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1959-03-18 第31回国会 衆議院 商工委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月十八日(水曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 長谷川四郎君    理事 小川 平二君 理事 小平 久雄君    理事 中村 幸八君 理事 南  好雄君    理事 加藤 鐐造君 理事 田中 武夫君    理事 松平 忠久君       岡本  茂君    鹿野 彦吉君       坂田 英一君    始関 伊平君       中井 一夫君    細田 義安君       前尾繁三郎君    渡邊 本治君       板川 正吾君    今村  等君       内海  清君    大矢 省三君       勝澤 芳雄君    小林 正美君       鈴木  一君    中嶋 英夫君       水谷長三郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       中川 俊思君         通商産業事務官         (鉱山局長)  福井 政男君         通商産業事務官         (石炭局長)  樋詰 誠明君  委員外出席者         議     員 滝井 義高君         農林事務官         (農地局管理部         長)      庄野五一郎君         農林事務官         (農地局管理部         農地課長)   中島 正明君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 三月十八日  委員櫻井奎夫君辞任につき、その補欠として水  谷長三郎君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 三月十七日  輸出入取引法の一部を改正する法律案反対に関  する請願井岡大治紹介)(第二四三二号)  小売商業特別措置法案の一部改正に関する請願  (井岡大治紹介)(第二四三三号)  小売商業特別措置法案の一部修正等に関する請  願(受田新吉紹介)(第二四三四号)  同外三件(西村力弥紹介)(第二四三五号)  同(山花秀雄紹介)(第二四三六号)  中国産生漆輸入に関する請願岡崎英城君紹  介)(第二五一一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第一七五号)      ――――◇―――――
  2. 長谷川四郎

    長谷川委員長 これより会議を開きます。  小売商業特別措置法案商業調整法案及び石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題とし審査を進めます。質疑の通告がありますので順次これを許可いたします。  この際お諮りをいたします。委員外滝井義高君より発言を求められておりますので、これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 長谷川四郎

    長谷川委員長 御異議なしと認め、これを許可いたします。滝井義高君。
  4. 滝井義高

    滝井義高君 お忙しいところを恐縮でございますが、石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案について、二、三の点について政府見解を承わっておきたいと思います。  御存じのように、石炭産業危機日本だけでなくて世界的な傾向になっております。欧州の石炭鉄鋼共同体等におきましても、三十三年十月現在で四千三百万トンの貯炭ができておるわけです。これはその地区の全消費量の二カ月分に当るわけですが、このようにヨーロッパ諸国においても非常な貯炭があります。ベルギーやアメリカにおいてもやはり同じように貯炭があって、石炭産業というものは非常な困難な情勢に逢着をしております。これは単に経済が不況であるということだけの理由ではない感じがするのです。いわばこれは燃料用の油の使用が非常に増加をしてきた、結局油の使用増加をするということは、油の生産中近東地区を中心にして大型な油田が開発をされるし、同時にその油を輸送する大型のタンカー、マンモス・タンカーというようなものができて、そしてそれらのものが油の価格を非常に下げたというようなことだと思うのです。そういうことから、たとえば電力等は、わが国においては政府の方は、豊水のために石炭使用が非常に減ってきたというようなことも、貯炭増加一つの大きな原因にあげておるわけですが、最近の電力業界等状態を見てみると、どうもだんだん油を使う傾向の方が多くなってくるんじゃないか、と申しますのは、結局油を使った方が、たとえば十万キロワットの新規の火力発電を施設として使った場合に、油を主として燃やしていきますと、一般経費で四十億円ぐらいはとにかく節約になる、こうなると炭主油従政策だけを推していくということも、どうも無理な状態がこういう客観情勢から出てくるわけです。そこで政府は、こういう世界的な石炭需要の大幅な減少と、生産制限をやるということも必ずしもうまくいかない、こういう中で一体これをどういう工合に切り開いていくかということなんですが、これは日本だけの問題として小さく見るわけにはいかぬような感じがするのです。で、輸入炭国内炭とをカロリ当り値段を比較してみますと、米炭が八十九銭、オーストラリア炭が六十九銭、樺太炭が六十七銭、国内一般炭が九十五銭、原料炭は九十九銭で、値段外国炭に比べて商い割に品質が悪い。こういうことになると、どうも石炭産業は、斜陽産業から破産産業になるおそれも出てくる。で、これはやはりすみやかに政府が思い切った対策を立てなければならぬと思うのです。ただ新昭和石炭というような、何か四十億か五十億ぐらいの会社を自主的に業者に作らして、それで当面を糊塗するということでは、もはや焼け石に水どころではなくて、焼け石に水の役目も演じ得ない状態が出るのじゃないかと思うのです。こういう点についてどうお考えになっておるか、まず最初にお承わりしておきたいと思います。
  5. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 今先生の御指摘通り石炭が非常に重油からの攻勢によって苦境に立っておるということは世界的な現象で、大体ヨーロッパ諸国考えておりますいろいろな対策というようなものも、われわれが今考え、またこれからとらんとしておることも大差ないように予想しておるわけでございますが、そのヨーロッパ石炭わが国石炭とでは若干事情が違うのじゃないか、そういう気もするわけでございます。しかしいずれにいたしましても一番石炭にとって大切なのは、供給を安定きせ、需要を安定させるということと、それから値段をできるだけ低廉にするということによって、経済的な不利を補うという、この二つに帰着するのじゃないか、こう思うわけでございます。われわれ御承知のように昭和四十二年に六千九百万トンという生産目標を一応掲げ、その際には二十三トン半の一人当り能率になるということを前提といたしまして、開発銀行あるいは中小企業金融公庫からの資金融資というようなことを通じて、炭鉱合理化等努力しておるわけでございますが、大体そうなりましたときには、カロリー平均で八十銭程度にまで炭価は下げ得るのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。で、大体そこぐらいまで下りますと、石油値段というものが、御承知のようにフレートによって非常に左右されるということで、将来どうなるかということは、もちろん予断を許さないわけでございますが、大体今程度ということにすれば、八十銭程度まで炭価が下った場合には、使用上のメリットの差一割ないし一割五分を考えても、一応やり得るのじゃないか。われわれといたしましては、これはぜひそういう格好に持っていくということによって、国内にある貴重なエネルギー源であり、また非常に大きな雇用の吸収源であります石炭産業というものを安定させ、発展させる必要があるのじゃないか、そういうふうに考えておるわけでございますが、そのためにはとりあえず当面の危機というものを乗り切ることが一番大切であり、次いで長期的な石炭鉱業の安定ということをはからなければならない、そういうふうに考えておるわけでございます。当面の石炭危機を乗り切るということは、何と申しましてもダンピングというようなことのないような格好にして、破滅というような状態に陥ることを避けるということが絶対に必要であろう、そういうふうに考えるわけでございます。もちろん生産制限をやるとコストが上ることは当然でございますが、しかしわれわれといたしましては、ここである程度コストが上り、会社の方も経理的には赤字がふえるということがありましても、これを、ダンピング等から混乱するという格好になって、業界が全く無政府状態になるということからくる摩擦と比べれば、当然石炭業全体として耐え忍び得る限度のものじゃないか。そのためには必要な金をつけてやるということが、絶対必要になるというような見地から、新昭和石炭の発足、並びに今後の発展ということにつきましても、政府といたしましてもできるだけの協力、指導、援助ということは、今後もやっていきたいと考えておるわけでございます。とりあえずの問題は、とにかく破綻を来たさせないということで乗り切ることにいたしまして、そのためには今の生産制限を一時的には強化するし、あるいは今御審議を願っております合理化法改正によって納付金期間を一年間ふやすことによって、非能率炭鉱を百万トン買い上げる。あるいは現在いろいろと検討いたしておりますが、輸入エネルギーにつきましても、必要最小限度輸入をとどめるという従来の方針、これをあくまでも堅持していくということでやっていきたい、こう考えておりますが、一ぺんに石炭石油コンペティティブになるということは不可能でございます。たとえばわれわれといたしましては、政府の唱えております炭主油従政策というものを、できれば三十四年、三十五年という二年間くらいで、まず石炭会社自体赤字がなくなって健全な経営ができるという程度にまで努力してコストを下げる。それからその次の一年間くらいで、今度は自主的にさらに割くらいコストを下げるということによって、石油十分競争ができるといったように、やはりある程度時間をかける必要があるのじゃないか。それからまた四、五年たてば、必ず石油に対してもコンペティティブになり得るのだという見通しがはっきりするのであれば、これは需要者各位にも、もうしばらくのしんぼうだし、とにかく国内にある一番大きなエネルギー資源でございますので、これをさらに発展させるということのために、もうしばらくの間御協力願いたいということで、炭主油従政策を今後も続けることができる、そう考えておりますので、とにかくまず現状赤字状態から抜け出すという努力、それに各社とも力をいたしてコストを下げる。さらにその次には石油コンペティティブになるようにさらに下げるというような、相当計画的なコスト・ダウンの努力というものを、石炭界に要請すると同時に、産業界に対しても、それを受け入れて、一つしばらくの間がまんしてもらいたい、そういうふうな格好で行きたいと思っております。  それからさらに長期的にはさっき申し上げました合理化計画の線に沿って増産を行うということで、炭価引き下げをいたしますが、さらにいろいろな地下資源産業の特性ということにかんがみまして、何らかの意味における需給の調整機構というようなものについても、今後検討を加えていきたい、こう思っております。さらに従来の用途ということだけでは、これは非常に限られておりますので、新しい石炭化学発展というようなことのために、官民あげて一つ用途の開拓に乗り出すということによって、石炭の将来を安定させるということにしたいと存じます。
  6. 滝井義高

    滝井義高君 今石炭局長から当面の対策長期的な対策二つに分けて詳細な政府見解説明があったのですが、もう少し一つ具体的に説明願いたいと思うのです。それはまず第一に当面の対策としていわゆる生産調整をやる、いわゆる生産制限をやる、この点については三十四年、三十五年に赤字をなくする努力業者にしてもらう。さらに二カ年間くらいは一割のコストの引きさ下げを努力してもらう、こういうことなんです。生産制限コスト引き下げ、あるいは赤字をなくする努力ということは、必ずしもこれは一致をしない、大きな矛盾をはらんでおる点なんです。政府長期エネルギー政策を立てておるのですが、最近経済企画庁あたりの意見をだんだん聞き、あるいは論議をしてみますと、もはや五年くらいの長期計画ではだめだ。やはり日本における長期計画というものは、十年、三十年の長期政策を立てなければならないのだ。たとえば石炭に非常に密接に関係のある鉄鋼のごときは、すでに昭和四十年以降の計画というものを、国が立てるのじゃなくて、民間の営利的な会社でさえもが立てておるわけです。すると当然そういうものに見合った石炭というものの計画が立てられなければならぬ。ところが昭和五十年に七千三百万トンの計画を立て、三十三年には五千八百万トンのものが、実質的には四千八百万か九百万トンしか必要がない。こういうエネルギー長期計画に大きな見通しの誤まりを来たしたのです。ところが一方国家における経済の要請というものは長期計画を必要とする、こういう状態があるわけです。そこで現実における日本出炭能力というものが五千七百万トンか八百万トンの能力があるにもかかわらず、それを制限しなければならぬのだが、一体その制限というのは昭和三十四年、三十五年の二カ年と、さらにあなたの言う、あと二カ年で一割コスト引き下げなければならぬ、六年、七年、こういう三カ年か四カ年かの出炭制限見通しと申しますか、ワクは、どの程度出炭制限ワクをもって進んでいくつもりなのですか。これを一つ説明願いたい。
  7. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 現在の石炭生産能力が果して幾らあるかということは、これは非常にむずかしいのでございますが、一応各社から今まで一体どのくらいの出炭が望ましいかといったような、希望的な数字をとったところでは、大体五千五百万トンくらいという数字が出ておるわけであります。大体会社がこのくらいが一番望ましいというところが一番今適切なところではないか。それに対しまして現在約百万トンばかりの過剰貯炭がある。これはできるだけ早い機会にその過剰性をなくするということによって、出炭制限というのはできるだけ短かい期間にとどめたい、こういうふうに考えておりますので、まだ数字その他は最終的にはわかりませんが、大体われわれのところの考えております数字というのはやはり四千八百万から四千九百万トンというくらいのところに、一応とどめる必要があるのではなかろうか、そういうふうに考えております。
  8. 滝井義高

    滝井義高君 そうしますとここ三、四年の間は、現状の四千八百万ないし四千九百万トンの出炭ベースを維持していきたい、こういうことなんですね。
  9. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 いや、二十四年度は四千八百万トンということで、大体そうなりますと現在われわれの考えております来年の需要予想というものは、五千百万トンか五千二百万トン程度であろうかと存じますが、大体三十五年三月、三十四年度の末には八百万トン程度にまで貯炭が下るんじゃないか。そうしますとあと需要とちょうどマッチした程度生産が行われますので、またことしのように特別に雨がよけい降り、電力だけで五百万トンも当初の計画と違うといったような不測の事態が生じない限りは、来年からは需要が五千三百万トンあれば五千三百万トン、五千五百万トンにふえれば五千五百万トンといったように、能力に対してそう無理のない程度生産ということをやっていけるようになる、そういうふうに考えております。
  10. 滝井義高

