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1959-03-19 第31回国会 衆議院 社会労働委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年三月十九日(木曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 園田  直君    理事 大石 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 田中 正巳君 理事 八田 貞義君    理事 藤本 捨助君 理事 小林  進君    理事 五島 虎雄君 理事 滝井 義高君       大橋 武夫君    奧村又十郎君       亀山 孝一君    川崎 秀二君       久野 忠治君    齋藤 邦吉君       中村三之丞君    中山 マサ君       二階堂 進君    古川 丈吉君       柳谷清三郎君    山下 春江君       亘  四郎君    伊藤よし子君       大原  亨君    岡本 隆一君       多賀谷真稔君    堤 ツルヨ君       中村 英男君    八木 一男君       山口シヅエ君    吉川 兼光君  出席国務大臣         国 務 大 臣 青木  正君         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君         厚 生 大 臣 坂田 道太君  出席政府委員         総理府事務官         (自治庁財政局         長)      奧野 誠亮君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (主計局次長) 村上  一君         厚生政務次官  池田 清志君         厚生政務次官         (大臣官房長) 森本  潔君         厚生事務官         (大臣官房審議         官)      小山進次郎君         労働政務次官  生田 宏一君         労働事務官         (大臣官房長) 澁谷 直藏君  委員外出席者         総理府事務官         (自治庁税務局         市町村税課長) 鎌田 要人君         参  考  人         (一橋大学教         授)      吾妻 光俊君         参  考  人         (東京商工会議         所中小企業委員         会委員長)   石田謙一郎君         参  考  人         (日本労働組合         総評議会社会保         障対策部長)  塩谷 信雄君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 三月十九日  委員小川半次君及び野澤清人辞任につき、そ  の補欠として久野忠治君及び奧村又十郎君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員奧村又十郎君及び久野忠治辞任につき、  その補欠として野澤清人君及び小川半次君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  中小企業退職金共済法案内閣提出第一一六  号)  国民年金法案内閣提出第一二三号)  国民年金法案八木一男君外十四名提出衆法  第一七号)  国民年金法の施行及び国民年金と他の年金等と  の調整に関する法律案八木一男君外十四名提  出、衆法第二六号)      ————◇—————
  2. 園田直

    園田委員長 これより会議を開きます。  中小企業退職金共済法案を議題とし、審査を進めます。本案につきましては、本日参考人として一橋大学教授吾妻光俊君、東京商工会議所中小企業委員会委員長石田謙一郎君、日本労働組合評議会社会保障対策部長塩谷信雄君、以上三君が出席されております。  参考人方々には、本日はお忙しい中をおいでいただきましてまことにありがとうございました。何とぞ本案につきまして忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。なお議事の整理上、一応一人十五分程度に要約してお述べ願い、御意見を開陳されたあと委員質疑にもお答え願いたいと存じます。ただ議事規則の定めるところによりまして、参考人方々が発言されます際には委員長の許可を得ていただくことになっておりますし、参考人方々委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、以上お含みおき願いたいと存じます。また御発言の順序につきましては勝手なから委員長におまかせを願いたいと存じます。  なお質疑をされる委員の諸君に申し上げておきます。参考人は御三名とも非常に御多忙でございますが、特に吾妻参考人は十二時まで、石田参考人は十二時三十分までに退出したいとの希望でございますから、そのおつもりで御質疑お願いいたします。  それでは吾妻参考人よりお願いいたします。吾妻光俊君。
  3. 吾妻光俊

    吾妻参考人 それでは中小企業退職金共済法案につきまして、私の意見を述べさせていただきます。  ます最初に、この法案全体に対する私の見解を述べさせていただいて、その後にそれぞれの問題点について触れさせていただきたいと思います。後に各問題点に触れる際におのずから明らかになると思いますけれども、この法案にはもとよりいろいろの問題点がございます。しかし中小企業に働く人々のために、この中小企業退職金共済法案退職者生活救済を行うという制度全体の精神そのものについては、私は賛成するにやぶさかでないものでございます。従いまして私のこの法案に対する意見といたしましては、各種問題点について若干私の見解を述べさせていただくということで、この法案がともかくこの国会を通過しますことが中小企業に働く人々のために望ましいことであるということを最初に述べさしていただきたいのであります。  さて、各種問題点に入らしていただきますが、この法案の一番大きなポイントとして問題になる点は、この法案が、この法案による救済を当事者の契約にゆだねておる、つまり任意制をとっておるという点が特にまず第一に問題になるかと思います。この任意制をとっておるという点につきましては、主として二つの点から考察する必要があるかと思います。一つは、この任意制を通してこの制度救済に浴する場合の労働者側意見と申しましょうか、意思と申しましょうか、それがどの程度この制度運用に反映するであろうか。またその制度運用そのものについてはかりにおくといたしましても、たとえばこれは中小企業対象でございますから、労働協約というようなこととの関連は非常に少いと思います。退職金規定その他就業規則というようなものの中にすでに退職金制度がある程度設けられておるような場合に、これとこの共済法案による救済との調節をどうするかという点が問題になるかと思います。もちろん私としては、この法案がかりに通過いたしましても、退職金そのものがいわゆる広義労働条件であるということには変りはないと考えておりますので、従いましてこの共済法案による救済というものと、それとは別に企業の中に設けられております退職金制度というものとは、おのずから調節は必要になると思いますけれども、一をもって他をはかるということはできない。従ってこの制度救済を受けるからといって、退職金広義労働条件として労使の交渉対象にならないというようなことはあり得ないというふうに、この点については考えております。第二の問題点は、今の問題とも関連いたしますが、この制度他種社会保険に見られます任意包括制にすべきかどうかという点が、この任意制ということとからんで問題になるかと思います。将来この制度が次第に習熟されました暁、あるいは中小企業条件というものが改善されるというような暁には、私としてはもとより社会保障的な意味を持つこの制度任意包括制というような方向へ進むことを期待しておりますけれども、しかし現段階において直ちに任意包括制に進むということは中小企業労働者の移動が非常に激しいといったような点から見て、現在のところはなお問題ではあるまいか、こういうふうに私としては考えております。第三の問題点といたしまして、国庫補助の点についての意見を若干申し上げたいと思います。現在の法案によりますと、七年以上について五%、十年以上について一〇%、こういうような形でもって国庫補助が行われるという建前になっております。あるいは七年を最低限として国庫補助を行うというこの点については、具体的な何年にしろというような意見は私としては現在はっきりしたものを持っておりませんけれども、あるいはもう少しこの点をより短期のものについても国庫補助考慮するという余地はありはしないかという、非常にばく然とした意見でございますが、あるいは十年、七年、この年限をどういたしますか、あるいはこの二段階になっておるのを三段階にするとが、いろいろな考え方がすでに出ておりますけれども、この点については補助条件となる最短期というものを若干低める余地があるのではないかというふうに考えております。第四の問題点としまして、この法案対象となる企業規模について、現在は百人以下ということになっておりますか、この点については、これを何人というところでしぼるかという点についてのはっきりした意見を申し上げるという段階ではございません。制度の発動の初期にはあるいはこの程度でよろしいのではあるまいか。実は最後一つ希望意見を申し述べたいと思いますけれども、この制度任意制であるということと関連して、運用自体に非常に問題点かあると考えますので、その運用を通しての体験といいますか、そういうものを通して、あるいは将来再考慮余地が出てくるかどうか、これはそういう実験に待たなければ、私としてはまだどの程度規模にいかようにこの制度運用するかということについての確たる意見を持ち得ないのが現状でございますが、少くとも一応この程度で発足してみるということも一つ立場ではなかろうかというふうに考えております。次に、この共済事業運営事業団という特殊の形態、組織によって運営せられるという建前になっております。この点についても各方面からいろいろな意見があるということは承知しております。この事業団民主的運営というものが確保されるということを前提条件としまして、これは実はかって昭和十一年に制定されました例の退手法の場合にもこういう一つの団体によって運営させるという意見も提案されたこともあるわけであります。従ってこれは前例のないことでもありませんし、要するに事業団運営が民主的に行われるということを条件にして、現在の仕組みでこの点はよかろうではないかということを一応考えております。最後に、この法案全体を通じまして私の一番この法案死活を決するといいますか問題点として考えますのは、一体所期のごとく十分にこの法案に基く制度が利用されるであろうかどうかという点にこの法案死活を決するほどのポイントがあるのではないか。その意味では特にこの法案が現在の形で通過するか、あるいは若干の修正を伴って通過するかは存じませんが、しかしいずれにせよこの制度任意制ということとの関係中小企業に関する啓蒙といいましょうか対策というものが非常に重要な意味を持つのではないか。ことに先ほど申しました就業規則等による退職金制度との関連ということも当然問題になって参りますので、下手をしてこの制度によるということが、この制度運用しておれば労働組合との間の退職金に関する交渉といいましょうか、そういうものにはあまり耳をかさないといったような動きがもし出てくるとしますと、これはすでに労働組合側意見としてその点が相当懸念されておるというふうに見ておりますが、そういった意味での中小企業経営者に対する啓蒙運動と申しますか、これが相当真剣に行われませんとこの制度か十分に運用されないし、あるいはまた今申しましたようなある程度の逆効果と申しましょうか、そういう点の生ずることを私としても非常に心配しております。これはこの法案自体に対しての意見ではございませんが、最後にこの法案の通過ということを前提といたしまして私の意見を述べさせていただいたわけであります。  これで私の意見の開陳を終りたいと思います。(拍手
  4. 園田直

    園田委員長 次に石田参考人お願いいたします。石田謙一郎君。
  5. 石田謙一郎

    石田参考人 この法案を私拝見いたしまして、実はこの法案関係あるもの、あるいは前提となるべきものは実は商工会議所が大体中心となりまして、近年各地において退職積み立てのいろいろな制度が設けられておるのでありますが、それらが一つの原因にもなったんじゃないかと思うのであります。ただ、商工会議所といたしましては、この退職積み立てというふうなものが、民間で任意にやられておりますのが相当普及して参りまして、だいぶ数が多くなって参りました、が、その運用、あるいは資金確保、あるいは働く人に対して必ず退職手当を払えるかどうか、この点を心配しておったのでありますが、そういうふうな点からも、本法案が、いろいろ問題を持ちながらも、この国会に提案されておるということにつきましては、私どもは大へんけっこうなことだと思う。そして法案全般に対して、まず私ども会議所の側としましては賛成であるということを申し上げ、ぜひ今国会において成立されんことを切望いたすものであります。  しからば、この法案全部にいろいろ問題がないのかどうか、このままでいいのかどうかということが問題になるであろうと思うのでありますが、実は私ども自体もこの退職金共済法案というものに対してはいろいろ心配しておる点があるのであります。それはどういうことかと申しますと、たとえばインフレの問題、あるいは最近間々世上にいろいろ申されておりまするアメリカの平価切り下げの問題、こういった場合に、一体この法案によって積み立てられたものの姿がどうなるであろうかというふうなことであります。御承知のように、戦前、戦後を通じての貨幣価値変動によって、われわれは相当手ひどい目にあっておりますが、これが、働く皆さんのために積み立てるこういうふうなものにどんな影響を与えるだろうか、こんな点を実は相当心配しておるのであります。しかしながら、そういう心配があるから、こういうふうな法案成立させないのがいいかどうかということになりますと、問題はおのずと別になってくると思います。問題がいろいろありながらも、中小企業対策一環として、また勤労者方々退職手当確保のためにもやはりあった方がいいというふうに考えざるを得ないわけなんでありまして、そんな点から私どもはこの法案成立を望み、かつ、この法案は、冒頭目的のところにうたわれております通り、勤労者に対する一つ福祉政策と申しますか、対策であると同時に、やはり中小企業対策一つてあるというふうに大体承知をいたしておるのであります。と申しますのは、皆さんすでに御承知のように、中小企業の問題にもいろいろ問題ありますが、その申の一つに不公正競争というものがございます。そういうふうなときの一つ底固めとし、また勤労者皆さん福祉のためにも、最低賃金制とかこの退職手当法案等を通じてこの人たち幾分でも安定を与える、そして同時に、これらを足がかりとして、中小企業の中の不公正競争幾分でも防ぐことかでれきば、この法案成立もまた効果があるんじゃないかというふうにも考えておるわけであります。  ただ、こういう点を見まして、私どもは二、三、この法案のままでいいかどうかということについて研究をしたのでありますか、私どもの方でもし改正かできるならばしてほしいという点が少しありますので、それらをこれから要望して参りたいと思うのであります。  まず第一に、ただいま吾麦先生からお話がありましたが、この法案魅力があるかどうかという問題でありますが、この魅力があるようにするということが一つであります。そのためには、中小企業勤労者平均勤続年数というものからいたしましても、現在のように七年以上ということはちょっと無理じゃないか。御承知のように、三十人以下の企業では商工を通じて大体三、八年くらいと考えられております今日、七年では、全くこの点では魅力がないんじゃないか。こういう点からしましても、やはりこの法案魅力を増す上からも、給付の補助は、現在の七年以上五%、十年以上一〇%というものに対しましては、少くとも五年以上に対しては五%、十年以上に対しては一〇%、十五年以上には一五%くらいというふうにぜひお願いをしたい、これか第一点でございます。  それから第二点といたしましては、われわれは、この法案一つ意義といたしまして、零細企業対策一つだというふうに考えておったのであります。と申しますのは、政府のいろいろな施策の中の中小企業対策が、十分ではありませんが、少しずつ進んでおりまするが、零細企業対策というものが大体ございませんので、日本現状を見ますと、三百数十万の企業者のうちの相当部分か小さな零細企業でございます。生業と呼ばれるような企業だろうと思うのでありますが、こういうふうな人たちは、いろいろな意味から恵まれない立場に置かれておる。しかもやっておりまする仕事の本質は、勤労者の方とほとんど変らないような姿なのであります。こんな点から申しましても、この法案一つ意義零細企業対策にあるならば、制度純粋性という点から申しますと問題はいろいろあろうと思うのでありますか、五人以下の企業主等に対しては、私どもは何とかこの法案の中にも入れてもらう方法はないだろうかというふうに考えざるを得ないのであります。これは、この法案性質からも無理であるということは私とも承知しておるのでありますか、ほかに零細企業対策のない今日といたしましては、ことに地方の商工会議所をかかえております日商等立場から申しますと、生業に類するような小さな企業をやっております事業主は、やはり勤労者と同様に考えていただいて、この法案対象にしていただく道はなかろうかというふうに考えております。これが第二点であります。  第三には、この法案に対しましての資金運用の面でありますが、これはいろいろ問題てあろうと思うのであります。この法案魅力がありますれば、これは相当普及して額も多くなりまするし、魅力がなければ加入することも少いと思う。先ほど吾妻先生お話のように包括任意包括というような問題もありまするが、これは法案全体の運用の面からいろいろ問題があると思うのでありまするが、とにかく一応魅力のある法律になりますれば、その資金も今後相当の額になるのではなかろうか。一応私どもの拝承しておりますところでは、労働省あたりは、十年後には三百万、千五、六百億というのを想定しておるようでありますが、ぜひここまでいけるようにありたいと思うのであります。     〔委員長退席八田委員長代理着席〕 この場合に、この相当大きな資金中小企業、特にこの法案対象か百人以下となっておりますので、こういうふうな企業から積み立てさせた、その金の還元の問題であります。これはやはり退職積み立て制度というものが、働く人の幸福を願うと同時に、この人たちのために、その資金をあえて自分の事業運用せずして、安定したところの事業団そのものに拠出いたしまするところの経営者立場も考えていただいて、やはりこの資金は、努めてその大部分中小企業の方の資金に回していただきたい、この点を特に私どもお願いをしておきたいと思うわけであります。  第四には、私が冒頭に申し上げたように、現在すでに商工会議所中心として共済制度が実施されております。これらの制度を救う方法なのでありますが、これが、この法案ではまだ十分とはいえないのであります。こういうふうな点についてもう少し考慮が願える余地があるのではなかろうかと私どもは考えるのであります。そうしてせっかくこの法案前提となるところの基礎ずけと申しまするか、それをやって参りましたところの零細企業の方あるいは商店会方々積み立てた金も、この制度に何とかもう少し上手に吸収できるような方法がなかろうかということを実は私ども考えておるのであります。  実はこの法案にはこういうふうないろいろな問題がまだまだたくさんあると思うのであります。この法案目的一つにうたってありまするところの勤労者福祉事業でございますが、これなんかも、実はその目的一つとしてやることは私はいいと思うのであります。しかし法案対象が、やはり恵まれない中小企業勤労者の将来の生活のための資金確保ということにありますので、一応は退職金ということに重点急を置いていただき、資金積み立てを多くして、そしてその資金運用、活用の面においてやっていただきたい。それでないとこの法案の趣旨が生かしにくいのではないかというふうに考えますので、こんな点も考えるのであります。しかしながらこういうような問題がいろいろありながらも、この法案そのものは、今日まで退職手当その他を働く人たちのために渡したいと思いながらも、経済界変動の激しい今日、なかなか渡せない中小企業立場、あるいはまたそういう企業に働く勤労者方々立場から申しますと、やはり成立してほしい。私は実は東京都の労働委員会委員を五年ばかりやっておるのでありますが、その中には、企業がつぶれたためにやめなければならぬ、しかもやめるときに、わずか三千円なり五千円の退職手当ももらえない企業が間々あるのであります。このような実情を見ますと、どうしてもやはりこういう制度は、問題をいろいろはらみながらも、社会保障一環としてぜひ成立してほしい。この問題を他の面から申しますと、社会保険に加入するという問題も実はあろうと思うのであります。こういうふうな問題もありながらも、しからばそれが達成できない今日において、この問題はそれができてからやればいいのだというふうに言っていいかどうかということになりますと、やはり中小企業対策零細企業対策というものはいろいろな面から考えなければいかぬ。そういう点から考えますと、この制度そのものもやはりそういう意味で必要じゃないか、このように考えるわけであります。そんな意味から、われわれとして希望いたします点三、四を申し述べまして、本法案成立の早いことを望むわけであります。そしてこの法案に問題となります点が多々ありますが、これは吾妻先生の言われたように、今後運用しながら是正していけばいいんじゃないか。そういう意味からは、この事業団運用あるいはその方針その他についてはいろいろ考えなければならぬ点はあると思います。しかしそれが十分考えられたあとにおいて実行すべしということではなく、むしろこの法案実施しなから運用をし、その運用中小企業対策にも、あるいは勤労者のための福祉対策にもなるように持っていけばいいんじゃないか、このように私は考えております。どうぞこの法案の御審議を十分尽されて、一日も早く成立するようにお願いをいたしたい、かように考えます。(拍手
  6. 八田貞義

  7. 塩谷信雄

    塩谷参考人 少し時間をいただきまして申し上げたいと思います。実は臨時中小企業労働福祉対策懇談会がこの法案を作成するための諮問的な役割を果して参ったと思うのでありますが、その過程では、労働力確保と安定ということがぜひ必要である、つまり中小企業には最近いい人がどうしても寄りつかない、また長続きがしないということが非常に強調されておったのであります。そこで私どもはこの問題に対しては、給与適正化をはかるということが先決の問題ではないかということを、まず第一点として考えているのであります。平素の給与は低いが、何カ年か勤続するならばまとまった退職金をやろうというこの制度は、私どもは古い制度であると考えます。いわば徒弟制の遺物であるし、封建的な雇用形態であると考えるのであります。資料によりますると、中小企業関係者の御説明の中で、今の労働力確保と安定ということをねらいまして、いわばのれん分け的な性質のものであるという御説明があるのであります。また壮年期における転退時の立ち上り資金だという御説明もあるのであります。しかしながら今日の経済情勢、産業の進展、こういうものを考えて参りますと、非常な変化をしてやまないと思うのでありまして、今日以後の情勢下において、果してこれらのねらいが達せられるものであるか、相当疑問があるところであります。このような制度に対して国費を投じて奨励をするという政府の意図は、われわれは了解に苦しむところであります。このような制度を立てまする結果といたしまして、第一には、雇用、特に給与の近代化をおくらせるものと判断せられます。第二は、労働者をどうしても企業に縛りつけるような結果になりはせぬか、その意に反して転職、退職を困難にするということか予見されるのであります。いま一つは、たとい共済制度とはいいながら、いわば救済を必要とするような零細企業労働者の犠牲という形において長期勤続者を優遇するという結果になるのであります。このことは憲法二十二条の職業選択の自由にも反すると考えざるを得ません。従いまして、労働者の自由な意思を尊重する、人権を尊重するという形において労働力確保と安定をはかるためには、このような退職金を支給する、ということよりは、給与適正化、特に今日の低賃金の体制を改めるということか先決であると考えるのであります。そこで、政府の業者間協定を中心とする現存の最賃法については、われわれはこれに対して反対をいたしたものであります。従いましてわれわれが推進いたしておりまする最賃法案の実施が最も適切であろうと考えております。これは全国一律であるということだけでなく、この制度をしいて参りまするためには、同時に思い切った中小企業対策を講じまして、支払い能力を充実させて、制度に対する適応性を作るということか併用されて参りまするから、従いまして賃金の適正化をはかることができるという点で非常に相違があると考えるのであります。従いましてわれわれは現在のような政府最低賃金制をしいた場合に、たといこれがいよいよ実施されるという場合におきましても、賃金かきわめて低い関係上、労働力確保と安定のために寄与し得る魅力的なものとなろうとば考えられないのでありまして、労働者を実質上は企業に縛りつけても目的を達しなければならないというような無理な法案が登場をしてくるのではないかと考えるのであります。しかもこのように大へん悪い支払い能力のもとにおきまして退職金の掛金を払い込む場合には、現在の賃金総額から、おそらく持ち出しとなる公算が強いと見なければなりませんし、従って今までの賃金はかえって引き下げられる危険性が出てくると存じます。言葉をかえるならば、業者間協定という政府最低賃金制を固定化しまして、それを最高賃金として、いわば低賃金体制の維持に役立たせ得るような、そういうことになろうかと考えまして、このことは現在の政府の最低賃金法案というものとこの退職金共済というものは本質的に見合ったものとして考えられておるといわざるを得ません。     〔八田委員長代理退席、委員長着席〕 つまり退職制度のように事業主のためにも大いに利用される、こういうものは多少筋は通らなくても、かなりの国費をお使いになる、最賃制のように、労働者本位のものに対してはきわめて御熱意がなくて低姿勢であるということを示しておろうかと存じます。若干法案の技術的な問題を申し上げてみたいと思いますが、最初の法の目的というところを見て参りますると、「従業員の福祉の増進と中小企業の振興に寄与することを目的とする。」となっておりまして、退職金制度というものを直接に労働者のためにお考えになられたのか、企業のために考えられたものなのか、この辺がどうもはっきりいたしておりません。政府説明によりますると、この制度は従業員の福祉の向上と雇用の安定に役立ち、ひいては中小企業の振興に資するものであるという説明をなさっておるのでありまするが、先ほど申し上げたように従業員と企業関係を並列的に表現をいたしておるところから見まして、法案の内容とは一致しないものと考えられるものであります。さらに、退職金の額はこれは一般に有利ではないと考えます。一つは、支給額は契約後四カ年までは納入掛金よりも少くて、七十二カ月まではその掛金を金融機関に預金した場合より少いと考えられます。今われわれの労働金庫は、大蔵省の認可を受けまして助け合い積金を行なっておりますが、月平均四分一厘で預金を受けまして、一年後定期預金として六分一厘で計算をしておるのでありまするが、市中積立定期預金はこれより平均して金利は高いといわれております。この詳細の数字はもし御質問があればあとで申し上げたいと存じます。  さらに中小企業従業員の平均在職年数の問題でありますが、政府の資料を見ますると、大阪商工会議所の要望書では平均二、三年になっておりまして日本商工会議所の要望書では三年前後、全国中小企業退職金共済法制定促進協議会では四・三年となっております。従いまして二年ないし四年と見ました場合に、契約後一年以内は支給されないのでありまするから、二年以上で受ける場合でも、その額は永年勤続者、すなわち本法案では十年ないし十五年に退職給付の山を置いていると判断されますので、これらの退職金のための犠牲となるもとになろうかと存じます。ことに女子及び老人は対象から除外されるか、もし除外されないで対象となりました場合でも非常な不利になろうかと思うのであります。  さらに資金運用の問題でございますが、資金運用部への運用が義務づけられております。資金運用部の資金昭和三十二年度で一兆一千五百六十三億円にも達しまて、本年の三月には一兆五千億円近くなるものと予想されます。その八六%前後が労働者の厚生年金と郵便貯金、簡易保険、郵便年金等、零細な国民の血と汗の結集でございますが、この資金が預金者の利益のためにはほとんど使われておりませんで、財政投融資に大部分ふり向けられておるのでありまして、このことは一九五二年のILO条約の精神にも反するものといわなければならぬと存じます。  次は、この法案成立をいたしますると、退職金に関する労働条件の一部または全部が制限される危険があると思うのであります。この点はただいま吾妻先生も御指摘になったかと存ずるのであります。本法案成立いたしまして、これに加入をしました企業の労使間におきまして、もし退職金制度がない場合には、この制度は明示をされました労働条件となるものと判断をせられます。労働基準法第十一条によりますと「賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」とありまして、また昭和二十二年九月十三日の基発十七号によりますと、退職金、結婚祝金、死亡、災害見舞金等の恩恵的給付は原則として賃金とみなされない、但し労働協約就業規則、労働契約等によってあらかじめ支給条件が明白にされているものはこの限りでない、とありまして、この通牒の要旨は支給条件が明白にされているかどうかにあると判断すべきであろうと存じます。従いまして、退職金を法定しまして特定の契約を事業団と雇用主の間に契約をし、被共済者はこの契約による利益を保障される限りは、単に恩恵的な退職金として解すべきではございませんで、労働条件の最も重要な賃金として扱われなければならぬと存じます。大蔵省主計局の岸本給与課長は、三十三年九月発行の「公務員給与体系詳説」で次のように言っております。過去において退職手当は思慮的給与と考えられていた、しかし現行制度においては退職手当を請求する権利があり、支給する義務があることは明らかである。従って退職手当は勤労の対価たる性質を有する、とあります。しかるに、このように重要な性格を持つと判断されまする本法案による退職金制度が、法文自体から見ますとこの点きわめてあいまいでございます。労働条件であるという明示もございません、また他に悪影響を与えることを規制するような法条もございません。従いまして法案全体から見まして、雇用者または政府によって悪用される可能性が強くて、問題であろうと存じます。特に、労働者の団結力の弱い中小企業労働者にとりましては、企業主が本法案による共済に加入した場合に、退職金に対する一部または全部を規制されるか、これに関する団体交渉権もしくは争議権さえも力関係のいかんによりましては事実上制限または査定される危険性があると考えるのであります。労働大臣または運輸大臣等の介入があるために、もしくは民主的な救済機関がないために、当該の労使間におきまする解決だけでは直ちに問題は解決されない、こういう欠陥があることは明らかであります。  次の問題は、労務管理政策に悪用をされまして、労働運動に対する不当介入に利用される危険性があろうかと存じます。本法案任意となっております、しかも任意包括加入を認めていないために、全員を被共済者とする必要はございません。また差別扱い禁止の法条はございまするけれども、精神規定でございまして、何ら罰則がないということは、企業主が被共済者を選択する余地を残しておるものと判断せざるを得ないのであります。ことに労働運動に無理解な企業主が、まことに残念ではありまするがなお今日中小企業には多いという現状におきまして、懲戒解雇、自己都合解雇によりまする退職金の扱いまたは通算の問題あるいは契約解除に伴う不利益扱いを通じまして、陰に陽に労働組合活動家に対する圧迫は可能であると考えられます。  さてこれらの一連のことは、事業団事業協同組合、中小企業団体中央会、商工会議所等に対しまして調査広報の業務を委託することができるというこの法条と相待ちまして、労務政策を通じて労働運動に対し不当介入する可能性は大いにあると申し上げなければなりません。  次に民主的な救済機関及び運営諮問機関が規定されていないということであります。労働大臣、運輸大臣の介入、理事長、理事、監事に対する任免または認可権、労働省令に対する多くの委任条項、これらから見まして政府の介入が非常に強過ぎると存じます。同時に懲戒解雇等自己の責めに帰すべき事由、退職給付制限、自己都合退職の場合の通算拒否、契約解除等に伴う不利益扱いの可能性等、事業主の一方的認定を大幅に可能とすることのできる、しかもそれがすなわち労働者の権利及び利益に大きく影響する問題を規定しておるのでありますが、これらに対する民主的な審査機関がございません。さらに企業主団体あるいは金融機関に事業団の業務を委託しておりますが、これら機関の運営を含めまして事業団の業務運営に対する直接利害関係者の発言の機会は与えられておりません。審査機関及び運営審議会は、労働大臣官房三十三年九月十一日付で、共済事業案要綱には当初盛られておったはずであります。それにもかかわらず、本法案にはこれを削除しておるという非民主的な措置となっておろうかと存じます。  次の問題は、社会保険を含む社会保障の強化を阻害するということであります。退職金はその企業が何年働いたら幾らやるという建前のものでありますが、社会保障は当人が働けなくなった、収入が得られなくなったという事実に基きまして給せられて参ります。従いまして両者の本質は根本的に異なるのでありまして、前者をもって後者にかえるわけには参りません。そこで今日国民年金法案国会において審議中であります。また現に厚生年金、健康保険、失業保険等もそれぞれ実施をされておるのであります。そうして五人米満の零細企業には、きわめて不十分ではありますが、任意包括制度もあるのであります。またこれらの社会保険もしくは社会保障によりまする年金は、どんな職場に勤めましてもまた職場を去りましても、各年限を通算しまして与えられるように、少くとも昭和三十六年までには法制化される手はずになっておるはずであります。従いまして、たとい中小企業において労働力確保と安定が必要だといたしましも、のれん分けや立ち上り資金でなければどうしてもならぬ、こういう理屈にはならないかと思います。すでに指摘をいたしましたように、りっぱな最低賃金制を作るということも有力な方法一つであります。同時にこれら社会保険社会保障に対する中小企業労働者の熾烈な加入の要望を国の援助によって実現させるということも、重要な対策でなければなりません。しかるところに、強制がきわめて困難である、こういう中小もしくは零細企業労働者のための今の任意包括制度か、これでさえも現実にはまことに名目にとどまっておるのでありまして、政府は何ら積極的に加入促進の手を打たれておらないのであります。失業保険の問題以外はあるいは厚産省の所管であるといわれるかもしれないのでありますが、労働省がこの問題に対して関係のないわけはないのでありまして、最近の傾向はむしろ加入をはばむ傾向さえあるように存じております。労働基準法の違反は非常に枚挙にいとまのないような状態でありますが、この問題をあわせ考えますと、労働者の権利や福祉がこのように放置されておりますことは政府の大きな怠慢でありまして、従って国としてまず力を注ぐべきはこの面でなければならない。もしも本法案か実施をされました場合には、現に社会保険に加入をいたしております企業がきわめて数少い現実から見まして、中小企業者が退職金共済の掛金を払い込む、さらに社会保険料も払い込む、こういう二軍、三重の重い負担に耐えられるはずはないのでございまして、社会会保険、社会保障の強化を大きく阻害するものと言わざるを得ません。  国庫負担の問題でありますが、事務費を全額国庫が負担するというのは、本来国が行うべき事務を他に依頼する場合に生ずる問題であろうと私どもは聞いております。本案任意制度でありまするから、事務費を国が持つという筋は通らないように思います。また事業主が個々に退職金を銀行に預金した場合には税法上優遇されないけれども、本制度に加入した場合に限って優遇をするという矛盾が出て参るかと思います。御承知のように閣議では二度まで方針をきめられましたけれども、大蔵省が事務的に処理ができなかった、三度目の政治的な圧力によりまして、ようやくきまったという経紳があるのでありまして、この辺の事情というものを、このことは説明をいたしておるのではないかと思うのであります。  前段で私は退職金徒弟制の遺物である、封建的な雇用形態であると申し上げました。退職金制度は御承知の通り国際的傾向に見られまするように、賃金と社会保障をよりよくしていく、そのために漸次企業自身がこれに対して、直接責任をとるという意味合いから、だんだんとその座を賃金と社会保障に譲るべきものと考えております。このようにいたしまして、雇用の近代化と働く者を含む国民の生活を保障する公的な責任が、生産に責任を持っておりまする企業にはあるように考えるのであります。しがしながら社会保険の利益さえも満足に受けられない労働者、国民の多いきわめておくれた日本現状、こういう状態の中で今申し上げましたことは方向としては当然なことでありますけれども現状において総評はしからばどう考えるのか、こういうことになりますると、退職金制度と申しましても、なるべくそれが労働者自体の権利として、これを近代化し、中小企業の労使が進んで自主的に、官製的ではなく自主的にかつ民主的な制度として創設することを望んでやまないのであります。たといその自主的な創設が中小企者業者なるがゆえに困難であるといたしましても、政府か本法案成立に示しました執意をもって、一方では中小企業の大幅の振興をはかり、他面は行政指導を強化いたしますために、当面財政的な援助を与える等所要の措置を講じまするならば、自主的に退職金共済制度を打ち立てることは、決して至難ではないと考えます。われわれはこの方向を推進したいと存じておるのであります。  本法案の制定を促進をいたしておりまするこういう事実というものは、政府従来の中小企業対策がいかに貧困なものであるか、むしろ偽わりに満ちたものであるということを示したものでありまして、同時に本法案成立により多くの政治的経済的利用価値もねらっておるといわなければなりません。特にこの際私は、昨年の十二月、鮎川中政連総裁が佐藤大蔵大臣に対して、総評が中心になって行なっておる労働共済事業を押えるためにも、給付費に対する一五%の国庫補助をぜひ実現してほしいと強く推しておられるよしを日本経済新聞が記事として報道いたしておるのを思い出すのであります。  これらのことはこれ以上申し上げませんけれども、特に中小企業団体法、環境衛生法の制定、小売商業特別措置法案、最低賃金法案の制定などとの見合いにおきまして、かねて懸案であります独占禁止法緩和を行う布石とする公算はきわめて強いと申し上げなければなりません。言葉をかえれば、独禁法緩和の露払い的効果も見のがすことができないと存ずるのであります。  中小企業者及びその労働者の利益のために総評はどういうふうに考えておるかということはただいま申し上げた通りであります。よって総評は中小企業の労使による自主的退職金制度の創設または再編と強化を念願いたしまして、かつこれを提唱する次第でありまして、政府本案に示されたような内容を持つ共済に対しましては遺憾ながら反対をいたす次第であります。  以上であります。(拍手
  8. 園田直

