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1959-02-02 第31回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月二日(月曜日)     午前十時二十二分開議  出席委員    委員長 楢橋  渡君    理事 植木庚子郎君 理事 小川 半次君    理事 重政 誠之君 理事 西村 直己君    理事 野田 卯一君 理事 井手 以誠君    理事 小平  忠君 理事 田中織之進君       井出一太郎君    小澤佐重喜君       大平 正芳君    岡本  茂君       川崎 秀二君    上林山榮吉君       北澤 直吉君    小坂善太郎君       篠田 弘作君    周東 英雄君       田中伊三次君    田村  元君       綱島 正興君    床次 徳二君       中曽根康弘君    船田  中君       保利  茂君    八木 一郎君       山口六郎次君    山崎  巖君       阿部 五郎君    淡谷 悠藏君       石村 英雄君    今澄  勇君       岡  良一君    加藤 勘十君       勝間田清一君    北山 愛郎君       黒田 寿男君    小松  幹君       佐々木良作君    島上善五郎君       中崎  敏君    成田 知巳君       西村 榮一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         法 務 大 臣 愛知 揆一君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君         文 部 大 臣 橋本 龍伍君         厚 生 大 臣 坂田 道太君         農 林 大 臣 三浦 一雄君         通商産業大臣  高碕達之助君         運 輸 大 臣 永野  護君         郵 政 大 臣 寺尾  豊君         労 働 大 臣 倉石 忠雄君         建 設 大 臣 遠藤 三郎君         国 務 大 臣 青木  正君         国 務 大 臣 伊能繁次郎君         国 務 大 臣 世耕 弘一君        国 務 大 臣 山口喜久一郎君  出席政府委員         内閣官房長官  赤城 宗徳君         内閣官房長官 松本 俊一君         内閣官房長官 鈴木 俊一君         法制局長官   林  修三君         大蔵事務官   石原 周夫君         (主計局長)  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十四年度一般会計予算  昭和三十四年度特別会計予算  昭和三十四年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 楢橋渡

    楢橋委員長 これより会議を開きます。  昭和三十四年度一般会計予算昭和三十四年度特別会計予算昭和三十四年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  小平君より発言を求められております。この際これを許します。小平君。
  3. 小平忠

    小平(忠)委員 ただいま委員長より宣言されましたように、ただいまから三十四年度の予算審議に入るわけでありますが、予算審議に入りますに先だちまして、私は特に委員長並びに政府閣僚に対しまして御留意願いたいことがあるのであります。  第一点は、御承知のように本年は参議院の通常選挙並びに各級地方選挙が行われるのでありますが、複雑な国際情勢に対処いたしまして、昨年来の経済不況を克服し、国民生活を安定させまして、国力の充実発展を期さなければならないきわめて重大な時期にあろうと私は思うのであります。このときに当って、予算審議というものはきわめて慎重を期さなければならないと同時に、やはり論議を尽して、その完璧を期するべきであると私は思うのであります。ところが、従来この予算審議に当りまして、われわれ委員もあらかじめ申し合せの時間は守るように努めているのでありますが、半面総理初め閣僚答弁がややもすれば冗漫にわたりまして、委員長から非常に時間の制約等を受ける場合があるのでありますが、特に私はこの際総理並びに閣僚各位に申し上げたいことは、そつのない答弁よりもやはり実のある答弁を簡明率直にお願いしたいことが第一点であります。  第二点は、従来ややもすれば、大臣にかわって政府委員答弁質問者意思に反して行われることが間々多いのであります。私は、政府委員答弁なり政府委員立場というものは、具体的な数字にわたりまする内容であるとか、あるいは大臣答弁に対しまする補足説明質問者の要請にこたえてやるというような場合が通例でなかろうかと思います。従いまして、大臣はいたずらに政府委員に力をかりてやるようなことのないように、特にお願いをいたしたいのであります。  最後に、三十四年度の予算審議に当りまして、予算関係いたしまする法律案は、一昨日官房長官説明によりまして、すでに五十二件国会提出されておりますことは、比較的順調に進んでいると思うのでありますが、しかし、まだ提出予定になっておりますもので、閣議決定は見ましたけれども目下印刷中で国会提出されていないのが七件、さらに提出予定になっておりますが、閣議決定をされていないものが二十九件、すなわち正式に国会に上程されていないのが三十六件に及んでおるのであります。予算審議と並行いたしまして、やはり予算関係ある法律案は、私はすみやかに提出をいただきたいと思うのであります。  以上の点につきまして委員長は確認せられまして、善処されんことをこの際要望いたしまして、私の議事進行発言にかえます。
  4. 楢橋渡

    楢橋委員長 ただいまの小平君の発言はお聞き及びの通りでありますが、政府におかれましても、ただいまの御発言の趣旨を御了承の上に善処されますように、委員長より要望いたします。  これより質疑に入ります。船田中君。
  5. 船田中

    船田委員 私は自由民主党を代表いたしまして、総括的な問題につきまして質問をいたしたいと存じます。第一は国際情勢見通しとこれに対処する日本外交路線の問題、国家安全保障に関する基本政策についてお伺いをいたしたいと存じます。第二は経済並びに財政政策の概要についてお伺いいたします。第三には、政治の問題、すなわち現下内外情勢に対応するわが国政治のあり方、こういうように大体大きな問題を三つに分けて質問申し上げたいと思います。  その第一、国際情勢見通しと、これに対する日本外交並びに国家安全保障に関する基本方針政策大綱について、まず第一にお伺いいたします。  世界情勢は、相対立する米ソ両国要人の相互の訪問とか、あるいは平和共存の呼びかけ、もしくは国連平和確立への不断の努力というような幾多対立を緩和せんとする努力計画が行われておるのでございますが、それにもかかわりませず、現在なお東西対立がいわゆる雪解け状態になっておるとは見られないのでございます。すなわち、現下世界情勢は、自由、共産陣営の複雑な対立的要素を主軸として大きく動かされているというのが現実の事実でございます。日本もまたその影響を免れ得ないと考えられるのでありますが、総理大臣現下国際情勢をいかに見通しておられるか、また、わが国立場をいかに考えておられるか、その大綱についてまずお伺いをいたしたいと思います。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 現下国際情勢は、米ソ対立中心とした東西陣営対立状態根本をなしておる。しかも最近における軍事科学の非常な発達、大量破壊兵器が現われてきたというようなことに関連をいたしまして、この緊張を緩和しようとする動き、あるいはいろいろな現実考えを実現するような計画が行われております。特に私はこのことの基礎をなすものは、やはり両陣営の間における不信を取り除いていくということが最も必要であり、またいろいろな緊張緩和に関する計画や、あるいはこれに関するところの会議その他のものが十分な成果を上げてない原因は、両陣営間におけるところの不信感がなお根強く現存しておるということが、その一番根底をなしておると思います。  こういう状態でありますけれども日本国連中心として平和外交を推進する上において、この両陣営対立緊張というものをいかにして具体的に緩和するかということに対して、われわれは今後積極的な努力を払っていく必要があり、また今日までもそういうことを積み重ねてきておるわけであります。  そして、そういう状況に立って、それでは日本はどういう立場をとるか。われわれが共産陣営の、いわゆるソ連側立場をとるものでないことは言うを待たないのでありますが、さらにわれわれが従来とってきておりました自由主義立場自由主義国との間の提携を緊密にして、世界平和を作り上げていこうという動きに対して、いわゆる両陣営のいずれにも属さない中立立場をとるべきだという議論もございますけれども、私どもはあくまでも自由主義立場を堅持して、自由主義国との提携の上に、この緊張緩和のためのあらゆる積極的な努力を重ねていって世界平和を作り上げていくことに邁進する、こういうのが私ども根本考え方であります。
  7. 船田中

    船田委員 今直ちに核兵器を持ち、あるいは各種のミサイル、ICBM、IRBM、重爆撃機といったようなものをもってする第三次世界大戦が起る、あるいは近い将来に起るということはまず考えられないであろうというのが世界の常識であり、またただいま総理大臣も申されたように、東西陣営要人たちの間にも何とか平和を確立いたしたいという非常な努力を傾け、現に最近ソ連のミコヤン第一副総理アメリカを訪問せられ、その効果もかなり上っておるというようなことも伝えられております。確かに今直ちに戦争が起るであろうというようなことはまず考えられないのでございますけれども、しかし昨年一年間の国際情勢の推移を見て参りましても、七月の半ばにイラクの革命が瞬時にして成功をし、またヨルダン、レバノンに対する米英の進駐、兵力をそこに投入をして、あの紛争の阻止をはかった、こういうような問題が起っており、かつそれを中心とする国連安保理事会の二週間にわたる会議、また八月にはこの問題を中心といたしました国連緊急集会というようなものが開かれまして、幸いに国連緊急集会におきましては、この中東問題が一応平和的に処理されたことになったのでございますけれども、その緊急集会が八月の二十二日に終り、直ちに翌日二十三日には、極東における台湾海海峡において火を吹く戦争が始まっておるこういう情勢でありまして、近い将来において全く部分的な戦争あるいは制限戦争が絶対に起らないと断言する者はおそらく何人もなかろうと存じます。  しかも第二次世界大戦が終了した後、この十数年間に起っておる世界戦争あるいは内乱、そういうものを見て参りましたときに、そこに一つの特徴的な性格が現われております。それは何であるかと申しますると、内乱、内戦でありますけれども、その多くのものが東西対立の国際的な性格をそこにからみ合せておるというところに、非常に大きな特徴がございまして、これは第二次大戦前の小さな戦争あるいは部分戦争というものとは非策に違っておるのでございます。従いましてそういう国際情勢を見て参りましたときに、わが国の平和と独立を維持する安全保障ということを考えて参りまするときには、きわめて複雑な国際情勢に対応し得る、そうして現実の事実をはっきりつかみました上においての日本安全保障ということを考えていかなければならぬと存ずるのであります。  最近ソ連及び中共におきましては、わが国に対しまして中立化を呼びかけて来ております。また御承知通り最近におきまして、フルシチョラ第一書記が第二十一回共産党大会におきまして、極東及び太平洋非核武装地帯設定ということを提案いたしております。かようにわが国に対して中ソ両国が執拗に中立化政策を向けて来ております。ところが一面ヨーロッパにおける情勢はどうかと申しますと、ユーゴスラビアは御承知通り共産圏に入っておりましたけれども共産圏から離れて中立化政策をとっておる、これに対しましては中共首脳者は口ぎたなくののしっておるという状況でございます。この中ソ両国わが国に対する中立化政策の呼びかけ、こういうものは一体いえばいわゆる彼らの言っておる平和五原則にも反し、バンドン精神にも反することではないかと存じます。  そこで総理は、日本の安全を保障するために、またこういう中立化政策の呼びかけに対しまして、確固たる信念を持ってこれに対処していく必要があると存ずるのでありますが、この中ソ両国中立化政策呼びかけに対し、いかなる処置をとられるか、またそういう御意思があるかどうか、これを伺っておきたいと思います。
  8. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど申しましたような国際情勢下において、ソ連中心としての共産圏からのいろいろな働きかけを見ますると、自由主義陣営国々に対して、あるいは中立政策をとることを強く要望しておる、しかも今おあげになりましたように、共産陣営から中立的な態度をとるものに対しては強く攻撃を加えておるというようなことを見ますると、要は中立化といい、いろいろな議論をしますけれども東西陣営対立におけるところの自分たち立場を強化していく、そうして自由主義陣営の協調なりあるいは協力を弱めていくという政策に出ているものだと思います。本来独立国がいかなる政策をとるかは、その国が自主的にきめるべき問題であることは言うを待ちません。また日本自由民主主義の国としてこあくまでも人間の自由と人間の尊厳を基調としたところの理念に立って、その国の基礎を作っていくという立場から申しますと、私どもはあくまでも自由民主主義立場を堅持して、この理想を同じくする国々提携して、そうして世界の平和を作り上げる、同時に日本の安全を保障していくという基礎的な考えにつきましては、われわれが従来とってきておる政策をあくまでも堅持するものであります。
  9. 船田中

    船田委員 ただいまの総理の御答弁によりまして、日本自由陣営協力をして国家の安全を保障していくという方針は大体了承いたしましたが、先ほど私があげましたように、中ソ両国日本中立化政策というものはかなりしつこく行われてきておるのでございます。御承知通りソ連外務大臣から門脇ソ大使に手交された一九五八年十二月二日の覚書を見ますと、この安保改定をめぐりまして非常に日本意思を曲解し、あるいはことさら曲解しておるのではないかとすら考えられるのであります。そうしてしかもかかる公式な申し入れをするということは、これはあたかも日本内政干渉をするようなものだと私らは考えるのでございますが、その点はいかがでございますか。またこういうソ連門脇大使を通じて手交されておるような申し入れに対して、政府はいかなる措置をとられんとするのでありましょうか。
  10. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ソ連安保条約改定をめぐりまして日本の国内政治問題についていろいろ呼びかけをしてきております。これはわれわれといたしましては、先ほど総理答弁されましたように、全く自主的に日本がきめるべき問題でありまして、ソ連からのそうした指図を受けるべき問題ではないのでありまして、従って内政干渉に類似するものだとわれわれは考えております。そういう意味において数次われわれの態度声明いたしておりますし、今後ともそうした呼びかけがありましたときに、われわれの態度をはっきり申して参りたい、こう思っております。
  11. 船田中

    船田委員 今の外務大臣の御答弁によりますと、近くソ連に対して抗議的な申し入れをするということに了解をしてよろしいのでございますか。
  12. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今日までもすでに外務省として日本態度声明いたしておりますが、今後たびたびそういうときがありました場合に、これに対して応酬をする場合もありますし、あるいは聞き置く程度の黙殺をいたす場合もあろうかと思います。われわれとしては態度をはっきりして参ることだけは間違いなくやって参りたい、こう思っております。
  13. 船田中

    船田委員 なお先ほど私が触れておきました第二十一回共産党党大会におきましてフルシチョフ第一書記が、極東及び太平洋非核武装地帯の設置ということを提案いたしておるのであります。結局これはソ連日本に対する中立化の呼びかけと和呼応いたしまして、要するに日本中立無防備状態にしようという意図から出ておるものと考えられるのでありますが、この共産党大会におけるフルシチョフ提案というものに対しまして、総理はいかにお考えになられますか。総理の御見解を伺いたいと思います。
  14. 岸信介

    岸国務大臣 フルシチョフ首相演説の詳細につきましては、私どもまだ成文を手にしておりませんが、新聞の報ずるところによってこれを考えてみますると、従来ソ連がとってきておった考え方に別に新しいものを加えたものとも私ども考えておりません。しこうして日本安全保障については、日本自体が先ほど申しましたような意味において、自由主義理想を同じくする国と共同して日本の安全をはかる。特に日本におきましては、アメリカとの間の日米安全保障条約基礎として、日本の安全をあくまでも保障していくという考えをとっておるわけであります。ただ核兵器で武装するかどうかという問題については、すでに私がしばしば言明しておりますように、日本自体核武装をする意思を持っておりませんし、また核兵器の打ち込みは、これを認める意思は持っておりません。ただアジア、太平洋にそういう地域を作るということは、ヨーロッパその他におきましてもそういう提唱がされておりますけれども、今日の東西陣営対立状況から見ますと、現実の問題としては実現がむずかしい問題である。私はかように見ております。
  15. 船田中

    船田委員 次に中共に対する政策についてお伺いをいたしたいのでございますが、中共との関係は、今さら申し上げるまでもなく、昨年の三月五日には民間代表が参り、その中には自民党の代長者も加わりまして、中共との間に民間貿易協定を締結いたしておることは御承知通りであります。ところが、その後留任民氏の非常に悪意に満ちた対日声明があり、また一方的に民間通商協定を破棄いたしまして、そうして五月、総選挙に入りますや、長崎における国旗事件をとらえて、非常に日本に対する攻撃を始めた。日本に対するというよりも、むしろ岸内閣及び自民党に対する攻撃をしつこく繰り返され、そうして貿易は一方的に注文いたしたものも全部廃棄してしまう、こういうようなことになったことは御承知通りであります。そうして、しかも岸内閣中国を敵視しておる、二つの中国を作らんとする陰謀を企てておる、こういうようなことをしばしば繰り返して申しておるのでございます。しかしわれわれから見ますると、これはむしろ逆でありまして、日本を敵視しておるのは現在の中国大陸にある中共政権ではないかと考えられます。しかも日本周辺における軍事情勢を見て参りますと、ソ連及び中共は非常な軍術を整えまして、日本周辺をあたかも取り囲んで日本包囲体制を作っておる、こういうような実情でございます。むしろ日本を敵視しておるのは中共及びソ連ではないかという感じすら持つのであります。しかも中ソ両国は一九五〇年二月には明らかに日本仮想敵国として三十年間の軍事同盟を結んでおる、こういう事実がございます。このソ連及び中共日本敵視政策に対して、かような声明に対して、日本はこれをただ黙って見ておるのか、むしろ中国ソ連に向って、ああいう軍事同盟は廃棄したらどうか、そういうような申し入れをする御意思はありませんか、またこれに対してどうお考えになっておられるか、総理大臣の御所見伺いたいと思います。
  16. 岸信介

    岸国務大臣 日中間関係につきましては、今船田委員の御質問のうちにもありましたように、昨年来きわめてわれわれとしては望ましからぬ状態になってきております。私はこれに対して当時静観をし、双方とも冷静に事態を観察して、そうしてここに誤解があり、もしくは理解の十分でないことがあるならば、これを十分に反省しへ合って、そうして両国の従来積み重ねてきておる貿易関係等をさらに復活するということを顧ってきたのであります。私は中共側から非難されているように、これに対して敵意を持ち、もしくは非常な悪意を持って対処するというようなことは毛頭考えておりませんし、また現実にそういう事実はないのであります。  私は施政演説にも明らかにいたしましたように、両国はその政治形態を異にし、おのおの社会、政治理念を違えておりますけれどもお互いお互いのそういう政治的立場は尊更し合って、いわゆるバンドン会議において採択された原則である内政不干渉お互いお互い立場を尊重しながらわれわれは貿易その他の経済関係等を進めていくということをやることが両国のためであり、また両国がそういう立場に立って事を処理するならば、だんだん両方の間の理解の十分でなかったものも理解が進められ、そうして歴史的に見ましても、長い文化的な関係やその他におけるところの友好関係が打ち立てられていくということを私は心から望んでおるわけであります。決して中共側の非難するような態度考え方を私は持っておらない。また同時に中共側のいろんな日本に対する従来の言動等に対して、われわれの方から何らかの批判をすることはこの際は慎しみたいということは、あくまでも両国貿易経済その他の文化交流等につきましては、歴史的、地理的また両国民の願望を尊重してこれを回復していくように努めることが望ましいことである、それには前提としては今言ったように両国のこの政治的立場については尊重し合って、これには干渉しないという原則をはっきりと打ち立てていくことが必要である、かように考えております。
  17. 船田中

    船田委員 私も中国大陸に六億四千万以上の人間が住んでおり、そうして今総理大臣も言われたように、日本中国大陸というものが地理的にも、また歴史の上においても非常に深い古い関係を持っておるこの事実、及び中共政権が確立されてすでに十年の歳月を経ておるこの事実も認識いたしまして、そうして中国大陸に対する関係考えていかなければならぬ、これを軽視するものでないことは私も同感でございます。しかし今直ちに中共を、承認するということは、いやしくも日本国連ー員になっており、また国連安保理事国になっております以上において、そうして日本外交路線基本国連中心ということに置いておりまする以上は、この国連中共に対する決議のあるということをも無視して今直ちにこれと政治関係を結ぶということは、私はとうていこれは、許さるべきことではないと存ずるのでございます。従って政治関係を離れて経済及び文化の上におきまして中共との交流を盛んにするということは、私も決してこれを、反対するものではございません。  そこで昨年の五月以来中共との関係が断絶をいたしておりまして、そうしてこれに対しまして政府は当時静観と言っておられたのでありますが、最近におきましてはその静観はただ無為無策に日を過ごすということではなくして、積極的に向うに対して機会があればこの正常化を何とかしてはかりたい、こういうことで新聞の伝うるところによると、外務大臣はあるいは大使級の会談をする、こういうようなことも伝えられておるのでありますが、その対中共貿易再開についていかなる方針、またいかなる努力をされようとしておるのか、またその方針はいかなる点に重点を置いてなさらんとするのでありますか、政府の御所見伺いたいと思います。
  18. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま総理大臣のお話がありましたように、中共との貿易関係につきましては、昨年五月以来中絶をいたしております。私どもは当時の事情から見まして静観態度を続けておったわけでありますが、静観ということは中共貿易をしないという意味では当時からなかったわけでありまして、静観をしておりますこと自体が、将来貿易関係を打ち立てるために当時必要であったのではないかと考えております。そういう意味において、今日貿易再開の時期が参りますれば、政府としましては当然その適当な機会をつかみまして中共との話し合いをしてゆくということに考えておるわけであります。ただ今後貿易を再開いたします場合に、民間ベースでやるか、どういう形でやるかということにはいろいろそのときの事情があろうと思います。その機会のつかみ方その他によりまして、実際に問題を打開する方法論としてはいろいろな方法が考えられると思います。ただ過去の経歴から申しまして、民間協定と申しましても、民間だけが協定をいたしますこと自体については、交渉過程に若干無理が起るのではないかという感じもいたすのでありまして、政府といたしましては、やはり今後貿易再開に当りましては、民間協定の場合でありましても相当指導と申しますか、あるいは協力と申しますか、そういう道を開いていくのが適当ではないかと考えております。あるいは大使級の会談等が行われておる現実の事態もありますので、アメリカソ連中共とのそういう事態もありますので、あるいはそういう意味において大使級会談を持つ場合もあり得るかと思うのであります。それらの問題につきましては政府としましていかなる機会をつかまえていたすか、その機会の起っておりますような当時の事情等を考えて今後進んで参るということを考えております。
  19. 船田中

