○横山利秋君 ただいま
議題となりました
揮発油税法の一部を
改正する
法律案に対しまして、私は
日本社会党を代表いたしまして、
反対の
討論をいたすものであります。(
拍手)
今回非常に政治問題化いたして参りましたこの
揮発油税の増徴は、そもそも、
昭和二十九年四月に、道路
整備の財源等に関する臨時措置法に基いて、
昭和二十九年から
昭和三十三年に至る道路
整備五カ年
計画の財源としたことに始まり、自来、
揮発油税のほかに、
地方道路税、軽油引取税等の巨額の金額を自的税として徴収して参りました。今回の
法律案はさらにその上に
揮発油税と
地方道路税で、現在の一キロリットル当り一万八千三百円から一挙に五千五百円
引き上げて二万三千八百円にしようとするものであり、実に三割近い大増税であります。
顧みますると、まだ十カ月前、ここにいるわれわれすべてが全有権者諸君に対して声をからして政策を説き、支持を求めました。その際、税制について、
自民党の諸君は七百億の減税を訴え、社会党は千億の減税を主張したものであります。個人も疑うことのない事実は、いかなる
理由にせよ、一人として増税の必要性を説いた者はないということであります。(
拍手)民主政治は、主権者たる
国民に、なさんとする政策を訴え、約束し、これを正しく実行するところにあるのであります。それにもかかわらず、今、
初年度百九十三億になんなんとする大増税をしようとしておるのであります。
政府与党の諸君の中に、「減税は約束した。しかし、増税しないと約束したことはない」という説をなす人があります。かくのごとき論弁、かくのごとき
国民を愚弄する言葉はございません。大体、岸
内閣は、選挙で約束したことは、その公約を適当に形だけ整えて、
内容はごまかすことにきゅうきゅうとし、他方、選挙で公約しなかったことに全力を傾注して、警職法を通そうとし、この
揮発油税をまた出してきておるわけであります。私どもの、この
法案に対する根本的な
反対の
理由は、まさに民主政治の名においてであり、岸
内閣の
国民と政治に対する不誠実きわまりない態度から
反対をいたすのであります。
この増税は、道路
整備財源確保の必要からとされております。しかし、今述べたように、
昭和二十九年以来のガソリン税のたび重なる増税によって、
日本の道路は果してよくなったでありましょうか。雨が降れば、都会でも長ぐつがなければ歩けない。子供ですら、かさというものは、天から降ってくる雨よけのために縦にさし、重ねて自動車のはねよけのために横にさすということを知っております。風が吹けば、また砂漠の野を行くがごとき黄塵におおわれ、そうして、
岸総理大臣が毎週行かれる別荘への道や
ゴルフ場への道はりっぱになっておるのが今日の実情であります。(
拍手)五カ年
計画の各税収は確保されたにもかかわらず、反面、道路の
整備は
計画通り実施されない。しかも、朝令暮改、
昭和三十三
年度より新たに第二次五カ年
計画を立て、さらに一兆円道路
予算として今国会に提出をいたしましたが、これも第一次と同様の轍を踏むことは火を見るよりも明らかであります。しかも、これが
計画の財源として、重ねて
揮発油税を大増税するがごとき政策は、
政府の無定見を現わすものとして、断固として
反対をいたすものであります。
道路は、言うまでもなく、国の産業の動脈であり、道路をよくすることは国家の長期経済
計画の一環として行われるのであります。しこうして、これは、ひとり道路利用者、しかも、その中の自動車業界のために道路がよくなるものでないことは、言うまでもないことでありましょう。それにもかかわらず、毎年々々減税が政治問題であるときに、毎年々々ガソリン税が増税となり、しかも、一部の関係者にしわ寄せさせられているのであります。このことは、自動車運輸業界に対して
政府の認識が不十分であるか、あるいは、
反対運動が大きくならないからといって甘く見ている証拠でありましょう。要すれば、弱い者に対してはずうずうしい
政府の考え方が明らかに見えるのであります。港湾の拡張は一般財源で行われる。
飛行場もそうであります。ひとり一般に開放されておる道路の
整備ばかりがガソリンの目的税でほとんどまかなわれ、
昭和三十四
年度に例をとるならば、まさに九百九十一億の中で一般財源はたった百億という、こういうばかげた数字は許さるべくもないのであります。(
