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1958-12-18 第31回国会 衆議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年十二月十八日(木曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長代理 理事 福井 盛太君    理事 鍛冶 良作君 理事 田中伊三次君    理事 村瀬 宣親君 理事 菊地養之輔君       薄田 美朝君    辻  政信君       濱田 正信君    三田村武夫君       赤松  勇君    猪俣 浩三君       大貫 大八君    神近 市子君       田中幾三郎君    中村 高一君       志賀 義雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         警  視  監         (警察庁警備局         長)      江口 俊男君         法務事務官         (人権擁護局         長)      鈴木 才藏君  委員外出席者         検     事         (刑事局公安課         長)      川井 英良君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 十二月十七日  委員菊川君子辞任につき、その補欠として淺  沼稻次郎君が議長指名委員に選任された。 同月十八日  委員三宅正一辞任につき、その補欠として赤  松勇君が議長指名委員に選任された。 同日  委員赤松勇辞任につき、その補欠として三宅  正一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政及び検察行政に関する件      ————◇—————
  2. 福井盛太

    福井(盛)委員長代理 これより会議を開きます。  今日は小島委員長にはお差しつかえがありまするので、委員長の指定によりまして、私が委員長の職務を行います。  これより法務行政及び検察行政に関する件につきまして調査を進めます。  発言の通知がありまするので、順次これを許すことにいたします。  猪俣浩三君。
  3. 猪俣浩三

    猪俣委員 最初に人権擁護局長にお尋ねしたいと思うのです。人権擁護局において認めましたる事実に基きまして、あと法務大臣並びに警察関係の方にお尋ねしたいと思います。  先般、日本教職員組合委員長小林氏が重傷を受けた問題、その問題の究明をしたいと思うのでありますが、その前に、今問題を起しました森小学校中心の地帯におきましては、相当の人権じゅうりん事件がたび重なってあったはずであります。それは、昭和三十三年十一月二十日に、高知教職員組合の副委員長の山原君と高知労働組合評議会事務局長の国沢君が、今度問題を起しました暴力行為中心人物でありまする中越益繁ですか、これを含めましたる十人の人たちに対しまして、住宅侵入暴行傷害公務執行妨害、これらの罪名につきまして、詳細なる事実を具申して告発状高知地方検察庁須崎支部にすでに十一月二十日に出してあるわけであります。これはあと法務大臣にお聞きしますが、検察庁はこれを一体どう取り扱われたのか。すでに十一月二十日に告発をせられておりまする人物が、今回のあの不祥なる暴力事件中心人物になっておる。そこで、この告発状を読んでみますと、事実は驚くべきところの人権じゅうりん村民教職員に加えておるわけです。こういう事実につきまして、これは労働組合側告発状でありまするから、どの程度であるかは公平な法務省人権擁護局調査してあるはずであります。そうして、高知県の教育委員会におきましても、また地元の村の助役さんも明白なる人権じゅうりん事実があるということを明言せられておったのでありまして、高知県の人権擁護委員会活動せられたはずであります。そこで一体人権擁護局調査せられて出ました事実が、どういう事実があったのであるか、中間報告でもよろしゅうございます。私どもは、人権じゅうりんがあったとかないとか、結論を今直ちに人権擁護局長に求めるのではありませんが、調査の上で一体どんな事実があったということがおわかりになっておるかを、ここで御説明いただきたいと思います。それは、今回の小林委員長暴行事件以前の数カ月にわたりまする森小学校中心といたしました部落における不穏なるところの状態を私どもは知りたい。それに対して法務省検察庁はいかなる処置をとられておったかをあとでお聞きしたい。  そこでまず第一に、人権擁護局長から、人権擁護局として調査されましたる調査の結果を御報告いただきたいと存じます。
  4. 鈴木才藏

    鈴木(才)政府委員 お尋ねの点でございますが、人権侵害の事実については、去る十一月の二十七日に教職員の方から、これこれの村八分的なあるいは強制圧迫的な行為を受けたという申告がございましたが、まだその申告の事実が果して真相であるかどうかの結論を得ておりません。それで、こういう事実があったということを今ここで御報告申し上げることができませんのが非常に残念であります。もしも申告の事実だけでもよろしいというお考えでございましたならば、御報告申し上げてもけっこうであります。
  5. 猪俣浩三

    猪俣委員 その事実だけでもよろしゅうございます。
  6. 鈴木才藏

    鈴木(才)政府委員 内容の事実に入ります前に、どういう雰囲気のもとにおいてそういう事実が起き、そうして申告がなされたか、こういうことをまず申し上げないと片手落ちだろうと思うので、しばらくはまずその状況を述べさしていただきたいと思うのであります。すでに御承知かと思いますが、この仁淀村村立の森小学校と申しますのは、児童が約三百七十一名、教職員矢野一郎校長を含めまして十二名であります。そうして、同校教育父母の会、これが約会員六百名でありますが、本年十月二十七日夜、同校教職員に対しまして、翌二十八日の勤務評定撤回要求大会のための一齊休暇を避けるよう要望いたしたのであります。学校側はこれをいれませずに、矢野校長谷脇教頭を残しまして、校長の許可を受けず一齊休暇を取って、高知市における右措置要求大会に参加いたしたのであります。そのために、父母の会は、学校側が二度と闘争に参加しないというさきの誓約を裏切ったという怒りを持ちまして、右の大会に参加した教職員転退職、または日教組を脱退しない以上は、子供を預けられないという理由のもとに、授業をボイコットすることを申し合せまして、二十九日、三十名の児童——現在は脱落いたしまして二十二名でありますが、三十名の児童を残しまして、三百四十一名が同盟休校に入ったのであります。  その後、事態を憂慮いたしました村当局等の努力もむなしく、学校側父母会側の対立は次第に激化いたしまして、情勢は悪化の一途をたどったのであります。十一月五日午後四時四十分ごろ、父母会員約三百名は、学校職員室で他校の教員を含めた約五十名が協議しているのを見て怒り、全教職員学校から追い出しましたので、警察官十数名が警戒に当りましたが、翌六日父母会員約五百名は、かねて村教育委員会から貸与を拒否されていました校舎を占拠いたしまして、校門にピケを張って、教職員等の立ち入りを拒否し、児童の自習を始めたのであります。一方学校側におきましては、このままでは正常な学校運営ができず、身の危険を感ずると申しまして、同月七日夜高知市に引き揚げ、高知教育委員長らに実情を訴え、その措置を要望して、同月十日帰村して、翌十一日午前十時ごろ、オルグ四十名に守られて全員登校したのであります。  かねて学校側村教育委員会側は、互いに学校管理権を主張いたしまして、意見が対立していたのでありますが、村教育委員会は同会に管理権があるという独自の見解に基きまして、父母会側の要請をいれて、十一月十一日東校舎六教室を父母の会に一時貸与したため、父母会側代用教員七名を雇い入れ、翌十二日から授業を開始したのであります。同一学校におきまして、非盟休児童と二組に分れた変則授業をするようになり、現在に至っているのであります。  その間抗争状態にいろいろの消長はございますが、村教組は付近の仁淀中学校対策本部を設けまして、各種支援団体オルグ三百名を動員し、父母会側は五百名ないし千名を動員いたしまして相対峙し、緊迫した空気をはらんだのであります。そのために警察官七十名と消防団員三十名が警備に当るという事態を生じたのであります。感情の激するところ不祥事件がいろいろと発生いたしまして、父母会員十四名が県教組及び県総評から、公務執行妨害住居侵入暴行傷害罪告発され、現に警察検察庁において捜査中であります。これはただいま猪俣先生から御指摘のあったところであります。  本件事態の解決につきましては、現に県教組父母会側による授業排除校長学校管理権を主張いたし、父母会側父母の会による授業正当性と、校長を除く教職員十一名の配置がえを主張して譲らないのであります。  こういうふうな状況のもとに、次のような先生側人権侵害が起きておることが申告されておるのであります。たとえば、この十一月の十九日に西森幸俊という方が酒を飲みまして、十二時五分前に私宅をたたき起し、非盟休から盟休に即時変えろ、自分は酒を飲んでいなくても人一人殺すくらいは何でもないといっておどかされたというのであります。それからその他片岡フクオという方が、この十一月の二十日に県教組宣伝カーの話を聞きに行っておりましたときに、近所におりました山添という方と市原という方が、聞えよがしに大声で、もうまああの人らも森にはおらぬでええようになるね、先生らと一緒に追い出したらええわと言った。こういうふうにいろいろと日常の生活におきましていやがらせをやっておることが申告されておるのであります。それからまた、この十一月の二十三日ごろにおきましては、正常登校児童父兄先生たちの話し合いのために吾川郡の吾川村大渡に参りましたところが、午後四時過ぎに、一緒に行っていたある人たちが、長者川にかけられました。沈下橋と申しますか、その橋の上に父母会員三、四十名ぐらいおりまして、その中におりましたある人が、あとから急にかがんで襲い、スカートの上からではありましたが、腰部を下から突き上げるように握りこぶしで一突き強く突き上げた。だれだろうと振り返ってみたら、その父母会員の人であった。こういうふうにいろいろといやがらせをやっておる。どうしてもその町に住みにくい。こういうふうないろいろの事実を申し述べました申告が参っております。
  7. 猪俣浩三

    猪俣委員 本年の十月の二十九日に、この森小学校の全教員は、学校から追い出されておる。それから十一月七日には全教員生命身体に危険があるとして高知市に引き揚げております。こういうことにつきまして、その動機原因いかんにかかわらず、教員生命身体の危険を感じてその任地におることができないという状態、しかもそれが地域の住民の行動によって引き起されたということは、非常に珍しい事件だと思うのです。私は、人権擁護局といたしましては、これだけの事実がある以上は、ほんとうに生命身体に危険があったのかなかったのかということを徹底的にお調べなさる必要があるのではないかと思いまするが、あなたの御答弁では、いろいろな立場があって言い渋る点もあるかも存じませんが、どうもあまり詳細な御報告を承わることができなかったことは残念であります。これは現在においてもなお調査中でありますか、あるいは調査を打ち切ったのですか。それをお尋ねします。
  8. 鈴木才藏

    鈴木(才)政府委員 これはただいま申しましたように現地からの一応の申告に基きました報告がありましただけで、まだ調査をいたしておりません。今後こういう人権侵害の事実がございましたならば、また申告がございますれば徹底的に調査をいたしてみたいと思っております。調査をとめたわけではございません。
  9. 猪俣浩三

    猪俣委員 高知県におきます人権擁護、これは法務局がやっておると思いますが、そこでは現在でも活動しておるでありましょうか。もちろん人権擁護局というのは機構がはなはだ貧弱で、十二分なる活動はできないと思うのでありますけれども一体高知における人権擁護局、すなわち法務局はどういう活動をされたのであるか、その活動状況をお知りでありましたらお知らせ願いたいのであります。どのくらいの人員が出て、一体幾日くらい調査をやったものであるか。これは人権問題としては稀有な事件だと思うのです。学校先生がその村から追い出されて、生命身体に危険を感ずるというような状況というものは、これはもう人権擁護局は全力をあげて調査しなければならない。これは原因はいろいろありましょうが、原因はまたほかの機会において考究すべきことでありますから、人権擁護局としてはあまり政治的な原因なんということに興味を持たずに、どういう事実があったかということを徹底的に調査していただきたいと思います。それは社会党でも調査しておりますけれども、何しろ党というものは一方的な政治的めがねで見ておると世人に思われがちでありますので、私ども調査しておりますよ、しておりますけれども人権擁護局という公正な立場にある局の調査というものが権威あるものと存じて、まずあなたにそれを伺ったのであります。どうもあまりよく調査なさっておらぬようでありますけれども一体高知県における人権擁護局において、どのくらいの人員が出動して、何日くらい一体調査されたのであるか、その具体的事情がおわかりでありましたら、御報告いただきたいと思います。
  10. 鈴木才藏

    鈴木(才)政府委員 森小学校の件につきましては、どれくらいの人員が、どれくらい時間をかけて調査したか、まだ報告に接しておりません。ただ私の方といたしましては、さき高知県の檮原村における教員住宅くぎつけ事件、それからまた日教組脱退をしろというふうに強制圧迫を受けたという、近所小学校でありますが、そういう事件につきましては、相当徹底的に調査もいたしたつもりであります。何分にも人権擁護委員の数も少うございます。特に起きました場所が非常にへんぴなところで、高知地方法務局職員局長以下特に人権調査に当ります者が四、五名でございますので、不行き届きの点は非常に遺憾に思うのであります。森小学校の件につきましては、まだ徹底的な調査ができておらないように思うのであります。それで私の方では先日来電報を打ちまして、至急に徹底的に調査するようにという指令を出しております。まだその報告が参っておりませんので、きょう詳細な御報告を申し上げることができないのは非常に遺憾に存じます。
  11. 猪俣浩三

    猪俣委員 人権擁護局には、先ほど私が申しました十一月二十日出されましたこの仁淀村の十人ばかりの村民に対する公務執行妨害家宅侵入暴行傷害、この告発状は提出されておりますか、されておりませんか。それを参考としてお持ちになっているか、なっていないか。
  12. 鈴木才藏

