運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1959-02-13 第31回国会 衆議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月十三日(金曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 楢橋  渡君    理事 植木庚子郎君 理事 小川 半次君    理事 重政 誠之君 理事 西村 直己君    理事 野田 卯一君 理事 井手 以誠君    理事 小平  忠君 理事 田中織之進君       井出一太郎君    内田 常雄君       小澤佐重喜君    大平 正芳君       岡本  茂君    川崎 秀二君       上林山榮吉君    北澤 直吉君       北村徳太郎君    久野 忠治君       小坂善太郎君    篠田 弘作君       周東 英雄君    田中伊三次君       田村  元君    床次 徳二君       中曽根康弘君    二階堂 進君       船田  中君    古井 喜實君       保利  茂君    水田三喜男君       八木 一郎君    山口六郎次君       山崎  巖君  早稻田柳右エ門君       阿部 五郎君    淡谷 悠藏君       石村 英雄君    今澄  勇君       岡  良一君    加藤 勘十君       北山 愛郎君    黒田 寿男君       佐々木良作君    島上善五郎君       楯 兼次郎君    成田 知巳君       西村 榮一君    柳田 秀一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         法 務 大 臣 愛知 揆一君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君         文 部 大 臣 橋本 龍伍君         厚 生 大 臣 坂田 道太君         農 林 大 臣 三浦 一雄君         通商産業大臣  高碕達之助君         運 輸 大 臣 永野  護君         郵 政 大 臣 寺尾  豊君         労 働 大 臣 倉石 忠雄君         建 設 大 臣 遠藤 三郎君         国 務 大 臣 青木  正君         国 務 大 臣 伊能繁次郎君         国 務 大 臣 世耕 弘一君        国 務 大 臣 山口喜久一郎君  出席政府委員         内閣官房長官  赤城 宗徳君         内閣官房長官 松本 俊一君         法制局長官   林  修三君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         大蔵事務官         (理財局長)  正示啓次郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  石田  正君         大蔵事務官         (為替局長)  酒井 俊彦君         通商産業事務官         (通商局長)  松尾泰一郎君  委員外出席者         日本輸出入銀行         副総裁     舟山 正吉君         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 二月十三日  委員綱島正興君及び勝間田清一君辞任につき、  その補欠として二階堂進君及び柳田秀一君が議  長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十三年度一般会計予算補正(第2号)      ————◇—————
  2. 楢橋渡

    楢橋委員長 これより会議を開きます。  昭和三十三年度一般会計予算補正(第2号)を議題といたします。  これより質疑に入ります。今澄勇君。
  3. 今澄勇

    今澄委員 それでは私は、最初岸総理に対してお伺いをいたしたいのは、当面非常に問題になっております北鮮送還の件については、伝えられるところによると、いろいろと問題点があるようですが、本日の閣議で一体どういうことをおきめになったか、なおこれが見通し等について御答弁願っておきたいと思います。
  4. 岸信介

    岸国務大臣 本日の閣議におきまして、在日朝鮮人のうち北鮮帰還希望者取扱いに関する件につきまして、閣議了解事項として決定をいたしました。  それは、「一、在日朝鮮人北鮮帰還問題は、基本的人権に基く居住地選択の自由という国際通念に基いて処理する。二、帰還希望者帰還希望意思確認と、右確認の結果、帰還意思が真正なりと認められた者の北鮮への帰還の実現に必要な仲介とを赤十字国際委員会に依頼する。帰還に関する諸般の事項の処理については、日本赤十字社をして赤十字国際委員会と協議せしめる。ただし、日本側において配船は行わない。」これを閣議了解事項として決定したわけであります。  なおこれに基きまして、これにありますように、ジュネーヴにあります国際赤十字でもってこの問題を人道的立場から処理しろという従来の主張、要請もありますので、これに依頼して事実を調べ、また帰還に関する扱いにつきましては、日本赤十字とよく協議して円満にこれを実行したい、配船については、日本側からは配船しない、こういうつもりでおります。
  5. 今澄勇

    今澄委員 閣議決定にしないで、閣議了解事項決定にしたというのは、どういうわけですか。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 これは閣議決定として扱う事項閣議了解事項というものは、閣議扱います場合においてきまっておるのでありまして、これは閣議決定事項でありませんから、閣議決定という形はとらずして、閣議了解事項として決定したわけであります。
  7. 今澄勇

    今澄委員 この際いろいろと圧力もありましょう。いろいろと伝えられるところもあるが、政府はこういった人道上の問題については、一つきぜんたる態度をとってこれが送還を実現していく、こういう方向でおやりを願いたいと思います。  緊急の問題ですから日韓問題を聞きましたが、きょうの私の質問の本論は、フィリピン賠償インドネシア賠償についてお伺いをしておきたいのであります。  フィリピンからお伺いしますが、マニラ七日発AP電によると、フィリピン賠償について、フィリピン下院は去る六日、賠償委員会を調査する決議案を採択いたしております。その理由は、賠償品目過当評価、贈収賄、賠償物資の不公平な割当、フィリピン業者日本側支払者とのなれ合い、こういった不正があるので、これを調査する。こういう報道がなされておりまして、しかも昨日入りました報道によると、フランシスコ・オルテガ委員長は、この調査に対して、いわゆる日本側支払者日本政府の要路も召喚して調べにゃならぬということを言っておりますが、このフィリピン賠償に関する向う側態度から見て、私はこれらの賠償に対する政府立場は、国民に対して非常に疑惑を与えておると思うのです。そこで、こういった向う委員会から召喚の要求があった場合は、日本からは一体出すのかどうか。もし現職の閣僚に——伝えられるところによるとそういう意思があるそうですが、召喚の話があれば、内閣としては、これらの責任をとっておやめになるということになるのかどうか、総理の御見解をまず聞いておきたいと思います。
  8. 岸信介

    岸国務大臣 今問題になっておりますことは、私事情は承知いたしておりません。賠償扱いにつきましては、従来とも関係官庁及びそれぞれの点におきまして、十分に厳正に扱われておりまして、今フィリピン側が言っているような事情は、私はあり得ないと思います。そして、そういう場合に日本から必要な人を召喚するというようなことが向う側から伝えられておるように、今澄委員から御質問がありましたが、そういうことも私どもは全然承知しておらぬのみならず、そういうことが国際的に、他国他国の人を召喚するということが可能であるかどうかということについては、私は非常に疑問を持っております。従って、今の直接の御質問には、なお研究してみなければお答えできませんが、そういうことはあり得ない、こう思っております。
  9. 今澄勇

    今澄委員 これは重大な問題でして、向う下院決議案などを見ると、やはり日本側支払者という言葉が使われておるのです。日本側支払者ということになると、商談をした商社ではなしに、これを支払った日本政府ということになるわけでして、日本フィリピンとの間にそれらの委員会が設けられたということは、近来まれに見る大へんな問題だと思うのです。そこで私は日本フィリピンとの関係について、賠償の問題に入る前に、日本フィリピンとの鉄鉱石を中心とする非常に密接な関係がある。しかもこのフィリピンアイアン・マインズという会社に対しては輸出入銀行が百八十万ドル借款を、鉄鋼三社並びにこれの引き受けの木下商店を通じて貸し出しております。われわれはこういうフィリピン日本との賠償あるいは延べ払いのプラント輸出、コマーシャル・ベースのいろいろな商売について、きょうこれから政府の所信を一つ伺っておきたいと思うのです。  そこでまず、わが国は戦争が終りましてから、計画経済から自由経済に移った。そこで鉄鋼統制が廃止になって、講和条約で独立後、鉄鋼政策は転換をいたしました。鉄鉱石の輸入は米国圏からアジア圏に切りかえることとなって、そこで日本はまずフィリピン鉄鉱石——これはもう地理の関係から日本が買わなければよそには売れないのですから、日本だけがお得意さんです。日本だけがお得意であるこのフィリピン鉄鉱石は、向うフィリピンアイアン・マインズという会社独占をしているし、日本木下商店独占をしておって、このフィリピン日本との商売にはほかの業者はほとんど手を染めることができない。そこで富士八幡日本鋼管の三社と木下商店がその下請として、フィリピンのこの鉄鉱会社との間に百八十万ドル借款をいたしまして、これはプラント輸出ということで向うに出して、安く鉄鉱石を買うということになっております。そこで私は大蔵大臣に聞きたいのは、一九五五年の二月三日、フィリピン側日本木下商店側との契約に基いて、あなたの方から百八十万ドルの金が出ておるわけなんですが、これがいつ支払われて、その返済状況がどうなっておるかということについて、大蔵大臣でも通産大臣でも、輸出入銀行監督大臣からお答え願いたいと思うのです。
  10. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 鉄鉱石の問題につきましては、これは賠償問題とは全然別途に、終戦直後鉄鋼三社が共同購入をいたしまして、それがためにある程度の投資をして、そうしてその投資に対する鉄鉱石を持ってくるという方針で進んでおりまして、それにつきましては賠償問題と何ら関係はありません。
  11. 今澄勇

    今澄委員 賠償問題と関係のあるなしではなしに、これに対して百八十万ドル輸出入銀行がいつ貸し出して、そうしてその返済状況はどうなっておるかということを聞いておるのです。
  12. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 事情をつまびらかにいたしませんので、ちょっと事務当局に今調べさせております。しばらくお待ちを願います。
  13. 酒井俊彦

    酒井政府委員 ただいまのお尋ねは、フィリピンに対する木下商店プラント輸出と申しますか、鉄鉱開発のための貸付金現物プラント提供だろうと思いますが、これは三十年の十一月に、おっしゃるように百八十万ドル許可になっております。それでこれは三十三年、昨年の九月末で三十三万二千ドル回収金がございまして、現在残高は百四十六万ドルになっております。大体据置期間を含めまして五年程度のことでございまして、これによって開発した鉄鉱石日本に持ってきてそれで決済をしていく、かような契約になっております。
  14. 今澄勇

    今澄委員 木下商店に貸し出したその百八十万ドルの内訳は、フィリピン会社との契約書を見ると、百六万五千ドルが、これが機械、資材の日本から向うへ送る資金として円為替で渡してあります。それから二十五万ドルは、フリー・ドルを必要として、この現金米国へ送り、米国機械購入してフィリピン会社に送るということになっております。残りの四十八万五千ドル、これはフィリピン現金を送金するということになっております。そこで輸出入銀行から貸し出されたその百八十万ドルのうちで、私が聞きたいのは、木下商店為替管理法のもとにおいて何月何日二十五万ドルという金を——これは輸出入銀行でそういう条件で借りたのですから、その条件はよく御存じだと思うが、一体何月何日アメリカヘこの契約に基いて二十五万ドルを送ったか、それをできればお答えを願いたいと思います。
  15. 酒井俊彦

    酒井政府委員 ただいまのお話でありますが、アメリカから必要な機械を買ったことは事実でございますが、ただいま手元資料で何月何日に何万ドル送ったということはわかりませんので、もしなんでございましたら、さっそく調べまして申し上げます。
  16. 今澄勇

    今澄委員 これはあとで非常に複雑怪奇なこの問題を解明して参りますが、この二十五万ドルの金がアメリカに送られてはおらぬのです。私は輸出入銀行はまことに監督不行き届きと言わなくちゃならぬと思います。とにかく木下商店のやることならば、あるいは鉄鋼三社がやることならばどんな無理でも通っておるという一つの事実を、この委員会を通じて提供をしたいと思うからこれを聞いておるのです。四十八万五千ドルフィリピン現金送金するということになっておるが、これは何月何日送金されたか、為替審議会の議を経ていっておるかどうか、これも一つ為替局長から御答弁を願いたい。
  17. 酒井俊彦

    酒井政府委員 ただいまの御質問お答えを申し上げますが、今仰せられた数字年月日等については、先ほど申し上げましたように、手元資料で詳しいものがございませんが、これは投資連絡会というのでやっております。輸銀の関係等はまたこれは別でございますが、投資連絡会というのでいたしております。なお木下商店につきましては、第一次にララップに百万ドル出しまして、これは全部回収されまして鉄鉱石が入ってきておりまして、非常に成績がよろしゅうございます。それで第二回分を、さっき申し上げましたように百八十万ドルをさらにやった、かようなことでございまして、こまかい時日、金額等につきましては調べましてさっそく御報告申し上げたいと思います。
  18. 今澄勇

    今澄委員 そこでこのフィリピン会社契約をいたしました明細書を見ると、可能な限り安くララップ鉱石日本に入れるためにこの借款をやっておるわけです。そこで機械の方なんですが、約百六万ドル機械が、それでは一体フィリピンに、その後契約の通り行っておるのかどうか、少くとも四億円からの金を貸し出して、それで作った機械が、一体フィリピンに行っておるのかどうか。私実は大蔵省の方の資料を調査しましたが、あなた方の方で作った各メーカー機械調べメーカーに当ってみたら、機械はできておらぬのです。八幡製鉄代表取締役社長渡辺義介富士製鉄代表取締役社長永野重雄日本鋼管河田重氏と、フィリピンアイアン・マインズ・コーポレーション社長のヘンリー・J・ベルデンという人の間に、木下商店代理取扱い者とするこの三者の契約書を見ると、これらの百万ドル機械フィリピンに行かなくてはならぬようになっているのですよ。ところが現実にこの機械フィリピンに行っておるかおらぬか。監督官庁大蔵省の担当の方でいいですから、ここで御答弁願いたい。
  19. 酒井俊彦

    酒井政府委員 私の方の調べにおきましては、さっきお話のあったような契約条件許可いたしておりまして、これが実際に、お尋ねのように、出ているか出ていないかという問題につきましては、通産省政府委員の方からお答えしていただきたいと思います。
  20. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 ただいまのお尋ねの件でありますが、許可したことは事実でございますし、全部は行っていないかもしれませんが、われわれは、順調にその通り進んでおる、こういうふうに確信をいたしております。(「確信の証拠を示せ」と呼ぶ者あり)なお具体的な数字につきましては、今手元に持ち合せておりませんので、いつどの程度積み出したかというようなことは、すぐに調べまして御報告申し上げます。
  21. 今澄勇

    今澄委員 これは五年か六年の契約で、契約してから、もう三十、三十一、三十二、三十三、三十四、五年もたっておって、その機械がいまだに向うに行っておらぬとすれば、輸出入銀行が国の金を木下商店に貸し付けて、これがアメリカにも送られておらぬ。これはアメリカへ送るという約束で貸したのだが、送られておらぬ。四十八万ドルフィリピンに送るという約束で貸したのだが、これも送られておらぬ。しかもプラント輸出フィリピンに送られるべきそのプラントフィリピンへ行っておらぬ。それはプラントの一部は行っているでしょう。けれども、あなたは、向うPIM会社決算報告書を見ましたか。その決算報告書を見ると、向う最初計画を変更している。一九五七年八月二十一日変更して、今までの脱硫選鉱装置すなわちベネフィケーション・プラントを、今度はクラッシング・プラント鉱石を砕く、それからスクリン・プラント、網でこれをよる。こういう簡単な装置向うは変更しているのです。だから、私はあなたの方から取った、この機械を何月何日、何を出したという一覧表がここにあるけれども、これはでたらめです。向う計画を変更しておるのに、そんな当初の脱硫選鉱装置機械を今ごろ送ったって役に立たぬ。しかも向う決算報告書には、そういうものが入ったということは一つも載っておりませんよ。私はおよそこれほど輸出入銀行が乱脈な融資というか、これは国家の機関としては全く私は言語道断の話だと思う。通産大臣、今あなたの方の松尾局長は送っておるかななんて言っているけれども向う計画を変更したんですよ。送ったってその機械は用はないのです。要するに輸出入銀行の金が今日まで宙に迷っておるということです。これはいかにも重大な問題でありまして、大蔵大臣、今あなたお聞きの通りですが、監督の衝にある大蔵大臣としては一体どうですか。
  22. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま事務当局の説明を聞きましても、十分事態が把握されておらないようでございます。私も、御指摘がありましたのでよく取調べた上でお答えをいたしたいと思います。     〔「委員長、こんなことでは困りますよ」と呼ぶ者あり〕
  23. 酒井俊彦

    酒井政府委員 ただいまのお話でございますが、いつごろどういう機械を送ったかということにつきましては、許可あとでは税関でチェックし、それからもし為替付のものでありますれば銀行でチェックいたします。もしそれを送らないでほかへ使ったということになれば、当然ドルの分につきましては銀行送金事務が参りますから、この段階においてこれはおかしいということになって、そういうものは生じ得ないと思います。いまだそういう報告は聞いておりません。従ってさっき通商局長の言われたように、物は大体順調に出ておるのではないかと私どもは考えております。
  24. 今澄勇

    今澄委員 為替局長、あなたはそう言うけれども大蔵省はこの木下商店PIM関係書類については、局長以外の人にさわらせないようにして直しているじゃないですか。しかも、これは私が特前のルートで手に入れたあなたの方の資料だけれども、それによると価格と注文日と出荷の日があって、製造メーカー名前もちゃんと載っているじゃないか。どうしてあなたはそれが答弁できないのですか。しかもこの名前の載っている製造メーカーに一々当って私は調べたのですよ。機械を作っておらぬのですよ。これは一体どういうことです。
  25. 酒井俊彦

    酒井政府委員 ただいまのお話でありますが、木下商店のことに関して私だけがそれを変更したとか、ほかの者に扱わせないということは絶対ございません。ただいまおっしゃった資料については私拝見しておりませんので、どういうものでありますか、あとで拝見しましてから、なおよく数字等がわかっておりませんから、これも今調べつつありますので暫時お待ち願いたいと思います。     〔「休憩だ」と呼ぶ者あり〕
  26. 今澄勇

    今澄委員 それじゃ休憩して……(「答弁にならないじゃないか」「休憩しなさい」と呼びその他発言する者あり)それでは私質問を続けますから、そう無理は言わぬから、その間に資料調べ一つ答弁してもらいたい。
  27. 楢橋渡

    楢橋委員長 質問を続行しますから、政府側もその間にすぐ答弁できるように調べて下さい。  今澄勇君。
  28. 今澄勇

    今澄委員 それでは、今の百八十万ドルについては、私はこんなでたらめなのはないと思うのです。これはどうせこれらの製鉄所の人々と……。     〔発言する者多し〕
  29. 楢橋渡

    楢橋委員長 静粛に願います。
  30. 今澄勇

    今澄委員 木下社長約束を履行しておらないし、輸出入銀行は非常にこれはずさんです。これは重大な問題で、こういうものがしまいに今度フィリピン支払い能力がなくなると、これが賠償に組み込まれて、それで焦げつき債権として賠償にまた入ってくる。こういうケースが多いから、これは賠償関係ないどころの騒ぎじゃない、大へん関係があるのです。  そこで高碕さんに私は伺うが、このフィリピン鉱石日本木下商店がほとんど独占しておるのです。そしてフィリピンの方もPIM独占しておってほかの業者が入れない。私は日本製鉄事業育成のためには、どうしても安い原料を入れて、しかも向うから安く売るというものがあれば何も木下独占させないで、これをどんどん入れていくことが鉄鋼政策としては必要だと思うのです。しかるに現実フィリピンでほかの鉱山ララップの港渡し、中小鉱山は五ドルか六ドルだといっておるのに、PIMの値段は非常に高いわけです。こういう独占をどうして通産省は許しておるのか、木下商店以外にどうして取り扱わさせないのか、この点も不審にたえないのですが、この点一つ監督大臣立場から御答弁を願いたいと思うのです。
  31. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 従来鉄鉱石あるいはスクラップの賢い入れ等につきましては、鉄鋼大手三社が大体全体の数量をきめまして、その数量につきましては通産省とよく話し合って、それをできるだけ安く、また無謀な競争をしないように、なるべくこれは一本でやろうということになって、安く買うために鉄鋼業者の方で購入を一本でやろう、こういう方針をとっておるようであります。従いまして鉄鋼三社の方は自分の使いやすいエージェントを使うとかいうことになっておりまして、これは鉄鋼三社が都合上木下商店を使ったことと存じまして、これによって木下商店独占をしたということでは全然ないと私は信じております。
  32. 今澄勇

