運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1959-02-13 第31回国会 衆議院 商工委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月十三日(金曜日)     午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 長谷川四郎君    理事 小川 平二君 理事 小泉 純也君    理事 小平 久雄君 理事 中村 幸八君    理事 南  好雄君 理事 田中 武夫君    理事 松平 忠久君       赤澤 正道君    新井 京太君       岡本  茂君    鹿野 彦吉君       菅野和太郎君    木倉和一郎君       始関 伊平君    關谷 勝利君       中井 一夫君    野田 武夫君       野原 正勝君    細田 義安君       山手 滿男君    渡邊 本治君       板川 正吾君    今村  等君       勝澤 芳雄君    小林 正美君       鈴木  一君    永井勝次郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       中川 俊思君         通商産業事務官         (重工業局長) 小出 榮一君         中小企業庁長官 岩武 照彦君  委員外出席者         中小企業信用保         険公庫理事長  山本  茂君         参  考  人         (商工組合中央         金庫理事長)  北野 重雄君         参  考  人         (商工組合中央         金庫理事)   加藤 八郎君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 二月十日  中国産生漆輸入に関する請願外一件(大石武一  君紹介)(第一一八五号)  同(小川平二紹介)(第一二七三号)  小売商業特別措置法案の一部修正等に関する請  願外二件(永井勝次郎紹介)(第一一八六  号)  同(小平忠紹介)(第一二八六号)  同(館俊三紹介)(第一二八七号)  同(芳賀貢紹介)(第一二八八号)  同(安井吉典紹介)(第一二八九号)  同(大西正道紹介)(第一三四四号)  同(安井吉典紹介)(第一三四五号)  同(足鹿覺紹介)(第一三八七号)  同外四件(山中日露史紹介)(第一三八八  号)  輸出入取引法の一部を改正する法律案反対に関  する請願永井勝次郎紹介)(第一一八七  号)  同外二件(小平忠紹介)(第一二七六号)  同(館俊三紹介)(第一二七七号)  同(芳賀貢紹介)(第一二七八号)  同外一件(松浦定義紹介)(第一二七九号)  同(安井吉典紹介)(第一二八〇号)  同(石野久男紹介)(第一三三八号)  同外二件(安井吉典紹介)(第一三三九号)  同外十二件(岡田春夫紹介)(第一三四〇  号)  同外一件(山中日露史紹介)(第一三八九  号)  日中貿易再開に関する請願外五件(淺香忠雄君  紹介)(第一二〇九号)  輸出入取引法等の一部改正案に関する請願(前  田郁紹介)(第一二一〇号)  同(池田清志紹介)(第一二七四号)  同(前田郁紹介)(第一二七五号)  日中貿易再開促進に関する請願小川平二君紹  介)(第一二七二号)  小売商業特別措置法案の一部改正に関する請願  外三件(小平忠紹介)(第一二八一号)  同(館俊三紹介)(第一二八二号)  同(芳賀貢紹介)(第一二八三号)  同外一件(松浦定義紹介)(第一二八四号)  同(安井吉典紹介)(第一二八五号)  同(石野久男紹介)(第一三四一号)  同外十四件(岡田春夫紹介)(第一三四二  号)  同外二件(安井吉典紹介)(第一三四三号)  同外一件(山中日露史紹介)(第一三九〇  号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案(  内閣提出第六一号)  中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律  案(内閣提出第六二号)  航空機工業振興法の一部を改正する法律案(内  閣提出第八五号)      ————◇—————
  2. 長谷川四郎

    長谷川委員長 これより会議を開きます。  商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案航空機工業振興法の一部を改正する法律案及びプラント類輸出促進臨時措置法案の四案を一括して議題とし、審査を進めます。質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。  なお商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案及び中小企業信用保険公庫の一部を改正する法律案の両案審査のため、参考人として商工組合中央金庫理事長北野重雄君及び同じく理事加藤八郎君が御出席になっておりすので御承知おき願いたいと思います。  それではこれより審査を進めます。松平忠久君。
  3. 松平忠久

    松平委員 前会に引き続いて留保した部分を御質問したいと思います。それは主として中小企業信用保険公庫の問題についてであります。事務引き継ぎを受けてから約半年くらいになるだろうと思うのですが、その間非常にお忙しいようなふうに聞いておるのですが、居残りなんか毎日やっておるということですが、今一番忙しいことというのは、公庫ではどういうことが忙しいのですか、それを理事長からお伺いしたい。
  4. 山本茂

    山本説明員 ただいま公庫について御質問がありましたので、お答え申し上げます。一番居残りで忙しくやっておりますのは、引き継ぎを受けた書類のうちで、保険金支払いというものがかなりたまっておったのでありまして、これをできるだけ早く現金の支払いをするということに全力を注ぎまして、保険金支払いを進捗しまして、現在では引き継ぎを受けました書類は、大体はけたという状態になっております。そのほか保険料調整といったようなものもできるだけ早くやるということが公庫の使命でもありまするので、できるだけ早くやるということで、ときには居残りをしてみんな努力するといったようなことで、大いに事務の進捗をはかっておるということでありますので、御了承を願います。
  5. 松平忠久

    松平委員 特別会計時代には一番苦情があったのは、御承知のように、保険金支払いの遅延だということにあったわけです。そこで保証協会がいつもそれを苦情の種にしておった。公庫に移ってから居残りもずっとして、なるべく早くこれを支払うということで御苦労しておることは非常によくわかるのですが、今はどうです。大体どのくらいでその金が保証協会にいくようになりましたか。
  6. 山本茂

    山本説明員 ただいまは私ども公庫の方へ保険金支払いの請求がきましてから、大体おそくても二カ月くらい、早いのは一カ月くらい、それで保険金審査を終りまして支払いをしておりますので、保証協会その他も大体そういうことで御満足をいただいておると思っております。
  7. 松平忠久

    松平委員 それからお伺いしたいのは、もう一つ苦情は、その手続が非常に煩瑣だったということなんです。書類を三十何通も書かなければならなかったというようなこともありまして、非常に手続が煩瑣だったということを聞いておるわけでありますが、その後それらの書類等の種類が減っておるのかどうか、いわゆる手続簡素化されておるかどうかということをお伺いしたいと同時に、何か公庫並びに通産省の方におきまして、事務手続を省くための便法というようなものを考えておるかどうか。たとえば、一件々々を保険にするというようなことでなくて、包括保険であるとすれば、何かその手続を省略して、一件々々にせずにやるような方式というものはないものかどうか。もしそういうような方式ができれば、これは非常に事務簡素化されてくるのではなかろうか、こういうふうに思うわけなんです。つまり一件一件の保険についての書類上の手続ではなくて、それを月ごとに大体まとめてやるとか、何かそういう包括的な事務手続というものはないものかどうか。そうすれば、保証協会の方も、それから公庫の方も、非常に手数が省けるのではないか、こう思うのですが、そういうことについてのお気づきの点というものはないものですか。
  8. 山本茂

    山本説明員 事務簡素化迅速化ということにつきましては、国会の御決議がありましたので、その線に沿うて努力しておるわけでありまして、ただいまの御指摘申請書あるいはその他の書類提出につきましては、昨年の七月とことしの一月とに二回にわたりまして、いろいろの検討を加えまして、数も少くするし、不必要なものは省くということにいたしました。  それから御指摘の、包括的にやったらどうかという点でありますが、これは今どうやったらうまく結論が出るかという研究をしておりますので、その結論が出ましたら、もう少し具体的なお答えができるかと思います。
  9. 松平忠久

    松平委員 それから現行制度経由機関が多いんじゃなかろうかと思うのです。この経由機関簡素化していくという方法一つ考えてみたらどうか。たとえば今ここに加藤さんがおいでになるが、商工中金なら商工中金支所でやりますと、本所へ来る、そこからこういうふうにいくというようなことですが、それをそうせずに、一ぺんにすうっといくような方法がないものかどうか。経由機関整理というようなことを、一体考えておられるかどうか、その点をお伺いしたい。
  10. 山本茂

    山本説明員 経由機関整理の問題でございまするが、ただいま私どもの方は地方出先機関を持っておりませんから、商工中金の方にお願いしておりますので、地方関係商工中金支所を使っておるわけでありますが、ただいま御指摘のように、商工中金本所を通るかどうかという点は、ただいま商工中金と御相談しておりまするので、何らか簡便な結果が出ることと思っております。
  11. 松平忠久

    松平委員 商工中金を経由する場合に、私は、商工中金との話がつくならば、何も商工中金本所を経由しなくてもこれはいいんじゃなかろうか、こういうふうにも思うわけです。それだけつまり手数も省けるし、同時にまた、これは時間的にも節約できるというふうに思うのですが、一つそこらのところの研究をしていただきたいと思うのです。  それからもう一つ伺いたいのは、この前の特別会計のときに、本年度つまり三十三年度はどの程度赤字があるかということを私質問したことがある。私のその当時の見込みとして、約五億円くらいの赤字があるんではなかろうかというふうに思ったが、当時の担当課長は、大体四、五億の赤字があるということを言っておりました。それをば皆さん方の方が受け継がれて、今日やっておられる、こういうことになるわけです。そういたしますと、その程度赤字というものは、やはりことしは見込まれるのではなかろうかと思うし、また来年度は、しからばその赤字というものは一体どの程度見込みになるのか、その見込額、本年度、来年度の分をお聞かせ願いたい。
  12. 山本茂

    山本説明員 公庫赤字について御質問がございましたが、赤字は今年度は、保険金支払いもふえた関係でございましょうが、三十三年度におきましては三千五百万円の赤字ということを見込んでおります。三十四年度になりますると、大まかな数字で申しますと、約四億円の赤字が出るんじゃないか、こう思っております。そのおもな原因は、特別会計時代融資保険をたくさんやっておったのでありまするが、この融資保険は非常に赤字がたくさん出る保険でありまして、ことに担保率が八〇%になっておりますので、その融資保険保険金支払いというものが大体ずれまして二年後に結果が出てくるのでありまして、特別会計時代から二年たった三十四年度に約四億円の赤字が出てくる、こういうふうに計算しております、この融資保険の方は本公庫になりましてからは、ワクかなり少くなりまして、三十三年度は百億、三十四年度は九十億ということで大幅に減っておりまするので、この方からの赤字は今後はそんなにたくさん出てこない。従って大体公庫の収益で支出はまかなえる。そんなにたくさん三十五年度以降は赤字は出てこない。若干の赤字はやむを得ないのでありまするが、何億といったような赤字は出てこないと見ております。
  13. 松平忠久

    松平委員 逆選択でありますからやむを得なかったということと、もう一つは、銀行が非常に悪賢くて、保証協会の犠牲において銀行が助かったというのが、実際を申しますとこの制度なんです。従ってこの制度そのものに非常に欠陥があってしょうがない、やむを得ない赤字だろうと思うのです。これは特別会計だろうが、公庫に移った後だろうが、今までのような制度だったら必ず融資保険というのは多くなって、そしていわゆる銀行救済事業にこの保険事業というものが大部分とられてしまうような結果になってきた、私はこう思うのです。従ってあの制度そのものにそういう欠陥があったのだから、やむを得ない赤字だろうと思いますが、少くともそういう制度を国家並びに政府も原案を国会提出して、そうして国会の承認を得て出た赤字なんだから、これは政府自体が始末をしてくれなければならぬ赤字だろうと思うのです。一体政府は、この赤字に対してどういう考えを持っているのか、これを基金の食いつぶしということでいくのか、私はそうあってはならないと思う。これはせっかく基金川上君が作ったときには、まあ二百億程度にしてやろうということで、この豊富な財源をもって、そうして損失をカバーしていくというアイデアがあったから、これは非常にけっこうだと思っておったが、その後実質的には百億程度になってしまって、川上君の構想がくずれた。しかしその構想そのものはいいわけです。ところが今申しました赤字というのは、その前の時代の、しかも融資保険から出た赤字である、こういうことであるならば、それは今回の増資された分と申しますか、百何億の基金を食いつぶして、その赤字を埋めていくというような考えで初めからあったかどうか。私は少くともそうではなくて、川上君の構想というものは二百億程度のもので運営していく、こういう構想が百億に減ったのでありますから、節約もしていかなければならぬけれども、そういう減った分からなおかつこの四、五億の赤字というものを控除してしまうというようなことがあってはならないと思う。その点は政府はどういうふうにお考えになっておるか。
  14. 岩武照彦

    岩武政府委員 保険公庫損益計算上の損失金というのは、法律的に言いますれば減資することになっておるわけであります。それで今理事長から話がありましたが、一体三十四年度幾ら損失があるかということは、一応この公庫予算参照資料には四億程度と見込んでおります。これは支払い準備金等の繰り入れを控除したあとの損失であるわけであります。そうしてどういうふうな決算をするかという問題が一つあるわけでございますが、いずれにしてもかなり損失が立つことは免れないようであります。その原因は今御指摘通りでございます。従って政府機関でございまするし、また普通の公庫政府機関基金、いわゆる資本金と違いまして、保険公庫のはこれが直接保険なり保証の基礎になるわけでございまするから、われわれとしては、これは減らしたくない。裏から言いますれば、政府出資によってこれをカバーすべきものだ、こう考えております。ただ明年度予算予定しております十億円は、これは減資補てんではございません。むしろ三十五年度予算においてどういうような措置をとるかということになると思いますが、いずれにしてもわれわれの気持としましては、基金が減って参る、ことに保険基金が減って参るようなことはしたくないと思います。同時にやはり時期は、毎年政府特別会計時代に付保しましたしりが出て参っておると思います。大体二年から三年おくれて出て参りますから、今後とも出てくるだろうと思っております。現在の業務運営からしましても、やはり逆選択保険、これは融資保険にしましてもあるいは保証保険にしましても、逆選択保険、そういう制度は、これはあまり奨励しない方がいいのではないか、むしろ薄く広くカバーする意味包括保険といいますか、その方に重点を置くべきだろうと思っております。
  15. 松平忠久

    松平委員 趣旨はまさにその通りだろうと思うし、また今岩武長官お答えによると、この赤字決算のときにいずれ三十五年度政府から補てんしてもらわなければならぬという趣旨のことを述べられたわけです。私はその通りだろうと思うのです。そこで今申されたような工合に、逆選択では実際は困るので、広く薄くという包括保険の方へ移行されていかんとするのがこの制度なんだ。しかし今過渡期でありまして、当初の予定の二百億というような資金もないわけであるから、そこがなかなかむずかしいので、従って第二種包括保険のごときは、先日の理事長説明によっても三つしかない、こういうような状態なんです。それを赤字の解消ということをせくと、かなり第二種を勧誘しなくちゃならぬというようなことにもならざるを得ないわけであります。私はそういうことはやらぬ方がいいと思う。つまりこの公庫の軍営をほんとうに法の精神のようにやっていくというためには、やたらと第二種を勧誘するということになってはまずい、こういうふうに思うのです。一体その点は公庫はどういうふうにお考えになるのですか。三つしかないけれども、まあ三つで当分がまんしておく、向うがやりたいというときはやってやるけれども、第二種に入れ入れといって勧誘をするというような方針はないわけでしょう。
  16. 山本茂

    山本説明員 御指摘のように第一の包括保険については非常に数が少いのでありますが、といって、これは勧誘すべきものではないということも、やはり御指摘通りであります。ただこれは現在普通保証保険と並立いたしておりますので、各保証協会の方ではいろいろ経済的な利便を考えた上普通保証保険の方が有利と考えられておりますので、そっちの方は非常に希望がありまするが、第二種の方は希望が少いわけであります。保証協会の方の希望を聞きますと、第一の要望普通保証保険ワクをふやしてくれということをしきりに言われておる。もう一つ要望は、このワクは今まで通りでもいいけれども、第二種の方を大いにやるのなら、もう少し料率を下げてくれぬかということを言われておりますが、現在公庫収支計画では、一応第二種の現在の料率を下げてはいろいろな点に支障がありまするので、その点はどうしたものか、実は私どもの方で研究しておるわけでありまして、これは私の試案でありますが、第一種と第二種を通して、第三の保険といいますか、一種と二種を合併したもので、その料率を一分くらい下のものをやったら、あるいは収入の点においても大した差異がなくて、しこうして各保証協会さんの賛成を得られるようなものができやせぬかというようなことも、これは私案としては考えておるのでございますが、今のところはまだ監督官庁に御相談するまでには至っておりません。
  17. 松平忠久

    松平委員 それからもう一つ伺いたいのは、公庫として保証協会との間において、いわゆる保険最高額と申しますか、個人七百万円、法人一千万円ですか、これは現在の保証協会なり公庫を利用する層が、なべ底的な景気というようなことから非常に融資の窮屈さというものが去年ありまして、今年はかなり範囲が広くなってきた、つまり今まで保証協会なんかにあまり御厄介にならなかったものが、かなり保証協会に厄介になるようになってきたという現実の姿が、地方に参りますとあるわけです。従ってそういう人たち保証額限度というものは現行限度では困る、もっと限度を上げてもらいたい、そういうような層が、この保証協会の方には出てきてしまったわけです。ですから私は保険の方も最高額というものを若干いじる必要があるのではなかろうか、上げる必要があるのではなかろうか、こういうようなことを感じておる。そういうことを希望しておる人が非常に多いわけなんですが、それに対しては研究か何かされたことはございますか。
  18. 山本茂

    山本説明員 保険最高限を高くしてくれという希望は、実はちょいちょい聞いておるのでありまして、その点も研究しておるわけでありますが、さてそれを幾らにしたらいいかというはっきりした結論もまだ出ておりませんので、至急そういう結論を出しまして監督官庁に御相談申し上げたいと思っております。
  19. 松平忠久

    松平委員 最後に、これは質問ではありませんで、意見と希望ですが、今私が申しましたことをせんじ詰めれば、いかに合理的にこれを節約して、しかもこれを利用する人たちの便利のためになるようなサービス精神から、運営改善をはかっていくということが第一の点。第二の点は、そういうサービスを受けるような人たちつまり利用者満足をするようなことをするためには、何としても結局金なんです。当初の予定のところへ早く持っていくということをしなければならない。ことしは、審議されておるこの法案の内容にもある通り十億円——初め五億円だったものを、われわれも大蔵省に行って十億円にしてもらったというようないきさつがあるわけですが、こういったものを、とにかく積み重ねていくということ、今後とも超党派的に機会あるごとに努力していく、そういうことをやっていくよりほかに方法はないと思うのです。そういうような意味で、一面においてはサービス改善のためのいろいろつなことを考えていく、同時に一面においては、これを裏づけるところのものを持っていくということで、しんぼう強くこれを育てていくというところに主眼があるだろうと思うのです。私はそれを希望しまして私の質問はこれで打ち切りにいたします。
  20. 長谷川四郎

