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1959-03-20 第31回国会 衆議院 商工委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月二十日(金曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 長谷川四郎君    理事 小川 平二君 理事 小平 久雄君    理事 中村 幸八君 理事 南  好雄君    理事 加藤 鐐造君 理事 田中 武夫君    理事 松平 忠久君       赤澤 正道君    新井 京太君       岡本  茂君    鹿野 彦吉君       坂田 英一君    關谷 勝利君       中井 一夫君    渡邊 本治君       板川 正吾君    今村  等君       内海  清君    小林 正美君       鈴木  一君    水谷長三郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       中川 俊思君         通商産業事務官         (石炭局長)  樋詰 誠明君         特許庁長官   井上 尚一君  委員外出席者         通商産業事務官         (特許庁総務部         長)      伊藤 繁樹君         通商産業事務官         (特許庁総務部         工業所有権制度         改正調査審議室         長)      荒玉 義人君     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第一七五号)  実用新案法案内閣提出第一一〇号)(参議院  送付)  実用新案法施行法案内閣提出第一一一号)(  参議院送付)  意匠法案内閣提出第一一二号)(参議院送  付)  意匠法施行法案内閣提出第一一三号)(参議  院送付)  商標法案内閣提出第一五八号)(参議院送  付)  商標法施行法案内閣提出第一五九号)(参議  院送付)  特許法等施行に伴う関係法令整理に関する  法律案内閣提出第一六〇号)(参議院送付)  特許法等の一部を改正する法律案内閣提出第  一五七号)(参議院送付)  特許法案内閣提出第一〇八号)(参議院送  付)  特許法施行法案内閣提出第一〇九号)(参議  院送付)      ————◇—————
  2. 長谷川四郎

    長谷川委員長 これより会議を開きます。  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。  この際お諮りをいたします。本案についての質疑を終局するに御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 長谷川四郎

    長谷川委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  次に本案の討論に入るのでありますが、通告がありませんのでこれを行わず、直ちに採決をいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 長谷川四郎

    長谷川委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  採決をいたします。本案原案通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立
  5. 長谷川四郎

    長谷川委員長 起立総員。よって本案原案通り可決いたしました。  次に、自由民主党及び日本社会党共同提案にかかる附帯決議を付すべしとの動議提出されておりますので、まずこの趣旨説明を求めます。渡邊本治君。
  6. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 ただいま可決されました石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案に対して、自由民主党日本社会党を代表して附帯決議案提出いたします。先づその案文を朗読いたします。   石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議   政府は、本法の施行にあたり、特に次の諸点について適切な措置を講ずべきである。  一、石炭需給の安定を図るため、需給調整機構を確立する等、速やかに抜本的方策を樹立すること。  二、離職労務者就業対策について、綜合的、計画的な施策を樹て、万遺憾なきを期すること。    なお、この一環として、中央並びに地方に石炭鉱業離職者対策協議会を設置すること。  三、離職労務者対策事業実施にあたつては、地方自治体の財政負担を極力軽減せしめるよう措置するとともに、離職者の吸収に、最も適切、有効な鉱害復旧事業の拡大について特段の考慮を払うこと。  四、離職労務者退職金労働協約就業規則等において定めあるもの)については未払賃金に準じ、石炭鉱業整備事業団炭鉱買収代金より弁済が受けられるよう措置すること。  以上でございます。  本決議案趣旨につきましては、各委員質疑を通じまして明らかにされた通りでありますので、省略させていただきます。何とぞ委員各位の御賛同あらんことをお願いいたします。
  7. 長谷川四郎

    長谷川委員長 ただいまの動議についての御発言はありませんか。——なければ採決をいたします。  本動議通り本案に対し附帯決議を付することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 長谷川四郎

    長谷川委員長 御異議なしと認め、よってただいまの動議通り附帯決議を付するに決しました。  この際通商産業政務次官より発言を求められておりますので、これを許可いたします。
  9. 中川俊思

    中川(俊)政府委員 ただいま御決議になりました附帯決議につきましては、政府としては十分その趣旨を体しまして、この決議本旨に沿うように労力をいたしたいと考えております。  石炭問題は非常な重大な危機に現在際会をいたしておりまするので、各位からも今後何かと御指導、御協力を願わなければならない点が多々あると思いまするが、政府といたしましては、ただいま申し上げまするような最善の勢力を傾注をいたしまするから、どうぞこの上ともよろしく御協力をお願い申し上げます。ありがとうございました。
  10. 長谷川四郎

    長谷川委員長 なお本案に関する委員会報告書作成等に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 長谷川四郎

    長谷川委員長 御異議なしと認め、そのように決します。     —————————————
  12. 長谷川四郎

    長谷川委員長 次に小売商業特別措置法案商業調整法案特許法案特許法施行法案実用新案法案実用新法施行法案意匠法案意匠法施行法案商標法案商標法施行法案特許法等施行に伴う関係法令整理に関する法律案及び特許法等の一部を改正する法律案、以上十二法案を一括して議題といたします。審査を進めます。  質疑通告がありますので、順次これを許可いたします。中井一夫君。
  13. 中井一夫

