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1959-02-26 第31回国会 衆議院 社会労働委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月二十六日(木曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 園田  直君    理事 大坪 保雄君 理事 田中 正巳君    理事 八田 貞義君 理事 藤本 捨助君    理車 小林  進君 理事 五島 虎雄君    理事 滝井 義高君       天野 光晴君    亀山 孝一君       川崎五郎君    藏内 修治君       河野 孝子君    齋藤 邦吉君       志賀健次郎君    田邉 國男君       谷川 和穗君    中村三之丞君       中山 マサ君    二階堂 進君       古川 丈吉君    柳谷清三郎君       亘  四郎君    伊藤よし子君       大原  亨君    岡本 隆一君       河野  正君    多賀谷真稔君       堤 ツルヨ君    中村 英男君       八木 一男君    山口シヅエ君       吉川 兼光君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 坂田 道太君         労 働 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         厚生政務次官  池田 清志君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      尾村 偉久君         厚生事務官         (児童局長)  高田 浩運君         労働政務次官  生田 宏一君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      堀  秀夫君  委員外出席者         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 二月二十六日  委員大橋武夫君及び野澤清人辞任につき、そ  の補欠として川崎五郎君及び天野光晴君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員天野光晴君及び川崎五郎辞任につき、  その補欠として野澤清人君及び大橋武夫君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  児童福祉法の一部を改正する法律案内閣提出  第一二四号)  内閣提出最低賃金法案に関する件      ————◇—————
  2. 園田直