    船田委員 ただいまの外務大臣の御答弁によりますと、今直ちに大使級の会談をするという計画を持ち、またその方針で日中貿易を再開しようとしておるのではない、こういうことですか。あるいは場合によっては大使級の会談をわが方から積極的に進めていこうと言われるのである。この問題は、私は、台湾にある国民政府との関係において、非常に重大な影響を及ぼすと思う。日本は、御承知通り、台湾にありまする国民政府との間に平和条約を締結いたしております。国民政府中国の正統政府なりとして、日本はこれと平和条約を結んでおる。ところが、事実中国大陸中共政権が厳然として存在する。もしこれと大使級の会談をし、政治的に交渉を始めるということになりますと、日本と中華民国との間の平和条約というものには非常に大きな影響を与えてくる。国民政府のこれに対する反対ということも当然起って参ると存ずるのでございます。そういう点について、外務大臣はそれらの調整をいかに考えて、この対中共貿易を再開されんとしておるのでありますか、その点心についての御所見伺いたいと思います。
  20. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本が中華民国と正常な国交を回復しております事実というものはこれは明らかな事実でありまして、私どもそれをないがしろにするわけではございません。ただ今後中共とのいろいろな話し合いをして参ります場合に、たとえば郵便協定でありますとか、気象上の協定でありますとか、あるいは貿易におきましても、その機会あるいはそのときの情勢に応じては、あるいはそういう状態が起り得るのではないかということを申し上げておるわけでありまして、今直ちに大使会談をやると決定して、そういう方向で進んでおるわけではございません。
  21. 船田中

    船田委員 私は、この中国との関係というものは非常にむずかしい問題がそこにあると思います。大使級の会談をするというようなことが新聞に出ますることは、これは国民政府としてはなかなか耐えられないことと考えておるようでございます。この貿易というものは、結局そろばんの問題。ところが、御承知通り共産政権というものは政治がすべてに優位しておるのでありまして、貿易文化も、すべては政治優先ということによって、政治に支配されておるのであります。ですから、一体いえば、政治を離れて貿易をするということも非常に困難だとは思います。しかしながら、これは何といっても、あの中国大陸に六億以上の民衆がおり、そして古い関係を持っておるのでありますから、これと貿易をするということは、日本国民として決してこれを軽視することはできない。むしろできれば貿易をして参りたいのでありますけれども、しかし貿易はやはり経済の問題でありまして、数字を離れていたずらに原則論あるいは観念論でこれを律するわけには参らぬのじゃないか。中華民国とすでに相当経済交流をやって、片道八、九千万ドルの貿易をやっておる。ところが対中共貿易は、一番多いときでも六千数百万ドルにすぎない。対韓貿易でも年々六千万ドルをこえておる。こういう事実を無視して対中共貿易をやれば、日本経済があすからでも繁栄するというような錯覚を持っておる人もかなり多いのでありますけれども、それらの点は、政府としては十分国民に納得のいくような説明を与えることが必要じゃないかと私は思う。いたずらに対中共貿易を急ぐために、あるいは大使会談をする、あるいは数字を無視して対中共貿易を急ぐというようなことは私は決して策の得たものではないと思う。通産大臣は周恩来首相にあてて私信で何か出されたとか、いろいろあるようでございます。しかし共産圏との経済文化交流につきましては、これは、よほど慎重にやる必要があると存ずるのであります。ことに対共産圏、対中共との貿易促進のために、日本が平和条約を締結しておりまする台湾にある中華民国との間に、ちょうど昨年春起りましたような紛争を巻き起すことは、私は決して策の得たものではなし、また日本経済の上から考えましても、台湾貿易は相当最近進んでおるのでありまして、それを無視して対中共貿易を急ぐということは、私は本末転倒ではないかと考えるのでありますが、それらについての政府の御所見伺いたいと思います。
  22. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 中華民国との経済関係は、御指摘の通りでありまして、円滑に協定のもとに進行いたしております。その事実りをわれわれも十分認識いたしておるつもりであります。従いまして、中共との貿易関係につきましても、いたずらに急ぐということをわれわれは考えておりませんので、静観態度を続け、あるいは今後機会があればそうした道を開いていこうという立場をとっております。むろん中共との、中国大陸との貿易というものは、現在中共共産主義的な体制をとっておりますので、果して戦前のような数量が出るかということは疑問だと思います。しかしながらこれを過大に評価するわけには参りませんけれども、もし友好的な立場において、しかも貿易の問題に限ってこれが話し合いがつくならば、やはり日本経済の上にも影響を与えることでありますから、そういう機会がありますれば考えていくべきが当然であろうか、こう政府としては考えておる次第であります。
  23. 船田中

    船田委員 私は、次に日韓問題についてお伺いをいたしたいと存じます。  日韓両国が、歴史上においても地理上においても、また民性の上においても非常に密接な関係を持ち、深い古い関係があるということは申すまでもございません、しかるに、戦争が済んで十三年余たった今日もなおこの最も近い隣国との国交が正常化しておらない、そして韓国の代表部は東京にありますけれども日本の代表部は韓国の中にこれを設けることも許されておらない、こういう不自然な状態に長く放置しておくということは、これは日韓両国のために決して得策ではない。ことに日本外交路線としてアジアの一員であるということを申しますならば、この最も近い韓国なり台湾なり、そういう両隣と仲よくして、遠い方面にまただんだん手を伸ばしていくというのが当りまえでありまして、われわれの社会生活においても向う三軒両隣という言葉があります。その両隣とすらけんかをしておるというようなことで、どうしてこの国際社会の生活が円満にできましょうか。私は、これも政府は十分考えていただかなければならぬ問題だと思うのです。  伝えられるところによりますと、日韓交渉は昨年の四月十五日に再開をされて、そうしていろいろ紆余曲折はございます。しかしながら各委員会——基本条約の問題あるいは船舶返還の問題、請求権の問題、あるいは国籍処遇に関する問題等の各委員会がそれぞれ審議を進めておりましたが、しかしそれが昨年の年末になりまして自然休会に入りまして、今直ちに再開される見込みが立っておらない。そこへ持ってきて、最近在日朝鮮人の送還問題というものが起ってきております。これには、私の見るところによりますと、かなり幾多の謀略が行われておるということもうかがえるのです。また実情を知らない多くの日本国民の間には、一部の朝鮮人が犯罪行為をやった、あるいは不逞な行為があったというようなことで、国民感情として、そういうものには早く帰ってもらいたい、こういう国民感情のあることも私は承知いたしております。また人道上の問題も、これも決してそういうことがないとは私は申しません。しかしながら、今日日韓問題の交渉が相当進んでおり、しかもこの問題をどうしても処理しなければならぬというやさきに、韓国側の最も好まないところの、北鮮人送還ということを軽々にここで処理するということになりますならば、おそらく日韓問題は相当な困難に当面してくるのではないかと考えられるのであります。この日韓交渉を今後どう進めていかれるのか。またその北鮮人送還ということがどの程度に進んでおるのでありますか。これにつきましては総理並びに外務大臣から詳細な御説明をいただきたいと思います。
  24. 岸信介

    岸国務大臣 日韓の間のこの現状は非常に望ましくないから、早く国交の正常化の道を開かなければならないということは御説の通りであります。昨年四月半ばから始まりました日韓会談も、すでに七年になりますか、最初に行われた会談以来の経緯を見ますると、非常に複雑な幾多の問題がからまっておりますので、これが解決については非常に困難があることは御承知通りであります。しかしながら、私はこれらの長い数カ年にわたる会談の経緯もありますけれども、ぜひとも両国の間の会談を成功せしめて、両国の間に国交を正常化していくということに努力をいたしたいつもりで今日まで努力をいたして参っております。その後、四月以降における日韓会談の内容は、いまだこれをもって満足する成功にまで至ってはおらないことは言うを待ちませんけれども、この間においていろいろと重要問題が論議され、両方の理解を進めた点も少くないと思います。従って、なおこの問題は根気強く会談を進めて、両国の国交正常化を作り上げるように努めたいと思います。  最近問題になっておりますいわゆる在日朝鮮人の帰国問題、特に北鮮の地域に帰りたい人々に対しての取扱い問題ということが、日本の、特にこれらの人々がたくさん居住しております九州あるいは中国地方方面から強く要望されております。お話のように、その背後にいろいろな動きもあることも想像できます。しかしながら、また純粋にこれらの在留朝鮮人が帰りたいという熱望のありますこと、またこれらの人々が居住しておる日本の各方面のこの希望を達せしめてやりたいという熱意というものも、無視することのできない状況であると思います。従いまして、私どもは純粋に人道的な立場、並びに国際通念として基本的人権の一つとして認められておる各人が居住地を選択する自由というものは、あくまでも尊重していかなければならない、こういう見地に立って、いろいろな希望もありますけれども、複雑な事情もありますので、その実情を国際赤十字社の関係において十分調査してもらいまして、われわれは純粋の人道的立場及び基本的人権を尊重する立場から、これらの問題を処理したい、かように考えております。  ただこれが日韓会談の上に悪影響を及ぼすおそれはないかという御懸念でありますが、現にこれに対して韓国側の要人等がいろいろな発言をすでにしておることも、新聞等が報ずる通りであります。しかしながらこの問題に関しては、私どもはあくまでも日本がそういう立場をとり、そういう問題を処理することが人道的の立場及び国際通念からきておることであって、日韓会談とは全然別個の問題であり、それに対する私ども考え方を十分に韓国側にも了解せしめるような方法をとるべきことは言うを待ちませんけれども、しかし今日まで韓国側の要人が新聞等に発表されておるような見解に基いて、今言ったような人道的立場、国際通念に基くこの問題の処理をそれによって取り上げるというようなことは、私はすべきものではなくして、韓国側に、日本側がそういう取扱いをするゆえん並びにそうせざるを得ない事情を、よく冷静に理解せしめるように努力をすべきものである、かように考えております。
  25. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日韓会談の経緯は、昨年四月開かれまして以来遅々として進みませんことは、皆様方御承知通りであると思います。日韓会談の問題の核心は、李ラインの問題だと思います。これを取り扱います漁業委員会の代表が八月末に来まして、それ以後九月、十月に入りまして開かれた結果がおもな点かと存じております。李ラインの問題につきましては、日本の公海自由の立場から見つましても、また漁業の問題からいいましても、重要な問題でありますので、この委員会がある程度道を開き、妥結の方向に向いませんければ、韓国側が要求しております文化財の返還なりあるいは船舶の返還なり、それらの問題を日本側が軽々に応諾をして参るわけにいかないのでありまして、それらを並行しながら考えておるわけであります。漁業委員会におきましては、日本側といたしまして一つの提案を十月にいたしたのでありますが、その点につきましては韓国側の応諾を見なかったわけであります。従いまして、十一月の中ごろに、魚族保存の見地から一つの案を日本側といたしましては提案をいたしております。それに対しまして、年末に至りますまで韓国側から回答をよこしておりません。年末並びに年始等の事情のために休会をいたしたわけであります。先月の二十六日からさらに再開をいたすということにいたしておりましたけれども、韓国の代表の連中が帰国いたして日本に参っておりません。そういうことで二十六日再開の日取りが日延べになっておりますのが現状であります。ただいま申し上げましたように、この李ラインを扱います漁業委員会の問題が日本としては重大でありますので、これらが円満に進行して参りますように、日本側としてはできるだけ努力も払い、また日本の要望に沿いますように、円満に解決できるように、今後とも努力をして参りたいと思っております。  なお総理が言われましたように、北鮮帰国の問題と日韓会談の問題とは全然別個の問題でありまして、韓国側におかれても、これが別個の問題であるということを十分理解され、国際通念の上に立った日本の処置に対して理解を持って、そうして日韓会談はそれを越えて別に円満に話し合いを進めていくように、私どもといたしましては希望いたしておるわけであります。
  26. 船田中

    船田委員 私はもちろん韓国のいろいろな要求、主張のうちに、わが国でいれられないもののあることは承知いたしております。日本の権益を害し、日本の権威を失墜してまで隣国である韓国との国交正常化を進めろというようなことを主張するものではございません。しかしこの韓国との国交調整ということは、これは相当大きな視野、大局的な見地に立って考えるべき問題ではないかと存じます。日本安全保障というような観点から見ましたときに、もし韓国が共産化されるというようなことでもございましたならば、これは日本にとってはゆゆしき大事でございます。そういう大きな観点から見ましたときに、韓国との国交調整をするということは、先ほど北鮮人の送還について人道上ということを言われましたけれども、私は人道上からもきわめて大切なことだと存じます。ことに韓国には今百三十数名の日本漁民が抑留されており、また拿捕された者もある。幸いに日韓会談が始まりまして、この夏以来というものは拿捕、抑留というようなことが行われておりません。一、二の例外はございましたが、大体において抑留、拿捕ということが行われておらない。ところが北鮮人の送還というようなことが強行されることになれば、それはなるほど理屈の上では別の問題だということが言えましょうけれども、しかし韓国人の考え方、また今までの交渉の経過から見ますると、これはなかなかむずかしい問題になってくることが懸念されるのであります。そこでそれらにつきまして、最終的には北鮮に送還するということにいたしましても、それの前にそれらについての韓国側の十分納得する説明と措置がないと、私はこの問題はかなり紛糾してくることではないかということを懸念いたしますので、くどいようでありますけれども、それらについての十分な御注意が必要ではないかというふうに考えるのでございます。  なお、抑留漁夫の返還ということについて政府は従来どういう措置をとってこられておるか、これもまたあわせて御説明を願いたいと思います。
  27. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 北鮮帰国の問題につきましては、ただいま申し上げましたように、日本の意図としては決して日韓間の関係を悪化する意味でこれを使うわけでございません。全く居住地自由という国際通念のもとにわれわれは公正にこれを処置していくということでありますので、その点を十分に韓国側に理解してもらうことは必要だと思います。従って、それらについての努力は今後とも続けて参りまして、日韓会談にそれが支障を及ぼさないように努力することは当然のことだと思いますので、そういう点について努力して参りたいと思っております。  なお、抑留漁夫は現在百四十七名かと存じておりますが、これらの帰還につきましては、われわれとしても累次会議の席上もしくは会議の席上外においてもこれを申しておりますし、また残念なことに、半年ほど抑留、拿捕がなかったわけでありますが、一月二十二日に再び二十五名ほどの漁夫の抑留が、われわれとしては李ラインの外であったと考えておるのでありますが、起ったわけであります。それらについては直ちに抗議をいたしております。
  28. 船田中

    船田委員 次に、東南アジア開発に対する日本協力ということについて、総理の抱負及び今後の政府方針を伺っておきたいと思うのであります。  総理は一昨年二回にわたりまして東南アジアを訪問せられまして、その結論としてはいわゆる東南アジア開発基金構想を明らかにせられ、またアメリカに行かれましたときにもこれを携えていかれて、アメリカ協力を求めるというようなことになりまして、その結果か、ここに三十三年度の予算の中には約五十億円の基金が設定せられておるのであります。しかし、昭和三十四年度の予算を見ましても、東南アジア経済開発、後進国の開発に協力するということにつきまして、政府は一体積極的に具体的に何をやっておるのかと申しますと、その多くはまだ具体化されておらないというのが実情ではないかと存ずるのでございますが、その東南アジア開発基金構想という総理の構想及び今後どういう具体的な政策をもってこれに対処せられんとするのであるか、それらについて概括的な点を総理から御説明願いたいと思います。
  29. 岸信介

    岸国務大臣 東南アジアを私が二回にわたって訪問をいたしまして痛感をいたしますことは、これらの地域における政治経済的の不安定な状況というものは、一日も早くこれを安定せしめるようにすることが必要である、これらの地域におけるところの国民が、いずれも自国の独立完成に非常な熱意を持っておりますけれども政治的にも不安であり、その根底はやはり経済的な不安ということがおおうべくもない状況であります。こういう際に、われわれがこれらの地域における経済開発をできるだけ早くやっていく、そうして経済の安定をし、繁栄の基礎を作ることが、独立の完成の上に非常に大きな力になるということを痛感したのでありまして、これらの地域における経済開発をやる上におきましては、これらの地域における開発をするについての技術が非常に欠けておる。またもう一つは資金が欠けておる。資金と技術が導入されることが、これらの地域の経済開発に最も必要であるということを痛感いたしたわけであります。われわれは、従来コロンボ・プランによって、技術的な援助というようなことも日本も国際的な一員となって協力をいたしております。しかし、またアメリカが個々の国々に対して援助資金等を出しておる事実もございますが、これらの地域におけるほんとうの開発というものは、政治的なひものつかない、真にこれらの地域の経済の基盤を強固にし、繁栄の基礎を強固にする、作り上げるという意味において各国が協力するという、政治的意図から離れた資金なり技術協力というものが、最も必要であるということを実は私、痛感をいたしたのであります。そういう点にかんがみて、日本が持っておる技術、あるいは経営の力等に関して、これらの国々における希望に応じてわれわれが協力するとともに、日本だけの力ではとうてい十分な資金的援助を与えるだけの国力がないということにもかんがみまして、やはりこれに対して、アメリカ中心として各国がそれぞれの応分な出資をして、基金を設けてこれが開発に協力することが望ましいと思ったのであります。今御承知通り世界銀行というようなものもございまして、これらの未開発地域に対する金融その他の資金の協力もしておりますが、東南アジアの現状からいうと、まだバンキングの対象としては、ヨーロッパその他の先進国に比べて非常に劣ると私は思うのです。そういう意味において、銀行のシステムではこれらの地域における開発に必要な資金が回るということはなかなかむずかしい、ここに特殊な基金を作る必要があるのじゃないかという考え方をしたわけであります。御承知通り、国際連合にもそういう意図のもとにおける考え方があるようでありますし、私の構想しているものを特別に別個に、私のいう通りに作るかどうかということについては、関係各国の十分な了解や理解を得る必要がありますので、そういう提案をいたし、日本としては、そういうものができる場合においては、これに出資をするために五十億円の資金を昨年度の予算に計上しておる。私どもは具体的に申しますと、この一年間において、コロンボ・プラン等によっての技術的な協力をやっている、また個々の賠償その他と結び合わしての経済開発についての具体的なプロジェクトに協力をしておる。それからさらにことしの予算案におきましてもある程度計上いたしておりますが、東南アジア諸国の中に技術センターを作って、そうしてこれらの国々の開発に協力するというような点においてのわれわれの考え方を具体的に示しております。もちろん三十四年度の予算に計上しておりますこれらのものが十分であるとは私ども考えませんけれども、しかし、私ども考えておる、特に技術の面における協力、それから資金の面における協力については、今後において関係諸国との間に十分な理解を進めて、そういう基金制度を作り上げるように努力をしたい、かように考えております。
  30. 船田中

    船田委員 次に、私は、わが国安全保障の問題につきましてお伺いをいたしたいと思います。  わが国安全保障ということを考えて参りますときに、先ほど来総理からも述べられたような国際情勢、ことに日本周辺国際情勢と、特に軍事情勢から考えまして、わが国において民主政治を守り、国家の安全を保障するということのためには、内に最小限度の防衛体制を整えるということは絶対に必要でありまして、いわゆる無防備中立論というものは成り立たないのではないかというふうに考えられる次第でございます。  この国防の基本方針につきましては、一昨年五月、総理が渡米される前に、国防会議の議を経てすでに決定をいたしております。外部からの侵略に対しては、将来国連が有効にこれを阻止する機能を果し得るに至るまで、米国との安全保障体制を基調としてこれに対処する、こういうふうになっておるのでございます。しかし、わが国の自衛体制は、すでに七年余を経まして漸次整備されてきております。もちろんこれだけの力をもって日本の安全が保たれるというものではございませんけれども、安保条約締結当時に比較いたしますると、諸事情が非常に違っております。すなわち、その当時は全く自衛の有効な手段を何一つ持っておらなかったということが前文にも出ておるのでありますが、今日は、約二十四万に及ぶ隊員、すなわち自衛隊が陸海空にわたって一応整備されつつある、そういう点において事情が違っておる。すなわち、今日は、日本の国土の防衛については日米両国協力して防衛をするという体制が一応整ってきておる、こういう事情にございます。また安保条約締結後すでに七年を経た今日において、その他のわが国経済状況も非常に変っており、経済建設も着々として進みつつある、こういう諸事情が変化しておるときに、安保条約の改定ということは、これは当然考えられることでございまするし、総理大臣及び外務大臣は、国会を通じてしばしば安保条約は合理的にこれを改定する、こういうことを言明されており、現に昨年の十月以来、外務大臣とマッカーサー大使との間に安保条約改定の交渉が進められておるのでありますが、その安保条約改定の、具体的にどういう点について改定をせんとしておるか、その方針の概略につきまして、総理及び外務大臣からその経過についてお話を願いたいと思います。
  31. 岸信介

    岸国務大臣 安保条約改定の問題は、今から四年前になりますが、当時の重光外務大臣アメリカに参りまして、日米の話し合いをした際に、安保条約はアメリカの一方的に各種の規定ができておる、これを対等の立場におけるところの双務的なものに直したいという希望を述べたことがございます。当時アメリカにおいては、それはそういったって、日本の現状からいえばそういうことはできないといって、この日本考え方を拒否されたのであります。その後私がアイゼンハワー大統領と交渉をした際に、いろいろの日本考えを述べた機会に、なるほど安保条約はその制定当時の事情からいって、日本国民国民感情に合わない点が多々あるように思う、しかし今改定という問題を取り上げることはなお尚早であるように思うから、一つこの安保条約の運営の上において、十分日本国民国民感情を取り入れたように運営されるようにするために、この両国政府の間において委員会を作ろうといって、委員会ができまして一年を経過し、昨年の九月に藤山外相がさらにアメリカに行って、その一年間の委員会の経緯にもかんがみ、なお今船出委員のおあげになりましたような七年前の事情と非常に事情が変っておる、またたびたび日本側からも要望しておる、これを対等な立場において日本の自主性を認めた安保条約に改定したいという希望を述べたのに対して、アメリカ側も、なるほど日本の国力もあるいは日本の防衛力というものも安保条約ができた当時とは非常に事情も変っておる、安保条約は過去において日本の安全を保障するに役立ったことを自分たちは確信するが、同時に将来に向ってこれをより合理的な基礎において改定するという交渉は東京でやろうということになったわけであります。しかしながら、対等といい、もしくは両方が双務的と申しましても、日本の憲法の持っておる制約というものは、他の国の事情とは非常に違うと思います。従って私どもがすべての交渉をする前提としてあくまでも日本憲法の規定の範囲内で、そして両国関係をいかに合理的に考えるかという点について、いろいろと交渉をしておるわけであります。その問題のある点並びにこれに対する政府考えの概要につきましては、外務大臣から御説明するこどにいたします。
  32. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま総理が述べられましたような、対等の立場に立って、日本の自主性を認めた上に立っての改定交渉を開始いたしております。若干時間がスロー・ダウンされておりますけれども、現っ在これを継続いたしておるわけであります。  問題は、皆様方もすでに御承知のように、現行安保条約の前文の書き方響は、必ずしも日本の自主的立場を明確にいたすわけでもございませんし、また内乱条項もしくはアメリカの同意を得なければ第三国に基地を貸与できないというような条項等については、自主的な立場からこれを十分検討する必要があろうかと存じております。なお配備、装備の問題等につきましても、日本の自主的立場から十分アメリカ側と協議をするように、われわれとしては自主的立場を堅持して交渉に臨んで参りたいと思っております。同時に年限等につきましても条約上これを明確にし、しこうして年限がつきますことは廃棄等の問題についても条件がついて参るわけでありまして、それらの問題について交渉をいたして参りたい、こう考えております。なお同時に、現在扱っております場合、条約地域の問題というものが一つの問題でありまして、これらの問題につきましても慎重に考慮しながら、今後の交渉の上にこれを具現して参りたいと思うのであります。これを全体を通じまして、ただいま国民の、要望というようなものを承知しながら案を作り、また交渉を進めて参りたい、こういう立場をとっております。
  33. 船田中