    滝井義高君 そうしますと非常に重大なことが起ってくる。どういう重大なことが起って参るかというと、日本長期エネルギー政策昭和二十三年度に五千八百万トンの供給をやる、そして五十年には七千二百万トンだ、こう言っておったわけです。そして石炭がいわば五十年には七千二百万トンになる程度のカーブをずっと今から描いて、その七千二百万トンに五十年には達するわけです。そういう位置づけを石炭についてやっておったわけです。そして同時に石炭に見合う石油とか木炭に至るまでのエネルギー計画を立てていた。ところが石炭が、今御説明になったような五千八百万程度からずっと伸びていかなければならぬものが、しばらくここで四千八百万から四千九百万に足踏みをするわけです。そしてせいぜいここ一、二年はよくいったところで五千百万かそこらだ。こうなりますと、本来石炭が占めなければならないエネルギーの地位というものを重油その他によって、あるいはガスによって食われちゃう、食われると石炭産業の将来の展望と申しますか、いわゆる今度は当面の対策として長期的な対策をやる場合に、もはや石炭の市場というものが国内にはなくなる、こういう問題が出てくるわけです。やはりこれの対策というものを考えておかないと、石炭の将来の展望というものは全く暗いものになっちゃう。これはここ三、四年におけるオートメーション化と申しますか、いわゆる産業体質改善によって政府はそれを重点的にやろうとしておるわけですから、各企業における燃料のもとであるボイラーその他の設備、こういうものが相当程度違ってきてしまうというおそれもあるわけです。そのときになって重油ボイラー石炭ボイラーに切りかえさせようということも、なかなかうまくいかぬことになる。今のあなたの御説明からはこういう矛盾点が出てくるような感じがするのです。こういう点の打開策を何かお考えになっておりますか。
  11. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 私冒頭に申し上げたつもりでおったのでございますが、企画庁で立てられた昭和五十年の七千二百万トン、石炭鉱業審議会合理化法に基く基本計画としては、四十二年に六千九百万トンというものを立てております。これは先ほど申し上げた通り、あくまでも基本線はくずさないということで長期的な、もっと能率的な開発を行うための縦坑の掘さくであるとか、あるいは坑道の機械化であるとか、斜坑であるとかいったようなものについては、これはほとんど予定通り投資を進めさせておりますし、開発銀行等の金も大体出しておるわけであります。これは一般的な石炭金詰まり等から、三十三年度は資金投下量としては約一割に相当するかと思われますが、御承知のように縦坑一本でも五年から十年かかるといったものがございますので、この一年に一割ばかりおくれたのは今後数年間に容易に取り返し得るものだと考えておりまして、われわれとしては、そういう長期的な開発についてのテンポというものは一向ゆるめる必要はないんじゃないか。こういう長期的に考えなければならないエネルギー、これは先生の御指摘になった通りでございますが、それを一時の、一年あるいは二年の非常に異常なる経済現象によって、貯炭が急にふえたようなことのために、根本策を変えるということはむしろ間違いなので、長期計画に沿った線はあくまでもそれを実施し、さしあたりはとにかく異常な苦境を打開するために、コストがある程度上るというようなことがあっても、それはがまんして切り抜ける。六千九百万トンあるいは七千二百万トンという一定の線に向っては、長い目ではあくまでも邁進する必要があると思っておりますし、また現在各社で行われておりますいろいろな開発工事等を見ましても、その線通りに大体行われておるというように確信しておりますので、長期的に見た石炭重要性ということ、将来決して石油にとってかわられる方向になるということはない、われわれはそういうふうに考えております。
  12. 滝井義高

    滝井義高君 ぜひ昭和四十二年には六千九百二十万トンの線が維持できるように、石炭局はもちろんのこと、岸内閣としてもやはりその方針を堅持して、もしそこに隘路でも出れば、その隘路というものは必ず断ち切っていくだけの勇気と自信を持ってやっていただきたいと思います。これはあなたが今、それをもって必ず貫いていくのだ、こういう御言明がありましたので、時間の関係上それ以上追及いたしません。今後の政府の実績を一つ見さしていただいて、その上でまた議論をさしていただきたいと思います。  次には、いろいろ石炭資金の確保の問題等もありますが、これは新昭和石炭会社について政府が協力して、できるだけ融資努力するということを予算委員会言明を得ましたので、それに期待をして、次には輸入エネルギーの節減というものを一体どういう工合にやっていくかということです。結局石炭の五千八百万トンの計画というものは、なるほど長期的に見ればその方針に変らないにしても、ここ一、二年の間というものは、やはり日本産業が拡大をしていき、経済成長が六%ないし六・五%伸びるのだ、長期計画では三十七年までには伸びていくということを、昨日社会労働委員会経済企画庁当局言明も得たのですが、そういうことになると生産の伸びに見合ってエネルギーというものが、石炭のカバーをしなければならぬ、他のエネルギーによって石炭不足分をカバーしていくという形が出てくる。そうしますと一体輸入エネルギー節約、特に外炭とか重油というようなものの関係を、どういう工合見通しておるのか。
  13. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 輸入エネルギーにつきましては、国内でまかなえるものはもちろん優先的に国内でまかない、やむを得ざる不足分だけを輸入炭で補い、あるいは石油で補うということを従来からとってきたわけでございます。ただここで一つ問題がございますのは、重油使用壁というものは毎年毎年相当のワクでふえておりますが、しかしその中で石炭と競合するいわゆるボイラーにたかれる重油の量は、大体公益事業を含めまして全体でせいぜい三割程度、実数で申しまして年間にして三青万キロ程度のものがボイラーでたかれる。あとの七百万キロ、これは非常に大ざっぱな数字でございますが、かりに千万キロというものがよく言われている数字でございます。ことしは九百十八万ということを予定いたして予算を組んでおりますが、三十四年度はまだはっきりしておりません。しかし九百十八万ばかりの中で大体二百五、六十万というものが、いわゆるボイラー用に使われる石油、それ以外は船等に使われますA重油等で、これは石炭と競合しないものでありますが、あるいは化学原料用石炭、それから鉄の製練のための特に硫黄分の少い、ロー・サルファの重油といった特殊のもの等でございますので、この石炭と競合する部分につきましては、われわれ従来から非常に大きな査定を加えまして、たとえば公益事業である電力等につきましても、最近の設備関係で、どうしても負荷の変動があるという際には、簡単に操作できる重油仕込むということでなければいかぬといったことから必要最小限度と思われるものを重油で認める。石炭でまかなえるものは、これは原則として全部石炭を使いなさいということで、三十年に重油ボイラー制限法を御制定願いまして運用していること御承知通りでございますが、われわれといたしましては、今後もこの方針というものは当然続けていくということで、国全体としても運用していただきたいと思っておりますし、われわれ石炭局のものはもちろんその方向で進んでいきたい。原料炭につきましては、これは国内で約一千万トン近いものが出るわけでございますが、たとえば来年の鉄鋼生産計画と合せますと、どうしても千四百万から千五百万ぐらいの原料炭が要るという格好になりますので、この需要量との差の四百万ないし四百五十万というようなものにつきましては、これは輸入せざるを得ない、こう考えております。しかしこれは御承知のように製鉄その他ガス、コークスに絶対必要な強粘結炭が大部分でございまして、一部無煙炭、これも国内でできないために入れざるを得ないのでございますが、そういうふうになっておりまして、国内と競合するものは一トンも入れないという格好で進んでおります。
  14. 滝井義高

    滝井義高君 鉄鋼との関連のある強粘結炭無煙炭輸入はやむを得ないと思いますが、そういう方針一つ堅持をして、よろめかないように、行ってもらいたいと思います。そうしますと、国内においては原料炭出炭制限は、先般の大臣の言明にもありました通り、やらない。そうしますと、今度この石炭鉱業合理化臨時措置法によって納付金を一カ年間納入するのを延期することになるわけですが、その場合に先般予算委員会では原料炭についてはトン当り納付金を一般炭の納付金に比べてプラス・アルファをつけて納付せしめるというお話があったわけです。従って原料炭には一体どの程度のアルファをつけるかという点です。これはもうやがて法案が衆議院を通るのですから、そこらあたりをはっきりしておいてもらうことが、あとにおいてごたごた問題を起さずによいだろうと思うのです。一体どの程度のプラス・アルファをおつけになるのですか。トン当り二十円の納付金に、どの程度増額しておりますか。
  15. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 今のところ納付金を一般炭と原料炭とで差をつけてやるということは、実は考えておらないのでございまして、たとえば目下設立準備中でございます新昭和石炭につきましても、これは御承知のように、そこで買い上げますのは、ほとんど現在余っている一般炭だけで、原料炭は一トンもそこに持ち込まれることはない、こういうふうに考えております。しかし各原料炭会社は、それぞれの原料炭も含めて、自分の出炭規模に応じて大体そこに金を持ち寄り、そしてそれを担保に銀行から金を借りてきて百万トン持とう、こういうことをやっているわけでございまして、大体これは業界内部のお互いの話し合いで、そういう全体の機関を作る際には自分には直接恩恵をこうむることのないような機関に対しても、みんな共同で一つ信用を持ち寄るというようなことによって、業界全体のトラブルを解決していきたいというようなことで、大体一般炭と原料炭の間も話がついているという格好でございます。実はこれを法律あたりできちっと分けるということは非常にむずかしい問題でもございますから、われわれといたしましては、業界の中でそう問題が片づく限り、できるだけ円満に業者同士で話し合いをさせて問題を解決したい、こういうふうに考えておりますので、たとえば今新昭和石炭の出資金といったようなものに出ている精神をもって、今後とも原料炭と一般炭との間の各会社の調整をはかるというふうにやつていきたいと考えております。
  16. 滝井義高

    滝井義高君 どうもそこがちょっとはっきりしないのです。この前予算委員会で私は念を押したのですが、トン当り納付金二十円というものを、今まで一般からやっておったのだが、原料炭出炭制限をこの際やらないのだ、というのは、原料炭は不足をしておる、従って原料炭についてはプラス・アルファを出していただくのだということは、大臣が言明されたのです。なるほどこういう新昭和石炭会社というような不況カルテル的な要素を持っている会社ができて、直接影響を受けないかもしれぬけれども、これは石炭業界としては間接な影響を全部受けるわけです。だからそこに、恩恵を受けることに濃淡の差はあるにしても、影響を受けることは間違いないし、長い自で見ると、たとえばわれわれの近所にもありますが、今まで無煙炭であった山で、いつの間にか今度は有煙になったという由もあるわけなんで、長い目で見るとそういう変化も起るし、また今度は原料炭が転落することもあり得ると思うのです。従ってこれはこの前の大臣の言明と今のあなたの言明と、まだ一ヵ月にもならぬのですが、その点今のような御答弁では原料炭と一般炭との差別というものはないので、これはお金を出すのはそれぞれの力において出すのだから、何でもないのですね。平均しておるわけです。ところが一方一般炭は出炭制限を受けるけれども、原料炭は自由に出していいのだということになれば、それについて何か石炭鉱業の合理化をやって、買い上げる資金として何ぼかそこに出してもいいのじゃないかという感じがするのです。その点はこの前の言明と今と違うのですが、言明が違うことは困るのです。
  17. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これはこの前大臣は納付金を引き上げるとは言われなかったと思うのでありまして、ただ滝井先生の御質問に対して、原料炭と一般炭との間には、ある程度取扱いに差をつけるということの方がいいのじゃないか――先生が大臣の気持はどうだというたしか表現だったと思うので、気持としては何か差をつけるということの方がいいのじゃなかろうかということを、大臣は答弁されたと思いますし、また私自身も申し上げましたときに、一般原料炭会社の方から、自分の方の炭は直接には買ってもらわぬけれども、自分の方で協力したいという空気がございますので、できるだけ民間同士で話のつくものは一つ円満に話をつけたいというように考えていますというふうに申し上げたつもりでございますので、この前の大臣の答弁と、私が今ここで申し上げておりますことは食い違いはない、そういうふうに考えております。
  18. 滝井義高

    滝井義高君 少し答弁が後退をしてきておるのですが、そうしますとその気持というのは、具体的にどういうところに現われてくるかということなんです。まさか原料炭を出している会社が、この新しくできる不況克服の会社によけい金を出すわけじゃないと思う。それぞれ出炭に応じて出すのならば、これは一般炭のところと同じなんですね。だから大臣の気持というものは、具体的に出炭制限を受けない原料炭会社は、どういう工合にそれを表明するかということです。
  19. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 今回新昭和石炭で買い上げますのは、御承知のように現在余っております一般炭で、原料炭でないわけでございます。従いましてこの新昭和石炭が、なぜ一体一般炭が余り出した昨年の秋ごろからすぐ発足できなかったかと申しますと、実は原料炭を主として出しているといったような山あたりは、自分らは何も買ってもらう必要はないのだし、困っていないから、わざわざそういう会社を作る必要を認めない、だから作るなら一般炭を必要としているような会社でお作りになったらいいのじゃないかというような空気が、初めにあったわけでございます。それはわれわれといたしまして、とにかく石炭界全体の問題もあるので、そういう角つき合せてものを言うということでなしに、一般炭も原料炭もとにかく相ともに業界危機を乗り切るというためには、協力すべきであるということ、これは大臣からも政務次官からも原料炭関係者にお話しいただいておりますし、またわれわれも協会等を通じて、とにかく原料炭会社はなるほど自分は困っていないかもしれないけれども、これはお互いの非常な混乱を防ぐということのために、せっかくこういう仕組みを作ろうというならば、気持よくそれに入って、そして応分の出資をするということで、協同して克服すべきであるというふうに指導して参りまして、それでそれが結局、今回の新昭和石炭の正式の発足というところまで、実を結んだわけでございますので、われわれといたしましては、従来も、自分のところはたまっていないので因らないんだからといったようなことでなしに、とにかくそれぞれの力に応じて応分の金は出しなさいということで指導してきましたし、今後もそれでやっていきたい、そういうふうに考えております。
  20. 滝井義高