  21. 永井勝次郎

    永井委員 中小企業金融関係について最初に長官に伺いたいのです。昨年中におけつる在庫調整という政府経済政策の結果として、中小企業にどのような影響があるか。三十四年度中小企業対策というものは、どのように中小企業がその影響を受けた実態の上に立って、出発しようとしておるのであるか。その対策の起点と、それから三十三年度在庫調整によるしわ寄せの実態というものを、どういうふうに把握されておるか、この二つの点についてお伺いいたします。
  22. 岩武照彦

    岩武政府委員 金融引き締めにおきまする在庫調整の問題の御質問かと思いますが、各企業、各業界引き締めの結果、まっ先に手をつけましたのは、大企業では設備投資調整でありますが、中小企業ではむしろ在庫調整つまり運転資金の方からしわが寄って参ったというふうに見られております。その結果各業界ではそれぞれ自分の業態に応じまするような生産調節あるいは出荷制限というふうな措置を講じまして、なお業界によりましては共同の機関にその在庫を一時たな上げするとかいうふうな措置もとられました。それに対しましてわれわれの方としましては、一般の金融がつけにくいものでありますから、政府関係金融機関、特に商工中金等から所要の運転資金——やや中期の運転資金でありますが、貸し出しまして、臨時応急の場に備えたのでありますが、その金額もかなりの額に上っております。これは一応商工中金の規定の許す範囲内の措置でございますが、今後この在庫調整措置が峠を越して、むしろ一般的に金融のゆるみが出て参り、また需要並びに生産活動がやや上向くように見られております。業界によっていろいろ事情は違うかもしれませんが、一般的にはそういうふうにいえるのではないだろうかと思っております。従ってそういう在庫調整の機能も、やや逼迫性が薄らぐということだろうと思っております。ただ御案内のように輸出関係中小企業の製品におきましては、アメリカ市場その他の輸出市場の変動に対処いたしまして、ある程度調整措置が必要であります。先刻御審議願いました軽機械の輸出振興法も、そういうことをねらった法案かと思っております。それに対しましてやはり中小企業関係金融機関も、そういう措置を裏づけるために十分な金融をつけていくべきだろうかと思っております。それで何と申しますか、三十四年度のそういう関係政策といたしましては新しい問題として今後こういう問題がかなり広がってくるかと思っております。  もう一つは、これはすでに御案内かと思いますが、最近中小企業設備投資意欲かなり高まっております。これは実はもう去年の夏ごろからかなりありまして、結局大企業は景気が悪ければまず設備投資を押えるということでありますが、中小企業設備投資の方は、むしろ不況になって生産活動がやや手がすきますと、この際設備を改善し、新しい技術を入れておかないと、同業者の競争に負けるとか、いい注文がとれないとかいうことで、昨年の夏ごろから、かなり設備投資の動きが活発化しておりまして、そのあおりが政府関係金融機関の窓口にかなり現われております。最近では、統計を見ますると、けさの新聞にも日銀が報告を出しておりますが、全国銀行の統計あたりでも、中小企業に対する貸し出しの比率が、昨年の十一月ごろからやや高まってきつつあります。もちろんそれは増減の比率でありまして絶対額ではありません。あるいは総体のウエートはそう高まっておりませんけれども中小企業方面におきましてかなり設備資金の需要が高く、政府関係金融機関に次いで市中銀行までその影響が出ておるということでございます。こういうような傾向はわれわれとしましてはおくれた中小企業の設備、老朽化した機械装置等を改善いたしますことはけっこうなことだと思っておりまして、実は一般会計の予算におきましては、例の設備近代化の補助金も明年度かなりふやしまして、業界要望にこたえて参ろうと考えておりますが、三十四年度はおそらく中小企業としましては体質改善のうち、特に設備の面の更新に対して、かなりの努力が払われて参るだろうと思っております。われわれもそういう傾向は望ましいものと考えまして支持して参りたい、こう考えております。
  23. 永井勝次郎

    永井委員 不況の場合に中小企業関係だけは設備投資の動きが活発になってきた。三十四年度はさらに相当活発になっている、こういうことです。そうしますと、長官考えは三十三年の期間を通して、中小企業業界政府政策にうたってありますように大体安定した、その安定した基盤の上に体質改善へ向って積極的に発足するのだ、こういうような一つの基本政策の中で中小企業設備投資が活発になっていく、こういうお考えであると了解してよろしいのですか、その点はっきりと伺いたい。
  24. 岩武照彦

    岩武政府委員 お言葉でありますが、安定という立場ではないだろうと思っております。むしろ各業種の内部における中小企業相互間の競争は、おそらく不況期にも増して激しくなりはしないか、あるいは設備近代化の競争、あるいは販売努力、新製品売り出しの努力等が、むしろ従来よりもきつくなりはせぬか、ことに近代化いたしますればお互い生産力が高まって参りますから、それだけの製品をさばきますためにやはりかなりの競争が行われるだろう。従って決して安定しておるとは思いません。安定しないで、むしろお互いの激烈な競争と経営改善の意欲のうちに中小企業は総体としてレベル・アップされるのではないか、極端な表現を使いますれば、そういう方向ではないかと思っております。決して安定するということではない。それはもちろん中小企業だけでは安定できません。片一方には大企業側の生産力の向上、あるいは熾烈な競争もございます。また海外市場は決して安定いたしません。むしろ私は不安定の要素は相当まだ残るだろう、不安定のうちに競争を通じてかなり体質改善の方向へ努力が行われるだろうと思う。従ってわれわれの方としましても、不安定なものを何とかして部分的でも安定さすために各種の組合法等の運営に当りたい、こう考えております。
  25. 永井勝次郎

    永井委員 そういたしますと、経済的な現象として現われたものは体質改善設備投資の活発化だ、この設備投資の活発化は業界の安定の基盤に立ってではなくて、不安定だからこそこういう刺激がここに起ってきたのだ、こういうふうに長官は理解しておると了解してよろしゅうございますか。不安定だから設備投資が活発になった、不安定な中で生き抜こうとする意欲が設備投資になってきたのだ、こういうふうに理解するのですか、そこのところを少しはっきりとしていただきたい。
  26. 岩武照彦

    岩武政府委員 安定、不安定というのは、なかなか概念的にはむずかしいものでございますが、やはり経済界としましては、どちらかといえば総体的安定というのかもしれませんが、しかし決してこれは固定した安定、あるいは絶対的安定ではないと思っております。これは現在の経済態勢の基本であります。ことに中小企業だけで安定するということはとうていできないことであります。ほかの要素が多いわけでありますから、やはりほっとしたかもしれませんが、決してこれは安定して、今からぼちぼち仕事をやろうという見通しではなくて、将来の激烈な競争を考えて自分たちも設備を新しくし、あるいは経営を改善してやっていこうという競争を通ずる、競争による不安定というふうに了解します。
  27. 永井勝次郎

    永井委員 そうすると競争を通ずる安定をはかるということならば、安定を促進するためには競争をもっと激化する、もっと活発な自由な状態で自由主義経済の原則に基く競争をやった方が安定が促進される、こういうふうに理解していいと思うのですが、それではそういう考え方と、軽機械関係の立法、あるいは輸出入取引法とか、いろいろなものを通じてカルテル化をはかっていく、競争をなくしていこうという方向、そしてこっちの方では体質改善のためには、自由競争でそれが刺激になって改善されるということとずいぶん矛盾してくるのではないですか、分裂症状にあるのではないか、中小企業庁はどっから手をつけていいかわからないということで分裂症状になっているのではないかと思うのですが、その点はどうなんですか。
  28. 岩武照彦

    岩武政府委員 競争を通ずる安定ということではありませんで、競争の結果不安定、あるいは不安定だから競争が起る、両方の関係があるかと思います。しかしこの競争が度をこせば全体の機構をこわしますから、ある程度の競争を総体的に制限する措置を講じなければならぬというふうに考えております。これは御承知のように中小企業団体法の考え方であり、また最近できまするいろいろな輸出統制措置考え方であるというふうに考えております。だからある程度の競争はむしろ望ましいわけでございますが、しかし競争をどこまでも追求して安定が得られるというわけではございません。そこらあたりはやはり総体的な安定を求めて競争を制限するということが、実際のところだと思います。
  29. 永井勝次郎

    永井委員 もう少し時間をかけてこの点は質疑をいたしたいと思います。  商工中金参考人の方にお伺いいたしたいのでありますが、三十三年度政府経済政策の裏づけとしての商工中金金融を通してどのような特徴、どのような欠点、三十四年度はその実績に対してどうあるべきかというようなことが導き出されたか、その三つの点について商工中金の立場からお話を願いたいと思います。
  30. 加藤八郎

    加藤参考人 ただいまの永井先生の御質問は非常に大きな問題でございますが、三十三年度政府の方針に従ってわれわれがやりました概要というような点を申しますと、いろいろ不況時に対する政府の施策が行われましたのに対しまして、商工中金といたしましては、できる限り国の方針を体して、その方向に向って金融をはかるという努力をいたして参ったのでございます。その一例を申しますと、その不況に対してただいま長官からもお話がございましたように、生産の調整であるとか、あるいは一手買い取りをして調整していくというようなことが行われておったのでございますが、そういうものに対する三十三年の十二月末の数字で申してみますと、綿スフ、絹人絹あるいは輸出双眼鏡といったようないろいろな面において調整がございましたが、そういうものに対する調整資金の貸し出しといたしましては、商工中金の貸し出し並びに公庫の代理貸し出しまでも含めまして、大体二十三億ほどの貸し出しをしておるのでございます。なお今後もこういう問題が続いてくるようでございます。それから三十四年度の見通しといたしましての問題でございますが、これはこれからの問題でございまして、また具体的にははっきり考えられませんけれども、たとえて申しますると、織機の買い上げの問題なんかが起りますと、それらのものの金融ということも出て参ると思いますし、また一般の金融調整に対する金利の負担を軽減するという政府の御方針でございまして、今回幸いに政府の出資も増額していただくというようなことに相なりまするので、そういう点から極力自己努力も加えまして金利も引き下げていきたい、かように考えておるのでございます。はなはだ雑駁でございますが、大体そんなところでございます。
  31. 永井勝次郎

    永井委員 率直に言いまして、お聞きしたいのは商工中金の三十三年の金融活動というものは政府のしりぬぐいに鞅掌されたのか、それとも政府経済政策への積極的な協力として、その裏づけとして活動したのか、その点の振り合いをお聞きしたいと思うんです。すなわち中小企業へのしわ寄せという形がぐっと来た、そのしわ寄せが政府が期待したよりももっと大きく来た、そして三十三年度における金融ワクというものは、それに比例したワクがそうふえておらない、そういうようなところでそういった政府中小企業対策の失政のしわ寄せが制度金融の方の関係に来て、そのしりぬぐいに鞅掌されて、ほんとうのいろいろな積極面は出せなかったのじゃないかとわれわれは判断するのですが、その関係をはっきりとお伺いしたい。
  32. 加藤八郎

    加藤参考人 御質問趣旨はよくわかりますけれども、われわれのやっております仕事の内容が、しりぬぐいをしたのか、あるいは積極的な協力だとかいうような、融資個々の面について、その場合々々の色分けがあるわけじゃございませんし、もちろんわれわれといたしましては、政府の御方針に従って積極面についての協力をさせていただいたつもりでやっておるのであります。また昨年末も二十億の商工債券の増額を引き受けていただきさまして、そういう資金をもって年末金融に積極的に協力をするというふうに、大体そんなつもりでやったのでございます。
  33. 永井勝次郎

    永井委員 昨年の金融債の消化は、どんな成績でしょうか。
  34. 加藤八郎

    加藤参考人 政府からお引き受けいただきましたのは当初三十億でございまして、大体それが年末までに出してしまうような見込みでございましたので、それに二十億を追加いただきまして、大体五十億というものを政府の方にお願いいたしたのでございます。それから民間の債券といたしましては、利付割引を合計いたしまして大体六十数億の純増をいたしまして、そういうものをもちまして貸し出しをいたしたのでございます。
  35. 永井勝次郎

    永井委員 長官に伺いますが、中小企業のいろいろな対策というもの、これは予算面でいろいろな対策が打ち出されるというときには、その裏づけとしての金融というものが大きく推進力となるのは言うまでもないことであります。そうしますと行政面で一つ政策を出す、金融面でそれの裏づけをしていくというような表裏一体的な関係で動きませんと、これはちりぢりばらばらじゃ効果が上らない。そこで一般の市中銀行その他の金融機関にかけ声をかけて、指令をしてもなかなか思う通りにはいかないでありましょうが、傘下の直接の金融機関はある程度連絡は十分だと思う。そこで政策の面と、これを裏づけていく金融面と実際の経済運営の面において、どのようにミックスしておるか、そしてどのような形で実際はやっておられるか、この点を一つ伺いたい。
  36. 岩武照彦

    岩武政府委員 これはむしろ実例をあげて御説明した方がいいと思いまするが、一番いい例は、たとえば双眼鏡の輸出振興会社ができまして、これが業務を開始いたしまして、工業組合のメンバーの製品を買い取って輸出します、そういうときの買い取り資金なんか、これはもう運転資金でございますが、商中なり普通の市中銀行の担当するところでございますが、なかなかその市中銀行では担保その他の点でやってもらえない。そこで商中の方と具体的にやり方を相談しまして、いろいろ手続考えて実施いたしまして、幸いにしまして金融の方は一応円滑に参っております。そういうふうに、これは一例にすぎませんけれども、ほかの場合でも、ある政策を具体的のものに実施します場合に、それに合いまするように政府関係金融機関融資を、フォローしていかせようとするということは、たびたび行なっております。そういうことで、われわれも中小企業関係金融は、御指摘のように一般の市中まかせ、あるいは信用補完制度だけではなかなか参りません。そういうふうにケース・バイ・ケースできめのこまかい手を打って参りたい、かように思います。
  37. 永井勝次郎

    永井委員 ずいぶんきめこまやかに計画を立てておるようでございますが、口ではきめこまかにいろいろやっているということは言えますが、実際面としてどうか。私ずっと見ていますのに、たとえば商工中金ばかりでなく、中小企業金融公庫にしても、国民金融公庫にしても、さあどこに災害が起った、そうすると当然その災害は平常な形の中でできたものではありませんから、それだけは特別にいろいろ措置しなければならない面に、そういう災害対策というものは特別に立てないで、緊急災害対策と称して災害金融というものを中小企業金融公庫に持ち込む、商工中金に持ち込む、そうして政府政策のしりぬぐいをそっちの方へ持ち込む。あちらの方の炭鉱が不況になった、そうするとそっちの方の関係金融を、またこの中小企業の方のいろいろな機関に持ち込んでくる。そうして正常な金融機関の活動というものが、最初の計画通り、また中小企業庁の計画の裏づけとしての金融活動という形ではいかない、常に不安定な、そういうしりぬぐい、いろいろな偶発的なもの、突発的なものをどんどん持ち込まれて混乱させられていく、こういうのが実態ではないかと思うのですが、それを一つ長官の目から率直に、行政官庁と中小企業庁は独立しているのですから、独立した立場で、はっきり発言してもらいたい。
  38. 岩武照彦

    岩武政府委員 しりぬぐいというおしかりでございますが、これはそのときの場合々々の問題もありまして、過般の狩野川台風でありますか、あのときは、これはむしろ中小企業の分野は財政負担といいますよりも、金融でいくのが一番時宜に適した方法ではないかと考えます。これは一般の公共土木事業とは違いまするから、企業者の復旧金融——ただこの際一般の条件ではむずかしいわけでありますから、これは特別な条件をそろえまして、それぞれ政府関係金融機関をして行わしておる、しりぬぐいというふうにごらん願うのも一つの見方かもしれませんが、われわれはこれはむしろしりぬぐいではなくて、金融機関の本来やるべきことでやったのだ、こう考えております。  炭鉱の問題につきましても若干考えておることがございます。中小炭鉱に対しまして特別の措置考えようということで、目下折衝しているところもございます。ただこれは事柄がちょっと災害とは違いまするので、なかなか制度的なものとして一括して扱うというのには、ちょっと事柄が適当でないケースでございますので、これはあるルールをきめて処置させたいと考えております。しかし私は全然政府関係金融機関にしりが寄らなかったとは申し上げません。それは一般の金融のしりが詰まりますれば、それだけ政府関係金融機関の窓口に中小企業融資申し込みが殺到するということは事実でございます。またそれに応じて政府関係金融機関が適宜融資を行なったということも、これまた事実で、またそうあるべきことだと思いますので、その面ではやはりしりが寄ったというふうにごらん願うところもあるかと思います。しかしまたこういう在庫調整期におきまして、ひとり双眼鏡だけでなくて、いろんな産業部門におきましてわれわれの方で各種の措置考え、それにこの中小企業関係金融機関を追随せしめておるということも事実でございまして、物事にはやはり積極的に政府一体政策の中に入ってきたという問題と、あるいははね返りを受けてしわが寄ってきたという問題と、両方あるかと思っております。
  39. 加藤八郎

    加藤参考人 ただいま長官からいろいろお話がございましたのと、われわれも同じように考えておるわけでございますが、われわれが商工組合であるとかあるいは協同組合から申し込みがございまして金融いたすわけでございまして、中小企業者が買い取りをしなければならぬとか、あるいは積算を調整しなければならぬという御実情を訴えられて、それをよくわれわれも承わりまして、必要な資金を御融通するということでございまするから、どこまでもわれわれは中小企業界の必要性に応じた資金を出すというだけでございまして、ただそれをしいてそういう必要になってきた原因を探究していろいろ申しますと、そこにはいろいろの原因があると思います。輸出のものでございますると、輸出先の市況のいろいろの状況とか、あるいは大きな財政政策なりあるいは金融政策なりの影響によってどうこうというようなことから、そういう資金の需要を必要とするというようなことになってくるものもあるかと思いまするけれども、私たちが窓口でお取引先にお話いたしましてお取引を願うときには、要するにその中小企業者が困っておって、こういう資金が要るという実情によって御融通申し上げておるわけでございまするので、結局長官のお話しになったようなことになるのじゃないかと私も考えます。
  40. 永井勝次郎

