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1959-03-17 第31回国会 衆議院 内閣委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月十七日(火曜日)     午前十時二十六分開議  出席委員    委員長 内海 安吉君    理事 岡崎 英城君 理事 高橋 禎一君    理事 平井 義一君 理事 前田 正男君    理事 受田 新吉君 理事 木原津與志君       安倍晋太郎君    小金 義照君       纐纈 彌三君    始関 伊平君       田中 龍夫君    綱島 正興君       富田 健治君    橋本 正之君       濱地 文平君    船田  中君       保科善四郎君    森   清君       石橋 政嗣君    石山 權作君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         国 務 大 臣 伊能繁次郎君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         総理府総務長官 松野 頼三君         宮内庁次長   瓜生 順良君         総理府事務官         (行政管理庁行         政監理局長)  岡部 史郎君         防衛政務次官  辻  寛一君         防衛庁参事官         (長官官房長) 門叶 宗雄君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   佐々木義武君  委員外出席者         総理府事務官         (自治庁税務局         固定資産税管理         官)      萩原 幸雄君         大蔵事務官         (主税局税制第         一課長)    塩崎  潤君         厚生事務官         (保険局健康保         険課長)    加藤信太郎君         労働基準監督官         (労働基準局労         災補償部長)  村上 茂利君         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 三月十六日  委員柏正男辞任につき、その補欠として八百  板正君が議長指名委員に選任された。 同日  委員八百板正辞任につき、その補欠として柏  正男君が議長指名委員に選任された。 同月十七日  委員田中龍夫君、田村元君、高橋等君及び町村  金五君辞任につき、その補欠として綱島正興君、  濱地文平君、安倍晋太郎君及び森清君が議長の  指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  総理府設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第七〇号)  防衛庁設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第九四号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出第  九五号)      ————◇—————
  2. 内海安吉

    内海委員長 これより会議を開きます。  防衛庁設置法の一部を改正する法律案自衛隊法の一部を改正する法律案及び総理府設置法の一部を改正する法律案一括議題とし、質疑を許します。前田正男君。
  3. 前田正男

    前田(正)委員 この際私は防衛法案について、総理に簡単に御所見をお伺いしたいと思います。  政府といたしましては、日本の平和と安全を維持するために自主的な防衛力増大に努められて、世界平和のために、また戦争抑制力としての実力を備えようとして、今回もまた防衛力増大法案を提出しておられるわけであります。こういう防衛力増強観点からいたしましても、また政府で研究しておられます安全保障条約改定問題点からいたしましても、この日本におきますところの防衛装備とか配置、こういうような問題については、われわれとしては相当慎重な取扱いをする必要がありますし、また安保改定によりますならば、この装備配置等は新たに協議事項に加えたいというふうな政府観点を持っておられるそうでありますが、そういう点から見まして私たちは、われわれの平和を維持し真の自主的な防衛をやっていくためには、この防衛上の装備配置等取扱いについては、慎重を期する必要があると思うのであります。ところがはなはだ残念ながら、わが国のこの重大なる装備配置の問題、あるいは安保改定に伴うところの協議事項に伴うところの装備配置の問題、こういう点に関しまして、外国に対してこれらの事項を通報いたしましてわが国を不利益に陥れ、外国利益のために行動をしようとするものがなきにしもあらずと思うのであります。これは世間伝えられるところによると、わが日本のように国際スパイ団の活躍している国はないといわれておるような現状でございます。こういうときにおきましては、当然わが国の不利を招き、外国利益を与えようとするものに対しての取締りをする必要があるのじゃないかと思うのであります。そういう点におきまして、防衛力増大から見ましても、また安保改定政府考えておられる観点から見ましても、当然防諜法制定というものが必要になってくると思うのでありますが、総理大臣はいかにお考えになっておるか、お聞かせ願いたいと思います。
  4. 岸信介

    岸国務大臣 独立国たる国がその独立を保持していくために、その独立を根底的に危険ならしめるようないわゆるスパイ活動というようなものに対して取締りをすることは、これは世界の独立国におきましては、いずれも当然のこととしてやっておるのであります。私はいかなる国といえども、その国の今申したような根本的の利益というものが——その国に不利な、またその国に害悪をもたらすように利用され、またそういうふうに使われるというような目的でもって諜報活動が行われるということは、これはどうしても適当な取締りを講じていかなければならぬと思います。ただこの問題は立法の問題といたしましても、いわゆる憲法上の自由権との関係もございますし、また取締り上の実際の面から申しましても、行き過ぎ等があるというと、これまた非常な弊害を生ずるものでございますから、政府としては慎重に各般の関係を調査いたしておりまして、将来におきまして適当な結論を得ますならば、国会へ提案して御審議をわずらわしたい、こういう目的でもって慎重に調査検討中でございます。
  5. 前田正男

    前田(正)委員 憲法上の自由というような問題も、これはもちろん公共の利益ということでありまして、わが国自主独立に反するような自由は私はないと思うのでありますが、次にそれに関連いたしまして、この際安保条約改定に当りまして、政府根本的に現在の安保条約の片務的な性格というものを、極力憲法の許す範囲において双務的な性格に変えていきたい、こういうふうなお考えのようでありますけれども、現在までの私たちの、日本におきますところの自衛力というものは、総理も御承知通り実力部隊といたしましては相当整備されてきたことは、安保条約の締結された当時とは相当変っております。確かに実力部隊としては、その条約の締結当時よりは増強されて参っておりますけれども、それでは自主的な防衛責任態勢というものは十分にできておるかというと、これまた明瞭な通り、現在のところ防衛庁は御承知通り総理府の一外局にすぎません。この外局である防衛庁行政責任がないのであります。総理実情を御存じかどうか知りませんが、現在国会承認を与えられましたところの防衛予算、こういった予算を支出するに当りまして、防衛庁長官である国務大臣がこれを当然支出する権利があるかと思うとそうではないのでありまして、一々大蔵省にお伺いを立てて、そうして支出をするというような実情になっておるのであります。わが国一国のこの重大なる防衛責任を負わされていながら、その国務大臣大蔵省に一々承認を得なければ、せっかく国会承認された予算が施行できない、こういうような行政責任の不明確なことで、果して私は現在の片務性双務性に改めていこうというほど、日本防衛責任態勢ができておるかどうか疑問に思うのであります。さらに総理も御承知かと思うのでありますが、現在の防衛庁の人事を見ましても、局長課長クラスには相当各省から出先の人間が入ってきておるのであります。こういうふうなことで、どうして私たちが自主的な防衛態勢というものを確立しておる、その責任を確立しておると言えるかどうか。政府考えられるように片務性双務性に改められるというお考えは私たちも非常にけっこうでありますけれども、しかしそれをおやりになるならば、どうしてこの日本におきますところの自主的な防衛責任態勢というものを明確にしないか。これを重視する必要が私はあると思うのであります。そのほか防衛長期計画等もいまだ十分にできておりません。こういうふうなことでは、私は十分な双務性を発揮しようとしてもできない実情じゃないかと思うのであります。またこういう自衛力というものは、非常事態に対処するべき立場責任態勢でございますから、非常事態が起りました場合は動員でありますとか、補給であるとか、こういった方面のことに対しましても相当の備えというものを持たなければならぬと思うのであります。従いまして防衛上からいいましても、当然これはいち早く責任態勢を明確にして、この外局国防省昇格いたしまして、そうしてこのわれわれの自主防衛態勢というものを確立してから、この片務性双務性に改めていこうという安保改定というものが始まっていくのが、私は当然じゃないかと思います。わが党の国防部会におきましては、昨年からこの省の昇格の問題を取り上上げて折衝して参ったのでありますけれども政府におきましては今回それを提案するに至らず、私たちもはなはだ残念に思っておるのでありますが、さらにわれわれ国防部会といたしましては、引き続きこの省に昇格のためのいろいろと問題点がありますので、検討いたしております。私自身も最近国防省昇格の私案を国防部会に発表いたしておるのでありますけれども、われわれといたしましても昇格に伴ういろいろの問題点については、解決策を講ずべく真剣な努力をしておるのでありますが、政府におきましても一つ安保改定をされようという、そういう気持に対しまして、当然あるいはそれ以前に行われるべきかもわからぬと思うのでありますけれども、この国防省昇格というものに対して積極的な努力を払われていく必要があると思うのであります。総理におかれましては、この省の昇格に対するお考えをお聞かせ願いたい。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 日本自衛力増強は、御承知通り日本の国情と国力に順応して漸次これが増加を、増強をするという従来の基本方針に従って、漸次今日の状況まで持ってこられたことは御承知通りであります。しかして現在の状況で果して日本自衛隊だけで日本の安全が保障できるかというなら、これもできないことも、これもまた事実上日本の力だけで日本の安全が保障できない。そこに日米安全保障態勢というものができておるわけであります。ただ御承知のように、この現行条約ができました当時は日本一つ自衛力がなかったわけでありますから、もっぱらアメリカの兵力によって日本の安全を保障するという道をとるほかはなかったわけでありますから、その条文独立国としてははなはだふさわしくないようなアメリカの一方的な、日本の全然自主性を持たない条文になっておることも、これは制定の当時の事情からやむを得なかったと思うのです。しかし今日におきましては、ある程度のなにができております。われわれは第一段にやはり祖国の安全をわれわれ国民の力で守る。そうして他から不正なる侵害を受けないという根本をあくまでも立てていくということは、私は独立国として当然のことである。この見地から見ますと日米安保条約現行規定というものは、いかにも国民的なそういう気持にそぐわない点があり、また駐在しておる米軍に対しましてもそういう状況でありますから、もちろん占領時代とは違っておりますけれども占領時代考え方が残っておるところがたくさんあると思う。だからどうしてもこれは私は独立国にふさわしい、また日本自衛力というものの今日の現状にふさわしい状況において、日米が話し合って適当に改正することが必要であるということが、安保条約改定根本考え方であります。  しかして今おあげになりました、しかしそういう情勢もある程度はできておるけれども、なお一番大きな国防の問題についての責任官庁たる防衛庁立場というものが、責任上非常に不明確でないか、こういう状況では安保条約はたとい対等な形に自主的に持っていこうといっても、十分でないのではないか。どうしてもこれは責任を明確にし、この点における行政機構というものをはっきりしていく必要があるのではないかというお考えにつきましては、私はそういう根本考え方については全然同感でございます。ただ行政機構の改革という問題に関しましては、いろいろな点を考えなければならぬと思います。従って私ども行政審議会という、有識者を集めていろいろな問題を十分あらゆる観点から検討をしてもらっております。しこうして防衛庁国防省昇格するという問題に関しましては、行政審議会としては時期尚早ではないかという意見が多数でございまして、はっきりした結論を得るに至っておりません。私は行政審議会意見等も尊重して、予算の総額の上から申しましても、また本来の仕事の性格から申しましても、責任を明確にし、十分に本来の目的を達するためには、将来どうしてもやはり省にするという時期がこなければならぬ、かように思って、今各方面意見も聞き、あらゆる観点から検討をいたして参りたい、こう思っております。
  7. 前田正男

    前田(正)委員 安保条約改定しようという方針にはわれわれも賛成でございますけれども、今のお話の通り責任態勢を十分に整えてもらうということについて、政府からもっと積極的に審議会の方にもまた与党の方にも働きかけて御相談を願いたいと思うのです。時間もありませんのでもう、一点最後にお聞かせ願いたいと思いますことは、今度の安保改定に当りまして、外務大臣等はよく内乱条項削除するというふうなことを発表しておられるのでありますけれども、はなはだ不幸ながら、私がこの安保条約の現在の条文を見ますと、外務大臣が言っておられるような内乱条項に該当するものはどこにもないように思うのであります。これは条文に書いてあるところによりますと、外国教唆または干渉によって引き起された大規模内乱及び騒擾という言葉でありまして、これはいわゆる間接侵略であると思うのであります。そこで外務大臣にこの点をただしますと、いや、今度は内乱条項削除しても、間接侵略の場合には外国から援助を受けられるのだと、いうふうにおっしゃっておられる。そういうことでありますと、これはいわゆる内乱条項削除ではなしに、間接侵略に対して米軍援助を受けるということは現在この条項にあるのでありますが、その条項を要するに書きかえて変更する、こういうふうに解釈していいのじゃないか。外務大臣の言っておられるように削除するということではなしに、書きかえて変更されるというのじゃないか。間接侵略の場合にも、今度の新しい改定でも出てくるということですから……。純然たる内乱の場合に、日本外国軍隊が出てくるということは、現在の安保条約には書いてありません。従いまして間接侵略に対しましては、今度は削除ではなしに、その条項を書きかえるということではないかと思うのであります。  ところが、この書きかえた場合における一つ問題点は、現在はほとんどすべての間接侵略の場合において援助を与えられるように書いてあるのでありますけれども、この書きかえの場合の書き方によりましては、簡単に援助がもらえないというような事態が出てくる。外国から武器とかそういうものが入ってきたとか、あるいは外国軍隊日本に対して相当配置について日本自衛隊がくぎづけをされる、そういう大規模武力的な威圧を加えられるというときはもちろんでございますが、そういう場合以外におきましても、外国教唆干渉等によって相当間接侵略が行われた場合の援助には、いろいろな形式があると思うのであります。たとえば情報を受けるとか、日本に置いてあります補給物資を受けるとか、場合によりましたならば米軍に頼んで輸送機とか船舶を利用して自衛隊員を移動さすとか、ごく初歩段階援助もいろいろとあり得ると思います。そういうものも全部含めた立場で書きかえる必要があるのではないか。同じ書きかえでも、書きかえのやり方によりましては、たとえばNATO条項に従って、それによって解釈してやるのだというふうなことを外務大臣は回答しておられるのでありますけれどもNATOの申し合せの条項によって援助を受けるというような場合には、今までのようなそういうごく初歩段階援助も、すべてNATO条項援助の中へ含まれるかどうかということは私は疑問だと思うのであります。この点につきましては、われわれの自衛力というものは、先ほど総理も言われました通りたちの平和を守るところの抑制力でありまして、これがあるからこそ日本が平和であるわけであります。これを行使するということはなるべく避けなければならぬことであります。従いましてやはりわが国の平和と安全を乱そうというものに対しては、相当の威力を持っておるということが必要であります。しかし日本自衛力で不十分な場合には、初歩段階でも応援を受けられて、間接侵略というものが起り得ないという力を持つことが絶対必要であると思うのでありまして、この条項を私が言いますように書きかえるにいたしましても、従来の力、われわれの持っておりますところの間接侵略あるいは直接侵略に対する自衛力というものは、減退しないようにしなければならないと思うのであります。その点総理は、今度の条項の変更に対して、われわれの自衛力が減らないという観点から一つやっていただきたいと思うのでありますが、どうお考えになっておるか、伺いたいと思います。
  8. 岸信介

    岸国務大臣 今日いわゆる内乱と称せられるところのものにも、いろいろな態様があると思います。普通の内乱におきましても、想像し得るところによれば、いろいろ外国からの使嗾や教唆あるいはそのつながりというものは、もちろんいろいろな態様であるというのが最近の国際情勢現状でございます。その最も著しいものは、言うまでもなく武力でもって援助して内乱をなにするというような形になれば、これはもうはっきりいたしておりますから、武力攻撃に対して共同的にこれを排撃、排除するというようなことは当然であろうと思います。しかし日本の最も普通の場合におけるところの内乱というものについては、日本自衛隊及び警察の力でもって一応——以前、安保条約ができた当時は全然そういう力を持たなかったのでありますが、これは一応日本の力でやる。しこうしていろいろな態様において、アメリカと共同してこれに当る場合もありましょうし、またその間において日本アメリカとの関係もしくは国際連合を通じての日本に対する外部からのいわゆる間接侵略に対する防衛措置というものも、当然講ぜられるわけであります。もちろんこの規定を書きかえる場合におきまして、私どもはやはり独立国として本来ある日本自体防衛、また特にそのうちにおいて内乱というものについては、その背後に外国関係があっても、一応日本の力で、独立国としてこれを静めるという観点に立って、この条文の書きかえをしたい。しかし今申すようないろいろな態様がございますから、その態様に応じて、いかなる場合においても日本の安全が保障できるというようなことを十分に考慮して変えていきたい、こう思っております。
  9. 内海安吉

