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1959-02-25 第31回国会 衆議院 地方行政委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月二十五日(水曜日)     午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 鈴木 善幸君    理事 亀山 孝一君 理事 纐纈 彌三君    理事 渡海元三郎君 理事 丹羽喬四郎君    理事 吉田 重延君 理事 阪上安太郎君    理事 門司  亮君 理事 安井 吉典君       相川 勝六君    天野 光晴君       飯塚 定輔君    加藤 精三君       田中 榮一君    津島 文治君       富田 健治君    山崎  巖君       太田 一夫君    佐野 憲治君       下平 正一君    北條 秀一君  出席国務大臣         国 務 大 臣 青木  正君  出席政府委員         国家消防本部長 鈴木 琢二君         総理府事務官         (国家消防本部         総務課長)   横山 和夫君         総理府事務官         (自治庁財政局         長)      奧野 誠亮君  委員外出席者         総理府事務官         (自治庁財政局         理財課長)   山野 幸吉君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  聖成  稔君     ――――――――――――― 二月二十三日  質屋営業法の一部改正に関する請願今松治郎  君紹介)(第一六四九号)  木曽岬村の愛知県編入に関する請願丹羽兵助  君紹介)(第一六七三号)  同(太田一夫紹介)(第一七〇七号)  地方財政措置拡充強化に関する請願亀山孝一  君紹介)(第一七〇八号)  大規模償却資産に対する固定資産税課税改正  に関する請願北條秀一紹介)(第一七〇九  号)  同(安井吉典紹介)(第一七一〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 二月二十三日  地方財政再建等のための公共事業に係る国庫  負担等臨時特例に関する法律有効期限延長  に関する陳情書(  第三五一号)  同(第四〇三号)  消防行政確立に関する陳情書  (第三五二号)  同(第三  七九号)  地方交付税率引上げ等に関する陳情書  (第三九八号)  地方税法の一部改正に関する陳情書  (第三九九号)  地方税の減税に伴う減収額国庫負担等に関する  陳情書(第四〇〇  号)  町村税財政制度確立に関する陳情書  (第四〇一号)  都道府県の財源調整に関する陳情書  (第四〇二号)  新町村建設促進に関する陳情書  (第四〇四号)  警察駐在所等施設に対する財源措置に関する陳  情書(第  四〇五号)  交通信号機設置に対する国庫補助増額に関する  陳情書(第四三  五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公営企業金融公庫法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一四九号)  消防組織法の一部を改正する法律案内閣提出  第一一八号)  地方財政に関する件      ――――◇―――――
  2. 鈴木善幸

    鈴木委員長 これより会議を開きます。  公営企業金融公庫法の一部を改正する法律案を議題として審査を進めます。  質疑に入ります。質疑通告がありますのでこれを許します。渡海元三郎君。
  3. 渡海元三郎

    渡海委員 このたび公営企業金融公庫に対しまして、出資金が五億ふえたのでございますが、この五億の出資金増加によりまして、公営企業金融公庫運営状況がどの程度改善されますや、この出資金増加に対する運営方針等について御説明賜わりたいと思います。
  4. 山野幸吉

    山野説明員 明年度公営企業金融公庫に対しまして五億円の出資があるのでございますが、これによりまして公庫は、既定の公庫債百億円のワクのほかに、五億円を長期貸付に回すことができるのでございまして、昨年度の公庫債発行額は八十億でございましたが、明年度は約百億近くの分が発行できることになるのでございます。従いまして、貸付額が約二十億円程度増加するわけでございます。それに伴いまして出資金については、まるまるその貸付金について公庫経営上プラスになるわけでございまして、公庫の業務運営上非常に楽になっていくわけでございます。なお、具体的な数字につきましては、この前資料で損益計算書その他につきまして御配付申し上げた内容等によって御承知を願いたいと思います。
  5. 渡海元三郎

    渡海委員 大体了承できたのでございますが、なお、従来から問題になっております市町村が従来持っております高利公募債に対する借りかえというような問題が残っておりますが、明年度運営によりまして、これを低利公営企業債と切りかえしていただくということが実行に移されるかどうか、この点一つ……。
  6. 山野幸吉

    山野説明員 今年度、三十三年度におきましては、先ほど申し上げましたように、公庫債発行額が八十億でございましたので、低利借りかえまで実はできなかったのでございます。明年度におきましては、公庫債発行額もふえましたし、新たに出資も得ましたので、できるだけ既発行高利債低利借りかえ等についても公庫で引き受けていきたいと考えます。
  7. 渡海元三郎

    渡海委員 なお町村長期資金の利用の中で、現在町村合併等によって急激に面積が増加した公有林経営の問題について、当然これには長期債が必要とされるのではないか。われわれも、それについては予算編成等を通じて鋭意努力して参ったのでありますが、予算をながめますと、この分は農林漁業金融公庫に出されておるのでございますが、私たちは、本来町村長期債を取り扱う機関といたしましては、公営企業金融公庫が扱うのが至当ではないか、このように考えておるのでございますが、この問題について、政府当局内においていろいろ調整されておると聞いておるのですけれども、いかなる状態にあるか、また将来これをどのように調整されんとするか、その御方針等についてこの際特にお聞かせ願いたい。
  8. 青木正

    青木国務大臣 お話しの問題につきましては、私どもとしても、でき得るならば、地方公共団体仕事でありますので公営企業金融公庫においてこれを取り扱うのが本来の筋であると考えておるのであります。ところが御承知のように、一方の考え方におきましては、林業というものが農林漁業関係でありますので、そういうことから予算編成に当りましては、お話しのように農林漁業金融公庫の方にその資金がついたのであります。これも一つ考え方でありましょう。しかしながら、私どもの立場に立って実際に運営いたしますのに、やはりこれは公営企業金融公庫で扱うことが最も適当ではないか、こういう考え方に立って、現在なお関係方面といろいろ折衝いたしておるのでありまして、私どもは、できるだけわれわれの考え方が実現するように今後も懸命の努力を続けたい、かように考えておる次第であります。交渉のいきさつにつきましては、奧野局長から説明いたさせます。
  9. 奧野誠亮

    奧野政府委員 公有林整備のための地方債は、現在は起債対象になっておりませんので、起債を認めます場合には、地方財政法施行令改正いたしまして公営企業に準ずる扱いにしなければならぬわけであります。しかしながら、そういうように制度改正をしてぜひ低利長期資金公有林整備資金に充てたいということで、関係町村方々、さらに農林省の林野庁、私たちの方がともどもに相談をいたしまして、一つの案をもって大蔵省公営企業金融公庫へのそのための出資金増額を求めて参ったわけであります。それにもかかわらず、予算を決定いたします最終段階になりましてから、突如として、そういうような仕事農林漁業金融公庫にやらした方が、同公庫は経験も豊富だし、円滑にいくのではなかろうかというような考え方も出て参ったわけであります。そういうようなところから結局、農林漁業金融公庫に対しまして、公有林であると民有林であるとを問いませず、造林資金を融通するというようなことで出資が行われたのであります。同時に、現在造林につきましては国から補助がなされております。予算説明によりますと、国の補助にかえて二万七千町歩融資対象にするのだ、こううたわれておるわけであります。その際に、農林漁業金融公庫が果して市町村融資することができるかどうか、これが当時も問題になっておったそうであります。農林漁業金融公庫から融資させるべきだという論をなす人においても、かなり疑問があったようであります。しかし、その場合には農林漁業金融公庫から森林組合融資をする、市町村はその造林分森林組合委託すればよろしいじゃないか、こういう強い意見もあって農林漁業金融公庫出資が行われた、こういう経緯があります。  私どもは、農林漁業金融公庫設立趣旨なり、あるいはその後の運営なり、あるいは公営企業金融公庫というものがすでに設立されているというような状態をあわせ考えますと、農林漁業金融公庫から市町村への融資はできない、またすべきものではない。市町村への公営企業整備のための資金でありますならば、公営企業金融公庫というものが設けられておるわけでありますから、これを通じて融資すべきであるという考え方を持っておるわけであります。そこで農林省との間で、当初はその仕事だけを公営企業金融公庫でやったらいかがなものだろう、こういう考え方も持っておったわけでありますけれども農林省としては、予算折衝いきさつもあるので農林漁業金融公庫からやらせたい。こういう考え方がございましたし、同時にまた私たちとしては、農林漁業金融公庫から市町村への融資はできないと考えておるわけでありますので、そのようなものについては委託を受けてもやれないのじゃないか、こう思うわけでございます。そういう事情でもございますので、やはり公営企業金融公庫が直接造林資金市町村融資できるような方向へ持っていきたいということで、政府部内でも話を始めておるわけであります。しかしながら、ことし中に解決するかどうか、なかなかむずかしい問題ではないかというふうに心配をいたしております。  私たちが、農林漁業金融公庫から市町村融資できないと考えておりますのは、農林漁業金融公庫法の第一条に、農林漁業者に対しまして、農林中央金庫その他一般金融機関融資を困難とするものについて融資をするのだと書いています。果して市町村農林漁業者というものに該当するかどうか、かりに相当な林地を持っておりまして造林をやっておりましても、一般林業家が営利的に林業経営をやっているのではなくて、あるいは治山治水の問題あるいはまた国有財産の造成の問題と違った系統から林業経営している、こういう気持を持っておるわけでございます。農林漁業者に該当する市町村があるかどうか、これが一つの問題であります。それは別といたしましても、農林中央金庫その他一般金融機関融資を困難とするというものには該当しないじゃないか。市町村起債許可を受けなければ融資を受けることができません。起債許可しましたものにつきましては当然融資が行われていくものだ、従来の例もそうであります。融資の行えないようなものは第一起債許可をいたしません。また起債許可もできないような財政状態に陥りました市町村におきましては、あるいは再建整備計画を立てさせますとか、国民全体の重要な任務を負っておるわけでございますので、当然健全な運営ができるように、国全体として配慮していかなければならない性格団体でございますので、融資を困難とするものの中に入らないと思っております。いわんや公営企業金融公庫というものが設立されました今日においては、当然そういうものは公営企業金融公庫から融資できるわけでありまして、一そう融資を困難とするものには該当しない、こう思っておるわけでございます。また設立の沿革からも、市町村融資対象にするということは考えられておりませんし、また融資されたこともないわけであります。もしかりに農林漁業金融公庫市町村融資できるんだということにいたして参りますと、公営企業金融公庫ができておりますのに、これはバス事業のための融資だ、これは電気事業のための融資だというようなことから、いろいろな金融機関があるわけでございますので、政府関係金融機関がばらばらに市町村融資することになって参りますと、融資を受ける市町村も因ってしまいます。また公営企業金融公庫設立趣旨も没却されてしまうことになるわけでありますので、そういう先例も開くことは厳に慎んでいきたい、こういう気持も強く持っておるわけであります。そういうことで、この間の事情は、公有林整備のための整備資金を得ようとして一緒に努力して参りました全国町村会の会長や事務局長にも伝えております。そうしてやはり筋の通った道を歩んで造林資金が適実に確保されるように努力していく。場合によっては、あるいは一年待たなければならないかもしれない。その場合には、どうしてもいけないところは、あるいは森林組合事務委託する、起債の裏をいくようなことになるのかもしれないけれども、やはり公営企業金融公庫を通じて造林資金を確保できるようになお努力していきたい、こういう話し合いをいたしておるわけであります。農林省大蔵省、三者で今後も話し合いを続けていきまして努力をいたしたい、かように考えておるわけであります。
  10. 渡海元三郎

