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1959-05-19 第31回国会 衆議院 商工委員会 第39号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年五月十九日(火曜日)     午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 長谷川四郎君    理事 小川 平二君 理事 小泉 純也君    理事 小平 久雄君 理事 中村 幸八君    理事 加藤 鐐造君 理事 田中 武夫君    理事 松平 忠久君       新井 京太君    岡部 得三君       鹿野 彦吉君    菅野和太郎君       木倉和一郎君    始関 伊平君       細田 義安君    渡邊 本治君       板川 正吾君    内海  清君       大矢 省三君    勝澤 芳雄君       勝間田清一君    兒玉 末男君       小林 正美君    鈴木  一君       堂森 芳夫君    中嶋 英夫君  委員外出席者         通商産業政務次         官       大島 秀一君         通商産業事務官         (大臣官房長) 齋藤 正年君         通商産業事務官         (軽工業局長) 森  哲夫君         通商産業事務官         (軽工業局アル         コール事業長) 橋口  隆君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 四月一日  委員板川正吾辞任につき、その補欠として山  中日露史君が議長指名委員に選任された。 同月四日  委員木倉和一郎君及び細田義安辞任につき、  その補欠として犬養健君及び川島正次郎君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員犬養健君及び川島正次郎辞任につき、そ  の補欠として木倉和一郎君及び細田義安君が議  長の指名委員に選任された。 同月七日  委員木倉和一郎君及び坂田英一辞任につき、  その補欠として高橋等君及び小金義照君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員小金義照君及び高橋等辞任につき、その  補欠として坂田英一君及び小西寅松君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員小西寅松辞任につき、その補欠として木  倉和一郎君が議長指名委員に選任された。 同月九日  委員松前重義君及び山中日露史辞任につき、  その補欠として板川正吾君及び永井勝次郎君が  議長指名委員に選任された。 五月九日  委員今村等辞任につき、その補欠として山崎  始男君が議長指名委員に選任された。 同日  委員山崎始男辞任につき、その補欠として今  村等君が議長指名委員に選任された。 同月十九日  委員永井勝次郎君及び水谷長三郎辞任につき、  その補欠として兒玉末男君及び勝間田清一君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員勝間田清一君及び兒玉末男辞任につき、  その補欠として水谷長三郎君及び永井勝次郎君  が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 四月六日  日中貿易再開に関する請願外一件(臼井莊一君  紹介)(第三三〇六号)  同(内田常雄紹介)(第三三〇七号)  同外三件(亀山孝一紹介)(第三三〇八号)  同外十二件(纐纈彌三君紹介)(第三三〇九  号)  同外十件(永田亮一紹介)(第三三一〇号)  同外三件(夏堀源三郎紹介)(第三三一一  号)  同外四件(井原岸高紹介)(第三三三一号)  百貨店法の一部改正に関する請願宇都宮徳馬  君紹介)(第三三四号) 同月九日  事業協同小組合組合員に対する金融及び税制  上の助成に関する請願田村元紹介)(第三  三五七号)  富士吉原地区製紙パルプ工場汚水毒物によ  る漁業補償等に関する請願外二件(久保田豊君  紹介)(第三三七三号)  日中貿易再開に関する請願外一件(石山權作君  紹介)(第三三七四号)  同(猪俣浩三紹介)(第三三七五号)  同外十五件(大矢省三紹介)(第三三七六  号)  同(片島港君紹介)(第三三七七号)  同(木下哲紹介)(第三三七八号)  同外十一件(久保田鶴松紹介)(第三三七九  号)  同外二十四件(五島虎雄紹介)(第三三八〇  号)  同(中村高一君紹介)(第三三八一号)  同外五十三件(原彪紹介)(第三三八二号)  同外十五件(八木一男紹介)(第三三八三  号)  同外十三件(小川平二紹介)(第三四〇二  号)  同外六十七件(押谷富三紹介)(第三四〇三  号)  同外二件(久野忠治紹介)(第三四〇四号)  同外十五件(島上善五郎紹介)(第三四〇五  号)  同(島村一郎紹介)(第三四〇六号)  同(中垣國男紹介)(第三四〇七号)  同外一件(永田亮一紹介)(第三四〇八号)  同外三十七件(西村榮一紹介)(第三四〇九  号)  同(坊秀男紹介)(第三四一〇号)  同外六件(松前重義紹介)(第三四一一号)  同(三鍋義三紹介)(第三四一二号)  同(八木一郎紹介)(第三四一三号)  同外六十七件(菅野和太郎紹介)(第三四二  三号) 同月二十三日  日中貿易再開に関する請願外十八件(淺沼稻次  郎君紹介)(第二四四〇号)  同外五件(菊川君子紹介)(第三四四一号)  同外十一件(阪上安太郎紹介)(第三四四二  号)  同外七件(濱野清吾紹介)(第三四六三号)  同外三件(松尾トシ子紹介)(第三五一七  号)  百貨店法の一部改正に関する請願小川半次君  紹介)(第三四七五号)  中小企業振興対策に関する請願(船田中君紹  介)(第三四七六号) 同月二十八日  水質汚濁防止制度の拡充に関する請願鈴木善  幸君紹介)(第三五五四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月二日  一、通商産業基本施策に関する件  二、経済総合合計画に関する件  三、電気及びガスに関する件  四、鉱業鉄鋼業化学工業機械工業その他  一般鉱工業に関する件  五、繊維産業に関する件  六、通商に関する件  七、中小企業に関する件  八、特許に関する件  九、私的独占禁止及び公正取引に関する件  一〇、鉱業一般公益との調整等に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月九日  中国生漆輸入に関する陳情書  (第六三六号)  同  (第六九三号)  同(第六九四号)  経済体質改善に関する陳情書  (第六六一号)  独占物価引上げ反対に関する陳情書  (第六六二号)  日朝間直接貿易の許可及び第四次日中貿易協定  実施等に関する陳情書  (第六九二号)  中国産脱外皮野棉皮輸入促進に関する陳情書  (第六九五号)  小売商業特別措置法案成立促進に関する陳情  書(第六九六  号) 同月二十八日  東京石油業協同組合不当行為取締りに関す  る陳情書  (第七六五号)  経済体質改善に関する陳情書  (第七六六号)  新聞代等諸物価値上げ反対に関する陳情書  (第七六九号)  東京電力株式会社東京砿油株式会社取引公  正化に関する陳情書  (第七七一  号)  中小企業対策に関する陳情書  (第七七二号)  上、下水道事業用電力料金に関する陳情書  (第七七九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 長谷川四郎

    長谷川委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件について調査を進めます。  まず技術導入の問題について質疑の通告がありますので、これを許可いたします。勝澤芳雄君。
  3. 勝澤芳雄

    勝澤委員 私は、この前二月十七日の日に当委員会におきまして、アメリカのジョンス・マンビル久保田建材との間のドライ・プロセスによるカラベストスの技術提携の問題につきまして質問をいたし、当時森局長より、これらの問題につきましては、十分業界話し合いの上、円満に処理をしたい、こういう説明がありました。昨日の日本経済新聞によりますと、通産省認可決定をして、関係業界反対に立って最後の段階に来た、こういうようなことが紙上に伝えられておるのでありますが、この前ここで私が質問をいたしまして、局長から、十分話し合いをしてやる、こういう御説明がありましたのに、どうも話し合いというものがまだ十分なされていないのじゃないか、こういう点から、その今日までの経過につきまして御説明を賜わりたいと存じます。
  4. 森哲夫

    森説明員 この前御質問がありました際に私からお答え申し上げましたように、技術導入の問題につきまして、業界と十分な話し合いをして、できるだけ円満にこの問題を解決しようということで、その後努力をいたして参ったのでございます。たとえば第三者が中に入ってやわらかにこの話をまとめるというような努力もいたしたのでございます。また、最近には業界代表方々に私のところへお集まり願まして、役所見解を述べ、業界意見も言っていただくという機会も作ったのでございます。そのようにしてただいま話し合いを進めている段階でございます。新聞の報道によれば、令すぐ外資審議会を開いてやるということになっているようでございますが、われわれの考えとしては、さようなことは意図していないのであります。もう少し話し合いを進めるという努力をしていきたいというふうに考えております。
  5. 勝澤芳雄

    勝澤委員 話し合いを少ししておるということなんですけれども、どうもその前提となるのが、もう通産省認可をするんだ、こういう立場で、何かそれを押しつけているようなことが、この問題には初めから感ぜられて、円満な話し合いというものが進まないように思うのですが、通産省として、この問題については、全然白紙立場で、業界とこの問題の取扱いをどういうふうにした方がいいかという立場話し合いをしておるのか、それとも認可をするのだ、そういう前提のもとに、押しつける立場で話をしているのか、その点が明確になっていないと思うのですが、そういう点についてはいかがですか。
  6. 森哲夫

    森説明員 役所業界話し合いをする場合には、無定見の状態でいたすべきものではないと考えております。一応の見解を持って、それを示して、業界意見を聞き、その業界意見が正しければ、役所の方でいろいろ考えを修正したり、また別途の対策を講ずるというふうに話を進めるべきであると考えております。そういう意味で、先日業界代表の方にお集まりいただきましたときには、私から、これはこういう点で導入してもいいように思われるということを申しました。ただ、ただいまのお言葉にありましたように、これは絶対に導入するんだという絶対の結論をもって私たち業界に臨んでいるわけではありません。一応こちらの見解を言い、それに対する業界の反論を期待して、実はこの前お話を申し上げたようなわけでございます。今後の話し合いのいかんによって、これを導入するにしても、またいろいろな条件の面で十分な考慮を加えることもできましょう。そのほか、とにかく業界との話し合いによって業界意見が明確になってから、われわれとしてはまた考えをいろいろ直していきたいというふうに思っておるのでございます。
  7. 勝澤芳雄

    勝澤委員 業界意見というのは明確なんですね。業界としては、これは新しい技術ではない、そしてこのようなものを入れなくても、十分このスレート産業においてはやっていけるし、また輸出も行なっている、こういう前提に立って行なっているわけであります。ですから、通産省との意見相違点というのは、とにかくそんなに通産省が、これが新しい技術だとするならば、業界通産省納得のいく立場で、これが新しい技術であって、当然日本にこの技術が必要なんだ、こういう結論を出してくれ、従って、あくまで反対という立場からやはり技術についての討論をしてもらいたい、あるいはまた公開品質試験というものをやってもらいたい、こういうことを要望しているわけでありまして、この点につきましては、前回も、そういう問題についても十分考慮しましょう、こういうお話がなされているわけでありますが、技術討論会あるいは公開品質試験という問題について、通産省としてはどういうふうに考えられているんですか。
  8. 森哲夫

    森説明員 私たち話し合い考えておりますのは、単に結論を見せ合って、その結論が違っているということを確認することを言っているんじゃございません。なぜそういう結論が出るか、その過程お互いに話し合って、その過程が正しいかどうかということについて、もう少し話し合いをいたしたい、こういうふうに考えておるのであります。そういう過程におきまして、どちらの考えが間違っているかということがわかってくると思うのであります。そういうことをねらって話し合いをいたしたいと考えておるのでありますが、ただ文書で結論だけを書いて持ってくるとか、またそれと同様な意思表示をされるというのでは、これは話し合いといううちには入らないと思っております。私らとしてはもう少し掘り下げた方法お互い考え過程についての話し合いをいたしたいというふうに考えております。  それから先ほどお話のございました品質試験等につきましては、すでに国立試験研究機関で、この試験をしてもらっているのでございまして、国立機関でやった試験が信頼できないという前提に立ってのお話に一々応じておったのでは、これは問題が混乱するばかりであると考えております。そういう国立試験所試験の結果に基いて、有識業界方々と効果的な、また能率的な話し合いを、今後われわれとしては進めていきたいというふうに、この品質試験につきましては考えております。
  9. 勝澤芳雄

    勝澤委員 国立の権威のある試験所でやったと、こう言われているのですが、じゃ具体的に実施をした試験、あるいはいつ、どういう方法実施をしたかという点について御説明を賜わりたいと思います。
  10. 森哲夫

    森説明員 これは昨年の十月ごろから十二月ごろにかけまして、通産省産業工芸試験所におきまして試験をしたのであります。大体試験方法は、JISできまっているものにつきましては、そういう方法によってやっております。そうして強度なり、あるいは含水率とか、あるいは吸水率とか、あるいは耐候性、そういうものにつきまして一応試験をいたしたのでございます。われわれとしてはこの試験は一応公正に行われたものというふうに考えております。
  11. 勝澤芳雄

