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1959-03-12 第31回国会 衆議院 法務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月十二日(木曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 小島 徹三君    理事 鍛冶 良作君 理事 小林かなえ君    理事 田中伊三次君 理事 福井 盛太君    理事 村瀬 宣親君 理事 井伊 誠一君       綾部健太郎君    川島正次郎君       高橋 禎一君    竹山祐太郎君       中村 梅吉君    馬場 元治君       三田村武夫君    神近 市子君       田中幾三郎君    志賀 義雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         警察庁長官   柏村 信雄君         警  視  監         (警察庁警備局         長)      江口 俊男君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         法務事務官         (人権擁護局長 鈴木 才藏君  委員外出席者         警  視  長         (警察庁警備局         警備第一課長) 平井  學君         検     事         (刑事局公安課         長)      川井 英良君         検     事         (人権擁護局調         査課長)    齋藤  巖君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 三月十二日  委員綾部健太郎辞任につき、その補欠として  渡邊良夫君が議長指名委員に選任された。 同日  委員渡邊良夫辞任につき、その補欠として綾  部健太郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政に関する件  検察行政に関する件      ————◇—————
  2. 小島徹三

    小島委員長 これより会議を開きます。  法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。  高橋禎一君。
  3. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 警察庁長官にまずお尋ねをいたします。この前の委員会で若干触れたところでありますが、苫小牧労働争議に関連して、御承知のように非常に深刻なかつ大規模暴力事件というものが発生をして、苫小牧の市は約四カ月間非常に暗黒と申しますか、無秩序の状態が継続したといわれておるのであります。それに関連して、警察力の非常に弱かったことが指摘されておるのです。ある雑誌等の記事によりましても、何か争議をやっておる側の人たちは、北海道警察官はせいぜい最大限三千人ぐらいしか動員できないのだから、われわれの方でそれ以上の人を集めてやれば何でもできるのだというようなことで、相当宣伝しておったということが見受けられるのであります。そういうことを言ったか言わぬか、そういうことは別としまして、確かにああいう大規模暴力事件的な、もしくは人権侵害のようなことが行われる場合、警察がそれを解決するために必要な職務上の義務を果す、こういうときに、警察官の陣容が整わない、人手が足りないというようなことで徹底した職責が果せない、治安の確保もできない、一人々々の人権を守ることができない、こういうことではいかぬわけだと思います。そういうときに、北海道警察官人員というのは五千人余り、こういうお話ですが、やはり応援を求める体制ができておらない。しかし、応援を得るといいましても、都なり各府県なりに予算上の問題その他でいわば最小限度規模しかないということになりますと、応援というようなことも十分できないのじゃないかという心配がありますが、そういうことはどう処置されるのであるか、あるいは全体的に見て、今の国内の治安状況等から考え合せて、これをさらに充実していく、あるいは機動的にうまく応援していく、そういう体制が整っておるものであるかどうか、あるいは足りないところを是正していくような考えがおありなのかどうか、それらの、すなわち警察力を機動的に、ほんとうにその職務を果し得られるように動員し得る体制、これについて一つ御説明願いたい。
  4. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 ただいま御指摘の苫小牧争議におきまして、警察力が非常に弱体であったという声があったことは私も聞いております。ただ、あの苫小牧争議は、七月から全面ストに入りまして、非常に長期にわたって行われ、その間に幾多不法事犯を見ておるわけでありますが、しかし、警察といたしましては、建前として争議行為自体についてこれに介入するという考えはない、その間に起った不法事犯取締りということを任務といたしておるわけでございまして、もちろん十分とは申しがたいと思いますけれども、あの王子製紙争議に対しまして、北海道警察のとった措置は必ずしも非常に警察が弱かったために適正な措置がとれなかったというふうには私ども考えておらぬのでございます。と申しますのは、いろいろ会社組合、あるいは第一組合と第二組合の間において、相互に解決すべき問題も多々あったように思いまするので、私は必ずしも非常に警察が弱体で手ぬるかったというふうには考えておりません。しかし、ただいまお話のような警察現有勢力で果して大事件に対処して十分なものであるかどうかということにつきましては、私どもも、警察人員につきましても、また機動力近代化と申しますか、強化ということにつきましても、現状では決して十分とは申せない、これはできるだけ早い機会に、さらに整備をいたしていかなければならぬと考えておるわけであります。非常に不十分ではございますが、来年度におきまして、全国で二千五百名の増員が大蔵省との間に話がつきまして、現在予算が審議されておるわけであります。これは国の予算としてはきわめて少いものでありますが、地方の府県費財政措置がとられることになっておるわけであります。さらにただいまお話しのように、北海道は約五千名でございまして、あの王子製紙争議の際には幾多不法事犯が起りましたので、常時少いときは四百名、多いときは二千百名という警察官を動員しておったわけでありますが、もし北海道だけで十分措置できないような事態が起りました場合には、他の府県からの応援を求めるということも法制上可能でございます。また、そういうことにつきましては、日ごろから十分に連絡を密にいたしまして、できるだけすみやかにそうした応援要請に応じ得るような措置をとっておるわけでございます。現に和歌山等において起りましたときは、大阪から応援に出かけておるような実績もあるわけであります。それから特に王子製紙のときから直接にそういうことになるというふうに考え意味で申し上げるわけではございませんが、一府県あるいは数府県にまたがって騒ぎが非常に大きくなるというような場合には、もちろん争議という意味において申し上げるわけではありませんが、非常に人心が不安になり、騒動が大きくなるというような場合におきましては、緊急事態宣言をいたしまして、警察庁長官都道府県警察を直接指揮するというようなこともできることに相なっておりますし、さらにまた事態が大きくなりますれば、公安委員会意見を聞いて、都道府県知事自衛隊治安出動要請をすることも可能なわけでありまして、そういう点につきましては、平素から関係機関との連絡を密にしておるわけであります。そういうような事態にならない前にこれを防止する、またそういう事態が起るようなきざしがないということは望ましいことでありますが、最悪の場合におきましては、いろいろととり得る手段というものはあるわけでございます。ただ警察だけから申しますれば、先ほど申し上げましたように、現在の人員装備というようなもので十分とは考えておりませんので、今後ともこの強化については、できるだけの努力をして参りたいというふうに考えております。
  5. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 警察出動問題に関して、今お話のありました非常事態宣言をしたような場合とかあるいは自衛隊緊急事態に対処するために、総理大臣から治安出動の命令を発したとか、そういうときの出動というものはこれはきわめてまれなことであるし、そういうことのないことをこいねがうし、またそういうふうに常に諸般の施策を講じていかなければならないわけでありまして、そこまで行かない平常時の警察運用ということが、私は一番大きな問題だと思うのです。それについて、せんだって委員会警察庁警備局長江口さんからのお話がありまして、大体各都道府県委員会が平時あらかじめ応援に関する協定を結んでおくのだ、それによって必要な事態発生したときには応援を求めるのだ、こういうふうな御説明がありました。すなわち共助協定を結んでおくのだ、ところが結んでいないところもある、たとえば北海道のごときはその例に当る、北海道と他の都府県とは出動に関しての共助協定というものを結んでいなかった、それが結んでいないと応援というものはできないのだというふうに私は受け取ったのですが、そういうことでありますと、各都道府県公安委員会考えによって、そういう共助協定というものを結ぶ場合があり、結ばない場合もあるということになる。それでは応援を必要とするような事態発生したような場合に、応援を得ることができないで、やはり治安維持上、警察使命達成上非常な不都合が起るというようなことがあり得るのですが、それらについて何か制度的にうまく運用していく方法があるものか、なければそれを整備される考えがあるか、その点を一つお尋ねします。
  6. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 応援の問題は、必ずしも共助協定事前にできておらなければできないというものではございません。要請をしてこれに応ずる、もちろん警察官の友情と申しますか、ともに国の治安任ずるという責任がありますから、府県警察でありましても、できるだけ応援に応ずるという態度をとるのは自然の理だと思います。従いまして、あらかじめそういう協定がなければできないというものではございません。     〔委員長退席福井(盛)委員長代理着席〕 ただ、協定をあらかじめしておくことによって、たとえば第一号動員であるとか、第二号動員ということで非常にスムーズにいけるという問題はあるのでありますけれども、これは法制的にできないという問題ではないわけであります。また管区本部長であるとかあるいは警察長というようなものが中に立ってこれを管掌するということも、事態の推移によってはやり得るのだというふうに考えます。
  7. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 そういう場合に、各都道府県公安委員会意見というものによってやるのか、それに全然関係なく応援できるものか、それから応援するということに関しての費用の負担、すなわち予算措置等についてはどういうふうに考えられておるか、その点を一つ
  8. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 都道府県警察は、都道府県公安委員会運営下に服しておるわけでございますので、公安委員会の意思を無視して、平常時において応援要請を強要するというようなことはできないわけでございます。必ず公安委員会意見によって動くということになるわけでございます。原則的には、経費の面でございますが、要請して応援派遣を受けたという場合におきましては、受けた都道府県においてその費用を、必要な経費を持つということが通常でございます。