    園田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出最低賃金法案に対し、さきに多賀谷真稔君外二名提出修正案に関し発言を求められております。これを許します。多賀谷真稔君。
  3. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ただいま議題になりました最低賃金法案に対する修正案につきまして、その提案理由及び内容概要について説明申し上げます。  政府最低賃金決定方法として、第一に、業者問協定によるもの、第二に、業者間協定地域的拘束力によるもの、第三に、労働協約による地域的拘束力によるもの、第四に、審議会調査審議に基くものの四つを掲げております。第三の方式はすでに労働組合法第一八条の労働協約一般的拘束力規定適用によって十分であり、第四の方式労働基準法第二十八条以下によって十分なし得るところであります。ゆえに政府案の真のねらいは第一、第二方式である業者間協定に基く最低賃金の新設にあることは明らかであります。  業者間協定は次の条件がなければ締結が推進されません。第一に、求人難であるということ、第二に、企業者地域的にまとまっておるという場合、第三に、企業の質が均一であるということ、第四に、過当競争業種で不公正競争排除の必要があるという場合、第五に、業者組合が強力でかつ統制力がある場合等でありまして、約二年間で八十件程度しか締結されていないのであります。今後果してどの程度推進されるか疑問であります。  第二に、たとい任意的業者間協定ができましても業者の全員の合意によって、労働大臣または労働基準局長申請をし決定を受けなければ、この法律にいう最低賃金にはならす、罰則適用もありません。業者間協定任意協定として有効に効力があるのに、わざわざ罰則の伴う法的手続をとるかどうか、これまた疑問であり、業者のうち一人でも反対者があれば申請ができないのでありまして、もし全員一致して申請するというならば、それは余程の利益のある場合であり、地域的一般的拘束力を持つことを欲する場合等のほかはないと思うのであります。  任意業者間協定法的手続をとるものはごく少いと考えなければなりません。  第三に、業者間協定申請され、その最低賃金額が不当に低くとも、労働大臣並びに労働基準局長法的最低賃金として不適当なりとして却下するのみで、何ら修正の権能がないのであります。これこそ何のため行政官庁申請をさし決定をさすのか意義がないと思うのであります、  第四に、われわれは政府案に対し、まことに奇異に感じますことは、却下された最低賃金業者間協定民事的契約としては有効であり、政府は、それらに対し何らの介入もできないことであります。  いやしくも申請をして不当として却下されたものが民事的には有効な協定であるということ自体、問題であり、かかる業者間協定不当協定として認むべきでなく、無効として禁止すべきものであると思うのであります。  現実に締結された業者間協定は、政府は、一〇%ないし一五%アップになっておると説明しておりますけれども、しさいに検対すると、あるいは、従来のどんぶり勘定を改めたにすぎないものがあり、大体は八時洲労働でやっと食事代が出て、その他の生活費は時間外労働でかせぐ程度のものであり、これでもっては労働者生活改善は期し得られないと思うのであります。  業者間協定についてさらに重要なことは、労働条件決定使用者に一方的にまかし、それをそのまま法によって保障するということでありまして、これは労働立法としてはうなずけないのであります。労働基準法第二条に「労働条件は、労働者使用者が、対等の立場において決定すべきものである。」とうたい、たとい組合組織のできない場合でも、労働基準法は時間外及び休日の労働協定就業規則作成等の場合には「労働者過半数組織する労働組合かない場合においては労働者過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。」と規定しており、労働条件決定には当該労働者の代表の意見を反映すべく非常な苦心と努力を払っているのであります。  国際労働条約、ことに最低賃金決定制度実施に関する勧告においては、最低賃金決定制度は、其の採れる形式の如何を問わす、当該職業又は職業部分に於ける関係条件を調査し尚第一に、且つ主として影響を受くる利害関係者、即ち該職業又は職業部分に於ける使用者及労働者と協議して、之を運用すべく、如何なる場合に於ても、最低賃金率決定に関する一切の事項に付ては、右使用者及労働者意見を求め且つその意見に対しては充分にして均等なる考慮を払ふべし。」と規定しており、本法案がこの勧告に抵触することは政府みずから認めるところであります。  ただ政府は、この法案最低賃金決定制度の創設に関する条約に対してはなんら抵触することがないと強弁しておりますけれども、同条約の第三条ただし書きの規定に適応しているかどうか非常な疑問があります。業者間協定に基く最低賃金原案作成についてなんら労働者は参与せず、しかも最低賃金審議会原案承認するかいなかの判断しかできす、原案修正する権限を持たない場合に、果してこの条約に抵触せずと言い切れるかどうか。本条約の批准をめぐって、今後国際労働会議で論議され、労働者意見の反映していない業者間協定を含む最低賃金法案は、本案ILO条約並びに勧告が期待する最低賃金法と、本質的に異なる性格のものであるという批判を受けることは火を見るよりも明かであります。  さらに政府業者間協定方式の手本をアメリカの一九三三年の全国産業復興法における各産業が自主的に作成する公正競争規約に求めているようでありますが、同法は、あの世界的大恐慌を克服せんとして低賃金を排除し、購買力の増大を通じて、産業復興をはからんとした故ルーズベルト大統領の公正な企業者を悩まし、労働者に諸害悪をもたらした海賊的行為を排除するという異常な決意によって制定されたものであり、それに基いて作成される公正競争規約は、もし大統領承認を得られないならば大統領みずからが作成するという最低賃金の問題に対する連邦政府の強力な干渉を規定するものでありまして、政府業者洲協定とは全く雲泥の相違があるといわねばなりません。かように、業者間協定に基く最低賃金につきましては、本委員会において政府よりいろいろ御答弁を得ましたけれども遺憾ながら納得することができず、ここに修正案として業者間協定に基く最低賃金を削除いたすことといたしたのであります。  最低賃金法制定に当ってます第一に考慮されなければならないことは、わが国における賃金構造が、いかなる特徴を持っておるか、低賃金階層がどのような形で構成せられ、さらに賃金格差がどの点で最も深刻化しているかという点に対する正確な認識が必要であると思うのであります。この点の認識いかんによっては最低賃金法性格方式等が非常に異なるのであります。  わが国賃金は国際的に比して著しく低いといわれております。賃金国際的比較はなかなか困難でありますが、わが国賃金の低いということは、単に賃金一般水準の低いということだけでなく、他に賃金分布に問題があるわけであります。諸外国と高賃金の者同上を比較すればその差は非常に縮小しておりますけれども、低賃金の者同士を比較すればその差は非常に拡大しており、賃金分布の不平等度にきわめて問題があると考えるのであります。  すなわちわが国賃金構造は広範な低賃金階層存在と種々の賃金格差拡大にその特色を見出すことができるのでありますが、その賃金格差の第一は企業規模別賃金格差であります。諸外国が五百人以上の事業所労働者賃金に対して、十人未満事業所労働者賃金が八〇%ないし九〇%であるに対してわが国は四〇%程度という状態になっており、しかもこの格差は、昭和二五年頃より拡大の傾向をたどっていることはさらに憂うべき現象であります。  この企業規模別賃金格差要因を、わが国資本主義構造的特質わが国労働組合組織あり方から分析してみたいと思います。  欧米の諸外風では大企業と小企業との間の付加価値の違いが二〇%をこえないのに、わが国では五〇%という大きな開きを持っていることは事実であります。しかし、付加価値相違の中には単に労働生産性の違いだけでなく、下請関係及び原料供給関係を通じて行われる大企業中小零細企業に対する支配、従属関係、それを支えている財政金融面での諸政策全般が含まれているのであります。すなわち、わが国産業構造後進性とそれを打破せんとする政策欠除中小企業付加価値を不当に低め、企業問賃金格差拡大せしめておるのであります。  次に規模別賃金格差拡大せしめておる原因として、わが国労働組合組織あり方をあげることができるのであります。諸外国におきまして、企業賃金格差の少いことは決して自主的に生じたものではありません。むしろ労働運動も発展せず、最低賃金制も確立していない時代においては、賃金格差は意外なほど大きかったことをわれわれは過去の資料で知ることができるのであります。しかし賃金格差の大きいこの賃金を現在のごとき形に変化せしめたのは、経済構造変化たけではなくして、実に労働組合運動最低賃金制であったのであります。御存じのごとく諸外国組合産業別組合であろうと、職業別組合であろうと、いずれも企業外横断組合であります。その中小企業労働者を包含した産業別組合または職業別組合がその経営者団体統一交渉を行なって最低基準の設定を行なってきたのであります。これらを通じて統一的労働市場が形成せられ、企業間賃金格差は縮少されたのであります。  しかるにわが国労働組合組織はこれと全く異なり、企業内の従業員、しかも臨時工を除いた本工員のみをもって組織された企業別組合であります。単産はあっても大部分連合会であるし、海員組合を別にすれば単産本部団体交渉に強力に介入できる体制を作り上げているのは炭労を初めわずかであります。しかも、中小企業の労組の組織率はきわめて低く、三十人より百人未満までは約二割、三十人未満はまことにりょうりょうたるものであります。現状ては中小企業労働組合はとうてい賃金格差を縮小するだけの力を持ち得ないのであります。わが国労働組合企業別従業員組合から脱皮して産業別労働組合を確立し、その産業別組合の内部に中小企業労働者を包括して中小企業低質金を緩和する必要があると思うのであります。  以上企業規模別賃金格差拡大とその要因について述べたのでありますが、次に雇用形態別賃金格差、すなわち、常用臨時日雇い別賃金格差拡大をあげることができるのであります。  臨時工社外工という名の不安定な労働者が現われ、本工員と同じ仕事をしながら賃金は非常に低く福利厚生その他の労働条件も不当に差別せられ、景気調整の安全弁として、神武景気には急激に膨張し、不況か始まるや整理の犠牲に立たされている労働階層存在を忘れてはなりません。さらに男女別または年令別賃金格差のはなはだしいことは、わが国賃金構成封建性慣習性を物語っているものであり、男女同一労働同一賃金原則も容易に実行されず、その格差改善も何ら見るべきものがありません。  かようにわが国賃金構造をながめて参りますと、その賃金構造の最大の特徴産業別職業別賃金格差というよりもほとんど規模別賃金格差に集約することができ、男女別年令別賃金格差拡大という封建的賃金構成に出ると考えられるのであります。しかして低賃金階層は全産業、全職業にわたって中小零細企業に群集し、婦人及び年少者の低賃金は全企業にわたって広範に分布しておるのであります。西欧のごとき組合組織状態であれば、未組織で低賃金に放置されている産業、または職業労働者対象とする方式十分効果があると考えますけれども、わが国のこの賃金構造組合状態においては政府案のごとき事業別職業別地域別最低賃金だけでは、所期の目的を達することはできず、その賃金構造の最底部に統一的一線を画する必要があると考えるのであります。かくして初めて、事業別職業別最低賃金意義を持ってくるのであります。よってわが党は全国産業一律最低賃金を底辺として、その上に労働の質と量に応じ事業別職業別最低賃金をあわせ設定することにいたしたのであります。  以下修正案の大要について御説明申し上げます  第一に、最低賃金決定方式については、政府案の「業者間協定による最低賃金」及び「業者間協定による地域的最低賃金」の項を削除し、それにかわり、「すべての労働者についての最低賃金」を設け、その最低賃金額決定については、中央最低賃金審議会議決を経て、労働大臣が定め国会承認を受けることとし、国会承認手続法施行後最初の通常国会召集日後五日以内に求めることといたしました。さらにその実施については、法公布のときより三カ月間の猶予期間を設け、最低賃金の変更については中央最低賃金審議会勧告権を設定することといたしたのであります。  第一に、全国一律最低賃金額をこえることを相当とする労働者最低賃金につきましては一定事業または職業ごとに、全国もしくは地域に応じ決定することとし、次の場合にその決定を行うことといたしたのであります。  すなわち一定事業職業に従事する相当数労働者労働団体使用者または使用者団体、及びその最低賃金決定利害関係を有し、またはその労働条件決定に慣行的に参加している労働組合、その他の労働者団体申請があった場合、さらに最低賃金審議会勧告が行われた場合といたしました。  第三に、労働協約一般的拘束力に基く最低賃金につきましては、一定地域だけでなく、全国的にも拡張できることといたしました。  第四に、最低賃金決定原則労働者生計費一般賃金水準その他の事情に改めることといたしました。  第五に、最低賃金適用除外から「試みの使用期間中の者」、「軽易の業務に従事する者」を削除し、これらの者も最低賃金法適用を受けることとし、さらに職業訓練を受けている労働者につきましては別の最低賃金を定めるととといたしたのであります。  第六に、家内労働者最低工賃決定について政府案は、最低賃金決定された場合において、関連家内労働者労働条件改善及び当該最低賃金の有効な実施を確保するため必要があると認めた場合に、初めて最低工賃を定め、それを一定家内労働者について適用することとしておりますが、これでは最低工賃決定までには長き年月を要し、ほとんど大部分家内労働者は放置されるので真に家内労働者を救済することが困難であります。よって修正案においては、日取低賃の決定は全家内労働者対象となるごとく物品別に行うことといたしたのであります。さらに最低工賃につきましては、労働者が提供する資材、光熱在等の経費を別にし、労働の対価のみと明確にいたしました。  第七に、最低賃金審議会性格については、諮問機関ではありますが、従来この種の機関答申は十分尊重されず、しばしば政府の裁量により変更されてきましたので、最低賃金決定議決を経て行うことといたしますとともに、みずから発議し、勧告できるようにいたしたのであります。なお政府案中の政府職員たる特別委員は廃止し、委員の任命については労働委員会の例によることといたしました。   そのほか、異議の申立事項の削除、その他右修正に関連して技術的修正をいたしました。  以上修正案概要について説明申し上げましたが、最後に、この修正案が各界の労働者をそれぞれ代表する総評、全労、新産別、中立組合統一的見解に基く、いわば、わが国すべての労働者の一致した要求に基き作成されたものであることを深く銘記願いたいと思うのであります。  言うまでもなく最低賃金法労働立法の中で最も基本的なものの一つであり、従って、それは大多数の労働者の支持と納得に基いて立案されてこそ初めて大いなる意義を持ち得るのであります。しかるに政府案はまさにその逆であります。もし、政府案がそのまま成立するようなことがあれは、それこそわが国労働立法史上大きな汚点を残すばかりでなく、国際的信用を失墜するおそれなしとしないのであります。  この点、十分の御留意の上、御審議下され、本修正案に御賛同賜わらんことを希望いたします。
  4. 園田直

