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1959-03-20 第31回国会 衆議院 農林水産委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月二十日(金曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長代理 理事 吉川 久衛君    理事 大野 市郎君 理事 本名  武君    理事 赤路 友藏君       安倍晋太郎君    秋山 利恭君       五十嵐吉藏君    今井  耕君       大森 玉木君    倉成  正君       笹山茂太郎君    田口長治郎君       高石幸三郎君    綱島 正興君       永田 亮一君    永山 忠則君       橋本 正之君    濱地 文平君       松岡嘉兵衛君    三和 精一君       角屋堅次郎君    金丸 徳重君       神田 大作君    栗原 俊夫君       栗林 三郎君    實川 清之君       高田 富之君    中澤 茂一君  出席国務大臣         農 林 大 臣 三浦 一雄君  出席政府委員         農林政務次官  石坂  繁君         農林事務官         (農地局長)  伊東 正義君         農林事務官         (振興局長)  増田  盛君         農林事務官         (畜産局長)  安田善一郎君         農林事務官         (蚕糸局長)  大澤  融君  委員外出席者         議     員 栗原 俊夫君         農 林 技 官         (水産庁生産部         漁船課長)   稻村 桂吾君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 三月二十日  委員八木徹雄君、三和精一君及び松浦定義君辞  任につき、その補欠として橋本正之君、永山忠  則君及び栗原俊夫君が議長指名委員選任  された。 同日  委員永山忠則君、橋本正之君及び栗原俊夫君辞  任につき、その補欠として三和精一君、八木徹  雄君及び松浦定義君が議長指名委員選任  された。     ————————————— 三月二十日  繭糸価格安定法の一部を改正する法律案栗原  俊夫君外十六名提出衆法第五五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  漁船法の一部を改正する法律案起草に関する件  繭糸価格の安定に関する臨時措置法の一部を改  正する法律案内閣提出第九八号)  酪農振興法の一部を改正する法律案内閣提出  第一六九号)  繭糸価格安定法の一部を改正する法律案栗原  俊夫君外十六名提出衆法第五五号)  農林水産業振興に関する件(非補助小団地土  地改良事業問題)      ————◇—————
  2. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 これより会議を開きます。  漁船法の一部を改正する法律案起草の件について調査を進めます。  本件につきまして、田口委員より、各位のお手元に配付いたしておりますような草案提出されております。この際草案趣旨について提出者説明を求めます。田口長治郎君。     —————————————
  3. 田口長治郎

    田口委員 ただいま議題となりました漁船法の一部を改正する法律案起草について、起草理由及びその内容を簡単に御説明申し上げます。  漁船法規定により漁船はすべて登録義務を負っておるのでありますが、そもそも、この漁船登録制度は、連合軍司令部の指令に基いて制定された漁船登録規則内容をほとんどそのまま継承したものであって、当時の事情から、すべての漁船につき厳重な登録制がとられ、登録を受けなければ漁船として使用できないこととなっているのであります。  現在登録を受けている漁船は約四十万隻あり、これら漁船の中には、科学的な装備を有する数十トンの大型漁船がある反面、無動力漁船が約二十五万隻もあり、このうちには、櫓、かいのみをもって操業する一トンに満たないきわめて小型のものが約十九万隻も含まれている現状であります。これらの小型漁船を使用する漁業者はすべて沿岸の零細漁業者でありますので、法の命ずるところにより登録または三年ごとの検認を強制しますことは、それらの者の漁業に支障を与えますのみならず、今後なお登録制度を存続せしめておく実益もほとんどないと存ずる次第であります。従いまして、この際無動力漁船のうち、総トン数一トン未満の漁船に限っては登録義務を課さないことといたしたのであります。  何とぞ委員長におかれてはこの案を委員会成案としてお取り上げ下さいますようお願いする次第でございます。
  4. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 ただいまの草案について発言があればこれを許します。  なければ、お諮りいたします。漁船法の一部を改正する法律案草案を本委員会成案と決定し、これを委員会提出法律案とするに賛成諸君の御起立を求めます。     〔総員起立
  5. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 起立総員。よって、そのように決しました。     —————————————
  6. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 酪農振興法の一部を改正する法律案議題といたし、審査を進めます。  本案は前会においてすでに質疑を終了しております。本案に対し、中澤茂一君より、自由民主党並びに日本社会党共同提案にかかる修正案提出されております。修正案内容各位のお手元に配付いたしておる通りであります。まず修正案趣旨について提出者説明を求めます。中澤茂一君。
  7. 中澤茂一

    中澤委員 自由民主党日本社会党共同提案による修正案を朗読いたします。   酪農振興法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。   新第二十条中「場合において、生乳等取引の公正を確保するため必要があると認めるときは、」を「場合には、」に改める。   新第二十四条第一項中「紛争と同種の紛争が他の都道府県においても発生しており、又は発生するおそれがあり、これらの紛争のなりゆきによっては広範な地方にわたり生乳等取引関係に重大な悪影響を及ぼすおそれがあると認めるときは、」を「紛争のなりゆきによっては二以上の都道府県にわたり生乳等取引関係悪影響を及ぼすおそれがあるときは、」に改める。  以上提案いたします。
  8. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 修正案について質疑はありませんか。  なければ、修正案及び原案を一括して討論に付しますが、討論通告もございませんので、直ちに採決いたします。  まず修正案について採決いたします。本修正案賛成諸君の御起立を求めます。     〔総員起立
  9. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 起立総員。よって、修正案は可決いたしました。  次に、修正部分を除く原案賛成諸君の御起立を求めます。     〔総員起立
  10. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。  ただいま修正議決いたしました酪農振興法の一部を改正する法律案に対し、大野市郎君より、自由民主党並びに日本社会党共同提案にかかる附帯決議を付したいとの申し出があります。この際発言を許します。大野市郎君。
  11. 大野市郎

    大野(市)委員 自由民主党並びに日本社会党共同提案で、ただいま議決をいただきました酪農振興法の一部を改正する法律案に対しまして附帯決議をいたしたいと存じます。  その案文を朗読いたします。     酪農振興法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、本法改正趣旨に即応し、その運用の全きを期するため、左記各項実現努むべきである。      記  一、有畜農家創設特別措置法に基く乳牛導入制度融資条件を早急に改善すること。  二、牛乳乳製品製造設備の新増設又は設備転換に必要な長期低利資金農林漁業金融公庫開発銀行等から貸付けることができる途を拓くこと。  三、牛乳乳製品生産費市況等に対する調査の徹底を期し、基礎資料の整備に全力を傾注すること。  四、乳製品緊急保管を行うに当つては、生産者乳価の安定を図ることを本旨として措置するとともに、更に進んでは、別途に牛乳乳製品価格安定機構の確立を検討すること。  右決議する。   昭和三十四年三月二十日      衆議院農林水産委員会  以上の趣旨につきましては、すでに本法審議の過程における質疑応答におきまして解明せられておることでありますので、重ねて説明いたすことを省略いたします。
  12. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 ただいまの附帯決議について中澤茂一君より発言を求められております。この際これを許します。中澤茂一
  13. 中澤茂一

    中澤委員 本法附帯決議について両党の一致を見なかった点について、若干政府当局の責任ある御言明を願っておきたいと思います。  第一点は附則修正についてでありますが、この附則において   附則に次の二項を加える。  5 経済基盤強化のための資金及び特別の法人の基金に関する法律昭和三十三年法律第百六十九号)の一部を次のように改正する。    第十一条第一項第一号を次のように改める。    一 農林漁業金融公庫にあつては、次に掲げる事業であって国の直接又は間接の補助対象とならないものに対して同公庫が行う貸付に係る利子の軽減に充てる財源をその運用によって得るための非補助小団地等土地改良事業等助成基金     イ 農地改良又は造成に係る事業     ロ 酪農振興法昭和二十九年法律第百八十二号)第十八条第七項の規定により公示した酪農経営改善計画に基き農業協同組合又は農業協同組合連合会が行う草地改良事業    第十一条第二項、第十三条及び第十五条第一項第一号中「非補助小団地等土地改良事業助成基金」を「非補助小団地等土地改良事業等助成基金」に改める。  6 農林漁業金融公庫法昭和二十七年法律第三百五十五号)の一部を次のように改正する。    第四条第一項中「非補助小団地等土地改良事業助成基金」を「非補助小団地等土地改良事業等助成基金」に改める。  これがついに両党の一致を見なかった点でありますが、この点について、将来草地改良についての三分五厘に対しても政府は適用するということについて政府見解を一応お聞きしておきたいのであります。
  14. 三浦一雄

    三浦国務大臣 ただいまお尋ねのありました草地改良でございますが、趣旨としましては私たち賛成でございます。当局といたしましては、なるべく牧野並び草地改良は国家の助成のもとに推進いたしたいと考えておったのでございますが、これもなかなか思う通りにもなりません。しかし、一面におきましては、草地並び牧野を管理している面におきまして相当な資産を持っている向きもありますことは御了承の通りであります。従いまして、この方面にはむしろ低利資金を融通いたしまして改良に沿うことも適切であろうと思いますから、今後十分に考慮しまして、実現のできますように配慮いたしたいと思います。なお、実は、三十四年度の原資はほぼきまっておりますので、この点は後年度にいかざるを得ないと思いますが、これらも十分検討さして、一日も早く実現の運びに取り進みたい、かように考えております。
  15. 中澤茂一

    中澤委員 次に、昨年の紛争において実際全国各地に起った受乳拒否の問題でありますが、今回は一応調停機関が非常に強化されたから、そういう事態は起らないであろうという予想は立つのでありますが、万一調停期間中において乳業会社受乳拒否をした場合は、政府はどういう行政指導あるいは行政措置をとるか、この点を明確にしておいていただきたいと思います。
  16. 三浦一雄

    三浦国務大臣 受乳拒否の問題でございますが、これは、理論的に、仰せになります通りどうしても考えざるを得ないのであります。しかし、今度は態勢を改めまして、生産者もあるいは加工する者も一体となって酪農を守り、かつ発展させなければならぬという基底に立っているわけでございまして、かような不幸な事態は予想しておりませんけれども、かような事態がありました場合には、すでに畜産当局からもしさいに御説明を申し上げておったと思いますが、われわれといたしましては、さしあたり行政上の指導を強化しまして、さようなことの起らぬように、また、同時に、起きますような憂いがありましても、各般の力を尽して、受乳拒否事態が起きないよう、かりにそういう憂いがありました場合にも、行政上の指導を強力に推進して、両者調整をはかりつつ酪農振興をはかって参りたいと考えます。
  17. 中澤茂一

    中澤委員 次に、第二十五条の解釈問題でありますが、第二十五条は、昨年の紛争においても検査権発動ができなかったというところに問題があったのでありますが、これは、亀岡法制局部長見解も、この法律を施行するため必要があるときと、要するに施行上の検査権であって、一般の検査権はない、こういう法制局見解も去年明らかにされたわけでありますが、それについては、この第二十五条において、たとえば買い入れ機関のそういう条文がないので、この点は私は非常に危惧をしておるのでありますが、この第二十五条の検査権発動が今回のこの法律によって確実に可能であるという保証があるのかどうか、この点について大臣見解を承わっておきます。
  18. 三浦一雄

    三浦国務大臣 この点につきましても、従前の制限を撤回さしていただきまして、改正をさしていただいたわけであります。同時に、一体これをやるのかどうかという意欲の問題もあるわけでございますが、これは、当局におきましても、この前から申し上げた通り、いわば決心を新たにしてこの行政の円滑を期したい考えでありますが、同時に、若干ではございましたけれども予算の裏づけをしておりますから、法律上の制限もとり、同時にその裏づけする予算も計上しておりますから、御指摘になったことは円滑に今度は行使するものと考えております。
  19. 中澤茂一

    中澤委員 最後にいま一点明らかにしておいてもらいたいのは、昨日最後まで両党の調整がつかないので、この第四項目の附帯決議になったのでありますが、これはやはり、現在の酪農振興基金を強化するなり、いま一つの別な機関を設けるかして、価格調整による蚕繭事業団のような、買い上げオペレーション機関というものが将来必要になってくると考えますので、実は日本社会党としては第四項の決議をもっと強化した案を出したのでありますが、これは両党折衝の結果非常にやわらかい表現に変ったのでありますが、この第四項の附帯決議本旨はそこにあるのでございます。将来そういう何らかの価格調整オペレーション政府考える方向にいくべきであるとわれわれは考えるのでありますが、これについて大臣の御見解をただしておきたいのであります。
  20. 三浦一雄

