○山本幸一君 私は、ただいま上程の
岸内閣不信任案に対しまして、
日本社会党を代表して賛成の
討論を行うものであります。(
拍手)
第三次
岸内閣は、組閣以来一年を迎えようといたしておりまするけれども、いまだに、残念ながら、見るべきものは何
一つございません。しかし、その
反対に、
不信任の数々はあまりにもあり過ぎて、私があきれ果てるばかりでございます。ここに、私は、問題を数点にしぼりまして、
岸内閣の
不信任を証明いたしたいと存じます。
まず、その第一は、前
国会における警職法の
政治責任でございます。先ほどの
趣旨弁明にも明らかな通り、この
法律案ほど
岸内閣の反動性を露骨に現わしたものはございません。(
拍手)すなわちこの
法律案は単に
国民の自由や基本
人権のじゅうりんのみでなく、かねて計画中の防諜法、秘密保護法、これらの制定であるとか、
日米安保条約体制の強化及び
憲法改悪をねらいとして提案せられたものにほかなりません。これらの制定や改悪は、平和を念願する
国民のひとしく
反対することはもちろん、また、そのため
国民的な大衆
行動が起きる亀とは必然と見られるのでありますから、これをおそれた
政府は、それらの大擬
行動弾圧の武器といたしまして警職法を
提出したことは、何人も容易に予測できるのでございます。(
拍手)しかも、
かくのごとき悪法を、唐突に、全くやみくもに提案し、これが
成立のために抜き打ち会期延長をはかりまして、聞くところによりますと、開会ベルの電源をひそかに他に移動するがごとき、まことに卑劣きわまる手段をもって
成立をはかったのでございます。(
拍手)だが、
政府のごの悪質な計画を看破した
世論と、わが党の
反対は、ついにこれを粉砕、廃案に終らしめたことは、よく
諸君の御承知のところでございます。
警職法はまさに
岸内閣の
政治生命をかけたものであることは、当時の
政府の言明によっても明らかなところでございます。歴代内閣の事例によっても、
かくのごとき
政治生命をかけた
重要法案が未
成立に立ち至った場合は、いさぎよく
政治責任をとって退陣いたしておることは、御承知のところでありましょう。(
拍手)しかるに、
岸内閣の場合は、単なる未
成立、廃案ではございません。文字通り
国民総反撃によってみごと粉砕されたのでありますから、寸刻たりとも台閣にとどまることは断じて許されないのであります。(
拍手)私は、内閣
不信任の多くを申し上げなくとも、この一事のみによっても、
岸内閣はいさぎよく退陣して
国民にその不明をわびてこそ、
責任ある
政治家のとるべき当然の道であろうと存ずる次第であります。(
拍手)
その第二は、
岸内閣の
憲法改悪の企図と、
憲法違反の事例でございます。
憲法改悪の企図は、
岸内閣によって始まったものではございません。吉田、鳩山内閣から引き続く保守党
政治の最大眼目でありますが、そのうちでも岸
総理は特に熱心な改憲論者であることは、世間周知の事実でございます。あなたは、かつて
自民党の
憲法調査会長をみずから買って出まして、いわゆる岸試案なるものを公けにしたほか、
昭和三十二年、すなわち首班指名を受けて間もなく、鳩山内閣時代に停頓いたしておりました
憲法調査会を発足させ、公然と改憲意図を明らかにいたして参ったのであります。
しかも、最近、最も具体的な改憲意図は、すなわち、昨秋のNBC放送記者ブラウン氏との会見によって、
憲法九条を廃棄すると語り、
国会はもちろん、国の内外に、いたく衝撃を与えております。また、先般来の各
委員会における岸
総理を初め
関係大臣の
答弁は、
憲法九条は
日本の自衛のための軍備の規定であって、交戦権を持つ米国の
核武装や
核兵器持ち込みは
憲法適用外の問題であると公言をいたしておるのであります。そもそも、
憲法九条を規定した精神は、
戦争行為を何ものにもまさる罪悪として、
日本は、再び武力
行為を起したり、また
戦争に参加したり、巻き込まれたくないという、
世界に誇る平和
宣言であることは、私が言うまでもございません。(
拍手)しかるところ、今申し上げました
政府の
答弁によれば、
米軍が
核兵器を持ち込むことは
憲法上これを
制約できないというのであり、ますから、これほどおそるべき
憲法違反の考え方はないと私は存じます。(
拍手)また、あなた方がいかに口先で
核兵器を持ち込まないと言いましても、このような
態度は明らかにその
持ち込みを企図いたしておると見られても、
一言も弁解の余地はないと存じます。