  10. 木原津與志

    木原委員 最近、防衛の問題についての総理憲法上の解釈と申しますか、見解と申しますか、それが非常に拡大され、飛躍しておるような点をわれわれは見受けるのであります。内閣委員として特にその点について注目いたしておるわけであります。特に総理参議院予算委員会における論議の中で、オネスト・ジョン核弾頭をつけることは、憲法上何ら違反ではない、差しつかえがないというようなことを防衛庁長官とともに言っておられるし、さらにまたきのうの予算委員会では、アメリカ駐留軍が大型の水爆あるいは原爆を持ち込むことがあっても、安保条約でこれをどうすることもできないし、さらに、日本憲法には違反するかもしれないが、これを持ち込まれた場合に拒否することはできない、こういうようなことを言っておられる。あなたは核装備はしないのだということを何回も繰り返し言っておられながら、憲法上はできるのだからということが裏にあるのでありまするから、いつあなたの考えが変って、それは憲法で認められておるから、持ち込んでも、核弾頭をつけても差しつかえないというふうに政策が転換になるかもしれない。こういう点についてわれわれは非常な関心を持っておるし、また一般国民も大きな恐怖をもってあなたの言動を見ておると思うのでございます。従って本日は、参議院での答えはそのままとして、本委員会にわいて、オネスト・ジョンの問題と、アメリカ駐留軍原水爆を持ち込む場合についての憲法上の解釈、その二点について、ここではっきり明らかにしていただきたい。
  11. 岸信介

    岸国務大臣 私はこれは今回の国会だけではございませんで、以前からの国会におきまして、憲法解釈論として、憲法論としての議論と私の政策論議論とは分けていたしております。これは今回が初めてではございませんで、過去の速記録等をごらんになれば、その点ははっきりいたしております。そして私の申しておりますことは、終始一貫少しも変っておりません。第一の、私自身がいかなる意味においても自衛隊核装備しないし、アメリカ駐留軍をして核兵器を持ち込ませないということは、一貫して今日まで主張してきており、また実際現実は私が言うておる通りでございます。ただ憲法論として、それでは核兵器と名がつくものはすべて憲法九条はこれを禁止しておるかという解釈論になりますならば、たとえば原水爆のごときもっぱら攻撃的な意義を持っておるものが、憲法自衛権範囲においての実力だけを持ち得るわけでございますから、いかなる意味においても、自衛という性格を持たないものを持つことができないことは、これは憲法上当然であるけれども、しかしそうでないものについては、これは憲法解釈として、核兵器という名がついておればすべて憲法違反だという解釈は、これは解釈論としてとれないであろうということを、私は終始一貫申しております。それで具体的の問題については、私自身十分軍事的知識を持たないがゆえに、それでは具体的に何が当るか当らないかというような問題については、十分専門のところで研究していくべきであって、私は具体的なものが憲法違反であるとか憲法にかなっておるとかいうような解釈はいたしておりません。  また昨日の予算委員会云々の事柄は、私はその席におりませんでしたから、防衛庁長官から当時のことを御返事することにいたしたいと思います。ただ憲法解釈として、米軍装備の問題は、これは私は憲法九条の関知するところではないというのが、正しい解釈だろうと思います。しこうして米軍装備の問題につきましては、これは日米間の条約できめるべきものであって、現在の安保条約においては御承知のように、米軍はその装備につきまして、アメリカの一方的の意思でもってなし得ることになっておりますから、私は従来アメリカ核兵器の持ち込みは認めないということを申しておりますが、それは一体条約のどの条文からそういうことが出てくるのだという質問に対しましては、現在の安保条約については、一応明確にやっておる規定はない。しかし私は一昨年アメリカへ行きまして、アイゼンハワー大統領との共同声明によって、そのときの論議によりまして、安保条約上から生ずるところのいろいろな問題を、日本国民の感情と利益に合致するように運営していくために、御承知通り共同委員会を作りました。その際に、そういう問題についても共同委員会に諮ってやるという了解のもとにきておるのでございます。しかし将来安保条約改定する場合においては、そういうことをアメリカが一方的にはできない、事前に協議して日本承認を得なければできないということを条約上明確にすることによって、私の申しておる事柄、いわゆる核兵器を持ち込ませないという方針を貫くことのできるような根拠を、条約上に置こうと存じております。しかし日本憲法はそういうアメリカ軍の装備にまでは関知していないと解釈するのが、私は憲法議論としては正しいのだろうと思います。
  12. 木原津與志

    木原委員 憲法の九条がアメリカ軍の装備を制限することはできないということになりますると、アメリカ日米安保条約によって原爆、水爆を日本に持ち込んでも、日本憲法でこれをどうすることもできないというような事態が起り得るわけですね。そうすると私は、条約ではそのまま持ってくるが、憲法でそれを禁止しておる、憲法違反だということになると、憲法条約の効力の問題がここに持ち上らなければならぬと思う。そうすると日米安保条約によって持ち込むことは可能であるが、しかもそれは日本憲法違反するというならば、日米安保条約の、持ち込むということを含んだその条約規定は、憲法九条に違反するために、日米安保条約そのものが、抵触する範囲内において無効になってしまうということになるのじゃないかと思いますが、総理の御見解はいかがですか。
  13. 岸信介

    岸国務大臣 私は憲法規定というものは、アメリカ軍のなにに対して憲法規定が適用されることではないので、それは憲法の関知しない事柄であって、同じ適用があって、条約憲法違反した場合において、一体条約の効力はどうかという問題は、これまた別の問題であります。私は憲法九条はそういう米軍の問題については関知しておらない、これは全然規定してるところではなしに、関知しないのだ、こう解釈すべきものであると言っておるのであります。
  14. 木原津與志

    木原委員 どうもおかしい。憲法条約に関知しないということは私もわかる。しかしその条約によって起ることが、具体的には原爆を日本に持ち込むということが、日本国を支配する基本法である憲法に抵触をするということになれば、憲法が優先するか条約が優先するかということが、そこから出てくるじゃありませんか。そうなれば憲法解釈論としましても、日米安保条約によって持ち込むことができても、憲法が禁止しているということになれば、それは当然憲法違反条約であるから、日米安保条約の抵触する部分をそのまま廃棄するか、無効ということになるじゃありませんか。
  15. 岸信介

    岸国務大臣 これはたとえば憲法の九条の一項の半面において自衛権というものは認めておるということを私ども通説に思ってとっております。しかし交戦権は二項において持たない、あるいは戦力を持たない、それを越えた戦力を持たないということは言われておりますが、アメリカ軍はそれの規定の適用を受けるものではございませんで、アメリカ軍隊はやはり軍隊として国際法上の交戦権を持っておりますし、また憲法第九条二項で言っている戦力を持つことはできないということの制限を受けておるわけでないことは、これは憲法制定当時からはっきり論議されておることでありまして、私が憲法九条はアメリカ軍のそういう問題について関知するところでないのだという解釈をとっておりますことは、憲法制定以来の一貫した正しい議論であると考えます。
  16. 木原津與志

    木原委員 あなたのおっしゃることはわかるのですが、ただ憲法は関知しないといっても、日米安保条約ができる前にすでに日本憲法というのはできておったのですよ。その日本憲法の中の第九条の解釈として、原水爆は国内に持たないのだということが一般的に解釈されておる。そこに持ってきて安保条約があとから締結されたでしょう。そうして締結されたその安保条約によって国内で禁止しておる。憲法違反するような行為をやる場合においては、安保条約そのものの、そういう効力が日本憲法との関連において否定されるということになるのが、これは当然じゃありませんか。あなたのおっしゃるのは、憲法条約と全然関係がないのだからとただおっしゃるだけですが、私もその点は認める。認めるが、少くとも日本の最高法規に違反する条約で事が処理されることを、憲法が許すかどうか、許されてもいいものかどうかということをあなたにお聞きしたいのです。
  17. 岸信介

    岸国務大臣 私は憲法九条の規定日本独立国として持っておる自衛権規定しておるものであって、その自衛権の内容としての戦力であるとか、あるいは自衛行動としていわゆる交戦権を持たないとかいうようなことは、日本自衛権範囲におけるところの日本自衛隊性格というものを規定しておるのが、憲法の九条の規定でございます。従って外国軍隊のことを九条は何ら規定しているものではないのでありまして、従ってそういう意味において私は米軍のことは関知しない、こういうことを申しておるわけでありますから、あくまでも日本自衛隊に関する日本自衛権の問題に関して九条というものの適用があり、制限を受けるということは当然なことである。それ以外なものは触れておらないというのが私の解釈でありまして、ただ憲法条約とは別のものであるから云々というような議論を申し上げておるわけではございません。
  18. 木原津與志

    木原委員 そういう解釈は間違っております。あなたは憲法九条は自衛隊に関するものだと言っておられるが、憲法の九条ができたときは自衛隊なんてまだ卵にもなっていないですよ。生まれていないですよ。生まれてない自衛隊に関するものだということになれば意味をなさぬじゃありませんか。この九条の問題は日本自衛権について交戦力を持たぬ、あるいは戦力を持たない、武力行使をやらない、国の交戦権を認めないということを内外に、特に日本国民に宣言した規定なんでしょう。自衛隊があるとかないとかいうようなことと関係はございませんよ。終戦後われわれが内外に、国民とともに世界に宣言したそのことに条約が触れている。条約によって持ち込まれることが憲法の禁止に触れてくるのです。こういうことを憲法は知らなかったからといって、そのままになるものじゃないでしょう。知らなければどっちが——安保条約が有効に日本に作用するのか、憲法の第九条が有効に日本に作用してくるのかということをきめなければならぬ。私どもはその場合、最高法規である日本憲法規定が当然優先するものであって、この規定をじゅうりんするような結果となる安保条約であるならば、その安保条約のその部分に関する限り、これは当然廃棄されるか、あるいは無効であるという解釈をとらなければならぬ。これは単なる憲法論議の問題だけでなくて、あなたの政治政策上の問題としても当然そうならなければならぬと思うのでございますが、いかがでしょう。
  19. 岸信介

    岸国務大臣 今木原君の御質問にありました憲法九条が自衛隊に関する規定だというようなことを私申し上げたつもりではございません。今お話の通り憲法の九条はいかなる意味があっても、国際紛争を武力で解決するということはやらないという規定をしておりますが、その半面において、独立国として自衛権を持つということを否認するものではない。自衛権はやはり認められておると解釈すべきものであり、すなわち他から急迫不正な侵害を受けるならば、これを実力をもって排除するという力を持つことは、これは憲法九条で、いわゆる国際紛争を武力をもって解決するということは永久にやらないといったことと、ちっとも矛盾するものでないというのがこの憲法解釈でございます。しこうしてその自衛権を裏づけるために、ある実力を持たなければならぬということも、ただ空に、抽象的に自衛権があるとしても、現実にもしも他から急迫不正な侵害を受けた場合に、これを排除する力を持たないというのでは、自衛権があるといってないも同じですから、その実力を持つ。しかしそれはあくまでも狭い意味における自衛権範囲内において、その実力を行使するものであり、従って諸外国軍隊というような広い意味における交戦権というようなものを、いかなる場合においても持つものではない、こういうことが二項において規定されておるわけであります。しかし外国軍隊日本の安全を守るために、日本条約を結んで、日本の安全を守るという場合に、外国条約を結んで、その軍隊日本に駐屯するということは、私ども憲法違反だとは思いません。その軍隊は今言っておる憲法九条によっている自衛権の内容のことだけしかやれないものでもなくして、広い権限を持っておる軍隊が駐留しておっても、私どもはそれは憲法違反ではないと思います。それは憲法九条の関知するところではないと、こう解釈すべきものである。従ってその軍隊装備につきましても、これは憲法九条の制約を受けるものでないというのが、先ほどから私が申し上げていることでございます。
  20. 木原津與志

    木原委員 自衛権のために外国軍隊が駐留するということを、私はとやかく憲法違反呼ばわりしているのではない。しかし日本自衛権には、おのずから憲法上の制約があるのです。その制約下における武装でなければならないはずなんだ。そこに持ってきて日本がよその国と結んだ条約によって、憲法自衛権規定を飛び越えて、すなわち具体的には原爆とか水爆とか、こういうようなものを持ち込むということになれば、そこで日本憲法自衛権範囲を越えるという事態が起ってくるわけです。そういうことを日本憲法で認めることができるかどうかという問題になる。  さらに私はあなたにお尋ねしますが、条約憲法とは一体どっちが優先するのですか。いつの何であったか忘れましたが、確かにあなたの内閣では、憲法条約が抵触する場合においては、憲法が最高のもので優先するのだ、条約憲法の下にあるのだというようなことを、法制局長官の口を通じておっしゃったことを私は記憶しておりますが、それならば、もし日米安保条約規定によってそれが国内に持ち込まれて、それが憲法の九条に違反するというならば、それは憲法上拒否することができるし、また当然拒否しなければ憲法違反だということになろうかと思いますが、いま一度その点御答弁願いたい。
  21. 岸信介

    岸国務大臣 憲法条約との関係については法制局長官からお答え申し上げますが、憲法九条の規定は、いわゆる憲法条約とどちらが優先するかという問題ではなくして、日本が半面において自衛権を持つ場合において、その自衛権というものの内容を規定する場合においての規定であって、いわゆる安保条約等によりまして協力するところの外国軍隊の内容を規定しているものではないのでありまして、従ってそこに優劣の関係が生ずるものではないと私は解釈をいたしております。しかし一般に憲法条約の問題につきましては、法制局長官からなお念のためにお答えいたさせます。
  22. 林修三

    ○林(修)政府委員 最初に憲法九条二項と安保条約との関係でありますが、これは今総理が仰せられました通りに、安保条約締結の当時において非常に議論があったところでありまして、米軍の戦力は憲法九条二項の戦力ではないということをはっきり政府は言っておりました。その当時からこれははっきりした問題だと私たちは思っております。従ってこの問題について憲法条約の優劣関係が起ってくる場面はないとわれわれは考えておるわけでございます。  ただ一般問題として、今御質問の憲法条約との優劣関係の問題でございますが、憲法九十八条には御承知通り日本は締結した国際条約は誠実に順守しなければならないという規定がございまして、この規定解釈をめぐっていわゆる憲法優位説と条約優位説と両方の説があることは御承知だと思います。ただそこで問題になりますのは、いわゆる二国間条約のことであります。二国間条約のごときものを結ぶに当りまして、政府といたしましては憲法を順守すべき立場にあることは当然でありますから、憲法違反するような条約を結ぶような態度をとるべきでないということは、政府に課せられた義務である、かように考えます。従って憲法違反のような条約を結ぶべきでないということは当然のことだと思います。ただ憲法九十八条二項の国際法規の順守ということから申しまして、たとえば外交官の治外法権の問題とか、そういうようないわゆる確立された国際法規あるいは多数国間条約のごときものにつきましては、あるいは憲法の方に優位するという解釈をとるべき場合があろうと思います。しかし二国間条約につきましては、今申しましたように政府としては憲法違反条約を結ぶような態度をとるべきでないということは当然のことだと思います。
  23. 木原津與志