    船田委員 安保改定についていろいろお話がございましたが、これについてやはり最も問題になるのは、今御指摘にもありましたように条約適用区域の問題、すなわち端的に申しますれば小笠原、沖縄両群島をこの中に入れるか入れないかという問題でございます。これにつきましては最近いわゆる河野構想というようなものも出ておるのでございますが、また外務大臣は先般名古屋の新聞記者との会談におきましては、沖縄、小笠原をこの条約区域には含ませないのだというようなことを言われておるのでございます。この小笠原、沖縄両群島を条約区域に入れるか入れないかということは、安保改定の最も中心的な問題であると存じます。もちろん日本国民感情また沖縄島民の感情から申しますれば、日本が潜在主権を持っておる沖縄に条約を適用するということは、これは望ましいことかもしれませんけれども、しかしまた一面から考えますと、その沖縄及び小笠原島を条約区域に入れましたときに、いわゆる条約適用区域と防衛義務を持つ区域とをせつ然区別することができるか、また憲法の制約によって防衛区域には入っており、あるいは条約適用区域には入っておるが、しかし現実にはこれに派兵ができないというような問題が起ってくるということになりますれば、条文のうちにそういうものを書き込んで見たところでこれは無意味なことになってくるのではないか、それらのことを考えましたときに、これはきわめて重大な問題でありますが、これらについて政府、ことに外務大臣としてはどう処置されていくのであるか。  また駐留米軍の使用、配備についての両国政府の事前協議ということも、これもきわめて重大なことでございます。またただいま外務大臣の御説明の中にありました内乱条項の削除ということにつきましても、これもきわめて問題はむずかしいのではないかと存じます。と申しますのは、先ほど国際情勢見通しについて総理からもお話がありましたし、また私からも過去十数年にわたる各地域に起った小戦争の様相を見て参りました、ときに、今日各地に起っておる、また今後予想される小戦争部分戦争あるいは制限戦争といったものはどういう形で起っているか。多くは外部からの教唆、扇動によって内乱が起ってきておる。そうして、あるいは革命が成功する場合もあるし、また内乱で終ってしまう場合もある。しかし中近東の最近の情勢、また台湾海峡の情勢を見ましても、この内戦について東西対立の国際的の性格がからみ合っておるというところに、第二次大戦後の格区域に起った小戦争の特徴がございます。  日本の今日の情勢を見て参りました場合に、あの北海道における苫小牧王子争議のごとき、半年にわたって、あれはまさに内乱寸前の争議でございます。全く労働争議の名においてあらゆる暴力を使い、法秩序を無視してやっておる、こういうことが行われておる。あの勤評反対にいたしましても、道徳講習反対の集団暴力にいたしましても、これは戦前でありましたならば、あれはまさに内乱罪、騒擾罪というようなところに進まんとしておる。そういう今日の国内の情勢、そうしてしかも申ソ両国からして、日本に対して、警職法を出せば警職法反対を唱え、あるいは日本中立化政策を呼びかけてきておる、こういう状況でございます。  そういう国内、国際情勢を見て参りましたときに、現在の安保条約第一条にあるあの内乱条項——内乱といっても、一国もしくは二国以上の外部からの教唆、扇動によって内乱が起った場合において、しかも日本政府の明っ示の要請があって初めて米軍の援助を求めるということでございます。この条項を軽々に削ってしまうということが、果して国民感情に合うものであるかどうか、また国民感情にかりに合うといたしましても、それが果して日本の国土の安全保障のために必要であるか、適当であるか、こういうことを考えて参りましたときには、この内乱条項ということを削ってしまうのが国民感情に合うものだといもて、そう簡単に片つけられない問題ではないかと存じます。  また条約期限の問題につきましても、これは中ソ両国は、日本を明らかに仮想敵国といたしまして、一九五〇年二月に中ソ軍事同盟を結んでおる。そうしてしかもその期限は三十年ということになっておる。この中ソ軍事同盟の期限等を勘案いたしましたときに、日本は、日米安保条約改定の際に条約期限をつけるということは、なるほど国民感情から申してそれは適当でございましょう。しかしながらその中ソ軍事同盟の三十年にわたる長期の期限というものを考えて参りましたときに、この条約期限をいかに設けるかということは、これはきわめて重大な問題と考えられるのでございます。  それらにつきまして、政府はすでに方針決定しておるのか、あるいはどういう政策をもってそれに臨まれてきておるのか、それらにつきまして御所見を伺っておきたいと思います。
  34. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 安保条約の交渉は、現在過程にあります。従いまして問題点等につきまして、ただいま船田議員の言われますように、いろいろ御議論がございます。従いましてわれわれとしては、御議論を十分拝聴した上で問題の解決をはかり、交渉を進めて参りたい、こう存じておるわけであります。先般の私の名古屋の会談は、私が入れないように言ったということでありますが、そのときには、新聞記者の諸君が、従来のあなたの傾向からいって、おそらく沖縄、小笠原を入れない方に考えているのだろうと言ったから、今私としては、交渉当事者である外務大臣としては、それに対してイエスもノーも言えないということを答えたわけでありまして、そういう状況のもとに現在進めているつもりであります。
  35. 船田中

    船田委員 安保改定の問題につきましては、今せっかく交渉中であり、しかも政府方針がきまっておらないということでございますから、これ以上質問いたすことを差し控えることにいたします。  この国の安全保障の問題について、最後に一つ伺っておきたいことは、わが国においては、敗戦後、戦争が終った後におきまして、この国の防衛というようなことについては、きわめて軽視されておる。なるほど憲法の九条には、戦争を放棄し、陸海空軍を持たないということがあることはもちろんでございますが、しかしいやしくも独立国である以上におきましては、その国の安全を保障するというためには、防衛の必要なことは、もうこれは申すまでもない。先般来朝されたラープ・オーストリア首相のごときも、独立条約が締結され、東西陣営のいずれにも、軍事同盟には参加しない、しかしながらオーストリア自国は、自国の力によって防衛するということを声明いたしまして、現に数万の陸海空車ができておる、こういう状況でございます。しかるにわが国におきましては、それらの点につきまして、明らかにこれに反対する意見があり、また一般国民に対しても、この点についてのいわゆるPRがきわめて行き届いておらないという状況でございます。しかも防衛費は年々千数百億円、これは私は決して今後そう近い将来に少くなることはなかろうと存じます。ことに最近アメリカにおきましては、対外軍事援助費を漸次減らしつつあるという状況であり、わが方から要請いたしておりまする軍事援助につきましても、昭和三十四年度以降において相当減額されるということが懸念せられるのでありまして、それらを考えて参りましたときに、わが国の防衛費は相当な金額を計上しなければならぬ。  そこで一体この防衛という問題を、政府は、その施策の上において、施政の上において、政治をやっていく上において、どういうふうに考えていくのであるか、またこの防衛費を、将来国民経済の上において、どの程度に計上するということを考えておるのであるか。三年前の経済五カ年計画の中においては、大体防衛費を国民所得に対比いたしまして二%強ということが計上されておったのであります。各国の実情を見ますると、敗戦国であるドイツ、イタリアにおきましても、このパーセンテージははるかに上回っておるという状況でございます。私は何も防衛費に多額の国費を使えというようなことを主張しておるものではございません。しかしながらこの防衛という問題が、国家の安全を保障するという上において、きわめて大切な根本的な問題であるということを考えました場合に、これを今後政治の中にどう考えていくべきであるか、また財政経済あらゆる面から考えまして、あるいは防衛費をどの程度に見ていくか、また自主的な防衛をやるという以上においては防衛生産をある程度に育成していかなければならぬ。そういうことを考えて参りましたときに、この防衛の問題は軽々しく扱うわけには参らぬと存ずるのでございます。  そこでそれらについての基本的な考え方につきまして総理からお話を伺い、なおこの防衛の生産、それから新鋭兵器を研究、開発するという以上におきましては、ある程度の装備についての機密の保持ということがきわめて肝要である。それらの点につきましての、もし具体的のものがありまするならば、それらについてあわせて伺いたいと思います。
  36. 岸信介

    岸国務大臣 一国がその独立を保持し、他から不当な侵略を受けないように安全を保障していくというためには、ただ単に狭い意味における防衛費というものだけを、あるいは防衛ということだけを考えるべきものではなくして、一国の、ことに日本の場合におきましては、外交も文教もあるいは社会保障も、みんな関連して考えなければならない。一番大事なことは、私は、国民が正しい意味における祖国を愛する、そして祖国の独立を守り、祖国が理想としておる自由民主のこの理想を完成していき、福祉国家を作り上げるんだ、そのために他から侵略を受けたり、他からいろいろな干渉を受けることのない、真の自主独立の形を作り上げていくという意味における正しい愛国心といつうものが、一番その国の防衛の基礎をなすものだと思うのであります。こういう意味において、私どもが、特に社会保障制度等が比較的行き届いておる欧米諸国等と、ただ単に国民所得といわゆる防衛費のこの割合がどうなるかというようなことを数字的に比べてみるというだけでは、私は実情に合わない点が多々あると思うのです。私どもは、この日本をみな日本国民がほんとうに愛し、他から侵略をされないようなりっぱな国とするという意味において、政治の各般の活動を考えていきたい、かように考えておるわけであります。  しかしながら、同時に、先ほど来いろいろ質疑応答がありましたような国際情勢下において、それでは日本が、そういう国民が国を愛し、国の独立を守り、他から侵略されないようにあらゆる努力をする、こう申しましても、国力とまた国際情勢に応じた最小限度の防衛の具体的な手段を持たなければならぬことは、言うを待たないのであります。これがいわゆる狭い意味における防衛費となって予算に計上されておると思います。同時にこのことは、それでは一国の力だけで国際情勢に対処して、あらゆる場合において安全であるか。そういうわけにいかないので、ここに安全保障体制としての共同防衛の形における集団防衛の形を考えていかなければならない、こういうわけであります。しこうして、この過去七年間におけるわれわれの努力は、とにかく国力と国情に応じて、漸次いわゆる狭い意味におけるところの防衛力を増強することに努力をして参っております。しこうして、その大体の国民所得に対する比率は二%前後になっておることは、御承知通りであります。しこうして、われわれはできるだけそういう方面に使う金を少くし、しかも他から侵略をされない、またいざという場合においては最も有効な手段として、これらの防衛の組織なり、実力を持つということも考えなければならないから、そこに私どもが国防の根本方針の一つとして、量よりもむしろ質に重きを置いた考え方をしていくということが、当然出てくるわけであります。質を考え意味においては最近の軍事科学の発達等にかんがみて、新しい兵器等の研究開発の問題ももちろん考えていかなければなりませんし、またその岡の防衛力を維持するために、その国における防衛産業というようなものがやはり裏づけをする必要も出てくることは、これは当然であります。しこうして、日本の今までの防衛力の具体的増強について、アメリカの援助というものが非常に大きな働きをしておったことも事実であります。また、それがアメリカにおいて、そういう軍事援助をだんだん少くしていくというような方向にいっておることも、御指摘の通りであります。やはり私はこの日本の国力の増強ということは、この七年間におきましても、諸般の経済政策に伴って考えております。防衛産業の問題も、ただ単に狭い意味における防衛産業として考えるよりも、やはりその国の経済とかその国の工業力、その国の技術力というものを高め、これを培養していくというような、相当広い見地をあわせて頭に置いて考えていく必要があろう、かように存じておるわけであります。
  37. 伊能繁次郎

    ○伊能国務大臣 お答え申し上げます。ただいま防衛の基本的な考え方については総理から申し上げた通りでございますが、最近の兵器の問題につきましては、御指摘のように、誘導兵器がもっぱら重要な戦力として考慮せられておりまするが、この問題につきましては一部において、核兵器等と誤まり伝えられておる向きもございますけれども、われわれとしては、誘導兵器については核兵器とは画然区別せられるべきものと考えておりまするし、また核兵器につきましては従来政府としては、総理から明確な御答弁をいたしておりますように、核兵器は持たないということで方針決定いたしております。さらに、これらの新しい誘導兵器の導入等につきまして、日米技術援助等の関係から、御指摘のような秘密保護の見地から、これらのものについての日本国内への援助についていろいろと支障等の点もございますが、今後これらの秘密保護の点につきましては、十分に国民全般の協力を得て善処して参りたい、かように存じておる次第でございます。
  38. 船田中

    船田委員 以上は、大体質問の第一点でございます。  次に、質問の第二点につきまして、これは主として財政経済の問題でございますが、これは他の同僚委員から詳細な質問があることになっておりますので、私はそのうちのごく概略だけ質問をいたします。  財政の問題でございますが、政府は行政整理についてどういうお考えを持っておられるかということを、総理から概略御説明を願いたいと思うのであります。と申しますのは、最近財政が非常に膨脹してきておりまするが、そのうちで非常に大きな比重を占めておりますのが、人件費の増加でございます。試みに過去三年間における給与費の増加を見ますると、一般会計及び特別会計、政府関係機関を通じて、昭和三十一年度予算が三千八百五十一億円でありましたものが、三十四年度の予算は五千五十一億円となっておりまして、毎年平均四億円を増加しておる。これは定員の増加と予算単価の引き上げによるものであります。また地方財政においても同様な傾向を示しておるものでございます。もちろんそれには理由もあることと存じますが、一方において、整理すべきものは思い切って整理する努力を払わなければ、人件費だけは無限に膨脹することになってしまうのではないかと懸念せられるのであります。しかもここ数年来、行政整理はほとんど行われなかったのでありますが、すでに行政の根本改革に着手すべき時期にきておるのではないかと存じます。従いましてこの行政機構の根本改革、ことに行政整理ということについての概略的な御構想を伺いたいと思います。
  39. 岸信介

    岸国務大臣 日本の過去におきまして、幾たびかいわゆる行政整理というものが行われてきたことは御承知通りであります。行政費が全体の予算の上において占める割合と、いうものがふえていくということは、財政上も大いに考えなければならぬことでございます。しかし私は、過去に行われたようないわゆるただ人員を整理するというような意味における行政整理ということはあまり大きな意味がないのじゃないか。過去の経験にかんがみましても、そういうことが一時行われましても、すぐまた人員がふえてくるというような、ただ人員を整理、淘汰するという意味ではなくして、やはり根本に行政機構の全面的な検討をして、行政機構をしてできるだけ簡素な形において、しかも能率を上げるというこの見地においた行政機構の根本的な検討をして、そうしてできるだけ簡素で、しかも能率のいい行政機構というものを考えていく必要こがあるのではないか。日本の現在行われておる行政機構を見ますというと、戦後そのときどきの事情から必要に応じて作られた機構がそのまま残っておって、いたずらに事務を複雑ならしめ、能率を阻害しているような面も少くないと思います。そこで国、地方を通じての行政機構の根本的な検討をして、できるだけ簡素な形における、しかも能率的な機構を考えていくという意味におきまして、政府におきましてもそういう意味の検討をいたしております。その成案を得るならば、国会に提案して御承認を得たいと思っておりますが、私の個人的な考えは以上のようなつもりでこの問題を取り扱て参りたい、かように考えております。
  40. 船田中

    船田委員 なお財政につきましては地方財政の問題がございます。それから経済につきましては経済の本年度の見通し、それから経済の安定的成長確保の手段、それから準備預金制度の活用、企業の体質改善の問題がございますが、それらの問題につきましてはいずれ同僚議員から御質問申し上げることにいたしまして、次に第三の問題について、政治問題について、最後に御質問申し上げたいと存じます。  わが国は終戦後十数年の間に経済は復興いたし、民生は安定をいたしまして、いわゆる戦後時代というものはもうすでに過ぎて、これからいよいよ安定成長という段階に進んで参たのでございますが、戦後身につけた民主政治の運営ということを、考えましたときに必ずしも経済、技術の回復発展いたしましたのと比較いたしまして、政治の方がうまくいておるとは考えられないのでございます。ことに去る臨時国会の際における状況を見ましたときに、これはまことに遺憾な点が多かたと存じます。幸いに岸総理大臣と社会党の鈴木委員長との両党首会談によりまして、国会の運営は一応正常化しましたし、また与党内においても総裁公選が決定をいたしまして、ここにいわゆる政治の停頓はなくなたのでございますが、この内外きわめて複雑な情勢下、しかもきわめて困難な時局に対処いたしまして、わが国のいわゆる平和国家としての、また文化国家としての理想を達成するためには、この政治の運営ということにつきましては、なかなか容易ならぬものがあると存じます。そこでこの政治問題につきまして、最後に一、二総理大臣所見を伺ておきたいと存ずる次第でございます。  民主主義政治を進めていくということのために二大政党の対立、その二大政党の間において国会中心として論議を尽し、そうして二大政党の間に政権を授受し、交代をしていくということは、これは憲政運営の常道でございまして、総理大臣もこの点は常に強調されておるところでございます。しかしそれにつきましては、両党がお互いにこの国会を広場といたしまして十分に論議を尽し、また両党が国民の基盤の上に立って、いわゆる国民政党として成長してこそ、初めて二大政党の意義をなすものと存ずるのでございます。しかるに去る一月十九日の社会党の中央執行委員会における鈴木委員長の言明を聞きますると、これを否認するがごとき立場をとておられるのでございます。かようなことで、いわゆる階級政党ということでありまするならば、ここに共通の広場を持つということはできないのではないか。二大政党の交代制というものが理想であるといたしましても、そういうところに社会党が固執される以上におきましては円満なる政権の授受ということはできないのではないかということを私は懸念いたすのであります。従いまして、この機会に民主政治を発達せしめていき、これを円満に運営していくということについての総理の御所信を伺いたいと存ずる次第であります。
  41. 岸信介

    岸国務大臣 民主主義政治は私はこれは言葉をかえて言えば議会政治を擁護するということが、そのまず第一の発足点になると思うのであります。議会というものを軽視し、議会における論議というものを妨げて話し合いをしないということになれば、われわれの考えている民主主義政治というものは成り立たない。ここにおいて、議会政治を完成していくという上から見ますと、二大政党ということが、最も率直、簡明に、政権の移動とか、あるいはその政策の違いや考え方の善悪というものに国民が主権者として最後の判断を下す問題において、国会の論議を通じての両党の主張というものを明らかにすることができる。こういう意味において、私は二大政党によて議会政治が運営されていくということを望んでおるのであります。その場合において二大政党のいずれが多数党となり、いずれが少数党となるかということは言うまでもなく総選挙を経て国民が審判し、国民の信頼によて一方の政党が多数党となり、一方の政党が少数党となるという形になてくることは、これは当然でございます。私はそういう意味においてこの二大政党を考え、しかもこの二大政党が国会を運営するに当っては、私は多数党たるものは、ただ数だけでもてすべてのものを押し切ろう、あるいは論議をなくしてこれをやっていくという考え方が多数党としては間違ており、十分少数党の意見も聞く機会を持たなければならぬことは言うを待たないと思います。しかしながら今日われわれが作り上げている議会政治のルールの最後は多数決によてきめるということでありまして、それまでの要するに道程において多数党が数だけでもて少数党の意見を封じ去るということが許せないと同時に、少数党も多数決によて最後の結論は自分たちの負けであるからということを前提として、あらゆる手段をもて論議を防げるということは、私は国会政治の上からとるべきものではない、こういう心がまえで両党が十分に国会という場所における論議を通じて、正当な主権者たる国民が最後の判定を下すべき論議がこの国会で行われるということがありまして初めてこの国会政治というものは成り立つと思うのであります。従いまして、私はこういう意味における議会政治というものを擁護し、これをあくまでも擁護するという立場において、いろいろな政策が違いましても、そういう見地において両党が同じ考えに立つときに議会政治というものは成り立つのであります。個々の政策についてはあるいは両党は大いに考えは違ておる、また同じものもありましょう。そういうことはすべて国会を通じて公正に論議され、そうして最後に多数決の原則に基いて決定されていく、しかもその多数決によて決定されるまでの道程における論議というものが、国民が将来行わるべき選挙においていずれに投票するかということの基礎になるものでありますから、そういう論議が最も明朗に、かつ、活発に行われるようにしなければならぬ、その前提としては国会というものを両党とも尊重し、これを守るという原則に立つことが必要である、かように考えております。
  42. 船田中

    船田委員 私は最近思想の動揺に乗じて法秩序を無視し、集団暴力に訴えるというようなことが平然として行われておるというところに、非常な心配をいたしておるのでございます。国会の運営を正常化するということはきわめて大切でありますが、その国会の中においてもまた国会の外におきましても、法秩序を無視した集団暴力が平然として行われておるというところに、私は民主政治がほんとうにまだ身について日本人のものとなておらない、円満に行われない、そこに非常な禍根があると存ずるのでございます。国際間におきましても、法秩序を守り、いわゆる国際民主主義のルールにのとて国際行政を進めていかなければならぬということは、外務大臣もよく言われておるのでございますが、まずこの国会の正常な運営をはかるというためには、この国会の内外における法秩序無視の行為を厳重に排除するということがきわめて肝要であると存じます。それらについての総理大臣の御所見はいかがでございますか。
  43. 岸信介

    岸国務大臣 言うまでもなく民主主義は、先ほど申しましたように、あらゆるものが公明に、しかも明朗な論議を尽して決せられるということでなければならないのでありまして、問答無用だとか、あるいは一切の審議をさせない、いわんやそれを集団的暴力でもて威圧して、させない、民主主義の上からいて、そういうことは絶対に許されないことであります。私がこの前の臨時国会のあと、鈴木委員長と話し合いをしまして、その後、両党の幹事長、書記長の間の話し合い等もありまして、将来の国会の信用を高め、国会の運営を正常化していくために、両党が十分に話し合て具体的な方法をきめよう、院内における法秩序の問題については、これは言うまでもなく、議長というものに最高の権限が与えられており、議長が慣例や、あるいは法規等によって、すべての国会内における秩序を守っていく。これに対してもしも反対し、あるいはこれを妨げるということは、あくまでも国会内部の問題として議長の職権によってこれをきめていく。また院外からわれわれのこの国会内における論議の自由やあるいはいろいろな審議というものを妨げるというようなことに対しては、これはやはり適当な方法によってそれを防止する方法があるかないかについて、さらに両党において委員をあげて研究しようということになって、近くその委員会ができるように私は聞いております。議会政治の発達した古い歴史を持っておりますイギリス等を見ましても、過去においていろいろな経験があったことと思われます。今日行われておる法律の中でも、国会が開会されておる間は、国会から一定の距離の間においては、集団的な陳情等の行動をしてはならぬというような法律もあるやに、私聞いておりますし、あるいはアメリカ国会におきましても、それに類似したような規定がございます。われわれは、国会内におけるところの審議国民の代表としてわれわれが良心に基いてやるところのこの審議に対して、他からいろいろな威圧を加えたり、あるいは審議を妨げるような行動というもの、これは阻止するという制度を作ることも、今日の段階において必要があろう。しかしどういう方法が適当であるかということについては、今申しましたような経緯から両党において選ばれました委員において十分に研究していただきたい、かように考えております。
  44. 船田中

