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1959-03-31 第31回国会 衆議院 社会労働委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月三十一日(火曜日)     午前十一時九分開議  出席委員    委員長  園田  直君    理事 大坪 保雄君 理事 田中 正巳君    理事 八田 貞義君 理事 小林  進君    理事 滝井 義高君 理事 五島 虎雄君       小川 半次君    亀山 孝一君       河野 孝子君    齋藤 邦吉君       志賀健次郎君    田邉 國男君       中山 マサ君    二階堂 進君       柳谷清三郎君    山下 春江君       山田 彌一君    岡本 隆一君       多賀谷真稔君    八木 一男君       吉川 兼光君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 坂田 道太君         労 働 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         厚生政務次官  池田 清志君         厚生事務官   森本  潔君         (大臣官房長)         厚生事務官   安田  巖君         (社会局長)         厚生事務官   高田 浩運君         (児童局長)         厚生事務官   太宰 博邦君         (保険局長)         労働事務官   澁谷 直藏君         (大臣官房長)         運輸事務官         (船員局長)  土井 智喜君  委員外出席者         議     員 五島 虎雄君         厚生事務官         (社会局生活課         長)      中村 一成君         厚生事務官         (保険局船員保         険課長)    戸澤 政方君         厚生事務官         (引揚援護局援         護課長)    山田 真澄君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 三月二十八日  委員谷川和穗辞任につき、その補欠として町  村金五君が議長指名委員に選任された。 同月二十九日  委員町村金五君が退職された。 同月三十日  委員中村梅吉辞任につき、その補欠として古  川丈吉君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月二十七日  健康保険法労働者災害補償保険法失業保険  法及び厚生年金保険法の一部を改正する法律案  (多賀谷真稔君外十三名提出衆法第六一号)  政府に対する不正手段による支払請求防止等  に関する法律を廃止する法律の一部を改正する  法律案五島虎雄君外十三名提出衆法第六二  号) 同月二十八日  身体障害者雇用法案坂本昭君外六名提出、参  法第一一号)(予) 同月三十一日  職業訓練法の一部を改正する法律案五島虎雄  君外十三名提出衆法第六五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  へい獣処理場等に関する法律の一部を改正する  法律案起算に関する件  社会福祉事業法の一部を改正する法律案内閣  提出第六六号)(参議院送付)  消費生活協同組合法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一八四号)  中小企業退職金共済法案内閣提出第一一六  号)  政府に対する不正手段による支払請求防止等  に関する法律を廃止する  法律の一部を改正する法律案五島虎雄君外十  三名提出衆法第六二号)  職業訓練法の一部を改正する法律案五島虎雄  君外十三名提出衆法第六五号)  厚生関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 園田直

    園田委員長 これより会議を開きます。  去る二十七日付託になりました五島虎雄君外十三名提出政府に対する不正手段による支払請求防止等に関する法律を廃止する法律の一部を改正する法律案議題とし、審査に入ります。まず趣旨説明を聴取いたします。五島虎雄君。     —————————————
  3. 五島虎雄

    五島虎雄君 ただいま議題となりました政府に対する不正手段による支払請求防止等に関する法律を廃止する法律の一部を改正する法律案について提案理由を御説明申し上げます。  PW、すなわち一般職種別賃金が、現在一部の労務者賃金を抑圧、従ってその生活を圧迫し、ひいては全労働者賃金に好ましからぬ影響を与えていることが、PWを廃止しようという根本的な理由でありまして、ここにPW根拠法規を一部改正する必要があると考えるものであります。  その理由は、まず第一に、土建及び自由労働者昭和二十二年以来、PWによって最高賃金額を抑えられているという事実であります。これら労務者賃金は、政府に対する不正手段による支払請求防止等に関する法律を廃止する法律に基く労働省告示によってきめられているものでありまして、これが一般職種別賃金基本日額表としてその額を明示され、最高額が押えられているのであります。すなわち、これ以上の額を支払ってはいけないというのが、右法律及びその告示趣旨でありまして、ここにPW頭打ち賃金と呼ばれる理由が存するのであります。さらに、緊急失業対策法第十条及び緊急失業対策法施行規則第八条では、失業対策事業に使用される労務者に支払われる賃金の額は百分の八十から九十までの額と規定しているため、失対労働者もまたPWによる手ひどい賃金ストップを余儀なくされているのが実情であります。土建労働者及び自由労務者がこのように賃金の額を抑えられ、最高額を規定される結果として、このPWが、他の労働者賃金にも強い影響を与えていることも重要であると言わねばなりません。このことは、PW公共事業だけでなく、民間労働者賃金を決定する際の重要な基準となっていることを見れば明らかに理解されるところであります。  さらに最低賃金法PWとの関係について考慮する必要があると考えます。最低賃金法は、本来労働者最低生活を保障するため、労働賃金最低を押えるということをねらいとしたものでありまして、この最低賃金法必要性がすでに各方面から認められている現在におきまして、これと矛盾するPWを許す余地はないと考えるのであります。すでに第二十八国会の衆議院社会労働委員会におきましては、石田国務大臣は次のように述べております。「しかしこれが(PW最高賃金賃金のくぎづけにする材料にされるということは、私は望ましくないと存じておりますので、この最低賃金法が実施せられましたあとにおきましては、この問題の処理についてはぜひ改正を加えたい」このように、PWすなわち一般職種別賃金の廃止の必要性は各方面から認められているのであります。  以上をもって政府に対する不正手段による支払請求防止等に関する法律を廃止する法律の一部を改正する法律案提案理由とする次第であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さるようお願い申し上げます。
  4. 園田直

    園田委員長 以上で説明は終りました。なお、本案についての質疑は後日に譲ることといたします。     —————————————
  5. 園田直

    園田委員長 社会福祉事業法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。質疑に入ります。滝井義高君。
  6. 滝井義高

    滝井委員 社会福祉事業法の一部を改正する法律案について、一、二点質問をいたしたいのですが、最近の厚生行政を見ますと、さきには骨関節結核児童に対する療育のための制度を確立しまして、さらに結核濃厚感染源対策を打ち出すというように、いわば非常に重要な点で抜けておったところを一つ一つ補強する厚生行政が、おそまきながらとられておることは非常に喜ばしいことでございます。今回出て参りました社会福祉事業法の一部を改正する法律案を見ましても、最近日本の国内に非常に増加をしておる精神病、特に精神薄弱者援護施設を経営する事業を第一種の社会福祉事業に加えることにした点は、非常に私はやはり画期的なものだと考えております。元来精神薄弱者福祉政策というものは、今までは児童福祉法による十八才未満精神薄弱児童対象にしておったのですが、今回新たに十八才以上の精神薄弱者対象にする施設にも国の補助金を出そう、こういうことのようでございます。そこで私がお尋ねしたい点は、最近における小中学校学童の中に非常に精神薄弱児が多いわけです。私の見た統計では四%くらいだということを言っておりましたが、最近厚生白書等を見ると五%くらいになっておるわけなのです。これらの者に一体厚生行政としてどういう具体的な対策を打たれておるのかということです。なるほど生活保護階層なりボーダーライン層というものは児童福祉法等で何とかやっていけると思うのですが、小中学校の生徒が千六百万ばかりおるのですが、その五%としても八十万をこえるわけです。そうすると現在ボーダーライン層なり生活保護対象の者で厚生省が手がけておる者は一体幾らなのか、そしてその手がけておるものを差し引いた残りの、八十八万マイナス児童福祉法対象になっている者イコール、そこにXという数が出るのですが、そういうものは一体どういうことになっておるのか、この二点をまず御説明願いたいと思います。
  7. 安田巖

    安田(巖)政府委員 お答え申し上げます。今おあげになりました文部省調査でございますが、小中学生千六百八十万の中で精神薄弱児が約八十八万人という数字が出ておるようでございます。十八才未満のそういった精薄者に対して現在どういう措置がとられておるかということでありますけれども、三十三年九月の児童局の調べによりますと、大体収容施設が百一、通園施設が十一でございまして、収容されております者が収容施設におきまして五千八百三十九人、通園施設におきまして三百四十一人でございます。もちろんそれらの収容施設には、回転をいたしておりますから、その数字よりたくさんの者がだんだん収容されることになると思います。そこで問題は精薄者と申しましても、これは御承知のようにいろいろ程度がございまして、文部省対象になっております八十八万人の精神薄弱児がすべて特殊な施設に入れて文部省義務教育課程から除くべきものであるかどうかという点につきましては、これはむしろ文部省考え方といたしましては大体魯鈍級でございまして、やはり特殊な教室等を設ければ、教育対象になるというふうな考え方ではないかと私は聞いておるわけでございます。  それからもう一つは、今申しました数字のうちでも、かりに精神状態としては相当の精薄程度がひどいのもありましても、それが直ちに収容するかどうかということになりますと、それにはまた当人の置かれました環境等も考慮いたさなければならぬと思うのでございます。今のところそういうものを勘案いたしまして、どれだけのものがそれでは児童施設として適切であるかという点につきましては、まだわかっておらないのでございます。明年度はそういった点につきましては、また調査を始める予算が計上されておりますので、その結果を待って対策を立てるように承わっております。
  8. 滝井義高

    滝井委員 今の小中学生千六百八十万人の中の八十八万人、それに各施設収容されておる者の数は六千人そこそこということになると、八十八万ですから、六千人を引いたって八十七万程度の人々は全くこれは魯鈍級で、文部省に今まかせられておる、こういうことなんですね。
  9. 安田巖

    安田(巖)政府委員 八十八万人という数字が、これは全部児童局の、つまり厚生行政対象といたしまして特殊な施設収容しなければならぬということはないと思うのです。これは滝井先生もお認めになると思います。私が聞いておりますのでは、児童局では大体要収容者三万人くらいということに推計いたしておるように聞いております。
  10. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、その八十八万の小中学の学童の中で、収容を要する者は三万人前後だ、こういうことでございます。従ってその三万人に対する施設というものが、何か——これはだんだん子供が大きくなってくれば今度は成人の方の部類に入ってくるわけですが、何かそこに文部省と連絡をしながら、厚生省では、これは児童局長所管になると思うのですが、大臣がいらっしゃるので、その収容を要する三万人程度の者を一体どういう形で今後計画的にやっていかれることになるのですか。実は最近における日本の、何と申しますか今厚生省設置法関係のあるバース・コントロールの問題にもこれは関連してくるのです。いつか予算委員会でも少し触れたのですが、多分公衆衛生局から児童局産児調節の問題は所管がえをやられておると思うのです。そうしますと、これはまたあとで触れてきますが、乳幼児精神薄弱の問題にも関連してくるのであります。最近日本においては、非常に精神薄弱児増加傾向にあるのですね。その統計を私今ここに持っておりませんが、増加傾向にあるということが一般の文献にも書かれております。そうしますと、自然的に学童における精神薄弱児増加をしてくる。数が増加すれば、その中で重い者も、それに比例をしないかもしれぬが、ある程度見合って増加をしてくることは確実です。従って今度だんだんこういう文明が非常に高度になり、しかも複雑になって参りますと、学童の中の要収容者が三万人よりだんだん増加をしてくる傾向が出てくると思うのです。従ってそれらに対する厚生当局としての計画的な精神薄弱者収容というようなもの、あるいはそれを指導するのには具体的にどういう対策をお持ちになるのかという点ですね。
  11. 安田巖

    安田(巖)政府委員 先ほどから申しましたように、現在の児童保護施設精薄施設収容力に比しまして、収容を要する者がそれを上回っておるということは事実だと思うのでありますが、しかしこれは具体的にどれだけ収容して、どういう計画を立てるかということにつきましては、先ほどお話し申し上げましたように、明年度そういった精薄児実態調査をすることになっておりまして、さらにそういった調査による正確な資料に基いて立てられることではないかと思うのです。しかし先ほどもちょっとお話がありましたが、先日も精薄児の方の協会の常務理事をしておる人が来たのでございますけれども、やはりそういったでき上ったものを追っかけていくよりも、そういった精薄児ができないように予防措置をとることがこれはぜひ必要であるということを、私のところに参りまして強調していったわけであります。そういう点につきましては、やはり家族計画なりあるいは母性の保護と申しますか、妊産婦の保護、そういったものが非常に重要な問題になってくるのではないかというふうに私どもも考えておるわけでございまして、そういった点につきましても、厚生省としていろいろ予算を計上して今後やっていくように承わっております。
  12. 坂田道太

    坂田国務大臣 御承知のように、精薄児及び精薄者というものがだんだん増加してくる傾向にある。これは一面においては、従来調査等におきまして不十分な点がございまして、実在としてはあったものが調査の結果顕在化してきた、あるいはいろいろの習慣等におきまして、自分の家庭の中に精薄者があるということを公けに出すことをちゅうちょするというような状況もございましたけれども、しかし一面におきまして、そういう精薄者に対して施設が設けられる、あるいは指導がなされる、あるいはまた国がこれに対して援助の手を伸べるというようなことからいたしまして、漸次そういうものが顕在化をしてくる、数字にも現われてくる、こういうことも増加した数字にもなってきておるかと思いますけれども、やはり御指摘になりましたように、生まれてくる児童の中に精薄者が多いというようなことも、かねがね私たちは聞いておるわけでございます。今日の青少年の犯罪というような問題を取り上げてみましても、その中には非常に精薄者子供が多い、あるいは売春等によって非常に業者にいじめられておるというような人たちを取り上げてみると、その中の相当部分がやはり精薄者であるというようなことが、今日だんだんと実はわかって参ったわけでございまして、やはり今後生まれいずる子供にそのような精薄者が多いということは、人口問題といたしましても、また民族の将来から考えましても、これはゆゆしき問題であると思うのでありまして、今日人口問題というものが、量の問題も非常に大きな問題ではありまするけれども、その質的な問題ということを一面において考えていかなければならないわけでございます。そういう意味から、今局長が答弁をいたしましたように、家族計画等によりまして、そのようにどうしても遺伝的に悪いというような人たちが生まれ出ないような家族計画というものが望ましいのではないかというふうに、われわれとしては考えておるわけでございます。  先ほどからお話がございまするように、しかしながらこれらの方々を、児童につきましてもあるいはおとなの人たちにつきましても、これを収容するところの施設というものが非常に少いわけでございまして、これらのものに対しまして、収容をする施設を完備していくということがわれわれの務めでなくてはならないということを考えまして、実は児童精薄施設については従来、これもまたそうたくさんではございませんけれども、ございましたものに加えまして、本年度から大人の精薄施設というものを作って、将来におきましては各ブロック別にでも作っていくという考えでおるわけでございます。また同時に、これは単に厚生省だけの問題でなくて、精薄児童というものの教育という問題、これもやはり大きな一つの問題かと思うわけでございまして、最近精薄学級であるとかあるいは教育につきましても、文部当局においていろいろ学級増加あるいは施設増加ということも考えておられるわけでございます。これらと相待ちまして、精神薄弱児童及び精神薄弱者に対する施設並びにこれらに対する指導、特に職業指導等について、一つ十分な手助けをいたしたいというのがこの法案提出いたした大きなねらいであるわけでございます。
  13. 滝井義高

    滝井委員 やはり昨日でありましたか、厚生省医療保障の五人委員会厚生省に勧告しておったように、やはり医療にしても、何にしても、計画が必要なんですが、その計画というものがどうも日本行政には欠けておって、そのときそのときの力関係予算が削られたりふえたりするということではいかぬと思うのです。こういう精神薄弱児とか結核というようなものは、一挙にしてこれは直るものではないわけですから、非常に長期療養を要するものです。従って、長期療養を要するものは、ちょうど国民年金計画が必要と同じように、やはり長期計画が必要だと思います。子供のときに精神薄弱者になれば、だんだんそれが、この複雑な世の中生活をしていくにつれて、むしろ精神薄弱状態というものはだんだん悪くなりこそすれ、よくなるということは、よほどの社会的ないい環境において指導しなければ、これはむずかしい世の中だと思うのです。だとすると、やはりこれは揺籃のときから計画が立てられておらなければならぬと思う。今私は中の学童をとりましたが、厚生省から出していただきました資料を見ても、成人乳幼児精神薄弱者は四百万人くらいあるといわれておる。そうしますと、一体学童は、魯鈍級で八十八万だが、収上容を要する者は三万だ。しかし、出ている資料を見ますと、十八才以上の施設収容を必要とする精神薄弱者数は六万六千五百人、こうなっておる。四百万人の中の一・五%程度だというのは、こういうものの見方としては、私はあまりにも少いと思うのです。その中で子供が半分おりますから、まあ三%、半分々々にしてみても、二百万が乳幼児、二百万が十八才以上の成人と見ても、三%そこそこだ、こういうことなんですね。そうすると、学童のところのわずかの年令をとっても五%、こういう統計上の数字の点からいっても、学童の半分以下では、どうもちょっとおかしいところもある。ただ、学童は集団的に学校とい場所に一かたまりになっておるから、これは調査がしやすいので、あるいは五%という高いものになり、乳幼児なり十八才以上の精神薄弱者というものは、ばっと社会に分散をしておるので、把握しにくいから率が低くなるということも考えられますが、ここらあたりの対策なんですね。今度予算を見ますと、精神薄弱者援護費二千五百七十万一千円が計上せられて、その施設を二カ所作って、運営費八割、施設費二分の一の補助になっておるのですが、乳幼児というのは家庭におるから大して社会的に目立たないと思うのです。学童までは大して社会的な害もないだろうし、家庭の中で包まれておるので見つからないと思いますが、十八才以上になりますとこれは相当社会的な問題を提供することになるわけです。一体収容を必要とする六万をこえる人たちというものが、二カ所作るだけであとはなかなか見通しがつかぬ、こういうことになるのですが、乳幼児成人に分けて、乳幼児については一体どういう方策をとり、成人については二カ所の施設を作るほかに、どういう具体的な政策を立ててやっていかれるのか、その点を一つ説明願いたい。
  14. 安田巖