    木原委員 結ぶべきでないということであるが、もしその結果憲法違反条約ができ上ったということになれば、それは当然無効であるとか廃棄するとかしなければならぬということになるわけですね。と同時に、この安保条約憲法九条との問題は優劣の関係がないのだということをおっしゃいますが、そんなことはないと思う。優劣問題が起ってくるのです。今言うように、日米安保条約によって日本駐留軍に水爆を装備するということになれば、これはアメリカ軍隊であると同時に、日本防衛する軍隊なんです。そうしてその国土の中では原水爆を持つことができないということに憲法上なっておるのだから、その場合に日本政府として、日本国民として、一体これをどうするかということが問題になる。そういう場合に、規制されるのは条約でなくて、日本国の憲法でなければならぬ。日本国の憲法原水爆を持ち込むことが違反ということになれば、安保条約で持ち込むものは憲法違反だとして、その持ち込むことのできるようになっておる安保条約規定を、憲法にかなうように改正しなければならないということにならなければ、論理が合わぬのです。いま一回この点についての総理の御答弁を求めます。
  24. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど来しばしば同じことを繰り返すことになるわけでありますが、憲法九条は、日本みずからが独立国として持っておる自衛権に関する規定であり、一切の国際紛争を武力をもっては解決しないが、他から不正急迫な侵害を受けるならば、実力でこれを排除するという規定でございまして、それに関する限りにおきましては、先ほど来申しておるような原水爆のごときものは憲法違反である、これを自衛隊が持つ、その自衛権の裏づけとしてそういう実力を持つことは、憲法が許しておらないということを私どもははっきり申しております。そのために自衛隊実力行使する場合におきましても、他の外国軍隊のごとき交戦権も持ちませんし、また他の外国軍隊がその国の安全を保障するために、あらゆる戦力を持ち得るように無制限な戦力を持ち得ないことも、憲法の九条二項で規定されております。しかしながら日本日本の安全を保障するために、他の国と条約を結んで日本を守るという場合において、外国軍隊に関しては憲法九条の一項、二項の適用はないのだというのが私の解釈でございまして、従ってアメリカ軍の装備について憲法九条が関知するものではないのだ、これを憲法違反であるとか、あるいはどちらが優先するというような議論をすることは間違っておるというのが、私の一貫した解釈でございます。
  25. 木原津與志

    木原委員 時間がありませんので、この問題はあとでまた時間を見てあらためて総理に再質問をいたしたいと思います。  次に移りますが、オネスト・ジョン核弾頭をつけるという問題であります。このオネスト・ジョン日本に持ち込まれたのは、昭和三十年の八月だったと記憶しております。鳩山内閣のころです。この際国会議論になりましたことは、オネスト・ジョンは原子兵器だから憲法違反だということだった。それに対して時の杉原防衛庁長官あるいは重光外務大臣、この人たちが、オネスト・ジョン核兵器じゃないのだ、核弾頭をつけて初めて核兵器になるのだけれども核弾頭はつけないのだから持ち込んでも差しつかえないのだ、こういうことで、三十年の八月にこれをアメリカから日本に初めて持ち込んだわけなのです。その当時は、繰り返して言いますが、核弾頭をつけない、つければ憲法違反になるかもしれないが、つけないから核兵器じゃないということで持ち込まれた。それが二年、四年、その後何年かたって、今度は参議院予算委員会で伊能長官が、核弾頭をつけても憲法違反じゃないということを言われ、さらにまたそれを支持するかのように、岸総理もそれをその答弁において肯定しておられる。こうなってくれば、同じ自民党内閣で、鳩山内閣のときには核弾頭をつけないから核兵器じゃない、だから憲法違反じゃないのだと言っておるのが、あなたの内閣になってから、これは防御用の兵器だ、攻撃用の兵器じゃないから、核弾頭はつけても憲法違反にはならないのだ、ここなんですよ。わずか数年の間に、憲法解釈がこういうふうに拡大され、飛躍してくる。この奥に何があるのか、私たちは想像ができる。しかし一般国民は、数年の間にこうした憲法の拡大解釈をされるということに、非常に不安を持っておるのであります。この点について、一体防御用の兵器か攻撃用の兵器かというようなことでは、先日石橋委員防衛庁長官との間にいろいろ論議がありましたが、そういう論議でなくて、少くとも前内閣において、核弾頭をつけると憲法違反になるが、つけなければ憲法違反にならぬという解釈のもとに持ち込んだものを、今ごろになって核弾頭をつけても憲法違反にはならないのだ、そういう解釈に急転直下された理由を、岸総理から直接お聞きしたい。
  26. 岸信介

    岸国務大臣 私の記憶するところによりますと、今のお話だと何か憲法解釈が急転直下変ったというようなことだが、私は全然そうは思っておりません。私の内閣になりましてから、憲法論として核兵器が持てるか持てないかという議論を、参議院やその他の方でもしておりますが、きょうお答え申し上げたと同じように、私は核兵器と名がつけばことごとく憲法違反だという解釈は、憲法解釈としてとらないと言って、しかし具体的にどういうものが当るのかというようなことについても、核兵器というものが発達の道程にあるから、自分としてはそういうことはまだ十分な研究はないけれども、理論としてはそう解釈すべきものだというのが、一貫した解釈でございます。そうしてオネスト・ジョンが持ち込まれたときにおける論議は、もっぱらこれが核兵器であるかいなかということが論議されておって、核弾頭をつけなければこれは核兵器にはならないのだ、核弾頭をつけて初めて核兵器になるのだ、今持ち込んでおるところのものは核弾頭をつけておらない、従ってこれを核兵器ということはできないというのが議論の要点であったように、私は記憶いたしております。従って、せんだっての参議院予算委員会におきましても、私は同じ考えで同じようにお答えをしておったのであります。これに対して、それなら一体具体的に憲法違反にならない核兵器というものはどういうものだ、具体的に何か例をあげろということでありまして、私は軍事科学についての十分な知識を持たないがゆえに、そういう具体的なものは自分としては今わからないという返事をいたしたのでありますが、それに対して防衛庁長官は、もちろん私と違って、現実に防衛庁責任があり、いろいろな兵器等も具体的に研究をいたしておりますので、一つの例として、オネスト・ジョン核弾頭をつけた場合は核兵器であるけれども、その射程は三十キロないし四十キロというようなものであって、もっぱら防御用のものと見られるがゆえに、こういうようなものは憲法上でいわゆる禁止しておるものとは思わないということを答えたわけであります。具体的に憲法論解釈が急転直下して変ったということは、ずっと経緯を、われわれの答弁を冷静に御検討下さるならば、絶対にそうでないということが明白であると思います。
  27. 木原津與志

    木原委員 憲法解釈は拡大しておらないという御意見でございますが、この憲法九条の解釈の推移、これが成立後の推移を、総理もよく御承知のことと思う。一番最初吉田内閣によってこの憲法が成立するときには、日本自衛を名目にして戦争をやってこういう羽目に陥ったのだから、今後は、この憲法規定するところは、自衛のために戦力を持つことは、いかなる意味においても許さない、そう解釈すべきものだという点であったのです。その後自衛のための戦力が戦力にならなければ、一応自衛権の行使としての武力の行使は認められるというふうに、解釈が広がってきた。そうして現在のあなたの内閣になったら、自衛のためには戦力を持つことは憲法違反ではない。こういうように、わずか十年の間に、この九条の自衛力の点について二段階も四段階も、それが拡大されてきておる。その拡大されてきておる推移をわれわれすっと見ておると、警察予備隊から自衛隊になり、さらに自衛隊が何カ年増兵計画かによってずっと大きくなるに従って、さらにアメリカとの安保条約あるいはMSA、そういうような協定が結ばれるに従って、あなた方のこの憲法解釈——戦力の問題、自衛権の問題あるいは核武装の問題が、初めにおいて予想をされなかったような拡大解釈がされておるという点を、一つ良心的に反省していただきたい。あなた方の言われるように、憲法上は許されるのだが、政策としてそれをとらないのだというようなことでは、万一あなたの内閣がまたほかにかわる、あるいはその他の条件があったときに、もし憲法改正によってされるならばともかくも、今日このままの憲法の中で堂々たる軍隊ができ、また近代の戦争というようなものも起るようになり得る。その点について、憲法解釈というものは、あなた方の政策とは別に、厳格な規定解釈をここに国民に打ち立てておかなければならぬとわれわれは考える。それをわずか十年の間のこの憲法の論争を見ただけでも、だんだん拡大している。しまいには、自衛のための戦力ということだったが、最近赤城官房長官は、自衛のために戦力を持つというふうに言っておられる。自衛のために戦力を持つというのだったら、これはどこの憲法とも一緒じゃありませんか。どこの軍隊にしたところで、自衛のために軍隊を持つのは当然のところなんです。そうして戦争が行われるのです。そういうふうに憲法解釈がだんだん拡張されていくことによって、将来日本がどのような運命になるかということをこの際総理に反省していただいて、あなたの憲法解釈について御一考を煩わしたいと思う。  まだお尋ねしたいことはたくさんあるのですが、私の持ち時間の関係でこれでやめます。
  28. 内海安吉

  29. 保科善四郎

    ○保科委員 私は防衛法案審議に当りまして、防衛の基本的な問題に対して、二、三総理に率直なる御所見を伺いたいと思います。  三月十一日にアイゼンハワー大統領が記者会見において、UPIのメリマン・スミス記者の質問に対し、こういうことを言うております。「われわれは共産帝国主義者の活動と方針があるかぎり、たえず国際緊張の間に過ごさねばならぬことを、わたしは多年説いてきた。共産帝国主義は世界革命を推進して、結局全世界をモスクワの指導のもとに共産化しようとする努力、圧力を決してゆるめようとはしない。彼らはこうして紛争を激化し、緊張を造成し、あるいはなんらかの方法で、自由世界が自由を保持しようと努める諸国の結合を強化しようとはかる計画を実施することができないように、またわれわれが正しい平和を求めて、防衛力を充実、強化させて行くことができないように、妨害する方策をとっているのだ。」こういうことを大統領が答えております。こういうような現実の世界の姿に対処して、自由世界はあげて平和を求めて、国際共産主義のかかる世界赤化主義を強行するということに対抗して、集団安全保障の強化に努め、その対策に全力を尽しておるということが、世界の現実の姿であると私は見ております。わが国も、この自由世界の陣営内において自由と民主主義を守って、そうして平和を希求するために集団安全保障態勢のもとに、特に日米安全保障条約を中軸として防衛力を漸増しながら、国家の安全のために万全を尽しておるという姿であって、これは私は当然のことであると考えます。  ところが、こういう事情にあるにかかわらず、現実を無視したる議論がしばしば日本において行われておる。現実を無視した中立論が横行するかと思うと、最も日本の安全保障の中軸となっておる日米安全保障条約の解消を主張する者すらある。かくのごとき言動は、よく国際情勢のわかっておる方はこういうものは信じないと思いますけれども、こういうことに惑わされている国民相当多いのであって、私はまことに遺憾に考えておるのであります。こういう世界の現実に逆行するいろいろな言動が行われておるということは、これは私は政府の態度にも若干原因があるのじゃないかと考えておるのであります。世界の政治の中心は、国家の安全保障、どうして世界の平和を守るかということに腐心をしている。国民予算をこの点に最も有効に使用する方向に、努力をしておられるわけであります。ところが、わが国は戦後十数年たっておっても、なおもってこの問題に対してただいま申したような混迷せる、いわゆるイデオロギーの議論が行われている。イデオロギーもいいでしょうけれども、現実を無視したる議論はこれは政治にならぬと思う。そこでこういうような議論が行われているのは——私は今度の議会における総理の施政方針の御演説を拝聴いたしましても、一言もこの安全保障、いわゆる防衛の問題に触れておられぬ。しかもこういうことを国民が不思議としない。先ほどアイゼンハワーが答えたような現状下にあって、こういうことはまことに情ないと私は考えておるのであります。私はこの機会において、せめてこの委員会を通してはっきりと国民に対して、総理の所信を一つ披瀝していただきたいと思います。
  30. 岸信介

    岸国務大臣 国際情勢の分析につきましてはいろいろな見方もありますけれども、私も大体において保科委員の見方と、現実の国際情勢の分析につきましては意見を同じくするものであります。しこうしていかなる状態においても、日本が他から侵略をされない、日本の安全を保障していくという見地に立って、すべてのものを考えなければなりませんが、それは言うまでもなく、単に武力といいますか、一つの具体的の狭い意味防衛力だけで、日本の安全が保障できるものでもございません。もちろん私は一番大きなことは平和外交を推進することによって——東西の緊張緩和に対して外交の路線を通じて努力するということも、これは日本の安全保障の上からわれわれのやらなければならない大きな使命であり、また国内においていろいろこの戦争中に受けましたところの損害や被害や、あるいはいろいろな社会的な不安というものを除いて、国民が民族的な意識から、祖国を防衛するという政治的基盤を作るような諸施策を行わなければならぬことも言うを待ちません。またそうは申しましても、現実にわれわれが持たなければならない武力的な実力というものにつきましても、いわゆる国力と国情に応じて漸増するという方針をとって今日までやってきております。まだ日本の国情や国力におきましては、日本の一国だけで、日本のいかなる場合における安全も保障できるという態勢にはなかなかいくわけではないし、また今日の国際情勢から申しますと、どんな国でも一国だけでいかなる場合においても他から侵略を受けるということのない、またそれを排撃するところの力を持つということは不可能でございまして、従ってここに集団安全保障の態勢をとらなければならぬ。われわれは理想的なものは、世界の各国が加入しておる国際連合においてそういう有力な機構ができ、世界の安全が保障され、従って日本が他から侵略を受けない、この安全が完全に保障されるという状態がくることが最も望ましいと思いますが、現実にはそうもいってない。そこで日米安全保障態勢によって——日本日本の自力でもって持ち得る防衛力というものだけでは足りないから、アメリカとの間の相互援助によっての防衛、安全保障を完全にやっていく。そうして国民が他から侵略されないのだ、われわれの平和な生活を脅かされるのでないのだというような安全感を持つことが、われわれの繁栄と国の繁栄と民主主義の完成の上には絶体必要である。そういう意味において、他から侵略を受けないのだ、侵略があるならば実力で十分排除できるのだという態勢を固めていくことは、これはどうしても政治の根底である。そこに日米安保条約の問題が当然起ってくる。これを廃棄しろとかいうような議論は私どもは絶対にとらないゆえんも、そこにあると思います。
  31. 保科善四郎

    ○保科委員 次にもう一つ。ただいま総理が触れられたのでありますが、この問題に関連して日米安全保障条約改定の問題であります。これは総理が一昨年の六月においでになりまして、最も重視をされた問題であり、当時時期尚早として日米安全保障委員会を設けられて、これが改定の準備をされた。従ってこの改定に乗り出して、その政治的責任を果される岸総理の態度に対して、私は全幅にこれを支持するものであります。ところが日米安全保障条約改定に関連をいたしまして、ソ連とか中共とかがラジオを通じ、国民にその改定が不必要だということを内政干渉をしてみたり、これに相呼応するかのごとく日米安全保障条約の解消論を唱えておる。あるいはわが党内においても、時期尚早論が行われておるというようなことは、まことに私は遺憾であると思います。しかしそういうことになっておる原因は、やはり日米安保条約を改正する準備として、先ほど前田委員がおっしゃったように、いろいろなやるべきことをやっていないというところに若干問題があると思います。
  32. 内海安吉

    内海委員長 保科さん、制限時間がきておりますから、なるべく簡単に願います。
  33. 保科善四郎

    ○保科委員 そういうことに関連をいたしまして、私は、もっとわが方でやるべきことをやりながら、国民に理解をしてもらうという、もっと徹底的な手段を講じられる必要があるのじゃないかと思います。この点に関する総理の御所見を伺いたいと思います。
  34. 岸信介

    岸国務大臣 御意見のように安保条約改定の問題は、われわれの長い念願でございます。独立国として、当然対等な立場に置いておかなければならぬという見地に立ってこれが改定をすることは、私は日本国民の心から願っておるところであると考えております。しかし具体的な改定の問題等につきましては、いろいろな憶測やあるいは悪意の宣伝等のために、国民に十分に理解、徹底しない節があると思います。これらにつきましては、政府としては今後十分に努力して、国民に十分理解してもらい、国民の協力のもとにこれが実現をはかっていきたい、かように思っております。
  35. 内海安吉