    船田委員 時間がなくなりましたから、私は最後にもう一つ伺っておきたいと存じます。それは民主政治というものは当然個人の自由と人格を尊重していくということが基本でありまして、日本が敗戦後かち得た一つの大きな収穫は、この民主政治を身につけたということでございますから、今後民主政治を大いに発展せしめていかなければならないのでありますが、しかし同時に民主政治は非常に金もかかり、またひまがかかるという非能率的な点もございます。それらの点につきましては、これは相当改善をしていく必要がある。現に昨年春フランスが内乱状態になりまして、そうしてドゴール政権ができた、第五共和国が建設されたというようなこともございます。日本にはもちろんドゴールのようなものはありませんからドゴール政権のできるということはございませんけれども、しかし民主政治というものは何でも妥協をし、弱くなることが民主政治であるというふうには私は考えられないのであります。私が一番心配いたしますのは、敗戦後十数年をたった国、その社会というものが非常な危機に頻するということは、第一次大戦後のあのドイツ、オーストリア、イタリア、ハンガリー等においても見られるのでございます。それらの前例を見た場合において、ちょうど十三年余を経ました今日の日本というものは、相当危機に見舞われておるのではないか。またその心配が非常にあるのでございます。  そこで、民主主義政治をいかに能率化していくかということを考えました場合に、また民主政治に非常に金がかかるということからいろいろの悪が出てきておるのでありますから、それらを考えました場合において、選挙制度の改善ということがここに当然起ってこなければならぬと存じます。それにつきましては、岸総理大臣はかって自民党の幹事長といたしまして、小選挙区制度を中心といたしました選挙制度を考えられたことがございます。しかしこの小選挙区制度についてはいろいろ批判もございます。これにつきましては、むしろ西ドイツに行われておるような一人二票、すなわち個人と政党とを対象としたところの選挙制度を考える必要があるのではないかというような議論も今日起ってきております。そこで、この民主主義政治をいかに能率化するか。それに関連いたしまして、選挙制度についていかに考えられるか。政治に金のかかるということを、いかにして金のかからぬような政治を実現するようにしていくか。そうして百悪の根源を断つという一大決心が必要ではないか。もちろん政府及び与党の首脳部におきましても、今日政治の信頼を取り戻すためにはみずから綱紀を粛正いたしまして、厳然たる態度をもって正しい方向に向っては勇敢に進むという相当な決意とその努力が必要ではないかということを痛感いたしますので、それらについての総理の御所信を最後に承わって私の質問を終ります。
  45. 岸信介

    岸国務大臣 民主政治を完成するということのためには、私は相当な忍耐強さを必要とすると思うのです。独裁政治におきましては、その独裁者の意向でもってすべてのことが決定され、そういう意味においてはいいにしても悪いにしても、直ちにその結果が明瞭に出てくるのでありますが、民主政治においては多数の人々の意見を調整して、そこに妥当な結論を得てこれを実行する、実行する場合におきましては、できるだけ多数の人々がこれに関与して、これの実行に誤まりなきを期するという形が出てくるわけでありますから、当然非常な忍耐強さを要しないと、何か直截簡明に事を処そうとする見地からいくと、能率の悪いあるいは何となし歯切れの悪い政治というような形が自然出てくると思う。しかしながらそれをわれわれが耐え忍んでいくことによって——あるいはそれをショート・カットしてある理想を達成しようとするときにおいて、私は非常な民主政治の危機が生まつれるものだと思います。そうだからといって、民主政治に伴うところのいろいろな弊害、非能率的なことや、あるいは組織その他が非常に複雑になってくることや、あるいはそういうことからひいて金のかかってくるという事柄に関しましては、できるだけそいうことをなくする方法を考える。  それの第一は、私はやはり民主政治の根底は選挙でありますから、選挙そのものに対して金のかからない選挙制度を考え、また国民の多数の人々の意思が率直に現われるような選挙制度を考えていく必要がある。私は二大政党論者であるとともに、二大政党というものを健全に育て上げていくためには小選区制がいいという考えを持っております。しかしながら、その小選挙区制を日本の実情に合わしてどういうふうにしたことがいいかについては、十分慎重に考える必要があると思います。そういう意味において選挙制度はできるだけ公営の部分を多くして、立候補する人にとって金のかからぬような選挙にしていくことが必要であり、またその根底においては、言うまでもなく、国民が民主主義の本義をよく身につけて、公明選挙の行われるようなあらゆる環境を作ることが必要であると思います。  こういう意味において選挙をまず粛正し、選挙を金のかからぬようにし、これを公明選挙に持っていく、しかもそれによって二大政党が国民政党として健全に成長、育成されていくという選挙制度を考えるということが、私は最も必要である。こういう意味におきまして、これは私自身の意見としては、従来から小選挙区制ということを考えておるわけであります。十分こういうことについては、なお各方面の意見も徴して慎重に考究をしたい、かように考えております。
  46. 楢橋渡

    楢橋委員長 午後一時半より再開することといたしまして、暫時休憩いたします。     午後零時三十六分休憩      ————◇—————     午後一時四十六分開議
  47. 楢橋渡

    楢橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。勝間田清一君。
  48. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私は日本社会党を代表いたしまして、過般提案されました予算案を中心といたしまして、経済、財政、外交あるいは政治にわたっての総括質問をいたしたいと思うのであります。  まず、外交について御質問をいたします。岸内閣は安保条約の改定を現在計画されておるのでありますが、過般の演説におきましても、わが国の国力も漸次回復して参り、自衛能力も漸増をいたして参る、また国際社会における日本の地位も向上してきたので、安保条約に合理的な修正を施したいという旨の態度を実は明らかにされたのであります。安保条約の合理的な修正を考える前に必要なことは、この安保条約を解消する方向に外交努力を続けていくのであるか、あるいはこの外交をこの安保条約の発展、拡大をしていく方向に進めていくのであるか、その問題が修正以前に私は確かめられておかなければならないと考えるのであります。岸総理大臣は、この安保条約の将来に対する態度について明確に御答弁願いたいと思います。
  49. 岸信介

    岸国務大臣 私は幾たびか、この前にもお答えしたと思いますが、われわれの最も望む安全保障の態勢としては、国連中心として、国連においてこの世界の安全を保障する機構ができることが一番望ましいと思っております。しかし現実はなおそれに遠い状況にありますので、私どもは、やはり日本の安全を保障するために、日米安保条約というものによって今われわれの理想としておる国連のそういう全体としての安全保障機構ができるまでの間は、日米安保条約の態勢を続けていく、かように考えております。
  50. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私は安保条約のできた経緯あるいは内容、そういうものを見ておりますると、平易に、常識的に明らかにこれを解釈するならば、これは暫定条約だと実は考えておる。しかも効力の問題等については第四条において、もちろん若干われわれの不満とするところはあるけれども、効力を失う条件というものは、明記をせられておるのであります。私は、安保条約は元来暫定条約でありこれはやがて効力を失わるべきものである、そのためにあなたは外交努力を払うべきである、これが本来の建前だと考えるのでありますが、あなたはその考えとは違うのでありますか。
  51. 岸信介

    岸国務大臣 今お答え申し上げましたように、私は決してこれが永久的なものだ、恒久的なものだとは考えておりません。その意味において暫定的だという勝間田君の言葉をそのまま用いてもよかろうと思います。私は、世界の平和が維持され、各国の安全が保障され、いかなる場合においてもそれが他から侵略されない、国連がこれを実現する崇高な使命を持っており、そういう機構が完成するまでの間の暫定的な処置だ、かように考えております。
  52. 勝間田清一

    ○勝間田委員 あなたがこの暫定という意味を、いわゆる国連の保障のあるまでの暫定処置と考えておるということは、非常な間違いだと実は私考えるのであります。当時の経緯、また当時のその内容自体が、今日、私は暫定的なものだと考えるのであります。すなわちそれは単なる国連の問題ではなくて、たとえば日本には固有の自衛権がある、しかし自衛能力がない、しかし世界には無責任なる侵略者がその跡を断たない、従ってアメリカの軍隊にここにおいてもらう、右の申し出をアメリカが了承して、暫定的な条約としてここにこれを取りきめておるんだ、こういう状態においてこの条約というものができておると私は考えるのであります。それは国連の問題と関連もしないし、他のいろいろの安全保障の形式はあるわけであります。だからあなたが、国連の集団保障ができるまでの暫定処置としてこの条約を考えておるとすれば、これは非常な間違いであると私は考えますが、今のあなたの考え方は非常な間違いではないか。
  53. 岸信介

    岸国務大臣 私は、今お答えを申し上げましたことを決して間違いだとは思っておりません。なるほど現在の安保条約のでき上った経緯等については、今勝間田委員のお話しになったような経緯もあったことは、私承知いたしております。しかし日米安保体制というものをどういうふうに根本的に考えるかという先ほどの御質問に対しましては、私がお答え申し上げたように、今、日本の置かれている立場からいって、日本の完全な安全保障を自国の力だけでやるということはとうてい望み得ない。また世界国際情勢もそういう情勢であって、いろいろな集団安全保障の体制がありますけれども、その最も理想的な状況としては、言うまでもなく、国連においてそういう安全保障体制ができることが望ましいし、また私どもはできるように努力をしていく必要がある。それまでの間において、非常に国際情勢が変ってくるというようなことになれば、これはもちろん国際的な関係をわれわれが考えなければならぬ事態が出てくるかもしれません。しかし今根本的に考えるとすれば、日本の置かれておる情勢安全保障としては、日米安全保障体制で日本の安全を保障するということは、最も適当な方法であるという意味におきまして、先ほどお答え申し上げた通り考えております。
  54. 勝間田清一

    ○勝間田委員 岸総理は、いろいろの場合にいろいろ態度を巧妙に変えていくということが、一番悪いことだと私は実は考えるのであります。三十二年の三月の一日に、私はこの予算委員会を通じて同様の質問をあなたにいたしたのであります。そのときにおける岸総理答弁を、私はここで速記録によって朗読いたしてみたいと思うのであります。すなわちこれは岸総理でありますが、——私はしばしば答弁しておるように、この日米安保条約によって日本の安全が保障されておるという今日の状態、また安保条約の今日までの実施の経過にかんがみまして、こういうものがなくなっていくことが日本国民の望みであり、またわれわれもそういう方向に向ってあらゆる努力をしていくべきものである、かように考えます。」こう答えておるのであります。私は、現在あなたのこの安保条約に対する態度というのは、違っておるとは実は考えております。私は、この安保条約のこういう状態が不自然であるというので、これをなくすようにしていきたいと考えます。そのために努力をしていきたいと考えます。それならば、あなたはこの条約を改正する以前に、このなくす方の努力をされるのが当然ではなかったか、そのために努力をされることが正しかったではないか。たとえばあなたが防衛力を作る場合に日本国民の中では、日本の防衛力というのは兵隊がなければやっていけないのだ、だから兵隊を作るのだという宣伝をされてこられた。このことは、やがて日本からアメリカ軍隊が撤退してもらえるかもしれないという錯覚を持っておる、またそういう期待を持っておる国民もあるかもしれない。ところがあなたの考え方は、だんだん共同防衛の形に持っていかれようといたしておるのであります。だから安全保障の形態は幾つもある、幾つもある中でどの方向を選んでいくかということは別個の問題といたしまして、私は、現在の安保条約をなくしている方向に努力することが国民の願望であり、あなたの努力の目標であると考えておった。あなたはそうではないのですか。
  55. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、私は、これはごく終局の目的は世界の恒久的平和が確立され、いかなる国からも侵略されないという保障ができるような事態が一番望ましい。その具体的の方法としては、国際連合におけるそういう機構ができて、そうして世界の安全が保障されるということが望ましいことは言うを待たないのであります。しかし現状はなおそれと遠いがゆえに私は日米安全保障体制によって日本の安全を保障いたすのが理想のものであり、これを恒久に続ける考えを持っておらないということは、先ほど申し上げた通りであります。  しかし、今のあなたの御質問の御趣旨でありますが、ただばく然と日米安全保障体制というものをなくしさえすれば、それにかわるところの日本安全保障が確保されないにかかわらず、ただこれを解消すればそれでいいというものでないということは、言うを待たないのであります。そういう意味において私は、この前もお答えしたことと今日お答えすることにおいて根本的にちっとも違っておらない、こう考えております。
  56. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そのことと重大な関係を持っておるのでありますが、藤山外務大臣が先ほど船田中氏の質問に答えて、前文を直したいと思うという御発言をされたのであります。一体どういう方向に前文を変えようとせられるのか、この点を一つ明らかにいたしていただきたいのであります。
  57. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 安保条約の改定に当りましては、いろいろな点があると思います。前文におきましても、われわれとしては、改定あるいは適当に書き直していくことが、日本の今後の自主性という意味からいきましても必要ではないか、こう考えておるわけであります。今、どういうふうな案で交渉するかまでは申し上げかねるわけであります。
  58. 勝間田清一

    ○勝間田委員 前文の建前について、どういうことを言うかわからないということであってはいけないと私は思う。これが今後修正される安保条約の性格を規定していく問題であります。でありますから、ただ前文だからこれをどうという問題ではなくて、安保条約の性格に関する問題でありますから、あなたは、安保条約の前文をどのように変えていこうとされるのであるか、方針を明らかにされる必要があると思います。
  59. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 前文をどういうふうに書き改めるかということはあれでありますけれども、私の安保条約に対する態度ということを申し上げますれば、御承知のように岸総理アメリカに行かれまして、アイゼンハワー大統領と会見されました。そして日米対等の立場でもって、日米の自主的な立場を堅持しながら、今後の日米関係を調整していこうという立場に立ちまして、この改定に着手したわけでありますが、同時に安保条約というものは、根本的にいえば日本自身の自衛をやる、他国から侵略をされるという場合に日本を守るということが、第一点であろうかと思います。そういう立場に立ちまして、われわれはこれらの問題を扱って参りたい、こう考えております。
  60. 勝間田清一

    ○勝間田委員 自衛の立場という形でなくて——自衛の立場という考え方も幾つもあると私は思うのでありますが、自衛の立場という問題とアメリカとの関係の問題であります。すなわち日本の固有の自衛権を持っておる。日本の国を守らなければならない。しかし日本には自衛能力がない。アメリカはこれにいてもらいたい、こういう形のものが安保条約の一つの精神になっておるわけでありましょう。あなたが、日本はもうすでに国力もできた、自衛能力もできたので、国際的地位も相当高まったので、この際に修正をしたいと言うのだから、この安保条約の精神というものを、一体どういうふうに変えていこうとせられるのであるかを、これはしゃべれないはずはないと私は思う。これをあなたは明確にされる必要があると思う。
  61. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 安保条約の締結されております精神というものは、日本が他国から侵略を受けるのに対して防衛をする、日本国を守る。そして日本国を守ります前に、むろん七年前と違いまして自衛力も漸増してきておりますし、あるいは国際社会における地位も、経済力等も充実してきておりますけれども、なお現在の国際情勢の間におきまして、日本だけで日本を守るということが、非常に困難でありますことは御承知通りであります。自衛隊をなお整備して参りますに対しても、多額の経費も要るわけであります。そういう意味からいいますれば、やはり現在の段階におきまして、少くも現在ある安保条約というものを改善していく。それによって日本の他国からの侵略というものを共同で守っていくということが、一番の主眼点であろうかと思います。その主眼の基本的な態度に沿って、私は改定いたして参りたい、こう考えております。
  62. 勝間田清一

    ○勝間田委員 防衛をしてもらいたいという態度ですか、まずそれを一つお尋ねしたい。
  63. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 防衛をしてもらいたい、防衛をともにやっていこう、こういうことであります。
  64. 勝間田清一

    ○勝間田委員 今度の協定には、従って防衛分担金、これは支払うべきでないと私は思うのだけれども、防衛分担金の制度について、どういう考え方であなたは進んでいかれますか。
  65. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 交渉のことでありますから、最終的にどう決定するかはわかりませんけれども、私どもといたしましては、防衛分担金の問題も取り上げて参りたい、こう考えております。
  66. 勝間田清一

    ○勝間田委員 取り上げるということは、結局これは支払わなくてもいいという立場であなたはいかれるわけですか。
  67. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 防衛分担金の問題につきましては、建前としてそういうふうに考えております。
  68. 勝間田清一

    ○勝間田委員 かなり双務的なものとしてあなたは考えていかれるから、防衛分担金は負担すべきでないという立場でいこう、こう進まれることは、私は妥当だと実は思う。しかし問題は、今度の修正案の内容なり前文のものと関連をして、さらに重要だと思うのは、アメリカが参加しておる各種の安全保障条約、こういうものの中に必ずうたわれておる文句が実はある。それはあなたの御存じの通り、西太平洋地域における地域的安全保障の一そうの包括的な制度が発達することを願望する、あるいは外部からの武力攻撃及び共産主義者の破壊活動に対する個別的及び集団的の能力を維持し、発展させること、この条項が常に入ってくるのであります。あなたは先ほど船田中氏に対する答弁で内容をほぼ明らかにされましたが、こうした条項は入るのであるか入らないのであるか、それを一つお尋ねをいたします。
  69. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど申し述べました改定の根本的精神から申し上れば、日本が完全に他国から侵略されないような防衛体制をとること自体が、東亜の平和に非常な貢献をするというふうに考えております。
  70. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それならば、この条項は入らないと見てよろしいか。
  71. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私どもは、ただいま申し上げましたような精神でこれからの交渉に臨んでいくわけでありまして、一々の条文にどういうものが入るか入らないかまでは、今日まだ交渉の段階において申し上げかねるのであります。根本態度を御承知いただければおわかりいただけるのではないかと思うのであります。
  72. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私は、こまかい条文の文章にまであなたにどうこうはいたしませんけれども、いわゆる条約の性格を私は明らかにしたいのであります。すなわち、単なる修正であるのか、あるいは何らかのあれが行われるのか、修正の前のまた性格の変更もあるのか、私は重要な問題と思うからあなたに申し上げるのでありまして、こうしたいわゆる地域的な一そうの包括的な制度、あるいはただ武力活動だけでなく、共産主義の破壊活動に対する個別的及び集団的な能力という、いわゆる日本の再軍備の義務性、こういう問題が入ってくるということになると、私は条約の性格はすっかり変ってくると実は思うのであります。また重大な変化だと考えるのであります。だから、あなたにここで文章などをお聞きするわけではない。あなたの基本方針を明らかにしていただきたい、こういう包括的な制度なり、こういう能力なりを約束するのであるかどうか、こういうことであります。
  73. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本が自衛力をどの程度に増強するかといいますことは、日本自体決定することでありまして、従ってこの条約でもって、ただいま申し上げたような根本趣旨から申し上げますれば、相互にそうした防衛というものに対する努力をするということは当然であろうと思いますが、しかし、条約によって内政的に何か日本の防衛力を規定されるようなことはあり得ないと思い、またあり得ないように努力して参るつもりであります。
  74. 勝間田清一

    ○勝間田委員 その点は、包括的な制度についても同様に考えますか。
  75. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 包括的というとどういうのですか、ちょっと説明していただきたい。
  76. 勝間田清一

    ○勝間田委員 西太平洋の結局包括的な制度ですね。早く言えば地域的な集団保障。
  77. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 同じことだと思います。
  78. 勝間田清一

    ○勝間田委員 先ほど船田委員に対しての内容の問題がありましたが、私はもう少し突っ込んでお尋ねをしてみたいと思います。まず岸総理に聞いてみたいと思ったのは、船田君は、内乱、騒擾鎮圧のためにアメリカの軍隊が出動することの条項は、そら軽々に削除すべきでない、こういう御主張をなすったのであります。これは単に見のがしていい議論とは私は考えられません。やはり内乱、騒擾鎮圧のためのアメリカ軍隊の出動という問題は、日本の自主権に関する問題である。これはあなたの言う通り内政不干渉、対等な立場という問題に関する問題でありまして、これはあなたは、はっきり内乱、騒擾鎮圧のためのアメリカ軍隊の出動条項は削除すべきである、これは私は正当であると思うのだけれども総理大臣の口をもってここに御答弁を願いたい。
  79. 岸信介

    岸国務大臣 安保条約改定の内容につきましては、いろいろな議論があることは当然であると思いますが、今おあげになりました内乱条項のごときは、私は新しい改定した条約には、これを入れるべきものでないという見解をとっております。
  80. 勝間田清一

    ○勝間田委員 安保条約の内容は、三本立になっていると私は考えるのであります。一つは内乱、騒擾のためにアメリカ軍隊が出動でき得るようになっておる。一つは日本の国に対する外国からの侵略に対する行為については、アメリカ軍隊と協議してこれを防衛する形に実はなっておる。もう一つは、御案内の通りに、極東の平和と安全の維持のためにアメリカ軍隊が出動し得るような基地提供になっておる。この内容について、ただ修正するという考え方でもってこれを説明することは困難だと実は私は考える。すなわち内乱の問題については、日本はどうするのだ、防衛についてはどうするのだ、基地の提供についてはどうするのだということが、結局この内容だと私は考えておるのであります。私はこの内容を全体的にながめてみて、岸内閣というものはこの三点をどう変えようとされておるのかということを包括的に、基本方針としてやはり明らかにされる必要がある。ただ、あるないという問題ではなくて、この三つをどう改正していくことが、日本独立と安寧を確立することになるのかというところの基本方針を明らかにする必要がある。そういう意味で私は岸総理に、この三点を将来どう扱おうとされるのであるかということを一つ明らかにしていただきたい。
  81. 岸信介

