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1959-03-19 第31回国会 衆議院 内閣委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月十九日(木曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 内海 安吉君    理事 岡崎 英城君 理事 高瀬  傳君    理事 高橋 禎一君 理事 平井 義一君    理事 前田 正男君 理事 飛鳥田一雄君    理事 受田 新吉君 理事 木原津與志君       今松 治郎君    植木庚子郎君       小金 義照君    纐纈 彌三君       始関 伊平君    綱島 正興君       富田 健治君    橋本 正之君       船田  中君    保科善四郎君       石橋 政嗣君    石山 權作君       中原 健次君    八木  昇君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         国 務 大 臣 伊能繁次郎君        国 務 大 臣 山口喜久一郎君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         法制局次長   高辻 正巳君         総理府総務副長         官       佐藤 朝生君         行政管理政務次         官       濱野 清吾君         総理府事務官         (行政管理庁行         政監理局長)  岡部 史郎君         防衛政務次官  辻  寛一君         防衛庁参事官         (長官官房長) 門叶 宗雄君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君  委員外出席者         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  行政機関職員定員法の一部を改正する法律案(  内閣提出第九一号)  防衛庁設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第九四号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出第  九五号)      ————◇—————
  2. 内海安吉

    内海委員長 これより会議を開きます。  行政機関職員定員法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を許します。受田新吉君。
  3. 受田新吉

    受田委員 今回提案されております行政機関職員定員法の基本的な改正点は、提案理由で伺っておるのでありますが、私がここでただしたいことは、公務員制度改正と相待って、定員法の本格的な改正をしたいという御希望があったわけですが、公務員法制度の方に手をつけることができなかったので、今回はこうした暫定的な、事業量増大等に伴う定員の増加という事務的な法案にすぎなかったという結果になるわけでございますか、いかがですか。
  4. 岡部史郎

    岡部政府委員 ただいまの受田委員お尋ねにつきまして率直にお答え申し上げますが、ただいま御審議をいただいております定員法改正案は、三十四年度各省庁の予算に伴う事業計画に即応する、必要な人員の改正に関する部分だけでございまして、これをまっ先に御審議いただくということは政府既定方針でございます。従いまして先般来問題になっております定員外職員制度根本的改正に伴う定員法改正は、公務員制度改正に関する国家公務員法等改正と一緒に、初めから別に出す予定でやっておった次第でございまして、決して後の方の計画が間に合わなかったから、暫定的に今の定員法を御審議いただく、こういうつもりではございません。別々にやるつもりでございます。
  5. 受田新吉

    受田委員 今度の改正案の中に、いわゆる定員外職員定員化ということがはかられていない、恒久職員についての今回の措置は、定員外職員の中に、定員化したものはない、それを一つお伺いします。
  6. 岡部史郎

    岡部政府委員 今御審議いただいております定員法改正は、原則といたしまして三十四年度予算に伴う定員の純増、純減建前といたしておりますので、原則としてはございませんけれども、運輸省に関する限り、一部分昨年年度の途中でとりあえず予備費をもって、航空管制関係のごく臨時のものでございますが、それにつきましては、三十四年度定員法改正の際直すという予定のものにつきまして若干手直しがございます。それだけでございます。
  7. 受田新吉

    受田委員 若干の手直しであっても、それは高級職員定員化ということが一部考えられておることになるわけです。  私は、きょうはごく基本的な問題だけお尋ねして、質問を後に譲りたいと思うのですが、政府においては、行政機関職員事務量というものと定員というものとを十分勘案して、臨時職員のような性格を持ったものを取りやめるのが根本的な方針ではないかと思うのです。いわゆる常勤職員といえども、あるいは常勤的な臨時職員といえども、その仕事中身一般行政職職員と全く同じような形のものである。そういう点においてわれわれは問題を提起しているわけであって、政府に根本的なそうした事務量定員というものとの公平な均衡を保たせる努力を欠いておるがゆえに、こういうことが毎年繰り返されておる、かように私は指摘したいのです。それは十分御反省になっておられますか。
  8. 岡部史郎

    岡部政府委員 ただいまの受田委員の御質問の趣旨につきましては、政府側といたしましても根本的には同意でございます。そういう方針で検討しております。ただ付加して申し上げたいことは、臨時職員常勤職員と同じ仕事をしているから、常勤職員恒久職員の中に入れてくれろ、こういうことなんでございますが、臨時職員定員内の職員と同じような仕事をすることは、これは当りまえのことなんでありまして、大体恒久的な仕事のうち、臨時に付加されたものをするわけでございますから、仕事の内容が同じなことは当りまえで、ただそれが臨時の分量でありますから、恒久的な職員にしないということでございますので、御了承いただきたいと思います。
  9. 受田新吉

    受田委員 現に定員化されておる職員、昨年定員化された職員においても、一例をとりますと、あなた方の区別している一つの問題として、一般行政職としての俸給と、それから事業費としての給与を出す定員とがあるわけですね。こういう区別はどこから出ておるわけですか。
  10. 岡部史郎

    岡部政府委員 行政管理庁建前といたしましては、各行政機関における恒久的な職員がどれだけあるべきかということを正確に定めるのが定員法建前でありまして、これが財政上の措置から給与費あるいは事業費から出されましょうとも、それは職員身分関係には何ら影響ございませんので、そういうお尋ね措置がとられましたとすれば、それは全く財政上の措置に出るものでございますので、私の方からは何ともお答え申し上げかねます。
  11. 受田新吉

    受田委員 同じ行政機関勤務する職員が、人件費としての給与事業費としての給与を受けるという区別を受けていることは、人権尊重の上からは適切でない、こういうお考えをお持ちになりませんか。
  12. 岡部史郎

    岡部政府委員 これは戦前におきましては、官吏の給与というものは人件費から出る。雇員、用員給与物件費から出るということで、これは非常におもしろくないことではないかというような批判がありまして、すべて給与というものは統一して人件費一本から出すべきものであるというような取扱いになって参りましたわけで、私もその方がいろいろな意味からいってよろしいと思っております。ただある特定の事業を遂行するために事業費というものをまとめて見る。その中において人件費はどれだけであるか、物件費はどれだけであるかということを別個に計上することは、これは純粋に財政技術上の見地にとどまると思いますので、今やっておりますことはいいか悪いかは別問題といたしまして、戦前人件費物件費区別して、物件費の中から給与を出すという建前とは違うと思っております。
  13. 受田新吉

    受田委員 これはまた後に具体的に御質問をすることにいたします。私はきょうは要点だけの、基本的な問題だけをお尋ねしておきます。  官営事業請負事業というものとを分けて仕事考えてみましょう。こうした仕事の分類において、将来政府としては官営事業一般請負事業というものとに対する職員立場をどういうふうに考えていかなければならぬかということについて、見解をお示し願いたいと思います。
  14. 岡部史郎

    岡部政府委員 定員算定に当りまして、公共事業形態を直轄、直営を基礎にして考えるか、請負基礎にして考えるかでだいぶ違って参ると思います。それで人を節約し仕事合理化する上におきましては、なるべく請負の形の方がよろしいのではないか、そういう方が定員算定の上においても合理化できるのではないかというような考え方が進んでおる次第でございます。
  15. 受田新吉

    受田委員 用員が不足する対策として、臨時職員というものを今後も考えるかどうか、これもお聞きしておきます。
  16. 岡部史郎

    岡部政府委員 先ほど受田委員お話通り臨時職員制度というものは、これは根本的に考え直さなければ、人事の適正なる処遇及び適正なる定員化ということは困難だと思いますので、これは根本的に考え直す必要があると思っております。
  17. 受田新吉

    受田委員 公務員制度改正定員法改正というものに、もっと真剣に取っ組んで検討される必要がある。しかもそれはゆるがせにできない、早急にやらなければならない問題であると思うのです。昨年せっかく二万有余人定員化をはかったのに、ことしは単にそうした定員外職員定員化の方法を除いた一般的な増員に伴う通常措置としての取扱いしかないわけですね。ここにあなた方の熱意の欠けている点があるわけであって、公務員制度がよし改正されなくても、今年度に引き続いて来年度もその定員化行管としてははかるという努力をなぜなさらなかったか、この問題をお答え願いたい。
  18. 岡部史郎

    岡部政府委員 臨時職員の合理的な解決ということは、公務員制度及び定員制度合理化以上に非常に大事な問題でございまして、政府としても全力をあげて緊急にやらなければならない問題と考えております。現在のところは臨時職員のうち、常勤職員としては三万七千名をかかえておるわけであります。そのほかに常勤的非常勤として三万人前後をかかえておる。これらの問題の解決は、なるべく早く真剣に根本的にやるべきものと考えております。
  19. 受田新吉

    受田委員 早急に根本的にという対策樹立の御計画を承わったのですけれども、現に定員外職員としてりっぱな勤務をしている、一般職員と変らない正常な勤務をしている職員を三十三年度定員化をはかった以上は、三十四年度にもこれを継続事業として定員化をはかるというのは、当然あなたの方のお仕事じゃないですか。ことしだけなぜ除外するか。公務員制度の方は別としても、この問題は考えなければならぬと先般あなたから御答弁いただいておったわけです。それとお話が食い違うおそれがありますから、もう一度……。
  20. 岡部史郎

    岡部政府委員 この点は根本的に御了解いただきたいと思うのでございますが、昨年六万六百人おりました常勤労務者のうち、公務員制度がどのようにでき上りましても、間違いなしに公務員の中に、恒久的な公務員の中に入るものといたしまして、二万七千名を手直しとして定員化いたしました。従いましてその残りのものにつきましては、公務員制度の根本的な改正と同時にやるということで、私ども作業中なのでございますが、現在のところ、総理府総務長官の手元において、公務員制度改正も準備中なのでございますので、それと歩調を合せまして、この問題は根本的に解決したい、こういうような運びになっております。
  21. 受田新吉

    受田委員 その運び方がわれわれは問題があるというわけです。さしあたりことしどうするかという問題に迫られているわけであって、その根本的な問題の解決、そのことを考えていたならば、本年度定員化されない、来年度に残されていく一般職員常勤職員に対して、非常な不安をこれは与えることになるわけなんです。当然ことしも新しい定員化がはかられると期待している職員に対して、報い方としては適切でない、かようにお考えではありませんか。
  22. 岡部史郎

    岡部政府委員 いろいろ御意見がおありかと思いますけれども、昨年は非常な御配慮によりまして六万六百のうち、二万七千の定員化を行いましたわけで、この定員化の分というものは、とにかく臨時職員のうち、常勤化したもので、職務責任のかなりはっきりしたもの、あるいは、言葉をかえて申しまするならば定員の中に入っていれば、もう事務官や技官に当然なれるようなもので、おくれているために、定員化されないためになれないというものをもっぱら、あるいは主として救ったような次第なのでございまして、そういう意味におきまして、あとの残ったものにつきましては、これは公務員制度の根本的な改正を待ってやる。その根本的な改正というものは政府全体としては本年度、すなわち三十四年度におきまして、法案提出を期待して作業努力して参っているような状態でございまして、さらにもう一言申し上げまするならば、この定員化ということは非常に困離な手続を伴うものでございます。せっかくの御審議によりまして、昨年の六月一日から定員化実施されましたけれども、これは御承知通り二万七千名でございますが、この作業がなかなか進みませんで、昨年の十一月ごろにはまだ一万五、六千の定員化が残っていたような状態でございますので、そういうことを見合せながら定員化作業を私どもも続けていきましたような次第で、非常に継続的な、時間のかかる作業だということを御了承いただきたいと思っておりますが、何しろこれは根本的な大事な問題で、今となりましては制度改正を待って、この臨時職員の問題を解決する以外にないと思っております。
  23. 受田新吉

    受田委員 あなたは非常に作業がむずかしいと言っておられるのですけれども、それはわれわれとしても了解する点があるわけです。しかしあなたの方と公務員制度調査室のやる仕事とは違うわけなんです。つまりあなたの方は定員の問題を担当しておられるわけなんです。従って担当の違うところのやっておることとにらみ合せてやるといっても、なかなか思うようにいかぬ点がありますので、あなたの方だけで今用意されている定員化構想を伺い、そしてその現在どこまで来ているかの中間報告をしていただいたらと思うのです。もっと具体的にしていただきたい。
  24. 岡部史郎

    岡部政府委員 事情の許す限り具体的に申し上げたいと思いますが、この定員化構想公務員制度改正と相待って結びついて行うものでございまして、別々に作業をするというものではございませんので、具体的に申しますると、公務制度調査室行政管理庁行政監理局とが中心になりまして、人事院あるいは大蔵省というようなところ及び各省と連絡しながらやっておるような状態でございます。その根本的な構想は、これは受田委員お尋ねに根本的には合致するのでございますが、要するに職員を使って仕事をさせます以上は、その処遇が適正であり、また働く人間が安心して誇りを持って働けるような地位身分とを与えなければならない。そういう意味におきましては、常勤労務者であるとか、常勤的非常勤職員であるとかいうような不安定で、しかも事実上継続するような地位仕事をやらせておくということは、いかなる音意味においてもマイナスである。従ってこういうような制度は根本的に廃止しなければならない。またこのような制度を設けて、それが正規の職員補給源になっておるようでは、メリット・システムに基く公務員制度というものが崩壊していくという危険がある。そういう二重の意味におきましても、まず根本的には常勤労務者常勤的非常勤職員制度というものは廃止してしまう。従ってそういうものの発生源を断つことによって初めて適正な定員というものを確保する義務と責任が出てくるのだ、こういうのが根本的な構想でございます。
  25. 受田新吉

    受田委員 常勤労務職員という制度を廃止する、こういうお考えのようです。これはあなたの方としては非常にけっこうな御意見で、これを実現してこそ初めて公務の円満な遂行が可能であると私も思います。それをいつごろまでに実施に移すかという一応の構想だけは持って仕事をしていかなければいけないわけですが、早急にというめどをどの辺に置いておられますか。公務員制度の問題とあなたの方のお仕事との関係もありますが、一応あなたの方の行管としてはそれをいつごろに実施したいと、目標を置いておられましょうか。
  26. 岡部史郎

    岡部政府委員 作業手続といたしましては、私ども希望を申し上げまするならば、この通常国会に所要の法案提出いたしまして、その完全なる実施は三十五年の四月一日から移りたい、こういうのがその手順に関する希望でございます。
  27. 受田新吉

    受田委員 来年の四月一日から実施目標にして、今から作業に邁進するあなたの御決意を伺ったわけです。そうしますと、あなたの御希望を実現する場合には、来年の四月一日からは常勤職員は全部定員化された職員として新発足できる。かように了解してよろしゅうございますか。
  28. 岡部史郎

    岡部政府委員 今の常勤労務者あるいは常勤的非常勤という制度が廃止される、そして各行政機関には必要にして適正な定員が確保される、従いまして常勤労務者のうちその定員の中に入れる必要がないようなものは排除されるということになるわけであります。政府といたしましては不必要な、あるいは公務員らしくないものを公務員として雇う必要はございませんので、こういうものは排除されると思いますけれども、どっちみち基本的にはお話のような点になると思っております。
  29. 受田新吉

    受田委員 そこで問題が起るのです。排除する対象になる人は、現在採用されている職員対象になる場合があるのかどうか。
  30. 岡部史郎

    岡部政府委員 それはあると思っております。
  31. 受田新吉

    受田委員 そうすると排除される職員はどういう立場に追い込まれることになるのでありますか。
  32. 岡部史郎

    岡部政府委員 排除される種類もいろいろだろうと思っております。仕事がなくなりまして排除されるもの、全く民間的な仕事に移されてなくなるようなもの、あるいは職務種類によりまして今度は労働三法あるいはPWの適用を受けるような形になるもの、いろいろあろうかと思っておりますが、しかしその点につきましては、政府全体といたしまして決して無理をしない、関係各省の実情に応じまして、関係各省との十分な話し合いの上で各方面意見を聞いて処理するつもりでございまして、御懸念のようにやみくもにそういうものをぶった切るというようなつもりはございません。その点は十分配慮いたすつもりでございますから、言葉意味とは別に、そう御心配はないと思っております。
  33. 受田新吉