    内海委員長 石山權作君。
  36. 石山權作

    ○石山委員 私、今までの論争を聞いていまして、国民の一人として大へんびっくりしたのであります。その一つは、日本の国の憲法は、ある種の自衛力は認めるけれども、攻撃的であってはならぬ、この防御と攻撃というふうな問題も、私はかなりに論争の種になると思いますが、一応常識的に言ってよろしい。その場合、総理のお話によると、外国軍隊は水爆その他を持ち込んでも、それは何ともならないことだ、こうおっしゃっております。私はなるほどと思うけれども、あるいは今までの経緯からして、なるほどと思うけれども、問題を突き詰めてみますと、ずいぶんへんてこなことだと思うのです。われわれ自身は攻撃的であってはならぬと言っていながらも、外国軍隊は厳然としていて、その軍隊は勝手気ままなことをやっても、こっちは何ともならぬ、こういうことが今の場合出てきたわけですね。私はそういう意味ではほんとうに、初めてではないけれども、なるほどそんな事態なのか、こう思ったわけです。それと同時に、安保条約を今度改正するとおっしゃっているわけですね。安保条約はそういう意味におきましては、これはいろいろ議論もあると思うのですが、われわれが考えている憲法上の解釈に沿うような改定論を政府考えておるのか。今の現実のような格好、勝手気ままにされて何ともならぬのだ、これは全くおかしな話だと私は思う。もっともこれは一方交通で、侵略された者、侵略した者、勝った者、負けた者の一方交通でやっているだろうと思うのですが、今度は一方交通を何とかして循環道路にするか、片側を広げていこうかという、交通整理をなさろうとする気組みを表示しているわけですね。その場合に、藤山さんは藤山さん、河野さんは河野さん、元締めをなすあなたはあなたで、何だか、どこを標準にして、国民にアドバルーンを上げるのか。あなたの言うのはいつもおもしろいのですよ。国民の世論を見ながら問題をきめるというのですね、そのためにアドバルーンを上げると。私は人がいいですから、善意に解釈します。しかし世論というものを、アドバルーンを上げながら一体どこへ持っていくのか、どこを見てきめようとするのか。そういう意味で、話を前に戻しまして、われわれ国民憲法自衛力、戦力の問題にあまり疑義を持たないような格好で、今度の安保条約改定なさるという気持で問題を進めているかどうかを御答弁願いたい。
  37. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど来の議論は、憲法解釈議論と、それから、実際上の政策議論とは、これは別であることもはっきり申し上げておるのであります。憲法上の議論として、アメリカ軍隊装備等には、憲法規定がこれには関知しないという意味のことを先ほど来申し上げたわけであります。また現行安保条約は、今石山君の言葉をかりて言えば、全く一方交通だけでおります。日本は全然アメリカの意思に対して、これを押える力がないのであります。今度はわれわれは、装備や使用等につきましても事前協議をすることにいたしまして、日本の意思に反していろいろなことが行われないように、交通整理を十分にやるというのが安保条約改定のねらいでございます。そしていろいろの御議論も従来行われておりますが、安保条約の改正点等につきましては、具体的に外務大臣やその他からも、はっきり国会におきまして、そして大体の方針等につきましても、この国会を通じてわれわれの考えを申し述べております。国民になお一そう理解と協力を求めるための方法につきましては、今後強力にこれを進めていきたい、こう思っております。
  38. 石山權作

    ○石山委員 おそまきながらでも対等で問題を話し合ってみる、こういう格好で安保条約をやっていくという考え方ですが、その場合、対等ということと共同防衛という問題が私は出てくると思うのです。対等と共同防衛。共同防衛を推し進めていきますと、相互援助という方向へ出ていくことの必然性があるのです。こういう場合におけるいわゆる自衛隊アメリカ軍との関係が非常に緊密になりながら、ある意味では憲法範囲を侵す格好が必然の形で出てくるのではないか。対等ということは結局共同防衛に通じ、相互援助に通じていくのかどうか、そういう考え方を持って対等という言葉を解釈しているのかどうか。
  39. 岸信介

    岸国務大臣 今度の改定につきましては、大前提として、日本憲法の制約の範囲内でということにつきましては、日米両国の間に十分な理解があるのであります。それを前提として話しております。先ほど来議論がありましたように、日本憲法は他の国の憲法に例を見ない、いわゆる憲法九条の規定というものがございますから、従って日本がいわゆる共同防衛といい、あるいは相互援助といいましても、日本憲法を逸脱してこの共同防衛やあるいは相互援助のできないことは、これは言うを待たないのであります。その点は条約にも明確にいたす考えでございます。
  40. 石山權作

    ○石山委員 共同防衛の問題になりますと、さきごろ私の隣にいる石橋委員からも、NEATO等の問題について大へんに危険性があるだろう、こういうことが言われているわけです。現実の問題として共同防衛をした場合に、沖縄、小笠原の区域を含めるか含めないか。そういう仮想のことには答えられませんというのがいつもの手でございますが、では守るなら守る、繰り入れるなら繰り入れる、繰り入れないなら繰り入れない、この際二者択一の御答弁ができるとしたらおっしゃっていただきたい。
  41. 岸信介

    岸国務大臣 沖縄、小笠原につきましては、御承知通りわれわれは潜在主権を持っているわけでございます。潜在主権を持っているということは、やはり観念的には、ここに自衛権を持っておると私は解釈すべきものであると思います。しかし現実の自衛権の行使の問題に関しましては、アメリカが一切の施政権を持っておりますから、アメリカの同意なくしては、これがやれないことも当然でございます。こういう関係にあると思います。そうしていかなる場合においても、この入れるか入れないかという問題に関しましては、御承知通り国民の間にいろいろな議論がございます。そうしてわれわれのはっきりしなければならぬことは、これを入れる入れないにかかわらず、われわれがここに潜在主権を持っており、施政権の返還を国民が一致して要望しておるというこの要望というものと、これを入れる入れないという問題は関係のない問題であって、この点を十分に——入れたからどうなる、入れないから施政権がどうなるという問題でない。この施政権の返還の問題につきましては、安保条約の問題とは別に、われわれが終始一貫国民的要望をアメリカにぶっつけて、そうしてその実現をはかるように今後も一貫して努力すべきものである、かように思っております。しこうして今度の安保条約改定におきまして、これを入れるか入れないかという問題に関しましては、なお十分に私は検討をいたして参りたい、かように思っております。
  42. 石山權作

    ○石山委員 結局まだきまっていないからという逃げ答弁に尽きるだろうと思うのですが、予想される一つのことですが、これは大へんそういう予想はしたくないのでございます。たとえばわれわれは共同防衛の区域に、いわゆる沖縄、小笠原も含まれないでいた、そして不幸にしてアメリカがどこかの国と交戦をした、そして被害を受けたのが沖縄、小笠原の人たちであった。こうした場合における日本国のいわゆる日本人、潜在主権を認めている日本国として日本人である沖縄人、日本人である小笠原の人たちの生命、財産の問題をば、どういうふうに解釈してこれを守るのか。この権原を守るのか。この点に関しては、どういうふうに御解釈をなさるわけですか。
  43. 岸信介

    岸国務大臣 それはアメリカが施政権を持っております限りにおいて、アメリカが全責任をもってこれを守るべき義務を持つと思う。しこうしてもしもアメリカがそれを守らないようなことがあるならば、われわれは当然これをアメリカに対して強く要望すると同時に、将来そういうことのないようにするためには、やはり施政権を日本に完全に返してもらうことをわれわれは別途努力して、これを実現する必要があると思います。
  44. 石山權作

    ○石山委員 それでは最初の話と私は似てくると思うのです。われわれは防衛力のためには、核兵器を持たない、攻撃的な兵器を持たないという。しかし外国人は、アメリカ人は勝手なことをしてもよろしい、これに通じてくるのじゃありませんか。われわれは一生懸命いわゆる沖縄、小笠原の人たちを守りたいという気持があるけれども、その点に関しては、施政権を持つアメリカ軍が思うままに処理するだろう。これに対して、何かあれば政府はちょっとくらい何か言って口をぬぐう、やむを得ない、泣き寝入りをするということと同じ格好でしょう。あとはこういうことのないように……。あとはこういうことのないようにといっても、殺されてしまったり、島が半分くらい形が変ったようになってしまってから、こういうことのないようになどということ自体が——私は近代兵器を知らぬなどと正直に白状しているからいいようなものの、われわれが近代兵器をもう少し知ったならば、こういうことのもう一度ないように、そんな軽口は聞けないはずですよ。そういう点はどうでございますか。
  45. 岸信介

    岸国務大臣 それは石山君と同様に非常に残念だと思いますが、桑港の平和条約規定によって、アメリカに一切の施政権をまかしておる日本の現在としては、しょうがないのです。そういう状態をなくすること以外に、私は日本国民が満足する解決の方法はないと思います。
  46. 石山權作

    ○石山委員 そうすると私、次にくると、おそらく岸さんは日本の国を対等に持っていくためには、大至急に再軍備を強化しなければならぬという次の答弁が用意されておるような気がして、あえて聞きません。あえて聞きたくないけれども、これを一つ聞いておきたい。一九五一年九月八日に「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約の署名に際し吉田内閣総理大臣とアチソン国務長官との間に交換された公文」、これの中身は、つまり日本の国をば連合国として、アメリカのほかに一つか二つくらいの国は自由に往復したりなんかやるのだ、それを許しなさい、便宜供与をしなさいという書簡の内容のようです。その条件が今も残っているかどうかということです。
  47. 岸信介

    岸国務大臣 法制局長官からお答えさせます。
  48. 林修三

    ○林(修)政府委員 御説のように今の青田・アチソン交換公文は、安保条約と一緒に国会承認を得たものでございますが、これは御承知のように内容は、当時の朝鮮事変を主として頭に置いて、朝鮮における国連軍の活動に対して、日本日本の内地において支持を与えるということをきめたもので、便宜を供与する、あるいは支持を与えるということをきめたものだと思います。これに関しましては、結局その朝鮮における国連軍の活動が消えたか消えないかという問題でございまして、消えない限りにおいて、この条約がなくなるということはあり得ない。現在もなお一部私は残っておるものと、かように考えます。
  49. 石山權作

    ○石山委員 そうなると私は問題はもっと複雑してくると思うのです。アメリカ軍のいわゆる核武装、水爆の持ち込み等に反対ができないのだ。悲しいことであるが、反対しても、持ってくるときは拒み得ないのだ、そういうことは今の林長官意見からして、アメリカのほかに一国または二つぐらい、あるいは三つになるか知らぬけれども、連合軍と名のつく連中が通過をする場合に、核兵器を持ってここを通過することは、どうなるのですか。拒み得ないのですか、拒み得るのですか。便宜供与を与える場合には、どういうふうになるのですか。船が入った場合にはどうなるのですか。一個師団ここに当分置いてくれ、原水爆を持った兵隊を一カ月ぐらい東京に置いてくれといったらどうなるのですか。
  50. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは日本のとるべき態度としては、私は、駐留米軍に対する態度と同じ態度をとるべきものだ、政策論としてはそういうことだろうと思うわけでございます。御承知のようにこれは実態としては、現在もうほとんど英豪軍は引き揚げております。私が聞いている範囲では、トルコの兵隊がときどき日本に休暇で帰ってくるという程度のものだと聞いておりますから、ほとんど実際問題としては何もそういう問題はないと思っております。
  51. 石山權作

    ○石山委員 実際問題はないといったって、憲法解釈と同じじゃありませんか。核兵器憲法上持ち得るのだ。私は持たない悲願を持っておる。しかし持ち得るといえば、あなたがやめれば、だれが内閣総理大臣になるかわからぬけれども、やるということでしょう。今のこともそれと同じことなんですよ。今の場合は事件が終ったように——差しつかえないのだ、こう思っても、事件が起きればこの問題は起きてくる。岸総理はこういう重大問題を知っておらないとは、外交問題を論ずるにしては、少し勉強が少いような気がしてなりません。これは大へんな話でしょう。ほんとうからいえばわれわれは、えらい相手はアメリカ軍一国だと思っていたら、アメリカ軍のほかにまだえらい国が一国、二国、三国、連合軍という名前のもとにあるわけです。そうしてこの書簡の精神がいまだ法的に消えていないとすれば、われわれはまだ小じゅうとが二人も三人もおるということでしょう。とんでもない話です。それをあなたがお知りにならないとして、外交問題を論じたり核兵器を論じたりするのは、少し困るのじゃないか。これは小言ですから、あなたの御答弁を求めません。  次にお聞きしたいことは、先ほど与党の同僚議員が二人ばかりあなたにうんとけしかけた。どういうけしのかけ方かよくわかるでしょう。防衛省に昇格するくらいにしたい。保科大先輩は何を言うかと思ったら、反共演説をぶった。そして大いに反共のためにやらなければならぬ——あまり長時間やったものだから、委員長からちょっと注意された。あなたはアジられた。アジられたけれども、あなたの答弁はそれほど大言壮語をやるわけにいかなかった。私はこれが日本実情だと思う。少くとも責任ある地位にあるあなたとしては、当然だと思う。ここに日本防衛産業というものをもくろんでいる自衛隊の連中もいますが、それとからみ合せて、いわゆる旧指導階級の企業家あるいは銀行家、いろいろあるでございましょう。われわれは資本家という名前で総括して呼んでおりますが、そういう人たち防衛産業の発展によって、現実の頭打ちをしている日本の経済の発展をもくろもうとしている。それだけであなたの方では、なべ底から少しはい上って好景気が来たなどと言っているが、しかしこれは御承知のように倉庫の品物を食いつぶしたのです。輸入をとめたのですよ。そしてつじつまが合って黒字が出たというが、決してこれは経済的に見れば健康な姿ではない。うんと不健康ではないけれども、不健康から薬を飲んで回復期に向いつつある。健康とは言えない。しかし与党の二人の方が言っておるのは、健康も健康、プロ選手を相手にしたようなおだてをして再軍備を要求している。しかしあなたは、なかなか慎重に言った。ということは、そういう自信がないのだと思うのです。今の日本防衛産業というものと現実の日本の経済の見通しというもの、初めあなたは、一昨年でしたか、アメリカへ行って帰ってこられたとき、例の東南アジア開発の円の積み立ての問題がございましたね。これを今あなたは変更してどうなるというのですか。第二次大戦の大立物クルップなども来るといいます。防衛産業をば増大し、活気づけて、東南アジアに軍備輸出をして、健康的でない日本の経済をば健康的にするというふうなもくろみを持っていられるかどうか。
  52. 岸信介

    岸国務大臣 経済の問題につきましては、いろいろな見方があると思います。私も今完全に日本の経済が健康で、どこにも欠陥のない健康であるとは考えておりません。しかし一部の人か言っているように、非常に不健全な状態であるとか、前途を悲観的に見るべき状況ではなくして、今石山委員が健康が回復しつつあるという言葉を言われましたが、まさにその通りであって、日本の経済の将来は、私は明るい見通しを持っていっていいような状態にきておると思います。しこうして経済全体の問題に関しまして、特にそのうちの防衛産業というものを取り上げて、何かこれを推進力として日本の経済を、産業をどうしようというような考えは、私は従来も持っておりませんし、今後も持っていくべきものではないと思います。ただ一国の防衛というものを、先ほど来いろいろありましたか、たとい制約されておる自衛権範囲内に限るべきものではございましても、それを裏づける一つ実力というものを、国内において生産し、国内においてそれを補給していくような防衛産業を持つということは、私は自衛意味から申しましても必要であると思います。そういう意味において、防衛産業をやはり育成していかなければならぬと思いますが、今お話のように、防衛産業というものを日本の将来の産業の推進力とし、これをもってアジアやその他の方へ進んでいくのだというように、防衛産業に大きな重点を置いては考えておりません。
  53. 石山權作

