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井上政府委員 ゴムぐつの裏底の
意匠に関しまして、ただいま御
指摘のような問題があったことは承知しておりまするし、私肉身神戸の
関係業者とも何回かにわたって面会いたしたわけでございますが、この問題につきましては、これは
意匠権の登録
出願の問題でございまして、申すまでもなく、先願主義によりまして、
特許庁としては厳正公平に
審査をいたしておるわけでございます。
審査の場合には、
特許庁として持っています範囲内におきましてのいわゆる公知使用と申しますか、そういうような
特許庁として有する限りの文献
資料はたんねんに調査をするわけでございまして、そうして公知公用でないという
結論、言いかえれば新規性の
意匠であるという判断に達しました場合には、
審査官がこれに登録の査定をいたすわけでございますが、ただいま御
指摘の大阪の業者の登録
出願につきましては、
特許庁におきまして、米国の
関係の雑誌等をももちろんこれをよく調査しまして判断を加えたのでございますが、
意匠の新規性の判断の場合に常に問題になりますのは、むずかしい点は類似かいなかというところでございますが、本件の場合には
意匠課の
関係審査官協議の上、これは類似ではない、言いかえれば新規性がある、かように判断をして登録の査定をいたしたわけでございます。
特許庁としまして登録の査定を行いました後になって、神戸の
関係業者からの陳情がございまして、これはすでに神戸地区においては公知または公用のデザインであるというような
お話があったわけでございますので、私
どもとしては、
特許庁が有する限りの
資料は調査したわけでございますけれ
ども、神戸地区においてこれがすでに公知であったというところまではこれを把握することができなかったわけでございますので、神戸の
関係業者に対しましては、もしあなた方がおっしゃるように、すでにこれが神戸地区でその大阪の業者の
出願以前に公知であったということであるならば、その公知であったという証拠を出していただきたい、そうすることによって、その設定された
権利について、無効
審判でこれを争う道が残されているわけであるということも
説明をいたしたわけでございますが、そういうような点につきまして、神戸
関係業者の代表団のうち一部の人はわれわれの言い分をよく了解されましたが、一部の人は
納得しないまま帰られたようであります。その後いろんな
方面に対して陳情の手を伸ばされていたようでございますが、結局この点につきましては、問題が非常に紛糾し、かつ対米輸出にも
関係する問題でございますので、ちょうどただいまから一ヵ月前になりますが、私の方の主管部長でありまする
審査第一部長のもとに、神戸の
関係業者と大阪の業者の両
当事者を呼びまして、よく話し合いをいたしたわけでございます。結局話し合いの結果、先願順によって
特許庁としてはもちろん
審査を行なっていく、そして
審査の結果、
特許庁が査定をした登録査定によって
権利を与えた分について、もし無効の原因がそこにあるということが考えられる場合には、その証拠を出して、無効
審判でこれを争うという
方法を講ぜられるのがよろしかろう、それからもしその
出願以前に善意で、公知でなくても同じデザインを使っておる事実がございますれば、これはいわゆる先使用権としまして法定
実施権がそこにあるわけでございますので、これは
権利者のそのデザインを法定
実施権によって使用を続けることができるわけでざいます。結局問題は、神戸地区における該当デザインというものがいつから公知、公用になっているか、あるいは
出願前に善意にそれがすでに用いられていたかどうかという事実の判断の問題に帰するわけでございますが、先刻申しましたように、
関係両
当事者に
特許庁にお集まりを願いまして、十分懇談しました結果、今後
権利者といえ
ども、必ずしもこの
権利を
理由としてはっきりした根拠もなく
権利侵害として訴えたり、警告を発するとかいうようなことはやらない、お亙いに業界全体で協調して、お亙いの
権利を尊重しながら、そしてまた違ったデザインについては正当な
権利を得ることによって、対米輸出について十分な共同歩調でもって円滑に輸出の増進に邁進したいというような話し合いの
結論に到達した次第でございます。その全体を通じまして、
特許庁に公正でない不公正な事実というものは全くなかったわけでございまして、この点につきましては、十分御信頼を願いたいと考えております。