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1959-02-25 第31回国会 衆議院 社会労働委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年二月二十五日(水曜日)     午前十一時十一分開議  出席委員    委員長 園田  直君    理事 大坪 保雄君 理事 田中 正巳君    理事 八田 貞義君 理事 藤本 捨助君    理事 小林  進君 理事 五島 虎雄君    理事 滝井 義高君       藏内 修治君    河野 孝子君       田邉 國男君    中村三之丞君       中山 マサ君    古川 丈吉君       柳谷清三郎君    伊藤よし子君       大原  亨君    岡本 隆一君       河野  正君    多賀谷真稔君       堤 ツルヨ君    中村 英男君       八木 一男君    吉川 兼光君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 坂田 道太君  出席政府委員         厚生政務次官  池田 清志君         厚生事務官         (大臣官房長) 森本  潔君         厚生事務官         (大臣官房審議         官)      小山進次郎君         厚 生 技 官         (医務局長)  小澤  龍君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巖君         厚生事務官         (保険局長)  太宰 博邦君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   鳩山威一郎君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環          境衛生部長) 聖成  稔君         厚生事務官         (保険局次長) 牛丸 義留君         専  門  員 川井 章知君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  厚生関係基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 園田直

    園田委員長 これより会議開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますのでこれを許します。岡本隆一君。
  3. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 今度の三十一国会は画期的な国会であると私は言えると思うのです。というのは、十二月に国民健康保険法案が成立いたしましたし、そしてまた今国民年金法案が正式に議題になりまして、今国会で成立する見通しでありますが、その二法案の成立によりまして、日本社会保障体系はおよそ形作られると思うのでありますが、そういう意味で非常に重要な国会であると私たちは信じております。ところで、今日本社会保障体系を形作るためにできておりますところのいろいろな社会保障関係の諸立法というものは、非常にか細い、いわば日陰に育ったようなうらなりの青ビョウタンといった形の、名ばかりのと言うと語弊があるかもしれませんが、相当補強しなければならない。しかもそれが相互の間に何の連絡も連携もなしに生まれてきておる。従っていわばてんでんばらばらの社会保障体系になっておると思います。そこでこういうふうな体系がおよそそろって参りましたなれば、この際政府は勇断を持ってこの継ぎはぎだらけの社会保障制度を、りっぱに一つ体系つけられた、整った社会保障制度に練り直していくということを、もう手がけるべき時期だと思うのです。当然また厚生大臣におかれてもそういうことをお考えになっていらっしゃると思うのでございますが、それについて、どういうふうな形で将来やっていきたいというふうな御構想があらばお聞かせ願いたい。
  4. 坂田道太

    坂田国務大臣 お答えをいたします。御指摘通りでございまして、いよいよ私どもといたしましても医療保障の面においては国民保険を出発いたさせまして、昭和三十五年度中には一応これを全国民に及ぼしたいというように考えておりますし、また同時にただいま御提案を申し上げておりまする国民年金法案、これはいわば所得保障一つの柱でございまして、医療保障とそしてまた所得保障の、この二大柱を社会保障一つの根幹といたしまして今後進めていかなければならない。もちろん昭和三十六年度にいわゆる拠出制度が始まるわけでございますが、やはり社会保障というからには、それにふさわしいところの内容を充実していくのが、今後の私どもの役目だと心得ておるわけでございまして、またその社会保障という考え方を広く解釈いたしますならば、失業問題も入るかと思いますし、あるいはまた住宅の問題も入るかと思うわけであります。さらには厚生省の中におきましても、単に医療そのものでなくて、病気にかからないようにしてあげる、いわゆる公衆衛生行政もいわば予防行政という面に向って進まなければならないのではないかというふうに考えるわけでございます。確かに今日ではその辺のところがばらばらになっておるというようなことも言えるかと思いますけれども、しかし現在の体系の中におきましても、やはり労働省の所管の失業保険の問題あるいはまた建設省の住宅対策という問題と、私たち社会保障医療保障の面、あるいはまた年金制度の面におきまして、これは互いに総合的な観点から眺めていかなければなりませんし、相連絡をとっていかなければならないと思うわけでございまして、どういたしましても、たとえば年金制度を始めるにいたしましても、先般予算委員会あるいは本会議等で御指摘になりましたように、現在ございますところの公的年金調整はもちろん、通算の問題はもちろん、これとわれわれの今提出をいたしまして御審議を煩わしておる年金制度との通算の問題も、やはりこれは考えていかなければならない大きな問題だと私たち考えておるわけでございまして、このあたりにつきましては、私ども研究をいたしますが、やはり社会保障制度調査会の御意見等参考にして、その調整をはかり、ほんとう社会保障という名前に値するところの制度を打ち立てるということについては、私同感でございます。そういう気持であるということを御了承願いたいと思います。
  5. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 社会保障体系づけて、これが社会保障であるというふうな考え方で、われわれが容認できる体系としてまず考えなければならないことは、すべての人がその制度によってひとしい恩恵が受けられる、これでなくてはならぬと思うのです。そこに厚薄があってはならない。ところが日本の今のたくさんできておるところの諸立法の中には、その処遇において大へんな不均衡があるのです。たとえて言えば、もちろん恩給所得保障一つです。ところが恩給制度というものは、これは賃金のあと払いだ、こういうふうな考え方もありますけれども、しかしながらそれを社会保障体系の中に入れてくるという場合には、そういうふうな考え方よりも、やはりすべての人に少くも最低の文化的な生活保障するという形のもの、そういう考え方のものとして私たち考え、取り扱っていかなければならぬ。ところがそういうふうな恩給制度と、今度出て参りました国民年金制度というものの間には、これはもう雲泥の相違がある。しかも同時に、今度の法案に出て参りました無拠出年金のごときに至りましては、これは約束したのだから仕方がない、出さなければしょうがないが、これくらいの捨て銭にしておけといわぬばかりのことでもって、今度の無拠出年金は七十才から月一千円、しかもそれは相当な所得制限があるというような形で出されてきておる。こういうふうな点において非常な不均衡があるのを、これから後どのように是正していくつもりなのか、こういう点を私はお聞きしているのです。
  6. 坂田道太

    坂田国務大臣 ただいま提出いたしております国民年金法案の、いわゆる無拠出年金について、将来どういうふうに考えておるかというお尋ねかと思いますが、私どもといたしましては、国民年金制度というものを、やはり国民全体に及ぼしていくという基本的な考え方に立ち、しかもまたそれはあくまでも拠出制によって、この年金制度を育てていくという考え方で出発をいたしておりますし、そういう建前で実は法案が作られておることは御承知通りでございます。ただ現在老齢になっておられる方々で、そういう拠出のできないような方々もこの思恵に浴させるという意味からいうならば、やはりここに経過的には、あるいは補完的には、無拠出制度考えるということが望ましいのではなかろうかという考え方から、実は援護年金という形で法案に盛ったようなわけでございます。でございまするが、何を申しましても、無拠出はまるまる国がこれを見ていくわけでございまするから、やはりこういうふうな制度を打ち立てます場合において、財政というものを一方においてどうしても考えざるを得ないわけでございまして、その観点から私どもといたしましては、やはり七十才をあるいは六十五才とかいうふうにいたしたかったわけでございますけれども、今度の法案では七十才というふうにいたしたようなわけでございます。あるいはまた年金の額にしても、一千円というようなことに落ちついたわけでございます。さらにまた所得制限等も実は考えざるを得なかったことは、これは率直に認めざるを得ないと思うわけでございますが、しかしながら一面におきまして、三十六年度からは拠出制度が出発いたしまして、そういたしますると大体六十五才から、しかも月三千五百円というような形で参るわけで、この程度ならば現在の日本財政、また将来の日本財政ということをにらみ合せて、やっていける見通しを私どもとしては持ったわけでございます。それにいたしましても、御案内のごとく、本年度の予算におきまして援護年金を出発しますにつきましても百億、さらに平年度化しまするならばこれが三百億、しかも三十六年度でこの拠出制が始まりますると、四百五十億くらいの国庫負担をいたさなければならないわけでございまして、この額というものは、年金を受けられる方々から言うならば、あるいは決して十分な額ではないかもしれませんけれども、しかしながら現在の国の財政から考えるならば、相当な額を実は確保できたわけでございまして、どうかその点も一つ御了承をいただきたいというふうに考えておるようなわけであります。
  7. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 今の大臣のお言葉は、一応財政的な見地からするところの今度の国民年金法案に対する言いわけだけなんです。そういうことは私どももよくわかっているのです。そういうことを私はお尋ねしているのではなくて、このような不均衡があるのに対して、これを将来このまま推し進めていくのか、この不均衡のままでいくのか、あるいは整理統合して、一つのまとまった体系にして、国民の各層の中にあるところの非常な不平等、不均衡というものを是正する意思があるのかないのか、あるとするならば、どういうふうにして進めていくのか、こういうことを私はお尋ねしておる。
  8. 坂田道太

    坂田国務大臣 先ほどお言葉にございましたように、現在ありますところの公的年金制度、たとえば厚生年金であるとかあるいは恩給とかというものと、それから現在提案をいたしておりまする国民年金とにおきましては、そこに相当の開きがあると思うわけでございます。しかしながら、これも現在ありますところの厚生年金にしろあるいは恩給にいたしましても、これはやはりそれぞれの沿革、あるいはそれぞれ一つ目的を持っておるのでございまして、今直ちにこれを一本にいたしまして、そうして社会保障を一本にするというわけには参らぬと考えておりまするが、しかしながら遠き将来におきましては、やはりこれらのものをある程度調整をして、あるいは一本にしていく方向へ向うということは私は必要ではないかというふうに考えますが、具体的な案等につきましては、やはりその専門の方々の御意見等もよく聞いてからきめなければならないと心得まして、やはり社会保障制度審議会等に諮問をいたしまして、その点のところを一つ研究を願いたい、かように考えているようなわけであります。
  9. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 たとえばイギリス社会保障制度を見ましても、非常にすっきりしているのです。所得保障所得保障として、各種の失業あるいは疾病あるいは老齢というような場合には、これは所得保障一本でやっていますね。そして、それと一緒に今度はまた病気のときには健康保険のような制度がある。ところが日本社会保障になりますと、いろいろな制度があるのを見てみると、たとえば所得保障一本でいっておるのは恩給失業保険とそれから国民年金、それから今度出ておる中小企業退職金法案、あれがまあ所得保障一本でいっております。ところがその他の諸立法は、医療保障所得保障とちゃんぽんにして出て参っておる。しかもそれが、たとえば日雇い健保と一般の、ことに健康保険組合の場合の付加給付があるのなどと比べますと、処遇に非常な厚薄がございます。だからそういうような非常に不遇な立場に置かれている者は、病気になった場合に、一つこんな程度でしんぼうしておけ、お前は日ごろ収入も少い、だから掛金も少いから、病気になったかてお医者にかかれる期間は短うてもしょうがないぜ、あるいはその他の給付も悪くてもしょうがないぜ、片一方は日ごろ相当な給与を受けておって豊かに暮らしておる、そういう人は病気になったときもそれだけりっぱな待遇が受けられる、私は社会保障というものはこういうふうなものであってはならないと思うのです。また政府がいつも、社会保険というものはこれは助け合い運動なんだ、お互いに助け合うのだ、だからみんな保険金を出し合って運営していくのだ、こういうことを都合のいいときにはいつもおっしゃるのです。都合のいいときはいつもそういうことをおっしゃるが、制度制度間の場合にあっては、そういうことはすっかりたな上げになった議論をなさる。それぞれの伝統と目的があるのだから、これはとてもそんなものは当分はどうにもならぬというふうなことを、少くとも社会保障を担当される大臣の口からそういうような言葉が出るとは、私は日本社会保障のためにまことに悲しいことだと思うのです。そういう点について厚生大臣はみずから陣頭に立って、それはいろいろの反対はあるでしょう、おそらく猛烈な反対もあると思うのです。しかしながらそれをしも押し切って万民すべてにあたたかい光と風とを送る、これが厚生大臣の仕事です。すべてのものにひとしく自然の恩恵を与えるなれば、太陽はすべての人にあたたかい光を送るのです。しかしながら悲しいかな今日の社会というものは、その光をすら、裏長屋に住む人たちは受け入れられないのです。すべての人が同じように自然の恵みを受けると一緒に、同時にまた社会制度の中でそういう社会保障をやろうというふうな機構というものがこの世に生まれて参りまするならば、それをひとしく受けられるような制度というものを組み立てていく、こういうふうな信念というもの、こういうふうな情熱というものを持たなければ、私は一国の社会保障を担当する大臣としての資格がないと思う。そういう点で、私は今の厚生大臣の御答弁はまことにこれは残念だと思うのです。いかがでしょうか、ほんとうにそういうふうな何をこれから政府としてやっていこうという熱意を持っていただけるのかどうか、もう一度御答弁願いたいと思うのです。
  10. 坂田道太

    坂田国務大臣 恵まれない方々に対して光を掲げていくという点につきましての情熱と誠意とにつきましては、私も人後に落ちないつもりで実はおるわけでございますが、何を申しましても社会保障というものが日本に植え付けられましたのは戦後のことでございますし、また世界の歴史を見ましても、やはりこれは第二次大戦以後の問題かと私聞いておるわけでございます。たとえば今日来日をいたしておりまするニュージーランドの首相であるナッシュさん、あのニュージーランドにおいては、一九三八年ごろすでにこの社会保障制度に取りかかられて、今日では理想的な社会保障制度をしいて、あまねく、いわば今おっしゃるような万民にあたたかい手が伸ばされておることは御案内通りでございますが、やはりそこまで参りまするにはそれだけの年月と、あるいは国民の協力と、あるいは為政者の情熱というものを待って私は初めてそこまでいったかと思います。またニュージーランド日本の場合と考えまして非常な違いは、ニュージーランドは御承知のように非常に人口が少い、二百万ぐらいである。ところが日本は今日九千万の人口を抱えておる。あるいはその国民所得におきましても、ニュージーランド日本よりもはるかに高い、こういった点も考えまして、現実的な一つ社会保障制度を打ち立てていくためには、確かに正万民のために光を掲げていくという理想に向って前進をいたさなければならないと思いますけれども、やはり私はその第一段階といたしましては、財政を無視した一つのプランであってはならないというふうに実は思うわけでございます。ことにニュジーランドの打ち立てた社会保障というものも、その後むしろイギリスでは、ビヴァリッジ案を見ましても、このニュージーランドで打ち立てたものを研究し、参考として、大戦が終りましたたしか一九四五、六年でございますかに初めてこれが日の目を見、そして今日のイギリスにおける社会保障というものがいわば完成されておるということを考えますときに、やはりそこには年月が必要であり、かつ、みんなの努力が必要であるというふうに私は考えるわけでございます。しかもイギリス社会保障におきましても、現在やっておりますところの当初の案は、いわば均等フラット制拠出、そして均等給付ということになってきていることは御承知通りでございます。ところがこれはいかにも平等の拠出をやり、平等の給付を受けるという非常に理想ではありますけれども、一面におきましてはその給付内容というものがやはり低過ぎるという声が、今日イギリスのいわゆる社会保障におきましてもそういう欠陥指摘をされまして、たしか労働党におきましても、この給付の面についてもう少しこれを引き上げなければならないのではないかというような議論も出ておるやにわれわれは承知をいたしておるわけでございまして、そういうような点を考えまして、今度の提案いたしました国民年金というものは非常に現実的なまた一つの可能な、そして日本の経済の成長に応じて漸次これを充実をしていくという意味においては確かに意義が深いのではないか。しかしながら今申されましたような、いわゆる万民恩恵が及ぶということにはやはりわれわれとしても今後考えていかなければならない。しかしながら、残念ながら今の公約年金制度の方が実ははるかに給付の点におきましてもいいわけでございます。ところが御承知のように、たとえば厚生年金にいたしましても、その他の恩給にいたしましても、そういうものを受けておられないところの中小企業の方であるとか、あるいはまた農民の方であるとか、いわばそういうような恩恵の乏しい、光の掲げられておらないところに国民年金制度を打ち立てることによって、初めてそこへささやかではございまするけれども、実は光を掲げたつもりでございまして、やはりそういう制度を充実していくということは御指摘通りでございますし、またこの給付内容等について、従来ありますところの年金その他と均衡を保つように努めなければならないということは、私どもといたしましても考えておるようなわけでございますことを一つ御了承いただきたいと思います。
  11. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 いつまで議論をむし返しても何ですから、次に進みたいと思います。ただイギリスのはフラット制で、給付が低過ぎるというお言葉でございますけれども、しかし一週四十シリングといいますと、これは日本の金に直しますと、二十シリングが一ポンドですから二千円、それを月額にすれば八千円、日本の三千五百円という金額に比べて、生活程度開きはあるかもしれませんけれども、とにかくイギリス最低保障というものは、月額にして八千円というものが保障されている。そういうようなことを考えていくときに、私たちはやはりイギリスの国が社会保障に払っている努力というものについては、大いに見習わなければならないし、さらにまた少くも今日の生活保護法、あるいはその他の社会保障立法の中に含まれておりますところの、あまりにも低過ぎる給付というものをもっと引き上げるための努力をしていただかなければならないし、同時にまた国民全部がお互いに相助け合う、こういうふうな考え方国民の中に強く植え付けていく。もちろん政府がそれを助成するということ、政府がその財政的な負担を持つということは、これはやはり国民の出す税金なんですから、みんな自分たちのふところから出ることです。同時にまた、拠出をおれはよけいしたから、出しただけのものはおれに全部返してもらわなければならぬのだ、こういうようなことになれば、これは私的保険制度と変らない。しかしながら公的な社会保障制度として、公的な社会保険制度、あるいは公的な扶助の制度として、一つ体系的な社会保障制度というものを考える限り、国民がみんなで助け合って、そしてみんながとにもかくにも楽しく暮せるというような方向へ持っていくための努力というものを、国みずからがしなければ、国民の方はついて参りません。だから今後そういうふうな方向努力をしていただきたいと私は思うのでございます。  そこで今度の国民年金法案を見ましても、またこの前の国民健康保険法案を見ましても、そこに一貫して出てくる一番大きな欠陥というものは、零細事業場従業員処遇の問題であると思うのです。国民健康保険法案が出ましたときに、零細事業場従業員を一体どうするのだ、零細事業場で働いているという、ただそれだけの理由をもって健康保険から締め出されておる。従って療養給付は五割自分負担しなければならない。おまけに傷病手当金という所得保障はありません。しかも保険金は、半額事業主負担という恩典もない。そういうように健康保険からは締め出され、厚生年金からも締め出されておる。厚生年金保険の場合には、やはり事業主負担があります。ところが国民健康保険と同じ形で、零細事業場の者はやはり厚生年金からも締め出されておる。零細事業場に働く者を厚生年金保険の中に抱き取ろうという努力が何も払われておりません。だから、小さな職場で働いて日ごろ不安な生活をしている人はそのままに、いつの場合にも不利な立場に、ただ職場が異なるという理由でもって不利な立場に置かれておる。これを一向顧みようとしないところに、私は政府考え方の中に、そういう小さい職場におるその人たちの、ほんとうの日ごろの苦しみとあすへの不安に対する理解がないと思うのですが、その点について今後――今はこういう法案として出しましたが、しかし今後、それではこれをどういうふうにしていくか、これをこのままでいくのか、あるいはこれを引き上げていくための努力をするのか、こういうことを一つ聞かせていただきたい。
  12. 小山進次郎

    小山(進)政府委員 ただいまお話に出ました零細企業従業員の人々を、どういうふうな体系で処理していくか。この問題は前々から御議論の出ている問題でございますので、筋道として、条件が許せば被用者保険の系統に努めて吸収していく、これは単に年金部門におてのみならず、医療部門においても、できるならばそういうふうにしていきたい、こういう考え方は前前から、いわば関係者の間ではほとんど定説に近いくらい固まっている考え方でございます。ただ何分実際の条件ということになると、これも岡本先生御存じ通り、非常にむずかしい条件がございます。零細企業従業員事業主自身負担能力の問題もございますし、また零細企業従業員を把握するための諸般の技術的な条件の問題もございます。そこらの点が十分見定めがつきませんと、考えはそのような考えでありましても、実際がなかなかうまくいかぬ、こういうことで研究を続けておるわけでございます。ですから、将来において条件が整いますならば、方向としてそういう方向に移していきたい、かように考えておるわけでございます。
  13. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 失業保険任意包括制をとりまして、零細事業場について任意包括でもって、とにかく入りたい者だけで零細事業場を吸収していこう、こういう努力を労働省が始めました。そこで厚生省ではこういうことをお始めになるお考えがあるのか、あるいはまたあるとすれば、いつごろからお始めになる考えですか、さらにまた、労働省が始めることを厚生省が何で始められぬのか、その理由一つ聞かせていただきたい。
  14. 小山進次郎

    小山(進)政府委員 この問題はいろいろ考え方のある問題でございまして、少くとも現在立案されております国民年金制度の側から見ますならば、現在いろいろな年金制度によってカバーされておる人々に対し、最低限これだけの年金的な保護を及ぼそうという意味で、いわば、たまたま現在零細企業従業員がほかのどの制度にもカバーされていないという意味合いで、こちらでお世話をする、こういうことでございます。  次の問題は、先生のおっしゃるようにああいう任意包括を強化するというような方向でこれを吸収していくか、あるいはまた短期保険の場合でございますと、任意の制度を取り入れるということがそれほど将来に大きい影響は及ぼしませんけれども年金のような長期の制度になると、それを開いたことが、あるいは将来かえって被保険者のために不幸になる場合もあり得るわけであります。そういう事情もございますから、これは昭和三十六年の四月一日に拠出制年金が発足するときまでにあわせてその問題も解決をつけたい、今のところ一応かようにもくろんでおります。
  15. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 今私は年金だけのことを問題にしているのではないのです。健康保険を含めて、日本社会保障体系として零細事業場人たちをどうするのだということを問題にしている。年金はこれから出発するのです。しかし健康保険はもうすでに長くある制度です。すでに長い歴史を持ち、相当末端の機構も整っているこういうふうな制度が、片一方では労働省はもう任意包括でもって始めている。あなたは今、任意包括というような中途半端なものは、将来被保険者のために不利になるということをおっしゃた。私も任意包括というような中途半端なものを心から歓迎しているわけではございません。もちろん全部強制加入にすべきだと思っております。しかしながら、とにもかくにも、及ばずながらでも努力しようという意図だけは示しておる。そういうような善意を私たちはくまなければならぬ。ものは何でも悪くとっちゃいかぬ。やはり一生懸命努力しておるという姿が出たら、その姿だけでも私ちたはくみ取って、それがりっぱに育つようにお互いに協力し合っていく。お互いに善意を持って協力し合っていく。だから任意包括制度ができたら、私たちが小さな職場へ行った場合には、任意包括制度があるから入ってもらいなさい、こういうふうに従業員たちに私たちは勧めてやればいいのです。君のところの職場健康保険はどうなっている、失業保険はどうなっている、君たちのところでも入れるなら入ってもらえ、こういうふうに言うならば、やはり団体交渉の中で要求して任意包括の中に入れてもらえると思うのです。そういうふうな制度がなければ、私たちは協力しようにも協力の場がない。とにかく労働省はやっておる、ところが厚生省はやらない、そっぽを向いているのだということになってくると、これはだいぶ――今は労働省は労働組合の弾圧機関のように変ってきている。ところが片一方ではそういうことにも手をつけておる。厚生省は今までどこまでも勤労者の味方の立場に立つということが表看板なのだ。その厚生省がそんなサボタージュをしているということでは話にならぬと思うのです。これは厚生大臣から、どういうふうにお考えになるか、またどういうふうにこれからやっていこうとされるのかということについても答弁願いたいと思う。
  16. 坂田道太

    坂田国務大臣 私からお答えをいたしますが、その前に局長からまず御答弁申し上げまして、そのあとで私から申し上げたいと思います。
  17. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 健康保険の部門に任意包括の適用は、すでに岡本委員も御承知通り、またただいまも小山審議官から御答弁申し上げましたように、私どもも、それが可能でありますならば、それは極力被用者保険の線に入れるという建前で従来からきておるわけでございます。ただ、申し上げるまでもなく、零細企業というところに、一つ健康保険の軌道に乗せて参ります上において、いろいろな条件なり隘路がございます。それで、それもできるだけ克服していくべきでありますがやはりその点について、それが確実に運営されていくということにつきましては、私どもとしてはこれはないがしろにはできないわけであります。そういう点も含みまして、それからまたもう一つの点といたしましては、御承知通り国民健康保険法の改正がなりまして、私どもはあと二年の間に未適用の人々をこの恩恵に浴させるというような含みで皆保険計画を達成いたしたい、この国民健康保険の普及ということ、またこれが支障があるというようなことについても、私どもとして実際の運営に当りましてやはり考慮しなければならぬという点もございますが、いずれにしても、その本質は、零細企業であるということのために、企業の形態なりあるいは職員の稼働の条件なり、あるいは職場々々の移動の関係とかいうような面につきまして、私どもがこれならば軌道に乗せられるというようなものから逐次これを被用者保険制度の中に入れて参りたい、これは従来から申し上げておる線でありまして、今後一そうそういう線に持っていきたい、私どもとしてはもちろんそういう気持でおるわけでございます。
  18. 坂田道太

    坂田国務大臣 ただいま局長から答弁いたしましたが、私どもといたしましても、岡本委員の仰せになったことは非常に参考になる点だと思いまするので、研究をいたして、善処をいたしたいと考えておりますから、御了承を願いたいと思います。
  19. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 あまり抽象的でたよりない、当てにならないのですが、それでは大臣お留守の間に、事務的な問題についてちょっとお伺いいたしておこうと思います。  環境衛生の問題でお伺いしたいと思います。蚊とハエの撲滅運動が相当成功はしてきている模模でありますが、農村地帯で蚊やハエがいなくなったというので非常に喜ばれている。それは私は蚊とハエの撲滅運動だけの効果ではないと思う。一つには、農薬が大いにあずかって力があると私は思っておる。ところで、農村地帯では蚊やハエは減った、ところが都市周辺ではものすごくハエがふえてきた、こういう現象が出ている。どういうことかと申しますと、家畜の飼養が野放図にされておるペい獣処理法が一昨年でしたか改正されましたけれども、それが一向法の実効が伴っておりません。実施はされても、実際的な効果が出て参っておりません。相も変らず、ことに豚小屋が都市周辺に非常にふえて参りました。しかもそれが何ら監督されないような状態で、保健所の方へ住民の方から幾ら抗議を申し込みましてもどうにもならないというような状況なんです。これを今のようなままに置いておいたのでは、大都市の周辺はますますハエがふえてくると思うのであります。それについて、この法の趣旨を徹底させるためには、どうしても家畜を飼養するということは許可制度にする、もちろん都市周辺の地区に限る必要はあると思いますが、そういうふうな必要があると思いますが、そういう点について厚生省としてはどういうふうにお考えになっておるか、あるいはそういうふうな法改正の御用意があるのかないのかということを伺いたい。
  20. 聖成稔

