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1959-03-12 第31回国会 衆議院 商工委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月十二日(木曜日)     午前十時二十三分開議  出席委員    委員長 長谷川四郎君    理事 小川 平二君 理事 小泉 純也君    理事 小平 久雄君 理事 中村 幸八君    理事 南  好雄君 理事 加藤 鐐造君    理事 松平 忠久君       新井 京太君    岡部 得三君       岡本  茂君    菅野和太郎君       木倉和一郎君    坂田 英一君       關谷 勝利君    野原 正勝君       前尾繁三郎君    渡邊 本治君       板川 正吾君    今村  等君       小林 正美君    多賀谷真稔君       堂森 芳夫君    水谷長三郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  高碕達之助君         労 働 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  大來佐武郎君         通商産業政務次         官       中川 俊思君         通商産業事務官         (大臣官房長) 齋藤 正年君  委員外出席者         総理府事務官         (自治庁財政局         財政課長)   細郷 道一君         通商産業事務官         (石炭局炭政課         長)      町田 幹夫君         通商産業事務官         (公益事業局次         長)      今井  博君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部長)  三治 重信君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部企画課         長)      住  栄作君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 三月十二日  委員水谷長三郎辞任につき、その補欠として  多賀谷真稔君が議長指名委員に選任された。 同日  委員賀谷真稔辞任につき、その補欠として  水谷長三郎君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第一七五号)      ――――◇―――――
  2. 長谷川四郎

    長谷川委員長 これより会議を開きます。  小売商業特別措置法案商業調整法案、及び石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案、以上三案を一括して議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。多賀谷真稔君。
  3. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 まず、エネルギー政策全般についてお尋ねいたしたいのですが、政府エネルギー見通しについて、今までいろいろデータが発表されたわけですが、現在政府として最も権威あるといいますか、十分な見通しを持っておられるエネルギー需要見通しについてお尋ねいたしたいと思います。
  4. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 エネルギーの将来の見通しにつきましては、これは経済企画庁とともにいろいろ先々のことを見ておりますが、大体昭和五十年を見通しまして、水力電気石炭、それからなお石油天然ガス薪炭、そのほかに昭和五十年におきましては原子力が相当利用されるというふうなことを前提といたしまして計画を立てております。これが現在持っております政府の一番の権威あるものと、こう信じておるわけであります。内容等につきまして、もし御必要でありましたら、説明いたします。――それでは内容を説明いたしますと、昭和五十年における水力電気は、これを一キロが七千カロリーの石炭に換算いたしますと、五千八百十万トン、それから石炭が九千三百二十八万トン、こういうふうになるわけです。そのうちこれを輸入炭国内炭とに分けますと、国内炭が七千二百万トン、輸入炭が二千四百七十二万八千トン、こういうふうになっております。そのほかに亜炭が百万トン、こういうふうになっております。  次に石油について申しますと、大体一億九百三十一万二千トンの石油を使う、その石油のうちで百五十万キロリットルが国内産で、輸入が七千四百九十四万キロリットル、これだけを輸入する、こういうことになっております。それから天然ガス、これは三百四十二万トンの石炭に換算したエネルギーを取るわけであります。薪炭石炭に換算して五百九十八万トンに相当するものに持っていこう、こういうわけであります。そのほかに原子力によるエネルギーをどうするかということになりますと、これを二千七百二十万トンの石炭に換算するだけのエネルギー供給を受ける、こういうことにいたしまして、結局全体といたしまして、石炭換算にいたしまして二億七千百四十万トンというエネルギーが、昭和五十年に必要だということになります。もう一ぺん申しますと、一キログラムが七千カロリーの石炭に換算した数字が、こういうふうな数字でございます。
  5. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この問題につきましては、経済成長率の問題をどう見るか、あるいはまた石炭技術的から見た出炭能力をどう見るか、いろいろ問題があると思うのでありますが、これは経済企画庁が見えてから質問に移りたいと思います。  そこで、三十三年度は五千六百万トンということが言われたわけですが、五千六百万トンがくずれた最も大きな原因を、主要な産業別にお述べ願いたいと思います。
  6. 町田幹夫

    町田説明員 昭和三十三年度の石炭鉱業合理化審議会に出しましたときの生産計画は五千三百五十万トンでございますが、そのときの需要見通し石炭総計といたしまして五千六百七十六万二千トン、そのうち雑炭を二百二十万トン引きまして、いわゆる精炭需要といたしましては五千四百五十六万二千トンということになっております。それが最近の見込みにおきましては四千六百九十万トンということになっておりまして、七百六十六万二千トンの差が出ておるわけでございますが、そのおもなものを見ますと、電力が当初千三百五万四千トンと見込んでおりましたのが、下期以降非常な豊水によりまして、現在の見込みでは二百十八万四千トンほど減りまして、千八十七万トンという見込みでございます。それからガスも四百四十一万トンの消費を見込んでおりましたが、暖冬異変等ガス需要等も相当減ったというわけで、三百四十二万九千トンということになっております。おもなものにつきましては一般的に鉱工業生産が相当停滞いたしましたために、相当需要が減っておりますが、大きなものといたしましては、紡績工業が百六十六万五千トンが百四十三万五千トンで約二十三万トン減っております。硫安が二百二万三千トンが百九十一万一千トンで約十一万二千トンの減、化学繊維が百四十三万トンが百十四万七千トンで二十八万三千トンの減、練豆炭が二百三十八万七千トンが二百十七万四千トンで二十一万三千トンの減、セメントが四百万トンが三百四十五万九千トンで五十四万一千トンの減、鉄鋼が五百三十六万七千トンが四百六十万六千トンで七十六万一千トンの減、その他が千百九十一万五千トンが九百五十二万五千トンで二百三十九万トンの減、こういうふうになっております。
  7. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 七百六十万トン程度誤差を生じたわけでありますが、その誤差の最も大きいのは電力であると思います。それからその他の産業についても、いわゆる不況産業といわれるものにつきましては、確かに経済見通しによってそごを来たしたのでありますから、あるいはやむを得ない点があるかと思いますが、石炭市場として本質的なもの、たとえば硫安等の本質的なものによる技術上の点からくる需要の減というものはどういう状態になっておるか、これをお聞かせ願いたい。
  8. 町田幹夫

    町田説明員 御指摘のように最近のいろいろな技術革新と申しますか、技術の進歩によりまして、相当石炭原単位も向上いたしておるわけでございますが、そのおもなものにつきまして、この五千三百五十万トンの計画をいたしましたときと、最近の実績見通し原単位の比較を見ますと、紡績工業では綿糸千ポンド当り当初計画におきましては〇・七トンの石炭を使うことにしておりましたが、それが最近の見通しでは〇・六五トンということになっております。パルプ・紙では千トン当り〇・四七トンの原単位が〇・三九五トンとなっております。それからソーダにおきましては、ソーダ灰換算トン当り一・三二トンが現在一・二二トン、化学繊維におきましては千ポンド当り一・四五五トンが一・四一トン、高炉銑におきましては、銑鉄トン当り一一・六トンが一・一〇トンということになりまして、おおむね一番少いのはパルプ・紙でありますが、これは八四%になっております。その他は大体九三、四%というふうに減っておるわけでございます。
  9. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 原単位の減少もありますが、たとえばアンモニア製造等において従来石炭ガス中心として製造しておったところが、これが重油分解によるもの、あるいは天然ガスによるもの、こういうふうに変化をしてきたわけであります。そこでこの前の昭和三十年度に石炭不況に陥りましたときに、合理化法案が出されたときには石炭化学ということがかなり言われました。ところが今日残念ながら石炭化学という声をあまり聞かない。一部の会社においては石炭化学推進のためにプラントを入れて、そうして試験所を作っておるようでありますが、最近は石炭化学という声をあまり耳にしない。かっては昭和三十年度の不況のときには、とにかく今まで燃料で使っておったのがあやまちだ、たから一つ原料で使うべきだということがかなり言われてきた。今日ではそういう声を聞かない。これは一体どこに原因があるか。どういう状態であるのか。一つお聞かせ願いたいと思います。