    園田委員長 次に齋藤邦吉君より発言を求められております。これを許します。齋藤邦吉君。
  5. 齋藤邦吉

    齋藤委員 私はただいま多賀谷さんが発言されましたことにつきまして二、三のお尋ねをいたしてみたいと思う次第でございます。  最低賃金法案審議の際に、社会党側におきましては全国一律八千円という最低賃金法案提出をしておられたのでありますが、先般これを撤回いたしまして修正動議を出されるということを承わったのであります。しこうしてまた先般の最低賃金法案の採決の際には正々堂々修正動議の御説明があるものと期待をいたしておったのであります。自民党といたしましては、社会党修正動議を出される以上は、正々堂々その趣旨を承わりまして、これに対して御質問を申し上げようと、私は実は、小林委員じゃありませんが、三十数項目にわたる質問を申し上げようと思っておったのであります。ところが社会党はいかなる理由によるわけでありますかわかりませんけれども、出席いたしませんで、新聞紙上では最低賃金法案引き延しのための欠席戦術である、こういうことをいわれておるのでありますけれども、そういうわけで社会党方々の御出席がなくて、修正動議についての趣旨説明がありませんので、私といたしましてはその修正動議に対する質問の絶好のチャンスを永久に失いましたことはまことに遺憾とするところであります。それはもうすでに済んだことでありますからその程度にいたしまして、これから二、三お尋ねを申しあげてみたいと思う次第でございます。  社会党修正の案というものは、まず第一に申し上げたいと思いますことは、最低賃金法案をいろいろ審議せられました中央賃金審議会審議経過を無視し、労働者側の一方的な意見に立脚したところの修正動議であるとまず私は申し上げ、この点についてお尋ねをいたしたいのであります。すなわち、政府最低賃金法案は一昨年の七月再開いたされました労、使、公益者構成中央賃金審議会において半年の歳月をけみして慎重に検討せられ、そうしてなされましたその答申を尊重してでき上りましたのが政府最低貸金法案であります、社会党方々審議会意見は尊重せよというふうなことをよく言われるのであります。政府案はこの中央賃金審議会意見を尊重して出した案であります。ところが社会党側は、先般におきましては全国一律八千円、これも一つ考えだと思います。実現不可能ではありますけれども、一つ考えであります。しかるに、今回それを撤回して、この賃金審議会審議の過程において、労働者側が一方的に提出した意見、すなわち全国一律の最低賃金実施するとともに、あわせて業種別賃金をきめるのだ、こういう労働者側だけの一方的な意見、これを一つもとにして今回修正動議を出された、こういうことであります。すなわち社会党修正動議なるものは、委員会審議経過を無視し、労働者側だけの一方的な意見によってなされたるところの修正意見である、こういうことを申し上げてやぶさかでないと思うのであります。いやしくも天下の公党である社会党が、労、使、公益三者のそれぞれの意見を公平に取り上げた答申をむしろ無視して、労働者側だけの意見に盲従する、これが社会党の本質であるということであるならば、まことに社会党のために嘆かわしい次第であると思うのでありますが、いずれにいたしましても、社会党意見労働者側だけの一方的意見に終始したところのものであるといわなければならぬと思うのであります。これがまず第一点のお尋ねの点であります  第一の点は、最低賃金法目的の問題であります。先般社会党小林委員が、第一条の目的につきまして、最低賃金というものは労働者保護だけであるんだ、よけいな目的を掲げる必要はないんだ、過当競争などというものは条文から削除すべきであると力強く労働大臣に迫られた。私は修正動議を楽しみにしてそうなっているものと思って見たのであります。ところが修正にはそれが入っていない、すなわち社会党がこの修正意見をまとめられるに当りまして、小林さんの意見少数意見として却下されたのではなかろうかと想像するのであります。あるいは社会党も反省をせられて、やはり最低賃金労働者保護だけじゃいかぬのだ、こういう良識を取り戻されたために第一条の修正はなかったのではなかろうか、こうも思うのでありますが、その点もお尋ねをいたしたいと思うのであります。  それから第三点に、社会党修正骨子をなす点につきましてお尋ねを申しあげたいのでありますが、社会党修正動議全国一律の最低賃金をまずきめる、それをきめますには一カ年の間に賃金審議会において議を練ってそれを国会提出して、そして国会承認を求める、そういう全国一律の最低賃金というものの上に、必要があれば業種別賃金制をきめていく、こういう骨子になるわけでありますが、慎重にこの内容を検討いたしますと、実にこれは何と申しますか、最低賃金制実施をだんだんとずらしていく、おくらしていくという意図のあるところの案であると思うのであります。まず第一にこの案を考えてみますと、全国一律の最低賃金というものを実施しよう、こういうような意見でありますけれども、一体社会党案はいかなる程度の額を適当なる全国一律の額と考えておられるのか、その点を承わりたいのであります。     〔発言する者多し〕
  6. 園田直