    勝澤委員 試験が公正に行われたというのは、これは通産省産業工芸試験所ですね。全体的な、たとえば建設省建築研究所なんというところではやっていないわけですね。——私はこれは参考に借りてきたんですが、この国産品と、J・Mで作ったものと比べてみてもあまり変りがないものであって、そして新しい用途というようなものも認められないし、通産省として技術の指導、技術の援助といったものも当然やるべきですから、そういう立場で、かりにもしこのジョンス・マンビルで作っておるものがいいとしても、われわれしろうとが見て、あるいはまた専門家が見ても、こういうものについては必要がないという意見がたくさんあると言われておるわけでありまして、それを、いや、私の方は国立産業工芸試験所でやったんだから、これが絶対唯一のものだ、こういうことはちょっと私はあまりにもかたくなじゃないかと思うのです。やはりまだほかにも国の機関もありますし、また実際に使っておる建設省建築研究所などというものがあるわけですから、そういうものの意見も聞く、あるいはまたほかにもこれらにつきましては、学界にも相当有力な意見を持っている人たちがあるわけですから、そういうものの意見も聞く、そういう立場でもっと広い判断をする、こういうことが必要だと思うのですが、そういう問題については、もう聞く必要がない、もうこれが絶対唯一のものだ、こういうふうにお考えになっておるのですか。
  12. 森哲夫

    森説明員 通産省試験所試験をいたしましただけではございませんで、いろいろ建築業者あるいはまた学界方々、また建設省、そういう方々にいろいろ広く意見を聞いた上で、われわれとしては一応の考えをまとめておるわけでございます。
  13. 勝澤芳雄

    勝澤委員 ですから、私は具体的にどこでやった、こう聞いているのです。産業工芸試験所以外に、今言われましたから、もう少し具体的に、どことどこと、どういう人にやられて、これがこうなんだということを、ちょっと話していただけませんか。
  14. 森哲夫

    森説明員 大体産業工芸試験所では、こういう建築資材の性能の試験が十分できるような設備があるわけでございまして、そこで試験をすれば、一通りのことはわかるということになっております。ただ耐爆試験等につきましては、これはその試験所には設備がありませんので、東大試験をしてもらっておりますが、この結果はあまり取り立てて言うほどのことはなかったのでございます。従ってただいま申し上げましたような産業工芸試験所試験の結果を大体基準にしてやっております。そのほかの試験、たとえば会社側がいろいろ依頼したような試験所もございますが、これはわれわれとしては、正式の資料としては使いたくないと存じておるわけであります。
  15. 勝澤芳雄

    勝澤委員 今出てきたのは産業工芸試験所とそれから東大でやった。先ほどの話だと、建設省建築研究所でもやった、こう言われているのですが、それらについては具体的に言われていない。そこで私は何となく、この問題はいつも問題になるのですが、結論を先にきめておいて、その結論をどういうふうに導いていくかということでものを作って、そこで無理に当てはめていく、こういう点に問題があると思うのです。ですから、当然これは今言われた中でも十分局長もおわかりになっていると思いますので、私はこの技術討論会なり公開品質試験というようなものについて、どうか一つ十分納得のいくような形で話し合って、そして試験やり方なりあるいは討論会やり方、そういうものをやらせる、こういうことをいたしたいと存じますが、そういう問題について局長どうでしょうか。
  16. 森哲夫

    森説明員 こういう技術試験の問題、そのほかこの問題につきましての意見調整は、私の方としましては業界有識なる方々とよく話し合いをした上で、なるべく進めていきたいというふうに考えております。その場合に業界がただ結論だけにこだわるとか、あるいはまた非常に故意に話し合いを延ばそうというようなことがあれば、われわれは考えを改めざるを得ないかと思いますが、しかし良識を持って話し合っていこうという態度でわれわれと接して下さるならば、われわれとしては、できるだけ業界話し合いをした上で、この問題は処理していきたいというふうに考えます。
  17. 勝澤芳雄

    勝澤委員 業界と話し合っていくということは何回も言われておるのですから、業界の希望について、これは討論会なりあるいは技術試験問題について、どうお考えになっておるのですか。
  18. 森哲夫

    森説明員 その点は、今後さらに業界ともう少し話し合いをしていきたいと思うのでありますが、いたずらに時間と経費とを浪費するような方法は、われわれとしてはできるだけ避けたいというふうに考えております。
  19. 勝澤芳雄

    勝澤委員 時間と経費、こう言われておるのですが、これは重大な問題だ、中小企業のこの業界では皆そう言っておるわけですから、業界としては重大な問題、死活の問題だと思います。ましてやこういうものが入ったら、業界としては相当混乱をするといわれておる。局長の方では、そう大した問題ではないと言われておりますが、そこでも大きな食い違いがある。まして問題は、品質なりその用途なり、いろいろそういう問題に問題があるわけですから、そういう問題は時間と経費をかけて十分やるべき問題だ。時間がないといっても、現実には昭和二十九年の日米石綿当時から問題になっておる。品物も何も変りがないわけですから、ことしの二月の十七日に、これがこの委員会で問題になっておる。そうして当時も、私は要望として、この技術討論会をやったらどうだ、品質試験をやったらどうだ、こういうことを提案して、十分業界と話し合うという約束をされておるわけですから、今日までその時間がなかったということは言えないと思いますし、また今まで試験をしたのはどうだといえば、去年の十月から十二月までにやったのだ、それが問題になって、ことしの二月の十七日に委員会で問題になっておるのですから、これは新しい問題として、私は十分この討論なりあるいは品質試験というものをやって意見を聞くべきだと思うのですが、次官、どうでしょうか。
  20. 大島秀一

    大島説明員 このような問題は、ただいま局長からのお話のように、通産省といたしましては、それぞれの立場において十分な研究を続けているわけでありますが、ことに通産省立場といたしましては、国立産業工芸試験所などの研究資料を最も大切な資料として考えなければならないということは、これは当然だと思うのであります。そこで勝澤委員お話のように、業界の声を無視してやるというようなことは、これはもう当然今の時代とりしてはあり得ないことでありますので、十分業界方々意見も尊重いたしまして、そうしてそれと両々相待って工業技術院方面にも話をして、試験調査をいたしまして、先ほど勝澤委員からお話がありましたように、場合によっては立ち会いで技術研究の発表をするということも、やるかやらぬかは別といたしまして、あり得るかもしれません。そのような意味におきまして、これは必ずやるとは私申し上げられませんが、そのようなことも決してないとは考えられないことと思うのでありますが、とにもかくにも、やはり通産省立場といたしましては、公平無私な国立工業技術院などの試験結果などを十分尊重いたしまして、これは最終的には外資審議会決定というようなものが、かなり一つのきめ手の材料にもなろうか、かように考えておりますので、十分検討いたしまして万遺憾ないようにいたしたい、かように考えております。
  21. 勝澤芳雄

    勝澤委員 十分意見を聞いて万遺憾なきを期したい、こう言われておるわけです。そこで今業界が言っておるのは、技術の問題について意見が違うから討論会をやってくれ、こう言っておるのです。もう一つの問題というのは、とにかく公開品質試験をやってくれ、通産省もやった、業界もやった、しかしそれじゃどうもまずいじゃないかということで、二月の十七日の委員会で、それじゃとにかく十分意見を聞こう、こういうことになっているんですから、その公開品質試験なり、技術討論会というのをこれからやって、そして業界もそうむちゃな反対をしているわけじゃないですから、どちらの品物がよいか悪いか見てくれ、こう言っているのですから、私はやはり公平な立場で見ていただきたい、こういうことなんです。そういう問題について、あるかもしれぬというようなことじゃなくて、はっきりこれは次官としてお答え願いたいと思います。
  22. 大島秀一

    大島説明員 御説明はごもっともだと思いますが、私は実はこの問題はあまり研究しておりませんので、そう決定的な返事をするにはあまりにも勉強が足らない、でありますので、これは十分省内におきまして、やはりそういうことをやるのが妥当かどうか。まあ率直に言って業者というものは新しいものが出ることを阻止しようとするのは当然なんです。ですから、それだけをもって簡単に決定するというようなことは、なかなか問題が残ると思いますので、この点は、きょうは私は臨時雇いみたいなものでありますから、あまりよくわからぬ。けれども、概念的に申しまして、今ここで明確に私がやるとかやらぬとかいうことを申し上げることは、ちょっと僣越じゃないか、かように考えますので、十分一つ省内研究いたしたいと思います。
  23. 中嶋英夫

    中嶋(英)委員 ちょっと今の問題に関連して質問いたします。局長はこういうことをおっしゃったですね。こういう問題を扱う場合に業界との対処の仕方について、自分でお考えになっている一つのスタイルがある。それは白紙で臨むべきじゃなくて、自分見解というものに立って、一ぺんそり返るべきだ、こういうお話があったのです。見解を持つのは私は悪いとは思わない。ただ見解をお持ちになるときに、よく意見を聞いておく必要があると思う。たとえばきょうの委員会なども、初めから私はこういう態度だというのじゃなく、こうこういう見解の上に立っているのだとか、やっているのだとかいうこと、そういう問題が、技術の問題になったところが、ただ試験をやっているということだけではわからぬと思う。第一に、この問題をはっきりするためには、現在の国産の石綿スレートの持っている欠陥ですね、それを新しい資材は、どこを埋めていくのだ、この点がはっきりしなければならぬ。それからその欠陥、今もし欠陥があるとするならば、その欠陥が単に強い弱いという問題なのか、これを強くすることによって新しい別の産業の面でこういう発展もあるとか、あるいは伸び切れない問題があるのだが、今度の新しい資材ではそれが伸びられるのだとかいう、そういう重要性というものは産業全般から、通産省立場において確信を持って、その上でやっているかどうかということが重要だと思うのです。単に新しいものが古いものよりもいいのだという次官のような概念的な問題で進めているとは思わない。何を埋めるのか、何を期待するのか。その点、新しい建築資材で、今まで構築し得なかった新しい設計が可能になるかどうか、そういうようなものはどういう点があるのかということ、そういう点をお持ちの上で、今言ったように一つの主観を持って折衝するのは当りまえだ、こういうふんぞり返った態度なのかどうか、その点を明白にしてもらいたい。しかも埋めるものがあるとするならば、その埋めるものを、国産の企業を圧迫し、あるいは国産の製品を圧迫する量との比較をどうしたか、そこに問題があると思うのです。その点ちょっとはっきりしておきたいと思います。
  24. 森哲夫

    森説明員 ただいま問題になっておりますカラベストスの用途は、従来の国産の石綿スレートとほとんど競合しないと言っていいのです。従来の国産の石綿スレートにおいてややこれに似ておるものは平板類、フレキシボード等でございますが、これらのうちで約八割は非住宅用に使われておりまして、住宅用は二割程度であります。ところでこのカラベストスというものは、住宅用にもっぱら使うものであります。従来の石綿スレートの使われておりまする用途は、住宅用といえども室内の壁板用のものが多いのであります。外壁は、普通下見板と言っておりますが、壁の外側に東京あたりでは板を横に打って、ずっと壁の土を保護するようになっておりますけれども、その下見板代用に使われておる国産スレートというものは、ほとんどないといっていい状態です。そこをこのカラべストスでやろうというのでありまして、従って製品は着色されたスレートでございまして、これを室内に使うには、その着色の状態が装飾的に見て十分ではない。しかし住宅用以外に使うには、少し色がついておりましてぜいたく過ぎるというようなもので、大体住宅用の下見板代用という用途に使われるものでございます。そういう点からいきますと、国産品は現在のところほとんどそういう分野には製品を供給していないのであります。そういう意味ではただいま御質問のありました点に大体お答えができるかと思うのでありますが、新しい分野を開くものでございます。さらに申しますと、製法が従来の国産品とは全然根本的に違っておりまして、従来のはいわゆる湿式法で、石綿とかあるいはセメント類というような原料の何倍かの水を初めから使ってやっていくのでありますが、このカラベストスは乾式法でございまして、水をあまりたくさん使わないやり方でございます。それが新しい方法でございまして、現在特許を出願されておりまして、これは一応第一審では認めて、出願公告されております。そういう意味で、これは新しい技術と、まずわれわれは考えていいというふうに思っておるのであります。従って、現在の日本の住宅建築を、木造と土というふうな旧式なやり方から、新しい一つの方式、これをプリファブリケーションと言っておりますが、大体現場で組み立てないで工場生産、各工場で部品を全部作っておいて現場に持っていって、いきなり組み立ててしまう、こういうプリファブリケーションの方式を日本の建築業界の改善のために進めていかなければならないのでありますが、その一つ方法としては、たとえば石綿スレートを使わなければならない。そうしてその場合に、今すぐに外の下見板代用として使えるものとして、このカラベストスが相当役に立つだろうというふうに私は考えておるのでございまして、そういう意味で、これは日本の建築界の改善のために相当貢献するものであるというふうに考えております。  なお、製法がドライ・システム、いわゆる水をたくさん使わない製法でありますために、含水率あるいは吸湿性、吸水性と申しますか、そういう点ですぐれております。従って家の外側に使いまして、雨に打たれたりあるいは非常に強い日に当ったりなんかした場合にも、膨張、収縮が非常に少い。従って亀裂とかあるいはひずみとか、そういうものの発生する可能性が少い、こういう点はドライ・システムによる製品の特長として私は否定できないものであろうというふうに考えております。
  25. 中嶋英夫