    三浦国務大臣 今お尋ねになりました点でございますが、実は、過去の委員会におきましても、私まだ未熟な案ではある、こういう前提にして私の考えを申し上げたと記憶しております。と申しますのは、むしろこの基金等機構機能を拡大して、必要に応じては乳製品等買い入れ、保管する機能を持たせたい、こういうことも考えておったのでございます。しかし、今度この基金を拡大して酪農振興に寄与させるわけでございますが、一面におきましては、私たちは杞憂だと思いますけれども買い入れを急ぐの余り運営がつかないことになっても困る、そういうふうなことを言われまして、この機構の改革までには及ばなかったのであります。もう一つは、乳製品を買うところは今学校の給食会等でございますが、これは必ずしも適当でない。むしろ別途の機関でもって、われわれの考えとしましては、買い入れ基金等が買いまして、そうして合理的に地方の方にこれを配るという方が適切じゃないか。両面の機能を持たせたいと思ったのでございますが、そこまではまだいきません。従いまして、今の附帯決議の御趣旨もありまするし、当局としましても、これらの問題を十分に勘案しまして、そして今後対策の十全を期したい、かように考えておりますから、今後とも、この問題につきましては、委員各位一つ協力賜わらんことを、むしろこちらからもお願い申し上げます。
  21. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 お諮りいたします。本附帯決議を付するに賛成諸君の御起立を求めます。     〔総員起立
  22. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 起立総員。よって、附帯決議を付するに決しました。  ただいまの附帯決議に対し、政府所見を求めます。三浦農林大臣
  23. 三浦一雄

    三浦国務大臣 酪農振興の問題につきましては、昨年の夏以来格別農林委員各位におかせられましては御協力を賜わりまして、深甚なる謝意を表する次第であります。今回の酪農振興法は、今御指摘になりました通り、いろいろの問題がまだ未解決のことも残っておるのでございますが、これは取り急ぎわれわれは改善の方途を講ずると同時に、今回御協力によりまして改正されましたこの法制のもとに、同時にまた若干前進させました予算等運用につきましてもあわせて全力を尽して、酪農振興のために寄与したいと考えます。  なお、ただいま決議になりました附帯事項につきましては、これを尊重し、十分にこの成果を上げ得るように努力いたしたいと考えます。何とぞ御了承願います。
  24. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 なお、お諮りいたします。ただいま修正議決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  25. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。     —————————————
  26. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 次に、本日付託になりました、栗原俊夫君外十六名提出繭糸価格安定法の一部を改正する法律案議題とし、審査に入ります。  まず、本案趣旨について提出者説明を求めます。栗原俊夫君。     —————————————
  27. 栗原俊夫

    栗原委員 ただいま議題となりました繭糸価格安定法の一部を改正する法律案について、提案理由を簡単に説明申し上げます。  御承知通り繭糸価格安定法は、蚕糸業の安定をはかるために今日まで大きな役目を務めてきましたけれども、昨年、いろいろな蚕糸業界の混乱から、繭糸価格の安定に関する臨時措置法、こういう臨時措置法が行われまして、主として昨年来この臨時立法が務めを果しておるわけですが、しかし、何と申しましても、親法である繭糸価格安定法がそのバック・ボーンになっておるわけであります。とりわけ繭糸価格最低価格の問題について最も大きな任務が課せられておるときに、私たちはこれを軽々に見のがすわけに参りません。特に繭の最低価格の問題につきまして、従来は、政令にまかされてはおりましたけれども価格支持制度という建前に立って、繭の生産費のバルク・ライン八割五分をこえる範囲内において、こういう形で最低価格がきめられておったわけであります。ところが、本年初めに、標準生糸最低価格及び最低繭価の算定についての臨時特例に関する政令、こういうものが公布せられまして、従来の八割五分というものが、一挙に、六割をこえる範囲内において、こういう工合に大幅に引き下げられました。このことは、養蚕を営む立場に立つときには非常に重大な問題であり、やはり価格支持という立場を維持する限りにおいてはこういうことではならぬ、こういう立場に立って、私たちは本来ならば従来の八割五分を堅持する考え方でありますが、今回の国会において事業団法が成立する見込みであり、この作用によって約一〇%というものを一応期待する。こういう立場に立って、少くとも繭の最低価格というものは生産費の七割五分を下るものではならないということを繭糸価格安定法に明文化して入れて参ろう、なお八割五分を七割五分に下げるというその一割は、新たにできる事業団法作用によってこれを補っていこう、こういう考え方に立つわけであります。繭糸価格安定法がどこまでも生産費というものを基準に安定をはかろうという法律である以上、やはり、実勢というものは実勢として一応認めなければなりませんけれども生産費というものに十分基礎を持った建前に立ってこの法律を推し進めていくことが何としても必要であろう、こういう考え方が私たちのこの法案を提案した理由であります。  何とぞ慎重審議の上御賛成、御可決あらんことを心からお願い申し上げます。
  28. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 これにて本案趣旨説明は終了いたしました。     —————————————
  29. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 次に、内閣提出繭糸価格の安定に関する臨時措置法の一部を改正する法律案、及び、栗原俊夫君外十六名提出繭糸価格安定法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、審査を進めます。  質疑通告がありますので、順次これを許します。栗原俊夫君。
  30. 栗原俊夫

    栗原委員 これは政府案に対する質問でございます。  まず第一にお尋ねいたしたいのは、本年の蚕糸業をどのように見通しておるかということをお伺いいたしたいと存じます。
  31. 大澤融

    大澤(融)政府委員 本三十三生糸年度蚕糸業見通しはどうか、こういう御質問だったと思います。御承知のように、昨年六月臨時措置法によりまして十九万円、千四百円ということの実現を期待してやっておったわけでございますが、御承知のような事態で、ただいまもお話がありましたように、昨年の暮れから今年の初めにかけまして最低糸価最低繭価の引き下げをいたしたのであります。なぜこういうことをしたかということの御説明を申し上げますれば、要するに三十三生糸年度蚕糸業見通しというようなお答えになるかとも思います。  私どもが昨年の暮れに価格安定審議会に諮りまして最低価格を引き下げましたのは、十九万円あるいは千四百円というような、いわば需給事情とマッチしないような価格になる、これをきめました当時とは需給事情が全く変ってきたということが基礎になっておるわけでございます。そこで、私ども、この価格考えますときに、それじゃ一体どういう需給見通しかというお言葉でございますが、御承知のように、安定法生産費基準として価格を定めておるわけでございますが、従来のような生産費の八五%というようなものを基準にいたしました価格と、需給から、つまり売れるであろうというような値段考えた場合と、両者の間に非常な距離ができた。そこで、あのような、今おっしゃったような政令改正をいたしまして、需給事情にマッチした値段に引き直す、こういうことでございます。このとき考えましたのは、需給事情生産費基準にしたあの政令とがマッチした考え方で、この場合にとりました需給均衡価格と申しますか、どのくらいの価格水準で今後いくであろうかという見通しを立てましたのは、十六万円くらいの水準で今後いくであろう、こういう見通しを立てたわけであります。そこで、従来の考え方として安定帯の幅といたしまして四万円というようなことを考えておったわけですが、その下目の十四万円ということを考えたわけです。そこで、私どもは、昭和三十三生糸年度、もうあと二、三カ月でございますが、十六万円水準で十月、十二月ごろのべースで移っていくのではないか、こういう見通しを立てております。
  32. 栗原俊夫

    栗原委員 繭糸価格安定法があるのに、臨時措置法ということでまたいま一年を越していこう、こういうわけであります。しかし、やはりその背骨をなすものは、どこまでも繭糸価格安定法でなければならぬと思うのですが、ただいまの御説明によると、どうもこの繭糸価格安定法精神を置きかえておるように思う。価格安定法精神は、われわれが読むところによれば、生産費基準にして、生産費を償うといっても八割五分という形でやってきたわけですが、その生産費を償う価格で売り出す、これで買え、こういう高姿勢であったわけですが、今のお話によると、買ってくれる値段にこちらが値を寄せていく、いわば低姿勢に変る。価格安定法精神の大黒柱をまるきり立てかえるような感じがするのですけれども、この辺に対する所見はいかがでございましょう。
  33. 大澤融

    大澤(融)政府委員 今までの生産費と申しましても、これは今は養蚕農家につきまして調べましたものの総和平均というようなことで考えておるのですが、この生産費をどういうようにとるか、またどういう農家対象にして生産費をとるか、あるいはこのとった生産費を実際の価格をきめる場合にどのように適用していくかというようなことは、同じ生産費基準にすると申しましても、いろいろな考え方があると思うのです。そこで、今までのようなああいう調査方法でああいう八五%というような考え方で適用する方法も一つだと思うのでありますが、この方法を適用したのであっては、実際の需給と全くマッチしないで、この方法でやった十九万円、千四百円というようなことでは、糸がほんとうには売れないで政府の蔵の中に入ってしまう、そういうようなことでは、養蚕をするあるいは製糸をする意味というものは全く失われるわけです。そこで、この生産費基準考え需給とマッチした方法ということをとらざるを得ないわけです。従来のように糸価が高くて、両者が今までのような考え方でマッチしていればともかく、マッチしないようになったからには、先般政府がとりましたような考え方でやることが最も妥当な方法だ、こういうふうに考えております。
  34. 栗原俊夫

    栗原委員 最も端的にお尋ねしますと、今までは、生産費がこれだけかかるのだ、この値段でお気に召した者は糸を買って下さい、繭を買って下さい、最低価格がある限りこういう立場であったわけです。ところが、今度は、そういう立場ではなくて、売れる値段最低価格をきめるという方向になると、これでなくちゃ売れないのだ、この値でできないお蚕飼いはよせ、こういう立場に変るわけです。どのように歯に衣を着せておっしゃっても、これで引き合わないお蚕飼いはよせ、こういうことになるのだけれども、そのように受け取っていいのですか。
  35. 大澤融

    大澤(融)政府委員 養蚕の問題は、価格安定ということと並行いたしましていろんな生産対策ということがあって初めて一貫した政策になろうかと思います。そこで、極端なことを申し上げますれば、今おっしゃったように、これ以下の養蚕はやめろというふうにおとりになられる方もあるかとも思いますけれども、一方、私どもといたしましては、特に来年度におきましては、生産の合理化、生産費の引き下げということに予算的にも力を入れまして、これでも養蚕が成り立つようにという努力はいたしていくわけでございます。
  36. 栗原俊夫

    栗原委員 それから、先ほど、繭の生産費のとり方についていろいろとり方がある、そして、そのとり方で八割五分が今まで千四百円になっておった、今度は繭の生産費のとり方を変える、こうおっしゃるのですが、具体的に繭を作っておる立場生産費というものはそうにわかには変ってきません。もちろん、ただいまのお話によれば、いろいろな施策によって生産費が下っていく努力はする、このことはよくわかります。しかし、だからといって、その生産費のそろばんの持ち方によって八割五分が六割になる、こういうことでそれが千四百円になるなら、八割五分が六割になってもこれは一向差しつかえないのだけれども最低価格を一千円に設定して、それが六割に当るんだというそのそろばんの出し方はどうもわれわれとして納得がいかぬわけです。この点は少しく考えてもらわなければならぬし、特に、昨年のいろいろな立場から想定した繭の値段、生糸の値段、こういうものが、一昨生糸も十四万円台におったものが、昨今は十七万円台になっておるし、繭に至っては、実に、これは気狂い相場かもしれませんけれども、生糸よりも繭の値段が高いというような乾繭相場が出ておる。このことはたまたま昨年の混乱の中から生まれた一つの異常現象であるとは考えますけれども、今年の需給の関係というものについては、ことしの春繭からどのような見通しがあるか、このことをある程度具体的に一つ見解を表明していただきたい。
  37. 大澤融

    大澤(融)政府委員 ただいま糸価の値上りあるいは極端な繭の値上りというような点の御指摘がございましたけれども、私ども、先ほども申し上げましたように、たとえば糸価十六万円水準ということを考えて十四万円ということをやったわけです。従来の考え方にすれば、安定帯の幅と申しますか、十六万円を中心にすれば、上下を二万円ということで、十四万円と十八万円、こう考えますれば、ただいまの糸価の値上りというようなことも、その幅の中に入っていく形、必ずしも異常なものだということは、私、言えないと思います。  そこで、ことしの三十三生糸年度十六万円水準で推移するものというような見通しをつけてやったわけでありますが、このような状態でずっといったならば、三十四年生糸年度でどうなるだろうか、こういう御質問だろうと思います。私ども見通しでは、昨年の十月、十一月ごろ、低価格ながら価格が安定してきて、月々の輸出が六千俵をこえるというような状態になったわけでありますが、このときの状態がただいまずっと引き延ばされてきて、三十三年度蚕糸業需給状態を表わしておるわけでありますが、その状態が来年度も同じようにずっと引き続いていくものだ、私どもはこういうふうに考えております。
  38. 栗原俊夫

    栗原委員 ただいまお話しのように、十六万円を中心にして、最低価格十四万円、上限を十八万円ということですが、私、不勉強で、今度の新しい臨時政令についての内容をつまびらかにしておりませんけれども本法の三条でいう生糸の最高価格というものは、臨時政令でもってきめられたのですか。
  39. 大澤融

    大澤(融)政府委員 私の表現に正確でない点がございますが、従来の安定帯の幅と申しますと、十九万円と二十三万円、四万円の幅でございます。そこで、十六万円水準というようなことを考えて、最低価格を定め、また、一方、安定法にああいう生産費を割らない最高価格二十三万円がございますけれども、あれはあれといたしまして、実質的に安定帯の幅というものを考えて、十六万円水準のときの最高価格というものはどの辺にあるべきものであろうかということを、今までの考え方から推して考えれば、十八万円ということを申し上げたわけであります。
  40. 栗原俊夫

