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1959-02-18 第31回国会 衆議院 文教委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月十八日(水曜日)     午前十時五十分開議  出席委員    委員長 臼井 莊一君    理事 稻葉  修君 理事 加藤 精三君    理事 木村 武雄君 理事 永山 忠則君    理事 原田  憲君 理事 小牧 次生君    理事 櫻井 奎夫君 理事 辻原 弘市君       木村 守江君    高橋 英吉君       谷川 和穗君    八木 徹雄君       西村 力弥君    長谷川 保君       堀  昌雄君    本島百合子君  出席国務大臣         文 部 大 臣 橋本 龍伍君  出席政府委員         文部事務官         (大臣官房総務         参事官)    齋藤  正君         文部事務官         (大臣官房会計         参事官)    天城  勲君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     内藤譽三郎君         文部事務官         (大学学術局         長)      緒方 信一君         文部事務官         (社会教育局         長)      福田  繁君         文部事務官         (体育局長)  清水 康平君         文部事務官         (調査局長)  北岡 健二君         文部事務官         (監理局長)  小林 行雄君  委員外出席者         厚生事務官         (社会局保護課         長)      大崎  康君         専  門  員 石井つとむ君     ————————————— 二月十六日  委員福井順一君辞任につき、その補欠として三  木武夫君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 二月十七日  義務教育費国庫負担法の一部を改正する法律案  (櫻井奎夫君外二名提出、衆法第三〇号) 同月十六日  スポーツ振興法制定促進に関する請願羽田武  嗣郎君紹介)(第一四三五号)  養護教諭各校必置に関する請願外五件(楯兼  次郎紹介)(第一四八八号)  同外三十一件(楯兼次郎紹介)(第一五四一  号)  同外四件(山本幸一紹介)(第一五四二号)  女子教育職員の産前産後の休暇中における学校  教育の正常な実施の確保に関する法律の一部を  改正する法律制定促進に関する請願外三件(堂  森芳夫紹介)(第一五三九号)  同(吉川兼光紹介)(第一五四〇号)  学校教育法の一部改正に関する請願中馬辰猪  君紹介)(第一五四三号)  盲ろう教育振興に関する請願中馬辰猪君紹  介)(第一五四四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  文教基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 臼井莊一

    臼井委員長 これより会議開きます。  前会に引き続き文教基本施策に関し、質疑を許します。小牧次生君。
  3. 小牧次生

    小牧委員 先般の委員会に引き続きまして、今回の予算内容とその他重要と思われる当面の文教政策について、若干大臣にお伺いいたしたいと考えます。  まず第一には、義務教育費国庫負担についてちょっとお伺いいたします。この問題は、さきに施行されました学級編制及び教職員定数標準に関する法律と直接関連があるわけでありますが、今回の計画によりますと、教職員の数におきましては、児童数が減少するという意味において三千七百七十人一応計算上は減ることになって、それから今申し上げた教職員定数標準に関する法律によって七千八百三十八人の増になります。差引四千六十八人が増加される、こういう内容になっておるようにお聞きいたしておりますが、全国においてはそういうことになるかもわかりませんが、その結果、各県別には実際にはどうなるのか、それをまずお伺いしてみたいと思います。
  4. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 各県別にどうなるかというお尋ねでございますけれども、この予算案に伴いまして、小学校は三十四年度において五十八人以上の学級を全部なくするようにしたい。中学校は五十四人以上の学級を少くともなくしたい。各県の実情はまちまちでございますが、非常にすし詰め学級解消が進んでいるところもございます。ですから、もちろんその進んでいるところは進んでいる時点を基礎にいたしまして、おくれているところをただいま申しましたように、小学校五十八、中学校五十四にとどめたい、こういう趣旨でございます。
  5. 小牧次生

    小牧委員 それは抽象的にはそういうふうに言えるかと思うのですが、私がお伺いしたいのは、それぞれ各県によって実情が違うわけですが、そういうところで減るところがある、あるいはまたふえるところがあるということになるのかどうか、それをお伺いしたい。
  6. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 各県とも減るような事態はございません。と申しますのは、定数基準の方で約三千数百というものが計上されておりますから、定数充足の分とそれからもう一つすし詰め学級解消の分と両方の要素が盛られております。従って、今御指摘になりましたように、八千何人かの増になるわけでございますので、各県がそれぞれの充足計画すし詰め学級、この二つの線を推し進めて参りますので、減る県はございません。むしろどの程度ふやすかということに問題があるんではなかろうかと思っております。
  7. 小牧次生

    小牧委員 これと関連して、さらにお伺いいたしたいのは、いわゆるすし詰め学級の問題であります。私は詳しい資料を持っておりませんが、一学級当り児童数が大体五十人とかあるいは五十五人とか、いろいろあるわけですけれども、統計的に見てどの辺が一番多いことになっておるのか、それを一つ伺いしたいと思います。
  8. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 全国平均で申しますと、小中学校とも四十四、五人になっております。ところが五十人以上の学級全国で十四万以上ありましたが、昨年すし詰学級解消に関する法律案通りましたので、昨年から積極的にすし詰め学級解消に努めて参りましたので、昨年の五月一日の統計によりますと、十二万八千とある程度減少して参ったわけでございます。御指摘の最も多いところは大体五十人から五十五、六人のところが全国的には多いのでございます。
  9. 小牧次生

    小牧委員 そうしますと、文部省の五カ年計画というものは、今言われたような五十人から五十六人というところが一番多いということを中心として漸次これを少くしていくという方針でありますから、具体的には五カ年をもって小、中とも五十人、五十人ということを目標としておられるようでありますが、これについては前に櫻井委員の方からもいろいろ質問がありましたが、私どもは、五十人、五十人ということを目標にしたのは一応考えられるにしても、やはりほんとうの教育というものから考えてみた場合に、四十五人とか四十人とか、大体そういうところが最もいい編制内容ではないかと考えておるわけでありますが、それについてはどうお考えでありますか。
  10. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 これは財政との関係もございますが、教育的に考えまして、私どもは四十人くらいが適当でなかろうか、諸外国の実情等も勘案しまして、御指摘のように四十人、せいぜい四十五人くらいまでがよろしいかと思っております。
  11. 西村力弥

    西村(力)委員 五十人を目標にしてやられるということは、実際にその地域の事情によって、二十人なら二十人の学級にせざるを得ないとか、三十人にせざるを得ない、こういうところはどうしても五十人上げるわけにはいかぬ。そういうものは存在するわけでありますから、こちらの計画で五十人までにするといたしましても、結局そういう動かし得ない少定員の学級が存在するわけでありますから、平均はずっと上ってくる。こういうふうに組まざるを得ないと思うのですが、その場合どういう工合に考えるんですか。
  12. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 これは前のすし詰め学級解消法律のときに御説明をしましたように、単級の場合には二十人、あるいは複式の場合には三十人というふうに計算しているわけでございます。私どもとしては現在全国平均は四十四、五人でございますけれども、とりあえず五十人以上の、主として都会地でございますが、その五十人以上の学級解消することに重点を置いておるわけでございます。
  13. 西村力弥

    西村(力)委員 五十人以上の学級は、五カ年計画が完成した暁においては一切存在させない、こういう見込みでございますか。
  14. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 原則としては、財政上あるいは政令の上においては五十人以上はさせないようにいたしたいと考えております。
  15. 小牧次生

    小牧委員 政府計画は一応わかったわけでありますが、私どもが非常に不安に思っておるのは、今局長が言われたような、そういう目標に向って文部省が進まれるわけでありますが、実際の予算編成を見た場合に、果して五年目に少くとも小、中学校ともに五十人、五十人の編制までいけるかどうかということに、非常な危惧を持っておるわけであります。しかし一応目標をそこに立てておやりになるということはまことにけっこうで、そこまで実現できることを、またそれ以上に、今言われた少くとも四十人ないし四十五人という目標にいくことを、われわれは理想としておるわけでありますが、この際大臣にお伺いいたしたいのは、岸内閣においても、たびたびすし詰め学級解消ということを叫んで参っておられるわけでありまして、文部大臣は新しく就任されて、これをその通り熱意を持って実現する、予算編成においても積極的にその実現方に努力するというはっきりした見通しと御決意を持っておられるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  16. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 ぜひ五カ年間にそのすし詰め教室解消をやらなければならぬと考えておりますし、見通しの問題といたしましても、中央財政地方財政を通じて見まして、大体今後五年間にこれを十分やり終えるという見通しを持っております。
  17. 小牧次生

    小牧委員 これと関連してもう一つ伺いいたしたいと思います。それはずっと前の国会におきましても、私はたびたびお伺いをいたした問題でありますが、養護教諭事務職員の問題であります。大臣は詳しく御存じであるかどうか存じませんが、これはもう長い間の問題でありまして、私は、文部省がこの養護教諭事務職員充実の問題について果してどの程度熱意を持っておられるのか、さらに進んで言えば、ほとんど熱意を持っていないのではないかというくらいにさえ考えておる問題でありますが、これは簡単に申し上げますと、学校教育法によって、いろいろなただし書きはついておりますけれども養護教諭事務職員も各学校配置して、児童保健衛生の問題、その他事務職員学校事務能率向上をはかるべく、はっきりと規定をされておる問題であります。ずっと前の国会において、そういう立場から私ども学校教育法の一部改正に関する法律案提案をいたしましたが、残念ながらこの法律案に対する質疑も行われないで法案が流れてしまった。まことに遺憾に考えております。従って今回再び今申し上げたような内容法律案を近く私ども提案をいたしましてそうして根本的にこの問題を御審議願って、これを成立させてもらって、今申し上げた児童保健衛生の問題や、学校事務能率向上の問題を解決をいたしたい、かように考えておるわけであります。この問題について、先般の国会において私がいろいろ内藤局長質問をいたしましたところが、すし詰め学級解消の五カ年計画重点を置いて、養護教諭事務職員配置についてはその次に考慮したい、こういう御答弁があったことを記憶いたしておるわけであります。しかしながら、私は先般の国会においても申し上げました通り事務職員は特別の事情のあるときは置かないことができる、また養護教諭については当分の間これを置かないことができる、こういう規定があるために、今申し上げたような、非常に不十分な配置の状態になっておるわけであります。この機会にお伺いいたしたいのは、事務職員において特別の事情があるときはという問題と、それから養護教諭においては当分の間云々、これがあるために、どうしても文部省において、なかなか積極的にこの問題と取り組んでこれを充実をしていくという態度に変ってこないという関係から、私ども法律案内容は、この二つをある年限に区切って、たとえば昭和三十六年とか昭和三十七年とかいう期限にこれを切って、そうしてその後は法律本則通り事務職員養護教諭も各学校配置をするという方向に持っていきたい、こういう考えでありますが、まず第一にお伺いしたいのは、この当分の間、これを一体いつごろまで文部省としては考えておられるのか、これはもう十年くらいたっておりますよ。そうすると、かりにこれをあと三カ年ないしは五カ年の計画をもって実施をしていくという場合に、これを加えるともう十五年くらいになる。一体そういう長い間の当分の間というのがあり得るのかどうか、まずこれをお伺いしたい。
  18. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 養護教諭につきまして当分の間置かないことができる、こういう規則が学校教育法の百三条にございます。当分の間とございますから、できるだけすみやかにするような方向に向わなければならぬと思うのでございます。かような意味合いにおきまして、昨年御審議を願いました定数基準法律におきまして、小学校は千五百人に一人、中学校は二千人に一人置くという基本線を堅持いたしまして、そのために養護教諭は五カ年計画で増員するということで、今後四カ年間に二千七百五十四人を充足するということを考えまして、本年は六百八十八人を増員いたしたのであります。ですからこの五カ年計画が順調に進みますれば、昭和三十七年度までにともかく三千数百名の養護教諭が一応定数の上では認められるわけでございます。私どもはこれによりまして、ただいま申しましたように小学校千五百人に一人、中学校二千人に一人という理想が一応達成されると思うのであります。その達成された後におきまして、さらに養護教諭を増員すべく、あらためて計画を検討いたしたいと考えております。
  19. 小牧次生

    小牧委員 今概数をお示しになりましたが、大体各学校配置をするという建前から、いろいろわれわれは考えておるわけでありますが、極端に学校生徒数の少い、そういうところまで今急に必ず配置しなければならないということは考えておりません。しかし今局長の言われたような数字をお聞きいたしますと、三千数百人を三十七年度までにふやしていく。一体、各学校配置するという建前から見て、今どのくらい不足しておるのか。もちろん御存じだろうと思うのですが、大へんな開きだと私は考えております、しかも今の御答弁の中で、それだけのものを増員して、そのあとでまたあらためて考えてみたい、これは一体どういうことですか。
  20. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 養護教諭は、できれば大きな学校は各学校ごと配置することがいいと思うのですけれども、小さいところはやむを得ないと思いますので、兼任になると思います。ですから、ある程度兼任を認めていかないといけない。そこで、私どもは、これはこの前御審議願いましたときにも御説明申し上げたと思うのですが、小学校はとりあえず千五百人について一人、中学校は二千人について一人。そこで、この五カ年計画が済んだあとで、さらに実態を調査いたしまして、次の段階についてどの程度が妥当であるかということを計画を立ててみたい、こう申し上げたわけでございます。
  21. 小牧次生

    小牧委員 それではさらにお伺いしますが、文部省自体として、今の答弁のようにお考えになっておるのか、それとも、もっと急速に充実をしたいという建前から、予算の面についても、文部省としては考えておられるけれども大蔵省の方でそういうことに難色を示しておるという事情にあるのか、また大蔵省の査定に、今私が申し上げたような気持を持って要求をされたことがあるのかどうか、どちらが実態であるのか、それをお聞かせ願いたいと思う。
  22. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 私どもといたしましては、ともかく今五十人以上の学級全国に十数万もございますので、約三分の一のすし詰学級解消することが当面の急務だと思うのであります。同時に、御指摘のように、養護教諭事務職員充実についても、決して私どもはこれをおろそかにしているわけではございませんので、漸進的に養護教諭につきましては、ただいま申しましたような基準までとりあえず充足していく、こういうことで進んでいるわけでございます。
  23. 小牧次生

    小牧委員 それと関連して、事務職員の問題をお聞きいたしますが、これも大体同様な事情にあるわけでございまして、特別な事情があるときは置かないことができるという条文があるために、容易に今日まで、これが充実をされない。従って、学校事務能率向上ということがはばまれておるというのは、これは偽わらない実態であると私は考えております。ところが、けさ配布されました予算資料に基いてちょっと見て参りますと、事務職員の数の増減においては、三十二年度、すなわち今の年度と来年度を比較いたしますと、全く同じ数字であるようでありますが、これはこの前の国会においても私がいろいろ御質問をいたしまして、内藤局長も、これを充実をしていくという答弁があったと私は記憶をいたしておりますが、今ここに示された数字実情から見て、一体どういう計画を持っておられるのか、あらためてお伺いいたしたいと思います。
  24. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 事務職員につきましても、昨年の定数基準法律のときに御説明申しましたように、小学校は十八学級中学校は九学級以上に必置できますように計画立てておるのでありまして、大体三十四年以降約千名の者が増員される予定でございました。本年度はその四分の一の二百三十三名を増員する計画財源措置をいたしたわけでございます。
  25. 小牧次生

    小牧委員 今私が申し上げたのは、けさ配布されました三十四年度予算資料に基いて一応お伺いをいたしたわけでありますが、これについては何ら増減は示されておらない。これは一体どういうわけですか。
  26. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 ちょっと御質問が聞きとれなかったのですが……。
  27. 小牧次生

    小牧委員 今二百何名の増ということを御答弁になりましたが、私が出し上げたのは、けさほど配布されました三十四年度予算資料に基いて調べて参りますと、全然増減が示されておらない。だからそれとあなたの答弁と違っておるが、まず第一にどういうわけで違っておるのか、それをお伺いしておるわけです、
  28. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 この数字の積算に多少単価との点があったそうで、実はこの数字はちょっと検討を要するものでございますから、私が申し上げた方が正確でございます。
  29. 小牧次生

    小牧委員 予算関係でそれが違うというのは、ちょっと意味がわかりかねるのでありますが、もう少しその内容についてお話し願わなければ、われわれは納得することができない。
  30. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 この資料は実は教員の俸給単価で、一本で作ったらしいのでございます。その点は、棒組単価の点がございましたので、こういう結果に現われましたけれども、実は人員と単価は別々に計算すべきだと思いますので、この点につきましては、あとで調整をいたしたいと思います。
  31. 小牧次生

    小牧委員 これはどうもちょっとおかしいと思うのです。これは悪く解釈すれば、金は変らないで、人間だけをふやすということになると、安上りで人間をふやす操作予算のワク内で行えるということも考えられるわけです。そういうことではないかということを念のためにお伺いいたしっておきます。
  32. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 そういうことでは毛頭ございません。ですから四千六十八人増の内訳をお示しすればわかると思いますけれども、この点は単価との関係だけでございます。
  33. 小牧次生

    小牧委員 四十幾らというのはどこに出ておりますか。これには九千四十五人と書いてあるのですが、何か違った別な資料ですか。
  34. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 この点は私の方の作成の誤まりがございましたので、さらに調整して差し上げたいと思います。     〔「了解」と呼ぶ者あり〕
  35. 小牧次生

    小牧委員 了解という不規則発言もありますが、私は了解はいたしかねますけれども、しかし今の場合は、この資料についてはこれ以上は追及いたしません。あらためて正確な資料一つ御提出願いたいと思います。  ただ、さらにこれに関連して今価の問題が出ましたからお伺いいをいたしますが、実は前の国会において、この問題を取り上げて私があなたに御質問をいたしました際に、非常に予算の額において見通しにおいて大きな開きを示したことがありまり。まず第一には、私ども計算によりますと、各学校事務職員養護教諭配置していくという理想建前にして計算をして参りますと、それぞれたしか養護教諭においてはまだあと二万五千人、事務職員においては大体これと同じような数字で二万五、六千人、合計五万人くらいを必要とするのではないか。こういう数字基本といたしまして、将来これは充実する上にどのくらいの直接国庫が必要であるかどうかということをお伺いいたしました際に、私の数字とあなたの数字と非常な開きがあった。その際に内藤局長は六万人を木木として私に答弁された。いまだに文部省計算は、まず第一に基礎数字において今申し上げた数字であるのかどうか、それからお伺いいたします。
  36. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 小牧委員の御質問の点が私ちょっと理解しかねましたけれども基礎数字とおっしゃるのは、小、中学校に全部養護教諭事務職員を置いた場合の不足数、こういう意味でございますか。
  37. 小牧次生

    小牧委員 高等学校も入っている。
  38. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 現在小、中学校におきましては養護教諭が五千二百人、事務職員が五千百二十になっております。そこで両方合せまして現在小、中学で大体三万以上でございます。ですから高等学校を入れますと六万七、八千になろうかと思います。そこで差し引きいたしますと、五万から六万の間だろうと思います。
  39. 小牧次生

    小牧委員 先般の国会においては、あなたは今から充実するという理想に向っての不足数は六万と計算をされたわけですが、五万から六万というとちょっと一万開きがあるわけでこれは非常に相違がある。その辺ははっきりしないということであれば、それじゃ私は大体五万人というこの数字をもってお伺いをいたして参りたいと思います。  その次には結局新しく今後増員するとすれば、一体単価をどのくらいに見るかということになるわけでありますが、私の記憶するところでは、内藤局長はたしか手当その他を入れて一人年間三十万、こういう数字を私に示して、それに六万をかけて、地方財政員負担も入れて結局は百八十億から二百億、こういう膨大な数字を示して、従ってとても財政負担が大きいから簡単に私どもの言う主張をいれて事務職員養護教諭を数カ年の間に増員充実していくことはなかなか困難だ、こう言われた。しかしこれは今後新しく入れるのでありますから、これは養成の期間も必要ではありますが、大体初任給というものを考えてみた場合に、そんなに一人当り三十万円ということは考えられない。そういう金額ではなくて、これは初任給でありますから、もっと低いところで採用されるのが普通である、こう考えますが、まず第一にその単価についてお伺いをいたします。
  40. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 予算編成いたします場合には、これは大体全国平均単価を用いるわけでございます。初任給が低いからといって初任給別予算編成しておるわけではございません。と申しますのは、どんどん昇給して参りますし、平均単価にしておきませんと新陳代謝も行われません。ですから一応予算編成の上では、私どもとしては事務職員なら事務職員全国平均単価教職員なら教職員全国平均単価予算上とるのが、これは予算技術としては当然なことだと思うし、また普通のことだと思います。
  41. 小牧次生

    小牧委員 予算編成建前はあるいはそうかもしれませんが、実際にはそれだけ要らない。少くとも年間十五、六万円もあれば、今申し上げたような養護教諭事務職員の新採用ということは可能ではないか。これは実際あなた方が予算を形式的に数字の上で編成される上においては技術上そういう操作が必要であろうかと思いますが、しかし実際にはそれだけの金を現実に必要としない。従って私が申し上げた最初のおよそ五万人という数字と、それから今申し上げた一人当り十五、六万円という数字を乗じて計算をいたしました場合に、実際に国と県が払う金は、あなたの私に答弁された数字の何分の一にしかならない。予算は組んでおいても実際に払う場合には、これは国の負担も県の負担も予算通りに払わなければならないというわけではないのであって、実際に採用したときの給料によって支払われるわけでありますから、予算は実際には余ってくるわけであります。私どもは実際上の支払われるであろうという実際額を基本として計算して、できるだけ予算上の困難性を緩和しながら、今申し上げたような養護教諭事務職員の増員をできるだけ短かい期間に完成していきたい、こういう建前で今あなたに御質問しておるわけでありますが、いま一度御答弁をお願いしたいと思います。
  42. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 あなたの御議論を伺っておりますと、初任給でとれるという前提ですしかし事務職員をとる場合に新卒でなければならないという規定はどこにもないわけです。ですから新卒でとれるという前提で予算を組んだ場合に、新卒以外の事務職員だってたくさんあるわけですから、しかもあなたのお話のように五万とする、私が六万と申しましたから六万でもよろしいと思いますが、一ぺんに五万、六万という相当の数をとる場合に新卒だけでとるというわけには参らぬと思います。ですから、どの辺を単価にとるかということは、これは全国平均単価が妥当でないにしても、私どもは新卒の単価で組むことは無理ではなかろうか。お話しのように十五万とみますと、賞与手当等を入れますと、大体十五カ月ぐらい見なければならぬので、とても十五万では私無理ではなかろうかと思っております。
  43. 小牧次生

    小牧委員 私は今あなたが言われたように、何も六万とか五万という膨大な数を一ぺんにふやしてやっていこうということを申し上げた覚えは決してないのです。その点はあなたもはっきりお聞き願いたい。従って、私どもは先般の国会においても法律案提案し、また近く提案をする予定でありますが、できるだけそういう財政上の負担を緩和しながらこれを漸次充実をしていきたいという計画のもとに、法律案内容は三カ年計画をもってこれを樹立するという建前で出しております。これをいろいろ御審議を願って、何とか今度は……。(「了解」と呼ぶ者あり)今了解という発言もありましたが、御賛成を願いたいと思っているわけでありますが、三カ年が無理であるならば五カ年というところを切って、そうして特別の事情のあるときはというところと、当分の間という、まことに不合理きわまる条文を削除していかなければならない、こういう建前法律案提案をしようとしておるわけでありまして、決して今あなたの言われるような五万とか六万を一ぺんに充実しようということは、われわれは毛頭考えてない。(「了解」と呼ぶ者あり)法律案を出した場合も了解してもらいたい。従って十五万という問題と三十万という問題には相当の開きがある。あなたの言い分も確かに一理あります。私どもは実際支払われる金額をできるだけそういうふうに実際的な立場から見て申し上げておるわけでありまして、今はこの問題についてはこれ以上深く立ち入りません。いずれ法律案提案いたしました際に、あらためてこの問題は根本的に再検討をしてもらいたい、こう考えております。さらに次の問題に入ろうと考えておりますが、関連質問をしたいという御希望があるようですから、一応中止いたします。
  44. 西村力弥