    今澄委員 あなたはそう言うけれども、私はフィリピン商務参事官から日本側に対して、そうPIMだけを相手にしないで、フィリピン中小企業育成のためにも、ほかの中小の山から買ってもらいたい、どうしてPIMばかり買うのかという向うから照会状が来ている。これに対する日本側の返事を見ると、イット・イズ・アワ・プリンシプルと書いてある。これはわれわれの取りきめである。このフィリピン会社で、近所で五ドルくらいで安くできるのをみんなかき集めて、そうして独占的にそこを通らなければ日本には売れないのですから、たたかれるだけ安くたたかれて、しかもPIM日本に高く売る。そして日本側の方は木下商店以外は取り扱わぬのですから、だれも買うわけにいかない。木下はそれで言い値で鉄鋼社へ納める。これは年間百万トン扱うと七千万円の手数料が落ちる。すべての手続、すべての保険料を三製鉄会社がやっている。しかも向うからPIMだけではなしに、ほかのものも買ってくれと言ってきているのに、何ら日本がやらないということは、これは独占禁止法違反だと思うのです。これは国民全体のためにとか、使用者全体のために一つのカルテルが認められることはあるけれども、一部の人だけがめちゃくちゃにもうけるために、フィリピンの方でもこういう統制機関を作って一括して納める。日本の方でも木下商店以外は扱わせない。こういうやり方というものは、これは私は非常な疑問がある。通産大臣鉄鋼政策としては、マレーの方では安い鉄鉱石がうんとあるが、フィリピンの方は非常に高い。しかもフィリピンは一九五七年から値上げを言ってきているのです。しかもこれは一ドル五十セントの値上げを言うてきておる。その一ドル五十セントの値上げ日本側は認めているのです。マレーの方はわずか五ドルか六ドル鉄鉱石を十セント値上げを言ってきた。これは認めておらぬのです。そうしてこれはPIMだけは九ドル二十五セントに一九五七年からはね上っている。しかもそのはね上った年から、さっき申しました輸出入銀行に返済を始めているのです。五五年に金が動いて八ドル幾らであった鉄鉱石のときは返済はないのです。全然契約は行われておらぬのです。それはそうでしょう、向うへ行ってないのだから。これはそう上げることはない。鉄鋼が不景気な三十二年のさなかに鉄鉱石ドル五十セントも値上げをして、そうしてその値上げをしたときから三十セントずつは輸出入銀行の返済として、CLを組むときには九ドルちょっと切れる金額で組んで決済しているのですよ。しかしこれは通産大臣、あなたの鉄鋼政策としては大へんな間違いであると思う。どうしてこういった間違った鉄鋼業政策が行われておるか、われわれは理解に苦しむ。通産大臣から御答弁を願いたいと思うのです。
  33. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 御存じのごとく、鉄鉱石を使用する鉄鋼会社というものは溶鉱炉を持っておるものに限られるわけでありまして、それは当時鉄鋼三社が溶鉱炉を持ってやるわけでありますから、これは各社が競争して高く買っては困る、こういうことで鉄鋼会社自身の利益擁護のために、あるいは日本鉄鋼の価格を下げるためにも、できるだけ安い鉱石を買うという方針をとっておりまして、政府はこれはいいことだと信じております。従いまして同じ安い価格でフィリピンにある——これは鉄鋼三社としてもそれを買っておるわけでございますが、過去の例から見まして、ララップ以外のものも、木下商店以外の南洋物産等においても相当な数量を輸入しておると信じております。その数字等についてはただいま手元にありませんが、御要求でありますれば取り寄せます。
  34. 今澄勇

    今澄委員 他の業者からも買ったということは、国会答弁用に事務局が作ったもので、実績はないのです。フィリピンPIMだけを中心にほとんどこれから買い上げておるのです。私はなぜこのララップの問題をこうしつこく聞くかというと、大体岸さんは戦時中軍需省の統制の実権を握っておったときに、木下さんは第二次製品統制会の理事長です。永野さんは鉄鋼統制会の、これも役員です。稲山さんもこれまた当時の岸さんと官財相握ってやった、早く言うならば、これは昔からの古いなじみのつき合いじゃないですか。同士みたいなものじゃないですか。その永野さんや稲山さんや木下さんが加わってほかのところには買わせない。そうして値段は安いかというとマレーやその他より高い。不景気になったが、値上げをする。値上げをしてから戻した金が約三十万ドルに達しているようなことで、その出した金は向うにいってはおらないという、この一辺の事実をまずフィリピン賠償インドネシア賠償の前段としてここでどうしても明らかにして、非常な独占が行われ、鉄鋼政策としても非常に間違った政策がここに行われている。この点については、こういう今日の鉄鋼三社並びに木下氏を中心としてのやり力は、鉄鋼三社に聞いてみると、フィリピン側PIMだけで買ってくれと言っているというのですけれども、今言ったように商務参事官から堂々たる手紙がきて、ほかの業者から買ってくれと言っておる。鉄鋼政策の責任者である通産大臣がそんないいかげんな答弁をして、あなたそれではとても鉄鋼政策はできませんよ。これは私は何も高碕さんの責任じゃないと思いますが、特に岸さんが幹事長になったころからいわゆる岸内閣ができたころにかけて、これは値上りをして、しかもこの値上り分が返済されつつある。この現実というものは、だれが何といっても大きな疑惑に包まれておるのです。しかも独占禁止法の疑いは深いのです。しかも私はここで最後にPIMの一九五七年の会計報告書、日本でいえば決算報告みたいなものを取り寄せて調べた。これを大蔵大臣にも通産大臣にも岸総理にも聞いてもらいたいと思う。  PIMの一九五七年会計報告によると、コミッション・セール、これは日本だけしか売らない鉄鉱石ですから、日本に売るための手数料が三十七万四千ペソ邦貨約七千万円、マネージメント・フィー、これは手数料、これが五十三万七千五百ペソ、邦貨約九千七百万円、日本に品物を売るための費用、雑費、これが八十万八千ペソ、これが一億五千万円、向う決算報告書だけでPIM日本鉱石を売るために日本側に使った金が年間三億円計上されているのです。これはPIMの会計報告です。私は予算委員会で何もこの金が政治献金になったとかどうなったとかいうようなこと言おうとは思いませんが、PIMがこういう決算報告を出した。日本向けのマネージメント年間三億、これは木下商店としてはさっき申し上げました七千万円の収入の上にいろいろ使ったではあろうが、大きな金ではありませんか。巷間伝えるところによれば、このララップの取引によってできておる金で、岸さんの幹事長から総裁選挙の費用が出されたと伝える者もおる。私はフィリピン鉄鋼三社と木下さんともとの軍需大臣であった岸さんとの関係を考えてみると、そういう疑惑は当然起きると思うのです。私は岸総理大臣の答弁を求めます。
  35. 岸信介

    岸国務大臣 私は今澄君が一体確信を持ってお話しになるのか、単純なうわさとしてそのことをお話しになるのか、私に対してそういう疑惑があるということを今澄議員がお考えになっているのか、今の御質問はきわめて不明確であります。そういう事実は断じてないということを明確に申し上げておきます。私はなるほど軍需大臣の時代に鉄鋼統制会というものを作り、統制会の役員で、今名前が上っているような人が関係をしておったということは事実であります。しかし私がかるがゆえに今お話のような疑惑を受けるというようなことは、いかなる根拠によるか、全然私には理解できませんし、私としては断じてそういうことがないということを明確に申し上げておきます。
  36. 今澄勇

    今澄委員 私は少くともこういうフィリピン日本との鉄鉱石の取引、これを取り扱っておる木下商店の急激な膨張、そして木下商店鉄鋼三社との関係、今日インドネシア賠償の背景にもあるいはフィリピン賠償の背景にも、とにかく木下商店が出てくる。これからそれらの問題については具体的な話をお伺いしますが、しかもアメリカに送るといって約束しておいた金もアメリカに送っておらない。輸出入銀行は何も言わない。フィリピンに送るという金もフィリピンに送っておらない、輸出入銀行は何も言わない。機械を作って送るといったが、その機械も送らない。値段は高い、三億のリベートは出ておる。輸出入銀行は何も言わない。百八十万ドルの金は一体どうなるかというと、そのララップという鉱山は掘り尽して非常に品位の低いものしか出てこないので、残りの百五十万ドルを返還する能力はないのですよ。非常な貧鉱になって、この鉱山は大体おしまいに近づいたのです。そうすると輸出入銀行に金は戻らないということになる。詳しく申し上げればここに明細書があるが、もう戻らないということになるのですけれども、そうなるとこれは焦げつきということになるのです。そして今度はこれがフィリピンとの間の賠償でもし処理されるとすれば、だれが疑うなといったってこれを疑わないで——こんなずさんな輸出入銀行やこんなずさんな政府は一体どうしますか。これは総理大臣としても通産大臣としても大蔵大臣としても、こういうずさんなやり方はけしからぬと思うのです。  そこでさっき輸出入銀行資料を待ちました。輸出入銀行からとってお答えになればすぐできるんだ、大蔵大臣からお答え願いたい。まだ答えられなければ休憩するより仕方がない。
  37. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 目下督促いたしております。     〔「それでは困るな、質問ができぬ」と呼び、その他発言する者あり〕
  38. 今澄勇

    今澄委員 それではもう一問だけ質問をして、その間に答弁ができなければこれは仕方がないのですが、永野重雄氏は木下さんとは前からの親友ですよ。その永野さんのお兄さんが今運輸大臣でいらっしゃる永野護さん、あなたです。あなたは、この間志免炭鉱のことで何か社会党にどうとかこうとかいうことがあったが、社会党のだれが言ったかちょっと聞きたいですが、あなた今度のインドネシヤ賠償についても船舶十隻のうち九隻を木下にやって非常な疑惑を生んでいる。それからフィリピンに行った船の問題でも、途中でエンコした船なども出て、向うでもその後非常な問題が出て、さっき言った委員会になったのです。あなたは日本側賠償委員でもあるし、運輸省の責任者でもあるし、特に木下商店とはあなたはきれいにしておかなければならぬのです。しかるにあなたは昭和二十六年ごろからアロハ・カレンターという横浜の二世がやっている会社の自動車、これは木下商店からあなたのところへ回っているのです。そうして田村久史という運転手、大正八年生まれの運転手、(笑声)これもそのころからその車を運転しているのです。その車は五のむの三六〇五、これは木下商店の所有ですけれども調べてみたらそれがあなたの家のすぐ隣にあって、その車に今まであなたは常時乗っておったし、今あなたの奥さんが乗っている。あなたの家族はみなこれに乗っておる。私はおよそ一国の大臣ともあろうものが、それは予算委員会ですから何も法廷のように私は言いませんが、こういうふうな疑惑のあるときに、そういう木下商店の自動車なりその他を全部提供されて、これを使っているというようなことは、これは私は大臣としてあるまじきことだと思うのです。あなた、どうですか。     〔発言する者多し〕
  39. 楢橋渡

    楢橋委員長 静粛に願います。
  40. 永野護

    永野国務大臣 インドネシアの問題及びフィリピンの船の問題には、いかなる意味においても何も関係ございません。ただし今の私がまだ何ら官職につかないときに、友人としてのつき合いをしたことはございます。今日は私は木下商店の自動車に乗っておりません。ただし私の家族がときどき使うことがあるかもしれませんけれども、それは私は存じません。
  41. 今澄勇

    今澄委員 私はその田村久史という運転手を調べてみたが、これは残業料を込めて月給三万九千円、この人が昭和二十六年から今日まであなたに奉仕したその労力、それから自動車を木下が買ってあなたに提供しておる金銭、あなたの家のそばに車庫があって、その車があなたのところの人を乗せて歩いているところを現に確認をして、しっかりと見てきたんですから、あなたはそう言うけれども、あなたが担当の大臣として賠償その他をやっておきながら、しかも自分は木下商店提供のそういうものへずっと乗っておって、そうして自分は関係はないんだ、今家族が乗っているかもしらぬ。これは法律的に言えば、あなたは利益を受けて木下商店を誘導したものじゃないですか。これが腐敗しておる内閣でなくて何ですか。私は荒唐無稽のことを言っているんじゃない。それはいろいろうわさはありますよ。そんなうわさを言おうとは思っておりません。これは現実確認した事実なんです。これ一つだけでもあなたにもし良心があれば大臣をやめなければならぬ、私はそう思う。何たるあなたは不誠意な答弁ですか。
  42. 永野護

    永野国務大臣 私は今御指摘になりましたような仕事には何らの関係はございません。すべてそれは私の任官前の個人的のつき合いであります。
  43. 今澄勇

    今澄委員 だから言っているじゃないですか。さっきからのララップの問題だって岸さんの問題だって長い間の友だちですよ。それは長い間の友だちの間でどういうことがあったか、金銭の授受なんということは、一介の代議士が自分の力で調べろといったって、検察が国家の予算を何億使ってもわからぬものが、なおわからぬでしょう。わからぬでしょうが、一例を氷山の一角としてあげればかくのことしですよ。運輸大臣、あなたは何ですか、逃避的なその責任感のない答弁永野さん、中村三之丞さんのときにいろいろ問題があって、圧力はあったががんばった私鉄運賃の値上げは、あなたが運輸大臣になってから行われておる。伊豆下田鉄道の建設も中村三之丞氏に宮川さんがいろいろ動いておることも私は詳しく調べたが、問題があったがあなたになってからこれがきまっておる。興安丸だってあなたになってから払い下げておる。志免炭鉱だってあなたになってから国鉄では払い下げをきめた。この一連の事実というものをあなたは反省して——今あなたが使っている木下商店提供の自動車の問題だって、あなたは何らの反省もありませんか。国民に対してもあなたは何ら自分はまことにどうも申しわけないという気はないのですか。
  44. 永野護

    永野国務大臣 私は使っておりません。ただ車庫が近所にありますので、場合によると家族の者があるいは使ったかもしれません。それはきわめてまれだと思います。
  45. 今澄勇

    今澄委員 永野護氏の家は、鉢山町四十五番地、運転手さんの家は鉢山町四十六番地ですからね。これはたまたま私はそばにと言うのじゃないのですよ。そういうあなたの心境で、何をやろうと勝手次第ということではもう何おか言わんやです。  永野さんは、岸さんがフィリピンへ行かれた一九五七年の第二次東南アジア訪問で、岸さんが濠州からマニラに立ち寄ったのですが、そのときあなたはまだ民間ではあったが、ライオンズ・クラブの団長として東京から行かれている。そのときにPIMの東京支社長である鍛冶田進という人があなたと一緒に行っている。あなたの娘婿さんの関係のある会社の伊藤忠の山根実という課長も一緒に連れて行っている。そして向うでは岸さんと会われているが、このときのあなたの向うでの活動は、ライオンズ・クラブだけの活動でしたか。
  46. 永野護

    永野国務大臣 ただいま御指摘になりましたものは、みなライオンズ・クラブのメンバーであります。そして私はライオンズ・クラブの団長として、それだけではございません、多数の会員を率いて参ったのであります。そしてライオンズ・クラブの行事をいたしました。
  47. 今澄勇

    今澄委員 十二月十三日からライオンズ・クラブの会議は始まったのに、あなたは岸さんと一緒に、ライオンズ・クラブの会合に出ないで帰っているじゃないですか。あとで湯川大使が諸外国から非常に抗議を受けて、その収拾に困っているのに、あなたの言うことと違っているじゃないですか。一体どういうことですか。
  48. 永野護

    永野国務大臣 大会の一日欠席したことはございます。それは日本の内地における用件が、その大会に出ることを許しませんでしたから。しかしフィリピンに滞在しております間は、ライオンズ・クラブの行事はたくさんあったのであります。一つだけ欠席いたしましたけれども、ほかには出ております。
  49. 今澄勇

    今澄委員 私はあなたの身辺を出入国の登録の記録で全部調べてみたが、およそライオンズ・クラブの十三日からの総会には出ないで、あとで湯川さんが困っているフィリピンの情勢も詳しく私は手紙をやって調べております。とにかくさっきの自動車といい、こういう問題といい、私はもう少し今の内閣の施政というものは十分締めてやってもらわなければいかぬと思う。私は、永野さんの身辺にからんでいる今の自動車の話一つにしても、これはけしからぬ問題です。  これからインドネシア賠償の方に話を移したいと思うが、先ほど来申したララップの問題に切りをつけてからいかなければならぬから、ちょっと答弁をして下さい。
  50. 楢橋渡

    楢橋委員長 佐藤大蔵大臣から発言を求められております。佐藤大蔵大臣
  51. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほどお尋ねになりました事柄の全部の資料はできておりませんが、ようやく今ララップ向け鉱山用設備等の輸出についての融資をいつ決定し、これがどうなっているかということだけわかりました。お尋ねのありました機械云々の問題は通産省の方でもただいま調べておりますが、もう少し時間がかかるかと思います。  それで、融資を承諾いたしました年月日は、三十一年の一月二十六日であります。金額は六億四千八百万円、これを限度とするということであります。そして輸出入銀行はこのうち八割までを自分の方の融資限度にいたしております。言いかえますならば、五億一千八百四十万円が輸出入銀行の融資の限度であります。また興業銀行は八%、五千百八十四万円、三菱、富士、三和各行がそれぞれ四%ずつでございまして、二千五百九十二万円ずつがその融資限度であります。最初の貸し出し予定日は三十一年一月三十日となっております。期限は三十六年十二月三十一日でございます。利率は年四分、市中は日歩二銭六厘五毛、こういう金利であります。貸出形式は手形貸付をいたしておりまして、証書を併用いたしております。償還方法は、鉱石輸入代金の留保金、トン当り三十セントをもって三十二年から返済を開始せしめ、期限までに完済のことということになっております。担保といたしましては、本輸出代金債権譲渡、輸出代金保険、及び海上運送保険等にも付保いたしております。それから保証人といたしましては、木下茂及び八幡製鉄、富士製鉄、日本鋼管の三社の均分限定保証ということに相なっております。それからその他の条件といたしまして、諸契約の変更または追加は、事前に輸出入銀行の承認を要するという条項もございます。  現在までの貸出額は、輸出入銀行といたしましては、五億一千八百四十万円を限度としておりますが、そのうちで四億五千三百六十万円を貸しております。うち返済のできましたのが九千七百八十万円でございます。従いまして、現在残高は三億五千五百八十万円、こういうことに相なっております。  以上だけ今資料が入りましたので……。
  52. 今澄勇

    今澄委員 もうそれは最初私がここでずっと並べて言った通りなんで、問題のアメリカに送金した金がいつ送られているか、フィリピンに送ったのがいつか。これはそういうことを条件に借りているのですから、これはあなたが調べてわからぬということはないでしょう。どうしてもそういうやつも一つ調べ報告してもらいたい。これを聞いているのです。
  53. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま急いで調べさしております。     〔発言する者あり〕
  54. 今澄勇

    今澄委員 私の質問の順序からいくと、このアメリカに送金をした事実があるかどうか、フィリピンに送金した事実があるかどうか。三社の協定全文を見ると、これは送金するということで輸出入銀行が貸しているのだから、だからあなたの方から返事がないとすれば、これはアメリカの方には送金しなかった、フィリピンにも送金しなかった、こうあなたはその事実を認めなくちゃならぬ。あなたここで、事実その通りだと言って認めるか。認めないなら認めないだけの他の資料を示すか、二者択一ですよ。どっちですか。
  55. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま大蔵省関係では、輸出入銀行に対しまして、木下の口座を見ればわかるだろうから、そこで資料一つ全部そろえてみよう、それから同時に通産省の方でそのつど輸出許可をいたしておりますので、その資料を今精細にまとめさしつつあります。しかし御承知のように三十一年以来のことでございますから、なかなか古いものでありますし、そういうことで少し私も懸念してはおりますが、御要望のその資料をただいま取りまとめ中でございます。
  56. 今澄勇

