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1959-02-26 第31回国会 衆議院 大蔵委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月二十六日(木曜日)     午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 早川  崇君    理事 足立 篤郎君 理事 押谷 富三君    理事 小山 長規君 理事 坊  秀男君    理事 山下 春江君 理事 石野 久男君    理事 佐藤觀次郎君 理事 平岡忠次郎君       荒木萬壽夫君    内田 常雄君       鴨田 宗一君    進藤 一馬君       竹下  登君    西村 英一君       濱田 幸雄君    古川 丈吉君       細田 義安君    毛利 松平君       山村庄之助君    山本 勝市君       春日 一幸君    久保田鶴松君       田万 廣文君    廣瀬 勝邦君       松尾トシ子君    山下 榮二君       山本 幸一君    横山 利秋君  出席政府委員         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君  委員外出席者         議     員 臼井 莊一君         大蔵事務官         (主税局税制第         二課長)    吉國 二郎君         参  考  人         (東都乗用自動         車協会会長) 藤本 威宏君         参  考  人         (東京トラック         協会会長)  中西 正道君         参  考  人         (東京大学経済         学部教授)   今野源八郎君         参  考  人         (映画産業団体         連合会会長)  城戸 四郎君         参  考  人         (読売映画社取         締役社長)   田口助太郎君         参  考  人         (千葉県興行環         境衛生同業組合         連合会会長)  秋山  有君         参  考  人 田中 絹代君     ————————————— 二月二十五日  委員加藤高藏君及び山花秀雄辞任につき、そ  の補欠として古井喜實君及び中原健次君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員中原健次辞任につき、その補欠として山  花秀雄君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 二月二十五日  塩業整備臨時措置法案内閣提出第一六三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  揮発油税法の一部を改正する法律案内閣提出  第七五号)  入場税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一三九号)      ————◇—————
  2. 早川崇

    早川委員長 これより会議を開きます。  揮発油税法の一部を改正する法律案を議題といたします。本日はお手元にお送りいたしました名簿の通り参考人出席しておられます。参考人には御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  これより参考人の方々から御意見を述べていただくのでありますが、最初に各参考人より御意見を述べていただき、そのあとに質疑に入ることといたしたいと存じますので、御了承を願います。なお参考人の御意見の開陳はお  一人約十分程度にお願いいたしたいと存じます。東都乗用自動車協会会長藤本君にお願いいたします。
  3. 藤本威宏

    藤本参考人 ハイ・タク代表といたしまして、それから中小企業立場といたしまして本法案に対して反対公述を申し上げます。  もとより道路を直すということにつきまして、その意義についてわれわれも十分に知っておるものでございまして、これに反対するものではございませんが、これをガソリン税増徴でまかなうということに対して絶対反対をしているものでございます。  まずハイ・タク関係といたしまして申し上げますが、今までにハイ・タクといたしまして、まことに妙なうわさが立っております。ハイ・タク事業といいますものは、きわめて利益がある、かつ大きな仕事であるというごときうわさが飛んでおりまして、まことに迷惑しているのでございます。お手元に配ってあります資料をごらんになっていただきたいと思いますが、資料第一に書いてありますが、ハイ・タク業者全国的に見まして、その九〇%が三十台未満のいわゆる小業者であります。そして四四%といいますものは、一台ないし五台というようなまことに零細な業者でございます。従いまして、三十台以上のいわゆる中企業といいますものは、全体の業者のうちの一〇%でございます。このようにハイヤータクシー事業と申しますものはきわめて零細な中小企業でございます。そしてこれらのうちで、比較経営が安定しておるといわれます大都市中心といたします業者が、大体一七%でございまして、他の八三%はいわゆる地方中小都市あるいは郡部にございまして、まことに困難な経営を続けておるわけでございます。一例を申しますと、静岡県の例でございますが、大体月の売り上げが十万円でございます。そして運転手さんの給料が一万二、三千円というような給料で、二日ないし三日会社に勤めて、一日帰るといったような劣悪な労働条件で働いております。そしてその結果、減価償却等を行いますと、利益といいますものは二、三%にしかならない、こういう状況でございますから、原主税局長は、今回のガソリン税ハイ・タク関係売り上げに対する負担分というものは二・九%云々とおっしゃいましたけれども、その二・九%自身がたとえばほんとうだといたしましても、これは利益が全部飛んでしまうというような大きな額でございます。売り上げの二、三%と軽くおっしゃいますが、利益率から申しますと大へんな額に上るわけでございまして、この辺は私ども担税力なしと考えておるわけでございまして、これは表によっても明らかでございますので、よろしく御宥恕をお願いしたいと考えておる次第でございます。  次に原主税局長は、外国との税率比較とか、自動車受益率とかいうようなことを盛んに言われておりますけれども外国との数字だけの比較が問題にならぬ、これはもう四囲の条件を無視しての比較ということが意味をなさぬことは、今さら申すまでもないことでありまして、これは割愛いたしたいと思うのであります。  さらに受益率の問題でありますが、盛んに鮎川道路調査会のものを金科玉条のごとく振り回されますけれども日本における自動車種類、これは資料の第二表にございますけれども、これを見ましてもはっきりいたしますように、この自動車のうち多くを占めているのは、いわゆる大都市中心とするような車両、つまり小型三輪とか小型四輪とか、あるいはハイヤータクシーとか、こういった種類のものでございまして、今回の五カ年計画によって道路が直るというプランを拝見いたしましても、それによって受益するとは考えられない。大半のものがそれを利用するとは考えられない。要するに、その上を利用しないものが受益するはずがないのでありまして、こういう意味から、鮎川道路調査会の研究といいますものは、アメリカのものを非常に参考としておりますけれども、九〇%以上舗装したあげくの平均数値と、わずか一、二本の主要道路を直す場合の結果とは非常な差があるということは御認識願いたいと思っております。  しかしながら、これも割愛いたしまして、きょう特に私どもの強調いたしたいと思っておりますことは、実はガソリンをどのようにだれが使っておるかということを調査してみました。それによりますと、日本ガソリンといいますものは、多くは中小企業が使っておるということが、資料によってはっきり明らかになったわけでございます。これは資料の第五によってごらん願いたいと思いますが、五を出すにつきましては、二、三、四といったようなこまかい調査の推論がありますが、これはめんどうになりますから割愛いたしまして結論だけ申し上げますと、日本におけるガソリン税負担といいますのは、中小企業者が使っております自家用貨物自動車トラックバスハイ・タク等事業用自動車大半負担しておって、この点からいいますと、政府が言われております中小企業対策とは全く相反したことが行われておるのじゃないだろうか、こういう結論が出て参っております。先進国におきましてガソリン税負担しておりますいわゆる自家用車の割合が九〇%あるというふうに聞いておりますが、これに対しまして、日本においてこのような自家用車と称すべきものはわずかに一一%でございます。これはいわゆる小型乗用車も入れての話でございます。全部含めてわずか一一%でございます。これは消費量でいきましたけれども、数でいくとさらにわずかで一〇%を割るというのがいわゆる自家用車の数でございます。他はすべて産業用に使用されております。しかもこれら産業用に使用されておる自動車の中で、中小企業に属すると考えられる自動車ガソリン税消費量は全体の四〇%に上っております。それからその他の農民等負担すると考えられておるものが二・八%、バストラックハイ・タク等営業者負担しておるものが二六・四%、これらを合計いたしますと、実に七〇%といいますものが中小企業あるいは営業者によって負担されておるということでございます。  従いまして今回の増徴が一キロリットル五千五百円であるとするならば、中小企業者負担しなければならないガソリン税は、今年度におきまして実に八十二億七千万円に上り、また農民負担しますものが五億九千万円に上る。それから事業用乗用車、これはバスハイ・タクトラック等でありますが、これらが負担する額が五十五億三千万円でございます。聞くところによりますと、個人事業税とか法人事業税等で今年は個人事業税で六十五億とか、法人事業税で二十億とかいうような減税が行われるというので、まことに中小企業者としては喜び感謝しておる次第でございますが、一方においてガソリン税におきまして、中小企業だけでも八十二億というような具体的な増徴が行われておるということになりますと、これは中小企業に対する対策費というものを相殺してしまって、逆に増税になってしまうのじゃないかと考えておる次第でございます。  また農民につきましても、ここに書いてありますように、実に六億というものがここで負担増になっておる。この点は今までにすっかり忘れられておるものでありますが、ここで明らかにしておきたいと思う次第でございます。これを具体的に申し上げれば、資料第六に出ておりますけれども小型四輪一台を持っておる中小企業者八百屋とか魚屋とか肉屋とかパン屋とか、こういうものが一年間に今回の増税によりまして受ける負担といいますものは、全国平均負担増は一万二千円であります。そうしますと一万二千円の負担増となります。従いまして事業税その他によって若干の三、四千円の軽減がございましても、差引においてはまことに大きな額が増税となっているということでございます。  それから小型三輪の場合には、これを持っておる八百屋とか、あるいはこれは農家も相当持っておりますが、こういったものが年間一万一千円の負担増となる。これまた完全に現金支出としてふえていくわけでございまするから、お百姓さんにとってもまた非常につらいわけでございます。それから現在盛んに行わております農村におきまする耕耘機、ああいったものを一台持っておりますと、これまた今度の五千五百円の増加だけで年間三千三百円の負担増となる。こういったものは非常に年々ふえておりまして、これはまた大へん負担ではないだろうか、どんどん増加していく負担ではないだろうかと思っております。またわれわれハイ・タク業者におきましては、普通車において年間四万三千円、小型において年間四万五千円といったような膨大な負担増となりまして、先ほど申し述べたようにハイ・タク事業中小企業が大部分であるということを考えますれば、これはまことに大きな負担でございます。しかもこれらの状況を考えてみまするに、車両の年々増加していく状況を分析してみますと、小型四輪とか小型三輪とかいうそういった中小企業者が使用する車は、他の車の増加比較して問題にならぬほど大幅にふえております。また農民が使っております耕耘機状況も、これもまことに膨大な増加を示しておりまして、一例をいいますと、三十一年において五万三千台の生産台数が、三十三年度では実に十三万六千台といったような膨大な増加を示し、さらにこれは爆発的に現在ふえている、こういう状況でございますし、将来を考えてみますと、このように中小企業者あるいは農民、それからハイヤータクシー業者のごときものが負担する税金の率といいますものはふえる一方でございまして、極端な言い方をいたしますると、日本道路作りの七割以上のものが中小企業、こういうような大衆課税的なものによってまかなわれておるということがはっきりいえるわけでございます。そういった意味で、単にハイヤータクシー業者だけではなくて、このように中小企業といたしましても大へんな額になる、こういうことでございまして、この点もう一回御検討をお願いしたいと考えている次第でございます。  こまかい数字につきましては、お手元資料を配っておりますので、ごらんいただきたいと思いますが、要は以上で尽きておるわけでございます。道路を直すことの意義については十分承知しておりますけれども、それがこのような中小企業者の四〇%、ハイヤータクシー業者の二六%、農民の九%、こういうようにかけてはならない、むしろ保護しなければならないところに対する税金によって道が直される、こういったことではわれわれはとうてい納得できない、こういう工合に考えて反対する次第であります。  以上で終ります。
  4. 早川崇