  9. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 そこで江口さんのおっしゃったのが実際としては正しいように思えるのです。というのは、公安委員会意見を無視しては応援出動することはできないわけです、各都道府県間においては。そういうことになると、その事態が起った、応援を求められた、そこで委員会を開いてそれにどう処置するかというような意見をまとめるというのでは、これまた時間的に非常に不都合で、ほんとう要求に応じ得ない。こういうことになるから、それで平常時いろいろな場合を予想して、そして出動するのだという公安委員会意見をはっきりさして、両者協定でもできておれば、何か事態が起って要求を受ければ、もう委員会意見というものは決定しているようなものですから、やりいいというような問題があるのじゃないかと思うのですが、そこはどうなんですか。実際、全国都道府県公安委員会の間では、そういうふうに共助協定をやっているものが多いのか。あるいは全然そういうことに関係しないで、事態が起って、要求を受けたときに、そのつど、そのつど意見をまとめて、どう処置するかということを決定するやり方が多いのか、そこはどうですか。
  10. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 応援問題は過去においても非常に多く行われておることでございますので、応援派遣要請を受けるというようなときに直ちにこれに応じ得るような措置は、多くの府県間においてとっておるわけでございまして、たとえば管区学校生徒を派遣するというようなことも、管区学校の校長の意見だけではいかないので、やはりそこに派遣していいという都道府県公安委員会同意というものが事前に得られていなければならない。しかし、管区学校生徒というのはもちろん教養が主でありますが、たとえば和歌山事件のときなどは、大阪府警から行った場合もございますが、管区学校生徒出動さした場合があるわけであります。これはやはり各府県同意をあらかじめ取りつけておくということにいたしておるような実例もあります。  それからまた、かりに協定というものがなくて公安委員会を一々開くという場合でも、そういう急を要するような場合におきましては、一堂に会しなくても、本部長からの電話連絡で御了解を得るというようなことで決議にかえることができるということもございまして、もちろんあらかじめ協定をしておくことにこしたことはございませんが、必ずしもそれがなければ事態に間に合わないというような状況ではないと考えております。
  11. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 それでは、苫小牧争議に関連しての問題をお尋ねいたしますが、御承知のごとくに、中山あっせん案といいますか、中労委あっせん案が出まして、そして一応、冷却期間といいますか、平和回復のための期間といいますか、三月三十一日までに争議関係の問題を解決しよう、こういうあっせん案で一応争議というものは終った格好になっておる。ところが、いろいろの報告を総合いたしますと、それから後におきましても、王子製紙苫小牧工場内において、あるいはその住宅地等においては非常な暴行事件脅迫事件、その他人権侵害事件等が起っておる。ある説によれば、それこそ毎日そういう事態が起っておる。しかも被害者側後難をおそれて、事態十分捜査当局その他に申告することもできない、こういう状態であるようなことを聞くのですが、警察はもちろん犯罪予防についてのいろいろの措置を講ぜられなければならない職責があり、犯罪事件が起ればそれを検挙しなければならないわけです。この中労委あっせん案の中に、今次争議に関連して現在行なっている告訴告発、訴訟及び不当労働行為の申し立ての取り下げ、なお正常なる争議行為責任は追及しないこと、こういう一項目があるわけなんですが、警察の方ではこれについてどういうお考えを持っておられるかということ、それからいわゆるあっせん案が出ましてから後に起っている先ほど申し上げた暴行事件脅迫事件人権侵害事件等を処理するのに、このあっせん案に今読みましたような趣旨が記載されておるということで、何か政策的に特殊な取扱い方法考えられておられるものであるかどうか、それをお伺いいたしましょう。
  12. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 争議中に発生いたしました不法事犯というものは百四十九件、そのうち告訴告発のあったものが八十九件でございます。これらにつきましては、もちろん警察といたしましては、法の命ずるところに従って、警察独自の立場において捜査を進める処置をいたしておるわけでございます。また争議終了後におきましても、ただいまお話のような、単なるいやがらせにとどまらず、暴行傷害等の行われましたものが十一件発生をいたしておるわけでございます。これらはいずれも告発がなされておりますので、これに基きまして事件発生を知りますと同時に、捜査を進めて、本年の二月九日までに全事件検察庁送付をいたしております。通常逮捕が二名、書類送付が十二名ということで十四名の送付をいたしておるわけであります。そのうち通常逮捕せられました被疑者二名につきましては、暴力行為等処罰二関スル法律違反行為として二月十八日に起訴をされておるということで、警察で知り得ました不法事犯というものにつきましては、すべて警察立場において措置をいたしておるわけでございます。あっせん案によって従来の行きがかりを捨てるというようなことは会社内部の問題でございまして、警察が取調べを要するという事案につきましては、警察独自の立場において措置をいたしておるわけでありまして、その点は特に政治的な考慮を払っておるという問題はございません。
  13. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 私は、中労委あっせん案というものがやはり争議全体を解決するために必要なことであるし、それは尊重さるべきでありましょうし、特に今その争議をどうするかという問題についてお尋ねをしておるわけではないのですが、ただそのあっせん案の中に一項目、いわゆる犯罪事件取扱いに関して、人権侵害問題等取扱いに関しての条項があるわけです。警察当局にしても、あるいは検察当局にしても、もちろんこれを全然無視することは、私はよろしくないという見解に立っておるわけです。今、長官の御答弁は、非常に事務的な御答弁のように承わるのですが、私のおそれますことは、このあっせん案が出ましてから、争議が終結しましてから後にこういう事態があるということで、こういう中山あっせん案に一項目加えられておるということでもって、その後に起ってくるいろいろの犯罪事件人権侵害事件を処理するのに全然事態を静観するとでもいいますか、積極的に解決方法を講じないでそのままに放置されるということは、よろしくないという見解を持っておるわけです。ところが、今のお話では、そういうことがない、わかっただけは解決しておるのだ、こういうお話ですが、警察ではどの程度調査なさっておられますかわかりませんけれども、私どものところに集まってくるいろいろの情報等を総合しますと、警察のお耳に入っておる面はごくわずかのように思える。そこが問題なんです。というのは、このあっせん案が出ましてから後今日まで職場闘争というのが非常に激しくなってきた、しかもそれは組織というものを強化して次に備える必要があるというところから、むしろ脱退者に対して、すなわち旧組合員が新組合員に対していろいろと職場闘争をやる、あるいは家族等に対して、住宅地等においても村八分的なこと、その他いやがらせ——犯罪になるものもあるし、そうでない人権侵害事件も相当たくさんある、しかもそれが毎日々々連続して行われておる、こういうふうに言われるのですね。そして被害者は、それでは警察なり検察庁なりその他関係当局にそれを申し出たらどうか、ところが会社に申し出てもはっきり解決をつけてもらえないし、それからまた警察検察庁等に申し出て、結果があいまいなことがあったり何かするようでは、それこそあとでいろいろ周囲から迫害を受けるだけで、むしろその後難をおそれて申告すらできないのだ、だから毎日々々いろいろな事態が起っておるのに、被害者としてはもうやりようがない事態で、気が狂わんばかりである、やがて生命にも影響するとまで叫ぶ人もある。こういうふうな状態ではならぬわけで、何とかこれを解決するために、私は警察当局はもっと十分調査される必要があるのだということを考えるわけです。ただ出てこないから——出てきたら解決をつけるが、出てこないのだから事件はないものだと思うというようなことでは解決がつかない事態だということを私ども感じておるわけであります。  そこで、今お答えのありましたように、自分たちはこのあっせん案の一条項等はこれはもちろん考えない、政治的には何らの配慮をしないで、純粋な気持警察権運用に当っておるのだとは言われますけれども、一方現地模様等被害者の叫びというものを聞けば、それが耳に入ってくる。私どもといたしましては、まあ一応中山あっせん案等もこういうふうに出ているのだから、事態を静観する、見て見ぬふりをする、そのうち三月三十一日までには何とか解決がつくであろうというような考えが実際上あるのじゃないかということを心配するのですが、それらについてよく御調査にならないと、ただ単なる報告というだけでは私はちょっと不安なような気持で、ほんとう警察職務が行われておらぬということを心配するのですが、その点はいかがでしょうか。
  14. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 今お話のような問題は、争議解決後の問題に限らず、今度の王子製紙の場合に、私は警察のあれが百パーセント完全無欠であった、こうは申しませんけれども、何と申しましても、経営内あるいは組合員同士の間の問題でございますので、警察がそうした不法事犯を知る端緒というものは、やはり組合員なりあるいは会社側なりから事情を正確に伝えてもらうということが一番事情を知る道であろうと思うのでありますが、遺憾ながらこの王子製紙の場合におきましては、これはわれわれも反省しなければならぬ問題がございます。警察が信用ならぬというような意味、あるいは警察はあまりしっかりやってくれないだろうというような先入観から、不法事態があってもこれを警察には言ってこない。そうして会社なら会社組合なら組合で、警察以外の方面に、非常に警察は弱いとか、さっぱり取り締ってくれないというようなことを言われた節が私は相当あるのではないかというふうに思うのであります。やはりともかくも警察を信頼して、そうした不法事案というものは警察に逐一知らせていただくということになりますれば、いやがおうでも捜査を進めるということにもなりますし、もちろん警察はそうした告訴告発がなくても、不法事犯というものは当然調べるべきでありますけれども内部の問題に深く立ち入ってやるということはなかなか困難な面もあるのではないかというふうに思います。  それから、争議解決後におきましては、今の中山あっせん案でお読みいただいたような条項に従って、会社なり組合員なりの間において、その趣旨に沿った意味において警察に申し出ないものが相当あったのかもしれない、そういう意味において警察が知り得なかったということはあろうかと思いますけれども、しかし、これにつきましても、私の聞いたところでは、やはりある相当の会合の席において、何ら警察連絡することなしに、警察はやってくれないということを会社側で話しておられたということも聞いておるようなわけでありまして、やはりそこはほんとう取締りを希望するということであるならば、できるだけすみやかに正確に事態を知らしていただくということが必要であろうというふうに思うわけであります。しいて目をつぶって、言ってきたものだけを取り扱うという気持は毛頭ございませんけれども、なかなか警察経営の中に入って捜査を進めるということは困難な問題があるように思うわけでありまして、決して怠っているために事件が少ししか取り上げられていないということではないように私は思うわけであります。
