○阪上安太郎君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま
議題となりました三
法案中、
地方税法等の一部
改正及び
地方交付税法の一部
改正の
政府原案並びに
委員会修正案に対しまして
反対の
意見を展開しつつ、
政府与党の反省を求め、この
法案が
反対議決せられることを
地方住民の名において強く要望するものであります。(
拍手)
最初に、今次の
地方税減税案の
基本的な性格については、まず、ものの順序といたしましてしばらく自民党の選挙公約と
減税問題の推移の跡をたどることにいたしたいと存じます。
昨年春の総選挙目当てに、自民党は、いわゆる七百億円の
減税公約をうたったのであります。しかるに、ようやく作業にかかってみますると、
地方財政の
現状は、あなた方
政府与党が考えていたような、なまやさしいものではなかった。すなわち、
地方は、年々積み重ねられた赤字がようやく解消する糸口を見出した程度でございまして、単
年度において辛うじて形式的に収支を合わすことができた
団体が大部分であります。学校、道路、橋梁、河川、こういったものの維持補修は不完全きわまるものであり、いわゆる
行政水準の低下と超過課税、法定外普通税の課税による
住民負担の犠牲の上に最低限度の行財政を維持していたにすぎないものであったのであります。従って、このような
減税公約は、最初から無理があったのであります。かくして、
政府与党は、当初公約の線より大幅に後退いたしまして初
年度百一億円、平
年度二日三十五億円という小規模の
減税案になったのであります。これは、選挙目当てのずさんきわまる
減税案であり、国民大衆を欺瞞する
減税案でなくて何でありましょうか。(
拍手)同時に、また、これは
政府与党の
地方自治の本旨及び
地方行財政の
現状に対する理解と認識の欠如が端的にうかがわれるものでございまして、選挙
減税という馬脚を現わした
政府与党は、何の面目あって今次の統一
地方選挙に臨むつもりかと言いたいのであります。
元来、
地方税の
減税問題の処理に当っては、それが、一方においては国民
負担軽減をせよという要請と、他方においては
地方の
行政水準を
引き上げよという要請との、相矛盾する二つの要請を調和せしめなければならないという、きわめて困難な課題を抱いているのであります。国と
地方との税
財源の配分の
合理化をはかるという根本的な
検討を前提としなければならないのにもかかわりませず、
政府与党は、これらの根本的問題については目下
検討中という逃げ口上に終始して、毎年、思いつきの、行き当りばったりの
税制改正を行い、そのあげくの果てが前述のごとき
改正案を生み出したのでありまして、まずもって、今次
改正案の
基本的性格というものは、選挙目当ての大ぶろしきが、
地方財政の見通しの誤まりから、ぼろぼろに破れて大幅な後退を余儀なくし、文字
通り彌縫的な
減税案に堕し去ったという三日に尽きるのでございます。(
拍手)
以下、
地方財政の現況及びその将来の見通しと国民
負担の見地から、さらにこの
改正法案の
内容に批判を加えるものでございます。
すなわち、まず
地方財政の現況と
地方税制の
基本的な
あり方でございますが、なるほど、
昭和三十
年度をピークといたしまして、
地方財政の赤字はようやく鈍化の傾向をたどっております。なお、三十二
年度の決算において、赤字
団体は全体の二七%で、その赤字額は再建債も含めて四百四十三億円となっております。一方、黒字
団体は全体の七三%でございまして、黒字額は三百六十六億円となっておる。そこで、財布のひもを締めるくせのある大蔵省あたりでは、この形式的に決算に現われた数字をながめまして、
地方はよくなったと早合点をしているかもしれないのでありますが、実際はそうではなく、多くの問題が依然として解消されないままに残っているのでございます。
その一つといたしまして、依然として
地方は赤字たな上げのための再建債を発行し、償還期限の到来した
地方債の借りかえ債の発行、交付公債の発行等、全く形式的な
措置によって赤字をおおい隠しはしているものの、その
負担は当然後年慶べ繰り越されているのでございます。これを、一体、
政府与党はどう見ておられるのでありますか。また、普通会計の
地方債は漸減する方策をとっておりますが、なお毎年旧債の償還に必要な金額をこえて新規
地方債を発行せざるを得ない状態でございます。現債額はすでに六千億円以上に上っているのでございます。これまた、
政府は一体どう見ておられるのでありましょうか。また、
公共事業中、道路
事業については、特に国の
負担率は
引き上げられているのでございますが、その他の