  10. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これはしろうと議論で多賀谷さんにあるいはしかられるかもしれませんが、私はこういうふうに思っております。化学工業といいましょうか、科学技術が日進月歩で進んでくるわけでありますが、燃料といたしましては、またこの使用の上からいって、固体よりも液体の方が便利だということも一つ考えられると同時に、一方から化学工業原料といたしましては、私は石炭石油もそんなにえらい違いはない、こう思っております。主として今日この石炭がこういうふうな状況になっておるということは、石油が比較的たくさん出たということ、それからこの石油運賃というものが非常に安くなってきた、その結果石油というものが石炭の分野を荒してきた、こういうふうなことが私はおもなる原因だと存じまして、石炭石炭として化学原料として研究をするということが、もっともっと必要だと私は思っておるわけであります。しかし石炭にかわる原油をもってすることができるというふうな化学的の組織のものになってみれば、むしろこれは石炭を使うよりも今原油の方が安くて、そうして処理がしやすい、こういうふうなことから、今日非常な勢いで、石炭が世界的に原油のために食い込まれてきておる。こういうのが今日の現象ではないかと存じまして、石炭というものについての燃料以外の使用の道につきましては、これは十分まだまだ検討をして原油で及ばない方面には、石炭にある一つの特徴があるだろうと存じまして、これは捨てるべきものではない、私はこう思っておりますが、これは多少しろうと議論になりますけれども、そう考えております。
  11. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ここに齋藤官房長がお見えですが、齋藤さんは当時の石炭局長であります。そこで合理化法案を出されるときには、齋藤さんみずからもおっしゃいましたし、時の通産大臣の石橋さんもおっしゃいましたが、もう燃料で使うというのは古いのだ、ですから石炭化学原料として使うべきだということが、かなり本委員会でも強調されたわけであります。そこで当時は第一には低品位炭を使うということ、第二には石炭化学の方向に進行さす、こういうことがかなり論議をされたと記憶しておるのです。おそらく速記録を見れば、そういうことがかなり論議されておる。ところが法案が通過いたしますとその声がほとんど聞かれなくなった。そうして最近では石炭会社が経営しておる化学工場石炭を切りかえて重油を使うというような残念な状態にもなっておる。石油化学といいましても、雇用量は直接には全然伸びていない。御存じのように石油化学で百億の投資をしましてもおそらく二、三百人くらいしか直接の雇用はないと思うのです。そういうことを考えますときに、今のような石油化学が百鬼夜行のごとき状態を呈して、どんどん企業の設備拡大もやっておる、政府は外貨の面その他でかなり制約をしておると言われますけれども、私は現在の石油化学状態を見ましても、少くとも化学工場であるといわれる工場会社はほとんど石油化学に対して進出をし始めた。ですから私は、今は確かにどの製品をとりましてもかなり不足の状態を示しておる、外国から輸入しておるような状態ですから、そういう面は言い得ると思いますけれども、しかし今のような石油化学状態を見ますと、これは無政府状態のような感じを受けるわけです。一方石炭はどうかといいますと、確かに石炭工程においてもガスにするだけ余分の工程が要ることは事実です。しかしこれは大規模推進いたしますならば、必ず私は石油化学と拮抗していけるものである、こういうように考えるわけです。そこで官房長もおられますからお聞かせ願いたいと思いますけれども、一体通産省としては石炭化学の面に、どういう推進方法をとられておるか、これをお聞かせ願いたいと思います。
  12. 齋藤正年

    齋藤正年政府委員 石炭化学がなぜ伸びないかというお尋ねでありますが、その前に石炭化学と並んでもう一つおあげになりました低品位炭の問題についてまず申し上げますが、その当時でも現在でも低品位炭原料となるべき石炭の産出はほとんど変っていない、当時よりも一般精炭が増産されただけ、むしろよけいに出炭しておるはずでございます。それがなぜ利用されなかったかと申しますと、低品位炭専用発電所常磐共同火力という形で建設されましたことは御承知通りでございますが、これが不況のときに建設をされまして、あらかじめ石炭消費量及びその規格、価格というようなものを生産業者と協定いたしまして、これらの生産業者が同時に株主になってスタートしたわけでございますが、この前の石炭市況が好転いたしましたときに、石炭需要数量の面におきましても、価格の面におきましても非常な困難をなめたという状況でございまして、従ってできます電力価格も当時予定しておりましたものに比べまして、若干高くなっておるということでございます。それから常磐地区にはもう一つ品位炭化学的な利用ガス化ということにつきまして、日本水素がございますことは御存じ通りでございますが、それもやはり不況のときに石炭完全ガス化でスタートいたしましたが、石炭好況になりましてからやはり原料炭の収集及び価格面に相当な困難を来たしまして、これが経営的には必ずしも成功ではなかった。この二つは初めから低品位炭利用を眼目としてスタートした典型的な事業でございますが、結局好況になれば低品位炭数量もなかなか出てこない。それから価格がむしろ精炭に比べて不利になるような状況でございます。これは石炭市況が変動の場合には、一般的にそうでございまして、好況のときにはむしろ高品位炭の方が割安になる、しかし不況のときには低品位炭は非常な値下りをするというのが従来の実情でございますが、その点あらかじめ十分手配しておきましたにもかかわらず、結果としては私が今申し上げましたような事情でございまして、結局低品位炭というものだけにたよる。特に低品位炭の場合には運賃負担力がございませんので、どうしても地元で利用する。そうしますと非常に限られた石炭山資源に全面的に依頼するわけでございますが、一たん好況になった場合に供給力に不安があるということは、長期の安定した事業計画を立てる上に最大の欠陥でございます。この点が、利用者の面もなお非常に研究、工夫を要する点があると思いますが、生産業者の面においても十分考えなければならない問題ではないか。この点が結局低品位炭利用の問題の一番大きなネックではないかと思っております。  それから石炭化学について通産省としてどういう手を打っておるかということでございます。これは当時からずっと一貫いたしまして、通産省研究項目重点項目に引き続いて取り上げて推進いたしております。通産省試験研究補助金なり、あるいは通産省所管研究所の取り上げます重要研究テーマとして、引き続いて石炭化学の問題は取り上げてやっておりますし、通産省の傘下にございます資源技術試験所でもずっと引き続いて石炭化学の問題を取り上げてやっておりまして、現に少しずつではございますが、成果が出ております。それはガス化の面におきまして、従来のコークスあるいは半成コークスを使いました二段階のプロセスが、流動乾溜法という方法で、非常に短時間に一段階ガス化する方法が一応技術的に完成されまして、御承知のように釧路で現に小規模工業化試験段階通りまして、実用化試験段階に入っております。これは用途あるいは立地条件、あるいは石炭価格によりますけれども、そういう条件がそろいますれば、原油ガス化によるガス化学と十分拮抗していけるのじゃなかろうかというところまで行っております。しかし石炭化学の一番中心でございます石炭から直接化学製品――オレフィン系とかバラフイン系というような、今流行の有機化学製品を取り出すという点につきましては、まだほんとうの基礎的な研究段階であります。しかしこれは御承知のように北海道炭礦中心にいたしまして相当金をかけて研究をいたしておりますし、理論的には十分石油化学に拮抗できるような品物ができるということだけは見通しがついておるわけでございますが、ただ原価面にどういう程度のものができるかという点、あるいは試製品を取りました際に、試産品をどういうふうに利用するかというような点、なお全体の規模、あるいは生産工学の面、そういった面にはまだ非常に研究の余地があるように思う。これが急に解決を見ることは困難のようでございますが、しかし石炭化学というものが全然見込みがないというふうに考えているわけではございませんし、また研究としても可否を問わず引き続いて続けておる状態でございます。
  13. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 今低品位炭のお話がありましたが、その低品位炭不況のときはかなり価格が下るけれども好況になると上ってくる。そこで価格が非常に不同であるから利用者側も非常に困る。そこで低品位炭利用というものが十分行われないのだ、こういうことを言われる。しかしこれならば私は政策解決ができると思う。これは技術の問題でなくて政策の問題です。ましてや低品位炭ということになれば私は政策解決できると思う。そこで私はその問題については、あとから質問したいと思うのですが、しかし技術面の問題もあるのではないかと思います。私も日本水素コッパース法を見てきました。しかしコッパース法というのは、単に石炭価格が高いからということだけであるのかどうか、これはわれわれもしろうとでありますからよくわからないのでありますが、重油テキサコ法とか、あるいは石炭で言いますとコッパース法、あるいはウインクラー法というのがあるわけですが、大体重油ガス化法に対して石炭ガス化法は一二六%から一六〇%くらい原価が高くなっておる、こういうことであります。そこでこれが単に価格だけ、しかも低品位炭の場合は価格を変動させない、一定にさしておく、こういうことで解決できるなら、これは価格政策でありますから、かなり政府が積極的におやりになればできるのではないかと思う。しかし技術的な問題は十分な研究と、ただ実験だけでなくてそれに対抗する大規模中間プラントを作って、さらに工場を作るという助成政策政府がやらなければできないと思うのです。今のように一会社がやっておるというような状態ではとうていできない、少くとも今日の石油化学に対抗するためは、石炭界あげて一本の石炭化学工場でも作って、大きな計画をやらなければうまくいかないのではないか、その前には少くとも中間プラントを作って、そうしてこれに数十億の金額を費してやらなければ、将来石炭市場を失うのではないか、少くとも原料の面では行き詰まって原料としての利用価値はなくなる、こう考えざるを得ないのですが、これに対して大局的に通産大臣から御答弁願いたい。
  14. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 政策面の問題でなくてやはり技術面の問題につきましては、相当長期にわたってこれに対しては腰を据えて検討を加えなければならぬと存じますから、今多賀谷委員のおっしゃったように、この点につきましてはやはり十分検討を加えたいと存じます。