  15. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 どうも長官の御答弁は実に冷静な、あっさりとした事務的なようなお話のように私には受け取れて仕方ないのです。これは私の現地に対する状況の認識の問題にかかるのか、そこはわかりませんが、いろいろ新聞に出ており、雑誌に出ており、しかも責任ある人たちが名前をあげて報告書を作っておられるそれらを見、また関係当局方面報告等を総合してみまして、決して苫小牧市はほんとうに平和を取り戻しておるという印象を受けないのです。まだまだ暗黒の面が非常に多い、こう考えておるのです。そこで、あの町は、御存じのように、苫小牧工場で持っておるような町なんですね。大部分苫小牧工場関係者と言っていいのです。そういう町でやることであって、しかも警察方面ほんとうに情報を提供し、申告してくれないとなかなか仕事はやりにくいのだというお話、これも一応もっとものようですけれども、先ほども申し上げたように、ほとんど町が二つに分れて争っておるのです。そういうときに警察なら警察検察庁なら検察庁というものが、少くも犯罪に関係しての問題について、ほんとうにたよりになると思えば、それは申告もするのですよ。ところが、たよりにならないことを見せつけられておると私は思うのです。たとえば、第二組合員の就業時等における問題、例の仮処分執行に関連したあの騒ぎ、警察当局報告にもありますが、もうたくさんの警察官が出て、中には警察官暴行、傷害を受けるというような事態があって、なかなか警察官も来て、いろいろやってくれるけれども、さっぱり効果が上らない。むしろ押されぎみのようなところ、そして暴行事件にしても脅迫事件にしても、警察官には当然わかっておると思えるようなことでも、さっぱりどうもうまく処理されないというようなところから、そしてまた一面、それらのことを親告すれば後難のおそれがある。そういう心理状態になることは、お認めになると思うのです。だから、そういうときに親告をしないからどうもうまくいかないなんというので投げておいたのでは、私はいかぬと思う。それこそ積極的に緻密にこれを調査、検討して処理する。親告しようとしてもすることができないような状態被害者が追い込まれているのだというその事態を見て、それに対処して問題を解決するのでなければ、ほんとうの熱意ある職責の遂行の方法じゃないと私は思うわけなんです。ですから、先ほどもお尋ねいたしました問題に関連するのですが、われわれはたくさんの人数でやっておるのだから、どうせ北海道警察力というものは大したものじゃない、それ以上のものでやれば何事をやってもいいのだ、こういうことで、組合運動として、労働争議としては程度を越えた、すなわち、暴力、暴行は許されないというのにもかかわらず、非常に暴行事件が起った。そして、しかもそれを慫慂するがごとき事柄も若干見受けられる。そういうときに、警察の力はもう限度がある。しかもそれは無力である。自分たちの目の前で警察の無力ということが証明されたような事態を見ておる者としては、もう動きがとれないのです。どうにもならない。それを警察の方でも冷静に見ておるというようなことでは、どうも私はこの五万人の苫小牧の町の治安の問題、そして、そこに住んでおる人々の人権の問題というものを考えれば、どうもこれをこのまま放置することができないという考えなんです。言ってこないのだからないのだ、こう言われても、そういうふうではないと私は思います。新聞等にも出ておるのです。連日そういうことが行われておるような事態である、こういう言葉をもって表現しておられるような人もあるくらいですから、そこを少し熱意を持って一つ解決する考えになっていただきたい。何もなかったらまことにけっこうなことなんですが、そういうふうなけじめがはっきりついていきませんと、私は労働争議の問題について特別な専門家でもないのでありますが、しかし、一つ組合が、そのやり方に対し満足しないで、その後別の考えを持った人たちがその組合から脱退をして、別な組合、第二組合を作って、そして自分たち考えに基いて組合を運営していくというような運動も、これはまあ組合運動、労働運動の問題として考えれば、いろいろの批判もあり、研究すべき問題ではあるでありましょうけれども、やはり同じ組合におる者だからといって、力をもって、後には暴力をもって脅迫をもって、その人たちを引きずっていくというようなことは、これはまた法律の精神からいっても、許すべきじゃないのじゃないか。そういうことになりますると、第二組合を作ることの可否等にも関係しますし、第二組合ができた、できることを是認するものとして、その第二組合が生まれた、その人たちの権利擁護の問題等に関連して、私はひとり苫小牧の問題だけでなく、そういう争議に暴力が伴うた場合における将来起るいろいろな問題にも、今度の問題の解決いかんということは、私は大きな影響があると思うのです。それを一つ、悪い影響を与えて将来収拾のつかないというようなことにならないようにやるには、どうすべきであるかということを考えて対処していただきたいと思うのですが、これはまだ解決のついた問題でないのでございますね。現存する問題として、さらに調査を徹底してやられるお考えがあるかどうか。もうあっせん案の出る前の事態は、それは取り下げをして解決をつけるのだ、その後の問題も親告しないからどうもわれわれにはわからぬというようなことでは、どうでしょう。あれだけの大騒ぎがあり、世間の人も大へんだと思っているその事態が、あばれ回った者はもう当然で、それが最後の勝利を得たのだというような結果にもなる、そういう印象を与えるということはよろしくないと思うのです。それらについての何かお考えがありましたら、一つお伺いいたしたい。
  16. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 お話の点、ごもっともと思います。要は警察に対する信頼という問題が根底になければならないと思います。そういう意味で今われわれとしても、先ほど申しましたように、親告のあったものについてだけこれを取り上げるということは申しておりませんので、御説のように不法事犯というものについては、できるだけ緻密に捜査を進めていくということでなければならないと思いますが、一面また当事者にはやはり警察に対しての信頼を持っていただいて、できるだけ勇気をもって不法に対しこれを取り締り得るように御協力願うということがなければならないのじゃないか。もう一つは、確かに不法事犯ではあっても、大ぜいの人間によって、しかもたとえば住宅街などで、パトロールも相当強化いたしたわけでございますけれども、見張りを置いて、警察官のおらない間に、大声で悪口を言ったり、石を投げたりする、そういうような状況になりますると、被疑者を特定するということは非常に困難な問題もあったように聞いておるわけであります。しかし、こうした問題は、もちろん一地方の治安の重大な問題でもございますので、もとより争議そのものに介入するということは絶対避けなければなりませんが、その間に行われる不法事犯については、今後とも十分徹底的に調査捜査を進めて参るようにいたしたいと思います。
  17. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 法務大臣がおいでになりましたから、法務大臣にまずお尋ねいたします。この前の委員会で、いわゆる犯罪原因論についていろいろ刑事局長からお話があったのであります。お聞きになっておるでしょう。苫小牧争議中に起った事件についてて、法務大臣も御心配になっていろいろ御研究になって、おることと思います。私の一番お尋ねいたしたい大きな問題は、犯罪を捜査されたのですか、中には起訴されたものもあるわけであります。その起った暴行事件脅迫事件等は一体どういう原因で起ったものであるりか、そしてそれは一時的な感情的なものであるのか、あるいはまた一つの組織的な指令等に基いてやっていることであるか、いろいろこの原因、動機というものがあると思うのです。そのいずれであるかということは、これは検察上きわめて重要な問題であります。法務省においては、今度新しく法務省設置法を改正されて、その中に、こういうことにも着眼されたのでありましょう、法務研修所を、職員に対する研修のほかに、刑事政策に関する総合的な調査研究をも行う機関とする、そういうふうな意図のもとに、その名前を法務総合研究所ということに改められて、いろいろ学識経験者等を集めて御研究になるという、まことにけっこうなことでありますが、その研究になる中で、いわゆる刑事局長の言葉をもって言えば労働検察といいますか、何か労働争議等に関係をして発生したところの刑事事件の原因論、そういうものに対してどう取り扱うかというようなことは非常に重大な問題である。しかし、研究所を作ってこれから研究するというだけではいかぬので、もう現在起った問題についていろいろの検討が加えらるべきだと思うのです。そこで今お尋ねした苫小牧の問題について、捜査した結果、どういうことになっておるか。そういう暴行というようなことを慫慂するものはいないか、指令するものはいないか、あるいは一つの団体の方針として、組合の方針として、闘争の方法として、そういうことをやるのだということになっておったものか、そうでなくして、ほんとに感情の激発、偶発的にそういうことが起ったのか、それが今度の苫小牧事件の大きな問題だと思うのですが、どういうことになっておりますでしょうか。     〔福井委員長代理退席、小島委員長着席〕
  18. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 苫小牧事件についていろいろと御質疑がございましたわけでありますが、これはもう私から申し上げるまでもなく、法務省といたしましても、非常に重大な事案であると考えておるわけであります。そうして、具体的に捜査をいたしまして、中にはすでに起訴をしたものもあるわけでございますが、その原因がどういうところからきているか、あるいはああいう大騒動の中でありますから、感情的に行われたものもあるのではないか、あるいは組織の力によって、ある集団等の指令あるいは慫慂によって具体的な闘争方式等も行われたのではないかというようなお尋ねでございますが、全体として見ますと、私は両方あるのじゃないかと思うのであります。ただ、まだ捜査中のものもございますし、裁判にかかっておるものでありますから、にわかに私としての意見を申し上げる段階じゃないのでございますけれども、具体的に捜査をいたしました案件についても、いわばその事件々々についてその原因や態様が違っておるようでございます。しかし、一般的に申しますと、私はお尋ねの点が両方ともあるのではなかろうかと想像しておるのであります。これらは裁判になりましてからも具体的に解明せられることと期待いたしておりますが、非常に重大な関心を持って私どもも見ておりまするし、同時に今後の態度といたしましては、これらの点を常に具体的にできる限り究明いたしまして、今後の対策に資することにいたしたいと思っております。  それから、法務総合研究所の点についてもお触れいただきましたが、この点もすでに政府委員から詳細御説明申し上げておることと思いますが、この研究所というのは、私どもの構想といたしましては、ただ単純に学理的な研究をするというのであってはいかぬわけでございまして、御案内のように、日本全体の組織、機構として、実は大学等においても刑事学の講座というものがもっとできなければならぬ、現在一つもないというような状態でありますが、それはそれとして、学問的な分野で今後検討せらるべきことと思うのであります。われわれの考えております研究所は、ただいまも具体的なお尋ねがございましたようなものについて、その犯罪の起った環境あるいは原因となるようなことについてできる限り科学的に検討して、そうしてこれが捜査の上にも、あるいは法務省のやらなければならぬ政策の上にも直接すみやかに反映してくるようにいたしたい、行政官庁に付設された研究所らしいやり方をやって参りたいと考えております。従って、この研究所には専任の所長をさしあたり置きませんで、将来はその必要が起るかとは思いますが、現在のところでは、法務省の事務次官をもってこの所長を兼ねしめるということで、そういったような機構の特色を発揮して参りたいと思っておるわけでございます。  かようにいたしまして、重点としては青少年犯罪の予測からアフター・ケアに至るまでの一貫した科学的な対策を検討する、それからその他ただいまの問題でございます公安関係事案等についても、社会情勢が非常な勢いで変化いたしておりますので、そのときどきに、さらに進んで将来をも見通して犯罪の捜査に遺憾ないようにやって参りたい、こういう趣旨で今後運営をいたしていきたい、かように考えております。
  19. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 苫小牧争議に関連して発生した、そして検挙されて起訴されたような事件については、その犯罪の原因等については法務大臣のところに詳細に報告がきているはずだと思うのですが、それはきているか、きていないか、きているものを、ここで発表することができれば、一つ具体的に発表していただきたい。
  20. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは特に重大な事案でございますから、私のところにも報告が参っておるのでございますが、すでに起訴をした案件等につきましては別に秘密にする必要もございませんので、それらの点については刑事局長から御説明させたいと思います。