    栗原委員 そうしますと、臨時政令による最低価格は十四万円、そして臨時政令には最高の価格はきめてないから、以前のきまった政令による二十三万円、こういうことになっているわけですか。
  41. 大澤融

    大澤(融)政府委員 形式的にはそういうことになっております。
  42. 栗原俊夫

    栗原委員 そこで、少しく最低繭価最低糸価との関係について伺いたいのですが、従来一般に理解されておりましたのは、繭が最低値段千四百円、これが百貫目で原料繭として十四万円、加工販売費が五万三千円ですか、そこで最低糸値が十九万円、このような工合に見られておったわけですが、今回繭が千円となると、百貫目で十万円、最低糸値が十四万円、この値幅は四万円ですが、これは加工販売費が四万円ということですか、それともこの四万円というものはどのような線から割り出されておるのですか。この辺はどうも理解に苦しむのですが、わかるような御説明をお願いしたいと思います。
  43. 大澤融

    大澤(融)政府委員 今お話がございました最低価格、これは正確に申し上げますと十四万百円です。それから最低繭価はキログラム当り二百七十円でございますから、千十二円五十銭。そこで、この最低繭価最低糸価をきめた場合の加工費が幾らに見てあるかということは、その差額になります。そこで、今申されたような四万円ということではございませんで、三万八千八百五十円、これが加工費と製造販売費に相当するものになるわけであります。
  44. 栗原俊夫

    栗原委員 先般、保管会社が保有繭を生糸に加工がえをするというときに入札を施行したそうですが、そのときにはどうもだいぶ乱調子であったというように伝えられておるのですが、その具体的な内容を発表していただきたいと思います。
  45. 大澤融

    大澤(融)政府委員 これは食糧庁あるいは専売局にも例のあることでございますけれども、入札価格あるいは予定価格というものは、その後にまた同じような入札が予想されるというような場合には発表しないことになっておりますので、具体的に個々の数字を公開のところで申し上げるのはちょっと差し控えたいと思いますが、大ざっぱに平均数字を申し上げますと、一万四千円、正確でございませんが、その程度のものだった、こう記憶しております。
  46. 栗原俊夫

    栗原委員 大体三万八千八百五十円ですか、こういうことは、これはわれわれもこれならばというような感じもしないではありませんが、どうも、先般の入札のときは、ちょうど一方において乾繭が乱調子の相場を出しておるのと見合った、おそらく加工費の乱売というものが起ったのだろう、こう思います。そこで、いろいろ昨年来のああした乱調子の中を越えてきて、今日、繭が足らない、糸が足らない、こういう中から、いろいろ相場も上っておる一つの大きな強材料になっておると思いますが、これに対して、政府の保管糸といいますか、政府の所有糸の今後の見通しというものは、これはどのような態度で臨んでいくか、どのような取扱いをしていくか。このことは少くともことしの生糸年度の非常に重大な素因になろうと思いますので、このことについては非常にデリケートだから言えないなどということでなくて、あまり商売気を出さずに、明確に方向を一つここで打ち出しておいてもらいたい、こう思います。
  47. 大澤融

    大澤(融)政府委員 ただいま、政府の手持ちと申しますか、特別会計で買いましたものが四万九千俵、約五万俵、それから、臨時措置法になりまして保管会社が持っておりまして来年度から特別会計に肩がわりするというものが約四万七千俵程度、それから、先ほどお話のございました入札をやって交換生糸として入ってくるものが一万二、三千俵、締めまして十一万俵何がしというものが来年度政府の手持ちになるわけであります。そこで、これをどう処分するか、こういうお話だと思いますけれども、従来の安定法で買いました、最初に申し上げましたものは最高価格で売り出す、つまり、今二十三万円の最高価格ならば二十三万円なら売る、こういうことになるわけです。臨時措置法の生糸は、これは、ただいま、保管会社が持っておりますときは、保管会社が政府に売ってよろしいかということで政府の承認を得て時価で売れるということが原則になっております。これがさらに政府の方へ肩がわりして入ってくるということになれば、時価で売れるということに法律の上ではなっております。しかし、そういうことで、いつ売り出すのだか、またどんな数量で売り出すのだかわからぬということでは、市場に非常に不安を与えるわけです。そこで、私どもは、この生糸をどういうふうに売るかということは、価格安定審議会に諮りまして、ルールをきめて処置していきたい、そうしてこれがいつどんな形で投げ出されるというようなことで市場に不安を与えないようにして参りたい、こう思っております。
  48. 栗原俊夫

    栗原委員 生糸については、内需と輸出と二つ大きな部門があるわけですが、対アメリカの輸出関係の問題について、政府はどのように考えておるか。実は、昨年、私、このことで行ったわけではありませんけれども、議会の代表で議会制度調査に行った折に、アメリカでいろいろ見聞きしてきたわけです。特に農林省で元蚕糸局の糸政課長をやっておられた岡本さんがおられまして、向うの実情は、生糸が高いから決して使わぬ、こういうことではないんだ、日本の輸出の値段があまりにも不安定であるから、向うで安心してこれを受けての仕事ができないんだ、こういうことを言っておるわけです。こういう中から考えるときに、政府として、今後のアメリカヘの輸出関係、そしてまた生糸輸出というものをこれから増強していくための基本的な態度——向うではなるべく窓口を一本にして安定した値段で売ってもらいたいということを言っておるわけです。向うではどのようなことを言っておるかというと、たとえば、こちらで生糸を作っておるような会社の貿易はやはり政府で今まできめてくれた十九万円を守ろうとするが、単純な貿易会社は、いわば買って売ってもうかればいいという立場に立って、政府最低価格を守ろうという意欲がきわめて薄い、こういうところから値を買いたたかれるんでなくて売りくずす形になっておるんだ、こういう点にいま少しくしっかりとけじめをつけたならば、向うではまだまだ需要は伸びていく、こういうことを言っておるけれども、このあたりに対する当局見解並びに基本的な所信をお伺いをいたしたいと思います。
  49. 大澤融

    大澤(融)政府委員 輸出の問題、これは私どもも非常に大事なことだと考えております。そこで、ただいま申されましたような安売りの問題があるというようなことも私ども耳にしておりますけれども、こういうことからだけで、それじゃ窓口を一本化したらどうだということには必ずしもならないと思うのであります。窓口を一本化して過当競争をしないでうまく売る方法ということは、私ども真剣に取り組んで研究していかなければならぬと思っております。従来、ややもすれば——御承知のように、アメリカに対する生糸の消費宣伝の機関といたしましては、中央蚕糸協会から、今お話のありましたような、前糸政課長をしておった者が行ってやっておるわけですけれども、これは、最近、日本絹業協会という、養蚕も、織物も、メーカーも、貿易関係の方も含めた一本の宣伝機関が誕生いたしまして、四月からこれが発足して活発に活躍することになっております。今までのニューヨークの事務所での活動といたしましても、ややもすれば向うのディーラーの声が非常に強く入ってきて、直接の織物業者の声がなかなかこちらに反映しないというようなきらいがあったように私聞いております。そこで、今年は、専門的なマーケッティング・リサーチと申しますか、市場調査をいたしまして、この結果を私まだ全部見ておりませんけれども、末端の消費者に渡るまでのいろいろの調査をいたしまして、もうぼつぼつ報告がまとまるではないかと思いますが、こういうものを基礎にして来年度は一段と力を入れてやっていきたい、こういうふうに思っております。     〔吉川(久)委員長代理退席、赤路委員長代理着席〕
  50. 栗原俊夫

    栗原委員 話が少し変りますが、いよいよ近づいてくる今年の春繭の問題でございます。春繭の処理の問題について少しくお話を伺いたいと思います。  今回事業団法も当院は通過しておるわけですが、春繭の処理について、方向としては団体協約、掛目協定、こういう処理の方法が当局によって指導されておるわけですが、従来は繭の授受が終ったあとで掛目協定が行われておったわけです。しかし、今回は、事業団法もできて、事業団がある程度繭を自分たちでかかえるということも起ってきましょう。あるいは自主乾繭の問題等の関係から、生繭で渡すがよいか、自主乾繭するがよいか、あるいは事業団で抱くがよいか、こうしたことの判断をする時点において、少くとも協定掛目の最高限というものだけはわかっておらぬと、こういう選択の基準が立たない。これが今までの実情であったわけですが、特に事業団というものができた以上はなおさらそういう必要性に迫られるので、今年の繭処理に対する指導方針の一つの柱として、掛目協定を繭の授受の行われる以前に何らか具体化するという方向が打ち出されているかどうか、このあたりを一つお話し願いたいと思います。
  51. 大澤融

    大澤(融)政府委員 春繭の取引についてでございますが、御承知のように、ここで御審議願って、ここは通していただいた事業団、これが参議院を通りますれば編制をいたしまして、この春繭にもできるならば活躍さしたい、こういう気持でおります。今、春繭が出る前に協定をして、このくらいでは売れるのだという値段が出てしかるべきだ、こういうお話だと思いますが、事業団が活動を開始することになれば、出回り期の前に、基準価格というか、そういうようなものをきめて打ち出すわけであります。これを基準にして協定をやり、その協定で一部こっちへつなげるというような形になろうと思うのでありますが、事業団の活動が始まりますれば、今おっしゃられたように、ある意味では協定の行われる前、春繭が出る前にこのくらいの値段という基準ができると思うのであります。今年の春繭の取引から今までのような協定の方法を改めて事前に値段をきめるということはなかなかむずかしかろうと思うのでありますが、取引の今後の重要な研究問題として私どもも検討を重ねたい、こう思います。
  52. 栗原俊夫

    栗原委員 実際の繭の取引の場面を局長よく御存じかどうか存じませんけれども、これはなまのもので、しかも数日でもってチョウが飛び出すというようなしろものなので、なかなか重大な問題なんです。そこで、ことしの繭処理の指導に当って、再びこういう段階において従来行われた売手市場時代のような混乱が想定できる、こう私は思っておるわけです。というのは、昨今の乾繭市場の混乱から、生繭市場もまた再び売手市場のようなああいう混乱が起る。その中で、一方には、共販、団体協約、こういうことが強硬に推し進められていくわけですが、ことしの春繭の争奪戦というものは、異常な混乱が起ってくる、こう思っております。そういう中で、実は今まで蚕糸局が指導した方向でそれぞれやってきたわけですが、たとえば、機械製糸が中心になって、座繰り玉糸、繭糸業者、こういうものを一貫して需要者団体というものを構成さして、そして団体協約を結ばしておる。ところが、昨年の暮れから繭が少くなって、そういう中で、当局指導した原料繭の調整というようなものなどはあまりうまくいっていない。ここで、ことしの春には、座繰り玉糸業者も、いわゆる需要者団体の中から反乱を起す危険性もある。もちろん繭糸業者というものが反乱を起す危険性がある。こういう状態であります。これは群馬の状況なんですが、座繰り玉糸業は全部休業に入っておる。これは、後々原料繭を調整して適当に回す、こういう約束で需要者団体が窓口をそろえたわけですけれども、そういかない。このことは非常に重大な問題と思うのですが、ことしの春繭の具体的な処理、これに対してどのような指導をなさる考えか。
  53. 大澤融

    大澤(融)政府委員 御承知のように、今まで例年農林省蚕糸局から産繭処理方針というようなものを県へ流しておるわけでございます。ことしの場合、こういうことでいいかどうかというようなことは、私ども検討しておりますが、なお近く県の主任官会議どもございますので、そういうところでも意見を聞いて、調整をして、しっかりしたものにしていきたい、こう思っております。要するに、原料繭の調整と申しますか、需要者団体を作るというか、いろいろ群馬県、あるいは山梨県にあるようですが、独禁法違反の問題があります。そこで、要は、養蚕団体と申しますか、養蚕農民の団体がしっかり団結をしてそれに当るということの態勢に持っていく必要があろうと私は思います。そういうような基本線でいろいろのことを考えて参りたい、こう思っております。
  54. 栗原俊夫

    栗原委員 話はなかなか口で言えば簡単できれいなんですが、実際は、養蚕農民が共販の態勢をとる、ところが、実勢というものはどんどん値が上っていく、掛目協定は実勢までいかぬ、こういう事態が想見できる場合には、とんでもないことが起るわけです。かって、二、三年前、昨年、一昨年から、売手市場から買手市場というような姿になってきたわけですが、売手市場時代の状態は容易でない。しかも、ことしの春繭にはそうしたことが想定できる。こうした場合に、一方においてはもちろん共販というものを強力に推し進める、このことは正しいと思うのです。正しいけれども、しかし、共販で団体の掛目協定という姿が存外思わしくない。こういうところに今日までの混乱の事情があるわけですが、そうした中へ座繰り玉糸あるいは繭糸業者を追い込んでいく。そこで、座繰り玉糸の原料繭をどうするか、さらにはまた、繭糸業者の取扱いをどうするか、こういう問題が具体的に起ってくるわけです。先般も局長にもちょっとお話ししたわけですが、ことし群馬では、繭糸業者は需要者団体のワクに入らない、こういう方向をとっておるわけなんです。しかもこれらは自由業ではなくて免許、認可をとった業者であって、おれたちをどうするのだ、こういう事態が起っておるわけですが、これらに対する当局考え方一つこの辺で明らかにしておいてもらわぬと、ほんとうにことしの春繭は混乱する心配がされてなりませんが、この辺について、繭糸業者には免許、あるいは認可を与えて仕事をさしておる、こういう人たちをどのような性格に扱うべきであるか。あるいは、座繰り玉糸というような人たちも、実際には一般に買出動をせずして、需要者団体で買ったものを分けてもらう、こういう姿のままでいることがいいのか、実際必要なものは買って出る、こういうことで需給というものをとっていくのか。私たちは、そういう事態のときには、よく実勢相場実勢相場と言うのだけれども、ほしい者が高く手を振る、こういう中から実勢は出てくると思うのだが、そういうのは当局指導によるとどうも実勢ではないらしい。安くなっていくことが実勢だというような方向をとっているのが当局だというので、当局のやる手口は農民からはあまり喜ばれておらぬ。むしろ不信を買っておる、こういう状態なんですが、この中でどのようにやっていくのが正しいとお考えなのか。また、どのように具体的にやっていこうとするのか。このあたりをいま少し抽象的でなく具体的なお話をしてもらいたい、こう思うのです。
  55. 大澤融