  15. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そこで私は価格政策に入るわけでありますが、政府合理化法案を作られた場合には、この合理化法案によって石炭価格を下げるのだ、こういうことの目的で出発された当時は、高炭価問題というのが非常に大きな問題になっておりました。今日でも私はその問題は解消していないと思うのです。ところが実際市中の平均炭価をながめてみますと、大体平均カロリーで三十年上期が四千四百六十七円、三十一年上期が四千九百七十円、三十二年が五千五百七十六円、三十三年が五千二百五十六円とダンピングを除きましては価格というものは下っていない、こういう状態です。  そこでやはり価格政策を十分にやらなければならぬ。価格政策をやる前提需給の安定でなければならぬと思う。そこでこの需給の安定について政府はどういうようなお考えであるか。今までの日本石炭歴史をながめてみますと、ほとんど日本石炭統制歴史を持っている、こういうことを一言に言っていいのではないかと思う。明治以前は各藩がおのおの一手販売をやっておりましたから、これは別問題といたしまして――黒田藩なんかは全部一手販売をやっておったのですから、これは別問題ですが、明治に入ってから経済上昇期にありました間は、そういう問題は起っておりません。そこで第一次大戦後にやはり統制の問題が起っている。第一次大戦のとき一九一九年には三千万トンという出炭をしているわけですが、その直後大正十一年にはもうトラストを作らなければならぬという状態になっているわけです。すなわち石炭工業連合会というトラストを作って出炭制限をして、これは輸入石炭との競争の関係もあり、国内炭需要が減ったということで、そこでまずトラストを作って出炭制限をするということになりました。ところがこのときは労働組合もまだ強くなかった状態ですから、かなり大きな首切りが行われている。それから昭和になりまして、昭和七年に昭和石炭株式会社という一手買取機関を設けているわけです。それから昭和九年になりますと重要産業統制法、これによって統制物資に指定されている。これは戦争経済につながるものであります。それから昭和十五年になりますと、石炭配給統制法というものができて、生産配給計画を任務とする日本石炭株式会社というのを設立している。それから昭和二十一年、終戦後に石炭配給統制するために、今までの日本石炭株式会社を解散して、今度は配炭公団になっている。それから臨時石炭鉱業管理法ができて、昭和二十四年に初めて自由経済という状態になってきている。そこで昭和二十四年から自由経済になって、すぐもう不況のきざしが出てきた、何とかしなければならぬといったときに、天佑と当時経済界では言いました朝鮮動乱が起った。そこで二年間は繁栄を見た。戦争が終ると今度はまた不況という状態になって、御存じのように昭和二十七年、二十八年、二十九年と非常な不況を見て、三十年に合理化法案ができた。こういう状態になっている。そして今日また買取会社を任意的に作らなければならぬという問題が起っている。そこで日本石炭歴史を見ますと、ほとんどが戦争経済につながるか、戦争経済につながらない場合は不況の谷間に落ちて、カルテル会社のようなものを作らなければならぬ、こういう状態になっているわけです。そこで私は石炭の宿命といいますか、その持っている性格からして、統制といえば経済的なイデオロギーで反対をされる方がありますから、統制ということは差し控えますが、需給の安定ということをどうしてもやらなければ、日本石炭はやれないのではないか、もうすでに歴史が示している、こういうことが言い得るのではないかと思うのです。そこでその原因は何かというと、その第一は、何といいましても企業に弾力性がないということであります。第二は、電力需用というのが今後非常に大きなウエートを占めてくる。しかもその電力需用というのは、豊渇水に非常な関係があるという状態があるわけです。これはお天気次第ですから、どうも人為的に何ともできないという問題がある。こういう二つの面から、どうしても需給安定的な恒久政策というものが必要ではないか。そこでこの合理化法案も、そういう意味においては、とにかく若干そういった面が入れられて、そうして不良炭鉱を買い上げる、こういうことになったわけですけれども、これだけでは私はやはり底抜けだと思うのです。少くとも標準価格というものが設定されて、そうしていろいろ運営されたにかかわらず、その後炭価は非常に高騰した。そうしてその高騰した結果はまた市場を失った、こういうことでは私は今後、先ほどお話になりました昭和五十年二億七千万トンの遂行というのは困難であると思う。これに対して通産大臣はどういうようにお考えになるか。一体恒久的な需給安定政策というのを考えられておるかどうか、これをお聞かせ願いたい。
  16. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 今石炭の過去の歴史を承わって、私はこの石炭鉱業というものがエネルギー資源として、またすべての産業の基礎産業であるということのためには、そういう手を打たなければならなかったということは必要だったと存じておりますが、前には石炭というものが、これは日本といたしましてはエネルギー資源としては唯一のものであったと思います。この点につきましては、石炭鉱業というものにつきましては、石炭そのものについて統制をするとか、あるいはセーブするとかいうことだけを考えていけばよかったと思っておりますが、戦後石炭というものにつきましては、石油事業との競合が非常に大きな問題になった、私はこう考えるのでありますが、幸か不幸か、日本といたしますれば、石油はほとんど輸入によらなければならぬ、こういうわけでございますから、かりに長期見通しを立てましても、先ほど申しました昭和五十年に二億七千万トンの石炭が要るといったときに、四八%は輸入に依存しなければならぬ、こういうふうになっておるわけであります。そういうふうな点から考えますと、将来の日本エネルギーは過去と違って石油石炭とを両方にらみ合せていかなければならぬ。石炭国内生産できる。石油はこれは輸入せなければならぬ、こういう点がありますから、やはり国内産業を持続する上におきましても、これは炭主油従ということの方針は変えることのできないものだ、こう思うのです。そういう意味から過去にとっておりました日本石炭政策とにらみ合せて考えますと、多少変えなければならぬことはこの石油というものを考えると同時に、国内産業輸入というものをそこにおいて考えていきますと、石炭はやはり中心に置いて考えなければならぬ、そういう点を見ますと、石炭需給見通しというものを、今まではあまり簡単に見ておったというふうな感じが私はいたしますから、これは単に経済的の問題でなく、国の将来ということから考えまして、これは需給見通しをもっと完全に、そうして間違いないものを作るということが大事だと思いますが、しかしそれに対しましても、先ほど多賀谷委員の御指摘のように、消費の方面は、水力電気の方は水の出工合によって変る、あるいは一般国内産業全体は景気、不景気によって非常に需用が変るということになりますから、需給見通しを完全に作ると同時に、どうしても需給調整審議会というふうなものを作って、その計画は確かであるが、いつでも随時にある程度変更し得るというふうな方面にも一つ機動性を持たす、そういう必要がある、こう存ずるわけであります。それでそれの調整といたしましては、やはりその輸入する油というものについて、経済をある程度無視しても、ただ単に安い高いというだけでなくて、それに対して国家の力をもって輸入を制限するとかいうような方法をもっていけば、多少この問題は解決し得るような考えがあるのでございまして、この点はまだ私ははっきりとこういうふうにやるということはきめておりませんが、そういう意味で石炭の今後の方針に検討を加えたい、こう存じておるわけであります。
  17. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大臣は今私たちが思っておることを率直にお話しなさいました。しかしこのことは、私は何度も大臣から聞いておるが、一向実行されない。要するに今までは、石炭だけがいわば水力と一緒にエネルギーであったけれども、今後は燃料エネルギーがやはり相当進出してくる。だから燃料エネルギーについての調整をしなければならぬ。石炭だけ調整してもだめだ。ところが燃料エネルギーは、幸か不幸か、外国からくるからこの調整は比較的楽なんだ、こうおっしゃるのですけれども、残念ながらそれが実行を見ていないところに問題があるのではないか。かつて読売新聞は、石油資本というのは日本政府よりも強大だということを新聞に書いた。今日石油会社をながめてみますと、製油会社においては、純然たる民間資本というのは三社程度です。これは丸善あるいは大協、出光、こういう程度であります。ほかは全部外国資本が入っておる。東亜燃料のごときは五五%も外資を入れておるわけです。こういう状態のためでしょうか、なかなか通産大臣がおっしゃることが実行を見ていない。しかも通産大臣の所管の石油と、同じ所管の石炭の調整が、同じ省においてできないということは、私は非常に遺憾であると思うのであります。電力のごときは公益事業でありまして、政府がかなりの権限を持っておる。その電力すら、最近の状態では、倍数をもって、二倍々々と重油消費が伸びておる。昭和三十三年度は若干減りましたけれども、また三十四年度の見通しを発表されたところによりますと、一〇%以上重油消費が伸びておる、こういったことで一体会社がやれるだろうか。通産大臣がここで御答弁になりましても、実際は実行を見ていない、こういう状態ではないかと思うのです。これに対してはどういう決意でおやりになるのか、これをお聞かせ願いたい。
  18. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これはある程度経済を無視してできますが、根本的に大きな経済を無視してやるということは、国の産業全体がやはり国際的な競争に打ち勝っていきます上においては、そう簡単にできないわけでありますが、御承知のごとく、三十三年度も、下半期におきましては相当議論がありましたが、最初の予定よりも五十万キロリットルの原油を切ったということは、石炭に換算してかれこれ二百万トン近くの石炭需要を油から切りかえた、こういうふうになっております。三十四年度におきましても、これは全体的には油の輸入はふえておりましょうが、しかしその計画から申しますれば、これはやはりある程度石炭に切りかえるようにやっていきたい。それは全然経済を無視するわけにはいかない。従いまして石炭原価というものをできるだけ下げるようにして、油に近寄らしめるということを考えていかなければならぬと存じますが、同時に私は油自体も今の状態は最悪の場合でありまして、最悪と申しましょうが、油にしてみれば、運賃が非常に安くなっておるわけでありますから一番いい場合であります。しかしこの運賃が、今日の運賃を持続するということは、だれも考えられないことでありますから運賃が高くなれば油の原価も上る、こういうことになりますから、その時期もあるわけなので、そういう点をにらみ合せまして、一ぺんに油を全部石炭にかえるというわけにはいかぬわけでありますから、逐次その方針をもって進んでいきたいと存じておるわけであります。
  19. 長谷川四郎

