております三国間のものにいたしましても、運輸省自身でどういう措置をとられるかというこにとだと思いますが、国会で議決を行ますればそれはやり得ること、かように私考えております。
  106. 井手以誠

    ○井手委員 財政法の建前から参りますならば、予算で議決をさればいいということではなくして、やはり法律に基うことが私は本則であると思うのであります。  そこで私は結論的に申し上げますが、ここにあります本は、あなたの方では一番権威のあると思われる法制局長官の林さんが書いたものです。こういうことが書いてある。「補助金のうち、特定の地域又は特定の団体等に限り交付するもの及び自由競争を原則とする事業に関して交付するものについては、さっきでいった営業自由の原則等との関係で、法律又は条例によって根拠規定を設け」ねばならないと書いてある。これはあなた方が一番信用のおける林さんの言葉です。禁止規定ではありません、慈善事業の団体などのように禁止規定ではありませんけれども財政法の根本精神からいけば、やはり法律に基くことが大切であります。特にこういう営業に関するもの、個人に関するものに引き続き助成金をやろうとする場合には、当然私は法律に基かねばならぬと考えるのであります。どうでございますか。私は続いて申し上げますが、当局はこだわる必要はないと思う。必要であるならば法律を出しなさい。
  107. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今、井出さんの言われる通り、これはいろいろ議論のあるところでございます。そのお話しになりますうちにもありますように、禁止規定ではないということは、はっきり申しておられるし、その望ましいとか、その方がいいとかというような議論はもちろんあるだろうと思います。今回の措置にいたしましても、予算組成上に幾つも先例のあることでもございますし、そういう意味で扱ったという程度でございまして、これを非常に長則にわたるものだとか、制度化するというようなものでございますれば、いろいろその点は工夫していかなければならぬこともあるかとも思います。思いますが、今回予算に三国間の航路補助を出しましたのは、先ほど来たびたび御説明いたしておりますように、先例等も勘案して行政措置で処置するということで、本年はさような処置がとられておる、この点を御了承いただきたいと思います。
  108. 井手以誠

    ○井手委員 では先例を教えて下さい。あなたも関係ないとは言えませんが、造船利手補給法、あれは造船疑獄の発端になったものでありますけれども、あれは法律によりました。一般の補助規定はそれは行政措置でできましょう。できましょうけれども、自由営業の原則に立っておるものに交付する場合は、これは林法制局長官も言っておるように、法律に基かなければならぬですよ。そんな勝手に行政措置でやるべきものではありません。
  109. 石原周夫

    ○石原政府委員 今、井手委員からお話のございました造船の利子補給につきましては、これは後年度にわたりますものでございますので、あらゆる例におきまして利子補給の場合には国車債務負担行為ないしは法律によるわけでありますが、最近におきましては法律による例が多いわけでございまして、これは後年度にわたります性質上当然でございます。今回の三国間の輸送の補助の関係は、後年度にわたるというものではございませんので、そのものといたしまして来年度また引き続きやるかやらないかということにつきましては、また来年度予算の審議の問題でございます。従いまして今日後年度以降を義務づけるものではございません。従いまして造船利子補給の場合におきまして法律を要しましたと同様の意味におきましては法律を要するものではございません。先ほど申し上げましたように、従来補助あるいは負担の関係におきまして、法律を出すか出さないかという境目は、私ども承知いたしておりますところでは、たとえば生活保護費であるとかあるいは児童保護費であるとかいうような義務的な負担に属しますものにつきましては、これは疑いもなく法律によったわけでございます。それに対しまして、奨励的な補助につきましては、先ほど申し上げましたように何らかのそれ以外の立法事もございまして、一緒に法律として一体の助成規定をうたい込むという例はこれもございます。しかしながら先ほど農林省ということで申し上げたのでございますが、たとえば農村振興費であるとかあるいは水産振興費であるとか、すなわち農協に対します検査指導費の補助あるいは事業活動の促進補助というような性質のものは、すべて法律なしにやってきておるのが従来の例でございまして、ただいまお話の自由企業であるかないかということにつきましては、これは私どもが従来承知しておりますところでは、相手が自由企業であれば必ず法律を要するということには必ずしも考えません。これは奨励的な補助であるということに限界を置いておるのであります。ただ大体の方向といたしましては、何らかのほかの立法の事項がございますときに、助成の規定をうたい込むという例はだんだんふえてきておるということは事実でございますが、従来の大体の境目は、私ども承知しますところでは、以上申し上げたようなことであります。
  110. 井手以誠

    ○井手委員 そんな解釈は私は認めませんよ。運輸大臣は後年度もやりたい、これは重要国策だとおっしゃっておる。あなたは国務大臣だ、国務大臣がそんなことをおっしゃっておる。主計局長は来年は来年だと、そんな話はどこにありますか。林法制局長官の書いた本にはっきり書いてあるじゃないですか。もう一ぺん読んでみましょう。「特定の地域又は特定の団体等に限り交付するもの及び自由競争を原則とする事業に関して交付するものについては、」法律または条例によらねばならぬと書いてあるじゃないですか。一番権威のある内閣の法制局長官の言明ですよ。はっきりするじゃありませんか。法律を出しなさい。自分の解釈じゃだめだ。一番権威のあるのは内閣の法制局長官じゃないですか。主計局の局長じゃだめだ。
  111. 石原周夫

    ○石原政府委員 前段の来年度の審議の問題だということを申し上げましたのは、法律上今後おきましてこれを義務づけるという趣旨で今回御審議を願っておるわけじゃないということを申し上げたわけであります。  後段の問題でございますが、これは実は林法制局長官とお打ち合せをしてからお答えいたすべきだと思うのでありますが、今、井手委員のお読み上げになりましたところで、ちょっと私の推測のようなことを申し上げますと、一視同仁をもって見るベき対象のうち、特定の対象を拾い上げて補助をいたすということには、何らかの法律のような措置がいるのじゃないかという趣旨かと思うのであります。しかしながらただいま申し上げております三国間輸送ということにつきましては、三国間の輸送をいたしますものの中で、一定の基準にはまりますものにつきましては、何らの差別を設けることなく助成をいたすということでございますれば、今お読み上げの法制局長管の文書の趣旨とはあるいは合致するのじゃないかという感じを持ちますものでありますから、あるいはお打ち合せをいたした上でお答えを申し上げるのが適当と思いますが、とりあえずの感じを申し上げます。
  112. 井手以誠

    ○井手委員 時間がありませんので、私ただいまの主計局長答弁には承服いたしません。私はあくまでもこれは法律に基かなければならぬという確信を持っておりますから、一つ内閣においても見解を統一して研究を願いたい。統一した見解をもう一ぺんここで述べてもらいたい。
  113. 楢橋渡

    楢橋委員長 午後一時三十分より再開することにいたしまして、暫時休憩いたします。     午後零時四十八分休憩      ————◇—————     午後一時五十八分開議
  114. 楢橋渡

    楢橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中島巖君。
  115. 中島巖

    中島(巖)委員 非常に時間が制約されて一時間半の打ち時間だそうでありますので、最初全艇にわたりまして私の質問の要旨がどこにあるかということをあらかじめ各閣僚に申し上げておきたいと思いま。私建設委員でありますので、こまかい建設関係の問題につきましては設委員会に譲りまして、ごく大ざっぱなことについてお尋ねいたしたいと思います。  本年度建設関係事業費といたしましては、河川局関係におきまして八百四十八億、道路局関係におきまして一千五百五十四億、住宅関係におきまして九百三十三億、都市計画関係において五十一億、なお官庁営繕関係、こういうものを合算いたしますと、建設関係の総事業費の概算が三千四百五十五億七千三百万円というような非常な膨大の数字になりまして、国の予算に占める比率も非常に多いのです。その中で特に大きな問題といたしましては、これは通常国会当初におきまして、総理大臣の施政方針演説の中に、また大蔵大臣財政演説の中におきましても、道路整備五カ年計画の一兆予算、これが大きな比率を占めておるのであります。そこでで問題を、主といたしまして道路整備計画の子算に置きたいと思うのであります。この一兆予算については、われわれといたしましても、現在の道路の状況から考えまして賛成でありますけれども、さてその内容に立ち至りますと、大きな予算を計上いたしましても、何ら道路政策の片りんさえ見えないのでありまして、これは道路政策というよりは、むしろ道路工事工程表といった方が適当ではないかと思うのです。さらにその財源措置を見ますと、非常にむちゃというより——何と申しますか、ガソリン税に全部ぶっかけておる。そして現作までの道路整備関係の、いろいろ建設省が企画いたしまして、国会の協質を経てきた幾多の問題があるわけであります。たとえば道路公団の設立、さらに本年度はば、首都高速道路公団法を提出いたしまして、これに対して、あと四カ年間で五百九十余億の予算を計上しておる。しかもわれわれが期待いたしておりました道路公団の現在の事業はどうかと申しますと、これらはあとで一々私の方から質問して内容を明らかにいたしますけれども、結局内閣の内政面の十大施策であるところの道路を整備五カ年計画の一兆予算というものは、この道路整備の緊急性に名をかりて、そしてその財源はガソリン税の過重によって補って、その内容はばらばらの政策であって、役人が職を離れたときに就職すると申しますか、そういうような全く内容がでたらめな政策になっておるわけです。従いましてこれらに対しまして、これから各閣僚に対して質問いたし、お考えをただしたい、こういうように考えるわけであります。  まず最初の問題といたしまして、道路整備五カ年計画基本構想、いわゆる道路政策はいかなるところにあるのか、この点につきまして私は総理にお伺いしたいのでありますが、お見えになりませんので、建設大臣にお尋ねいたします。
  116. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 お尋ねの道路政策の基本的な考え方の問題でございますが、御指摘のように、従来の日本の道路政策というものは、旧来の道路、すなわち都市から都市へ心ができておったのを、だんだん交通量も増加し、自動車も輻湊してきたというので、その幅を広めあるいは改良していくというような道路政策を進めてきておったのでありますが、今回の道路五カ年計画は、私どもは、全く面目を一新して、耕しい意味の道路政策をやっていこうという考え方を持っておるのでございます。そうして最も重点を置いておりますのは、まず第一に国道の整備をやる、国道の整備をやりまして、五カ年間に重要な国道については大体改良舗装をしてしまう、さらにまた重要な地方道等につきましても、相当の改良舗装をやっていくという構想でやっておるのでありまして、一挙に今までの道路政策から全然離れた新しい道路を作ってしまうというようなことにも飛躍はできませんので、多少従来の道路政策の延長的なものもございますけれども、大きなねらいとしましては、新しい道路を建設していくのだ、こういうねらいでやっておることを御了承いただきたいと存じます。
  117. 中島巖

    中島(巖)委員 今建設大臣答弁でもわかるように、道路政策に対する基本的のある一つの政策というものがなければならぬはずなんだ。ところが今回の一兆予算のその基礎をなすものは、建設省が各地方からいろいろな要望をされておる、従って要望された個所を集計して、それに持っていって一兆の金を振り分けただけで、基本的の道路政策というものはないのです。これは幾たびか私は建設委員会で質問応答を繰り返しておりますけれども、そういうものを集計してそれに一兆予算を振り分けたというにとどまっている。ある雑誌を見ますと、イギリスの道路は九五%舖装ができておる。ところが現在自動車工業が発達してきまして、高速自動車道路が必要となって、この政策を根本からくつがえさねばならぬ立場になって非常にろうばいしている、こういうことが出ておりましたけれども日本もすでにその状態がここにきつつある。従いましてこの現在行き詰まった道路を改良すると同時に、将来の国の道路政策はかくあらねばならめという一つの目標を持っておらねばならぬわけだが、その目標がないわけだ。従いまして徳川時代からありきたりの道路を、自動車がたくさんになって動けぬようになったからこれを直すというだけで、いわゆる岸内閣の道路政策というものは道路工事工程表であって、膨大な予算を組んだにもかかわらず、何らここに道路政策がない、この点を私は指摘しておるわけであります。従いましてもう少し具体的に、どういう構想でやるのだという道路の政策が政府にあってもいいはずだと思うので、くどいようでありますがもう一度御答弁を願います。
  118. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 道路政策がないではないかというお尋ねでありますけれども、おっしゃることもよくわかります。しかし私どもといたしましては画期的な道路政策を持ったつもりであります。そして新しい近路構造令によって新しい道路の建設をしていくのだ。従来の道路の非常に曲りくねっているところはまっすぐにし、幅の狭いところは幅を広くし、そして相当の高速度でもって自動車の交通ができるような、新しい意味の道路を作ろう。あなたから言われるとあまり満足できないかもしれませんが、私どもは大いに自慢をするに足るというふうな気持ちで一牛懸命やっております。どうぞ一つ御了承願いたいと思います。
  119. 中島巖

    中島(巖)委員 それだからいけないと言うのです。道路の幅を広げたり、あるいは道路構造令を出したりというようなことは枝葉末節の問題でありまして、ここに新しい一つの政策がなければいかぬ、こういうように与えるわけでありまして、そういう政策がないから道路公団に莫大な金を与えても——これはあと指摘いたしますが、ろくな仕事をしておらない。今度また首都高速道路公団が今国会で成立して、あと四カ年に五百九十余億という金を与えても、これは役人が退職したあとの口をこしらえることと、汚職の温床にしかならぬような結果になるのではないか、こういうことを私は考えるわけであります。そこで道路政策におきましては、ただいま建設大臣が言われたように現在の道路を拡幅したり、道路構造令を直したりする必要もありましょうけれども、しかしそれと同時に一つの大きな政改の目標というものを持たなければいかぬ、こういうように私は考えるわけであります。  そこで、これ以上押し問答いたしておっても仕方ありませんけれども日本産業構成というような立場から見まして、東京に約九百万、その周辺に千二、三百万の人口がある。そして京阪地区であるとか、あるいは名古屋で、あるとか、福岡であるとか、こういう一つの地点にまとまって、この大人口、大産業構成、こういうことは非常に国全体の上から見て不健全な、ちんばの産業構成だと、こういうように考えるのですが、これに対して経済企画庁長官、それから大蔵大臣考えを承りたいと思う。
  120. 世耕弘一

    世耕国務大臣 ちょっと聞き漏らしたのですが、もう一度御質問願いたいと思います。
  121. 中島巖

    中島(巖)委員 現在の日本産業構成から見まして、また人口の分布から見まし、京浜地区とかあるいは阪神地区というところだけがべらばうに大きくふくらんでしまって、年々そこへは工場、人口が集まってくる。こういうこと国全体から見てちんばの産業構成じゃないか、不健全な産業構成じゃないか、こういうように考えるのだが、企画庁長官のお考えはどうか。
  122. 世耕弘一

    世耕国務大臣 お答えいたします。お説の過りであります。それにつきましては、新しい産業都市の計画というものは将来考えなくちゃならぬのではないか。言葉をかえて申しますれば、隣接に分布した都市ができて、そうして惑星都心と申しますか、惑星都市と大都市とがつながって、お互いが総合的な経済発展を遂げるということが一番必要ではないかということは、世界各国でも同様にその議論があるようであります。日本の都市計画を今後どういうふうに持っていくかということは、お説のような点をどう処理するかということが問題だろうと思います。なおこの機会に申し上げたいのは、最近におけるところの失業状況は都市集中なんです。都市に失業者が非常にふえたという現象は、決して喜ばしい現象ではない。これを打開するにしても、やはり惑星都市の完全なる発達と産業の分布状態が総合的に組織させられなければ、りっぱな産業立国は望まれぬじゃないかという感じを持っておるということをお答えいたします。
  123. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 お答えいたします。近代国家におきまして、都心集中、こういう形が各国とも出て参っております。産業構造あるいは経済活動から、また立地条件その他の面から見まして、かような現象を生ずる、これは各国とも同じような状態になっておると思います。そこで問題は、こううように部市に人口が集中するという場合に、いろいろわれわれが考えなければならないことは、都心に対する施設が特に過重になって、地方に対しての施策がおくれる、言いかえますならば、都市生活は非常に便益を受けるが、地方は近代文明から取り残される、あるいはまた生活の実態自身も、都市といなかとの間に非常な差を生ずる、あるいはまた失業問題等から見ましても、都会に失業問題は集中される、こういうようないろいろ起るであろうところの諸弊害というか、あるいは摩擦というか、そういうものに対して十分の考慮が払われて、いわゆる近代産業構造としての活動に、その居住の地域いかんによって非常な迷惑をこうむらないようにすることが、私どもの政治目標ではないかと思うのであります。これはひとり資本主義国家だけの問題じゃない、おそらく共産主義国家であるソ連におきましても、中共においても、都市集中の形は必ず出てきておると思います。問題は、この都市集中の結果が、自然の経済の発展の過程において生ずる現象である限り、そう心配することはない、こういうように私ども考えております。
  124. 中島巖