    園田委員長 参考人に対し質疑を行います。質問の各位に申し上げますが、先ほど申し上げました通り、参考人吾妻光俊君は十二時まで、石田謙一郎君は十二時三十分、所用のために退出されますので、そのおつもりで退出される方から先に質疑お願いいたします。滝井義高君。
  9. 滝井義高

    ○滝井委員 お忙しいところ、非常に有益な御意見をいただいてありがとうございました。吾妻先生が十二時までにお帰りになるそうでございますから、吾妻先生の分だけ先にやらしていただきます。  まず第一に、今塩谷参考人からの御指摘がありましたが、この退職金共済法が実施されますと、企業主か共済契約者になりまして、そしてそれは任意でございますから、個々の労働者に掛金の金額を違えて契約をすることが可能になっておるわけです。この点、日本退職手当法の発展の歴史がきわめて情義をもって与えられたというような歴史的な経過がありますので、再びこれがそういうことになりますと、やはり労務管理的なものに非常に利用される可能性があると思うのですが、この点に関して吾妻先生はどうお考えになっておるのか、御説明願いたいと思います。
  10. 吾妻光俊

    吾妻参考人 それではただいまの御質問にお答えいたします。御質問にもありましたように、また塩谷参考人からも御指摘かありましたように、中小企業の現在の段階で今お話がありましたような差別待遇といいますか、これが絶無とは考えません。しかしこれは労使関係そのものが、中小企業においてだんだん発展していく過程、まだ未成熟だという過程で、あらゆる方面、たとえば不当労働行為その他で現われてくる問題でありますか、かりにこれが組合運動に対する対策といいますか、そういう意味でそういう差別待遇がもし現われますれば、これは普通の不当労働行為の範疇ですから、不当労働行為の制度によって救済するほかはない、こういうふうに考えます。その他そういう筋じゃない情義といいますか、そういうことになって参りますと、どうもこれは現在の段階では法律の力で何とも抑えかねると思います。先ほども私申しましたように、この制度は非常に過渡的なものだというふうに私としては考えておりまして、将来はもう少しこれがたとえば任意制任意包括制になる、あるいはもう少し合理的なバランスのとれた掛金の金額の決定というようなものも、次第にこの制度運用の中から洗練されていかなければならぬというふうに考えておりますが、結局現在の段階ではとりあえずこの法案を制定する方が中小企業で働いている労働者救済になるという意味で、あまり神経質にその点を考えられますことは、かえって中小企業労働者救済と保護に着手するというごの芽をつみとってしまう結果になることを私はおそれる。これが私の意見でございます。
  11. 滝井義高

    ○滝井委員 次には、この制度任意加入で強制加入でない、そういう制度に今度国が事務費を出そう、それからある程度退職金に対しても国庫の負担を行う、こういうことになっておるわけです。そうしますとさいぜん石田さんからお述べになりましたが、商工会議所等が推進をしておる民間の退職金制度、それから自主的に労働組合等でやっておるような制度、こういうものにも国庫がある程度補助金を出さないと均衡がとれないにとになると思うのですが、その点についはどうお考えになりますか。
  12. 吾妻光俊

    吾妻参考人 国庫補助の問題ですか、確かにおっしゃったように実質的な不均衡はあると思います。その点に先ほどの労働側の参考人の反対意見もあったようですが、しかしこの制度一つ法律的なものとして現われておるということからすれば、これはどうもそういう差別が出てくるのはいたし方ないのでありまして、もちろん将来民間で行われております退職金共済制度かどの程度伸びてくるか、あるいは労働運動がこれをどう推進するかというようなことは、これは将来の問題であります。将来そういう各方福の退職金制度か推進されていく場合には、全体を統合した施策というものが要求されるという段階になるかと思います。しかし現在の段階は、結局この法案が現われました原因が、すでに実際行われておる退職金制度では中小企業労働者救済は不十分という認識のもとにこの共済法案ができたわけですが、その限りにおいて、この制度運用に当って国庫補助が行われるということは、いろいろ理論的な問題点はありますけれども、これは制度としてはいたし方ない、当然とでもいうべきじゃないかというふうに考えております。
  13. 滝井義高

    ○滝井委員 これで終りますが、この制度が発足をしますと、現在これと一番密接な関係にあるのは厚生年金なんです。そうすると五人未満のものも任意加入で厚生年金ができるわけです。五人未満の方は加入が少いということですが、百人以下あるいは三十人以下の商業、サービス、こういうようなものにしても今後厚生年金の進展がこの制度がでることによって妨げられるというおそれはないかどうかということです。と申しますのは、事業主が二重の掛金はとてもできない、こういうことで五人米満という一番社会保障を必要とする層か置いてきぼり食っておるのですが、それがこういう制度ができることによってかえって盲点にますますされて進展しないのじゃないか。特に厚生年金とこの制度関係をどうお考えになっておるか。
  14. 吾妻光俊

    吾妻参考人 お答え申し上げます。これは全体として今度の共済法案社会保障制度との関連は非常にむずかしい問題で、先ほど労働側の参考人から指摘されましたように、性格が非常に違う。社会保障的な制度としてこの法案が打ち出されておるとはちょっと言い切れない性格の違う点があります。そこで二者択一という形で社会保障制度の伸び悩みがきはしないかという御心配だと思うのですが、これはおのずから時が解決するのではないか、つまり社会保障制度というものが中小企業の面にまで浸遣してくるというほどに体制の整備が行われて参りますと、これはこの制度かあるからということで、社会保障制度そのものの伸び悩みがくるという心配はだんだんなくなる時期がくるのではないか。そういう意味から申しますと、本来理念的に言えば、退職金制度そのものが、先ほど労働側の参考人から御指摘がありましたように、非常に中間的な、社会保障と賃金との中間といいますか、そういう性格を持ち、やや過渡的な意味を持つ制度だと思います。そういう点を強調して参りますと、これは本来は最低賃金保障という問題と、社会保障制度の拡充ということの中に、長い将来を見通しますと解消していく性格のものではないか、そういう時期が参りますと、これはおそらく法案社会保障制度の体系の中にどこかに組み込まれるという時期がくるかと思います。しかしあくまで私の見解は、現在の過渡的な段階としては若干そういう摩擦はあると思いますけれども、しかしとりあえず、この法案目的としている保護というものがあることが、労働者のためにプラスであるという考え方から、この法案を支持したいという見解を述べているわけでございます。
  15. 園田直

  16. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 吾妻先生に一、二点お尋ねをいたしたいと思います。現在の政府の政策の中にも児られるのですが、最低賃金におきましても業者だけの業者間協定という型を法定されて、賃金の中に入れてくる、また今度は労働者の意思の反映というものは全然法律の条文からはうかがわれない共済制度を施行してきた、こういう状態の中で、一方をながめてみますと、中小企業労働組合の組織率というものはずっと停滞をしまして、さっぱり組織化されていない、こういう状態であります。部分的には若干起きておりましても、全体で見ればそういう状態であります。そこでその原因は何かというと、やはり企業別組合にあるのではないか。今の中小企業労働者企業別組合で組織しようといっても、実際問題としてはなかなかできないのではないか。こういうように考えるわけです。そこで先生は、中小企業労働者をいかにして組織するか、これについて先生の御見解を伺いたいと思います。
  17. 吾妻光俊

    吾妻参考人 ただいまの御質問は、この法案ともちろん関連はありますが、非常に広範な御質問なものですから……。私もいかにして中小企業労働者を組織化するかという問題については、ある程度意見を持っておりますけれども、ごく簡単に述べさせていただきたいと思います。  特にこの法案関連して申し上げますと、つまり業者間協定とか最低賃金の場合、あるいはこの法律、すべて労働者の意思の反映ということのない救済制度というものが出てきておるということとの関連において御質問があったというふうに考えます。この点は私の考え方とすれば、かりに業者の側に重点を置いたものだということを前提にいたしました場合に、これはやはり労働運動としてこの点を制肘していくといいますか、修正していくというほかに道がないのではないか。先ほど退職金というものは労働条件と考えられるということを申しましたが、この制度があるがゆえに退職金というものが広義労働条件からはずれてしまうことはないはずであります。またはずさないということのためには労働運動のバック・アップというものが必要である。中小企業の中にもそういう労働運動の力というものか入ってこなければならない。この法案の罪でそうなったということではなしに、むしろ労働運動が退職金の問題をどう処理していくかということについての推進力が足りないために、この法案の結果、そういうことになっていくということなんです。ただ、最後の御質問の、どうしたら組織化されるかということは、実は私の方から伺いたい問題であります。つまり企業別組合というワクをどうして打破するか、これは総評、全労、その他の労働組合の方に一つその建前を示していただきたい。われわれは、企業別組合という状態は、ほんとうの意味の最賃制度もできないし、要するに社会保障制度の確立ということはむずかしいということを年来主張しております。しかしこの労働運動がどうして企業別というワクを破ろうとしておるか、その決心のほどは実は私の方から伺いたい、私が労労運動に高ってこうしろというような思い上った意見を述べるという気持はございませんので、この辺で一つ……。
  18. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 労働者の意思の反映の点ですが、基準法ではかなり労働者の意思の反映を取り入れるべく法文で努力をしております。たとえば時間外協定でも、賃金控除の場合でも、就業規則の場合におきましても、労働組合のない場合においては労働者の過半数というような努力をしておる。やはりこういった法案は、労働者の意思の反映をいかにして入れるかということの努力をする必要があるのじゃないかと思います。労働運動の推進も一方ぜひ必要ですが、それがあまり期待されないという現段階では、ただ労働者の意思の反映がないということだけではどうも済まない。これはやはりそういった労働基準法に似通った条文の押入か必要ではないか、かように考えるのですか、どういうふうにお考えでしょうか。
  19. 園田直

    園田委員長 吾妻参考人に申し上げますが、予定の時間が参りましたけれどもあと三、四人おりますから、あと十五分か二十分だけお願いいたします。
  20. 吾妻光俊

    吾妻参考人 労働者の意思を反映させろという御意見はまことにごもっともであります。ただ労働基準法にあって、これがこの法案にないという点ですが、この法案の中に労働者意見を反映させるようなうまい方法があれば、それを入れることに反対だというふうにおとりになっては困りますが、ただ労働基準法の場合には、刑罰をもって労働者の最低生活を守るという非常にきつい態度で経営者に立ち向っておるのであります。この場合には結局、労働基準法の理想としておる線は、できるだけ多数の労働者の意思、労働者意見というよりも、むしろ組合とか職場の労働者の過半数ということで言っております。要するに多数の労働者の、しかも決議というようなものを通じてはっきり労働者の意思というものを、かりに労働基準法の中に認められている例外規定といいますか、そういうものを適用する場合に、それをつかんでおかないと、個々の労働者が心ならずも個人としてはその緩和というようなことに同意をすることがあっては、彼のために最低生活を守るという目的が失われる。そこで、機会あるごとに、多数者の意思というところで——これも私は多数決だけでいいとも思っていないのです。ほんとうをいえば、組合でそう決議したからというだけではなくて、個々の労働者も納得した上で、できれば全員一致ということですが、技術的には多数決というほかにないわけです。その場合にも、個々の労働者の意思を尊重しなければならぬというふうには考えております。ともかく労働基準法の場合には、罰則をもって強制しなければならぬと考えているそういう最低水準の維持ということが問題ですから、その際には、かりに時間外協定の例をあげますと、八時間労働というものは最低線ですが、これをきわめて例外的な場合に破るという場合には、どうしても労働者の意思というものをはっきり確かめて、多数者の意思というものを少くともつかんでおかなければ弊害が生ずるのじゃないかという考え方でございまして、この退職金法案のように、いわば恩恵といってはいけないですが、労働基準法というような線から違ったあるプラスをしているという法律の場合には、同じ程度労働者の意思を求めるということは必ずしも必要ではない、こんなふうに考えております。
  21. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 先生の方からも労働者の意思の反映かないということを先ほど指摘されたものですから、具体的にはどういうようにこの法律に表わしたらいいか、こう思って質問をしたわけです。  それからこの退職金関連をして、日本の賃金が年功賃金であるということを言われております。年功賃金というのは、労働者の、要するに実力ある者に賃金が高いということでなくて、長く勤続しておれば、ともかくあまり能力がなくとも賃金が高いということであって、こういうシステムにあるということか、最近オートメーション化する、あるいは技術革新が行われる段階において非常に問題になっておると思うのです。そこで私は、この中小企業者に退職金という制度があることがいけないうといわけではありません、そのこと自体は賛成ですけれども、方向として、年功賃金というものに対して、労働法の権威者であり、直接ではありませんけれども、いろいろな立場から労働運動に対する評論をお書きになり、またいろいろ指示を願っておる先生がどういうようにお考えであるか、これをお聞かせ願いたい。
  22. 吾妻光俊

    吾妻参考人 やはりこの法案関連してだけお答えいたしますが、これはひとりこの法案関連する問題ではなくて、むしろ大企業の側にも退職金制度というものが勤続年限を軸にして組み立てられているのが日本現状なんです。そういうことを考えますと、どうもこの法意に関してだけその問題を論ずるのは意味がないと思います。もちろん賃金形態として、日本の賃金形態が合理的な賃金形態の側に移行していくことに応じて、この退職金というものの性格も変ってきましょうし、あるいは退職金制度というものの存在理由が非常に薄くなるということになって参りましょう。少くともこの法案に関する限りは、これはひとり中小企業だけの問題ではないのでございますから、特に答えを差し控えさしていただきたいと思います。
  23. 園田直

    園田委員長 五島虎雄君。
  24. 五島虎雄

    ○五島委員 時間がございませんので、あとに数名質問者がございますから、私質問をしぼって、二点について先生にお伺いしておきたいと思います。  ただいままで、任意包抱の問題と任意加入の問題、それから加入の際の労働者の意思を反映せしめることはどうかというようなことについて質問が行われました。それで、先生がさっき意見を述べられたときに入っていなかったと思いますが、商工会議所の代表の方や塩谷さんからは述べられたわけですけれども、労働大臣の権限が比較的強い。そこで、私たちは、やはり事業団が組織されますから、それについては、この法案成立した場合に、何らかの民主的な運営機関というものが必要じゃなかろうか。そのためには、労働省内に、事業団の民主的な運営方法とが資金の使い方の問題とか、その他の問題を審議会組織によって軍営していくような、審議会機構と申しますか、そういうような、たとえば学識経験者あるいは業者あるいは労働者の代表等からなる機構をもって運営に当るというように考えられるわけですけれども、この点については先生のお考えはどうでしょうか。
  25. 吾妻光俊

    吾妻参考人 事業団の民主的な運営を担保するために審議会を設ける、これはたしか社会党の御主張かと思うのです。もちろん私ども審議会を設けるということについては、別に異議はない、と言うとおかしいですけれども、先ほど申しましたように、私がこの法案の通過に賛成するという意見を述べましたのに二つ条件を出しまして、一つは、事業団民主的運営ということを確保したいという意見を出しております。もう一つは、啓蒙でございます。そういう条件をつけておりますが、民主的運営確保するための必要性という点からいって、審議会組織を設けるということがあれば、これはベターではないかというかうには考えております。
  26. 五島虎雄

    ○五島委員 この法律案をずっと通読いたしますと、やはり今まで滝井さん、多賀谷さんが質問をされましたように、それからまた塩谷参考人が指摘されましたように、この退職金共済法案でも、退職金の問題ですから、労働条件にほかならない。労働条件にほかならなければ、やはり労働者の意思、従業員の意思というものが強力に反映される機構でなければならないと思うわけです。  それから、私が一点先生に質問しておきたいのは、たとえば退職金の通算の問題です。自己の都合あるいは何らかの都合で従業員がやめた場合に、退職金は、十二カ月以上では支給されるわけですけれども、何らかの都合で、本人の意思によって退職金をもらわないで、六カ月以内に他に就職する、そういうような場合は、この退職金の月数が通算されることになります。ところが、この法案の内容を見ると、同一職種に勤めた場合に、六カ月以内であったら通算できるということになっておるわけです。ですから、たとえばそば屋さんに勤めていた従業員の方たちが何らかの都合でやめて、退職金をもらわなかった。そうして六カ月以内に、同一職種ですからそば屋さんと解釈しますか、あるいは飲食店と解釈しますか、そういうような同一職種に勤めなければ退職金の通算ができなしということに解釈されるわけです。この点についてはいろいろの面から聞いたわけですけれども、たとえば業者の方たちはこういうような意向があるようです。そば屋さんがせっかく自分たちの従業員に退職金積み立ててやったのに、自己の都合でやめてしまって、そうして鉄鋼業に勤めた、そういうような仕事の違うところに勤めていった者に退職金をやるということはどうかなというようなことで、この法律案に反映したのが同一職種という字句で表わされているやに聞いているわけです。私たちは、中小零細企業に勤めている従業員は、就職の機会もなかなかない、そして労働条件等々が非常に悪いものですから、なかなか就職の機会をつかむことができない、従ってこういうような退職金の通算に関しては、中小零細企業いずれの職種、事業場に勤めても、通算はそういうように強力に制限する必要はないのじゃなかろうか、それが中小零細企業に働く労働者に対する思いやりでなければならない、こういうように思っておるわけです。また同一職種に限るということは、中小零細企業に働く労働者の仕事の面を非常に制約するものじゃなかろうかと思っておりますが、こういうような法律の内容、条文の使い方については、どういうようにお考えになりますか。
  27. 吾妻光俊

    吾妻参考人 今二点についてお話があったように思うのですが、最初労働条件退職金労働条件であるから、これについては労働者の意思の反映をさせろということで、これは私先ほども申しましたように、退職金労働条件だという考え方をとっております。意思を反映させるというのは、要するにこの制度を利州するということの場合と、それからお互いに労使間だけで退職金制度を作るという場合と、若干ニュアンスの違いがありますけれども、その点は、この法律ではとの程度意思を反映させるかということか問題になるわけです。一般のお互いの間でやるという場合とは若干ニュアンスが違うということだけは事実だと思います。  それから、御質問の焦点はむしろ第二点にあったようですが、通算の問題ですが、これは労働省令で類似の事業の範囲をきめることになっております。私も実はその場合の御方針をまだ伺っていないので、はっきり承知いたしておりません。よくわかりません。(五局委員「全般的でいいですから」と呼ぶ)要するに、通算という制度がおそらくやや例外的な制度だということは事実だと思います。     〔委員長退席、大石委員長代理着席〕 退職すれば、そのときに一応この法律による支給を受けて、それからまた就職すれば、またそこで受ける。しかし、この原則でいくと、労働者が気の毒な場合が出てくるのではないか。そこで、ある条件をつけた場合に、その条件のもとならば通算という、いわば特典といいますか、そういうものを認めようという趣旨で、これがあまり窮屈にしぼられますと、これは問題があるかと思いますけれども、類似の事業という程度、これはその範囲がどの程度になるかわかりませんが、これをあまりきつくしぼらないということの条件であれは、現在の法律でもさまで不都合はなかろうというように考えております。
  28. 五島虎雄