    岸国務大臣 内乱条項につきましては、先ほどお答え申し上げた通り御了承いただきたいと思います。日本が他国から不当に侵略されたという場合において、侵略を排除し日本の安全を保障するということについては、日本は当然日本の全力をあげてそれをやるわけでありますが、アメリカもこれに対して一つの義務を負うて、日本と共同してこの侵略を排除するという責任を明確にする必要があるだろう。それから基地の使用、基地につきましては、やはり日本アメリカ側に与えるところの、日本の側における一つの義務として基地を提供する。これの使用等については、事前に協議その他の方法によって、日本の意向も十分取り入れたやり方でやる、こういう方向に考えていくべきである、こう思っております。
  82. 勝間田清一

    ○勝間田委員 今のあなたの答弁の中で、やはり一番重要だと実は考えるのは、日本の防衛について義務を負いながら防衛をしていくという考え方と、それならその義務は一体何であるかということになってくると、あなたの考えの——今答弁の中には、おそらく基地を提供することが、共同防衛に対する日本の反対給付であるというように私は聞き得られるように思う。すなわち国を共同防衛してもらうためには、基地も提供して、しかもそれは事前協議という条件付ではあるが基地を提供することによって日本の義務を守りたい、あるいは反対給付をしたい、こういう関係としてあなたは考えておるのか、そう解釈してよろしいのか、あなたの御答弁をお願いしたいと思います。
  83. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどお答えを申し上げた通りであります。今勝間田君の御質問の趣旨につきましては、私ちょっと了解しかねるのでありますが、私は必ずしもアメリカ側が日本を防衛する義務を負うということに対する対照といいますか、それに対して日本がどうするというふうに対照的な義務のように私は実は考えているわけではないのでありまして、日本安全保障立場から日米安保条約というものの実体を検討して、日本アメリカとの関係をできるだけ対等の関係にすると同時に、日本安全保障をするのに最もふさわしい条約内容はどういうことであるかという観点から、私は実は考えておるのであります。
  84. 勝間田清一

    ○勝間田委員 何も答弁されていないと私は考えるのであります。藤山外務大臣が当初計画された当時は、やはりNATO方式なりあるいはSEATO方式なり、アンザス方式なり、双務的な防衛条約を締結をしていきたいということが、おそらく計画されたに違いないと私は思う。ところが中途において日本国民世論というものが出て参って、それは戦争に巻き込む結果になる、あるいは憲法違反の結果になるというようなことから、これを日本の特殊の状態の中で修正していこうという態度に私は変られたのではないだろうかと実は考える。だからこそ今日小笠原を入れるとかあるいは沖縄を入れるとかいう問題で、非常にいろいろの議論が起って参る、あるいは保守党の中においても今修正すべきではない、もっと自衛能力を強化してから安保条約の改定に向うべきだという御議論の方もあられる。だから今日保守党の中においてもいろいろの意見があるということを私も聞いておるのであります。  そこで私はやはり問題になると思うのだが、この一番大事なところは、基地提供と日本の防衛との関係の問題をどう考えて修正をされていこうとするのであるかということ、これが問題だと実は思うのであります。藤山さんは、この基地の提供ということを日本の共同防衛ということに対する反対給付として考えておるのではないか、外務大臣に一つお尋ねいたしたいと思います。
  85. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この基地提供というものが、今回の安保条約の改正における日本の持つ義務の一つであることは間違いないと思います。しかしながらそれが全部だとは申し上げかねるかとも思います。
  86. 勝間田清一

    ○勝間田委員 安保条約の問題について、河野一郎氏がマッカーサー大使と御相談をなすっておられる。私は日本外交路線の上からきわめて好ましくない態度だと実は考える。あの行動に対して岸総理大臣は一体どう考えておられるか、お尋ねいたしたい。
  87. 岸信介

    岸国務大臣 日本アメリカとの外交交渉のルートは、言うまでもなく私もしくは外務大臣を通じてアメリカのそれぞれの機関とやっております。それ以外にルートは全然ないわけであります。ただ駐日大使であるマッカーサーがいろいろな人々に会って、日本の世論の動向なりいろいろな人々の意見を聞いていることは、これは河野君だけの問題じゃありませんで、いろいろな人々と会っているようであります。私はこれはそれぞれ大使が会いたいという人と会って意見の交換をするということは、ちっとも差しつかえないことであり、わが党の中にもそういうふうに河野君以外にも会っている人があり、あるいは社会党の方にも会っているやにも聞いております。これは広くその国に駐在しておる大使が、いろんな意味において人々と接触するということは当然あり得ることだと思います。ただ外交の交渉をするとか、ないしは外交そのものの話し合いがそれの間に行われるということは、御心配のように私は望ましい形でないのみならず、そういうことがあってはならないと思います。あくまでも外交交渉につきましては、私もしくは外務大臣がその衝に当っておるということは言うを待たない。そのほかには一切のルートはございません。
  88. 勝間田清一

    ○勝間田委員 河野氏の行動については、私は、責任内閣をとっておるしかも与党の議員としての態度から見て、決して好ましい態度ということはできないと思う。しかしその内容とするところは、私はもっと大事だと思う。官房長官は、あるいはまた自民党の幹事長は、地方に行きまして藤山外務大臣の言うことも河野氏の言うことも大した違いはないのだ、こういう談話を発表せられておる。大した違いがないのだということには、私は絶対にこれは解釈することはできない。今日小笠原と沖縄との問題について、潜在的な主権の問題を何とか留保したいという気持が国民にあることは、これは私は日本民族の民族精神としてある程度あると思う。しかしこれは安保条約と関連さすべき問題ではないのであります。私はこの領土権の問題は、別個の形において、これは当然日本の主権が主張さるべきだと実は考えておる。それが何か安保条約と関係していけばうまくいけるかのごとくに誤解をさせていくというところに、政治の大きな魔術があるし、誤まりがあると私は考えておる。安保条約の改定の問題と、小笠原の領土権の返還の問題とは別個の問題である、こう考えていく考えがあるかどうか、一つ総理大臣のお考えをお伺いしたい。
  89. 岸信介

    岸国務大臣 私は、その点においては勝間田君と全然意見を同じくしております。安保条約の問題と、沖縄及び小笠原に対して持っているわれわれの潜在主権の問題、従って施政権の返還の問題これは全然別個の問題であると思います。
  90. 勝間田清一

    ○勝間田委員 外務大臣にお尋ねいたしますが、欧州における経験で、NATOの軍事同盟が締結をされる際に、ソ連陣営においては、そういう形の電事同盟を締結すべきでないという非常な呼びかけをしたことがあります。しかし、不幸にしてNATOができた結果は、御案内の通り、赤いNATOといわれる東欧の軍事同盟が、対抗的にできたのであります。日本における安保条約の改定なり、あるいはこれが強化なりというものが、ソ連、特に中国、北鮮及びベトナムに影響を及ぼさないはずはないと私は思う。それなるがゆえに、今日中立という問題を、中国及びソ連から呼びかけをしておるというのは、ちょうど、欧州における場合とよく似ておると私は思う。中立問題についての論議は別個といたしまして、この安保条約の改定なりが、中国、北鮮、ベトナム等に及ぼす悪影響、これを計算に考えたことはあるかどうか、この点を藤山外務大臣に一つお尋ねをいたしたい。
  91. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今回の安保条約の改正は、現行の安保条約の不備な点、特にただいままで申し上げましたような両国対等の立場に立って、日本の自主性を発揮したように改定していこうということでありますので、現行安保条約以上に、何らかの形で他国に迷惑を及ぼすというような改定にはなっていかぬと思います。従いまして今御指摘のような点は、私は心配要らないのではないか、こう考えております。
  92. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私はその意味において、岸総理大臣が施政方針演説において、片方でおれは安保条約の改定をやるのだという演説をしておいて、他面において、おれは日中の国交回復をやるのだ、こう言われる。私はこれほど外交的に愚弄した話はないと思う。アメリカとの軍事同盟を強化して、他面において日中との国交回復をやろう、これは国民に対する選挙演説なら別問題といたしまして、外交技術としてこんなことが成立するはずがないと私は思う。一体この矛盾をどう解決されようとされるのか、あなたの異なった二つの思想をどう考えようとされるのか、総理大臣にお尋ねしたい。
  93. 岸信介

    岸国務大臣 私どもは、安保条約の改定ということについて、今勝間田君が指摘されたように、中共側その他共産圏の側から申しまして、日米の軍事的関係を深める、あるいは強めることを目標にしておるということを言われますけれども、そういう内容ではなくして、日本アメリカとの関係において非常に不平等であり、日本国民感情が従来とも問題にしておった事柄を、できるだけ対等な形において日本の自主性を認めた形においてこれを修正をしよう、軍事的なわれわれの義務や行動というものを、日米の間において強化するという目標を持ってはいないのであります。また内容もそういうことは盛ってはいないのであります。従いましてこの改定ということは、これはむしろ現在あります日米安保条約というものを廃棄しろという議論は別であります。私はその態勢をとる以上は、当然にやらなければならぬ問題を扱っていくのであって、決してこれによって軍事的の協力関係を強化し、軍事同盟性格を明確ならしめるというふうな性格のものではないと私は思う。従いまして、これを日本安全保障の義務において、現在あるところの安保条約というものの内容を、より合理的なより対等的なものにして、日本国民国民感情に合致せしめるようにしようということでありますから、これを取り上げて、もしも中共側やあるいは共産圏側において、日本がこれらの国々に対して敵意もしくは友好関係に反するがごとき考え方の表現であるというふうに見ることは、全然事態をしいるものであります。従いまして、私が日米安保条約の改定と日中貿易の再開の問題について述べておることは、ちっとも矛盾ないことであって、当然のことを言っておるつもりであります。
  94. 勝間田清一

    ○勝間田委員 日本の安全という問題についてあるいは外国から侵略があるとか、あるいは内乱、騒擾をかき立てる者があるとか、いろいろ脅迫的な、あるいは違ったイデオロギーのいろいろな論説を吐く者があるのであります。私はほんとうに現実的な世界情勢をながめてみるときに、一番大切なことは何であるかというと、二大陣営対立からくるところの世界戦争の脅威、もう一つは、後進地域における植民地性と、独立との間からくるところの脅威、変化あるいは非常におくれた生活から立ち直ろうとするところの現状打破の動き、こういうものの中からくる世界の不安というものが、すなわち大きな不安の根源だと私は考えている。アジアについて考えてみても同様であります。今日のアジアにおける脅威というものは何であるか。言うまでもなく朝鮮の三十八度線、台湾海峡、南北ベトナム、これが両陣営の直接対決しておるところの危険な地域なのであります。この危険な地域に対して、いかにアジアの平和を保っていこうとするのかという外交が、私は中心外交であると思う。これを刺激し、これを発展拡大させるところの外交であってはならないと私は確信をいたすのであります。こういう点は東南アジアについてもいえることだし、また中近東についてもいえることだし、東欧州についてもいえることであります。私は、今日の世界の脅威、日本の不安という問題について、岸内閣が、他国の侵略があるからだ、こういう観点に立たないで、このアジアの緊張そのものがわれわれの平和を脅かしておるのである。この緊張そのものを打開していこうというところに、私は外交中心を置かなければならぬと考える。もしそういう考え方でいくならば、ここに軍事同盟お互いに締結し合って、中ソの方の壁を高くし、日本の方の壁も高くしていくという形ではなくして、やはりその壁を引きおろして緊張をやわらげていくという方向に外交の視点を置くべきだ。私は今日のアジアの脅威の実態ととるべき外交方針というものはそうあるべきだと実は考えるが、これに対する見解を岸総理大臣にお尋ねをいたします。
  95. 岸信介

    岸国務大臣 御指摘のように世界の大きな不安の根源は、東西陣営対立が激化しておること、その間の関係緊張しておるということであると思うのです。今おあげになりましたその他の地域的な紛争等におきましても、単なる地域的な紛争ではなくして、その背後に両陣営の勢力がこれをおのおのバックしておるというところに、これらの地域的な紛争というものが世界的不安の一つの因子になっておると思います。従いまして一番大きな問題は、言うまでもなく東西陣営対立関係をいかにして緩和し、今お話のようなこの間の対立の壁を高めて両方が競争し合っていく、その均衡によってわずかに世界の平和を保っておるというようなこの事態を、根本的にどう改善していくかという問題が、世界のどこの地域においても、いやしくも今日の世界政治家が一番大きな関心を持っている問題であると思うのであります。それに対しては、私はあくまでも国連中心として、日本は、この対立関係というものを緩和していくという積極的な努力を従来もやってきておりますが、今後も続けていかなければならない。そうしてこの方向に向っての努力というものをあらゆる外交の面に表わしていくということが、日本外交根本であろう、かように考えております。
  96. 勝間田清一

    ○勝間田委員 不幸にしてあなたの言われるような外交は、実際には行われておらない。これはきわめて遺憾であります。藤山外務大臣も岸総理も、わが党の中立外交というものを極力非難した、このような挑発的な演説をされました。私は若干申し上げておきたいと思う。最近の欧州の動きを見ておりましても、アジアの動きを見てもそうでありますけれども、両陣営不信と恐怖とを取り除くような安全保障態勢の合意に達しない限り、世界の問題は解決がつかないように私には見受けられるのであります。たとえば西ドイツと東ドイツとを考えてみても、この統一の問題というものは一体何であろうかといえば、自由投票よりも両軍隊を撤退することにある、あるいは包括された新ロカルノ方式を作ることにもある、あるいはNATOの強化という方法以外には方法はないと言う人もある。意見は対立しておるけれども、結局安全保障方式をどうとるかという問題に帰着しておる。解決された事例を見ますと、たとえばオーストリアに見られるごとく、中立をとり、両陣営がうしろに撤退をして、そうしてここに解決の妥結の道を発見したということがあった、私は今日の世界で一番大事な問題は、武力競争をしても、軍事同盟競争をしても、ミサイル競争をしても、あるいは大陸弾道弾競争をしても、競争そのものは何らの解決を見出されなかった、それは想対的であるからであります。その考え方に今日世界が気がついて、やはり対立を激化させていくという形の中には、永久に建設的な解決の道はないんだ、そこでオーストリアの例に見ても明らかなように、これを解決していく道は、この壁を下げていく以外にない、あるいは軍事的に引き下る以外に方法はない。あるいは中立地帯を作る以外に方法はない、あるいは全部を包含した新ロカルノを作る以外に方法はない、こういうような一つの平和共存の保障態勢を作るというのが、私は世界の今日における動向だと考える、この世界の動向というものにさおさして、そうして国連中心に活躍されるということが正当だと考えておる。その考え方に今日切りかえていくことが、私は今日の国際情勢に合った外交のとり方だと実は考えておる。その外交のとり方というものを、ある者はこれを中立ともいい、あるいは中立的ともいい、あるいはノン・インボルブメントともいい、そのいずれでもよろしいのであります。対立激化の方法でなくて、中立和解というか、平和共存というか、その方向に外交を進めていくべきだというのが、わが社会党の平和外交路線というものであります。その平和外交路線というものに対して、あなたは中立論だ、観念論だ、非現実論だ、こういう反駁を加えることは浅薄きわまりない批判だと私は考える。この点についてのあなたの明確な御見解を承わりたい。
  97. 岸信介

    岸国務大臣 東西陣営対立、競争の根源であるこの両陣営間における不信の念というものを一掃していくことは、対立を緩和する道であります。そのためには、あるいは国連を通じ、あるいは当該国の間において各種の問題を話し合うことにより、建設的な道が見出されることは、望ましいことであると思います。しかしある国がどういう政策をとるか、ことに外交政策についてとるかという問題に関しては、ある国が置かれておる情勢、すなわちその国の経済状態やあるいは政治状態あるいはその国を取り巻くところの地理的な環境であるとか、いろいろなものを考慮して、われわれが進んでいくべき外交政策路線考えるということは、当然であると思います。ヨーロッパのいろいろな国々においてのさまざまな事象を見ますと、オーストリアで成功した問題が、隣りのハンガリーではどういう状態になっておるかというようなことを考えてみますると、やはりその国が置かれておる各種の客観情勢というものを頭に置いて、そうして進んでいくべき外交路線というものを考えるべきものであって、こういう意味から申しまして、日本自由民主主義立場を堅持し、従来においても自由民主主義の国と提携をし、理想理念を同じくする国々との協力のもとに世界の平和を進めていこうという、こういう外交路線をとっておる事柄は、日本の置かれている各種の背景また経済的、政治的の環境、条件からいいまして当然である、今日私は、必ずしも社会党の中立政策というものを全体的に非難した意味でも絶対にないのでありまして、私の言っているのは、日本のこの外交路線というものを変えて、従来の自由民主主義立場、また自由民主主義国々との提携ということをやめて、そうしていずれの陣営にも属さない中立立場をとることが、日本安全保障の上において最も適切な方法であるということを主張する人がありますけれども、それは今申し上げましたような日本の置かれておる国際的環境なり、日本の進んできた道という具体的の現実から離れておる議論である。またそういう意味において決して日本のとるべきものでないのみならず、そういうことが日本立場中立に持っていくということ、共産主義国が日本中立を強く呼びかけておることから考えてみましても、日本の国際的の従来の立場なり、あるいは従来の国際的の信用というものの基礎をやはりこわすものだ、日本をして共産国の方へ一歩近づけしめるという印象をあらゆる面において与える。これはソ連中共から日本中立化しようということを呼びかけておることからも、私はそう言って差しつかえないと思いますが、そういうことは日本のとるべき政策でないという考え方であります。
  98. 勝間田清一

    ○勝間田委員 中立化共産主義に近つけるというようなことを言われておりますけれども、しいるもはなはだしいと実は考えておる。われわれ社会党が今日まで中立外交を主張いたして参りましたのは、戦後十年にわたってのわれわれのたゆまない主張であります。このたゆまない主張に対して、当時共産陣営においては世界の二大陣営において中立はあり得ないといつう立場をもって、社会党は批判を受けて参ったわけであります。同時に保守党の諸君からも、同じ意味においてこれはむしろアメリカ陣営に対してひびを入らせるものである、離間させるものである、だからこの態度をとるべきでないという態度をとって批判を受けて参った。しかし今日世界中立という言葉を使おうが使うまいが、中立的な態度をとって世界の和解を求めていく以外に協調の道はないというのが、多くの大勢になってきたというふうに考えておる。社会党の中立外交と今度のソ連中国中立外交と同じものであるかどうかは、さらに私どもは検討を要するところでありますけれども、少くとも社会党の年来の主張されたところに、中立外交の線にソ連なり中国なりが提案をしてきたということは、私は外交的にとらえ得べき重要なチャンスであると考えておる。これは岸総理に言うまでもないことでありますが、西ドイツの統一問題について、アデナウアー政権は幾たびか統一の可能性を見失ったのであります。その幾たびかあった可能性を見失っていたところに、今日アデナウアーの外交についての批判があるということも私はよく見ております。今日私はただ単に中立の呼びかけがソ連中国の戦略的な、あるいは何かの意図を持った単なる呼びかけであるかのごとくに、これを一蹴し去るべきでは断じてない。こういう傾向を私はむしろ喜ぶべきだと考えておる。これについてはあなたの返答を求める必要はございません。私は次の質問をいたします。  アジアにおける二つの陣営に対しての外交をどうするか、これは非常に重要な問題だと思う。あなたは中国と台湾とを二分して、一方の陣営におつきになる外交をとっておられる。南北ベトナムに対しては南ベトナムの賠償は払うけれども、北ベトナムについてはこれを認めていかないという態度をおとりになる。南北朝鮮についても同様な態度をとっておられる。このアジアにおける一民族が二つの国に分れておるという状態が、アジアの緊張をかもし出しておる根本の原因であると私は考えておる。これに臨む日本外交態度というものはきわめて重要であると私は思っておる。この二分されたアジアの状態に対して、日本外交はどういう態度で臨んでいった方が、アジアの平和に貢献するものであると考えておるかどうか、この点をあなたにお尋ねをいたしたい。
  99. 岸信介

    岸国務大臣 一つの民族がいろいろな関係で二つに分れておるということは非常な不幸であり、またそれが平和に対する一つの脅威や不安をかもしておる原因を作っておるということは、この前の大戦世界の各地において見られることであります。しこうしてこれが背後にはやはり東西陣営対立という形において、おのおのその支持する勢力が背後についておるということが、またその問題の解決を非常に困難ならしめておる実情であると私は思う。しこうしてこれはいろいろな歴史的の関係もございます。たとえば台湾にある中華民国政府日本との関係は、私がここに申し上げるまでもなく、先年平和条約が結ばれ、これとの間に日本の友好の関係が作られておる。しかし同時に中国大陸における中華人民共和国の統治は、相当長い期間行われ、それが安定の方向に向って相当に進んできておるという事実、また南北ベトナムの問題やあるいは南北朝鮮の問題については、すでに国連がこれに対する解決の一つの提案をしておるというようないろいろな関係が、これらの問題についてはみな関係を持っておるわけであります。現実外交政策としてわれわれがとるべき問題については、これらの現実をやはり無視するわけにはいかないのであります。従ってよくいわれることでありますが、台湾の問題は中国内政問題なりと簡単に片づけることによって、決してこの問題は解決するのではなくして、その背後にはやはり国際的の両陣営対立ということを背後の形に置き、また国連におけるところの諸問題というものを置いておる以上は、単純な内政問題としてこれが解決するわけではなしに、やはり国際的の意味を持っておる。一面においては国際的の問題を解決せざる限り解決がつかないのであります。従って私どもはたとえば中国の問題については決して二つの中国を作り上げる陰謀を持っておるとかいうことではございませんけれども、これらの歴史的な事実、日本と中華民国政府との間の条約というものに対して忠実にこれを履行していくということは、これは国際信義の上から当然であると思います。また南北ベトナムや、あるいは韓国及び北鮮の関係につきましては、国連の一員として、国連決定なり国連方針というものに順応して日本外交政策をきめることも、これまた当然のことである、こう思っております。
  100. 勝間田清一