    渡海委員 ただいまの大臣並びに局長の御意見、われわれも全く同感でございます。農林漁業金融公庫というものは農林業であるから、町村であってもこれに融資すべきでないかという議論に対しましては、本来の金融というものが、一般法人町村とはおのずから性格が異なるものでございますから、私は当然これを取り扱っておるところの公営企業金融公庫で行うという方針こそ筋の通ったものではなかろうか、このように考えるのでございます。せっかく御努力を賜わりまして、そのような方向を実現していただきたい、かように考えるのでございます。特にこの便法といたしまして、森林組合委託をして道を開くというふうなことは、あくまでも便法でございまして、このような方法よりも本来の道に返って町村そのもの起債の道を開くというように講じていただきたい、かように考えるのでございます。また単に林業のみでなく、現在農林漁業金融関係でも、融資すべき農業に関するものを多数持っておるのでございますが、これらに対しても現在行われてないのでございますから、この点林業のみを対象として、農林漁業金融公庫から町村起債の道を開こうとするようなことは、従来の過程に照らしても少し無理があるのではないか、かように考えておるのであります。しかしながら、各公有林野を持っております市町村がこの資金を必要とするということは、各市町村からの熾烈な陳情その他におきましてもこれは事実でございます。政府も、このために特に補助にかえまして二万七千町歩融資対象とするという点につきましては、同意をいたしておるのでございまして、この道は明年度において必ず開いていただきたい、かように考えるのでございまして、その際筋を通して、公営企業金融公庫がこの融資ができますように、何とぞ格段の努力をされんことを強く要望いたしまして、私の質問を終らしていただきたいと思います。
  11. 鈴木善幸

    鈴木委員長 他に御質疑はありませんか。——別に御質疑もないようでありますから、本案に対する質疑はこれにて終局することといたします。  次に討論に入る順序でありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立
  12. 鈴木善幸

    鈴木委員長 起立総員。よって、本案全会一致をもって原案の通り可決いたしました。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成並びに提出手続等につきましては、先例によって委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 鈴木善幸

    鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  14. 鈴木善幸

    鈴木委員長 次に、地方財政に関する件について調査を進めます。  質疑通告がありますのでこれを許します。阪上安太郎君。
  15. 阪上安太郎

    阪上委員 前回の委員会におきまして、今問題になっております屎尿処理施設方式について自治庁側の御意見を伺ったのでありますが、その場合の御答弁によりますと、結局現段階においては、単独事業として起債をつけることは自治庁としてやぶさかではないが、しかし補助事業としてこれに起債をつけるということについては、厚生省の方で化学処理方式については技術的な安全性というものがなお確認できないので、そういうわけにはいかないという意味答弁を私は承わったのであります。きょうは一つ厚生省側のこの点についての御意見を承わりたいと思います。  率直に言って、一体なぜ化学処理方式補助事業として認めることができないのかということになりますと、これはすでにわかっておる問題でありますが、厚生省の方ではいまだに技術的な安全性というものを認められない、こういうことだと私は思うのであります。そこで、これらの化学方式に対して厚生省が在来とってきたところの研究経緯あるいは指導、そういったものについてどういうことをやってこられたか、一つこの機会に御発表いただきたいと思います。
  16. 聖成稔

    聖成説明員 屎尿処理問題が御案内のように非常に深刻になって参りまして、いわゆる農村還元が行き詰まって参りましたので、各都市でも非常に困っておることは御案内の通りでございます。そこで私ども方針といたしましては二つの基本的な方式を考えておるわけであります。一つ下水道計画のある都市につきましては、下水道終末処理場を設置することによりまして逐次便所の水洗化をはかってこれによる処理をいたしていく。一方下水道計画のない都市につきましては、陸上処理施設を作って、清掃法に基きまして都市が収集いたしました屎尿をここに運搬いたしまして、この施設に投入して処理をする。こういう基本的な方式でございます。  そこで、その処理施設は従来屎尿消化槽補助対象として取り上げておるわけでございますが、ただいま阪上先生から御指摘のございましたように、昨今この問題が非常に大きなやかましい問題になって参っておりますので、薬剤を混入いたしまして処理するいわゆる化学処理方式でありますとか、あるいはまた遠心分離方式であるとか、あるいはまた好気性菌の培養による処理であるとか、いろいろな方法あとからあとから各方面で考案されてきているような実情にあるわけでございます。そこでこの陸上処理施設につきましては、屎尿消化槽のみを補助対象にして、他のものはどうして補助対象に取り上げないかというところが先生の御質問の要点かと思うのであります。実は、私どもいろいろ専門の学者の御意見等も承わっておるのでありますが、一般的に申しまして、屎尿処理施設につきましては、いわゆる理論的な計算でありますとか、青写真の上の検討でありますとか、あるいはまた小規模の実験的な施設であるとかという程度のもので、直ちにこれでもう大丈夫だというような決定的な断定ができないというのが学者方々の御意見であります。いいものかもしれないが、本格的なある程度の規模のものを作って実際に運転してみませんと、最終的な決定ができないというのが学者方々の一致した御意見なんでございます。  そこで、先生も御案内かと存じますが、化学処理屎尿消化槽に比べますと建設費が安く、用地も比較的小さくて済むというような利点がございますので、各都市ともぜひともこの化学処理をやりたいという要望が漸次高まってきていることは事実でございます。ところが、補助対象に取り上げましても、御案内のように国が四分の一を助成いたしまして、残りの四分の三は当該都市に持たせるという結果になりますので、都市側からいかに要望がありましても、最終的に自信のないものを、よろしい、それでは補助対象に取り上げるということにして、実際運転しました結果がうまくなかったということになりますと、非常な迷惑をかけることになるというところで私どもとしては慎重にならざるを得ないわけでございますが、と申しましても、昨今この化学処理につきましてはずいぶん各方面における研究が進んで参りまして、いつまでも疑問符をつけたままで、いいかもしれないかというような態度では済まされないような情勢になっていることを私ども十分承知しております。実は明年度予算清掃審議会設置に要する予算大蔵当局に要求いたしましたが、幸い認められまして、国会でただいま御審議中の予算案の中にはその予算が計上されているわけであります。この趣旨も、従来はこうした大臣諮問機関といったものはなかったのでありますが、屎尿関係権威者を網羅いたしまして審議会を設置して、ここで一つ本格的な検討をやっていただこうということに実はいたしているような次第でございます。現在の方針といたしましては、若干の都市において、化学処理と一口に申しましてもいろいろ方式があるものでございますから、二、三のものを実際作らしてみまして、ただいま申し上げました審議会の方で検討していただいて、ある期間運転してみて、これは大丈夫という結論を得られましたならば、そのときには従来の消化槽と同様に国の補助対象としても取り上げていきたい。そこまでは、実際のものを作りまして権威ある方々にさような形で判定していただいて、その上で決定していきたい、こういう態度でいるわけでございます。いいものがありましても、従来から取り上げております屎尿消化槽に拘泥してそれを取り上げないというような態度では決してございません。よければ必ず取り上げていかなければならぬ、こういう気持でいるわけでございます。
  17. 阪上安太郎