    ○五島委員 ほかは他の委員にかわります。どうもありがとうございました。
  29. 大石武一

    ○大石委員長代理 吾妻先生、時間が来ましたか、もうしばらくよろしゅうございますか。——それでは小林進君。
  30. 小林進

    ○小林(進)委員 先生もお急ぎのようでございまするから、具体的な個々の問題は私は省略いたしまして、最近この委員会で公私ともにささやかれている問題について、私は率直に先生にお伺いいたしたいと思います。あるいは御気分に反しまして失礼な結果になるかもしれませんか、一つお許しをいただきたいと思います。それはほかでもございません、われわれはこの社会労働委員会だけでも最賃法あるいは国民年金等々、数回こういう公述人あるいは参考人等の諸先生方においでを願って御意見を伺っておるのでありまするが、その間を通じまして、最近の風潮として、お許しをいただきたいのでありまするが、どうも学者の意見が学者らしくなくなったのじゃないか、むしろ政治家的な発言に堕してどうもすっきりしないところがあるというふうなことが害われているのであります。この前も、国民年金法案の公聴会を開きましたときにも、むしろ公述人の方からもそういう意見が出て参りまして、私どもが学者の方々を特に選んでお呼びして御意見を伺いまするのは、やはり学者には理論的な割り切ったすっきりしたものをお伺いしたいからです。それで、業者には業者に対する立場で、利益代表あるいは職場代表で御意見を伺いたいのでありますが、そういうようなことは、これは全く見解の相違でございますから、最初から失礼な点はお許しいただきたいということでお願いいたしておるのでありますが、このたびの退職金共済法案の問題につきましても、やはり今の中小企業者に雇われておりまする労働者が気の毒だ、何とかこの人たちの最低生活を保持してやらなければいかぬのではないかという、そういう労働者立場でこの法案が作られるべきものでなければならない、そうあってほしいと私は思います。その第一の目的自体が、何かこの法案ではすっきりしないという感じを私は持っておりまするけれども、こういう点に対しても、先生のお話ではよりベターということを言われましたが、学問の世界、真理を追求する世界に、よりベターという言葉が一体許されるものかどうかということも考えられるのです。それはそれとして、どうも目的かすっきりしない。それから、やはり労働基準法ではございませんが、労働者立場からいっても、こういうような労働者に一番重要な関係のある法案労働者が対等の立場ででも入っていないだけではない、発言権がないというような段階、しかも業者だけの任意で、自分のより好みで労働者を加入せしめたりすることさえも許されている。そこへ政府かバック・アップいたしまして、そうして五%なり一〇%の補助金を出す。私たちが公平な立場で見ましても、中小企業者の雇用の問題、あるいは雇用者の安定性確保等を政府かむしろバック・アップいたしまして、中小企業者の及ばざるところをあと押しをして、そうして日本のこの零細な滅びいく中小企業者を何とか政府がささえてやろうというような立場でしかこの法案ができていないのであって、ほんとうのねらいである労働者を守るとか、中小企業に働く気の毒な労働者立場を保護してやるというようなことはちっとも法案の中ににじみ出ていないのではないか、そういうようなことを感ずるのでございますけれども、学者のお立場として、やはりこれがないよりはいいのだとおっしゃる、その点をいま少しく、私の及びもつかない深みのあるところを一つお教え願いたい。これは先住だけに失礼なことを申し上げてまことに恐縮でありますけれども、私どもは、社会保障制度審議会ですか、国民年金法案を作られた学者の方にもその点を申し上げたいし、最賃法に対する勧告をなされた学者にもこの点を申し上げたい。これは私の意見だけではございません。     〔大石委員長代理退席、委員長着席〕 これはおそらくこの国会内部の、多数とは申し上げませんけれども相当の中にこういう空気が入なぎっておりますので、先生は、そういうわれわれの疑問に対して、全学者を代表するというような立場で御回答を願えればはなはだ幸いと存ずる次第であります。
  31. 吾妻光俊

    吾妻参考人 今のお話を伺っておりますと、何か学問というものを取り違えておられるように思うのであります。学問というものは右へ行けばずっと右へ行き、左へ行けばずっと左へ行くという一本調子のもののようにお考えのようですが、われわれとしては大へん意外な御見解を伺ったわけであります。労働法というのは社会保障だということは私の信念なんですけれども、そう一足飛びに理想案というものが実現するものではないから、むしろ積み重ねていった方がよかろうということで私らの見解を述べております。  最初に、中小企業の方を守るということと業者がかけ持ちみたいなことになっているという点なんですが、私は中小企業労働問題というのは、大きく言えば中小企業問題でもあると思う。労働基準法というのはまさに労働者の側だけを考えた法律ですが、しかしそれを運用していきますと、中小企業は存外うまくいかないのです。結局、労働基準法を守るだけの金がないということがだんだん出てきて、根本的な解決は中心のところというものが労働省にあって、中小企業が救われないような形で労働者の保護をはかってみても実行性がない。こういう考え方から参りますと、これは両建でおかしいという議論もあり得ると思いますけれども、これか日本中小企業のあり方、零細企業のあり方というものを非常に直截に反映しているということすなりますと、もちろん業者の方の還元金融というものだけを焦点として、この制度運用されるといたしますれば確かにおっしゃるようにピントがはずれているといってもいいのでありますか、むしろこの法律建前としては、別にこの第一条の規定をたてにとってその批判するには当らぬじゃないかというのが私どもの考えであります。
  32. 小林進

    ○小林(進)委員 これで私は終りますか、中小企業を育成、強化することによらなければ、そこに雇われている労働者は救われないじゃないか、こういうお説でございますが、その点私どももごもっともだと思います。けれども中小企業に対するこういう退職金に五%、一〇%の補助金を出すというこのあり方自体は、中小企業者の質の改革問題には一つもプラスにならない。これは単なる彌縫策ではないか。同じような立場にあるのが農村でございます。八反、十反という農村の零細農が同じく中小企業のような企業体を作っております。それに対して政府は今日まで何十種類かの補助金政策で、五%、一〇%といろいろの形で補助をして救うという形も作っております。これは退職金とは違いますけれども、それが究極において零細農家を救うゆえんになっておるか。ちっともなっておりません。十余年の後にはむしろ農民をだんだん窮乏に追い込む結果になっている。それと同じようなことが今度は中小企業者に現われてきたのではないか。没落の過程にある斜陽産業にこういう突っかえ棒を一本、二本出してみたって、それは救済方法でない。むしろ明日以後の没落を一日か半日長びかせるだけであって、近代化や向上、変革に対して支障をなすものではないか、かように考えておるのでございますが、この点もう一回先生の御意見を伺いたいと思います。
  33. 吾妻光俊

    吾妻参考人 この法案を、中小企業の保護といいますか、そういう面から考えれば、もちろんごくわずかの施策でしかないわけであります。しかしこれがなぜそういうわずかな施策でしかないかと言いますと、これは労働者の保護を目的とした建前制度にからんでの中小企業の保護ですから、中小企業対策の太い柱になるはずのものではないと思います。ですから中小企業対策というのは総合的にあらゆる観点から樹立されなければならない問題で、お説のように中小企業対策がこの法案によって何とかなるということではもちろんない。私もこの点は御同感でございます。
  34. 園田直

  35. 八木一男

    八木一男委員 お急ぎのところ大へん恐縮ですが、ごく簡単に御質問申し上げます。  先ほどいろいろの参考人方々からの御意見を伺い、また委員の質問がありました過程で、社会保障の問題についていろいろとお話も承わりましたし、委員側の意見もございました。たくさん言うと時間がございませんが、私は、労働者の問題は、まず働いている間は賃金の問題が解決されなければならない、それから完全雇用ができ上って、職がないという場合がないようにならなければならない、それ以外の問題は完全に社会保障で解決がつくようになっておらなければならないと考えるわけであります。しかながら今なかなかそういうところにないのでございますか、まず厚生年金の問題は先ほど滝井委員からお触れになりましたけれども、失業保険の問題が触れられておりません。この中小企業労働者退職金という問題と失業保険という問題が一番事実としてはタイアツプする問題ではないか。中小企業の非常に長いこと働けない、条件が悪くて転々として変っておる人にとってみれば、失業保険の方がより大事ではないかと私どもは考える。ところが失業保険法について、今五人米満には任意適用の道がやっと開かれたような状況であります、健康保険でもほかの厚生年金でも同じような状況でございますが、五人以上の事業所でも、法律は強制適用でありながら、実際に適用されておらない事業所がたくさんある。そのされておらない原因は、五人米満に強制適用が行われていないために、非常に素朴で従順過ぎる労働者が、そういうのがないのがおかしいと気がついても言い出せない、あるいは気がつかない、あるいは事業主の方はそれをよいことにして強制適用の事業所でもそれを適用しないというような状態がございます。私どもはそういう状態をほんとうによくするためには強制適用ということでその問題は解決がつくと思う。五人米満の事業所に対する社会会保険の強制適用がとこの事業所でもあるということになれば、自分のとこころだけなければ変だということでだれ気がつきますし、また言う元気も出ますし、事業主の方もそういう悪徳のことはできないと思いますので、そういう必要もあると思う。こういう問題より以上にそちらの方が大事ではないかと思いますが、吾妻先生の御意見を聞きますと、これも一応ある程度いいものだからそうむずかしく考えなくてもいいというような御意見のように承わりましたけれども、私どもの考え方では、政府の方がほんとうに社会保険を全部の雲細な労働者に適用させるという意欲が非常に乏しい。労働大臣というような人間は労働者のサービス大臣でなければいけない、事弾圧ばかり考えておるような今の労働大臣には、ほんとうにほったらかされておるわけです。こういう場合にこういうものができまして、ある程度労務対策というような味のいいものができますと、それをいい、ことにして、そっちができたのだからということでほったらかすおそれがある。また先ほど他の委員からも申されましたように、いろいろの掛金があるからということで負担が二重になるということで、こっちができたらそっちができないというようなことになるおそれがある。私どもはこういう法律を出すよりは、むしろ失業保険の強制適用の法律を出すべきである。厚生年金あるいは健康保険の五人未満の強制適用の法律を出して、厚生年金を途中で脱退した後に脱退手当金が少くなるとかかけ捨てになるというような条件をなくして、そういうような保護をすべきだ、これが出ることによって、そういう正しい方向がおくれる危険性が多分にあると私どもは考えておるわけでございます。  大へん一方的にお話し申し上げまして恐縮でございますが、先生の御意見一つ承わりたいと思います。
  36. 吾妻光俊

    吾妻参考人 先ほど退職金制度というものについて申し上げました。かって第二次大戦後までは、退手法というものか生き残っておりました。それか失業保険法というものにとって変られた。今度の法律と色彩は違いますけれども、とにかく退職金というものを扱っているという点では、同系統に属するわけでございます。そういう点から考えますと、本来ならば、退職金というものが社会保障の方に解消していくということが望ましいというとは先ほども申し上げましたし、この法律につきましても、今おっしゃったように特に失業保険法との関係では失業保険法の拡充強化、その点に施策の根本のねらいか少くとも長期的には定められていなければならぬということについては、全く御同感でございます。ただ先ほどから繰り返し申し上げておりますように、現在過渡的にせよ、退職金制度というものがかなり一般的な慣行として行われている日本現状から見まして、特に零細企業について、この法案を作るということの必要性はあるのではないか、少くとも過渡的にはあるのではないかということを重ねて申し上げます。
  37. 八木一男

    八木一男委員 まだ御質問申し上げたいのですが、ほかの委員に譲ります。
  38. 園田直

    園田委員長 大原亨君。
  39. 大原亨

    ○大原委員 今までの質問の中で触れられなかった点を含めまして簡単に二点だけ御質問いたします。  やはり一つの大きな目標、これは民主主義の徹底とか、人間の尊重だろうと思うのですけれども、そういう大きな目標の中で、この法案の占めている位置について、これがよその方に向いているかその方に向いているかという問題はあると思いますけれども、しかしむしろ最低の問題として、私は今まで言われていた点を含めまして、こういう点はぜひ是正すべきではないかと思うのです。その第一点は、労働基準法との関係を言われましたけれども、共済契約の中で受益者は第三者、労働者でありますか、これに関連をいたしておる点から考えましても、少くともこの法案の中で任意包括制をとるべきではないか、労働者の権利として関係をいたしておる点から考えまして任意包括制をとるべきではないか。  もう一つは、今も言われましたけれども、この通算制について権利として保障するような、そういう法の規定を整備すべきではないか。そうしないと、この問題は幾ら現実的といいましても、これは非常に大きな欠陥があるのではないかという点が一つ。もう一つは中身の問題ですけれども中小企業の平均の雇用の年数は三年というふうにいわれております。大体これは政府の答弁でもそうです。女子なんかに至りまては一年です。そういたしまして、ことの法案の内容は四年未満では元金に足りない。それから六年未満は銀行の積み立て定期等には足りないわけです。十年あるいは十五年を山にしているわけです。そういう中身から考えましても、これは実際に実益があるかないかという問題が私どもはあると思う。そういう点については、私はこれは実施の過程において非常に大きな問題が起きてくると思いますけれども、との二つの点につきまして、これはきわめて具体的な私の意見だと思いますので、それについて先生の率直な御見解一つお聞きいたしたいと思いす。
  40. 吾妻光俊

    吾妻参考人 労働者の権利ということを考えの基礎にしていく場合には任意包括制でなければならぬ、こういう御意見ですね。     〔委員長退席八田委員長代理着席〕  この点は、先ほど労働基準法との関係も御説明申し上げましたが、労働基準法に関する限りは、もう明瞭に労働者の権利という形で最低条件の維持が行われておるわけです。一体退職金についてもそこまでいけるかどうか。権利というと大へん抽象的な水かけ論になってしまう。むしろどんな労働者にも当然いく、均霑する保護というところまでいくことが、果して現在の中小企業の実情の上で無理かないものかどうか。こういう点についての考慮任意包括制をちゅうちょさせた原因だと思っております。ですから、権利であるとかないとかという議論は、結局権利として認めることが制度的に無理であるかないか。労働基準法とか団結権とかいう場合と同じように、権利として認めるということは、少くとも退職金については、中小企業を目安に置いた退職金制度としてはちょっと無理ではないかというのが、この法案立場だと思います。  それから期間の点ですが、これはおっしゃったように、非常に短かい期間で退くものについては元金にもならないという実情も確かにございます。この点は、私もそれはできればこの支給率をもう少し低い、年限の短かいのに定めることが望ましいというふうに考えております。これを何年をどこで切るかという問題になりますと、なるほど移動性が多いからこの制度の恩恵を受ける率が少いということにもなるのですけれども、しかしまた今度逆に移動性が多いだけにこの制度を、そういうひんぱんに動く者についてまで相当高率の形で運用することが、財政的にといいますか、金の面からいってかなり大きな負担になるということになるんじゃないか。こういう面からいいまして、私はまあ何年がいいかということについては、先ほども言っておりますように、確たる考え方を持っていないのであります。もちろんおっしゃるように、できれば支給が大体とんとんにいくような期間というものはなるたけ下へ下げるということが望ましいとは考えております。  どうもこれこそはっきりした御返事にならなかったかと思いますが、大体そしういう考え方であります。
  41. 大原亨

    ○大原委員 次に石田さんにお尋ねしたいと思います。  この私か質問しました第一の点でございます。どういう立場に立って考えましても、少くとも従業員が喜ぶというものでなければいかぬと思うのですよ。そうしなければこの普及性といいますか、みんながこれに加盟するということはないと思うのです。そういう点では今、石田さんも塩谷さんもおあげになりましたけれども、私もちょっと今一端を指摘いたしまして学者の御見解を聞いたわけです。しかし学者の人はやった経験もないし、やる責任の立場にもないから、それは責任のある見解は、なかなか未知の分野における問題に意見を求めるということは実際は無理だと思うのです。そういう点ではお残りになりました二人の御意見というものが私は非常に貴重だと思うのです。私地方へ帰っていろいろ聞いてみました。この点を中小企業経営者の人に、特にサービス業の人に聞いてみました。そうすると、この法案は実益かないというのが非常に多くの意見です。実益があるかないかという問題、少くとも従業員が喜ぶか喜ばないかという、これは理屈は抜きにいたしまして、そういう問題は、大体法律案の趣旨はいいから通していくんじやということでは、私は無責任だと思います。     〔八田委員長代理退席、委員長着席〕  だからその点で、私は今も申し上げましたけれども、実際にサービス業、零細な企業を含んで、そういう不安定な職場にある雇用関係を安定させるということも政府は言っているのですから、そういう点から考えて、今の実績から考えて、通算制についてもこういう問題がある。それからいろいろな条件もそうなんですけれども、その山を十年から十五年のところに、大体十五年ごろに置いておいて、そうしてこういう法案を作るというふうなことは、インフレというような問題もございますけれども、それと一緒に法案の中身といたしまして、体系といたしましては、なかなか労使双方とも納得できない問題をたくさん含んでおるのではないか。そういう欠陥を持っておることがわかっておるのに、これをやるということは、今も同僚から質問かございましたけれども、エビでタイルつる以上に悪い結果になるのじゃないか、その点私どもは十分検討いたす責任があると思うのです。私どもは少くとも三年ぐらいのところを最低といたしまして、そこでは元利合計がとれる、そして三年をこえたものについては国が出していく、そして職場においてもそういう現実に希望が持てるような法案の内容を整備する、そういうことが立法者として一番現実的な配慮じゃないか、こういうふうに思うのですけれども一つ石川さんの御見解をお伺いしたい。
  42. 石田謙一郎

    石田参考人 お話の通り、この問題は非常にむずかしいのでございまして、私も中政連の常任総務をやっておるのですが、会議所なり、中政連の考え方にもいろいろ差がございまして、同じとはいえないのでありますが、御指摘の魅力の問題、まさしくこの法案ができてもそれかうまく運用されるかどうか、その点だろうと思います。そういう意味から、魅力がなければ、あるいはある一部の人が実際の効果がない、だから要らないじゃないかというふうに飛躍することについては、これはちょっと問題があるのじゃないか。私はここしばらく会議所の中小企業委員会の委員長をやっておりますが、政府がどう考えておるか私にはわかりません。私は今日出されておりまする法案について、それをわれわれ中小企業者が受けて果して利益があるだろうか、同時にこの法案目的であるところの働く人が、これによって利益があるだろうか、そのように素朴に考えてみたいと思います。その点から申すと、私は全然魅力がないとはいえないじゃないか、ともかくも問題がいろいろ議論されながらも、政府退職手当というふうなものについて、事務費を持とう、あるいは年限の問題はありながらも、補給金を持とうということになりましたことについては、私どもは素朴にやはりそれを受けていきたい、こういうふうに考えます。  問題はこれからあとの、この法案に対するいろいろなPRをしっかり労働省でやっていただきたい、このように考えます。  それから山の問題と補給の始まる時期の問題でありますが、山については、御指摘の通り短かいほど私はいいと思う。しかしながらこの法案性質から申して、最後にはそういう影か薄れたのでありますが、最初は、本来特に零細企業、あるいは商店街関係の良質な人の確保ということが、やはりこの法案の初期のいろいろな制度であったところのものには考えられておりますので、勢いどうしてもこの法案の中に盛られておりまする山がおそく、なったのではないか。私どもは逆に、できるだけ早くしてもらいたいという要望を実はしております。おりまするが、それが十年が果していいか、あるいは十五年がいいか、御指摘の通り少くとも十年ないし十五年というところにぜひ持っていきたい、それでもおそいよりも早い方かいいと私どもは考えております。それから政府が七年から五%ということについては、先ほど申し上げたように、私どもとしては五年五%、十年以上一〇%、十五年一五%と申し上げたのですが、この理由は中小企業の勤続年数ともいうのがとり方によって違います。被用者の数が三十人ある、五十人ある、あるいは法案に盛られた百人もあるところで非常に違って参ると思いますが、少くとも三、四年までは事実でありまして、それをしからばそこまで思い切って下げたらどうかということでありますが、この法案対象がいろいろございます。私ども考えてみまするに、中卒あたりの子供でありますと、三年あたりになりますとちょうど仕事を覚えたころになるわけであります。どうしても二、三年はかかる。そういうふうなところまで下げることが必要かどうか。しかし、そうじゃない、一つの仕事につく相当の年配の方もございます。こんな点を考えますと、三年に下げるということも一つの行き方だとは思いますが、そういうふうな点からしまして、まあまあ少くとも五年くらいになったら、ここまで政府が奮発したんだから五%出してもらいたいというふうに考えて、実は先ほど一五年五%、十年以上一〇%、十五年一五%というように申し上げておるのであります。
  43. 大原亨

    ○大原委員 もう一つ塩谷さんにお尋ねいたします。今までいろいろ論議されたことなんですけれども、最賃でも社会保険でも、いろいろばらばらにやって、しかも不徹底だというふうなことか重なりますと、これがずっと積み重なっていいところへいくんだという見解も抽象的には立ちますけれども、実際には障害になったり、あるいはそういう彌縫策の績み重ねが、かえって筋の通った社会保障制度や雇用政策を妨げる、こういう結果になる、こういう御見解でございますけれども、その点につきまして塩谷さんの方で——私も若干指摘いたしましたが、具体的にこの法案に対して修正すべき点をあげられましたけれども、最低こういう問題がなかったらこの法案としては致命的な欠陥だ、こういうお考えがありましたら一つお聞かせいただきたいと思います。
  44. 塩谷信雄

    塩谷参考人 ただいま修正の最大限度というか最小限度といいますか、そういうものは何かというお話でございましたが、私どもは、この法案で最も重要視しなければならぬのは賃金との関係であるという理解をしておるのであります。つまり最低賃金の立て方と、この退職金制度というものは見合っているものであるという理解をしている。従ってそういうところに本質的なポイントを置いておりますから、政府が国のカをもってこういう制度を立てるのではなくて、業者が自主的に制度を立てるような方向に、政府はむしろ行政指導をして援助をしてやってほしい、こういう立場でありますから、当然私どもは基本的に反対の立場であります。修正によってこれがよろしいという考え方は今のところは持っておらないわけです。ただ法案自体として見ました場合に、どういう欠陥があるかということを先ほど来若干の指摘をいたしたにとどまるわけであります。  これらの問題のうち何が一番重要であるかということになりますと、いろいろ見方も出てこようかと思いますが、いずれにいたしましても、退職金制度というものを法の力によって打ち立てたということは、労働条件の明らかな明示でありまして、この限りにおきましては単なる恩恵的な退職金制度であるという理解はできない。先ほど申し上げましたように、当然これは労働基準法及び労働省の通牒等によりまして明らかなように、賃金として扱うべき基本的な性格を持っておるという立場から、労働者の権利が明白にされなければいかぬということは、これは何といっても指摘をしなければならぬ点であろうと思います。  第二の問題は、当然これまた通算の問題がきわめて重要であるということは論を待たないところであろうと存じます。ただわれわれが、この法案を見まして、いろいろ技術的な表現を用いてありますから、わずかばかりの修正をもってしては、この乱用とか悪用の弊を免れることは困難である。と申しますのは、今日の中小企業の労使関係をごらん下さればわかりますように、きわめて労働者の団結力が弱い。おそらく先ほど申し上げました権利の問題にいたしましても、これがどういうふうに生きてくるか、あるいは殺されるかという問題は、まさに力関係に依存する面が非常に多いと思います。従って労使間において話し合いをしただけで問題は解決しない。そこには政府の介在がありまして手が屈かぬという、そういう法の立て方をいたしておりますから、基本的には相当の手入れをしないというと、労働者の権利を確保するということにはならぬのではないか、かなりの面において技術的な修正をしなければ、われわれの希望するような筋のあるものにはならぬのではないか、私はにういうふうに思いますので、これとこれを修正していただけばこういうふうになるという見解は申し上げられないと存じます。
  45. 園田直

    園田委員長 ほかにございませんか。——これにて参考人方々に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人方々にごあいさつを申し上げます。本日は御多忙中のところ、種々貴重な御意見をお述べいただき、本案審査の上に多大の参考となりましたことを厚くお礼を申し上げます。ありがとうございました。午後二時まで休憩をいたします。午後零時五十二分休憩      ————◇—————  午後一一時二十八分間議
  46. 園田直

    園田委員長 休憩前に引き続き、会議を再開いたします。  内閣提出国民年金法案並びに八木一男君外十四名提出国民年金法案、及び国民年金法の施行及び国民年金と他の年金等との調整に関する法律案を一括議題とし、審査を進めます。  質疑を行います。小林進君。
  47. 小林進