    ○勝間田委員 技術的な御議論を岸さんからお聞きしようとは実は思っていないのであります。あなたのもっとステーツマンな、もっと政治家的な世界の卓見がほしかったのであります。しかし岸総理の今日までの外交を見ますと、賠償に支払いする態度なり、あるいはいろいろその他の外交政策態度を見ますると、不幸なアジアの二分された状態をいよいよ強め、いよいよ拡大し、みぞを深めていく方向にあなたは進んでいらっしゃる。だからそういう態度を私はおやめ願いたいと実は思う。ベトナムについて、南ベトナムについての賠償をやられるようだけれども、こういうものはおやめになるべきだと実は考えている。私はその点はこれ以上あなたにやはり質問はいたしません。ただこの前に中立外交の問題と直接関連のある問題でありますけれども中立外交政治的な、経済的な、あるいは軍事的な、地理的な条件というものが日本にはないのだという御発言で、本会議場で演説をされたのであります。私はこの文章を見てしばし考えた。果してそういう条件があるのかないのか。あなたはあるときには中国との間には歴史の上においても、地理的な上においても、経済的な上においてもつながりがあるのだ、こういう説明をされる。今度は逆に中立外交平和外交になってくるとそういうつながりはないかのごとくに、あなたはこれを主張されている非常に便利な答弁の仕方を実はおやりになっている。この条件を無理に拒否し、ある条件を無理にやろうとしないでいくならば、おそらくアジアについての平和的な共存外交というものは成立しないでしょう。だが、あるものを助長し、これを発展させていくということならば、私は成功するだろうと思うのです。その中でやはり一番今日大事なものは、まず第一に核武装に対する非武装宣言というものを行うべきだと私は考える。今までは岸さんは原子兵器の実験禁止というものの協定が締結されるまでは、日本で早計にやるべきでないという態度を表明されてきたかに私は見受けるのであります。私はその理由がわからない。日本の憲法の立場で今だれに相談なしに堂々とやれることは、私は核武装をしませんよ、これを国会を通じ、政府声明を通じてここに宣言することが、どうして世界の平和に災いをもたらすでしょう。どうして日米間の関係にひびを入らせるでしょう。私は失うところよりも得るところがきわめて大きいと実は考えておる。やれることだと私は考えておる。あなたの決意次第でやれることだと考えておる。だから、今日私は核非武装宣言というものは、日本の自主的立場において早期に行うべきだと考えておる。これがアジア外交に及ぼす平和的な貢献というものは、私は非常に大きいと考えておる。あなたのもう一度再考をわずらわしたい。
  101. 岸信介

    岸国務大臣 私はしばしば国会において、日本の自衛隊は核武装をしない、また日本核兵器の持ち込みはこれを認めないということを、国会を通じて申しております。従って私のこの核兵器に対する方針というものは、内外においてきわめて明瞭であると思います。これを勝間田君の言われるように、核非武装宣言というふうな何かの形にすることがいいとかどうかという議論でありますけれども、私自身が責任を持って国会を通じて明確にこの点はすでに言っており、国の内外においてもそのことは十分に私が言っておるということについて、はっきりと認識をしておると思っております。
  102. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それならば国会において核非武装の宣言を決議することに対してあなたは協力し、あるいは支持することができますか。
  103. 岸信介

    岸国務大臣 国会が決議するかどうかという問題に関しましては国会の御意思にまかしていいと思います。私自身は今申し上げた通りの趣旨でありますから、そういう内容を持ったことが決議されることについては、全然私は同感でございます。
  104. 勝間田清一

    ○勝間田委員 高碕通産大臣にお尋ねいたしたいと思いますが、アジアの経済協力の基盤を作っていくことが私は非常に必要だと思う。その場合一番大事なことは、中国を加えていくということが私は非常に大切だと考えておる。特に東南アジアの市場における中国の商品の進出というような問題も、深く考えて見ますと、まことにいろいろの深い原因があると考えておるのであります。そのためには中国をも含めたアジアの経済会議というものを私は開催する必要があると思う。現にセイロンのバンダラナイケ首相から日本に対してアジア経済協力会議の提唱があったのではないかと思うのですが、あなたのこのアジア経済会議——中国を含めたアジア経済会議に対するところの態度を一つお尋ねをいたしたい。
  105. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 アジアに対する経済協力というものは、できるだけ多数のものがこれに参加するということは当然必要だと私は存じます。かってバンドンにおけるアジア・アフリカ会議が開かれましたときにおいては、中国もあるいは中共も参加しております。そういう意味におきまして、経済問題に関する範囲におきましては、私は中国とともに相談ずるということは必要だと存じます。
  106. 勝間田清一

    ○勝間田委員 外交については以上で終るわけでありますが、私は岸総理にこの外交の最後にお聞きしたいと思うのです。あるいはかなりいやなことを申し上げることになるかもしれませんが、警職法の提案以来、岸内閣の対外的な信用は失墜したと私は思っておる。同時に党内における現在の状態というものは、外国の条約を批准するなどというような力が岸内閣にないではないかというような不安も世界にはあると私は思う。また共産陣営考えてみると、岸内閣が敵視政策をとっておるということは、単にソ連中国だけでなしに、北鮮も金日成の声明を、共同声明の中でそれを出しておることはあなたも御存じの通りだと思う。これを考えてみると、あなたが今後外交問題で強力に日本の国の利益になるところの外交を推し進めることはできないではないかというのが、今日の私は国民考えておるところではないかと実は思っておる。これは不幸なことであります。今まで吉田内閣はサンフランシスコ、安保条約等を締結をした、鳩山内閣は日ソ外交を推進をした。岸内閣は今日三年にもなるけれども、今後期待し得る外交のことはできないじゃないか。その対外的信用は今日ないじゃないか。私はそういう懸念の方が外交上にはもっと重要だと実は思う。その対外的信用の失墜せる今日の状態下において、あなたは何をなされようとされるのであるか、私は外交のこの基本的な問題についてお尋ねをいたしたい。
  107. 岸信介

    岸国務大臣 外交を推進していく上におきまして、国内における政局が安定しておるということが必要であることは言うをまたないのであります。私は内政外交とは常に表裏一体をなすものであるということを、かつて外務大臣として国会において外交演説において述べたことがあるのでありますが、全くその通りであります。従いまして常にわれわれが考えなければならぬことは国内における政局を安定して、そうして外交に当るということを考えるべきことは当然であります。いろいろの事態が昨年の秋以来発生をいたしまして、あるいは勝間田君の言われるような懸念を持った者も一部にあるかと思いますが、今や私は党内におきましても総裁公選を終って政局も安定し、党が一致結束して国民に公約をしております線に沿って、内治、外交ともにこれを推し進める決意でおります。しこうしてそれでは何をやるかというお話でありますが、これはしばしば私が国会においても申し述べておる通り、われわれは一面において自由主義国との提携を深めて、そうして国連中心外交を推進するとともに、アジアにおけるところの諸国との関係を緊密にしていく。東南アジア諸国、いわゆる未開発地域における国々に対しての経済協力の問題、あらゆる面において協力をすべきことは、これは当然われわれの重大な責務として行うべきとともに、完全な理解と信頼の上に立ったところの日米外交を推進していくことは、これまた当然である。と同時に、共産国に対しましても、私どもはすでにソ連との間において共同宣言以来、貿易協定その他のものを積み重ねていく、文化協定等につきましても協議を進めております。すなわち共同宣言に盛られたところの精神を具体的に実現していくということである。また中国に対しましても、せんだって来いろいろお話があるような、またわれわれが所信を述べているような方向において、共産国といえども、これらの友好親善を進めていくことは当然であると思っております。要はやはりいたずらに政局不安なるがごとき印象をかき立てて、そうして日本外交推進に支障を生ぜしむるようなことがないような態勢をあくまでも固めて、強力に進んで参りたい、かように存じます。
  108. 勝間田清一

    ○勝間田委員 政治の問題はまた一つあとでゆっくりやらしていただきますが、経済の問題について大蔵大臣、通産大臣あるいは農林大臣経済企画庁長官等にお尋ねをいたしたいと思う。  私は総理大臣にまずお聞きいたしておきたいと思うのでございますが、三十二年の三月に岸内閣は石橋内閣の予算審議を中途から引き継いだ。そのときに私ども社会党は神武景気といわれる、こういうような投資の異常な発展期の時代に一千億の施策、一千億の減税といったような非常な刺戟的な政策はとるべきではない、こういう政策は必ず国際収支の破綻を招くであろうから、この際に控え目な予算として出すべきだ。あなたはその絶好の機会だから、この場合再提出しなさいという要請をいたしたのでありますけれども、あなたと当時の池田国務大臣は自説を強行いたしまして、ついにニカ月後、五月には破綻をして、今度は百八十度経済政策を転換せざるを得なかったことは、あなたの記憶に新なところだと考える。昨年はなべ底景気だといわれたのであります。それに対してわれわれ社会党は、不況対策をこの際立てるべきだ、こういうことを申し上げたのでありますけれども政府はわずか災害復旧費九十億円程度の補正予算を組んだだけで、ごらんの通り社会党の提案を拒否いたしました。そうして結局底入れだ、あるいはアク抜き政策をやるのだということで、中小企業及び農民等にしわ寄せをして、一カ年間企業整備を続けて参ったという状態であります。なべ底の経済に対して強硬な企業整備を続けたというのが昨年の結果だと私は実は思う。しかるに本年の予算をとっておるように考える。この形からまたいろいろな議論が出て、あるいは過熱論が出る、あるいは何論が出るという形になっておりますけれども、私は公平に判断をして、この刺戟的な予算に対する対策が要請されるというのが現状ではないかと実は考えておる。いずれにいたしましても、岸内閣のここ三年間の政策というもの、経済情勢政策とが全く食い違っている。神武景気といえばあおりをかけ、不況だといえばさらに底入れをやる、そうして景気回復といえば——これはおそらく参議院選挙をねらっているのだろうと世間はいっておりますけれども、相当の積極政策を出しており、経済条件と経済政策とが一致しないのであります。これから起きてくる国民の犠牲ははかるべからざるものが私はあると思う。私はここに炭序内閣の見えざるこうした政治的責任は非常に重いと考えておる。財政的良心がどこにあるかということを私は考えておる。あなたは過去三カ年間のあなたのとってきた財政経済政策をどう反省をされますか、お尋ねをいたしたい。
  109. 岸信介

    岸国務大臣 言うまでもなく経済の波というものは、長い目で見ましていろいろとあるわけであります。その間において経済政策を適当にとっていくということが、これは財政経済政策根本考え方でございまして、できるだけその波を小さくして、そうして安定した基礎において、日本の労働人口の増加その他から考えまして、これを一定の安定した基礎における成長の形に持っていくということが、基本考え方としてしなければならぬことだと思います。しこうして、そのために年々の予算をどういうふうに編成していくかという考えは、この長期のそういう安定した基礎における日本経済の発展ということを頭に置いて、その線に沿うて財政規模やあるいは予算の編成を考えていかなければならぬ。今勝間田君は、過去の三十二年度及び三十三年度及び今度の三十四年度の予算についての御批判でございますが、なるほど三十二年度の予算におきまして一千億の減税を一方に行うと同時に、一千億の積極財政ということにつきまして、当時いろいろな論議がありましたことも、私はよく承知をいたしております。なるほど経済の行き過ぎ等のために緊急総合対策をとらさるを得なかったことも十分私も認めております。これについて経済のいろいろな事相についての正確な景気指数等の事情についての把握が不十分であったことも、これは率直に認めざるを得ないと思います。こういう経済の諸現象に対する正確なデータをつかんで、そうしてこれに対する対策を考えていくべきであることは、当時も私ども痛切に感じ、自来そういう方面について特に意を用いておるわけであります。ただ昨年、三十三年度の予算の場合におきまして、社会党から特に不況に対処すべきいろいろな積極的な不況対策をやるべきであるという御議論でありましたが、私どもは当時、三十三年度の予算に、三十二年度の後半にとってきておる政策が及ぼすであろうところのいろいろな事態に対する、たとえば中小企業等に対する相当の予算をすでに考慮しておるがゆえに、特にそういう刺激的な不況対策としての補正予算を出す必要はないというのが当時の見解でありました。しかし今日になって考えてみますると、われわれの言ったごとく、この調整期を終った後においての経済、財政の見通しにおきましては、大体私どもの予想した線に来ておるわけであります。今後においても十分この経済政策を立て、予算等の編成に当りましては、その基礎となるべき数字や諸現象に対して、十分な正確な実態を把握することに努めて参って、会申しましたように経済の動揺の幅をできるだけ少くして、安定した基礎の上に成長をはかっていくというふうに考えております。本年度、三十四年度の予算の規模、内容等については、十分御審議をいただきたいと思いますが、私どもは昨年来の経済のたどってきた状況及び国際経済情勢等を判断をいたしまして、このくらいの程度の規模の拡大ということが、日本の置かれておる各種の環境から適当であるという観点に立っておるわけであります。内容的のこまかいことに対する御批判もしくは質疑等には、関係大臣からお答えいたさせます。
  110. 勝間田清一

    ○勝間田委員 世耕経済企画庁長官に一つお尋ねしておきたいと思いますが、非常に波が荒かった、この荒かったことについてあなたはどこに原因を求めておいでになりますか、その点を一つお尋ねをいたしたい。
  111. 世耕弘一

    世耕国務大臣 お答えいたします。この問題につきましては私は就任以来その原因について追及いたしました。おそらく勝間田さん、ここをついてくるだろう、そう思って研究してみましたが、こまかく検討してみますると、必ずしも日本の国内だけの経済情勢の見込み違いではなくして、国際関係が相当悪化して、その波が意外にも底の浅い日本経済界に波及したことが原因であるということを私は突きとめることができた。しかしなおこの点について申し上げたいことは、三十三年度の貿易関係において、かれこれ四億近くの見込み違いがあるということが発見された。この点についても、部内では長官がかれこれ非難するけれども、これはやむを得ない現象なんだ、こういう説明であったから、やむを得ないという言葉で世間は承知しない、やむを得ないという事情があるなればその理由を明らかにしようじゃないか、こういうふうにして突っ込んで検討いたしましたところ、まず中共関係貿易で、友好であるべき中共との取引がそごを来たした、これはお認め願えるだろうと思います。それからもう一つは、海外の市場が物価の値上りと値下りと、その他の経済事情によって輸出が思うようにいかなかったのであったのだが、逆にこれをカバーするために相当努力を払ったのだけれども、結局値下げして貿易額には差がないのだけれども、金高の上において差が出てきた。こういうふうなことをせんじ詰めてみますと、先ほどあなたのおっしゃっていただいた見通しがあまりにも甘過ぎたのじゃないか、ずさんだったとおしかりになるお気持はよくわかりますけれども、その実情がこういうような実情であったということだけを御了解願いたいと思います。これは私は必ずしも弁解するのではございません。先ほど総理船田議員に説明されたように、国会お互い国民会議の広場だ、こういうことであります。私は、会議の広場であると同時に、話し合いの場でなくちゃならぬ。だから、ベテランのあなたのようないわゆる経済通から、この点はおかしいのじゃないか、この点は是正する必要がないかということを率直におっしゃっていただいたのは、私はその真理をとらまえてやるところに国会の意義があるのだ、こういうふうに考えております。同時に私は誤まっておるところは率直に認めます。今岸総理が、貿易関係について少し見通しが誤まった点があったということを率直にお答えしたと思いますが、かくあるべきだと私は思います。そこに政治の進歩がある、かように考えます。また数字の点については時間がかかりますから……。
  112. 勝間田清一

    ○勝間田委員 まことに世耕さんのお人柄を発揮されて、非常に率直でけっこうだと思うのでありますが、ただあなたは貿易の面で大きな食い違いがあったということだけを指摘されたのでありますけれども、そこに話を持っていってしまうということは、何か国内政治について私は責任のがれをしておるという感じを受けるわけです。そうではなくて、やはり一昨年から昨年、今年にかけての一番大きな問題は、資金のコントロールができなかったというところに、私は問題があるのではないだろうかと考えます。すなわち設備投資あるいは在庫投資というものが非常に乱高下をいたしました。これは特徴的なものだと考えておるのであります。あなたもすでにお調べになったと私は考えますけれども、実際に有効需要というものをながめてみますと、個人消費というものは非常に底が幸いにしましてかたいのであります。しかもこれは相当の底を実は持っておるのであります。     〔委員長退席、重政委員長代理着席〕  輸出についても、なるほど金額は違いましたけれども、あなたのおっしゃる通り数量は相当出ておりますが、長い目で見ますとさほど大きな変化は、伸び悩んではおりますけれども見受けられないのであります。財政支出の点を見ておりますと、財政支出の点は年年増大をいたしておるのであります。これもおそらくストレートにふえておると見てよろしいと思っております。問題は、実は民間資本の形式のところに問題がある。その民間資本の形成の問題は、結局設備投資と在庫投資というところにある。これが非常な景気撹乱要素になっておる。これを再びことし繰り返すことになるならば、それはまた大きな変化になるのであります。そうして過剰投資ができてくる、過剰設備ができてくる、悪い現象が現われてくるというところに、実は問題があると私は思う。その観察に持っていくならば、当然経済政策というものは、国民生活なり財政支出なり貿易なりという面も大事だが、同時に私は民間資本形成の面に対する適切な指導というものが一番重点だと、実は考えておるのであります。その点の反省というものがあなたの反省でなければならないし、総理大臣の反省でなければならぬと思うのだが、そこについては一言もお触れにならないというところは事実に相違するのではないだろうか。世耕さん、いかがですか。
  113. 世耕弘一

    世耕国務大臣 なかなかいいところをおっしゃってくれました。日本経済の根の弱いということが大きな原因である。少し景気の波が来れば軽く浮き上る。少し世界の波が来ればすぐ浮き沈みするというように、日本経済は重さがない、根が浅いということ。そこで企画庁といたしまして、大いに、今御指摘のように考えなければならぬことは、いかにして日本経済を強く育成するかということが大きな問題である、ここに思いをいたさなければならぬ、私はかように考えておるのであります。なおこのために今度の経済対策に準じて財政計画のごときも、その他の面に関しましても、その点に十分の留意をされて、世間でいわばこれは超過散布だと非難される程度まで、むしろ日本の産業経済を養うためにその方に多分の資金が流用されているということは、ごらんいただいたら私はおわかりのことだろうと思うのであります。この点は私よりもむしろ大蔵大臣なり通産大臣からその行き方について数字をお聞き順う方が御便利だろう、かように考えるのであります。
  114. 勝間田清一

    ○勝間田委員 世耕さん、まじめに取り組んでいらしゃるようですが、今の答弁では、はなはだ納得しかねるのであります。経済が浅い浅いということはよく世間で言われます。なるほど浅い面が確かにありますけれども、最近のいろいろの詳しい調査した結果から見ると、底が浅いという問題は、むしろ若干修正しなければならぬのじゃないかとさえ考えられる点が実は多いように私は考えておるのであります。先ほど来申しましたように、個人消費の面、財政支出の面、いろいろな面を考えてみまして、資本主義というものが、恐慌が、なべ底がなかなか続いて、下ささえが非常に強いなどというところは、私はかなり見直してよい面があると思うのであります。これを簡単に底が浅いというような判断で、もちろん合理化なりその他の点もあなたの方としては考えるに違いないと私は考えるけれども、そうじゃないという認識も大事だと私は思うのであります。やはり資金の指導性という問題が非常に大切なんです。たとえて申しますと、設備投資で非常に大きな問題が進むということもありますけれども、科学の振興であるものができる、しかし数年後においてはもうその設備はだめになるというような問題もある。それから日本経済の脆弱性はどこにあるだろうかということを考えてみると、むしろ機械器具工業にあるんじゃないかということも考えられてくる。硫安の問題についても、これは製鉄業からくる硫安の方に重点を置くべきか、硫安の専業として従来日本がやっておたような政策をとるべきかということは、私は投資としては非常に重大な問題だと思うのです。その投資に対する指導性がない。これも私は後ほどいろいろ申しますけれども、通貨の自由交換性の問題をいろいろ考えてみ、あるいはドイツのたどってきた道などを考えてみましても、一番重要な問題は、通貨の安定と資本投資の合理性という問題と計画性という問題である。そういう点が長く続けられていくことに日本の長い意味の成長と発展というものがあるのであて、その場限りの党利党略で、あるときにはあおり立て、あるときには何々して、そういうところに日本の今日の、波の高くてしかも効率の少い、犠牲の大きい現象が現われていると私は考えておるのでありますから、どうか一つ世耕さん、また議論をするときもあろうと思いますけれども、ぜひ一つお互いに研究してみたいと思うのであります。  ただそこで、私はなおものを前進させますけれども、佐藤大蔵大臣にお尋ねをしたいと思うのでありますが、今度の財政規模の点なりあるいは内容の点から見まして、相当刺激的だということは私は言えると思う。相当意図的だと言えると思う。積極的だ。一般会計で御案内の通りに、千七十一億円の増額であります、財政投融資の方で千二百三億円ほどの増額であって、二千二百七十四億円の財政規模の増大ということになておるように見受けられるのであります。しかもこの財源というものをみますれば、これは前年度の剰余金、それからたな上げ資金の取りくずし、それからまた投融資の方からいうならば前年度の繰り越し資金、このいずれの財源も本年限りです。その本年限りの財源を全部今度はつぎ込んだ。これはかなり大蔵大臣としては大胆なつぎ込み方だと実は思う。あとを考えれば、インベントリーの取りくずしか、公債政策かというところまでいくはずのものだと思うのだが、一ぺんに本年度限りの剰余金をつぎ込んだということは、私は相当特色のある考え方だと思う。しかもあなたは、ここで来るのが散布超過になるということはお認めになていらしゃる。二千四百億程度の散布超過ということになる。そうすると、かなり大胆な、野心的な、悪く言えば党利党略的な選挙をねらったことかもしれませんけれども、とにかく積極的な形をここに出しておるのであります。この出してきておる問題について懸念が生じてくるのは、実は先ほど来の問題でありますこの刺激的な政策について一番大事な問題が、この資金のバランスを得た指導ということになると私は思うのであります。あなたのこの積極的なものが再び災いを繰り返さないようにいくためには、ただ単に弾力的運営ということによてごまかすことなく、あなたの財政論というものをここではきり出していただきたい。
  115. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 先ほどの総理並びに企画庁長官にお尋ねになりましたことにも関連をいたすので、予算を編成いたします際の構想と申しますか、どういう考え方であたかということを一応御披露いたしたいと思います。勝間田君は先ほど来三十二年度予算あるいは三十三年度予算、また三十四年度予算というものがどうも景気の変動を無視して)財政投融資の観点だけから予算を作ておるのじゃないか。そのためにどうも景気の波動と財政計画などが一致しておらぬ、こういうことを冒頭に言われたように思います。それに対しまして総理から御説明いたしましたように、三十三年度予算は、三十二年度の予算を受けた後の経済情勢の変動を一応念頭に置いて三十三年度予算を組んだのであります。従って、社会党の諸君から、中間において刺激を与えるような補正予算を組めと言われたが、そういうことに耳をかさないで、三十三年度予算を忠実に実行することが経済に対応する、こういう考え方から昨年は社会党の要望に沿わず、補正予算を組まないで経過いたしたのであります。しかし、私どもが想定いたしましたように、三十三年度予算を忠実に実施することによて、いわゆる経済の調整過程を終え、最近はこれが上昇に向ておると言われておるのであります。この事実は勝間田さんも現実経済情勢動きというものについては御承認になるところだろうと私は思います。今回の三十四年度の予算を組みます場合も、当然三十四年度の経済情勢というものを想定をいたし、これは、経済企画庁長官から申し上げましたように、経済企画庁の想定資料を基礎にして、そうして予算を組んだのであります。今回の予算が非常に膨大であり、繰越金、剰余金その他みな使い果しているだろうから、三十五年度以降は非常に困るのじゃないか、ずいぶん思い切った予算の作り方だ、二千四百億の散布超過もここに招来している、従って、金融の面でどういう措置を今度おとりになるのか、こういうことですが、私どもは三十四年度の一般予算あるいは財政投融資計画を立てます際は、三十三年度に引き続いての三十四年度の経済情勢を想定いたし、これにふさわしい予算を組んだつもりであります。私は、昨年の臨時国会でも申し上げましたように、経済に対して、財政なりが特に刺激を与えるような措置は望ましいことではない、もちろん経済のあり方は、これは経済の成長にまかすべきことであり、特にその成長が急激に上昇するような場合にはブレーキをかけることもいいし、また非常に下向きに強いような場合にはささえをすることも必要だと思うが、財政の面から、経済に対して特に力をかすことは望ましいことではなつい、経済の着実な、健全な成長ということを念願する上から見ると、そういうことはすべきでない、こういうことで、昨年の補正予算の要求などについても、実は耳もかさないで参ったのであります。しかし、今回の予算は、御指摘になりますように、一般会計においても、また財政投融資におきましても、三十三年度の当初予算に比べると、相当大幅な増加の予算であります。しかし、財政投融資などは、昨年は年度途中におきまして相当増額補正をいたしておりますから、それに比べれば、ただいま言われるように、一千二百億というようなことにはならないわけでございますけれども、しかし、とにかく金額は相当ふえておる。この意味で、あるいは非常に刺激的だ、あるいは非常な積極性を持っておる、あるいは意図を持っておる予算だ、こういう見方をされる向きもございますが、私どもはただいま申し上げますように、三十四年度の日本経済のあり方、成長の度合いにふさわしい予算、これに相応し、同時にこの経済をささえていく力が十分ある、実はかように考えて作っておるのでございます。  そこで、問題になりますのは、二千四百億予定しておるこの散布超過の問題だと思います。この二千四百億——あるいは実施いたしました結果、それを前後することだろうと思いますが、とにかく相当多額の散布超過にはなっておる、この散布超過を一体どうするのであるか、これをそのままほうっておけば、過去において経験したような不要不急の方向にまたこの資金が使われたり、そうしてまた経済のアンバランスが膨脹を来たしたり、日本経済として非常に心配な状況が起るのじゃないか、こういう点の御指摘だと思います。私どもも、この散布超過といいますか、財政投融資と民間資金との一体的運用という表現はいたしておりますが、このあり方というものが、経済に対して、いい意味にも悪い意味にも非常に影響を持つということを実は心配いたしておるのであります。この意味から、過日の財政演説でも申し上げましたように、この散布超過も、使い方によれば非常に有効適切な効率を上げ得るのじゃないか、しかしながら、それを誤まるならば、御指摘になるような危険な要素すら実は持つのではないか、これを有効適切に使うということを申しますのは今日の金融の正常化の面に必ずこれは役立っていくに違いない、これを金融の正常化の面に役立たすということ、これがまず第一の私ども考え方でございます。御指摘になりましたように、経済の発展につれまして絶えず注意をし、特に意を用いなければならないことは、通貨価値の安定にあることは申すまでもないところであります。従いまして、この散布超過の事後処理とでも申しますか、その処理の方法を通貨価値の安定の方向に役立たすことができるなら、日本経済の成長の面から見ましても、非常に有効適切なものだと思うのであります。ただ、私が申し上げたいのは、私ども考え方では、どこまでも資本主義、自由主義経済原則を立てております。ことに金融の面におきましては民間の創意と工夫、その活動に待つ。     〔重政委員長代理退席、委員長着席〕 そうして政府は、財政的な一体的運用をいたしますが、同時に金融のあり方なりまたは事業のあり方等につきましては、いわゆる法律が認めておる程度の日常の指導監督の範囲を実は出ない。主たる面は、この日本銀行を中心にしての金融の操作を指導する。たとえば公定歩合の操作にいたしましても、あるいは公開市場の操作にいたしましても、これは日本銀行自身のやるところであります。しかしながら、これは日本銀行がやるのだからといって、政府はそれをまかし切るというわけにはいきません。ここで最も必要なことは、私ども日本銀行と絶えず密接な連携をとりまして、そしていわゆる一部で懸念しておるような過熱論、これに対しての警戒も必要でありましょうし、同時に思ったほどの経済の伸びが実現しない、あるいは下降するという場合でありますならば、また金融機関の協力を得て、これに対するささえの役目ということをしていかなければならないと思います。しかし、今回の予算編成から考えます場合におきましては、このささえ的な効果よりも、今まで一部で議論されておるような経済に対する過熱的な悪影響を生じないように、絶えずその注意をしていく。その意味におきましては、この日本銀行が中心になってやりますものについて絶えず連携を緊密にして、すなわち時期を失しないで、適切な措置を講じていくという方法をとりたいと思っておるのでございます。
  116. 勝間田清一