    永井委員 長官に伺いますが、この不安定の中に体質改善を行なっていく、こう言う。では体質改善のねらいは何かということなんです。不安定な条件、そして設備投資をやればさらに増産されるにきまっているのですが、現状でも生産過剰で相当過度の競争になっておる。それをさらに設備投資をして改善し、競争をさらに激化していく、こういう循環作用が起ってくると思いますが、そういう一つの条件の中で体質改善をやる。ただ体質改善といったって、内容はずいぶん質的に違うと思うのですが、政府が今行おうとしている体質改善というのは質的にどういうもので、どういうところをねらうのか、それをお伺いいたします。
  41. 岩武照彦

    岩武政府委員 一日に体質改善と申しましてもいろいろございますから、御質問があるわけだと思いますが、第一点はやはり経営の近代化といいますか、合理化だろうと思います。ことに経営管理面におきます各種の合理化措置だと思います。御承知のように中小企業ではそういう経営の組織自体も近代化され、分化されておりませんので、こういう近代的な経営のあり方に即して、中小は中小なりに組織を固める必要があると思っております。ことに個人経常的な色彩の強い企業がございますが、やはりこれはそういう一人の人で動いている企業ということでは工合が悪いわけでございますから、そういう経営の組織と、それから具体的なやり方としましては、やはり各種の財務管理、労務管理、生産管理あるいは事務の管理といったものを、もう少し近代化する必要があると思っております。それについてはわれわれの方でやっております企業診断の仕事が手始めであります。最近企業診断の申し込みが非常に多くなっております。これはやはり中小企業が何とかして経営を近代化したいという一つの努力の現われだろうと思っております。われわれのやっておりますいわば公けの企業診断だけでは不十分でございますから、他方各種のコンサルタントもいろいろ活動しておるようでおります。またわれわれもできますれば、こういうふうな中小企業の診断を行う人の資格あるいは業務等をはっきりさせたいと思って、若干の案も考えておる次第でございます。その次は先ほど来申し上げました設備ないし技術面の近代化でございます。これは特別な御説明の要はないかと思っております。以上、要しまするに、いわゆる体質改善のねらいとしますところは、やはり経営全体を合理化し、大企業との較差を少くし、国際競争に耐えるような企業にするということだろうと思っております。  そこで、その結果増産になるじゃないかという御質問でございますが、これはいろいろあると思います。生産能率が上って増産になるものがございましょうし、あるいは設備がふえて増産になるものがございましょうが、設備の面は、これは単純なる増設であってはならないと思っておりまして、われわれの考えております設備近代化等の補助金制度におきましては、やはり旧設備はこれを廃棄あるいは格納するというふうな手を講じたいと思っております。しかしながら全体としてはやはり能率向上上その他の結果、生産能力としては上り、コストとしては下るということが事柄の結果だろうと思っております。  そこで、ではマーケットのない場合どうするのだという御質問でございますが、マーケットの問題はいろいろ国の内外にわたりまして、また商品ごとに非常に複雑な問題でございます。実はマーケット・リサーチそのものが経営管理の一つのあり方でございまして、もちろん各企業ともマーケット・リサーチには今後力を入れて、中小企業中小企業なりに、自分一個であるいは共同で新市場の開拓、新製品の普及あるいは新しい宣伝、販売の方法に努めることは当然でございますが、全体として今オーバー・プロダクションになるような場合にはどうなるのかっというお話、これは現在あります各種の調整措置を使わざるを得ないだろうと思います。これは国内市場も同様でございますし、また輸出市場も同様だと思います。その結果はむしろ合理化前に比べましてコストも下っておるはずでございますから、いわば生産なり出荷の量を減らしても手取りは減らないようにする、あるいは労働者の賃金その他には影響ないようにするということはできるはずだし、またすべきだと思っております。
  42. 永井勝次郎

    永井委員 長官説明は非常に抽象的だし、それからまた方法論なんです。いろいろなことを診断してどうするとかという、そういう方法論を聞いておるのではなくして、質的に体質改善というものはどうするのか、それは何なのかということを聞いたのです。私は体質改善は二つよりないと思うのです。資本蓄積に重点を置くのか、国民生活の安定向上に重点を置くのか、その置き方によって体質改善のやり方というもの、方法、技術というものは違っていくと思うのです。重点をこの資本蓄積に置くのか、国民生活安定向上に置くのかということ、これがやり方の分岐点だと思うのですが、政府政策の中には、これからの設備近代化あるいは設備投資については、借入金をうんと少くして、自己資金でそういうことをやるように、こういうことをいっておる。従来のようにわずかな自己資金で、あとの大部分を借入金でやるといういき方でないということになれば、これはもう体質改善というものは、資本蓄積に重点が置かれていく、こういうねらいというものは、ちゃんとはっきりしていると思うのです。そうして資本蓄積に重点を置くという一つの体質改善の方策がとられるとするならば、今後の体質改善のねらうところも、またそのやり方も、これはもう大量生産あるいは大企業重点というような形にどんどんいって、そうして独占化が強化されていくという方向をたどっていきますことは、これは議論の余地のないところであります。そういう一つの体質改善をねううといたしますならば、お前のところには自己資金はどれだげあるのか、十要るならばお前は七まで自己資金でこい、三割はこちらの方で融資してやるのだということで、融資金融機関でずっとしぼって参りますならば、中小企業やなんかでこれから資本蓄積をやって、そうして設備投資をやるというようなことかう出発するのじゃ、とても間に合わない。そういうような一つのいき方で考えて参りますならば、三十四年度から出発します体質改善という中には、ばくと体質改善ということを打ち出しておりますけれども、内容を質的に吟味していきますと、相当中小企業に対してはきびしいものがあると思うのです。これに対して、自己資金でこれからの設備投資はやらせるのだという政府政策、それから体質改善というもの、それから中小企業におけるそれに対応するところの対策、それに対する裏づげの金融、こういう一貫した政策について、長官はどのようにお考えですか。
  43. 岩武照彦

    岩武政府委員 永井委員のお話にありまする体質改善の目標が、資本蓄積あるいは国民生活の安定向上ということは、これは私国民経済全般の部面としては、あるいはそうかとも思います。また大企業にはそれがいわばぴったりあてはまることもあります。ところが中小企業は実はその一歩手前にあり、資本蓄積とかあるいは国民生活の安定ということをいう前に、自分が一人前の企業になるということがまずその前の問題で、その上で大きいことがいえるわけであります。御承知のように中小企業では、実は自己資本の蓄積どころか、金融機関から金を借りられないというふうな企業かなりあるわけですし、過般の工業の基本調査の結果、一部の県の統計を見ておりますと、金融機関から金を借りてないというのが実に三分の一くらいございます。これはつまり金を借りられないような企業になっておるということであります。われわれとしてはむしろ、せめて金融機関が相手にして、金でも借りられるような企業にするというのが先決問題で、できるだけ金を借りないで自己資本を蓄積するというふうに指導するのは、その次でございます。まだまだ中小企業の段階は、御指摘よりも一歩手前の段階でございます。従って、私ども中小企業庁としましては、世上伝えられておるような体質改善は、これはやや大企業向けの体質改善論で、もう少し中小企業向けの体質改善論が必要であると思っております。それは先ほど私が申し上げたところでございますが、要するに今の大企業も、これは企業だけから見れば、かなり非難さるべき余地は多い、いわば前近代的な要素が残っておると思いますが、中小企業はまだもっとその前にある。せめてあの大企業程度まで、世の中が相手にしてくれるところまで持っていかなければ話にならぬのであります。そこで、もちろん資本蓄積は必要でございましょうが、その前に、もち少し自分の企業のあり方を改善して、せめて金融機関も相手にしてくれるというところまで持っていきたいと思っております。もっともこれは中小企業でも企業によりましては、資本蓄積が場合によっては可能な企業もあると思います。ことにかなり中規模の企業で優秀な技術を持っておるところは、これは資本蓄積も可能でございましょうから。そういう企業に対しましては一般の大企業と同じように、あまり金を借りないで自己資本を蓄積しようという指導も必要かと思っております。また雇用しております労働者等に対しましても、もう少し待遇改善その他の点でなすべきものもあるだろうと思います。それからもう一つは、そういうことにいたしますれば、いろいろと各種の金融並びに税制等におきましても、中小企業でも資本蓄積ができるような制度にしてもらうことも必要だと思っております。
  44. 永井勝次郎

    永井委員 私は長官の個人的な見解を聞いておるのではなくて、あなた方は政府政策の中で行政をやるのであって、政府は資本蓄積に自己資金を重点にして今後はやるのだ、そうして体質改善をするのだ、こういうことを言っておる。これは体質改善というものの吟味が十分できていないものですから、またぼやっとしておるわけですが、体質改善とはどういうことかということを吟味していけば、私がさっき言ったように、資本蓄積か国民生活の安定向上か、この二つの道よりない。大きく質的に分ければその道よりない。このどっちの道をとるか、国民生活の安定に資するならば、長官の言うように賃金をもっと上げなければいけない。国内の市場を開拓していく、そういうものとあわせて、いろいろな設備投資なり何なりの性格というものが、そういう方向で進んでいくだろうと思う。資本蓄積ということになれば、これはもうどうしたって賃金をたたく、原材料で、国際競争に勝つようにこれを安く入手するなんという状況はないのですから。そうすると地産コストの伸び縮みは、賃金のととろにあるわけでありますから、社内資本蓄積のためには、もっと低賃金もっと低賃金、こういうふうなやり方で賃金のところにぐっとやってくるのは当然だ。そうして、長官は、何か大企業中小企業と別な世界で動いておるように言っておりますが、大企業がそういう一つの経営方針をとっていきますならば、また政府もそれを政策として打ち出していきますならば、これはもう下請の関係にやってくる、あるいは系列の関係にやってくる、中小企業がそういうものの関係にぐっと押えられてしまって低賃金、そうして社内蓄積なんかできっこないですから、ますます系列化が促進されるという形になってくるでありましょうし、三十三年の不況の中を通り抜けて——通り抜けてはいないのですが、三十四年度に差しかかってきた。ヘビの山を越えてきたと思ったら、さらに三十四年度は今度はワニがまた大きな口をあけて待っているというように、もう中小企業というものは常にどういう形でか、えじきになるような状況にある。そういう環境にちゃんと政府が用意しておられる。そうして目先々々を変えながら、去年は在庫調整という名によって中小企業にしわ寄せをしてきた。ことしは体質改善という名において中小企業の首をひねる、こういうやり方をしておる。でありますから、そういうやり方の中でもっと別な——中小企業が資本蓄積は大企業のことでおれのことでないなんて、そういうようなものの考え方はおかしいと思うのです。そうしてそういう一つの一貫した経済政策の中で、中小企業庁が中小企業のほんとうの味方として考え、あるいは商工中金なり何なりやるというその裏づけとして動いていくというなう、もっと行政と金融機関とが密接な関係で、表裏一体関係が確立されていかなければいけない。ところが今まではその表裏一体関係ができていない。そうして行政は行政でやっていく、金融機関はコマーシャル・ベースでやっていく、そういうようなばらばらな形でやっていって、結局は大きな国の政策の流れの中で口先でごまかしごまかし、中小企業をだんだんとっちめていく、命を縮めていく、慢性的な症状の中で自殺させていく、こういう政策がとられているわけです。でありますから、その点については中小企業庁長官はもっとはっきりとした線で戦っていくべきだし、商工中金その他はもう少し制度金融という名にふさわしいような金融措置というものが講じられなければいけない。コマーシャル・ベース一本でいくならば、何も制度金融なんか機関をやたらにたくさん置く必要はないと思う。中小企業の立場で三十四年度のけわしい経済政策の山坂を乗り越えていく一つの展望としての心がまえを、長官商工中金の方から、簡単でいいですからお伺いしたいと思います。
  45. 岩武照彦

    岩武政府委員 お話がありましたような資本蓄積と国民生活の安定とが、調和点がないものかどうかという点は大いに議論のあるところだと思っておりますが、中小企業庁としましては、大企業並みの体質改善には中小企業を指導しない方がよいと考えております。これは先ほど申し上げた通りでありまして、そういう論に同調いたしますと、中小企業自身が体質改善のチャンスを失うことになるかと思っております。しかしながら御指摘のように、大企業の資本蓄積の結果が中小企業の方の合理化をはばむという面がなきにしもあらずでありますから、その点は作戦的には中小企業は別のもので、中小企業並みの体質改善をはかる、それには大企業側もいろいろな点も反省ないし自省してもらいたいところがあるというふうに申し上げている次第であります。  なお三十四年度政府関係金融機関と一般の中小企業対策との連携緊密化の問題につきましては、従来以上に緊密な指導連携のもとにやりたいと考えております。
  46. 加藤八郎

    加藤参考人 簡単に申し上げますが、商工中金はどこまでも組合の中央機関として奉仕すべき責任なり義務を持っておりますので、中小企業のためになるように従来ともやっておりましたが、今後とも一そう先生のお話のような点もよく考えまして、間違いのないようにやっていきたいと思っております。
  47. 永井勝次郎

    永井委員 商工中金は割合に組合金融においてはサービスよくやっておるようでありますが、ただ中小企業金融公庫が組合金融というものと、個人貸しというものとこの相反した性格のものを一つの窓口でやっていることはいろいろな点で矛盾がくるのではないか、矛盾を感じながら仕事をやっているのではないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  48. 加藤八郎

    加藤参考人 お答え申し上げます。この前代理貸し制度の際に、員外の者にも貸せるというふうに申し上げてございましたが、そういう場合に組合の員外の者に貸し出しをやるために、組合金融はおろそかにならぬだろうかという御注意もございましたので、いろいろわれわれとしては公庫の代理貸しをさせていただいておりますけれども、主力はどこまでも組合員並びに組合の構成員というものを中心にやっているのでございまして、員外の貸し出しというものはまだやっておりません。決してそのために組合金融を阻害するというようなことはないつもりでございます。
  49. 長谷川四郎

    長谷川委員長 田中武夫君。
  50. 田中武夫

    ○田中(武)委員 私は航空機工業振興法の一部を改正する法律案につきまして、少しお伺いをいたしたいと思います。  まず最初に、質問に入る前に私の感じを申し上げたいのですが、どうも最近政府は、ことに通産省も含めてですが、国会があるんだから、役に立っても立たなくてもどうでもよいような法案をよけいお出しになる、国会議員を遊ばしておくのももったいないというようなお考えをお持ちじゃないかと思うのです。私はこの法案について申し上げているのではないのですが、そういう感じを受ける法案がたくさん出てくる、たとえばこの法案にしましても、成立してからまだ一年もたっていない法案なんです。二十八国会で解散まぎわに成立いたしました法案です。それを今日またこうして改正法を出してくる、それなら最初からちゃんと一年や半年で改正をしなくてもいいように整備をしてお出しになればいいのに、通ってから半年もたたないうちにまた改正案が出てくる。今日この商工委員会にも三十件にあまる法案がかかっておりますが、そのほとんどは一部改正、こういうようなものが多いわけなのです。どうもお出しになる場合に、最初からいろいろなものを入れておくと通りにくい、しかし一応通しておいてから改正という格好をとるならば、比較的法案通りやすい、そういうようなお考えでこういう手段をおとりになるのではないか、このように考えられるわけなのです。この法案につきましても、先ほど申し上げましたように二十八国会で成立いたしまして、半年あまりたった今日、その改正案が出てきまして、その内容は前に通った法律に基いて特殊会社を作った、こういうことなのです。そこでお伺いいたしたいのですが、いわゆる最初の法案をお作りになった当時、この航空機工業振興法実施に当りまして、それを担当していく機構は、最初から特殊会社ということをお考えになっておったのかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  51. 小出榮一

    ○小出政府委員 航空機工業振興法の一部改正を今回御提案申し上げたのでございますが、ただいま田中先生御指摘通り航空機工業振興法が先般成立いたしましてから、施行後もちろんまだ日は浅いわけでございますが、この法律のねらいは御承知のようにわが国における航空機工業の国産化を促進するということが終局の目的でございます。それに対しますいろいろの政府の助成措置等に関連する法案を一応整備して、御審議を願ったわけでございます。その当時におきまして、国会の審議等を通じて明白になったかと思うのでありますが、その国産化のための基本といたしましては、やはり航空機工業の国産化ということは一朝一夕にはできない、順序を追いまして、まず設計の段階から試作の段階、試験の段階を経て初めて本格的な国産化ができる、それは申すまでもないことでございますが、世界各国の例を見ましても一朝一夕にはできない、相当な年月を要するわけでございます。  そこでまずその第一歩といたしまして、航空機工業振興法に基きまして設計の段階から着手をいたしました。御承知の通り現在財団法人輸送機設計研究協会というものが関係各会社の協力を得て着々その成果を上げて参ったのでございます。従いまして、いよいよ設計の段階から試作、試験の段階に入るという態勢が整いましたについて、それらの態勢を整備するための方法一つといたしましてここに新しく特殊会社を設立する、こういうことを考えたわけでございます。最初この航空機工業振興法を立案いたしました際におきましては、——私当時の速記録を拝見いたしましても、やはり将来に対する構想といたしまして、場合によってはそういう会社というものも考え得るということの答弁が当時の政府当局からあったように記憶いたしております。ただ、それではなぜ最初からこの法案の中にそれを置かなかったかという点になりますと、御承知の通り特殊会社、これは民間だけでやれないという意味におきまして政府出資を必要とする、これには予算措置その他の裏づけができませんと、この会社は成立いたしませんので、それらの態勢が整い、また一方設計の段階も相当整備されましたこの時期におきまして、今回一方において予算も計上いたしまして法律改正を合せてやる、こういう趣旨でございまして、航空機工業の国産化の成果を最終的にまとめますためにはこういう改正が必要であり、またその時期としては今日が最も適当である、こういうふうに考えた次第でございます。
  52. 田中武夫