    聖成説明員 ただいま先生は都市周辺というふうにおっしゃったわけですが、周辺のみならず、大都市の中心部等においてもそういうような事実がありまして、各都市においてこの問題がやかましい問題になっておることは事実であります。それで先年へい獣処理物の法律の改正の際に、一挙に許可制に持っていくか、あるいは一定の地域においては禁止する――もちろん許可制の前提には禁止ということを含めて考えたわけでございます。従来よりも一歩前進というような意味で、届出ということで法律改正が行われたわけであります。たったいま御指摘のように、どうもあれでは十分に効果が上らない、大都市の衛生当局の方々も、どうも届出では骨抜きで弱くて困るという声が高いのであります。現在私どもでその実情をいろいろ調査しております。その成績を見まして、状況によりましては、国会の御同意をいただければ許可制にして、厳重に大都市中心、特に周辺ならいざ知らず、都心部における蚊とハエは一掃いたしたいというようなことを考えております。
  21. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 その辺について十分な御認識がいただけておれるようなら、われわれも御協力して、実効の上るような法案の成立に努力したいと思います。  もう一つ同じような問題について、人口一、二万という町で、塵芥の処理に困っておるところがだんだん出て参りました。至るところにごみを捨てたのでは不衛生だからというので、各町村で自主的にごみ集めをやっておる。それを今まではどこか空間地であるとか、やぶの中であるとかを探して埋めたり、あるいは一カ所に集めてそこで消毒するというふうな処理をしておったわけであります。しかしながらそれはいつまでも続きません。長くたって参りますと捨てるところがなくなってしまう。そこで塵芥焼却場を作りたいという動きが相当出て参っておる。ところがそれには相当の予算を伴います。人口一万ぐらいのごみを集めますと、一日に千貫ぐらいのごみが出る。それを処理いたしますのに焼却場を作ろうとしますと、どうしても二、三百万の費用がかかる。ところが今日の貧弱な市町村財政をもってしては、そのような焼却場を作るのにはちょっとしんどい。そこでまた日ごろのごみを集めるための費用あるいはそれから先の燃料、維持費というようなものを考えていくときに、町村財政自体の相当な負担になって参ります。何とか一つ国の方から建設については幾らかの補助を出し、あるいはまたあとの維持については、地方交付税の中の積算の一つのファクターにするというふうなことをしていただきたいという声が出て参っておるのですが、その辺のところはどうなっておるのか。あるいはまたこれから後そういう努力をしていただけるかどうかをお伺いしたいと思います。
  22. 聖成稔

    聖成説明員 ただいま先生はごみの問題を御指摘になったわけでありますが、ごみよりもさらに都市が困っておりますのは屎尿の問題であります。そこで現在の屎尿処理の施設につきましては四分の一の国の補助と、さらに大体それの倍額程度の起債額の特別のワクが認められているわけであります。ごみにつきましては、ごみの処理施設のうち非常に経費のかかります堆肥を作る施設につきましては、本年度から正式に補助対象として取り上げたわけであります。ただいま御指摘のごみ焼却場につきましても補助対象に取り上げたかったのでありますが、本年度は屎尿問題と今の堆肥施設につきまして、前年度に比べますとかなり大幅な予算の増加を見たわけであります。将来の方向といたしましては、御指摘のようにごみ処理施設につきましても、できれば国の補助をつけたいという希望は持っておるわけであります。なお起債のワクにつきましては従来からも見ておるわけでございます。それから維持費につきましても、今御指摘ございましたような交付税の積算の中に含まれておるわけでございます。ただ人口一、二万――相当大きい都市ですとかなりの額になって参りますが、小さいところですと十分な額が計上されてないということで、当該都市の財政状況が困る場合もあるかと思います。今後とも御指摘のように十分一つ援助をいたしまして、この問題の解決をはかるようにいたしたいと思っております。ただ現状では、先ほど申し上げましたようにまず屎尿問題を解決しないと、その方がごみよりもさらに困るというのが、実情でございますので、逐次ごみの方にも入っていきたい、こういうつもりでございます。
  23. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 ない袖は振れぬということでございますが、これは将来の問題として、だんだんこういう問題が出てきているということを御認識願って、それを実現さすようなお骨折りをこれからお願いいたしたい。  それからもう一つお伺いしたいのは、近ごろガス中毒が非常にふえて参りました。昨日の夕刊にも、夫婦がふとんの中でガスストーブのために死んだということが報道されております。私はたしか神田厚生大臣のときだったと思いますから、今から二年前だったと思いますが、ガス中毒がだんだんふえてくる、これは何か原因があるに違いない、一つ厚生省の方で調べて対策を講じてもらいたいということをお願いいたしました。よろしい、わかりました、やりましょう、こういうふうな御答弁だった。ところがガス中毒がこのようにどんどんふえてくるのに、一向厚生省としては対策らしいものを打ち出していただいているように私には思えない。それは不注意だからしようがない、こういうことになっておると思う。しかし私はそんなものではないと思うのです。それについて厚生省としては、どういうふうな努力を今までしていただいたか。なるほどガス会社がいろいろ、注意をして下さいというふうな広報活動をやっております。ガス会社に広報活動をやれというようなことぐらいは、厚生省の方からお申し入れがあったかどうかは知らぬ。しかしながら私はガスの成分に大きな変化が来ているように思う。だからそれを調べて善処してもらいたいということを私は申し上げておいた。それについて何らかの検討をしていただいたかどうかということをお尋ねしたいのであります。
  24. 聖成稔

    聖成説明員 ガス中毒は、御案内のようにガス中に含まれている一酸化炭素による中毒で、これは無色無臭で非常に猛毒を持っておるわけでございます。この点につきましては、先年来国立衛生試験所におきまして常時ガスの成分につきまして研究、検討が続けられております。現在でもやっていただいておるのであります。その後の対策としては、今先生の御質疑でお触れになったのでありますが、原料によって一酸化炭素の含有量がずいぶん違ってくるようでございます。非常にいい原料を使えば一酸化炭素の含有量も少い。何か最近は一酸化炭素の含有量が上っております。先日私国立衛生試験所へ参りましたときも、そういうお話を聞いております。それでガスは本来は無臭でございますけれども、一般大衆に注意を喚起する意味におきましてにおいをつけまして、そのにおいによってガスが漏れていることがわかるようにさせておるわけでございます。にもかかわらず、事故があとを断たないことはまことに遺憾に思うのでございますが、私ども決してこの問題につきましてはガス会社にまかして、無関係だというわけではないのでありまして、今後いかなる対策をとったらいいか、同時にガスの一酸化炭素の含有量等につきましては衛生試験所で常時調べてもらっておりまして、いろいろ連絡をとってやっているというような次第でございます。
  25. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 実は京都でも、たとえばガス管が腐食いたしまして自然に漏れてきておったのが、家に入ってきて中毒を起したというふうなこともございます。東京でもそういうふうなことがある。あるいはまたこのごろは、起きて食事をしておって、ガスが消えてそのまま放出されているのに気がつかなかったために、中毒を起して死んでいる。こういうふうな死亡例すら出てきている。こうなって参りますと、もうまるでわれわれの身辺をいつでも殺人魔がうかがっているような不安をすら持たなければならない。だんだんみんなガス・ノイローゼになってくると思う。だからこの問題の解決のためには真剣な努力を払っていただかなければならぬと思う。私はあまり近年になってガス中毒がふえたものでありますから、実は私の知り合いの大学の衛生教室に頼んで調べてもらった。ところが最近の都市ガスですが、冬季の一酸化炭素の含有量が二〇・二%、夏に調べますと六%から八%、一〇%で、倍以上、倍から三倍に一酸化炭素の含有量がふえておる。どうしてそんなにふえたのだといって聞きますと、これはガスの製法によるのだと言うておる。夏は需用量が少いから自然に発生するガスをそのまま使っておる。冬は需用量が多いものだから、今日の急に膨張した都会に供給量が間に合わない。もう一つは採算を考える。だから、コークスに熱風を吹き込むのだそうですが、コークスに熱風を吹き込んでコークスの中に残っておる、ガスまで取り込むのです。それによって一酸化炭素の量がこんなにふえるのだ、こういうことなんです。そうなって参りますと、ガス会社は殺人剤を売っているようなものです。こういうふうなことをそのままに政府が見逃しておいて、それで今日ひんぴんとして起るガス中毒に対する対策が立っているということは私は言えないと思うのです。これは事実なんです。これが事実であるとするなれば、政府の方としてはどういう手を打つか。私はやはり市販ガスの成分に規制を加える必要があると思うのです。随時調べて、そして一定量以上の一酸化炭素を含んでおるガスを供給してはならないということを法律的に規制する必要があると思うのです。これは一酸化炭素の含有量が多くても少くても同じじゃないか、こういうことは私は言えないと思うのです。私がこういうガスの問題に特に関心を持つゆえんのものは、この前の委員会でもお話しましたが、私の家族が一ぺんに、母親と子供四人でございましたが、ガス中毒でやられまして、苦い経験を持っているから、私はガスに対して特に注意を払うのです。ガス中毒を起すときには、何かガスの中に尿意を催す成分がある。だから、びろうな話ですが、みんな尿意を催して目が覚めて、それで便所へ行こうとして部屋を出て倒れているのです。一酸化炭素の含有最が少ければ――これは一酸化炭素以外のものがそういうふうな働きを持っておるのです。だから一酸化炭素の中毒死、あるいは中毒のために動けないというふうな状態になる前に、やはりそういう現象が起きてくる。これは私たけの狭い経験かもしれません。しかしながら、あるいはその他の何かで気がつくかもしれないと思うし含有量が少ければ、中毒死に至らない間に発見されるという率も多くなって、助かる率が当然多いはずです。だから一酸化炭素の含有量が非常に高いということは、ガス中毒死の一つの大きな原因であると私は思いますので、これはいかにガス会社から反対運動があろうとも、これには人命というものを対象とする限り、きぜんとした態度でガス中の含有量というものに対する規制をやっていただかなければならないと思うのでありますが、厚生省のお考えを承わりたいと思います。
  26. 聖成稔

    聖成説明員 先ほどもお答え申し上げましたように、私どもこの問題はきわめて重要な問題だと考えておるわけでございます。そういうような観点から、常時衛生試験所で調査をしていただいておるわけでありますが、ただいま先生の御指摘のように、最近における事故が増発しておるという事実にもかんがみまして、なお十分に実情を調査いたしまして、必要がありましたならば、先生の御意見のように必要な対策を立てていきたい、かように考えております。今後一そう真剣に取り組んでいきたいと思っております。
  27. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 今度の予算にも婦人の更生対策費というのが組まれておりますが、これは労働省からも少し予算が組まれておるというふうに、二つのところから予算が出て参つっておる。もっとも更生した婦人が再び転落するような者を防止するというふうな対策が講ぜられておるのはけっこうではございますが、どうも売春防止法ができてから、この売春防止法の実施をどこが責任を持ってやっていくのかという、責任者たるお役所はちっともはっきりしておらないじゃないか。取締りの方は警察がやる、それにひっかかってきた者は厚生省がやる、あるいはまた労働省がそれに対する労働対策というような形で、名目だけの予算をほんのちょっぴり盛っておる。こういう形をもってしては、せっかくあれだけ騒がれて売春防止法が成立いたしましたにもかかわらず、その実効が一向にあがってこない。逆にこのごろはどんどんもとの古巣に舞い戻りまして、ところによっては昔と同様に繁昌しておるというふうな現象すら出て参っております。これについて、一体どこが責任を持って政府はやっていただけるのかということ、まず第一に厚生省でやっていただけるのかどうか、そういう点をお伺いしたいと思います。
  28. 池田清志

    ○池田政府委員 売春防止法が国民の総意によりまして実現をいたして施行中でありますことは、まことに喜ばしいことだと思います。この法律の執行に当りまして、いわゆる行政の面で各省にそれぞれ分属されておることについてはお話しの通りでございます。申すまでもございませんが、売春の道に沈んでおられた方々の転廃業の指導をするというようなことにつきましては厚生省、その方々の就労をあっせん指導するということについては労働省、あるいはまたそういう方々が法を犯されるという立場になられました場合におきましては法務省、検察庁というふうなことに相なっておりますことは御指摘通りであります。内閣におきましては、それらの法律の施行について統一をはかりまするために、これにつきまする審議、相談をする機関もあるわけでありまして、今日のところ厚生省のみが主となってその責任を持っておることでありませんことは御承知通りであります。
  29. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 厚生省のみが主導権を持ってやるわけでないということは、現状は私も知っております。だから、それを統括的にどこでやってもらえるのか、だれがほんとうに力を入れてやってもらえるのかということを私はお伺いしております。
  30. 池田清志

    ○池田政府委員 今の御意見はまことにごもっともでございます。私どもといたしましても、これを一手に引き受けて親身になって御相談し、善導し、あるいは職につけていただくということを一ところでやるようにいたしたいのですが、今の各省の分れ方からいたしまして、それぞれ各省の担当する部面にそれぞれの面が分属されております現状は、まことにしようがないのでありますが、御高見のほどは十分尊重いたしまして……。
  31. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 私はそんなふまじめなお答えを聞いているのじゃないのです。せっかく成立した法律をどうするのだということなんです。それじゃ、その法律の中で、この売春問題について一番熱心に取り組まなければならないお役所はどこですか。
  32. 池田清志

    ○池田政府委員 この法律の施行に当りましては、従来そういうところに入っておられた婦女子の方々がまず足を洗っていくということであります。それが第一歩であるわけですが、そのことについては厚生省が全責任を持ってやったわけです。御承知のように各都道府県に相談施設等もできまして、それによってやって参っておりますことはおわかりの通り。従いましてそういう禍害というものが今日では法律上なくなっており、実際上そういう面で働いておられた方々がそれぞれに足を洗ってほかの方面に行っておられるという実情にありますことはおわかりの通りであります。
  33. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 あなたのお話を聞いておりますと、三百代言を相手にしているような気持なんです。理屈はうまいことをおっしゃる。しかしいやしくも売春問題が取り上げられた理由は、まず第一は婦人の貞操が搾取の対象になってはならないということなんです。第二は花柳病の対策です。そういう問題になってくれば、これは当然厚生省に一番密接な関係がある。そういう法律に違反すれば、これは法務省でしょう。これはそれ以外の法律関係だって、厚生省関係の諸法だって、違反すればやはりみな法務省にいくんですから……。そうでしょう。それは法案そのものは法務委員会が審議されたかもしれません。しかしながら立法の精神というものは、これは何としても転落婦人というものは極貧層から出るのであり、そしてまたその境涯というものがいれば非常に同情すべき状態の中にあるわけでありますから、法律が成立した以上、一番真剣にこの問題と取り組まなければならないのは当然厚生省である。それをのらりくらり、まるでウナギをつかまえたような調子であなたは返事されますが、これは何でもいい、いいかげんにあしらっておいたらいいということでは、ちょっとふまじめですよ。
  34. 池田清志

    ○池田政府委員 今御指摘のことは、第一歩であるということは先ほど来私がお答え申し上げております。この第一歩の仕事を担当しておるのが厚生省でありますから、厚生省といたしましてはその担当について徹底的にやるべく、御承知のように昭和三十二年度から三十三年度にかけまして、二年間、そのことで一生懸命やっておるわけでございます。厚生省の職務といたしましての務めは一生懸命やっておるわけでありますが、このことにつきましてまだ不十分な点もあらうかと思いますので、それらの点につきましては、御指摘をいただきますれば十分拝聴いたします。
  35. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 不十分過ぎるから私はこれを問題に出しておるのです。だけれどもあなたと話をしていても何だから、また今度大臣とゆっくりやります。  次にらい対策のことでお伺いしたいと思いますが、今度らい予防費の中にテレビを五台ふやす、それから不自由者慰安金を月五十円増額するというふうなことでもって、気の毒ならい患者に対するところの処遇が改善されておるという点は非常にけっこうなのですが、らい療養所が十一カ所あるのに五台というのは、これは与えられない残りの六カ所の療養所は、テレビ受像のできないような僻遠の地にあるためなのですか、あるいは予算関係のためなのですか、どちらですか。
  36. 小澤龍

    ○小澤政府委員 実は奄美大島を含めて十一カ所でありまして、奄美大島は実はテレビが使えませんもので、残った十カ所について二カ年計画で考えております。御承知のように映写装置をそれぞれの療養所に持っておりますけれども、これは旧式な映写装置でございますので、昨年実は二カ年計画でシネマ・スコープというのですか、広角の映写機を買うことにいたしまして、今年は二年目になっておりますから、それに加えまして今年、来年でテレビをそれぞれの療養所に配置したい、かような計画でございます。
  37. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 それではそういうふうな映画を映したり何か、月に何回ぐらいされておるのでしょうか。
  38. 小澤龍

    ○小澤政府委員 実はその資料を用意して参っておりませんので、この次に答えさせていただきたいと存じます。
  39. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 私の方に陳情の書類がきておるのですが、月二回くらい映画がある、それをもうちょっとふやしてもらいたい、こういうふうに言うてきておるのです。それは月二回でもいいじゃないかというお考えもあろうと思うのですが、しかしながら一歩も療養所を出ることができないような人たちは、ほんとに娯楽に飢えておると思うのです。だからテレビができたことは非常にけっこうだと思うのです。だからこれを二年計画だなんてしみったれたことを言わないで、せめて一ぺんにしてあげたら非常によかったと思うのですが、それはどうでしょう、予備費からでも出ないのでしょうか。
  40. 小澤龍

    ○小澤政府委員 実は今年は二年目のシネマ・スコープの購入予算もつけたものでございますから、テレビもこれを二カ年に分割いたしたのでございますけれども、御指摘の点まことにごもっともでございまして、私ども療養所の経費の運用におきまして、もしも余裕があるようでしたら何とか考慮していきたい、かように考えおります。それから映画の回数を先生から教えられて、はなはだ恐縮いたしました。これも予算とのにらみ合いもございますけれども、でき得る範囲において回数をふやして参りたいと存じます。
  41. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 非常に温情のあるお答えでございます。患者もそういうふうなことが夢でなしに実現いたしましたら喜ぶであろうと思いますので、次官も一つ今度は御協力をお願いいたしたいと思います。いかがでございましょうか。
  42. 池田清志

    ○池田政府委員 ただいまの私ども御鞭撻いただきましたお言葉通り努力させていただきます。
  43. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 それはどうもありがとうございます。  そこで不自由者慰安金が五十円ふえたことでございますが、この不自由者慰安金については、前々から私委員会で、も少し何とかしてあげたらどうかということを申しておるのですが、らい療養所の人々の書いておるものを見ますと、不自由な人は自分で何もできないから、いろいろなことを人に頼む、人に頼めばそれについてはやはり多少なりお礼をしなければならない、お礼をするのに物がないから、園から配給される石けんを与えたり、あるいははだ着を上げたり何かして、自分は継ぎのひどいものでしんぼうしておる、こういうようなことを書いてあるものを読みますと、また食事にたまについてくるおやつであるとか、くだものなどをお礼の代償にして自分の足りない用足しをしてもらう、できない仕事をしてもらうというふうな手記を読みますと、ほんとうに涙がにじむような気がするのです。従ってこの不自由者慰安金の増額というものは、これは患者慰安金として五百円、そこへ不自由者慰安金が二百五十円、そこへ何かはかのものが少しプラスされて八百円、七百五十円か八百円程度の現金だけがわずかに日用品その他いろいろなものに使い得るところの費用だという、その実態調査を私の方へ送って参っておりますが、それを見ましても、平均を見ますと、たばこ代が二百三十七円であり、カン詰類、これは福神漬だとかそういうものを買うんだろうと思うのですが、それが月に三十七円、新聞が二十六円で書籍が二十二円、平均でありますからこういうことになるのでしょうが、これじゃ書籍も新聞も十分見ることのできない人が多いというふうな状態に置かれておる。それに対してまた園内で働いた人たちに与えられる報酬が甲乙丙三級に分れておって、甲が三十五円、乙が三十円、丙が二十五円、これも前から、これはあまりひどいじゃないかといつも言っていることなんです。それに対して、それは三度食事を給与し、そして同時にまたその中で住居も与えた上でのその作業に対する報酬なんだから、それはお小づかいでしんぼうしてもらわねばならぬ、こういうような御返事なんです。まあ住み込みのお仕着せのでっちさんだったら、お小づかいは少うていいというふうな考え方と同じようなところで出発はしているのだけれども、もし園内で働く人を使えば一人前の人件費を出さなければならない、さらにまた園内に入っている人はそれだけどういう人かといえば、それは刑務所に入っている人とは問題が違うのです。刑務所に入っている人は、これはみずからの罪の報いで入っている。しかしながららい療養所に入っている人は、これは公共の福祉のために、自分の自由を犠牲にしているのです。自分の居住の自由を犠牲にしているのです。居住の自由を犠牲にしているだけでなしに家庭生活をも捨てているのです。妻子に別れ、あるいは夫や子供に別れて療養所に入るのです。そして一生その療養所の中で消えていかなければならない不遇な人たちなんです。そういう不遇な人たちというものを、ほんとうに不遇の人たちという同情を持って見ていくなれば、君ら働いたかて、食わして生きさせてやっているのだから報酬が少うてもしんぼうしておけ、こういうふうな考え方は、これは全く冷たい数理計算です。これについてもっとあたたかい気持を持って、このような金銭的な欠乏の中で不自由な暮しを、しかも一切の社会生活というものを犠牲にしてやっている人たちに対して、もう少し何らかの考え方を持っていただけないのか。これは大臣にお伺いしたいと思っていたのですが、次官の方から一つお答え願いましょう。
  44. 小澤龍

    ○小澤政府委員 まことに御指摘通りだと存じます。社会から隔絶した生活をしておりますので、できるだけ厚い援護の手を伸ばさなければならぬことは当然のことだと思います。そこでただいま御指摘の不自由者慰安金は昨年まで百五十円であったのでございますが、今年度からたしか二百円に引き上げてもらったのです。さらに来年度は二百五十円に増額になった。私どもは当初少くとも三百円にしたいと思いまして財政当局とも折衝いたしたのでございますけれども、一ぺんに三百円を認められませんで、小刻みに三百円に近づけつつあるという現状でございます。私どもは何せ不自由者というものの援護を第一優先的に考えたいと考えまして、財政当局との話し合いも実はここに重点を置いて参ったわけでありますし、今後も参らなければならぬと考えておるのであります。そこで今度は不自由者だけではなくして、その他の患者に対しても御指摘のようにできるだけ勤労に対しては薄謝を呈したいと考えておりますが、実は私どもはただいま申し上げたような考え方から、率直に申し上げますと二次的に扱ってきたわけでございます。今後ともこれらについてはさらに努力いたしまして適当な謝金が出るように努力していきたいと思います。ただらいの療養所の中で医師の仕事に従事願っておる人たちも相当おるのでございますが、ことに肢体不自由者に対する介護という仕事を患者さんにお願いしてございまして、これは私どもといたしましては勤労に対する報酬という考え方もありますけれども一つは同士の人たちお互いに助け合うという考え方でこれを従来お願いして参ったのでございます。事実、かつてはらいの治療方法が幼稚でございましたので、初めは軽くてもだんだん重くなる、今世話しておる人たちが何年かたつと世話される段階にきておったのでございまして、そういう点から患者さんもその点は非常に納得しておられたのでございますが、最近はらいの治療方法が非常に進歩しまして、重症になる人が非常に減ってしまった、逆にかえってよくなってくる、自分たちが幾らお世話しても、お世話を受けることが考えられないということもございまして、患者さんの方から正当な報酬の要求が出ていることは事実でございます。事実でございますが、こういった予算を一気に増額することもなかなか困難でありますし、なお同士愛という観点から御協力願っていきたい。われわれとしては謝金は今後とも努力していきたいと考えます。
  45. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 幸いあたたかいお気持は持っていただいているようでございますから、今後とも一そう御努力願いたいのでございますが、先年愛生園に参りましたときに、いろいろお医者さんからもお話を聞いたのでありますが、どうも各収容所とも欠員が多くてなかなか充足できないのです。そこでどうでしょう、保健所の医師の充足に対しては、今それに対する対策費というのが組まれて貸費の制度が行われておる。ところがこういう僻地の収容所であるとか、あるいは国立の結核療養所なんかでもやはり人を得るのに困難な模様があるようでございますが、そういうようなところをも一緒に、国立の結核療養所については、もしもこれは即時にということが困難であるとするなれば、せめてらい療養所の人たちの診療に当るお医者さんだけでも、その人を得るための特別の給貸費制度というふうなものを保健所と一緒に、あるいはより以上の予算をもって一つ出発をしていただくというわけにいかないでしょうか。
  46. 小澤龍

    ○小澤政府委員 御指摘の、特にらい療養所に勤務しようという医者が非常に数が少いわけでございます。充足率は全体平均で六〇%程度です。東京の全生園は比較的に人が雇いやすいので、これは一〇〇%近いわけでございますが、それだけにほかの療養所は人が少いわけであります。特に奄美大島の遠隔の地になりますと非常に希望者が来ない。ただいま行っておる方も、任侠的精神をもって行って下すっておるわけでございます。そういう状況でございます。これは放置、放任できないのは当然でございます。そこで実は私どもは僻地医療と、らい療養所の医師対策とあわせまして、ただいま先生の御指摘の貸費学生制度を立てようと思いまして実は計画いたしまして、その実現方に努力いたしたのでございますけれども、残念ながら機熟せずして、ついに今国会には御提案申し上げることができなかったのでございます。この努力は今後とも続けていきたいと存じております。
  47. 坂田道太