岸内閣の論法によれば、
米軍が
日本に
核兵器を
持ち込み、不幸にして
戦争が起き、
日本が戦場となることも、また、
国民がみな殺しになるような被害をこうむっても、あえていとわない、という考え方にほかならないのであります。(
拍手)
岸内閣こそ、平和
憲法、また民主主義の最大の敵であると申し上げましても、この意味において過言ではないと存じます。(
拍手)
しかも、防衛の美名のもとに年々
自衛隊の増強をはかり、また、今回は
日米安保条約改悪に手を出し、
日本をして
日韓台軍事同盟の一員に加えんとするのほか、事ごとに中共を敵視する政策を進め、その結果、
国民に平和への不安を抱かしめているのであります。これらのすべては、改憲への既成事実を作り上げようとする、
憲法じゅうりん以外の何ものでもございません。(
拍手)われわれは、
日本の平和と民主主義の宿において、
岸内閣の存在を一日たりとも許すことはできないのであります。
第三は、
岸内閣のうらはら
政治であります。岸さん、あなたほど
国会答弁にそつのない
総理は、今日まで他にその例を見ません。同時に、あなたほど、
答弁と信念の食い違いの、すなわち、うらはら
政治家の悪名を
世界にはせた人もまた珍しいのであります。(
拍手)岸さん、あなたの体内に、一かけらでもよいから、信念の持ち合せがございましょうか。私は、あなたの信念のない例を一々ここにあげようとは思っていませんが、これだけは申し上げておかなければなりません。
先般来、わが党の核非武装
宣言決議案に、あなたは賛成をしておきながら、党内から異論が出ると、あれは、
総理大臣、すなわち行
政府としての
答弁であって、
自民党と
政府との
意見に相違のあることは珍しくないという御
答弁でございました。私は、これほど二軍
性格政治を最もよくさらけ出しておる事実はないと存じます。(
拍手)もちろん、私も立法府と行
政府の
性格の異なることは十分存じておる一人でございます。しかし、御承知の通り、新
憲法下における
政党内閣・議院内閣制のもとでは、
政府、与党は一体不可分の
関係にあるのでございまして、手品つかいなら知りませんが、
総理、総裁の使い分けは断じて許すことができません。(
拍手)ましてや、個々、ささいの政策ならともあれ、核非武装
宣言のごとき、
日本民族の生死に関する基本問題については、なおさら私は許さるべきものではないと信じます。そのくらいのことは、
官僚的能力を身につけた
総理が百も承知のはずでございましょう。しかるに、それを承知の上で
総理、総裁の使い分けをなされているならば、あなたは典型的な二枚舌の持ち主であり、全くもって
政治家の風上に置くことはできないと存じます。(粕手)およそ
政治家たるもの、強い信念を必要といたすものでありまして、二枚舌
政治こそ、まさに国の一大不幸といわなければなりません。私は、
国家、
国民のため、すみやかに
岸内閣の退陣を要求するものであります。(
拍手)
その第四は、あなたの公約が行方不明になっておることであります。あなたは、昨年の
衆議院の総選挙以来、多くの公約をいたしたのでありますが、なかんずく、社会保障制度と
減税、さらに汚職の絶滅は、公約の柱となっておることは論を待ちません。しかしながら、現実はいかがですか。
まず、
政府自慢の
国民年金制を見てごらんなさい。三十四年度
予算一兆四千余億円に対し、この年金
予算は、わずか百億程度、すなわち、〇・七%にすぎない、鼻くそ程度のものであります。(
拍手)また、人によっては保険料の掛け捨てとなり、あるいは、世帯によっては自己の掛金を給付してもらう程度でございます。保険料徴収制度もまた、勤労階級の
生活に何らの配慮もなく、全く非情なものでございます。これでは、一体、どこを押して社会保障の体をなしていると言えましょうか。社会保障、
国民年金などと、名誉ある言葉は、今日以後使わないでもらいたいと存じます。(
拍手)
次に、
減税公約による税制改正なるものを見てごらんなさい。なるほど、当初年度五百億円余の
減税案でございますが、内容は、依然として下積みの者に恩典はなく、
減税々々の宣伝に反して
ガソリン税などの増税を強行することによって、実際は三百億円足らずのものでございます。加えて、運賃、ラジオ聴取料等の物価
値上げが行われているのでございます。私の知る限りにおいては、物価
値上げによる
国民生活へのはね返りは、一世帯当り年額五千円前後になります。かりに二千万世帯といたしまするならば、驚くなかれ、一千億円以上の物価