    ○石山委員 防衛産業は自立経済その他に必要だという意味も、私はあると思う。今の場合の防衛産業自体を見ますと、飛行機工場一つ見ても、そのくらい新しく投資をしなければジェット飛行機ができないということは了解されると思うのです。造船しかりでしょう。新しい潜水艦を作る場合、これが関連産業を刺激するということは、確かに了解できる。しかし経済全体からいえば、決して健康な状態に進まないのではないか。一部の産業には潤沢な政府補助金が出るけれども、一般の民生安定に必要な方への投資は著しく阻害を受ける傾向になるのではないか、これは争われない事実だと思うのです。  それからもう一つ私が考えたいことは、民生安定の場合、今防衛庁及び与党の方々が考えているいわゆる兵力増強の姿、これはものの本によれば、第一回の査定をやったら五千億かかったというじゃないですか。これでは国民の反撃を受けるからもっと小さくしろというので、いろいろ苦労したけれども、最終段階で三千億になったというのですね。すると、これは防衛予算からすると、約二倍になるわけでしょう。今国民所得の何%に当るかということで、一・七と書いたり、一・八と書いたり、いろいろ工夫していますが、今度はそうなると、三%をこえるという数字が出てくる。そうした場合に、防衛産業の伸びと同時に、他の産業を刺激して、全般的にわれわれの生活程度を引落さないでそういう希望が達成される見通しというようなものを、私はまだ聞いたことがない。あなたがもし数字等があって出して下さるならば、それも一つの手でございまして、一つ御説明をお願いしたい。
  54. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどお答えを申し上げましたように、私は特に防衛産業というものを無視できない理由も一面言うと同時に、決してこれを日本の産業の中核体とし、推進力として、これによって日本の経済を引っぱっていこうというような考えは持ってもおらぬし、また持つべきでないということをはっきり申しております。そうして今年の予算あるいは財政支出や財政投融資等をごらん下さいますればわかります通り、決して私ども防衛産業に非常に大きなものを投資して、日本国民一般の出店の安定や向上等を妨げるというような考えを持っておらぬことは、きわめて明瞭だろうと思います。もちろん鉄とか電力とかいうものは、防御産業にも必要であります。しかしこれは全体の産業に必要なことでありますし、また造船に対して融資して船を作っていくということは、決して防衛産業をねらってではございませんで、むしろ日本の海外との物資の交流並びに外貨の支払い等を節約し、日本がこの方面に払っておるところのものを日本みずからがかせいでいく、むしろこれによって日本の産業を全体的に豊富にしようということであります。またわれわれが今年におきまして、特に社会保障制度の拡充に対して、予算の面から見ましても従来に例を見ないようにこれを増額しておるということを考えていただきましても、決して防衛産業に非常に重点を置いて、これに財政やあるいは投融資というようなものをこれに集中していく、他の国民生活を圧迫するというようなことは毛頭考えておらないことが明白になると思います。
  55. 石山權作

    ○石山委員 あなたの答弁だけ聞けば、なるほどそうです。ただし現実はそういう姿ではない。私は人のいい男だから言いますけれども、私は自民党の悪事というものをある意味において好意的に見ているものです。その悪事の一つとしてどういう現象が出てくるかというと、金のかからない防衛力を強化したい、それは何かというと、アメリカに寄りかかろう、この前提のもとに安保条約というものがいじられるのではないかと思われる悪事、それがあってはいかぬ。私はこの場合強く総理に要望しておきます。  もう一つ、あなたは私の言い分、防衛産業によるところの日本産業全体の繁栄ということを、おそらく今の産業の指導者、資本の指導者は意図しているのだと申し上げたけれども、あなたは否定されておる。しかし私はクルップ氏などが来る場合には、エアハルト西独副首相などと違って一番響いてくると思うのです。あなたは否定されても、おそらくMSA援助の形において日本の産業はうっかりすると防衛産業に切りかえられて、日本人がうしろ指をさされるような死の商人もあえて辞さないというようなやり方をとるのじゃないか、そういう心配を私は持つ。こういう悪事が二つ行われると私は言っているわけですけれども、行われないというのはあなたの答弁でしよう。  あとは言いませんけれども、もう一つ先ほど防衛と治安の問題が出たわけです。内乱条項についていろいろ御心配をなさっている方もあるが、どうも岸首相を初め与党の方々は何か幻覚を夢見ている。麻薬をたくさん使う人は幻覚を見るそうです。それかどうか知らぬけれども、どうも北方のクマだか何だか知らぬものを巨大に考え過ぎているのではないか。そうして純真な日本国民はそれに染まってしまって、この巨大なクマのつめに屈服をして、彼の言うがままに動くのではないかという錯覚を起しているのではないか。日本の国のどこに内乱の不安があるのです。北海道の道民ですか。それとも私たちの周辺の秋田県民ですか。私歩いてみて、この純真な日本人がどこを舞台にして今内乱を起さなければならぬかわからない。内乱を一生懸命探している。そうして警察権力ではとても間に合わないから、自衛隊を動かそうじゃないか。自衛隊で間に合わないから、ミサイルを持ったアメリカを動かす。何を一体あなた方は自分の日本国民を疑うのです。そういう現象はどこにあるか。与党の責任者として私一つあらためて聞きたい。与党の諸君はそういうことを言っておるのですから、あなたは与党の責任者としてこういう治安の問題をどういうふうに考えて、おられるか。
  56. 岸信介

    岸国務大臣 先ほども保科委員に私お答えをしたのでありますが、国際情勢の分析ということについては、われわれはあらゆる面から検討をして、正確な情勢の把握に努めております。しかしこれの見方において、非常に極端な見方が二つあると思うのです。一つは、たとえば中近東に起っておる事態であるとか、東欧におけるところの事態であるとか、あるいはアジアの各国の情勢というようなものを非常に神経的に強く考える見方と、それからそういうことには全部目をおおって、そういうことは一つの幻影にすぎない、世界は平和であり、日本はむしろ何もそういう危険はないのだというふうな非常な楽観的な見方と、相反している見方が二つ私はあると思う。しかしわれわれ責任の衝に立っております者が、国際情勢をあらゆる点から常に正確に把握していかなければならぬ立場におきましては、決して両極端とも適当ではない。実際は楽観論者が言っているように、全然そういう危険がないなどと簡単に考えるような事態でない。あるいは東欧の事態や中近東の事態は、東欧、中近東という限られた事態ではなくて、やはり世界が共産主義と自由主義との対立において、先ほど保科君の言葉にありましたように、私は国際共産党の世界的な活動というものはこれは無視できない状態にあり、日本はそれから全然遮断されて、安全な地帯にあるなどと考える状態ではないと思う。しかし今日直ちにあるいは今明日のうちに、そういう内乱が起るかというような切迫した事態でないことも言うを待たないと思います。私ども国際情勢の判断からいうと、国際共産党の活動が国際的にいろいろある、日本の国内におきましても、われわれの方におきましても、いろいろな調査機関等において調査しておるところによると、これを全然無視できない状況にあることもわれわれ十分考えなければならぬ。こういう見地から治安の問題というものも、決してわれわれは安心のできない状況にあることだけは私断言できる。しかしそれならばすぐこういう内乱が、どこそこの地域に起る危険があるのだというふうなことではなくして、国際共産党の動きからいいますと、いろいろな事態をつかまえて、これをアジって全国的に盛り上げていこうというのが、各国においてやっておる実践の姿でございます。従って日本におきましてもそういう危険を十分頭に置いて、治安の維持ということについては万全を期していきたい、かように思うのであります。
  57. 内海安吉

    内海委員長 石山君なるべく簡単に願います。
  58. 石山權作

    ○石山委員 簡単に、これ一つです。総理の言う楽観的なんということは、私は楽観じゃないと思うのです。日本人の精神とかあり方を善意に信ずるかどうかと言っているのですよ。あなたの言ういろいろな情勢の判断というのは、日本人を悪意に見ているということなのです。日本人を信用しないという見方が多分にあるのじゃないか。そういう見方があればこそ、事前だ事前だと事の起らない以前にいろいろなことをやらなければならぬというお考えになりがちなのです。ですからおそれを描いてしまう、そして警職法などをお出しになるわけですね。そういうふうになれば防諜法も出さざるを得ないという格好になるでございましょう。あなたは防衛産業をなさらぬというけれども防衛産業をなして自衛隊増強を急にされるとすれば、これは民生が動揺しますから、必ず労働者諸君は赤旗を立てたり、農民諸君は米価の問題でむしろ旗を立てて農林省の前にすわり込む、そうするとあなたはさっそくひっくくるという方便をとるわけでしょう。そうじゃありませんか。あっちこっちを考えて世界の情勢云々などというよりも、もっと現実の日本人の善良さをあなたは信頼できないのですか。そういう意味でもう一つ答弁を願いたい。ただ人を疑ったような話は困ります。
  59. 岸信介

    岸国務大臣 石山君の非常な誤解でありますが、私は日本人を疑っているとか、日本人の善意を疑っているというようなことではございません。日本国民が善良であればあるだけに、そういう悪らつなる国際共産党の活動というものに対して警戒をしないほど日本人は善良でございます。それに対して政府としてそういうことを未然に防いで、これらの平和な生活を守るということは、われわれの当然にやらなければならぬことだと思います。
  60. 内海安吉

    内海委員長 受田新吉君。
  61. 受田新吉

    ○受田委員 私は時間も迫っておることでありますので、総理に単刀直入にお尋ねします。ごく簡単に明快に御答弁願いたい。  私は総理がこの委員会その他の委員会に熱心に出て、委員の質問に答えられるという態度には、非常に敬意を払っておる一人です。しかしあなたは内閣の責任者として、現在副総理を置いておられないという問題等は、何かそこにお考えがあるのではないかと思うのでございまするが、御答弁を願いたいです。
  62. 岸信介

    岸国務大臣 過去におきましても私は必要があれば——総理というなには通俗にいわれておりますが、要するに私が事故があった場合において、これにかわる国務大臣をあらかじめ指定しておくということをやったこともありますし、やらないこともあったのでございます。現在においてはその必要を認めておりませんのでやっておりません。
  63. 受田新吉

    ○受田委員 内閣法第九条には、内閣総理大臣に事故ある場合には、あらかじめ指定する国務大臣総理大臣の職務を行うという規定があるわけです。内閣法第九条の規定は、いわゆる副総理を置いても置かなくてもいい規定かどうか、あらかじめ指定するということになると、これは内閣法において厳として置かなければならない国務大臣ではないかと思うのでありますが、法的解釈の上から御答弁を願います。
  64. 岸信介

    岸国務大臣 従来の例から見ましても、必ず置かなければならないことではなくして、事故が予見されるとか、いろいろな場合におきまして必要に応じてあらかじめこれを指定する、九条はそういう意味であると解釈しております。
  65. 受田新吉

    ○受田委員 総理大臣の事故ということは、鳩山さんの急逝などに見ましても、いついかなる事態が起るかもしれないのです。人間はなま身です。総理は御健康であるということを誇られても、万一この委員会を出られる直後にどういう事態が起るかわからない。われわれはなま身の人間であるということも考えておかなければならぬ。総理急逝という場合に、だれがあとの総理大臣の職務を行うか、それをお答え願いたい。
  66. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは結局内閣法あるいは憲法解釈の問題になると思うわけであります。私からお答えいたしたいと思いますが、内閣法第九条は御承知通りに、そういう事故があった場合にはあらかじめ指定する国務大臣総理大臣の職務を行うということになっております。従いましてあらかじめ指定された大臣がおられれば、それで問題ないわけでございますが、なかった場合はどうかという御質問でございます。なかった場合、それでは何もできないのかというと、これはそうはいかないことだと思います。それでは済まないわけであります。従いましてこれは結局一般の法理によって解釈するほかないことだと思います。結局私どもとしては、そういう場合には閣議の合議によってどなたかを代理者にきめる、そういう方法をとるべきだろう、かように考えます。
  67. 受田新吉

    ○受田委員 閣議の合議で決定するまでの期間は、だれが総理大臣の職務を行いますか。
  68. 林修三

    ○林(修)政府委員 そういうことは瞬間的に直ちに閣議を招集してやるべきだ、かように考えるわけでございます。
  69. 受田新吉

    ○受田委員 閣議を招集するまでの空白の期間はだれが責任者になりますか。
  70. 林修三

    ○林(修)政府委員 結局その場合に、だれも何もできないということはすぐは出てこないわけでございまして、今申しましたように、すみやかに閣議を招集してやるということ以外はあり得ないわけであります。この点は、日本憲法あるいは法律はすべてそういうことが迅速に行われることを期待して書いてあるわけであります。そういう精神に従ってやるというほかにお答えのしようはないと思います。
  71. 受田新吉

    ○受田委員 総理の、実力者のおられたあとに群雄が割拠しておる場合には、閣議でなかなか臨時総理の人物が選べないということが起ってくる。現に岸さんが副総理を置いておらない事情には、いろいろな要素が伏在しておると私は思う。そういう意味からもちゃんとしたものがここになければならないと思う。この内閣法九条は、あらかじめ指定する国務大臣がおらなければならないという原則を立てた規定ではございませんか。
  72. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは御承知通りに、第九条自体からいえば必ず置けとは書いてないわけでございまして、事故がある場合にはあらかじめ指定された国務大臣が代理をするということでございます。従いまして必要にして十分なことは事故の前に指定されてあればいいということであります。もちろん初めから指定されておればそれに越したことはないのでありまして、必要にして十分なことは、事故が起る直前にあれば、第九条が働くわけであります。
  73. 受田新吉

    ○受田委員  「予め指定する」という言葉は、事故があったときに指定をしておらなければならないということではないですか。
  74. 林修三

    ○林(修)政府委員 この文章から申しまして、「予め」ということは、たとえば内閣が成立したときに直ちに置けということまで規定しているものとは考えられません。そういうことが従来の例としては多かったわけでございますが、それをしないから直ちに内閣法違反であるとか違反でないとかいう問題は起りっこない問題であります。必要にして十分なることは、その事故の起るときにそういうことがあればいいということでございます。もし万一なかった場合にどうなるかというさっきのお尋ねでございますが、なかった場合に何もできないで手をこまぬいておるわけにはいかないわけでありますから、その場合にはおのずから別の法理が働いて、閣議によってこれをきめるということになるのが当然だと私は思います。
  75. 受田新吉

    ○受田委員 かって吉田総理は曲学阿世の徒といって南原総長を攻撃したことがあります。林さんの御答弁は曲学阿世に類するものがある。何となれば、あらかじめ指定するということになれば、事故があったときにあらかじめ指定した国務大臣がおらなければならぬとわれわれは解釈しておる。選択権利はないと思う。事故があったときにあらかじめ指定した国務大臣がおらないということは、九条違反ではないですか。
  76. 林修三

    ○林(修)政府委員 それはもう九条違反とか違反でないとかいう問題ではないと私は思うのでありまして、事故が起ったときに、あらかじめ指定された大臣がおられないときにどうするかという問題でございまして、その場合には、先ほど申しましたような別の法理が働いて、閣議できめるというのが一番正当なことであろう、こういうことでございます。
  77. 受田新吉

    ○受田委員 どうするかということでなくして、法規にちゃんと書いてある問題を問うているわけです。あなたは、事故があったときというのは急逝の場合を含むか含まぬか、心臓麻痺のような場合。
  78. 林修三

    ○林(修)政府委員 たしか第九条は「事故のあるとき、又は内閣総理大臣が欠けたとき」と書いてございます。もしも内閣総理大臣がおなくなりになれば、欠けたときとなるわけであります。事故のときではないわけです。
  79. 受田新吉

    ○受田委員 欠けたときとあなたは解釈しますね。そうすると総理が突然なくなるというときは、事故の中に入らぬと了解してよろしゅうございますか、九条に入らぬ……。
  80. 林修三

    ○林(修)政府委員 第九条は、「事故のあるとき、又は欠けたとき」と書いてある以上は、欠けたというのはおられないことでございますから、おられるけれども病気で執務ができないというのが事故のあるとき、かように解釈するはかなかろうと思います。
  81. 受田新吉

    ○受田委員 そうすれば、欠けたときの方に入るじゃないですか、九条に入るじゃないですか。
  82. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほども欠けたときに入るということは申し上げたのであります。事故のあるときかとおっしゃられるから、事故のあるときではないと申し上げたのであります。
  83. 受田新吉