    鈴木(才)政府委員 その告発状あるいは告訴状は私どもにはまだ届いておりません。地方の局では、刑事事件になりましたので、おそらく人権問題としての調査をまず控えておるのではなかろうか。まず警察あるいは検察庁においてお取調べになって、その事実が判明いたしましてからという気心があったかもしれません。
  13. 猪俣浩三

    猪俣委員 その人権擁護局態度ですね。こういう大きな政治問題のからんだような事件につきまして、警察は中立を守るというけれども、何としたって時の政権に非常に顧慮することはまた当然だと私は思うのです。そこで、やはり同じ政府機関でありまする法務省人権擁護局というものは、その意味において私は特異なる存在だと思うのであります。これは法務省自身とは全く異質なものがそこに入っておる。そこで今私ども状況調査資料としては、とにもかくにも人権擁護局調査というものが一等公平のものじゃなかろうかと思う。自民党自身調査におきましても、社会党調査におきましても、政府警察官捜査におきましても、これはどうも直ちに信用しがたい点が——信用してもいいのかもしれませんが、一応色めがねで見られる傾向がある。その意味におきまして、人権擁護局は、調査ということにつきましても、非常に私は権威を持たなければならぬと思うし、またそこに非常に意義のあるところがあるんじゃないかと思うんです。どうも機構が貧弱のためでもあるかも存じませんが、警察調査なんということになると、人権擁護局じゃ手をこまぬいて見ておるというような結果です。警察人権侵害したなんというようなことは、われわれの過去の経験で、絶対にみずからは言いません。これは幾らも事例はあるんです。あの東大の校舎、講堂へ学生を装って本富士の警察署が行って、学生警察手帳を取り上げられた事件があります。その警察手帳を全部写真に写してこっそり持っておったからいいようなものでありますが、その警察手帳は返してしまった。そうして彼らは一体国会へ来ての証言にことごとくうそを言っております。警察手帳は取り上げたから質問者材料が何にもないと思っておったらしいのでありますが、その警察手帳写真を出したところ、一ぺんに手をあげちまって、それを全部認めてしまった。ですから、警察官それ自身は、自分人権侵害事件なんというものを絶対に正直に言いやしませんよ。国会へ来てもその姿なんです。ですから、人権侵害があったかなかったか、警察官自身人権侵害も言わないし、また住民人権侵害をやったなんていっても、時の政府動向、すなわち勤評を実施しようという政府動向に沿った村民態度だとすれば、警察はそれについて人権侵害があったなんというようなことは言わぬ。これはもう明らかなことです。ですから、それは、この侵害を受けた者にしますると、実に心外千万なことなのでありますが、それを救っていただくのは人権擁護局なんです。ですから、警察捜査があろうがなかろうが、人権擁護局は擁護局独自の見解において、人権擁護のために調査すべきものだと私は思うのです。ところが、警察告発してあるから、警察活動かあれば手控えするということでは、私は意味がないんじゃないかと思う。その間に、われわれから見れば、警察によってみんな証拠を隠滅される。菅生事件なんというものがある以上は、警察を全面的に信頼せよなんといったってできませんよ。警察官共産党員を装って爆弾まで持って歩くというこの世の中です。あれだって事の真相がわかったから今日救われたのですけれども、天佑と申すより仕方がない。あのままでいったら、菅生事件というものば全部やみからやみに葬られまして、これは明るみに出なかったと思う。偶然かあの材料が出てきたために、これは警察がしかけたわなじゃないかということがわかってきたようなわけです。それですから、こういう人権問題に関する告発がありました際には、警察に先んじて人権擁護局活動していただくことが、私は人権擁護局本来の任務じゃないかと思うのですが、局長の御所見を承わりたい。
  14. 鈴木才藏

    鈴木(才)政府委員 法務省にございます人権擁護局に対しまして御信頼をいただきましたことは、私として非常にうれしく思うのであります。実は私は昨年二月弁護士からこの法務省に入りまして、まず驚いたことは、機構の小さいことであります。おそらく本来は個人個人の小さな人権問題を取り扱うための機構のように思われたのであります。従いまして、こういう集団的な大きな人権侵害事件が発生いたしますと、現在の人権擁護局あるいは地方法務局におきます人権擁護課職員、これは大体課長以下三名程度であります。それから全国人権擁護委員が六千五百人ほどおられるのでありますが、これらの方は本業を持っておいでになりますので、集中的かつ機動的に事件調査するには非常に不適当であります。個人的な人権の相談、あるいは小さな人権侵害調査される資格はございますが、こういうふうに警察の大きな問題になりますとか、あるいはたとえば先般起きました浦安の漁民の事件でございますとか、ああいうふうな非常にたくさんの人を調べなければならない場合におきましては、本省と東京法務局職員を全動員をいたしましても、調査が不十分であります。従いまして、私は警察に告訴され、検察庁告発されたような事件は、人権擁護局としてすぐ手をつけない、こういう方針は立てておりません。むしろ従来そういう傾向がございましたので、私はそれと逆な方向を指示しておるのであります。ただこの高知県の地方法務局では、いろいろの面から、まだ警察がその告訴事件について調査中であるというので、やや手控えたのではないかと私は想像するのであります。私の方針といたしましては、決して刑事事件になったものについては、もしも人権侵害事件がある場合に、人権擁護局として手控えろという方針はとっておりません。
  15. 猪俣浩三

    猪俣委員 そこでこの今日の不幸なる重大事件発生の以前に、もう村民教員に対する人権侵害事件が相当あって、先ほど申しましたように、本年の十一日二十日に住居侵入公務執行妨害暴行傷害、恐喝ということで検察庁告発しておるわけであります。その中に今日の中心人物でありました中越、これはナカエツと読むのですか、ナカゴシと読むのですか、この人物中心となって入っておる。このときに私は検察庁一体どういう調べをせられたのであるか、そこに疑問があるのです。ここで徹底的に捜査なされておるならば、今日の不祥事は起らなかったのじゃないかと私は思うのです。そこでここに第一項から七項までの詳細なる告発の事実、これはどれ一つとっても驚くべき暴行です。たとえば、今回の中心人物である中越は、森小学校父母の会の会長である。そうして、小学校を占拠して、父母の会において、児童団に私に教育を行う。小学校先生同校でもって音楽その他の正規授業を行おうというと、実力をもってこれをけ飛ばして妨害しておる。こういうようなことをやっておるのみならず、やはりこれらが中心となりまして、全治六日間等の傷害を与えておる。学校の女の先生が通れば、ズロースまでもみなまくり上げるという暴行をやっておる。こういうことが詳細に告発せられているわけであります。それは勤評に反対すること自体は、政治問題として是非曲直はきまりましょうけれども、いかなる理由があったといたしましても、学校教員に対しまして、地元の者がかような乱暴を働くということは許すことができない。文部大臣の昨日の答弁を新聞で読みますれば、教職員組合のやり方が悪いんだから、ああなるのは当然のごとくふらち千万な答弁をやっておる。おそらく地元人たちは凱歌をあげてますますやるでしょう。政府はわれわれの味方だ、何をやったって教員は赤で、きゃつらが悪いんだから、こういう信念を固めるだろうと思うんです。一体そういうようなことでいいのかどうか、私は深憂にたえないものがある。動機いかんにかかわらず、個人法規侵害侵害であります。これは、私は痛感したのでありますが、わが国民人権なるものの尊重の観念が希薄である。たとえば私がこの法務委員会で数年前に取り上げました鹿地亘事件でも、鹿地亘がアメリカの軍隊によって不法に監禁せられたというときには全国の同情が集まったにかかわらず、一たん彼がスパイをやった疑いでとらえられたということになると、あべこべに今度は鹿地を国賊呼ばわりし、その真相発見に対して努力している私に対してさえ脅迫状が来るということは、スパイであったかどうかを私ども問題にしたんじゃありませんし、スパイそのものを処罰する法規は現在日本にないはずなんです。私ども不法に監禁されたかどうか、たといスパイであったとしても、やみからやみに葬るような処置というものは人権じゅうりんである。それが法に触れるならば、正規機関においてこれを起訴し裁判をし、その結果死刑になりあるいは懲役になることはやむを得ませんけれども、不都合なやつだからといって、てんぐにさらわれたような形で一年有半もその所在を断つようなことについて、当法務委員会は糾弾したにもかかわらず、どうもスパイなら仕方がないくらいのことを堂々たる評論家が言うようなわが国民性である。そこで私は文部大臣発言は非常に重大だと思うんです。  そこで勤評問題——なるほど教職員の行動に対して私ども一から十まで是認しておるわけではありませんけれども、それはそれといたしまして、それだからといって、このリンチのごとき村民の行動というものは許すことができない。そこで私は法務大臣にお聞きいたしますが、これは十一月二十日に正式に高知地方検察庁の須崎支部の支部長検事あてに告発せられているんですが、これは現在までにいかなる捜査をおやらになったか、詳細に承わりたい。あなたは全部それを御承知ないかもしれませんから、その係の方でけっこうです。どういう御捜査を現在までやっているか、それを詳細に承わりたいんです。この告訴にも中心人物になっておる人物が、今日のあの乱暴ろうぜきを働きました中心人物なんです。われわれは、邪推いたしますれば、検察庁はほうっておいて、陰に陽に彼らの活動を見のがしておったんじゃなかろうか、それで政府検察庁警察はわれわれの味方をして、赤退治のわれわれに同情しているんだというような誤まれる認識を村民が持ったのじゃなかろうかという疑いもわれわれは持つんです。それですから、この告発に対していかなる捜査をされておったか。徹底的にこの捜査をされたなら、今日の不幸なる事象は起らなかったと思う。今日は、何でもない小林委員長が、数名の人を呼んで懇談しておった。そこへみずから酔っぱらって乗り込んできて、あめれだけの失明に瀕するような重傷を及ぼしたということは、許すべからざることであります。この告発に対していかなる処置をとられたか、詳細に承わりたい。
  16. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいまのお尋ねに対しまして、こまかいことは事務当局から補足をいたさせますが、大体のわれわれのとりました処置は、次の通りであります。  この告発は、ただいま御指摘のように、十一月の二十日に高知の地検の須崎支部に提出せられました。ところがこの事案はきわめて複雑でもあり、また御指摘のように非常に重要な要素も含んでおると認められましたので、特に高知の地検としては、本庁、つまり高知の地検本庁に移送させまして、ただいま高知地検自体が捜査に当っておるわけであります。最近に高知の地検から出ております報告によりますと、近く結論が出る模様であります。  それから、これもただいま御指摘のように、告発の事実は七つに分れておるのでございます。そのうちの第七にあげられておる片岡外一名の傷害事件については、すでに警察で取調べの上送検されておりますので、あわせて捜査中でございますが、これまた近く結論が出るはずであります。  検察庁行政の建前として、申すまでもございませんが、私といたしましては、まずもって高知地検の公正な捜査の結果を待ちたいと考えておるわけであります。
  17. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなたも御存じのように、教職員組合がこの暴行を受けました十五日、その方の問題はそのままにしておいて、十六日には一齊に教職員組合地方公務員法違反という理由で全部逮捕されておる。しかるにここに掲載されておりますことは、これはみんな刑法犯です。もちろん地方公務員法違反をこのままにしておれという意味じゃありませんけれども、これは日教組という大きな職員組合の機関決定に基いて、その所属の人たちが動いておる問題で、破廉恥罪でも何でもありません。それに対しては、全部逮捕しておる。しかるに、こういう傷害暴行——六日間の傷害を与えたなんていう事実がたくさん列記されておる。どれ一つ見ても刑法犯です。こういうものに対しては、一体逮捕したのかどうか。われわれは必ずしも逮捕しろと言うのではありませんが、検察庁の取調べが相当不公平じゃないか。もし教員組合のやることが不都合であれば、それを調べなければならぬでしょう。しかし、いかなる理由ありといたしましても、いやしくも学校先生が、機関決定に基く行動をやっておるのに、それに対して村民がこれを脅迫して誓約をさせたり、これを破ったと称して、暴行、脅迫を加える、そういうことは一体許すべきことであるかどうか。しかもこれは刑法犯です。それに対して一体どういう調べをしているのか私どもは不可解でありますが、一方の教職員組合については、学校先生は逃げも隠れもしやしません。それを全部逮捕しておる。一方は六日間の傷を負わした人間でもそのままにしておく。不公平じゃありませんか。あなたは一体どう考えますか。調べのやり方というものが、はなはだ公平を欠いている。それだからこの十五日のような問題が起ってきた。われわれの調査によれば、村の連中は、政府はわれわれの味方だ、教員というものはみな赤だ、赤を征伐するのだという意気込みだそうであります。検事の取調べや警察の取調べの中に、そういうような暗示を含んだ調べ方をしておったのではないか。表に現われたところでも、片一方は片っ端から逮捕する、片一方は逮捕しない。そこで承わりますが、一項から七項までの告発事実に関する人間を逮捕して調べた者がありますかどうですか。
  18. 川井英良