    今澄委員 三十一年以来のことではなしに、これは金を三十年の十一月、輸出入銀行が出して、それを送ったのは一度きりなんで、その辺を見ればすぐわかる。それは事実があるから報告できない。あなたが、事実があるとかないとか報告できないとすれば、われわれはそれがそろうまでそれを待たなくちゃならぬ。それを前提として質問しておるのですから。
  57. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま申し上げた通りでございます。今資料の提出を督励しておりますから、しばらく御猶予を願います。     〔「休憩しなくちゃしょうがない」「ではそれまで待ちましょう」と呼ぶ者あり〕
  58. 楢橋渡

    楢橋委員長 続行いたします。
  59. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいま書類をもって調べましたところが、最初ララップ計画につきましては、全額で百八十万ドル、そのうちの百六万五千ドルプラント輸出をやる。それからアメリカから機械を買わなければならぬというので、二十五万ドル米国から機械購入する。それから先方において工事をしなければならぬというので、これがいわゆるインパクト・ローンとして四十八万五千ドル、こういう計画で進んだのでありますが、そのうち通産省といたしまして、どれくらい輸出ができておるかということを調べましたところが、現在までに百六万五千ドルのうち九十一万九千四百三十三ドル六十四セント、こういうことになっておりまして、あと六千八百八十万ドルがまだ残っておる。これは保留されておるわけであります。これが今日までの現状でございます。(「アメリカ送金、フィリピン送金は……」と呼ぶ者あり)アメリカから機械を輸入したことでありますから、これは私どもの方では書類はないわけであります。(「フィリピンにいつ送ったのか、そんなことがわからないはずはないじゃないか」と呼び、その他発言する者あり)アメリカから積み出されました機械の中は、二十五万ドルの中で、私どもの方ではっきり今まで積み出しておる数字がありまして、この内訳のわかっておるものは、十五万二千七百ドルになっております。あと残りはまだ積み出されてないと存じております。
  60. 今澄勇

    今澄委員 とにかく私が言っているのは、今通産大臣が読み上げた、通産省で各メーカーに発注したということにして一応書類の上だけ整えた書類は、大蔵省にも行っているのです。ここに私が持っているのですから。これは何月何日発注とか書いてあるが、大方八割くらいになっているけれども、その機械会社一つ一つ当ってみると、それはあとでまた決算委員会で詳しくやりますが、これはうそなんですよ。それから今、アメリカドルを送っていない、フィリピンドルを送っていない、そこがこのララップの問題の一番中心の話なんですから、今あなたが言ったような形式的な、たとえばインドネシアの賠償計画でも、それは何もかもみなやったあとで、本年一月十四日付か何かで通産省賠償計画書というのを、われわれが要求したら作った。そんなものは全部おさまってから作っただけのことで、それと同じことで、これはとにかく機械会社に一々当ってみて、これはあとであれですけれども、正確でない。だから大蔵大臣は、この輸出入銀行条件として貸した金が一体どこに行っているのか、それは行っていないと認めるか、それとも行っているというのか、それがはっきりするまではだれが聞いても、これは明らかな、理路当然でして、私のあと質問は行われないのです。
  61. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 問題は、先ほど来お話いたしましたように、融資の承認をして、今度はそれを通産省の方でそのつど輸出許可をいたしておるわけでございます。そのものと当方の許可したものと、それに合った内容であるかどうかを突き合して見なければなりませんから、その点が大蔵省自身としてわかりますのは、いついつ承認した、その条件その他は適正であるということ、そうしてそれに基いて輸銀が融資をいたしておるということでございますので、ただいま御指摘の点につきましては、輸銀の実際の融資の日時等を調べないとお答えができない。ただいまそれを突き合しておる最中でございます。
  62. 楢橋渡

    楢橋委員長 十二時半より再開することにいたしまして、暫時休憩いたします。     午前十一時四十九分休憩      ————◇—————    午後一時二十四分間議
  63. 楢橋渡

    楢橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際政府に一言申し上げますが、資料等につきましては、委員会の審査に支障のないように十分に準備するよう、委員長より特に注意いたす次第であります。  大蔵大臣及び通産大臣より発言を求められております。この際順次これを許します。佐藤大蔵大臣
  64. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 資料の問題で今御注文を受けましたが、こういう問題でございましたら、私ども詳しく資料を整えるはずでございました。実はこういう問題に御質問があるということを詳しく事前に把握いたしておりませんために、委員会に大へん御迷惑をおかけいたしました。  先ほど御説明いたしましたように、フィリピンララップ鉱山用設備等の輸出に関する問題でございますが、基本的なこの計画についての融資承諾は、先ほどお話いたした通り、三十一年の一月二十六日でございます。その金額は百八十万ドルということに相なっております。その詳細は、先ほどお語いたしましたから省略さしていただきます。ところがこの百八十万ドル決定いたします前に、三十年の十一月二十一日に二十五万ドルの送金の許可の決裁を経ておるのでございます。この二十五万ドルの問題が、先ほどお尋ねをいただいた点でございます。この送金の実際なり内容等につきましては、通産大臣からお話があることと思いますので、その方のお答えに譲りますが、問題は、先ほども御説明をいたしました百八十万ドル決定をいたしまして、その中にこの二十五万ドルが吸収されておること、その点は御了承いただきたいと思います。機械等の発注のために送金の許可が一カ月ばかり前に決定を見ておる、こういうことでございます。
  65. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいままで収集いたしました材料によりますと、フィリピン計画は百八十万ドルを要する。これによってフィリピン鉱山を開発して、一年に百二十万トンの鉱石を持ってきて、五カ年間にこれを償却する。一トンについて三十セントずつをもって償却する。これは日本としてはすこぶる有利だということで、当時これは許可されたわけであります。この百八十万ドルの出資につきましては、午前中御報告いたしました通りに、一部分はアメリカ機械を持ってこなければならぬというので、二十五万ドル許可をいたしておるわけであります。全面的にいたしておるわけであります。その中で十五万三千ドルというものは、すでに機械としてアメリカから送られたということで、これは内容はわかっておるのでございます。あとのものにつきましては、今木下商店を呼んで詳細調べておりますから、その詳細の結果によってまた御報告いたします。  それから四十八万五千ドル現地で要るというようなものは、一括して現地必要部品として許可しているわけでございます。そのうち四十五万五千四百ドルというものは、これはすでに使われたもの、こういうことで御解釈願います。
  66. 今澄勇

    今澄委員 今の二人の答弁ではっきりしないのは、アメリカ輸出入銀行契約の通り送っておるかどうか。フィリピンに労務その他の対象で、これはペソでやるように契約書を見るとなっておるから、四十八万五千ドル相当額をフィリピンに送らなくちゃならない。これを送っておるかどうか。この肝心の二点についてあなたは答弁がないじゃありませんか。
  67. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 ただいまの二十五万ドルの分でありますが、アメリカ機械購入代金、これにつきましては、サンフランシスコに木下の支店がありますので、そこへまず金を送りまして、それからそれぞれの取引先にまた金を渡す、こういうふうな手順になっておるのでありますが、二十五万ドル分は日本から見れば一応送金をしたことになっております。そのうち正確に申しますと十五万二千ドル若干でございますが、これはそれぞれの取引先に物を送りまして、そのできた機械フィリピンに送られた、こういうような状況になっております。あとの分につきましては、これは取引でございますので、何も一ぺんに一度に送るというわけのものでもございません。送金は実は二十五万ドル分は三回にわたりまして送金をいたしております。従ってでき次第物が出ていっておるわけでありますので、物ができますれば木下の現地支店から現実のサプライヤーに支払われる、こういう状況であります。
  68. 今澄勇

    今澄委員 ちょっとあなた待ちなさい。今の、アメリカに二十五万ドルを送っておらないじゃないですか。木下商店アメリカ支店で、現地にあったドルで支払いをして、日本からはいってはおらぬのです。あなたもっとほんとうの答弁をしなさい、いつ、何月何日為替のあれを組んで送ったのですか。
  69. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 先ほども大蔵大臣から御説明がありましたように、許可といたしましては三十年の十一月三十日に実はやっておるのでありますが、今二十五万ドルと申しましたのは三回にわたって現実に送金いたしておりまするが、実際いつ為替銀行で為替を組んだかというところまでは、実は今まだ調べるひまがなかったわけです。(「そこを聞いておるのだ」と呼ぶ者あり)しかし二十五万ドルを送金をしておるということは事実である、こういうことであります。一々の日付まではまだ調べる余裕がありません。
  70. 今澄勇

    今澄委員 最初の二十五万ドルについてはフィリピン側調べたところによると、木下商店アメリカに在外支店を持って、そこで十五万ドルの金を払って送っておるのであって、日本からはアメリカ木下商店にいっておらない、木下商店のほかの取引でほかの決済を受けた資料はもらいましたが、ドルはいっておるのだけれども、これは契約のきまる前に為替のあれをとったというのもおかしいけれども現実にいっておらぬのですよ。いっておるなら何月何日、決済していっておるのか、日にちをあげてここへ出しなさい。
  71. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 アメリカ機械の発注をいたしておりますものは、フィリピン会社から直接アメリカ会社との契約になっておるものでございます。それがただいま言われております百八十万ドルの協調資金と申しますか、それで支払われるということでございまして、アメリカの製造会社に対する発注はフィリピン会社自身だ。その取扱い木下アメリカにおいてやっておるということでございます。当方といたしましては、百八十万ドルの資金による鉱山開発計画というのがございますから、そのうちの所要資金として二十五万ドルというものがアメリカに送金されておるということでございます。
  72. 今澄勇

    今澄委員 アメリカに二十五万ドルを二回に分けて送ったとか何とか言っておりますが、木下は商社ですからCLを組んで、いろいろ金は動いておりますが、少くとも輸出入銀行契約では、木下がその金をこちらで使うことはできないのです。だからそれは木下のところにたまっていなければならぬ。それがアメリカ木下商店で決済したということになると為替管理法違反ですよ。それは何月何日に向うに渡ったという日にちがわからなければ、向うにある金を勝手に使って、こちらにある金で相殺するということは為替管理法違反ですよ。
  73. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 日本輸出入銀行に関する限り、その資料ははっきりいたしておりますが、この百八十万ドルは御承知のように協調融資でございます。従いまして、興銀あるいはその他の銀行も協力いたしております。そのために三十一年時分の資料がただいま興銀の倉庫の中に入っておるものをひっくり返しておりますので、正直に申しますとなかなかこの時間までには実はその資料が出て参っておりません。その点はまことに遺憾に思います。しかし本筋は、この百八十万ドル計画のうちに入っておる金でございますし、また先ほど申しましたように、百八十万ドル計画のうち、なお残高も残っておるような状況でございますから、数字的にはその間の説明がつくのでありますが、ただいままで時間をとりましたところでは、興銀の倉庫に入っておる書類を探し出すだけの実は余裕がないので、その確認の点において十分御納得のいくような資料のないことを実は残念に思っております。
  74. 今澄勇

    今澄委員 輸出入銀行の代表者をきょう呼んでいるのですが、ちょっとここへ出られまして、その間のいきさつについて御答弁を願いたい。
  75. 楢橋渡

    楢橋委員長 今呼んでおります。
  76. 石田正

    ○石田政府委員 輸出入銀行の総裁がおりますのですが、まだ見えておりませんので、私が輸出入銀行から聞いておりますところだけ前もって申し上げておこうかと思います。  輸出入銀行が一番初め融資の相談を受けましたときには、百八十万ドルということで相談を受けたわけでございます。そうしてその百八十万ドルに相当するところの円貨を審っの対象といたしました。その結果現在どういうふうな数字になるかということは、先ほど大蔵大臣が申されたところでございます。現在実際に金を貸しましたところの基礎になっておる数字は、百八十万ドルに対してどうなっておるかということを申し上げますと、輸出入銀行といたしましては、輸出機械が、百八十万ドルの場合には百六万五千ドルということになっておりますが、そのうちの九十万七千ドルというものが確実だと思いまして、それを審査の対象といたしておるわけであります。  それから米国購入機につきましては二十五万ドルという計画でございますが、輸出入銀行が融資をいたしますところの対象としては、十五万二千ドルということではじいておるわけでございます。そのほか現地の方の問題につきましては、百八十万ドルの内訳の中に四十八万五千ドルということで査定を加えまして、そうして貸出しの実行額、融資源は、先ほど大臣も申し上げました通り、貸出しの実行額はそういう実行計画を頭に置きまして金を貸した、こういうことに相なっております。
  77. 今澄勇

    今澄委員 それで今のアメリカの送金が、輸出入銀行契約の通り行われておらなければ、それは協調融資だけれども、八割は輸出入銀行が出しているのですから、これは国家機関です。そこで輸出入銀行としては契約違反であるということで、召喚して契約と違った理由を聞き、それを木下商店から直ちに引き上げる、こういうことが輸出入銀行に与えられた輸出入銀行法の示すあなた方の義務です。当然のことです。だから総裁を呼んでおるんだ。片方がほんとうならば片方は違反ですよ。こちらが義務を果しておらなければ、政府の方はうそをいっているということになるのです。どっちですか。
  78. 石田正

    ○石田政府委員 大臣からお話がございましたように、二十五万ドルの送金の問題につきましては、輸出入銀行としては十五万二千ドルという数字を示して、それは送られたという前提で金を貸しておるわけであります。
  79. 今澄勇

    今澄委員 それが送ってないのですよ。
  80. 石田正

    ○石田政府委員 送られておりますか送られておりませんかということにつきましては、先ほど来お話がございますごとく、その送ったと思われるところの銀行について事実を確認いたしておるというのが実情でございます。
  81. 今澄勇

    今澄委員 まあ、私は幾ら鉄鋼三社、木下商店がおるとはいいながら、こういったでたらめな今日の輸出入銀行との関係を見ると、いかにこれが政治的に大きな圧力をどこからか加えられておるかということを想像せざるを得ぬのです。私はこういった背景のもとに、今度いろいろな問題が出てきておりますが、こういうふうな輸出入銀行なら輸出入銀行が、自分の銀行法にきめられた点を実行していく。それから四十五万ドルフィリピンに送るべき、労務その他のために金が要ると向うは言っておるのだから、これは今答弁がないけれども、これを送らなければ国が引き揚げる、もしそういうことでなければ何億という金がずっと一業者手元に遊んでおって、これが自由に利用されるというようなことは、とんでもない話だと思うのです。この点はあと輸出入銀行の代表者が見えましたならば私は質問をしますし、なお時間もありませんから、これは引き続いて他の委員によってもまたあれしていただきましょう。とにかく私は岸さんに言っておきたいことは、今お聞きのようにあなたがこういった鉄鋼関係、戦時中の関連の人々が一つのグループで、フィリピン日本木下商店との間に多くの問題があります、私はこの木下商店フィリピンの高速船に船屋でもないのに三隻も入って、高碕通産大臣が反対していろいろ議論が出て、インドネシアの賠償も九隻だと思ったら、今新聞を見ればジャカルタから共同が来て、しかも二十一隻ナジル海運相は木下にやるべきであるということを向うで発言をして、それは一体ほんとうかと言って連絡が来ていて、きょうのあれを見ると非常に木下というものが特別な優遇を受けていることは事実です。第十四次造船においても、内田さんの海運は明治海運をけ飛ばして中型船が割当になっている。私は、こういう一連の事実からあとで一括総理永野さんにはお聞きしなければならぬが、政府としてはもっと国民の納得のいくような方向を一つとっていただきたい。なお今の輸出入銀行の金を貸しましたアメリカの送金、フィリピンの送金については、今度は大体様子はわかりましたから、私は送金の事実はないと思います。思いますがもし政府の方で送金したというなら、きっちりした日付と資料を予算委員会一つ出してもらいたい。
  82. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 大へん慎重な手続をとりましたためにおくれて参りまして、先ほど来あやまっておるわけでありますが、ただいま公文を確かめました結果が詳細に報告が参りました。三十一年二月二十三日、三菱銀行五万ドル、三和銀行五万ドル富士銀行五万ドル、興銀十万ドル計二十五万ドル、この送金は完了いたしております。そうしてこの二十五万ドルは全部アービング・トラストに預入してあります。そうしてそのうち十五万二千ドルは使用済みであり残りは九万八千ドル、これは支店名義で目的を特定して預けてあるということでございます。  次の四十八万五千ドルにつきましては、そのうちの送金済みのものは四十五万五千四百五ドルということになっております。三十一年六月五日十八万八千六百六十五ドル、三十一年九月十二日七万四千七百七十四ドル、三十二年四月二十三日十九万千九百六十五ドル、計四十五万五千四百五ドル、これだけが送金済みでございます。これは全部確認いたしたところでございますので、間違いはございません。
  83. 楢橋渡

    楢橋委員長 今澄委員に申し上げますが、今日本輸出入銀行副総裁の舟山さんが見えましたから……。
  84. 今澄勇

    今澄委員 それでは舟山さんにお伺いしますが、今大蔵大臣から木下商店とあなたの方との間に、一九五五年に取りきめた、十一月、資金が出ておる百八十万ドルフィリピンララップ鉱山への協調融資、これについてフィリピンヘの送金の面、それからあと今入ってくる鉱石にトン当り三十セントを課して、今昭和二十七年から約三十万ドル返還しておりますが、あと百五十万ドルを、もうララップ鉱石がほとんどなくなって、株価も五十分の一に今暴落しているようなことだが、これから返還をするのに一体非常に疑惑に包まれている。それからなお佐藤大蔵大臣から報告のありました年月日については、私の方もまた詳細調査してあれしますが、輸出入銀行としてこういった融資に対する監督、それから約束が守られておらなければ資金をすぐ引き揚げるというような点について、非常な怠慢がある。輸出入銀行のこの取引に対する御見解を一つお聞きしておきたいと思います。
  85. 舟山正吉

    ○舟山説明員 ララップ鉱山の融資についてのお尋ねでございますが、輸出入銀行の融資の方式は、御承知の通り輸出入銀行と市中銀行と協調融資をいたしております。それで本金につきましては、申し込みは六億六千七百余万円ございましたのでありますが、それに対して総額六億四千八百万円を融資することにいたしまして、そのうち輸出入銀行は五億一千八百四十万円の受け持ちでございます。この総額のうちに、内訳をいろいろ資金の用途別に見ておるのでございますが、そのうち日本よりの買付機械代といたしましては、ドル貨にいたしまして百六万五千ドル、それから米国よりの買付機械の代金といたしましては二十五万ドル、こういう内訳になっておるのでございます。この融資の実行につきましては、これはただいま申し上げました総額と申しますのは、融資承諾としていわばワクを与えるのでございまして、その後はこの借り主における資金の使用進行状況を見まして、少しずつ区切って資金を出していくのでございます。その資金繰りを見まするのは、この協調融資団の管理銀行がこれを見守ることになっておるのでございまして、その報告によりまして輸出入銀行現実の貸し出しをやっていくわけでございます。そこで、その借主の資金の使い方というようなものにつきまして、当初の貸付契約契約違反とか、あるいは将来の債権確保の上において、何か支障になるような使い方があるといったようなことにつきましては、この貸付契約の中の約款において、それぞれ規定があるわけでございます。今日まで金を出しておるのでありますが、約款がどうなっておりますか、ただいま私は記憶いたしておりませんけれども、特に約款に違反の事実がありとして、輸出入銀行といたしまして措置したことはないように記憶いたしております。
  86. 今澄勇