    ○田中(武)委員 物を作る場合、これは航空機によらず何によらず、まず設計をし、それから試作をし試験をするということは順序であります。従いまして今局長がおっしゃったようにまず設計をして、設計ができたから試作の段階に入った、そこでこういうことが必要である、こういうことは私答弁として当らないと思う。少くとも物を作るためには設計をし、試作をし試験をすることはわかり切った工程である。従ってこれは最初から考えられるべき道だと思うのです。最初から特殊会社という構想は持っておられたがそれをあえて出さなかった、いわゆる最初の法案に入れなかった原因は、第二の点である予算措置、これが大きなファクターを占めておるのではなかろうか、このように私は思うわけです。ちょうど現長谷川委員長が通産次官をしておったときに出ました法律、合成ゴム何とか法というのがありました。どうも要領のわからぬ法律でありましたが、あれも出てきましてよく調べておると、これも予算関係で最初から出資である金を、一応政府が債務負担かなにかのような格好で出して、今度出資にするというような手をとったと思うのです。どうも大蔵省との予算折衝、言いかえるならば大蔵省の主計官の考え方によって国会の審議を冒涜しておると思う。最初からわかっておるのをただちょっとした予算の問題、それも通産省と大蔵省の折衝、いわば一主計官の考え方によって、最初からできておるうちの八割程度法律を出しておいて、あとの二割は改正法で出すということをやられたら、せっかく歳費を出して四百六十七名もの衆議院議員を置いておくのだから、ときどき使わねば損だということで法律を出されておるように思うのですが、これは局長に申し上げても直ちに解決する問題でもありまんから、それはそういう点でおきますが、この前の局長の主管であった、最近われわれが参議院に送りました双眼鏡あるいはミシンに対する軽機械などの振興法でも、それほど必要かということを、私も何回も申し上げたかと思うのでありますが、今後はそういう点に考えをいたしていただきまして、法律を作るときには最初から十分審議して十分なものを作る。そうして二日や三日で改正するというような論議が起らないようにしてもらいたい、このように思うわけであります。  そこでお伺いいたしたいのですが、この法案を最初審議したときに、この航空機工業振興法、これはあくまでも平和的な産業の振興であり、中型のジェット輸送機を作るために作った法律だと記憶しておる。その際にこれが軍用機に転換せられない、こういうことにわれわれは繰り返し質問をし、繰り返し答弁があったはずです。ところがこれは——私は職制の課の名前について申し上げるわけではないのですが、これの主管課が航空機武器課ということになっておる。この間も課長と笑ったんですが、航空機と武器課の間に点が入るのか入らないのか、どうも航空機武器課というと、航空機工業振興法が最初は平和産業振興であり、輸送用の中型ジェット機を作る、いつの間にかこれが軍用機になる素養を作っていくのではなかろうかというような心配を持つわけなんです。たとえばこの輸送機で自衛隊を運んだ場合は、これは軍用機になるのかならないのか、お伺いいたします。
  53. 小出榮一

    ○小出政府委員 航空機工業振興法を最初に御審議いただきましたときに、将来国産化によって生産されました国産の航空機というものが純然たる民間用のみにとどまるのか、あるいは将来これがむしろ軍需生産の方面にいくのではないかという点が、相当論議になったことは私も承知いたしております。  そこで今回の国産化のための会社を設立いたしまして国産をいたします際におきましても、もちろんこれは売れないものを作るわけには行かぬわけでございます。将来における需要というものはもちろん想定いたしまして、これに対する事業計画を立てるわけでございますが、その需要想定におきましては、当然民間の航空輸送及びさらに進んでは輸出という面を想定いたしまして計算をいたしておるわけであります。ただこの法律上の解釈から申しますれば、これは中型の輸送機であるというにとどまるわけでありますので、これを防衛庁が買い取って、防衛庁として使用するということは法律上の解釈としては可能でございます。従いましてかりにこれを防衛庁がこれと全く同じ飛行機を買い取って、そのまま軍用に使えるかどうかは存じませんけれども、多少の設計の変更をして自衛隊輸送をするということになりますれば、これは防衛庁用の使用機、こういうことになるわけでございます。  それから今、課の名前につきまして御質問がございましたが、確かに御指摘通り、航空機武器課という、ちょっとわかりにくい課が所管にございます。これは申すまでもなく武器である航空機という意味ではございませんで、航空機及び武器課ということでございまして、この課におきましては航空機工業振興法あるいは航空機製造事業法というものの施行、並びに武器等製造事業法という法律が別にございまして、御承知の通り補助金も出しておりますし、これらの事務を便宜上あわせてやっておる、こういう意味であります。
  54. 田中武夫

    ○田中(武)委員 それでは具体的にいえばYS—11型、これはあくまで輸送機ですが、これは将来自衛隊機として使用せられるという可能性はあるのですね。
  55. 小出榮一

    ○小出政府委員 先ほど申しましたように、私どもの会社の将来の事業計画として、防衛庁需要は算定の中に入れておりませんけれども、防衛庁がこれを多少の改善によって発注するということも可能である、こういう解釈でございます。
  56. 田中武夫

    ○田中(武)委員 その点については重工業局長に聞いてもなにだと思いますから留保しておきます。  そこで具体的にお伺いしたいのですが、こうして現実の問題として特殊会社を作るという法案をお出しになった以上、この特殊会社の構想といいますか、こういうものについてもう具体的におきめになっておると思うのですが、まず場所をどこに、そして役員は具体的にどういう人を考えておられるのか、その点について一つ具体的にお伺いいたしたい。というのは、先ほど申し上げました合成ゴム何とか法というのも、何か法律ができたときに、いや四日市だ、どこだというようなこともあったと思います。うまいことを言っておるが、実際はべースに乗って走っておった。事実は動いておって、法律はあとから出てきたようなことだったと思うのです。これもどの程度構想ができておって法案が出てきておるのか、お伺いいたします。
  57. 小出榮一

    ○小出政府委員 今回設立を予定しております会社に関する具体的な物的なあるいは人的な構想の内容でございますが、まず法律にすでに規定がございますのは、御承知のように取締役七人以内、監査役二人以内、こういうことでございまして、その人的な構成につきましては、量産段階、製造段階に入ります前に、ただいままで昭和三十一年度以来財団法人輸送機設計研究協会というのができておりまして、これが機体六社あるいは部品関係の七社、その他の格関係製造会社の協力を得まして、また人的な面につきましても各社から協力を得て設計を一応やっておるわけであります。すでに実物大の木型も完了した、こういう段階でございます。従いまして今回の会社におきましてもその構成におきましては、当然これらの各会社からも協力を得なければならぬ、こういうふうに考えておりますが、具体的にたとえば社長はどういう人、あるいは専務にどういう人、そういうところまでは実はまだ考えておりません。ただ御承知のように、この会社は自分で全部設備を持って製造する会社ではございませんで、結局協力を得ておりまするそれぞれの既存の機体会社あるいは部品会社等の協力を得て、それらに対して下請をさしてやっていく、こういう会社でございますので、この会社自身が非常に膨大な敷地なり設備を持って、自分で製造するということではございません。むしろそういう面に関する物的な設備というものは、特に大きなものは必要としない、こういうふうに考えております。
  58. 田中武夫

    ○田中(武)委員 十九条の二号によると、「輸送用航空機及びその機体構造部品の製造及び販売」こうなっておりましょう。どうもこの会社のやることは将来みずからの手で輸送機を作る、こういうことになると思うのですが、試作の段階では二機だとか四機だとかということであるが、計画を見ると、もう五、六年先には大量生産に入る、こうなった場合はやはり相当の設備なり敷地は必要だと思うのですが、将来の構想はどうなんですか。しかもおっしゃるようなことなら十九条二号というのは、あまり必要ないのではないかということも考えられるのですが、いかがですか。
  59. 小出榮一

    ○小出政府委員 この会社は先ほど申し上げましたように、すでに各関係会社の協力を得て、設計を一応完了いたしておりまする財団法人輸送機設計研究協会を、さらに発展的に継続するわけでございますので、実際の製造業務あるいは部品関係の製作等につきましては、すでに既存のメーカーがございまして、その間のそれぞれの割り振りというものもおのずから分野がきまっておりますので、これらの会社に対しまして発注をし、そうして製造の主体はこの会社ということになりますけれども、実際の製造はそこでやる、こういうことであります。従いまして今御指摘の第十九条の第二号の「輸送用航空機及びその機体構造部品の製造及び販売」ということにつきましては、これはそういうような生産体制において行う予定でございまして、従いましてさしあたりこの会社自身でそういった機体関係の製造、販売をやるというような関係にはなっておりません。
  60. 田中武夫

    ○田中(武)委員 どうも通産省を流れる一貫した考え方がこれにも出てきておる、こう思うのです。われわれが前の軽機械の輸出振興法の審議のときにも、あるいはあらゆる法案審議のときに申し上げるのですが、やはり官僚統制の強化をはかる、こういうことの考え方が通産行政の一貫した流れである。そういうことについてわれわれは指摘してきたと思う。今の御答弁によるとなるほど航空機というようなもののおくれておる日本の現在では、ある程度そういうことは必要を感じないこともないのですが、やはりやり方は異なるが、この法律による特殊会社を作って、それを通じて航空機製造全体を統制していく、こういうような思想が流れているように思いますが、いかがでしょうか。
  61. 小出榮一

    ○小出政府委員 航空機製造株式会社というような特殊会社を、今回政府出資によって作ります趣旨は、この会社を通じて業界の何らかのコントロールをやるというような、いわゆる官僚統制的な意図を持っておるものでは全然ございません。こういう航空機国産化をやりますにつきまして、むしろ業界自身の方の態勢といたしましても、どの一社においてもこれを単独で、かつ民間のリスクのみにおいて製造、販売するということは、とうてい不可能でございまして、やはりこれは先進国の例におきましても、国家の非常に強大な助成を——その助成の方法はいろいろな形態があります。あるいは国自身が設備を持って、その三分の二以上を貸与しておるというようなアメリカのような例もございます。とにかく国家の非常に大きな助成というものがなければ、航空機の製造というものは不可能であるという実情でございますので、その実情に即しましてこういった形態をとらざるを得ないのではないか、かように考えておる次第であります。
  62. 田中武夫

    ○田中(武)委員 重ねてお伺いしますが、まあ航空機のようなものだからということなんですが、通産省から出てくる法案のほとんどを見ますと、その業種、業態は異なるとしても、輸出振興協会とか、何とか協会とかいうのを作って、その業界のすべての頂点にそこが立って、そうしていわゆる輸出振興だというような関係から出てきておる輸出取引法の一部改正法を見ても、やはり一手買い取り。こういうことが全部そういう方向に流れておると同じように、やはりこの航空機業界に対して、この特殊法人の会社が一手販売、一手買い取り、いわゆる窓口を一本にしぼる役割を果す、こういうような感じを受けるのですがどうでしょう。
  63. 小出榮一

    ○小出政府委員 軽機械の点は私の所管でありますので別といたしまして、他のいろいろの法令の関係等におきましては、お答えいたします限りではございませんけれども、航空機に関する限りにおきましては先ほど来申し上げますように、航空機工業それ自体が非常に総合的な工業であり、かつ精密度も高い、技術的にも最も高度の技術を要するものでございます。しかも日本が戦後の空白によって非常に立ちおくれておる。立ちおくれておるけれども、今日立ち上れば、ちょうど数年後における世界各国の国際競争の中に参加するチャンスとして最も適当な時期である、こういう意味におきまして、今回これを発足いたしまするにつきましては、どうしてもこういう形態でなければ、民間だけの力ではできないという実情に即しましてこれをやるわけでございます。従いまして、ちょうど同じような総合工業でありまするところの自動車工業というようなものが、かつてはこれは将来とうてい国産化は不可能であろうというふうに、戦後思われておりましたものが、今日アメリカにさえ輸出できる態勢になったというような実例もございます。そういう長い将来の形態は別といたしまして、さしあたり世界の競争に追っつくというためには、どうしてもこういう態勢をとらざるを得ないのではないか、かように考え、また民間各会社におきましても、そういう趣旨におきまして全く同感であり、かつこれに協力するという態勢が、すでに設計の段階においてできておるわけでありまして、これをさらに発展せしめまして、こういう会社にしたい、かように考えておる次第であります。
  64. 田中武夫

    ○田中(武)委員 これは直接局長とは関係がないと思うのですが、たとえば輸出に当りまして、貿易の問題にいたしましても特殊な関係があるからこうやらなくてはならぬ、今航空機も特殊なものであるからこうやらなくてはならぬ、すべてそういうことによって、考え方によると業界一つにまとめて、その頂点に立つ特殊会社なり特殊法人を作って、それが法の保護を与え、あるいは国家がそれに資金を出すというようなことによる方法が、このごろほとんどの部面において現われてきておる。そのことを裏返したならば、前国会政府は独占禁止法の改正を出した。これは世論の反対にあって引き下げた。だが、これを今国会にはまだ出してきていないようですが、これを出さなかったからといって、独禁法の緩和と同じような状態を作っていくということについては、政府の一貫した考え方であることは間違いないと思う。こういうようなやり方を裏から見れば、業界の自主的な協定、カルテルという格好で動いていく、すなわち独禁法の思想に反する独禁法改正と同じような方向にいく、こういうような形態を作りつつあるというように私は感じるのです。これは局長直接じゃないのですが、せっかく次官が見えておりますので、大臣にかわって御所見を承わりたいのです。この法律もそうですが、今度出てきておるところの通産省関係法律のほとんどが、すべてそういうような傾向を示しておる。これを裏から見れば独禁法緩和、独禁法の改正を出してきたが、それは世論の反撃で引っ込めたが、実際においてそれと変らないような各業界、産業別の組織を作っていく、こういうように感じるのですが、いかがでしょう。
  65. 中川俊思

    ○中川(俊)政府委員 世耕長官のまねをするわけではございませんが、非常にいいところをつかれた。私は、過去わずかの間ですが、通産省へ入ってみて、正直申し上げて、全く田中さんが先ほど来おっしゃっているような点なきにしもあらずだと思う。どうも官僚統制というか、そういう方面にややともすればすべての点が向きたがる傾向があるように思うのです。これは社会党さんは統制経済がたしか好きだったと思うのですが、しかし御承知の通り統制経済についてはいろいろ非難がございまして、できるだけ自由経済に持っていかなければならぬことは申し上げるまでもないのですが、また一面考えてみますと、田中さん、私入ってみてそう思うのですが、業界がばらばらにやっておると輸出を阻害するし、たとえば三十三年度の輸出の状態を見てみましても、数量はほとんど目標に達しておるけれども金額は達しない。ダンピングをやる。各業種は別々に勝手なダンピングをやる。そういうようなことで、結局輸出数量だけは所期の目的を達する数量は出ておっても金額は達しない。国家のために非常に私はなげかわしいことだと思うのです。そういう意味から考えて、先般の軽機械の法律あたりも、やはりあれを放任しておきますと、私はこれは大へんなことになって、しまいにはダンピングをやって、世界の市場から締め出されるというような結果にあるいはならないとも限らないと思ったのです。ですからあの法案の出ているときでも、さらに今議題になっております航空機工業法案につきましても、私は最初に相談を受けたときに、これは官僚統制というようなきらいに見られやしないか、こういうことで、私は大臣と二人だけでございましたが、正直に申しますと、相当この問題につきましてもいろいろな角度から検討してみたのです。けれども、まあ一応この段階でやってみて、そうして今御心配のような点が施行していく上において現われるならば、これはもう国会で廃案にするなりあるいはまた改正するなりして、その段階を踏まなければならぬけれども、一応それではとにかくやってみようじゃありませんかということで、これを国会に提案したわけなんです。しかし今御心配になりますような点は、確かにそれはないとは申しません。私もそういう点を懸念いたしておりますから、そういう点につきましては十分一つども注意したいと思います。  なお私どもの寿命は短かいのでありまして、いつまでも政務次官をやっておるわけじゃありませんから、いつまでも通産省の内部におって監督するわけには参りませんが、そういう官庁のやることにつきましては、社会党といわず自民党といわず、政党が十分監視をしていただきたいと私は思うのです。これが日本では、はなはだおこがましいことを申し上げて恐縮ですが、役所に対して政党の監視が足りないと思うのです。私は役所に入って非常にそういう感じを持ちました。今ごろいろいろな問題になっている、一例を申し上げますと、アメリカの自動車を入れるというような問題についても、ガソリンのない日本がたくさんなガソリンを使って、そうして交通妨害になる大きな車を、報道用であるとか観光用であるとかいう名目で入れておる。入れておるが、実際に調べてみますと、どこの新聞社にも自動車部というのがありまして、ひどいところになると自動車部がこれを賃貸ししておる例すらある。さらに観光用というので入れておって、そうして御承知の通り今は自動車を入れれば倍もうかるのですから、五百万円の自動車を入れれば一千万円、三百万円のフォード、プリムス級ならやはり六百万円、倍もうかる。国民の貴重な外貨を使って、そうして特定の人がもうけておるというようなことであるから、私はことしも外車なんか入れる必要はないと言って、いまだに決裁せずにおる。そういうようなことについて、各方面からいろいろ圧力があります。社会党さんの方からも、なぜ入れないのかと言ってこられる人があるんですよ。あなたの方の人でもある。わが党にもあるのです。あるが、私はだれから言ってきても、私が納得できなければ決裁しませんと言って、いまだに決裁せずにおるのです。これは一例ですが、そういうことについて私は役所に対して政党の監視が足りないと思うのです。だから官僚統制に持っていく、役人がいろいろのことをやるといって非難はしますけれども、それなら平素それだけの監視をしておるかというと、私のわずかな経験ですが、していないように見受けられるのです。ですから、この法案は一応これで通していただいて、そうして十分に一つ社会党さんと協調して、私ももうすぐ政務次官なんというのはやめますから、あんな忙しいところに長くおったら選挙に落ちますから、早くやめて、そうして皆さん方と一緒になって、私が修得した点については、田中さんあたりと特に協調してよく監督をしたいと思いますから、どうぞ御協力を願います。
  66. 田中武夫

    ○田中(武)委員 中川次官のおっしゃったまず五、六割までは私は同感です。大いにやっていただきたいと思います。ことに次官として政府の要路にあられるのだから、やっていただけると思う。しかしまだ御答弁の中で、いわゆる官僚統制につながる統制経済と計画経済を混同しておられるような点はありますが、これはここで論議すべき問題じゃございませんので、差し控えます。  そこで元へ戻しまして、この特殊会社の問題について具体的な点をもう一、二伺いたいのですが、資料によると、ピーク時は従業員が百九十とか二百とかということになっておるようです。従って、先ほどおっしゃったような、ことしはこの会社はやらないのだというと、その程度の人しか要らないのかもしれませんが、この会社ができまして、そこに働く従業員とこの会社との雇用関係は、どういうようなことになるのですか。と言いますと、たとえば直接雇用の格好で雇い入れるのか、あるいは格関係会社からの派遣といったような格好でそこへ行くのか、その点はいかがですか。
  67. 小出榮一

    ○小出政府委員 その点につきましては、先ほど申し上げましたように、この会社自身は自分で製造、販売を直接やるわけではございません関係上、従いまして、この会社自身が直接に製造面等につきまして、技術者なりあるいは労務者を雇ってやるという面は比較的少いわけでございますが、しかし会社と直接雇用関係に立つ者もございまするし、それから各関係会社からの協力を得まして、出向という形で入れてくる者もある。この両方の職員があろう、こういうふうに予想しております。
  68. 田中武夫