    中島(巖)委員 都市に産業構成が集中し、人口が集まる、これは好ましくない状況だということは、両大臣も同じ意見なのです。そこで問題は、道路政策の上においても、あるいは鉄道なんかの交通政策においても、そういうことを基本的に考慮を払って道路政策を立案せねばならぬ、こういうように思うのです。あまり詳しく質問する時間もありませんが、きょうは総理が見えぬので、総理に関係のあるような質問を大蔵大臣にちょいちょいするかもしらぬけれども、それは御了承願いたいと思うのです。  そこで、そういうような立場で道路整備五カ年計画ができておればいいのでありますけれども、そうではない。かっての各所の要望を積み上げたと、ろへ一兆予算をかけて、そうして道路整備五カ年計画を樹立いたしたわけであります。  次に建設大臣に、今度の予算において東海道の調査費を千八百万計上いたして請求してあります。これは先ほど楯君が質問いたしまして、重複する点があると思いますので、重複する点は避けまして、私の方から具体的な問題について質問いたしたいと思うのです。これはあなたの方から出した資料で、東海道の現在の一号国道は、四十年になれば自動車が輻湊して、機能が麻痺する、こういう資料が出ております。これは確かにその通りであります。しかし、この東海道の現在の一号線を十四メートルに拡幅いたしまして、そうして最も交通のひんぱんな清水、静岡であるとか磐田郡であるとかいうところにバイパスを通せば、十分に収容できる。現在六千台、七千台というのを分析しますと、そのうちの三千台、三千五百台というものがほとんどわずかな五十キロ以内の近距離輸送だ。それで飛躍して高速自動車道というようなことを考えずに、一号線の第二次改良をお考えになったことがあるかどうか、研究したことがあるかどうか、この点をお伺いしたいと思う。
  125. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 東海道の自動車交通が、昭和四十年ごろになりますと、輻湊して麻痺状態になる、このことはきわめて重大な問題であります。そのときになってあわてても、これは及ばないのでありますから、あらかじめどうしてこの問題を解決するかということを、政府としては慎重に検討しておかなければなりません。昭和三十四年度に約千八百万円の調査費をつけましたが、その調査費は、東海道の輻湊を緩和する方策いかんというような意味で、ただいま中島委員お話の一号線の拡幅ということも一つ考えでありましょう。さらにまた、どうしてもそれでさばき切れないということであれば、もう一本作るというにとも一つ考えであります。そういうふうにとらわれないで、どういうふうな方策を講ずることが最も合理的で、最も経済的であるかという点を考えて、十分にとらわれないで調査してみたい、こういう趣旨で千八百万円の子算を計上したような次第でございます。
  126. 中島巖

    中島(巖)委員 重ねて、くどいようですが建設大臣にお尋ねいたしますが、この東海道すなわち国道第一号の第二次計画というものと、それから現在予算がついて着工して進んでおるところの例の中央道ができた場合と、こういうものの交通量というようなものを比較研究して、第二次案で可能であるというような結論が出れば、そのように踏み切る御意思であるかどうか。それから第二次改良について御研究される考えであるかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  127. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 ただいまのお尋ねの点でありますが、あらかじめ結果を予想して、そこへ調査を特っていくというような態度を避けまして、きわめてフリーな態度でもって調査を進めていきたいということは、ただいま申し上げた通りであります。ただ中央道の問題につきましては、これはすでに法律も通っておりますし、政府としてもこれをやるという方針で、やる上において、いかなる注意をし、いかなる用意をしなくちゃならぬかという意味の調査を進めておるわけであります。
  128. 中島巖

    中島(巖)委員 次に道路公団のことについて若干お尋ねいたしたいと思います。この道路公団の設立の要旨は、限られたるところの道路整備費で、しかも日本は道路整備が非常に立ちおくれておる。民間の資本によって道路整備の拡充をはからねばならぬ、こういうようなことで道路公団が設立されたわけであります。従ってこれは政府の道路政策に対する、道路整備に対する補助機関である、こういうようにわれわれは解釈いたしておるわけであります。そこで、しからば道路公団が現在着手しているところの事業は、どんな内容のものであるかと申しますと、先ほどの楯君のときに問題になりました、例の縦貫道以外の個所といたしまして三十三カ所を現在着工いたしておるわけであります。この三十三カ所の内訳を見ますと、伊東道路であるとか、立由登山道路であるとか、雲仙道路であるとか、阿蘇登山道路であるとか、南霧島道路であるとか、北霧島道路であるとか、高野山道路であるとか、裏磐梯山道路であるとか、伊香保道路であるとか。こういうような観光道路ばかりやっておるのです。観光道路も必要ではあろうけれども、現在の緊迫したわが国の道路情勢下において、こういうものにばかり大きな資本をかけて、重点を置いておるということは、今、岸内閣が一兆子算、日本産業が萎靡しておるところの一つの隘路は道路が悪いためである。こういう大きな目標を掲げて、そうして相当な資本をつぎ込んで道路公団にやらせるのに、こういう観光道路ばかりやっておる。これでは大きな目標に向って進めない、こういうふうに考えるのですが、建設大臣はどういうふうにお考えですか。
  129. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 道路公団の設立の趣旨については、御指摘通りだと思います。ただ道路公団の有料道路として道路を設置する場合におきましては公共事業としてやるべきものを道路公団がやるというのではなくて、公共事業としてやるべきものは政府の負担に、おいて無料で通る道路を作る。道路公団の道路は、民間から借金をしてやって参りますから、その借金の償還ができるような、ペイする道路を作るという建前でおるわけでございます。そこでただいま御指摘のよな観光道路ばかり作っておるではないかということでありますが、これは単に観光だけの意味でなくて、その地方の交通の用に立つということはもちろんでありますが、同時に観光道路を整備することによって、日本の国際的な観光収入の増加をはかろうという大きな目標を一つ持っておるわけであります。御承知のように今日イタリアにおキましては、年々六億ドル以上の外貨収入を観光資源から上げておりますが、それに比べてはるかに景色のいい、世界じゅうの観光客を誘致する条件を備えながら、道路が悪いために日本の観光収入はわずか三千万ドルかそこらであります。これはどうしても重要な一つの外貨収得の方法としても、道路を整備するということは大きな意味を持つ、その一端を道路公団もになっておる、こういうふうに御理解いただきたいと思います。     〔委員長退席、小川(半)委員長代理着席〕
  130. 中島巖

    中島(巖)委員 建設大臣答弁はとんでもない答弁です。つまりそれは先ほどの話に戻りますけれども、せっかく一兆予算を組みましても、いわゆる国に基本的な道路政策がないから、そういうことになるのです。今、大臣答弁を聞いておりますと、あたかも観光道路株式会社を政府の金でこしらえてやって、それによって外貨をかせぐというような印象を受けたわけであります。けれども、道路整備はそれ以上に、日本の全産業の観点から考えて必要なものであって、そういうところへ投資をせずに、それよりは全日本の道路の骨幹となるような大幹線へこれらの資本から、あるいは労力から集中すべきものだ、こういうように考えるわけであります。これ以上質問いたしましても仕方ありませんから、私と政府との見解の相違を一言述べておくことにいたします。  それからさらに道路公団関係について尋ねいたしますが、かつて国会におきまして、たしか昨年の五月だと思いましたけれども、例の国土開発縦貫自動車道建設法が通りますと本年度三十七億かの予算があるのだから、どうしても小牧—神戸間は予定路線の法律を出してくれろということで、ぼくらは本年どうしてもその金を使わなければならぬから、予算がついているのだから、法律を改正してくれということで、この政府の求めに応じて法律を改正したわけなんです。そうしてその結果、名神高速道路に対して三十七億三千万の予算をつけた。それからさらに京都バイパスに対して二億九千九百万の予算がありまして、両方で四十億二千九百十六万の予算がついた。ところがそういう政府が無理をいって法律改正をしておきながら、三十二年度中に三億千六百五十七万円しか使わなくて、一割しか使わなくて三十七億幾らというものが繰り越しになっておる。さらに本年度におきましては、六十五億の金がついて、この三十七億の繰り越しと合計いたしまして、百二億の予算になっておるわけです。ところが最近私の方で政府から、この二月の四日でありますが、調書をとってみますと、この百二億でもってどれだけの金を使っておるかと申しますと、川地関係で五億七千八百万、工事関係で十六億七千万、事務費関係で一億五千五百万、合計で二十四億使っておる。さらにこの工事関係の一番大きな十六億七千万を見ますと、昨年度契約したのは四件しかなくて、本年度契約して、竣工期間昭和三十五年の竣工期間のものが大部分です。そういたしますと、この金も五億とは使えない。どんなに大ざっぱに見ましても二十億程度しか使えはしない。すると八十億近いところのまた予算の練り越しをする。これをお認めになりますか。建設大臣にお伺いしたいと思います。
  131. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 名神国道の工事が非常におくれておりますことは御指摘通りであります。はっきりそれは認めます。ただ、どうしてこれがおくれておったかといいますと、用地置収がなかなか進まなかったのであります。一方においては、これは道路だけでなくして、あるいは住宅問題その他公共事業全体にわたって、土地収用法のようなものをもう少し強化して、どんどん話が進むような方策を講じろという意見もありますけれども、私はそれを強権でもってやっていくような行き方は極力避けて、やはり話し合いでいくがよろしいということで、根気よく話し合いを進めておったのであります。三十三年度におきましては、川地買収の話し合いに一ぱいかかりました。工事を実際進めるために非常に督励をしておったのでありますけれども、なかなか用地買収が進まなかったのでありますが、ようやく用地買収も相当進んで参りまして、三十四年度には、工事は急速に進んでいく、こういう見通しを持っております。私ども計画としましては、大体三十六年の終りまでに名神国道は一応完成をする目途のもとに、三十七年度において供用を開始したい、これを必ずやろう、こういうことで今せっかく進めておりますから、一つ御了承いただきたいと思います。
  132. 中島巖

    中島(巖)委員 法制局長官おりますか、今おったようですが、留守ですか。——これはこういうようなでたらめな一割の予算も使えぬというような、こういう莫大な予算要求をして、これに対しまして財政法か何かで、何かの処罰をするとか、あるいは訓戒のような方法は法律的にないものですか。事務当局でよろしいです。
  133. 石原周夫

    ○石原政府委員 道路公団につきましては、公団法の規定がございまして、一定の場合に繰り越しをいたします規定がございます。それに基きまして繰り越しをいたしておるわけであります。ただいまのお話のように、その割合は相当大きいのでございますが、ただいま建設大臣からお話がございましたような事情がございますので、やむを得ないものだと考えております。
  134. 中島巖

    中島(巖)委員 重ねて建設大臣にお尋ねいたします。ちょっとくどいようになるかと思いますが、昭和三十二年度においては、要求と申しますか、工事予算の一割も使えなかった。三十三年度におきましては百億以上の予算を計上して二十億も使えぬ、こういうことに対しまして建設大臣は責任をお感じになりますか、当りまえだと思っておいでになるのですか。
  135. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 私としては、工事予定通りに進まなかったことにつきましては、はなはだ申しわけないと思っております。しかし、申しわけないでは済まないのでありますから、これはどうしても進めなければならぬ。三十四年度には、用地買収が非常に進んで参りましたから、相当今度は工事は急速に進んでいく、こういうことで取り返していきたい、こう思っておるわけであります。
  136. 中島巖

    中島(巖)委員 それから先ほど建設大臣は、この有料道路についての私の質問に対しまして、それは採算のとれる道路ばかりやるのだから、観光道路なんかばかりやることになってもこれはやむを得ぬ、こういうような答弁でありましたけれども、そういうことなら、本年度道路公団に対して四十五億の出資金を認めており、昨年度は相当額の政府資金を出しておる。さらに五カ年計画におきましては、数字ははっきりは忘れましたけれども、三百十二億だかの出資金予定しておる、これはどういう意味ですか、今のお話との関係は。……
  137. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 私の先ほどのお答えが、観光道路だけを作るというふうな趣旨に答えたといたしますと、それは語弊がございますので、修正しておきたいと思います。もちろん償還が必ずあるという、つまり起債でやって参りますから、返さなければならぬ金でありますので、償還は十分考えていかなければなりませんが、必ずしもきちきちそれを考えておるのではなくして、たとえば名神国道について見ましても、数年間はどうしてもこれは赤字が出るという計算であります。将来長きにわたってやって参りますと、これはぺイして参りますけれども、当分は赤字になって参ります。そういうことも道路交通の必要上やらなければならぬ、こういう建前をとっておりますから、必ずしも実際の交通の必要と道路公団の事業とが離れておるわけではないことを一つ御了承いただきたいと思います。
  138. 中島巖

    中島(巖)委員 次に、午前同僚の楯委員から質問がありましたので、その点を省いて質問いたしたいと思いますが、例の国土開発縦貫自動東道、これは私が申し上げるまでもありませんが、第一次鳩山内閣のときに提出されまして、四内閣、五国会にわたって相当もみ抜いてきまったのです。ところが、現在において東海道だとかあるいは海岸線だとかいろいろな議論があるのですが、それは法律決定以前のものであって、今日の段階におきましては、午前の大臣答弁でもわかる通り、中央道をやるんだ、こういうことをはっきり大臣も御答弁があったわけです。それから午前中の答弁におきまして、この法律は経過地は指定してあるけれども、この経過地を基準として、新しく法律で路線を決定せねばならぬ、こういうことになっておるわけです。その路線決定の法律は、本年十二月に始まる通常国会に提出する、先ほどこういうことの御答弁がありましたから、さように了解いたしておるわけであります。それで、この五カ年計画予算の中にどの程度の小牧—東京間に対する予算が計上されておるか、二十日に閣議決定をされるという話でありますから、正式のものはまだきまっておらないと思います。現在大臣の所管事項として要求しておる額はどれだけであるか、この点をお伺いしたいと思います。
  139. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 ただいま国土開発縦貫自動車道の調査をやっております。その調査の結果によりまして、この五カ年計画の中に、もしやるとすれば百億程度、こういう数字を掲げて五カ年計画を今策定中でございます。また閣議で決定いたしませんので、これは建設省の案でございますが、そういう考えで進めておることを一つ御了承いただきます。
  140. 中島巖

    中島(巖)委員 あなたは今もしやるとすれば、そういうお言葉を使いましたけれども、これはやることにきまっておるのじゃないですか。
  141. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 その通であります。
  142. 中島巖

    中島(巖)委員 そこで重ねてお尋ねいたしますが、新東海近線は、これはあと永野運輸大臣がお見えになりますとお伺いしたいと思いますが、昭和四十年に完成ということを目途にしてやっておる。ところが高速道路は、せっかく小牧まで百七十キロあけたって、二時間ばかり走るだけで、東京まであけなければ、これは効果はないのです。これはおわかりだと思う。それで、すでに三年も以前に法律で決定いたしておる。従って、東京と神戸間を何年までに完成するというような、大体の目標があってもいいはずだと思う。そういう目標はまだ立っておりませんか。
  143. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 東京と神戸間の縦貫道路については、ただいま着手しております名古屋—神戸問を急いでおりますので、これが大体三十六年の末に完成いたします。その完成を待った後に、かつ東京—名古屋間の実際の調査をやった結果によりまして、工費その他の積算等をはっきり出してみて、そして何年にやるかというような、実際の工事計画というものを立ててみたい。従って、ただいま何年にやるという計画は持っておりません。
  144. 中島巖

    中島(巖)委員 これは私が申し上げるまでもなく、いわゆる技術屋という立場でなくして、政治家の感覚において、四内閣にわたってもみ抜いた法律であって、これは私や楯君が言うから、社会党がいろいろ主張するのじゃないかというようにお思いになるかもしれないけれども、あなたの方ではこの法案の——私も当時建設委員をいたしておりましたが、この法案の説明には、牧野良三君であるとか、松浦周太郎君であるとか、宮澤胤勇君であるとか、こういう連中が再三来まして、そして説明席においてこの法案を何度も説明して、通せと言って、にれは全くあの当時は自民党の方が中心になってやったくらいな法律案であります。従いまして、こういうようなものを基本として、骨として、現在の道路網を立つことによって初めて恒久的な道路政策が立たる、こういうように私は考えるわけです。従って、この五カ年計画に、先ほど大臣が御答弁になりました観光道路みたいなものに対する予算が四百数十億あるわけでございますが、今申された百億のほかにこういうようなものを全部投入して、東海道もあの通りになっておりますし、早急に全線について開始すべきである、こういうように私考えるわけです。それで大臣の御答弁にありましたように、十二月の通常国会においては予定路線の法案を出しまして、調査の結果によりますれば三十五年度にも一部、相当工事のかかる山岳地帯に対して着手されるような御意思があるかどうか、この点もお伺いしたいと思う。
  145. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 中央縦貫道路の建設をでき得る限り早くやりたいというのは、私どもの念願であります。ただ調査が大体三十四年度にほぼ終ると思います。おくれても三十五年の中ごろまでにははっきりした積算が出て参りますので、その結果を待って進めたい。五カ年計画は三十七年まででありますから、あと一年半ないし二年間ぐらい残るわけでありますが、その間には百億程度でちょうど一ぱいじゃないか、こんな気持で大体百億程度を予定し、さらにその次の五カ年計画で本格的な日程に上っていく、こんな見当でやっております。
  146. 中島巖

    中島(巖)委員 それから、道路公団の仕事その他に影響がありますので、運輸大臣にお伺いいたしますが、道路公団で下田方面に対して二カ所工事を進めているわけです。ところがこの間の新聞を見ると、一月二十二日の運審の答申案で、伊東—下田間の鉄道敷設を、伊東下田電気鉄道に免許するのが適当であるというような答申案が出たことを新聞で見ておりますが、これに対して運輸大臣は——もちろん免許せねばならぬと思いますが、免許する考えであるかどうかということが一点と、もう一つは、免許するについては、何年くらいで完成させるお考えであるか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  147. 永野護

