運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1959-02-14 第31回国会 衆議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月十四日(土曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 楢橋  渡君    理事 植木庚子郎君 理事 小川 半次君    理事 重政 誠之君 理事 西村 直己君    理事 野田 卯一君 理事 井手 以誠君    理事 小平  忠君 理事 田中織之進君       内田 常雄君    小澤佐重喜君       岡本  茂君    加藤 高藏君       川崎 秀二君    上林山榮吉君       北澤 直吉君    久野 忠治君       佐藤虎次郎君    篠田 弘作君       周東 英雄君    田中伊三次君       津島 文治君    床次 徳二君       中曽根康弘君    二階堂 進君       藤枝 泉介君    船田  中君       保利  茂君    水田三喜男君       森下 國雄君    八木 一郎君       保岡 武久君    山口六郎次君       山崎  巖君    山下 春江君       阿部 五郎君    石村 英雄君       今澄  勇君    今村  等君       岡  良一君    加藤 勘十君       北山 愛郎君    黒田 寿男君       佐々木良作君    島上善五郎君       多賀谷真稔君    楯 兼次郎君       成田 知巳君    西村 榮一君       柳田 秀一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         法 務 大 臣 愛知 揆一君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君         文 部 大 臣 橋本 龍伍君         厚 生 大 臣 坂田 道太君         農 林 大 臣 三浦 一雄君         通商産業大臣  高碕達之助君         運 輸 大 臣 永野  護君         郵 政 大 臣 寺尾  豊君         労 働 大 臣 倉石 忠雄君         建 設 大 臣 遠藤 三郎君         国 務 大 臣 青木  正君         国 務 大 臣 伊能繁次郎君         国 務 大 臣 世耕 弘一君        国 務 大 臣 山口喜久一郎出席政府委員         内閣官房長官  赤城 宗徳君         内閣官房長官 松本 俊一君         法制局長官   林  修三君         外務事務官         (アジア局賠償         部長)     吉田健一郎君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         大蔵事務官         (理財局長)  正示啓次郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  石田  正君         大蔵事務官         (為替局長)  酒井 俊彦君         国税庁長官   北島 武雄君         通商産業事務官         (通商局長)  松尾泰一郎君         運輸事務官         (海運局長)  朝田 靜夫君         運 輸 技 官         (船舶局長)  山下 正雄君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 二月十四日  委員井出一太郎君、大平正芳君、北村徳太郎君、  小坂善太郎君、田村元君、古井喜實君、早稻田  柳右エ門君、淡谷悠藏君及び小松幹辞任につ  き、その補欠として森下國雄君、山下春江君、  津島文治君、保岡武久君、藤枝泉介君、加藤高  藏君、佐藤虎次郎君、多賀谷真稔君及び今村等  君が議長指名委員に選任された。 同日  委員佐藤虎次郎君、津島文治君、藤枝泉介君、  森下國雄君、保岡武久君、山下春江君、今村等  君及び多賀谷真稔辞任につき、その補欠とし  て早稻田柳右エ門君、北村徳太郎君、田村元君、  井出一太郎君、小坂善太郎君、大平正芳君、小  松幹君及び淡谷悠藏君が議長指名委員に選  任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十三年度一般会計予算補正(第2号)      ————◇—————
  2. 楢橋渡

    楢橋委員長 これより会議を開きます。  昭和三十三年度一般会計予算補正(第2号)を議題といたします。  質疑を続行いたします。柳田秀一君。
  3. 柳田秀一

    柳田委員 私はきのうの今澄委員質疑応答を聞いておりましたところ、岸総理を初め永野運輸大臣その他閣僚諸公答弁がふまじめというか、免れて恥なきたぐいというか、このように賠償というような国家背景で、国民血税をもって支払うべき、しかもこれが国民疑惑を持たれているような問題に対して、もう少し真剣な答弁を望みたいのであります。単に国会をどうにか乗り切る、社会党の鋭鋒をともかくかわすというような態度であってはならぬと思うのであります。今日までに戦後ではないといわれておりますが、なおちまたにはたくさん失業者もあり、多くの戦争犠牲者もある。しかも、岸さんには痛い言葉でありますけれども戦争責任者としての岸さんを首班とするこの内閣ならばこそ、戦争によって起った償いであります。国民の多くの金を、いかに相手に迷惑をかけたといってその国に払うほどの余力はまだありませんが、国家が犯した罪悪の償いを、国民は、涙をのんででも、舌をかんででも、乏しき中から払うということにはやぶさかでない。それをあなたを首班とする内閣において、今日伝えられるような疑惑があるならば、その疑惑を一掃するだけの誠意をもって私は御答弁を願いたいと思います。  そこで、すべてこの予算委員会におきましては、国民の血の出るような税金からの予算を審議するわけでありますが、賠償に入る前に二、三お伺いしておきますのは、中小企業とかその他にはなかなか融資が参りません。国民金詰まりで困っておってもなかなか金を貸してくれない。ところが、ある特定の事業には、ある特定業者には、経済協力という名のもとに、私は血税が乱費されておると思うのであります。その一例がアラビア石油の問題であります。昨年の当委員会におきまして与党委員からもこれは質問がございました。そこで、このアラビア石油はまだ海のものか山のものかわからない。掘ってみて出るか出ぬかわからぬが、このアラビア石油に今日までどれくらい融資をされましたか、大蔵大臣から承わりたいと思う。
  4. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは自分資本で実はやっておるのでございまして、まだただいま御指摘になります融資という形のものはございません。
  5. 柳田秀一

    柳田委員 山下太郎氏のなにするアラビア石油からは、二十五億円の融資を申し込んできたという事実がありますか。
  6. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これはドルにかえるといいますか、送金を申し込んできていることはございます。しかし、それは自分の資金をドルにかえるのでございます。
  7. 柳田秀一

    柳田委員 その額は幾らですか。
  8. 酒井俊彦

    酒井政府委員 数字のことでございますから私から申し上げますが、ただいま大臣がお答えいたしましたように、輸銀からは全然金が出ておりません。ただいままでに送金をされましたものは、合計、本年一月末までで七百六十三万ドルでございます。内訳を申し上げますと……。
  9. 柳田秀一

    柳田委員 内訳はよろしい。
  10. 酒井俊彦

    酒井政府委員 それじゃ合計だけでございます。
  11. 柳田秀一

    柳田委員 佐藤大蔵大臣はこれに六億円融資をされるというふうにおきめになったそうですが、そういう事実はありますか。
  12. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 さようなことはございません。
  13. 柳田秀一

    柳田委員 次はブラジルミナス製鉄所であります。これは御承知のように日伯合弁でやっておるのでありますが、今日までにどれくらい外貨を送られましたか。     〔「そんなものが調べなければわからぬのか」と呼び、その他発言する者あり〕
  14. 楢橋渡

    楢橋委員長 静粛に願います。
  15. 酒井俊彦

    酒井政府委員 ミナスにつきましては、三十二年の六月に合弁会社ができましたわけでございますが、三十三年の初めから建設を開始するということで、ミナス会社資本金三十二億クルゼイロということにいたしまして、その一〇%に相当する三億二千万クルゼイロ払い込みを要求して参りました。これに対応する日本ウジ・ミナスという会社がございます。これは授権資本二十八億でございますが、日本側出資の四〇%に相当いたします一億二千八百万クルゼイロ、約百四十万ドル、五億円でございます、の払い込みを行いました。その後建設が進みまして、第二次の送金といたしまして、第二次資本金払い込み六億四千万クルゼイロの増資を行うことにいたしまして、日本側も本年一月に四〇%に相当する二億五千六百万クルゼイロという払い込みに応じたわけでございます。
  16. 柳田秀一

    柳田委員 邦貨にして幾ら
  17. 酒井俊彦

    酒井政府委員 換算をいたしますと、約二億五千万くらいに相当するのじゃないかと思います。
  18. 柳田秀一

    柳田委員 ドルにして幾ら
  19. 酒井俊彦

    酒井政府委員 ドルにいたしますと、これはそのときどきによって資本関係の相場が変りますから……。(「そんなことはわかっておる」と呼び、その他発言する者あり)大体百五十万ドル見当になりますが、今正確に数字を割ってますから……。
  20. 柳田秀一

    柳田委員 これはブラジル安東大使が非常に熱心なんです。そうして今クビチェック大統領がこの六月に選挙があるわけだ。そこで向うでも何か政治的なうわさが非常に飛んでおるわけなんです。従って、こういうさなかですから、われわれの国家からこういう外貨を送るときにはよほど慎重にしていただかなければならぬ。そういう意味において私は今申し上げておるのであります。  なお、ウジ・ミナス製鉄所に対しては、その後は一向進捗していない。これを送りましたのは、一昨年でちょうど日本が一番外貨事情の悪いときです。これこそほんとうに血の出るような外貨を送ったのです。しかも、その外貨が有効に使われていないのです。私は本委員会を通じましてこのウジ・ミナスバランスシート早急念一つ出していただきたいと思います。  それから第三は、アラスカ・パルプでありますが、これは水野君が社長になって、最近は業界でも波紋を投げかけておるのですが、これは十二万トンほどの輸入をやってくると、日本年間パルプの今後の輸入量はずっと下ってきて、今大体四万トンを切れておるというときに、日本業界を非常に圧迫する。しかも、悪いことには、日本が全額出資しておいて、しかもそれを外貨で買わなければならぬというようないわくつきの困ったしろものなんですが、これに対しても今後私たちは追及したいと思いますから、またこれのバランスシートその他を詳細に一つ委員会に出していただきたい。これは最初にお願いをしておきます。  そこで問題のインドネシア賠償に入りますが、昨日今澄君が二月の十四日、赤坂の賀寿老というところで、岸さんがスカルノ大統領会談され会食されたときに、たまたま木下商店社長木下茂を交えられて、短時間であったといえども、三人で会食されたということを追及したのですが、その事実は認められたことは岸さん、私は非常に率直であったと思います。ただし、事実は認められたが、そういう事実がどのような事態を招来するのか、特にこの木下店に対する一括入札ということの疑惑を持たれているときに、よしんばスカルノ大統領が言ってきたにしろ、あるいはスカルノ大統領の日程が詰まっておったにしても、そういうような芸者の出入りするような料理屋で、一国の大統領総理大臣疑惑を持たれておるような商社社長と、たといそのほかに総領事とかなんとか入ったとしても、飯を食べるということに、あなたは反省をお感じになりませんか。これがわが党の鈴木委員長一緒に、スカルノ大統領が来られたのだから両党の総裁でも一つ歓をあたためるということなら、これは話はわかっておる。そういうことに対して、あなたは良心の苛責を全然お感じになりませんかどうか。これはまずいことであった、今後はこういうことは絶対しない、そういうふうにお考えになりますか。もう少し私はあなたの腹の底からの答弁を聞きたい。
  21. 岸信介

    岸国務大臣 ちょっと昨日の答弁を誤解されておるようでありますが、私は会食はいたしておりません。その日は賀寿老においてスカルノ大統領とその一行その他と一緒会食する催しがありまして、その会食が始まります前のごくわずかの時間において、スカルノがかねて申し込みのあった木下と会うからということで、私も立ち会ったというのが事実でございます。
  22. 柳田秀一

    柳田委員 私は会談したか会食したかという事実を主にして今質問しているのではないのです。そういう疑惑を持たれたことに対して、あなたは良心的にどう考えるかということを問うておる。
  23. 岸信介

    岸国務大臣 私は当日の話からいいまして、また何ら内容的にやましいことはないと考えております。
  24. 柳田秀一

    柳田委員 エコノミストの二月十四日号には、これは二月中旬となっておりますが、これは二月十三日と思います。築地のこれまた芸者の入る料理屋金田中で、岸さんはスカルノ大統領——これによると、木下商店社長木下茂氏が同席しておる。この三者会談は、インドネシア国籍中国人C・M・チョウ、こういう政商のあっせんで行われたといわれておる、こう載っておりますが、この事実はお認めになりますか。
  25. 岸信介

    岸国務大臣 そういう事実は全然ございません、私に関する限り。
  26. 柳田秀一

    柳田委員 二月十四日銀座のキヤバレーアスターハウスで、永野運輸大臣、あなたは木下商店社長とともに、インドネシア側スカルノ随員と、アスターハウスに行かれた事実がありますか。これは、あなたは写真をとられておるというふうに聞いておりますが、その事実はどうですか。
  27. 永野護

    永野国務大臣 そういう事実はございません。
  28. 柳田秀一

    柳田委員 赤城官房長官、先ほどの築地料理屋金田中会談は、赤城官房長官スカルノ、岸、木下同席ということを認めておると書いてありますが、これはどうですか。
  29. 赤城宗徳