    ○田中(武)委員 そこで一つ特に強調いたしたい点があるんですが、と申しますのは、アメリカ軍が駐留して来まして、まだ日本ではジェット機というようなものについてあまり経験なり技術を持たなかった当時、各航空機会社から、表面は解雇の格好をとったのか休職の格好をとったのか知りませんが、その会社を一時離れまして、もぐりで駐留軍の労務者として入ってきて、そして一年なり半年なりたって、一通りのジェット機に対する知識なり技術を修得したらやめて、その会社に戻って重要な地位につく、こういうような事例が今まであったと思う。事実を指摘するならしてもよろしいのですが、ありました。従って、今日御承知のように、アメリカ軍の駐留軍の撤退はわれわれ国民として大いに望むところでありますが、その反面、多くの駐留軍関係の労務者が解雇せられて、職にありつけなくて困っておる実情については、よく御承知の通りであります。ことに一例をあげましたならば、立川基地周辺をとっただけでも、約三千人の解雇者が出ております。しかもこの人たちは従来から、立川飛行機あるいは航空技術研究所あるいは昭和飛行機といったようなところの従業員が多くて、そういう人が駐留軍関係の労務者として基地に入っておって、相当ジェット機等についての技術等を修得しております。そういう人たちが駐留軍の撤退によりまして、今申しましたように、立川周辺だけで三千人という人が遊んでおる、こういう状況なんです。従ってこういう会社ができて、たとい百人でも百五十人でも新たに人を採用し、しかもそれがジェット機輸送に対する設計、試作、実験というようなことなら、この経験者として特に適当だといいますか、最適任者であるようにも考えられます。これは会社が独自の立場で雇用するであろうけれども、監督的な立場に立つ通産省、ことに重工業局等から、今日の駐留軍離職者の実情を見ていただきまして、十分こういうような技術を持っている人を生かすような方法についての御指導を願いたいと思います。その点について一つお伺いしたい。
  69. 小出榮一

    ○小出政府委員 この会社ができまして、この会社自身で雇用する技術者、労務者、あるいは関係の協力します各会社において雇用いたしまする技術者、労務者、職員等につきましては、もちろん非常に高度の技術あるいは経験を要するものでございますので、なかなか適格者を得るということは困難かと思いまするけれども、ただいま御指摘がありましたような駐留軍関係の離職に伴いまするこれらの救済対策等につきましては、すでに政府全体といたしまして、あらゆる面においてできるだけ援助をするという方針で臨んでおりますので、ただいま御指摘がありました、航空機関係の駐留軍の労務者で、駐留軍の撤退に伴う離職対策一つとしても、そういうような適格者がありまする場合には、もし同じ条件でありますれば、そういうような人たちをなるべく優先的に取り扱うというような方針につきましては、そういう方針で指導していきたい、かように考えております。
  70. 田中武夫

    ○田中(武)委員 重ねて強調しておきたいと思うのですが、もし同じような条件であるならばというようなことでなく、努めてそういう方向において指導をしていただきたい。と申しますのは、この会社に対して初年度三億円ですか資本金を出す、六千万円の補助金をつける、相当国としても資金的な面を見ておるわけです。一面、駐留軍の関係の離職者は、これは考え方によれば、敗戦の一つの犠牲者である、こうも言えると思うのです。かってはいわゆるアメリカの基地なりその他において働いて、そこではいわゆる日本的な労働法の適用を受けず、まあ酷使であったかどうか知らぬが使われて、そうして国民的歓迎の中で駐留軍が引き揚げていったあと、自分たちの職を奪われたということ、それに対して、今二、三の例をあげられましたが、政府自体対策は、私は十分でないというよりか、むしろなっていない、こういうことを指摘したいと思うのです。その中において、こういう人たちが立川だけで三千人もおる。こういう点に留意していただきまして、ことに特殊会社であり、国が今後もめんどうを見ていく会社である、こういう政策とにらみ合せて、こういう離職者の人たち、ことにこの人たちがジェット機に対する技術なり経験を持っておる、修得したということなら、うってつけだと思うので、特に一つ努めて採用するように、強く御指導願いたいと思います。  次にお伺いいたしたいのですが、この十四条二項ですか、それによりますと、「政府は、予算範囲内で、会社に対して出資することができる。」こういうことになっており、計画を見ました場合に、まず初年度、来年度政府が三億円の出資をする、民間から二億円、補助金が六千万円、これで一応出発することになっておるわけです。予算範囲内と、こういうように書いてありますが、三十八年には大体三十九億五千万円の計画のようですけれども、そうすると、初年度から三十八年度までの政府出資金については、一応の計画もあると思いますが、そういう三十八年までの三十九億五千万円の詳細な年次計画を一つ聞かしてもらいたいと思います。
  71. 小出榮一

    ○小出政府委員 ただいま御指摘通り政府出資に関しましては、当然のことでございまするけれども予算範囲内においてということでございます。まず初年度、三十四年度におきましては、すでに三億円の政府出資ということになっておるわけでありまして、この政府出資は、附則の方に書いてございますように、本格的な量産段階に入りますれば、大体収支も相当償うであろうということで、民間出資を中心にやっていくという大蔵省との打ち合せになっておりまして、そういう趣旨が表わしてあります。従いまして試作、試験機を製造いたしまする試験段階が終りまするまでの昭和三十八年度までの間に、政府出資を行う、こういう予定でございます。その資金の総額は三十九億五千万円、こういうことになっております。そうしてこの年次別計画というのは、これはまあ一応将来の政府予算措置等と関係もございますので、これは各年度ごとにそれぞれの予算措置を講じて参りたい、かように考えておりまするけれども、一応昭和三十五年度以降について、われわれの考えておりまする出資の予定金額を申し上げますると、——失礼を申し上げました。特に年次別にはきめておりませんけれども政府の出資は、大体私ども予定といたしましては総額の半額以上は政府出資による、こういうふうに考えております。
  72. 田中武夫

    ○田中(武)委員 それでは半額以上は政府、半額未満が民間、こういうことになるのですか。最初出発は三対二、こういうことになるのですが、将来においても、こういう比率を保っていくおつもりなのか、それとも大体どういう程度の振り合いでお考えになっておりますか。
  73. 小出榮一

    ○小出政府委員 官民の出資比率につきましては、ただいま私半分以上ということを申し上げましたが、これは航空機工業に関する政府助成の必要性、あるいは先進国等における諸外国の例等から見ましても、やはりこれはできるだけ政府出資を多く出す方向に持っていきたい、かように考えております。従いまして初年度においてはすでに三対二という比率になっておりまするが、少くとも通産省決定はこの三対二の比率を最小限度というふうに考えまして、将来はやはり政府出資の比率はこれよりは増大することがあっても下らないようにしたいと考えております。
  74. 田中武夫

    ○田中(武)委員 そうすると具体的にいえば、政府として年度にこれだけ出すということがきまって、これと大体三対二程度の比率をもって民間の出資を募るのか、あるいは民間の出資がこれだけあるということを見て、これらの出資をこの程度ということで予算の要求をせられるのか、その関係はどうなっておりますか。
  75. 小出榮一

    ○小出政府委員 これは各年度ごとに事業の進捗状況なりあるいは会社の経営の状態等によりまして、そのときの予算編成時期等における情勢によって、判断しなくてはならぬかと思うのでありますが、やはりすでに今年の経験等から見まして、民間における出資の能力と申しまするか限度と申しまするか、そういうようなものをやはります相当に勘案いたしまして、そうして既定の計画を遂行するということを大前提といたしまして、その計画に必要な経費につきまして足りない分についてはできるだけ政府が出資をしていく、こういうふうな考え方になるのではないかと思います。
  76. 田中武夫

    ○田中(武)委員 この計画を資料で見ますと十年後までのことは大体数字が出ておりますが、それ以後この会社をどういうような格好で存続さしていくおつもりか、これをお伺いします。
  77. 小出榮一

    ○小出政府委員 先ほど申し上げましたように、昭和二十八年度をもって大体量産、マス・プロの段階に入るわけでございまして、それから以後におきましては大体その量産のべースに乗りましたならば、会社の収支関係等も相当好転するだろうというふうに考えられますので、従って先ほど申しましたYS—一一型の量産態勢に昭和三十八年度から入る、そういたしますと、その昭和三十八年度から七年間の計画におきまして、全部で大体百五十機の生産を行う……。
  78. 田中武夫

    ○田中(武)委員 それはわかっておりますが、十年たった以後の会社をどういう格好で……。
  79. 小出榮一

    ○小出政府委員 一応その辺までの計画は持っておりますが、それから将来の量産態勢がさらに一そう進捗いたしまして、海外における需要なり、あるいは輸出関係等の需要が、どういうふうに増大——当然増大すると思うのでありますが、増大をしていく関係等を見まして、それ以後における動きを立てたいと思っておりますけれども、現在のところはそれ以後何十年という長期にわたる事業計画は、ただいま持っておるわけではございません。
  80. 田中武夫

    ○田中(武)委員 なぜそれを伺っているかといいますと、この会社が存続する限り政府持ち株はそのままでいかれるのか、あるいはその時期がくれば、その政府持ち株を何らかの方法で処分するということが考えられておるのか、その点に関連してお伺いしたい。
  81. 小出榮一

    ○小出政府委員 政府の出資は先ほど申し上げましたように、一応量産段階に移行する前の段階まで出資をするわけであります。それ以後においては新たなる出資はしないというわけでございまするが、しからばすでに政府が出資いたしまして持っておりまする政府の持ち株というものは、将来どういうふうにこれが処分されるのかというような趣旨の御質問かと思うのでありますが、これに関しましては、たとえば日本合成ゴムというような特殊会社の場合におきましては、その株式処分に関する規定がある程度あるわけでございますが、特に今回御提案申し上げましたこの会社につきましては、あらかじめその株式の処分ということを予定いたしておりません。やはり将来とも政府の財政的な援助というものは、出資なりあるいは融資なりの形において必要であると思いますので、特に持ち株を将来処分するということは予想いたしておりません。
  82. 田中武夫

    ○田中(武)委員 十年先のことまで心配しなくてもいいのですが、そのころになると立場を異にして私たちがそっちへすわっておると思うので、そこは別に心配ではないのですが……。(笑声)  それから三十八年度から政府が出資しない、そういうことになりますと、それ以後で民間の方が増資をした場合は、今言われておった比率は将来変るわけですね。
  83. 小出榮一

    ○小出政府委員 当然に変るわけでございます。
  84. 田中武夫

    ○田中(武)委員 私まだ質問の半分も入っていないわけでありますが、次の採決の関係等もありますから、自後の質問を留保いたしておきまして、この辺で一応おきます。
  85. 長谷川四郎

    長谷川委員長 それでは航空機工業振興法の一部を改正する法律案及びプラント類輸出促進臨時措置法案は、このあとでまた質疑を続行いたします。     —————————————
  86. 長谷川四郎

    長谷川委員長 お諮りをいたします。商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案及び中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案の両案についての御質疑はありませんか。——両案についての質疑はないようですから、両案についての質疑は終了したものと認めます。  次に、両案を一括して討論に付すのでありますが、両案につきましては討論の通告はありませんので、これを行わず、直ちに採決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  87. 長谷川四郎

    長谷川委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  採決いたします。両案を原案の通り可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  88. 長谷川四郎

    長谷川委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  次に、ただいま可決いたしました両法案に関する委員会の報告書の作成等につきましては、委員長に第一任願うことに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
  89. 長谷川四郎

    長谷川委員長 御異議なしと認め、そのように決します。     —————————————
  90. 長谷川四郎

    長谷川委員長 航空機工業振興法の一部を改正する法律案及びプラント類輸出促進臨時措置法案の両案についての質疑を続行いたします。田中武夫君。
  91. 田中武夫

    ○田中(武)委員 続けてお伺いいたしますが、計画を見ますと、まず三十八年までに試作機を二機づつ四機作って、三十八年から四十二年までに百機、四十三年から四十四年までに五十機作る。そして一機は大体三億五千万円ですか、そういうような計画が出ておるのですが、当てごとと何とかは向うからはずれるというのですが、こううまく計画通りいく自信がおありなのでしょうか。
  92. 小出榮一

    ○小出政府委員 すでに過去において財団法人輸送機設計研究協会に対しまして、政府からの補助金等の助成措置もやっていただきまして、設計も予定通り終了し、また実物大の木型も先般ごらんに入れましたようなものができ上りまして、きわめて順調に進んでおりまして、今回も私どもがほぼ予定しておりました政府出資等の予算措置も、一応予算案として計上されておりまするが、予定通り政府の助成措置が円滑に参りますれば、所期の計画通りに十分促進し得る、かように考えております。すでに関係会社等におきまする設備的あるいは技術的な運営等も、すでに過去において熟練を経たものも相当擁しておりまするので、これら全体を適切に動員して参りますれば、計画通りに必ず進行する、かように思います。
  93. 田中武夫

    ○田中(武)委員 百五十機作る、そのうち百機を輸出する、こう言っているのですが、まず作ることについて大体自信がある、こういうことですが、今度は出すことについてこれまた自信がありましょうか。と申しますのは、現在では日本の技術はすでにおくれておるわけです。十年後にはなお相手方も、先進国は技術が進むであろうし、こう考えたときに、いわゆる追いつき、追い抜くだけの技術的な自信があるのか、また同時にコスト的に考えても将来の資材の値上り、こういうことを考えて国際べースにおいて百機輸出をするということに対するコスト上の自信があるか、こういうことがまず疑問として起るのですが、いかがでしょうか。
  94. 小出榮一

    ○小出政府委員 御指摘通り製造が順調に進みましても、売れない飛行機を作るのは意味がないわけでございますので、その間の需要の想定等につきましては、百五十機のうち大体五十機を国内、百機を輸出、こういうふうに想定いたしておりまするが、これらの想定は私どもといたしましては相当固く見積ったつもりでございまして、国内におきましては、国内民間航空の需要の仲び等につきましても、比較的低目に押える、また現在飛んでおりまするすでに古い飛行機等につきましての代替性というようなことにつきましても、その算定をかなり精密に見積っております。  それから輸出向けの需要の点につきましても、東南アジアあるいは中近東、中南米それぞれにつきまして、現在それらの地域において飛んでおりまするDC—3、その他の種類の代替性の問題等々とにらみ合せまして、相当精密に算定したつもりでございます。そこで今お話の、どうせ日本でこれができ上るのには五、六年かかるわけでございますが、その間に世界各国もやはり作るわけでありますので、それでは結局競争力の点において、スタート・ラインにおいてすでにおくれておる日本といたしましては、結局五、六年先においてもおくれをとるのではないかという点は、まことにごもっともな御心配の点だと思うのでありますが、幸い現在一応完成しておりまするYS—一一型というものにつきさましては、これは輸送機設計研究協会におきまして非常に精密に、世界各国のいろいろな面につきましての最も優秀な面だけを抽出いたしまして、これを総合設計したきわめて自信のあるものでございます。と同時に、他の世界各国におきましては、これと同じような優秀性を持った民間輸送機はまだ設計いたしておりません。従いまして将来五、六年先におきまして、これを完成いたしました一九六三年ごろを想定いたしてみましても、十分われわれの設計にかかるような優秀な設計による飛行機というものは、他の諸外国においてもこれに匹摘するものは現われないであろう、かように考えております。従って輸出の可能性につきましては、その面からは心配がない、かように考える次第であります。  それからもう一つ指摘の資材関係その他の物価の変動というようなものによりまするコスト計算、一機三億五千万円程度ということについての変動を来たすかどうかという点でございまするが、確かに資材関係、材料関係につきましては、当然物価の変動ということはございまするけれども、そういうようなものがございましても、他のいろいろな製作費の中に盛っておりまする償却の見方でありまするとか、あるいは海外宣伝等のそういう費用でありまするとか、そういう営業費、販売費というような面につきまして、かなり弾力性のある経費の見積りになっておりまするので、かりに資材関係において値上りがありましても、十分これを吸収し得るだけのコスト計算をいたしてありますので、そういう将来の面につきましても、コスト的な面においては心配は要らないのじゃないか、かように考えております。
  95. 田中武夫

    ○田中(武)委員 百機を輸出するというのだが、大体どういう国へ輸出する目途があるのでしょうか。
  96. 小出榮一

    ○小出政府委員 YS—一一型をかりに輸出するとした場合におきましては、東南アジア、中近東、中南米、この地域が大体この飛行機の性能から申しまして輸出適格地だと思います。そこで現在これらの各地において飛んでおりまする飛行機が、数年を出ずして代替しなければならぬ時期にくるわけでありますが、その代替を必要といたしまする機数は、東南アジア地域におきましては約二百六十機です。それから中近東地域におきましては九十三機、中南米地域におきましては六百二十機ばかりありまして、これらの三地域の合計だけで九百七十八機という数字が一応代替を必要とするであろうと認められておりまする輸送機があるわけであります。一方今後十年ぐらいの間におきまして、航空輸送はもちろん急速に伸びると思います。一応考えられまするのは一八%、あるいは低く見積っても一〇%の伸びと考えられますが、もちろんそういった国際線につきましては、これはどちらかと申しますると、もっと大型ないしはジェット機のようなものでありまして、この中型で考えておりますものにつきましては、さらに全体としての伸びは十年後の昭和四十二年ごろまでには、やはり二倍ぐらいの需要の伸びがあるだろう、こういうふうに固く見積っても考えられるのであります。従ってこれに対しましてYS—一一型が、現在飛んでおりまするDC—3と代替いたしまする場合には、大体一機でもって二機分くらいの代替性がある、こういうふうに考えて見積ってみました場合においても、新規需要が全体として千百機ないし千二百機あるのではないか、こういうふうに考えられます。従いましてかりにその一割だけをYS—一一型でまかなうといたしましても、百十機ないし百二十機の需要というものは十分に考えられる、かように思う次第であります。
  97. 田中武夫

    ○田中(武)委員 今の御答弁によると、自信があるようなんだが、もう一度さらに聞きたいんですが、技術的とコスト的の両面から、ジェット機の先進国を相手に、今おっしゃったような中近東なり、東南アジア、こういうよらな方面で、実際貿易の勝負に打ち勝つという自信が出てくるんですか、いかがです。
  98. 小出榮一