    西村(力)委員 今の事務職員を増員する場合の平均単価の問題でありますが、あなたの方では一人当り三十万とらなければならぬということを固執せられておりますが、こちらの希望するような、またあなたの方が望まれるような工合で、五年なら五年で増員する場合の単価は下る、こういう見込みは立ちませんか。
  45. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 これはいずれ財政負担は増高するんですから、お話しのように初年度において新卒を相当とるという前提のもとにやれば、私は技術的には下ると思います。しかしいずれ後年度には平均単位に持っていかなければならぬ。
  46. 西村力弥

    西村(力)委員 次に大臣にお聞きしますが、当分の間というのはどのくらいの期間を考えておるのか。当分の間だからなるべく早急に解消するのが当然である、こういう質問でありましたのに、これに対する答弁は、全然われわれとして的確なお答えとは受けとれない。当分の間というのは、大臣としてはどういう工合にその解消考えられておるか、全校配置という場合にいつごろまでに実現したいと考えられておるか、事務的な話ではなく、大臣としての見解を承わりたい。
  47. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 これは学校教育法理想として考えている学級編制の仕方をうたっているわけでありますから、なるべく早い機会にこれに近づけていくのが筋だと思いますが、ただ中央、地方の財政状況等もございますので、とにかく今日の場合といたしましては、すし詰め学級解消の五カ年計画というものに全力をあげて、予定通り五カ年間に完遂をいたすということに最大の重点を置きたいと思います。この点についてはわれわれは十分五カ年間解消いたします決心でありまするし、また十分五カ年間解消できるという見通しを持っておりますが、ただしこれは決してふところ手でできることではないので、再三質問のございましたように、よほどの決心で推進をしなければならぬ問題でありますので、まずこの五カ年計画の完遂に全力をあげまして、ついでただいまお話しのありましたこの法に規定された理想方向において、実現をなるべく早くやるというふうにしたいと思います。
  48. 西村力弥

    西村(力)委員 すし詰め学級解消を五年で確実にやると仰せられますが、私たちとしてはある程度の発展は認められますけれども、五カ年間に完全にやり得るだろうとおっしゃるそのことには、全面的にその通りだとの了解はちょっとできない状態にあるのです。  そこで一つ委員長に頼みたいのは、五カ年間すし詰め学級解消するという具体的な計画資料をぜひ出してもらわなければならぬと思う。たとえば生徒数の変遷、それから教室の増築の五カ年間計画、教員の配当の増加、こういう点を全部関連せしめて、皆さん方が確信を持って五年間解消せられると言われる裏づけの資料をぜひちょうだいしたいと思います。  それからもう一つ大臣にお聞きしますが、私の持論としましては、学校教育というものは、教師、それから事務職員養護教諭、それから使丁あるいは給食婦、そういう人々がそれぞれのポジションを持って、それぞれの努力をして、そして学校教育というものは営まれるものだ、こういう考え方に立つのです。そういう場合に、逆に私のいうことを生徒の側からいいますと、生徒の側はやはり使丁の動向も相当影響するし、給食婦の動向も相当影響するし、事務職員のいろいろな勤務状況、態度、教育的な関心、すべて生徒に影響するのですよ。そういう点からいっても、これらの学校教育を営むすべての人々は、同じ目標に向って一体とならなければならない。そういう場合に給食婦や使丁とか、単純労務に従事する者は、これは単純労務者であって、教育公務員というワクに入れることはちょっと疑問があるというのが今の普通の行政の考え方です。しかし私たちはお互いの社会をよくしていくには、それぞれのポジションでそれぞれの任務を遂行する、そういう立場の人々はみんな同志だという考え方を持って進まなければならない。そう言えばこれは中国あたりのトンツー、同志という考え方であろうと思う。加藤君が笑われましたが、これから教育をよくするには、たとい現在の状態の社会機構が続いても、そういう考え方で物事を進めなければならぬのではないか、こういう工合に考えるわけであります。単純労務者は少し低いのであります。上の方は公務員としての資格を持つのだ、こういうような考え方を捨てて、そういう人々も公務員というような責任ある格づけをやっていく、こういう方向をとるべきであると思うのです。さしあたって事務職員も、これはもう子供たちは事務職員も先生と呼んでいるのだし、影響も大きいのですから、教育公務員という同列の中に入れて、そうして実施していくのが当然である。こうすることこそが教育効果の向上を期する道であるのだ、こういう工合に考えておる。私のこういう考え方に対して、大臣はどういう見解を持たれるかお聞きしたい、こう思うのです。
  49. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 これは同じ学校に勤めておりまする者が、あるいは校長先生であろうとあるいは給食婦であろうと、あるいは小使いさんでありましょうとも、ほんとうにやはり子供をかわいがって、子供がりっぱな人間になるように学校の場というものを心得て働いてもらうということは、そうなくてはならぬと存じます。ただ、私はそういう考え方で勤めてもらわなければならぬということによって、直ちに全部の人が教育公務員という身分を持ち、責任を持ち、監督に服するというふうにならなければならぬというふうには考えないのでありまして、やはり公務員法上の身分というのは、これはきわめて厳格な特殊な意味があるわけでありまして、そこにはそれだけの恩典もあるし、それからそれだけの資格その他に制限もあるわけでありまして、私はただいまお話のございました教育の場にある者は、これはもう小使いさんでも、給食婦でも、校長先生と同じつもりでやってもらわなければならぬということにおいては、まさしくそうあってほしいと思いまするし、そういうつもりでおそらく多くの人はやってもらっておると思います。ただ、身分法上全部教育公務員でなければならぬというふうには考えませんので、大体現行の行き方でよろしかろうと思うのであります。
  50. 西村力弥

    西村(力)委員 事務職員に限っての問題については御答弁がありませんでした。それではお聞きしますが、公務員法上のそういう責任と義務が厳然と付せられるものにしないにしても、教育的な立場に立って、その仕事を十分に果してもらうためにそれを望まれるというならば、他の方法によって、そういう人々を守る措置をやはり考えていかなければなりません。あの諸君、給食婦にして炊事を喜んでやっている方がほとんどですが、中には身分の不安、給与が低い、こういうところから、料理をしながらやはりぶつぶつ言う者が出るということもこれは事実として否定できないのです。ですから、あなたが教育的な良心に立ってその仕事に専念してやってもらいたいという希望、そうして学校全体としての教育の効果を願うのだ、こういうことをおっしゃるならば、公務員としてワクづけはできないにしても、そういうようないろいろな勤務上の不利あるいは不安、そういうものを解消するために、別途の努力を何らか払われるという、こういうことを今おっしゃらなければいかぬと思うのです。その点はどうです。
  51. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 まさしくその通りでございまして、そういう方向文部省は今までも努力をいたして参りましたし、今後もやるつもりでございます。給食婦の問題にしましても、これはことに身分が安定をいたしておりませんけれども、今回も交付税の算定基礎の中へ入れ込んで、国費でこれをできるだけめんどうを見る、給与の基礎をめんどうを見るという形におきまして、現実には現在雇員にも用員にもなっていないような、ほんとうの日雇い的な身分でいる人たちさえあるようでありますが、こういったふうな人たちに対して給与のもとを拡充いたしまするのと、それからそれに伴いまして、やはり身分を安定させて参る方向につきましては、これはぜひ給食婦につきましてもやりたいと考えております。  それから先ほどお話のございました諸般の問題に関しましても、身分法の問題につきましては、これは資格であるとか責任であるとか、いろいろな問題がありますから、教育公務員の範囲というものはおのずから私は限定されなければならぬと思いまするけれども、身分、待遇の安定、改善ということにつきましては、今後ともできるだけやって参るつもりでございます。
  52. 加藤精三

    ○加藤(精)委員 関連。先ほどから小牧委員が、非常に地味ではあるけれども、非常に政策的な重要な御質問をされましたことにつきましては敬服いたしております。それに対してときどき不規則発言をしたことについては、相当程度の反省を本員はしているものであります。しかしながら、私があえてこの関連質問をたびたびお願いした理由は、この教員定数問題というものにつきまして私は非常な興味を持っているのであります。今まであまり出なかった議論がこの定数問題についてはあると思うのです。それは私長い間教育行政の方の仕事に今日まで——県の学務課長とか学務部長とか、文部省の課長なんかしておりまして、その間に専門家の話をいろいろ聞いたのでありまするが、一つ学級に物覚えの非常に悪い生徒、たとえば小学校に上るまで、一年生に入学するまでに十までどうしても勘定できないような子供がおります。私も勘定できなかったので、非常に兄が嘆いて泣いたということを聞いておりますので、私も知能が少しおくれた人間だということを自覚しておりまするが、私なんかよりもなおさらに知能のおくれた者が、一学級五十人のうちに二人や三人いるのだそうでございます。それが義務教育でございますので、全部を上に上げなければならぬので、非常にその先生は苦労するもんだそうです。その二人か三人の知能のおくれている子供のために、全部の学級の進度が非常におくれるということを聞いております。そうでございますと、特殊学級ということが非常に問題になってくるのです。それからこれと若干関連いたしますが、これも専門家に聞いたのであります。日本では水泳のときのいわゆる運動衛生といいますか、そういうふうなことが非常に未発達でございまして、難聴児童というのが非常に数が多いらしいのでございます。私どもの農村なんかでは、私は選挙区で選挙のことにかけ回っておるときに、お医者さんなんかと会うといつも聞いておるのです。選挙運動よりもこっちの方に私はいつも熱心になっておるのですが、学校衛生上、難聴児童というものは非常に問題なんです。今度学校教育法改正によりまして、この難聴児童の相当の部分を盲ろうあ特殊教育の中に入れ込むというような、非常にいい改正がある。そういう意味からも、なるべく早く学校教育法等の一部改正を上げていただくことを——一ぺん討論が済んだのですから、公聴会が済んだのですから、無意味に遷延させることもないと思うのであります。そういうことも非常に要請されるわけであります。とにかくこの特殊教育、義務教育児童定数の問題、それから特殊学級の先生の、今は定数はないのでありますが、これに定数を設けて、そして特殊教育というものに今入れている力を一とすれば、五倍、六倍を入れるとするならば、一学級の進度というものが非常に進むばかりじゃない。日本の学者は、三十五人が教育的に一番理想的なものだとしておりますが、これはたとい三十五人でなくても、四十五人でも相当な効果を上げ得るのじゃないか。われわれも財政事情が許せば、せめて四十五人とか四十人とかにしたいもんでございます。しかしながらわが国は今資本蓄積の途中にあるのでございまして、国民が何とかして生きていきたい、それには食糧の自給自足もできないわが国としては、たくさんの綿花や羊毛を買って、それを加工して外国へ出して金をもうけて、そして国民の経済をささえているという情ない状況でありまして、鉄、鋼鉄の鉱石を一ぱい買ってきて、思い切った対外協力、財政投資までして鉄鋼石を安く手に入れて、それを加工して売って、国民の将来の経済を全うしようというときに——それはもうわれわれは文教委員会ですから、教育だけに力を入れたいのですけれども、資本の蓄積ということも国全体の経済から考えなければならぬ、そういう面からしまして、今直ちに日本経済がどうなるかもわからないのに、この四カ年中に全部養護教諭を置けとか、それから事務職員を置けということを言うのは無理だと思う。また特殊学級を必ずどの学校にも置けということも無理だろうと思いますけれども、相当広い範囲における特殊学級の数を増加していくということは、これは教育の効果を上げる上におきまして教員の定数を増すのと同じ、またはそれ以上の効果を上げ得ることになるだろうと思うのであります。それで難聴児童の問題も、やはり知能がおくれたということが大きな原因だろうと思うのであります。そういう点を総合的に判断して下さいまして、普通学級の教員定数の増加ということとあわせまして、このろうあ教育の振興とかあるいは知能の非常におくれた精神の未発達耗弱児童の特殊教育というような点も御研究になっていただいて、並行して進んでいただいたらどうか。それに関連いたしまして特殊教育学級の現状と、それからそれに対する将来の措置等につきまして、専門家であられますところの内藤局長に御質問申し上げるわけであります。
  53. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 大へんごもっともな御質問でございまして、私どももできるだけそういうふうにいたしたいということで今日まで参ったわけでございますが、御承知の通り養護学校につきましてはすでに義務教育に準ずるような法律案ができておるのでありまして、教員給の二分の一の負担、施設についても二分の一負担、教材費につきましても小、中学校に準じた措置が講じられておるわけであります。さらに今御指摘になりましたように、普通の各小、中学校にも大体三%程度知能のおくれた子供がおるといわれておるのであります。この人たちに特別学級を作ることによりまして、その人たちの本人の仕合せのみならず、学級全体の学習効果を上げる上にぜひ必要であると私ども考えまして、本年はわずかではございますが前年度の約倍に増額いたしまして、特殊学級の促進に必要な設備の充実をいたすように予算措置をいたしたわけでございます。現在までのところ大体千八百学級が特殊学級といわれておるのであります。私どもはこれではとても足りませんので、本年はとりあえず予算措置といたしまして二百学級分の学級設置に必要な設備費の予算を計上いたしたわけでございます。同時に教員につきましては、これは昨年御審議いただきました定数基準法律によりまして、ただいま御指摘になりましたような特殊学級につきましては十五人で教員一人を確保する、こういうふうにいたして、教員の面におきまして定数基準の方で確保し、また設備につきましてはただいま申しましたような特殊学級の設備費の助成を行いまして、できるだけすみやかに特殊学級が普及いたすように考えておるのでありますが、御指摘になりましたように、まだ予算が前年度の倍額ということでありますので、さらにさらにこれを増額いたしまして、できるだけ早い機会に特殊学級全国的に普及充実いたしますように私たちも努力し、また期待をいたしておるわけでございます。
  54. 臼井莊一

    臼井委員長 関連質問一つ簡単にお題いしたいと思います。
  55. 西村力弥

    西村(力)委員 関連して。大臣の御答弁せっかくでありましたが、事務当局それを一つ具体的に御答弁願いたい。
  56. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 先ほど西村委員から大臣に御質問ございました。これにつきまして実際にどういう措置をいたしましたか私の方から申し上げさせていただきます。  事務職員につきましては、先般の法律によりまして、これは超過勤務手当を支給するように、またそれに必要な財源措置をいたしたわけであります。なお給与の取扱いにつきましても、事務職員が低い地位で格づけされないように、できるだけ学校実態を考慮しながら高い地位に格づけするようにという通達もいたしたわけであります。なお人事の交流につきましても、積極的に人事の交流を進め、働く者の意欲をそそるようにということで通達もし、また教育会議等においても説明し協力を求めたような次第でございます。ですから教育公務員特例法の中に入れなくとも、事務職員の系統の中において十分に待遇が向上し、また能率が上るように措置して参ったわけであります。そのほか寮母とかあるいは先ほど御指摘の給食婦等につきましても、大臣からお話ございましたように、私どもでは財源措置をいたしまして、本年度約十二億の財源措置をいたして、これは交付税交付金の単位費用に入れたわけでございます。そして身分を安定するようにいたしたわけであります。こういうような措置を行いまして、全般的に教育公務員の特例法として教員の分については別途考え、その他の学校に従事しておるところの人々のためにもそれぞれ適切な手段を講じまして、待遇の向上と職員の地位の向上に資したい、かような考えでおります。
  57. 小牧次生

    小牧委員 中にいろいろ関連質問がありまして、多少問題がほかの方へそれたような気もいたしますが、元へ戻して、もう一度内藤局長にお伺いいたしたいのは、いずれ、先ほど申し上げました通り養護教諭事務職員の問題については、私ども法律案提案いたすことになっておりますから、その際にもう少し突っ込んでお伺いをいたしますけれども、先ほども西村委員からお話がありましたが、私ども養護教諭事務職員充実の問題については、何も短兵急に、短期間に一ぺんにこれを充実しなければならないということは申し上げておらない。そこで重ねてお伺いするようでありますが、事務職員の場合の、特別の事情あるときはこの限りでないとか、あるいは養護教諭については当分の間これを置かないことができる、こういう条文があるために、今あなたがいろいろ御答弁をされるようなことを許しておかざるを得ない。従ってこれを何とかして適当な機会にはずして、そうして法律本則通り内容に持っていきたい、こういうことで先ほど来御質問を申し上げておる。橋本文部大臣もこれに関連して先ほどの御答弁では、すし詰め学級解消ということに重点を置いてやっていく、これには職員定数標準に関する法律も最近できたから、こういうようなお話があったわけでありますが、もしそうであるとするならば、この学校教育法法律は、これはもう十年も前に作られた厳然たる法律である。法律においてはこれは何ら変りはない。ただ今たびたび申し上げるようなただし書きがついておるがために、不当な取扱いを受けてこなければならないという状態にあるから、これと同じ法律であるならば、すっきりした形に直すというのが文部省建前でなければならない。従ってすし詰め学級解消重点を置いて、力を入れていただくのはまことにけっこうであり、われわれも大いにこれを推進しなければならない、これは当然であります。同じように、法律で一応は本則としては置くことになっておるものを、何とかしてはずすということも、これは重点を置いて改正していくということにおいては私は何ら軽重はない、その差はないと考える。従ってお聞きしたいのは、これは文部大臣にお伺いをいたしますが、ほんとうに養護教諭事務職員の増員をはかって、生徒児童保健衛生の問題、体位の向上、あるいは学校事務能率向上ということについて十分なる熱意を持ち、しかも今私が申し上げたような学校教育法のそういう内容について十分これと取り組んで再検討される熱意と御意思があるかどうか、これを橋本文部大臣にお伺いをいたしておきます。
  58. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 学校教育法規定されました標準の型と申しますか、理想の型へ持っていくことは、これはもうぜひ必要なことでありまして、当面のいろいろな施策等と関連をいたしながら、先ほど申し上げましたような考慮をしながら、なるべく早い機会にこの法律標準に達するような努力をして参りたいと思います。
  59. 小牧次生

    小牧委員 それではもう一つ伺いしますが、なるべく早い機会にそういうふうにしたいと言われても、先ほど申し上げた通り、特別の事情があるときとか、あるいは当分の間とかいうことがあるために、今あなたの言われるようななるべく早い機会ということはきわめて抽象的に受け取らざるを得ない。従ってこれをある程度何カ年なら何カ年というめどを置いて、すし詰め学級解消については五カ年計画というようなはっきりした一応のめどは文部省はつけておられる。われわれはその通りにそれが達成されることを望んでおりますが、同時に今の養護教諭事務職員の問題についても何らかめどがなければならない。これは法律建前から見てもおかしい。ただそれをなるべく早い機会とおっしゃったんじゃ、これははっきりしないわけでありまして、そこに私どもが言うような三カ年計画でもってやるということが無理であるならば、あるいはこれを延ばして五カ年計画なりあるいはそれに準ずるようなめどを文部大臣はお持ちになって、そうしてこの問題と取り組んでもらうというのが私は大臣の責任でなければならない、こう思いますが、重ねてお伺いをいたします。
  60. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 私は、長期経済計画と関連をいたしまして、各省所管でやはり長期の財政計画を持つということがどうしても必要だと思いまして、厚生省におりましたときも、私自分の考え限りで相当長期の財政計画を立ててみたのであります。私就任早々でまだ全般のことについて十分認識を得ておりませんが、ただいまお話のございました学校教育法規定された理想の状態に持っていきますとか、それからまた学校教育法には規定されておりませんけれども、給食婦の問題等、つまり将来、おそらく実行しておるところにおいては給食をやめるということは考えられないので、ああいう方面の身分制度の問題でありますとか、それからもう一つは、これは国の大理想として掲げております特殊児童教育というものを義務教育できちんとやりますような方向へ持って参りますとか、いろいろな問題があると思います。それからもう一つは、やはり科学技術、ことに基礎研究をある水準までなるべく早い機会に持って参りますといったような問題、これはそれぞれにやはり相当膨大な財政需要を持ちますので、私は自分でこれをできるだけ可能な範囲で実現に移していきます上でどれくらいの財政計画が必要か、立ててみたいと思います。そうして今大きく頭に浮びまするすし詰め教室解消の五年計画の問題、それからただいま御指摘のございました学校教育法内容の完全実現に関しまする問題、それから特殊教育の義務制に関しまする問題、それから基礎研究に関しまする問題といったようなものを私総体的に少し検討してみて、そして中に年度計画を立てて、推進し得るものについてはそういう方向でやって参りたい、こう考えております。今のところはちょっと考えてみましても、財政需要も相当膨大であるようでありますし、当面の御指摘の問題につきまして何カ年計画を立てていくかどうかということについては、もう少し研究の余裕を与えていただきたいと思います。
  61. 小牧次生

    小牧委員 この問題についてはこれ以上は申し上げませんが、しかし今私が申し上げておる問題は、これはもう今始まった問題じゃない。これはもうずっと前から問題になって非常に要望が強い問題なんです。しかもこれはまたいずれ次の委員会等で先ほど申し上げました通り局長にもいろいろ質疑をいたしたいと思っておりますが、予算の面においても、あなたは長期の財政計画といわれますけれども、そうたくさんの金額も必要としない。私ども計算では、直接国庫が負担する金額といたしましては一年間に大体十億内外の金額を計上してもらえるならば、三年ないし四年の年月をもってすれば私どもの今申し上げておる主張は可能である、こういう問題です。大臣がたびたびおかわりになりまして、また今からこれを一つ研究してみよう、失礼でありますが、あなたがいつかおやめになってまた新しい大臣一つ大いに研究してみましょうと言われたのでは、実際われわれは困る。従って就任早々ではございますが、早急に一つ今の問題とも取り組んでいただきたい。これはどうしてなかなかうまくいかないかというと、内藤局長がなかなかうまく、これを解消しようとする熱意を示しておらない。少くとも私はそう考える。これをやろうと思えばできない問題じゃない。予算の問題もこれはあなたにいずれまた質疑いたしますが、相当な開きがあることを確信を持っておる。従って多額の文部省予算の上から見ますと、決して私はそう無理な金額ではないと思う。ほんとうに熱意をもって生徒児童保健衛生の問題や学校事務能率の問題と取り組むという気持があるならば、これはどこかにその端緒を見出すことができる問題である、こう私は考えておりますから、橋本文部大臣におかれましても、先ほど申し上げた通り一つ早急にこの問題と取り組んでいただいて、少しでもこれが前進し得る態勢を示していただきたいということを申し上げておきたいと思います。  次に文教の施設費についてお伺いをいたしますが、特に公立文教施設費について若干お伺いをいたしたいと思います。  義務教育の水準の向上をはかるためには、何と申しましても学校教職員の数を大幅にふやしていくと同時に、学校の校舎の増改築またこれに対する補助率の引き上げ等、いろいろ必要な問題がたくさんあるわけであります。これについては先日櫻井委員からもいろいろ御質問がありました。従って私は重複することはできるだけ避けたいと考えておりますが、この問題については、文部省におかれましても、昨年度予算五十七億より七十七億にふえて参りまして、若干の前進を示したことは事実であります。また坪当り単価につきましても、あるいは危険校舎の老朽度の問題にいたしましても、さらにはまた構造面における鉄筋の比率が五〇%まで引き上げられた、こういうように改正の跡が示されております。そこでお伺いいたしたいのは、今不正常授業が行われておる、これを解消しなければならないという建前から推定される不足坪数は幾らになっておるか、これをお示し願いたい。
  62. 小林行雄