    ○勝間田委員 大蔵大臣の今の御答弁を聞いておりますと、依然として日銀の操作などを中心とした運用を考えていくというようなところに重点があるようでありますけれども、実は一昨年の破綻のときに池田大蔵大臣は同じことを言ったのであります。しかし、結局失敗したのであります。その範囲なりあるいは銀行の窓口を通じての指導なりの限度というものが明白にわかったのであります。その意味では、佐藤大蔵大臣の今の御答弁の限度では、私は賛成できません。しかし、これをもっと私は実は掘り下げて考えてみたいと思います。  そこで、通産大臣にお尋ねをいたしたいのでありますが、民間資本形成における最大の構成要素は、言うまでもなく第一が設備投資でありますけれども、これについて従来開銀あたりは、来年は五・五%くらい下るのではないだろうか、あるいは通産省あたりは、資金需要が一・一%くらいの減になるのではないか、設備資金の需要がそういうふうに下るのではないかと言われておりますが、一体この数字の根拠というものは、どういう根拠になっておりますか。
  117. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 設備投資が行われるということは、大体現在における設備がどの程度に稼働しておるかということによって行われるでありましょう。景気の上昇というものも、一に設備投資、在庫投資によって起るわけであります。過去における日本の各工場における稼動がどういう程度であったかと申しますと、これは一昨年の一番景気がよかったとき、いわゆる神武景気のときには八四%の稼働率があった。その八四%の稼働率ということは、すぐに設備が不足しているということがわかるわけであります。そこで一昨年設備をうんとふやした。その結果昨年は四月から六月にそれが落ちまして、稼働率は六七%になりました。六七%になったということは設備が過度だということがわかっておるわけであります。そこで、そのときに、つまりいわゆるなべ底景気の一番底をついたのであります。そこでどういうふうな動向にあるかと申しますと、私どもの経験によりますれば、稼働率が大体七五%程度にあるという、そのときに初めて民間が投資をどんどん始めるわけであります。ところが、本年の予算を組みますときに、経済企画庁でいろいろな点から検討いたしました結果、三十四年度の稼働率はどうなるか、これは日本全国の二万三千の工場について調べたのでありますが、その結果どうなるかと申しますと、さきに申しました昨年の四月—六月は六七%であったのでありますが、九月になりますと、これが六九%に上ったのであります。そして昨年の十二月は七〇%に逐次上ってきているわけであります。三十四年度は平均してこれは七二%ぐらいに達するだろう。そうなると、七二%の稼働率があれば、設備はそんなに原則的にいうとふやし得ない。そうすると、昨年よりも設備投資というものは減るだろうというのが今日の見通しであります。
  118. 勝間田清一

    ○勝間田委員 今の資金需要の点は、おそらく各工場なりから、あるいは銀行を通じてなりから通産省へ集まってくるのだろうと思うのでありますが、その設備需要の内容を、三十四年度の傾向をどう判断されますか、その点を一つお尋ねしておきます。
  119. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 大体申しまして、今消費の方において行き詰まっております繊維工業あるいは石炭業、あるいは肥料工業というふうなものは、もう相当設備は余っておるわけであります。ところが、設備の足りないもの、逐次生産に伴う販路がふえてきて販売数がふえた、在庫投資も減ってきたという方面につきましては、これはたとえば製鉄事業であるとかあるいは電気事業であるとか、あるいは同じ繊維工業の中でも一部化学繊維の事業であるとか、あるいは非鉄金属であるとかあるいは食料品工業とか、特に輸出がどんどん振興して参ります方面の需要につきましては、消費がふえれば在庫が減る、在庫が減ればそういう小さな設備がふえる、こういう傾向になっておると存じます。
  120. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私は、やはり依然として設備投資の面は、設備拡張あるいは近代化の面、こういう面に非常に多いのじゃないかと思うのですが、その傾向はいかがですか。
  121. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お説の通りでありまして、だんだん輸出を増進せんがためには、生産原価を切り下げなければいかぬ、それには設備の近代化をせなければならぬ、ということのために今合理化し近代化する方向にだんだん進んでおります。
  122. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そこで、通産大臣にお尋ねをしたいのでありますが、設備拡張なり設備の近代化なりというそのものはともかくといたしまして、先ほど来申しましたような石炭とか繊維とか肥料とか、いろいろな現にすでに過剰になっておるものの施設がたくさんありますが、設備過剰の面と設備拡張の面とをいかに資金的にこれを指導していくかというところに調整の問題があろうと思う。この問題をどうして確保していくか。すなわち設備拡張と過剰設備の状態のある、二つの状態の中でどうこの調整をはかっていくかということについて、あなたの見解を一つ聞かしていただきたい。
  123. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいま御指摘の問題につきまして、一番適切な例は肥料工業であります。現在の肥料工業のごときは大体四割を輸出に充てておるわけであります。国内消費が六割なのであります。ところがその原価につきましては、設備が悪いために非常に高くつく工場がある。ところがそういう工場の設備はどうしても原価の安くつく方面に切りかえなければならぬ、こういうわけでありまして、これは詳細にわたりますけれども、今の固形材料を使っております方面はどうしても高くつく、これを流動体に変えるということにすれば安くなる、あるいは製鉄所の持っておるところの排ガスを使うことになれば安くなる、こういうことになりますが、そういう方面がだんだんふえてしまって、既設の工場が立ち行かなくなると困る、こういう結果になりますから、その指導をします上におきましては、これは資金でどうこうということはできません。ただ唯一の方法は、これは常道ではありませんが、現在肥料製造をしますには、合理化するためには、外国の技術を持ってこなければならぬ。そういうわけでありますから、外資法をもちましてこれに制限を加えて、もし製鉄事業の方が新しい設備にかえるということになれば、既設の業者の古い設備と一緒にかみ合してやらす。ただ単独にそれをやるということは、外資法をもって処理したい、こう存じております。
  124. 勝間田清一

    ○勝間田委員 今通産大臣はやはり重要な問題を提起したと私は思う。資金の面でコントロールすることはできない。結局は輸入機械等をコントロールすることによって一つ間接的に押えていくのだ、こういうことをおっしゃったのだと思う。ところが通貨の自由交換という問題ができて参り、あなたの方では最近もう手続なども変ってきている。特にAA制度などについての申込みが殺倒しておるという今日の状態であります。このAA制度などに今度自由通貨の面が進んで参れば、当然思惑輸入とか、あるいは輸入競争とかいう問題が起きてくるのだと思う。そうなると、あなたのせっかくの設備資金のコントロールというところの障壁はとれてしまう。いや、現にAAの問題は現在の問題だから、決して先の問題ではございません。だから、そうした輸入の状態に持っていくならば、あなは最後のコントロールするせきもなくなってしまうわけですね。そういう点を考えてみると、私はどうしてもこの際に資金のコントロールというか、あるいはこれを適正に指導していける有効な手段というか、それはともかくといたしまして、実はその面が今日一番欠けていると私は考えている。これについて一つ大蔵大臣のお考えを聞かしていただきたい。
  125. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 先ほど通産大臣から御説明いたしましたが、また勝間田さんもすでに御了承のことだと思いますが、設備投資等の所要資金につきましては、民間の所要資金量というものを実はそれぞれの協会なり銀行を通じまして、大蔵省自身もつかんでおるのでございます。たとえば、財政投融資におきまして、今回も八百八十八億の民間資金の援助を受けることになっておりまするが、こういうことはやはり民間資金がどういう方向に使われるということが十分わからないと、財政投融資計画も立たない。私ども特に威力は用いませんが、金融業者といたしましても過去の苦い経験もありますし、またその一つだけの銀行でなく、お互いに競争している銀行ではございますが、産業の設備投資については相互に十分計画を照らし合して、各業界の所要資金の量を大体想定するわけでございます。この内容等については、通産省がもちろん中心になって聞いておりますし、そういう場合に業界の指導をいたすわけであります。  同時にまた、次は今高碕大臣からお話しになりましたように、為替の面におきまして、やはり設備の近代化をいたしますと、在来ならば必ず為替審議会にかかるわけでありますが、そういう場合にも内面的な指導をするということに実は相なっておるわけであります。そこで、ただいま御指摘になりました通貨の交換性の問題がある。この通貨の交換性の問題から、貿易状況もすっかり変ってくるのじゃないか、こういうことでございますが、確かに今後は貿易状況も変るに違いないと思います。しかし、ただいままでのところ、欧州の諸国にいたしましても、交換性を回復したとは申せ、在来の貿易形態を直ちに変えるとは実は申しておらないのであります。この点はすでに御承知のことだと思います。しかし、今日変えないからと申しましても、通貨の交換性はだんだん範囲が拡大されるでございましょうし、当然貿易の面におきましても、貿易の自由化の方向に進んでいくに違いない。従いまして、政府といたしましては、今日からそれに対してもいろいろ準備を進めておるわけでございます。しかし、一部で言われておりますようなトルであるとか、あるいは円為替が自由になるとか、こういうことはただいま私ども考えておりません。おりませんが、方向としては、相当の時間はかかるだろうが、必ず自由化の方向へ行くだろう、そういたしますと、その御指摘になりましたAA制を採用するとか、その他のこともいろいろ考えていかなければならぬ、かように考えております。
  126. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そこで、この資金需要とか、あるいは資金の需要に対する適正なコントロールとか、指導とかいう問題が出てくるわけでありますが、やはりその一つの手段であると私が考えておるのは、民間資金の活用という点であります。散布超過がここに行われて民間資金を活用していこう、それを財政投融資計画の中にはめて、一つそれを運営していこうというのでありますから、一つの遊休資金というものをここで計画的にしていこうとする一つの手段とも考えることができるわけであります。そこで、その民間資金の活用の問題について私は一つお尋ねをしたいと思うのでありますが、八百八十八億の民間資金の活用をしたいということなんです。これはもちろん公募債借り入れ等によって行うことは表明せられたようでありますけれども、私は、もっと拡大できるのじゃないか、拡大していいのじゃないかと実は思っておるのであります。私は散布超過だけが一つの標準とは考えませんけれども、三十一年のときのはむしろ揚超で、御案内の通り大体一千六百三十三億円程度の揚超があったわけであります。このときの民間資本の活用計画というものは八百九十九億程度であったが、実際に行われたのが七百十七億程度の活用であったと思うのであります。三十二年のは同様に揚超でありまして、二千五百九十七億円のものでありましたが、民間資本の活用の面は八百四十五億円、実行されたのが五百五十九億円というようなところがあたと思う。ことしは二千四百億円程度の支払い超過なのでありまするから、私は八百八十八億円程度の民間資本の活用では低いと思う。もと拡張すべきだと実は考えておる。一体大蔵大臣は今後どういう基準でこの額をきめていかれようとするつもりであるか、一つお尋ねをいたしたいと思います。
  127. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 散布超過といいましても、やはり預金を奨励しなければなりませんし、銀行蓄積というものがふえてこないと、銀行としてはすぐ起債その他で協力するわけにもいかないことは、これはもうおわかりがいくだろうと思います。今回の八百八十八億は、昨年の四百二十三億でしたか、それに比べますと、倍以上のものであります。民間の金融機関、普通銀行なり、あるいは保険会社なり、あるいは証券会社なり、信託会社なり、各方面といろいろ協議をいたしまして、ようやく八百八十億の協力といいますか、非常に理解のある一致を見たということでございます。問題は、この散布超過の状況、さらにまた生産が増強される、こういう際にできるだけ貯蓄を奨励していく、この方策はどこまでもとりたいと思います。これが日本銀行の貸し出しに対してこれを返していくとか、あるいはまた金融機関自身がこういう状態において経営の合理化をはかていくとか、あるいは資本の構成も正していく、同時にまた銀行自身が過当競争をしないで、いわゆる事業の育成に協力していくとか、いろいろ姿勢を正していく問題が多いのであります。問題は、政府の一般会計なり、あるいは財政投融資が大きくなると、この点が民間事業に対しましても連鎖反応を来たすことは当然でありますし、一部において民間の需要もこの意味で高まる、この需要が高まることを自然にまかさないで、ただいま申すような内面的な方向でこういう機会にこそ金融機関の姿勢を正していく、そうして経営の合理化なり、あるいは過当競争を避け、あるいは金利そのものも国際金利水準にさや寄せしていくような指導をする、こういうことでございますので、これは民間の金融機関の積極的な協力と、やはり企業の面におきましても自粛が相当必要だと思います。また大きい観点に立ちますと、今回の財政投融資が非常に膨大だと言われますが、これなどは、いわゆる産業基盤の面でやや立ちおくれを来たしておる——日本経済状況から見ましても、いわゆる公共事業、道路、港湾その他産業基盤の事業と考えられるものが立ちおくれをしておる、こういうものの方向へ特に注ぎ込むということをいたしたのでございますが、これなども、いわゆる経済の各部門の間のバランスを取って、そうして健全な経済のあり方、その方向へとにかく指導していく、こういう考え方でおるということを御了承いただきたいと思います。
  128. 勝間田清一

    ○勝間田委員 この散布超過の状態において八百八十八億円の民間資本の活用は低過ぎる、私どもはもと拡大すべきだという考え方を持ておりますけれども、この問題については議論が分れるようでありますから、この程度にいたしておきます。  そこで、散布超過を機会として、金融の正常化をはかりたいという考えについては先ほど来御答弁がございましたが、さて金融の正常化の内容というものは一体どうなのか、ここが私は必要だと実は考えるので、この際金融の正常化をどういうふうにしていくのか、大蔵大臣に一つお尋ねをしたい。
  129. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 いわゆる民間に対する貸し出しの必要を十分考えて参りたい。日本銀行依存の金融機関のこの姿はこういう機会にこそ是正すべきではないかと思います。その意味で、一部ではもうすでに準備預金制度の活用というような話も出ておることは、新聞その他で宣伝をいたしております。まだこれなどは積極的に私どもそこまで踏み切ておるわけではありません。しかし、金融が日本銀行依存の度合いを是正していくという場合に、今のようなことが同時にあわせて考えられるでありましょうし、また金利自身も、日本の金利は大体高いということを言われるのですが、こういう際に経営の合理化をはかって、そうして世界金利水準にさや寄せしていく、あるいはまた銀行の貸し出し状況そのものにいたしましても、過当競争またその他いろいろ批判を受ける事柄もあると思います。そういうような事柄について十分指導し、また監督していく、また同時に、日本銀行自身はみずからの貸出残高によりまして金融の実情を十分把握して、それに対処していく、こういう考え方であります。
  130. 勝間田清一

    ○勝間田委員 結局日銀の借り入れに依存していかないようにという方面と同時に、日銀に相当還流していくのじゃないかと実は思う。それからある者は千六百億か、千五百億くらいになるのでないかという発表をしている人もございますが、相当私はそういうものがあるだろうと実は思う。それからもう一つ、やはりあなたが行われようとされておるのが、私は金利政策の上に見受けられるけれども、今日資金の面を考えてみて、いわゆる郵便貯金のような面はむしろ伸び悩んでいる。これは財政投融資計画の原資に実はなている。ところが逆に、定期性の預金というようなものは相当ふえてきた。これに対して今度は租税上の特別措置についての特権は廃止をされたようですけれども、かなり定期性の預金にものをいていることがいえる。それから御承知通り、信託投資におそらく二千億も流れておるという今日の状態である。この信託投資の金も、本来ならば、私は社債を買い入れるという方向にこれを指導していくというのが当り前ではないだろうかと思う。すなわち同じ預金がふえたと申しましても、ふえた預金がどう使われるのか、どこに集またがよろしいかということは、私は資金需要の関係から見てきわめて重要なことだと考えておる。そこで郵便貯金の利子の引き上げをやるのか、あるいは銀行の定期性の預金の方はむしろこの際に下げるのか、あるいは今申しましたような信託投資に流れる金というものについては、どうして合理性にこれを導いていくのか、私はこれはやはり必要だと思う。この金利政策をも含めた今の預金資金というものを一体どう見るか、どう指導するか、この点についてのあなたの見解をお尋ねをいたしたい。
  131. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 金利の問題は、ただいま申し上げますように、いわゆる方針として、国際金利水準にさや寄せするように指導しているということだけを申し上げているのでございまして、ただいま具体的にどうこうというわけではございません。よく巷間では、公定歩合を下げるのかということを言われますが、これなどは日本銀行にまかしておいていい事柄のように思います。これも日本銀行がやることには違いございません。これなどは経済に対して大きな影響を持つことでございまして、いわゆる十分連携を緊密にいたしたいと思います。  そこで郵便貯金は割に伸びが悪くて、定期の長期ものが非常にふえておるという実情でございますが、郵便貯金、の伸びにつきましてはいろいろの原因があるだろうと思います。三十三年度の見込みは千百五十億、これはまことに大きかたのではないかと思います。今回の三十四年度は、郵便貯金一千億を目標にいたしておりますので、まずこの程度は郵政省の努力によて達成が可能ではないかと思います。そこで銀行やあるいは信託預金等で集まりました金を一体どういうふうに使うのであるか。この点では、一画企業自体に要望しておりますことは、企業の資金をやはり増資なりあるいは社債なりによるべきじゃないか、銀行からの融資に非常にたよるこの姿は、経済自身がやはり強さという点において欠くることにもなるということで、一般企業の資金獲得方法等についてもいろいろ指導いたしております。この点ではすでに財政演説にも指摘いたしましたように、今後はできるだけ増資なりあるいは社債という方向でまかなうようにしてもらいたい。そういう意味で税制の面からも増資などが比較的進めやすいように工夫したい、こういう考え方をいたしております。
  132. 勝間田清一