    園田委員長 静粛に願います。
  7. 齋藤邦吉

    齋藤委員 すなわち、全国一律の最低賃金額というものがあまりにも高きに失するならばやはり経済界に混乱を来たす、あまり低過ぎればこれは最低賃金の意味がない。そこでこういうふうな法案社会党側が先般出そうというのでありましたが、これにつきましては総評系の一部の方々には、やはりああいう法律であってもわれわれはあくまで八千円であるというふうなことを主張しておるやに聞いております。これが事実でなければけっこうでありますが、もしそういうことであるならば、社会党の最初の撤回された原案とあまり変りはない、こういうことになりましょう。また八千円というものを強行しようとするならば、おそらく労働組合の中でも——せっかく先ほどは全労、総評などまとまった案だと仰せられますけれども、全労系が果してこれに賛成するかどうかもわからぬではないでしょうか、そこにも一つの問題があると思います。  そこでそういうふうな金額の問題はその程度にいたしまして、今度はその金額のきめ方の問題について申しあげてみたいと思います。このきめ方につきましては、賃金審議会において案を練って労働大臣国会承認を求める、こういうふうになっております。妥当なる全国一律の最低賃金額というものを一カ年の間にきめるべきであるという義務を審議会に課してそれを強行しようということは、実際問題としてこれは不可能ではないでしょうか。数年前に玉糸座繰あるいは絹人絹の最低賃金をきめようとして、その四業種においてすら数カ年の研究をいたしましても、最低賃金額決定することができなかった歴史を持っております。さらにまた政府提案の最低賃金法案社会党最低賃金法案というものは国会提出せらるること三たび、約一年以上の審議を経ておりますけれども、なかなか成立の段階まではいっていない。しかも社会党側は八千円といいながらこれを急遽撤回する、こういう過去の経験から申しまして、労、使、公益者構成審議会において、一年間というわずかな期間に全国一律妥当の最低賃金額をきめるということは、これは実際問題としてきわめて困難な事柄であります。そこへ持ってきて、先般のように、社会党側審議遅延のために欠席戦術をした——かどうかは別ですけれども、そういうふうな風習がまたこの賃金審議会の中に流行して参りまして、おれは反対だというので退席するということになりますれば、いよいよもってこれはなかなか難航いたしまして、審議はできないということになるのではないでしょうか。さらにまた、かりに幸いにしてそれが一カ年間にまとまって国会に出す、こうなりましたときに、国会において承認が得られなかったら一体どうなります。いよいよもって最低賃金はできないということになるではありませんか。さらにまた、業種別賃金というものは全国一律の最低賃金制の上にこれを乗っける、こういうのが社会党修正の意図でありますから、いよいよもって全国一律の最低賃金制実施は困難であり、業種別賃金の問題はいよいよ解決が困難ということになるのではなかろうかと思うのであります。すなわち、社会党方々は、心から最低賃金制実施し上うという熱意があるのかないのか疑わしいところの考えを持っておるものであると私は思うのであります。すなわち、社会党の御意見というものは、労働者側の一方的意見に盲従し、全国労働者が待望しておるところの最低賃金制実施を遅延させようという意図に基くものであるといわなければならないと思うのでありますが、これらの点についての御意見をお聞かせ願いたいと思うのであります。  そのほか実は三十数項目持っておるのですが、時間の関係もありますからこの程度にいたして、私の質問を終えさしていただきたいと思う次第であります。
  8. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 齋藤委員は十九日の会議のことをおっしゃいましたけれども、ILO八十七号条約をめぐってすでに一カ年間紛争を続けておる。これは単に国内だけの問題ではなく、国際的舞台において、あるいは総会において、あるいは理事会において非常な問題になっており、批判を受けておる。でありますから、わが党といたしましては、この問題は本国会きわあて重要な問題でありますので、当初から取り上げたかったわけでありますけれども、一応政府の意図が、労働問題懇談会の意見を聞いて、その答申を待ってということでありましたので、われわれは旱天の慈雨のごとくこれを待望しておったのであります。そこで、十八日に答申案が出ましたので、党といたしましては、きわめて重大な問題でありますから、十九日の予算委員会の劈頭、わが党の国会対策委員長をわずらわして質問に立てよう、こういうことでありましたので、その質問が許されるかどうかという問題は、今後の自民党の労働政策に重大な関係がある、そこで、われわれといたしましては、一応この問題について解明願いたいというところから、ああいう事態が発生したのでありまして、われわれが欠席戦術に出た、こういう意味ではなかったことを御了承願いたいと思います。  次に、中央賃金審議会答申をしておるのに、それに対して意見を無視しておるではないかということでございます。これは、齋藤委員も御存じのように、労働者側は最初から反対し、労働者の統一見解というものを述べております。しかし最終的には労働者の方もこの問題を提案することは了承しよう、それは、国会において最低賃金審議をされることは今後の日本の労働界に非常に有益であるから、一応審議するために答申に対して提案をすることは認めようという全労働者の一致した意見であるとわれわれは聞いておるのであります。そういう意味におきましては、私は、これはきわめて意義かあったと思います。でありますから、私たちはそういった理解のしに立ってこの最低賃金を見ておるわけでありますが、御存じのように、最初昭和二十九年に出ました最低賃金審議会答申にいたしましても——これは議論になりますからあとで申しあげますけれども、全国統一の全産業一律賃金が望ましいと書いておるのであります。でありますから、これをどう扱うかというのは考え方の相違でありまして、何もこのこと自体が最低賃金の遷延をするというものではないと私たちは考えるわけでございます。  次に御質問の第二点でありますが、これは小林委員質問の中で、公正競争の確保というようなことは目的からはすすべきである、労働者生活の擁護を第一に掲げるべきだ、こういう御主張があったと聞いております。小林委員がおっしゃいましたように、最低賃金目的は、過当競争の防止にあるわけじゃありません。これは御存じのように、第一義的な目的は、労働者保護にあるわけであります。労働者生活の向上にあるわけでありまして、これが第一目的であります。しかしながら付属的な関係におきまして、事業の公正な競争の確保という面が出てくるわけであります。でありますから、党といたしましては、これをわざわざ削る必要もないであろうと考えまして、修正案でございますから、なるべくこの自民党の案に近い形で、御賛成を願うために、われわれは出してきたわけであります。これが第二点でございます。  次に第三点でございますが、全国一律賃金といっておるけれども、一体いかなる賃金考えておるかということでありますけれども、われわれといたしましては、御存じのように、八千円が妥当である、しかし現時点においてこれが出発するならば、一応六千円で地ならしをいたしたい、こういう考えを持っておるわけであります。しかし私たちが十分な調査期間を待たずして、ここに八千円とか六千円という金額を掲げることもいかがかという議論もありましたので、専門的な最低賃金審議会にその慎重審議をゆだねまして、そして最高の権限であります国会承認を得たい、こういう意味で変えたわけであります。  次にそのきめ方でありますが、果して一カ年で最低賃金審議会が結論を出し得るかということでございますが、これは齋藤委員労働省におられたとき御存じのように、前の最低賃金審議会答申を出していただく場合に、時の労働大臣は、十分ゆっくり時間をかけてやって下さいとあいさつに言われております。答申を求める際にこういった発言をされた例は、私は寡聞にして聞かないのですが、これは珍しくゆっくりやって下さいということを強調しておる。そこでゆっくりおやりになったのでしょうけれども、それは十分に時間をかけてやりましたけれども、その答申には、政府は一顧だに与えなかった。でありますから、そのことについては自民党の諾君は何も言う権限はないと私は思います。私は、果して一カ年でできるか二年かかるかという問題は、そのときの政府並びに審議会の意気込みの問題であると思う。恩給調査会のごときは、連日連夜やっております。連日連夜やって、とにかくあのむずかしい恩給調査の問題、通算の問題、いろいろな問題の結論を出しておる。しかも最低賃金審議会は今度初めてではございません。長い間いろいろ調査をされておる。労働省でも調査をされておるのでありますから、ほんとうに腹をきめてやる気があるならば、できると私は思う。われわれの案を通していただいても、やる気がなければこれはできないかもしれません。しかし私たちは政府がそういうような怠慢をされると困りますから、ちゃんと期限をつけて、そうして次の通常国会の五日以内に出してもらいたいということを言っておるわけでございます。そこで、われわれは期限を付しているゆえんがあるわけでございます。  それから、国会承認しなかった場合はどうなるか、こういうわけですが、それは国会承認しなければ、残念ながらこれは施行するわけにいきません。しかし良識ある国会でありますから、私は絶対にそういうことはあり得ない、かように考える次第でございます。  以上です。(拍手)
  9. 園田直