    ○川井説明員 告発の事実につきましては、ただいま大臣が御説明申し上げましたように、高知地検本庁において取調べを進めておりますが、今までの報告によれば、逮捕をして取り調べたということはございません。ただ事実がたくさんありますし、それから相当重要な内容を、この告発の事実の通りだといたしますならば含んでおりますので、相当な勢力をこれに当てまして捜査をいたしておりますが、御承知のように、たくさんの参考人等を呼び出して事実の証拠固めをしているわけでございますが、いろいろ関係者がほかの事件にも関係がありまして、検察庁が呼び出しをしたときに必ずしも出てきてもらえないというような事実もたくさんあるようでありまして、検事が地元に出張いたしまして、近いところへ来ていただいて、ひまを見て供述を求めているというふうなことのために、ある程度時間がかかっているというふうな報告になっております。私ども中央におきましても、高知事態が非常に重大化いたしておりますので、先般刑事局の検事を四国の方に派遣いたしまして、この事件捜査の進捗状況並びにこの一齊休暇闘争事件状況というふうなものについて調査並びに連絡をさせて、捜査の慎重をはかっているというふうな状況に相なっております。  それから、十五日に小林委員長に対する傷害事件が起きまして、その翌日に当ります十六日の早朝に、県教組の幹部に対する逮捕が行われたということもまた事実でございまして、時間の関係から判断いたしますと、いかにも不公平な処置のごとく考えられるわけでございますが、あとの方の県教組に対する十六日の強制処分の問題は、ただいま御指摘の地方公務員法の違反ではございませんで、十一月二十九日から三十日にかけまして教育長等を不法監禁したという容疑が出て参りまして、その間の申告やら探知に基いて捜査を進めておりましたところ、容疑が明らかになって参りましたので、不祥事件が起きる前から警察におかれまして逮捕状あるいは家宅捜索令状等を用意いたしまして、そうして十六日の朝にそれをやるということをきめておって、その捜査のあらかじめの計画に基いて捜査を断行したということになっておるようでございます。十五日のこと並びにその前のただいま御指摘の告発事件捜査と、それから十六日の県教組幹部に対する逮捕との間には、別に特別な意図とかなんとかいうようなものはなかったのでございまして、偶然の一致からそういうふうなことになったわけでございます。なお、告発事件につきましても、その後捜査が進展しておりまして、近く結論が出る、こういうふうな報告になっておりますので、その結論というのは今からすぐに判断はできませんけれども、事の進展状況によっては、いろいろ強制処分その他も考えられるのではないかと想像いたしております。
  19. 猪俣浩三

    猪俣委員 不法監禁したような事件で逮捕状を出した。ところがこの森小学校中心における仁淀村の不法監禁なんというものはざらにあるじゃないですか。ことにこの告発状に第二に列挙せられました野並という人は、左眼上部に全治六日間の傷害を与えられた。これは医者の診断書が出ているのです。それから第四のうちの第三項にあげられた関田軍司という人は、全治二週間の全身の打撲擦過傷の傷害である。これも医者の診断書が出ておる。第五にあげられたのは、やはり池添辰男という人に対して傷害を与えて、これは全治三日間の傷害だ。第七にあげられておりますのも、これは田村智正という人に対して全治六日間の傷害です。かようにいたしまして、実に明白な暴行傷害事件だ。かようなことをやっておる。しかも集団的にやっておる。しかるにその指導者幹部に対しては一切逮捕もしなければ、ろくに調べもしない。わずかに、今法務大臣の話によれば、第七の田村智正という人間に対する全治六日間の傷害だけは起訴したというようなお話である。この教員に対するやり方というものは、不法監禁なんということやその他の暴行はざらじゃないですか。そういうことに対しては不問に付しておる。そうして明白にこういう医者の診断をつけて——関田軍司なんという人は全治二週間じゃありませんか。こういう重傷を負わせている。こういう者たちに対しては一切逮捕もしない。これは乱暴な無頼漢ですよ。あるいは一部のボスに踊らされた無頼漢なんだ。こういう者の方が学校先生よりも大事だということになるわけだ。その者の自由を尊重したということになる。さような調べ方というものが一体ありますか。法務大臣の所見を聞きます。こういう明白に乱暴をやって、全治二週間なんという重傷を負わしておる、その証拠が歴然であるにかかわらず、これに対しては逮捕もしなければ何もしない。そうして、ある人を監禁した疑いありというようなことで学校先生だけは大量に逮捕してしまう。しかも、この反対運動の幹部と思われるような人をみな逮捕してしまう。こういうやり方が一体公平といえますか。それは勤評反対で政府の政策に反対することについては、政府としてはおもしろからざるものがありましょうけれども、司法権というものはある程度独立を保障せられておる。時の政治問題によって取扱いを二、三にしてはいけない。なぜそう言うかというと、今日のあの重大なる小林委員長に重傷を負わしたというような事件は、検察庁のやり方からきておる。ここに徹底的にこういう暴行をするものに対して検挙の手を伸べておったならば、こんなことは起らなかった。あなたの所見を承わりたい。
  20. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先ほども申し上げましたように、また私のかねがねの所見といたしまして、検察権の運用については、あくまで公正でなければならないということを私はかたく持して参りたいと思っております。先ほど川井公安課長からも申し上げましたように、この告発につきましては、十一月二十日これが提出されて以来、高知の地検といたしましても、最善を尽しておるわけでございますし、またその後に起りました事件につきましても、これは捜査中で、ここで具体的に告発状その他に基いて私としても意見を申し上げることはできないわけでございますが、今後捜査の進展によりましては、いろいろの具体的な事実が現われてくるかと思うのでございまして、そういう点について、こまかく逮捕するとかせぬとかいうようなことは、ただいま申し上げられませんけれども、あくまで公正に取り扱うように、今後とも十分留意して参りたいと思っております。
  21. 猪俣浩三

    猪俣委員 私の最後の質問ですが、このときに検察庁のやり方が、この暴行というものに対して徹底的に反撃をしていたならば、今回の事件は起らなかったろうと私は思う。それに対するあなたの所見はどうですか。
  22. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 猪俣委員がさようにお考えになり、あるいは御観測になっておるということは承わっておきますが、私はその御意見に賛成はいたしかねるわけでございまして、私どもとしては最善を尽してなおかつ起りましたこととの間に牽連性はないと考えております。
  23. 猪俣浩三

    猪俣委員 大臣はお急ぎのようでありますので、私はこの問題につきましては、大臣にいま一ぺん法務委員会においでいただきたいと思います。そのときにまた続いて御質問を申し上げたいと思います。大臣はどうぞお帰りをいただきたいと思います。  それでは私は、この問題との連関はほかの委員からあるかもしれませんが、かえて申し上げますことは、前の唐澤法務大臣のときには、何べんも質問いたしまして答弁を得ておるのですけれども、あなたが法務大臣になってから、私としてはまだ答弁を得ておらぬのであります。それは恩赦の問題であります。皇太子妃が決定せられまして、いずれ御結婚の成典があげられるだろうと思いますが、それに対して恩赦があるかないか。恩赦があるといたしましても、来年は非常に選挙の多い年であります。それでありまするから、選挙違反について恩赦をするかしないかということは、これは今から当局が決心をかためて言明しておりませんと、私はいけないと思うのです。唐澤さんの時分は、選挙違反は恩赦の中に入れないようにする方針だということは、たびたび繰り返されましたけれども、あなたになってから私は聞かないのです。これは国民の世論でもありまするし、この前のように政治資金規正法、選挙法違反なんていうものを恩赦の中に入れることは、国民に対して非常な不信を与えると思うのです。これはあなた一個ではもちろんできませんが、あなたは、法務大臣として閣議に相当な発言権がある。そこであなたの決心をお聞きしたいのです。恩赦があるかないかわからないが、あるものと予測いたしまして、公職選挙法違反をその中に入れるのか入れないのか、それを今はっきりなさっておかぬと、もう来年の一日から、知事選挙だ、参議院議員選挙だ、県会議員選挙だと、選挙の連続であります。そこで私は、選挙粛正という意味におきましても、ここに法務当局の断固たる決意を天下に表明していただきたい。あなたは、どこまでもこの恩赦の中にかような問題を入れないという決意であるかどうか、それを承わりたいと思います。
  24. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 恩赦の問題につきましては、私は前内閣並びに前大臣と全く同様の見解を持っております。  なおつけ加えて申し上げたいと思いますのは、恩赦を現実に行うとしても、その時期は相当将来のことになると思いますので、ただいま具体的にこまかい点にわたりまして、政府としてこう考えておるということを申し上げる時期がまだ熟しておらないと思います。ただ私申し上げたいと思いますのは、旧憲法当時と全く現在は違うのでございまして、恩赦というようなことを考える場合におきましても、これは皇室の御慶事であるから、昔の言葉で、いわばその御仁慈の気持によって国民に与えられるというようなものではなくして、こうしたおめでたい機会に刑事政策的にどう考えたらいいかということを考えるべきでありまして、従って、そんなに広範囲に行わるべきではなく、大赦というように、犯罪の名前をあげまして、これが根っからなかりしことになるというようなことは考えるべきではない、私としてはかように考えておるわけであります。
  25. 赤松勇

    赤松委員 ちょっと。  明日勤評の問題をめぐりまして、政治問題につきましては、社会労働委員会で内閣総理大臣に御質問することになっておるのであります。従いまして、私は、時間もお急ぎのようでございますから、最近起りました重大な人権侵害事件が一点、あとは純法律論として勤評をめぐる地公法違反の問題につきまして法務大臣の御所見をお伺いしておきたい、こういうように思うわけであります。  まず第一の問題は、本月初めに岐阜の地検に発生をいたしました事件であります。これはすでに法務大臣の方へ報告があったかと思いますが、金華山強盗の二重逮捕事件でありまして、これは何らの物的証拠なくして起訴をされまして、しかもその取調べの過程におきまして終始一貫否認したにもかかわらず、ついに検察庁がこれを起訴しました。そういたしますと、名古屋地検におきまして別の犯人を逮捕したところ、これが真犯人であることが判明をいたしまして、しかもその証拠が現われたわけであります。そこで名古屋地検におきましては、岐阜地検が直ちにこの誤れる不当な検挙を受けました被疑者を釈放するのではないかと考えておりましたところ、岐阜地検は容易にこれを釈放しない。そこで名古屋高検がその間調整をいたしまして、本月の八日、ようやくその無実の被疑者を釈放した、こういう事件があるわけであります。これは幸い別に犯人が現われたからいいようなものの、もしこのままになっておりますならば、何らの物的証拠なくしてこれは殺人罪で起訴され、公判に回り、重大な結果が生ずるわけであります。この点につきましては、岐阜の地検の検事正も大へん済まないことをした、こう言っております。また本人は死んでも死に切れない、この殺人犯として受けた嫌疑は一生ぬぐうことができないというので、切歯扼腕をいたしまして、ほとんど精神病者のような状態でおる。これは非常に重大な問題だと思うのです。片一方に犯人がしかも物的証拠のある犯人があがって、名古屋地検がそれを肯定しておるにもかかわらず、岐阜地検が面子にこだわってこれを釈放しない。名古屋高検の勧告で、あるいは最後の命令でようやく釈放したというような事件は、きわめてこれは重大だと思うのです。だから、私どもは警職法の問題の際にも、こういう点の警察官の権限拡大について非常に憂慮をいたしまして、従って、あの法案に反対をしたわけでありますが、こういう重大な人権侵害が起きて、しかも岐阜の検察庁に対するところの措置についてはいまだ何らその責任がただされていない。これに対しまして、法務大臣はどのようにお考えであるか。その内容等につきまして言えとおっしゃるならばずっと申し上げますが、いかに根拠のない、しかも本人は自白していないにもかかわらず、これを起訴して公判に回そうとした人権じゅうりんの最たるものと思うのです。しかも単なる暴行とか何とかいうのではなくて、殺人犯です。一つ間違えば死刑になるのです。非常に重大な問題だと思うのでありますが、これについて、岐阜地検に対して、どのような措置をおとりになるお考えであられるか、これをお伺いしたいと思います。
  26. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 実は、率直に申し上げるのでありますが、私として最終的にこれをどうしたらいいかということについては、まだ自分としてもきめかねておるのであります。なぜかと申しますると、この中村という人にこういったような非常にぬぐうべからざる気の毒な目に合せたということについては、これは非常に遺憾千万に思うのでありますが、同時に実は私も数日前にこの一切の経過を聞いたわけでございまして、ただいまお話を承わるとさらによろしいかと思いますが、御承知のように二人連れの子供連れの人が金華山の途上において強盗犯人にあったわけで、そして時計その他を取られた強盗事件であると思います。ところが、その犯人と目される者を現認した証人あるいはその奪われたと思われる時計を質入れをしたそのときの状況その他等を詳細に聞いてみますと、まあこれはほんとうに十分の注意をし、捜査をした者でも、あるいは間違ったかと思われるような節もないではございませんので、それらの点をもう少しよく調べました上で、私としてとるべき措置を確定いたしたいと思っております。しかし、ともかくも現実に犯人でない人にかようなぬぐうべからざる勾留をし、起訴に至ったということは非常に遺憾に存じております。
  27. 赤松勇