    ○小林(進)委員 実は大臣にお断わりをしておかなければならぬのでございますか、きのうこの社労委員会において、総理大臣においでを願いまして、私どもが蓄積をいたしておりました質問をやることになっておったのでございまするが、ちょうど委員長代理—————————————————————がすわっておったものでありますから、本会議の開会に籍口いたしまして、私の質問の前に打ち切ってしまいましたような次第でございまして、その結果私どもは本日総理大臣に続いて御出席をいただかなければ、本委員会における国民年金法案審議に応ずるわけにいかないということで、厳重なる抗議を申し込んだ次第でございまするか、それに対して多くの同僚諸君から、しかし総理大臣は本日どうしても出席できないから、その実弟であられる大蔵大臣が御出席になる、巷間伝うるところによれば愚兄賢弟であって、むしろ弟さんの方か実にりっぱであるから、それで兄総理大臣に対する質問を大蔵大臣に一つやってくれるようにと、こういうような約束になりましたので、私の真意ではございません。実は総理大臣に対しましては闘志が油然とわいてくるのでありまするが、大蔵大臣にはどうも闘志がわきませんので、いささか私もとまどいしておる格好でございまするが、そういう申し合せでございますので、本日は総理大臣にお伺いするつもりで御質問をさせていただきたいと思いますので、そのつもりで一つ御答弁をいただきたいと思うのでございます。  総理大臣として第一の質問をお願いいたしますが、実は昨年の五月の選挙の公約以来、自民党が国民に公約いたしましたその主たるものは、減税と社会保障制度の充実でございまして、減税七百億円、社会保障制度の完備、その中における国民年金法案というものは、重大な選挙の公約でありました。ところがその公約を実現いたしまする臨時国会も、実に警職法であのごとく乱闘で終ってしまいました。いよいよ通常国会でその選挙の公約が実行されることになったのでありますが、われわれの前に提出せられた国民年金法案というものは、どうも選挙のときの思わせぶりな公約からながめますならば、羊頭狗肉の感なきを得ないのでございまして、無拠出年金においても七十才以上、与えるものはわずかに千円、しかも所得制限等がありまして、本年度は百億円、平年度三百億という、一兆四千百九十二億円の予算からながめればスズメの涙と言いたいが、スズメの涙にも及ばざる少額のものを出して、そしてごまかしをおやりになろうとするのでございまして、われわれはとうていこういう少額のものに賛意を表するわけにはいかないのでありまするが、そういう幾多の点において、どうも公約に偽わりあり、あるいは第二次岸内閣にはこの社会保障制度というものに対する熱意がはなはだ希薄であるということをわれわれは感ぜざるを得ないのであります。そういう予算面の少額と相比例いたしまして、特に国民が、今日なお現岸内閣のこの社会保障制度に対する熱意を疑っておりまする多くの原因の中の最も顕著なる一つの事実は、今年の一月に行われた内閣の改造に関する問題でございまして、主流、反主流の争いから、ついには三大臣の辞職という結果が生じまして、それをもとにいたしまして、閣僚の入れかえがあったのでございます。その閣僚の入れかえの中に、ともかく厚生大臣の橋本さんが文部大臣になられて、そうして今の坂田さんが厚生大臣になられたのでございます。私はこういう人事は、いやしくも国民に対して、政府の厚生行政あるいは社会保障制度というものに対するその熱意を疑わしむる多くの要素の中の一つの重大な要素である、かように感じておるのでございまして、私が申し上げるまでもなく、橋本前厚生大臣は、二回の厚生大臣の職におつかれになった、しかもこのたびの国民年金は、橋本厚生大臣か立案をせられたのでございまするし、しかも就任早々彼は非常な熱意をもって、あらゆる障害をしりぞけ、この国民年金を自分の手で完成するのであるということを、われわれあるいは国民に対してかたく公約をせられておった、それが三大臣の反逆と申しまするか、辞職によって、臨時に橋本厚生大臣が文部行政にタッチせられた、それはわれわれから言わせれば、しろうとの大臣が便宜的に文教行政をやられた、そのやられたことを一つの理由にいたしまして、そうしてこの重大な国民年金に熱意をもって仕上げようとしておられた橋本厚生大臣が文部大臣に横すべりをさせられた、巷間非常に怪しみまして、その理由を総理大臣に承わりましたら、臨時的にこれをやらしてみたら非常に熱意がある、馬力がある、この五十万教員のあらしの中に立って、勤評闘争というがごとき、こういう困難なものを払いのけていくためには、橋本大臣がその迫力と威力において適任者である、こういうことを総理大臣が語られたというふうに、新聞は報道いたしております。その言葉の陰には、予定せられておる坂田文部大臣は、この勤評闘争にはいささか迫力と威力に欠けておるから、従ってそれほど重要な閣僚のいすではない厚生大臣の方に回せばよろしいのであるという、こういう言外の言葉が漏れておる。私は坂田厚生大臣とは、大臣に就任せられてから二カ月近くこうやって委員会を通じてその他を通じておつき合いを願っておりまするが、歴代厚生大臣の中で、おそらく坂田厚生大臣か最適任者ではないか、実にりっぱな大臣であり、新感覚を持たれて、しかも野党を牛耳ること赤子を牛耳るがごとく、実にりっぱな大臣だと心から私は敬服をいたしておりまするが、そういう敬服の問題は私個人のことで、そういう手腕の適、不適は別にいたしましても、総理大臣たるものがその人事を行うについて、そういうような厚生行政の中に生まれてきたような橋本大臣をいわゆる勤評闘争に当らせるために——言いかえれば文部行政は一番重要であり、困難である、だからそれを文部大臣にするのだ。坂田さんは、私は知っておりまするけれども、七回国会議員に御当選でありまするが、その大半は文教行政にタッチをせられており、まさに文教行政のエキスパートであります。そういうエキスパートで、自他ともに坂田さんは文教行政の最適任者と信ぜられている人を、そういう力が足りないからというふうなことで厚生大臣に持ってこられたということは、厚生行政全般に対する今の岸内閣の軽視の思想が——総理大臣が厚生行政を非常に軽く考えておられる一つの現われであると私は思う。これは私個人ではありません、世間一般がさように考えております。この問題に対してどうか一つ総理大臣になりかわって、佐藤大臣の明確な御答弁をお願いいたしたいと思います。
  48. 園田直

    園田委員長 ただいま小林進君の発言中、不穏当と認められる言辞があったやに思われます。後刻調査の上、不穏当なところがあれば適当「に処理いたします。
  49. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 いろいろ前置きがございましたが、私はただいま岸内閣の大蔵大臣であります。人事についてのとかくの批判をする立場ではございません。特に総理大臣になりかわってということでございますが、国会において責任ある答弁は、私は所掌以上には出るわけに参りません。その点をはっきりお断わりいたしておきます。ただいま御意見のうちにもございましたが、歴代厚年大臣中坂田厚生大臣は最適人者だとおっしゃっておられるわけであります。その一事で私も全く同感の意を表して、お答えといたします。
  50. 小林進

    ○小林(進)委員 大蔵大臣は総理大臣の代理でもございませんので、その御返答はできないということはやむを得ず了承する以外にないと思います。ただ、しかしこの問題は、まだ国民全般からその疑惑を解くまでには至りませんが、一つ将来ともそういう不明朗な人事をなさらないようにしていただきたいと思うのでございまして、これは一つお願いの筋にいたしておきます。  次は、限られた時間でございますので私は一問だけでやめたいと思いますけれども、今も申し上げますように、このたび政府がお出しになりました国民年金はいわゆる拠出が主たる本筋になっておるのでございまして、それを補う意味において無拠出か併設迂られているという形でございます。その無拠出の金額が平年度三百億円、その支給の開始が老齢において満七十才、かようになっておるのでございますが、この問題と関連いたしまして、池田前大蔵大臣が最近非常に名論をお出しになりました。すなわち月給二倍論ということでございます。その二倍論の根拠は一体どこにあるかといいますると、時間がございませんから池田勇人氏の主たる意見を一、二行申し上げますると、「月給二倍論」というのは給与所得者の月給を二倍にするとともに事業所得も二倍にふやし、国内の有効需要を高める。これこそが、いま日本経済のガンとなっている、限られた輸出の伸びと、それより大きい生産の伸びとの差を埋める唯一のカギである」かようなことを言われておるのでございまして、これはわれわれがかって主張した——今でも主張しておる理論と非常に似通っておるのでございます。なおこの二倍論をやられる理論的根拠として三点をあげておられます。第一は、日本経済は近年画期的に強化された。第二は、今の日本経済は大きな生産力を持っているが、有効需要が足りず、供給超過圧力にあえいでいる。第三は、そこで有効需要を起し、供給力——生産力を十分に働かせて日本経済をもっと伸ばすべきである。こういう三つの論拠をあげられているのであります。私はこれを国民年金に当てはめまして、今はどうも国内においてはボーダー・ラインなどというものかすでに一千二百万人もいる。品物はふえたけれども購買力がない。国民は貧乏に苦しんでおる。こういうところにこの国民年金の果す役割というものは非常に大きいと思う。生き残った七十才以上の人々にわずかに一千円ずつの金をくれるなどというよりは、この有効需要の観点に立って、わが社会党の主張するように、六十才から千円、六十五才二千円というふうに、この国民年金を年金という言葉に値するように、これを一つ広く国民各層に撒布せられたら、私は池田理論が国民年金の側からも非常に生きてくると思う。かように考えるのでございまして、この点一つ大蔵大臣に、池田月給二倍論並びにわが党の国民年金法案に対する所見、この両方をお伺いいたします。
  51. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 国民年金は三十四年度の予算に老齢、母子、障害等の各年金を無拠出でまず始めることを予算の上に計上いたしました。冒頭において、その金額が公約と違いはしないか、こういうようなお話がございましたが、どういうような公約をしているかは自由民主党の最もよく存じておるところでありますし、実は私自身もその当時党におりまして、公約は今回の案においても完全に実施していると確信をいたしております。七十才以上月千円ということは当時から申しているのでございまして、さような意味で私ども公約に違反しておるとは思いません。ただお話になりますように、年金にいたしましても、千円よりは二千円あるいは三千円がいい、七十才よりも六十五才から始める方がいい、こういうような御議論は、もちろん国民の中にもあると思います。また社会党御自身は、そういうような表現をされまして、わが党の公約は低きに失する。もしも社会党であるならば、もっと金額も増額できるし、年令も低いところから始め得る、こういうようなお話であったように思いますが、私どもは実現可能な約束をいたしまして忠実にそれを実施いたしておるのでございます。社会党は社会党としておそらく十分の財源をお見つけになって、もちろん天下がくれば実施なさることだろうと私は思いますが、今まで表現されておりますように、自衛隊の費用を波らしてというようなお話をなさいますと、国民はなかなか納得いたさないのであります。そこでただいま小林委員は、そういう問題とは別にして、経済の成長によって十分まかない得るのじゃないか。かねての社会党の主張であった、給料を引き上げろ、そのことか内需を喚起し経済の成長を来たす、こういう意味で財源は経済成長に期待をかけるんだ、こういう御主張のようでございます。そうしてわが党の池田君の所説を引用しておられます。御承知のように給与を引き上げるという議論は、社会党はもちろん給与を上げることによって内需喚起、こういう表現で長く主張しておられます。自由経済、資本主義経済のもとにある学者諸君にいたしましても、昨年エアハルトさんが来まして、大いに賃金を増額しろ、国民生活の向上をすることが経済の発展だというような表現をされた。あるいは正月早々には中山伊知郎君が月給二倍論を発表した。また今度は池田君が同じような議論を出しておられる。そこで社会党の諸君のお話を、この委員会では小林委員から初めてでありますが、私しばしば他の委員会で、大蔵委員会、衆参両委員会を通じて、また予算委員会等で伺いますと、池田君の所説の一番都合のいいところだけをいつも引用しておられる。私どもの経済理念と皆さんの立っておられる経済理念は根本に違っておるのでございまして、もしも池田君の説に満幅の賛意を表し、これを唯一の方として御引用なさるなら、社会党の諸君はいつの門に社会党的な経済理念を変更されたか、こう伺いたいような気が実はいたすのでありょす。そこで、この機会に相違の点を明権に申し上げておきたい。  皆さんの方は給与を上げることによって内需、消費を喚起する、そのことが経済の成長をさすんだという言い方をいたしておる。私どもの考え方では、賃金そのものは生産性と対応するものだという考え方をしておる。すなわち、生産性が向上するところに初めて賃金の高騰というか、これを引き上げることができる、また生活の向上がある。賃金を上げてやることではなしに、生産性向上と相待って経済が成長していく、これが私ともの考え方であります。この意味で過去の経過をごらんになるとおわかりだろうと思います。十年前の給与と十年前の国民所得、それらのことをお考えになれば、おそらく給与も二倍近くなっておると思う。今後の方向として、経済を発展さしていくこと、それが同時に賃金を向上さし、また生産能力を上げていくゆえんでございます。表現といたしまして二倍論をぶっておられますが、一体その二倍論はことしじゅうに上げるというのか、二年後に上げるというのか、五年後に上げるというのか、そういう点には触れておられない。経済はもう生々として成長していくものだし、どの政党でお考えになりましても、経済を成長さし、国民生造を向上さす、もっと豊かな生活をさすというのが政治の目標であることには違いはない。ただその行く道が、社会党の皆さん方と私どもの行き方が違っておる、これはどうも仕方がないが、そういうものだと思う。そこで、池田君の所説でありますが、池田君の一番大事な点を抜かしておられると思うのです。エコノミストでどういう表現をしておられるか、読んでいませんから私はわかりませんが、あるいはその中に書いてないかもわかりませんが、池田君自身は、三十四年度の予算、財政投融資の金額は適当なものであり、まことに成功だと言っておる。この一事でこの考え方はりっぱに裏つけをされておる。その意味でまだ自由民主党には多数のりっぱな人たちがおられますので、先はど椅本文部大臣、坂田厚生大臣についてどうもかえ過ぎるということを言われましたが、それぞれみんな最適任者かいつの時代でも生まれて参ります。そういうように、この経済理論につきましても、ただいま申し上げるように基本的な変りはない、この点だけは一つ認識を改めていただきたいと思うのであります。今日社会保障制度を広く進めておりますゆえんも、わが国の長期にわたる経済発展をやはり期待して、そういう意味で結論を出しておる、この点を御了承いただきたいと思います。
  52. 小林進

    ○小林(進)委員 もう私に与えられた時間は終りだそうでございますが、大臣の長い御答弁、どうもありがとうございました。ただしかし、池田さんは決して三十四年の予算は非常に有効適切とは申しておられませんので、ただ、今の日本の経済は供給都過圧力にあえいで、まさに瀕死の状態にあるから、これを何とか抜け道を講じなくちゃならないということを言われておるのでございますけれども、論争しておれば時間かございませんので、とれで終りといたしまするが、ほんの一言でございます。ともかく私ども国民年金の公聴会等を地方に行っても持ったのでありますが、そのときに言われることは、軍備論争はもうどうでもいい、どうでもいいが、いずれにしても、必要であるといっても、それは将来の問題だろう、将来に備える問題であろう、しかし、今日本のわれわれの置かれている現在は、とにかく食えないという生活のどん底に落ちておる人たちが、千二、三百万人おることは事実でございましょう、それを、こういう人たち救済あと回しにして、将来の危険に備えるという考え方は私ど、もは、再軍備肯定論者であるにしても、なおかつ政府の今のやり方に質感できない、今の国会で何をおやりになっておるか、国会でおやりになっておるのは、グラマンとかロッキードとか、証人を呼ぶとか呼ばないとかいって、毎日決算委員会を中心に騒いでおるのでありますが、ああいうグラマンとかロッキードとかいう飛行機を自衛のために三百台購入するというか、一体その費用は幾らですか、こういうことを言われるのでございますが、大臣、これは政党を抜きにいたしまして、日本の今日のこの時限においてああいうグラマンとかいう飛行機が一台三億とすれば九百億円、四億とすれば千二百億円の金額だ、そういうような飛行機をどうしても買わなければならないのかどうか。そしてわれわれのいわゆる国民年金、無拠出年金を今日の時限において七十才以上の者だけに限定をし、しかも所得制限、これは選挙のときの公約だとおっしゃるけれども、私はあの選挙のときには所得制限という公約は聞かなかったのにそういうこともおやりになった。そうしてわずかな人々に百億くらいしかおやりにならないが、ほんとうの大臣の心の底においてもやはりこれは正当であるとお考えになって起るかどうか、一言でよろしゅうございますから、お聞かせ願いたいと思います。
  53. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいまのお話は航空機の問題についてお述べでございましたが、基本的にはやはり社会保障制度の推進の急務ということを強く心から願っておられる御発言だと思います。私ども今日の現状というものがこれで十分だとか、これをどうしようもないのだとか、かような投げやりの気持は毛頭ございません。いわゆる経済を成長さすにつきましても、体質改善ということを特に強く要望いたしております。この体質改善の中には、いわゆる日本の産業の二重構造といわれるような中小企業であるとか、あるいは農村であるとか、あるいはまた中小企業とまでいかないいわゆるボーダー・ライン以下の国民層のあることを絶えず考えておりまして、国民総所得の増加を企図する意味においての経済の繁栄ということを心から願っておるのでございます。しかしながらさような考え方をいたしましても、力の強弱のある現状におきましては、国か特に力をかさない限り、総体としての生活水準などはなかなか向上はしていかない、厚生白書などが指摘しておるような今日の状況でございます。そういう点から考えて参りますと、社会保障制度——びとり養老年金や障害年金ではございません。社会保障制度を全面的に強く、また広く、大きく推進していくことの急務であることは、これは御指摘になるまでもなく私どもにもよくわかるのでございます。同時にまた、私どもは独立国家として、この国の安全を確保する、また平和を確保するという意味においての備えというものもやはり必要だ、こういう意味で、私は航空機のどれがいいとか悪いとか申すのではございませんが、ある程度の、国方相応の自衛力を持つということは独立国家として当然のことではないかと思うのであります。  私ごとし初めて三十四年度の予算を編成いたしたのでございますが、予算編成に当りましてつくつく感じましたことは、なすべき仕事がいかにも多く、しかもこれをまかなう財源に限りがあるということでございます。この点を私率直に皆さん方に御披露いたす次第であります。やはりまかなうべき財源は全部が全部国民の負担によってまかなわれるのでございます。そういうように考えて参りますと、したい仕事につきましてもおのずから曲後がある、またその規模等につきましても、やはり国民負担にならないようによく考えていかなければならない、こういう意味でいろいろ私ども工夫いたしておる、この気持を御了承いただきたいと思います。
  54. 園田直

    園田委員長 滝井義高君。——質問者の方に申し上げます。あと二人ございますから、大蔵大臣は参議院の予算委員会と連絡をして、三時三十分までに了解がついておりますから、それまでに終りますように、時間を厳守していただきます。
  55. 滝井義高

    ○滝井委員 いろいろお尋ねしたいことがたくさんあるのですが、要約をして簡単に申し上げますので、一つエッセンスだけ答弁いただきたいと思います。  先般経済企画庁を呼びまして、日本の長期経済計画についてお尋ねをいたしました。ところが三十七年までの長期計画の中に、いわゆる振替財源として七千二百十億円が組まれております。ところがその中に、困ったことには、この年金の計画が組まれてないということです。御存じの通り年金というものは、長期の計画の上に立ってできておるものです。政府案によっても、ピータ時には五百二十億の金を政府が負担をしなければなりません。ところが政府の一番大きな予算編成の基礎になる長期経済計画の中にこれが織り込まれていないということ、これは大へんなことなんです。これを大蔵大臣、一体どう考えておりますか。
  56. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいまのお話、長期経済計画をいつ発表いたしたものですか、時期的には私もちょっとわからないように思うのであります。今回の社会保障制度、この法条を御審議賜わりますれば、十分御指摘のようにその点は考えていかなければならないものだと思うのであります。おそらくその点は優先的に取り上げるべきものであるという一事を申し上げまして、お答えといたしたいと思います。
  57. 滝井義高

    ○滝井委員 この委員会の審議の過程で企両庁長官を呼びまして、そうして質問をいたしましたところ、三十七年度においては、振替財源としては七千二百千億を見ておりますけれども、この中には年金は入っておりません。実はこれを作るときには、年金の計画はなかった。年金の計画かなかったために入れていなかった。年金というものは昨日も私いろいろ総理に質問をしたのですが、実は国民的な世論が非常に強くなって、日本の財政と経済との裏づけがなくして、実は政治的ないわば世論によって作られたものなのです。従って当然これは日本の長則経済計画というものを私は変更してもらわなければならぬと思うのです。財政を組む大蔵大臣としては、今入れたようなことを言われますと、今度は当然われわれは経済企画庁を呼ばなければならないことになる。経済企画庁は入っておらないということです。これは厚生省にまずお尋ねいたします。厚生省入っておりますか。
  58. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいま申し上げますように、これは大事なことです。もし入っておらなければ変更してでも入れます。
  59. 滝井義高

    ○滝井委員 これは念のために、変更してでも入れるという言明かありましたが、厚生省これが入っておるかどうか。こういう一番大事なところが大蔵大臣の間と、それから企画庁、厚生省との各閣僚の間に一貫した意思の疎通がないということです。予算編成の基礎になる数字というものは、長期経済計画でしょう。これが今言ったように、大臣はどうも入っておるかおらぬかわからぬし、企画庁は入っていないというし、こういうことでは仕方がないと思うのです。厚生大臣、もっとこういうところをがちんとつかんでおかないと、長期計画なんですから、これを事務当局に今から尋ねなければならないというとではいかぬと思うのです。今大蔵大臣は入っていなければ必ず入れるということでありますから、日本の長期計画というものは、これによって変更されるということなんです。なければ変更するという確認を得ましたから、十分厚生省と連絡してやってもらいたいと思います。  次には財源の問題について、これは私は本会議でも一応御質問を申し上げたんですが、いよいよ年金が発足することになりますと、日本の予算編成上実に異例の措置をとらなければならぬことになるということです。昭和三十六年になりますと、国民健康保険と、それから日雇いで四百億だけの金を出さなければならぬことになります。昨年の十二月に国民健康保険法が通って、あなたの方の大蔵当局の言明によってこの数字が出てきているのです。それから恩給か本会議でも申し上げました通り、三六年には軍人恩給がビータになって千三百億になる。それからこの国民年金か最低に見積っても四百三十億から五十億になります。そうするとこれだけで三千百五十億です。今年度の社会保障費は、文官から軍人の恩給まで入れた広義社会保障で二千七百億円です。そうしますと今年の予算のベースでずっと三十六年まで参りまして、皆保険と恩給と国民年金だけを今言った三つの数字で伸ばして、他のものは今年のベースでずっと伸ばしていっても三千五百億になる。そうするとこ大体七百億から八百億三十五年は社会保障費を増加しなければならぬということになる。社会保障費が、日本の戦後の歴史の中で大体百億が常識、だったんです。ところが今年は二百二十三億程度になった。これは百十億の年金があったから二億をこえたわけです。ところが今度はこの二カ年間で八百億をやるのですから、社会保障費が今までの倍少くとも恩給はふえてきておりますが、それらのものを入れても、とにかく二百億というものが四百億ずつふえていかなければ八百億にならぬわけですから、そこでわれわれが公聴会に行ってこのことを、申しますと、私の個人的な友だちの学者なんか一致して言うのは、実は政府が三十四年度に拠出制を始めたというのは、滝井さん実はそこにあるのだ、私たちは政府がほんとうに拠出岸制をやる腹であるかどうかということについて非常に疑いを持っております。この点を政府にはっきりしてもらっておいて下さいというのがみんなの意見です。すなわち政府が二年間猶予期間を置いて拠出を始めたということについて疑念を持っておる。  そこで佐藤さんにここで特にお尋ねをしたいのは、ほんとうに腹をきめて三十六年から拠出制を文字通り始めるという言明をここでやってもらいたいということです。今の予算も従って八百億になるのですから……。
  60. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいまのお話でございますが、数字が私どもの方の見るより少りし大きいという感じがいたします。この数字は後ほど主計局長から説明させますが、ちょっと数字が大きいようです。しかし非常に飛躍的な増加であることは御指摘の通りであります。そこでこういうものを実施するに当りまして、一体十分な見通しがあるのかどうか、ことにしろうと大蔵大臣が出ているから次のことはわからないのじゃないか、非常に御心配のようであります。この年金制度を、始めるにつきましては、むろん十分精査をいたしておりますし、今の経済の伸び、成長度というものをこれと勘案して参りますと、この程度のものは十分まかなえるというのが私どもの見通しであります。従いまして今日のところ、ただいまの計画を変えるような考え方はいたしておりません。
  61. 滝井義高

    ○滝井委員 問題はそこです。大蔵大臣今の言明は、経済が伸びるからまかなえる。そうなると、経済が伸びるとどういうことになるかというと、これは経済企画庁とわれわれは論議済みなんです。この五カ年間に大体日本経済の成長は六ないし六・五%ずつ成長していく。正確に言うと、〇・八%くらいしか伸びかないのです。そうしますと、その場合にいわゆる消費水準が幾ら上るかというと、三十七年度までに三割八分消費水準が上りますと、この年金の保険料と年金額等を変更しなければならぬ。国民経済の成長につれて、年金の拠出額と年金額は多くなるので、あなたの言うように、経済、が成長したら今の五百二十億というものをさらに六百億、七百億、八百億とふやさなければならない。そういうことがこの法案に盛られておるのです。経済計画というものと財政というものは見合わなければならぬ。だから今のあなたのような御答弁だと、三割八分伸びるということを言っておるのだが、大蔵省は三割八分伸びた場合には、保険料の今の百円というのを一体どのぐらいに上げて、二十五年あるいは二十年後の月額二千円のこの年金額を一体どの程度に変更するかという問題が出てくるのです。これをやはり考えておかないと論議ができない。
  62. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいま御指摘になった点はもちろん大事な点でございますが、いわゆる法案の第四条による変更を要するような事由かどうか、その場合にどういうようにこれを変えていくかということでございます。ただいま三八%という表現をしておられましたが、その通りに直ちにそれを変えていかなければならないかどうか、どういう影響があるか、これはもう少し研究しないと、当然のようにお考えになりますとその点は違うように思います。
  63. 滝井義高

    ○滝井委員 いやそれはこの四条をお読みになると、国民の生活水準が上ったときには変更する原則になっておるわけです。しかも五年に一回ずつ変更するのです。それははっきり厚生大臣も御答弁になっているし、事務当局もそういう答弁をしてきておるわけです。ところが今のあなたの御答弁では、それはまたそのときのことで、やらぬということになるとこれは大へんなことになる。だから私たちは経済企画庁を呼んで、一体今から五年の後には国民所得がどのくらい伸びてどういう水準になるかということを調べておる。三割八分上るのですよ。三割八分上って年金や何かを変更せぬでそのまま置いておくということになれば、これは国民の魅力かなくなる。それで岸さんは何と言ったかというと、そのときには、当然インフレその他が起るときには変更します、そして財源に不足か出たならば国が責任を持ちますということをはっきり言ったのです。今のあなたの御答弁では、経済が伸びるから財政は今のままでまかなえますと言うけれども、経済が伸びれば今度は同時に五百二十億なり四百五十億の負担というものはさらに拡大をすることになる。
  64. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 今滝井さん御自身のお話しになりましたように、たとえばインフレ高進というような非常の事態、こういう場合だとこれは非常にはっきりいたしております。今の普通の経済の伸びに対して、これに比例してこれを変更するというような書き方ではございません。特別な事態に対しての考え方はもちろんございます。(「それも含むんだよ。」と呼ぶ者あり)それも含むというお話でございますが、非常な変更があれば当然これは考えなければならないことであります。けれどもその際にどういうようにするか。ちょうど給与ベースの引き上げを物価指数その他から毎年議論いたしておりますが、なかなかその通りに出てこないものもあります。ちょうどそれと同じようなことでございまして、これはよほどの変更のある場合は、これは非常にはっきりっしている。それは総理自身の答弁でもう尽しておると思います。問題は通常の場合の経済の成長を直ちに反映さすかどうかはそのときによって考えたいし、またこれはもちろん財政の都合もよく考えて、そうして真にその目的を達するような方向に努力すべきでものだ、かように思っております。
  65. 滝井義高

    ○滝井委員 わかりました。自治庁が呼ばれておるそうですから一緒に答えてもらいたいのですか、実は事務機構の問題です。実は私たちは事務機構にはそう大して金はかからぬだろうと安易に考えておりました。ところかこれをだんだん調べていくと相当の驚くべき金がかかるということがわかってきた。と申しますのは、今年度はなるほど無拠出だけでございますから一億五千五百万円を自治体にやる、郵便局に七千五百万円をやる、すなわち自治体では一人当り五十円、それから郵便局では三十五円でございます。ところが公聴会等で市町村長さんその他の意見を聞いてみますと、市町村側の意見はどういうことになっておるかと申しますと、少くともこの事務機構を整備するためには、大中の都市においては一人当りの受け持つ数は大体千人ぐらいだ、中小の都市においては五百人に一人ぐらいの事務員が要るんだ、従って事務員の数がやはり一万二、三千人ぐらいなければできないのだ、その金はおそらく二十五、六億なり三十億ぐらいになるだろう、こういうことです。厚生省当局の意見を聞いてみましても、現在の社会保険の出張所の機構を大体二倍にしなければならぬ、今百あるものをもう百十程度ふやさなければいかぬのだ、そうして少くとも職員がやはり三千から四千ふやさなければならない、こういうことなんです。そうしますと、これは一体一人の事務費というものは、現在の五十円というものは国民健康保険の事務費の半分と見て五十円にしておる。一体自治庁と大蔵省とは——特に自治庁はまず第一にこういう膨大な事務機構がとにかく県を通ぜずにどかっと市町村にやってくる、これに一体いかに対処して年金の窓口を完全にやろうとしておるのか。そうしてしかもその財政上の問題を大蔵省はどう考えておるか。
  66. 青木正