    中嶋(英)委員 委員長の時間の御制限があるようですが、この建築資材は、私も実は本職は土木屋で、建築関係の雑誌を参考に毎月とっておりますが、応接にいとまがないほど新しい資材が生まれ、新しい工法が発表されて、たとえば一時はジュラルミンがいいとか、今言ったような資材の問題がある。たとえばよく見てみると、果して住む側の方に立っているかというと、むしろ企業家の側に立って、たとえば造船関係が行き詰まったからその工場があく、こういうものを建築関係に伸ばしていこう、あるいは何かそういう企業の側から新しい品種が出されたり、新しいテーマが出されたりしていく。たとえば現に、過去、戦後十何年間たっておりますが、いろいろなスタイルだってずいぶん変っていますね。非常に奇異の感を持ったものが長年の間にかえって親しいものになったり、あるいは博覧会みたいで一、二年たってみると、ばからしいこっけいみたいなものになる。しかし一々意味がついている。非常に建築界は技術と関連してくるのですけれども変化が多い。従って今の資材の面でも、たとえばボード類も、一時穴があいたボードが出て、そしてこれに金をかけて、いろいろおもしろい内部の装飾ができるというのが出ると、一ぺんにデパートなんかでたくさん出される。使ってみると穴の中から黒くさびが出たり、色が出て部屋をかえってよごしたり、重いものは乗っけられないというので、どんどん変っていく。その変っていく中で追いついていく日本の中小企業者の苦労というものを、やはり考えなければならぬ。あまり変化を追いかけすぎる。少くとも日本の建築スタイルは種々雑多で統制がとれていない。確かに建築落命が進んでおるけれども、何か小刻みに新奇を追っていくという観がある。そういうところに私は問題があると思うので、もっと腰を落ちつけたもので行きたい。たとえばきょうこの発表を確信を持って局長が言う、また来年新しいこういうものが出たがどうだ、はい、と言って変っていく、そういう国の狭い、こまかい変り方というものが業界に混乱を起すし、またこれを使う工法だってなれないものに変っていくということで、こういうことから技術者の方で当惑する。喜んでいるのは企業家と、新しい何か目先の変った設計で喜ばせていくプランを立てる人、デザイナーとか、そういうところだけ喜んでおるという建築界の現状というものをはっきり見つめて、先ほど同僚勝澤委員からいろいろ指摘したような点をもっと検討した上で、対処した方がいい、こう私は考えますので意見を申し求べておきます。
  26. 勝澤芳雄

    勝澤委員 そこで私は委員長もあまり時間がないと言われておりますので、一つの提案としてこの問題は特に重大な問題でありますから、先ほどからも私が申し上げておるように、また次官局長もやや賛成されておるようですから、まず純粋な立場技術討論というものを十分にやっていただく。そして二つ目としてはこの品質比較試験というものをやっていただいて、業界お互い納得する立場で、この品物の比較をしていただく。なお学識経験者を参考人として入れて、公正な立場でこの判断を下す。こういうふうにいたしたいと存じますが、その点どうでしょうか。
  27. 大島秀一

    大島説明員 なるべくその趣旨に沿うように一つ努力いたしたい、かように考えております。
  28. 勝澤芳雄

    勝澤委員 最後に私は特にこの問題につきましては委員長にもお願いしたいのですが、十分話し合いをする、こう言いながら私が二月十七日にこの委員会で取り上げた問題につきましても、まだどうも私は通産省においては十分意見が取り上げられていないように思うのです。特にこれは技術的な関係が多いわけですから、技術的な立場でこの問題が新しい技術であるのか、また新しい用途があるのか、広い立場の検討というものは当然すべきだと思うのです。そこで委員長の方からもこういう問題については十分当局にも言っていただくと同時に、できるならばこの委員会においても、この問題につきましては十分第三者の参考人を呼んでいただいて、そして検討していただくように要望しておきます。
  29. 森哲夫

    森説明員 ただいま学識経験者等の意見を聞いてきめるようにというお話がございましたが、大体そういう民主的なやり方をする機関として外資審議会というものがありまして、そこで数人の民間の学識ある方々が審議をして下さるような機構になっておりまして、われわれとしてはできるだけそういう外資審議会の皆さんの審議によって最終的な決定をみたいというふうに考えております。そのことをちょっと申し上げておきます。
  30. 勝澤芳雄

    勝澤委員 それは私は違うと思うのです。外資審議会に出すというのはただ事務的なものであって、その下をどういう形でやるかということが重大な問題だと思うのです。ですからそのために今日まで業界話し合いを進めていると思うのです。業界と話が進めば当然外資審議会にかけられて、この問題は実施に移されておったにかかわらず、今日までその問題がなされなかったというのは、十分まだ技術的な話がなされなかったからだ。専門的な立場でこの問題は検討すべきだ、こういう立場で今日まで通産省としても試験をやったけれども、試験の結果についてまだ十分業界と話をしていないと言うし、業界の方もこれは新しい技術じゃない、新しい用途じゃない、国内産業で十分間に合うのだ、もし国内産業で間に合わないとするならばそれは通産省の指導、新しい技術研究について保護助長政策をやってこられないからだ、こういうことが言われているのですから、この程度の技術を、とにかく新しい外国技術でなければできないというようなそんな情ないことではなくて、もっと積極的に、こういう新しい技術というもの、こういう研究機関を作ればという積極的な気持で、そういう機関を作ってやるべきだ。それを外資審議会に逃げるという形はどうも私はふに落ちない。それは先ほど次官も言われているのですから、これは試験をする、それから討論会もやる、その上でまだどうも意見が食い違うというのならば、十分話し合って、そうして最終的にどうしてもしょうがなければ、結論というものを通産省は持っているのですから、もっと話し合って業界というものがある程度協力できる態勢を作り出して、その上で最終的なものにしていく、こういうふうにするように要望いたしておきます。直ちに外資審議会にかけて外資審議会の判断に待つなんという、そんなしろうとばかりの外資審議会にかけたって、そのデータというものは皆さんが作ってそのままに通そうというのでに、これは今まで業界の話し合ってきた、円満に話し合いをして十分検討するという言葉と的はずれだと思います。
  31. 森哲夫

    森説明員 御要望として承わっておきます。     —————————————
  32. 長谷川四郎

    長谷川委員長 次に、小林アルコール工場払い下げの問題について質疑の通告がありますので、これを許可いたします。小川平二君。
  33. 小川平二

    小川(平)委員 小林アルコール工場の払い下げについてお尋ねをいたします。この問題については、政府においてすでに一昨年合理化のための最も効果の上る手段として、若干の工場を逐次払い下げていくという方針を決定しておったのでございます。私どもはかねてから——今日は大臣が出席しておいでになりませんが、大臣に対して、大臣を督励いたしまして一日も早く実現をしていただきたいと要望をしておったのでございます。それにもかかわらず、今日までじんぜん日をむなしくして実現を見なかったその理由はいずれにあるのか怪しんでおる次第であります。そこで今日は、政府においてはこのアルコール工場を払い下げる必要性、必然性ということを、どのように考えておられるのか、またどの程度切実な、緊切な問題として認識しておいでになるのか、またあるいは今回の払い下げによって実際にどのような経済的な効果をねらっておいでになるのか、あるいはまた発生してくる労働問題その他について対処なさろうとしておるのか、というような点について、あらためて所信を伺いたいと思うのでございます。  そこでまず第一に、なぜアルコール工場、官営工場を払い下げをしなければならないのかという点につきましては、操業率が極端に低い、予算コストがだんだん高くなってくる、同時に合成法によるアルコールであるとか、あるいはメタノールといったような類似品ないし代替品に対して競争力を持つことができない、しかも経営管理の改善であるとか、技術水準の向上であるとか、一般的に考えられる通常の合理化の手段をもってしてはどうしても切り抜けられない、そこでどうしても非能率の工場を逐次払い下げていかなければならないことになるのだ、このように説明されておるのでございます。  そこでまず第一にこの点について、きょうは時間が限られているのですが、できるだけある程度具体的に、詳細に政府のお考えを承わらしていただきたい。
  34. 森哲夫

    森説明員 操業の点だけでございますか。
  35. 小川平二

    小川(平)委員 操業度の点だけをお尋ねしたのではないのです。なぜ払い下げを行わなければならないのかという一般的な理由について御説明願いたい。詳細に具体的な事実資料に基いて御説明をいただきたいとお願いしたのです。
  36. 森哲夫

    森説明員 御承知のごとくアルコール専売事業は、戦争中に石油の不足を補うために燃料としてのアルコールの増産を、国家的な強力な支援のもとに行うということで、昭和十二年ごろに国営工場を十三建設いたしまして、やってきたのでございますが、戦後はそういう軍事用を中心としました燃料の需要がなくなるとともに、一方石油が代替されるということが可能になったということで、アルコールの需要が昔と比べまして非常に減って参っております。しかしながら工場は依然として昔の大需要に応ずるような設備を持っているわけでございまして、そのために現在国営工場の操業度は五二、三%というふうな、ほとんどならしてみまして半分に近い状態になっております。しかもこれは過去において五つの工場を払い下げいたしまして、八つの工場を動員して、なおそういう状態であります。しかもこの五二、三%の操業度を分析してみますると、非常に立地条件のいいところ、あるいは設備が非常に合理化されているところは相当高度の操業をいたしておりますが、反面立地条件の悪いところにおきましては操業度がわずかに三〇%程度というものがあるわけでございます。そういう工場が二、三ございます。こういう状態で生産をやっておりますので、国営工場で作りますアルコールのコストが高くなるのは当然でございます。反面、最近の新しい石油化学その他の最新式の方法が非常に安いコストのアルコールを供給しようとして、いろいろ話をわれわれのところに持ってきておるような状態でございます。そういう最新式の生産方式による脅威を、常にこの国営工場はますます強く受けるという状態になってきております。そういう状態を改善するためには、どうしても国営工場の操業度の引き上げをやる必要がございます。そのために過去において五つの工場の払い下げをいたして参ったのでありますが、今回も、もう一つ工場の払い下げをいたしたい、それによって操業度が五八%くらいに上りましょう、アルコールの生産費もその結果一キロリットル当り三千七百円程度安くなる、国営工場についてはそうであります。アルコール全体としましては二千円程度安くなるという計算ができるわけでございまして、一口に申しまして国営アルコール製造事業が非常に古いやり方で、また過剰の設備で操業しておるのを、もう少しすっきりとした身軽な形にいたしたいということが、この払い下げの理由でございます。反面、われわれのところにときどき声が聞えて参りますが、国営事業だからといって三割程度の操業をやっているというのはどうも穏当を欠くじゃないか、あまりにもルーズなやり方であるというふうな社会的な声も聞くことがあるのでございまして、この際、その一つの工場の払い下げによりまして、できるだけ健全な姿にいたしたいというふうに思っております。しかし払い下げをいたしました場合には、労働者の処遇の問題が当然起ってくるのでございまするが、この点は非常に大切な問題だとわれわれも考えております。この払い下げをすることによりまして、従業員が従来よりも悪い労働条件のもとに生きていかなければならなくなることは、われわれとしては絶対に避けなければならないというふうに考えております。競争入札によってこの払い下げの相手方がきまるわけでありますが、その相手方に対しては、従来の労働条件を下らない、むしろそれよりもよりいい条件のもとに労務者のうち新工場に引き継がれることを希望する者はそれを受け取るようにという、そういう条件をつけて払い下げを実行いたしたいというふうに考えております。
  37. 小川平二

    小川(平)委員 逐次お尋ねをしていくのでありまして、まだ入札のことや労働問題のことはお尋ねしておらないのですから、そういうことは御答弁していただかなくてけっこうです。  まずお尋ねしたいのですが、今コストが非常に高い、こういうことですが、これは具体的に石油化学から出てくるアルコール、あるいはまたメタノールその他の類似品ないし代替品のコストに比較してどうなるのか、その数字を承わりたい。それからこのアルコールは現在一体幾らで売られておるのか、そうしてそれがペイしておるのかおらないのか、そういう点を承わりたい。
  38. 森哲夫

    森説明員 アルコールの生産費につきまして昭和三十三年度の実績からお答え申し上げますると、官営工場の生産費は一キロリットル当り八万八千百円、それから民営工場の酒類を製造しておるところで委託あるいは特許で作らせておるものが七万七千円、それからパルブ廃液から作っておるものがありますが、これが一キロリットル当り六万五千四百円という工合になっておりまして、全体の平均が七万九千円ということになっております。これに対して、これは工場原価でありまして、一般管理費等をさらに加えて考えますると、全体の原価としては九万二千円くらいになります。これを販売会社の方に一応送りまして、そうして小売商まで小さく分れまして一般に売られるとか、あるいはまた工業用等の大口のものは、もっと上の段階から販売されるということになっておるのであります。販売価格につきましては、末端の販売価格について申し上げますると、工業用のものが八万三千二百円、それから一般用のもの、これは家庭の医療用とかあるいはそのほかこまごまとした小さな用途のものでありますが、これが三十八万四千五百円でございます。濃度によって価格が違いますが、一般に使われておる九十五度のものにつきましては、ただいま申し上げましたような数字になっております。このように一般用のものが非常に高いというのは、これはアルコールが酒用に非常に転用されるという可能性が多いものでございますから、そういう意味で酒と同じように税金をかけておる関係で高いのであります。このようにして酒税に相当したようなものが入っておりまするので、当然これはアルコール事業の本来の収益とは言えないものであります。国庫に当然納めるべきものであります。それがおおむね一年間で六億円程度になるのでございます。ところが実際納入しておりますのは、最近では五億円程度でございます。従ってこれはアルコール事業だけの分野からいうならば、実は赤字を出しておる。それを酒税等のものを一部入れて、やっとやっていっている。つまり酒税の一部を補助としてもらって、それでやっと運営されておるというふうに言ってもよろしいかと存じます。ところで最近の石油化学等で作られます製品の価格について申しますと、メタノールがキロリットル当り三万二千円、イソプロピルアルコールが九万六千円、一般のアルコールにつきましては、大体工場原価で六万円前後というふうに考えております。大体そのような事情でございまして、官営工場のコストが一番高いために、こういうアルコール事業全体としての一種の赤字の状態になっておるということが言える。また石油化学等と比べましても、この状態では、とても長く続きそらもないということが言えると思うのであります。
  39. 小川平二