    中井(一)委員 私はただいま上程されておりまする特許法案等につきまして、その根本的な問題と、あわせて二、三副次の問題について質疑をいたそうとするものでございます。  まずお伺いをいたしますことは、これらの法案参議院を通過するに当りまして、三項目にわたる附帯決議が付せられたことについてであります。すなわち、わが国現在におきまして、裁判所における裁判が、数年かかってもなお結論を得ることができないという、いかにもこの世のものとも思えぬような遅々たる進行ぶりに対しまして、国民より峻厳なる批判があるのでございます。同様に特許庁における特許その他の問題に関する審査審判登録等の手続がおくれて、日進月歩の現状に適合しないという非難もまた多年いわれてきたところであります。今回四十年ぶり特許法その他について根本的な革新をせられることになったのでありますが、法律のみ革新されても、その法律を運用するところの方途がよろしきを得なければ、大革新も何らの意味をなさぬと思うのであります。この点につきまして参議院はこの法案を決定するに当って「一、審査審判促進に努め、特に滞積せる未処分出願を一掃するため画期的方途を講ずること。二、審査官審判官の増員を行い、併せてその待遇を速やかに改善し、有能なる人材の確保に遺憾なきを期すること、三、設備、資料備品等を充実するとともに、執務環境の改善及び執務能率の向上をはかること、という三項目附帯決議をされておるのであります。これはまことに至当な決議でありまして、通産省としては虚心たんかいにこの決議に聞いて、かつこれを実現するの誠意を示さるべきものだと思うのであります。この点につきまして政府の御所見を承わりたい。ことにこの点につきましては、特許庁機構人員、それらの状況が、異常なる進歩発達をしつつあるわが国経済現状に対して、従来きわめて間に合わなかったということを考えるのですが、来年度の特許庁関係予算に見合って御説明がいただきたいのであります。
  14. 中川俊思

    中川(俊)政府委員 御指摘の点につきましてはまことに遺憾にたえない次第であります。特許出願に伴いますいろいろな商標であるとか、意匠であるとかというような出願件数が、逐年増加をいたしておりますことは御承知の通りでございます。従いまして特許庁といたしましてはできるだけ審査官増員いたしまして、そうして機構の拡充をはかって各方面からの御要望におこたえをいたしたい、こういうことで、毎年御案内の通り予算の増額並びにこれに伴います人員の増を要求いたしておったのでございますが、いろいろな点から今日まで思うようにいかなかったことは、まことに申しわけないことと存じておるのであります。本年は幸いにいたしましてわずかではございますがこの要求を満たされましたので、今日まで各方面に御不便をかけておりました審査促進をはかることにかなり役立つのではないかと思っておるのであります。なおただいまお話がございました参議院での御要求に対しましては、審査促進であるとか、あるいは人材を登用するとか、あるいは執務能率を改善するとかという点につきましては、御趣旨を体しまして、今後十分御趣旨に沿うような方向に持っていきたいと考えておりますから、どうぞ一つ御了承を願いたいと思うのであります。  なお自余の点につきましては事務当局より答弁をいたさせます。
  15. 井上尚一

    井上政府委員 御質問に対しましては中川政務次官よりお答え申し上げた通りでございまして、われわれとしましてはこの附帯決議趣旨に沿いまして、今後万全の努力を尽して参りたいと考えておる次第でございます。本年度の予算との関連において審査審判促進という方向がどういうふうに具体化されておるかという一点につきまして申し上げたいと存じますが、審査審判迅速化ということにつきましてはいろいろな方法があるわけでございますが、何と申しましても第一には人員増加でございます。政務次官から先ほど申しました通り、三十四年度におきましては二十名の増員が予定されているわけでございますけれども、われわれとしましてはこれでもって十分とは考えていないのでございますが、今般の法律改正によりまして、特許料登録料出願手数料等改正ということが行われることになりますれば、特許庁としましての収入は支出をはるかに上回ることになりますので、そういう特許庁歳出歳入状況等にもかんがみまして、今後特許行政能力の強化のために人的物的両方面につきましての整備充実を期して参りたいと考えるわけでございます。従来の人員増加状況は、三十一年度におきまして八十名、三十二年度におきまして百名を見たのでございますが、三十三年度には十二名、そして三十四年度は先刻申しました通り二十名でございますが、われわれとしましては今後の審査審判処理促進計画というものを現在作りまして、今後数ヵ年間の計画をもって、逐次増員によりまして、現在停滞しております未済案件の解消と同時に、審査審判期間短縮化に十分な努力をいたして参りたいと考えております。
  16. 中井一夫

    中井(一)委員 ただいまの政務次官並びに長官の御説明では、私ども国民の心からの事務革新進歩を希望するところが満たされず、まことに遺憾に思うのでありますが、この点につきましては、幸い参議院におきまして、特許庁通産省を鞭撻する有力な附帯決議をされたのでありますから、これによりまして年来の問題解決のために努力されんことを切望しておきます。  なおこの機会資料要求いたします。現に係属中の事件、提出されてから解決に至らざるものは何件ほどあって、しかもその一番長いものは何年くらいにわたっておるか、こういうものについての統計を急いでお出しいただきたい。これは特許関係だけではなく、その他関連法案に関するものを、できるだけ詳細に御提出をいただきたい。  次にお伺いいたしますことは、官庁の事務が滞りなく時のよろしきを得て進むことが、必要であることは言うまでもありませんが、その事務のとり方について公正を疑われるようなことがあっては、その根本がだめになる。そこで特許登録等の問題は、それぞれ当事者にきわめて深刻な利害関係のあるものでありますから、特許庁における事務取扱い根本精神は、あくまでも公正でなければならぬと思うのであります。しかるにときどき不公正が行われるというような話の耳に入りますことは、まことに特許庁の威信のために遺憾なことでありますが、長官といたしまして、その部下に対する平素の指導監督についていかなる心持、またいかなる方策を講じられているか、承わりたいのであります。
  17. 井上尚一