    安田(巖)政府委員 この精神薄弱者調査というものは、これは事柄の性質上非常にむずかしい調査でございまして、先ほどから申し上げております調査も、昭和二十九年に公衆衛生局でやりました実態調査であります。収容を要しますかどうかという判断も、調査員が調べましたものの精神薄弱程度と、それから家庭環境というふうなものをあわせて考えまして、そうして収容を要するかどうかということをきめていった、こういった数字の集計でありますから、必ずしも非常に具体的に統一された基準ということがあるいは言い得ないかもしれないという点で、資料としては非常にこれは不十分なものだと思います。そこで今の四百万という数字は、小中学生の中の精神薄弱児数字というものが出て参りましたから、大体そのパーセンテージ、五%かけたものが四百万になるわけです。そういう出し方でございます。六万三千幾らという数字が出ましたけれども、果して全部が収容できるかどうかということにつきましては、まだいろいろ疑問もございます。また将来の計画といたしましては、私どもは少くとも各県に一カ所ずつはこういう施設を作っていきたい。同時にまた民間におけるこういった施設につきましても、それに対して国からこれを助成するような方法も講じていきたい、こういうのがとりあえずのねらいでございます。
  15. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 児童関係を私から補足して申し上げたいと思います。先ほど社会局長からお答え申しました精薄児保護を要する者が約三万と申しますのは、これは二十七年のいわゆる要保護児童調査の一応の結果でございます。この調査自体が、調査やり方等についてもいろいろ問題がございますし、直ちにまさに正確な調査ということも言いかねるような事情もございますので、それはそれとして三十四年度におきまして、精神薄弱児実態調査をいたすべく予算を計上いたしたのでございます。その結果によりましてさらに精密な将来の計画を立てたいと考えておりますが、計画を立てるにつきましては、御承知のように現在施設の体系としまして、一番購い者については、いわゆる知能指数二十五以下の者を収容するものとしては、国立の秩父学園を持っておるのでございますし、それから通園できる者については、御承知のように先年来精神薄弱児通園施設というものを設けるようにいたして進捗をいたしておりますし、それから従来からありましたいわゆる都道府県立ないし私立等精神薄弱児施設、いわゆる収容施設がございますが、これらをどういうふうな振り分けにしていくか、数をどの程度に考えていくべきか、その辺のところは実態調査の結果を待ちまして十分検討して参りたいと思いますが、そういう将来の計画もさることながら、当面の問題としては、先ほどお話があったように現在の収容施設等は非常に少うございますので、これらの級数増設についてはそれぞれ進めておるような次第でございます。
  16. 中山マサ

    中山委員 今の児童局長さんのお話に、テストの程度も十分ではないというお話がございましたが、この間私があるものを読んでおりましたときに、親の側から、何か紙を与えてまるを切らせたりあるいは三角を切らせたり、そういうことをすることによって自分の子供精薄という刻印を押されたことについて非常な不満の状態を書いてあったものを私は読んだのでございまするが、どういうふうに今まで御調査なさっていらっしゃいますか。もしそれが今御答弁できまするものならば聞かせていただきたいということが一つ先ほどいわゆる子供たち家族計画とか、そういうことからこういう精薄が生まれてくるようなお話があったのでありますが、それはどういうことなんでございましょうか。昨年でしたか一昨年の二月でしたかに、私が精薄児童の親たちの会合に呼ばれて参りましたところが、私は実にお気の毒な父親に会ったのであります。その御家庭の名誉のために名前を言うことは差し控えますけれども、それはある官庁の高官のお方がそこへ御出席になりまして、自分は三人子供がある、二人は非常に優秀な成績であるけれどもあとの一人が精薄児であって非常に悩んでおるので、きょう特殊学級のこの精薄児の親たちの会合に出てきたのだというようなお話をなさいまして、私はその親ごの心境を察しまして、非常にお気の毒に思ったのでございます。優秀な兄弟があるのに、どういうわけで一人だけがそういうふうなことになったか、もしそういう面で児童局長さんには、あるいはこの問題は遺伝だとかそういう面もございましょうけれども、私も四人の男の子を持っておりますけれども、おのおの性格も違っておりますから、兄弟であっても違った性格あるいは能力を持って生まれてくるということはわかりますけれども、あまりにもこういう飛び離れた話を聞きますれば、どういうわけでそういう現象が現われてくるのか、受胎調節のいろいろな技術の欠陥からそういうことになるのでございましょうか。それからまたてんかんの子供がある家庭の話を聞きましたら、その人つが非常に難産で、難産の結果その子がてんかん性になったのではなかろうかという話も聞いたのでございますが、そういう精薄の生まれてくる原因までも究明していかなければ、ただ生まれてきた子供たちに対する対策だけを立てておってもこれはどうかと思います。アメリカでも原水爆の放射能の灰なんかが落ちてきているので非常に危害が加わっているというような話も聞きますし、こういうものが胎児に影響を与えるのか、あるいはこういう緊迫した社会の情勢というものが子供を胎内に持っておりまする母親に対する精神的のいろいろな影響というものが加わるのか、あるいはまたその生活苦から胎児にそういういやなものつが出てくるのか、その原因を究明していかなければ、どんどん今ふえてくるというお話でございましたが、ふえてくる子供たちに対して対策をしてもいかがかと思うのでございますが、そういう原因というものが、もし児童局長さんにおわかりならば、お聞かせ願いたいと思います。あるいは厚生大臣は今は厚生省関係においでになっておりまするけれども、文部行政に非常に熱心でおいでになったお方でございまするから、こういうことも御研究になったことがおありになるか、聞かせていただきたいと思います。
  17. 坂田道太

    坂田国務大臣 私も精薄児になる原因というものを詳しく知っているわけではございませんけれども、その中にはやはり遺伝性のものもあるのではなかろうか、あるいは今御指摘になりましたような、受胎調節の過程においてそういうような者が生まれてくることもあるかと考えております。その点につきましては、専門の方々から御答弁を申し上げた方がよいと思います。ただ私が申し上げました先ほどの意味は、優生学的な意味において、ある程度受胎調節の必要があるということをお話し申し上げたのであります。
  18. 中山マサ

    中山委員 もう一点私のお尋ねいたしましたのは、学校で精薄のテスト——大臣は今は厚生大臣でいらっしゃるし、またがっても政界にお出ましになる前にそういう関係にお勤めになったということも聞いておりますが、文部省関係ではテストをするについて、ちょっと紙切れを切らせたりそういうことをしたくらいで、あなたの子供精薄だという刻印を押されるということに対して、非常な不満を持っている親がございますので、かつて文部行政においてはそういうことはどういうふうになすっていらっしゃいましたか、あわせてちょっと先生の御体験から聞かせていただきたいと思います。
  19. 坂田道太

    坂田国務大臣 実はその点私はつまびらかにいたしておりませんけれども精薄というふうに見る以上は、やはり知能指数等も一つの参考として、その他のいろいろの医学的な意味においてそれをきめたと思うわけでございますけれども、この点になりますと詳細私も知っておりませんので、あるいは正確を欠くかと思いますので、いずれ文部当局にお尋ねをいただきたいと思います。
  20. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 精神薄弱児調査の点でございますが、先ほどお話し申し上げました二十七年の調査は、児童委員をわずらわしまして直接子供にタッチするというよりも、いわゆる傍見と申しますか、それとかあるいは地域社会におけるいろいろな話を総合して調査を進める、そういうふうな非常にラフな素朴な調査をいたしております。今回やろうと考えておりますのは、学校等で就学の猶予、免除、そういった措置をとられている児童でございます。とられるについて心理学者あるいは精神衛生の学者、それらの人たちにお願いをして、調査の方法等を中央で十分検討いたしまして、慎重にやるようにただいませっかく研究打ち合せをいたしつつある状況でございます。いずれにいたしましても、調査すること自体及び調査の結果というのは、その子供のみならず、その家族全体あるいは縁者にとりましても非常に重大な問題でございますので、先ほどお話のありましたような点につきましては、今後十分注意をして参りたいと思いますし、同時にこれは文部省等において調査をなさる場合においても、そういった気持でやっていただくように関係の方々とも十分連絡をして注意し合って参りたい、かように考えております。  それから精神薄弱児の生まれる原因の点でございますけれども、この点については学者によっていろいろ意見があるようでございます。しかし私ども承知いたしております範囲におきましては、もちろんこれは一つ二つの原因というよりも、複合的な原因もあろうかと思いますが、やはり一つはこれは遺伝的な原因に基く場合も否定できないだろうと思いますが、そのほかに受胎中における母体の障害あるいは特殊の疾病に基く場合、それから出薙時における物理的な障害に基く場合、そういったいろいろな場合が考えられるように承知いたしております。遺伝的原因に基く場合においては、これは根本的に除去する以外に手がないわけでございますが、今申し上げました後者の二点につきましては、いわゆる母子衛生、受胎中における母体の健康維持の問題、あるいはそのほか注意をするというようなこと、それから出産時における障害の問題につきましては、産婦人科のお医者さんなり助産婦さんなりにも十分御留意をいただき、あるいはその前にそういう事態が予見される場合においてはいろいろな準備措置をとるというようなこともあろうと思いますが、いずれにいたしましても母子衛生の施策を強化することによって相当防げる点ができるのじゃないだろうか。そういう意味で母子衛生の充実——先般お骨折りをいただきました母子健康センターの問題もそれをねらった一つの着眼点でございますが、母子衛生の施策の向上充実ということに十分に力を注いで参りたいと思います。  それから受胎調節の直接の結果によって精神薄弱児が生まれる原因になるかどうかということについては、そういう疑いを持つということは当然起り得る因果関係の状況だと思いますけれども、しかし、これが現実に学問的にいかなる因果関係になって、いかなる現象になっているかという点については、学問的に確たる所見を私どもはまだ聞いていないのでございまして、これらの点については、これは学問上のことでございますから、直ちに受胎調節と結びつけて考えるという予見をもって着手することもいかがと思いますけれども、注意は怠らないようにしていかなければならないと考えております。
  21. 中山マサ

    中山委員 もう一つ伺っておきたいことは、こういう精薄児童は都市に多いかあるいは農村に多いかという点でございます。よく農村にお話しに行きますと、農村の婦人よりもむしろ牛の方が大事にされる、たとえば耕作をして帰ってくれば、牛は洗ってもらってそのまま休憩させられるけれども、われわれ女房族は、帰ってきたらまたそれ以上に仕事があるから、非常な過労によって私どもは早く年をとるという話もしょっちゅう聞かされるのでございますから、そういう精薄児は農村に多いのかあるいは都市に多いのか、その数を承わっておきたいということが一つ。  私もすぐ次の会合に行かなければなりませんので、もう一つ伺っておきたいところがございますが、去年でしたかおととしでしたか、私が香川県に遊説に出張させられましたときに、かつて精薄児童施設に勤めておった人にお目にかかったのでございます。その人が切々として私に訴えましたことは、私はお見かけの通りこんなに丈夫で元気です——これは自由民主党の婦人部長をしている人でございますが、こうして元気に政治活動もやっておりますのに、定年制によって私はやめさせられました。私はこういう精薄児童について非常な愛情を感じておった。しかもこういう子供を取り扱うのには——普通の子供に対してすら担当な忍耐と気根によって指導していかなければならないのに、まだ元気であるのに定年制であるからということでやめさせられてしまいまして、そういう子供に対する愛着を感じ、また自分の元気なのを感じながらやめてこなければならなかった。ほかの学校の先生というようなものでしたら、そういう定年制も仕方がないことだろうと思う。しかし、こういう特殊な子供を預かる施設においては定年制ということよりも、むしろそれを預かる人がいかにこの事業に対して非常な愛情を持つか、そうしてどれくらいの熱意を持ってやっておるかということも少し考えに入れて、定年制だけにこだらわないようにやっていただかなければ、子供たちの十分なる指導、善導ということがやられない。何にも言えなかった子供も自分が導いてきたことによってだいぶん言えるようになった。私は、この仕事をやめさせられて、生活に困るわけではないけれども子供たちに対する愛情で苦しんでおるという話を涙ながらに私は訴えられたのでございまするが、この二点について、いろいろと規則にどうせ縛られなければならないのでございましょうけれども、そういう点も加味できるものかどうか。やはり今日その方に、いかに愛情を持っておる人でもやめさせてしまわなければならないのかということを参考に聞いておきたい。
  22. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 都市における精薄児の出現率といなかにおける出現率と比較をした正確な数字をもってお話しできないことは非常に残念でございますけれども、私ども承知いたしておりますのは、たとえば海の中の封鎖された島でありますとか、あるいは山間のほかとの交通の割合に少い隔離された部落でありますとか、そういう所に割合に精神薄弱児の出現率が高いというふうに聞いております。これはおそらく血族結婚あるいは近親結婚の所産というふうに学者の人たちは見ておるのでございます。これは私どももそうであろうと考えます。一がいに都市と農村と比較することは非常にむずかしい問題だと思いますけれども、ただ現実の問題として、いなかにおきましては、いわゆる母体についての保護と申しますか、そういった点、あるいは出産前後におけるこれの取扱いということについて、都市における場合よりも客観的な条件は決して有利な条件にはないということは言えるわけでございまして、先ほど私が申し上げましたように、出産時における障害でありますとか、あるいは妊娠時における病気ないし事故という点から考えれば、そういう事故が起り得る可能性は、やはりそういう客観的な条件のそろっていないいなかにおいての方がむしろ多いということは当然理論的にも推察をされるわけでございます。そういう点は考えられると思いますが、なお今回行わんとしております調査の結果によって、今お話しのような線に沿った数字が出るか出ないか、これはやってみなければわかりませんが、もし出たといたしますれば、また機会を改めてお答え申し上げたいと思います。  それから定年制云々の問題でございますが、御承知のようにたとえば精神薄弱児施設について見て、これは私立のものもございますし公立のものもございますが、私立のものについてはおそらくその施設々々のならわしというものもあろうかと思いますが、公け立った定年制というものはないと考えております。ただ、県立でありますとか市町村立でありますとか、これらについては、その吏員の定年制を設けておるところについては、やはりそういった施設についてもこれを適用するかどうかという問題も起り得ると思います。しかし、いずれにいたしましても、机の上で事務をとるのと、実際に子供に接触し、寝食を共にして世話をするのと、これは仕事の性質も違いますので、それらについては十分違った考え方をとっていかなければならぬことは言うまでもございません。多かれ少かれ私は公共団体においてもそういう点は御配慮になっておると考えております。     〔委員長退席、八田委員長代理着席〕  いずれにいたしましても、今お話がありましたように、この精神薄弱児のお世話をするということは非常に大へんな仕事で、単に事務的に事を処理するというだけではもちろんいけないので、十分児童に対する愛情なり、あるいは指導をする技術なりというものの上に立って行わなければならぬということは言うまでもございませんので、これらの点を十分制度上も尊重していかなければならぬというふうに考えております。
  23. 滝井義高

    滝井委員 ちょっと途中から関連質問がありましたが、各県に一カ所ずつ今後こういう精神薄弱者保護していく施設を作りたいということでございます。御存じのごとく現在女子の精神薄弱者も相当おるわけなんです。現在の日本には女性の教護院といいますか、そういうようなものは、ことし何か一カ所できますか、多分それくらいしかないのです。その点との関連はどういうことになっているのか、それを先に答えてさいただきたいと思います。
  24. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 教護院は現在国立、府県立、私立合せまして五十三カ所ございます。府県立のものにつきましては、これは男の子供も女の子供も、もちろん内部においては分けますけれども、同じ施設に入れているところが大部分でございます。それから私立で女子の教護院というのが一カ所ございます。しかしこれらはいずれもいわば程度から申しますると、そう重い者を入れるわけには参りませんので、いわゆる程度の重い女子の不良児と申しますか、女児を収容するために国立の教護院を三十四年度において設置する、そういうふうにいたしておるのでございます。現実にこれの不良性を帯びました児童、これは男の場合も女の場合も含めまして精神薄弱を伴っている者がやはりある程度ございます。これは結局精神薄弱状態であるために、いろいろ社会的な特別な環境の中において不良性が加わってきたというふうに考えられると思いますし、そういった意味ではこれは精神薄弱児施策というものの不徹底なためにいわゆる不良化しているというふうにもとられますし、また逆に、これはいずれの場合においても不良の児童というものは、やむを得ざることながらある一定の者というものはあり得るということも考えられますが、いずれにいたしましても現実に精神薄弱を伴っている者がいて、不良性を帯びている者が現在教護院にかなり入っているということは事実でございます。これを終局においてどちらの施設に振り分けるかということについてはこれはその具体的な症状に基いて判断しなければならないと思います。
  25. 滝井義高