    ○小林政府委員 小牧委員のお尋ねでございますが、意味が二様にとれますので、二つの範疇に分けてお答えをいたしたいと思います。  御承知のように例年公立学校につきましてはその建物についていろいろな現在の状況の全国調査をいたしております。昨年の五月一日現在の不正常授業の実態で申しますと、小学校につきましては不正常授業を行なっている学校数が三千九百五十八、中学校につきましては千六十一、そのうち二部授業を行なっておりますのが四千四百十七学級、これは小学校で、中学校につきましては三十二学級、教室以外の部分、たとえば廊下であるとか学校の昇降口であるとかいうようなものを普通教室として使っておりますのが小学校で五千七百九十七学級中学校につきましては二千二百八十二学級というような状況でございます。ただ、これはただいまも申しましたように、昨年五月一日現在の全国の各小、中学校の不正常授業の様子の積み上げでございまして、この資料はおそらくお手元にお配り申し上げてあると思いますが、五カ年計画によってすし詰め教室解消しようとするその計画基礎になるものは、これは三十四年度以降各市町村の各小、中学校において児童生徒がどういうふうに増減をしていくかという推定を漏れなくとったわけでございます。その数字を大元にいたしまして、整備すべき坪数を計画して参ったのでございます。その数字によりますと、小学校のいわゆるすし詰め授業の解消のためには約十九万坪、十八方九千坪の整備をすればよい、そのうち国庫負担でやる分と起債でやる分と、それは従来からの国の措置としてございますので、その十九万坪のうちの七〇%を国庫負担事業で整備するということにいたしまして、十三万二千坪というものを小学校分のすし詰め授業解消の要整備坪数としております。それから中学校につきましては、これは御承知のように小学校と違いまして、小学校の方は本年度以降は非常な勢いで生徒数児童数が減って参りますが、中学校の方は三十四年度は三十三年度に比べてやや減りますけれども、三十五年度以降三十七年度にかけまして年々約七十万くらい、三カ年に大体二百万以上の生徒が増加するということになっております。そしてその三十七年度がピークでございますが、その場合に整備すべき坪数といたしましては大体八十四万坪でございます。八十四万坪の建物を建てなければなりませんけれども、そのうち国庫負担事業でやる坪数といたしましてはその七〇%の約六十万坪、五十九万二千坪という坪数を整備するということにいたしておる次第でございます。現在の状況はどうであるか、基礎になった数字はどうであるかというお尋ねでございますので、ただいまのようにお答え申し上げた次第でございます。
  63. 小牧次生

    小牧委員 今局員がお示しになった坪数を基準として文部省としては五カ年計画をもってこれを解消したいということが進んでおられる、こういうわけでありますが、文部省がこれを実現するために当初計画をされ、予算折衝において大蔵省といろいろ交渉されてこれが相当程度減額させられておる。まことにわれわれは残念に思っておりますが、まず文部省としては今示された数字に基いて、今回提案された予算基礎として今後進めざるを得ない、こういうことになるわけでありますが、その今申し上げた数字に基いての五カ年計画、これを簡単にお示しを願いたいと思います。
  64. 小林行雄

    ○小林政府委員 このすし詰め教室解消の分につきましては、実は先ほど来大臣もお答え申しておりますように、三十八年度において小、中学校ともいずれも児童生徒の規模を五十人以下に編制するということを最大の目標にいたしておるわけでございまして、それを前提に、ただいま申しましたように全国の小、中学校漏れなく推定調査をいたしました数字が、ただいま申し上げたような数字でございます。この解消の方法でございますが、ただいま申しましたように、小、中学校につきましては児童生徒の増減に大きな相違がございます。小学校につきましては三十四年度以降約二百万人の児童減がある。中学校につきましては三十五年度以降において約二百万人以上の生徒増がある。こういうことでございますので、小学校につきましてはこれから減って参りますので、三十四年度の不正常授業といたしましては最も困難度が高いわけでございまして、三十五年度以降の児童数だけをとりましても、これは次第に緩和されていく状況でございますので、小学校の不正常授業解消の建物につきましては、特に三十四年度重点を置きまして、五年間の必要坪数十三万坪の約四〇%を三十四年度に整備する。これは均等割でいけば二〇%程度でいいわけでございますが、必ずしも均等割でございませんので、三八%、約四〇%の四万八千五百坪を三十四年度に整備したいということで予算をお願いいたしておる次第でございます。  それから中学校につきましては、これはただいま申しましたように、三十四年度約二百万人以上の生徒増がありますけれども、三十四年度におきましてはむしろ三十三年度より生徒が減るわけでございます。従って三十四年度においてはそれほど校舎を建てる必要がない。むしろ三十五年度以降非常にふえるということが予想されて、そのときに校舎を建てなければならぬという状況でございますので、従来の予算使用の実績等をも考慮いたしまして、五十九万坪、約六十万坪の十分の一、すなわち五万八千坪を三十四年度には計上をいたしておる次第でございます。必ずしも均等割とはなっておらぬ次第でございます。
  65. 臼井莊一

  66. 櫻井奎夫

    櫻井委員 関連して。今の問題に関連いたしましてちょっとお尋ねをいたします。  小学校の不正常授業の解消につきましては、生徒の増減を加味いたしまして三十四年度重点を置いて四万八千均の解消をはかった、こういうことでございますが、これは三分の一国庫負担の線でやられておるのですか。この点につきまして私ども文部省の努力が非常に足らない、こういうふうに考えざるを得ない。なるほど法律建前では不正常授業解消のための必要な建築費としては、小学校は三分の一であり、中学校は二分の一の負担になっております。ここにやはり法的な矛盾がある。同じ義務教育の中の不正常授業を解消するといいながら、一体どこに小学校中学校を区別する必要があるのか。中学校は二分の一補助しておるが小学校は三分の一しか補助をしない。そういう補助の少いときに小学校の不正常授業の解消重点的にやられるということは、やはり地方の財政に非常な負担をかける結果になってくる。私はこの不正常授業の解消に伴う国庫負担というものは、小学校中学校ともにすみやかに二分の一にすべきが法の建前として当然である、こういうふうに考えるものであり、昨年の二十八国会においてもこういう法律案提案いたしたわけでありますが、不幸にしてこの提案は通らなかったわけでございます。この点について局長はどういうふうに考えておられますか。
  67. 小林行雄

    ○小林政府委員 不正常授業の解消につきまして、国の負担率が小学校中学校の間に差があることは、ただいま御指摘のありました通りであります。ただ御承知のように、現在の負担制度は、昨年の通常国会において御承認を得ましたきわめて最近の制度でございまして、これにつきましては非常に関係者の努力があったわけでありますが、私どもといたしましては、この新しい制度のもとに何とか急速に教室の整備をいたしまして、できるだけ早く不正常授業を解消したい。そのためにできるだけ大幅の予算を取るということ、年次計画的に予算を取るということが最も緊要のものであると考えておったのでございます。御指摘のございましたように、小学校中学校の不正常授業の解消のための教育整備に差があることは、理屈の上からはおかしいかもしれませんけれども、これには御承知のような経過的な相違があるわけでございまして、将来といたしましてはもちろん小、中学校同じになるのが理想かも存じませんけれども、現在の段階におきましては、小学校の不正常授業の解消のために、この三分の一ではとうてい負担ができない、負担率を引き上げなければ整備ができないというような情勢が見られるというようなことになれば別でありますけれども、現在の段階といたしましては、まず一つの妥当な目標を着実に整備するということの方が、私どもといたしましては緊要であると考えておる次第であります。
  68. 櫻井奎夫

    櫻井委員 あなたは事務当局ですから、法律についていろいろ御批判をなさることはできない立場でありますから、その点は了承をいたしますが、私はこのような同じ義務教育における不正常授業の解消が、小学校中学校と区別されるべきではない、こういう一貫した考え方を持っている。事務当局もおそらくそういうふうに法律改正されることを望んでおられると思う。従って私は今回提案をいたしておりますそのような法律を、すみやかに、与党の理事諸君もおられるようでありますから、あなた方も一つ全幅的に御賛成いただきたい。そうしなければ小学校の不正常授業の解消は困難です。今局長さんがその範囲内でやるというようなことを言っておられますが、こういう差別というものはあるはずはない。そういう点に大臣も十分御考慮をお願いいたしたいのです。先ほど局長もおっしゃった通り、この前の国会でやっとこの国庫負担法が成立をしたので、それまでにいろいろばらばらになっておった法律を、一本にするということだけが成功して、今日負担の率においてはいろいろまちまちです。これを、やはり義務教育の立場に立って負担率を一定にすることが今日義務教育の水準向上すし詰め学級解消の大きな課題であるということを、私はこの際小牧君の質問に関連して特に強調をいたして、私ども提案いたしておりまする法律案にどうか御賛同なされんことを御要望申し上げて、私の関連質問を終ります。
  69. 小牧次生

    小牧委員 ただいま櫻井委員から適切な要望があったのでありますが、不正常授業の解消のための小学校中学校の補助率の相違の問題と同時に、危険校舎の補助率の問題も同じように統一されなければならない。これは櫻井委員がすでに法律案提案されておりますから、十分御審議を願いたいと思う問題でありますが、先般の櫻井委員の御質問に対しましても、またただいまの御質問に対しましても、ある程度同様趣旨の御答弁があったようでありますが、それは補助率の引き上げという方法を避けて、そうしてできるだけ多くの学校に割り当てた方がいいのではないか、こういうような御答弁の御趣旨であったと私は考えておるわけでありますが、私の推測するところでは、文部省自身もこれを何とかして統一したい、二分の一に持っていきたいというお考えがあって、いろいろ大蔵省とも折衝されたけれども大蔵省の方で承諾をしなかったのではないか、私はかように推測をいたしておるのであります。橋本文部大臣は、先般文部大臣に就任されて文部省予算折衝にどの程度途中から参加されたかよく存じませんが、今の問題についてどの程度御存じであるかどうか、あらためてお伺いいたしたいと思います。
  70. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 実は私、十二月三十一日に兼任をいたしまして、その日に閣議決定がございました。私は折衝の経過は全然存じておりません。
  71. 小牧次生

    小牧委員 閣議決定の日に大臣に就任されたということであるようでありますが、これはきわめて大きな問題で、局長の御答弁がありましたけれども、なるほどできるだけたくさんの学校にこれを割り当てたい、二分の一補助の引き上げを避けて、なるべく多くの学校に割り当てようという、そのお気持はわかるのであります。しかし今櫻井委員も言われたような方向に向って、予算の額もふやすと同時に、たくさんの学校にこれを割り当てるということが、とりもなおさず今問題となっておるすし詰め学級解消五カ年計画ということになるわけでありますから、この点は一つ今後大臣におかれましても、うんと力を入れていただきたい、かように考えますが、先ほどの局長の御答弁の中に、不正常授業の解消の問題に関連いたしまして、中学校においては約六万坪計上した、こういう御答弁でしたね。ところがあなたの先ほどの御答弁では、まだ六十万坪不足いたしておる、こういう御答弁です。今後五カ年後におけるわが日本の生徒児童数増減については、私は正確な見通しを持っておりませんが、五年後若干生徒児童数は上昇して参る傾向にあるのではないか、こういう見方も行われておるわけであります。あるいはそうでもないかもわかりませんが、いずれにいたしましても、六十万坪に対して約六万坪の予算の計上ということを基本にして計算をいたしてみました場合に、少くとも中学校においては十年以上かかる。果してこれでもっていわゆる岸内閣のいうすし詰め学級解消ということが可能であるか。私はあるいは来年度どの程度予算をお組みになるかわかりませんが、このままの調子でいくならば、これは少くとも十年かかる、こう断定せざるを得ない。これと今年度の五カ年計画との関係を御答弁願いたい。
  72. 小林行雄

    ○小林政府委員 お尋ねの中にございましたように、中学校の不正常授業解消のための整備すべき坪数といたしましては約六十万坪、三十四年度にはその約十分の一の六万坪を計上しておるわけでございますが、この理由につきましては、先ほどお答え申し上げましたように、三十四年度には中学校生徒数は三十三年度に比べて減るのでございます。従ってここ二、三年の予算使用の趨勢から申しまして、最近は私どもといたしましては、予算をいただきましても、なかなか中学校整備につきましては配分するのに他の事項の予算に比べまして困難ということはございませんけれども、他の小学校の不正常なりあるいは危険校舎、学校統合というものに比べますと、競争率はきわめて低いのでございます。三十四年度には生徒の減るということと、従来の使用の実情等からいたしまして、三十四年度といたしましてはこの程度で十分であろうというふうに考えたのでございまして、三十五年度以降は非常な勢いで生徒数がふえて参りますので、本年度の実績のような十分の一というような工合には参らぬ。当然この六十万坪から六万坪を引きました五十四万坪の三分の一というような数字が計上されるものというふうに私どもは心組みをいたしておるわけでございます。
  73. 小牧次生

    小牧委員 これは局長あたりに要求することはどうかと考えておりますが、今度の予算の折衝のあとを調べて参りますと、たしかあなた方の要求は六万五千坪要求されたと私は聞いておるわけであります。その六万五千坪に対しても、なおさらに約五千坪を下回るところの五万九千坪がようやく認められて今回計上されておる。この傾向を基本にして来年度の問題を私ども考えてみました場合に、残る五十四万坪の三分の一ということを——あなたの御希望と申しますか、計画はよくわかるわけでありますが、今のような文部省予算折衝あるいは予算編成に取り組む態度で、そういうことがそのまま大蔵省としてこれを認めてその通り編成されるかどうか。これは岸内閣として私は問題であると思う。六万五千坪の要求に対して五万九千坪という坪数しか認められない。来年度の今言われるような坪数を実現するためには、よほど文部省として腹を据えて予算編成に当ってもらわない限りは、またことしと同じような坪数しか認められない危険性が多分にあると私は想像しておる。(「ノー、ノー」と呼ぶ者あり)ノー、ノーといってもこれは実際が示しておる。はっきり数字が示しておる。そうなりますと、新しい文部大臣としましては、ほんとうに言われる通りに五カ年をもってすし詰め学級解消するのだという断固たる態度をもって予算折衝に当ってもらわない限りは、十七、八万坪の三十五年度計画が実現できない。一体大臣はこの問題に対して、ほんとうにこの五カ年計画を実現するのだという立場から、熱意を持ってこの実現に立ち向うお気持なのかどうか、文部大臣にお伺いをいたします。
  74. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 昭和三十四年度予算編成方針は、十二月の十九日に閣議決定をいたしましたが、その中にはっきり、公立文教施設の計画的整備と教員の充実を行なって、五年間すし詰め教室、危険校舎の解消をはかるとともに云々、という決定をいたしておるわけであります。これはただお題目としてやったのじゃなしに、十分見通しを立てて、そうしてこれをやり抜いて参るつもりでございます。ただ御指摘のございましたように、これは政府全体といたしましても、文部省としても、ふところ手で楽々とできるものとは考えておりません。十分やはり総体的な財源のやりくりをいたしましたり、文部省といたしましては真に熱を入れて今年度の事業を遂行し、来年度の事業を遂行し、さらにその次の予算を要求していくということに十分な努力を払って参るつもりでありますから、そういう形において、必ずやなし遂げるつもりでおります。
  75. 小牧次生

    小牧委員 大臣の一応の御答弁を承わっておきますが、自由民主党としても、かねがねこれは高く唱えて参っておる問題でありますから、その公約通りに、橋本文部大臣が、せっかくこの間の人事の異動で、重要な文部行政担当の国務大臣として来られたわけでありますから、一つ腕の見せどころでもって、今申し上げたような坪数の予算の獲得に全力をあげてもらいたい。  これに関連いたしまして、さらに老朽危険校舎の改築の問題についてお伺いをいたします。  まず第一にお伺いいたしたいのは、これも不正常授業と同じでありますが、今文部省で、老朽危険校舎として今後改築しなければならない坪数、それを一体どの程度に把握しておられるか、お伺いいたしたい。
  76. 小林行雄

    ○小林政府委員 御承知のように、危険校舎であるかないかというのを測定する基準といたしましては、耐力度を使っておりますが、従来危険校舎として改築すべきものとして国の負担をつけております点数は四千五百点以下の建物ということにいたしております。この四千五百点の基準で、小、中学校の建物につきまして全国調査をいたしました結果と、なお現在四千五百点以上であっても、五年間のうちには危険度が次第に進行して四千五百点以下になるということも予測されますので、そういったものを合せまして百四十六万坪というものを想定いたしておりますが、そのうち国の負担事業としてやるべきものと認めますものが七〇%で、百二万坪でございます。これを五カ年間解消したいというので、その約五分の一の二十万坪を計上いたしておる次第でございます。なお高等学校の危険校舎につきましても、考え方といたしましては同様でございまして、五カ年間に整備すべき坪数三十万坪、そのうちの七割が国庫負担坪数でありまして、二十一万坪、その約五分の一弱、三万三千坪というのを三十四年度に計上しておる次第であります。これは必ずしも五分の一になっておりませんけれども、前年度の金額が一億四千二百万という予算数字でありまして、三十四年度に三万三千坪を改築するといたしましても四億八千六百万、前年度に比べて倍以上の金額になりますので、いろいろ府県等の建築計画とにらみ合わせまして三万三千坪を計上するということにいたしたわけであります。
  77. 小牧次生

    小牧委員 義務制の方で一応百万坪と推定されて、今回はその中の二十万坪、こういう御答弁でありましたが、小学校中学校を分けてみた場合に幾らになりますか。
  78. 小林行雄

    ○小林政府委員 その点は今こまかい資料を私手元に持っておりませんので、再調してお答え申し上げたいと思います。
  79. 小牧次生

    小牧委員 危険校舎の改築、解消の問題は、これは申し上げるまでもなく地方町村におきましては非常に大きな問題であり、そして児童教育のためにできるだけ早くこれを解消して、父兄も先生方も安心して教育ができる状態に持っていかなければならないということで、非常に関心の強い問題であります。そこで今二十万坪というお話がありましたが、文部省とされましては予算編成に当って、当初幾らを予定して大蔵省と折衝されたのか、お伺いをいたします。
  80. 小林行雄

    ○小林政府委員 坪数そのものははっきりとは記憶いたしておりませんが、考え方といたしましてはこの四千五百点以上のもの、すなわち四千五百点から五千点までのものが、全部この五年間のうちには危険校舎になるのではなかろうかという推定をいたしまして、要求をいたしたのでありますが、大蔵省は必ずしもこの四千五百点以上五千点までの校舎が、すべて五年間に四千五百点に落ちてくるものではなかろう、これは構造その他によって違うのではないかということで、私どもも五年の間に必ず絶対にこの五千点までのものが四千五百点になるという確証もございません。一応の調査はいたしましたが確証もございませんので、その三分の二が予算積算の基礎として五カ年計画に組み込まれれば、一応危険校舎の解消としては妥当な目標ではないか、こういうふうに考えております。
  81. 臼井莊一

    臼井委員長 それでは午前中の会議はこの程度といたしまして、午後一時二十分より再開いたします。なお休憩後理事会を開会いたしますから理事の方はお集まりを願います。  これでもって休憩いたします。     午後零時四十九分休憩      ————◇—————     午後一時五十六分開議
  82. 臼井莊一

    臼井委員長 休憩前に引き続き会議開きます。  質疑を続行いたします。小牧委員
  83. 小牧次生

    小牧委員 私は午前中予算の問題でいろいろ大臣その他にお伺いいたしましたが、これから予算の問題を離れて、若干当面の重要と思われる文教の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  実は、今月の十一日付の読売新聞を拝見いたしますと、その中に文部省文部大臣の諮問機関である社会教育審議会の中に読書指導分科会というものを作られた、こう新聞に発表いたしております。もしそれが新聞に書いてある通りできたものであるとするならば、その目的と構成についてお伺いをいたしたいと思います。
  84. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 ただいま社会教育局長がおくれておりますので、かわってお答えいたしますが、お話の社会教育審議会の分科会として読書指導に関する事項を調査、審議するための分科会を設置いたしました。委員は学識経験者をもって充てております。
  85. 小牧次生

    小牧委員 何名をもって構成され、どういう人がその委員になっておられるのか、お伺いします。
  86. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 ただいま人数を記憶しておりません。学芸大学の教授その他の学識経験者をもって構成されておりますが、その点については直ちに調べてお答えいたします。
  87. 小牧次生

    小牧委員 当面の局長が見えておらないというのでは、あるいは十分答弁ができないかもしれませんので、橋本文部大臣にお伺いいたします。  新聞にも書いてありますが、読書指導のために大臣の諮問機関である社会教育審議会の中に読書指導分科会というものができて、その構成についての詳しい答弁はありませんでしたが、それができておるということは今答弁がありました。そこで今御答弁通り、文字通り読書の指導をやるという建前であろうかと思いますが、もとよりこれは橋本文部大臣大臣に就任されてからのことであろうと思います。従って大臣におかれましてもこの点は十分御承知の上であろうし、従ってその構想について大臣のお考えをお伺いいたしたいと思います。
  88. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 局長が参りましてから詳しくお話を申し上げますが、私実は就任をいたしましてから日が浅いので、その点については私が積極的に指導をしたと申しますよりも、前から社会教育の方の関係で青少年の図書としてエロ・グロと申しますか、あまりおもしろくない本があって、こういうふうなものはやめたい、何とか禁止ができないかというような要望がずっと平素からあるのでございます。それに対しまして、もちろん刑事犯罪に触れるようなものは、取締りをいたしますが、そのほかの部分につきましては出版の自由であまり積極的に取締りというのはできぬわけです。そこで不良図書を除くということが、これは出版検閲というようなことはできませんし、またするべきものではございませんので、主として青少年向きのいい図書を推薦をする、そうしてそういう良書推薦というような形で、積極的な形で本の内容もよくなるようにしていきたいという考え方が従来からありまして、それで良書選択の委員会を設けられたように私は理解をいたしておるのであります。大体そういうふうな趣旨のことはまことにけっこうでございますし、人選等も前々から関係の向きで相談をされておったように思います。妥当であると考えた次第でございます。
  89. 小牧次生

    小牧委員 ただいまの大臣のお話の通り、良書を選定するとかあるいはいわゆる悪書を追放して青少年のために教育向上をはかるということは一応建前としてはけっこうだと私は思います。しかし問題はしかく簡単ではないのであって、一歩これを間違いますと、今大臣も言われた通り、これは非常な危険性をはらむことにもなる。従って文部省とされましては社会教育審議会に諮問をして、その中に今申し上げた読書指導分科会というものを作っていろいろ検討されるわけでありますが、私どもが懸念するのは、結局今客観的ないろいろな条件というものを考えた場合に、これが思想を統制するという方向に進む危険性を考えざるを得ない、こういう意味であえてこの問題を取り上げて御質問をいたしておるわけでありますが、そこでまずお伺いをいたしたいのは、読書指導分科会というものでそういうことをやろう、おやりになるに当っては、何かそこに認定と申しますか、この本は青少年が読んで非常にいい本だとか、あるいは良書だというようなことをきめる一つの何か認定の基準というようなものをそこに作って、それに基準を置いて選定をやろう、こういうことでありますか。社会教育局長さんがおられないので、もしなんでしたらあとからお伺いしますが、もしわかっていたら御答弁を願いたいと思います。
  90. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 あと局長が来ましてからにいたしたいと思います。そういうような良書選択の基準等につきましても十分そこの委員会で練って、そうしてお読みを願う、こういうふうになるものと私は考えておりますが、なお前々からずっとこの仕組みについては検討いたして参ったところであります。局長が参りましてからよくお話し申し上げたいと思います。
  91. 小牧次生