    井上政府委員 第一に、先ほど資料提出の御要求の問題に関連しまして一言申し上げておきたいと存じます。三十三年について申しますれば、出願件数は、特許実用新案意匠商標を通じまして十七万四千件でございましたが、年間処理件数は、特許実用新案意匠商標を通じまして十四万一千件でございます。結局年末におきます末処理件数と申しますものは二十五万七千件くらいございます。どれくらい期間を要しておるかという点につきましては、特許実用新案等につきまして、電気、機械、化学その他各部門別によって事情が非常に違うわけでございますけれども、平均して申しますれば、特許実用新案は約二年四ヵ月、意匠が約一年、商標が約十ヵ月、そういう状況になっているわけでございます。  それから第二の点につきまして、特許庁審査審判については常に公正を旨とする必要があるという、この点について長官としてどういうふうに部下督励監督しておるかという点については、私どもとしては、国民に対する特許実用新案意匠商標というような重要な権利得喪変更に関する仕事でございますので、きわめて影響するところが大きいということにかんがみまして、常に部下に対しましては、公正、正確、慎重であると同時に、できるだけ迅速にという、公正と迅速という両方の要請に極力沿うように督励もし、指導もいたして参っておるつもりでございまして、われわれといたしましては、将来ももちろんそういう方針でもって十分審査審判関係官に対する指導監督に遺憾なきを期して参りたいと存じておりまするが、そういうことによりまして、御趣旨に十分沿い得るつもりでおります。
  18. 中井一夫

    中井(一)委員 次にお伺いいたしたいことは、今回御提出法案のうち、特許法等施行に伴う関係法令整理に関する法律案、その第四条によりますると、独禁法の第百条を削除せられることになったのであります。この第百条は申すまでもなく、裁判所による特許実施権の取り潤し及び政府との特許契約の禁止の宣告等独禁法違反者に対する厳重なる処分を定めておるものであります。これを削除するということになりますと、どういう結果が起るか。ここに問題が生ずるのは当然であります。独禁法はその本質上、いわゆる独占等に関する行き過ぎを禁止するのが本旨でありまするし、特許法独占権を国家において認め保護するというのが精神でございます。従ってこの両法律の間に、観念上またその立場上、当然一種の相剋のあることはやむを得ないことなんでありますが、今回御提出特許法改正関連して、ただいま申し上げた関係法令整理に関する法律案において、独禁法がその違反者に対してなし得る制裁規定した条文削除せられることになったのであります。この問題に関する内容的な質疑は、あらためて機会を得ていたしたいと思いますので、本日はその底に横たわるところの問題についてのみ、政府所見をたださんとする次第であります。なぜと申しまするに、この百条の削除ということが世間の問題となり、ことに消費者団体連合会等の取り上ぐるところとなりまして、これは全く大企業者擁護その独占を寛容にするために、百条が削除されることになったのである。すなわち、これは特許権の乱用、悪用について抗議する法的根拠を失わせるものである。またこの第百条は独禁法中の一条文であるからこれを削除せんとするならば、独禁法自体改正して、これをなすべきである。独禁法に手を触れずして、独禁法にあらざる特許法改正においてこれをなすということはおかしい。ことに聞き捨てになりませんことは、通産省の大官は実業界至るところに入っておられて、重要なる地位にある。従ってこれらの影響よりして大企業者擁護のためにかような改正をするのである、かような話の起りつつありますことは、きわめて残念なことであります。通産省ことに特許庁といたしましては、四十年来いまだかつて大改正のされたことのないこの特許法を、現在の日本にふさわしい特許法にあらためて作り直す意味をもって、劃期的な大改正をなされんとするに当り、かような不潔なるうわさ話のあることは、通産省のために、特許庁のためにはなはだ遺憾に思うのであります。しかしすでにかような攻撃的な意見が行われる以上は、通産省ことに特許庁は正々堂々とそのしからざるゆえんを明らかにせられるべきであると思うのであります。この点につき、まず御所見を承わりたいと思います。
  19. 井上尚一