    受田委員 御心配はないといっても、その該当職員には大へんな心配です。一生の運命を支配するものである。だから軽々しく現在おる職員の中で適当でないものは今度の定員化対象外に残されて、それぞれ適切なところへ追いやるというような形にお考えになっていただくことは重大な問題だと思います。今幾つか具体的な転換方面を御指摘になりましたが、どれを一つとってみましてもわれわれとしてはまことに悲しい立場に追い込まれるおそれがある。ここを一つあなたはお考えにならなくちゃいかぬと思うのです。定員化されなかった職員とこれから先の仕事というものをにらみ合してみて、これから先新しく増大する事務量に対応して、現在常勤であるいは常勤的非常勤職員として勤務している職員を完全に救うという対策を、あわせ用意する必要はありませんか。
  34. 岡部史郎

    岡部政府委員 ただいまの受田委員お尋ねにつきましては完全な配慮をするつもりでございまして、根本的な考えにおきまして全くお説のようでなければならぬと思っております。私が先ほど申し上げましたのは、これは当然のことなんでございますが、実は常勤労務者常勤労務者といいまして、その種類が千種万様なのでございまして、中には床屋であるとか料理人であるとか、いろいろな種類のものまで入っておりますので、そういうものまで公務員制度の切りかえに当って、当然に定員化されるというようなことは予想されないのでございます。そういう非常に乱雑な形態になっておりますから、そういう点はあくまで排除しなければならぬ。しかし必要な職員、それから業務量がふえる面に向っての適正な職員転換配置というようなことは、十分考えなければならぬと思っております。
  35. 受田新吉

    受田委員 私ここでちょっと定員法関係して国公関係質問をしなければならなくなったのですが、長官、私はあなたにこの機会に御所見を明らかに願いたい点が数点あるわけです。  第一点は、あなたは行政管理庁長官として行政機構簡素化能率化、こういうものを提唱され、今国会においてこれが根本的な改革法案提出する、それは衆議院予算を仕上げる段階までであると言明されたわけですが、いかがなことになっておるか。今日依然として出ておりませんか、いかがですか。
  36. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 お話通り行政機構改革につきましては、すでにわが党において選挙公約をいたした問題でもありますので、鋭意これが成案を求むべく努力をして参りました。審議会答申案もすでに御承知通り出ておりますので、今受田君からお話通り衆議院予算案が通過したころ、多少国会もひまになるから、その機会提出すべく努力をして参ったわけであります。しかるにただいまのところ率直に申し上げて自治庁を省昇格する問題、それから港湾行政一元化においては大体成案を得ておりますが、なお港湾行政一元化の問題においてまだ各省間において意見の食い違った点がありますから、これを調整中であります。また許認可事項の問題、あるいは世間でいうミドル・マネージメントというような問題についてもあわせて提案したい考えでありますが、今期国会においては間に合うかどうか、この点は疑わしいのでございまして、でき得べくんば港湾行政一元化自治庁の昇格問題だけは何としても提出すべく、今日なお努力しておるような次第でございます。
  37. 受田新吉

    受田委員 あなたのお気持としてはできるだけ早く出したいと思ったが、思うようにならなかったということでありますし、今ある程度具体的にお話も出たわけですが、国防省設置という問題も出ておる。これは防衛庁長官から猛烈な希望が出ておりますが、これらはどうなっておりますか。
  38. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 この問題はおそらく今期国会に提案することは至難であろうと存じます。
  39. 受田新吉

    受田委員 行政審議会答申をもとにしてこれを尊重するということでございますが、行政審議会答申中身をずっと読んでみるといろいろなことが出ておるわけです。特に行政機関事務能率化をはからせる、そうして必要な審議会閣議決定のようなものをやめて法律化するというような措置をとって、つまらぬものは整理する、こういう要望などがいろいろ出ておるわけですが、これらに対して根本的な対策を早くあなたは打ち立てなければならなかった。一月にはこの答申が出ておる、それが二月一ぱい作業をされても、三月初めには出なければならなかったはずですが、なぜもっと真剣に取り組まれなかったのですか。自治庁自治省昇格を今から国会に出したって、国会はもうじき終るのですから、間に合いませんよ。どうも行管長官としてはあなたはきわめて不手ぎわをされたと思う。山口長官勤務評定ははなはだ怠慢である。あなたは長官に就任された直後、記者団行政機構根本的改革をやると大みえを切られたことは御存じでしょう。いかがですか。
  40. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 お説の通りでございまして、私の考えとしては、今の自治庁の昇格問題も、国会の会期がまだ五月まであるのでありますから、この点は一つ、もし提案いたしました暁においては、すみやかに慎重審議を重ねていただきたいとなお希望を捨てていないわけであります。今の各種審議会の整理につきましても、各省間と大いに折衝をいたしておるようなわけであります。何代か前からこの行政機構改革ということは叫ばれて参りまして、私の先輩諸君が私の前任者として相当努力をされた跡を顧みますると、なるほどこういう点に非常に困難があったということをつくづく感じさせられるものがありまして、全く私としてはその不敏を嘆いておるようなわけであります。
  41. 受田新吉

    受田委員 自民党は選挙公約で、行政事務簡素化能率化をはかり、その責任態勢を明らかにするということをうたっておると思うわけです。  そこで次にお尋ね申し上げたいことは、今回出されたいろいろな設置法関係法案をごらん下さい。行政の簡素化になっておるのでしょうか。各省てんでんばらばらな要望です。われわれは今、せっかく政府が提案されたことだし、政府に対しましてもできるならば協力したいという親心で、今回できるだけこれに賛意を表する方へわれわれは共鳴したわけです。われわれはあなた方に対して非常な親心を発揮しておるのです。普通ならば大なたをふるわなければならぬ法案なんです。それだけ努力して協力していきたいのでありますけれども、今顧みると協力し過ぎた。あまりにも各省設置関係法案通り過ぎた。われわれとしては多少ざんきにたえない点がある。けれどもあなたに明らかにしていただきたいのは、今回の各省設置法案の最後の裁定をされたのはあなた方だろうと思うのです。閣議へ出される前にあなたの方が手を入れられたわけです。そのときにこういう無統制な要求——あなたの言われた運輸省の港湾行政、厚生省の国民年金、こういうようなものだけでなくて、先ほど言われたように全部総花式に各省が出していることに対して、なぜもう少し整理して統制をとり、公約の行政の簡素化ということと能率化ということをはかる努力をされなかったのでしょうか。実力は副総理と一般が目しておる、副総理の席にすわっておられるあなたが——総理は副総理を置かぬと言われたけれども、事実あなたは副総理の席にすわっておられるのです。副総理と自他ともに許すあなたとして、総理にかわる御答弁を伺いたいと思います。
  42. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 各省設置法はお説の通り私の方で一応検討を加えて、その後において閣議に提出して決定されておりますが、それぞれの各省の理由、また今受田君のおっしゃられた行政の簡素化とそれから行政に対する親切を増すということはおのずから別個なものであって、行政を完全に運営するためには、今提出されておる各省の設置法案はどうしても必要欠くべからざるものと認めて、私の方でこれを承認し閣議決定を受けた、こういうことになっておりますので、私は現在提出されておる各省設置法が、行政をいたずらに複雑化するために提出されたものとは思っておりません。
  43. 受田新吉

    受田委員 そういう解釈でいけばどのようなことでもできるのです。それぞれ仕事がふえたから定員をふやし、役職をふやしていくということになってしまう。だからここで一つお尋ねしますが、行政の簡素化というのは、一体課をふやしたり部をふやしたり、そういうことをやっても簡素化になるのかどうか。
  44. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 行政簡素化の大きなねらいとしては、たとえば許可、認可のごときは、願書が出てからあるものは六カ月、あるものは、二年、三年もそのまま放置されておるというようなこともございますので、こういった面を局長決済にするとかあるいは課長決済にするとかいうことで、いわゆる人民のために便利、簡素に行政をとり行うということでありまして、たとえばそういう面において行政をきわめて簡素にして、人手のかからぬようにするということが大きなねらいだと思っております。
  45. 受田新吉

    受田委員 部課の統合ということをはかること、これは簡素化の具体的な事例だと私は思うのですが、いかがお考えでしょうか。
  46. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 部課の統合ということももちろん簡素化一つでありましょうが、また中には業務が煩瑣になって部課を分けなければならぬこともございましょうし、それはそれぞれのケースによって親切に統合または分離する、こういったことはやむを得ないことであろうと思っております。
  47. 受田新吉

    受田委員 事務量と人員ということもこれは大事な仕事になってくる問題ですけれども、そこの合理的基準というのは一体どういうところに置いておられるのか、お示しをいただきたいです。
  48. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 これは定員法において示されておることであります。
  49. 受田新吉

    受田委員 定員法にどういうふうに示されておりますか、お答えを願いたい。岡部さんでけっこうです。
  50. 岡部史郎

    岡部政府委員 業務量定員との関係については、これはいろいろな標準をもちまして具体的にやらなければならぬものでございまして、行政事務が多岐多端にわたっておりますので、一つの標準によってやるというわけにはいきませんけれども、たとえば郵便関係の郵便配達の業務であるとか、あるいは簡易保険の伝票整理の業務であるとかいうようなものは、それぞれできるだけ正確にストップ・ウオッチを持ってその業務量をはかって、必要な定員算定するというようなこともありますし、それからまた教職員のごときは学級数であるとか、あるいは講座であるとか研究科目であるとかによって決定することがございますし、いろいろでございますが、非常に思索的判断的、調査的な業務から、機械的、現業的な業務に至るまで種々さまざまでございますが、できるだけいろいろな手段をもちまして合理的な業務量に基く定員算定ということを考えております。
  51. 受田新吉

    受田委員 その算定の具体的な事例を資料として御提出願いたい。たとえば今回国民年金の業務を取り扱う年金局設置に伴う定員とその事務量というものを算定された基準というものを一つあわせてお示し願いたい。
  52. 岡部史郎

    岡部政府委員 これは膨大な資料がございますから、お手元に差し上げることにいたします。
  53. 受田新吉

    受田委員 いま一つ山口さん、責任態勢の確立ということはあなたの党のりっぱな公約なんですが、責任という言葉は一体どういうことになるのですか。責任の所在はどこにあるのかという問題を今からちょっとお尋ねしてみたいのです。あなた方国家公務員責任というものは一体何に対する責任か、こういうことを一つお答えを願いたい。
  54. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 責任ということはやはり主権者に対する責任であって、いわゆる人民に対する行政官庁としての責任と、こういうことだろうと思います。
  55. 受田新吉

    受田委員 名答です。そこははっきり御認識されてのことに基く次の質問になるわけですが、あなたは行管長官として各省の行政管理、監察の任務を持っておられるわけです。従ってここに問題が起るのは、責任の所在を明らかにする行政が行われなければ、行政権の国民に対する責任は果されないわけです。ところが最近行政機関職員の中に、はなはだしく国民に対する責任を汚している人も出てきているわけです。特に高級職員にそれが多く見られるわけでありますが、そうした際に、たとえば部下の一般課員が非常なあやまちを犯した、国民に対する責任を果さなかったという場合の責任は直接の誤長ですか、部長ですか、あるいは局長ですか、次官ですか、大臣ですか。
  56. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 もちろんそれは各省の所管大臣にあると思います。
  57. 受田新吉

    受田委員 ところが、今せっかく大臣が責任者だとおっしゃったけれども、とかく世間でいわれているめくら判というのがありまして、判こを押すことで責任の所在をどうするかが議論されているのですよ。事実問題として一般職員の犯した問題について責任を負うているのは、せいぜい担当の係長から課長くらいです。その責任が大臣に及んで大臣がやめたということを近く聞いておりません。いかがでしょう。
  58. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 それは犯した罪とか、あるいは犯したあやまちの軽重によって、おのずからその大臣がみずから責任をとる、こういったような問題は生じてくるのだろうと思います。
  59. 受田新吉

    受田委員 それは軽重によってと言うけれども、多久島事件のごときはこれは重大な責任ですが、農林大臣が責任をとったということを寡聞にして聞いておりません。いかがでしょう。
  60. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 私の就任前の問題でありますので、これにつきましてはどういう処置をとられたか、よく調べてお答えいたします。
  61. 受田新吉

    受田委員 東京電力の石炭納入にからまる汚職事件、これらについては責任関係のある課長などがずいぶんたくさん犠牲を受けて処分されている。民間会社などにおいては、こういうふうにたくさんの人々が責任をとって職を退く、他に転ずるとかいうようなことになっている。ところが公務員の場合にはそれが非常にずるくなって、高級職員責任というものはいずこにありやということを世間に疑わしているわけです。行政組織法の最初の一、二条のところに、その責任の根拠が、内閣の統轄のもとにおいて行われるということが書いてあるわけですね。そうすると、最終責任は総理大臣ということになると思うのですが、これはあなたとしてはどういうお考えですか。
  62. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 もちろん最終責任内閣総理大臣でございますが、やはりその犯した罪、あやまちの軽重によって、またその個々の事犯によっておのずから判断さるべきものであって、一一小さいことまで大臣がやめておったのでは、大臣は何人おっても足らぬことになりますので、その点は、現在までとられた方向、さらにこれを引き締めて、一つわれわれとしても考える必要があると思います。
  63. 受田新吉

    受田委員 行管として調査されて責任の所在の明らかにされた事項として、遠くに及びませんでも、吉田内閣成立以後における課長以上の責任のとられた事件を資料として御提出願いたいのです。  もう一つは、ある特定の事件についての責任をどこに置くか、軽重ということを長官は仰せられますけれども、そういう責任の所在の基準というものは一体どこがきめられるわけですか。
  64. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 責任の所在の基準ということは、やはり従来の慣行によらなければやむを得ぬと思います。
  65. 受田新吉

    受田委員 慣行——責任態勢の確立ということを言うておられる岸内閣として、慣行によってやるというのでは、これは責任態勢の確立にならぬと思うのです。責任態勢の確立ということは、責任をとるべきものはとるというはっきりした基準を設けるというようなところまで進んでいかなければならぬと思うのですが、いかがでしょう。
  66. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 受田君のお説の通りだと思いますが、遺憾ながら現在においてはそうなっておりますので、この点は十分研究する必要があると思います。
  67. 受田新吉

    受田委員 研究の必要がある問題をもう一つ提起します。あなたはきょう副総理として、岸総理にかわる御答弁を願いたいことが一つあるのです。それは内閣の責任という大きな問題になってくるのです。これは行管長官としての立場でなく、あなたは国務大臣として今閣僚であられるわけですから、閣僚としての判断を伺うわけですよ。自民党が生命を賭して戦うと約束した警職法、党の運命をかけ政府の運命をかけて出した警職法、これがつぶれたというときの責任のとり方についてお尋ねしたいのです。党の運命をかけ政府の運命をかけるような重大法案が、世論の前に惜しげなくつぶされた場合の責任の所在はどういうところにあるとお考えですか。
  68. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 私は警職法がつぶれたとは思っておらないのでありまして、やはり社会党その他の意見を尊重して、いわゆる政治的な考慮のもとにこれが提出を見合わせたとか、あるいはこれが廃案たることを承認するとか、そういったことは政治上あるのでありまして、何も法案にこれがつぶれた場合には責任をとるとは明示されてないのでありますから、そこは政治的に判断していかなければならぬ、こう思っております。
  69. 受田新吉