    滝井委員 実は精神薄弱者とそれから教護院に行く不良との相関関係というものは、私は非常に密接な関係があると思う。たとえば売春婦は知能テストの低い者が多くて、ほとんど精神薄弱者というものが習慣的に売春をやる者が相当にあるということは、これは皆さん御存じの通りです。そうしますと、これらの関連というものを十分に考慮しなければならぬのですが、それについてもやはります乳幼児精神薄弱的な施設、これは未熟児の時代からいろいろな施設があるわけですが、未熟児というのは、肉体的にも精神的にもやはり弱いところがあるから未熟児だと思うのですが、そういうときから今までの十八才未満施設、それから今度のおとなの施設、こういうものはやはり何か系統的に一貫したものがなくてはならないと思うのです。どうも厚生省行政を見ると、そのときどきにそういう形が出ておって、何かそこに一貫したものがない。私はこの前ここで指摘いたしましたが、結核対策をやるのに、文部省文部省の道を歩いている、厚生省厚生省の道を歩いているというのではいかぬのではないか、やはり一個の人間が子供からおとなの過程に育っていくについては、これはやはり一個の人間であることには変りはないのだから、厚生行政というものも一貫した筋を通していってもらわなければ困る。さいぜんこの精神薄弱児調査の方法が出ました。実は私もいつかまるや三角を切らして、それが精神薄弱児であるという診断の上に一つの誤まりを来たしているということを中山さんと同じように、多分日本経済か朝日か、新聞であったと記憶しておりますが、読んだのですが、そういう面からいっても、精神薄弱者である児童その他乳幼児もひっくるめた全国的な調査というものは、やはり大々的にやってもらう。そのやるについては児童委員なり、民生委員なり、あるいは社会福祉主事なり、児童福祉主事という末端機関があります。同時に社会福祉の協議会というようなものもあるわけです。そうして県の所管する児童相談所というものが心理学に経験のある者を置いているわけですから、私は軽い者はまずまずとして、収容をして相当精力的な教育と治療を施さなければならぬ者の把握というものは、これはしろうとが見てもわかると思うのです。そして最終的なふるいというものを児童相談所でかけていったらいいと思う。児童相談所は大体保健所のあるところには一カ所ずつあります。それから県には割合権威のある県の児童相談所というものがある。最近こういう児童相談所というようなものに対する予算のつぎ込みというものが非常に少くなってき始めました。私の知っている大学教授で相談所の所長になっている人がおりますが、どうも最近待遇が悪くて進展をしないので、昔の大学教授に返りたいというのがいるのです。そういうようにこの精神薄弱の問題に対する施策の比重の置き方というものがだんだん軽くなりつつある。初期においてはこれらのものには各県とも相当金もつぎ込んだし、りっぱな施設も作りました。ところが最近は行ってみると閑古鳥が鳴く状態で、だんだん待遇が悪くなる。これは地方自治体の赤字のかげんもあるかもしれません。同時にその児童相談所の手足となって働く社会福祉主事、あるいは児童福祉主事というような末端の人的な構成が充足されていない。これは私がここで言うまでもなく、保健所における充足率と同じで、六割か七割です。従ってあなた方が科学的な調査をやろうとしても、そこに専門家がいない。これは社会福祉主事ならば、少くとも心理学をおさめたり、何かそういう経験がなくては主事の免許というか、とにかく資格ができないのです。ところがそういうものが六割か七割の充足奉で、貧しければ貧しい自治体ほど実際にはそういう者がいないのです。さいぜん児童局長が言われたように、貧しいところほど社会的な交流が少いために、血族結婚が多くて精神薄弱児なり精神病が多い、これは明らかです。皇族でさえも、皇后陛下に民間の人を迎えて、皇族の血の清浄化をはかろうという時代になったのですから、これは私は日本における一つの転機だと思うのです。日本の一番の象徴がそういう方針をとり始めて、民間の毛並みのいい優秀な方を入れて、皇族の優秀化といいますか、血の清浄化をはかろう、こういうことなんですから、こういう時代はいいときだと思うのです。こういう精神薄弱をなくすために、皇族がその範をたれているという一つの問題もあると思うのです。そういう点で、上の方は政策はこういう政策ができておるけれども、末端がだめなんです。そういうものを科学的に見ていく力がない。そして力がある人はりょうりょうたるものであるという実態ではいかぬと思うのです。やはり上の政策がこういうように進展をするならば、その末端に働く人間がやはり充足されておるという姿、これがとられなければならぬと思う。いろいろ中央で予算がついても、末端にいった場合に、この前の辺陣地に保健所のかわりにできる母子センターについても、私はそういう点で異議があった。それができてもそこに人がこないという点です。もう一つはこういう精神薄弱ができる非常に大きな原因であるいわゆる産児調節の問題、家族計画の問題についても予算が消化しきれないので、本年は千八百万も削られなければならない、こういう実態なんです。結局これはなぜなのかというと、そういう具体的な家族計画を、ほんとうに家族計画精神に基いて普及する人がいないのです。人がおったらやれますよ。ところがその人がいないからという結果になってくる。これを公衆衛生局から児童局に移しても私は同じだと思う。児童局は末端の手足というもの——たよるところはどこかというと、これは移しても児童局はたよるところはないですよ。一体児童局はどこにたよるか、社会福祉事務所にたよるといったって、社会福祉事務所には御存じの通り児童福祉司もよういないという状態です。民生委員児童福祉委員をほとんど兼ねている。こういうことになると、どうも私は、この精神薄弱というものは、やはり末端の人間の整備というものがまず第一に先行されなければならぬ、こう思うのです。一方生活保護の部面を見ると、結核精神病というものが非常に金を食う、こういう面が出てきておるわけです。従ってそれを金を食わせないようにするためには、やはり軽いうちに、子供のうちに訓練をして、その精神薄弱状態を脱却せしめる。そういう精神薄弱の者が都市に出てくれば、この複雑な都市の生活状態の中からいわゆる精神病として不良化してくる。薄弱が今度は不良に転化するということです。そうしてそれは同時に、最終的には、こういう狂暴なやつは精神病だという認定で精神病院に入れられなければならぬ、こういうことにもなり得るのです。あるいはそれが結婚すれば、今度は質の悪い者同士の結婚のために、また新しい精神病者を拡大再生産をしていくということになる。何かそこらあたりの末端の機構の問題というものについて、一体厚生省はどういう工合に考えてこういう施策をして、のしていくかということです。上台がはっきりしないところに、上だけいろいろ施設を作っても、これは動かない。その証処は、婦人相談所が閑古鳥が鳴いているということをこの前ここで指摘しました。ことしはたぶん婦人相談所も予算を削られているんじゃないかと思いますが、そうだとするならば、ああいうところに余っている人間というものをむしろこういうところに回して活躍をしていただく。婦人相談所の人も、みんな人間を取り扱っているのだから心理学の経験がありますよ。そういう点では何か厚生省の施策というものは一貫したものを欠いておるし、それから上告がしっかりしていないのです。だからその土台としては、福祉事務所なり児童相談所というようなところを強化しなければ、これは予算をつけてもらってもとても末端で消化されない。消化しきれないというか、いわゆる血となし肉となすことができないという意味なんです。そしてせっかく局長さんの努力で予算がついて施設ができるが、さて施設は閑古鳥が鳴く。できたあとには一、二年すると閑古鳥が鳴くという、こういう流行病みたいな形で、一、二年すると忘れられるということでは困ると思うのです。そういう点について一体あなた方は、今私が指摘したような家族計画の問題にしても婦人相談の問題にしても、あるいは今作ろうとしておるこういう十八才以上の精神薄弱者施設の問題にしても、どういう観念で、どういう計画とどういう人的要素をそろえてこれを拡大強化していかれるのかということです。同時にそれは生活保護における精神病の医療費というものにつながってくる。それを減らす一つのてこにもなると思う。そういう点、行政というものが計画的に、総合的にどういう工合に立てられていくかを御答弁願いたいと思うのです。
  26. 安田巖

    安田(巖)政府委員 今、厚生省のいろいろ施策がとられました場合に、それを末端で実施をいたす場合の実施機関の体制が不十分である、その不十分であるということを置いておいていろいろな施策をやりましても、やはりこれは実効をあげ得ないのではないか、こういうような趣旨の御質問と承わったのであります。お話のように、現在厚生省関係でも、今おあげになりました保健所でありますとか福祉事務所でありますとか、あるいは児童相談所であるとか婦人相談所というものがたくさんあるわけでございます。婦人相談所につきましては私所管でございますので、この機会にちょっと申し上げておきますけれども、これは予算は別に落ちておらないのでございまして、むしろ昨年より人件費その他につきましては充実をいたしております。同時にまた最近の成績も、必ずしも御指摘のようなものではないということだけここで申し上げさしていただきたいのでございます。  それで、そういった機関が、その多くが交付税、交付金でまかなわれておるということが一つございます。それからあと、たとえば婦人相談所にいたしましても保健所にいたしましても、これは補助金でございます。そこで国でいろいろ予算をとりましても、第一線機関でその趣旨に沿って充実をするかどうかというようなこと、たとえば福祉事務所がいい例でございますけれども、これはかかって自治団体がそれに対して協力するかどうかということになってくるわけでございます。そうなりますと、問題は、やはり私の方でいろいろやきもきいたしますけれども、自治団体がそういった問題なり機関について十分認識を持ってくれまして、そうしてこれはほかの方の施策と比べまして、必ず優先させなければならぬというところまでいかないと、実現できないような今の仕組みに地方自治の制度がなっておるわけであります。それで私どもももちろんそういった点と同様な心配をいたしておりますけれども、しかしそれを待っておりましても、これはなかなか百年河清を待つようなものでございますので、同時に今度のような精薄の問題が非常にこれは緊急な問題になっておりますので、機構の方も充実をしながら、同時にまたそういった必要な対策もとっていくという形で並行して参りたいと思います。またそういったような姿が行われますことによりまして、自治団体等もそういったものの必要性を認識してくれますと、それに必要ないわゆる福祉事務所とかあるいは児童相談所でありますとかいうものをまた充実していく契機にもなるのではないか、こういうふうに思っております。御指摘のように不十分な点は十分承知しておりますが、そういった点を並行して今後考えて参りたいと思います。
  27. 滝井義高

    滝井委員 なるほど婦人相談所の相談員の予算等はふえておりますが、婦人保護費全体としては千九十万三千円の減少になっておる。実は今ちょっと私これを見て育ったわけですが、今も局長さんみずからがお認めになったように、交付税でまかなわれておるし、それから補助金でまかなう、その補助金に見合う自治体の持ち分の予算がつかない限りはなかなかうまくいかぬわけです。ところが自治体が結局それをつけないということは、こういうものに対する政府自体の施策の浸透が末端の自治体に行っていないことを示すのですよ。だからそれは言葉をかえて言えば中央政治の貧困ですよ。それだけの協力態勢を自治体がとらないということなんです。これは民族の運命にかかわるような重要な問題でありながら、それに国が金をつぎ込んでも自治体がつぎ込まない、こういう姿はやはり中央政治の貧困でもあるし、それに対する厚生省自身の努力が足らぬということにもなり得るのです。  実はさいぜん精神薄弱児調査方法についてもいろいろ問題がありました。調査は要保護児童しかやっていないわけですね。そうしますと、今大体末端ではこういう不良化の防止とか売春の対策とかいうようなものを一体どこが主導権をとってやっておるかと申しますと、警察と社会教育団体です。われわれも昔よくこういうものに出ましたが、警察と社会教育団体、そしてそれに一枚加わってくるのが社会福祉協議会であり、同時に学校の先生方がこれに加わってくる。そうするとイニシアチブはどこがとるかというと警察とか社会教育団体です。決してこの福祉事務所がそういうもののイニシアチブをとってやってはいないということ。だから今度は地方自治体にしてみれば、警察の外郭団体である防犯協会というようなものを各戸から十円とか二十円という金を集めて作って、それがやってしまう。同時に社会教育は公民館その他が、今度社会教育法が強化されてこういうところにも自治体から金が出ていきますと、ますます主導権をとる。ところが福祉事務所や何かはどうなっておるかというと、これはお客さんです。来ておっても非常につつましやかな発言しかしておらない。私の知っておる限りでは主導権を握っておらない。ところが一体警察とか社会教育——社会教育にはある程度心理学をやった公民館の主事等もおるかもしれませんが、何といっても心理学その他をやっているのは、そしてそういう精神薄弱なり不良化のケースを扱うのは福祉事務所の主事です。主事にはそれだけの主導権を握る人材が現実にいない。厚生行政の上からいえば、少くとも精神薄弱の問題とか不良化の問題あるいは婦人保護の問題について、地方自治体の中におけるそういう民間との協議体を作る場合には、主導権を握り得るだけの人材の配置が必要ですよ。そのためにはやはりある程度予算をつけてやるし、自治体にもその方向に向くだけの協力態勢をとらせなければならぬと思う。それが今ないのです。私はこの前から、社会事業関係予算が出るたびごとにこういうことをここで言っておりますが、七割以上からふえないですね。私三、四年前にもずいぶんやったことがあるし、この前社会福祉事業法改正をして二十万以上の都市にも福祉事務所を二カ所くらい置くことができるというときにもやったのです。いわゆるアフター・ケア等も社会福祉事業の中に加えるというようなときもやったのですが、どうもそういう点に対するてこ入れがない。だから施設はできるけれども、今度は施設と末端の大衆とのつながりがないために生きてこない。こういう点、坂田さん、やはりもう少してこ入れをする必要があると思うのです。今社会局長さんがお認めになった通りなのです。自治体がふるい立って協力をしなければ、幾らりっぱな施設ができてもそれはそれっきりですよ。そして御存じの通りこれらの精神病を収容する施設は、作業する場所も必要でしょう。作業療法も必要です。そうすればそこに農園とか花卉園芸ということもやらなければならないという点もあります。そうなるとできた品物の販売、はけ口も見つけなければならない。それにはどうしても地方自治体の協力なくしては、こういうことは絶対にできないのです。ところが自治体はそういうものを出せば金がかかる、大してもうけはないのだ、選挙のスローガンにはするけれども、選挙が終ったらそれっきりだということではどうも困ると思うのです。そういう点に対する坂田厚生大臣の今後の腰の入れ方がどういう工合になされていくのか、御答弁を願いたいと思います。
  28. 坂田道太

    坂田国務大臣 いろいろ伺っておりまして、まことにもっともな点もあるわけでございます。やはりこれらの施設が末端におけるその地区としては総合的な、そして厚生省としては一貫した一つ行政というものをやっていかなければ意味はないと私は思うのでございます。ただいま局長から答弁いたしましたように、一面において補助金や地方交付税の対象になっておるために予算を使うこともできないというような御指摘でございますが、これもまた一面にはこちらの指導等が十分でないために、地方庁におきましてはこれらに対して熱意がない、あるいは御協力が得られないというようなこともあるかと思うわけでございます。まず私たち厚生省といたしまして、ある程度計画的に、そして各局の考えておりますことを総合的に取り上げて、それを末端に及ぼしていかなければならないのではないかというふうに思うわけでございます。これらの点については単に福祉事務所なり児童相談所等のみならず、同時にその地区にございます社会事業団体あるいはまた住民その他の御協力を得ることなくしてはやっていけないわけなのでございます。そういう観点から実は本年度、これは初めての予算でございますけれども、地区組織の育成強化の費用といたしまして二千八百万円を新たに計上いたしたわけでございます。これなども実はそういう厚生省の末端組織における総合的な、そしてまた各種団体あるいは住民その他の御協力のもとにおいて円満、円滑な厚生省行政というものが浸透していく、またそれに対して御協力を願うという意味合いから、このような予算措置をとったようなわけでございまして、今後十分気をつけまして、計画的、総合的な施策を考えて参りたい。そのためには当面問題になっております精薄児童あるいは精薄乳幼児あるいは成人精薄者の実態がどういうものであるかということをきわめませんことには対策も立てられないのではないか。それを単に児童局あるいは社会局だけでなくて総合的な観点から取り上げていく、しかもその施策に基いて各地方団体においてどういうふうに具体的に取り上げていくかということが私たちに課せられた大きな任務だと考えておるわけでございます。その辺は滝井委員等の御指摘の点も十分参考にいたしまして、今後努力を重ねて参りたいというふうに考えておる次第でございます。
  29. 滝井義高

    滝井委員 今年精神薄弱者の大人用の施設を二カ所作るわけですね。各県に作るということになると、一年に三カ所ずつ作っておっても二十年かかるのですね。これは一体何年間計画で三府四十三県に作ってしまうのですか。それだけ御答弁願います。
  30. 安田巖

    安田(巖)政府委員 私ども当初の計画でいきますと、大体五カ年計画でもって全国に作りたいということでございましたのですが、予算が御承知のように二カ所に査定されましたので、これは定員が百名でございますので、あるいは七十名くらいにして、三カ所に伸ばして使えるのじゃないかということを私ども考えております。またこういうことが出て参りますと、民間等にも刺激を与えまして、そういうものが出てくるかもしれません。私どもまた来年二カ所の予算を要求するつもりはございません。やはり相当のそういった計画に基いた数を要求いたしたいと思っております。
  31. 滝井義高

    滝井委員 大臣に最後に申し上げます。今局長が言われた通り、五カ年計画でお作りになるというおつもりだったら二カ所に削られた、従って、おそらく十カ所くらいは作るつもりだったろうと思うのです。そういうことを大臣お含みになって、もう八月になれば来年度予算の折衝にもなりますから、やはりこういう点はある程度計画を立てて、きちっと早目にやらぬと、二十年もかかって作ると、三カ所ずつ作っても十四、五年はかかるから、十四、五年では精神病患者が二倍にも三倍にもふえて、どうにもならぬことになりますから、その点一つぜひ五カ年計画でやるように、百人を七十人に縮めてもかまいませんが、やはり何かセンターを作って、精神病の重大性を国民に知らして、そうして推進するようにぜひやっていただきたいと思うのです。
  32. 坂田道太

    坂田国務大臣 私も最小限度五カ年間で、もう少し早くやりたいと思いますけれども、五カ年計画に基きまして、この国会が終りましたならば、さっそく来年度予算の編成の作業に取りかかりたいというふうに考えておる次第であります。
  33. 八田貞義

    ○八田委員長代理 これにて質疑は終局いたしました。  次に本案を討論に付するのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 八田貞義

    ○八田委員長代理 御異議なしと認めます。  社会福祉事業法の一部を改正する法律案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  35. 八田貞義

    ○八田委員長代理 起立総員。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし上と呼ぶ者あり〕
  36. 八田貞義

    ○八田委員長代理 御異議なしと認めます。そのように決しました。  午後一時半まで休憩いたします。     午後零時三十四分休憩      ————◇—————     午後二時四十七分開議
  37. 園田直

    園田委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  この際、五島虎雄君より、へい獣処理場等に関する法律の一部を改正する法律案の起草に関する提案がなされておりますので、五島君に発言を許します。五島虎雄君。     —————————————
  38. 五島虎雄