    井上政府委員 今般の特許法等施行に伴う関係法令整理に関する法律第四条におきまして、独禁法百条の削除規定しておる理由についての御質問でございます。この点につきましては、従来特許権取り消しという制度現行法中にはございまして、第四十条の規定におきまして、特許権の収用あるいは制限、取り消しというような事項が規定せられていたのでございますが、今回の法律改正の場合に、われわれが慎重研究しました結果、特許権一般第三者利益との調整という観点から申しまして、特許権を取り消す、抹殺するという必要はない、むしろ特許権についてのその内容について強制実施を命ずるということで必要にしてかつ十分である、かような結論に達しましたので、特許権に関しましての取り消しという制度廃止いたしたわけでございます。従来の独禁法の百条におきましては、中井委員が御指摘通りに、これは第八十九条あるいは第九十条という罰則に関する規定の場合において、「裁判所は、情状により、刑の言渡と同時に、左に掲げる宣告をすることができる。」そうしまして、「この特許権特許又は特許発明実施権は取り消されるべき旨」というのが入っているわけでございます。この宣告がございました場合には、この判決が確定しますと、裁判所は、判決謄本特許庁長官送付をいたしまして、そうして特許庁長官はその謄本送付があったときには、その特許権特許または特許発明実施権を取り消すという処分をいたすわけでございます。今申しましたような理由で、むしろ特許権一般利益との調整方法としまして、特許権強制実施でもってその必要を満たしていくという理由取り消しという制度特許法廃止することになりましたので、この源から、すなわち特許法においての特許取り消しを前提としてこの独禁法百条の規定が設けられているわけでございますので、特許法中の制度廃止によりましてこの特許権に関する取り消しということを規定しました第百条の規定を、ここに同時に廃止することがむしろ適当である、かような考えでございます。これがこの第百条の廃止に関しましてのおもなる理由でございます。  なおしさいに、ついでに申しますと、この百条という規定にはいろいろ不備な点がございまして、たとえば独禁法第二十三条におきましては「この法律規定特許法実用新案法または意匠法商標法権利の行使と認められる行為にはこれを適用しない」というふうに、工業所有権につきましては実用新案法意匠法商標法というものも同格に扱っているわけでありますが、百条におきましては特許権のみについて規定をし、実用新案意匠商標については何ら触れるところがないというところの理由も必ずしも明らかでないわけでございますのと、もう一つは、ここに「実施権の取消」ということがございますが、従来の実施権という法律の性質は、これは債権でございますので、債権取り消しということは法律的に全くこれは意味がない、おかしいと言わざるを得ないわけでございます。というようなふうに、この百条にはいろいろ疑義もあるわけでございまして、そして大きな理由としましては、先刻申しました特許法中における制度廃止によりまして、これを必然的に引っ張って参っておりまする百条の方では、特許取り消しという制度特許法上なくなりました関係で、独禁法の本規定を同時に廃止することが、これがむしろ適当である、かように考えたわけでございます。  なおついでに、恐縮でございますが、先刻御発言中の、通産省出身者で民間に云々という御指摘がございましたのは、おそらく本日の毎日新聞の記事ではないかと存じますが、これは特許庁関係者について調査しました結果、全くこれは事実無根の報道でございますので、ぜひ御放念を願いたいと思います。
  20. 中井一夫

    中井(一)委員 百条についてのただいまの御説明によりますと、特許権を取り消すということよりも、むしろ特許実施せしめることの方が、この独禁法制裁趣旨にも合う、特許法精神にも合う、こういうふうに仰せになったのですが、それならば今度の改正特許法におきまして、さような場合に特許権者にこれを実行実施することを強制するというような規定があるのでございましょうか。
  21. 井上尚一

    井上政府委員 新特許法の第九十三条の規定がこの該当規定でございます。第九十三条に、「特許発明実施公共利益のため特に必要であるときは、その特許発明実施をしようとする者は、通商産業大臣の許可を受けて、特許権者又は専用実施権者に対し通常実施権の許諾について協議を求めることができる。」第二項としまして「前項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、その特許発明実施をしようとする者は、通商産業大臣裁定を請求することができる。」第三項としまして、第八十四条、第八十五条第一項、八十六条ないし第九十一条の規定を準用しておるわけでございますが、第八十四条の規定は、裁定の場合におきます関係当事者答弁書提出。八十五条は、特許発明実施審議会意見を聴取してから裁定しなければならない、そういう規定でございます。それから八十六条が裁定の方式、八十七条が裁定謄本の送達、八十八条が対価の供託、八十九条及び第九十条、九十一条は裁定の失効または取り消しに関する規定でございまして、この第九十三条の規定によりまして公共利益のための通常実施権の設定の裁定制度を新たに設けた次第であります。
  22. 中井一夫

    中井(一)委員 第九十三条によりますと、お話通り特許発明実施公共利益のため特に必要である」ということが書いてあります。この考え方と、すなわち九十三条を必要とするところの理由と、独禁法第百条によって定むるところの制裁のもとになった違反行為をしたものに対する制裁いき方との間には、全然観念が違っておるし、関係もないことだと思われるのでありますが、この第百条を削除する理由として特許法の第九十三条をもってその理由説明を満たすに足りると思われるということについては、私ども納得がいかぬのでございます。ただしこの問題については各条文にわたっての詳細な問題に入りますから、本日はただ納得ができない。特許庁長官におかれましてもさらにこの説明方法につき再考をされる必要があるということを申し上げて、次の問題に移ります。  特許庁の係官及びその執務いき方が公正であるということが、特許庁事務のすべての根本であるということは申し上げるまでもないところであります。これに関連いたしまして、昨年暮れから本年の春にかけて神戸市のゴム業界に遺憾な問題が起っております。このことはすでに長官もよく御承知のことでありますが、これまたこの業界から特許庁に対しまして一種の深き疑惑を持っておるのでありますから、この機会特許庁所見と態度とを明らかにしていただきたいのであります。すなわち事柄は、ゴムぐつの底のデザインの意匠登録に関するものであり。大阪の大貿易商社である田附商店のリップル・ソール、くつ底の意匠権の横奪問題としてゴム業界にやかましい問題を投げた事件なのであります。元来このリップル・ソール(波型模様のゴム製くつ底)は、アメリカのメーカーであるウエアーハイドが一九五七年にアメリカにおいて特許をとっておる一つ意匠であります。この意匠に類似して、昨年の夏以来、日本のゴム工業の中心地であります神戸その他で製品を製造して、莫大なる数量、金額のものをアメリカに輸出して、ようやくその不況を切り抜けることができたことがあったのであります。そうしてすでに昨年の夏、神戸の産業会館におけるゴム製品の展示会がありました際にも、この意匠に基くところの製品が、多数の製造業者から展示され、まさに公知公用の事情にあるのであります。しかるにその後に至りまして、大阪の田附という大貿易業者がこの意匠登録を特許庁出願をいたし、本年一月中旬には未だ登録も完了せないのに、関係業者に対し内容証明郵便または公告によって、その意匠を使用すれば権利侵害となるから注意せよと厳重な申し入れをしたのであります。驚いたのは以前よりその意匠を使ってどんどん製品を外国に売っておるところの業者で、本年の一月二十四日には兵庫県ゴム製品協同組合理事長豊崎一正氏等多数の業界代表者が大挙上京して、特許庁長官を初めその他の係官に面会し、田附の出願は乱暴千万だ、許されるならば、先使用者であるわれわれこそ権利者であるべきである。それにもかかわらず貿易業者の立場でありながら、その意匠登録の権利を自分の一人占めにして、多数の業者の権利利益を横奪せんとするけしからん、もしさようなことが行われるならば、われわれ多数工場主並びに従業員一万にも上るものが大へんな迷惑をする、しかもいまだ登録もされていないのに、田附から関係業者に対して警告を発した、実にけしからぬ行動であるから何とか制止してもらいたいと、長官初め係官に訴へたはずであります。かような事実がありましたかいなや、承わりたいのであります。
  23. 井上尚一