    大澤(融)政府委員 率直に申し上げまして、具体的な最終的な結論に私どもは到達しておりません。いろいろ研究しておりますが、基本的には、先生も言われるし、私の言ったような方向でやりたいと思います。これは、中央だけで考えて処理をいたしましても、なかなか具体的ないろいろな事情がからみますので、県の連中ともよく相談をして、混乱のない処理方針を立てたいと思っております。
  56. 栗原俊夫

    栗原委員 どうも、あまり軽く逃げられるので……。なかなか当局としても言いにくいところではありましょうが、末端では、当局指導のもとに、都道府県の蚕糸課が、一般のこういう業者に対する問題も、やはり団体協約一本ということで、つまり徹底的な指導をする、指導だけならいいけれども、ときには行き過ぎがあるような行動までとる、こういうことではやはり問題が起るので、これらについては十分注意を喚起していただきたいことと、再び独禁法違反というような問題で問題を起しかねない要因をはらんでおりますから、この点は十分注意していただきたいと存じます。  そこで、いま一度本格的な本論に戻るわけですが、繭糸価格安定法の第三条、生産費を中心にこの法律はできておるとわれわれは思っております。どこまでも生産費を守るということが中心にできておる。価格安定の中心は生産費を出発点とする、このように考えておる。ところが、どうも政府考え方はそうでない。この辺について、この法律の体系を根本的に変えるつもりなのかどうか。まあ、今の姿から言えば、小手先で全然骨を差しかえておるけれども、姿は今までの姿のように見えるが、もう全然法律趣旨が変ってしまう。売ることを中心にやっていく、こういう形になるわけですが、この辺のほんとうの腹はどこにあるか。今は、臨時措置法、それから政令、こういうものでも組み合せて当面を処理していくわけですが、これは、今のままでいくと繭糸価格安定法の立法の精神というものが全然入れかわってしまう、こう思うのですが、この辺はいかがでございましょうか。
  57. 大澤融

    大澤(融)政府委員 その問題があることは、今提案しております臨時措置法の一部改正の延長という問題とつながるわけでございますが、私どものやり方といたしましては、従来の安定法生産費基準ということは、その方針で物事を処理しておるわけでございますが、ただ、先ほどもちょっと触れましたように、生産費というものはどういう農家について調べるか、あるいは家族労働報酬というようなものはどういうふうに評価して参るか、いろいろ問題がございます。また、非常に能率のいい農家生産費基準にするのか、もっと一般的に、能率の悪いものを含めた平均のものを今のようにやるのか、いろいろ問題があると思います。また、そうしてその生産費をとってみたところが、それではこれを価格算定にどういうふうに使うのかというやり方についてもまたいろいろ問題があると思います。先ほども申し上げましたように、今までの生産費のとり方、今までの生産費価格への適用の仕方、こういうものと、需給均衡といいますか、需給事情とマッチしている間は別に問題がなかったのですが、そうでなくなったわけであります。そのため、十九万円というああいう大へんなしょい込みをせざるを得なくなったというわけであります。そういう需給事情生産費とどういうふうにかみ合せていくか、一体生産費基準一本でいいのかどうかというような問題も、さらに発展してあると思うのです。これについては、私ども、簡単に解決をつけるべき問題ではないので、振興審議会等の御意見も聞いて、ここ一年かかって解決をしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  58. 栗原俊夫

    栗原委員 今のお話を伺うと、繭糸価格安定法が制定された当時の立法精神には今も少しも変りはない、従ってそれは生産費の線を守っていくという精神には変りはない、ただし、売り物であるから、需給均衡価格というものも大きく考慮に入れなければならぬ、そういう観点に立っていま一度生産費というもののそろばんの持ち方について十分研究していきたい、このような受け取り方をしておるわけですが、それでよろしゅうございますか。
  59. 大澤融

    大澤(融)政府委員 そのようなことだと思いますが、生産費主義そのもの、あるいは需給関係等をどういうふうに考えるかということが、これからの検討問題である、こういうふうな意味でございます。
  60. 栗原俊夫

    栗原委員 そうすると、やはり生産費というものがどこまでも中心である、ただ、生産費のそろばんのはじき方に今までいろいろ問題があった、それを十分研究しながら売り値の方も研究していく、どこまでも中心は生産費だ、こういう工合に考えてよろしゅうございますね。そうすると、その生産費をどう持つかということがあとの議論になっていくわけですから、特にだめを押すわけなんですが、それでよろしゅうございますね。
  61. 大澤融

    大澤(融)政府委員 ことしの問題としては、生産費基準ということでやっておるわけです。将来の問題としてはいろいろ検討して参る、こういう意味でございます。
  62. 中澤茂一

    中澤委員 関連して……。  将来の問題とか、そういうことじゃなく、繭糸価格安定法第三条には、「繭の生産費の額に生糸の製造及び販売に要する費用の額を加えて得た額を基準とし、」と、明らかに生産費基準として、そのあとへ、「主要繊維の価格及び物価その他の経済事情を参しゃくして、農林大臣が定める。」、こう規定されておるのですよ。この法律は間違いないでしょう。そうすると、やはり生産費が原則でしょう。ところが、昨年からのやり方を見ていると、生産費が原則じゃないじゃないですか。経済事情を参酌して生産費を逆算しておるというのが、今回出た十四万という最低価格、そういう線じゃないですか。明らかにこれは法律第三条に違反しておるという議論が成り立つのですが、どうですか。
  63. 大澤融

    大澤(融)政府委員 臨時特例政令を出しまして、生産費を六〇%、——御批判はありましょうが、そういうことで、これを基準として定めておりますので、安定法精神に反するというふうには考えておりません。
  64. 中澤茂一

    中澤委員 原文には生産費と明らかにそう書いてあるのだから、あなたがそういうことを言うと、たとえば、ここでまた値下りになった、そうすると今度は生産費は六〇が四〇になり三〇になる。そんなことをやっておったら、どこまでいってもきりのない話じゃないですか。要するに、生産費というものは、繭糸価格安定法を作ったときに、十六万二千幾ら、それから加工費が五万二千二百幾ら、こういう基準があるのですよ。それが生産費計算で、この法律を作った当時の基準で十九万円というものがはじき出されたわけです。そうでしょう。だから、その生産費計算を下げていくというなら、今栗原氏の言われたように、これはきりのないことだと思うのですよ。六〇に下げる、またことし値下りした、それでは今度四〇に下げるということではきりのないことで、事実上、今回の措置というものは、繭糸価格安定法三条を明らかに無視して、経済事情の参酌が中心になって、生産費計算が従になったという理屈は、これは栗原さんの言った通り成り立つのですよ。あなたがいかに詭弁を弄しても……。だから、これは明らかに繭糸価格安定法第三条の生産費基準にしてと参酌してという点を逆にひっくり返したので、繭糸価格安定法を無視しておるということは明らかに言える。第三条の違反であるとわれわれは断定しておるのですが、どうですか。
  65. 大澤融

    大澤(融)政府委員 今申されたように、勝手に四〇%、二〇%というように、幾らでも下げられるのじゃないかというお話でございますが、私どもそうは考えておりませんので、生産者が可能な限り最大限の合理化を行なっても、なお経営の存立が不可能なほど低い価格にまで下げるということは、法の精神には反すると思います。そうした意味で、私どもがとっていることは、これは見解の相違ということにあるいはなるかもしれませんが、私どもは第三条の精神にのっとっている、こういうふうに考えております。
  66. 中澤茂一

    中澤委員 いま一つ。あなたがいかにそう言ったってだめですよ。明らかに第三条違反ですよ。それでは、一体、農家経営の安定のために十四万でいいのだ、要するに養蚕そのものが千円という最低価格でいいのだという根拠はありますか。あなたの今の答弁によれば、そんな根拠はないはずです。この繭糸価格安定法を作ったときの計算というものが基礎になって、やはりこの安定法というものは考えられなければいかぬと思いますよ。そのときの生産費は、だいぶ古いことで記憶がないが、たしか十六万幾らだったと思う。あの安定法を作った昭和二十六年当時の計算というものは、たしか生産費が千六百二十幾らか三十幾らで、加工賃が五万二千幾ら見ているはずですよ。それを基礎にしてこの法律というものは成り立ったのです。だから、その基礎が根本的にくずれるということでしょう。そうすると、私が最初に言ったように、第三条の生産費基準というものが従になってしまって、経済事情の参酌が中心になってしまっているから、安定法に明らかに違反しているということは言えると思いますよ。しかし、私が幾ら責めても、あなたはそう言えます、法律違反でありますということは言えないはずですが、とにかく根本的にそういうことが言えると思うのですよ。だから、あなたの今答弁された、十四万というものが養蚕経営をこわさない最低価格だと言える根拠がありますかと言うのです。そんなものはないはずですよ。やはり一応十六万幾らかの安定法を作ったときのものが基準になって、この安定法考えられなければいけないと思います。だから、そういう点ほどうです。これは幾ら追及しても平行線になってしまうから、これでやめますが……。
  67. 大澤融

    大澤(融)政府委員 六割と申しますと、今申されたように大体千円であります。今までの生産費調査内容を見ますと、六、七割というものは労力費であるわけですが、その反当の労力費をほかの作物とある程度の均衡を考えていきますと、大体この程度のもので均衡がとれるというようなことが一つ考えられるわけです。ただ、先ほどから申し上げましたように、価格安定制度だけに養蚕に対する政府の施策があるということではなくて、生産費の切り下げというような合理化の方向の政策と相マッチして私どもやっておるわけでありまして、ことに、来年度においては、年間条桑育というようなことを中心にして、あるいはまた技術体制というもの強化、そういうことと相伴って、今言ったようなことの実現を果していくというねらいでございます。
  68. 栗原俊夫

    栗原委員 先ほどお話のあった、生糸十四万円、この中には販売加工費が三万八千八百五十円、こういうことで、繭の生産費の方ではバルク・ライン六十ということですが、この三万八千八百五十円という加工販売費もバルク・ライン六十でございますか。
  69. 大澤融

    大澤(融)政府委員 さようでございます。
  70. 栗原俊夫

    栗原委員 そうすると、六十で逆算すると六万五千円という加工販売費になるわけですが、やはり加工販売費は六万五千円、これが平均加工販売費だ、これはどうも世間一般から考えてそうは思えぬのです。この辺はあとで明細な資料提出をお願いしたら提出できますか。
  71. 大澤融

    大澤(融)政府委員 従来の製造、販売、加工費の生産費調査、これについては資料が提出できます。
  72. 栗原俊夫

    栗原委員 最後に、私の考え方を申し述べて、局長のお答えをいただいて、質問を終りたいと思うのですが、私たち考え方は、繭は最低価格が千円になる場面もあると思うのです。しかし、それは、われわれの考え方では、どこまでも生産費の八割五分が千円に当る、これはこういう施策でなくちゃならぬと思うのです。生産費の六割が千円に当るということでは芸のない話なので、八割五分を支持する、しかし、それが千円に当るのだということは、それは生産費を下げる施策が先行しなければ全く意味がないと思う。千円で売らなければ売れないから千円なのだ、それが今まで八割五分だったが、六割に当るから六割だ、こういうことでは、もう政治でもなんでもないと思う。だから、八割五分を堅持しながらそれが千円に当る、こういうふうに生産費を下げていく施策をどうしてやっていけないか、こういうことです。われわれは、先ほども提案のときに申し上げたのですが、今回農民が主体となった事業団が働くことによって、一〇%というものを自主的に維持しよう、従って八割五分を七割五分、こういうことに政府協力するつもりで法案を出しておるつもりですが、これはどこまでも生産費の八割五分、それが千円に当るという方向に持っていく施策を打ち立ててもらいたい、こう強く要望して、御所見を伺って、私の質問を終りたいと思います。
  73. 大澤融

    大澤(融)政府委員 確かに、合理化へ大いに力を入れて、生産費を下げて、繭の値段が非常に安くてもうまくいくというふうな方向にわれわれ努力することは御同感でございます。
  74. 赤路友藏