    坂田国務大臣 ただいまの問題は、実は私も厚生省へ参りまして調査をいたしましたところが、ただいま局長から御答弁申しました通りでございまして、実際定員はもらっておりながら、そこへ行かれるお医者さんの方が少いということは、私一つの大きな問題だと心得まして、何とか一つそういうところへ行っていただけないものかということで、今研究をいたしておるような段階でございます。しかしながら、今局長から申し上げました通り、やはり単に経済的に給与を上げてあげるということも一つの方法でございますし、あるいはまたそのお医者さん方の子弟の教育を幾分こちらで見てあげるということも一つの方法でございましょう。またいわゆるらいの病気というものに対しての研究は、やはり今後続けていかなければならないわけでございまして、この点についてはお医者さんの中でも、これを究明しようという意欲を持った方々も多数おられると私は思います。そこで、やはりこれらに対する一つ研究が十分にできるような設備等を配慮してあげることも一つの方法ではなかろうかというふうにも考えます。同時にまた、こういうような仕事に携わるお医者さんあるいは看護婦さんという人たちは、何らかの宗教的な気持、あるいは求道的な考え方、そういったものを持った方でないとほんとうの行き届いためんどうを見てあげることはできないのではないかというようなことも考えまして、従来の考え方だけでなくて、何かここへ一つ新しい――新しいかどうかはわかりませんが、とにかく何かお医者さんがそういうところへ行かれるような方法というものを考えてみたい。岡本さんも、そういうような具体的な案でもございましたら、一つお示しいただきたいと思うわけなんで、ほんとうに定員をもらいながら、しかも相当の待遇をほかのお医者さんよりも見てあげながら、なおかつ行かない、充足率が五〇%あるいは六〇%ということでは、これは申しわけないと私は思うのでございます。この点は、まあこういうことができるかできないか私わかりませんけれども、そこへ従事するような看護婦さんであるとか、あるいはそこへ行かんとするお医者さんであるとかいう方々に対して、特別私からお願いをするというようなことでもやって、一つその充足率を高めていきたいというような気持でおることを御了承願いたいと思います。
  48. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 大臣のお言葉を承わりまして、まことに、そういう気持を持っていただくということは非常にけっこうだと思うのです。やはり収容所に勤める人たちは、ほんとうに殉教的な気持で仕事をされるのだから、そういう尊い気持に報いようという誠意を持つ、このことが一番大事であると私は思うのです。一つ今後ともそういうことをよく考えて、そういうあたたかい気持を持っている人に対しては、単に危険手当とか、そんなような意味ではなく、何とかそれに報いなければならぬという熱意を持ってやっていただくようにお願いしておきたいと思うのです。  なお、らい患者の方から非常に心配してきていることは、国民年金の中で、傷害者年金ですが、それに対して将来収容所の人たちはどうなるのだろうということを案じて、質問書を出してくれというのできているのですが、今度の年金制の中で、どういうふうにそういう収容所の中にいる人を扱っていただけるのか、その辺についてお伺いしたいと思います。
  49. 坂田道太

    坂田国務大臣 この点も非常に私重要な点だと思います。生活保護法の適用を受けられておる方々に対しても、やはり国民年金が実質的に受けられるようにしてあげなければ、全国民を対象にしたいわゆる国民年金制度というものも意味がなくなるではないかというふうに考えまして、私就任早々ではございましたけれども、この点につきましては特に閣議決定をいたしまして、老齢加算、傷害加算、母子加算ということを決定いたしたようなわけでございます。もちろんこの額等については今後また努力をして参らなければならないと思いますけれども、そういう意味合いから考えましても、同様に、らいの病院におられる方々に対しましても、これはやはりその傷害の程度に応じまして、何ら変りなく支給ができるということにいたしておる次第でございます。  こまかい点につきましは事務当局から答弁をいたさせます。
  50. 小山進次郎

    小山(進)政府委員 今大臣が申された通りでございまして、先ほどお話にありましたように、不自由舎にいるような人も、おそらく大部分は傷害年金の該当者になるということです。これについては今のところ何らの給付制限は予定しておりません。
  51. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 そうすると、不自由舎にいる人たちは、一般の市井にいる人たちと同じように、不自由者援護年金がいただけるということになりますと、患者慰安金や従来の不自由者慰安金の上に、不自由者援護年金が支給されるのか、あるいはそれはもう別個になるのか、その辺のところをお伺いしたい。
  52. 小澤龍

    ○小澤政府委員 実はその点、まだ私の方としては研究不十分でございまして、これから関係各方面と検討いたしたいと思います。
  53. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 研究不十分ということで今一応逃げておくんじゃないですか、えらい失礼なことを申し上げるかもしれませんが。これはもう当然併給にならなければ援護年金制度のできた意味がないと思うのです。今まで通りなら、年金制ができたかてできぬかて、園内におる人にとっては同じなんです。だから、たとえば月一万円の所得がある人でも、老齢になれば年金はもらえるし、援護年金はもらえるし、七十才以上ならもらえるし、あるいは傷害者になれば傷害者としての援護年金がもらえる。だかららいの収容所にいる人たちは、一応最低生活はもちろん保障されているでしょう。しかしながら援護年金ができるという制度そのものは、従来の生活プラス援護年金なんだから、それが収容所におる人には出ないということであれば、およそ援護年金制度というものはナンセンスだと思うのですが、その点について、厚生大臣どうです。
  54. 小山進次郎

    小山(進)政府委員 先ほど申し上げましたように、らいの収容所におりましていろいろ生活の世話をしてもらっているということのゆえに、特に援護年金の支給を制限したり、あるいは減額をするということは、おっしゃる通り考えるべきものじゃないと思いますが、ただ先ほど来お話になっておりました慰安金ということになりますと、これはやや性質が違って参りますし、金額から申しましても、援護年金の場合は月千五百円出ますので、これはおそらく当然調整されるという筋合いのものだと考えます。
  55. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 この慰安金というのは、名は慰安金なんだが、この慰安金は一体何に使うんだ。未来の局長さんどうお思いになりますか。小山さん、慰安金というのは、名は慰安金だが、実質的には何に使われているものだと認識されていますか。
  56. 小山進次郎

    小山(進)政府委員 口頭試問をいただきまして大へん恐縮でございますが、たとえばちり紙とか手ぬぐいの類とか――生活保護にもそういうものがありまして、名称を慰安金なり小づかいということで若干のふくらみを持たしておるというのがこの種のものでございますから、従って先ほど申し上げましたように、生活が完全に保障されているような施設の方に援護年金を差し上げる場合は、今のようなたぐいの金は、ほかの方との受益の公平という点から見まして、多少はごしんぼう願うという筋合いになるだろう、こういうふうに考えておるわけであります。
  57. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 援護平金は、ある程度の所行があり、最低生活が確保されている人でも、一応それだけの資格を備えた人には与えられる。六十九才何カ月まではだめなんです。七十才になったら、とたんに援護年金がもらえる。そうすると六十九と七十は不公平じゃないか、これは議論にならないんです。それはその資格を備えたらもらえるんだから。だからその援護年金、傷害援護年金なら傷害援護年金に該当する者は、これは最低生活の維持のために一応他の名目によっていろいろな費用が出ていようとも、それにプラスされると考えるのが制度としての当然の考え方であると思う。ところが一方でそういう金が出ているんだから調整されるのはしようがないじゃないかということになると、そこに私の言う冷酷な数理計算というものが出てくる、こう言うのです。あなたのお考えは理論的にも、また人間性的な議論の上からも間違っておると思うのですが、これは一つ厚生大臣の方に裁判していただきましょうかね。
  58. 坂田道太

    坂田国務大臣 この点は率直なところ、年金局におきましても研究をいたしておる段階かと思いますし、またここではっきり御答弁申し上げる段階ではないと思いますが、しかし、御趣旨のことは非常に大切な事柄であるというふうに思いますので、いずれこの点をはっきりいたしましてお答えを申し上げたいというふうに考えます。
  59. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 それではこれ以上はまた年金のときにお伺いしますが、もう一点だけお伺いしておきたいと思うのは、入園患者にして拠出能力のある人は、普通に拠出して年金の加入者になれるのでしょうね。
  60. 小山進次郎

    小山(進)政府委員 お尋ねは、おそらくらい療養所に入っている人をどう扱うかという問題かと思いますが、らい療養所に入っております方々は、御当人が御希望になれば保険料を納めていただいて拠出の対象にしております。しかし無理には保険料は徴収しない、かような扱いにしております。
  61. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 大臣がお留守でございましたのでほかの問題を尋ねておったのでございますけれども、それではもう少し健康保険の問題についてお伺いしたいと思います。  健康保険で支給される傷病手当金ですね。これは一種の療養期間中の所得保障なんです。この所得保障として現在標準報酬の六割が支給されておる。ところがその六割をもってしてはなかなか留守家族の――たとえば入院患者が発生したとする、傷病手当金が六割支給される。六割では留守家族の生計の維持はなかなか困難である。それからまた患者の方もいろいろ小つかいが要る。平生より生活費はかさむのです。そこでその場合、現在はたとえば事業主から幾らかの補助を出してやる、幸いその人の勤めておる企業体がやや財政的に裕福であれば、一つ何ぼか生活を補助してやろう、こういうことになるのです。ところがその事業主が出した分だけ傷病手当金から差し引かれる。それが今の制度の建前です。こういうことになって参りますと、これは逆に今の健康保険法の所得保障というものがその人の所得制限になるのです。出しても無意味だから出さないということになる。健康保険法にはこういうふうな重大な欠陥があると思うんですが、厚生大臣はどうお考えになりますか。これは是正する必要があるとお考えになりませんでしょうか。
  62. 坂田道太

    坂田国務大臣 この点は私まだ実はつまびらかにいたしておらないのでありまして、よく研究をいたしてお答え申し上げたいと思います。
  63. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 傷病手当金のお尋ねでございますが、これは従来から大体六割が手当金として出ておるわけです。近年になり特殊な場合の加算金、この手当金の額が第一の御質問かと思いますが、それで十分かどうかという問題が一つあるわけであります。十分かどうかというのは、考え方によって御意見はあろうかと思いますけれども、私どもこの制度を運用して今日まで参りました現状におきまして、格別これは非常に困るという声もそう伺っておるわけでもないわけであります。また私ども大体この辺がまあまあ今日のところではいたし方ないところかと思っております。もし時代の推移に伴いましてこれがなお不十分であるということでありますれば検討しなければならぬが、ただいまのところは、率直に申し上げて、私どもは今の程度でまあまあいいのじゃないかと思っております。  それから二番目の、事業主から出ました場合にこちらの方が差し引かれる、これは制度の建前といたしまして、その方が事業主から月給なり賃金をもらっている間はこちらは支給しない。それが切れた場合に支給する。その間におきまして、企業のそれぞれによって、病気になって何カ月くらいは事業主が出すというところもございましょうし、また極端なところは一、二カ月後すぐ切りかえるというところもあろうと思います。この辺のところは制度としても扱いにおいて違いが生ずるところもあるわけでございますが、まあ制度の建前としてすぐ、たとえば何カ月以降でなければこの傷病手当金は出さないということを今きめたといたしますれば、それで画一的に線が引かれるならばそれも一案かと思います。しかし場合によっては、事業主がこういう制度を悪用する意味において出さないというのでなしに、ほんとうに事業主が出せないというものも世の中にはあると思います。この点を考えますと、これはやはり運用の面で、事業主といえども今まで自分のところに働いておった勤め人でありますから、それが病気になったからといってそうむごいこともしまい、この辺は人の善意をある程度信用してもいいのじゃないか、そういうような点でございまして、先ほどちょっと申し上げたような何カ月という線を引いて云々することも私はまだ時期尚早のような気がいたします。この辺は一つ制度の運用において善処して参りたい、かように考えております。
  64. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 局長のお答えはちょっと私はお尋ねしておることと違うのです。それで傷病手当金制度があって、六割では生計の維持が困難な場合に、たとえば事業主の方で、やっていけないからそれじゃ月々幾らか補助してやろうということで事業会計から毎月一定額をきめて出しますと、給与とみなされてその分だけ傷病手当金から差し引かれるというのが建前になっているんです。だからそれじゃかわいそうじゃないか、結核で一年も一年半も入院して、六割の傷病手当金ではやっていけない、だから事業主の方から月三千円補助してやろうか、五千円補助してやろうかということで、出すことができるような道を開いたらどうか、こう私は言っているんです。
  65. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 現在の建前ではさようになっていないわけでありますから、お話はよく承わりまして、私どもとしてはもう少し研究させていただきたいと思います。
  66. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 それじゃ伺いますが、今の制度のままでも、たとえば私的年金制度のような形のもので共済組合のようなものを作って、共済組合の給付として渡した場合にはそれは賃金、給与とみなされないで、差引はされないでしょうね。
  67. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 調べて、あとでお答え申し上げます。
  68. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 もう一つお伺いして、もう時間も一時でございますから終りたいと思いますが、今度は年金厚生年金保険のほかに国民年金ができ、また中小企業の退職金制度ができるというふうに、非常に年金の積立金がふえてくるわけです。そういたしますと、この積立金について何らかの規制をする必要があると思う。現在厚生年金保険の運営が一体どういうふうな法的規制を受けておるのか、またどういうふうにして運営がきめられておるのかをまずお伺いしたいと思います。
  69. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 厚生年金保険の積立額は三十二年度末におきまして二千三百八十三億ほどに相なっております。これは積立方式をとっておりますので、将来この額もさらにふえて参るわけでございますが、その積立金は今日におきましては政府の資金運用部の方に預託いたしまして、そこにおいて運用されているわけであります。これは将来の給付の財源に相なるものでありますから、まず安全なる運用が第一に必要になってくるわけであります。ただし、同時にまたできるだけ効率的な運用ということも考えねばならぬわけであります。その辺のからみ合わせにおいていろいろむずかしい問題も出て参ります。そういうところに預けるよりも、何か別個に運用したらどうかという御意見も当然出るべき筋合いのものであろうと思います。しかしながら資金運用部の方の運用も最近においてはいろいろ考えて参りまして、平均いたしますと五分九厘、六分弱の運用を現在事実上いたしております。予定では五分五厘でありますが、事実上五分九厘の運用をいたしております。また同時に、こういう資金を長期にわたって吸い上げたままで置くということにつきましても、納めまする被保険者の立場から、また自分たちの掛金を積み立てておるのであるから、できれば何か自分たちの福利の方にも活用することを考えてほしいという御意見が出ますのもまた筋であろうと思います。さような点からいたしまして、昭和二十七年度以来、その積立金の中から被保険者の福利という面を念頭に置きまして、若干の還元融資を毎年やっているわけでございます。その他の分は、資金運用部資金の中に入れて、政府財政投融資計画の線に沿ってこれが運用されている、こういうことでございます。
  70. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 預金部運用資金の場合言は五分九厘、これは非常に安い金利でありますが、これがいろいろ政府財政投融資の中へ繰り込まれておるので、今度はそのうちの同割を還元融資に回すかというふうなことは、どういう機関でおきめになるのか、還元融資はことしはなんぼにしようというようなことですが、それは運用のやはり骨子だと思いますが、そういうような方針は、どこでだれがおきめになるのかということをお伺いいたします。
  71. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 これは毎年度予算を組みます際に、財政投融資計画として政府の方で案を立てまして、国会の御審議をいただきます。
  72. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 その方針は閣議でおきめになるのですか、それとも大蔵省でですか。
  73. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 もちろん閣議でやります。
  74. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 そこで還元融資の問題でありますけれども、今度中小企業退職金法案が出て参りましたので、一応中小企業から出てくる退職金積み立てが適正に運用されなければならないと考えまして、一体それじゃ今後国民年金の方の積立金はどういうふうに運営されるのかと思いまして、厚生省の方から資料をちょうだいしたのです。還元融資の対象を見ておりますと、どうも大企業だけではありませんが、非常に大企業に偏重して融資が行われておる。だからこれでは、厚生年金保険に入っているのはひとり大企業の従業員だけじゃございませんから、あまりこのような片寄ったことが行われていることはどうもふに落ちないと思うのですが、還元融資を一体それではどこへ幾ら融資するのかというふうな細目をおきめになるのは、だれがどこでおきめになりますか。
  75. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 これは先ほども申し上げましたように総ワクといいますか、大きいワクは政府財政投融資計画の中でやるわけであります。それを具体的にどこの企業にどの分をどのくらい回すというようなことにつきましては、これは借り受けたいという当事者からの申請を地方当局を経由して私どもとりまして、きめますのは厚生、大蔵、自治三省で相談して最終的に決定いたすことになっております。  それから一般論として大企業に少し偏重しているような御印象を受けたということでありますが、これは人によってそういう感じをとる方もあろうと思います。これは先ほど冒頭にちょっとお答えいたしましたように、まず将来の給付の財源になるものでございますから、何といたしましてもこれが野放図な運用をすることによって、価値がむだになって損失を招くということは避けなければならぬ。そういう意味で私どもといたしましては、安全第一ということが第一に出てくるわけでございますが、しかしそういう面だけにあまりこだわって参りますと、また先ほどの御意見のようなことにも結果として相なるかと思います。これはもし従来のあれにそういうふうな感じを持たれたことがあったならば、私どもとしては戒心すべき点だろうと思います。何分にも大企業の被保険者だけじゃありません。中小企業にも被保険者がいるわけでありまして、その人たちも掛金をかけておるわけでございますから、その人たちの福祉のための運用ということも、私ども何とか頭をしぼって考えていかなければならぬと思います。それと、先ほどのいわゆる担保といいますか、償還能力といいますか、そういう面に対する配慮をどういうふうにかみ合せていくか、こういうことでありますが、従来そういうふうな大企業に偏しているのじゃないかというようなお感じがもしあったとするならば、これは私どもといたしましては今後十分気をつけて考えて参りたいと思います。
  76. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 還元融資の状況を見て参りますと、二十七年から三十二年までの間に二百四十二億融資されていますね。三十二年、三十三年の状況を資料としてちょうだいいたしまして見てみますのに、三十二年には七十億、三十三年の計画は七十五億ということになっております。それがどこへ融資されたかということを見て参りますと、どれを見ても、融資されているところはいわゆる巨大資本といわれるところばかりです。三井鉱山、太平洋炭鉱、三菱金属鉱業、王子製紙、北海道炭鉱、国策パルプ、これは名前をあげていけば、どれもこれもほとんどがそういうふうな大企業に出てきておる。試みに、同じようにたくさん出ておるのはどういうところか調べてみますと、たとえば日立製作所です。日立製作所が昭和三十二年に二億九千九百万円の融資を受けている。住宅に二億二千九百万円と、病院を建てるのに七千万円というふうに、約三億の融資を受けておる。三十三年度になってからやっぱり二億一千万円。だから三十二年、三十三年と合せまして五億九百万円という膨大な還元融資を受けておる。それでこの間、あまり日立がたくさん融資を受けておるものだから、日立の会社から出ておる同僚の石川君に、君のところは一体従業員は何ぼあるのかと聞いたら、三万だという。全国で被保険者が三万の団体に、とにかく二年の間に五億というような膨大な金が融資されておる。また三井鉱山を見ましても、三十二年と三十三年と合せますと三億四千万円というふうな金額が融資されておる。こんなふうな融資のされた方を見ていきますと、これは非常に失礼なことを言うがおこらぬで下さい。しかし、還元融資というのは、昔の造船疑獄の例の融資ですな、あれと同じような小型の――一つ一つの金額は少いですから、砂糖にたかるアリのような形で、それぞれの資本家がずっとついていっているんじゃないか。だから、この前健康保険汚職が出ましたが、こんな姿のままにしておいら、現在はそうではないでしょうけれども、将来これが取り合いになって、第二の健康保険汚職が出、第二の造船疑獄というものが、この還元融資をめぐって私は出てくると思うのです。だから、こういうふうな運用の仕方については、厳に局長も考えを付して、もっと公正な、すべての被保険者に届くような還元融資をしていただかなければならないし、厚生大臣も、各局長のやられることにめくら判を押していないで、こういう問題については特に厚生省が――いやしくも国民が納めるところの零細なお金の中から、この前は健康保険汚職が出て参りました。あれは非常に悲しむべきことだと私は思うのです。私は時間があれば、きょうは健康保険汚職の実態というものも御説明願い、私の不審に思うこともお尋ねいたしたいと思っておりましたが、しかしそういうことは、きょうはもう時間がございませんから端折りますが、しかしながら、健康保険の問題に続いて、また年金汚職というようなことになってきたのでは、私は厚生省の非常な恥辱になると思う。現在は夢そういうことはないと信じておりますが、今後こういう還元融資という問題が――これはおそらく国のいろいろな産業の開発は必ず国民に返っていくんだから、財政投融資の中にそのまま入っているのではないか、そういうお考えもあると思います。しかしながら、国としての廃業の開発、振興は、やはり国自体の他の財源をもってやっていただくべきである。こういうふうな大きな還元融資というものは、当然被保険者に返るよにする。だから三千億というような年金の積立金があれば、これでもって住宅建設のばんとしたものを年々にやっていけば、これはものすごい住宅建設ができると思います。今日の日本国民の一番大きな悩みになっておるのは、住の問題です。この住の問題は、それぞれの堅実なと思われる企業体に、どんどん制限せずに融資する。これなら大丈夫。おまけにこういう住宅建設というようなものについては、そこにちゃんと担保物件があり、かりに途中でその企業体がどうなっても、あとには現物の土地、建物という担保物件がちゃんと確保できるのです。だからそういうふうな方面に使えば、積立金というものはもっと有効な、ほんとうに被保険者の身に返ってくる形でもって、幾らでも何はできる。ことに還元融資が今のように大企業にどんどん行われる。そうすると、日立とかその他の大企業に働く人たちは、片一方では給料はいい。しかも片一方ではいろいろな厚生施設があり、いい住宅が提供せられるというような形で、中小企業の方は不安定な状態で、低賃金で働いておる。しかも六畳の一部屋に親子五、六人がざこ寝をしておる。こういうふうな生活の格差、賃金の格差が、ますますひどくなる一方です。せっかく厚生年金がこうしてりっぱに積立金ができていき、制度として運用されていくときに、現在のような形の還元融資をしていけば、賃金格差をますますひどくする一途であると思います。だから、こういう点について特に厚生大臣の御意見を求めて、今後厳に公平な還元融資をしていただくようにお願いしたいと思いますが、いかがでしょう。
  77. 坂田道太

    坂田国務大臣 ただいまの問題は非常に重要な問題でございまして、零細な国民方々から積み立てられた金は、やはり積み立てられた方々の福祉厚生の面に還元していくことでなければならぬというふうに私は思うのでございまして、単にそれが、ある大きな企業のみに限定されるということは望ましくないと考えます。今後とも公平な配分をやって、そうしてそれが国民の零細な方々にも還元していくような方向へ進みたいというふうに私は考えておるわけでございます。なおまた積み立てました金というものは相当多額の金になりますし、また御指摘通り厚生、保険関係において汚職等が起らないように私は厳に戒めて参りたいというふうに考えております。
  78. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 これで終ります。
  79. 園田直

    園田委員長 午後二時三十分まで休憩いたします。     午後一時二十一分休憩      ――――◇―――――     午後三時二十五分開議
  80. 園田直

    園田委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  厚生関係基本施策に関する件について質疑を続けます。滝井義高君。
  81. 滝井義高

    ○滝井委員 午前中に岡本委員からいろいろと総論的なことや各論的なことが質問をされましたが、私は堀木さんが厚生大臣になったときも、橋本さんが厚生大臣になったときも、それぞれ厚生大臣が就任するたびごとに、大臣の寿命というものはそう長いものではない、従ってまあ六カ月か七カ月で、長くて一年くらいだから、あれもやる、これもやるといってもなかなかできないんだということを言っておったんですが、その遮り橋本さんも七カ月そこそこで文部大臣に、栄転をされたのか、左遷をされたのか知りませんが、とにかく文部大臣に任命がえになりました。橋本厚生行政というようなものは、何か明確なものをはっきり打ち出さずに、いろいろなものをたくさんあとの坂田さんに残して文部大臣に転じておるのですが、昨年十二月国民健康保険法が成立をして、一応皆保険ができることになるわけですが、今度の国会所得保障のにない手である年金が発足を見ようとしております。そこで歴代の大臣に尋ねると同じようなことを坂田さんにも尋ねるのですが、坂田さんの命もそう私は長くないと思う。参議院選挙が終った後に内閣の改造をやるということになると、またどこか文部大臣かあるいはどこかに栄転をされないとも限らない。そこでやはりまあまあ普通六カ月かそこらというのが相場であるとするならば、その相場の中の仕事というものを一応やはりめどに置いて大臣というものはこれから仕事をやっていかなければならぬと思うのです。まあ長くて一年ですから、一体坂田さんはあなたの厚生行政の重点をどこに置いて、これだけは自分の任期でやっておかなければならぬというものがあろうかと思います。で、あとでいろいろ堀木さんから残された問題については質問をしてみたいと思いますが、あなた自身が厚生大臣として、このことだけは後世の史家から見た場合に、日本の厚生行政では、坂田厚生行政では、こういう点が特色としてその実現を見たいというものを一つくらい残したいだろうと思います。われわれもまた残していただきたいと思いまして、それを一つまず明らかにしていたたくことが一番いいのではないか。それを心棒にして、それを扇のかなめにして坂田厚生行政というものが展開をしていく、こういうことになると、われわれも非常に質問をするにもしやすいと思うのです。
  82. 坂田道太

    坂田国務大臣 最初に私といたしましては幸か不幸かこのたび厚生大臣に就任をさせられまして、六カ月か一年か、それはわからぬことでありますが、しかしながら任期のある間におきましては、私としましては、これはというものだけは一つやってみたいというふうに思っております。そこでこれまた橋本前厚生大臣あるいは堀木前々厚生大臣あるいは党の方々あるいはこの委員会の方々あるいはまた社会党の方々が多年要望されておられましたいわゆる所得保障の画において、年金制度というものを本国会に提出する運びになったわけであります。私といたしましては皆さん方のいわば積み重ねられた上に立って、この国民年金法案を提出する当の責任者に実は相なったわけでございまして、私はこのことにつきましては、その所得保障に一歩踏み出した年金法を私の手によって皆さん方に御審議をわずらわすということはまことに光栄だと考えておるわけでございます。何といたしましても、これは今後の日本における社会保障国民保険一つの柱と、もう一つ所得保障の大きい一つの柱といたしまして、相当に国民生活に重大な影響をもってくるものだと心得えておるわけでございまして、何といたしましても、この年金制度だけは一つ皆様方の御協力を得まして本国会において無事通過をするように私は努力をいたしたいというふうに思うわけでございます。これを基本といたしまして、いろいろの厚生行政をやっていく覚悟でございます。
  83. 滝井義高