    五島虎雄君 へい獣処理場等に関する法律の一部を改正する法律案の起草につきまして、私が代表して動議を提出いたしたいと思います。  お手元に配付いたしました通りの起草原案を作成いたしましたので、まず起草原案について御説明申し上げます。  畜舎筆の取締りにつきましては、明治六年太政官布告で、人家稠密の地で養豚を行なってはならないという規定があり、各都道府県におきましてはそれぞれ都道府県規則を制定し、牛豚類の畜舎について人家稠密な地域におきましては、許可制かまたは届出制を採用し、特定地域におきましては、畜舎の設置を禁止しているところもあるなど、主として衛生警察の観点から取締りが行われてきたものであります。  戦後になりまして都道府県の規則は、昭和二十二年日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律によって自然失効し、これにかわるものとして昭和二十三年第二国会で、へい獣処理場等に関する法律の制定を見たのであります。  この法律の中で、都市における畜舎(牛、馬、綿羊、ヤギ及び豚)に対する衛生措置が畜舎の管理者に対して義務づけられ、環境衛生監視員が畜舎の衛生保持についての監視指導することとなりました。その後、家畜家禽の飼育増加に伴い、都会地並びに人家密集地域及びその周辺において畜舎の設置が増加してきたのでありますが、畜舎の構造設備につきましては規定が全く欠け、非衛生な場合、単に取扱い方法の改善だけを指示するにとどまり、適切な指導が行いがたい状況にありましたので、昭和三十一年六月六日法律を改正して、畜舎の構造設備の基準を設定するとともに、届出制度とし、なお犬、鶏、アヒルも一定数以上を飼養するものについても法の適用を受けることとしたのであります。  従来市及び人口五千人以上の市街的町村(旧警察法におきまして自治体警察を設置する市町村すべて)が適用地域でありましたのを相当縮小し、特別清掃地域のうちからさらに一定の基準に従って知事がその地域を指定するということになり、また畜舎については従来その衛生措置だけを規制しておりましたのを、新たに衛生措置を満たすため必要な最低の構造設備基準をも加えたのであります。  この法律改正による畜舎に関する部分の要点は次のようなものであります。  1 一定の種類及び頭数の動物を清掃  法第四条に規定する特別清掃地域のうち政令で定める基準に従い、都道府県知事が指定する区域内で飼養または収容したときは都道府県知事に届け出ること。  2 畜舎の構造設備は政令で定める公衆衛生上必要な基準に適合したものであること。3 (1)及び(2)に違反した場合、使用の制限もしくは禁止を命ずることができることとしたこと。  その後畜舎等については単なる届出制度では実態の把握に困難性があり、すでにでき上っている畜舎の構造設備を改めさせることにも困難性が見られましたので、結局、都市の畜舎に対する適切な指導措置が行いがたく、付近住民に対する環境衛生上の弊害を惹起いたしますので、これを許可制度とすることが妥当だと考えられるのであります。  以上が本法律案提案理由の概要であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに可決せられんことをお願い申し上げます。
  39. 園田直

    園田委員長 ただいまの五島虎雄君の御提案に対し発言があればこれを許します。——別に発言もないようでありますので、直ちにに採決いたします。  五島君の動議のごとくこの起草原案を委員会の成案とし、委員会提出法律案とするに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 園田直

    園田委員長 御異議なしと認めます。よってさように決しました。  なお、この法律案提出手続等につきましては委員長に御一任願っておきたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  41. 園田直

    園田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     —————————————
  42. 園田直

    園田委員長 本日付託になりました職業訓練法の一部を改正する法律案議題とし、審査に入ります。提出者より趣旨説明を聴取いたします。五島虎雄君。     —————————————
  43. 五島虎雄

    五島虎雄君 ただいま議題となりました職業訓練法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  去る第二十八国会におきまして、職業訓練法の制定を見ましたが、その際、政府原案には市町村、民法第三十四条の規定により設立した法人、法人である労働組合、その他営利を自的としない法人が行う職業訓練については何らの規定がなく、その必要性と重要性にかんがみ、その際自社共同修正をもってそれらの行う職業訓練についてはこれを公共職業訓練とみなすこととし、その旨を、法第十二条に明記いたしたのであります。しかしながら、それらの職業訓練に対する国の経費負担等については全く考慮されなかったため、今日この種職業訓練の推進が阻害される結果を招来しつつあるのであります。周知のごとく現行法第三十四条は経費の負担等について、公共職業訓練については経費負担を、また認定を受けた事業内訓練については補助金を支給する旨を規定し、すでに相当額のものが支給されております。しかるにさきの市町村等の行う職業訓練については、これを公共職業訓練とみなすこととしながら、その経費の負担等については全く考慮されないというきわめて不公正な取扱いが行われているのであります。公共職業訓練や事業内職業訓練については経費負担を行うが、市町村等の行う職業訓練については負担も補助も行わないという理由は全く見当らないのであります。特に市町村等による職業訓練は技能者養成規定当時から、関係団体の間で非常に熱心に取り上げられ、その果した役割と影響はきわめて顕著なものがあり、今後ともその必要性と重要性はますます増大するばかりであります。この意味からも政府としてはこれら市町村等の行う職業訓練に対し積極的な援助を強力に進めるべきであると考えるのであります。そこでこの際、市町村、労働組合等職業訓練法第十二条第一項に規定する法人の行う職業訓練についても補助を行うこととし、法第三十四条第二項中に、市町村等の行う職業訓練を加えることにいたしました。  以上がこの改正案を提出する理由であります。何とぞ、慎重御審議の上すみやかに御可決下さるようお願い申し上げます。
  44. 園田直

    園田委員長 以上で説明は終りました。  なお、本案についての質疑は後日に譲ることにいたします。  このまま休憩いたします。     午後二時五十七分休憩      ————◇—————     午後三時九分開議
  45. 園田直

    園田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  消費生活協同組合法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。質疑に入ります。五島虎雄君。
  46. 五島虎雄

    五島委員 大臣が来ておられませんけれども消費生活協同組合法の一部を改正する法律案について若干の質問をして、厚生省考え方をここに明らかにしておきたいと思います。  まず第一点は、生協の共済事業に関する異常、危険の準備積立金制度が生協法で明記されることとなりまして、これに伴ってこの準備積立金に対する非課税措置が他の協同組合法による共済事業と同様に認められる、こういう趣旨の改正は生協育成の意味から歓迎すべきであると考えるわけであります。しかし同じ政府から今回提案されたところの小売商業特別措置法案では、生協活動を大幅に規制しようとする内容が提案されました。そうして規制されたわけです。それは通産行政のみに力点を置いたものの考え方であると私は思っております。この法案は商工委員会で大幅に修正を受けて、この衆議院の通過を見たのですけれども、修正されたとは言いながら、現行の生協法よりは取締りが強化されております。厚生省と通産省の共管の問題について非常に今後通産行政の面から生活協同組合の活動そのものが取り締られるということになります。こういう点について厚生省社会局長大臣の見解を聞きたいと思いましたけれども大臣がおられませんので、社会局長のはっきりした考え方を聞いておきたいと思います。  質問の要点を要約すれば、今後の生活協同組合の活動について厚生省厚生省なりにどういうように育成強化していくか、これを制限していくということについては大きな疑点がある。私たちはやはり国民の生活を保持していかなければならない立場から、法の示す通りに国民生活の安定と向上ということを拡大強化していかなければならないと思いますけれども、その点について社会局長はどういうように考えられ、今後どういうように対処していかれる気持があるかということを簡単に第一点にお尋ねしておきます。
  47. 安田巖

    安田(巖)政府委員 消費生活協同組合の今後の発展の問題と、今回同じ衆議院の商工委員会でに決定になりました小売商業特別措置法の改正点との関係が御質問の第一点かと思いますけれども、今度の小売商業特別措置法におきましては小売商業を保護しようという立場から立案をされているわけでございまして、消費生活協同組合が大多数の国民の、庶民の生活の合理化という点について貢献をしておるという問題とは実は別問題かと思うのであります。ただぶつかって参りましたのは消費生活協同組合の員外利用の問題でございますが、これは消費生活協同組合法にも御承知のように禁止の規定がありまして、従来からも厚生省といたしましてはそれについて許可をし得る場合の準則を地方長官に通達をいたしておるわけであります。これでもって大体足りるかというふうにも思えるのでございますけれども、今回の措置は小売商の保護というふうな、またそれと同じような意味のことを規定された、こういうふうに考えているわけであります。従って私どもとしましては、消費生活協同組合の今後の発展につきましては従来通り努力をして参りたいと思っております。
  48. 五島虎雄

    五島委員 今後の生活協同組合の発展のためには従来通りやりたい、ところが小売商業特別措置法が小売商業調整特別措置法という名に変ったわけでありますけれども、これによって生活協同組合の員外利用が非常に規制されてくるような印象を受け、そうして私たち生活協同組合の将来の活動に非常に杞憂を持っておるわけです。ところが、生活協同組合の員外利用というものは無制限に許すべきではないと思います。生活協同組合が組合だから、だから売れたらいいのだということで市中一般人たちと競争をしてだれにでも無制限に売るということは私はいけないと思います。しかし生活協同組合法第一条の目的にも示しているように、国民の生活の安定と生活文化の向上のための自発的な組織であるという点から、自己発展すなわち生活協同組合自体の発展、すなわち組合の発展のためには組合加入者のための予備的利用というものがない限りにおいては自己発展というものはとうてい不可能じゃないかと思います。これは社会局長生活課長も、私たちよりよけいに御承知だろうと思います。すなわち予備的利用、ウエイティング・メンバーといったような意味で、ある程度の員外利用は当然認められてしかるべきだと考えるわけですけれども、この員外利用のことについてどういうように考えられますか、この点について答弁は非常にむずかしいかもしれませんけれども一つお尋ねしておきたいと思います。
  49. 安田巖

    安田(巖)政府委員 生協の員外利用の問題は、これは生協法の本来の建前から申しまして避けるべき問題であることは申すまでもないところでございます。また一方におきまして小売商の方の保護の立場からもそういうことについての取締りを非常に強く要望されておる向きがあることは御承知の通りであると思います。それから大へんむずかしい御質問でございますけれども、現在の農業協同組合法、漁業協同組合法、それから中小企業協同組合法にも員外利用は原則として認めないという規定があるわけでございます。ところが今申し上げましたような法律には、組合員外の者がその協同組合を利用いたします場合には、利用の量が五分の一をこえない範囲において員外利用を認めてあるわけであります。これは人数でなくて事業の分量に一つの制限を置いておるというのは、やはり組合員に奉仕しようという建前からきておるんじゃないかと私ども考えておるわけであります。これが農業協同組合にあって消費生活協同組合にないという事由につきましては、いろいろあると思いますけれども、そういう事実が一つあること。それから昭和二十九年にはやはり今お話になりましたウエイティング・メンバー・システムというものを六カ月を限って認めておったようないきさつもあったわけであります。これは非常に複雑な問題で、税法上の恩典等との関係がございまして、従来も多少ごたごたした問題でございますが、そういう点もございますので、今お示しのようなことにつきましては今後もよく研究してみたい、こういうふうに私ども考えております。
  50. 五島虎雄

    五島委員 今後研究するというようなことになると、従来の取扱いと変るかもしれないというような杞憂を持つわけです。  次に、小売商業調整特別措置法の附則による生協法の改正によれば、第十二条の第四項は、当該行政庁は、員外利用の許可申請があった場合、員外者に物品の供給事業を利用させることによって中小小売商の事業活動に影響を及ぼし、その利益を著しく害するおそれがあると認めるときは、員外利用の許可をしてはならないという条文になっておるわけです。その利益を著しく害するおそれがあると認めるとき、という認定の基準が非常にむずかしいんじゃないかと思うわけです。この認定の基準はどういうものであるかというような疑問がわきます。もうすでに通過した法律案であろうとも、私たちは私たちなりに、厚生行政の立場からすれば非常に疑問がわくわけです。そこで、さいぜん局長が言われましたように、農協法や水産協同組合法ですか、農林漁業協同組合法ですか、あるいは中小企業協同組合法等の協同組合法では、一事業年度における事業の量のうち、員外利用が五分の一は認められるというようなことになっておるわけです。それがこの生活協同組合法だけがそういうような法文の明示がないということは、生活協同組合をだんだん制限するかのような疑惑を持つわけです。しかし、本法の第一条の目的を国民生活の安定と福利の増進ということに置く限りにおいて、生活協同組合を推進強化していくという上において、しかも自己発展をさせるためには、この員外利用というものをある程度認めておかなければ、自己発展じゃなくて、自己逼迫になってしまうと思います。それで、今後研究すると局長は言われるわけですけれども、その点について、大体農協法や水産協同組合法やあるいは中小企業協同組合法等にうたわれている程度のものが常識であると解釈していいかどうかというようなことについて明らかにしてもらいたい。その点は非常にむずかしいでしょうが、できるだけ明らかに、私が納得いくように説明しておいてもらいたいと思うのです。
  51. 安田巖

    安田(巖)政府委員 員外利用の規定と農協法のように二割まで認めるように直すかどうかという御質問でございます。これは非常にむずかしい問題でございますが、実は生協法ができた当時から員外利用の規定は消費生活協同組合にはなかったのであります。その後この問題についていろいろ研究いたしましたけれども、御承知のようにむずかしい問題がいろいろございまして、にわかに決定をいたしがたいような事情があるわけであります。私がここで御返事申し上げましたからといって必ずしもそうなるというわけでありませんが、そういう意味で十分研究してみたいというわけであります。なお、小売商業調整特別措置法の条文の、著しく利益を害するおそれがあるときということでありますが、これは議員の御修正でそういうふうに直っておるように聞いておりますので、私どもそういった速記録とか御意見を承わって参考にいたしたいと思いますが、それをもとにしましてどういう方針でやるかと仰せられますれば、これはやはり一律にはいかないのでありまして、具体的な場合に一つずつ判断していくということになるではないか、こういうふうに思っております。
  52. 五島虎雄

    五島委員 員外規制は決定されていないから今後研究をしていきたい、なるほどそうだろうと思う。そうして研究して生活協同組合を育成強化する考え方局長の方ではよく盛り込んでいきたい。従って、社会の常識上従来あったことはまあまあそれなりに生協の発展のために努力していきたいという意味が含まれているのではないかと思います。私はその問題を明かにしたいのですけれども、そういうような方向に進めていかれんことを希望いたしまして、次の質問に移りたいと思います。  第三点に、現在政府政策によりまして、私鉄やバスの運賃あるいは電気、ガス、NHKの聴取料、公営住宅の家賃など公益的な性格を持つ事業の料金の値上げが行われたりあるいは行われようとしております。それに伴いまして、他の物価も全般的に上昇しつつあるのであります。これに対応して、国民が適正な価格で物を求めるために生活協同組合を活用しようとするのは、今後の成り行きとして当然ではなかろうかと思うわけです。国民生活を守るために、政府、ことに厚生省としては、積極的に援助すべきであると思います。この援助をするということはさいぜん局長は明らかにされましたが、生活協同組合に対する貸付資金の問題があるわけです。育成強化しようと思われる意思があるにもかかわらず、大蔵省が削るのかだれが削るのかわからぬけれども、年々この貸付金が減ってきている。昨年は九百万円でしたが、今年の予算では八百万円ということです。全国の生活協同組合の貸付をしてくれという額がだんだん上ってきて、昨年は九百万円に対して千九百六十万円ばかりの希望であった、半分にも足りない。ところが今年は八百万円で、百万円削られたわけです。こういうことでは生協活動の円滑化を期することはできない。都道府県の要求は今後も急増していくだろうと思うのです。予算でこの貸付金をできさるだけ多くとって生活協同組合の円滑な運営のために配慮することがいいんじゃないか、そのために努力をしてもらいたいと思うわけです。今年は百万円削られて八百万円になってしまったけれども、今後は、冒頭に局長が言われましたように、生活協同組合活動の発展と運営の円滑化のために努力していきたいというようなことを、言われた言葉をこういうところに明らかにしていってもらいたいと思いますが、この点に対するところの見解を求めます。
  53. 安田巖

    安田(巖)政府委員 生活協同組合に対する貸付金でございますが、御承知のようにこれは二十八年から予算に計上されました。そのときはたしか二千万円、年々減って参ったのであります。この減って参ります理由一つは、最近府県からの要求がだんだん減ってきたという事情があったわけでございます。これは何も生活協同組合がそういうものを必要としないというのじゃないのでありますけれども、けさほども滝井委員からお話がございましたように、国で半分を持ちましても、やはり府県が半分持たなければならない。そうすると府県当局がこういう仕事についてどの程度の熱意を持っておるかということが、今度予算化されるかされないかという問題になってくるわけです。そこで最近数年におきましては、府県の予算化ということがはかどらなかったわけでございますので、年々大蔵省に返してしまうというふうな状態が続きました。そこで大蔵省で査定を受けましても、私どもといたしましてはどらもしようがないということで、残念ながらこれはお返しをするよりしようがないというような状態が続いたわけでございます。最近、ことにことしから今御指摘のように相当ふえて参りました。そういうようなこともございますので、明年度以降におきましてはそういう点についてはもっと努力いたしたい、こういうふうに思います。
  54. 五島虎雄

    五島委員 それでは滝井さんその他の質問もあると思いますし、あまり長くなりますのでこれをもって終ります。ですから、私の質問は員外利用の問題を明らかにするということ、それから今度の貸付金の問題を今後よく考慮していくということ、そういうようなことが完全に明らかにはなりませんでしたけれども、言外に含まれる局長の言葉を期待して、私これで終ろうと思います。ですから、この改正法律案である政府原案についてはさしあたり質問はございませんから、これをもって終ります。     —————————————
  55. 園田直