    永野国務大臣 お答えいたします。伊東—下田の路線につきましては、お説の通り運審からその答申案が出ております。その免許の日付は、ちょっと調べておりますから、調べてすぐ御返事いたします。それから、これは今申しましたように早急に迫っている問題だと思いましたので、期間は、三カ年内に竣工さすという条件つきでこれを免許する、こういうことにしております。——二月九日に免許いたしております。
  148. 中島巖

    中島(巖)委員 これと関連して建設大臣にお尋ねいたしますが、道路公団でこの下田道路というものに三億五千何百万と、さらにもう一つ伊東—遠笠道路に対しても工事をやっておるわけでありますが、こういうように鉄道が敷けることがはっきりしますれば、こんなところを競合して工事をやるより、幹線道路の工事をやらせた方がいいと思うのですが、どういうお考えですか。
  149. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 鉄道と道路が競合するではないかというお尋ねでございますが、あの地帯は、御承知のように、富士箱根国立公園の地帯でありまして、自動車による旅客が非常に多うございまして、小田原から熱海へ道路ができましたならば、熱海から伊東——伊東の道路が合非常に悪いのですが、伊東から先に有料道路ができておりまして、その中間が少しあいているわけです。その中間を埋めていくということであって、さらに伊豆半島を一周する道路計画というものができているわけであります。そして東京に最も近くて、外客の最も来やすいあそこを整備するということが、外貨収入の上にも非常に大きな役に立つ、こういうことを考えてあの計画を進めているような次第でございます。
  150. 中島巖

    中島(巖)委員 建設大臣答弁は、私了承することができないのです。これは先ほども申し上げた通り、一兆予算を組んだけれども、岸内閣の道路政策というものがないから、そういうまちまちなことを御答弁されている。従いまして、もう一度この道路整備五カ年計画に対しては、大きな道路政策の骨をこしらえて、そしてそれに沿ってやっていくたまうに希望いたしておきます。これ以上問答を繰り返しておってもしようがないと思います。  そこで、運輸大臣がお見えでありますのでもう一言お尋ねいたしたいと思いますが、鉄道敷設法によって審議会を近く開くというようなことを、午前中の楯委員に対して答弁されたわけであります。そこで、鉄道建設線、つまり先ほどお話しの東海道線を除いた鉄道敷設法によるところの建設線が、たしか二十七、八本あったと思うのです。先ほど大臣の御答弁をお聞きしておりますと、本年度ほ九十五億の予算だ、こういうようなことを言われておったわけであります。そういたしますと、二十数線の建設線を持っておって九十五億という予算では、われわれが考えたところ、相当長期間かかるのじゃないかと思う。従いまして、現在の建設線の本数、総体の工事費、それから何年に完成する予定か、それから今度の鉄道建設審議会において新しく建設線を取り上げる予定なのかどうか、この三点についてお尋ねいたしたいと思います。
  151. 永野護

    永野国務大臣 東海線以外の現在着工中のものは二十六線でございまして、建設費用は、延長千二百キロでありますが、いろいろな掛りを全部ひっくるめますと約千百二十五億円を度します。それを三十五年から四十年の間に完成することを目途といたしております。そして、その具体的な時期、方法につきましては、今度お集まり願う建設審議会の御審議を得たいと思っております。
  152. 中島巖

    中島(巖)委員 いま一つ答弁が落ちておったのですが、今度の審議会に、運輸大臣のお考えとしては、新しく予定線と申しますか、調査線から建設線に取り上げるものかどうか、この点について御答弁願いたいと思います。
  153. 永野護

    永野国務大臣 お答えいたします。そういう点も今度建設審議会の皆様方の御意見を聞いて、新しくこれに追加するかあるいは既成のものだけにとどめますか、そういうことも審議会の御意見に従うつもりでございます。
  154. 中島巖

    中島(巖)委員 最近いろいろな審議会ができまして、そうして審議会に責任を負わしては政府はいつもそういうふうに逃げておって、まことに審議会というものは重宝なものだと思います。審議会が発言すると、なるべく発言をさせないようにおぜん立てしておいてはいつもやっておるのですが、あなたをこれ以上責めても無理でしょうからこの程度にしておきます。  それから今度、これはあと佐藤大蔵大臣にいろいろと御答弁を願うつもりでおりますけれども、国会においても何回かガソリン税の値上げをせぬということを声明しておきまして、そうして今度値上げをしたわけでありますが、当然これはコストに響いてくるわけであります。従いまして、私鉄は昨日もだいぶ本会議で問題になったわけでありまして、私鉄は今回上げるのでありますけれども地方バスは一昨年、つまり昭和三十二年の値上げ以前に申請して運賃値上げをやっておるわけです。昭和三十二年の値上げをこうむった会社が半分以上あるわけです。今度この二回の値上げをこうむって、旅客運賃はそのままということになった。これは貨物も同じことです。それで、今度の値上げによりまして、おそらく業者は運賃値上げを申請してくるだろうと思うのです。こういう場合には、どうしてもこれは理屈だから許可しなければならぬと思うのですが、これに対して運輸省はどういうお考えを持っておるのですか。
  155. 永野護

    永野国務大臣 値上げの問題は非常に慎重に取り扱わなければなりませんので、全体として見て、ガソリンの値上げを全部運賃の問題に転嫁するというようなことは考えられません。個々の会社の経理状態につきましては慎重に取り扱っていくつもりでございますが、ただいまのところ、直ちにガソリン税の値上げ運賃に転嫁する心持はございません。
  156. 中島巖

    中島(巖)委員 どうも答弁が非常に上手というか、あいまいというか、ずるいというか知りませんけれども、個個に検討して、そして今は値上げするつもりはありません、こういう答弁でありますけれども、これは二回も大幅な値上げをされて、そうして、そのままでおれるものじゃないから当然申請してくる、そうして個々に検討すると、これはもっともだ、こういうことになるわけなんですが、その場合は料金値上げを認めますか。
  157. 永野護

    永野国務大臣 繰り返すようでございますけれども、個々の会社の経理内容が非常に違いますので、ガソリン税値上げの結果、どうしてもある程度の運賃値上げを認めなければならないような問題が起れば、そのときの問題といたさなければなりませんけれども、これには例の運審の公正なる御審議も経なければなりませんので、その具体案が出ましたときに検討いたすつもりでございます。
  158. 中島巖

    中島(巖)委員 次に、東海道の新しい鉄道の幹線計画にいたしましても、それから中央道にいたしましても、転換量であるとか、自然増の貨客の量であるとか、こういうことは調査の基本的問題になるわけです。     〔小川(平)委員長代理退席、委員長着席〕 そこで、これはごく最近だと思うのですが、昭和三十三年六月に自動車局自動車道課から発行された、「国鉄東海道線から高速自動車道への貨客の転換率について」という、こういうものが出されておるのです。このはしがきを見ますと、「交通関係閣僚協議会において取上げられた、東京—大阪間陸上輸送体系整備問題の一環として国鉄東海道線より東京—神戸間高速自動車国道への貨客の転換は、如何程であるかということが問題となり本問題を検討するため、経済企画庁運輸省建設省、国鉄の事務担当者を以て構成する小委員会が設けられ、専門的な検討が重ねられた。貨物転換率に関しては、運輸建設両省より案が提示され、両案を基礎として企画庁において調整案が作成され、小委員会において結論として採択された。」こういう見出しでもって交通転換量なるものを、膨大なる資料をこしらえてあるのです。ところが、実は私バス屋で、この方は専門なんですよ。そこでこの転換量というものが、一キロ当りの一人の客の運賃を三円五十五銭、こう見てあるのです。これは非常に大きな間違いなんだ。そしてこれによりますと、「二百キロ以上に対しは普通バスが性向線を越えているので転換率はゼロとした」、こういう突拍子もない基礎のものさしでこういう膨大な資料を作ってあるのです。ごくわかりやすくしますと、バスなるものの採算はどういうところにとっておるかと申しますと、山の中で一キロ走って六十円上れば採算がとれるとなっております。六十円以上はもうけで、六十円以下だと赤字だということが常識なんです。しかも、私のところは中央アルプスの千四百メートル以上の山を越して、二回も三回も切りかえしなければ通れぬようなカーブをいつも通っている、そういう状態なんです。それでかりに現在十一段シートでありますけれども、高速道ができれば十五段、十八段、つまり八十人、百人乗りというようなことになるのです。かりに六十円としますと、三十人乗ればキロ一人二円あれば採算がとれる。三円五十銭のところを三円に落せば、おそろしい転換率が来ます。さらに一円おろして二円五十銭になれば、その転換率というものは莫大に違ってくる。そして二百キロ以上はゼロと見ておるが、高速道路ができれば、二百キロ以上くらいなところが初めて旅客の路線になる。こういうものを基準として政府でいろいろな道路政策あるいは交通政策をやられるということは、非常に遺憾だと思うのです。それから経済企画庁といたしましても、東京—大阪間の輸送量増強の施策の現状というのを昭和三十三年の十二月九日に出しておりますけれども、おそらくこれを基準にして出しておられると思う。そういたしますと、非常な間違いが起きると思うのです。この中にもこういうことが書いてある。元来、鉄道輸送と道路輸送はそれぞれ独自の輸送分野を擁し、性格的に前者は大量、遠距離の輸送に、後者はその便宜性を生かした短距離輸送に適し、代替性は割合に乏しく、補完的な面が多い、こういうことになっておりますけれども、現在の発達した自動車工業の時代においては、三百キロ、五百キロというようなところが、高速自動車で一番効率の上るところだ。そこで経済企画庁長官に対してお尋ねするのは、こういう基準であなたの方では、いろいろな計画の貨客転換量や、いろいろたとえば新しい鉄道を敷くにしても、あるいはただいま申しました縦貫道の問題にしましても、お考えになっておるのか、この点をお尋ねしたい。
  159. 世耕弘一

    世耕国務大臣 お答えいたします。  今お示し下さった統計数字に関しましては、御指摘の点は十分了解できるのであります。この点に関しまして実はすでに数回さらに検討いたしまして、最近新しくできた数字があるはずであります。その点は事務当局から具体的に説明させていただきたいと思います。
  160. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 お答え申し上げます。ただいま御質問の高速道路への貨客の転換についてということは、昨年の春から夏にかけまして、御指摘通り、各省の専門家が集まっていろいろ検討を加えて参りまして、七月ごろに一応の結論が出たわけでございますが、これは非常に詳細な十三の品目のグループにつきまして、貨物についてはそれぞれ転換の可能性検討する、旅客につきましても距離に応じての内訳を作りまして検討した、一応各省の専門家が妥当と認めた数字でございます。それから二百キロ以上の点は転換ゼロというお話がございましたけれども、旅客及び貨物についても、それ以上の路離についてもやはり転換最をそれぞれ見込んでおるわけであります。外国の例から見ますと、アメリカなどに非常に長距離の有料高速自動車道ができておりますが、比較的その長距離の区間を全体として通過しておる客が少いので、ペンシルヴアニアのターンパイクでは全距離を初めからしまいまで通過するのは、通過量の約四、五パーセント、それから通過自動車の約八割五分が個人用の自動車、乗用車というような結果が出ております。しかし一応そういうようなデータも考慮いたしまして、それから国内の転換量につきましては、距離及び品目等につきまして一応専門的検討を加えたものでございまして、それほど重大な欠陥はないのではないかと事務当局としては考えておる次第でございます。
  161. 中島巖

    中島(巖)委員 新しくあなたの方で、またこの計画以外に計画を立てられたそうでありますから、その資料をお願いいたしたいと思います。いずれあらためて御質問いたしたいと思います。  次に道路整備五カ年計画財源関係について、主として大蔵大臣建設大臣に質問いたしたいと思うものであります。最近促成と申しますか、だいぶわれわれの方でも責めまして、五カ年計画財源計画ができてきたわけであります。そこで財源を見ますと、これは国会で今までたびたび、ガソリン税以外に一般財源をガソリン税同等額まで投入せよということを、何回か各委員会で、参議院でも議決しておるわけであります。そこで一兆予算財源的な内訳を調べてみますと、私の調べたところでは、この中に地方庁の負担が一千九百億あるわけです。従って八千百億という財源関係になるわけであります。それでこの八千百億の中の二千億が、例の有料道路になるわけであります。有料道路は借入金を主体としてやるわけでありますけれども、緻密にこの財源の内訳を見ますと、ガソリン譲与税並びに軽油引取税で六千二百三億になっておる。今回の、これは国会を通るかどうかしりませんが、増税分がこの中に一千二百九十七億含んでおる。交付公債が三百八十四億、借入金が一千六百八十八億で、八千二百七十五億というような、こういう財源になっておるわけであります。そこで質問の第一点といたしまして、ガソリン税と同額の一般財源を入れろという要望に対しまして、建設大臣はいつもの説明に、今度は一般財源を入れましたとか、この次は入れますとかいう答弁をいたしておるのでありますが、この五カ年計画にどれだけ一般財源が入るかというと、三百十七億入ることにこの予定ではなっておる。ところが三百十七億入っておりまして、そのうちで、例の有料道路関係の、今新しく法律を出しておる首都高速道路公団や現在の道路公団に対して、三百十二億の出資をすることになっておる。そうすると、一兆予算の中にガソリン税と同額の一般財源を出せという要望をいつもしておっても、結局三百十七億一般財源から出して、三百十二億有料道路の方に補助してしまうから、一兆の中には五億しか一般財源の中から出ていない、こういう数字になっておるのですが、そういうふうに了解してよろしいですか。
  162. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 今の御指摘のような数字でございます。
  163. 中島巖

    中島(巖)委員 これは重大な問題だと思うのです。そこで大蔵大臣にお尋ねいたしますが、このガソリン税を大幅に今度増徴することになったわけですね。そうしてこれは今まで国会において何度も、これ以上ガソリン税を上げてはいかぬというような決議が、四、五回いろいろな委員会なんかでなされておる。これは御承知だと思う。こういうような情勢において、しかも岸内閣は減税を公約いたしておるわけでしょう。これは減税じゃない、増税でしょう。それだから、その中でなおガソリン税を上げたということは、どういう根拠でもって上げたか、これを大蔵大臣にお伺いしたい。
  164. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 お答えいたします。今回揮発油税を上げましたのは、道路整備財源を確保するためにやったのでございますが、この点はそれ以外の目的はございません。そこで中島さんは、先ほどもお話のように、運輸業者でもあられるし、また石油も扱っていらっしゃるようでございますから、ただいまお話しになります問題については、過去の経過等についても非常に詳しく御承知だと思います。ガソリン税によって道路を整備するということをきめまして、過去においてもたびたびガソリン税の引き上げを計画いたしましたが、そのつど負担力がないという理由のもとに、所定の計画実施することができなかったように思います。問題は、今回の揮発油税を引き上げることが、業界に対して果して負担力があるかないかという問題に実は帰するのではないかと思うのであります。過去の例等から見まして、時に石油業者がその引き上げ分を負担するような結果になったり、あるいはまた運輸業者が負担するような結果になったりいたしておりますが、各国の揮発油税の税率等をしさいに調べてみますと、今回の引き上げによりましても、日本の揮発油税というものは、アメリカを除く他の国に比べれば、まだまだ割合は低いのであります。もちろん国力あるいは経済活動、そういうような状況も同一ではございませんから、ただ単に税率が低いからというだけでこれは可能だという結論ではございませんが、私どもの見るところでは、今回程度の引き上げは十分負担力あり、実はかように考えて、今回の引き上げを計画いたしたのであります。御承知のように、揮発油税につきましては三割、軽油引取税については五割、そういう計画を立てておる次第でございます。
  165. 中島巖

    中島(巖)委員 大蔵大臣はいろいろよけいなことを言って、そうしてどういうわけで上げたかという理由をちょっとも言ってくれぬです。どういうわけで上げたかをずばり一言言って下さい。
  166. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今、道路を整備するために財源が必要だ、同時にそれが負担力がありやいなやということを考えまして、負担力ありという結論で、出したわけであります。
  167. 中島巖

    中島(巖)委員 その負担力ありという結論を出すには、根拠があるわけだ。その根拠は、どういうわけで負担力ありと認めたんですか。
  168. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまその一例といたしまして、各国の問題を取り上げて申し上げました。この点は各国の税率に比べて、日本の税率の低いことは御了承がいくだろうと思います。また同時に、石油業界あるいは運輸業界の収益の状況等を、過去の三十年以後の状況等を見ますと、これは順次、率は低くはございますが、幾分か上昇の傾向をたどっております。企画庁の調べである経済関係一般収益率を上回る数字が出ておる、平均より以上のものが出ておる。こういう点を勘案いたしますと、負担力ありという結論になるわけであります。
  169. 中島巖