  21. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 ただいま報告の参っております限りについて申し上げますと、大体において、一つの感情的な雰囲気から発生した事案が多く見られるように考えられるのでございます。具体的に詳細にという御質問でありましたけれども、なお公判中でございますけれども、まだ審理開始に至っておりませんので、先ほど大臣が申し上げましたように、今後の公判を通じましてそういう点も逐次解明されていくわけでございまして、もう少し時期を待っていただきたい、こう考えております。
  22. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 先ほど大臣は、これは両方の内容を持っているのではないか、すなわち感情的なものと非常に組織的、計画的なものと両方含まれておるのではないかというお考えでしたが、われわれもいろいろな事態を総合してみて、そういうふうに思えるのです。刑事局長現地から来た報告によると、感情的なものが多い、一部の偶発的なほんとうに衝動的な犯罪のものが多いようにおっしゃるのですが、果してそれで捜査が徹底しておるのかどうか、私は相当疑問があるように思えます。しかしなお、それらについてはさらに調査をされるということですから、一つ徹底した調査を願いたい。と申しますのは、ほんとうに偶発的なものと組織的などこからか指令が出て、暴行などはかまわぬぞということで、いろいろそこでやったところを見ますと、集団的に一つの大きな目的でやっているように見られるものが多いようです。それらの点がはっきりしないと、それを見きわめることができないと、起きた被害は個々については非常に軽微のようなものに見えても、その計画でやられたのでは、毎日々々同じようなことを、軽微な事件でも累積していけば、被害者としては大へんなのです。そういう人権侵害が見られる、毎日々々いじめる、いやがらせをする、ちょっとこずき回す、軽微な暴行であり、脅迫であるけれども、それを計画的に毎日々々やっていくと、全くノイローゼになってしまう。精神病になってしまう。後には生命に影響するとまで訴える人もある。事実そうなんです。ですから私はお尋ねする。その原因というものは組織的、計画的なものであるか、それとも偶発的なものであるかということは、個々の事件の重みを見るのに非常に影響があるわけです。差があるわけでありますから、それを徹底してやらないと、こういう種類の問題の解決にはならないと思う。総合研究所で犯罪原因を大いに研究すると言われますが、私は今日本の刑政上大きな問題としては、労働刑法と言いますか、それと労働検察に関する問題だと思う。これは寛大にやれ、厳しくやれ、そういったようなことを今申し上げるのではないのですが、真剣に研究して、ほとんどうに間違いのない方途を講じなければ大へんなことになる。日本の産業にも影響する、また治安にも大きく影響すること等々を十分研究される必要がある。しかし、それは学者が集まって、本を集めていろいろ言っておったのではだめなんで、一つ一つ日本国内に起る具体的な事件について、その原因をほんとうに正しく究明していくということ、これが基礎なんですから、それが資料にならなければならない。ただ起った事件についてはあいまいにしておいて、どこからかいい名案がないだろうかといったら、そんなものはありはしないのです。ですから、今度の苫小牧の問題なんかは、それらを研究するほんとうにいい参考資料とも言えるわけでありますから、徹底的に究明することが将来この種の問題を解決するのに大きな効果を与える。こう思うのであります。総合研究所においては、それらの労働刑法、労働検察の問題を一つの重点として研究されるという方針があるかどうか、こういう点について、一つ法務大臣から御意見を伺います。
  23. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先ほど申しましたように、研究所におきましては、この種の問題についての徹底した研究をいたしたいと考えております。  なお、苫小牧事件につきましては、ただいまお話の点は私も全く同感でございまして、こういう種類の事件については一つ徹底した調査がどうしても必要である。またただいまもお触れになりましたように、一方法務省の立場から見ますると、人権の擁護という点も非常に大切なポイントになりますので、これらの点についても同時に人権擁護局といたしまして、十分にこの事件を、一つのサンプルと言うと語弊がございますが、徹底して調べていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  24. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 苫小牧労働争議関係して中労委あっせん案というのが出ておりますが、そのあっせん案の内容は法務大臣も御検討になったことと思いますが、その中に、「今次争議に関連して現在行なっている告訴告発、訴訟及び不当労働行為の申し立ての取り下げ、なお正常なる争議行為責任は追及しない、」こういう項目がある。これがある以上、中労委の方と法務大臣の方と何らかの交渉があったかどうか、全然無関係であるか、それについてまずお尋ねいたします。
  25. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 現在までのところ、私は中労委の裁定の問題については、新聞等で承知しておりますだけでございまして、中労委その他から少くとも私のところへ何らの意味の意思表示はございません。
  26. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 今読み上げましたような条項があることは御存じだと思いますが、そこでこのあっせん案が出るまでの刑事事件の取扱いはどうするか、その後における刑事事件の取扱いをどうするか、このあっせん案と関連して刑事政策的に何らかのお考えがあるのかないのか、おありになれば、その内容について御説明願います。
  27. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいま申しましたように、私はまだ何も相談を受けておりませんし、またこれは相談をしてくるのかどうかもわからないというように私としてはただいま考えているわけでございます。それからそういう前提といいますか、仮定のもとに私の意見を申し上げるならば、これはたとえば当事者相互間で取り下げとかなんとかいうことがありましても、たとえばすでに起訴した、あるいは取り上げている事案等については、やはり刑事罰を伴っている法規の適正なる執行という点から申しまして、私はこれは別個の問題であると考えざるを得ないと思います。
  28. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 私は何も厳重に処罰しさえすればいいという考えを持っているのではないのです。大臣のお話では、中山あっせん案のごときは問題にしないで、やるだけやるんだというように見受けられるのです。そこは将来の大きな研究問題でありましょうが、私の今の気持としては、やはり中山あっせん案にこの条項が盛られたということは、苫小牧に起った刑事事件をいかに取り扱うかということについて非常に考えなければならぬ大きな条件の一つだと思うのです。将来この種の争議がなくなり、苫小牧ほんとう意味の平和が訪れるというきわめて大局的な立場に立って、これを相当尊重しつつ考慮していくべきであると同時に、一方で厳として治安維持人権擁護のための刑政というものは考えなければならぬ。そこに大きな調和が必要だと思うのであります。ところが今大臣のおっしゃったような趣旨でなくて、実際にこういう案が出ているわけだし、今までのことはそうとがめなくても、三月三十一日まではどうなるかわからぬから、しばらく静観しようというような不徹底な態度、あいまいな態度でもって、治安が乱れた、あるいは個々の人々の人権が侵害されていくことはよろしくない。そこのところはやはり国民のために、また地方治安のために守っていくことは必要だ、何も重い罰さえつければいいという趣旨ではないのです。  そこで大臣に申し上げますが、これは先ほど来警察庁長官に対する質問等でもおわかりになっていると思いますが、このあっせん案が出ましてから、争議は終結しましたけれども、なお毎日人権侵害事件が起り、暴行脅迫もあるという状態で、非常に暗い冷戦状態というよりは、やや程度を越したもののごとくに考えられる事態なのです。それに対して法務大臣は、人権侵害に対する人権擁護の大きな責任を持っていらっしゃいます。それから犯罪事件に対してこれを処理するという責任者でもありますから、そういう事態の上に立って、何か特殊な御決意なり御方針なりがおありになれば伺いたいと思うのです。親告がないから何もないのだ、人権侵害も犯罪行為もないのだというふうに簡単に片づけられない問題が苫小牧にはあると思いますので、特に御質問申し上げるわけです。
  29. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 御意見は私もよくわかるつもりでおりまして、ただいまさらに重ねてのお尋ねでございますが、たとえばこれは親告罪の例をとりましても、かりに当事者の告訴があり、起訴後それがかりに取り下げられるという場合であっても、公訴権は消滅しないというようなことから考えても、やはり法の秩序を的確に維持するという点から申しますれば、中労委のあっせん全体の気持は、政府としましても、もちろんこれは尊重すべきものと思いますが、そこにはやはり一つの残された私ども立場というものがあるという趣旨を申し上げたつもりでございます。  それから、人権の擁護の点から見ましても、かりに事件は刑事事件として片づきました場合におきましても、やはり先ほど申しましたように、一つの大きなサンプルでございますから、災いを転じて福にするという意味からいっても、その原因が那辺にありや、あるいはいかなる事態がその後も引き続き起っておるかということについては、常に重大なる関心をもって、徹底した調査というものをやって、われわれとしての一つの心証を持ち、また将来のいろいろな政策の面にも反映していくようにしなければならぬ、抽象的でございますが、こういうふうな態度で私はいくべきであると考えておるわけであります。
  30. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 中山あっせん案については、何らの連絡もないしということで、これとはほとんど関係なく検察陣が処理するというお話なんですが、そうでなくして、先ほど私が申し上げたように、非常に大きな関係、影響というものがあるわけであります。やはり中山さんあたりとよく話し合って、ほかに条件もありますが、しかし検察の面、人権擁護の面というのも大きな問題なんですから、それらがうまく調和されていくところに解決の道があるように思える。だから、検察というもの、人権擁護局の働きというものが一人歩きでもいかぬと思えるのですし、ただ末端の事務当局にだけまかしておいたんじゃ、これまた根本的な解決方法にならないと思うのです。私はこの前の委員会で、委員長にも、中山さんあたり呼んでいただくように御配慮願うということを要求しておきましたのですが、われわれの気持としても、この中労委のこうしたあっせん案というものは、よほど専門家がいろいろ研究なさって出たことでしょうから、お伺いをし、それが検察関係あるいは警察関係等にどう影響するのか、向うとしてはどういうことを考えておられるか、やはりそれが必要のように思うのですが、大臣からそういうふうなお気持でもって、中労委あっせん案に関して話し合いをされる、そういうふうなお考えはありませんですか、どうでしょうか。
  31. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 前段にお話しいただきました点については、私も十分考えて善処いたしたいと思います。これはしかし何といいますか、法務大臣としての立場で十分研究すべきことであると思うのでございまして、個々の案件に対する検察権の発動それ自体にかりにも制約がかかるというふうな取り上げ方はすべきじゃない、こういうふうに私は考えるわけであります。