    赤路委員長代理 午前の会議はこの程度にとどめ、午後一時より再開することとして、これにて休憩いたします。     午後零時四分休憩      ————◇—————     午後一時二十五分開議
  75. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  非補助小団地土改良事業に関し、金丸徳重君より発言を求められております。この際これを許します。金丸君。
  76. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 私は、主として山村部落に今悩みの種になっておりまするところの土地改良事業、結局それが小団地のために捨てられておったところでありますが、それらに関連いたしまして、農林御当局の御所見などを承わって、これからの私どもが現地におきまする農民諸君の相談相手になる資料をいただきたいというつもりであります。  その前に、なぜ私がこのようなことにつきましてきょうお尋ね申すかにつきまして、考え方の動機とでも申しますかをお聞き取りいただいた方がよろしいと思います。実は土地改良事業が食糧増産その他に関連いたしまして大きく取り上げられまして以来、各地の農業の振興の上にはずいぶん大きな光明となっております。そのために、農村方面の力の入れ方というものは、片や農地解放などをあわせまして、非常な中身を持った、また非常なスピードを持ったものとして進められておるのであります。この点は農民諸君もひとしく感激しておるところと思うのであります。ただ、残念ながら、そういう中におきまして、一たび山村に入ってみますると、その恩恵に浴し得ないままに捨ておかれておるところが多いのであります。そして、それらを見ますると、今までの土地改良のねらうところが、あるいは三十町歩以上であるとか二十町歩以上であるとかいうような比較的大きなところをねらっておりまして、二町歩、三町歩というような団地には目が向けられなかった。今まではそういうことであるいは手が回りかねたというところであったかもしれませんけれども、だんだんそれが捨てられておるというみじめさというものが、非常に強く、大きな団地に住む農村との比較において現われて参っております。そして、その結果といたしまして、私どもが非常に心配いたしておるところは、山合いの部落がだんだんさびれてしまいまして、現に人口は、ひどいところになりますと、ここ五、六年の間に三割も四割も減っておるのであります。先祖代々耕してきたところの農地田畑を捨てて町方へ出てくる、そうしてそこでわずかながら、あめ、たばこを売って口を過ごすというような実例にしょっちゅう出っくわすのであります。そこで、私は、これを救うためには、農村振興の政策の手をどうしてもそういう方面の日陰に捨てられておる小さなところにも伸ばしていただかなければならないのではないかと思っております。幸いにしまして、生活改善などにおきましては、たとえば簡易水道奨励でありますとか、あるいはかまどの改善その他お勝手というようなものから、生活改善それ自体についてはそうした山合いの小さな部落の上にもやや力が及んでおるのでありますが、一番おくれておるのは、どうも肝心かなめの働く場所としての田畑に対する農林省の手が比較的及ばなかったのではないかというような気がいたすのであります。  そこで、今までとり上げておったところの十町歩以上とか、あるいは昨年からは五町歩以上の小団地にも土地改良の力の及ぶような体制はできたようでありますが、そうしたものが全国的に見てどの程度に功を奏しておるのか、またどんなふうに利用されておるのかというようなことを、これまでの小団地土地改良というような問題にしぼって、農林御当局の政策の過去の歩み方、現状などについて、一応歴史的展望とでも申しましょうか、そういうものをお聞かせいただきたいと思うのであります。
  77. 増田盛

    ○増田政府委員 山村対策についてでございますが、日本列島の地勢から参りまして、日本の農村の中における山村の占める割合がきわめて大きいのでございまして、そこには相当の人口が生計を営んでおるわけであります。これに対して、いろいろ、農林省といたしましても、できるだけ統一した方針に基きまして総合的なしかも具体的な政策を打ち出したい、かように考えておるわけであります。今お話しになりましたように、生活改善の上からとか、また山林行政、国有林行政の方面からも、いろいろ検討は続けておるのでありますけれども、私どもの所管しております農業の面からも、特にその中で土地改良の面につきましては、農地局所管のいろいろな仕事と力をあわせまして、できるだけのことはいたしたい、このように思っております。以前は、やはり、御指摘のように、土地改良の限度を、しかも補助の限度をどこで区切るかという問題に関連しまして、ここ数年来いろいろな御意見があったわけでございます。そういういろいろな御意見の中で一応実を結んだ形になりまして、普通の場合におきまして、灌漑排水とかいったようなものは五十町歩、それ以外の土地改良の場合にはおおむね二十町歩、——原則論でございますが、そういうことで区切りを打ち出しまして、それ以上のものは農地局で当然補助事業対象にしておるわけでございます。しかも、それ以下のものが問題でございますが、その場合に、特に山村だけを対象にしまして、小団地開発整備事業という事業を三十年度から実施いたすことになったわけであります。現在まで四カ年実施しておるわけでございますが、まず予算の上から申し上げますと、実はこの予算には私ども満足しておるわけではございませんが、三十四年度には、この山村対策の支柱をなしますところの小団地開発の整備事業予算額が三億一千五百万でございます。これに対する対象市町村数が三百三十三あるわけでございます。三十三年度はどうかと申しますと、補助額が二億二千七百万、市町村数が二百四十でございます。一応このごろの予算の計上の仕方から見ますと、やや大幅に増額したと言ってもいいんじゃないか。特に、私どもの所管しておる非常に微細な振興局の予算から見ますと、まあまあ相当大幅な増額だろうと思うのでありますが、問題の根本に照らしまして、山村対策であり、しかも土地改良が中心であるということを考えますと、とてもこの予算では満足し得ないものがあるわけであります。今後の発展の方向をこの方面に私は傾注いたしたいと考えるわけであります。  そこで、計画を簡単に申しますと、これは、先ほど申し上げましたように、昭和三十年度より十カ年計画で発足しておるわけであります。この前私が申し上げました市町村と申しますのは旧市町村でございます。町村合併以前の調査に基きまして計画が出発したのでございますので、旧市町村を使っておったわけでございまして、現在山村——この山村は、御承知通り、林野率七〇%以上、その町村におきます全体の土地面積の中で林野が七〇%以上を占めるということで機械的に割り出してございます。これは、たしか当時の市町村の数が一万くらいでございまして、その中で二千八百が該当する、こういうことであります。そうして、この二千八百の町村に対しまして、一町村当り一回九十万円の補助をする。事業費にしますと平均三百万円になるわけでございます。三百万円の三割の補助で九十万円になる。現在若干予算の節約の点で少し端数が出ております。そういう考え方で出発しております。一町村の平均事業費三百万円の三割補助、これを土台にしまして、二千八百町村ずつ十カ年に二回やろう。いろいろ準備の都合もありますから、一ぺんにどかんと金をやってもなかなかできませんので、この事業費に基きまして一ぺんやって、そして十年間には二回またそこに戻ってくるということで、結局二千八百町村の二倍の五千六百町村を十年間でやる、こういうことでございます。現在の実績は、実はこの計画からとりまして、三十三年度までに千五百五十町村しか実施をされていない、こういうことでございまして、進捗率はまだまだ低いのでございます。三十四年度ではとうてい半分になりません。半分以下でございまして、ずっと率が低いわけでございますから、大いに努力しなければいかぬと思うのであります。  それから、山村対策の特性にかんがみまして、できるだけこの事業内容に山村特有のいろいろな仕事をつけ加えていく、こういう考慮をいたしておるわけでございます。農地局の方で従来大きいものに対しまして補助事業をやっておられるのでございまして、沿革的にはそれの引き続きの問題として出てきたわけでございます。事業範囲といたしましては、農地局で普通おやりになっているもの以外に、たとえば農地局でお取り上げになっておらない共同の増反開墾、農地局も非常に大きい事業をもちろんやっておりますけれども、増反の開墾、それから林野関係の林道も取り上げてございます。畜産関係の牧道とか、あるいは牧野灌漑排水、それから牧野の隔障物の設置なども取り上げております。こういう事業の種類別に若干補助率が違うわけでございまして、補助率は平均三割と先ほど申し上げましたが、事業別に、三割のものが大部分でございますが、ものによっては四割、あるいは農道などは二割でございます。  小団地開発に関しては以上の通りでございますが、これに関連しまして、特に山村を対象としてはおりませんが、私の方で例の新農村の建設総合対策事業がございます。この事業で、実は山村も当然この受益対象として入ってくるわけでございまして、現在までに、土地改良の面におきましても、山村におきましては新農村建設事業補助並びに国庫融資を利用しまして相当な事業が行われております。振興局のやっております事業として特に大きな事業は二つでございますが、そのほかに、これも山村と銘打っておりませんが、先ほど申し上げました通り、やはり小団地整備の事業に関しましては五町歩という限度がございますが、この五町歩という一番下の限度に対しましては、新農村の場合にはこれをさらに引き下げております。従って、五町歩という限度にとらわれないということであります。これは山村の場合には非常に活用できると思います。そしてまた、この小団地開発という場合に五町歩で押えられた点を、ささやかでございますけれども補うものに、私の方で農業改良資金というものがございまして、農業改良資金の面で私どもの方で考えておるわけでございます。これは、小団地開発整備事業でとらえられない、しかも一方では公庫融資でもつかまえられない、こういういろいろな小さい事業を農業改良資金の面で土地改良を実施していく、こういうことを考えておるわけでありまして、これは非常に小さい金額でございますけれども、一件当り十二万五千円というのが農林漁業金融公庫の限度でございますから、それ以下の事業でもこの農業改良資金を貸し出しておる。これは各県に農業改良資金として国の三分の二の補助基金を設置してございます。従って、そういう基金を今度は活用できるのじゃないかと思います。  以上でございますが、何分、土地改良の面に関しましては、いずれあとで農地局長から詳細お話があると思いますが、補助事業に関しましてもそのようにいろいろな種類がございます。さらに、農林漁業金融公庫の面に関しましても、三分五厘の融資の問題がございまして、こういう問題とのからみ合せもございます。特に山村としてそれぞれ特定されておるわけではないのでございますけれども、山村の場合に大いに活用できるのじゃないか、かように考えております。特に、金丸先生のおいでになる山梨県のように、果樹県などの場合には、農地局の補助事業でありますと、いろいろやかましい条件がついておりますし、果樹園ないし蔬菜園だけではこういう造園事業やあるいは土地改良がむずかしい面もあると思うのでありますが、山村などにこういう特殊作物、果樹、蔬菜等の適地があって、ささやかな面積でいろいろ開畑をする、あるいは土地改良をやるという場合のために、私どもの方の事業に関しましては、小団地開発整備事業におきましても、新農村の特別助成におきましても、それから農地局御所管の非補助三分五厘の融資事業にしましても、こういう場合に対して相当門戸を広げておるわけでございまして、できるだけそれぞれの地方の実態に即しました新しい農業の方向に即応しようという努力をしておるわけでございます。
  78. 伊東正義

    ○伊東政府委員 振興局長から詳細説明がありましたので、私簡単に申し上げますが、先ほど先生の御質問がありましたように、団体営は、大体灌漑排水でありますとか、五十町歩——これは山間部に行きますと二十町歩ということで、二十町歩を限度としまして、それ以上が団体営ということでやっておったわけでございます。そういたしておるのでございますが、それでは先ほど御質問のような小規模の土地改良なりあるいは開墾に手が届かぬということで、今振興局長から申し述べましたように、三十年、三十一年ごろから、小団地の開発整備でありますとか、あるいは新農村の制度というものができて参ったわけでございます。私どもの方の農地局としましては、それにさらにつけ加えまして、御承知のように、三十三年度から非補助の小団地の土地改良助成基金ができましたので、これを活用いたしまして、三分五厘の低利の融資をしていこう、なるべく御期待に沿いたいということで制度を設けたわけでございます。これは団体営以下の基準のものを開くということになっておりますが、御承知のように、ことし三十三年度のワクは二十七億五千万で、そのうち二十億は今の団体営の基準以下の小団地のものに融資をしていこう、従来団体営で補助金を二割なり三割受けていたものでかわっていくものは七億五千万というようなワクを一応頭に置きまして考えたわけでございます。今まだ三十三年度の実績は出ないのでございますが、各県から要望がございまして、これをとりまとめてみますと、小団地の二十億に該当するものに対して要望が二十六億ぐらいで、六億ぐらいオーバーしております。そのほかが十一億ぐらい要望が出ておりまして、二十七億五千万のワクに対しまして三十七億ぐらいの要望がございます。これを三十三年度は三十億足らずのものに圧縮しなければならないのでございますが、今の小団地につきましては、二十億のワクに対して一十六億の要望があるという形であります。来年度におきましては、御承知のように、ワクをだいぶふやしまして、二十七億五千万に見合います三分五厘のワクは六十三億になっておりまして、そのうち小団地は幾らと実はまだきまっておりません。小団地の要望が相当多ければ、これは三十億でも四十億でもふやしていく。——団体営の基準以下のものでございます。そういう考えで、一応、来年度に関しましては、ワクをきめませんで、要望に沿うて実情に合ったようなワクをあとで考えたらいいのではないかというふうに考えております。それで、ことしは開田、開畑というものは実は三分五厘の対象になっておらなかったのでございますが、特に山村等にこれは非常に関係があると思うのでありますが、来年度は、ワクもふえましたし、事業といたしまして、特に山村等で問題になります開畑の問題あるいは小規模の開田の問題は、下に制限をつけませんで、二町でも三町でも、そういうものは三分五厘の融資ができるような事業を追加し、ワクもふやしまして、御要望のような山村地帯の小規模な土地改良事業あるいは開墾事業等につきましては、極力、振興局の補助金のほかに低利の融資もあわせまして、なるべく山村の人々の生活の安定をはかっていくということを考えたいと思っております。
  79. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 両局長から非常に詳細なお話を承わりまして、ありがとうございました。ただ、お話の中で、せっかくそうお力を入れておられるにかかわらず、比較的進捗率が低いというか、要望が上ってこないやに承われる節がある。振興局の方におきましてもことにそうであります。それからまた、農地局の局長のお話の中でも、それはなるほどワクよりもよけいなものがあるようでありますが、実際の要望というものはこんなものではないと想像される。どうしてそういうふうにいいねらいの制度が実際の要望として上ってこないのか。それらについて何かお気づきになっていることでもございましょうか、承わりたい。
  80. 増田盛