    ○滝井委員 今度の国会国民年金法なり厚生年金の改正案も出るらしいのですが、とにかくそういう年金法をぜひ実現をしていきたい。こういうことでそれを中心として厚生行政の展開をはかりたい、こういうことだそうでございますが、あなたが就任したときにこの委員会でお述べになった言葉の冒頭には、所得保障医療保障の実現に努力をする、今後これらの施策を中心にして社会保障制度の充実とその基礎的話条件の整備をはかって参りたい、こういうことをおっしゃっておるわけです。実は堀木さんも、皆保険の基礎的諸条件を整備して参りたい、こういうことを言っておる。あなたは社会保障制度の充実とその基礎的諸条件を整備して参りたい、こう言っておるわけです。そこで、その基礎的諸条件の整備とは一体何かということです。堀木さんも基礎的条件を整備すると言ったのですが、堀木さんのときは皆保険の基礎的諸条件の整備だった。あなたは社会保障制度の充実とその基礎的諸条件の整備。年金と皆保険と両方の基礎的諸条件の整備になっておる。非常にあなたの場合はその範囲が広範多岐にわたることになったのです。そこで、広範多岐な問題はあとで尋ねるとして、まず第一に、堀木さんから橋本さんへ、橋本さんから坂田さんへと受け継いだ皆保険の基礎的諾条件の整備、これは一体具体的にどういう工合に進行をしておるのか、これを一つ御説明を願いたい。これは大臣が事務当局から聞いていなければ、事務当局でもかまわぬと思いますが、これは一体どういうことになっておるのか。
  84. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 大臣にかわって私からお答え申し上げます。皆保険の基礎的諸条件と申しますか、たしか前に申し上げました、国民健康保険法の改正をやって、国民健康保険法の普及計画に資する、こういうことが第一であります。これはこの国会において皆様方の御協力によりまして先般成立いたしました。ただいま実施の軌道に乗せておる最中でございます。私どもといたしましては、この法律改正によりまして今後二年の間に大体皆保険計画を達成できるという自信を持ってただいま運用しておる次第であります。  それから第二には結核対策というものがあったかと思います。これも明年度の予算におきましては、やはり結核対策に若干の特別対策措置を講じておると存じます。それを中心といたしまして、また私ども国民健康保険法の運営におきましてもそういう点に力を尽しまして、結核対策も進めて参りたい。それから医療機関の整備でございますが、これも特に無医地区の医療機関整備関係でございまして、これも明年度予算におきましても引き続きこれの解消に新しい手を打っていくように相なっておるかと思います。かような点からいたしまして、大体この皆保険の幕礎的条件と申しますか、そういうようなものにつきましては逐次進めて参っておるのが現在の段階かと思っております。
  85. 坂田道太

    坂田国務大臣 ただいま保険局長からお答えを申し上げた通りでございますが、大体国民保険を三十五年度中に完成をしたい。しかしその制度がありましても、それを受け付けるところの医療機関がなければ、国民の側からながめた場合においては、たとえて申し上げまするならば、無医地区等においては、国としては国民保険制度が打ち立てられたにしましても、そこの無医地区においては、その医療機関に診療を受けることができないわけでございまするので、それらの地区において医療ができるような、いわゆる診療所とかあるいは病院とかいうものを整備していかなければならぬ、こういうことが第一点かと思います。同時に最近の医療というものが非常に科学技術の進歩に伴いまして複雑でございますし、あるいはまた総合的な診療というものが行われなければならないわけでございまして、そういう意味から申しますると、相当に完備をした病院が必要になってくるわけでございまするが、それらの私どもの所管をいたしておりまする医療機関の中におきましても、全国的にながめますると、非常にアンバランスがあるのではないか、やはりこのアンバランスをバランスするということに努めていかなければならないし、また私たちの省以外の病院等におきましても、やはり一つの計画のもとに病院が建てられなければならないというふうに考えるわけでございまして、この辺の点につきましても、ある程度アンバランスをバランスするという方向へいかなければならないのではないか、こういうようなことを実は考えておるようなわけでございます。
  86. 滝井義高

    ○滝井委員 社会保障の基礎的諸条件の中の一つの重要な柱である皆保険の基礎的条件は、国民健康保険の普及と結核対策の推進と医療機関の整備、一応この三つだと大臣から答弁をせられました。堀木さんの言った基礎的条件と少し違うようでありますが、一応それで及第をして、その次の年金の基礎的条件所得保障一つであり、坂田厚政の大きなかなめになって厚生行政が展開をしていく年金の基礎的条件は一体何か。
  87. 小山進次郎

    小山(進)政府委員 これは先生かねがね申しておられますように、年金は、その人が盛んな年令で生産に従事しておりますときに出ておりました所得をもとにいたしまして、その人が老齢とか、あるいは不慮の廃疾とか、もしくは死亡というような事故にあいました場合に、御本人もしくは生き残った遺族のために何らかの意味において、一面においてはそういう人々が生活をしていけるような何がしかのものを与える。他面においては、本人にとってはできるだけ、生産的な労働に従事しておった当時の生活に相応した生活がそういうふうな事故になった場合にも続けていけるようにしよう、こういうようなことでございますので、もとは何といっても、生産的な活動に従事しております場合におきまして、ある程度その生活を続けていくことができるような所得を得ていくということが、これは何と申しましても所得保障の場合のいわば基本的な条件になるわけでございます。そうなりますと、これは結局目ざすところ、日本の経済構造の基本的な条件でありまする経済構造の二重性というようなものが逐次解決をされていきまして、すっきりした形になっていくということが必要だということになって参りまするので、所得保障の基本的条件が何かということになりますと、これは結局そこまでいかざるを得ない問題だ、かように考えておるわけでございます。
  88. 坂田道太

    坂田国務大臣 ただいま小山審議官から申しました通り、何を申しましても今度提出いたしました年金法というものは、その基本的な考えといたしましてはやはり拠出制をその基本といたしておるわけでございまして、生産に従事して、そして何らかの所得があって、そしてその方が将来老齢あるいは傷害あるいはその他の事故によって受ける所得の低下といいますか、そういうものを防いでいこう、あらかじめそういうものを予定をいたしまして、そして今生産に従事し所得を得ておるその所得の一部を、そういう老齢の場合においてあるいは傷害を受けた場合においての一つの備えとしてこれを積み立てていくというのが基本的な考えでございますし、同時にそれらの人たちの自発的な気持と同時に、やはりそれに対しては掛金の二分の一を国で見ていくという考え方からこの年金法というものの立て方がなっておるわけでございまして、私どもといたしましてはやはりそういうような観点から、自分の老後については自分の所得の一部を積み立てていって備えをするということをよく御了解をいただくということでなければならないのではないか。いかにりっぱな所得保障制度ができましたといたしましても、それを受けられるところの人方のいわゆる認識と申しますか、年金に対する心構えというもの、つまり自発的なそういったものを十分尊重しまた自分考えていただくということがなければ、私はその制度というものは進まないのではないかというふうに考えるわけでございまして、ただいま審議官から答弁いたしましたような心構えで、その基礎的な条件を今後整えて参りたいというふうに考えておるわけでございます。
  89. 滝井義高

    ○滝井委員 今、大臣なり小山さんから御答弁がありましたが、年金の基礎的な条件は――まあ今度の国民年金拠出制を建前としており基本としておるから、従ってわれわれが日常の生産活動なり経済活動をやる場合に、そこから確実な所得が入って、そうして保険料が払える姿が出ていなければならぬ。ところが現在の日本経済のもとにおいては非常な格差があり、二重構造だからなかなかそれがうまくいかない。だからこれを解決することが年金の基礎的条件なんだ、これはもうその通りです。ところが、これは厚生行政から非常に大きくはみ出している部面なんですね。だから、坂田厚生行政において、社会保障制度の充実とその基礎的条件を整備する、こう所信を表明せられた、その基礎的条件を整備するということは、今のような二重構造を解消するということでは私はないと思う。何か厚生行政のワクの中で、少くとも坂田さんや小山さんなんかがやり得る基礎的条件というものがなければならないと思うのです。そうでなければ――たとえば医療における皆保険の基礎的条件とは何だ、これは国民健康保険だ、結核対策だ、医療機関の整備だということを言われましたが、これらは厚生行政のワクの中でやれることなんです。そして、日本の経済の二重構造を解消するということが同時に皆保険の基礎的条件にもなっておる。だから私の知りたいのは、新しく坂田さんが厚生大臣になって年金を中心に推進するというのは、一体その基礎的条件というものは、これとこれとこれを厚生行政でやったならばそのときには、この年金というものは少くともほかの二重構造がある程度解消されてくれればうまくいくのだということで、厚生省の中で手の届き得る範囲でなくてはならないと思う。それでなければこれはどうも作文になってしまうと思うのです。どうも私は頭が悪いので、この基礎的条件というものを前に私が質問をして、堀木さんがぱっと答えたから、これは厚生省また基礎的条件を出したかな、エビでタイをつるつもりかなと思って、実はきょうは年金坂田さんがおやりになると、こうおっしゃるので、年金の基礎的条件というものは一体何であるかと聞いたのです。なるほど二重構造はそうでしょうけれども、その二重構造の解消がもし日本経済でできるならば、これは日本の資本主義というものは先進国と同じような隆々たる姿にいくと思うし、最低賃金の問題でも、業者間協定というけちなものを政府が出さなくとも、これはわれわれが言う一律八千円を出せるわけです。ところが大坪さんやその他の人がなかなか賛成しないというのは、二重構造という壁が前に黒々と立ちふさがって、これが解消できないところに、ちゃちな援護年金といって、十一月からわずか千円しかやらない年金しかできない理由があるのです。だから根本的には、その二重構造の解消をするならばその障害は抜け得ると私は思うのだが、しかしそれは早急にはなかなかできないとするならば、厚生行政の中からその基礎的条件を整備する一つの糸口を切り開かねばならぬ、その切り開くための基礎的条件とは一体何かということなんです。これがもし把握されていないならば、今のように二重構造ということになれば、年金制度というものは今以上を出ない、少くとも保守党の政府のもとにおいては今以上に私は出ない、こう思うのです。たから、この点をもう少し、頭が悪いのではっきりしておいてもらいたい。
  90. 坂田道太

    坂田国務大臣 滝井委員は決して頭が悪いではなくして、非常に頭がいいわけなんですが、私どもといたしまして、あるいは私がまだしろうとで、御質問の趣旨によく答えないということかと思いますけれども、たとえば今回年金法が通過いたしました場合を考えた場合に、これが最低限の生活をしておられるところの生活保護法を受けておられる方々というものを抽出いたして考えますと、これに対して生活保護法の建前からいうならば、何らかの別な収入があった場合においてはこれを収入とみなして、それを切り捨ててしまうということだと思うのでございますが、私が就任いたしましてから、実はこの問題につきまして、やはり国民年金ができて、そうして生活保護法を受けておられる方にもこれが及ぶような別途のことを考えるべきではないかというようなことを考えまして、やはりこの生活保護法方々にも、たとえば老齢加算、あるいはまた母子加算あるいはまた障害加算とういことを認めていただくように実は閣議決定をいたしようなわけでございまして、その額等についてはまだ大蔵省と最後的な決定はいたしておりませんけれども、少くともそういうような加算の制度を認めて、これに国民年金が実質的に及ぶということであれば、年金制度が打ち立てられない前と、それから年金が始まってからとでは、それだけやはり生活保護法を受けておられる方々にプラスするのではなかろうか。もちろん国民経済というものが一方において進みますし、そしてその生活水準というものとの関連を見ていかなければなりませんけれども、少くとも年金制度という立場から見るならば、それだけのものが加算をされるということは、これはわずかな金ではありましょうけれども、受けておられる方々にとっては相当ありがたいことではなかろうかというふうに考えるわけでございます。なおまた、何を申しましても、この年金制度が低所得者層に対してどういうような影響を持つかということにつきまして、たとえば国の力としましては税金の面において、あるいはまた失業をなくす完全雇用というようないわゆる失業対策の面から、あるいはまた住宅対策というような面から、もっと基本的に申し上げまするならば経済力というものによって、このボーダー・ライン層に落ち込む人たちというものを防ぐということも、根本的にはこれは大きな問題だと思うのでございまするが、なおかつそれにいたしましても現在二百四十万世帯の低所得者層がございますし、そういうようないわゆる低所得者属というものを、それらの経済政策、あるいは減税政策等において転落せんとするところの人たちを防ぎますとともに、その低所得者層の人たちが更生していくという道をはかることも大切だと思いますが、私たち厚生省の所管といたしましては、現在あるところの低所得者層、いわゆるボーダー・ライン層というものに着眼をいたしまして、これらの人々が年金が実際に支給される段階において、どれだけ一般の生活水準に更生していくかというところにねらいを定めけなればならないのではないかと思いますし、その影響というものは本年度援護年金にいたしましても百億、しかもこれが普通の平年度化しました場合においては三百億の金というものがとにかくこの層におもに入っていくということは相当な影響を持ち、その老後につきましても相当な精神的なあるいは経済的なゆとり――ゆとりという言葉は当らないかもしれませんけれども、少くとも不安というものに対する解消の一助にはなるのではなかろうかというふうに思うわけでございまして、私は決して大した影響ではないのではなくて、相当な実際的な経済的な影響というものが出てくると思う。ことに援護年金の場合においては、相当所得制限をいたしております。これは一面においては問題であろうと思いますけれども、しかしながらおもに低所得の人たちに対してこのお金というものが入っていくということはやはり相当なプラスになるというふうに考えるのでございまして、こういうことを押し進めていくということがこの諸条件の中の一つかと実は私心得ておるわけでございます。
  91. 小山進次郎

    小山(進)政府委員 先ほど滝井先生が御質問になった趣旨を、私若干正確に把握しないでお答え申し上げたために、問題が少しはっきりしなかったようでございますが、ただいま大臣がお答え申し上げましたように、あそこで申しておりまする所得保障の基礎的条件というのは、つまり現在所得がほとんどない者あるいは全然ないといったような人々にもある程度の所得を与えていく、いわば国民年金という制度を行うことによってまんべんなくそういうものが行き渡るようにしていく、こういう制度を行うことが所得保障の基礎的条件を整備するのだ、こういうような考え方でいっているわけでございまして、実は私が先ほどうっかり申し上げましたような、もっと本質的な意味における条件として申し上げておったわけではないのでございまして、その点、ただいま大臣がお答えになったような趣旨だ、こういうように御了解をいただきたいと思います。
  92. 滝井義高

    ○滝井委員 私はあなたの前段の答弁で実はいいかと思うのです。医療保障の場合はそれだけ問題の認識というものが、たとえば基礎的条件といえば、国民保険を普及するとか、医療機関を整備するとか、あるいは結核対策をやる、こういう答弁で何とかこれは、悪い言葉で言えばごまかしていけたのです。しかしもはや年金というものになると、そういう厚生行政という、ちゃちといってはおかしいけれども、狭いワクの中の答弁だけでは、年金制度をやる基礎的条件というものは一体何なんだ、こういうことになると、結局日本経済の二重構造というものにぶち当らなければならぬという、ここなんですね、問題は。私はここを――さすが小山さんです、的をぴちっと射って言ってくれたんですが、実は私はきょう少し言いたいと思ったのだが、もう次に進むから言いません。実はそれできょう社会局長にも来てもらっているのです。さいぜん岡本さんの質問にも、特に五人未満と言いませんでしたけれども、そこは出たのです。五人未満の零細企業従業員は一体どうするのだという問題、やはりこれにつながってくると思うのです。年金制度ほんとうに順当に発展をせしめていって、拠出制をその柱に確立をしようとするならば、やはり私はこの問題の解決なくしてはできないと思う。医療は構造からいえば上部構造ですから、何とかごまかすことができるが、所得保障は、医療と同じような面がありますけれども、これは今すぐ命がどうだという医療ほど深刻性の問題がないわけなんです。まあ老後になってからというような問題です。割合みんな遠い将来を、いわば霧を通して見るような限で所得保障というものを日本人は見がちです。ところが病気だというと、なま身ですから、すぐに病気になるかもしれない、あるいは現実に病気の人もおるという状態で、非常に身近に感ずるということで、幾分切迫感というものについて医療保障所得保障については隔たりがある。ところが最近日本における老人人言の増加というものが、あるいは新しい遺法の制定、そして戦争後におけるインフレというような問題が、やはり所得保障というものを考えなければならぬ、こういう切実感というものを病気に次いで、医療保障に次いでわれわれに与えたところに問題があると思う。ところがその老人人口が非常にふえたというこのこと自体の中に、やはり日本の二重構造という運命がからまって、非常に年金制度を進展せしめるむずかしさというものをわれわれに教えてくれておる。今大直が二百四十万世帯ですか、厚生白書に書いてある数字が正しいならば千百十三万人、そういうものが出てきておるわけなんですが、これらのものの実態を見てみると、結局それは生産性の低い中小企業零細企業に従事しておる者か、あるいは商業とかサービスとかいうものに従事しておる者。ところが最近、きょうの新聞をごらんになれば、大企業というものが学校の卒業者の雇用を非常に少くしつつあるという現状、そうして中小企業なりサービス業、第一次産業部門、第三次産業部門にぐっと雇用がふえてきている。これは結局何を意味するか、低賃金を意味する。小山さんの言う、いわゆる確実な保険料を納めるだけの所得というものが保障せられてないという形が出てきておる、こういう実態。そこには雇用者も自営業者も、それからそこに働いている家族従事者というか、そういうものが、いわば一つの大きなかたまりになった低所得階層になっている。そしてそこには若い人と老人とが競合しながら、ひしめき合って就職をしておる。こういう形があると私は思う。それは同時に日本人口問題でもあるし、経済の二重構造の問題と重なった問題として出てきておると思う。これを解決せずして、将来の年金の展望というものは今からそう進むものではないというのが私の考え方なんです。だから基礎的条件を整備するというなら、小山さんが言われた通り、まずここにメスを入れなければならぬが、それのメスを入れることが当面の日本においては、特に僣越ながら保守党の政権のもとにおいて、経済政策というものが大きく転換をせぬ限りにおいては、二重構造における低所付随層というものはなくならないというのがわれわれの認識です。なくなっても、それは非常に長時間かかるという認識のもとにおける基礎的条件というものは一体何なんだ、こういうことになる。それを私は聞きたいのです。
  93. 坂田道太

    坂田国務大臣 これもまた的確なお答えにならぬかと思いますけれども、ただやはり私は、最近の生活保護法の人員がだんだん下ってきたことについて、あるいは厚生省のいわゆる末端において、相当無理をして、当然生活保護を受けらるべき人たちを締め出したというような御批判があるかと思いますけれども、しかしながら一面において、この四、五年におきまして、広義の意味における社会保障政策というものをふやして参った。その結果、やはり一面においてはこういう人員の低下ということも出ておるのではなかろうかというふうに思うわけでございますし、またたとえば英国におきましては、もちろん私たち社会構造とあるいは経済上のいろいろの違いはございましょうけれども、しかしながら、あそこにおいては保守党がこれを推進をいたしまして、その結果、今仰せになるような、いわゆる低所得者層というものが漸次改善されてきておるというデータが実ははっきりしておるわけでありまして、単に資本主義社会であるからこれはだめだというふうには言い切れないのではないだろうか、社会主義の政策のみがこれを解決するのだというふうには言い切れないのではないだろうかというふうに私たちは思うのでございまして、やはり資本主義社会におきましても、為政者なりあるいはまたわれわれが協力をいたしますことによって、今のような問題も解決することができるというふうに実は信じておるわけでございます。ただ、その諸条件につきましては、それが何かというようなお尋ねに対して、あるいは的確なお答えにはならぬと思いますけれども、しかしながら、私たちはその点にメスを入れて、その実現を期さなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  94. 滝井義高

    ○滝井委員 私も、資本主義の政党が現在の日本の非常に苦しい二重構造なり過剰労働力というものを解消できないとは申さない。現在の岸内閣のとっておる政策そのままではできないのだ、大きく政策の転換を必要とするのだ、こういう論理でございますから、間違いのないようにしてもらいたいと思うのです。そこで、もちろんさいぜん大臣が言われましたように、皆保険の基礎的条件とともに、坂田厚政の扇のかなめである年金制度の確立をもって厚生行政をやろうとするならば、その年金の基礎的な条件年金制度確立の土台をかためていくためには、加算制の問題とか通算の問題とか、完全雇用とか、住宅政策とか減税政策というものが総合的にやらなければならぬことは当然です。それは大まかに分けて言えば、雇用の積極的な増強の政策をとること、それからいま一つは、社会保障の充実というような言葉で表現すれば、何とか片がつくかもしれませんが、当面この際一番問題なのは低所得階層なんです。千百十三万人も低所得階層がおる、こういうことになると、これらの人がまんべんなく年金制度拠出でやっていけるかというと、私は実はここに大きな疑問を持っておるのです。本会議の答弁でも、将来七割か七割五分程度しか加入の対象人口の中から掛金をかける能力はないという推定の答弁がありました。そうすると、二割五分か三割というものは落ちる。これは百人の二割五分か三割ならば、二十人か三十人だから大したことはないのですが、二千万とか二千五百万とか二千七百万の二割とか三割とかいう数は、一握りの国民の数ではないのです。こういう者を一体どうしていくのかということなんです。そうしますと、こういう者が年金に加入し得る制々、少くともその保険料が払い得なかった制度のもとにおいても、何か考慮をしなければならぬ。私は年金の問題はまた別にやるつもりですが、たまたま基礎的条件からこういうところに入り込んできたから言っておるのですが、これが一番私は問題だと思う。これはあに年金のみならんや。保険でも同じです。国民健康保険でも、金額で一割、世帯で二割落ちておるのですから、年金と変らない。ところが今度は国民年金国民健康保険が重なるのですから、その落ちる率というものはもっと多くなる。そうすると、二千四、五百万の人がこれに加入できない。年金なり国民保険の恩典に浴さないその数は六百万とか七百万で、ばかにならない。そうすると、六百万、七百万はどこに一番集中しておるのかというと、二百四十六万世帝、千百十三万のホーダー・ライン層で、これは動かぬ。予算委員会で言ったように、これは太平洋の日本海溝における海水と同じで、動いても一分間に一ミリか二ミリしか動かない、こういう姿です。一体これをどう掘り起していくか、これが年金の基礎的条件を整備する一番主眼点で、これが小山さんのいわれる二重構造の解決の問題です。ところが二重構造の解決の問題だといっておったのでは、厚生行政の手の届かないことになってしまう。だから年金をかなめにして厚生行政を展開しようとするならば、厚生行政自体の中からこれにメスを入れて、方法を講ずる以外にない。これが基礎的条件を切り開く第一歩だと思う。そうなると、社会局の行政における低所得階層対策というものが五億三千二百万円、このくらいしか金が出ていない。しかもこれは生活保護とはとんど同じか、すれすれの者のわずかに九牛の一毛にしか当らない人たちにしか政策が行かない。それでは基礎的条件の整備にはならぬということになると、どうすればいいのかという問題なんです。この問題の解決なくしては、私は進まないと思う。これは年令のときに、もう少し私はほかにやりたいことがありますから、あと八木先生もおりますから、この問題について明確に厚生省の方針をひっくるめてまず御説明をしてもらいたと思うんです。ここで行き当りの答弁をやったってしようがありません。今の一間一答の中で、大体、今大してあなた方が方針を持たないということがわかったのですから、その具体的の方針を次の機会に大臣を通じて、資料なり方針として、大臣がここで御説明をし、われわれに文書で一ついただきたいと思います。これはお願いしておきます。  そこで次には、堀木さん以来の、それから橋本さんを通じて坂田さんになりまして以来の懸案事項である基礎的条件医療保障、皆保険の基礎的条件を整備するためには、診療報酬の場合が当時あげられた。国民保険の普及ということの中における診療報酬の問題があげられた。その診療報酬を決定する場合に非常にごたつきました。告示をどうするこうするということがごたつき、しかも甲乙二表をどうだこうだということがごたついてきたのですが、その甲乙二表をすみやかに統合するということは、これは橋本さんとわれわれとの一問一答の中で、もう何回も橋本さんが言われたことなんです。一体現在、厚生省は甲乙二表を統合する作業をやっておるかどうかということなんです。やるとすれば、その時期は一体いつなんだということです。というのは、大臣御存じないかもしれない。あるいは大臣は相当友人たちに医師もおられるようでございますから、御存じかと思いますが、特に乙表に至っては五・四というような、少数点が非常に多いのです。それで現在これは基金にいってお調べになるとすぐわかるのですが、少数点以下の点数が多いために、基金の事務というものが非常に繁雑になりまして、間違いが実に多いということです。そして乙表というものは現在日本の医師の九割ちょっとこえる人たちが採用をしておるわけなんです。私は事務の簡素化というものを、ここ十年ばかり県会議員のときから主張し続けてきておる。ところが事務の簡素化がなかなかうまくいかないので、今度は甲乙二表というものは事務の複雑化に拍車をかけた。甲乙二表は一体いつやられるのか。
  95. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 この甲乙二表は、御承知通り昨年の六月に告示になりまして十月から実施になったわけでございます。従いまして私どもはその際にも、将来なるべくすみやかに両方を統合するようなことを現在でも考えておるわけでありますが、具体的にこれに手を触れます前に、なおいろいろな情勢――現在昨年実施したばかりでございますから、この辺の実施の結果というようなものを見まして、関係者一同が、みんながそれぞれ建設的な意見を持ち寄って動き出す、そういうような情勢の熟するのをなるべく早く促進いたしますが、そういうのを待ちまして、それから甲乙二表の統合というものを具体的に取りつけたい、こういうふうに考えております。
  96. 滝井義高

    ○滝井委員 どうも今の答弁は橋本さんなんかの答弁と違うのです。すみやかに甲乙二表を統合したいというのが橋本さんの言明だったのです。少くともこれは今日本の医療で非常に迷惑を及ぼしておる問題なんですから、これを一体どうするのか。その具体的な方針が立たぬということでは困ると思うのですが、坂田さんどうですか。年金のことも大事なんですが、まだ橋本さんなり堀木さんが、あなたに全く困った種をまいて残しておるわけです。種をそのままにしておくと――これはまかぬ種ははえぬで、種をまいちゃったのですから、これはだんだん根を張って、もはや日本医療をどうにも動かぬようにしてしまいますよ。あなたは一体どうされるつもりなんですか。
  97. 坂田道太

    坂田国務大臣 ただいま局長から答弁をいたしました通りでございまして、やはりこれらのデータというものを慎重に検討いたしまして結論を出したいと思うわけで、あるいはこの答弁で御満足はいきかねると思いますけれども、しかしながらこの方針は私やはり堀木大臣並びに前橋本厚生大臣から引き継いでおりまするので、よく慎重に検討をいたしました上において結論を出したいというふうに考えておるわけでございます。
  98. 滝井義高