    受田委員 その政治的判断で、党の運命をかけ政府の運命をかけたような法案がつぶれたということになれば、これはもう国民の信頼にこたえてない政府であり与党であるわけなんですね。そういう意味において、政治的な責任、道徳的な責任、こういうような問題が出てくるわけなんです。今の内閣は責任をとっておらぬ、ちっとも反省の色がないところを見ると、政治的な責任とか道徳責任は皆無の政党である、あるいは政府であると了解してよろしゅうございますか。
  70. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 警職法の場合のごときは、やはり受田君の属せられる野党の強き主張というようなものを取り入れたのでありまして、諸君はまたこれは国民の声だと言ってわれわれを強く追及されたわけであります。政府が国民の声をいれ、そして政治上の必要以上の苛烈な摩擦を避けて円満なる行政を運営していくということは、これは政府の良識といわなければならぬ、私はかように考えます。
  71. 受田新吉

    受田委員 そこへ踏み切った御答弁という点においては、山口さんもよほど人間の幅のある人だということが言えると思うのです。あなたのお人柄としていい言葉が出たわけですが、そういうふうにいけば、これは非常に円満ですけれども、しかし責任政治という立場からは、責任のある法案を出してつぶれたそのときには、野党に協力したのだから円満におさめたのだ、こういうようなナマズを押えるようなことを言っておったのでは、責任政治の確立はできません。あなたは、そのときの法案をつぶした責任者として、青木国家公安委員長くらいは当然引責辞職をさすべきじゃありませんか。これは総理にかわって、国務大臣として御答弁願いたいのですよ。かっての杉原防衛庁長官は、国防会議法案国会審議ができなかったという特殊の事情でさえも職を退かれたのです。こういうことをあなたは考えられると政治責任というものの本質というものは十分おわかりになられると思うのです。もう一度私の所見に対する御見解を伺いたいと思います。
  72. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 責任もやはり大小がありまして、閣僚の任免までは、私どもの方で御答弁するわけに参らぬと思います。
  73. 受田新吉

    受田委員 あなたは国務大臣として、もしあなたが警職法担当の国務大臣であったとしたならば、そういう問題にぶつかったとしたならば、あなたは今回閣僚として関与しておられるのでありますから、どういうお気持を持たれるか、これはあなたは御答弁できます。
  74. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 それはそのときどきの状態によるのでありまして、仮定の問題でもありますから、吉田茂さんの言葉をかりて言えば、仮定の問題については私を追及されることはきわめて迷惑であります。
  75. 受田新吉

    受田委員 あなたは行管長官として国会で約束をして、作業に従事したが仕事ができなかったというような長官でいらっしゃるのですね。行管長官としてははなはだ心もとないことなのです。副総理という貫録があるからこそあなたのお顔が持てておる。こういうことになると、私は問題が起ると思う。  そこで、あなたにもう一つお尋ねしておきたいことは、かつて鳩山内閣は、行政機構簡素化を提唱されて、部課の整理をされた。それは三十一年であったと思うのでございますが、せっかく部課の整理をされて、二割程度でしたか一割でしたか、ちょっと記憶を今しておりませんが、その整理計画を発表された。ところがそれからもう一年したうちには、もとの方へさっさと戻ってきた、こういう事態があったのです。いかに行政機構簡素化という問題が困難であるかということを物語ると思うのです。あなたはそれを御記憶していただいておると思うのです。そこで行政機構簡素化というものは、部課の整理統合というようなことは困難であって、認可許可事項の適切な簡素化というような問題だけにしか、あるいは審議会の整理縮小ということにしか手がつけられない、こういうことになるとあなたはお考えですか。
  76. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 草木を育てるのでも、強度の剪定をいたしますと側枝が飛び出してきたりするのでありまして、吉田内閣、鳩山内閣において強度の剪定を加えられた結果が、現在定員外の定員等があるというような事態を生じておるのではないかと思っておるのでありまして、私らは行政の簡素化とかあるいは行政機構改革ということはなすべきであるが、それが直ちに人員の整理というようなことには、もう現段階においては至難なことであって、行政改革即人間の整理ということは、考え方としては古いのではないか、むしろ定員定員定員に繰り入れて、新たなる定員法のもとにおいて、いま一ぺん締めくくりをする必要があるのではないか、私はこう思っております。
  77. 受田新吉

    受田委員 私は定員の問題に触れているわけではないのです。部課の整理統合ということで、今お尋ねしているわけなのです。従って幾つもある課の中で一つを整理するというようなことを、せっかく鳩山内閣は実行されたのです。ところがそこにおる課長というポストは、適当に審議官とか調査官とかいう名前をつけてもらって、一応定員のワクだけは確保されてあるわけですから、定員の方では問題になっていないのです。その部課の整理統合という問題を考える行政簡素化というのが、現状では不可能である、あなたはかようにお考えになっておるかどうかをお尋ねしておるのです。
  78. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 これは先ほど御答弁申しました通り各省において、あるいは部課の統合を必要とするところもあれば、あるいは部課を分離して新たなる任務をこしらえるということが必要なところもありましょうし、それは個々の問題について、行政管理庁としては、きびしくこれを監督しこれを判断するという考えでございます。
  79. 受田新吉

    受田委員 きびしく判断しただけで、実行に移さなければだめなんですが、ところが今回は部課がどんどんふえている、こういうことでは、きびしく判断しても部課の統合ということは、行政簡素化の現実の問題としては不可能であるということを物語っておられる。たとえば仕事の済んだ引揚援護局関係のある部課がなくなるというのは、これは当りまえの話ですが、普通の場合においては部課の整理統合は行政簡素化の題目としては困難である、かように解釈してよろしいか。
  80. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 それは仕事の量が、時代の変化とともにふえるところもあれば、また減るところもあるのでありまして、その事業の量によって、部課を増さなければならぬ面もありましょうし、あるいはすでに任務が完了して仕事が少なくなった部課は、これを整理統合するというような必要を生ずるでありましょうし、それはその問題ごとに解決していく以外に方法はないと思います。
  81. 受田新吉

    受田委員 そういう考え方だから、日本の行政機構改革の根本的な問題の解決ができていない。それぞれ個々の問題に触れて検討をきびしくして結末をつける、こういうような考え方では全く行政機構の根本的な統合の原理とか統合理念というものはないじゃないですか。私はそれを非常に憂えている。アメリカではフーヴアー行政委員会のようなはっきりした実力を持った機構があって、それが行政機構の全般の問題に非常な勢力を持って、実力を持って臨んでいる。こういうような事例をわれわれはイギリスにも見ることができるわけです。そういうことを考えてみたときに、日本の行政管理庁というお役所は、行政審議会という諮問機関はあっても全く用をなさないし、その場当り的な行政機構改革に終始しておられるとしか判断できません。副総理が行管長官になるということはまれなことなんですから、そういう時期に勇敢に統合原理といいますか、そうした基準というようなものをはっきり持った、フーヴアー行政委員会のような実力を発揮する機関として、あなた方が立ち上るところの決意が必要じゃないでしょうか。
  82. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 私は不敏ではありますが、私の行管長官就任以来、私の部下の諸君が全くこの乏しい予算の中で、旅費にも恵まれないというような状態の中で、ほんとうに国家行政の改善のために努力し、あるいは各省を監察しておる姿を見ると、私は国の行政機構の確立のためには全く必要なる、必要以上の役所であると思いますし、私は予算的にも皆さんの御協力を得て、いま少しくこの行政管理庁の機構が他のいかなる省にも優先して拡大し、確立していかなければならぬと思っておるようなわけでありまして、私自身は不敏ではありますが、行政管理庁としてはその任務に十分のことを尽しておる、こう思っております。
  83. 受田新吉

    受田委員 私は行政管理庁職員の方々が精励恪勤していることはよく承知しております。役所をのぞいても熱心です。地方の行管局にしてもそうです。私はそのことを申し上げているのじゃないのです。アメリカのフーヴアー行政委員会のような強い強い実力を発揮して、その行政委員会のツルの一声でどの役所も黙り込むというくらいの実力を持つ行管でありたい。その指導理念というか、そうした原則を確立するお仕事長官にあり、また岡部さんのような幕僚にあるわけです。最高の責任者たちがはっきりした原理を打ち立てて、行管職員に指示を与えるときに、そこにおのずから実力の発揮できる行政の基本が生まれてくるわけです。今のような、各省に対するにらみがちっともきいていない、どの省を見てもお山の大将になりたいような人ばかりがそろっているものですから、みんな各省とも言うてくるわけです。官房長を置くといえば、みんなが置くようになる。置いていないのが行管と法務省程度になってきている。そこにあなた方の機関がはなはだ弱いので、副総理のようなあなたのような方にこの際がんばっていただかないと、こういう問題に対して統合原理というものが発揮できない。私はそれを非常に悲しむのです。長官、あなたの任を重くして命軽しというくらいの御決意で、もう少し根本的にお考え直しはいかがですか。下の部下の職員の話じゃないのですよ。
  84. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 御忠告ありがとう存じます。御意見を体して、さらに一つ魯鈍にむちうって御趣旨に沿うよう努力いたします。
  85. 受田新吉

    受田委員 私の希望をあなたがいれていただいておるようですが、それがどういうふうに具体的に現われるかを私どもは今から見守っていきたいと思います。  そこであなたにもう一つ。かって私はあなたに、官庁の職員勤務について上級公務員の問題を申し上げたことがあります。承わって直ちに督励をするということでしたが、その後すでに三カ月になんなんとしておると思いますが、経過報告を願いたいと思います。
  86. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 私としては、閣議においても一再ならずこのことは申しておるわけでありまして、相当各省からいろいろ申されますが、私としては受田君にお約束したことは実行しておるのであります。ただそう一気に長年の慣行が改正されるとも思われませんので、さらに努力を続けていきたいと思います。
  87. 受田新吉

    受田委員 私は最後にあなたに定員法関係する質問をちょっとしておきたいのです。先ほど岡部さんから御答弁いただいたのですけれども政府は、このたび事情あって公務員制度改革案が出なかったために、定員外職員定員化という問題が本格的にできなかったということを答弁されたのです。しかし岡部局長のお説によると、来年の四月一日からは完全に定員化をはかりたい、常勤職員というものは皆無にしたいという意思表示が今あったのですが、これは非常に私としては誠意ある御答弁であると思っておるわけです。しかし来年四月一日からそれをはかるというならば、よし公務員制度改革案が出なくても、定員化をはかる問題だけを分離して法案の中へ織り込むことは可能ではなかったか。三十三、三十四、三十五年度職員の定数において一万五千ないし二万ずつ定員化をはかるということになれば、三カ年計画でこれが終るわけなんです。さしあたり今年度のうちに、今度の法案の中に、定員外職員定員化公務員制度改革とは別に昨年に引き続き実施するという意味で、せめて一万なりと一万五千なりと、あなた方の方で具体的な改正案を出してほしかったと思うのです。これが出ておらぬというところに非常なさびしさを感ずるのですけれども、これはあなた方御相談を受けたと思うのでありまして、こういう問題が具体化されることは望ましいことであるとお考えであるかどうかを伺いたいと思います。
  88. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 公務員法改正を待って今年度提出する予定はいたしておったのでありますが、遺憾ながら公務員法改正法案提出されなかったわけであります。われわれとしては率直に申し上げまして、きのうも農林大臣その他の関係大臣と連絡をとりまして、何とか三十五年度を待つまでもなく、今受田君の御意見通り、今年も少しでも許される範囲において定員に繰り入れるよう、しばしば大蔵大臣とも折衝いたしておるわけでありまして、私はまだ三十五年度でなければならぬとまでは思っておりません。まだ努力する余地がある、こういうふうに考えております。
  89. 受田新吉

    受田委員 この国会におきましても、公務員制度改革ができなくても、各省別に定員化をはかりたいということは、いろいろな委員会などでも関係閣僚から発言されていることなんです。従って公務員制度改革の問題が片づかなければ定員化をはからぬということは問題があるのであって、定員化の問題は、行管独自の見解で、従来の経緯にかんがみて、年次計画的に実施さるべきではなかったか、かように私は思うわけです。従ってこの点が今回の改正案を拝見して非常に遺憾に思うわけです。いかがお考えでしょうか。
  90. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 私は一方には行管長官であると同時に北海道開発庁の長官で、現業の職員をたくさんかかえておりまして、片方の北海道開発庁においては特に必要を痛切に感じておるようなわけでありますので、幸いにして二つを兼ねておる私としては、何としてでもなおこれ以上努力を続けていきたい、こう思っております。
  91. 受田新吉

    受田委員 ちょうどあなたが今おっしゃった通りを三カ月前に言われたことがあるのです。御記憶いただいておると思う。その長官をいただいておるから、定員化の方は公務員制度改革とは別な何かの方法でなされるであろう、現場を抱いておる長官を兼ねておられる副総理のおられるこの機会にと、みんなが期待しておったわけですが、さっぱりこれが出ておらぬのです。あなたの公約はいつも違ってくるのです。これは予算関係のない問題です。常勤職員事業費の方から出すようになっているのです。私はその点さっきついたのですが、一般人件費と別に常勤職員を扱っているのですから、定員化をはかっても事業費の中から出すようになっているのですね。そういう非常に不愉快な予算の立て方をされていることを私は今指摘したわけですが、その一般事業費でまかなわれるような形になっている職員定員化をはかるのは、予算の上においてはちっとも影響はない、そういうことになりますね。ちょっとお答え願います。
  92. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 厳密に予算の上ということになりますと、やはり項目を移動したりしなければなりませんが、私は大蔵大臣には率直に、君の方の腹かげんには一つも影響はないのだから、脳溢血にかかる人がちょいちょいはな水をたらすとかからぬらしいから、地震と同じで、来年一緒にと言っておったら大ゆれにゆれるから、小出しに一つことしもやろうじゃないか、こう言って毎日のように現在なお交渉をしておるわけでありまして、今国会中に何とか一つ目鼻をつけたいと、なおほんとうに努力しておるようなわけであります。
  93. 受田新吉

    受田委員 非常に頼もしいことを今お聞きいたしました。大臣、ほめてあげます。あなたは大蔵大臣佐藤氏を、佐藤君、君やれと、あなたの方が副総理格である佐藤氏を子分のようにしてあごで指示しておられるという点は、私は非常に頼もしさを感じましたが、事実大蔵省が今までこの問題にがんばってきたと私たちは了解します。従って予算の上においては何ら変更なくして、常勤職員定員化をはかられる道があるわけなんです。もちろん常勤的非常勤立場の人は別ですが、そういうことにおいても、あなたの方としても、さしあたり常勤職員の切りかえということは可能であるということになれば、今国会のうちにおいてもとあなたが今言われた言葉に私は非常に意を強くしたのであって、私たちこの定員法が今国会の一番最後に通るようにしてもいいんですから、これが五月二十日ころに通って四月にさかのぼって実施ということで、そのころにあなたの御返事を待って定員化をはかる方法もあると思いますが、これをお待ち申し上げても希望が持てましょうか。望みなきにあらずか、望みなしか、もう一度伺いたい。
  94. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 私自身その望みを捨てておりません。
  95. 内海安吉

    内海委員長 石山權作君。
  96. 石山權作

    ○石山委員 あなたは北海道開発庁長官を兼任されて、受田委員の言い分を聞けば非常に実力者であって副総理格だ、こうおっしゃっておるのですが、私もその通りだと思う。事北海道に関する限りは人員の配備を見ても、あなたは自分のところだけはちゃんとやっておる。これは実力者でなければ自分のことだけでもやれないのが現状ですから、自分のところだけでもえらいと思う。それから例の石炭手当も御自分のことだから、あなたは閣議で大あばれにあばれて、そこだけでもまた半トン分多く取ろうというような御努力をなさっておられたと私は想像するのですが、公務員制度定員の問題、あるいは行管等から見た場合に給与を自分のところだけやったら、大へんでこぼこになってしまってみっともないということになりませんか。特に給与の場合は——人員の場合は必要だからといって目をふさげばふさぐことができると思うのですが、給与の場合御自分の力だけを過信して、そこで何かちょっとやったと仮定すれば、これは全般に現われてくるのです。そういうような場合にあなたはどういうふうに処置を今とっておられるのですか。
  97. 山口喜久一郎