    滝井義高君 そうしますと、大臣のプラス・アルファをつけたいという気持は、原料炭会社も新昭和石炭に出資するんだ、今の答弁ではこういうことが落ちになることになるわけですね。どうも大臣のこの前の答弁とは、だいぶ後退をしたようでございます。私は、日本石炭産業がこういう危機になったときに、この前もここで言いましたが、石炭産業の事業主というものが、やはりもう少し大所高所に立ってものを考えないといかぬのです。企業一家的な、自分の炭鉱だけがいいというようなものの考え方があるところに、日本石炭鉱業というものが行き詰る一つの原因もあるのですよ。だから、私は、やはり政府は、この際、今後この石炭鉱業の問題を考えるためには、労働問題も考えなければいかぬし、非能率炭鉱の買い上げをやらなければならない。しかし能率のある炭鉱がもっと大局的な、大乗的な見地にやはり立たないといかないと思うのです。だから、弱い炭鉱は買い上げる、そして買い上げたときの労働者というものはおっぽり出して失業者にするという、こういう冷酷な政策が今とられておるわけです。それならば、能率のいいところの連中は、もっと義務を課さなければいかぬでしょう。国が少くとも銀行から金を借りる世話をしてやろうというなら、それだけのものをやらなければいかぬ。おれの方は能率がいいからわが道を歩むんだということになれば、これは四つの狭い日本の国において、経済計画なんというものは立たぬですよ。そういう点について、どうも今の答弁は私は少し不満です。この前の大臣の答弁とは相当後退をしている。いずれこれはもう一ぺん大臣にもその点確かめたいと思います。  そうしますと、次には、さいぜんあなたの御言明の中に、なお長期石炭政策というものについては長期エネルギー政策ワクをくずさない、あるいは四十二年には六千九百二十万トン、二十三・五トンという一人当り能率というものもくずさないんだ、こういう御言明があったのです。そうしまして、縦坑開発、従ってそれは同時に機械化の促進という合理化を伴うておるわけなんですが、これの進行の状態というものは、一割程度計画変更というか、ちょっと時期がおくれるという形だと、こういうことを御説明になったのですね。そうすると、一体そういう縦坑開発機械化の促進、いわゆる炭鉱の近代化、合理化というようなものは、結局、どういう状態で進むことになるのですか。
  21. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 大体三十三年から三十七年までの五年間で、われわれといたしましては、石炭にトータルで千六百三十億ばかりの投資を考えております。これはこのうち約半分八百三十億ばかりが、能力増強のために坑内を更新したり、あるいは拡張したりというようなことに使われ、それから残りの約八百億ばかりのうち百七十億程度が、現在あります規模における設備の更新であり合理化であります。それから約六百三十億ばかりが、現在の規模を維持するためにどうしてもやらなければいかぬというものであります。従いまして、大体五年間に合理化あるいは能力増強という関係で約千億の金を投ずるということでやつていきたい、そういうふうに考えております。  なお、御参考までに、三十年から三十二年までの三カ年間、この三カ年間には維持投資を含めまして全体で四百八十六億、大体年率にいたしまして百六十億ばかりの設備投資がなされたわけでございますが、それを今度は三百二十億、ちょうど今までの倍というスピードで投資をするということによって、高能率炭鉱の実現ということを期待しております。
  22. 滝井義高

    滝井義高君 そうしますと、今までの計画では、三十三年五千八百万トンを目標にして、三十三年から三十七年までに石炭へ千六百三十億の投資をやることになっておったわけですが、三十三年の推定実績ですね、まだ年度が終っておりませんから、その実績と三十四年の見通しというものは、一体どういうことになるかということです。  それから、あとの三カ年、三十六年と三十七年の二カ年間はコストを一割下げなければならぬことになるわけですが、その場合に、この計画というものはどういう工合に伸びていくのか、それとも縮むのか、そこらの見通しですね。あまり長い見通しをやっておっても、間違ってもいかぬですから、そこらの三十三年の実績と三十四年の、今あなたの言われるように、少くとも百六十億の設備投資が三百二十億くらいに伸びなければならぬということが可能かどうか、そういう点です。というのは、まあ銀行等もなかなか石炭産業へ、わずかに四十億か五十億の不況克服のための会社に金を出すことも、政府がやはり口を入れなければいけないという、こういう事態が出てきておるわけです。そういう中で、これは必ずしも明白な、前途に明るい展望のない石炭というものに、それだけの金が一体どうすれば出ていくかということをも同時にあわせて知りたいから、御説明願いたいと思います。
  23. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 三十三年度、今年度の当初の計画は、大手、中小を合せまして約三百九十六億という設備投資を一応考えたわけでございます。しかしそれが大体一割程度減りまして、三百六十億程度の投資になるのではないか、そういうふうに考えております。先ほども申し上げたと思いますが、約一割工事がスロー・ダウンしたわけでございますが、しかしこれは今後三年なり五年なりというものをはかって、それには縦坑もございます、それから来年できるものもございますし、全体でならして考えますと、大体基本計画の四十二年六千九百万トンという線は、これは今後注ぎ込んでいきさへすれば支障なしに一応実現できる、そういうふうに考えております。  なお、三十四年度につきましては実は現在各炭鉱から設備投資計画を聴取いたしておる最中でございますので、まだ最終的にでき上っておりませんが、今まで説明を聞きました各社計画等を大体集計しますと、ほぼ今年度並みということになるのじゃないか、大手で三百億で、中小で五、六十億程度ということになりはしないか、そういうふうに考えております。
  24. 滝井義高

    滝井義高君 そうしますと、三十三年、三十四年の見通しを加えると、計画の二割ぐらいはおくれてくる、こういう結果になる可能性があるわけですね。
  25. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 そのどの段階で一割二割とらえるかということでございますが、これは先ほど申し上げましたように、五年十年かかるという長期縦坑もあるわけでございますので、当初立てた設備投資のプログラムからいいますと、一カ月半おくれれば一割以上おくれるということになりますので、そういう一番最初に書いた青写真と比べると行程がおくれているという面は確かにあると思います。しかしそのために計画が一割おくれたのだというふうに今ここで断定するのは時期的にまだほんの途中の段階でございますので、投資額はおくれていることは事実でございますが、しかしそれは本質的には長期計画には支障を来たさない、そういうふうに考えておるわけであります。
  26. 滝井義高

    滝井義高君 これもなお三十三年度の明白な実績が出るのが、もう少し時間もかかるようでございますし、あなた方の見通しが非常に自信を持って、しかも強い意思で推進をしていこうという意欲が現われていることは認めますので、その自信と意欲が現実の生々発展をする産業の中に根をおろすことを期待して、次に移りたいと思います。  次には、いよいよこの石炭鉱業合理化臨時措置法の一部改正案が通って、その通過後にいろいろ処理する問題が起ってくるわけですが、その問題を少し聞いてみたいと思うのです。  まず第一に、これは先般この委員会でもやはり私お尋ねをしたのですが、いわゆる合理化を申請する鉱業権者が自分の鉱区を非常に分割をして、炭鉱の買い上げの申請をするという点です。これについては鉱業法を改正するときに、何とか考慮いたさなければいけないだろうというような意見もありました。まあ鉱業法の改正はなかなかすぐこの国会に間に合わぬようでもございますが、次の国会に出るかどうかわかりませんが、鉱業法はいつごろ御改正になるつもりですか。
  27. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 三十四年度から鉱業法改正審議会が正式に発足いたしまして、大体今の予定では三十四年、三十五年の両年度の間に、十分な検討をして結論を出すということを目標に仕事を進めております。
  28. 滝井義高

    滝井義高君 そうしますと、これは鉱業法の改正はなかなか間に合わぬわけで二年三年あとになる、そうしますと、この前この委員会で買い上げ申請をしたその鉱区についてはできるだけ立法の精神からいってこまかく分割をして買い上げをやるということはいけない、行政指導でそういうことをやらないようにしよう、こういう御答弁があったのですが、そういうことを今おやりになっておりますか。
  29. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 鉱区の分割は御承知のように通産局の認可を要するということになっておりますので、われわれといたしましては鉱区の分割ということが申請された場合に、これがたとえば事業団に一つ買い上げてもらうということのために、一部非常に鉱害の多いところだけは残しておいて、高く売れるところだけ事業団に持ち込もうといったようなことは避けるようにということから、これは十分な注意をして指導いたしておりますし、そういうふうに明らかに事業団あたりに買い上げてもらうということを前提に、鉱区の分割を申請したという場合には、それは許可しないという方向で実際に仕事をしているわけでございます。しかしとにかくまず一定の面積以上に分割するということは、現行の鉱業法で認められておりますので、いや、これは自分は売るのでも何でもないのだという格好で分割申請した場合には、これはちょっと役所の方ではわからない、これは事業団とも十分に連絡をとりまして、一つそういう怪しげな分割をして持ち込んできたという場合には、できるだけ事業団は買わないというような方向で、大体これはあらかじめ買い上げ申込者の炭鉱はわかると思いますので、これを分割して持ち込む場合には買いませんよというようなことを、事前に言うように現在指導いたしております。
  30. 滝井義高

    滝井義高君 事業団と通産局との関係ではなくて、通産局内部の関係なんです。これは鉱区の分割その他をやるのは鉱山部、今度は鉱害は鉱害部でやる、そうするといつの間にか鉱山部でやってしまっているのです。今言ったように私有財産ですから、一定の鉱区があればそれは自由に届け出ることができるわけです。そうするとそれをもうあの炭鉱は買い上げの対象になるということがわかり切っておるのに許可してしまっておる、こういうことなんです。事業団と通産省との間の話ではなくて、実に通産省内部の連絡調整がうまくいっていないということです。こういう点については、もう少し出先の通産局にそういう点を厳重に注意をして、そして鉱山部と鉱害部あたりの連絡を密にさせておかないと――これはもう買い上げ見通し炭鉱というものはわかっておりますよ、われわれしろうとがわかるのだから、専門家のあなた方がわからないはずはない。ところがきちっと申請をしたときには分割してしまってきておる、分割したってかまわないのだ、その鉱業権者は同じだから。だからそれは一括して出なければだめだ、こうおっしゃってくれればいい。ところがなかなかそれを言わない。だから今後は今あなたの言われたような行政指導の方針というものを、やはり明確にしておいてもらわなければいかぬと思うのです。  そこでそういう分割が行われると、どういうことになるかというと、鉱業権者は自分の今持っているAという鉱区を、今度二分してこれをAとBにするわけです。そしてAだけを申請する、そしてBに今度坑口を掘ってそして炭坑を始めるわけです。そうしますと、どういうことになるかというと、今までAで掘っておって鉱害を与えておったその地域というものは、当然鉱害復旧の対象にならなければならない、買い上げられる対象にならなければならない、特に安定しておる場合にはそうなんです。ところが今度Bに坑口を掘ってしまって、どういうことになるかというと、今度すぐ隣ですからAのところに脱水陥落が起ってくる、そうしますと、それは不安定な鉱害になって、これをどうするかということでなかなかもめてくる、必ずめんどうが起ってくる。いわんやそれが三つも四つもに細分された場合にはどうにもならない。そういうように一つの鉱区がもう能率が上らないのだ、現在日本石炭出炭制限をやらなければならぬのだといって買ってもらっておるくせに、隣にすぐ鉱区の分割をやって、新しく掘って能率の悪いものを始めていく、こういうこと、ところがこの点についてはわれわれが一つ文句を言えない弱点がある。というのは廃鉱になった、買い上げになった、その炭鉱に働いておる労務者をこれに移す、こういう利点があるわけなんです。いわゆるこういう矛盾点との調整、こういう点を政府として十分考えられておらなければならぬ。ところがどうしてそういうことが起るかというと、買い上げの対象になる炭鉱の労務者の、いわゆる総合的な労務政策政府にないから、結局こういうことを、その場で、何と申しますか、われわれの言葉で言えばお茶を濁すということになるし、何か当面を糊塗しただけのことになってしまう。そこでこういうような当面を糊塗することでなくて、そんなに能率の悪い鉱区を買い上げたのですから、そこに新しい炭坑を開いたところで、その出炭期間はもうきまっておる。一年かせいぜい二年ですよ。だからまたこれは同じく買い上げを申請をするのですよ、それはもうきまっておることなんです。そういうように次から次に迷惑を及ぼして事務を複雑にしていぐ、石炭は山のように余っておるのにというような問題が起ってくるのですが、こういう点の処理を一体どうするかということです。
  31. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これは非常に大きな問題だ、こう思うのでございますが、しかし、今の法律の建前というものから見ますと、分割した鉱区、それを任意申し込みという制度で事業団が買っておるというような場合には、分けてきたものは買わないということで、はっきりぴしっと拒絶してしまうということは、分けられたあとでは非常にむずかしい関係になると思うのでございます。今のお話にありましたように、結局鉱害の被害者に迷惑をかけるか、それともそこの雇用問題というところにしわを寄せるかという矛盾点が、そこに出ているんじゃないかという先生のお話、これは確かにその通りだと思いますので、われわれといたしましては、ことに北九州のような非常に老衰炭鉱が多いというような地域につきましては、今後労働問題、特に雇用問題につきましては、単に通産省だけでなしに、政府全体あげて基本的な対策というものを確立することによって、こういう労務者にしわを寄せるかわりに、鉱害の被害者にしわを寄せるというような不合理が起らないように、今後はできるだけの努力をしていきたい、こう考えます。
  32. 滝井義高

    滝井義高君 私はそれは割合簡単にできると思うんです。というのは、たとえば労務者についても、買い上げ炭鉱の雇用関係というものは、その調印予定日の前二カ月間に雇用されていなければだめだというような制限をうけておるわけです。従って、鉱区についても、買い上げの申請をしたときにおいて前六カ月とか一年以前に分割をしたものはもうだめなんだ、こういうことをやっておけばいい。労務者にはそういうものをつけておるんですから、鉱区にもそういうものをつけるか、そういう行政指導をおやりになる方がいい。一年も三年も前から分割をしてやろう、そこまではなかなか頭が働かないと思うのですが、そういう点はどうですか。
  33. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 できるだけ今の御趣旨に沿うような考えが実現できるように、一つ至急検討を進めたい、こう思っております。
  34. 滝井義高