    井上政府委員 ゴムぐつの裏底の意匠に関しまして、ただいま御指摘のような問題があったことは承知しておりまするし、私肉身神戸の関係業者とも何回かにわたって面会いたしたわけでございますが、この問題につきましては、これは意匠権の登録出願の問題でございまして、申すまでもなく、先願主義によりまして、特許庁としては厳正公平に審査をいたしておるわけでございます。審査の場合には、特許庁として持っています範囲内におきましてのいわゆる公知使用と申しますか、そういうような特許庁として有する限りの文献資料はたんねんに調査をするわけでございまして、そうして公知公用でないという結論、言いかえれば新規性の意匠であるという判断に達しました場合には、審査官がこれに登録の査定をいたすわけでございますが、ただいま御指摘の大阪の業者の登録出願につきましては、特許庁におきまして、米国の関係の雑誌等をももちろんこれをよく調査しまして判断を加えたのでございますが、意匠の新規性の判断の場合に常に問題になりますのは、むずかしい点は類似かいなかというところでございますが、本件の場合には意匠課の関係審査官協議の上、これは類似ではない、言いかえれば新規性がある、かように判断をして登録の査定をいたしたわけでございます。特許庁としまして登録の査定を行いました後になって、神戸の関係業者からの陳情がございまして、これはすでに神戸地区においては公知または公用のデザインであるというようなお話があったわけでございますので、私どもとしては、特許庁が有する限りの資料は調査したわけでございますけれども、神戸地区においてこれがすでに公知であったというところまではこれを把握することができなかったわけでございますので、神戸の関係業者に対しましては、もしあなた方がおっしゃるように、すでにこれが神戸地区でその大阪の業者の出願以前に公知であったということであるならば、その公知であったという証拠を出していただきたい、そうすることによって、その設定された権利について、無効審判でこれを争う道が残されているわけであるということも説明をいたしたわけでございますが、そういうような点につきまして、神戸関係業者の代表団のうち一部の人はわれわれの言い分をよく了解されましたが、一部の人は納得しないまま帰られたようであります。その後いろんな方面に対して陳情の手を伸ばされていたようでございますが、結局この点につきましては、問題が非常に紛糾し、かつ対米輸出にも関係する問題でございますので、ちょうどただいまから一ヵ月前になりますが、私の方の主管部長でありまする審査第一部長のもとに、神戸の関係業者と大阪の業者の両当事者を呼びまして、よく話し合いをいたしたわけでございます。結局話し合いの結果、先願順によって特許庁としてはもちろん審査を行なっていく、そして審査の結果、特許庁が査定をした登録査定によって権利を与えた分について、もし無効の原因がそこにあるということが考えられる場合には、その証拠を出して、無効審判でこれを争うという方法を講ぜられるのがよろしかろう、それからもしその出願以前に善意で、公知でなくても同じデザインを使っておる事実がございますれば、これはいわゆる先使用権としまして法定実施権がそこにあるわけでございますので、これは権利者のそのデザインを法定実施権によって使用を続けることができるわけでざいます。結局問題は、神戸地区における該当デザインというものがいつから公知、公用になっているか、あるいは出願前に善意にそれがすでに用いられていたかどうかという事実の判断の問題に帰するわけでございますが、先刻申しましたように、関係当事者特許庁にお集まりを願いまして、十分懇談しました結果、今後権利者といえども、必ずしもこの権利理由としてはっきりした根拠もなく権利侵害として訴えたり、警告を発するとかいうようなことはやらない、お亙いに業界全体で協調して、お亙いの権利を尊重しながら、そしてまた違ったデザインについては正当な権利を得ることによって、対米輸出について十分な共同歩調でもって円滑に輸出の増進に邁進したいというような話し合いの結論に到達した次第でございます。その全体を通じまして、特許庁に公正でない不公正な事実というものは全くなかったわけでございまして、この点につきましては、十分御信頼を願いたいと考えております。
  24. 中井一夫