    長谷川委員長 多賀谷君に申し上げます。労働大臣が参りましたが、労働大臣は参議院の予算委員会の関係があるので、御質問がありましたら労働大臣に対する質問を先にして下さい。
  20. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それにいたしましても、産業別重油販売実績及び見込みというものを見ますると政府計画では公益事業において一二%も重油消費が伸びておる。公益事業というのは政府の認可事業ですから、少くとも純然たる民間企業ではない。公益事業である電力とかあるいはガス、しかも財政投融資をかなり使う電力における規制ができないようなことでは、私は一般の民間に対する重油消費の規制というのは非常に困難ではないかと思う。こういう点は一体どういうようにお考えですか。私は電力というものに対してこれだけ重油を伸ばす必要はないと思う。しかも今日電力会社の豊渇水によって、石炭は今お話がありましたように二百数十万トン毎年予定が狂っておる。とにかく一番石炭需要の予定の狂うのは電力です。でありますから電力について重油がこれだけ伸びると予想されておるということは、きわめて私は遺憾に思うのですが、どういうお考えですか。
  21. 今井博

    ○今井説明員 おっしゃる通り、確かに電力事業におきましては重油消費はふえております。これは最近新鋭火力がふえて参りまして、特に最近の最新鋭火力がふえて参りますと、普通の旧来の火力と違いまして、どうしても混焼率が技術的に高くならざるを得ない、実はこういう事情がございます。特に新鋭火力は普通の火力と違いまして、ベース・ロードとして運転いたしておりますので、フルに運転しなければならない。それからときどき機動停止といいますか、火力をたくときに、やはり油を技術的に使わざるを得ない、そういう事情がありまして、普通の火力は昔は大体八%か九%の混焼率でやっておりましたけれども、最近の新鋭火力は二〇%あるいは最々新鋭になりますと、極端なものは二四%というふうなものも出ておりまして、全体の混焼率が昨年は一三%程度の混焼率でやっておりましたが、三十四年はそれより少し上るのじゃないか、実はこういう見通しでおりまして、主として新鋭火力の増加による技術的な問題が主たるものであると考えております。重油を極力抑制するという点については、三十三年度はもちろん豊水の関係もございましたけれども、百四十万キロという計画に対して、消費は百十何万で実績は下っておりますが、三十四年度はやはり百四十万くらいの重油が要るのじゃないか、こういうふうに考えております。
  22. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私はどうもしろうとでよくわかりませんけれども、新鋭火力はベース・ロードをするのですから、むしろ重油の混焼率は少くて済むのじゃないか。一般の火力は火を落したり、また火をつけたりするのですから、しろうと考えでいえば、むしろ一般火力の方が点火する場合に重油がよけい要るのじゃないかと思うのですけれども、どうもベース・ロードであるこういう新鋭火力に、なぜ重油の混焼率が多く要るか、この点どうも疑問でありますが、労働大臣が見えておられますので、時間がないそうでありますから、労働問題を先にやりたいと思います。どうも順序が逆になって、うしろから始めるようになるわけですが、そこで労働大臣にお尋ねいたしたいのですが、今度の石炭合理化法案の一部改正によって百万トン余分に買うわけです。そこで一体どのくらい失業者が出るのか。われわれの見込みでありますと百万トンで七千五百人くらい失業者が出る。ところが今まですでに三百三十万トン全部買い上げてはおりませんけれども、三百三十万トン買うという予定になっておるが、おそらく六十万トンくらいはまだ買われてないのではないか。そうすると今から百六十万トンというものが買われる。それによってどの程度失業者が出るのか、これに対する離職者対策はどういうふうになっているのか、お聞かせ願いたい。
  23. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 合理化法による石炭買い上げを、さらに百万トン追加することにつきまして、政府石炭政策としてぜひやらなければならないことであると思いますが、そういうことをいたします場合に、当然予想される失業問題に、政府としては万全の措置を講ずべきであるということで、それぞれ関係者で検討いたしまして、その結果私どもとしましても、あらゆる角度からその施策を実行いたしていくために、それぞれの関係方面において相談をいたしまして、今お話しのように失業対策について協議いたしました。もちろん御存じのように万全の措置を講じていくということについては、骨が折れることでありますけれども、一応私どもの計算によりますと、百万トンの増が買い上げに伴う離職者は、全国で大体七千五百三十名ほどと考えております。そのうち北九州関係が四千九百名というふうに計算をいたしたわけであります。これらの離職者に対しましては、いろいろ相談をいたしました結果、まず第一に同系業種の間でできるだけ配置転換をして吸収してもらうということにして協力を求めておりますが、同時にまた新規採用の場合は、特にただいまのような施策によって生ずる離職者を優先的に雇用してもらうというふうなことも協議をいたしたわけであります。そしてなるべくほんとうの意味における離職者を少からしめる。それから私どもの方の受け持ちの仕事といたしましては、当然そこに予想される離職者に対しまして職業訓練、これは多賀谷さんも御承知通りに、従来失業者がある程度出る。あるいはまた多発地帯のようなところには特別な職業訓練をいたしておりますが、そういうものも百万トン買い上げの施策と協力する意味で、私どももこれに特に力を入れて参りたい。それからまた他の方に移動して参ります場合に、従来炭住を持たなかったところの労務者が、あっちこっち移動するのと違いまして、現在は大体炭住におるけれども、あるいはまた小規模のところでありますと、そういうところにいない人もおりますが、移動して参りますにはそれぞれ金も入り用なわけで、そういう離職者の移動について、できるだけ政府においてもお手伝いをしてやる。その移動の促進をはかるようにいたしたい。それからそれらの措置によって対策のできない離職者に対しましては、それぞれの関係地域において公共事業や失対事業等を集中的に実施して、その雇用を吸収して参る、そういうふうに考えております。それからまたこの施策を円滑に遂行いたしますために関係地域におきまして、石炭鉱業離職者対策協議会というものを設置いたしました。そこでなお先ほど申し上げましたようなこと以外に、われわれが御協力を申し上げるべきことについては、全面的にお手伝いをして協力をする、こういうふうに考えておるわけであります。そこですでにしばしば他の委員会等においても申し上げてございますからおわかりのことと存じますが、なお公共事業等において、御承知のように三十三年度予算では四十五億五千八百万円を計上いたしておったのでありますが、本年度はそれにさらにプラスをいたしまして、合計七十九億四千万円というものを、特にこのことについて諸般の仕事を満足にさせるために予算の増額をいたして、私が先ほど申し上げましたようなことをいたしますためには、やはり地元の負担増のことも考慮いたさなければなりませんので、九州、ことに福岡の県当局等も招致いたしまして、実際に当って自治庁とも十分な連絡をとりまして、これらの離職者に対して行うべき仕事の手ぬかりのないようにいたしておるわけであります。なお新聞にもちょっと出ておりましたが、季節的に炭鉱労務者が今のようなことで離職される者について、伊豆の災害復旧地等でもそういう人たちを一つ吸収しようというお話がございまして、まことにわれわれとしてはありがたいことでございまして、現にそういう人たちが移動して他の地域の災害復旧等に労働力を向けられるという方々については、地元の市町村あるいは県等から餞別なども出していただいたりして、そういう意味でいろいろな面から協力をいたしまして、ただいまの百万トン、さらに買い上げることによって生ずる離職者の対策に万全を期しておるわけでございます。
  24. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私の手元に福岡県鉱業関係市町村連盟から資料が参っておるわけであります。それは石炭合理化臨時措置法施行による炭鉱買い上げに伴う失業者の発生状況調、昭和三十三年十二月末現在ですが、これは現在までに買い上げを決定し、及び申請をなし閉山せるものの分、こういうことであります。現在までに福岡県において出ております閉山並びに失業者に対しまして、各町村別にしさいにデータが出ておるわけでありますが、それによりますと、今までで閉山をいたしました炭鉱の当時の従業員数が一万五千五百三十六名、それから離職後、他に就職した者がそのうち五千六百四十一名、さらに離職後他の市町村に転入をした者が三千百五十三名、さらに完全失業者という言葉を使っておりますが、この完全失業者というのは政府の定義とは違う。これは政府の方は一カ月の終りの一週間に一時間も働かなかった者、こういうことでありますからこれは違いますが、とにかく六千二百二十六名という数字をあげております。これはかなり失業保険をもらっておる者が入っておるのじゃないかと推定されるわけでありますが、こういう数字を出しております。それから生活保護法の適用を受けております者が七百二十二名、それから今度炭鉱の不況によって今まで就職しておった者で離職が予想される者、これが私はきわめて重大な数字になってくると思うのです。今まで炭鉱が好況でありましたから、一回閉山後離職いたしましても、次に同じような炭鉱に就職しておる、それが同じような規模の炭鉱ですからそれがまた閉山になる、こういうような問題あるいは閉山にならなくても首切りになる、こういう問題、この数字が二千四百七十一名、こういう推定をしておる、こういうようにはっきりしておるかどうかわかりませんが、少くとも二千四百名程度は一度就職した者が再離職をするのではないか、こういう推定が行われておるのであります。そこで雇用対策を必要とする者が八千七百九十七名という数字をあげておるわけでありまして、これは私は数字そのものは、厳格に言いますと必ずしも正確でないかもしれませんが、大体の傾向は変らないのではないかと思う。そこで今度この合理化法案百万トンに伴う失業者というのは、百万トンだけの失業者を対象とするわけにいかない、過去の三百三十万トンにさらに百万トンを加えまして、四百三十万トンの買い上げによるそのしわ寄せが一度にここにやってくるということを想像しなければならぬと思うのであります。そこで今度の失業対策というのは、きわめて私は重大な問題であると考えるわけです。そこで私たちは、昭和三十年度の石炭合理化法案が通過いたしました際に、非常に苦い経験をなめているわけでありまして、当時の労働大臣は一体合理化法案が通過することによる失業者の問題はどうするかということに対して、きわめて明細に数字をあげてお答えになっておるのであります。