    山口国務大臣 北海道は御承知通り積雪寒冷の地帯でありますし、北海道の公務員諸君が石炭の消費量という問題は直接生活に響くことでありますので、この問題は北海道独自の問題であって、これは他の官庁の諸君とはおのずから別個の待遇を受くべきものである、私はかように思っております。その他給与の面においては北海道だけが独走したり、あるいは著しく優遇されたというようなことはおそらくないのではないかと思っおります。
  98. 石山權作

    ○石山委員 北海道独自だけということですと、北海道帝国でも建設されるわけですか。北海道だけが零下五度になるのじゃないのです。青森においても盛岡においても零下五度になるし、雪も降りますよ。ですからそういう給与という問題に関してはやはり北海道開発庁長官という立場ではなくて、行管という立場に立って見ていただくということでないと、これはやはり問題が起るのじゃないかと思うのです。おそらくあなたの方の仲間の中でも、長官の独走に対してはいろいろチェックする面があるのではないかと思うのです。私は今の場合こうしろとかああしろとかいうのじゃないですが、そういう声があると聞いているものですから、給与というものはその地域だけで問題を見ようとすれば、全般に対して影響が非常に多いのでございますから、十分注意をされてこの問題を解決していただきたい、行管立場としてやっていただきたい。零下何度になるのは東北にもたくさんあります。雪の深いところはあなたも知っておる通り、長野だって新潟だって福井だって雪がうんと降るのです。北海道帝国をお築きなさるのならば別でありますが、そうでない限りは給与というものは独立しないのだというようにお考えを願って、処理していただきたいというふうに私は望んでおるものであります。  次に公務員制度が再検討されておるわけですが、私はやはり公務員制度が再検討される時期に来ておると思っております。ただここで聞いておきたいことは、きのうあたりの防衛の問題等について、憲法がそのつど解釈が変っていくというふうな、奇妙な現象が起きておるわけなんです。これらについて公務員のいわゆる身分、権限というふうなものを、この場合やはりおのおのが検討しておく必要があるのではないか、私はこう思うわけです。公務員というものはある面から見れば、ただそれがサービス機関のように見えますけれども、私はそれも半面だと思います。サービス機関としての任務というものは半面だと思うのでずが、もう一つ強い国家権力の代行者である、こういう私の考え方は違うのでしょうか。皆さんが公務員制度をおやりになるときに、公務員というものは一体何か、こういうことを考えながら公務員制度改正を行わんとしておりますが、私の今言ったような考え方は違っておるわけですか。
  99. 佐藤朝生

    ○佐藤(朝)政府委員 ただいま公務員身分、分限についてのお話がございましたが、われわれといたしましても公務員が国民全体の奉仕者であり、またただいまお話通り行政権力の一部をになっておるものでございますから、その分限、身分等を厳正にしなければならぬことは当然のことであると思います。
  100. 石山權作

    ○石山委員 国家権力の代行者としての一つの権威を持った身分、それと同時にサービス機関としての国民に奉仕するという立場、これは両立しておると思うのですが、今の公務員制度を見ますと、サービス機関としての服務規定の方が非常に強いのではないかというふうに思うわけです。特に私なぜ服務規定が強いかと言うと、いわゆる私たちの基本的人権とかなんとかいわれておる政治の問題とか労働運動の問題とか、こういうものが公務員法によってきちんときめられておる。それから一つの慣習としてお役所に入るときは、お前は何政党を支持するかというようなやり方、これは本人が申し述べようが申し述べまいが、あるところでは身元を調査して共産党員であれば、あるいは積極的な社会党員の活動家であれば、試験が通っても入れないというようなやり方をやっておる。こういう事実はございませんか。
  101. 佐藤朝生

    ○佐藤(朝)政府委員 ただいまお話の点は、公務員法におきまして、暴力をもって国体を変革する団体に属しておる者は、公務員になる資格がないと書いてあるだけでございまして、そのほか入るときに何政党を支持するか、そういうことはあり得ないと思います。
  102. 石山權作

    ○石山委員 そうするとあなたの言うことは、今暴力行為をもって日本の国体、国家機構をば変革するという政党が現実にあるということを言っておるわけでありますか。
  103. 佐藤朝生

    ○佐藤(朝)政府委員 お答えいたします。ただいまのは公務員法にそういうように規定がございますので、ただいまそういう団体があると申したわけではございません。
  104. 石山權作

    ○石山委員 あなたの御答弁の語尾があいまいで私よく聞き取れなかったのですが、そういう点はやはりはっきりしていただきたいと思うわけです。それからもう一つ公務員制度改正する要素として、公務員が国家権力の代行者である、私はこう申し上げましたが、その意味から見ていわゆる公務員の権利擁護、あるいは給与あるいは定員、こういうものが三つ重なって初めて身分が守られるのではないか。ただ給与だけ高くても人員が非常に不足であるとか、あるいは給与も人員もそれぞれバランスがとれているけれども、非常に個人的な思想の問題まで立ち至ったような法律を作られる。そうすればそれもまた公務員にとっては幸福なことではない。今の公務員制度考えられている中身のうち、どれを一番動かそうとしているわけですか。公務員の義務ですか、あるいは公務員の権利ですか、あるいは定員給与というような考え方ですか、どこを一番中心にして今問題を研究していられるか、その点を一つ……。
  105. 佐藤朝生

    ○佐藤(朝)政府委員 公務員制度改革の問題につきましては公務員制度調査会の答申がございまして、その後この答申に基きまして種々の総理府において研究しております。われわれ昨年総理府長官就任以来もいろいろ研究しておりますが、ただいまのところわれわれの考えております公務員制度改革の問題は、人事行政機構の問題と大体公務員の範囲の問題、先ほどからの定員の問題と関連があります範囲の問題、この二つの問題にしぼって実は研究している状態でございます。
  106. 石山權作

    ○石山委員 範囲といいますとこういうことになるのですか。民間でいえばこういう事例がある。社員というのは私らでいえば公務員でしょう。それから準社員、これは常勤でしょう。それから席のない常に浮動性のある、直用といいますね、こういう労働者。これは公務員の場合は非常勤職員だと思うのですが、その範囲というのは常勤までの範囲を考えているのでありますか。それとも現在席のある人員の想定のもとで問題を考えているのか範囲というのはどこをさしているのか。
  107. 佐藤朝生

    ○佐藤(朝)政府委員 公務員の範囲と申しますのは、ただいまお話のございました通り定員内の職員、それから常勤職員、すなわち常勤労務者、それからその以外の非常勤職員の問題、その三つの問題につきまして、そのうちどれだけの範囲を一般職に残すか、あるいはそのうちのどれだけの範囲を特別職にいたしますか、それからそれについての処遇をどうするか、そういうような問題として考えております。ただいまお話常勤職員のみならず、非常勤職員の問題につきましても同時に研究の対象として考えております。
  108. 石山權作

    ○石山委員 私は公務員制度を論ずる場合に、政府が労働行政によって、賃金によってもうけを得ようなどというあさましい考えを起したならば、決して行政は上らぬと思う。今のいわゆる公務員常勤、非常勤というやり方からすれば、これは民間の営利会社と同じものの考え方ですよ。そういう面がございませんか。私はそう思っています。実に国はあさましい搾取をばいわゆる国家権力の代行者におくめんもなくやっておるじゃないか。そしてそのものを前面に押し立てて、お前は国家の権力の代行者だから官紀をちゃんとしなければならぬ、何々もちゃんとしなければならぬという服務規定をわんさと与えている。そういう現象が起きていると私は思うのですが、あなたはどういうふうに考えておられるか。結局常勤や非常勤の場合、特に非常勤の場合などは搾取のはなはだしい対象になっておるじゃないですか。常勤の場合もそうでしょう。年限によっては五年以上たっても公務員になれない。試験に通ってもなれない。むしろ公務員試験を通った人よりも、その仕事に対しては熟練度の高い非常勤の方々が相当いる。そうした場合、公務員になれないとするならば、その非常勤の方の能力を十分に活用させながら、実際与える賃金と身分の保証は果していないではありませんか。だから私はいやみたらしく言うのですが、国は営利会社のような、労働力を搾取するような、公務員を搾取するようなやり方をやっているのではないか。しかしこれはやむを得ない現象だ、どうしてもやむを得ない現象だというなら、その現象はどういう理由なんです。説明していただきたい。
  109. 佐藤朝生

    ○佐藤(朝)政府委員 ただいま非常勤職員の問題のお話がございました。非常勤職員の間にも、お話通り常勤と同じような勤務を行い、また職務も同じようなものがあるのでございます。こういうものは職としてつかまえましたときに、定員職員と同じような職であれば、やはり定員職員と同じような処遇をしてもいいのじゃないかというふうに考えておりますが、ただその非常勤のうちでどういう職員がそれに当りますかは、十分研究してみないといかぬと思います。
  110. 石山權作

    ○石山委員 この公務員制度考える場合、定員法公務員を擁護する法律になっているかというと、私は初めは、おそらくある意味では擁護の面がかなりあったと思うのです。けれども最近はこの定員法というものは非常に膠着状態になって、運用の妙を失なってきて、むしろこれはお役所の方でも不自由を感じている面があるのじゃないか。もちろん非常勤常勤の方々は非常に困ると思っているのです。そういう意味では——施行された当時の事情はいろいろあると思う。しかし今の現実において、公務員法の中の定員法というものは、労使双方、国家と公務員をば縛りつけてしまっているというふうに私は見ているのですが、そういう現象はありませんか。
  111. 佐藤朝生

    ○佐藤(朝)政府委員 お話通り定員法は、定員に掲げたものが身分の保証を受けるという点がございます。公務員擁護という点もございますが、定員法ができまして以後はいろいろな事情から、常勤職員あるいは非常勤職員というようなカテゴリーができまして、定員職員と同じような職務を行い、また定員職員と同じような勤務形態を持っているものができましたので、こういう人たちが定員内の職員と同じような仕事をしているという点につきましては、定員法がその後いろいろな事情で行政の実態にそぐわない点があったのではないかと思います。その点で、二、三年前から常勤職員等の定員繰り入れの問題が起ったのではないか。また最近そういう声が非常に高くっなたのではないかと思いますので、その点につきましてはやはりある程度定員職員に入れた方が、私どもとしてもいいのじゃないかと考えております。
  112. 石山權作

    ○石山委員 私はあなたと論議をこれ以上続ける時間もございませんから、今後の研究課題としてこういうことを一つ研究していただきたい。たとえば公務員制度の中では、今までは守られる部門よりも守るという服務権限が非常に強い。しかもその服務権限の中で看過できない点は、やはり思想の自由、政治活動の自由、それとともに強調さるべきは、今の公務員制度の中の定員法の問題です。こまかく言えば、今度の国民年金とからんだ恩給の既得権の問題等、いろいろ複雑な問題があると思う。そういうような経済の面をまず一応切り離しまして、法の制定するところの一つの権限の問題として、この問題を私たちは今後とも質問を申し上げたいのでございますから、一つ十分研究していただきまして、もし事前にわれわれが研究する資料等があれば配付していただいて、問題に時間をかけないように、わずかな時間でお互いが了解し合えるように、私は資料の提出をもあわせてあなたに希望してこの問題は終ります。
  113. 内海安吉

    内海委員長 暫時休憩いたします。午後二時より再開することといたします。     午後零時十一分休憩      ————◇—————     午後二時三十分開議
  114. 内海安吉

    内海委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。石山權作君。
  115. 石山權作

    ○石山委員 私資料要求について政府当局にお願いがあるのです。これは議事進行に大いに協力したいという意味も含めてお願いするわけですが、大ていのところは各省で——特に私、大蔵と農林なんかにおった場合には、その省の係担当官が研究題目を一生懸命勉強して、本などを出して、その本をば資料として配付したりするぐらいに、資料を多く出していただいた。ですから質問の要旨も非常にある点は節約されて、生きた分だけが論議されるといううまみがあったわけです。防衛庁はそういう点ではどうも創立されてから年限が浅いためか、あっちこっちひより見ばかりしているのかわからぬけれども、資料が少いように私は思います。特にきのう、おとといの論議なんか聞いてみますと、非常に行き違いがある。行き違いがあるということは、やはりどこかに資料の不足などがある意味ではあるのではないか、私はこういうふうな気持もいたします。私たち論議を進めるに際して、特に防衛庁予算が多いのでございますから、国民の血税を有効に使うという意味で、慎重に審議を進めたいわけです。その意味では、まだ兵器に対する資料というものは出ておりません。普通のところは黙っていても出してくれるのですが、要求しないから出さないと思いますので、御要求をいたします。私の言うのは武器、たとえば小は小銃、大は軍艦——軍艦は砲を搭乗させておるわけですが、その砲門の大きさ、性能、こういうふうないわゆる武器の性能、単価、その数、製造月日、製造会社、こういうふうな武器の一覧表を出してもらいたい。それからもう一つは自動車のようなもの、これは武器でないといえば武器でないかもしれませんけれども、われわれとしてはやはり大切なことですから出してもらいたい。端的にいえば武器の性能等を含めたところの、自衛隊が持っている国家の財産を私は知りたいのでございます。これはかなり大きな資料になるかもしれません。しかしこれは防衛二法の論議を進めていく上にはぜひとも必要なものでございます。防衛二法を早く上げたいという与党や政府の気持があるならば、早急にその資料を出していただきたい。私は火曜日ぐらいまでに出していただきたいと思いますが、もし資料が出ないとすれば、私は性能等について一々質問をして、それを確かめておきたい。そうでないと話は進まぬと思うのです。そういう点について政府から一つ御答弁をお願いいたしたい。
  116. 伊能繁次郎

    ○伊能国務大臣 自衛隊の装備に関する兵器その他の資料等については、詳細な御報告が出ていないということでございますので、ただいまお尋ねになりました点等をしんしゃくしまして、できるだけ資料を明確にして、できるだけ早く提出いたしたいと存じますが、来週の火曜日というお言葉にすぐ間に合うかどうですか、そのようにできるだけ努力して御期待に沿いたい、かように考えております。
  117. 石山權作

    ○石山委員 これはなるべく早くという言葉じゃいかぬと思うのですよ。たとえば新しい船をお作りになるでしょう。その船の性能を明示しないで、どうして私たちそれを作れとか、作ってよろしいとかいけないとかいう論議ができますか。もし皆さんがそんなにおっしゃるのならば私も言いますが、船というものは甲板の鉄と腹面の鉄は違うのですよ。それぞれの性能についてそれぞれみんなお互いが聞くということになったら、話は進まぬわけでございましょう。私何もいやみを言っているのではないですよ。庁として一番高いお金を自衛隊は使っているわけですから、これをやはり皆さんの言う愛される自衛隊かどうかしれないけれども、PRするというのでしょう。まず国民にPRする、その国民を代表するわれわれにPRを怠っているのではないですか。それでは私はいけないと思うのです。特に……。
  118. 内海安吉