    阪上委員 ただいまの御答弁によりますと、学者間では、いまだ技術的な安全性というものについてこれを確認することはできない、こういうような一点があった。その意味は、結局化学処理方式というものは安全性がないために全然対象にならないのだ、こういうふうに割り切ってしまうべき性質のもののように私は聞いたのでありますが、この点につきましては、必ずしもそうでないと私は思います。というのは、あなたが後段で御答弁なさった言葉は、やはりそのままで放置しないで研究を進めて、そして安全性を持つように持っていくという考えのように私は承わったのであります。そこで先ほどあなたがおっしゃった中に、化学処理方式利点というようなものについて、もう一つ忘れられている点があるのじゃないかと私は思う。化学処理方式が財政困難な自治体において取り上げられていく理由の一つとして、先ほど言われたように建設経費が非常に安上りであるということもありますし、もう一点としては、時間的な処理の問題が一つあると思う。八時間連続運転すること、そして人口の増加に伴って将来急増を来たしたような場合においても、この化学処理方式であるならば、同じ施設を二十四時間フル運転することによって、三倍からの能力を出すことができるというような、将来とからみ合せても非常に有利な点がある。そういった点から考えて、どうしてもこの化学処理方式というものを厚生省はもっと真剣に取り上げられてしかるべきである。数年来、私の目から見れば漫然放置しておったような面が強い。そして物理方式ばかりに頭を使っている。こういうことでは、市町村の最近非常に困っておるところのこの問題の解決をすることにはならないだろう、私はかように考える。こういった問題につきまして、ぜひもっと真剣に取り組んでいただきたいと思うのです。ただいま伺ったのでは、何か清掃審議会というようなお言葉でしたが、一体それは予算はどのくらい計上してあるのですが、ちょっと伺っておきたいと思います。
  18. 聖成稔

    聖成説明員 ただいまの最後のお尋ねの予算は、本省費でございまして、審議会設置に要する経費として二十九万円ほど計上されております。  それで先ほど申し落したのでございますが、化学処理についてもう一つどもが心配しておりますのは、なるほど建設費も安い、用地も狭くて済む。それから今先生がおっしゃいましたように、非常に能率的に処理できるという長所がある反面に、維持管理が非常にむずかしい。消化槽でございますと、投入しておけば、極端に申し上げれば、糞便中に自然にあります嫌気性菌の働きによって、糞尿が分解されていくわけでございますけれども化学処理の場合には、人為的に普通二種類あるいは三種類の薬剤を加えて処理して参ります。たとえば最後に非常にアルカリ度が強くなりますので、中和してから放流いたしませんと、放流水が末端における農業あるいは水産業等に影響を与えまして、問題を起したような事例もございます。そういった維持管理のテクニックがむずかしいという点でございます。  それからもう一つは、消化槽の場合でございますと、ただ投入してそれでよろしいわけでございますけれども化学処理の場合は薬剤が要る。従って、建設費は安いけれども経営経費が高くつく。これはもうはっきりデータも出ておるわけであります。そこで使用薬剤が手軽に入るようなところですと、非常にいいのじゃないか。しかし入るところから非常に遠隔地でございますと、運賃等にかかりまして、経営費に非常に困ってくるのじゃないか。そこで薬剤を十分に投入しないでいいかげんな処理をいたしますと、また問題が起るという懸念がございますので、維持管理の技術と経済面が果して実用化に適するかいなやという点が、むしろ安全性というような点よりも実は心配な点であります。そこで先ほど申し上げましたように、実際に作らせまして、三カ月なり、あるいはある期間運転させてみまして、これならば維持管理もそんなにむずかしくないし、経費も実用的な範疇で可能性ありという確信を得ましたならば、直ちに取り上げたい。その辺の判定は先ほど申し上げたような新たに設けます清掃審議会におきまして判定をいたしたい、このように考えております。
  19. 阪上安太郎

    阪上委員 現在どんな化学方式があるのですか。
  20. 聖成稔

    聖成説明員 現在言われておる沈澱法、浮遊法、簡単に申しますと、薬剤を加えまして固形分を下に沈めてしまうという方式と、それから逆に浮遊法と申しまして、あわを立たせまして、あわにつけて固形分を上に浮かせてしまう、そして液体分と固形分を分離する、この二つの方法があるわけでございます。
  21. 阪上安太郎

    阪上委員 最近に自治体側から、この化学処理方式一つ起債を認めてくれというような起債申請の件数は、どのくらいに上っておりますか。
  22. 聖成稔

    聖成説明員 私どもが聞いておりますのは、三カ所程度でございます。
  23. 阪上安太郎

    阪上委員 あなたの先ほどの答弁の中で、危険性があるので、一応作らせてみて、それから危険性が除去されておるならばこれに対して起債を認めてやる、これは逆じゃないでしょうか。危険性があればこそやはり起債を認め、あるいは場合によっては補助金等もつけてやらなければならぬと私は思うのですが、あなたの考えでは、自治体はとにかくやりたければやれ、そしてやった結果がうまくいけばこちらの方でめんどうを見てやる。こんなものの考え方で、そして今何とかこれを取り上げていこうという作為がある段階において、果して自治体はそういうことによってこの仕事をうまくやっていけるかどうか。私からいえば、むしろ逆に危険であるからこそ補助事業として認めてやろう——大体補助事業というのはそういう性格を一部持っておるんじゃないですか。あなたの方で、危険があればこれは何も認めない、突っぱねてしまう。危険がなければこれは認めてやる。くどいようですがこれは逆だと思う。こういう場合、特に何らかの特別の補助をつけてやる。もっと極端に言うならば、三十九万円やそこらの予算を計上して、これに対するところの措置だ、そんなことを言っておられるのが私はおかしいと思う。国庫でもってそういう施設をどこか適当な市町村に作らせて、そうしてあなたの方で責任をもってデータを出されたらどうなんですか。今言ったような三十九万円くらいの予算を計上しておいて、それでもって——おそらくこれはうまくいっているかどうか見て回る経費じゃないかと私は思うのです。そんなことで今問題になっておるところの屎尿処理の問題は解決されないと思うのです。一体これはどうなんですか。
  24. 聖成稔

    聖成説明員 ただいまの問題でございますが、実は私ども現在このような方法で考えておるのでございます。この化学処理をぜひやりたい、いろいろ多年にわたる研究の結果、相当自信が持てるのでぜひやりたいということを言っております業者が三、四軒ございます。これらの方々はそういうことをよく知っておるものですから、ぜひ実際に作ってみたい、自分らのところでは絶対自信があるんだということを強く言っておる。そこで現在私どもの方で考えておりますのは、そういうぜひやりたいというからやたらにやらせるということではなくして、それを一応先ほど申し上げたような権威ある学者方々検討してもらいまして、なるほどこれは理論的には大丈夫だ、あるいは実験室的にも大丈夫だ、あとは実際に大きな規模のものを作ってやってみるばかりだというようなところまで合格したものについては、これをまたぜひやりたいという市もあるわけなんです。それで市と会社との話し合いで、市が土地を提供して実際にそういう施設を作ってみる。作るのは、その場合には会社側が作る。そうしてでき上った結果を先ほどのような機関で判定しまして、これでよろしいという結論が出ましたならば、そのときに当該会社から市がその施設をそっくり買い上げる。その買い上げる場合に、補助金なり起債なりのめんどうを見てやる。こういうやり方で二、三カ所やってみて、それでもう大丈夫だということになったら、最初からもう従来の消化槽と同じように補助金なり起債なりつけて建設させる。こういう行き方でいったらどうかということで、今そのやり方をいろいろ検討し、あるいは大蔵省その他と折衝してみよう、こういうような進み方をしておるわけであります。この方法でいって、ほんとうに会社側が申すようなりっぱなものができていけば、地方団体にも迷惑をかけないで、また国の方も相当の負担をいたしましてそれを作っていくことができる。大体今その方向で考えておるような次第でございます。
  25. 阪上安太郎

    阪上委員 一応会社まかせで会社にやらせて、工合が悪ければ会社が負担する、それでは厚生省としてこの問題を取り上げて真剣に取り組んでいるという格好じゃないでしょう。またそういう行き方を厚生省が指導するということになりますと、いろいろなあまり芳ばしくないような問題が起ってくるんじゃないか、むしろ思い切って厚生省みずから取り上げて、みずからの一つの力でそういうものをやっていくということがやはり私はいいと思う。  そこでそれと関連いたしまして、最近大阪の吹田市でこの問題について問題が起っておるのです。それは、吹田市は化学方式をやりたいということでもって起債申請しておる。何式をやりたいということを言っていない。ところが、吹田市についていろいろ私調査をいたしました結果によりますと、何か厚生省の方で起債を許すことになったけれども、今吹田市が仮契約をやって、そして議会に契約の件を上程しているところのその会社についてよりも、むしろ他のこの会社の方をやった方がいいんだということをサゼスチョンされた、こういうように私は聞いておる。もしそうであるとすれば、これははなはだしく地方自治に対するところの干渉だろう、私はかように思うのです。これらの真相はどうなんですか。
  26. 聖成稔