ところがそれが全部狂っておる、ここに非常に問題があるわけであります。当時労働大臣は、とにかく昭和三十年度においては電源開発工事で四百名、河川改修その他で千七百五十名、さらにその内訳として遠賀川に五百名その他に千二百五十名。道路事業に千五十名、鉄道建設改良事業に九百名、合計四千百名を吸収する、こういうことをはっきりおっしゃっておるわけです。ところが実際はどうかといいますと、鉄道建設事業のごときは、もうすでに同僚議員からお話があったと思いますが、不況のさなかには工事は行われなかった、二年後ぐらいにやっと工事が始まり出した、こういう状態にある、そうして現在はどうかといいますと、この前地元の町村長が見えてのお話でありますと、四百名予定のところが三名しか雇っていない、お茶くみ三名だと、こういう話です。建設事業に携わる人人は、みなよその方から雇ってきて請負が入ってきておる、こういう事情だそうであります。これは私は何をいいましても労働省の怠慢であると思う。実はその当時の川崎―油須原線の建設工事は、労働省が予算をとって運輸省に移管をするという話でこの話ができた、ところが合理化法案が通過した後には、労働省の方はそっぽを向いて運輸省独自で全部金のめんどうからその他をやらなければならぬ、こういう事情にあったと思う。しかし運輸省の方は何も失対の人々を使う義務はない、こういう気持ではないかと思う。こういうように私たちは実際の運営をながめてみますと、合理化法案が通過したときの国会の答弁と全然異なったことが行われておる。なるほど当時は若干事情が違って炭界が好況になったという理由もあるでしょう。しかし現実に買い上げ後の閉山を受けました炭鉱に行ってみますと、まことに悲惨な状態です。従来マル石といいまして合理化法案に伴う離職者に対しましては、全員失対事業に行けるようにしておった。ところがいつの間にかそれはやめて、一般の日雇いと同じような扱いをする。ところが炭鉱の世帯というのは、おやじさんが一人で働いておるという世帯は珍しいのです。とにかく低賃金なものですから、おやじさんも働き、家内も働き、むすこも働いておるというのが大体炭鉱の実態なんです。そういたしますと、ほっぽり出された世帯からは一人しか日雇いに行けない。ほかの者は、同世帯において世帯主並びにそれに準ずる者しか日雇いに行く資格がありませんから、行けないという状態になっておる。現に私たちがその閉山後の離職者に会いましたら、政府はだましたじゃないか、最初はマル石といって全部雇ってくれたけれども、今ごろは世帯主しか雇わぬ、こういう状態になっておるじゃないか、こういうことであります。こういう状態でありますから、実際めんどうを見てやると言いながら放置されておる労働者に対しまして、われわれ自身も責任を感じますし、労働省としても責任を感じなければならぬと思うのです。そこで従来マル石という制度があったじゃないかということを言いましたところが、県の労働部長は新任でありまして、そういうことがあったでしょうか、こういうふうに逆にいうくらい、もう忘れられた状態になっておる。そこに私は非常に問題があるのじゃないかと思のです。そこで今抽象的に大臣お話しになりましたけれども、私は具体的に的確に、一体この地点にはどれだけの失業者が予想されて、どの仕事をやるのかということを明確に表を出してもらいたいと思う。私たちは二度とあやまちを繰り返したくないと思う。実際三百三十万トンプラス百万トン、計四百三十万トンのしわ寄せがここにくるという事態に、労働大臣の抽象的な上手な答弁で、私たちは満足するわけにはいかない。だから具体的に一つ表を出していただきたい。
  25. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 多賀谷さんも御承知のように、福岡の県当局も来てもらいまして、またこちらからも実際に人をやりまして、――過去のことはいろいろお話がございました。そこで今回はたとえば今の買い上げの多くの炭鉱は遠賀川の流域である。遠賀川というのは地元でありますから、もうよく御存じのように、こういうことの施策のために、非常に一本の川で金を食っております。しかもなおかつその流域であるからして、まず地元と相談いたしまして、そうして大体公共事業としてどういうような仕事が、一番経済的にしかも人員吸収に効果的であるかというふうなことの相談をいたし、同時にまたそういう事業をするための地元負担というのは、県も増強されるのでありますから、自治庁も入れて相談をいたした、こういうわけでありますが、今どういう地域にどれだけのものが発生をしてそしてそれをどういうふうにその場所で吸収し得るかということにつきましては、これはもう先般来政府部内及び県当局と相談をいたしましたので、大体のことをおわかりだと思いますが、私どもは先ほど申し上げましたような公共事業で十分の手当をするほかに、それでなお残るものは一般失業対策でこれを労働省において引き受ける、こういう態度をとっておるのでございますから、その失対事業をこれからなすべき地点につきましては、県当局の計画を待って、それにマッチするようにこちらで全面的な協力をする。従って先ほど申し上げましたように三十三年度予算に、さらに三十三億八千百万円というものがふえた、こういうことでありますからして、部分的に詳細にこの地点にこういうふうに仕事をして、それに人を吸収するのだということについては、今私どもの結論を持っておりません。それは先ほど申しましたように、先般来県当局とわれわれの方で、鋭意このきめられた方針に基いて、どれだけの者をどこに吸収するか、今計画を相談中でありますから、なるべく実際に適応したような計画を、なるべく早い機会に決定をして、私どもも百万トン買い上げの施策による離職者に対しては万全の措置を講じて参りたい、こう考えております。
  26. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 今政府計画されておる内容も、私たちはかなり承知しておりますが、その内容につきましても私たちは非常な不満を持っておると同時に、非常な誤差があることを指摘したいと思うのです。たとえば政府は既往の三百三十万トンのうち、昭和三十四年度に発生を予想される離職者がたった五百十五名、こう書いておる。これなんかは全く私から言いますならば見込み違いもはなはだしいと思うのです。まだ三百三十万トンのうち六十万トン買い上げていないのですが、第一これが入ってない。当然これは三十四年度に発生します。それから百万トン買い上げにもさらに発生する。しかも前に買い上げました二百七十万トンの分についてさらに発生する、こういうことですから、百万トンだけの離職者を対象としては私は意味がないと思う。これは重なって累増してくるということを考えなければならぬ。これが第一に問題であると思うのです。それから第二には、いやしくも法律を通過さす場合に、あとのことは今研究中でありますという答弁では私は承服することができない。それはすでに今までにわれわれはそういう目にあってきておる。実際建設省にしましても、その他の省にいたしましても、現実問題としてはなかなか雇ってもくれませんし、何をいいましても今までの道路なら道路五カ年計画、こういう線に沿って事業をやろうとする。そこでそういう線にはずれたところの地帯には、なかなかそういう事業が来ない。むしろ比較的労働者の少いところに、そういう事業が行くという皮肉な状態になる。一番的確なのは鉱害くらいです。鉱害は炭鉱地帯に出るのですから、鉱害復旧事業というのは一番端的に事業効果があると思うのですが、この鉱害ですら、本年度はごくわずかしか予算が組まれていないのですね。ですから今のような状態ではとうていできない。三十年度のときには三十年の一月から三月まで、すなわち二十九年度の第四・四半期につきましては、特別に鉱害の繰り上げをやったということもあるわけです。そうして失業者を吸収したのですが、確かにそれは失業者吸収の一助になったと思う。そういう政策をやらなければ解決することができない、私はこういうふうに考えるわけです。鉄道の建設、油須原線につきましても五十六名増加するように書いてありますけれども、これも現在実際四十名使っておるかどうかもわからない。ですからさらに五十六名使うなんということは、なかなかわれわれはその通りだというわけにはいかないと思う。さらに建設省の公共事業だって、そのことが言い得るのではないか、こういうふうに考えるわけですが、これは一つ具体的に表をお示し願いたいと思う。第一点は今申しましたように政府が今考えられておるような計画では、失業者はさらに累増してくるだろう、それは見込み違いだということ。第二はもう少しはっきり計画を示してもらいたい、かように考えるわけであります。
  27. 三治重信

    ○三治説明員 三十四年度の各省の予算は、一応北九州に予算をつけられるものとして、大体のところを出していただいて、各省の本省側の方で減らすことはないという線でまとめたわけなんですが、具体的なものは福岡県の土木、農林、そういうところから各省へ出向いて、具体的な場所その他予算額の内訳を目下協議中でございますので、各省ともそれを待った上で具体的なものについてやらしてもらいたい。今各省とも具体的な補助金、それから国の直轄事業計画なんかについても、中央と地方と相談中でございますので、それを待った上でないと、そういう具体的な細部のものについてはわからない。しかしその大ワクについては、先ほど大臣から御説明がありましたように、各省も同調して予算額、それから吸収人員も決定したということでございます。  なおマル石の問題でございますが、これは確かにその当時に労働省からも特別なワクとして出したわけなんですが、先ほど多賀谷委員から御指摘のように、当時炭況が非常に回復して、むしろそちらの方に出なくて再吸収されるような状況で、労働省から見れば、その当時通産と労働で非常に失業対策、失業対策といってやったのが、現地においてはむしろ実際的にマル石の人が予定したほどなかった。今度のものにおいても、むしろ各省から出たのは、多賀谷委員がおっしゃったように、ほかの実施官庁の方は労務者をそういうふうに予定したのが、むしろだまされた、だから今度も実際大丈夫かというふうなことも念を押されているくらいでございまして、先ほど大臣のおっしゃったように、過去のことはともかくといたしまして、今後われわれの方も各現地の当局と具体的に相談してやらぬといかぬので、だから今のところできるできぬといっても水かけ論になるのではないか。従って公共事業の方も、場所が違えば、九州の現地とも相談して、バス、トラックもやるし、それから現場の飯場施設のない事業所についてはパイプ住宅なんかの補助金も出そう、事業団の方もそれで補助金が足りない場合には、さらにパイプ住宅なんかも買って出そうというふうな線でやっておりますので、実行上については、さらにいま少し時間をかしていただきたい、こういうふうに思います。