    小川(平)委員 本来の仕事は完全に赤字である、酒税的なもので辛うじてカバーしておるという事情はわかりましたが、そこで社会党の方もいろいろ御質問があると思うので、御迷惑をかけてはいけませんから、なるべく固めてお尋ねをいたします。  操業度を引き上げるためには、現在民間にも相当数量を委託しておるのですから、これを引き上げることによって官営工場も操業度は引き上げ得るのじゃなかろうかということが第一点でございます。まずこのことを御答弁願いたい。  それからまた経営管理の改善であるとか、設備の近代化、合理化等、通常考えられる方法によってはもはや合理化の余地はないのだ、あるいは非常に狭い限界があるのだ、こういうふうに聞かされておる。しかるに社会党におかれましては、これはやり方によっては、一キロリットル当り一万円余りコストの引き下げが可能だということもいっておられる。この点はいかがでございましょうか。御説明をいただきたい。
  40. 森哲夫

    森説明員 アルコールの生産は先ほどちょっと申し上げましたように、民間に委託したり特許したりして作っておるものがございます。現状について申しますと、昭和三十三年度の実績二方六千四百キロリットルのうち、官営工場で作っておりますのが一万四千四百キロリットル、大体五五%、民営工場のうちで、大きく分けて二つになりますが、酒を作っておる工場で兼営的にやらしておるのが三千百五十キロ、それからパルプ工場でその廃液から廃物利用として生産いたしておりますのが八千八百五十キロという状態でございます。そこでわれわれとしても官営工場の操業度をできるだけ引き上げる、そうして官営事業を合理的な姿に持っていこうという配慮をいたして、毎年官営工場の生産量はふやすようにいたしております。アルコールの需要は最近石油化学方面から若干食われておりますので、年々そう増加はいたしておりません。その状態において官営工場をふやすのでありますから、当然しわは、民間に委託したりあるいは特許したりして作らせておる工場に及ぶわけでございまして、そういうことを徐々にやっておるのでございますが、しかしこれには限度がございます。酒の工場について言いますと、酒の工場からあまり多くを引き上げますと、酒の工場の方で専売アルコールを買わなくなるということになりまして、結局酒の工場の生産割当を引き上げるということは、ほとんど意味をなさなくなります。それからパルプ工場の廃液の方の生産割当も、大量に引き上げるということは、実は先ほど申しましたように、コストが一番安い製品でございます反面、木材の利用合理化の角度から、当商工委員会でも大いにこういう方面を推進せよという御要望もあったような次第もございます。そこでそう大量にこれを削減するということはできない、徐々に少量のものを削減するということによって、許す限りの範囲で、官営工場の操業度の引き上げをはかろうということを、われわれ努力をいたしております。しかし一方ある官営工場の操業度を非常に引き上げるという説をなす人が言うほどに、官営工場の生産量を民営工場から移してふやしていくということは困難であろうと考えております。  それからほかの合理化の点でございますが、もちろん私の方も工場の払い下げと並行しまして、工場の生産段階における技術あるいは設備の改善、また原料なり製品の輸送の段階における輸送費の節減、また販売の段階における販売マージンの節減、こういうあらゆる段階におきまして合理化を進めて参りましたし、今後もまたこれを進めて参りたいと思っておりますが、これほそう大きい金額を期待することは困難だろうというふうに思っております。しかしこれは今後ともさらに努力はしていきたいと思っております。
  41. 小川平二

    小川(平)委員 通常の手段によるコストの引き下げがどの程度可能であるかという点は、これは一つの争点でございましょう。これについてはおそらく後刻社会党の方からいろいろ御質問があるだろうと思います。今の御説明ははなはだ抽象的で満足できませんけれども、次の問題に移ります。  次に、このたび払い下げの対象として、特に小林工場を選んだ理由はどこにあるのかというのが第一点。  第二にこの払い下げによって、どのような経済的な効果を期待しておいでになるのか。払い下げによって国営企業に対しあるいはまた全体としての専売事業に対して、どのような影響、効果が出てくるかということ。それから地元に対してどのような影響を与えるのか。たとえば今日の払い下げによってイモの消費量が倍になる、こういうふうなこともいわれている。あるいは逆に払い下げをすると、地元の農家が危機に陥る、こういうふうなこともいわれておる。あるいはまた地元の経済団体その他は、今回のこの企図に対してどのような意思表示をしておるか、そういう点について承わりたい。
  42. 森哲夫

    森説明員 小林工場を選びました理由としましては、ここが大体国営の現川在の八工場のうちで操業度が一番低い部類に属しておるのでございます。先ほど申しましたが、操業度が三〇%前後、こういうのが三、三ございますが、そのうちの一つでございます。なぜこういうふうに低いかということになりますと、アルコール専売事業全体として見ますと、立地的にやはり不利な点があるということであります。この辺にできますイモの品質は非常にいいのでございます。しかし何しろ地域がへんぴなところにありますので、そういうために国営工場のアルコールの生産費を償うという場合には、どうしても重点をほかに置かざるを得ないという結果、こういう低い操業度になっておるのであります。  それから払い下げをする場合には一応相当しっかりした買手が現われていないといけないわけでございます。幸い小林工場には、そういうまず資産、信用の確実な酒の製造業者が一応払い下げの希望を表明いたしたということで、払い下げをいたしたいというわけでございます。この工場を払い下げました場合の効果としては、アルコール事業全体の操業度が五三%から五八%くらいに上る、その結果、国営工場のアルコールの生産費は一キロリットル当り三千七百円ぐらい下るということになります。これは相当大きい合理化効果であると思います。もしこの工場の払い下げが実現した場合、これを買い受けた酒類の業者は三分の一の操業度ということで維持していくことは、これはとてもできる相談ではございません。大体、これを買った工場は現在の生産量の少くとも二倍のものを生産するということ、になると存じます。数字でいいますと、この工場は現在三〇%の操業で年間千キロのアルコールを作っておるのでございまするが、大体二千キロのアルコールを作るということにしないと通常の企業としては成り立たないと思うのであります。そこで、これはいろいろ他の酒類のアルコールを作るというようなことで事業分量を二倍することにいたします。そうなりますとイモの購入量は従来に比べて大体倍ということになりまして、地元の農村に対してはいい影響を与えることになりましょう。また、その地域においてこういう工場の生産量が倍になりますると、いろいろ購買力をその辺に扶植するということになりまして、地元の経済関係の団体としては払い下げに対して好感を持っておるということを申し上げられると思います。
  43. 小川平二

    小川(平)委員 今度のことについていろいろな風評があるようでございます。おそらくこれは根拠に乏しいものと思うけれども、新聞などにアルコールの問題がごてておる、一ぱい飲まされたのはだれかというようなことが書いてある。それから反対をする方々におかれては、背後に汚職関係があるからこれを明るみに出そう、こう言っておられる。もしそういうものがあるなら、きょうはよい機会でございまするから、そういった点を明るみに出しそいただきたいものだと思いますが、お尋ねしたいことは、そのような印象を皆さんが与えたと思われるような事実が何かあったのかどうかということ、それからまた、今日までのある段階において、どこか特定の会社に払い下げを内定されたというようなことがあるのですかどうか、こういう点について承わりたい。今後の問題といたしましては、払い下げる相手方をどういう基準あるいは手続に基いて決定をなさるつもりであるのか、こういう点について御答弁を願いたい。
  44. 森哲夫

    森説明員 最初御指摘のありました汚職の疑いの問題でございますが、こういうことは絶対にございません。どういうところからそういうことが言われておりまするのか、これはおそらく非常に事実をまげて悪宣伝をしておることだと思います。われわれとしては、こんな工場の払い下げに、それほと複雑な事件等がからまれておるものではない、これは全く純粋の行政事務としてやっていける問題であるのでありますもそれから、払い下げを特定の工場に則定しているということはないのであります。一般に国有財産の払い下げは、指名競争入札で払い下げをするのが原則でございまして、特定の一社にすでにもう払い下げを事前に内定するということはあり得ないことでございます。現在のところ、この工場に対しては本坊酒造と三楽酒造、この二つの会社が積極的な払い下げの希望を表明いたしておるのでございます。どちらになりますか、これは入札の結果によってきまるわけでございます。政府としては、払い下げの対象工場の条件としましては、能力が相当大きい酒類の業者であって、しかも信用が相当りっぱなものということを第一の条件にいたしておりますが、そのほか、工場の在籍政府職員については、その希望者を引き取って、従来よりも下回らないような待遇が十分できるような、そういう力を持っておる。こういうことを条件にして相手方を選択いたすことにいたしておるのであります。また、手続につきましては、大体国有財産の払い下げのためにはこれは通例でございますが、いろいろな資産の評価委員会というものを特別に作りまして、大体適当な価額はこのくらいであるという一応の見当をつけて、これを基準にして払い下げの事務を進めていくということにいたしております。
  45. 小川平二

    小川(平)委員 次に、労働問題について承わりたいのですが、御説明によれば小林工場の操業度は三〇%ということでございます。そうすると、月のうち実働日数はおそらく十日にも満たないということになるのだろうと思いますが、あとの二十日は一体何をやっておるのだということ。また給与のぺースはどのくらいになっておるのか、御説明を願いたい。
  46. 森哲夫

    森説明員 実稼働三〇%程度でございますので、それ以外の時間は工場の清掃をしたり、あるいは庭のいろいろな掃除をする。そういうふうな清掃なり整備ということをやって過ごしておるわけでございます。  この給与のペースは工場の在籍職員の経歴なり年令あるいは家族の状況等によって、他の工場とは一律にはいえないわけでございますけれども、この工場だけについて見ますと、基準内賃金で一万九千九百六十五円ということになっております。アルコール事業全体よりはちょっと低いのでございますけれども、これは先ほど申しましたような年令なり家族の状況、そういうことが平均よりも少し程度が低いといいますか、そういう結果でございます。
  47. 小川平二

    小川(平)委員 アルコールを製造する工場の場合において、一月のうち十日近くも草をむしっておる。草むしりの労働というものは、何ら生産的な効果はないと思いますが、そういう事態を今日まで放置されておったということは、まことに驚くべきことではないかと私は考えます。それはともかくとして、今回の払い下げに伴って発生する労働問題一般に対して、どのように対処されるつもりであるか。払い下げの相手方の工場に就職したくないという方々も出てくるに違いない。たとえばそういう問題に対して、どのような措置を講ぜられるおつもりであるか、詳細に承わりたい。  それから労働組合が今度の問題に反対をする根拠。どういう根拠で反対をしておるのか、それに対して政府はどのような見解をとっておられるか伺わせていただきたい。
  48. 森哲夫

    森説明員 小林工場の従業員が現在百十二名でございます。過去において何回か工場の払い下げをやって参ったのでありますが、この直前の場合には従業員もそうひどい反対をしないで円満に、払い下げを受けた事業の方に移っていったのでございます。今回は従業員の方で相当強い反対をいたしておりますが、政府としては払い下げ工場を決定する場合、その条件の一つとしまして、その工場の在籍の政府職員につきましてはその生活の安定と技術の活用のために工場買受人にこれを承継させるなどの所要の措置を講ずるということになっておりますが、この際に労働条件が従来よりも少くとも悪くならないように、できれば従来よりもよくなるようにというふうに、新しく払い下げを受けた者と話をきめたいというふうに考えております。また工場を買い受けた者に対しては政府の承諾なくして、その工場の施設を解体したり処分したりして事業をやめるということのないように、これも払い下げのときにはっきりきめておきたいと考えております。そのようにしてわれわれといたしましては、現在の従業員が新しい払い下げを受けた事業者のもとに移っていって、従来よりもより幸福に暮らしていけるようになることを希望しているのでございます。またそのようにいたしたいと、できるだけの努力をする所存でございます。従来のところ、この工場の買受人がどうも特定の一つにきまっておるかのような前提で、この払い下げをした結果従業員の待遇が従来よりも悪くなるという前提で、ものことを考えておられる方が多いようでございますけれども、しかしこれはまだ早計でございまして、先ほども申し上げたように払い下げを切望している工場が二つあるわけでございまして、そのいずれにつくかはまだきまっていない。しかも私の方としてはいずれのほうについても、少くとも従来の労働条件よりも悪い条件下で従業員が働くということはないというふうに確信をいたしておるのでございます。  それから組合側が従来反対をいたしております一番大きい根拠は、やはり払い下げをされた後において労働条件が従来よりも悪くなりはしないか、そういう心配がまず前提になっているように思うのであります。そうして、従って払い下げはやめてもらいたいということを言っておるのでございます。代案としましては、払い下げをしなくとも、いろいろ合理化をやれば、こういうようにして、一万円近くもコストが下るのじゃないかという資料も作っております。しかし、われわれの見るところでは、そのやり方をやっていきましそも、そんなにコストが下るとは思いません。そういうわけで、やはりわれわれとしてはこの払い下げを進めていくということが、国営、官営の工場の操業をもっと合理化する効果的な方法である、これを中心にしてさらにいろんな合理化措置を進めていくということが、この際アルコール専売制度の合理化をはかっていく上において、一番有効な措置であるというふうに考えておるのでございます。
  49. 小川平二