    聖成説明員 大阪の吹田市が化学処理をぜひやりたいということで強くこれを要望しておることは、私どもよく承知しておるのでございます。実は昨年の夏ごろからだと存じますが、吹田市の執行部あるいは市の議会の内部におきましても、この化学処理の二つの方式といいますか、二つの会社といいますか、そのいずれをとるかということにつきまして、いろいろ議論が二つに分れ、また市会の関係の委員会もあちらこちら視察などして回りまして、ずいぶん検討検討を重ね、審議審議を重ねたようでございますが、なかなか結論が得られなかった。ところが、私どもといたしましてはただいま先生からお言葉がございましたが、こちらから積極的に——吹田に限らずいずれの都市といわず、どこそこのあれをあなたのところでやってごらんなさいということを絶対に申さないことにいたしております。いわんや、こちらが言った施設を設けなければいろいろの好意あるめんどうを見てやらぬぞということは絶対に申したことはないのでございます。ただ吹田市におきましては、むしろ市会が非常に紛糾いたしまして、何らか厚生省の意思表示を得なければもう解決がつかないというようなことで、こちらの方へ何か一つ厚生省からサゼスチョンしてほしいというような非常に強い要望がたびたびございました。それで実は一つの方の会社は——もちろん私はそういうことには触れたくないということは終始主張しておったのでございますが、どうしても何か言ってもらわぬことにはどうにもきまらぬで因る。一方施設を設けることは一日も急がなければならぬという状態にあるというようなことで、それで一方の方はすでに静岡県の清水に施設を持った経験を持っており、片方の方はまだ持っていない。そういう意味で、率直な気持でいえば、一方の方がやって、そして両方を比較検討する機会ができれば、それは非常に望ましい。その程度のことを、これは言いたいことではございませんでしたけれども、せめてそれくらいのことでも言ってもらわなければどうにも困るという、そういう趣旨でございまして、先生のおっしゃる通り、私もそういった意味で、いろいろ地方自治に干渉しようという気持は毛頭持っておりませんので、さように御了承いただきたいと思います。
  27. 阪上安太郎

    阪上委員 あなたも御承知のように、一つの学校に起債が許されたという場合に、この建築は清水組でなければいけないのだとか、大林組でなければいけないのだということを言うことはもってのほかだと私は思うのです。ことに屎尿処理化学処理の問題につきましては、御案内のようにいまだに安全性が確保されていない。あるいはまた経営経費の問題についても相当問題点があるといわれておる。しかも吹田市が自分でやろうと考えたところの清水式の不二工業株式会社に締結しようとした。これは清水市においてすでに実施している。これは結果が出ておる。これは事実のようであります。しかしながらもう一つの、これは宝光という会社だと思う。この宝光会社はただ理論的にある程度の改良を加えたが、いまだどこにも実施していない。それをこちらの方をやれというようなことを言うのは、私は大きな誤解を招くと思う。しかし、今伺えばその通りで、一つは清水式でやっておってすでに結果が出ておるんだから、改良を加えていくという将来の改善というものが考えられる。宝光はどこもやっていないから、幸いやろうというのであれば、危険もあるがこれをやってみたらどうかというようなことで、あなたがそういうふうにサゼストされるということであれば私は了承しますが、その場合に、先ほどから特に問題になっておるように、そういうことを厚生省が言えるだけの立場にあるということは言えないと思う。そしてそれは会社まかせで、危険が出たならば——こういうような態度で臨んでおる限り、そういうことを言われるということは、これはどうも少しおかしいと私は思う。これは非常な誤解を招きますよ。そういう言い方で言いますと、国会議員とかその他がいろいろ頼みに行ったような経緯も存じておりますが、そんなことはよくありがちなことですから大した問題にいたしませんけれども、そういうことは少し誤解を招くようなことになるのではないかと私は思うのです。この点は一つ厳に注意していただかなければいかぬと思います。  それよりも、私は特にこの際あなたにお願いしておきたいのですが、先ほどのようなたよりない態度じゃなくして、危険が出れば自分の方で背負ってやるような気持で、そして会社の方で負担を受けるような行き方、そういう余地を残さないようにしてもらわぬと、今言ったような問題とからんできて、いろいろと忌まわしいうわさが出てくると私は思う。ですから、やってもらいたいことはその吹田の問題ではなくして、もっと積極的にこれを取り上げていただきたい。私の聞くところによると、厚生省は在来とも物理的な消化槽方法ばかりに固執しておる。新しく出てきた化学方式を取り上げることにどうも積極性がない。こういうふうに私は聞いておるし、何か因縁情実もあるような感じがここから出てくる。もう少し率直にこれを取り上げられるお気持はないのですか。この際もう一ぺんあなたの意見を伺っておきたい。
  28. 聖成稔

    聖成説明員 先ほど来いろいろ申し上げておりますように、私どもは、化学処理あるいはまた今後さらに新しい方式やいろいろな問題が出てくることも予想されると思いますが、そういうものにつきましては、真剣にこれと取り組んで、そしていいものはどんどん取り上げていく。ただその間に、先ほど申し上げるような屎尿処理施設につきましては、単なる理屈だけで割り切れないいろいろな困難な問題がございます。その点につきましても、今先生が御指摘になりましたように、より熱意を入れまして積極的に検討を加えていく、そうして問題を急速に解決していきたい。こういう気持でやって参りたいと思います。
  29. 阪上安太郎

    阪上委員 地方自治体においても、いろいろと建設にからみましてその監督を強化して、設計通り実施しておるかどうかというような程度の監督はどこでもやっております。一例をあげても、たとえば汽車会社等に対しましても、国鉄あたりがとっておる態度というものは、やはり設計通りに行なっておるかどうか、そこから出た欠陥によって汽車がうまく作られておらない、支障があるというようなことであるならば、これは汽車会社の責任だ。こういうことになるのですが、今のような化学処理の場合に、厚生省でそういったはっきりした、これはこの通りにやれば安全である、この通りにやればいいんだということのはっきりしたものを持っていない。持っていないでもって一つのテストケースとしてこれをやれと、こういうふうに持ってくる場合に、特に現段階においては、化学的な処理方法に対しては、これこそ特別の補助金もつけてやるくらいの考え方がなくちゃいけないんじゃないか。こう思うのですが、この点はどうでしょうか、
  30. 聖成稔

    聖成説明員 先ほど申しましたように、全部国で経費を持って作ってやるということになれば別かもしれませんけれども先生がおっしゃるように、こういう場合には相当大幅な補助をするといたしましても、なおかつ地方に負担を持たせることになるわけであります。その場合に、国の方でまだ十分確信が持てないものをさような取り上げ方をいたしまして、もし結果が悪ければ、これは市の方でやりたいというから補助金を出してやったのじゃないかということは言えないと思います。やはり地方としましては、自分らは専門でないので、厚生省補助金の対象にしてやるといったから、自分らの方は安心してやったが結果が悪かったということになって、非常なトラブルも起ってくるというようなことも考えられます。こういうものは全部国の方で費用を持って市で作ってみるというようなことができれば非常によろしいと思います。私どもも、さっき申し上げたような方式を今考えておりますが、一方的に危険負担を会社だけに負わせるということについても問題は確かにあると思うのであります。いろいろ他の類似の問題等を調べておりますが、こうした場合にある程度の危険負担を国がやるという方法もあるようでございますので、そういった方法検討いたしております。必要とあればまたそういう金を要求いたしまして善処して参りたい、かように考えております。
  31. 阪上安太郎

    阪上委員 今御答弁がありましたのでこれ以上申し上げませんが、とにかくこの化学処理に対して起債をつけるというような場合には、一つよほど慎重に業者の選定等につきましても——これがいいというような確信がある業者はおそらくいない、こういうのでありますから、一つ慎重に扱っていただきたいと思います。それとともに、危険があっても起債あとから認めるというようなものの考え方はどうもおかしいと思うのですが、その点自治庁のお考えは一体どうなんですか。
  32. 奧野誠亮

    奧野政府委員 先日もお答え申し上げましたように、自治体自身がどのような方法を選ぶかということを決定するわけでございますので、屎尿処理施設を設けたいという団体につきましては、方法のいかんを問わず起債許可対象に考えていきたいと思っております。
  33. 阪上安太郎

    阪上委員 これで私の質問を終りますが、繰り返して申し上げますけれども厚生省の方は、できるだけこういう仕事は国の経費でまかなっていくくらいのテストをやるように、これはぜひ一つ考えていただきたいと思います。本年からでも何か財政措置がつくならば一つ思い切ってそういう措置に出るようにしてもらいたい、これだけ言って私の質問を終ります。     —————————————
  34. 鈴木善幸