    中島(巖)委員 とんでもない話で、これは三十三年十二月八日の自民党の政調会交通都資料第六号というもので、これは私よりは大蔵大臣の方が御存じだと思うのですが、「大蔵省は揮発油小売価額は誰外国より廉いからこれを引上げることは不当でないといっているが、自動車関係直接課税は揮発油税の外十種類余に及び優に壱千億を突破しその税額は世界一の重税である。」こういうようにあなたのところの政調会は言っておるんですよ。それからこういうことを言っている。たくさんありますけれども、「揮発油は食糧と同様に産業経済活動の血液であるに拘らず、その税率は真珠入金指輪、清酒よりも高く、たばこ(ひかり)に匹敵している。」こういうようにあなたの政調会は言いまして、そうして税率を出しておりますけれども、真珠入り金指輪は二八%の税率であるけれども、揮発油は一五六%余の税率である。その他ゴルフ用具は五〇%の税率だ。電気冷蔵庫は四二%だ。たばこは一七〇%だ。たばこと同じであって、真珠入り金指輪、清酒より高い。こういうことを言っている。それから今大蔵大臣の言われた、よその税率より低いということに対して、あなたの方の政調会の資料はこういうことを言っているのです。「自動車運賃に対する揮発油小売価格の比率は高く営業収益率は国際的に最低である。」こういうことを言いまして、バス一人平均の一キロ運賃はイギリスは五円七十五銭、アメリカは七円四十二銭、日本は三円三十六銭だ。そうして揮発油一リットルの価格は、イギリスは四十六円七十銭、アメリカは三十円、日本は三十円。そうしますと、バス運賃中に占める揮発油の価格の率は、日本は八八・九%、アメリカは四〇・四%、こういうふうにして、揮発油の税率ではあるいは今大臣の言われたようなことが当てはまるかもしれぬけれども、運輸収入から比較してみても、日本のガソリン税が一番高いということを、あなたの方の自民党の政調会ではっきりしたこういう資料を出している。これに対して御意見はどうですか。
  170. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど数字を申し上げなかったので、中島委員お持ちの数字でいろいろお話しのようでございますから、私の方の調べを申し上げてみたいと思います。  揮発油の小売価格に占める揮発油税負担の各国の状況を申しますと、イタリアは七〇・九%、イギリスは六〇%、西独は五四・八%、日本の場合は五〇・七%でございまして、イタリア、イギリス、西独のそれよりもいずれも低い、こういう実情にございます。それから自動車運輸業の営業収入の純利益率の問題でありますが、これは私の方の調べ、これは法人企業統計によるのでございますが、それによりますと、自動車運送業の営業収入の純利益率は、昭和三十年は四%、それが三十一年度は五%ないし六%であります。三十二年度は六%ないし七%と漸次増加いたしております。これは日本銀行の本邦主要企業経営分析調査、この方によって見ますと、三十一年、三十二年とも五ないし六%というのであります。先ほど申しますように、数字から見まして、やや上昇の傾向がございます。そこで全企業の平均の利益率はどうなっているかと申しますと、全企業の平均率は三ないし四%でございます。こういう点を考えてみますと、この自動車運送事業そのものといたしましては、平均よりも相当高いところにあるというところから、これは負担力ありということを実は考えておるのでございます。そこで今度先ほどお話になりますように、自動車を経営する場合には、ガソリンばかりじゃない、自動車税その他いろいろの公課があるんだ、そこでその方の負担から見ても非常につらい状況になっておる、こういうお話でございましたが、私の方の取調べといいますか、調べたところによりますと、これは一九五八年の調べでありますが、自動車一台当りの税額の全体は、日本だと七万三千円という平均になっております。アメリカは自動車の非常に安い国でございますから、これはもちろん日本より安くて四万九千円、しかしイギリスになりますと十万六千円、フランスも十万三千円、西独はさらに高く十二万五千円、こういうような数字になっておるのでありますが、これらの点が、私どもの調べたところでは、ただいま御指摘になりました数字と違っております。これはその数字について、どの方の数字が正しいとかいろいろな議論があろうかと思いますが、私どもは重大な問題でございますので、ただいま申し上げるように、各方面資料を精査いたしまして、この精査した結果に基いて、ただいまのような措置をいたしておる次第であります。御了承願います。
  171. 中島巖

    中島(巖)委員 今会社の収益率なんかを大蔵大臣はいろいろあげられたけれども、これは大きな企業だけがそういう統計に載っているわけでありまして、非常な零細企業はそういう統計に載っておらぬわけであります。従いまして大きなバスであるとかいうような独占企業の収益率がいいということで、一般の自動車業者が収益率がいい、そういうことは言えぬと思うのです。それから私の数字とあなたの数字と違うというようなことも言われましたけれども、これはこのガソリン税を上げるために、そういうような数字的の問題がいつも出て、お互い大蔵委員会、運輸委員会建設委員会なんかで論議を戦わしておるのです。そこでそういう論議を戦わした結果、ガソリン税を上げまして、そのあとでいわゆる国会としまして、昭和二十九年の道路整備財源に関する臨時措置法の改訂のときも、これをもうこれ以上は上げない、揮発油税の収入を約五四%として、四六%は一般財源でやれ、こういう決議をしておるわけであります。それからさらに昭和三十一年の衆議院の運輸委員会では、「この上の増徴は税負担の均衡を失し、自動車運送事業その他に甚大なる影響を及ぼすものと認め、揮発油税増徴に対し絶対反対する。」参議院でもこういうことを幾たびか言っておるのです。こういう国会におけるところの幾たびの議決があるにもかかわらず、これを今度政府が攻敢行したということは、全く国会におけるところの議決を無視したことになる。そしていわゆる減税を公約しておいて、増税をしたことになる。こういうことに結論がなると思う。それで、これらの今までの国会の議決その他に対しまして、大蔵大臣はどうお考えか。
  172. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 国会の御意向は、十分予算編成の際に取り入れたつもりでございます。御承知のように、三十三年度におきましては、五十億一般会計から一般財源を入れておりますが、今回は特に百億にしたというような点も、この国会の御要望に沿ったという感じでございます。ただ国会で要望されておりますような率そのものじゃないことは、まことに遺憾でございますが、私どもは先ほど申しますように、税の負担という点から見まして、ます適当な負担率じゃないか。同時に、一般会計からの財源も、道路整備のためにこれを取り入れるという処置をいたしたのでございます。
  173. 中島巖

    中島(巖)委員 時間がきたというわけで、自民党の理事の諸君から、盛んにやめろと言って責められておるわけですが、(「やめろじゃない、簡潔にやれ。」と呼ぶ者あり)だから一つ簡潔にやりますが、あなたの方の自民党で、揮発油税、軽油引取税増徴に関する大蔵省内示は、道路整備に関する財源を他に求める考慮を払わず、過酷にすぎ、業界負担能力の限度を越えるものと認める、よって政府の善処を要望するという、こういうものが出ておる。これは自民党の百二、三十人の代議士が判こを押して著名しておる。この中には防衛庁長官の伊能さんもやっておる。厚生大臣の坂田道太君もやっておる。国会対策委員長の増田甲子七君も、党紀委員長の植竹春彦君も、広報委員長の福田君、こういうようにあなたの方の現職大臣から六役から、たくさん絶対反対でこういう書類が出ておる。そうして幾たびかの公約を踏みにじって、道路予算一兆円をガソリン税に全部転嫁しておる。今あなたは、百億ことし出したと言うけれども、この百億は、四十五億道路公団でやって、十億を今度できる首都高速道路公団でやってある、こういうように、数字の上で魔術ばかり使っております。こういうように自民党内部ですら絶対反対を唱えておっても、なおかつこれを強行する考えであるか。私は、この日本の道路が非常に立ちおくれておるということは、政府と同じ考えで、急速に整備をせんならぬ、これはわかっておる。道路を急速に整備することによって日本産業が将来発達する、これもその通りわかっております。それを今財政投資をするに、一気にガソリン税だけで投資する必要はないと思う。従って、将来の産業のこういう大きいところの基本的政策であるから、この分については道路公債によるべきだと思う。そうして十年、二十年においてこれを償還すべきなのが妥当な政策だと思うのだが、これについて大蔵大臣の御所見を承わりたい。
  174. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほどまだお答えをしなかった点がありました。減税を公約している際に増徴をするじゃないか、それは矛盾じゃないかということでございますが、今回の税制の減税案を実施いたします際に、いろいろの目的で税制の整理もいたしておりますし、また政策的な観点に立ちましての所要の財源の確保もいたしております。そういう意味で、減税は減税、今回の道路整備のための所要の財源の確保は確保ということで、私どもは割り切った案を実は作ったのであります。同時にまた、自民党内に多数の反対意見があるではないか、こういうことを御披露でございました。おそらく道路が整備されることについては、だれ一人異存はない。おそらくこれは社会党の諸君も御賛成だと思います。しかし金なしに道路整備をするというわけには参りません。これはやはり所要の財源の処置をしなければなりません。わが自由民主党内におきまして、このガソリン税引き上げについていろいろの意見のあったことは、ただいまお読み上げになりましたことでもはっきりいたしておりますし、私もよく了承いたしております。私ども政府の立場から何でも強行するという考え方ではございません。どこまでも民主的に最終的な案を決定いたすのでありまして、ことに自由民主党におきましては、特にその点は民主的に決定をするのでございます。従いまして、一部の反対の意見はございますが、私どもはよく話し合いました結果、ただいま国会に提案して御審議をいただいておる最終案を決定いたしたのでございます。それらの点は私ども自民党内の問題でございますから、これは御了承おきを願いたいと思います。もし幾分かでも誤解があると困りますから、経過だけ申し上げるのでございます。今日これは党内できまった最終案であることをはっきり申し上げておきます。  そこでお尋ねは、道路のような長期のものについては、公債を発行したらどうかという御意見だと思います。公責発行論は一部にもちろんございます。これも普通の金融状態、普通の通貨価値が維持されておる状況のもとにおきましては、公債発行論も別に反対する筋でないように私は思います。ただ私は、今日の日本財政状態から見まして、また金融状態から見まして、この際公債を発行することがいいか悪いかという問題で、私どもは公債発行論には賛成をいたしておらないのであります。と申しますのは、経済の健全な発達をはかる、こういう場合に、その基礎になる、基盤になりますものは、申すまでもなく、通貨価値を安定さすということだと思います。公債発行というものが一度せきを切りますと、なかなか容易にこの公債発行についてのブレーキなどはかかりにくいものだろうということも伺っておりますが、そういう意味でなくて、ただいまの通貨の状況、通貨価値の状況、いわゆる財政状況そのものから見ますと、もう少し公債発行については慎重に考うべきときではないかというのが、私どもの持論でございまして、そういう意味から、ただいまの公債発行論には賛成いたしかねておるのでございます。
  175. 中島巖

    中島(巖)委員 時間が切れましたので、自民党の西村委員から盛んにさいそくがあります。これは国会正常化のために私守らねばならぬと思いますから、質問は以上で打ち切りますけれども、所感だけ一言申し上げておきたいと思います。  山内閣が官僚内閣だ、金権内閣だということで、盛んに言われるわけです。今大蔵大臣は、民主化だと言われましたけれども、党内にこれだけの、いわゆる現職大臣が三人もおり、党六役が反対の署名をしておる、これを押し切ってやられるということは、いわゆる官僚内閣ではないか、こう思うのであります。  それから第二点の問題として、この一兆円の道路予算は、これは金額は、道路整備の緊急性に名をかりて一兆予算を作ったけれども、その内容には基本的な根本的な道路政策が何らない。従って道路公団であるとか、首都高速道路公団であるとかというような、幾多の官僚があとに就職するような公団ばかりこしらえてしまって、そうして莫大な予算を使うにもかかわらず、内容はこういうようなせつな主義のまちまちな道路政策をやっている。従って私の希望するところは、政府はもう一度練り直して、基本的な大きな道路政策をやっていただきたい。  それからこのガソリン税に全部おっかぶせぬように、これは長く日本産業経済の繁栄となるのであるから、道路公債なり何なり他に財源を求めるべきものではないか、こういうように感ずるわけであります。  だいぶ自民党から請求がありますので、国会の正常化のために、以上で終ります。
  176. 楢橋渡

  177. 滝井義高

    滝井委員 私は、まず日本の政策を立てる場合には、日本の人口問題を無視しては政策は立たない、こう思うわけです。従って、まず人口問題から政府の見解をいろいろお尋ねしてみたいと思います  日本経済を動かしていくものは人であるが、同時に経済を動かす一つの原動力はエネルギーだと思います。従って、人口問題からエネルギー政策について政府基本的な政策をお聞きしたいと思います。御存じの通り、今年をもって日本の人口は九千三百万になります。その九千三百万になる日本の人口の内部の量的な質的な転換というものは、かつて日本の資本主義が経験をしたことのない新しい経験を今われわれはしつつつあるわけであります。従ってこの日本の資本主義がかって経験したことのない人口問題を明確に把握せずして、前に申し上上げました通り、政策は立たないと思う。端的に私たちが現在日本の人口問題の移り変りの状態を見てみますと、日本の人口は、大正九年を契機として一つの転換が始まりました。それが特に顕著な状態を呈して参ったのは、昭和二十二年です。いわゆるベビー・ブームというものが起ったことは、大臣の皆さん御存じの通りでございます。そうしてその二十二年、三年のベビー・ブームが急激に低落を始めたのは昭和二十五年でございます。そうして三十二年、一昨年になりますと、実にもう昭和二十二年のベビー・インプレーション、ベビー・ブームがベビー・デラレーションに変っておるのでございます。一体こういう状態になったときに、日本の国内でどういう状態が起りつつあるかということです。これはきわめてしろうとわかりのする方向でまずここに明白にしておきたいと思います。  まず第一はベビー・デラレーションの起ることによって一番困り始めたのは助産婦の諸君です。もう仕事がなくなり始めました。この助産婦の将来の養成計画その他は一体どういう工合にするかという点です。現在産婆は老齢化して、若い産婆はいないという状態が出て来始めました。これがます第一にベビー・デラレーションの中に起っておる一つの現象です。第二の現象は、幼稚園の開店休業状態が起って参りました。二百六、七十万昭和二十二年に生れておったものが、百六、七十万、百万の減少を来たしました。従ってそれに見合言う幼稚園を建てておったのが、幼稚園がいわゆる閑古鳥が鳴く情勢が出るという、あるいは今すし詰め教空といっておりますが、これが将来になるとガラ空きになるという情勢があるということです。いま一つは、昭和二十二年のベビー・ブームが、十五年の後には職業安定所の窓口に殺到してくるということです。さらに大学は、現実もそうでございますが、さらに狭い門としてのそのひしめきをますます強くするということです。そしてもう一つ私たちが最も重要に考えなければならぬ点は、生産年令人口というものが、ここ十年間というものは非常な角度をもって、われわれがかって経験しなかった状態で、急激に一つの大きな波となって押し寄せて参るという点です。同時に赤ん坊がインフレからだんだんデフレになりますが、その過程で、今度は女性が急激に減って参るという点です。そして男性がだんだんふえる状態が出る。これはあとで説明しますが、そうしますと、現在の日本の結婚形態というものは、年をとった男性が年の若い女性をもらいます。従って女性と男性との均衡が破れて、ここに男性自体の結婚難というものが招来してくる。(笑声)これは実は笑いごとではないのです。それはあと日本の就業構造に非常に大きな影響を持ってくるのです。そしてもう一つ大事なことは、第七番目には、老人人口というものが急激な形で増加してきているということです。大ざっぱに見て、こういう七つの点を無視して私は日本の政策は立たないと思うのですが、大蔵大臣なり経済企画庁長官は、日本予算を組む場合に、こういう問題を一体どういう工合に把握をして予算をお組みになっておるのかということです。
  178. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 さすがに滝井さんはその道の専門家であられますから、大へん詳細に具体的な問題について人口問題を、また産業的観点に立っての御批判をも加えてのお話でございました。お説の通りに、いろいろ考えさせられる問題がもうすでに起きております。ただいま言われた助産婦の問題のことについては、厚生省の方でお話があろうかと思いますが、大蔵省でいろいろ予算を作ります場合におきましても、今の御指摘になりました保育所や小学校や、あるいは中学校等の文教施設費の整備等においては、もうすでにそういう形が現われておるのでございます。それが今後の問題として、就職の問題、就労の問題、あるいはその後における老齢人口がふえるということと、同時にそのあとに引き続いて、今度は非常に人が足らないというような問題が生じてくる。こういうようなことで、それらの点をも考慮に入れて、ただいまいろいろ予算なり長期計画等についての工夫をいたしておるわけでございます。
  179. 世耕弘一

    世耕国務大臣 お答えいたします。私は、経済の方はしろうとのうちのしろうとだと新聞でも批評されておるのであります。教育の方はいささか現在においても関係を持っておるのでありますが、教育と、特に今おっしゃられました大学あるいは幼稚園、新しい日本の原動力である人口問題には、十数年来取り組んでやってきたものであります。その観点から考えますと、今お尋ねが非常に核心に触れたお尋ねのようでありますから、少し掘り下げて申し上げてみたいと思うのであります、  それはまず一番私の耳を響かせたのは、女がふえて男が減るだろうというお話であります。これは人間にたとえるというと、あるいは適当な言葉でないかもわかりませんが、近ごろ鶏を飼うにしても、羊を飼うにしても、牛を飼うにしても、みな科学的操作をやって、男の代用を片づけておるのであります。これがさらに科学的に進歩をして参りますと、今おっしゃったような男がある程度少数でも間に合うという時代がくることも、これは決してむだな予想じゃないということも言えるのであります。それくらいに科学が長足に進歩しているということが言えるのであります。それからもう一つ、端折ってお答えいたしますなれば、人口問題でありますが、これはいろいろ見方によって観点が違うと思います。日本に人口が多いということを多くの人が厄介扱いにしておりますが、私は、人口が多いということが日本の強さである。いかにアメリカが、諸外国が、りっぱな機械を発明いたしましても、人間を作ることはできない。人間以上の機械はないのであります。この意味において、私は人間尊重輪を実は考えてみたい。もし企画庁で今後新しい計画をするとするなれば、その人的資源の動力源であるところの人口というものをいかにふやし、いかに調節し、いかに民族の発展をはかるかというところに、すべての観点を結びつけなく茶ならぬ、かように考えております。
  180. 滝井義高