    内海委員長 石山君、さしあたり要求したものを出してもらうことだけにてして……。
  119. 石山權作

    ○石山委員 今総理がおいでになったから打ち切りますが、あとでまたこの問題については答弁を求めます。
  120. 内海安吉

    内海委員長 了承いたしました。  では、防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案を一括議題とし、質疑を許します。石橋政嗣君
  121. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 私は原水爆その他の核兵器を含めて一切のもの、そういうものを日本国内に持ち込んでくる問題、それから自衛隊自体がそういうもので装備する問題、これが憲法上どうなるかという問題に関連いたしまして、大体三つばかりお伺いをしたいわけです。そのうち最初の二つは、すでにきのう防衛庁長官お尋ねをしたわけですが、いまだに明確なお答えをいただいておりません。従ってまずそれから始めまして、そのあともう一つこれに関連する問題を聞きたいと思うわけですが、総理は初めて御出席になっておられますので、きのう私が防衛庁長官お尋ねをいたしました質問の概要を、最初にちょっと申し上げておきたいと思います。  第一番目は、先日来伊能防衛庁長官がオネスト・ジョンのようなものならば、かりに核弾頭をつけても防御兵器であるから、日本の自衛隊が持つことは憲法上許される、こういう発言をしておられるわけであります。私はこの憲法解釈にどうも納得いかないわけです。なぜ納得がいかないかということを言う前に、まず岸内閣自体としてもどうも二年前と現在とこの問題についての憲法解釈が変ってきているのじゃないかということを指摘いたしたわけなんです。二年前というと昭和三十二年ですが、四月二十五日に当時の小瀧防衛庁長官が岸内閣の、いわゆる政府の統一見解としてこの問題を国会に対して答弁しておるわけです。その内容は、「現在核兵器といわれているものは原水爆が代表的なものであるが、その他のものも伝えられるところによれば多分に攻撃的性質を持つもののようである。そうとすればこの種の核兵器をわが国がみずから持つことは憲法の容認するところではないと考えらる。」このような統一見解なるものを岸内閣としては国会に呈示しておるわけでありはす。そういたしますと、当時と今と若干情勢が変ったとおっしゃるものの、仏はオネスト・ジョン自体、その威力なり性能なりが落ちたということは認められませんし、かえって向上しておる。にもかかわらず当時は攻撃的性質を持つものとして違憲なりと言っておった岸内閣が、二年後の現在防御的な兵器だと言って、これを違憲じゃないというふうに変えてきたのはおかしいのじゃないか、これが私の第一の質問でございますが、この点に関連いたしまして昨日の長官の答弁は、いろいろ逃げ口上を述べておられるようです。どういう逃げ口上を述べておるかと申しますと、当時核兵器というものの中にオネスト・ジョンは入っていなかった、こんなことを言われております。これでは納得がいかない。現に当時このような問題が盛んに国会で論議され、国民の関心を生んだ端緒になったのは、いわゆるオネスト・ジョンが国内に持ち込まれたという一事なんです。従って原水爆以外の核兵器といえば、まずだれでもが頭の中にオネスト・ジョンというものを置いておった時代の話なんです。そのオネスト・ジョンなるものは、通常の弾頭を装着している場合は通常兵器、核弾頭をつけている場合は核兵器ということについても、当時からはっきりと定義が下されておった。その一番身近に国内に持ち込まれておるオネスト・ジョン、核弾頭はなくともオネスト・ジョンというものが現実にあって、見た人も国民の中には現実におる。国会でも一番関心を持っておった。そのものを除いてあとの核兵器について、どうも攻撃的性質を持つもののようであるから、それは憲法の容認するところではないと言ったのだというふうなことを言っても、これは明らかに逃げ口上、へ理屈だと思う。そういうことをおっしゃることはやはり私は国会の論議、国会における発言というものについて責任を持たな過ぎるというふうに考えますので、もう少し率直にこの点御説明を願いたいと考えるわけです。それが第一番目ですが、その点からまず総理にお答えを願って、第二の問題はまたその次に今度は防衛庁長官お尋ねしたい。
  122. 岸信介

    ○岸国務大臣 憲法の解釈として核兵器と名がつき、原子兵器と名がつくものはすべて憲法違反かというと、そういうわけにはいかないだろう。いろいろ核兵器というもの、原子兵器というものも発達の道程にあるから、いやしくもそういう名が冠せられるならば、ことごとく憲法違反だということは適当ではないと思います。しかしながら現在あるところの原水爆のごときもの、もしくは多くの核兵器といわれておるところのものについては、多分に攻撃的な意義を持っているから、そういうものは憲法において持ち込みはできないものだと解釈するというのが、統一解釈の意味でございます。  そこで具体的にオネスト・ジョンはどういうふうに解釈すべきものかということにつきましては、実は最初参議院でその質問がありまして、私自身は十分研究をしておりませんので、実はそれが当るか当らないか、それでは具体的にどういうものが防御的であり、どういうものがなんであるかという質問に対しましては、私は実ははっきりした答えをしておらないのでございます。その後さらに防衛庁長官質問がございまして、防衛庁長官は私と違って、オネスト・ジョンの性能なりあるいはその後におけるいろいろな改良なり何なりというものをよく承知いたしておりますから、このオネスト・ジョンなるものについての意見国会において答弁をいたしたわけであります。しかして昭和三十二年の当時小瀧国務大臣と石橋委員、あなただったと思いますが、それの質疑応答につきましても、速記録について、私一応拝見をいたしました。しかしその内容につきましては、ところどころ十分意を尽さないところもあるようでありますが、オネスト・ジョン自体は、当時問題になった核弾頭をつけるかつけないかという問題については、それはつけないのだ。従ってこれは核兵器ではない。そしてその性能からいって、多分に防御的な兵器として日本からもアメリカに供与方を要請しているのだということを申しておりまして、当時からもはっきりした見解は——なお当時まだオネスト・ジョンというものについての十分な研究がなかったと思いますが、日本の自衛隊において研究開発のために供与を申し出ておるものの兵器の一つとして、オネスト・ジョンがあるのでありますが、それはもちろん核兵器としてではなくして、普通兵器としてのオネスト・ジョンというものを研究開発しようという意図でそういうことを言っておるのであって、これは防御的な兵器であるという見解に立っておったと思うのであります。ただいかなる意味においても核弾頭はつけないということははっきりいたしておりますし、私は今日においても日本がいかなる意味においても、核武装をしないし核兵器を持ち込みさせないという意味からいうと、核弾頭を装置したところのオネスト・ジョンも、これは入れないということは一貫して述べておる通りであります。ただ純粋に憲法の解釈論としての点は、今言ったようないきさつ上、今日においてオネスト・ジョンというものの性能から見てこれは防御兵器だ。実際上持つ持たぬは別として、これは持たないのだけれども、憲法の解釈とするならば、防御的な兵器なりとするならば、これに核弾頭を装置しても、いわゆる防御的な核兵器として、憲法上持ってはならぬと禁止されておる兵器には入らないだろう、こういうことを防衛庁長官がお答えをしたのでございまして、その間に根本的な考え方が違っておるというふうには私はとっておりません。
  123. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 先ほども申し上げたのですが、当時核弾頭をつけない場合のオネスト・ジョンは、核兵器じゃないということはもう十分に聞いておったわけなんです。しかし核弾頭をつけた場合は、核兵器だということははっきりしておるわけなんですよ。この統一見解なるものは、核兵器の場合を述べておられる。しかし核兵器については、日本では全然見たこともないわけなんで、情報に基く以外にない。その情報によれば、多分に攻撃的性質を持つものだ、こういうふうに断定しておられたわけなんです。だから攻撃的性質を持つものであるとすれば、憲法の認めるころではない、こういうような解釈をとっておられた。そうするとオネスト・ジョンが核弾頭を装着した場合というものは、攻撃的性質を持っておるものの中に当時入っておったわけです。それを入っていなかったのだと言われることに、私は問題があると思うわけです。しかし総理は先ほどから言っておられるように、自分ではオネスト・ジョンはいいとまだおっしゃっておりません。オネスト・ジョンは、憲法の容認するところだというふうには、はっきりおっしゃっておりません。これは防衛庁長官がおっしゃっておるわけです。私はこの問題をこれ以上総理とやっておると、ほかのものの質問の時間がなくなるから、あとで防衛庁長官とゆっくりやりますが、総理の御見解として、今後しっかりした固定したものを持つ意味において、誤まりなからしめる意味で私はちょっと申し上げておきますが、このオネスト・ジョンの威力というものを十分に知っておいていただきたいと思います。きのうも防衛庁長官お尋ねいたしましたが、当時の広島型の八分の一と初め言いましたが、あとで訂正して四分の一の威力があると言いました。私どもが軍事評論家等に当って調べてみましたところでも、七割程度という人もあるし、四分の三ぐらいじゃないかという人もあります。とにかくものすごい威力を持っているということです。オネスト・ジョンに今核弾頭を装着して使う場合、その威力たるや、広島型の、防衛庁で言うところでも四分の一、われわれの調べたところでは四分の三程度の威力を持っているものである。これを軽々に合憲なりなどということを口にしてはならないのではないか。私はそういう見解を持っておりますから、この点は一つ総理として頭に置いておいていただきたいと思います。あと第二、第三の質問をしていく中で、やはりこの問題が関連してきますから、まずこのことだけを申し上げておきまして、あとで防衛庁長官にゆっくり質問をいたします。  第二の質問はどういうことかといいますと、今でもこれは総理もお認めになっているのですが、攻撃的な性格を持った核兵器は、これは憲法の認めるところじゃないから、絶対にこれは自衛隊は持てませんと断言しておられます。具体的に防衛庁長官も、たとえば爆撃機、長距離ミサイルあるいは弾導兵器、こういうものは他国に脅威を与える攻撃的な性質を持っているから、憲法の認めるところではない、これは持てませんという答弁をきのうもなさったわけなんです。これは本質的にはよくないのですけれども、岸内閣の見解として一応いいこととしておきましょう。そうしますともう一つ総理や防衛庁長官が答弁しておることと、どうも矛盾するような気がするわけです。それは何かと申しますと、この間総理が参議院の予算委員会において答弁しておるのでもはっきりしておるわけですが、他国の攻撃を日本が受ける、そうした場合に攻撃する敵の根拠地、たとえば誘導弾の基地、そういうようなものをやっつけぬことには日本の防衛は全うできない、その基地をやっつけるのは合憲か違憲かという問題が出たときに、日本の陸上自衛隊などが、あるいは海上も含むのかどうか知りませんが、自衛隊員自体がその基地に出かけていって、それをやっつけるということは、海外派兵の中に入るからそれはできません、しかし他に適当な手段がなく、やむを得ない場合は誘導弾で攻撃することも、爆撃機で爆撃することもやむを得ない、合憲だと総理はおっしゃっておる。この二つの答弁は私は明らかに矛盾しておると思う。なぜ矛盾するかといいますと、いわゆる自衛権の範囲として他に適当な手段がない場合、敵の基地をも爆撃することができる、誘導弾で攻撃することができると言いながら、攻撃することができるというからさてそれでは何で攻撃するか、その武器の方を点検していったら、その武器は憲法上持てない、こういう解釈になっておるわけです。行為は合憲だが、その行為を行うために必要な武器は違憲だ、一体そんな解釈が成り立ちますか。こういう矛盾した答弁が出てくるのは、攻撃兵器、防御兵器というふうに、兵器自体にそういうものがあるかのごとく無理に分けようとするところに問題がある。使い方で違ってくるのです。それを本来武器が攻撃的な兵器、防御的な兵器というふうに分類されるかのごとく偽装するから、こういう矛盾した答弁が出てくると私は指摘しておるわけです。一体この点矛盾しないかどうか、一つ率直にお答えを願いたいと思います。
  124. 岸信介

    ○岸国務大臣 実は例に上っております日本の自衛隊の活動範囲はどこか、海外派兵はできないということに関連して、それでは外国の基地から日本に対する攻撃が誘導弾等で加えられて、どうしても日本としては海外派兵ということはできないのだから、それならば、これは敵の攻撃のままに国土が焼土に帰しても、あるいは民族が破滅しても、座して忍ばなければならぬのかというように問題を追い詰めて議論をしたときに、それは自衛権というものを持っておる場合において、そういう場合にわれわれは国が焼土に化しても、あるいは民族が滅亡しても、座して滅亡を待つという意味では自衛権というものはなかろう。そういう場合において、ほかに手段がない、そうしなければ日本の全土が焼土に化し、もしくは民族が滅亡するというような時期において、その基地を何とかしてたたく以外に日本を救う道がないというような場合において、その基地をどういう方法か知らぬが適当な方法でたたくということは、やはりこれは許されている自衛権の観念のうちに認めるべきものであろうということが、今の議論になりました趣旨であると思います。こういう意味でございますから、もちろん日本は日本の安全を保障するのに一方自衛隊を持ち、自衛上必要最小限度の実力はみずから持っていくということでやっておりますが、しかしこれだけで日本のあらゆる安全を保障する、他からの侵略を絶対に防ぐというわけにいきませんから、さらに日米の安保条約改正によりまして、共同して、日本の侵害されるような場合において、これの侵害を排除して安全を守る、こういう処置をとるわけであります。しこうして米軍は御承知通り、日本の憲法のような制約のもとにある実力部隊ではございませんで、これはいろいろな装備も持っておることでございます。従って海外に出かけていって行動もできるわけでありますから、共同してやっている以上は、われわれはこの力によってそういう事態を第一段に排撃するという処置に出ることは当然だと思うのです。しかし観念の上からいったら、自衛権においてはそういうことは一切できないのだ。領土、領空もしくは領海あるいはこれに接続しておるところの公海や公空以外において行動することは一切海外派兵になるからできないのだ。従ってそれ以外のところから日本が攻撃される場合においては、座して手をこまねいて見ておらなければならぬものだ、こうは私は自衛権の本質から言えないのではないかという意味におきまして、ああいう議論になっておるのでございます。従ってそういうごく限られた、また観念的な議論の場合におけるわれわれの回答でございますから、その場合に応ずるような武器を平素から持っておらなければならぬということはおのずから別の問題である、従って私はこの間においては矛盾はないというふうに考えております。
  125. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 平素から持っておるか持っておらないかということは、これは憲法上の問題じゃないのです。総理が常にお得意の言葉としてお使いになる政策の問題です。だから政策の問題として持たないということは十分わかっておるわけです。岸内閣は絶対持たないだろうと私は信頼もいたします。しかしそれは政策の問題で、岸内閣限りの問題で、憲法上持てるか持てないかというのは岸内閣を越えた永久の問題です。だからこそ私たちが非常に重要視するわけです。岸内閣が永久に日本の内閣であるならば、このことのみをもって安心しておれるわけです。しかしそうじゃない。そこで一生懸命心配してお尋ねをしておるわけです。明らかに今の答弁は矛盾しておるわけなのですよ。というのは、憲法の九条を思い起していただきたい。まず前段第一項において政府与党は、自衛権というものは否定しているものじゃないというふうに言っておられます。憲法で言うところの「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する。」という第一項の規定は、自衛権そのものを否定したものじゃないということを言っておられるわけです。自衛権の限界というものはどうかという私ども質問に対して、自衛権の限界というものはあるとお認めになっておるし、まず第一に急迫不正の侵略が現実に行われるといった場合、第二に他に適当な手段がないといったような場合、第三に必要最小限度の措置をとる、こういう限界がおのずからあるということを明示しておられる。これが自衛権の限界と言っておられるわけです。そこで第二項に入ります。第二項は「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」とあるが、これは自衛権を認めている以上、その自衛権行使のために必要な戦力まで否定したものではないという解釈をあなた方はとっておられる。そうしますと自衛権の限界と戦力の限界というものは、あなた方の論法をもってしても一致しなくてはならない。そうなのですね。この点いかがですか。
  126. 岸信介

    ○岸国務大臣 石橋委員の御質問を私ちょっと解しかねておるところがありますが、私どもは一項において自衛権はこれは否認されておるものではない。認められておる。従って二項においての戦力ということは、自衛のために必要な最小限度の実力を持つ場合は、それは二項で禁止しておる戦力には入ってない、そういう範囲内において実力を持ち得る。その実力をあるいは武力といい、あるいは戦力という普通の言葉で表現することは差しつかえありませんが、その場合にはいわゆる二項の戦力の範囲には入らない、こういうように解釈しております。
  127. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 結局、もっと具体的に今問題になっていることで言いますと、自衛権の範囲というものの中に入る一つの行為として、総理は、敵から攻撃を受けた、その場合に、他に適当な手段がないときには、この憲法の規定によって座して死を待つというような、そんなことは憲法は言っておらぬはずだから、敵の基地を誘導弾で攻撃したり、あるいは爆撃機で爆撃したりすることは、この憲法の自衛権の範囲として認められる、こうおっしゃっている。そうですね。そうしますと、それで認められる行為ならば、それを遂行するためのいわゆる武器というものは、第二項においても認められなくちゃならぬ。そうしなければ理屈が合わないじゃないですか。第一項で認められる、合憲だという行為を遂行するために必要な武器というものは、いわゆる第二項における禁止された戦力ではなくて、あなた方の言う合憲の自衛力の中に入る、こういう解釈をとらなければつじつまが合わないじゃないですか、こう尋ねているわけです。
  128. 林修三