  28. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 通産大臣も十二時までしかおれないそうでありますから、大臣に対する質問たけを簡単にやりたいと思います。あとから局長その他には質問いたしたいと思います。  そこでお聞かせ願いたいことは離職者に対する処置でありますが、塩業整備法によりますと、これは一カ年間の離職金を今度政府は組んで、そして塩業の整備による離職者には一カ年分の給与を出す、こういうことになっておるわけです。炭鉱の場合はわずかに一カ月ということでありますが、一体この差異はどこから出ておるのか。こういう点が第一点。  次の第二点は、労働大臣にお尋ねいたしたいのですが、現在高率補助を多発的な地帯には行われておりますね。この合理化法案による閉山の出て参ります炭鉱所在の町村につきましては非常に財政が逼迫してくる。そこで失業対策もやらなければならぬ、生活保護もしなければならぬ、税収入は減る、こういう状態です。かねてから政府は駐留軍の離職者とこの合理化法による離職者とは、これは一般の失業者とは区別すべきである、こういうことをおっしゃっておったわけです。そこで私はこの際、駐留軍の離職者あるいは炭鉱の離職者につきましては、これは全額国庫負担でおやりになったらどうか、こういうことを申し上げたい。それは、すでに緊急失業対策法という法律が、政府がやることを前提にしてできておる。そして国庫補助が全額だというのは、ちょっと奇異に感じますけれども、法律そのものは全額でやるようになっておる。すなわちこの緊急失業対策法の第九条ですか、「失業対策事業は、国が、自らの費用で、又は地方公共団体等が、国庫から全部若しくは一部の補助を受けて、実施する。」ですから一部の補助はつけたりになって、大体国みずからやるか、あるいは全部の補助金を出してやるかということが前提になっておる。ところが一度だって全額の国庫補助をおやりにならない。私は、こういう法律の施行に伴う離職者というのは、これは人間が限定されておるのですから、当然その人間の分については政府が全額出すべきである、こういうように考えるのですが、労働大臣いかがお考えでしょうか。この二点をお聞かせ願いたい。
  29. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいま御質問の塩業整備には一カ年というお話ですが、これは九カ月になっておると思います。しかるに炭鉱の方は退職の金が一カ月しか出ない、こういうことでありますが、元来塩業は御承知のごとく政府の専売事業でありまして、その計画が出たものはほとんど政府が買い取るということになっておる。これを廃業するわけでありますから、その事業の性質が石炭と塩業とはだいぶ違っておりますことと、もう一つは塩業の方はやめてしまえば、もうそれでほんとうに仕事がなくなってしまうわけですが、石炭の方はある程度配置転換ができるということ、そういうことも考慮されました結果、石炭の方は一カ月の手当しか出しておりません。ただし遠方に移動いたしましたときには、旅費だとかなんとかいう名目をもちまして約一カ月ぐらいを出しておりますから約二カ月分くらいの離職手当が出る、こういうふうなことでありますから、多少そこは事業の性質上違っておるということを御了解願いたいと存じます。
  30. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お話のように、駐留軍労務者等で、多発地帯については特別な処置も講じておるわけでありますが、この合理化法等によって現在計画いたしております地域につきましても、いわゆる高率補助はいたしております。またそれをしていくべきであると思っておりますが、その地点が御承知のようにたくさんございます。そこでその各地域でそういう必要のないところはやってはおらないようでありますが、たくさん離職者の出るところでは、もちろん高率補助でやっていくように措置をいたしたいと思います。
  31. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 確かに塩業とは事業の性格が違っておることは認めますけれども、私は労働者の立場からいえば、塩業の場合は配置転換がきかないけれども、炭鉱の場合はきく、こういう状態には必ずしもないと思うのです。ことに地下労働でありますからなお困難である。塩業の場合は地下労働でないものですから、土木事業その他に必ずしも向くとはいいませんけれども、比較的配置転換が炭鉱労働者よりも一般的にはきき得るのではないか、こういうように考えるわけです。そこで塩業の場合は十年勤続で一カ年ということになっておるのでありまして、やはりその程度にはしてやる必要があるのではないか、こういうふうに思うのです。私はこのことについてもあとから質問いたしたいと思うのですが、実際問題といたしましてどういう状態になっておるかといいますと、某炭鉱で、大体買い上げで金を出したのが五千万円といたします。そのうち鉱害復旧をほとんどやってない。ですから三千五百万円から四千万円鉱害の賠償金が要るのです。そこでそれはまず優先的に事業団が持っていく、そういうことになっておる。そうすると、あとの千万円から千五百万円のうち、国税庁その他が持っていく。それから労働者の賃金、これは賃金未払いはなかったわけです。ところが退職手当の、労働協約または就業規則による確定した退職金が千三百万円ある。それが一銭ももらえぬという状態になる、こういうばかな話があるだろうかとわれわれは考える。そこで実際問題として、塩業の場合は、退職規定がなくても、とにかく政府はやる、退職規定があった場合には、その差額をやるということになって、労働者には十年で一カ年分の離職金がもらえるのですが、炭鉱の場合は、実際退職規定があっても、今申しましたような炭鉱では一銭も退職手当が入らぬというようなことになっておる、こういう取扱いを受けざるを得ない状態になっておる。それは業者が悪いといえば全く悪いのです。今まで鉱害復旧を放置しておったなんということは最も悪いのですが、鉱害復旧の面からいいますと、合理化法は確かに価値があったということになるのですが、労働者の側からいいますと、全部同じところにプールに失業者を置くという状態になっておる。そうすると個個に一人ずつ切られていきますと、お隣は働いておるのに自分だけが切られたということで一生懸命仕事を探すわけです。ところが隣も失業しておる、その隣も失業しておるということになりますと、失業保険のある間は、どうしても人間ですからイージー・ゴーイグな形になってそのまま、何とかそのうちになるだろうという気持がどうしてもわく。気がついたときには全部が失業しているのですから、どうにもならぬというのが実情です。しかも退職金がもらえないというような状態では、これはどうも私は合理化法の弊害というものが非常に多く出ておるのではないかと思う。そこでこれについて一体両大臣はどういうふうにお考えですか、これをお聞かせ願いたいと思うのです。
  32. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 現在の規定では未払い賃金は優先的に払えということになっておりますが、退職金はそれができないというところに、よほど欠陥があると私は存じますが、実際から申しますと、やはり未払い賃金と退職金は同様に認めらるべきものだと存じます。その点は十分私は検討をする必要があると存じますが、今直ちにそうするということは言えませんが、不幸にして、炭鉱業者がほんとうにまじめに経営しておれば、当然積立金なりをもって処理しなければならぬ問題だと存じますが、こういう不況でいろいろな借金がふえ、未払い税金があったというようなことのために、そういう結果になっておると存じますが、これは未払い賃金同様、ある程度の限度の退職金というものは優先支払いをするというような工合に一つ検討を加えたいと存じます。
  33. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ぜひそうお願いいたしたいと思います。そこで両大臣にお尋ねいたしたいのですが、筑豊炭田の将来というものは、ただ単に合理化法案だけの問題ではない。これは筑豊炭田だでははなくして、鉱物資源のあるところは同じような状態になると思いますが、だんだん鉱物資源がなくなりますと、とにかく鉄道はつき、電車は通り、町はりっぱになって、そして市街地を形成しておるけれども、ほとんど失業者という状態なんです。そこで筑豊炭田のどの町村をながめてみましても、もう五年、十年とたちますと、十くらいの炭鉱を除きましては、ほとんど閉山をしなければならぬという状態に陥る可能性があるわけです。そこで一体筑豊炭田をどうするかという問題は、きわめて大きな問題であると思うのです。これを一体どういうようにお考えであるのか、イギリスにおきましては、かつて特定地域改良法案というのがあり、さらに工業配置法というのができておる。また、アメリカにおいても、かなり完全雇用といわれる程度まで雇用水準の高いところでも、部分的に見ますと特殊な失業地帯ができておる。これはやはり鉱物資源の問題であるとか、あるいは防衛関係の軍需工場が倒れたという場合、そういうのが起きておる。そこで地図の塗りかえというか、産業立地的に古い地図をどうしても新しく塗りかえる必要があるのではないか。特にイギリスにおいては造船とか石炭のような景気変動の激しい産業地帯には、景気変動に弾力性のある産業を持ってくるというので工業配置法というのができておる。そして開発公社というのができて、特定な開発をしておる。そして土地を提供とか工場を貸与するとか、こういういろいろな制度ができておると思うのですが、そういった点について一体どういうようにお考えですか。これは合理化法があるなしにかかわらず、こういうような状態になると思うのですが、一体どうお考えであるか御答弁願いたい。
  34. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これは日本全体の工業立地の計画とやはり順応して失業問題も考慮を加えていく必要があると存じます。特に石炭鉱業だとか、天然資源を主体として掘っておる産業が、天然資源が枯渇した場合にどうするかという問題は、非常に重要な問題だと存じまして、その点は今後工業配置という問題と相並んで検討を加えたいと存じます。