    赤城政府委員 事実も知りませんし、私も出席した事実もありませんから、それを認めていることもありません。
  30. 柳田秀一

    柳田委員 昨日今澄君は、永野運輸大臣は、まあ大臣就任前でありましたが、木下商店から運転手車庫つき自動車を提供を受けて、就任後も家族は乗っておられる、こういうことを質問をして、大体それはお認めになったのですが、これは私は職権のあるところのあっせん収賄罪が成立すると思うのです。あなたは賠償に対して、ことに船舶賠償に対してあなたは職権があります。そしてあなたは大臣就任後といえどもそのようなやはり供応を受けているわけです。私はこれはあっせん収賄罪が成り立つと思うのです。これに対してあなたはどういうような御反省をしておられますか。それは免れて恥なしというたけでなしに、私は道義的にも責任があるが、法律的にもあっせん収賄罪が成り立つのではないかと思いますが、あなたはどう思いますか。
  31. 永野護

    永野国務大臣 お答えいたします。私は私の自動車がありますから使ったことはございません。ただし、その車庫が近所にありますために、私の家内とかあるいは子供が時たま使ったことがあるかもしれませんけれども、それは私の全然知らぬときにその運転手に頼んで送ってもらったことがあると聞いております。
  32. 柳田秀一

    柳田委員 司法当局に尋ねますが、こういうたぐいは、これは職権のあるあっせん収賄罪が成立すると思うか、それはしないと思うか、はっきり答弁して下さい。
  33. 愛知揆一

    愛知国務大臣 犯罪の構成の要件となる事実なりあるいはその証拠の裏づけなりということについては、きわめて慎重な手続を要するものでございまして、ただいまお尋ねのようなことについては、私といたしましてはさようなことは考えておりません。
  34. 柳田秀一

    柳田委員 そこで本論に入るわけでありますが、インドネシア賠償で私はまず第一に、木下商店が選ばれたことに対して多くの疑惑があると思うのです。だからこそ、きのうの新聞の取り上げ方も、皆さんごらんの通り、おそらく週刊誌なんかはこれは一斉に取り上げると思うのです。これは大体国民全体がこれに対しては非常にくさいと、こういうようにこれは見ているわけです。そこで商社としての信用で選ぶとするならば、これはやはり第一物産だとか三菱商事だとか、たくさんあるでしょう。現在ジャカルタに駐在事務所を持っておるのは約十六、七社あります。多くは四人少くとも一人ぐらいの駐在員を置いて——木下商店は目下申請中でありますが、正式の駐在事務所すらありません。そういうような、商社としてもまずこの信用状態ではそう私はこれがトップにいくとは思わない。それから従来のインドネシアに対する輸出入実績ですね。よくお役所は従来の実績ということを言われていますが、実績からいくならばやはり野村貿易だとか兼松だとか、そういうところに落ちるのがまあまあ常識だろうということをだれしも考える。ところが貿易商社でもないあるいは船舶業者でもない鉄くず商木下商店が、何ゆえにこの船舶賠償に関しては、一括十隻中九隻までの契約を得たか。どういうふうにこれはお考えになりますか。
  35. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これは輸出取扱業者というものがたくさんありますが、その業者の手腕によってやることでありまして、これは外貨を割り当てるとか、あるいは政府の統制でもってやる場合には慎重にわれわれは考えておりますが、外国において商社が自由に行動することにつきましては、これは一々政府は干渉することはできないのであります。従いまして、木下商店が少数の人かは存じませんが、それが先方において仕事をしたということにつきましては、これは何ら制肘を加えることはできないわけであります。
  36. 柳田秀一

    柳田委員 制肘を加えるとかなんとか言っているのじゃないんです。この賠償協定を見ましても、これはやはり直接方式ですね。随意契約もこれは許されているわけです。しかし、このように疑惑を持たれるように、なぜこういうところに落ちたかということに対しては、やはり所管高碕さんとしては、これはやはり制肘を加えるわけではないけれども、相当綿密に調べる必要があると思うのです。これはやはり背景はまず木下商店社長木下茂、これが第三国人ブローカーであるところのC・M・チョウ、それからかって外交官をしておった豊島という木下商店の嘱託。そういうところを通じてスカルノ、それから賠償ミッションの団長のバスキあるいはスカルノ与党スウイルヨ総裁、あるいはその与党のN・U党、そういう方にこれは働きかけたことは想像するにかたくない。しかもその働きかけに石原広一郎、小林中、永野護運輸大臣、そういう人が介在しておると伝えられておるのです。しかも今日このインドネシアの政情というものは決して安定したものでなく、しかもこう申してははなはだ失礼であるけれども、民主的の基盤の確立したところまでまだ至っておりません。だからここによけい疑惑が起きるのです。そういうときに、こういうような商社信用からいっても、輸出入実績からいっても、まあまあ普通ならば考えられぬところに、しかもそれが十隻中一隻が入っているというのならば全然話がわからないでもないが、十隻のうち九隻までも随意契約してくるのは、何かおかしいと考えるのが常識です。高碕さんの長年の御経験の常識からでも、これはおかしいな、こういうふうに考えるのが当りまえだと思いますが、あなたはどうお考えになりますか。
  37. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 商業の取引につきましては、相手方があることでありますから、その相手方信用するかいなやということが第一の目的でありまして、相手方信用した以上は、その取引はその本人の責任をもってやるわけでありますから、それをわれわれは聴取するだけでありまして、相手方選出定によって、われわれはこれに従っていくよりほかに方法がないと存じます。
  38. 柳田秀一

    柳田委員 私はまず問題点を投げかけておいて、その相手方の点はあとで触れることにいたします。  そこで、日本インドネシアが昨年四月の十五日ですか、賠償協定が発効して、そうして賠償実施計画の初年度が双方合意の上に達してできることはこの協定に明らかなんですが、双方合意に達した年月日は何年何月何日ですか。これは所管藤山外務大臣に伺います。
  39. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 詳細につきましては、賠償部長からお答えいたします。
  40. 吉田健一郎

    吉田(健一)政府委員 お答え申し上げます。船舶九隻に対しまして実施計画を合意いたしましたのは、昨年の六月十七日でございます。
  41. 柳田秀一

    柳田委員 業界筋では、大体一月の終りごろから二月中旬にかけて——スカルノ大統領が来られたのは一月二十九日で、お帰りになったのは二月十五日でありますが、そのころにすでに九隻中の一隻は確実に賠償商談が成立しておる、こういっております。当時インドネシアは西イリアン問題が起って内航船の需要が非常に緊迫しておった。きのうも藤山さん御説明のように、その仏前には貿船ではなしに用船の問題が起っておった。そうして向うから使節団も来、一たんは仮調印までして、そのうち商談成立せずしてこれは不成立に終っておる。その用船交渉が、不成立に終ったので、そこで今度は買船か、あるいは賠償引き当てを目当てとしての買船の話が急速に進んできた。だから業界ではそういうふうに見ておるのですが、これを監督される運輸大臣としては、大体木下商店とそれから船舶業者との間に船舶売買交渉が始まったのは——成立したのではなく、交渉が始まったのは大体いつごろからというふうに判断しておられますか。
  42. 永野護

    永野国務大臣 木下商店インドネシア売船交渉をしているという事実につきましては、私は何も存じておりません。従いまして、正式にこれが認証という問題が起りました後でありますから、ただいま賠償部長が申しましたとき以後だと存じます。
  43. 柳田秀一

    柳田委員 そのようなことでは、私は運輸行政の監督はできぬと思うのですが、船舶局長は来ていますか。——それじゃ運輸省の事務当局から、今の答えを政府委員からさしていただきたい。
  44. 山下正雄

    山下(正)政府委員 お答え申し上げます。賠償の船のみでなくて、輸出船の問題につきましては、造船所は、それぞれの出先または自分会社の人を使いましていろいろ以前から交渉いたしております。この交渉につきましては会社によりましては事前に連絡をしてくるところもございますし、また会社によりましては商売上の機密と申しますか、そういう見地から事前に連絡してこない場合もございます。従いまして、私どもといたしましては、具体的な事実がはっきり会社から申し出があるまでは、いろいろなことをほじくりましてどうだこうだというのも、非常に誤解を招く心配もございますので、話のあるまでは私どもは無理に造船所から交渉の事実を聞き出すということをいたしておりません。従いまして、インドネシアの問題につきましては、はっきりは覚えておりませんが、以前から話をしておったかに存じます。いつごろかはっきり時日は覚えておりません。
  45. 柳田秀一

    柳田委員 そのような答弁では困る。事務当局としては、少くとも商社筋造船売買の動きがあることは当然わかっておるはずだ。こんなことがわかっていないはずはない。大体いつごろからこの売買商談が行われておるとか、あるいはそういうような交渉が始まっておるくらいのことは空気はわかるはずだ。はっきり答えなさい。
  46. 山下正雄

    山下(正)政府委員 もちろんインドネシアの問題につきましては、木下商店のみでなく、いろいろの会社も話をしておったと思いますが、私の現在の記憶では、それがいつごろであったかということは思い出すことはできません。
  47. 柳田秀一

    柳田委員 そういう答弁ですと、あなたの方のくさいものをばらしますぞ。きのう高碕さんは今澄君の質問に答えて、最初はコマーシャル・べースで商談が進められておったが、あとでこれを賠償に繰り入れた——今六月十七日ということを運輸大臣は言われました。正式にこれはもうあと声明書が出ておるくらいだ。ところが高碕さんは、四月にやはりそういうあれは行われておって、あとでそれを不本意ながら賠償計画に繰り入れたと言っておりますが、今の運輸大臣と通産大臣の御答弁に食い違いがあるように思うのですが、もう一ぺん運輸大臣一つ……。
  48. 永野護

    永野国務大臣 私が就任いたしましたのは六月でございます。今の三月、四月ごろのことは存じません。
  49. 柳田秀一

    柳田委員 運輸大臣が国会で答えることは、自分就任以前のことは全部答えられないで、それでよろしいか。
  50. 永野護

    永野国務大臣 全然触れておりませんから存じません。
  51. 柳田秀一

    柳田委員 内閣は連帯性のものとしてわれわれは質問しておる。自分就任以前のことは知らない、答えられない、そんなことで国会の審議ができますか。委員長どうです。
  52. 楢橋渡

    楢橋委員長 委員長はそれは関係がないから答えられない。
  53. 柳田秀一

    柳田委員 どうもきのうから永野さん少し頭に血が上っているようですが、二月九日ジャカルタ発AFP電によるとナジル海運相談、インドネシア政府賠償の初年度実施計画をきめる交渉に先だって、日本政府に対し、初年度計画の一部として船舶九隻を緊急調達したいとの提案を行なった、こういう提案が出ておる。これを賠償に関係がある各省大臣が知らぬわけはない。それでは今のあなたの答弁は違うじゃないですか、どうです。
  54. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 インドネシアはオランダとの関係で急速に船を要するということで、当時日本に船を用船するとかあるいは買うということを申し込んできたのは事実でありまして、当時船主協会が中心となっていろいろやっておりました結果、ある程度の商談が進められておったのは事実であります。しかしながらこれが賠償に繰り入れられましたのは、先方とすれば賠償実施計画ができることを待つことができない、非常に急を要するのだ、こういうふうなことで非常にせついてきたわけでありますが、しかしこちらとすれば賠償実施計画ができなければ契約はできない、こういうことのために廷ばしておったのであります。一部分の実施計画として船舶だけやってくれ、こういうことで多少話は進められておったのでありますが、実施計画ができてから初めて正式な契約ができたのであります。これは昨日の私の答弁と多少食い違っているかもしれませんが、よく調べました結果、本日御報告申し上げます。
  55. 柳田秀一

    柳田委員 だから私はただいま賠償実施計画ができた日とか成立した日を問うているのではない、そういうような買船の動きがあったのは一月か二月のいつごろからかということを聞いておるのはそれなんです。こういうような向うからちゃんと外電が来ておる。日本政府に提案を行なってきておる。だからその動きがあったのはいつか。現に二月九日に動きがあるでしょう。それをあなた方はっきりお答えにならぬじゃないですか。何も契約のときはいつかということを言っているのではない。いつごろから動きがあったか。船舶局長船舶部長かしらぬが、それすら答えられない。こういうようにちゃんと日本政府に提案があったでしょう、どうですか。
  56. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 昨日もお答え申し上げましたように、ナジル氏が一月の四日でありましたか来まして、用船交渉をして山県船主協会の会長と交渉されましてそれがうまくいかなかった。その後インドネシア側船舶事情が急迫しておりますことはわれわれも知っておりましたし、新造船計画等をやりまして、そうして賠償等でそれをもらいたいというような考え方はありました。しかしながら、正式にこのナジル海運相が来ましたのは六月でありまして、そのときに初めて賠償でもってこれに振りかえてやってもらいたいということを私は聞いたわけであります。
  57. 柳田秀一

    柳田委員 それでは一つこれをまとめて筋書きを申し述べておきましょう。まず第一は用船から貴船に切りかわった一月ごろから木下商店は暗躍しております。大体一月中に一隻中古船の買収の商談が成立したということは、業界では確実だと見ております。それが第一。  第二は、二月十四日の賀寿老会談で急ピッチでこの話がまとまったことは事実であります。現にその翌日の十五日でしたか、インドネシア政府から木下商店に九隻指名発注をしたいという申し出の事実があったように思いますが、この事実はどうですか。
  58. 吉田健一郎