値上げとなるのでございまして、
減税額を上回ること実に七百億円となり、加うるに、
政府お家芸の水増し徴税が本年も見込まれておりますので、
減税どころか、驚くべき増税といわなければなりません。(
拍手)
先ほどの年金にいたしましても、この税制にいたしましても、およそ公約実行などとは言えません。もしこれが公約実行だとするならば、公約実行という言葉の前に「ガマの油売り」とつけ加えていただきたいと存じます。(
拍手)
さらに、汚職の
追放に至っては問題になりません。前
国会から今
国会を通じて、グラマン問題を初め、戦闘機種の汚職が、わが党の委員から鋭く追及されているのでございます。この事態危うしと見ました
政府与党が、わが党委員の発言中に審議打ち切り動議を
提出するなど、全くもって卑怯、悪質な
行動が平然と行われて参ったのでございます。また、
予算委員会におけるインドネシア等の賠償にかかわる汚職の
疑いは、
国民をして、りつ然とせしめるものがございます。すなわち、――よくお聞きいただきたいと存じます。木下商店なる鉄屋が、知らぬ間に造船会社に化けまして、大手筋の造船会社をしり目に、ほとんどの契約にあずかりました。こともあろうに、一国の大統領と
総理の会合の席上に鉄屋のブローカー的
政商が参加するなど、何人が見ても、そのくささは、ふんぷんとして鼻をつくものがございます。(
拍手)また、永野さん、あなたは先ほど福永さんの
反対討論でにやにや笑っておられましたが、永野運輸大臣一家に至っては、自宅の隣に、問題の
政商の車庫を、作らせたのか、あるいは作ってあったのか存じませんが、その
政商の高級車をわがもの顔に乗り回すなど、全くもって鼻持ちならぬ事実でございます。(
拍手)岸さん、うそでもよろしい、清潔を口にする者なら、この一事によっても、かかる不届きな大臣に対しては即刻罷免をしなくてはなリません。それができないところに、岸さん、あなたの哀れな姿がございます。(
拍手)
なお、
自民党諸君にはお聞き苦しいかもしれませんが、ごしんぼう願いたいと存じます。去る二月二十六月の
予算委員会第一分科会では、岸
総理が総裁をしておられる
自民党の委員から、岸
総理の
金権政治の実態がいやが上にも明らかにされました。いわく、岸
総理は機密費を使い過ぎるというのであります。いわく、一国の
総理として
国民の師表たるべき身でありながら奢侈に流れる傾向があるというのであります。いわく、
安保条約改定は
総理の思いつきであるというのであります。いわく、
岸内閣は何ら取り上げるべき業績を果していないというのであります。(
拍手)岸さん、これは、ほかならぬ、あなたが最もよく知る
自民党の代議士の言葉でありますぞ。(
拍手)
また、昨年暮れの
自民党総会において、勇敢なる二、三の代議士
諸君による
金権政治の
攻撃もさることながら、この一月に行われた
自民党の
総裁選挙では、岸
総理の
対立候補者
松村謙三さんさえ、そのスローガンとして、岸
総理の
金権政治、
権道政治打破を掲げられたのでございます。今日まで、たびたび
総裁選挙が行われたのでございますが、このようなスローガンを掲げられたことは、かつてございません。
岸内閣の裏面を最もよく物語っておると私は存ずるのであります。(
拍手)岸さんは、みずから、
政治は力と金なりと公言しておられるそうでありますが、
かくのごとき
金権政治の横行は、必然的に、金のかかる
政治、すなわち汚職のつきまとう
政治になることは、論を待たないと存じます。(
拍手)汚職
追放を看板とした
岸内閣の身辺がこのような
疑惑に包まれたことだけでも、重大な
政治責任を感ずるべきだと信ずるのであります。(
拍手)
最近の地方自治体における
汚職事件を見てごらんなさい。
政府は、去る二月二十七日、地方自治体に汚職についての注意を促したそうですが、このことなどは、まさに目くそが鼻くそを笑うたぐいであります。(
拍手)
岸
総理、あなたは最近の新聞をごらんになりましたか。新聞の
世論訓告を見ますると、
岸内閣支持は、時とともに急激に後退して、さながら冬の寒暖計のように低下しつつあります。(
拍手)前
国会で、あなたは、わが党から三悪温存ときめつけられて、色をなして怒ったそうでありますが、今や、三悪
追放でなくして、あなたのうらはら
政治、弾圧
政治、
憲法改悪の三悪追加となったのでございます。(
拍手)
総理、いかがです。この声は、私の声ではない、
国民全体の声と思わなければなりません。(