    ○小出政府委員 技術的な点につきましては、先ほど来申し上げておりまするように、設計自体の問題とそれを製作する技術の問題と両面考えられるのでありまするが、設計面におきましては、非常に優秀な——国際的に見ましても、現在の段階においては最も優秀と考えられる設計になっておるというふうに考えられまするし、技術的な面につきましては、御承知のように、戦後の空白がございましたけれども、すでにジェット機その他米軍の発注等によりまして、あるいは防衛庁需要等によりまして、相当技術陣営におきましても訓練をしておりまして、十分に技術的には太刀打ちできるものである、かように考えております。それからコスト的には一機当り三億五千万円という数字は、諸外国の例から申しまして、これと同じよらな優秀な性能の飛行機ということを考えまする場合におきましては、十分競争力のあるものである、こういうふうに考えております。
  99. 田中武夫

    ○田中(武)委員 それはいずれ将来の問題ですから、その自信を持って、計画がそごを来たさないようにやっていただくということで、この点はおきたいと思います。  先ほど特殊会社の大体の構想を伺ったわけなんですが、三十八年の試作段階、試験段階まではそのような構想でいけると思うんだが、三十八年以後のいわゆる量産態勢に入った場合、量産段階においてやはり今までおっしゃったようなことでいけるのかどうか。その場合に関係各社との関係はどういうようになるのか、これらについて一つまだ納得いかないんですが、十分の御説明を願いたいと思います。
  100. 小出榮一

    ○小出政府委員 量産段階に入るまでのその前の段階までは、これは当然政府のよほどの援助がないと軌道に乗らないということで、一応政府出資はそこまではやるということになっておるわけでございまするが、いよいよ量産段階になり、月産二機というふうなペースですべり出しました場合におきましては、申すまでもなく量産の需要との関係がございまするが、われわれの需要想定は相当かたく見積っておりまするので、需要があるということを前提にして考えまして、量産態勢が進めば進むほどコスト的にも相当合理化されて参りますから、一そう収支関係等におきましても十分償っていく、かように考えております。その場合における生産の形態でございまするが、これはやはり少くとも当分の間はこういうふうな態勢におきまして、各会社が一社だけで全部機体から部品から関連装備等までやるということは、とうてい不可能でございまするので、そういうような態勢でやらざるを得ないのではないか、非常に長い将来のことになりますと、これはまたあらためてそのときの情勢によって判断しなければならぬ、かように考えております。
  101. 田中武夫

    ○田中(武)委員 たとえば部品というか、その航空機を構成する機械器具、たとえばエンジンとか計器、こういういろいろな部分を、結局エンジンはどこの会社がやる、計器はどこがやるというようにきめて、それを作ったやつをこの特殊会社で組み立てだけをやるということになるのか、あるいはこの会社が量産態勢に入った後、今言われたような百九十名等の従業員で実際どういうことをやるのか、この会社自体が量産態勢に入ってからはどんな仕事をするのか、こういう点についてお伺いいたしたいと思います。
  102. 小出榮一

    ○小出政府委員 この会社と各既存の航空機関係の会社との関係でございまするが、この会社自体は、先ほど来申し上げておりますように、まず設計はこの会社がやるわけであります。それから設計されましたものの試験でございます。いろいろな試験がございまするが、それらの試験はやはりこの会社が主体になって行います。その試験をいたします設備は、国有の試験設備もございますし、あるいは各会社が持っておりまする試験設備もございます。そういうところを利用いたしまして試験をやる主体はこの会社であります。それからこの製作に必要な治工具を作るわけでありますが、その治工具の設計なり製作は、この会社からそれぞれの関係会社に発注をする、こういうことになっております。そういたしまして、試験期、それから試作期あるいは量産期といういわゆる製造段階に入りますと、それぞれの各部品につきましては各社に下請発注をいたします。そうして組み立てにつきましては、ある特定の、そのうちの一番主体になる会社に組み立てを委託する、こういうふうな関係になろうと思います。それらの委託関係あるいは下請発注の分野等につきましては、大体業界の内部におきましても態勢が整っておりまして、相協力して、各社の設備なり、技術的な能力なり、あるいは生産能力の余剰分を勘案してきめる、こういうことでございます。そこで、量産態勢に入りました以後になりますると、これは設計関係はこの会社のあくまで責任でございますので、設計部門につきましては、相当これに必要な技術者というものが必要になってくるわけであります。設計は一ぺん設計すればそれで終るということではございませんので、絶えず経験によりまして改良を加えなければならぬという意味で、設計技術の面につきましては、将来さらに増員していくということが必要であろうと思うのでありますが、具体的な発注、生産関係は、ただいま申したような関係になろうと思います。
  103. 田中武夫

    ○田中(武)委員 だから、この特殊会社が親会社のような格好で、関係の各会社が下請会社のように注文を出す、そしてここで組み立てられるものと思ったら、そうでなく、組み立ても他の関係会社でやっていく、こういうことになると、それじゃ具体的に十九条の各号のなし得る業務を今の御説明に当てはめまして、どれとどれとをやるのか、お伺いいたします。
  104. 小出榮一

    ○小出政府委員 十九条の各号でございまするが、これは結局この会社が営みまする事業範囲、これはやはり会社自身の建前といたしましては、設計、試作、試験、製造、販売ということはこの会社自身の事業である、こういうことになるわけでありますが、その会社自身の行いまする製造、販売につきまして、それぞれの機体関係の構造部品なり、あるいはそれ以外の部品等につきまして関係の会社に発注をしてやらせる、こういうことでございます。事業といたしましては、この会社が全体を——設計から製造、販売という事業それ自体は、この会社の事業である、こういうふうに考えます。
  105. 田中武夫

    ○田中(武)委員 いや、実際は作らないのでしょう。この会社は物を関係会社に下請のようにさして作らすのでしょう。そうすると製造というようなことが出てくるのでしょうか。販売だけの仕事と違うのですか。
  106. 小出榮一

    ○小出政府委員 まあ製造という言葉の法律上の解釈の問題になりまするけれども、自分自身で設備を持って全部をやるという場合は、もちろん製造でございまするが、こういったような形態におきまして、自分で製造権と申しまするか、そういうものを持っておるという意味におきまして、やはりこれはこの会社の製造にかかるものである、こういうふうに解釈いたします。
  107. 田中武夫

    ○田中(武)委員 部品メーカーと組み立てメーカーがあって、そういう場合に少くともアッセンブルはパート・メーカーから上ってきたものを組み立てることによってそれを製造した、こう言えると思うのです。ところが今の御説明によると、組み立て自体もやらないということになったら、製造というような範疇に入るのでしょうか。製造権というのは一体どういうものなんですか。
  108. 小出榮一

    ○小出政府委員 この会社が自分で設計をし、その設計に基きまして発注をいたして、委託して製造をやらせるという形でございまするので、やはりこの会社自体が製造を行う、ただあとの方にも規定がございまするように、普通の航空機製造事業法による製造の場合と、確かに設備的な面におきまして形態が違いまするので、特に航空機製造事業法による製造事業者とみなすという一応の、みなす規定も置いておる次第でございます。形態としてはやや異なっておりまするけれども、やはりこの会社自身の製造事業である、こういうふうな解釈をいたしております。
  109. 田中武夫

    ○田中(武)委員 たとえば私がこのライターを、ライターを作る会社へ、こういう格好で、こういう意匠を入れたものを作ってくれ、こう注文する、私は何も作らない、設備も何も持っていない、設計や意匠等はやって、全部向うで作ってきたものを私が受けを取って、これ売るといいますか、そういう業をやったときに、私はこのライターの製造業者になりますか。
  110. 小出榮一

    ○小出政府委員 形態としては、今ライターの例をおあげになりましたけれども、まあそれに似たような形態になろうかと思います。
  111. 田中武夫

    ○田中(武)委員 この製造の法律上の解釈はまあそのぐらいにしておきましょう。しかし何か十九条各号と今の説明を見ると、この特殊会社がやることと、この条文の文句とがぴったりこないような感じがあるわけなんです。  ついでですからお伺いしますが、三号の「前二号に掲げるもののほか、会社の目的を達成するため必要な事業」、これはきまり文句で、こういうような場合は入れるわけなんですが、ことにこの場合は二項において、通産大臣の認可を、こういうことでくぎがしてあるわけなんですが、そうすると一体考えられるのは、どういうようなことが三号として考えられるのですか。
  112. 小出榮一

    ○小出政府委員 さしあたり特に今すぐどうこうと予定したものはございませんけれども、予想せられまするのは、修理関係あるいはアフター・サービスと申しますか、そういうような関係の事業が出てくるのではないか、かように考えております。
  113. 田中武夫

    ○田中(武)委員 それではこれはそのつど二項によって大臣の認可をとって行う、こういうことになるのですね。
  114. 小出榮一

    ○小出政府委員 その通りであります。
  115. 田中武夫

    ○田中(武)委員 航空機といえば、私どれほどの部品があるのかよくわかりませんが、自動車会社に聞いたら、自動車でも三万でしたか部品があるそうです。そうするとこの航空機工業振興法によって作られていく輸送機、これはあらゆる部門に関連を持つと思います。たとえば電子工業の関係もありましょう、あるいは小さな機械工業に関係もあろうと思います。これは本法案を審議したときも若干私触れたと思いますが、現に出ておる電子工業振興臨時措置法でしたか、あるいは機械工業振興臨時措置法、こういうのと本法自体との——今問題になっておる特殊会社じゃないのです。本法案自体との関連及びこの会社で作る飛行機の各部品で、たとえば電子工業振興法の関係になるような部品、たとえばコンデンサーあるいは抵抗器、こういうようなものが出てくると思います。これは機械工業振興法にも規定せられておると思うのですが、これによって部品の方はまかなっていくというか、この法律の適用を受けることによってやっていこうとするのか。それともこの航空機工業振興法による中型ジェット輸送機を作るために必要な部品についての振興政策、これは別個にまたお考えになっておるのか。何か法律を作るのがお好きですから、また別に航空機工業振興法の部品の振興に関する臨時措置法というものが出てくるのかどうか、一つお伺いします。
  116. 小出榮一

    ○小出政府委員 航空機工業振興法それ自体の問題でございますが、今お話の通り航空機の総合工業といたしまして、部品部門が非常にたくさんあるというわけでございます。そこでそれらの部品部門につきましても、当然これは政府として相当の育成措置、助成措置をしなければならぬというわけでございますが、その助成措置をするに当りまして御指摘通り、この法律のほかに機械工業振興法というものとエレクトロニクス関係の電子工業振興法というものがあるわけでございまして、それらとこの法律との関係でございますが、機械工業振興法と電子工業振興法というのは、機械工業一般あるいは電子工業一般に関するそういった全体としての近代化ということを主目的にいたしております。普通の機械工業一般あるいは電子工業一般に関する基礎的なと申しますか、あるいは汎用性のある面につきまして、これらの振興部品が選定せられておるわけでございます。従いましてこの航空機工業振興法による育成措置は、それらの機械工業関係あるいは電子機器関係の中でも航空機専用部品というものが育成対象になる、こういうわけでございまして、ものによりましては、その分野が多少両者ダブる場合もございますが、いずれもそれぞれの振興法によりまして品目を指定するわけでございまして、具体的にはこの航空機関係の地上において特に専用的に使います管制機器とかあるいは無線機とか、そういったようなものにつきましては、この航空機工業振興法の指定品目になる、こういうふうに考えられます。
  117. 田中武夫

    ○田中(武)委員 どうもいつも言うことですが、あまり法律や何かが多過ぎて、二重三重の網がかかってくる、こういう感じを私はいつも申し上げ、そういうふうに受け取るのですが、この場合がやはりそうなると思うのです。機械工業振興法によるものは一番基礎だと思うのです。その上に立って電子工業、また特殊なものとして航空機の一部門の電子工業のものが指定になると思うのです。そうなった場合、どれによってやるのか、こういうことになると思う。たとえばコンデンサー、抵抗器といったようなものを一つ考えました場合に、今日日本の電子工業の発展の一番の技術的な欠陥は、コンデンサーあるいは抵抗器にあるといわれておる。そういうところから機械工業振興法の十八品目か何かだったと思いますが、それの指定の中に入っておったと思います。それが電子工業振興法がまた別にできて、これはどっちでいくのかと言えばこっちでいくのだ、こういうような話があったと思うのです。そうすると、今度この航空機工業振興法が出て、それの部品をなすところのもので、このいずれかにまたがるものがある。あるいは三つにまたがっておるものがある。そうなるとどの法律をもって優先的に適用していくのか、そういう点についてどうもはっきりしない。これが憲法と法律、命令というなら憲法の方が優先するのだということだが、同じ法律なんでどうするのか。それは政令その他で小さく分けて、品目等によって区別してできると思うのですが、やはり一緒くたになってきて、あるところでは三つ法律の保護を受けるというような面も出てくるだろうし、あるいは全然そのワクからはずされてくるものも出てくる、こう思うのですが、この点どうですか。
  118. 小出榮一

    ○小出政府委員 確かにお話の通り機械工業振興法、電子工業振興法、航空機工業振興法、いずれも一般的、基礎的なものと部分的なものという関係のものもございますし、あるいはそれが逆に航空機の方は一般的でその中の電子部門というのが、一般、特殊の関係が逆になっておるものもありますし、ものによりましてはダブっている面もあろうかと思います。従いましてもちろん具体的には御指摘通り品目はそれぞれの法律に基きまして指定するわけでございますが、大体の考え方といたしましては基本的には機械工業一般の振興に、基礎的にかつ汎用的に貢献するものが機械工業振興法の対象になり、電子工業とこれとの関係におきましては、一般と特殊という関係になりますが、あるいは原材料的な面は大体電子工業で、あるいは製品の面は特に航空機関係の製品を航空機工業振興法、大体の考え方を分けますれば、そういうことでありますが、具体的にはやはりそのときそのときによって、多少重複を生ずる面も出てくるかと思います。
  119. 田中武夫

    ○田中(武)委員 そうすると航空機の部品、こういう一つの特定のものをとった場合に、いわゆる電子工業振興法だとか、機械工業振興法は一般法であり、これは特別法である。従ってこれを優先さす、こういう一つのいわゆる当該部品というか、当該物質に観点を置いて、それがお互いの間において原則法であるか、特別法の関係であるかということで、特別法という観点を優先さす、こういう考え方はいいですか。
  120. 小出榮一

    ○小出政府委員 大体の考え方といたしましては、今お話のようなことでございますが、さっきも申しましたように、原則と例外の関係がものによりますと、逆になる場合もあろうかと思います。大体の考え方といたしましては航空機専用部品につきましては、航空機工業振興法というような建前でいきたいと思います。
  121. 田中武夫

    ○田中(武)委員 この法律全般の規定を、改正法を見まして感ずることですが、たとえば同じような特殊法人、特殊会社で電源開発あるいは合成ゴム、あるいはまた東北開発、いろいろなそういう法律がありますが、それと一々私は規定を知らないのですが、規定の置き方なり監督の仕方はどういうふうになっておりますか。大体今までの特殊法人と同じような規定の置き方になっているのですか、特殊なものがありますか。
  122. 小出榮一

    ○小出政府委員 こういった政府出資のいわゆる特殊会社というものにつきましては、大体一般の例に従っておるのでございますが、今お述べになりました日本合成ゴムあるいは石油資源開発株式会社というようなものがございます。あるいは東北開発株式会社というのがございますが、基本的には官民共同出資の特殊会社という点につきましてはいずれも同じであり、その特殊会社にした理由も、結局民間だけでは開発なり経営が困難であるということについて、政府がこれに援助するという点においてはいずれも同じであります。しかしながらいずれも会社の目的なり、あるいは事業の性質がそれぞれ違っておりますので、そういう面からくる違いがございます。従いまして特にはっきりしておりますのは、この航空機の会社は先ほど申し上げましたようにいわゆる設計、試作という開発段階において特に政府の援助を必要とする。従ってその開発段階において特に政府資金を導入し、量産段階に移行したあとにおいては、民間資金によって主として量産をやらせる。こういう点が一つの特色であろうと思います。石油資源開発会社というものはもちろんその設立目標は違いますが、性格的には大体これに類似しておる。それから東北開発は御承知の通り東北という地域の特殊性によっておりまするし、それから日本合成ゴムにつきましては、これは合成ゴム全体の供給確保のための製造、維持に当るという点でありまして、性格的にはこの航空機の会社とは相当違っております。従いましてそういった事業内容なり目的からくる違いはございますけれども、その他の政府の監督規定であるとか、役員の関係とか、それらの点につきましては、特に特殊な規定を置いておる面はございません。
  123. 田中武夫

    ○田中(武)委員 三十二条以下の罰則の問題ですが、この条文を読んでおりますと、刑法の百九十七条以下のいわゆる涜職の罪の条項と同じような趣旨だと思うのです。一部特に五年以下の懲役に処すという点が違うようなところもあるかと思うが、これを特に設けたのは、あるいは公務員、仲裁人と刑法の方ではなっておるが、ここの特殊会社の役員は公務員ではない。仲裁人でもないから、刑法を準用するという格好でなく、特別にこの改正に入れられた。こういうふうに思うのですが、ほとんど同じような性格の規定を特にここに入れられたのは、刑法百九十七条以下の条文と関連いたしまして、何か特別な理由がありますか。
  124. 小出榮一

    ○小出政府委員 今の罰則の点につきましては、刑法と類似のような罰則が、いずれも会社の公的な性格またその役員が公務員的な性格を持っておるという意味から、職務の公正を期する意味で、あるいは業務上の秘密等に関連いたしまして、特にそういう趣旨から罰則を置いたのでありますが、全部刑法に依存しないで、特に経済関係の罰則という意味におきまして、刑法と類似ではございますけれども、特にこういう規定を置いておるわけでありまして、これは他の特殊会社の先例等も、いずれもこういうような措置をいたしております。
  125. 田中武夫

    ○田中(武)委員 そうするとこれは一つの背任罪、涜職罪と考えていいわけですね、それとも特別なこれによる罪名があるのですか。
  126. 小出榮一

    ○小出政府委員 たとえば三十二条等につきましては、これは贈賄、収賄という規定でございますが、もちろんそういう性質の犯罪でございまして、結局罪名と申しますと、この法律に基く罪、こういうことに正確に申しますればなるわけであります。
  127. 田中武夫

    ○田中(武)委員 まだ若干質問したい点もあるのですが、実は私午後から他の委員会質問予定しておりますので、これで一応終りたいと思います。  特に希望を申し上げたい点は、冒頭申し上げましたように、この航空機の製造ということについて、特殊な事情から特殊会社が必要だということは一応わからぬでもないが、何でもかんでも電源開発以来特殊法人を作ってやっていこうというような考え方だけは、あまりお持ちにならない方がいいのじゃないか。それはものによって必要でもあろうし、しますが、どうもそういうような点で、すっきりしない点もありますが、一応これで終ります。
  128. 長谷川四郎