    ○受田委員 あなたの議論はどうも曲学阿世のきらいがあるから、これで一応打ち切りましょう。私は総理大臣責任者を置くべきだと思うのですが、あなたは現状では依然として必要ないとお考えですか。
  84. 岸信介

    岸国務大臣 私はまだその必要は認めておりません。
  85. 受田新吉

    ○受田委員 もう一つ機構に関することで伺いますが、条約を結ぶ場合に、事前あるいは時宜によっては事後に国会承認を得る規定がありますが、安保条約のような重大な条約を結ぶ場合には、事前に国会に諮ることが適切であると思うが、総理はいかがお考えですか。
  86. 岸信介

    岸国務大臣 事前というのは、批准を得るために国会へ出すとか、そういう意味だと思います。なお法律解釈につきましては法制局長官から御答弁いたさせます。
  87. 林修三

    ○林(修)政府委員 憲法の事前、事後の問題は、御承知のように安保条約に際し、あるいはその後のMSA協定等の際に、国会においても繰り返して御議論のあったところでございまして、これは受田先生十分御承知のことだと思うわけでございますが、政府解釈といたしましては、いわゆる批准条項あるいは承認条項の入っておりますものにつきましては、署名によって条約の内容が確定して、それを批准あるいは政府承認によって効力を発生させる、その中間においてどうするのか。事前、つまり批准あるいは承認以前には効力を発生しておりませんから、その前にやるのが事前である、さように考えております。批准後あるいは承認等によって効力の発生された後に国会の御承認を願うのが事後だ、かように考えております。それから署名のみによって成立する条約、これは国会の御承認を得ようとすれば署名前にしなければなりませんけれども、普通の条約は署名まで内容が確定しないのが普通でございますから、これは事実なかなか行い得ない、従って最近の例では、大体において署名によって効力を発生させることはせずに、みな批准条項、あるいは承認条項、受諾条項というふうに入れておるわけでございます。そういうわけで、署名と批准あるいは承認との間において、いわゆる事前の御承認を願っておるわけであります。ただ憲法解釈から申せば、いわば時宜によってというのは、条約によっては非常に急を要する場合もあろうから時宜によるということでございまして、どういう場合に必ず事前により、どういう場合にしか事後はできないということには、これは必ずしもならないので、時宜も文字通り時宜によりで、そのときそのときの状態によるというのが憲法規定だと思います。しかし政府は常に大体の原則として、万やむを得ない場合のほかは事前に御承認を願うという方針をとってきておることは、受田先生よく御承知のことだと思います。
  88. 受田新吉

    ○受田委員 事前にということは、これは原則であると思いますが、いかがですか。
  89. 林修三

    ○林(修)政府委員 憲法は、事前承認を得る、ただし時宜により云々と書いてございますから、原則であることは間違いございません。
  90. 受田新吉

    ○受田委員 今回の安保条約改定、行政協定の改定等を企図される場合に、事前に国会承認を得る段階に来た問題であると私は思うが、いかがでありますか。
  91. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほどからも申し上げております通り政府としても従来の解釈は、いわゆる事前というのは署名、調印によって条約文が確定して、そのあとで批准、受諾あるいは承認、いろいろの条項が入っておりますが、原則としては批准と考えております。批准をする前に、要するに署名、調印後批准前にこれをやる、これが辛前承認をお願いすることだと解釈しておりまして、従っておそらく安保条約もそういうような形になることであろうと私は承知しております。
  92. 受田新吉

    ○受田委員 さよう長官と同じ解釈で、総理は事前協議、事前承認の形式をとられるのですか。
  93. 岸信介

    岸国務大臣 法制局長官解釈通りに取り扱うつもりであります。
  94. 受田新吉

    ○受田委員 もう一つ機構上の問題として、国防会議という重大な機構があるわけですが、安保条約、行政協定のような国の防衛の大綱に影響する大きな約束をする場合に、国防会議に諮る防衛の大綱の規定の中に含まれる問題かどうか、御答弁願いたい。
  95. 岸信介

    岸国務大臣 御承知のように国防会議のなには国防の基本的な問題、及び内閣総理大臣が必要と認めた国防に関する重要事項に当るか当らないかできめるべき問題であって、私は今までの論議のなにから見ますと、特に国防会議にかける必要は現在のところは認めておりません。
  96. 受田新吉

    ○受田委員 防衛庁として国防会議に諮らなくて済むような重大でない問題かどうかということもあるわけなのです。あなたは必要がないとおっしゃる。しかしながらその他内閣総理大臣が諮る問題と防衛の大綱という問題をにらみ合せてみたときに、日本国防の運命を決するような重大な決定をするのに、国防会議に諮らなくても済むわけですか。あまりにも国防会議の軽視じゃないですか。
  97. 岸信介

    岸国務大臣 現在御承知通り安保条約がございまして、今度の改正というものが国防基本方針を変更するようなものであるならば、かけなければならぬと思いますが、私どもの今考えておるところによりますと、そういう内容を持っておりませんから、今のところは必要ないだろうというのが私の考えでございます。
  98. 受田新吉

    ○受田委員 そういう重大な内容と持っておらないというけれども防衛に関する重大な約束をするわけです。  中身に入って一、二お尋ねをしてみたいのですが、あなたは憲法解釈政策を別にしておられますけれども、たとえば敵が急迫不正の侵略をした場合に、座して死するを待たずして、これに刃向うために敵の基地をたたくということは適当である、こういう解釈があるわけです。このことは憲法上の解釈ですか。あるいは実際問題として考えておることですか。解釈政策か、お答え願いたい。
  99. 岸信介

    岸国務大臣 憲法上の解釈として議論が出まして、憲法上の解釈としてお答えをしたのでございます。
  100. 受田新吉

    ○受田委員 あなたは政策としてはそれはおとりにならない、かように了解してよろしゅらございますか。
  101. 岸信介

    岸国務大臣 これは政策としての議論になりますと、非常に仮定的な、私どもが想像していないところの設例は、実は政策問題としては、正確に申し上げまして考えていないというのが本当のところだと思います。ただ憲法解釈としてあらゆる設例を——あるかないかは別として、仮定でも、こういう場合に憲法解釈はどうなるかという意味においては、これはなにしなければならぬのですけれども政策問題としては実は私は考えておりません。
  102. 受田新吉

    ○受田委員 行政協定二十四条に、共同作戦をとって外部の武力攻撃に対抗する規定があります。この規定の際に、アメリカ側が日本側に指揮命令権を発動して、日本の部隊がアメリカの部隊の指揮下に入る場合があり得る、かよう了解してよろしゅうございますか。
  103. 岸信介

    岸国務大臣 法律の解釈ですから、法制局長官から……。
  104. 林修三

    ○林(修)政府委員 今の行政協定二十四条のいわゆる協議、あれから直ちに日本自衛隊アメリカ軍の指揮下に入るということは出てこない、私はかように考えております。
  105. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと共同防衛立場上、米軍日本との協議の結果、日米合同委員会結論として出た場合は、そういうことになりますね。
  106. 林修三

    ○林(修)政府委員 これはやはりおのおのの主権の問題もございますし、結局は協議してお互いの分担をきめるとか、あるいはお互いのやり方をきめるということであろうと思います。直ちにその一方が一方の指揮に入ることがいいか悪いかということは、非常な大きな問題でございまして、過去の大戦当時の連合国の動向なんかを見ましても、非常な問題のところでございます。主権の問題に関連いたしますから、今の状態として直ちにそういうことは予想していないもの、かように考えざるを得ません。
  107. 受田新吉

    ○受田委員 強大な国と弱い国との話し合いになってき、また安保条約アメリカの一方的な考え方できめられるということにおいて、そういうことは事実問題として起り得ませんか。
  108. 林修三

    ○林(修)政府委員 事実問題のことは私にもちょっとわかりませんけれども、二十四条はあくまで両者が協議して、お互いにいかに行動するかということを対等できめるということであろうと思います。
  109. 受田新吉

    ○受田委員 総理は、日米共同作戦の場合に、アメリカ軍隊は自由な行動ができるという意味から、日本外国の基地を、外部の武力攻撃に対する措置としてなし得ることは考えておられたのですね。
  110. 岸信介

    岸国務大臣 アメリカのなにとしてはできると思います。
  111. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、日本に駐留しているアメリカ軍隊が、武力攻撃に対する報復の意味で外部に攻撃を加えていく、そういう場合に、日本軍隊がその指揮下に入っている場合、これはアメリカの方の解釈では攻撃ができる、日本は攻撃ができないということで、その場合は日本は沈黙している、アメリカだけが攻撃を加える、かように了解してよろしいですね。
  112. 岸信介

    岸国務大臣 二十四条の関係で直ちに指揮下に入るとか入らないという問題は、先ほど法制局長官がお答えしたように、直ちに指揮下に入るという解釈はすべきものではないと思いますが、今の米軍日本自衛隊とが共同して日本に対する侵略を阻止し、これを排撃するという場合において、おのおのの分担とかあるいは受け持ちというものがきまっていくわけであります。そして日本自衛隊は、あくまでも憲法範囲内における自衛権の行使以上に出て行動することもできないことは当然であります。そういう意味において、アメリカ軍隊の行動範囲との間には差異があると思います。
  113. 受田新吉

    ○受田委員 あなたの昨日の御答弁では、大型の核兵器を持つ米軍日本軍が共同作戦をする場合、事実上原爆、水爆等の被害を日本軍が受ける公算のあることは御承知いただいておりますか。
  114. 岸信介

    岸国務大臣 ちょっと質問が……
  115. 受田新吉

    ○受田委員 原爆、水爆のような大型の兵器を持って日本に駐留する米軍日本軍と共同作戦する場合に、米軍が敵に攻撃を加える、その報復として向うから攻撃を受けるとか、そういう関係になった場合に、核武装をする米軍の指揮下に属する場合の日本軍隊が、核兵器による被害を受けるということが考えられるはずです。これはどうですか。
  116. 岸信介

    岸国務大臣 第一に、前提として私は核武装を日本もしないし、核兵器を持ち込ませないということを明瞭に申しております。従って大型のものでなくても、小型のものでも、米軍がいろいろな核装備をする、核兵器を持って入ってくるということは認めぬということを、私は明瞭に申し上げております。これが一つの前提であります。それからもう一つは、日本軍隊が直ちに米軍の指揮下に入るという前提を置いて今受田委員は設例でありましたが、私はさっき言うように、そういうことが起るものでないということをはっきり申し上げておるわけでありまして、ちょっと御質問の前提が私の言うことと違っておるので、結論は当然違うことになると思います。
  117. 受田新吉

    ○受田委員 私が心配しておるのは、あなたの憲法解釈政策の混淆ということが起るという問題です。政策としてはとらないとおっしゃっても、そういう解釈をしておると、米軍核兵器を持ってきても、それに対していかにアイゼンハワーと約束しても、安保条約の本質からいっても、どのような装備をしようとも、これに対してあなたは条約上の問題としては抗議は申し込めないわけですね。
  118. 岸信介

    岸国務大臣 私が核装備をしない、核兵器を持ち込ませないということは、今日までこれは責任のある国会においてかくも明瞭に申し上げておりまして、アメリカにおいても十分承知しておって、それに対する抗議であるとか、あるいはそれに対して反対の意見が述べられたこともございませんし、また事実上今日までその意見に反してアメリカが一方的に核兵器を持ち込んでおる事実もございません。こういう事態でありますから、私が今はっきりと核兵計の装備をしないし、持ち込みを認めないと言っておることは、これは決して憲法議論と混淆するというふうな性格のものでない、こう御了承願います。
  119. 受田新吉

    ○受田委員 憲法解釈論として、あなたは向うが持ち込むことは認めるというわけですね。
  120. 岸信介

    岸国務大臣 憲法解釈論として、要するにさっきからいろいろ議論をいたしましたように、憲法九条の規定アメリカ軍の装備には何ら関知しないのであって、それは関係ないのだ、こういうことを申し上げております。
  121. 受田新吉

    ○受田委員 それであなたの解釈論政策の問題の波及する問題がもう一つあるわけですが、たとえば今沖縄の地域を共同防衛地域に含めると仮定した場合に、そこのアメリカ軍隊の指揮下に入って、日本軍隊が行動する場合に、日本軍隊は沖縄や小笠原は日本の領土である、潜在主権があるというので、それは海外派兵にならない、かように総理のお気持はあるのですか、これはよろしゅうございますね。
  122. 岸信介

    岸国務大臣 私は沖縄、小笠原については日本の潜在主権を持っておる地域でありますから、いわゆる海外派兵という観念には入らない。アメリカ軍の指揮下に入る入らないという問題とは関係なしに、潜在主権を持っておるところのなにに対しては、海外派兵だとは私は解釈しておりません。
  123. 内海安吉

    内海委員長 約束の時間が過ぎておりますから……。
  124. 受田新吉

    ○受田委員 約束の時間二十分しかやっていないが、早く打ち切ります。  さっき石山委員から質問した問題が一つ残っているのですが、沖縄の施政権を日本へ返還する要求はどんどん続けているということでありましたね。それが現にアメリカにおいて外交委員長にフルブライトという人が就任して、極東の問題等において、南ベトナム等を含んだ大きな問題で、中共と交渉してはどらかというような意見を持っているわけですね。中欧においても米ソ両軍が中欧地区から撤退する、ソ連と話し合えという意見を述べておる。こういう空気になっておるときに、総理はいたずらに施政権の問題は蒸しておいて、さしあたりあすこを共同防衛地域にするかいなかという議論をやっておることは本末転倒であって、安保条約第四条の規定によるもっと大きな立場からの平和回復ということをお考えになる必要はないですか。  そのことと、もう一つ、沖縄の住民のほんとうの生命、財産を守るというあなたの情熱からいうならば、今度改定されようという条約の中にあるいは交換公文の中に、沖縄住民の保護の問題をちゃんと取り入れるという用意をする必要があるかないか。この二つの点について。
  125. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどそういう問題に触れてお答え申し上げたのでありますが、日本の交渉する意味から申しますと、ただ単に日本自衛隊を強化するとか、安保条約を合理的にするというだけで目的が達せられるものでないことは言うを待ちません。世界の緊張の緩和、ことに日本が位しているところの極東におけるところの対立を緩和するということの具体的な方策があるならば、これを推し進めていくことは当然やらなければならないと思います。ただフルブライト氏の意見がこうだからこういうふうにと、国際情勢、極東の情勢というものは私は簡単でないと思います。十分に慎重に考えなければならぬ問題である。  第二の点につきましては、私は沖縄の住民また日本国民の人々の気持というものが、十分に条約におきましても満足せしめられるような適当な方法をとらなければならない、こう考えております。それはどういう形でやることがいいかということは、十分慎重に考えるつもりであります。
  126. 受田新吉

    ○受田委員 今の具体的な問題は、たとえば交換公文等の中にそれを織り込んで、日本の主張をしたいというような意味かどうか。あなたはお疲れでございますので、早くお帰り願ってお昼をいただいてほしいのですが、ここは一つあなたのほんとうの決意のあるところを具体的に申して下さい。
  127. 岸信介

    岸国務大臣 今すぐ交換公文にするかどうかという具体的なことははっきり申し上げかねますが、少くともこの条約そのものに表現する問題もございます。あるいは交換公文等においてその趣旨を明らかにする方法もございます。これらの問題のいずれか、まだほかにも方法はあろうかと思いますが、具体的になるように十分研究いたします。ここで交換公文にするのだというふうに結論を出すことはまだ早いと思います。
  128. 内海安吉

    内海委員長 午後二時に再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時四十七分休憩      ————◇—————     午後二時二十三分開議
  129. 内海安吉

    内海委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  総理府設置法の一部を改正する法律案について質疑を許します。石山權作者。
  130. 石山權作