    滝井委員 きわめて政府の抽象的な御答弁をいただいたのですが、実は予算委員会であまり人口問題が討議をせられないのです。というのは、日本経済が五%成長するとか、あるいは公定歩合をどうするとかいう問題は、日本経済の表面を、それはたかも群盲象をなでるがごとくなでておるにすぎないのです。本質的には、やはりこの人間の問題を私は引っぱっておるのだと思うのです。現在資本主義の国である日本においては、多産多死から少産少死へと、人口の質的、量的転換が始まっております。ところが一方世界には、三つの人口の爆発的な増加地点がある。それはたとえば北アフリカ、あるいはラテン・アメリカ、そして日本を除くアジアの諸国、こういう後進地域というものが、爆発的な人口の増加傾向の中にある。われわれは先進国でなくて中進国だということを、厚生省は厚生白書でいっている。人口の今までの特徴は、依然としてわれわれは後進国の特徴を持っておりました。しかし、今や中進国になった日本の人口の様相というものは、全く違った様相を是している。そうだとするならば、私たちはやはりこの点に目を向けて経済政策を立てていかなければならぬと思います  そこで私はあとエネルギー政策がありますので、人口の問題はあまり多く時間をかけることができませんので、二点にしぼって参りたいと思うのです。  現在、日本の人口問題が集中的に問題を形成をしておるのはやはり二点、一つは産児制限の問題です、一つは雇用の問題だと思うのです。この二つが、国民経済と人口のアンバランスの問題のいわば集約点です。そこでまず第一の産児制限の問題です。現在日本にわいては、出生人口というものが百六、七十万に減って参りましたが、実際に簡単に言うと、やみからやみに葬られる数というものは実に大へんなものです。これは出生する人口をはるかに上回っておるものがそういう形になっておると言われております。日本における経済的な貧弱、そして急激な都市の文化的な生活の向上と申しますか、そういうものがいわば日本のバース・コントロールというものを非常な勢いで普及せしめていきました。そういう安易な形で産児制限が行われて、そこには一国の政治を思い、一国の民族の将来を思った計画的な、いわゆる家族計画と申しますか、こういうものが考えられていないということです。たとえばことしの予算を見てみましても、昨年は七千二百五十万円ばかりの金を計上しておりましたが、ことしは五千四百十四万円と、千八百三十六万円も削っちゃった。これはおそらく大蔵省は、この金が余ったから削ったのだろうと思うのです。ところが、結局日本の国民の中には安易な堕胎習慣と申しますか、そういうものが国民的な習慣になりつつあるということなんです。これは私は大へんなことだと思うのです。少くともわれわれが一家のうちの計画的な産児をやろうとするならば、やはりそれは無方な現在の生活環境に対応をして、そしてまあやむを得ないという形でなくして、国の政治と経済のあり方の中から、一体われわれは日本の民族の増加傾向を計画的にどういう工合に考えたらいいかということを、日本の千八百万の世帯の一人々々がやはり真剣に考えた上の計画でなくちゃいかぬと思うのです。ところが、政治はその指導がない。日本の人口問題の集約点のまず第一点はここにあると思う。もちろん政治家の中には人口問題というものは国民の自然の帰趨に持つべきであって、政治がこれに関与すべきでないと主張する人もおります。たとえば典型的な人は、前の吉田総理のごときはそういう主張だったと聞いております。しかし、私は現在の日本の状態、特に精神薄弱児というものが非常に小学校にもふえております。日本の児童の中に精神薄弱児がふえておるということは、結局、日本におけるいわゆる計画産児の形がほんとうに科学的な形でやられていないということを意味すると思うのです。こういう点で一体厚生大臣はどうお考えになっておるのか、これはきわめてじみな問題なのでみんなやりません。しかし、あえて私は、やはりこれは日本の民族を愛するならば、政治家が取り組まなければならぬ段階が現在の日本にやってきたと思うのです。まず厚生大臣のそれに対する見解を伺い、大蔵省はどうしてわずか一億に満たないこういう金を削らなければならないのかという点を一つ明らかにして、おいてもらいたい。
  181. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 わが国における人口問題が非常に大切なものであるということは、御指摘通りでございまして、たとえばこの厚生白書によりますと、昭和三十三年におきまして九千百万の人口が、昭和五十年には一億くらいになる。しかしながら、ゼロ才から十四才の人たちをとって参りますと、この増加率というものが三一・九%から二〇・一%に下って参ります。ところが十五才から六十四才までの人口をとって参りますと、昭和三十二年度六二・七%から七二・三%という工合に非常に増加をしてきておる。この実態が、今後いわゆる生産年令人口というものと老齢化していく人口というものとの問題が、やはり雇用の問題に関連をしてくるわけでございまして、ことに老齢者を扶養するところのものが、ほとんどこの統計によりますと、扶養その他によるものが実に七六・六%というようなことでございまして、この点は経済政策をやっていく場合においても、まことに私重要な問題であるかと思うのでございます。一方、そのような人口という問題あるいは老齢化の人口がふえていく、しかもそれに対して老齢者を扶養するというパーセンテージが非常に大きい。こういうことから関連いたしましても、やはりある程度の家族計画というものを立てていかなければならないことは、これは当然なことだと思うのでございますが、一面世耕さんからも御答弁がありましたように、それは異常な形において人口が減っていくということは、やはり問題があるのではないかというわけでございまして、その辺のところをよくわが省といたしましても、また経済企画庁あたりともよく連絡をとりまして、やはり計画を立てなければならない段階に来ておるというふうに考えておるわけでございます。本年度予算につきましては、御指摘通りでございますけれども、たとえば助産婦関係の補助にいたしましても、千円の月の手当が約二千円、倍額にいたしておる点もよくお考えをいただきたいと思うわけでございまして、私どもといたしましては、十分ではございませんけれども、これらの点について家族計画の推進に当っておるようなわけでございます。以上簡単でございますけれどもお答え申し上げます。
  182. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまの問題はまことに重大な問題でございます。そこで先ほど来お話しになりますように、人口構成の面から見まして、産業の成長の面から見てもいろいろ関係がございましょうし、あるいはまた優生学的に見ましてもいろいろの問題があると思います。また、最近のように堕胎が行われることになれば、健康保持という意味におきましてもこれまた見のがせないものでありますし、あるいは道徳的な問題から見ましても、これまた一考を要するものだと思います。宗教的には旧教などは、堕胎や人口調節などは最初から罪悪だとしておるところもございますが、いずれにいたしましても、非常に現状は混乱をしておる状況だと思います。そこでただいま厚生大臣からも御説明いたしましたように、政府自体といたしましても、この問題の指導については十分意を用いて参っておるのでございます。御指摘のように、なるほど予算がだんだん減ってきておるということでありますが、これは過去の実績等をごらんになりまして、御指摘になった過り、決算額を見ますと相当不用が出ておるのであります。この予算の内容的の問題としても工夫しなければ、せっかくの予算も生きないじゃないかというようなことで、今回は金額的に減っておりますが内容的には実はふくらみを持たしたつもりであります。ただいま厚生大臣お話しをしておりますように、受胎調節指導員というものは、在来の手当わずかに月千円でございましたが、今回はこれを交通費その他を見て、さらに千円を増額して二千円にしたということも、指導員などの活躍を助ける、そういう意味におきまして一そう効果あらしめるというように工夫をいたしておる次第でございます。
  183. 滝井義高

    滝井委員 単なる避妊技術の普及ではなくして、うあはり国民生活のあり方を一体どういう工合に変革をしていくかという、私はこういう根本的な問題だと思うのです。もしわれわれの国民性の中に、そういう随胎的な習慣というものがだんだん固定化してくるというならば、現在の日本の社会的な目まぐるしい情勢の中で、非常にたくさんの精神薄弱児が出ております。これは坂田さんは、文部行政に今まで関係されておったから一番よくわかると思うのです。非常にたくさん出ております。しかも劣等児が多い。切った張ったの記事が新聞の社会面を毎日にぎわしておるというのは、やはり私は根本的にこういうところにも原因があると思う。こういうところに、やはり日本の政治というものが、じみではあるけれどあたたかい行き届いた手が差し伸べられないところにも私は問題があろうかと思うのです。こういう点については、ぜひ内閣としても、もう少し真剣に考えてもらう必要が私はあろうかと思う。  同時にそのことは、今度はその裏には雇用の問題というものが当然登場して参ります。現在生産年令人口が急激に増加することは、すでに日本昭和利三十四年度経済見通しの中においても、これははっきり述べられておるところでございます。生産年令人口が増加をするということは大きな生活の問題でございますが、究極は、これは雇用問題に集約ができます。同時に、一方老人人口が増加をして参ります。昭和三十五年程々になると、七%か八%、全人口に対して老人人口が占める。しかも十五才未満の人口というものば急激に減少してくる。こういう形の中で、私たちはやはり雇用問題というものを考えていかなければなりません。われわれが雇用問題を考える場合に、日本の低所得階層の問題でございます。一九五〇年、昭和二十五年では、二十才から四十九才までの結婚あるいは育児期の女子人口は、当時の同じ年令の男子の人口に比して百五十万だけ多うございました。一九三五年、昭和十年当時においては、逆に女子の人口の方が七十五万少かったんです。従って、昭和二十五年には、差し引きしてみますと二百万だけ女子のいわゆる働き盛りの人がふえた、こういう形が出て参ります。このことは一体どういうことを意味するかというと、結局女子人口が、結婚難ということによっていや応なく日本の労働市場に殺到せざるを得ないという形が出て参る。同時に、あの戦争その他によって母子家庭をもたくさん作っております。そして同時に、就業する女子人口に加えて、新しい老人人口というものがたくさんふえてきておる。これがやはり就職戦線に加わってくることは、もう火を見るよりも明らかです。日本の戦前戦後における男女の年令別の労働力化率の推移の状態を見てみましても、十四才から十九才までの勉強しなければならぬ青年期でも、男が昭和三十年では四割四分九厘、女性が四割一分八厘仕事につかなければならぬという状態に追い込まれておる。六十才以上のものを見つると、六十才以上の男性は、実に六割六分二厘が職を求なければならぬという状態に追い込まれておるし、それから六十才以上の女性でさえも二割六分三厘の状態になっておる。これは大正のころから依然としてそういう状態が続いてきて、昨今は幾分それが少くなろうとする傾向が見えておるけれども日本における老人人口の増加や、あるいは今の女子労働というものを考えると、この傾向というものは、決して急激にヨーロッパ諸国のように減る情勢はない。いわゆる若い労働力、そして老齢の労働力というものが、急激に労働市場に現われてこざるを得ないという客観情勢でございます。そういう中で、現在日本に二百四十六万世帯、千百十三万の低所得階層があることは、日本の厚正白書がわれわれに示しておるところです。そこで、こういうたくさんな低所得階層というものを日本に置いて、社会的な諸政策を行おうとされておるわけです。その場合に、私が特に大蔵大臣に注意を喚起いたしたい点は、昨日と一昨日の予算委員会の公聴会においても、それぞれの公述人がお述べになったんですが、この日本の政策というものは、どれもみんなヘビのなま殺しのような不徹底な状態です。特に低所得階層というものは、何か一つの政策だけで自己の生活を全うすることができないという状態が、政策の中に端的に現われておるということです。日本の人口問題という背景をよく頭に置いて、その上で日本の低所得階層対策というものは立てられなければならぬと思うのです。  そこで、まず私は、ここに端的に一々指摘をして、大蔵大臣の真摯な御答弁をお受けしたいのです。たとえば昨日も——一昨日でございましたか、ここでも折摘されましたが、結核の問題を見てみましても、一体結核は今どこに一番巣食っておるか、これは日本の低所得階層の中の中年です。もはや日本の青年には、ヨーロッパと同じように結核はなくなりつつあります。BCGやツベルクリンの普及によってなくなりつつあります。そうしてそれは低所得階層における中年令の階層に巣食いつつある。特にこれは公聴会でも、朝日新聞の江幡氏も指摘をしておりましたが、一般が千人に対して三・五人しか結核に罹患しておらぬのに、生活保護は五十九人、ボーダー・ライン層というものは四十五人もおる。十倍をこえておる。しかも結核対策というものは、それらのものに、わずかにことし七千件のうちの四千件についてのみ医療費というものを三分の二負担します。こういう形、しからば三分の一はどうするか。これは生活保護か何かにたよらなければ結核対策の推進ができない、こういう政策をとられておる。そういう手間のかかる、一方においては結核予防法でやり、残りの三割のものは生活保護でやるなんという、そういうめんどうな手間のかかることをやらずに、もしその人の結核をほんとうに救おうとするならば、思い切ってどこか一カ所でこれを救うことが当然だと思う。それをやっていない。ここに行政のむだがある。貧乏な日本でこういうむだをなぜやらなければならぬかということです。  もう一つ指摘します。たとえば、これは失業対策です。これは労働大臣もお見えになりましたが、私も指摘しようと思ったが、江幡さんもやはり同様に指摘しておりました。たとえば失業対策事業で働いておっても、その失業対策事業で食えるだけの金をくれない。ニコヨンといって二百四十円くれておる。だんだん物価が上るとニコバチ、二百八十円になり、最近はサンマル、三百六円になった。ところが、三百六円では子供が二、三人おるともう食えない、こういう形。だから食えない分は生活保護で上げましょう、こうなっている。一方において、失業対策で日雇労務者として働かしておきながら、そこで食えるだけの金をやらぬので、今度は食えない分は生活保護で行わなければならぬ。こういうむだを一体なぜやらなければならぬかというのです。  もう一つ、年金です。今回百十億の年金をお出しになりました。ところが、これは簡単に言えばボーダー・ライン、これしかやれないということです。老齢、身体障害、母子の援護年金というものはそういうものである。それならば何も年金の、あとで触れますが、莫大な事務費を使ってなぜそういうことをしなければならぬかということです。それならば生活保護で思い切って十分にやったならばよいではないか。こういうような政策の小出し、ヘビのなま殺しのような政策というものはいかぬということです。  もう一つ、生活保護自身についてもそうです。生活保護は、現在一般の勤労者家庭の三割六分程度に生活が下ったならば、そのときは生活保護費を出そうということです。ところが、それだけでは食えないので、日雇にいくか別なことをやらなければならぬ。こういう生活保護自体にしてもそういうことです。三割六分で一体食えるか。日本の勤労者の三割六分か四罰程度で一体食えるかということ、憲法二十五条の保障ができるかということです。国民健康保険もそうです。国民健康保険で、二割の国庫負担と五分の調整交付金を出しました。しかし、現在の農村であの半額の負担ができないからこそ中農以下というものはかかれぬではありませんか。これもなま殺しです。かかれるものは中農以上です。こういうように政府が社会保障として出しておる、低額所得階層対策として出しておるどの一つの政策を見ても、一つだけで生きるだけの生活を保障する何ものもないということです。こういうむだをしてあちらでちょっぴりこちらでちょっぴり、そして、それにも莫大な事務費と莫大な人件費がかかるという状態を一体大蔵大臣はどう考えているのかということです。この点、一つ大蔵大臣の明確な御答弁を願いたい。
  184. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御指摘になりますように、結核対策あるいは進んで失対事業、あるいは生活保護あるいは年金制度、国保、それぞれ見ても、これは十分でない。この点は私どもも率直に認めます。ただ、私が申し上げたいのは、こういう制度そのものがそれでは一つの制度に吸収のできるものかと申しますと、そういうわけのものでないことは、これはもう滝井さんもよく御了承がいただけるだろうと思います。たとえば、老齢年金にいたしましても、それが生活保護というカテゴリーで片づくものかと申しますと、必ずしもそうではない。そういうように考えて参りますと、今までできております各種の社会保障制度というものは、それぞれみんな必要があってその制度が創設されている。しかしながら、それらの制度を十二分にまかなうだけのそれでは裏づけになる予算があるのか、問題はそこに実はなると思います。過去の制度がそれぞれ必要で生れてきたことは、及ばずながらもそういう制度を始めたことは、一歩前進であった、かように考えます。今日までこの予算の分配におきましていろいろ工夫し、こういう社会保障についても力をいたして参っておるのであります。今回なども、結核対策にしても、この予算をふやしていくとか、あるいは老齢年金制度を始めるとか、あるいは失対事業についても、金額は不足とは言われるが、これも幾分かでも増額していく。とにかく限りある国庫金をもって、国の歳入をもって、それぞれの制度をできるだけ本来の趣旨に合うように実は最善の努力をいたしておるものでございます。私は、かような点は、おそらく今の切り詰められたというか、限りある財源でまかなっておる制度のもとにおいて、この制度は不要だからこれをやめてこちらへ回せというようなことは、滝井さんもおっしゃるわけじゃないだろうと思います。それぞれの制度は必要なんだ、なぜもっと金額をふやさないのか、むしろこういうような幾つも類似のものができるために、事務費の面で非常な損失があるのじゃないか、こういうところも御指摘になったと思いますが、私は、制度自身が必要だと考えて参りますと、それを運営していく上において、やはり相当の事務費の必要なことも御了承を願わなければならないと思います。しかし、私どもは、限りある予算を使って参るのでございますから、機会あるごとに事務的な費用をできるだけセーブしまして、そうして本来の制度の目的達成のためにわずかでも金を回していく、こういう努力を今後とも続けて参るつもりでございます。ただ、制度そのものとしては、今の状況で満足すべきものでないことははっり申し上げておきます。
  185. 滝井義高