    滝井義高君 ぜひ一つ検討していただきたい。  次に、いよいよこの買い上げ対象になった炭鉱が調印も終って買い上げられてしまいます。そうした場合に、買い上げ炭鉱の鉱害復旧のいろいろな計画の立て方についてですが、まずその炭鉱が買い上げられると、安定鉱害については当然その鉱業権者が被害者との間の問題を全部片づけて、そして事業団に買い上げてもらうことになるのが建前です。ところが、この地域が安定をしておるかどうかということをきちっと見定めていくことは、なかなか困難な問題が多い。たとえば、あとで農地の問題等も出ますが、これは不安定分だということで、そのときそのときの鉱業権者の経済状態その他にも関係をして、なかなか安定したと認めないということが多い。鉱業法の建前は、やはり鉱業権者が認めなければだめだという建前になっておるわけです。そこで、必然的に安定をしておると常識的に思われるものも不安定分に入れられて、そして一括をして買い上げられた後に、その整備事業団がリザーブして、前に先取をしているその金で、今度は復旧計画が立てられていくことになるわけですね。そこで、いわばそれらのものをひっくるめて不安定分としましょう。その不安定分の復旧計画というものは一体どうしてやっていくかということです。たとえば筑豊炭田のように、もう軒並みに炭鉱がずっと買われてしまうことになる。そうすると、そこにいわば不安定分だというものの中に相当安定したものが含まれてきておるわけですから、これはもう被害者にしてみれば、早く復旧してもらいたいことになるわけです。ところが、早く復旧するということになると、その場合のやり方は、金銭賠償で、いわゆる打ち切りで行くか、一般鉱害にかけるかという二つの問題になってくるわけです。あなた方はその鉱害復旧を一体どちらでおやりになるのか、これをまずお聞きしたい。
  35. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 われわれといたしましては、鉱害の跡始末につきましては、金銭賠償でなしに、できるだけ臨鉱法の精神にのっとって復旧、鉱業の回復を主目的にやっていきたいと考えております。
  36. 滝井義高

    滝井義高君 一般鉱害でやる、臨鉱法でおやりになるのだということになりますと、当然その計画がなくてはならぬことになるわけです。この計画というものはどういう工合にお立てになっていかれますか。たとえば一つの市に五つも買い上げの対象の炭鉱ができてしまった。そうして鉱害復旧をやらなければならない家屋が二千戸もできた。そうすると、これは今までのような予算のつけ方では二千番目の人が鉱害復旧するのは十年も後になって、家は倒れてどうにもならないということになり得るわけです。従って、当然整備事業団としては、買い上げた後にはその地区の被害者が納得のいくような計画というものを示されなければならぬと思うのですが、これは一体どうお考えになっておりますか。
  37. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 不安定鉱害につきましては事業団がその鉱区を買い上げた以上は、事業団としては鉱業権者となるわけでございますので、鉱業権者としての事業団が地元民と話し合いをして復旧計画を立てる、そういうことになると思っております。
  38. 滝井義高

    滝井義高君 それは復旧計画を立てるけれども、国と県とで合せて予算が三分の一ついてくるわけです。従って、事業団がやろうとしても、その分の金がついてこぬとなかなかいかぬわけです。少くとも国の政策でこれはお買い上げになるわけです。石炭鉱業合理化政策という高い見地からお買い上げになるわけです。そして三千戸も一挙に鉱害復旧対象の家屋ができる。これは少くとも三年かそこらすれば安定するんです。炭鉱をやめてから買い上げになるまで長いものは一年か一年半もかかるんです。復旧対象の家屋あるいは農地が安定するためには、三年から五年というのが常識です。それがほぼ一年か一年半で安定してしまうということになると、復旧してくれということになって、われもわれも復旧してくれということになった場合に、整備事業団としてその申し入れに全部応じて、一年か一年半の間にやってしまえるかどうかということです。これは国がそれに見合う裏打ちをやってくれなければできないことになるが、その点どうなりますか。
  39. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 御承知のように、臨鉱法を制定いたしました当時の鉱害というものが、三十四年度以降なお五十億ばかり残っておるわけでございます。われわれといたしましては、三十七年の臨鉱法が一応満期になるときまでに、残り全部片づけたいというふうに考えておりますが、残念ながら三十四年度の予算では、われわれの考えておりました十七億べースが十一億べスというふうにだいぶ計画に対してショートしておるわけでございます。この点はわれわれもはなはだ遺憾に存ずるわけでございますが、しかし、少くとも臨鉱法で考えておりました全体で約百億ばかりの鉱害というものは予定通り三十七年までには処理できるというふうに、今後は国家の予算の裏づけ等も得まして実施したい、こう考えておりますし、さらにわれわれといたしましては、臨鉱法というものが臨時立法でなしに、むしろこういうのを恒久立法ということにすることによりまして、地下の採掘とそれに伴う地上の諸権益との競合というものをどういうふうに調整するかというようなことについて、恒久的な制度を設けることによって解決するという方向に行きたい、こう思っております。たとえば鉱業法の改正というような際にも、当然そういう地上の権益と地下の採掘というものとの競合関係の調整ということが論議されるというふうに期待いたしております。いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、鉱害はできるだけすみやかに復旧する、少くとも臨鉱法で対象としたようなものについては、予定期間内に終らせるというふうに国家予算の裏づけを今後増大するということに努力していきたいと考えます。
  40. 滝井義高

    滝井義高君 三十一年から三十四年末までの計画で、なお五十億残っておるわけです。そうしますと、一体百万トンふやして四百三十万トンの買い上げ対象になりますが、それによってやらなければならぬ鉱害の復旧経費の総額はどのくらいになりますか。まず三百三十万トン分から言って下さい。三百三十万トンで幾ら、今度百万トン追加したら幾らと……。
  41. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 まだ三百三十万トンにつきましても、必ずしも全部現地の調査が終り、調印するというところまで行っておりませんで、目下調査中でございます。それから今後買い取りが予想されます百万トンにつきましては、大体対象になる炭鉱がどこかということも、必ずしもまだはっきりしておりませんので、今の話はできるだけ早く調査いたしまして、わかった分からだけでも、資料で提出したいと考えております。
  42. 滝井義高

    滝井義高君 それならば三百三十万トンはわからぬでも、もうすでに買い上げの完了をした三百六十万トンについてのおよそのものがわかっていないですか。およそのものがわかっておらなければ困りますがね。
  43. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 今までにすでに買い上げを了したものについては帰ればもちろんわかると思いますが、今手元に資料がございませんので、できるだけ早く調べて申し上げます。
  44. 滝井義高

    滝井義高君 あとで出していただきたいと思うのです。およそ腰だめ的な数字はわかっておらなければならぬと思うのですが、三百六十万トンについて、それもわかりませんか。
  45. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 昨年の十二月末現在で、安定鉱害が五億五千四百万、それから不安定関係の今後の積立金という格好で、新鉱業棒者であります事業団が積み立てるということになっておりますのが約一億七千五百万、合計いたしまして買い上げました炭鉱の鉱害の中で事業団が関係して復旧しようというふうに考えておりますものが、大体八億三千万でございます。
  46. 滝井義高

    滝井義高君 これは二百六十万トンに見合う分ですか。
  47. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これは二百四十三万五千トンという昨年の十二月末までに買い上げたものでございます。
  48. 滝井義高

    滝井義高君 そういたしますと、この事業団が復旧した八億三千万の中で、国の経費というのは幾ら負担しておりますか。
  49. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これは御承知のように、物件によって国の負担額は違いますが、大体前後平均いたしますと、ほぼ国費は半分という程度になっておりますので、今申し上げました八億三千万、これに見合う八億程度の国費が出されまして、事業量としては、十六億程度になっておる、こういうふうに考えております。それからなお昨年の末までに、現実に事業団から支出いたしましたものが、約四億八千九百万円ございます。
  50. 滝井義高

    滝井義高君 そうしますと八億三千万円事業団の負担分があって、国の負担分は総体の約半分に見合う八億程度で、事業量は十六億だ、それに対して十二月末までに四億八千九百万円事業団が出しておる、こういうことですね。そうしますと、大体この通りにずっとならしていけば、もう十五、六億の金が要るということになるわけですね。大体それだけわかっておればけっこうでございます。  次には買い上げ炭鉱の施設の処理方針ですが、まず第一に炭鉱を買い上げますと、炭鉱には御存じの通り炭鉱住宅があります。そのほかに施設等のありました土地があります。それから住宅には多く水道がついておるわけです。それから炭鉱には借用地がたくさんあります。同時に鉱害関係では、国や畑の鉱害の復旧の問題、それからずっと炭鉱ができたとき以来作物の補償をやっております。米、麦、果樹、こういうものの補償をやっております。それから水道にかわる井戸の問題なんかも同時にあるわけですが、まず第一に炭住の問題ですが、炭鉱を買い上げまして、この炭住というものは結局その炭鉱に働いておった勤労者諸君が依然としてそこにおる場合と、それから勤労者諸君がいなくなってあき家になる場合とあるわけです。その炭住に別の人が入るということもありますが、この炭住を一体将来どういう工合に処理していくかという問題です。この政府方針一つお聞きしたい。
  51. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 炭住はできるだけ明け渡していただきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。しかしどうしても炭住から出ていけないといったような方もあると存じますので、われわれといたしましてはそういう方にはできるだけ炭住もぽつん、ぽつんと住まれたんではあとの人も非常に困りますので、できるだけ一カ所に集まっていただく、そうして一つまとまって住んでいただいて、定住の希望を持っておられるという方には、特別割安に払い下げるということで処理していきたい、そういうふうに考えております。
  52. 滝井義高

    滝井義高君 そうしますと、その炭住はできるだけ一カ所に集めて住んでもらうようにするが、その人が希望すればこれを払い下げる、そうしますと、あいた炭住をそのままほおっておると瓦も木もみななくなってしまう、そういうものは一体どういう方針ですか、あき家になった炭住。
  53. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これは一応撤収いたしまして、資材として売れるものは売るというふうにしていきたいと考えております。
  54. 滝井義高

    滝井義高君 それは非常にもったいないことになるわけで、せっかく建っているものをこわして売るということになると問題があるのだが、その場合にその炭住というものは、今御存じの通り日本は住宅不足です。特に低家賃住宅が不足をしておる。母子家庭あるいはボーダー・ライン層というものは住宅がなくて非常に困っているのですが、こういうものを市町村に無償に近い額で払い下げて、そうして何かそれを活用するというようなことが考えられるのではないかと思うのですが、そういう点はどうですか。
  55. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 市町村の方から一つ譲り渡してもらいたいというような要望のありました際には、できるだけその要望に沿って割安に払い下げる、売却をするように処理したいと思っております。
  56. 滝井義高

    滝井義高君 その場合に、これをその自治体に――どうせ炭鉱が買い上げになってしまいますと、その労務者は失業して、いわば一団となって生活保護の対象になるわけです。そういう場合に一切のしりぬぐいというものは、政府石炭政策が大きく誤まったと言ったらあなた方は怒るかもしれぬが、見通しの誤まりからこういう結果が出てきておる。従って政府政策の誤まりによって出てきたものでありますので、たとえば駐留軍労務者等に対しては、いろいろと手当をしているわけですね、それと同じようにこの住宅をその地区の市町村に無償で払い下げるということはお考えになっておりませんか。
  57. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これはわれわれ今の段階において無償でということは考えておりません。やはりある程度割り引くということを考えておりまして、地元の市町村も石炭鉱業がつぶれるということのために租税が入らないということで、非常に困っておるようでございますし、いろいろこういうものをかかえて市町村に御迷惑をかけるということにもなりますので、できるだけ安くは払い下げたいと思っております。しかし全然ただということで払い下げるということは、今のところ考えておりません。
  58. 滝井義高

    滝井義高君 無償は考えないが安くということでございますから、一応そういうことで理解をしておきます。  次には、当然その炭住に水道なり電気がいっておるわけですね。そこで電気はとにかくとして、水道は御存じの通り炭住にいくものは鉱害水道ではなくて専用水道です。炭住にいく専用水道と、その炭住の付近にある、いわゆる鉱害を受けておる住民にいく鉱害の水道と両方に分れるわけです。ところがその水源地は一つである、こういうことになった場合に、その炭住を取り払ったり、あるいはそこの炭住居住者、もとの炭鉱の労務者だけが一かたまりになってそこに入る、こういうような場合に一体その水道をどう処理していくかという問題が起ってくるわけです。そこでその水道を当然公衆衛生の見地から管理するということになると、これはもうだれにでも自由にまかせるというわけにいかぬことになる。従って当然そこに保健所が介入をして、やはり地方自治体が責任を持たなければならぬということになりますが、政府はこの水道をどういう工合に処理をしていく方針なのか、それをこの際明らかにしておいていただきたい。
  59. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 鉱害水道につきましては、これは地元の方に与えた鉱害復旧ということのために鉱業権者として設置した水道でございますので、これにつきましては事業団が買い上げたという場合にも、今後の運営に支障がないというだけのことにつきまして十分なる話し合いをした上で、地元の市町村等に引き継いでおるというような実情でございますので、ほとんど問題はなかろう、こう考えております。ただ炭住の専用水道につきましては、これは元来がその炭鉱を経営していくというためにそこに住んでいる人のために引いた水道で、一般の鉱害水道とはだいぶ性質を異にしておる、そういうふうに思うわけでありますので、そこでこの水道を今後どういうふうに扱うかということは、先ほどの家屋をどう扱うかということと、大体同じ考え方をするのが一番実情に合うのじゃないか。これも事業団の方から申しますれば、これは炭住から皆さんが出ていかれますならば、そこにあるポンプだとか、あるいはパイプだとかは取り払って処分してしまうということがむしろ一番望ましい、こういうものでございますけれども、しかし現実にそこに人が住んでおられる、それは今までその炭鉱で働いておったという方である場合には、とにかく泥水でも何でもいいから飲んでおれということは、人道上からも言いかねるという問題でございますので、われわれといたしましてはできるだけ一カ所に家屋を集結していただく。それと並行いたしまして、それらの集結したような家屋に住まれるという方々については、どうせいずれは地元の町村にこの水道はお渡しすることにならざるを得ないと思いますので、この地元の市町村と具体的にどういうふうな格好で引き渡せば一番いいかということを個別的に話しまして、そして事業団としてやり得るといったようなある程度の処理をいたしまして、市町村に引き渡すというふうに取り運んでいきたいと考えます。
  60. 滝井義高

    滝井義高君 水道を事業団が買い上げたときにはそういう処理ができるんですが、事業団が水道を買い上げる条件は、一体どういう条件があれば水道を買い上げることになりますか。
  61. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 大体水道法が改正されまして、簡易水道の規定が設けられましてからは、それらの水道法に基く基準に合致するように、まず前鉱業権者の手で直したものでないと、事業団としては買い上げないという格好で進んでいきたい、そういうふうに考えます。
  62. 滝井義高