    小川(平)委員 払い下げによって今後労働条件が引き下げられるのじゃないかということが、反対のおもな論拠のように承わりますが、先刻からの御説明によれば、おそらくこういうことは杞憂に属するのではなかろうか、こう思われます。  関連して、この際伺いたいのですが、今回のことについていろいろ、いわば威迫的な行為が行われておる。毎晩夜中に電話がかかってくるとか、あるいは抹殺してしまうぞというようなことを書いた投書がひんぴんと舞い込むというようなことを仄聞しております。かりにかようなことを職員がやっておられるとするならば、これは公務員としてもとより好ましいことではない。これから先、政府は既定方針を実行に移されることと信じ、かつこれを期待しておりますが、手続の進捗に伴って、たとえば現地調査というような場合に、志免炭鉱の場合に出て参りましたような、いわば人権じゅうりん的な行為というようなものが起ったときに、政府としてはどのように対処されるつもりであるか。
  50. 森哲夫

    森説明員 そういうお話がありました脅迫的な行為は、実はわれわれの身辺に起っております。そこでそういう場合には、さっそくそういう行為をしたと思われる側に対して警告を厳重に発しておるわけでございますが、今後もしこういう傾向がさらに強くなるというようなことになりますならば、われわれとしてはそれに対処して、さらに強い態度をとらざるを得ないと思っております。ただわれわれとしてはできるだけ従業員の諸君がわれわれの立場をよく理解されて穏健な行動に終始されることを希望いたしているのでございます。
  51. 小川平二

    小川(平)委員 いろいろお尋ねしたいことがございますが、だいぶ時間が経過しておりますから、そろそろ終結いたしますが、今までの御答弁を通じて、なぜこの際小林工場を払い下げなければならないかという点についてのお考えを詳しく承らしていただきました。また反対論の根拠も必ずしも常識を有する人間を首肯せしめるに足るものでないということもよくわかりました。この上は政府が自信を持って一日もすみやかにこの払い下げを実行に移していただきたいと切望しておりますが、万一これが労働組合その他の反対によって実現できないというような場合に、政府としてはどうするおつもりであるか、この程度のことさえ実行できないということであるならば、この際根本の問題として、現在の専売制度そのものをあらためて検討しなければならないのじゃないか、こう考えざるを得ないのでございます。一体アルコールが石油化学から出てくる、しかも石油化学からさらに低廉なアルコールが生産されてくるということは、疑いもなく画期的な技術の革新であります。技術の革新は言うまでもなく世界的な趨勢である。しかるに日本の場合においては専売制度のからに立てこもって技術の革新を阻害しておる、専売制度そのものが技術革新の桎梏になっておる、こう断定せざるを得ないと私は考える。そもそもこの専売制度が実施された理由は、先ほどの御説明にもありましたように、航空用燃料を確保したいという純粋に軍事的な目的からスタートしておる。今日に至ってもあるいは税収を確保する効果があるといわれる、あるいはまた横流れを防ぐんだというような御説明もあるようでありますが、わずか五億円足らずの税収というものは問題にならない。現在の専売制度を維持することによって生じてくるいろいろなマイナス面と比較すれば問題にならない数字であるといわなければならない。横流れ云々という取締り的な見地に至っては、今日アルコールを水でうすめて飲まなければならぬというような事情はもう全然存在しておらない。こういう制度をこれ以上維持していく必要があるかどうかという点について、私どもは強く疑念を持たざるを得ないのでございます。すでにタバコについても塩についても審議会ができておる。政府においては、この際根本にさかのぼって、今日の専売制度そのものを再検討してみるというおつもりがあるかどうか、この点を承わらしていただきたい。
  52. 森哲夫

    森説明員 御指摘のように現在の専売制度は必ずしも当初のようなはっきりとした業績を上げておるということは言いにくかろうと思います。そういう点については、先生の御説明はいろいろ考えさせられる点がございます。しかしながら、これも過去長い歴史を持って今日まで来たものでごさざいまして、いろんないきさつを持った制度でございますので、純理で割り切るわけにも参らないかと思いますし、さらに制度の本来の趣旨の一つでございますいろいろ販売上の取締り上の面から見ましても、にわかに専売制度をやめるという結論も出しにくいかと思いますが、しかしそのやり方等につきましては、相当根本的に考える必要があろうかと存じます。そういう点につきましては、今後われわれとしても広範囲の識者の御意見を聞きながら研究を進めて参りたいというふうに考えております。
  53. 小川平二

    小川(平)委員 以上で私の質問を終了いたしますが、いずれにいたしましても、操業度わずか三〇%というようなことでは、かりにこれが民間の企業であったなら、とつくの昔につぶれてしまっておる、倒産していなければならないはずのものでございます。こういうものをこれまで漫然と放置しておいたということに対して、私はむしろ政府の怠慢を責めなければならぬと思う。すでに方針を決定なさいました以上、この種の問題というものはじんぜん日をむなしくして、先へ延ばして行けば行くほど、ますますこじれて、解決が困難になるのでございます。この際既定方針に向って、一日もすみやかにこの払い下げを実行なさるように切望を申し上げます。以上で質問を終了いたします。
  54. 長谷川四郎

  55. 兒玉末男

    兒玉委員 私は小林工場払い下げ反対立場から、今までやって参りました通産省当局に対しまして、質問をしたいと思います。  まず、本日この重要な国有財産払い下げについて、商工委員会においてこの問題が取り上げられるということは、すでに早くから確定しておったにもかかわらず、なぜ本日大臣が出席しないのか、この点について見解を明らかにしていただきたいと思います。
  56. 大島秀一

    大島説明員 まことにごもっともだと思うのですが、実は大臣は前からすでに参議院選挙の応援ということが計画されておりまして、それに参ることになりましたので、まことに相済まぬとは思いますが、どうか御了承願いたいと思います。
  57. 兒玉末男

    兒玉委員 選挙のことをいえば、みんな忙しいわけでありまして、選挙と国有財産の払い下げのこの重要な問題に対しまして、そういうことを重いと言われることは、はなはだ私は心外でありまして、しかも商工委員会の開催を無視して選挙に出かけるということは、公私の分を誤まった考え方ではないかと思いますが、その点について次官はどういうふうに考えておられるか、伺いたいと思います。
  58. 大島秀一

    大島説明員 公私混同といわれますと、そのようなそしりもあるかと思いますが、しかしやはり選挙ということもなかなか重要な問題でありますので、やはりそのような点で出かけたわけでありますが、しかしそれに対しましては政府当局の者どもが十分御納得のいくようなお答えを申し上げてそれをふさぎたい、かように考えておりますが……。
  59. 兒玉末男

    兒玉委員 もちろん次官もその当事者であり、責任者でありますが、少くとも最高の責任者である大臣の見解というものを、この際はっきりしなければいけないということで、三月の初め開きました商工委員会の際にも、私は委員長を通じて、大臣御出席の上でこの問題に対する見解と所信をはっきり伺いたい。このこともすでに二カ月前から要望してあるわけでありまして、今度の措置についてははなはだ遺憾であります。この委員会を開会された委員長見解も、この際お聞きしたいと思います。
  60. 長谷川四郎

    長谷川委員長 御答弁申し上げます。委員会としては大臣の出席をお願いしておきましたけれども、大臣は何か所用の都合がありまして出席ができないそうでございます。もし大臣が御出席にならないで委員会の議事が進行できなければ、本日はこれにて閉会いたしますが、よろしゅうございますか。よろしければその通りいたします。あなたの御希望通りにいたします。私は委員長として御答弁申し上げましたから、それについてのあなたの御回答を承わります。
  61. 兒玉末男

    兒玉委員 次官の御見解を再度はっきりしていただきたいと思います。
  62. 長谷川四郎

    長谷川委員長 ですから、大臣の御出席がなくて進行できないとすれば、委員会は本日はこれで閉会いたします。
  63. 兒玉末男

    兒玉委員 そういうことは一つも言っておりません。
  64. 長谷川四郎

    長谷川委員長 大臣が出ていないのだから、いけなければやめます。  政務次官の御答弁はごもっともでございます。あまり正直過ぎるだけだ。あまり正直過ぎるから、そういうことになる。政治をやっているのだから、そんな正直に言わなくてもいい。みな同じことをやっているのだから……。  大臣がいなくても御質問をいたしますか。
  65. 兒玉末男

    兒玉委員 します。
  66. 長谷川四郎

    長谷川委員長 それじゃ兒玉君。
  67. 兒玉末男

    兒玉委員 私は小林工場の払い下げにつきまして、先刻、勝間田政審会長もこの問題の責任者として、橋日事業長を通じて、あるいは大臣に対しましても、社会党とアルコール専売組合とが、今後のアルコール専売事業の長期安定計画そのものについても十分な検討を加えておるので、この結論が出るまでは閣議の決定を待ってもらいたい。こういうことを事業長を通じてもはっきり言明してあるにもかかわらず、選挙公示直後の八日に、しかもどさくさにまぎれてこのような閣議決定をなぜ八日に行わなければいけなかったのか、このいきさつについて次官見解をお伺いしたいと思います。
  68. 森哲夫

    森説明員 手続の問題につきまして私からお答えをさせていただきます。従来からもいろいろ勝間田先生その他の方々に、この払い下げの必要性につきまして、またその他のこれに関連する事情につきまして御説明を申し上げたりなんかしていたのでありますが、実は払い下げを前提としてわれわれが考えておりますことは、先ほど申し上げた通りでございますが、もしこの払い下げを実行するといたしますと、買い受けた工場が、秋にできるイモを買って生産をするということを計算しなければならないのでありますが、それから逆算いたしまして、いろいろな手続の進行状態を考えてみますと、どうしても五月の初めごろに払い下げの方針をきめなければ間に合わないということになったのでございまして、決してどさくさにまぎれてやったわけではございません。どさくさまぎれが別にあるとも考えておりませんが、ともかくそういうスケジュールを逆算してみまして、五月上旬ということをきめた次第であります。なおまたアルコール専売制度の改善の根本策について、いろいろ皆さん方で御研究をいただいておりますが、それはこの払い下げがきまりましても決して手おくれだということにはならないのでありまして、さらに引き続いていろいろ専売制度の根本につきましては、やはり考えていかなければならないというふうにわれわれは存じておるのでございます。
  69. 兒玉末男

    兒玉委員 私は根本的な問題については、あとの方でいろいろと見解をかわしたいと思っておるわけでありますが、この払い下げをめぐる内部的な問題について若干の質問をしたいと思うわけであります。  まず第一点としまして、昨年十二月十八日に橋口事業長が組合に対して、小林工場は本坊酒造に払い下げるのだ、こういうことを通告されたそうでありますが、指名競争入札も行われていないこの時期において、どうしてこのような特定会社の名ざしを行なったのか、私はこれは非常に疑惑を招く最たるものだと考えますが、次官並びに事業長はどのような立場からこのような言明をしたのか。はっきりと一つお答えを願いたいと思います。
  70. 森哲夫

    森説明員 そういうことを正確に言ったことはないと思うのでありますが、ただ十二月の終りに、本坊酒造がこの払い下げの希望者として出現しているということは言っておると思いますが、これに払い下げるんだということは、これは言えるはずはないのであります。指名競争入札で払い下げを受ける者がきまるのでございますから、そういうことは言えるはずがございません。言葉というものはとり方でどうにもなりますし、あるいはとられた方がそういうふうにおとりになったのかもしれませんが、われわれの申し上げたことは本坊が有力なる払い下げの希望者として現われておるということでございます。
  71. 兒玉末男

    兒玉委員 やはりこれに関連してでございますが、この小林工場の払い下げ問題というのは、私も地元の関係でよく経緯を知っておるわけでございますが、昭和三十一年でございましたか、このときにも払い下げ問題が起きましたが、今問題となっている本坊酒造の現在の工場の経営内容なり、あるいは資本その他の状況から判断して払い下げを受ける能力はない、こういうことで前事業長の場合においても、組合の反対等のない前に、すでに不可能だということで払い下げを中止した事実もあるわけでございます。わずか二年足らずで、そんなに事業の内容が急変するわけはないわけでありまして、その辺の経緯についてどのような見解をとってきたのか、はっきり一つお答えを願いたいと思います。
  72. 森哲夫