    ○滝井委員 そのデータとか情勢とか結果を見るというのが、甲乙二表を統合するのにいかなるデータが必要なんですか。何も乙表というのは前の点数をただ逆に、十一円五十銭を十二円五十銭に、あるいは十二円五十銭を十三円五十銭にするのを、ただ点数にもっていっただけじゃないですか。もとの乙表とちっとも変らない。前の点数表は不合理だから乙表だ、こういうことになった。甲表は合理的だといって甲表をおやりになった。そうして今度は甲乙二表をすみやかに統合するといっておったのだが、甲乙二表は十分検討して、統合して新しいものを作ります、こうだんだん答弁も変ってきておるのです。ところが大宰さんや大臣は情勢やら結果を見るというが、いかなるデータ、いかなる結果、いかなる情勢を見てやるのか。これを統合してくれということはもはや民の声になっておるのですよ。大衆の声ですよ。みんなの声ですよ。だからそれをそのままほうかむりしていくということは、私は許されぬと思うのです。私はここで言っておきたいのは、結核、皆保険年金、こういうように日本の厚生行政がファッション・モードみたいに、まるっきり洋服か服装のアクセサリーの流行みたいにだんだん変っていくということはおかしいと思う。やはり一つ一つ根じめをしていく必要があると思う。これも年金の基礎的条件に間接にはなるものなんです。だからこれは今のような答弁ではどうも私は満足できない。橋本さんの答弁よりか坂田さんの答弁は後退している。橋本さんはすみやかにやりますということだった。だからもう少し具体的な方針を示さなければ、この段階ではそんな子供だましじゃだめですよ。
  99. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 別に子供だましの御答弁を申し上げているわけではないのでありまして、滝井委員もすでに御承知通り甲表、乙表の二表を採択いたしまして昨年の十月実施いたしましたばかりで、関係団体の間にもまた多くの議論があります。それは昨年の十月実施いたしましたのと、今日に至りますまで相かわらず、それぞれ自分の方が是とする表の反対の表について、とやかくいろいろな御意見が出る。私は御意見が出るのは差しつかえないと思っております。しかしながら厚生大臣がとにかく慎重にお考えになった後に一応告示いたしたものであります。ですからそれはそれとして一応実施をいたす。その間において、たとえば甲表が合理化の線が強く出ておるというが、果してそれがどの程度のものであって、実除に当てはめてみたらどうであったか、あるいは乙表は現実的な線が強く出ておる。しかし乙表を当てはめて実施してみてどうであったか、これはやはり関係者のそれぞれの方々が、単に机上の理論でもって乙表可なり甲表是なりというようなことを言うこととほかに、やはり現実にそれを当てはめてみて、それがどういう結果になるかというようなものができました後において、初めてこの甲表、乙表をさらに一元化して――一元化するということはよりよい表を作るということでございます。従いましてそういうような建設的な動きに入りますには、昨年十月実施して、各人が納得のいくような線で結果もまだ出ておらない、そういう段階において直ちに私どもが甲表、乙表を一元化するのだということを申しますことは、私どもとしてはそれは何のプラスにもならない。それは将来甲表、乙表、二表でいくことがいいとはもちろん私どもも思っておらないわけでございますが、いやしくも一つ制度を実施いたしましたからには、その制度を改善するためにはやはりそういう意味の、大臣はもろもろのデータとおっしゃいましたが、そういうことも必要でございましょうし、また関係者の人々の間にも、そういうような気持になってもらうということも大事だろう。さような点からいきまして、今日の段階においてすぐ実施をしろとか、あるいは準備はどうなっておるかというふうに仰せられましたならば、私といたしましては、その点についてはもう少し時間をかしていただきたい、こう申し上げざるを得ないと思います。
  100. 滝井義高

    ○滝井委員 時間をかしてくれということでございますが、実はわれわれ国会は、甲表の基礎となったその条件さえ検討をさしてもらっておりません。全く厚生省が一方的に甲表というものは告示したものです。われわれ少くとも社会党なり国会は、あの医療費体系というものはだめだといって二十九年に拒否したものです。拒否したものを基礎にして厚生省はお作りになった。だからわれわれ国会はああいう大事な問題というものは、当然民意を代表する国権の最高機関である国会のある程度の了承を得ることが必要なんです。ところが二十九年に国会のボイコットを食って医薬分業も流れるというような、ああいう事態まで起したものを基礎にして、そして新医療費体系に基く点数表を出してきて、それで甲表をお作りになっている。甲表に対する基礎となったあの一昨年の十一月に出したもろもろの新点数表の資料の検討は国会一つも行われておりません。行われていないままにあなた方は強行告示をやっておる。従って、甲表がいいとか悪いとか民間でおっしゃっておられるけれども、まだ国会はこれに対し正規の討議をしておらぬですよ。そういうものをあなた方が強行告示をされて、そうして医界がああいうようにちりぢりばらばらに分裂をするという状態になってきておる。だから少くとも今のような保険局長の答弁というものは橋本さんの答弁とは全く違ったものになってきた。橋本さんは、すみやかに甲乙二表は甲表の精神に基いて統合するのだとおっしゃってきておった。それは初めは甲表を基礎にしてと言っておったのですが、だんだんわれわれに言われて、われわれのような精神になり、最近は中表、乙表を対等に扱って一本にするというように、二転、三転してきている。しかもすみやかにとなっている。ところが今のあなたの答弁のように、データを集め、資料を集め、情勢を検討して結果を待ってということになると、これはいつやるかわからぬということになる。     〔委員長退席、八田委員長代理着席〕 そういうことではわれわれは了承できない。もしあなた方がそういうことならば、甲表の基礎について今後われわれはここでやらしてもらわなければならぬと思うのです。これが長期であるということになれば、やらしてもらわなければならぬ。一体三月の一日になり、十日までの間には、現在甲表なり乙表を選択をしておる医療機関は、今度再選択をすることになる。そうしますと、さいぜん言ったようにまかぬ種ではなく、すでに種をまいておるのですから、種は必ずはえてくる。はえると、これは根が張る。根が張ると今度はなかなか事が処理しにくくなるということなんです。一体それではあなた方は、すでに三月一日から十日までの間に甲乙二表の再選択をそれぞれの医療機関はやることになるのですが、これをそのまま六カ月なら六カ月延ばして、六カ月以内にやるという、こういう考えはありませんか。
  101. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 さような考えは現在持っておりません。
  102. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、厚生省の考え方は甲乙二表をいつ統合するかわからぬ、こういうことですか。これは大臣一つはっきりしておいて下さい。もうこのままずるずるっといって、いつやるかわからぬ、こういうことですか。
  103. 坂田道太

    坂田国務大臣 ただいまあるいは御答弁がまちまちのような印象を与えたかと思いますけれども、われわれといたしましては、この問題はやはり重要な問題であるから解決しなければならない問題だと心得ておるわけでありまして、すみやかにやはり結論を出したいというふうに考えておるわけでございます。
  104. 滝井義高

    ○滝井委員 すみやかに結論を出すというからには、一体いつごろまでに結論を出すのか、その目途をやはり定めなければ政治というものはいかぬです。さいぜん申しましたように、大臣の命は長くない。芸術は長いかもしれぬけれども、われわれの人生は短かいのですよ。芸術、人生が短かいよりもさらに厚生大臣の生命は短かい。だから橋本さんにもそう言った、任期中におやりになるのかどうか、すみやかにやりますということもたびたび言っておる。ところが今のようなことでは処置ないのです。だからここらあたりを一体どの程度までやるのか。六年も七年もいわゆる十一円五十銭とか十二円五十銭とかというものが算定単価だった。この算定単価は、橋本さんが厚生大臣に一番初めになって、今度はまた六年か七年後に回り回って橋本さんが厚生大臣になったときに、その自分の手で刈り取らなければならぬ運命になった。坂田さんは四十代で若いですから、また五年か六年後に厚生大臣になったときに、またここで私はこうやるかわからぬということを言われては困るのですよ。だからそういうことではなくて、これはやはり坂田さんも――政治というものは思い切りが大事ですよ。お互いに五重の塔から自をつぶって飛びおりなきゃならぬこともある。甲乙二表を、勇断を下して大臣がやるということを決定すれば、あなたの下の手足になってあなたを補佐する局長以下はやる。ところが優柔不断に、岸さんと同じように右に左にぐらぐらとよろめく状態ではだめなんです。橋本さんもできない、堀木さんも変なものを二つ作った。あなたが厚生行政に名を残したいと思うなら、年金の前にこれをやる必要がある。ファッション・モードじゃないから、ここらあたりをやることが必要だと思いますが、どうですか。あなたの任期中にこれをやるのだという御言明ができますか。もちろんそれをやるのだと御言明してどこかに栄転する、まあ総理大臣にでもなられたというのなら別ですよ。私はこれをやるのだという腹がまえだけ聞けばいい。
  105. 坂田道太

    坂田国務大臣 これは非常にむずかしい答弁ですが、この問題はいろいろ関係諸団体との関係があってむずかしい問題でございます。でございますから、決断をいたしますならば滝井委員のおっしゃるように目をつぶって場合によったら飛び込むこともあろうかと思いますが、ただいまのところでは、まだこうだというふうには参りません。しかし私はすみやかに結論を出したいわけでございますから、その際におきましては、両方の言い分等もよく聞き、データ等も十分検討し、あるいは局の人たちとも十分話し合った上において、そのとき私は決断を持って処理いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  106. 滝井義高

    ○滝井委員 すみやかに処理をされる、こういうことでございます。そこで一応そういうことで次に話を進めますが、甲乙二表が採用されてからすでに五カ月経過しました。十月、十一月、十二月、一月、二月――二月は半ばを過ぎて、もう二月も終ることになりますが、満四カ月確実に資料が集まった。一体甲乙二表ともに八五のワクの拡大ができたかできないかということです。
  107. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 昨年十月から実施をいたしまして私どもが手にしている材料と申しますと、いわゆる支払い基金の材料でありますが、これがまだ十二月までしか出ておりませんが、その間におきまして新点数によってどの程度診療費が上昇したかということは、これはなかなか正確に把握することは非常に困難であります。一体診療費というものは、あえて私から出し上げるまでもなく、その算定にはいろいろな条件が伴うのでありまして、それぞれの同じ条件でもまたなり年なりが変って参ります。その間の診療費をそのまま比較するということは非常にむずかしいのであります。疾病の量とか質の変化あるいは医療の内容の変化あるいはまた特に点数でも変りましたならば、それに伴います診療行為についても変化というものの起ることが当然予想されるわけであります。従いまして、そういうものを正確に比較することは無理であろうかと思うわけであります。しかしながら一応の参考と申しますか目安と申しますか、大体の状況は、たとえば一例といたしまして昨年の十月分は旧点数表、それから新しい点数表、十月はいろいろなことで診療費の請求も遅れておるということもありますので、一カ月飛ばしまして十一月分との医療費を、一件当りの金額基礎として比較してみますと、大体一般の診療につきましては八・五%、それから歯科診療については八・九%くらいの上昇には一応なっております。しかし今申し上げましたように、これをもって直ちに私ども自身も八・五%かくのごとく上っておりますということを申し上げるつもりはございません。最初に出し上げましたように、いろいろ条件が加わっておりまするので、これを正確に比較するということは困難でありまして、あくまでも一応の参考資料あるいは目安という程度意味において申し上げる次第であります。
  108. 滝井義高

    ○滝井委員 そうなると、今の保険局長言葉は、甲乙二表の統合というものは、正権なデータなり結果なり情勢を見てやるというのと矛盾するのですよ。やはりすみやかに甲乙二表を一本化するんだ、こうおっしゃったら、そのデータというものは十月、十一月、十二月、一月と、きちっとそろえておかなければうそなんです。そしてまた今のように、これは私、館林さんに個人的にも言ったことがあるんですが、去年の九月とことしの十月を比較したり、一件当りがとうだ、これは参考にはなると思うが、そうでなくして、やはり個々の医療機関について、点数を変えることによって大きな所得の変化を来たさないというのが、単価改訂の大前提だったはずです。これは高田さん以来何回もわれわれに説明しているところです。医薬分業以来われわれに説明しているところです。そうだとするならば、あなたの保険局の直轄の社会保険の病院もあるし、厚生年金の病院もある。その病院で甲表なり乙表を採用しているものがあれば、十月においてもわずかの調査費を出して――金は大してかかりはしません、その調査費を出して、甲表を採用しているなら甲表ともとの点数との比較表を作らせる。それを一年くらいずっとやらせる。それくらいのデータをそろえなければ、あなた方が甲乙二表を熱意をもってやるということがくみとれない。データを見る、結果を見るといっても、客観性がない。これは今までやっていなかった。私は何回も要求したが、その資料が出ていない。だから今度はごめんどうでしょうけれども、これはわずかの金しか要りませんから、全国に一つブロック別に指摘して、これは私的な医療機関も、金を出して、人件費だけ出せばやる人はおりますよ。そうしてやって、少くともブロック別に、あなた方が医務局で実態調査をやられておるから、それを医師会と、それから今度は保険者の団体、被保険者の団体を総合して一つそれをやってみるというくらいの熱意を示すことが必要だと思うのです。それでなければ、あなた方が甲乙二表を統合するといっても必ずまた議論が出てくる。八・五%をまずやったかどうか、上ったかどうかということが一番大事な点です、今後の議論をする上においては。その点については、局長といってもなんですから、大臣どうですか。国立病院、社会保険の病院、それから厚生年金の病院、あなたの所管に幾らでも病院があると思う。それから日本医師会に相談をせられて、全国の私的医療機関の何カ所かをごらんになって、百もやればいい、百くらいおやりになって、一体一年間の状態がどうなるのか。半年でいいです。その資料を出すくらいの熱意がなくちゃいかぬと思うのです。資料を要求しても、まるきり変な、去年の十月とことしの十月を比較したような資料を持ってきても、そんなものは統計の役に立たない。どうですか、そういうものを作って国会へ出すだけの熱意があるかないか。できれば私は二月分くらいまでを作って出してもらえれば一番いいと思う。
  109. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 先ほど申し上げましたように、診療の条件内容等相当変っておるわけであります。あるいは正確にできませんが、私どももいろいろな面から近ついて検討して、そしてそれの大数観察としてどういうような結果になる、こういうようなことを出して参りたいと思います。先ほどお話のようなやり方も一つの案でございましょう。これは一つども具体的に検討させていただきまして、しばらく、これはお話のように一年くらいになりますか、どのくらいになりますか、やはりそれだけかけてみなければ大数観察の結果も正確さを欠くわけでございますから、そういう点につきましては具体的に検討して参りたい。またその結果につきましては御報告申し上げるつもりでおります。
  110. 滝井義高

    ○滝井委員 私は少しせっかちでございますから、すみやかに出すといったら文字通りすみやかでなくちゃならぬ。すみやかというのも、二年も三年もかかるすみやかでは大臣がかわってしまうのですよ。だから、すみやかということを大臣が言われたからには、大臣の任期中にやるというくらいのことがすみやかですよ。大臣がかわって総理大臣になったときに、二十も年下の大臣厚生大臣になってやってすみやかじゃ困るのです。従って、これはできれば――もう十月からあるはずなんです。やっておるのですよ。国立病院や何か、ちゃんと自分の損得があるからやっておるところがあるはずですから、それをお探しになって、できれば次の機会にでも一応正規に資料として出してもらいたいと思う。委員長、それを一つ資料として強く政府に要望しておいて下さい。  それから、どうもそういうように甲乙二表の問題については、あつものにこりてなますを吹くような状態で、厚生省はさわらぬ神にたたりなしという状態ということは非常に遺憾です。そこで大蔵省は、そういうように八・五%のワクの拡大があったので、今度は租税特別措置法をはずそうとしております。一体今まで、税制懇談会あるいは税制調査会というようなものができると、やり玉に上るものは三つあった。一つはいわゆる米の供出に対する千四百円の基礎控除ですか、免税、それから銀行の長期預金の利子の非課税、それから社会保険の診療報酬、この三つがいつもやり玉に上っておる。今度二つだけは大蔵省は解決したようでございます。米価等は単独法で出しているらしい。それから銀行の方も租税特別措置法ですでに大蔵委員会にかかっている。そうすると、社会保険だけはまだちょっと動いてはいないのですが、厚生省の方針は一体どういうことなんだということです。これは動かす方針なのか動かさない方針なのか。依然として今のままの二八%社会保険の診療報酬として、所得として見ていくことを、あくまで厚生省はずっと押していくのかどうかということが一つ。いま一つは、それに伴って、いわゆる二八%を動かすことによって地方税の事業税を今まで通り社会保険にもがけようとする動きがある。これについては一体厚生省の方針はどういう工合にやっていく方針なのか。この二点をこの際一つ明白にしておいていただきたい。
  111. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 租税特別措置法によって、事業収入について所得を二八%というふうに見る特別措置の点につきましては、二十六年の改訂の際にこれが一つ条件みたいになって、自来実施して参ったところでございます。昨年の八・五%の診療報酬のワクの拡大の際にも、この二八%の特別措置があるということを前提として、私どもは八・五%のワクの拡大をはかっておるわけでありますから、厚生省といたしましては、この税の関係について、大蔵当局に対しましてその点は十分に考慮されるよう申し入れはしてあります。ただし、その後大蔵省におきまして租税の合理化をはかっておりますが、この二八%というものは運用に何かまだいろいろの不合理な画があるということで、合理化をはかるということでありますならば、私どもといたしましては、格別また私どもがとやかくそれを言うべき筋合いでないかと思いますが、やはりその場合におきましても、現実にそういう個々によって収入を得ている人の収入に極端に大きな差が出るようなことについては注意してもらいたい、かようなことを申し入れておるわけであります。ただいままでのところでは、私どもは別にそれ以上具体的に中身に入ってどうこうすべき立場でもないと思いますが、聞くところによりますと、まだその点についての腹案というものも出てきていないように聞いておる現状でございます。
  112. 牛丸義留

    ○牛丸説明員 地方税の同趣旨の改正については、自治庁当局の方もその改正の措置は今回は取りやめるという意向を聞いておりますので、従来の曲り措置されておるものと私ども承知いたしております。
  113. 滝井義高

    ○滝井委員 どうも厚生省の答弁ははなはだ自信を欠いておるですね。単価を十一円五十銭、十二円五十銭から十円に変えて、八・五%のワクの拡大をやるということを医療機関にきちっと約束をして、それは税の二八%だというのなら、やはり厚生省はきちっときめて、それでもって大蔵省を押しまくっていくという態勢がなければいかぬと思うのです。これはどうもそういうことを大臣にも連絡しておらぬ。事務当局が答えて、大臣から確信のある答弁ができぬということは、大臣を補佐する方においても欠けておると思うのです。こういう単価問題は、これ一つ火がつけばまたもとのもくあみですよ。だからこういう大事な問題について、もう少し厚生省は大局に目を注ぎ、全般的な動きというものをつかんで推進してもらいたいと思うんです。そこですみやかに甲乙二表の統合をおやりになる。統合をやるためにはその場所が必要なんです。場所は一体どこか。中央社会保険医療協議会です。これは大臣も御存じの通り。中央社会保険医療協議会においては、社会保険の診療の指導監査に関する事項をやったり、適正な診療報酬の額をきめたり、あるいは国民健康保険の診療報酬の標準額を審議したり勧告をしたりするんですね。国民健康保険は、昨年十二月新しく発足をいたしました。全国的に見るとその単価はアンバランスです。十円のところもあるし、十一円五十銭のところもあるし、はなはだしいところは八円とか七円でやっている。当然国保の適正な診療報酬の標準額等も検訂しなければならぬ段階がきている。ところが中央社会保険医療協議会は、三十三年六月十五日以来、二十四名の委員のうち十二名がそのままなんですよ。なぜこれを任命しないかということです。
  114. 坂田道太

    坂田国務大臣 これは滝井委員もすでに御承知通りでございまして、医師会と病院協会その他の諸団体との関係が望ましい状態にないわけでございます。この点につきましては前橋本厚生大臣からも引き継ぎ事項として特に私も承わったわけでございます。御承知のように六月になりますと全部任期がなくなってしまうというような実情でもございますし、またすでに半分はなくなっておるわけでありまして、これこそすみやかにわれわれといたしましては任命をいたしたいというふうに考えておるわけでございますけれども、何せあれくらい当事者門において紛争いたし、また世間におきましても問題にされたわけでございますので、これこそ私は、単に私がここで言明したから直ちに手を結ぶということにはならないのではないかと思うわけでございます。要は、この二つの団体が手を結んで、国民保険制度が一方において打ち立てられますと同時に、その医療を担当いたしておりますところの医師会並びに今度は病院の方々が車の両輪のごとく動いて、初めて私は国民保険恩恵国民に及ぶというふうに思いますので、すみやかにこれは結論を出さなければなりませんけれども、私のここでの言明そのものがかえってその結論の妨げをするというような場合も予想されておりますので、実は私内々この問題につきましては誠心誠意をもって、少くとも私の任期中に解決をいたしたい、かように考えておるような次第でございまして、この点についてはしばらく時間をおかし願いたいと思う次第でございます。
  115. 滝井義高

    ○滝井委員 堀木厚生大臣から、橋本厚生大臣から坂田厚生大臣と、三代にわたっておるのです。大臣の任期より長いのです。この問題が放置されてから、六月十五日ですから八カ月です。大臣の任期より長い問題をあなたの任期で解決するのだというと、また六カ月か七カ月かかる。これは諮問機関です。では一体方向はいかなる方向で解決するかということなんです。橋本厚生大臣はどういうことを言ったかというと、医師の利益を代表するものは療養担当者の側、すなわち医師、歯科医師、薬剤師の側においては、特にその中の医師については、日本医師会一本を主濃した。ところが私は何か新聞で、六団体か七団体から食いつかれて、申し入れを受けてそのままになったということを見たにとがある。真偽のほどは知りません、これは質問をしておりませんからわかりませんが、まあそういうことだった。これは一体方向はどういう方向で解決される御所存なのか、この方向だけくらいはおわかりだろうと思うのですが、どういう方向で解決されるのか。
  116. 坂田道太

    坂田国務大臣 この方向は、実を申しますと、私自身としては一応考えてはおりまするけれども、これをここで今直ちに発表いたしますることがどういう影響を与えるかということを苦慮いたしておるわけでございまして、要は、その二つの団体がほんとう日本の医療の確立のために手をつなぐことが最終の目標だというような意味合いにおきまして、目下私十分両者の方々とも話し合いをしておるような状況でございます。この点につきましては、国会でございまして、実を申しますとすべてを皆様方にお答えしなければならないわけでございまするけれども、その点しばらく猶予を願いたいということを申し上げる以外はないのでございます。
  117. 滝井義高

    ○滝井委員 私は一つの団体の内部の問題に他の団体が干渉することはけしからぬと思う。もしそういうことになれば、たとえば日経連の代表が出たのを片一方の団体がだめだといったらだめですか。それはやはりお互いに団体の自治というものがあるのです。だからこの問題のもつれというものは大臣もお聞きだと思うのですが、日本病院協会と医師会との関係、すなわち医療協議会の委員であった神崎前日医理事をどうするかというような問題からこじれてきておることは御存じの通りです。だから問題はそこの二つしかない。医師会と目病をどうするかというこの問題に還元できると思う。そうなって参ると、一体目病とは何かということが問題になるのです。日本医師会とは何かということが問題になる。法律では関係団体の推薦者となっておる。そして医師の利益を代表するものなんです。その医師の利益を代表するものに日本病院協会が入るか入らぬかということです。だからこれは日本病院協会が医師の利益を代表するものかどうかということの御答弁をいただけばはっきりしてくるのです。
  118. 坂田道太

    坂田国務大臣 この問題は実を申し上げますと非常にデリケートな問題だと思うわけでございます。しかしながら、私がこの問題をいろいろ事務当局から聞きました場合におきましても、また病院協会あるいは医師会の方々とお会いいたしましていろいろ話を聞きました場合におきましても、そこには最終段階において相当に感情的な問題が含まれてきておるのではなかろうかというふうに実は感じております。従いまして、私の今滝井委員にお答えできることは、常識的な一つの判断――むしろ私はこれにノータッチであった、そして私がそういうような常識ということで判断をいたしたい、こういうことで一つ御了承を願いたいと思いますし、おそらく滝井委員は、それだけ私が申し上げますならば、たいていお察しがつくのではなかろうかというふうに思うわけでございまして、はなはだ不明確な答弁のようでございまするけれども、少くとも滝井委員には私の気持は了解できるのではなかろうかというふうにおこがましくも考えるわけでございます。
  119. 滝井義高

    ○滝井委員 どうもあまり遠慮をし過ぎると思うのですよ。むしろこういう場合はだれかが、われわれの炭鉱地帯の言葉で言えば、ボタをかぶるということがあるのですが、ボタをかぶることが必要なんです。だれかが泥をかぶらなければいけないのですよ。堀木さんはごたごたを直した。橋本さんは、簡単に言えば、どっちにもいいようなことは言われなかったと思うけれども、まあまああっちを向いたりこっちを向いたりして文部省に行っちゃった。あなたもまた常識的な判断ということ――やはり常識というものは私は世の中に通用するものだと思う。だからやはりその常識をふっと、言うときには言う方がかえっていいのですよ。ふたをして言わぬことがかえて悪い。こういうときにこそ五重の塔から飛びおりるということなんですよ。
  120. 坂田道太

    坂田国務大臣 全くその通りでございまして、私も最後の腹をきめました場合には、泥をかぶるという覚悟でおるわけでございまして、その点実は慎重にやっておるわけでございますから、常識的な判断においてこの際はしばらくの時間をおかしいただきたいということをお願いを申し上げる次第でございます。
  121. 滝井義高