  35. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 今の政府の総合開発を見ましても、未開発地域の開発ということに重点が置かれておるようです。しかし問題は、もうすでに開発されておるこの色を塗りかえなければならぬというところに非常に大きな問題があると思う。私は時間もありませんから、後ほど別の機会に大臣に質問いたしたいと思いますが、こういう点を考慮願いたい。  そこで通産大臣お忙しいようですから、最後に一点お聞かせ願いたいのは、需給安定のために価格の面を兼ねて、どうしても安定的な恒久的な機関を作らなければならないと思う。今、石炭不況だといいましても、皆さん方のおふろにたかれる石炭はトン当り一万一千円くらいするのです。どう考えてもこんなばかげた話はない。炭鉱が不況だ、ダンピングしそうだというのに、東京で石炭を買うとすれば家庭燃料として一万一千円もとる。こういう状態で、私は、石炭はみずから市場を狭くしていく状態になると思う。ですからこういう状態をなくして、坑所渡しの生産費に利潤をプラスした価格、それに輸送費ということにして、ぱっと石炭価格がわかるようにしなければ、石炭需要は伸びないので、だんだんだんだん狭められていくだけだと思う。これは業者みずからも反省しなければなりませんけれども、政府としても政策の中に十分考えなければならぬと思う。とにかく売買炭価が幾らであるかというのは、業者の最も魅力です。これを秘密にしておるのです。ですからこれが幾らであるかということが非常な魅力になる。その操作によって利潤を得ておる。こういうようなことでは、日本の炭鉱はみずから墓穴を掘っておる、こう考えてもいいと思う。それと同時に需給の安定ということをやはり考えなければならぬ。政府は自由企業だからというだけでほっておくならば、これは永久に同じような歴史を繰り返すのではないかと思います。そして七千二百万トンなんというものは、とうてい達成できないだろう。七千二百万トンが要る状態の時代になりましても、七千二百万トンということはとうてい不可能であろうと思う。そこで安定政策政府みずからやる必要があるのではないか。私が先ほど申しましたように、日本石炭歴史というものは統制歴史です。北海道炭礦は今度七十周年で、出しました印刷物、膨大なものですが、石炭統制史というのを作った。これほど日本石炭というものは統制歴史を繰り返しておる。私は統制のことは言いません。そういうこともまた伺いたくありませんけれども、需給安定に対する恒久的な対策を大臣はどうお考えであるか、この二点をお聞かせ願いたい。
  36. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 完全なる需給計画を立てるためには、どうしてもこの合理的な配給計画を立てますと同時に、長期にわたる需給安定策を講じなければならぬと存じます。そのためには石炭が基本産業であるという意味から申しましても、また今電力なりガスについては、政府の方において価格をきめておるわけであります。発言権を持っておるわけでありますから、同様に消費者に入る石炭価格というものについても、政府は当然干渉すべき必要がある、こう存じまして、ただいま多賀谷委員の御指摘のありました価格というものも、当然長期の安定した価格消費者の手に入るということは、需給安定の政策の方に加味して、今後考えていきたいと存じております。そういうふうな意味で、今検討を加えておるわけであります。
  37. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そこで今までの労働大臣の答弁を聞いておりましても、私たちはどうしてもこれで十分だという確信を得られないわけであります。この法案はまだ審議をされますから、その審議されておる間に政府の案を、プリントでけっこうですから、具体的にお示し願いたいと思う。それによって私たちはさらに審議を続けていきたい、かように考えております。  そこで、私は日本雇用政策というものがあるのだろうかという懸念すら持つわけですが、それは日本の公共事業その他を中心とする財政を考えましても、景気がよいようなときには公共事業がふえる、景気が悪くなると公共事業は削られる、こういうことになりますと、一体日本雇用対策というものはないのではないかと疑わざるを得ない。そこで各国がどういうような状態を示しておるかということをいろいろ調べてみたわけですが、御存じのようにアメリカについては私が申すまでもないと思います。雇用というのができて、そうして民間の経済活動をながめ、そうして雇用をながめながら、あるいは生産投資、そういうことを勘案して、いわば民間の経済の活動との差額、これを政府の財政規模にしておる。雇用計画の中に入れておる、こういう方針がとられておる。これについては言うまでもないと思いますが、かなり小さな国でも、公共事業に弾力性を置くということで、非常な苦心を払っておるようであります。スイスにおいても中央政府と地方政府その他公共団体の公共事業投資計画について詳細に調査をして、そうしてその調査に基いて、好況時には一時それを中止させておる。そうして失業者が発生し、また失業者の発生が切迫した場合に実施をする、こういうように弾力性をつけておる。またオランダにおきましても、失業の際に実施するために、常に公共事業を一部保留をしておる、こういう方針をとっております。ノルウエーにおきましては、鉄道建設事業好況時にはやらない。要するに好況時には保留して、不況が発生したときに実施する、こういうことになっております。オランダは弾力性を持ちながら、しかも労働力の集中程度の高い土地改良に大部分を充てておる。こういうように西欧のかなり小さな国でも、これだけの準備を整えておると思う。そこで日本の場合、もう少し私は一般の経済活動、そういった面あるいは政府が作る経済政策、この経済政策雇用というものをかなり中心に考える必要があるのではないか。日本経済政策というのは物と金だけで動いておる。そうでなくて人を中心に考える必要があるのではないかと思う。なるほど経済五カ年計画を見ましても、あるいは三十四年度の経済見通しを見ましても、雇用のことは書いてあります。書いてはありますがこれはまるっきり作文になっておる。そうしてそれは付属的なものになっておる、こういった点で日本政府には雇用政策がないと考えざるを得ない問題があるのではないか、こういうように思うのですが、大臣並びに企画庁はどういうようにお考えであるか、お聞かせ願いたい。
  38. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 雇用の問題は、私どもの立場から見て一番大切であって難物である。これは常に痛感いたしておりますが、御承知のように政府の策定いたしました経済計画をごらん下すってもわかりますように、やはり政府が目標といたしておりますのは、まず人に重点を置いて、どのようにして雇用を拡大していくかということが、長期経済計画の冒頭に掲げてあるところで、これはなるほど企画庁が策定いたし、これを政府の方針としてきめまして発表したものを頭から読んで参りますと、一応の文章であるというふうにとられるかもしれませんが、われわれが予期いたしておるところは、単に文章ではありませんで、それを目標にして経済計画をやっておる、しかし私はいつも思うのでありますが、ともかくも限られた資源、限られた領土の中に生産年令人口というものは、一定の率をもって毎年増強して参ります。厚生省の発表いたしておる厚生白書を見ましても、ここ数年後に労働力人口というものがピークにくる時期がある、私どもとしましてはやはりそういうことを頭に置いて経済計画を立てなければならぬ、従って今御審議を願っております合理化法につきましても、政府がこの点に重点を置いている一つの片鱗の現われでありますが、やはりそれによって生ずる失業者というものについて、どのように雇用量を拡大していくか、どのようにしてその間に反動が行われずに済むかということに重点を置いて、その話がまとまるまで法案の提出を遠慮しておったというふうなことからも、やはり人の問題に重点を置いておることを御了解願えると思うわけであります。  そこでわが国は先ほど申しましたように、とにかく相当量の人口をかかえておる上に労働力人口が年々増加してくる。従ってそれに合うような経済政策を立てなければならぬ。もちろんわれわれは自由経済の立場に立ちますが、多賀谷さんも御承知のように、今日特殊な国は別でありますけれども、野放図な自由経済というものはあり得ない。また徹底的ないわゆる社会主義経済で、計画経済をそのままに押し切っておる国もあまりありません。従ってわれわれはやはり雇用の問題などは計画性を持って立ち向っていくべきである、もちろんそのように考えております。そこで来年度の経済運営の政府の考え方としては、やはり昨年及び今年の状況を勘案して、産業規模の伸びを五・五と押えることは少しも無理がない。私個人の観測といたしましても、政府が今考えておるよりも下半期においては規模が伸びていくのではないか、今の稼働率等を計算して推測をいたせば、そのように考えております。しかしながらなおかつ昨年と同じ程度に、完全失業者六十万ということを想定した。これは非常に内輪に見積ってのことであると思っております。御承知のように大体政府が行います景気調整策といったようなものも、七、八カ月後に正直に失業保険の受給者増強等に現われて参ります。従って私は、現在立てております政府の三十四年度予算運営並びに経済見通し等については、大体これでいいんではないかと思う。そこで行います政府の施策が最終的にしわ寄せして参りますのは、労働省の担当いたしております失業問題にかかって参ります。そこで私どもは今まで政府のいたしておりましたような、もちろん総合的に各省が協力をいたして雇用増大をはかると同時に、実質的に私どもに与えられました雇用面の増強というふうなことにつきましては、これは事務的なことになりますが、やはり、たとえば安定所というふうなものが、その機能が十分に発揮されておらないということは、雇用審議会の有沢会長の答申を見ても、われわれじくじたるものがあるのであります。従って三十四年予算には、前年度に比べて数倍の施設費を取りました。このことはやはり大産業の諸君、昨年の十月ごろ、これは実際に人を雇用してくれる人々と、それから政府のやっております雇用拡大等について、もう少し有機的な関連性を持つ必要があると存じまして、雇用懇話会といったようなものを作って、その中に主たる産業の責任者を集めまして、それでわれわれが訴えましたことは、年度がわりにおいては常に新規雇用ということについて、たとえば電力界あるいは工業界、石炭あるいは造船、化学工業、そういうところで実際に人を使ってくれる人々を集めて、政府の考えを訴える。今やっておりますのは、その各業界の幹事役を務めておるような人々に、年度がわりにおいてどういうような技術者を、どのようにその業界において必要とするかというふうなことを、今一生懸命で相談をさせておるようなわけでありまして、実際面からいたしましても、そのようにわれわれは雇用の拡大ということについて全力を上げておる。そのようにして、実際面を担当しておる方からも雇用の増大をはかると同時に、一応計画性を持った計画に基いて、企画庁の策定いたしました運営方針は無理ではないという建前で、一つこれが実現のできるようにということで、政府部内が連絡をいたしまして、雇用の増大をはかる、こういうことであります。