    今澄委員 ここにその約款がありますが、多々違反の点があるのです。第一に、フィリッピン側に送った労務その他の管理費の面において、まだ送ってないものもある。それから、その一番大事なところは、第二年目以降の価格は、作業原価に基いて経済的に可能な限り低減するものとする、こうなっているのに、これを融資してから三年目に一ドル五十セントも値上りしておる。鉄鋼界は不況のどん底にあるのに、あなたの方の協調融資したPIMカンパニーが一ドル五十セント値上げして、しかもこれは日本側は認めておる。これは協定書の重大な違反です。だがしかし、時間もありませんから、この問題はこの程度にしておきますが、こういった一部の人だけで非常に独占的な行為を行う、こういうことについては、独占禁止法の違反もあり、通産省においても十分監督し、今後輸出入銀行においても十分一つ警戒せられる方がいいと思います。  そこで、時間がたちましたから、私は、今度は岸総理に申し上げます。岸総理は、一月七日、植村経団連副会長より訪問を受けて、熱海のあなたの別荘について尋ねられ、まことにまずいやり方であったということを——新聞にも出ておりますが、総理大臣としては、どういうところがまずいところであったというふうにお考えになっておりますか。(笑声)
  87. 岸信介

    岸国務大臣 われわれの私生活の問題におきましても、いろいろと総理として社会に話題をにぎわすというような事柄はこれは望ましい形でない、これはまずいことである、こう思います。
  88. 今澄勇

    今澄委員 アメリカのニクソン副大統領が汚職の疑いありという疑いをかけられただけで、個人の全資産を明らかにして、アメリカ国民に対してみずからの潔白を証明しておる。この一連の事実から見ても、あなたの税務署へ申告で届けておられる公務員としての年間の所得、株式の配当、その他の申告の出ておる所得から比べてみると、南平台における高峰邸の、箕山会をあなたがやっておられたころ契約された点、山口県田布施の本宅の鉄筋改築の問題、今度熱海土地に別荘を建てられた問題、東京の本邸と、こう比べてみると、ここしばらくの間に非常な建築があるわけです。私は、これは冗談でなしに、一国の政治家としては、そういう国民の疑惑に対して答える必要があると思うのですよ。あなたの御答弁を願いたいと思うのです。
  89. 岸信介

    岸国務大臣 私の郷里に鉄筋の建築をしたということは、全然事実はございません。そういう事実はございません。それから、熱海に私が別荘を持ったことにつきましては、これは事実でございまして、これについても、私は何らやましいこともございませんし、従って、御疑問の点があるならば、何でもお答え申し上げます。
  90. 今澄勇

    今澄委員 あなたは、今度伊東と下田間の鉄道の建設で、あそこの伊東一帯の土地が非常に問題になっている。そこにあなたの岸信介という表札が立って、これまた国民の大きな話題になっているのです。私は、終戦後今日まで——田布施においても、田布施の駅からあなたのお宅まで舗装道路がついている。あなたの本宅を改築修理されたことも、これはわれわれが見ている。それから今の別荘といい、やはり国民は金権政治、そういう印象を——特に木下商店やグラマンの問題等ある折柄、私は、総理としては、これらの問題について十分戒心しなくてはならぬと思うのです。特に熱海にも舗装道路があなたのところについている。私は、日本の戦争のときに——今日の日本にいたしたあなたの総理になってからの態度としては、国民は納得しかねるのです。私はあなたの政治責任を一つ質問します。お答え願いたいと思います。
  91. 岸信介

    岸国務大臣 私の郷里の——これは今澄君も非常に近いですから御承知だと思いますが、私の郷里において、駅から私の家まで舗装道路ができているということは、これは事実に反しております。それから熱海の別荘に至るまで本道から入っておるこの私道は、あそこのわれわれの別荘のあります一帯において、土地を持っております者が温泉組合を作っておりまして、温泉組合のその土地所有者がそれぞれ分担金を出して、この道路を鋪装しておるというのは事実でございます。
  92. 今澄勇

    今澄委員 その伊東の方のあれも事実無根ですか。
  93. 岸信介

    岸国務大臣 これは実は私が満州時代に知り合っている人が、土地の分譲をするので一合だけ持ってもらいたいということで、一口だけ私が加入いたしております。しかし、それが、伊豆地方の土地の値上りを考えて大きな土地を私が持っておるというようなことではございませんで、事実ごらんになってもわかりますように、その一部分をそういう友人がやっておる土地の会社の何として私が一口申し込んでおります。
  94. 今澄勇

    今澄委員 そこで私は、インドネシアの賠償の問題について最後にお伺いをするわけであります。  まず、日本とインドネシア両国間で協議して、賠償で引き渡すものをきめなくちゃならぬ。これが賠償計画ということで、賠償条約の中にも、契約の中にも入っておる。この実施計画ができてから、これに基いて使節団が日本業者と直接交渉して契約を結び、政府はその契約や協定が実施計画に合致するかどうかを確めてから、認証をして、認証を得て初めて契約が発効する、とこういうことになります。その点から見ると、今度のインドネシアの賠償で、ほかのものは何ら計画も何もないのに、木下商店の船が九隻だけまずきまっておる。しかも、ナジル氏が来朝して、これが、まさか通産省大蔵省も賛成はすまいと見ておったのにきまったということは、非常に大きな疑惑を残すのです。これは担当の大臣から、一つどういういきさつできまったのか御説明を願いたいと思います。
  95. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 昨年の一月にナジル海運相が見えまして、インドネシアがオランダとのいろいろな状況下において、経済断交その他の状況下において、輸送力をどうしても自分たちで持たなければならぬということで、日本に用船の計画を持ってこられまして、山県船主協会長と折衝をされましたけれども、不幸にして、その用船契約が、値段の関係その他でできなかった事実がございます。その後ナジル海運大臣が再び来られまして、今度は買船をしたいというような意向を持って、日本もしくはドイツを回られました。六月十日にバスキ公使がスバンドリオ外務大臣の書簡を持って私のところに見えまして、そうしてインドネシアの海運の状況等をしきりと訴えられました。そうして、用般ができない以上は、新造船その他を買船いたしたい。——そこで御承知のように、賠償実施計画というものが四月十五日から発足いたしましたので、細目がきまっておりません。でありますが、インドネシアの政情あるいはオランダとの経済関係からいって、船舶の必要というものは私もそうあろうかと思い、なるべくインドネシアに対して好意を持ってこれに処していくべきだと考え、賠償委員会に各省の連絡協議会というのがございますが、これにかけまして、それはいいじゃないか、この際インドネシアに対する日本方針として、できるだけインドネシアの経済状態を救うためにいいじゃないかというような結論にも達しましたので、六月十六日かと存じておりますが、私といたしましては、インドネシアの船舶要求に対して、賠償でやるということを申したわけであります。ただ当時、賠償の細目にわたっての協定がまだできておりませんので、それらの手続を進めた上で、七月十六日でございましたか、バスキ公使の方と賠償の実施の中に入れるという手続をいたしたわけであります。私どもは、賠償によりまして船舶を出します経緯は今申し上げた通りでありまして、一昨年の暮れと申しますか、以来のインドネシアの状況から申しまして、外交上できるだけ早い機会に船舶を供与することが適当だろう、こう思ってやっております。
  96. 今澄勇

    今澄委員 外務大臣に聞きますが、実際の取引は木下商店の村上常務という人が、昨年の四月、インドネシアに、C・M・チヨーというインドネシア・オーバー・シーズ・カンパニーの社長とともに向うへわたって、そこで向うで話がきまっておるのです。これは外務省のそういった計画ではなしに、もうきまっていた。船の手を打っているのはもうそのとき打っているのです。それがあとでほかのところには一つもどうだという連絡もなしで、木下商店だけをきめるということは、これは非常に疑惑を残すと思うのです。どうして、当初計画を作り、こういった計画があるということを日本業者にも知らせ、そうして公平な機会を与えてやるというふうにしなかったのですか。
  97. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 現在各国と締結しております賠償協定の実施方法というのは、直接賠償方式をとっております。従いまして、順序から申しますと、年度計画賠償契約をいたしましたときに、大体日本賠償に供与できる船舶であるとか鉄道車両であるとかいうような相当な大きな品目を、付属書でこの程度のものならば賠償で出せるだろうということを一応きめております。さらに実施計画になりますと、毎年一年ごとに、実施計画を立てまして、そうしてそれを両方で合意して参るという順序になるわけであります。ただ、合意されました実施計画というものの中で、どういうふうに契約をいたしていくかということは、現在直接方式でありますので、インドネシア政府なり、あるいはフィリピン政府なりが、直接業者と話し合いをいたしまして、契約を締結して、そうして賠償部に持って参りまして、その認証を求めることになっております。でありますから、今回の場合において、年度内に実施計画がまだ完全に全部にわたってできておらなかったということは事実でございますけれども、今インドネシアの経済事情が逼迫し、半年以上も前から船舶の用船その他しきりと政府に希望しておりましたので、まず賠償に繰り入れても差しつかえないもの、こういうふうにわれわれは推測をいたした次第であります。
  98. 今澄勇

    今澄委員 通産省賠償室から出た一月発表の資料によると、インドネシア賠償実施計画は調達決定のつど個別に合意決定する方式がとられているともうはっきり書いておるのです。これは庁内の連絡不十分でしょう。この資料を見ると、運輸省や外務省とは違うのです。これは要するに計画書がなくて随意契約で実際やったのが、そのつど計画で認められてきまった、こういうことなんですね。日本の国内取引であるならば、日本政府は、会計法、予算決算及び会計令等によって、競争入札をして、しかもこれが公平を期する、こういうことになっておる。だから指名競争や随意契約のときには政令で別の制約を定めて、国内の業者との腐敗、汚職、疑獄の発生その他過当競争を押えるというのが日本の国内政策なんだ。しかるに、このインドネシアとの賠償については、実施計画というものがあり、合同委員会というものでチェックしてこそ、日本国内のそういう過当競争や日本国内の業者の腐敗やその他のものが防げると私は思うのですよ。それをそういうことは、いかに直接方式といいながら全然抜かしておいて、そうしてインドネシアと業者だけにまかして、一番うまくやったのがみな認証されるという方式では、競争が非常に激化して、日本の通産行政の上からもこれは大へんな困惑を来たすのではないか。一体行政指導の面でこれをどう切り抜け、どういうふうな指導をして、今日のこの混乱する姿を食いとめようとしておるか、日本の通産行政の立場からも御答弁願いたい。
  99. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 賠償の実施計画につきましては、通産省といたしましては、その計画に参与いたしまして、そうして、それが日本の産業に直接妨害があるかどうかということをよく検討いたしまして発言をするわけであります。実施計画を実行するに当りましては、これはフィリピン側の希望といたしましては、最初日本政府がこれをまかなってくれ——こういうふうな方式が昔あったのであります。それは困る、直接にしてくれということになりまして、それでフィリピン側が直接日本業者と折衝してできるだけ安いものを買いたい、こういう方針をとるわけでありますが、そういうふうな場合には、できるだけ通産省といたしましては日本の……(「話が違う」「今の答弁と違う」と呼ぶ者あり)まあ賠償の問題では取扱いは同じであります。それでそういう場合には、国内におけるそういうふうな人たちに向いまして、できるだけ協調していくようにということを行政指導をいたしております。
  100. 今澄勇

    今澄委員 日本とインドネシアの賠償協定の第三条には「年度実施計画を協議により決定」とある。インドネシアの使節団が「日本国民又はその支配する日本国の法人と直接に契約を締結するものとする。」ということを第四条で規定しているのです。だからこの協定で見ても、直接随意契約を結ぶということは、協定で認められたのだから違反ではないが、年度実施計画を協議により決定するということが先行しなければならぬ。が、これが先行しないで——しかも一般業者に機会均等にして、そうして政府がこれをあっせんして、何と言ったってこれは国民の血税ですから、業者全体の納得のもとにこの賠償が行われるということが、通産大臣の責任でなければならぬ。通産大臣は何をぬけぬけと言っておりますか。あなた、責任はどうですか。
  101. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 それはインドネシア側といたしましては、できるだけ安いものを買いたい、こういうことを希望するわけなんでございます。しかし、日本側といたしますれば、これはほかの産業に影響すれば困るから、賠償実施計画ができましたときには、先方の交渉に応ずるときには日本業者の間においてできるだけこれ一本にするように要請いたしております。先般問題となっております船の問題につきましては、賠償実施計画をいたします前からの話でありまして、その問題は非常に先方が急いでおったわけでありますから、それは賠償実施計画あとで入れたということは先ほど申し上げた答弁の通りであります。
  102. 今澄勇

    今澄委員 私は、この賠償実施計画あとで入れたという正直な通産相の答弁から見ると、大体通産大臣大蔵大臣は反対すべきなんだ。これが木下商店だけに特別な利益を供与した最大の疑問の点であって、私は通産省がもっときっちりとやるべきだったと思います。この計画のないのをあと計画に入れた。木下商店に限って入れた。しかも十隻中九隻入れたのは国民の大きな疑惑でして……。  通産大臣に続いて伺うが、さらにきょうのジャカルタ十二日発共同によると、インドネシア海運省当局者は、十二日賠償計画に基き日本からさらに二十一隻の船舶を調達することに大筋の話し合いがまとまり、近く仮調印されようと語った。初年度計画は十隻を引き渡すことになっているが、今度の追加分は二十一隻、四万三千トン、金額は二千万ドル、これの船舶の取扱い商社は木下商店。こういう報道が入っているのですが、またこれも計画外だけれども、実際にきまったからということでお入れになるということになれば、一部の木下商店というものばかりがそういうものの中にぐんぐん入ってくることになるが、通産省としてはどういうふうにやられますか。通産大臣は今の、この向うからこちらに言ってきているそうですが、話をお聞きですか。それに対して通産省態度はどうです。
  103. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 船舶に関する問題につきましては、国内の関係があるものでありますから、船舶を何ぞう賠償に入れるかとか、幾ら売るとかというふうなことは運輸省においてきめるわけでありまして、運輸大臣の方から答弁いたします。
  104. 永野護

    永野国務大臣 私は━━━━━━━━━━━━━━━━━。     〔「おかしいじゃないか」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
  105. 楢橋渡

    楢橋委員長 ただいま運輸大臣から発言を求められております。永野運輸大臣。
  106. 永野護

    永野国務大臣 補足をして説明いたしますが、私が今申しましたのは、賠償に船を供与するということについては、私は関係がないと申し上げたのであります。
  107. 今澄勇

    今澄委員 今通産大臣はあなたが……。     〔発言する者多く、議場騒然、聴取不能〕
  108. 楢橋渡

    楢橋委員長 高碕通産大臣……。     〔今澄委員「運輸大臣でなければだめだ」と呼ぶ〕
  109. 永野護

    永野国務大臣 重ねてお答えいたします。私がただいま申しましたのは、賠償に船を提供すると、いうその交渉には運輸大臣は触れておりません。しかし、今度何トンの船をどういうふうに作るというワクが私の所管外のことできまりましたときに、その船を作ることが日本の国内経済にどういう影響を与えるかという意味におきましては、運輸大臣は発言の機会があります。
  110. 今澄勇

    今澄委員 永野さん、海外投資連絡会は、次官会議の申し合せで経企、外務、大蔵、農林、通産、運輸の各局長なり官房長なりがやって、これは大臣の所管権限ということになっている。賠償実施連絡協議会は各省の次官で構成して、これも大臣の決裁事項ということになっている。しかもあなたは六月十四日、閣議後の記者会見で次のごとく語っている。インドネシア、フィリピン等に対する賠償については積極的に船舶を提供するようにしたい。これは鉄鋼、造船など関連備業を大いに潤おし、将来は船舶修理などが期待されるからである。こうあなたは語っている。賠償の実施については現在競争入札によって商社が直接契約を行なっているが、賠償は国が責任を持つものであり、政府が直接やるべきであると思う。しかし、実際問題としてこれがむずかしいとすれば、船舶だけについても窓口を一本化、何らかのあっせん機関を設ける必要があるとあなた自身が言っている。あなたはどうですか、先刻の答弁は。
  111. 永野護

    永野国務大臣 私は、賠償に船舶を使ってくれることは、日本の造船業の将来のために望ましいことだと思っております。しかし、私はその賠償の中に船を入れてくれということを主張する機会はないのであります。従いまして、その交渉はあげて担当官庁であります外務省の方でやってくれておると思うのでありますが、しかしその船を作りますときに、日本の造船所の能力その他を考えまして、今賠償の方へあまり船材を使ってくれては困るがというようなことを、その賠償に船を使うということがきまったあとでわれわれが発言の機会を持つのであります。  それからあとの新聞の記事でありますけれども、私はかって全権でありましたときから、賠償は国と国との債務だから、国が責任を持って引き渡すべきであるというのがそのときからの私の持論であります。いわゆる間接方式によるべきだというのが私の持論であります。従いまして、できるだけの機会に国がそういう機会を得たいとは思ったのでありますけれども、その意見はいれられませんで、いわゆる直接方式になったのでありますから、今は何ともいたし方ないのであります。しかし、私の希望といたしましては、国が責任を持ってやるべきものであるということは、賠償契約締結の当時から今日に至るまで、私の所信は変っておらないのであります。
  112. 今澄勇

    今澄委員 それは答弁になりませんよ。あなたが先ほど言った━━━━━━━━━━という答弁を取り消してもらわなくちゃ……。
  113. 永野護

    永野国務大臣 そういう意味であれば取り消します。(「そういう意味とは何だ」と呼ぶ者あり)私は、賠償の問題は質問のときに意味を聞き違えたのであります。賠償に船を提供するというその交渉には運輸大臣は入らない……。(「今に始まったことじゃない」「運輸大臣の答弁にならないよ」「率直に取り消せ」と呼び、その他発言する者多し)私は、先ほどの質問の御趣意を取り違えておりました。従いまして、その聞き違いに基きました御答弁の部分だけは取り消します。
  114. 今澄勇

    今澄委員 それは具体的にはどの部分でどれを取り消してどういうことをするのですか。それは具体的にどういうところを聞き違えて、だから私は、どこを取り消してあらためてこう申しますというところがわからない。
  115. 永野護

    永野国務大臣 お答えいたします。私は、賠償の交渉には関係がないと、こう実は申したつもりであります。従いまして、私に関係なしにきまった賠償の交渉によって船を供給するということがきまりますと、その造船計画については私の意見を述べる機会もあるのであります。
  116. 今澄勇

    今澄委員 永野さん、そう言われるけれども賠償実施連絡協議会へは、あなたのところの、あなたの下にある次官が入っているんです。だからこれはあなたの下僚なんですから、あなたはその上司として——これはあなたの決裁事項でしょうから、あなたは責任があるじゃないですか。
  117. 永野護

    永野国務大臣 実施計画を立てます前には次官が出ております。しかし、その実施計画に基きまして具体的に先方と契約をするその交渉には運輸省は何にも関係するところはないのであります。     〔「どうもはっきりしないな」「休憩々々」と呼び、その他発言する者多し〕
  118. 楢橋渡

    楢橋委員長 ただいま永野運輸大臣の━━━━━━━━との発言はお取り消しになったらどうです、運輸大臣。
  119. 永野護

    永野国務大臣 ━━━━━━━━━━と申しました私の発言は取り消します。
  120. 今澄勇

    今澄委員 私は、永野さん、あなたは笑っておられるけれども、これは税金を負担してこの賠償の重荷を背負う国民の側からすると、あなたはそこでそんな笑い顔で言っておられるような問題ではないと思うんです。私はやはり、言いたくなかったが、さっきあなたは、それは隣におるからとかなんとか言っていますけれども、その車はあなたの家の車庫の一部におるのじゃないですか。そしてあなたは自分でそれをずっと使って今でも利用しておって、それで国会を通じて——先ほど総理は、非常に遺憾であったといって、非常に私は謙虚だと思うんだ。あなたは何だ。あなたは国民の前へ自分の責任のがればかりにきゅうきゅうとして、運輸大臣ともあろうものが、業者といろいろ折衝しなくて一体何ができますか。あなたは業者と接触し、あなたの次官は協議会で、あなたがそれと関係があることは明らかじゃないですか。それを明らかでないなんて言って、自分の一身のことばかりあれして、しかも、向うから言ってきた二十一隻の木下商店のやつはどうするかということはいまだあなたは答弁してないんだ。私は、あなたはもっと謙虚に反省しなくてはならぬと思うんです。一体こんな運輸大臣がいて、岸総理はどう思うんですか。あなたの内閣じゃないですか。あなたの感想を聞きたい。あなたの意見はどうですか。
  121. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどの質疑応答につきましては、ただいま運輸大臣がこの議場を通じて取り消しておりますから、これで御了承願いたいと思います。
  122. 今澄勇