    滝井義高君 そうするとそれはなかなか大変なことになるので、現在炭鉱へ引かれておる簡易水道はほとんど合致しないですね。それを合致させるためには相当の金を入れなければいかぬわけです。そうしますと非常に問題になるのですが、現実に合致しない水を飲んでいるわけです。だからこれは公衆衛生法上の違反をやっておるわけなんです。ところがこれは炭鉱の財政方が弱いために、保健所あたりがやむなく目をつぶっておるのだと思うのです。ところがそれを今この段階で、いよいよ買って下さいと申請したときになってから、何百万円という金を水道に入れなさいと言ったって、これは木によって魚を求めるのたぐいになっちゃうのですがね。この点に対するもっと具体的な指導方針を、一体どうするかということです。そうしないと結局水道の問題に引っかかって買い上げの対象にならぬ、こういう問題が出てくるわけです。水道法の基準に合致する程度に鉱業権者が金を入れたら買い上げるということでは、水道問題で石炭合理化が進まぬということになる可能性があるのです。
  63. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これは事業団の方から言いますと、買い上げた炭鉱について自分で巨額の金をかけてまで直して市町村に引き渡すといった義務は、事業団としてはないわけでございます。といって今先生のお話がございましたように、身売りをしたいという炭鉱に何百万円も金をかけて、水道を直してから持ってこいということは、実際問題としてほとんど不可能じゃないか。実はわれわれ、関係の厚生省あたりとも、国の方からこういう水道についても補助金を出すといった道はないかということについて、いろいろ共同で研究してきたわけでございますが、残念ながら今の制度のもとにおいては、国から直接出すということは非常に困難であるというより、むしろ不可能だといったような一応の結論が出ております。そこでわれわれといたしましては先ほど申し上げましたように、まず直してから買い上げるということをやはり原則として、とって参りたいと思っております。しかし実際の問題につきましては、それをある程度適正基準に合致させるために要する金が、どのくらいになるかというようなことを考えまして、それがあまりにも不当な高額に上らないといったような場合には、本来事業団は何もそんなことをやる必要がないわけでございますが、ある程度事業団にそういったような工事をさせ、必要な施設を設けるというようなことで、衛生上の危害を除いた上で市町村の方に渡すといったような方向で処理するように、一つ事業団を指導していきたいと考えております。
  64. 滝井義高

    滝井義高君 だいぶん話が進んできました。そうしますと、今のような方針でやってもらえば、ある程度うまくいくと思うのです。そうじゃなくて、もしさいぜんあなたが言われたような方法で、もとの鉱業権者に簡易水道の規定に合うように直させて、その後でなければ買い上げないということになれば、炭鉱がやむことによって水源地の電気がストップしますから、水道はつぶれるわけです。しかしつぶれた場合に、まず炭住の居住者、専用水道の居住者はとにかくとして、鉱害を受けている被害者というものは、鉱業権者が今度は整備事業団になるのだから、整備事業団に、われわれは井戸水はだめだから水道をつけて下さいと言う権利はあるわけです。だから、そういう点から詰められていくと、これは整備事業団は水道を新しく作らざるを得ないのです。そうなるでしょう。そこはどうですつか。
  65. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 鉱害水道につきましては、確かにこれは鉱業権者として責任を負わなければいかぬということでありますが、ただし今の例から言いますと、鉱害水道については少くとも一件もトラブルが起っていない。大体全部今度の十年間なりの運転経費というようなものを先払いをするというようなことで、円満に話がついて、虚町村に引き取っていただいておる、そういうふうに承知いたしております。
  66. 滝井義高

    滝井義高君 大体そういうことでわかりました。そうすると、今ちょっと私が尋ねる前に言われましたが、大体鉱害水道について、もしその水道をやめる、そして安定をすることによって井戸の水が出始める、こういうことになるわけですが、その場合に、井戸の水が出てくれば問題がないと思いますが、水が出ても、その水がいわゆるわれわれの言葉で言えば金け水と申しますか、鉄分があってなかなか飲めない、こういう場合があるわけです。従って、当然それをがまんをしてもらってでも飲んでいただこう、水道はとてもやっていけないのだというときには、十カ年分ですか、経費の先払いはおよそのところは、どのくらいですか。
  67. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 今までの例では、事業団が買う前に、旧鉱業権者と、それから地元の市町村との間で話がついて、そして結局事業団はその水道を買わなくて、直接前権利者から市町村に引き継がれている、そういうことになっておりますので、今後も鉱害水道につきましては、大体同じような方向で、前権利者と地元との間の話し合いを円満につけるという方向に、われわれとしても指導していきたいと考えております。
  68. 滝井義高

    滝井義高君 そうしますと、そういう鉱害水道については、事業団が中に入らずに、鉱業権者と地元の市町村との間に話をつけて、そしてやっていきたい。実績は十カ年ですか、そのついた実績はわかりませんか。
  69. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 事業団が直接買っておりませんので、はっきりわかりませんが、私が前に一般的な問題として水道問題を調べましたときのあれでは、三年ないし十年というふうに聞いております。十年間の費用を払って、旧権利者から市町村に引き渡している、そういうふうになっているというふうに承知いたしております。
  70. 滝井義高

    滝井義高君 大体わかりました。  次には炭住の電気の問題ですが、炭鉱がやむと動力線が切れるので、電気がなくなります。そこで、これは他人の住宅に、炭鉱がやんでも入っておるというので、不法占拠だ、こういう言い方をする方もおるわけです。従って、他人の家に電気を引くということはもうできませんから、動力線を切ると一緒に電気を切ってしまいましょう。こうなると無灯火部落になるわけです。無灯火部落になると、県が三分の一か何か補助金を出して、市町村が三分の一補助を出して、自分が三分の一くらい金を出して、また電気をつけるのです。こういう不経済なことをやる。しかし三十世紀の文化の時代ですから、電気はなくてはならぬわけです。そういう場合の炭住において、あなた方は親切に一カ所に集めよう、それから一カ所に集めたものについては、水道は一つそこだけは何とかしよう、ここまでは来たわけですね。電気は一体どういう工合に指導されますか。
  71. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 電気につきましても、私が今まで承知いたしております範囲では、電気をとめられて無灯火の状態で暮らしているという例は、一件もないというふうに報告を受けておるわけでございます。たとえば、今まで入っておりました高圧線、それが非常に危険だから普通の電灯線に切りかえるといったようなことについては、炭住を一応所有しておりますのは事業団でございますので、事業団がその炭住のり管理者という立場から、災害防止というものについても当然責任を負わなければいかぬということで、これは本来人が入っていなければそんなことをやらなくてもいいのですけれども、不法占拠にしても、ある程度それが入っておられるということであれば、電灯線の切りかえといったような工事は、事業団の方で今までやってきたというふうに報告を受けております。
  72. 滝井義高

    滝井義高君 そうしますと、それは非常に大事なところですから……。実はあなたに報告がないだけで、われわれのところにはそれがあるわけです。鉱業権者が全部切ってしまって、そして電灯がつかずに困っておるのです。電灯をつけるのには、いわゆる屋外までは電灯会社がやってくれるのですが、屋内になると自分が金を出さなければならぬ、これが莫大に金がかかる。莫大にといっても、そう何百万円ではないのですけれども、何十万円とかかる。引っ込みをして家屋に入ってから、配線に非常に金がかかるのです。今のように、原則的に整備事業団が一つ大目に見てやってあげよう、こういうことであれば話がうまくいくのだが、これはなかなかそういっていないでしょう。整備事業団はそんな金は出せない、不法占拠の者にどうして金が出せますかということですね。それで今のように理解して差しつかえありませんか。原則的に事業団が今後電灯代は見ていこう――動力線から引かれている炭住の中の配線の仕方というのは、炭住のときはいいのです。ところがそれが今度は炭住でなくて、払い下げて一般の家屋になると、その配線の仕方はだめになる。やりかえなければだめなんです。許可にならない。そこでこれは相当の十万、二十万の金が要るのです。だから無灯火部落については、県あたりでは三分の一の補助を出します、それから地元の市町村も三分の一出して、本人が三分の一出すのです。ところがその本人は生活保護者ですから、三分の一出せない。出せないから電気がつかない。こういう問題が出てきているわけです。
  73. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 屋内の配線までは、実は事業団の方でもめんどうを見切れない、と申しますか、地元の電力会社と話し合いいたしまして、そこでいわば法的には根拠なしに住んでおられるのだから、その住んでいる方が自分の費用でとにかく屋内の配線をされるという場合には、事業団の財産でもありますが、配線模様がえをするということはやっていただいてもけっこうだというふうな程度以上のことは、これは事業団としてもし得ないのではないか、そう思っておりますが、家の外まで来ております高圧線に非常に危ないので、これを一般線に切りかえるといったようなことについては、今までにもそういうことをやった例があるようでございますし、これは先ほど申し上げました管理者の管理上の責任、危害防止といったような立場から、やむを得ず今後もそうせざるを得ないのではないか、こういうふうに考えておるわけであります。それからなお今後の方針といたしましては、先ほどの水道と同じで、これも非常にむずかしいのでございますが、一応前権利者で、そういう動力線を一般線に切りかえるというようなことをやらして、事業団の方に申し込むようにというふうに、事業団と前権者との間の話し合いを進めるように、役所としても指導していきたいと考えております。
  74. 滝井義高

    滝井義高君 そうしますと、事業団に売る前に、鉱業権者が動力線からいわゆる普通の家屋と同じように安全な配線をやる、そしてその後に買い上げてくれ、これはなかなか行きませんよ。さいぜん言ったように買い上げ炭鉱というものは、もう気息えんえんたる状態だから、一文だって金は出しません。鉱害の調査その他買い上げをしてもらう書類を作るだけで、百万から百五十万円くらいかかるのですよ。鉱害の調査から、交渉から何から全部やる。そうすると気息えんえんたる炭鉱は百五十万円の金がないのです。だから途中で買い上げの申請事務を投げるものが出てくるのです。こういう点は非常にこまかい点ですけれども、この法律が出たら、すぐにこれは起ってくる問題です。しかもそこにおる労働者というものが今言ったような形で、もし配線を旧鉱業権者がやらなければだめだなんということになったら、全部鉱業権者はおっぽり出してしまいますよ。そうすると、労働者は首を切られた上に家屋まで追い出される、こういう冷酷無情なしわが寄ってくるのです。だからその点は、もう少しあなた方電気の問題は真剣に討議して結論を出してもらわなければならない。今のようなことではちょっと困ると思うのです。そうすると炭住だけは、うるさいのは買い上げません、こうなるのです。水道と同じです。水道も買い上げません、炭住も買い上げません、――まだあとちょっと土地の問題がありますが、――この問題にもう少しあなた方が御研究になって、これは人間が住んでおるところなんですから、電気を今まさか切るというわけにもいかぬということ、それから電灯料の問題をどうするかという問題が出るのです。こういう電灯料の問題は一体どうするか、生活保護者ですからこれは払えないのです。そうすると電灯会社は切れば人道問題になる、といって鉱業権者も払うというわけにはいかぬということになると、もし炭住が買収になっておれば、炭住の所有者の事業団に電灯会社なり労働者は行かざるを得ない、こういうことになるのです。そこらあたりは一体どうお考えになりますか。方針が全然立っていなければ協議をしてもらわなければなりませんが、どうやられる方針ですか。
  75. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 電気の問題は、先ほどの水道の問題と同様に、法律的には事業団で特別のめんどうを見る必要はないという結論は、一応出し得ると思うのでございますが、しかし実際問題としては、今先生指摘のように非常に基本的な人権につながるような部分を含んでおりますので、水道問題、それから電気問題といいますのは、一つ一つケース・バイ・ケースで、できるだけ最小限度のめんどうは見る、といった格好で解決するようにやっていくほかしようがないのではないか、これはいわゆる原則として、必ず事業団の方でかぶるべきではないのだけれども、万全の措置を講ずるのだといったような原則を立てることはやはり筋としておかしいのではないか、またそうなるとかえって一部の鉱業権者だけに、逆に悪用されることになるかもわかりませんし、原則は先ほど申し上げましたような格好で行って、実際にはケース・バイ・ケースで何とか最少限度の人間らしい生活ができるという程度にまでは、事業団でも協力するというような方向で、解決していきたいと考えております。
  76. 長谷川四郎