    鈴木委員長 次に、消防組織法の一部を改正する法律案を議題として審査を進めます。  質疑通告がありますので順次これを許します。安井吉典君。
  35. 安井吉典

    安井委員 消防組織法の一部を改正する法律案に関連いたしまして、消防についての若干の問題についてお尋ねを申し上げたいと思います。  これまでの三つの国会の中で消防の問題が取り上げられたのは今度が初めてでございます。それだけに今日の自治体消防をどういうふうにしてよりよくするかということについての政府の積極的な御見解の御発表もあろうかと考えておりましたところが、それがございませんで失望を感じたわけでございますが、国家消防本部の「わが国の火災の実態と消防の現状」というパンフレットの中でも、この中を若干引用いたしますと、「消防も能率的なものへ、合理的なものへと、組織も変化して来ている。組織のみならず、人も施設も地方行政の困難の中にあってよくも発展して来たものと思われる。ところが消防の歩みはまだまだである。現行制度十年を経過してますますこの感を深くする。」このような自己批判も行われているわけでありますが、「消防の歩みはまだまだである。」というこの反省。ところがこれの原因は一体どこにあるか、それに対する基本的な対策はどうかというような点を、この際青木国務大臣から明らかにしていただきたいと思うわけであります。
  36. 青木正

    青木国務大臣 わが国の消防制度が昭和二十三年に新しく自治消防として発足して、その後十年を経たわけであります。私は、率直に申し上げまして、消防というものは自治体が責任を持ってやるそのあり方に対しましては、当然そうあるべきであり、また今後もそうなければならぬと考えるのであります。しかし、自治体が責任を持ってやると申しましても、これを市町村だけにまかせて、国なりあるいは府県なりが傍観者——と言っては語弊がありますが、一切まかせきりで、あまりこれに対して力を入れぬというようなあり方で果たしていいのかどうか、こういうことをまず第一に考えるのであります。消防審議会の答申を見ましても、やはりその点について特に答申が出ておるのでありまして、私どもといたしまして、あくまでも市町村消防でなければならぬ。しかしながら、同時に市町村だけでできない問題、こういう問題については、できるだけ国なり府県なりにおいてこれに協力するような形を作らなければいかぬのではないか。たとえば経費の面について申し上げましても、市町村で使っておる消防費というものは非常に莫大なものであります。ところが、国の方で出しておる消防費は、本年度ふえましてもせいぜい六億五千万円程度、府県の消防費というものを総合いたしましてもせいぜい四億程度じゃないか。こういうことでありますと、市町村消防という名前、また実態、これをあくまでも備えていかなければなりませんが、ただそれだけでいいとも考えられない問題ではないか。もう少し国なり府県なりが協力しなければいかぬのではないか。たとえば、だんだんと消防機械も近代的になって参ります。そうした場合に、消防に携わる職員の技術の問題、こういう問題も市町村だけにまかせておいて、そういう技術を市町村が教育せよといったところで、なかなか無理じゃないか。こういう問題はたとえば消防学校というようなものは、あくまでも府県がこれを取り上げて、そうして市町村の消防職員の技術の訓練等はいたすべきではないか。また消防施設につきましても、市町村が責任を持ってやると申しましても、できるだけ国でもこれに対して協力する。こういう態勢に持っていかなければいかぬのではないかというような考え方から、今回の改正案はその第一歩として提案いたしたのであります。しかし、私ども考え方は、消防というものはその仕事の性質から見ましても市町村があくまでも責任を持ってやる、主体はあくまでも市町村に置く。ただ、国なり府県なりがもっと協力するあり方でなければならぬ、かように考えておるわけであります。
  37. 安井吉典

    安井委員 大臣の今の全体的なお考え方の筋はわかるわけでございます。ところが、今度提案されておりますものは、消防組織法改正と消防法の改正であります。この中におきまして、国や都道府県の消防関係の機関や権限の強化といったようなことがうたわれております。しかし、消防についての国だとか都道府県の機構や体制の改正意味がないと言うわけでは決してありませんけれども、もっと進みまして、消防についての人的な、あるいは物的な、いわゆる消防力そのものの強化というようなことが、今回の政府提案の措置の中に欠けておるのではないか、そういうような気がいたすわけでありますが、いずれにいたしましても、この制度改正だけが今回取り上げられておりまして、かんじんの基礎的な消防力をいかにして強化するか、あるいはその最も基礎となります消防財政をどうするか、そういったようなことに対する政府の熱意というものが全然見とれないのです。その点いかがでしょうか。
  38. 青木正

    青木国務大臣 御指摘の点につきまして、私の考え方も実は基本的には全く同じであります。単に制度上国なり府県なりが協力するというような制度を作ってみたところで、実体が伴わなければおよそナンセンスであります。また逆な面から申し上げますと、私、直接関係いたしましたのは国家公安委員長になってからでありますが、その前から消防のことにつきまして若干、地方行政委員会の委員等の関係もありまして、毎年予算の獲得について協力いたしてきたのであります。その場合に、やはり建前が自治体消防ということになっているものですから、国がもう少し補助金等を出さなければいかぬじゃないかということを言いましても、制度上やりにくい点も私ども実際は考えるのであります。やはり制度としても、国がこれに対してできるだけの協力をしなければいかぬ、こういう建前にまずすることが必要ではないか。その両々相待って初めて施設補助費の拡張等もできるのではないか。そのことなくして、制度上の裏づけなくして予算の獲得というようなことを考えましても、なかなか困難でありますので、そういう面も考慮いたして今回の改正をいたしたのでありまして、逐次制度上も国の責任というものを明らかにして、その制度に基いて、物的の協力ということももう少し積極的に国がやるような姿にしていきたい、かように考えておるわけであります。
  39. 安井吉典

    安井委員 今のお話は結局、この改正法の十九条の問題にからんでくるわけでありますが、それの方からもう少し内容に入って参りたいと思うわけであります。この十九条の規定は、「市町村の消防は、国家消防本部長又は都道府県知事の運営管理又は行政管理に服することはない。」と、きわめて明確な調子できっぱり表現をしております。これくらい自治体消防の本質あるいは基本的な性格というものを明確に言い切った基礎的な規定はないと思います。いわば市町村消防の金科玉条というようなものだと思います。それが今度の場合抹殺をされようとしておるわけです。ここに非常に大きな問題があると思います。それでこれは今度言いかえられるわけでありますが、この問題についての国家公安委員長の御説明は「国及び都道府県の消防に関する組織、権能の合理化」というような表現、あるいはまた「国、都道府県、市町村相互間の関係を明らかにいたしました」というような言い方、こういうことで今度の改正がなされるわけでありますが、関係を明らかにするというのは、もうここにこれくらい明らかな規定はないわけです。市町村消防は国家消防本部長にも都道府県知事にもその運営あるいは行政管理の面において服することはない。これくらい明らかなことはないわけであります。関係を明らかにいたしましたということ自体大へんおかしな言い方だと思うわけであります。だから、われわれ心配いたしますのは、国家権力が自治体のこういう基本的な権能というものの一部を取り上げようとしておるような、中央集権化の意図というものがこういうところにあるのじゃないか。これはむしろ自治権の縮小であり、憲法の地方自治の精神、地方自治の本旨とでもいいますか、そういうようなものにむしろ逆行するものじゃないか、そういうような気がいたすわけであります。前回の委員会におきましても、この点ずいぶん論議がかわされたようでありますが、委員長の御意見一つ承わりたいと思います。
  40. 青木正

    青木国務大臣 第十九条を改正いたしましたことにつきましては、なるほどお話しのように十九条の従来のはっきりした言葉、これを改めた点におきまして、何か中央において中央集権のような意図がその中に入っておるのではないかというふうな御疑念のようであります。この表現から、あるいはそういうような御疑問をお持ちになるかと思うのでありますが、私ども考え方、またこの法律を作るに当りましての基本的な考え方は、先ほど来申し上げましたように、そういう考えは毛頭ないのであります。消防関係の方々あるいは市町村方々が、この法案の立案の過程におきましてもいろいろ参りまして、私ども意見を交換いたしたのでありますが、よく御説明申し上げまして、市町村方々も私たち気持を納得していただいたのでありまして、われわれの考えとしては全く他意ないのであります。ただ国が、何と申しましても市町村消防だからといって、これを市町村にだけまかせておって、極端に言えば、市町村消防だから国は知らぬというような形でおること、それは私は消防という仕事の性質から見ましても、また自治体というものに対する国の立場からいたしましても、自治体の権限を縮小するということでなしに、自治体というものを伸ばすために国が協力すべきではないか。中央集権で押えるという意味でなくして、自治体の力を伸ばすために国が協力する。こういう意味において今回の改正をいたそうといたしたのであります。そこで運営管理、行政管理を行なってはならないということだけで、従来の表現でありますと、何か県や国は消防をまかせきりでかまわぬのだ。こういうことになって、国が無責任な立場になっても困りますので、そうでなしに今回の改正のように、あくまでも市町村の自主性を尊重し、しかし同時に国あるいは府県としてもこれにできるだけの協力をしなければならぬ。こういうあり方にした方が、自治体消防が発展するためにもいいのではないか。こういう基本的な考え方に立っておるのでありまして、私どもは決して現行の消防制度を改変して、中央集権なりあるいはまた中央が自治体消防に対して何らかの関与をしようというような気持は毛頭ないのであります。ひたすら自治体消防の発展に協力しよう、その協力ができるような姿にしたい、これだけのことなのであります。
  41. 安井吉典