    ○石山委員 松野長官にこの際お伺いしておきたい点は、今回たくさん設置法を、特に総理関係で四つ出たのですが、委員会委員の選出の基準でございますか、こういうことでお伺いしておきたい点は、たとえば例をあげれば放射線障害防止の技術的基準に関する法律、こういうのがございます。この委員の中で学識経験者という言葉を使っているわけです。この学識経験者というのは、今までの政府委員をお選びになる場合の一つの慣用語みたいになっておるのです。学識経験者という人の名前など、今読み上げた法律のもとで総理大臣の諮問機関の委員の方々を見ますと、学識経験者というと約二十名ですが、すべてごりっぱな方なんで、なるほどこれは学識経験者だ。そうすると学識経験者というものをこう見ると、学識はわかるけれども、経験者という範疇が非常に狭められているのか、無視されているのかという印象でございますが、学識経験者という場合に一体どんなふうなことを頭の中にお入れになって委員の方を御選定になっているのかどうか、こういう点を一つお聞きしておきたいわけです。
  131. 松野頼三

    ○松野政府委員 学識経験者という名前で選定いたしますときには、学識に対して非常に経験を持ち、しかもその学識に関して長い間経験をお持ちの方という意味で、必ずしも実務に入った人ばかりをさすわけではございません。学識を持ち、しかもその理論及びそのものについての経験が豊富な方という意味委員の選定をいたしております。
  132. 石山權作

    ○石山委員 そういう考え方でお選びになるから、学者先生だけというので限定されるのは無理ないと思います。しかし経験という言葉はどうもそういう、あなたのおっしゃるのは学識が深くて、学識がまた毎年々々経験を積み重ねていくのだ、こういうふうな考えだと思うのですが、そうじゃないと思う。学識は学識、経験は経験、この言葉に二つの意味があると思うのです。あなたのおっしゃるように学識経験というように続けた言葉、それと学識というところで切る、点をつけるという考え方、経験というものは別、経験というのは何も野放図な経験ではなくて、そのものに対して長い間従事したために自然に得られる経験ということもあり得ると思うのです。たとえば例が学識の言葉に当てはまるかどうか知りませんけれども、いわゆる勘という言葉がございます。たとえば野球選手みたいな場合、これは練習するときはいろいろなことをやるわけです。風速がこうなればたまがどっちに飛ぶとか、左打者が打てばたまはどっち方面に飛ぶか。あるいは水平に振る打者のたまはどうか、すくい上げて振るたまはどこへ行くか、どういうふうな格好で上るか、これは一つの力学的なあれで出てくるわけですよ。しかしそれを経験的にやれば、そんなのを一々計算してやっているのじゃないですよ。りっぱな野球選手というものは勘で走っていって、それをちゃんと捕えるというふうなあれが出るわけですね。これはやはり私は経験の深さがその人をしてある初歩的な学力を屈服させた姿だと思うのです。今のような考え方で、たとえば放射線のような——これはあなたに関係ないことだけれども、学識経験というふうに続けてしまうと、せっかくいわゆる実地にやって得られる勘どころというものが、その委員会の中に反映しないのじゃないですか。そういう点ではどうです。せっかくのそのりっぱな意見なんというものは、いつも象牙の塔に閉じこもっておる方々に壟断される。だから委員会であまりいい意見が出ないのでしょう。出ないから政府は聞き置く程度で、あなたの方でさっぱり聞いておらぬでしょう。今までいろいろなことを答申されても、答申通りやったためしもないし、学識経験なんといって尊重しておきながら、ほんとに答申した通り実行したためしもない。税制も二つ出ているのですが、答申通りやったこともない。これは過去の事例を調べてみればはっきりしているのですよ。ですから基準を非常に尊重してかた苦しいことをおっしゃっているけれども、結局学者先生をばかにすることになりはしないか、こう思うのです。ほんとに尊重されてやるかということです。それを学識、経験と私が言いましたように切ってみる。学識は学識、経験は経験、こういうような関係委員をお選びになれば、委員会というものは私はもっと実質的な結論を得るのではないかというふうに思うのですが、そういう点はいかがでございますか。
  133. 松野頼三

    ○松野政府委員 お説の通りで非常に参考になるわけですが、学識経験という一つの用語を使っております以上、ただいま私がお答えしたのが一つの原則でありますが、たまたま今野球の選手をお引きになりましたけれども、野球の選手は学識がなくても経験が非常に高度な場合、かりに言うならば水原とか三原とかいう人は、これはおっしゃるように果してスポーツ学会として学識があったかどうかわかりませんが、野球の審議会でも作るときは、これは学識経験の経験が主になった学識者という意味にもとれましょうから、私の方は、一応原則としては私がお答えしましたことが第一なのでありますけれども、全然それを固持して、学識がなければ、経験だけではとらないかというと、ただいまのような例も当然とるべきであるし、委員の選定のときには、やはり学識があるいは従であるかもしれないが経験が非常に豊富な言論の方というものは、かりに学識が、いわゆる一方における学問というものがないにしましても、経験者としてとることにやぶさかではございませんし、今までにおきましても、そういう方が入っておった例もたくさんございますので、一応学識経験というのは、さきに言いましたのが学識経験ですが、経験だけでも非常に豊富だという今のような例はあり得るし、私の構想の中に入っておりますので、その意味で学識経験を御了解いただきたい。なお答申案は尊重しておらぬじゃないかと言われましたが、私の調べておった範囲では、相当この答申を尊重しておりますけれども、しかし時期がおくれたり、あるいは議会において提案すべき条件が備わらなかったために、あるいはその答申案の尊重の度合いが薄かったかもしれませんけれども政府としては答申案は相当実は尊重しておるわけで、つい先般出ましたものにつきましても、政府は尊重いたしております。これは見方の問題で、あるいは現実にそれができなかったということはそのほかの条件でありますけれども政府としては最大限に尊重していたしておるつもりでございます。
  134. 石山權作

    ○石山委員 具体的な例で、法案の産業災害防止対策審議会の件について原子力局長にお聞きしたいのですが、原子力の問題は、われわれ特にその問題については経験のない、いわゆる学識もない部数の一人であろうと思っております。しかし想像するところは、限りもないほど人間にある幸福をもたらすとともに、予測のできない不安というふうなもの、いわゆる放射線による災害等が隔世遺伝で起きるというような御意見等も承わるわけです。忘れたころ何かくるという中にはよく災害の問題があるのですが、放射能の場合なんかほんとうに忘れたころ来るようで、はなはだりっぱな業績をあげたいわゆる原子力による活動ということは、私らは大へんに人類に貢献するものだということもわかるわけですが、それと同時に、そこに従事して働く者からすれば、非常に不安心もあるわけなのです。この不安心の場合の、いわゆる災害上の問題として、私先ほど読みました放射線障害防止の技術的基準に関する法律の場合の委員の選定の仕方でございますが、これがたまたまどうも学識経験と続けてしまって、経験者が採用されておらないようでございます。委員会は来年の五月に改選になるようで、まだ年限があるようでありますけれども、やはり産業災害の問題が出たものですから、私たちとしてはいわゆる働く者——ものを作る側からはいいのですけれども、そこに従事して働く者の側、放射線の被害を受ける者の側からいろいろ問題を申し出たいという事柄が、私はたくさんあるのじゃないかと思う。この審議委員の顔ぶれによれば、こしらえる側あるいは指針を与えるほんとうの意味の純粋の学者、あるいは施設をする方の立場の、事業者の代表者と見られる方がこの表には二、三見えるわけです。しかし働いて、被害を受ける側の者は何ぼ探してもないのです。こういったやり方は、私は審議会としては全きものではないのではないかと思うのですが、局長の御意見一つ聞かしていただきたい。
  135. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 放射線障害防止法が一昨年の五月でありましたか国会で御審議をいただきました際に、当時の社会党の志村議員から、この法案を上げるに際しましても、あるいは法案審議の過程におきましても、ぜひこの審議会委員には、いわゆる経験者あるいは実際に働きました従業員の方からも委員を選定してもらいたいという強い御希望がございまして、そのときの最後の答弁といたしまして、当時は宇田国務大臣でございましたが、御趣旨は非常によくわかりますけれども、何しろ放射線の障害防止、このときにはこの法案は同位元素による障害防止のみに限っておりましたので、同位元素による障害防止という問題は、非常に新しい問題でもあり、経験者もほとんど皆無というような状況でありますので、幸いただいま申し上げましたこの法案によりまして、国家試験として放射線取扱主任者——これはもちろん労働者といわず経営者いわず、だれでも国家試験を受けてパスした者は取扱主任者になり得るわけでございますので、そういう取扱主任者ができました暁には、その中から、この学識経験者として適当な人があれば選択いたしたい。言いかえますと、御趣旨は決して否定しているわけではないのでありますけれども、それに相応する適当な方がなかなか見当らない。しかしそれができました暁には御趣旨に沿います、こういう答弁をして、法案を通していただいたわけであります。そこでこの法案通りまして、すぐ審議会委員の選定に移ったわけでございます。その際いろいろ御推薦等もございましたが、何せこの放射線に対する、特に同位元素に対する経験者がいないものですから、そのときの考え方といたしましては、ちょうど労働省から財団法人労働科学研究所にいろいろ補助金をお出しになって、放射線による労働者側に対する障害の防止等に関する研究をお願いしてあった関係もございますので、それではいっそ労研の経験者の方に代表して出ていただいた方が、趣旨に沿うのではなかろうか、こういうことで、勝木新次といいまして、当時は副所長でございますが、ただいま所長になっている方に委員になってもらいまして、主として放射線が従事員に対してどういう影響を持つであろうか、それに対してどういう配慮が必要かといったようなことに対する意見をちょうだいしたい、こういうことで勝木さんを一人お入れしたわけでございます。  そこで昨年になりますが、昨年になりまして、放射性同位元素に基く障害防止のみならず、もっと広範囲に、たとえますと病院等で使っておりますエキス光線等によるものまで含めて、そうしてこれは実施を各省でやっておる関係上、その技術的な基準を作る法律を昨年、おととしと引き続きまして提出したのでございますが、その際には、社会党からもこれに対して別に強い要望もございませんし、おそらくはその前に作りました審議会のメンバーで大体よろしいのではなかろうか、実はそういうふうに考えておった次第でございます。ところが最近になりまして、この基準法に基いて作った審議会は、従来科学技術庁にありましたものを総理府に移したのでございますけれども、その際には、ただいま御説明したような経過もございましたので、前の委員の方にそのまま委員になっていただきまして、そうして業務を引き継いでそのまま発足したという経過になっております。  そこで最近になりまして、ぜひ一つ従事者側の経験者を入れてもらいたいという強いお話が再々ございまして、高碕国務大臣も私も、その点はよく承知してございます。そこで、さっき申しました宇田国務大臣が答えましたように、国家試験も施行され、放射線取扱主任者という方がおよそ数百名もうできてございます。近く又引き続いて国家試験を行いますので、だんだんふえて参りますから、おそらく適任者の方もたくさん出てきているだろう。そこで適任の方がありますれば御推薦をちょうだいして委員にするのは、決して拒否するものでも何でもないという御答弁を申し上げたのでございますが、さてただいまの委員がどういう工合になっておるかと申しますと、三十人のうち二十九人が従来のままきまっておりまして、ただ一人欠けておりますけれども、その欠けておりますのは、人事院側からの官庁側の委員が、御承知のように人事院の事務総長の方はこういういかなる審議会等も兼務してはいかぬという規定があるそうでございまして、委員にはなれない。そこでその下の方に一つこの際なっていただこうというのでただいま交渉中でございまして、まだ最終的にははっきりした発令をするところまでいってないのでございますが、そういう関係で人事院側ともはっきり話をつけませんと、その一人を埋めるというのもにわかにできかねますので、来年の六月でございますか、改選期になりました際には、十分客観情勢等も、そういう学識経験者もふえて参りましたので、適当な方がございますれば御推薦をいただいて、委員にいたしたいというふうな経過になっておるのでございます。
  136. 石山權作

    ○石山委員 だいぶ御理解ある御答弁をいただいたと思います。もう一つついでに要望しておきたい点は、原子炉が今運転しつつあるわけですが、この原子炉以前のいわゆるウラン鉱を掘っている鉱山等、これは鉱山局との関係等もあると思うのでございますけれども、閑却される憂いも相当あるのじゃないかというふうに、従事者の側から見ますとそういうふうな点もあるわけで、そういう点の監督等はどういう関連性がありますか。
  137. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 この点は、御承知のように放射線を含む物質を採掘する場合には、その粉塵等によるけい肺と申しますか、特殊なけい肺になるわけでございますが、非常に濃度が高まりますので、これに対する対策は十分注意しなければならぬものと考えておるのございます。そこでこれに対する対処方といたしましては、直接私どもの監督しておりますたとえば原子燃料公社等に関しましては、厳重にこれを指導いたしまして、通風あるいは事後の処置等万全を期して、障害を起さぬように見守っておるのでございますが、その他の鉱山等に関しましては通産省側で監督をやりまして、通産省の方でも特にこの問題を重視して、地方の鉱山監督局でございますか、通産省の出先官憲でこれを取り締りながら、この点に関しましては従来の鉱山保安法以上に注意して扱いたいというふうなことになっておるようでございます。
  138. 石山權作

    ○石山委員 ここには審議会に五つの部門がございますね。たとえば部会では施設とか影響というふうなところがございますけれども、そういうふうなところに、これは専門委員会みたいなところですから、たとえば正委員のほかに補助委員みたいなものが必要な場合には、やはり十分鉱山側の——私は労働者側なんて言いませんが、そこに従事している人たち意見を入れるような工夫が相当とられ得る要素がありますか。
  139. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 それは十分考えておるつもりでございます。
  140. 石山權作

    ○石山委員 この点に関しまして、私労災関係、それから厚生省の健康保険、こういう点で一つお聞きしたいのですが、これは研究途上でなかなか結論を得られないと思います。どうだと突き詰められてもなかなか簡単に返事のできない問題だと思うのですが、労災関係として隔世遺伝等を含む問題をどういう形で——本人がそこにいる場合は五十五というような定年制等もあるわけです。そしてずっとあとで起きてきたというような場合の認定の仕方、保護の仕方、こういうようなことはどういう格好で研究なさっていられるか、お伺いいたしたいと思います。
  141. 村上茂利

    ○村上説明員 原子力関係を含みます放射線障害の問題につきましては、先生も御承知かと存じますけれども、業務上の負傷疾病というふうに考えられますものについては、現在でも労災保険法上の補償をいたしております。ただ御質問の点は、今後相当長期間を経てから身体的な故障を起す、たとえば後発性ないしは遅発性といわれるような現象として、相当たってから身体的な障害を起した場合に、どのような補償措置を講ずるかという点に御質問の要点があるようにお聞きしたのでございますが、その点につきましては、医学的な見地から見ましても、どの程度の状態の身体的障害を業務上のものと判断すべきかいなかという、その認定上いろいろ検討を要する問題があるようでございます。それからまた相当年数がたってから身体的障害を起す、あるいは遺伝上のいろいろの問題を起すという場合の補償理論の問題といたしまして、現在の使用者の無過失責任による災害補償制度でよろしいか、あるいは別個な角度からの検討を要するのではないかなどいろいろ問題がございますので、労働省といたしましては総理府の方とも連絡をとりまして、漸次この面の研究を進めて参りたいというふうに考えておりますが、目下のところその認定基準はどうか、あるいはどういう補償を講ずるかという点につきましては、非常に困難な問題がありまして、こうだということはただいま申し上げかねるような状態でございまして、鋭意検討を重ねているような次第でございます。
  142. 石山權作