    赤松委員 そういうことを法務大臣おっしゃるならば、これはやはり議論になってくるのです。たとえば、聞き込みでもって、大へんよく似ておったというようなことが信憑性があるかどうか、あなたの方にどういう報告がきておるかわかりませんけれども、現地の新聞をごらんなさい。もうほとんどあの程度で起訴するのは無理だと、みんな筆をそろえて書いておる。それから相当のスペースをさいてかような重大な人権侵害が行われることは、非常に大きな問題であるということを言っておるのです。あなたがそういうことをおっしゃるならば、いかに検挙が軽卒に行われたかという事実を示さなければなりません。しかし、その時間もありませんし、またあらためて私はやりたいと思うのでありますが、死んでも死に切れないと言ってその被疑者は泣いておるのです。あなたはよく報告を聞いて措置をとる、こう言うのですけれども、現実にこれが誤認だということは、ぬぐうべからざる事実なんです。従って、これに対して当然反省もし、責任をとるということは当り前のことですが、重ねてあなたの所信を承わりたい。
  28. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいま申し上げましたように、私としては非常にこれは遺憾なことだったと思っております。従って、十分な措置をとるつもりでおります。
  29. 赤松勇

    赤松委員 それでは、法務大臣は、おそらくそう長い期間ではないと思いますが、近いうちにこれに対する責任のある態度をおとりになるということを期待し、それを私は監視しながら、さらにこの問題は留保しておきたいと思います。  次にお尋ねしたいのは、地方公務員法違反教職員関係で、今日まで事件になりました件数は何件ありますか。
  30. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 事務当局からお答えいたさせます。
  31. 川井英良

    ○川井説明員 件数と申しますと、佐賀県で検挙して起訴したのが一件、東京地検でやりましたのが一件、福岡地検でしましたのが一件、和歌山地検で起訴したのが一件。一件というのは人数が七人ないし二十人というふうに分れておりますが、件数でいけば今まで地方公務員法違反で起訴したのはそれだけであります。
  32. 赤松勇

    赤松委員 今お聞きしますと、相当な件数にのぼります。また人員も多数にのぼっておると思います。そこで法務大臣にお尋ねしておきたいことは、これは法務委員会ではありません。文教委員会ですが、昭和三十二年五月十一日の文教委員会におきまして、辻原弘市君の質問に対しまして、政府当局はこういう答弁をしております。辻原君は有給休暇の問題について質問をしました。それに対して政府委員から「承知をいたしております。二月六日に佐賀県高教組の方が、約一千名でございますか」云々とありまして、最後に「校長の承認のもとに皆様がそういう大会にお集まりになったのでございますので、これは合法的なことであると考えております。」こういうふうに言っておる。要するに有給休暇をもらって、あるいは校長の許可を受けて、集会なりあるいはさまざまな勤務条件に関するそういう会合に出席をするということは、これは非合法ではない、地方公務員法違反ではないというように思うのですが、その点は大臣いかがでありましょうか。法務大臣の御見解を承わりたい。
  33. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは法律の解釈上なかなかむずかしい点がございますので、詳細の条文についての説明は政府委員からいたさせたいと思います。しかし、学校校長の承認があるからというだけで私は必ずしも免責にならないと考えます。
  34. 赤松勇

    赤松委員 法務大臣が御答弁なさるのは少し無理だと思うのですが、今の御答弁は非常に重大でありまして、私は聞かないことにしておきましょう。ただ和歌山の場合におきましては、和歌山の高教組においてはそれぞれ校長との話し合いにおきまして、当日の勤評反対闘争の参加については、事前に了解され、許可を受け、また調整もされておるわけであります。しかるに、今度の処分の発表を見ますと、これが地方公務員法違反であるという点であります。私は和歌山に参りまして、教育長に、どういう点が地方公務員法違反であるのかということを三時間にわたって問いただした。しかし、これに対しましては、一言半句答弁がないわけです。答弁ができません。答弁ができないのは当然です。私はこの問題がもし公判にかかれば、絶対に無罪であるし、白であると確信をしております。そのことは別といたしまして、そこで私は、次の一点を法務大臣にお尋ねしておきたい。  地方公務員法の中の三十七条、これは条文を読まなくてもおわかりであると思うのでありますが、この三十七条の中に「地方公共団体の機関が代表する使用者としての」云々として、「同盟罷業、怠業その他の争議行為をし、又は地方公共団体の機関活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。又、何人も、このような違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおってはならない。」こう書いてあります。私は和歌山地検の次席検事に会いました。そして起訴の理由をただしましたところ、やはり地方公務員法第三十七条違反、違法な行為を企て、またはその遂行を共謀し、そそのかし、あおった、こういう理由で起訴をしておるわけです。私はここに当時の議事録を持っておりますが、実はこの法律を立法する際、国家公務員法、地方公務員法を立法する際におきましては、私は反対でありましたけれども、立法には参加しました。お宅の方の党の根本龍太郡君あるいは今副幹事長をやっている何とかいいましたね、彼も参加をしました。そしてこれは昭和二十一年、当時は罷業権を認めておったわけです。二十三年に改正になりまして——その改正は、御承知のように二・一ゼネストによって、マッカーサー声明が出まして、それからこの法律の改正になった。当時私どもはマッカーサー司令部とも折衝をし、当時この法律を担当しておりましたフーヴアーとも折衝し、あるいは人事院総裁の意見も聞き、当時法務総裁でありました大橋武夫君にもしばしば委員会に御出席を願いまして、政府当局の見解をただしたのであります。それで、この条文にあります「何人も、このような違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおってはならない。」という中の「何人も」という概念は、一体だれをさしておるのか、法務大臣、常識でけっこうです。法律論でなくてもけっこうでございますから、「何人も」というのは一体だれをさしておるのか、これをお聞きしたいと思います。
  35. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 この「何人も」というのは、職員をも含めていかなる人もという意味と私は解しております。
  36. 赤松勇

    赤松委員 それではお尋ねいたしますが、職員以外のものとは、一体だれをさすのですか。
  37. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 それはただいま申しましたように、いかなる人もでございますから、職員以外の第三者、一般の人ということが言えると思います。
  38. 赤松勇

    赤松委員 全く法務当局はこの法律に対しましては無知にひとしい。「何人も」とここに入れたのは、職員をさして言っているのではないのです。「何人も」という場合は外部の者です。つまり、外部の者は、その公務員の中立性を守るために、またその能率をば高めるために、何人もそれを扇動したり、その機能を停止するための扇動をしたりあるいはそそのかしたり、そういうことをあおるような行為をしてはならない。これは当時の委員会におきましてもしばしば繰り返し大橋君が答弁している。マッカーサー司令部の見解もそうであった。ところが「何人も」というのが、今日は職員が主体になっている。職員自身をさしている。そして文部省は故意にこれを使って、地方団体においては条例を作って、そしてその条例を教育委員会はさらに狭義に解釈して、今日地方公務員法違反としてどんどん教員をふんじばっている。だから私ども警職法ができますときに、できる瞬間はそうであっても、やがて法律は独走するのだ。かって鉄道公安官を設置する場合にどうでしたか。猪俣さんがここにおられるが、私も一緒にやった。鉄道公安官は朝鮮人の暴行を防ぐためにやるのです、労働争議には使いません。郵便法の場合でもそうではありませんか。それがどんどんこういうようになってきておる。地方公務員法を立法する場合あるいは改正する場合、「何人も」ということにつきましては長時間にわたってこれを審議し、討論し、そうしてきめた。立法府できめたことが今ゆがめられている。御承知のように、地方公務員法の母体は国家公務員法です。その国家公務員法を作る場合におきまして、百二条の政治活動禁止の問題について、その政治活動とは一体何であるかということで私どは十分審議しました。今日政府当局か考えているような政治活動という意味では全然なかったのです。志賀君がおられて大へん悪いのですけれども、実際は、あのときマッカーサー司令部がねらったのは共産党である。「何人も」という場合は共産党をさして言っておった。それは議事録をお示ししてもよろしゅうございますけれども、この点について淺井人事院総裁に私質問したが、速記を止めさして、秘密会において淺井人事院総裁は、GHQとの折衝の過程あるいは向うの意向、政府当局の考え方、そういうものを明らかにして、そうしてこの「何人も」というのは、外部の共産党をさしているということを、当時の政府当局者は陰に陽にはっきりわれわれに言っておった。だからその議事録を見ると、志賀君の方に加藤充君という代議士がおりまして、これは憲法違反だというので、あの当時委員会で盛んに議論をした。そのくらい議論のあった問題でありまして、われわれも反対したのでありますけれども、あの法律が成立した。ですから、何人もこれをそそのかし、あるいはあおり、あるいは共謀してこれこれの機能、つまり公務員の中立性を犯したりあるいはその公けの機関の機能を停止させるようなことをしてはならないという場合には、職員そのものをさして言っているのではないのです。もしそうだというように法務当局がお考えになっているとすれば、私は国会の立法の過程あるいは立法の精神をじゅうりんするものだと思う。もう一ぺんその当時の事情を十分検討してもらいたいと思うのでありますけれども、あなたは知事会に出なくちゃならぬといって非常にあわてているようですから、武士の情で、私もうんとやりたいけれども、またあす社会労働委員会に来てもらってゆっくりやりたいと思いますけれども、そういうような立法過程というものがあったんだということを十分お考え願いたいと思います。地方検察庁職員たちは文部省と同じような考え方で、またあの間違った条例と同じような考え方でびしびし検挙している。しかし、たとえば東京、佐賀あるいは群馬、高知その他において地方公務員法違反でもって検挙をし、起訴しても、これが裁判にかけられれば、われわれはこれは絶対に白だ、無罪であると確信をしている。ただ問題は、無罪になることを確信をしておりますけれども、電産のストライキのそれを申し上げますと、高裁、最高裁におきまして、あれほど当時やかましかった電産のスイッチを切った争議行為、これに対しましては九七%まで無罪になっておるということを法務大臣、御存じでしょう。九七%まで無罪になっております。川崎重工業のレッド・パージはどうですか。これも無罪になって、しかも職場復帰を判決の中でうたい、そうしてその間、三年間の賃金を全額支払え、こういう判決が出ております。ただ私がここであなたに強調したいことは、教職員地方公務員法違反であるというような勝手な検察庁の認定によって検挙をされる。しかも、行政罰はその前に来るんです。罪になるかならないかは公判によって初めてきまる。その裁判所が判決をしない前に、すでに行政官庁がこれに対しまして免職、減俸その他の過酷な行政罰を課しておる。私はこれは大きな問題だと思うんです。これからたとえば高裁なら高裁まで行って、その間三年間かかって無実だということになった場合に、一体この教員はだれが救済しますか。だから私は昨年今の岸総理大臣に対しましてこの点について尋ねた。だからあなたたちか行政罰を加える場合、あるいは検察庁がこれを検挙する場合においては、よほど慎重に考えてもらわなければならぬ。人権を守るということのほかに、特に憲法二十八条の労働者の権利について十分に考えてもらわなければならぬ。それに対して岸首相は同感の意を表しておった。しかし今日このようなあいまいな解釈によってどんどん教員が検挙されておる。まことに私は遺憾にたえません。時間がありませんからこの程度でやめておきますけれども、明日はこういう問題につきまして、勤評の各地における人権じゅうりんの問題ももちろん取り上げていきたいと思います。しかし本質的なこういうような——当時二・一ゼネストまでは罷業権がみな与えられていた。あの事件によってマッカーサー司令部の命令によって、その罷業権が奪われた。それにかわる法の救済方法として、一方では人事院に勧告権が与えられ、他方におきましては憲法二十八条から出ておる団体交渉権——団体協約はなくとも団体交渉権というものはあるんです。ただそれが明確に書かれていないだけであって、国家公務員の場合におきましても、あるいは地方公務員の場合におきましても、団結権があればこそ、団結する自由は人事院といえどもその規則の中で認めておるじゃありませんか。国家公務員法はこれを認めておるじゃありませんか。そうだとすれば、今日たとえば和歌山等におきまして一方的に行政罰で首にして、首にした者はもう相手にならないといって団体交渉は拒否している。こういうことは全く憲法二十八条の精神に反するものである、こう思うので、こういう点についても特に御考慮をばお願いしたいと思います。
  39. 猪俣浩三

    猪俣委員 私は結論だけお聞きすればいいんです。この高知の問題の起った村におきましては、父母の会なるものを作りまして、そうして森小学校東校舎全部を占拠して、同校教員を暴力的に校舎から追い出して、そうして父母の会において勝手に無資格の教師を雇い入れて、いろいろの教育、聞くところによると、極端な軍国主義教育をやっているそうですが、一体かようなことは学校教育法あるいは教育職員免許法に違反していると思うんです。学校教育法の八十四条、八十九条、これは刑罰に入れられています。それから教育職員免許法二十二条、これも刑罰を予定している。資格のない者を教員に村の父兄が勝手に任命して教育をやる、五十日間もやっておる。こういうことが許さるべきことでしょうか。これは違法行為じゃないでしょうか。いわゆる刑事問題として取り調べる対象じゃなかろうか。これの結論をお聞きいたします。
  40. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 それらの点が今回のこの事件が非常に複雑なところであると私は考えるのであります。まずこの父母の会というのが学校の一部を占拠しているというお話でございましたが、たとえばその場合におきまして、村の教育委員会が成規の手続きによって校舎の一部をある会に貸与したのだということもいわれておるようでもございますので、その辺のところを明らかにいたしませんと、法律的なはっきりした判断が下し得ないと思います。  それから、ただいまお話のように、父兄はその子弟に教育委員会の管理のもとに正規学校教員による教育を受けさせなければならない。ところがこれを拒否させたということが明らかである場合には、学校教育法の趣旨に私は違反すると思いますが、これらの点につきましても法律上あるいは裁判上の問題になります場合には、先ほどもくどく申しましたように、十分に捜査いたした上でなければ、私どもの最終的な意見というものが申し上げかねるわけでございまして、その点は御了承願いたいと思います。
  41. 猪俣浩三