  32. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 次には人権擁護の問題でありますが、先般法務省から人権擁護局の斎藤さんが現地へ行って、いろいろ調査なさって、委員会においてもその報告があり、なお後日書面等によって、詳細、正確に御報告があることになっておりました。大臣もすでにお聞きになっておることと思うのでありますが、犯罪事件よりもはるかに多くの人権侵害事件があったように私ども承知いたしておるのであります。こまかいことは別にいたしまして、非常に人員不足、予算不足で、苫小牧でいろいろたくさんの事件が起ったけれども、われわれではどうにもならない、ごくわずかの事件を調べてみたという程度のことなんです。せっかく人権擁護局があって、りっぱなお仕事をなさる建前にはなっておるのですけれども、さっぱり効果が現われない、そこで今申し上げたような点で、苫小牧の実情から見て、人権擁護の建前からやらなければならぬことがたくさんあるのが、人員その他予算措置等でやれない。そこで、将来一体人権擁護局の問題、人権擁護に関する事務の問題について、このままでいいのか、もっと別なお考えがおありになるのか、それをお伺いいたしたい。
  33. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 この点は全く御指摘の通りでございまして、これは率直に申し上げるのでありますが、この苫小牧事件についての調査につきましても、実は年度末にもなって参りまして、まことに旅費にも苦労してひねり出さざるを得ないような状態でございます。人権擁護の問題が非常に大切なことであるので、三十四年度の予算におきましても、いろいろと苦慮いたしたのでありますが、最近の経験から申しまして、人員をふやすということももちろん考えました。しかし、それよりも、現在開設以来もう十年になんなんとしているわけでございますが、少くとも今本省の人権擁護局におる者、あるいは地方法務局に配属されておる人権擁護部の連中に、事件がどこで起るかわかりませんものでありますから、一番大事なことは、さしあたり旅費を増すことであるというふうに考えまして、三十四年度の予算でも、わずかではございましたが、ある程度の予算を計上することにいたしたわけでございます。しかし、これではとうてい満足すべき状態ではなかったのでありますが、私の感じといたしましても、法務省は従来全体としても非常に予算に弱いところでございましたので、三十四年度の予算でも増さなければならないと思われるところが非常に多岐にわたりましたものでありますから、自然そういう関係から、人権擁護局関係予算がとうてい満足すべき状態にふえなかったということは、まことに私も責任を感じているような次第でございます。まああらゆる機会に人権擁護の大切なことを国民的にも御理解を願って、今後人権擁護局を中心にする政府の機構の充実ということについては、画期的な努力をし、かつその成果を上げたいと考えておるわけであります。  実は、少しわき道になりますが、今六千数百人の人権擁護委員の方々が活躍されておりまして、これは各地方の末端におきましても相当の信頼を得るようになりました。この人員も相当多くふやそうかと思ったのでありますが、この六千数百人のうちの相当の部分の方は非常に信頼を受けておられるような方々でありますので、これらの方々が末端のところにおいて、たとえば協議をする、会合をする、あるいはそれに出かけて参ります等についても相当の補助をいたしたいということで、これもわずかのことではございましたが、若干の配慮は予算の上にも現わしたのであります。なおまた政府自身の足らざるところは、従来もそうでございますが、市町村等にも相当の援助を受けて動いてい錢ようなわけで、これは私はあくまで本筋ではないと思っておるわけでございますが、何らかの形で、三十四年度におきましても、いろいろの工夫によりましてこれらを解決して参りたいと考えておるわけであります。
  34. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 時間も参りましたから、最後に一つお尋ねしておきますが、今の人権擁護の問題に関して、苫小牧では毎日々々人権侵害行為があるというふうに言う人もあるのです。それは少し誇張されておるかどうか知りませんが、とにかくいろいろの資料によれば、犯罪行為もあるが、それよりもさらに多くの人権侵害行為が行われておる。ところが、人権を擁護する立場にある法務省で、人手が足りない、予算がない、どうにもならぬと言う。それでは問題は解決がつかないわけです。それから、人手が足りない、予算がないというので、ただ消極的な態度をとっていたのでは、先ほどもちょっと申し上げましたように、被害者側が申告する勇気すらなくなってくる。後難をおそれて、その他の事情で——それでは人権侵害行為が、具体的に果してあったのかないのかわからぬことになる。細々とした仕事のやり方で、現われたものだけが、日本国内で、あるいは苫小牧に例をとれば苫小牧で、あれだけしか事件がなかったのだということになったならば、幾ら予算要求されても、その程度のことなら、それでいいじゃないかということになる。だから、人権侵害事件はかくかくあるのだが、調査すればこれだけあるのだけれども、人手が足りない、予算が足りない、それで解決がつかないで困っておるのだということを具体的にはっきりすれば、また予算措置の問題もあるでしょうけれども事件があったのかないのかわからないで、あいまいになっておるのじゃいかぬということです。  そこで、この前の委員会人権擁護局長からもお話がありましたが、これから綿密に調査して、苫小牧における人権侵害事件の処理をし、将来そういうことのないように非常に努力しようという決意を述べられ、大臣にも御連絡があったと思うのですが、齋藤さんも、現地でいろいろその連絡がつくような道を講じておられるようですが、どうも泣き言の多い法務省において、果してそれがうまく解決できるかできぬか、やや私ども希望の持てないような気持がするのですが、この際大きな問題に直面されたわけですから、一つ徹底的にやってもらいたい。こういう事件があってもこれだけしかできぬ、それで、この問題を解決するために、将来はいろいろと、予算措置人員措置、機構上の問題も考えなければならぬことになると私は思うのです。人権侵害問題は非常に多くなっておりまするが、私は、人権ほんとうの尊重、人権の擁護ということが大切だと思うのです。だから、この際この問題について、今度は新しい考え方から——今までは、占領時代に向うから押しつけられたような面で生まれた制度も若干ありますし、人権擁護問題なんかも、当初はややそういう傾向もあったように思うのですが、そうでなくして、今度はほんとうに自主的に、今の日本の実情等から見て、国民の人権侵害があり、これを擁護することが大切だということでもって、やはり法務大臣のなさる仕事の新しい芽だと思うのです。法務大臣が青少年問題についていろいろ御心配になっておるということは、私ども非常に敬服いたしております。大いにやっていただきたいと思うのですが、国民全体の人権擁護に対してもっと熱を入れる、もっと新しい構想のもとに、機構の点においても、またたとえば人護擁護審査に関するいろいろの手続の問題にしても、しっかりとした制度を打ち立てて、世間の要望に沿い得るようになされんことを要望いたしますが、法務大臣、そうなさいますか、どうですか。
  35. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 この点は、非常に御激励いただきましてまことにありがたいのでございますが、ただいまも大いに御激励いただきました通りに、実は私も考えておるのであります。一、二申し上げますと、たとえば、昨年は、ちょうど世界人権宣言の十周年記念に当っておりまして、法務省にはそういう関係予算は全然なかったのでありますが、特に内閣を動かしまして、今の程度では、列国に負けない程度の人権擁護十周年記念の大会を東京に持ちまして、全国人権擁護委員はもちろんでございますが、その他各方面に呼びかけまして、人権擁護のいかに大切であるかということについての啓蒙の一助にいたしたつもりで、その成果は相当上ったように思っておるのであります。それから特に、現行の日本の憲法の前文あるいは各条に照らしてみましても、世界人権宣言の前文や三十条に盛られた思想というものが、非常にはっきり取り入れられているように思うのでありまして、こういったような点も、当時の事情は別といたしまして、非常に喜ぶべきことでなかろうか。特に人権宣言が国連で採択をされる前に、むしろ日本の憲法にはそういう趣旨が取り入れられてあったというようなこと、それから人権擁護委員法というようなものを中心とした現行の政府の人権擁護に対する機構については、私はやはり世界的に注目すべき制度であると思うのであります。今のところはこれだけの制度ができておるだけでありますが、その制度だけの立場でいえば、これは相当よくできておるのでありまして、要するに、今後はそれをいかに活用するかということで、結局金の問題に帰着すると思いますから、この点は、先ほど来申し上げておりますようないろいろの工夫をこらしまして善処して参りたいと思うのであります。  それから具体的な案件の取り上げ方については、御指摘のように、どこで人権侵害が行われているかということは、日夜、おそらく現在の瞬間においても、どこにあるかもわからないわけでございますが、苫小牧のように——これは私の私見でございますが、おそらく類型的な事案が相当あるのじゃないかと思いますから、そのうちのモデルになるようなケースについて、少くとも積極的に詳細に調べるということが、まずさしあたりの要務ではなかろうかと思います。ところが、実際この調査に当る係官の所見を聞いてみましても、人権擁護問題くらい人間の心理とも申しますか、微妙複雑なものはないようでございまして、これらの点について、その衝に当っておる者の苦心というものは、われわれ非常に高く評価しなければならぬと思うのであります。いろいろ泣き言が出るというお話もございましたが、一面に泣き言も出ざるを得ないと思いますが、しかし、私の見ておりますところでは、人権擁護に当っておる係官の意気といいますか情熱といいますか、これは一つ高く買っていただいて、なおこの人たちに大いにふるい立つようにみんなで御支援をお願いいたしたい。また同時に人権擁護委員をお願いしておる方々は、私の見ておりますところでは非常に熱心で、特に昨年のその大会以来その意気も上っております。また責任の重大なことも考えておりますので、決してぐちを言うだけで投げやりになっているということは私は万々ないと思いますけれども、なお一そう私どもとしてもこれをさらに刺激し、大いに活躍してもらうようにこの上とも努めたいと思っております。
  36. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 最後に一つ苫小牧の現状を見られて、人権擁護の立場から、もっと調査を緻密にして、そして積極的に大いにこの解決に当るという御決意があるのかどうか、そこを一つお尋ねしまして私の質問を終ります。
  37. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 その決意を持って当りたいと思います。
  38. 小島徹三

    小島委員長 志賀義雄君。
  39. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 きょうは公安委員長の青木国務大臣にも御出席を一週間も前から願っておったのですが、自分は何も事件の内容がわからないから、出たってしょうがないだろうというようなことを言われたそうであります。現に亀田得治参議院議員の質問に対しても、青木公安委員長答弁しておられないのです。警察庁の書いたものを棒読みにされたのでなければ、——委員長の方から明日はぜひ出るように督促していただきたいと思います。いいですか委員長。にやにやしているだけじゃわからない。
  40. 小島徹三

    小島委員長 よろしゅうございます。
  41. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 この前法務大臣も警察庁長官もおられなかったところで、江口警察庁警備局長が非常に重大な発言をされたので、まずそのことから質問いたしたいと思いますが、警察が共産党を警備情報調査活動の対象とすることは、破壊活動防止法が出るときにも非常に問題になりまして、警察はそういうことはしないということになっておるのであります。公安調査庁自体の情報調査活動も、法律に規定した以上のいろいろな越権行為をやっているのでありますが、警察が共産党を対象として警備情報調査活動をやるという決定は、警察庁長官、いつされたのでしょうか。国会でそういう答弁を聞いたこともないし、また先日江口警備局長のお話では、それがいつ決定したか知らない、いずれ次会にお答えします、こういうことでございました。いつそういうことが決定されましたか。