    ○林(修)政府委員 今の問題は憲法の解釈の問題でございますから、私から先ほどの総理の御答弁を多少敷衍して申し上げたいと思います。  憲法第九条第一項は、自衛権を放棄しておらない、自衛権は認められているということでございます。自衛権の本質は他から侵害を受けた場合にこれを排除するということでございまして、それをいわゆる他から侵害を加えられた場合に、甘んじて、それでやられっぱなしのものではない。やられる場合にはそれを排除することが認められる。排除する方法としては、その場合の必要に応じた限度においてはこれは認められる。普通の場合、たとえば一億の国民が全部死ぬというような場合には、それに対抗する手段を認めることは、これは自衛権の本質だと思います。そういう自衛権を九条一項は放棄してないということです。  しかし、自衛権の本質はそういうことでありますが、二項は自衛のため必要な最小限度の実力を認めることは憲法の禁止しているところではないということでございまして、必要最小限度というのは、何回も御説明しておりますが、四囲の国際情勢あるいはその国の置かれた状況によってきまってくる問題でございまして、よその国が何にも軍備をしておらないのに、日本だけが大きなものを持つということは、これは必要最小限度を越えるものであります。そういうように相対的なものだと思います。自衛だけの本質からいえば、他国に数倍する実力を持つことは自衛権の本質を全うすることに最もいいことだと思いますが、そういうことは憲法九条では認めていない。これは外国では例を見ない憲法である。そういうことまでは憲法は認めているのじゃない。憲法は必要な最小限度の実力を持つということは禁止しておらないが、やはり日本の過去の経験から、日本の憲法はそういう主張を規定しておるものだ、かように考えるわけです。いわゆる自衛権の本質としてどこまでやり得るかということと、そのために必要な最小限度において持つということは、おのずから別の問題であります。必要最小限度というのは、四囲の情勢あるいは日本の置かれた環境によってきまってくる。外国に数倍する実力を持つことが自衛のためにいいことは論のないことでございますが、そういうことを憲法は認めない、かように私は考えます。
  129. 内海安吉

    内海委員長 石橋さん、総理とのお約束の時間が参りましたので、他は防衛庁長官からお聞きを願いたいと思います。
  130. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 必要以上に重要な問題ですし、お互いに静かに話しているのですから、総理、時間の許す限りおって下さい。その点お願いします。  それで今の問題、法制局長官はこじつけの名人ですが、非常に苦しそうです。あなたは今、いつも使う手ですが、憲法上の問題と政策上の問題、それを混淆しようとしていますよ。明らかに憲法解釈の問題だけ私は尋ねているわけなんですから、第一項と第二項とマッチしないというのはおかしいじゃありませんか。それでは私はあなたに聞かないで総理にお尋ねしますよ、理屈として。第一項で認められる自衛権というものが、あなた方の解釈としておのずからどこかに限界があるわけでしょう。その具体例として私は敵基地の爆撃とか、総理の言葉をそのままおかりしますと誘導弾による攻撃とかいうことまでは、これは最悪の場合ですが、ほかに方法がない場合ですけれども、とにかく自衛権の限界だ、憲法の第九条第一項で認められている、ぎりぎりのところまであなた方できるとこうおっしゃっている。そうしますと、そのできるということが認められれば、それを遂行するための兵器は——戦力でも自衛力でも何でもいいといつもおっしゃっておりますが、私もどちらの言葉を使ってもいい、自衛力と言ってもいいでしょう。おのずからそれを遂行する程度のものはいわゆる自衛力、戦力の範疇に入らなければおかしいですよ。第一項と第二項がちぐはぐになっておる。一項で認められた自衛権の限界の中にあるならば、それを遂行するための道具というものは、いわゆる第二項で認められた戦力の中に入る、こういう解釈をとってこそ筋が通る、私はこうお尋ねしておるわけなんですが、いかがですか。
  131. 岸信介

    ○岸国務大臣 憲法九条の自衛権及びこれに申すところの自衛力及び自衛行動というものが、非常に限局されておることは御承知通りであります。ほかの国の憲法とは非常に違っております。また従来自衛の名においていろいろな行動をする、その方がより便宜である、究極は日本の安全をはかるためだから、その防御のために最も有利なことは、まず先制攻撃していくことだというような行動は、これは許せないことは言うを待たないのであります。そういう意味において、われわれが持ち得る自衛力というものは、自衛上の必要最小限度のものを持ち得る、その限度がどの辺にあるのか、どういうものが具体的にあるかということは、各種の事情から判断をしてきめなければならぬと思います。従って自衛上有利であり、適当であり、望ましいものをすべて備えるということは、憲法が許してないと思います。日本の憲法がそういうふうに限られておる。そういう意味において、必要最小限度の自衛力を二項においてわれわれが持つという考えでおるのであります。
  132. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それでは時間がありませんので、残念ですがその問題はあとでまた質問するとして、第三の質問たけ許していただきます。第三の質問というのは、在日米軍の装備については憲法上どうにもならぬ、こういう答弁をおっしゃっているが、これまた憲法論として非常に私はおかしいと思う。そこでお尋ねするわけですが、先ほども総理は私の質問に対する答弁の中で、日本の力だけでは防衛は全うできません。だから日米安全保障条約を作ってアメリカの力にもたよっているのです、こういうことをおっしゃいました。これはすなわち、憲法でいうところの自衛権を日本が持っておる、ところがそれを全うするために自衛隊では足らぬからアメリカに補完してもらう、こういう意味を持っておるのでしょうね。その点いかがでしょう。
  133. 岸信介

    ○岸国務大臣 その次の質問はどういうことが予定されておるのか知りませんが、趣旨からいうと、日本の力だけでは足りないから、日本の置かれておる国際環境から、日本と最も親善関係があり、信頼の関係がある、そうして日本の防衛に役立つというアメリカを選んで、アメリカとの間に条約を結んで、日本の足らざるところをアメリカと共同して補って、日本の安全を確保する、こういう意味であります。
  134. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 何を次に予定しておるかとおっしゃるから、私は明らかに言います。私は、憲法で認められた自衛権というものを自衛隊では全うできぬから、アメリカの力をかりてくる、いわゆる補完する、こういう意味でしょうということは、そうだとおっしゃいました。そうしますと、この在日米軍というものも、いわゆる自衛権の限界を越えて要らぬお世話をすることはできないじゃないかということを聞きたいのです。いかがですか。
  135. 岸信介

    ○岸国務大臣 憲法九条というものは、あくまでも日本の固有の自衛権並びに自衛隊なり戦争放棄に関する規定であって、安全保障条約によってアメリカ車が日本に駐屯して、日本の安全を守るという場合に、私はこの九条は適用あるものではないと思います。たとえば日本はいかなる場合においても戦力を持たないと言っておりますが、アメリカの軍隊が陸海空の戦力を持ってもちっとも差しつかえないし、日本の自衛隊は実力行使する場合においても交戦権を持ちませんけれども、アメリカの軍隊はりっぱに交戦権を持っているのであります。あくまでも米軍というものは憲法九条の制限内において活動しなければならぬとか、またその範囲内において装備その他を持たなければならぬというふうに、憲法九条の制約を受けるものではない、かように考えます。
  136. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それでは安保条約で共同の安全と平和のために米軍は使用することができますね。そういたしますと、アメリカには往々にして予防戦争という思想もあります。実行するかしないかは別として、そういう思想がちょいちょい論戦の中に出て参りますが、在日米軍がそういう思想に基いて行動しても、これはやむを得ないということになりますか。それを規制する何ものもありませんよ。日本には条約上も、安保委員会の規制も、事前協議の規定も何もありませんよ。それが憲法上許せるということになると、在日米軍が先制攻撃を加え、いわゆる予防戦争ということで立ち上っても、日本は何ら違憲じゃないということになりますよ。その点いかがですか。
  137. 岸信介

    ○岸国務大臣 われわれがアメリカを日本の安全保障の相手方として、ああいう協定を結んでおるということは、日米の信頼関係に基いておることはもちろんでありますが、同時にアメリカが強力な実力を持っておって、十分たよるに足るということも一つの理由であります。同時にまたアメリカが国連の一員として、国連憲章に対しては忠実にこれを順奉する国であるという信頼の上に立っておるわけでありまして、米軍が動き得る場合は国連憲章にきめられておる条項に従ってやりますから、今お話のようないわゆる先制攻撃というようなことは行われ得ない、こう思っております。
  138. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 やるやらぬは別として、憲法上できるかどうかだけ答えて下さい。
  139. 岸信介

    ○岸国務大臣 それにつきましては、日本の憲法の範囲内において、アメリカ軍が行動するということを前提として、われわれは条約を結んでおる、さように御了承願います。
  140. 内海安吉

    内海委員長 それでは伊能長官への質問に移ります。
  141. 岸信介

    ○岸国務大臣 ちょっと、今私の言い違いがあったから改めますが、国連憲章の範囲内において行動するという考え方においてという意味であります。憲法と言ったということでありますから。
  142. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 総理がせっかくゆっくり答えると言うのに与党の諸君が騒いで追い出してしまって残念であります。  それでは引き続いて防衛庁長官お尋ねいたしますが、アメリカが国連憲章に従ってそのワクの中でやられた。そう幾ら期待されましても、現に自由主義国家群と称する、その中の強力な有力な国としてのイギリス、フランスあたりがスエズにのこのこ出ていく。そして国連のおしかりを受けるというようなこともあるわけです。やるかやらぬか、そんなことに期待してみたところで、これはわからない。だから明らかに日本の憲法において許される行為なのか、許されない行為なのか、はっきり解釈を示しておいて、そうしてそれですぱっと規制していったらどうですか。その点いかがですか。
  143. 伊能繁次郎

    ○伊能国務大臣 先般もお答え申し上げましたように、米軍の行動については憲法は何も規定しておりませんから、あくまでも日本の憲法は、日本の自衛隊に関する規定だと私は考えます。
  144. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 先ほどの総理大臣との質疑応答もよくお聞きになっておられると思うのですが、まず私が聞いたのは、結局在日米軍のお世話になっておとるいうことは、日本の自衛隊の力だけではどうしても日本の防衛を全うできない、これを補うためにアメリカに手伝ってもらう、こういう思想の上に成り立っておるということははっきりお認めになっておるわけですよ。そうしますと、そこにはおのずから日本の防衛、憲法で許された自衛権の範囲を越えることのできないわくが私はあると思うのですが、ワクがないのですか。
  145. 伊能繁次郎

    ○伊能国務大臣 さいぜんよりお答え申し上げておりますように、憲法はあくまで日本の自衛隊に関するもので、アメリカを規制するものではない、かように考えます。
  146. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 日本は今自衛隊というものを持っておるわけです。安保条約締結当時はなかったわけです。今は持っておる。しかし、当時にしても今にしても、あってもなくても、とにかくこれだけでは防衛は全うできぬ。だからよその国のお世話になる、これはあくまでも補う意味である。一体になって初めて自衛を全うし得る、防衛を全うし得る、こういう思想だということをお認めになっておるわけです。目的は日本の防衛、自衛、そうしますと、補うだけではなしにそのはまったワクを越えて足したものが、自衛隊プラス米軍というものが、いわゆる憲法で許されて自衛のワクを越えてもいいという解釈が成り立ったら、これは大へんだと思うのですけれども、いかがですか。
  147. 林修三

    ○林(修)政府委員 憲法九条は、御承知通りのいきさつでできておる規定でございまして、これはあくまで日本が過去の歴史にかんがみまして、国際紛争解決の手段としての戦争、あるいは武力の行使、あるいは武力による威嚇を放棄するということでございまして、これはしかし半面においてはもちろん独立国としての自衛権を放棄しておるのではない、こう解釈されております。従いましてここで言う半面に認められております自衛権は、まさに日本の行使し得べき自衛権のことでございます。また第二項において「前項の目的を達するため、」云々ということは、まさに日本の自衛力あるいは日本の持ち得べき戦力、こういうものの限界を規定しておるわけでございます。これは九条一項、二項を通じて、外国の軍隊あるいは外国の権利、こういうものは九条の適用を受けるというようなものではございません。これは憲法全体の趣旨から申しまして、憲法九条のような特殊の憲法を持っておる日本といたしましては、他国の公正等に信頼するということも書いてございます。国連憲章による集団安全保障ができればもちろんそれによりましょうけれども、その前提として、それに至るまではアメリカ等の国と共同的な防御体制をとること、これはもちろん憲法が容認しておるところである、かように考えます。憲法は国の安全を放棄していいということはどこにもうたっておらないのであります。むしろ憲法全体の規定を見れば、国民の幸福を向上するということが憲法の趣旨だと思います。他国から侵略されない、他国に対して日本を安全に保つということが憲法の趣旨だと思います。従って憲法九条では、日本の過去の歴史にかんがみて特殊の規定を置いておりますけれども、これは同時に他国と共同して日本を安全に保つということは、まさに憲法が認めた趣旨だと思います。その場合に、共同して日本を守るという立場に立つ米国の力、あるいは米国の権限、これは米国としては米国の憲法あるいは国際法に従って行動すべきものでございまして、もし日本国内においての行動について米国のことを規制しようとすれば、これは条約で規制する以外には方法がございません。憲法でこれを規制する方法はないわけでございます。
  148. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 日本の一国の力では日本が完全に守れないから、やむを得ないからアメリカと一緒に守るのだ、ところがその日本の実力とアメリカの実力と足したものは、いわゆる憲法で容認された自衛権のワクに必ずしも拘束されぬ、そのワクを越えてもいいのだ、こういう新解釈を私は聞いたわけです。そうしますと、結局憲法で規定された自衛権のワクを越えても、アメリカの方が越える分にはやむを得ぬのだということになりますと、先ほどから言っているように、たとえば一つの例として、おそらくアメリカのことだからやるまいとあなた方は信頼されておるでしょう。しかしやるかやらぬかは信頼感の問題であり、私もアメリカがそういうことをやるとは思ってもおりません。思いたくありません。しかし現にそういう論争が、アメリカの国内において激しく行われておる。さっきから言っておるように、予防戦争という思想、今絶対に軍事力が優勢なうちにたたいてしまえという思想が、非平に根強い形でアメリカの中にはあるわけです。そうしますと、これを実行しないという保障はありませんから、憲法上できるかできぬかということは、ここではっきりしておいた方が私は無難だと思う。せぬだろうせぬだろうというのではなしに、それは日本の憲法のワクを越えることになるから、日本の憲法で認められた自衛権のワクをはみ出すことになるから、日本におる限りはできないのだ、そういう明確な態度を打ち出しておきさえすれば安心なんですよ。それを単に期待されても、憲法ではできぬのだという解釈をとられたのでは、これは非常に不安なんです。政治というものは、国民に不安を与えるものであってはならぬと私は思いますから、安心感がいくように、明確にそこのところを示しておいていただきたいと思うのですが、憲法上絶対できぬのですか。予防戦争をやるやらぬは別として——法制局長官、あなたは答弁したのだから、これは大臣におまかせしなさい。
  149. 林修三