拍手)
政府与党が、さきの選挙公約、また、今回の
予算編成に際しても、中小企業の育成等をはかるために減税を行うことを強調してきたことは、天下周知の事実であります。しかるに、自動車業者等の負担する
揮発油税等は、年年増税して、高率な負担と化しているにもかかわらず、今回、さらに財政上の一方的な考え方から大幅な増税を行うことは、減税公約、あるいは中小企業育成等の諾政策に矛盾するもはなはだしいものであって、私は、恥知らずの増税というよりほかはないと痛感をいたすのであります。(
拍手、発言する者あり)
今回の増税について、佐藤大蔵大臣は、
予算委員会並びに
大蔵委員会において次の点を主張しています。すなわち、
揮発油税は、諸外国に比し
日本は低率であるし、自動車運輸業界に及ぼす
影響は微々たるもので、運賃の
引き上げ、物価等に何ら
影響するものではないとのことでありますが、これらの見解は実情を知らざるもはなはだしいものであります。
税率を諸外国と比較する場合、最も大事なことは、担税力があるかいなかを
国民所得の上から考慮して、各国の
国民生活水準を基礎に論ずべきであり、
わが国は営業用自動車が圧倒的に多いのに反し、欧米諸国は九〇%が自家用車であり、
国民所得も大きく、担税力のある国と生活水準の低い
わが国とを比較してその割合を論じなければならぬのであります。その比較を考えたならば、
日本の現在の
揮発油税を一〇〇とすれば、イギリスが三八・八五、フランスが七一・九七、
アメリカはわずか五・一四、オランダは五三・七三でありまして、イタリアの二〇九・八四という特異なところを別にすれば、
日本のガソリン税は
現行でも世界で最も高い税金をとっておるのでありまして、
政府の
説明は全く詭弁もはなはだしいものであります。(発言する者あり)
政府は、自分に都合のいいときだけ著名な各国との比較を持ち出すのでありますが、こういう単純比較をするならば、最低賃金でも、社会保障でも、賃金水準でも、暮らしの水準でも、何でも一律に外国との比較を論ずべきであって、ガソリン税を増税するときだけ、これをちょうちょうするということ、言語道断といわなければならぬ。(
拍手)
また、道路
整備による受益により、増徴分は運行費の節約で還元されるとのことでありますが、これは、欧米諸国のごとく、八〇%以上完全舗装された道路のある国で初めて言えることでありまして、わずかに七%程度の現状の
わが国においては、納税者と受益者とは同一ではないのであります。それに加えて、無策、無統制の道路行政のために、道路という道路は至るところモグラの巣のように掘り起され、また、近年は、著しい交通量の増加に伴い、燃料の空費が増加しているのでありまして、道路の
整備はおろか、交通は混乱の極に達し、自動車業者、多額の
揮発油税を納めても、道路
整備の受益など思いも寄らぬことと言えるのであります。
一体、
政府は毎年の両院の決議をどう考えているのでありますか。三十一年には衆議院、
参議院の運輸
委員会において、道路の
整備強化には一般財源にこれを求め、
揮発油税の
現行以上上の増徴は絶対避くべきであるとの決議、三十二
年度の決議もまた同様。不思議なことには、
自民党の中でも何回も
討論され、最後的に、三十二年の一月に、
揮発油税に対する
課税は若干
引き上げるが、別途これと同額程度以上を一般財源から支出するものとするとの決定が、与党の皆さんの手によって、その政調と税制改革特別
委員会でなされておる。かくのごとく、国会でも与党内でも決議されていることが全くむぞうさに踏みにじられて、三割の大増税が一般財源の十分な投入もされずに行われることは、一体何を意味するのでありましょうか。
交通何がしという新聞社発行のパンフレットを拝見いたしますと、このガソリン税が増税になったいきさつが暴露的に書かれております。佐藤大蔵大臣が就任するためにのまされた条件であるとのことであります。(発言する者あり)かくのごとき情報がまことしやかに乱れ飛び、これがなかなか説得力をもって信ぜられやすいほど、この増税は無理がございます。
〔「退場を命じろ」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