  42. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 共産党につきまして情報を収集するということは、これは共産党が少くとも暴力革命主義を捨て去っていないということになりますると、治安の維持を責務とする警察といたしましては、これについて情報を集め、その動向について視察するということは、私は当然のことであろうと思うのであります。これがいつきまったか、また国会においてそういうことを聞いたことがないというお話でございますが、すでに斎藤長官の時代から、そういうことは国会でも答弁をいたしておりまするし、警察としては当然の責務でありますから、あらためて何月何日にそういうことをやることに改めたという筋のものではございません。
  43. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 前会の江口警備局長の答弁と、今のあなたの発言に関連して質問いたしますが、共産党は「いずれの日か暴力革命をやるということを企図している団体だ、」と、こういうふうに江口警備局長は言っておられます。共産党の方針というものは、大会できめた方針あるいは行動綱領、こういうものによってきまるのであります。現在共産党は最大限綱領ともいうべき基本綱領は持っておりませんが、昨年の大会で、行動綱領と政治上の方針はきめておるのであります。われわれ共産党の幹部といえども、大会で決定したことは、ちゃんとそれに従ってやるのであります。そこには暴力革命をいずれの日にか企図しておるということを書いてもないし、考えてもおらないのでありますが、一体何を根拠としてこういうことが言われるのでしょうか。その点、根拠を明らかにしていただきたいと思います。
  44. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 共産党の第七回大会におきましても、平和革命方式をとるか暴力的な方式をとるかは、情勢いかんにかかっておるということをいっておるわけであります。従って、暴力革命一本やりでいくということは表面出ておりませんが、そういうものがいつ暴力革命方式をとるようになるかということは、非常に国の治安に重大な関連を持つわけでありますから、そういうことであるかどうかということを十分に視察することは、当然警察の責務として行うべきものと考えております。
  45. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そういう勝手な解釈をされては困ります。共産党は今日、「世界の社会主義と平和・独立の勢力が画期的に大きく成長した世界情勢のもとで、」しかも「今日の憲法が一応政治社会生活を規制する法制上の基準とされている情勢では大衆闘争を基礎にして、国会を独占資本の支配の武器から人民の支配の武器に転化さすという可能性が生じている。」共産党は非流血的な方法で革命をやることを望んでいる、こういうようにはっきり書いておるのであります。これは綱領問題のところでありますが、なお政治報告の方では、「憲法改悪を阻止し、人民の民主的権利と民主的教育をまもり、国の政治を徹底的に民主化するためにたたかわなければならない。」そしてその中には、第一に、「憲法改悪の阻止、人民の民主的権利を制限するあらゆる法律、命令の撤廃、」こういうこともあげてあります。第二には、「党と労働組合、一切の民主的運動にたいする弾圧に反対し、警察政治と思想警察の廃止、政治活動と労働組合活動の自由のためにたたかう」こういうふうになっております。そして今長官の言われたことに関連して言うならば、私どもの方で暴力革命をことさら意図するということは全然ないのです。警察なりあるいは軍隊なりが暴力を加えてくるとき、そのときには正当防衛の観点から、国民に対して対抗することを明らかにしなければならない、こういうことをいっておるのであります。情勢次第によっては、そういうばく然としたことではないのであります。この立場からすると、あなた方が共産党を暴力革命をいつの日にかやる団体であると言うことは、警察庁長官であるあなたとして、必ず自分の方から暴力を加えることを予定しておられるのですか。問題はそこへ転化する。それを伺います。
  46. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 ただいま志賀さんお話しの、平和的に革命を遂行するということを念願しておる、そうなれば一番思うつぼであるかもしれませんけれども、そうならない、情勢の変化によっては暴力方式も辞さないということは裏にあるわけであります。それから民主主義を尊重するというけれども、私の理解するところでは、共産党のいわれる民主主義というものは、立憲政治のもとにおける、議会政治のもとにおける、いわゆる自由主義者のいう民主主義ではないと思う。今お尋ねの、警察が暴力をふるうというようなことは毛頭考えておりません。警察不法を予防し鎮圧するということでありまして、不法というものが前提にあって初めてこれを鎮圧するということになるのであります。警察が暴力をふるうというようなことはとうてい考えられないのであります。
  47. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 先ほど高橋委員の方からも、王子製紙争議で質問がありました。警察庁長官は記憶のいい方だから、忘れてはおられないと思いますけれども、洗たくデモのようなこともやってくる、こういうことを言っておられますね。しかしながら、あれは実は警察が手本を示して教えたことです。砂川事件のときに警官隊がかきを作って、たとえば参議院議員の安部キミ子さん、これに洗たくデモをかけて、安部さんひどい目にあっております。警察が模範を示したことになっているのですがね。高橋君はそういうことは御存じないと思うのですが、そういう先例はちゃんと警察が模範を示してやっていることです。それで、あなたは暴力を使ったことはないと言われるけれども、学生がデモをやったときに、新聞社や通信社の人に警察官暴行を加えましたね。あれはれっきとした証拠が残っておるでしょう、写真にまで。あれは暴力じゃないのですか。
  48. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 私が申し上げましたのは、警察が暴力を仕向けていくというようなことはあるべきでないという趣旨で申し上げたのでありまして、個個の警察官職務執行において、あるいは誤まったり、あるいは行き過ぎがあるということが、十二万の警察官の中に絶対ないという意味において申し上げたわけではございません。
  49. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 個々の警察官においてそういうことは云々と言われますけれども、私が質問をした暴行をした警察官に対しては、これをただ配置がえしただけで、同じ機動隊に置いているでしょう。役人でない場合、警察官でない場合に対しては、それを一々刑事処分に付するとかなんとかいうことになっておるが、警察官の場合には何らの刑事処分もないでしょう。そうなれば、個々の警察官の問題でなくなります。暴力をふるっても、それは個々の警察官がやったことだといって言い逃げをしてくれる、あとの処分はない、こういうことになります。刑事上の処分も何もない。それはあなた方が暴力を是認しておることじゃないですか。そういうことに対して、私ども共産党は反対しているのであります。そうすると、共産党は暴力革命を企図する団体だということ、これはあなたは公式に警察庁の見解として述べられるのですか。共産党の文書にはそういうことは一つも書いてない。あなた方だけがそれを無理にそうだと断定してかかられるのですか。先ほど申しましたように、あなたは肝心の点は答弁をそらしておられるけれども警察が暴力をふるわない限り、軍隊が暴力をふるわない限り、共産党がやるということはないのです。それが前提なんです。そのことは、昨年の党の大会の方針でもはっきりしておるわけであります。それなのに、あなた方の方で、どうしても共産党はやるのだと言われるのか、公式の見解として言われるのかどうか、その点をはっきり伺いたい。この点は重大なんですから、しっかり答弁してもらいたい。
  50. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 先ほども申し上げましたように、共産党は暴力革命方式を捨て去っていない、平和的方式でいくか、暴力的方式でいくかは情勢いかんによる、従って、いつ暴力方式をとるようになるか、注意をして見ていなければならない、こういうことであります。
  51. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それがごまかしです。情勢次第と言われるが、その情勢というのは、警察と軍隊が暴力を使う以外にはないのです。共産党は、一般に、情勢次第によっては、そんなあいまいなことはいっておりません。その情勢というのは、警察、軍隊、これが暴力を使ってくるときなんです。その場合には——これは憲法に規定された当然の国民の権利でありまして、共産党だけのことではないのです。だから私がお聞きするのは、その情勢次第というのは、今申した通りであるが、いつ暴力を使うかというのは、換言すれば、警察、軍隊がいつ暴力をしかけてくるかということであります。そうすると、あなた方は警察が暴力を必ず使うということを予定されておるのですか、その点御答弁を願います。
  52. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 先ほども申し上げましたように、警察不法を鎮圧するという責務を持っておるわけであります。だから、共産党員が法に触れるにとをしない限り、警察はこれに対して取締りは行わない。ところが、おそらくあなたは、警察が暴力をふるうというその暴力は、共産党員に対する取締りということを暴力と解釈されるのだろうと思う。共産党員は何でも法律に規定された禁止の行為をしてもよろしい、それは正しいのだ——それは共産党員が考えれば正しいことかもしれませんが、憲法下における民主主義の国民は、これを正しいと思わない。その、国民が正しいと思わない、法にきめられた禁止の行為、刑罰行為をあえて行なった者を取り締る、その取り締る行為は暴力だ、それで暴力方式をとるということになれば非常に危険千万なことだ、私はそういうふうに思います。
  53. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 どうも話を二つこんぐらかしてごまかしておられますが、いつの日にか暴力行為をやる、暴力革命をやるということと、一般に不法ということを言われる。この不法のことについては、警察自体の不法のことをあとで質問しますが、私が今質問していることは、あなたも答弁された通り、共産党は情勢次第で暴力革命をやるという、そのことを聞いているのです。一般に、不法の問題については、山ほど質問の材料はあります。岸首相の答弁も引用してあとからあなたに伺いますが、そうではなくて、私の伺いますのは、不法一般のことではなく、共産党が情勢次第で暴力革命をやる団体だから、警備調査活動の対象にしなければならないと言われるが、その情勢次第というのは、警察と軍隊とが暴力をふるってくるときだ。だから、あなたがどうしても暴力革命をやる団体だ——この前江口警備局長が言明しておりますし、あなたも今それと似たようなことを言われたけれども、そういうふうに考えておられるのか、不法一般の問題はあとで聞きますから、そこへ話をそらさないで答弁していただきたいと思います。
  54. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 私は話をそらせる気持は毛頭ないのでございまして、あなたが先ほど警察なり軍隊なりが暴力をふるわない限り暴力方式はとらないのだ、こうおっしゃった。警察なり軍隊なり——今軍隊はございませんが、自衛隊なりが暴力をふるうということは、一体どういうことを共産党員は考えておるかといえば、共産党についての取締りである。その取締りというものは、警察は法に従って取り締るのであるから、たとえば共産党で革命情勢をずっと伸ばしていく、そうして大衆の先頭に立って相当ひどいことをかりにやる、そうしたときに、これは取り締らざるを得ない。その取り締ってきたやつは、これは暴力なのだから、われわれも暴力方式に転化する、こういうことになるようなことを考えておられるのではないか。警察が暴力をふるったときにだけ暴力方式をとるのだとおっしゃったから、その警察の暴力と言われるのは、共産党の考えは、共産党員に対する取り締りではないか、こういうことを申し上げたのであります。