  129. 小平久雄

    小平(久)委員 本法につきましては、田中委員からだいぶ詳細な質問がありましたので、なるべく簡単に若干の点についてお尋ねしたいと思います。政府が造船工業、さらには自動車工業、これに引き続いて航空機工業というものを、いわゆる総合機械工業の発達の方策として、これを大いに振興していこうという意図に対しましては、われわれもとより大賛成なんでありますが、法案の内容なりあるいは今後のこの会社の運営等について一、二この機会に伺っておきたいと思います。  まず最初に伺いますが、この航空機工業振興法ができてから日も浅いのですが、若干の補助金を出したということがあったようですが、できてから一体政府は具体的にどういう面で振興の措置をとってきたのか、これをお尋ねします。
  130. 小出榮一

    ○小出政府委員 航空機工業振興法の成立を見ましてから、航空機工業の国産化というところが終局の目的でございますので、これに対しまして一定の計画をもちまして国産化を促進すべくやって参ったのでございますが、その中核といたしまして昭和三十二年五月に航空機工業界全体の協力によって、すでに財団法人輸送機設計研究協会ができておりまして、御承知のように三十二年度におきましては三千五百万円の補助金を交付し、また三十三年度におきましては一億二千万円という補助金を交付いたしまして、すでに実物の木型の試作、設計というようなものを開始できる段階になったわけであります。こういうようなことによりまして、従来からのこういった設計研究の面について、そういった中核体に対する助成をいたすと同時に、またそれぞれ関連の形におきまして技術的な面について、いろいろの試験なり研究をいたすにつきましては、それらの研究等に要します技術的な補助金といたしまして交付して参った、こういうようなことであります。従ってそういった設計段階が一応軌道に乗りまして、今回いよいよ試作の段階に入ろうということで、今回の会社を設立して持っていきたい、かように考えます。
  131. 小平久雄

    小平(久)委員 そこで今回の法の改正は、主として製造会社を作る、こういうことにあるようでありますが、従来ありました設計研究協会と今度できます製造会社、この間の関係というものは、将来どういうことになるのか。法案を一読しますと、別段設計研究協会の成果を承継するといったようなことは何にも書いてないようですが、おそらく内部的にはそういう話し合いがもちろんできてこの案になったと私は思いますが、その間の事情をこの機会に説明していただきたい。
  132. 小出榮一

    ○小出政府委員 既存の財団法人輸送機設計研究協会と、今度この法律によって作ろうとしております会社との関係でございますが、実態的には既存の研究協会の事業を引き継ぐ関係になりますので、財団法人の研究協会はこの会社の設立と同時に解散をいたしまして、そしてそれまでにYS—一一型の研究、試作にいろいろの成果がございます、そういった関係の全部の資料あるいは残余の財産というようなものは、この新会社に寄付される、こういうふうなことになると思います。職員等の人的な面につきましても、大体新会社に引き継がれる、かように考えております。
  133. 小平久雄

    小平(久)委員 ただいまの御答弁のうち、設計研究協会の成果というものは新会社に寄付される、特に寄付という言葉を使いましたが、そうすると無償で引き継ぐ、無償で寄付するという意味ですか。
  134. 小出榮一

    ○小出政府委員 既存の財団法人研究協会の残余財産の引き継ぎにつきましては、ただいま寄付と申し上げましたが、その場合における有償、無償の関係でございまするが、この財団法人の寄付行為を定められておりますのは、その財団法人が残金財産を処分するにつきましては、この財団法人の役員の決定に基きまして通産大臣がこれを認可するということになっておりますが、ただいまのところすでにもちろんそれらの点につきましては、協会内部におきましても相談をしてもらっておりますが、現在までのところ大体無償で寄付をする、こういう方針でいくものと考えられます。
  135. 小平久雄

    小平(久)委員 今の御答弁の中で、残余財産を無償で寄付するという大体の方向にあるというお話でしたが、一体残余財産というものの内容はしからば何か、設計の成果であるとか、あるいはこれは大した資産もないのかもしれませんが、多少のものは持っておりましょうし、一番大きなものは何といっても設計の成果だと思うのですが、そういうものを無償で出す、こういう意味なのか。その点はこの法案の中に規定されております設計あるいは試験、そういうものに要した費用というものは、将来この会社の資産としてとっていける、しかもそれを将来研究、試作、試験期の終った後に七カ年で消却するのだ、こういうことまでうたってあるわけです。そういうものの中の一番大きなものは、要するに設計だろうと思います。そういうものを無償でやるということと、将来この会社の資産にとっていくのだという規定と、どういう関係になりますか。
  136. 小出榮一

    ○小出政府委員 財団法人輸送機設計研究協会のいわゆる残余財産というものは、今小平先生から御指摘通り、設計、研究の成果という、いわば無体の財産権、これがほとんど全部でございます。これに関連する多少の機械装置であるとか、あるいは工具、器具、備品というようなものはございますが、無体のものが大体主でございます。それを一応この会社に無償で提供する、こういうことになろうかと思います。
  137. 小平久雄

    小平(久)委員 そうするとこの点はどうなりますか。おそらく既存の協会というものは財団法人だったのじゃないかと思います。そうするとそこには政府の補助金も行ったでしょうが、各航空機会社が、これは財団法人ですから寄付行為でやったのだろうと思うのだが、各航空機会社がすでに今までやりました寄付行為による金銭、そういうものは各航空機会社の純然たる損金として、あるいはもうそういう経理をしておるかどうか知らぬが、あるいは支出というような形になっておるかもしらぬ。その辺はどういうことになるか、自分で出したものは無償になってしまうというのではこれは全然ゼロですね。そこのところはどういうふうになっておりますか。
  138. 小出榮一

    ○小出政府委員 今の協会に対する協力いたしまする各会社の財産、資産等の関係でございますが、政府補助金は別といたしまして、各会社から出しておりまする寄付でございますが、これにつきましては、各会社の経理においては損金としてすでに整理されておる、こういう格好になっております。
  139. 小平久雄

    小平(久)委員 各会社の個々の経理とこの税法上の問題というのは一応別だと思いますが、従来の各航空機会社が協会に出した金ですね。それはどうですか、あなた方知っておりますか。税法上はどういう取扱いをしておりますか。損金として認められてきておるか、あるいは資産として取扱いを受けてきておるかということです。
  140. 小出榮一

    ○小出政府委員 税法上においては損金として取り扱っております。
  141. 小平久雄

    小平(久)委員 事実そうだというお話だから私もそのまま受け取っておきますが、しかし果してそう扱われておるかどうか、私ちょっと疑問に思うのですが、事実がそうだというのですから、これは航空機会社についてあるいは税務当局について詳細なことを聞かなければわからないと思いますから、その点はそれだけにしておきます。  そういうことになりますと、今まで累計が幾らになるか知らぬが、今後会社ができた場合、先ほども申しましたが、法案のうちにはっきりとうたってあるように、設計なり試作なり試験なりに使った費用というものの全部が、結局新会社の資産の部に移っていくわけではなく、従って全部が償却されるわけではないという建前になりますね。そういうことでしょう。今までの分はもう無償になってしまうのだから帳簿に載っけようがないでしょう。また新たに評価面で帳簿に載っけるのですか。
  142. 小出榮一

    ○小出政府委員 今までの政府補助金及び各会社からの金額的な面でございまするが、各会社からは、昭和三十二年度におきましては四千五百万円、三十三年度においては一億八千万円というものが出ておるわけでございまして、これらの点につきまして、新会社においてはこれをいかに経理的にやっていくかという点につきましては、やはり評価できるものにつきましてはこれを評価していく、こういうことになっております。
  143. 小平久雄

    小平(久)委員 先ほどの答弁では無償で寄付するというのだから、今までの分はみんな無償になってしまうのじゃないですか。これはいずれ委員会ができるようだから、そこらで論議されることかと思いますが……。
  144. 小出榮一

    ○小出政府委員 先ほど申しました各会社から出ておりまする金というのは、御承知のように各会社の出向者が——大体この研究協会は各会社の出向者が大部分でございます。専従職員でございますが、それらの者の人件費の関係等において出資されておる金が相当大きな金額になっておる、こういうふうになっております。
  145. 小平久雄

    小平(久)委員 その点もただいまの御答弁ではどうも私も明確にできないような気もしますが、いずれ設立委員会等も設けられるようでありますから、そこらでよく筋の立つように一つ研究願いたい。  次に進みまして、この新会社の性格、今後の運営方針等でありますが、これにつきましては先ほど田中委員から詳しく質問がありました。田中委員の御質問に対する局長の答弁の中で、この会社は製造、販売は行わないということを言われたようだが、これはちょっと言葉がまずかったと思います。いずれにしても出資して、みずからの設計によって現在存する会社に委託製造させてみずから販売する、こういう性格なんだろうと思いますが、従来いろいろ同種の会社がありますが、いわばこういった、なるほど政府の金も、出資もありますが、ある意味においては、これは既存の会社の共同会社ですね。そういう会社というものは、どうも人的の構成等においても、あるいはその後の協力関係等においても、必ずしも一般が期待するようなわけにはいかない。現在の協会も、いわゆる出向の形式で外部の人がきておられるというお話だが、その出向が一流の人がきてやってくれるならばいいが、ましてや今度は純然たる別個の会社になりますから、そこに果して一流の人を出してくれるかどうか。それが今まで新しくできた共同会社というものが、必ずしも期待通りにいかなかった一つの大きな原因ではないかと思います。それとまた一たんできてしまうと、この新しい会社に、現在幾つかの会社がある中で、主要なる人事を送り込んだ会社がリーダー・シップをとってしまって、他の会社は単におつき合いをさせられたといったような、そういった先ほどのこととは、また見ようによれば逆のような欠陥もややもすれば起りがちであったというふうにわれわれは考えるのですが、それらの点についてはどういう配慮を払っておられるか、その点を一つ承わりたい。
  146. 小出榮一

    ○小出政府委員 お答えいたします前に、先ほどの財団法人輸送機設計研究協会から引き継がるべき資産の新会社における処理等につきましては、私の答弁では非常に不十分だと思いますので、なお十分一つ正確な形においてはっきりしておきたいと思います。  それから田中先生に対するお答えの中で、製造、販売の面につきましては、私の言葉が足りませんで、申し上げました意味は、今小平先生御指摘のような意味でありまして、法律は、製造はするが普通の設備的の意味の製造ではない、販売はやる、こういうことでありますので、訂正をいたしておきます。  そこで新会社におきましてその人的な構成の問題につきましては、確かに小平先生の御心配の通りの問題が、実はわれわれも非常に心配しておる点でございます。寄り合い世帯であると同時に、すぐもうかる会社でもございませんで、これの運営等につきましては、非常にむずかしい問題が予想されるわけでございます。従いまして、現在私どもとして具体的な構想を持っておるわけではありませんが、御審議の結果、法律通りまして会社が設立されますまでには、なお若干の期間もございます。その間には、十分関係会社と——実はすでに内々相談はいたしておりますが、協力態勢を作ると同時に、この会社にはできるだけ優秀な人を各界から送り込むことによって、ほんとうにこれが国産化の中核体として適正な運営ができるようにやっていきたい。またそれは現在の機械関係、部品関係あるいは関連各会社の生産分野なり、その能力、設備、技術というような面から見まして、おのずからそこにある程度の基準もできております。各会社の出資比率というようなことにも、これはもちろん考慮はいたしますけれども、必ずしもそれのみによるということも考える必要はございません。あるいは適正なる財産処理というようなものを強力にやって参らなければならぬ。十分相談して参ればいい人を得られるし、またそういうふうにぜひ指導していきたいと考えております。
  147. 小平久雄

    小平(久)委員 ただいまの段階では、今のような御答弁以外にはなかろうと思いますが、先ほど申したような点を具体化しましたならばお示し願いたい。そこで、今の御答弁のうちにもありましたが、人事等も必ずしも各社の出資比率によらないというお話がありましたが、民間からの出資は、そうしますとこれは各社必ずしも平等じゃなく違っていく、こういうことですね。ただ、それもおそらくはこの設計が成功して発注する場合の発注額の比率くらいが基準になって各社の配分等がきまるんじゃないかという気がしますが、その点はどういうことでその比率をきめるのか、また考えようによると、また各社いずれも自由な会社ですから、現在の力というものが必ずしも将来の力ではない、こういう点もあるだろうと思う。そういうことを勘案して、要するに各社への株式の配分というか、引き受けを初めに願うという立場なのかもしれませんが、どういう基準というか、方針でやるのか、また将来はこの会社の株式というものは必ずしも航空機の現在の製造会社ばかりでなく、一般にも公開し、公募するというような道をたどるものなのかどうか、その辺を一つ説明願います。
  148. 小出榮一

    ○小出政府委員 昭和三十四年度さしあたり発足当時における民間出資は二億でございますが、それの割り振りにつきましては、ただいまのところ、すでに日本航空工業会という、御承知の通りの航空機工業の民間団体を中心にしまして、全部の関係会社の人を集めまして相談をしていただいております。従ってただいま、今日現在におきまして具体的にどういう基準でということはまだきまっておりませんが、大体の考え方としましては航空機の中でやはり機体が中心でございますので、機体関係のメーカーが大体半分くらいを持って、さらにその機体関係の中で、各機体関係会社をどういうふうに分けるかという問題は、またその次に出てくるわけでございますが、大体そういうようなことで、あとの半分を修理関係あるいは部品のメーカーあるいは関連の航空運送事業者というようなところに大体期待する、こういうことになろうかと思います。そこで、一般公募という点につきましては、さしあたりとしてはそこまでは考えていないということであります。今までのところでは、関係会社間の話はきわめてスムースに、きわめて協力的に進んでおる、かように承知しております。
  149. 小平久雄

    小平(久)委員 一般公募の点は、もちろんこういう性格の会社ですから、現在直ちに公募してみても、あるいは応募者がないかもしれませんが、しかし一方には非常に将来輸出ができて有利になるのだというようなこともうたっておるのですから、それを楽しみに受ける、応募したいという者も中にはあるかもしれない。さらにもちろん輸出もできるという段階に至りますならば、これはもう一般に公募してももちろん応募する人もいるかもしれません。将来はそのときにならなければわからないといえばそれまでですが、将来は公募することもできるわけですな、この法律の建前からいえば。
  150. 小出榮一

    ○小出政府委員 さしあたり一般公募の必要がないと申しますか、そういうことは考えてないというだけで、法律上は今御指摘通りこれを拒否する規定はございません。また、おそらく将来は航空機に関連する部門あるいは関心のある一般産業界の方々の出資も期待できる、かように考えております。
  151. 小平久雄

    小平(久)委員 次にこの会社の将来のことですが、この点も先ほど田中君からも触れられたようでありましたが、この会社はさしあたってはYS—一一ですか、もっぱらこれの設計、試験、これを中心とした会社ということのようですが、何か政府から出した資料にも書いてありますが、要するにこういった飛行機の開発というものが五、六年もかかる、こういうことでありますから、YS—一一に当面全力を注ぐというのはもとよりでありましょうが、それだけに専念しておって、あとに続くものはどうするのか、こういう問題が一つあるのじゃないかと思うのです。いわば設計であるとか試験であるとかというものがオーバーラップしながらいかなければ、いわゆる日進月歩の時代に、こういった飛行機製造界などは追いつかない、タイムリーにいかぬ、こういうことだろうと思うのですが、そういう面はどうお考えになっておりますか。
  152. 小出榮一

    ○小出政府委員 この会社はもうYS—一一型の量産ということを前提として発足するわけでございますが、日本としては最初の国産機でもございますので、もちろんこれに全力を集中するのが手一ぱいということになるわけでございます。また一度できました飛行機は、これを完成するまでには相当の時間を要することは、各国ともいずれも同じでございます。従って、すでに製造を中止しておるような飛行機が、DC—3がまだ今日なお世界を飛んでおるというような実情でございますが、もちろんこのYS—一一型をもって終るというふうには考えていないわけでありまして、将来における量産態勢が整いました場合におきましてはさらにこのYS—一一型自身の設計の改良ということは、もちろん絶えず行いますが、さらに余力を持つことができますれば、進んで大型のものであるとか、ないしは輸送用のヘリコプターであるとか、あるいは垂直上昇機というものの研究開発ということも考えられますが、これらの点につきましては、将来どういう機種を考えるかというようなことについては、もちろん将来の問題として考える以外には、まだ今日の段階においてはYS—一一型に全力を注ぐ以外にはないのではないかと思いますけれども、もちろんこれだけで終る、これ以外のものには手をつけないという趣旨のものではないと考えます。
  153. 小平久雄

    小平(久)委員 御趣旨はよくわかりますが、YS—一一型というものはともかくこの説明書を見ると、一応量産の計画が終るまでが約十年もかかる、こういうことでございますね。ですから、これをやってみてから、その次のことはまた考えるというのでは、その次の機種という場合になると、私は非常に手おくれになるのではないかという気がするのです。これは人的な関係もありましょうし、経費の問題もありましょうし、いろいろな制約があることはわかりますが、少くともYS—一一というものの目鼻がつけば、ここ二、三年の間には次のものについてさらに設計を初めとした研究を進めていく、こういうことにならなければ、この会社の寿命もきわめて短かい。こういうことになるし、また時代におくれるということもあるし、そういう点をどう考えるかということをお尋ねしたのであります。
  154. 小出榮一

    ○小出政府委員 先ほど申し上げましたように、さしあたりはこのYS—一一型の量産態勢を整えることにおそらく手一ぱいだろうと思いますが、もちろんお話のようにそれが全部終了して、それからまたゆっくり次のものにかかるというような考えではございません。余力ができますならば、できるだけ早くこれと並行して、さらに他のと申しますか、より進んだものにと申しますか、新しい研究開発にも手をつけるべきじゃないか、かように考えます。その間の、それなら大体いつの時期になるかということにつきましては、将来における国内あるいは国際的な情勢ともにらみ合せて、航空機工業審議会というようなところでも、絶えず御審議をいただきまして、機種なりあるいは設計の決定をしていく、かように考えております。
  155. 小平久雄

    小平(久)委員 では次に設計試験の段階における資金関係について若干お尋ねいたしますが、これも先ほど田中君から質問がありました。この政府の資料を見ると、いずれにしても三十五年度、三十六年度ですか、これがピークのようですね。そして先ほどもっぱら出資の関係についてのお尋ねがあったのでしたが、おそらく私は政府の財政の都合等からすれば、三十五年度が十五億一千五百万ですか、三十六年度は十五億、これだけ要るというが、とてもこの需要には政府はこたえきれないのではないか。もちろんそれだけ熱意があれば一番けっこうなんですが、そうなると結局は借入金なり社債なりという問題になるのじゃないかと思う。その規定もこの法案のうちにはあるようですが、その辺はどう考えておられますか。
  156. 小出榮一