    ○増田政府委員 先ほどいろいろ申し上げたのでございますが、特に私の方で主体になっております小団地開発整備関係でございますが、これは実は要望がないわけではないのでございます。要望が相当あるのでございますが、しかし、市町村の場合に、やはり市町村が一つの単位になっておりまして、山梨などの場合をお考え願うとよくわかるかと思いますが、新しい市町村の場合には平地地帯まで入った大きな市町村になっております。これは実は旧市町村で集計したもので、旧市町村の場合には、平地地帯に偏しまして、割合に小さいところに細分されて市町村がございます。山村の場合におきましてはきわめて広大な面積で、旧市町村の場合にも大きな村があるわけでございます。そういう関係で、私ども今まで実は、いろいろこの仕事をやっていく場合に、平地地帯の水田を中心にして暮している地帯に対しましては、PRといいますか、この趣旨の浸透も非常に早いわけでございます。従って、いろいろと制度もありますし、これに対する要求などもすぐに出て参るということでございますが、山村の場合には、非常に面積が広大な中にわずかばかりしか耕地がない、しかも散在しているということで、事業計画を立てる際などにも、やはり五町ないし二十町といいましても、なかなかそこにまとまりがつかなかった傾向があるのではないか、かように考えております。しかし、最近におきましては県のそれぞれの担当課の努力によりまして、特に近年におきましてはこれに対する要望も相当出て参っております。しかし、私をして言わしむれば、やはりこの平地地帯だけにその重点を置かないで——山村の場合には非常に手数はかかります。県庁でいろいろ指導される場合にも、非常に時間も経費もかかりますし、あちこち散在している場合に、これをまとめて一つ事業として持ち出すことは、私は非常に努力が要るだろうと思います。それを実は小まめにたんねんに御指導願うならば、必ずやこういう点で大きな力になって中央に対して要求が出てくるのではないかと思います。その点なども、実は、三十三年から三十四年に関しまして私どもの方にとりましては相当大幅な増額を見たという点も、そういう声が最近非常に大きくなってきておるからであります。先ほどもお話にありましたが、山村対策としましてこれが重要だという声が出て参っております。従いまして、先ほど農地局長お話になりました、農地局で行われます三分五厘の融資対策など、実はこういう面のPRなども、五分もあり三分五厘もありといったような格好が、末端まで浸透するのが非常にむずかしいし、それが金額として積み上ってくるのに時間がかかるのではないかと思いますが、こういう点に関しましても、私どもの方はもちろん、農地局の方に、特にそういう点で現在山村に対する趣旨の徹底、PRの徹底、こういうものに対してお願いいたしておるわけでございます。
  81. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 制度のPRが足りなかったというようなことも一つの原因であろうとおっしゃるのでありますが、私も確かにそれがあるように現地においては見ておったのであります。同時に、先ほどの御説明の中で承わるところによりますと、大体事業単位を三百万円というふうに踏んでおる。ところが、実際に山村で要望しておるところの切実なものは、三百万とか百万とかいうような事業ではなくて、もう少し小さなものであるように思われる。そこに私はこの問題解決の根本の壁があるのではないかと思うのです。なるほど、大きく市町村が合併されましたものですから、その市町村全体としてつかんでいけば、同じような条件のところを幾つか合せると、そういう三百万とかあるいは五百万とかいうような事業対象もあるとは思います。しかし、それにするためには相当な時間がやはりかかりますし、ことに、町村合併直後などにおきましては、各部落ごとの話し合いなどは、それ自体相当の時間もかかり、努力を要するということなんであります。そこで、それをさらに小さくねらっていただいて、部落の単位くらいにやっていただいて、事業単位も、もう十万以上くらいは一つ目をかけてやるというふうにでも考えを直していただきませんと、ほんとうにこの切実な要求に沿うのに、あまりに時間がかかり、あまりに手数がかかってしまって、差し向きの間に合わないことになりはしないかと思うのであります。私は、山に住んでいるものですから、山の中を歩きます。山が好きなものですから、その意味もあって歩くのでありますが、行く先行く先でそういう訴えを受ける。ここはなぜこんな土地のままにして捨てておくのか、こんな残念な畑のままにあきらめているのかと聞いてみますと、いや、こういうのは町に頼みに行きましても取り上げてくれませんと言う。原因は、団地が小さい、二町、三町程度のもののようであります。従って、これは、何といいますか、てんで鼻もかけられないというようなことのままであきらめさせられておるのでありますか。しかし、それはそれだけに非常な切実な要求を持っていることは確かなんでありますから、これに、町を通じてこいとか、あるいは三百万円分集まってこいとかいうようなことでなしに、その部落それ自体の二十人なり三十人なりの農家が寄って、こうしよう、こうしたらこの土地はよくなるんだというような計画ができたら、それを直接につかんでいただくような方法が考えられないものかどうか、こういう点でありますが、いかがでありますか。
  82. 増田盛

    ○増田政府委員 ただいまのお話、まことにごもっともでございまして、私どもも十分その御趣旨に沿うて事業を実行いたしたいと思っておるわけでございます。参考までに申し上げるのでありますが、先ほど市町村で三百万円事業費と申しましたが、これに対しまして説明を補足いたします。実は、一市町村三百万円になっておりますけれども、私どもの方の指導としては、一地区平均六十万円くらいというところで指導しておるわけでございます。この六十万円にもいろいろ問題はございましょう。従いまして、私の方で実は事業種別にこまかくいろいろ考えておるわけでございます。たとえば、農道、牧道、林道などの場合は一カ所十万円くらいを目標にしてやっていこう、その他の場合におきまして、実はこれは土木工事の単位の問題でありまして、コストの問題にも関係して参りますけれども、三十万円くらいのところまではまとまってやった方がいろいろな面で便利ではないか、コストも安くなるのではないかということで、その他の土地改良の面においては三十万円くらいを一応の基準にしております。しかし、これで何も縛られているわけではありませんで、地区数がふえればいいわけでありまして、今後この面にも努力いたしたいと思っております。  そこで、念のために、山梨の場合をこの前にいろいろ調べて参ったのでありますが、山梨県の小団地開発整備に関する過去の事業におきましては、私が先ほど申しましたように、県のいろいろ御指導だと思いますが、こまかいところにあまり手が届いておらぬ。というのは金額で申し上げますと、事業費が大体四千五百万円くらいの過去の実績になっておりますが、これに対して機械揚水が非常に大きいのであります。従って、これは機械揚水の償却を考えますと、相当面積が集団しなければならぬということになる。従って面績も大きいのであります。それから、もう一つ非常に大きいのは用排水路でありまして、これは機械揚水の場合よりも地区数が多いのでございますが、しかし割合まとまった地区をやっているように見受けられます。四千五百万程度の金の中で、この二つで三千七百万円くらいを占めているということでありまして、今いろいろお話しになりました非常に小さいやつでございますが、これは実際は指導すればできるはずであります。これは、私の方でも、その市町村でそういうことをやる場合にはぜひ取り上げたいと思います。しかし、おそらく、そういう町村では、こまかいものをぼつぼつやるよりも、もっと先に機械揚水とか用排水路の大きいものをやりたい。しかも農地補助のところまでいかないそういう土地が相当残っていることが如実にこれによって示されてくるのではないか。  従いまして、これによって私どもは市町村が終ったというのではなしに、もう一回回ってこようという考えを立てまして、十カ年計画を計画しておるのも、そういう点で私どもやはり有意義じゃないかと思っておりますが、最初に申しましたように、やはり二十町歩のところで限度があり、あるいは灌漑排水の場合は五十町歩でございますから、そういうところで補助の限度がありますと、そのやや下回ったところをまず先にやる、こういう傾向がある。従って、小さいのはあと回しになる。従って、これをもう一回実は私の方で回しまして、その小さいところは次の機会にできるだけ取りつけていく、こういうことを考えておる。それは私どもの方の所管の行政に関してでございますが、先ほど農地局長から詳細お話のありました通り、私の方の補助事業にほぼ匹敵するような三分五厘の公庫融資の事業が三十三年度から発足しまして、三十四年度からは大幅に拡大されるようでございまして、これと一緒に、一方では小団地の補助でやり、一方では三分五厘の公庫融資でやる。この五分三厘の公庫融資を補助に換算いたしますと、おそらく二割から三割の中間ぐらいの補助率に該当するんじゃないかと思うのでありまして、こういう資金を有効に活用して、両方合せて計画的な事業を進めて参ることになれば、私は山村のこういういろいろな対策が一ぺんに進んでいくんじゃないかと思います。  ただ、この場合に、何といいましても資金の裏づけでございますが、小団地の開発の場合には、補助補助でありまして、補助以外の地元負担がございます。地元負担に関しましては、やはり公庫融資で——これは利率が高いわけでございますが、補助残融資をやっております。六分五厘の補助残融資を、ちゃんと公庫融資のワクをとって、それはそれで最高八割までの融資が受けられるようにめんどうを見るようになっております。そのほかに農地局の三分五厘を一つ考える。農地局の方の三分五厘の方は、個人の事業までずっとお貸しになるようでございます。個人の事業対象になっておるようでございますから、それを一つ計画的にやる。ただ、非常に制度が複雑になっておりますから、どうしても私は、先ほど申し上げました通り、やはり県庁が非常にこまめに、かゆいところに手が届くように指導しなければならぬじゃないか、こういうことを考えております。
  83. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 なるほど、お話で、私の方の山合い、谷間の土地改良がおくれておる原因の一部がわかりました。それ以前に、まず能率の上る、平地といいますか、盆地の方にたくさん残っておる仕事をまず手がけなければならないというようなことであったと思いますが、それはもちろん私は進めていただかなければなりません。私の県のことばかり取り上げてはいけないのでありますが、たとえば、私の県でありますと、釜無川の右岸、左岸、これは増田局長あちらに御在任中から手がけられた仕事です。これがまだ、一部は着手されておりますが、大きなものは着手に至っていない。茅ケ岳の方にいたしましても、国営でやられるようにと、特に私どもは非常に楽しく御期待しておったのですが、これが、いろいろな事情もおありと思いますが、進んでおりません。そうした問題をかかえておるものですから、容易に山村あるいは谷間、あるいは川と川との間というような小団地にまで手が届かなかったことと思います。けれども、かゆいところへ手が届かなかったということは——私もほんとにそう思いますが、かゆいところに手が届かなかったのは、太い手のまま伸ばそうとしてついに伸びなかったように思う。ですから、一つここで太い手を細くして、どこもなくしていただくというような基本の方針をとっていただきたい。これは、農林省の方ではそうとっておられましても、県段階にいきましてからそれがまたもとの太い手になってしまうらしいのであります。これを一つぜひ御指導をいただいて、かゆいところに細いながらも手が届いていくという御方針をさらに強く打ち出していただきたいと思います。私は、山村あるいは山合いの部落の人口が減る、嫁に来手がない、息子が住みつかないのだというような悲惨な状況を見るにつけても、この方から救い出していきませんと、日本の中小企業の問題も片づかないのではないか。今その人たちがなけなしの田畑を売り払い、家をこわして東京なり町方に出てきて、そこで何かの仕事をして、そうして中小企業の過当競争というような残念な事態を悪循環的に現出しておる実情でありますが、これを一たび農村の方の生活を改善し、働きいい田畑を作り上げておきますと、若い人たちもおのずからとどまってくるのではないかと思う。それが莫大な金が要るということであれば別ですけれども、私の実例として非常に感銘しておりますところは、昨年十何万かかけた索道一本のゆえに、その部落の農民の人たちが過労から救われて、病人が目に見えて減ってきた。これはお医者さんが述懐して言ってくれたことであります。一本の索道が部落を救い出したという例さえもあるのであります。いわんや、それが土地そのものをよくするということになりますならば、一そうそこに張り合いを持って住み続けることができるのではないか、こう私は思うのであります。ただ、問題は、いろいろな関係がありまして手が届かない。それを手を届かせるにはどうするか。結局、今の御方針がそうでありますから、あとは県への御指導であります。県への御指導をさらに強くしていただく以外にはないのでありますが、さて、そうなった場合に、先ほど冒頭にお伺いしましたように、果してこのワクで足りるものやいなや。数から言いますと約一万町村ということでありますが、部落に計算いたしますと、ずいぶんこまかいものになると思います。その二十戸三十戸の部落に目をつけていただきたいというのが、私のきょうのお尋ねの要点であります。それだけに、数がうんとふえて参りましょうし、金もとうていこれでは間に合わないと思います。そこで、そうなりますと、数がふえ、手数がかかる。県でも、せっかくの農林省の御指導、御鞭撻にもかかわらず、いかにせん手が間に合わないということで、そこにかゆいところに手を届かせるわけに参らぬという実情が出てくることになりはしないか、こう思うのであります。結局、金のワクをとっていただくこと、あるいはまた同時に技術指導などの人たちも農林省自身がお持ちになることも必要でありましょうが、県の方へも相当用意していただくようにしませんと、今までの壁をぶち破ってかゆいところに手を届かせるわけに参らぬように思うのであります。それらについてはこれからどういう御用意をお進めになるのでございましょうか、お伺いいたしたいと思います。
  84. 増田盛