    今澄委員 これは非常に重大な点なんです。これはやはりひょっとしてフィリピンからもいろいろと問題があろうし、日本の国会もこれから証人を呼んで、フィリピンと同じように調査すべきだと思う。そこで岸さんは、永野さんがこれらの賠償の問題にいろいろと関係しておるのに、自分は木下商店からそういういわゆる利益の供与を受けている。あなた自身の閣僚がそういう状態であって、これはいいことだと思いますか。あなたの総理大臣としての所見はどうですか。
  123. 岸信介

    岸国務大臣 各閣僚も、先ほど申しておりますように、いろいろな私生活の上におきましても十分戒心をいたすようにいたしたいと思います。
  124. 今澄勇

    今澄委員 私は、これは三悪追放を表看板にかけておる岸内閣の現状としては、やはり総理大臣としては国民に公約した手前、お考えを願わねばならぬと思う。総理答弁の前に永野さんから、今の木下商店の二十一隻あとあれしておるという話は向うから連絡があったらしいが、外務大臣、運輸大臣の答弁を聞いてからにしましょう。
  125. 永野護

    永野国務大臣 二十一隻の問題につきましては、まだ私は報告を受けておりません。
  126. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 一月十七日に黄田大使からそういうようなことがあるということを言ってきております。
  127. 今澄勇

    今澄委員 通産大臣は、そういうやり方で一体おやりになりますか、高碕さん。
  128. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 二十一隻という話がございますけれども、私はそれはまだ通告を受けておりません。おそらくはこれは賠償と離れた問題だろうと思っておりますから、私はまだ通告を受けておりません。
  129. 今澄勇

    今澄委員 外務大臣のところに一月も前に来ておって、それで運輸大臣も通産大臣もみな知らぬというのは、それはどういうことですか。それはどういうことです。おかしいじゃないか。     〔「外務省だけで握っていていいのか」と呼び、その他発言する者多し〕
  130. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 そうした情報の通告のありましたときには、各省に回しております。
  131. 今澄勇

    今澄委員 今外務大臣は情報と言ったけれども、これは大使からの公式の電報じゃないか。何だ、内閣は不統一じゃないか。そんなものはだめだ。     〔「休憩々々」「全然だめじゃないか」と呼び、その他発言する者多し〕
  132. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 在外大公使から来ましたそうした情報につきましては、各省に知らせるように、当然いたしておるわけでありまして、情報でありますから、大臣のところまで行っておるかどうか、私存じておりません。
  133. 今澄勇

    今澄委員 今、外務大臣は情報と言いましたけれども、そんなことはないです。いやしくも一国の大使が、今九隻の船を決定したあとで、これはおかしい。木下商店だけにあと二十一隻もやらせるのはどうか。これには詳細な条件が、あと言わないけれども、ずっとついておる。それが通産大臣にも関係するところがうんとあるし、大蔵大臣、運輸大臣に関係する部分もついてきておるのです。一片の情報でそれを見なかったとは言わせません。全然不統一じゃないですか。何言っておるのですか、とてもだめです。とても、とても。そういうことでは私は質問を続けることはできない。でたらめだ。     〔「内閣不統一もはなはだしい」「休憩々々」と呼び、その他発言する者多し〕
  134. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいま申し上げましたのは、黄田大使からそういう情報が来ておるのでありまして、先ほど申し上げましたように、こうした問題につきましては、政府に申し込みがあるということではないのでありまして、業者とインドネシア政府との間に話がつきましたというような情報が、黄田大使から来ておるわけであります。その情報につきましては、外務省から各省に回しておるのであります。
  135. 今澄勇

    今澄委員 その黄田大使の公電を各省に回せば、これには金融の関係、年限、いろいろ船のあれやらあるんだから、当然運輸大臣も見、通産大臣も見て、いまさっき通産大臣は、賠償計画の中にないものをあとから認めたことは遺憾であった、いまさっき言ったばかりじゃないか。それが内閣の閣僚が、ある者は知っておるがある者は全然それがわからない、そういった状態が許されますか。まさに閣内不統一ですよ。乱脈じゃないですか。
  136. 岸信介

    岸国務大臣 ただいま御質問の点を外務大臣は、黄田大使からの情報として関係各省に回したということでありますが、この間における各省の連絡が十分でなかったことは、先ほど来の答弁で御承知の通りでありまして、不十分であると思います。ただ、私も内容を今ここで初めて見たのでありますが、実は内容が具体的にまだ取り上げるだけの内容にはなっておらぬようであります。また賠償との関係におきましても、延べ払い方式による輸出の契約としてそういう話がされておるということであり、同時にドイツやイタリア等からもこれに対して船のなにについては申し出があるというようなことでありまして、きまった話としてこれに対して政府各省が具体的にどう扱うべきかというような具体的な事実として、この駐在の大使から日本政府の意向を聞いてくるとか、日本政府の処置ぶりを要求しておるというような内容のものではないのであります。私は実はそういう事実はここで初めて見たのでありますが、そういう程度であります。しかしそれにしても関係省の間における連絡が十分でなかったことにつきましては十分注意をいたします。
  137. 今澄勇

    今澄委員 総理の御答弁でややはっきりしました。私はそういうたとえば九隻の場合でも、各省の大臣も知らない間にきまって、通産、大蔵等の事務当局がいかにそれに反対してもきまっていく。今度の場合もそういう話が一つも伝わらないが、だんだんときまってきて、またナジル海運相か何か現われて言われるとぴしゃっときまる、あとでまたしぶしぶ承認していく、木下さんのところが大きく取り扱うでは、とても国民は、税を負担する者の立場からすれば、内閣に対する信頼は持てませんよ。私は、少くとも内閣の諸公は、そういう点については一つ十分注意してやってもらいたいと思います。まあ次へ移りましょう。  村上常務がインドネシアに行かれたときに、向うでは国賓待遇で、非常にいい待遇をしておる。岸さんの親書を向うへ手渡したと伝えられておるが、岸さんはお渡しになりましたか。
  138. 岸信介

    岸国務大臣 そういう事実はございません。
  139. 今澄勇

    今澄委員 岸さんは、あなたの方のカワジ秘書を使って手紙を持たしておやりになったことがありますか。
  140. 岸信介

    岸国務大臣 カワジ秘書というのはおりませんが、何か……。
  141. 今澄勇

    今澄委員 あなたのお知り合いの方、私設秘書でしょう。
  142. 岸信介

    岸国務大臣 そういう事実はございません。
  143. 今澄勇

    今澄委員 これはやはり聞いてみないと疑惑のあることですから……。インドネシア・オーバーシーズ・カンパニーの社長、C・M・チョウという人がおるのです。これとあなたが一昨年の九月、インドネシアその他東南アジア旅行の前に、木下さんの紹介でお会いになったことがありますか。
  144. 岸信介

    岸国務大臣 チョウという人には私、一、二回会ったことがございます。しかしインドネシアに私が旅行する前に、木下君の紹介で会ったという事実はございません。帰ってきて、その後私が箱根に休養しておるときにたずねてきて、会ったことはございます。
  145. 今澄勇

    今澄委員 そこで村上常務が四月、インドネシアに行きましたときに、一緒に参りましたさっき申しましたC・M・チョウという人に、木下から二千万円の軍資金を渡し、協力を依頼したという情報がインドネシアのこちらの大使館に入って、インドネシア大使館のワルマナ情報官からインドネシアの方に連絡があって、村上さんと一緒に向うへ着いたとたんにこれは逮捕になっておる。私はこの事実は、木下商店がやったかどうか、民間のことであるから知りませんが、そういう村上常務のふところ刀であり、しかも汚職の疑いありとして飛行場において逮捕いたした人と、一国の総理大臣が一、二度会っておられるというあなたのその言葉は、このインドネシア賠償というものをめぐって、非常に重大な疑惑を国民に与えると思います。このチョウという人に私が直接会って聞いたところでは、九月に総理向うへ行かれる前に、赤坂の長谷川で木下さんと会った。その後箱根の奈良屋で私は二、三回お伺いして打ち合せしたと本人が言っておるのです。私は一国の総理大臣が、このインドネシア賠償というもののそういうインドネシア側のいきさつからかんがみても、これは非常に疑惑に包まれたと思わなければなりませんが、総理大臣はどうお思いでありますか。
  146. 岸信介

    岸国務大臣 事実は先ほど私がチョウと会ったのは箱根でございまして、それ以外に私は会っておりません。それからチョウがインドネシアにおいて捕逮されたとかいうような事実は、私全然関知しておりません。(「関知とは何だ」と呼ぶ者あり)それは知っておりません。
  147. 今澄勇

    今澄委員 二月の十四日いよいよスカルノ大統領が帰られるというので、そこの賀寿老でお別れパーティがありました。そのときは六時からということであったが、七時ごろまでおそくなったですが、ほかの小部屋で木下さんとスカルノさんとあなたと三人で、時間は短時間だったけれども、お会いになっておるというが、どうですか。
  148. 岸信介

    岸国務大臣 これは三人だけではございませんで、当時のインドネシアの総領事も立ち会っており、随員の人もおりまして、ごく短時間会ったことは事実でございます。チョウはそのときにはおりません。
  149. 今澄勇

    今澄委員 私がこの賠償をめぐって今いろいろお聞きした点を総合すると、やはり大きな疑惑に包まれざるを得ません。  もう一つ外務大臣にお伺いをしますが、これは通産大臣と外務大臣とに御答弁を願いたいですが、外務省インドネシア賠償担当官白幡参事官は、昨三十三年八月突如としてイタリアに転出を命ぜられ、彼は非常にふんまんを漏らしておりました。それから通産省賠償室長高見沢氏は一月二十八日の飛行機でニューデリーに出発して、これも転勤させられております。賠償室インドネシア班長の江頭精一技官、これも十一月発令で転勤しております。どうしてこういう賠償に最も必要であるべきインドネシア関係のそれらの皆さんを、この問題が表に出てくるや転勤させたのですか、その理由を一つ聞かせてもらいたい。
  150. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 白幡参事官のローマ異動は、全然そういうような意図ではございませんで、外務省の普通の人事としてやっております。
  151. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 通産省の中で賠償室に参ります者は、外国語に通じておる者でなければ困る、こういうことで外国語に通じておる者を回しておるわけであります。それが相当の時期になりますと、海外の派遣員と交代するのは当然であります。
  152. 今澄勇

    今澄委員 私は賠償事務にたんのうな人が、こういう賠償の実施をこれから行うとき最も必要であるというのに、その中の硬骨漢と見られた諸君を転勤させるということは、非常な疑惑に包まれると思う。国会がこれを決算委員会で喚問して、当時の情勢等を聞くという場合に対処して転勤させたという者もおります。少くともそういう疑惑がある。今あなた方はその転勤を認めたのだ、これらの担当官を転勤させたというこの疑惑は、国会を通じて私は解かねばならぬと思う。  もう一つ通産大臣に聞きたい。このインドネシアには繊維製品やあるいはその他のいろいろの品物を普通の通商ベースで売って、支払い能力がなくて焦げついたものがだいぶあったはずです。この焦げつき債権の総額が幾らあったか、その焦げつき債権の総額中、今度の賠償へ繰り込んだ金額は幾らであるか、これは通産大臣の担当傘下でありますから、お聞かせを願いたいと思うのです。
  153. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 従前インドネシアとの取引はオープン・アカウントの勘定でやっておりましたわけでございますが、そのオープン勘定の焦げつきが、確かな数字は今記憶ありませんが、一億七千万ドルくらいだったと存じております。その全額が今度の賠償の折衝の中に入ったわけであります。
  154. 今澄勇

    今澄委員 これはいわゆる金のもらいがおそいからというので、民間業者は一割から二割清算勘定で高く売っているわけです。それで相当な利潤を得ておるのにもかかわらず、これを全額賠償へ入れるとは一体何事ですか。もっと精査して、その中で賠償に入れるべきものと入れないものと作らなければならない。なぜあなたは全額入れましたか。民間業者のいわゆる赤字失敗を政府がしりぬぐいをしたといわれてもしようがないじゃありませんか。
  155. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 この問題は賠償前の問題でありまして、オープン・アカウント勘定で仕事をしておるわけであります。その焦げつきが一億七千万ドルあった。それが賠償の折衝の中に入りまして、賠償の一部分になったということは事実でございます。
  156. 今澄勇

    今澄委員 私は今度の木下商店の二十一隻、それからフィリピンに高速船のコマーシャル・ベースによる話し合い、みなこれはコマーシャル・べースによる取引です。だがしかしそういったコマーシャル・ベースによる取引、インドネシアの北スマトラの油田の開発であるとか、これもコマーシャルな取引、そういうもので支払い能力が万一なかった際は、これを賠償に入れて政府がしりをぬぐうということが、日本とインドネシアとの賠償交渉の裏に隠されておるのだということを、真偽はわからぬがしきりと伝えている。そのいわゆる秘密協定と伝えられている一つの姿は、インドネシアにおける焦げつき債権が賠償に入ったことで明らかであります。もし政府賠償に名をかりて、そういうふうなものをうまくいけばよし、いかなければ賠償の中に入れるというようなことでは、大へん国民に疑惑を与えるが、それらのコマーシャル・べースで取引されておるものは、一切これからの賠償には組み入れないということを総理大臣はこの場で言明をしてもらいたい。
  157. 岸信介

    岸国務大臣 ちょっとその前提として、インドネシアとの賠償協定を結びます場合に、賠償協定ができ、今後の友好関係が結ばれるということを前提として、当時オープン・アカウントで残っておりました焦げつき債権はこれを免除するといいますか、放棄するということを定めまして、これは国会の御承認を得た通りであります。今おあげになりました具体的の賠償の範囲にどう入るか、この問題についてはっきり賠償の実施計画のうちに取り入れられて、賠償と初めからなっておるものと、それから延べ取引等の形でやりまして、それの担保のような意味において、この賠償を引当てにするというやり方が、従来個々の取引の間に、フィリピン等との取引の間におきまして審議をしております。この場合におきましても、言うまでもなくこれは賠償一つの形の変った方式として十分に審議し、また賠償の実施計画の範囲内においてこれを組み入れるという取り扱いをしておりまして、決してそういうものに対して特別なルーズな取扱いをするとか、あるいは特にルーズに、そのコマーシャル・べースで契約をしたところのものにあとから利益を与えるというような取扱いはいたしておりません。最初から賠償及びこれに準ずるものとして十分に実施計画とにらみ合せて、これに認承を与えております。
  158. 今澄勇

    今澄委員 今の総理答弁ですが、その実施計画というものは、きまったあとからさっきのように作っているのですから、しかも秘密協定だ秘密協定だと伝えられておるような、そういうコマーシャル・ベースで回収不能のときは、今度は賠償計画でそのつど入れていくということでは、これは確かに一応民間商社の商業レベルでやるが、これがうまくいかなかったときは賠償に切りかえるという結果になるじゃありませんか。
  159. 岸信介

    岸国務大臣 今私が申し上げますのは、この契約の場合においては、それが支払いの担保の意味において賠償を引き当てにする。従ってもしも履行ができなかった場合においては、賠償額からそれだけ返額するということを計画の当初から審議して、それが適当であるかどうかということをきめるわけでありまして、コマーシャル・べースできまったところのものが、払えなくなったから、それをルーズにすぐ賠償の方でしりぬぐいをするというような扱いは絶対にいたしておりません。
  160. 今澄勇

    今澄委員 そこで私は賠償にからんで、戦闘機の話を高碕通産大臣に聞きたい。今の岸総理大臣の答弁からすれば、このジェット機が最初から賠償ではないけれども、コマーシャル・ベースの取引として認められておるということになると、これは大へんです。富士重工でできているプロペラ飛行機とジェット練習機の二種類を、小谷取締役と伊藤忠の山根という人が向うに行って折衝しておる。その総額は四千万ドル、大使館もこれは照会状が外務大臣のところには来ているはずです。これは日本がいわゆる平和国家として、その他のいろいろな諸外国に与える影響というものは重大なものであって、この四千万ドルの飛行機の供与——賠償を見てみると、鉄かぶとが五十万ドルとか上陸用舟艇が二百万ドルとか入っておりますが、これは一応黙っておるとしても、この四千万ドルのジェット練習機のインドネシアへの供与ということは、これは大へんなことです。これは大蔵当局は反対だそうですが、通産大臣は一体どう思っておりますか。通産大臣、続いて大蔵大臣のご意見を聞いておきたいと思います。
  161. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいま御質問のジェット練習機をインドネシアに輸出するとかいうお話でありますが、これは全然私ども関知いたしておりません。知りません。
  162. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 私自身も全然知りませんので、ただいま担当の局長を呼んで聞いたのでございますが、その局長自身も全然知らないと申しております。
  163. 今澄勇

    今澄委員 これは現にインドネシアの在日大使館から外務省へ問い合せが来ているはずです。外務大臣どうですか。
  164. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 問い合せはきておらぬようでございます。
  165. 今澄勇

    今澄委員 今事務当局の間で、大蔵省は反対だし、私もいろいろ聞いて参りましたが、何もあげ足をとろうというのじゃないのです。こういうことは少くとも賠償や延べ払いの形式ではやってもらいたくない。そういうものはやらないのだということを、総理大臣でも通産大臣でもここで答弁してもらえばけっこうなんです。
  166. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまの御質問でありますけれども、そういうことは何も私は知らないのでありますから、仮定の問題につきましては私何ともお答え申し上げかねます。
  167. 今澄勇

    今澄委員 とにかく一国の各省大臣が、現に向うへ商社が行ってやっていることがまだわからない。外務省へは確かに連絡があったはずだから、答弁を合せられておりますが、私はこういうことは十分一つ気をつけて、おやりにならぬようにしていただきたいと思います。  そこで時間も参りましたから、最後に総理にお伺いいたしますが、今あなた、賀寿老でスカルノ大統領、木下だけではなかった、向うの領事とも会ったと言われましたけれども、いやしくも一国の、国に迎えた国賓に、それが商工会議所の会頭とかいうのならまだしものこと、一介の木下商店などというようないわゆるブローカーの社長をその席に、たといわずかといえども会わせるということは大間違いですよ。私は総理大臣として不謹慎と思いますね。あなたはそれをどう思いますか。
  168. 岸信介

    岸国務大臣 私が当時承知しておるところでは、木下君がスカルノに面会を申し出たところ、スカルノは時間が非常に詰まっておってない。ただし当日は賀寿老での面会の前に、ごく短かい時間ならば会うことができるということを答えておき、それからスカルノ大統領から私にもその話があって、こういう者に会うからちょっと君も一緒に聞いてくれということで、(発言する者多し)会ったわけでありまして、別段の具体的の話はその席上ではなかったのであります。ごく短かい時間でありました。
  169. 今澄勇

    今澄委員 総理大臣、随意契約で、これは業者業者がおのおのきめるのだ、それをチェックすべき賠償契約賠償計画もないのだ、そういうときに一国の総理大臣が、その担当する商社の代表と向うのスカルノ大統領と会われるということは、これはやはりおよその国民の常識から見ればあなたは軽率だと思います。善意に解して軽率だと思います。私はここに、あなたに対する疑惑が大きく上っておる一つの例を言わなくちゃならない。木下商店の顧問には谷正之氏がおります。これはあなたが満州国に商工部次長をしておられたときからのあなたの知り合いです。木下商店の実質的な顧問役を永野護さんはやってこられました。これは永野重雄氏のお兄さんです。本間という人も顧問です。これも岸さんのお知り合いです。この木下商店鉄鋼三社と岸さんというものを国民は離して見ておりません。そういうときに、あなたはその木下商店を一国の国賓たるスカルノと同席させた、これはあなたに大きな責任があります。なるほど幹事長をやめさせ、議長、副議長をやめさせ、党の六役をやめさせても、自分は選挙で当選すればそれで全責任はないなどというような、そういう考え方では、この国民の血税を背負って賠償の任に当る総理大臣が、いかにそれが軽率であったかということをあなたはおわかりにならぬでしょう。しかし国民はそういったあなたの行為については、断じてこれは許すことはできません。あなたは一体どう思いますか。
  170. 岸信介