    園田委員長 次に、伊藤よし子君より発言を求められておりますので、これを許します。伊藤よし子君。
  10. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、政府提案の最低賃金法案に反対し、社会党修正案に賛成の意見を申し上げたいと存じます。(拍手)  本論に入ります前に、一言申し述べておきたいと存じますことは、最低賃金法案が本来労働者の最低生活を保障し、ひいては産業構造の近代化をもたらすことをねらいとしていることでございます。これは世界各国にも共通する考え方でございまして、私もこの観点から、政府案を検討してみたいと思うのでございます。  さて、問題となっております政府案は、今回が三回目の御提案でございますが、三回にわたって、その内容にはいささかの変化もございません。ただいままで政府案に盛られております内容につきましては、その提案のたびごとに、社会党委員から幾度となくその欠陥が指摘されてきたのでございます。ところが政府は、このたび重なる欠陥の指摘について何ら御反省の色もお示しにならず、欠陥に満ちた内容のままで押し通そうとしておられるのでございまして、このことは、二月十九日、自民党の委員方々だけによって当政府案を一方的に可決なさった事実にも明らかに見ることができると存じます。幸いにして、このような暴挙については、自民党も遺憾の意を表明され、ここに私が意見を申し上げることができることになったわけでございますが、私は、政府与党の方々にもう一度政府案を再検討し、私どもの批判に耳を傾けていただきたいということを、特に強調いたしたいと思う次第でございます。  ます、政府提案の最低賃金法案について、私どもが特に反対をいたします理由は、政府案を一貫して流れる使用者本位の考え方でございまして、真に労働者の立場に立って考えられていないという点でございます。このことは、政府案業者間協定骨子として最低賃金方式を作ろうとしている点に、明らかに見られるところでございます。これを別の観点から見ますと、政府提案の最低賃金法案は、その施行によって、何ら日本の労働者が低賃金に悩む現状を改善する効果をもたらさず、かえって逆に、低賃金を固定化するおそれがあると言うことができると思うのでございます。(拍手)  その第一の理由は、最低賃金決定使用者の意のままになるという点でございます。政府案によりますと、最低賃金方式としては、四つの方式が掲げられているのでございますが、主として優先するのは、業者間協定方式でございます。これは使用者にとっては任意協定方式でございまして、行政官庁は単に勧告をなし得るにとどまり、金額についても、何らの拘束を受けるものではございません。さらにまた、この協定最低賃金として決定するためには、事業者の令部の合意が必要とされ、またこれらの地域的拡張適用につきましては、大部分の合意が必要だとされております。しかもこの場合にも念を入れて、異議の申し立てができるという余地を残しているのでございます。こういうあり方では、最低賃金額はきわめて低くなるだろうということは、明らかに推量されることでございます。  第二に問題となりますのは、業者間協定によります場合、最高賃金制になる危険が多分にあるという点でございます。御承知の通り、政府案最低賃金決定原則といたしまして、事業賃金支払い能力を規定しております。このような原則に立ちます限り、使用者企業本位にものを考えますのは当然でございまして、このような原則からは、労働者にとって望ましい最低賃金が出てくるはずはないのでございます。  第三に問題となる点は、同法施行のかぎが労働大臣に握られているということでございます。たとえば家内労働者最低工賃については、労働大臣が必要と認めるときこれを定めるというような規定の仕方でございますが、これではいつになったら家内労働者最低工賃決定されるのかわかりません。これと同趣旨の、労働大臣が必要と認めるときという規定は、法案の各所に見られるのでございますが、法律施行の重大な認定権を労働大臣に与えるようなあり方には、私どもは強く反対したいと思うのでございます。これは今まで当委員会における大臣の御発言等を考えてみましても、果して労働大臣労働者の側に立ってお考えいただけるかどうか疑問に思うのでございまして、むしろ経営者の側に立ってお考えになるのではないかと私は懸念いたす次第でございます。法律というものが単に一大臣の意のままになること自体、大きな問題となるのでございます。ことに現政府のもとにおける労働大臣のお立場を考えますとき、この点私は、特に労働大臣に強大なる権限を集中した当政府案には、強く反対の意を表明したいと思うのでございます。  御存じのように、最低賃金制は、すでに世界にあっては四十数カ国において実施されているのでございますが、これらの国のいずれをとってみましても、最低賃金決定に当っては必ず労働者意見を聞き、その意見を尊重する建前をとっているのでございます。ILO憲章に盛られた精神その他からも、このことが明瞭にくみ取られるのでございます。さらにまた、最低賃金決定制度実施に関する勧告には、次のようなことが述べられております。決定される賃金率の権威を一そう大きくするには、同人数の労使双方が共同して、賃金決定機関審議及び決定に直接参加することを一般的方策としなければならない、こう言っております。さらに、最低賃金額決定するには、賃金決定機関は、関係労働者が適当な生活水準を維持することができるように考慮しなければならないとも述べているのでございます。このような点につきましては、すでにILO条約を批准した諸国は早くから実施しているところでございますし、批准しない国といえども、このような精神、規定あるいは勧告を国際的な常識として認めていることは、周知のことだと存じます。このような国際的常識あるいは国際的な基準について、私たちが早くから政府にその順守を要求しておりますにもかかわらず、今に至るも政府がその要求に耳をかされないことは、私どもの最も遺憾とするところでございます。  以上申し上げました点を総合して考えてみましても、政府提案の最低賃金法案は、最低賃金法案の名に値しないといわざるを得ません。(拍手)特に私は、政府案が、労働者に最も関係の深い法案を作成するに当って、労働者意見を全然意に介していない点を、強く非難したいと存ずるものでございます。(拍手)前に申し述べました国際条約その他国際慣行から申してみましても、労働者の意思の入らない最低賃金制度というものは考えられないのでございます。労働者意見を十分にくむ制度を基盤として、初めて最低賃金制度が労働者生活を保障し、産業構造の近代化の基礎ともなるのでございまして、この点私は政府案の重大な欠陥と思うのでございます。  このように、労働者意見を全く無視して政府案が作られているのでございまして、私はこういう政府案の背後に、依然として一貫した低賃金政策のあることを強調せざるを得ないと思うのでございます。(拍手)言葉をかえて申し上げますと、政府わが国の低賃金構造を改造する意図は全く持たれず、事態を糊塗するためのうやむやな法案をお出しになったにすきないということができると存じます。さきにも申し述べましたが、最低賃金法目的一つとして、産業構造の近代化という点のあることは申しあげるまでもないとこるでございますが、産業構造の近代化のためには、低賃金構造を打破するという統一的意思あるいは統一的計画機関が必要とされるのでございます。具体的に申しますれば、わが国経済構造に深い認識を持ち、その認識のしに立って、あるべき賃金構造を定めるという機関を必要とするものでございます。最低賃金法という観点から言いますと、その一つの形として、最低賃金審議会というものが考えられますし、この審議会の権限が強く、政府もこの審議会の設定した計画に従うということになれば、低賃金打破の有力な土台にすることができると思うのでございます。ところが政府案審議会の桁限はきわめて消極的であり、労働大臣を動かす力は何らございません。従って、わが国最低賃金額をきめるのは、ただ企業というワクにしばられた使用者だけということになるのでございまして、ここに私は政府案が、その打ち出し方はともあれ、隠された意図が、わが国の低賃金構造をあくまで維持しようという点にあると考えざるを得ないのでございます。(拍手)  このような意図を持った最低賃金法が施行されます限り、現在最も問題になっております賃金格差の問題は、解消されるどころか、かえって再燃し、ますますわが国経済に深刻なる影響を与えることを、私は強く懸念するものでございます。このような政府案について私どもは強く反対するのでございます。  さてこのような政府案の欠陥を補うために私どもの修正案が出されたのでございますが、修正案につきましては、多賀谷委員から詳細なる提案理由説明がございましたので、私は重複を避けまして、ただその重要なる点について一、二申し上げたいと存じます。  わが国の低賃金構造を根本的に是正するということを前提として、全国一率の最低賃金がわが党の修正案においては設定せられ、それと並行して一定事業または職業ごと最低賃金が設定されるという点でございます。前に申し述べましたように、わが国の経済の底には広範な低賃金が構造化されているのでありまして、これを一掃し公正な賃金水準を作りしげるためには、統一的な賃金方式を設定し、最低線を確定するという措置が必要だと思います。この最低線を引くという意味で修正案全国一率方式を盛ったのでございまして、この方式を欠いては極端な賃金格差を是止することは不可能であると思うのでございます。ソーシャル・ダンピングの弊害をなくすためにも、わが国産業構造を近代化することが急務でございますが、それには公正なる賃金構造が必要であり、そのためには全国的に最低の賃金はこうだという、この一線が画されるべきであると私は考えるものでございます。(拍手)こういう意味で前に統一的な賃金政策が必要であり、そういう賃金政策について寄与できる機構が考えられなければならないと申し上げた次第でございます。社会党修正案では、中央最低賃金審議会の権限を強化するととを述べておりますが、これは当審議会が国際的、国内的経済情勢を十分に把握し、その上で公正な最低賃金決定するという理由に基くものでございまして、当審議会の権限の強化と、全国一率の最低賃金制方式は両々相持って、公正な賃金水準の向上、従ってわが国産業構造の近代化という目標のためには不可欠なものであると考えるのでございます。こういう全国一率の最低賃金決定によって、全国に広く存在する低賃金労働者生活水準を引き上げることが初めて可能だと思うのでございます。この最低線の上に業種別職業別方式を加味すれば、それらは総合的に全体として賃金水準引き上げに役立つと考えますので、特に修正案についての御考慮を強くお願いしたいと思うのでございます。そのほか当修正案について申し述べる点は多いのでございますが、すでに提案理由説明等で詳細に申し上げていますので、私はこの程度にとどめます。  ただ婦人という立場から一言つけ加えておきたいと存じます。婦人労働者の地位が、わが個においては低いということは周知のことでございます。先日もある会社で、結婚する女子労働者は退職させるということを決定したという新聞報道がございましたが、これは全くわが国の婦人労働者の待遇がどのようなものであるかという一つの例であると存じます。また賃金についてみましても、婦人なるがゆえに不当に低い賃金を強要されておりますことは明瞭な事実でございます。憲法では、男女同一労働、同一賃金を宣言しているにかかわらず、現実は全く異なった姿なのでございます。雇用婦人労働者はもちろん、さらに非常に多数の家内労働に従事する婦人労働者についても同じことが言えます。すべてこのような婦人労働者の待遇について、特にこの際私は考慮すべきものと考えるのでございます。わが国の全体としての低賃金が強くこの婦人労働者の低賃金に足を引っぱられているという事実に立って、最低賃金立法に当っては、深くこの点の留意が必要だと存じます。  最後に、つけ加えて申し述べたいことは、社会党修正案は現在の日本の全労働者が一致して支持しているという点でございます。修正案提案理由説明にもありましたように、総評、全労、新産別、中立組合というような、日本の労働組合を代表する組合すべてが一致して当修正案の成立をこいねがっているのでございます。労働大臣並びに政府与党の皆様方もこの要望に耳をかされまして、全労働者の心からなる期待にそむかれないことを私は希望するものでございまして、ここに私は、政府案に反対し、修正案賛成の討論を終るものでございます。(拍手)
  11. 園田直