    早川委員長 次に東京トラック協会会長中西正道君にお願いいたします。
  5. 中西正道

    中西参考人 本日はわれわれのために意見を申し述べる機会を与えられましたことを厚く御礼申し上げます。  私は大崎運送会社社長中西正道と申します。東京トラック協会の副会長をいたしており、また日本トラック協会税制対策委員会の副委員長もいたしておりますので、トラック運送事業に対する増税影響について申し述べ御参考に供したいと思います。  まず結論を申し上げますと、今回提案されました揮発油税引き上げ案については絶対反対であります。軽油引取税引き上げ案についても同様絶対反対であります。  以下反対理由を簡単に申し述べます。  現行揮発油税価格の五五・五%を占めている高額過重なる税であるにかかわらず、政府減税政策の陰に何ゆえ引き上げられるのか、私たちには全く納得のできがたい点が多々あるのであります。今回ここに企図したごとき大幅な増税が行われるといたしますと、このパーセンテージはさらに販売価格の六〇・二%を占めることになります。現下の不況に呻吟しているトラック業者としては全く負担の限界を超え、片っ端から倒産せざるを得ません。従ってここに絶対反対を表明する次第であります。しかしながら、私は政府の言われる揮発油税引き上げ理由について一々ここに反論を加えようとするものではありませんが、現行揮発油税率が諸外国税率比較して果して安いのか、また諸外国税率そのもの比較によって税率を決定することが妥当であるかどうか。税率比較については、税負担均衡という見地からすれば、むしろ国内諸税との比較において負担均衡がはかられるべきではなかろうかと考えるのであります。また道路整備によって自動車の受ける利益自動車に還元されると見なされる利益道路整備費増額に伴って無限に増加するものであるかどうか、電気、ガスの動力源に課する一〇%の税が妥当な税率であるならば、すでに道路費大半揮発油税負担している現状から見て、今回の揮発油税増額自動車受益の限度をこえることはなはだしいものではないか、増税案がまた道路費として自動車の応益課税的の増税であるならば、道路の完成前の徴収という不合理あるいは都市重点幹線偏重道路整備事業に対し、僻地における自動車が全く恩恵を蒙らないという不合理も無視し得ないことであります。  以上申し述べました政府のいわれる増税理由に対しては、これまでも国会において再三論議されて参りましたことでありますので、その可否については国会の決定にゆだねるといたしましても、今回の増税はわれわれ自動車使用者担税力を全く無視した暴挙であるということをぜひ申し上げておきたいのであります。思うに徴税の根源は、その所得にあることは何人も異論の存しないことであろうと思うのであります。  それでは増税対象とされたトラック企業担税力はどうか。佐藤大蔵大臣は、過日予算委員会自動車運送業者担税力ありと見なしての措置で、道路整備費増額を確保するため増税案を提案したと答弁されたと聞いております。自動車担税力については、大蔵省の法人企業統計によれば、自動車運送事業は、他の産業比較して収益率がよいということが理由のようでありますが、全く逆であります。  この法人企業統計は、自動車運送事業、あるいはトラック運送事業等の個個の事業対象として調査されたものではなく、運輸、通信、その他公益事業といったようなきわめて大まかな調査で、しかもその調査対象となった運輸事業は、鉄道あり、軌道あり、電鉄の経営するバス事業あり、倉庫業あり、きわめて大まかに幾多の運輸事業対象として調査されたものであると聞いております。従ってこの調査結果があたかも自動車運送事業収益であるかのごとくに宣伝され、これによって全産業収益率比較して自動車運送事業担税力を判断する資料とすることは早計もはなはだしいものであります。トラック運送事業と申しましても全国一万二千の業者がおりますが、二百両、三百両を有する大規模なものは十数社を出でず、経営者みずからハンドルをとって運転に従事する二、三両の業者が非常に多く、きわめて零細な小規模業者が大部分を占めております。従ってその経営内容もきわめて貧弱でございまして、しかもこれらの多数業者は、事業者より数多いもぐり業者の圧迫を受けまして、業者相互の激烈な競争を常にやっておりまして、運賃のダンピングが非常にはなはだしい状態になっておることは御承知の通りでございます。認可された現在の運賃すらとることができなく、これをはるかに下回っておるのでありまして、ガソリン税増徴による運賃値上げがかりに行われたとしましても、業者はとうていそういうものを補うだけの収入を得ることは、現下状態から参りますと困難でございます。  それではこれらのトラック事業収益現況はどうかと申し上げますと、ただいま申し上げました通りに、規模の大小あるいは地域的な荷動きの相違、運賃収受地域差等により、一がいにこれを申し上げることはできないのでございますが、今回の増税トラック事業に及ぼしますところの影響につきまして、日本トラック協会が、直接にトラック事業者調査しました点を御参考までに申し上げますと、その対象にいたしました会社全国で八十七社でございます。その八十七社の保有車両数普通車が千百四十三両、小型車九百六十二両、これはガソリン対象といたしておりますが、軽油車が九百二十五両、ただいまの八十七社の運営いたしております車両を、ガソリン軽油消費対象として調査いたしました場合に、かりにガソリン税が五円五十銭、軽油税が四円の値上りになりますと、年間七千百五十八万円の利益が逆に五千六百二十二万円の赤字になるわけでございます。この資料につきましては、お手元参考資料をつけておりますが、一・七%利潤が、逆にただいまの課税によりまして、一・三%の赤字になってしまうというような状態でございまして、増税後の収益に及ぼします影響は、結局マイナスという状況で、一会社平均といたしましても、八十三万円の収益が、増税によりまして六十四万円の欠損になる次第でございます。さらに一両平均にいたしますと、年間ガソリン車は五万六千円の増税となって、一台の消費量でありますが、軽油車は五万円の増税となる次第でございます。平均一両当りに三万円の利益をあげていたものが、二万四千円の欠損になってしまう。従って今回の増税自動車担税力があるという措置であるとしますならば、これは全く実情にそぐわないものでございまして、この点現状のままで課税されまして、十分担税力があるということは考えられませんので、一つ十分に御認識をいただきたいと存ずるのであります。  さらに次に一言申し上げたいことは、道路整備が、国の政策として道路整備五カ年計画によりその整備促進がはかられているゆえんは、道路は国の産業経済の基盤をなすものだとして、国民的な要望にこたえて、さきに行われた総選挙においての公約の結果であると存じますが、われわれトラック運送事業者といたしましては、もとより道路整備はまことにけっこうでございます。その成果も期待するわけでございますけれども道路費増額に対しましては、今回の予算措置に見られたような自動車負担だけにこれを依存するようなことがなく、ただいま申し上げました自動車担税力あるいは自動車道路費負担増税等から、他に財源を求められることをぜひお願いしたいと存ずる次第でございます。道路整備が国民的な要望にこたえた政策であるとしますならば、国民的な負担において整備が促進されるべきものだと思います。  一応トラック全体の業者の零細な事業状態参考書におつけいたしました。現在日本全体のトラック業者数は一万六百四十四社でございますけれども、この中に三両以下の台数で営業しておる業者は三千六百十九業者でございまして、三両以下が三割というような状態で、当然自分が労務者としてやっていかなければできない運送業者であることも御記憶に残していただきたいと存じます。  以上のような状態で、トラック運送事業者立場から、今回のガソリン税軽油税増税に絶対反対を申し述べる次第でございます。
  6. 早川崇

    早川委員長 次に東京大学経済学部教授今野源八郎君に公述をお願いいたします。
  7. 今野源八郎

    今野参考人 今回の揮発油税の一部改正法律案につきましての私見を述べさせていただきたいと思います。  ガソリン税をもって道路整備目的に充てるという根本方針につきましては、すでに御存じ通り、二十八年にきめられました道路整備費財源等に関する臨時措置法において、その基本的な方針がきめられております。問題は、従いましてそういう根本的な政策そのものではなくして税率にあると思います。  もう一つの問題は、ガソリン税によって作られる道路は、どこまでも自動車に還元さるべきものでありまして、果して自動車の発達の目的に適するような形の道路改良がなされているかどうかという道路政策にあると思うのであります。私、主として交通政策の専門でありますので、その点からこの問題についての私見を述べさせていただきたいと思います。  第一の問題は、税率の問題でありますが、税率につきましてはかなりきびしい引き上げという感じがいたします。しかしながら、これを国際的に比較してみますと、日本だけがこのような高率の税を払うということにはならないようにも見られるのでありまして、一応御存じかと思いますが比較してみますと、日本ガソリン小売り価格に占める税率が約四〇%になるかと思いますが、アメリカの三七%よりは高い。イギリスは五九%前後だと思いますが、あるいは西ドイツの五六%に比べますと、高いとはまだいえない、まあ低いにこしたことはございませんが、そういうことが一ついえるのではないか。それでは税を込めましたガソリン小売り価格を国際的に比較してみますと、日本の場合約四十二円の小売り価格になるのかと思いますが、そういたしますと、アメリカの二十九円に比べまして高い。あるいはイギリスの四十六円、西ドイツの五十二円、あるいはイタリアの七十三円ということを考えてみますと、実際は安いにこしたことはございませんが、まあまあというような感じがいたすのであります。  その次に問題になりますのは、ただいまも中西さんから御報告があったようですが、果して自動車の利用者がこれを負担する能力があるかどうかという問題になります。これは意見の分れるところだと思いますけれども結論的に申しますと、まあまあがまんしていただける程度のものじゃないかという気もするのでありますが、しかし、その影響が非常に大きいことはわかっております。問題は、この税が自動車業者あるいは一般的な道路の利用者、特に自動車を持って、利用する人に還元されるような形で道路が改良されるならば、それはまあまあがまんできるということになるんじゃないかと思います。これがどの程度自動車のランニング・コストに影響があるかということにつきましては、バイヤー、タクシーあるいはトラックによって違うと思いますが、大体三%前後くらいじゃないかという感じを持ちます。これもケースによって違うと思います。そういたしますと、問題は、ただいまの税制あるいはその税を取り立てた道路改良政策というものが、自動車業者あるいは広く自動車利用者に還元されるような形でリンクされて道路改良がなされているか——もちろん広い意味ではなされていると思いますが、しかし厳密に申しますと、必ずしもそう言えないんじゃないか。そういう点から、道路五カ年計画の重点政策というものを、もう少し自動車の交通に便利になるように還元するような形でしていただきたいと思うことが第一点であります。  それから第二点といたしましては、一千億をガソリン税によってまかなおうとするのに対して、一般財源から支出が三百何億という少いものでありますので、この一般財源からの支出を、奨励の意味もありまして、大体倍くらいにふやしていただきたい。ガソリン税だけでこれをまかなうということは、少し自動車業者に、対しまし残酷じゃないかという気もするのであります。結論的に申しますと、私は、そういうことが満たされるならば賛成するという、条件付の賛成でありますが、それではその論拠をもう少し申し上げてみたいと思います。  大体ガソリン税によって道路を改良するという考え方は、これは受益者が負担するという考え方であります。道路受益者というものは、もともとは沿道の土地所有者であったわけであります。それが、主たる受益者が、自動車をもって交通する道路の利用者であるという考え方に変りましたのは、今世紀に入ってからでございます。それでは道路改良利益者と申しますか、受益者と申しますか、それは自動車業者あるいは自動車利用者だけであるのかと申しますと、そうでないことはおわかりの通りでありまして、土地が値上りいたしましたり、地方の工業が開発されたりいたしますし、大きくは、国の産業の立地条件がそれによって有利になる。商店も有利になり、泥がはねなくなるとかいろいろな利益もあるわけであります。そういたしますと、狭い意味自動車業者だけではないということになりますが、主たる受益者が自動車の利用者であるということは、最近世界各国の傾向として認められてきております。狭い意味ではそうは言いましても、大きく考えますと、やはりその他の受益者というものも考えられるし、国家経済がそれによって利益を得るわけでございます。その点から申しますと、一般財源からの支出金というものをもう少しふやしていただけないかという気がいたします。自動車を持っておられる方は、税率が多くなっただけコストが高くなるということは当然でございますが、しかし、それによって、同時にランニング・コストも下る、つまり舗装によってタイヤの消耗も少くなりますし、パーツの痛みも少くなる、あるいは時間が節約されて、トラックなり、バスなりあるいはハイヤータクシー運転の回転が早くなるということは、資本の回転速度が早くなるということにもなりますし、もう一つ、事故が少くなるということでございます。もう一つは、非常に混雑しております地域を運転いたします場合に感じます精神的な緊張、そういうものからのがれたりするということは、あるいは歩行者にとっても利益でありましょうが、いろいろな意味で最も利益を受けるのは自動車の利用者であることは当然であります。しかし、先ほども申し上げましたように、広く考えますと、これは大きな国家経済のプラスであります。従いまして、自動車を持っている人から取り上げた税金は、その税金を支払った人に返すような形、つまりリンク制的な考え方、リンケージ・セオリーといわれておりますが、そういう考え方が各国においてとられております。そういう点から見ますと、五カ年計画は大へんりっぱな計画でございますが、過去の実績から申しますと、たびたび指摘されますように、非常に地方分散的である。そのこと自身はけっこうですが、自動車の非常に混雑する地域の道路改良がおくれているということは、東京の現状につきまして私がここで指摘するまでもないのであります。従って、東京で自動車が便利に走り得て、事故が少くなるような立体交差を作るとか、あるいはほんとうの高速道路を作る——高速道路と申しますが、ただいままでありますようなものは名ばかりの高速道路でありまして、自動車の能率から見ますと、かえってじゃまになるような例もございます。そういった点。あるいは東京を中心に申しますと、東京・静岡の間とか、水戸、宇都宮とか、そういった交通量の多いところ、大阪地域につきましても同じでありますが、そういう混雑しているところ、つまり、混雑しているということは、自動車の流れる現象から見ますれば摩擦の抵抗の多いところでございますから、そういうところを放置しまして、山に開発道路を作るためにガソリン税を使うこと、それはけっこうですが、それだけの財源がない場合には、そういう雄大な計画に対しては国がめんどうを見るのが常識ではないかという気がいたします。従って、私はガソリン税をとられることに対しては賛成いたしますが、その使い方はやはり自動車業者に返るようなリンク制的な考え方をもう少し道路政策に織り込んでただきたいという気がいたします。  先ほどガソリン税税率が、西欧諸国に比べて高くないということを申しました。それでは道路は西欧諸国に比べてよくなっているかと申しますと、よくなっていない。ガソリン税は西欧並み、道路は西欧並みにならない。これは自動車業者にとっては非常に迷惑なことでございますので、どこまでも自動車業者に返るような形で、まず道路を改良していただきたい。ということは、交通需要のあるところ、自動車の混雑するところから改良して、自動車の輸送の点から見て漸次政策を伸ばしていただきたいという気がするのであります。  もう一つは、ガソリンのキロリットルに対して幾らという均一的な税率でございますが、これは少し不公平ではないかという気がするのであります。ここにアメリカの研究がございますが、結局道路を利用することに対しての税金道路から受ける利益に伴って支払う税金でございますので、やはりどの程度道路を専有するかという専有の幅、それから専有の時間、タイムス・スペースを考慮してきめることが一つだろうと思うのであります。従いまして、これはトラックに対して少し酷になりますが、やはりアクセルの数の多い重量の車に対しては、幾らか差別的な税を作るというのが最近の各国の例のようでございます。これはアメリカ道路局で調べた図でございますが、普通の車の場合には舗装なりロード・ベットの厚さがこの程度で済むが、だんだん重量になってきますとロード・ベットもこういうふうに厚くなってくる。従って、これだけ道路に対して圧力を加えることは道路を堅牢にする——普通の車でありますならば一キロ一億か二億の道路で済むものが、大きなトラックを通すためには、三億なり四億の道路を必要とするという場合には、それだけのウエートをつけた税を支払ってもらうのはやむを得ない。そういう差別ガソリン税という考え方が入って参ります。もう一つはそれだけでは不公平でございますので、さらに特別な道路利用者税、スペシャル・ユーザーズ・タックスという考え方が入って参りまして、それで、たとえばどのくらい道路を使ったかというトンキロなりあるいはキロ数を勘案した別の税を合せて使っておる州もございます。なるべく税は公平に、その道路の利用度に応じてかける。そうすれば使わない人が比較負担が少い。  もう一つはそのガソリン税というものを大きな意味でなるべく自動車の発達にかわってくるような意味で循環して返ってくるような形で使っていただきたい。そういう道路政策をしていただきたい。そういうことによって初めて自動車が結局有利に運行もされ、そして自動車が大きな基盤で発達する。自動車が発達すればガソリン税増徴され、自動車工業が大量生産に入りまして、自動車が安くなって輸出も増大され、広い意味自動車燃料産業というものが国の中心的な産業として発達をすることもでき、交通も非常に便利になるという結果になるわけでございまして、このガソリン税による道路改良そのものは、趣旨においては非常にけっこうだと思いますが、こういうふうないい意味での拡大再生産が、自動車産業中心にして行われるという条件のもとで、ガソリン税というものが承認されるのでありまして、それがどこかでとまって、あまり人の通らないような道路と申しては語弊がありますが、非常に膨大になって自動車そのものの流れということから、やや離れたような計画に実際実施上いきますならば、それはかなり批判されなければならないし、どうかそうでないように道路政策の実施に当りましてはお考え願いたい。そういうことでありますならば、私はそういう条件つきでこのガソリン税というものに対して賛成いたします。
  8. 早川崇