    岸国務大臣 私は、今木下商店の顧問にあげられました本間という人はどういう人であるか知りませんけれども、谷君は役人時代から知っておる人であります。しかしそれが私が木下商店と特別の関係を結んでいる理由には一つもならぬと思います。また私は先ほどもお答えをしたように、木下君とスカルノが会う時間に対しまして、私にもスカルノ君が立ち会えということを言ったことを断わるほどの重大な問題であるとは、実は考えずにやったことであります。
  171. 今澄勇

    今澄委員 最後に、私は一つ岸さんにお聞きをします。私の手元には近衛元総理大臣の女婿で秘書官をやっておられました、今熊本に現存しておる細川護貞という人が昭和二十八年に発刊している「情報天皇に達せず」という日記があります。この著書を見ると、細川さんはこう言っている。「この日記は高松宮殿下に御報告するために私が集めた政治上の情報の覚書である。私は、高松宮殿下の御発意により近衛公や高木海軍少将の推薦によって各方面の意見を殿下にお取り次ぐ任務をお引き受けしたのであります。」その日記の中の二百九十九ページ、九月四日というところに、これはあなたが軍需大臣をしておられるころです。「岸は」——そう書いてあるのですから、失礼ですがその通り読みます。「岸は在任中数千万円、少し誇大に云えば億を以て数える金を受けとりたる由、而もその参謀は皆鮎川にて、星野も是に参画しあり。結局此の二人の利益分配がうまく行かぬことが、内閣瓦壊の一つの原因でもあった。これについては、さすが山千の藤原が自分の処で驚いて話した。」これがこの日記に載っておるのであります。私は、いやしくも一国の総理大臣が、そういう現存しておる人の著書に、あなたが軍需大臣のときのこういう記述を見て驚かざるを得ませんでした。私は、今度のインドネシア賠償その他の問題について、あなたがどこで何をしたか、それをつまびらかにしませんが、ここに私が今あなたに読み上げたこの「情報天皇に達せず」という本の中に、あなたのことをこういうふうにはっきりと書いてある。あなたがもし今後総理を続け、それから賠償の問題に責任を負ってやろうというのならば、この細川護貞氏を初め、これに出ている人々と対決をして、それがいかに事実無根であったかということを、あなたの政治責任としてやられる必要がある。もしあなたがそれをおやりにならぬとするならば、刑法上の罪はないけれども、あなたは戦犯で出てこられましたが、あなたに対する国民の疑惑は断じて消えない、あなたの御所見を一つ承わって、私の質問を終ります。
  172. 岸信介

    岸国務大臣 私は、細川君の著書の中にそういうことがあったということは、初めて今澄君の読み上げられたことによって知ったことでありますが、事実は全然そんなことはございません。それよりも私は、著書に書かれている言葉を、これこれの由であるというようなことで、いかにもそれが事実のごとく書かれておるということにつきましては、私は実に著者そのものの良心を疑いたいと思う。私自身は絶対にありませんから、いかなるところにおきましてもそれは明瞭にすることができると思います。
  173. 楢橋渡

    楢橋委員長 本会議散会後は直ちに再開することとし、この際暫時休憩いたします。     午後三時七分休憩      ————◇—————     午後七時三十六分開議
  174. 楢橋渡

    楢橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。北山愛郎君。
  175. 北山愛郎

    ○北山委員 私は、昭和三十三年度の補正予算の第二号につきまして、若干の質疑をいたしたいと思います。時間が大へんおそくなりましたが、御迷惑でございましょうが、しばらくごしんぼうを願いたいと思う。まず順序として、補正予算の——これは百十八億の事務的な予算でありますが、そういう補正予算の問題を中心にし、さらにその次には外交問題をやり、それからこの補正予算、三十三年度の予算等に関係をする財政経済の問題につきまして、関係の閣僚にお伺いをしたいと思うのであります。  そこで、まず補正予算でありますが、御承知のように、私どもは、過般の昨年の特別国会におきましても、また臨時国会におきましても、五百億以上の補正の要求を政府にいたしたわけであります。その内容は、災害対策、それから経済の不況のしわ寄せを一番受ける中小企業の対策、あるいは失業者が出ておりますので、この失業者に対する対策、あるいは農漁民の対策、そういうものを含んだ当面の緊急対策というものを、予算として提出すべきであるという要望を政府にしたのでありますが、それを政府の方では、現在は不況でない、不景気じゃないのだから、不況対策はやらないのだ、こう言うて、ついにわれわれの要望をいれなかったのでありまして、そうして今回のようなきわめて事務的な補正予算を出して参った。この点はあらためて私どもは遺憾の意を表するものであります。ただ、この際特に断わっておきたいのは、この前の本会議あるいは委員会におきまして、大蔵大臣あるいは総理も、昨年の社会党の要望の際に、不況ではないのだから不況対策はやらないのだ、景気の刺激政策はとらないのだ、こういうようなことを言ってきたが、その後経済は回復をして、そうして昭和三十四年度は回復の過程になったのであるから、ちょうどわれわれの方の観測が当ったのだ、社会党の不況対策は不必要だったのだ、何かそういう意味のことを申されておりますが、これは完全な誤解でありまして、私どもは、経済の不況対策として、いわゆる景気を一般的に刺激をする政策として補正の要求を出したのではないのであります。むしろこの経済不況のしわ寄せを一番受けるのが中小企業であり、あるいは勤労大衆である、農民、漁民である、こういう見地からして、その不況の犠牲を受ける、いわゆる経済緊急対策の犠牲になるところの、これらの低額所得層であるとか、あるいは零細企業の人たちに対して、その犠牲を緩和しなければならぬというのが、われわれの補正の要求であったわけであります。特に災害につきましても、あの伊豆を中心とする大きな災害、あれに対しては相当徹底的なものをわれわれは必要とする、こういう見地から補正要望をいたしたのでありまして、単なる景気全体の政治政策をとって国内の有効需要をふやせばよろしいというような趣旨で言ったのではないということを、あらかじめお断わりをしておきたいのであります。  そこで、いろいろこの景気の動向なりあるいは経済の構造の問題なり、この問題につきましてはあとでお伺いをいたす考えでありますが、まず補正予算の中に幾つかの問題がありますが、その中で補正の金額の一番大きいのは、義務教育費の国庫負担の増加であります。これが四十五億になっておる。これはその内容を見ますると、昭和三十二年度の分が二十九億、それから三十三年度の精算分が十五億ばかりになって、総体で四十五億になっておりますが、一体三十二年度の二年前の精算をなぜ今ごろになって出さなければならぬのか。それだけの分を地方財政の方では負担をしてきておるのです。そういうこと、また特にそのように昭和三十二年度において今の二十九億の精算をするということになれば、これは昭和三十三年度においても、今度の十五億の補正というのは、わずかに期末手当の増加分についての補正でありまして、そういう点だけが補正をされたのでありますから、またそれ以外にもあるかもしれぬ。こういうようなやり方をなぜとらなければならぬのか、この点につきまして、自治庁長官あるいは文部大臣等のこの御説明を承わりたいのであります。
  176. 橋本龍伍

    ○橋本国務大臣 お答えを申し上げます。地方財政の立場から申しましても、できるだけ精算不足分を少くするように配意しなければならないと考えておるのであります。従来年々やはり相当程度の精算不足分が出てきております。何分にも義務教育費は千億になんなんとする金額でございますので、現員現給で見てやっておりますが、ちょっと退職者が多いというふうなだけでやはり相当狂って参るわけであります。しかしそれにいたしましても、そういう狂いができるだけ少くなることが必要でありますので、実は今回の補正予算におきましても、後年度へのその影響を考慮したわけでございます。四十五億ばかりの金額の中で、二十九億五千万円は三十二年度の精算に伴う不足分でありまして、これはもう今日としてはやむを得ないであります。ただ、この三十三年度の不足をできるだけ少くしたいという考えからいたしまして、今回は補正予算において、そういう趣旨で追加要求をいたしたのでございます。     〔委員長退席、西村(直)委員長代理着席〕  この、ただいま申し上げました二十九億五千万円を除きました残りの十五億五千万円がございますが、これは一つには三十三年度におきまして期末手当、それから薪炭寒冷地手当、級地引き上げ、給与改善がございました分について、五億九千六百万円を要求いたしました。ところがそのほかにどうもやはり従来の例にならって不足が出るのじゃないかと思われますので、当初三十三年度の予算を組みました際は、現員現給に対しまして昇給財源を二%見ておりましたのを、三%見ることにし、退職手当の財源を二%見ておりましたのを、二・五%見ることにいたしました。その差額としての昇給所要率引き上げ分の一%分として六億九千百万円、退職手当所要率引き上げ分〇・五%相当額として二億七千万円の追加要求をいたした次第でございます。この分だけは、三十三年度におきまする不足分がたとい出ましても、可及な限り少くすることができると考えておる次第でございまして、今回こういう点を心して改善をいたしたつもりでございますが、なおこうした精算不足が出て、地方財政にやっかいをかけることの少いようにできるだけ工夫をいたして参りたいと思っております。
  177. 北山愛郎

    ○北山委員 問題は、国庫負担の交付が二年もおくれるということと同時に、これは半額の国庫負担でありますから、あとの半額分というものは当然地方の財政負担であります。しかもそれぞれ三十二年度、三十三年度当初の地方財政計画には見込んでなかったということになるわけなんです。そうすると、四十五億相当額というものは、地方財政計画に盛られないものを地方団体が負担をしたということになるわけでありますが、この点の措置は一体どうなるのですか、これは自治庁長官から承わりたい。
  178. 青木正

    ○青木国務大臣 御指摘のように、義務教育費につきまして、年々地方団体が自己の責任において支出しておるという事態につきまして、私ども常に非常に遺憾に思っておる次第でございます。三十二年度分がようやく今回補正され、また三十三年度分も補正ということで、過年度分が今になって精算される、この事態につきまして私どもまことに残念に思うのであります。ただ次年度の途中におきまして、いろいろ給与の改訂等がありました関係もありまして、こういう事態が生じて参ったのでありますが、その間において、地方団体が国の負担すべきものを立てかえており、それ以外に、地方団体として新たなる財政需要を生じて、自己においてもさらにそれだけの負担をするということになっておりますので、当初の財政計画から見て、それだけ地方団体は非常に苦しくなったわけでありますが、全体といたしまして、地方団体の自己の財源の範囲内において、ある場合には節約もし、またできるだけ効率的に使いましてこれを支弁する、こういうことになって参ったのであります。過去のことは過去のことで、私はまことに残念に思う次第でございますが、今後そういうことのないように、先ほど文部大臣からちょっと触れたと思うのでありますが、三十四年度におきましては、昇給原資の問題、また退職金の問題、こういうことにつきまして、従来の率にさらに加えまして、今後そういうことのないように、できるだけの配慮をいたしたつもりでありまして、これによって、三十四年度は相当改善を見ることができるのではないか、かように存ずる次第でございます。過去におきまして、そういうことのために、地方財政に迷惑をかけたこと、突然新しく給与改訂等がありましたために、思わざる支出をかけたということにつきましては、私どもまことに残念に考える次第でございます。
  179. 北山愛郎

    ○北山委員 問題は、四十五億という地方負担は何ら措置されない。結局自治庁長官の話の通りで、地方団体がこれをいろいろな収入から補てんをしてやりくっていかなければならぬ。こういうことが、これだけではなくて、地方財政計画の見込みが少いためにいろいろな問題があると思う。そういうふうにいろいろな地方自治体の負担になるような経費があるものですから、そこで地方団体としては、どうしても地方財政計画よりも若干オーバーするような税収なり何らかの財源が、いわゆるクッションになる、この融通のつく財源がなければならぬ。これが私はどうしても地方財政としては必要だと思うのです。ところがことしの税収は、御承知の通りほとんど伸びないで、大体地方財政計画に見込んだ税収くらいがとんとんだという話でありますが、昭和三十三年度、すなわちことしは、三十二年度の繰越分が府県と市町村で大体四百億くらいあると見込まれる。三十二年度は税収が相当ありましたから、それの繰越分が地方団体では次年度に使えるわけでありますから、その四百億をやりくって、ことしの税収の足りない分をまかなって、何とか三十三年度はやって参った。ところがこの繰越金が、三十三年度から三十四年度に行く場合には、ほとんどなくなるというのが実態じゃないでしょうか。そうしますと、三十四年度の地方財政計画というものは非常に苦しいのじゃないか、こういうことがそこに想定されるわけでありまして、この三十三年度から三十四年度の繰り越しが少い。それから三百億以上の税収の自然増を見込んでおりますが、これなんかも国税と同じように相当無理がある。地方税の場合には、いわゆる住民税の所得割というのは前年度の所得をとりますから、ことしが伸びなければ、やはり来年も住民税はほとんど伸びないわけです。しかも国税の方は、法人税はことしと横ばいだというふうに見ておりますから、そこで所得や法人所得関係の地方税は伸びない。三百億というのは、一体どこで伸びるのかということになりますと、資料をいただいておりますが、固定資産税で伸ばしておる。これはずいぶん無理な話なんです。全体として税収の見積りが無理じゃないか。そして一方では公共事業費がふえるものだから、二百億以上の地方負担がふえて参る。地方負担がふえて、繰り越しが減って、そして税収に無理があるとなれば、三十四年度の地方財政というものは、相当窮乏の方向へまた転換するのではないかと私は心配をするのです。問題はいろいろありますけれども、時間もありませんから、ただ一点だけ聞いておきますが、固定資産税を百億以上も見込んでいるのですが、今度固定資産の評価を上げるのではないでしょうか。最近国税局が宅地について三〇%ぐらい評価見積りを引き上げた。これに応じてやはり宅地や家屋について評価がえをして、何十%かを上げるような予定で税収見積りを組んでいるのではないか、そういう点もいろいろ問題があろうかと思うのですが、これらの点を自治庁長官にお伺いしたいのです。
  180. 青木正

    ○青木国務大臣 明年度の税収につきまして、見積りが過大と申しますか、あるいはまたこれだけの税収が期待できるか、こういう御質問でありますが、御指摘のように、明年度におきましては、市町村分におきまして固定資産税が百億ほど増収になる、こういう計算をいたしております。しかしこの計算は、税率を上げる、あるいは評価額を上げるというような前提に立っての計算ではないのでありまして、これは御承知のように、固定資産の評価はそう再々変える建前になっておりませんので、従来通りの評価額、そして地籍等につきましては、実際の調査した面積に基いて算出いたしておるのであります。特に増収をはかるための評価がえ、そういうようなことはいたしておらないのであります。
  181. 北山愛郎

    ○北山委員 この委員会で一々住民税が幾らだとか、あるいは固定資産税がどうだとかいうような時間もありませんけれども、しかし、税収見積りは相当無理があるのじゃないかと思うのと、今申し上げたように、義務教育費ですらすでに四十五億を、いわゆる半額分、地方負担分を地方財政計画に乗っけないで、地方の財政に負担をかけておるわけなんです。そういうものはほかにもたくさんある。要するに、歳出の見積りが低く見積ってある、単価を少くしておる。こういうところから財政計画上無理がある。そういう点、いろいろ今の話を大蔵大臣はお聞きになって、そうして今度の三十四年度の地方財政を見た場合に、いわゆる公共事業の補助金の臨時特例ですね、あれを三十四年度からやめてしまう、道路は除くがやめてしまう。そういうことによって新たに六十億の地方負担がふえるわけなんです。今簡単に申し上げたような事情から考えてみて、地方財政には若干の弾力性がなければならぬし、そうでなくても、公共事業の事業量の増大によって二百億以上の負担がある。交付税がふえても、そっちの方に全部回しても足りない。税収は国税よりももっとむずかしい。こういうような事態で、一体補助率の臨時特例というものを廃止して、新たに六十億の負担を地方団体にかける、特に府県にかけるということは適当かどうか、ここでお答えを願いたい。
  182. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 臨時特例を設けましたのは、御承知のように地方財政が特に苦しい時分にあの制度を設けたのでございます。時限立法で法律ができたことは御承知の通りでございます。私どもたびたび御説明いたしておりますように、国、地方の努力によりまして、地方財政は非常に堅実になってきた、かように考えますので、この機会にその期限が到来いたしますから、今回これをその期限が切れると同時に延長しないことにしようということでございます。しかし、ただいまいろいろ地方の税収等についてのお話が出ておりますが、私は今回のこの三十四年の地方財源そのものについては、自治庁からも説明いたしておりますように、いわゆる過大な見積りをしておるとは実は考えておりません。その詳細等について、必要ならば十分事務当局をして説明さしてもけっこうですが、それぞれ税を構成しております各分野について、国で取り上げております基準と同一のものを採用し、地方税は地方税としての特に特殊なものが考えられておるわけではないのであります。なおまた教育費等の増加について先ほど来お話が出ておりますが、三十二年度の精算分を今日やる。今回のような精算額の多いことは、過去においてはまれかと思いますが、過去におきましても、かような精算の結果これを補てんしておることはしばしばでございますし、今回だけが特に新しい例ではございません。今回は、三十二年度の精算分プラス三十三年度において大体不足するだろうと予想されるものも、今回の補正予算で計上いたしまして、地方の負担を軽減していくように考えておりますし、また先ほど来説明いたしておりますように、三十四年度の義務教育費等の予算計上に当りましては、在米の率をさらに増加して、地方の教育等を十分見るようにいたしております。従いまして、御指摘になりますように、地方財政そのものが非常に膨脹して苦しいかどうかということになりますと、なかなか議論の存するところとは思います。ことに北山君のようにその道の経験者であられますと、いろいろ御議論はあろうかと思いますが、総体的に見ますと、ただいま臨時特例を特に設けなければならない、こういうような理由は私どもは見つけにくい状況にございます。
  183. 北山愛郎

    ○北山委員 地方の税収の話が出ましたから、この際に大蔵大臣にお伺いいたしたいのですが、この前、井手委員の方から質問がありました例の国税の申告所得分、それから法人税の見積りですね。これはどうしても私ども聞いておりましてわからないのです。どういう基準で一体ああいう見込みを出すのか、私も、過去の実績によると言うものですから、何かものさしがあるだろうと思っていろいろ調べてみたのです。ところが調べてみると、昭和三十二年度においては、経済成長の見通しは七・五%の成長率だった。そのときの申告所得の方は一〇%の伸びを見ているのです。それから法人税の方は四〇%ぐらいの伸びを見ている。三十一年度から三十二年度に移るときの成長率七・五%のときに、今言ったように法人税の方は四〇%くらい、申告所得は一〇%。今度三十三年度は三%の成長というわけで、申告の方は逆にマイナス一一%、そうして法人税の方はプラス一一%、そうして今度の三十四年度では、この前論議になりましたように、申告所得の方はプラス二七%で、法人税の方は横ばいだ、こういうように年々違うわけなんです。一体どこを基準にして、経済成長率から申告所得税の見積りあるいは法人税の見積り、そういうものを割り出すのか、この三年間の率を見ても、少しも基準がないわけなんです。それで共通している点は、三十三年度の場合三%の伸びを見たときにも、それから三十二年度のときも、少くとも法人税の方の伸びはずっとよけい見ておる。ところが、三十四年度に限って五・五%の成長率を見ながら、法人税の方は横ばいであって、逆に申告の方は二七%の伸びというのは、全然三十三年、三十二年のそういうやり方と逆なやり方をしておる。これはどういうわけですか。
  184. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 なかなか専門的な話になりますので、事務当局をして説明いたさせます。
  185. 原純夫