    ○青木国務大臣 御承知のように、明年度におきましては無拠出の年金だけがあるわけであります。無拠出の場合市町村としては裁定事務とか、あるいは受給者手帳の交付とかいうような事務を担当するのであります。しかしいよいよこれが本格的に実施されまして拠出制度まで行われることになりますと、言うまでもなく市町村の仕事は現在予想しておりますよりははるかにふえるわけであります。そこで私本会議で一人当り五十円と申し上げましたが、これは三十四年度についての問題でありまして、今後本格的な拠出制度が実施されます場合には、当然これはそれに見合ってふやしていかなければならない。また私どもそういう考えに立って、関係当局と折衝いたして参ったのであります。言うまでもなく法律の八十五条ないし八十六条に、この事務費は国庫が負担することになっておりますので、私ども法律の精神にのっとりまして、事務量か増加した場合は当然それによって国の費用も増加を要求する、かように考えております。
  67. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいまの自治庁長官の答弁で尽きておるのでありますが、今回のものは収納事務のない、ただ渡すだけでございますし、また紙その他も全部官給でありますから非常に簡単である、こういう意味で五十円でございますが、今後は無拠出制ばかりでなく本格的にスタートいたしますと、当然十分査定をいたすつもりでございます。
  68. 滝井義高

    ○滝井委員 その場合に国民健康保険のように事務費をどんどん削るために、地方自治体の赤字の原因というものは、実にその事務費を自己負担しなければならぬところから赤字が出て、そうしてそれが地方自治体全体の赤字の大きな原因になるというようなことのないように、十分これは配慮しておかないと、この掛金が集まらなくなってしまう。集まらなければ保険はくずれることを意味する。  次には、時間がありませんからこれで終りますが、本会議でもちょっとお尋ねしまして簡単に大蔵大臣は片づけられましたが、実は積立金の運用の問題です。大臣も御存じの通り、今度の国会だけでも国民健康保険、国民年金ができます。もう一つ中小企業退職金共済制度というものができるわけです。そうすると、これの方でも相当の積立金が出て参ります。それからこれはピーク時には三兆ぐらいになる、あるいは国民経済の伸びによってこの額をふやしますと四兆ぐらいになる。そのほかに現在の厚生年金が三十三年九月現在ですでに二千三百八十三億の積み立てができて、余裕金が二百五億ですから、二千五百八十八億という積み立てがある。なるほどそれらのものは徐々に積み立てて参りますので、それぞれ適当に資金運用部にやって財政投融資その他に回しております。還元融資に回しております。ところがこれらの社会保障制度かだんだんたくさん出て参りますと、失業保険も今年末には六百億をこえます。それから恩給を今度はあなた方の方は年金に切りかえたわけですが、あれから積立金が出て参ります。こうなりますと、いわゆる兆のつくくらいの積立金というものがどの制度にも出てくるわけです。今までのように単にそれを資金運用部にちょびちょびとつぎ足してきてそれをやるということでなくて、これらの長期の社会保障的な制度によってできる積立金というものを一貫した方針で運用をする政策が立てられなければならぬ時代か来たと思うのですが、この点について一体どう考えるかということなんです。
  69. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 基本的な問題でございますし、この種の零細な基金の運用でございますから、十分私どもも気をつけなければならぬと思います。安全しかも有利、同時にまたこれらのものが厚生施設その他にも十分還元できるように、財政投融資の計画をいたします場合に十分考えたい、かように考えます。
  70. 滝井義高

    ○滝井委員 財政投融資に考えなければならぬことは当然だが、こういうようにあらゆる制度に莫大な積立金ができるということになると、今までの運用の仕方ではいかぬじゃないか。やはり日本の長期経済計画とか、あるいは財政上の、もっと総合的な見地からこれらのものを運用していく姿をとらないと、今の各法案の状態を見ると、その積み立てたものはわれわれの金なんだ、だからわれわれの方に持ってこいという我田引鉄になっておる。引水じゃなくてお金を引くことになっておる。それではなかなか大へんなことになるんですよ。だからそこに一貫して、どこかできちっと系統的にこれらのものを運用する道を考えなければならぬということなんです。
  71. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいま財政投融資ということで簡単に表現いたしましたが、基本的には御指摘の通りです。これがばらばらにならないことが必要だと思います。そうして財政資金といたしましての運用については、その使途等について十分効果あるように工夫すべきだと思います。
  72. 園田直

  73. 八木一男

    八木一男委員 大蔵大臣に国民年金法関係いたしました御質問を申し上げたいと思います。時間が迫っておりますので、率直にお伺いをいたしますので、御高見は十分拝聴したいのですけれども、御答弁の方も一つ率直にお願いいたします。  大蔵大臣の財政を運営される根本的なお考え方をちょっと伺いたいのですが、私どもの考え方を先に申します。財政の運営で、たとえばことしとか来年とかいうように、つじつまが合うということはもちろん大事なことでございますが、そういうことだけで考えないで、見通しがあれば、長期間の見通しでことしからいろいろの計画を組まれる、そういうような広い意味のりっぱな財政方策で考えていかれる必要があると思います。大蔵大臣はもちろんそういうようなお考え方でおられると思いますが、それにつきまして一つ
  74. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 もちろん自由経済と申しましても、全然無計画で進めるわけではございません。政府等におきましては長期経済計画を立てまして、そのもとにおいて財政計画を進めていくという考えでございます。
  75. 八木一男

    八木一男委員 次に国民年金制度国民年金法についてお伺いをしたいのですが、大蔵大臣は国民年金制度についてはどういう意義があるというふうにお考えでございますか。
  76. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 国民年金制度については、この法律にもちゃんとその趣旨、目的を書いておると思いますから、この点で十分ではないかというように思います。
  77. 八木一男

    八木一男委員 もう一回はっきりおっしゃっていただきたのいですが、所得の少い人に所得保障をして、その人たち生活ができるようにするというような意味だとお考えでございますか。
  78. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 第一条に書いてある通りでございます。
  79. 八木一男

    八木一男委員 非常に警戒しておられますので、それではこっちから言いますけれども、結局気の毒な人を助けるという意味のほかにいろいろの意義があるかどうか、この点についての大臣のお考えを伺いたいと思います。
  80. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 もう読まないつもりでしたが、どうしても読まないといけないようです。「国民年金制度は、日本国憲法第二十五条第二項に規定する理念に基き、老齢、廃疾又は死亡によって国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によって防止し、もって健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする。」非常に明確に書いてあります。
  81. 八木一男

    八木一男委員 そういうことだけしかお考えになっておらない。それは間接に言って国民生活の向上というぼうばくたる言葉であるので、何でもひっかけられますけれども、ただ気の毒な人の共同連帯による助け合いである、親孝行運動である、そういうことをほとんど全部とお考えになっておられるのではないかと思うけれども、それだけではなしに、ほかの点に非常に影響の多い制度であります。これは社会保障制度を通じて所得の再分配が行われる。減税の再分配よりも社会保障制度の再分配の方が緻密に妥当に行われます。現在一定の免税点以下は同じになりますから、緻密に妥当に再分配が行われる。そのことによって消費購買力が恒常的に安定してできることになる。それで産業の振興、安定——途中を申し上げなくても頭のいい大蔵大臣であるからわかると思います。振興、安定に寄与し、次に雇用の増大、安定に寄与するという作用をするわけであります。次に生産性向上ということをさっきおっしゃいましたけれども、所得保障で老人が安心して暮すというような制度ができ上ると、若い健康な労働者がどんどん職場について労働力の質かよくなる、そのようなほんとうの意味の生産性向上ができるような状態になる。農家やあるいは零細企業におきましても、所得保障が完全にでき上ることによって、若い経営者にその経営権がゆだねられる。そうなりますと、農業の近代化とかあるいは協同化という問題が非常にスムーズに進むというふうに、産業とか雇用とか、そういうような非常に大きな面にこの制度関係があるわけであります。そういう意味があるということを大蔵大臣としては当然考えていただいておると思いますし、いただいておらないとしたらさらに強く考えていただかなければならないと思う。その点について端的なお答えを願いたい。
  82. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 今回の年金制度は、ただいま読んだところで目的は非常にはっきりいたしております。いろいろの御意見があるようでありますが、先ほど来それを拝聴いたしております。
  83. 八木一男

    八木一男委員 今のような意義があることをお認めになりますが。
  84. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 八木さん御自身の御意意見をただいまちゃんと伺っておりますから、そういう議論のあることははっきり承知いたしております。
  85. 八木一男

    八木一男委員 聰明なはずの大蔵大臣が、今言ったような作川があるということをお認めにならない。そういうことではいけません。だれが言ったってそういうことはある。経済とか経済とか国民生活とか、そういうことを考える人であればだれしも考えることなんです。それを多く見積るか少く見積るかという問題はありましょうが、そういう基本的なことについて一国の大蔵大臣が御答弁がないというような定見のないことではいけません。
  86. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 先はど小林委員のお尋ねに対して私の所見の一端を御扱露いたしました。おそらく政治の目標というものは、国民生活を向上させ、より豊かな政治をすることでございます。これはどの政党でも変りはない。そういう意味からお考えになりまして、どの制度でもこういう問題で結びつくのだ、こういう御議論はりっぱに成り立つと思います。しかしながらこれは直接間接、その関連というような影響、それぞれの関係においての影響でその大目的を達成するのでありますから、すべてのものを直接の効果に結びつけられると、私の考えとやや違っておる、こういうことを申し上げたいのであります。
  87. 八木一男

    八木一男委員 大蔵大臣はやはりわかっておられる。ただ警戒をしておられて、それで返事をされない。私も率直に伺っておるのだから率直にお答え願いたい。しかし今言った最後の言葉でわかります。そういう意義は認めているけれども、それを認めたならば、それを倍にしろとか三倍にしろとかいきなり追い詰められる、だからうっかり返事はできない、そういうような態度をとっておられる。私はまじめに伺っておるのだから率直にお答え願いたい。それでいきなり倍にしろ、三倍にしろと言っても大蔵大臣返事ができないことはわかっておる。しかし今のところ助け合い運動とか親孝行運動というだけのことで考えられている向きが多い。しかしそういう意味の直接間接の御判断はなさってもよろしい。とにかく相当程度のそういうような内政上の諸問題によい影響のある問題であるということを御認識願って、ただ助け合い運動だからこの程度ということじゃなしに、ほかの点にも効果があるからもっと積極的にこれを推し進めようという考え方に立っていただかなければならないと思う。そういう考え方で、今後この制度がよりよく発展されるために御努力になっていただけるかどうか。
  88. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 いわゆる社会保険制度やあるいは組合保険制度とは今回は非常に変っておるのです。国自身がその年金制度を創設し、そうして国自身が責任を持つという、これは非常中にはっきりしたものでございます。いわゆる助け合い運動というような精神的な面の問題じゃなしに、今度は一つの政治的責任のもとにおいてこの制度が生まれておる、こういうように私どもは理解いたしております。
  89. 八木一男

    八木一男委員 積極的な御努力をなさるかどうかということが質問の焦点であります。その点についてお答えを願いたい。右堆い云い
  90. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 従いまして、当然国の責任として積極的な努力をいたします。
  91. 八木一男

    八木一男委員 とにかく非常に時間がかかりましたし、かきっとお答えを願わなかったけれども、積極的な御努力をなさるということを伺ってやや安心したわけです。  厚生大臣はおられないのですか。厚生大臣にいてもらわなければ困りますよ。
  92. 園田直

    園田委員長 今すぐ参ります。
  93. 八木一男

    八木一男委員 実は厚生大臣を中心としたこの社会労働委員会の論議で、いろいろな問題が指摘をされました。そうして与党の方も当然それに賛成であるような、これはこうすべきだというような点がたくさん出ているわけです。ところが与党の方は、本年度の予算がきまってしまったというワクにはめられて、いいけれどもそれ以上ことしはなかなか出られないという状態なんです。ところで内閣総理大臣の岸さんにお伺いしたときに、ほんとうにそういういいものだったらかえる努力をなさったら総理大臣としては及第であるけれども、いいということがわかりながら、内閣の面子ということで、予算は出し直しできない、あるいは与党をして修正せしめることはできないというような態度をおとりになるならば、これは政治家として落第だということを申し上げましたところ、総理大臣は及第になろうという努力の御答弁をなさった。聞いて、ほんとうにそうだと思えばそうやるということをおっしゃった。そこで、内閣総理大臣の方が最高の責任者でありますけれども、現在残念ながら、大蔵省というものは非常に偉大な権力を握っておる。そこにいる主計局長なんというものは、ほんとうに各省大臣以上の権限を握っておる。そういうことではいけない。国家の一番最高の機関で与野党ともに一生縣命義をして、これがいいということか、そういう大蔵省の事実上の非常に偉大なる権力のためにできないということであっては、これは政治の立場としてはいけないと思う。でございますから、大蔵省をあずかっておられる大蔵大臣としての立場ではなしに、内閣をともに運行しておる国務大臣の立場として、それがそうだから全部やれということではありません、そういう論議かかわされて、みないいと思ったことについてはできるだけ早くそれを実現するために、やはり内閣全体の責任において努力するというような御見解を、国務大臣として御答弁を願いたい。
  94. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 抽象的な問題でございますから、抽象的なお答えをいたしますか、私ども政治家の心がけは、ただいま御説のように、常によりいいものを作るという努力を、あらゆる機会に払っております。これは政治家の当然の心がけだと思っております。
  95. 園田直

    園田委員長 八木君、もう時間がありませんからそのつもりで……。
  96. 八木一男

    八木一男委員 それでは具体的な点を申し上げます。政府案の方の拠出年金の方にはいろいろな問題点が指摘されました。そして開始年令か高過ぎる、六十五才ではおそ過ぎる、金額が憲法に保障された金額ではない、特に四十五年後の目標がこれであってはとんでもないというような論議がされました。次に、その内容が社会保険的であって、社会保障的ではない。支払いを少ししかできなかった人は年金が少くなる。あるいはもっとできない人は年金がもらえない。あるいは一部分気の毒な人が納めた年金が掛け捨てになって、仕合せな者の方に移ってしまう。あるいはまた納めるべき保険料が住友吉左衛門が納めても、ボーダー・ラインの心中一歩手前の人が納めても、同額の百五十円だというような点が、非常に問題点として指摘されたわけであります。政府側、与党側のいろいろな考え方がおありになって、いろいろな問題がございましょうし、それを世論を聞いて社会党のものにしろと言っても、これは無理であります。しかし公聴会その他において、半分は社会党の案が絶対によろしいと言い、残りの半分の与党推備の公述人も、社会党の案のいいところを取り入れて半分くらいのところでやってもらいたいということが、全国の公聴会でもここの公聴会でもその声であります。それを総理大臣は、そういう声は聞いてやりたいということを言われた。厚生大臣は非常にやりたがっておられる。そこで最後の難関である大蔵大臣がそういうことを積極的にやっていただければ、そういうことができる。  それから、時間がありませんから、もう少し先を申し上げますが、無拠出年金の方であります。無拠出年金の方はずいぶん問題点がありました。これにつきましては、予算の上の抵抗かありながら、厚生大臣もどうしてもそれはしなければならないと思うということを認められた数点かあるわけです。生活保護法の問題につきましては、この間総理大臣に申し上げましたから、きょうは時間の関係で省きます。たとえば七十才という老齢の開始年令は高きに失する、これはできるだけ低くしたいという考え方です。もう一つは、何と申しますか、内科障害に年金を上げないことは過酷にすぎるというような点、これは予算の抵抗かありながら厚生省は認めざるを得なかった。そしてまた、予算の佐藤さんににらまれることをおそれることがなかったならば、必ずうんと言われるようなものが五つ、六つあります。それは養老年金の方で、配偶者所得制限という実に理論的に根底のないものであって、実質的に農家の老人たちに年金が回らなくなるような制限、あるいはまた身体障害者の方には、家族加給は母子の方にあるにかかわらず、それがつかないというような点、それから母子と障害に対する所得制限が非常にきびしというような点、あるいはまたおばあさんが孫を養い、姉が弟妹を養ったような場合は、母子家庭よりも非常に気の毒だ、そういう問題をつけなければ意味をなさない、逆転をしているというような点、数点すべて厚生大臣は暗黙にその通りだということを認められておりながら、ただ佐藤さんの怒りつらを——失礼しました。(笑声)佐藤さんが非常に憤慨されることをおそれてなかなか答弁をされなかった。ところが内科障害の点と七十才を下げる点、そういう点については、これはもうほんとうに理の当然に負けまして、それは絶対にやるべきだと厚生大臣はおっしゃる。これらの数点をできるだけ早く、今の予算でやれと言いたいのですけれども、実際上無理でありましょう。それで大蔵大臣として、補正予算の機会があれば——ごくわずかなものであれば予備費くらいでできます。ある程度のものは補正予算でできる。それ以上のものは来年度でやるというようなことで、できるだけほんとうの意味に可能な年金になるように、そしてまたそれが全般のほかのことにも役に立つように、そういうことに積極的にやっていただきたいと思う。これは総理大臣のお考えでもあり、厚生大臣の熱願であります。ただ一つ大蔵大臣がその方向を示されれば、国民が非常に喜ぶわけであります。私ども政府案が悪い方が割合に攻撃しやすいのです。かし私どもはそういうような利己心は持っておりません。政府が点数をかせいでも、自民党が点数をかせいでも、国民のためにいい制度が早くできてもらいたい。その意味でぜひ大蔵大臣の積極的な御答弁を願いたいと思います。
  97. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいまの点、いろいろ御意意見が存することだと思います。そう簡単に賛成ができかねております。と申しますのは、一面やはり財政的な負担ということ、これとやはり結びつけて考えなければならぬ。一面なるほど貧しい者あるいは老齢者あるいは身体障害者等非常に国に御奉公した人たちを、今回養老年金という制度で援護するといたしましても、やはり国の財政であります。財政とは一体何か、やはり国民の負担である。だからやはり国民の納得のついく範囲でなくちゃならない、こういうふうに実は思うのであります。ただ私がこの機会に特に御理解をいただきたいと思いますのは、先ほど来八木委員もいろいろ御指摘になりまして、今回の社会保障制度ことに年金制度、これを創設した気持は一体何かという点を強くお尋ねになっておられます。見方によっていろいろな批評もあるでございましょうが、私膚身は、国に御奉公した人たちが年をとってから生活に不安を感ずるようなことがあっては相ならないというのが今のような考え方で、国か一つの支柱を与えるというところに大きな重点があると思うのであります。この点では在来の政治の行き方から見まして非常な画期的な制度だと思います。もしもこれかできるなら、財政的に許しますなら、またこういう制度に対しての国民の真の理正解を得ますならばもっと早く実現したかもわからない。しかしながら今日ようやくスタートするという際でございます。その意味でこれを取り上げるにつきましては、大蔵官僚がどう言ったとかこう言ったとかいうお話がございますか、これは大蔵官僚や各省の官僚程度できめられるような問題じゃなくて、こそこそ天下国家の大政策の遂行でありますので、これが決定に当っては各界の権威者をめての審議会で十分御審議をいただいてその答申を得て、その答申の線によって今回の法案かできておるのであります。おそらく権威者の諸君も、この案をもって満足だとは実は考えていないに違いない。しかし一般の国民生活の状況なり国の財政状態から見るならば、この程度が遡当だろうということだろうと思うのであります。だから今後改善、進歩というような面にはむろん工夫すべきものがあるだろうと思いますが、今回この案を決定した政府の決意なり、また事務当局がこの案の実施についてただいま協力されておりますその点について、先ほどのような御批判を受けることはまことに私は遺憾に思うのでありまして、大政策を取り上げてこれを実施に移すまでの関係か各省の連中の苦心、苦労というものに対してもどうか一片の御同情を願いたい。そしてこの政策を実施するに当っては大きな国の財政負担というか、財政力と十分にらみ合していくのだ、この考え方だけは私どもがとっておる。この点も、別に目の玉が大きいからといってしょっちゅうにらんでおるわけじゃないのですから、その辺はおしかりを受けるととはけっこうですし、また御鞭韃を賜わりますことは善んで受けるつもりであります。ただいまいろいろな御批判がありましたけれども、ただいまのところ今日のとの案をもって最善のものだ、私どもはかように考えております。どうかよろしく御了承賜わりたいと思います。
  98. 八木一男

    八木一男委員 大蔵大臣、実は先ほど納得のいくということをおっしやいました。これはほんとうに率直に出し上げたいのですけれども、たとえばおばあさんがみなしごを、三人養っている場合は、元気なお母さんが母千家晦で二人なり三人子供を養っている場合よりも生活か困難であって気の毒であるというとは、これはだれが考えてもそうだと思う。それから十七才の姉さんが十五、十三、七つ、五つくらいの弟妹を養っている方が気の毒だということは、だれが考えても理の当然だろうと思う。ところがそういうところは払わないようになっている。それは明らかです。間違いありません。それから身体障害者の内科障害といいますと、ほんとうに動けば死んでしまうような状態にあって手や足がない人と同じように働けない状態にある。そういう人は内科障害であるからということで一又ももらえないということになっている。それは全然インチキです。そこに小山君もおりますけれども知っています。そういう人が子供を持っている。身体障害者は結婚しなければいいじゃないかと言うかもしれない。結婚してそういうことになった、そういうときに子供がある、奥さんがある。まだ奥さんがあればいいかもわからない。子供だけの人がある。そういう人たちの場合は親孝行の息子さん、お嫁さんにかしずかれている老人よりは——老人に差し上げることはわれわれも賛成ですけれども、その人たちよりは気の毒な状態にある、所得保障が必要な状態にある。そういう人がはずれているわけなんです。そういう者を救い上げる御努力は、これは一点、ニ点でしたら予備費のほんのちょっぴりでできる。びっくり仰天する金額ではありません。ほんとうにちょっとでできる。そういうことを即刻にやっていただいて、そうして来年の財政とにらみ合していただいて、今国民の待望している状態をお聞きになって、ほかの点をもっといじくっていただきたい。私どもは内閣をとりましたら一ぺんにやりますけれども、残念ながら議席が足らなくておたくの内閣ですから、そう簡単にしていただけないことはわかりますけれども、われわれのお願いでなしに国民の要望という意味でそういう不合理な点をあげて——これはそんな金額じゃありませんから、そういうふうに修正をしていただきたい。  それからもう一つ、将来の拠出年金は二年後に開始されるわけです。ここに厚生省の資料の十七ページにございますが、国庫負担がだんだん減ることになっておる。経済成長率は、いろんな議論がありますが、しかしふえていくこことだけは何としてもだれしもお認めになるだろう。ふえていって財政的に予算のワクもふえ、楽な状態になるころに国庫負担が減るような計算になっておる。そのくらいのことは、ふえていっても、もっと金額自体をふやしても率はふえないこともある。率が減っておるのではなしに金額自体が減っておるのですよ。だから金額を倍にしたって率は同じことです。そういうような状態がありまするから、これは拠出年金の方も、われわれの指摘したような不合理、政府側も認められておられるところを相当程度直す余地か、財政を預っておられる立場としても容易にできるわけです。そういうことを一つよく御理解を願いまして、厚生大臣がこれから大蔵省にいろいろ御交渉になるとか、また総理大臣が貧乏追放のためにやりたいという御熱意に一つ大蔵省の方も、そういういい年金制度が発展するように積極的に御努力になっていただきたいと思う。その点についての御決心を一つ伺わしていただきたい。
  99. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいま具体的にあげられました事例について、これは要望として、御意見として伺うことは当然でございますが、私少し聴聞をかければ——必ずしも全部に賛成できるものではないのでございますがその点は省略させていただきます。しかし私、今後の厚生省と大蔵省との関係において、十分調整を正要するような点がございますれば、十分好意のある考え方で——好意と申しまするか、先ほど積極的にこの制度を盛り立てていくのだということを申しておりますが、その観点に立ちましてよく話し合って参りたいと思います。具体的の問題は八木さんの御意見として伺っておきます。
  100. 八木一男

    八木一男委員 そういうことで年金制度がよくなるように御努力願いたいと思います。先ほど小林委員の御質問中に、社会党の年金案の財政の裏づけについて御批判がございましたが、これについては私どもは十分な反論もございますか、時間がないので、これはそうでないということだけを申し上げまして質問を終ります。
  101. 園田直

    園田委員長 奧村君。——奥村君に申し上げます。あなたの出席要求中、主計局長は参議院の予算委員会の関係で出席しますので、村上主計局次長が残っておりますから質問を続けて下さい。
  102. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私は委員長のお許しを得まして、非常に貴重な時間ですが十五分ばかりさいていだだきまして、厚生省の小山審議官、それから自治庁の鎌田市町村税課長、大蔵省の村上主計局次長に、特に援護年金の受給権者に対する所得制限の問題だけに限ってお尋ねをいたしたいと存ずるのであります。  この援護年金に対する所得制限が非常にきびし過ぎるということは、かなり世間の非難もあるようでありますが、しかし国家の財政の事情からやむを得ない点もあろうかと思うのであります。ただ私は受給権者の配偽者に所得税納税者のある場合は失格するとか、あるいは受給権者の同一世帯内に勤労所得が五十万以上ある者は失格するとか、この点ならまだしんぼうできますが、受給権者が住民税の均等割を納税する場合は失格するとか、まるで人並みの世帯を持っておる者は失格するのだということでは、いかにもきびし過ぎるので、これはもう少し何とかならぬかということだけに限ってお尋ねするわけです。この点については自由民主党の国民年金特別委員会においては、受給権者は所得税の納税義務者の場合は失格する、こういう案であった。これならまだがまんができた。それを住民税の均等割ということになると、大ざっぱに申しまして所得税なら三十万くらいの所得がなければ課税されませんが、住民税の均等割といえば十三万、といいますとこれはずいぶんレベルが下る。これについてはわが党の特別委員会だけでなしに、社会保障審議会においてもこれだけはいかにもひど過ぎるじゃないかという答申を出しておるのです。大蔵省なり厚生省の方も予算の関係もありましょうが、資料を見てみますと、この住民税均等割納付者を失格させるということで、わずかに失格の見積りは七万八千人、予算で見れば平年度で九億円ですから今年はわずか三億円、これがどうして出せなかったか、この点を承わりたいと思います。
  103. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 援護年金の所得制限が、できればもう少しゆるやかなものであってほしいという御意見につきましては、今までもいろいろな方から御発言があり、将来の望ましい方向としては十分考えていきたいという趣旨をこれまで大臣からお答え申し上げておったわけでございますが、ただいまお尋ねになりました本人の所得の分につきましては、先ほどお引きになりました自由民主党の特別委員会における皆さんの御研究の際にも、大体の見当として月に一万円くらいの所得があるならば御遠慮願ってもいいのではないか、こういうふうな考え方が強かったのでございます。そういう考え方がもとになりまして、お一人の場合は老齢控除がございますから大体十四万円というものに近くなりますので、十四万円に当る所得税を引いたのでございます。なおその際に金額で表わさないで所得税を引きましたのは、一人の場合におきにましてはたとえば十二万円、あるいは十三万円ときめますことと、十四万円ときめますことの門にそれほど大きな開きはあるわけではございませんけれども、その人が扶養親族を持っておりました場合には、扶養親族の数の多い、少いによりまして非党にその所得の持つ実際上の意味が違って参りますので、そういうことをよく反映させるようにいたしたいというので所得制限というような表現になったわけであります。ただいま申しましたような事情で、党の要望は先ほど先生のおっしゃったようにおきめになったのでありますが、私ども立案に当りましてはそういう御趣旨を尊重して十三万円をもとにし、扶養親族一人について一万五千円というものをさらに加えて考えるということで、御趣旨の大部分は現在の法案の形で現われておる、かように考えているのでございます。
  104. 奧村又十郎