    安井委員 自治体消防に対する国や都道府県の協力がきわめて大切であるということについては、これは全く同感だと思います。しかし、法律改正によりまして、市町村消防の権限を一部国へくれ、都道府県へくれ、くれたら協力しましょうという態勢は、どうも私は通らぬような気がいたします。特に財政的な問題につきまして大臣は言われたわけでございますが、これは消防組織法の第二十五条を一つお忘れになっているのではないかというような気がするわけです。第二十五条には「市町村の消防に要する費用に対する補助金に関しては、法律でこれを定める。」とあります。ですから、今御心配になっているのは、大蔵省の役人が、この第十九条をたてにとって市町村に金を出さないというようなことをおそれておられるようでありますが、政府はどんどん法律をお出しになればいいと思います。市町村消防を強化する財政的な強化に対する措置の法律をどんどんお出しになれば、出した法律は幾ら大蔵官僚の方が力が強いといっても、それは守っていただかなければいけないと思います。あるいはまた地方交付税の財政需要額の中においても、ほんとうに消防を強くしようという御意向があるならば、その中においての消防に対するいろいろな計数をもっともっと強化していただけばいいと思います。そういう措置が十分にあるのじゃないですか。そういう措置が十分なされておりませんで、一方的に形の上の問題だけにこだわっておられるというところに、どうも私は不自然な気がするわけですが、いかがです。
  42. 青木正

    青木国務大臣 消防施設補助につきましては、三、四年前でありますか、御承知のように法律を出しまして、あれによって補助をいたしておるわけでありますが、しかし、補助についての法律法律として、やはり消防組織法におきましても、建前として——この表現を見ますと、ただもう何もかまわぬでいいというふうにとられるおそれがありますので、むしろ改正案のようにして、あくまでも市町村の自主性は尊重する。しかしながら、従来の表現のような言いっぱなしでなしに、こういう表現にした方がいいんじゃないか、こう私どもは考えておるのでありまして、こういう表現にしたからといって、従来の考え方をこれによって変えようという気持は毛頭ありませんし、また実際にこれによって従来のやり方が変るとも、私どもは考えておらないのであります。
  43. 安井吉典

    安井委員 それでは消防施設強化促進法の改正も——これは消防三法といって二本の柱でありますが、そちらの方をどうしてお出しにならなかったのですか。
  44. 青木正

    青木国務大臣 法律改正というよりも、この方はむしろ財源措置の問題になるわけでありますので、法律改正よりは、もっぱら予算の獲得という点に実は重点を置いたのであります。今回、私どもの立場がまことに微力なために十分とは参りかねたのでございますが、ことしとにかく一億ほど増額を実現いたしたわけであります。
  45. 安井吉典

    安井委員 財政の問題はまたあとでさらにお尋ね申し上げたいわけでございますが、いずれにいたしましても、そのような、ほんとうに強化しようという御意向がどこにあるかわからないで、ただ消防の制度そのものに改正の面を向けていく。ことに市町村消防の権能の一部を国や都道府県の方に吸い上げていく。そういう行き方だけが表面に出ておるということから、私どもにいたしますと、何か昭和二十九年の警察法改正のときの趣旨考え方に相通ずるものがあるのじゃないか、そういうふうな疑念を抱かざるを得ないわけであります。警察と消防とは、法律の上でもはっきり協力関係が規定されておりますように、非常につながりがあるわけです。ところが消防は、あくまで共同防護とでもいうそういう本旨に従いまして、市町村段階で切れておればこれは問題がないわけでありますが、今度の改正によりまして、都道府県の消防への指導力が一そう増強されていく。そういうことによりまして、都道府県警察との結びつきというようなものが再現するおそれもあるのじゃないか。そういうことから、われわれは、また再び警察国家への方向へつながっていくのじゃないか、そんなようなおそれも感ぜられるわけであります。国家消防本部事務当局が立案された趣旨がそこまでいっているとは、私考えたくありません。しかし、今のようなこういう体制の中から、いつの日かそういう方向に引きずられていく要素を、そういうような種を今まいておくことになるのではないか、こういうふうな気がいたすわけでありますが、その点いかがでしょう。さらにお尋ねしておきます。
  46. 青木正

    青木国務大臣 だんだんのお話、お気持は私もよくわかるのであります。何もこの条文を無理に変えなくてもいいんじゃないか、それをわざわざ変えたというところから見ると、どうも背後にそういう意図があるのじゃないかという御疑念をお持ちになること、私もそのお考えはよくわかるのでありますが、ただ私はこういうことも考えるのであります。現行法によりますと、「市町村の消防は、国家消防本部長又は都道府県知事の運営管理又は行政管理に服することはない。」この考え方はこの通りでありますが、このことを端的に考えますと、消防本部長あるいは都道府県知事のいろいろな助言なり何なりがあった場合がありましても、それについて一切耳を傾ける必要がないと、極端にとられても困るんじゃないか。たとえど、私先日消防庁の研究所を視察いたしたのでありますが、最近における化学工業の進歩等に従いまして、消火施設などにつきましても、いろいろ新しい考え方に立ったものを考えていかなければならぬのじゃないか。そういうような場合にも、国はできるだけ国の立場において研究もし、また実験もし、その結果に基いてできるだけ市町村に助言もするというふうな立場に立って、市町村消防に協力することが必要ではないか。そういうようなことを考えてみますと、現行法のように言いっぱなしでおく条文が果してどうかというふうな疑問も、一部に出てくるのでありまして、やはりそうでなしに、むしろ、この点は改正案のようにした方がいいんじゃないか。あくまでも市町村の自主性は尊重する、尊重しなければいかぬ。しかし、同時に、自治消防がりっぱにやれるように、国や府県も、その運営についてできるだけ協力するような形にすべきである。こういう考え方に立っておるのでありまして、卒然としてこの十九条を改正すると、いかにもその背後に中央集権の意図を持っておるのではないかという御疑念も起ると思うのでありますが、そういう考えは実は毛頭持っていないのであります。やはり何らかの関連というか、協力するような形にするためには、この表現が適当かどうかということから来ておるのでありまして、この十九条の精神を変えようという気持は毛頭ないのであります。この通りの表現で果していいのか、むしろ改正案のような表現にした方がいいんじゃないか、これだけの気持なのであります。
  47. 阪上安太郎

    阪上委員 関連して。この前の委員会にも、私は十九条につきまして消防本部長に質問したのであります。今、この問題につきまして大臣から御答弁がありましたが、地方自治の本旨にのっとって地方の自主性を守っていくという点につきまして、これほど端的に実現されておる法律はないだろうと私は思う。行政管理とかあるいは運営管理とかということについて、市町村は服することはない。こういうことなんでありますけれども、今言われたように、趣旨は全然変ってないというならば、なぜこんなものにさわられたか、私はそこに疑問を持つわけです。前会にも御質問申し上げたときに、消防本部長ははっきりと、これは政府並びに都道府県からの財源補助を得たいためにこれを削るんだ、全面改正するんだ。こういうような答弁があったと私は思うが、これは非常に不見識だと思います。そのことのために基本的な地方自治の本旨というものを抹殺していく。そうして財源援助を得たいために地方自治体の自主性はどうなってもいい、こういうような考え方であるならば、非常に間違っております。そういうことであるならば、先ほど安井君からお話しのありましたように、ここでもって二十五条なり八条なりを改正すべきである。本旨はちっとも取り違えていないとおっしゃるならば、改正する必要はちっともないんじゃないかと思う。それを先ほどから何回も繰り返されておるのですが、こういった点について、大臣はあくまでもこれを堅持して通そうとなさっておるのか、一つ伺っておきたいと思います。
  48. 青木正

    青木国務大臣 私ども、一体どうしてこの改正の必要があるか、事務当局の意向も十分聞いてみたのであります。聞いてみて、私は率直に申し上げますが、この条文があるために非常に誤解を受けているというか、市町村で誤解をいたしまして、たとえば新しい消防のやり方や何かについて助言、勧告をしようとしても、運営管理一切十九条で、そんなことはよけいなことじゃないかということで、協力しようとしてもそれをすなおに受けない。誤解を受ける点があるので、この点を直したいということだけなんでありまして、それ以上事務当局がこの改正をする気持は毛頭持っていないのであります。従って、私といたしましては、何もこれを変えることに決してこだわっておりません。この表現を生かしつつ、同時に市町村が誤解をして、こうなっているから助言を受けなくてもいいというのでは困るので、できるだけ国が協力できるような、また協力すべきものと私は思うのであります。いろいろな研究なんかは市町村がやるわけにはいかないのでありますから、国が研究をして、その研究した結果に基いてこれを市町村に助言するというふうなあり方にしなければいかぬ。そういう協力をするためには、それを受け入れる市町村側で、この条文があるために誤解をして、よけいなおせっかいはするなということで、せっかくの助言も断わるということであっても困るのではないか。そこでこういう改正という問題が出てきたのでありまして、適当な字句でその気持を表わすことができれば、私は決してそれにこだわるという意味ではないのであります。
  49. 阪上安太郎