    ○滝井委員 私がこの問題でしつこく大臣を責めるのは、結局ここができないと、甲乙二表の一本化はできない。だから不合理の上に不合理が積み重なっていくということは、結局厚生行政が一歩も進まぬにとを意味するのです。だからどこかでどろをかぶって糸口を開くという、五重の塔から飛びおりる決心というものが必要になってくる。それはもうここ以外にないですよ。医療保障ほんとうに前進させて、切り開いていこうとするならば、まずこの問題から解決していかなければならぬ。そうすれば今度は三カ月なり六カ月の見通しがついて、医療協議会が居間をし始めますから、それによって甲乙二表の問題は解決してくるのです。ここをいつまでもほおかぶりしておくことは私は許されないと思う。  それからもう一つ、新しい事態が起ってきたというのは、日本の医療というものはだれが担当するかという問題です。すでに三十二年の健康保険法の改正によって、健康保険の療養を担当するのは保険医療機関になった。国民健康保険の療養を取り扱うのは、国民健康保険の療養の取扱い機関が取り扱うことになった。医者は何になったかというと、歯車になってしまった。従って、この場合われわれが医療協議会を新しい観点から見なければならぬという事態が起って参ったのです。ともかく今までのような医療機関のものの見方ではだめなんです。  それからもう一つ私は言いたいのは、たとえば国民健康保険においても、保険者とは一体何なんだということです。特別国保ができたから、医者も保険者になったのです。そうしますと、保険者とは――国民健康保険の今の医療協議会に出ておる委員の状態を見てごらんなさいよ。保険者に国民健康保険理事者が出ていますよ。被保険者にだれが出ているかというと、国民健康保険の参与、幹部が出ている。こういう矛盾をあの医療協議会の委員は犯している。そうして法制局に聞いたら、全く厚生省の委員の運営が間違っておると言っています。私がここでよく言うように、太宰保険局長保険者でもあるし、被保険者でもあるし、監督者でもある。三重人格ですよ。そういう人たちが出るときには、保険者で出ていっているのですよ。説明するときには、政府委員の監督者としていろいろなことをあそこで説明している。館林さんも同じですよ。しかもその中から二人も出ておる。保険局長と館林さんと二人も出ておる。法制局に聞くと、これはおかしい、どっちか一人でいいという。委員の構成自体がなっておりません。一つ一つ調べてごらんなさい。なっておらない。国民健康保険の代表で出ているのはなっておらない。それから、たとえば高橋先生が出ている。逓信病院の院長です。逓信病院は病院協会に入っているかどうか知りませんけれども、公的医療機関類似のものです。そうすると、それは公益代表で出ている、医師の利益も代表できる。そういうことをだんだんせんじ詰めて参りますと、私はいつかここで橋本さんに言ったことがあるが、病院協会が甲表を採用するものをどうしても必要だとするならば、公益代表でお出しなさい、それで解決するじゃないかということです。橋本さんはいい意見を聞きましたと言ったけれども、実行しない。やはりこれは、ここで私が一人で責任を負いますというように、どこかで責任を負う人がいなければならない。右顧左眄していろいろなことを相談していると、あなたも岸さんと同じようになる。それではいけないので、思い切ってこの際がちっと結論を出すということなんですね。だから、医療を担当する保険医療機関とか、国民健康保険の療養取扱い機関というものができているのだから、これは一体どうするつもりですか。これらの利益は一体だれが代表しますか。
  122. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 御承知通り、従来医療協議会におきましても、今回のような大きな問題がこじれると申しますか、そういうものがなくて、それぞれみな建設的な意見でもって、議論はあっても建設的な立場でうまく運営できておったように私は聞いておるわけであります。その場合におきまして、医療を担当する医師の利益を代表する、同時に最近においては、医療機関という医師の一つの総合体が、病院がございますが、やはりそこに働いているお医者さんの立場も代表するというようなことで、それぞれ適当な方が選ばれておったと思います。その選び方につきましては、先ほどお話がありましたような点があるいはあったかもしれませんけれども、とにもかくにも全体がそこで議論されれば、大体みなの総意として、それによって運営されていっておったわけでありますが、こういうふうになって参りますると、なかなかその運営というものがむずかしくなってくると思うのです。特に今回の場合は、これを早く開きたいという気持は私は持っております。持っておりますけれども、先ほど大臣からお答え申し上げましたように、この医療協議会というものがうまく再び軌道に乗るということは今後の厚生行政あるいは医療行政を格関係諸団体の理解のもとに円滑に進めて参ります上に非常に大きな影響を持つものでありまするので、さような点につきましては、むしろ拙速で泥をかぶるよりも――泥をかぶることは大臣も先ほど申し上げましたように泥をかぶる覚悟をしているということでありますが、それはそれといたしまして、やはり物事を進めていくという、その慎重なる準備期間というものを申し上げているものだと存ずるわけであります。その点につきましてはいろいろ御意見は拝聴いたしましたけれども、もうしばらく猶予をいただく方がよろしいのではなかろうかと思います。
  123. 滝井義高

    ○滝井委員 保険医療機関や療養取扱い機関の利益は一体だれが代表するかということを聞いているのです。だれが代表するのですか。あなた方の今までの主張は、日本の医療はもはや保険医療機関が取り扱うのだということがあなた方の主張です。療養の取扱いをやるのは療養取扱い機関なんです。法律では日病もなければ日医もなかったはずです。一体この利益ばだれが代表するのかということです。こういうように、中央社会保険医療協議会ができた当時とは全く違った情勢が出てきたということです。客観的に言えば、もはや中央社会保険医療協議会のごとき機関では日本の診療報酬を決定するだけの力がなくなったことを意味する。もはや根本的にメスを内れなければならぬ。今のような、中央社会保険医療協議会の中で厚生行政がとられておって何も進展しないという、こういう事態がもはや認識不足だ。もはや一切を御破算にして、新しい日本の進展をする医療行政にがっちりした諮問機関を打ち立てて、そこで診療報酬を決定する機関を作らなければだめだということを示しているのです。だから、保険医療機関の利益ばだれが一体代表するかというと、医者は代表しませんよ。あるいはあなたが作った療養取扱い機関の利益はだれが代表するか。療養取扱い機関は医者ではない。保険医療機関は医者じゃない。これを一体だれが代表するのだ。これは保険者でもない。被保険者でもないはずだ。そういう新しい客観情勢が出ておる。日本医療保障制度の中で今まで通り昭和二年にでき、昭和十三年にできた健康保険なりあるいは国民健康保険を基礎にしてものを考えておるところに、厚生行政の十九世紀的頭があると私は言わなければならない。だから十九世紀の頭をもって二十世紀後半の医療圏題を解決しようとしたって解決できない。厚生大臣に泥をかぶれというのは、何も私は日本医師会は一本にしなさいとか日病を一本にしなさいというのではなくて、もはやこの際白紙になって医療協議会というものを新しく考え直さなければならない時期が来たということなんです。これなんですよ。もはやわれわれが活眼を開く道はこれ以外にない。これによって新しい紙の上に新しい坂田行政の向う方向を示したらいい。医師の主体性を確立しなければならぬというなら、そこに医師の主体性を確立する道を考えなければいかぬと思う。一体これをどうするか。これはあなた方が新しい種をまいたのでしょう。新しい機関がもしそうだったら、あれを取り消して下さい。こういう矛盾が起っておる中で、これを今まで通りのしきたりで解決しようとするところに無理がある。私が大臣に泥をかぶりなさいというのは、だれを任命しなさいということではない。幸い六月が近づいた。六月までに国会に出せば、われわれは協力をしてこれを過しますよ。おそらく与党だって苦しんでおる。これ以外には言本の医療を進展する道はない。坂田さんは初めて厚生大臣になったのだから白紙ですよ。白紙の上に変な入れ知恵をされるのではなくて、きょうの私の言葉を聞いて帰ったら、中央社会保険医療協議会法なり社会保険審査会法をもう一ぺん読んでごらんなさい。もう昔の思想ですよ。新しい皆保険昭和三十六年以降をになう診療報酬なり療養担当者を指導するものにはなっておりません。だから新しい観点から日本の診療報酬を決定する機関を作らなければならぬのです。しかも一国の予算の根本をゆるがす程度に医療費の問題は大きくなってきたのですよ。社会医療たけでも二千四百億をこえておる。自由診療を入れれば、あるいは結核の問題をこれに入れていきますと、国民所得の四%をこえようとしておるのですよ。防衛費より多いのですよ。こういう大きい問題を今までのようなちゃちな――と言っては失礼ですけれども、蝸牛角上の争いをする中央社会保険医療協議会ではだめだということです。もっと高い観点から人材を集めて、いわゆる防衛費とにらみ合せながら、これは日本社会保障なり年金、皆保険の問題の一番のにない手ですから、高い見地からやっていくという方向に持っていかなければならぬと思うのです。どうです坂田さん、この医療協議会なり社会保険審査会を根本的に検討する意思があるかということです。
  124. 坂田道太

    坂田国務大臣 きょうはまことに有益なお話を伺ったわけでございますが、十分これは私ども頭にとめまして、今後検討いたして参りたい、かように考える次第であります。
  125. 滝井義高

    ○滝井委員 六月になると全部の委員の任期がなくなります。六月にはもうすでに国会は終っております。従ってでき得る限りそれまでに社会保険医療協議会なり社会保険審査会をひっくるめて、一つの根本的な検討をして政府の腹をすみやかに決定してもらう、そ、れによって甲乙二表の一本化の問題もあなたの任期中にすみやかに片づく、こういう道が開けてくることを私はここに大臣に御説明を申し上げて、この際大臣の勇断をお願いいたしておきます。ところが一方、そういうように中央社会保険医療協議会がもめると同じ形が、先般来われわれがこの委員会で強硬に主張してようやく踏み切った臨時医療制度調査会にも現われようとしておるということです。この委員の割り振りの問題について、いろいろと外界から、われわれを入れよ、われわれを入れよという声があることは、厚生省にも入っておると思う。今これは厚生省設置法の一部改正として提出されておると思いますが、この委員が多分学識経験者だけになっておるのじゃないかと思うのです。初めこれは医務局の所管として発足するとわれわれは思っておった。ところがいつの間にかこれが臨時医療制度調査会が単独法でなくて、内閣委員会にかかって厚生省設置法の一部改正として出ておるのです。一体学識経験者とは何かということです。保険に重大な関係を持っておるものかどうかわからぬような学識経験者にやらせるということについては問題があると思う。これは労働組合も言っておる、日本医師会も言っております。こういう重大な問題を学識経験者という――その人が医療に詳しいかどうかわからぬのに出すということについて問題がある。たとえば厚生省に医療保障の五人委員会がある。あれにつきましてもわれわれは実を言うと不満です。何かこそこそと大臣が顧問的に任命をしてやるということ、もっとやはりああいうものをやるなら権威ある機関として、それが決定したならばがちっと動かぬようなものにしないといけないと思う。何かときどき座長を作って報告を出すということではいけない。従って今後臨時医療制度調査会というものができれば、そういうものはなくなるかと思いますが、これは三カ年間の臨時立法です。三カ年間で役割を果すでしょう。そうしますとこの委員の問題にしてもなかなか問題が今出てきておりますから、医療協議会と同じような二つの舞いを踏むかもしれないということが世間で言われておる。一体これをどうするつもりなのか、どういうつもりでこれをやられるのか。われわれとここで一問一答をやったときには非常にかおりの高い理想を持ったもののはずなんです。ところが今もそうであろうとは思うんだけれども、少し成り行きが私は違ってきたような感じがするのですが、これは一体どういうものなのか。いずれこれは内閣委員会に出たら、内閣委員会の審議があればそこに行ってやるか、合同審査を申し込むかやってもいいのですが、医療協議会と同じような懸念があり得ると思うのですが、大臣それをどうお考えになっておりますか。
  126. 森本潔

    ○森本政府委員 医療制度審議会は厚生省設置法の一部改正といたしまして、先般国会提案いたしました。ただいまお話の調査会の委員の構成、運営等でございますが、この調査会のねらいとしておりますのは、医療制度――具体的に申しますならば医師法、歯科医師法その他医療従事者の身分の問題であります。また病院、診療所等の医療機関の問題、医師法、医療等の制度の根本的な改正を考えておるのであります。なおこれに関連いたしまして、医療制度と他の語制度、たとえば社会保険でありますとかその他の制度、それらの関連する事項について、根本的な事項についての考え方を整理いたしたい、こういう趣旨で出す予定でございます。その委員につきましては、ただいまお話のように従来の審議会、調査会というものが、往々にして運営の適正を欠くというような面がございますので、よほど慎重にしてもらわなければならぬ。ただいまの考え方としましては、むしろ利益代表的な委員でなしに、純粋な公平な立場にあるところの学識経験者を中心に委員を選定したらどうだろうかというような荒筋の考えで準備をいたしております。
  127. 滝井義高

    ○滝井委員 医師の身分から機関、それから制度の根本的な改正にまで当ろうというのに、純粋な公平な雲の上にいるような人で、一体この複雑こんとんとしておる協議会の問題に快刀乱麻の対策ができますか。私はそれは汚れておってもいいと思うのです。あのきれいなハスの花は泥田の泥の中から出てくるのですよ。それは出てきた委員に適切、公平な議論をしてもらえればそれでいいと思うのです。どうも厚生省は医療協議会がああいう工合に混乱して、おるから、これは医務局あたりにおいてやられるとまた大げんかが起るから、官房か何かに置いてやったらよかろうというような、なるべくさわらぬ神にたたりなしという、道路の端をちょこちょこと通っていくことでは、この日本の重大な医療の問題は解決できません。私は今から言っておきます。これはできたってだめです。むしろやるなら、この中には国会議員も入れて、内閣の中にある社会保障制度調査会ですか、あれくらいの格式と権威を持ったものにしなければだめですよ。そうしなければ、とても日本のこのむずかしい問題の解決はできない。それは大臣が就任をして、元の厚生大臣の橋本さんが、文部省の大学病院を厚生省に渡さないじゃありませんか。殷鑑遠からずじゃないですか。こういう元厚生大臣であった者が文部大臣になったら、それはもう渡さないという実態が、すでに医療制度調査会が発足しても、いかに根本的の問題の解決がむずかしいかということを示しているわけですよ。ですから、こういう点をもっと大胆率直にやろうとするならば、権威ある機関にしなければだめです。これは権威がないとは言いませんが、もっと人間をたくさん集めていいのじゃないか。労働組合も入れるし、医師会も入れる。これなんかは日本病院協会も入れていいですよ。機関の代表も入れるし日経連の代表も入れるし、みんな入れて、一体どうしようかということで、公正な運営をきちっとやるような姿に持っていくことは、これは私は大臣の腹一つでできると思うのです。だから、そういう点について厚生行政というものが権威を持たなければいかぬ、勇気を持たなければいかぬと思うのです。今の厚生行政では、権威と勇気が地に落ちておるのですよ。それを私は悲しむ。と同時に、この臨時医療制度調査会で医療法と医師法の改正ということも根本的にやってもらわなければならぬ。今回医療法の改正を政府は出すとおっしゃっておる。ところが、医療法の改正をやられるならば、当然医師法の改正もやってこないと――この前健康保険なり国民健康保険を論議したときに、私はいろいろ根本的な矛盾を指摘したはずなんです。だから、ちゃちな医療法の改正だけでお茶をにごすのではなくて、この通常国会に医師法を医療法とともに出してくるべきだと思う。そうしてそれを一応三年間の暫定的な措置として、当面経済立法であり社会立法である健康保険なり国民健康保険なりと、医師法、医療法との矛盾点だけはやはり一応通常国会で解決する。そうしてインターンとか、民員教育から医者の身分、それから医療機関の配置とか、一貫して見通したものは、医療制度調査会でもっと根本的にやってもらう。しかしそれは三年かかって結論が出て、それから立法上の処置を各省とも調整してやるということになると、四年、五年はすぐかかる。それまでは今のような矛盾の状態を続けていかなければならぬ、こういうことになりますから、手初めとしては、医療法の改正をお出しになるなら、この際思い切って医師法の改正を、少くとも経済立法と見合う程度に――経済立法に矛盾があれば同時に直していく。そうして社会保険医療協議会を出す、このくらいのものが一応そろって、今度の国会から次の参議院の選挙が終った後の臨時国会までに大体片づけるという見通しくらいは立ててもらって、そうしてその立てた見通しの上に、この制度を今度は各界を集めてやっていく、こういうことに私はしてもらいたいと思うのです。そうでないと、今の姿でいっていると、坂田さんの行政は、打開の糸口がどこにも見出し得ない。そうしてあなたも橋本さんと同じように何もせぬで、国民年金のちゃちなものが通っただけで終りということになるのです、私は予言しておきます。笑うどころじゃない、その通りになる。たからあなたが糸目を開こうとすれば、私が今言った程度法案をそろえて、国民年金とともにやる。医療保障所得保障は車の両輪なんですから、これ以外にあなたのやる仕事はない。そうして経済のことは経済企画庁なり大蔵省、通産省にやらしておく。この二つがそろってやられ、そちらの方で経済の安定ができ、社会保障の方はあなたの手でできるということになると、日本全体の大きな車がそろう。厚生省はその二つの車でよろしいのです。だからそういう点を、私はぜひ若い、しかもドイツ文学をやられて、若い医師の悩みをドイツ語でお読みになったあなたに期行をしたいのです。今までのような古い大臣では、二十世紀後半の医療というものは無理だ。しかし、あなたならば期待ができる、こう思うのです。しろうとでいいのです。これはしろうとの方がいいと思うのです。そういう点で、今のような点を一つ根本的に、臨時医療制度調査会をお出しになっておるのだから、この機会に医師や医療法もやる。それから別に医療協議会法と社会保険審査会、これは一緒の法律になっておりますが、それにも手をつけていく。それは、おそらくあなたの寿命が来るであろう参議院議員選挙前後をめどとして、それまでに片づけていく。それから先に命があれば、もう少し目標が出てくると思う。ですから、一応それくらいの目標を定めてやっていく。これだけの腹がまえがあるかどうか、ここでちょっとお聞かせ願っておきたいと思うのです。
  128. 坂田道太

    坂田国務大臣 きょうは私にとりまして非常に有益な点を御指摘いただきまして、厚く御礼を申し上げる次第でございます。十分これをかみしめまして、厚生行政、ことに医療保障所得保障とは車の両輪のごとくやりたいと思うわけでございます。私もドイツ文学をやりまして、かのハンス・カロッサの医者としての求道的な気持に引かれた一人でございまして、そういう意味からも、一つしっかりやりたいと考えておる次第でございます。
  129. 滝井義高

    ○滝井委員 あとに八木さんが控えておりますので、所得保障、低所得階層対策やなんか、せっかく社会局長に米ていただきましたけれども、局長には申訳ありませんが、これでやめますから、あとは一つ次会にやらしていただきます。
  130. 園田直

    園田委員長 八本一男君。
  131. 八木一男

    ○八木(一男)委員 ずいぶんたくさん御質問申し上げたいことがございますが、時間がだいぶおそくなりましたので、一番根本的な点だけ、なるべく時間を節約して御質問さしていただいて、後にまた機会を得て続けさしていただきたいと思うわけであります。  まず坂出さんが厚生大臣になられたことについて、坂出さんの厚生行政、社会保障に対する御決心を伺いたいと思ったわけでございますが、同僚滝井委員の御質問中にその御決意がうかがわれましたので、それについて重ねて伺うことは避けたいと思いますが、それに関連いたしまして、非常に親しく、敬意を払っている滝井さんの御質問でございますけれども、それとちょっと違う考え方を持っております。というのは、滝井さんは、厚生大臣の命は六カ月が平均だ、それで坂田さんも六カ月前後でやめられるだろうというような推定のもとに、その間にこれこれの仕事をしろと言われました。これはもちろん当然のことで、六カ月内に重点を根幹とした、ぜひやるべきことをやっていただかなければならない。この点滝井さんと同意見でございますけれども、私は、もちろん私ども社会党員ですから、社会党内閣ができて、社会党の厚生大臣ができるときには、坂田さんに御退陣願いたいと思いますけれども、それまでの間は、自民党内閣の厚生大臣が、六カ月や一年くらいでやめるという気持でやられては困ると思う。社会党の内閣ができるまでは、厚生大臣は、石にかじりついても、たとい副総理の口がかかってきても、きちりとして厚生大臣をやり遂げるぐらいの覚悟でやっていただかなければならないと思います。やめられるときは、厚生大臣としてどうしてもしなければならない所信が、閣議が非常に無理解でいれられなかった、それに対して一大警鐘を与えるつもりで、だーんと辞表を総理大臣にたたきつけるということで、将来の厚生行政前進の素地を作る、そのくらいの勢いのときにやめる。そういう場合にやめる。それ以外には、たといいい口がかかっても、幹事長の口がかかっても副総理の口がかかってきても、それはお断わりする。おれは厚生行政と心中するんだ、それくらいの覚悟でやっていただかなければならないと思いますが、それについての御決意を伺いたいと思います。
  132. 坂田道太

    坂田国務大臣 八木さんから非常にいい御質問を受けまして、私案は恐縮をいたしておるわけでございますが、少くとも私が厚生大臣に任ぜられました以上は、私は私なりの乏しい経験ではございますけれども、やはり私といたしましては、もしそれが総理大臣と相いれない場合においては、いつでも辞表をたたきつけるだけの勇気を持っていることを御了承いただきたいと思うわけでございます。それが長かろうと短かかろうと、とにかく与えられた任期においてはべストをつくしたい。そして自分にできる最上のことをやりたいというふうに御了承いただきたいと思います。
  133. 八木一男

    ○八木(一男)委員 そこでこの本年度の厚生予算の組まれた初期の段階は、橋本さんの時代にこれができたわけでございまするが、今度の厚生省の予算、これは幾分前進を示しておりますけれども厚生大臣としてこれで十分なものであると思っておられるかどうか、一つ端的にお答えを願いたい。
  134. 坂田道太

    坂田国務大臣 私は、これは足りないと申し上げますると、前任者にいわば御努力を願いまして、そして予算を組まれたことに対し見まして、これをとやかく申し上げることは差し控えたいと思いまするけれども、しかしながら、これでもって足れりというふうには考えておりません。やはり私がもし厚生大臣の地位を許されまするならば、来年度の予算におきましては、私の責任においていま一そうの努力を期したいというふうに考えておる次第でございます。
  135. 八木一男

    ○八木(一男)委員 御決意を伺ってやや安心したわけでありまするが、もう少し強い御決意を伺いたかった。と申しますのは、厚生省の予算はことしはふえております。去年もちょっぴりふえております。ところが一昨年、一昨々年までさかのぼって御検討いただいているかどうか存じませんけれども、一応名目的にはふえておりますけれども、そこの中で、いろいろの項目の組みかえで名目的にふえたけれども、ふえていない部分もあります。それからふえたことを一応是認して計算しましても、総予算のふえる率よりも、二年前、三年前よりは減っているわけです。総予算のふくれる率よりは厚生予算のふくれる率は少い。これは世の中が発展する過程においては、実額は減らなくとも、厚生行政がほかの行政に圧迫されてへこんでいるということの証拠なんです。ことしはちょっとふくれました。ふくれましたけれども、昔の減った部分の失地をわずかに幾分回復しているにすぎない。これの倍くらいあってやっと失地を回復したという状態です。     〔八田委員長代理退席、田中(正)委員長代理着席〕 ところが失地を回復するようなものであっては厚生行政はいけない。厚生行政の一番中心であるのは社会保障である。公県衛生も大事でありまして、そういう点は両方とも、これはこまごまと例証をあげなくても大臣おわかりだと思いますけれども、現在急激に前進しなければならない部分であるわけです。内閣全体の行政にはそういうところもずいぶんあります。しかし明治以来からそれに関しての行政は、それは漸次何十年かかかって進んでいるんですから、進め方が平均して進んでいるわけです。ところが、昔がなまけておって、今までそういうことが完成してなかった、不十分であったために、最近の状態から見ると急激に前進をせしめなければならない、そういうような政府の行政部分の中で、これは第一番に数えてもいい部分です。そういう部分が、この二、三年前は実質的に後退した。ことしはやや前進したようだけれども、後退したところを幾分追いついたにすぎない。それではいけないので、前進に次ぐ前進を毎年やらなければ、これはいけないわけです。そういう点でよほどの覚悟をされないと失地回復じゃない、幾分前進に持っていくまでにはずいぶん困難があると思うのですが、それを乗り切られる確信をもって当られるかどうか。
  136. 坂田道太

    坂田国務大臣 確かにお説の通りでございまして、たとえば本年度の予算におきましても、何を申しましても、年金についております額が百十億ということで、むしろあるいはものによってはこれによってしわ寄せをされるという部門も出てくるかと思うのでございます。それからまた来年度の予算の場合におきましても、おそらく三百億の年金関係だけでも増額でございます、本年度にしましても、約二百億の増額というふうになるわけです。おそらく大蔵省当局としましても、もう三百億年余をふやしたんだから、ほかの方はがまんせよ、こういうようなことにあるいは出てこないとも限らないと私は思うのでございまして、この点については私ども覚悟を新たにいたしまして、来年度の予算につきましても、本国会が済みましたら、直ちに作業にとりかかりたいというふうに考えておりまして、その点も十分考えつつ、やはり相当に私は厚生予算というものを前進また前進というふうにいかなければならない。そうでなかったならば、いわゆる近代国家としての内容を持った国家というわけには参らぬというふうに考えるのでございまして、少くともわれわれ保守党の内閣において、私たちできるだけのことを実は打ち立てたいという決意をしておるつもりでございます。
  137. 八木一男

    ○八木(一男)委員 御決心を伺いまして非常に意を強ういたしましたが、ぜひそうお願いいたしたいと思います。厚生大臣は七回の当選で、議会においては私どもの大先輩でございますし、人格の高潔なこと、学識の豊かなことは定評のあるところでございます。しかしちょっと見ますると、非常に人がおよろしくて、馬力が少いように見えます。ですけれども、私は馬力が少いように見えても、それを期待をしているわけです。ほんとうに誠実な方が、またほんとうにいろいろなことを検討される方がほんとう努力される勇気は、いわゆるはったりで馬力の多い人よりもはるかに大きな力になると私ども考えておりますので、そういう点の私どもの期待を一つ裏切らぬよう、その期待の倍くらい専心をしていただきたいと思う。  それで実はここに厚生省の各幹部の方がおいでになりますが、どなたも私は前からよく存じ上げておりまして、非常に優秀な方で、非常に理想を持っておられる方です。しかし今の官僚制度の中で、歯にきぬを着せないで言えば、やはりやり方が一つのワクを出ないというくせがある。にれは厚生省だけではありません。ほかの大蔵省でも労働省でもみなそうです。そういうふうに大臣が御決心になっても、大臣の幕僚の皆さんが同じような決心で、今までのからを破って厚生行政を進めるんだという御決意になられませんと、これはいかに大臣が聰明であられても、努力をされても、大勢の方がまとまってなされる仕事でございまするから、そういう方々大臣と同じような気持で、今までの御努力の上にここに新しい空気を注入して、一つ前進しようという考え方になっていただく必要があると思う。と申しますのは、今までの厚生省の方々の御努力を別に非難するわけではありません。相当の御努力をなさったことは認めるわけですけれども、どうかそういう点で、大臣だけじゃなしに、厚生省の各幹部の方に同じように厚生行政の前進のために、社会保障の完成のためにやっていこうという新風をぜひ吹き込んでいたかくようにお願いしたいと思うのですが、その点の大臣考え一つ
  138. 坂田道太

    坂田国務大臣 私から実は厚生省の優秀な幹部の人たちに対して新風を吹き込むとかなんとかということはおこがましいとは思いまするけれども、少くとも私は厚生大臣という地位そのものは、私自身は愚かでございましても、やはり重要な地位だと思いますし、私も選挙をやっていわば国民の代表として選出をされたものでございますから、私の尺度というものはあくまでも国民のためにということ以外の何ものもございません。従いましてその尺度からはかる場合におきましては、それらの厚生省の役人の方々に対しまして私の決心なり私の気持なりというものを率直に披瀝いたしまして、そうしてその尺度で一つやっていただきたいということは就任以来申しているわけでございます。今日までの状況におきましては、私が非常に愚かではございまするけれども、私を非常に補佐していただいて実は感謝を申し上げておるような次第でございます。どうかこういうような機会に一つ皆様方がこういう社会保障の問題について御関心を示していただき、また御指導を賜わりますことが一々私にはぴんぴんとくるわけでございまして、この幹部諸君の頭脳あるいは誠意というものを私は信頼をいたしまして、できるだけ国民のためになるような行政をやってみたいというふうに考えておるわけでございます。今日、日々委員会に臨みます私の気持といたしましては、まことに薄氷を踏む思いでございますけれども、しかし皆様方の御質問というものは国民全体を代表せられるお言葉だ、いわば民の声は天の声というような気持でやっておることを御了承いただきたいと思う次第であります。
  139. 八木一男