    ○林(修)政府委員 憲法の解釈としての御質問でございますから、私から御説明申し上げます。憲法の九条二項による戦力がアメリカの戦力を含むかいなかということは、決して私は新しい解釈をしたわけではございません。御承知通り昭和二十七年の安保条約の当時において繰り返して議論になったところでございまして、米軍の戦力というものは憲法の九条の関知するところではないということは、繰り返して政府は答弁いたしております。従いまして当時においてもうすでにそのことは政府の見解は明らかになっておるわけであります。これはものの本を読みましても、憲法九条二項の戦力は米軍の戦力まで含むものではないという解釈をしている本が多いと思います。従いましてそこには、私は米軍の力というものについては憲法上の制約は関知しておらないと言わざるを得ないと思います。従いまして先ほどから申し上げましたように、もしもそれがどうしても必要であるならば、条約の問題になってくるわけであります。これは条約をいかなる態度で締結するかという問題でございます。これは申し上げるまでもないと思いますが、日本は米国と実は安全保障条約を締結しておるわけでございます。米国は日本の安全を守るために、日本にいる駐留軍はもちろんそのために置いておりますが、米国としては、米国の全力をあげて日本を応援してくれる建前であります。今の米国の力は、米国の日本にある実力だけが米国の力ではございません。米国のあらゆる抑制力が日本の防衛力に働き得るわけであります。こういうところから考えましても、日本の憲法の制約が米国の戦力あるいは米国の行動に及ぶということは考えられないと思います。米国はまさに自国の憲法あるいは国連憲章というものがあるわけでありますから、米国が国連憲章に従って行動することは当然の期待でございます。米国が国連憲章に違反した行動をとるというようなことを予想することは、私は適当でないと思います。
  150. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 出しゃばって答弁するくらいなら、肝心の聞いていることを答えなさいよ。先制攻撃とか予防戦争とかいうものは、しからばやるやらぬは別として、憲法で認められた行為の中に入るのかどうか、この点だけお答えしなさい。
  151. 林修三

    ○林(修)政府委員 今の御質問は、わが国についての御質問であろうか思といますが、わが国についての問題は、いわゆる自衛権の本質は、外国から武力攻撃を受けた場合に、これを排除するために必要な限度においてやるのだ、日本としては、いわゆる予防戦争とか先制攻撃ということはできないのだということはすでに明らかになっていると思います。米国の問題でございますが、米国の問題は、米国の憲法にはもちろん日本の憲法九条のような規定はございません。従いましてあとは国際法の問題になってくると私は思います。あるいは米国の良識の問題になってくると思います。しかし米国は、良識以外に国際法にもちろん準拠いたします。特に国連憲章に加入しておりますから——国連憲章は、御承知通りに軍事行動が正当化される場合は三つしかございません。一つはいわゆる個別的または集団的自衛権の行使でございます。この場合はしかも安保理事会が行動をとるまでの間に限られております。第二は国連の安保理事会の決議によって動く場合でございます。第三の場合は国連憲章に直接の規定はございませんが、いわゆる平和統合のための決議というような、いわゆる総会の決議がございまして、朝鮮の場合あるいはスエズの場合に、安保理事会が麻痺したときに総会の決議によって国連の行動がとられた。そういうような三つの場合しか、アメリカが国連憲章上武力を使うことが正当化される場合はないわけでございます。もう一つは国連憲章外のことでございますが、他国の正統政府から内乱のために援助を求められた場合に、その内乱を鎮圧するために他国に兵を出す、これは国際法上認められておりますが、こういう場合以外に、アメリカがいわゆる予防戦争をする、今言ったような意味以外の予防戦争をする、先制攻撃をするということは、これは明らかに国連憲章に違反いたします。そういうことをアメリカがやることを私たちは予想すべきではないと思います。
  152. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 委員長もよく注意しておいていただきたいと思います。私の聞いていることに答えないで、ほかのことを盛んに言うものだから、何度も同じことを聞かなければならないし、また時間ばかりかかる。こういうことは一つ遠慮させていただきたい。法制局長官がそれ以上のことを答えられないならば、大臣が答えればいいです。明晰な頭脳を持っておられる大臣がわからないはずはないです。  私が言っていることは、在日米軍が日本の憲法の拘束を受けぬということはそれではわかりましたが、だからアメリカがそんなことを考えてもらわないと、あなた方は百パーセントの信頼をお寄せになっているかもしれないけれども、しかしアメリカの国内においていろいろ論議もあるし、アメリカの憲法において拘束されてもおらぬし、あるいはということも考えなければならぬ。そうすると日本にいる米軍が、そういった日本の憲法で許されないような行為をやっても、それは憲法ではどうもならぬ、やむを得ぬ、こういうことになるのでございますかと私は聞いているのです。
  153. 伊能繁次郎

    ○伊能国務大臣 それは日本の憲法はアメリカのことを規定いたしておりませんから、あくまで日本のことだけしか規定しておらないことを私はお答え申し上げます。
  154. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 そうするとやるやらないは別として、もし予防戦争なんという思想があって、先制攻撃などということをやろうという気になりさえすれば、在日米軍がそれをやったって日本の憲法には違反にならない、こういうことになるわけですね。
  155. 伊能繁次郎

    ○伊能国務大臣 それは日本の憲法に違反であるとかないとかいう問題とは別の問題だと私は考えます。
  156. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 関係はないということは、日本の憲法では規制できない、そういうことですね。
  157. 伊能繁次郎

    ○伊能国務大臣 日本の憲法の規制外だと存じます。
  158. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 そうすると、これはまず第一に安保条約自体が違憲ですね。そういうふうな日本の自衛権のワク外の行動を許すような米軍を日本に置いている。しかも日本防衛の名において置いているということ自体、そういうことを百も承知でそういう条約を締結した日本政府責任というものは、追及されなくちゃならぬではないですか、この点はいかがですか。
  159. 伊能繁次郎

    ○伊能国務大臣 その点は、安保条約締結当時論議されまして、憲法上違憲でない、かように存じます。
  160. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それでは具体的な例をあげましょう。在日米軍が先制攻撃というようなことをやっても、日本はこれを規制する方法がない。憲法上も違憲じゃない。条約上も認めて、好きなようにアメリカにさせることになっている。極東の安全と平和という名のもとにおいてやれるようになっている。事前協議の機関も何らこれに関してはない。安保条約の使命の中にもない。従ってやろうと思いさえすれば在日米軍は先制攻撃もなし得る。そうしますとこの攻撃を受けた他国はこれは正統ないわゆる防衛行為として報復措置に出るでしょう。たまたま日本にある部隊、米軍が出ていくわけですから、ここに対して攻撃を加える。そうしますとそれは即日本に対する侵略だというので、行動を開始する。こう考えていくと、かりにアメリカが先制攻撃をやっても、日本は必然的に戦争に巻き込まれていく、こういうことに現実になる、これは大へんなことだとお思いになりませんか。
  161. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほど御答弁したことで実はもう私尽きていると思ったのでございますが、駐留米軍といえどもこれは米軍の一部でありますから、米国は国連に加入しておりますから、国連憲章の適用を受けることは当然でございます。ただ安全保障条約締結当時においては、日本はまだ国連に加入しておりませんでした。従いまして安全保障条約の方には、米国あるいは日本がおのおの国連憲章に従って行動するという条文はございません。しかしその点がいろいろ問題とされまして、一昨年の岸、アイクの共同宣言のあとで、御承知通りに日本と米国とは交換公文を交換いたしまして、いわゆる国連憲章と安保条約の関係に関する交換公文というものを交換しております。これには当然に米国は国連憲章に従った行動をするのだ、あるいは五十一条に従って行動した場合には国連の安保理事会に報告するのだ、あるいは安保理事会の協議事項にもなるのだという趣旨のことが書かれております。これは書かなくても当然のことだと思っておったのでございますが、なお念のために米国は国連憲章に従って行動するのだということは、ここでもはっきりしておるわけです。国連憲章に従って行動する以上、御質問のようなことは、予想されないわけであります。個別的自衛権あるいは集団的自衛権、あるいは国連の安保理事会あるいは総会の決議に従って米国軍が行動する、それ以外にはあり得ないと思います。そういう行動をした場合に向うからそれの報復としていろいろ日本の基地にやってきた、日本の米軍の基地にやってきたという場合には、日本の国土を侵しているわけでありますから、これは日本の自衛権の問題だ、かように考えます。
  162. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 先ほども例にあげましたイギリス、フランスだって国連加盟国じゃありませんか。有力な国連加盟国の英仏が国連憲章を百パーセント守りましたか。そういうのは、信頼の問題だと言っているのです。(「ソ連はどうだ」と呼ぶ者あり)ソ連を弁護しているのではないから、ソ連を非難するならソ連を非難してもいいです。幾ら信頼を持ったって、やっている国もあるじゃありませんか。だから僕はそんなことを聞いているのじゃない。きょうは防衛庁長官、いやに黙して語らず、あなたが答弁できる問題まで、法律問題であるかのごとく法制局長官に譲る必要はありませんよ。今申し上げたような例は十分におわかりのはずです。おそらくやらないだろう、そんなことはやならないだろうということは、お互いそれは信頼感を持ちたいのですが、しかしそれをワクをはめておる、そのワクというものが往々にして無視されがちな現状です。国連機構は無視されがちなものになりやすいのです。国連自体が完全なものではないからしようがない。そうしますと、日本とアメリカの関係だけで憲法とか条約とかいうものをつぶさに見ていけば、今私があげたような例も、これは起らぬとは限らぬわけだ。起ってしまってから、それは困るぞ、そんなことはだめだぞと言ったっておそいですよ。今から明確に態度を表明していく上においても必要な措置をここで講じておく。政治家としてとり得る措置をここではっきりしておいた方がいいわけだ。それをやらぬと、先ほど私が言ったような最悪の事態、すなわち先制攻撃をアメリカがかけた、そういう場合においてすら、日本はずるずると戦争に巻き込まれるというような懸念を全然なくす努力をしないというのはおかしいと私は思う。暗に国連だけに何とかしてくれるだろう、そういうことはないだろうということではなしに、日本とアメリカとの間でやろうと思えばできるのですから、それをやろうとする意思はお持ちにならないのですか、いかがですか。
  163. 伊能繁次郎

    ○伊能国務大臣 ただいま法制局長官が答弁いたしましたように、国連憲章の趣旨から日米の問においては交換公文を締結しておりまして、私どもはさようなことはない、かように考えております。
  164. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 あなた方は大切な問題になると他国を信頼するというような言葉で逃げてしまって、それ以上に安全な措置を講じようとしない、無責任きわまる。これは政治家失格だと思う  それでは先ほどお尋ねして保留になっている問題をもう一度お伺いしますが、敵基地を爆撃することができる。飛行機でという言葉まで総理はちゃんと言っておられます。それから誘導弾で攻撃することもできる、こうも言っております。誘導弾、飛行機、はっきりと例示しておる。ところが敵基地に届くような誘導弾とか、そこまで行けるような飛行機とかいうものは、長官も何度も言っているように、日本の憲法上持てない。一体このつじつまをどうしてお合せになるのですか。その点お答え願います。
  165. 伊能繁次郎

    ○伊能国務大臣 その点はさいぜん総理大臣から詳細に申し上げたと存じますが、御承知のように設例として、国連の援助もなし、また日米安全保障条約もないというような、他に全く援助の手段がない、かような場合における憲法上の解釈の設例としてのお話でございまするから、例を飛行機とか誘導弾とかいろいろなことでございますが、根本は法理上の問題、かように私ども考えまして、誘導弾等による攻撃を受けて、これを防御する手段がほかに全然ないというような場合、敵基地をたたくことも自衛権の範囲に入るということは、独立国として自衛権を持つ以上、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨ではあるまい。そういうような場合にはそのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば誘導弾等による攻撃を防御するのに他に全然方法がないと認められる限り、誘導弾などの基地をたたくということは、法理的には自衛の範囲に含まれており、また可能であると私ども考えております。しかしこのような事態は今日においては現実の問題として起りがたいのでありまして、こういう仮定の事態を想定して、その危険があるからといって平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っているということは、憲法の趣旨とするところではない。かようにこの二つの観念は別個の問題で、決して矛盾するものではない、かように私ども考えております。
  166. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 自由民主党は日本の国防の基本方針というものを持っておられます。そこで今の問題に非常に関連のある一点を指摘いたしますと、わが国の国力及び国情に相応するように最小限度の自衛態勢を整備して、外国駐留軍の撤退に備えていく、こういうことが掲げられております。国防の基本方針もこの精神に基いて作られておるようであります。いつまでもアメリカにおってもらわない、こういう根本思想を自由民主党は持っておるとかねがね——ほんとうに思っておるかどうか知りませんが、言っております。この防衛力整備目標、防衛三カ年計画というものが達成されたときには、少なくとも在日米軍撤退の基礎ができるということも再三言っておられる。この点は御確認になりましょうね。
  167. 伊能繁次郎

    ○伊能国務大臣 御指摘の点につきましては、骨幹防衛力ができ得れば、できるだけ在日米軍には撤去してもらいたい、かように私ども考えております。
  168. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 結局外国軍には一日も早く、できるだけ早く撤退してもらいたいということはお認めになったわけです。そうしますと、そういう事態は一日も早く作らなくてはならぬとあなた方はお考えになっておりましょう。少なくとも三カ年計画が達成される時期は三十五年ないし三十七年、そう先のことではありません。どんどん撤退を開始するということなんでしょう。全部引き揚げるかどうかは別として。そうしますと、もし急迫不正の侵害というものが日本に対して行われたときには、日本国内に米軍も国連軍もおらぬという時期が考えられなければならぬわけです。それらのものが来るまで自衛隊だけでがんばっておかなければならぬという時期が必要になってくるわけです。それを一カ月とか三カ月とかいって想定してあなた方は計画を作っておるのです。この点も間違いないところです。そうしますと、その何日間自衛隊だけでがんばっておるその期間内において、敵基地を攻撃するということは一番最初に起きてくることではありませんか。その点はいかがですか。
  169. 伊能繁次郎

    ○伊能国務大臣 具体的な例で一々お答えを申し上げるわけには参りませんが、万一骨幹防衛力が完成をして、そのときにできるだけ撤退をしてもらいたいという気持はございまするが、お話のように全部できるかどうかということも、まだ話し合いの問題でございますから、決定はいたしておりませんが、その際であっても日本の周辺には米軍の有力な兵力もございまするし、また日米安全保障条約も存在することでございますから、そういう点についての防衛上の心配は、御指摘のごとく、日本の力で守っている間における援助の力は、私は差しつかえはない、心配はない、かように考えております。
  170. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 あなたの今の答弁でいくと、在日米軍は、ある程度の自衛隊ができれば、あるいは早々に引き揚げるかもしれぬ。しかし日本の周辺にはおっとそうはいきませんぞということは、手近にあるところは沖縄をさしておる。沖縄については、あなた方は施政権の返還を求めると盛んに言っております。言っておりますけれども、あなたの今の答弁でいくと、沖縄は在日米軍の撤退したあともいつまでもおるかのごとき印象を受けますが、そうなんですか。
  171. 伊能繁次郎

    ○伊能国務大臣 私は特段に沖縄とかなんとかいう意味でなくて、米軍というものは東洋に有力なる兵力を持っておる、かように考えております。在日米軍ではありません。アメリカの軍は極東に有力なる兵力を持っている、かように申し上げております。
  172. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 日本の周辺とは具体的にどこをさしたのですか。言って下さい。
  173. 伊能繁次郎

    ○伊能国務大臣 さいぜん申し上げましたように、設例の問題でありますから、具体的にどこどこということは申し上げかねますと申しております。
  174. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 日本の周辺といえば、まずまっ先に沖縄というのは常識ですよ。それでは沖縄でなくても、あなたの言う日本の周辺に、在日米軍が撤退したあと米軍は有力なのがいつもおる。それに全部依存して最善の措置は講ぜられないわけですか。ある程度のものが整備されて、米軍が日本から撤退した後までも、全部アメリカに肝心なところはおまかせします、そういう思想ですか。
  175. 伊能繁次郎