    長谷川委員長 滝井君に申し上げます。大蔵省の主計官はきょう休んでいるので、来られないそうですから、農林省から来ておりますから農林省に……。
  77. 滝井義高

    滝井義高君 それでは一つそういうことで、最小限度のめんどうは、事業団が見ざるを得ないだろう、こういうことです。こういう事業団がめんどうを見るについて、事業団というところは、いわば鉱業権者から納付された納付金と、開発銀行の利ざや以外は金がないのです。少くとも私はこういう法律をやられるときには、政府はやはり国の一般的な財源から、事業団に何ぼか金を出してやっておかなければ、事業団としては動きがとれないのです。こういう経費が出てくるのです。だから事業団の経費というものをやはり予算に組んで、何ぼかあそこに金を流してやっておらないと、こういう問題が出てくる。私は三千万か五千万円くらいの金は、整備事業団に国がやはり出しておく、そうしてこういう不時の場合にはそれを見ていくという形をとらせることが必要だ。そういう点をほんとうは大蔵省の主計官が来たら、言って聞かしておこうと思っていたのです。行政の末端がわかっていないから、非常にしゃくし定木のことになる。末端をあずかる事業団なり鉱害部というようなところは、こういう場合には金の出ようがないので、非常に苦労しているのです。じゃこういうものを全部生活保護だからといって市町村に持っていく、それはなかなかむずかしいのです。政府の大きな石炭政策のために、こういうしわが労務者に寄ってきた。われわれが前にこの石炭鉱業合理化法審議するときに、こういうところまで実は勉強して突っ込んでおかなければいけなかった。ところが、そういうことに対してやられていなかったために、今合理化が終ろうとするときに、こういう問題が出てきて、非常に労務者諸君に迷惑をかけている。こういう点は、もう少しく御検討を願いたい。最小限度は事業団が見ようということでございますから、一応それで了承しておきます。それでその最小限に見るについてはケース・バイ・ケースで一つやってみようということですから、それで了承しておきます。  次には土地問題です。炭鉱を買い上げれば莫大な土地が出て参ります。そうすると一体この土地を政府はどういう工合に処理していくかということです。時間の節約上、もう一、二問ありますから一緒に言いますが、いわゆる土地と同時にその鉱区と下の鉱物があるわけです。だからその莫大な土地を一体どういう工合に処理していくかということが一つと、その土地の下の鉱区、鉱物を将来どう処理していくか。買い上げた鉱区は、この前ここでお尋ねしたのだけれども、それは業務区分がはっきりしていないのですね。長期エネルギー政策を立てて四百三十万トン買い上げた、その土地、そしてその土地の下にある鉱物、鉱区というようなものを、一体どういう工合に取り扱っていくのか。
  78. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 まず地面、土地、これにつきましては整地をするとかいろいろなことで、換金処分できるようなものは、逐次そういう格好で処分するという方向でやっていきたいと考えております。  それから地下の鉱物をどうするかということでございますが、御承知のように今の法律では事業団は鉱区の保有というところまでで、それから先のことは実はきめておらない。これは将来、あるいは今までのようにばらばらの小さな炭鉱であった場合には総合開発ができなかったけれども、ほとんどその付近一帯が買い上げになった結果、総合開発に適するといったようなものも出てくるかもわからない、そういう場合にはそのときの石炭の事情、さらに長期的なエネルギー政策の観点から、総合開発に適するものは、せっかくの国家的資源でございますから、活用をはからなければならないと思っております。しかし差しあたりの問題といたしましては、石炭が非常に過剰で不況になっている折柄でもございますし、また今までの経営では成り立たぬということで、事業団に買い上げを申し込んできたものでもございますので、これはよほど大規模な開発ということになって、巨額の金額をかけたほんとうの合理的な開発をやらぬ限りは、とても低廉なコスト供給することは不可能でないか、今のような過剰時代に、それだけの金をかけて開発をする必要があるかどうかということになりますと、この一、二年は少くとも否定的な答えが出ざるを得ないのではないか、こう思いますので、われわれといたしましては、今後鉱区をどういうふうに処分するかということはエネルギー政策全体の見地から、一つ総合的に判断いたしまして、総合開発に適するものは総合開発をさせるという方向に持っていく、こう考えますが、しかし今の段階において鉱区を近くのものに売るとか、あるいはすぐ開発するのだとかいったようなことは考えておりません。
  79. 滝井義高

    滝井義高君 将来鉱区を大規模的に、能率が上る姿で総合開発をできるときは考慮をするということが結論のようでございますが、その総合開発のときにガンになってくるのが分割鉱区なんです。大きな鉱区の中でぼつんぽつんと分割されて鉱区が出てきているのです。そうしますとそれが非常に大きな阻害になるのです。実はこの法律には明記をされていない。買い上げた鉱区というものを将来どうするかという場合に、一番冒頭に申し上げました鉱区の分割の問題というものが、非常に大きな手かせ足かせになって総合開発を困難にする、こういう見地からも分割というものは十分考えておかなければならぬと思うのです。次には土地です。土地は今換金処分ということを言われたけれども、御存じの通り炭住というものは大体だんだん値段が下って参ります。しかし土地は、人口が多く国土が狭くなった日本においては年々歳々上昇カーブをとることは当然です。その場合に、土地の中でも借地があるわけです。借りておってもとの田や畑をボタ山にしたり、あるいは事務所を建てたり炭住を建てたりしているのです。この借地に対する処理方針というものはどういう方針を立てているのですか。
  80. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 それは結局貸主であります地主さんと協議いたしまして、そうしてたとえば原状復旧の上で返してくれということであれば、そういう原状復旧というようなことをやった上でお返しする、あるいは今のままの格好でもいいというのであればそのままの格好でお返しする、これはやはり個々の貸主との間の話し合いということを、まず基本にして処理していきたい、そういうふうに思います。
  81. 滝井義高

    滝井義高君 実は炭鉱が地主から土地を借りるときには、これはもとのようにしてお返ししますというのが大がい一筆になっておる。覚書とか証書にそういう契約になっておる。ところがボタ山になったり全く姿が変ってしまっておるわけです。そうしますと、今やはり一番問題になるのは、その地主と鉱業権者との話し合いがつかないのです。そうすると結局それを高い価格で買うとか、もとの状態に復旧できないために買収する以外に方法がない、こういうことになると整備事業団は当然片づけていらっしゃい、こうなるわけですね。片づけていらっしゃいとこうなると、金がないのですから鉱業権者はどういうことになるかというと、その地主にいって、まあおれが金をもらったら払うからということで、契約を結んでしまうわけですね。金をもらったら払う、こういう形になる。そうして整備事業団に片づけた形に持っていくのです。ところがこれは海のものとも山のものともわからないのです。買い上げを対象に申請はしているけれども、なるかならぬかわからないのです。そういう形が行われるんですね。そこで私は善良なる被害者を救済するために、やはり現金を払ってからやっておかぬと、あとで被害者に泣き寝入りをしなければならぬ者が出てくるのです。特に鉱業法なりこの合理化法について、無知な大衆は知らないんですよ。これは国会でも石炭産業について関心を持っておる代議士が少いと同じように、地方民はその鉱害の詳しい法律をかゆいところに手の届くようには知っていないのです。そこにブローカーが発生する。こういう点に対する指導方針をやはりもっとはっきり打ち立てて、そうして鉱業権者と事業団との契約、それから旧鉱業権者と地主との契約、こういうようなものをもやはり確認をさせなければいかぬ。だからしてあなた方が買い上げをやろうと思えば、もとの地主とその鉱業権者との間に行われておった契約書の写しを出させて、そうして全部それが解決しましたというはっきりした証明か何かをとっておかぬと、どうもこれは被害者というものは非常に弱くなっている。もう炭鉱がやめてしまうのだ、あそこの炭住も、ここの炭住もあき家になってしまって、いつ鉱業権者がこの土地からいなくなるかもしれないぞ、これは早く、なんぼでもいいじゃないか、一銭でも二銭でもいいから、もらうだけもらった方が得じゃ、こういう弱気になる。ところがあにはからんや、厳とした国家にひとしいような整備事業団の鉱業権者ができて、それを見るんだぞということを知らない。だからそういう点の、何と申しますか、啓蒙も必要だが、同時に啓蒙をやる前に、あなた方と鉱業権者、いわゆる整備事業団と鉱業権者、鉱業権者と貸主、貸主と整備事業団、こういう間をもっと密接にはっきりさせておく必要があると思いますが、そういう点、どういう指導をしておりますか。
  82. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 事業団といたしましても、借地の上にボ夕山を持っているといったような場合には、年々借地料を払っていかなければならぬと思います。いつまでも今おっしゃったようなトラブルがございますので、できるだけ借地の上にボタ山を持っているといったような場合には、その土地そのものを貸主から売っていただくということで、事業団がこの土地を買い取るということによって、めんどうな紛争といったものの根を断ち切るという方向で今後進んで行きたいと考えております。
  83. 滝井義高

    滝井義高君 土地の問題はいろいろケース・バイ・ケースで非常にむずかしい問題が多いので、このくらいにして、次には、その田や畑の作物の補償をやっておるわけです。これは農地局では、どういう工合にこれを見ておりますか。田や畑というものは、御存じの通り、非常に陥没が起って、二毛作の地帯が湿田になって一毛作になってしまうわけです。そうすると、それは炭鉱とそれからその耕作農民との間に契約を結んで、石当り幾らという補償料を払っておるわけです。そうすると、今度は鉱業権者が事業団にかわるわけです。その場合に一体その年々払っておった補償料というものはどういう形になってくるのかということです。これは農民の家計の上に非常に大きな影響を及ぼすのです。この補償料というものが筑豊炭田においては農家のいわば大きな現金収入を形成しておるわけだ。これは農業経営にも関係してくることになるのですが、これはどういうように見ておるのか。農林省の農地局の所管ではないかもしれませんが、農地局の方では、どういう工合に見ておられるのか。それから通産省はどういう工合に見ておられるのか。
  84. 庄野五一郎

    ○庄野説明員 農地の炭鉱による被害の問題でございますが、これについては農林省といたしましては臨鉱法に基いて、復旧ということを大体原則にして、そういう方針で通産省の方とも打ち合せをし、現在に至っておるわけでありますが、そういうことに至らないで、やはり被害が年々起っている、こらいった原形復旧ができないでやはり被害が起っている、こういう問題については年々賠償、こういう形で金銭賠償がなされております。これについては石炭局とよく打ち合せしなければならないと思いますが、すでに発生しているそういう被害については、当然これは会社で支払っていく、こういうことになると思いますが、整備事業団に引き継ぐものは、整備事業団で引き継いでいくということにしていただかなければならぬと思います。なおそういうものの未済の分についてはどういうふうに処理をするか、これは債権債務の形で整備事業団に引き継いでいただくということにしなければならぬと思いますが、そういうことで打ち合せをして、農民にこのために問題が起らないように、一つ処理していきたい、こういうふうな考え方でおります。
  85. 滝井義高

    滝井義高君 実は土地も同じですが、整備事業団が引き継ぐ場合には、事業団はできるだけ経費を節約しようとするわけです。従って、旧鉱業権者と地主なり農民との間の契約というものは、農民なり地主というものが相当有利な立場に立っていたわけです。というのは、炭鉱を始めるときにはこれはもうどうしても始めなければならぬので、相当無理な条件も全部のんでしまって、そこに契約ができているわけです。はなはだしいところは、離作料を毎年払うというようなところもあるのです。離作料を毎年払います、そしてあなたのこのたんぼを私の方のボタ山なり事務所を建てますから、離作料は、あなたはこれで五万円あげておったから、五万円毎年払います。そして同時にあなたはうちの会社の火薬庫の番人に使いますというようなところもあるのですよ。そういうような契約になっておる。ところが今度整備事業団が買い上げてしまうことになると、まず地主あたりに行って、あれはどういってくるかというと、たとえば私も少しばかり炭鉱に土地を持っていますが、炭鉱と私との間の契約にはたとえば地代、反当り三千円だ、そしてそれを一年の前払い、こうなっておるわけです。十二月になったら、前年の十二月には向うは反当り三千円払います、こうなっているのですね。ところが整備事業団からくる書類はどういうことになるかというと、これを六カ月ずつに切って、六カ月のあと払いでございますということになって来ておる。前は一年分三千円を前年の十二月に払いますとなっておったのを、今度はその年の六月に半年分だけ払いましょう、そして十二月に半年分払う、いわゆるあと払いに変って来ておる。そしてそういうものを炭鉱に、君がこれを貸主との間に、あるいは農民との間に契約を締結してくれば、それはおれが買い上げてやろう、こういうふうに高姿勢に事業団は出ておるわけです。そうすると鉱業権者は農民に行って、一つこれに判こを押して下さい、これさえ判を押してくれれば、あなたに金がくるのだからということで、農民はほんとに金がくると思って判を押しているという例が多いのです。昔、大手の炭鉱にもありましたが、孫子の末まで鉱害については異議を申すまじく候という契約をみんなとられておるのです。それで今炭鉱へ行って鉱害の請求をやると、それを見せられますよ。あなたのおじいちゃんのときにこんなものを私にくれておるのだ、あなたは文句ないだろうと言われると、ぎゃふんですよ、それをみんなとられておる。それと同じですね。こういう形です。今度は整備事業団が高姿勢に出る。炭鉱は判だけは押してもらわなければならぬから判を押してもらう。だから今度は事業団になると条件が悪く切りかえられるおそれがある。これは農民にとっても被害者にとっても非常に苦痛になるわけです。こういう点はあなたの方は、農民とそれから鉱業権者なり、地主と鉱業権者との間に話を片づけてきて、それから買い上げるのだ、こういうことになると非常な無理がそこに起ってきておることになる。こういう点に対する具体的な指導を、もう少しはっきりやる必要があるのではないか。そうしないと、たとえば補償料を三千円ずつ出しますと言っておったものが、千円でなければ、わしの方はだめですというようなことにならぬとも限らない。耕地整理が行われてしまえば、一、二年あるいは三、四年すれば、元の熟田になるでしょう。しかし、耕地整理が行われるのには、予算が足りないから相当な年月がかかるわけです。そうするとその間にこれは当然復旧してもらわなければならぬ。特に田地田畑ははっきりしております。ところが、果樹なんというものははっきりしない。炭鉱が下からずっと水を引き落して、ナシがだんだんかたくなる、桃の粒が、大きいのが小さくなる。こういう損害ですから、なかなか交渉をしても見分けがつかない。ところが今までは炭鉱がその下を掘っておるのだから、炭鉱は弱味がある。弱味があるから話がつくのです。ところが今度は官庁的な整備事業団が農民と対決することになると、農民は泣き寝入りをさせられるおそれが出てくる。そこでこういう補償の問題については、炭鉱がずっと一かたまりずつ買い上げられていくのですから、善良な農民は相当被害を受ける。全く知らぬ間に下を掘られて、ナシも桃も祖先伝来の、一番最盛期になって、炭坑が下にできたために、もう老衰期の桃、ナシになってしまう。こういうこともあり得るわけです。一体こういうものの補償の基準はどういう工合にやられておるかということです。
  86. 庄野五一郎

    ○庄野説明員 私の方といたしましては、関係地区の農地事務局なり、あるいは関係県の農林関係の部課でございますが、そういうものを通じましてよく実情を調査、把握いたしまして、また、そういう地帯の農業委員会等もございますので、そういうところからも農地等に関するいろいろな実情を聴取いたしまして、これは具体的な問題になってくるかとも思いますが、そのために農民に不当に損害が起らないように、あるいは今後の農業経営の問題もございますので、その補償なりを解決する。あるいはさらにそういう地帯の営農振興をどうするかというような問題もございますので、県等を通じてよく指導をして、また通産省の方ともこの問題についてはいろいろお打ち合せをして、具体的に処理していかなければならぬかと思っております。
  87. 滝井義高