    園田委員長 内閣提出にかかる最低賃金法案並びにこれに対する修正案に関する発言は終了いたしました。  なお、去る十九日の本委員会において、内閣提出最低賃金法案及び修正案の採決に際し、起立総員と宣告いたしましたのは、社会党委員が欠席されておりましたので、そのように宣告いたしたのであります。先刻よりの御発言によりまして、社会党委員諸君は、政府原案に反対であることが明らかになりましたので、事実は、多数の賛成で決したものであるとことを明確にいたしておく次第であります。  暫時休憩をいたします。    午前十一時十十三分休憩      ————◇—————     午後一時四十九分開議
  12. 園田直

    園田委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。来たる三月四日、当委員会において、国際労働条約第八十七号に関する問題について、参考人より意見を聴取することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 園田直

    園田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  なお、参考人の人選及び手続に関しましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 園田直

    園田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     —————————————
  15. 園田直

    園田委員長 児童福祉法の一部を改正する法律案を議題とし審査を進めます。  質疑に入ります。通告がありますので、これを許します。滝井義高君。
  16. 滝井義高

    ○滝井委員 児童福祉法の一部を改正する法律案について、二、三の点を御質問申し上げたいと思います。  さきにわれわれは児童福祉法の一部を改正する法律で、養育医療と申しますか、いわゆる未熟児に対する対策を立てました。それより前に身体障害の児童に対する育成医療というものをやはり一つの対策として実施をすることにしたのです。今度新しく児童福祉法の一部を改正して骨関節結核にかかっておる児童に対して、養育医療とか育成医療とか非常に言葉は似ておるが違う療育医療の制度を確立することになったわけなんです。いわば骨関節結核患者の療養をやる一方、教育をやろうというきわめて進歩的な児童福祉法の改正だと思っております。そういう意味では今度の改正というものはわれわれ敬意を表したいと思うのであります。  そこでそういう法律でございますが、一体現在日本の結核の実態というものが、客観的に見てみますと、ツベルクリンあるいはBCGの接種、こういうようなものによって日本の児童と青年の結核というものは非常に減って参って、そして現在結核というものが二十五、六才から四十才前後のいわば日本の健全な労働のにない手あるいは生産の推進力の部面に片寄ってきつつあるという、こういう一応の傾向があるわけでございます。しかし児童や青年に結核が減ったとはいえ、なお依然として家族の中に濃厚感染源があってそれが結核の処女地である児童や乳幼児に非常に大きな脅威となっておることもまた現実に見落してはならぬ事実であります。そういう中で特に政府が骨関節結核というような特殊なものを一体なぜ取り上げたのかということです。もっと前に、われわれが乳幼児なり児童の治療対策を講ずる前に、骨関節結核というような特殊なものを取り上げる前に、もっと一般的な児童の結核というものについてのやはり明確な政府の施策というものが先行してこなければならぬと思うのですが、そういうものについては一体政府はどうしようするのか、これを厚生大臣から一つ御答弁を願いたいと思います。
  17. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 大臣からお答えいたします前に私から申し上げたいと思います。児童の結核につきましては、ただいま御質問の御趣旨にもありましたように、治療とそれから教育と生活指導というものをあわせ行うということでなければ、十分児童の福祉ははかれないというように考えられるのでございまして、そういう意味からいたしまして、同じく長期の療養を必要といたします結核にかかっております子供一般についてかようないわゆる学習と療養と生活指導とがいわば三位一体に行われるような体制を確立するということがどうしても必要である、そういうような考え方のもとにその方面の努力を進めて参ったのでございますけれども、今回はまずそのうちでもさらに期間的にも相当長期の療養を必要とする、いわゆるその必要度の最も高いものから手をつけるという意味において、この骨関節結核にかかっておる児童の療育の問題を取りしげたのでありまして、一般児童の結核の問題については、今申し上げました趣旨において制度を立てまして、予算を確保いたしますように、今後十分努力をいたしたいと考えております。
  18. 滝井義高

    ○滝井委員 必要度の高いものからやるということでございますが、これは児童局長も御存じだと思いますが、一般のいわゆる胸部結核と比べて、骨関節結核というものは、これは非常に発生が少いわけなんです。私は政策というものはまれなものを先にやるということでなくて、やはり一般的な、大衆的なものから手をつけるのが政策だと思うのです。われわれが学生のときにこういう一つのエピソードを持っておりますが、いわゆる皮膚科の患者を見ております。そうしますと、全身に小さなおできができている、その患者をプロフェッサーがわれわれに見せますと、いわゆる医者になりたてのものはどういうことに診断をするかというと、教授が、これを君診断してみろといって出したのだから、この患者はおそらくまれなむずかしい疾患であろう、こういうことがすぐ頭にくる、そこで教科書をひもといてそしてまれな病名をつけるのです。ところが皮膚科の疾患の八割ないし九割というものは普通の湿しんなんです。だからこれは慢性の湿しんなのか急性の湿しんなのか、ああ急性の湿しんだといえばそれは合格なんだ。ところがそういうのと同じように、これは医学生の初歩のやり方を厚生行政はやっておるのではないかという感じが私はするのです。われわれが政策をやる場合には——骨関節結核は原発的にくることはあります。しかし何といっても結核の初感染の形態というものは、頸部のリンパ腺がはれてくるか、あるいは肺門のリンパ腺がはれるか、こういう形が初感染の形でやってきて、それから関節にいく、こういう形だと思う。そうすると、やはり初感染のとこるを押えるということが第一前提でなければならぬと思うのです。一体この児童福祉法対象になる子供の年令というものは十八才未満ですか——十八才未満の日本の一般の結核ですね、これは一体どの程度あるのですか。これは公衆衛生局長の方でも児童局長の方でもどちらでもいいのです。
  19. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 十八才未満で結核にかかっておる児童は、二十八年の結核実態調査から推定をいたしますと、医療の必要な者が四十五万人、このうち入院治療を必要とする者が十二万人、さらにこのうちいわゆる学齢児童か約六万人、そういうふうな数に推定をされるわけでございますが、一方文部省の方で公立の小中学校における長期欠席児童というものについて調べましたところによりますと、小中学生合せまして二万七千名ということになっております。この間数字が相当違っておりますけれどもいずれにしても相当数に上るということは、これはおわかりの通りでございます。  なお先ほど私の答弁が言葉が足りなかったかとも思いますが、特にこの児童福祉法で取り上げましたのは、長期療養を考えました場合に、どうしてもこれは長期治療の立場から単に病気をなおすというだけでなしに、学習指導なり生活指導とあわせてやっていかなければならない。そういうような観点からいたしまして、一般結核対策と別個の特別の体系を考えたわけでございます。その必要度から申しますと、結核にかかっております者のうちでも入院治療が比較的長くかかりますカリエスの児童をまず取り上げたのでございます。といって、もちろん一般の結核児童につきましてもやはり私どもの数字に上りますと平均の入院日数は大体八カ月ということになっております。カリエス児童は約一年半でございます。相当長期にわたっておりますので、同じような考え方をしていかなければならぬということは言うまでもないことでございまして、先ほども申し上げましたように、今後十分努力をして参りたいと思っております。
  20. 滝井義高