    ○小出政府委員 お話の通り一応量産態勢が整います昭和三十八年度までに総額三十九億五千五百万円という経費を予定しておるわけであります。年度別には、三十四年度は出資、補助金その他を合せまして五億六千万円という総経費でございます。三十五年度あるいは三十六年度、この辺が相当ピークでございまして、いずれも十五億円というような金額になるわけであります。これをどういうふうにしてまかなうかという問題につきましては、私どもとしてはできるだけ政府出資の増額というような点につきましては努力をいたしたいと思いまするし、また大蔵省方面との今年三十四年度予算折衝の過程等におきましても、御承知の通り経済援助資金特別会計から、さらに引き続き将来も出資が継続されるという予想は大体私どもも持っております。出資の点につきましては、相当程度三十五年度以降におきましても、期待できるのではないかと思います。足りない分は、もちろんこれもできるだけ低利の資金でまかなっていく必要がありまするので、開発銀行融資なり、そういった財政投融資関係などによりまして援助していきたいと考えます。
  157. 小平久雄

    小平(久)委員 先ほど局長のお言葉のうちにもあったようですが、この会社と石油資源開発会社、これは性格が同じようなものだ、なるほどこれは人間が設計しておるのですから、皆さんだいぶ自信があるようだから、石油資源開発の試掘ほど危険性はないかもしれませんが、それにしても果して皆さんが御想像なさっておるほど輸出にまで手が伸びるのかどうか、この点も私は若干疑問がありますが、大体の性格は同じようなものです。そこで石油資源開発会社の関係においては、今国会におきまして借入金等の政府保証措置をとったわけです。ところがこの法案にはそういう規定は一向ないようですが、局長が努力されることは当然であり、またそれを期待しますが、なかなか財政資金だけで十五億程度の金を、若干は民間もありましょうが、これをまかなうことができないというようなことになると、これは来年、再来年あたりは、この会社が非常にピンチということにならざるを得ない。そこでどうしても借り入れなり社債の発行なりをする。この社債の発行をするということが、どうもこの会社の資産というものが無形財産なんですから、なるほど帳簿価格の載っけようによっては載っかるかもしれませんが、有名無実といえば有名無実ということにもなるわけです。この社債等の発行というものは、政府保証でもなければなかなか困難ではないかと思います。そこで政府保証などという制度についてはお考えがなかったか、何か考えられても大蔵省にけられてしまった、こういうことですか。
  158. 小出榮一

    ○小出政府委員 御指摘通り来年、再来年の十五億円という金をまかなっていきますのは容易ならぬことであるということは、私どもも覚悟しておりました。これが安易に簡単に達成できるというふうには全然考えておりません。従いまして、財政投融資の面に極力全力を尽しますことは、当然でございまするが、今御指摘になりました法律上におきましても、石油資源開発会社におきまして、今回一般的な債務の保証という規定が入るようでございますが、それと同じような規定あるいは社債の発行につきまして保証するというような規定を置いたらどうかということは、確かに私どももこの法律を立案する過程におきまして考え、大蔵省とも折衝いたしたのでありますが、とりあえずこの発足のときさにおきましては、一応この形でいくということに落ちついたわけであります。さらに将来今の社債の点等につきまして、その必要がどうしてもあるという場合には、適時にまた法律改正するなりなんなりして、その方面の努力も続けていきたい、かように考えております。
  159. 小平久雄

    小平(久)委員 では次に題を変えまして、この将来の需給のことについて若干所信を伺っておきたいと思います。要するに御説明によると、四十四年度までに百五十機を作って、大体国内需要が五十機程度、百機程度は輸出、こういうことを期待しておるようでありますが、果してそういうことについて自信があるのかどうか、われわれがちょっと考えたところでも幾つかの不安な条件があるのではないかと思う。DC—3なりDC—4なり、リプレースその他の問題については、実際ダグラス会社ならダグラス会社自身がおそらく考えているのではないかという気がします。  それから何と申しましても、これは新たに作るのですから——日本の自動車が輸出するまでに至った、こういうようなお話も先ほどありましたが、それには何と申しましても、国内で国産自動車に対する信頼というものが相当高まる、その後において初めて輸出もできる。国内で使ったこともない、どんなものができるかわからないものを初めから輸出を当て込んでやる、こういう点について若干というよりも、私はむしろ大いに不安を感ずるのです。それも一点。  それからこの計画は機体はなるほど一応国産ということのようでありますが、エンジンは英国から輸入しておる、こういうことなんですね。ところがそのエンジンが優秀だと、この説明には書いてありますが、これも聞くところによれば、まだ試作中だとかいうように聞いております。これもできてみなければ、果して優秀なのか優秀でないのかわからない。あるいはまたそのエンジンのメーカーが、これはむしろ一般の取引でありますから、日本にはかくかくの条件でなければ売らぬというようなことでも出てくれば、これはいかにこちらが当て込んでも、適時にしかもまた適量を、あるいはまた適切な価格でこれを輸入するというわけにはいかぬだろうと思います。ちょっと考えただけでも、そういった二、三の不安な点が私はあるのではないかと思いますが、そういう点はどうお考えになりますか。
  160. 小出榮一

    ○小出政府委員 この会社を作りまして、将来量産態勢に入っていくということが当然の前提でございますが、それには当然この販売先と申しますか、需要面の確実な予想がなければ、量産態勢が確立できないということは当然のことでございます。従いまして、私どもがこの計画を考えます際におきましては、実はその需要の想定というところに一番重点を置きまして、できるだけかたく、かたく見積るという方針で考えてみたわけでございます。そこで国内路線といたしましては、これは特にあらためて御説明の必要はないかと思いますが、一番不確定な要素と考えられますのは、やはり輸出の面でございますが、先ほど田中先生の御質問にも申し上げましたように、全体の世界各国の民間輸送機、大体ここで考えております中型輸送機と並ぶような程度の規模のものといたしましては、やはりその代替の時期ということを考えますと、現在日本で設計いたしておりますYS—一一のような優秀な設計によって代替を考慮しておる競争相手というものは、そんなにないということが考えられまするし、また先ほど申し上げましたように、東南アジア、中近東あるいは中南米というようなところにおいて需要いたしまする需要機数、それが将来の新規需要というものが約一千機ぐらいあるだろう、そして代替及び新規需要が一千二百機ある。それに対しまして、かりに一割というふうに見積りましても、百機をこえる、こういうふうに考えるわけであります。これはまずコスト的な面におきましても国際競争力がございまするし、また技術的な面につきましても、やはり十分にこれに競争し得る。それから特に今お話のございましたエンジン面、これは航空機の信頼性なり安全性という点におきましては、エンジンが実は一番重要でございまするが、そのエンジンにつきましては、遺憾ながらまだ国産ができない。従いまして、これにつきましては、ロールス・ロイスのダート一〇という型を入れるわけでございますが、今度入れようといたしておりまするエンジンについては、すでに先月末に、耐久試験まで行いまして、その試験は成功裡に終っておるという情報が入っておりまして、今後十八カ月後、一年半くらい先にはマス・プロ態勢に入ることが可能であるということがすでに保証されております。なおこの間ロールス・ロイスの会社とは絶えず緊密な連絡をとりながらやっていくわけでありまして、実際に量産態勢に入る数年後におきましては、当然これは最も優秀なるエンジンとして、国際的に信頼性のあるものになると、かように考えておる次第であります。
  161. 小平久雄

    小平(久)委員 今の御説明のうち、ロールス・ロイスとの提携ということですが、これは具体的に何か契約でもすでにできているのですか。あるいは会社ができたらすぐにでもやろう、こういうことなのか、そこも一つこの際承わっておきたいと思います。  それから価格の面ですね。今コストの面で非常に有利だというお話がありましたが、一体コストのうち、どういう点が有利なのか。外国には競争相手がないというお話がありましたが、そこらはよほど情報でもとられての確信に立っての答弁だと思いますが、コストの内訳というのもあるいは無理かもしれませんが、一応三億五千万でしたか、そういう値段までここに出して、有利だと、こう言っているのですから、何か予想のコストというものがあるのだろうと思うのですが、そういうものも——まあ今なければあとでもけっこうですが、参考に資料として出していただきたいと思いますが、どういうところで、いわば後進的なわが国の飛行機工業というものが、他国よりも安くできるのか、その辺もちょっと説明して下さい。
  162. 小出榮一

    ○小出政府委員 まず前段のロールス・ロイスとの提携の問題でございまするが、これはすでにロールス・ロイスとの問に話し合いが進められておりまして、ロールス・ロイスの技術者が二名ですか、すでにこちらに来て、輸送機設計研究協会と提携をとりながらやっているわけでございまして、これにつきましては、十分にできると思います。特に、御承知のように、イギリスの航空機産業というのは、輸出産業ということが最大の重点になっております。従って、これらの面につきましては、向うも相当積極的に日本に対して輸出するという意欲は十分にあると思います。  それから第二のコスト的な経済性の面でございますが、これも一機当り約三億五千万円という計算を出したのでございますが、これはもちろん積み上げた一応の検討をしたものでございまして、航空輸送関係の会社の経費の中の大体六〇%ないし七五%というものは、輸送機を運航する直接運航費ということになっておりまして、運航費が安いかどうかということが、結局価値判断の一番最大の要点になっておるのでありまして、これらの運航費を国際的な基準によっていろいろ比較検討いたしまして、既存のDC—3ないしDC—4、そういうレシプロ機と比べましてYS—一一は大体二〇%以上安いというふうに考えます。従いましてそういうような面からいたしまして、コスト的には十分国際的にも引き合うだろうというふうに考えられますし、それから先ほどお答えいたしましたように、この会社自身といたしましていろいろ金利、償却あるいは営業費、販売費というような面につきましては、かなり弾力的に見積って十分の余裕をもって計算してありまして、かりに材料費等において多少の値上りがあるといたしましても、十分それを吸収して、一機当りのコストを低く押えるということができると考えられますし、量産態勢に入りますれば、ますます量産によるコスト・タウンということで、経済性の点においては有利にやっていくだろう、かように考えておる次第であります。
  163. 小平久雄

    小平(久)委員 そのコストの関係はどういう計算で出るのか、もし資料がありましたら参考のために、あとでけっこうですから、一つ提出願いたいと思います。  それから今のお話のうちにもありましたが、コストが安くいくということももちろんですが、何と申しましても航空機の場合には安全性というものが一番大きな問題だろうと思うのです。聞くところによると、このYS—一一というのは双発だそうでありますが、これはわれわれしろうとが飛行機に乗る場合でも、どうも双発に乗ると何となく心細い気がします。双発から四発に乗ったときには大へん心強いような気がしますし、逆に四発から双発に乗りかえたときには、何か心細いような気がする。これは単なる説明では済まされないのですね。感情というか感じですから……。双発でも大丈夫なんだと、いかにいわれても、多少運賃をよけい払っても、四発に乗った方が安全なような気がする。少くもわれわれしろうとはそういう感じを抱くのですね。それで私は飛行機屋さんの専門家の一、二の人に聞いてみたことがあるのですが、一体双発の場合と四発の場合どちらが安全率が高いかということなんです。それは四発が全部完全なものでなければ、これは幾ら十つけようが二十つけようがだめということになるでしょうが、しかし一般的にいえば、やはりどちらの性能も同じだということにすれば、双発よりも四発の方が安全だ、こういうことに何かなるらしいように私は聞いておるのですが、そういう点で今度のYS—一一型というものは、先ほど申しましたが、日本ではとにかく初めて作るのですから、だれもこれの安全性は、計算上はしているのかもしれないけれども体験した者がない。それを輸出まで当て込んでやろうというのですが、従って安全性というものを、よほど重視して設計をされなければならぬし、もちろんそうされていることとは思いますが、ただわれわれ一般人の感じというか——感じだからこれはどうもしようがないと言われればそうかもしれないが、そこらのところはどういう配慮を払って、あるいはどういう確信に立って双発を採用されることになっておるのか、その点も一つ承わっておきたいと思います。
  164. 小出榮一

    ○小出政府委員 最初の国産機としてなぜこれを双発にしたか、四発の方が少くとも安全感があるのではないかという点につきましては、全く同じような感じを実は私もしろうとの一人として持っておったわけであります。従いまして、もちろんそういう飛行機を作って売り出す以上は、一度でも事故がありますと直ちに信頼性、安全性がなくなりまして売れなくなるということで、従ってその航空機の安全性、信頼性ということは生産者として、あるいは販売者としては一番重点を置いて考えている点だと思います。従いまして、私がここで幾ら説明をいたしましても、技術屋ではないものでございますからして、御納得がいかないかと思いまするが、私ども自身といたしましても、そういう気がいたしましたので、専門の技術屋さん等にくどいほどこの点につきましては確かめまして、大丈夫だという答えを得、またそういう確信を私ども自身も持ったわけでございます。すでに先進国におきまして、たとえばオランダのフレンドシップとかあるいはフランスのキャラベル、これはジェット機でございます。それからソ連のTU104、これもジェット機でありますが、こういうような最近できておりまする新鋭機はいずれも双発でございます。従って双発だから四発よりは不安である、安全性が少いということにはやはりなっていないようでございます。ことに信頼性、安全性につきましては、何と申しましてもエンジンが一番重点でございます。そのエンジンにつきましては、先ほど申しましたようにロールス・ロイスのダート一〇、ターボ・プロップ・エンジンを選定したわけでございます。これを経験がないと申しましても、そういったダート一〇エンジンそれ自体は、運転以来十二年を経過しておりまして、それのただ改良型でございます。十分これは信頼性があるということでございまするし、また信頼性、安全性と同時に経済性というものもあわせて加味して考えなければならないし、それらを全部総合いたしますると、やはりこの際は双発ということが最も適当であり、かつ大丈夫である、こういうふうなことでございます。先般DC—3の墜落に伴いまして航空安全懇談会というのが政府全体、運輸省あるいは科学技術庁、通産省共同で持たれたわけでありまして、民間のあらゆる方面の学識経験者を集めまして、十分その事故の原因等も検討いたしたのですが、双発なるがゆえにという結論は全然出ていないわけであります。そういうような点におきまして、あるいはお答えにならぬかと思いますが、私どもとしては十分その点を検討したつもりでございまして、それらの点を信頼いたしました上で、こういう計画を作った次第であります。
  165. 小平久雄

    小平(久)委員 だいぶ時間も経過しましたから、私はあと一点だけで質問を終りますが、ただいまの点につきましては、局長の御説明通り、おそらく専門家の意見を尊重する、こういう一言に尽きると思うのですが、ただ専門家の意見はまさに尊重しなければなりませんが、一般使用者の感じというものも無視できないものですから、この点は一つさらに専門家等と打ち合せられて、一般利用者が安心できるように一つお願いしたいと思います。  そこでエンジンの問題ですが、これはさしあたり輸入するよりほかないでしょうが、国内での生産という点については一体どういう計画なりお考えなりをお持ちですか。  それと機体の材料、これについては今度の設計からいうと、ほとんど国産でいけるのかどうなのか。現在の防衛庁の飛行機などでも一部は輸入をしておるとも聞いておりますが、かりに輸入するとすればどのくらい輸入しなければならないのか。さらにさかのぼれば、日本の自動車工業の発達の過程を見ると、格好だけはいかにも外国に劣らぬようなものができたが、少し使っているうちにすぐガタがきてしまうということで、長年信用が得られなかったのであります。その根本はもちろん工作方法にもよりましょうが、むしろ材料の面での欠陥というものが、より根本的な欠陥であったのではないかとわれわれは考えておるわけですが、一体航空機の機体の材料等についても、これは最近は金属材料研究所などもできましたし、研究なさっておるのだと思いますが、しかし終戦後はこの面でも一つのブランクがあるわけです。国産の機材というものが果して現状において、そのまま信頼できるのかどうか。あるいはこれの改善というようなことについて、どういう手を打っておるのか、結局はここに帰着するのではないかと思うのですが、工作機械を外国から入れてきて、工作はできるということになると思いますが、結局は材料、材質の問題、こういうことになると思うのですが、そういう面で一体どういう対策を講じられるのか、最後にそれだけを承わって、せっかくできる会社ですし、また当局が非常に熱を入れておられることもわれわれは感知するところでありますので、その目的が十分達せられるように希望しながら、私の質問を終ります。
  166. 小出榮一

    ○小出政府委員 まずエンジンの点でございまするが、もちろんロールス・ロイスのエンジンは輸入してやるわけでありますけれども、いつまでもエンジンにつきまして輸入に依存するということは、国際収支の面から申しましても、また国内のエンジン関係の技術の向上、あるいは生産対策確立の面などからも不適当でございますので、この面についてもできるだけ早く国産化を進めたいと思います。御承知のように現在エンジン関係につきましては、日本ジェット・エンジンという会社、これもある程度の国策的な会社でございます。これにつきまして、今年度わずかでございますけれども、このターボ・プロップ・エンジンの研究開発のために補助金もすでに交付しております。今後やはり八年くらいかかろうかと思いますけれども、エンジン関係についての研究開発促進というようなことについてもできるだけ促進したい、かように考えております。それから機体の材料関係等でございますが、これは全部国産でやる予定であります。  それから防衛庁関係につきまして、輸入の面がございまするけれども、これは戦闘機等のいわゆる超音速のジェット戦闘機というようなものがございます。これは非常に材料がしっかりしていないと耐えられないという面もございまして、これらのようなものになりますと、やはり輸入に待つ面がございますけれども、しかし国産のジェット機等につきましても、やはり大型機材以外は全部もうすでに国産でまかなっております。従ってこういったプロペラ・エンジンの飛行機等におきましては、十分国産でやれると思います。ただそれらの材質の改良等につきましては、もちろんあらゆる試験研究機関あるいは生産機関を通じまして、その改善、改良にはできるだけ手を尽していきたい、かように考えております。
  167. 長谷川四郎

    長谷川委員長 私が一つ聞きますけれども、エンジンは技術提携じゃなくて、売買契約ですね、何カ年とかいう……。
  168. 小出榮一

    ○小出政府委員 そうです、輸入でございます。
  169. 長谷川四郎

    長谷川委員長 本日は、これにて散会いたします。  次会は来たる二月十七日火曜日午前十時より開会いたします。     午後二時二十一分散会      ————◇—————