    吉田(健一)政府委員 そういう事実はございません。
  59. 柳田秀一

    柳田委員 と同時に、岸総理の命令で、外務省、大蔵省、通産省、運輸省の各省次官にインドネシア政府からそういうふうな申し出があったから、そのようにしかるべくというような通達が出されたということを伝えておりますが、この事実はどうですか。
  60. 吉田健一郎

    吉田(健一)政府委員 そのような事実は全然ございません。
  61. 柳田秀一

    柳田委員 国会で事実はございませんというけれども、そういう動きがあったということを業界では言っております。これを裏書きするように、越えて四月四日には村上常務とC・M・チョウとがインドネシアに飛んでおります。それから四月八日に木下インドネシアに飛んでおります。これは政府から提出されました資料ともはっきりと平仄が合っております。そうしてインドネシアに行って、その行ったときにチョウと村上との間に非常に汚職があるというので、インドネシア官憲が怒って、チョウを飛行場で引っぱったという事件もありますが、それはともかくとして、最後の地固めに行っております。そうして四月十五日に正式にインドネシア賠償は発効し、次いで五月三十日にバスキ賠償使節団長が来日し、越えて六月六日にナジル海運相が来日し、ナジル海運相の泊ったホテルの机上には各商社から、各海運会社からの提出書類が山のように積まれたということであります。それほど売り込みの商戦は激しかった。結局木下商店一括契約に成功した、こういうのが大体の筋書きであります。  そこできのうも今澄委員質問しましたが、この年間計画作成前に、こういうふうに高碕さんもお認めになるように部分的に賠償交渉に入るということは、これは賠償協定の第三条の違反だと思いますが、これはどうでしょうか。
  62. 吉田健一郎

    吉田(健一)政府委員 御承知の通り、賠償協定上年度実施計画を先に作りまして、その年度実施計画で合意した物資について賠償契約をやるという建前でございます。ただいままで御説明いたしました通り、昨年の六月十八日に実施計画を作りまして、それに基いて賠償契約をいたしまして、その認証をいたしましたのが七月二十四日でございます。従いまして協定上何ら違反はないと存じます。
  63. 柳田秀一

    柳田委員 そんなことはよく知っておる。元来は賠償実施計画ができたあとといえども、こういうような賠償には特に慎重にやるべきであるにかかわらず、事実としては高碕通産大臣認められたように、事前にコマーシャル・べースであるにせよ、そういうような話が進んだということは、いよいよ疑惑を深からしめておると思います。さらに今の政府委員の説明によりますと、七月二十四日に正式にきまったと言っておられますが、六月二十一日付の日本海事新聞によると、外務省ではこのほど対インドネシア賠償本年度実施計画船舶買付として、竣工船五隻、未竣工船四隻、計九隻の契約船価格七百二十万ドル、邦価換算二十五億九千二百万円を承認した、こういうふうに六月二十一日付の日本海事新聞は発表しておる。今、七月二十四日に正式にきまっておると言うが、それよりさらに一月前に日本海事新聞では外務省はそういうふうに承認したと言っておるがどうですか。
  64. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように七月二十四日でありましたか、承認したわけでありまして、それ以前に特に話し合いは聞いておりますけれども、承認したという事実はございません。
  65. 吉田健一郎

    吉田(健一)政府委員 ただいま私が申し上げましたように、六月十七日に両国間に実施計画を合意いたしたわけであります。七月二十四日と申しましたのは、実施計画に含まれておる船に基いて賠償協定が締結され、それを認証した日であります。
  66. 柳田秀一

    柳田委員 私はこの際、たとい相手側から随意契約を言うてきたにしろ、この前の用船のときにはこちらに山県委員会というものを設けられて、今後用船に関しては窓口を一本にすると言われた。それは私は非常に公明なやり方だと思う。なぜそういうふうに船主協会、造船工業会等関係諸団体でガラス張りの機関を設けて、そうしてそこにおいて選考するなり、もう少しこの交渉をだれが見ても公明な明朗なやり方でやっていくわけにはいかぬのですか。藤山さん、どうです。こういうふうにくさいもの、くさいものというふうに——私は貝になりたいという言葉がありますが、私は犬になりたい。私はほんとうに犬になっておったら、こんなものはピシャッとかぎつけておるのですが、悲しいかな人間の嗅覚ではわかりませんよ、そこまでは。もう少しこういうふうに公明正大にやるような機関を設けたらどうですか。
  67. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 賠償は御承知のように直接賠償でありますので、インドネシア側が希望いたす商社と締結をいたすことになっております。なるべく日本が一本になってやることは好ましいことではありますけれども、現状はそういうような直接賠償の方式でありますので、それを強制するわけにはいかぬと思います。
  68. 柳田秀一

    柳田委員 その点もあとで結論として申し述べましょう。  そこで船舶局から提出された資料についてお尋ねをしたいのです。小谷汽船から五宝丸という中古船を買って、日立築港でこれを少し改装したのですが、玉宝丸というのはインドネシア名でカラワツ号と名が変ったのですが、海員組合の某氏に星船長が語ったところにより、あるいは高級船員、機関士の語ったところによりますと、神戸で試運転のときにエンジンがこわれておった、新しいものと取りかえてくれと要求したところが、それを拒絶されて、海員組合は乗船を拒否した、こういうように伝えておるのです。これに対してはある週刊誌は、「船は出て行く、うわさは残る」というような見出しをつけておる。また二月十一日のNHKの録音放送もこの機関士の言を取り上げておるのです。一見したところ、そういうようなぼろ船のようであります。そこでこの若福丸、成豊丸、玉宝丸、柏山丸、雲仙嶽丸、それぞれの竣工時の価格は幾らですか。これは事務当局からお答え願いたい。
  69. 山下正雄

    山下(正)政府委員 御説明申し上げます。若福丸の売船の価格は二億三千五百五十八万四千円……。
  70. 柳田秀一

    柳田委員 それは資料にありますからよろしい。竣工時の引き渡し価格です。
  71. 山下正雄

    山下(正)政府委員 このほかに修繕費が加わっておりますが、修繕費が若福丸につきましては五千六百五十万七千七百六十円、それから……。
  72. 柳田秀一

    柳田委員 それはみなここにあるのです。私の言うのは、若福丸が一九五五年十二月に進水しているのです。そのときの価格を聞いている。
  73. 山下正雄

    山下(正)政府委員 今ここにございませんので、さっそく調べまして御返事申し上げたいと思います。
  74. 柳田秀一

    柳田委員 今すぐここで出ましょう。
  75. 山下正雄

    山下(正)政府委員 もしここに資料がなければ、何でしたら電話で問い合せます。
  76. 柳田秀一

    柳田委員 大体インドネシア賠償が国会で問題になるというのですから、事務当局は、われわれしろうとの議員でもこのくらいの質問をするのだから、そのくらいのものは持ってきておるのが政府委員の役目ですよ。
  77. 山下正雄

    山下(正)政府委員 お答え申し上げます。成豊丸の新造価格は二億七十万円、それから柏山丸は二億三千万円、玉宝丸が二億二千万円、雲仙嶽丸が二億九百万円、若福丸が二億二千万円。
  78. 柳田秀一

    柳田委員 わかりました。それからロイドの減価率ですね、減価率をかけて若福丸は大体舶齢が三年、成豊丸三年、玉宝丸一年四カ月、柏山丸一年四カ月、雲仙嶽丸二年です。そこにロイドの減価率があるでしょう。それをかけてすぐはじいてみたらどうなります。
  79. 山下正雄

    山下(正)政府委員 この計算はまだやっておりません。
  80. 柳田秀一

    柳田委員 よろしい。それでは竣工後三年ではロイドの減価率で幾らになりますか。八〇%ですか、八五%ですか、三年で幾らになりますか。
  81. 山下正雄

    山下(正)政府委員 ただいま的確な数字は申し上げられませんか、後刻計算をいたしたいと思います。
  82. 柳田秀一

    柳田委員 よろしい。私はあまりこまかいことを予算委員会で問おうとは思っていない。ただ船には減価率というものがある。新造してから三年なり四年たってくると、新造船の価格かける八〇%とか、八五%とかそうなってくるのです。だから雲仙嶽丸にしても二億九百万円、それにかりに八〇%かけたら二、八、十六ですから一億六千万円くらいになる。目の子算で大体頭の中で理解しておいて下さい。そういう前提に立って船の値段というものはさまっていく。そしてさらに船の値段の決定的価値というものは、マーケット・プライス、海運市況です。そうするならば売買の行われた昨年のちょうど今ごろから夏にかけての海運市況というものは、大体どんなものですか。これは運輸大臣、あなた商売だから御存じでしょう。
  83. 永野護

    永野国務大臣 かなり不況であったことは認めておりますけれども、どの程度のものであったということはただいま宙には記憶しておりません。
  84. 柳田秀一

    柳田委員 それでは政府委員にお尋ねしましょう。当時海運市況、特に内航船の海運市況はどういう工合であったか、これが第一点。それから第二点は過剰船腹はどれくらいあったか。それから積地におけるところの滞船はどの程度あったか。この三つを一つお答え下さい。
  85. 朝田靜夫

    ○朝田政府委員 お答えいたします。昨年の当時の海運市況は、スエズ運河の直後、世界海運市況が転落をいたしまして、その後の余波を受けて相当苦しい状態になっておるのであります。英国海運会議所の不定期運賃指数も、おそらく昭和二十七年を一〇〇といたしますと、三分の一程度に下っておると思います。内航につきましてはこれと状況がだいぶ違うのであります。内航海運は御承知のように慢性的不振であります。一方において国鉄の輸送、木船、機帆船の輸送というものとの間に両ばさみになっております。内航船の運賃というものは、慢性的な不振であると思います。ただ今詳しい運賃の額は手元にございませんが、ただいまでも木船の標準運賃を割っております。当時とあまり大差はない、こういうふうに考えます。
  86. 柳田秀一

    柳田委員 それでは結論として、とにかく非常な底入れであったということだけはお認め願えるのですね、海運局長、どうですか。
  87. 朝田靜夫

    ○朝田政府委員 お答えをいたします。室蘭、京浜の二十二年の上期の数字がございますが、一千百円であります。当時はおそらく九百三十五円程度ではなかったかと思っております。底入れであったかどうかという点でございますが、慢性的にこの傾向というものはあまり変りませんので、底入れであったかどうかということにつきましては、ちょっとお答え申し上げられませんが、慢性的不振のそういう傾向がずっと持続しておった、こういうふうにお答えしたいと思います。
  88. 柳田秀一

    柳田委員 それでは私の方で調べた内航海運市況を一つ申し述べてみましょう。  そのころは荷物は非常に減っておった。そうして船腹は過剰であった。さらに昨年の初めに朝鮮動乱から最も底入れをした。それをさらに去年の五、六月ごろは割っているんです。神戸の海運筋によると、もうすでに資金難から船を持ちこたえることができない。これを売る者が出てきたり、一ぱい船主の倒産も出ておるというふうに伝えられておる。特に市況は夏場を迎えて、今も言うように慢性不況で、これはもう打開ができない。積地におけるところの滞船はさらに増加の傾向にある。そこへもってきて、当時ちょうど長期の炭労ストがあった。そういう影響がある。さらに産業界が操業短縮をずっと継続しておった。そこへもう一つ悪い要素には、中国貿易が全面的に中止になった、こういうような悪い材料が積み重なって、相当量の浮動船腹が内航船にみな入ってきたというようなことで、不況はかって見ざる深刻化であるというのがこの当時の海運市況、特に内航海運の市況であります。そういうように考えて参りますと、建造価格ですでに二億円そこそこ、それにさらに三年から四年たっておるとすると、それからさらに減価率をかけたら減っておるにきまっている。しかも今言うように船すら持ちこたえられぬというほど底入れの海運市況が悪いときに、建造価格を上回って若福丸が二億三千五百万円何がし、成豊丸が二億三千七百万円何がし、玉宝丸が二億三千六百万円何がし、柏山丸が二億三千五百万円何がし、雲仙嶽丸が二億三千六百万円何がしということで売買が行われておるということは、これは明らかに不当です。この数字は明らかに不当であると思うんですが、これに対して所管運輸大臣はどう思いますか。
  89. 永野護

    永野国務大臣 お答えいたします。私は当時の市況はよく存じておりませんけれども、今の建造価格とそれから実際の売買価格とは、建造価格が安かったから安く売ろうというようなことはあり得ないのでありまして、大体その当時の他の売船の例を見まして、これが他の売船に比べて非常に不当に高にというようなことがあれば、あるいは考えなければならぬかもしれませんけれども、しかし建造価格が安いからそれを高く売ったということだけで責めるのはどうかと考えます。
  90. 柳田秀一