    ○増田政府委員 予算に関しましては、先ほど申し上げました通り、十分これでまかなっておるとは考えておりませんし、今後増額に極力努力いたしたいと思います。なお、きわめて大事でありますけれども人目につかないようなこまかい仕事がこの山村対策の生命でございますから、この点に関しましてはかねがね県に対して注意を喚起しておるのでございます。県としましては、小団地開発の主管課は大体耕地課が多いわけでございまして、これに対して振興局の系統であります農政課系統あるいは農産課系統の者も極力努力はいたしておるわけでありますが、なお私も、これに対する注意喚起、指導の徹底等に関しましては、最近特に痛感いたしておりますので、農地局長にもお願いしまして、特に県の耕地系統の技術陣営に対しまして、御趣旨のようなかゆいところに手の届くように、よく農民の方々の要望を入れて、煩をいとわずして、農村振興の上に直接役立つようなこういう仕事に対してもっと重点を置くように、私どもの方から強力に指導いたしたい、かように考えております。
  85. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 私のちょうだいしました時間がもうなくなるわけでありますが、今の点、耕地課の要員の足りないことはもう前から言われております。その足りない耕地課の人々の手が、実はその足りない手ながらも山合いの方に目を向けてくれればいいのですけれども、それが補助事業などの方で手が回りかねるような実情なものですから、一そうそちらの方はほったらかしておるという実情であります。耕地協会などがあって、それについて若干穴埋めをする意欲は持っておるようでありますが、力これ足らずということが実情であるのであります。私は、願わくは、この際、こういうふうなせっかくいい施設をお持ちになって進められておるわけですし、そしてそれが、PRが足りない、あるいはその他のゆえにせっかくの善政が現地の方に伸びていかないことを非常に残念にも思いまするので、一面におきましては、中央におけるワクの拡大その他のお力をいただきますとともに、何としても現地の手を増すための何らかの措置方法を一つ早急にとっていただくようにお願いしたい。それも技術陣営の非常に優秀な者をということではありませんです。わずかに二町歩、三町歩の土地について、これは土質の改善をしなければいけないとか、ここは一つ水質を考えよう、温水ため池でいこうとか、あるいは畦畔で一つ何とかしようじゃないか、農道を何とかしようという程度でありますから、そう優秀なる技術陣営でなくてもいいと思うのであります。いいと思いますけれども、数を一つよけい配置できるような形にしていただく。これは全く私の思いつきでありますが、しかし、いつも頭のすみっこにあることなんですが、農林省では現地には食糧事務所でありますとかあるいは統計事務所をお持ちになっておられます。私は、同様に、もしかでき得るならば、農地事務局の出張所的なものができて、直接にでも一つ指導願えるような道が開けないものかどうか。また、ある場合におきましては、あの統計事務所あるいは食糧事務所のスタッフの中には、ずいぶん土地の状況について長い間苦労しておりますから、かけ出しの技術陣営などよりももっと土地の改良関係などについては明るい知識経験を持っておる人があるのであります。これを県に収容することがどうかということでありますれば、農地事務局の出張所的なものに収容なされば、現実の土地改良の問題を通じて山村の興隆といいますか農村全般の振興に非常に役に立つのではないか、こう思うのであります。これらについては農地局長などの御見解も伺って、私ども騒げと言われますればいかようにも騒ぎますが、一つ所見を承わりたい。
  86. 伊東正義

    ○伊東政府委員 御意見、つまり、山村関係の土地改良でありますとかあるいは開墾の問題の指導力が足りないじゃないかというお話、これはごもっともだと思います。実は、私の方の三分五厘の制度をやったのでありますが、先ほども全国で三十七億要望があったと申しましたが、山梨県は二千七百万くらいしか実は要望が出て参りません。これは制度が初年度の関係もありますが、私は、やはり、先ほどからのPRの足りぬというお話のほかに、それに関連しますいろいろな指導関係の職員の問題、あるいはそれに要する経費の問題でまだ足りぬところがあるのじゃないかというふうに考えられます。ただ、先生のおっしゃいました、統計なりあるいは食糧事務所に人がいるのじゃないかというお話もございますが、これはなかなかむずかしい問題でありまして、農地事務局の定員もそこまで実は手を伸ばしまして指導をするにはあまりにも人員の点では貧弱でありますので、これは私だけの考えでございますが、やはり、これは、県の中で、何課といわず、課を問わず、また、改良普及員という制度もございますし、これは林業関係にもございますし、農業関係にもございますので、こういう人たちを動員いたしまして、そして山村の土地改良なり開墾というものを指導していくというやり方が一番実情に適するのではないかというふうに実は考えます。それで、農地局としましては、これは公務員の定員をふやすというわけになかなか参りませんので、この融資の事務がだいぶふえて参りまして、来年度は土地改良だけでも公庫から百四十億くらいの融資が全部で出ることになりますので、そうなりますと、非常に県の関係の事務費もふえて参りますので、われわれといたしましては、県に事務費の補助をするというような形で、経費の面で幾分の援助をしていきたいという考えを実はとっております。定員をふやすということもなかなか困難でございますが、われわれの経験からしますと、土地改良をやります場合にも、改良普及員の人々と手をつないでやったところは実はうまくいっております。そういう事例がだいぶ多うございますので、私、先ほど申し上げましたように、そういう人々をみんなで活用しましてやっていくのが一番いいのじゃないかというふうに今は考えております。
  87. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 大へんありがとうございました。私はこれで質問を終ることといたしますが、繰り返して恐縮でありますが、非常にこの問題は火急のように私には見受けられるのであります。それは平地の農業と、それから山合いの農業、山の上の農業とは開きが非常に大きくなって参ります。加えるに、生活条件の差もだんだん出て参りまして、山村はさびれいくばかり。それはもう人口の移動状況をごらんになればよくわかることであります。そして、それを今にして食いとめませんと、将来への社会問題として大きな種を残すことになると思われます。幸いにして両三年来この方面に目が向けられておりまするので、一そうこれを効果的に、またスピーディにお進め願いたいことを御要望申し上げまして、私は終らしていただきます。  委員長、ありがとうございました。     —————————————
  88. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 次に、内閣提出繭糸価格の安定に関する臨時措置法の一部を改正する法律案、及び、栗原俊夫君外十六名提出繭糸価格安定法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、審査を進めます。  質疑通告がありますので、これを許します。高田富之君。
  89. 高田富之

    ○高田委員 先ほど栗原委員からおもな問題点についての質問がありましたので、私は関連程度に簡単に二、三の点をお尋ねしたいと思います。  先ほどの質疑を通じまして、やはり大体明らかになったと思うのですが、繭糸価格安定というものの制度の精神をあくまでも尊重してこれを堅持していくという御答弁でありましたが、しかし、内容的には、実際問題としまして、安定制度というものを事実上放棄してしまったという結論が出ざるを得ないわけであります。この点はいろいろと質疑応答の中で明瞭になったのでありますが、さて、しからば、ああいうふうにいたしまして、昨年度の繭価格の底値を見て、その底値以下のところへ最低繭価を持っていったわけですから、事実上これは発動しないという見通しのもとに定められたものでありますので、形の上では繭糸価格安定法は残っておりますが、実質的にはすでになくなったものと考えざるを得ないのです。もしそうでないと言うならば、現に、暴落をしてその線まで来たときに、その線を堅持するために無制限に支持するかといえば、支持しなかった実績がこれを証明している通りでありますから、これは事実上ない。結局残るのは事業団で、事業団によってある程度の、きわめて限られた範囲ではありますが、操作をするという価格調整のシステムがわずかに残されているというのが、いつわらざる現状であろうと思うのです。  そこで、それはそれとして、政府としても、去年ああいう大暴落を見まして、すでに財政上ささえきれぬということから、一挙に事実上の放棄ということになったのであろうと思うので、その事情はわかるのですが、さて、しからば、そういう安定制度が事実上なくなったという状態にいつまでも置いておくわけには参らぬと思います。これは、どうしても、養蚕農家に、あるいは業界全般に、安定感をすみやかに与えなければならないという責任がやはり政府にはあるわけなんで、先ほどのような質問が出るのもそういう点からでありますが、政府としては、一体これから将来にわたって今の繭糸価格安定制度というものをいつまでも堅持していく考えなのか、それとも、もっと——これを事実上放棄して、しばらく様子をごらんになっているのだろうと思うのですが、いつまでも様子ばかりごらんにならないで、構想をまとめて、かくあるべき価格安定制度というものについての、まだ最終確定したものでないまでも、政府の大体のお考えですね、こういうものは那辺にあるかということを一つ御発表願いたいのです。
  90. 大澤融

    大澤(融)政府委員 御承知のように、私どもは来年度価格安定制度を全部廃止してしまうという見解はとっておりません。臨時措置法の期限延長によりまして、法律に基いてきめられた最低価格の線、ここまで落ちたならば保管会社が買い出動に出るということを準備しておりますので、価格安定制度を廃止したというふうには私どもは思っておりません。ただ、しかしながら、繭糸価格安定制度、今までの安定法については、去年以来のああいう問題もございまして、あのまま今度も適用していくということには、なかなかいかぬと思います。午前中もお話ししましたような生産費の問題ももちろんありますし、それから、安定制度によりますと、特別会計がいきなり買ってしまうというようなぎこちない方法になったりしておるわけです。そこで、御承知のように、ことし桑園の整理というようなこともございますし、また、御指摘になりました蚕繭事業団というものを発足して活動して参るわけであります。それやこれやを見ながら、この一年間臨時措置法の延長をして、かたわら繭糸価格安定制度を将来どういうふうに持っていったらいいかということを、今まで現われた問題点を取り上げながら、それの解決をして新しいものを作り、三十五生糸年度からは、臨時措置法にかわるもの、今の安定制度にかわるものを発足できるようにということで、私どもいろいろ考えておるわけであります。率直に申し上げまして、まだ私どもは問題を洗っておりまして、振興審議会等にもかけまして将来の制度を固めていこうという態度でありまして、今までのところ、こういう考えでありますというものは、まだ私どもは持っておりません。
  91. 高田富之

    ○高田委員 率直に、まだ明確な考えがまとまっておらぬというお話でありますので、やむを得ませんが、やはり、何としましても、幾ら堅持していると言いましても、もう信用しておらないので、事実上もう最低価格制度というものは放棄されたものである。ただ、事業団というものができて、わずかにある程度の操作ができるというふうにしか、もうこれは受け取られていないのですね。ですから、これは非常に残念なことなので、そういう精神がおありならば、やはり、すみやかに明確に価格支持制度というもののあり方をはっきりさせて、そしてそれを打ち出される、こういうことでないと、今何もなくなってしまったというのと同じ状態だと思うのです。それで、さしあたり今度は春繭について——さっきもちょっと栗原さんからお話がありましたが、春繭の場合に予想されますことは、今度は暴落対策でなくて、まかり間違うと繭の争奪戦ということになる可能性が非常に強くなってくる、こういうことなので、下ってきたときには底値の方はどんと下までおろされてしまう、上りそうになってきたときにはどうするかということなんですが、今までのやり方では、結局団体協約ですね、これを強力に進めることによって、とにかく掛目協定を一本の線で各県でやらせる、これをあまりに強くやったために、実際ならばもう少し繭の値段が競争によって高まるべきものを、逆に高めない作用をしたのであります。ですから、実際は農民が団結して高く売るべきシステムのものが、あべこべに向う様の共同購入の機関になりまして、かえって押えられるという結果になった。そうなりますと、いよいよせっかく事業団等もでき、共同販売の態勢を強化しようというときに、むしろこれはそれが押えの作用をして、かえって養蚕農民からは好ましからざるもの、それよりもむしろ、いっそのこと、そういうことをされるくらいなら、何もやらぬ方がいいじゃないかというような議論さえも出てくる可能性すら非常に強いと思うのです。そこで、この団体協約による取引のやり方というものと独禁法との関係、これは従来も非常にあいまいだったと思うのです。それで、こういうことはやはり、今度は春繭を前にしまして、もう一ぺん明確にされる必要があるのではないかと思うのです。たとえば、われわれの方で、埼玉県、群馬県、山梨県もそうなんですが、非常に極端なことが従来行われておる。去年はああいう状況ですから共同乾繭をしようという逆の方向にいったわけですが、今度は情勢が変って参りますと、あべこべに再び一昨年以前のような状況が起るのではないかと思うのです。たとえば、これはよく御承知だと思いますけれども、団体協約というものをほとんど強制的に、それ以外の販売方法を行政的な指導力で封じてしまうということをやっておる。たとえば、繭糸業者に対しては、みんな県庁で廃業届を集めて、繭を買いに行ったら、日付を入れて白紙委任状がついていますから、その場ですぐ廃業させてしまうというような、まことに驚くべき、営業の自由を侵害するようなことまでやりまして、団協による以外は販売をする道を封じてしまう、そういうことをやっている。一方、製糸の方では、争って買うのはいやですから、地盤協定をやりまして、地盤協定を破ってお隣の製糸の地盤から繭を買いますと、その買った繭は、その製糸にやらないで、全部県でもって調整繭に取り上げてしまうというような、実に乱暴きわまることを従来やってきたのです。ことしの春繭で需給関係がそういうふうになって参りますと、また再びそういう問題が起ってくるわけです。この団協の指導をするということは、根本の考え方としては非常にいい、理想的に運営されれば非常にいいと思うのですけれども、今のような形でいきますと、かえって農民の利益を不当に圧迫する。そうして独禁法違反を官庁なり製糸協会なりがあえて犯しているような形が出てくるわけです。ですから、そういうことはやはり避けて、適正な繭の相場が出るならそれを出させていって、そこらを基準にしながらこの事業団の運営なり団協を正しくやっていくということでないと困ると思うのです。ですから、そういう点で、今でもまだ結論が出ない係争中の独禁法違反事件というものは山梨や埼玉やほかでもあると思うのですが、これらの点については明快な見解を今お出しになっておかないと困ると思うのです。ですから、その指導要領をお出しになるに当っての当局考え方、団協と独禁法についての考え方一つ明確にしていただきたいと思うのです。
  92. 大澤融