    早川委員長 引き続いて参考人に対する質疑の通告がありますので、これを許します。  なお続いて入場税法の一部を改正する法律案について、参考人より意見を聴取いたすことになっておりまするので、委員各位の御質疑はなるべく簡潔にお願いいたしたいと思います。まず山下春江君。
  9. 山下春江

    山下(春)委員 ただいまの公述の中で、藤本参考人中西参考人とは自動車立場がお違いになると思います。中西参考人は大きなトラックの方でいらっしゃるのに、何回も絶対反対というお言葉がございましたが、私が伺っておって藤本さんの方の立場に対しては今、今野教授のいろいろなお説とにらみ合せて、非常に同情する点があると思うのでありますが、そういう意味中西参考人の絶対反対というお言葉に対しては、いささか私も首をかしげて伺っておったのであります。ただ私ども考えますときに確かに日本道路は、これだけの強いガソリン税をとられていらっしゃるのに値する道路かどうかということについては、全くごもっともな点ばかりでございますが、しかしながら中西さんは考慮の余地なく絶対反対というお心でございますか、多少は勘案する余地があるということでございましょうか。実は私は最近いなかへ参りまして、もともと舗装の道路でございませんが、しかし舗装道路に匹敵するような小砂利の非常にいい道路が私の周辺にありましたのが、非常に冷たかったところへ急に暖かさがきた。そこを重量トラックバス等が通りましたために、その車道の横には一メートルぐらいな土が盛り上り、この道路をもとの姿に直すには一体どうしたらいいかという非常なおそろしいような恐怖を感じて参ったのであります。私は福島県でございますが、あまり道路がよくないところに、宮城県あるいは青森県の方から食糧品その他のものを積んだ七トン以上の重量トラックで定期に走られるために、その一番出口にいます福島県というのは惨たんたる道路にいつも逢着させられておりまして、高いとは思いますけれども、絶対反対というお言葉はいかがなものかと思いますが、多少お含みがございましょうか。
  10. 中西正道

    中西参考人 今絶対反対かどうかということについて御質問がございましたが、トラック事業を行なっておりますものの立場から申し上げたわけでございまして、私どもトラック事業を、ことに大蔵委員会でお調べ下さるならばわかりますが、これだけ免許せられておるところの多数の業者が実際において収益をあげているかどうか、所得をとっておるかどうか、所得をとっておるかどうかと申しますと、ほんとうにトラック運送業者は労働者であります。この労働者が現在の状況から申し上げますならば、とにかくガソリン税がこれから先増税されると、買うたびに六十何パーセントかの税金を払うんだということを聞いただけでも絶対だめだ、おれたちが払うなんてとんでもない話だ、それは大きな業者が、いろいろな事業をそこに付加しまして、二事業、三事業を行なっておるところでようやくにして相当の利益を上げているものと、コンパルした金額を出しておる利益率と、私ども自動車を持って運送事業をしております現在の経営内容から申し上げますならば、どうしても私どもは健全なる経営をしていきたいという欲望は持っております。しかしながらくる年くる年くる日くる日が欠損続きであります場合には、こういう決定的な税金をかけられまして、さらに労働問題もこれから先起きて参りましようし、また税金ばかりでもございませんが、ガソリンの市況が非常に悪い状態からだんだん市況回復で高価ながガソリンを買わされる状態になって参りました場合、これが両面からとうてい負担がし切れないということも申し上げまして、私トラック業者立場から申しまして、あくまでも絶対反対でございます。
  11. 山下春江

    山下(春)委員 私は藤本参考人にもお尋ねをいたしたいのでありますが、あなたのお述べになりました耕耘機がこうむる重税の悩みあるいは開拓地の三輪、四輪の小型トラック等がこうむる重圧、そういったようないろいろな面から見まして、今野教授の言われました多少税率に差をつけることが望ましいのではないかということと、いかにもぴったりした感じに聞こえるのでありますが、今のところ実に私不可解に思いますことは、このガソリンを消費されております方々が非常な勢いで反対をされております。私もきびしいと思っております。しかしながら巷間伝えられるところによると——私は実相は知りませんが、伝えられるところによると、自動車の権利をとれば、その権利書だけが一台二百五十万円で売買されておるということは、そんなにもうからない、やればやるほど赤字が累積される仕事が、なぜそんな勢いで売れるのでございましょうか。
  12. 藤本威宏

    藤本参考人 何か絶対反対でないようにお聞きになったようでございますが、私も絶対反対でございます。  まず前半の方にお答え申し上げますと、私申し上げたのは、何回も申し上げますように、ガソリン税は、ガソリン税をかけられてそれを負担している人間といいますか、中小企業が四〇%を負担している。それから事業用自動車が二六%負担している。それから農民等がやはり相当パーセント負担している。これらを合計いたしますと、七〇%くらいのものは全部中小企業とか農民とかいうものにかけられておるのです。従って、今回のガソリン税年間約二百億、といっても増税分だけでありますけれども、そのうちの百三十億からのものが実は中小企業から徴収されておるということでございまして、先ほどのように個人事業税が六十五億減税になったといたしましても、差引いたしまして、今度のガソリン税によって中小企業は逆に増税を受けておるという実相を申し上げたわけでございます。  第二点の、それじゃハイヤータクシーの方はどうかというお話でございますが、これは先ほども御説明申し上げて、その袋の中に表が入っていると思いますが、なるほど都市関係におきまして若干いいということについてはいなむものではありません。ただこれが全国の何パーセントかということでございますが、これは全国業者のうちの一七%にすぎない。厳密に言うならば一五%でございます。このくらいのものが今おっしゃるような潤っていると称するものでございます。これも昔から潤ったのじゃございません。二十九年、三十年ごろには、みな一様に、全国的に倒産したり、東京なんかの例を見ますと、不渡りを出さなかったのが実に二十八社しかなかったというような惨たんたる状況まで至ったわけでございます。そのあとにおきまして、ここに今野先生もおられますが、これでは東京じゅう全部倒産してしまうということで台数をとめまして、それで保護育成に当ったということで、今日大都市だけ、つまりその一五%の範囲内におきまして若干安定してきた。それも昨年のごとく神風問題等でだいぶきびしいおきゅうをすえられておりますので、その方もまた大へんでございますが、一応そういう状況でございます。従いまして、郡部や中小都市を考えてみます場合に、これは今回二、三%の負担増だなどと簡単に言っておられることが、実は利益率大半を持っていってしまうことになるということについてはトラックと同様でございますので、この辺ははっきりいたしたいと思っております。
  13. 早川崇

    早川委員長 山下委員に申し上げますが、あと一問で一つ
  14. 山下春江

    山下(春)委員 いろいろのお話、先ほどいなかのハイヤーは一台十万円というお話でございましたが、私は一台八万円にようやくなるかならぬかということも実は訴えられて知っております。従って、そんなにいいとは思いませんけれども、しかし不思議な現象もあることでございますので、トラックにおかれましても、小型ハイヤーにおかれましても、絶対反対というよりは——今の今野教授のお話など非常にうんちくのあるいいお話であったと思いますので、今後もう一つゆるやかに御検討を賜わることをお願いして質問を終ります。
  15. 早川崇

    早川委員長 横山利秋君。
  16. 横山利秋

    ○横山委員 人にはいろいろ聞き方があるもんで、私は実は山下委員のような受け取り方をしなかったわけであります。そこで今野先生にお伺いするわけですけれども、あなたのお話は取った税金を何とか返すようにしてやれということでありました。その意味では、たとえば東京のようなところには立体交差あるいは高速道路をもっとどんどん作ったらどうだ、そうすれば東京におけるタクシーなりトラックは納得するであろうという御議論のようであります。ただ私ども政治家の立場に立ってみますと、そうしたいのですが、実はそうはなっていないわけです。今度の五カ年計画にいたしましても、中央道を初め全国産業道路としてやらなければならぬというふうな考え方に立っておるわけなんです。そうしますと、あなたの言う、返すようにしてやれということは、実際問題としては、国の政策としての道路のあり方と税の取り方とは、あなたの御意見は御意見としても、実際は違うわけであります。そこが私は今野先生のお話のようにはなっていない。そこで今野先生はさらに別な点で一般財源をふやしてやらなければだめじゃないか、こういう御議論を展開されました。そこで初めて私と意見が一致するわけであります。もしも一般財源を今の産業道路、国の経済に必要な道路政策に適合するように飛躍的にふやしたならば、あなたは山下委員の受け取られたような御説明の仕方をなさらなかったのじゃないかと思うわけであります。要すれば、あなたは一般財源の投入の仕方はきわめて薄い、これは倍にしなければならぬとおっしゃった。けれども現状はそうでないのであります。この現状の線に立って今野先生は御賛成でありますかそれとも反対でありますか。
  17. 今野源八郎

    今野参考人 現状という問題でございますが、ガソリン税の方も大体一つの与えられた政策と考えますが、道路政策におきましては、やはり一級国道の改良に重点を置いておられますが、一級国道の中でも、私はやはり自動車の交通量の多いところに重点が移されるべきではないか。すでにそこは移されておる重点政策であるとおっしゃられましたが、そう申しますならば、さらに超重点的に、外国のやっておるような道路政策をやっていただきたい。もちろん開発道路も必要でございますし、国におきましても決定はされておられるようでございますが、いつそれをだれの負担においてするかということでは、五カ年間に全部縦貫道路を作られるわけでもないと思いますので、今後とも、僭越でございますが、私ここで述べましたような世界に大体共通な健全な道路政策、そうして公平な道路税、自動車税という考え方をどうか先生方におかれまして調整をして、後世悔いのないようなりっぱな国の大幹線道路自動車道路として作っていただきたい。開発もけっこうでございますが、開発ということは一体何を意味するか、私たち経済学者から見ますならば、国の工業の発達、そして農業の発達でございますが、やはり適地に産業を起すことでございまして、今まである自動車交通の混雑しておるところにむしろ病気がありますので、それを解決することに交通政策としては最初の重点が置かれるべきではないかと思います。その点で多少意見を異にするかと思いますが、要するに最も適地な需要のあるところに公平な税の還元をするような形で交通政策を考えていただきたい、これは私のお願いでございます。それほど山下先生のおっしゃることと、ただいまの先生のおっしゃることと、私の言うことでは根本は食い違っていない、時間的な差、どこにプライオリティを置いていくかというだけの問題ではないか、どっちを先にやるか、だれの金でやるかというだけのことで、道路を改良し、自動車の発達をはからなければ、日本が後進国としていつまでもとどまっておるという悲劇が長く続くということは同じだと思います。
  18. 横山利秋

    ○横山委員 私はこういうふうに理解しておるわけであります。先生のおっしゃる受益負担という点、それが第一問題でありますが、受益負担という点から、税金を出した人々に利益を還元してやれというお話があったと思うのですが、私がそれを理解したのは、たとえばトラックとかタクシーとかバスとか、今度増税されて苦しがっておるそういう人たちに、利益を返してやったら文句を言わなくなるだろう、こういう意味におっしゃったと理解した。ところが現実の道路政策はそうはいっていないのじゃないか、先生の御指摘なさったようにいっていないのじゃないか。そうだとすればすでにそれに矛盾があるではないか。そういう立場に立てばこの増税なんというものについては問題があるのではないか、それが私の第一であります。  第二番目は、一般財源の投入が少いとおっしゃいますが、その点については私の意見と全く一致をいたすところであります。今回の五カ年計画で参りますと、財源としては、御存じだろうと思うのでありますが、現行税率で三千五百五十三億、一般財源で三百十七億、新たに増収額で千六十八億、ほかに直轄負担金相当借入金三百八十四億を加えましても、まさにガソリン税五千三百円の中で四千六百円を受益者が負担しなければならないというあり方については、どうにも私は納得できないのであります。  先生に第一点にお伺いしたいのは、国の道路を直す上において国の一般財源から投入する割合と、それからこういう業界なり何なり、受益者が目的税的に負担する割合というものはどの辺が適当であろうかという点は、きのう私ども政府との間で質疑応答を長く重ねたわけでありますが、政府においてはその目安が全然ないのであります。なるほどある外国においては全部目的税でやっています。そういうところもないではありません。しかし今日の日本状況から言ったならば、先生もおっしゃるように、これでは一般財源が少いではないかという議論が与野党を通じて圧倒的なのであります。しからばどの辺が妥当かという点について先生は何か科学的なと言っては何でありますが、御意見をお持ちでありましょうか。
  19. 今野源八郎