    森説明員 前回と申しますのは一昨年でございますが、唐津の近所にある大津アルコール工場の払い下げを行いました。そのときに希望者を募ったのでございます。本坊の希望もそのときに集めたのでございますが、本坊はむしろ小林工場の払い下げを当時希望しておって、大津工場の払い下げを希望しなかったということで、前回の大津工場の払い下げの場合は、本坊が具体的な払い下げ希望者として登場しなかったのでございます。その間の事情が誤まり伝えられて、あるいはそういうふうなことが言われておるかと思いまするが、これは誤まりでございます。
  73. 兒玉末男

    兒玉委員 今の局長のお考えは、私は多少疑問の点があると思うのです。三十一年のこの小林工場の払い下げは、前に防衛政務次官をした小山代議士もよく知っておるのでありて、そういう事実がなかったという局長の回答には、よく納得ができないのですが、どうですか。
  74. 森哲夫

    森説明員 大津工場の払い下げが最後に実現したのでございますが、当時本坊は小林工場を希望しておったのです。政府としては当時小林工場の払い下げは具体的な問題として取り上げるのはまだ尚早であるということで、小林工場の方は問題にしなかったのであります。そうして大津工場の方の払い下げを決定したのであります。そういうわけで、本坊が希望しております小林工場の払い下げというのは、当時は実現しなかったわけでございます。
  75. 兒玉末男

    兒玉委員 その点は見解を異にしておるようでありますが、次にやはりこれは本坊に関連することでございますが、今度の小林工場払い下げをめぐりまして、相当以前から本坊が工作をしているということが、地元の新聞等においても再三報道されたし、また現在西諸、小林を中心として本坊酒造が約三千石の販売をやっておるわけでありますが、それらの点からいろいろと疑いをかけられる点もあるわけでございますが、特に組合へ払い下げの意図を事業長が通告をする前に、大蔵省のある人の紹介状を持って事業長は現地に行かれて、そしてこれははっきりと新聞にも出たわけでございますが、本坊が払い下げを受けた場合に、この小林工場の重要ポストに——今度の払い下げの一番推進役となっておる小林商工会議所の朝廣専務と飲食をともにしており、また十二月の十四日に組合に払い下げを通告して、その足で現地に行った場合に、鹿児島市の料亭のつるやというところで、産省当局の古澤管理官、それから松下課長、立野工場長、それから本坊側が五名、深夜までこういうことについて話し合いをしたという事実もあがっておるわけでございますが、これなんかは私は非常に公務員としてそのとった行動というものが軽率ではないか、このように考えるわけでございますが、どうですか。
  76. 森哲夫

    森説明員 本坊がこの小林工場の払い下げを受けようとしていろいろ通産省にも話に参りましたことは、これはありますが、これは当然のことだと思いますし、また当方から本坊に対していろいろ話をするということも当然だと思います。ただいま御指摘のありましたような事実につきましては、これが真実でありますかどうかについて調査をいたさないといけないと思いますけれども、しかしただまあその場所が非常に問題にされておるのでございますけれども、少くともこの話し合いをする場合に、何か政府がこの払い下げによって一つの利権的なものによる利益を得ようと考えていた、そういうことは毛頭ございません。これは天地神明に誓って申し上げられます。こういう程度の工場で、そういうふうな問題が起るはずがございません。それを大げさに取り上げるのはどうかと思うのであります。私としてはそういうことを言われまして、もしそういうことがあるとすれば、疑惑を受けるようなことは極力避けなければいけないという反省は感じますけれども、ただそれだけの事実で、何かいかにも汚職的なものがあったということを勘ぐられるのは、はなはだ心外でございます。ちょっとその点申し上げます。
  77. 兒玉末男

    兒玉委員 私は汚職的なものがあったということは一口も言っていないつもりであります。そういうような行為は公務員としてすべきことじゃないじゃないか、こういうことに対する見解を問うたわけでありまして、よく質問の中身を聞いておってお答えをいただきたいと思います。  次に、これは現在本坊がすでに小林工場の払い下げを前提としての準備行為として受け取られるような節があるわけでありますが、私も専門家でありませんけれども、たとえば何か蒸溜装置のアロスパスとかいら相当の金額を要する機械の工事もすでに進捗している、こういうことも聞いているわけでございますけれども、これはもしこの本坊の払い下げが実現しなかった場合等にはきわめて重要な問題にもなるわけでございますが、この辺の見解についてどういうふうなお考えをお持ちかお聞きしたい。
  78. 森哲夫

    森説明員 もちろんそうおっしゃるからにはきちっとした事実をおつかみの上で言っていらっしゃると思います。それを示されてからお答えを申すのが正しいかと思いますが、しかしその前に申し上げておきますけれども、政府は本坊に対してこれを払い下げなければいけないという拘束は全然ございません。そのことだけを申し上げておきます。
  79. 兒玉末男

    兒玉委員 それから次にこれは多少不当労働行為にも該当する事項でございますが、橋口事業長が本坊への払い下げを組合が認めるならば、その代償として組合に三十万円贈るということを言明して組合の懐柔策をはかったということが判明しておりますし、またこのことはテープ・レコーダーにも録音してあるわけでありますので、この点については、これは労働組合法第七条によりましても明らかに不当労働行為と断定されるわけであります。こういうことについての真偽を私はこの際明確にしておいていただきたいと思います。
  80. 橋口隆

    ○橋口説明員 今の問題にお答えいたしますが、それは非常に心外な話でございます。三十万円という金を実際上提示しようと申し上げたことは絶対にございません。ただ組合側が今回反対いたします最大の理由は、組合本部でございますが、組合の財政が窮迫して困るというような話がございましたので、それならばその問題は別途に考慮すべきではないか、もし省としてもできることであるならば、一つ御相談に乗ってもいいということでございました。具体的に三十万円を提示しまして、それをどこかから持ってきてあてがうというような不当なことは毛頭いたしておりません。
  81. 兒玉末男

    兒玉委員 この点については私はいずれまた今後の問題として追及していきたいと思っているわけでございます。  それから、特にこれは先ほど局長の言明もありましたが、この払い下げを行なった場合に、払い下げを行う対象の工場に対しましても専売アルコールの製造権を与えてやる、こういうことも回答の中にあったようでございまするけれども、そういうことになりますると実質的に経営合理化、コスト切り下げの意義がきわめて薄くなってくるやに考えるわけでございますが、その点についてはどのような見解をお持ちであるか。
  82. 森哲夫

    森説明員 払い下げを受けた工場が、その操業開始直後に円滑に事業がやっていけるような配慮を、政府としてもやはりする必要があると思います。そういうわけで、場合によって違いましょうが、小林工場の場合、政府としては、アルコールの製造権を一部期間を限ってつけてやるということは、ひいてはこの工場で働く労務者にも幸いすることになるというふうに考えるのであります。もちろんこれは現在作っているのと同じ量を永久に作らせるのでは、官営工場の操業度を引き上げる目的をほとんど達成しませんので、そういうばかなことをする考えは持っておりません。
  83. 兒玉末男

    兒玉委員 では実質的にこれから払い下げが行われる過程において当然起り得る問題でございますが、当初の経営が安定するまでに大体どの程度のアルコール専売権の量というものを考えておるのか、その点を一つお聞きしたいと思います。
  84. 森哲夫

    森説明員 これは払い下げの話を具体的にきめる際に、先方と交渉しなければいけないことでありまして、ここでその条件を公表することは避けさしていただきたいと思うのであります。しかしながら当分の間はその工場の生産量が倍になるのに役立つ程度のものは考えていかなければなるまいと思っております。これは払い下げの相手がきまってから具体的に切り出していきたいというふうに思っておるのであります。
  85. 兒玉末男

    兒玉委員 それからこの払い下げの問題をめぐって、通産省の内部においても、たとえばこの推進役である事業長直属の管理官あるいは班長等が、これはなかなか問題が困難であるということから、事業長に対していろいろと勧告もされたやに私たちは聞いておるわけでございますが、そういう下部の意向を全く無視して、あくまでもこれをやるのだという、何と申しますか権力的な払い下げの意向というものが進められている、このように私は理解をしているわけでございますが、それらのことについてどのような見解を持っておるのか伺いたい。
  86. 橋口隆

    ○橋口説明員 私の直属の部下との間に、意見の食い違いがあったということは全然ございません。この一工場払い下げ、また小林工場を払い下げるということにつきましては、班長以上の幹部は全員一致してこれを支持いたしております。これはおそらくどこかから出た分裂工作にすぎないものとわれわれは考えております。全員一致、現在でもその態勢で払い下げを推進してい為実情であります。
  87. 兒玉末男

    兒玉委員 それから先ほど局長が回答の中で、小林工場が払い下げの対象となった理由として、最も操業度が低い、それから地理的条件も一番悪い、こういうことを言われたわけでございますけれども、これは通産当局の資料にも明らかでございますが、たとえば数字をもって申し上げますならば、この小林工場のカンショ使用の場合の優位性というのによりますと、他の工場ば澱粉化の場合には一九・五%から二五・一%、小林工場の場合は二六・五%になっております。それから精製歩合の場合においても、他の工場の平均は九〇・五%から九二%、小林工場の場合は九三・七%になっております。また原料使用の場合の製品一キロリットル当りの使用量から見ましても、他の工場は千四百九十五貫から千六百二十貫、小林工場の場合は千四百四十七貫、こういう数字が三十三年の統計で出ておるわけです。こういうふうに最もカンショの生産地であり、しかも地理的にも恵まれておる小林工場は、先ほど言われた回答とは全く相反するものであります。鹿屋の工場等と比較した場合には、能率その他においても、むしろ小林より悪い、こういうふうに判断するわけであります。同時にまた稼働率がわずか三〇%しかない、こういうことについてはこのような優位性のある工場であるにかかわらず、製造量の配分において作為的に小林工場が稼働率が低いようにやっておるのじゃないか、こういう誤解あるいは疑惑を持たざるを得ないのでありますが、このような点についてどのような見解を持っておられるか伺いたい。
  88. 森哲夫

    森説明員 先ほど申し上げましたように小林の周辺のイモは非常に質がよろしいのです。その歩どまりは非常にいいということはわれわれも存じております。しかし商品として消費地に送るまでのことを考えなければいけませんし、送るまでのことを総合してみますると、小林の操業をあまり高くして、たとえば関東地方あたりの千工場の操業度を下げるということにいたしますと、官工場のアルコールのコストを高める結果になるわけであります。そういうわけで小林工場の操業度が抵いのでございます。  それから払い下げの対象として選ぶ場合には操業度の問題もそうでございまするが、一方買手の事情も考えなければならないのであります。買手のない工場を払い下げるということはできないわけでございます。やはり希望者があるということも一つの選定の理由であります。買手のない工場を払い下げても企業はやっていけないことになるわけですから、買う方の側も工場を買い受けてペイするような見通しを立てなければならないのですが、そういうふうな人が現われてこなければいけないわけなんです。これは小林工場以外にもいろいろ買いたいという希望者が現われたということは、これまでにもございまするけれども、しかしそれらはどうもひやかし的なものであったり、こちらも信頼しがたいような脆弱な企業者だったりすることがございまして、そういうものはみんなお断わりしておるような次第であります。それらの工場の生産条件、販売条件なり、また払い下げを受ける側の希望者のいろいろつな事情が合さって小林工場が選定されたということになるわけでございます。
  89. 兒玉末男

    兒玉委員 今の局長見解はきわめて私は遺憾だと思います。この拡い下げの根本をなすものは、経営の合理化であり、コストの切り下げだということを盛んに表向きには宣伝しておきながら、今度は売る立場になったら、相手が買うような工場を払い下げなくてはいけないというのでは、全くこの基本的な方針と矛盾する見解だと私は指摘せざるを得ないわけであります。なお先ほど私が質問した中で、鹿屋工場との比較の点についても一つ回答していただきたいと思うわけでございます。
  90. 森哲夫

    森説明員 私は買い手の都合だけを考えてきめるということは言っておりません。両方考えてきめると言っているのであります。たとえば関東地方に非常に優秀な工場があります。これを買いたいという人がありましたが、これはこちらの都合を考えて断わっております。これを売ったのでは、国営アルコール工場のコストが上る一方であります。ですから両方のことを考えてきめておるので、おっしゃるような一方的なことだけをとって御判断を願わないようにお願いいたしたいと思います。そういう意味で鹿屋工場のごときは、そういう二つの条件がそろっていないのであります。従って今回は小林工場が問題になってきたのでございます。
  91. 兒玉末男

    兒玉委員 ではこれに関連して、五月十六日の南日本新聞、これは鹿児島の地方新聞でございますが、この新聞に「もめる小林アルコール工場払下げ」という見出しで、いろいろな見解が書いてございますが、最後に橋口事業長が、アルコール専売制度についての談話を発表しております。この中において特に私が不審に思うことは、鹿児島県の出水、鹿屋の工場はぜひとも残したい、そして小林工場を払い下げることによって、他の工場と専売制度を維持していきたい、こういうことが東京支社の渋谷記者の責任において発表されておるわけでございますが、私はこういう発言こそは、全く政治的な発言としか受け取れないわけであって、自分の出身県の工場を払い下げないで、小林を払い下げる、こういうこと自体が、今までやってきたことを裏書きするような事業長の発言だ、私はこういうふうにとらざるを得ないわけであります。この点についてどうお考えですか。
  92. 橋口隆