    ○奧村委員 もうこれは議論にわたりますから……。それでは実際の問題として、今年の十月から初めてこの画期的な制度、国民の非常に期待する制度が実施されるについそ、実際問題としてこれは実施できるのか、立案者であり、また実施の責任者である政府か、こういう制限を一体具体的にはだれがどうしてするのかという私は非常に深い疑問を起すのであります。と申しますのは、この十三万円以上の所得というものは、一体どの法律に基いてだれが調べるのかという疑問がまず起る。これは政令に穣ってあります。政令の内容を承わりますと、地方税法の二百九十二条の一項によるところの総所得金額、それか十三万円以上、こういうことでありますが、この地方税法の規定は、すべてこれは所得税法の所得という意味であります。ところが所得税法の所得というものは、御承知の通り税務署が調べている。そうすると、これは大体基礎控除、扶養控除などありまして、総所得が三千万以上あるのを税務署かお調べになっているのです。それを役場か受けて帰って、御承知のいわゆる住民税の得割をかける。所得税の納税者以外の者は均等割だけかける。従って総所得三十万以下の方は市町村でも、税務署が調べるものを役場が調べ直すというよことはしておりません。役所は税務署が調べたのをそのまま受けて所得割をかける。ところが十三万というと三十万円からだいぶ開きがありますから、税務署として調べたことを今度この年金を実施するために新たに調べなければならぬ。これはだれが調べるのです。ここを実際の問題としてお尋ねします。
  105. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 税については特に権威であられる先生のお尋ねでございますので、いろいろ非常に専門的な事項を頭に置いてお考えになっていることと思うのでございますが、一応現在私どもか整理しております考え方といたしましては、申し上げるまでもなく今度の援護年金の該当者になります七十才以上の老人とか、あるいは十六才米満の子供を扶養している未亡人あるいは身体障害者、これはいずれも地方税法におきましては、十三万円をこえる所得がないと均等割を課せられない、かようなことに相なっているわけでございます。それでこういうようなことに着目をいたしまして、まず均等割を納める人がこの所得制限に該当するかどうかということか実際上の問題としては出て参るわけであります。それでこれらの人々のうちで、今度は所得税を納める程度の所得のあります人は、先ほど申し上げました十三万円に十六才未満の子供一人について一万五千円を加算しました額は、必ず所得税を探せられる額よりも低くなりますから、その意味におきまして、所得税を納めているような人は問題なく、どういう角度から見てもこの所得制限に該当する、従って実際上問題になりますのは、所得税は納めていないけれども市川村民税の均等割は納めているという老人と未亡人と身体障害者というのが先生が今問題にしておられる対象になるわけでございます。これらの対象は現在の推計によりますと、先ほど御引用下さいました資料に明らかにしておりますように、大体四万五千程度のものでございます。一市町村に直しますと大体十人ぐらいでございます。この十人ぐらいの人につきまして、その人の所得が十三万円はこえているけれども、この法案に規定しているような十六才未満の子供一人について一万五千円という加算をすると、それを上回らない程度にとどまるかどうかということで問題になるわけであります。これらにつきましては、自分の所得は十三万円に子供一人について一万五千円を加えたものよりも少い、こういうふうに主張される方、そういう方から所得の申告をしていただき、それを市町村の税務当局において確認をいたしまして、それによって徴収をする、こういうふうな処理方法を考えております。
  106. 奧村又十郎

    ○奧村委員 市町村では昔からただ徴税はしますけれども、人様のふところの所得を調べるということはしたことがないのですが、今度は国民年金実施のために特にそれを市町村にしてもらうということですね。しかし問題は、現に均等割のかかっている者は当然失格になるのですね。
  107. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 現に均等割を納めている人々は、先生のお言葉によれば失格するかどうかということを検討すべき対象になるわけでございます。
  108. 奧村又十郎

    ○奧村委員 御承知の地方税で、老人、未亡人等は、十三万円以上ある者に対しては均等割をかけてもいい。だから均等割がかかっておるということは、十三万円以上の所得があるということ、こういうふうに反対解釈されるのですが……。
  109. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 その人に十六才未満の子供かなければ、おっしゃる通りになります。子供があります場合に、十三万円に子供の数一人について二万五千円ずつを上積みして参りますから、それで先生が感じておられる問題をどういうふうに解くかということが問題になるわけでございます。
  110. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それは答弁をだいふ逃げておられます。老人年金の該当する七十才以上の老人というものは、資料によれば約三百万人おられるのでしょう。母子年金の対象は約四十万そこそこでしょう。その中の十六才以下の子供さんのある母子家庭というのは、これはごくわずかでしょう。だから私の言うのはおもに数の多い方でいえば、老人の場合は十三万円以上の者、つまり均等割のかかっている者は全部失格する、こういうことになる。そうなると、今度は市町村長の立場になりますと、均等割はほしい、が均等割をもらえば国民年金は失格する、痛しがゆしです。市町村長の気持からいけば、やはりその市町村には一人でもよけい国の恩恵、援護年金はやりたい。が税の均衡上ほか並みに均等割だけはもらわねばならぬ。均等割をもらえば失格する。痛しかゆしです。そこで市町村によっては、この際均等割をやめて——年金の方は一万二千円おりる、均等割は年に三百円かそこらですから、均等割をとるのをこの際やめて、年金を受ける人をふやしてやろうということにもなるし、またその法律の執行の責任というのはおそらく市町村長にあるわけじゃなかろう。その所得を調べる責任というのは、市町村長に責任を負わすのですか。それなら法律に明定せねばならぬ。
  111. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 地方税法にきめてあります通りに、所得を調べて市町村民税をとるはずでございますから、おそらく援護年金をもらわせたいため、に均等割の賦課を特に免除するというようなことはまずあるはずがない、かように考えているわけでございます。それからその人が果してそれに該当するかどうかということの証明は、市町村にしてもらいます。
  112. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは最後に大蔵省主計局の村上次長に伺いますが、一体援護年金の受給権者の均等割納付の失格七万八千人と見込まれたこの計数の根拠は何ですか。私は七万八千人ところでないと思う。法律通りに施行すれば、これの何倍も出てくると思う。またこれにはそう根拠のある資料というのはあるわけはないと思う。これは何を根拠にしてこういう計数をお出しになったのですか。
  113. 村上一

    ○村上(一)政府委員 お答え申し上げます。今御指摘の人数は、厚生省の方で課税資料を検討されまして、該当者がそれだけあるというふうにお出しになっておる人数でございます。
  114. 奧村又十郎

    ○奧村委員 厚生省の方で課税資料をもとにして七万八千人を出したと言われるが、私は厚生省の資料からいくとこういう数字は全然出るものじゃないと思う。と申しますのは、七十才以上の老人だけでも約三百万余りおられる。その中で五十八万人の方は働いておられる。だからその五十八万人のうちの少くとも半分の方は年に十三万以上の所得があるように思われる。こういう厚生省の資料からいけば、七万八千人という数字はどうしたってはじき出せぬのです。これは実際上こういうことは実行できないから、私は結局腹づもりでこういうそろばんをお出しになったと思う。確固たる計数が出るのなら、その根拠を厚生省の方から示していだきたい。
  115. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 私どもがこの予想をつけましたもとになっておりますのは、市町村の所得税と均等割を納めている人の相関係がどうなっているかという資料をもとにしたのでございます。お元に差し上げてある資料の中にございますが、平均をいたしますと、大体所得税を納めております人々の二倍の人々が市町村民税の均等割を納めている、一対二という関係になっております。ところが老齢とかあるいは母子、障害という人々について調べますと、その率がかなり低まっておりますので、所得税を納めているこれらの該当者の数をもとにいたしまして、その一倍半というのを見込んだのでございます。
  116. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは自治庁の市町村税課長にお尋ねしますが、市町村における均等割の納税者の中で、特に七十才以上の年令の均等割を受けておる人の総数をちょっと承わりたい。
  117. 鎌田要人

    ○鎌田説明員 実ははなはだ申しわけないのでありますが、その資料を今手元に持っておりませんし、そういう調査は今まで行なったことがないのでございます。
  118. 奧村又十郎

    ○奧村委員 結局これは全く腹づもりでやっておられるように思う。市町村の市町村民税の賦課の状況が、市町村ごとに貧富の差が非常にひどいので、特に東京都内なんかは十三万や二十万所得があっても均等割はかかっておりませんし、また貧困な農村方面では十三万の所得がなくとも実際は均等割がかかっておる。そういう非常に不均衡な市町村民税の均等割の納税者に対して失格させる、こういうことはいかにも不合理だということで私はお尋ねいたしたのでありまして、願わくは政府が提案されるまでにこれは改めていただきたかったが、今日ここまで至ったので、まことに私は遺憾に思う。実施両において私のまことに不安に思う点が現われてこないかということを非常に不安に思うので、私はただいまこの貴重な時間をいただいてこの点を速記録に残して、今後も政府の実施をよく見て参りたい、かように申し上げまして、私の質問を終ります。
  119. 園田直

    園田委員長 八木一男君。——八木一男君に申し上げます。労働大臣の請求がありましたが、参議院の予算委員会の関係で、数回折衝をいたしましたが出席できませんので、政務次官が代理で出席いたしております。
  120. 八木一男

    八木一男委員 委員長の御努力は多といたしますけれども、倉石労働大臣のこの社会労働委員会の厚生関係一つも出てこない態度は断じて許さるべきではない。厳重にこれから委員長から御注意、御叱責を願いたいと思います。  それでは時間がありませんから、労働大臣のかわりに政務次官に質問いたします。労働大臣の代理としての政務次官に申し上げるわけでございますから、そのおつもりでお答えを願いたい。それから私が質問したことは政務次官から労働大臣に直ちに伝えられて、その通りするようにお申し伝えを願いたいと思います。  この国民年金法案についてお伺いをするわけでございますが、国民年金法というものは、その名前の通り全国民に対する年金制度でなければいけない。老齢とか遺族とか障害に対する所得保障を全国民にする制度でなければいけないはずであります。ところが非常に問題を簡単に、楽に、イージー・ゴーイングに扱おうとして、労働者を除いて、そうしてそのほかの国民年金制度を作った。こういうことは少くとも一国の政府がやることではない。ほかの人だったら、めんとうくさいからほっておけということになりますけれども、ほんとうに全国民のことを考える政府であればこういうことはすべきではない。こういうことをすべきではないのにされた一つの大きな原因として、労働者のサービス省であるところの、それを預かっておるところの国務大臣の倉石君が、こういう問題については全然関心がない。労働者を弾圧するような行政措置とかあるいはまたインチキなものを掲げて、インチキな最低賃金法を出して、ほんとうの意味では最高賃金法になるようなものを出して、そして資本家のごきげんをうかがうというような、ほんとうの労働者サービス省の立場から全然逆な方向、そういうようなばかなことばかり、けしからぬことばかりに血道を上げて、ほんとうの労働者福祉に全然関心がないために、閣議においてもそういう労働者立場の発言を全然なさらない。そういうためにこういうことになったのだと思います。主管庁の厚生省にも責任は十分にありますけれども、労働大臣の責任はまさに重大であります。それにつきまして労働大臣代理としての政務次官はどうお考えになりますか。
  121. 生田宏一

    ○生田政府委員 お答えいたします。労働省といたしましては、国民全般の社会福祉のために、特に労働者福祉のためには真剣に取り組んでおりますので、ただいま御懸念のようなことは労働省としてはないということを申し上げます。
  122. 八木一男

    八木一男委員 そういうような答弁をなさるもんじゃありませんよ、現に何もしてないんだから。政府労働者福祉に直接関与できるものは何でありますか。公務員の賃金を上げることはできますが、民間の賃金を直接労働省が命令して上げることはなさっておられない。社会党の乏しいつつましやかな最低賃金すら必要ないと考えておって、逆に資本家の有利になるような、労働者が抑えられるような、引っ込められるような最低賃金法を出す。賃金の面では直接の権限は持っていない。そうなれば社会保険の点において、社会保障関係においては、国がいい制度を作れば労働者に直接いいものが返ってくるわけです。そういう点で労働省としては一番に考えなければならない問題です。そういうことを何もしておらなくて、労働者のために一生懸命やっておる、そんな答弁じゃ通りません。倉石君のかわりの答弁ですから、悪いことは悪いとあやまりなさい。
  123. 生田宏一

    ○生田政府委員 大臣が所用がありまして出席することができませんことば私からおわび申し上げます。ただし労働行政について、大臣にいたしましても、また労働省にいたしましても、その福祉に関心がないということはございませんので、その点は御了承願いたいと思います。
  124. 八木一男

    八木一男委員 関心があるのに何もしないということは、全然無能力だということです。倉石君もあなたもやめなさい。それじゃ何も能力がないということだ。これについてはどうですか。それについてどうお考えになりますか、大臣と一緒にやめますと言いなさい。
  125. 生田宏一

    ○生田政府委員 ただいまのお尋ねは、私といたしましてはお答えに困ることでございますから、どうぞお許しを願います。
  126. 八木一男

    八木一男委員 政務次官というのは、政務については大臣の代行をするもので、そういう返事かできないようだったら政務次官の資格はありません。大体そこまで私に言わせたのは、悪いことを率直に認めないからなんだ。悪いことを率直に認めて、これから急速に直すと言えば、そこまで追い詰めない。悪いことを率直に認められないで、よくやっておるなんていうことを言うから、そういうことになる。正直に答弁なさい。何もやってないでしょう、今は。
  127. 生田宏一

    ○生田政府委員 だいぶおしかりのようでございますが、中小企業退職金法律案にいたしましても、またただいまお話がありました最低賃金法案にいたしましても、労働省といたしましては、それが現状日本労働者階級について一番ふさわしい法律案であるということを実は考えて出しておりますが、しかし八木委員のお考えの中には、この法律案がきわめて労働者福祉に沿わないものである、こういうお考えもあろうかと存じますけれども、これは立場の相違でございますし、また考え方の相違でございます。われわれの方としては、熱心にまじめにやっているつもりでございますので、御了承願います。
  128. 八木一男

    八木一男委員 立場の相違と言われますけれども、今の国民年金における労働者立場であるとか、失業保険であるとか、当然どんな立場でもやらなければならないことを全然なまけておいて、ほかのよけいなものを出してきて、出してきたものがとんでもないものばかりだ。そういうことでは、ほんとうに責任を果しておらない。果しておらないことは率直に認めなさいよ。全国民に国民年金制度を作るときに、労働者がほったらかされて、労働者のサービス官庁としてそれでいいですか。答弁に苦しんだら、あなたが倉石君を呼んできて下さい。かまいません。
  129. 生田宏一

    ○生田政府委員 答弁に苦しんでおるわけではございませんが、しかし労働省がまじめにやっていないということについてあやまれということでございましたならば、これは私といたしましては御返事のできないことでございます。
  130. 八木一男

    八木一男委員 政務次官かそれに御返事ができないとおっしゃるなら、政務次官の責任で今直ちに倉石君をかけ足で連れてきて下さい。━━━━━━━━━━━━━━━━━。政務次官はそれほどでもないですから、政務次官をあまり困らせるのは悪いですから一応譲りまして、こちらから申し上げますから、きょうのことをよく聞いておいていただいて、倉石君に一番極端な言葉で、一番強くお伝え願いたいと思います。私の言葉を倍くらいにして話さないとあの人はぴんとこないから、ほんとうにその通りの倍くらいにして伝えていただきたい。労働者のサービス官庁である労働省を預かって起られる倉石君は、労働者のことは全然考えておらない。その証拠には、国民年金制度労働者を入れるというような措置をしておられない。次にそれが今専務上に何とかかんとかむずかしいというような御答弁をきっとなさる。それならば、制度が分れておっても、その分れておる労働者制度国民年金制度を少くとも同格に、それ以上にやらなければいけないのです。そういうふうに高めることを同時にしなければ、労働者が一般国民よりも軽視されたことになる。そういうことと、それからもう一つ、そういうふうに制度が分れていても、今の通算という処置が完全に行われない場合には、途中でやめた人が非常に不利になる。制度が分れるようなインチキなことをされるならば、少くとも通算措置については完全な方法をとることを、厚生省がなまけておっても——そっちに聞かなくてもいいんです。こっちの言うことを聞いていて下さい。あなたの答弁のときに困られたら、僕の方が終ってから聞かれていいんです。途中から聞くのはやめて下さい。政府委員にも言っておきます。質問がしにくいから途中では言うな。終ったとき注意していただいてけっこうです。——そういうふうに通算を完全にすること。それから、現在の厚生年金が途中脱退者には脱退手当金しか出さない。この脱退手当金は使用主の出した分は返ってこないわけです。本人の分にちょっと利息をつけた分しか返ってこない。ところが、今までかけていた分は使用主の分ももろう権利がある。一番気の毒な人の権利が剥奪されて、仕合せな人に持っていこう、そういう法律の不合理さ、そういうことを直す。通算を完全にする。そうして厚生年金の基準を上げる。厚生年金は、今基準は、お教え申し上げますけれども、月に三千六百円の基準である。国民年金は三千五百円の基準だ。ほとんど同額だ。国民年金の国庫負担は、政府はインチキで五割といっているけれども、給付に対する国庫負担は三分の一であります。三割三分三厘三毛。そうして厚生年金の方は一割五分。金額はほとんど同じで一割五分であったならば、労働者だけが恩恵が少いということになる。年金制度に関しては、ほかの国民よりも労働者が必要度が多いのであります。生産手段を持っておらない、店を持っておらない、道具を持っておらない、工場を持っておらない、そういう必要度の多い人に対して、ほかよりも薄いということではバランスがとれない。労働者の年金制度が先にできたのは、そういう必要度に応じてできたわけである。その必要度の多い方をほったらかしておいて、そうしてそういうことをした厚生省もとんでもない、けしからぬわけでありまするが——坂田君を呼んで下さい。年金のときにはいつも聞いていてもらわなければならぬ。
  131. 園田直

    園田委員長 すぐ参ります。
  132. 八木一男

    八木一男委員 そのときに、労働省がそういうことにてんで関心がなしに、弾圧対策はかり考えているから、よけいそういうことになる。厚生省かもしそういうことを忘れておっても、労働大臣は血相を変えて乗り込んで、それを直さななければならない。てんでそういうことを考えておられない。そういうことではいかぬ。厚生年金法の改正案を政府が用意しておられる。それが非常に不十分で、金額を一割か二割しか上げない。三割三分にしようとしたら、金額は倍以上げなければならぬ。金額をある程度にとどめるならば、一割五分の国庫負担の率を上げなければならぬ。そうして労働者の年金が必要なる度合いを考えれば、さらに多く考えなければならない。ですから、厚生年金を国民年金のようにバランスを合せて、ほんとに内容の整った、金額の高い、国庫負担のバランスのとれた、そうして途中脱退者が損がいかない、ほかの制度と完全に通算がとれる、そういうものを出される決心があるかどうか伺いたいと思います。
  133. 生田宏一

    ○生田政府委員 ただいま御審議を願っております法律案と既存の法律との間に多少の差かあることは、私どもも存じておりまして、この法律ができますときには、いろいろ議論のあったところでございます。しかしこれは労働省としては、そのようなもろもろの法律案なら法律案が調整されて、社会保障一つの水準が引き上上げられますことは、私たちも心から希望するところでございます。それで、法律案の中にこれは至急に調整をして、そうして水準を高めていこう、こういうようになっておるようでございますから、それを強く期待しておるわけでございます。
  134. 八木一男

    八木一男委員 私の申し上げましたことを、労働次官としては今までやらなかったことにかんがみられまして、これからも全方をあげてそれに邁進をされる、それから労働大臣にそうさせる、しないときには、もうほんとにけんかをしてでも労働大臣を改心させる、改心させなければ、政務次官はそれだけの決意があったのに、頑迷固陋な労働大臣のためにできないということを声明を発表して、そうして世の中かよくなるような立場においてやめられる、そういう御決心かあるかどうか。
  135. 生田宏一

    ○生田政府委員 法律の中にちゃんとそのようにいたしますと書いてあるわけでございますから、それが正確に守られることを私たちは期待しておりますし、またその主張もいたすつもりでございます。
  136. 八木一男

    八木一男委員 書いてあるのは通算措置たけでございます。金額とか国庫負担とかあるいは途中脱退者の不利な点を直せという、私が申し上げたことは書いてありません。そういう点についてもそういう御努力をなさるかどうかということを伺っておる。
  137. 生田宏一

    ○生田政府委員 私たちは社会保障の向上につきましては、この方向にはむろん大賢成でございます。それで、そういうことのありましたものにつきましては、これをいたしたいというのは当然でございます。ただ、一個人の考え方でなしに、国の予算とかその他の条件が伴って初めてできるものでございますから、それで今八木委員のおっしゃるようなことにぴったりとしたお答えはできませんが、しかし私たちはその方向に努力するつもりでございます。
  138. 八木一男

    八木一男委員 実際労働大臣には非常に腹を立てておりますので、かわりに出てこられた政務次官につらく当ったのは、非常に強過ぎたのは私恐縮でございますが、ほんとうに怒っておりますので、今言いましたことを三倍ぐらいに強めて伝えて下さい。つかみかかりたいくらい労働大臣に対しては腹を立てております。われわれ社会党全体が怒っております。私がかんしゃく持ちだから腹を立てているだけでなしに、みんなが応援しているような工合で、労働大臣はほんとうに心を入れかえてそれを熱心にやってくれ、やってくれなければ政務次官かほんとうに困るのだということでぜひやっていただきたいと思います。それで、厚生大臣が大事なときに来られなかったので非常に残念だったのですが、労働省の方は、厚生年金の途中脱退者の不利をなくする、あるいはまたバランスを合せる——さっき申し上げましたことは、金額を上げるか国庫負担金を上げるかということです。同じ金額にしたら三割三分になるようにバランスを合わせなければ、労働者は困る。できれば、労働者の必要度か多いのですから、それ以上になっていいのですよ。それから通算を完全にやる。それからもう一つは、途中脱退者が不利にならないようにする。今のように、途中脱退者は脱退手当金が本人の分に利息をつけたぐらいしかもらえないということでなしに、使用主が出した分ももらえる、国庫負担の出したものももらえる、そういうふうに途中脱退者という気の毒な人——これは転職ということは気の毒なんです。首を切られるということは、ずっと残っている人よりも気の毒だ。そういう人の方が社会保障が必要なんです。そういう人を不利にしている厚生年金というものは、実にでたらめな法律であると私は考える。そういうことを徹底的に直すということを一生懸命に努力すると労働政務次官は言っておられる。倉石君には三倍ぐらいの強さで言う。それで、厚生年金の主管官庁である厚生省がぼやっとしてほったらかしておるということではいけない。そういうことについて、坂田厚生大臣がほんとうに私が申し上げました通り——簡単に申し上げましたけれども、この点は政府も御承知ですからおわかりであろうと思いますが、その点について、それをほんとうによくするために、ほんとうに全面的に、急速に最大の努力をされるか、そういう点について厚生大臣のお答えを承わりたいと思います。
  139. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 ただいま予算委員会に出ておりましたので、今まで八木委員の御質問の内容等を詳しく聞いておりませんから、あるいは取り違えた答弁をいたすかもしれませんが、御了承いただきたいと思います。  厚生年金等におきまする被保険者について右利なようにしていくという努力につきましては、私渾身の努力を払いたいというふうに考えております。
  140. 八木一男

    八木一男委員 それでは労働政務次官、大へん強い言葉で申し上げましたけれども、どうか倉石さんにさっき申しましたように強力に伝えていただきたいと思います。  厚生大臣に一点だけ申し上げますと、さっき大蔵大臣が米られまして、各委員から御発言がございました。大蔵大臣も、年金制度のいろいろ論点になったことを実現するために努力をするということを、なかなかうまい言い回しでありましたが、とにかくそういうような積極的な意思表示がございました。そうして内閣総理大臣もそういうおつもりでございます。でございますから、厚生大臣としても、ますますかんばつて、急速にいろいろ論点になったような点が解決されるように、ほんとうに全力をあげてやっていただきたいと思いますが、それについての総括的な御決心を伺いたい。
  141. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 昨日以来の総理大臣並びに本日の大蔵大臣の御答弁等によりましておわかりいただきましたように、われわれ内閣といたしましては、年金法を今後とも努力をいたしまして充実して、国民のために、またほんとうに国民の方々、特に低所得者の方々に喜んでいただけるものに作っていきたいというふうに、私ども固く決心をいたしておるような次第でございます。
  142. 八木一男

    八木一男委員 厚生大臣初め政府の各位が、国民年金をほんとうに世論に従って、それから野党の意見のいいところも十分取り入れて、これを発展される御努力をなさるということを御答弁で、そういうふうになさるという御決心であることを、十分そのことを理解いたしまして、御努力をさらに御要望しまして質問を終りたいと思います。
  143. 園田直