    滝井義高君 どうもまだ庄野さんの方は実情がよくおわかりになっていないようでございますが、筑豊炭田では、田地田畑の補償は炭鉱で全部やっておるわけです。今度整備事業団が切りかわってくるわけです。切りかわってきたときに、整備事業団が今までの契約をそのまま踏襲するというならば、これは問題がないわけです、そうして鉱害の復旧をやる。耕地整理が終ればいいのですが、終るまでの間は、前のものを大体受け継いでいくかどうかということですよ、あなたの方で。
  88. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 安定鉱害については補償金で、それから不安定鉱害については積立金で、ともかく買上代金の中からリザーブするということをいたしておりますが、われわれといたしましては、農地の復旧までの期間の年々補償についても、補償金なりあるいは積立金なりの中に含めて考えておりますので、実例としてあるいは先生指摘のあったような例で迷惑をかけているという点があったかもわかりませんが、実は私今まで年々補償なども非常に過少であったというようなものについては、それを適正量に引き直して補償金なり、あるいは積立金なりというものでリザーブするというふうにやってきたと承知しております。もし今のお話のように事業団になったために、非常に条件が悪くなったというような実情等もございますならば、さらにその点をよく調べまして、農地の問題でもございますので、農林省とも十分連絡をとりました上で、機構の改廃に伴って農民あるいは地元民があまり不当な損害を受けることのないように善処していきたいと考えます。
  89. 滝井義高

    滝井義高君 ぜひ一つ田畑における米作や麦の生産に対する補償、あるいは果樹等に対する補償等は、旧来の慣例を十分尊重して、不当に農民を圧迫することのないように、整備事業団に十分御指示を賜わるようにお願いしておきます。  そこで農地法との関係でございますが、今まで炭鉱では、いわゆる不安定農地として相当多くの農地が解放から漏れておったわけです。ところが今度その炭鉱が全部やむことになって、いわゆる鉱業用地としてとられておったものが全部あいてしまうわけです。これは整備事業団のものになるので、もはや安定の一路をこれからたどるわけです、炭鉱はやんでしまったわけですから。そうするとその土地は当然農民に解放になると思いますが、そう理解して差しつかえありませんか。
  90. 庄野五一郎

    ○庄野説明員 自作農創設特別措置法で農地改革をやりました際に、作柄が非常に不安定だ、そういった農地につきましては買収除外になって、いわゆる炭鉱の農地ということで残っているものが、私の方も正確な数字ではございませんが、五百町歩ぐらいあると聞いております。そのうち今度の合理化によりまして農地を所有しております炭鉱が、どの程度のものの整備にかかるか、それはまだ具体的に承知いたしておりませんけれども、そういう作柄が非常に不安定な農地につきましては、われわれといたしましては現行法で原形復旧をやっていただいて、それによってできれば炭鉱を指定するというか、会社と地元農民の間で農地を売買するということができれば、それにこしたことはないと思っております。まずわれわれといたしましては、こういう農地については現行法で復旧をしていっていただきたい、こういうことで通産省にはお願いしたい、こう思っております。
  91. 滝井義高

    滝井義高君 復旧の問題でなくて、とにかく五条五項ですか、私も長く農地法を読まぬからちょっと忘れましたが、自作農創設特別措置法の五条五項かなにかで、これは当分の間炭鉱用地だということで解放を留保されておるわけです。そうしてしかもその留保されておる理由というものは、炭住を建てるとかあるいは将来炭鉱用地に使うからということで留保されて解放されていないわけです。ところが今度炭鉱がなくなってしまった。なくなれば、これはりっぱなたんぼになるわけです。私も十年ばかり昔、農地委員をやったことがありますが、不安定とは一体何ぞやというと、結局農業経営をやって収支がつぐなわないのが不安定だという議論をしたことがある。さらに三年か五年になると、炭鉱は毎年申請をしかえていくわけです。ところが今度は申請も何もない。事業団になったら一括して買い上げてしまう。事業団のものになっても農地であることには変りはない。あるいはもと農地であって、そうして今炭住になったり、グラウンドになったりしているものがあるわけです。そういうものを耕せばもとの農地になるのです。今から二年か三年くらい前までは農地だったのです。それをグラウンドか何かにしておかないと買い上げられるのでグラウンドにしておいた、こういうものもあるのです。とにかく農地あるいは農地と同じようなものが相当莫大に今度出てくるわけなのです。耕作面積がだんだん不足をしつつある日本で、農家が六百万戸もそれ以上にもふえる、こういう地帯ですから、整備事業団もさっきの方針のように、土地はどうしますかと言ったら、今売りたいとおっしゃるのです。そうしますと、これは農民に解放されたらよいのです。これは当分の間炭鉱用地、鉱業用地としてとっておる。そして不安定の農地だとこうなっておりますが、もうこれから当分安定の一路をたどるわけです。そうしますと、それは農民に解放してよいことになるのですが、そういう方針でよいのですか。
  92. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 今の先生の御質問には問題が二つあります。一つは土地そのものを返却するという問題と、それから農地として活用するかどうかという問題と、若干違う問題があるのじゃないか、たとえば今まで農民からお借りしておったというような土地を返すという場合には当初借りるときに、用済みになった場合には一体どういう格好で返すか、たとえば農地にしてお返しするか、あるいは原形に復旧してお返ししますといったような約束になっているものは、その約束に従って一応農地として復旧してお返しするのが当然であろう、こう思っております。ところがそういうあれでなしに、鉱業事業団自体の所有地になってしまったというものを処分する際に、農民に処分して農地として活用する方がよいのか、あるいはそれ以外の処分方法によるのがよいのかというようなことにつきましては、そのときそのときのケース・バイケースで若干問題が違ってくるのではないか、私農地関係の法律の勉強が不十分でございますので、自作農創設法との関係といったようなものがどういうふうな関係になっておるか、実はここでまだ十分その間の事情をつまびらかにしませんから、その点は一つよく法律自体を勉強さしていただきまして、農民に解放するのが適切だ、一番よいんだという場合には、当然農民の方に解放するという方向に進みたいと思っておりますが、これはそのときそのときの場所の状況その他の関係で、必ずしも一律に農地として解放するんだと言い切れるかどうかという点につきましては、もう少し勉強さしていただいた上でお答えいたしたいと思います。
  93. 滝井義高

    滝井義高君 現況が農地である、ところがそれは不安定農地だということなんですね。不安定農地ということはもちろん陥没が起るかもしれないということと同時に、それは農業経営の収支がつぐなわない、こういうことなんです。ところが実際農民から見ると、炭鉱地帯の湿田というものは案外米ができるのです。ただその炭鉱の用地が将来要るかもしれないというような予測をもって、それを留保しておっただけです。ところがもうこれから先やることはないのですから、炭鉱はなくなってしまったのですから、現況が農地であれば、農民は今まで農地委員会に申請をしたけれども、炭鉱が反対をして解放されなかったのです。だから当然それは今度は解放してもよいという理論が成り立つという問題が一つ。それからもう一つの問題点は、今から二年ぐらい前に、炭鉱用地だといって、炭鉱が農民の解放の申請を全部拒否して、もうこれは解放まかりならぬということで、離作料を払って畑を全部つぶしちゃったわけです。それの所有権は鉱業権者、炭鉱が持ったわけです。しかしそこはたまたま農民が作っておったために、離作料を払って解けたわけです。ところが排除の理由というものは、炭鉱用地、炭住を作るという理由で排除してあったわけです。ところが今度はもう炭鉱の炭住を作る必要はなくなったわけですから、今から二年か三年前にそういう理由で排除されたもとの農地というものは、もし農民が農業経営を確実にするために、自分は水田を持っておるが畑は持たないんだから、その地区をもう一ぺん畑にしてもらいたいという申請をしたならば、整備事業団はそれをやるかどうかということなんです。もとの農民に返してもらえるかどうかということなんです。そういう二つの問題です。
  94. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 それは最初に申し上げましたように、農地法の関係で、炭鉱用として必要はなくなったという場合には、法律的にも当然今までの特例が消えて、農地に返さなければならぬというような関係になっているというのであれば、これはもう当然その法律の規定に従わぎるを得ない、こう思いますが、実はその間の事情がどういうふうになっているか、先ほど申しましたように、農地法の勉強が足りませんので、むしろ農林省の方からでもお答えしていただいた方がよいのではないかと思います。
  95. 庄野五一郎

    ○庄野説明員 今御質問の会社が所有権を持っておる農地の問題でありますが、現況が農地であるということと、それから現況が農地以外のものになっているという場合で、取扱いは変ってくるだろうと思います。もちろん自創法で買収除外になりまして、会社が持っている農地について、これを農地以外のものについては農地法では許可が要るわけでございます。しかし社用地にするというようなとこで、適法に礼用地になって、現況農地でないものは、農地法の適用外になります。それから現在農地であって、これを地元の人に耕作させている、非常に作柄は不安定でございますけれども、耕作させておるといったような場合にはこれは農地法によって処理することになります。先ほど御質問がありましたように、不安定という問題も農地法でいう不安定というのは、作柄が非常に自然条件が悪くて、毎年作柄にできふできが非常に多い。そういったようなことでございまして、いわゆる臨鉱法でいう不安定というのとは、多少観念が違うのでございます。臨鉱法でいうのは御承知通り鉱害がまだ進行中であるとか、そういったものでありますが、御質問のような農地は、大体会社が買収をいたしました当時から、相当鉱害が進んで水がたまって非常に作柄が悪いといったようなところでございまして、それが下を掘っているために、どんどんその程度が進んでいるかどうかという問題が、臨鉱法にかかってくるわけでありますが、われわれの農地法の関係では、そういうことで作柄が毎年水がたまって、自然条件が非常に悪くて、収穫がない。できふできが非常に多いというようなことが多い。それが小作に出してあるというような場合には、現在の農地法におきまして、会社の所有制限なり、小作の保有地の制限なりございますが、そういう制限に向っておりますものは、農地法によって、これは現行の九条でございますが、それによって、国が買収するなりしなければならない。買収して小作人に売り渡す、こういうような関係に相なります。その前に会社と小作をやっておる農民との間で、相対の売買契約ができれば、農地法の三条で許可していく、こういうことになるわけでございますが、それができないで、会社が保有すべからざる農地を持っているということになれば、九条で国が買収して小作人に売り渡す、こういうような関係になるわけであります。
  96. 滝井義高

    滝井義高君 私は会社でも、整備事業団でも今の関係は結局同じになると思うのですが、そうしますと、結局鉱業用地に使うんだといって、二年くらい前に農地を離作料を払って、今度はグラゥントにしてしまう。それは現況農地でない。ところがそのときの理由は、炭住を建てるんだという理由で農地を離作させたんだけれども、現況が農地でないものについては、これは一切農民は発言権がない、こう理解して差しつかえないですか。
  97. 庄野五一郎

    ○庄野説明員 その当時の契約が、離作料をはらって完全に会社の所有地にして、そして社用地にするというようなことだけの契約ならば問題はないと思いますが、これは会社として用途を廃止したような場合には、またもとに戻すというような、先ほど石炭局長からお答えになりましたような特約が当時あれば、その特約に従わざるを得ないのじゃないかと思いまして、現況農地じゃないものについて、農地法では処理しないことになっております。その当時離作料を払って、農民とその契約をされるときの特約がどうなっていたかということを具体的に調べなければ、地元の農民に払い下げるかどうかということは出てこないと思うのです。これは現況もグラウンドになっておれば、農地法のらち外でございますので、そう御承知願いたいと思います。
  98. 滝井義高

    滝井義高君 実は戦争中に炭住が建っておったわけです。ところが戦争に負けた後にその炭鉱はやめて炭住がなくなってしまったわけです。それはいわば宅地だったわけです。それで食糧不足で皆が作り始めたわけです。そのうちに農地法ができて、現在作っているものにはそれを解放するのだ、こういうことになったわけです。作るについては炭鉱が作ってもよろしいということだったんです。そういうことは九州あたりでもどこでも多いのです。自分の山を開墾して作らしておるうちに、それは現況が農地だというので、もとの地主の山が耕作農民に七百円で取り上げられたということが多い。だから地主が何とかしてくれというようなことも起るのだと思います。ところが今度は同じ条件のその土地が、離作料を払ってグラウンドにさせられたわけです。ところが今度炭鉱がなくなったらグラウンドは要らなくなるから、そこに住んでいる部落民というものは、そこに行って作ればいいのですから、また作る可能性があるわけです。整備事業団になればますます作る、運動場というものはいなかは要らないのだから、炭鉱がある間はグラウンドが要るけれども、炭鉱がなくなったらグラウンドは要らぬ。土地を遊ばせておくのは惜しいじゃないか、自分の前に五町歩も六町歩も土地があいているのだから耕そう、他人の土地を耕すことは違法だけれども、問題はそうなるのです。そうするとその土地というものはどこかに払い下げるとおっしゃるのだから、もともと農地で、ずっと十年も作っておったんだから、また農地にしてあげたらどうでしょうか、こういうことなんです。前段の方の、不安定農地について現況が農地であれば、これは農地委員会に解放の申請をすればいくと私は見ておる。ところが後者の場合はあなた方のおっしゃるように私は農地法では無理だと思う。無理だけれども、整備事業団という国にかわるようなものがそれを所有して、その土地を長く遊ばせておくのはもったいないじゃないか、戦争中と同じように耕作してもよろしゅうございますかといって耕作をさせるように言っておる。耕作すると現況が農地になる。だからそういう場合の解決をしておかぬと、一つ炭鉱がざっと五百人も六百人分もの炭住を建てております。ところがその炭住の建っておったところはもとはたんぼであり、ナシ畑であったわけですから、炭住がなくなると、もとの畑になる。すぐに耕せば物ができるのです。ところがそういうものを休ませておくのはもったいないじゃないか、こういう問題が出る。これはここ数年を出ずして必ず具体的に出てくると思う。そうして炭鉱は山の中にあるのですから、自然にその近所の者が耕してしまう。いつの間にか行ってみたら麦畑になっておったというようなことにもなりかねない。だからあつものにこりてなますを吹くわけではないが、合理化を審議するときに、そういうこまかい問題まで論議しておかなかったので、あとになってわれわれが考え及ばなかったことが出てくる。きょうは私は少しくどいようだけれども、合理化にかかった後に、一面人間として生活する上において、すぐに起ってくる合理化法との関係をやっておく必要があるということで農地局まで来てもらってやっておる。必ずこれは起ります。炭住の建っておったところは昔の山です。あるいは戦争中に開墾をしたところがいくらでも残っておる。だからすぐに仕事がなくなれば開墾でも始めようかといって始めます。炭住にいる人はそういうものが出ますよ。そうするとそれが開拓民と同じような姿でやる、こういう問題が必ず三年、四年すると持ち出されて参ります。だから今からそういう方針をお持ちになっておらなければいかぬということです。整備事業団というものは普通の鉱業権者と違った状態が出てくる。炭住が最小限にはケース・バイ・ケースについて何とかめんどうを見ましょうというところまでくると、あいている土地を耕してもいいじゃないか、こうなる。そうすると既得権になって、三年か五年すると、農地を解放してくれという問題が、戦争中に起ったと同じように出てくる。あなた方この問題について考えがあれば伺いたいし、なければ研究して下さい。どうですか。
  99. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 農林省と十分に連絡いたしまして、一番合理的な解決方法をはかるというふうに、できるだけ早く方針を確立したいと思っております。しばらく研究期間をお貸しいただきたいと思います。
  100. 滝井義高