    ○橋口説明員 その点は非常に重大な誤解があると思います。私は別に新聞に発表したわけではございませんが、地元の新聞が鹿児島の工場はどういうふうにするつもりか、こういうふうに聞かれましたので、今回は小林の工場を払い下げて、すぐ鹿児島県内の工場を払い下げるわけではない、もしできるものならば、今回小林の一工場を払い下げると、これによって、専売制度も多少維持できるし、あるいはまたほかの工場も払い下げをしなくて済むのではないか、こういうような談話を申し上げた次第でごさざいまして、私が出身地である鹿児島の工場を払い下げないと言明したわけでは絶対にございません。
  93. 兒玉末男

    兒玉委員 ではこの新聞の報道は誤まりだということになりますか。この点は非常に重大な問題でございますが、こういう談話の発表はしなかったということではないわけですね。
  94. 橋口隆

    ○橋口説明員 新聞記者の御質問に対しまして、私が先ほど申し上げたような意見は申し上げましたが、ただその記事をまだ拝見しておりませんので、それがすぐ誤まりだと申し上げるわけには参りません。
  95. 兒玉末男

    兒玉委員 それから、これはおそらく官側の出した新聞でございますが、四月二十七日のアルコールニュースによりますと、今度の小林工場の払い下げによって、残された七つの工場でございますか、この工場の経営なりあるいは今後のアルコール専売事業に対する合理化というものは、きわめて私は不見識なものだと考えるわけであります。というのは、このアルコールニュースの中の三ページの下の方にこういうことが書いてあるわけです。小林工場の払い下げを行うことにより、少くともここ一、二年は、これら非常に生産コストが低いとか、あるいはアルコール専売はやめてしまえとか、こういうふうな批判の鋭鋒をかわすことはできると思われる。こういうふうに、いわゆる一時の小手先の考え方によって、小林工場をこの際切っておけば、何とかここ一、一年は言いのがれできるわいというふうなことを、当局みずからが自分の新聞に書いていることは、アルコール事業に対する計画性のないところの態度だと私は指摘せざるを得ないのでございます。この点について当局はどのような見解でこのようなニュースを出したのか、またこのこと自体が、結局小林工場の払い下げというものが、ただ名目的な払い下げである、一時を糊塗するための払い下げだとしか断ぜざるを得ないわけでございますが、この点についてどのような考えを持っておりますか。
  96. 森哲夫

    森説明員 先ほどほかの先生の御質問に対してお答えいたしましたように、アルコール専売事業の問題は、小林工場の払い下げを決定して、それで完全にピリオドが打たれるものであるとは思われません。このことはおそらくどなたでも、大体良識のある方なう御理解できると思います。そぢいう意味でその記事をごうんいただきますなうば、御了解願えると思うのであります。確かに合理化の一つの有効な方法として、小林工場の払い下げはやろうといたしておるわけでございますが、しかしそれだけで事終れりとはわれわれは考えておりません。いろいろな合理化方策をなお検討していかなければなりません。そういうふうな考えが現われて、そういう文章になったのでございまして、別に一時のごまかしのためにやるとか何とか、そういうふうなひねくれた考え方はわれわれはいたしておりません。
  97. 兒玉末男

    兒玉委員 私は局長の回答はきわめて不満であります。みずからがPR活動のためにやっているこの情報において、一、二年はこれうの批判の鋭鋒をかわすことができる、こういうことでは、全く自分の事業自体に対する誠意を私は疑わざるを得ないわけであります。こういう考え方について非常に不満であります。  次に、少くとも払い下げを希望されておる、先ほど話がありました本坊のほかに三楽酒造でございますか、こういうところが申請をしている模様であります。しかもこの場合において、特に受け入れ側の態勢がきわめて重要な問題になってくるわけでございますが、われわれの方で調査したところによりますと、本坊酒造の現在の実情というものは、全く今の小林工場の組合の諸君が心配するのももっともだと、こういうふうな事態がたくさんあるわけでございます。たとえばその労働条件にいたしましても、ほとんど十二時間くらいのオーバー労働によって、辛うじて賃金直しをやっている。それから、大体働く期間というものが六カ月くらいで、あとは首を切って、そして失業保険によって食っている人が大多数である、こういうことが調査の結果判明いたしておるわけでございます。もちろんわれわれは、何も本坊を特定の払い下げ対象としているわけじゃないのだ、こういうことをあなた方は先ほど来再三言明されておりますけれども、少くとも今日閣議決定まで持ってきた以上は、こういう相手の三楽なり木坊の労働条件等についても、十分調査の上でそういう態度を決定されたと、私はこのように判断するわけでございますが、こういうふうな不安定な労働条件のもとにあるのが木坊であります。おそらく入札の結果は本坊に行くだろうということを、私は九九%予想するわけでございますけれども、そういう点から判断した場合に、このような本坊が果して買い受けの対象たる資格を十分に持っておるかどうか、その辺の見解一つ具体的に御説明いただきたい。  それからもう一つ私が疑問に思っているのは、申請している工場の経営内容につきまして、先ほど申し上げた四月二十七日のアルコールニュースにおいて指摘されておるようで、ありますが、非常に本坊の方はこまかくその内容が書いてある。ところが三楽の方は、抽象的な表現だけしか書いてない。こういうふうな部内の従業員に対するPRの仕方そのものにも、非常に公平を欠くような仕方でやっている、このように私は指摘せざるを得ないのであります。少くとももし二つの工場を比較して、その経営内容を従業員に知うせて、安心していけるような態勢を作ろうとするならば、当然申請している本坊と三楽の工場の経営内容というものは平等に公開すベきではないか、この二つの点について見解をお伺いいたします。
  98. 森哲夫

    森説明員 本坊にもし払い下げが決定した場合に、従来の従業員がこれまでよりも不幸になるということがないようにわれわれとしては十分の調査をいたしたのでございます。資産関係その他はもちろん労働条件につきましても調査をいたしております。今お話のあったような、これは臨時雇いのことについて言っておられるので、しょうが、少くとももし小林工場が本坊に払い下げられるとするならば、現存の従業員がそういう不安定な状態になるということはわれわれとしては許さないつもりであります。また木坊とてもそんな考えは持っていないと思っております。労働条件についても、いろいろ条件といいますか給与等につきましても調ベておりますが、現在より悪くなることはありません。同じベースで考えれば若干よくなるというふうにわれわれは考えております。ただ年令その他条件が違うために、いきなりよりよくなるということは言えないのですが、換算してずっと計算いたしますれば、むしろ現在よりは若干よくなるのではないかといろふうに思っております。  それから本坊に九分九厘まで行くように先生お考えのようですが、われわれはそういうふうには考えておりません。三楽についてもわれわれは有力なる払い下げの候補者として考えておるわけでございます。そのニュースの方には三楽のことをあまり書かなかったというのは、三楽に行く可能性が少いかう書かなかったというのではなくして、三楽は大体だれもよく知っておるこれはもう屈指のメーカーでございます。今さら紹介するまでもないということで書かなかったのであろうと思います。とにかく木坊の方に九分九厘まで行くというような前提で、いろいろお考えいただきますと、われわれの方も大へん困るのでございます。
  99. 兒玉末男

    兒玉委員 局長はその本坊の情勢についても詳しく調査されておるように回答されたし、また払い下げ後もそのような心配はないというふうに、ほとんど断言されるような回答をされましたが、私はやはり民営の企業なりあるいはこの基盤の脆弱性、こういうもの等から判断しましても、これはきわめて従業員が不満を持つのは当然だと思うわけであります。しかも過去の、たとえば北海道等の場合においても、わずか払い下げ後二カ月でございますか、ついに工場が閉鎖して三百名の従業員が路頭に迷ったという事実もあるわけであります。こういろふうな点について、もう少し私は確たるところの資料というものを整備して、しかもまたこのような北海道等の場合においても全く野ざらしにされておるというような、こういう過去の苦い経験というものを十分に御理解されておると思うのですが、こういうような場合について、ほとんど当時の責任者というものは責任をとらない、ただ払い下げをされて路頭に迷った従業員だけが不幸を見て、当時の担当官というものは知らぬ顔をしておる、こういうことは絶対に私は許されない人道上の問題だと考えるわけでございますが、こういう北海道等の前例もあるわけでありますから、その辺の最悪の場合ということも一応考慮に入れて慎重なる配慮をすべきであると思うのですが、その点に対する見解をお伺いしたいと思います。
  100. 橋口隆

    ○橋口説明員 ただいまの北海道の例でございますけれども、その当時は一般競争入札でありまして、指名競争入札にしなかったのでございます。それで多少そういうような欠陥を生じましたので、その後の三工場の払い下げに当りましては、非常に慎重な態度をとりまして、常に指名競争入札を公正に行うということによって、そういうおそれがないようにいたしております。今回も近く入札の指名をするわけでありますが、それは大体資産、信用の最も確実な数社に対してこれを出すわけであります。その点の調査は私ども十分にやりまして、再び北海道の轍を踏むようなことのないように努力したいと考えております。
  101. 兒玉末男

    兒玉委員 それから私特にお聞きしたいのでございます。この前勝間田政審会長からも言われた通り、今後のこの長期安定計画というものについて私はお聞きしたいのでございますけれども、少くとも今度の小林アルコール工場の払い下げによって生ずるコストの切り下げというものは、結果的には二千円程度だということを局長は言明しておるわけでありますけれども、少くとも私は今後のアルコール専売事業の本質というものから考え、また千三百名でありますか、二十四年間つちかって参りましたところのこの技術者というものを有効に生かすためにおいても、もう少し私は閣議決定の前に慎重なる配慮と、それから今社会党と専売労組が考えておるところの安定計画についても、もう少し慎重なる討議を重ねて、そうしてアルコール専売の将来に対する対策というものを考えることが、最も建設的な行き方ではないかと私たち考えるわけであります。しかも働かせれば働くだけの能力もあるし、さらにはまた小林の立地条件が悪いとは言っておるけれども、実質的には、たとえば鹿屋工場との比較から考えましても、むしろ地理的条件等についても、小林工場等については有利な立場にあるように私は考えるわけであり、しかもまたカンショの生産から申しましても、南九州においてはむしろカンショ生産の最多量生産地であって、そういう点から考えた場合、さらにまた民間企業に対するところの一般地域住民の信頼の度合いと、それから官営工場に対する信頼の度合い、あるいはまたカンショ購入の際に一定の価格を維持する官営工場の場合は、むしろ他の民間業者の農村、農家のカンショ買いたたきに対しましても、これを抑制する役割を今日まで小林工場は果しておるわけであります。そういうような農村政策の面から考えましても、さらにこの安定計画について検討する意思はないのかどうか、また先ほど新聞でも指摘されておられる小林を切ってもすぐ来年、再来年には再びこのアルコール専売の問題が当然上ってくる、こういうことを考えるならば、一時しのぎのこそくの手段ではなくて、やはり長期にわたる専売事業の根本的な問題から検討し直すべき段階に私はあろうと考えるわけであります。そういう点から何も小林だけを急いで払い下げる必要は認めない、こもいうふうに考えるわけですが、その点についてどう考えるか。
  102. 森哲夫

    森説明員 アルコール専売事業の遠い将来を考えて根本的な検討をいたすことは、その必要をわれわれも大いに認めております。場合によっては専売制度の根底をゆるがすことになっても仕方がないとわれわれは考えております。そういう根本的な検討を今後進めていきたいというふうに思っております。ただそれをやってしまうまで工場の払い下げという、現在考えられる合理化としては一番効果のあるものをやめておけということは、私は筋が通らないと思います。これはより効果のあるものはどんどんとやっていくベきものであって、いろいろな施策を並行的にやはり進めていくということが一番いいやり方であると私は考えます。これまでも申し上げましたように、小林工場の払い下げだけで問題が片づくとは思っておりません。さらに根本的な検討を今後加えていきたいというふうに存じております。
  103. 兒玉末男

    兒玉委員 一つ回答が抜けておったと思うのです。われわれが考えておる安定計画、こういうことについて今後一つ話し合いをしていく、そういう考えはないか、そのことについても見解を伺いたい。
  104. 森哲夫