    小牧委員 それでは社会教育局長がお見えになるまでこの質問は留保いたしまして、のちほどお見えになりましたら引き続き質問をいたしたいと思いますが、その間他の問題を御質問をいたしたいと思います。  それは先般の委員会におきましても私は質問いたしましたが、いわゆる当面の大きな問題である勤務評定の問題であります。この勤評の問題につきましてはこの前にも申し上げましたが、文部省といたしましてもあるいはまた日教組といたしましてもあるいはまたわれわれ国民といたしましても今のような教育の混乱ということを何とか収拾し、そうして平常な教育が行われるような状態に一刻も早く引き戻していかなければならない、こういうことを私は先般も申し上げたわけでありますが、この勤評の問題の解決のために、それぞれ各県におきましていろいろ努力が払われて参っております。たとえば神奈川県におきましては御承知の通り神奈川独自のいわゆる神奈川方式というものが作られ、あるいはまた長野県におきましてはいわゆる長野方式、その他東京都におきましても近く正式に何らかの結論が出るやに私どもは聞いておるのでありますが、この際お伺いをいたしたいのは、まず第一には神奈川県の問題であります。神奈川県のいわゆる神奈川方式というものを文部省は認めない、こういう態度であるやに聞いておりますが、果してその通りであるのかどうか。  それからもう一つは、従って教職員組合といわゆる団交と申しますか、団交渉、話し合いをするための団体交渉を勤評についてはやらない、こういう方針であるように私は聞いておるのでありますが、果してその遮りであるかどうか。もしそうであるとするならば何がゆえにそのような態度なり方針を文部省はとらんとするのか、あらためてお伺いをいたします。
  92. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 勤評の問題については私から特別に申し上げるまでもなく、先年以来の内閣の方針というものを少しも変えておりませんということをまず第一に私は申し上げねばならぬと思います。神奈川方式の問題についてまずお話がございました。神奈川方式は、神奈川方式自体も勤評でないということをうたってきめたものでございます。われわれが法律の解釈という観点からいたしましても、これは人事管理権者が勤務実績を評定するという法律にきめられました最小限度の条件を満たしておりませんので、これは勤務評定とは認めがたいとはっきり考えておる次第であります。なお、神奈川県の当局はああいうものをきめられてから、末尾につけられた要領に従っていろいろ検討しておられるそうでありますが、ほかの四十六都道府県の中で、大多数は片づいて参っておりますので、神奈川県におきましても、真に法の要件を満たした勤務評定が行われることを心から期待をいたしておる次第であります。  それから勤務評定の問題に関しましては、待遇の問題等の内容のものとして、職員組合と御相談を申すといった筋のものでございません。私は、勤務評定というものは、法に定められました通り、都道府県の教育委員会において計画をいたし、町村の教育委員会において実施をいたすもので、教育委員会との間の団体交渉によってまとめるといった筋合いのものでないと考えております。
  93. 小牧次生

    小牧委員 今大臣の御答弁の中にもありましたが、こういう問題は、たとえば神奈川県におきましては、神奈川県の教育委員会教職員の団体である教職員組合との当事者の間でいろいろ数十回にわたって団体交渉が行われて、そうして一つの結論が出た。これは今大臣の言われた通り、私は、自主的に解決をさるべき問題であると思うのです。従って、神奈川方式が勤評であるかないかという解釈論は別にいたしまして、今申し上げたように、当面せるこの教育の混乱をいかにして収拾するかということが、われわれ政治に関係しておるものの責任であり、また当面の責任者である文部大臣の責任でなければならない。従って、それをただ一方的に、これは法律できまっておるからやらなければならないとか、いわゆる法律一点張りの態度や、あるいはまた神奈川県のやり方は正当なものとは認めがたいというようなお考えでは、私は、この問題の解決はなかなか困難だと考えます。そこで内藤局長にもお伺いいたしますが、神奈川方式が生まれて、そうしていろいろ批判が出たわけでありますが、局長はその直後、神奈川県の教育委員会教育長を呼びつけて、これをつるし上げた、こういうことを言われておるわけであります。事実であるかどうか、そこまで私は正確に調べたわけではありませんが、そういうふうに聞いておる。大臣の方がそういうことを指示されて、そういう態度に出られたのか、あるいは局長自身でそういうことをされたのか、お伺いいたします。
  94. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 つるし上げたとかなんとかいう事実は全然ございません。もしそういうことが報道されれば、それは報道の誤まりでございます。この点は、神奈川の教育長によくお聞き下されば明確になると思うのです。私ども、実は神奈川勤評が出た直後におきまして、教育長から事情を聞いただけでございまして、私どもの意見はそのときは全然申し上げておりません。従って、つるし上げるとかなんとかいう率態は起きていないはずでございます。
  95. 小牧次生

    小牧委員 それでは重ねて局長にお伺いいたします。先ほど大臣にお伺いをいたしましたが、神奈川県の教育委員会と教員組合とお互いに相手の立場を尊重して、そうしてその原則のもとに自主的にこれを解決しようということで話し合いが行われて生れたこの神奈川方式をどういうふうに考えておられるのか、あなたのお考え伺いたい。
  96. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 先ほど大臣から神奈川方式についての御見解が表明されておりますので、あらためて申し上げることはないと思いますけれども、地方公務員法をごらんいただきますならばおわかりになっていただけるのですが、勤務評定は、任命権者が職員の勤務実績に関して定期的に評定をすることになっております。神奈川県の評定を見ますと、これは勤務評定は不可能である。従って、監督者であるところの校長が評定することはできない、校長はよき相談相手、助言者である、それから教育委員会は評定を行わない、こういうことが規定されておりますし、また、勤務実績につきましても、勤務実績というよりは、むしろ教師の厳粛なる自己反省の記録であり、希望、不満、要望を記述するものだ、こういうふうに書いてあります。ここから見ましても勤務実績ということは当らないではなかろうか。少くとも私どもの文面通りこの神奈川県の方式を見ますと、法に定めるところの勤務評定とは認めがたい、こういうふうに考えるのでございます。
  97. 小牧次生

    小牧委員 この勤評そのものに対する解釈論について委員会でたびたび質疑が行われましたが、一貫して、今もあなたが言われた通り法律にあるからこれを実施しなければならない、また、神奈川方式は法律に当てはまらないから勤評とは認めない、こういう答弁で終始しておられると思うのです。そういうことを言われると、われわれも言い分がたくさんある。まず第一に、法律にあるからこれをやらなければならないというならば、ほかにも文部省関係法律はたくさんあるが、なかなかその通り実施されておらないというのが今日の現実の姿であります。そういうものは法律通り実施しないで、勤評そのものについては、法律にあるからそれはやらなければならないのだ、法律に定めがあるからこれを実施しなければならないのだというにいたしましても、人事院の規則等にもあります通り、これは客観的ないろいろな条件が具備されて初めて実施されなければならないということは明確である。ところが、そういう条件がまだ十分に具備されておらないし、先般長谷川委員からも相当強くこの問題について質問があったわけでありますが、長谷川委員は、昨年直接アメリカに行かれましていろいろアメリカにおける勤務評定問題について詳しく調べてこられた。なるほど初めのころはアメリカにおきましても一応これを実施しようとし、また多少実施いたしてみましたけれども、これがなかなかうまくいかない。従って、現在においてはほとんど行われておらないというのがアメリカの実情である。神奈川県の場合におきましても、教育委員会教職員組合との間にいろいろ自主的な話し合いが行われた最中に、教職員の勤評というものはきわめて困難である、教育委員会の方も、もちろん教職員組合の方も同様でありますが、お互いに勤評は困難だということを確認し合った上に立っていろいろな話し合いが行われ、そうしてその結果いわゆる教職員の反省記録と申しますか、教育活動に関する記録というものを作って、そういうものを中心として、いわゆる学校管理と申しますか、あるいは人事管理と申しますか、そういうものの面に資するという結論が生まれて参りました。われわれはその努力とともに、その生まれた結果もわれわれは高く評価しなければならぬと思う。にもかかわらず、今内藤局長は、簡単に、これはもう法律に定めてあることだし、それに当てはまらないから認められない、そういう態度で、果して私はわが日本の重要な教育行政を担当し、これを推進していく資格があるかどうかということを疑わざるを行ない。どうです。
  98. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 神奈川方式についてごらんいただきますれば、私はあの方式の中に書かれておるところの前文にも非常に独断が多いと思うのであります。たとえば、校長は監督者でない、校長は校務をつかさどるのであって、教師は教育をつかさどるのだ。従って、校長には勤評をする資格がないのだ、こういうふうな独断をされておりますけれども、校長は校務をつかさどると同時に、所属職員を監督する義務があるわけであります。この面については一言も触れていない。しかも、教育委員会学校の管理、運営の最終責任者であります。その最終責任者としての教育委員会の職責というものが、私どもとしてはこの中で十分くみ取られていないと思うのであります。かような意味におきまして、この神奈川方式が自主的にきまったとしても、私どもは幾多の疑問があると思っておるのであります。
  99. 小牧次生

    小牧委員 それではあらためてお伺いいたしますが、これは文部大臣にお伺いいたします。一体何のためにいわゆる教職員の勤務評定をやるべきであるとお考えになっておるのかお伺いいたします。
  100. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 これは現内閣といたしまして昨年、一昨年以来何べんか所管大臣が申し上げたと思いますが、勤務評定の問題につきましては、もちろん今日現行法、地方公務員法、その他の法律に定められたことの事項でもございまするし、それからその法律に定められておりまする趣旨を考えてみましても、これは国家公務員についても、地方公務員についてもそうでありますが、重要な公務をつかさどる者につきまして、やはり平素の勤務実績を評定をいたしまして、そうして人事管理を適正に行い、かつ能率向上を期するために行うのでありまして、私は近代的な人事管理の方式といたしまして、この勤務評定というものが適正に行われて、ずっとこれに修熟しながら積み重ねていかれるということは非常にいいことだと思います。そういう趣旨で現行法ができておりまして、その現行法の実施をわれわれはやっておるわけでありまして、あらためて本日、また私の口から申し上げることもないほど、今までおそらく政府当局者の言明があったと思うのでありますが、それと少しも変っておりません。
  101. 小牧次生

    小牧委員 ただいまの大臣の御答弁の中に、人事管理という言葉がありました。教職員の人事管理ということと、それからいわゆる教育効果といいますか、能率向上と申しますか、そういう点の関連性について、大臣は一体どのようにお考えでございますか。
  102. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 教員の人事管理をやりまするに当っては、その先生のいろいろ学問上の取り柄でありまするとか、あるいはまた勤怠でありまするとか、あるいは子供に対する教え方の問題でありまするとか、あるいはまたその場所々々によりまして、家庭状況、子供の状況等も違っておりますが、そういうようないろいろな状況に対しまするその先生方の適否であるとか、こういうふうなものが常に勤務評定の中で適正に評価をせられる、それが人事管理を適正に行うゆえんであり、また最も教育効果を上げるような教育行政の行われるゆえんであると考えております。
  103. 小牧次生

    小牧委員 内藤局長にお伺いしますが、あなたも大臣答弁のように考えておられますか。
  104. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 さようでございます。
  105. 小牧次生

    小牧委員 私はこの人事管理の問題を学校教育の場合にはしかし簡単に、今おっしゃる通りには参らない、こう考えておる一人です。ただ先ほどもお話がありましたが、普通の校長の管理あるいは監督という権限の問題につきましても、これはわれわれには異論があるわけでありますが、普通の意味のいわゆる教育効果という問題と別にいたしましても、ふだんのいわゆる校長の監督というものは、これは今日まで行われて参っておる。これは法律がなくても今まで行われて参っております。従って私はいわゆる勤評の問題については、勤評の判定、権限そういうものは校長にはないという立場をとっておりますが、それはそれといたしましても、普通の会社工場における、品物を作る、あるいはいろいろな事務をやるというような場合におけるいわゆる人事管理という場合には、これは確かにある程度生産品その他いろいろな事務能率を上げる上において直接的な効果もあるし、あるいはまた緊密な関連性もあると思います。しかし学校における学校教育の効果というものは、そういうものと一律に扱うことはわれわれはできない。その立場から、今大臣やあなたが言われるような、普通の平面的ないわゆる勤務評定、人事管理というものでは決して学校教育の効果というものは期せられるものではないと私は考える。かえってそういうものを無理してやるがために、すでに勤評が実施されて参った県のいろいろな実績を聞いて参りましても、これは非常な弊害がもう現われて参っておるということは、他の同僚議員からも御指摘があった通りであります。従ってそういう実際面を知っておる、教育関係者である神奈川県の教育委員会委員の中から何名か委員を選抜し、また学校側からは校長、あるいは商工会議所の会頭というような人々を交えて、神奈川県におきましては特別の委員会を作って、そうして今私が申し上げたように、学校教育については勤評はきわめて困難である、ということは、教育効果の向上ということに関連いたしまして、むしろそういうものについては疑問を投げかけており、そして真に学校教育の効果の向上ということを目標にし考えて、それを実現せんがために、数十回の団体交渉をやった結果生まれて参ったのがいわゆる神奈川方式である。立場なり考え方の相違だといわれればそれまででありますが、私は今申し上げた通り考えておる。それを、先ほどもお話にありましたが、ただ法律に定められておるから、それに当てはまらないからいけないのだというのだが、一体その法律とは何かということである。そういう態度でいったら、私はほんとうの学校教育なり、教育効果の向上ということは期せられないのじゃないか、こう思う。もっと文部省におかれては、大臣局長ももう少しおおらかな気持で、それぞれの県が非常に苦心して、教育委員会教職員組合の方で研究し努力をして積み上げて参ったその結果というものの自主性を認めて、そうして少しでも今混乱しておる勤評の問題を解決の方向に導くという態度こそ、現在私は最も要請されておる態度ではないか、こう考えておるわけでありますが、局長は先ほどの法律の問題とあわせてお答えを願いたいと思います。
  106. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 都道府県が自主性を持って勤務評定の問題を解決されることを私どもは期待しておるわけであります。しかし都道府県教育委員会が自主性を持つというのは、おのずから国で定まったところの法律の範囲内でなければならないと思う。この点につきまして、神奈川県の勤務評定も、私どもとしては法律の範囲内から逸脱しておるように思われるのであります。特に教育行政の最終責任者はあくまでも教育委員会でなければならぬと思うのであります。この教育委員会が教員の人事についての資料となるところの勤務評定について判定が行えない、こういう点は私どもとしては、教育委員会学校の管理、運営の責任を持つという建前から考えて少し行き過ぎではなかろうか、かように思うのであります。特に私どもは、学校がいいとか悪いとかと申しますのは、建物や設備がいいということももちろん大事な要素ではございますけれども、それにも増してやはり教員諸君の素質がほんとうにいいか悪いかという点にかかってくると思う。その素質を上げるために勤務評定を推進していきたい、こういう趣旨でございますので、この点を一つ御了承いただきたいと思います。
  107. 小牧次生

    小牧委員 法律はどうですか、法律法律と言われるが。
  108. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 私が申し上げた法律というのは、地方公務員法四十条あるいは地方教育行政の組織及び運営に関する法律のことを申し上げておるのであります。
  109. 小牧次生

    小牧委員 しかし問題は何かと申しますと、真に学校教育の効果を上げていく、これが目的なんであります。何も勤評とか、あるいはあなたの今言われるような法律が云々とか、何か教育効果とは別個にそういう形式的なもので、そういうものがあるから、これはやらなければならないのだというようなものでは絶対にないと私は思う。そういう立場から神奈川県におきましても、先ほど来たびたび申し上げる通り、その教育効果の向上ということを目標にして、専門家がいろいろ検討して、いわゆるあなた方のお考えになっておるような、そういう勤評では困難だということをお互いに認め合っている。文部省の、自分たちが考えておるのが一番正しいんだ、われわれがやることが一番常に正しいんである、そういう態度では、とうていわが日本のほんとうの民主教育の推進とか教育効果の向上ということは期せられないと思う。教育は、あくまでも教育基本法にある通り、これは国民の手によって運営されていかなければならないのが建前である。それをあなた方がただ単にそれはもうだめだと考えれば、すぐ神奈川県の場合でもだめなんだということは、これは少し行き過ぎでもあり、思い上りじゃないですか、どうですか。
  110. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 私はやはり考え方になるべく無理のないようにしたいと考えております。私が申し上げておるのは、私がこの立場に立って無理をして申しておるように思われるとはなはだ心外でございまして、ほんとうに教育効果を上げるためには、先生の特質とかいろいろな点についても、勤務評定というものはできるだけ科学的に目の届いたいろいろなもので積み上げていくべきものであって、そうしなくちゃいかぬものだということを私はかたく確信をいたしております。教育効果を上げることが大切であるだけに、教員の人たちのいろいろな特質とかなんとかいうものを見るのを避けるようなことは私はおかしいと思う。その点どうも日本教員組合の方で、何か自分たちだけで教育をやりたいといったような考え方で、無理をして勤評をぜひ拒否するというようなことを決定された結果いろいろな問題が出てくる。そういうことでなしに、もっとすなおに私は考えてもらいたい。  それからもう一つは、法律に従ってものを考えるのが当然でありまして、教育というものは、これはもう国民社会の中から生み出された教育方針によってやらるべきものであって、単に役人の筆先でどうこうというものではございません。その通りであります。ただ国民社会の中から生み出された教育方針であるということは、決して教員組合が教育を左右する問題でもなければ、PTAが教育を左右する問題でもないのでありまして、要するに国法によって定められたところに従って、国民社会の意向というものをどう反映していくかという憲法上の方式に従うべきものだと私は思う。その憲法上の方式というものは、今日国民主権の民主政治でありまして、われわれがほんとうに衆参両院とも選挙のたびに判定を受けながら、それにって良心に従って国法を築き、その国法の上に行政をやっているわけであります。教育に関しましては、そういう趣旨で国会において教育に関しまする法律を作って、かつまたそれの行政に当りましても、ただ普通の行政機構だけではいけませんので、教育委員会の制度を作り、やはり公選によります首長が推薦をして、公選に委員会によって運営をはかるという形をとっているわけであります。私は教育は国民の手によって行われるということは、今日民主政治下におきます国法に従って、そうしてこれによって定められた教育委員会の組織を通じましてやっていこうというのが、一番民主的な行き方だと考えております。そういうような趣旨で、この立法の趣旨から考えましても、勤務評定というものはけっこうなことだと考えておりまするし、それに従いましてできております勤務評定というものを、やはり今日の定められた教育行政組織によってやって参りますこと、これが真に国民のための教育を行うゆえんだと私はかたく信じております。勤務評定の問題に関しまして、むしろこのままではうまくいかぬのじゃないかということは、やはり私は教組の側でぜひお考え願いたいのでありますが、これは教育というものは非常に大事でありまするだけに、私はちょいちょい申し上げる必要もございませんけれども、それは先生方によって、学問上に特別に得手なり好きなりというものはございましょうし、あるいはまた教え方がまずいけれどもなかなか頭はいいというような先生方もおりまするし、また生徒の教え方のうまい先生もおるし、それから教え方のうまい、頭のいい悪いということを抜きにして、子供に非常に慕われる人とそうでない人といったようなこともございますし、また地域の状態によりまして、子供の性質等も非常に荒っぽいところがあったり、非常におとなしいところがあったりというようなことがあります。私は勤務評定という形式の問題についてはいろいろな御意見があるかと思いますけれども、これは今日定まった方式によってわれわれはやっておるわけであります。何と申しましても、やはり教育効果を上げるために——先ほど平面的におっしゃいましたけれども、私は決して会社や銀行と同じだからという意味で申し上げているのではない。教育の場であればあるほど掘り下げた見方が必要なのであって、そういう意味においては、勤務評定というものが行われ、そうしてこれが習熟され、多く人の目を通じながらだんだんその内容充実いたして参りますならば、これは人事管理を適正に行い、職務能率向上をはかるという趣旨から申しまして、この法律にきまっているから機械的にやるのだということでなしに、趣旨からいってまさに私はそうなくちゃならないと思って、真に良心的に私は非常に強くそれを主張いたしております。
  111. 小牧次生

    小牧委員 いろいろ御答弁がありましたが、あなたの言われる通りであるとするならば、また現在でも学校においてはある程度学校の校長が監督をして、いろいろ指示なりあるいは指導を行われておる。それをさらに神奈川県においてはもっと突っ込んで、県の教育委員会とか、あるいは学校の先生方の組合の方と話し合って、さらに教育効果を高めるための方法はどうかということを検討した結果、神奈川方式が生まれて参った。それが今あなたの御答弁の中にいろいろありましたが、それと比較してどうして神奈川の方がいけないとお考えになっておるのか、どうしてもわからない。
  112. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 私はむしろ小牧委員はよく御存じの上で御質問になっておられるので、多少無理があるのじゃないかと思うのですが、学校の先生が御自分で教育実績の反省をなさる。そして校長さんも一緒になってそれの検討をするというような話は、私は大へんけっこうなことだと思っております。それはまさしく法に定められた勤務評定の要件というのは、最小限度のことを書いてあるわけでありますから、それに加えてさらに別のことを行うのはけっこうでありまして、それは勤務評定とは別の問題であると思いますが、けっこうだと思います。私はそれに反対をいたしません。ただ教員の人事管理を適正にして、職務能率を上げていく、教育に大事な教育効果を上げていくという面から見まして、これは人事管理の面にありまする者が公平な第三者の立場から見て、そうして平素の勤務実績を見ていくということが、一番公正を期するゆえんでもあり、その間にもちろんそういう判定をする前には、それは校長先生自身が教室を見にいくこともあるだろうし、あるいはまた同僚の評判を聞くこともあるだろうし、あるいは児童の試験成績というものも注意深く比べてごらんになることもあるでしょう。これはそれに違いないので、やられるのがいいのでありますが、最後の結論といたしましては、やはり法に定められてございますように人事管理権者が勤務の実績を評定するということが、勤務評定というもののしんでなければならないと思うのでありまして、むしろそういうものがだんだん公正に積み重なっていくように、どうか一つ小牧さんその他有力な皆さん方の御尽力を私はお願いをしたいと思うのであります。そのほかにそういうようなことをする上においても、先生方が御自分の勤務実績を反省してみたり、校長先生、どうもこういう点はうまくいかないがどうだろうというようなことを御相談になるのは非常にけっこうなことであって、これは勤務評定以前の問題としても、勤務評定以後の問題としても、それ自身に私は決して反対を申しておりません。ただ勤務評定というものは一つの客観的な人事管理の方式として、共通的な要素を持って行われなければなりませんけれども教育法に定められたものは、一つの最小限度の条件がある。その条件を定めたことはやはりそれだけの意義があると考えております。
  113. 小牧次生