    ○八木(一男)委員 一番大きなことだけ申し上げますが、社会保障に関していろいろの論議をされますときに、お役所で論議されるときも、議会で論議されるときも、あるいは各種審議会で論議されるときも、欧米諸国の例をとって、欧米諸国がこうであるからというような論議が往々にして行われます。私は、ほかの国のことを参考にすることはいいけれども、欧米諸国がこれくらいであるからそれと同程度、あるいはそれよりごく少くても、日本の国力が少いからその程度でいいということは断じて間違いであると思うのですけれども厚生大臣はどうお考えになりますか。
  140. 坂田道太

    坂田国務大臣 八木さんの御質問は全くその通りでございまして、やはり日本日本としての一つの背景がある、あるいは歴史がある、伝統がある、あるいはもろもろのいろいろの条件がある。このことを忘れて、ただよその国に育ってそれがうまくいったから、直ちにその制度がこの日本の国土において花を咲かすというものではないというふうに思うわけであります。たとえばニュージーランドは御承知のように社会保障制度におきましても百年の歴史を持っておる。しかも、午前中もお答え申し上げました通り、一九三八年にすでに社会保障に乗り出して、むしろそれを基礎として、それを参考として、英国におきましても一九四五、六年に、第二次大戦の終ったときにビヴァリッジ案が出されてそして今日のような保障制度ができたというふうに聞いております。しかしながらニュージーランド日本を比較いたしました、場合に、ニュージーランドの国は二百万の人口である、あるいは国土は日本とそう大して変らない、あるいはまた国民所得というものがはるかに多いというのに、これの優劣を話してみたところが実は話にならないのじゃないかと思います。しかしながら百年前からそのような社会保障制度という問題について関心を持っておったということは、やはり大切にしなければならないことじゃないか。同様の国柄、同様なことが言われる国におきましても、国民の意識が足りなかった場合にはそのような制度も花が咲かないわけなのです。たとえばヨーロッパにおきましても、スエーデンにしても、フィンランドにしても、あるいはまたノルウエーにいたしましても、この三国において社会保障制度が花を咲かしておると言いましても、それはその国その国のいろいろな事情があるかと思うので、むしろこれだけの大きい人口をかかえ、そしてこれだけの資源に乏しいわが国において、なおかつ社会保障制度というものをどうやって現実的に解決をし、国民の福祉に貢献をするかというところが実は重大な問題である。しかしその場合英国あるいはニュージーランドあるいはスエーデンあるいはアメリカとの諸制度。というものをわれわれとして一応の参考にすることはやはり有益なことであると思います。しかしながら日本の置かれておるところの地位、つまり人口構成はどうだ、産業構造はどうだ、民度の状況はどうだという、あらゆる観点から私は社会保障というものを考えていかなければならないと思うのでございまして、この点まことに八木委員と同感でございます。
  141. 八木一男

    ○八木(一男)委員 厚生大臣、非常にに残念なのですけれども、さっき申し上げた言葉はそれでいいのですが、今の御説明によると私の考えと正反対なんです。正反対で、いつもだったら大きな声を出すのですけれども、大きな声なんか出しても同じことですから穏やかな声で申し上げますけれども、実は、ほかの国の例を出して、それと同じでいい、あるいはそれより少くていいということではいけないのではないかと言ったら、その通りだ、その通りだという説明で、日本人口が多い、資源が少い、だからほかの国より少くても仕方がないというような意味に聞えるような――誤解でしたら非常に仕合せなんです。それを食言追及なんか、私はいたしません。誤解でしたら改めていただけば非常に私としては仕合せですけれども、そういうふうに聞えた。私の考え方はそうじゃないのです。たとえばりっぱな官庁の建物を建てるなんということは、国力が少かったらバラックでけっこうです。議会の建物なんか、こんなりっぱなものは昔の金持時代に建てたので、今建てるのだったらバラックだって何だってけっこう。外車なんかどんどん走らせているのは間違いなんで、あんなものは国産の小さなものでけっこうなんです。ああいうものは、国が貧乏であれば分相応でかまいません。けれども社会保障という問題は逆の問題なんです。貧乏をなおす問題、病気をなおす問題ということになると、日本の国は貧乏がほかの国より多い。病気もほかの国より多い。そのなると、こういう社会保障の問題ではほかの国と逆でなければいけない。ほかの国が五十の程度なら日本の国は百やらなければならないと思うのです。特に日本では賃金格差が多い。あるいは大農と零細農の生活程度が非常に違う。金持と貧乏人の生活がぐんと違う。そこで金持の方は医療もできれば老後も安楽に送れる。けれども貧乏人の方はその両方ともできないというような状態が全部に充満しておるわけです。そういう状態に対処するために、日本では外国の制度と同じではいけない、それを倍増す制度でなければいけないと思う。そういう意味で、外国のまねをしてはいけないということを申し上げたのであります。厚生大臣社会保障に非常に御熱心でございますけれども、さっきの私の言い回しで、聞き違いとか理解が間違っておれば非常に仕合せであります。そういう意味で、もう一回御答弁を願いたいと思います。
  142. 坂田道太

    坂田国務大臣 あるいは私が聞き違いをしておるのかと思いますけれども、私の申さんとすることは、やはり今お話を聞いてみると、実は私が申し上げたことがすなおに先生に伝わっておるように思うわけなんで、私は社会保障というものはやらなければいけないと思います。しかしながらやはり日本の国力というものあるいは経済の発展の段階に応じたいき方をとるべきだということを申し上げておるわけであります。確かに私はアメリカと日本の状態とを比較いたします場合に、アメリカにおいて一九五〇年に上下両院の協議会において低所得者層の調査の報告があったそうでありますが、それによってアメリカにおいてすらも三分の一の低所得者層があった、貧乏人があったということが報告をされておる。アメリカの国で三分の一の貧乏人があるという問題意識が取り上げられたところに私は意義があると思います。しかしながらその一つの、生活保護の基準というものは実に二千ドルになっておるということを考えました場合に、たとえばアメリカの四民所得の比率から合うならば、これが六割たということを聞いておるわけであります。日本の場合においてはこれが二割あるいは三制だ、そういうふうに考え、さらにまた日本のいわゆる国民所得、それからアメリカの四民所得というものを考えるならば、日本国民所得は九分の一あるいは十分の一かと考えられるわけであります。そうだといたしますと、もし二割の場合は十八分の一、三割の場合は二十七分の一の貧乏世帯である。アメリカに私たちが参りまして、貧乏人という考え方というものは、働く意欲があれば大体アメリカにおいて働ける、そういう社会においての貧乏人というものは、これははやはりなまけ者だという感じかいたします。むしろ金持というものは相当の努力をしてやられた人だ、偉い人だ、こういう感じが通用をいたしております。しかし日本の場合においては、働く意思があっても働けない、働く機会に忠まれない、そういう経済状態にあり、社会諸勢にある。いわゆる同じ貧乏追放といいましても、その問題意識というものははるかに日本の方が切実である。この点については八木さんと私は全く同感だ、こういう意味でありまして、従いましてやはりこの低所得者層に対してどういう施策をやるかということが私は厚生行政のポイントでなくちゃならぬと思います。この点は滝井さんが先ほど御指摘になりました点でございまして、もろもろのわれわれの政策が、この低所得者層に対して、国民年金はどうなんだ、あるいは健康保険はどうなんだということを解決せずして、私は厚生省の存在意義はない、実はかように考えておるわけでございまして、この点につきましても私は八木さんと全く同意識を持っておるわけで、何とかしてその低所得者層というものをなくする政策を今後掲げていきたいというふうに思うわけでございます。さりながら、限られた一つ財政、限られた経済というものから申しますると、やはりわれわれ政治家といたしましては現実的な政策というものを打ち出さなければならないわけでございます。ただ今日日本の場合においても――非常に私おもしろいと思いましたのは、英国におきましても、昨年の保守党の大会においてマクミランが何と言っておるかというと、労働党を称して最初にこういうことを言っておるのです。われわれは時流に乗っておるというか、ついておるというか、あるいはどういう訳になるか知りませんが、ウイ・アー・アップ・ツー・デート・アンド・ゼイ・アー・ナット、それからその次が、ウイ・アー・リアリスチック・アンド・ゼイ・アー・ナット、ウイ・アー・レリバント・アンド・ゼイ・アー・ナット、こう言って、労働党に対して実は批判を加えておるわけです。何もこれは社会党さんに文句を言うわけじゃございませんけれども、少くとも私の心がまえといたしましては、やはり財政状態に応じたウイ・アー・リアリスチック、こういう立場で物事を処理していきたいということを考えておるわけでございます。
  143. 八木一男

    ○八木(一男)委員 非常に懇切な御答弁でありがたいのですけれども、時間の関係がありますから、私に対する儀礼的な言葉は省略していただいてけっこうです。私の方もずばりと申し上げますから。  そうしますと、結局ほかの国よりも貧困が多い、疾病が多い、失業が多いという状態、それから現在も救貧対策の相手になるような非常に状態の悪い人が多いという状態において、外国よりも社会保障に熱心にしなければいけないということは、厚生大臣、同じお気持だろうと思いますが、端的にその点について。
  144. 坂田道太

    坂田国務大臣 全く同感でございます。
  145. 八木一男

    ○八木(一男)委員 そこで、厚生大臣がさっきの御答弁で財政ということを言われましたけれども財政もマンネリズムに陥っておると思うのです。財政についても厚生省がマンネリズムに陥っている。大蔵省、大蔵大臣その他を、場合によっては教育しなければならぬことがあると思うのです。財政は全部大蔵省のことだということでは、いつまでたってもマンネリズムは解決がつかないわけです。厚生大臣でございますから、閣議でそういう御主張をなさる立場がおありになると思うのですけれども、とにかく大蔵省のやり方というものは、やはり今までのくせがありまして、そのときだけの出し入れでいけばいいというような傾向が多いわけです。ところが思い切ってやれば、あとで財政負担が減ってしまうというものがあるのです。そのときだけは苦しくても思い切ってやったら減ってしまうというものがある。そういうものについても、財政当局だからと言って幾分マンネリズムに陥っておったら、別な観点からそれをよりよくするための御主張をなさっていただいていいと思うのです。その大きな例を一つ厚生行政で申し上げますと、結核問題がある。結核問題で、三年前に医療保障勧告が社会保障制度審議会から内閣に出された。そこでは結核問題の解決のために、今までの結核問題対策費のほかに、毎年少くとも三百億以上出して、五カ年で結核を撲滅しろという勧告が出ているわけです。そうなれば、三百億みたいなものは財政上どうにもならないというようなことを大蔵省は言うにきまっているのです。それでへずろう、へずろうとする。それで厚生省も元気がなくなって、去年は結核の医療費、予防費ではなく医療費について、今までの重症患者の別なワクを設けないで、医療費全体について、入院の食事料は省いておられましたけれども、全額国庫負担ですか、全額公費負担の案を持っておられた。持っておられたが、去年大蔵省からはね飛ばされて元気がなくなって、ことしはそれも出しておらないようなんです。こういうようないきさつがある。そこで大蔵省の方は、きっとそんな三百億なんて無理言ったってできはしないというように言われたにきまっている。言われたにきまっていますけれども、結核の問題は、短期間にたくさんのお金をつぎ込んでなくしてしまえば、あとは金は要らないのです。それで五年間で大体撲滅はできる。三百億、五年間で千五百億使ってみたところで、あとはそっちの支出が減るのだったら、長期の財政計画としてはとるべきなんです。ところが鳩山さんみたいな明敏な主計官がおられますけれども、その上司の人たちになかなか頭の回転の悪い人がいて、ほかでは聰明であっても、そういう点でそういうことの主張がなかなか通らないというにとになるわけです。そういうときに、やはり厚生大臣が、ほんとうに厚生行政のために、結核を撲滅するという公衆衛生の立場から、そういう気の毒な患者を助けるという社会保障立場から、それだけで相手が納得しなければ、財政の点でもこうではないか、大蔵大臣なぜ近視眼的な行き方をしておるかというようなことで対決をなされば、問題は片づくわけです。ところがそういうことを今までだれもしていないらしいのです。さっき言ったように、坂田厚生大臣が、そのくらいの勢いで佐藤さんと渡り合って、それを論破して、そういうことができるようにやる決心があるかどうか伺いたい。
  146. 坂田道太

    坂田国務大臣 私の方でいろいろきめまして、そうして要求すべき必要がごさいましたならば、これは相手が大蔵大臣でございましょうとも、あるいは総理大臣でございましょうとも、私は堂々と渡り合うっもりでございます。ただ問題は、必要と私が感ずるか感じないかという問題だと思います。それからもう一つの結核の問題は、今おっしゃいましたようなことになろうかと思いますけれども、しかしながら年金制度につきましては、やはり相当に将来の財政を見通さなければやれないので、やはり私たちは現実的な一つ年金というものをとりたい、というふうに考えておるのでございます。
  147. 八木一男

    ○八木(一男)委員 結核の問題はあとでまた触れるといたしまして、今リアリスチックとか何とかおっしゃいましたけれども、とにかく政治をやる以上は、理想は掲げなければならないけれども、現実の状態に対処しなければならないということは、われわれといえども知っておるわけです。ところが、その幅の認定が問題でありまして、極端に言えば五千億厚生行政で必要とすれば五千億の増税をすればできるのです。しかしそれはほかの方で問題が起るでしょう。だからこれは一概には言えませんけれども、できないということは一つもないのでありまして、ほんとうに重要な場合はどっちが重要かという問題になるわけです。そういう点で、さっき申し上げましたように厚生省もマンネリズムです。毎年一別か二割くらいならば一生懸命頼めば大蔵省は査定で入れてくれるだろうが、倍も出したらばねられるだろうと初めからあきらめておる。聰明な厚生省の官僚の皆さんがそういう空気を打破しなければ、社会保障はちっとも前進しないのです。大蔵省もりっぱな公務員の方ばかりおられるけれども、やはり前例に従ってやれば無難だという考え方がある。無難だ無難だということで、世の中で非常に前進しなければならない部分がゆるやかにしか前進しないでとまってしまったら、その中で病気の人が死ぬ、貧乏の人が苦しむという問題が片づかない。そういう国民ほんとうの苦しみを知ったならば、今までの、財政の中で厚生省は何%、農林省は何%、運輸省は何%というような、そういうことを離れて、ほんとうにどれが重点であるかということで財政を組まなければならぬ。その組まなければならない御当局がマンネリズムに陥っておる。それを前進して、これはこれだけ必要だと言わなければならない厚生省自体がマンネリズムなのです。非常に優秀な方がおられるけれども、今までさんざん努力されても、さっきも滝井君の御質問に、一生懸命努力したけれども査定で入らなかったと言っておられた。あんなちっぽけなものでも入らないものだから元気がくじけてしまって、百出さなければならぬところを十か五くらい出したら、まあよかったというような考え方がびまんしておるわけです。それを打破してもらわなければ社会保障の前進がない。打破の範囲は、自民党内閣ですから自民党の範囲内で、よくはないけれども仕方がないと思います。しかし自民党はむしろ社会保障を一番大きな内政上の問題として掲げておるわけです。選挙では、自衛隊の拡大など何も訴えておらない、僕らは一つも聞いたことがありません。それでもインチキして拡大しておるからけしからぬ。自民党の議員で、われわれは自衛隊を何倍に拡大しますなんて言った人は一人もいませんが、社会保障をしますということは耳にタコができるほど聞いておる。ところが社会保障一つも拡大しないということは、公約と違うわけです。自民党の党議で社会保障を進めるということがきまっている以上、進めるべきなのに、今まで進められなかった。それをほんとうに進められるならば、進めるという公約に従って財政計画も組みかえなければいけない。それを昔の伝統を守って、それに一%か五%、一〇%という色づけをやっておるからちっとも公約通りいかない。それを徹底的に変えるには、厚生大臣初め厚生省は火の玉になって大蔵省と大げんかしなければならない。大蔵省の中でも、鳩山さんのような理解のある方が大蔵省の中で計画を変えるというように爆発してもらわなければいけない。そういうような元気でやられるかどうか。
  148. 坂田道太

    坂田国務大臣 私といたしましては、やはり社会保障というものが今日の近代国家が充実していくという場合の一つのめどでなければならないという意味からは、お説の通りでありまして、この社会保障予算の獲得についてはやはり火の玉となって努力をいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  149. 八木一男

    ○八木(一男)委員 同じようなことばかり言いましたけれども、今前半は聞いておいでになりませんでしたが、厚生、労働関係の主計官として、厚生省が今後懸命に検討されて出された厚生省の予算に対しては大蔵省もそういうような立場考えられて、財政を大幅に組みかえて社会保障が完全になるような方向財政方針を持っていかれるかどうか。これは非常に大きな問題で、主計官としてお答えにくいかもしれませんけれども、しかし一つ勇気をふるってお答えになっていただきたい。
  150. 鳩山威一郎

    ○鳩山説明員 先ほど厚生省の御要求が少いというようなお話がございましたが、私どもはもちろん要求の多いものに最終的に多く予算がきまるというようなことは絶対にないと存じております。特に社会保障関係のことになりますと、これは全体の財政問題と密接につながる問題でございます。そういう問題につきましては、やはり私どもも厚生省と一緒になりまして、日本財政上いかにしたら社会保障が最も有効に、しかも日本の現状に即したものができるかということを、これは私どももふだんから常々勉強もしたいと存じております。  なお三十四年度予算につきましては、党の公約その他を最優先ということで予算編成がなされた次第でございまして、例年の社会保障費の増加に比べまして三十四年度は飛躍的にふえたと私どもとしては考えておる次第でございます。しかしなおことしの予算の計上の仕方では――来年度はさらにこれが必然的にふえるような様相を帯びておるわけであります。また拠出制国民年金が始まりますころにはさらにまたふえるというような、そういった末広がりの内容を盛った実体の予算を計上いたしておる次第でございます。今後社会保障の発展ということにつきましては、厚生当局と常に緊密な速絡をとってやっていきたいと考えております。
  151. 八木一男

    ○八木(一男)委員 鳩山さんがおいでになる前に申し上げたのですけれども、実は厚生省の予算は一昨年と一昨々年は、全部の予算の伸び方よりも伸び方が少いわけです。ちょっと伸びておりますけれども、伸び方が少いわけです。ですから総体的に後退しているわけです。ことしは少し伸びていることは知っておりますけれども、これは昔のへっこんだ穴を幾分埋めてもらったというだけです。ですから四、五年前からさかのぼって考えていただきたいのですが、穴がちょっと埋まっただけで、ほかの財政がふくらんだだけにまだ一向達していないわけです。前と同じ率で計算されるとそういうことになるのです。ですから社会保障は前進しなければならぬ、公衆衛生は完成されなければならないという立場からいうと、この失地回復がまだちょっとしかできておりません。そういうことからいうと、失地はもちろん回復されなければならないし、それ以上に今前進されなければならない社会保障であり、公衆衛生であるから、それよりもはるかに多くなければならない。そういう観点からいうと、ことし鳩山さんのお考えによると相当ふえておりますけれども、これもそういう観点からいえば、それの数倍か十倍くらいふえないとふえたことにはならぬ。これは鳩山さんだけに申し上げても御迷惑でしょうが、きょうは大蔵大臣に来ていただくつもりでしたからあれですけれども、他日機会を得て大蔵大臣にそういうことを申し上げたいと思いますが、特に厚生、労働関係の主計官でいつも御苦労なさって、いる鳩山さんに、大いに厚生省の立場になって今後ともがんばっていただくようにお願いしておきたいと思います。  それから結核の問題にまた戻ります。結核の問題は坂田さん御就任になって間もないので、経緯を十分には御存じないかもしれませんが、医療保障勧告ができましたとき、岸さんがまだ内閣総理大臣臨時代理のころでありましたが、医療保障勧告をそのまま実行するかというときに、いろいろ回りくどい御返答があった。ところが社会保障制度審議会の設置法第二条で、内閣は結局医療保障勧告を尊重しなければいけないということになっているわけであります。そういうことで、厚生省が要求したけれども大蔵省が査定してはねるということは、ほんとうは許されないわけであります。内閣自体が尊重の義務を持っているわけであります。坂田厚生大臣、ぜひその点で主張していただきたい。大蔵省がいかぬと言うことはできないわけです。内閣自体が尊重しなければならないという義務を持っている。これを尊重しなければ内閣自体が法律違反を犯したことになるわけであります。これは内閣総辞職に値するような責任です、実行しなかったら。そういうふうな大きな背景があるのですけれども、どうもそれが忘れられがちになっていると思います。法律に明記された審議会の勧告答申に対する尊重義務、これについて岸さんに質問したことがあります。五人委員会とか七人委員会のような厚生省の勝手に作った委員会は、尊重されてもいいし、されなくてもそう法律的な問題ではないけれども、少くとも社会保障制度審議会の勧告は尊重されなければ法律違反であって、内閣を投げ出される責任があるくらいの重大な問題ではないかということを伺ったのです。そうしたら岸さんは、その通りだ、それで尊重する――おととしの話ですが、だけれどもことしは急場の間に合わないから来年は尊重するからかんべんしてくれと言われた。その来年になってもやってない、ことしになってもやってない。もしこのことがほんとう国民に浸透したら、これだけで内閣不信任案の理由になるわけです。ほんとうはそういう問題です。岸さんは明らかに言っておられる。これは速記録を調べていただいたらすぐわかる。来年は必ずするようにしますということを答弁しておられる。ですから坂田さんが要求されるときに、大蔵大臣や主計局長が何やらかにやら言ったときには、とにかく大きな声を出してめちゃくちゃにたたかれてもいいわけです。内閣が責任を持っているのに一大蔵省が何を言うかということを言われてもいいような立場にあるのです。その内容社会保険全体に関係がございます。健康保険国庫負担をすべし、国民健康保険国庫負担を二割五分ではない、少くとも即時三割にすべしということがそれにくっついているのです。それと同時に社会保険の適用者も全部含めて、結核に対する予防費はもちろんだけれども、医療費の全額を公費で負担すべしとはっきり出ている。ところが厚生省の頭のいき方がそっちの方だけ抜いているわけです。国民健康保険は三割でよろしい。そこで、今まで平均二割だったものを平均二割五分にしたんだから、これでも政府努力いたしました、御了承願いたいというようなことを言っている。とんでもない。結核医療費の公費負担を入れれば、三割というやつは三割でなくて五割くらいにしていい。五割にすべきところを二割から二割五分にしたんだ。六分の一くらいにすぎない。こんなものは公約を果したとも言えないし、制度審議会の答申を尊重したとも言えないわけです。ですから、今すぐ予算を組まれて三割にすべしと坂田さんに申し上げたって、これは無理なことは残念ながら私ども存じております。しかしそういうことをよく読んでいただけばわかりますから、来年の大蔵省との大げんか、閣議における論点を十分に整備しておかれて、どんなにほかの防衛費が来ようと、何としても――橋木さんと佐藤さんが前にけんかされたそうですけれども、防衛費を削って社会保障費をやると言ったそうですけれども社会保障費の方はこういう法律的な立場がある、それと与党の第一の公約の点がある。だれが何としても防衛費なんかよりもはるかに上になければならない。ですから、防衛庁長官とつかみ合いしてでも、そっちをへっこまして、こっちをふくらますというようなことをやってもらわなければならない。そういうことをもう一回御決意を伺いたい。
  152. 坂田道太

    坂田国務大臣 結核の問題は非常に重要な問題でございまして、何と申しましても、医療費の中において占める国民負担というものは非常に大きいと思うので、結局低所得の方々には結核という長期の、そうして費用のかさむ問題でございますので、この点はやはり八木委員のおっしゃいますようなことを私どもとしても頭の中に置いて、今後来年度の予算を組みます場合においては、大蔵省当局のよく一つ御理解をいただきまして前進させたいというふうに考えておるような次第でございます。
  153. 八木一男

    ○八木(一男)委員 それでは、濃厚感染源の隔離ということは今度出ていますけれども、来年度一般の結核の医療費の全額公費負担という法律を出していただけますか。
  154. 坂田道太

    坂田国務大臣 その問題はしばらく検討いたしたいというふうに考えております。
  155. 八木一男

    ○八木(一男)委員 この問題は、厚生省ですでに昨年案を持っていられるわけです。ただしその原案には一つ大きな欠点がありますから、その欠点を直して出してもらいたい。それは社会保険の適用者を省いているわけですが、これも入れてそういう案をぜひ出していただきたい。ということは、結核だけでいえば、社会保険の方で見てもらえるからいいんじゃないかというような簡単な割り切り方ができるかもしれませんが、結核を全部なおすために出すということと同時に、社会保障制度の医療問題は私も参画しておりましたから知っておりますが、結局三割、二割というようなことを出したのは、社会保険の結核医療費が全部公費負担されるというような前提において出した。それを切り離して出せば、健康保険三割、国保五割くらいの勧告を出すところです。聰明な政府の方が読み違いをされることがないという前提のもとにあの文章ができているのに、無理やりに読み違いをされたか、読み違いをされたような格好をしてあそこから切り離されておる。そうなると、去年答申にかかるのに六カ月議論を戦わしている。それが文承上のところでこういうふうに組み立ててできているところが無理に引きちぎられたら、六カ月の苦労が何もならぬ。ほんとうの法律の条文が生きない。そういうことがからんでいることを忘れないでいただきたい。それは厚生省として立案されたのはいろいろな立場があるのでしょうけれども、からんでいることは絶対に忘れないでいただきたい。それから、結核の全額ということが絶対の要件になるということは、全額でなくても、八割でも九割でもいいじゃないかという考え方が、普通しろうとには起る。厚生省の方はそれが非常に違うということはおわかりだと思う。八割や九割にしたら、効果は三分の一くらいになってしまう。九割の効果がない。というのは、結核というのは今治療法がほとんど完成されているわけです。完成されているのになおる人がないのは、病理的になおらないというのじゃなしに、財政的に経済的になおらない。非常に金がかかるために、治療法が完成しているのに入院できない。いろいろな十分の治療が受けられないということのためになおらない。ですから、それを一割残したら、その一割が払えないために、あとの九割の補助を受けられない人がたくさん出る。一割減らしたら効果は十分の一くらいになる。だから、これは絶対に十割にしなければ意味をなさないものである。そこをちょっと簡単に考えられると、あのくらい一生懸命やっておるのだから考えてやろう、十と言われたから、八くらいやれば十分勉強したことになるだろうと考えられたら大違いだ。そういう点で、絶対十割にしなければならぬ。それから十割を公費といっても、国費と地方費を合せて十割でよかろう。国庫八割に地方費二割でよかろうという考え方が往々にしてあるのですけれども、地方財政というのは御承知のような状態です。一割でも二割でも地方財政に譲れば、地方的の差別が起るわけです。貧乏県では実際に運行されないということです。ですから、この問題は地方分権の問題とは別に、社会保障の問題は、事務は地方にやらしてもいいけれども、事前に関する限りは全部国が背負うという考え方でないと、地方的に非常にアンバランスが起る、不公平が起るということになる。ですから、金は全部国が持つ、これはちっとも減らさないで、全額社会保険と両方からんで持とうということを、一つはっきりとその点を貫いた案をぜひ出していただきたいと思うのですが、あえてもう一回御意見を承わりたい。
  156. 坂田道太