    猪俣委員 その辺が実に不可解なんです。一日や二日じゃないじゃありませんか。あれだけ教育々々といって勤評問題をやっておるこの政府が、とにかく暴力団みたいな一つの集合体、そういうものが勝手に村の教育委員会を脅迫して占拠して、そうして勝手な先生を置いて教育しておる。一体こういうことを調査なんて——これは一日や二日くらいのことじゃないじゃないですか。長い間そういうことをやっておる。それに対して何らの処置をやらない。だから彼らはますますおごり、増長になりまして、自分らがやっておることは正しいという頭になってくる。そうして自分たちの教育が正しいんだといって、とんでもないことを生徒に教え込んで、学校先生をみな赤だと称して追い出しておる。こういうことは、今赤松君が言ったように、学校先生ばかりを逮捕することを考えずに——こういう問題をこれから調査するようなお言葉ですけれども、そんなばかな話はない。何十日やっておると思うのですか。学校教育法なり教育職員免許法に明確に違反しているじゃありませんか。こういうことを許されたらどうなるか。勝手に学校先生になって、勝手な教育をやっておる。勤評問題もヘチマもあったものじゃないじゃありませんか。こういう明らかに刑罰でもって制裁を加えておることさえ見のがしておる。一体それでいいのですか。どれだけ調査なさったか。今始まったことじゃないのですよ。もう新聞やなんかにも——ことに十一月二十日には、この告発状にも明確にその点が書いてある。明確に告発理由の中に書いてあるじゃありませんか。それを受理していながら、今日においても何だかわからぬ、複雑だから調査しなければならぬという。何が複雑ですか。こんなことははっきりしたことです。県の教育委員会自身はこれは人権じゅうりんであり、違法であるということを言っておるのです。それにもかかわらず、警察検察庁も、告発状まで出ておるにかかわらず、何にもこれに対して警告も発しなければ調べもしてない。その理由を承わりたい。こういう私にある団体が、勝手にそういう義務教育作業を行なっておることに対して、何が複雑なんです。何がめんどうなんです。それを調べることは、何らめんどうなことでもなんでもない。法律違反であることは明らかじゃありませんか。調べた後に法律的な議論がいろいろ出ることはあるかもしれませんが、どれだけこれは調べておられるか。一日や二日じゃないのです。何十日間やっておるじゃありませんか。法務省としては、この問題について、地元検察庁に対してどれだけの調べを命ぜられたか。どういう調べをしておったか。あなたのところに報告が来ておるか。私どもは不可解千万なんだ。こういうとほうもないことを許されたのでは、どういうことになるのですか。学校先生をつかまえることばかり熱心で、こういう明白なる法律違反に対してはどうもめんどうで、むずかしい——そんなばかな話はないと思う。どういう捜査をされたか承わりましょう。
  42. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、十一月二十日には、御指摘のように告発も出ているわけです。先ほど申しましたように、その七つの項目の中には、ただいま御指摘の点も入っている。その事実を、私はその事実の通りを申し上げておるわけです。そうして、これは一地検の支部などの捜査すべき問題としてはあまりにも重大な問題でありますから、直ちに地検本庁に移送して、それから先ほども申し上げましたように、さらに法務省の本省からも人を派して、十分慎重な捜査に当るように指令をいたしておるわけでございます。その結果は近く明確になるということを申し上げておるわけでございまして、誠意を尽して調べておるわけでございます。ただ犯罪になるかどうかというような点については、御専門の猪俣委員には釈迦に説法でございますが、ただ単に常識的に、これは明白に法律に違反するということを当局側としてはそう簡単にきめつけるわけにはいきませんので、十分法律の命ずるところに従いまして、慎重な捜査をした上ではっきり態度を打ち出すべきである、こう私は考えております。
  43. 猪俣浩三

    猪俣委員 それは慎重にやってもらわなければならぬことは明白であるが、私どもはどうも捜査のバランスがとれていないと思うのです。今、赤松君が言ったように、教員組合の、それこそ法律上相当疑義のあることに対して、しかも学校先生なんというのは、証拠隠滅だ、逃亡だといったって、そんなものは簡単明瞭なことで、あるはずがない。それを片っ端から逮捕している。そうしてこういうような、まるで部落において、何といいますか、国家の教育系統そのものを破壊している行動をやっているじゃありませんか。そういうことに対しては、慎重々々といって何も捜査なさらぬ。それだから今日、十五日のごとき不祥事件が起ったと僕は思う。まるで教員ばかりを悪く見、教員ばかりを追っかけて、そうしておいてその教員に迫害を加え、学校を占拠して、こういう学校教育法なり、教職員免許法なりに違反した行為をやっておっても、これはむずかしくて、調査もなかなか容易じゃないというようなことでじんぜん日を送っておられる。おそらくろくろく調査なんかしていないと私は思う。ですから、彼らの一団は大いに気勢を上げまして、だんだん狂暴な態度に出てきた。僕は今日の小林委員長の遭難事件のごときは、春秋の筆法をもってすれば、その責任の一半は警察及び検察庁にあると考えております。もっと適切なる、公平なる捜査権の発動をしておったなら、あんな事件は起らなかったはずなんです。それを何か見て見ぬふりをしておる。これに対してはなはだ不満である。  なお警察検察庁のやり方がはなはだ不公平であること——砂川事件に対しまして、私ども警察官人権じゅうりん問題として、社会党の不当弾圧対策委員会から正式に告発状が出ている。それに対して、ほとんどろくろく調べもせずに不起訴にしております。しかし何ぞや、今度の砂川事件に対します公務執行妨害罪の裁判が八王子裁判所であった。一体どういう判決が出たと思います。この二十日に正式な判決文が手に入りますから、そのときに私はただしまするけれども、その判決の理由の中には、諸君が実に重大に反省しなければならぬことが含まれている。裁判所の判事がああらゆる証拠を集めて結論を出したのです。それは、第一は、あの砂川派遣の警察官の行動というものは、あれは警職法以外に権限のない行動であったということで、公務執行妨害罪の裁判で一人無罪になっている。いま一つは、いわゆる第四測量隊がすわり込み労組員を引っこ抜いた際、いわゆる警官のトンネル内でなぐる、けるの暴行を加え、排除したことは、正当な実力行使の限界を逸脱しておる。これを私ども問題にして告発している。警察官がずっと二並に並んでいて、そこへ一人ずつ引っぱり込みまして、そうしてこっちの入口から向うの出口までこれをけ飛ばし、突きなぐり、へとへとにして出しておる。そういうことをやったんだ。それをわれわれは告発している。しかるに何もそんな事実はないといって不起訴にしておる。しかるに、この、裁判所の公正な判決にはそれを認めているじゃありませんか。かように、何か労働組合の問題だというと、あるいは民主団体の問題だというと、そうして事がいやしくも警察官告発したというような問題だというと、全部これを取り上げない傾向がある。ですから私どもは警職法なんという改正案には反対をする。彼らがどんなことをやったって訴える場所がない。訴えたって取り上げないのですよ。現に判決が明白に、くしくも判決理由に書いてあるじゃありませんか。あなたはこれに対してどういう御所見を持ちますか。私ども同じ東京検察庁告発しておる。それはそういう事実がないといって不起訴にしておる。しかし同じ事実について裁判所がこういう判決をしているじゃありませんか。どうお考えになりますか。
  44. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 検察庁が不起訴にするについては、それだけの十分の検討をした上で不起訴にしたものと私は信じます。しかし、いろいろと猪俣さんの御意見のおありの点については、私どもといたしましても十分その御意見を尊重いたしまして、今後ますます——従来もそのつもりでございましたが、そういうお疑いのないようにいたして参りたいと思います。
  45. 猪俣浩三

    猪俣委員 あらためて私は、この判決が出ましたら、全文を検討して、どういう理由でわれわれが出しましたるあの砂川事件に関する警官の職権乱用を不起訴にしたか、その理由を承わりたいと思います。まだ二十日過ぎじゃないと判決の謄本が手に入りませんから。ただし、判決に立ち会った弁護士の、要点は、やはり二つでありまして、その一つは、あの何も生命身体、財産に影響のない事態に八百人からの警官を動員し、他人の土地に立ち入りして、そこで——それは警察官の職権がない。そこで起ったことだから、公務執行妨害罪にならぬということで無罪になっておる。これは今回の警職法の改正問題でも非常に問題であります。ですから、今回の高知の問題も、引き続いてその点に連関して申し上げたいと思う。  高知の問題については、十五日の九時半に教員組合から佐川警察署に対して緊急の手配りを願っておる。しかるに、出てきたのは翌日です。みんな事が終ってからのそり出てきて、そうしてその日の朝は、今言ったように、教員組合の幹部をつかまえることに一生懸命血道を上げておる。その間数時間出動をしない。そうして、しかもそれを、だから警職法を改正しないとそういうことになるようなことを宣伝するやに聞いておる。とんでもないふらちな行為だと思う。こんなことは、今の時代に、生命身体、財産に危害が及ぼうとするときには、明白に、警職法の第五条に、現行法で規定されていることなんです。そうしてこれはまさに生命身体その他に危害が及ぶ状況であったことは明らかである。それに対しては何ら正当なる職務行為をやらないのです。そうして砂川事件みたいに、裁判所から、そんな状態か何もないのに八百人も出したのは間違いであるときめつけられて、公務執行妨害罪は成立しないという判決を受けるような体たらくである。これは警察だからあなたに直接のあれはないでありましょう。ただあなたの直接の問題としては、われわれはこの警察のトンネル式の方法で実にひどい目にあったことを目撃しておるがゆえに、これを具体的に告訴したのであります。しかるにかかわらず、そんな事実は存在しないといって不起訴にしてしまっている。どれだけ捜査したんだかわかりません。ところが判決は、ちゃんとその存在をここに明らかにしておる。判決の理由に書いてあるじゃありませんか。私はあなたが今大いに反省すると言いますから、それ以上は言いませんが、判決文が出ましたならば、あらためてその不起訴処分にしたことについて質問したいと思います。ですから、十二分にわれわれの納得のいくことをやってもらいたい。とにかく警察権なりあるいは検察権というものは、公平の立場活動してもらいませんと、妙な一種の政治的頭で、労働組合とか民主団体とかいえばみんな不逞のやからというような吉田茂総理が前に言ったような頭でやられたら、たまったものではない。今度の高知の問題でも先ほどから私がるる申しましたように、取り締るべきものを取り締らないで放任しておいて、そうしてああいう十五日のような最大の不祥事を起した。小林委員長という人は、私は委員長にならない前からよく知っておる人ですが、温厚篤実な衆望を担っておるりっぱな人物である。だから四回も委員長に再選せられ、どうしてもやめさせてくれといっても、日教組がやめさせないような衆望を担っておる中心人物です。その人物に対して瀕死の重傷を与えるというようなことは、容易ならざることだと私は考える。それに対しまして、事前にちゃんと防ぐ手段が多々あったにかかわらず、放任しておいた。それが積り積って彼らに妙な錯覚を与え、教員は赤であるからして、こんなものは多少やったっておとがめがないというような感じに彼らはなっておったらしいのです。かような感じを与えました政府機関のやり方に対しては、私どもはもっともっと糾弾しなければならないと思いますが、あなたがお急ぎであるということで私も遠慮したところが、赤松君があすやるのをきょうやってしまって、どうもこの委員会の権限を侵害したような格好になったのですが、あなたがおいでになりましたからこの点だけは質問いたしましたのですが、お引きとめして失礼いたしました。
  46. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 時間がありませんから次会にやりますが、法務大臣が知事会に出られることについて、一つ希望いたしたいことがあるのです。と申しますのは、いつも法務委員会法務大臣が言われることと、知事会その他検察官会議などで法務大臣が言われるのと、いささか二重人格のきらいがあるのです。ここではきょうも猪俣君からさんざんくぎをさされましたが、慎重に不公平にならないようにするという回答があっても、翌日の新聞を見ますと、あなたは必ず法秩序を確立しなければならないということを言われて、つまり俗にいえばけしかける結果になっておるのです。今度県知事なんか来ますが、そこで法秩序の確立というようなことを言われますと、結局は今度の高知県で起ったようなことをあなたがけしかける結果になるので、そういうことにならないように、明日の新聞を見ても、ここで発言されたことと首尾一貫するように、法務大臣としては決して一方的に無頼漢たちを扇動することのないように、また司法警察官や検察機関が故意に一方的なことをやるようにするものでないということを一つ発言していただきたいのです。そうしませんと、必ずやりますよ。また猪俣君がくぎをさしたことを必ずやる。お墨つきをいただいたような気持で長官たちはみな帰りますよ。そうして教育庁のねじをまた巻くのですからね、必ず事件が起ります。現に今度の高知県の問題にしても、川井公安課長も特にそのことを言われましたけれども小林委員長発言が新聞に載っております。小林委員長を殺せと言っておるではありませんか。それはあそこに行った人がみんな聞いておるのです。これは殺人未遂です。猪俣君は殺人未遂の点には触れておりませんけれども、あなた方がへんぱなことをやるから、殺したところで大丈夫だ、政府が保障してくれるという気持があるから今度のような事件か起ったのです。現に昨日も群馬県ではどうです。教育会館が捜査を食いました。県教も捜査を食いました。次には共産党の県委員会までが昨日六、七十名の警官にやられ、三十三点にわたる全然関係のない文書まで取られておる。ですから、きょう知事会に出られるときには、あしたの新聞を見て、またやったというように法務委員会の心証を害するようなことを発言しないように、一つ積極的にここで猪俣君に答弁したようなことを言っていただきたい。詳しいことは時間がありませんから、これで放免いたします。
  47. 猪俣浩三