    小牧委員 私の質問に無理があるというようなお話がありましたが、私はちっともそういうところはないと思う。私は実はその方面の専門家じゃないです。むしろ第三者として公平に問題を考えて立ち向っておる一人であると私は考えておる。またあなたの御答弁の中にも、教組の皆さんが教育をやるのだとかなんとかいうようなお話もありました。おそらく学校の先生方自身が、教育をやるということをいわれる場合は、いわゆる教育行政下はなくて、純粋の教育そのものを担当し教育を行い、教授をするのだということであって、いわゆる教育行政を教職員組合が関係してやろうとかなんとか、そういうことでは断じてないと私は思う。従って先ほど大臣のお言葉の中にもありましたが、私も申し上げた通り教育はあくまでも国民の手によって運営されなければならないというのが民主教育建前であり、教育基本法がこれを示しておる。従ってこれはむしろ国民自身が自発的にこれを積み重ねていって、そうしてよりよい教育を行い、自分たちの教育向上させるということに努力してこそ初めてほんとうの民主教育も行われるし、教育効果の向上も期待できる。これをいわゆる上の方から押えつけて、そうして一つの型を作ってこれに当てはめて、その通りにやっていかなければいけない、この誤まった戦前の教育のやり方を打破するために民主教育ということも叫ばれ、教育基本法もできておる。憲法もその通り規定されておる。従って今回の神奈川方式の場合におきましても、勤評の問題を取り扱うに当りましても、教師の自発的意欲と申しますか、あるいは教育意欲と申しますか、その向上をはかるためにどうすればいいかということで、教育委員会教職員組合の方でいろいろな話し合いが続けられた結果、神奈川方式が生まれて参ったということは、先ほど来たびたび私が申し上げた通りであります。それを一つの形式にこだわって、判定をしないのだとか、あるいはいわゆる勤務の評定をしないからこれはいけない。文部省考えと違うからいけないというような方針をお取りになる限りにおいては、私はほんとうの意味の下から積み上げられた民主教育の推進ということは不可能である。むしろそれを逆行させるものである、こう考える。特に先般もお伺いいたしましたが、学習指導要領の最近の変遷のあとをながめて参りましても、一番最初は、これは内藤さんがよく知っておる下から積み上げて、積み重ねていくということが当初の学習指導要領の精神であった。それをだんだん一つ基準を作って、最後には国家基準を作って、それに当てはめて教育内容を変え、これを指導していこう、こういうような方向に今大きく変貌しつつあることはまぎれもない事実なんです。ちょうどこの問題と勤評の問題と軌を一つにいたしておる。どうして神奈川方針をそういう教育効果を高めるための一つの試案と申しますか、一つの行き方であるということを認められないのか。これと同じように東京都の場合においても、いろいろ特別委員会を作って勤評の問題について検討がなされておる。あるいはもう結論が出たかもわかりませんが、これを読んでみますと、いわゆる総評欄こういうものは削除し、順位はつけず。全体を通じて特記、留意すべき事項だけを書く、こういうようになっておる。これとあわせて一体どうお考えであるか。内藤局長の御答弁をお願いいたします。
  114. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 先ほど来小牧委員からお話のように、勤務評定は人事管理を適正に行うのに役立つかどうかということに結論がなると思うのです。こういう意味から考えて、教育委員会学校の運営管理の最終責任者であるのだ、その最終責任者が人事権を行使するのにどうしたらいいか。現在でも毎年年度末にはどこの県でも数千人の人事異動があるわけであります。これによって教育界の清新の気を注入して新しい教育意欲を起さしているわけであります。この場合にも何らかの勤務評定が行われておる。この勤務評定が、あるいは文書にした記録になっていませんので、個人の主観とかあるいは因縁情実が入りがちなものなので、できるだけ科学的に評定しようというのが今回の勤務評定の趣旨なのであります。この線から考えまして、神奈川県の勤務評定はそういう意味において役立つものかどうか、私どもは非常に疑問を持っておるのであります。もちろん先ほどから大臣が申されましたように、反省記録もけっこうです、しかしこれはこれとしてけっこうなんでありまして、これをもって勤務評定と認めるわけには参りませんということを申し上げたわけであります。  それから特に東京都の事例が出ましたけれども、東京都はまだ中間報告でございまして、特別委員会としても決定したとは私聞いておりません。そこで東京都は昨年勤務評定の規則を制定いたしました以後において勤務評定の委員会を設けました。その中には校長それから地教委の教育長等関係者が入ります。また組合にも呼びかけておりましたが、組合はこれに参加いたしておりません。そこで九月十五日の事件を契機に東京都は別個に特別委員会というものを勤務評定の改善委員会の中に設けたのであります。これは主として学識経験者を中心に特別委員会がその勤務評定の委員会に対する一つ資料を出すということでございます。それを先般中間発表されたようでございますが、最近まだ最終的にこれを練るというような段階でございますので、今私どもとしてこれにいろいろ意見を差しはさむことは差し控えたいと思います。
  115. 小牧次生

    小牧委員 文部省においてはさきに全国教育長協議会の試案というものを作られた。これと関連いたしまして考える場合に、先ほども答弁の中にありましたが、現在でも教職員の異動なりいろいろなものは行われておる、その点から科学的な人事管理というために一つ基準をこしらえてやろう、こういうお話でおそらくあなた方が指導されて全国教育長協議会の試案ができたのだろうと思うのです。ああいう複雑きわまる多元的な内容を、一体人事管理と称して学校教育の効果を向上させることが可能であるかどうか。これは私はむしろ結果は全然逆効果であると思う。こういう複雑なものではとうてい教育効果の向上は期せられないというために、それぞれの県においていろいろな検討がなされて、神奈川方式なりあるいは今のお話の東京都場合においても学識経験者の方々が特別委員会を作っていろいろ検討された結果、その全国教育長協議会の試案とは相当大幅に異なるところの、今申し上げた総評欄は削除するとか、あるいは順位をつけないとか、あるいは教師の品位とか責任感とか人格的な評定はやらない、これは結論は出ていないかもしれませんが、そういうような相当大きな違いを見せておる結論が生まれようといたしておる。この今日の現状についてあなた方はもう少しあなた方自身の態度も反省されて、ただがむしゃらに一つの試案を作ったからこれに当てはめなければならないという態度をやめ、その点については各県において相当無理があるし、研究しなければならない、研究しようということであらゆる努力がなされておる。それを先ほどの話ではありませんが、通り一ぺんに一つの型に当てはめていこうという態度は最も誤まったやり方であると私は考える。これについてどうお考えになりますか。
  116. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 各県それぞれの御事情があろうと思います。私どもも別に全国教育長協議会の試案を全部に押しつけているわけでは毛頭ないのであります。あの試案通りにやっておる府県は数県にすぎませんので、それぞれの各県の実情をしんしゃくしてやっているわけでございます。あの中で、御存じのように私どもはそれほど複雑な項目と思っていないのであります。実は十三の項目でございまして、国家公務員についても十項目ないし十四、五項目やっておりますので、それほど複雑だとは考えておりませんけれども、いろいろと各県それぞれの事情で多少の修正があるようでございます。ですから協議会でお作りになった案が、私どもとしては今のところ妥当なものと考えておりますけれども、それぞれの各県の事情によって適当にこれをさらに改善、工夫を加えられるということはけっこうだと考えておるのであります。決して私ども法律通りというわけで、法律をあくまでもたてにとっておるわけでもございませんけれども、少くともこれは人事管理に役立たなければならぬ。たとえば今お話になりました総評の欄をつけないと、たとえば研修するという場合に、資質の悪いものを研修する、その場合にどういう者が資質が悪いのか。東京都はおそらく四万人くらいおりますから、一々四万人の表を集めるということはなかなか大へんだと思います。その場合に総評の欄がついておれば、比較的活用が便利でございますので、資質の悪い者を研修していくというような活用の面には非常に便利ではなかろうか、かようにも考えるのであります。しかし、私どもはあくまでも行政当局といたしましては、法の執行をするのが建前でありますので、法律に違反するようなものに対しては是正するようにしていかなければならないと考えておるのであります。
  117. 小牧次生

    小牧委員 時間がだいぶ経過いたしましたので、いずれまた他の適当な機会におきましていろいろ御質問を申し上げることにいたしまして、この問題については私はこの程度でやめたいと思います。しかしながら最後に申し上げたいことは、私どもはほんとうに冷静に考えてみた場合に、どうして教育効果を向上させるかということが目的である。ただ単に人事管理のための人事管理というものは全く有害無益である。こういうことを考え、私はあくまでも教育というものは上から干渉され、型にはめていこうとするような考え向上させられるものではなくて、あくまでもその根本は自主性を尊重するというところにほんとうの教育の発展があり得るということをかねがね考えておりますから、こういう神奈川方式その他いろんな方式が出てくるでありましょうが、そういう点の批判なり解釈なりあるいは指導なり等につきましても十分一つ慎重に御検討の上善処されるように、この際に強く要望しておきたいと考えます。  それから、先ほど社会局長さんがお留守でありましたから途中で質問を中止いたしましたが、いわゆる読書の選定の問題であります。  簡単にあらためて申し上げます。文部大臣の諮問機関として社会教育審議会があって、この中に読書指導分科会というものが生まれた、こう新聞が報じております。従って、私はその読書指導分科会の構成、委員の数並びにそれによって何を目的に運営されようとしておるのかということをお伺いいたしまして、大臣その他から簡単な御答弁があったわけでありますが、今申し上げた構成については遺憾ながら御答弁がなかったわけでありますので、この際局長から御答弁をお願い申し上げたいと思います。
  118. 福田繁

    ○福田政府委員 お尋ねの点でございますが、御承知のように最近青少年の非行あるいは犯罪というものがかなり統計的に見ますとふえてきているようであります。従って青少年の不良化防止というような観点から、青少年の健全な育成という問題からいろいろなことが言われておりますが、特にこの青少年に対するいろいろな影響というものは社会各方面にございますが、俗悪な映画等もその一つでございます。ところでその青少年の健全な育成あるいは不良化防止というような見地から読書、図書の影響というものもまたなかなか看過できないようなところがあるようでございまして、いろいろそういった方面から俗悪な図書につきましては青少年に読ましたくないというようなものがかなりございます。しかしながらそういった問題についてはこれはまたなかなかめんどうな問題がございまして、文部省といたしましては、さっき御指摘になりましたような社会教育審議会の中に読書指導分科会というものを設けまして、そこで青少年の不良化防止というような見地から、青少年のための読書指導のための資料その他を作っていこうというような考え方でございます。従って趣旨は今申しましたように地方におきましていろいろ青少年の指導の上に必要な図書その他の資料を流してやる、こういうようなことがねらいでありまして、構成は大体十二人の委員からなっておりまして、分科会の会長は東京学芸大学の学長さんの村上俊亮さんでございます。そのほか国立科学博物館の館長の岡田さん、それから共立女子大学教授の中河さん、あるいは聖路加病院の小児科の斎藤さんあるいはお茶の水大学の教授であります波多野さん、それから工業大学の教授であります星野さん、それから新聞関係といたしましては朝日新聞の論説委員の杉村さん、毎日新聞の出版局長の藤山さん、読売新聞の和田さん、そういう三人の方が入っておられます。そのほか中学校長といたしまして城南中学校の校長さんの牛山さん、それから小学校の方では誠之小学校長の椎野さん、それから社会福祉法人の双葉園長の高島さん、そういう十二人の委員で構成されておりまして、目下具体的なやり方について研究中でございます。
  119. 小牧次生

    小牧委員 最近における青少年の犯罪ということも非常に今社会的な大きな問題であり、法律的にもいろいろ研究されておるところでありますが、これと関連いたしまして、青少年を不良化から守るという意味において、悪書を追放していい本を読んでもらって青少年の向上をはかるということは、これは私はけっこうなことだと考えております。しかしこういう問題については、従来民間のいわゆるいろいろな団体がありまして、そういう民間の団体によっていろいろ読書なり図書の推薦が行われて参っておるにもかかわらず、今回文部省自身がそういう委員会を作られまして、名前を承わりますと、それぞれなかなかりっぱな方々ばかりのように考えられるわけでありますが、そういう委員会のもとに図書の選定と申しますか、推薦制度と申しますか、そういうものに文部省が乗り出して参ったということは、これは一つの問題であろうかと私は思う。その意味で先ほども文部大臣にもお伺いをいたしたわけでありますが、これを他の映画の場合なんかについて考えてみますと、映画にも文部省の推薦映画というのがございます。前は確かに大体教育という面に限られて推薦がなされておったようでありますが、だんだん最近では一般的な映画にまで手を広げて参った。文部省の推薦映画ということになりますと、これは非常に興行価値もあるし、入場者もたくさん出て参って、競って文部省の推薦映画になりたいというような傾向が出て参っておることはこれはまぎれもない事実であります。従って今回図書についてもどの程度の図書を選定される御計画であるかどうか存じませんが、今のような方向に進まれるとするならば、これは従来危惧されておる思想統一と申しますか、文部省による思想統制が一段と積極化されて参ると同時に、図書業者も競って文部省方向に合わせる、迎合すると申しますか、そういう方向に進みがちである。そうなりますと、これは教科書の検定制度というものがありますが、それと並んで一般的な普通の読みものとしての図書、読書も相呼応して同じような方向にこれが規定づけられていって、先ほど申し上げたような思想の統制が簡単に行われて参る、これは戦争時代に試験済みの問題であります。従って私どもはそういう方向を非常におそれるわけであって、文部省のそういうお考えは一応いいといたしましても、民間に推薦の団体があるし、あるいはまた図書館等における青少年の読む本の予算充実をして参るとか、いろいろ私は文部省として、あるいは社会教育局として打つべき手はたくさん残されているのではないか、こう考えるわけでありますが、この点についてどのようにお考えであるか、文部大臣のお考えをお伺いいたしたいと考えます。
  120. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 仰せのようにいろいろな面でやって参る点はあると思いますけれども、私はやはりこうした青少年の読書指導といったような面で、これは小さいことのようですけれども、こういうふうな面はこういうふうな面で、こうした方々の、文部省だけでなしに、審議会の意見を聞いて、こういうところで良書推薦をやるというような面にも目を向けてやって参ることが必要だと思っております。
  121. 小牧次生

    小牧委員 それではもう一つ伺いをいたしますが、先ほどあげられました方々で構成されておる読書指導分科会によっていろいろな本を選定されることになるわけでありますが、その場合にこの本はいい本であるとか、あるいは青少年が読んでは悪い本だとか、いろいろそこで選定されるわけでありまして、何かそこには——諮問機関でありますから、それに基いて文部省としては最終的にはおきめになるかもわかりませんが、その前に認定の要綱と申しますか、基準と申しますか、そういうものがあるのかどうか。あるとするならばそれをお示し願いたいと思います。
  122. 福田繁

    ○福田政府委員 お答えいたします前に、誤解があるといけないので申し上げておきたいと思いますが、映画については、現在文部省が推薦するという推薦制度はとってない。これは教育上価値があり、適当かどうかという選定はいたしておりますけれども、推薦というお言葉のような制度ではない。従ってこの図書の場合におきましても、推薦あるいはそういった式のものを考えておるわけではございません。先ほど申し上げましたように、地方におきまして小さな子供たちが読書をするという場合に、父兄あるいは周囲の関係者がそれに対して適切な指導ができるように、それが適当なものであるかどうかというような選別をする資料としてこれを作っていきたいという趣旨でございます。従って、その適当な書籍であるかどうかということについては、もちろんある程度基準は必要でありましょう。従って、青少年に悪影響のある図書については選定しないような基準になると思いますが、具体的なことにつきましては、まだ審議会としてもきまっておりません。申し上げる段階ではございませんが、映画等におきましても一応の選別の基準というものはございますので、あるいはそういったものを参考にして基準は作られるのではないかと思っておりますが、まだ決定いたしておりません。
  123. 小牧次生

    小牧委員 これで私の質問はやめたいと思いますが、今の書物の選定、推薦の問題を私は非常に重要な問題だと思うから取り上げて御質問を申し上げておるのでありまして、結論を申し上げますと、私は学習指導要領の変化についても、あるいはその他一連の、今日のわが日本の教育行政全般について考えられる点は、とにかく国民の手によって運営されなければならないという民主教育建前がくずされて参って、結局いわゆる文部省という権力を持った上の方からの教育の支配が行われて今日に至る、こういうことでは根本的に誤まっておるから、そういう方向はいけない。同時に、一般的な学校教育以外の面における読書の指導ということに今回文部省が乗り出されるということについても、やはりそういう一連の逆行を、教育行政の一環としてわれわれは十分警戒しなければならない。戦前の図書の検閲とか、あるいはそういう強力なものにまでは私はいかないであろうとは思いますけれども、いつの間にか、知らない間にそういうものが復活をいたして参っては大へんでありまして、そういう図書の選定とかあるいは読書の指導というものは、民間の団体等が今やっておるそういう面を文部省としては十分指導されて、そうしてこれを助長していかれることが一番いい方法であると考えて、こういうことはできるだけ避けていくべきである。もしどうしてもこれをやろうとされるならば、先ほど私が申し上げたような思想統一とか、あるいは思想統制というような疑念を持たれないように、またそういう方向に進まないように、この際十分御善処をお願いしなければならない、こう考えて、私は先ほど来この問題を取り上げて御質問をいたしたわけでありまして、最後に、これに対する橋本さんのお考えをお聞きいたしまして、私の質問を終りたいと存じます。
  124. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 民間の団体でやりますことを排除するつもりはございません。ほんとうに国をあげてこうした事柄を行なって参りたいと思っております。ただいま仰せのことにつきましては、私ども十分趣旨をくんで考えて参りたいと思います。
  125. 西村力弥

    西村(力)委員 先ほど、給食婦に対する給与は相当大幅に改善される措置をとった、こういうことでありますが、先ほど自治庁当局に私その点ただしてみましたところが、給食婦の給与費単価は昨年と何ら変らない、こういうことがはっきりしたわけなのでございます。ただ大臣が言われることは、今まで九百人に対して一人の給食婦という費用算定をしておったが、これを二人とする。九百人の給食を一人でやるなんて無理なんで、あるいは二人でしても無理かもしれません。それを一人であったのを二人にしただけで、個々人の待遇にプラスしたということはいささかもない。ですから、先ほど大臣が御答弁になり、具体的には内藤局長が御答弁になったが、そういうことは事実そのものの御答弁ではない、私はそう思わざるを得ない。確かに九百人対一人ですから、二人にしたという点、決してわれわれはそれを悪いというわけじゃない。大へんけっこうだと思う。むしろそれでも不足じゃないかと思うのですが、個々人の給食婦の給与の増加という問題は実際には考慮せられていない、そういうことなんですから、そういう間の事情について再度はっきり御答弁をお願いしたいと思う。
  126. 清水康平

    ○清水政府委員 給食従事員の問題につきましては、待遇の問題と身分の問題、この二つが最も大切なことだと思います。待遇の問題につきましては、御承知のごとく三十三年度から交付税交付金の方で、ただいま御指摘通り九百人に一人、九万二千何がしかついておるわけであります。われわれといたしましては、ありのままを申し上げますと、少くとも三百人に一人くらいは置きたいのであります。ただいま関係各庁と折衝いたしまして、またただいまお話のございました通り、一人ふえる見込みでございます。しかしそれがそうなっても、現場に参りました場合に、身分がどうなるだろうかという問題が残るわけでございますが、給食に従事しておられる者の中に、私どもの調査によりますと約八千人という方は、雇員でも用人でもない、非常に身分が不安定な者であります。この人たちを少くとも雇員あるいは用人にしてもらうように努力いたさなければならぬと思っておるわけでございます。従いまして、その点につきましては、今後あるいは通達を出しまして、設置者のできるだけの協力を——協力というよりも、積極的にやっていただくように仕向けて参りたいと思っておる次第でございます。
  127. 西村力弥

    西村(力)委員 大へんけっこうですが、先ほど、待遇改善をすることによって生活を安定し、身分を安定するために今年度新しく十二億を計上したのだという御答弁であったのですよ。今の答弁では、私の質問にちょっとも合っていないじゃないか、こう思うのです。
  128. 清水康平

    ○清水政府委員 ただいま関係官庁と折衝いたしておりまする一人増の全国の総額が十二億、こういうふうに見ておる次第でございます。
  129. 西村力弥

    西村(力)委員 だからそれには一人増額した分をやるのだという地方財政に対するより多くの裏づけ、それはできるけれども、個人々々の給食婦の改善というものはそれによって基礎づけられない。そうでしょう。ただ二人を見込んだというだけであって、一人の単価は九万二千円ということですから、それは一つも引き合いになっていない。月五千五百円ということになっておるのですから、それでは個々人の待遇改善になっていないのです。それを先ほどは個々人の待遇改善になるように十二億を計上したという御答弁であった。御答弁そのままを私は信じたいのですけれども、事実は違うのです。十二億増加計上になって、それだけなれば大へんけっこうですが、その点はっきりしていただかなければいかぬと思うのです。
  130. 清水康平

    ○清水政府委員 ただいま申し上げました通り、昨年の一人と、三十四年また一人ふえることになりますので、問題は地方へ参りました際に、その人たちの身分と待遇がそれに伴うて上らなければならぬわけでございます。それにつきましては、各県の教育委員会とも連絡し、あるいは通達を出しまして、身分は雇員あるいは用人に上げていただくように、それから待遇も、全国で十二億ふえたのでございますから、待遇も上げるように努力いたしたいと思っております。
  131. 西村力弥

    西村(力)委員 三百人に一人というのだから、三百人対一の予算計上であれば、それは必要人数全体を交付税で見られる。それはいいですよ。今度は二人ふえたから一だんと進歩した。この点も認める。ですが、一人々々の単価が全然変らないから、この単価で地方に回した場合に、地方においてそれを受け取って、これは二人分来たのだ、それだけのことだから、一人々々を上げよう、そういう気持にはならないのですよ。たしかに一人々々の単価が九千二百円を一万三千円というものにはじいた、こういうことで流れていけば、それではやはり政府の方針はこの通りだから一人々々の給与を上げなければならぬという気持になる。もちろん交付税はひもつきじゃないから、自由に使ってもかまわぬけれども基礎になる単価が示されて、上げられていないと、地方において上げるということにならないのですよ。そういう工合にたとえば九千二百円が一万三千円になったのならば、御答弁通り私たちは喜んで受け取るのですが。
  132. 加藤精三

    ○加藤(精)委員 関連して。私その点西村さんの御質問の趣旨と、御答弁になる趣旨とについて、私なりの解釈をして、そして文教行政がより科学的に、より進歩するために——それは地方行政の専門事項で、文教に来てこまかくやるというのは、地方行政の局長、課長みないる前で言われるならいいけれども、そうではないものですから……。その点はこう考えるのです。私は、地方交付税の基準財政需要額というものの中には、従来盛ってあるものと盛っておらないものがあると思う。盛っておらないものは、その残り三割に当る自由財源で今まで支弁しておったのです。ところが今度新たに基準財政需要の中に入れれば自由財源の方で負担していた分と、それから新たに財源賦与になった分で所遇の財源が得られるので、その限りにおいて文部省の御答弁が正当なんです。これは、たとえば文部省にも前に例がありまして、義務教育国庫負担金というものができて、当時一千万円ができたときですが、文部省局長さん、課長さんたちが全国に手分けして、一千万円というものが新規財源になったのだから、これを優遇のために使うようにというふうに各府県の知事に懇談に行ったことがあるのです。これは上級生の申し送りのように、私文部省の課長になったときに先輩の課長に聞いたのですが、そういうふうな趣旨でこれから文部省が始められようとするわけであります。今度新しく基準財政需要に昨年と本年とあわせて二人分が計上されたことは、もちろん財源の賦与です。財源賦与だから、それを優遇の資に向けるように文部省でこれから一生懸命になりなさるというものだろうと思うのです。そういう点を文部省で説明しておられるのだろうと私は考えますので、われわれの議論がさらに正確になるために、私はそう解釈しておるのですが、そう解釈してもよろしいかどうか。
  133. 西村力弥