    滝井委員 私は一つ一つの制度が不必要だとは申しません。しかし、一つの制度でなぜ一人々々の同じ人間をきちっと救わないかということなんです。結核対策にしても、いわゆる公費負担——結核予防法と生活保護法と両方が集まらなければ、一人の同じ人間が結核で完全な治療を受けられない制度というものは、これはまずい制度じゃないか、どうせ一人の人間に百円の金をやるなら、どこか一つの窓口からおやりになったらどうですか、こういう意味なんです。二つの窓口から、いわゆる福祉事務所の窓口と別の窓口からおやりになる必要はないだろう。どこか一本で——保健所の窓口と福祉事務所の窓口と二つからやれば、それだけ事務費も要るし、また受ける患者も両方行かなければならぬ、こういう不便があるということなんです。そして、そのために莫大な事務費が要るということなんです。これは時間の上から言っても、国民の血税の上から言っても、こんなロスはない。大蔵省がほんとうに金を合理的に、有効に、効果的にお使いになろうとするならば、私はそうやるべきだと思う。たとえば失業対策事業にしても同じです。もし三百六円で食えないということになれば、それは三百六円以上の金で食えるようにして、生活保護がいかないようにすべきだと思う。そういう点についての配意というものが欠つけておる。従って、低所行階層というものは、依然としてそこに固定化し、そしてもはや日雇い労務者の職業というものはそれが一つの職業になりつつある。そうして五十才以上の年令層というものがそこにはうんと出てきた、こういう実態というものは、私はそのまま放置できないと思うのです。だから、日本のこういう低所得階層に対する対策というものは、やはりもう少し総合的に検討されなければならぬ。  私は、もう一つ具体的に、今度の予算の中から大蔵大臣に御指摘を申し上げたいと思う。それは今度年金を百十億お出しになりました。それから倉石労働大臣の方の中小企業退職金共済制度に五千万円と、そのほか事務費が七十九万円ですか、五千七十九万二千円をお出しになっておる。ところが、その結果、いかなる連鎖反応が起ってきたかということです。そういう新しい二つの制度を作るために起ったところの連鎖反応というものは、まず第一に厚生年金に起ってきます。厚生年金は、年金を作ったがために、千分の三十の料率が千分の三十五と、五引き上げられました。そして標準報酬というものは、三千円から一万八千円までのものを三千円から三万六千円、こういうように改訂された、これが第一の連鎖反応。第二の連鎖反応は失業保険に起って参りました。失業保険は昭和三十二年末までに五百三十九億円の積立金がある。失業保険は黒字だ、だから失業保険の国庫の負担金というものは三分の一から四分の一に切り下げる、こういうことをおやりになりました。そして同時に料率についても、千分の十六を、事業主、労働者それぞれ千分の一ずつ千分の二下げて、千分の十四とした。健康保険についても、千分の六十五を二下げて、事業主と本人と一ずつ下げて千分の六十三にする。船員保険については、これは総合保険でございますから、厚生年金、失業保険、健康保険とあるのですから、これについても同じような処置を講じた。そうして日雇いについても今度は二割五分の補助金を三割に引き上げる。こういうように、あるものは引き上げ、あるものは引き下げるという、こういう連鎖反応が起ってきた。何か一つ制度をいじると、その連鎖反応というものは、日本の中堅的な労務者諸君を保護する社会的な経済的な諸立法に全部起ってきている。これを国会で審議するだけでも、あるいはこれを印刷する紙代だけでも、莫大なものなんですよ。私たちは、一銭を笑う者は一銭に泣くと言いますが、やはり国民の血税ですから、こういう点は一銭でも大事にしなければいかぬと思うのです。やはり、これらのものは、日本の低所得階層を非常に大きく包含しておる制度です。特に厚生年金や健康保険というものは中小企業が非常に大きくこれに包含せられておりますが、そういう点から考えても、これは具体的に現われてきている問題なんです。すでに法律の面に現われてきている。こういう点は、一体労働大臣なり厚生大臣、あるいはまた佐藤大蔵大臣はもちろんですが、どうお考えになるか、この機会に一つ明白にしておいていただきたい。
  186. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 年金制度を始めるとか、あるいは中小企業の退職金共済制度を始めるとかで、その連鎖反応で他の社会保険にいろいろ響いてきている、こういうお話でございますが、これは見方の問題で、私どもは別にこれは連鎖反応だというような考え方はいたしておりません。ただ、先ほどのお話にもありましたように、各種社会保障制度というものが、そのときどきの必要によって、それぞれスタートいたしておりますので、そういう点から見ますと、各種社会保険相互の間におきましても、必ずしも均衡のとれる制度とはなっていないように思うのであります。給付の内容も違っております。たとえば、今回の中小企業の退職金制度が厚生年金制度とどういうような関係を持つかというようなことになってくると、今回などは、特に中小企業といたしまして非常に小規模のものに限っておりますから、そういう点でも、今回新しく救済されるのは、今までの制度となるべく重ならないように実はいたしておるのであります。今回私どもが工夫いたしました場合に、いわゆる年金制度を今度は全面的にスタートする、こういう際に、各種社会保険制度を、現在の給付内容を維持するとして、国の負担なりあるいは料率なり、そういうものを一つもう一度見合せてみたらどうか、そうして均衡をとることが必要じゃないかというので、実は今回、連鎖反応ということにわざわざ結びつけるまでもなく、一度社会保険制度を見直してみるということをいたしたのであります。従いまして、この成績のいいものについては料率を下げるとか、あるいは国の負担を変えるとか、また成績の思いものについては十分その事業効果が上るように、やはり料率の引き上げだとか、国の負担率を引き上げるとかいうことを実はいたしておるのであります。なお、問題は、こういう際に一つ成績がよければ給付内容を一そう進めたらいいじゃないか、こういう意見ももちろんあることと思います。しかしながら、各種社会保険の内容等を見ると、やはりこれは均衡をとって参らないと、その点では非常にびっこの状況になっても、国の財政状況もなかなか許さないというようなことから、まず一応基準をそろえることを先にやってみよう、そうして次の時期にさらに社会保障制度の内容を充実していく、こういうようにやり方の段階を考えてみよう、こういうことであります。
  187. 滝井義高

    滝井委員 中小企業退職金共済制度と厚生年金が重ならないとおっしゃるけれども、これは重なるわけなのです。厚生年金は五人以上の事業場には適用されている。従って、中小企業退職共済法というのは、商業では三十人である。それから多分あれは百人くらいか百人以下になっておった。そうするとこれは重なるのです。しかも事業主は、厚生年金においては半分だけの事業主負担を持っております。今度は事業主が全都一口二百円ずつ出すわけなのですから、これは大臣は重ならないとおっしゃるけれども、重なっておる。それから均衡の問題です。現在日本の貧弱な社会保障制度の中の社会保険というものの均衡主義、これはもう実に低くて、ものの役に立たないのです。厚生年金にしても、現在定額分と比例報酬を入れても、月四千円もらう人は少い。今度それを標準報酬を幾分上げ、保険料を上げてそれを幾分高めようということだと思うのです。しかし、厚生年金をそういう高めをやろうとするならば、まず厚生年金と今回の国民年金との通算の問題をこの際明白に打ち出して、それをやるべきなのです。順序を誤まっておると思う。この点、坂田厚生大臣はどう考えるのか。それから、労働大臣は、失業保険との関連もあるが、この点一体どうお考えになっておるか。一つ労働省なり厚生省の包み隠さざるところを明白にしておいていただきたい。
  188. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 年金制度を始めます場合におきまして、今まであります公的年金制度と通算するということは、やはり前提条件になるかと思うわけでございますが、われわれの方といたしましては、三十六年度から拠出制度が発足いたしまするので、それまでにはこの現在あります公的年金制度の通算の措置と、それからまた今度発足いたします年金制度との通算の措置をやるべく、また法案にもその明文をいたしておるような次第でございますが、やはりこれに対しましては相当の準備と検討を加えなければなりませんので、目下これが検討をいたしておることを申し上げて、御了承を賜わりたいと思うのであります。
  189. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 失業保険のことにつきましては、大体大蔵大臣から申し上げたような考えでございますが、失業保険だけ取り上げてみますと、いろいろ意見も立つと思いますが、大蔵大臣の申し上げましたように、政府部内でも、前から、戦後まちまちになっております社会保険について、これを総合的に研究してみる段階にきているということは、かねがね考えておったのでありますが、昭和三十四年度予算の編成に当りまして、御承知のような国民年金その他が行われることになりましたから、一つ財政的にも一ぺんこの際できるだけ調整していこうではないかという考え方になりまして、御承知のような方法をとったのであります。従って、社会保険全体に対する政府考え方が後退したということではないのでありまして、私どもとして、これを機会に総合的な研究をいたす、当面財政的措置はこういうふうにやって、そうして、社会保障全体について後退することのないような措置をとってやっていきたい、こういう考えであります。
  190. 滝井義高

    滝井委員 今の坂田厚生大臣答弁はちょっと了承できないのですが、昭和三十六年から公的年金と国民年金との調整をやるということを岸総理も言われましたし、今あなたもここで御答弁がありました。御存じの通り、今三十四年度予算を審議しておるわけですが、三十四年度予算を審議するに当って、しかも保険数理を計算して、厚生年金の料率を上げ、標準報酬を引き上げる、一万八千円から最高三万六千円にするのだ、こういうことは、正確な保険数理に立っての計算でそうなっているはずなのです。だとするならば、何ぞ三十六年を待たんや、もう今の段階で当然厚生年金と国民年金との通算の問題というのは、政府は国民の前に示すべきだと思うのです。それを示さずして、三十六年にはやりますと言っておる。それでは今度の法律の改正というものはやらなくてもいいわけです。ところが、それをあえてやるというのは一体どういうことなのだ、こういうことになるわけです。それは社会保険の調整をやる。調整ならば、一番大事な国民年金と厚生年金との調整をやらずして、今度の年金問題というのは片づかぬと思うのです。ところが、一方国民年金を創設をして、厚生年金というものは何らそれと無関係の形で調整をせられるということは、納得のできないところなのです。そういうように、日本の政策というものが、そのときそのときの政治の財源を捻出するための波のまにまに現われていくということになるならば、その制度を受ける労働者諸君なり被保険者諸君というものは、大へんな迷惑をこうむるのです。だから、岸内閣の欠点は何かというと、岸内閣は国民に向うべき方向を示さない、政策の方向がはっきりしないところに岸内閣のだめなところがあるのだということは、岸さんを支持する経済同友会のチャンピオンの連中が言っておる。われわれ社会党もそうです。今度の年金を作るなら連鎖反応はないとおっしゃるが、連鎖反応はないといたしましても、五つも六つも社会保険の法律をおいじりになるならば、改正案を出されるならば、やはりそこに総合的な将来を見通したものでお出しにならないと、厚生年金は三十六年度になってからまた改正するということになる。それではあまりにもどろなわだと思います。少くとも長期の経済計画をお立てになって、日本経済の伸びというものは今年は五・五平年度は六・五とお見通しになっておって、雇用その他をおきめになってやるのでしょうから、その中における賃金の伸びその他はきちんとわかるはずです。だからこの際これを一緒にやるべきだ、ところが、そういうことをやられずに今のようにつぎはぎだらけの状態を持ってくるということは、どうも私は納得ができないのです。これでは日本の低所得階層というものはなかなかついていけないのですよ、この政策には。しかもこの低所得階層というものは、十年以上納めなければ保険金をもらえないというのだから、一体低所得階層に十年以上も保険料を納め得るかということになるんですよ。なかなか納め得ないという現実がある。こういうように、どうも内閣の政策というものに一貫したものがない。そのときそのときの御都合主義で法律の改正を行い、答弁をやるということは、私は許されないと思います。だから、こういう機会に明確に国民に向うべき方向を示し、立法精神というものを明確に示していく必要があると思います。時間がありませんから、こまかい点についてはいずれ大蔵大臣にも来ていただきまして、年金その他の委員会でやりたいと思います。  そこで、エネルギー政策に入らせていただきますが、このエネルギー政策もまたむちゃくちゃです。ちょうど日本の社会保障が一貫した方向がない、低所得階層に対してあたたかい手が差し伸べられていないと同じように、この石炭政策、長期エネルギー政策の中における特に石炭政策について、私は政府の方針をお聞きいたしたいと思います。現在、長期エネルギー政策の中において、特に国内資源として重要な役割を演じておる石炭産業というものは、今午後三時の産業だといわれております。いわゆる斜陽産業だといわれておるのです。石炭の魅力というものは、重油や天然ガスのために、もはや失われつつある。いわば追われる身に石炭はなりつつあるというのが、偽わりなき現在の客観的な日本における石炭の姿です。そうすると、もう現在の日本の石炭の問題というものは、これは需給をどうするかという問題ではないと私は思います。需給の均衡をどのように回復するかというような単純な問題ではなくして、現在の石炭業界というものを基本的に態勢的にどういう工合に持っていくかという問題だと思います。  そこで、私は通産大臣にお尋ねいたしたいのですが、石炭業界の基本的な態勢をどういう工合に改善していくのか。体質改善というのは岸内閣の重要なスローガンにもなっておるし、重要な施策にもなっておるのですが、この石炭産業基本的な態勢をどういう工合に変えていくおつもりなのか、これをまず冒頭に高碕大臣から御説明願いたい。
  191. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 長期のエネルギー対策から考えまして、石炭がやはり国内のエネルギー資源として重要な役割を演じなければならぬ、これはもちろんのことと存じますが、こういう点から、お説のごとく今日石炭が他のエネルギーと比較いたしまして、非常な不振な状態にあるということは、まずエネルギー面において石炭と競合するものといたしましては、原油であるとか石油である。     〔委員長退席重政委員長代理着席〕 石油は、たまたま昨年船舶が増加した結果、輸送費が安くなった、こういうことのために、予想外に石油の原価が下ってきた。普通石油につきましては一カロリーについて一円以上のものであった。ところが現在においては九十八銭である。そうして現在の日本の石炭との間の差額が縮まってしまって——石炭においても現在九十八銭でありますから、同一になっております。そうなると、有効利用率から申しますと、石油の方が一割ないし二割メリットがある。こういうようなことのために、石炭を消費すべきエネルギーが、だんだん石油にかわらんとしているわけであります。しかしながら、これは永久にそういうものであるかと申しますと、必ずしも永久でない。と申しますことは、現在の船舶は、将来におきましては、もっと運賃が上るものということを考えなければならぬ。そういう点から考えまして、石炭というものが現状に即してそんなに将来性がないものだ、こういうふうにここで断定することは、大きな間違いだと存じます。従いまして、石炭の将来というものは、現状のままでは原価が高くつくから、今後これを安くしなければならぬ。現在におきましては、だんだん能率を上げました結果、一人の一月当りの生産が十四トン半くらいになっておりますが、これをどうしても昭和五十年を待たずして二十トン以上、二十三トンくらいに持っていきたい、それがためには石炭の現在の山を相当合理化して、機械化していくということにあると思います。そうなりますと、問題はここに二十九万人の炭鉱労働者がある。それが昭和五十年を待たずして五万人ばかりの人を整理しなければならぬということになります。そうすると、その人間をどういうふうに持っていくかということは、政策として考えるわけでありますが、いずれにいたしましても、石炭の仕事は決して将来性がないというわけではなくて、将来原価をもっと安くし、そうして日本の唯一の供給し得る——唯一とは申しませんが、供給し得る一つのエネルギー資源として相当重大な役割を演ずるものである、こういうような考えで今後の政策をとっていきたいと存じます。
  192. 滝井義高

    滝井委員 昭和五十年には現在の石炭産業に従事する二十九万の労働者を五万人程度整理をする、そうして石炭の原価を安くして合理化をはかって、それによって一人当りの一カ月の出炭が十四・五トン程度のものを二十三トン程度に引き上げる、これならば日本の石炭がエネルギー政策の中に占める位置は一応保持できるであろうというのが、要約すれば大臣の御見解のようでございます。そこで、根本的な問題に入る前に、日本の石炭産業は、貯炭が八百万トンをこえると、大体一つの危機線上をさまようことになるのだ、こういうことが今までの常識でございました。現在千二百万トンをこえる貯炭があるといわれておりますが、その貯炭の状態は一体どういうことになっておるのか、これをまず、大臣でもいいし、あるいは事務当局でもけっこうですが、御説明願いたい。
  193. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 大体この石炭の貯炭はお説のごとく七百万トンないし八百万トンが端境期にあるのが適正だと存じますが、そのうち約五百万トン程度のものは消費者といたしますれば、ときには急にまた石炭の要ることもあるし、急にふやすこともできないから、大体五百万トン程度は消費者の手に置く。あと二百万トン程度は山元において貯炭する。これは約一カ月に足らぬ分でありますが、それくらい山元に貯炭する。あと百万トン程度のものは原料炭等があるものでありますから、そういうもので大体七、八百万トン程度の貯炭が正しい、こう存じております。御説のごとく現在一千万トン以上の貯炭があるということは事実でありますが、現状におきましては、これが消費者の手にあるものがかれこれ六百五十万トンというふうに、正常貯炭よりも百五十万トンばかりふえておる。大手筋の山元貯炭が四百五十万トン、これが先ほど申しました標準数量よりも大体三百万トンふえておるというのが現状でございます、
  194. 滝井義高