    園田委員長 厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますのでこれを許します。八木一男君。
  56. 八木一男

    ○八木(一男)委員 医療保障の問題の特に社会保険の問題について伺いたいと思います。  社会保険で背から、厚生大臣が御就任になる前から、一部負担というものは非常にいけない、本人負担というものはそういう医療保障の本来の目的を阻害するものであるというふうな意見は、私どもも持ち、それが一般的な意見になっているわけでございますが、それについての厚生大臣の基本的な考えを伺いたいと思います。
  57. 坂田道太

    坂田国務大臣 お答えをいたします。実はこの問題は、過日の八木委員の非常に熱心な御質問に私お答えを申し上げたわけでございまして、前々この社会保険が赤字であって、それが黒字に転じたならばもう一部負担はやめたらいいではないか、あるいはやめるべきじゃないか、やめるのが当然である、大体厚生省人たちなり何なりは、そういうわずかな金だからこれは取ってもいいというように思っておるかもしれないけれども、しかしそれを取られる身になってみるならば、このわずかな百円というものが非常に痛いわけであって、病気になって医療保障を受けようと思っておっても、そのために医療が受けられない、そういうことであっては結局医療保障というものの意味はなくなるじゃないか、ことに保険財政もよくなっておる今日であるから、直ちに即刻やめたらどうか、こういう御質問だったと記憶をいたしております。その後私もいろいろ考えておりまするし、また当局の方でも検討いたしておりますが、実はあのときに答弁をいたしました以上に出ていないことを非常に残念に思うわけでございますけれども、しかしながらこの問題はやはり相当広範な、その場できめろとおっしゃいましても、そう簡単にそういたしますというわけにも実は参らないわけでございまして、意のあるところは私は十分伺いましたし、私も研究もいたしまして、自分が納得をいたしますならば、御趣旨に沿うようなことにもなるかと思いますけれども、ただいまのところは、まだそれをやめるかあるいはこのままでいくかという結論に実は達しておらないというのが偽わらざる実情であることを御了承いただきたいと思うわけでございます。
  58. 八木一男

    ○八木(一男)委員 この前も申し上げましたので、その問題についてはあまりくどくは申し上げませんけれども、健康保険のこの前改悪が行われましたときに、非常な論議が行われまして、初診時の一部負担をふやすことはいけない、あるいはまた入院時の負担を取ることはいけない、そういう論議があったわけでございます。そこで厚生省は後でへ理屈をつけておられますけれども、そのもとの起りは、赤字があったからということで押し切ったわけです。ところが赤字の要因がなくなって、黒字になっているのですから、それをもとに戻すのが当りまえであって、そこに太宰君もおられますけれども社会保障制度審議会のむにやむにゃした答申が、ごくわずかのもので皆が納得するものであればやむを得ないという答申を出した。それに籍口してそれがいいんだということは言えないと思います。社会保障制度審議会のむにゃむにゃした非常に弱い答申であっても、ごくわずかなものというのは、これは今までの百円であってもいいということではない。それは財政が苦しいからと言われたからそういうことにもなったけれども、ごくわずかということは、ごくというのですから、百円よりは五十円がいい、五十円よりは三十円がいい、三十円よりは二十円がいい、二十円よりは五円、五円よりはセロの方がいいというのです。それもやむを得ないということです、この際そういう事情があるから。ほんとうはなくなった方がいいということです。ですから、そういう審議会の意見をひん曲げて、意見があるからということのお考えは全然なしにして、ほんとうにそういう立場で考えていただきたいと思います。早く見てもらって、診察をしていろいろな療治をするということでなければ、医療保障の原則がくずれるということです。それが一番の目的であって、それを阻害するようなことは、医療保障とは全然反対のことだ。そういうことをすれば、見てもらいに来る人の数が減るであろう、そうなれば国庫の負担を要求されることが少くなるだろう、そういうことだったら、健康保険を管掌している厚生省の任務はない。厚生大臣もほかの方も、もしそういうことで縛られておるんだったら、社会保険を語る資格なし。社会保険は、そんな金の高なんか一切考えないで、早く見てもらえることが必要で、また金の点で考えても、早く見て早く直した方が将来的には財政の負担が少くなる。大蔵省のわけのわからない連中が、近視眼的に、ことしの予算さえ少なければいいというようなくだらない財政方針をしている。そこに皆様方の力で説得して、そういうことを変えていかなければならぬ。ところが厚生省自体において、一部負担はいいということを考える連中がまだおるのです。その連中は意地でやっているわわけです。三年ほど前からぎゅうぎゅうやられたから、意地でやっているだけで、そういう二、三人の人の意地で、医療保障が逆転したり、将来の進歩が進まなくなるようなことはいけないと思う。そういう点については、厚生省の優秀な公務員の方は、大部分はもう意地を捨てられる時期だと思いますし、またそういうふうに、これは政党内閣ですから、大臣が御指導にならなければいけないと思う。それ以外には理由がないわけです。またそういうお答えができる域に達しないと言われることは、それまでの御努力がまだ足りなかったせいだ。それを、必ず次に御質問するときには、そういう方向の施策を打ち出しまして、いやすでに一部負担全廃の法案は出してあるじゃありませんか、そのくらいの勢いでやっていただかなければならないと思いますが、それについての厚生大臣の御決意を伺いたい。
  59. 坂田道太

    坂田国務大臣 ただいまもお答えを申し上げました通りでございまして、御趣旨はよくわかるわけでございますけれども、ただやはり一部負担を残しましたからには、それぞれの意義もあるかとも思いますし、まあ考えておるわけでございます。八木委員はそれはないんだ、とにかくないに越したことはないんだというようなことでございまするけれども、やはり私たちとしましては、もう少し御研究をさしていただくようにお願いを申し上げたいと思うわけであります。
  60. 八木一男

    ○八木(一男)委員 この前も申し上げたことで、厚生大臣も私の方もあまり時間がありませんから、あるかとも思いますのでと言われましたから、この程度でおいておきます。あるんだと言われたら、断じて承知まかりならぬのですが、そういうことで、野党の私どもなまいきなことばかり申し上げて、非礼で非常に申しわけないのですけれども、そういうような大きな声を出したり、いろいろなことを言うのは、ほんとうにそうだと思っているからなんです。そこを一つ、今までのいろいろの立場というようなことじゃなしに、今までのだれだれの立場、どの部局の立場ということでなしに、国民の立場で一つ考えて、いい方向に推進していただきたいと思います。  それは一般的な問題ですが、今度は特にとんでもない問題があるわけです。実は健康保険法と一連の、たとえば船員保険法の健康保険の分ですね、そういうものが健康保険法の一部負担をふやす改悪法案と一緒になって、同じように方向を合せて、無理やりに船員保険法の改正が多数で通された。ところが、船員保険法というのは別な問題がたくさんあるわけです。一つは船員法の八十九条という法律があるわけでございますが、それについて厚生大臣御存じでしょうか。
  61. 坂田道太

    坂田国務大臣 ちょっとまだ私理解をいたしておりません。
  62. 八木一男

    ○八木(一男)委員 条文を持っておりませんけれども、結局、船員の療養については船主が全部補償しなければならぬということの規定があるわけです。ですから、一般の保険と別なんです。そういう法律があるわけです。ですから、一部負担というのには、ほかの方でも理由が私は全然ないと思うけれども、あの当時の時点において、かりに厚生省理由があったとしても、この船員に関する限りは、そういうことは、船員法の規定から見て理由は全然通らない。それはいけないじゃないかということを大いに言ったわけでございますが、それにつきまして、非常に何と言いますか、これもお役所主義といいますか、健康保険法をこう直したからこっちもこう直さなければ気持が悪いということで、ほかの法律に抵触した変な改正をやったわけです。それで、御説明では、これは船員法の規定の通りにしなければならぬ、だからそれは負担はさせないんだ、一部負担はとにかく払ってもらうけれども、これは船主がまたあとから返すんだ、だから船員の負担にはならない、そういうようなことを言われて、これも無理やり押し通された。あとで返すものを先に取る必要は全然ないのです。それでめちゃくちゃに困ったことがある。非常に不合理なことがあって、とにかく大衆が非常に迷惑しているわけです。それなのに、そのときに、とにかくあとで返すんだからということで、先にとってあとから——世の中で事務の簡素化と言われているときに、そんなやっかいなことをするというのはほんとにとんでもないことなんですが、そういうことが行われているわけです。その当時の情勢ではとにかく健康保険法の改正の方が大きな問題であったわけです。ほんとうは僕は審議をしたかったのですが、これが大事だからとかなんとかいうようなことで、無理やりに、船員保険法の審議はほとんどさせないで、これを通そう、これと同じ関連のものだからと、ずっと押し通そうとされた。私どもは悪いところを指摘したのですけれども、とにかくとにかくということで多数で押し通して、審議を打ち切って、とにかくしゃにむに押し切った。これは押し切られた立場は別としまして、これについては厚生省側も運輸省側もまともな答弁はできない。これはごもっともでございます、いけません、だけれども健康保険法と同じに並べなければならないからということで、審議もさせないで無理やりに押し通した。それがいけないということになって、参議院の審議のときに、これはその当時の厚生大臣も運輸大臣も、そういうことはいかぬ、だからそれを、今度はこうなってしまったけれども、とにかくそれはそうでなくしなければいかぬということで、大体そういう御意見になった。そのときに参議院の社会労働委員会で附帯決議がついているわけです。これはまあわあっとやっちゃったんでこういう間違いを犯したけれども、この間違いはもとに戻さなければいかぬということで、与党の方もまた緑風会の方もみんなそういう意見になられて、それから当該の官庁もそういう意見になられた。それをちょっと読みますと、こういうことです。二十六国会の附帯決議なんです。ほかのこともついております。「健康保険の被保険者の標準報酬額を引き上げた反面、船員保険の被保険者の標準報酬を最高三万六千円に据え置き、しかも被保険者の一部負担制度をなすことは、船員保険の療養給付の主旨から見て矛盾を感ぜられるから、船員保険法については、早急に根本的な改正について検討の必要がある。右決議する。」これは満場一致で参議院で決議されているわけです。ところが、それからずいぶん日数がたっているのですけれども、ほったらかされているわけです。それで何か船員保険法等の改正というインチキきわまる法律が出ているそうですけれども、私はあんなインチキな法案は審議する必要はない、撤回させるべきだと考えていますから、それについては、太宰君が首を振ろうと振るまいと、とにかく触れませんけれども、そこをちょっと見ましても、この方の問題が入っていないわけです。あの法案の問題ではない、あんな法案を出そうが出すまいがかまわないけれども、当時この問題を解決することは国会の意思であり、厚生省なり運輸省なりもそれを了承したことでもあり、また当然どんな観点から考えてもしなければならぬことだ。それがまだほったらかされている。それを早急に、この一部負担をやめるというふうな考え方にならなければいけないと思います。太宰君がそばで知恵をつけていますから、そんなことを言われては困ると言われるかもしれませんが、そんなことは抜きにして、理由あとで逐次申し上げますけれども、そういう経緯、国会の意思でそういうふうにきまり、運輸大臣が約束をし厚生大臣が約束したものであって、それがほったらかされている。それで坂田さんは、就任早々で、まだ船員法の規定も今お読みになったくらいで、この問題は——これは太宰さん、少しもっとそういう経緯のことを御説明にならなければいかぬと思いますが、まだ御説明になっていないということですから、厚生大臣も大体この問題は初めてだと思う。そこで、そういう経緯ですから、そういうふうに初めてでは困ると思いますけれども、これから急速にこの問題を考えられて——そのときに間違ったことをやったということは、全部が認めているわけです。間違いを正すには早くしなければいけません。急速にこの問題を解決するための法律改正をなさる必要がある。少くとも今即時と申し上げたいけれども、ほかの法案でこういう質問ができませんですから、まあできれば今すぐ御準備になって、五月の三日か二日ぐらいまでに出される、それがいかなくても次の特別国会には——ほかのところというか、毒をまぜちゃいけませんよ、毒をまぜたりじゃなしに、この点の薬だけの法律を出されたらどうかということについて一つ御答弁願いたい。
  63. 坂田道太

    坂田国務大臣 ただいま八木先生の御質問を聞いておりまして、まあ聞いております範囲内においてはもっともであるというような節もないわけではないわけでございます。でございまするけれども、八木先生のおっしゃることを直ちに私がそうだともこれは言えないかと思うわけでございますので、いましばらく時間の御猶予を願いたいと思います。確かに参議院の段階においてそういう附帯決議がついておるということも御指摘になりまして、あるいは八木委員のおっしゃったものは、御都合のいいところだけをお述べになったので、御都合の悪いところもあるいはこの附帯決議に書いてあるかもしれませんので、その辺のところはよく附帯決議の原案を見まして、あるいはその経過等も聞きまして、そして十分研究をいたしましてから、もし出すべきであるという判断に立ちますならば一つ一出したいというふうに考えるわけでございます。
  64. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 船員保険法に一部負担制度を採用いたしました際は、別にこれは健康保険法に入れて、船員保険法の方の気持が悪いから、こういうわけで入れたのでは毛頭ございませんことは今さら申し上げなくとも御承知のことと思います。これはやはり船員保険につきましては船員法との関連がございまして、三カ月間は業務外の疾病、負傷につきましても船主が持つということは、それとこの一部負担制度はやはりおのずから異なるところがありまして、やはりこれはあえてくどくど申し上げるまでもなく、私どもの見解といたしましては社会保険制度の健全なる運営を維持していきますためには必要やむを得ざるものとして採用しておる制度でございまして、それと船員法の船主の災害補償をかみ合せて、船員保険につきましてはお話のようにあとにおいて船主から補償してもらうという制度をとったわけでございまして、その辺のことについて運営上の問題はあろうと思いますが、これは一つ今後なお努力して参るつもりであります。  なお参議院の附帯決議の点につきましては、御承知のように一部負担制度について矛盾を感ぜられるから早急に根本的改正の検討をする必要があるという決議でございました。あれから見ましても、私どもこのたび船員保険法の改正を議論いたしました際におきましても、社会保険審議会におきまして、船員保険については相当根本的な点についていろいろ問題があるから、これを引き続いて船員保険部会として研究して参ろうということに意見が一致したようで、これは引き続いて部会が開催されて、この根本的ないろいろな問題につきましての研究が開始されるわけであります。私どもの見解は一部負担については先ほど申し上げた通りでございますが、いずれそこにおいてはやはりそれぞれのお立場からその点の議論が出ることは私ども承知をしておりますので、十分各方面の御意見もその際には承わって参るつもりであることを補足して申し上げます。
  65. 八木一男

    ○八木(一男)委員 まず厚生大臣に申し上げます。
  66. 坂田道太

    坂田国務大臣 参議院で予算が上るわけですから……。
  67. 八木一男

    ○八木(一男)委員 予算が上ろうが何であろうが、いてもらわなければ困ります。
  68. 園田直

    園田委員長 続行しますから、ちょっと待って下さい。
  69. 八木一男

    ○八木(一男)委員 閣僚がいない、そんなことは形式的なことです。向うは政務次官でいいですよ。
  70. 坂田道太

    坂田国務大臣 四十五分がきたのです。向うの矢嶋君が……。
  71. 八木一男

    ○八木(一男)委員 矢嶋君がなんといっても僕は承知しない。僕は四十五分間と聞いたのです。今聞いたら四十五分らしいのですが、僕は四十五分間のつもりで質問しておる。討論しておるときには政務次官だっていいですよ、答弁するのじゃないでしょう。ここは答弁を求めるのですから。それは矢嶋君のわがままなんです。参議院の予算委員会のわがままです。そんなものほっときなさい。
  72. 園田直

    園田委員長 また継続しますから……。
  73. 八木一男

    ○八木(一男)委員 あとで休憩で流しませんね。来られますね。もう一つの点、あと一分間区切りまで。厚生大臣、都合のよいところだけ言われたかもしれないと言ったけれども、そうじゃない、もっと言わなければならぬところがある。お読みになったように船員保険の標準報酬は三万六千円ではいけない、船員の標準報酬は、普通の給料はもっと多い。それを健康保険を上げておきながら船員保険を上げないという、こういう矛盾ばかり厚生省はやっておる。きょうは一部負担の方を御説明申しますというから——僕は都合のいいところだけを持ち出してやるというような、そんな卑怯なことはしませんよ。言う通り、その通りほんとうです。それをうそだと言う人、助言する人があったら、その助言する人がうそをついておる。そう思って答弁していただきたい。この通りで、僕は正直に言っておりますから。ほかのことも、三万六千円も言いたいのですが、時間の都合があるからこっちにしぼったのです。  続いて、次に、太宰さんの今の答弁は、もう非常に私はけしからぬと思う。とんでもない。厚生大臣来られてからもう一回言いますが、それで厚生大臣にいてもらいたかったのだけれども、そんなけしからぬ話はない。それで二十六国会のときになったのです。一部負担と標準報酬の引き上げについての附帯決議がついておる。それを全然なまけておいて、今度ごちゃまぜ法案を出してそこに入れたというならまだまだ半分答弁になりますよ。附帯決議がついておるのです。大事なことを全部すっぽかして、ほかのよけいなことのついた法律を出そうとした。それについてはこれから将来検討してみます。そんなことで政府の責任が保てますか。太宰さんが厚生大臣にこの経過を言ってないのは明らかになった。厚生大臣は就任したてのほやほやで、厚生行政はたくさんあるものだから知らないと言っておるけれども、そういうときにはこれは正直におっしゃい。もっと先にやらなければならないのをなまけておったのです。それとも、頑迷固陋なやつがいて、できなかったということを言われるべきであって、こんなものを問題があるということを言われては困る。これをしなければならないのだと答弁をなさるのが正直な答弁です。ただし、今までいろいろな仕事があってできなかった、あるいは太宰さんの就任前の人がなまけてできなかった、太宰さんになってからやられたけれども、それはまたほかのことがあったからなかなかできなかった、それとも何かブレーキがあったか、大蔵大臣のやつがわけがわからぬから、それでそこまでいってないのだということでもけっこうでありますけれども、そういうことであって、努力しておられないことを努力しておられるようなことに答弁をされては困る。二十六国会から一つもしておられない。今度船員保険法を討議する場合があったけれども、国会の附帯決議の、全会一致のそれを全然無視した原案を出しておられる。社会保険審議会を非常に買われますが、政府としては国会の附帯決議を盛った原案を出さなければいかぬです。それについて社会保険審議会で、それはいかぬといえば、こっちが勝手にきめますが、原案も出しておられない。附帯決議をやるという原案を政府は全然責任を持っておられない。附帯決議に対して原案を出して、保険審議会の連中の一部のわけのわからぬ連中が反対した、それはこっちで考えます。原案も出しておられない、しかも保険審議会の中のもののわかった委員は、これの必要性ということを主張しているわけです。それを助長し推進しようという立場をあまり積極的にとっておられない。全然政府としての努力はしておられない。運輸省はどうですか。
  74. 土井智喜