    今野参考人 ただいまの一般財源に関してどのくらい支出すべきかという科学的な根拠とおっしゃられますと、ちょっと今ここでは申しかねますけれども、大体常識的に申しまして五カ年間に三百十七億というのは少いのではないかという気がいたしますので、これは借り入れその他でもかまいませんが、とにかくその倍くらい、六百億くらい出していただければ、自動車の利用者も納得するのではないかというような感じがいたします。  もう一つの、ガソリン税で全体の道路費用のどのくらいをまかなうべきかという問題は、国によっても違いますが、ただいま先生の御指摘がありましたように、国によってはほとんど全部ガソリン税によって出し、しかもガソリン税がそれを越している場合にはほかの目的に使っているところもありますが、大体はガソリン税で九〇%以上まかなうような傾向になってきておると思います。しかしそのもとは金の卵を生む自動車でございますから、あまり重い税金をかけますと自動車がふえないということでございまして、正しい意味自動車生産がなされるための呼び水ということも考えますと、やはり税率もあまり重くない方がけっこうでございますし、できますならばこういう重い税率というものは五カ年計画なり十カ年計画くらいの目安を置いて、道路が一応自動車道路として世界的に見られる程度の道路になるまでの、過渡的な税率と考えられるのではないかと思います。
  20. 横山利秋

    ○横山委員 あまり時間がないようでありますからもう一、二問にいたしますが、先ほど先生がおっしゃった各国比較の問題でございますけれども、この点は実は本委員会できのう大蔵省と私の間で論争した点であります。比較論をするに際しまして単純比較をしてよろしものかどうか。国民所得の中に占める割合を考うべきではないか。あるいはまた外国ではガソリン税一つではあるけれども日本におきましてはそれに関係する税というものは非常にたくさんある。ここに運輸省の調査がございますが、揮発油税として五百五十六億、地方道路が百三十一億、軽油引取税が六十四億、自動車税が九十七億、軽自動車税が二十億、物品税が六十一億、自動車取得税は三億、こういう外国状況と比べものにならないほどそれに附帯する諸税というものが自動車については多いわけです。こういう国民所得から分析した比較論や、こういう総合的な比較論をして果してなおかつでありましょうか。あるいはまたもう一つの観点から言いますと、バスの料金、タクシー料金、あるいはトラックの料金の各国比較と、ガソリン比較をしたらどうであろうか。何と何を比較したら各国比較が一番その間においては妥当であろうか。この点について御意見を伺いたいと思います。
  21. 今野源八郎

    今野参考人 ただいま御指摘の点、国民所得を勘案した比較でなければならない、ごもっともでございます。国民所得を勘案いたしましても、今回のガソリン税というものはそう著しく高いものではないという気がいたします。と申しますのは、もう一つ比較の方法としては、外国ではかなり国民所得は高い。その中でガソリン税というものが考えられるわけでありますが、それと並んで、ガソリン税をあれだけ取ってきたがためにあれだけりっぱな道路ができたということにならなければならないということが、また同時に考えられると思います。  それから自動車ガソリンの税の問題でございますが、これも日本自動車に関する税の思想が非常に古いということ、アメリカで申しますと、一九一〇年代の自動車に関する思想であって、自動車というものをぜいたく視した時代の思想、特に自家用車に重くて、営業車に軽いとかあるいは自動車を持っておることに対してかけられるあの財産税的な税というものは非常に古い税であり、ただいまのような道路ガソリン税と勘案しましてこれらの税の近代的なシステムをやがて作っていただきたいという気がいたします。物品税あるいは自動車を所有することに伴う税その他いろいろな税というものが日本においては高い、税そのものが高いということとガソリン税が高いということとの関係から申しますと、実に今度のガソリン税というものが何か自動車業者にとってはお気の毒であり、不公平な気がいたします。しかしこれも大きな立場から長い目で見れば、日本自動車のための道路が改良されるからという私が最初に述べたような前提が満たし得るといたしますならば、道路を新設するときの重点政策によってそれはかなり私は解決できるのじゃないかと思いますが、そういうことを勘案いたしますと、やはりやむを得ないものと言わなければならない。しかしお願いとしましては、ここ数年の間に自動車に関する税と道路に関する税を一元的に考えていただきたいという気がいたします。
  22. 横山利秋

    ○横山委員 先生に対する御質問はそれでとどめることにいたします。今私が御意見を承わりました際に、要するに私の希望を条件としてという先生の御希望が幾つかございます。今政府が提案をいたしております中に、その背景に先生のおっしゃる条件というものは満たしていないから、私も大いに議論を持っておる点を御記憶を願いたいと思うのであります。  それからこちら側のお二人に簡単に御質問をいたしたいのでありますが、トラック関係の方にお伺いをしたいのは、この税金引き上げになった場合には、それがどういうふうに転嫁されると業界では御判断なさるか。たとえば石油業界がそれを持つのか、あなた方がそれを持つのか、あるいはまた運賃引き上げになるのか、その引き上げの転嫁がどこへ行われるか、業界としてはどういうふうに判断しておられるか。これはいい悪いの問題でなくて、どうなるかという点をお伺いしておるのであります。  それからこちらの方にお伺いをしたいのは、先ほど温厚におっしゃったものですから、絶対反対の気持にゆるみがあるような条件的なような雰囲気があるそうでありますが、それは別といたしまして、今日高級織物税とかあるいはガソリン税とかこの国を取り巻く税の問題について非常に高い雰囲気であります。私ども政治にあります者としては、そういうふうな雰囲気になって議論をすることはほんとうは好ましくないわけであります。しかしながら私どもにいろいろ陳情がございます、特にガソリン税についての非常な熾烈な声について一体どういうふうにお考えでありましょうか。きょうはあなたにこのガソリン税の値上げについての技術的な御意見を伺ったのでありますが、率直に今日までの業界の経緯について、そのほかの問題について御意見がございますればこの機会に一つ参考に伺いたいと思います。
  23. 中西正道

    中西参考人 それでは今の御質問に対してお答え申し上げます。引き上げられた後にはだれが一体負担するのかということであると存じます。これは、私ども運送業者といたしまして、過去の経験に徴して考えますと、引き上げられましならば、結局一応負担する段階がございます。第一回はおそらく石油業者でございましょう。それで第二回目にわれわれの方へ移行されて参ります。これはさっそく移行されて参ります。そしてわれわれは約一カ年間負担をしていくわけであります。そしてその後にはやはり運賃に還元されて参りまして、運賃が全部引き上げられると思います。これは生きんがためにはどうしてもそういう工合にだれかに負担してもらわなければやり切れない、その期間が約一年間ございます。一年間はわれわれは塗炭の苦しみをするわけであります。収入と支出とのバランスを無理やりに荷主に押しつけて、そして物価を引き上げていく段階に入ってくるわけであります。そういう経路をたどることを申し上げます。
  24. 藤本威宏

    藤本参考人 御質問に対してお答申し上げます。今回のガソリン税反対運動がこのように熾烈になって参りましたのは、昨年、前回等とは非常に違っております。それは今回の反対が非常に全国的であり、全業者的であるというところが、非常に変っておると思っております。全国的に見まして、現在はむしろ、先ほど申したように、地方の業者の方の死活権が制せられるといったような、きわめて大へんなところまで参っております。そういう意味で、各県、地方都市、いなか、こういうところの業者の方が、これではつぶれてしまうということで、従来非常に純朴なおとなしい業者でございましたが、このへんがむしろ中心でございまして、中央の都市関係が突き上げられているというのが現在の情勢でございます。もう一つ非常に変って参りましたのは、このガソリン税が、よく調べてみたところ、実は自分たちのふところが大へんなのだということで自家用組合、こういった、従来何も関係のないような運動しかしなかったところに非常に大きな抵抗が起きておる。結局魚屋とか肉屋とかパン屋とか、そういった零細業者のところが、勘定してみたらば、一万何ぼも上るのだということで非常にあわて出して騒いでおる。こういう工合に今回の騒ぎが非常に全国的であり、同時に業種が非常に多岐に分れて反対運動になってきておる、この辺が非常な特徴じゃないかと思っております。  以上でございます。
  25. 早川崇

    早川委員長 この際委員長より一言ごあいさつ申し上げます。  参考人各位には御多用中のところ長時間にわたり御出席をいただき、有益かつ忌憚のない御意見によりまして、本委員会の審査に多大の便宜を与えられましたことに対して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)     —————————————
  26. 早川崇

    早川委員長 次に入場税法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案につきましては参考人出席しておられますが、参考人には御多用中のところを御出席いただき、厚く御礼を申し上げます。これより参考人の方々から御意見を述べていただくのでありますが、最初に各参考人より御意見を述べていただき、そのあとで質疑に入ることにいたしたいと思いますので、御了承願いたいと存じます。なお参考人の御意見の開陳はお人約十分程度でお願いいたし、大体一時までに終りたいと存じます。  では最初に映画産業団体連合会会長城戸四郎君にお願いいたします。
  27. 城戸四郎

    ○城戸参考人 御指名によりまして、映画産業団体連合会の会長を兼ねまして、われわれの意見を申し述べさしていただきます。  入場税の問題はすでに御承知の通り、きょうあすという問題でなくて、これは国民大衆にかかる問題でございますので、政府当局及び与党におきましても関心の深いものであります。特に、ややもすると政府に対立する社会党においてもなおかつこれに非常に関心を深く持っておるものであります。その点において、私たちはこの入場税の問題が各般において好意的に見られておることを心から喜んでおるものでございますが、現実問題になりますとこれがなかなか思うようにいっておりません。特に私たちの念願といたしますところのものは、入場税の軽減は業者に間接的な利益はございましても、直接的の利益は大衆にある。しかもその大衆は最も庶民的な大衆にあるのでありまして、その点においてややもすると映画がぜいたくであり不必要であるかのごとき伝統的の観念にとらわれ、従って入場税も軽々に看過される危険があったのでございます。昨年、自由民主党に対して、われわれはこれが軽減を非常に陳弁いたしまして、演劇の方面におきましては現実の企業的体制を考慮して特に軽減をしていただきました。しかし映画におきましては、昨年は自転車税、荷車税というものの軽減に重点が置かれまして、今年にこれが延ばされたのでございます。その際自民党の幹部の方々がわれわれ映画産業振興会——映団連の前身——の会合の席上御出席下さいまして、その入場税軽減がいい意味影響をいかに国民に及ぼすかを理解されて、同時にその入場税の軽減の必ず実現さるべきことを御誓約下さって、われわれはひたすら今年を待っていたわけでございます。自来与党並びに政府当局におきましても非常に好意的にこれを軽減する方向に向っておられるやに聞き及び、また今回御提案の大蔵省の予算案を見ましても、その趣旨が盛り込まれておるのでございますが、ただその中にわれわれが遺憾に思うことは、いわゆる税金の軽減が高額入場料に厚く、低額入場料に薄いということでございます。つまり高額入場料に対する従来の税率四〇%及び五〇%の部分を一率に三〇%に引きさげて、一見非常に下げたように見えますが、その高額入場料に対する税額は税収総額のわずか八%にすぎないことを申し上げたいと思います。一方低額入場料の方では、政府の提案は、五十円以下を一〇%、五十一円以上百円までを二〇%としておりますのを、百円まで一〇%とし、百一円から百三十円までを二〇%としていただきたく思っております。かえってこの方が観覧頻度を増加せしめて税収増加を来たすことを永年の経験によって明言することができます。  以上で私の意見を終ります。
  28. 早川崇