    西村(力)委員 それはあなたから言われるまでもなく、あなたは旧自治庁の次官ですからよくおわかりか知らぬけれども、私だってそのくらいのことはわかる。わかるが、先ほどの答弁は、九百人に対し一人分だけ見ておったのを二人にした。そうしてそのことによって地方財政に余裕財源ができることによって待遇改善になるということをわれわれは期待するという答弁ならいいのです。ところが内藤局長は、十二億を計上して待遇改善をする、こういう答弁だから、それは誤まりだと言うのです。誤まりを率直に認めたらどうです。しかも加藤前自治庁政務次官は、地方財政に余裕財源が出るようなことを言われますが、現在地方で所得税の減税、入場税の減税、遊興飲食税の減税が議論されておる。そのことによって赤字を生むということで地方団体がわいわい言っておるじゃないですか。今地方財政はこんとんとしておる。非常に余裕ある経理が行い得るような状態において今一人分のところを二人にするならば、その余裕をもって待遇改善に向けるということは言えるのですけれども、鞠躬如として赤字財政に苦しんでおる。またことしの税制改正によってますます赤字財政にいこうとするときに、二人分の財源がいくから、余裕が出たから待遇改善にいくということが言われるはずはない。そういうことを期待するのは大いに期待していいけれども、期待するということは、一人々々の単価を引き上げて、こういう工合に裏づけたから上げてくれということならば話はわかるということを私は言っておるのです。
  134. 清水康平

    ○清水政府委員 三十四年度もう一人ふえまして、それに要する交付税交付金は大体十二億と見込まれております。これは従来学校の給食に従事しておられまする人の待遇に振り向けるようにせっかく努力いたすつもりでありまして、御承知のごとく、学校給食に従事しておられる人のうちでも、先ほど申しました雇員でも用人でもない方の待遇が非常に低いのでございまして、その人たちを含めて給食従業員につきましての待遇にそれを振り向けるように努力いたす所存でございます。
  135. 臼井莊一

    臼井委員長 堀昌雄君。
  136. 堀昌雄

    ○堀委員 時間が制約されておるようでありますので、半分もやれないかと思うのですが、その前に、ちょっと私が予定した質問以外に、先ほど小牧委員文部大臣質疑応答の中で、ちょっと私納得のいかない点がありますので、先にそれから伺いたいと思います。  まず、先ほど文部大臣は勤務評定の問題について科学的な評価をやりたい、こういうふうにおっしゃっておる。科学的な評価というものは一体どういうものかということを伺いたいわけですが、科学的という表現は、私は少くとも客観的であるということが前提に立つものじゃないかと思う。主観的なものは少くとも科学的とは言い得ないと私は考えておる。そこであなたのおっしゃる勤務評定というものは、客観的なものとしてあなたはお考えになっておるかどうかをお伺いしたい。
  137. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 科学的な評価ということを申しましたかどうか、それは私は言葉が悪いと思います。科学的な人事管理方式でやるということを申しておったつもりなのであります。そうしてその間、評価自身は科学的と申してもいいかしれませんが、その人の性質でありまするとか、あるいは学問の度合いだとか、あるいは子供の好ききらいとかなんとかいうような、評価というものは勤怠におけるような純客観的なものですからこれは主観的と申しますよりも、それで、そういうような性質をできるだけ客観的に判断をしなくちゃいかぬと思うのですが、勤務評定自身は科学的な人事管理の方式として行われるものでありまして、評価というものはできるだけ客観的に、公正に行われなければならぬと考えております。
  138. 堀昌雄

    ○堀委員 それからもう一つちょっと伺っておきたいのは、さっきから皆さん方の方で人事管理権者が評定をするという言葉を盛んにお使いになっておられます。一体教育行政の中における人事管理権者というのは何をさすのですか。
  139. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 教育委員会が人事管理の責任者でございます。法律には任命権者と書いてあります。
  140. 堀昌雄

    ○堀委員 そういたしますと、任命権者が人事管理権者であるということでございますね。地方教育委員会にはそうすると人事管理権はないのですか、そういう意味でございますね。任命権は県の教育委員会にあるように法律には書いてありますけれども、そうすると、県の教育委員会が任命権者である以上は人事管理権者というのはそこだ。そうするとそこが評定をするのであって、やは地方教育委員会には評定をする権限は法律上からはないということになりますね。
  141. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 地公法四十条を見ますとその通りでございます。しかしながら同時に、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の四十六条によりますれば、県費負担職員についての勤務評定については都道府県が計画し、そのもとに市町村の教育委員会実施する、こういう規定になっておるのでございます。
  142. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっとそれは何だかわからなくなりました。あなたが最初おっしゃったことは、地公法のワクの中でおっしゃったのですか。私は今教育委員会の問題について、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の中で、任命権者というものは明らかに県の教育委員会にある、こういうふうに書いてあるのですから、そこを初めから確めて申し上げておるわけであって、地公法の問題については初めから触れておりません。だから当然四十六条をこの前から皆さんとだいぶ問題にしておるところでありますけれども、市町村の教育委員会が勤務成績の評定を行うというふうにこの法律は君かれておるにもかかわらず、あなたは任命権者が評定を行う人事管理権者であるとはっきりおっしゃっておる。全然矛盾するのじゃないですか。その法律をどう解釈しておられるのですか。
  143. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 矛盾していないと思っております。と申しますのは、地方公務員法が原則であります。ですから普通の場合ですと、当然任命権者が勤務実績について評定をする。しかしながら同時に、地方教育行政の組織及び運営に関する法律によって、この場合の県費負担職員については任命権者は計画を行うんだ、評定の実施は市町村の教育委員会が行う、もちろん市町村の教育委員会も御承知の通り任命についての内申権を持っておりますので、ある程度の服務監督権も当然あるわけであります。その意味において任命権を補充しておる、こういうふうに解釈していいと思うのであります。
  144. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと詭弁だと思うのです。私は人事管理権者が勤務評定をする、その勤務評定について問題を提起しておるのであって、その他の問題についての任命権者について話をしておらないのです。最初に文部大臣に伺っておるように、勤務評定のさっきの関連の中で伺っておるわけです。ですから私は四十六条のワクの中でものを言っておるのに、あなたは初めには人事管理権者というものは任命権者であるとはっきりおっしゃった。任命権者ということであれば、この法律のワクの中では県の教育委員会なんです。その県の教育委員会にあるということを断言しておいて、今私がこの四十六条を持ち出したら、そうじゃないんだ、具申権があるから部分的に委譲されておる——私はそういうものではないと思うのです。だから人事管理権者は地方の教育委員会であるかどうかということを今度はここで一つはっきりしてもらいたい。そういうふうに部分的に、都合のいいときはこうだとかああだとかいうことで法律を運営することは私はできないと思います。
  145. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 これは別に矛盾がないのでありまして、地公法四十条によって任命権者が勤務実績について評定するという基本線が貫かれておるわけであります。ですから高等学校につきましてはこの本則通りいくわけなんです。ところが別の地方教育行政の組織及び運営に関する法律に基いて、これは当然市町村の教育委員会実施する、こう規定されておるので、私は原則と矛盾してないと思っております。
  146. 堀昌雄

    ○堀委員 まあ水かけ論になりますから、これはまた次会に一つ法制局を呼んで検討さしていただくことにいたしますけれども、ここでもう一つ伺っておきたいのは、そうすると、少くとも県費支弁の教職員の勤務成績の評定については、人事管理権者が地方の教育委員会であって、そこで評定をするということに理解してよろしゅうございますね。
  147. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 人事管理に責任を持ち得る立場の委員会でございます。
  148. 堀昌雄

    ○堀委員 人事管理に責任を持ち得る立場の委員会、そういう表現をすると、県であるのか地方であるのかわからなくなってくる。私はそこで県と地方教育委員会と、ここをはっきり区別してものを聞いておるわけです。そこをはっきり返事をして下さい。
  149. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 県費負担教職員については、勤務評定を行うのは市町村の教育委員であることは、これは法律に明記されております。このことと勤務実績について評定を行うということは、私は矛盾がないと思います。と申しますのは、県費負担職員については、御承知の通り任命権者は都道府県の教育委員会ですから、都道府県の教育委員会が勤務評定の計画をするわけであります。計画するものと評定を行うもの、この二つに分けて、二つ合せれば任命権者ということになるわけであります。
  150. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと私が聞いていることと違う答弁なんですが、要するに私は、地方教育委員会が勤務成績を評定するということは法律にはっきり書いてあるから、少くともこの場合には、この地方教育委員会が人事管理権者であるかないかということを聞いておるのです。
  151. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 人事管理権の一部をになっておるものであります。
  152. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、大臣は科学的な人事管理の方式ですかをとりたいというのですが、非常にあいまいな表現になってきたと思うのです。まあそれはそれとして、その場合に、今の建前は校長さんが評定書に記入することになっておりますね。そうすると、この場合には校長が評定を記入する人間であって、その次に、今度は人事管理権者が評定するということで、地方教育委員会がこれまた評定するんだということになってくるんだと思うのです。ところが具体的には地方教育委員会委員の諸君は、必ずしも教師の個々の状態について知っておるわけはないのであって、だからこの場合においては、ほとんど校長の評定にゆだねられるということになると私は思います。法律上から見ると、今おっしゃったように人事管理権者としての力を地方教育委員会が執行するんだという建前になっておるけれども実態の上では校長がやるということになってくる。そうすると校長というのは一人の人間なんですね。勤務成績を評定しろというこの法律は、委員会がやれ——委員会というものは少くともこの法律の中では複数なんです。複数ということは少くとも客観性がここに入ってくる余地が私は十分にあると思う。ところが一人の人間が評価をするときに客観的にやるなどということができるかどうか。本人が幾ら客観であると思っても、これはその校長の恣意にまかせられるものであって、これは厳密にいって主観的なものである。そういう主観的なものを基礎にして、客観的な人事管理ができるということは、私はロジックが合わないと思う。私はここでしょっちゅう質問をしておる中で、大体皆さんは皆さんの立場があることは了承しておる。しかし少くとも私たちと皆さんとの間には、一つのロジックの中においては道が通じていなければならぬ。ところが今の内藤さんのお話を聞いても、はっきり言ってこれはロジックが通っていない。私の申し上げておる、私の考えとしては口ジックが通らない。それは一応、法制局の問題はここに取り出すことにして除きますが、今の大臣のおっしゃった科学的な人事管理の何とかという客観的なものを主体にしようという考え方と、校長一人に評定をゆだねておるこの問題の中には、私は口ジックとして全然通じるものがないと思うのですが、大臣はいかがですか。
  153. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 それはすべてこういったようなものは人がやるわけであります。これは都道府県教育委員会計画に従い市町村の教育委員会実施をする。その場合に具体的に評定書に記入いたしますのは、いろいろな、定められた表現に従って、校長が全く良心に従って、そして自分の主観的な好ききらいというようなものをできるだけ抜きにしてやるわけで、私はそういったようなものがだんだんに積み重ねられていって、一人の校長がことし見、来年見、また別にあるいは学校を転任しというようなことによって勤務評定書もだんだん積み重ねられて参ると思うのですが、ただ一時点の一人の人だけを考えますとこれはむしろ心配だ。心配だという面からいうと心配だということになると思いますが、やはり人の世界というものは、校長さんもそう疑ってかかってばかりいないで、校長は良心に従って、できるだけ先生の資質というものは客観的に見きわめて私はやっておられると思う。ただその場合に神様じゃありませんから、あるいはあの前のときにはこういうふうに見たけれどもあと考えてみるとなかなか別の面で特徴があるようだというふうに、一人校長さん自身が判断を変えられるというようなことも私はあるかもしれないと思いますが、これはやはりそのときの現在においてできるだけ客観的に見て、公正にやっていくという、ものの積み重ねというものは、これはいかなる場合にだれがやっても出てくる問題であります。私はそれだからどうしてもだれかしら最先端で責任を持って見る人がなくちゃならない、だから勤務評定というものは非常に恣意的なものであるといったようなロジックには私はならぬと思います。
  154. 堀昌雄

    ○堀委員 まあ見解の相違というものもありますが、具体的な事実の中で一人の人間が何かのものを定めるときには、これはより客観的に見られるものか、恣意的に見られるものかということは、常識論として、やはり主観が入り恣意的なものになる可能性の方が多い、これは私は常識だと思います。そこでちょっとこの問題に関連して、私は非常に興味のある事実を一つお話を申し上げたいと思います。実は私は医者なんですが、医者の場合は非常に問題がよく似ているわけです。一人の患者を見ておりまして、ある医者がいろいろ診断をする。この場合には医者という立場で非常に努力をして、客観的な判断の上に、分析に基いて、彼の科学的な良心に基いて診断をするわけです。ところがやはりこれが人間のすることですから、誤まりもあるわけです。ところが医者というものは、少くとも科学者でありながら、自分は純粋でありたいと願っておるばかりに、自分の診断を正しいと思い込みがちなものです。これは絶対だと思い込みがちなのです。ところが患者の方が非常に不安に思って何人かの医者に見てもらうということが起きてくる、そのときに初めて実はほんとうの客観的なものが出てくるわけで、何人かの医師の意見が同様なそういう分析の上に立って正しければ、最初の医師の診断は正しかった。ところが場合によってはそういうことも起きなくて、残念ながら最初の医師の考えておった判断が誤まりであったということも起るわけです。こういう点について私は中国において、あの国は医学としてはまだ非常に進歩してない国ですけれども、ここでやっておることは非常にりっぱだと思うことは、ここでは一人病人が重くなったら何人かの医者がみんな寄り集まって、その患者を見てみんなで検討して、そうしてその中でできるだけ客観性を高めた努力をしていくということをやっていく。私はこれは非常に科学的だと思います。その点で日本医学というものはやはりそうなるべきだと思う。人間人間を、ものを判断し、処理する場合には、客観性を求められる場合にはかくあるべきである。そうすると、教育というような人間人間との間の関係において、さっきあなたがおっしゃったようないろいろな資質というものを評価する場合は、少くとも何人かの人間が、私は一番いいのは全部の先生たちが寄って、その一人の先生についてのいろいろな判断をし合って、その中でより客観的な評価というものが生れてくるというのであるならば、これは私はまた問題の考え方が別だと思う。少くとも一種の支配をしている者が一番上にあって、その人たちの生殺与奪の権を握っておる者が、ただその人間だけの判断で、それが科学的で正しいのだということになれば、これは人間関係の信頼感だけがあとへ残ってしまう。患者が医者に見てもらっておるときには、少くとも信頼感が続いておる間は、その医者の科学的良心を疑うことはないわけなんです。ほかの医者に見てもらいたいということは、少くともその医者に対する信頼感が何らかの形でゆらいだときにその患者がそういうことを言うのが、これは人間関係として当然なんです。ところが、残念ながら現在勤務評定がこういうふうに混乱しておるということは、学校の先生方すべてが自分たちの校長に対して完全な信頼感が持たれるような状態にあるならば、必ずしも問題はこういうふうに紛糾しないけれども、残念ながら政府の施策のあり方がそういう方向でないために、校長さんがややともすれば上からの権力に屈従しやすいという状態の中で信頼感がないというところに非常に大きな問題があると私は思う。その中で客観性を高めていく努力というものをいかにしてやろうかというのが、私は神奈川方式の一つの現われだと思う。私はまじめな人事管理というものに対する努力の現われだと思います。必ずしも神奈川方式はそれでいいという意味じゃなくて、より幅の広い客観性を高める方法というものは、さっき申し上げたように、教師のみんなが寄り集まって、その中でその教師に対する批判をして、その中で皆が高めていくという形でなければならないと思うけれども、しかし現在の時点でああいう方法は一つの科学的な方法である、あなた方のおっしゃっておることが科学というものでないということを私は一言申し上げたいと思うわけなんです。これは私の本論ではないので、ただ私、小牧委員と、文部大臣のお話の中で、どうも皆さんが言葉というものを非常にあいまいに、あるいは安易にお使いになっておる。もう少しわれわれはシビアにこれを規定して考えていかなければ、そこに人間の相互の不信感というものがますますふえてきて、それが必要以上のトラブルを起す原因になるのではないかということを感じたものですから、冒頭に当ってちょっと質問をさせていただいたわけです。  ここで私の本来の質問に入るわけですけれども、そこで文部大臣伺いたいのですが、憲法の二十六条に「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。」こういうふうに書かれておるわけですね。そこで、この中で私は気になりますのは、国民には権利があると書いてあるし、それから同時に権利があるけれども、親は子供を義務教育に出さなければならない義務がある、こういうふうに書いてある。その最後が、「義務教育は、これを無償とする。」こういうふうに書いてある。無償としたいということは書いてない、無償とするのだということが憲法に書いてある。皆さん方はたびたび勤務評定と称するものが法律事項にある、内容規定されていないのですけれども、そういう言葉として勤務成績を評定するということであるから、法律にあることは実施をしなければならないのだということは、灘尾文部大臣以来何回も聞かされておるし、大体橋本さんもそういう趣きの話をさっきからしておられるわけなんです。そこでこの問題なんですが、権利というものはあなたはどういうふうにお考えになっておるか、義務はどういうふうにお考えになっておるか、そしてこれを無償とするということは、国の責任を明らかにしておると思うのですけれども、これについての文部大臣の御見解を伺いたいと思います。
  155. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 憲法の第二十六条に「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」この権利を有するというのは、門地でありまするとかいろいろなほかの信条でありまするとかというところで制限を受けない、その能力に応じて機会均等に、あるいは大学でも高等学校でも教育を受ける権利を持っておるという趣旨でございます。それから義務教育の問題につきましては、ここにありまするように、普通教育について国民は子女に教育を受けさせる義務を負っておるわけでありまして、「義務教育は、これを無償とする。」ということにつきましては、これは義務教育に関して学校運営の面の経費というものを国民から取らぬという趣旨でありますが、ただ法律的にこれを明確に書いてありますのは、教育基本法の中で「国または地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料は、これを徴収しない。」これが二十六条の無償の内容として法律的に明確にされておるところでございます。
  156. 堀昌雄

    ○堀委員 私はそういうふうに理解してないのです。普通教育をさせる義務があるのは親に義務があるのです。義務を課した以上は、その義務が行われるための少くとも最低の責任は無償とするという形でここに書かれておる。これは義務に対して書かれておる、国の責任を書いておる、教育基本法のこれは部分を書いたにすぎない。授業料は無償とするということは、これは当りまえのことで、ではほかのものは何でも取っていいのか、授業料に見合わないものは取っていいか、そういうことじゃないと思います。  そこで、これは資料をお願いいたしたいのですが、二週間ばかり前でしたか、一週間ばかり前か、文部省の方で父兄が負担をしておる費用の額について、何か資料を、最近のものをお作りになっておるようですから、これは本日でなくともけっこうですが、ちょうだいしたいと思います。これは後ほどまた次会に引き続いて特に伺いたいのですが。  私はやはり憲法の定めるところに従って、教育は無償であるということは、義務教育児童学校に行くために必要な経費は、これは国が見るというのが、私は憲法を正しく理解し、憲法を守る道だろうと思う。勤務評定が法律であって、その法律実施するためには教育界に混乱を起しても差しつかえないといわれるほど勇敢に法律を守る文部省の皆さんが、どうしてこの憲法の第二十六条の問題をより真剣に考えておられないのかという点について、私は大きな疑問を持っておるわけなんです。  それからもう一つありますのは、教育基本法の第十条に教育行政という項目がありまして「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。」こういうふうに書かれておるわけです。そこで、私は今度の予算案を拝見してつくづく感じますことは、どうも教育行政というものが必ずしも基本法の十条のように行われていないのではないかという疑いを持っておるわけであります。片方で憲法が国民に対して教育の無償をはっきりと明示しておるならば、まず憲法に書かれておる教育の無償が行われた後において、あるいは政府その他の考えられておる考え方を行政の上に反映していこうというための費用が計上されてくるということであるならば、私は了解ができるわけですけれども、残念ながら——この予算案あとでこまかく御質問いたしますけれども、その中で感じられることは、本末転倒しておるんじゃないか、教育行政のための費用の方に重点を置いて、無償とすべき憲法の建前を守らないという精神が流れておる。これはあなた方が口に法律を守らなければならぬと言いながら、実際にはほんとうの意味教育を守っていこうという熱意に欠けておるのではないかという不安を私は持たざるを得ない。この点を文部大臣はいかが考えておられるのか伺いたい。
  157. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 憲法に規定してございまする権利義務は宣言的なものであって、趣旨をうたいながら具体的な権利義務の範囲というものはこれは法律によって規定されて参るわけでございます。お説の通り義務教育を受けさせるということによっていろいろな負担が出て参ります。直接の教材費もございまするし、裸で学校へ通わせるわけにも参りませんから、やはり自然に服装という問題もございまするし、あるいはまた学校の教科書の問題もございまするし、教科書だけでいかないというので副次的な教育資材の問題も起りますし、交通費の問題も起るわけでございます。理想としてはいろいろ問題がございますが、しかし憲法の中には義務教育はこれを無償とするという趣旨をうたって、ただ、一体それじゃ義務教育を受けさせるためのこの憲法の無償という範囲は交通費まで入るかどうかといったような点についてはいろいろ議論がありまするので、そこで法律に範囲を明確にしておるのでありまして、教育基本法の中では授業料を取ってはならないということをはっきり規定しておるわけでございます。憲法二十八条に規定された無償ということの法律的な内容としては、授業料を取ってはならないということが規定されてあるだけでございまして、それ以上のことにつきましては、これはむしろ憲法のこの精神をくんだ教育施策の問題といたしまして、これはいろいろな面において義務教育を受けるところによって起って参りまする父兄負担というものを、直接の交通費の問題、あるいは教材費の問題その他につきまして、今日までできるだけ国でめんどうを見るように拡充をいたして参りました。なおこの特殊児童その他にかち合うところもございますが、そういったようなこまかい気づかいをやりながら、やはりできるだけ義務教育に対する副次負担の範囲というもの拡充はいたして参りたいと思います。ただ私は、この二十六条の規定によって、直ちにおよそ義務教育を受けさせるということによって考えらるべき一切の経費というものを全部無償——無償というのは国でめんどうを見る、こういう言葉では解しがたいと考えておるのでありまして、内容は憲法で宣言された趣旨というものを法律規定をする。当面法律でこの問題について規定をされておるのは授業料の問題だけだ。しかし政府としてはそれだけにとどめないで、あとの点についてはできるだけ義務教育を受けることによる負担というものを、今までもめんどうを見てきたし、今後もめんどうを見て参りたいと考えております。
  158. 堀昌雄