    ○土井政府委員 ただいまの御説明の通り船員法の関係につきましては、やはり第八十九条によりまして「船員が職務上負傷し、又は疾病にかかったときは、船舶所有者は、その負傷又は疾病がなおるまで、その費用で療養を施し、又は療養に必要な費用を負担しなければならない。」これが船員法の原則でございます。それで船員法の成立の経過から見ましても、その給付につきましては同法の第九十五条によって、これは他の法律によって療養またはその費用等が支払われる場合においては、その限度において災害補償の責を免れる、従って船員保険法はうらはらの関係になっておるわけでございます。御質問にもありましたように、船員の場合に特にこの点が問題になりますのは、やはり海上労働の特殊性と申しますか、船舶はひんぱんに移動する、それがために陸上の労務者と違って、固定した療養の場所を持たない例が多くなるわけでございますので、船員法のこの原則については、国際的にもこれが認められておる次第でございます。そこで厚生省の方とこの点いろいろ事務的にも打ち合せいたしまして、できるだけ船員に負担のかからないように努力をしておるのでございますが、今までの実際の模様を見ますと、割合に大型の商船、汽船関係におきましては違反が少いのでございますが、小型船、機帆船あるいは漁船等におきましては、やはり零細企業が多いのでございます。それから一方におきましてやはり不況の影響等がありまして、まだそこまで全部徹底されておらないようなうらみがある次第がございます。そこでとにかく船員法のこの規定というのは、船主が療養の義務があるわけでございますので、できるだけその点に義務違反のないように労務官等を督励はしておるのでございますが、やはり経済的な負担等の関係から見まして、保険との関係の調整の問題は確かに今後の問題として残されているところでございますし、そういった点については船員保険のいろいろ改正等につきでましても、関係者から意見も出ておりますし、社会保障制度審議会でも討議されている問題でございますので、今後とも一つその点を考慮して参りたいと思っております。
  75. 八木一男

    ○八木(一男)委員 それじゃ厚生大臣が来られるまでこのまま休憩して下さい。
  76. 園田直

    園田委員長 このままで休憩いたします。     午後四時三分休憩      ————◇—————    午後四十五分開議
  77. 園田直

    園田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑の通告がありますのでこれを許します。田中正巳君。
  78. 田中正巳

    ○田中(正)委員 簡単に引揚者給付金について御質問を申し上げたいのであります。昭和三十二年四月一日以降この法律が施行されておるわけでありまするが、その後この法律の施行状況は一体どういうふうになっておるか、これを簡単に御説明願いたいと思います。
  79. 池田清志

    ○池田政府委員 ただいま田中委員の御質問の引揚者給付金の問題でありますが、お引き揚げになりました方々がリュックサック一つでお帰りになりました実情等にかんがみまして、国会の御鞭撻等によりこの給付金が出ることになりましたことは御案内の通りであります。政府といたしましては、国会の御意向等もしんしゃくいたしまして、これが施行の円滑を期しておるところでありますが、その細部につきましては他の政府委員より御説明申し上げます。
  80. 山田真澄

    山田説明員 進捗状況について御説明を申し上げます。総予定人員は約三百三十万人と予定をしておるのでありますが、本年の二月末までの受付数は二百五十九万人でございます。これは約七八・五%になります。この受付人員に対しまして、すでに認定を終りました人数は二百二十七万人でありまして、これが受付数に対しまして八七・七%に相なっております。それからすでに国債の発行令達の済んでおります人数は、二百十七万人でございます。これが金額にいたしますと、三百十四億でございます。
  81. 田中正巳

    ○田中(正)委員 そうすると、われわれが当初予定しておりました三百三十万に対して現在まで受付が約七八・五%しかされておらないわけでありまして、あとの二二%ほどのものは、まだ全然申し込んでおらないということに相なるわけでありますが、これらについては、一体どういうわけで申し込みがないのか。あるいはまた時間の都合上先に進みますが、さらにこのうち三十万ほどの人間が認定を受けられないでおりますが、その間の事情、要するに国債の交付を受けられないという人がかなり実はあるわけでありますが、これらについては一体どういうわけでこういう事情になっておるのか、その辺を御説明願いたいと思います。
  82. 山田真澄

    山田説明員 現在までの受付数が七八・五%でございますが、その残りの者がどうしてまだ出ていないかということでございますが、これは資料を現在整理中であるというものと、それから時効までにまだあと一年ございますけれども、時効が来るまでに出そうという比較的のんびりした人が相当あるように思われるのでありまして、大体そういう方々であろうというように考えております。
  83. 田中正巳

    ○田中(正)委員 資料が整備できない、あるいはまた時効がまだであるからもう少しゆっくり出そうといったような人であろうということでありますが、資料の整備という点が実は問題だろうと思うのであります。そこで政務次官にお尋ねいたしまするが、政務次官はこの問題について、いろいろと該当者の人々の間に資料が整備できない、その資料の整備できない理由の中に、この制度そのもののつまり要件が非常に厳格だといったようなことから、そういった恩恵にあずかれないというようなことがいろいろいわれておって、しばしば該当者からこれについて政府当局に要望等があるわけでありますが、政務次官はこういったような点についてお聞きになったことがございますか。
  84. 池田清志

    ○池田政府委員 ただいまの田中委員のお尋ねでありますが、私も一議員といたしまして引揚者の方々からそういうようなお話を再々伺っておるところであります。なお役所といたしましてもそういう話を伺っておるわけでありまして、係からもそういう報告を受けておるところであります。
  85. 田中正巳

    ○田中(正)委員 そこで一昨年ですか、この法案を本委員会において審議いたしました節にも実はいろいろ問題があったわけでありまして、それぞれその間熱心な質疑応答がかわされたのでありまするが、どうもそういったような点についてこの制度の施行実施が円滑にいかないというふうに、実は私ども当時の委員会から見ると思われるのであります、特に問題になるのは、在外期間六カ月という制限等をめぐりまして、いろいろ当時の事情からして、これについての確実なる資料がなかなか手に入りがたい、あるいは客観的に証明ができないといったような事情から、ほんとうにそういう状態であるにもかかわらず申請ができないでいるといったような事情も実はあるようであります。それからまた昭和三十二年三月三十一日までに死亡した者について年令の制限がありまして、こういったような点からも恩恵に浴し得ない人もある。あるいはまた所得額についてもいろいろと問題があったようでありますが、それらをめぐっていろいろとこれらの該当者の人々の間に実は問題があるわけであります。これらについては当時も当委員会においていろいろ審議をいたしまして、将来いろいろ考えていかなければならぬといったような御答弁もあったように私どもは記憶いたしておるのでありますが、今日この支給の状態を見ましても、当初予定しておった予算額はたしか五百億と記憶いたしておりますが、すでに法施行後二年になりますが、実は三百十四億しか出ておらないというようなことになって参りますと、あと二百億近い金が余っておるわけでありまして、そういったようないろいろの趣旨から考えて、あの節にしかれたところのこれらの制限措置というものを、当時の事情並びにこれらの人々の置かれた立場並びに今日の要望等をいろいろと勘案いたしまして、また予算も若干ゆとりがあるように思われまするので、厚生省当局はこれらの制限を緩和するとか、あるいは再検討するとかいうような御用意があるかどうか、その点について政務次官からお聞きいたしたいと思います。
  86. 池田清志

    ○池田政府委員 今のお尋ねでありますが、お話のように五百億を予定いたしまして発足いたしましたことは御案内の通りであります。ところがその施行状況は、先ほど山田君から御報告申し上げましたように、なかなかフルに参っておらないわけであります。その理由といたしまして田中委員も御指摘になりましたようにいろいろ条件がある、しかもまたその条件を満たすための調査がなかなかむずかしいというような点もいろいろ指摘されるところであります。さればそういうようなものを超越と申しますか、緩和すると申しますか、そういうことによって五百億に達するように骨折るべきであるという御主張でありますが、この五百億というのは予定の人員全部が申請され、全部が認可されるということになりますと、それでおしまいになるわけなのであります。ところが予定の人員中まだ整備されておらない、すなわち認可されておらないという方々が多数いらっしゃるわけでございますが、それは必ずしもこの条件がむずかしいとかいうことばかりでもないかと思います。先ほど山田君も申しましたように、時効の期間等もまだ一年くらいはありますから、もっと迫ったらお出しになるという方もおありでございましょう。しかしまた条件がむずかしいということについての緩和の問題といたしましては、私どもこういたしますというお返事を今日のところできませんが、当局におきましてどういうふうにしたらよろしいであろうかということを調査をいたしておるわけであります。
  87. 田中正巳

    ○田中(正)委員 ただいま厚生政務次官からいろいろと検討をいたすとかあるいは調査をいたすというお話があったのでありますが、すでにもうこれは法施行して二年になるのであります。実際は手続を始めてから一年半くらいだろうと思いますが、およそこういったような政府から金が下りるということになりますれば、大ていの人は、申請する意欲のある者は、もうすでに大体しているのでありまして、さっき説明員の方からのんきな人もおるという話がありましたが、こういうような人もおるだろうと思いますが、実際私どもの知る限りにおいては、これは少いだろう。むしろいろいろ手続がめんどうであるから一つもう少したってからというような気持が、私ども地方において聞くところによると、実際は多いのですね。また、何とかいただきたいと思うけれどもめんどうであるとか、あるいは一生懸命資料を探しておるけれども、あるいは証人を立てたいと思っているけれども、なかなか見つからないというような状態で、心ならずもおくれているというのが、われわれの知っている範囲内では実態のようであります。そういうわけでありますから、おそらくこのままの制度でやっていくならば、時効完成するまでの間に五百億は出ない、なるほど数字の上ではそういうふうになりますけれども、その後いろいろな推算の違いもありましょうし、あるいは死んだとかいなくなったという異動もあると思いますので、結局私はこのままの格好でやれば五百億はいかないと思うのです。それの緩和でありますが、これについては私は予算はこのままでいくならば余るものであろうというふうに思いまして、片や今申し上げましたようないろいろな制約を緩和いたしましても、そう大した金額にはならないというふうに思っているわけであります。これは今後この制度を実施していく上においていろいろと大きな影響のある問題ですから、ここで直ちにやるのだとか、あるいは改正案を次の国会に出すのだという御言明はあるいは困難かと思いますけれども、これは一つよく考えていただきたいと思うのであります。実は非常に気の毒な状態で、これこそわれわれがこの制度を実施して恩恵を与えてやるべく国会において立法した、その親心というものが通らないような具体的な事象というものが、地方には枚挙にいとまないほど実はあるわけであります。それをめぐりまして、われわれ国会におる者についても、こういったようなことについて再検討してもらいたい、緩和してもらいたいという声はしばしばであります。そういったようなことで、われわれはこの制度が不公平にわたったりあるいはルーズになるということは決してこいねがうものではないのでありますが、もしわれわれの見込みの通り予算上多少でも余裕があって心配がないものならば、一つ近い将来においてこれらの点をめぐって再検討し、なるべくこういったような引揚者の気の毒な人々にこの恩恵が均霑するように、またこの制度があまりにもストリクトなために心ならずも泣き寝入りするようなことのないように、ぜひお願いしたい、かように思っておりまするが、これらについて政務次官、もう一ぺんお答え願いたいと思います。
  88. 池田清志

    ○池田政府委員 今の田中委員の重ねてのお尋ねでありますが、全く御趣旨御同感でございます。資格のある方でありましたらすべての方に漏れなくこれが徹底し、すべての方々に対しましてこの交付金が渡るようにいたすべきは当然であります。幸いにいたしまして田中委員の御高見を拝聴いたし、私ども役所といたしまして御趣旨に沿うように今後努力をさせていただきたいと思います。
  89. 田中正巳

    ○田中(正)委員 いろいろと趣旨に沿うように努力をするそうでありますから、一つその点はよく研究をいたしまして、できるだけ近い将来においてこういったようなことについてこいねがっている、待ちあぐんでいる全国の資格者のためにやっていただきたいということを、重ね重ね御要望申し上げまして私の質疑を終ることにいたします。
  90. 中山マサ

    中山委員 それならば、これだけのお金が余っている、しかしまだ有資格者が申し出るかもしれない、こういう二つのことになっておりますが、その制限された期間がだんだん迫って参りましても、もしこのお金が余るようになったらどうなさるおつもりですか。これは残りだから、いわゆる出さずじまいにするというお考えかということが一点。それから社会党さんがいつもおっしゃるのでありますが、厚生白書を見ると、いわゆる人口の黒い壁ということを厚生白書でしきりに書いておられまして、日の当らない階層が非常にふえてきた、いわゆるお金のある者とない者とのギャップが非常に大きくなってきたとおっしゃいますが、こういう海外におった人たち日本に帰ってきまして、苦労をされているところが一番目の当らない人たちではなかろうか。私ども、海外の引揚者に関しましてはまことにお気の毒に思いまして、微力ながらもいろいろの努力をさせていただいたものといたしましては、ぜひ一つそういう御見解を、ただ厚生白書を出しっぱなしで、こういう暗い階層が非常に幅が広いということを言いっぱなしで、厚生省が済ましておいでになってもいいのか、これだけの金がもし全部使い果されないとするならば、御自分のお説に従って、その暗い階層に少し日を当ててやろうという親心はないものか、その辺を一つきまり切った政府答弁のようなことばかりおっしゃらないで、私はもうちょっと翻り切ってお話を伺いたいと思うのでございますが、私のお願いは無理なものでございましょうか。ほんとうに政府がそうしたいという気持を起しますれば、私はこれはできることだと思うのでございます。たとえば母子家庭に対する貸付金でも、余ったものはその年が過ぎればすぐ切ってしまうというようなことは——これは政府でなしに大蔵省かもしれませんけれども、そういう厚生白害を出すときだけは一生懸命にそういう気の藤な階層のことをできるだけお書き立てになって、それっきりでなしに、その階層を縮めていく努力、ことにそういう暗い階層の中で引揚者の階層が私は一番みじめだと思っておるのでございますが、いかがなものでございましょうか。その二点を一つ伺いたいのでございます。
  91. 池田清志

    ○池田政府委員 今の中山委員のお尋ねでございますが、第一点の五百億、これを余すつもりは毛頭にないのでございます。これは御承知のように予定人員を想定いたしまして、それに応ずる総額といたしまして五百億でございますから、予定人員の方々がすべて御申請をいただいて、すべてパスしていただくということは、私どもが念願しておるところでございます。でありますから、先ほども資格要件あるいは審査等がむずかしいから、それを緩和して円満にいくようにしろという田中委員お話がありまして、私どもも今後そういうふうに努力をさせていただきたいとお答え申しておるような次第であります。  第二点の厚生白書の関係につきましては、これは御承知のように実態そのままを明らかにしておるものでございます。これに対しまして日の当らない谷間の方々に対しましては、国といたしましては社会保障、社会福祉の関係におきましてできるだけの措置をしなければならないということはもう御指摘の通り、あるいは御鞭撻の通りでありまして、私ども役所といたしましては、ぜひそういうことに力を入れて参りたいと思っておる次第であります。なお具体的のことでありますれば、他の政府委員からお答えいたします。
  92. 園田直

    園田委員長 委員長から一言申し上ておきますが、ただいま田中正巳君から質問した引揚者の給付金支給等を中心とする質問は、委員会全般の意見でもあり、検討すべき時期でもありますから、なるべく早急な時期に委員会政府と一体になって検討されるように要求いたします。——八木一男君。
  93. 八木一男

    ○八木(一男)委員 厚生大臣の御到肴がおくれておりますので、政務次官に御質問申し上げたいと思います。先ほど御質問申し上げておりました船員保険の一部負担の問題はしばらくおくといたしまして、やはり社会保険の問題でありますが、社会保険の審査制度の問題について一つ御質問いたしたいと思います。  社会保険の審査制度は、御承知の通りいろいろの傷病手当金が突然切られたり、あるいはまたつき添い看護料が打ち切られたり、あるいはまた傷害年金が突然打ち切られたというときに、それは困るじゃないか、もっともらっていく資格があるというようなことで、被保険者なり、被扶養者なりからそういうことを審査を要求するわけであります。当然審査をして、支給を打ち切られたのは不当であるから続けることになるというような大事な制度であります。これについては審査制度の人員の問題、予算の問題、その他の問題でこれがうまく運営されておらないと私どもは考えているわけなんですが、どう運営されておるか伺いたい。
  94. 池田清志