    阪上委員 今おっしゃったその助言ですけれども、これは現行法ではっきり助言できるようになっている。ですから、その点の誤解は市町村が持っているとは私は考えません。しかし一部にそういう向きもあることはあるかもしれません。ですから、現行法でこれは十分足りるじゃないかという気持が依然として私はやはり強いのです。それから、大臣も消防は手がけられたことはあると思いますが、われわれも手がけてきたことがあるのであります。市町村というものは、実際非常な消防に対するところの熱意を持っておるのであります。現在、教育関係の固有事務にいたしましてもだんだん薄れてきておるし、警察関係は薄れてしまいました。たった一つ残っている重要な固有事務ではないか、こう思うのです。これに対して、これはえらい人情的な話になりますけれども、こういった十九条でもってせっかく喜んでおるものを取り上げてしまうという行き方は、少し酷じゃないか。そのことによって逆に消防に対するところの熱意を失っていくおそれもなきにしもあらずです。ことにこの消防があるために、今日独立財源としても一番大きな部門である固定資産税というものがついておるというふうに考えていいくらいのものが、だんだんこういうふうに薄らいで参りますと、非常に自治体消防というものは影が薄くなって参りまして、市町村自治体というものの存在価値が疑われてくるのではないかというところまで参る大きな問題だ。私はかように考えておりますので、どうかこの点につきましてはさらに考えていただきたいと思います。
  50. 佐野憲治

    ○佐野委員 関連です。ちょっと私質問したいのですけれども、どうも納得できない点があります。十九条の問題ですが、この問題に対しまして、私は法律技術論からいっても、法律はやはり明確性、具体性を持たなくちゃならぬ、これは現在の立法の明示するところだと思います。それがこれほど明確に町村消防であるということを規定して、なお民主主義の考え方に立って、特に消防が警察機構から分離する、同時に町村消防としての独立性を持つ、こういう中から消防組織法が生れてきたわけでありますし、法は具体性を持たなくてはいかぬ。こういう意味から運営管理、行政管理に服することはない。こういうふうに明確にしたのだと思います。それを今、改正条文のように、自主性を尊重しなければならぬ。これは法律論からいいましても一つの倫理規定である。こういう倫理規定というものは法律からはぐべきである。これは近代法の大体今流れじゃないかと思う。あえてこういう抽象的な、しかも倫理規定に切りかえようとする意図がどこにあるのか、その意味がはっきりしていない。近代法からいっても具体性、明確性を要求されておるのに、包括的、抽象性をもって表わすのは、どこかに何かあるのじゃないか。法律技術論から考えて納得できない。この点に対して大臣の率直な意見をお聞きしたいと思うのです。
  51. 青木正

    青木国務大臣 法文の表わし方の問題についての御質問でありますが、条文上の問題につきましては本部長から答弁をいたさせていただきたいと存じます。ただ、私の申し上げたいことは、先ほど来申し上げましたように、根本の考えを変えようという気持はないのでありますが、どうもこの条文があるために市町村側におきまして若干の誤解もある。また国の方の立場といたしましても、この条文があるために国は関与なしというような立場に立っておることもおかしいのではないかということから、この条文の精神を生かしつつ、同時に、国、県が十分協力するようなあり方にすべきであるというだけの気持から改正という問題が出てきたのであります。従いまして、先ほど阪上委員の御質問に私申し上げましたように、この表現の問題について、私どもは決してこだわるのではないのでありまして、この十九条の精神を変えようという気持は毛頭持っていないのであります。持っていないのでありますが、従来の実績と申しますか、今までやってきた経験から見まして、この条文があるために、かえって市町村側で誤解をしておったり、あるいは国の方におきましても何か責任がないように考えていたり、そういうことであっても困るので、これを市町村消防の発展のために、国あるいは府県が十分協力せなければならぬあり方にするためには、これは改正する必要があるのではないか。後段の方にいろいろ書いてありますので、何もこれを変えなくともそれで十分じゃないかという先ほどもお話がありました。その通りであります。その通りでありますが、前にこういう原則があるために、これが非常に強く響きまして、一切国あるいは府県が協力せぬでもいいのだ、関与せぬでもいいのだというふうな考え方——もちろん関与してはいけませんが、しかし協力はしなければならぬと私は思うのであります。また当然そうあるべきものと思うのであります。また、市町村としても、やはり国なり府県なりの助言は受け入れてしかるべきものと考えるのでありまして、そういう点からいたしまして、この表現が果して適当であるかどうか、こういう考え方に立っての改正にすぎないのであります。実体を変えるという意味でなくして、表現の問題である。こういうことから改正の問題が出てきたのであります。  なお立法技術上の問題につきましては、本部長から答弁させます。
  52. 佐野憲治

    ○佐野委員 本部長のお話は、この前承わったので、大臣から率直な意見を伺いたかったのです。というのは、二十条に対しましても、それぞれ助言する、指導する。こういうことも国の、県のあり方が明記されておるのです。ですから設備、機械、器具にいたしましてもあっせんすることができる。こういう形になっておるわけですから、ちっとも問題は起らないと思うのです。逆に運営管理、行政管理に服することがないという地方自治の原則がここにうたわれてあって、その上に立っての国の指導、県の助言あるいは資材のあっせん、こういうことが初めて生きてくるのじゃないか。これを除いてしまって、自主性を尊重しなければならないという形になって参ると、これは一つの国家権力の介入というものが必然的に出てくるのではないか。当然それらのことをにおわせるかのごとくに、今度の改正条文の中に調査権を国、県が持つということになってくる。しかも行政あるいは運営管理に服することがないという権限を奪ってしまう。こういうことを考えますと、青木大臣は非常に民主的な方でありますから、今日の消防の運営に対しては非常な関心を持っておられる。しかしながら、この法が一たび成立してしまうと、法律というものはひとり歩きするもので、青木大臣の意思を乗り越えて、この条文から解釈すると、府県に対して当然国家権力が介入して参るということを防ぐ、これを保障する、従来の地方自治体の固有の権能に対して保障する、こういう保障するものがちっとも約束されていないということになって参りますと、非常に危険な要素を含んでおるのではないか。私はこの点を最も疑問に考えるし、もう一つこれに関連して消防法の改正の爆発物に対する改正を見て参っても、やはり地方自治体に対する信用といいますか、地方自治体というものはどうも能率が悪いものだ、だからこれを国が指導してやるのだというやはり一貫したものが現在行われておるのじゃなかろうか、こういう点を心配するわけですけれども、と同時に消防組織法の第一条に明確にされておりますように、やはり災害を軽減するということ、これが消防組織法の中における趣旨、目的だと思うのです。国家権力がそれほど強く町村に干渉しなければならない、そういうことによって火災を軽減するという法の趣旨から考えて、具体的にそういうことが必要とされるでしょうか、そういうことがあったのでしょうか。現在の消防の統計を見ても、非常に火災件数は減っておる。アメリカの二十分の一だ。非常に喜ばしいということも、消防におけるところの消火技術は外国並みに到達しておるということもいわれておる今日において、今までの行政管理にあるいは運営管理に服しないという民主主義の原則に立って運営されてきた消防において、どこにじゃまな点が具体的に起ったのか。逆に、こういうことがあるからこそ、大正、昭和の消防と今日の消防と比較すると飛躍的な充実がなされていっておるんじゃないか。そういう実情であるにもかかわらず、なおも消防法における爆発物の改正に見られる点、あるいはまた十九条の改正、あるいは調査権をもって強化すること、こういう形をもってしなければならぬという必要性というものはどこにあるのかということを、もう少しはっきり示してもらいたい。
  53. 青木正