    ○滝井委員 昭和二十八年の統計で十八才未満の四十五万人の結核患者のうちで学齢児童か六万人、そうすると中小学合せて二万七千というのが長期欠席児童ですね。数字の違いはありますが、最近公衆衛生局の方で、昭和三十二年ですか、調査をやったはずですね。抽出調査でしょうけれども、この調査の結果この数字はどういう工合に動いたでしょうか。
  21. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 三十三年でございますか、われわれの方は今度の抽出調査では二十才で切っておりますので十八才との間が若干差がありますが、傾向は同じと思います。二十八年が二十才未満が要治療患者五十六万、従って十八才から二十才の間の者は四十五万と五十六万の差になると思います。それに対しまして三十三年は二十才未満が二十四万人でございます。従いまして非常な減少になっております。おそらく十八才未満も大体ほぼ同様な傾向じゃないか、かように存じております。
  22. 滝井義高

    ○滝井委員 大臣、今お聞きのように、日本における青少年の結核というものは、昭和二十八年の調査に比べてわずか五カ年間で半分以上も減っているという実態です。今後結核対策を立てる上にここがわれわれの非常に注目しなければならぬ点だと思うのです。骨関節結核というものは原発性に来ることもあるが、大体一次的ゼクンデールのものが多いということになりますと、われわれが焦点を合わさなければならぬものは、小中学合わせてまず大ざっぱに見て、多い数をとれば六万人の長期欠席児童、少い数をとれば二万七千人です。やはり私は二万七千人の政策が立てられなければならぬと思うのです。九牛の一毛といっては語弊がありますけれども、まあ大して多い数じゃないだろうと思うのです。おそらくこの政策対象になる数は二百九十人そこそこでしょう。だから二百九十人に対する対策もいいと思うけれども、われわれが大蔵省に予算を折衝する場合には、やはり一般児童を対象にして、今あなたが御説明になりましたように、これはやはり八カ月前後の入院を必要とするものです。だからそこらあたりから網をかぶせていくべきだと思うのです。そうしますと、骨関節結核が全部その中へ包含されてします、この点がどうして主張されなかったかということなんです。
  23. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 滝井先生は十分事情を御承知の上の御質問だと思いますが、お話のような線で厚生省としては予算の案を立てて交渉をいたしたのでございますけれども、全般の関係によりまして、今申しあげましたように、カリエス児童に一応なったわけでございます。従って一般児童の問題としては当初の要求考え方通り今後継続をして努力をして参りたいと考えております。
  24. 滝井義高

    ○滝井委員 やはり結核対策というものは、私はそういい妙案はないと思う。やはりオーソドックスを守らなければならぬと思う。そのオーソドックス的な、いわゆる四つに組む政策の立案ができないところに、日本の結核対策が前進しない理由がある。この点は大蔵省をもう少し啓蒙する必要がありますので、次会には一つ大蔵省の主計局長なり政務次官を——大臣がこられればなおいいのですが、委員長一つそのように運んでいただきたいと思います。  そういうように、とにかくこの児童の結核対策がいわゆるオーソドックスな対策でないあやまちを犯すと、それから伸びていく結核対策も間違ってくるのです。それはいつも私がここで申し上げているように、分水嶺から流れ出てくるところの一つの小さなせせらぎも、小川も、だんだん大海に注ぐころになるともう向う岸が見えないくらいの大きな川になる。それと同じように、出発点において間違いますと大へんな間違いが起って、結核の撲滅ができないということになることは火を見るよりも明らかなことです。従ってそういう点についてはもう少し考えてもらいたいと思う。そうしますと二万七千人の長期欠席の学童がおる。一方においては六万人もおるという、こういう数字の違いはありますが、二万七千ないし六万の長期欠席児童の実態というものは一体どうなっておるのかということです。これらの学童が長期欠席をしておるということはもうほうり出しておられるのか、それとも何らかの対策が講じられているのかという点、実は日本の保健所なり結核予防法によって全国民に結核検診をやるということが、前の公衆衛生局長山口さんの時代から非常に強く叫ばれて法律の改正もやりました。なるほど君は結核だ、もうレントゲンの像は黒い影が出ておる、だから養生しなければいかぬということを学校で宣告されて、その児童が休むことになった。だがその児童の運命というものはどうなっているのかという把握がないのです。これは坂田さんも文教委員として文部行政に携わっておられましたからおわかりだろうと思いますが、君は結核だという宣告はするけれども、そのあとの処理は現在の学校においては行われておりません。わずかに二百八、九十名のものが、骨関節結核では救われるかもしれないけれども、それらの二万七千はそっくりそのまま、一体どういう形になってどういう運命をたどりつつあるのか、この実体の究明が——あなた方が今後、児童福祉法で十八才未満の者を救おうとすれば、これらの者の実態が把握されていなければならぬが、これは一体どうなっておりますか。
  25. 高田浩運

    ○高田(浩)政府委員 いわゆる一般的な結核対策としては結核予防法によって行われているわけでございますが、従来もこういった児童につきましては、厚生省としても十分気を配りまして、たとえば国立の結核療養所等においても結核の児童を対象とした対策を進めて参っておるのでございまして、現存国立の結核療養所のうち約五十カ所近くにおきまして約二千床ほどの小児ベッドを持ってやっておるわけでございます。御承知のように、児童はやはり小児病棟なりあるいは小児病室なり、そういう特殊な状態において、特殊な部屋なりあるいはむねなりにおいて治療を行わせることが適当でございますので、そういった小児病棟あるいは小児病室をもって実際に小児を取り扱っているのが今申し上げた数字でございます。そのほかに国立ではございませんけれども、御承知の小児結核保養所、これが八カ所ございまして、これが千二百床、これにもそういうふうな特別な取扱いをいたしておるのでございます。これらの多くにおきましては、カリエス児童についてとっておると同じように、生活指導なりあるいは教育の関係につきましては、特殊学級あるいは養護学校というものを設置する形において教育が受けられ、同時にまた職員におきましても、その生活指導の面に特に気を配るように留意をして進めて参っておるような状況でございます。そういうふうに実態としては、国立療養所等において相当程度の対策を進めて参っておるのでございますが、もちろんこれに入るについては相当な医療費がかかりますし、またそれに物理的に入れない児童があることは、数字を比べてみれば十分わかる通りでございまして、私どもとしてはこういうような対策措置を制度として打ち立てることに努力することはもちろんのこと、事実上の問題としても十分関係の局と連絡をして進めて参りたい、かように考えております。
  26. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、三千か四千ぐらいの人はどうにかベットで療養しているけれども、二万二、三千の者はとにかくどうなっておるかわからぬという実態だと思うのです。そこで私はやはりこの学童の結核というものは、大体初感染をしてから、われわれの習った結核学では、六カ月ぐらいの間に肋膜炎かあるいは肺門リンパ腺の腫脹が起ってくるわけですが、私はいろいろ金をかけるよりか、その時期にまずそれらの学童に無料てパス、マイシン、そのほかヒドラジッドとかいろいろいい薬ができました、それを無料で半年ぐらい服用させるべきだと思うのです。これはわずかな金でできます。今一グラムの原価は一円を割りますよ。学童が骨関節結核にかかたっり空洞ができたりして国が一人に一万三千円そこそこの金をつぎ込むよりか、一グラム一円以下の原価で今パスができると思うのです。学童はおとなみたいに一グラム一回に飲まなくてもいいのです。五グラム以下でいいのですから、量が少くてもいいし、これでなおってしまう。骨関節結核や空洞にいかないうちになおし得る、こういう利便があるわけです。やがて墓場に近いような状態になってから金をつぎ込む政策よりか、まだ元気はつらつたる少年の目の輝きを持っているときに私はすべての人にやるべきだと思う。すべての人といったって今言った少い数でいえば二万七千、多い数でいっても六万です、これはわずかな金で済む。一グラム一円以下でできる。原価で製薬会社でもらってごらんなさい。それに手数料少しをやる。製薬会社は、学童にやるのだということになれはそのぐらいの思い切りはしてくれますよ。宣伝のためにあるいは無料で寄付してくれると言うかもしれない。そういう政策が私はほしいと思うのですよ。(「賛成」と呼ぶ者あり)それで与党から賛成の声が出ておるのですが、そういう点は坂田厚生大臣どうですか。
  27. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 ただいま滝井委員の御指摘の点でございますが、非常に私同感に考えるわけでございまして、まあできますならば、やはりわずか二万七千程度の学童についてその行く末を見きわめるということでなければ、実際問題として意味をなさないのじゃないかというふうに思うのでございます。できますならば、三万七千のカードを作って、そうしてその児童が一体どうなっていくかということぐらい考えるべきだというふうに思うわけでございます。まあこの点につきましては、事務当局とよく相談をいたしまして、適切な処置をとりたいというふうに考えております。
  28. 滝井義高