    滝井委員 現在消費者の手元に六百五十万トン、大手山元に四百五十万トン、千百万トンばかりで、その他おそらく原料炭その他があろうと思いますから、千二百万トンくらいになるのだと思いますが、貯炭が戦後かって日本の石炭産業に見ない最高の状態になった。これは一体どういう原因があるのかということです。政府は、日本経済というものは神武以来の好景気で、日本産業はずいぶ伸びていくんだというようなことを言っておった。そうして長期エネルギー政策においては、三十三年度の出炭計画は五千八百万トン、昭和五十年は、大臣が今言われました通り、当時七千二百万トンということで、一人当り二十三トン、こういうことになるんだと思います。そうすると、そういう計画——三十三年に五千八百万トンを立て、最終目標、昭和五十年には七千二百万トンの御計画を立てられておったにもかかわらず、それが三十三年には四千九百万トンの出炭にかえられた。そうすると、第一年度においてすでに九百万トンの狂いがあったということです。おそらく石炭産業の資本家は、この五千八百万トンを目標に出炭計画を立てたと思う。あるいは資金をつぎ込んだと思うのです。また労働者もそれに見合って募集したと思うのです。ところが、それが経済見通しの誤まりか何か知りませんが、おそらく経済見通しの誤まりのために、九百万トンも石炭を削らなければならなかった、ことに内地炭において削らなければならなかったという見通しの誤まりは、一体どこから起ったかということを、長くなくて、簡明率直に世耕長官と高碕大臣の方から御答弁願いたいと思います。
  195. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 最初、一昨年長期計画を立てましたときに、三十三年度は、私、五千六百万トンと記憶しておりますが、五千六百万トンという計画があったのであります。そうして五十年度に七千二百万トンにするというわけであります。これは長期の計画としては当然のことと存じますが、その最初の年の発足に当りまして、五千六百万トンは周囲の状況から見て多過ぎるといって、最初の計画は、業者自身は五千三百五十万トンという数字に減らしたのであります。その五千三百五十万トンというように減らしたが、なおかつここに下半期における豊水期のために電力業者の消費が非常に減ってしまった。それからもう一つは、現在の日本の工業が、予定のごとくその生産が進まなかった。こういうふうなことのためにここに三百万トンか四百万トンの狂いが起ったということは事実でございますが、それだけは減りまして、現在四千九百万トン近くの生産でようやくバランスがとれる、こういうふうな状態に相なったわけであります。
  196. 世耕弘一

    世耕国務大臣 お答えいたします。エネルギー対策につきましては、長期計画と短期計画のもとに計画を大体進めてきておるのでありますが、その短期計画の問題と申しますれば、今御指摘の石炭の問題が非常にいろいろな話題を投げかけ、政治問題を生んでおると思うのであります。その点に関しましては、今高碕大臣から一応御説明があったと思うのでありますが、私からもさらに私の考えを申し上げたいと思いますことは、石炭のエネルギーの使用その他のことについて、数量の変化があったということは、石炭のエネルギーを単価の関係から石油に切りかえたということが一つのことだと思う。それからまた経済的な日本産業の動きが、電力の使用量をば減少したということも、また石炭需要の上に影響を来たした、かように考えられるのであります。この点から申しますれば、当初の計画数字上の狂いがあったということは否定できないことであり、御指摘通りだと思います。そういうふうな関係で、企画庁といたしましてはまずエネルギーの短期計画、長期計画というものをば二通り樹立いたしまして、目下企画庁内に、審議会の中にさらにエネルギー部会というものをば作りまして、真剣にこの問題に取り組んで御期待に沿うようにいたしたい、かように考えておる次第であります。
  197. 滝井義高

    滝井委員 真剣に取り組んで御期待に沿うようにしたいと言うけれども、私は日本の政治はやはり人間の問題を中心として動かなければならぬと思う。しかし同時に産業はエネルギーを中心にして動く。そうしますと、エネルギーの昭和五十年までの長期計画における第一年度において——私五千八百万トンと思ったら、五千六百万トンだそうですが、五千六百万トンにしても七百万トンの狂いがある。七百万トンの狂いがあれば一体どういうことになるかというと、それはすべてのものに狂いが出てきておるはずだ。鳩山内閣のときに経済五カ年計画か、六カ年計画かを作りました。当時のもので合っておるものは日本の人口の伸び以外は全部間違っておった。人口の伸びだけが合っておった。その後また作り直したはずです。今度あなたが長官になってからも検討とはおかしいです。私は当時のエネルギーの供給実績、昭和二十七年からずっとそれを基礎にして、昭和五十年までのものをちょっと書いてきておりますが、これはりっぱな数字が水力、石炭、石油、天然ガス、薪、木炭までにわたって出てきておるわけなんです。そうすると、こういうものがすでに大事な石炭においてもう第一年度から六百万トンも七百万トンも狂うということになれば、これは大へんなことです。その結果、まず私は、あなた方はそうおっしゃるが、私が特に言いたい点は、三十三年度の石炭の消費見込みというものは、四千八百八十万トンで四千九百万トン程度、そうすると三十三年度は三十二年度よりか二千七百万トン減少ですよ。それから一昨年、三十三年度を基礎にしたその三十一年度よりは——一昨年というのは三十一年度ですが、二千五百万トンの減少です。ところが、しからば日本の鉱工業生産は一体石炭の消費がずっと減ったように伸びなかったかというと、鉱工業生産というものは三十一年は一二九・一ですよ。三十二年は一四五・三、三十三年は、これは推定ですが一四六・七です。鉱工業生産というものは、石炭の消費が減少したけれども、ぐんと伸びていっている。一体こういう状態はなぜ起ったかということなんです。それは、なるほど豊水による火力発電というものが消失をした、それから重油や何かの圧力があったのだということであるならば、その見通しというものは前もって立っておかなければならぬはずなんです。それが一体なぜ立たなかったかということなんです。その点はどうですか。
  198. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お説のごとく鉱工業の伸びと同様に石炭の生産を伸ばすとか、石炭の消費が伸びたとかいう見方は間煙いでありまして、これはわれわれ四、五年間のいろいろの研究の結果そこに大きな間違いがある。これは外国でも同様でありまして、そういう点で必ずしも鉱工業の伸びと同様に石炭は伸びるものじゃないということははっきりいたしております。特に今回の誤まりの大きかった原因は、先刻申しました過り日本の全体の工業が予定のごとく伸びなかったということのためと、もう一つは豊水であった、特に電力の方に要する石炭の消費が二百万トン以上の減退を来たした、そういうところに大きな誤差が生じたわけであります。そういう理由でございます。
  199. 滝井義高

    滝井委員 鉱工業生産が進まなかったということと電力が減少するということですが、鉱工業生産は進まなかったというけれども指数は伸びておる、こういうことなんです、私の言いたいのは。そうすると、指数が伸びて鉱業生産が進まなかったということは、体どういうことなのですか。ちょっとそこを理解ができないのですがね。
  200. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 わずかばかりの鉱工業の生産はふえておりますが、エネルギーとしての石炭の消費というものは減ったわけであります。
  201. 滝井義高

    滝井委員 そういうように、政府は五千六百万トンも使うという計画を立てておったのに、それが使われなかったという原因は一体どこにあるのですか。
  202. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 ただいま大臣から申し上げましたように、豊水と鉱工業の伸びが当初の予想に比して実績が非常に低かったというこの二つに原因するわけでございますが、まず農水の関係で電力が減りましたのは約二百八十万トン、これだけ減ると現在われわれ推定いたしております。それから鉱工業の関係は、当初昨年度比四・五%程度鉱工業生産水準が上るということで、石炭の所要数量を二千四百万トン余り計上したわけでございますが、実際には〇・七%程度にとどまりそうであるということから、鉱工業部門における石炭の消費が減ったわけでございます。特に石炭をよけい消費いたします鉄鋼業あるいはセメント、ガラスといった窯業というようなエネルギー多消費産業の伸びが当初の予想より低かったということのために、非常に大きなそごを来たしたわけであります。
  203. 滝井義高

    滝井委員 豊水やあるいは鉱工業の伸びの見通しの誤まり、それからセメントであるとかガラスあるいは鉄鋼工業、こういうものに対する見通しの誤まり、こういうことが、結局日本のエネルギーの中における重要な国内産業で、しかも最も雇用労働の多い石炭産業にしわが寄ってきた、こういう結論になります。一体そういうことのためにどういう結果が出てきておるかと申しますと、端的にいうと大手の炭鉱に、大臣の言われたように貯炭が非常に増加をしてきておる。これは結果ではっきり現われておる。それから炭価は下落傾向というものが出てきて、中小の山は今のままでいけばつぶれるので、ダンピングをやる情勢があるということです。それからいま一つは短期の借入金が非常にふえておるということです。三十三年三月末で百十五億円程度のものが九月末ではすでに二百億、だから八十五億円程度短期の借入金が石炭山ではふえている、こういう実態が出てきている。それから実働の炭鉱の状態を見てみますと、昭和三十二年十二月末では七百九十五鉱、大手八十三鉱、中小が六百八十四鉱、これが三十二年十二月ですが、三十三年の十一月、一年たった後になると、七百九十五が七百十、大手八十で大手のうち三つは参っておる。それから中小は六百八十四が六百三十だから五十四程度も参る、炭鉱がつぶれるという実態が出てきておる。こういうような石炭産業の不況の実態が、今度労働者の面ではどういうように現われてきておるかというと、昭和三十二年の十二月において三十二万九千人程度のものが、二十九万八千人程度というように労働者にもしわが寄ってきているわけです。そこで一体今後この千二百万トンもある貯炭というものを、具体的には政府はどういう工合に一体減少させていくのか、その具体的な政策をここに——日本の重要な基幹産業である石炭産業の運命を、やはり石炭産業に従事する人ばかりでなくして、関連産業の諸君もこの問題は非常に重要な問題と注目しております。特に鉄鋼においてそうです。日本の重要な産業の鉄鋼は、日本の石炭の値段がどうなるか、あとで触れますが特に原料炭の問題と関達してくる。そこで一体千二百万トンの貯炭を具体的にはどういう工合にして減して、日本の石炭産業が危機状態から脱して、正常な貯炭である七百万トンないし八百万トンにするためには具体的にどうするのか、これは一つ通産大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  204. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お説の現在の貯炭が千二百万トンありますが、そのうち百万トンは原料炭でありますから、大体千百万トンというものについて考えてみまして、これを端境期におきましては九百万トン程度に引き下げていきたい、こういう考えで進んでおるわけであります。それにつきましてはまず第一に昨年の下半期におきましても、石炭とエネルギーとして競合いたします原油の輸入につきましては、最初の予定から五十万キロリットルを切ったわけであります。五十万キロリットルということは石炭に換算いたしまして約八十万トンの石炭でございます。その意味におきまして同様に来年度の原油の割当の予算におきましても、これを大体百万キロリットルを切っていくということにすれば、石炭といたしまして約百六十万トンの石炭の消費に振りかえることができるということに相なりまして、同時に明年度の生産につきましても、これは従前減産をするということを言っておりますけれども、これは政府といたしましては単純に勧告だけをやっておったわけでありまして、明年度は石炭鉱業合理化法を適用いたしまして一割五分ないし二割予定よりも減産いたしまして、四千九百万トン程度にとどめていくというふうな方針をとっていきたいと存じます。そういたしますれば初めて端境期に適正貯炭に達する、こういうような方針で進みたいと存じておるわけであります。なおその間におきまして一番おそるべき現象は、御指摘のごとくダンピングをやられるということのために石炭の価格が暴落するということは困りますから、昨年の五月、相当の長期にわたる融資をいたしまして、今年の三月にその金は期限になっておりますけれども、これもある程度延期したい。その上に現在持っております貯炭の百万トンだけは大手筋においてこれはたな上げする、持ちこたえる、貯炭数と別に持つということのための資金の別ワクを作らしてこれを貯炭する、こういうような方針で進みたい思っております。     〔重政委員長代理退席、楢橋委員長着席〕
  205. 滝井義高

    滝井委員 千二百万トンの現在日本の石炭産業を危機に追い込んでおる貯炭を、どういう工合に処理していくかという相当画期的な大臣の御答弁がございました。そこで最後の方から一つ尋ねていきたいのですが、現在大手炭鉱の持っておる百万トンの手持ちのものをたな上げをする、別に資金を持って持つということでございますが、この意味は一体どういうことでございましょうか。大蔵省としては、百万トンの石炭に見合う財政投融資の中から、何か石炭会社に金でもお出しになるのか、この点一つ大蔵大臣の方から明権にしていただきたい。
  206. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 政府予算ではございません。ただいま申し上げておりますように民間融資ということでございます。
  207. 滝井義高

    滝井委員 民間融資といっても、危機に瀕する石炭産業に借入金がずんずんふえていく、特に短期の借入金がふえていっておる石炭山に、相当これは思い切った金を出さなければならぬと思うのです。これは百万トンの金なら何十億という金が要ると思う。これは一体民間の会社が貸してくれますか、今の倒れかかった石炭山に。すでに三井鉱山においても再建案というものが出て、昨年の決算ですか、十九億円の赤字だ。三井の社長以下はかわらなければならぬかもしれぬ。あるいは明治鉱業においても五百六、七十人ですか、五百八十人かの配置転換なり首切りをやらなければならぬ、再建整備をやるのだ、こういう状態の山にそう金を貸すことはないと思うのですが、これは高碕大臣その自信がありますか。
  208. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お説のごとく個々の会社においては相当信用が墜落しておるところもあります。中にはまだ相当な信用のあるところがありますから、これは共同の連帯責任を持って、石炭鉱業全体のために百万トンの融資を民間でやろうということは大体話は済みまして、大体これは見当がついております。
  209. 滝井義高

    滝井委員 百万トンの貯炭のたな上げをやる、別ワクにするというその資金の総額はどの程度必要ですか。
  210. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 現在、先ほど申し上げましたように貯炭は全体で千百万トンあるわけでございます。それが今がむしろピークで、これがだんだん減っていくわけでございます。ただ問題はこの持ち方をどういうふうにするかということになりますが、資金の総額としては、現在の石炭のために出されているという金、この範囲内で一応——貯炭の量は今がピークで、これが減るわけでございますから、絶対的にはふえる見込みがないわけでございます。ですから大体現在借りております期限というようなものが一応そのうちやってくるわけでございますが、これを返済するという際に少し返済を待ってもらう。そしてそれは、先ほど連帯というようなことを大臣も申し上げたかと思いますが、現在業界で進んでおりますのは、一応各社がそれぞれの分に応じて出資をして新しい会社を作って、そしてその新しい会社で大体百万トン程度の貯炭を持つということをやろうということでございます。それで大体百万トンといたしますと、それはもちろん幾らで買うかということになりますが、百万トンだけの金に幾ら要るかということになると、大体四十億前後ではないか。それを幾らで買うかということは、これから現在持っておる会社とそれからこれを買い取ろうという今度の会社との間で幾らにするかということでございますので、まだはっきりわかりませんが、まあ四千程度とすれば四十億程度の金が一応要る。これは現在千百万トンの貯炭を持っておりますから、総額としてはその中で一応まかなえるということになると思います。
  211. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、百万トンに見合う四十億の金を大手のそれぞれの炭鉱が分に応じて幾らか出資をしていく。そうすると全部四十億は出せないでしょうから、そうしますと残りの幾らか知らぬが、あるお金というものは、これは民間の銀行が貸してくれる、こういうことはなんでしょうか。
  212. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 大体そういうことで銀行との間に話を続けているということでございます。
  213. 滝井義高

    滝井委員 続けておるということで、それは自信がおありになるのでしょうね。この問題はあとでもまた触れていきますが、一つの社会不安を起しつつある問題です。従って政府の方針をやはりこの際この議場を通じて明確にしてもらう必要があると思う。大臣、重ねてそういうものをお作りになる確たる自信があるかどうか、これを一つはっきりして下さい。
  214. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 大体現在におきまして千百万トンの貯炭を持っておりまして、すでに借金も二百億円以上を超過しておるわけであります。それから考えまして百十万トンの貯炭は逐次減少して参るわけでありますから、百万トンというものにつきましては十分私は自信があります。
  215. 滝井義高

    滝井委員 ぜひそれを実践していただくようにお願いいたしておきます。その場合に、当然ある程度の出炭制限の強化ということが問題になって参ります。出炭制限の強化をやると、当然そこにコスト上昇の問題が起ってくるわけであります。そうすると大臣がさいぜん御説明になりました通り、石炭と重油の価格が九十八銭ですか、どちらも同じ程度になってきておるところに問題がある。重油は灰が出ないので人件費等が要らないし、非常に処理が簡単だという点で、値段が同じでも重油の方がいい、こういう形が出てくるわけです。その場合に出炭制限をやると、石炭のコストの問題は一体どういう見通しになるか。
  216. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 大体一割程度の出炭を制限いたしますと、八%からもう少しくらいのコストが上るのじゃないか、そういうふうに言われております。
  217. 滝井義高