    ○原政府委員 申告所得税と法人税の動きは、他の各税の動きとかなり違った動きをしております。それは景気の上り下りがありますと、大体物価の上り下りというものがある。取引量についても非常に伸びる、それからまた縮むというようなことになります。そこで第一の物価の上り下りにつきまして申しますれば、商売をやる向きは、物価が上ると、普通の利益率のほかに、物価が一割上れば、仕入れから売るまでの間に一割なら一割それで利益が出るとしますと、普通の利益率が一割であったといたしましても、その値上り益が一割加わることによって、簡単に言えば倍の利益率になるわけであります。それから値下りの場合には逆なことが起りまして、普通なら利益率は一割あるのだが、値下りで一割の利益が飛んでしまうというようなことがあって、ゼロになってしまう。国民所得の上り下りに応じて、法人の所得あるいは申告所得税の所得というものはそれに応じては上り下りしない。その幅をより大きく見せた数字になってくるわけであります。これはよくかっても言われましたが、インフレの場合に、利潤インフレとかなんとか言われたことは、結局生産費の中で賃金というものはそうよけい上らない。ところが、物の値段というものは、景気のいいときにはどんどん上っていくというようなことで、その差、マージンが非常に大きく企業の利潤として残るというわけであります。先ほど来、年度から年度を追うて言われました点は、まことに税収見積りでの一番問題の点ではありますが、それにはそういう理由があって、景気の上昇期においては、通常の国民所得あるいは国民総生産の伸び以上に伸びる。下降期においては、そのカーブよりもより落ちる。前の年に七・五%の伸びがありましたのが次の年に三%の伸びということになりますと、三%という伸びがあっても、今申したマイナス勘定があって伸びないというようなことがあり得るわけです。私どもは、その辺をできる限り精密に計算する。たとえば法人の三十四年度の所得にして見ますれば、三十四年度に入ってくる法人税というものは一体どの事業年度の結果のものであろうかということをずっと並べます。そして当該事業年度における経済活動はどうかということを、経済見通しの趨勢を月々に刻んで精密な計算をする。もちろん見込みでありますから、実際にはどう動くかという問題はありますが、そういうことでやっておりますし、また、ただいま申しました値上り、値下りの利益、損というあたりはなおさら推定がむずかしい問題であります。率直に言って、その辺のところにむずかしい問題があるとは思いますけれども、御存じのような経済見通しというもので、生産が幾ら伸び、物価がどういうふうに動いていくという前提を立てるわけでありますから、その物価の動きというものを見て参りますれば、これは一応推算がつくということであります。従いまして、一見そうやって年度から年度へ非常に不規則な増減を示しているというところに、こういう税の他の酒とか物品税とかいうものの通りにならぬというような客観的な事跡が出ているわけです。従いまして、昭和三十四年度の法人税収が三千三百億に対して八十何億しか伸びていないというようなところをごらんになるについても、そういうような事情をくんでごらんになっていただきたい。間接諸税、あるいは源泉所得税というものは、そういう意味ではより景気変動には影響されない動きをするものでございますが、法人税と申告所得税は、そういう事情でかなり不確定な要素が多いということでございます。
  186. 北山愛郎

    ○北山委員 そんなこと言ったって、三十二年、三年、四年と、たとえば徴税上の時期の問題だってそういうふうに大体一つの流れがあるわけです。ずっと追ってきているわけです。そして大体の傾向としては、法人の方の弾力といいますか、上り下りが大きいということはよくわかる。それで成長率よりもずっと法人の方が上ってくるわけです。三十三年度においても、とにかく申告の方より法人の方が率の伸びはいいということになっておる。とたんに三十四年度になって成長率は五・五%になっておりながら、申告所得の方は今までかってない二七%に伸ばしておきながら、法人の方は横ばいだというのはちょっと受け取れない。これはどんなに物価がどうのこうのといって説明されましても、そういうものを総合されたものが、この国民所得のそれぞれの所得の数字になっておるわけでしょう。だから私が数字的に比較してみると、昭和三十二年度の国民所得の実績は、法人所得が九千六百三十九億なんです。ちょうど三十四年度の見通しの九千六百十億と大体同じくらいなんです。そうすれば、その当時の三十二年度の法人税の収入実績というものを比べてみると、この三十四年度の見込みよりも二百五十億違うのです。だから、もしこの通り申告の所得が伸びていくとすれば、大蔵省は法人税の中で二百五十億くらいはどうも隠し財源を持っておるのじゃないか、こういうふうに言わざるを得ないのです。どうしてもこれは何ぼ聞いてもわからない。ですから、もしも今のようなお話ですと、ただ断片的なお話では困るから、ちゃんとした資料——これは数字によって計算したのでしょう。だからその数字を出してもらいたい。そうでないと、この場だけのそんな抽象的なことではだれもわかりませんよ。少くとも国民所得であるとか、経済の成長率なんかがあって、そうして見通しを立てて、その経済の計画の上にやはり予算なりなんなりを組むのですからね。それをやっているでしょう。だから、それの数字に合ったような税収の大体の傾向でなければ私はおかしいと思う。そうでないとするならば、三十四年度に限りそうじゃなかったという何か特別の説明が必要なんです。私は、実は一つの原因は法人の租税特別措置法にあると思うのです。だから景気が後退をするというと、今度はなかなか上りにくくなるという事情はあるでしょう。しかし、これはここで議論すれば長くなりますからやめます。やめますが、一つ今のようなお言葉だけじゃなくて、もう少しはっきりとした基礎を持たなければ、こんな毎年々々へんてこりんの見積りをしたのじゃ、ものさしも何もさっぱりないんじゃないかということになる。少くとも実績じゃなくて見通しなんですから、見通しである以上は、何か基準を持ったものでなければならぬ。まさか三十四年度の税収を一々当ったわけじゃないでしょう。物価がどうなるのか、これだって見通しなんです。だから、見通しの計算に立った所得の見積りであり、税収なんだから、その基礎を一つはっきり出してもらいたいと思う。  それから、そんなことで時間をとってもしようがありませんから、災害の問題をちょっと聞きたいのですが、せんだって伊豆の狩野川辺を歩きましたところが、いまだにあの災害の跡がほとんど直っておらない。直っておらないばかりじゃなくて、そこには流木であるとか、家具の流れたものであるとか、そういうものの掃除すらできておらない。四カ月たっておるのですよ。あの当時あんなに騒いで、すぐやりますとかなんとか言っておいて、そうして予算措置もしたということでありながら、ほとんどなっちゃいないのですよ。あの狩野川の復旧主事は一体どういう見通しに立ってやっておるのか。今になってからこの補正予算の中にまた少しばかり、十何億ばかり足し前が出ておりますが、あんなざまではいかぬと思うのです。掃除もできておらぬのですよ。一体その事情はどうなのか。それを一つ建設大臣から、これは農林大臣もあるかもしれませんけれども、建設大臣からお伺いしたい。
  187. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 昨年の災害の復旧につきましては、それぞれ昨年の補正予算で認められておったのでありますが、それでもなお計算上十二億五千万円ばかり足りなくなったのであります。それは昨年の補正予算で要求をいたしました当時に、なお詳細な損害の測定ができなかったものが残っておったものでありますから、それを今回の補正予算で要求をしたのでございます。やり方としましては、狩野川の場合は直轄河川になっておりますので、直轄河川は災害復旧の五〇%を予算でつけてございます。三十三年度内に五 〇%くらい、三十四年度の予算にはやはり五〇%を認めてございます。補助河川の方につきましては、大体法律の所定の要求されております三〇%の復旧をやる、こういう建前で今復旧事業を進めつつあるような次第でございます。
  188. 北山愛郎

    ○北山委員 今の災害の問題は、実は昭和二十二、三年のころの災害当時は、地方団体は補助金がこなくても工事をやったわけです。ところが、このごろでは政府が当てにならないから、そこでちゃんと金を握るまでは工事をやらないで、現場をそのままに置いておくというような傾向が出るので、この点は建設大臣としては、必要な工事がどんどん地方団体の責任をもって運び、しかもその裏づけを政府が必ずやってくれるというような、地方団体に信頼される災害復旧の工事の進捗というものを御考慮いただきたい。これを要望いたしておきます。  それから労働大臣にお伺いしますが、失業保険の負担金がありますが、これは三十三年度の負担金の不足分というものを若干追加をしたわけであります。まあその数字を見ると、失業保険の給付というものが、三十三年度においてはふえたんだという実態を現わしていると思うのですが、ところが昭和三十四年度においては、積立金が相当あるからという理由だろうと思うのですが、国庫の負担率というものを、三分の一を四分の一にするということにして、これが非常な問題になっているわけです。これは一体労働大臣のお考えなんですか。労働大臣が金が余ったから一つ国庫負担を三分の一から四分の一に減らしてもいいのじゃないか、そう思っておやりになったことなんですか。
  189. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お話のように昭和三十四年度予算の失業保険経済、予算面に現われておりますのは、労使双方の負担を八から七に下げ、そして給付の場合の給付金の国庫補助を三分の一から四分の一に下げた、こういうことでありますが、失業保険経済そのものから見まして、私どもは社会保障制度の拡充ということは希望するところでありますから、失業保険それだけから考えますならば、いろいろ御意見もあるところでありますが、政府全体として、社会保険につきましてしばしば国会でも御議論のありますように、社会保険について総合的な研究を要する時代にもう入ってきておる。同時にまた、なけなしのところで工面をして、ともかくも国民年金制度というふうなものを始めることになったものでございますから、社会保険経済全体を見て、ゆとりの出るところからはゆとりを出して、そして新たなる社会保障制度というものを設ける手伝いをここでやろう、こういうふうな総合的な考えでいたしたわけであります。従って法律の命ずるところによりまして、社会保障制度審議会、その他それぞれの審議会に御意見を聞きまして、その答申が出ました。それに基きまして、これからどういうふうな処置をするかということについてもっぱら検討しておる、こういう最中であります。
  190. 北山愛郎

    ○北山委員 まさか私は労働大臣がみずから三分の一を四分の一にしてもよろしゅうございますと、こうは言わなかったと思うのです。しかしこれは政府全体としても、やはり失業保険という国と使用者と被用者と、三者が一体になってやっておる制度なんですから、今金が余っているから率を変えるとか、そういうものじゃなくて、基本線をやはり貫いていくというのが必要じゃないかと思う。外国の場合でも、全額国庫負担のところもあるし、また半額国庫負担をしているところもあるようですが、やはり一つの原則を貫いて、国が、失業保険については三分の一は必ず責任を負うのだという建前を貫くのでないとおかしい。しかも労働省の予算関係から見てもあまりほかの方もふえておらぬのですよ。労働大臣は非常に心臓が強いようですが、予算をとる場合には非常に遠慮をなさっておるのではないか、こういうふうな感じがするので、まことにこれはおかしい。これは政府全体としても三分の一負担するということは、今までかけた人も政府は三分の一持つのだという期待権といいますか、こういうことでもって使用者も被用者も労働者もやっているのだから、そういう約束を貫いていくということが必要だ。同時に、すべての失業保険に入るべき人たちが全部入っているというなら、まだ話はわかるのです。もう満額になったから、金は余っておるしというようなことにもなるでしょう。ところが三百万人以上も失業保険の適用を受くべくして受けられないような零細企業の労働者も、たくさんおるはずなんです。そういうところに手を伸べることをしないで、一体負担率を下げるとは何ごとだ、こう言いたくなるのですが、これは大蔵大臣が強制なさったのじゃないですか。大蔵大臣の御意見を聞きたい。
  191. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 別に強制はいたしませんが、御承知のように、社会保険制度はそれぞれそのときどきに設けられ、発達して参っております。従いまして各種社会保険を比較研究してみますと、国の負担率は必ずしも同一ではございませんし、またその経理状況も非常にいいのもありますし、また悪いのもあるのでございます。今回、国は御承知のように年金制度も突施し、社会保障制度を全面的に一つ整備して、いわゆる福祉国家の建設に乗り出そうと実はいたしておるのでございます。こういう際でございますので、各社会保険の実態を十分見まして、その実態に合うようにしていく。御承知のように、いずれにいたしましても国民の負担、税収入でまかなっていく部分が大きいのでございます。そういうところから見ますと、今回手がけておりますように、非常に成績が悪くて国の負担あるいはまた加入者の負担も引き上げなければならないというようなものもございますが、一面御指摘になりました失業保険のごときは、積立金も非常にふえておるし、しかも最近、三十三年などは経済が不況で失業者が非常にたくさん出るといわれておる、そういう時期においてすらどんどんふえてきておる。こういう実情であれば、ただいま御指摘になりますように未加入者をふやすということも一つの方法ではございましょうが、今まで加入しておる諸君の負担率を引き下げて、負担を軽減するということも必要でありましょうし、また同時に国自身の国庫負担の率にいたしましても、他の社会保険並みにすることも一案ではないか、そういう意味で、時に私どもは社会保障制度の政策の後退だというような非難を受けることを非常にきらうというか、そういうことは避けたいと思いますし、どこまでも社会保障制度を積極的に進めたいという考え方でございますので、社会保障制度審議会にも諮問いたしまして、十分その御意見も伺っておるのでございます。最近におきまして社会保障制度審議会の答申もいただいております。従って、この国庫の負担率を引き下げることについて全面的に賛成だといってはおられません。おられませんが、そういうことをやることもこれまた一応の案ではないか。ただそれをやる場合において考慮すべき点というものを一、二指摘されておるのであります。その点は、たとえば将来の経理状況が悪くなった場合には国においてこれを負担しろとか、あるいはまたこういう国庫の負担率を下げた場合に、給付の内容を低下することがあってはならぬぞというような注意を実は伺っておるのでございます。事柄の性質上、どこまでも慎重にまた各方面の意見を聞いてかような結論を出して参る、それを実施に移していくという考え方でございます。
  192. 北山愛郎

    ○北山委員 それでは直接の補正予算の問題、今の義務教育とかあるいは失業保険、そういうことを一応離れまして、この際外交問題をちょっとお伺いしたいのですが、私は外交はしろうとでありますから、常識的にこれは不思議だ、聞きたいなと思うことだけをお聞きをいたします。  問題は日中の関係打開の問題でありますが、最近外務大臣は、中国との郵便協定なりあるいは貿易協定あるいは漁業協定という問題について政府間の話し合いをしてもよろしいとか、あるいは大使級の会談を持ってもよろしいとか、そういうような意見を発表なさっておる、それは新聞で私承わるのですが、一体そういうお考えを持っているのですか。
  193. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日中間の関係が、貿易において昨年途絶しましたことは御承知の通りであります。むろんわれわれは静観ということを申しておりましたけれども、静観というのは貿易関係を復活するしないという意味ではなかったわけであります。従って、今後われわれとして日中間の貿易が復活される場合にどう考えるべきかということを一応考えて参らなければならぬと存じます。その際貿易の関係におきまして、従来民間協定等が三回にわたって行われ、第四次協定に至って国旗問題等のために破綻をいたしたわけでございます。そういう状況から見まして、今後やります場合には、民間協定におきましても最初から相当やはり政府が注意して指導して参ることが必要ではないか。また場合によっては大使等の会談、政府間の話し合いをいたすことも、貿易に関しては適当ではないかという考え方でございます。同時に郵便協定でありますとか、海難救助協定でありますとか、あるいは気象協定というような問題になりますと、政府が当事者とならざるを得ない場合があるわけでございます。そういう場合には、大使級の会談等によって問題を取り上げていくということも考えられるわけでございます。そういう意味において申したわけでございます。
  194. 北山愛郎

    ○北山委員 よくわかりました。そうしますと、そういうような協定を中国の政府と取り結んでもよろしいという気持がなければ、そんなことは言えぬはずなんです。しかしながら、そういう協定を目標にして会談を持つというような話し合いをすることは、これは内容は貿易なり経済の問題であっても、やはり外交の範疇ですね。ですから、もしも中国、北京の政府との間にそういう貿易協定を日本政府が持つとするならば、それは事実上中国を承認したことになるのじゃないですか、そういうことをやはり頭に置いてお考えになっておるのじゃないですか。
  195. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいま申し上げましたような郵便協定でありますとか、あるいは気象協定でありますとか、海難協定とかいうものは純技術的な問題でありまして、政治的な関連はございません。また貿易協定の場合でも、私ども民間協定を指導し、あるいは大使級の話し合いによってこれを打開していくということ自体は、必ずしも中国を承認するということにつながってはおらぬと考えております。
  196. 北山愛郎

    ○北山委員 そうすると、それは政府間の協定ではない、こういうつもりで言っておられるのか、その点をはっきりしていただきたい。  それからもう一つは安保条約との関係ですよ。だから安保条約の改定をするということは、すでに中国の陳毅外相が、これはやはり中国に対する敵視政策であるということで、向うはよく思っておらない。そのよく思っておらない意味は私もわかるような気がするのです。なぜならば、今までの安保条約というものは、やはり占領下において、どっちかといえば、アメリカの強制ではないにしても、向うの発意によって、いわば押し込まれたような格好になったということは、日本国民もそう思っておるし、また世界的にもそういうことは認めておると思うのです。ところが、今度はみずから進んで対等の立場で双務的な協定をするというのですから、その安保条約に積極的な日本意思をもってそうして参加するということなんだから、その安保条約というものがやはり共産圏というものを目標にする限りは、そういう共産圏、中国、ソ連というものを目標にしたような軍事協定に、日本が積極的に自己の意思によって参加するということでありますから、向うとすれば、これは今までよりもおもしろくない。日本政府は、どうも今まではアメリカとの関係上しようがなかったのだろうが、今度はみずから進んでやるというのだから、これはけしからぬ、こういうふうに思うのじゃないかと私は想像されるのです。少くともこっちは主観的に敵視はしておらぬと言うけれども向うではそう思っていることは事実なんです。そういうことを知りながら、安保条約の改定を進めておいて、向うの中国の好まざることを進めておきながら、日中関係の打開をしようということは、矛盾ではないか。これは総理大臣に聞きたい。
  197. 岸信介

    岸国務大臣 日中間の貿易を何とかしてできるように、現状を打開しなければいかぬということにつきましては、私どももあらゆる点から検討を加えてきておるわけであります。私も施政演説で申しましたように、お互いが従来のいきさつにとらわれることなくして、またお互いの政治形態であるとかものの考え方というような事柄は、お互いがお互いの立場を尊重し合って、両国民の幸福のために、また繁栄のために貿易をやろう、こういう立場に立って打開したい。私どもはまだ現状において、中共政府を承認するとか、これと正式の国交を回復するということは適当でないと考えておりますけれども、貿易の点はこれをぜひそういうふうに進めたい。進めるについては、先ほど外務大臣も申しておるように、民間協定だけでいくということは、いろいろな誤解なり、あるいは締結後において問題の生ずるおそれもありますから、政府もある程度これに対し指導力を持つとか、適当な方法で、締結された後において問題を起さないような方法をとるというのが根本の考えであります。安保条約の問題とこの日中貿易の再開の問題と、私どもは本質的に関係がないと思っております。ただ、北山委員が御指摘になりましたように、中共側におきまして、この安保条約の改定に対していろいろな発言をされております。また、安保条約というものはやめて、日本が中立政策をとることが望ましいんだというふうな言明もされております。しかし、私ども日本の安全を保障するために、現在におきましても、アメリカとの間に日米安保条約によってこれがやられておるわけであります。この内容をわれわれが検討して、現状の日本国民感情に合うようにこれを改定しようというのは、独立国たる日本として当然のことであります。われわれがもしもアメリカとの軍事協力なりあるいは軍事的行動、活動の範囲を、今度の改定において、共産国に対して強化するというような内容を持つものであるならば、あるいは中共側がそれを非常に喜ばないということもありましょうけれども、現在あるところの日米の共同しての日本の安全保障というものについて、日本が従来発言権のなかったのが発言権を持った、あるいはアメリカが一方的にすべての行動をきめるということは、日本の独立自主の立場からいって、日本国民性がこれをとうてい容認しないというような事態にきている場合に、これを双方の意思の合致によって行うというような形に改めるということは、正当にそれを理解するならば、中国側におきまして、われわれの行動を敵対行為である、あるいはその点に対して日本の行動を非難するとか、または悪い感じを持って、貿易再開等に対しても支障になるというふうに考えることは、私どもの考えておる安保条約の改定というものの真の意義と全然合致しないもので、こういう点につきましては、もちろん安保条約の改定の問題は日米両国間にやるわけでありますから、一々中国政府の方にこれがわかるわけでもありますまいし、いろいろな誤解やあるいは宣伝情報等が誤まり伝えられる部分もあろうと思いますが、今言ったような趣旨でありますから、この二つの、安保条約の改定の問題と日中貿易の再開の問題とは、決して矛盾撞着するものではない、かように考えております。
  198. 北山愛郎