  55. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 たとえば、警察官が新聞記者をぶんなぐった、これは暴力だ、暴力反革命をやってきたからこちらも暴力革命をやるのだ、そんなばかなことじゃないのです。そういうことは無数にありますから——私の聞いているのは、不法行為とあなたが言われるようなことについては、あとでこちらから質問しますと言うのです。この前江口警備局長が言い、あなたもそれと同じようなことを言われたが、警察と軍隊とが暴力をふるってくる、そういうときに、これに対抗するということを言っているのです。あなた方の方では、そういう暴力を行使することを建前としてやられないと言われながら、共産党は暴力革命をいつの日にかやる、こういうふうに言われる。私の言うのは、それでは前提が成り立たないというのです。だから、私が聞くのは、個々の不法行為はあとで質問しますから別にしまして、共産党がいつの日か暴力革命をやる団体である、それを企図しておる団体である、こういうふうに公式に警察庁の見解として、政府の見解として表明されるのかどうかということを伺っておるのです。
  56. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 先ほどからたびたび申し上げておりますように、共産党は暴力革命主義を捨て去っていない、情勢いかんによっては暴力方式をとるおそれのある団体であるというふうに考えております。
  57. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 何度も申します通り、あなた方の方から暴力をふるわない限りということを言っておるのですよ。だから、その前提についてはっきりした限り、それはあなた方の一方的見解ですよ。これまでの革命を見ても明らかだけれども、社会主義と平和独立の力が強くなった今日ではなおさらその暴力さえ、われわれ共産党の立場としては、平和民主団体の立場としては、それをふるうこと自体を前もって阻止するような行動に出るのです。そういう方針をとっておるのです。でありますから、情勢次第では——あなたが何度言われても、その情勢というのは警察と軍隊が暴力をふるうときだ、こういうことになるのです。私どもはそれを警戒しなばけれならないと言っているのです。今までの問答を繰り返してきたところでは、あなた方がやはり暴力的に攻撃することをちゃんと意図しておるとしか思えないのですが、どうですか。
  58. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 何度申し上げても同じでございますが、警察不法を取り締る、決して暴力を行うということはあるべきものではない、従って志賀さんの言われる警察が暴力を行うときというその暴力というのは、共産党員の不法を取り締る、それが激しく不法を犯すようになった場合は激しく取り締らざるを得ない、そのときに、これは警察が暴力をふるってきたのだから暴力方式をとらざるを得ないというふうに、情勢判断をされるおそれがあるということを申し上げておるのです。これは何度繰り返しても同じことと思います。
  59. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それではもう少しほかの質問を進めた上で、今の問題を明らかにします。  去る二月十七日の参議院決算委員会で、岩間正男参議院議員が、今度問題になりました大阪の平野署のスパイ事件、これについて質問をいたしました。そのときに二つの質問をしております。一つは、警職法反対闘争についてであります。これは拾われた文書を記載したものでありますが、これによりますと、現職の警官が、警職法に絶対反対しろということを言っておるのであります。その点について警察の方としては、警職法は民主主義を弾圧するものだから、これを絶対に阻止するようにやれというようなことを指示されたのですが、警察庁長官は、国会においては、警職法はぜひ通さなければいけないのだと言われておる。あなたの部下は、警職法は民主主義を弾圧するものだから、これに絶対反対をするようにと、大阪の全逓支部でそういうふうに方針を出しておる。これはどっちがほんとうなのですか。
  60. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 私は、警職法は現在でも、ああいう趣旨の法律は必要であると考えております。そういう建前からいたしまして、警察庁からあれに反対しろというような指令をしたことは、絶対にございません。
  61. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 ところが、警察官がそれをはっきり言っておるのです。昭和三十三年十一月八日の文書であります。大阪平野署の文書でありますが、警察官が協力者、つまりスパイのことでありますが、作業員がこの協力者に説明するには、「警職法改悪案の改悪要点を説明し、ひいては警察国家の両現であり、治安維持法の復活であるという点に結論を導くよう指導すること。但し、此の場合でも、ながながと……」「説明するのではなく、直接労働運動に関係ある条項について……」意見を求めながら、座談的に話して「民主勢力に対す反動の不当な圧迫だ、飽くまで闘わねばならぬ」と怒りをぶちまけるような態度で結ぶよう指示すること。」こういうふうに言っておる。あなたの部下の今の警察官は、あなたが今言われているのとまるっきりあべこべのことをスパイにやらしておるのです。あなたは今、警職法は正しかったと言われる。ところがあなたの部下は、弊職法というものは警察国家の再現であるということを、労働組合の中で盛んに宣伝しろと言っている。何のためにこういうことをやらせるのですか。
  62. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 そういうことをやらせる考えはございません。しかしながら、大阪のその事件は、おそらく協力者——これはできるだけ共産党内の情勢を正確に把握するというために、そういう協力者の工作の方便としてそういうようなことがやられたかもしれません。これは共産党員として言いそうなことを言って近づくということだろうと思います。
  63. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そうすると、警察官は、共産党の言いそうなことを言って、そうして事情を把握するためにやるというのですね。ところが、岩間議員の質問に対して、岸総理大臣は、「その事実は全然承知いたしませんが、もちろん、私は、もしもそういうことが事実あるとするならば、それは政府の方針でないということは言うを待たないと思います。」と答弁しておられる。そうすると警察庁長官は、部下の人がこういうことをやっておるのは、政府の方針に沿っておるとお考えなんですか、どうなんですか、その点を伺いたい。
  64. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 警察官はそれぞれ任務を分担しておるわけでありまして、おそらくその警察官は、協力者にできるだけいい働きをしてもらうという熱意があったあまり、そういうことをやったのだろうと思います。
  65. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 あなたの言われているところから考えると、一方の警察官は、共産党なり労働組合員なりが警職法反対をやると、これを押えつける、他方、一部の警察官は、これは警察国家の再現だ、しっかりやれといって、労働組合——これは労働組合に対する指示ですよ。労働組合の執行委員に対する指示です。そういうことをやって、一方ではあおってやらせておいて、他方ではつかまえる、そういうことになりますが、そういうことは政府の方針でないと、岸さんははっきり言っている。あなたの今言われることを伺うと、当然のことのように言われますが、そういうふうに、一方では扇動して、他方ではその結果、労働組合員なり共産党員なり社会党員なりが活動したら、それをつかまえる、こういうことになりますが、そういう方針でやっておられるのですか。
  66. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 おそらくその警察官の行動も、労働組合にそうしたことを扇動するということが目的ではなくて、共産党に近づき安い素地を作るということに主眼があったと思うのであります。
  67. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そういうふうに、場合によってはあなたのいわゆる不法行為で、刑事上の問題にもなるようなことまでもして、共産党員に近づいていいのですか。そういうやり方は、ジェスイット的な目的は手段を正当化する——警察国家というものはそういうところに本質があるのですよ。今のあなたの答弁でわかることは、そういうことで警察がやることは何をしてもよろしい、こういうことになるのでありますが、あなたはそういう方針でやらしておるのですか。
  68. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 何をやらせてもいいということではないので、不法行為を誘発するようなことは、当然警察官として行うべきことじゃありません。しかしながら、共産党員に近づき安くするということは、何も不法行為じゃございません。
  69. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そこで問題が出てくるのです。岩間委員がなお質問しております。「共産党にこのようなスパイを作って入党させる、それを慫慂して、金をくれ、これを育成していく、こういうような方針は、これはどういうことになるんですか。」岸総理大臣が答えて言うには「もちろん、政府はそういう方針をとってはおりません。」、こういうふうに言っておる。さっきの岸総理大臣答弁、また今引用しました答弁からしても、あなた方のやっていることは全然政府の方針にも反しております。あなたはやはり共産党に近づくためには扇動をやってもいい、また金をくれて入党工作をやってもいい、スパイ工作をやってもいい、こういうふうに言われるのですが、岸さんはそれは決して政府の方針ではないと言っている。
  70. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 私どものやっておることが、政府の方針に背馳するとは考えておりません。ただ個々の警察活動について、あるいはわれわれの基本方針について、総理から指揮を受ける筋合のものではございません。
  71. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そうすると、何でもやっていいというのですか。
  72. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 何でもやっていいということではなく、とにかく不法を犯すようなおそれのある団体については、つぶさにこれを調査する必要があるという場合において、ある程度の方策を講ずるということは当然の手段であろうと思うのであります。