公共事業は、
地方財政の
再建等のための
臨時特例がこの三月三十一日限り廃止になるのでございまして、少くとも七十三億ないし百億円に近いところの歳入欠陥を
地方にもたらすのでございます。このような大問題を放置していることは、全く不謹慎であるといわざるを得ないのでございます。
多くの
団体で、収入増をはかるため超過課税と法定外普通税を行なっているほかに、
税外負担といたしまして二百五十三億円にもなんなんとする
住民負担が圧力を加えているのでございます。これに対し、大蔵省は何らの調査もせず、同じ
政府部内の自治庁の数字を誹謗するばかりで、これを採用しようとしない。そのため何ら救済されていないところのこの
地方の状態、これまた、まことに不謹慎きわまる態度であるといわざるを得ません。(
拍手)
行政水準についても、全く最低の水準にとどまっております。すなわち、府県道の未改良部分は総延長の七八・四%、橋梁のうち四四%が木橋であり、交通不能または荷重制限を行なっているのが二四%にも及んでおります。義務教育施設の不足坪数及び危険坪数の合計は必要坪数の二五・七%に達し、不正常授業は小学校で一四%、中学校で一一%、高等学校では、これらの合計は必要坪数の二九・九%にも一達しているのでございます。その他、下水施設、屎尿処理、塵芥処理等については、特に
行政水準はきわめて低く、非衛生的な処理
方式を行なっているものが全体の五八%ないし八〇%に達しているのでございます。これを見ても、
政府与党が言うごとく、
行政水準の上昇などというものはどこにも見出し得ないもので、全く百年河清を待つの情ない状態でございます。このような状態では
公共事業の返上もやむなきに至るのではないかと、われわれは非常に心配いたしております。この反面、単独
事業の伸びはわずかに七%、まさに
地方自治はその自主性を失いつつあることは、きわめて重大でございます。国は、一兆四千百九十二億円、読みかえて「一兆ヨイクニ」でもよかろうけれども、
地方は、一兆三千三百四十一億円、読みかえて「一兆サミシイ」といわざるを得ないような状態でございます。
戦後、
地方自治については、国政民主化の線に沿いまして、憲法上その地位が明確になり、かつ、
シャウプ勧告を契機といたしまして
地方税財政は面目を一新したかの感がございますが、依然これは形式的であります。すなわち、
昭和三十二
年度の
地方税収入と
国税収入の割合は、国が五五%で、
地方は四五%であります。ところが、
地方が最終的に
使用するところの額は、
地方税、
地方交付税、
国庫補助
負担金、譲与税、それと国の
直轄事業に対する
地方負担額を差し引きずると、国が三七%で、
地方が六三%と相なるのでございます。国は
国税として五五%の税源を吸い上げ、実質的には一八%を
地方に戻さなければならないのであって私は、ここに
現行税
制度のからくりを見出すものでございます。この一八%こそは、
地方自治の自主性をそこない、中央集権を助長せしめるものであり、陳情政治を作り上げ、忌まわしい汚職をいざなうものであります。同時に、官僚政治の腐敗と
地方政治の腐敗を招来するものであり、さらに、すべての選挙における与党の援護射撃の道具となるのであります。それが今日おためごかしの思いつき
減税となるのでありまして、これこそ、わが国民主政治のおそるべきガンであると、われわれは考えるのであります。(
拍手)
今や、国民大衆は、勤労者も、農民も、
中小企業者も、みな
減税を強く希望しています。しかるに、
政府与党は、大企業、独占資本に対しては、経済再建、生産拡充、輸出
振興等の美名のもとに、各種の
租税特別
措置により、年間八百億円に上る非課税
措置の大部分はこれらに振り向け、手厚い保護を加えているのでありますが、一方、大衆に対する
負担の
軽減については、非常な出し惜しみをいたしているのであります。特に、
地方税の場合、有力なる税源はこれを国が優先的に取り上げているために、勢い、大衆課税的な税種目から構成されざるを得ないのであります。その結果、
地方自治体は、さらにその財政欠陥を
地方住民に転嫁するのやむなきに至り、
税外負担、超過課税の形で大衆を収奪する悪循環を繰り返しているのでございます。(
拍手)
中小企業の
事業税撤廃の熾烈な運動、トラック、バス業者等の揮発油税、
軽油引取税増税
反対の熾烈な運動、また、農村における
固定資産税の
負担過重の問題、飲食、宿泊に対する遊興飲食税の
軽減の問題等々、いずれもこのような収奪課税に対する大衆の反発、抵抗であります。
以上、このような今次
改正案の
基本的な錯誤に対し、私は断じて納得することができないのでありまして、これがこの
法案に対する