    早川委員長 次に読売映画社取締役社長田口助太郎君にお願いいたします。
  29. 田口助太郎

    ○田口参考人 人場税の問題が国家的見地から見ても非常に重要であるという観点に立たれまして、法案審議の輻湊している最中に私たちを参考人に呼んでその意見を聴取し、慎重審議して下さいます国会に対しまして、心から感謝申し上げます。  入場税法を改正するに当りまして、まず考えておかなければならない、知っておかなければならないこういう問題を考慮してから、初めて入場税率の改正の技術的問題を論議すべきだと思いますので、私は映画の問題点について幾つか参考に申し上げてみたいと思います。映画が国民生活とは切っても切れない重要な関係にあるということは、これはただ映画人が我田引水的に使っている常套語だというような簡単な問題ではないことは、次のような数字によっても明瞭にわかると思います。一月の十日に通産省から発行いたしました映画産業白書を見ますと、三十二年度の映画劇場における観客数は十億九千八百万人の多きに達しております。従って一日の観客動員数は約三百万人であります。これを他の娯楽興行の入場者数と比較してみますと、演劇、音楽、スポーツ、競馬、競輪、競艇等の映画以外の娯楽興行全体の入場者数は一億二千五百万人で、映画の大体一割にすぎないのであります。しかもこの約十一億の映画観客数は、単に映画館において見た観客数でありまして、映画館以外で、たとえば学校とか公民館とか工場等の講堂などで見る観客は映画白書によりますと、年間五億九千四百万人が推定されると書いております。従いまして映画館で見る観客と学校その他の非劇場で見る観客とを足しますと、年間十七億の教字になり、一日平均四百五十万人の人々が映画を見ていることになるのであります。またこれを興行収入の面からながめましても、年間、昨年三十二年度において八百二十七億でありまして、国民一人が映画に支払っている金は年額九百十円に当ります。従って一戸当りの家族構成を四・三といたしますと、一戸当りの映画に支出する金額は平均三千九百十三円になるのであります。政府や立法府が映画について施策を打ち立てる場合には、映画産業というものはこれほど多くの大衆と結びついておるのであるという認識をまず持ってから立てなければ、どんな政策でも砂上楼閣になってしまうのではないかと思うのであります。このような映画と国民生活の関連性をしっかり認識いたしまして、それから映画産業なり映画そのもについての問題点を国家的な、あるいは国民的な視野でながめて見ますと、私は次のような問題があると思います。  大体大きく分けますと三つでありますが、一つは映画というものは国民大衆、特に青少年の精神生活に及ぼす影響は重大であるという点が一番大きな問題点であると思います。また映画産業自体の中に内在する問題点もあります。もう一つは、国民生活の映画支出との均衡の問題が第三の問題点であると考えます。この三つの問題点のうち一番強く考えなければならないことは、第一の問題である映画が国民大衆に慰安を与え、あすの英気を養い、あるいは教育手段として大きな使命を果しておることは、観客動員数が毎日四百五十万人もある点から見ても明瞭でありますが、また同時に映画は暴力の肯定、肉体的享楽の賛美、いわゆるよろめきを合理化するような低俗な映画も多少作られ、教育者や子供を守る立場の人々から強い批判を受けておることもまた悲しい事実であります。少くとも映画倫理委員会から十八才未満の青少年には見せてはならぬという映画が、昨年度において三十二本できたこともまた事実であります。しかも映倫が子供に見せてはいけない映画だと指定いたしましても、現在の国家制度といたしましてはこれを制限する何らの方法もありません。やっておるのは興行館主が良心的に制限しているにすぎないのでありまして、万全の処置がとれないこともまた当然といわなければならないと思います。このような低俗映画が相当できる、あるいは一部でもできては困るという教育者の立場を私たちは尊重しなければならないし、健康で明るい、あるいは教育手段として芸術的価値の高い映画がどんどん生まれるような方途を講ずることも必要であろうと思います。しかしそういう問題を直接に取り上げますと、憲法二十一条の言論の自由なりあるいは表現の自由との関連において非常にむずかしい問題であることも事実でございます。  次に、映画産業内の問題点がありますが、時間の関係上省かしていただきます。  次に問題になるのは、国民生活費と映画支出との均衡の問題であります。先ほど申しました通り、映画に支出する一戸当りの金は三千九百十三円でありますが、これは全国平均でありまして、都会地はこれよりはるかに上回りますし、また青少年の多い家族においてはこの数字を大幅に上回ることが推定されます。従いまして国民生活費と映画娯楽費の比率はどのくらいが適当かということは、これは私よりも大蔵委員の方々が専門家でありますので、どうぞそういう点からもぜひ検討を加えていただきたい、こういうものを考慮して改正をしていただきたいということをお願いするものであります。  しからばこういうような観点に立って現在の提出されている入場税法の一部改正法律案を静かにながめますと、以上の問題点を解決するような方向には全然行っておりますん。逆にこれらの問題点を解決からおくらせるような方向に改正案が提出されておることは非常に遺憾であると思います。どういう点が解決の逆行かと申しますと、まず映画の問題は内容が非常に重要だ、子供の教育上あるいはわれわれの精神生活上非常に問題が多いのだ、そういう点を考えるならば作品がどんなものでも一律に減税するというこは承知できない、いい方法ではないと私は思います。現に昨年演劇を中心としまして入場税法の一部が改正されました。政府原案では一律でありましたが、賢明なる国会の力によりまして文化性の高い芸術の入場料は二割を限度として低額税率に修正した——先ほど申しました通りこれらの問題は映画から見ると、見る観客数で一割に過ぎない。そういう一割のものですら内容によって国会に修正した。これが国会の最高意思の入場税に関する考え方であるとして私は昨年大いに敬意を表し、拍手を送った者であります。ところが今度は十倍の観客を動員し、しかも青少年が一番多く見る映画については何ら考慮を払わずに提出された。これは昨年の最高国家機関である国会の方向を大蔵省が無視した官僚独善的な考え方から出発しているのではないかと私は思うのであります。こういう点で考えますと、まず文化政策を十分加味してやらなければならないことは、昨年の改正と同じ方向でなければならないということを私は強く希望するものであります。  また入場税法の改正に当って、税金というものは間接税であろうと直接税であろうと、税負担能力の高い者からよけいにとるというのは、先ほど城戸参考人から申し述べた通りだと私は思います。ところが今度の改正案を見ますと、その原則とさかさまである。税負担能力の高い者は大幅に減税をした。しかるに税負担能力の弱い大衆に対しては全然据置であるということは、税の根本方針に反する考え方からした改正案だと私は思います。全国興行環境衛生同業組合調査によりますと、全国の興行場の九五%の映画館に入るものについては全然減税にならない。きわめて限られた五%、一部の高級劇場に入場する者のみが減税対象になっているのにすぎないと書いてあります。これでは税法の原則に反するばかりでなく、民主主義の原則にも反する考え方であると私は思います。  それではどういうように修正せしめるか、どこから修正していただきたいかという私の結論を申し上げますと、入場税の問題は予算とも関連する大きな問題であります。従いまして金額はどうあるべきかということは、私の意見を差し控えることが妥当な問題である。これは国の全予算からながめましてやっていただきたい、多いほどけっこうでありますが、他の予算との関連において立法府におまかせするのが妥当であろう。ただ強く言いたいのは、先ほど申しました税負担率の弱いものから少く取るということと、もう一つは昨年国会で修正されましたような思想に基きまして、それと徴税技術の可能な範囲の方法と考えられる点は、青少年向きの推薦映画と教育映画とそれにニュースを加えた興行については、これから改正されるであろう入場税法税率の二分の一にしていただきたい。そうして文化政策をこういう面で織り込んで、児童を学校の先生がどしどしと連れていけるような小屋が発展するような方途で、入場税法を改正いたしていただきたいということを希望申し上げまして、私の意見の発表を終りたいと思います。
  30. 早川崇

    早川委員長 先ほどの城戸参考人の供述について城戸参考人より発言が求められております。これを許します。
  31. 城戸四郎

    ○城戸参考人 先ほどのパーセンテージの問題で、その中にちょっと言い間違えたところがあるような気がしますので申し上げます。大蔵省案のいわゆる五十円以下を一割、それから百円以下を二割というのを、百円までを一割、百五十円までを二割、それ以上を三割というのが私の希望でございます。
  32. 早川崇

    早川委員長 次に千葉県興行環境衛生同業組合連合会会長秋山有君にお願いいたします。  なお委員各位に申し上げますが、供述人の発言中は静粛にお願いいたします。
  33. 秋山有

    ○秋山参考人 私は千葉県の東南端に位する勝浦市にささやかなる映画館二館を経営いたしております。斯業の経験三十有余年のものであります。元来勝浦町は急速なる発展と入口膨張によって市制がしかれたものではなく、国並びに県の御方針に基いて隣接町村三カ町村を合併して、昨年の十月一日に市制がしかれたところでございます。従って四里四方にわたって人口三万一千が散在するという、文字通り地方の一小都会でございます。海岸地帯の小規模な漁業、それから山間地帯における零細農業以外に何ら産業において見るべきものはないところでございます。従って全国七千の映画館中圧倒的に多い階層である標準型の小企業映画館であります。  次に私ども営業の実情を簡明率直に申し上げることを御聴許願いたいと思います。私の映画館は貧弱ながらも人口三万一千の中の独占企業であります。その位置は市の中心部ではなく市の南端に所在するため、農家の観客が山坂を越えてお正月であるとか盆であるとかにはおいで下さるという事態でございます。ゆえに密集人口を持っ市街地は、一つのプログラムを一週間継続興行をすることができまするけれども、私どもにおいては水曜日ごとにかわる映画が、せいぜい三日ないし四日間持つというような状態、私どもの言う週末三、四日というものは閑古鳥が鳴くという状態でございます。そこでやむを得ずフィルムの賃貸料の過重負担とはなりますけれども、五日目よりは全然別の映画を上映する。すなわち二のかわり興行を敢行して営業を持続しているという状態でございます。従って一館あたり毎月二本立といたしまして、十六本ないし二十本の映画が必要とされるわけでございます。私は邦画六社全部と取引をいたしております。これは私が独占企業であるだけに、いわゆる映画会社の配給料金をセーブすることができ、取引も非常にスムーズにいっているというわけでございまするけれども、競争館が二館、三館とありますると、必然的に人気ある会社の映画の争奪戦、あるいは料金のダンピング競争等が行われます。また配給会社はこれをよき幸いとして配給料金のつり上げを敢行しているのが、映画興業界の実相であり、また業者大半はこのうき目を見ているということであります。そこで比較的恵まれた環境にある私が月間どのくらいな商いをしているかということを申し上げてみたいと思いまするが、大体私どもの映画館は大人百円、小人が五十円の料金をちょうだいしておりまするが、それで大体毎月両館合せて一万一千人程度の観客を収容いたしております。その一七%程度は小人でございます。八三%が大人ということになりまして、たとえば大人九千七十人に対して小人が千八百人というような状態でございまして、大体両館合せて月間の窓口収入が百万円、このうちには当然入場税も含められております。その比重が現行税法によりまして大体両館で十八万八千円程度、十九万になんなんとする税金を納めております。実収は八十一万円程度。さよういたしますると全収入の実に一割九分程度が税金ということに相なるわけでございます。これらの明確な数字は後段で御質問等によってお答えいたしたいと思いまするが、ともかくも月間両館合せて八十一、二万程度というのが平均でございます。それに対してどのくらいの支出があるかと申しまするに、給料、宣伝費、電気料、経常費、それから多少の借財もございますので、それに対する利子等を計算いたしますると、四十四万二千円程度なければならない。また映画の賃貸料金は、大体各社あわせてお安くいただいておりますけれども、四十万ないし四十五万実は毎月赤字であるかということでございますが、それでは全面的な赤字であめるかというと必ずしもそうではございません。率直に直し上げてお正月の興行、それから私ども町をあげての祭礼等が四月にございますことと、八月のお盆興行、これらはいずれも二〇%ないし二五%の増収が見込まれますので比較的恵まれた環境でありながら辛うじて営業を持続しておるという状態でございます。これらの数字も後段で申し上げたいと思います。かように比較的好条件に恵まれておる私においてすら実質的には経済難に常に直面しておる。さようでありますので、映画館が飽和状態にある業者の痛苦を何とぞ御了察賜りたいと存ずるものであります。  私どもの合言葉といたしまして人口二万について辛うじて映画館一館の経営が成り立つとされております。前述のごとく映画館経営の当面する最大の焦点は、配給会社に実情に即した適正なる料金で売っていただくことと、重圧以上の入場税の全免ないしは大幅減税をしていただく以外に活路はないのであります。このままにするとき現状七千の映画館は三年を出ずしておそらく二千館程度に減少するだろうということが考えられるのでございます。逐年テレビ、野球、相撲その他の娯楽物の影響によりまして深刻なる不況にあえぐ大半業者が第一に考えておることは、入場料金の低下でございます。これとても入場税が現存する限りにおいては、至難事がつきまとっていくのであります。業者は不景気になればなるほどまず第一に考えますことは、料金を引き下げて大衆にアピールしたい、かように考えておることでございます。  ここでわれわれ業界の卑屈なる実相を申し上げてはなはだ恐縮ではございますが、入場税がかつての最高十五割時代より数度にわたって引き下げをしていただきました。そのつど業者は入場料の低下をなぜ怠っていたかと申しますと、私どもの因習の世界では、税が引き下げられると間髪を入れず——ここに城戸さんがおられて恐縮ですが、配給料金がとたんに上るというのが実相でございます。城戸さんの会社は決してそうではございません。(笑声)今回の減税の御処置に対しては大蔵省の御注意がなくても業者はとっくの昔より入場料の引き下げを考えております。大衆にお約束いたしております。今まで百円とったところを九十六円にせいなどとわずか四円程度の引き下げでは大衆は決して喜びはいたしません。より以上の引き下げをわれわれは考えておるわけでございます。しかしながらこのたび御送付を賜りましたこの改正案によりますれば、これはほんのわずかロード・ショウ及び封切館のみ厚くて、大多数を占めるただいま田口さんがおっしゃった九五%の映画館、大都会の二、三流館ないしは地方館にはきわめて薄いものであります。換言すれば大衆娯楽場への入場者についてはほとんど減税の恩恵はない。五百円、八百円の高額料金の、きわめて少い大資本家の持つ最高級の映画館の保護政策としか考えられないことであります。(拍手)  なお最後に学校、仮設小屋等における催しに新たに三十円までの免税点を設置されたこの一事は、私どもにはどうしても解釈し切れないのであります。なぜかならば私どもの数年にわたる大蔵省への減税運動にもかかわらず、税額の減収を見るからなかなかに容易でないという仰せでございますが、われわれはたとい十円か二十円の入場者に対しても入場税を納めておるわけでございますので、これが学校、仮設小屋等の場合に限ってのみ三十円の免税点ということになりますと、苦境にあえぐ地方の小都市の映画館主を破滅に導く一大要素になるという事実を賢明なる委員諸先生の御明察に訴えたいと思うものでございます。
  34. 早川崇

    早川委員長 次に演劇関係者として田中絹代君にお願いいたします。
  35. 田中絹代

    ○田中参考人 私は田中絹代でございます。  皆様方にぜひともお願い申し上げたいことは、諸先生方のお力を借りまして、ぜひとも大衆の方々が映画を安く見られますように、切に切にお願い申し上げます。どうぞよろしくお願いいたします。
  36. 早川崇