    中井(一)委員 ただいまの御説明によりますと、この意匠に関する審査は、その審査をなす資料特許庁の手元にあるもののみによってなした、しかし、神戸における状態はその資料としなかったというお話であります。私は、これは驚くべき審査のやり方じゃないかと思う。わが国におけるゴムぐつの製造、従ってまた、これに関する意匠というものは、まさに神戸の業界がその中心であることはだれも知らぬものはございません。そうして問題はそのゴムぐつの意匠審査に関するものである。それならば、ほかのことはさておき、まずもって神戸におけるこれらの業界の状態をお取調べになるのが当然だと信ずるのであります。ここに初めて公知公用か、それとも外国の模倣であるか等の判断もつくはずであります。それにこの大切な第一義を怠り、特許庁内にある資料のみによってやるということは、いかにも納得ができないのでありまして、こういうようなやり方では、それは単にこのゴムぐつの問題だけではない、日本全体の意匠、進んでは特許に関する審査の上においても、特許庁としてはなはだ欠くるところがあるのではないかと、疑いを抱かれてもやむを得ぬと思うのでありますが、この問題につき、何ゆえそのセンターである神戸の業界の実情をまず御審査にならなかったのでありますか。
  25. 井上尚一

    井上政府委員 特許庁としまして、審査の過程においてどこそこにそういう公知、公用というものがあることがわかりました場合には、関係官が出張し、あるいは資料をこちらから要求しまして、そういうものはもちろん集めるわけでありますが、本件の場合におきましては、特許庁における審査の結果、登録査定後におきまして、そういう事実を神戸の関係業者からの陳情によってわれわれとしては承知したわけであります。  それからもう一つは、もちろん審査の段階におきましては、これは関係業者に対しまして、こういうデザインは公知であるかというようなことで、外部に一々これを示すわけにはもちろん参らないわけでありまして、申すまでもなく、審査の段階におきましては、特許庁の有する限りの資料を使いまして、できるだけ厳正公平に、かつ緻密にこれを行うわけであります。繰り返しになりますけれども審査資料としましてできるだけ広い範囲から収集することに常に努力はいたしておるわけでございまして、もし特許庁にございません資料で、神戸地区において該当のようなデザイン、意匠審査上必要な資料がそこにあるということが、審査の段階におきましてわかった場合には、われわれとしましては極力手を尽してその資料を収集するということは当然行なっておるわけでございます。
  26. 中井一夫

    中井(一)委員 ゴムぐつの問題は私は実はしろうとです。それでもなお昨年の夏、神戸で展示会があったときにその係員から、こういうようなくつ底ができて、アメリカへどんどん神戸のくつが出るということを説明せられ、うれしいことだと感心したのであります。そのしろうとの私さえこのリップル・ソールの事柄は知っておるのである。しかるに、特許庁がゴムぐつというきわめて特殊な製造者、関係範囲の狭いものについて審査をなさるのに、こんなはっきりした公知、公用の事実が製造のセンターにあることを知らずにおられるというようなことでは、はなはだ心もとないと思うのであります。たれが考えても、またいかなる場合においてもちょっとやそっとでは、わからぬという問題ならば、それは特許庁内の資料乏しきがために許すべからざるものを許したという誤まりはあってもやむを得ぬと思われますが、かようなきわめて明白であり、しかもこれを許すならば、わが国のゴムぐつの輸出にどんな関係があるかということは直ちに想察ができる、それにかかわらず、肝心のセンターの取調べをいたさずして、手元のみのきわめて少い資料によって判断決定せられたなどというのは、私は特許庁の威信と名誉のためにほんとうに惜しむものであります。ただいまの御説明を聞けば聞くほど、日本特許庁というものを何とかもっと充実、強化して、その審査に権威あらしめるような方途を講じなければならぬことを痛感する次第であります。もとより審査の結果に至るまでは、その審査は秘密を要すべきことは当然であります。秘密を要するがゆえにこそ、特許庁としてはその取り調べに慎重を期さなければならぬ。慎重だけではなく万全を期さねばならぬ。それをみずからの審査資料の範囲きわめて狭く、万全を期していないことのために起ったこの問題を当然の帰結のごとくお考えになっておるところに、私は特許庁に対しはなはだ遺憾に存ずるのであります。  そこで具体的の問題に入りますが、本年一月十四日に業者は上京をして長官並びに係官に会って、田附の申請は乱暴だ、すでに公知公用のものだから許してもらってはならぬということを申し上げたのでありますが、このとき長官は、話を聞けばもっともだからその審査については最善の考慮を重ねようと言われたということが報告をされておるのであります。しからばそのとき田附の申請の登録は制止せらるべきであったと思うのでありますが、なぜこれを押えることができなかったのでありましょうか、御説明をいただきたい。
  27. 井上尚一

    井上政府委員 神戸の関係業者の代表に会いましたのは土曜日の午後でございました。それで私はいろいろ話を聞いたのでありますが、もちろんこういう問題は一方の当事者だけの言い分で判断するわけに参りません。もしそういうふうにこの問題の出願以前におきまして、神戸地区においてそれが公知公用であったというならば、その同じデザインのものがすでに公知公用であったという証拠を出していただきたい、そしてもしその証拠があったならば無効審判請求という道もある——ちょうど土曜日でございましたので、登録の担当部局はもう退庁後でございました。この関係について月曜日までに事態の進行状況を調査することを約したのでありますが、月曜日になりまして事態を調査いたしました結果、登録査定を受けました大阪の業者の方から、もうすでに登録料の納付があったわけであります。ですから登録料の納付がありました以上、その権利設定を取りやめるというわけには登録令上参りませんので、われわれとしましては事態の進行がそこまで来ている以上は、これは一応権利を設定するほかはない、それで繰り返して、もしこの意匠登録に無効の原因があるということを神戸の関係業者においておっしゃる場合には、その関係資料を固めて、そして無効審判請求という方法を講じてもらいたいということを重ねて申し上げたわけでございます。
  28. 中井一夫