拍手)この際、
総理は、この
国民の声を体して即刻に退陣し、その
政治責任を明らかにすべきであろうと信じます。(
拍手)
第五は、
労働政策に現われた
岸内閣の反動性でございます。
政府は、労働問題の基本となるべきILO条約第八十七号の批准に対して、かねがね、労働問題懇談会の結論を尊重すると
答弁に努めて参りました。幸いに、去る二月十八日、労働問題懇談会は、批准すべき旨の答申をいたしたことは言うまでもございません。しかるに、
政府の
態度はいかがです。
国内法の整備をたてにとって、できる限り批准を引き延ばそうといたしているのであります。それのみか、
国内法整備に名をかりて労働
関係法の改悪がたくらまれていると聞いているのでありますが、それほどまでにして、何のために独占資本家べの奉仕に努めなければならないのか、全く不思議の感がいたします。これでは、
政治献金に
関係があると疑られましても、やむを得ないことになろうと思うのであります。(
拍手)ILO条約の批准と
政府の企図する労働
関係法の改悪とは全く背反したものであることぐらいは御承知であろうと存じます。
また、最低賃金法に至っては、
業者間協定を骨子にすることによって、より正そうの低賃金政策を強行しようといたしているのであります。かかる最低賃金法は、低賃金政策法と今後は読みかえていただきたいと存じます。
さらに、
岸内閣成立以来、石田労相、倉石労相を通じて日教組、国鉄、全逓、全電通、王子製紙などに加えられた弾圧は、無数に上っておるのでございます。いわく労働秩序の維持、いわく法秩序の維持という美名に隠れて、警告労政から弾圧労政へと、日増しに露骨な弾圧政策に変っているのでございます。岸
総理、あなたは、各地の遊説で、口を開けば、労働階級に、ばかり、雑言を浴びせ、労働組合と一般
国民との離間策をねらうことによって自己の選挙活動戦術の武器といたしているのでありますが、いつまでも
国民を欺瞞することはできません。
岸内閣の
性格からしても、また独占資本を背景とする点からいっても、労働組合の抗議集会など、大衆
行動や争議
行為がおきらいなことではありましょう。しかしながら、おきらいならば、なぜその前に
国民生活の安定をは、かられないのか。御承知の通り、だれがすき好んで争議
行為や大衆
行動をとるものがありましょうか。あなた方が食えないようにするからであります。あなた方が平和を脅かすからであります。岸さんも、働く力は国の宝であるという言葉を御承知でございましょう。札束や金銀を山と積んでも、物の生産、すなわち、一粒の米も、一きれの。パンもできません。物の生産は、
中小企業者、労働者、農民の持つ労働の力によってのみ生まれることを、お知り願いたいと存じます。だからこそ、われわれが、労働の力を尊重する
政治をやれと主張するのであります。今の
日本の
経済組織を見てごらんさない。金の力のみが一切を支配して労働の力は資本家階級の搾取の対象にすぎないのであります。このことをわきまえない
岸内閣こそ、働く人々の敵だといわれても仕方がありません。(
拍手)
かくて、私は、非情にして無理解きわまる
岸内閣の即時退陣を要求いたさなければなりません。
最後に、皆さんに
一言つけ加えて申し上げておきたいことは、それは、ただいま、私の尊敬する福永君が、どういう御心境で
反対討論に立たれたか、私はよく存じません。しかし、福永君をあまりにもよく知る私は、福永君の
演説をじっと耳にしながら、まことに痛々しい思いがいたしました。(
拍手)私が思うに、稲永君の
良心と
政党人との板ばさみに抜き差しならぬつらい
立場に追い込まれた福永君の心情たるや、まことに察するに余りあるものがございます。(
拍手)
なお、私が先ほど来るる証明いたしました
岸内閣不信任の声をお聞き願った
自民党の各位の中に、しゃくにさわったといってお聞きになった方がありましょう。あるいは、場内をずっと拝見しますると、中には、もっとやれ、その通りだ、けしからぬ、やれといって、腹の中で激励する
諸君もありましょう。(
拍手)私は訴えます。私を腹の中で激励する
諸君に、どうか、数分後に迫る、数刻後に迫る
不信任案に対する
態度におきまして各位の良識によって、過ぐる
総裁選挙に現われた
松村謙三さんに対するあの
行動をもつ、おこたえ願うならば、どんなに
国民は喜びましょう。(
拍手)私は、
国家、
国民のために、
諸君の良識に強くお訴えいたしまして、賛成の
討論にかえるものであります。(
拍手)