  73. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 今の答弁は非常に重大であります。つまり政府の方針には反しないが、一々総理の指示を受けないということで、政府当局も知らないようなことを警察がやっておる、こういうことになるわけであります。菅生事件の場合も、張本人の一人をかくまっておったが、政府の方は全然知らないのですね。それであのために、どれだけここで当時の法務大臣があやまったかわからぬ。公安委員長も頭を下げております。そこでさらに進んでお尋ねするのでありますが、昭和二十九年三月二十二日、第十九国会衆議院法務委員会で、当時の齋藤国警長官が、あなたは齋藤長官のときからやっておりますと言われるが、一体どんな思想を持っておるかということは調査をやる必要はない。従ってやっていない。憲法に思想の自由が保障されておるから、その自由を制限するようなやり方は憲法違反になる。共産党あるいは共産党という名がつくならば、何でもかんでも取り締るということではない。法律を犯してやろうという疑いが濃厚である場合に調査する云々ということを言っております。さらに重要なことは、共産党のいわゆる非合法による、すなわち暴力革命を推進しようという考えを持って活動しておらない、またそういう心配のない面に対しては、調査する必要がないと言っている。ここで最初の問題に返りまして、あなたは齋藤国警長官の時代からやっておられると言われるが、その当の齋藤君は、こういうふうに法務委員会ではっきり答弁をしておるのであります。ところが江口警備局長は、いずれの日か共産党は暴力革命をやるということを言明しております。あなたは、きょうは突っ込まれると不法行為を調べるのだと言う。そうして私が突っ込むと、情勢次第で、こういうことを言われる。共産党は、大会できめた方針に基いて行動する団体であります。従って、あなた方の方が暴力をしかけてこない限り、私どもの方が平地に波乱を起すようなことは絶対にやらないのであります。やり方を見ればわかる。岸総理がはっきりと、警職法反対、そんなことを警察官が労働組合の支部の執行委員に対して指示し、それをやらせる、そういうことは政府の方針でないと言い、またスパイに金をやって、これを共産党に入党させる、そういうことも政府の方針でないと言っている。あなた方は、やはり共産党は、あなた方の方に何らの原因がないのに暴力革命をやる可能性のある団体だ、こういうふうに断定しておられるが、今まではっきり説明しておりますように、われわれはそういうことを考えたこともないのです。考えもせず、また現在してもおらない。一体どこにそういう心配があるのですか。どうしても共産党に暴力革命をやらせなくちゃいけないという意図でもあるのでしょうか。スパイに金をやって入れたり、警職法は必要でございますと長官は一生懸命言うが、下の警官は、警職法は警察国家の再現だから、これに反対しろと言う。ほんとうのところ、共産党にどうしても暴力革命をやってもらいたいのですか。そこのところを伺いたい。
  74. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 暴力革命を起させないようにしたいと考えております。
  75. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 起させないようにしたいというのなら、あなた方がこういうスパイ工作をやったり金を使ったりしなければいいのです。現に法務省の人権擁護局長は、大阪の法務局から報告を受けておりまして、明らかに人権侵害の疑いがあるということを言っておるのであります。大阪の平野の警察署のやったことについては、先日法務大臣はおられなかったのでありますが、人権擁護局長からそういう報告がありました。この点について、スパイに金をやった、こういうことまでも言っておるのです。金を渡すについては、これは昨年の十一月八日の文書でありますが、報酬として二千円手交すること、手交に際しては種々協力を願って、交通費やその他の特に費用がかかるので足しにしてもらいたいと言って渡すこと、断わっても無理に渡してしまうこと、こういうふうにはっきり指示されておるのであります。こういうことをしてやっておることについて、人権擁護局長は、明らかにこれは人権侵害である、その疑いが濃厚であるということを言われたのですが、法務大臣いかがでございましょうか。
  76. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私も人権擁護局からの報告は聞いておりますけれども、ちょうど局長がおりますから、人権擁護局長から御報告いたさせます。
  77. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 今、志賀委員がお述べになりました点でございますが、私が六日でございますか、この委員会で、大貫委員に対してお答えをした内容は、上田という協力者に対して、本人が好まないのにかかわらず、共産党への入党を強要したという事実が疑われるので、その点が人権上問題である、そういう中間報告を受けたので、われわれの方でその事実ありやなしや、その点について今調査をしておる、こういうふうに御答弁をいたしたのであります。
  78. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 人権侵犯の疑いが濃厚であると言われたことについて私は伺っておる、そこを答弁して下さい。
  79. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 私が御報告申し上げましたのは、大阪法務局が本件について調査をした一種の中間報告を受理した、その中間報告におきましては、平野警察署のある職員が、上田という協力者に対しまして、共産党への入党を強要したという点について疑いが持たれる、こういうふうな報告でありました。それでこの点はやはりそういう事実がもしあるとすれば、人権上の問題と私は考えるのであります。けれども、その事実ありやなしやをその送って参りました資料に基いて今現実に調査をいたしております、こういう御報告を申し上げたのであります。
  80. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 ただいまの御答弁でありますが、この前大阪法務局から来たものについて、結婚妨害という事実が一つつありますね。これは人権を侵害したとはどうも思えない、こういう報告があったことについて、その点はなお疑いがあるから再度調査するようにしておる、こういうことでした。もう一つの今私がお尋ねしたことについては、向うからの報告もそういうふうになっておる、こういうふうに言われました。あなたは別に、それが疑わしいから再度調査するというような御答弁ではなかったのであります。
  81. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 私は、再度調査するとは申し上げません。送ってきました資料に基きまして、大阪法務局が入党強要があった疑いがあるという事実を認定いたしておりますが、その認定事実が果してその各般の資料に基いて認定できるやいなや、私の方で今調査、検討いたしておる、こういうことを申し上げたのであります。
  82. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 その点について法務大臣は、今人権擁護局長が申しましたような事実がありとすれば、これはどういうふうにお考えでしょうか。
  83. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私も、先ほど申しましたように、報告書は読んでおります。この問題は、たとえば結婚妨害の疑いがあるのではないかという点が一つの大きな問題であると思われたわけでありますが、これについては、関係者の供述書その他を見ましても、そういう事実はないと見るべきが妥当であるかと私考えたわけでございます。  それから今の共産党入党強要云々の問題については、一応そういう疑いがあるということが報告書に指摘されてあることは事実なのでございますけれども関係者の供述その他についてもまだこれはずいぶん調べてみなければ、はっきりした結論が、局長あるいは課長の立場においても言えないという、そのありのままを私報告を受けているわけでございますから、それらの点についてさらに調べた上でなければ、はっきりしたことは申し上げられないと思うのであります。  なお、先ほど高橋委員の御質問のときにも申し上げましたように、この人権擁護の侵犯の事実の有無についての取調べというのは、これは御理解願いたいのでございますが、実にこれはむずかしいので、まことに人情の機微に触れたようなところがございますので、調べたから、はい右から左に結論が出るというわけになかなかいかぬものでありますので、相当の時日や苦心が要りますことは一つ御理解いただきたいと思うのであります。従って、私どもも、これに軽々に、結論をこうだと断定し切るのにはなかなか大へんな仕事であるということもあわせて御理解をお願いいたしたいと思います。
  84. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 今、結婚の問題につきまして、その点について疑いがないということでありますけれども、この警察の文書によりますと、三十三年七月三十一日、これには佐藤署長、それから三浦署長補佐、それからそのほか係官が全体で五名、おのおの係長、主任、担当警察官の捺印もあるのでありますが、その中にこう言ってあります。「対象」——「対象」というのは警察の穏語でスパイのことです。「対象の結婚問題については、種々相談にのってやることは必要であるが、作業遂行の面から考慮して、破談になる方がプラスとなるので言動には特に注意すること。」つまり破談になる方がプラスである、そういうふうに指導ぶりも、そのやり方の言動については注意すること。それから八月二十五日には「結婚問題で相談をしたり、意見を求めたりすること。これは信頼と親密度を急速に高めるために役立つので、会議後にビヤホール等に誘うことが一番よい……」、同じく十一月二十一日には、結婚を破壊されて金をもらってスパイになっておった全逓の支部の執行委員のことであります。「又見合いをした。」何々に勤めている何々という人、名前も職場も出ておりますけれども、ここではあえてそれは申しませんが、これは前の結婚を破壊されたあとの二度目の見合いのときのことであります。これに対して北村という警察官の言うには、「〃君は男前だし女はいくらでもいるから別に焦ることはないぜ〜前回はうまく行かなかったのだから焦らずよく考えた方がよい″」こういうふうに言っております。さらにそのあとで、報告書には「結婚を見合はすよう方向へ」これはどうもごろが合いませんけれども、そのように書いてあります。「結婚を見合はすよう方向へ持ってゆくことが必要と思われた。〜結婚したら5、作業の障害となる——」、この5、というのは、法務大臣も御存じないでしょうが、やはり警察の符牒でありまして、入党ということであります。入党の作業の障害となるから結婚は見合わせるように、これは前後二回やられております。こういうことを実際やっております。  柏村警察庁長官に伺いますが、あなたの部下は、こういうふうに結婚までも破壊しております。そして、お前は男前だから、女は幾らでもいるんだから、今結婚にあせるなという下心は、ここにちゃんと出ておる。結婚するとスパイとして役に立たなくなるから、それで結婚をぶちこわせ、ただし、ぶちこわしととられないようにうまくやれ、これくらい悪らつなやり方はない。今の警察の正体をよく現わしている。これは一体どうです。これも個々の警官がやったことで、あなたの知らないことなのですか。
  85. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 結婚をなるべくしないようにというような内輪の話があり、そういう気持があったことは事実のようでありますが、現実に結婚を妨害したということはないように聞いております。
  86. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 今の柏村警察庁長官答弁でありますが、私が言った通り、結婚を破壊する意思はないなんて言わせませんよ。スパイ工作に差しつかえるから、結婚はさせないようにする、ただしそれを露骨にやらないでうまいことをやれ、こういうことを言っておるのです。れっきとした証拠があるじゃありませんか。証拠を突きつけられて、あなたごまかしたってごまかし切れませんよ。それではあなたの言うことは信用されなくなる。
  87. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 私が申し上げたのは、そういう意図があったようにうかがわれる、しかし、現実に結婚を妨害した事実はないように聞いておる、こういうことを申し上げております。
  88. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 きょうはこれまでにしておきます。
  89. 小島徹三

    小島委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後一時二分散会