    ○石山委員 私もそうと思います。研究途上だというふうなことだと思います。しかし先進国としてイギリス、アメリカ等では、相当原子力の利用が進んでいるわけです。事例等もたくさん現われている。特にこういうふうな障害事項に対しては、イギリスなどでは進んだ法律なども出ているのではないか、こういうふうに私は思っております。労働省としてはいろいろな言い分はあると思っておりますけれども、私たちとしては、労働省は労働者の一番いい味方になり得る省だというふうに思っているのですが、労働者の身分のこと、補償のことをよその省のように鋭意研究中でありますでは、これはほんとうを言うとあまり誠意がないですよ。現実はもう現われつつある。原子炉が運転し始めつつあるし、ウラン鉱を掘っておるのでございますから、障害が起きつつあるというふうな仮定は私できると思うのです。そうした場合に鋭意研究中、あしたも鋭意研究中というふうな答弁ではいけません。拙速主義でもいいから——拙速主義はあまりほめたことではないけれども、この場合やはり一つの基準を早く立てるということが私は大切だと思うのですが、一つそういうことを要望しておきたいと思います。それから外国の事例があったら一つお知らせ願いたいと思います。
  143. 村上茂利

    ○村上説明員 御指摘の点ごもっともでございまして、このような危険な作業に従事する労働者の立場考えますならば、すみやかに防護措置を講ずる必要があることは全く御指摘の通りであります。労働省といたしましては、従来から労働基準法並びに労働基準法に基く安全衛生規則などによりまして、とりあえずの処置をいたして参ったのでありますけれども、最近の放射線関係の非常なる進歩に伴いまして、従来の規則では不十分である、かようにわれわれも認識いたしまして、昨年来電離放射線障害防止について至急手を打つ必要があるという見地から、安全衛生規則とは別に電離放射線障害防止規則というものを作ろうというので原案を作成し、総理府の放射線審議会にも御意見を聞きまして、さらに労働省の労働基準審議会というのがございます。これは御承知通り労使公益三者構成でなっておりますが、この審議会にも諮問いたしまして御意見を聞き、一応防止規則の案を作りました。これは公聴会も一応終りましたので、四月一日から公布施行という段取りで、この放射線障害防止のための措置を一応講じたい、かように考えておるわけでございます。御指摘の問題は特に補償をどうするか、こういう問題にかかって参りますと、先ほども申しましたような使用者の無過失賠償責任論からそのまま考えられるかどうか、あるいは別個な社会保障的な見地から考えたらいいか、いろいろ問題もございまして検討しておるような段階でございます。外国等の文献につきましても、あまり手持のものは率直に申しましてございません。各方面と連絡をしまして、そういった面についても遺憾なきを期したい、かように存じておる次第であります。
  144. 石山權作

    ○石山委員 それでは厚生省の方にお聞きいたします。今お聞きになっていただろうと思うのですが、労働省にお聞きしたような内容を含めながら、いわゆる災害を受けた人たちに対する健康保険等の適用について、保護方をどういうふうにお考えになっていられるかをお聞かせ願いたいと思います。
  145. 加藤信太郎

    ○加藤説明員 御承知のように健康保険と労働者災害補償保険とは、業務上は労働者災害補償保険で、業務外は健康保険ということになっておりますので、今労働省からも御答弁がありましたように、この問題はむずかしいから両省よく相談しまして、業務上のものは労災補償保険、それからそうでないものは私の方で、いずれにしても労働者の放射線に基く疾病につきましては保険で処理していきたい、そういうふうに考えております。
  146. 石山權作

    ○石山委員 年限が継続していくような問題であると、判定の仕方は非常に楽なわけですね。そうでない場合が多いというふうに私は聞いているものですから、それだけだめを押しているわけです。なおったと思っているとどこかにひそんでいてまた起きるという可能性、何でもないと思っていると不慮に起きてくるような現象、こういう場合に、たとえば打ち切り制度というものがあるでしょう。打ち切り制度などをどういうふうに適用される考え方か、聞かせてもらいたいと思います。
  147. 加藤信太郎

    ○加藤説明員 今の御指摘は健康保険法で引き続き同一疾病で三年以上になる場合には打ち切るという、その問題を御指摘になったのだろろと思いますが、この点につきましては、引き続き三年以上の問題を放射線にどういうふうに適用するかというのは、実は私まだ研究を全部聞いておりませんが、これは結核等におきましては途中で、なおりましてまた再発した場合には、前に二年かかりまして、それから一応治癒いたしまして、さらに何年か置いて再発して一年たちましても、合計三年になっても打ち切っておりません。やはりその継続期間が再発してから三年になってから打ち切っておりますから、結核と同様に扱うものといたしますれば、三年引き続いて疾病状況になければ、途中で一応治癒すればまた三年、そういうことになるわけでございます。しかし今の段階では、それでは放射線災害について特殊な措置をとるかという御質問があるかと思いますが、この点についてはまだ研究中で、特に放射線災害についてどうという態度はきめておりません。
  148. 石山權作

    ○石山委員 長官にお聞きします。今までのいろいろな質疑応答をあなたはお聞きになっていたと思うのです。それでこの審議会は、私が原子力の話をちょっとしただけでもって、大へんに困難な内容を持っておるわけですね。しかもこれは急がなければならぬ。あなたの方では原子力をうんとふやしたくってがんばっておるわけでしょう。また今あなた方がお出しになった原子力だけではない、産業防止の問題もある。その広範な災害に何ぼ予算を計上したかと見ますと、何べん見ても経費は三十五万です。あなたの方で出した農地被買収者問題調査会設置法案というのは何ですか。昭和三十年にもらすでに農林省がちゃんとやっている問題を、もう一ぺん再調査するといって一千万円出しているでしょう。しかるにこの方はあなたは何を諮問しようとして、たった三十五万で間に合うと思っているのです。諮問の要綱があるのですか。一体三十五万円で何するのです。これは全く労働者をごまかすようなものじゃないですか。三十五万円で何を一体勉強なすって、何をやるのですか。これは審議だけして、あと研究調査なんというものは別の機関でやるのだ、ただおしゃべりさせるだけの機関だ、そんなにあさはかに片づけて、災害を受けた労働者に対しては、今審議会を設けているからそのうち何とかなるべえ、こういう表現でございますか。御答弁を願います。
  149. 松野頼三

    ○松野政府委員 審議会が三十五万だから、これを軽視しているというわけではございません。これは審議会の運営費ですから——今までに相当大きな審議会でも八十万とか百万とか六十万とかいろいろありますので、この審議会の運営上の経費であって、内容によってこれが予算化するものでないことは御承知通りでありまして、たまたま農地の問題を取り上げられましたが、これは別な意味で、農林省の方の事務局の経費も入れてただいまおっしゃったような経費になるので、総理府の中におきます農地問題の経費というものは、一千万なんという経費はございません。これは各省合せてでありまして、従って災害防止の問題は、総理府の関係の災害防止対策審議会の経費はその通りでありますが、産業防止とかあるいは労働省の方にはまたこれ以上に別な予算がありますので、ただ三十五万と言われてこれだけをとられると、一応三十五万というふうな経費になっておりますが、これは総理府における審議会の運営費ですから、それはその事業の内容に付随したものではございませんので、内容はここに書いてありますように一千五百億と書いてありますから、その意味でありまして、どらか一つ御了承を願いたいと思います。
  150. 内海安吉

    内海委員長 受田新吉君。
  151. 受田新吉

    ○受田委員 十分の本会議まで御協力をお願いいたします。また委員がおらなければ採決に応じませんから、予告しておきます。  それで私この法案を通す前に、もう一つ確認しておきたいことは、皇居造営審議会の問題で、皇居の開放の問題に触れておかなければいけない。これはこの間瓜生次長は、いろいろ開放の含みもお話しになっておったわけですが、旧本丸を中心としたあの一帯の地帯は、これは約十万坪ばかりあるようでございますが、この地帯は国有財産でもあり、また皇居の姿から見て、一般に開放してもいい地域ではないか。それより以外の地域に、陛下の御住所を中心とした皇居がある、こういうような形のものが、皇居開放方法論として考えられるものではないかと考えるのでございまするが、国民とともにある皇室という意味から、何かの御意見をお持ちじゃないでしょうか。
  152. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 旧本丸の東地区の関係は、先日お答えをした通りでありまするが、あの地区につきましては、現在でも乗馬クラブとかテニスのクラブとか、そういうのがありまして、そういう方は自由に入っておられるわけです。その他夏季の林間学校あたりもやっております。この場合は、小学校の子供さんが来ておられるわけです。あの地区については現在でも考えておりまするが、将来に皇居造営の問題と関連して、さらにもっと進んで考えることが必要ではないかというようなことは考えておりまするが、しかし皇居造営の話の出ていきます過程において、現在部内で話しておる場合においては、たとえば迎賓館を東地区のどこか広いところに作ったらどらか、そういう話も出たりするものですから、そういうことも関連がありまするから、ここですぐにどうということは申し上げかねる次第であります。気持は先ほど申し上げたような次第であります。
  153. 受田新吉

    ○受田委員 林間学校その他にも開放しておられるということになれば、思い切ってこれを一般都民のレクリエーションの場として、一般国民のレクリエーションの場として提供するという方が筋が通るのじゃないか、かように思いまするので、もう一歩進んだ御研究を願ったらと思うわけです。  もう一つ、この間瓜生次長は、皇居開放というそうした問題を、皇居造営に一緒に含めて、この審議会で審査してもらったらという御希望があったと記憶しておるが、これはよろしゅうございましょうか。
  154. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 それは今までもちょと申し上げましたように、皇居の位置という問題、今の皇居の地域の中へ作るにしても、もとの宮殿のありましたところへまた宮殿を作るか、あるいはそうではなくて、今お話のありました東地区の方へ作ったらいいのではないかというような説もあるかもしれませんし……。ですから、そういうことと関連いたしまするから、その関係において皇居造営審議会において、またいろいろ御意見を承わりたい、こう思っておる次第でございます。
  155. 受田新吉

    ○受田委員 先般松野長官は、皇居開放の問題はこの審議会の所管ではないという御答弁があったようですが、これと瓜生次長の御意見と食い違っておりますが、これはどうしたことでしょう。
  156. 松野頼三

    ○松野政府委員 私はただいまの皇居の現状について、これを開放するかしないかということは、この審議会の所管ではない。新しく皇后を作ることについて、皇居は建物そのものだけではございませんという御答弁をいたして、それに庭園及び付属、それから様式というものがありますから、それに関連する場合には、当然この審議会の問題になりましょうが、それ以外の問題ということになれば、これはおのずから別個の問題だ。従って今度皇居造営の敷地の面積、建物の建坪というものはこの審議会の所管になりましょうが、その以外の地区を開放するかしないか、使用するかということは、この審議会とは別個な問題になろう、こういうふうな意味で御答弁したわけで、ただいまの現実的な問題、それから造営の問題、多少私の答弁と、質疑の中においては明らかに差がございましたので、この問題で、今直ちに皇居を開放するかしないかということは、この審議会の問題とは多少かけ離れております、こういう御答弁をしたと記憶しております。
  157. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、今の旧本丸地区を開放して、国民のレクリエーションの場その他に供したいという場合は、この造営審議会で諮ってもらいたいのだという瓜生次長のお言葉と、長官のお気持とは、これは食い違っておるのじゃないですか。
  158. 松野頼三

    ○松野政府委員 私は食い違っておるとは思いません。端的に申し上げて旧本丸地区を開放するかしないかということは、皇居造営審議会の議題ではないと存じます。ただし逆に、旧本丸地区に造営するかしないかは、当然今度の造営審議会の議題になるのだ、こういう意味で私は答弁いたしましたので、質問者が直ちにきょうあした開放するかしないかという御議論がございましたから、それは審議会関係は別でございませんかという意味で答えたわけで、従って造営地域の問題と開放するかしないかということは、その地域が造営地域に入れば審議会の議題に入りましょう、入らない場合はこの審議会と別個になりましょう、こういう御答弁を申し上げたのでございます。
  159. 受田新吉

    ○受田委員 きょうこの法案がまさに通らんとする寸前でありますので、ここは念を押しておきたいのですが、松野長官のお気持は、旧本丸地域が造営の地区に入らぬ場合には、その旧本丸地区を開放するかどうかの議論は造営審議会の所管ではない、こういうことなんですか。
  160. 松野頼三

    ○松野政府委員 関連はございますが、直ちにそれが、この審議会結論がどういうふうに出るかわかりませんが、しかし所管かどうかということは、それは審議会の答申と造営の問題にかかりましょうけれども、関連はありますけれども所管そのものではない、こういうつもりであります。
  161. 受田新吉

    ○受田委員 瓜生次長としては、今長官の御答弁とあなたのこの間申されたこと、きょう申されたこととやや食い違っている点があると思う。旧本丸地区を開放するということは、当然審議会の所管としてそういう問題を検討してもらいたいのだということで、造営審議会に期待をかけておられるようですが……。
  162. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 先ほども申し上げましたように、この東地区を開放するかどうかというような問題と、皇居の造営の位置をどこにするか、皇居の観念の中には先ほども総務長官がおっしゃいましたように、庭園をどうするかという部分も入って参ります。皇居の付属の皇室用財産、特別の庭園にするということになりますと、いわゆる世の中にいいまする開放とは必ずしも一致しないわけでありますから、そういう意味において総務長官がおっしゃったことと同じことでございまして、関連としてはそういう関連でございますから、自然皇居造営審議会でもそうした問題も取り上げることと期待しておるというふうに申し上げた次第であります。
  163. 受田新吉

    ○受田委員 関連事項として審査するということで、審査の対象になると了解してよろしゅうございますね。それでよろしゅうございますね。  それではいま一つ、きょう幾つも審議会の設置が規定されるわけでございますが、総務長官、せっかくあなたのような頭脳明晰な幅の広い実力者がおられるときに、審議会委員にたくさんなられて、一人で二十も占めておるという実例があるわけですが、これを制限する法規を作るとか、あるいは何か政令を出すとかいう方法をおとりになりますかどうですか。
  164. 松野頼三

    ○松野政府委員 私の気持としては二十一も一人の方がやられるということは、これは必ずしも全能ではないと存じます。ただしこれは審議会を作ったときに、各業界代表というような場合、一番数の多いのは商工会議所の会頭というのが、商工会議所の関連するものではすべて代表者にして名を連ねさせてくれ、また連ねてくれという、実は両方の希望がありますので、そういう方が組織の代表ということで名を連ねるわけで、そういうものは必ずしも商工会議所の会頭さんが二十一も二十四も身体があくかというと、これは物理的に不可能かと存じます。私はそういう方は無理だと存じます。しかし日本商工会議所をぜひこの中に入れてくれということで、関係法案の場合にその代表者として会頭の名前を入れたために、今日二十幾つというのがありますが、私の気持としては、会頭がおられるならば次は副会頭の方がこっちに入ってもらいたいという気持でございますが、しかし団体に推薦をお願いしたときに、やはり推薦者を入れないわけに参りませんので、推薦を依頼しなければ別ですが、依頼しますとたいてい会長さんの名前を推薦してくるものですから、私の方ではできれば会長さん、専務さんと別々に入っていただきたい気持はありますので、十分気をつけておきますが、政令できめるには多少その辺がどうかという感じがいたします。
  165. 石山權作

    ○石山委員 私二週間も前から設置法の一部として固定資産と税制調査会の問題を質問したいという通告をしているのです。けれども委員長はきょうどうしても上げたくて、大へん、私が何か言うとにらめているのだけれども、上げたくているなら、私はその点御協力を申し上げます。そのかわり私はこの問題を次の、たとえば防衛問題等が出たとき、いわゆる防衛産業についてからめて税制等を私に質疑さしてくれるというならば、この問題に協力してもいいのだが、どうです。
  166. 内海安吉

    内海委員長 石山さんの言論を抑圧したつもりはないのですが、今後とも十分注意して、あなたの御期待に沿うようにいたします。  御質疑はありませんか。——御質疑がなければ、これにて本案についての質疑は終了いたしました。  これより本案について討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありません。直ちに採決いたします。総理府設置法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  167. 内海安吉

    内海委員長 起立総員。よって、本条は原案の通り可決いたしました。なお本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  168. 内海安吉

    内海委員長 御異議なしと認めます。よってそのように決定いたしました。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後三時十二分散会