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今野参考人 今回の
揮発油税の一部
改正法律案につきましての
私見を述べさせていただきたいと思います。
ガソリン税をもって
道路整備目的に充てるという
根本方針につきましては、すでに
御存じの
通り、二十八年にきめられました
道路整備費の
財源等に関する
臨時措置法において、その基本的な
方針がきめられております。問題は、従いましてそういう根本的な
政策そのものではなくして
税率にあると思います。
もう
一つの問題は、
ガソリン税によって作られる
道路は、どこまでも
自動車に還元さるべきものでありまして、果して
自動車の発達の
目的に適するような形の
道路改良がなされているかどうかという
道路政策にあると思うのであります。私、主として
交通政策の専門でありますので、その点からこの問題についての
私見を述べさせていただきたいと思います。
第一の問題は、
税率の問題でありますが、
税率につきましてはかなりきびしい
引き上げという感じがいたします。しかしながら、これを国際的に
比較してみますと、
日本だけがこのような高率の税を払うということにはならないようにも見られるのでありまして、一応
御存じかと思いますが
比較してみますと、
日本の
ガソリンの
小売り価格に占める
税率が約四〇%になるかと思いますが、
アメリカの三七%よりは高い。
イギリスは五九%前後だと思いますが、あるいは
西ドイツの五六%に比べますと、高いとはまだいえない、まあ低いにこしたことはございませんが、そういうことが
一ついえるのではないか。それでは税を込めました
ガソリンの
小売り価格を国際的に
比較してみますと、
日本の場合約四十二円の
小売り価格になるのかと思いますが、そういたしますと、
アメリカの二十九円に比べまして高い。あるいは
イギリスの四十六円、
西ドイツの五十二円、あるいはイタリアの七十三円ということを考えてみますと、実際は安いにこしたことはございませんが、まあまあというような感じがいたすのであります。
その次に問題になりますのは、ただいまも
中西さんから御報告があったようですが、果して
自動車の利用者がこれを
負担する能力があるかどうかという問題になります。これは
意見の分れるところだと思いますけれ
ども、
結論的に申しますと、まあまあがまんしていただける程度のものじゃないかという気もするのでありますが、しかし、その
影響が非常に大きいことはわかっております。問題は、この税が
自動車業者あるいは一般的な
道路の利用者、特に
自動車を持って、利用する人に還元されるような形で
道路が改良されるならば、それはまあまあがまんできるということになるんじゃないかと思います。これがどの程度
自動車のランニング・コストに
影響があるかということにつきましては、バイヤー、
タクシーあるいは
トラックによって違うと思いますが、大体三%前後くらいじゃないかという感じを持ちます。これもケースによって違うと思います。そういたしますと、問題は、ただいまの税制あるいはその税を取り立てた
道路改良政策というものが、
自動車業者あるいは広く
自動車利用者に還元されるような形でリンクされて
道路改良がなされているか——もちろん広い
意味ではなされていると思いますが、しかし厳密に申しますと、必ずしもそう言えないんじゃないか。そういう点から、
道路五カ年
計画の重点
政策というものを、もう少し
自動車の交通に便利になるように還元するような形でしていただきたいと思うことが第一点であります。
それから第二点といたしましては、一千億を
ガソリン税によってまかなおうとするのに対して、一般
財源から支出が三百何億という少いものでありますので、この一般
財源からの支出を、奨励の
意味もありまして、大体倍くらいにふやしていただきたい。
ガソリン税だけでこれをまかなうということは、少し
自動車業者に、対しまし残酷じゃないかという気もするのであります。
結論的に申しますと、私は、そういうことが満たされるならば賛成するという、
条件付の賛成でありますが、それではその論拠をもう少し申し上げてみたいと思います。
大体
ガソリン税によって
道路を改良するという考え方は、これは
受益者が
負担するという考え方であります。
道路の
受益者というものは、もともとは沿道の土地所有者であったわけであります。それが、主たる
受益者が、
自動車をもって交通する
道路の利用者であるという考え方に変りましたのは、今世紀に入ってからでございます。それでは
道路改良の
利益者と申しますか、
受益者と申しますか、それは
自動車業者あるいは
自動車利用者だけであるのかと申しますと、そうでないことはおわかりの
通りでありまして、土地が値上りいたしましたり、地方の工業が開発されたりいたしますし、大きくは、国の
産業の立地
条件がそれによって有利になる。商店も有利になり、泥がはねなくなるとかいろいろな
利益もあるわけであります。そういたしますと、狭い
意味の
自動車業者だけではないということになりますが、主たる
受益者が
自動車の利用者であるということは、最近世界各国の傾向として認められてきております。狭い
意味ではそうは言いましても、大きく考えますと、やはりその他の
受益者というものも考えられるし、国家経済がそれによって
利益を得るわけでございます。その点から申しますと、一般
財源からの支出金というものをもう少しふやしていただけないかという気がいたします。
自動車を持っておられる方は、
税率が多くなっただけコストが高くなるということは当然でございますが、しかし、それによって、同時にランニング・コストも下る、つまり舗装によってタイヤの消耗も少くなりますし、パーツの痛みも少くなる、あるいは時間が節約されて、
トラックなり、
バスなりあるいは
ハイヤー、
タクシーの
運転の回転が早くなるということは、資本の回転速度が早くなるということにもなりますし、もう