    柳田委員 私は何も建造価格を言っているんじゃない。建造価格の減価率を言っている。特に大事なことは、やはりこういうことはマーケット・プライスで商談を行うんだから、その当時の海運市況がバックになっておるということを言っておる。建造価格がどうという、そんなことはちっとも言ってない。あなたは自分の都合のいいことばかり答弁しておる。一体運輸省はそのような背景のもとに、だれが見ても多少不当と思われるような売買の値段になっているが、これを認証されたのですか。認証するときには、私の言うような観点からやはり検討して認証を与えなければならぬと思います。賠償というものは相手国に出すのですよ。出したものは賠償から免責されるのですよ。日本の側から言うたら、ボロ船でも高く売ったらそれはいいということは一応言えますよ。しかし賠償はコマーシャル・べースではない。賠償というものは国際的な背景で、国家血税でやるのです。戦争に負けた者は戦争の償いをするのです。それにはやはり特に安い値もいかぬし、特に高い値もいかぬ。そういうことは国際的な信用に関するものです。完全なコマーシャル・ベースではないのだ。そのようなことで賠償をやってはいかぬ。だから認証を与えるというのは、運輸省としてはこの値段に対してはもっと厳密な検討をなさってしかるべきだと思いますが、運輸当局はどうですか。
  91. 山下正雄

    山下(正)政府委員 ただいまの御質問は、外務省の方からお答え願った方が適当かと思いますが、賠償協定の中で、直接民間と向う政府契約をいたすことになっております。その価格につきましては、協定の精神の上で政府の方がとやかく言うことになっていないような取りきめになっております。従いまして船の売買につきましては、持っております会社と、それから向う政府とお互いの相談の上の取りきめになっておる。従いまして、私どもは価格につきましては触れないことにいたしております。
  92. 吉田健一郎

    吉田(健一)政府委員 船の問題という個別的な問題を離れまして、認証の御説明を申さしていただきます。協定の第四条に三つの認証の規準が書いてございます。御承知の通りだと思いますけれども一つ賠償協定の規定、二つ目は両政府協定の実施のため行う取りきめの規定、三つ目に当該時に適用される実施計画、つまり協定上認証の基準と申しますものはこの三つでございます。先ほど来、他の政府委員から申し述べましたように、この三つが充足されておりますならば、日本政府といたしましては認証を拒否する立場にはないわけでございます。
  93. 柳田秀一

    柳田委員 賠償というものは、たとい船を引き当てるにしても、日本の金は外国にいくわけなのです。それならば今の賠償部長の答えのように政府業者まかせなんだ。ただ認証するのだというのは、賠償という国民血税で、業者幾らもうけてもよろしいという結論になりますがどうですか。それは業者の腕次第だというのですか。
  94. 吉田健一郎

    吉田(健一)政府委員 先ほど申しましたように、協定四条で書いてある認証の基準はこれだけでございます。しかしながらそのときに通産当局からも御説明があるかとも存じますが、同時に認証のほかに輸出関係法令の審査をいたしまして、これに適合するか適合しないかということを同時にやるわけであります。協定上の認証とは違いますけれども同時にいたします。従いまして、フロア・プライスとか、シーリング・プライスとか、上と下と法令によってきまっているようなものにつきましては、これはそれに違反いたしました場合には、認証拒否をせざるを得ないということになるわけでございますが、それらの以外の事項に関しましては直接方式、しかも商業手続にのっとって契約されるという建前になっておりますので、日本政府といたしましては認証拒否をする立場にはないということでございます。
  95. 柳田秀一

    柳田委員 認証拒否をする建前でないというが、少くとも賠償実施は厳粛な日本政府の義務です。それならばこういう価格に対しても、これはみな賠償計画に入ってくるわけですから、こういうものの値段というものは、単に業者の腕次第というか、そういうようなあれ次第であとはとんと押すのだ、こういうことではわれわれ国民はたまったものではない。もうけるのは全部業者じゃないですか。賠償国家の中に一人でももうける者であったら許さぬと思うのです。業者も損をするのはあたりまえの覚悟で賠償はやるべきだと思う。賠償によって一銭でももうけようということは許されぬと思う。それに対して、あなたの方はただそういうような、なっていない答弁、そんなことで賠償がやっていけますか。  それでは大蔵省に聞きますが、こういうふうな業者木下商店とが船を売買したときには、大蔵省の方にはこの売り値、買い値というものは届けることになっておりますか、それはどういうふうになっておりますか。
  96. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 お尋ねの趣旨がちょっとわかりかねるのですが、会社の所得の問題、税に関する問題としてのお尋ねかと思いますが、こういう事柄は税務署において十分調べます。
  97. 柳田秀一

    柳田委員 それでは、昨年こういうような売買契約が行われたときの売り値、買い値に対する資料は、現在大蔵省にありますか。
  98. 北島武雄

    ○北島政府委員 お答え申し上げます。御質問がございました木下商店の決算期は、たしか十月期でございますので、昨年の末日までにおそらく申告されていると存じます。ただいまその申告の資料は手元にございません。
  99. 柳田秀一

    柳田委員 それじゃ早急にこの委員会に、その売り値、買い値ともお出し願うように。よろしいですね。  そこでこの資料を見ておると、今言いましたように、中古船を買った値段が、船齢が二、三年平均のものが一隻当り大体二億三千五、六百万円についているわけです。そこで貨物船を貨客船に直さなければならぬので、造船所でこれを改修しておりますが、この価格が大体一隻当り四千五百万円ないし五千六百万円についているわけです。そうすると、中古船の方は認証はどれくらいになったかというと、若福丸については二億九千万円ほどになっておる。成豊丸もやはり二億九千万円になっておる。ところが新造船が四隻ある。この新造船の方は一隻当り二億六千七百万円になっておりますね。それから新造船も中古船を直したのも、ディーゼル・エンジンはどちらも千四百馬力一基つけております。それから速力も大体一一・五ノット。それからグロス・トン、デット・ウェートというようなものは、ほとんどみな同様です。それから乗客定員もほとんど同様です。条件はほとんど同じなんです。そう見ると、新造船の方が大体二億六千万円そこそこで、中古船を改造した方は約二億九千万円、三千万円ほど中古船が高くついておるわけですが、これは一体どういうことです。運輸大臣、どうですか。
  100. 山下正雄

    山下(正)政府委員 お答え申し上げます。改造船につきましては、従来でき上っております船の部分を取りこわして、新しい設備をつけるというような仕事がございます。従って、初めから客船なら客船として設計した方が船は安上りになる。要するに、取りこわしの費用とか、そのほかいろいろの雑工事がこれに伴いますので、修繕費が割高になるわけであります。
  101. 柳田秀一

    柳田委員 自動車でも、やはり新車の方が高いんですね。新車の方が高いにきまっている。これは常識ですよ。大体古い物が値打ちがあるというのは、骨董品か政治家ぐらいですよ。(笑声)古いので値打ちがあるのはそんなものでしょう。中古船が新造船より高くつくなんて、そんなばかなことはないです。  そこで、この点はさすがにエコノミストでもついております。エコノミストはどういうふうに言っておるかというと、「新造船は当時鋼の材安値で船価も安く、業界筋では木下商店契約船価は一隻当り三千六百万前後高いとみている。四隻で一億四千四百万円の高値になるわけ。」こう言っておる。そこへもっていって、中古船が、先ほど言ったように市況は悪い、もう建造時から値は下っておるにもかかわらず、これまた普通考えて五、六千万以上に高くついておる。これが五隻で、約三億ほど高くついておる。これを加えると、約五億から六億くらい、木下商店がまずもうけておると見なければならぬ。そこへもってきて、この前の造船汚職のときに明らかになったように、船の売り渡しにはリベートがおそらくついておるんじゃないか。そうすると、この前の造船疑獄でも明らかになったような率をかけると、木下商店はこの新造船と中古船の九隻だけで、ざっと目の子算用少くとも六、七億の利さやをかせいでいるということが大体わかると思う。だからこそ木下商店が暗躍したものもむべなるかな、こう言わなければならぬ。そこで、この五つの船が結局インドネシアに送られるのですから、日本国籍を喪失しなければならぬ。これは船舶法で登記所に届けなければなりませんね。それはいつなされましたか。これは法務当局ですか……。
  102. 山下正雄

    山下(正)政府委員 お答え申し上げます。木下商店インドネシア政府との間に行いました船舶売買契約は、賠償対象船の所有者の代理者として契約したのであります。この事実は、政府の認証しました当該船舶の売り渡し契約書によりましても、はっきりいたしております。すなわち、インドネシア政府に対しまして船舶を売りましたものは、木下商店ではなくて、当該船舶の所有者であるわけであります。従って、この売り渡しました船舶につきましては、木下商店等と当該船舶の所有者との間に所有権の移転があったわけではなくて、従って、船舶の所有者がインドネシアに船を渡しましたときに、そこで初めて国籍を喪失しておるということになっております。所有権の移転は、船舶の所有者と木下商店との間にはございません。
  103. 柳田秀一

    柳田委員 そうすると、木下というのは完全な中間第三者ブローカーということになるわけですね。その点はまたあとで尋ねましょう。  このエコノミスト誌を読みますと、「中古船を売った反田商会などはそのカネで一億七千万円の新造船をつくったほどで、売渡し船主の政治献金などもうわさにのぼっている。問題は、これらの巨額の木下商店の利益の一部が岸首相や永野運輸相らに贈られたといわれている点である。もしこれが事実だとすれば岸首相らは賠償のリベートをとったことになり、国民血税で私腹をこやしたわけで、重大汚職といわざるをえないことになる。」こういうふうに書いてある。これは私が言うのじゃない。(笑声)やはりこういうような疑惑が持たれるのです。これは毎日新聞社が出している。そう名もなき雑誌ではない。相当信用のある雑誌なんです。やはりこういうような疑惑が持たれる。一人私がここで言っているだけでなしに、頭の普通に回転する者ならば大体それくらいの疑惑は持つのです。だから私はこれを今尋ねておるわけなんです。  そこでこれは事務当局でよろしいのですが、中古船の売買の手数料は大体幾らくらいが妥当だと見ますか。
  104. 山下正雄

    山下(正)政府委員 お答え申し上げます。中古船の売買の手数料は、船の大きさまたはその契約が含みます危険の程度によりましていろいろございます。大きな船では二、三%、また特殊なケースにつきましては一割方またはそれ以上をこえるような場合も間々ございます。
  105. 柳田秀一

    柳田委員 大体不動産売買の基準から見ると、一千万円以上五千万円が大体一ないし三%、それから一億円以上は大体一%以下、こういうことになっておりますから、二億円ならばこれは二百万円以下、こういうことになると思うのです。その際にリベートは認めますか、認めませんか。
  106. 山下正雄

    山下(正)政府委員 今の割合の問題につきましては、船の大きさ等をお考えになっておらないので、大きな船につきましては比例は少うございますが、小さい船につきましてはその比率が多くなります。  それからリベートということでございますが、これは商習慣でやっておるやに聞いております。従いまして私の方といたしましてはリベートが幾らであるか、そういうことを聞くこと自体がやぼな話でございまして、全然私どもは存じておりません。
  107. 柳田秀一

    柳田委員 リベートはこれは商習慣でやっておるやうに承わる、こういうことです。このリベートの問題は、この前国会で非常な問題になった。あれからまだそう日もたっておらぬ。その担当のあなたが、やに承わるというのではどうにもならぬ。この前大へん問題になったばかりですよ。リベートに対しては、あなたはもう少し明確に答えて下さい。やに承わっておるではどうにもならぬですよ。
  108. 山下正雄

    山下(正)政府委員 お答え申し上げます。たとえば船が日本の港に参りまして造船所で修繕をやるような場合もございます。そのときに船の修繕費が幾らであるか、それによって船長が当然の権利をしてリベートを要求するような場合もございます。従いまして外国を相手にしました場合のリベートというものは、実はどの程度が妥当なものであり、また実際どの程度になっておるのかということにつきましては、私どもは調べをいたしておりません。
  109. 楢橋渡

    楢橋委員長 岸内閣総理大臣から発言を求められておりますから、これを許します。岸内閣総理大臣
  110. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど柳田委員の御発言中、エコノミストの記事を御引用になりましたが、これは単に私の名誉ということでなしに。日本の政治の名誉のために、そういう事実は絶対ないということを明確に申し上げておく。しかしエコノミストの記事に対しまして、どういうふうな処置をとるかということは、私別に考えますが、柳田委員の御発言にありましたから、その点を明確にしておきます。
  111. 柳田秀一