    園田委員長 ただいまの八木君の発言中、もし不穏当な個所かあれば、速記録を調査の上、処置いたします。大原亨君。
  144. 大原亨

    ○大原委員 私は身体障害者の年金のことについて、一点だけお尋ねしたいと思うのですが、この身体障害者の年金につきましては、拠出、無拠出を通じまして、今家族の加給がないとか、あるいは二級以下には適用しないとか、金額が少いとか、いろいろ問題が指摘されたと思います。その欠陥の一つとして内科的な疾患についての論議をされたところでございますか、前の臨時国会のときに、前厚生大臣の橋本さんに私は原爆被害者の年金につきましてお尋ねをいたしました。そうしたところが橋本厚生大臣の御答弁は、調子かよかったのかどうか知らぬけれども、この問題については十分一つ事情がわかったので——特にあの人は岡山の近くで、広島や長崎のことはよくわかるので、十分一つ努力をしたい、こういうお答えでありました。これは速記録を見ていただけばわかります。坂田厚生大臣は、新たに厚生大臣のお仕事を引き継ぎになりまして、そして年金を手がけて今回提案されたわけですけれども、こういう御努力をなさったか、こういう点について具体的にお聞きしたいと存じます。
  145. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 実は、面接橋本厚生大臣からこの問題につきまして、年金をどういうふうに長崎あるいは広島等の原爆被害者に対してやるかということについて、実は私自身といたしましては承わっておりませんので、はなはだ申しわけないと思いますが、ただ私が就任いたしましてから、広島等における原爆被害者の方々は、まことにこれはお気の毒な方々であるから、何とかして一つこれらの方々に対して、もし援護の手が差し伸ばされる道があるとすれば努方をしたいというふうに考えておりまして、この前の参議院におきます中山委員の御質問等にもございましたわけでございますが、その中の放射能等による被害を受けられた方々、それらの方々に対して、医療面において、あるいはまた生活困窮をされておられる方々に対するいろいろの——従来やって参りましたことは闘いでおりますけれども、ただいま年金問題と結びつけて、直接的には実は私今のところ聞いておらないのであります。
  146. 大原亨

    ○大原委員 厚生省の事務当局にも具体的にその点についてお聞きをいたしたいのですが、そういうことについては引き継いでいない。そういう点については事情はだいぶ勉強はしているけれども、引き継いでない、こういうお話ですけれども、かいつまんで言いますと、私どもといたしましては、基本的にはこれは国際法に違反する無差別爆撃なんだ、そういたしましてこんなにたくさんの人が死んで、今でも広島では十何人も死んでいるんですよ。それから長崎でも三名以上も死んでいるんです。白血病になりましたら、これは不治の病なんです。併発病を起さない健康管理をしていく、身体の健康を保持していく、そういう点について国が管理する以外にない。しかしながら治療費につきましては、やはり生活費がないために、治療も入院もできない、こういうことも大体わかっているのです。でういう点から、私どもといたしましては、これは当然国際法の違反たから、平和条約で権利を放棄したのだから、当然国が肩がわりして見ていくべきだ。こんな悲惨な問題についてはそういうふうに考えて、根本的に遺族に弔慰制度を、あるいは扶助制度を作るべきだ、とう考えるのですけれども、さしあたっては二つの方法がある。その一つは、いわゆる現在の治療法が、たとえば健康保険などのように病院に通って休む際には傷病手当があるように、医療手当のようなものを最小限度補給をいたしまして治療ができるようにする。そうして健康管理その他の調査を大学やその他の機関で総合的に企画いたしまして、これをやる中でこの治療法について考えていく、そういうことが一つ、現在の治療法を補完していくということが一つ。それからもう一つは、この新聞は二月三日の毎日新聞でございます。これは読売新聞にも出ておりましたけれども、広島市の基町にありますYMCA内日本キリスト教奉仕団広島被爆者福祉センター、これらで調査いたしたところでも、詳細に読めばわかるのですが、しかしこれを端折ってちょっと紹介いたしますと、いわゆるボーダー・ラインの人の生活実態を調べた。百六人中八十八人が医者の診療を受けることができないで、ほったらかしになっておる。そうしてそれぞれの調査をいたしましてアンヶトをとりましたら、「将来の希望は一という調査に対して六人の婦人が「何の楽しみもないので早く死にたい」こういう回答をしておる。広島はずいぶん復興したようだけれども、長崎も同じだが、一歩裏道を行ってみたら、電灯もなし、ラジオもなしに、そうしてニコヨンとか生酒保護とかいろいろな関係だけでほんとうに治療もできないで、ほったらかされておる。そういう人はたくさんおる。これは読売新聞にも出たし、毎日新聞でも事実を紹介しておるのです。これは政府が障害年金を提案をいたす際に、日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度と、こう身体障害者の趣旨説明をいたしておる。それにこれはまさに的中しておる。何といっても白血病で、原爆症にかかったら不治の病です、死を待つのです。健康管理をする、あるいは栄養補給をする、いろいろな手助けをしていく、あるいは治療についても国がみる、こういうことを国がしてやる以外には、この問題については希望も何もない。しかも、国家の責任じゃないですか、非戦闘員を無差別爆撃して。岸さんは責任がある。こういう内科的な疾患について厚生大臣は、いろいろ私が事情をこの席で申し上げて、そしてその二つの面についても考えるし、いわゆる身体障害者年金においては十分趣旨はわかったから努力をしたい、こういうお話なのです。現地の視察にも見えました。一級障害とかいろいろな障害があるか知らぬが、事この問題について何も検討されていないというのは、私は非常に不可解である。この点については非常に満足できない。それは努力されなかったことはわかったけれども、どういふうにお考えになっておるか、一つお聞きしたい。     〔委員長退席、大坪委員長代理着席〕
  147. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 原爆障害の人々の問題については、ただいまお話がございました通り、大原先生からはかねがねお話がございまして、私どもも障害等級委員にこの旨をお伝えして、その際に御相談を願ったのでございます。その際の結論といたしましては、非常にお気の毒なことであり、これは他の内科的疾患と同様に十分考慮すべき問題である。しかし、現在の段階においては他の内科的疾患と切り離してこれを取り扱うだけの用意がないから、もう少しこの点一緒に研究して結論を出そう、こういうふうになったのでございます。先ほど大臣が聞いておらないと申し上げたのは、橋本前大臣から詳しくお聞きしなかった、こういうことでございまして、障害等級委員のことも含めて申し上げたつもりであったのでございますが、大臣は予備知識を十分に持っておられませんでしたので、あのように申し上げたのでございます。
  148. 大原亨

    ○大原委員 私はこの問題は原爆被爆者の医療法の関係その他特殊立法との関係もございますから、また時をあらためまして御質問いたしたいと思うのですが、この問題は私どもは、大蔵大臣はきようイデオロギーが何とかいっておりましたか、これはほんとうに人道的な問題だと思っておる。だから私ども社会党は、この問題について実際に現状でできる案を、修正案を用意しておるけれどもこれは出してない。超党派でやりたいと思っておる。従って当面できるだけやる問題については二つの問題があるということを申し上げたのです。原爆被爆者の医療法の改正の問題と、それから年金において配慮していただく問題、私はそういうことがほんとうに行き届いた、きめのこまかい社会保障制度に対する考えであって、これは等級をきめる委員会において簡単に論議して、予算とのかね合いやあるいは現状認識を十分されてない方々の手によって簡単に処理さるべき問題ではない。この問題については総合的に私どもといたしましては御質問申し上げる機会をぜひ持ちたいと思うのですけれども、特にこの問題は年金との関係におきましては厚生大臣も十分御留意いただきまして、現地の実情を御調査になったりあるいは——医療法では本年は予算が機械的に削られているのです。これは根本原因は何かというと生活問題です。治療をしたってなおらないということと一緒に、治療をしたらば食えない、死ぬということなんです、そこまでいっておる、そういう問題でありますので、ぜひともそういう点を真剣に御研究いただきましてお取り上げいただくようにお願い申し上げまして、私の質問を終ります。
  149. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 多賀谷真稔君。
  150. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は国民年金という画期的な法案が制定されるに当って、先般労働大臣にもお尋ねしたわけですがILO、第百二号条約、社会保障の最低基準に関する条約についての批准の問題をお伺いいたしたいと思うので)」。あります  この条約の内容をながめてみますると、非常に寛大な条約になっておるわけであります。この寛大な条約になっておるゆえんは、これは戦後の労働条約であり、後進国がILOに多く加盟した後の条約であるからであります。そこでこの条約は比較的批准をしやすいように、最低の最低をきめておる。そこで日本におきましてもとの条約の批准は困難ではないと思うのでありますが、どうして厚生省並びに労働省ではこの条約批准の手続をおとりにならないのか、これをお聞かせ願いたい。
  151. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 私もILO条約におきますところの条件というものが非常に低位に置かれてあって、そして労働条件のまだあまり発達しないところの国々においてもなるだけこの条約に加盟ができるような気持でやっておるということは承わっておるわけでございまするが、たとえば失業保険等についてはたしか条件は満たされておるというふうに聞いておりまするが、その他のものにつきましては、いまだにその条件を満たされていないように聞いておるわけでございます。そういうような関係から、やはりこの条件等が整わなければいけないのではないかというふうに考えておるわけでございまして、これらの点につきましては、小山審議官から答弁をいたさせます。
  152. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 昨日総理から、またただいま大臣からお答え申し上げました通り、ILOの最低基準の条約については、常にわが国の社会保障制度をこれに達せしめるように改善していかなければならない、かような考え方を政府部内においては持って、改善の方向をきめておるわけでございますが、ただいま大臣から申し上げましたように、遺憾ながら現在の内容ではまだ年金部門につきまして批准し得るだけの内容になっておりません。おそらく今国会で御審議を願っておりまする法案程度になりまするならば、かろうじてその条件か満たし得るのではあるまいかというように考えておるわけでございます。なお疾病部門におきましても、非常に厳密に条約を解釈いたしますと、若干抵触する部分がございますけれども、これは大筋として通過できるものといたしまして、年金部門と疾病部門か通過できるようになりますならば、政府部内としても早急にそういう道をとりたいというようなことにいたしておる次第でご、さいます。
  153. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私もさっと国内法との関係をながめてみたわけですが、まず最低基準の条約か要求しております医療関係について見ますと、これは条約は予防と治療と双方を要求しておるわけであります。ところがわが国においてはもっぱら治療に限っておる、これが医療関係においては一つ問題点になると思います。さらに出産に対する医療給付ということを強制しておるわけでありますが、わが国では出産医療は取り振っていない、これが問題になると思うのです。その次の第三点としては、費用の負担区分につきまして、本人費用の負担について、出産についてやはり全然費用の負担というものか考えられていない、これもやはり問題になる。医療は、これはちょっと基準に合わないと思います。しかし医療というものはかなり重要視しておることは事実であります。国際労働条約の、事務局の原案には医療はいわば必須要件といいますか、必ずやらなければならない一つの要件であるということを出しましたけれども、それは後進国が多いということで一応医療の部分は必須要件、でなくなったわけでありますが、日本が今から批准をしていくという段階になりますと、医療という問題はやはり批准の必須要件ではありませんけれども、ILO常任理事国としての立場からいいますと、これはやはり大きな問題ではないか。でありますから、これについては十分今後国内法の整備をはかっていただきたいと思います。さらにまた疾病給付でありますが、これは私は健康保険の傷病手当金という制度、これで大体足りるのではないか、あるいは足らない場合があるのかしれませんが、大体いくのではないかという気持がするわけであります。それから失業給付でありますが、失業給付につきましてはこれは大体標準を上回っておると考えていいのではないか。さらに問題の老齢給付ですが、従来は、今までの厚生年金ですと大体二点問題がある。第一点は、最低十五カ年の拠出をした者には、やはり減額年金をやらなければならぬという強制がある。これは今まで厚生年金になかったものであります。今度できればこれは批准できるのかもしれませんが、そういう問題。それからその次には老齢者に対する暫定年金の支給かなかった。現に老齢者の人、これは今度の老齢の援護年金でいき得るのではないか。そうすると、一体老齢給付というものは、今度の国民年金を合せて、最低基準に合うかどうかということを、あとから御答弁願いたいと思います。それから業務災害の給付については、これは残念ながら、長期給付をしなければならぬのを一時金でやっておりますから、これはやはり適合してない、こう考えざるを得ない。そこで、労災も一時金打ち切り補償という制度を、やはり長期給付の形に変えなければならぬという問題が、やはり国民年金、厚生年金というものがだんだん完備するに従って、問題が起るだろう、こういうことが言えるのではないかと思います。     〔大坪委員長代理退席、委員長着席〕 家族給付につきましては、これは残念なからその水準に全然達してないということが言えるのではないか。出産給付につきましては、医療と介助に対する現金給付を規定しておりますので、医療については、前述いたしましたごとく、これはやはり批准の基準に合っていない、こういうことがいえるのではないか。廃疾給付につきましては、障害年金、あるいは今度出ますやはり障害年金ですか、こういったことで、これはできるのではないかと思うのです。さらに遺族給付につきましては、これまた給付額の点において合致してない点がある。しかし全般をながめてみますと、大体三つはできるのではないかと思うのです。傷病手当金を制度としております傷病給付、それから失業給付、廃疾給付、こういうことで、ちょっと体裁は悪いのですけれども理事国としての体面は悪いのですけれども、大体批准できるではないかと思うのですが、これは一体とうして批准の手続をとられないのか。あるいはさらに老齢年金を一本入れられて批准をせられるのか、果してこの老齢年金では基準に達しないのか、この点を御答弁願いたい。
  154. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 ただいま大へん専門的な御検討に基く御意見があったわけでございますが、私ども事務当局の間でかねがね話し合っておりますことは、先生仰せのごとく、やはり何とかして、批准するならば、失業と疾病と老齢という、やはり社会保障の柱ともいうべきものについてパスしていきたい、そういう方面について何とか一つ若干無理な解釈があっても、大体大肋としてはいけるというところまで持っていって、批准というものを手続的に進めるようにいたしたい、こういうふうに話し合っているわけでございます。ただいま仰せになりました老齢給付につきましてでございますが、今回改正を予定しております厚生年金保険法では、老齢給付の額は、かろうじて求められている程度までいけるであろう、しかし遺族給付、障害給付になりますと、どうもまだそこにきめられているところまではいきかねるというような程度のものでございますので、これらの点につきましては、さらに国民年金制度の充実と並行して改善を加えていきたい、こういうようなことか、現在の段階で労働、厚生両省で話し合っているような事項でございます。
  155. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 しかし面目は面目でして、実際の実態は実態です。ですから百数分出ておりますILO条約の中で、まだ二十五くらいしか批准の手続をとつていないのですから、私はできればやはり批准をした方がいいと思うのですね。ましてや老齢給付においてせっかく国民年金を出すのですから、後進国も受けられるような最低基準を出しております、その最低基準にも及ばないということでは、私はこれだけ政府が宣伝をした価値がないのではないかと思う。ですから遺族給付の点あるいは障害給付の点、どこか一体条約の老齢給付の基準に沿わないのか、これを一つ明確に御答弁願いたい。
  156. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 大へん恐縮でございますが、実は厚生年金保険法の今度の改正因容について、正確には承知しておらないのですが、今度の改正では基準の年金額が上ることになりますので、自動的に老齢給付の線が求められている条件に合い得る、こういうふうに私ども判断しているのでございますが、遺族給付と障害給付について特別な改善の措置が加えられるようになっておりませんので、ILOの条件できめられてありますあの標準的な賃金との割合の額をどうも下回るという点がまだ改善され切れぬで残っておる、こういうふうに考えているわけでございます。なおさらに取り調べまして、万一間違いがございましたならば適当な機会に訂正させていただきたいと思います。
  157. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 なぜそれをおやりにならないのですかね。大体国民年金と厚生年金と出るのに、まだこの最低の最低、後進国でもできるような条約が批准できない、その基準に達しないということでは、私は全く情ない思いをするわけです。せっかく制度を踏み切るのですから、踏み切るのにまだ足らないということでは、私は制度の発足に当って非常に遺憾だと思う。ですからそういった遺族給付並びに障害給付において足らないというならば、それをおやりになるのが政府ではないかと思うのです。まだ的確にあなたの方ではっきりしないということでは、いかにILO条約に不勉強であるかを暴露するようなものであって、どの点がどれだけ違うのかという——今お話しになりましたが、結局標準所得との関係ということをおっしゃいましたが、なぜそういうように立法化されないのか、これは非常に遺憾に考えるわけであります。そこで私は今の所得水準との関係、本法でいいますと第四条との関係をもう一度お聞かせ願いたいと思うのですが、この国際労働条約百二号の六十六条の八項、すなわち「老令、業務災害、廃疾及び扶養者の死亡に関する定期的支払金の額は、生計費の相当変動により一般所得水準に相当変動があった場合には、検討を加える」この検討というのは改定だそうですね。これはレビューという英語で言葉を入れているそうですが、これはフランス原文ではレヴィゼということになって、レヴアイスと同じことだ、こういうことですね。ですから改定、こういうことをいっている。これば若干公定訳ではないですから、労働省は誤訳をしておるようですね。結局改定をしなければならぬと、こうはっきりある。そこでこれと現在の水準とが条文上合っているかどうか、これを一つお聞かせ願いたい。
  158. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 趣旨においてはこの趣旨も表わしているという内容でございます。
  159. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 趣旨はなるほど変動について調整正せよというので、趣旨は合っているのでしょうが、大体この要求している条件と第四条一項と合っていますかと、こう聞いておるのです。
  160. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 これは今回提案いたしました法案に基きまして、そういうふうな措置がとられることをILOの条約では要求しているわけでございまするので、昨日来総理及び厚生大臣から申し上げたような趣旨及び精神で運用いたしますので、この点は私ども完全に合致するものと思っております。
  161. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 先ほど大蔵大臣の答弁を聞いておりますると、小山審議官もお聞きになったように、変動という文句の考えが非常に違うんですね。これは一般所得水準が上る場合は変動ではない、それはインフレであるとか、貨幣価値の暴落であるとか、こういう場合である、順調な所得水準の移動あるいは上昇という場合には、これじゃないのだと御答弁になった。私は関連質問で聞こうかと思ったのですが、時間がなかったので、残念ながら聞き得なかったのですが、同じ閣僚の中でそれだけ意見が違うということは許されないと思うのです。金を握っておる大蔵大にが、これは所得水準あるいは生活水準が正常に上昇しりた場合を言うのじゃない、これはインフレとかあるいは貨幣暴落ということを示すのだ、こういう観念の理解でありますと、私たちは今後運営できないと思うのです。今まで経済の成長率が伸びるのではないか、生活水準が上るではないか、こういった場合に常に第四条一項を言われて、そうして一項によって修正する、こうおっしゃった。ところが今日大蔵大臣の答弁を聞いてみると違うのです。これは一体どちらがほんとうでしょうか、所管大臣としての厚生大臣の答弁をわれわれは今後の運営一つの指針にしたいと思いますが、厚生大臣はどういうようにお考えですか。
  162. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 私ども第四条の読み方といたしましては、やはり著しい変動が、物価変動であれ、生活水準であれ、ありました場合には、それに対応する措置をとる、こういうふうに理解をいたしておる次第でございます。
  163. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は比較的注意をして答弁を聞いておるわけですが、小山審議官は著しいということを案外言わないのです。あなたは相当変動ということをしょっちゅう言うが、条文には著しいとあるのに、なぜ小山審議官は相当変動という答弁をされるかと思って、いろいろ気を使って調べてみた。ところがあなたは国際労働条約に相当変動とあるものだから、常に相当変動という言葉をお使いになる。決して著しいということを言わない。そこで冬文を見ると、残念ながらあなたの気持と反して著しいという——日本語では著しいというようなことになると大へんなものですね。そこでやはり著しい変動であるならば、四条の一項ということだけでは逃げられないと私は思うのです。要するに所得水準が上る場合に、これは暫しい変動ですからということで、正常な所得水準の上昇については非常に今後問題を起すと思うのです。その点一つ明確にお答え願いたいと思います。果して大蔵大臣の言うようなインフレとかあるいは貨幣価値の暴落を言うのか、あるいは正常な所得水準が上っても、その場合においてやはり四条一項が適用になるのか、これをはっきりお聞かせ願いたい。
  164. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 著しい変動という言葉が使われるようになりました事情は、単に変動というふうに表現いたしますと、これは変動がありさえすればというふうにいろいろ誤って理解されるおそれがある。従って、その変動というものか相当なものでなくちゃならぬ、あるいは顕著なものでなくちゃならぬという趣旨で使われた言葉でございまして、中身においては相当なというものと同じような考えでそういう言葉が選ばれたのでございます。
  165. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 年金正財政の方の調整すなわち保険料の額の方は五年ごとというのではっきり明記してある、ところが年金額の方はただ抽象的な言葉で逃げられている、私はここにやはり問題があると思う。あるいは五年の間に非常に変動が友一たとレう、レ土は走れわれとして有利な解釈をすれば別ですけれども、これは逃げ方によって十年も変動がない、しかし保険料の方はいじるのだと、こういうことになりますと、せっかく作りました四条一項というものが死文化する。そこで少くとも保険料の額を検討する場合には必ず年金額の検討をする、こう考えてよろしいのですか。
  166. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 これは実際上は必ずそうなると思います。五年ごとに検討いたします際には、財政全般について検討いたしますけれども、その際に保険料の額がどうであるかということを論議する前提といたしまして、年金の額がそれでよいかどうか、もしこれについてある種の変更を加えるとするならば、それに対応して保険料はとうするかというように検討いたしますので、結果としてはおっしゃる通りになっております。
  167. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 大体なるのでなくて、厚生省としては必ず検討をするつもりですか。
  168. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 一言お断わりを申し上げた上でお答え申し上げたいのですが、先生ほど検討という言葉について、ILOの御説明をなさったわけでありますが、私かここで申し上げている検討というのは、文字通りの検討という意味で申し上げておるわけでございまして、上げるか上げないかということを十分各方面からきわめるという意味でございますが、さような意味合いにおいては、五年ごとには当然検討することになると思います。
  169. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 もう一点お聞かせ願いたいと思いますが、それはこの保険料の免除の規定ですね、私は免除というのはやはり給付は同じように受けるべきだと考えるわけです。免除というのは、にやり恩恵を同じように受けるのが免除なんですね。ところが免除をしておきおがら、やはり十年間は拠出をしなければならない、こういう規定を置いているところはどうしても一貫しない、それは免除じゃないですね、部分的に恩恵を与えておる。ですから私は免除といった以上は、拠出期間というものを明記すべきでないと思うのですが、どうですか。
  170. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 免除と申しますのは、保険料の納入義務を解除するという意味で免除としておるわけであります。免除されたものについて、どういう扱いを給付との関係においてするかということについては、先生仰せの通りの考え方もあり得ると思いますし、またこの法案のような考え方もあり得る、にれはまあいわば流儀の違いとでも申すべきことに相なろうかと思います。
  171. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は言葉の論議をしているのではなくて、やはり精神として免除した以上は、給付については平等に行うべきだと思う。それを、やはり免除とは言っても実際は拠出はしなくちゃやらないんだといったところに、いかに国民年金を少くしようかというところに、やはり政策論としてわれわれが理解できない点がある、こういうことだけを申し添えて、私の質問を終ります。
  172. 柳谷清三郎

    ○柳谷委員 動議を提出いたします。ただいま議題となっております法案につきましては、その質疑を終了せられんことを望みます。
  173. 園田直

    園田委員長 ただいまの柳谷君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  174. 園田直

    園田委員長 起立多数。よって国民年金関係法案質疑を終局いたしました。  この際、八木一男君外十四名提出国民年金法案について、国会法五十七条の三による内閣の意見があればお述べ願います。
  175. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 衆議院議員八木一男君外十四名提出による国民年金法案並びに国民年金法の施行及び国民年金と他の年金等との調整に関する法律案の二法案は、政府提出国民年金法案と競合し、かつ予算の裏づけもありませんので賛成いたしかねます。
  176. 園田直