    森説明員 アルコール事業の長期安定策につきましては、衆知を集めて研究をいたしたいと思っております。その意味でいろいろな政界の方あるいはまたわれわれアルコール事業内部の組合の諸君などのお知恵も拝借をしていきたいと思っております。ただ今日提出されておりまする一九五九年五月と銘打たれた長期安定計画、私もこれをちょっと勉強してみ策したが、これは非常に誤まった考えが中に入っておる。官営工場の操業度を民営工場の生産量を減らすことによって上げる、それによって労務費が非常に節減される、一万円節減される、こうありますが、こういうばかなことはあり得ないのです。アルコール専売事業全体の固定費は、官営工場の固定費を下げるために民営工場の操業度を下げて、そのかわりに民営工場の固定費を上げるということにいたしましても、アルコール専売事業全体の固定費というものは変らないのです。そういうようなものを、ただ官営工場についてだけ見まして、官営工場の操業度を上げることによって、これだけの固定費が減るということをそのまま使っておりますが、そうして、半面、たとえばパルプ廃液等を利用する工場の操業度をむしろ下げる、それによってコストが相当上るはずですが、それは企業合理化であまりコストが上らないようにするとか、そういうふうな考え方でやっておったのでは、なかなか実行可能な安定方策というものはできないと思うのであります。いずれにしろ、もう少しわれわれも、今後根本策につきましては組合ともよく話をし、またそのほか、各方面の識者と御意見の交換をいたしながら、研究を進めて参りたいというふうに考えます。
  105. 兒玉末男

    兒玉委員 そういう考えであるならば、なおさら私は、従業員が猛烈に反対し、しかも地元においては、さほど反対ないということを言われましたが、すでに一万人以上の、農民を含めた反対の署名もあるし、またこの払い下げの推進となった商工会議所におきましても、組合が調査した結果によりますと、朝廣専務を中心とする一部幹部の策動であったということもはっきりと指摘をされておるし、しかも私はここに商工会議所会員の署名簿も持ってきておるわけでありますが、そういうふうに地元の一部の役員の行動によって、この払い下げが推進されておる。しかも地元においてはその商工会議所の会員の七割近くが反対しておるということは、はっきりいたしておるわけでありますが、このように、地元が切実にこの問題については、反対もやっておる。しかも市議会におきましても、この取扱いについては慎重なる態度をとってもらいたい、こういうことを、通産大臣に対しましても先刻陳情書が来ておるはずであります。そういうふうな地元民の意向というものを全く無視して、あのような強硬な対策によって、閣議決定といろ網をかぶせて、あとはもうどうもできない、こういうふうな権力的なやり方については、私は絶対に納得はできないわけであります。そういう点から考えまして、またもう一つは予算の措置等も、ことし一年間はちゃんと組んである。多少の人員の削減はあるようでございますけれども、そういう点から勘案しましても、何も急いで小林だけを無理やり払い下げする必要はないのじゃないか。ほんとうにアルコール工場全体の立場から判断をするならば、ここ一年間、じっくりと今後のアルコールの問題に対して根本的な立場から検討して、そうして一千三百名の従業員が安んじてこの事業に能力を上けるような対策をとることが、そのような思いやりのある態度こそが、私は通産当局のとるべき道じゃないか、このように考えるわけでございますが、その地元の反対の関連、あるいは向う一年間さらに検討するまで、この払い下げ問題を一応白紙に返す、ころいう態度を私はとってもらいたいと思うわけでございますが、これに対する見解を伺いたい。
  106. 森哲夫

    森説明員 地元民の反対のことを申されましたが、それぞれの立場によりまして、反対される方もございましょう。しかし、賛成される方もございます。われわれはそれを総合してみまして、地元民は決して反対しているのじゃないというふうに考えております。もちろんこれは、根本的には、先ほど来いろいろお答え申し上げたように、アルコール事業の合理化をやるために、そのやむを得ない要請から出てきておるのでございまして、幸い地元民も大多数支持をして下さっておるのでありますから、われわれとしては、これを実行していきたいというふうに思っておるわけであります。  また予算の話も出ましたが、これはそれでは払い下げを前提にして予算をことし計上しなかったとしたならば、一体どういうことになりましょうか。ますますこれはお言葉のような非常に権力的な払い下げを実行するということになるわけであります。われわれとしてはできるだけ円満に話を進めていこうというつもりで、予算の人員、その他はそのまま計上いたしてあるわけでありますが、しかし万一の場合を考えまして、この払い下げの実現した場合のいろいろな退職金その他のものもこれは計上してございます。そうでありますので、予算の関係では、われわれの立てた拾置が適正であったように思っておるのでございます。まあいろいろこれまで長時間お答え申し上げましたが、それによって御了察いただけたように私は存じておりますが、やはり小林工場の払い下げは、閣議決定の線に従って今後とも実行を進めて参りたいというふうに考えております。
  107. 兒玉末男

    兒玉委員 これは非常に大事な問題でありますが、今局長は、地元の多数の方が払い下げを希望している、こういうことを言われましたけれども、私は少くともそういう事実について、それではいかなる具体的な資料によって地元民の多数が賛成しているということを言われるのか、その辺の具体的な資料をそれでは一つ呈示していただきたい。  第二は十四日でございましたか、勝間田政審会長並びに総評、アルコール専売組合の代表と大臣の話の際において、責任者である勝間田会長が結論的に払い下げを了承した、こういうようなことを通産省の方で各工場に流している、こういうことを聞いたわけでございますが、これはきわめて重大な問題であって、だれがそういうことを流しておるのか、そのことを一つはっきり言ってもらいたいと思う。
  108. 森哲夫

    森説明員 地元民の意向を察知する方法としてはいろいろございましょうが、しかしわれわれとしては商工会議所とかあるいは市役所の当局、そういう方々の御意向を承わって、地元民の世論を推定いたしておるわけでございます。私もこういう方々と会って話をいたしております。そういうことで地元の方も有力な方は賛成しておられるということを申し上げたわけであります。  それから第二の点でございますが、これは私どういうところからそういうことが言われておるのかちょっとわかりません。従って今すぐお答えいたしかねるのでございますが、よく調査をいたした上でお答えいたしたいと思います。
  109. 兒玉末男

    兒玉委員 第一の回答については、有力者と言っておるけれども、これは全く一部の商工会議所の会頭とか専務であって、しかも市当局も賛成しておるようなことを言われますけれども、市当局においては特別委員会を設けて、そうして非常に問題の重要性を認識して、大臣に対しては慎重なる態度をとってもらいたいという要望があるのを、局長としてはこれは賛成だというように考えることは、きわめて軽率だと私は指摘せざるを得ないのであります。こういう点についてはどうしても納得できない。そこで今までいろいろと指摘をして参ったわけでありますが、これからお聞きしたいのは、特に今度の小林工場の払い下げの動機というものは、いわゆる名目だけは確かに合理化ということを表看板にしておるけれども、私は利権的なにおいがふんぷんとするということをまず指摘をしたい。  次に労働者の首を切らなくても、あるいはこの工場を閉鎖しなくても、事業の安定ということは考えられるというわれわれの主張を、さらに当局側も検討し、また一緒にこの問題を検討して、この問題は一時保留をしてもらいたい。  それから次に、小林はすでに創立後二十年になるわけでありまして、あと二、三年で年金のつく人たちも相当おるわけであります。しかもこの人たちは今までの低賃金に甘んじながら、やはり老後の生活保障という立場から営々として働いておるわけでございますが、このような永年勤続者であと二、三年で年金のつくような人たちに対する処遇ということについても十分考えるべきであるが、このような点については、どのようなお考えを持っておるのか、お伺いしたいと思います。
  110. 森哲夫

    森説明員 この払い下げの問題について利権のにおいがするということを仰せられますが、それはどういう事実に基いておっしゃっておられるのか、その事実をお示し願った上で、私の方は検討いたしたいと思いますが、少くともそういう話は通産省に関する限りは、全然私はにおいも承知いたしておりません。そういうふうに事柄が変な衣をかぶせられて世間の人の誤解を受けるようなことは、われわれも非常に残念でございます。そういうことをあまり簡単に言っていただきたくないと思います。  それから人員の整理をしない、つまり払い下げをしないでもということでしょうが、払い下げをしないでも合理化ができる方法があるんだから、それがはっきりするまでは払い下げを留保せよ、これも今までいろいろ申し上げたことで尽きておると思います。重ねて申し上げませんが、組合の最近出した合理化長期計画書を見ましても、これらははなはだ信頼しがたいものであり、もう少しお互いに検討しなければいけないと思います。それはゆっくりわれわれも検討いたしたいと思っておりますけれども、しかしその結論が出るまで小林工場の払い下げを留保するということはいたしたくないと思っております。なお従業員の処遇につきましてはいろいろ御要望の点に極力沿うように努力をいたしたい、かように思います。
  111. 兒玉末男

    兒玉委員 そこで私は今度は次官に、——きょう大臣がいないので非常に遺憾に思っておるわけでございますが、少くとも今まで指摘した点あるいは地元におけるところの農民の不満、不安、それから従業員の将来に対する生活の保障そのほか小林市議会が大臣に対して要請しておりますところの慎重なる態度をもって考慮してほしい。また商工会議所における払い下げ要望書の中身というものが一部幹部の運営によってなされたものである、こういう事実がはっきりいたしておるわけでございますので、この際一つこの払い下げあるいは指名競争入札をする以前に、当然先刻大臣も現地調査の必要性ということも言明しておるわけでありますし、この際ぜひ一つ現地調査、それから同時にこれの今後の長期安定計画に対して、組合並びに社会党から推薦する学識経験者を含めたところのいわゆるアルコール専売事業の長期経営の安定計画の審議会、こういうものを私は設置する必要がある、このように考えるわけであります。でありますから、この二点についてぜひ次官の確約をいただきたい、このように考えるわけでございます。
  112. 大島秀一

    大島説明員 ただいま御指摘の商工会議所の御意見というようなものにつきましては、われわれ通産省側といたしましては十分検討いたしまして、相当有力の賛成を得ておるものというように確信いたしております。それから大臣に向って慎重にせよというお話がございまするが、むろん慎重にいたしたと考えております。それから地方農民に関する問題につきましては、これまた十分考慮に入っておるはずであります。またことに将来アルコールの専売制度というものを、どのように改善しなければならないかということは、これはもう幾多の論議をされておる問題でありまするので、この点は十分これから皆さんとともに検討をいたしまして、そして最も国家的に有利な方法に持っていくべきである、そのような段階にも入っておるのではないかとさえ考えておるのであります。いろいろな点から考えまして、私ども通産当局といたしましては、この問題は、もうすでに皆さん方の御要望のこともたくさんありますけれども、十分検討いたしまして、そして閣議の決定をいたしておりますので、これは実行に移したい、かように考えております。
  113. 兒玉末男

    兒玉委員 今後の計画の問題についての審議会の設置と、現地調査ということについて、ぜひ一つ——これはこの前大臣の言明もあるわけでありますので、この際一つ次官が責任を持って、その点について確約をしていただきたいと思うわけですが、どうですか。
  114. 大島秀一

    大島説明員 審議会については検討の余地も多少あろうかと思いますが、現地調査ということまでは、私どもではもうその必要はないのじゃないかというふうに考えております。
  115. 兒玉末男

    兒玉委員 必要がないという理由は、閣議決定でありましても、今後さらに地元の農民なりあるいは市当局なり、または労働組合等の協力なくしては、今後たとい払い下げが実現せられたといたしましても、その実現までに非常な困難を生ずる、こういうことがはっきり予想されるわけであります。特に地元における小林工場の労働者を中心とする地域の労働組合あるいは農民等においては、非常に今までのやり方について、しかもあのような閣議決定というものが予想以上に早く出された、こういうことについてもしゃにむに閣議決定で押し切っていこう、こういう意向というものを、われわれは非常に遺憾に思っておるわけでございます。そういう点から判断いたしましても、先刻問題になりました志免の問題等におきましても、あのような全く地域住民の死活の問題でもあります。また小林の場合においても第二の志免問題と言われているぐらい、非常に労働組合初め社会党としてもこの問題を重要視いたしておるわけでありまして、何も閣議できまったから現地調査の必要はない、そういう考え方こそが、あまりにも強硬な行き方じゃないか。やはりこの際慎重な考慮、そういうことは、少くとも地域住民のなまの声、あるいは商工会議所の有力者が言っておることが商工会議所会員の多数の意思であるかどうか、そういう具体的な点についても、この計画というものをスムーズに行う上においても、当然私は現地の調査なりその付近の農民の実情、そういうことを十分聞くということが絶対に必要なことだ、このように考えるわけであります。しかもそういう調査をしないで、ただ上の方だけできまったのだからもういいんじゃないか、あるいは二、三日前でございましたか、従業員が職場集会を開くことについても国鉄の同志が激励に行ったにもかかわらず、集会を開かせない。こういうふうにしゃにむに閣議決定という網をかぶせて押し切ろうとする、こういうような権力的な行き方については、なおさら疑いに疑いをかけられて、そういう疑惑を生むことにもなるわけでありますから、この際通産当局が確信を持って払い下げをやるのであればあるほど、私は現地調査の必要性、地域住民の協力を求める、こういう立場に立って講査をぜひやってもらいたい、このことを強く要望したいと思います。
  116. 長谷川四郎

    長谷川委員長 委員長から兒玉君に要求をいたしておきます。御質問の中に、事業長が組合員に幾らを贈ると言ったということはテープ・レコーダーにおさめてあると、あなたはおっしゃっておりますが、次会が開かれるときまでに、テーフ・レコーダをお持ちになって公開の席において明らかにしていきたいと考えております。次会にはこれを御持参願います。  本日はこれにて散会をいたします。次会は公報をもって御通知を申し上げます。     午後零時五十九分散会