    柳田委員 私も日本国の名誉のために、また岸先生の名誉のためにも、さようにあってほしいと思います。  そこでリベートの問題に返りますが、リベートは私は認めてはいけないと思う。ただ商習慣上これが一つの慣習になっておるということならば、これも習慣でありましょうが、会社の帳簿にきちんと載って、そうして正当に経理されておるならば、まあこれは違法でないという解釈も一部にあるのです。しかし会社の帳簿にも載せずして、ただ話し合いの中のリベートというものは、これは明らかに法律違反であり、これは刑事事件になるのでありまするが、今度の木下商店の各中古船五隻の売買の裏にはリベートがあるように伝えられておる。大体この公称価格だけでも一億四千万円ほど高いが、その上にさらにそれと同額のリベートがあるのではないかと、ふんぷんとうわさされている。こういううわさをされたときに、司法当局はもう少し洗う努力をするかしないか、この点を一つはっきりして下さい。
  112. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまいろいろお話がございましたが、警察権の立場といたしましては、単なる情報記事等に軽卒に踊らされるということは、かえって警察権の威信のために私はいかがかと思うのであります。同時に情報あるいは聞き込みというようなものも捜査の端緒になることはあり得るわけでございますが、この際私明らかにしておきたいと思いますことは、わが国の警察陣というものはまことに健在でございまして、国民の御信頼に必ず期待し得るように常時適切な態度をとっておるわけでございます。今までのところで、ただいま御指摘になるようないろいろのことにつきまして、私は警察当局からも何ら報告にも接しておりません。
  113. 柳田秀一

    柳田委員 これも事務当局でよろしいが、この中古船売買のときの検査料は、大体これはどのぐらいが妥当だと見られますか。
  114. 山下正雄

    山下(正)政府委員 検査料につきましては、日本海事協会と検査の契約をいたしております。額につきましてはここに来ております事務の者が知っておるかと思いますが。ちょっとお待ちを願いたいと思います。  失礼いたしました。船主の代行といたしまして、五百七十万円の検査料を一隻について海事協会からとっております。
  115. 柳田秀一

    柳田委員 私が尋ねたのでやや妥当な答弁はそれ一つだけでしたね。大体鋼船ならばまあ二百何ぼ——今五百何ぼと言われたのですか。——それでは私の質問を訂正します。大体鋼船の検査料というものは一%前後なんです。木造船は少し高い。そうするとこれは二億三千万円ですから、約二百三十万円くらいなんですがね。これは今五百でしたか、私二百と聞いたが……。
  116. 山下正雄

    山下(正)政府委員 五百七十万円です。
  117. 柳田秀一

    柳田委員 これは非常に見込み高ではないですか。どうですか。あなたの方はそのまま認証したのですか。
  118. 山下正雄

    山下(正)政府委員 ただいまの五百七十万円は、検査のみでなくて船主の立場を代行いたしまして、その工事が適当であるかどうか、また場合によっては設計、仕様等について意見を述べるというような、そういう技術料が加算されております。
  119. 柳田秀一

    柳田委員 その価格には回漕費は含んでおりますか。
  120. 山下正雄

    山下(正)政府委員 五百七十万円の中には回漕費は含んでおりません。
  121. 柳田秀一

    柳田委員 いや、この二億三千万円に回漕費は含んでおりますか。
  122. 山下正雄

    山下(正)政府委員 回漕費は含んでおりません。
  123. 柳田秀一

    柳田委員 それはどこ持ちですか。
  124. 山下正雄

    山下(正)政府委員 インドネシアと別途契約をいたしまして、そうしてその分を新たに賠償の認証額として追加をいたしております。
  125. 柳田秀一

    柳田委員 回漕費は……。
  126. 山下正雄

    山下(正)政府委員 そうです。
  127. 柳田秀一

    柳田委員 いよいよこれはぼろいですね。そうすると、この船を買って、これをまた造船所なんかに回しますと、そういうような回漕費は別途でまた追加するのですか。入れるのですか、どうなんですか。この二億三千万円に改造費、修繕費を加えた約二億九千万円、この中に入っておるのかおらぬのか、どうなんですか。
  128. 山下正雄

    山下(正)政府委員 回漕費は入っておりません。改造費は別でございます。
  129. 柳田秀一

    柳田委員 そうすると、船を買った、それを修繕した、それは入っておるが、回漕費は入っていないのですね。しからば、そこに非常に不思議なことは、この中古船を買うときに、認証時九〇%をちゃんと渡す。そうしてこれはおそらくインドネシアに引き渡したときに、残りの一〇%を渡す。これまたぼろいと思う。今ごろ計画造船でも何でも、新造船をやるときにはまずこれが取りきめたときに、もう大体三〇%というのが私は相場だと思う。こんなものをしょっぱなに認証したときに九〇%もらうでしょう。それじゃ自分一つも金は要らぬですよ。そうして今言ったように、廃船処分するときには、これはもとの業者から廃船処分するのでしょう。そうすると、認証時においては、これはまだもとの旧船主、旧オーナーが持っている。それから改造したときも、もとの旧オーナーが持っている。ところがこの二億三千万円の九〇%というものは、ちゃんと木下商店にいっているんですよ、賠償勘定から。そうすると、木下というものは、ぬれ手にアワで自分は何にも持たずにやれる。そうしてその改造の費用すら、これは別途会計だという。こんなけっこうな商売はないですよ。これが賠償で許されますか、どうです。
  130. 山下正雄

    山下(正)政府委員 いろいろ御議論はあると思いますが……。     〔発言する者多し〕
  131. 楢橋渡

    楢橋委員長 静粛に願います。
  132. 山下正雄

    山下(正)政府委員 現在の行いました契約は、さようになっております。
  133. 柳田秀一

    柳田委員 そこで協成汽船のごときは、船会社自体が認証をとろうとしたのです。こんなものを中間ブローカーの木下に認証をとらすのでなしに、船会社自身が認証をとろうとした。ところが外務省はこれを押えたという。今日ではもとの船会社、オーナーと木下とは口うらを合わしているでしょう。これはもう口を割ることはできませんが、当時は船会社自身が認証をとろうとしたが、外務省は許さなかった。外務大臣、どうですか。
  134. 吉田健一郎

    吉田(健一)政府委員 ただいま御指摘のような事実は全然ございません。
  135. 柳田秀一

    柳田委員 だから、木下商店は、もう去年の十月ごろから、そろそろこの問題は国会で問題になるというので、たいぶ手を回しております。これは木下商店の店員の話でありますが、帳簿を焼いたり書き直したり、大へんあわてておるそうです。  それから、昨年の十二月の二十二日と三十三日に、運輸省の職員に木下商店から英国製の洋服地を歳暮として送ったが、どうですか、この事実は。運輸省の船舶局の職員が、英国製の洋服地を昨年の十二月二十二日と二十三日の両日、木下商店から歳暮としてもらったかもらわないか、もらわないならもらわないと、ここではっきり言って下さい。
  136. 山下正雄

    山下(正)政府委員 こういう事実は私ども存じておりません。
  137. 柳田秀一

    柳田委員 それでは次に、私は資料要求で配付された資料について一つ尋ねてみますが、第一に私が資料要求したのは、バイヤーに、特にC・M・チョウだと思うのですが、木下商店から円払いの許可をきっと求めておると思うのです。その円払いの許可を求めた年月日と、相手先と、その金額をお知らせ願いたいと言ったところ、その回答は、昭和三十一年度以降、通産省では許可した実績はない、こういうことですが、これは事実ですか。
  138. 酒井俊彦

    酒井政府委員 資料を提出いたしましたように、そういう事実は全然ございません。
  139. 柳田秀一

    柳田委員 これは、その担当課の課員が言っておりますが、うちの課長は資料を要求されたが、非常に困って、ほとんど台帳も調べず、そのまま該当なしと答えておる、こういうふうに私のアンテナには入っておるのです。もしも台帳を調べて、そういう事実があったらあなた方大へんなことになりますよ。どうですか、ほんとうにありませんか。
  140. 酒井俊彦

    酒井政府委員 大蔵省に御要求になりました資料に関する限り、全部台帳をとりまして、その事実はないということを確認いたしております。
  141. 柳田秀一

    柳田委員 通産省はどうですか。
  142. 松尾泰一郎

    ○松尾(泰)政府委員 木下商店は鉄鋼原材料のおもな輸入業者でございます。従いまして、粘結炭あるいはドル地域からのくず鉄等については、当然一般の輸入業者と同様な外貨割当の許可を得ております。別段、それにつきましてはおかしいところはごうもございません。
  143. 柳田秀一

    柳田委員 私は外貨割当のことで聞いたのではないので、円払いのことを聞いたのです。  それからもう一つはこれも通産省ですが、木下商店の三十年以降の年度間の輸出入の取扱い実績を資料要求したのです。ここへ出てきておるのですが、この数字にはこんりんざい間違いりあませんか。
  144. 松尾泰一郎

    ○松尾(泰)政府委員 いろいろ慎重に調べた結果でございまして、全然誤まりはないと思っております。
  145. 柳田秀一

    柳田委員 これは台帳を引っぱり出して、木下商店のその年度間の輸出承認書と輸入承認書を取り寄せまして、それを加えて全然積み重ねたら出るのですが、これは木下商店から店員が鉛筆書きの走り書きを持ってきて、そうしてそのまま——私の資料要求が多少おそかったのでありますが、そのままここに出したというふうに聞いておるのですが、どうですか。もしもこういうような国会提出の資料がずさんなものならば承知しませんぞ、どうですか。
  146. 松尾泰一郎

    ○松尾(泰)政府委員 正確なものと信じております。
  147. 柳田秀一

    柳田委員 信ずるのですか。次は、私は木下商店及びチョウとの間に預かり円の疑惑があります。このように非常に政商としてやみで暗躍するというからには、相当の政治資金がばらまかれたであろうし、また伝えられるところによると、だれにだれ、だれにだれというのがありますが、国会の品位から私は言いません。言いませんが、相当ばらまかれている疑いがある。これは預かり円の疑いがある。これは預かり円なら明らかに為替管理法違反です。この木下商店の年間収支及びこれに対するところの税金を取り寄せてみました。昭和二十二年十一月から三十三年十月までの赤字は、これは四億七千百二十七万二千三百四十四円、従って税金ゼロ、こういうことになっている。こういうような赤字決算になっておる。このような木下商店が、私はそう政治的に動けるはずがないと思うのです。国家に税金も納めていない、そのような木下商店が、そう派手に動けるわけがない。必ずここに疑いが、預かり円か何か為替管理法違反をやっているだろうということは、当然予測されるのです。それでアンダー・バリュー方式によって、インドネシアの方に現に外貨を残しておる、ルピア貨にして、あるいはドルにして残しておく、あるいは逆に日本に円を預かっておくというようなことを、どうもやっているのではないかという疑いがあります。こういうものはやがておそらく決算委員会その他で問題になると思います。また愛知さんに問うても愛知さんはまともな返事をしませんから、司法当局は十分今からあらかじめこれに対しては警戒をしておいていただきたいことだけは、ここではっきり申し上げておきます。  それからその次は、今度は木下茂社長と村上常務に渡した外貨ですが、この大蔵省の資料ですが、これを見ますと、私は不思議だと思うのです。まず第一は、昭和三十年九月二十日の認可月日は、香港、フィリピン、インドにおける貿易促進並びに市場調査、こういうことなんです。このときの外貨は百四十五がドル相当のポンドです。二百九十がドルです。そうすると、百五十と二百九十として四百四十ほどのドルになる。ところがこの香港からフィリピン、インドをぐるっと回ってみると、大体飛行賃だけで八百ドルぐらい要ると思うのです。そうして木下商店資本金は一億円以上あるのですから、大体滞在費一日二十五ドルぐらいは割り当てるのです。そうすると飛行機賃もない。かすみを食って生きていたのか、どうして泊っていたのか、ホテルの滞在費も何も出ないのです。この数字からどういうことが説明できますか。
  148. 酒井俊彦

    酒井政府委員 お答えいたします。ここに出しました資料は、外貨割当額とございますが、滞在費だけであります。航空運賃は国内で円払いで、こちらの日航に乗りましても外国航空会社に乗りましても、円で払いますから……。
  149. 柳田秀一

    柳田委員 全部滞在費ですか。
  150. 酒井俊彦

    酒井政府委員 滞在費でございます。単価は二十四ドル、それにこれは特別外貨でございますから、五ドルつけてございます。
  151. 柳田秀一

    柳田委員 しかし幾ら航空運賃は円払いだって、円はドルになるのでしょう。
  152. 酒井俊彦

    酒井政府委員 円払いにいたしまして、それでこちらで利益が出ましたものは、外国航空会社につきましては利益は送金させております。その限りにおきましては外貨になるわけであります。これは別に航空会社、運輸業者の海外送金ということになるわけでありす。なお円払いの点につきましても、その円を支払った額を特別外貨の中から引き落して計算いたします。従いまして滞在費だけが外貨割当ということになるわけであります。
  153. 柳田秀一

    柳田委員 それから今日インドネシア賠償使節団の事務所は虎ノ門ビルにありますが、世上伝うるところによると、このミッションの行動は非常に派手だというように伝えられておる。夜な夜なナイト・クラブに行くとか、非常に派手だというのですが、この使節団の費用というものは、賠償費のうちから日本政府が落していくことになるのじゃないかと思うのですが、それはどうですか。
  154. 吉田健一郎