    坂田国務大臣 いろいろ御教授を賜わったわけでございますが、その点は十分御意見を拝聴いたしておきます。
  157. 八木一男

    ○八木(一男)委員 あと三時間ほどの分量がありますが、御迷惑ですからあと二十分くらいに縮めます。  その次に健康保険法のことですけれども健康保険の一部負担がふやされた。それからもう一つ、その前に保険料が上げられたということがあって、大騒ぎがあったことは御承知通りでございますが、そのときに厚生省は非常に巧妙きわまる、いい頭を非常に間違った方に使われまして、黒字が出る見通しがついておるのに、赤だ赤だと、まるで赤が大好きなように言われまして、赤字が出たという理由のもとに、保険料を上げておきながら、そのまま一部負担をふやしてしまった。ところが、それをやったとたんに黒字に転換しておるわけです。赤が黒になったら、これは当然逆にしてもらわなければならない。そういうことをなさることは厚生省としての責任であり、厚生大臣として当然なさらなければならない仕事であると思いますけれども、それについてどう考えるか。前に赤字であるという理由のもとに、私どもに言わせれば改悪がなされた。ところがその要因がなくなった、今度は黒字なんです。そのときに赤字であると言われたのですから、黒字になったら元へ戻されるのが、ひっかけるわけでもなんでもない、すなおに考えられて当然だと思うのです。その点について厚生大臣の御意見を先に伺いたい。総括的な、抽象的なものでもけっこうです。
  158. 坂田道太

    坂田国務大臣 赤で、その赤字が黒字になったという場合には、その赤であったものがどういう事情で赤であったか。そしてそれがどういうふうな事情で黒になったかということを十分に知らないと、これは何とも言えない問題ではないかと思いますので、まず保険局長から一つ御答弁を申し上げたいと思います
  159. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 御承知通り昭和二十九年度、三十年度あたりは健康保険財政が非常に苦しゅうございまして、皆様方にも御心配をわずらわしたところでございます。そのときに政府として、片一方において三十億の国庫補助を三十一年度、三十二年度、二年間保険財政に投入いたしますとともに、いろいろな措置をとったわけでございます。その措置の一つには、赤字財政と申しますか、財政上の見地からとった措置もございましょう。たとえば保険料の料率を恒常的な料率の千分の六十から緊急分の、しかも満度の千分の六十五まで引き上げる、こういうような財政的な――またしかしその他の、単にそういう財政的見地というより、むしろ制度の健全なる発達のためにとったとわれわれは思っておる措置もあるわけであります。八木先生の御質問はどうやらその辺のところが一つの伏線のようでございますが、それはそういうようなことでございます。従いましてその後これらのもろもろの措置をとりました結果、財政もおかげさまでよくなってきました。それにつきましては国庫負担の方もほかの方に回されて、私どもとしてはなはだ不本意な点があったのでありますけれども、三十億から十億になった、こういう点もございます。しかし同時に、なおそれで今後の運営が成り立つという見通しでございますので、先ほどの財政対策の面の、保険の料率を引き上げましたけれども、これは御承知通り緊急満度の千分の六十五まで行っておりますから、これは非常に弾力性を欠いております。これは今後の保険の運営につきましても、まず第一にこの辺のところを弾力性を持たしておく、こういうことが必要であろうということで、一応予算の面におきましては、三十四年度の六月以降において千分の二を引き下げるような予算を組んでおります。これは六月の間近になりましてから、またさらに正式に検討してきめたいと思います。そのような措置を講じておる次第であります。
  160. 八木一男

    ○八木(一男)委員 今度は厚生大臣だけがお答えになれることを申し上げます。ほかの人だと、これは別な伏線が厚生省に入っちゃうのです。これは厚生大臣だけでお答え願いたいのです。社会保険ほんとう社会保障であるかどうかわからないけれども社会保険社会保障の一部に一応入れるとしますと、そういうものは結局相互扶助で、気の毒な人を助けるという意味が一番多いと思うのですけれども、それについてはどうお考えですか。
  161. 坂田道太

    坂田国務大臣 その通りだと思います。
  162. 八木一男

    ○八木(一男)委員 そうなりますと、時間がないから、もう少し意地悪く伏線を置きたかったのですが、意地悪をやめにしまして、結局保険料という問題と一部負担という問題――そうお聞きにならなくて率直に聞いて下さい。こっちは意地悪しませんから……。保険料と一部負担という問題ですが、保険料というものは社会保険全体の人が、高くなれば多く負担しなければならぬ、安くなったら負担が減るということです。一部負担というものは、この社会保険の中で病気になった人が負担しなければならないのです。そうすると財政に余裕がある場合に、どっちの負担を減らした方が社会保障の意義に適するとお考えですか。最初に断ったように、これは絶対大臣に答えてもらいたい。観念的なことでけっこうですから……。
  163. 坂田道太

    坂田国務大臣 やはり国会の答弁と、いうものは速記に残りますし、非常に重大でございます。従いまして私が誤まった――誤まるというよりか、聞き違いをしたり、うろ覚えで答弁をするということはよくないと思いますので、責任がある答弁はいたしますけれども、一応局長から答弁いたさせます。
  164. 八木一男

    ○八木(一男)委員 私、意地悪しないつもりで申し上げておるのですが、聞き違う心配があるというなら、何回でも質問者に聞いていただいたら何回でも克明に説明いたします。聞き違ったらいけないというなら、何回でも説明いたします。こっちに質問していただいてもけっこうです。これは一番大事な点です。厚生省は厚生省として全体に御努力はなさっておるけれども、悪いくせができかかっておるのです。これは同じ家に住んでいると同じくせが出るのと同じです。みんなおそ起きだったらば、ほかのとえろが完全であっても、みんなおそ起きになる。そういう悪いくせが、ほかの点では勉強がよくできるし、一家仲よしの厚生省にもできておる。だから厚生省で今までやられてきた方から答えられると、この悪いくせが出るのです。ほんとうに新しい、全然こういうようにくせのついてない、純粋な、熱心な大臣から御答弁願いたい。――とにかくそれについての感じだけをおっしゃって下さい。それはそうだけれども、ほかの点であるということを必ず太宰君言うにきまっておるから、率直に今言ったところの感じだけをお答え願いたい。
  165. 坂田道太

    坂田国務大臣 そこの点は非常に不勉強でござまして、よくわからないのであります。一部負担というものがどういうものであるか、あるいはまた保険料というものがそれとどういう関連を持つかということが実はよくわからないものですから、そこで一応保険局長から答弁をさせます。しかし保険局長が答弁したからといって、何も私がそれによって左右されるという意味のものではございません。その点は私も八木委員の熱心な御質問に対しまして純真に答えたいと思っております。それほど私もばかではございませんから、まず保険局長から答弁いたさせます。
  166. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 そうなりますと、くどくどと申し上げません。御承知通りこの一部負担は大きい問題でございます。そうしてこれは八木委員委員でいらっしゃいます社会保障制度審議会においてこれを勧告いたします際に、非常に大きな異論があったようでございます。それで多数説、少数説それぞれございましたけれども、答申におきまして現在のような点数単価方式をとっております場合においては、制度の健全なる運用をするため少々程度の一部負担はいたし方ないであろうという趣旨のことを――ちょっと文章は違いますが、そういうことになっております。もちろんそれについては八木委員初め有力な反対意見もあったことはよく承知しております。政府といたましては健康保険法の改正を上程いたしました昨年でございましたか一昨年でございましたか、引き上げの際にも、この一部負担については非常に御議論、御質疑がございました。そのときに御答弁申し上げましたように、これは単なる赤字対策としてという見解からこれをとっておるわけではないのであります。やはりこの制度を健全に運営していく上において、この程度の一部負担はやむを得ない、こういう見解でやっておるわけであります。
  167. 八木一男

    ○八木(一男)委員 厚生大臣に申し上げたいのですが、そういうことを言われるから困るのです。結局そう言ってのがれようということで、厚生省はさんざん打ち合せをして、赤字だけではないのだ、運用上必要なんだから一部負担も必要なんだ、ということを統一されて答弁をする。最初出てきたときは、健康保険が赤字である、収支バランスが合わない、困ったということで――川崎秀二君の時代です。七人委員会というインチキな委員会を勝手にこしらえて、学識経験者というが、厚生省の息のかかっている人を七人集めて、その人の名前と権威を拝借して、その人たちが一生懸命にやったからこれでいいのだということで、川崎さんがやらしたわけです。実際けしからぬ。審議会の冒涜です。こんな官選の委員会は作るべきではない。年金の五人委員会の答申なんというものは、あきれ返った答申である。厚生大臣も御存じだと思うのです。そんなけちな、厚生省の息のかかった委員会なんかこれからお作りにならない方がいいと思う。そういうことで、そのときも赤字対策として委員会で作られた。ところが、その有名なる学者たちは、赤字対策で作ったのだけれども、それを作ったのに参面したから、それをけなしたら自分の面子にかかわる。だから学者としても純真むくじゃない。ほんとのところあの学者たちよりは坂田さんの方がずっと僕ら純真だと思います。そういう人たちがまたほかの審議会に重ねて出ているわけです。そういう人たちが初めは赤字を埋めるためにどうするかということでやられていた。それで一番大きな社会保障制度審議会にいったときに、太宰さんは事務局長だったからちゃんと知っておるわけだが、全体の空気は赤字対策がおもだから、僕ら絶対にいかぬといって反対したけれども、非常に親心が強過ぎて、今の政府じゃそれ以上できまい、大蔵省がいうことを聞くまいということで、赤字だからそのくらいつじつまを合せるのはしようがないということで、猛烈な反対があったけれどもそういうことで通した。それでごくわずかな一部負担ならやむを得ないということになった。やむを得ないというのは日本語でいいことじゃないのですよ。仕方がないから、ごくわずかな一部負担ならやむを得ないということで――その答申には僕らは猛烈に反対なんですよ。これは各省の次官も全部入り、自民党の議員さんも入り、そういう純真な学識経験者も、少し息のかかった学識経験者も両方とも入り、それから各階層の資本家代表もみんな入って、そこでできた答申が、ごくわずかな一部負担ならやむを得ないということで、やむを得ないということは赤字だからやむを得ないということなんだ。それ以外に理由はないのです。それが今赤字が黒字になったのだから、もとに戻すのは当りまえですよ。応問がないから残念だけれども、伏線を張っていけば厚生大臣はお困りになるだろうけれども、困らせるのが目的でない、制度をよくしていただくことが目的だから、率直に言いますけれども、厚生省のほかに努力は認めますが、これが一番悪いくせだ、とにかく国民をどろぼうと見ようということだ。被保険者なり医療担当者はどろぼうである、だから一部負担や何かで締めつけなければいかぬという考え方がある。そういうことじゃいけないのです。それは一千万人に一人や二人どろぼう根性を持っている日本人はあるかもしれない。現に強盗が入るのだからこれはしようがない。しようがないけれども、大多数の国民は善人である。そういう建前で行政をしなきゃ日本の政治というものはできないですよ。日本人がどろぼうと思ったら、そんな者はみんな監禁しなきゃならぬ、みんな容疑者にしなきゃならぬ、そうでしょう。ところがそういう建前で厚生行政が行われている。それは初めからそうじゃなかった。赤字があって困ったから何とか解決しなきゃならぬというところから始まった。それでいろいろな反対があるので、その反対を押えつける理由として、過剰診療が行われるとか被保険者と医者が結託して行われるというようないろいろなことをデッチ上げて、そうして一部負担というもので締めつけようと考えている。厚生省の人たちが熱心なのはわかつておりますけれども、頭のいいことはわかっているけれども、そのときは赤字で、九割九分までそっちに頭が一ぱいであって、医療保障制度がどんなものであるべきかということを一時忘れられた。借金のことを考えていると勉強のことを忘れるが、勉強のことを忘れて借金のことばかり考えていたわけです。こういうことは人間ですから僕らでも忘れることがありますが、もう二年間忘れた、あやまちで過ごしたけれども、そのあやまちを改めてくれればいいのです。別に内閣の責任を追及しようとはいわない。あやまちを改めてくれたらいい。それを間違ったことをいまだに強弁して、それでいいんだなんて言われたら、これは開き直らざるを得ないということになる。ですから一部負担をやめるということが今社会保険で一番大事なことです。それで厚生大臣に申し上げたいことは、結局一部負担ということですが、これは入院の一部負担もある。そんなものわずかな金じゃないかと思われる方があるかもしれない。厚生省の部長さんや局長さんや課長さんや、また坂田厚生大臣などはそう思われるかもしれない。私も昔貧乏でしたけれども、今は歳費をいただいて人並みの生活をしているというようなことであると、ぴんとこないような金なんです。ところが大衆にとっては非常にぴんとくる金なんです。零細企業の労働者の傷病手当金はちょっとしかつかない。そこで入院の一部負担を取られたならば、結局家族が暮していくことを心配して内職して――奥さんが非常にけなげな人だったら、あんた病院でちゃんと直して下さいというけれども、奥さんがだんだんやせてきた、あるいはそういう環境ですから結核や何かうつって奥さんがだめになると思えば、だんなさんとして奥さんがかわいければ、途中でも退院して一部負担をやめるということになる。また奥さんが非常に気が強くて、あなたの入院料を払うのはかないませんよといえば、気の弱いだんなさんだったらはい、そうですかといって、すぐ退院しなきゃならぬことになる。どっちの場合もあるでしょうけれども、そういうことになる。それから今度は見る方からいえば、たった百円の金と言われるけれども、僕らも七、八年前に百円の金がなくて困った経験がたくさんある。僕は一番貧乏な階層ではなかった、それでもほんとうに困ったことがある。とにかく五十円の金がなくて大事な会合を汽車に乗れないであきらめたことが数回ある。そういうときになると、結局子供が学校で金が要る、先生が持ってこいと言われると、隣に借金をして過ごす、ところがまたほかの子が言ってくる、また隣に行くということになれば、百円の金で二、三日どうにも動きがつかぬことがある。そういうときに病気になったときには、百円の一部負担金があるからといって診察をあきらめてしまうわけです。特に女の人がそうだと思う。御亭主が薄給であって、子供が金がかかる、子供は純真だからほかの子供が持っていればあれを買ってくれとか、あるいは学校の先生が持ってこいと言われたからお金を出してくれとかすぐ言う、そういうことに金が全部いったら、百円の金さえないことになる。見てくれれば、早く診断してもらって早くなおせるのに、その機会を逸するのでますます病気が重くなってしまう。極端な場合にはそれで死ぬことがある。そうでなくとも病気が重くなって、その人が長いこと苦しむということになる。今度は早期診断、早期治療ということが医療上述べられておりますが、それができなくなる。保険経済、保険財政を大きな目で見てもらいたいというのもそこなんです。早期に診断すれば早く病気がなおる、病気が重くならないうちに診断できれは保険財政はよくなる、そういう長い目で見た保険財政計画を厚生省では一時忘れられたと見える。頭のいい方たちがそれを知らないはずはない。一時忘れられた。片方で借金をして夢中になってしまったので、勉強の方を忘れられた。大蔵省に持っていくともっと厚生行政は薄くなるから、よけい大蔵省の方ではそう思う。ほんとうは長い目の財政計画は大蔵省がしなければならぬのです。さっきの結核の問題でもそうです。そういう意味で、財政的に見ようか何的に見ようが、そういうものはやめるべきだ。それを意地を張って、はっきり言えば、ほかの点では厚生省の御努力は認めますが、この一部負担の点では厚生省の局長さん、次長さん、部長さん、課長さんには猛烈な意地がある。そのとき猛烈にわれわれはたたいた。それを一生懸命こらえて、三年越しにやっと通した。当時高田さんにわれわれ罵詈ざんぼうを言って失礼だと思っておりますが、そういう点がある。だから、この点意地があるわけです。これは僕らが罵詈ざんぼうしたのが悪ければ、頭を下げて手をついてあやまってもいいのです。しかしそれと政治とは違う。厚生省の首脳幹部の方の意地のために社会保障制度が前進しなかったり、気の毒な人が助からなかったら、これは困る。そういうことを変えてもらうためには、これは大臣にやってもらう以外にない。赤字の背景で黒字になったといかに厚生省が言われても、審議会ではその赤字の対策が目的でやむを得ないという答申を出した、ごくわずかなものであればやむを得ない。ところが百円というものは貧乏人にはごくわずかではないのです。それからこのやむを得ないというのは、その状態が直ったらもとに戻せということである、それがやむを得ないという日本語の正常な解釈です。それで赤字が黒字になった、だから一部負担はやめてもらわなければならぬ。本来からいえば一部負担は全廃すべきだ。ゼロにすべきだ。あのとき四十五円のものを百円にしたのですが、これは全廃すべきたと思う。そういう点で、だいぶ厚生省の方の悪口を言いましたが、ほかの点の御努力は買っておりますので、一つ借金の整理のために一生懸命になったときにはそういうお気持であられても、それが静かに返られたら、一部負担というものは社会保険上一番悪いものだということは、聰明な方ですから私はわかるはずだと思う。で、すぐ御協議になって、大臣としては、そういうものをどうしてもやめる方向に持っていこうというふうに考えていただきたいのです。その御決意をお聞かせ下さい。
  168. 坂田道太

    坂田国務大臣 今やっと大体の問題の所在が実は理解いたしたわけでございまして、それほど愚かな者でございますけれども、しかし御趣旨の点は私は非常に重要な点ではないかと思います。おそらく、何もうちの厚生省の聰明な方々が、あるいは一時は意地を張られるようなこともあったかと思いますけれども、少くともそれだけの問題でありますならば、何も国民のためになることを意地を張って済ませるというような方々ではないと私は信じておりますので、帰りまして、よく協議をいたしました上において処置をいたしたいと考えております。
  169. 八木一男

    ○八木(一男)委員 厚生大臣の御決意を伺いまして、非常にそういう点で期待を持てるのですが、厚生省の方に非常に悪言を言いましたので、特に関係の深い局長さんの太宰さんに失礼な点は別といたしまして、厚生大臣の今のお考えに従って、厚生省としても一部負担廃止の方に考えるという、そういうことに大臣を補佐して協力するという御決意を、保険局長から一つ伺いたいと思います。
  170. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 先ほど大臣がお答えしましたように、大臣とよく御相談いたしまして、検討いたします。
  171. 八木一男

    ○八木(一男)委員 そういうことでございまして、黒字の処断は、もちろん保険料を下げることが一つの方法でありますけれども、順序といたしましては、入院の一部負担を全廃する、診療の初診料の一部負担を全廃する、それからさらにできれば内容給付を上げる。それでなお余裕があったら保険料を下げるという順番でないかと私どもは思う。保険料さえ下げればいいということは、いささか社会保障の前進とは正反対――正反対とは言えませんけれども、前進の完全な方向ではないと思う。とにかく入院一部負担をやめる、初診料の一部負担をやめる、それから制限診療をなくするということ。これは実質上一部負担と同じようなものです。これをやってもらったらなおれるのに、制限診療があるからできない。制限診療をやめる。それから給付の年限を延ばすとか、あるいは傷病手当金をふやすとか、それからさらに保険料を下げる。そのためには国庫負担を大幅に入れるということになる。その点で、また大蔵省と交渉していただかなければなりません。そこで健康保険国庫負担については、すっかり忘れたようなふりをしておられる。国民健康保険国庫負担がふえることは、私どもは大賛成です。大賛成ですけれども、労働者の健康保険をふやすことも忘れてもらっては困る。率直に言うと、労働者も農漁民も同じ国民なんです。同じ国民に公平ということをよく言われます。自分たちの厚生行政の諸制度のいろいろな欠陥を抜きにして、表面的公平を言われる。健康保険の方は給付が多い、全額給付である、使用者負担がある、だから非常に厚いのだということで、何もない農漁民の方をやられるということばかり言われる。農漁民にどんどん厚くされることは、私どもは賛成です。どんどん厚くされなければいけない。だけれども、労働者の方に半分使用者負担があるという点は、これは歴史的の状態からきているわけです。工場法時代から労働条件一つなんです。それがなければ、賃金がもっと五割くらい上っているわけなんです。それがそういうことになっているのですから、これは政府が出しているのじゃないから、自分が出しているようなふりをして、それがあるからいいのだと言えるような立場ではありません。それは使用者が出してくれている。それは労働者と使用者の昔からの沿革によってできた。それで半分あるからいいということは、政府は言ってはいけない。国民健康保険に二割五分やったら、労働者の方にも二割五分しなければならぬ、そんなかたいことは言いませんが、半分くらいはしなければならぬ。実際はやはり使用者があるから、国民健康保険より厚いものがある。国民健康保険が薄いから、これをどんどん上げていただくのはいいけれども、労働者の方はつかみ金三十億を二十億にして、それでも十億出しているからいいというような考え方は大間違いだ。少くとも労働者の方にももっとすべきである。われわれは二割と言いたいけれども、それくらいすべきである。それで国保の方は五割くらいにしろ。両方から結核の医療費は全部別ワクの国庫負担考えるというところまでいかないと、医療保障というものはちぎれた、ごく一部分ということになる。そういうことが社会保障制度審議会の勧告なんです。社会党の主張じゃないのです。社会保障制度審議会の勧告ですよ。年金では社会保障制度審議会のことをさんざん言われますけれども医療保障の方ではとんと忘れられたような顔をしている。僕ら年金の方には一生懸命に関与しておりますから、年金の完成のためには坂田さんや小山さんと同じように熱心なんです。だけれども自分が関与しているものだけがよければいいということじゃない。社会保障というのは総体的なものです。医療保障が完成されなければならない。失業問題に対する対策が完成されなければならない。特に防貧対策が完成されておらないために、現在貧乏のどん底に陥っておられる方の救貧対策がほっておかれてはいけない。社会保障は防貧対策のいいことは、これは理論的に言えます。だけれども防貧対策が今までなかったために、現在貧乏な人のことを考えれは、順序を言えば救貧対策が一番先になる。それから医療保障失業対策も年金問題も発足しなければならぬ。私ども年金を一生懸命に言っておりますが、救貧対策を完成する、医療保障失業対策と年金と同時に出発するということをやっているわけです。政府が今度年金にある程度――非常に程度は少いけれども熱心になられたということは、私も非常にいいことだと思う。だけれども年金というようなジャーナリズムに乗った、脚光を浴びた問題を、それも百やればいいけれども二十か三十くらいやって、それから救貧対策などは百やらなければならないところを十くらいでほったらかしている、医療保障政策も十五くらいでほったらかしてある、それで能事足れりということではいけないと思う。  それで非常に悪口がましいことを言いましたけれども政府の今の考え方は大体そういうところです。おのおの百やらなければならないところを、一番気の毒なところは五くらいでほったらかしている、医療保障対策は十五くらい、今度年金はちょっと力を入れられて二十くらいやっておる。僕は年金はもっと主張しますよ、二十じゃ足りない。政府の今の力でもって、いろいろな政府の今の状態においても、八十か九十くらいまでいかなければならないという主張は、これから熱心にしますけれども、それと同時にほかのものも九十九くらいまでも上げてもらわなければならない。あとの一くらいのところは、社会党が完成しますよ。先にやってもらった方がいいわけですけれども、そういうことでほかの方をほったらかしにされては困る。そういう点で年金は非常に大事で、画期的なものでありますから、スタートしなければ、ほかの大臣になって忘れられては大へんです。小山さんがおられますから忘れられることはないでしょうけれども、それと同時に、スタートをして熱心に一生懸命になっていただくことは大事でありますけれども、私は滝井さんと違って欲が深い。半年に一つか二つやってくれなんて言いません。百でも二百でもやれるだけやってほしい。それと年金をやること、それに関係のある医療保障、結核対策の問題、もっと大事な生活保護や社会福祉の問題、それから失業対策については、これは管轄は労働省であるけれども、厚生省だけよければいいといって、失業保険国庫負担が四分の一くらいに下るようなことをそばで指をくわえて見ているというようなことは、社会保障の根幹の大臣の態度ではないと思いますから、たとい労働省であっても失業保険が改悪されないように、厚生大臣一つそっちの方も協力してやる、そのかわり厚生省のことに倉石君も協力させる。倉石君はこのごろ一つも熱心じゃない。社会保険の問題は、五人未満の事業所の問題なんか、厚生省に労働大臣が乗り込んできて、おれたちはどうしてくれると言ってしかるべきだけれども、労働省は全く労働者弾圧政策ばかり夢中になって、労働者の社会保障政策は全く頭はからっぽなんです。僕はきょう倉石さんを呼ぶはずだったのですけれども、おそくなって残念ですが、今度坂田さんと並べておいて、倉石さんをこてんこてんにたたきますから、一つそういう点で労働省と協力してそういうことをやっていただきたいと思います。それについて一つ総括的な御意見を伺いたい。
  172. 坂田道太

    坂田国務大臣 まことにその通りだと思うのであります。ただ私どもは今度社会保障年金提案を申し上げておるわけでございますが、何もこれだけがわれわれの浮生行政ではないわけでありまして、今度出発いたしました国民保険、それに伴う医療保障というものがやはり大きな柱であるということは、お説の通りだと思います。また同時にその最低生活を営んでおられますところの、生活保護法を受けておられますところの人たちに対する公的扶助、この問題を解決することなくして、私は厚生行政はあり得ないというふうに思います。児童福祉あるいは福祉三法によるところの問題等々を考えまして、今八木さんがお述べになったことが実は厚生省の行政であるというふうに私は聞いておるわけであります。この点は抜かりなく一つやりたいというふうに考えております。
  173. 八木一男

    ○八木(一男)委員 時間があれですからもう終ります。五時間分くらいあったのですけれども、もう時間がないですから、問題の名前だけを申し上げておきますから、一つ御検討して、すぐ推進していただきたい。  こまかいことになりますからあれですけれども、さっきも岡本さんの御質問に出ました五人未満の事業所の社会保険の適用の問題、それから日雇労働者健康保険の改善の問題、その対象をふやす問題、これは日雇い形態の山林関係の労働者などは強制適用も受けていない、これをふやす問題、これはあそこにおられる山本さんがよく、御存じであります。それから次に部落対策の問題、未解放部落の問題を申し上げますと二、三時間かかりますからきょうは省略いたしますが、昨年の三月十一日の社会労働委員会の速記録をぜひ読んでいただきたいと思います。岸内閣総理大臣がはっきりと明言されたことが載っておりますので、それをお読みになって一つ推進していただきたいと思います。  以上で終ります。
  174. 田中正巳

    ○田中(正)委員長代理 次会は明二十六日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後六時四十一分散会