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滝井義高君 実は土地も同じですが、整備事業団が引き継ぐ場合には、事業団はできるだけ経費を
節約しようとするわけです。従って、旧鉱業権者と地主なり農民との間の契約というものは、農民なり地主というものが相当有利な立場に立っていたわけです。というのは、
炭鉱を始めるときにはこれはもうどうしても始めなければならぬので、相当無理な条件も全部のんでしまって、そこに契約ができているわけです。はなはだしいところは、離作料を毎年払うというようなところもあるのです。離作料を毎年払います、そしてあなたのこのたんぼを私の方のボタ山なり事務所を建てますから、離作料は、あなたはこれで五万円あげておったから、五万円毎年払います。そして同時にあなたはうちの
会社の火薬庫の番人に使いますというようなところもあるのですよ。そういうような契約になっておる。ところが今度整備事業団が買い上げてしまうことになると、まず地主あたりに行って、あれはどういってくるかというと、たとえば私も少しばかり
炭鉱に土地を持っていますが、
炭鉱と私との間の契約にはたとえば地代、反
当り三千円だ、そしてそれを一年の前払い、こうなっておるわけです。十二月になったら、前年の十二月には向うは反
当り三千円払います、こうなっているのですね。ところが整備事業団からくる書類はどういうことになるかというと、これを六カ月ずつに切って、六カ月の
あと払いでございますということになって来ておる。前は一年分三千円を前年の十二月に払いますとなっておったのを、今度はその年の六月に半年分だけ払いましょう、そして十二月に半年分払う、いわゆる
あと払いに変って来ておる。そしてそういうものを
炭鉱に、君がこれを貸主との間に、あるいは農民との間に契約を締結してくれば、それはおれが買い上げてやろう、こういうふうに高姿勢に事業団は出ておるわけです。そうすると鉱業権者は農民に行って、
一つこれに判こを押して下さい、これさえ判を押してくれれば、あなたに金がくるのだからということで、農民はほんとに金がくると思って判を押しているという例が多いのです。昔、大手の
炭鉱にもありましたが、孫子の末まで鉱害については
異議を申すまじく候という契約をみんなとられておるのです。それで今
炭鉱へ行って鉱害の請求をやると、それを見せられますよ。あなたのおじいちゃんのときにこんなものを私にくれておるのだ、あなたは文句ないだろうと言われると、ぎゃふんですよ、それをみんなとられておる。それと同じですね。こういう形です。今度は整備事業団が高姿勢に出る。
炭鉱は判だけは押してもらわなければならぬから判を押してもらう。だから今度は事業団になると条件が悪く切りかえられるおそれがある。これは農民にとっても被害者にとっても非常に苦痛になるわけです。こういう点はあなたの方は、農民とそれから鉱業権者なり、地主と鉱業権者との間に話を片づけてきて、それから買い上げるのだ、こういうことになると非常な無理がそこに起ってきておることになる。こういう点に対する具体的な指導を、もう少しはっきりやる必要があるのではないか。そうしないと、たとえば補償料を三千円ずつ出しますと言っておったものが、千円でなければ、わしの方はだめですというようなことにならぬとも限らない。耕地整理が行われてしまえば、一、二年あるいは三、四年すれば、元の熟田になるでしょう。しかし、耕地整理が行われるのには、
予算が足りないから相当な年月がかかるわけです。そうするとその間にこれは当然復旧してもらわなければならぬ。特に田地田畑ははっきりしております。ところが、果樹なんというものははっきりしない。
炭鉱が下からずっと水を引き落して、ナシがだんだんかたくなる、桃の粒が、大きいのが小さくなる。こういう損害ですから、なかなか交渉をしても見分けがつかない。ところが今までは
炭鉱がその下を掘っておるのだから、
炭鉱は弱味がある。弱味があるから話がつくのです。ところが今度は官庁的な整備事業団が農民と対決することになると、農民は泣き寝入りをさせられるおそれが出てくる。そこでこういう補償の問題については、
炭鉱がずっと一かたまりずつ買い上げられていくのですから、善良な農民は相当被害を受ける。全く知らぬ間に下を掘られて、ナシも桃も祖先伝来の、一番最盛期になって、炭坑が下にできたために、もう老衰期の桃、ナシになってしまう。こういうこともあり得るわけです。一体こういうものの補償の基準はどういう
工合にやられておるかということです。