    ○堀委員 もちろんここで義務教育の授業料を取らないというのは、これは最低の無償の条件だと思うのです。そうしてさっきあなたがおっしゃるような、電車に乗って通う交通費だとか、それはなるほど私は直接のものだとは思わないのです。しかし御承知のように、全国の今の児童は、少くともPTAへ会費と称せられるものを大体月五十円内外、これは必ずとられておる。その内訳の内容を見ると、大体半ば以上は直接学校の運営に必要な費用のために使われておるというのが実情なんです。私は八年もPTAの会長をしておりましたから、その実態については詳しくわかっておる。少くともそれらの費用というものは、これは当然無償の範囲に入る性格のものだと思うのですけれども、残念ながら皆さんはそういうふうに今お考えになっておられるのかどうか。ここで教材費の単価を少し上げていらっしゃることは私はけっこうだと思いますけれども、この教材費の単価を上げるために使われた予算の費用、あるいは教育長の補助金であるとか、あるいは校長さんの海外旅費であるとかいうものに使われておる費用の額というものとにらみ合せてみると、私は皆さんが考えられておる教育に対する考え方、すなわち教育行政が優先をして、憲法に定める教育の本質的な問題の方があと回しになっておるのではないかということを、この予算案全体を通じて痛切に感じておる。皆さんの方では児童一人について幾らという資料もちゃんと発表しておいでになる、私は新聞でちょっとちらっと見たのです。しかし私が最低生活者たちの費用の生計費の中をずっと分析しますと、実際に義務教育の問題については教育扶助というものが行われておりながら、生活保護家庭では、やはり教育のための費用というものがかなりたくさん使われておるというのが実情なんです。教育扶助だけで学校へ行くことができないというのが実情なんです。そういうような、国民の中にひとしく教育を受ける権利があると書かれておりながら、その権利を施行することができないような状態に置かれておる児童はたくさんいるのです。早い話が、子供たちが、今度は修学旅行の費用を計上していただいたということは、私は大へんけっこうだと思うのですが、学校においてこういうことが行われるのは修学旅行だけじゃないのです。毎学期遠足というものがある。それについて、最近では非常に費用がかかる傾向が出てきている。その遠足のための費用を子供に渡したために、きょうは金が一文もないから、自分は失対の仕事に行くために歩いて出てきましたということを書いておる失対の母親があるわけなんです。遠足の費用のために、電車にも乗れないで、遠い道を歩いて、そうしてその日の仕事をやらなければならぬ母親というものがある状態の中で、皆様方がほんとうに真剣にこの憲法にかかれておる教育についての国民の権利というものを自覚され、あるいは国の責任である無償というものを考えられておるかどうかという点については、私はこの予算案を拝見して、まことに遺憾である。教育長の俸給が低い、なるほどそれも低いかもしれない。しかし、ほんとうに困っておる人のために、憲法に定められた教育の権利というものを認めないでおいて、何とか食っておる教育長や、あるいは校長さんたちを海外に派遣するための費用の方が先へ出てくるというような、こういう心がまえであなた方は一体ほんとうに国民に対してこの憲法に定められる考え方を施行しておられるのかどうか、静かに私反省していただきたいと思うわけです。これについて大臣のお考えを承わりたい。
  159. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 これは非常に御意見と私は違うのでありまして、私はやはり、教育というものをやりまする場合に、校長先生ができるだけ学識を広めるというようなことも必要でございまするし、またそれに携わっておりまする教育長の俸給というものを整備することも必要でございます。今日、義務教育に対しまする経費というものは相当膨大なものを使っておりますが、これでなおかつ十分だとは私も考えておりません。このほかの面についてもう少し拡充をしたい。あと要するに校長さんの見学とか、教育研修とか、あるはまた教育長の待遇にしても、今日まででストップさせるのは正当だというふうに考えておりません。私は、教育はやはり総体としてバランスをとって考えていかなくちゃならぬと考えておりまして、今日予算に計上いたしましたのも、そういう趣旨でございます。
  160. 堀昌雄

    ○堀委員 橋本さんはこの間まで厚生大臣をやっておいでになって、少くともあなたは、厚生行政の中で、国民がどういう姿であるかということは一応御理解をいただいておると思うんです。きょうは厚生省の保護課長御出席いただいておりますね。今問題はそこまできましたから、私は今度は生活保護の問題と準要保護児童の問題とについて、厚生省の側に先に伺ってから、文部省伺いたいと思うんですが、厚生白書では、皆さん方は、ともかくもボーダー・ライン層という状態で国民の一二%、約一千八十万人かの人たちがあるということを白書の中に書かれておられるわけです。ところが今度、ここで生活保護ははっきりしておりますから、数の上では大体国民の一・八%というふうに規定されておるわけでありますけれども、準要保護児童の教科書の費用を今度は文部省でお出しになることになりまして、それのワクが大体二%、三十六万幾らになっておったようでございます。  そこで、これは厚生省の方へ伺いたいのですけれども児童を持っておる家庭で下からいって生活保護が一・八%、その上今度は二%で切れるところというのは、それは世界として大体どのくらいの収入があるところだというふうにお考えになるか。これはこの前すでに厚生省の方に、こういう質問をするから調べておいていただきたいということを申し上げておいたわけなんですけれども、御返事いただけましょうか。
  161. 大崎康

    ○大崎説明員 ただいまのは、要保護児童に準じます準要保護児童と申しますか、その数がどのくらいになるかという御質問だと思います。
  162. 堀昌雄

    ○堀委員 違うのです。もう一回申し上げます。皆さんの方でボーダー・ライン層というものを厚生白書の中に書いていらっしゃる。そのボーダ一・ライン層というものを一体所得のどこから切っておられるかということについて、実は私いろいろ見たけれども、ないわけです。どこで切っておられるかわからないのですが、それはいいとして、それは国民の一二%あるのだということが書かれておるわけです。ところが、ここで生活保護に準ずる児童というものを、文部省の方では、二%で、その数は三十六万四千八百八十一人だというように書かれておるわけです。その二%、三十六万四千八百八十一人というのは下からとっていくことになると思うわけですが、大体その二%くらいというところは標準世帯として見て、一体どのくらいの生計費に該当するところだろうかということを私はこの前係りの方にお願いをしておいたのです。ということは、根拠があるのかどうかということなんですね。二%というふうに文部省がお考えになったことは、何か根拠があるのかどうか。生活保護が一・八%とっているから、ちょっとふくらまして二%出そうじゃないかということではないかというふうに私は見ておるのですが、そこに根拠があるかないかということについて、先に厚生省側にその二%の標準世帯の生計費のところを伺っておきたいと思ったのですが、お答えができなければ、至急にお調べを願ってからでもけっこうなんですが。
  163. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 生活保護の対象と準保護児童の対象をどの辺で切るかということになると思います。私どもとしては、大体生活保護の五割増し程度あ収入を目標にいたしますと、大体四%近くの数字が出るわけです。それでは五割増しのところは生活が十分か、これもなかなか実情明らかでございません。そこで本年度予算では、大体四%の半分の二%ということで、給食費あるいは教科書、それから衣料費、修学旅行、全部大体二%ということで一応切ったわけでございます。
  164. 堀昌雄

    ○堀委員 生活保護費の五割増しということになりますと、これは厚生省の方でごらんいただきたいと思いますが、大体東京都の標準世帯の生活保護の費用は、基準改定によって、たしか約一万円近くに今なっておると思います。五割増しという一万五千円になるのです。一万五千円ということになると、これは四%どころの問題じゃないのです。もしそういう表現をするなら、一体その一二%という問題の限界は大体どこか、先に厚生省の方で答えてくれませんか。あなた方がボーダー・ライン層の一二%ということを出してきたその標準世帯における生計費は、大体どこで一体押えておられるか、これをちょっと先に伺いたいのです。
  165. 大崎康

    ○大崎説明員 これは三十一年に実施をいたしました厚生行政基礎調査から推計をいたしたものでございます。それで、たとえば東京都の被保護世帯をとりまして、その被保護世帯の消費水準というものを全国的な水準に直しまして、それをものさしといたしまして全国的な推計をいたしたわけでございます。ところが、この調査自体は、実は収入によるものではなくして、もっぱら消費水準によっておりますし、かつその調査自体は、実は現物支出を含んでおりませんので、その間、東京都の被保護世帯の収入水準というものと若干隔りがあることになっております。従いまして、東京都の被保護世帯というものをものさしにいたしましてはかってはおりますけれども、それは全部被保護世帯になるということはございません。その間に相当な差があるわけであります。従いまして、世帯数といたしましては二百四十万世帯、そのうちの五十八万世帯というものが被保護世帯、こういうふうに相なっておるわけであります。
  166. 堀昌雄

    ○堀委員 私は保護世帯のことを聞いているのじゃないのです。そのボーダー・ライン層——皆さんが一二%一千八十万のボーダー・ライン層が日本にあるのだという表現を使っておられる、あの上限です。どこかで切っておられるわけだから……。国民の中で、ここから下はボーダー・ライン層だと切っているわけでしょう。私どもは低所得階層、被保護世帯の分析をやっておるわけですけれども、私どもは大体一万五千円くらいのところからほんとうの意味の低所得階層と見ているわけです。そうすると、さっきおっしゃったこれは低所得階層に全部入っちゃうのですよ。実際の意味で言うと、今の内藤さんの言われた五割増しで見れば、四%どころじゃないわけなんです。現実に……。それを厚生省の側として確実なデータの上で、どういうふうに押えておられるかということを伺いたいわけなんです。
  167. 大崎康

    ○大崎説明員 私どもでやっております調査は。今申し上げましたように、厚生行政基礎調査という百分の一の調査を基礎といたしまして、東京都の被保護世帯をものさしにいたしましてはかりましたものでございます。今申し上げましたように両方の調査で若干調査上の方法が違っておりますので、その全部が被保護世帯にはなりませんで、二百万世帯というものがそのものさしではかった場合の低所得世帯になるわけであります。
  168. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっとわからないのは、ものさしは何ではかったっていいのです。もうちゃんとわかっているのだから。私は少くとも低所得階層の分析については、皆さんに劣らぬだけ自分でやっているのだから、そういうふうなあいまいな表現でなくて、一体標準世阯帯としてあなた方はそういうものさしではかった。その支出の方でけっこうです。消費額として一体幾らだったのか。標準世帯として今の一二%に来るのは一体幾らだったかということが伺いたいのであって、私は金額の面、消費面で伺っているのですり。
  169. 大崎康

    ○大崎説明員 それは三十一年の三月当時の一級地の甲地の最低生活費を使っておるわけであります。その当時の最低生活費につきましては今私ちょっと資料を持っておりませんので、これは後ほど御報告いたしたいと思います。
  170. 堀昌雄

    ○堀委員 それは資料が来てから伺いますが、率直に申し上げまして、実は二%で切るということになると、私はそういう低所得の人たちの中に問題が起るという場合がありはせぬかということを心配するわけです。ほんとうに困っておる人のところにいって、困っておらぬところへいくかどうかという点については非常に問題がある。少くとももうちょっとふくらして、同じく困っておる人たちにやる財源がないというのなら、私はここまでこの問題を申し上げないのです。これは答弁が誠意のあるところだから、私はただ責めるばかりではないのです。皆さんが努力をしておられる経過を私はそれなりに評価をしたい。しかしせっかくやるのなら、片方にいろいろなさっき申し上げた行政費が要る。先ほどまではなかった行政費がたくさん使われておるときに、ほんとうに困窮しておる人たちの立場になって皆さんが考えられた。それは一つこの二%を四%にしてくれ、そして一つにはこっちの行政費の方は半分に削ってでも、こちらをやりたいということが、私は憲法に書かれている問題とのつながりで理解をしていかなければならぬと思うのです。その点が私は非常に不満なんです。その皆さんの努力を全然認めないのじゃないのですよ。努力は認めるが、もうちょっと科学的なそういう問題の上に立って——問題はこういうことだと思うのですよ。乏しきを憂えず、ひとしからざるを憂うという言葉はよくいわれるわけです。このほんとうに貧しいぎりぎりのところは大体私どもが見ているところでは、この間も岡先生が言われたように、現在の生活保護の人たちのエンゲル系数は六四%、それが今度は私どもが今見ておりますところの五割増しの状態の中でも、五四%くらいで、五〇%以下にはなっていないのです。そういう状態の中におる人たちがぐっとひしめいて茅屋の住居におるときに、この中のちょっとだけにこういうことをやるということの困難さ、そういう問題を含めて、ほんとうに真剣に考えられたかどうかということを一つ伺いたいのです。
  171. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 御説の点を十分考慮いたしまして、実は前から教科書に二%出しておりまして、給食につきましては従来一・五%のを本年二%に引き上げたわけであります。そのほかに昨年からは学校保健における医療費を五%見た。さらに本年はその線を推し進めまして、修学旅行に二%、保護に二・五%、合せて八千七百万円計上したわけであります。御趣旨の線に沿って、こういう低所得の階層の者たちが修学に困難でないような措置は一応できた。問題は比率の問題だと思うのです。そこが二%がいいのか四%がいいのかということになりますと、私どもとしては、もう少し実態を調査いたしたいと考えておるのであります。
  172. 堀昌雄

    ○堀委員 努力の方法は私もけっこうだと思いますし、調査をされるのはけっこうなんですが、ただものの考え方として、要するに比重をどう置くかということの心がまえから私は皆さんにお願いしたいと思います。今後もいろいろとあとでこまかい問題の中で触れますけれども、その点を特にお願いをして、ちょっと今生活保護の児童医療費の問題が出ましたので、これについてちょっとついでに保護課長さんの方にもう一回伺っておきたいのですが、今度学校保健法が改正されまして、そこで法十七条ができて、要するに小学校で伝染したり修学の妨げになるようなものについては、生活保護児童については費用が出るということになったわけです。それの病名まで施行令の七条に規定されておる。一番トラホーム及び結膜炎、二番白癬、折癬及び膿痂疹、三番中耳炎、四番蓄膿症、五番齲歯、六番回虫病及び十二指腸虫病、こういうふうに学校保健法できめられて、施行令ができておる。そこでこの問題と生活保護の医療の一般的な問題との間で、今末端においては非常に混乱が起きておるということは、生活保護の医療の場合には健康診断に基いてこういうふうな疾病が発見せられて、それに対する治療というようなことは大体皆さん認めておらぬのだろうと思う。病気をして非常に困っておるからやむを得ず診療を受けるということで問題が提起されておるわけです。ところで医師の方にしてみると、片一方は文部省予算の中の生活保護医療費という問題で、これは金がありませんからこのくらいにして下さいなどということがしばしばいわれたり、同一の疾病について、片や生活扶助を受けている者については、普通のそういう医療扶助として処理をする場合があったり、末端では非常に混乱をしておる。こういうことなんですが、保護課の方の、生活保護の児童の医療費についての取扱いの考え方と、その予算の出てくる経過というようなものについては、皆さんどういうように扱われておるのか、それを具体的にお伺いしたいと思います。
  173. 大崎康

    ○大崎説明員 生活保護におきましては、いわば最低限度の生活が維持できない方々に対して医療扶助を行なっているわけであります。その場合におきまして、まず他の法律なり他の施策がございますと、それが優先して行われるわけであります。従いまして、その他施策が行われがたい場合、それが及ばない場合には、それは当然生活保護法で医療扶助が支給されるべきものでございます。
  174. 堀昌雄

    ○堀委員 そういたしますと、まず学校保健法の方で診療を受ける、そうすると学校保健法にきめられた予算だから、もうここにない、そうしたらそこからあとは今度はすぐ生活保護の扶助に、医療扶助として切りかえ得るということになるのですね。
  175. 大崎康

    ○大崎説明員 その通りでございます。ただしその保護を適用する場合には、御承知のように法律で定めたいろいろな要件がございまして、資産の活用でございますとか、あるいはたとえば一定の扶養義務者の扶養が先行するという建前は言うまでもありません。仰せの通りでございます。
  176. 堀昌雄

    ○堀委員 そうしますと、もちろん今おっしゃるように、私が今取り上げておりますのは併給の者の場合を申し上げておるわけです。だから当然今おっしゃることは入っておるわけですから、併給を受けておる者の場合に、学校で身体検査を受けたら、こういう該当した疾病が出てきた、そこで当初はおそらく併給者ですから、当然これは学校保健法から出てきておる予算で医療を受ける、金がなくなる、そうしたら今度は併給者であるから、当然これは引き続きあなた方の方の一般の生活保護法の医療扶助によって、連続していけるということだと理解してよろしいわけですね。
  177. 大崎康

    ○大崎説明員 生活扶助と併給になっている場合はその通りでございます。
  178. 堀昌雄

    ○堀委員 厚生省関係の方のは、先ほど私がお願いした資料をお願いをいたしまして、これで厚生省に直接関連のあるのは終ります。  そこまできましたから、ちょっとこれは大臣伺いたいのですけれども学校保健法ができまして、非常にいろいろなことを学校医がやらなければならないということになってきたわけです。ところが実情を見ますと、現在の学校医の手当というものは、地方自治体にまかされておりますために、きわめて形式的といいますか、これはお話にならないような状態が行われている。大体非常にりっぱな都市で、そういうことに関心を持っておられるところでは、年額として一万円内外が出ているところがあるようでありますけれども実情としては、年額として二千円、三千円というようなところが非常にたくさんあるわけです。皆さんの方では、最近は地方交付税の中へ大体七千円見当でそれを入れておられるというようなお話を聞いておるのですが、現実にはそういうものは渡っていなくて、二千円、三千円です。そしてまず小学校児童が入るための身体検査に何日か出て、その次には四月に行われる定期の身体検査に出て、それから今度はツベルクリンを調べるのに出て、それからさらに、今度はBCGの接種のために出、あるいは何らかの予防注射をやるといえばすぐかり出される。年間では大へんな日数を、学校医師は学校保健のために、これはほんとうに無償で働いているわけです。しかし私は、少くとも現在こういう状態の中でこういう法律が定められたら、当然それに見合う報酬などということは、さっき申し上げたように貧しい人たちの教育の問題もありますので、これをすぐに、われわれがほんとうに正当だと思う額まで考えるわけではございませんけれども、少くとももう少し——あまりむちゃくちゃな、名誉料にしてもひどいような状態で放置されている学校保健医、歯科保健医、そういう人たちに対して、私は法制上の問題として何らかの手当を支給する形をとりたい。そういうことで皆さんの方に御予定がないならば、こちらの方で準備して何とかしたいと考えておりますが、これに対する大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
  179. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 私から申し上げるのも、もう釈迦に説法だと思いますが、ただいま御指摘のございました点は非常によくない点で、この間も実は代表者の方にもお目にかかりましたが、私は急速に正当な報酬を払うように改めて参りたいと考えております。本来的に申しまして、だんだん医療保障の方面も進んで参りまして、治療から予防へというような大勢でございますし、子供の病気にいたしましても、伝染病等はむしろ平素の予防というものが主体であって、なったときには問題は非常につまらないことになる。一般的に申しまして、成人病などにしても平素の健康管理というものが大事で、いよいよ治療というときには、大体死ぬときだというようなことになりつつあります。総体的に見まして、健康管理に関する仕事は、社会奉仕だというような考え方があるが、それは非常に古い医療組織に対する考え方だと思っております。ただ現実の問題といたしまして、これをただで押しつけるというような形が一般化しておりますので、一ぺんに直すのはなかなか骨だと思いますし、かりに文部省大蔵省との間に話をつけてみましても、自治体がどの程度乗ってくるかというようなことで、非常に困難があると思います。私は皆さん方の御助力を得て、なるべく早目に手を回して、今のような状態の是正をはかって参りたいと考えております。  それから、ついでに申し上げておきますが、先ほどお話のございました学校保健と生活保護の関係でございます。先ほど厚生省の方からお話のありましたように、優先的には一応学童については学校保健が優先いたしますが、あれはやはり学校の管理下における学童の疾病、障害というようなことからいって、おのずから手術とかその他については制限がございますので、あるところまでいきますと、普通の推移をたどっておっても、生活保護の医療扶助に切りかえなければならぬ場合があるわけであります。その間の移り変りの際に、御承知の通り社会福祉事務所の方へ仕事が移るというような関係等もございまして、ほっておいてうまくいくかどうか心配の点がありますので、御注意のあった点に従って、具体的な手続でこの学校保健の方と生活保護の方とがうまくつながるように、厚生省との間に事務当局で協定をさせたいと思っております。
  180. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣のお考えは大へんけっこうだと思いますので、一つそのようにお考え願いたいと思います。  基本的な問題でもう二つばかりやらせていただきたいと思いますが、その一つは、当面非常に問題になっております入学試験の問題であります。実は現在の日本の教育というものが、入学試験のために私は非常にゆがめられてきつつある、こういうふうに感じておるわけであります。皆さんの方の資料を拝見しますと、中学校から高等学校への進学者は五三・七%、これが中学から高等学校への進学者ということになっている。約半分の者が進学するということは、イコール半分のものはそのまま社会に出るということであります。その次に今度は高等学校から大学へ進学する人の状態は一六・五%が進学で、五六・九%が就職だ、だいぶ間の残っているのはどういうことか、ちょっとこの資料だけではわからないわけでございますが、しかし少くともここでも進学者というものは一六・五%だということになっております。しかしそういうふうに中学校から高等学校へは半分、高等学校から大学へは一六・五%、こういう人たちがあるために、いわゆる普通教育というものがどうしてもゆがめられる傾向が起きつつあるのではないか、そのもとはやはり大学の受験という問題に関連してくると私は思うのです。そこでこの中でちょっと関連があることで気がつきましたのは、国立の中学校は九七・九%進学をするということになるわけです。それから私立の中学校は九六・八%、私立の中学校というのは今は大体高等学校なり大学へ入れるためにある学校ですから、ここで進学者が九六・八%は問題がない。ところが国立の中学校というのは、これは教育大学に付属をしておる中学校だと私は考えるのです。国立大学には教育学部といいますか、そういうところに付属をしておる中学校の生徒の九七・九%は進学者なんだ。そうするとこの中学校は何のために置かれておるかというと、そこの教員を養成するための一つの練習機関といいますか、また訓練機関として置かれておる小学校中学校、その中の九十何%というものはみな進学をする連中ばかりで、そういう少くとも選ばれた児童を相手に教育大学ではここで教員の訓練なりそれからスタイルなりが訓練をされる。そうして一般に出てきたら今度は五〇%が進学、五〇%は社会に出るということ、おまけにそういう選ばれた者でなくて、加藤先生もおっしゃった非常におくれた人たちがたくさんおる教育現場へ行ってやるということになる、こういう実情が、この関連で私がちょっと資料を見て出てきたのです。これでは教育大学に何のために付属中学が置かれているかという観点からして、要するに義務教育一つの普通教育としてのあり方という問題から見ると、私は非常におかしな状態じゃないかと思う。少くとも国立大学の教育学部にある付属中学も、これは半分は就職をするような人たちが入り、あとの半分は進学をするような人たちが入る、少くともそれは一般にある公立小中学校のモデルであるようなところで訓練をするのでなければ、教育大学としての使命、置かれておる問題について矛盾が生じるのではないか。ところが実際に見ておると、私のところの兵庫県の教育大学の付属中学校では入学試験がある。そうして私の子供を一ぺん受けさせようと思って話を聞くと、とても成績のいい者ばかりでなかなかむずかしいです、こういう話なんです。だから私はそうか、それはだめだからやめようということだったのですが、入学試験をやって粒よりのいい者を上からよって、それを入れて、そうしてこれを土台にしていろいろと教育課程の練習をした先生が出てくる。こういう実情を見るとはなはだおかしいのではないか。これは今の大学の入学試験等に関連するのですが、大学の入学試験のために現在は三年浪人しておる者、四年浪人しておる者、二年、一年と浪人が主体で、東大なんというのはなかなかいきなりじゃ入れないというような話を聞いておるわけです。予備校の入学試験すらもなかなかむずかしいのだというような実情になっておる。これについて何とかしなければ日本の教育というものはどうしてもゆがんでくる。こういうふうに私は強く感じておるわけです。ということは、試験勉強を四年もやっておる人間などというものは、試験勉強のためにはなるほどエキスパートになるかもしれないけれども人間として果して役に立つ人間になるかどうかということについて私は大きな疑問があると思う。そこでこれは私の一つの私案なんですが、ともかくも大学に入る人たちのためには、やはりある程度の能力というものは幅をきめなければならない。これは私は当然だと思う。そこでたくさんの志願者のある中でやはり幾らかの幅をきめなければならないけれども、それは少くとも皆さんが教育の立場から考えて、大学に入学するに必要な能力という判断の上に立つべきであって、上から順番をつけて何人取るという考え方は、どうも教育のあり方として、特に国の教育のあり方としてはちょっと問題がある点ではないかと思うのです。たとえば東大を例にとれば、東大で千人の生徒を取る。そこへ一万人の受験者が来た。この二万人の受験者を一応試験をして、少くとも高等学校の課程を十分に終了しておる能力があって、大学教育を受けるに足る人が五千人あったとする。そこで千人しか取れないのだというときには、五千人の中で抽せんにでもしてあげればいいのではないか。大へん極端な例になりますけれども、やはり公平を期するという意味で、その中では抽せんをするということになって、おまけに浪人何年以上の人というものは何%しかその抽せんに入る可能性はないのだというような考え方か何かがとられて、ほんとうにある時点々々における教育というものを十分にやりさえすれば、必要以上に入学試験のために何年も勉強をやることが教育の本義でないのではないか、こういうふうに率直に感じるわけであります。そこで現在の試験というものが一般の親にとっては大へん大きな問題で、中学校高等学校、大学とみなが頭痛はち巻でやっておるわけでありますけれども、しかし教育という問題がこういう試験というもののためにゆがめられておる事実というものは——これは小学校中学校、公立のところで補習教育をやって上へ入れようとするところがたくさんあったり、学校の中で補習をしたらいけないと言ったら、学校の前の何かの施設を借りて学校の先生がそこへ行ってやっていたりというようなことは、少くとも教育基本法に書かれておる趣旨や憲法に書かれておる教育の趣旨とは非常に反するものではないか、こういうふうに思うわけです。  そこで大へん長く質問しましたのであれですが、まず第一点の国立中学校の問題を一つ初等中等局長に伺って、大学受験の問題を大学局長の方に一つ伺いたいと思います。
  181. 緒方信一