    大澤(融)政府委員 お話のございましたのは、埼玉県、山梨県の独禁法違反の問題で、係争中でまだ公取の結論が出ていないようであります。そこで、具体的な問題としては、たとえば、今御指摘のあった、繭糸業者から白紙委任状をとるというようなお話がございましたが、具体的な問題については、公取の判断が出ませんと、何とも申し上げられませんけれども、今御指摘がありましたように、春繭の取引、今度の春は去年あたりと違って二、三年前のように繭が買えなくてみな買う方の側が競争するというような事態も予想されますので、根本的には、今も御指摘になりましたように、農業団体、養蚕農民の団結がかたくなって、これが外に対して大きな力を出すというやり方、その方向で指導するのが筋だと思います。しかし、今までやりましたような私どもの産繭処理方針というような考え方を毎年出して、独禁法との関係も考えながら、そういう方針を県に指導して参ったのでございますが、ことしは今申されたような事態も予想されますので、先ほど申し上げましたが、近く四月の初めには、そういう県の関係の方々とも、具体的な問題でもありますので相談をして、どういう処理をして参るかということは、そのときにはっきりきめて参りたい、こういうふうに考えております。
  93. 高田富之

    ○高田委員 それは一つ早急にはっきりしていただきたいのですが、この点一つだけ、——繭糸業者が免許を受けて営業をやっておる繭買い、こういう人たちが買い出動をすることに対しては、免許をしているのですから、いろいろな名目をつけてこれを制約したり禁止したりしてはならない、そういう人が買い出動することは自由である、従って、反対側から言えば農民が売ることは自由だ、こういう点はいかがですか。
  94. 大澤融

    大澤(融)政府委員 繭糸業者の制度が蚕糸業法に基いて制度的にあるのでありますから、これが買い出動をするということが取引全体から考えていろいろ問題があるということならば、またそのときにいろいろ考えなければならぬと思いますけれども、プリンシプルとしては、これが買い出動するということは、そういう制度が前提としてあるのですから、そうしてはならないというような結論にはならないだろうと思います。
  95. 高田富之

    ○高田委員 そうすると、当然のことですが、それを無理にある協定によって一つの県の繭糸業者が買い出動してはならないような取りきめや何かをした場合には、これは当然独占禁止法に違反をする、こういう結論になると思うのですが、いかがでしょう。
  96. 大澤融

    大澤(融)政府委員 具体的な問題になりませんと、どのような場合にどういうふうになるのか、独禁法違反かどうかということは、今ここで結論を申し上げるわけには参りません。
  97. 高田富之

    ○高田委員 この点につきましては、ただいま公取の方にももうだいぶ長い話ですが出ておりますので、至急に一つ農林省としても御検討願いまして、はっきりとした指示を出していただきたいと思います。また同じようなことが起ると大へんな混乱になりますので、早急に一つ農林省の明確な態度を御表明願いたいと思います。公取の方は少しのんびりしておりまして、独禁法緩和の形勢もあるものですから、あまり仕事をされないことをもって建前としておるのではないかと思うので、農林省の方の指導を早く出してもらわないと混乱がくる、また繰り返されるおそれがありますから、この点はお願いしておきます。  それから、ちょっと問題は違うのですが、大臣一つお尋ねしたいのです。片倉製糸の社長の安田さんは日製協の会長でもあるわけです。これにつきまして、最近株主総会でいろいろ経営内容等について議論がなされておるわけでありますが、特に農林省と非常に関係のある問題として見のがし得ないのは、片倉製糸の大宮工場の試験所に、試験研究のために使うべき補助金といたしまして国庫補助金が出ておるわけでございます。これを相当何カ年かにわたりまして実際は大宮工場の試験所において研究用にこれを全然使っておらないので、これは社長さんの責任問題だというようなことがだいぶ問題になっておるのですが、これは全然根拠のないことでありましょうか、多少そういうことがあったのですか。
  98. 大澤融

    大澤(融)政府委員 ただいま御指摘の問題は、詳細のことを今私記憶しておりませんけれども補助金を出して仕事をやらしたことがありますが、調査の結果、実際はそういうふうに使われていなかったという事件がございます。そこで、これは補助金適正化法に従って処置をいたしまして、返還を命じて、すでに返還されたと思います。
  99. 高田富之

    ○高田委員 返したというのは、いつごろですか。
  100. 大澤融

    大澤(融)政府委員 確かな時期は私は覚えておりませんけれども、私が局へ来てからですから、去年だと思います。
  101. 高田富之

    ○高田委員 金額ではおよそどのくらいですか。
  102. 大澤融

    大澤(融)政府委員 ちょっと金額を覚えておりませんから……。
  103. 高田富之

    ○高田委員 何年間にもわたっていたものですか。
  104. 大澤融

    大澤(融)政府委員 二年ぐらいにわたっていたと思います。詳しいことは調べましてお答えいたします。
  105. 高田富之

    ○高田委員 そういう事件は今度が初めてなんでしょうか。このほかにも同一のようなケースがあったということを耳にしているのですが……。
  106. 大澤融

    大澤(融)政府委員 私が知っている範囲では、これ一件です。ほかには私は聞いておりません。
  107. 高田富之

    ○高田委員 神奈川県の川口製糸ですか、何かこれは名目は違う助成金らしいのですが、そんな事件があったように聞いておるのですが、そういう事実はありませんか。
  108. 大澤融

    大澤(融)政府委員 ちょっと今記憶ございません。
  109. 高田富之

    ○高田委員 実は、こういう問題がほかにもあるというようなことを耳にいたしたので、私自身も正確なことは全然調べておりませんが、農林省は監督官庁で、厳格に一つそういう点はやってもらわないと、各種の補助金がたくさん出て、使い道がどこにどうなっているかわからぬというようなことでは困るのです。  それから、この片倉へ出ておる金額はあとでお調べ願いたいのですが、それがあとでわかって、そうして返還を命ぜられるというようなことは、相当大きな問題です。しかも製糸協会の会長ですから、そういう問題があったときに、これがただ返したからというようなことで、蚕糸局に協力をして業界全体を指導していかなければならぬような団体の責任者であってそのまま不問に付されているというようなことは、どうも何かおかしいものを感ずるのですが、政治的に折衝でもあってそんなことになったのでしょうか。大臣一つ……。
  110. 三浦一雄

    三浦国務大臣 実は今の問題は私は初耳でありまして、今局長の方で詳細調べて善処したいというのが答弁の要旨でございますが、これに関する問題は、これは軽々に看過し得ないと思います。それでございますから、今までの各種の調査あるいは研究等につきまして、生糸のことですから、受託調査等をしておるかもしれません。あるいはまた助成金等も出しておると思いますが、これらは近いうちに全部検討調査させまして、その成果を全部洗いざらい見たいと思います。同時にまた、もしそれに非違がありますならば、信賞必罰でもって厳正にこれを直す。それから、同時に、今御指摘になりましたが、安田さんが製糸協会の会長をしておるのですが、そういう事態については、役所の処分を待たずに御善処される場合もありましょうし、また、必要に応じては、役所の方から勧告といいますか、さようなこともあるかもしれませんが、この事態の推移は一つ当局におまかせ願いたい。われわれの方では厳正にいたしたいと思いますから……。
  111. 高田富之

    ○高田委員 それでは、一つ具体的に事実を調査されまして、それに対する農林省の処置といいますか、態度、考え方というものを一度この委員会で明白にしていただきたい、こう思います。これにはいろいろなデマ、——デマであるか真相であるかわかりませんが、いろいろなことが言われておりまして、実際は相当政治的な問題になって、そうして会計検査院あたりと農林省で折衝をしてうまい工合にやったというようなことまで言われておるわけであります。ですから、事は重大なので、ぜひ一つ大臣も責任を持ってこの問題についての明快な態度を表明していただきたいということを要請しておきます。  私はこれで終ります。
  112. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 関連質問を許します。中澤茂一君。
  113. 中澤茂一

    中澤委員 このごろの入札の利益金だね、あれは総額で幾らですか。大体三億前後と言われているんだけれども。もう計算は済んだでしょう。
  114. 大澤融

    大澤(融)政府委員 御質問趣旨がよくわからないのですが……。
  115. 中澤茂一

    中澤委員 このごろの払い下げ入札のときの……。
  116. 大澤融

    大澤(融)政府委員 利益金と申しますと、どういうことでしょうか。
  117. 中澤茂一

    中澤委員 浮いたやつがあるでしょう、二億九千か三億……。
  118. 大澤融

    大澤(融)政府委員 春繭を百二十万貫ばかりやったあれですか。利益金と申しますと、どういう意味ですか。
  119. 中澤茂一

    中澤委員 差益があるでしょう。
  120. 大澤融

    大澤(融)政府委員 それは加工費です。先ほども栗原先生の御質問がありましたが、個々の落札価格が幾らかということは、公開の席では申し上げにくいことでございますが、非公開なりあるいは先生のお手元へなりお示しをして差しつかえないかと存じます。
  121. 中澤茂一

    中澤委員 それは非公開でもいつでもいいが、あなたは一度報告すると言って来たけれども、おれは都合が悪くてだめだったが、入札による差益額が大体総額で二億なんぼ、ちょっとよそからの情報では二億九千万円、約三億前後差益額が出ておるというようなことを聞いたんだが、どうなんです。総額でいいんですよ。総額は言ったっていいでしょう。間組の一万円入札まで言えと言うんではないのです。
  122. 大澤融

    大澤(融)政府委員 これは、午前中申し上げましたように、平均価格にしますと一万四千円くらいになります。予算との差額をおっしゃっていると思いますが、予算が三万一千五百円ですから、その差額一万七千円、これの百二十万貫ですから、約三億ぐらいあるかと思います。もし御必要があればあとで計算してお届けいたします。
  123. 中澤茂一

    中澤委員 それは約三億前後といわれているのですが、それは一体財政法上から言ってどういうことになるんでしょうか。その入札による差益額はどういうふうな処理方針になるんでしょうか。
  124. 大澤融

    大澤(融)政府委員 これは、保管会社が引き取るワクの中の問題ですから、今まで百億とか五十億とかワクがあって、そのワクの範囲内ならそのまま政府が来年になって肩がわりをするわけですから、ワクを全部使い切らんで残れば、それだけ、政府が引き取るときは、特別会計での財政支出というか、借入金で措置するといいましょうか、その金が少くて済む、こういう問題だろうと思います。
  125. 中澤茂一

    中澤委員 それは法文の第何条で——総額のワクでそれをやって果していいものかどうか、僕もよくわからぬのですが、総額のワクがそれだから差益を総額のそれで処理していいものかどうか、ちょっと疑問に思うのだが……。
  126. 大澤融

    大澤(融)政府委員 そういうことじゃございません。保管会社は繭代に加工賃を入れて糸にしてこれだけになったというもので、その金額で特別会計が引き取るわけですから、別に問題はないと思います。
  127. 中澤茂一

    中澤委員 問題はないわけですね。なければいいです。
  128. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 ただいま審査中の両案のうち、繭糸価格の安定に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について他に質疑はございませんか。——なければ、本案に対する質疑は終了いたします。  次に、本案討論に付しますが、討論通告もありませんので、直ちに採決いたします。  繭糸価格の安定に関する臨時措置法の一部を改正する法律案賛成諸君の御起立を求めます。     〔総員起立
  129. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 起立総員。よって、本案原案通り可決すべきものと決しました。  なお、お諮りいたします。ただいま可決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  130. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  次会は来たる二十四日午前十時三十分より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後二時四十八分散会      ————◇—————