    吉田(健一)政府委員 その通りでございまして、賠償年度実施計画の中に、ミッション経費という項目を起しております。
  155. 柳田秀一

    柳田委員 それならばその賠償使節団のミッション事務経費を資料として早急提出して下さい。いいですね。  きのう今澄君が、ジャカルタ十二日発共同で、インドネシア海運当局からさらに二十一隻の賠償追加まとまる、こういうような記事を取り上げて質問いたしました。総理は、内容は具体的になっていない、藤山さんは、一月二十七日に情報として黄田大使からそういうことを言ってきておる、この情報は各省に回した、ところが高碕さんと永野さんは全然聞いてないというようなことで、だいぶもめたのですが、これは情報というのは、どういう意味ですか。藤山さんに黄田大使から私信でも来たのですか。それとも公電でも入ったのですか。どういうことですか。
  156. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 在外大公使は、その任地におきます各種の政治情勢なり経済情勢、あるいはそれらの問題につきまして、それぞれ情報を集めて知らせて参ります。そういう意味において情報でありまして、公電と申しますのは、何か当該国との直接の関係の仕事なり、あるいは当該国の外務省との接触、そういうものに関する事案が公電であります。その他のものは一応情報とわれわれは呼んでおります。
  157. 柳田秀一

    柳田委員 そうすると、すでに本年度実施計画実績以外に、二十一隻ですか、賠償追加まとまる、こういうような内容の公電というものは来てない、そういうことですか。どうなんです。
  158. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 まあ在外公館から来ます電報を、新聞社と分けたり何かする意味において、一応公電と総括的にはよく言っておりますけれども、しかし実質的内容から申しまして、その土地の経済事情なりあるいは政治の情勢なり、新聞紙上からとりましたもの、そういうものを在外大公使としては、情勢判断のためにいろいろ送ってくることがございます。当該国政府と接触して向う政府が言ったというようなものは公電と、厳密にいえばわれわれ言うわけであります。新聞紙上で、こういう政治情勢があるとか、あるいはこういう経済関係のいろいろな状況があるというようなことは、まあ情報としてわれわれ考えております。
  159. 柳田秀一

    柳田委員 それが一月二十七日とあなたはおっしゃいましたが、それ以降にはそういう情報は入っておりませんか。
  160. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 特に入っておりません。
  161. 柳田秀一

    柳田委員 二月七日に黄田大使から何かあなたのところに情報ですか、公電ですか、賠償に関して入っておりませんか。
  162. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私が記憶している限りにおきましては、ないと思いますけれども、調べてみます。私が全部見ているわけではありませんから……。
  163. 柳田秀一

    柳田委員 じゃすぐ調べて下さい。
  164. 吉田健一郎

    吉田(健一)政府委員 ちょっと今記憶にございませんが、お時間をちょうだいいたしましたならば、調べて御報告いたします。何かヒントでもいただきますれば、はっと思い出すことがあるかもしれません。
  165. 柳田秀一

    柳田委員 とにかく賠償に関して、二十隻追加とか二十一隻追加とか新聞に出ております。
  166. 吉田健一郎

    吉田(健一)政府委員 そのような公電はございません。
  167. 柳田秀一

    柳田委員 それではお尋ねしますが、二月七日藤山外相あて黄田大使公電、ナジル海運相は、さきに第一次賠償実施計画において日本側より船舶十隻を受けたが、さらに木下商店に対し、インドネシア海運省は巡視艇二十隻、一隻の価格三百五十四万ドル、総計七千万ドル——参考にこれを邦貨に換算しますと、二百五十二億円——総計七千万ドル契約した、この決済条件は契約時五%、各船骨備えつけ時五%、完成時一〇%、合計二〇%、残額は八年間十六回の均等払い、金利は年五%ととす、決済方法はインドネシア銀行から取り消し不能のLCを全額開設し、賠償引き当てを担保とす、こういうような公電は入っておりませんか。
  168. 吉田健一郎

    吉田(健一)政府委員 そのような公電はまだ入っておりません。
  169. 柳田秀一

    柳田委員 この公電を各省に外務省は回した覚えはありませんか。
  170. 吉田健一郎

    吉田(健一)政府委員 昨日藤山大臣から御説明がございましたように、巡視艇二十隻三百五十万ドルという情報、これは大臣が申し上げました情報でございますが、これは事務レベルで各省に回しましたが、ただいま御指摘のような公電もございませんし、またそういう情報を外務省から各省に連絡いたしたこともございません。
  171. 柳田秀一

    柳田委員 これは実は価格が総計七千万ドルなんです。これを木下商店契約したと伝えておるのですが、これは大へんなことなんですね。それかあらぬか、昨日の新聞にジャカルタ十二日発共同というのがきておるわけです。これを今澄君も尋ねたわけですが、そうなって参りますと、こういうような二十隻にしろ、二十一隻にしろ、その金額は何千万ドルにしろ、こういうものはもう今年の賠償計画だけでなしに、次年度、次々年度に全部及んでくる。そういうものをたとえコマーシャル・べースにしろ契約しておいて、それの担保が賠償引き当てになるのか、賠償に組み入れることになってくると、いよいよこれは一社に独占される。こういうことになってくると、これは大へんなことだと思う。だからこれはもう少し事実を確認したいと思うのですが、そういう情報が入って、しかもその情報は、ナジル海運相からそういうことを黄田大使に言ってきたのか。ただインドネシアではそういうことが伝えられておるのか。その辺のところはどうですか。インドネシア政府として、これに対しては大体こういうような方針でおるのだ、こういうように解釈してよろしいのですか、どうですか。
  172. 吉田健一郎

    吉田(健一)政府委員 ただいま申し上げました通り、二月七日の御指摘のような趣旨の公電はないのでございまして、何ともお答えいたしかねます。
  173. 柳田秀一

    柳田委員 それではこの二月十二日の共同からいきましょう。インドネシア海運省当局者は、十二日賠償計画に基き、日本からさらに二十一隻の船舶を調達することに大筋の話し合いがまとまり、近く仮調印されると語ったというのです。これはインドネシア海運当局談になっておるわけです。右船舶の取扱い商社木下商店、伊藤万といわれる。これは朝日新聞の伝えておるところですが、こういうことになってくると、二十隻ですから、これはまた次年度、次々年度にくるわけです。そうするとこれはインドネシア船舶賠償というものは、ほとんど木下が独占するということになってくる。これはインドネシア海運当局談なんです。向う政府当局から何も聞いておらぬが、ただ新聞紙上その他現地の新聞紙上の情報ではという藤山大臣の話でありますが、そこは食い違うのです。新聞紙上の情報ではなしに、インドネシア政府がこう言っておる、こういうことならば、あなたが先ほど言ったように、向うさんの政府といっちの商社と話し合いをしたならば、われわれは認証をやるだけでありまして、それに対してチェックはできませんというなら、これはどんどん進んでいくじゃありませんか。これは大臣から答えて下さい。
  174. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま申し上げましたようなことでありますので、情報として何も来ておりませんが、なおよくそれは取り調べてみることにいたします。
  175. 柳田秀一

    柳田委員 多少仮定の質問にもなりますが、これは仮定ではないと思いますが、そういう場合に、もしもインドネシア政府から二十隻なら二十隻のうちの相当数は木下にやらせますということで、向う随意契約を結ぶ、そうしてその価格も、それは向うさんがお取りきめになることだ、こっちは認証するのだというだけですという今のままの答弁ですと、これは進行せざるを得ない。これはいまだに国民疑惑を持っておる木下商店が、いよいよさらになぜそういう優遇を受けなければならないか、そういう疑惑が一そう強まってくるのです。だから、こういう情報があるならば、その情報を基礎にして、たといそういう情報があっても、これだけ国会で——まだ黒白はなお明らかになっておらぬにしろ、木下商店にこれ以上厚遇をするということは、確かに国民に対しても疑惑を与えるだろう、それならば、これは情報は情報として、しばらく政府としては、その話はまず進めていかぬようにしたい、進めていかぬようにしたいというだけで、商社向うインドネシア政府との話がどんどん進んでいくのですから、だからそれをどう思いますかというのです。
  176. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 今ちょっとよくわからなかったのですが、要点だけもう一ぺん、はなはだ恐縮ですが……。
  177. 柳田秀一

    柳田委員 ではもう一ぺん申しましょう。要するに、こういうような情報と称するものが来ているわけですね。そうすると、これはまだ情報の域だけれども、しかし今までの答弁によると、インドネシア政府日本業者とがこれは随意契約するのですから、しかも価格の点なんかでも、今まで明らかになったところによると、政府は認証のときにほとんどチェックできないというのですね。そうすると、価格の点でも、量でも、どんどん商談が進んでいくわけですね。そういう場合に、これはあまりにも一社を厚過することになって、これ以上また疑惑を深めることになるが、政府としては何らかチェックする御意思があるのか、それともまた自然の成り行きにまかすのか。それはそのときのことだといえばそうだけれども、こういう情報が流れておるのですから、これを判断してあなたはどう考えられますかというのです。
  178. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 私は第一回のインドネシア賠償について、たまたま船舶がこれに入り、それがいろいろ問題となっておりますことは、まことに遺憾に存じますが、インドネシアに対する賠償は初めてやったことでありまするし、先方も非常に急いでおったということのために、そういったふうなありもしないことが伝えられて疑惑を受けたことは、まことに残念に存じます。先ほど柳田さんがおっしゃったごとく、この賠償は純粋なコマーシャル・べースでありません。どうしても日本国民賠償国に対して、われわれの血をもってこれを補う、汗をもってこれを補う、この気持であるべきものだと存じます。従いまして、その価格はむやみに安くてもいけません。不当競争をして安くてもいけません。けれども、暴利をむさぼるべきではないという、こういう方針をもって、私どもは今後処理していきたいと存じます。
  179. 柳田秀一

    柳田委員 それから次は北スマトラの油田開発ですが、これにもだいぶ疑惑を持たれているのです。これは、小林中さん、それから石原廣一郎さん等の名義で油田開発の権利をとられた。その代理をこれまた木下商店におまかせになったらしいのですが、これは国際的に国際司法裁判所に提訴される疑義があるのです。提訴者は、英国のシェル石油会社並びにオランダ石油会社です。こういうような疑点も難点もここに出てくる。それからもう一つは石油を日本に入れて、その代金は船で払うというのだが、万一石油開発が不可能な場合にはこの船の代金は賠償引き当てになるというような暗黙の了解があるというふうにも伝えられるのですが、これはどうですか。
  180. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 インドネシアの石油産業は日本の将来の経済計画にとって非常に密接な関係がある。従いまして、この問題につきましては十分調査をいたしたいと思っておりますが、先般来、かつて日本軍が占領しておったあのパレンバンの地におきまして、その所有者から日本業者に対して、どれくらいの修理をすれば、またどれくらいの金を使えば、幾ら油が送れるか、こういう調査を頼んできたのであります。それがために政府は石油開発会社の社員を派遣いたしまして、目下調査中でございます。詳細なことは、もしお入り用でございますれば政府委員からお答えいたします。     〔委員長退席、重政委員長代理着席〕
  181. 柳田秀一

    柳田委員 なお、この件にからんで日イ合弁のインドネシア銀行から金が出たというようにも伝えられる。そこでこの銀行から日本人名義で、あるいは木下商店名義で金を引き出したというような事実はありますか。これは大蔵省、通産省がやっぱり許可を与えなければならぬことになっておりますが、そういう事実はありますか。
  182. 酒井俊彦

    酒井政府委員 プルダニア銀行はインドネシア法人でございまして、インドネシア日本との合弁になっております。従いまして、先方の銀行法に従ってやっておりますので、貸付の内容その他については、私どもつまびらかにいたしておりません。
  183. 柳田秀一

    柳田委員 しかし、インドネシア銀行から日本人が金を引き出す場合には、当然日本政府の許可を求めることになっておりますが、それはどうですか。その法的根拠は認めますか。
  184. 酒井俊彦

    酒井政府委員 当然日本側が出資をいたすにつきましての送金が要ります。それは許可をいたしております。
  185. 柳田秀一

    柳田委員 そうすると、日本人が引き出した事実はありますか。
  186. 酒井俊彦

    酒井政府委員 日本人が引き出した事実があるかどうかは、先方の銀行の内容でございますので、私どもで調査が不可能な次第でございます。
  187. 柳田秀一

    柳田委員 それは資料として要求したら、あなたの方で先方を調査して、ここに出しますか。
  188. 酒井俊彦

    酒井政府委員 それは先方に問い合せてみませんと、私どもの手元ではそういう資料はございませんし、インドネシア法人でありますから、確かな資料が出るかどうか、これはまだわかりません。
  189. 柳田秀一