    ○伊能国務大臣 仮定の問題でございますから、その事態が起りませんと——私どもは起ることはもちろん望んでおりません。おそらくだれもが望まぬと思いますが、そういう事態が起った具体的な場合に、いかに処理されるかということでありまして、現在その点について何とも申し上げられません。
  176. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 最悪ぎりぎりの場合とおっしゃいますけれども、私はそのぎりぎりの措置というものは、少なくともまっ先にやらなければならない措置になると思うのですよ。あなた方が真剣に、ほんとうに純粋に日本の防衛だけを考えておられるならば、そんなばかな論議は出てこないのじゃありませんか。私どもは憲法も防衛の名のもとにおいてであろうが、全然保持を認めておらぬと割り切っておるからいいのです。あなた方は認めているのだと言って、金をかけてせっせと作っている。作っている以上万全なものを作る努力は、おのずからワクはあっても、ワクの中で最善を尽すということはしなくてはならぬはずです。その最善を尽さぬで、肝心なところをつかれるとどこかの国になすぐりつけてみたり、そういう態度でりっぱな自衛隊なんかできるはずはないじゃありませんか。私どもも今の憲法がなければ、それは賛成してもいいかもしれぬが、全然そういうことは禁止した憲法がある。だから同調できません。あなた方は、その中でもある程度ゆとりがあるはずだと言って、そうしてそのゆとりの中で防衛力整備をやるのだと言っておる。そのでき上ったものは私は万全の努力を払わなくてはならぬと思う。その万全の努力を払うべき措置を、あなた方はこういう場合だこういう場合だと言うから、それを例にあげて話をすると、またよその方へ問題をそらしてしまう。そういうことでは幾ら論議したって無意味なのですよ。敵基地を攻撃することができると言ったり、誘導弾で攻撃することができると言ったり、それも単に精神的な士気を鼓舞する程度のことであって、実際にそういうことをやろうと思ってもできないですよとあっさり言うなら、私はまた話がわかるのです。率直に認めたらいかがですか。変なこじつけを一生懸命なさらず、そこまでやって日本の防衛をやりたいと思うけれども、正直のところは、やろうにも今の憲法では武器は持てない、誘導弾も持てない、爆撃機も持てない、残念、だから気持ははやるけれども実行はむずかしいのだと、はっきりお認めになったらいかがですか。
  177. 伊能繁次郎

    ○伊能国務大臣 さいぜん来答弁申し上げた通りでございます。
  178. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それではやむを得ませんから、あとでまたたくさん同僚の議員が質問いたしますから、第二、第三の問題はその程度にいたします。  第一に戻りまして、いろいろと私が申し上げたことは、結局第一のあなたがオネスト・ジョンは違憲じゃないと言ったことに関連して発展したわけです。違憲じゃないという根拠として、オネスト・ジョンに核弾頭をつけても防御兵器だ、こういうことをおっしゃったから、いろいろあっちこっちに無理がいってきた。またオネスト・ジョンは、核弾頭をつけても防御兵器だというようなことをあなたが具体的な例を出しましたから、ここではっきり限界ができてきた格好になるわけです。それ以下のものならいい。それ以上のものならいかぬ。これがまた何月か何年かたったら、もう少しこの限界は上にいくでしょう。こういうことになっていくわけです。それはあなた方の望むところかもしれぬ。しかし今の日本の国民感情とぴったりいったところの発言とは私は受け取りかねます。政治家としていささか失格のきらいなきにしもあらず。もう少し国民感情を尊重しなくちゃいかぬのじゃないかという感じがする。大体無理ですよ。武器そのものの性能から攻撃的武器あるいは防御的武器、こんなばかな分類ができるはずがありません。これは使い方によってきまる。攻撃的に使ったか防御のために使ったかという手段によって分類されるものだと私は思うこの間もちょっと申し上げたタオルでも殺人はできる。これと同じです。ところがその分類できもしないことを、無理やりにやろうとしたところにあなたの失敗があるわけです。オネスト・ジョンの核弾頭を装着したときの威力は、広島型の四分の一の威力があるのですよ。大へんなものですよ。口では広島型の四分の一、四分の一というけれども、あなたがお認めになったものでも四分の一、私どもはほとんど変らぬほどの威力を持っていると聞いているのです。小型にはなったのだけれども、威力としてはうんと大きくなっているのが最近の核兵器です。原子爆弾しかりです。そうしますと、あなたは原水爆というものは一切違憲だとおっしゃっているが、この原子爆弾というのは、うんと小さなものができております。戦闘機も何発でも今持っていきます。バズーカ砲につける十キロ程度の原子弾もあるというのですよ。そうしますと、原子爆弾ならいかぬという理屈も成り立たないじゃないですか。戦闘機に積み込んでいくような、防御のために使う原子爆弾ならいいということにならなくては、つじつまが合わない。かって高射砲が果しておった役目を、地対空のミサイルが果しておる。これも新型のナイキなどは核弾頭を装着できる。これも完全に防御用兵器じゃないですか。あなた方の論法なら、これも持てるということにならなくちゃならぬ。性格的にしいて分類していこうとすれば、空対空の戦闘機につけるものならば、核兵器でもミサイルでもいい、地対空の方ならなおいい、原子爆弾でも、戦闘機につけられるようなちっぽけなものならば、戦術的に使えるようなものならばいい、少くともオネスト・ジョンの広島型の四分の一よりも小さい威力しか持たないものならば、何ぼでもあるのです。これはいい、こういう解釈が成り立たなくちゃいかぬと思うのですが、大臣いかがですか。
  179. 伊能繁次郎

    ○伊能国務大臣 私は憲法上の解釈として、一つの設例として申し上げた次第でございます。
  180. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それは答弁ですか。私は非常にたくさんしゃべって、損したような気がします。具体的に私はせっかく例をあげたのですよ。あなたが、オネスト・ジョンは核弾頭をつけても防御兵器だから違憲じゃない、こうおっしゃったから、なぜ攻撃的にならないのですかと聞いたら、射程距離が三十キロ、四十キロだ、こう言う。それでは三十キロないし四十キロ以下の射程のものならば、核兵器でも一切よろしいという新例が開かれなくちゃならぬ。攻撃的な兵器、防御的な兵器という分類はむずかしいと思うが、あなたがあえてやれると言うならば、もっと防御的なものがある。地対空のミサイルがそうだ。あるいは戦闘機がつけるところの空対空のミサイルがそうだ。これは核兵器であってもいいという解釈が成り立たない。威力でいくならば、オネスト・ジョンは広島型の四分の一程度の威力があるとあなたは言う。四分の一以下の威力を持った原子爆弾や核弾頭は山ほどある。そういうものは一切いい、こういう理屈にならなければつじつまが合わない。そんな分類は私は不可能だと思うけれども、あなたはあえておやりになった超人的なお方なんです。そうしますと僕が今言っているようなものは全部合憲、こういうことになるのでございましょうかと、親切に聞いているのですから、親切にお答え願いたい。
  181. 伊能繁次郎

    ○伊能国務大臣 私は憲法上の解釈として、すべての核兵器が必ずしも違憲ではございません、かような見解に立ちまして、一つの設例として申し上げた次第でございますので、それ以上現実に岸内閣は核兵器は一切持たないということで、設例上のことと御解釈願います。
  182. 受田新吉

    受田委員 ちょっと関連してお尋ねしますが、あなたはきのう私の質問に答えて、在日米軍は交戦権の発動の軍隊となる。また日本の自衛隊の場合は、自衛権の発動の部隊である、そういうことがあり得ると言われましたが、再確認できますか。
  183. 伊能繁次郎

    ○伊能国務大臣 私はさように申し上げたと記憶いたしております。
  184. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、この交戦権発動の軍隊として、すなわち国権の発動としての軍隊ということになった場合に、在日米軍は明らかに日本の憲法のらち外の権力団体ということになるわけですね。
  185. 伊能繁次郎

    ○伊能国務大臣 もう一度正確にお尋ね願います。
  186. 受田新吉

    受田委員 日本の在日米軍は、国権の発動たる戦争の部隊、すなわち交戦権の発動の対象になる部隊があり得るということをあなたが言われたわけです。そこから出発するわけです。そこをもう一度お答え願います。
  187. 伊能繁次郎

    ○伊能国務大臣 私が申し上げましたのは、アメリカはアメリカの憲法に基く軍隊である。日本は日本の憲法の自衛権に基いた自衛隊である、かように申し上げた次第であります。
  188. 受田新吉

    受田委員 従って在日米軍については、これが交戦権の対象として行動することにも何ら制約がないということになり得るわけですね。
  189. 伊能繁次郎

    ○伊能国務大臣 その通りだと思います。
  190. 受田新吉

    受田委員 そうしますとまた一つの問題が起るわけなんですが、今の核武装の問題、これが憲法の解釈論からいって、核武装をなし得る日本の軍隊の肯定をあなたはしておられるわけです。従って核武装した日本の軍隊と、交戦権の発動をした在日米軍との共同作戦ということが憲法解釈論からはなり得る、かように了解してよろしゅうございますか。
  191. 林修三

    ○林(修)政府委員 今の御質問の趣旨、ちょっと私了解しかねるところがあるのでございますが、要するに日本の自衛隊は日本の憲法に従ってのものでございまして、日本の憲法の認める範囲、あるいは自衛隊法の認める範囲以上の装備も持っておりませんし、また性能も持っていないわけでございます。これに対してアメリカの軍隊は、日本に駐留する軍隊であろうと、あるいは米国の本土におる軍隊であろうと、ヨーロッパにおる軍隊であろうと同じだと思いますが、米国の軍隊は、米国の憲法に従い、国連憲章に従って行動し得る正規の軍隊でございます。その点違うことは言うを待ちません。そこで共同という意味がよくわかりませんが、かりに外部からの武力侵略がありました場合に、日本の自衛隊は日本の自衛権に基いて行動いたします。アメリカの在日米軍は、これは安保条約の規定に従って、そういう場合には日本の防衛に当ってくれるわけです。この場合に、お互いに協議するということが、行政協定の二十四条に書いてございます。それ以上の共同行動というのはどういうことを意味するかわかりませんが、要するにお互いに共同動作をする。その場合にアメリカの軍隊は、いわゆる正規の完全な軍隊でございますから、いわゆる交戦権と申しますか、よその国まで出ていくことについても何ら制限はないわけでございます。そういう範囲の行動をとり得るわけでございます。日本の自衛隊はそういうことはとらない、こういうことだと思います。
  192. 受田新吉

    受田委員 そこで一つ問題が起るのは、在日米軍は交戦権の対象として行動する。従って外国へも乗り出し得る。従って日本の自衛隊は、自衛権の発動としての部隊として国内にとどまっておる。しかしその日本の自衛隊は、核武装を保持し得るという憲法の解釈論から言うならば、今盛んに議論したことで一つ追加申し上げるわけですが、やむを得ざる場合に敵を攻撃する場合があり得るということと、在日米軍の対外攻撃とが競合し得る場合がある、かように了解をいたしませんか。
  193. 伊能繁次郎

    ○伊能国務大臣 憲法の解釈上私は必ずしも違憲でないということを申し上げたことは御指摘の通りでありますが、しかし現在日本は核武装をしないということを同時に申し上げておりますので、現在の在日米軍と、想定された憲法上の解釈の観念的な核武装を持った日本の自衛隊とが、どういう共同という意味でありますか、その内容はわかりませんが、それは日米安全保障条約に定められた範囲の協議をするということはございますが、核武装を持たない日本の自衛隊と在日米軍とが協議の上、それぞれ適当な分担をして、急迫不正の侵害による敵の攻撃に対してこれに当るということはあり得ると思います。
  194. 受田新吉

    受田委員 そこで海外の侵略を日本が受けた、その場合に米軍は国権の発動として戦争を開始した、日本部隊は自衛権の発動としてこれに協力する、こういう形になるわけですね。ところが、今の核武装の問題は後ほどお尋ねしますが、実際の問題として起ることは、その場合は事実上の戦争状態になるわけですね。明らかに在日米軍は戦争状態になる。戦争状態に巻き込まれている米軍が日本におるわけです。従って、日本は今石橋委員の言われた自衛権の発動という解釈が、アメリカのそうした補完的な協力によって、アメリカの交戦権の発動と一本になって戦争状態に追い込まれる、かような状態になることは御存じでございますか。
  195. 林修三

    ○林(修)政府委員 ちょっとその御質問の趣旨を十分に了解しない点があるかもわかりませんが、要するに日本が外部から武力侵略を受けた場合に、自衛隊はその自衛行動をとるわけであります。それから米軍はその場合に日本を援助してくれるわけでございます。そういうことはあり得るわけです。そういう場合に、その先どうなるかというお話がよくわからないのでございますが、日本が外部からの侵略を受けた場合、日本の自衛隊も自衛権の範囲において行動し、駐留米軍も行動する、あるいは駐留米軍のみではないかもしれません、ほかの米軍も一緒に日本を守ってくれる、こういう行動をするだろうと思います。そういうことに尽きるのではないかと思います。
  196. 受田新吉

    受田委員 いやそれが尽きないものですから……。戦争状態ということは、日本が単に自衛権の発動としての部隊を持っているだけなら起り得ないことなんです。一緒におる米軍が戦闘状態にある、戦争を開始しているという場合に起り得る問題を私はお尋ねしておるわけです。そうした場合に、日本の本来の自衛隊が、自衛権の発動としての自衛隊が、完全に戦争状態の米軍の巻き添えを食らった形に実態が置かれてくる。特にあなたのお説であるならば、自衛隊は自衛権の発動の限度であるから米軍との協力の限界がある、こういうことでございますけれども、その場合における協議事項というものは、戦闘状態に置かれている日本の国土が、日本の自衛隊の行動と米軍の交戦権の発動たる部隊との間に、厳格な差別をつけ得ない実態に陥るということを、あなた方としては想定しておるかということです。これは実際問題として、あなた方の解釈論としてでなく、政策の問題としてそういうことが考えられるということを、防衛庁長官は十分御承知でおられる。実際に日本が戦争に巻き込まれる危険が、在日米軍の交戦権の発動によって起り得るということを想定しておかなければ、日本の自衛隊としては非常に安易な気持だと言わざるを得ないのです。
  197. 伊能繁次郎

    ○伊能国務大臣 前提についての理解が私十分でないかもしれませんが、先ほど石橋先生がしばしばこの問題については触れられましたように、アメリカは国連憲章のもとにおいて行動するので、侵略戦争というようなことは常にあり得ないと私ども考えております。また交戦その他云々の話もございましたが、戦争というようなことになりますと、宣戦布告という事態も起らなければならぬと思います。そういう前提等についての何らのお話なり御説明がございませんので、その辺のとこは、日本はあくまでも憲法に基く自衛隊としての行動の範囲をとり、また万一御指摘のような点を仮定いたしましたといたしましても、日米の間におきましては日米安保条約による協議を前提としてそれぞれの行動が規制される、かように考えます。
  198. 受田新吉

    受田委員 先制攻撃の場合でなくて、国際紛争の解決の手段として、米軍が戦争を開始した場合実際に起り得る問題、それを前提として今お尋ねをいたします。そうした場合、在日米軍は完全に戦争状態に巻き込まれる。これはしばしば起り得る状態ですね。そのときに日本の自衛隊と戦争状態に置かれている米軍との間に、実際問題として区別ができ得るかどうかという問題です。
  199. 伊能繁次郎

    ○伊能国務大臣 さいぜん石橋委員のお尋ねのときにも、私並びに法制局長官から申し上げました通りに、国連憲章に基くアメリカの行動というものに信頼と期待を持っておりますので、先制攻撃などというようなことがアメリカからしかけられるということは考えておられないのでございます。
  200. 受田新吉

    受田委員 先制攻撃の場合を私は今言ったのではございません。あなたにもう一度繰り返してお尋ねしますが、国権の発動たる戦争が国際紛争の解決の手段としてやむを得ずアメリカがやったという場合、そういう場合のことを私はお尋ねしておるわけであります。先制攻撃の場合など絶対例示したわけではないのですから、質問に答えて下さい。
  201. 伊能繁次郎

    ○伊能国務大臣 さような場合においては、日本に攻撃が加えられない限り、自衛隊が動くということはあり得ないと思います。
  202. 受田新吉

    受田委員 終ります。
  203. 内海安吉

    内海委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時七分散会