    ○滝井委員 この点は、大蔵省と一緒に、次会に一つ文部省の初等中等教育局長を呼んでもらいたいと思うのです。レントゲンで間接撮影をやって、それからその怪しい者を直接撮影をやって、父兄にあんたのところの子供は結核でございますよ、養生させなければいけません、これだけではどうも教育の民主化、それから機会均等の面から考えても少しやはり手落ちのところがあると思う。憲法の義務教育は無償であるという、その文字通りにわれわれは主張したいところだが、そう言うと社会党は空理空論と言われますから、そこまではきょうは言いませんが、まあ肝油とかそれからサントニンなんかの虫下しというものを学校で安く買わしておるのです。あれも必要だと思いますが、やはりバスかヒドラジットを安く買わせるというか、今言ったように、一円以下なんですから、そのくらいなものは厚生省と文部省と協力すれば私はすぐできると思うのです。これをもし全国の今の二万七千から六万、たかだか見積って六万程度にやってやることによって、これは十年したら日本の青年結核というものはほとんどなくなる状態が出てくると思うのです。そういうことを一つ坂田厚生大臣の協力を得て、次会は文部省にも来てもらって、ここらあたりを締めてもらいたい、こう思うので、委員長、ぜひ次会には文部省も呼んでいただきたいと思います。  そこで次に移っていくわけですが、私の統計は少し古いのですが、今のように六万の学童がおるけれども、その学童が一体どういう運命をとって結核が進行し、あるいは停止をし、治癒しておるかということがはっきりわからない。しかしどこかでそれらの学童はなけなしの財布を両親がはたいて、何らかの治療を、これは治療のよしあしは別にしても、受けておることは確実です。そこでこの一九五六年の患者調査で医師にかかった者の数が六十七万、そのうち入院が二十六万、外来が四十一万です。これは一九五五年に比較すると入院は一%しか減っていないのです。入院はなおやはり多いということです。ところが外来はどういうことになっておるかというと、四十一万というのは一九五五年に比べて二割五分減っておるのです。外来は減っておる。だからこれを全般的に見ると結核患者というものは、外来で減っておるのですから、さいぜんの十八才未満なりあるいは、十才未満の者がほとんど半減をしておるということと同じように減ってきておるわけです、ところが驚くべきことは、この健康保険とか共済組合という被用者保険の本人は、一九五六年はその前の五五年に比べて一割六分減っておるのです。それから被用者保険の家族は五六年は五五年に比べて一割二分減っておる。ところが今度は国民健康保険や何かの層はどういう形になっておるかというと、これは平均すると一割四分ふえてきておる。従ってこれは何を意味するかというと、結局現在の健康保険とか共済組合という、二十年、三十年の古い歴史を持つ社会保険による制度の恩典を受けておる日本の勤労大衆の層というものは、大体結核についてまあまあ治療を受けて、それが一応ピークを通って、だんだん富士のすそ野のように下りつつある。一応今度は富士山の頂上から低下の傾向をたどっておる。ところが一方皆保険の進展の進まない中小企業や、あるいは農民や、その他五人未満の零細企業に働く労働者なりその家族、特に学童もひっくるめて、それらの層は、今からぼつぼつ皆保険の恩典によって結核の治療をしようかという、こういう状態が出てきておるということなんですよ。この点は日本のそれらの中小企業なり農村の学童も例外ではない。この問題をやはり私たちは十分気をつけなくてはならぬ。もちろん最近の日本における農村も、もはや都市と同じように、結核がすっとひまん性に、平均的に、同じように広がっていきました。そしてそこではなるほど免疫を受けて、諸外国と同じように結核が古くなりつつありますけれども、学童というその肉体自身をとってみれば、これは結核についての処女地であることは間違いがないのです。従ってこれが乳幼児に感染すれば、結核の脳膜炎になるだろうし、それから学齢児になりまして、五、六才以上の者になれば、肺門リンパ腺なり肋膜炎になることは明らかです。そうしてみますと、それらの者がようやく今から病気をなおす、治療の皆保険の恩典に浴そうかという、こういう形になると、結核というものはそこに今度はしょうけつをきわめてくることは明らかだ。こういう点から考えてみると、ますます農村や中小企業者かたくさんその児童を送っておる学校から、重点的にパスあるいはヒドラジッドの無料のTBの政策というものが始められなければならぬという具体的な政策も、私はそこから出てくると思うのです。  それからもう一つ注意しなければならぬ点は、結核の病床がいわゆるあき始めてきているということです。空床がだんだん多くなってきている。一九五四年の利用率は、九四・一%の利用率、ところが五六年は八五・九%、五七年は八二・二%と、実に急激な下り方を始めている。そうしますと、日本の学童の中で、開放性の結核を持っておる学童については、この空床を利用するという政策です。こういう点についての政策というものは、やはり具体的に金をつぎ込まずして、一石二鳥、三鳥、四鳥の政策というものがとられなければならぬと思うのです。そういう総合的な政策というものが、今の日本の厚生行政には欠けておるし、それらの総合的な問題についての検討と申しますか、大蔵省の金を出す方の啓蒙があなた方に足らないのではないかと思うのです。こういう点について、あなた方は今度の骨関節結核をやられる場合に、どういう工合にお考えになったかということです。だから児童の問題を単に児童局だけの問題とする問題のとらえ方をやると、これは誤まる。やはり日本の結核全体の中におけるその第一歩の発足の場としての児童の結核、大きな結核対策の一環としてまず児童の結核対策、こういうとらえ方をすると、おとなが使っておった病床があいておるならば、何も子供の保養所に入れなくとも、それに入れる。そこに二十、三十の空床があれば、そこらの地区の学童をそこに当てはめて、そうして内科医を兼任させてやれば、これはできぬことはない。内科の専門の医者、結核の専門の医者ならば、小児結核だってわからぬはずはないわけです。こういう政策がどうも欠けておるという感じがするのですが、大臣はそこらあたりをどうお考えになりますか。
  29. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 まことにいい御意見だと思うわけでございまして、われわれといたしましては、単に児童局における児童の結核対策、しかもその中の骨関節の対策ということでなく、やはり総合的な一貫的な結核対策の中において、この骨関節の対策ということを考えて参らなければならないのであって、同時に一面において、この空床ができつつある、それについて何か児童を入院させるというような、いわば行き届いた総合的な対策があってしかるべきではないかという御意見は、まことに私同感でございます。ただ空床がありますところが、直ちに児童のそういう感染をした人たちを入れられる状況にあるかというところは、これは具体的に検討いたしてみなければわからないかと思いますけれども、その御趣旨は私まことに賛成に考えております。
  30. 滝井義高

    ○滝井委員 本会議の予鈴が鳴りましたので、この問題については次会に譲らしてもらいたいのですが、次会は全国の国立なり、結核関係の空床の分布の状態と申しますか、こういう点についての御説明一ついただきたいと思います。それを宿題として、きょうはこれで終ります。
  31. 園田直

    園田委員長 次会は来たる三月四日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時二十七分散会