    中井(一)委員 二十四日の陳情または抗議と申しますか、そのことがあった後直ちに、あなたの部下審査部長がわざわざ大阪まで行っておられる。何のために大阪まで行かれたのか、大阪まで行く以上は何ゆえに神戸までその足を伸ばさなかったのか、登録料金を納める納めない、そういう問題の以前に、業者の抗議のありし直後東京を出発しておられる。大阪まで行くならば一時間で行ける神戸へなぜ行ってこれを調べてくる親切をなさらないのか。私は、その審査部長が大阪に行かれたのは、何か田附との間に特別の関係があって、急いでその登録をするよう打合わせのためであるなどとうわさされておることを、特許庁のために残念に思いますから、その点を特に明らかにせられんことを希望いたします。
  29. 井上尚一

    井上政府委員 担当の審査第一部長が大阪へ参りましたのは全く別の用件でございまして、それは去年日本生産性本部から派遣になりました商標管理専門調査団の一員として審査第一部長が渡米いたしたわけであります。その商標管理専門調査団の報告会が、たまたま大阪で行われたわけでございまして、団長以下調査団全員大阪で報告会を行なったというその機会に出席するだけの目的を持って、審査第一部長は大阪に出張いたしたのでございまして、本件の意匠登録出願には全く関係のない、またその大阪の出願人と会った事実は全然ないわけでございます。その点はたまたま不幸にしてそういう時期にちょうどぶつかったという結果、関係の神戸の業者の方が、あるいは疑惑の目をもって見たということがあったようでございますけれども、それは私としましてまことに遺憾に存ずるのでありまして、その大阪出張の理由及び事情は右に申し上げた通りでございます。
  30. 中井一夫

    中井(一)委員 そういう事情であれば、私は初めにも申し上げたように、少くとも一業者の問題でない、神戸だけでも関係者一万人に及ぶところの問題である。これはまた田附と神戸のゴム製造業者との間の抗争にとどまらない。わが国貿易上の問題として場合によればアメリから日本に対して抗議が来るおそれのある問題であります。そうであるのに、大阪まで行くついでがありながら、なぜ神戸まで行って実状を調査する親切がなかったか。これは親切の問題ではない。特許庁の当然の職責である。それをなされざりしことをはなはだ残念に思う。繰り返して申し上げます。この審査特許庁内にある資料だけでいたし、神戸の実状は調査をしなかった。問題の中心地神戸は大阪から一時間の行程以内にある。担当の審査部長を大阪へ出張を命じておきながら神戸の調査を命ずることはなさなかった。それではその前日わざわざ上京して急訴した業者に対して、長官としてあまりにも不親切ではないか、私は長官の職責上はなはだ遺憾に思うのでありますが、この点につき重ねて御所見を承わりたいのであります。
  31. 井上尚一

    井上政府委員 審査第一部長は意匠に関する業務も担当いたしておるわけでございますけれども、これ以外に出願及び登録、商標分類審査というふうに非常に多くの業務を担当いたしておる部長でございます。大阪へ出張しました理由は、先ほど申し上げましたように、商標管理専門調査団の一員として報告会に出席するということでございました。それでなお東京の方にいろいろ緊急の要件もありましたものですから、大阪滞在はきわめて短かい時間で、すぐこちらに引き返してくるというような状況でございました。神戸地区の状況調査をしなかったという点についての長官の配慮が不十分ではないかという御指摘でございますけれども、この点につきましては、私どもといたしましては、長官室で神戸関係業者と再三懇談いたしまして、公知、公用等に関しましての資料提出を求めたわけでございますけれども関係業者におきましては、当然その資料の収集を願って、われわれ特許庁の方に御連絡がくるものと期待しておったわけでございます。なお大阪へ行ったついでに神戸ということも、四囲の事情が許しますならば、あるいはその方がよかったかと存じますが大阪出張の商標管理専門調査団の報告会の日程というものは、本問題がこういうふうに具体化するずっと以前からきめられておった予定でございましたので、関係の部長としましては、団の一員としまして、前もってきめられた予定通りの行動により東京へすぐ引き返して参ったような次第でございます。
  32. 中井一夫

    中井(一)委員 そこで先ほど承わると、一ヵ月ほど前に関係業者を呼んで懇談をせしめ、話がついたという趣旨のことを仰せになりましたが、どういう結果になったのでございますか。またこの問題はすでに無効審判の訴えも起っておると聞くのでありますが、あるいは将来対外的な問題も起るおそれがあると思われます。私は日本製品の信用のためにこれをおそれるのでありますが、この問題解決のため長官はいかに善処せられんとするか、この際承わっておきたい。
  33. 井上尚一