  39. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そこで大臣も参議院が呼んでおるそうでありますから、最後に一問だけ質問いたしますが、今大臣は合理化法案の提出がおくれたのも、実は雇用問題を研究しておったから、こういう話ですけれども、私は逆に少くとも法案提出までにまだ対策ができていないというようなこと、そのことが雇用政策というものに重点を置いてないという証左ではないかと思う。少くとも合理化法案を出すということがわかっておるのに、鉱害復旧の予算も大して増してない。増してもごくわずかです。これは雇用問題と全然関係はない。ですからいやしくも合理化法案を出そうという場合には、そういう予算措置が各般にできておらなければ、私は政府雇用問題を重視していると、いかに大臣が御答弁になりましても、実際的にはやってないということを現わすものである、こう考えざるを得ないわけです。そこで私はそれほど雇用問題に重点を置いておられるならば、なぜ緊急失業対策法に示してある全額国庫補助ということをおやりにならないのか、一体国庫補助というのは、いつおやりになるのか、どういう場合にあの法律が適用されるのか、これをお聞かせ願いたい。
  40. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 あの法律の立法当時、多賀谷さんも参画されたと思いますが、私はあの法律のときには立法に参画をいたして、今お話のようなことについて当時の政府との間に熱心な質疑応答が行われたわけであります。御承知のように先ほどお話のございました失業者多発地帯等について、政府はできるだけ財政の許す限りにおいて高率補助をいたしておるわけであります。今わが国の財政事情の最大限度で、われわれが努力をして高率補助をやるようにしておる、そしてできるだけすみやかにやはりわれわれが立法いたしましたもののその趣旨が貫徹されるように、なお一そうの努力をいたして参りたい、こう思っております。
  41. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 実は高率補助の適用を受け得ないほど財政が逼迫をしておるわけです。高率補助の適用は、大臣御存じかと思いますが、ワクがあるわけです。ある一定数以上やった場合というワクがあるために、実際はそれほど高率補助をいただいても、なお財政が窮迫しておるから、その恩恵に浴せない町村があるのです。それが一つです。  それからやはり先ほども申しますように、政府が法律を作ってやる失業対策というものについては全額これを見る、こういうことが原則でなくちゃならぬと思う。少くとも一方においては買い上げることによって財政は危機になり、さらに支出は増大する、こういうような町村にさらに地方負担をせよということは、酷じゃないかと思うのです。これは公共事業だって政府みずからがおやりにならなければ、公共事業を受けるだけの財政の余裕がありません。結局返上する以外にはない。そうすると失業者は依然として吸収されない、こういう事態になると思いますので、一つ格段の努力をお願いしたい。そこで労働省に対しましては、この法案審議中に一つ明細な責任ある資料を出していただきたいということを要望しておきます。  それから通産省にお尋ねしておきますが、合理化法の施行状態をお聞かせ願いたいと思うのであります。と申しますのは、坑口開設許可というのがこの法案に盛られておるわけでありまして、一方において買い上げて閉山をさせながら、一方においてどんどん炭鉱がふえるということは、これは法案の趣旨に沿わない、こういうわけで坑口の開設については許可制度をとっております。ところが昭和三十三年の五月までに政府が買収いたしました炭鉱の生産数量が年間二百七万トン、こういう数字になっておるわけですが、この買い上げた場合は二百七号トンでありますけれども、坑口開設許可をした炭鉱の生産数量というのが驚くなかれ三百二十二万トンもある。一体何のために買い上げておるのか。一方で買い上げると言いながら、一方においては坑口開設許可でどんどん炭鉱がふえて、そうしてその生産能力が三百二十二万トン、こういう数字になっておる、これでは意義をなさないのじゃないかと思うのですが、一体どういう運営をされてきたか、これをお聞かせ願いたい。
  42. 町田幹夫

    町田説明員 坑口開設の許可につきましては、いわゆる高能率炭鉱に限りまして、許可するという方針のもとに進めて参っておりまして、何でもかんでも許可するということはやっておりません。いわゆる目標能率と申しまして、合理化法設定当時のあれでございますが、昭和三十四年度の十八・四トンという目標能率の五割増しのものでなければ許可しないということでやって参っておるわけでございますが、先ほど御指摘の三百二十二万四千トンというのは、この許可しました炭鉱が、いわゆるフル操業に入りましたときの出炭量でございまして、これは御承知のように相当長期にわたりまして、縦坑開さく等の工事をする大きな炭鉱等もございますので、そういうものが将来出炭になるものがありますので、そういうものを込めて三百二十二万四千トンということでございます。これは能力でございまして、現在まで出炭しておりますのは約百十万トン程度でございまして、これが全部出炭しておるというつわけではないわけでございます。これは四、五年先に出炭力になる、しかも非常に安いコストの出炭になるというものを相当含んでおるわけでございます。
  43. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 炭鉱の開発は適正規模でなくちゃならぬということを盛んに言われておるわけですが、一体この坑口開設の許可をされた炭鉱は、常識的に考えて適正規模の炭鉱ですか。
  44. 町田幹夫

    町田説明員 もちろん坑区の合理的開発のためには適正な規模でなければならぬというのはお説の通りでございます。ただ何をもって適正規模と判断するかということは、非常に困難なのでございまして、これはその鉱区におきまする炭層の賦存状態によりまして、非常に変って参るわけでございます。一般的な傾向といたしましては、日本の炭鉱はだんだんと深部に移行いたしております。従いましてそういうふうな深部に移行した場合の採掘方式といたしましては、相当大きな縦坑なり、あるいは大規模な斜坑等を掘らなければなりませんので、非常に小さな出炭規模では償却もできないということでございますので、どうしても深くなりましたところにおきましてはやはり三十万トンとか五十万トンとか、そういうふうな相当大きな規模でなければならぬわけでございますけれども、ただ炭層状況の、いわゆる露頭ぎわ等の比較的浅いところに炭層を持っておりますもの、あるいはいわゆる残炭等がございまして、そういうものを採掘するものにつきましては、小さな規模でもけっこう採算がとれますし、コストも安いし、経営としても成り立つという面も出てくるかと思いますが、この坑口開設を許可いたしました件数は、これは主として出炭が増加いたしますが、百二十三件でございます。このうちの六十五件、半分以上が北海道でございまして、北海道等の比較的炭層の浅いところに許可した、こういうことでございます。
  45. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 しかし百二十三件も許可して、それが全部で三百万トンということになると、月産にすると二千トンくらいの炭鉱ですね。これは小炭鉱ですよ。こんなのがなぜ許可されるのか。しかも今申しますのは平均ですからね。私はどうも租鉱権あたりがかなり許可されておるのじゃないかと思うんです。あるいは大手鉱区の分譲――しかも聞くところによると、この坑口開設の許可をした炭鉱がまた新規買い上げの申請をせんとしておるということを、正確にいいますと聞いておる。一体何のために許可制度を設け、合理化法を設けたか、全く運営はでたらめであると言わざるを得ない。どういうようにお考えですか。
  46. 町田幹夫

    町田説明員 坑口開設の許可基準といたしましては、いわゆる炭鉱の能率ということを中心に考えております。従いまして、能率がその基準に該当するということになれば、これは拒否するという理由もないわけでございます。それから率直に申しまして、北海道に特に多いわけではございますが、これはいわゆる石炭好況時と申しますか、石炭がある意味で非常に不足したという時代がございまして、いわゆるスエズ動乱のときでございますが、石炭が非常に逼迫した。一方油等も相当不足といいますか、いわゆる高くなった。国内炭の増産ということが、需要家等の面からも非常に強く要請されたというふうな面がございました。その際大手炭鉱等におきましては相当大規模な合理化工事をやっておりますけれども、それがたまたまその時間に間に合わないというために、露頭ぎわ等の浅いところを、いわゆる租鉱権ということで、いわば一時のつなぎということで掘らせたという例は、これは実際問題としてあるわけでございます。しかしそれはその当時の情勢としましてはやはりある程度必要でもあり、またそれが実際問題としては非常に能率の高いコストの安い炭鉱が出ておるということになっております。
  47. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大手炭鉱の租鉱権あるいは分割鉱区が大体四〇%含まれておるということを言われておるのですが、しかも何でそういうことになったかというと、結局これは労務政策である。常用として普通の賃金を払うことをいさぎよしとしないものですから、結局臨時夫の形、あるいはまた租鉱権の低賃金で、悪い労働条件で掘らそう、こういうところに問題があったと思うのです。好況時のことはやむを得ない、こう言われますけれども、合理化法は長期安定をねらって一方で買い上げているのですから、やっぱり坑口開設の許可というのは、かなりシビアにおやりにならないと、法律全体が意味をなさないわけです。一方で買い上げて、一方でどんどん許可をして、そのうち許可をした中から買い上げてくれというのが出るなんという、そういうばかげた話はないと思うのですね。私はこの点に対する運営は確かに誤まっておる、こういうように考えざるを得ないのです。さらに価格の面あるいは需給の面、いろいろな面におきまして、今までの石炭政策は大転換をしなければいかぬ時期が来ておるのではないかと思うわけです。  本日は大臣も退席されましたのでこれ以上申しませんけれども、石炭政策全般について、やはり合理化法だけでは私はできないと思う。合理化法はなるほど一面役立つ面があるかもしれませんが、これは失業者を失業者のプールに置いて、そしてお互いに無気力な人間を作って、そうして市町村その他の財政を逼迫さす、この面が非常に大きくなってきておる、こう考えざるを得ないわけであります。そこで失業対策についてさらに詳細な資料が出ると思いますので、私はそれをながめながらさらに大臣に対して根本的な政策をお聞きいたしたい、こういうように考えて、本日の質問はこれで一応終ります。
  48. 長谷川四郎

    長谷川委員長 本日はこれにて散会をいたします。次会は明日午前十時より開会いたします。     午後零時二十九分散会