    猪俣委員 ちょっと警察にお尋ねがあります。私ども報告によれば、十二月十五日の午後九時半に県教組から佐川署に対して緊急の連絡があったにかかわらず、何人の巡査の派遣もなかったと聞いておる。その事実はどうですか。
  48. 江口俊男

    ○江口政府委員 ただいま猪俣委員のお話のうちで、私の受けております報告と異なります点は、まず時間の点でございます。九時半に要請があったというお話でありますが、私たちが何べんも聞き合せてただいま承知しております点は、十時三十五分に、仁淀高校でありますか、中学でありますか、そこの中平という教員から佐川署に連絡がございました。佐川署は御承知のように、仁淀から約三十キロ離れております。十時半に電話をいただきましたので、すぐ集まるだけの人数を集めて岡林警部補が引率して学校におもむいております。しかしながら、三十キロの距離とあの地勢から申しまして、一時間以上を要しまして、着きましたのは零時二十二分でございます。第二陣としてさらにほかの警察官を招集しまして、西山警部が指揮をして、これは一時間くらいおくれてそこに出発いたしておるような状況であります。なおまた県の本部におきましても、午前一時半ごろ、刑事部長を長として警備課長その他がこれに次ぎまして現地に行っております。これは朝の四時ごろ着いてすぐに仕事にかかっておりますので、その距離的な事柄を御考慮の中に置かれますと、特にじんぜんとしてこれを見送ったということにはならないかと考えます。
  49. 猪俣浩三

    猪俣委員 そこで大体新聞に報道されておりますが、警察署の受け取られました当時の小林委員長の重傷を負うた事案についての概略を御説明いただきたいと思います。
  50. 江口俊男

    ○江口政府委員 御要望でありますので、私たちが聞いております限りにおいて申し上げます。森小学校が従来からどういう状態であったかということにつきましては、先ほど来御論議のございましたことでございますから、私たちも承知はいたしておりますけれども、一応省略いたしまして、十二月十五日の事件のことだけを申し上げます。ことに私の申し上げますうちで、被害が何名であり、傷の状態がどうであるかということにつきましては、もちろんただいま調べておるところでありまして、主として被害を受けられました方々から、こうであったということを聞いたことに基くものというふうに御了承願いたいと思います。  まず、日教組小林委員長は、十二月十五日に高知市に到着、同日の午後四時ごろ、東元県教組委員長、和田同情宣部長とともにハイヤーで森の方に向っておられます。そして午後六時十五分高岡郡仁淀村の森地区に到着して、同地区内を巡回したと書いてありますが、どういうふうに回られたか、そして演説でもされたか、そういうことはちょっと詳しくございませんが、巡回した後に小学校に立ち寄って児童教員に慰問品のノートを渡されたということになっております。その後小林委員長は、七時十分に仁淀高校におきまして、父兄の十名、これはいわゆる子を守る会——父母の会じゃなしに、教組側の父兄でございますが、その十名、付近の教組員四十名をまじえて座談会を開いたのでございます。ところが、午後八時三十分ごろになりまして、中越父母の会会長ら約四十名ぐらいの父兄が同校に参りまして、われわれにも傍聴させよということを申し入れております。それに小林委員長は代表者だけならよろしいという答えをしたようでありますが、なお押し問答をして、その際には中には入っておりません。父兄側は漸次増加をいたしまして百名くらいになりましたので、九時半ごろその座談会は一たん閉会となっております。九時半で閉会したので、小林委員長が帰ろうとされたのでありますけれども、乗ってきたハイヤーのタイヤがパンクをされておった。これはだれかが故意にパンクさしたもののようでありますけれども、これは調べてみないともちろんよくわかりません。それで修繕できるまでまた二階に上って待っておった。ところが午後の十時半ごろになって下に待っておった父兄の一部が二階に上ってきて、そのうちの一人が右教室の入口のガラス戸二枚を破って、他の者もこれに追随して、あとは新聞等に書いてあります通り石灰の入った紙袋とかあるいは机、いすというようなものを投げつけたのでございますが、この騒ぎが、私たちのあとからの調べでは十時五十分ごろまで続いた、約二十分間くらいの間のようでございます。その間のいろいろなことを総合して、高知からこちらの方に連絡した事柄でありますが、その日はもちろん佐川署からかけつけたのは、ただいま私が申し上げたように、連絡を受けて、一時間半の道をかけつけたので、物理的に零時何分になるということを申し上げましたが、もちろん駐在巡査もおることでございますので、九時半ごろその学校までは行っております。ところが、これはどうしてよく状態を見ていなかったかということを問い合せましたら、今までも何回もこういう話し合いみたいなことがあって、何かありはしないかと思ってそばに行くと、これはどちら側からそうされるのか知りませんけれども、おまわりの立ち入るところじゃないというようなことで、何もなければ、話の内容なんかを聞こうという意味はないので、校庭から見ておった、こういうのです。そこで、九時半に座談会が済んだためでごさいましょう、森から来ている父兄——父兄というよりも女の方、何といいますか、母でございましょう、五人を、途中かあぶないから——あぶないというのは、反対側の父母の会の連中が相当集まっておるということで、途中を保護するという意味で、おまわりさんがついていってくれということを、教組側に入っておりました労組員——名前もわかっておりまするが、その方に送ってくれということを頼まれて、森地区まで送っていっております。飯尾という巡査でございます。そこで送っていって駐在所に帰ったところが、佐川へ電話をかけられたと同じ中平という教諭が電話をかけておられる。この点多少食い違いがございますが、取り巻かれているというような電話だということでございました。それで、そちらの方に出向こうとして道まで出たら、午度は続いて森小学校の方から電話がかかって、森小学校の方は中内という宿直の教諭が村民暴行されているという。それでその駐在の細君が出かけようとしている巡査——出かけたそうでありますが、家を出た巡査を追っかけて、森小学校から現に中内先生がたたかれているという連絡があったということを言うもんですから、飯田君は仁淀の方は人数もお互いに多い、取りかこまれているというふうに、これは聞いたつもりでございまするけれども、そういう状態、片方は現にやられているということで、森の方にかけつけた、行く方向を変えた。それで森に行ってから、中内氏はそこにおられたんでしょう、村民も多少残っておりましたけれども、これは乱暴した連中ではなかった。しかしながら、あとを警戒する必要があるということで、これが三十分ほど森小学校におったということで、仁淀にかけつけるのがおくれたのでございますけれども、その間のことについて駐在巡査が一人でどちらを先にどういうふうにやった方がよかったかということは、これはあとから考えていろいろ批判し得ることでございまするけれども、私たちの連絡を受けておりまする実情は以上のようなことでございます。  それから、負傷者の状況は、いろいろ報道がございますけれども、わわれれの方の確認といいますか、はっきり知っておりますのは十六名。そのうちお医者にかかって手当をしたのが九名、現在入院中が八名というふうに私は聞いております。そして一番重いのが、これは結果によってわかりませんけれども、現在の見込みとして一番重いのか全治一カ月二名、全治三週間一名、二週間が五名でございますか、その他は六日とかあるいは自宅で手当をしているのが八名ということになっております。
  51. 猪俣浩三

    猪俣委員 今あなたの話によると、駐在の巡査が行く場所を違っておった、何でもないところへ顔を出して、大いに乱暴されているところへとうとう行かぬでしまった。その事情というものも私どもは疑惑があります。これはもっと調査しなければならぬ。時間のことについても、教組側では九時半に連絡をとったと言うが、あなたの方では十時半だと言う。これもわかりません。いずれにしても、ぶっ殺してしまえということで、電灯を切って、目つぶしをして、相当計画的な集団暴行をやっているわけです。もし労働組合人たちが、たとえば日教組人たちが、教育長とか県当局にそういう行動をやったら、一体皆さんはどういう態度をとるだろうかと私は思うんです。今日逮捕されている者はいない。とにかく一カ月の重傷を与え、あるいは二週間の重傷者が何人もできるこの大暴行事件、しかも非常に計画的です。電灯の線を切ったり、目つぶしをあれしたり、あなたにもう少しその犯行の様子を聞きたいと思うのだが、あなたは御説明なさらなかったが、そういうことは重大ですよ。しかも、それが一つの団体で、指揮者の会長なる男が先頭を切ってやっておるのだ。しかもその男は告発されている人物です。前に何べんもこういうことをやっておる人物です。それなのに、そのまま逮捕もせずして調べておる。その点については、同僚の志賀君が今言ったように、殺人未遂かもしれぬ。とにかく重傷を負っているのです。そうしてやり方が非常に計画的で、人殺しの様相です。そういう殺人未遂の嫌疑もかけられるような犯罪状況の者に対して、全然逮捕もせずして捜査しておる。そこに何か私どもは割り切れぬ、教員教育長を監禁したことに対して逮捕することとにらみ合せて、私ども警察態度にはなはだ割り切れぬものがあるのです。実に重大な暴行事件ではありませんか。その暴行のやり方について、あなたのところに報告があったら説明してみて下さい。
  52. 江口俊男

    ○江口政府委員 ただいまのお話のうちで、飯尾駐在巡査が何でもないところに行って、何でもあるところに行かないということにつきましては、何でもないところに行ったわけではないのであります。事の大小の問題がどちらが重要であったかというふうに私はあとで検討する余地はある、こう申し上げたわけであります。その点誤解のないように……。  それから今申し上げたように、現場に居合せたという第三者がございませんので、私たちもあとから参りまして器物のこわれた状況を見て、なるほど相当ひどかったろう、あるいは被害者にあたって、どこをやられたというようなことをまとめて報告が来ているのでありまして、これは新聞等に出ておりますことと大同小異であり、かつまた私たちだけが知っていることではなしに、むしろ警察としてはあとで知ったというようなことで、特別に申し上げなかったのでございます。特別のどういう状態でだれがだれをたたいたかというようなことは、結局現在駐在所に捜査本部を設けて、県の捜査部長、刑事部長を長として五十一名の刑事が慎重に捜査に当っておりますから、だんだん判明してくる、こう考えますが、犯行の状況については、特別に私から申し上げることはないのでございます。  それから、なぜ逮捕しないかという問題でありますが、これは教員組合の不法監禁事件について逮捕をなぜしなければならなかったかということと同様に、私は現地におきます捜査技術の問題を考えて、私自身もちろん、今日、逮捕されてなくても、事件の進展によってはそういうこともあろうかというふうに考えております。
  53. 猪俣浩三

    猪俣委員 おそらく県民でも村民でも、一方の教員組合の首脳部は逮捕されておるし、それからかような重傷を負わせた村民は逮捕されずにいる、やはり自分たちの方が正しいので、教員の方はあれは赤で、政府もあまりかまいつけないのだという印象を強くしているだろうと思う。そこで、きょう文部大臣にもおいで願うあれをしたが、ほかの委員会へ出ていて出席なされないが、文部大臣は、とにかく教員組合が悪いからこういうことになったというような発言をなさっておる。これは私はもう大へんな問題だと思うのです。諸君は、治安の維持、治安の維持というようなことをしきりに言っておりますが、警察検察庁態度そのものが——こういうことが各村に起りましたならば、大へんな問題だと思うのです。その点につきましても、日教組態度いかんにかかわらず、しかも日教組がどこかへ押しかけていったのじゃないのです。委員長が行って、みんな話し合いをやっておる席へ乗り込んでいって、しょうちゅうをあおって乗り込んでいって、こういう重傷を与えるような乱暴なことをやる。しかし、それに対しては、今日逮捕もしていない。どうも私どもは割り切れぬところがある。団体もはっきりしているし、団体の中心人物もはっきりしているじゃありませんか。日教組の団体の幹部を検挙するならば、こういう暴力団の幹部もはっきりしているのだから、少くとも幹部の一人や二人検挙して調べなければならぬのじゃないですか。それをじんぜんとしている。私どもは、その点につきまして、はなはだ警察当局の考え方というものに対して割り切れない。果して中立の態度を守っているのであるか、勤評反対を憎むの余り、大目に見ているのであるか。学校先生村民とでは、村民の方が大事で、学校先生はどうなってもいいのであるか、諸君の態度はそういうふうに見えるのです。  念のために聞きますが、この父母の会というものは全国的の組織があって、岩田宙造という人が会長だということを聞いております。そういうことに対しましては、皆さんの方でも研究していると思う。そういう団体があるのかないのですか。そして、ここの父母の会と、そういう団体と連関があるのかないのか。聞くところによると、全国的な父母の会という反動団体から相当の金が行っていると聞いている。だから、学校先生を勝手に雇う。正規の資格のない者を雇って授業をさせたり、酒を飲んだり、みなそういう運動資金でやっていると聞いている。あなた方は革新陣営については根掘り葉掘り調査をされている。盗聴器までくっつけてスパイ活動をやっているのです。こういう全国父母の会なんというものは存在するのか、存在したら会長はだれなのか。それと高知父母の会とは何か連絡があるのかないのか。そういうことを一体捜査されたのかどうか、それを承わりたい。
  54. 江口俊男