    早川委員長 続いて、各参考人に対し、質疑の通告があります。これを許します。佐藤觀次郎君。
  37. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 最初に城戸さんと田口さんにお尋ねしますが、映画のことにつきましては社会党は非常に熱心でありまして、そこに池田さんも見えますが、私たちは映画法の出ないようにいろいろ骨を折りまして、私たちは大衆の映画は無税くらいにしたい、将来社会党が天下を取ったなら百円くらいの映画はただにしたいという考えを持っておるわけでございます。  ところが現在の日本の税法が非常にまずいので、なかなかそう簡単にいかない。現在私たちには入場税の問題について多くの投書、陳情書がきておりますが、大体八十円から百円くらいまでは百分の十の税率を占めておるという声があります。われわれの調査によりますと、一般の映画の平均が七十七円くらいになっておりますので、われわれはせめて百円、少くとも八十円くらいまでは、一〇%の入場税は下げなければ何の意味もないと思っております。今度、政府減税の声で、十九億の入場税の減免をやることになっておりますが、ただいまいろいろな参考人の話にあったように、なかなか理想的にいっていない。上の方だけ、ロード・ショーや第一流館だけが下って、大衆には影響がないような状態であります。  そこで城戸さん、田口さんにお尋ねしたいのです。今の二本建の映画あるいはその他のいろいろな映画の問題がありますが、ただ私たちは、大衆の映画、少くとも百円以下の映画を減税することに希望を持っておるのですが、こういう点についてどういうお考を持っておられるのか。あるいはニュース映画、教育映画、その他一般の映画館以外の、たとえば芝居とかコンクールのようなものにも恩典にあずからせたいという考えを持っております。ただ一点のお願いしたいのは、減税をしても大衆には返ってこない、結局今映画館の関係で言われたように、入場税が下っても、松竹とか東宝とか東映とかいうような大きな映画会社だけが利潤を生んで、大衆に利益がかからぬことになりますので、そういうことについてどういう考えを持っておられるのか、城戸さんと田口さんに一つお尋ねしたいと思います。
  38. 城戸四郎

    ○城戸参考人 お答えいたします。  映画配給料金が、入場税に比例ないしそれに関連して下らない、むしろ上るという御懸念のようですが、映画業者としてはっきり申し上げられることは、入場税はもともと大衆税でございますので、入場税の低減は当然大衆に転嫁さるべきものであって、映画製作者がそれを取得するものでないということであります。ただ現在においては——映画業界のことをちょっと御参考に申し上げておいた方がいいんじゃないかと思うのですが、今や日本の映画界は非常に熾烈なる競争に突入しておるのであります。果して二本建がいいかどうか、これはなかなかむずかしい問題で、われわれはむしろ二本建に反対でありますが、地方常設館の人々は二本立ないし三本立というものを強く要望するのございます。その結果どうしてもこしらえなければならない。現在におきまして、この二本立を六社が実行いたしますと、一社約百四本、六社でもって六百本を越える。これに外国映画二百本を加うるならば、優に八百本が日本映画界で封切られる。毎日二本ずつ見ていっても見切れないという現状になるのであります。一方テレビというものの攻勢はわれわれとしましてはがんばって何ら影響なしと言っておりますが、ニュース、スポーツ、アクティングの問題につきましてはテレビはわれわれの脅威として十分に存在するのであります。ことにわれわれの過去の歴史は金融、税法その他いろいろの点において圧迫されて今日に至って、ただ民衆の力によって発達したのでございます。しかしテレビを顧みますならば、外国の映画の輸入に対するドルのクォーターあるいはテレビの技術に対する製作その他万般に関する補助その他いろいろの点において政府の援助がございます。そういうような意味からいたしましても、われわれはどうしてもこの産業を最小限度に維持していかなければならない、それには大衆が見るということが基本になっております。大衆が見るということはわれわれ業界が助かるということであります。業界の助かるためには入場税が下るということ、観覧数頻度が上るということ、これによりましても税金の減収は直ちにこれが大衆の負担の軽減となり、そうしてこれに対して大衆の観覧数の頻度が上昇して、間接的にわれわれの産業が保護される、こういうようなことに相なるわけであります。
  39. 田口助太郎

    ○田口参考人 私も城戸さんと全く同じ意見でありますが、私は十割から五割に引き下げるときに、佐藤議員らと一緒に下げる運動を聞く方の立場でやりました。その結果一週間か二週間たったら下げた分だけ上っちゃった、当時は五割を下げたのでありますが、上ったというのでずいぶん憤慨したことがあります。映画館というところはひどいところだと当時の議員が憤慨したということを私は記憶しております。私は今ニュース映画の方をやっておりますが、しかし冷静に考えてみますと、現在でも物価指数から見ても非常に低い、通産省の映画白書によりますと、三十二年度の物価指数から見ても非常に低いということが出ております。大体三百六十の小売物価指数が二百二十くらいというような点——物価指数を平均しますと、常に三割から五割くらいしか映画料金は上ってないという点から見ると、これは当時憤慨したけれども、やはり冷静に考えると経済の法則というものはなかなか動かないものだなというふうに私は考えております。従って現在でも入場料金は物価指数から見て非常に安い。なぜ安くするかといえば、結局映画というものは十人お客が来ても千人お客が来てもコストは同じです。従って多くの観客を動員することによってむしろ料金がふえる。高く料金をとったからもうかるというものではない、本質は、経費は同じなんですから。たくさんの人に見せる。たくさんの人を動員するということになると、やはり料金が安いことが必要だ。従いまして客を動員するという立場から見ますと、先ほど秋山さんがおっしゃったように、税金がかりに一割で四円くらいだけれども、与行主はもっと引く考えであるということを主張されておりましたが、私も必ずそういう方向になるのではないかと期待しておるものでございます。
  40. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 次は田中絹代さんにちょっとお尋ねしますが、田中さんは若いときから俳優をやっておられて、最近は監督までやっておられる。映画を生産する労働者のような形だけれども、われわれは昔からよく知っておるのですが、あなたの立場として、今度政府から五十円までに約一割の料金の改正をやっておりますが、一体どれくらいまでの料金で——たとえばわれわれは百円ということを限度に置いておりますが、入場料のただということはわれわれは理想でありますけれども、ただというわけにいかぬけれども、今の現状でどのくらいの程度ならば大衆が喜んで映画を見るか、大衆の中に入るかということについてのお考えを持っておられるのか、俳優として監督としての立場からあなたの御意見を承わりたい。
  41. 田中絹代

    ○田中参考人 私、製作現場の立場から申し上げれば、いいお仕事をするために、また大衆の方々のためにもそれはできるだけ下げていただきたい。専門的な数字はどうぞ城戸からお聞き下さいませ。
  42. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 秋山さんにお尋ねしたいのですが、私どもも農村の出身でありますが、今地方の娯楽としては映画が唯一の娯楽だと思うのです。そういう点でただいま訴えられましたように、非常に今映画が地方ではテレビや野球その他に押されて、いろいろな困難な事情にあると思うのです。それだから具体的な問題として入場税はどれくらいのどういう形にしたらいいか、あなた方は実際にやっておるのだが、現状の形で法案が出ております。大蔵省の方では十九億というわずかの上の方に厚く下の方に薄いようなこういう入場税の改正が出ているわけです。そういう点であなたが地方で映画館をやっておられる立場から考えて、どのくらいにしたら、どういう工合にしたら経営が成り立っていくかというようなことについての、あなたの御意見を最後に承わりたい。
  43. 秋山有

    ○秋山参考人 業者が大幅に助かる線はせめて百五十円程度まで一割にしていただくならば大幅に業者は助かる。それが諸般の事情からでき得ません場合でも、せめて百円まで一割程度でありますれば、いわゆる大衆を相手にする小さな常設館ことごとくが恩恵を受け、また大衆にたやすく歓迎されると私は考えております。
  44. 早川崇

    早川委員長 山村庄之助君。
  45. 山村庄之助

    ○山村(庄)委員 いろいろと基本的のお考え方や希望を聞きましたけれども、また城戸さんは訂正されました。秋山さんが、政府は今度の改正案について、三十円まで免税にする、こういう改正案を出しておるのですが、三十円ぐらいな免税をやられたら日本国中のいなかの映画館みなつぶれてしまう、こういうお話たったが、そのつぶれるという理由はどこにどういう影響をして地方の映画館はつぶれてしまうか、そのわけを一つ話してもらいたい。
  46. 秋山有

    ○秋山参考人 私が学校、仮設の小屋等において催しものをする場合に三十円まで免税をするのだという、この点について第一に不可思議に感じましたことは、数年にわたって私ども減税のお願いをいたしておりますが、そのつど国家の税収入の減収を来たすのだからこれはできない、こう仰せなのです。どうしてさように税収の減少を憂える大蔵当局が免税点を設けられたかということに疑問の第一がございます。  それからもう一つは、自来学校の講堂等は私どもの観念では神聖なるべきところと考えられております。しかるところ農村等におきましてはレビューあるいはいかがわしい演劇が現在でも上演されつつあります。それは娯楽の乏しいところへよい意味での娯楽提供ならば私どもも心から賛成せざるを得ません。しかるに依然としてさような公共建物が興行場化し、従いまして隣接する貧弱なる映画館には免税点がございませんので、優に三十円という入場料金は、小規模の興行はあらゆるものができる。そこで少からず圧迫を受けるのは現在の貧弱なる映画館なり、私どもはかように考えておる次第であります。
  47. 山村庄之助

    ○山村(庄)委員 田口さんはどういう考えなのでございますか。三十円ぐらいならば免税はもうしていらぬ……。
  48. 田口助太郎

    ○田口参考人 これは非常にむずかしい問題でございまして、先ほど秋山参考人が申しました点も事実でございます。しかしまた労働組合とかあるいは青少年団とかPTAとか学校の資金カンパとかで公共的な建物を使って教育映画を見たり、いろいろの催しものをして三十円以下をとるような場合も、われわれ教育映画に携わる者から見るとまだたくさんあります。これらの者の立場から見れば免税点は高いほどいいという立場に立たなければならないと思います。また先ほど秋山参考人が申しました通りに、ストリップ・ショーとかインチキな劇団とかが、地方に回ってやるというようなことをばっこさせる原因にもなる、従っていい面と悪い面と両方があるので、どちらにしたらいいかということになると、立法技術ができるならばいい面は免税点を認め、悪い面は排除するようにすることが好ましいと思います。
  49. 山村庄之助

    ○山村(庄)委員 これは仮設の分に対する三十円の免税点を新たに設けよう、こういう考え方になっておりますが、常設には及ばない、但し地方に行きますと、いろいろ娯楽機関や安く遊べる機関が少いから、それでわざわざそういう仮説面に対してこういう免税点を設けておるのですが、業者を、常設館を圧迫する、だからこういう免税点はいかぬという意味ですか、秋山さんにどっちかはっきりと……。
  50. 秋山有

    ○秋山参考人 仰せの通りでございます。私どもはかくも考えております。設備の比較的完全な映画館の場合にはかかる恩恵がなく、さように仮設とか公共の建物においてのみ行われる催しものにのみなぜにさような恩恵があるのか、それでは地方の弱小映画館は大きなる打撃を受ける、そこでこの一点に関しては反対せざるを得ない、かように考えておるのでございます。
  51. 山村庄之助

    ○山村(庄)委員 わかりました。
  52. 早川崇

  53. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 入場税法案が出てきますと、皆さんが待望久しかったにもかかわりませず、この入場税法案が必ずしも現在の映画事業あるいは関連産業要望するものに即応しておらぬ、こういう御意見参考人の各位から申し述べられました。国家財政の観点からはいろいろな制約があります。今回の減税法案は、総額において十九億円だけの減税をいたすという一応の政府の提案でございまして、私どもはできるならば減税の絶対額もぜひともふやそう、こういう考えに立っております。そこで私ども減税の問題をどういう点から序列を設けたらいいか、こういうことが私どもの当面の関心事でございます。そこで皆さんの今までの御高説を聞いておりますと、城戸さんにいたしましても、田口さんにいたしましても、秋山さんにいたしましても、あるいは田中さんにいたしましても、映画事業そのものが大衆性に立脚しておるのだ、従って大衆の心からなる支持なかりせば映画事業それ自身が危ないという点では、これは明細な数字からも、あるいは直観的な田中さんのお話からも私どもは了知いたしたわけでございます。ただ、皆さんが一応こうした大衆性をモットーといたしまして、スローガンといたしまして私どもに訴えておりますが、しかし私どもはもっとざっくばらんに、こうした大衆性ということはむろん大前提ではございますけれども、皆さんの企業的関心からどうしてもこれは困るのだという率直な御意見もあろうと思っております。動機といたしましては、お互いの経営的関心から、ないしは田中さんの場合でしたら出演料の影響等を顧慮されての、当然の利害的な関心がおありだろうと思います。  私はまず最初に率直にお尋ねいたしますが、現在映画事業というものは不況産業とされておりますが、その映画の現在の不況は入場税の重圧によるものであるか、あるいはもっと他律的な原因があるかどうかということです。すなわち入場税の重圧よりはむしろテレビとかそうした新しい企業からの圧迫、こういうことが当然吟味されていいと思うのですが、その点につきましてお伺いいたします。具体的には日本の映画製作の本数が年間六百本というのは、アメリカ等のハリウッドを中心とする大きな規模の映画事業がその本数の絶対量においてもまだ日本の本数よりも少いし、いわんや人口を考慮すると、この点は大へん差があると思うのです。この点につきまして、特にテレビとの関連につきまして城戸さんから御所見をお伺いしたいと思います。
  54. 城戸四郎