    園田委員長 これより三案を一括して討論に付します。通告がありますのでこれを許します。中村英男君。
  177. 中村英男

    中村(英)委員 私は日本社会党を代表し、ただいま上程されております政府提出国民年金法案、社会党提出国民年金法案国民年金法の施行及び国民年金と他の年金等との調整に関する法律案の三法案に対し、社会党二法案について賛成、政府原案について反対の意思を表明し、以下その理由を政府案、社会党案の両制度を比較しながら申し述べんとするものであります。  まず基本的な拠出年金について申し上げますと、第一に年金額及び給付要件についてであります。年金制度の根幹となるべき老齢年金について両案を比較してみますと、社会党案は六十才開始、年最低八万四千円、政府案は六十五才開始、年最高四万二千円であります。具体的な例で比較してみますると、六十四才でなくなられる人の例では、社会党案ではすでに四十二万円支給を受けているのに対し、政府案ではゼロであります。六十七才でなくなられる人の例では、社会党案では最低の場合は八万四千円の八年分すなわち六十七万二千円支給を受けているのに対しまして、政府案は最高四万二千円の三年分すなわち十二万六千円しか受けていない。二十五年しか保険料を納め得なかった人は七万二千円、十年内しか納め得なかった人は三万六千円というきわめて貧弱な金額であります。このように支給される金額において大きな差があることを明らかにいたしております。国民年金すなわち社会保障の根幹である所得保障につきましては、憲法第二十五条の精神で考えらるべきことは論を待たないところでありますが、政府案はその第一条に憲法の精神をうたいながら、その内容は似て非なるものであります。月三千五百円が健康で文化的な生活を保障するものであるとは、国民の了解と納得を得るものではないと存じます。ましてや、二十五年しか保険料を納めない人、これに相当する人が一番多いと推定されますが、この人たちの場合は月二千円、生活保護の基準と同程度であります。しかも右の金額は四十五年後に完成するのでありまして、今でさえ話にならない金額が四十五年後の目標とは情ない次第であります。社会党案の月最低七千円ももちろん十分とはいえませんが、健康で文化的な最低限度の生活を維持できるものと信じます。  次に開始年令の問題であります。政府案の六十五才はおそきに過ぎるのは当然で、社会党案のごとく六十才開始にすべきであります。政府案は社会保障の先進国中、一部に六十五才開始の国かあることに籍口いたしまして、現在のところわが国の国民老衰時期はこれらの国の国民よりはるかに早いのでありまして、拠出年金といえども過渡的なものは短時日に効力を生ずるものでありますから、当然ごの要素を入れて六十才開始が適当であるのであります。また将来はわれわれ国民の老衰時期もおそくなるでありましょうし、制度が完成する四十年、四十五年後には諸産業のオートメーショーン化が進み、労働力必要度が滅って参りますから、生産に従事する人は生産年令にある健康な人だけで、その他の人たちの労働時間も短縮される状態になり、六十才以上の人は生産の第一線から退き、十分な老齢年金によってゆうゆうと老後を楽しみ、全方を文化、政治、経済、教育に注いでいただかなければならない時代になると予測されるわけでありまして、これらの意味で社会党案のごとく六十才開始が絡対に必要であり、政府案の六十五才は不適当であると存じます。  次に政府のとっておりまする完全積立方式と、社会党の積立方式と賦課方式の折半方式とを比較して申しますと、先に申しましたように年金額と開始年令の両要素で両案の内容を比較すると非常に大きな差があります。また後段に申し述べます無拠出年金におきましても大きな差があるのでありまして、そうなった理由の最大のものは、わが党と政府との国民年金に対する熱意の差、具体的には国庫負担の差でありますが、そのほかにこれと関連のありますのが賦課方式を取り入れるかどうかという技術的な考え方の相違であります。政府案のように拠出年金を国庫負担分までも完全積立方式をとれば、現在生産年令にある人々が自分たちの老後その他に対して、自分たちの力で完全に準備しようということになります。一方現在の老人、母子家庭、障害者に支給する無拠出年金は、結局現在の生産年令にある人々が負担することになって、現在の青壮年が二重負担になるわけでございます。ここに年金給付を高めることを困難にする要因があるのでありまして、このことに思いをいたし、現在の青壮年は、われわれの親たちに親孝行をする、だからわれわれの老後に自分たちも用意はするか、子供たちにも半分は親孝行をしてもらうという考え方で、一部すなわち国庫負担分だけ賦課方式に踏み切った社会党案はまことに適切であるというべきである。(拍手)完全稿立方式に固執する政府案はまことに近視眼的でありまして、厚生大臣の提案趣旨説明によりますと、賦課方式をとる将来の国民に過度の負担を負わせるからと言っておられますが、完全積立方式では現在の国民が過度の不当な負担を負うことになるわけで、将来の国民が逐次親孝行の義務を負うことはまことに当然であります。しかも現在の生活は苦しく、四、五十年の先の生活は楽になっているということを考えれば、政府案は心なき案であるといわねばなりません。(拍手)  次に拠出年金の組み立てであります。一言にしていえばわが党案は社会保障主義に徹し、政府案は保険主義であることであります。わが党案は何回減免を受けましても、極端の場合には全期間免除の適用を受けましても、また年金税を払えなかった人でも、血条件で六十才で他の人と同額の年金が支給されることになっております。政府案は四十年間保険料を完納、あるいは免除と完納だけであった場合月三千五百円、二十五年の場合月二千円、十年の場合月一千円、十年未満の場合には年金もない、三年未満しか納入しない場合には、保険料までも返してもらえず、ボーダー・ラインの人が苦心して納めた金が仕合せな人に持っていかれるという内容であります。この部分ば、年金制度を通じて収奪が行われているという決定的な反動性が現われております。保険料の納め方の多い人が年金が多くて、納め方の少い人が年金が少いというのでは、現在の生命保険の年金支払い条項付生存保険を国営にして、国庫負担で幾分合理的にしたということになるだけであります。これでは社会保険で、社会保障ではありません。保険料あるいは年金税を支払うことが困難な人々ほど老齢その他の所得保障を必要とする度が高いのであり、この人々を見殺しにする政府案は断じて社会会保障の名に値しません。  次に、保険料あるいは年金税について同様のことがいえます。わが党は一般国民年金では、均等割、所得割、資産割の制度をとり、労働年金では標準報酬比例の年金税を徴収しておりますので、生滅の楽な人は多く負担し、生活の困難な人は少ししか負担しなくてもよいことになっております。一般年金税月平均一人百六十六円になるわけですが、収入資産が少い人は九十円ぐらいになる。さらにボーダ・ラインには減額制度があり、その上免除が明確に規定されております。政府案は一律、すなわち収入の多寡によらないのは不合理といわねばなりません。この面より見ましても、わが党案は保障に徹し、政府案はそうでないのであります。  以上は主として老齢年金について申し上げましたか、障害あるいは遺族給付は、両案とも老齢給付を基準としておりますので、基準の金額に大きな開きがあるととは申し上げるまでもありません。金額以外の点についても、わが党案は障害、遺族で即時支給開始であるのに、政府案には保険料納入条件がついております。また、政府案は障害年金を内科障害に支給しないという無慈悲な内容であります。遺族給付につきましては、社会会党案は母子、父子、孤児、寡婦、鰥夫、すべてに支給する遺族年金であるのに反し、政府案は父子、鰥夫には支給しないで母子、孤児、寡婦のみにしか支給しない乏しい内容であるのに、それを三つの名前に分けて、さも支給する対象が多いように宣伝されている向きのあることはまことに卑怯千万といえましょう。母子より気の毒な孤児たちに母子の四分の一程度の支給しかしないなと、その良識を疑わざるを得ません。  次に、労働者年金についてであります。全国民に適用さるべき国民年金制度から労働者を除外した政府案はその名に値しません。これを放置しておいても、別な制度でその適切な改善をするというならまだしもでありますが、政府の厚生年金改正に対する態度を見ますと、国庫負担は一割五分、給付水準国民年金の二割増程度では、労働者を完全に無視した態度であるといわねばなりません。社会党案のごとく国民年金制度の中に労働者年金を設け、その定額部分を一般国民年金と同額にして、労働者はもちろん、労働者を農漁業者、あるいは商工業者、自由業者、無職者とも完全通算ができるようにしたことはまさに適切なものであります。無理解な人たちは、社会党の労働年金平均額年十四万三千円だけを見て、労働者偏重政策だという人があるようてすが、労働者年金の国庫負担は二割であり、一般国民年金の八万四千円に対し換算すると三一割五分でありまして、将来賃金水準が上った場合、他の国民と同様大体五割程度と相なります。この点、国の手当において全く同様であります。年金額の平均が多いのは、生産手段を持たない労働者には年金の必要度の高いことと、低賃金ながら確実に毎月現金収入のある労働者は自己の負担で年金を準備しやすい状態にあることにかんがみまして、その人たちか国庫の余分の負担ではなしに、自分たちの負担で年金をふやすことになるような親切な、しかも合理的な配慮をしたわけでございます。農漁業、商工業と自由業者あるいは無職の人たちまでも自分たちの負担で年金を合理的に増加できるよう政府の手により、よい任意年金を売り出すことによって、労働者以外の人たちも同様の希望を実現できることを明らかにいたしております。  さらに、労働者の配偶者につきましては、わが党案は一般国民年金に強制適用するわけでございますが、政府案は任意適用と相なっております。現在の家庭における主婦の状態から考えますと、任意適用では実際に入り得ない主婦の方が多いのでありまして、その場合労働者の配偶者だけが老齢年金から実際上ほうり出されることになるわけでありまして、国民年金としては大きな欠陥であるといわねばなりません。主婦は老齢になっても老齢年金が必要でないという考え方は、里女同権の思想に反するものであり、断じて排撃しなくてはならぬと考えております。(拍手)  次に、国庫負担の問題であります。政府案とそれに対応するわが党案の一般国民年金を比較してみますと、との点で大きな差がありますので、これが内容の差のついた大きな原因であります。政府案は保険料の五割の国庫負担といっております。わが社会党案は保険料に対して申しますと十割国庫負担になっております。社会党案は給付の五割国原負担でありまして、政府案は給付のみに対しては三分の一、すなわち三割三分三厘余の国庫負担になるわけでありまして、この点で大きな開きがあり、社会党案が適切であり、すぐれておるわけであります。  次に無拠出年金制度について論を進めますと、社会党案の養老、母子、身体障害三年金に対応するものは、政府案においては老齢援護、母子援護、障害援護の三年分であります。まず政府案の老齢援護年金の給付は月千円、七十才開始であります。社会党案は六十才開始で、六十五才より倍額であり、六十五才以後の金額は年収十八万円までの世帯の老人月二千円、それ以上は月千円でありまして。給付に非常に大きな差があります。たとえば六十九才でなくなられる老人の場合、社会党案では十八万円あるいは九万円を支給されているのに対しまして、政府案ではゼロであります。七十二才でなくなられる老人は、社会党では二十五万二千円あるいは十二万六千円を支給されているのに対しまして、政府案はわずかに一律三万六千円であります。しかも、老夫婦とも七十才以上の場合おのおの二割五分減額、夫婦二人で一人半分しかもらえないという削減規定までついております。この例でいかに社会党案と政府案の開きか大きいか一目瞭然たるものがあります。所得制限は、本人所得制限は両案ともに十三万円、世帯制限は、社会党案と三十六万、政府案五十万でありまして、そのほかに政府案にのみ配偶者所得制限というまことに不可解きわまる制度があります。所得保障である年金は、本人の所得がある場合に支給しないことは、無拠出年金である以上やむを得ません。また無拠出年金に政府が支出される金額に限度のある以上、生活の楽な人にある程度御遠慮願うこともまたやむを得ないことでありましょう。それゆえに、社会党案も政府案もともに採用している本人世帯の両所得制限はいたし方ないものでありますが、配偶者所得制限というものは全く根拠のないものであります。政府が老人に対する年金を実際上支給しないために考え出した苦肉の策であります。(拍手)このため五十万世帯までもらえると喜ばされた農家の老人は、二十万までの世帯収入でももらえないことになります。世帯所得制限三十六万円と五十万円の差、これは国民年金制度のすべてに社会党案より劣る政府案の中で、ただ一つだけ政府案の方がよいと言いたいために無理に作った選挙対策条項であります。(拍手)  次に母子年金についてであります。政府案は月一千円、年一万二千円、社会党案は月三千円、年三万六千円、第二子からの多子加算は政府案月二百円、社会党案月六百円、所得制限は基本的にいえば、政府案十三万円、社会党案十八万円、社会党案は二十才までの子供のある母子家庭に支給するのに対し、政府案は十六才、しかも二十五才以上の子供のある者は支給しないことになっております。さらに社会党案は、祖母が孫を、姉か弟妹を養う準母子家庭にも支給するのに対し、政府案は、このような母子家庭以上に気の毒な家庭には一文も支給しないという冷酷むざんなものであります。(拍手)すべての面で社会党案は妥当であり、政府案は内容の乏しいものであります。  次に身体障害者年金、障害援護年金についてであります。政府案は一級月千五百円、二級以下はゼロ、社会党案は一級月四千円、二級月三千円、三級月二千円、家族加給は政府案は皆無、社会党案は配偶者及び子供全部につきます。所得制限は基本的に政府案十三万円、社会党案十八万円であります。政府案は二級障害以下には一文も支給しないわけでありまして、さらに内科障害の場合には、一級でも支給しないというのであります。老齢援護年金で月収四万円の楽な暮しをし、親孝行する子供の孝養を受げている老人に年金を支給し、若い身空であすをも知れぬ生命を心配し、一文の所得も得る道もなしに家族を路頭に迷わすことを心配している内科の一級障害者に一文も支給しない、このようなアンバランスな配分は全く正気のさたとはいえません。(拍手)  さらに驚くべきことは、生活保護を受けている人たちの問題であります。社会党案は無拠出年金と生活保護を完全に全額併給をすることを法律に明記してございますか、政府案では援護年金が生活保護法の収入認定に入ることになっておりますので、生活保護を受けている老人、母子家庭、障害者には政府の援護年金はゼロということになっております。一番生活の苦しい、そして取得能力のないこれらの人々に対する援護年金が支給されないようでは、年金は全く意味がないと断ぜざるを得ません。(拍手政府審議の過程において、わか党委員の質問に対して、総理大臣、厚生大臣より、援護年金と同額の加算をするという明言があったことによって、政府にも幾分の良心が残っておることを知り得たわけでございます。それがほんとうに実行されるまでは、この点に関する政府案批判を断じてやめるわけには参りません。(指手)  無拠出年金制度を通じて言えることは、わが党が平年度約一千二百億円の支給に踏み切り、政府が平年度約三百億程度しか踏み切っていないことによる給付の差であります。さらにともに大小の差はあれ、限られた財源の中での配分に関し、わが党案は必要の度の多い人に厚みをかけ、社会保障的に配分をしているのに対し、政府案はそれのさかさまでありまして、自民党の得票のみをねらった選挙対策的配分をしている点であります。  以上のごとく、拠出、無拠出のすべての点において、政府案に対しわが党案がはるかにすぐれていることは、中央、地方の公聴会における公述によっても明らかであります。このすぐれた社会党案に対するごくわずかな批判は、実行が可能であろうかとの一部の人の意見のみであります。私ども社会党は、わが党案の実行に確信を持っております。初年度は半年分で六百六億円で、この財源はわが党のかねての主張である租税特別措置法の特例、減免税の改廃によって容易にできるわけであります。特別措置法のうち、農家の早場米供出、青色申告に対する特免、保険医の診療車価が安いことの代償としての特免など、大衆に対するものはそのまま存置いたしまして、資本蓄積の特別減免税を取りやめれば直ちに七百億の財源ができるわけであります。第二年度は自然増で数百億の新しい財源ができて千二百億は容易に支出できます。その後は経済拡大によって財政が膨張し、社会党の賦課方式による国庫負担がだんだんと増しても一向心配かないことは、社会党案が本会議に上程された際、政府の企画庁長官が明らかに認めたところでありまして、本委員会の審議の過程においても明らかに立証れたところであります。(拍手)このように支出可能な見通しがあるのに、国庫支出をしない、国民年金の名に値しない貧弱かつ不合理な国民年金法案政府が出してきましたのは、真によき国民年金を作ろうとの意図でなく、ほうはいたる世論に押されて、ただ表面を糊塗するだけのごまかしの態度であると断言してもあえて過言ではあるまいと思います。(拍手)  最後に四条についてでありますが、国民年金制度は将来における長期的給付であり、それは政府の長期経済計画に見合ったものでなくてはならないのに、本政府案はみずから立案した経済計画とは全く遊離したものであります。すなわち経済企画庁の計画では、経済成長率は昭和三十一年より昭和四十年までを年平均六・五%とし、消費、支出額の上昇を六・三%、国民一人当りの消費水準の上昇を五・五%と見ているのであり、さらに昭和四十一年より昭和五十年までを年平均四・五%の経済成長率を見ているのであります。国民年金の額は一般国民生活水準の上昇に見合うものでなければなりません。しかるに政府案は拠出後四十五年の完成時、すなわち昭和八十年においてやっと員千五百円と、年金額はわが国の生活水準の上昇をわずか一%しか見ていないという結果になり、いかに経済が成長しても社会保障政策は並行していかないという政府の政策を端的に表現したものといわなければなりません。(拍手)ことにインフレの問題、米国の平価切り下げの問題、戦前戦後の貨幣価値変動でひどい目にあっているだけに、この点については国民の協力が十分得られるかどうかはなはだ疑問であります。  以上申し上げましたような理由で、私は憲法第二十五条の精神を実現する豊富な内容を持ち、制度のすみずみまで社会保障的にりっぱに作り上げられている社会党案、しかし実行可能な社会党両案に対し全面的に賛成の意を表し、国民年金という名に値しない貧弱な内容と、社会保険的な、あるいは選挙年金ともいうべき不合理な組み立てをしている政府案に反対の意を表明し、討論を終る次第でございます。(拍手
  178. 園田直

    園田委員長 田中正巳君。
  179. 田中正巳

    ○田中(正)委員 私は自由民主党を代表いたしまして、政府提出国民年金法案については賛成、社会党提案にかかる国民年金法案及び国民年金法の施行及び国民年金と他の年金等との調整に関する法律案、以上二法案に対しては反対の意見を表明しようとするものであります。(拍手)  わが国の社会保障制度は医療保障を内容とする健康保険、国民健康保険等の疾病保険、失業の場合の所得保障を内容とする失業保険等の分野につきましてはかなり整備されておりますが、老齢、身体障害、生計中心者の死亡等に際しての所得保障を内容とする年金制度の部門では、わずかに国民の一部を対象とする厚生年金保険、恩給等の制度があるのみにすぎません。すなわち国民のうち相当部分を占めております農民、自営業者、零細企業の被用者等は老齢、身体障害、生計中心者の死亡等による生計能力の減少または喪失の場合に、所得保障を受けるととができず、直ちに生活の育成にさらされることとなるのが現状であります。国民年金制度早期実現要望の声は、このような現状から広く国民の間において近年とみに高まって参ったのであります。  わが自由民主党におきましては、国民年金制度を早急に実現することは、福祉国家建設のために喫緊のことと考えまして、これを重要公約の一つとして取り上げ、昨年六月には党内に国民年金実施対策特別委員会を設け、鋭意制度の要綱につき検討を進めて参り、同年十二月にはその成案を得たのであります。今回政府がわか自由民主党の国民年金制度要綱を基礎として、細目にわたる技術的な検討を加えた結果としての国民年金法案提出いたしましたことは、国民年金制度実現要望の強い世論にこたえたものであり、かつはわが自由民主党の公約もこれによって確実に履行されることとなることを信ずる次第であります。(拍手)  政府提出国民年金法案は、原則的な考え方として、国民の共同連帯の思想に基く拠出制年金を基本とし、無拠出年金の支給は制度発足時にすでに給付事由に該当している者に対する経過的なものと、経済的な事情によって拠出能力が乏しいため受給要件を満たせない者に対する補完的なものとにしているのでありますが、この考え方はわが国の実情に合った健全な考え方であると確信いたします。すなわち国民年金を無拠出制だけで行おうとする場合には、その財源をまかなうものとその給付を受けるものとの間に直接の関係がございもせんので、自己責任の原則を基調とする現代社会の基本理念から見て好ましくなく、また経済的には人口老齢化の過程をたどっているわが国においては、六十五才以上人口一人を、生産年齢人口十一人で扶養すれば足りる現在はともかく、六十五才人口一人を三・三人の生産年齢人口で扶養しなければならなくなる将来を考えますと、国民経済の健全な発展に著しい障害を与えることとなると考えるのであります。また制度の内容につきましては、まず第一に年金給付の内容は、現在わが国の社会経済事情が許容できるせい一ぱいのものに近いと考える次第であります。拠出制年金月額三千五百円程度、援護年金月額一千円ないし一千五百円程度という年金額は、必ずしもこれで十分であると言い切ることはできないかもしれませんが、社会保障制度審議会の答申の線は確保されておりますし、およそかかる給付は多いのにこしたことはありませんがさらばといって社会党のごとくいたずらに給付内容の高きを望み過ぎて、財源上の問題から国民年金制度の発足をおくらせるよりも、確実な財源見通しの上に立って適正規模制度を来年度から堅実に実施して参ることが先決問題であり、しかる後にわが国将来の経済成長の運びに応じた給付内容の向上等をはかり、漸進的にこの制度を育成して参るべきであると確信いたす次第であります。  第二に、拠出制年金の給付とも関連いたしますが、被保険者の納付する保険料につきましては、そのつどその額の二分の一という高率の国庫負担が行われ、これが年金給付の中に組み入れられて戻ってくることとなっておりますが、年金給付費に対するこのように高率な国庫負担は、社会保障制度審議会が、高きに過ぎるという感じを与えるかも知れないが、といって答申しているものをさらに上回るものでありまして、拠出制年金の建前をくずさない範囲でとり得る国の保障措置として、ほぼ最高限のものであると考えられ、まさに画期的なことであります。  第三に、本案では、低所得者で拠出能力の乏しい者については保険料納付の免除を行い、その期間は受給要件の期間として計算することとなっておりますが、国民の全部を対象とする国民年金制度におきましては、中でも年金の必要性の最も強い低所得階層についてこのように有利な措置を講ずることが、制度の趣旨を十分に生かす道であると考える次第であります。  なお本案によりますれば、公的年金適用者、それらの者の妻等については一応適田川を除外し、これらの公的年金制度国民年金との間のいわゆる通算調整は、別に法律をもって定めることにしておりまするので、本案による保険料徴収の開始されることとなっている昭和三十六年四月を目途としてこの通算調整の措置が必ず講ぜられ、国民年金制度の精神が生かされるよう政府において十分に努力されんことを望む次第であります。また援護年金の所得制限条項も、これにより支給停止を受ける者が母子、老齢、障害の別によりやや異なりまするが、受給権者の一割ないし二割までにとどまるものでありまして、現在の財政事情等からはやむを得ない程度のものと考えますが、将来に向っては国の財政事情ともにらみ合せてできる限りこれを緩和する方向に進むことを強く念願するものであります。  そのほか保険料を徴収する最も効率的な方法の採用、合理的な保険料納付免除基準の設定、保険料積立金の自主的な管理運用等につきましては、保険料徴収開始の昭和三十六年度までに慎重な検討を行い、本法案による国民年金事業の適正かつ円滑なる運営を期せられんことを切に要望する次第であります。  以上出し述べましたところにより、政府提出国民年金法案につきまして、私は賛成の意思を表明するものであります。(拍手)  次に、社会党提出にかかる国民年金法案等につきまして意見を申し述べます。  まず第一に、本案による国民年金は財政上実現不可能であろうと考えるのであります。すなわち本案に関しまして社会党が公表しておられる年金給付費だけでも初年度約一千百四十億円を、要し、自後逓増して参ることとなっております。私どもはこの金額については大いに怪しいと思うのでありますが、しかしこれをそのまま受け取ると仮定いたしましても、わが国の国民経済及びそれに基く財政に破綻を生ぜしめずに、国民年金だけのためにこれだけの巨額の経費をまかなう財源をどこに求められるのか納得できないのであります。しかもわが自由民主党が同案につきまして検討したところによりますれば、社会党の公表しておられる数字のほかに、さらに約八百億円程度の給付費が初年度においては必要とされるはずであります。社会党が昭和三十四年度予算の本院採決において、組みかえ案も予算大綱をも発表できなかった理由の一つもこの辺にあるものではないかと推測されます。およそ天下の公党としてかかる態度はまことに遺憾であり、厳に戒むべきことであろうと私どもは考えるわけであります。  さらに社会党案では、年金税の額は、老齢年金給付分のみで数理計算されているようでありますが、これでは障害年金及び遺族年金の給付はできないはずであります。しかし初年度から数理的保険料による年金税額を適用しているので、制度発足時に二十才をこえている対象者分の不足財源を別途に補てんする必要があるのでありますが、これについては何らの用意もありません。これらの点を考え合せますと、初年度のみならず将来に向っても社会党案は財源的に成り立たないおよそ無理な案であるということをますます確信をいたす次第であります。かような案にはわれわれ責任のある者は絶対に賛成ができないわけであります。  第二に、社会党案によりますと、免除を受けることができると推算されます全体の一三%程度のものを除き、年金税をかなりの低所得署にまで賦課し、徴収するここととなっておりますが、このようなことは、拠出能力の面から見て、実際上可能でありましょうか。またこれと関連して、税額は毎月詳細かつ複雑な計算によって決定することとなっておりますか、特に多数の農民、自営業者等を対象とする一般国民年金につきましては、市町村長か毎月各世帯ごとに精緻な所得把握をした上で税額を調定することは、実務上とうてい不可能であるのでありまして、このようなことはまた現実に即せぬ社会党の犯した誤まりではなかろうかと思うのであります。(拍手)まして減額規定を適用されるようなボーダー・ライン層につきましては、減額規定が非常に細密に規定されているだけに、一そうその感を深くするだけでなく、これらの低所得者につき賦課事務を行うこと自体、さきにも述べましたように、徴収可能性との対比においてどれほどの実益があるかは疑問があると言わざるを得ないのであります。  第三に、特別年金の支給要件としての所得制限が苛酷に過ぎると考えられるのであります。しかもこの場合の所得は、本人の所得によるほか、受給権者の属する世帯の世帯主及び世帯員の所得の合計額によることとされておりますので、これでは家族労働者の比較的多い農家や自営業者などでは、特別年金を受けることのできる者の数はきわめて限定されてしまうと思うのであります。  そのほか社会党案では、一般国民年金について拠出制を建前とし、所得比例の保険料をとりなから年金給付は定額としておりますが、およそ拠出制を建前とした場合、保険料を所得比例とし、年金給付を定額のものとするようなことは、世界各国の年金制度の例を見ましても、寡聞にしてわれわれはこれを聞かないのであります。かかる構成は無拠出制の場合にのみ妥当するものでありまして、この点におきましても社会党案のごときは国民感情にも合致しない非常識きわまりないものであるというふうに考えざるを得ないのであります。(拍手)  以上申し述べましたところにより、社会党提出にかかる国民年金法案及び国民年金法の施行及び国民年金と他の年金等との調整に関する法律案につきまして、私どもは、まことに現実を離れた、財政を忘れた、一部国民を欺瞞するようなまことに無責任な案であると考え、われわれ責任政党としては、政治家の良心においてそのようなものには断固反対せざるを得ないのであります。  以上をもちまして、政府提出国民年金法案に賛成いたし、社会党提出の両案に対しては反対をいたすわけであります。(拍手
  180. 園田直

    園田委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決いたします。まず、内閣提出国民年金法案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  181. 園田直

    園田委員長 起立多数。よって、内閣提出国民年金法案は原案の通り可決すべきものと決しました。(拍手)ただいまの議決の結果、八木一男君外十四名提出国民年金法案及び国民年金法の施行及び国民年金と他の年金等との調整に関する法律案の両案は、いずれも議決を要しないものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  182. 園田直

    園田委員長 起立多数。よって両案はいずれも議決を要しないものと決しました。この際、山下春江君より、内閣提出国民年金法案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されておりますので、趣旨の説明を求めます。山下春江君。
  183. 山下春江

    ○山下(春)委員 私はこの際、ただいま議決になりました国民年金法案に対し、自由民主党及び日本社会党を代表いたしまして、附帯決議を付したいと思います。    国民年金法案に対する附帯決議   政府は、国民年金法案発足後、その総体について改善拡充に努力すべきである。  特に左記事項について特段の考慮を払い、早急に適切なる措置か講ぜらるべきである。  一、国民年金制度各種公的年金制度の相互間に通算調整の途を講ずることは国民皆年金の理想を達成するための不可欠の要件であるから、昭和三十六年度までにこれに必要な措置を完了すること。その際途中脱退者が不利にならないよう充分の配慮をすること。  二、生活保護法の運用において、老齢加算制度の創設、母子加算及び身体障害者加算の増額等の措置を講じ、生活保護法の被保護者にも援護年金支給の趣旨が充分に行きわたるよう早急に措置すること。  三、積立金の運用については、一部を資金運用資金として運用するほか、一部は被保険者の利益の為に運用する方途を請じ、努めて被保険者にその利益が還元されるよう特段の配慮を加えること。  四、援護年金の支給に当つては各種の制限措置、老齢援護年金の年令制限、各種所得制限に若干厳し過ぎる向も考えられるので、将来国民経済の発展に対応し、漸次これを緩和するよう考慮すること。   なお、準母子家庭にも母子援護年金を適用する道をひらくこと。  五、障害年金及び障害援護年金については、内科的疾患に基く障害者に対して逐次支給範囲に加えるよう考慮すること。 以上でございますが、何とぞ全会一致御賛成あらんことをお願い申し上げます。(拍手
  184. 園田直

    園田委員長 本動議について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  185. 園田直

    園田委員長 起立総員。よって内閣提出国民年金法案に対しましては、山下委員の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、厚生大臣より発言を求められておりますので、これを許します。坂田厚生大臣。
  186. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 ただいま御決議いただきました附帯決議につきましては、これを十分尊重していきたいと考えておりますことを申し上げる次第であります。
  187. 園田直

    園田委員長 なお右各室に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  188. 園田直

    園田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。本日はこれにて散会会いたします。午後五時五十七分散会