    ○池田政府委員 ただいまの保険制度におきます審査制度の問題でありますが、私ども政府といたしましてはできるだけこの機関の運営を円満に進行いたしまして、申請者の御趣旨に沿うように努力をするということで進めておるのでありますが、今御指摘のように予算等の側約を受けたりいたしておりまして、御満足を得ていない場合があろうかと思います。これにつきましてはさらに努力をするということを申し上げます。なお他の政府委員からも詳しくお答えすることにいたします。
  95. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 御指摘の通り、社会保障の審査制度は非常に大切な被保険者の権利に関する問題でございます。これにつきましてはできるだけ公正にやるということはもちろんのことでありまして、さらに迅速を要するということも必要であろうかと思うのであります。さような建前で、せっかく努力はいたしておるのでございますが、これは御指摘のようになお今日の段階においては決してこれが十分であるとは私どもも考えておらないのであります。この点については何とかして能率を上げるように行政運営の面においても考慮いたしますと同時に、やはりそれの人員の不足の点などにつきましても検討をいたさなければならない。かように考えておる次第でございます。それでとりあえず三十四年度におきましては、従来審査官が各都道府県に一名ずつ配置されておるわけでございますけれども、特に多い都道府県につきましては、その審査官の数を複数にするということにいたしまして、東京において二人、それから北海道、大阪、兵庫、各一名を増員する、かような措置をとっておる次第であります。なお引き続き今後そういう審査制度の運営の強化につきましては、御指摘の点は私ども十分わかっておりますので、今後さらにその強化の措置を講じて参りたい、かように考えておる次第であります。
  96. 八木一男

    ○八木(一男)委員 政務次官からよく厚生大臣お話しになっていただきたいので、よくその点について御理解いただきたいと思います。  太宰さん、東京の審査請求の件数と、それから少いところの審査請求の件数との差はどのくらいになっておりますか。
  97. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 個々の県は具体的に申し上げられませんが、全国の審査官が年間に一人当り平均七十四件ほど取り扱っておりますから、月にいたしますと約六件でありますが、ただいま申しましたような県は、それの何倍か処理しているわけです。東京でございますと、月に四十二件余り処理をいたしております。大阪あたり二十件、兵庫あたりが二十八件という程度処理の件数でございます。
  98. 八木一男

    ○八木(一男)委員 鳥取か奈良県か滋賀県か、そういう小さな県の数はわかりませんか。
  99. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 一例で八木委員の御出身の奈良を申し上げますと、三十二年度で三十四件でございまするから、月にいたしますると三件弱ということでございます。
  100. 八木一男

    ○八木(一男)委員 厚生次官、よくお開き下さいましたね。月に三件くらいのところもある。東京では太宰さんが言われましたように四十何件、そうですね。各都道府県に今一人ずつしかいない。一名増員しても東京の方が一人当りが二十件、ほかのところは三件、猛烈なアンバランスですね、そういうことがあるわけです。全体的の数もふやさなければならないけれども、そういうような多いところにたくさん人員を配置しなければ、ひとりでにおくれることは当然のわけです。ところが、ちょっとおくれては非常に困る問題ばかりだ。つき添い看護が必要だということをばんと減らされる。滅らされた間はくれないわけです。くれなくても金がある人はいいけれども、ない人がある。つき添い看護は打ち切られた、困ったなと言っている間に審査請求をやったってしてくれない。その間からだを無理して——つき添い看護を審査をしたら、つき添い看護が必要であるという決定が出るかもしれない、そういうような人がつけてもらえないために無理をする、からだをこわす、結核の場合だったらそれで喀血して死んでしまうということもあるわけです。それを審査がおそくなるということのために人が死んでしまったり、その間また、病理的に死ななくても、世をはかなんで自殺をすることもあれば、そうじゃなくて生きていく人でも、当然の自分の権利があるのにそれを無視されて、その間非常に苦しみ、悲しみにあわなければならないということが起る。それでは困ると思う。全体に少いですよ。全体に少いけれども、今全体の問題の方が大事ですけれども、今のバランスの問題も非常におかしいですよ。三件に一人のところと、四十何件くらいのところがある。それで東京で四十件あるのに一人ふやす。一人ふやしたわけです。一人当り二十件になるわけですね。そこへよけいに二人ふやした。もうそんなことは大して変りがないわけです。
  101. 池田清志

    ○池田政府委員 大いに変りますよ、三で割るのですから。
  102. 八木一男

    ○八木(一男)委員 三で割ってみましょう。四十二件ですから、十四件です。三と十四だったらだれが考えたって四倍半以上ですね。そういうことが起るわけです。全体の数をふやすことがまず大事ですが、そういうことになっている。明らかに不合理なことが予算がとれないために起っている。こんな予算は大したことはないのです。それをやはり厚生省自体が予算をとって、ちゃんと解決してもらわなければいけない。大蔵省は金がないないと言うけれども、片方は金がない、あるの問題じゃないのです。健康が守られるか、その人が非常に不仕合せなことになるかという問題なんです。金がないないと言うけれども、金なんか幾らでも作れるわけです。国家財政だから、必要なことだったら増税すればできるのです。増税は僕はそんなに賛成しませんが、ほんとうに必要なことだったら、それをしなければほかの人が死んでしまうということだったら、それをしなければいけないのです。ところが、そういうことを一つも知らない、そういうことに同情のない大蔵官僚が、ただ自分の任務の範囲内でつじつまを合せよう、少くすればいいということをやっている。そのわからない連中に教え込んで、教え込んでもわからなかったらけんかしてでもとるのが、こういうような医療行政を担当している厚生省の任務だ。ところが厚生省は非常に腰が弱いので、いつまでたっても、ふやしたといってもそういうような状態です。そういうことを変えられなければいけないと思う。今の問題よりももっと大事なのは全体的な人数をふやす問題です。それで審査官の人数がふえることが必要だ。それができなければ——大蔵省の壁がなかなか厚いことは知っています。それができなければポジションをつけるということも考えられる。ブロックについて、件数が多いところには数をふやすということもしなければなりませんし、またブロック内でプールしてやれば、その仕事が肩の荷が重過ぎるのと軽過ぎるというのも幾分変ってくるということもあるわけです。幾らでもいろいろな方法はある。とにかく人間をふやすということ、それから繁文縟礼でなくて合理的に考えるということもしていただかなければならない。それについてそういうことを必ず推進されるかどうか、次の国会で、まだなまけておるのではないかというようなことを言わなくても済むような処置をされるかどうか。
  103. 池田清志

    ○池田政府委員 ただいまの八木委員の言われた審査制度の重要性につきましては、私どもこれを十分考えておるのであります。御指摘のように、審査は適時にしかも迅速に処置しなければならないものでありますから、それに要しまする人員等も、逐次ではありますが、だんだん増員をしたいと考えております。三十四年度におきましても御案内のように少しふやしておるわけであります。これの配分につきましては、取扱いの件数等を考慮いたしまして配置をきめたいと思います。なお、御意見のようなプール制と申しますか地域制と申しますか、そういうようなやり方も、御高見にありましたようにけっこうなことだと思いますから、私どもも研究さしていただきまして、審査制度が円滑に進むように考えていきたいと思います。
  104. 八木一男

    ○八木(一男)委員 まことによさそうな意見ですけれども、もっと金をふやしてこなければしょうがないわけです。それでこれは定員というような問題がありますね、定員法の一部改正で、すが、それを今度の臨時国会に出されるかどうか、次の臨時国会で補正予算にそれを組まれるかどうか、そういうことです。
  105. 池田清志

    ○池田政府委員 八木委員の御発言は、私ども御鞭撻いただいておるのでありますが、きょうのところ、御指摘になりましたように次の臨時国会に提案するということをお約束はできませんし、あるいはまた、きょうのところ、補正予算の中に織り込むということのお約束はできませんが、御趣旨に沿うようにあらゆる努力をさしていただきまして、いろいろ事務的にも調査研究を進めさせていただきます。
  106. 八木一男

    ○八木(一男)委員 次に、これは第一審の方なんですが、第二審の方、社会保険審査会、こちらの予算もふやしてもらわなければならない。社会保険審査会でも非常に事務が渋滞しておるわけです。それはそこに事務局がない。そこで審査して決定したことをやっているところは保険局の庶務課なんです。きまったことでもその決定通知がおくれてしまうわけです。審査会の方もやることが非常におくれているのですが、おくれてきまったことが、今度決定通知を出すことを保険局の庶務課がやっているのですが、ほかの仕事があるからなかなかできないということでは困るのです。それについてはどうですか。
  107. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 中央の社会保険審査会につきましては、地方で解決いたしませなんだ問題を審査いたすわけでございまするから、それだけ処理件数においては少くなると思いますが、その一件々々の内容は、よりむずかしくなってくる。これにつきまして、先ほど申し上げましたように、公平にそれから迅速にという前に、慎重にやらねばならぬという要素が非常に強くなってくる。それだけに一件当りの日数もかかることはいたし方ないことであります。しかしながら今日三人の審査官がフルに活躍しておるわけでございまするけれども、その運営という面では決して私どもまだ十分ではないと考えておる次第であります。何とかしてこの面の打開につきましていろいろ考えていかねばならないと考えておるわけでありますが、御指摘のようにいろいろ人をふやすという問題それから予算の問題もあろうかと思いますが、これは逐次考えて参ることにいたし、さしあたり可能な面からでもこの運営がより迅速にいくように私どもは考えて参りたいと考えておる次第でございます。
  108. 八木一男

    ○八木(一男)委員 政務次官にお答え願いたいのですが、審査会で結論を出されてから、決定が文書になるのには半年かかる。半年の間のそういう人たちの苦しみというのはほんとうにとんでもないことです。その前にずいぶんおくれておるのですよ。これは別として、事務的の処理だけで、ほんとうに不仕合せな人が半年間精神的に苦しむ、それが解決できなかったら政治じゃないです。おまけにそこで悲観して首つりでもされたら、あと取り返しがつかない。事務の決定が文書にできない、そういうことだけで、そういう多くの一番気の毒な人に非常な不幸を与えておるわけです。そんな問題が解決できなかったら、これは全然社会保険なんか語る資格がない。ほとんど解決されてないわけですよ。太宰さんの方の御説明、御弁解はけっこうですが、厚生大臣の代理としての政務次官——政務次官は大政治家であって、ほんとうはどんどん大きなことを推進されると思いますが、残念ながら官制上即時にお答えできないこともあろうと思いますが、このくらいのことは厚生大臣がおられなくとも私の責任でやらせます、そんなものは事務上の処理でおくらすことは断じてさせない、とにかく次の国会にはそういう文句を言われないように、諸君としてもよくやったと言われるようにやってみせます、そのくらいのことは御返事できると思う。これは小さなケースですけれども大事なケースです。そういう点について、これは法律的な大事な任務ですから、厚生大臣にかわっての政務次官の決定的な御返事を一つ伺いたいと思います。
  109. 池田清志

    ○池田政府委員 今の御発言は人の人命、人権に関する最も大事なことでありまして、迅速にやらなくちゃならぬことは御案内の通りであります。お言葉の中に半年というようなこともございましたが、私ども報告を受けております限りにおきましては、そういう長くかかったものはないのであります。しかしまたそういうものがあると前提いたしましても、それを短縮することは私どもの務めでありまして、部下関係の者を督励いたしまして迅速に処理ができるようにし、処置ができるようにいたしまして、次の国会にはおほめの言葉をいただくように努力をさせていただきます。
  110. 八木一男

    ○八木(一男)委員 総括的にはいいのですが、督励して労働強化ばかりさせたってそんなにできるものじゃない。一週間や二週間はできるかもしれぬ。そういうことじゃなしに、それの人員をふやすこと、審査会自体に事務局を置くこと、その陣容を充実させること、それに対する予算の裏づけをするということをしなければ、督励だけでは今度はその人が神経衰弱になっちゃうというようなことがあるわけです。労働強化ということでやらせるのじゃ長続きはしない。だから事務局を置くか、人員をふやす、その予算を取る、そういうことについての御返事を伺いたい。
  111. 池田清志

    ○池田政府委員 事務局を設けるという御趣旨の御発言のようでありますが、現在事務局と銘打って存在するものはございませんが、庶務課においてこれを担当しておりまして、事務局があるがごとく一生懸命やっておりますから、決して労働強化になる筋はないと考えております。
  112. 八木一男

    ○八木(一男)委員 われわれの調査では半年おくれておるのですよ。そんなものは決定したら即座に出さなければいけないんですよ。半年という例があるけれども三カ月くらいの例もあるということを太宰君は言っておられたが、三カ月なんてけしからぬ。一月でもけしからぬ。十日でもいけないですよ。それなのに事務局を督励してやるというような御返事では困る。それをほんとうにやらせるためには、ずっとやらせるためには人員をふやさなければならない。予算を取らなければならない。予算も取らない、人員もとらないでやりますと言ったって、それはから念仏ですよ。ほんとうの政治家である厚生政務次官は、政府予算のことに一口も口をきいちゃいけないというような自民党の中の妙なワクは破って、このくらいのことは政務次官——何十億出せるかと言っても、政務次官が大臣になられたときには言えますけれども、それは無理かもしれない。こんなものは大した金額じゃないでしょう。そのくちいのものは政治生命にかけてもやってみせますというくらいの御返事をなさらなければいけないと思う。
  113. 池田清志

    ○池田政府委員 この定員の問題あるいはその配置、職務分掌の問題等はもう釈迦に説法でありますが、御案内のように各行政分野におきまして政府といたしましては心を配っておるところであります。今の審査の問題につきましても、現在中央に三名おるわけでありますが、それをもちまして事務量等からあんばいいたしまして、これでよろしかろうという前提のもとにそういうことに相なっておるわけであります。もしそれ事務量等が増加いたしまして、あるいはまた時間の短縮等をはかるという要請により、それに応ずるように処置するという段階になりました後におきましては、これは申すまでもなく人員の増加というようなことに進んでいきますることをお答え申し上げます。
  114. 八木一男

    ○八木(一男)委員 大政治家でございますから、政府全体の立場も十分御理解でございましょうけれども、今は厚生省の代表として御答弁を伺っておるわけです。大蔵大臣なんかの立場など考えなくてもいいのですよ。厚生大臣としてはそこでもこれをふやすのだという御返事をいただけたらいいわけです。政府としてやるのだったら、最終的に岸信介君に言わなければいけないのです。未決定事項を決定したとは言えないでしょう。厚生省としてはとことんまでやり抜くのだ、やらなければ——というのはかく決意を示さなければ大蔵省のわけのわからない連中はうんと言わないでしょう。これくらいのことは、大政治家の政務次官が辞表をたたきつければ展開します。そのときには考えますとか、そうでなくて、連続的に三回くらい話せばわかってきます。ちっとも悪いことじゃない、いいことです。それで不仕合せな方が救われればこれは政務次官としても御満足だろうと思う。そのくらいのことはなされる大政治家であると私は思う。ですからそんなあいまいな返事でなくて、少くともやってみせる、予算をふやす、人員をふやすというような御返事はいただきたいと思うのです。
  115. 池田清志

    ○池田政務次官 厚生省内部の諸要員の問題について申し上げてみましても、やはり事務量等に制約されますことは御案内の通りであります。従いまして中央における審査の問題が、事務量等が増加いたしまして定員を増加しなくちゃならないという段階になりましたら、私政治家として、あげてこれに努力いたします。
  116. 八木一男

    ○八木(一男)委員 それでは困ります。事務量がふえまして、今事務が停滞しているわけです。今半年か——早いのは一カ月くらいのがあるかもしれません。一カ月だっておくれておるわけです。今停頓しておるからそれを解決するのが政治であって、しないのだったら何にもならない。それを解決する努力をしないのだったら何しているかわからない。この面に関する限り無能力だ、責任を果していないということになる。悪いことは全部変えなければ政治は進んでいかないわけです。事務量がふえましたといったら、ますます半年が一年になる。そんなことはやるのは当りまえで、現在事務量でおくれておるのだから、おくれないようにするには人員をふやさなければならない、予算をふやさなければならないということは、聡明なあなたはおわかりのはずなのです。それを立場に縛られたりということでなしに、ほんとうに政務を担当しておる政務次官として、ほんとうに政治的にやるべきことはやるのだ、やってみせるのだ、そういうような御返事をいただきさたいと思います。事務官としてでなしに。
  117. 池田清志

    ○池田政府委員 現在の事務の分量から申しまして、現在の人たちをもちましてこれでやっていける、こういうようなことによりまして現在の通り進めておるわけでございます。もしそれ事務量等が増加をいたしまして人員増加の問題が出た場合においては、これはどうしても徹底して増加しなければならぬということは御理解いただけると思います。
  118. 八木一男

    ○八木(一男)委員 今まで厚生政務次官の御答弁は全部筋が通って、そんな変な答弁はなかったと思うが、きょうはほんとうにおかしな答弁ですよ。半年おくれている。半年は多い例かもしれぬが、三カ月と言われるかもしれぬけれども、おくれていることは初めから認めているわけです。おくれていることが悪い、非常に気の毒な人の人権を極端に圧迫するということは認めているわけです。悪いことを直さなければ政治じゃないでしょう。それではほかの人に何も言えないでしょう。どろぼうする人が悪いといって刑法で縛る、そういうことは言えないでしょう。政府自体が悪いことがわかっていながら直す努力をしない。とにかくおくれていることは悪いのですよ。おくれていることは非常に人民の不幸を増すわけです。それがわかっていながら、将来ふえたら増すというのですが、そんなのは意味をなさない。現在悪いのを直さなければ……。
  119. 池田清志

    ○池田政府委員 八木さんの重ねての御質問でございますが、先ほど来申し上げておりますように、人員の配置はやはり事務数量というものが一つの基礎になっておることはおわかりの通りであります。今の審査の中央の問題にいたしましても、だんだん件数がふえておるように報告を受けております。従いましてそれに時々刻々応ずるようにということはむずかしいことでございますが、予算関係でありますから、一年度々々々におきましてそれに適するようにだんだんに進めて参るようにいたしたいと思います。
  120. 八木一男