    ○城戸参考人 ただいま企業的見地からの御質問がございましたのでお答えいたしますが、テレビの影響はもうはっきりございます。アメリカにおけるテレビの影響というものが、最近アメリカの映画製作業者に大きく及んだことは——アメリカ日本の約倍の人口がございまして、シカゴ、ニューヨーク、ロサンゼルスあるいはハリウッドという少数都市に相当な人口がおりますが、大部分は広大な地域に分布されておるわけであります。従って娯楽が自然少い、そして映画館に行くにも自動車をもって遠くにまで行くというような関係上、テレビが生活内容から買い得られる段階にあるアメリカといたしましては、急速に発達して、現在においては御承知の通り約五千万台のテレビがございます。三人強に一つというようなことになっておるのであります。日本におけるテレビの普及率におきましては、今においては世界第一位と申していいと思います。イギリスの五百万台、フランス、イタリアはこれよりはるかに下でございます。しかしその速度において、日本が五百万台になることは近く実現するのではないかと私は思っております。テレビの劇との差、それをわれわれは今発見して、そしておのおのの分野における特徴を発揮することが映画産業のいくべき道だと思っておりますが、御承知の通り、まだ戦前においては二千五百の常設館が、映画はもうかるもうかるという声によりまして、今日では約七千館をこえるのであります。そういうような関係上、立地条件のいいところ悪いところ、いろいろな意味におきまして常設館の激烈なる競争が現在行われております。従って常設館主自体も競争に巻き込まれて経営困難に陥っております。その関係上あるいは映画の上映本数をふやすことによって競争し、あるいは入場料金を経営の限界点以下に出してこれを競争するというような実情にございます。ことに最近におきまするテレビ以外の問題につきましても、日本においてはいろいろのエンターテインメントがございます。競輪だとかその他外国にもないようなものがございます。特に非常に没却しがたい影響一つといたしまして、観光バスの普及というものがございます。これは一回観光バスに乗りまして地方に参りますと、映画の五、六回分の費用は飛んでしまうというようなことで影響があるのであります。しかしわれわれといたしましては、この発達は文化生活の向上という点から必ずしも反対すべき筋合いのものではないと思います。そういう中にあって映画をあくまでも確立して、文化的に芸術的に思想的に、あらゆる意味においてこれを実行しようという上におきましては、現在のいわゆる製作費がぐんぐん上昇しつつあるのであります。二本立に加えるにその製作費が上昇する。その製作費と収入とを見合いまする場合において、今や製作業界は赤字に突入しようとしておる段階でございます。しかし今日入場税を御審議下さいまする際に、このことはただ御参考に申し上げる程度にとどめて、あまり弱音をはかないで、われわれ自身自戒して、また別な方面でできるものならばこれに対する打開策を講じたいこう思っておりますが、いずれにしましても非常に苦難に突入しておる。入場税の軽減を強く申しますのも、先ほど申した大衆の観覧頻度を上昇して、われわれの方にはね返ってくるということも期待しておるようなわけでありますから、その点を御了承願います。
  55. 早川崇

    早川委員長 ちょうど予定の一時にあまり時間がありませんから、簡潔に両者ともに御答弁なり御質問願いたい。
  56. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 田口さんにお尋ねします。田口さんの御関心は、映画の大衆性を説くと同時に、映画の教育的影響を一応重視すべきものである、さような開陳がございました。その通りであろうと存じます。そこで現在娯楽的な映画と同列に置かれました教育映画あるいは成年向きの映画あるいはニュース映画等、こうした一連のグループのものは娯楽的なものと区別して税法上において優遇せらるべきではないか、こういう御意見を承知いたしております。そこでこの映画は修身の教室の講座にかわるべきものではありませんから、この点あまりまた力点の置き方を間違えますと、国家統制とかそういう点から憲法二十一条に抵触してくるような事態を招来しやせぬかという憂いが私どもございます。この場合の選別の基準をもし格差をもって低減されるとするならば、どこに置かれるか、この点につきまして御開陳をお願いします。
  57. 田口助太郎

    ○田口参考人 非常に重要な問題の御質問でありますが、たとえば私の申し上げました教育映画とか青少年向き映画というようなものを安くしろ、そういう映画はだれがきめるのだということは非常に問題があると思います。しかし映画界では終戦以来映画倫理規程管理委員会というものがありまして、上映する映画は全部三つのランクに分けております。一つは成人向けで子供が見てはいけない映画、それからぜひ子供に見せたい映画、それから一般映画、この三つに必ずランクしております。それ以外は一本もないわけであります。従ってこの映倫のランクできめられた青少年向け推薦映画あるいは教育映画というようなものを減税対象にいたしますならば、憲法二十一条の問題も起きないというふうに私は考えております。ただ単なる法律論からいくと映画倫理規程管理委員会という法的性格が弱い。これの選別したものは税の対象にはならぬじゃないかというような議論も官僚方面からは従来も出ております。しかし私たちは昨年国会で修正されました純音楽、純舞踊というようなものは一体どういう方法で判別しているかという反問をいたしますと、これは税務署がやっている。税務署はどんな基準でやっているかというとその基準は何もない。クラシックだからこれは純芸術だろうというような常識でやっておる。しかしもし映倫の性格が税法の対象としては弱過ぎるとかかりにいたしますならば、これが改組の方向に向っていくことも必要でありましょうし、また現在の段階としては、映倫の審査を税務署が参考にして、そして私の言いました教育映画なり児童劇映画なりというものを認定するという、形式論は税務署の認定、実質的には映倫の審査というものを相当大幅に是認してやっていけば、去年の改正のときよりも徴税技術として私は楽であると考えております。
  58. 早川崇

    早川委員長 山本幸一君。
  59. 山本幸一

    山本(幸)委員 秋山さんに御質問したいと思います。簡単にお尋ねしますから、簡単な答弁でけっこうでございます。  まずお尋ねしたいことは、現行の入場税制度でいけば五段階があります。そこで先ほど来伺っておりますと、百円前後の入場料、それ以下のものが税が安くなることが一番好ましいのだ、それはとりもなおさずそういう観客の動員数が多いということにもなると思うのです。そこで現行四割、五割という一つのランクがあるわけですが、かりにこういう四割、五割という、全額でいえば三百円、五百円、八百円という入場料のこのランクの分が、五割、四割のものが頭打ちで三割に下ってくる、その場合にそういう高額入場者の動員数がふえますか。
  60. 秋山有

    ○秋山参考人 御質問の要点はおそらくかようなことではなかろうかと私御推察申し上げることは、歌舞伎座さんが五割から三割に相なった、しかし依然として入場料は千円である、あまりに高額な、私どもと縁の遠い存在は私どもにはうかがい知ることもできませんが、ただ私どもはかく考えておるのでございます。現在私どもの業態にいかに入場税が重圧になっておるか、端的に私の例を申し上げますと、入場税なるものがなかったと記憶いたしておりますが、昭和十年私の映画館は大人が四十銭いただいております。今日は大人が百円で小人が五十円でございます。その百円のうち二十円は税金でございます。それから五十円のうち四円四十五銭その中から税金として取られるわけでございます。物価指数から考えましてもちょうど二百倍と相なっておりません。しかるところ百円のうち二十円……。
  61. 山本幸一

    山本(幸)委員 それはわかります。私はもっと簡単なことを言っておる。もう一ぺん言いますが、現在の五割の入場税が三割に下った場合にそういう高額入場者が、下ったからといってうんとふえますかということを聞いておるのです。
  62. 秋山有

    ○秋山参考人 五割から三割といいますとかなりの比率の値下げができるわけでございますので、私は興行成績においては見るべきものが必ずある、こう考えております。
  63. 山本幸一

    山本(幸)委員 もう一つお尋ねいたしますが、私の見解では、たとえば四割、五割の高額入場者が、三割に下ったとしてもそれが非常にふえるとは考えておりません。  それから……。
  64. 城戸四郎

    ○城戸参考人 ちょっと今の御質問につきまして秋山さんと意見が違いまして、むしろ御質問者の意見に私が同感なんですが、大体高額入場料を払う人人は比較的金額にはこだわりません。映画それ自体に引きずられますので、低減があったからといってそれが増加するということは、少くもそういう高級劇場を扱っているわれわれの経験としてはいささかも影響ないというふうに思っております。
  65. 山本幸一

    山本(幸)委員 もう一点だけお尋ねしますが、これはやはり秋山さんの方が適当だと思いますが、私は税体系上からいって段階を三つにするとか五つにするとか、このどちらがいいかということを今ここで議論しようとは思いません。今政府案で出している頭打ち三割、段階は三段階、これは必ずしもこうすれば徴税技術上容易でないという点を考えられておるのではないかという気がしますが、そこで頭打ち三割にして、かりに段階を五つ設けた、一割、一割五分、二割、二割五分、三割という段階を設けた、そういう場合は税の徴収技術上困難ですか。
  66. 秋山有

    ○秋山参考人 税の徴収技術という仰せですが、この税金は税務署の行うべき義務をおおむね映画館が行わせられておるということでございまして……。
  67. 山本幸一

    山本(幸)委員 そこを聞いておる。あなたの方は困難ですかということです。
  68. 秋山有

    ○秋山参考人 あまり段階が多いと当然困難であると私どもは考えております。
  69. 早川崇

    早川委員長 山下春江君。
  70. 山下春江

    山下(春)委員 私は秋山さんに一点だけ伺いたいのであります。先ほど三十円の免税点に反対をなさいました。ゆうべ実はテレビの「バス通り裏」というプログラムを見ておりましたら、勉強している学生が二週間も勉強のために映画に行けなかったから、あすお弁当を持って早朝から二本、午後二本、晩一本全部見てくると言っておりました。なるほどうまい見方もあるものだと思って私は教えられましたが、それは多分その学生には料金が高いからなのでありましょう。ですから料金の低いのはけっこうでありますが、しかしながらその三十円を免税点にしたということによって、いろいろ先ほどから御議論が出ておりましたが、これがたとえば保育所に子供を預けている母たちがちょっとした修理をするための興行あるいはほんとうの青年団の健全な興行ならいいのですが、いかがわしい団体を含んだ地方興行のややプロ化したようなのが、三十円という免税では非常にはびこるのではなかろうかということが、私はやはり非常に心配であります。特に三十円の中に競馬、競輪などが入っておりますが、競輪などというものは、もしやりたければ体育会でやればいいのであって、三十円の興行にすべきものではないのでございますので、そういうものを免税しておるということについては確かに館を圧迫するだろうと思います。そこで今どのくらいな率そういうものに圧迫されておるかということがわかればお答えを願いたい。
  71. 秋山有

    ○秋山参考人 早々の際でございましたので、明確な数字等はただいま準備いたしてございませんが……。
  72. 山下春江

    山下(春)委員 今、現行では二十円でございますから、二十円の場合にはそういう影響が非常に少いでありましょうが、三十円になったら影響は受けるであろうか受けないであろうか、あなたの長い間の経験から一つばく然とした返事でけっこうでございますが……。
  73. 秋山有

    ○秋山参考人 仮設の、あるいは学校等における臨時の催しものについて今回初めて三十円が免税点に相なったものだと承知いたしております。
  74. 山下春江

    山下(春)委員 そうではなくて、三十円になるとあなた方はどのような圧力を受けるであろうかという、その想像のお答えを願いたいのであります。
  75. 秋山有

    ○秋山参考人 むずかしいお答えでございますけれども、おそらくは今までの例から……。
  76. 山下春江

    山下(春)委員 先ほどあなたはつぶれるとおっしゃった。そのことについてあなたはどのくらいな圧力を受けるであろうかという、およそのパーセンテージでも御存じならば出してもらいたい、こういうことでございます。
  77. 秋山有

    ○秋山参考人 ただいま確実にお答えの準備がございませんので、いずれ書面等においてお答え申し上げたいと思います。
  78. 山下春江

    山下(春)委員 それではさっきのつぶれるというような御発言ですが、影響ないのでございますか。私はそこが大事だから今承わっておるのですが、そんな正確な数字をお出し下さらぬでもけっこうですから、あなたがさっき三十円の免税点では映画館がつぶれる、そういうことは私もいろいろな諸般の情勢から、そして営業的にもこれはあんまり芳ばしいことではないと思うものですから、むしろあなたの議論に賛成だから、あなたがどのくらいな影響を受けるからつぶれるとおっしゃったか、その点をおっしゃっていただきたい。
  79. 秋山有

    ○秋山参考人 ありがとうございました。地方におきまして三十円まで免税ということに相なりますれば、小規模なあらゆる興行ができるということであります。レビューにいたしましても、浪花節にいたしましても、演劇にいたしましてもそれが必ずはんらんしていく。そうするととりあえず影響を受けるのは地方の弱小映画館だ、かように考えておるわけでございます。
  80. 早川崇

    早川委員長 小山長規君。
  81. 小山長規

    ○小山委員 簡単にお尋ねしますから、簡単でけっこうですが、城戸さん、田口さん、秋山さんからそれぞれ……。実は入場税の軽減は、われわれ自民党としましては多いほどいいと思っております。それがただ予算その他の関係で今のような立案になっておりますが、これまた実情に即して、御意見を伺って、なお修正すべき点がないか、今盛んに探している最中であります。そこで一つ伺いたいのは、われわれは映画産業に関しては入場税だけでなしに物品税のことを考えておるわけです。それは今提案にもなっておりますが、たとえばネガ・フィルムは今二〇%の物品税をとっている。それを今度はゼロにしよう、無税にしよう、こう考えておる。それから映画の撮影機は今三〇%の税金をとっておる。それをゼロにしようと考えておるわけです。それから映画館がお使いになる映写機も三〇%の物品税をとっておるのが、これまたゼロにしようと考えておる。そういうふうにやっておるのですが、これが入場料金にどの程度響くものだろうか、実は多少疑問もなきにしもあらずです。そこで城戸さんの方にお伺いしたいのは、そういうふうにネガ・フィルムが安くなる、あるいは映写機、撮影機が安くなれば、あなたの方の配給というものは相当安くなるものかどうか、これが一つ。それから秋山さんの方からいうと、そういう撮影機や映写機やネガ・フィルムが今まで税金を二割、三割ととっておったものが、今度は全部ゼロになってくると配給料が安くなるだろうとか、あるいは入場税が二割と希望しておるのが一割になっても、まあある程度がまんしてというふうにお考えになるだろうかどうだろうか、この点をそれぞれの立場一つお答え願いたい。
  82. 城戸四郎