    井上政府委員 特許庁とましては、出願案件につきまして公正にかつ迅速に審査審判を行うというのが本務でございまして、こういう本件の場合のように、関係当事者を呼んで事実上の懇談をやるということは、全く異例の方法でございますが、なおそういう異例のことをあえてやりましたゆえんのものは、対米輸出貿易上影響があってはまずいという考慮で、わざわざ関係当事者に上京を願って、特許庁が中心となって懇談の機会を持った次第でございます。その懇談の結果一応話がついたと申しまするのは、神戸業者の方からももちろん意匠出願が出ているわけでございます。大阪の業者の方からも出ている。そういう関係業者からいろいろ出ておりまする出願につきましては、先願の順序に従って特許庁としては公正な審査を継続する。そして継続しました結果、登録査定になる、権利になるというような場合において、従来よりも一そうこの意匠審査の正確を期しまするために、神戸業界、大阪業界における従来の資料、公知資料というものは、これをできるだけ特許庁に提供し、御協力を願いたいということも申したわけでございます。そして権利設定になりましたものについて、なおまだ無効の原因があるというような懸念がもしございます場合には、関係業者の方から、当然これに対して無効審判請求を行うことができるわけでございますけれども、問題は、権利の設定に関して無効審判で争うということよりは、当面の輸出貿易上悪影響がないように、何とかこれを取り計らっていくことが必要であろうと考えましたので、大阪の業者から神戸地区の関係業者に発しました警告というようなものでなく、また権利侵害としての訴えを提起するというようなことでなく、お互いの権利権利として尊重しつつ、そしてまた無償または有償で、この権利の内容としましてのデザインを、関係業者が一緒にできるだけ使うことによって、輸出貿易上悪影響がないように、むしろ輸出貿易が有利に展開するようにという方向に、いろいろ懇談の結果、関係業者は全部了承して帰られたわけでございます。
  34. 中井一夫

    中井(一)委員 私の質問は本日はこの程度で打ち切り、あらためて機会を見ていたしたいと思います。ただ、せっかく政務次官がおいででありますから、この機会に申し上げますが、政務次官は最も民衆の心を心とせられるお方であります。ただいまお聞きのような事情で、私はなるべく穏やかに申してはおりますけれども、業者間の憤激は容易ならぬものがあるのでありまして、一言にして言えば、田附は大阪における大貿易業者であり、彼らの動くところ官庁はそれに従うに反し、われら微力な中小商工業者は、相手にもされない、実に残念だというにころにこの問題の重要性があると思うのであります。願わくは、通産省特許庁執務に対し、さらに一そう厳重にして周到なる監督指導を続けられんことを希望いたします。
  35. 中川俊思

    中川(俊)政府委員 先ほど来中井さんと長官の問答を拝聴いたしまして私が感じましたことは、中井さんが御指摘のような点も私の耳にしばしば入るのであります。そういう点につきましては、大臣が就任されましたときに、大臣からもよく私にそのお話がございまして、そういうような点は十分に善処して、そうして世間の誤解を解消するように持っていかなければならないから、協力をしてくれというお話でございましたので、私もはなはだ微力ではございまするが、そういう点につきましては細心の注意を払ってきたわけでございます。先ほど、せっかく大阪まで来たのになぜ神戸に寄らないのか、これも私どもの感情からいたしますと、中井さんのおっしゃる通り、せっかくそういうようなトラブルが起っておる問題であるから、大阪まで行ったら、自分が神戸に行くことができなければ、せめて神戸の関係業者に連絡をして、実はこういう用事で大阪へ来ておるのだが、大阪まで出てこないかという親切があってほしいと思うのでございます。しかしまた一方考えますと、長官がお答えを申し上げました通り、役所の出張というものは時間的にまたいろいろな点においてきわめて制約をされておりまするので、ただその目的さえ達せば、そういう問題がごく近くにあっても、それを放擲して帰るということが、私は今日の役所のやり方ではないかと思っておるのであります。しかしこれは決していいとは思いません。ことにこういう問題を生じておるさなかでありまするから、中井委員の御指摘のように十分に連絡を密にして、そして御心配になっておりますような疑義がもしあるとするならば、その疑義を少くとも解消するように持っていくのが当然役所のやり方でなければならないと思うのであります。また一面翻って考えますと、役所の仕事は私どもから見ますときわめて機械的でございまして、もう少し配慮してもらいたいという点もあるのでありまするけれども特許庁は御案内の通り非常に人員にも不足をいたしておりまして、収入が多いのだからもう少し人を増して、そういう問題に対しましてできるだけ迅速に審査も進める、また結論も出さなければならないということは十分わかっておるのでありまするが、いろいろな関係上なかなかこれが思うようにいかない、こういう点で御迷惑をかけておる点が多々あると存じます。これらの点につきましては逐次改善をはかっていきたいと思いますから、御了承を願いたいと思うのであります。  なお先ほど来中井さんの御指摘になりました中に、大企業であるからこれには味方をする、中小企業に対しては冷淡であるというようなおしかりの言葉があったようでございますが、もしそういうような点があるといたしますならば、これは断じて許容しておくわけに参りませんので、私どもといたしましても大臣と相談をいたしまして、十分に善処いたしたいと考えておりますから、もしそういう点がございましたら、一つ指摘を願いたいと思います。そういう点につきましては十分注意をいたしまして、中井さんの御指摘になったことのないように今後善処していきたいと思いますから、何かと御指導協力を願いたいと思うのであります。  いろいろな点につきまして申し足らない点がございますが、私はここで中井さんのいろいろな御忠告の点は十分拝聴いたしました、御意思のある点につきましては、今後できるだけ善処していくということをお約束申し上げる次第であります。
  36. 長谷川四郎

    長谷川委員長 本日はこれにて散会いたします。次会は来る三月二十四日火曜日午前十時より開会いたします。     午後零時四分散会      ————◇—————