一つ、事故が少くなるということでございます。もう
一つは、非常に混雑しております地域を
運転いたします場合に感じます精神的な緊張、そういうものからのがれたりするということは、あるいは歩行者にとっても
利益でありましょうが、いろいろな
意味で最も
利益を受けるのは
自動車の利用者であることは当然であります。しかし、先ほ
ども申し上げましたように、広く考えますと、これは大きな国家経済のプラスであります。従いまして、
自動車を持っている人から取り上げた
税金は、その
税金を支払った人に返すような形、つまりリンク制的な考え方、リンケージ・セオリーといわれておりますが、そういう考え方が各国においてとられております。そういう点から見ますと、五カ年
計画は大
へんりっぱな
計画でございますが、過去の実績から申しますと、たびたび指摘されますように、非常に地方分散的である。そのこと自身はけっこうですが、
自動車の非常に混雑する地域の
道路改良がおくれているということは、東京の
現状につきまして私がここで指摘するまでもないのであります。従って、東京で
自動車が便利に走り得て、事故が少くなるような立体交差を作るとか、あるいはほんとうの高速
道路を作る——高速
道路と申しますが、ただいままでありますようなものは名ばかりの高速
道路でありまして、
自動車の能率から見ますと、かえってじゃまになるような例もございます。そういった点。あるいは東京を
中心に申しますと、東京・静岡の間とか、水戸、宇都宮とか、そういった交通量の多いところ、大阪地域につきましても同じでありますが、そういう混雑しているところ、つまり、混雑しているということは、
自動車の流れる現象から見ますれば摩擦の抵抗の多いところでございますから、そういうところを放置しまして、山に開発
道路を作るために
ガソリン税を使うこと、それはけっこうですが、それだけの
財源がない場合には、そういう雄大な
計画に対しては国がめんどうを見るのが常識ではないかという気がいたします。従って、私は
ガソリン税をとられることに対しては賛成いたしますが、その使い方はやはり
自動車業者に返るようなリンク制的な考え方をもう少し
道路政策に織り込んでただきたいという気がいたします。
先ほど
ガソリン税の
税率が、西欧諸国に比べて高くないということを申しました。それでは
道路は西欧諸国に比べてよくなっているかと申しますと、よくなっていない。
ガソリン税は西欧並み、
道路は西欧並みにならない。これは
自動車業者にとっては非常に迷惑なことでございますので、どこまでも
自動車業者に返るような形で、まず
道路を改良していただきたい。ということは、交通需要のあるところ、
自動車の混雑するところから改良して、
自動車の輸送の点から見て漸次
政策を伸ばしていただきたいという気がするのであります。
もう
一つは、
ガソリンのキロリットルに対して幾らという均一的な
税率でございますが、これは少し不公平ではないかという気がするのであります。ここに
アメリカの研究がございますが、結局
道路を利用することに対しての
税金、
道路から受ける
利益に伴って支払う
税金でございますので、やはりどの程度
道路を専有するかという専有の幅、それから専有の時間、タイムス・スペースを考慮してきめることが
一つだろうと思うのであります。従いまして、これは
トラックに対して少し酷になりますが、やはりアクセルの数の多い重量の車に対しては、幾らか差別的な税を作るというのが最近の各国の例のようでございます。これは
アメリカの
道路局で調べた図でございますが、普通の車の場合には舗装なりロード・ベットの厚さがこの程度で済むが、だんだん重量になってきますとロード・ベットもこういうふうに厚くなってくる。従って、これだけ
道路に対して圧力を加えることは
道路を堅牢にする——普通の車でありますならば一キロ一億か二億の
道路で済むものが、大きな
トラックを通すためには、三億なり四億の
道路を必要とするという場合には、それだけのウエートをつけた税を支払ってもらうのはやむを得ない。そういう差別
ガソリン税という考え方が入って参ります。もう
一つはそれだけでは不公平でございますので、さらに特別な
道路利用者税、スペシャル・ユーザーズ・タックスという考え方が入って参りまして、それで、たとえばどのくらい
道路を使ったかというトンキロなりあるいはキロ数を勘案した別の税を合せて使っておる州もございます。なるべく税は公平に、その
道路の利用度に応じてかける。そうすれば使わない人が
比較的
負担が少い。
もう
一つはその
ガソリン税というものを大きな
意味でなるべく
自動車の発達にかわってくるような
意味で循環して返ってくるような形で使っていただきたい。そういう
道路政策をしていただきたい。そういうことによって初めて
自動車が結局有利に運行もされ、そして
自動車が大きな基盤で発達する。
自動車が発達すれば
ガソリン税も
増徴され、
自動車工業が大量生産に入りまして、
自動車が安くなって輸出も増大され、広い
意味の
自動車燃料
産業というものが国の
中心的な
産業として発達をすることもでき、交通も非常に便利になるという結果になるわけでございまして、この
ガソリン税による
道路改良そのものは、趣旨においては非常にけっこうだと思いますが、こういうふうないい
意味での拡大再生産が、
自動車産業を
中心にして行われるという
条件のもとで、
ガソリン税というものが承認されるのでありまして、それがどこかでとまって、あまり人の通らないような
道路と申しては語弊がありますが、非常に膨大になって
自動車そのものの流れということから、やや離れたような
計画に実際実施上いきますならば、それはかなり批判されなければならないし、どうかそうでないように
道路政策の実施に当りましてはお考え願いたい。そういうことでありますならば、私はそういう
条件つきでこの
ガソリン税というものに対して賛成いたします。