    ○城戸参考人 物品税との関連性でございますが、今大蔵省から提案されておるところの物品税の低減を換算いたしますると、各製造会社によっていろいろ違います。天然色をやっておる会社はかえって支出が増大いたします。それから天然色をやらない白黒の方は非常に楽になります。たとえば松竹、東映、大映のごときは、みんな製作費が増加いたします。松竹の例をもってしましても大体五千万円ほどの製作費増に相なるという計算になります。  それから、映写機の問題その他の機械の問題につきましては、安いに越したことはございませんが、直ちに映画それ自体にどの程度に影響するかということは、ちょっとここでははっきり御答弁ができません。ことに、撮影機の場合は数が少うございますから、自然すぐ影響するかということに対しては、なかなかむずかしいと思います。ただ撮影機は御承知の通り国産を奨励する必要がございます。今はほとんど大半は、外国のミッチェル、その他イギリスアメリカから購入しておりますので、もう一息参りますならば、撮影機は国産で十分間に合う。従って、この国産機がさらに東南アジアまでいきます。その他の点においても物品税が軽減されることが望ましいと思います。ただ入場税との関連性は私はいささかだと思います。  終りに臨みまして、入場税につきましては、超党派的に御考慮願いたいと思います。
  83. 秋山有

    ○秋山参考人 私にお答えできますものは、映写機だけでございます。これは地方館におきましては、おおむね三年程度は使っております。従って、減価償却等もあまり大幅に考慮はしておりません。大体地方館の使用しておりまするものは百五十万円程度のものであります。三年間は持つのであります。ただ購入の際にいささかお安くなるということはありますが、それによって入場料を引き下げる段階にまでは、ちょっと無理だと考えております。  配給料が下るだろうかということにつきましは、どうも映画会社と配給会社は、私どもの上に君臨しておりますから、これは城戸さんの方のことでございますから……。
  84. 山本幸一

    山本(幸)委員 私があんまり簡単に質問したから、あなたは何か錯覚しておるのじゃないかと思いますから、もう一度お聞きしますが、要するに今度の政府案では三段階にしたわけです。ところが、この三段階ではあなた方の希望または希望に近いものはとうていいれられておらぬということですね。これはおわかりだと思う。  そこで、私は現在政府の出しておる原案の三段階の範囲内において、なるべくあなた方の希望または希望に近いものに近づけることは私どもも賛成しております。そこで、そういう場合にランクが五つになる。たとえば一割五分というものを作ったり、二割五分というものを作った場合には、五段階になりますが、五段階にしたらあなた方の希望なりあるいは希望に近いものに近づけられるとするならば、あなた方は、そういうランクがふえても、税を徴収するには、ひまを惜しまなければ努力ができるのかどうかということを聞いておるのです。決して税の徴収に困難でないという点があるのかどうか、これを聞いておるのです。これは重要な問題ですから。
  85. 秋山有

    ○秋山参考人 たとい段階の数が多くなりましても、私どもの希望するところの線に近づけば、あらゆる労苦を惜しまないつもりであります。
  86. 早川崇

    早川委員長 春日一幸君。
  87. 春日一幸

    ○春日委員 私はやっぱりその点を明確にしておいていただきたかったのです。たとえば、この映画館は八十円なら八十円、七十円なら七十円、あるいは五十円なら五十円と入場料はきまっておると思うのです。そこへ一割かけようが、一割五分かけようが、二割五分かけようが、かけるときにはちょっとそろばんはややこしいかもしれぬが、かけてしまったら、プリントしてお客からもらうだけで、何も煩瑣はない。ただいまあなたはちょっと困難だということでございましたが、困難でありますと、今山本委員が御質問になりましたように、問題が煮詰められていって、そうして相互の主張が折衷される場合に、もし妥結案がそんなところに収まるような場合に、あなたが困難だとおっしゃるなら、困難ならやめておけということにもなるかと思うのであります。しかしこの点は明らかになりましたから、これは記録にとどめておきます。  そこで、私せっかくの機会でありますから、田中さんに一つお伺いしたい。いよいよお若くて、お美しくてけっこうでございます。(笑声)ただいま参考人諸君の御意見を伺いますと、城戸さんは、映画製作産業六社を通じてことごとく赤字である、非常に困難な状態であると述べられました。それから上映館の代表であります秋山君また、ことごとく赤字経営であって、全国の常設映画館の多くのものは、二年か三年を出でずして破産必至の状態を予言されておる。さらに、実際の現状においては、二年目か三年目に経営者が行き詰まって手をあげてしまって、そうして経営者がかわっておるというのが実情であると言われた。このようなはなやかな産業が、製作者も、また上映館も、みんな赤字で苦しんでおる。こういう実態は、聞く者として異様な感に打たれざるを得ないのであります。私たちは、先般大蔵委員会から、西ドイツの映画館と映画配給会社との関係調査に参ったことがございましたが、そのときの報告によりますと、私は今明確な数字は記憶にとどめておりませんが、何でもその映画配給協会一つの財団法人みたいなものを作って、そうしてそこに金融その他のいろいろなバツク・アップがなされておる。そうして映画館が水揚したその水楊料金の何パーセントをこえて、この配給会社がそれを取ってはならないという一つの不文律といいましょうか、ある程度は法令によってサポートされたそういうルールによって、最低限度の映画館の収入が確保されて、そうしてその使命が全うできるような体制ができておると聞いております。そこで、今申し上げたのは一つ参考でありますが、田中さんはまことに第一流の俳優であられ、かつまた監督としても第一流になりかけておる。(笑声)そこでこの製作会社と上映館とがことごとく赤字状態にあるということは、一体どこにその原因があるのであろうか、あなたの第三の目からこれをいかにながめられるか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  88. 田中絹代

    ○田中参考人 あまりむずかしいお答えができませんで申訳ございませんが、私の一番感じます点は、資本家また興行者の方々がお困りになる、赤字になるという問題は、やはり自分たちにいい仕事ができないで、観客の方々にも見に来ていただけない。じゃ、どうしていい映画を作るかということになりますと、直接私たちが困りますことは、ここにいらっしゃいます城戸参考人、また資本家の方には申訳ございませんが、私たち直接にお仕事をしていく上に、一番経済的に困るのです。そういう意味で、どうか——少しでもいいものをお客様に見ていただきたい。それには、とにかく私たちにいい仕事をさせていただきたいという意味で、今日お願いを申し上げておるわけでございます。
  89. 春日一幸

    ○春日委員 大体わかったような、わからないようなお話でありますが、(笑声)私はこの際、特に映画製作産業代表の城戸さん、それから上映館代表の方に申し上げておきたいのでありますが、こういう入場税問題の帰するところは、その経営をいかに成立せしめていくか、採算ベースの問題に集約されると思いますし、もとより大衆負担の軽減の問題等もあるでありましょうが、ともに経営が成り立つ限界においてこの税の問題を取りつけていくということにあろうと思うのであります。従いまして、私どもがいろいろと検討いたしております範囲内では、ひとり税の問題たけではなかなか解決がつかない。ただいま田中参考人からも、一家の見識として述べられたところがありますが、西ドイツの映画館が、日本のそれとは相異なって、とにもかくにも恒常的にその経営が安定しているということは、私は何らかの措置が講ぜられておると思うのであります。いかに名画を作製されましても、これを上映する映画館が安定した状態にならなければ、これは両々相待って完璧を期しがたいと思うのでございます。そういう意味からいたしまして、フィルムの代金、その値段決定の問題、徴収のしよう等の問題につきましても、製作会社、配給会社、上映館で十分に話し合いと検討をしていただいて、税の問題についても解決をはからねばならないけれども、同時にそういう経営の根幹に触れても、一つ十分なる御検討あらんことを強く要望いたしまして、私の質問を終ります。
  90. 早川崇

    早川委員長 お諮りいたしますが、議員臼井莊一君より、本案に関し発言を求められております。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  91. 早川崇

    早川委員長 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。臼井莊一君。
  92. 臼井莊一

    ○臼井莊一君 この機会に、委員外発言で一言お伺いしたいと思います。  今各参考人の御意見を伺っても、大会社も中小興行者も非常な困難にあるということが、ある程度はっきりされたわけでありますが、これは一つには、過当競争で、人口はふえたけれども、戦前から見ると、常設館が二倍以上、二倍半にもなる、そこで製作会社も二本立をやる、地方でもやる、こういうことかと思うのです。そこで今度の減税を、先ほど田口さんからお話のように、映画そのもの、また社会教育的な見地から考えて、やはりある程度入場税の操作によってよき映画を普及するという方法も、私は政治的に考えなくちゃならぬじゃないかと思うのです。その一つとしては文化映画だと思う。今日、見る者からも、また興行する側からも理想的な形態は、特殊なところを除いては、ニュース映画——これは大体やっていますが、もう一つは文化映画、それに劇映画を加えるという形態が、一番望ましい経営状態ではないかと思う。そこで文化映画——といっても、その基準はなかなかむずかしいでしょうが、文化映画、ニュース映画、劇映画をやった場合には、入場税を思い切って軽減する、こういうような考え方も、文化映画を発展させる方法でもあり、また二本立をある程度整理する方法ではないかと思うのですが、この点について、田口さん、城戸さん、秋山さんから、もし御意見があればお伺いしたい。
  93. 田口助太郎

    ○田口参考人 今の御質問の通りでありまして、私が先ほど述べまりしたのは、そういう形態が好ましいし、国家施策はできるだけそういう方面に方向づけてそういうものを育成するようなために、その一環として入場税も呼び水としてやるべきだという議論でありまして、今の御質問の趣旨に全く同感でございます。
  94. 早川崇

    早川委員長 横山利秋君。
  95. 横山利秋

    ○横山委員 一問だけ伺います。城戸さんでも秋山さんでもけっこうですが、この入場税の問題に関連して通産省の映画産業白書を見る機会に恵まれいろいろ見ておりましたけれども、こういう点について一つこの機会に御意見を承わりたいのであります。それは、日本の今の映画上映の中で特徴的なのは輸入映画が非常に多い、その中でもアメリカ映画が非常に多いということであります。また映画館においては二本立、三本立が蔓延しつつあり、上映時間が非常に長過ぎるということであります。これは看過することのできない国の外貨の問題、あるいは教育あるいは衛生等の問題で重大なことだと思うのであります。私がこの中で参考に見ることができましたのは、イギリスやフランスやイタリアにおいて行われている外国映画の制限の問題であります。ここで調べましたところによりますと、イギリスでは自国映画を三〇%以上はやれという制限があるそうです。フランスにおいては十三週につき五週は自国映画をやれというようなことがあり、イタリアにおいてもそのようだそうであります。今の日本の映画を担当していらっしゃる製作者の方あるいは上映の方では、そのような御意見が今の状態の中であるのだろうかどうか。本委員会は、税金の問題ばかりでなく外国為替の問題も取り扱っておりますので、この機会に一つ参考になる意見を聞かしていただきたいと思います。
  96. 城戸四郎

    ○城戸参考人 今の問題はなかなかむずかしい問題でございまして、世界中の文化国で映画の推進に助成を与えている国は非常に多いのであります。イギリス、イタリア、フランスその他ヨーロッパにおける小国はみんなそうであります。アメリカにおいては比較的表立った援助はいたしておりませんけれども、国務省内に映画局というものを特に設けまして、これをアメリカナイズする上において全世界に推進していることは御承知の通りであります。従ってアメリカ大使館においても映画についてわれわれ文化人にパンフレットその他を配っていることは御承知の通りであります。アメリカの映画が多いということは、大衆の声といたしましては、もっとあらゆる方面の外国映画が輸入されてほしいということが希望されているとまずわれわれは見ております。しかし御承知の通り、占領下の状態においてアメリカ当局が映画を日本においてコントロールしまして以来、そのときの数が今日ものをいって、大蔵省当局もそれに対して何か打開をはかろうというような御苦心のほどもわかるのでございますが、いつもそれがデッド・ロックに上りましてなかなか容易に打開されていないように承わっております。しかしわれわれとしましては、全世界のよき映画の日本へ来る数は国によって限定されないことが望ましいと思っております。  フリー・マーケットの問題でございますが、まだ今の段階ではなかなか骨だと思います。たださえ二本立をいかにして統制しようかとしてわれわれが苦慮している際に、フリー・マーケットになりますと、より以上善悪にかかわらず多大の数が導入されてくることはわかっておりまして、自然映画の過当競争が行われて、われわれ業者は非常な苦難に向うということもほぼ申し上げられると思うのであります。為替のコントロールによることの是非は別問題といたしまして、ある程度のコントロールができていることが、業者産業の助成には役立っているということを、われわれはいくじなくも告白しなければならない状態でございます。ただ先ほどドイツのお話がございましたが、まだドイツは十分調査しておりませんが、製作会社におきまして製作した映画が外国に出るとか、あるいは著しく国民的影響のよき意味の感化を与えたという場合におきましては、フランス、イタリアのごときは入場税から還元してそれに対して保護助成をしているということがあります。これは最近イギリスにおいても叫ばれているような情勢でございますが、われわれは何も金をほしがるわけではありませんが、そういうことまでして、映画の向上に対して当局が関心を持つということは、特に国会の方々においても御考慮をわずらわしたいと思います。
  97. 早川崇

    早川委員長 この際委員長より一言ごあいさつ申し上げます。参考人各位には御多用中のところ長時間にわたり御出席をいただき、有益かつ忌憚のない御意見をいただきまして、本委員会の審査に多大の便宜を与えられましたことに対し厚く御礼を申し上げます。本日はこの程度にとどめ、次会は明二十七日午前十時十五分より開会することとし、これにて散会いたします。     午後一時二十六分散会