    柳田委員 なおあとにフィリピンの一九五九年からの経済協力、フィリピンにマイクロウェーブを取りつける問題、あるいはマリキナ多目的ダム建設、これに急に伊藤忠が入ってきたような問題だとか、あるいはマリキナ・ダムの指定の問題などもありますし、そのほかまだ尋ねたいことがありますが、だいぶ時間がきましたので、最後に私は先般来新聞をにぎわしておる日本、フィリピン間の高速貨物船の問題をお尋ねして、質問を終りたいと思います。  これは二月十二日の各紙が報道しておるのでありますが、ちょうどこのような高速貨物船十二隻をフィリピンの国家開発公団、NDCとの間に取りきめられたということは、日本の海運業界に大きなショックだったと思うのです。特にこの建造の条件というものは、日本の計画造船から見ればはるかに有利です。こういうような造船をして、しかもこの高速の船が将来太平洋、ニューヨーク航路に対しては大きな脅威になることは、海運業界からも強く叫ばれておる。この問題は別にいたして、これは結局商業べース、すなわちコマーシャル・ベースで契約をするのか、これは賠償には全然関係がないのか、その点はどうですか。
  190. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 この問題は、昨年の八月に先方のロドリゲスが参りまして、コマーシャル・べースで船舶を買いたい、こういう申し出があったのであります。それにつきましては賠償に繰り入てもらいたい、こういうふうな話がありましたが、これは断じて賠償に繰り入れることはできない。マリキナ・ダムとそれからマイクロウエーブ、これはいろいろな関係上賠償をある程度担保にするかもしれない。こういうことを言っておりましたが、これは賠償に関係することはできないで、純粋のコマーシャル・ベースとしてしたのであります。また先方もそういうふうに考えておりますし、今後やらない考えであります。
  191. 柳田秀一

    柳田委員 そこでこの引き受けが、浦賀船渠が六隻、それから三菱造船所が三隻、造船会社でも何でもない木下商店がまたまたここに顔を出して三隻、これまた疑惑の種をまいておるのです。これに対しては私は閣内では高碕さんはここの答弁も二番良心的だと思うのです。あなたも今度のこういう問題ではある意味において永野さんのそばづえを食らって御迷惑だったかもしれないが、新聞を見ると、さすが高碕さんらしい。ということは、受注仮契約者中に商社が一社入っておる。これは木下商店のことだと思う。全部造船会社としたいとの希望をあなたはロドリゲス氏ですか、それに述べた。こういうことですが、私はこれはしかるべきだと思う。さすがやはり高碕さんは筋を通される、こう思うのですが、そのとき向うはどう言いましたか。それから商業ベースでやられるのなら、これは今後あくまであなたの御方針通りやられますか、どうですか。
  192. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これは実際の取引といたしますると、造船所責任を持っておりますが、この中にいわゆる仲介者、ブローカーがおります。それで浦賀船渠にいたしましても、あるいはそのほかの三菱にいたしましても、あるいは相当のブローカーが入ってやっておると思います。     〔重政委員長代理退席、委員長着席〕 ただいまおほめ願ったのでありますが、私は、そうではなくて、いかにも格好が悪いので、これは全部商社がやる、あるいは全部一括して造船所がやるという形式をやってもらった方が、われわれの立場上都合がいい。これは銀行との関係もあるものですから。そういうことにつきまして、できるだけこの場合には造船所でやってくれないか、こういうことを申し出たのであります。先方も、それについてはよく考慮するということで別れたわけであります。
  193. 柳田秀一

    柳田委員 それはできるだけで、こっちは申し入れ、先方は考慮するというのですか。どうですか。そこのところはもう大体コンクリートになっておりますか、もう一ぺん……。
  194. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これはすでに木下商店とは仮契約を結んでありますから、仮契約を変更することになりますから、これはやはり先方の意思で、尊重しなければならぬと思います。
  195. 柳田秀一

    柳田委員 そうすると、これはあなたの希望というところにとどまる、こういうように理解していいわけですね。仮契約まで結んでおるものだから、あなたとしては一応先方に筋は通したが、まあその程度ですな、これは。
  196. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 その通りでございます。
  197. 柳田秀一

    柳田委員 UPの四日発の電報によりますと、フィリピンのオカンポ議員は、これは野党の自由党ですが、フィリピン国会において、東京にあるところのフィリピン賠償使節団幹部は、賠償船舶の調達で巨額の金額を横領した。日本業者は公開入札にしてくれと言っておるが、フィリピン賠償使節団はこれを拒否しておる。——従来フィリピンとかビルマの賠償は公開入札になっておるのですが、どうもこういうのが四日発で出てきておるところを見ると、今のこの高速船の十二隻の中に、造船会社でも船会社でもない商社がにょこっと三隻も入っておるということと、これはだれが考えてみてもどうも関連があると思うのですね。そこで私は、本朝来特に政府に対して、どういうように金が流れてだれがどう取ったかということをあまり追及せずに問題をずっと進めてきたのは、ほかでもないのです。ということは、今日、日本賠償が国内的じゃなしに、もうすでにこのように国際的になっておる。そして国際的の汚職にまで発展する可能性が出てきておるのです。これは大へん大事なことです。戦争に負けた日本が、その賠償によってあるいは相手国との間に、日本業者との間に、政府は関係ないかどうか知らぬが、少くとも日本業者との間において、われわれ国会の野党が追及するだけじゃなしに、フィリピンにおける野党からも、あるいはインドネシアにおける野党からも、あるいは軍部の方からも、ハッタ派の方からも、こういうふうに非常に国際的な賠償汚職というものがアジアの一角に非常にはっきりと浮び上ってきた。これは私は非常に大事なんです。従って日本としてはわれわれ戦争に負けた者は、それこそ先ほど申しましたが、歯を食いばってでも賠償は払います。しかし、その賠償がかりそめにも相手国との間に日本業者が暗躍して国際的の汚職になるようなことがあっては、われわれ敗戦国民は浮び上れないと思う。特定の一業者やその他がもうける——先ほど私は多少数字にわたって突いていったが、それは商談としておやりになって、そうして向うが認証をとってくる。こっちの方日本政府には何にもチェックする方法がないんだという。そうなってくると、今問題にしましたところのインドネシア追加の二十隻なり二十一隻分にしても、あるいはフィリピンの高速船十二隻にしても、これは仮契約たから、われわれ希望としては——高碕さんは正論を言われる。単なる希望を承わっておくだけなのです。既成事実としてどんどんできていく。インドネシアは、あるいはこれはコマーシャル・ベースの取引だと言うでしょう。しかしこの賠償を見ても、一億七千万ドルの焦げつきは棒引きした。今日インドネシア外貨保有量はほとんどありません。帳面上は一億何がしあるでしょう。しかし、実際は何もない。そんなところが過去にもうすでに焦げつきになっておる。日本にそんなコマーシャル・ベースでかりに結んだところで、インドネシアに払う能力があるわけではない。ことに政情は不安である。もう一つ言いにくいことであるが、インドネシアにしても、あるいはフィリピンにしても、私は、まだまだ国家として、いわゆる国政がほんとうの民主主義のルールに乗って、しかもきれいな政治が行われるまでにはほど遠いと思う。ようやくにして苦難の道を歩んできて独立をかち得たところであって、まだ長い間の占領国民として、国民に訓練されていない。日本の明治維新以前である。だから、これがかりに日本と西ドイツとか、あるいは日本とフランスとかいう国なら別です。相手を決して軽べつする意味ではありませんから誤解ないように聞いてほしいですが、まだそこまではいっていない。われわれは早くそこまで立ち上ってくれることをアジアの友だちとして望んでおる。だからこそ、われわれ敗戦国民賠償を払うことは決してやぶさかでない。しかもその賠償は、かりそめにもそういうような、フィリピンならフィリピン、インドネシアならインドネシア当局と、あるいは時の政権をとっておるものと、あるいはそこらに暗躍するところの第三国人ブローカーであるとか、日本人の業者であるとか、そういうものがこの陰にひそんで、あるいは汚職をやり、わいろを取り、リベートを取る、そういうことをされたのでは、これは許されない。結局そのことは、日本がむしろ将来とも、インドネシアにしても、フィリピンにしても、相手国に大きな迷惑をかけることになるのです。だから単に協定がどうの、何がどうのでなしに、この際一ぺん、われわれは賠償を払いますけれども、ここでもう一度日本賠償考え直す必要がある。  そこで私は岸さんにお尋ねしますが、そういう意味において、特に今日問題になっているのはどういうことかというと、まず日本側が問題になっている。これは言いにくいことでありますけれども、岸さんでも永野さんでも、もう一つ賠償に対するところの御反省が足らぬというか、この国会における答弁から見ては、あるいはそれは何らあなたに追及することではなかったかもしれない。しかし国民は疑いを持っている。ことにあなたは先ほど申したように、あなたが戦争責任者ならば、ことさらこの戦争の跡始末に対しては、より以上あなたは身を持するに厳でなければならぬ。熱海の別荘にしても、一国の総理大臣が別荘を持つことを云々するほどのやぼな社会党ではありません。あなたも日夜攻勢に忙しいから、週末くらい熱海の別荘でゆっくり休んで下さい。それぐらいわれわれは雅量がある。しかし、同じ別荘を作られるならば、何も世上うわさされておるような木下商店との結びつきはやめて下さい。賀寿老会談にしても、あなたは理屈を言われるけれども、いやしくも国賓として呼んだところの一国の元首と芸者の入る料理屋において会うなんて不謹慎もはなはだしい。何らそこにやましいものがなかったといっても、そのことだけでは国民は承知いたしません。だからあなたにしても、永野さんにしても、そういうような木下商店から自動車を借りておりますが、それは前のことであります、あるいは隣で番地が違います、そんなことを言っててんとして恥じない態度で国民が承知いたしますか。だから私は今日岸内閣、特に永野運輸大臣、このお二人がおられることが、言いにくいがはっきり言うが、お二人がおられることが、今日の賠償というものが国際的の汚職に発展してきた原動力だと私は思う。  第二には、やはりこの中に暗躍するところのものは、私は木下商店だと思う。こういうような国民血税の中から自分たちが多少なりとも私利をはかるというような考え方、商人はもうければよいだけでは済まない。ほかの商売ならともかく、賠償に当る商人はもうければよいだけでは済まない。そういうような商社がいるということが、私は問題だと思う。私は何も木下商店を憎むものではありませんが、こういうようなことはやはり国会を通じて明らかにしなければならぬというので、そういう点に焦点をしぼって私は質問したのです。  もう一つの問題は、やはりこれに対する監督官庁であるところの運輸省、大蔵省、あるいは通産省、そういうところの指導監督が、はなはだ不徹底であり不行き届きであるということです。責任のがれであるということです。ここに問題がある。  第四は、こういう賠償を受け入れる態勢におきまして、日本側においてこの前の用船のときの用船委員会のごとく、しかるべき船主協会とか、造船工業会とか、そういう業者のある一定の機関を作って、たとえ直接決済の方式であろうとも、一応は業者の選定にしても何にしても、そういうようなトンネル機関を作って、だれが見てもガラスばりのような機構をまず日本側において整備することが必要であると同時に、私は率直にスカルノ政権に対してもガルシア政権に対しても、岸さんから、こういう問題はお互いに双方不利益になるから国家としてこれはお互いに考え合おうということを提案されてしかるべきだと思う。そのことがむしろフィリピン国、インドネシア国に対するところの名誉であり、尊敬であると思う。その道をとらずに安易な道で、向うさんにかってにやらしなさいということではいかぬと思う。そういう観点に立って今後の粛正のためにも一つこの際問題になっているフィリピン、インドネシアその他の賠償は、これを払わぬというのではありませんが、これを進展せしむることはしばらく中止をされたら一番いいと思う。そうして双方お互いに検討する、機構も改める……。(「それは信義に反するじゃないか」と呼ぶ者あり)国際信義に反しない。そういうことを一ぺんやって、何も一月も三月も延ばそうというのではない。そうしてもう一ぺん再出発することが必要だと思いますが、その意思があるかどうか岸さんにお伺いいたします。
  198. 岸信介

    岸国務大臣 賠償問題というのは厳粛な問題であり、これが公正に、われわれは国際信義の上からこれらの国々に対して誠実にこれを履行することは当然であります。またこれに関連していろいろな疑惑を受けるがごときことのないようにしなければならぬということにつきましても、柳田君の御意見の通りに思います。  ただお言葉の中に私の別荘と木下とが何らか関係あるがごときお言葉がありましたが、これは全然私とは関係ございません。また私と永野運輸相が今日の賠償問題における疑惑の中心である、原動力であるというふうな御発言がありましたが、これも私は、そういう事実はいかなる具体的な事実でそうおっしゃるか、今日までの質疑応答においても明らかなるごとく、私は決してそういうものでないということを明確にいたしておきたい。  ただ今後この賠償に関することをしばらく停止して、そうしてこれが再検討すべきじゃないかという御議論でありますが、私は先ほど来申し上げておるように、これを厳粛に公正に履行するという上において、足らざる点あるいは疑惑をかもすがごときについては、厳に注意をすべきことは言うを待ちませんけれども、しかしこれらの賠償もしくは経済協力の点を、われわれは条約に従ってできるだけ早く履行するということが、これらの国々との友好の上からも必要であり、これらの国国におけるところの経済建設の上からいっても望ましいことでありますから、これを停止するという考えはありませんが、十分厳正に取り扱うことにつきましては、なおこの上とも一そう留意していきたいと思います。
  199. 柳田秀一