    ○江口政府委員 私たちが警備的な立場から、ただいまの盗聴器云々のことは別として、どちらの側につきましても、でき得る限りのことを研究していることはその通りでございますが、この父母の会というものは、今度の問題を惹起した森地区父母の会の属している会であるかということですが、しかしこれは私たちが現在承知している限りにおきましては、仁淀村の中のしかも森小学校の管轄区域におきまする父母の単独の会でございます。ただこれが全国的な組織があるとして、その一部であるとするならば、数も割りに少いというか、村を割ったような形になると思いますが、先ほどお話がございましたように、生徒の大部分というか、三百七十名のうち三百四十名の者がその方からいっている。父母会員にして六百名くらいでございますけれども、そういう会であるところから見て、全国的な組織の一部だというふうにはただいままでのところ聞いておりません。それで、今御指摘になりましたような岩田宙造という人がやっている会があるかどうか、これは確かめてみたいと思いますが、われわれの視野には現在入っておりません。
  55. 猪俣浩三

    猪俣委員 とにかく革新陣営については実によく調べていなさるが、そういう反動的団体についてはさっぱりお調べしてないのですね。岩田宙造という人が全国父母の会の会長だと新聞に出ている。それを警察も御存じないというのだから、これはあなたの管轄ではないかもしれませんか、これは公安調査庁を呼んで聞かなければわからぬかもしれぬが、全国的にそういう反動的な団体があって、その団体の応援によってこの森地区でそういうことが起ったとすれば、容易ならぬことだと思うのです。警察でももっとそういうところを捜査すべきではないですか。新聞にはちゃんと報道されているではありませんか。それをさっぱりお調べになっていない。それから、この父母の会の会長と称する中心人物中越益繁ですか、これの政党関係、経歴等はお調べになっているでしょうか。もしなっておったら、ここで御報告下さい。
  56. 江口俊男

    ○江口政府委員 森地区父母の会の会長である中越という人につきましては、現在の職業としては農業であり、以前には満州におったこともあるというようなことがわかっている程度で、おそらく特定の政党に属しているというのではないと思っております。
  57. 猪俣浩三

    猪俣委員 満州で何していたか知らぬが、満州浪人かもしれぬですね。そういうことをもう少し御研究なさる必要があるのじゃないか。それというのは、どうも革新的な陣営の者については実によく調査しておる。ところが、こういう反動の連中に対しての調査というものは全くなさっておらない。こういうことを調査なさらぬと、全体の治安というものを維持する上に、非常に欠陥があると思う。諸君はただ警職法の改正をすればいいとお考えになっているようであるが、そうじゃないんだ。もっと強く反動団体というものの系統やら、そういうものをよく研究なさらぬといかぬと思うが、どうもそういう研究が足らないと思うんですね。私は、これもこの村特有のものであるかどうかに対してははなはだ疑問があるのでありますが、今のところ、こうだと私ども断定できませんけれども、新聞には、全国父母の会の一つの関係においてこの父母の会というものができておるんだというように書いてありますから、警察はとうに調査なさっておると思って私はお尋ねしたのであります。そうすると、今さっきおっしゃった、警察からは何人の刑事が行って調べておるのですか。もう一度承わりたい。
  58. 江口俊男

    ○江口政府委員 県の刑事部長以下五十一名の刑事が行って捜査をいたしております。
  59. 猪俣浩三

    猪俣委員 それから検察庁にお聞きしますが、検察庁ではどういうふうな処置をとっておられますか。
  60. 川井英良

    ○川井説明員 事件報告を受けまして、翌十六日の早朝に、高知地検の次席検事が検察官一名を帯同いたしまして、直ちに現場に臨んでおるという報告を受けております。
  61. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、高知の次席検事が検察官を帯同して今現地で調査しておるというのですか。
  62. 川井英良

    ○川井説明員 直ちに現場に行って、捜査の指揮に当っておるという報告を受けております。
  63. 猪俣浩三

    猪俣委員 それからいま一点。きょうは警察庁長官がおいでにならぬのであれですが、砂川事件の判決を見ますと、警察に対してはなはだ痛い判決理由が出ているわけです。僕らあの当時それをしきりに言ったんです。何でもない、ただ反対の意思表示をするために、憲法二十一条の表現の自由に基いて集会、結社をやっているにすぎない。それに対してものものしい格好の鉄かぶとの警官隊が八百人も出てきて、私ども行ってみましたが、それは荘厳ですわ。ある程度非常に頼もしいと思いましたね。実に警察官というのはよく太って、がんじょうな体格だ。これがピストル、警棒、鉄かぶとでずらっと並んだときには、ほんとうに頼もしいと思いましたが、これに人権じゅうりんをやられると、全くたまったものではない。こういうのが出ておったが、私ども何もないではないかと言うておった。それをそういうことをやっておった。今度の判決には、何の必要もないときに、こんなものを出したということが判決理由に明らかになっておるが、これは警察はどうお考えになりますか。
  64. 江口俊男

    ○江口政府委員 砂川の警備の事案につきましては、われわれの方でもそれ相応の事由があってやったことでございますから、なんでございますが、その判決は判決として、よく読ましていただいて、やはり現在の法の解釈上無理であるという点が出ている点につきましては、なおよく検討して、出過ぎておるということであれば、もちろんそれだけ引っ込めなければならぬと思っております。
  65. 猪俣浩三

    猪俣委員 もう一点、実は新潟県の柏崎市で人権じゅうりん問題が起って、今県下では相当評判になっておる。その事案は、柏崎市の国立病院の看護婦さんが、患者の財布を盗んだということで嫌疑をかけられ、非常に自白を強要せられて、ついに盗んだという自白をした。ところが、その後その財布は出てきたわけです。そうして看護婦さんは催眠剤を飲んで自殺をはかって、四日間意識不明で生命がおぼつかないという状態に陥ったという事件があるわけです。ところが、これは現在二十になる娘さんで嫁入り前ですよ。それを新聞に大々的に掲げられまして、ほとんど致命的な打撃を受けたわけなんです。しかるに、今日起訴も不起訴も、犯罪はお前じゃなかったということも、何も釈明せずして、警察署は半年以上もほおかぶりをやっておる。この娘さんは浮ばれないのです。実はけさはるばると柏崎市から——これは私の選挙区ではありませんが、柏崎市から病院の医療組合の人たちに付き添われまして、また県会議員一名に付き添われて、私の自宅を朝早く訪問して泣いて訴えられた。これはあなたの耳に入っておるかどうかわかりませんし、私はこれは突然のことですから通告もしておりませんので、今直ちに御答弁を願わぬでもよろしいのでありますが、この事案を御検討いただいて、無実の罪であるならば——死をもって抗議した女なんです。幸いに生命は取りとめましたけれども、死をもって抗議したこの婦人の名誉というものを、何らかの方法で回復する必要があるのではなかろうか。その取調べは、実に非科学的で、全く昔のおかっぴき的な調べをやっておる。しかも、それは町の市民だれ一人として好感を持たない柴田という刑事なんです。これがそういう拷問的な自白の強要をして、とうとう盗みましたと言わせた。ところがその財布をどこへ捨てたという場所が、あすこへ捨てた、そこへ行ってみてもない。うそだ、お前あすこじゃない。そこで今度は便所の中へ捨てた、それもない。そこで五回も捨てた場所を変えておる。もうすでに盗んだことを自白している以上は、財布の捨て場をうそつく必要はないはずでありますが、盗んだことがないのにどこへ捨てた捨てたと言われますから、でたらめなことを言う。それだから何一つ証拠はあがらない。しかるにかかわらず、なお彼女を責め立てて、徹底的に捜査をいたしましたために、とうとう耐えかねて自殺をはかったという。最高裁判所の判例に、一個の人間の生命は、全地球よりも重いという判決例が出たことがありますが、二十才になるお嫁入り前のこの看護婦さん、五年も国立病院に勤めておりましても一回の事故もないこの看護婦さんに、突然としてさような嫌疑をかけ、しかももっと周到にあらゆる状況なりその他を科学的に検討するならば、簡単に事が明らかになる事案を、頭からただ自白強要一点張りでその刑事はやっております。実に非科学的な捜査をやっておる。そうして一個の人間を自殺にまで追い込んでいる。ですから、この窃盗がその人間の仕儀なりやいなやについては、はっきりさしていただきたい。これはあなたの方から柏崎の警察署に進言していただいて、とにかくそこに非常に人権じゅうりんがありますが、それはそれといたしましても、国立病院の中では、この娘さんが疑われるなんということを考えておる人は一人もいない。それだけ善良な女性なんです。それを、勘違いからこの女性に嫌疑をかけて責め立てた。今また国立病院に再勤めをしておりますけれども、何しろ結婚前でありますので、これに対して国家が何らかの方法で明らかにしていただきたいと私は思うのです。どういう方法がありましょうか、あなたの御所見を伺いたい。
  66. 江口俊男

    ○江口政府委員 私も警察の一員でございますので、ひとしくその責任を感じますが、この事件につきましては、たまたま一昨日衆議院でございますか、参議院でございますかわかりませんが、社会労働委員会に中川刑事局長が呼ばれて、やはりこの問題で質問を受けております。どういう答弁をしましたか、私、その内容までは聞きませんが、政府委員室でたまたま一緒になりましたので、こういう事件があることは承知いたしております。従いまして、所管の局から、新潟県に対しましては、もちろんしかるべき措置をとるように連絡をしているものとは存じます。またそういう窃盗容疑に問いました理由——その柴田という刑事も、何もないところにそういう疑いをかけるということもございますまいし、何らかのあれはあったと思いますから、そういう釈明等も聞いて、所管の局の系統から、しかるべく善処をするように私から伝えたいと思います。
  67. 猪俣浩三

    猪俣委員 突然のことですから、それ以上要求しませんが、全部調査していただきたい。私の方でもその調べぶりについて詳細に報告を受けておりますから、それに対しまして後日、人権じゅうりん問題があったとすれば、その警官に対する責任を追及しなければならぬと思います。だから、あなたの方でも十二分に調査していただきたいし、現在とにかく財布は出てしまったし、本人はそのままの姿で放置されておるから、これに対するいかなる雪辱の方法があるのであるか、警察当局としても、一個の人命のために、うら若い女性のために一つ特別なる御考慮を願いたい。あなたはそれぞれの上司と御相談の上、場合によってはこの次の法務委員会にでもまたお尋ねいたしますから、どうかこの女性が生きられるようにしていただきたいと思います。
  68. 福井盛太

    福井(盛)委員長代理 大貫委員
  69. 大貫大八

    ○大貫委員 私はきょう質問するつもりはなかったのでありますけれども仁淀事件について江口警備局長答弁に事実に非常に反する点がありますので、二、三明らかにいたして注意を喚起しておきたいと思います。  警察というものが、こういうことに対して公平な立場に立って捜査をすれば問題ないのでありますけれども、先ほど猪俣委員から強く追及いたしましたように、警察自体、特別な偏見を持って問題に臨んでおるから、ああいうような事案が発生したものと思うのであります。たとえば、十五日の日、午後八時ごろ、もうすでに不穏な空気があったことは、私ども調査でも明らかであります。午後八時ごろ仁淀高校に不穏な空気があったが、飯尾という巡査がそこにおった。しかも非常に不穏な空気になったので、組合側の座談会に出席しておった十名くらいの父兄がここから脱出しておる。父母の会から取り巻かれて非常に不穏な状態になったから、ここを脱出いたしましたのが九時半、これははっきりしております。私にも証拠があります。九時半にこの脱出した父兄が、佐川警察署へ連絡をとっておるのであります。ですから、この連絡に基いて、佐川警察署が適宜な措置をとったならば、こんなことは起らなかった。だから、そういう点についてあなたのお答えになっているのとまるで違っております。この点、あなたの方は現地の調査しかないのですか、特に警察庁から派遣して、調査をしたということはないのですか。
  70. 江口俊男

    ○江口政府委員 ただいまお話の九時半という点は、報道等にもそういうふうにございますし、私たちも念を押して、これは数回現地というか高知県に対して聞いたことでありまして、十時三十五分中平という教員から電話がかかってきたことは間違いないと言っているが、さらに大貫委員からお話がありましたように、人柄が特定しているようでありますから、なにがしが九時半たれに電話をかけられたかということを聞きますれば、それは調べるのにちっともやぶさかでございません。私は現地から参りました事実を何ら粉飾して申し上げているのでないことを御了承願いたいと思います。  それから私の方からたれか行ったかというお話でありますが、行っておりません。と申しますのは、警察の組織といたしましては、もちろん各府県が単位でございまして、これが原則として全責任を持ってやる。しかしながら、やはり全国的な連絡と調整が必要だからというので警察庁がございまして、その出先が各管区といって、四国には高松に管区局長を長とした一つの機関がございます。だから、事件が起りまして、そこから警備課長がさっそく飛んで行って、現地というか、現在高知にいると思いますが、高知県で一緒になって調べておる、こういう状態であります。
  71. 大貫大八