反対の第一点でございます。
次に、その個別的な
内容についても多くの欠陥があるので、
日本社会党の要求に照らして批判をいたします。
今次
改正案の
内容について、まず
事業税でございますが、これは、
法人事業税のうち、五十万円以下の分については思い切って二先
引き下げ、それが
個人事業税とバランスがとれないというのでありますならば、さらに
個人事業税の
税率を
引き下げることにより、勤労所得の性格を持つ零細業者等の
負担を
軽減すべきであると考えるのであります。大企業に厚く零細企業に薄いやり方は許されないのであります。
また、
固定資産税についてでございますが、
制限税率の
引き下げのほかに、さらに
税率を一律二%
引き下げることにより、農地や下級住宅に対する
負担を
軽減すべきであると考えるのであります。
軽油引取税の増税は、現段階においては
実施すべきでない。
地方の
道路財源の増強はもとより必要ではございますが、その
負担をすべて自動車
関係者に求めることは当を得ないし、ことに、わが国の道路は、米国その他の戦勝国と異なりまして、戦争により徹底的に破壊されたものであるがゆえに、むしろ国の蓄積
財源等により
負担すべきものであり、いわんや、運賃値上げを誘因して大衆に転嫁すべき性質のものでは断じてないのであります。(
拍手)たとい五〇%の増税が二〇%に
引き上げられましたといたしましても、この点、われわれは納得できない。
遊興飲食税でございますが、遊興飲食税は、
免税点をそれぞれ五百円、一千円に
引き上げるべきであります。
現行の三百円、八百円では、おちようし一本が地獄と極楽の境目であります。全く、酒は涙であり、ため息であります。このような、家庭の延長とも見なすべき大衆飲食に対しては、思い切った
軽減をなすべきであります。
入場税であります。これは、
現行では譲与税であるが、当初から、もはや譲与税の価値を失っている。すなわち、今日では、取り上げたそのままで
地方に還元しているのであります。すみやかに
地方税に移管すべきであります。また、その課税の状態は、低い料金のものほど高率となっていることは不思議であり、納得ができません。これはすみやかに是正すべき七あります。
次に、電気ガス税の非課税
措置でございまするが、特定の大企業にのみその恩典に浴せしめ、そのしわ寄せを一般消費者に転嫁している現況は好ましくないので、この際、これを廃止してその税源により一般消費者の
税率を
引き下げ、その
負担を
軽減すべきであると信じます。
また、
地方税減税による
減収補てんはきわめて重大な問題であり、かつ、
地方団体側と
地方住民との
減税に対する矛盾を解決するキー・ポイントであるので、
減税による補てんは、独立税源を量ることと、なお交付税の増率によりまかなうことを主張するのでありまして、その意味において、消防
税外負担を解消するため消防施設税をすみやかに創設すること、
住民税の三十五
年度以降の
減収に対し、たばこの消費税を四・五%以上
引き上げ措置を講じておくこと、
租税特別
措置法をすみやかに整理すること、非課税
規定をすみやかに整理すること、その他、交付税の繰り入れ率を百分の三十に
引き上げること、臨特法の有効期限を三カ年間延長すること等の財政
全般の
措置により
減収補てんを推し進めることを強く要望いたしたのであります。
以上が、わが
日本社会党の今次
地方税法改正に対する税種別の要求であるばかりでなく、同時にまた、国民大衆の
減税に対する強い要望であったにもかかわらず、
政府与党は、これをほおかむりして何ら反省するところがなかったのでありまして、わが党の最も遺憾とするところであり、これがこの
法案に対する
反対の第二点であります。
これを要しまするに、今次の
地方税法等の一部
改正案は、
地方に対する全くの押しつけ
減税案であり、
住民に対する公約違反の選挙目当て
減税案であり、場当り的な思いつき
減税であり、何ら一貫性のない、よろめき
減税でありまして、われわれの断じて承服することができないものであります。国は、あり余った
財源で、左うちわで、「一兆ヨイクニ」と、小うたまじりの政治にうつつを抜かしているときに、
地方では、不足した
財源で、きゅうきゅうとして
住民に
負担を転嫁し、「一兆サミシイ」と悲鳴を上げているのであります。国破れて山河ありということわざは、今日では、全く逆に、山河破れて国があるといわざるを得ません。(
拍手)
政府与党は、思いをここにいたし、みずからの非を卒直に悟り、
地方自治擁護のため権力の中央集中を改めて、ここに、
地方税法等のこれらの二
法案に対し
反対の議決に
賛成されるよう要望いたしまして、私の
反対討論を終ります。(
拍手)