    青木国務大臣 十九条の関係は、先ほど来私申し上げましたように、これは今後行政管理あるいは運営管理をしなければ消防力の強化ができないから、運営管理、行政管理をやろう、こういう趣旨では全くないのであります。行政管理、運営管理という用語につきましても、定義づけも行われておりません関係もありまして、これを市町村側で誤解して、一切がっさい国や府県の助言を受けなくてもいいんじゃないかというふうな誤解が一部にあったのでありますので、そういう誤解を解くためにもこれを直した方がいいんじゃないかというような程度の気持にしかすぎないのでありまして、決して従来のあり方を変えて国や府県が関与しようというような考えを毛頭持っていないのであります。また行政管理あるいは運営管理しなければ、国家権力がもう少し入っていかなければ消防力が強化できないのかというような御質問でありますが、私どもは、国家権力が消防力強化に関与しようなどという考えは持つべきでもなく、毛頭持っていないのでありますが、ただ先ほど来申し上げておりましたように、やはりいろいろ新しい消防のやり方等につきましては、国の責任において、また国の負担においていろいろ研究もし、そうしてそういうものを市町村消防に助言するというふうなあり方だけは、これは私は当然国としてやっていかなければならぬのではないか。市町村消防は、御承知のように消防署のあるところもありますが、消防団員が中心となっておるところもあるのでありまして、そういう消防団員の方々に、新しい消防のやり方あるいは消防の機械等につきまして、新しい知識を不断に取り入れるようにと言ってみたところで、市町村にまかせきりで果していいのかどうか。これはやはり国がそういう負担をいたしまして、国が研究をし、国が実験をして、その結果を市町村側に助言するというふうな形において協力していかなければいかぬのじゃないか、こういうふうに考えるのであります。従いまして、この十九条の問題につきましては、改正の、これを削除してこういう表現にしたことにつきまして、何か非常な中央集権的な意図があるのではないかという御疑問、なるほど一応わかるのでありますが、私どもは決してそういう考えはないのでありまして、これはしかるべく私はこの趣旨を従来の法の精神を生かすようなあり方にすることについて何にも異存はないのであります。決してこれを改正せなければならぬという気持は毛頭持ってないのであります。従来私どももしばしば消防関係の人あるいは市町村方々のお話を承わって参ったのでありますが、何かこれがあるために、国や府県は何もせぬでもいいじゃないか、そういうふうに誤解されても困るじゃないか、これだけのことなのであります。
  54. 佐野憲治

    ○佐野委員 では近い将来に自治省を設置して、消防庁というものを外局として置く考え方があるのかないのか。こういう点を一つと、もう一つ現在町村消防として育成するために、現在の各町村は税外負担として消防に対してどれだけの負担をやっておるか。これに対する解決方法として、私どもがしばしば提唱しておる消防施設税、こういう形で町村における消防の財源を考えなければならぬということをしばしば提案しておるわけですけれども、そういうことに対してどういう工合に大臣は考えておられるか。この二点に対して大臣のお考えを承わりたい。
  55. 青木正

    青木国務大臣 自治省を設置する場合に、消防庁を外局として置く考えはどうかというお話でありますが、この点につきましては、まだ政府部内におきまして検討中でありますから、ここではっきり申し上げかねるのでありますが、私自身の考えといたしましては、自治省というものは、昔の内務省の復活という考え方と逆な意味におきまして、府県市町村の、地方自治体の意向を中央に強く反映させるために、私はどうしても自治省というものは設置すべきものである、こういう考えを持っておるのであります。従って消防庁につきましては、現在国家消防本部というものがありますが、ありていに申しますと、消防本部の職員が二十数名、これで独立していろいろ消防の予算獲得その他をやっておるのでありますが、実際なかなかむずかしいのであります。しかも、消防はあくまでも市町村消防でありますから、その財源をできるだけ見ていかなければならぬ。見るためには、やはり自治庁というものは府県、市町村の財政を見ておるのでありますから、同じような立場に立って、やはり消防の仕事にしても国として財政的な協力をするために、自治省ができた場合には、やはりその中の外局として消防庁を置いて、そうしてできるだけ国が財政上の協力をするようなあり方にすることが望ましいじゃないか。これを消防庁というものを別個にして、警察庁につけるというような議論の方も一部にあります。私は、そういう考え方に反対なのでありますが、消防を伸ばすことは、決して警察と協力させるためではないのでありまして、必要なことは財源措置でありますから、そういう意味におきましてはむしろ自治庁の方と連絡を密にすべきものと私は考えるのであります。  消防施設税につきましては答申の次第もありまして、私どももその考え方には全く同感であります。できることならばこの国会にも消防施設税の創設をいたしたいということで、いろいろ関係方面とも折衝もいたし、努力もいたして参ったのでありますが、まだその実現の段階に至らなかったことを私どもは残念に思っております。しかし、引き続き今後も消防施設税の実現につきましてはできるだけの努力をいたしまして、消防財源の確保に全力を尽したい。そうして消防が市町村消防として独自の財源を持ってりっぱな仕事がやれるように育成に協力していきたい、かように考えておるわけであります。
  56. 安井吉典

    安井委員 第十九条の問題については、これはあくまで消防組織法のバック・ボーンだと思います。そういうまん中の背骨だけがいじられてしまえば、あとの骨はばらばらになってしまうわけです。それだけに、私どもはこれは大切にしていかなければならないと思います。ただ協力関係を緊密にしなければいけないというのは、これははっきりした問題であります。そういうような措置の進め方につきましては、さらに検討を進めていくべきだ、かように考えるわけでございます。  さらにこの問題については後ほどいろいろ検討が行われると思いますので、次に消防力の強化の問題につきまして二、三お尋ねをいたしたいと思います。消防施設の充実あるいは近代化というふうな方向はきわめて大切な問題でありまして、消防ポンプや貯水タンクでありますとか、最近では化学消防車やはしご車、火災報知機の問題から消防艇というように、いろいろと地方公共団体の消防力を強化しようとすればいろいろな要請がどんどん出てくるわけであります。無線の連絡施設なんかも近代消防の中においては非常に大切 問題に現在なってきておるわけでございますが、これら消防施設の充実強化という面につきまして、昭和二十八年に消防施設強化促進法が制定されて進んできておりますが、毎年の予算額というのは相変らず伸びが少くているようでありますが、今日までどういうふうな効果を上げてきているかということを一応お尋ねをしたい。さらに今後これの補助率を、今三分の一であるのを二分の一にすべきだというような審議会の答申もあったように聞いておりますし、あるいはまた自治体消防の強化基準というものを国できめまして、それまでに背伸びしなければならない部分につきまして、国が積極的にそういうものを援助してやるべきだ、こういうふうな答申もあったように聞いておるわけでありますが、これらの問題について一つお考えをお聞きいたしたいと存じます。
  57. 鈴木琢二

    鈴木(琢)政府委員 現在の日本の消防力の状況は、消防の現状の本の中にも書いてありますが、大体われわれが考えている消防の基準の四割弱というような状況であります。これはかねがね私どもが消防強化十年計画を立てて、標準まで持っていきたいということで数年来努力して参ったのでございますが、いずれにいたしましても財源の問題が一番隘路になるわけであります。従って、先ほどお話のありましたように、消防の特定財源を創設して、安定した財源措置を求めればこの計画は達成できるわけでございます。現在のところ御承知のように遺憾ながらその計画通りには進んでいないということで、今大体消防ポンプで例を申し上げますと、消防ポンプの存命というのは十年とわれわれは見ております。無理に使って十五年、十五年になりますと非常に能率が減るものですから十年と見ておりますので、十年以上の計画というものはあまり意味をなさぬようなことになります。それで十年計画というものを立てておりますが、それが一方に財源の都合で思うようにいかないということでございます。先ほどもお話がありましたように、結局、消防の特定財源を求めて財源的に安定することが第一の要件かと存じますが、現在ではやむを得ずわずかばかりの国庫補助を呼び水として従来数年間やってきておるわけでございます。これでも相当な効果を現わしまして、この数年来相当消防施設が整備されてきております。ただ数から申しますと、大きな消防ポンプに換算いたしまして現在全国で七、八千台しかないのでございますが、一万台ぐらいはまだ不足といえるような実情でございますので、今後も、先ほどお話がございましたような特定財源措置ということとも考えあわせまして、消防強化のために努力していきたいと考えております。しかし、たといわずかな国庫補助でございましても、これが呼び水となり刺激となりまして、この数年来市町村の消防施設並びに消防の訓練が非常に行き届いて参りまして、統計でごらん願えればはっきりいたすのでございますが、火災の件数は——これは社会の生活状態がだんだん変って参りまして火災の原因となる条件が多くなって参っておりますので、火災発生件数は毎年ふえてきておるのでございますが、火災の損害額、それから建物で申しますと、建物の焼損坪数はだんだん減ってきておる。特に三十二年度は相当に減っておるのでございますが、引き続き三十三年度も、坪数におきましても、損害額におきましてもずっと減少をいたしております。これは気象条件その他が著しく有利だったとは言えないと思うのでございまして、ひっきょうこの数年来、こういう補助などによる消防の力の入れ方が強くなって参った効果として消防施設がだんだんと全面的に強化されてきたということと、それから消防職員、団員の消火技術能力というものが非常に強化された、向上したということが一つの大きな原因であろうかと思っております。もちろん、一般の国民の火に対する警戒心なり、あるいは新しい科学、文化生活に対する知識がだんだん広まってきたということも一つの大きな原因かとは存じますが、こういったいろいろな補助金その他の施策によって、消防が設備の点においても、また人的面においても、非常に全面的に強化されてきたその結果が、やはり統計上にはっきりと現われた。火災損害あるいは焼損坪数の減少という結果になって現われているのじゃなかろうか、さように考えております。
  58. 安井吉典

    安井委員 今日は時間がだいぶ過ぎましたので、この辺で一応打ち切りまして、次会に譲りたいと思いますが、国家消防本部からの資料をお願いしたいと思うのが一つあります。消防団員等公務災害補償責任共済基金法の基金の加入状況その他運営に関する資料を一つ御提出いただきたいと思います。
  59. 鈴木善幸

    鈴木委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後零時三十九分散会      ————◇—————