    滝井委員 八%程度のコストの上昇が一割の出炭制限である。こういうことになると九十八、九銭のものが一円をこえるわけです。これだけですでにエネルギー政策における競合関係にある重油に敗れるという状態が出て、ますます自己矛盾が出てくるわけです。この問題を一体どう解決するかということです。出炭制限によって出てきたコスト高というものについて、政府が何か責任を持つかどうかということです。これは大蔵大臣一つどうですか。この点、出炭制限をやったためにコスト高が出てくる、今八%程度のコスト高ということでございますが、これについて何か政府考えてやるかどうかということです。
  218. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これは今説明申しました通りに、コストが幾らか高くなります。しかしながら、一番おそるべき現象は、ダンピングによる石炭価格の暴落ということでありまして、かりに原価が五%ないし八%上りましたところで、政府といたしましては、現在の原油というものが九十八銭であがっておるということはアブノーマルでありまして、もっと運貨が高くなれば、当然一円以上になるわけでありますから、将来の石炭鉱業をよく見るために、油の消費者に対しましても、ある程度の規制を加えて石炭を使ってもらうということの方針を持っていきたい。こういうことにすれば、私は今日の状態におきまして、しいて大きな問題とする心配はないと存じております。
  219. 滝井義高

    滝井委員 油の消費者に対して規制を加えるということは、すでに過去においても何度かいわれたのです。しかしちょうど資本主糧の社会においては水が低きに流れるがごとく、需要供給の関係、価格の関係というものは、おのれのためにこの経済的な原則を貫徹していくことは、経済人たる大臣御存じの通りです。そうしますと、企業は慈善事業ではないのだから、安い重油を振り捨てて石炭に向うということはなかなか考えにくいところなんです。そうなると石炭産業の将来を考えて、何か国がこれにてこ入れをする以外には、私はこの問題の解決はできないのじゃないかという感じがするのです。しかし今あえて大臣が石油についての規制をやられるということですから、きょうはそれを一つありがたく受け取って引き下っておきたいと思います。  そこで次は原料炭の問題です。御存じの通り現在日本の鉄鋼産業は、九百十三万トン程度の原料炭を必要とします。日本の内地でできる供給可能のものは四百五十万トン程度です。そうすると四百六、七十万トンは輸入しなければなりません。一体この原料炭の国内における取扱いをどうするかということです。これは今のあなたの千二百万トンの貯炭を減らす政策の一つにあった、いわゆる石炭鉱業の合理化によって炭鉱を買い上げる問題にも関連してくるわけです。その場合に、この四百六、七十万トンの原料炭の輸入をやるということになれば、輸入のワクをふやさなければならぬということになると思う。この原料炭の関係をどうお考えになっておるか。
  220. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 御承知のごとく、昭和三十二年には原料炭は四百六十九万トン輸入しております。三十三年度は、現在の見込みでは三百八十八万トン輸入しなければならぬだろうということです。三十四年度は、やはり全体の消費として千四百五十万トンの原料炭が要るというわけでありますから、かりに輸入を現状にとどめましても、一千万トン以上の原料炭を国内において生産をしなければならぬ、こういう状態でありますから、今後一般の燃料炭についてはある程度の制限を加えますけれども、この原料炭の方には、さらに生産を十分増加せしめるという方針で進みたいと存じております。
  221. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、原料炭の出炭制限はやらない。輸入に関係があるのでできるだけ奨励をして、これは増炭方向に持っていくのだ、こういうことですか。
  222. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 その通りでございます。
  223. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、その場合における原料炭の灰分は、非常に原料炭が少くなると、二割くらいの灰が出ても、それは原料炭だということなのです。一体政府はどの程度のものを原料炭と規定しているのか。
  224. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 大体灰分一〇%以下のものを原料炭と考えております。
  225. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、一割以下の灰分のものを原料炭としまして、昭和三十四年度において一体どの程度の石炭の需要があるとお見通しになっておるかということです。三十三年度においては五千六百万トン石炭が必要だといって増産計画を立てた、財政投融資も石炭業者にはやった、労務者も募集した。ところが四千九百万トンにしぼんだということで非常な恐慌が出てきておるわけです。一体三十四年度はどの程度の見通しを持っておるか。これは非常に重大なところなのです。というのは、鉱工業の生産がどうも工合が悪かったということで、今度泣き寝入りをさせられたのでは大へんなんです。
  226. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 来年度の需要は、国内炭で大体五千百万トン程度というふうに考えております。
  227. 滝井義高

    滝井委員 その五千百万トンの中には千万トンの原料炭を含んでおりますか。
  228. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 その通りでございます。
  229. 滝井義高

    滝井委員 五千百万トン三十四年度に需要の見通しだそうでございます。そうしますと、今の千二百万トンの貯炭を減らす重要な点では、少くとも現在の日本の石炭産業に従事をしておる労務者の中から五万人程度は整理しなければならぬ。大局的に昭和五十年まで見ると整理しなければならぬ。とりあえず石炭鉱業の合理化によって百万程度削減をすることを先般政府は発表されておりました。今合理化適用によって一割五分ないし二割の削減をはかる、こういう御方針なのです。そうしますと、まずお尋ねをいたしたいのは、石炭鉱業の合理化をおやりになった場合に、原料炭の一千万トンに見合うところの負担金、いわゆるトン当り二十円か何かの納付金を納めるわけです。それと開発銀行の利子で、合理化で炭鉱を買い上げているわけですから、その原料出炭の出る炭鉱というものが納付金を納めるとすれば、一般炭よりも高い率で納めるのか、その点を一つ伺いしたい。
  230. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 現在のところ、まだ原料炭と一般炭をどういうふうに区別するかということにつきましては、はっきりした結論を得てございませんが、  これは業界自体におきましてある程度無制限に出し得るというものと、どうしても出炭を、強制されて制限せざるを得ないというものとのアンバランスは、是正しなければならないのではないかというような意向が現在出ておりますので、これはできるならば業界内部の問題というような格好で片づけるようにということで、政府といたしましてはもう少し様子を見てみたいということであります。
  231. 滝井義高

    滝井委員 そうすると政府の腹は、原料炭にも気持としてはできれば一般炭よりよけいに負担してもらいたいと考えておるわけですか。これは気持だけでけっこうですから、一大臣から伺いたい。
  232. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 原料炭の方は比較的打撃が少いものでありますから、できますれば二十円の負担金の方を幾らかよけい負担していただいて、そして一般の燃料炭の方を助けていきたいというふうな気持でおります。
  233. 滝井義高

    滝井委員 具体的に合理化の問題に入りますが、石炭鉱業の合理化をやり炭鉱を買い上げた状況は、三十四年一月十日現在におきまして炭鉱の数は百三十四、政府の目標は三百三十万トン、現在私の手元の数字では二百四十三万五千トン、労働者数にして一万七千六十二人でございます。三百三十万トンの目標に対してなお八十七、八万トン残っておるわけです。これにもう百万トン追加することになりますと、今から百八十万か九十万の炭鉱の買い上げが行われるわけでございますが、それによって相当数の失業者が出ます。政府は百万トンによって七千五百人程度の失業者が出るとおっしゃっております。まず私は労働大臣建設大臣にお尋ねいたして、それから同時に大蔵大臣にもお尋ねをいたしておきたいのですが、政府は再々にわたって本会議を通じて、今年度における政府財政投融資、公共事業の増加によって、二十万八千人程度の労務者の吸収は、失業対策の別ワクとして可能であるということは明白にしたところでございます。この石炭産業は御存じの通り、北九州のいわゆる筑豊炭田、佐賀、長崎、常磐、北海道とあます。明治以来日本産業の基礎をささえてきた石炭の相当の部分というものは筑豊炭山から出ておりまして、非常に老朽化しておるわけです。従って合理化の対象になる中小の山が集中的に現われるところは筑豊炭田、それに次いで長崎、佐賀——常磐に一部あるかもしれませんが、こうなるだろうと思う。その場合において、一体この失業対策に公共事業というものを具体的にどういう工合に回していくかという問題でございます。現在百万トン買い上げ、残りの八十七万トンを買い上げるにしても、それに対する具体的な対策というものをまだ寡聞にして聞いていないのです。こういう点について、建設省に合理化によって買い上げられた、その失業者というものを具体的に吸収する何か計画がおありかどうか、また労働省はそういう問題についてどうお考えになっているか、あるいは大蔵省は財政投融資その他をそういう面に回すだけの御意思があるかどうか、これを明白にお教え願いたいと思います。
  234. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 石炭の合理化に伴いまして失業人口が出て参りますが、建設関係といたしましては、公共事業実施することによって、できる限りこれを吸収しなければならぬと思っております。大体三十四年度に出て参ります失業人口が千人内外と聞いておりますが、そのうち年間を通じて大体五百人程度を私の方で見込む、こういう話し合いになっております。合理化の詳しいことは通産当局がわかりますのでそれを聞いていただきたいのですが、九州の百万トン計画については、そういう話し合いで私の方ではできるだけこれを吸収する、こういうことで話し合いをしているような次第でございます。
  235. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 石炭政策について、百万トンをさらに合理化法に基いて買い上げるということでありますが、その必要性については通産省の方からお話があったことと存じます。私どもの立場といたしましては、滝井さんもよく御存じのように、すでに三百三十万トンでも相当な離職者を生み、それに対してはそれぞれの手段を講じて参りましたが、なお未処理のものも若干残っている。それにさらに失業者が出るということをそのまま放置して、百万トンの買い上げだけ先行されるということは困ることでありますから、政府部内におきまして、企画庁、労働省等それぞれ関係方面がただいまその政策を実行して参ることによって、しわ寄せしてくる離職者をどうするかということについて鋭意研究中でございまして、それが決定して、そして政府の方針に移って参る、こういうふうに今もっぱら相談をしている最中でございます。
  236. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 大体建設大臣と労働大臣から御説明申し上げましたが、補足して申し上げますと、三十三年度には三百三十万トンのあの合理化の分は大体二百八十万トンだけは片づく。三十四年度に持ち越す分は五十万トンくらい残る。その上にさらに百万トンの合理化による整理をしたい、こういうことに相なりますと、どうしても急速に解決すべき問題は、六千何百人の失業者をどうするかということになるのでありまして、特に問題とすることは、御指摘のごとく、主として北九州に偏在しておるのでありますから、北九州においてはどうしても五千人の吸収をしなければならぬ。その中で急速にこれを要する者は、千人を何としても対象としなければならぬということで、農林省、特に建設大臣にもお願いいたしまして、建設省の方では五百人近くは就労する道を講じようということになっているわけでありますが、この詳細なことは、経済企画庁なり労働省なり建設省とよく話をいたしまして、正確な数字、正確な見込みが立たなければ、通産省としては実行し得ない点でありますから、各省のお力をかりまして、せっかく今検討中でございます。
  237. 滝井義高

    滝井委員 政府の各大臣の石炭鉱業合理化による悲惨な姿の認識が非常に足りないと思います。日本のエネルギーの重要なにない手である石炭産業の運命をかけた政策というものに対する政策の裏づけがないことは、すでに現実の二百四十三万トン買い上げられたその廃墟の跡を見れば、まさにすぐわかる。少しも政策が行き届いておりません。合理化によって起る問題は、まず当初は労働問題が起って参ります。しかしその労働問題が、今度はだんだん深刻化してくると、もはや社会問題になってくる。そしてその社会問題は最終的には地方自体におおいかぶさってくるのです。そこでこれは自治庁長官に今度はお尋ねすることになるのですが、この炭鉱がやめることによって、その炭鉱の市町村は鉱産税がなくなります。それから炭鉱から入っておった固定資産税がなくなります。それから日本の税制は御存じの通り源泉徴収によってまかなわれております。農村なり、中小企業というものは二百万そこそこしか税金を納めておりません。そうすると炭鉱町というものは、炭鉱労働者が源泉徴収で取られて、そしてそれがそこの市町村の財政をささえておる。ところが炭鉱がやめることによって源泉徴収、いわゆるその市町村の財源の根本がなくなってしまう。鉱産税はなくなる。住民税は源泉徴収が減るために非常に急激な勢いで減っていく。固定資産税は一番大きな炭鉱がなくなるために滅ってくる。こういうことからいわば町ぐるみだめになる。炭鉱がやめることによって、炭鉱の失業者が出るばかりではございません。炭鉱によってささえられておったその炭鉱町の中小企業がだめになり、中小企業がだめになるならば、兼業をしながら炭鉱に通っておった農村も、そのできた白菜とか、あるいはネギとかいうような野菜が売れなくなってだめになる。すなわち町ぐるみだめになる、こういう実態です。一体こういう実態の中で、自治庁は、合理化によって買い上げられたあとのその日治体の姿というものを、今後どういう工合に導いていくかということなんです。なるほど日本の炭鉱業を生かすためには炭鉱労働者を五万人、昭和五十年までに減らしてしまえばいいのだ。ところがその五万人減らすということは、連鎖反応によって一つの町全部がだめになることを意味するのです。こういうことは明治以来の日本産業の発展に貢献をしてきた石炭産業にとって、もうお前らは今まで過去に役割を演じた、もうお前たちはこれでよろしいといって突っ放す状態です。それでは日本の大事な資源というものをあまりにも軽視したものの考え方だと思うのです。そこで私は、まずそういう実態になる自治体に対しては、起債のワクの拡大をやるとか、あるいは交付税を別に考えるというような具体的な政策というものを、自治庁は打ち出す意思があるのかどうか。これは当面百万トン買い上げ、あるいは残りの五十万トンを実行していけばすぐに出てくる問題です。これを一体どういう工合にお考えになっておりますか。
  238. 青木正

    ○青木国務大臣 お話のように、現在でも相当炭鉱地帯の町村は財政的に困難を来たしておる上に、百万トンの合理化、このことが関係の市町村の財政に重大な影響を及ぼすという問題は御指摘通りであります。福岡県におきましても非常にそのことを心配いたしまして、いろいろ私どもの方にも連絡をとって参っておるのであります。そこで先ほど通産大臣大蔵大臣からもお話がありましたが、自治庁といたしましては、自治庁の立場において、御指摘のようなこの合理化によって地方公共団体に及ぼす影響、このことをどうするかという観点に立っていろいろ現在折衝いたしておるのであります。と申しますのは、百万トンの合理化をやる、そうしてこれに先ほど公共事業を回すというお話もありましたが、お話のようにその回し方のいかん、一般失業の方をどれくらい使うか、そういうことによる財政のやりくりの問題、あるいはまた御指摘のように一般失業ですと起債もワクがないわけでありますので、起債関係の方、起債をつける問題も、適債事業の方の関係等、しかも全体として具体的の計画が出て参りませんと、それに対する私の方としての対策が立ちにくいのじゃないかということで、せっかく具体的な案として折衝いたしたい。なお言うまでもなく、予想される失業人口を対象として一応基準財政需要には見るわけでありますが、しかし今回のごとき場合は、予想志される失業人口というものとは別に、新しく失業者が生じてくる。それによって新しい財政需要も起ってくるし、減収の問題も起ってきますので、建前としては当然特別交付税の対象にしなければならぬ問題と考えるのでありますが、それにいたしましても、具体的の計画が立ちませんと、そういう私どもの方としての具体的の案も立ちませんので、先ほど労働大臣、通産大臣お話もありましたように、事務当局間でせっかく具体案について折衝を重ねておる次第であります。
  239. 滝井義高

    滝井委員 それでは政府経済企画庁を中心にして労働省なり自治庁なり建設省なりあるいは大蔵省も入っていただきまして、やはり総合的な石炭合理化によって出てくるいろいろな現象に対して、それを未然に民生安定の方向に持っていくように対策を立てることを一つ希望しておきます。  そこで、それはいわば日本の長期エネルギー政策の中における千二百万トンの貯炭をどうするかという政策の一つの方向なんです。しかし根本は、何といっても、日本の総合エネルギー政策というものを一体どうするかということです。これに対して政府見通しはやはり明確にしてもらわなければならぬと思う。というのは、重油なり外炭の輸入というものを今後具体的に一体どうしていくのか、そうしてそれが日本の国内炭の価格に及ぼす影響というものを政府はどう見つるのか、その上に立って日本の出炭計画というものをどういう工合に指導していくのか、そうしてそれは同時に日本経済見通しといかなる関係を持つか、こういう点をこの際でき得べくんば明確にしておいていただきたいと思うのです。
  240. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまの御説明はごもっともと存じまして、従前そういうふうなことについていろいろ政府検討をいたしておりましたけれども経済の情勢は刻々変りつつあるようなわけでありまして、特に最近また原子力等が問題となってクローズ・アップされておるわけでありますから、そういう点を考慮いたしまして、長期エネルギ——計画といたしますれば、今まで五十年度まではできておりますけれども、その上におきましても十分さらに検討を加えまして、将来誤まりないようにやっていきたいと存じております。
  241. 滝井義高

    滝井委員 私は簡単に人口問題、あるいは一つ日本産業における重要なにない手であるエネルギーの中の石炭政策、二つについて非常に短時間の間に大っざっぱな質問をさしていただきました。しかしこれらの人口問題に立脚した政府の政策、あるいは日本産業の一番基礎的なにない手である石炭なり鉄鋼に対する政府の明確な見通し、こういうものがどうも薄弱です。もう少しこういうものについては、予算委員会予算資料としてきちっと政府が当初に明白にして、その上に立って一体日本経済はどうなるんだという論議が展開できるような、もっと科学的な良心的な、国民のわかりやすい予算委員会にしていただくことを望んで私の質問を終らせていただきます。
  242. 楢橋渡

    楢橋委員長 明日は午前十時より開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後五時二十九分散会