    ○大貫委員 いや、私は別にあなたが粉飾してここで答弁しているとは考えないのですが、ただ現地から事実をゆがめた報告がなされておる疑いが十分ですから、これをあなたの方からお調べ願いたいと注意を喚起するのです。  それからさらにもう一つは、先ほどの御答弁によると、飯尾という巡査が森小学校の方に帰って行った云々の答弁、ちょうどこれは仁淀森小学校の中内教諭の暴行というのが並行して行われたかのごとき答弁をしておるのですが、これは大変な間違いなんです。私ども調査、現地からの報告によりますと、仁淀でもってさんざっぱらあばれて暴力をふるったこの一団が引き揚げてから、さらに森小学校へこの団体が行って、中内教諭をやっつけておる。これは明白な事実なんです。どうしてこういう明らかな事実をゆがめて報告するのか。これこそ現地の警察の公平を疑う十分な資料にもなると思うのです。その点について、もう一度調査をしてもらいたい。
  72. 江口俊男

    ○江口政府委員 私たちも先ほど来申し上げているように、現地の報告はこれこれなんだが、そのときの駐在巡査の行動が、事の大小あるいは合理的な判断という点から十分であるかどうかということはなお検討の要があると、こう申し上げたのは、それが事実であるかどうかという点も含めてのことでございますので、なお調査をいたします。しかし、大貫委員のお話で、仁淀であばれた連中が帰りに森の方で同じ人間がやったかどうかというようなことは、やはり捜査を待たないとわからないと思うのです。常識的には私たちもそう考えたのですが、けさの電話でそれは間違いがないかということを確めると、それはどうも同じ人間であるか、違う人間であるか、ちょっと特定しかねるというようなことで、そういうことを含めて現在調査中であります。
  73. 大貫大八

    ○大貫委員 私は同じ人間だとは言いませんけれども、少くとも仁淀であばれたその一団が引き揚げて行って、森小学校でやっつけたことは事実です。その点はもう間違いがないようですから、十分お調べを願いたい。  それから、これは高知県の警察本部長ですが、十七日に教員組合側から抗議を行なっておりますが、その抗議に対してこういう答えをしておる。これはけしからぬと思うのですが、現場には流血も少いから大したことはない、こういうことを言うておる。もうすでにこういうところにわれわれは、警察がきわめて不公平な立場からこの事件に臨んでおるということが言えると思うのであります。しかも、こういうところからの報告がゆがめられてきておることは、たとえば西森教諭は十七日の午後六時まで意識不明だった。そういう報告はないでしょう。今までのあなたの答弁から見ても、どうも全治何週間というだけでありまして、西森教諭というのは十七日の午後六時です。大へんなけがだと思う。十五日の晩になぐられて、十七日の午後六時、それまでの間意識不明であったのですから、これは大へんな重傷だといわなければならぬのです。そういうことについての報告がありますか。一体この被害者の被害の程度に対して、そのような報告が入っておりますか。
  74. 江口俊男

    ○江口政府委員 まず第一点の、高知県の本部長が現場を見に行きましたのは、翌日すぐ行っておりますが、そのときに血が云々という問題は、これは電話で私聞いておりますが、非常にやられた部屋が混雑をして、相当なけががあったろうと認められる状態自分でも見ておる、その割に出血というか、血の跡は少ないという意味のことを感じたということは言っておりまするから、おそらく血が少かったから大したことはないなどというようなことを申すはずはないのであって、そういう点、言葉の行き違いもあったろうかということは私も想像いたします。  それから西森善郎という人がひどいということは聞いております。ただ、十七日の何時まで意識不明であったというようなことは書いてはございません。むしろ西森という人が意識不明というよりも、頭の中枢を冒されている可能性があるということまで言っております。それは意識不明だったということではなしに、神経をやられたおそれがあるという状態だそうであります。
  75. 大貫大八

    ○大貫委員 それからもう一つ非常に重大なことは、これは私の方の調査で私の方の調査網といっても、警察のような完備した捜査機関なんか持って、いないのですが、それですらこういう事実が入っているのです。小林委員長暴行を受けて、現場で意識不明になっておるとき、ちょうど暴行を加えておった人間が、髪を持って引ずり上げ、その顔を見て、まるでお岩のようだというて、さらにその顔に暴力を加え、つばを吐きかけておる。このような暴行を加えた事実がある。しかもそればかりじゃない。そのとき、窓から投げ出して殺せ、ほうり出せと言った。二階ですから、窓から投げ出されたら死んだかもしれません。そういう声もその場にあったという。まさにその事実は殺人罪を構成する。殺人未遂、死んでおりませんから未遂ですが、殺人未遂の重大な容疑だと思う。こういう事実が私どもの方にわかっておるが、警察の方ではこの点についてどの程度わかっていますか。
  76. 江口俊男

    ○江口政府委員 ただいまおっしゃったようなことを現在捜査しているのでありまして、おととい、きのうは主として今おっしゃったようなことを被害者に聞いておるのでありまするから、現地では十分今のようなことを存じていると思います。しかしながら、私の方には一々そういう内容については参っておりませんので、髪を引っぱってどうしたとかこうしたということは、私は承知しておりません。
  77. 大貫大八

    ○大貫委員 これほど重大な内容を持っておる事件でありながら、今までにまだ被疑者は一名も検挙されてないのでしょうか、その点を……。
  78. 江口俊男

    ○江口政府委員 先ほどこれは猪俣委員からもお話がございましたが、検挙といいますか、身柄を逮捕して調べておるというのは現在ございません。
  79. 大貫大八

    ○大貫委員 その現場に居合せた者は、もう新聞にも名前が出ているじゃありませんか。中越といいますか、どうしてこれは逮捕しないのですか。どうも不思議でたまらぬのですね。教員側であったならば、先ほど猪俣さんからも言われたように、これは大へんなことだ。もしもこれが反対に労働組合側がかような事件を犯したとしますならば、これは捜査なんかにしろ逮捕にいたしましても、大々的にやるに違いない。関係のない者までもまずどんどんあげてしまって、逮捕状をとって、そうしてあとで整理していくという形をとるはずなんです。今はとっておる。ところが、これだけの大事件を起しながら、しかも、新聞に出ている中越某という人物、どうしてこれは野放しにしておるのでしょう。こんな者を野放しにしておけば、証拠隠滅など簡単にできますよ。集まって、だれはいなかったとかいうことがその場でできてしまいます。
  80. 江口俊男

    ○江口政府委員 なぜそれをやらないかということは、先ほどからもるる申し上げているように、第一段階としては、被疑者——第三者がおれば一番いいんですが、第三者というものはこの場合ありませんから、被害者から、だれだれが来たか、だれだれからやられたか、あるいはだれだれと思うかというようなことを一生懸命現在やっているということであって、父母の会の会長は中越何がしということももちろんわかっております。また、その日行っておったこともわかっておりますが、果して犯罪なる行為についてその人が自分でやったか、あるいは教唆したかというようなことは、やはり容疑者を特定しなければやれないことでありまして、その人間が将来入ってくるかどうかということは私存じませんけれども、現在までのところ——現在といっても、これはゆうべでございましょうが、総数三十数名については大体何らかの条項に当てはまるんじゃなかろうかと見込まれている被疑者があるのでございます。それについては次々にどういうことをおやりになるか、地方においてやりまするか、今私がこれは何月何日に逮捕されるであろうとかどうとかということを申し上げる材料はない。教員組合がやればすぐやるというようなことをおっしゃって、この間の不法監禁、これはたまたま同時にやって、片方はすぐ逮捕しているというようなことでございますが、これはやはりだれだれがどういうことをやったということが特定して、そういう令状がもらえてやっている。現に幹部だからやったというんじゃなしに、証拠の写真によってちゃんと監禁している現場のわかっておる顔についてやっているのです。具体的な例を言いますと、東元委員長は中に入っていない。どうも一緒にやっておったということは考えられるけれども、その証拠の写真に入っていないというんで抜けているという工合に、刑事事件捜査ということになってきますと、単に常識だけでやるというわけにはいかぬことは御承知の通りでございます。この問題については、決して警察がへんぱな処置をする気持はあるはずがございませんから、おいおいその状態に応じて、そのことははっきりするだろう、こう私は確信をいたしております。
  81. 大貫大八

    ○大貫委員 どうもそれがおかしいんです。特定しないからというんですけれども中越何がしという者が現場におったことは、もう明白なんです。これは個人の犯罪じゃないでしょう、集団犯罪ですよ。騒擾罪になるか、暴力行為になるか、とにかく集団犯罪です。個人の責任をとるべき問題じゃないですよ。やれやれ、殺してしまえということで集団的にやっているんですから、少くともその場に居合せた責任者である中越何がしなどは、まず何をおいても検挙しなければならぬはずだ。ところが、それを証拠固めをしてなんというようなことでほっておけば、これは証拠隠滅、簡単にやれますよ。めいめいが私はやらぬ、私はやらぬというようなことになってわれわれが悪く解釈すれば、警察が通謀して、かつて暴力団について、何か暴力事件が起きると、責任者を一人引っぱって済ませたと同じようなことをやるんじゃないか、そういう疑いすら持てる。要するに、ごく狭い範囲にしぼってしまって、責任者なんかを何とか逃がそうと、そういうふうな意識的なへんぱな処置をやっているんじゃないか、こういうふうにすらわれわれ思えるのですが、どうですか。
  82. 猪俣浩三

    猪俣委員 その答弁の前にそれと一緒に……。  大体こういう、岸総理大臣すら決定的に調査するようにという発言があったという大事件ですよ。一体本省からやはり適当な権威ある人を派遣する必要があるんじゃないですか。地方警察だけにまかしておきますと、われわれ、非常に疑心暗鬼ができるんですよ。それをだに、これだけの大事件であるにかかわらず、一体今日まで警察の本庁からもだれも行かぬ。検察庁もだれも行かぬ。私どもはその辺についてどうもふに落ちない点があるんです。あなたがじかに出かけたらどうですか、それをお答え下さい。
  83. 江口俊男

    ○江口政府委員 私が行けば一番いいんですが、おそらく諸般の事情、国会その他で行けないと考えます。だから、警察庁としましては、常時そういうときのために、各管区本部、管区局というものを置きまして、そして警察庁の職員が常駐しているのが四国なら四国、——今高松におります。これは国家公務員でございます。そこからその方の係課長を現在よこしておるところでございます。なおあらためて本庁から捜査の専門家なりをよこす必要があるかどうかということにつきましては、そういう御説も出ましたので、上司とも相談しまして、もしもその方がいいということであれば、出るということになりましょうが、私ちょっと約束はしかねると思います。
  84. 猪俣浩三

    猪俣委員 今の問題は、検察庁も、一つ本省からも私は出かけてもらいたいと思うのですが、どうでしょうかね。
  85. 川井英良

    ○川井説明員 私も帰りまして、いろいろ上司と相談してみます。
  86. 大貫大八

    ○大貫委員 今の問題ですけれども、特にこの仁淀事件が起ったのは、十五日に突如として起ったのじゃないのです。先ほどから猪俣委員も指摘しているように、いろいろの告訴事件なんかも出ておる。非常に不穏な空気がずっとみなぎってきておる。だから、今まで教員組合のオルグが現場へ行くときには、警察本部、県警の方に連絡をとっておった。連絡をとって、そのたびに護衛がついたというような状況だった。三十名なり五十名なりの護衛がついた。ところがこのときも小林委員長と東元という県委員長の二人が入つるについて、あらかじめ県警本部にも連絡をしておる。それにもかかわらず、このときに限ってはなぜか警察の方で何の手配もしなかった、そういう非常に険悪な空気になってきておるのに、何らの処置も講じなかった。こういう点から見ましても、あなたはそういうことは考えられないと言うけれども、県警本部長の大したことがないというような暴言、いろいろなものを総合いたしますると、どうも何かしら警察が、意識的にこういう事件、これほどのものが起るとは思わなかったろうが、ある程度やっつけてもいいというくらいの、何かそういうものがあったのじゃないか、こういうことが想像される。そんなことを言うと非常に変なことを言うように思われるかもしれぬが、私自身がもう現に経験しておる。私は昭和六年のことでありましたけれども、私の法律事務所に、当時生産党という暴力団がなぐり込みにやってきました。警察に連絡すること数回、それでも来なかった。そうしてようやく私の法律事務所がめちゃくちゃにたたきこわされて、しかも負傷者も出てきてから警察がやってきた。そうして形ばかりに生産党員を検挙した。暴力をふるった生産党員を検挙したばかりでなく、私のうちの書生まで連れていった。被害者でありしかも夜学に通っている当時十六、七才の書生まで、私夫婦を除いたほかは、私のうちに居合わせた書生なり弟なり、いろいろなものを全部検挙した。こういうことで、これは戦前の警察の例なんですが、しかし今の警察も少しも変っていないような気がする。どうも最近の警察の動きを見ますと、特にこの高知県の仁淀事件を見ますと、昭和六年私みずからが受けた警察のへんぱな扱い、何かしらそれに似ているような気がする。そういう点からしても、一つ警察庁としても、地方的に非常に公平を疑わしむるこういういろいろな事象が出ておるのですから、あなた自身が行かなくとも、課長でも係長でもたくさんいるでしょう、そういう人を派遣して、ぜひ調査をしてもらいたいと思う。
  87. 福井盛太

    福井(盛)委員長代理 本日はこれにて散会いたします。     午後一時三十一分散会