    滝井義高君 どうも非常に長い間ありがとうございました。実はこうして合理化で買い上げになりますと、その炭住に住んでおる全部の労務者が失業者になって、そしてほとんどの者が失業保険が切れたあとは、もはや中小の炭鉱が筑豊炭田においてはなくなるので、仕事がなくなるわけです。全部生活保護者になります。そこで政府はこの際やはり予算の裏づけをした、集団的にその炭鉱労務者諸君を就職せしめるような対策を、駐留軍労務者のあの就労対策と同じようにあわせてとる必要が出てくると思うのです。最近新聞で見たのですが、あの静岡県の災害地に筑豊炭田の労務者を集団的に、住宅まで提供して、二年か三年かの公共事業に使う。こういう方法が私は非常にいいことじゃないかと思うのです。今年の公共事業は、経済基盤の強化という名のもとに、道路、港湾等の経費が相当増加しました。そしてそれに二十万八千人程度の失業者も吸収ができるというふうに、本会議その他で言明があったわけです。こういうものについて、やはり優先的にマル炭として労務者を配置する必要があると思うのですが、そういう点は少くともこの法律が通ったならば、やってもらわなければならぬと私は思うのです。ただ昭和三十四年度の一つの大きな隘路は、政府は十二月に予算を編成するときに、百万トン買い上げの具体的な方針を立てていなかったということです。従って三十四年度の公共事業の中にはその炭鉱の失業者――あなた方の資料では千人そこそこですが、実際には福岡県が出してきた数字によると、九千人くらいが出るだろう、こう言っておる。三百三十万トンの失業者がすでに一万人以上もおる上に、また五千人、七千人と失業者が出てくるということになりますと、相当な社会不安が出てくるわけであります。そこであなた方は十二月にその問題を出していなくて、予算を組んでいないわけですから、今後そういうふうに出てくる労務者を、一体どういう工合に具体的に今年度予算をつけていかれるのか、この方針だけを明らかにしてもらいたい。
  101. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 今回の買い上げに伴います失業者だけに問題を限定いたしました場合には、これは労働省の推定等によりましても、大体千人分程度の仕事を見ればいいんだ、そういう格好になっておりますし、またわれわれも、今先生の御指摘通り予算の原案を作りますときには、これをはっきり頭の中にえがいてやったわけではございませんが、しかしこの予算が出されましたあとで、だんだんこれが固まりつつある過程におきまして、できるだけ融通して、ここから出る失業者を吸収するようにやっていただきたいということで、各省の予算につきましても、できるだけ吸収への予算の配付ということを重点的にやるようにということをお願いして、この数字を出していただきまして、大体一般的な失業対策等々を合せますときには、労働省で考えておられる数字は十分こなせるのだということになりまして、ただいま自信を持って出したわけでございます。しかし実際には今御指摘にありましたように、労働省の方で調べておられる以外に、すでに滞留している労働者が相当あるということは事実だと存じます。従いまして今回この法律を出しますに当って閣議でいろいろ御審議願いました際にも、今後は特に北九州あたりについては、必ずしもこれは一時的な現象だというふうに判断できない、ある程度構造的な面を持っておるのじゃないか。そういう点をも考えまして、雇用審議会等におきましても、できるだけ重点的に石炭から出てくる離職者の対策を取り上げて、駐留軍労務者の問題と同様に、政府の非常に重点的な雇用政策一つとして取り上げるべきではないかということで、閣議了解の中でも特にうたわれておりますので、われわれといたしましては労働省、建設省、農林省、運輸省等各省の御協力も得まして、これらの今後石炭から離職する人々が最も円満に他に転換できるという方向一つぜひ持っていきたい、そのためにはこの閣議で御了解いただきました、雇用審議会における最重点政策として取り上げるというような決定につきさましても、これが単なる空文に終らぬように、内閣あるいは企画庁というものを中心に、一つできるだけ早く具体的な裏づけというものをやっていくように、通産省としてはできる限りの努力をしたい、こう思っております。
  102. 滝井義高

    滝井義高君 非常に長いこと質問させていただきましたが、石炭の合理化の政策というものは、日本エネルギー政策、基幹産業の問題から、国民生活安定、いわゆる生活保護に至るまでの非常に広範な問題を含んでおります。どうか一つ通産省が中心になって内閣としても澤身の努力をもって、この問題の推進に当っていただきたいと思いますが、最後に一つ大臣のかわりに中川政務次官の推進の決意をお伺いして、私の質問を終らしていただきます。
  103. 中川俊思

    ○中川(俊)政府委員 先ほど来いろいろ御心配の点、一々ごもっともだと思うわけであります。政府といたしましてもお話のように見当違い、見込み違いの計画のもとにやっておったと言われればそれまででございまするが、石炭の問題は滝井さんよく御承知通り天候に支配される面も非常に多うございます。しかしいずれにいたしましても政府が全然手違いがなかったというわけではありませんが、とにかく今日のような事態に立ち至ったことにつきましては、非常に遺憾に考えておるわけでございます。先ほど来局長からもるる答弁を申し上げました通り、これによって生ずる失業者の問題、その他中小炭鉱の問題、これら等につきましては万全の策を講じて、後顧の憂いのないように持っていきたいという決意を持っておりまして、せっかく主務官庁であります通産省におきましては、連日この問題と取り組んでおるような状態であります。なお今後この施策を進めていく上におきまして、滝井さんのごとく石炭界に非常に造詣の深い方のお知恵を拝借する場合もあると思います。一つともども解決にお力添えを願いたいと存じます。
  104. 長谷川四郎

    長谷川委員長 中嶋英夫君。中嶋君に申し上げますが、鉱山局長は三十分に参議院に行く予定になっておるそうですから、なるべく簡潔にお願いいたします。
  105. 中嶋英夫

    ○中嶋(英)委員 それでは簡潔に御質問をいたします。ただいま審議されております本法案の提案理由の中に、今回の措置のほかに、輸入エネルギーの節減、石炭需要の喚起等の施策の実施によって不況の打開に努めたい、こういう政府方針が明らかになっておりますが、いわゆる輸入エネルギーの節減と申しますと、当然石油関係との競合問題が指摘されてくると思うのであります。そこで最近新たに石油精製の会社が設立される動きがあるように聞いておるわけでありますが、こういう点が実際あるのかどうか、その点について御質問いたしたいと思うのであります。
  106. 福井政男

    ○福井政府委員 新しい計画といたしましては各精製会社が将来の石油需要の伸びに対応いたしまして、いろいろ計画をいたしておるようでございまして、私どもの方でも会社の方から計画につきまして、いろいろ説明を聴取いたしておる段階でございますが、新しい会社といたしましては、先生も御承知のように川崎地区に埋め立てが相当行われる予定になっておりまして、現在進行いたしておりますが、この地区に東亜燃料とゼネラル物産、合弁の会社一つと、それからさらに東亜燃料日本漁網という会社が合弁で一つ新しい会社を、それぞれ作って、事業をもくろんでおるようなことであります。
  107. 中嶋英夫

    ○中嶋(英)委員 その川崎に今度設立せられますゼネラル石油日本漁網石油という、こういう関係はすでに原油の割当のワクは持っておりますが、精製の設備というものは現在まで持っていなかった。従って今回設立せられます工場というのは、この原油の割当を中心として設けられるものだというふうに理解するわけであります。これ以外に原油の割当がなくて、将来の需要の伸びというものを計算に入れた上で、とにかく精製所を作ってしまう。作ってしまえば当然原油の割当がくるだろう、そういうような見通し会社の設立を進めている、そういう向きはないかどうかということなんです。
  108. 福井政男

    ○福井政府委員 現在私どもの方で承知いたしておりますところでは、ただいま仰せのような計画は具体的には承知いたしておりません。
  109. 中嶋英夫

    ○中嶋(英)委員 そうしますと需要の伸びというものは十年、二十年先を考えると、現在の設備の操業率がかりに百%になっていなくても、十年後には足りなくなる。それを予定して今から作っておくんだ、こういうことで石油業界に関して精製工場の拡張とか、あるいは新設というものがふえていく可能性があると思うのですが、この問題と、ただいま審議されております石炭産業の現況の非常な苦しさというものと競合する面について、鉱山局長としてどのようなお考えを持って進められておるのか、その点をちょっとお伺いしたいと思います。
  110. 福井政男

    ○福井政府委員 御承知のように石油の将来の需要見通しと申しますのは企画庁で策定いたしました長期経済計画によってみましても相当伸びるようになっております。その伸びに対応いたしまして現在の設備の拡張計画がどういうふうになっておるかということになろうかと思いますが、御承知のように現在石油精製工場の原油設備の稼働率は大体六〇%くらいになっておる、平均が、かようになっておるわけでございます。従いましてこの現状から見まして、将来の仲びに対応して、会社としては石油産業の中では、お互いに競争的な立場にございますので、できるだけ有利な立場を保ちたいという一つ企業心というものから、そういうふうに全体から見ますと能力の方が若干上回ってきておる、こういうことになっておるわけであります。これを長期計画に比べてみますと三、四年早くそのテンポが来ている、こういう状況になっておりまして、現在いろいろ計画されております中でも、明年中に工場ができ上るというふうな具体的計画に、全部がなっておるわけではございませんで、現在海のところを埋め立てをやりまして、そうして将来計画を実行していくというようなものがございまして、そこいら辺の現在各社で持っております計画が、具体的にどういうテンポで進んでいくかということを会社の方から聴取いたしまして、今検討をいたしておる段階でございます。
  111. 中嶋英夫

    ○中嶋(英)委員 私がこういう質問をしますの、確かに川崎の埋め立てが現在進行中であります。大体計画より早く進んで、もう一年もすればあの百六十万坪の埋め立てが終るわけです。その埋立地はほとんど石油関係、あるいは石油化学関係、まさに石油化学のセンターというような感じの構想が進んでおるわけです。会社がどんどんふえて参りますとおのずから競争心が出てくる。そうするとその競争が、そうでなくとも日が当らなくなってきた石炭産業の方にしわ寄せしてくる、こういう問題になると思うのです。ですから当面する石炭産業の不況の打開に対していろいろな対策をなさるのもけっこうですけれども、その辺はよく見計らって、今新しく会社を作るといっても、原油の割当のワクがある、これは理解できますけれども、これからどんどん新設の会社を認め、工場をどんどん認めていくということが石炭産業にすぐしわ寄せになるということを考えたら、ある一種のブレーキと申しますか、線を引くとか、そういう点が必要ではないか。たとえば現在日本では十五の精製会社があって、工場数は二十三、平均能力は一日三万三千バーレルである。ところがフランスでは十五工場で平均能力がむしろ四万五千バーレルというように多い。イギリスの場合は大体これをちょっと上回った量を十六工場でやっておる。こういうことを考えたとき、あまり小型の会社、小型の工場がどんどんふえていくという傾向は勢い競争が激しくなって石炭の方にしわ寄せがくる、こうなると思う。その点について将来の需要の伸びとなると、十年、二十年を考えますといろいろな傾向線が引けるわけでありますが、傾向線だけにたよらないで、ある程度の指導というものは考えていいのじゃないか、この点についてお伺いを申し上げたわけです。何かお考えがありましたら、それを伺って質問をやめたいと思います。
  112. 長谷川四郎

    長谷川委員長 中嶋さんは、新規の油の精製会社というのは、申し込みがある場合を聞いておるが、今後新規の精製会社というものは申請があれば許すか許さないかということが一つと、ゼネラル、日鋼というものに割り当てられている外貨があるのだから、これは当然それに割り当てられた外貨によって許さるべきなんだ、こういうことだと思うのだが、それを答弁願えばいいのじゃないですか。
  113. 福井政男

    ○福井政府委員 ただいま中嶋先生の御意見は、私どもごもっともな御意見だと思います。私どもまたそういう見地で検討いたしておりますが、今後なお十分そういう点を配慮いたして研究をいたして参りたいと存じます。なお新規会社の問題につきましては、会社そのもののできますのは私の方で別段規制を加えるというような関係はないわけであります。これがつまり油の精製をやるということになりますと外貨を必要とする。その外貨は現在のところでは割当基準で、そういうものに対しては外貨の配当をしない、こういうことで運用をいたしておるわけであります。
  114. 中嶋英夫

    ○中嶋(英)委員 要するに会社を作ることは制限できない。会社を作りました、そうして多少工場を作っても割当は困難だぞ、できないぞ、こう言われても強引に作ってしまう。作った以上は遊休設備にしてほうっておくのはもったいないから云々ということになってきますと、お役所の方は、せっかく作ったんだから少しはということになってしまう。気の強いものはそれでもなお進めるという傾向が、従来の例からいっても私はないとは言えないと思うのです。ですからそういう点は、今後作ったものが勝なんだということであってはならない。それはまた石油業界自身のためにも過当競争を起すことになりますので、そういう点を御配慮願いたいということなのであります。よろしくお願いいたします。時間のようですから、これで打ち切ります。
  115. 長谷川四郎

    長谷川委員長 次会は明日午前十時より開会をいたします。本日は、これにて散会いたします。     午後一時二十九分散会