    ○緒方政府委員 入学試験の問題に関連いたしまして、教員養成の付属学校の問題についての御質問でございます。御指摘のように付属小、中学校でございますが、これは教員養成のための教育実習を主たる目的として設置されておるわけであります。それ自体の教育の目的もございますけれども教育実習ということを主たる目的といたしておるわけでございますので、その目的に沿うような運営をやっていくということは必要だと思います。  現在ただいまお話のように国立の付属中学校の卒業生の九〇何%でありましたか、これだけの進学率ということは、私はまだ正確な数は存じなかったわけでございますけれども、現在の運営の実態といたしまして、先ほどお話のようにある程度の試験をして入れるということがあるように存じます。しかしやはり教育実習をいたします上におきまして、これはまだ学生でありますから、ある程度質をそろえないと、教育実習もなかなかむずかしいという点がございますので、その選ぶ方法は学校によりましていろいろあるようでありまして、考査でやる場合もありますし、考査をしたその基礎の上に抽せんでやるというふうな方法もとっておるようでございます。これは学校によりましていろいろ工夫をしております。しかしいずれにいたしましても、今申しますように実習をいたしますためにある程度質をそろえたい、こういう配慮が学校当局にあるように存じておる次第であります。  ただお話のように質のいいものばかりではほんとうの実習にならぬじゃないかという点もございますので、あるいは公立学校教育実習を委託してその付属学校だけでなしに——これは付属学校の規模の問題もありますが、公立学校に委託して公立学校に出向いて教育実習をする、こういうこともいたしてそのための補習をしておるという実態であります。何といいましても今申しますようにある程度質のいい者を入れる。それから教育実習でございますけれども、実習をいたしますためには、その教官というものはやはり指導の力のある者でなければなりませんので、教官の質もある程度ほかの者に比べてよろしい、こういうことになると思いますが、そういう教育環境の中で教育を受けます中学校の卒業生が進学の率がいいということは、またその結果として生まれてくるかと存ずる次第であります。そういうふうな実態でございまして運営は今申すようなことであります。  それから大学の入学試験についてということでありますので、私から一応お答え申し上げますが、これは非常にむずかしい問題でございます。入学試験の方法だけではなかなか解決できないかと存じます。これはやはり結局は就職に結びつく問題にも相なりますので、就職受け入れ側の産業界そのほか社会全体の考え方の問題にも関連してくるかと存じております。最近の傾向といたしまして、これは新聞にもございましたが、国立大学について申し上げますと、昨年ごろからそういう傾向になってきておりますが、中央のいわゆる有名大学に集中する率が、これは徐々にではございますけれども若干減少いたしまして、地方大学に分散する傾向は出ております。これはやはり高等学校の進学指導ということもございますし、それから地方大学を充実していくということをわれわれとしても努力いたしておるわけでありまして、地方大学で地方出身の子弟が安心して勉学して、そこを卒業し、さらに就職をする、こういうふうに安定した状態ができれば、むずかしい学校に集中して非常に激烈な試験が行われるということは若干緩和を見るのじゃないか、こういうふうに思うわけでありまして、文部省といたしましては従来から、地方大学にその地方に属する特色を持たせるような方向に整備をしていくという努力をいたしておるような次第であります。これはいろいろと学校制度の問題も確かにあると思います。たとえばただいま学校教育法の一部改正を御審議願っておるのでございますけれども、今大学と申しますとただ一種類の大学でございますが、やはり段階をつけた高等教育機関というものも必要じゃないか。そうして選ぶ側もあるいは採用する側も、大学出というものと、あるいははなはだ恐縮でございますが、専科大学出、こういうものと二段階の卒業生が出てくるということになりますと、やはりそういう観点から能力あるいは経済的な条件等に応じまして、自分に適当な大学あるいは専科大学に進むということになりまして、有名な大学に集中するという点も、入学試験の緩和もできるのではないかと考えております。なおその下の小中学校等の制度の問題もあるかと存じます。たとえば外国の例を見ますと、ずっと初めの段階で相当ひどくふるわれてきて、最後に大学に入るというようなシステムがとられておりますので、大学自体におきましてはそう激烈な入学試験というものは見られないわけでございますけれども、その下の段階で事実上はふるわれている、非常に進学の能力のある者だけが上の方までいけるという制度に、そもそも初めから組み立てられているところもあるようであります。今の日本の学校教育制度では、どうしても上の方に集中していくということがやむを得ない状態になっております。要するにいろいろございましょうけれども、非常にむずかしい問題でございまして、今御提案になりました試案は、私ども今すぐここでちょっと何とも申し上げかねる次第であります。
  182. 堀昌雄

    ○堀委員 総括的な問題でもう一つだけ伺ってきょうは終りにして、次に具体的な問題をやらしていただきたいのですが、実は橋本文部大臣はこの間まで厚生大臣をしておられたときに、私は大学病院の問題で実は御質問をしたわけです。ここで本年度の大学病院の予算のところを見せていただきますと、大学付属病院の管理に必要な費用と、それから患者の診療に必要な費用というのを両方足しますと、約八十億七千万円費用が要ることになります。ところがその下に文部省所管の歳入見積りは六十六億一千二百万円、これだけ見ますと大学病院というところは少くとも年間に十四億七千万円赤字が出ておる、こういうことになると思うのですが、これはもちろん会計上別個の問題になっておると思いますが、人件費が入っていないのですね。大学教授その他が実は学校職員として給与をもらっておるのであって、決して大学病院の管理費の中には大学教授の俸給は入っていない。その他文部教官と称される諸君の費用は全部別個のワクで見ていて、これはいわばその中心をなす医者の人件費なしで見て十四億七千万円ほど赤字になったように私は思うのですが、その点はそのように理解していいでしょうか。
  183. 緒方信一

    ○緒方政府委員 ただいまの御質問でございますが、人件費の点は医学部の基礎、臨床を含めまして、講座に属する教官の経費は入っていないという意味でございまして、診療に従事する者の経費は人件費も入っておるわけでございます。そういうふうに御理解いただきたいと思います。
  184. 堀昌雄

    ○堀委員 大学では現在文部教官と名前がついている人と、それでなくて給与が出ている人があると思うのです。文部教官と名前がついている人は、少くともこのワクの中にはないと思うのですが、そこはどうでしょうか。
  185. 緒方信一

    ○緒方政府委員 診療に従事いたします者の中に文部教官もございます。講師、助手、こういう者は文部教官でございますが、これは診療の方に属しております。
  186. 堀昌雄

    ○堀委員 それはわかりました。そうするとそれは除いたとして、やはり年間十四億七千万円の赤字になっておるということは認められるわけですね。この予算面から見たらそうなんですよ。
  187. 天城勲

    ○天城政府委員 大学の病院の経費と収入の組み方でございますけれども、大学の病院の経費の中で診療関係と病院の学術研究という分野がございまして、学術研究を簡単に申しますと学用患者とか、それから大学の病院の講師、助教授に対する研究費がございますが、これは収入自体とは関係がございませんが、全然国費で出したという考え方をとっております。それから厚生省の国立病院と違って特別会計でございませんものですから、必ずしも両方の関連が何パーセントかははっきりしておりません。
  188. 堀昌雄

    ○堀委員 私も学術研究に必要な費用として二億八千五百万円か何かを計上しておられる点はワクの外と見ておる。しかし少くともこの予算から見ますと、大学付属病院の管理に必要な経費として出されておるものと、それから患者の診療に必要な経費として出されておるものが八十億七千万円かかることになっている。そしてその下にあなたの方はちゃんとなお、病院収入として文部省主管歳入見積り六十六億一千二百万円を予定しておるとはっきり書かれておるところを見ると、ほかに収入があろうはずがないわけですし、あなたの方でここに支出を予算化しておられる以上、計算上十四億七千万円ほどの赤字になるということは間違いないと思うのです。
  189. 天城勲

    ○天城政府委員 今御説明のように数字を並べてみますと収支の数字が違うのですから、赤字ということになるかもしれませんが、先ほど申しましたように、特別会計でございませんものですから、ちょっと赤字という言葉があてはまるかどうかしりませんが、おっしゃる通り収入は六十六億でありますから赤ということになります。
  190. 堀昌雄

    ○堀委員 そこでこれは文部省の方から対厚生省の問題として考えていただきたいことにもなるわけですが、一体大学病院というものは何のためにあるかというところから伺っていかないとこの問題はちょっとむずかしいと思うので、大学病院というものは何のために置かれておるかということをちょっと最初にお聞かせ願いたい。
  191. 緒方信一

    ○緒方政府委員 大学は医学の研究それから教育実施いたしております、そのための付属施設といたしまして病院を作って、その研究、教育のための機関としてあるわけでございます。
  192. 堀昌雄

    ○堀委員 要するに大学病院というものははっきり医学研究、教育のためにあるということであって、これは診療のための機関ではないということで一つ見解を統一していただけるものかどうか、ここは非常に重要な問題にあとで発展すると思うのです。
  193. 緒方信一

    ○緒方政府委員 大学は研究と教育の使命を持っておりますから、その医学の研究と教育のためにその付属機関を持っているわけでございますけれども、あわせて実態といたしまして診療も行なっておる。診療を行なって、そのことを通じて教育、研究に資しておる、こういうことでございます。
  194. 堀昌雄

    ○堀委員 私もそう思うのです。大学付属病院の目的は少くとも日本の大学の研究と教育のために置かれておるということが第一前提である。たまたまそれを行うために、従たる問題として診療を行なっておる。決して診療をするための病院であるわけではないのであって、主体はあくまでも教育、研究のためにあるということは私は当然のことだと思うのです。そこで教育、研究のためにあるということになると、ほんとうに教育、研究のために使われておる費用は二億八千五万円が皆さんの方では学術研究に必要な費用、臨床医学研究並びに学生の教育実施を行うために必要な経費である、こういうふうな格好であって、教官研究費のほか学用患者として云々、こういうふうに出されておる。そこで今おっしゃった一番主要な目的であるところの教育、研究のための費用というものは文部省は別途に考慮されておる。そうしてそれ以外に六十六億一千二百万円というものが病院収入という格好でここにある。これは実は私はこの前に橋本さんが厚生大臣のときに伺ったわけですが、大体日本の今の医療の状態というものは皆保険の方向へどんどんと進みつつある。ある時限においては日本では皆保険になってしまう。ところがその保険診療というものはある一つの経済立法に甚いてこれこれの治療しかしちゃいけない、こういうことはしていけない、あれはしていけないという規制がある。少くともある一つの学問的な前提に立って、これがもう一般的に、普遍的に行えるようになったものでなければ便ってはならないということが大体保険診療の基準として書かれておる。そこで大学病院というものは診療のためにあるではなくて、教育と研究のためにあるのであるから、少くとも大学においてはそういうふうな覊絆をはずしものを考えていくべきではないか、こういうふうに考えたわけであります。そうしてそのことを申し上げたところが、当時の厚生大臣であった橋本さんは、それは文部省が勝手に考えればいいことであって、厚生省はそれはもうそういうふうには考えておりません。文部省が別個に予算を組んで、学術教育研究のためのものをやられればいいのであって、保険とは別個なものである、こういうふうなお話があったわけです。しかし、私はそのときに——実はこれは厚生大臣と並べてやらないと意味はないのですが、厚生大臣の坂田君は残念ながら文教畑で、今そうぎゅうぎゅう言うのは遠慮して、きょうは橋本さん一人で、厚生大臣であったというところで伺いたいのですが、やはり文部省の立場としては、そういうふうな保険診療という形で少くとも教育及び研究のためにならないような治療しか認めないようなものは大学からやめてもらって、少くとも大学というものは、ほんとうの日本の医学技術の進歩のために必要な治療をやるところにしてもらう。そうしてそれと保険診療との差額が出たものについては、これは文部省考えるなり、厚生省が考えるなり、そういう格好を考える。国民の側の立場としては保険診療を受けられる立場にすべきであっても、大学の立場としては保険診療のワクなどということで医学の進歩に役に立たないような診療のために大学病院を置いて十三億四千万円の赤字まで国が見る必要はないのではないか。私はこういうふうに思うのですが、橋本文部大臣、いかがでしょうか。
  195. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 実は私お話もございましたし、それからまた医学部長会議の方からの要望もございましたので、一体どういうふうにやったらいいのか、厚生省で話をするには、やはり具体案がなければ困るというような話をしておきましたところが、たまたま昨日日本医学会の医学教育会議というので一案作ったから見てくれということでありまして、私、参って案をちょうだいして参りました。そのほか、先に申し上げますが、いろいろ問題があると思いますが、その案を大学学術局長に渡しまして、これで厚生省と相談をするようにといって今明示してあるところでございます。大学学術局の方ではあまり知識もないと思いますので、大学のだれか教授か助教授の人で、保険経済の関係のわかる人を大学学術局長の代理みたような形で厚生省と相談をさせたいと思っておるのです。で、お話のございましたように、いい悪いは別として、もう保険の患者しか来ないわけですから、どうしても大学が学術教育という面からいいましても、保険の患者相手に治療をやり、検査をやって、研究また教育の面をやらざるを得ないわけです。そういう面からきますと、保険経済のワクからはずれたような治療をやるということもございますので、やはり適当の条件のもとに所要の治療をやったら、ワクにはずれても、むやみに全額否認するというようなことをしないでいくという点が一点でございます。しかし結局おのずから治療指針のワク外の仕事をやりますから、料金といってもはっきりしないようなものも出てきますので、ある程度差額を本人から徴収しなければならないという場合が出てくるようでありまして、正確に記憶しておりませんけれども、そういうふうな場合には、何といいますか、大部分の面は保険経済で規格の診療の料金をとるけれども、差額の分について本人から追加をするとかいう部分が出て参るようであります。それから全く新しいものについては、たしか大学の研究費で見るといったような何か三段階かに分けて保険の適用とからみ合せる問題もございますので、これはやはり実情に即して何か具体的な解決をしたいと思います。やりまするとすればやはり新年度からがいいと思いますので、来月半ばくらいまでにできるだけ厚生省の方と話をしてみまして、できれば四月一日からそういう方向へいけるようにしていきたいと考えております。ただこれはお話がございましてからあとで厚生省の部内でも相談をしてみたのでありますが、やはり片面なかなかやかましい問題がございまして、どこと申しませんけれども、大きな病院が最近はたくさんありまして、お医者さんもほとんど大学の教授、助教授、講師といったような人ばかりがやっているようなところがありまして、大学病院だけそういうことをやるのは不当なんで、大学病院はあんまり勉強していない、うちの病院の方が勉強をしているといったようなことで、やるならもっと広く均霑させろとかなんとかいうような問題があるわけであります。これはやはりどこかでけじめをつけないと困るので、事実研究はしておられるし、インターンの人もおるかもしれないけれども、今お話がございましたように、本来的な使命として教育、研究というために設けられているところというふうに限定をいたしまして、きのうもらいました一案に従って厚生省の方と話をしてみたいと思っております。やはりどこかでまとめていく必要があると考えております。
  196. 堀昌雄

    ○堀委員 そういうことでお考えを願えれば大へんけっこうなんですが、もう一つさっき申し上げた人件費の主たる部分がほかの方の費用で出ていてすら、大学病院全体としては十三億四千万円もの赤字が出ておるということと、大学病院はおそらく全国的に、病床をあけて患者が来ないから困っているというところはない。国立病院は、病床は満床、外来患者はこなし得る限度をこなしておる。みな非常に忙しく働いておって、そうして主たる医者の人件費がほかから出ておっても、なおかつ十三億四千万円の赤字があるということは、健康保険の今の単価の問題が大きな原因になっておる。今も文部大臣がおっしゃったように、実際には大都市における大学病院に来る患者の大多数は保険患者であるということを見れば、やはりここに健康保険の単価というものの矛盾がはっきりある。この間いろいろとおあげになったけれども、国のこういう施設において、医者をほとんどただで使っておるというような状態ですらこんなに赤字が出ておるということはこれは皆さん方にお話するのじゃないのですが、少くとも大学病院の管理運営という面から見ても、文部省は厚生省に対して適正なる単価を要求される必要があるのじゃないか、私はそういうふうに思うわけです。国の内部の機関でありますから……。  それが一つと、もう一つは、過去における学位制度が変更をされて——昔は御存じのように学位制度がありまして、そこで、皆が学位をもらいたいために無給で、もう各大学の教室には医者が一ぱいいたわけです。私もそういう無給の医者でいたわけですが、ただで一生懸命やっていて、それで実はこれだけ赤字だ。ところが残念ながら——残念ながらというとおかしいのですが、最近は大学院制度に変ったために、ただ残っていたら学位がもらえるという状態でないために、最近の卒業生はあまり大学病院に残らなくなってきたという格好です。そうすると、実はそういうたくさんの医師で運営をするために、病床数も多く、入院患者、外来患者をたくさん扱っておるところが、今度は教官の待遇の扱いを受けている者だけでこれを処理しなければならぬという現実の問題が起きている。各地の大学病院では定員が非常に窮屈なために、医師は、教育に追われるどころか、診療にも追い使われて、教育へのエネルギーなどはすり減しておるというのが、今の大学病院における臨床の実態なんです。そこでそういう学位制度の変更、大学院制度との関連で、現在そういう状態にきておる大学病院の医師の定員の問題、あるいは教官の定員の問題といいますか、そういう問題について何らかの配慮をしておられるかどうか、これを一つ伺いしたいと思います。
  197. 緒方信一

    ○緒方政府委員 第一点の問題につきましては、先ほど大臣からお話がございましたように、厚生省に対しまして今極力折衝をいたしておりますし、これからも、大学病院の診療の特殊性につきまして、さらに努力をいたしたいと思っております。  第二点の問題でございますが、これは学位制度の変更というお話でございますけれども、学位制度につきましては、今日におきましても、大学院を出て、そうして試験を受け、論文を提出して学位を取る方法と、もう一つ、論文博士の学位取得の方法も新しい制度にあるわけでありまして、その方面はさほど変更があったとは言えないと存じますが、しかしこれも社会保険制度の関係におきまして、診療に従事します者は保険医師の身分をちゃんと持っていなければならぬという関係もございまして、その面で今いろいろと工夫をいたしておるような次第でございます。実情といたしましては、学位を取りますためには、大学院を出て、なおその教室におって診療に従事して、また指導を受けて学位を取る、こういう実態はあるわけでございますが、しかし社会保険制度との関係におきまして、いわゆる昔の無給副手の身分をちゃんと確立するという方法をとらなければならぬかということで、ただいま研究をいたしております。
  198. 堀昌雄

    ○堀委員 実はまだだいぶあるのですが、時間も五時を過ぎましたので、本日はこれだけで終りたいと思いますが、最後に大臣一つ、今の局長さんからは返事がなかった単価が不合理であるという問題を——これはもう数の上で出ていることですから、私は現在の単価が正当な状態で運営されれば必ずこういうことになるんだというふうに理解しておるのですが、大臣はこれについてどういうようにお考えになっておるか。私は不当に低いと思う。だから国立大学の病院で十三億四千万円の赤字が出ておる。少くとも医師の人件費を別途にしている国立大学の病院で十三億四千万円の赤字が出ておるのは、現在の社会保険の診療単価が低いからだということは、文部大臣の立場としてはおっしゃれるんじゃないかと思いますが、それを一つ
  199. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 文部大臣の立場は当りさわりがありますが、私はいささかそれに関する学識経験者の範疇に入ると思いますので、その辺でごかんべんを願いたいと思いますが、単価の問題は一応去年ああいうふうにいたしましたけれども、もちろん甲乙二表の問題を、同一診療行為は一つの評価にするように改正することが必要でありますと同時に、私はもう率直に申しまして単価は安過ぎると思います。この問題につきましては、ただどうも、やはり労働組合にいたしましてもあるいはまた企業家の団体にいたしましても、医者を使う方の側が、両方ほとんど共同戦線で、安ければいいんだというような形で医者を目のかたきにしておりますし、医者にも悪い点はありますけれども、私は単価をむやみに低くしているのはばかげた話で、単価を上げて点数かせぎをできるだけ少くして、医者も楽をしながら、患者も楽をしながら、結局総体の医療費は同じだという行き方があるはずだと思います。今回医療制度調査会の案が出ておりますが、あれで、将来の本格的な診療報酬のあり方を継続的に審査する機構を、皆さん方に十分お考えいただいて、将来末長く、これは五十年でも百年でも——周期的に出てくる問題でありますから、その制度をお考えいただきますと同時に、その前に、当面の問題につきましては、甲乙二表の統合と関連をいたしまして、できるならば総医療費をあまり動かさないワクの中で、単価はもう少し上げる方が普通なんじゃないかということを、私は私見として持っております。ただ単価を上げたなりで、相変らず点数かせぎばかり行われるような状態じゃ、医療費もふえるし、医者もくたびれるし、ばかげた話じゃないかということになると思います。私は先年調べました医療費の調査でも、ほとんど今日の状態では医者の診療行為も筋肉労働みたいになって、たしか全国で一番のもうけがしらが、学校を出て二、三年たった二十九才の医者であったというのですが、これは非常にばかげたことでありまして、そういう点についてなぜもう少し医者を使う方の側で考えてくれないかと思っておりますが、医者もあんまりがちゃがちゃせずに、少し落ちついて相談に乗ってくれる必要があると思うのです。これはもう全く文部大臣でもない前厚生大臣でもない、やや学識経験ある一衆議院議員の参考意見ぐらいにお聞きを願いたいと思います。
  200. 堀昌雄

    ○堀委員 あとまだ実は私少し具体的なことがあるのですが、きょうはおそくなりましたから、次回にやらせていただくことにいたしまして、本日はこれで終ります。
  201. 臼井莊一

    臼井委員長 本日はこの程度とし、次会は明後二十日午前十時より理事会、十時十分より委員会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時十一分散会