    ○北山委員 安保条約と日中の関係ですが、これは総理が何と言おうとも、現実には向うが不快に感じているのですから、不快に感じていることをやりながら、話し合ってもいいというようなことを言ったって、こんなことは何の役にも立たないことはわかり切っている。だから、本気になって日中関係を打開するような気持でやっているのかどうか、私は国民としても疑わしいと思うのです。安保条約なんかを一方ではやりながら、一方では協定をやってもいい、会談をやってもいいと言っても、これは相手が応じないにきまっていますよ。だからこれはゼスチュアじゃないか、こういうふうに見る向きも多いし、少くとも安保条約自体にしても、中国が誤解しているとか何とか言っているが、一体国民の中で、はっきりわかっておらぬじゃないですか。自民党の中だっていろいろな意見があるじゃないですか。いいんだか悪いんだか、果してこれが日本国民のためになるのか、日本の国の将来のためになるのかについて、いろいろ意見が分れているのですよ。外国がそれをいろいろなふうに見ることは、これは当然ですよ。国内ですらもわからない。私にもわからない。なぜ一体安保条約を改定しなければならないのか、わからない。一体日米対等の防衛なんてあり得ない。なぜかならば、立地条件が違う。こっちは第一線なんです。第一線の陣地みたいなものですよ。それと向うの本国。こっちは戦争になれば直ちに戦場になる場所なんです。向うはその第一線によって守られる後方なんですよ。だから、これは立地条件において、いざというときを考えるときに、対等じゃないでしょう。考えられないでしょう。焦上になってしまうでしょう。だから、そういう立地条件から見ても、これは対等であるべきはずはない。一体対等にやるというならば、せんだってドレーパー・ミッションが来たときに、軍事援助の方は続けてもらいたいなんて言うのもおかしいですよ。向うから兵器の援助はもらっておいて、そして対等にやりましょうなんて言ったって、これは事実関係が対等でなくなる。そういうあらゆる点から見て私にはわからないのですが、まあきょうはその程度でおいておきましょう。  次に、財政経済の問題にちょっと触れるのですが、大蔵大臣日本経済の体質改善ということを言うのですが、その体質改善というのはどういう意味なんですか。日本の産業に、あの施政方針の財政演説を見ると、国際競争力をつけるんだというような意味で言っているようにも思える。どうなんですか。
  199. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 体質改善もいろいろ考えていかなければいかぬと思います。ただいま言われますように、企業の内容を充実して、国際競争に負けないようにする、これも明らかにその体質改善の一つでございます。しかし、もっと大きい視野に立って見ますと、日本の経済はずいぶんアンバランスな経済構成をいたしております。特に三十四年度の予算編成で指摘いたしましたように、経済基盤、そういう面において、相当おくれているんじゃないか、そういう意味で、道路であるとか、港湾であるとか、あるいは鉄道の整備とか、こういうことも一面でいろいろ工夫して、特に財政投融資の面でもそういう点を気をつけております。しかしてまた他の面におきまして、大企業、中小企業あるいは農村、こういうようなものを考えてみました場合に、経済界におけるいわゆる強者、弱者の関係もあります。しかもこれは日本経済の特質から見まして、中小企業の大事なことも、農村の大事なこともよくわかるのでございます。こういうような面においても、やはり経済界の各部門でこれが均衡がとれた発達を期していかなければならぬ、そういう意味からも、中小企業に対し、あるいは農村に対し、特別の助成対策を講ずるということは、もう申すまでもないところであります。あるいはまた、科学の進歩におくれをとらないような設備改善をしていくことも、これまた体質改善の大きなねらいであることは申すまでもないところであります。あるいはまた、企業自身の資本の構成の状況を見ると、いわゆる自己資本あるいは借入資本、そのいずれによっておるかというような点も、将来の国際競争にひけをとらないような点において、これはもう大事なことでございます。日本の経済の底が浅いということをよくいわれております。今日企業経営の面から見まして、融資にたよっておる面が非常に大きいと、景気不景気で非常な影響を受ける。これはやはり企業の資本構成というものは、そういう意味では、よほどこれから工夫していかなければならないと思います。あるいはまた、金融機関、金融資本そのもののあり方にいたしましても、姿勢を正すとか、あるいは体質改善という意味においてよほど工夫していかなければならないものがあると思います。この点は、各方面にわたって、より堅実で内容が充実し、しかも国際競争にひけをとらないようなものを、実はいわゆる体質改善という簡単な言葉で表現をいたしておるのでございます。これからの経済政策のあり方は、ただいま申し上げるような方向でそれぞれ指導し、協力を心から願っておる次第でございます。
  200. 北山愛郎

    ○北山委員 私どもはやはり、いわゆる二重構造であるとかあるいは所得の階層差がひどくなるとか、そういう問題も日本経済の大きな内部構造の矛盾だと思うのです。ところが、その矛盾を今までの十年間に、保守党の政府というものは、どんどん拡大してきておるわけです。租税政策においても、租税特別措置法のようなもので、同じ百万円の所得がある人でも、配当の所得である場合には、税金が一文もかからぬというようなことに対して、勤労所得であれば二十万も三十万も税金がかかる。寝ておって利子配当で暮しておる者が税金を払わぬで、働いておる者が高い税金を払うというような制度をやっておるでしょう。それからその他法人の特別措置についてもたくさん今でもやっておるんです。強い者が、大きい者が安い税金を払っておるのです。安い金利の金を使い、安い税金を払っておるのですから、だんだん富の格差というものができてくる。所得の格差ができて、そして底には、きょうの本会議でもありましたように、膨大な一千万以上の低額所得層というものが沈澱してしまった。だから景気、不景気ということを言うけれども、現在の景気、不景気というのは、時間的に多少の波は打つ、波は打つけれども、それは全体として上ったり下ったりするのじゃなくて、底の層は万年不景気なんです。上の方が景気、不景気の問題があるのであって、景気循環というものは、上層部が影響を受けるだけであって、下層の方は万年不景気なんです。そういうような質的な変化をしている。そういう形に日本の経済が構造上矛盾をやっておるときにおいて、それはただ自然にできたのではなくて、政策的にそうやってきたのだ。私そういうふうにいろいろな資料を作ってきたのですけれども、時間がありませんから一点だけ申し上げる。例の低額所得層の問題でありますが、これなんかについても、厚生白書はあの高い調子で、まことに読む人をして感激せしむるようなりっぱなことを書いている。ところがその厚生省が、生活保護について、ボーダー・ライン層に対する生活保護のやり方を見ると、毎年々々減っておるのですよ。昭和二十七年以来、保護を受ける人員というものは、昭和二十七年が二百七万人です。二十八年が百九十三万、二十九年が百八十九万ということになり、三十二年、岸内閣ということになれば、百六十五万、三十三年が百五十万二千、三十四年になると百四十七万九千、こういうふうに年々被保護の人員というものが減っておる。こういうことは厚生白書と矛盾しておるのです。もしもこの実態が示すように、予算が示すように、年々保護を受ける対象人員を減らしてもよいような実態であるとするならば、何を好んで厚生白書がああいうヒステリックなことを言うか、これはもう明らかに生活保護の事務監査をきつくしたり、いろいろな補助の打ち切りをしたり、そうしてその結果毎年の保護対象人員を減らしておる。三十四年度も減らしておる。一体これは実態を表わしておるのですか。それと同時に、三十四年度において、今度は二・五%ですか、保護基準というものを上げたですね。普通なら基準を上げるなら対象人員がふえなければならない。基準を上げておいて対象人員が減るということはどういうことなんです。こういうことを見るならば、厚生白書はなかなかいいことを言っておるのだが、私も読んでみましたが、もっともだということが書いてある。書いてあるが、対策というものは何もなっていない。この点については、厚生大臣あるいは総理大臣からお伺いをしたい。そういう状況にずっとなってきている。
  201. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 お答えいたします。ただいまの保護人員が漸次下ってきている、これは事実でございます。ただ、北山委員が御指摘になりましたように、日本の低所得者層というものは大体全世帯数の一二・六%、約二百四十万世帯、そのうちで、保護の対象となっておるのは五十八万で、これは三十一年度の統計でございます。従いまして、それを差し引きました百八十二万というものが結局ボーダー・ラインの層であると思いますが、これは、今お話しのように、体質改善をやっていくということがこのボーダー・ライン層を救っていくということになるかと思います。そのためにはやはり経済基盤の強化をやっていくということ、あるいはまた失業問題につきまして積極的な対策を講じて、ボーダー・ライン層に転落しないような政策をとっていく、あるいはまたボーダー・ライン層にありますところの人たちというものを、そうではない所得の水準の高いところへ持っていくという政策が、総合的に勘案されなければならないということは全く同感であります。また同時に、全人口に対しまして一二・六%のいわゆる低所得者層があるという場合におきまして、たとえばアメリカにおきましても、一九五〇年、上院、下院の調査によれば、一九四八年度の実態におきまして、アメリカにおいてすら一二%の貧乏人の階層があるということが指摘されておるわけでございますが、そのアメリカにおける最低基準、いわゆる生活保護法の基準というものは、やはりあれに現われておりますように約二千ドル、二千ドルと申しますならば、国民所得にいたしましても、日本の場合の約九倍あるいは十倍というふうに言えるかと思いますし、またその二千ドルという最低基準というものは、一人当りの国民所得に対して六割である。しかし日本の場合においてはその国民所得当りに対して二割あるいは三割という場合におきまして、貧乏の差というものは、約十九分の一か、あるいはまた計算によりまするならば、二十七分の一というような低所得者層にあるわけであります。アメリカにおけるところの貧乏の意識というものと日本における貧乏の意識というものは非常に違ってきておる。アメリカにおいては、むしろ働こうと思うならば大体働けるところの環境にある。日本においては、働こうという意思があっても働けないという実情にある。アメリカにおいて貧乏人というものは大体なまけ者だ、こういうようなことも一面において言える。しかし、日本の場合における低所得者層に対しましては、そういうようなことが言えないような社会的現実がある。この点について私どもとしては大いに考えなければなりませんし、あるいは減税政策をやっていく、あるいは失業対策をやって完全雇用に向っていく、さらにはまた経済基盤の強化をやっていくというもろもろの政策をやりますけれども、先ほど北山委員が仰せの通り、そのボーダー・ライン並びにそのまた下位に立ちますところの生活保護法の適用を受けておるところの人たちというものは、依然として解決をされないというところに、われわれ厚生省としての今後の任務がある。しかしながら、これらに対しましては、この前御審議を願いまして通過をいたしましたところの国民皆保険の制度であるとか、今度国会に提出をいたしましたところの年金制度によりまして、どれくらいこれらのボーダー・ライン層を救出するか、あるいは社会保障の道を講じていくか、あるいはボーダー・ライン層じゃなくて、生活保護に苦しんでおられる人たちに対して、年金をどの程度において実質的に受けられるようにしていくかというようなことなり、あるいはまた更生資金あるいはまた医療資金等を総合的にやることによりまして、お説のような点をやっていきたいと考えております。そのためには、一体日本のボーダー・ライン層なり、あるいは生活保護法の実態というものが、実はまだ明らかにされておらないことは御指摘の通りでございまして、われわれおそまきながらも、本年度の予算におきまして、新規に五百万の低所得者層に対する調査費を計上いたしまして、御審議をわずらわしておるようなわけでございます。これも一年におけるところの一回の調査でございまするから、来年度におきましては、大蔵大臣等とも御協議を申し上げまして、ぜひとももう少し低所得者層に対する実態の把握ということをお願いしようというふうに考えておるような次第でございます。
  202. 北山愛郎

    ○北山委員 坂田さんに言っては気の毒ですけれども、私はそんなりっぱなことを言う資格はないと思うんですよ。とにかく一年や二年の問題じゃないんですよ、二十七年からずっと減っているのだから。しかも総予算に対する保護費の割合も、二十九年の三・四%、そこから三十三年、三十四年は二・七六くらいに下っておるのです。減らす理由はどこにもない。減らしちゃならぬという、こういう困っておる人が一千万人もいるというような白書を出しておきながら、それでおいてどんどん対象人員を減らすとは何事ですか。総理から聞きたいのです。保守党の政治はこういうことをやっている。
  203. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 大体、数を減らしたとおっしゃいますが、私どもの予算は、在来の実績を基準にして実は見ておるのでございます。一面、いろいろ低所得層というもの、その点については、ただいま坂田大臣からるるお答えをいたしましたような実情にございます。しかし、いわゆる生活保護を受けております実績、それを基準にいたしまして予算を組んでおるのでございまして、これは特に私どもが筆を加えてこれを減らすというような政策をとっておるわけではないのでございます。問題はもう少し実態をよく把握することが先決問題でございましょうが、ただいまのところは、ただいま申し上げるような次第でございます。
  204. 北山愛郎

    ○北山委員 とにかくそれが実態を反映しておるものならば、厚生白書なんかで、ああいうヒステリックなことを言う理由はないはずなんです。そういうことを一方では言っておきながら、実際はどんどん減らしておるというのはおかしいと言うのです。それから農政にしても、農林大臣にも開きたかったのですが、たとえば零細農の問題にしても、兼業の増加にしても一体、どうするのです。そうするというと、今度は農林漁業の基本制度の調査会を作って二年間も調査して、今まで一体何をしていたか。どんどん兼業で、三割農政ということだから、三割しか農業で食っていけない、食っていける農家が残らなくなってしまった、今までの政策上そういうふうになってきておる。大きな独占企業や大資本や大きな金持ちだけはどんどん肥え太っているし、そういう矛盾を作っているというのが、今までの岸内閣のみならず、自民党歴代政府の政治なんです。要するに、階級を作る政治なんです。自民党は国民政党と言うけれども、階級を作る政党なんです。社会党こそが階級をなくす政党なんです。そうじゃないですか。いわゆる自由民主主義——アメリカもそうだと言われたでしょう。アメリカは、あれほど富の程度の高いところですら、一二%の低額所得層がおるのだ。一方においては、巨大なビッグ・ビジネスがある。他方においては、国民層の相当の数がやはり困っておる。アメリカですらそうである。そういうふうないわゆる自由民主主義の政策というものは、一方では富の集積をやり、一方では貧乏の集積をやるというのが今までの政策の結果である。私は詳しくいろいろな物価の問題やら賃金の問題やら、いろいろな問題のここにデーターを持ってきたけれども、一々言えないが、しかし租税一つだけをとってみても、強いもの勝ちですよ。そういう政策を今もとっておる。だから岸内閣の政治は、国民政党の政治じゃなくて、階級を作る政治をやってきたんだ、こう私は言わざるを得ないんですが、総理大臣はどう思う。
  205. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん社会、国民各層におきまして、われわれが福祉国家を念願している以上、低所得階級、生活に困窮するような層をなくしていくように努力していくことが、政治の目標であることは言うを持ちません。われわれは、一方において、しばしば申し上げるように、経済の繁栄の基礎を固めて、これの安定的成長を考えると同時に、一方においては社会保障制度を拡充していくということによって、福祉国家を作り上げることを念願しております。今、北山委員が、自由民主主義こそ階級を作ることの結果になり、従って自由民主党こそ階級を作る政党であって、社会党はそういうことをなくすることを目標としておる政党だということをお話しになっておりますが、これは言うまでもなく政治の目標が保守、革新を問わず、国民各層の福祉を念願している以上、その方法論において、両党の立場なり政策が違っておりますけれども、その目標はそこにあるわけでありまして、その方法として、社会主義の方法で行くのがいいのか、あるいは自由経済の方法で行くのがいいかということが理論的に分れておるわけだと思います。決して私、自民党が階級を作ることを目標としての政策をとっておるわけでもないし、われわれ、社会党はそういうことを激化することを目標としておられる政党であるとも思ってはおりません。
  206. 西村直己

    西村(直)委員長代理 北山君に申し上げますが、申し合せの時間がきておりますから、一つ簡潔に願います。
  207. 北山愛郎

    ○北山委員 いろいろと聞きたいこともあるのですが、現実には、自由主義というけれども、今の経済は自由ではないのです。というのは、強いもの、大きい会社と小さい会社や個人と同じ税金を納めているかというとそうじゃない。同じ率じゃなくて、大きい方がいろいろな特典を与えられておる。金利の安い金もどんどん借りられる。中小企業は頼みにいっても貸してくれないというようなことで、政治がすべてそういうふうになっている。だから、自由競争じゃないですよ。もう独占なんです。ちょうど岸さんがこの前の国会に独占禁止法の改正案を出そうとした。こういうことは、今あるいわば地下カルテルというか、すでにカルテルが四十もできておるのだけれども、それを合法化しようというわけです。そうなれば、ほとんど現在の国民生活に消費者が使ういろいろな品物、乗りもの、あるいは電気でもラジオでも、そういう生活の物資の大半というものは、もう価格協定やいろいろな生産協定や、そういうカルテルの支配する価格になっておるということは、公正取引委員会がそれを認めておるのです。消費者は、大衆は、独占価格の中におるのですよ。そういうふうなことを、独占禁止法を緩和して、これを合法化しようという政治をおやりになろうとしておる。もう自由じゃないのです。だから自由民主主義なんというのは私はうそじゃないかと思うのです。いわゆるそのときの、今の政治と資本家が結びついて、そうして政治をこの一部の大きい者に都合のいいように、あらゆる制度を作り直して作っておる。これが今の政治の姿であって、これこそ階級を作る政治だと私どもは言わざるを得ない。まあこのごろは自民党の中からも金権政治を排撃するという声も相当強くあがっておるから、私どもは非常に賛成なんですけれども、その金主主義というのは、きょうのこの委員会においてもいろいろな論議が出ましたけれども、結局金が政治を支配するのが、金が主人になる金主政治であり、政治が金の上に立っておるのが民主主義だと私は思うのです。今の政治はもう民主主義を越して金主主義になっておるのだ。金が政治を支配しておるのじゃないか。金が政治を支配して、そしておまけに政治が階級を作るのだ。だから社会党は当然その圧迫をされておる階級の立場に立ってやる。これは当然そういうことになってくる。だから国民政党といいながら、実は今のこの日本の構造、日本の経済の二重構造、三重構造というようなものを、今の保守党の政治では直せない、むしろもっともっとひどくなる、こういうふうに私は断言せざるを得ないということを最後に申し上げて、時間で非常にせき立てられておりますので、これで私の質問を終ります。
  208. 西村直己

    西村(直)委員長代理 先般委員長に御一任願っておりました公述人の選定につきましては、次の通り決定いたしましたので、この際御報告申し上げます。  十六日の公述人は、武蔵大学教授芹沢彪衛君、朝日新聞論説委員江幡清君、毎日新聞論説委員山本正雄君、信越化学工業株式会社社長小坂徳三郎君、翌十七日の公述人は、日本女子大学教授松尾均君、東日本建設業保証株式会社会長荒井誠一郎君、全国銀行協会連合会会長小笠原光雄君、全国農業会議所農政部長平尾卯二郎君、以上であります。  本日はこれにて散会いたします。     午後九時六分散会