    ○勝間田委員 増資の面で自己資金になるべく従うようにという御趣旨のようでありますが、今度の税制改革の目標が実はそこにあるように私は見受けられるのでありますけれども、これについてのあなたの具体的な考え方、それから私の先ほど注文しました郵便貯金の金利は一体どうするのか、あるいは銀行預金金利に対してこれをどうするのかという点についての御答弁ができますか、できれば一つお尋ねいたしたい。
  133. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 郵便貯金それから銀行の預金、この金利をどうするかということでございますが、ただいまこれを変更するような考え方をいたしておりません。郵便貯金については、また銀行の方につきましては、まず貸出金利の方について、たとえば公定歩合との関連が密接にございますが、この点は先ほど申し上げた通りでございますので、ただいま具体的に申し上げません。貸出金利については今のままだと私は一応考えております。それから税制改革は御指摘の通り、やはり今回応急にとりましたものも、資本増加といいますか、増資に役立たさせるような意味でこれを計画いたしたのであります。しかし、これだけで目的が達するとは実は考えておりません。ことに企業課税のあり方というものが相当広範に、また十分調査を要するように思いますので、これらの点につきましては、今回は権威のある税制調査会を設けまして、この税制調査会で企業課税のあり方であるとか、あるいは国、地方の税源の問題であるとか、それをじっくりと検討して参りたい、かように考えております。
  134. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そこで私は岸総理大臣にお尋ねをいたすのでありますが、財政投融資は五千百数十億にも実はなっておる。これは私は予算ならざる予算だと実は考えておるわけです。この資金の運営は、現在大蔵省の理財局の資金課でありますか、一課がこれを担当いたしておる。銀行局の方は、どちらかといえば銀行業務の監査をやっておるという状態であります。この金融なり資金なりの指導あるいはコントロールあるいは計画性、こういう問題については、行政機構の改革をして、私は相当強力化する必要があるのではないだろうかと思う。それから大蔵当局であったと実は思うのでありますが、過般の委員会において、資金統制なり、資金の計画化を行うような特別な施設を作る必要がないと思うというような答弁を実はされたかに聞いておる。しかし、これは世耕さんの方でありますが、世耕さんの方では、やはりこの機構を作るべきだ。資金計画委員会というようなものをとにかく作っていくべきだ。そうして資金の長期的に見た着実な計画と総合性の上に立った指導というものがなければ、日本の国の安定と成長は期し得られないのだ、ここに全く放置されておるように見受けられるのです。この金融資金、これに対する指導性、それを確立する機構、こういう問題が今日私は最も重要だと実は考えておるのであります。よく世間では、日本にはビルトイン・スタビライザーがある。労働組合があって個人消費はささえられておるとか、失業保険があってどうにかなっておるとか、あるいは農産物の支持価格制度があって経済がささえられておるとか、いろいろのことを聞きますけれども、一番のウイークの点は、資金に関するところの問題であり、金融に関する問題であります。これが独占資本の一方的な壟断に実はまかされておる。あるいは系列金融に撹乱されておる。こういうところに一番重要な点があるのだから、ここで行政上あるいはその他の公的な機関を作るべきが当然だと私は思う。できればそれに対する法律を提出して、この確立をはかるべきだと思う。この考え方があるかないか、あなたに一つ最後にお尋ねして、この経済の画は一応終りたいと思う。
  135. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど来いろいろ金利の問題やあるいは資金の問題、特に民間資金の問題、これに対して適当な計画性を与え、もしくはそれが経済の安定的成長に役立つようにコントロールする必要があるのじゃないかというふうなことを中心にいろいろ御意見がありましたことを拝聴しておったのでありますが、根本的にいいまして、私どものとっておる自由経済主義から申しますと、こういうものを強い力で計画化し、その計画に基いて強いコントロールをやるという考え方は、実は私ども根本的にはとっておらないのであります。しかしそれかといって、全然自由にまかしておき、そのことが何らの計画性を持たないということでも、これはいかぬことは言うを待たないのであります。そこに従来ありますところの、この金融業岩間における自主的な規制の問題や、あるいはまた経済企画庁において立てました経済の長期計画の線に沿うてのあらゆる行政が運営されていく。従って自然にそれに従っての方向に金融がコントロールされていく。また今おあげになりました財政投融資が、この国の方針に基いての金融の方向を支持していく。これに民間の一般のものは右へならえというような形に持っていくというようなことにおいて、いろいろと一般の民間の金融の指導なり、あるいは方向づけというものをやってきておるわけであります。そこで今勝間田君のおあげになるようなそういう少し強い意味のコントロールをする機構なり、あるいは組織というようなもの、もしくはそれに対する法律的な基礎を与えるような立法をするということについては、現在私どもとしては考えておりません。従来ありますところの資金委員会その他のものを活用することによって、さっき言ったような方針による民間資金の指導ということを一そう有効にやっていくという考え方が、私ども根本考え方でありまして、特に今御指摘になりましたようなことを私どもは今日は考えておりません。
  136. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 今の総理のお答えでいいかと思いますが、実は今回大蔵省は資金審議会というものを法律に基く委員会にする。ただし、これは二年間の期限付で御審議を願うことにいたしております。この資金審議会は、在来から民間の協力機関といいますか、自主的な審議機関でございます。これがいわゆる行政組織法ですか、あの法律に基ぐ委員会としてきっちりしておこうということで御審議をいただいておりますが、これはお尋ねになりましたようないわゆる資金委員会とか、あるいは投資委員会とか、そういうような統制的な機能を持つものではない。この点一つ誤解のないように願いたいと思います。いずれこれは御審議をいただくのですが、在米からありますものを法律に基く委員会にするということで、どこまでも統制はしないつもりでおります。
  137. 勝間田清一

    ○勝間田委員 この見解については、依然として何かイデオロギーのようなものに拘泥されているように私は見受けられてならない。日本のように経済が弱くて、しかもこうした政治的な安定のないところで、どうして継続的な安定と成長が得られるかという問題については、私は非常に考える点が実はあると思う。ドイツとよく比較されるのでありますけれども、エアハルトの何年間の努力というものは、一つの一定不変の努力が長く積み重ねられてきた結果であると私は思う。保守党もその程度の良心があっていいと私は思う。その点については見解を相違いたしますが、一つ私の意見として述べておきたいと思うのであります。  最後に、時間もなんでありますが、私は岸総理政治的な面で実は一つお尋ねをいたしたいと思う。岸総理の警職法の提案の際にとった態度は、あなたは非常に遺憾だと言われたと私は思う。しかしだれが考えてみても、あの警職法を持ち回り閣議で、しかも施政方針演説にも何らなかったことを突如として出してくる、そうしてそれを強行せられた。その結果国会を混乱させる大きな原因を作られる。私は、この手段というものは非常な非民主的な手段だと実は考えておるのであります。同時にこれに対して、実は国会では議長あるいは副議長を解任させるというような態度をとりました。あなたは、総裁の総選挙が行われたのだからこれに対する責任はないのだ、こういう見解でいらっしゃるように見受けられるのだけれども、あなたも、警職法を当時出された青木さんも、この政治的な責任をとることが前提だと私は思う。この政治的な責任についてあなたはとろうとされないのですか。青木国務大臣の責任は一体どうなるのですか。これをまずあなたにお尋ねしておきたいと思うのであります。
  138. 青木正

    ○青木国務大臣 警職法の提案の問題につきましては、実は御承知通り、警職法の改正の内容につきましては国家公安委員会におきまして長い間研究されてきて、最近の社会情勢等にかんがみて、集団的な暴力等によって一般の社会の福祉が害されるような事態がないように、また青少年の犯罪等の現状から見て、保護に関する警察官の職務の問題を考えることは適当だということで、これは十分に研究されてきたところであります。しかしてこれを非常に突如出したとか、あるいはそれに対する国会の、審議に伴ってのいろいろな事態につきましては、私はこういう問題に関する取扱いとして適当でなかった点は率直にこれを認めます。しかしながら、こういう法律がそういうようなちゃんとした研究なり、調査なり、相当に時日をかけて行われた。その公安委員会には、もちろん役人や党人が入っておるわけではございませんで、十分各方面の民間の意見を徴して作られておるところのこの公安委員会において灸画され、こういう案が出た。しかも社会的の状態から見て、こういうものを提案することが必要であるという政府の見解に基いてこれを出したのであります。しかしながら、その後における審議状況を見ますと、この提案が事前における一般の了解といいますか、あるいは宣伝啓蒙と申しますか、十分な準備がなかったというような点からいろいろな事態を生じましたことは、非常に遺憾と考えておるわけであります。しかしながら、これのために政治的責任をとって、あるいは内閣が辞任するとかどうとかいう性質のものではないと私は考えて今日まできておるわけであります。
  139. 勝間田清一

    ○勝間田委員 青木国務大臣は一体どういう責任をとられますか、お尋ねをしたい。
  140. 青木正

    ○青木国務大臣 警察官職務執行法が、ああいう形において国会が変則状態となり、その結果として審議未了になりましたことは、まことに遺憾に存ずる次第であります。もちろん私は、単に警職法の問題に限らず、政治家として責任を厳格に考えなければならぬという信念であります。しかし、責任を感ずるということは、そのことが直ちにやめなければならぬ、こういうものとは考えないのであります。と申しますのは、警察官職務執行法の改正につきましては、現在もなお私は、基本的にはああいう改正をどうしてもやるべきものである、こう考えております。しかしながら前国会の経過等にかんがみまして、基本的にはあの骨子を私どもなお改正する必要があると考えておりますが、誤解を受けた点等につきましては十分検討を加えまして、そうして世論にも聞いて、適当な機会にこれが実現をはからなければならないのではないか。さような意味におきまして、私どもの責任として、世間の誤解を受けた点等につきましては反省もし、直すべき点は直しまして、そうして改正案のねらいとする点につきましては、これを実現することによって自分の責任を果さなければいかぬのではないか、かように考えておる次第であります。
  141. 勝間田清一

    ○勝間田委員 何か警職法の成立する責任を果すまでやらなければならぬというような考え方をあなたは持っておるようですけれども国会意思や、世間の意思ははっきりきまっておると私は思う。あれだけ国会の反撃を受け、国民の世論の批判を受けたのでありますから、率直にこれは自分の不明を恥じて、責任をとるのが当りまえだと思う。何かまだ、あなたの責任回避のために、研究をするのだ、今後も検討をやるのだとということで、あなたは何か自分の責任を回避するような態度があることは、私は遺憾だと思います。これは率直にやはり自分の責任をとる、あの案は暴案だったということの態度を明らかにするのが当然だと思っておるのであります。  それからもう一つ私が遺憾にたえないと思っておるのは、勤務評定に対する政府態度の問題であります。炭さんは、都合のいいときになると、必ず民主主義には忍耐と努力が要る、時間がかかる、こう言われる。こういう時間がかかる、忍耐が要るというならば、なぜ、ああ一律に組合の諸君が非常に反撃しておるのを、これに対してお互いに十分な話し合いをしていく道を開いていこうとしないのか。何でも千編一律に文部省がこれを強行しようとせられる。その結果が社会に不安を起すということは、今日結果から見て明らかだと思う。警職法の場合と同様だと私は思う。ここ一両年の間、日本国会の内部及び外部の状態を見ますると、政府の方がみずからの権力に従って政治を強行しようとしたところに、すべての混乱の原因が起きている。これを私は大局に見ざるを得ない。その考え方をもってしまするならば、一両年の院内外の混乱の責任は岸内閣の重大な責任だと考えておる。平地に波乱を起し、国会内外にわたって混乱を起しておる。これは岸さん、あなたの政治の行き方の間違い、権力的な基本的な原因からきておると私は考えるのであります。私はこれに対する政治責任を感じていた、だきたいと思う。いかがでありますか。
  142. 岸信介

    岸国務大臣 私は、この点に関しては勝間田君と意見を異にするものでありますが、長い占領政策のあとにおいて、この日本状態を見ますと、真に自主的な立場から、日本のあるべき正しい民主政治のあり方というものに対する私どもの十分な反省と、それから将来の進んでいくべき道というものが十分に築き上げられておらないと私は思う。終戦後においての民主化のいろんな方向において、国民がだんだんにこの民主主義のなにを身につけておることについては、非常に頼もしいと思います。同時に、最近の事象から見まするというと、集団的な組織の力をもってするならば、現在あるところの法律や秩序に対しても、これらの組織の人人がそれを好まないという場合においては、いわゆる悪法は法にあらずというような考えでもってこれがじゅうりんされておる。また戦後の混乱時代からずっと、民主政治の十分に成熟しない間に行われたところのいろいろの間違った慣習なりあるいは慣行というようなものが、それが正しい政治上の、もしくは法律上の道であというような考え方が各方面にあることは、これは正しい民主政治の育成の上からいって、そういう風習は改めなければならないというのが私の考えであります。こういう意味において、そうすることが正しい民主政治を作り上げるゆえんでもあるし、国民の多数、そういう組織に入っておらない人々あるいは声なき多数の国民立場考えてみるというと、そういう組織を持っている人々だけの都合なりあるいは意見というものを、自分たちの組織の力だけで実現しようとする考え方は、決して正しい民主主義のあり方でない、こう考えておるわけであります。従いまして今の、警職法に現われているところの内容等につきましては、実際上これは必要がある。しかしながら、それを実現する上において、取扱いの上においてのことについては、なお私は注意すべきことがあるがゆえに、慎重に検討するということを施政方針で申したわけであります。勤評問題につきましても、この勤評をやらなければならぬということについては、これは私は何人も異存のないことであると思う。ただ、これをやることについて教員組合の諸君がこれに反対する。そうではなくして建設的に、その内容等についての意見なりあるいはそのやり方等についての話し合いは、これは十分すべきものであり、またすることに対して政府はちっともやぶさかでありません。ただ、しかしながら頭から勤評は絶対反対だ、これは絶対やらないという立場を堅持しての話では、これは話し合いをする余地のない問題だ。そういう意味におきまして、この取扱いについても、私は従来ずいぶん遺憾な点があたと思う。しかしすでに教員の諸君の多数の良識と、国民多数の人々の協力によて、漸次これは施行されております。平穏に施行されております。また施行されておる府県というものがほとんど大部分になってきておるという現状から申しますと、もちろん初めての試みでありますから、将来勤評の内容ややり方等について、いろいろ検討も加えなければならぬというようなことが起てくることに対しては、私どもは十分に謙虚な気持でこれらを検討するにやぶさかでございませんけれども、しかし、あくまでも絶対反対だという態度でやるということについては、われわれとしてはどうしても了解がいかない点であります。そういう前提、お互いに法秩序を守るということを前提として考えて、もしその法が悪いならば、民主主義の場であり、民主主義的に立法されておる国会において修正するとか、あるいは新しい立法をするとかという態度をもて臨まないというと、これが悪法であり、われわれが考えてみてこれはけしからぬというならば、それを守らなくてもいいということを、国民の各自がいろいろなグループを作てやったならば、私は社会の秩序、また真の民主政治は絶対にでき上らない、かように考えるのであります。
  143. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私は、今の議論には賛成をいたしかねるのであります。ただ、今日まで岸さんの歩んでこられた道を考えてみると、われわれの念頭に浮ぶものがたくさんあるのであります。あなたの幹事長時代において、小選挙区案を出されて参って、このために国会は未曽有の混乱に陥たのであります。社会党が小選挙区案を出したのではないのであります。政府から、与党から出したのであります。そしてその結果は、国会が混乱に陥ったのであります。あなたはまたアメリカから帰ってハワイに来たときに、おれは総評と社会党と対決するということを、あそこで公言せられたように聞いておるのであります。あなたはまた昨年選挙が終って大勝したその絶頂のときに、国会は与党だけで運営するのだ、常任委員長や何は一つ与党でやるんだと豪語されたのであります。石橋内閣から引き継いだときに、議会において共通の広場を作っていこうじゃないか、話し合いの政治をやっていこうではないか、また、私のこの本会議質問のときに、野党と与党の総理大臣外交情報を交換したらどうだ、賛成だ、こう言って当時あなたは国会正常化に一歩進むかに見えた。だが、それは実行されずして、国会はおれが一人でやるというようないでたちで今度は出て参られた。そして勤評だ、警職法だ、これに対する態度を見ておりますと、都合の悪いときにはきわめて低姿勢、また自分のきわめて絶頂のときには高踏的に出てくるように見受けられてならない。これは一国の総理に対してわれわれ野党が実は異口同音に考えているところであります。こういうのを反省することなくしてあなたが民主政治を確立しようなどということは言えないと私は思う。だから、今日自民党の内部でさえ、金権政治だ、権力政治だと言われて批判を受けるほどここに世論化してくるということは、日本の民主政治の将来にとてまことに惜しむべきことであります。その意味において、今日あなたがこうした権力や金力を排除して、ほんとうに民主主義のために戦っていく、政治を築いていくという事実を自分みずからが示すことなくしては他を批判する資格は断じてないと私は思う。にもかかわらず、みずからの反省はこれを形容詞として、社会党はどうしろの、いや、院外の労働組合はどうしろのと、責任を他に転嫁するような態度の中には、真の、はらわたの中から出るところの反省はないと思う。一国の政治の責任者は、みずからが率先していくという態度が大事であります。みずからの責任を他に転嫁して、みずからの責任を軽んじようという意思があたならば、政治を動かすことはできません。その気魄というものが今日あなたにないと思う。また、その誠実さがないと思う。ここが、私はあなたに強く反省を求めたいところであります。私は先ほど外国からの岸内閣に対する信用の失墜の問題も申し上げました。今日、国民の内部における岸内閣に対する態度は、いつやめるか時期の問題だ、その興味が世間を包んでおるのであります。でありまするから、こういう事態を考えてみると、今日あなたは責任をとって、民主主義の政治を作り上げるために総辞職をすべきだ、その総辞職は、あなたの今日とるべき唯一の道だと実は考えておる。あなたのこれに対する考え方をここに明らかにいたしていただきたい。
  144. 岸信介

    岸国務大臣 民主政治を、政治家としてほんとうの腹の底からこれを築き上げるところの熱意と信念を持たなければならぬ。特に一国の首相ともなればそうであるという御議論は、私も全然そう思います。しかしながら、それが現在の状況において内閣が直ちに総辞職すべきものであるかどうかということについては、私は全然勝間田君と意見を異にするものであります。私が先ほどから申していることはただ、責任を相手方に転ずることによて自分の責任を軽くしょうとか、のがれようという考え方に出ているわけではございません。私が、民主政治を守るために、法秩序を前提としてのあらゆる行動というものを、その範囲内に置きまして——もしも法秩序において適当でないものがあるならば、新たな立法を民主的にすべきである。そうでなくして、勝手にやることは民主政治でない、また、真に国会政治を守り、議会政治を守るという見地において、今朝来申しておるように、国会審議の場所として、ここにおいてわれわれが十分政策について意見の相違というようなものを国民の前に明瞭にして、そうして国民の審判を求めるというのが国会の本義である。いろいろ私の過去二年余にわたるところの施政の間において、私がことごとくりっぱにやってきたとは絶対に考えておりませんし、この間において反省すべきは反省している。しかしながら、現在の状況からいて、むしろわれわれが信じておるところの、われわれが考えておるところの民主政治の樹立並びに国会政治の擁護についてのわれわれの信念を、全力をあげてこれを積極的に果していくことこそ、私は責任を明らかにするゆえんである、かように考えております。
  145. 勝間田清一

    ○勝間田委員 岸さんは、また二大政党論を国会演説されたのであります。私も二大政党、これを是認するものであります。また、そうあるべきものだと思うのであります。しかし、二大政党の場合、今日考えてみたときに一番大切なことは、平凡なことではあるが、与党が失敗をしたら政権は野党に譲るべきであります。与党の中でいわゆる主流派と反主流派の形を作り上げておいて、主流派を倒しておいて反主流派が政権をとるとか、だれ派が今度はだれ派を倒してだれが政権をとるとか、いわゆる一党の内部において多数を背景にして政権をたらい回ししていくということが政治慣行なり歴史に現われてきたところに、今日政党を堕落させるところの根本のものがある。与党が失敗をしたならば野党に譲るべきだ、その原則というものが承認されずして今日二大政党を主張することは私はできないと思う。少数多数は、これは国民が批判すべきところであります。国民の批判を受けるところに、次の安定政権というものを樹立することができるのであります。私は、この道を確立するということが、今日多くの問題を解決する根本であると実は確信をいたしておるのであります。あなたの二大政党と政権授受に関する考え方を明白にしていただきたい。
  146. 岸信介

    岸国務大臣 私が二大政党を考えておることはいろいろな点がありますが、政権の授受の点につきましては、私は勝間田君と同じように考えております。すなわち、政権を担当しておる与党が、いわゆるその内閣が政治責任をとってやめなければいかぬという場合において、政権が野党の手に移るということが、二大政党の一つの根本考え方基礎であろうと思います。その点においては、私は全然同感であります。ただ、これは、昨年秋以来の警職法その他の国会の混乱や、あるいは自民党内部において総裁選挙をめぐっての意見対立等あったことは事実であります。こういう際に私は、やはり国民の多数の人々が、その場合において、岸内閣というものが政治的責任をとって総辞職しなければいけない、そうして、その場合において、野党たる社会党が政権を担当すべしという世論の声がほうはいとして起るような状態においてああいうことが起るならば、これは民主政治の本態として当然世論の声に従わなければならないと思います。しかし、現在の状況から言うと、これは何も社会党を非難する意味であるとか、社会党に対して何を言うわけではありませんけれども、実際まだ二大政党として両党とも十分な成長ぶりを示しておらないというところに、まだそういう慣行が樹立されない実質的の背景があると思う。そこで、お互いが反省しながら、りっぱな二大政党として今言ったような、一党が政権を担当しておって、政権を投げ出さなければならぬような事態があったならば、これはストレートに反対党たる野党にやって、ここに円満な、民主的な政権の授受が行われるように二大政党制が確立されることを切に心から願っておるわけであります。
  147. 勝間田清一

    ○勝間田委員 お互いに二大政党の実をおさめていないということを言われましたが、それをほんとうに自粛の面であなたがそう言われるならば、これを了承いたします。しかし、二大政党を作るか作らないかは、国民がこれをきめることであって、あなたから、あれは二大政党の一つの資格はないとか、あるいは何らの政党に成長していないとか、こういうことを言われることは、私は言語道断だと実は思う。それは同時に私たちも保守党を尊敬いたします。そうして同時にわれわれ自体も世間から尊敬を受ける社会党になることをやります。それはお互い努力と研さんの結果であって、他から非難さるべきものではないでしょう。だからあなたも努力されなさい。われわれも努力をいたします。これで私の質問を終ります。
  148. 楢橋渡

    楢橋委員長 明日は午前十時より開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後四時四十二分散会