    柳田委員 最後に、それでは岸さん、アメリカのニクソン副大統領が、自分の身辺を金銭に関して疑惑を持たれたときに、財産を公表して、そして天下に明らかにしました。私はニクソンにならえというのじゃありませんが、少くとも今日あなたに疑惑が向いていることは事実です。それは熱海の別荘の問題は多少私の言葉が過ぎたかもしれませんが、しかしそういうふうに伝えているものもあるのです。だから、国民はやはり疑惑を持っている。私はやはり一国の名誉のためにも、また総理岸さんのためにも、そういうことは払拭される方が望ましいと思う。そういう意味においてあなたは、あなた個人の財産を一つ今天下に公表するお気持はありませんかどうか。
  200. 岸信介

    岸国務大臣 私は、私自身の財産につきまして、実は世の中に公表して批判を受けるほどの財産は持っておりませんが、しかし何かその点においてそういうことが必要であると認めるならば、やることについてちっともやぶさかではございません。
  201. 柳田秀一

    柳田委員 それならば、この問題はわれわれ社会党としてはなお決算委員会あるいはそれぞれ所管の他の委員会で追及いたします。あるいは必要によっては証人、参考人等を喚問することを私は今ここにおいて言っておきますが、資料として、昭和三十一年度以来の木下商店の考課状並びに決算書、税の申告並びに個人木下茂の所得税、それを一つここへ提出してほしい。なおまことに申しわけありませんが、参考に供したいので、岸総理大臣永野運輸大臣の同年度における所得税もあわせてここへ提出していただきたい。さらにできるならば、もしもこの委員会等においてそういうものの提出が困ると言われるならば、国会法の成規の手続によりまして、秘密会を要求いたしましてもその書類は出していただくことを要求いたしまして、私の質問を終ります。
  202. 楢橋渡

    楢橋委員長 これにて質疑は終結いたしました。  これより討論に入ります。島上善五郎君。
  203. 島上善五郎

    ○島上委員 私は日本社会党を代表して、ただいま議題となっておりまする昭和三十三年度予算補正(第2号)に対しまして、反対の討論を行わんとするものであります。  政府はさきの第三十国会で災害対策を中心とする補正予算第一号を提出したのでありますが、今回は当面必要とされる最小限度の補正措置として、歳出については、生活保護費、義務教育費国庫負担金、災害復旧事業費など、おおむね法定の規定により必要とする経費の追加を行うものとしており、歳入については、これに必要な財源を相続税、砂糖消費税、関税、専売納付金等、現在までの収入見込みが確実に予算額をこえるものによって充当しております。     〔私語する者多し〕
  204. 楢橋渡

    楢橋委員長 静粛に願います。
  205. 島上善五郎

    ○島上委員 政府は年度末に提出した補正予算として最小限度の補正措置を行うという仮面のもとに、二年続きの不況の被害を受け、かつ昭和二十八年以来全国的な災害を受けた国民に必要な最小限度の補正措置をすら拒否しようとしておるのであります。これが今回の補正の実態であります。岸内閣は、昨年中に社会党が再三にわたって不況のしわ寄せを受ける中小企業対策、農漁民対策、失業対策を中心とする予算補正を要求したにもかかわらず、すべてこれを拒否し続けて参りました。その理由とするところは、内需を刺激するような補正予算を編成することは、せっかく経済調整を進め、基礎を安定させようとしているときに当っては、その時期ではないということでありました。しかるに過去一年間に経済不況が政府の予想を裏切って長期化し、操業短縮は三十業種にわたって、操短率は四割をこえたまま固定化し、一流会社の企業採算も著しく悪くなっております。工場閉鎖、人員整理が続出し、失業は次第に下請地帯から始まって、毎月二万人ずつの首切りがふえていっております。そしてせっかく就職を予約された新規卒業生も、予約解消が続出しているありさまであります。  また今回の予算補正で、政府みずから認めておりますように、失業保険の受給人員が、予算見込みを上回ったほど失業者が増加したので、失業対策費の予算補正を必要としておるのであります。このように、政府みずからも認めざるを得ないように、不況の被害が勤労国民に広く波及しておるにもかかわらず、政府はがんとして予算補正を拒否し続けてきたのであります。ところが政府が今国会に配付した資料、財政法第二十八条による昭和三十四年度予算参考書類によりますれば、昭和三十三年度に、財政資金対民間収支は、二千八百六十一億円の財政資金の支出超過となっておるのであります。政府は、勤労国民の不況からくる被害については、現在はまだ内需を刺激するような予算措置をすべきでないと言いながら、実は経済政策をあげて大企業を中心とする不況回復に全努力を集中したのであります。日本銀行からの膨大な大企業への貸し出しの増加、公定歩合の引き下げなど、独占資本に対しては不況切り抜けのためにあらゆる手段を講じながら、零細企業、農漁民など、勤労国民に対しては、何らの対策もやろうとしなかったのであります。このような岸内閣の経済政策の根本方針は、そのまま今回提出された補正第二号にも貫徹されているのであります。すなわち、生活保護費、国民健康保険助成費、失業保険費負担等社会の保障関係費は、合計して約四十一億円支出されておるのでありますが、たとえば医療扶助の入院人員の増加を政府認めているものの、このような十五億円程度の補正増額で、果して年度末になるにつれて、各地方に診療打ち切り、扶助打ち切りが続出しないと政府は保証できましょうか。厚生省の補正要求は、少くともこの倍額をこえておったはずであります。  また三十三年度発生災害復旧事業費について、わずか十五億円程度が計上されているだけであります。大体三十三年度災害の被害を政府は七百四十億円程度と調査報告を受けながら、これに対する事業費の査定を四百六十六億円とし、三十三年度については極端に査定をきびしくしておるのであります。さらに補助金の率についても、二十八年度並みの特別措置をとってはいないのであります。われわれは、このような少額な災害対策費には断じて納得し得ないのであります。  第三に、蚕糸業緊急対策費を例にとってみるならば、桑園の整理は一町歩当りの単価が二千五百八十円で計算されておりますが、これで自民党の諸君も農民に対して説明ができるでしょうか。しかも桑園整理後の農地を作付転換するために必要な土地改良の経費は何ら計上されていないのであります。政府の構想は、安い単価の涙金を養蚕農家にくれてやればそれでよいというのであり、養蚕農家をいかに転換させようかということ、農業の発展、農民の所得向上の見地は、何らとられていないのであります。わが党の見るところ、歳出補正はこのように不誠意きわまるものであります。  また歳入財源についても、われわれはこれに賛成することができません。ここに本国会に提出された昭和三十二年度一般会計決算資料を見ますと、昭和三十二年度の防衛庁予算は一千十億円、これに対して前年度よりの繰り越しは二百三十六億円、すなわち予算の二割以上もあったのであります。しかも三十二年度には、この合計額を使い切らずに、三十三年度に繰り越されたものが約九十五億円であり、ほかに未使用残額が三十二億円もあるのであります。防衛庁が、国民周知のように、乱費、浪費をやっても、まだ百二十七億円の使い残りを生じております。本年度も、防衛庁は、各種の乱費について新聞をにぎわしておりますが、このように明らかに未使用残額を生ずる歳出項目を削って、補正財源を調達すべきではないかと思うのであります。  要するに、昭和三十三年度予算は、この第二次補正を含めて、わが国経済の変動に即応する対策を欠き、ことに不況下において、一部大企業、大資本の救済に終始し、不況の犠牲者たる失業者中小企業、農民、漁民など、勤労国民にしわ寄せをする階級予算であると断ぜざるを得ないのであります。この予算によって富める者は栄え、独占資本はますます肥え太る反面、一千万の低所得層、数百万の不完全就労者、零細化し兼業化する農民の生活は、いよいよ苦しくなるばかりであります。かかる社会の不平等に反対し、貧富対立の矛と盾解消を最終目標とする日本社会党は、このような階級差をますます大きくする予算、階級予算に対して断じて賛成し得ないことを明らかにし、予算補正に対する討論を終ります。(拍手)
  206. 楢橋渡

    楢橋委員長 岡本茂君。
  207. 岡本茂

    ○岡本(茂)委員 私は自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております昭和三十三年度一般会計予算補正(第2号)の政府原案に賛成の意を表するものであります。  本補正予算は、さきに大蔵大臣及び政府委員より説明がありました通り、その総額は歳入、歳出とも百十八億五千三百万円でありまして、これは昭和三十三年度予算成立後に生じました事由に基き、当面必要とされる最小限度の予算措置を講ずるものであります。  歳出におきましては、義務教育費国庫負担金四十五億七百万円を初め、三十三年発生災害復旧事業費十五億八千五百万円、失業保険費国庫負担金十四億九千百万円、生活保護費十三億九千百万円、国民健康保険助成費十二億一千百万円等、主として義務的経費の不足額の追加、及び今回新たに追加せられました蚕糸業緊急対策費三億九千百万円等を内容とするものであります。  しこうして、これらの財源といたしましては、相続税五億円、砂糖消費税三十五億円、関税四十億円等の自然増収、及び専売納付金の増加三十億円等をもって充てることにいたしておるのであります。以下一、二の点について申し述べてみたいと思います。  第一は、三十三年発生災害復旧事業費についてであります。三十三年発生災害は、すでに御承知のごとく、九月の二十二号台風によるものを含み、相当の額に達したのでありますが、政府はさきに昭和三十三年度予算の予備費の使用、地方交付税交付金の交付時期の繰り上げ等の行政措置を行い、またさきの臨時国会におきまして、第一次補正予算により、とりあえず五十二億二千六百万円の追加を行うほか、予備費を追加して対処して参ったのでありますが、その後の実地調査の進展及び復旧事業の進捗に伴いまして不足を生ずることと相なりましたので、これを追加するものでありまして、時宜に適したものと存ずるのであります。われわれといたしましては、災害地の復旧が一日も早く完成し、被災住民が安住できるようしばしば政府に対しまして、行政上及び予算上等の措置につきまして、強く折衝して参ったのでありますが、今回のこの措置によりまして、復旧が一そう進捗するものと考えますので、大いに賛意を表する次第であります。  次に、今回新たに追加計上せられました蚕糸業緊急対策費について申し述べます。三十三年度におきまして、生糸の需給事情が急激に悪化したため、繭生産の縮小はやむを得ない状況となり、政府におきましてはさきに春蚕については百五十億円、夏秋蚕については、五十億円の資金をもって、価格維持のためたな上げの措置を講じたのでありますが、さらに昨年十月二十四日の閣議決定に基き、養蚕農家が転業等のために桑園整理を行う場合は、これを奨励するために補助することとし、三十三年度における必要額を追加したものであります。  蚕糸価格の安定につきましては、わが党におきましても、過般来蚕糸対策特別委員会を設け、その対策に鋭意努力して参ったのでありますが、このたび転業養蚕農家に対しまして、かかる助成措置が講ぜられましたことは、まことに喜ばしい次第であります。  さらに明年度予算におきましても、蚕糸業緊急対策費といたしまして、桑園助成措置のほかに、養蚕農家のために繭の価格安定を行う全国蚕繭協会の設立等の予算措置を講じ、総額三十三億六千四百万円を計上いたしておりますほか、糸価安定特別会計におきましても、三十三年産生糸及び繭の買い取り資金として、一般会計より二十億円を繰り入れる等必要なる措置を講じており、蚕糸価格安定に対する熱意がうかがえるのでありますが、今後とも積極的にその対策に万全を期せられ、繭価低落の防止及び養蚕農家の経営改善になお一そうの努力をいたされんことを要望するものであります。  その他の点につきましては、いずれも既定経費の不定額の追加でありまして、今さら申し述べる必要はないと存じます。  先ほど社会党の島上君よりいろいろ御議論がございましたが、要するに財政経済の実情を無視した議論でありまして、反対のための反対論と言わざるを得ないのでございます。(拍手)従ってわれわれは、これはとるに足らぬ議論と考えておるのでございます。  以上の理由をもちまして、私は本補正予算政府原案に賛成し、討論を終るものであります。(拍手)
  208. 楢橋渡

    楢橋委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。昭和三十三年度一般会計予算補正(第2号)に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  209. 楢橋渡

    楢橋委員長 起立多数。よって、昭和三十二年度一般会計予算補正(第2号)は、原案通り可決いたしました。  委員会報告書の作成につきましては、先例によりまして委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  210. 楢橋渡

    楢橋委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  委員会散会後理事会を開きますから、理事諸君はそのままお残りを願います。  明後日は、午前十時より、昭和三十四年度総予算につきまして公聴会を開会いたします。  本日はこれにて散会をいたします。     午後一時二十三分散会      ————◇—————     〔参照〕  昭和三十三年度一般会計予算補正  (第2号)に関する報告書     〔別冊附録に掲載〕