    ○八木(一男)委員 今太宰さんからいろいろ聞いておられたでしょう。そういうことではいけないと思うのですよ。今まで何回も御答弁を伺いました。全部が非常に筋の通った御答弁です。僕は厚生政務次官を非常に尊敬申し上げていたのです。そういう方が、今の質疑応答の中で、そういうことは直すように予算の裏づけをする、定員は増すと当然言われる方であると思う。ところが、太宰君が横で耳打ちをすればそういうワクにはまった御答弁をなさる。それじゃ事務局が政治を支配しているわけです。ここは国会ですよ。事務局の中の事務の打ち合せではないのです。政治というものはどうあるべきか、日本人の当然の、一番気の毒な人の人権が実際にじゅうりんされているのですよ。それを直すかどうかということを伺っているわけです。事務局なんかどうでもいいですよ。政治家としてそれを直すべきであるかどうか、直すべきだと思ったら、それをやるためにとことんまでやるという御決意を表明していただかなければならないのだ。事務局の今まで間違った——半年も延ばした、三カ月も延ばした、それで不幸な人の不幸を助長した、間違った事務局のワク、それにとらわれている御答弁なんか御答弁になりませんよ。
  121. 池田清志

    ○池田政府委員 重ねてのお尋ねでございますが、その時期来たりということでありますならば仰せのように直さなければならないということは先ほど来申し上げている通りであります。
  122. 八木一男

    ○八木(一男)委員 時期来たりという情勢をあなたが推進されるかどうかということです。ひとりでに時期が来たときにやったのでは任務を果していないわけです。言葉でうまく言われる、幾らうまく言われても私は一生懸命聞いていますからね。ほんとうの意思の御表明があればそんなに続けて申しませんが、言葉はきれいでも、時期来たれりということで、大蔵省が聞かないときにはいつもこれをやらないということであっては答弁にならないわけです。事務量がふえたらふやすということでは、現在のおくれていることを解決することにならない。そういうことじゃなしに——それはできないことはありますよ。あなたが辞表をたたきつけられても岸信介君が頑迷固陋だったらできないでしょう、あなたが総理大臣になられるまでは。そういうことは知っていますよ。知っていますけれども、時期来たれりという情勢をあなたがとことんまで作っていかれるかどうかということを伺っているわけです。
  123. 池田清志

    ○池田政府委員 現在の段階におきましては、実情から申しましていまだ時期来たれりということではないと私は判断いたします。従いまして私が時期来たりと申しましたのは、漸次ふえて参ります事務量等をあんばいいたしまして、増員の要ありということになりました際におきましては、これが実現を期するべく努力いたしたいということであります。
  124. 八木一男

    ○八木(一男)委員 厚生政務次官、いつまでたっても押し問答ですが、それじゃ事務的におくれている、つき添い看護料をつけるべし、傷害年金をつけるべしという審査の結果が出たときには、その人はほんとうはつき添い看護婦をつける権利があるのですよ、傷害年金の人は……。それを不当に脅かされてつけられなかった。これがただ普通に金の問題であれば、利息を十分つければある程度カバーできるかもしれないが、金の問題ではなくて病気の問題です。つき添いが必要なときさに金が出なければ、何年たって、五年たって、六年たって出たって、その病気をほんとうになおすということに役に立たない。死んじゃってから線香をあげても何にもならない。そういう問題ですよ。そういう問題だから、現在おくれているのはいけないということは御理解になったと思う。現在おくれていることをおくれないようにすべく努力なさることは政治家の任務だろうと思う。そういうことが官制上できないとか、ほかのバランスでできないと言う事務局を、それではいけないと言ってしかりつけるのが政治家だ。それでなかったら大臣や政務次官なんか要らない。みんな局長で政治をやったらいい。ほんとうの政治家としての勇敢な御答弁を願いたい。
  125. 池田清志

    ○池田政府委員 今の問題は御指摘のように人命に関する重大な問題であります。そのことは私もよくわかっております。さればこれを迅速に時宜に適するようにするために部下を督励をいたしますと申し上げております。さらにまた時期来たれりかどうかということは、現在のところにおきましてはまだ時期来たれりというところまで進んでおりません。私どもといたしましては、時期来たれりという場合においては、御趣旨に沿いましてこれを実現するために努力をする、こういうふうに申し上げております。
  126. 八木一男

    ○八木(一男)委員 わかりました。督励をしてということが、その定員をふやす、予算をとるということの意味ならけっこうです。ところがそれは全然しないで、三人の事務局員を猛烈にしかって労働強化をして、なまけたらどんどんやらしたらいいようですけれども、今半年もおくれているのを、三人をしばいてみたところでそれが十日でできるような状態になるはずもない。それを無理にやらしたらその人が病気になってしまう。そういうことで、部下を督励してということは、定員をふやし、予算をふやすために努力をするということであればけっこうですけれども、そういう意味であるかどうか伺いたい。
  127. 池田清志

    ○池田政府委員 今私が申し上げております時期到来という際におきましては、部下も督励し、私自身も努力いたしまして御趣旨のようにいたしたいと思います。
  128. 八木一男

    ○八木(一男)委員 私がさっき申し上げた陣容をふやす、予算をふやすという意味ですね。それも事務量がふえたときでなしに、今現在におけるおくれた原因を排除するために、事務量がふえたらふやすのは当りまえですけれども、現在におけるおくれていることをおくれないようにするために、人員をふやし予算をふやすという意味に理解いたしますが、違うのだったらまた御答弁下さい。そういう御返答であったと理解して先に進めます。  あとで言うことを先に言ってしまって、前後むちゃくちゃになったのですが、次に、これは全部予算なんかに関係があるわけですが、そういう事務のほかに、こういう審査をするときに調査をしなければならないことがある。調査をしなければならないときに調査の人員がなくて予算がない。ですからそれを厚生省のほかの部局に委託をするわけです。ところが厚生省というのは、社会保険に対しては一つのある意味じゃ使用者みたいな立場に立っている。なるたけ社会保険の支払いを少くしたい。正当な権利がある人でも何とか因縁をつけて少くしたいという考え、が底流しているわけだ。そういう考えが底流している方が再調査をする。それでは公正な審査をするための調査にはならない。ですから審査会自体で調査ができるというふうにしなければいけない。そういうことをする必要があると思いますが、それについてちょっと伺いたい。
  129. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 申し上げるまでもなく、審査会はいわば一種の訴訟みたいなことになるわけであります。それにつきましては当然当事者間の申し立てとか、それに対する片方の見解というものが出ますし、それに対してそれぞれの関係の代表というような方々から参考の意見というものを聞いた後において審査官がこれを決定するわけでございますが、その決定いたします前に調査をするということはこれは当然起るわけでございまして、それに必要な旅費等は、これは予算に組んでございます。しかしながらそれでなお不十分である場合、あるいはその人員が——これは審査官の三人が行きます場合においてはやはり審査官がみずから出なければなりませんけれども、その下調査につきましては、審査官付を命ぜられたものでなお人員の不足いたします場合においては、保険局の他の職員をやりくってでもそういうことを今までしておるわけでございまして、調査そのものが予算が足りないとかあるいは審査会の事務を担当する係としての人間が不足するというようなことのために、この審査の事務の運用を阻害する、こういうことにつきましては、私ども極力それを防止するための措置は講じておるつもりでございますし、将来さらにそれについては強化して参るつもりでございます。ただ、審査会というのは先ほど申し上げました通り、やはり一つの訴訟制度でございますから、その間につきましてはただ迅速に迅速にといいましても、同時に慎重な審議というものはどうしてもやむを得ないことであろうかと思うのであります。その点については一つ御了承をいただきたいと思います。  なお、ちょっとここで、立ちましたついでと言っては失礼でございますが、先ほど来、審査が決定いたしましてから、単なる事務の手続で、決定を送付するまでに半年かかる事例もあるやの御発言がございましたが、これは私ども今調べてみましたところでは、さようなことはございませんで、これはやはり請求があってからそれが行くまでの間ということであろうかと思いますが、もし何か御承知のことがありましたならば、御指摘いただきますれば、私どもさっそく取調べいたしまして、万が一さようなことがありましたら大へん申しわけないことでございますから、これを改めますことにやぶさかでございませんことを申し上げます。
  130. 八木一男

    ○八木(一男)委員 最後の点については、私ども調査では結論が出てから文書を発送するまでには半年以上かかった例がある。これは私どももまたさらに調査しますが、半年でなくて、三月であっても一月であっても、これはとんでもないことですよ。  それから、今のは審査会の審査官自体が御調査になるのが一番いいと思う。ところがこれは数が少いですから全部調査できない。下調べということになる。下調べということになれば、これは審査会の直接の事務局が下調べしなければならぬ。保険局の人がすれば、片方のその審査に反対の出したくない方なんです。再審査要求があって、出したくない方のそういう部局の人が調査に行くのでは、これはほんとうの公平な調査にならぬ。審査会という中立的な裁判機関自体の事務局が行かなければならない。それについて厚生政務次官、どうですか。
  131. 池田清志

    ○池田政府委員 今のお尋ね、御高見の通りでございます。これまた先刻申し上げておりまするように、事務局を置いて、事務局自体で調査ができるように進めていくことがよろしいことだと私ども考えております。
  132. 八木一男

    ○八木(一男)委員 それでは事務局で調査をするということをぜひ考えていただきたい。その前に、それができない範囲のところは、結局被保険者の利益代表も立ち合って一緒に調査をする、片方の保険団体の方の利益団体だけが調査するのじゃなくて、被保険者の方の利益団体も複数になって調査する、こういうことも考えると、相当にそういう弊害が現実的に排除される、そういうこともお考えの一つに入れていただきたいと思います。それについて……。
  133. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 ただいまのお尋ねは、不審査をいたします場合におきましては、できれば被保険者の利益代表もそれに立ち会わせるということ、これは実際ただいまのところは実行いたしておらないのでございます。これはその審査に必要な資料として審査官から命ぜられたもの——それは当然審査会に関与しておる方々の意向というものもしんしゃくして、必要事項を列挙して調査を命ずるわけでございまして、文字通り事実を調査して参る、こういうことが調査の使命でございます。それにつきましては当然その調査した者が、その調査した者としての責任をもってこれをやらなければならぬわけでございます。それを今度は審査会全体として、その当否について、あるいはそれを参考にしてまた論議が進められて参るわけでございまして、当然それは被保険者の利益代表の方々は、それ以外に被保険者の人たちからの意見も伺っておられることでありますし、従来のやり方がそれによりまして著しく被保険者に不利なことがございますれば、これは当然考えなければならぬことでございますが、そういう問題につきましてはなお研究さしていただいて、今日のところはそれで御了承願いたいと思います。
  134. 八木一男

    ○八木(一男)委員 そういう審査会の中立的な機関自体で御調査になるのが一番いいと思います。保険局あたりの事務局の人がなさる場合には、今言ったような被保険者の利益代表も一緒に行くということを一つ御検討になって、それかできるように、これもわずかな予算だと思いますが、そういうこともお考えになって、予算の裏づけをしていただきたいと思います。  何かはかの案件があるようですから、あとこの問題に関する限りもらちょっとで打ち切りますが、一番大事なことを最後に言うわけですけれども、たくさんの事例があるわけなんです。たとえばある事例では、傷病手当金を請求したら、第一審の審査官による決定までに六カ月かかった。その次に第二審の審査会の審査の方に要求したら、その決定までに二年十カ月かかった。これは一番ひどい例じゃないのです。まん中辺の例です。そういう状態ですから、一番最初の審査官の人数をふやすとか、それから配置をうまくするとかいうことが第一に必要であるし、第二審の方のたとえば調査を早くするための事務局員をふやすことが必要である。またこの調査が決定した後の庶務的なことをやる事務局員をふやすことも必要であるということになる。そうしないと、さっき言ったような非常な人権じゅうりんが起るわけです。そういうこと全体について、社会保険審査会が実際的に処理がおくれないように、公平と言われますが、公平は公平でもちろん必要です。特に迅速という問題があまりにも無視されておりますので、遅延、遅滞がなくなるように、その人員的な予算的な裏づけをなされ、運営においてもいい運営をなさるということをしていただきたいと思います。端的にいって、この社会保険審査会は全くほったらかしにされておるわけです。部屋を見てもそらです。社会保険審査会というものは三者構成ということがあったのですが、これはそうじゃないことにされた。しかし今の委員長はなかなかいい運営をされていろいろな利益代表者の意見を聞く場を持っておる。ところがそのやる会議所はすわる席もない、集まった人が突っ立って話をしなければならないというような状態です。そのくらいのことは考えればできることです。これは社会保険審査ということを全く無視した一つの現われではないか。部屋もない、集まった人がほんとうに真剣に考えているのに、立ちながら相談をしなければならないというような状態です。そういうことですから、ぜひ政務次官、そうして政務次官から大臣におっしゃって、全体がよくなる、また保険局長その他もこういうものは督励されて、ぜひ次の国会では、私がとやかく文句を言わなくても、よくおやり下さいましたと言えるようなことを推進していただきたいと思います。それについての総括的な御意見を伺いたいと思います。
  135. 池田清志

    ○池田政府委員 社会保険の審査につきまして、第一審の審査官の問題、第二審の審査会の問題等につきまして八木先生から詳しいお話を伺いまして、私ども大いに啓蒙せられました。期間がそれを総じて三年くらいにもなるということは、いまだ部下から報告を受けておりませんで、私はもっと短期間にできるものだと考えておりました。先ほど来答弁いたしております通り、これにつきましては、さらに検討させていただきまして、次の国会では必ずおほめをいただくようにいたしたいと思います。
  136. 八木一男

    ○八木(一男)委員 一応これで終ります。     —————————————
  137. 園田直

    園田委員長 次に、消費生活協同組合法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。  質疑はこれにて終局いたしました。  次に、本案を討論に付すのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  138. 園田直

    園田委員長 御異議なしと認めます。消費生活協同組合法の一部を改正する法律案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   [総員起立〕
  139. 園田直

    園田委員長 起立総員。よって本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  140. 園田直

    園田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     —————————————
  141. 園田直

    園田委員長 次に、中小企業退職金共済法案議題とし、審査を進めます。質疑を許します。齋藤邦吉君。
  142. 齋藤邦吉

    ○齋藤委員 ただいま議題となっております中小企業退職金共済法案につきましては、質疑を終局せられんことを望みます。
  143. 園田直

    園田委員長 ただいまの齋藤邦吉君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。   [賛成者起立]
  144. 園田直

    園田委員長 起立多数。よって本案の質疑は終局いたしました。  ただいま委員長の手元に、自由民主党及び日本社会党の共同提案にかかる大坪保雄君外九名提出の本案に対する修正案が提出されております。趣旨説明を聴取いたします。大枠保雄君。     —————————————     —————————————
  145. 大坪保雄

    ○大坪委員 私は自由民主党及び日本社会党を代表いたしまして、中小企業退職金共済法案に対する修正案を提出せんとするものであります。  ただいま議題となりました中小企業退職金共済法案に対する修正案につきまして、その趣旨と内容の大綱を御説明申し上げます。  政府提出中小企業退職金共済法案は、中小企業に退職金共済制度を確立し、もって従業員の福祉の増進と中小企業の振興に寄与せんとする趣旨のものでありますが、この修正案は、法案趣旨とするところを一そう具体化し、内容を充実させようとするものであります。  すなわち、第一に、小中企業の雇用の実情にかんがみまして、退職金に対する国庫補助について、政府原案においては、掛金納付月数七年以上五%となっているのを五年以上五%に改めるとともに、退職金の額について、政府原案においては掛金元金及び元利合計に達する時期が掛金納付月数四年及び五年六カ月となっているのを、それぞれ三年六カ月及び四年六カ月にするよう別表第一に所要の修正を加え、さらに掛金納付月数の通算の条件を緩和せんとするものであります。  第二に、本制度に関しまして、従業員に対し不当な差別的取扱いがあってはその趣旨に反しますので、退職金共済契約の締結に関しまして、任意包括加入を建前とするよう改めるとともに、契約を締結する場合において従業員の意見を聞き、かつその意に反してはならないことを規定することであります。  第三に、この法案の改正及び施行に関する重要事項について労働大臣の諮問に応じさせるために、労働省に中小企業退職金共済審議会を置くこととし、本制度の運用を一そう実情に即せしめんとするものであります。  第四に、共済契約者被共済者等が退職金共済契約子の権利義務に関する事項について異議があるときは、労働保険審査会に審査を請求することができることとし、給付等についての適正を期さんとするものであります。  その他事業団の余裕金について従業員の福祉を向上させるための資金にも融通されることを明記すること、商工中金が法案第四十六条第一項の規定による業務の委託を受ける道を開くことのほか、所要の技術的修正を加えんとするものであります。  何とぞ御審議の上すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  146. 園田直

    園田委員長 以上で修正案の説明は終りました。  衆議院規則四十一条に「委員会は、議院の会議中は、これを開くことができない。但し、議長の許可を得たときは、この限りでない。」とありますが、正式に議長の許可を得ておりますので、本日の委員会は有効であります。  修正案についての御発言はありませんか。——なければ、次に、国会法五十七条三の規定による内閣の意見があれば、この際これを聴取いたします。倉石労働大臣
  147. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいまの修正案は政府提出中小企業退職金共済法案趣旨をより具体化しようとするものでありまして、国庫補助について若干増額を伴う点につきましては別といたしまして、全体としての趣旨には政府といたしましては賛成であります。
  148. 園田直

    園田委員長 次に原案並びに修正案を一括して討論に付すのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  149. 園田直

    園田委員長 御異議なしと認めます。  採決に入ります。まず中小企業退職金共済法案に対する修正案について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  150. 園田直

    園田委員長 起立総員。よって本修正正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除いた原案について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  151. 園田直

    園田委員長 起立総員。よって本案は修正議決すべきものと決しました。  なおただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  152. 園田直

    園田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  本日は、これにて散会いたします。     午後六時五分散会      ————◇—————